衆議院

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第3号 平成22年11月5日(金曜日)

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平成二十二年十一月五日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 小平 忠正君

   理事 吉良 州司君 理事 中野  譲君

   理事 中林美恵子君 理事 長島 昭久君

   理事 西村智奈美君 理事 秋葉 賢也君

   理事 小野寺五典君 理事 赤松 正雄君

      浅野 貴博君    江端 貴子君

      小川 淳也君    大泉ひろこ君

      勝又恒一郎君    菊田真紀子君

      阪口 直人君    首藤 信彦君

      中津川博郷君    浜本  宏君

      伴野  豊君    本多 平直君

      山花 郁夫君    若泉 征三君

      金田 勝年君    河井 克行君

      高村 正彦君    松野 博一君

      笠井  亮君    服部 良一君

    …………………………………

   外務大臣         前原 誠司君

   外務副大臣        伴野  豊君

   防衛副大臣        安住  淳君

   外務大臣政務官      菊田真紀子君

   外務大臣政務官      山花 郁夫君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    鈴木 久泰君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月五日

 辞任         補欠選任

  菊田真紀子君     江端 貴子君

同日

 辞任         補欠選任

  江端 貴子君     菊田真紀子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とヨルダン・ハシェミット王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオランダ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

小平委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として海上保安庁長官鈴木久泰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小平委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。きょうは質問の機会をありがとうございます。

 まず冒頭、実は、これは質問通告にございませんでしたが、昨夜からきょうにかけて今大きな報道をされております、今回の尖閣漁船のビデオの流出についてお伺いをしたいと思います。

 まず事実確認をしたいのですが、きょうは保安庁長官、済みません、お忙しい中ありがとうございます。まず、今回のこのビデオは海上保安庁が撮影したものかどうか、それが確認できたかどうかをお尋ねいたしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 今回のユーチューブへのビデオの問題でございますけれども、現在、その映像の内容も含めまして鋭意調査中でありまして、私ども本庁から現地、石垣保安部に担当もけさ行かせまして、徹底的に調査することにしております。

小野寺委員 だれが見てもこれは保安庁の方が撮ったとしか思えない、当然、船上から撮っていますから。これは保安庁が撮ったビデオで間違いないでしょうか、もう一度お答えください。

鈴木政府参考人 これは大変大事な問題でありますので、その点も含めまして、きちっと調査をしたいと考えております。

小野寺委員 この尖閣の事案が発生しました九月七日、この日に、発生した直後、海上保安庁長官は当然このビデオというのを見せてもらっていると思いますが、そのときに見たビデオと同じものでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 私が最初に見ました映像は、衝突の直前と直後を撮影したものでありまして、今回のものと同一かどうかは定かではありませんが、御指摘の点について真剣にこれから調査したいと思っております。

小野寺委員 ここまではぐらかしたような答弁をする必要はないと思います。恐らくだれが見ても、あの状況を見れば、これは海上保安庁が撮ったそのビデオだと思うんですが。

 さて、九月七日、長官は何時ごろ、この衝突の状況を、これは多分国土交通省にいらっしゃったと思いますが、そこで見られたか、覚えていらっしゃいますか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 まず、衝突のその時点では、私は参議院の国土交通委員会に出席しておりまして、これはその前のヘリコプター事故の閉会中審査がなされておりまして、それに出ておりまして、メモでその衝突の事実の報告を受けました。その後、本庁に帰りまして、現地から送られてきた映像を確認したということでございます。

小野寺委員 前原大臣にもお伺いします、当時、国土交通大臣でいらっしゃいましたので。

 私ども、当時の報告によりますと、この事案が発生した九月七日、その日の参議院の国土交通委員会が終わった後、この事実確認について報告を受け、その映像を見たと伺いましたが、それで間違いないでしょうか。

前原国務大臣 今、海保の鈴木長官がお話をしましたように、午前中が参議院の国土交通委員会で、第六管区のヘリが墜落をした、それに関する集中質疑を行っておりまして、その最中に、秘書官からメモが入りましてこの事案について知ったということでありまして、委員会が終わった後に、本省に戻り、そして長官から、何時かは定かには覚えておりませんけれども、報告を受け、ビデオを見ました。

小野寺委員 そのとき見たビデオというのは、いわゆるテレビの映像だったのか、パソコン上での映像だったのか、どちらだったでしょうか。

前原国務大臣 国土交通大臣室に大きなテレビがございまして、そこで、DVDだったと思いますけれども、映像を私は見ました。

小野寺委員 保安庁長官にお尋ねします。

 今、保安庁長官は、この衝突事案、現場から送られたビデオを見たとおっしゃいましたが、この送られたというのはどういう意味でしょうか。

鈴木政府参考人 現場から衛星を使いまして送られてきた映像を、うちの担当が私に見せてくれたものと承知しております。

小野寺委員 その送られた映像というのは、いわゆる衛星を使って、そして海上保安庁の何か機械、デッキなのか、あるいは衛星の通信によってネットの添付ファイルのような形で送られたのか、どちらでしょうか。

鈴木政府参考人 私は、映像を見ただけで、その詳しい状況は承知しておりませんが、いずれにしても、約五分程度の、二回にわたってぶつけた映像でございます。

小野寺委員 実はこれは大事な問題でして、今回、私ども、ビデオ、ビデオというから、何かこういうカセットみたいなものを渡して、あるいはこれは官邸にも渡っています、官邸で見ているとか、そういう印象があるんですが、時系列で見て不思議だなと思ったのは、尖閣諸島で起きて、その事案のものがなぜ夕方には国土交通省で見られているんだろう。これは恐らく、映像をデータとして配信したということだと思います。

 もし今でもすぐ確認できるのであれば、それが衛星のネットを通じてコンピューター上で添付ファイルとしてやりとりされたかどうかを至急確認していただけませんか。事実だけの問題です。

鈴木政府参考人 済みません。具体的な方法は詳しくはないのですが、衛星を通じて動画で送ってきた、その部分の映像であります。

小野寺委員 衛星を通じて動画で送るということは、通常これはデータに添付するということだと思うんですが、どなたかわかる方はいらっしゃいませんか。これはすぐわかる話ですから。

 では、大臣。

前原国務大臣 機械的な詳しいことは私もわかりませんが、いずれにしても、今調査をしています。私も、朝早く馬淵国交大臣から連絡を受けまして、調査をしっかりするということでありますので、それほど時間を置かずに皆さん方には事実をお伝えできるのではないかと思いますので、もう少しお待ちをいただければと思います。

小野寺委員 きょうは一時間時間がありますので、今本省に電話をすればすぐわかると思います。

 これは大事な問題でして、実は、今回のこのデータというのが、衛星を使って、もしコンピューターの例えば添付ファイルという形で本省に送られてきたとすれば、このデータというのは、もう既にこの時点でコンピューター上にあるわけです。ということは、この保守管理というのがどのようにして行われていたか。もう既に、現物の、撮ったDVDではないんです。それがもしファイルとしてコンピューター上にあったとすれば、そこから簡単な形で、メールのやりとりの中で幾らでもこれは広がっていく。

 ですから、このデータを送って、そのときの管理がどうだったか、それが大変重要なので、お答えをしていただきたいと思っています。

鈴木政府参考人 済みません。衛星を使ってその日のうちに送られてきたということは先ほど申し上げました。それでないと我々もその日のうちに見ることはできません、石垣から空輸では見られないと思いますので。そういう形で送られてきましたが、送られてきたデータにつきましては、きちっと我々は厳重に管理をしておるつもりであります。

小野寺委員 その後、このデータを官邸にも持っていって、仙谷官房長官に見せたということでありますが、そのときは長官は御一緒だったんでしょうか。

鈴木政府参考人 そのとき、私どもの次長が行っておりましたが、そのビデオもそのまま回収をして、引き揚げてまいりました。私どもが管理をしております。

小野寺委員 今回、ユーチューブに発信した方のIDネーム、IDの名前があります。だれが出したか、ニックネームですが、sengoku38という名前です。sengoku38、ローマ字でsengoku、数字で38。これは失礼な言い方かもしれませんが、ネット上で何と読むかと出ているのは、実は、センゴクサンガパア、そういうことで出ているらしいんです。

 官邸にこのビデオを持っていったとき、そのとき、だれに見せましたか。

鈴木政府参考人 先ほどお答えいたしましたように、私は直接行っておりませんが、関係閣僚及び関係者だと考えております。

小野寺委員 今、事務の方が後ろで電話をかけて、その管理というのが、これがコンピューター上で、いわゆる添付ファイルでやりとりしたかどうかというのが確認できたら、お忙しいでしょうから、もう戻られて結構です。

 実は、このネット上での管理は大変重要な問題です。つい最近も、警察の情報がネットで、ウィニーを通じて流れたというふうになっています。そこには、日本の捜査情報だけではなくてFBIからの提供情報も実は入っていた。ですから、私ども、このネットで流れるということに、本当に保守管理をしっかりしなきゃいけないんですが、もし、今回のこの情報の流出というのも、実はこのネット上でのやりとりがあったとすれば大変な問題だ。

 そして、これは実は、例えばユーチューブに確認をすれば、その先、だれがこれは出したかということが、捜査上、もし警察が動けば確認することができると思います。また、もしメール上で残っていれば、特定の方がこれをメールで送ったということになれば、だれからだれに送ったかというのがわかります。これで、最終的には今回の情報を流出された方というのをしっかり把握する必要があると思うんですが、この捜査、対策に対して万全なことを尽くされるかどうか、外務大臣に伺いたいと思います。

前原国務大臣 今、海保を監督している国土交通省、国土交通大臣を中心に事実を調査しているという報告を受けておりますので、それを待って、どのような対応をとるかということを決定していくことになると思います。

小野寺委員 来たらすぐお帰りになって、今電話で聞いていると思うので。

 このビデオがもう出てしまったということは、恐らく全世界、いろいろな形で皆さん添付してこれから回っていくのだと思います。当然、中国側もこの事案をよく知っているということになりますが、今回のこのビデオ流出、そしてまた、私たちはこれを見て初めて、ああ、なるほど、これは中国側が間違いなくぶつかってきた、しかも、その船の操縦というのは、酔っぱらっていたという一部報道もございますが、かなり乱暴だ、間違いなく中国が間違っているということをこれは世界に示す内容だと思うんですが、中国に対して、こういう状況が出たということで、中国政府、日中間、これから何か大きな問題が出ると前原大臣はお考えでしょうか。

前原国務大臣 特段、私が今回連絡を受けたのが午前の一時四十分ぐらいだったと思いますけれども、それ以降で、中国側から外務省に対して何らかの照会が来ている、あるいは反応があるということは聞いておりません。

 いずれにいたしましても、ASEMの会議で菅総理と温家宝首相が会われて、その後、ハノイでは、直前になって日中首脳会談というのはできなくなりましたけれども、私はヨウケツチ外相との間で、一時間二十分にわたって、もちろんお互いの原則的な立場というのはしっかり話をいたしましたけれども、今後の日中関係をどう戦略的互恵関係に発展させていくのかということで、極めて実りの多い議論ができたと思っておりますし、その方向性をしっかりと堅持しながら、菅、温家宝両首脳で合意をされた日中関係の改善、そして戦略的互恵関係の推進というものに努力をしてまいりたいと考えております。

小野寺委員 つまり、今回のこのビデオが流出した件で特に中国側からは反応がない、特に問題ないんだろうということであれば、なぜ当初からこのビデオを公開しなかったのか。そうであれば、私は、このビデオを見れば、今回の日中関係のこの複雑なことはないんだと思うんです。あの映像を見て、ネットで恐らく多くの中国人が見て、これはちょっとこの船長は危ないよな、多分そう思うのが普通だと思います。

 なぜこのビデオを当初に公開しなかったのか。公開しないということを、私は、いろいろな委員会の中で、当時の前原国土交通大臣がこの直後に公開については否定的だったという話を伺いましたが、どうだったんでしょうか。

前原国務大臣 九月の七日に事案が起きまして、そして、被疑者を逮捕して石垣に連れていったわけですね。そして、取り調べをしてすぐに検察に送致をするということで、まあ長くても二日ぐらいだろうということでありまして、当然ながら、検察に送れば、このビデオというものが証拠として扱われることになるだろうということで、証拠物件になるものの公開については慎重であったということでございます。

小野寺委員 この事案につきましては、これだけネットに流れても日中間に特に影響がないのであれば、私どもはやはり、冒頭からこの問題についてネット公開をすればしっかりわかったんじゃないかと思っています。

 保安庁長官、今報告があったと思うので、先ほどの件を教えてください。

鈴木政府参考人 先ほど御説明したように、衝突時の五分の映像を信号で衛星を経由して送ってきて、それでこちらで受け取ったというふうに聞いております。

小野寺委員 信号というのはどういうことでしょうか。

鈴木政府参考人 衛星回線で、衛星を通じて送りますので、ビデオの画像をその衛星に信号で発信して、それをこちらでキャッチしてまた画像化したということでございます。

小野寺委員 ということは、通常の私どもが思うネットの添付ファイルという形で送ったのではないというふうに理解していいんでしょうか。

鈴木政府参考人 そのとおりでございます。

小野寺委員 いずれにしても、この情報というのが、では、DVDに焼きつけてその場で持っていたのか、ネット回線ですから一度何らかのコンピューターのホストに入ったのか、そこはどうなんですか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 ビデオテープレコーダーに落としたものをDVD化して、それを関係者にお見せしたりしておったということであります。

小野寺委員 済みません、細かい話で。映像がデータで送られるということは、そのデータを直接DVDに書くわけじゃなくて、ホストコンピューターなりに一度それが入るはずなんです。入った後にDVDに焼きつけるということだと思うんですが、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 コンピューターではなくて普通のビデオに受けて、それをDVDにして、お見せするときは持ち歩いたということであります。

