衆議院

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第10号 平成23年5月11日(水曜日)

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平成二十三年五月十一日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 小平 忠正君

   理事 吉良 州司君 理事 首藤 信彦君

   理事 長島 昭久君 理事 西村智奈美君

   理事 山口  壯君 理事 秋葉 賢也君

   理事 赤松 正雄君

      大泉ひろこ君    大山 昌宏君

      勝又恒一郎君    菊田真紀子君

      阪口 直人君    道休誠一郎君

      中津川博郷君    萩原  仁君

      浜本  宏君    早川久美子君

      伴野  豊君    山尾志桜里君

      山岡 達丸君    山花 郁夫君

      河井 克行君    北村 茂男君

      河野 太郎君    高村 正彦君

      西村 康稔君    松野 博一君

      笠井  亮君    服部 良一君

    …………………………………

   外務大臣         松本 剛明君

   外務副大臣        伴野  豊君

   農林水産副大臣      篠原  孝君

   経済産業副大臣      松下 忠洋君

   内閣府大臣政務官     和田 隆志君

   外務大臣政務官      菊田真紀子君

   外務大臣政務官      山花 郁夫君

   文部科学大臣政務官    林 久美子君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 岡田 太造君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         前川 喜平君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           今別府敏雄君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  大谷 泰夫君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           長尾 正彦君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            佐々木伸彦君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十一日

 辞任         補欠選任

  浅野 貴博君     山岡 達丸君

  中野  譲君     大山 昌宏君

  金田 勝年君     西村 康稔君

同日

 辞任         補欠選任

  大山 昌宏君     中野  譲君

  山岡 達丸君     浅野 貴博君

  西村 康稔君     北村 茂男君

同日

 辞任         補欠選任

  北村 茂男君     金田 勝年君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 社会保障に関する日本国とブラジル連邦共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 社会保障に関する日本国とスイス連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 日本国とインド共和国との間の包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件(条約第一八号)


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     ――――◇―――――

小平委員長 これより会議を開きます。

 社会保障に関する日本国とブラジル連邦共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、社会保障に関する日本国とスイス連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件及び日本国とインド共和国との間の包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官岡田太造君、文部科学省大臣官房総括審議官前川喜平君、厚生労働省大臣官房審議官今別府敏雄君、医政局長大谷泰夫君、経済産業省大臣官房審議官長尾正彦君、通商政策局長佐々木伸彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小平委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川久美子君。

早川委員 おはようございます。民主党の早川久美子でございます。

 久しぶりの外務委員会の質問となります。何とぞよろしくお願いいたします。

 まずは、このゴールデンウイーク中の松本外務大臣の外遊について幾つかお尋ねをさせていただきたいと思います。

 大臣は、この連休中に、アメリカ、ドイツ、セネガル、ベルギー、イギリスと、まさに弾丸出張をされました。日米外相会談を初めさまざまな会合に出席され、多くの成果を上げられたと承知いたしております。

 大臣が英国を訪問された際、日・EU・EPAの交渉開始に向けた働きかけを精力的に行ったと承知をいたしております。ヘイグ外相は、松本大臣との共同記者会見において、日・EU・EPAの支持を明確に表明されました。日・EU・EPAというのはハードルの高いEPAの一つと認識をしておりますが、今回、ヘイグ外相が支持を表明したことは大変大きな成果であったと思います。

 日・EU・EPAに向けた我が国政府の取り組みの現状と今後の見通しはどのようなものになっているのか、お聞かせください。

松本(剛)国務大臣 早川委員にお答えをいたしたいと思います。

 おっしゃったとおり、日・EU・EPAは、我が国経済にとっても大変大きないわば効果が期待できるものとして、私どもとしても積極的に取り組んできたものでございまして、昨年四月の日・EUの定期首脳会議で合同ハイレベルグループというのが立ち上げられて、その後、日・EUの経済関係の包括的な強化、統合のために共同検討作業が行われてきたところであります。

 こういった議論の中で、EUの関心の高い非関税措置については、行政刷新会議で検討を行って、EU側が要望する三案件を含めて具体的な方針が閣議決定をされるなど、EU側には、それぞれの項目について対応の方向性や時間的な大枠などをお示しする、こういうことを重ねてきているところでございます。

 今お話がありましたとおり、日英の外相会談でもこの件で支持の御要請をし、会見については今御指摘をいただいたとおりであります。

 また、今回の出張に当たっては、四月の三十日の日にベルリンで核軍縮・不拡散に関する閣僚会合というのがありましたが、そこにおいても、ドイツのウェスターウェレ外務大臣とお会いをする機会があった際にも、ドイツからの支持もお願いをしてきたところであります。政府内において御検討をいただくということで、首脳会談等においてもメルケル首相も前向きにお話をいただけるように私どもは受けとめているところでありまして、さらに関係国にも支持を求めてまいりたい、このように考えております。

 同時に、五月の二日の日には、EUのデグフト欧州委員、トレード担当ということで、貿易、通商の担当というふうに位置づけられると思いますが、このデグフト欧州委員と日・EU経済閣僚会合を行いまして、双方で来るべき定期首脳協議の成功のために必要な作業を加速させようということで一致を見ることができました。

 我が国としては、このEPA交渉の中で、非関税措置を含むEUの関心の高い領域、項目について積極的かつ真剣に取り組む決意を示すことで、また、しっかり加盟国、産業界に働きかけをすることで、ことしの定期首脳会議でぜひ交渉開始に合意をしたいということで努力を進めているところでございます。

早川委員 ありがとうございます。日・EU・EPAは、日本にとっても大切なEPAとなります。さらに関係国に支持を働きかけていただきたく、お願いをいたします。

 次に、セネガルで行われました第三回TICAD閣僚級フォローアップ会合についてお伺いをいたします。

 今回の震災でも、発展途上国を含めた多くの国々から、我が国に心温まる支援をいただいています。こうした国際社会の善意の根底には、ODAを初めとした我が国の国際貢献の積み重ねがあったと思います。

 復興財源のためとはいえ、ODAの削減を余儀なくされたことは大変残念でございましたが、今回のTICADにおいて、これまでの国際公約との関係でアフリカ諸国を初め国際社会に対してどのように説明を行われたのか、また、先方の反応はどのようなものだったのか、お尋ねいたします。

松本(剛)国務大臣 今これも委員がおっしゃいましたように、今回の大震災、そしてその後に国際社会から寄せられた連帯の表明、支援の申し出といったものは、これまで我が国が国際社会に対して大変すばらしいいわば貢献をしてきた、この培われた信頼というものが大きく反映をされているというふうに考えております。

 そのような意味で、今回の震災を経て、この後、日本は、国際社会の中でこれまで培ってきた信頼を引き続き維持する、同時にさらに、今回の震災で私どもも実感をした、開かれた国際社会の中でこそ日本の未来があるということに改めて確信を持つと同時に、このことをしっかりと行動でもあらわしていきたいという趣旨で、まさに今お話を申し上げた、今御指摘をいただいたような点について具体的にもお話をしてまいりました。

 TICADは、御承知のとおり、アフリカの開発に関する我が国の試みでありますし、同時に、我が国が中核となっておりますけれども、アフリカ各国、そして国際機関やアジア各国なども含めた幅広い参加者がいるというオープンな会であることも大変な特徴でありますが、今回は第三回のTICAD閣僚級フォローアップ会合というのがセネガルで行われたというのは御承知のとおりであります。

 この冒頭におきまして、私の方からは、支援にお礼を申し上げると同時に、二〇〇八年に始まったTICAD4の国際公約は順調に実施されてきているということを報告すると同時に、この公約を引き続き誠実に実現していくということの決意を表明させていただきました。また、これに対しては、出席したアフリカ諸国、国際機関などからは連帯の意が改めて表明されると同時に、公約を引き続き誠実に実現していくという決意に対しては高い評価をいただいたというふうに思っております。

 また、アフリカにおきまして、この間、何カ国かの方とは二カ国間の会談を行うと同時に、さまざまな場面において各国の要人と懇談を行う機会がありましたが、この間にも、今回の震災後、まさにちょうどこのときに国会においては第一次の補正予算の御審議をちょうだいしていたわけでありますけれども、この内容についても説明をさせていただきました。

 私どもの力及ばずODA削減になったわけではありますが、ここにおいでの外務委員初め多くの皆様の御支援をいただいて、最小限の幅にとどめていただくということで、二カ国間を初めとして、影響は与えない部分について御説明を申し上げ、御理解をいただくように努力をしてまいりました。

早川委員 ありがとうございます。

 今月後半は、日中韓首脳会議やG8サミットなど、本当に重要な外交日程がメジロ押しでございます。今回、東日本大震災や福島第一原発事故を経験した我が国にとって、原子力、防災などの分野で国際社会に対して経験を共有する契機と考えております。こうした一連の首脳会議に向けてどのような方針で臨まれるのか、お聞かせください。

松本(剛)国務大臣 これも今委員から御指摘がありましたとおりでありますが、今後の国際的なさまざまな議論の場面においては、原子力安全というのは大変大きなテーマになってくるというふうに考えております。