小野寺委員 ということは、この情報というのはいわゆるデジタルで送られたわけではないということなんですか。

鈴木政府参考人 衛星を通じて、そのデジタルの信号で送ってきたということのようであります。

小野寺委員 そうしますと、オリジナルのDVDは一枚と考えていいんでしょうか。それとも、デジタルで送られてきたものが、例えばデッキあるいはホストコンピューターみたいなものの中に落とし込まれて、その中にはもとのオリジナルが、送られてきたオリジナルが残っていて、そしてそれをDVDに焼きつけた、そういうふうに考えていいんでしょうか。

鈴木政府参考人 まだ捜査過程の話でありますので、詳細なところは差し控えさせていただきたいと思いますが、送られてきた経緯はそういうことでございます。

小野寺委員 ということは、私ども、一次情報とか証拠資料ということでお話を伺ったので、それは例えば、撮ったそのビデオの本体が一次証拠です。その内容が、私たちは今までずっと、海保の説明であれば、それを官邸で見せたり、あるいはいろいろなところ、枢要な方に見せたという報告を受けていたんですが、今の話で言えば、もう既にオリジナルは船の上にあって、そしてデータとして衛星を使って国土交通省に送られて、そしてそれを官邸も見たり、あるいはさまざまな方が見ていたということになれば、何枚も何枚もこのコピーが実は存在したということではないんですか。

鈴木政府参考人 オリジナルの映像のほかに、ただいまお答えしましたような五分間の衝突時だけを切り出した映像がありまして、それをごらんいただいておったということでございます。

小野寺委員 では、四十四分間のオリジナルのものというのはだれが持っていて、だれだけがそれを手元に置くことができるんですか。今回の五分じゃない、あるいは国会で報告した六分強じゃない、四十四分の長さのものというのは、そうすると、これを持てる人は特定できるということですか。

鈴木政府参考人 その点につきまして、現在、担当官を現地へ派遣して徹底的に調査をしておるところであります。

小野寺委員 私たちが大変腹立たしいのは、国会で何度も、そして委員長にも何度もこの公開をお願いし、そして、これは与野党で政治マターとして協議し、ようやく出たのが六分五十秒ですよ。そして、それを見られる方も特定されています。この外務委員会の中で、委員長も見ていません、私も見ていません。国会の審議に使うにも出さないあなたたちが、ユーチューブに漏出。これは何ですか、一体。

 そして、このオリジナルを確保して責任があるのは、何度も、海上保安庁が確保している、海上保安庁の責任で出せない、自分たちがしっかり管理している、何回も言ったじゃないですか。そして、私たちには裁判中だから見せない。出ているじゃないですか、こうやって。

 長官、何かないですか、一言。おわびでもいいです。

 長官、何度も私たちが要求したら、海上保安庁がしっかり確保して、これは外に出せません。出ているじゃないですか。これについてどうお考えですか。

鈴木政府参考人 このビデオ映像は確かに私どもが撮影したものでありますが、大事な裁判の証拠でありますことから、検察当局とも協議の上、公表は差し控えておったものでございます。

小野寺委員 ということは、この漏えいをしたのは海上保安庁か検察ということになります、それ以外はこれを持っていないということで今お話をされましたから。

 ということは、これは海上保安庁にはない、検察の責任だとここでもおっしゃるんでしょうか。

鈴木政府参考人 ただいま申し上げたのは、ビデオの公表の件について、検察当局と私どもで協議をして公表を差し控えたということでありまして、検察の方に責任を押しつけておるということではございません。

小野寺委員 今回のビデオの保管の責任はどの役所にあるのか。これは、一次的にそれを撮って管理をしている海上保安庁にあると考えて間違いありませんか。

鈴木政府参考人 ビデオは私どもと検察当局と両方で保管しておりまして、それぞれ厳重に保管しておるということでございます。

小野寺委員 ということは、今何度も言っていますが、責任がどこにあるか。うちにあるかもしれないし、検察にあるかもしれない。でも、いずれにしても、このビデオというのは、これは外に出るはずがないものです。外に出るはずがないもの、しかも、海上保安庁がずっと自分たちの責任で保管していると言っている。海上保安庁の責任でなければ検察の責任、検察の責任でなければ海上保安庁の責任。

 だけれども、いずれにしても、この責任を一番負わなきゃいけないのは、一次的にその情報を撮って管理する義務がある海上保安庁じゃないかと思いますが、長官、どうですか。

鈴木政府参考人 私ども、大事なテープでありますので、しっかりと管理をしてまいったつもりであります。

小野寺委員 長官、これ以上もう大丈夫ですので。

 ただ、私が言いたいのは、今回、皆さんが本当に命を顧みずこの漁船に乗り移り、そして中国の漁船、あの映像を見ればこれはならず者ですよ、そういう漁船の船長を逮捕した、取り締まったということ、それは高く評価をしています。そして、こういうビデオのことで保安庁の現場の職員の方を傷つけたくない、そういう思いもあります。

 この問題というのは、私は、申しわけないですが、この根っこにあるのは、恐らく多くの皆さんが今回のことで不満を持っているんだと思うんです。現場の方が多くの不満を持っているんだと思うんです。なぜ自分たちが命をかけて捕まえた船長が簡単に釈放されてしまうのか、そしてなぜ、自分たちが勇猛果敢にやったこと、あるいは中国の傍若無人ぶり、これをビデオで世界に公表しないのか、こういうやるせない気持ち、そういう憤り、私はこれがこのビデオの公開の背景にもしかしてあったのではないかと。

 決して許されることではありません。ですが、ここまで内部の情報が出るというのは異常ですよ。

 そして、このID名を見てください。sengoku38、仙谷さんの名前が書いてあるじゃないですか。私は、そこにすべてが込められている、そういう思いがございます。

 今回を契機に、しっかり情報流出については歯どめをかけていただくよう海上保安庁にもお願いしますし、この事実確認について、最終最後だれがそうしたのかというところまでしっかりと対応していただくことを保安庁長官にお伺いして、その後、外務大臣にお答えいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 御指摘のとおり、しっかりと事実関係を究明させていただきたいと思っております。

前原国務大臣 今回ユーチューブに載った画像というものの調査を今明確にやっております。

 その段階で、また新たに、我々政府として国会の場で、あるいは国民の皆さん方にお示しをすることになると思いますけれども、仮にこれが海上保安庁が撮影をしたものがベースとなって流出をしたということになれば、これは情報管理の面では極めてゆゆしきことでありますし、調査をして、だれに問題があったのかということまでは徹底的にやらなくてはいけませんし、先ほど海保か検察かという話でしたが、それ以外もあると思うんですね、例えば盗まれたとか、そういうこともあるかもしれません。

 ですから、いずれにしても、調査をしっかりやって、そして仮に政府の情報というものが流出をしたということであれば、これは事件として扱わなくてはいけないし、捜査をして徹底的にその所在、もしそういう、だれかが流出した、あるいはだれかが窃盗したということであれば、徹底的に捜査をして、事案として上げるというところまでやるべきだと私は思っております。

小野寺委員 長官、結構です、どうも忙しいところを。またさまざま対応があると思うので、しっかりお願いします。

 そして、もう一つお話をしたいのは、実は、もしこのビデオの流出がこの事件発生直後から行われたとしたら、そのときの責任者、国土交通大臣は前原現外務大臣ですし、今発生したとすれば、この問題の責任者は馬淵国土交通大臣になります。ですから、いずれにしても、これは最終的には政治がそれなりの責任をとる、そのことが必要だと思いますが、現場の問題と限らず、やはりこういう大きな問題については、政治家としても大臣としても、しっかりとこの問題について国民に謝罪なり、今後の再発の対応をするということが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

前原国務大臣 先ほど答弁をさせていただきましたように、今調査中でございまして、海保が撮ったものが流出をされているのかどうなのか、あるいは仮にそうだったとしても、どういうものが流れていたのかといったところを徹底的に調べなくてはならないと思っておりますし、また、先ほど答弁しましたように、だれが流出をしたのか、あるいはだれが窃盗したのかということについても徹底的にやらなくてはいけない。

 まずは真相解明、事実解明をすることが先決だと思っておりますので、現在調査を行い、そしてそれがわかった上で、政府として全力を挙げてまずは真相究明をするということが大事だろうと思います。

小野寺委員 それでは、次に日中関係についてお伺いをします。

 先日、日中の首脳会談というのが行われました。これは十分間の会談ということで私どもにお知らせをされたんですが、この議事録というのは存在するんでしょうか、大臣。

前原国務大臣 メモは見ましたけれども、要は、これは小野寺委員ももう外務省から聞かれているかもしれませんが、首脳が会議の始まる前に立ち話をしているときに、私が聞いたのはブルネイの首脳だったと思いますが、菅総理が話をしているときに温家宝首相が入ってこられて、次々と握手をされて、菅総理のところにも来られて握手をして、そこから会話が始まった、こういうことでございます。

 もちろん、近くに通訳はおりましたので通訳はしたと思いますけれども、議事録というような正確な会談であったというふうには我々は認識をしておりませんので、どういうやりとりがあったかということについては、福山副長官がブリーフをさせていただいたような、それのベースとなったメモ程度はあるのではないかと思います。

小野寺委員 そのメモを私どもも見せていただきましたが、その中には、例えば尖閣の対応について中国に対して抗議をするなり、あるいは中国にある日本の商店、お店が壊されたということに対しての謝罪を求める内容とか、そういうものはあったんでしょうか。

前原国務大臣 メモの内容については、つぶさにどういう内容だったかということの詳細までは差し控えたいと思いますが、その前に、これは小野寺委員も御承知のとおり、日中外相会談をやったわけです。日中首脳会談というのはまだセットされていませんでした。

 日中外相会談で、当初は三十分の予定でありましたけれども一時間二十分話をいたしまして、冒頭、私の方から、尖閣にかかわる日本の確固とした立場について中国側に話をしました。もちろん、それに対する反論もありました。そして、さまざまなテーマについて日中外相会談で話をして、そしてお互いが日中首脳会談が行われることが望ましいということで、それぞれが努力をしようということで一たんはセットされたわけでありますけれども、さまざまな理由でそれがなされなかったのは残念でございましたけれども、日中外相会談の中で、さまざまな、多岐にわたる分野について忌憚なく我々は意見交換をしたということはお伝えをしたいと思います。

小野寺委員 前原外務大臣はしっかり日本の立場をお伝えしたんだと思います。ところが、肝心の菅総理、私ども報道を見ますと、待ちぼうけを食ってホテルで三十分待って、何かすごすごと帰ってくる姿を見ました。そして、その翌日だったでしょうか、十分間会談ができた、会談ができたということで、何か躍動感があるような、そんな発表がなされました。

 さて、その会談はどんな内容かと思ってメモを見ましたら、そこに書いてあったのは、今度会ったらゆっくり話しましょうねということしか書いていなかった、そういう印象があります。これは会談と言えるものなんでしょうか。

前原国務大臣 私のイメージする会談というのは、事務方がちゃんとセットして、そして通訳、ノートテーカーも含めてしっかりとした、要は準備を整えた上でやるのが会談だと私は思いますので、私のその定義からすると、会談ではない。先ほど、しょぼしょぼとおっしゃいますけれども、要は、土壇場になって首脳会談をやらないと言ってきたわけであります。

 中国側のコメントを我々が解釈する立場にはないですけれども、二つ話があって、一つはハワイでの日米外相会談、いわゆる尖閣の五条対象の話。でも、これは別に、前からある話であって、新しい話ではありません。もう一つが、日中外相会談の話を、日本が事実でないことをまき散らしていると。これは、東シナ海のガス田の交渉再開について合意をしたというAFPという通信社の誤報をそのまま受け取って流しているということですので、我々からすると、なぜ首脳会談ができなくなったかということは、その時点では理解できなかったことであります。

 いずれにしても、我々としては、ASEMでの両首脳の確認というものを受けて、着実に関係正常化に向けての努力をしておりますし、我々の戦略的互恵関係を目指すという方向性は全く変わっておりませんので、しっかり努力をしていきたいと考えております。

小野寺委員 前原大臣は多分しっかりやっていらっしゃるんだと思います。肝心の菅総理のお話をしております。

 そして、今、前原大臣の定義でいうと、私も多分同じ意見だと思いますが、これは通常の会談と呼べるようなものではないのではないかと思います。ただ、外務省から出てきたメモは、日中首脳会談という形で出てきていますので、これはどう見ても会談なのかなと。

 まず、そでにされたことに対して菅さんが抗議をしていることもありません。そしてその後、この尖閣をめぐる、あるいは日本の企業やお店が壊されたことについての抗議もここではしていないようだ。ここでのメッセージは、今度はゆっくりお会いしましょうね、お話ししましょうね、こういうことだと思います。

 そして、これは私たちだけじゃなかったんですね。これは報道ですが、中国の外務省副報道官が二日、菅直人さんと温家宝のハノイでの懇談について、これは時候のあいさつを交わした程度ということを言っております。

 私は、これはとても惨めだなと思うのは、向こうは時候のあいさつ程度ということでさらっと流しているのに、日本はこの時候のあいさつを、会談した、会談した、十分間会談したということで何か一生懸命宣伝をしている。こういうことについて多くの日本の国民は、この事案に対しては、これは惨めじゃないかなと。

 それで、私は別に会えなかったら会えないでいいと思うんです。会わないことも外交の大切な段階ですし、メッセージですし、会って角を突き合わせるのなら今は会わないでおく、これも大事な外交の内容だと思います。

 ですから、あえてこの問題を会談として、これは外務大臣ではなくてむしろ官邸サイドの考えだと思いますが、なぜこんなことをしたのか、コメントがあれば教えてください。

前原国務大臣 外務省が発表しておりますのは、会談ではございません、十分間の懇談です。

小野寺委員 済みません。私、会談と懇談が違う意味で、こういう形で使われるというのは初めてわかりましたが、いずれにしても、懇談だということですけれども、首脳懇談、何かこの間は二十五分間の懇談があった、今回は十分間の懇談だと。菅さんは懇談が好きなんだなと私は思っております。

 さて、こういう日中関係、今大変な問題ですが、実はこの日中関係の恐らくきしみの問題、そしてその背景には多分日米関係があると思いますが、そこで起きてきたのが今回のロシア大統領の国後への訪問ということになります。

 今回、大臣は河野大使を召還いたしました。この召還をした目的と、そして河野大使から今の日ロ関係についてどのような報告を受けたか、教えてください。

前原国務大臣 河野駐ロ大使を一時帰国させまして、今回のメドベージェフ大統領の国後訪問の背景、ねらい、あるいは国内におけるさまざまな動き、こういったものをヒアリングいたしました。

小野寺委員 そこで、私どもちょっと気になったのは、今回のロシア大統領の国後訪問というのが、これは報道で出ている話ですが、これはひとえにロシア国内の事情である、ロシア国内の事情で来たんだということを明言されていますが、本当にそうなんでしょうか。

前原国務大臣 さまざまな要因があると思います。詳しくはつまびらかには申し上げませんけれども、さまざまな要因があってのことでありますし、また報道ベースについては玉石混交でございますので、こういった正式の場でお伺いいただければ、お答えできる範囲でお答えをしたいと思います。

小野寺委員 実は、きょうこの委員会に河野大使を政府参考人としてお招きしました。残念ながら、政務三役の判断で今回大使の出席はできないという御返事をいただきました。私は、もし大臣がそうおっしゃるのであれば、本来であればここに政府参考人として河野大使においでいただいて、私どもも直接、今回の日ロ関係、そしてロシア大統領が国後訪問をしたその理由、背景についてお聞きしたいと思うんですが、政務三役の判断でここには出さないということであれば、これは外務大臣にかわって聞くしかありません。

 今回、私は、さまざまということではなくて、背景には、今回の中国と日本との尖閣をめぐっての関係、ここで今日本はぎくしゃくしている、この間隙を縫ってロシアの大統領が国後訪問をしたとしか思えないんですが、このような背景についての報告はなかったんでしょうか。

前原国務大臣 理由は幾つもあると思いますし、いろいろな報道、見方がされていることも承知をしておりますけれども、一つ事実として申し上げたいのは、この五年で、ロシアの地位のある方々が北方四島へ訪問している回数がかなりふえてきております。副首相あるいは外相、ラブロフ外相も行っておりますし、かなりふえてきております。

 私は、実は五年前にビザなし渡航で択捉に行きましたけれども、そのときに、クリル発展計画というものをやっていくんだと。つまりは、今まで一番端っこの方であった千島列島、北方四島、こういったところにも、あのころは天然ガスや石油の価格が物すごく高かったですよね。そういう意味で、恐らく財政的にもかなり余裕があったんだと思いますけれども、そういう中でのクリル発展計画というものでお金が使われ始めて、それに対する視察であるとか、あるいはてこ入れであるとか、そういったものが徐々に徐々に生まれてきている、そういったことも一つの大きな背景としてあるんじゃないかと私は思います。

小野寺委員 今大臣のお話を伺うと、ラブロフさんも行き、だんだんロシアの要人が行き始めた。ということは、今回のメドベージェフ大統領の北方四島への訪問というのもある程度予測された。そして、二十九日には、十一月一日に行くぞということで報道もされている。

 この報道されている、これはロシアはもしかしたら大統領が行くかもしれないとみんなが一番思っているとき、このときに前原大臣はハノイにいましたね。そして、そこにはラブロフ外相もいたはずです。そして、会議は違いますが、ハノイには、メドベージェフ大統領もいましたし、菅総理大臣もいたんです。同じ期間、あるいは同じ会議に外相同士はいました。なぜ、この機会をとらえて、北方四島に行くことに対しての日本側の強い懸念というのを直接大臣や首相から相手の首脳に伝えなかったのか。そして、腹立たしいのは、このハノイから経由をしてダイレクトで国後に行っているんですよ、メドベージェフは。一緒にいたところから行っているんですよ。

 私は、なぜこのハノイの会議で日ロ関係の会談を申し入れなかったのか、あるいは入れたけれども断られたのか、そのことについてお伺いしたいと思います。

前原国務大臣 ハノイに私も三日ほどですか、二泊三日ほどおりましたけれども、会議でラブロフ外相、メドベージェフ大統領と会うこともすれ違うこともございませんでした。お互い、さまざまなバイの会談、マルチの会談、そういったものがある中で、忙しく動き回っていて接触の機会がなかったということだというふうに思っております。

 ただ、なぜだということをおっしゃいますけれども、私がこの職について、ニューヨークから帰ってきてすぐ、こういう話が上がってまいりました、北方四島に行くのではないかと。それを受けて、私は、九月の終わりだったと思いますけれども、駐日ロシア大使を呼んで、それについては厳にそういうことがないようにということは申し入れておりましたし、東京またモスクワ、さまざまな外交ルートで申し入れは行ってきたところでございまして、そういう意味では、日本側としては十二分にロシア側には日本の意向は伝えていたつもりでございます。

小野寺委員 私は、同じハノイに来ているんですから、本来であれば、そこで事前に外相会談を持ちかけ、そして強い懸念を日本政府が伝えるべきであった、そう思っております。

 さて、こうして河野大使を呼んでしまったということになりますが、大使はいつまで日本にとどめ置くつもりなんでしょうか。これが長引けば長引くほど、今度はロシア側が恐らく駐日ロシア大使、相互ですから、同じく引き揚げるということにもなると思うんですが、いつまで大使は日本にいるか、見通しを教えてください。

前原国務大臣 まだ決定はしておりません。

小野寺委員 さらに、今、ロシア大統領が今度はほかの北方四島にも行く可能性があるというふうにラブロフ外相が話しております。もし、これでさらに国後以外のところに大統領が行くということになった場合、今度は日本政府はどのような対応をするのか、教えてください。

前原国務大臣 北方領土は日本の固有の領土であり、四島の帰属を確定して、そして平和条約を日ロ間で結ぶという日本の方針は全く変わっておりませんし、また、北方四島への訪問についての日本の立場というものも、再三伝えているとおりでございます。

 そういう意味において、我々としては、これからもさまざまなルートを通じてロシア側に日本の考え方をしっかりと伝えてまいりたいと思います。

小野寺委員 APECでは、十三、十四日、横浜にメドベージェフも来るという予定になっています。日ロ外相会談の見通しはいかがでしょうか。

前原国務大臣 外相同士の会談というのはできるだけやるべきだと私は思っておりまして、日ロ外相会談もやりたいと思っておりますし、日本の立場をしっかりと伝えたいと考えております。

小野寺委員 日ロ首脳会談です。私は、前原外務大臣は多分ラブロフさんにしっかり言うんでしょう、心配なのは菅総理なんです。日ロ首脳会談でしっかりと日本の立場、北方領土の問題を伝える、このことを含めた日ロの首脳会談、これは予定されていますか。

前原国務大臣 APECにお越しになるということで、APECの議長国として、APEC加盟メンバーについては歓迎をしたいと思っております。

 ただ、どの国と首脳会談をやるかということについては、今まだすべて決まっているわけではございません。

小野寺委員 日本国民の感情からしたら、今歓迎をしたいというお話がありましたが、メドベージェフさんが来て、今、何も向こうが発言しない中で、素直に歓迎する気持ちには恐らくなれない。特に、北方四島にかかわる元住民の方々は、これは許されないことだと思っています。

 当然、日本政府として、むしろこちらから日ロ首脳会談を持ちかけて、北方四島に対するメドベージェフ大統領の対応について強く抗議するべきだと思いますが、いかがお考えでしょうか。

前原国務大臣 お言葉を返すようでありますが、APECという場は、これは二十一カ国の経済をしっかりと議論し、将来の経済統合に向けての議論を積み重ねていく場で、たまたまことしは日本が議長国だということでありますので、議長国としてAPEC加盟メンバーを歓迎するのは私は当たり前だと思います。

 それとは別個に、個々の二国間の問題でさまざまな懸案事項がある場合は、首脳会談あるいは外相会談でそれはまた別個にしっかりと日本の立場を言うということが大事なことだというふうに私は思っております。

小野寺委員 ということは、こちらからむしろ持ちかけて、当然日ロ首脳会談を行う、そしてそこで日本が伝えるメッセージというのは、間違いなく、北方四島、今回のメドベージェフ大統領に対しての強い日本側の懸念、これを伝えると考えてよろしいんでしょうか。

前原国務大臣 繰り返しの答弁になって恐縮でございますが、どの国と首脳会談を日本がやるかということはまだ確定をしておりません。

 しかし、少なくとも私はラブロフ外相とは日ロ外相会談はやりたいと思っておりますし、日本の立場についてはしっかりと議論をしたい、こう思っております。

小野寺委員 日中の首脳会談についての見通しはいかがでしょうか。また、当然、ヨウケツチ外相と前原大臣の会談も予定されていると思いますが、そこでまた尖閣の問題は明確に中国側に伝えると考えていいんでしょうか。

前原国務大臣 ロシアや中国を含めて、どの国と菅首相がバイの首脳会談をやるかということはまだ決まっておりません、これは同じ答えになって申しわけございませんが。

 ヨウケツチ外相とは、私はぜひまた議論したいということを先方にも伝えておりますし、また、ハノイでの外相会談の後、握手をして別れるときに、次はまた横浜で話をしようと言って別れておりますので、ぜひヨウケツチ外相とも話をしたいと私は思っております。

小野寺委員 内閣の一員の前原外務大臣としてお伺いをします。

 内閣総理大臣、菅直人総理大臣が、今回、APECの機会をとらえて、日ロの首脳会談、日中の首脳会談をやるべきだ、そうお考えかどうか、教えてください。

前原国務大臣 二十カ国の首脳が来られるわけです。その首脳からさまざまなオファーもいただいておりますし、我々の考え方もございます。どの首脳も我々にとって議長国としての大事なお客様でございますので、今、さまざまな点を勘案しながら最終日程調整をしているところでございます。

小野寺委員 これは改めてお伺いします。

 こちらから持ちかけて話をするべきだ、受け身ではなくて、むしろ話をしたいというふうにするべきだと、特に日ロ、日中についてはお考えか、教えてください。

前原国務大臣 私の思いとしておなかの中にある思いはございますけれども、これは総理とも御相談をし、また、さまざまな観点から、限られたスロットの中でどういった首脳会談をするかということについて今調整をしているところでございまして、同じ答弁になって申しわけございませんが、今調整をしているところでございます。

小野寺委員 特に日中の問題、これからも大変な課題だと思うんですが、これから日本の島嶼防衛を含めて多くの課題があると思うんですが、そこでひとつ防衛省にお伺いします。安住副大臣、申しわけありませんでした、お待たせしまして。

 日米の軍事演習が、この暮れもしくは来春に予定されていると伺っております。その軍事演習の内容がわかりましたら、教えていただきたいと思います。

安住副大臣 御指摘の日米の合同実動演習については、これから年末にかけまして実際に行うという方向で今調整を進めております。

 内部の詳細につきましては、近々、幕僚長の方から、以前から、従前どおりのルールに従えば発表させていただくということで、今、詳細を詰めているという段階でございます。

小野寺委員 この軍事演習の中には、島嶼防衛、今回、私ども、尖閣あるいは南西諸島、そういうところでさまざまこれからしっかりと守りを固めなければいけないというのが国民的なコンセンサスだと思いますが、この島嶼防衛を想定した演習も行われると考えていいんでしょうか。

安住副大臣 御指摘のとおりでございますので、島嶼部の防衛についても、この演習については、引き続き、これまでと同じようにしっかりとやっていきたいと思っております。

小野寺委員 ありがとうございます。今まで、実はこの問題を事務方に聞いても、明確な答弁はございませんでした。今、島嶼部の防衛についても想定をして、さまざまな防御策の中で想定をして行うという御答弁がございました。

 実は、先月ワシントンに行ったときに、アメリカの外交筋の皆さん、特に防衛関係の皆さんから懸念が出ていたのは、アメリカ側はこの軍事演習の一つの大事な目的として、尖閣を想定した島嶼防衛をやりたい、ただ、日本側がどうもそれに対してまだ明確な反応がないということで心配をされていましたが、今回、この尖閣をめぐる問題について、日米間でしっかり島嶼防衛を含めた従来どおりの軍事演習を行うと考えてよろしいのか、再度お伺いいたします。

安住副大臣 平成十九年における演習でも島嶼侵攻対処というのはしっかりやっておりますが、尖閣諸島は、外務大臣も何度も答弁しておりますとおり、我が国固有の領土ですから、重要な島嶼部に位置づけられておりますので、島嶼部、尖閣に限らず、そこをしっかりと日米共同演習で対処していく訓練というのは常に必要だと思っておりますから、当然、今回についてもそういうことを考えているということでございます。

小野寺委員 実は、国防省に伺ったときに、フロノイ次官にちょっと物騒な質問をいたしました。もし日中が紛争となり、あるいは尖閣が中国に占領された場合、これを奪還するために日中の紛争が起きた場合、このときにアメリカはどう対応していただけますかという物騒な質問をしました。そのとき、フロノイ次官からは、これも安保五条の適用になります、そしてアメリカはサポートをしますというお話をいただきました。

 私は、先ほどお話しされたように、こういう軍事演習を含めた日米間の防衛の強固な体制、大臣もクリントン国務長官から答えを引き出しましたが、安保第五条の適用、これがしっかりなされるということのメッセージを明確に出すことが、逆に日中間の一定の距離がしっかりわかるということ、そしてこれが逆に日本の安全保障につながる、そう思っておりますので、ぜひ、この島嶼防衛については、南西諸島も含めて、どうも今は海上保安庁に頼っている状況がありますが、むしろ防衛省がしっかりと連携をして対応していただく、これが大事だと思っています。