 同時に、防災、災害対策も、これまでも一つの大きなテーマでありましたし、また、我が国がこれまでもある意味では主導的な役割を果たすことができてきた分野だというふうに思っておりますが、今後、今回のまさに大震災の経験をしっかりと共有するという立場から、防災、災害対策、そして原子力安全の分野においても、国際社会において主導的な役割を果たさなければいけないという決意を持って、それぞれこれからの重要な首脳会談などにも臨まなければいけない、このように考えております。

 お話がありました日中韓におきましては、そのいわば前段に当たります日中韓の外相会談におきましても、原子力安全、そして防災、災害対策を首脳会談のテーマとすべく準備をするということで、その重要性の確認をしたところでありますし、また、私自身が出席をいたしました四月初めの日・ASEAN特別外相会談におきましても、防災、災害対策における今後の協力というのが大変重要なテーマになり、また、原子力安全についても議論が行われました。これも、今後の日・ASEANにとどまらず、ASEANもしくはASEAN関連の首脳レベルの会合にもつながっていくものというふうに考えております。

早川委員 ありがとうございます。

 外務省は昨年来、経済外交を重点的に取り組んでまいりました。前原前大臣は、新幹線を初めとする日本のインフラを積極的にセールスするため、多くの国々に足を運ばれました。松本大臣は、これまで推進してきた経済外交に復興の視点をプラスした、復興に向けた経済外交を推進していく方針と理解をいたしております。

 日本の復興に資する経済外交としては、震災の影響を受けている貿易や観光、留学などの回復に向けた取り組みに加えて、EPA推進などを通じたより開かれた経済環境の整備、さらには高速道路のパッケージ型インフラの輸出などが想定されますが、今後、外務省といたしましては、復興に向けた経済外交をどのように推し進めていくのか、お聞かせください。

松本(剛)国務大臣 この経済外交という視点は、私も、当時の前原大臣のもとで副大臣ということで、チームの一員としてその策定に携わってきた者でありますが、日本のこれからの将来を考えたときに、そして、その時点での置かれた日本の状況、少子高齢社会であり、また日本の将来のいわばフロンティアというのは国際社会の開かれた中にあるという考え方、これに基づいて策定をしたものであります。

 今、復興を進めていくに当たって、先般、今回の大震災を危機の中の危機と位置づける発言もあったわけでありますが、これはすなわち、これまであった幾つかの危機の課題というのに引き続きしっかり取り組んでいくと同時に、この震災に対する対応も万全を期さなければいけないという趣旨でそういった表現をとらせていただいているわけでありますが、その意味から申し上げれば、そもそもあったこの国のいわば長期的な、大きな意味での危機感というものに対する対応策としての経済外交の必要性、位置づけというのは、基本的に変わらないというふうに考えております。

 その上で、今もお話がありましたけれども、もちろん、経済連携などについても、やはりこれを推進することによって日本経済が強くなるということに資することは間違いないというふうに思っておりますが、この経済外交、これまでも幅広く議論をしてまいりましたけれども、復興にどのように資するのか、例えば東北地方にさらに投資を促進するために経済連携といったものが有効に生かせるのかどうかとか、そういうこともしっかり議論をしていくようにしていきたいと考えております。

 また、資源やエネルギーの安全保障ということをお話ししてまいりましたが、エネルギー政策をこれからいろいろ考えていく中に当たって、エネルギーの安全保障の観点というのも一層重要性を増すと思います。

 また、観光の柱などは、これは長期的にもでありますが、短期的にも早急に取り組まなければいけない課題というふうになっておりまして、渡航制限や輸入制限などの政府間の規制の緩和、解除に向けて正確な情報を伝えて働きかけを行うと同時に、いわば渡航制限がなくなっても実際に人が来ていただかなければいけないわけですから、関係省庁とも連携をして、そういった取り組みにも前向きに取り組んでいきたいと思っております。

早川委員 松本大臣が外務大臣に就任されたすぐその直後に東日本大震災が起きました。復興に向けた経済外交、ぜひ、松本大臣のリーダーシップのもと、外務省一丸となって強く推し進めていただきたいとお願いをいたします。

 続きまして、日・インド包括的経済連携協定について質問をさせていただきます。

 まずは、本協定を締結するメリットを簡単にお聞かせください。

山花大臣政務官 日印EPAの締結のメリットについてでございますけれども、本協定は、インドとの間の経済活動の連携を強化するため、物品の関税の撤廃、削減やサービス貿易の自由化に加えまして、自然人の移動、投資、知的財産、政府調達、競争、ビジネス環境の整備等の幅広い分野を対象といたしまして、包括的な経済上の連携を推進するものでございます。

 本協定を通じまして、アジアで第三位の経済規模を有し、成長著しいインドとの間で、経済関係、ひいては両国関係全体が一層強化されるということが期待をされます。さらに、本協定は、アジアの地域全体における経済関係強化のための推進力としても大きな意義を持つものと考えております。

 本協定の具体的な効果といたしまして、例えば、インドにおける関税撤廃、削減によって、現地に進出をしている日系企業の工場が、日本からの部品、例えば自動車の部品などを例として挙げることができるかと思いますけれども、その調達コストを下げることができるようになるということが挙げられると思います。また、投資であるとか知的財産等に関するルールの設定などによって、現地に進出する日系企業の投資環境が改善するということが期待をされます。

早川委員 ありがとうございます。

 この協定は、民主党政権で署名された初めてのEPAでございます。とはいいましても、協定締結交渉の最終場面までは自公政権のもとで進められてまいりました。本協定の内容は、ほぼすべてが自公政権で決められたものなのか、あるいは、民主党政権として、政権獲得後、交渉において何らか実質的な修正が行われて新しいルールを加えたものなのか、お伺いいたします。

山花大臣政務官 早川委員御指摘のとおり、この交渉は二〇〇七年の一月に開始をされておりますので、政権交代以前に既に十一回の交渉が行われておりました。その結果、協定の大きな枠組みは決まっていたんですけれども、ただ、物品貿易の市場アクセス改善であるとか後発医薬品、いわゆるジェネリックと言われるものですけれども、あと、サービス貿易であるとか自然人の移動など、多くの重要な論点が残されていたというのも事実であります。

 政権交代後に、政府といたしましては、先ほど申し上げましたように、アジア三位の経済規模を有しております成長著しいインドとの関係強化を図るためにも、本協定の早期妥結が重要との考えのもとで政府内調整を進めて、インド側との交渉を行ってきた、こうした経緯でございます。

早川委員 ありがとうございます。この質問に対して、また後ほど関連の質問をさせていただきます。

 まず初めに、経済連携政策をめぐる最近の政府発言について、ハイレベルEPAという用語がよく使われております。日豪EPA交渉についても使われておりますが、ハイレベルEPAという概念があるのならば、ローレベルEPAというような概念も必然的に存在するわけでございます。

 まずは、このハイレベルEPAの定義をお聞かせください。

山花大臣政務官 包括的経済連携に関する基本方針というのがございますけれども、そこで述べられております世界の潮流から見て遜色のない高いレベルのEPAというのは、物品貿易の市場アクセスにおいて高い自由化率を実現するとともに、高いレベルの投資保護や投資の自由化、金融、電気通信等のサービス貿易の自由化から自然人の移動、知的財産、また政府調達等に至るまで、幅広い分野において質の高い内容の経済連携を進めることを念頭に置いております。

 委員御指摘のハイレベルとは何かというところだと思いますけれども、これまでほかの、予算委員会などでも御議論があったと思いますけれども、おおむね関税撤廃品目の割合が九五%ぐらいが一つの目安であるということが言えるかと思います。

早川委員 今、ハイレベルEPAというのは、品目ベースで九五%の自由化を目指すものがハイレベルEPAだという御答弁がございました。

 ほぼ一〇〇%の自由化を内容とするEPAがハイレベルEPAだとすれば、往復貿易額ベース九四%、また品目ベース八六%の自由化を目指すインドとのEPAを含めて、これまで我が国が締結してきたEPAはハイレベルEPAではない、言葉はちょっと正しいかどうかわかりませんが、ローレベルEPAと言えるのではないかと思います。

 現政権は、オーストラリアとの間でハイレベルEPAの早期締結を目指しており、また、原則一〇〇%自由化をうたうTPPの参加を検討していることにかんがみれば、交渉終盤に自公政権からバトンタッチをされたとはいえ、相対的に自由化の低いEPAを締結することについて政府としてどのような思いを抱かれているのか、お聞かせください。

松本(剛)国務大臣 まず根本的に、経済連携を高いレベルで推進をするということは、長い目で見たときには、両国にとって大変大きな経済的なメリットがある、もしくは経済的な発展のチャンスがあるということにその意義があるというふうに思っております。その意味では、今委員がお話しをいただいたオーストラリア、またアジア太平洋の九カ国が参加して議論をしているTPPについても、当然、我が国にとっても大きな経済的なチャンスであるようなものであるかどうかということはしっかり私どもとしても見きわめた上でその議論に加わっていかなければいけないということは、申し上げるまでもないことだというふうに思っております。