 島嶼防衛を含めた、尖閣を含めた対応について、大臣にお伺いいたします。

前原国務大臣 外務大臣という立場ではありますけれども、国務大臣として、日本のいかなる地域についても主権をしっかり守っていくということは大事ですし、日本は七千の島から成る島嶼国でございますので、そういう意味においては、しっかりとした島嶼防衛を全体として行っていくということが大事だと考えております。

小野寺委員 その際、ホスト・ネーション・サポート、これは私が国務副長官スタインバーグとお話ししたときに、向こうからも明確にこの話がありました。フロノイからもありました。このホスト・ネーション・サポート、今回も、今、予算のさまざまな検討をされていると思いますが、これが従前どおりしっかりとアメリカ側との協議で満足のいく額が出るのか出ないのか、お伺いをしたいと思います。

安住副大臣 小野寺委員の御質問に対して、私の立場で言わせていただければ、極めて重要なコストであり、思いやりという言葉が適切かどうかはわかりませんけれども、日米同盟にとってこれは価値のあるものであるので、ぜひこれまで同様の対応をしてもらえればということで、政策コンテストの場で私も主張をしておりますし、前原外務大臣の方からも同様の趣旨のお話をしていただいているということでございます。

小野寺委員 ただ、従来、民主党は、この駐留経費を含めた特別協定、前回はこの延長に対して反対。その内容としては、ホスト・ネーション・サポートの内容に対して不満があるということで、実は国会では反対をされております。

 今回、もし方針が変わるとすれば、与党になったから、やはり日米関係を考えて方針を変えることになるのか、そのことについてお伺いしたいと思います。

安住副大臣 今御指摘のとおりでございまして、問題提起は私も野党時代もしましたが、今、日米間で各レベルで協議をしております。その中で、やはり人件費、光熱費、それから、新しくグリーンアライアンスというか緑の同盟ということで、いろいろな提案も受けていますけれども、中身のことについては、国民にきちっと説明できるようなものにするという点では、やはり中身の改善というものもあってしかるべきだということで、今、断続的に協議をしているというのが事実なので、総額としての考え方はありますけれども、中身については、当然変えるところはやはり変えていった方がいい部分もあるのではないかなということを私どもは思って、それを今、日米交渉の中で主張しているということでございます。

小野寺委員 これは私どものときにも反省点ですが、やはり中を見ると、例えばゴルフ場のキーパーとか、ボウリング場とかホテルの支配人とか、こういう不審な、これまで出す必要があるのかというところはしっかり直していただいて、対応していただければと思っております。

 きょうは、冒頭、起きたビデオ事案で大分時間を使ってしまいました。海上保安庁には事件の究明をしっかりしていただくこと、そして外務大臣には、この問題についてこれからも私どもがしっかり対応できるように、ぜひ、ビデオの全面公開、これについてお願いしたいと思っております。

 委員長、よろしくお願いいたします。

小平委員長 当件につきましては、後刻理事会で協議いたします。

小野寺委員 ありがとうございました。質問を終わります。

小平委員長 次に、秋葉賢也君。

秋葉委員 自由民主党の秋葉賢也です。

 きょうは、前原大臣に、小野寺委員の質問を受けて、北方問題を少し取り上げさせていただきたいと思うわけでございますが、その前に、ビデオ問題、先ほど鈴木海上保安庁長官から、我々が撮影したものだという御発言がございました。これから徹底的に究明をしていただいて、そして、前原大臣の答弁にもございました、場合によっては事件として扱うべきだと。大変重要な認識だと思います。

 菅政権になってといいますか、政権交代になって、やはり国家としての危機管理というものが大変問われているのではないかと思いますし、我が国のいわゆるインテリジェンス戦略というもののあるべき姿をこれからしっかりと議論して、手がたいものにしていく必要があるんじゃないかなというふうに思います。

 改めまして、ビデオの流出問題、何が原因で、だれがどういう形でやったのかということを徹底的に究明していただいて、そして、事実上、ネットを通して世界にビデオの内容が明らかになっているわけでございますから、早急に、国会だけではなくて、国民に対して公開をしていただくことを改めて申し上げておきたいと存じます。

 さて、今月一日のメドベージェフ大統領の国後訪問は、事前にそういううわさが流れてはおりましたけれども、私自身、今月はAPECも控えておりますし、この時期にまさかという思いで受けとめさせていただいたわけでございます。

 前原大臣も、先ほどの答弁にありましたように、九月の末にはベールイ大使に申し入れを行ってもいただいておりましたし、いろいろな外交ルートを通して日本側の立場を伝えていたのは当然でございますけれども、しかし、私はまさかこの時期にという認識を持って受けとめましたけれども、こういう事態、率直に言って、予測されておりましたでしょうか。

前原国務大臣 外務省の担当局からは、先ほど小野寺委員の御質問にも答弁をいたしましたけれども、二〇〇五年以降、要人の北方領土への訪問がかなりふえている。副首相あるいは外相級の訪問がふえているし、また、サハリン州知事は数度にわたって訪問をしている。

 その背景については、これも先ほど答弁させていただきましたけれども、資源価格が高騰して、資源国であるロシアの財政状況が大変余裕が出てきて、いわばロシアの端である四島、あるいは千島列島に対するクリル開発計画というものが行われるようになって、そういうもののてこ入れ、実施、そういったところでのいわゆるコミットメントが強くなっているのは事実だというふうに思っております。また、その中にあって、大統領に対して北方四島を訪問してほしいという内部での要請も従前からあったということを私も報告を受けておりましたので、そういう意味では、可能性については認識をしておりました。

秋葉委員 今、前原大臣からも、これまでのロシアの国内事情ということ、そして、そうした国内の圧力というようなお披瀝がありましたけれども、いずれそういう可能性はあるということでの認識はそのとおりだと思いますが、この時期でということについてはいかがですか。

前原国務大臣 どの時期であろうと、北方四島は我が国固有の領土でありますし、それについては、我々は従前から外交ルート等を通じてロシア側に伝えてまいりましたので、今回の訪問については極めて遺憾でございます。

秋葉委員 私、今回、この時期の視察で非常に悔しいなと思いますのは、ハノイでいわば同じテーブルで会議をしていて、すれ違いで会談はなかったとはいっても、ロシアの関係者とは会えなかったとはいっても、メドベージェフ大統領はその足で視察をして帰ったということ、そして、来週日本に来ることにもなっている、そのタイミングでということ。かなり強硬な訪問であったと私は認識しておりますし、ソ連時代も含めて、ロシアの最高指導者が北方四島に足を踏み入れてしまった、このことは、我が国の対ロシア戦略の根本的な練り直しを迫られているんじゃないかと思うんですね。

 申し上げるまでもなく、我が国としては、やはり北方問題を解決して平和条約を結ぶんだというスタンスの中でやってまいりました。

 民主党政権になってもう一年以上たつわけでございますけれども、振り返ってみますと、九月二十三日の国連総会の場で日ロ首脳会談が行われておりますし、十一月にも、シンガポールで行われたAPECの際にも日ロの首脳会談が行われ、直近では、ことしの四月にも日ロ首脳会談が行われて、三回行われております。

 特に、御案内のとおり、国連総会の際の日ロ首脳会談においては、メドベージェフ大統領から、いわゆる独創的で型にはまらないアプローチ、独創的なアプローチというような表現の中で、日本側にとっては新しい展開があるのではないかと大いに国民も期待したところでございますし、その後、三回にわたる首脳会談でも、正直、むしろ事態は着実に好転していくのかなというような期待も抱かされる内容だったと私は思うんですね。

 先ほどの議論からも出ておりましたように、二〇一二年には大統領選挙もあるだとか、いろいろなロシアの国内事情があるにしても、我が国の対ロシア外交戦略というものの練り直しが迫られると思うんですが、その点については、大臣はどのような御認識でしょうか。

前原国務大臣 一九五六年に日ソ共同宣言というものがまとめられて、そして領土交渉というものは今までかなり長い間やられ続けてきたわけでありますけれども、残念ながら、解決に至っていない、平和条約の締結につながっていないということでございます。

 根本の練り直しが迫られるかというと、私は、立場は不変だと思っています。つまりは、四島は日本の固有の領土であって、四島のいわゆる境界画定をしっかり行って、そして日ロの平和条約を締結するという考え方は、何の違いもないわけであります。

 そういう意味においては、歴史的な経緯、我々からする法的な背景、こういったものを粘り強く話をしていく。過去にもいろいろな交渉がなされてきたということは、私もこの立場に立たせていただいて、つぶさに見させていただきました。過去、自民党政権でも努力をされてきたというふうに私は思っておりますし、特に冷戦時代には、全くそんな領土問題がないよというようなところから、頑張って領土問題についての認識まで言及をさせてきた面もあったわけでございまして、そういう意味では、我々のスタンスをしっかりと、相手のいろいろな行動でこちらがぶれるのではなくて、我々のスタンスは一定している、変わらないというところで粘り強くやっていくということが重要だというふうに思っております。

 むしろ、私は、今自分自身にも言い聞かせているんですが、ともすれば、領土問題について日本は意欲が薄れてきているのではないかというふうに見られているとすれば、それは間違ったイメージを向こうに伝えてしまっているのかなという思いをします。

 やはり、この問題は極めて大事である、日本の主権にかかわる大事な問題であって、この問題を解決しないと戦後は終わらない、こういう思いの中で、粘り強く領土交渉を事あるごとに取り上げていって、向こう側にも日本の意欲というものを喚起し続けるというところが大事なことではないかというふうに思っておりますので、メドベージェフが国後に行ったからといって変えるということではなく、むしろ、日本側の領土問題解決の意欲をしっかりと伝え続けるということが大事なことではないかと私は思っております。

秋葉委員 ただいま大臣から、基本的な戦略は不変だ、いわばそういう認識のお披瀝があったわけでございますが、ただ、多くの国民は、そういった認識での日本外交の交渉事というものに対して非常にもどかしさを感じているんじゃないかなと思うんですね。

 私たちは、当然北方四島は固有の領土ですから、二月七日を北方領土の日として制定をしたり、いろいろな国内的な努力は、まだまだ希薄化はしていない、しっかり地道に全国的な運動を各地でもやっておりますし、北海道はもちろんですけれども、積み上げてきたものがあると私は思うんですね。そういう中で、我が国が努力を続けてきたにもかかわらず、今回のメドベージェフ大統領の国後訪問はあくまでも国内問題なんだの一言でいわば踏みにじられたわけです。

 ですから、私が申し上げている対ロ戦略の練り直しというのは、やはりカードとして、交渉事の進め方。

 今、日ロ間の経済依存というのはかなり進行してきております。御案内のとおり、今、ロシア産の原油も国内輸入の六%を占めるようになってまいりましたし、液化ガスも八%強の割合になって、特に極東開発、これは尖閣での海洋利権の拡大というのと同じような構図が背景にあるわけでございますけれども、そうした、一方で経済依存が強まる中で、かつてのように日本政府として経済支援的なカードというのは余り説得力がなくなってきている。

 今回、一時的に河野大使を帰国させて事情を聞くということで、事実上日本からロシアに対する一つのメッセージを発したことにもなるわけでございますけれども、日本の立場というものを繰り返し述べるだけではなくて、やはり具体的なカードを切っていく必要がある、そういうふうに考えております。

 せっかく来週から始まるAPECは、大臣がおっしゃるように確かに二十一カ国が対象であって、我が国はそのホスト国だというお立場はよくわかりますけれども、やはり国民から見れば、この機会をとらえて、日ロそして日中の首脳会談、外相会談、この四つの会談は、懇談じゃなくてですよ、会談をしっかりとセットして、そこで議論するというのは、私は当然のことだと思うんですね。

 それが、先ほどから大臣のお話を聞いておりますと、ASEAN全体だとか、菅総理とも相談してと。まあ、それは外務大臣として総理の指示を仰いでやっていくのは当然ですけれども、外務大臣として、やはり我が国の国益第一の姿勢で、そういった姿勢を国民にアピールする。APECをチャンスととらえて日中、日ロ間では首脳会談の申し入れを求めたい、そういうことを国民に発するのが私は外務大臣としての責任ある仕事ぶりではないかと思うんです。

 改めてお伺いいたします。

 二つの質問になりましたが、具体的なカードとして、北方四島は我が国固有の領土だと申し入れをするだけではなくて、どんな手だてを具体的に考えているのかということ。そしてもう一つは、やはりこの機会に首脳会談、外相会談、この四つの会談を必ず実現してほしいと思うわけでございますけれども、呼びかけるお考えがあるのか、伺っておきたいと存じます。

前原国務大臣 まずは、日ロ、日中の首脳会談あるいは外相会談でございますが、外相会談については、ぜひやろうということをそれぞれの国に伝えておりますし、首脳会談につきましても、菅総理は議長でありますので、全体会議のリードをされていくということの中で、バイ会談、二国間会談のスロットがかなり限られておりまして、今調整をしております。そのことはおわかりをいただきたいと思います。

 それから、秋葉委員がもう一つおっしゃった点というのは、私は大変重要な点だと思います。

 例えば、旧ソ連のときに非常に経済的に疲弊をしていて旧ソ連邦が崩壊をしたときと、先ほど申し上げたような、資源国として、資源の価格が上がってきてロシアがある程度豊かになってきたときの交渉というのは、全く違うフェーズだと思うんですね。そういう意味において、現在のロシアをどう見るか、あるいはロシアのニーズをどこに求めていって、そのニーズというものに日本は合致できるのかどうなのかといったところが交渉のレバレッジになる、てこになるというのは、まさにそれは秋葉委員のおっしゃるとおりだと思います。そういったものを、もちろん交渉事ですので詳しく申し上げるわけにはいきませんけれども、やはりお互いの求め合うところで協力関係を進めていく。