 その上で、日・インドEPAについては、これは確かに、これまでの御議論でもありましたように、これまでの経緯もあったわけでありますし、また、インドにとって事実上初めてに近いと言ってもいいようなEPAの交渉であったというふうにも私どもも理解をしておりますので、まずはインドとの連携を深める大きな一歩と、一歩では済まないぐらい大変大きな歩みだという位置づけになることが重要だというふうに思っております。

 インド自身がアジア第三位の経済規模がありますし、また、貿易額などを見ても、インドの著しい経済成長を背景に、日印関係の貿易額なども飛躍的な割合で伸びつつあることを考えますと、このEPAを締結することで、また、メリットについては先ほど政務官から御答弁を申し上げたとおりでありますけれども、両国の経済関係を強化することには大変意義がある、このように考えて、また日印関係全体を緊密化させるという意味でも大きな意義があるということを考えまして、今回締結をするということに前向きに取り組んだものでございます。

早川委員 日・インドのEPAは、先ほどお話がございましたとおり、十一回の交渉、ほとんどが自公政権で行われたということでございましたので、これはローレベルEPAというか、比較的品目ベースで自由化が低いというのもある程度私も理解をいたします。

 今後、日豪、オーストラリアはハイレベルEPAを目指すと政府の方で方針が示されておりますが、その後のペルーやモンゴル、韓国、これはすべてハイレベルEPAを目指して交渉を行っていくのかどうか、伺わせてください。

松本(剛)国務大臣 目指すという意味では、おっしゃったとおり、基本的に目指してまいりたいと思っております。

 また、インドの場合は、これまでの経緯もあったわけですけれども、やはり早く締結することに意義があるということがありますので、目指しつつ、双方の事情、交渉の中で、目指すレベルと早期に締結をするということの組み合わせの中でしっかりと国のために交渉していきたい、こう考えております。

早川委員 今、大臣からの御答弁で、目指すレベルと早期締結、これも大切だというお話がございました。

 民主党政権としても、米に代表されるように、センシティブ品目については守るものは守ると国民の皆様方に今までもお約束してきたわけでございます。前政権のEPA政策に照らし合わせれば、自公政権下で締結をされた、交渉されてきたEPAは、ハイレベルEPAではなかったと位置づけられます。しかしそれは、守るものは守っていくという配慮からでき上がってきたEPAであると理解をいたします。

 今、政府としてハイレベルEPAを目指すという一つの方針と、また、守るべきものは守っていく、こういう標語に集約されるセンシティブ品目への配慮をどのように両立させていくおつもりなのか、お伺いさせてください。

松本(剛)国務大臣 まさに、委員御指摘のこの点がこれから最も重要なポイントになってくると思っております。

 例えば、今回の日印EPAにおきましても、先ほどお話ししたように、インドにとりましてスタートではかなり早い段階でのEPAであったわけですけれども、その後、幾つかの国とのFTA交渉なども進捗いたしますると、結果としては、今、インド市場において日本が、ある意味では我が国企業が不利な条件を強いられる。これはインドに限らずあらゆる場面において、FTAの締結がおくれることによって日本の経済活動が不利な条件に置かれるというような状況が既に発生をいたしてきております。

 その意味で、今委員がおっしゃったような、センシティブ品目を守るということと、また日本の経済活動を守るということをどのように両立させるかということが、まさに、センシティブ品目について配慮を行いつつ高いレベルの経済連携を目指すということにあらわれております。

 これから、センシティブ品目についての配慮ということは、具体的なやり方としては、さまざまないわば守り方というのもあると思いますので、そこは相手との交渉の中、そして我が国内におけるセンシティブ品目における必要な対応ということはしっかり行っていかなければいけません。同時に、高いレベルの経済連携を進めていかなければ我が国の経済活動があらゆる面でいわば不利な条件を押しつけられたまま行わなければいけないという問題も残したことになるということに配慮してやっていきたいという趣旨で進めているところであります。

早川委員 日豪EPAは、ハイレベルEPAを早期締結するために交渉に入っているというふうに伺っております。

 そうしたことによると、今国内対策を練っているということでございますが、財源など、どういった、どのぐらいの財源で守っていくのか、具体的にどのように守っていくのかということは、この日豪EPAを進めるに当たって、並行してというか、いち早く答えを出していただく課題なのかなと思っています。

 今、日本は、東日本大震災の復興支援で、いろいろな基本方針の進め方、計画どおりにいくことがなかなか難しいと思いますが、どうぞ一日も早く具体的な施策を示していただきますようお願いを申し上げるところでございます。

 また、今回の大震災を受けて、今後どのように他国とのEPA交渉を基本方針に基づいて取り組んでいかれるのか、お聞かせください。

松本(剛)国務大臣 これまでも、今お話がありましたように、日豪は既に、いわばアップダウンを経てと言ったらあれですけれども、長い間交渉を進めてきておりますし、その対策について、今委員がお話しいただいたように、一つだけ申し上げれば、今回の大震災において、復旧という意味では、当然大きな費用もかかりますし、これを急いで万全を期さなければいけないわけでありますけれども、復興を進めるに当たっては、私も兵庫県ですし、次に御質問いただく西村議員も兵庫県でありますが、やはり、同じところへ戻るということではなくて、さらに前へ行くというような形の復興を目指すべきだ。阪神・淡路大震災のときに創造的復興という言葉を使ってまいりましたが、その意味では、第一次産業も含めて、今回の復興の結果、さらに前へ行くような形になる、これはある意味では、強くする、再生につながってくるものだというふうに思っておりますので、そういう意味では、財源もうまく有効に活用する必要があると思っております。

 その意味で、今後という意味では、現在、既にモンゴルであるとか幾つかの国々とEPAの話が出てきておりますことにも積極的に取り組んでまいりたい、このように考えているところでございます。

早川委員 いろいろ通告させていただいたんですけれども、時間となりましたので、質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

小平委員長 次に、西村康稔君。

西村(康)委員 自民党の西村康稔でございます。きょうは、外務委員会で質問する機会をいただきまして、ありがとうございます。

 日印のEPA協定を中心に、インドと日本の間で論点になっている、案件になっている点について幾つか御質問させていただいて、その後、できれば、今後のFTAあるいはTPPをどう進めていくのか、そのことについてもぜひ御議論をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 では、早速質問に入ります。

 まず最初に、自動車部品の関税引き下げについてお伺いをしたいと思うんです。

 実は、四月の半ばだと思いますけれども、マルチ・スズキという、インドでは自動車の世界で半分のシェアを持つ企業があります。日本最大の現地での立地企業であり、最も成功している日本企業の一つだと思いますけれども、そのスズキが、このEPA発効直前、この段階になって、部品の輸入先を、日本から輸出するのではなくて、ドイツやタイに変更するということが報道でなされております。これは現地のビジネス・スタンダード紙という新聞でも報道されております。これはどういうことなのか。もちろん、円高があり、震災の影響があったということもあるんだと思いますけれども、よくよく聞いてみると、部品調達コストの削減がやはり一番大きな理由だというふうに言っております。

 何のためのEPAなのか。外務省、経産省から説明を伺うと、いや、もう部品は大分下がりましたよと言うんですけれども、実は、インド側がどうしてもこだわって、除外して、削減に応じなかった品目が物すごくあるわけですね。

 これは、きのう私も幾つか見せてもらって、数を聞くぞということは通告をいたしておりますので、この自動車部品の中でインド側が関税削減に応じなかった品目は何品目あるのか、ぜひお伺いをしたいと思います。

松下副大臣 日印関係では委員にも議員活動の中でいろいろ御活動いただいたことをよく承知しておりますので、本当に感謝しております。

 確かに、自動車部品、日本とのEPAにおきまして、関税引き下げ、相当の交渉の中で昨年秋に妥結したわけです。まず、韓国との間で相当激しい競争が行われていたということの中でやってきたわけですけれども、自動車関連品目全体のうち、EPAにより自由化に合意した品目ベースでいきますと日本は約三六%ということで、韓国との間では上回っているものになっているというふうに承知しております。バンパーとか点火コイル等においても、韓国より上回る条件を獲得したという品目が多く存在しておりまして、エンジンやギアボックス等の主要自動車部品でも日印EPAにおいて韓国と同等の条件を確保しているということで、我が国として、当面のEPAについての韓国との戦いの中で、我々としてはしっかりと有利なところを確保しているというふうには認識しております。

 以上でございます。

西村(康)委員 もちろん、韓国との競争は非常に大事であります。現地でできるだけ安くていい車を、日本車を売るという視点でいうと、韓国に負けない制度をつくることは大事でありますけれども、実は、やはり日本から部品供給がふえないと、結局タイから行く、ドイツから行く。これでは意味がありませんので、ぜひ、今回はもうこれで交渉は妥結をしておりますけれども、今後、日本からのこうしたいい部品、特に日本企業はやはり日本のいい部品を使いたいというのがあると思いますから、これが安く入るように引き続き、随時、日本からの輸出額がふえるようなフォローをぜひしていただきたいというふうに思います。

 続いて、同じくレアアースのことについてお伺いをしたいと思うんですが、これは大臣にお伺いした方がいいですね。昨年十月にマンモハン・シン首相が来られました。菅総理との間でレアアースについて話がなされております。副大臣としておられましたから御存じだと思いますけれども、どういう話がなされたか、お伺いをしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 当時副大臣としては、私自身は実はインドは直接担当をいたしておりませんでしたけれども、今お話がありましたように、我が国にとってやはりレアアースの供給確保というのは大変大きなテーマであって、また、委員御承知のとおり、今、現実にはレアアースの供給はかなり偏った供給をいわば確保しているという状況でありますので、供給先を広げるということが当時の外交課題でもあったと理解をしておりまして、いわば埋蔵というか可能性のある国とはあらゆる局面でそういったお話をさせていただき、オーストラリア、またインドとも、そしてベトナムともお話をする中で、高いレベルでの会談でもそういった議論があったというふうに承知をしております。

西村(康)委員 公表されている資料でも、レアアースの開発等について協力を深化させるということで外務省のホームページにも載っておりますし、当時、実はオリッサ州の案件で個別の案件を日本としてはぜひとりたいということで、これは首脳会談で珍しく個別の案件にまで言及されて、向こうも協力するということですから、非常にいい話だと思うんです。

 これは松下副大臣御存じかどうか、その後、インドとのレアアースの協力関係は進んでいるのか進んでいないのか、ぜひお話をお伺いしたいと思います。

松下副大臣 オーストラリアとかベトナムとかカザフスタン、これは従来から積極的に資源外交を進めてまいりました。

 インドについても、昨年十月の日印の首脳会談におきまして、これは両国共同での開発を目指すということに合意しております。本邦企業とインド企業によるレアアースの生産に向けて現在関係者間で調整しておりまして、今後も一層努力していきたいと考えておりますけれども、インドのウラン、トリウム鉱石残渣からレアアースを抽出していくということについて、より一層進めていきたいということで話を今進めているところでございます。

西村(康)委員 これもぜひしっかりフォローしていただきたいと思うんですが、去年の秋に首脳間で合意をされたんですけれども、実はうまくいっていないと思います。もう半年たちますけれども、その後何の報道もありませんし、参加をしようとした企業の幾つかは、もうその州から撤退をして、別のところでやろうというような動きもあるようです。

 インドとの関係で一番大事なことは、州政府に非常に権限があるということだと思います。幾ら首脳間で合意はしても、州政府が話を聞いていない。州政府の権限に対してしっかり働きかけなり要請をする、これをやらないとなかなか物事は進まないわけでありまして、レアアース、鉱物資源が非常に豊富なオリッサ州、POSCOという韓国の製鉄所も、二〇〇五年に計画したけれども、いまだに建設できない。物すごく州政府の権限が強くて、これもトラブっている例だと思いますけれども、せっかく首脳間でこう合意をしたわけですから、これは外務大臣にもぜひフォローしていただいて、州政府との関係を含めて、しっかりと具体的に案件が進むようにしていただきたいと思いますけれども、何かありますか。

松本(剛)国務大臣 ありがとうございます。

 委員におかれては、承知をしている限りでも二けた以上の回数、議員になられてからもインドを訪問されて、日印間については大変御尽力をいただいております。

 今も御指摘をいただきました、オール・ジャパンで取り組むということで、またいろいろ御指導、御指摘もいただきながら取り組んでまいりたい、このように思っております。

西村(康)委員 ぜひフォローしていただきたいと思います。

 インドはやはり日本にとっては非常に大事な国で、親日的な国でありますし、中国一国に今依存している体制をできるだけ分散化しようという中で、ベトナムもカザフも大事ですけれども、オーストラリアも大事ですが、インドもぜひよろしくお願いをいたします。

 それから、ITのセキュリティー規制についてお伺いをしたいと思います。

 これも、昨年インド側で、中国からの通信機器の輸入が物すごくふえて、しかし、その中に、さまざまな盗聴を仕掛けられたり、スパイウエアと言われるようなソフトウエアがあったり、こうした中で、通信機器の輸入規制をやろうという動きが出てまいりました。

 これはもう新聞にも大きく報道されていますし、外務、経産、取り組まれていると思いますが、その中で、俗な言葉で言えば、そのとばっちりという言い方、日本の企業の通信機器まで規制の対象になる。別に日本はそんな悪いことをしているわけじゃないわけですけれども、これで昨年、非常に大きな問題になったわけですけれども、その後、現状はどうなっているのか、これは松下副大臣の方がいいですか、お願いします。

松下副大臣 委員にも大変御心配をかけておりまして、いろいろ活動いただいていることに感謝しておるわけですけれども、御指摘のとおりに、インド、それから中国もそうですけれども、ITセキュリティーに係る規制強化の動きがあることは我々もしっかりと認識しております。いずれの場合も、我が国企業を含む外国メーカーにとっては事実上の貿易の障壁となる可能性が高いと考えておりまして、これは欧米とも連携しつつ、働きかけをしてきているという現状にあります。

 インドに関しては、こうした我が国等の抗議を踏まえて、今規制強化案を一たんは凍結して、規制案の見直しをしているところだというふうに我々は承知しております。

 中国に関しては、現時点では商業的利害はないけれども、さらなる是正に向けて、政府間で引き続き対話を続けていく必要があるというふうに考えておりまして、WTOやEPA等の枠組みを活用しながら、今後ともしっかりと対応していかないかぬというふうに考えております。

西村(康)委員 念のために確認をいたしますけれども、一応、今凍結して小康状態ということですので、これはこれで、今のところはいいわけですけれども、今後さらに規制強化なり主張をしてきた場合に、当然、WTOの知財協定についての違反、内外無差別の違反の可能性があるわけですけれども、これはそう理解してよろしいか。

松下副大臣 やはり適切な知的財産保護という観点も含めまして、貿易阻害的な技術基準とならないように、閣僚レベルでも、またWTOの定例会合においても問題提起を行っておりまして、今後ともこれが貿易制限とならないという基本的な立場を守りながら、しっかり働きかけていきたい、そう考えております。

西村(康)委員 今回の交渉でこのことは取り上げられたのでしょうか、取り上げていないのでしょうか。

松本(剛)国務大臣 交渉の経緯をすべてお話をすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、結果として、EPAの中において、この分野を直接議論するようなチャプターはないというふうに理解をしております。

西村(康)委員 第九章に「知的財産」とあって、貿易関連知的所有権協定に従い、つまりWTOの知財協定に従い、知財の、中を飛ばしますが、無差別的な保護を両国は確保すると書いてありますので、全くないというわけじゃありません。一般的な規定として入っていますけれども、ぜひ、この規定も入っているわけですから、今後、そういう知財協定を無視したような、あるいは差別的な規制を強化される動きがあれば、インドといえどもぜひしっかりと、この協定もありましてWTOもありますから、これに基づいて議論をしていただきたいと思います。

 いみじくも、先ほど言われました中国やブラジルでも同じような動きがあって、中国やブラジルの場合は、政府の調達についてこういうようなことをやるわけです。ソースコードを全部明らかにしろ、すべて中身を明らかにしろということを言ってくるわけですけれども、これは明らかにWTOの政府調達協定違反。ところが、中国もブラジルも、それからインドもこの政府調達協定に入っていないわけです。

 このことをぜひ、入ることを促していく。中国、インド、まあインドはまだ仲間、ブラジルも仲間で、中国は仲間じゃないと言うつもりはありませんけれども、新興国について、さまざまな無理難題を言ってくる可能性がある。つまり、国際社会のルールと違うことを言ってくる。そのときに、やはり彼らに、国際社会の一員として、もはや新興国、先進国になりつつあるわけですから、国際ルールを守らせる、国際社会の一員としての責務をしっかり果たさせるということが大事だと思うんですが、今回のこのインドとの議論の中で、インドに対してこの政府調達協定に入ることを促したのかどうか、あるいは中国やインドに対してそういうことを働きかけているのかどうか、これをぜひお伺いしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 委員もよく御案内のとおりで、先ほども知的財産権について一般的な規定がある旨の御指摘をいただいたこと、私どももよく承知をしておりますが、いわば上乗せその他についてということ、御案内のとおりだと思いますので、もうその点については繰り返しません。

 政府調達については、今お話がありましたように、政府調達にある意味では限りませんけれども、新興国の各国には国際社会のルールの中に参画をしていただくことが大変重要だというふうに考えておりますし、いわば政府調達協定において中国を初めとする新興国に加わっていただくということの重要性というのは私どもも十分に認識をして取り組んできているというふうに考えております。

西村(康)委員 今回の協定の中に、第十章にも政府調達協定があって、百十三条に「追加的な交渉」として、インドがこの政府調達協定に入る意思を表明したときにはしっかりと両国でこれを見直す、その交渉を開始するということが書いてありますので、つまり、恐らく途中段階でこういう議論をされたんだと思いますが、インドはそういう意味で第一歩を踏み出しているわけですけれども、さらにこれを促していただいて、プラスアルファ中国やブラジルやロシア、こういった国々に世界の国際的なルールに入るように、守るように、ぜひ今後促していただきたいと思います。