 ただ単に、先ほど北方領土については原則を申し上げたわけで、原則は変わらない。しかし、交渉の手法については、まさに秋葉委員がおっしゃったように、原則だけではなかなか進まない、一九五六年から進んでこなかったわけですね。では、向こうからすると、日本と友好関係、協力関係を進めていくメリットというのはどんなところにあるのかといったところもしっかり確認をしながら、そして、どういうカードか別としてそれを切っていくという大所高所に立った戦略というのは必要であって、領土交渉が全く進まなかったら一切の経済協力をしないよということについては、それは旧ソ連の、大変ソ連が経済的に厳しかったときにはそういう交渉もできたのかもしれませんが、今はそういう状況ではないということの中で、六十五年たってまだ戦後問題が解決していない中で、どううまく戦後問題を解決するかということで臨んでおります。

 ぜひ、まさにこれは言葉だけではなくて与野党を超えて、特にきょうは高村先生おられますけれども、元外務大臣として本当にお知恵をかりて、総力を挙げてやはりロシアとは交渉していかないといけないと思っておりますので、御指導をお願い申し上げたいと思います。

秋葉委員 本当にバックグラウンドが大きく変化する中で、かつてのようないわゆる一つのカードみたいなものの制約がある中で、具体的にどうしていくのか。今大臣からも、やはりなかなかこうだというような具体的なカードとしての対応というのは難しい面があるんだなというふうに思いますけれども、ラブロフ外相は、これも近々、ほかの、歯舞あるいは色丹などの訪問も予定しているという発言がございます。

 プーチンさんが大統領の時代には二島返還というような話もあった中で、我が党はもちろん終始一貫して四島一括での返還を求めているわけではございますけれども、今回、国後に続いてまたよもやほかの島もということになれば、これは致命的な日ロ間の亀裂ということにならざるを得ないし、かなり踏み込んだ日本政府としての対応をしていかないことには国民も納得できないし、私は大変そこが懸念材料だと思っておるんです。だから、そういう意味でも、来週は機会をとらえて首脳会談も開いていただきたい、こう思うわけでございます。

 今日本政府に問われているのは、尖閣問題以来、国益、主権をどう守るのかという本当に国家としての根本的な課題が問われているわけでございますので、しっかりとリーダーシップを発揮していただいて、来週のAPECの会合を実りあるものにしていただきたいと申し上げまして、きょうは質問を終わらせていただきます。

小平委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 冒頭、大臣、最近よく寝られるでしょうか。

前原国務大臣 先ほども答弁いたしましたように、今回のビデオの問題で、秘書官からメールが入りましたのが一時四十分ぐらいでございまして、その後、何回かメールが来ますので、そういう意味では、ぐっすりというわけではありませんけれども、しっかりと元気にやっておりますので、御心配いただきませんように。

赤松(正)委員 冒頭、何でこんな話からスタートしたかといいますと、もういろいろなところで言われているから大臣も耳にしておられるかもしれませんが、「太平の眠りを覚ます上喜撰 たった四杯で夜も眠れず」、明治の維新のときの狂歌ですね。

 私、この黒船来航で日本が江戸幕府の時代から明治維新を経て今日に至るまでの流れの中で、ある意味で今回のこの事態というのは、「太平の眠りを覚ます上喜撰 たった四杯で夜も眠れず」、これにひっかけて今風の狂歌を考えてみた。「平成の眠りを覚ます中漁船 たった二発で夜も眠れず」、この中漁船というのは玉煎で、宇治のお茶の別名を指すということで、別に言葉遊びをするわけじゃありませんが、際立って状況は似ているなと。

 冒頭、今の前原大臣の時代認識、大きい話でございますけれども、この辺を確認した上で、まず、今の日本をどうとらえておられるのかということを、私の考えも申し上げて、大臣のお考えを聞かせていただく。ここから始まって、そして対中、対ロの外交の基本的なありようというものについて、先ほどお二方の同僚委員から質問がありました。それを聞いていて、大臣のお考えも随所に披瀝されていたので、その辺のことを確認したり、あるいはまた私から御指摘をさせていただいたりということで、大枠、二つの角度からの質問をしたい、こんなふうに思います。

 まず、時代状況の認識。明治維新のときの狂歌を申し上げましたけれども、今、多くの国民は大変に、先ほど委員会の冒頭であった、中国の漁船との尖閣諸島沖におけるトラブルをめぐって、今日のロシアのメドベージェフ大統領の国後島訪問に至るまでの一連の流れの中で、いろいろなとらえ方、いろいろな見方があるんですけれども、一つやはり大きな塊としてあるのは、先ほど来の大臣のお言葉にもありましたように、というか、質問者とこんがらがっておりますが、やはり日本の国の主権というものをいかにして守っていくか、そして領土をどう保全していくかということについて、多くの国民の皆さんが民主党政権のかじ取り、これは民主党政権だけの責任にするつもりはありません。後で申し上げますけれども、自公政権の終わりのころから、先ほど五年という話をされましたが、文字どおり自公政権の終わりのときの五年を含めて今日に至るまでの流れの中で、やはり多くの国民が懸念を抱いていたことが顕在化してきたというとらえ方ができるのではないかと思います。

 私はかねがね、先ほど申し上げたような明治の維新というところから、日本が日露戦争を経て、そして一九四五年の日本の崩壊、さきの大戦で日本は負けたという、約八十年間のいわゆる軍国主義による興亡があって、そしてその後、第二次大戦以降いわゆる経済至上主義、前半が富国強兵だとするならば、大戦以降は富国強経といいますか、あるいは富国のみといいますか、そういう経済至上主義で日本のかじ取りをずっとしてきて、そしてバブルが絶頂になって、バブル崩壊、こういう形で、今まさにバブル崩壊の流れの延長線上にある。

 そういう観点で、四十年の興隆、四十年の没落、こういうトータル八十年でいきますと、一九四五年から四十年後が一九八五年、若干のずれがありますけれども、バブル絶頂期。それが崩壊して四十年ということは、今度は二〇二五年ですから、これは少子高齢化のピーク。こういうふうな状況の中で、まさに日本が今非常に苦しい状況の中にある、こういうことが言えようかと思うんですね。

 その最初のきっかけになった、先ほどの狂歌でいいますと、スタートになった時点は、まさにいわゆる第一の開国である。戦争の敗戦によって第二の開国を強いられて、今、第三の開国を強いられているときにある。第三の開国というのは随分前から言われ続けてきて、一体いつ開国するんだという状況が続いてきた中で、まさに今、この尖閣の問題が起きて、そしてメドベージェフ・ロシア大統領の訪問。

 これは私は、後で申し上げますけれども、両方の国の国内事情、中国の国内事情、そしてロシアの国内事情、もちろんそれもあります。しかし、それもあるんだけれども、言ってみれば日本の側のシグナルといいますか日本のかじ取りとの強い関係がある、そういうふうに思いまして、まさに今、そういう点では第三の開国期を迎えた状況の中で、言ってみれば寝られない。今までは平成の眠りで、正直言って、多くの国民、私たちも含めて、ある観点からすれば眠っていたとしか言いようのない側面があった。それが、目を覚まして、これから立ち上がろうとするのかどうかということが問われている。

 もう一遍また深い眠りに入るんじゃないかという説もあるんですけれども、そういうふうな時代認識を私はしているわけですけれども、大臣の認識を聞かせていただきたいと思います。

前原国務大臣 読書家でいらっしゃって、いつも新幹線でお会いすると本を読んでおられる赤松先生、またそのことについての御著書もみずから書かれている。非常にそういう意味での見識と洞察力を持たれた先生からの質問で、民主党の議員であり、今は内閣の一員でありますけれども、そういう立場を離れて少し、離れられませんけれども、離れてちょっと議論をさせてもらいたいと思います。

 昔、少し前まで、日本のGDPというのは五百十五兆円で覚えていたんですね。そうしたら、今は大体四百七十三兆円まで減ってきている。つまりは、日本の経済が縮み始めているというところに私は非常に危機感を持っているんです。もちろん、人口が減ってきているというのはありますけれども、しかし、片や莫大な財政赤字があり、経済が発展をしていかない中で、これから社会保障や教育、あるいは少子化対策にもお金をかけなきゃいけない。あるいは、私の前職でいえば、今まで高度経済成長でつくったインフラの維持、更新というものがこれからどんどん迫ってくる。どうやってこの国をマネジメントしたらいいんだという、大変難しい状況に日本はあると私は思います。

 そういう意味で、日本が目指すべきことはたった一つで、いかに日本の経済成長を担保するか、そのための施策を総動員していくかということに尽きると私は思うんです。その再配分の仕方はまたいろいろな問題があると思いますし、それを促すような税制改革もあると思うんですが、日本はそういう状況だ。

 他方で、中国はどんどん経済発展をしている。十三億の富が毎年平均して一〇%前後の経済成長をしていて、ことし、いよいよ日本のGDPを抜く。もう抜かれたのかもしれません。そして、抜かれただけではなくて、あと八年たったら日本のGDPの約倍になるというような巨大な国が存在をするわけですね。チャンスでもあるけれども、ただ、不透明な軍事費の動向を含めて、リスク要因でもある。注視をしなきゃいけない面もある。

 そういった中で、日本がいろいろな戦略関係を保っていかなくてはいけないということを考えたときには、当然ながら、うまい外交が大事であると同時に、いかに国を富ませて、そして経済力でもって、日本は衰退しないんだ、やはりこの点を一点集中でやらないと、外交も相手の国力を見てやるのが当然でありますので、結果的にはそれが足元を見られるということですので、いかにディクライニングカントリーと言わせないような状況をつくって、もう一度この国は復活するんだといったところを、総動員をやっていくということでなければ、いかに政権交代があったとすれ、またどの政権が政権を担ったとすれ、ここの状況を踏みとどまって、また高齢化社会の中でも安心した社会保障が提供できる体制を整えていくということに根本は尽きるのではないか、私はこういうふうに思っております。

赤松(正)委員 今、外務大臣述べられました、そういう経済という部分で、多くの国民が日本の今の状況に対して大きなる不安を感じているという状況が随分前から続いてきた、失われた二十年。私はよく言うんですが、当選してからほぼ二十年で、その間ずっと失われていたというのは本当に悔しいというか残念な思いがするわけですけれども、そういう状況がある。

 そういう状況の中で、一方で、ある種、車の両輪というべき経済、あるいは私はほどほどの国家意識、ほどほどの軍事力という言い方をよくするんですけれども、そういうものを背景にしていかなくちゃいけない。二つの側面があるのに、今外交という分野で大変に日本が脅かされているという側面が正直あると思うんですね。

 そこで、具体論に入りますけれども、先ほど秋葉委員の質問に対して大臣が答えられた中で、私も実はきょう質問しようと思っていたことと全く一致する問題意識がある。それは、やはり対中の関係で、前回大臣と、尖閣の問題について棚上げにするんだという、いわゆるあうんの呼吸というものが今まであった、それを実際、前原大臣の前後というか、民主党政権になってからとはっきり言った方がいいと思うんですけれども、そういう棚上げをするということを、暗黙の合意というのはやめて、正面からやはり領土の問題について主張するという方向にかじ取りをしましたねという確認をいたしました。というそのシグナルを見てロシアが、ほとんど軌を一にして、もちろん四、五年前からのさまざまな副大臣等の北方四島訪問というものがあったにせよ、今回のメドベージェフ大統領の訪問につながっていった。

 その背後には、さっき大臣が言われた、意欲が薄れてきている、日本の側の北方四島に対する姿勢というものに私はぶれが残念ながらあったと。それは、北方四島の島民の皆さんではなくて政府関係者、これは具体に言えば麻生元総理大臣あるいは鳩山前総理大臣、この辺の皆さんの発言が、いわゆる四島返還ということではなくて、二島返還ということを思わせるような発言があったり、あるいは面積で半分こするというふうな言い方があったり、そういうふうなシグナルが続いてきたということ、そういうことが大いに背景にあるというふうに見ていかざるを得ない。そういう側面が、結局、日本のそういう足元を見透かされる。

 先ほど言われたような、そういうロシアの国内事情ももちろんあるでしょう。あるでしょうけれども、一方、日本のそういう基本的な領土に対する姿勢というものにぶれがあると見られてきていると思うんですけれども、改めてその辺の考えを聞かせていただきたいと思います。

前原国務大臣 前総理である鳩山総理は、この問題について、私は意欲は強くお持ちだったと思います。特におじい様が日ソ共同宣言をまとめられたときの総理でありますので、個人としても強い意欲を今でも私はお持ちだというふうに思います。

 そういう意味では、どの政権がというよりも、こだわり続ける意思というものをどう向こうに伝えていくのか、しつこいまでにやはり伝えていく。六十五年間たって、若干それが弱くなっているのではないかという感じを私はしておりますので、やはりこれを契機にもう一度、我々は、北方四島というのは日本の固有の領土なんだ、そしてこの四島の帰属を確定して、日ロとは忌憚のない経済協力関係、共存関係をつくりたいんだというようなメッセージをしっかりと伝えることが大事なのではないかと思っております。

赤松(正)委員 大臣、非常に大事なことで、要するに、前回の委員会でも、中国に対して前原大臣は、ある意味で初めて正面切ってまさに領土をめぐってけんかをしようという姿勢を示した、今のところ言葉だけでありますけれども。同時にロシアに対しても、先ほど来のやりとりを通じて、近過去の、少しばかり私は鳩山さんもぶれたと思いますけれども、そういうものを払拭して、毅然として、まさにけんかを辞さず、こういう姿勢の大臣であるという言葉の上での姿勢を表明されたということは私は認めます。

 その上で、言ってみれば、過去の日本の政府の、あるいは北方領土問題関係の皆さんが懸命になって、ある意味でガラス細工を組み立てていくような非常に細心の注意を払って、今日まで築き上げてきた日ロ関係の中における北方領土問題だったと思うんですね。それが、言葉をかえますと、北方領土の日本化という言い方をする人がいますけれども、そういう側面があったと思うんです。北方領土をいかに、残念ながら実効支配を向こうにされちゃっているけれども、それをいかにして中身から崩していくか、北方領土をいかに日本化していくかというふうな先達たちの大変な御苦労が今まであった、そう私は認めるんです。