 その議論をしましたので、あわせてちょっとTPPの話をしたいと思います。インドの話ももうちょっとしたいんですけれども、先に、この国際ルールという意味ではTPPの話をしたいと思うんです。

 TPPは、まさに成熟した先進国が、これまでのP4という小さな国々だけじゃなくて、釈迦に説法ですけれども、アメリカが入りオーストラリアが入り、シンガポールは先進国でしょう、日本も入る、場合によってはカナダやほかの国々も入ってくる、成熟した先進国が、お互いの貿易や投資、いろいろな経済関係の中で高いレベルのルールをつくろうというのが一番大きな目的だと思いますけれども、このTPPについて六月までに方針をまとめるということで当初やっておられましたが、震災がありましたので、その後、事情変更がありました。

 新聞報道によると、なかなか政府の中も意見がまとまっていないように伺っていますが、大臣としては、このTPPを推し進めるお考えがあるのかどうか。交渉に参加をして、日本としてルールづくりに参加をする、ちょっともう時期も遅くなっていますけれども参加をする、あるいは、高いレベルのルールをつくり、これを、今申し上げたように中国やロシアにしっかりと守るようにむしろ日本として促していく、この役割が日本の果たすべき役割じゃないかと思いますけれども、大臣、どういうふうにお考えでしょうか。

松本(剛)国務大臣 TPPについては、いろいろな側面があることはもう既に委員御案内のとおりでありますが、御指摘ありましたように、今のルールの面というのも非常に大きな面だというふうに考えております。

 とりわけ、マルチの場面でのルールづくりというのも大変重要なわけでありますけれども、このコンセンサスを得ていくのに大変時間がかかっていく中で、期待どおりのルールがすぐに策定できていない面もある。そうなりますと、いわばTPPというのは、一方では幾つかの国の合同FTA的な要素もありますが、他方では、今お話があったように、その間でルールを定めることで主導的にアジア太平洋の、ひいては、場合によっては世界のスタンダードになる可能性のあるものだというふうに私どもも理解をしておりますので、ぜひともやはりその議論には加わることが我が国の経済にとっては望ましいと私自身は考えております。

 また、交渉の参加をいつ決めるかということで、震災前は六月と決めていたことは事実でありますが、震災という大きなことがありましたので状況が変わったこともこれまた事実でありますが、他方で、私自身としては、やはり交渉に参加するかどうかを決めるということは、TPPの交渉そのものは今九カ国の中で進んでいますので、今でも遅いかもしれないと今委員がおっしゃいましたけれども、交渉に参加することに意義のある時期というのはおのずと決まってくると思いますので、それまでにはしっかり決断をすべきだと思っておりますし、今お話がありましたように、ルールを策定するという意義から考えれば、ぜひとも議論に加わるべきだと私自身は考えております。

西村(康)委員 力強い御答弁をいただきましたので、ぜひ、政府、内閣の中でしっかり主張をしていただいて、もうこの時期で、秋、十一月ハワイではまとめたい、大枠合意をしたいというアメリカの、全体の雰囲気もありますから、そのためには一日も早く入った方がいいと思いますので、ぜひ、交渉に参加をしてしっかり情報をとり、日本としての主張をし、ルールづくりに参加をしていくということは極めて大事だと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 その関連でお伺いをしたいと思いますけれども、日豪EPA、今交渉はどういう状況になっているのか。特に農業交渉はなかなか難しい面があると思いますけれども、松下副大臣は私の農業政策の師匠でもありまして、入ったときにいろいろ御指導いただきまして、改革派の松下副大臣でもありますので、まず松下副大臣からお答えいただいてもいいですか。日豪EPA、どういうふうに今交渉が進んで、どういう見通しを持っておられるのか。

松下副大臣 先ほど松本大臣からお話がありましたけれども、TPPも含めて、地球儀の上における日本の位置というのは、これは世界でどんなことが起ころうと国内で何が起ころうと変わらない。インドの横に行きたいとかイギリスの横に行きたいとかということはできないわけで、我が国の立ち位置というのは、これははっきり貿易立国、資源のない国としてどういう立場でこれから我が国民が生きていくかということははっきりしていると私は考えています。

 そういう意味で、この日豪EPAも、二国間としては大変重要な国の一つで、それぞれの課題を抱えていますけれども、とにかく前進させていかなければいけないという立場は変わらないと考えております。

 この前もギラード首相がお見えになりました。我々としては準備を整えて、一緒に前進させることで準備しておったのですけれども、三月十一日のあの東日本大震災そして原子力の問題も起こりまして、今そういう状況に、ちょっと復興に入っているわけですけれども、この立ち位置は変わらないということでこれからもしっかり前進させていきたいという気持ちを強く持っております。

西村(康)委員 これはこれで難しい問題もあると思いますけれども、私から見ればTPPへの試金石の一つでもあるし、ぜひしっかりと議論をしていただいて、いいものをつくっていただきたいというふうに思います。

 その上で松本大臣にお伺いしますが、こういう意見があります。日豪でEPAができれば、あとこのマルチのTPPの顔ぶれを見ると、大きな国でいっても日米のFTAができればTPPは要らないんじゃないか、二国間でやればいいじゃないかと。つまり、TPPをつぶそうとする、反対をしている人たちからすると、日豪EPA、二国間でやれやれやれと言い、次は日米FTAだという意見がありますけれども、この考えについて大臣はどういうふうにお考えですか。

松本(剛)国務大臣 日米関係というのは、政治、経済、安全保障、あらゆる面で大変重要な関係でありますから、これを緊密化させていくということは、一般的には大変重要なことだろうというふうに考えております。

 他方で、経済に関しては、私が承知をしているところでは、今米国は、新たな交渉という意味では専らTPP交渉に重点を置いて進めているというふうに承知をしておりますので、いわば米国との関係でもTPP交渉というのは重大な意味を持つということは御指摘のとおりだろうというふうに思います。

 同時に、これはもう繰り返しませんが、先ほど委員と議論させていただいたように、TPPがルールその他も含めて大変幅広い意味を持つという意味で、そちらの面でも大変重要だという意味で、私は、幾つかの、複合的な面も含めてTPP交渉というものについては注視をしていかなければいけないし、また日本政府としてしかるべき対応をしていかなければいけないのではないかと考えておると申し上げたいと思います。

西村(康)委員 今の御答弁は、アメリカ側もTPPを優先しているし、アメリカの議会も含めて、恐らく二国間はもう新規のものを当面やらないということでしょうから、TPPを日本としても進めるというふうに理解をさせていただきます。

 その上でお伺いをしますが、TPPの議論の中で、これも反対派の人たちからよく言われる議論ですけれども、例えば弁護士や医師、こうした人たちの相互承認、つまり、日本でアメリカの医師、TPPのほかの国々の医師、ほかの国々の弁護士の方々が仕事をするというようなことをTPPの中で認めていこうという議論がある。つまり、これに入ってしまうと、そういう人たちも反対をする、医師会、弁護士会も反対をする、あるいは、さらに言うと医療制度まで、国民皆保険の日本の医療制度に対して変更を求められるというような議論がありますけれども、こういう議論がTPPで行われているのかいないのか、このことについてお伺いをしたいと思います。

松下副大臣 九カ国でTPPは現在交渉中であります。我が国は情報収集しているというところなんですけれども、今後、資格の相互承認に関する事項が議論の俎上にのる可能性はあると見ております。しかし、いずれの国においても、相手国との間の資格付与の条件が同等のレベルでない場合には相互承認しないというのが通例になっております。

 ですから、そういうことで現在進んでいるわけですけれども、そのために、多様な国が参加するこのTPP交渉で医師資格の相互承認がなされる可能性は低いと私たちは見ております。外国人医師が大量に流入するという事態になることは想定されない、私たちはそう見ております。

 以上でございます。

西村(康)委員 私が聞いてる範囲でも、例えば医師免許の相互承認であったり、あるいは医療制度を九カ国、TPPで統合していくのは、こんなことはとてもあり得ない、全然ばらばらな制度ですから。つまり、日本の国民皆保険を変えろというようなことがTPPの場で議論を、まあ、あるかもしれません、これはまだ我々、我々というか今日本政府はその交渉の外側にいますから、外側で情報収集しているだけですので、実際に交渉に入らないとわからないわけですけれども、そういう意味でも、ぜひ交渉に入っていただいて、そういう懸念がないということ、あるいは、もしそういうことになれば、制度が全然違うんだからそんなのは無理だということを主張していただきたいと思います。

 仮に日米で、二国間でFTA、EPAをやろうとすると、これは日本とアメリカの、お互い高いレベルの先進国ですから、アメリカはアメリカの医師の免許を日本で認めてくれ、医療制度を変えろ、あるいは弁護士を認めろ、こういう二国間の方がきつい議論になる。

 TPPのマルチの場でやると、アメリカがこれを主張すると、マレーシアのイスラム系の医師、イスラム系の弁護士がその資格でアメリカで仕事をすることになるわけですから、これはアメリカは恐らく今の感情的にもなかなか認められない部分もあるでしょうし、それぞれのレベルも相当違う、九カ国が違うという意味で、九カ国でもちろん高いレベルのルールをつくっていくわけですけれども、すべての国々の制度を一緒にするものじゃない、相互承認するものじゃない。むしろ二国間で、日米でやるほど厳しい要求が突きつけられる可能性もあると思います。

 そういう意味で、申し上げたいのは、TPPの中で、ぜひ交渉に入って、今みたいなところの疑念も払拭しながら、しかし経済行為にかかわる投資や知財の保護、貿易、こうしたものについては高いレベルのルールをつくるということで推進をしていただきたいと思いますけれども、私のこういう考えに対して、大臣、どういうふうに思われますか。

松本(剛)国務大臣 私どももさらに努力をしなければいけないと痛感をしております点は、まさに今委員が御指摘をいただいたように、TPPに関するいわば適切な理解を広げるということが一番重要なことだろうというふうに思っております。部分でもなくまた誤解でもなく、TPPについて、その意義と内容について適切に、正確に理解をいただくことで、私どもは、おのずと判断は収れんをするのではないかと。

 努力をしていきたいと思っております。

西村(康)委員 当面は情報収集という形ですけれども、ぜひこれも力を入れていただいて、できることなら早く交渉に入って、しっかりと日本の立場を主張し、高いレベルのルールづくりに参加をする、それと同時に、おっしゃったように、関係のある人たちに対してしっかりと理解をしてもらう、これはもちろん農業の皆さんもそうですし、関係するいろいろな人たちに理解を求めるという努力をしていただければと思います。

 日豪EPAで一点だけ。資源エネルギーについて交渉しているのかどうか。

 過去、ブルネイやインドネシアとの協定の中では、なかなか資源の優先的供給というところまではいきませんけれども、いざ輸出規制を彼らがやったりするときにはしっかりと相談をしてくれる、突然輸出がとまるようなことはないというような規定を入れてきているわけですけれども、私はこの際、オーストラリアとのいい関係を考えれば、優先的に日本に対して供給をする、ここまではなかなか難しいかもしれません、しかし、例えば何か案件が出てきた、天然ガスを掘る、そういうプロジェクトが出てきたときに、一斉に入札をするということ、それはそれであれですけれども、今そうなっているんだと思いますが、ただ、日本に対して優先的に声をかけてくれる、最後は金額的なベースで決まるんでしょうけれども、優先的に、日本やりませんかと。

 これは事実上今もそういう、オーストラリアは非常に親日的な、そういうこともやってくれていますので、ある意味でそういう規定が入れられるんじゃないかと思うんですけれども、そういう交渉をやっているのかどうか、これをお伺いしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 松下副大臣とは、副大臣当時、関係省庁間の交渉では経産省、外務省からそれぞれ出ていく立場で、光栄なことに松・松コンビと呼んでいただいておりましたので、息を合わせてこれからも努力をしていきたいと思っております。

 今委員のお話がありましたように、豪州は重要な鉱物資源、エネルギーの我が国の調達先であるということはもう申し上げるまでもないことでありまして、その長期的な安定供給を確保するための強固な基盤を築く、さらなる関係強化の道筋をつけることが重要である、こういうことを踏まえて議論を行っているということを申し上げられると思います。

 今お話があったような形を含めて、一つは、どのようなことが交渉の中で書けるかということと、もう一つは、委員よく御案内のとおり、EPA、FTAもマルチのルールのもとで行われるものでありますので、そういったもので何が書けるかということがあろうかと思いますけれども、意義としての、またお考えとしての、私どもが求めなければいけないものはしっかりと、どういう形で実質的に確保できるかというのはしっかり議論していきたい、こう思っております。

西村(康)委員 日豪EPAに反対する方々の中には、向こうはマーケットが小さいですし、日本がとれるところが少ない、そういう方もおられますので、ここは、資源大国オーストラリアでありますから、日本が安定的に供給を受ける仕組みをこのEPAでつくるというのは非常に意味があると思いますし、反対する人たちにも説得力がある。

 それから、これはTPPではできない話、TPPの中でその国だけ優先的にはできませんから、二国間の、日豪でしかできない話でありますので、ぜひこの点を交渉の中でやっていただきたいと思います。

 それから、日・EUのEPAについて、いろいろ聞きたかったのですが、一点だけお伺いをします。

 大臣も首脳といろいろ会われて、このEPAの交渉を開始するということがいろいろ報道されていますけれども、五月末に日・EUの首脳会談が開かれる予定と聞いておりますが、ここで交渉開始になるのかならないのか、お伺いをしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 ぜひ交渉開始に向けて合意ができるように、努力を今しているところであります。

 一つだけ申し上げれば、御案内のとおり、我が国にも、国権の最高機関である議会があって私ども政府があるわけでありますが、EUの場合は、御案内のとおり、直接私どもの交渉相手である欧州委員会、いわばこれが行政に当たるような部分になると思いますが、もう一つ、首脳が中心となる欧州理事会、他方で承認をいただく欧州議会という構造にもなっておりますので、合意、さらにステップごとに手続が、また理解、了解が各機関において必要だという点は御理解をいただきたいと思っております。

西村(康)委員 EUには根強い反対があります。韓国とのFTAがこの七月からスタートするわけですけれども、自動車業界を含めて相当危機感を持っていると思いますし、日本から得られるものが今度は彼らは何があるのかと。特に、非関税障壁をずっとこれまで議論してきていますけれども、なかなか日本は開かないということを言われていますので、ぜひ、七月から韓国がスタートするわけですから、先ほど松下副大臣言われたとおり、やはり競争しているわけでありますので、早く交渉をスタートして早く妥結をするようにお願いをしたいと思います。

 せっかく、ことしの一月、アイルランドに支援のために一千億円を出したりとか、スカイマークがエアバスを六機買ったりとか、今度はフランス・アレバの技術を原発で使う、JRもドイツから部品を買う、いろいろなことがばらばら出るんですけれども、これがレバレッジというか、プラスに働いていないんだと思うんですね。

 余り一つ一つのことは大きく恩を売るという話でもないかもしれませんが、一千億アイルランドに出すというのは物すごく大きな話でありますし、これまでエアバスは全然日本は買ってくれないと言われた中で、スカイマークは六機を買うという非常に大きな話。もっと政府で、各省間で連携をとっていただいて、こうした一つ一つのこともしっかりPRをしていただいて、単に民間がぽんと発表してしまったらそれで終わりですから、もう少し官民連携もしていただきながら、戦略的に、EUをどういうふうに交渉の場にのせていくのかという努力をしていただきたいと思いますし、六月交渉、ぜひ期待をしたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 時間がなくなってきましたが、せっかくお呼びをしましたので、最後、日印の金融のことだけお伺いをしたいと思いますが、今回、金融で、今回の協定で緩和をされて、思ったほどの緩和ではないので、生保も銀行もそれほど出るわけじゃないんですが、ただ、一点お伺いをしたいのは、インドのインフラ整備は物すごい量、規模が今後出るわけですけれども、その重立った手法が、いわゆるPPP、官民パートナーシップで、官のお金と民のお金でやるということなんですが、日本企業は全然とれていないんですね。全くとれていない。

 日本は基本的に円借款を中心としたODAでやろうとする、しかし、これと民間との投資がうまくかみ合わさっていないというところなんですが、せっかく今回EPAで規制緩和をされて、何社か金融機関が進出することになると思います、その中で、ぜひこのPPPを組成していく。つまり、金融機関のファイナンスを中心にしながら、州政府ともがっちり交渉して、民間と力を合わせてもらって、PPP、インフラの事業をとっていくということをぜひお願いしたいと思いますが、これは松下副大臣の方がいいですか。

小平委員長 松下経産副大臣、簡潔に答弁願います。

松下副大臣 わかりました。

 そのとおりです。デリー、ムンバイも含めて、インドの中で確かに我々がやるべき仕事はたくさんございますので、これは全力を挙げて努力していきたい、こう思っています。東日本の災害はありますけれども、それはそれ、全力を挙げますけれども、もう一方の大事なことはちゃんとしなきゃいかぬ、そう思っています。

西村(康)委員 時間が来ましたので終わりますが、ぜひ、大きな市場、向こうも親日的、そしてEPAを結んだということで、単なる貿易の輸出じゃなくて、インフラ輸出とか、インフラ面での受注を含めて頑張っていただきたいと思います。

 金融の関係あるいはジェネリックでインド市場から日本との関係をちょっとお聞きしたかったんですけれども、残念ながら時間がなくなりまして、済みません、またの機会にさせていただきたいと思います。

 ぜひ頑張っていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

小平委員長 次に、秋葉賢也君。

秋葉委員 自由民主党の秋葉賢也です。

 きょうは、日本とインドのEPAの締結の問題、あるいはTPPの問題を中心にお伺いをさせていただきたいと存じます。

 先ほどもお話がございましたけれども、本当にインドは、私も二度ほどしか伺ったことはありませんが、大変親日的な国で、今現在でも、ある意味で、人口の面でいえば世界最大の民主主義国家と言ってもいいんじゃないかなというふうに思っておりますが、二〇三〇年にはその人口も中国を凌駕するのではないか、こう言われているわけでございます。