 しかしながら、ここへ来て、残念ながら、先ほど大臣がおっしゃったようなロシアの、ロシアもここ一九九〇年代以降、大変な苦労を経て、いろいろな紆余曲折を経て、今日の復活のように見える状況を呈してきている。こういう状況の中で、北方領土のロシア化、これにまさに取り組むべく腰を上げたというターニングポイントが、先ほど来の、繰り返すようですけれども、大臣の言う四、五年前というふうに、助走を経て、序曲を経て、そして今、今回、この尖閣の問題に端を発した日本の外交姿勢、前原外交の姿勢を見て、向こうがこういう形で手を打ってきた、こんなふうに見える。もちろん、その背景には、もう時間がないので多くは触れませんけれども、沖縄の普天間基地の問題が背後にある、日米関係が極めてぎくしゃくしたものがある。こういうものが全部、言ってみれば凝縮された形で今日本に襲いかかってきている、こういう状況が出てきていると思うんです。

 今、そういう長い間の北方領土の日本化、そして一方、北方領土のロシア化、こういうふうに転機になったという認識はおありでしょうか。

前原国務大臣 ちょっと言葉じりをとらえて申しわけありませんが、別にけんかをするつもりはありません、外交はけんかじゃありませんので。中国とも、日本の立場をしっかり申し上げたわけであって、ロシアとも、日本の原則的な立場と、しかし、そういったものを解決した上で平和条約を結んで、ともに共存共栄していきたいという思いの中でこれから外交問題をやっていこうとしているのは、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 先ほどお話をした、私が五年前に択捉に行ったときに、クリル発展計画というもの、これは十カ年計画だというふうに私は説明を受けましたけれども、そのときに、資源価格が高騰して、恐らく相当経済が豊かになって、ロシアの果ての地域である四島やあるいは千島列島などにもそういったお金が使えるような状況が生まれてきたんだろうというふうに思います。

 そういう意味では、今まで、赤松先生がおっしゃったように、お金が来なかったときには地域が近かった日本が何とかうまいぐあいに支援をやって、そして北方四島の日本化というものを、先生のお言葉をかりれば、努力をしてきたわけでありますけれども、若干そういう形でなくなってきている。だから、領土交渉も難しい面が出てきているのも、またこれは事実なんだろうと思います。

 しかし、これはお互い、日ロの首脳あるいは外相レベルでもぜひ私は話をすべきだと思うのは、地球地図を見たときに、モスクワから北方四島というのは余りにもやはり遠いわけですね。サハリンからでも遠い。ウラジオからでも遠い。そうすれば、この地域の発展というものを本当に考えれば、それは日本がしっかりと、地理的な関係からすると、もちろん歴史的な背景からは日本の固有の領土でありますけれども、地理的に見ても、日本化していかなければこの地域の真の発展はあり得ないということをやはり私はしっかりと伝えることが大事なんだろう、こう思っておりまして、そこは冷静に話をするということが大事なことなのではないかと思っております。

赤松(正)委員 大臣の言葉じりをつかまえるわけじゃありませんが、外交は時にけんかをする必要があります。それは、今、日中、日ロの関係を見ていて、国民の皆さんは多く、私たちもそうなんですけれども、けんかをしなくちゃいけない場面で、しなきゃいけないのにしないというのが映ってくるんですよ。

 公明党は、元野党で与党を経て今また野党になりましたけれども、いわゆる日中の関係において、私たちの先輩が、日中平和友好条約を結ぶ直前といいますか、昭和四十七年の以前、昭和四十六年の段階で、野党ではありましたけれども、先輩たちが対中外交を展開するわけですね。そのときにやはり、私たちがある種伝説的に聞いているのは、激しいけんかをした、けんかをした後で向こうが折れてきたということがあるわけですね。それはロシアにおいても同様です。

 そんなことは大臣はよくわかっておられて、さっきの、言葉でもって云々ということを言ったことに対して言われたんだろうと思いますが、やはりいざというときにはけんかをする。そして、先ほど言われたようなそういう両国の関係、日中、日ロの関係をうまくやっていくようなことも必要ですけれども、今の場面を見ていて、怒らなきゃいけないときに怒っていないなということが非常にメッセージとして伝わってきていることが大きいということも言っておきたいと思います。

 私、残された時間について、先ほどの同僚委員からの質問に対する、聞いていてちょっと気になったことを一、二、申し上げます。

 一つは、ビデオの問題でありますけれども、ビデオについては、私も現物をこの間、予算委員会のメンバーと一緒に見させていただきました。

 先ほど来、さまざまなことを大臣も言われましたけれども、いわゆる裁判のマターとしての、そういう証拠になるというものについて公開をはばかられるということは、スタートの時点ではあったにせよ、きょうまた大変に世の中を騒がせている、先ほど小野寺さんからあったような事態に至るまでの間に、大変な時間があったわけです。だから、こういうことが起こるということの流れの中で、やはりビデオを私たちに見せるということさえ大変に時間がかかった、遅かった、こういう指摘はせざるを得ないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

前原国務大臣 国土交通大臣のときにビデオの公開に慎重であったということは、先ほど答弁したとおりでございます。その後は、証拠物件として検察にお預けをしておりまして、処分保留ということでありますので、証拠物件もそのまま保留をされていた、そして刑事訴訟法の二百四十八条に基づいて判断がされた、あるいは四十七条に基づいて判断がされたということでございますので、その分時間がかかったんだという認識を持っております。

赤松(正)委員 この問題は、やはりもう少しスピーディーな対応が必要だった、そんなふうに思います。

 それから、もう一点は、この間、予算委員会で、菅総理大臣、横に前原外務大臣もいらっしゃいましたけれども、その中で、いわゆる日中首脳会談がなぜ実現しなかったか。要するに、原点に立ち返って人に会うべきだ、人に会うという部分で、外交という観点では中国の最高指導者と会わなくちゃいけないという話を申し上げたときに、総理大臣は、私に対して、少し誤解があるという言い方の中で、要するに、首脳会談は当初予定されていなかったんだ、いろいろさまざまな忙しい状況の中でそれが実現するかもしれないということで、結果的に見ればそれは実現しなかったんだけれども、当初はそんなことはやる予定に入っていなかった、大要、こういう言い方をされました。

 私は、非常に強く疑問に思ったのは、前原外務大臣が言ってみればミスリードをした。要するに、外相会談をやって、テレビでも放映されていましたけれども、首脳会談が実現される可能性が高いというニュアンスの言い方をされた。それで、結局はそれがそうならなかったという意味では、ある意味で菅さんは、前原さんの外相会談の流れの中で実現すると思い込んでいたのにうまくいかなかったという意味では、彼も被害者じゃないのかなという点で、前原、違うじゃないかと怒られなかったですか。

前原国務大臣 結論から言うと、怒られておりません。

 お言葉を返すようでありますが、午前中に、何日かはもう忘れましたけれども、八時半から一時間二十分にわたって日中外相会談をやって、お互いぜひ首脳会談をやるように努力をしようということで別れまして、そしてその後にぶら下がりをしたわけでありまして、だから、ミスリードではなかったわけです。つまりは、日中首脳会談はその後に実際セットされたわけです、昼過ぎだったと思いますけれども。直前まで公表しないでおこうということで、昼過ぎにセットをされて、そして日中韓の首脳会談の後にやりましょうということになったわけであります。

 これも、先ほど申し上げたとおり、ハワイの日米での外相会談、尖閣の五条問題、でも、これは新しい問題ではありませんし、一時間二十分やった日中外相会談では取り上げられなかった問題でありますし、もう一つは、AFP通信の誤報というものに基づいて、日本が合意をしていないことをまき散らした、こういうことでございます。

 ですから、ミスリードでもないし、セットは実際されていたものが中国側の事情によってキャンセルをされたということは残念だったと思いますが、いずれにしても、今後、ASEMで両首脳がつくられた関係改善の動きというものをしっかりと大きな流れにしていくということで頑張っていきたい、このように考えております。

赤松(正)委員 そういう今の言い方を聞いていますと、要するに怒らなくちゃいけないときに怒っておられないんですよ。いわゆる前原、菅の関係じゃないですよ。まさに、私から見ていると、中国の北朝鮮化といいますか、従来の北朝鮮のさまざまな言動に似たような、非常に無体な表現を次々と連ねて、また、外交上、経済上のカードも次々と突きつけてきて、中国がまさに乱暴ろうぜきといいますか、非常に日本をなめ切った、そういうカードを次々と切ってきた。それに対して、菅総理大臣も、前原外務大臣も非常に冷静に、あるいは粛々という言葉に代表されるように、非常におとなしく、ただひたすら中国のやってくることに対して受けて、そして、一方で、今最後におっしゃったように、日中関係についてうまくやっていかなくちゃいけない、こういうことのみがクローズアップされてしまう。これにやはり、冒頭申し上げたような、国民が非常に、今開国を迫られている状況の中で果たして本当にうまくいくんだろうかという強い懸念を持っている、こんなふうに感じるんですけれども、いかがでしょうか。

前原国務大臣 いろいろな見方があると思いますし、例えば、先ほど先生のおっしゃった括弧つきのけんかというものは別に外でやらなくてもいいわけで、例えば外相会談でやって、それを別に外に言う必要もないわけでありますので、国の主張すべきことはしかるべきときにしっかり主張するということは、我々はやっております。そして、そのことについて外で言うかどうかということについて、日本的と言われるかもしれませんけれども、言わない場合もある。

 それについて国民の皆さんがどう思われるかでありますけれども、大事なことは、一番初めに申し上げた、今、日本は危機的な状況にある、経済が縮んでいって、周りの国がどんどん発展をしていく中で、ディクライニングカントリーと言われている。そうさせないために日本の立て直しを、まずは経済から。別に私はマルクス主義者じゃないですけれども、やはり下部構造をしっかりしないと、上部構造である政治とかさまざまな活動はできないということで、経済の立て直しに資するための政策をしっかりやっていくということが大事だと考えております。

赤松(正)委員 前原さんが学生時代、日本の外交は対中位負け外交という言い方をする識者がいました。決してそうならないように頑張ってほしいということを強く申し上げて、質問を終わります。

小平委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 先ほど来ありましたが、ロシア連邦のメドベージェフ大統領は去る十一月一日、ソ連時代を含む最高指導者として初めて、日本の歴史的領土である千島列島の国後島を訪問したわけであります。我が党の志位和夫委員長は同日、これに強く抗議する談話を発表いたしました。

 今回の訪問は、日本国民にとっては、大統領のたんなる「国内視察」ではない。それは、ロシアの最高権力者が、同国に不当に併合された日本の領土である千島を、「ロシアにとってきわめて重要な地域」としてこれからも占領しつづけ、領有を固定化しようとする新たな意思表示であり、領土問題の公正な解決に反するものであって、わが党はきびしく抗議する。

というものであります。

 そこで、前原大臣、今回のメドベージェフ大統領の訪問にはいろいろな理由があると思うと言われましたけれども、この訪問が単なる国内視察ではなく、同国が不当に併合した日本の領土をこれからも占領し続けて、領有を固定化しようとする新たな意思表示であり、領土問題の公正な解決に反するものだ、大臣はそういう認識はお持ちでしょうか。

前原国務大臣 北方四島は日本の固有の領土でありまして、この問題を解決して、そして平和条約を結ぶという日本の政府の方針は全く変わっておりません。

笠井委員 私が伺ったのは、今回の訪問について極めて遺憾であり抗議すると大臣自身がおっしゃったわけですが、日本の政府は、今回のロシア大統領の訪問がなぜ、どう遺憾であり、何を抗議しているのか。私は、単なる国内視察ではなくて、これからも占領し続けて領有を固定化するものじゃないか、新たな意思表示じゃないか、あるいは公正な領土問題の解決に反するんじゃないかということを申し上げたわけですが、大臣自身は何を遺憾だと思って抗議されるんですか。

前原国務大臣 ロシアの最高指導者が日本の固有の領土に訪れたということに対して、遺憾の意を表明して抗議をしたわけであります。

笠井委員 それでは、歴史的事実を確認したいと思うんですが、千島列島は北端の占守から南端の国後までの諸島を指すわけであります。幕末から明治にかけての日露間の平和的な外交交渉におきましては、一八五五年の日露通好条約、それから一八七五年の樺太千島交換条約を経て、全千島が日本の領土と確定されました。その後、日本の領有が正当な根拠を持つことは、第二次世界大戦の時期まで国際的にそれが問題になったことは一度もなかった。ここまではそういうことでよろしいですね。

前原国務大臣 それで結構だと思います。

笠井委員 では、ロシア、かつてはソ連ですが、それと日本との間の領土問題はどうして起こったということでしょうか。

前原国務大臣 私の記憶しているところで申し上げれば、一八七五年に千島樺太交換条約を日露間で結んで、樺太は放棄をし、北方四島と千島列島すべてを日本の領土にした、そして日露戦争において、一九〇五年にポーツマス条約を結んで、樺太の南半分というものを日本がそのことによって譲り受けたということであります。

 ただ、その後、ここから共産党さんと見解が異なるわけでありますが、一九五一年のサンフランシスコ条約において、日本は南樺太それから千島列島を放棄するということをその条約において宣言したわけであります。ただ、この千島列島というものは伝統的にずっと日本の固有の領土であった四島は除くということでございまして、共産党さんは千島列島全部が日本の固有の領土だということをおっしゃっておりますが、我々は、四島は固有の領土で、得撫から北、そして樺太についてはサンフランシスコ平和条約で放棄をしたということでございます。