 今回、締結に向けて環境が整ったことは、今後の日印の両国の発展にとっても大いにプラスになるんだというふうに考えておるところでございます。

 そういう中で、三月の大きな震災もございました。本来であれば六月末をめどにTPPの交渉参加をどうするのかということを判断するんだということで、政府の方では期限を区切っていたわけでございますけれども、先ほどの西村議員との質疑の中でもございましたけれども、こうした事情もあって、少し延期せざるを得ないという報道もなされているところでございます。

 しかし、これは、表明しても、実際のいろいろな参加手続云々を考えますと大変時間のかかる話になってくるわけでございまして、この十一月のハワイでのサミットというものがある意味での最終的なめどになってくるのかなという認識も持っておりますけれども、私どもから今の政府を見ておりますと、率直に言って、非常に閣内がばらばらといいますか、政府としてこうだという取り組みの判断なりメッセージというものが十分伝わっていないような気もいたしますので、そういった問題意識を前提に、まずは、このTPPの参加是非の問題について、いつごろまでにこれをはっきりさせるのかということを外務大臣に伺いたいと存じます。

松本(剛)国務大臣 交渉参加をいつ判断するかということは、震災前に六月と申し上げてきたことは事実でありますし、私どもとしては、今もお話が、西村委員との議論、そして今先生の御指摘もありましたように、TPPの交渉そのものは、大きな流れとしてはことしの十一月のハワイでのAPECに向かって今動いているわけでありますので、交渉参加の是非、結論はまた総合的に議論をしなければいけないとしても、交渉参加を判断することそのものに意味がある時期というのはおのずと限られてくるというふうには考えておりまして、そういう意味での国際的な環境は、実は震災前から大きく変わっているということはないというふうに思っております。

秋葉委員 そうすると、今の外務大臣の答弁ですと、やはり遅くても十一月のハワイでのAPECまでには判断をしていくという理解でよろしいんですか。

松本(剛)国務大臣 まさに交渉の進捗について私ども情報を収集いたしているところでありますが、さまざまな議論が行われているようですので一概には申し上げられませんが、先ほど西村委員がおっしゃったように、十一月にもし一つまとまるとすれば、当然それよりは一定程度早い段階でなければ議論に参加をしたということにはならないというふうに考えられると思っております。

秋葉委員 米国はやはり、自国での開催ということもあって、この場での交渉妥結を目指しているようでございます。もし日本も今後前向きに考えていくとすれば、やはりここがタイムリミットになるんじゃないかと思います。

 我が党にもさまざまな議論がございます。基本ルールづくりに日本も参加して、国益の観点から主体的にそのルールづくりを主導していくべきだという意見がある一方で、実際、政府から打ち出されているさまざまな見通しの指標を見ましても、特に経済産業省あるいは農水省が出している資料との大きな開きの問題もある。あるいは、TPP自体、先ほども弁護士あるいは医師の参入問題についての議論がありましたが、我々の推測の中での話ということもあり、また、二十四の部会がどういう方向で、本当に、九カ国、十カ国、十一カ国になったときにどういう議論になるのか、およそその推測が難しいというような状況の中で、国内においては、やはりさまざまなシナリオを前提に議論していくことが大事だというふうに思っております。

 きょうは経産省それから農水省からも副大臣においでをいただいておりますので、今現在の政府としての考えというのはまだまとまっていないわけでございますから、外務大臣からは遅くても十一月のハワイでのAPECというお示しがあって、その前にやはり方針を示さなければ間に合わないだろうというような認識だと理解しておりますが、農水省の方ではどんなお考えで今取り組まれているでしょうか、副大臣にお伺いしたいと思います。

篠原副大臣 三月十一日の地震、津波、それに引き続きます原子力発電所の事故、これは農林水産業にとっては非常に大問題でございまして、我々は、農林水産省といたしましては、この復旧復興に今全力を挙げているところでございます。国民の皆様からも、これをまず第一優先順位として取り組むべきだという声が我々のところには強く届いております。

 TPPについて今後どうしていくかということでございますけれども、この件につきましては、いろいろな考え方があるかと思いますけれども、今までの日本が進んできた道、こういったことを見直していくべきじゃないか、人生観、価値観を転換してもいいような大事件、大事故だったのではないかと思います。ですから、我々は、日本の行く末を考える場合は、まずこの復旧復興のことを考えて、それを踏まえた上で、TPPについてもどうしていくかということを検討していかなければならないんだと思っております。

秋葉委員 もちろん震災対応というのが急務の課題なわけですから、それに今全力を傾けていただきたいと思うわけでございますが、TPPの参加問題を考えるときに一番国民的な不安あるいは懸念の要素というのは、日本の農業をどうするのか、この一点に尽きるんだろうと思います。ですから、この交渉参加を判断する時期を目途に、やはり一定の一つのパッケージとして、こういう農業にしたいんだというようなことで踏み込んだ対策というものが示されない限り、なかなか多くの国民が、そうだ、やろうということにはならないんじゃないかなという気はいたします。

 昨年、農水省が発表した資料を見ても、農産物の生産額も少なくても年四・一兆円ぐらいは減少していくことが何年か続くだろう、あるいは自給率も現在の四〇%から一四%に低下するだろう、また、農業の就業も、まさに三ちゃん農業のある意味では拡大が続いて今本当に高齢化が進んでいるわけでございますけれども、さらに三百四十万ぐらいの雇用減につながるんじゃないかといった問題が指摘されるわけですから、この辺の回答というものもしっかり出した上で、交渉参加への方針というものが打ち出されなければならないと私自身は大変強く懸念をしております。

 今回、私の地元の仙台平野も、稲作あるいは葉物野菜などの生産が大変盛んな地区が津波でやられたわけでございます。こうしたところの復旧にこれから全力を挙げていかなければなりませんけれども、しかし、大きな自由貿易交渉という協定の検討の流れの中では、農水省のこれからの取り組みというものが大変重要になってまいりますので、その辺のこれまでの検討状況について伺っておきたいと存じます。

篠原副大臣 我が国の農林水産業の立て直しというのは、TPPに関係なく必要なことではないかと思っております。

 ですから、今ちょっと、復興に全力を挙げるということでとまっておりますけれども、官邸に食と農林漁業の再生推進本部というのを設けまして、既に数回会合を開いておりまして、三月に中間取りまとめをして、六月に基本方針をつくる予定でございました。しかし、先ほど答弁申し上げたとおりでございまして、まずは復旧復興が第一だと。しかし、復旧復興だけしているのではない、この機会に、日本農業の大改革も進められるのだったら進めていこうということを考えております。

 例えば、今秋葉委員から御指摘がありました仙台平野、日本の穀倉地帯の一つでございます。全体で二万四千ヘクタールが冠水したりして被害を受けております。仙台平野も、一万ヘクタールを超えるところが冠水してしまっているかと思います。境目もなくなってしまっている。基盤整備をやり直さなければいけない。そのときは、大きな区画の田んぼにしまして、そして規模拡大して、十ヘクタール、二十ヘクタールの大規模稲作経営というのをこの機会につくり上げて、言ってみれば日本のモデルにしてまいりたいと思います。

 復旧復興と日本の農林水産業のビジョンづくり、それから、これはちょっと今我々の検討段階でございますけれども、東北はもともと農業でも漁業でも食料基地でございます、東北を日本の新たな食料基地にということをキャッチフレーズにして、復旧復興、それから改革、一挙になし遂げたいと思っております。

秋葉委員 仙台平野も、農業用水だけで三百キロ以上あると言われているんですけれども、これがもう本当に使えない状態でございます。また、農地の復元といいましても、瓦れきも入っている中でございますから、相当土も入れかえなんかしなければいけない。また、住居の移転も含めて、これは本当に大きな課題ですので、また別のところでいろいろ議論させていただきたいと思いますし、農水省におかれましても、やはりお年寄りが生きがいとしての雇用の場となっているということが大変重要な点だとも思っておりますので、そういった点も十分配慮していただいて頑張っていただきたいと思います。

 副大臣、もう結構でございます。

 さて、経済産業省的には大いにTPPも進めていきたいというお立場だと思うんですけれども、今、農水副大臣からも御答弁がありましたように、農業問題については、こうした自由貿易化の流れとは無関係に国内的に大変な状況だということがあるものですから、処方せんがこれだというのを示すのはなかなか難しいと思うんですけれども、そうした農業を産業としてとらえた上で、これから新しいスキームも打ち立てていかなければならないと思っております。

 そういう意味で、今般政府がまとめられました総合特区なども大いに活用しながら、この第一次産業の分野でも大いにやっていかなきゃいけないというふうに思っておりますけれども、改めて経済産業省としてのTPPに対する取り組みについて伺っておきたいと存じます。

松下副大臣 今、日本は、御承知のとおりの東日本の大災害、原子力を含む大きな、深刻な事態に真剣に取り組んでいるわけでございまして、国を挙げて、全力を挙げてこの問題の解決に努力しなきゃいかぬということは当然のことでありますし、全力を尽くしてまいります。