笠井委員 そこのところの議論はその先の話なんですけれども、その以前に、なぜ領土問題が起こったかといえば、第二次大戦の終結時に、当時のソ連指導者のスターリンが一九四五年のヤルタ会談で、カイロ宣言での領土不拡大の戦後処理の大原則を踏みにじって、対日参戦の条件として千島の引き渡しを要求して米に認めさせる、そして講和条約の締結も待たずに千島列島を自国の領土に一方的に編入して起こったものだ、その際、ソ連は北海道の一部である歯舞群島、色丹島まで編入した、これが領土問題の始まりだ。そこはよろしいですね。まさにそういうことだと思うんですが。

前原国務大臣 それは同じ認識です。

笠井委員 そうしますと、そうしたソ連の大国主義的な領土拡張の誤りを正して、戦後処理の不公正を是正するというところにロシアとの領土問題の解決の根本がある、そこから始まったわけですから。それは、大臣、よろしいですね。

前原国務大臣 要は、旧ソ連の侵攻というものがあって、しかもそれは八月十五日以降も続いたわけですね。そういう意味においては歴史的な事実は今、笠井委員のおっしゃったとおりでありますけれども、ただ、私は、その後の、日本の戦後処理のあり方としてのサンフランシスコ平和条約のことを申し上げたわけであります。

笠井委員 まず領土問題が何から起こったかという点でいうと、歴史的事実はそうだと。

 我が党は、その点でいうと、その戦後処理のそもそもの不公正を正すところにロシアとの領土問題解決の根本がある、そういう立場で今から四十一年前の一九六九年に千島政策を発表いたしましたが、それ以来、全千島列島と歯舞群島、色丹島の返還を求めてきたところであります。ところが、実際には、その先になるわけですけれども、日本政府の対ロシア領土交渉が、大臣が先ほど言われました一九五六年の日ソ共同宣言以来半世紀にわたる努力にもかかわらず、不毛な結果に終わって、まだ解決していない。

 その戦後処理の不公正を正せない大もとには、私、はっきり言って、歴代の自民党政権の二つの問題があると言わなきゃいけないと思うんです。一つは、一九五一年のサンフランシスコ条約第二条(c)項で千島列島の放棄を行ったこと、そしてもう一つは、そのサ条約の枠内で解決しようとして、国後、択捉は千島に属さないから返せという主張に頼ってきたことだと。

 これは、要はこういうことだと思うんですね。サンフランシスコ条約で千島列島を放棄したときには、国後、択捉は南千島だと言って、そしてそれを含めて放棄したのに、後になって、いやいや、それは千島に属さないから返せという話になった、こういう主張が国際的に道理を持たないんじゃないか。千島放棄に縛られている限り、国後、択捉を含む四島返還もあり得ない、だから交渉が不毛な結果に終わってきたということだと思うんです。

 これは立場が違うというんじゃなくて、経過を見ると、そこに矛盾があり道理がないというところが出てくるんじゃないか。そうした従来の政府の立場を大もとから見直す、再検討するというところに来ているんじゃないかと思うんですが、そのおつもりはないでしょうか、大臣。

前原国務大臣 いや、歴史的な経過は一つですから、見直すも見直さないもないと私は思います。

 一八五五年の日露通好条約においても、要は、当時からも自然に択捉と得撫の間が境界線ですねということで、この択捉、国後、歯舞諸島それから色丹、この四島についてはもう日本の固有の領土であったということは紛れもない事実でございますし、また、千島樺太交換条約で譲り受けたのは得撫から北の十八の島でありますので、千島列島はこの十八であって、四島は入らないということについては、私は何の問題もないと思います。

笠井委員 では、ちょっと、サンフランシスコ条約のことも先ほど言われて、そこから立場が違うと言われたので確認したいんですが、サンフランシスコ会議当時の日米政府当局者の言明について確認したいんです。

 一九五一年九月七日に、日本側の吉田茂代表、ここに当時の発言がありますけれども、こう言っております。「日本開国の当時、千島南部の二島、択捉、国後両島が日本領であることについては、帝政ロシアもなんらの異議を挿さまなかった」、こう言っています。日本開国の当時、千島南部の二島、択捉、国後両島が日本領であることについては、帝政ロシアも何らの異議も挟まなかったと。そして、こうも言っています。「日本の本土たる北海道の一部を構成する色丹島及び歯舞諸島も」、こういうふうに述べている。

 それから、米側のダレス代表ですけれども、ここにこう言っております。「二条(c)に記載された千島列島という地理的名称が歯舞諸島を含むかどうかについて若干の質問がありました。歯舞を含まないというのが合衆国の見解であります。」そして、「千島には約一万一千人の日本人がおりました。」ということも言っております。

 こういうことを言っているのは間違いありませんね。

前原国務大臣 間違いありません。

笠井委員 さらに、一九五一年の第十二回国会、この講和条約の批准承認国会で質疑応答がございます。そこで、当時の西村条約局長がこう言っております。「条約にある千島列島の範囲については、北千島と南千島の両者を含むと考えております。」そして、こう言っております。「この千島列島の中には、歯舞、色丹はこれは全然含まれない。併し国後、択捉という一連のそれから以北の島は、得撫アイランド、クリル・アイランドとして全体を見て行くべきものではないか、」。

 こう言っているのも間違いありませんか。

前原国務大臣 済みません、西村条約局長の昭和二十六年十月十九日の……(笠井委員「十九日と十一月五日です」と呼ぶ)十月十九日と十一月五日。

 十月十九日の資料は持っているんですが、十一月五日は持っておりませんので、ちょっと確認できません。申しわけないです。

笠井委員 では、十月十九日はそう言っていますね。前半です。条約にある千島列島の範囲については、北千島と南千島の両者を含むと考えている。

前原国務大臣 そのとおりでございます。

笠井委員 確認できないということで、これはもしあれだったら確認していただきたいんですけれども。私、ここに会議録がありますので。

 十一月五日、参議院の平和特別委員会で、「この千島列島の中には、歯舞、色丹はこれは全然含まれない。併し国後、択捉という一連のそれから以北の島は、得撫アイランド、クリル・アイランドとして全体を見て行くべきものではないか、」というふうにはっきり言っているわけでありまして、先ほど大臣がいろいろ説明されましたけれども、しかし、はっきり、サ条約で千島列島を放棄するときには国後、択捉は南千島だと日米の当局の交渉者も言っていたし、国会でもそういう答弁をしていたわけです。ところが、後になって、結局、交渉の中で、千島でないから返せという話になった。

 これでは、結局、日本の政府が主張をやってきたことが国際的に通用する道理を持たないんじゃないかと思うんですが、通用すると思いますか。

前原国務大臣 るる国会答弁等も含めてお話をされましたけれども、政府の解釈としては、北方四島が歴史上一度も他国の領土となったことがないという歴史的事実、特に一八五五年の日露通好条約でも、択捉と得撫島の間を国境をそのまま確認していたこと、また、千島樺太交換条約において、得撫島以北の十八島の名を列挙して千島列島としているということから、日本政府の立場は不変でございます。

笠井委員 その解釈が問題で、政権がかわったんだから、見直す必要があるんじゃないですか。ここまで来てなかなか進まない、しかもこんなことになっている、強硬措置に向こうが出ているということだと思うんですよ。

 私、国際的道理がないのに、一九五五年以降、国後、択捉は千島にあらずとして、どこにも通用しない論理、議論を持ち込むことになって、日本政府が歴史的事実と国際的な道理に立った交渉をやってこなかった。その結果が、一九九三年の東京宣言や、その後の一連の首脳会談での日本側の一方的な譲歩になり、そして今回の国後訪問、現状固定化へということで、ロシア側の強硬姿勢を許すことになった。こんなことだから、初めから北千島は放棄して、南千島の返還は道を閉ざされて、そして歯舞、色丹の返還もいつまでたっても先延ばしということになっちゃう。これが現実の経過だと思うんです。

 もう六十五年たちました。私も、九〇年代末に、参議院議員のときに、ビザなし渡航ということで、国会からも島民であった皆さんと一緒に実際、色丹と択捉に行ってまいりまして、島民であった皆さんの思い、島民である皆さんの思い、そして墓参なんかも御一緒しました。まさに本当に一刻も早く解決をという思いだと思うんです。

 これまで政府が、千島を放棄した上で、国後、択捉は千島に属さないから返せと言ってきたこと、これがなかなかうまくいかない状況になっているわけですから、それをそのまま引きずるんじゃなくて、先ほども、会議録、その部分はありませんということも大臣は言われたりしていたんですが、関係資料にももう一回当たって、せっかく政権交代した以上、日ロ領土交渉を根本的に再検討する、そういう用意、あるいは今までのことを見直すという用意は少なくともおありなんでしょうか、ないんでしょうか。

前原国務大臣 先ほど笠井委員が引用された西村局長の国会答弁でございますけれども、この答弁の中には、確かに先ほどおっしゃったように、千島の中には北千島のみならず南千島も入るということを言っておりますが、その後に、他方において、南千島と北千島は歴史的に見て全く違うものであるという答弁をしているわけです。

 こういったどちらともとれるような答弁をしたがために、昭和三十一年に、誤解を生じてはいけないということで、政府の統一見解というものが出された。国後、択捉は日本の固有の領土であって、サンフランシスコ条約で放棄した千島列島には含まれない、こういう政府の公式見解を決めたわけでありまして、民主党政権でもこの見解を踏襲して、四島は固有の領土であり、この四島の帰属の確定というものを目指して領土交渉を進めてまいりたいと考えております。

笠井委員 南と北が違うということ、歴史的経過は違うということを書いてあると言われましたけれども、それは経過が違うことは違うんです。だけれども、にもかかわらず、吉田代表も、ダレス代表も、日本政府も、結局、国後、択捉については南千島だというふうにやって、交渉のときやっていたんですよ。そして、締結するときなっていたんですよ。それを後から違うと言ったって、通用しないでしょう。だから、その根本から見直すべきだということを言っているわけです。

 我が党は、歴代の日本政府に対して、日ソ、日ロの領土問題の解決のためには、千島放棄条項を不動の前提としないで、第二次大戦の戦後処理の不公正を正すという立場に立って交渉を行うことを提起してまいりました。

 ロシアが現状固定化を目指して新たな強硬措置に出ようとしてきている今日、日本政府が、半世紀に及ぶ交渉の総括を踏まえて、しかも、政権がかわったわけですから、歴史的事実と国際的道理に立った本格的な領土交渉に踏み出すことを強く求めて、時間になりましたので、私の質問を終わります。

小平委員長 次に、服部良一君。

服部委員 社民党の服部良一です。

 前回に引き続き、沖縄の普天間基地、辺野古の新基地へのオスプレー配備について質問いたします。

 米軍の次世代攻撃ヘリであるオスプレーに何でこんなにこだわっておるんやということですけれども、オスプレーは過去、再三事故を起こし、米兵も三十名以上死亡し、未亡人製造機という別称を持っております。政府は、これまで、住民の反発を恐れて沖縄への配備を隠し続けてきました。過重な基地負担を軽減するという一方で、オスプレーの配備はまさに負担軽減に反する象徴的な問題だというふうに私は認識しておりまして、沖縄県民の関心は非常に高いわけです。

 最初に、防衛省にお聞きいたします。

 事実関係ですけれども、八月末までに行われた辺野古移設に関する日米実務者、専門家協議で、米軍機の有視界飛行経路が日米で食い違うということが表面化いたしました。地元の新聞ではこういうふうに一面トップで、「飛行経路の説明誤り」ということで、大々的に報道されているわけです。日本政府は、周辺住宅地に近づかないような台形と説明し、米側は、台形に飛べるはずがない、標準的な楕円形の経路を主張したというふうに報道では言われております。

 飛行経路の食い違いというものは、オスプレーの配備を前提とするから起きているのではないかと私は思っているわけですが、言い方をかえると、オスプレーが配備される場合は、アセスがあるわけですが、現行計画の飛行経路というのは変更、拡大になるんでしょうか。

安住副大臣 これは、率直に申し上げまして、委員ももう御存じだと思いますが、現に、例えばハワイを含めて、海兵隊がオスプレーに対しての配備というものを順次進めていることはもう事実である。しかし、我が国に対して、沖縄に対する配備というものを正式な場で伝えてきたということはありません。

 ですから、私たちとしては、しかし、現実に海兵隊の動きを見れば、これは十分想定をし得る状況になっているということを念頭に置きながら、今、日米で協議をしている最中だというところまでは申し上げられるというふうに思っております。

服部委員 八月三十日の産経新聞を見ますと、飛行経路をオスプレー運用に沿ったものに変更するよう米側が求めた、こういう記事があるわけですね。

 これは新聞記事だと言ってしまえばそれまでですけれども、私が質問しておるのは、飛行経路の変更ということが議題になったというふうに言われているわけですけれども、これはオスプレーが運用されれば飛行経路が変わる、そういう文脈でのことかどうかという、その事実関係をお聞きしているわけです。そういう具体的な協議が行われたのかどうかということです。

安住副大臣 本当に申しわけないですけれども、協議中の細部のことにわたっては、今は公表できないということになっております。

 ただ、私の方から、何度も申し上げますが、想定し得ることは事実でありますから、我々としては、代替施設の飛行経路については、周辺住宅地の上空飛行をぜひ回避し、そして騒音の影響を最低限に抑えるようにということで、その基本線に立ってアメリカ側に話をさせていただいているということでございます。

服部委員 なかなか本当のことをおっしゃっていただけないので、質問がやりにくくて仕方ないんですけれども。

 それでは、前原大臣に、前回、環境アセス、必要ないんじゃないかという御答弁がありましたので、ちょっとその件に関連して御質問いたします。

 昨年の十二月四日の記者会見で前原大臣がおっしゃったことは、仮にオスプレーが配備されることになれば、環境アセスをもう一度オスプレーを前提としてやり直さなければならない、こうおっしゃっているわけですね。それを私が前回問いただしたところ、滑走路の長さとか、あるいは基地の面積が変わったらアセスをやり直すことがあるというような趣旨の御答弁をなさったわけです。

 ところが、私の認識では、既に、一九九六年、SACOの最終報告ドラフトで、オスプレー部隊の基地として使用できるよう支援する設計となる、要するに、オスプレーの配備を前提とした設計になっているんだということを、例えば滑走路の長さであるとか幅とか、あるいは地耐圧とか、そういったものが計画されているということが明らかになっているわけです。それがアメリカの裁判で明らかになった資料から、これも沖縄の地元の新聞ですけれども、「配備念頭に日米協議」ということで、これも大きく当時報道されております。

 要するに、滑走路の長さとか幅とかその面積だとかいうことを私は問題視しているわけじゃなくて、もちろんそれも問題ですけれども、そもそも、住宅地の近くを飛行し、騒音をまき散らすということが問題なわけですね。当然、騒音コンターも変わります。

 ですから、そういう意味で、環境アセスのやり直しが必要ではないのかということを大臣にこの前お聞きしたわけですけれども、大臣が記者会見で環境アセスをもう一度やり直さなければならないというふうにおっしゃったときの考え方、あるいは今の考え方でもいいですけれども、やはり環境アセスをやり直すべきだというふうにお思いになりませんか。

前原国務大臣 これは服部先生の方がお詳しいんだと思いますけれども、環境アセスをどうするかということは、沖縄県の環境影響評価条例で決まっているわけですね。服部先生、これはよろしいですね。その中で書かれているものは、機種の変更は書いていないです。

 私も記者会見で、沖縄担当大臣として申し上げたのは、仮に今のCH46からオスプレーに変更した場合において、例えば飛行経路とかが変わるというようなことになれば、運用が変わるということになれば、ここの、いわゆる施行規則の二十三条、二十六条関係の別表二に書かれている滑走路の長さ、あるいは飛行場及びヘリポートの区域の位置というものを変えないといけないのではないかという前提で、私は記者会見ではそれを申し上げたわけであって、それをもし変えないのであれば、この沖縄県の環境影響評価条例の関連規定では、環境影響評価をやり直す必要性はないということであります。

服部委員 沖縄県民は、この前、名護の決議の話もさせていただきましたけれども、辺野古の受け入れについては、十七対九ということで市議会も賛成多数ということですが、オスプレーの配備については、受け入れてもいいじゃないかという市議も含めて全員反対なんですね。それほど非常に過敏な問題なんですよ。

 それで、一方で、国は負担軽減ということをおっしゃる。オスプレーが来れば負担軽減にならないんじゃないか。墜落のおそれもある、離発着のときの騒音も高いというふうに言われているわけですね。エンジン出力もやはり三倍、五倍ぐらいあるというふうに言われているわけですよ。

 ですから、そういう意味で、きょう、実はお手元に資料を配らせていただきました。裏表ですけれども、「オスプレイアセス 政府、説明責任放棄」と書いていますけれども、これは何の記事かといいますと、ハワイのアメリカの基地で、オスプレーが配備されるということで、環境アセスをやっておるわけですね。ここの冒頭のところだけちょっと読ませていただきますと、海兵隊は米本国の各基地でオスプレーの配備前に、国家環境政策法に基づき環境アセスの手続を実施してきた。今、現実にハワイでは実施されているわけです。「日本政府は「過重な負担を軽減する」との言葉と裏腹に周辺住民や県民の負担増の懸念に答えず、説明責任を放棄したままだ。」こういう記事なわけなんですよ。

 大臣、ハワイでこういうオスプレー配備を前提に環境アセスをやっているという事実、これは、もちろん質問通告していますから、きのうには御存じかもしれませんけれども、それ以前は御存じだったでしょうか。

前原国務大臣 質問通告をいただく前には存じ上げておりません。

服部委員 きょうは長島前政務官もいらっしゃいます。二〇一二年十月から二十四機、沖縄に随時配備されるということを長島さんも、政務官時代、東京の講演でおっしゃったということなんですが。

 防衛省にお聞きしますが、もし普天間基地にオスプレーが配備される場合、格納庫とか、駐機場とか、各種附帯設備の新設も行われるんでしょうか、配備されるとすれば。

安住副大臣 これは服部先生、全く仮定の話ということを前提に申し上げれば、ハワイ等の事例を見れば、新しい格納庫等々の建設をしているということは事実のようでございますから、そういう認識に立って私も見ております。

服部委員 いろいろ言いたいことはあるんですけれども、もし普天間飛行場を対象としたオスプレー配備ということになれば、我々はもちろんオスプレー配備は反対ですよ。反対だけれども、環境アセスをする、しないということについても、やはりダブルスタンダードじゃだめだと思うんですね。クリアゾーン、今の滑走路の問題、宜野湾の伊波市長も繰り返し訴えておられますけれども、アメリカでは守られている基準が在日米軍基地では守られない、こういうことが住民の大きな不信につながっているという問題。これは当然、日米地位協定の問題があります。これはまたじっくり議論をさせていただきたいと思いますけれども、そういうことを申し上げておきたいと思います。

 前原大臣、TPPに非常に前のめりということ、前のめりと言っていいのかどうか知りませんが……(前原国務大臣「前向き」と呼ぶ)前向きということですが、そもそも、鳩山政権が掲げた東アジア共同体構想について前原大臣のお考えを聞いたことがないので、この東アジア共同体構想ということに対して、大臣はどういうふうなお考えをお持ちでしょうか。

前原国務大臣 ASEANという国々が協力関係をさらに強固にしていき、そして一体性を強めていっているというのは委員も御存じだと思いますし、また、ASEANプラス3というもの、あるいはASEANプラス6という形で、日本も含めての地域協力、地域連携がどんどん進んでいっているということは、委員も御承知のとおりだと思っております。その文脈の中で、東アジアが一体となって協力関係を強めていく、特に経済協力関係を強めていくということは大変結構なことだと思います。

 ただ、昔からよく議論されたように、EAEC構想とかございましたけれども、私は、やはり世界第一位の経済大国であるアメリカをそこに除外すれば、経済共同体としての東アジア共同体というのはなかなかなり得ないんじゃないか、そう思っています。

 私は、九月のニューヨークでの日米外相会談において、東アジア共同体構想にはアメリカは排除されないという言い方をしたら、菅総理はオバマ大統領に、東アジア共同体にはアメリカも含まれるという言い方をされまして、私は排除されないという言い方をし、菅総理は含まれる、こういう言い方をされて、いずれにしても、アメリカ、あるいはそういった、大きく言えばAPECの大きなイメージの中で、アジア太平洋地域の経済統合をしっかり進めていく中での一つのアジアの核が東アジア共同体である、こういう認識を私は持っております。

服部委員 私が聞きたかったのは、アメリカが入る、入らぬの話ではなくて、実は、きのうですか、慶応大学の金子勝さんが院内に来られまして、学習会がありました。大臣も大変気になさったと思いますけれども。

 この金子先生の話の中で、東アジア共同体構想と、例えば農政の三本柱は、これはもう全然相入れない関係である、要するに、世の中をすべて変えてしまうことになるんだということをおっしゃるわけですね。

 例えば、農政のことに限っていいますと、戸別補償制度で非関税の障壁をつくったり、食の安全、安心という付加価値、あるいは富裕層に対するブランド野菜等で日本の競争力をつけるとか、農山漁村の六次産業化で地産地消の流通、加工も巻き込んだ雇用創出をするとか、これを一つの、東アジアの地域でやっていこうじゃないかというような考え方と、そういう意味での東アジア共同体構想、「「東アジア共同体」構想に関する今後の取組について」ということで、六月一日にも政府から出ているわけですけれども、そういう考え方と、アメリカ主導と言ったら語弊があるかもしれませんけれども、TPPでつくり出される日本の社会のありようというものが根本的に変わるんじゃないかと私は思っているわけですよ。

 そういう意味で、今までの民主党政権の中で唱えられてきた、農業政策だけじゃありません、郵政の問題を含めて、非常に変わるというふうに私は思っているんですけれども、大臣はどういうお考えでしょうか。

前原国務大臣 根底においては、求める社会像というのは、私は服部委員とは根本的に違っていないと思います。山紫水明のこの日本の国土をしっかり守っていく、そしてまた食料安全保障という観点からも食料自給率を上げていく、そういう意味においての方向性は恐らく服部委員と同じだと思うんですね。

 よく菅総理がおっしゃっていますけれども、私も同じ意見なんですが、TPPに入ろうが入るまいが、今の農業の延長線上で果たして農業というものが成り立ち得るのかといったところを根本的に問いかけなくてはいけない状況になっていると思うんです。

 私がよく数字で申し上げて、それをおしかりを受けていますけれども、例えば農業従事者の平均年齢は六十五・八歳ですね。少し前までは六十歳ぐらいだったですよ。そうしたら、五年たったらちょうど同じぐらいだけ延びていっているということになれば、この農業のままでいけば、ではあと五年後には農業の平均年齢は七十歳ということになってしまう可能性がある。若い人がなかなか入ってこれなくて、いわゆる高齢者が支える農業で果たしていいのかということもありますし、先ほど人口減少の社会になるということを申し上げましたけれども、別個の手段で何らかの過疎対策あるいは限界集落対策をやらないと、これは国土交通大臣のときに痛切に感じましたけれども、今あるインフラすら維持できないし、山は荒れ放題になる可能性がありますね。あるいは、そうなると保水能力もなくなってきて、洪水の危険性が高まる。

 したがって、自由な貿易体制に入る、入らないは別にして、今の農業のあり方と人口減少の中で、過疎地をどう日本がかかわっていくのかということについては別個の問題として考えないと、それがごちゃごちゃになっているから今議論が対立したように見えているのではないか。つまりは、日本の国土保全とか日本の農業というものは、入る、入らないは別にして、今、根本的な問題解決を迫られている状況なのではないか。それについては私も服部委員の方向性と全く一緒ですし、自由貿易に入る、入らないは別にして、それはしっかりやっていかなきゃいけないという思いは共有をしております。

服部委員 別だったらいいんですけれども、私は、本当に非常に懸念をしているわけですね。ですから、きょうその議論をする時間はありませんけれども、引き続きじっくり対応をお願いしたいと思います。

 最後に、私は、去る十月二十三日、広島県で行われました、戦時中の中国人強制連行被害者と西松建設との和解に基づく中国人強制連行受難之碑の除幕式に参列してまいりました。式典には、中国から当時の労働者や遺族四十名初め、西松建設、それから土地を提供した中国電力、それから地元首長、議会関係者、市民など、多くの方々の出席があり、大変感動いたしました。政治と金で問題になった西松建設が責任を果たしているわけですね。

 今、尖閣問題で、日中間で偏狭なナショナリズムをあおるような風潮がある中で、民間でこのような地道な努力が行われているということを、大臣、ぜひ知っていただきたいんです。戦後補償の問題、いろいろありますけれども、私もあの式典に参列して、まだまだ戦争の傷というのはいえていないなということを肌身で実感したわけです。

 そういったことを今後また議論させていただきたいということを申し上げて、きょうは質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

     ――――◇―――――

小平委員長 次に、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とヨルダン・ハシェミット王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオランダ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣前原誠司君。

    ―――――――――――――

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とヨルダン・ハシェミット王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオランダ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

前原国務大臣 ただいま議題となりました原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とヨルダン・ハシェミット王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、本年六月以来、ヨルダンとの間でこの協定の交渉を行いました。その結果、本年九月十日にアンマンにおいて、我が方在ヨルダン臨時代理大使と先方ヨルダン原子力委員会委員長との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、原子力の平和的利用に関する我が国とヨルダンとの間の協力のための法的枠組みを提供するものであり、核物質等の平和的非爆発目的利用、国際原子力機関による保障措置の適用、核物質防護措置の実施等につき定めております。

 この協定の締結により、両国間で移転される原子力関連資機材等の平和的利用が法的に確保されるとともに、これら資機材等の長期間にわたる安定的な移転の確保に資することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十年十一月以来、スイスとの間で現行の租税条約を改正する議定書の交渉を行いました。その結果、本年五月二十一日にベルンにおいて、我が方在スイス大使と先方財務大臣との間で、この議定書の署名を行った次第であります。

 この議定書は、現行の租税条約を部分的に改正するものであり、投資所得に対する源泉地国課税をさらに減免するとともに、条約の特典の濫用を防止するための規定及び税務当局間の租税に関する情報交換のための規定を新たに設けることとしています。

 この議定書の締結により、我が国とスイスとの間での課税権の調整が一層効果的に行われるとともに、租税に関する情報交換が行われることになり、両国間の人的交流及び経済的交流の促進並びに国際的な脱税及び租税回避行為の防止に資することが期待されます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオランダ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成十六年六月以来、オランダとの間で現行の租税条約にかわる新たな租税条約を締結するための交渉を行いました。その結果、本年八月二十五日に東京において、我が方外務副大臣と先方駐日大使との間で、この条約の署名を行った次第であります。

 この条約は、現行の租税条約を全面的に改正するものであり、投資所得に対する源泉地国課税をさらに減免するとともに、条約の特典の濫用を防止するための規定等を新たに設けることとしています。

 この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、我が国とオランダとの間での課税権の調整が一層効果的に行われることになり、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、本年三月以来、オーストラリアとの間でこの協定の交渉を行いました。その結果、本年五月十九日に東京において、我が方外務大臣と先方国防大臣との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、我が国とオーストラリアとの間で、共同訓練、国際連合平和維持活動、人道的な国際救援活動、大規模災害への対処のための活動等のために必要な物品または役務を我が国自衛隊とオーストラリア国防軍との間において相互に提供することに関する基本的な条件を定めるものであります。

 この協定の締結により、我が国自衛隊とオーストラリア国防軍との間の緊密な協力を促進し、もって国際連合を中心とした国際平和のための努力を初めとする国際的な協力に寄与することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 以上四件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認をいただきますようお願いいたします。

小平委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十二日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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