 同時に、我が国は、先ほど申しましたけれども、貿易立国で成り立っている。資源のない国がこれからどうやって生きていくのかというときには、私は、林業や水産業も含めて、農業を強くするということは国益そのものであるし、これと同時にまた産業界の改革も進めて、この力が両方相まって外に向かっていくということが、これはどんなことがあっても必要だと考えておりますし、国内でどういう事態が起ころうと、世界でどういうことがあろうと、この基本的な立場は変わらないと考えています。

 ですから、災害復興は全力を挙げますけれども、同時に、昨年の秋に国際的に約束したいわゆるAPECでの菅総理のあの発言、そしてダボス会議における国際会議での発言を含めて、国際的に、日本は変わってきたなということをはっきりとメッセージを送ったと私は考えています。

 ですから、この立場はどういうことがあっても変わってはいけないと考えていますし、我が国の生きる道そのものだと考えておりまして、この基本路線をしっかり確認しながら、しかし今現在の事態にもしっかり対応していく。国の将来を見据えた貿易立国としてのしっかりとした立ち位置を失うことなく進んでいくことが大事だ、今日本の底力が試されている、私はそう考えています。全力を挙げて努力したいと考えています。

秋葉委員 今、副大臣から力強い御答弁があったわけでございますけれども、国民的な議論として考えた場合には、どういったルールづくりが、これは貿易の分野以外でもさまざまなルールづくりに相互に作用を及ぼすということでの不安感が強いものですから、ある意味では、今は日本は本当に蚊帳の外から情報収集をしているという位置づけなわけでありますが、もう少し、あくまで参加を前提とするかどうかというよりも、やはり情報を得て、国民に向かって、この二十四の部会でどういった議論あるいは論点がこれから整理されていくのかということについて、政府としてしっかりとした十分な情報を発信していくということが非常に大事だと思うんですね。

 先ほどの、医師免許あるいは弁護士免許の相互互換性の問題を聞いても、それぞれの国でそれぞれの思惑がありますけれども、この議論がどう収れんされていくのかということについては、はっきり言ってしまえば、だれもわからないわけですね。

 ですから、それぞれの部会ごとに、日本の国益は何で、日本の立場はどうだという論点整理をしっかりと示した上で、TPPへの参加についてどうするのかということでセットで示していかないと、やはり不安感だけが増幅して、本当にこれは国益にかなうのかという議論になるんだと思います。

 例えば、これは各省でそれぞれの分野ごとに議論すべきことでございますけれども、経産省としては、この二十四の部会についての論点整理というのは今もう着手しているんですか。

松下副大臣 現在の情報を集めているその範囲の中において、中をしっかりと勉強し、研究しております。

 この際、委員のおっしゃるように、やはり我が国はもう一歩踏み込んでやっていくべきじゃないか、私自身はそう考えております。これは外務大臣、そしてまた閣僚の中で今議論されていると聞いていますので、その結果をしっかりと注目して待ちたいと考えています。

秋葉委員 本当にこの問題は、総理も含めて内閣官房がもっと強いリーダーシップを発揮してやっていかなきゃいけない課題だとは思うんですが、外務大臣、どうなんでしょうか。国民的には、地元でTPPの議論となると、農水省的な議論と経済産業省的な議論が真っ向対立して、非常に不安感だけが先走っているという現状があるんですよね。

 ですから、政府として、それぞれの部会で今こういう論点があって、我が国としてはこういうメリットがあるんだ、デメリットがあるんだということも含めて、やはりもっと情報を開示していくということ。もちろん、今、日本の立ち位置は蚊帳の外ですから、それは情報収集も限られているかもしれませんし、この九カ国もさまざまな思惑があることは間違いないんですね。だからこそ、完全な、関税一〇〇%の撤廃は十年後、そういう時間的な軸を置いているわけであります。

 しかし、我が国としては、決めてからそれに対応するというのではやはり遅いわけですから、正式表明するまで、六月が少し延びたわけでありますから、事前に国民に向けた論点整理の資料をつくるように閣議なりでもっともっとリーダーシップを発揮してもらうように、大臣として号令をかけていく必要があるんじゃないかとも思います。

 また、大臣自身は、そういう問題意識の中で、各省との調整なりそれぞれの省庁の考え方云々というのはあるんですけれども、それを形式的には内閣でまとめていくということだとは思うんですけれども、外務省としても、外務大臣としてもこの議論をしっかりとリードしていくということが必要だと思いますが、そういう意味で、それぞれの部会のメリット、デメリットも含めた論点整理について、大臣としてのかかわりといいますかお考えといいますか、そういった議論は今内閣としてどの程度本当に進んでいるんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 委員が冒頭におっしゃったように、今我々に与えられている課題というのは、省庁横断的な課題がTPPに限らず大変多い、これをどのようにするのか。大上段に構える人は、省庁再編をしろとおっしゃる人もいますけれども、恐らく、再編をしてもまた別の省庁横断的なものが出てくる、こういうふうに思います。

 そういう意味で、ある意味では自公政権のときもトライ、もしくは半分実現されました、官邸主導という形でまとめるというのが一つの方法だろうというふうに思いますが、案件が大変多数にわたって、また多岐にわたったときには、それぞれ各省の、この分野はここが中心になってまとめろという形で進めるというのが一つの考え方ではないかと私自身は思っております。

 そういう意味では、通商の部分については、経産省とは連携をとっていきながら外務省も主導的役割を果たさなければいけない。先ほどもお話がありましたが、TPPに限らず、EPA交渉などをするときには大変各省の多分野にわたりますので、事実上のタスクフォースなどがこれまでも立ち上げられて行われてきたというふうに我々も承知をしておりますが、特にこのルールもしくは非関税の分野の議論については、私どもとしてもしっかり、省庁横断的な、もしくは少なくとも情報が交換できるような枠組みというのは必要だと思っておりますし、その方向へ向けて動いているところであります。

 またもう一点、国民への説明というお話でありました。

 御案内かと思いますけれども、震災直前には、TPPも含めて経済連携のあり方について広く説明をする機会を設けていこうということを準備いたしておりました。まさに震災で中断をされておるわけでありますけれども、ぜひ、やはり経済連携の意義、また、今お話がありましたように、国際的な社会の中でさまざまなルールというものが決められていくことの意義と日本が加わっていくことの意義ということについて説明をする、もしくは広く知っていただくようなことについては、私自身もまた努力をしたい、このように思っております。

秋葉委員 ある意味で結論ありきにならないように、国民の皆さんに十分な情報を提供しながら、本当に国民的な議論を経て決定をしていくという慎重さも大事だと思っておりますし、また、かといって、タイムスケジュールを考えますと、そうそう先延ばしにできないという事情もこれありでございまして、いずれの方針を打ち出すにしても、特に我が国として農業関係が大変大きなダメージを受けるんじゃないかということが言われているわけでありますから、こういったものに対するしっかりとしたフォローアップのメッセージがなければなかなか難しい課題でもあるということを申し上げまして、次の課題に移らせていただきたいと思います。

 副大臣、もう結構でございます。ありがとうございました。

 さて、きょうは法案の審議ということでございますけれども、被災地選出の議員として、これまでの世界各国からの支援状況について改めて現状をお伺いさせていただきたいと思うんです。

 米国はもちろんでございますけれども、世界各国から大変な御尽力をいただいて、本当に感謝をいたしております。仙台空港なども、一月以上無理だろう、二カ月、三カ月はかかると言われておりましたけれども、米軍、特に海兵隊の皆さんの独自のすぐれた技術力等々によって滑走路も使えるようになりましたし、また、さまざまな救援、救護活動に御尽力をいただいたわけでございます。

 世界じゅうから、例えば物資あるいはそうした技術や何かの御支援だけじゃなくて、金額というベースで見ても、七十七カ国・地域から総額百五十億円を超える寄附も寄せられているというふうに伺っておりますけれども、改めて、きょうがちょうど二カ月目なんですね、本当に早いものでございます、この間の各国からの支援状況について、大臣に現況を伺っておきたいと存じます。

松本(剛)国務大臣 現在までのところ、政府レベルというふうに把握できているところで申し上げると、義援金、支援金は、七十八の国・地域の政府などから総額約百五十億円以上の寄附金の支援を受けております。

 民間ベースも多額の金額があるというふうに承知をしておりますが、受け入れ団体も多様になっておりますので全体像が直接把握できていませんので、すべてを申し上げることはなかなか困難だろうというふうに思っておりますが、五月九日現在、内外の寄附で、日本赤十字社では一千七百億を超える金額を受けているというふうにもお聞きをいたしております。

 今回の震災に当たって、多くの国・地域・機関から多くの幅広い支援、大きな支援をいただいたことを、改めて、この場をかりてお礼を申し上げたいと思っております。

秋葉委員 本当に世界じゅうからの善意が寄せられている中で、これは外務大臣がというよりは総理、官邸による各国への謝意伝達、これが大変不十分な面があったのではないかという御指摘もございます。

 具体的に言えば、ちょうど四月十一日の一カ月をめどにしたところで、七紙に謝意の広告が出されました。グローバル紙も、インターナショナル・ヘラルド・トリビューンやウォールストリート・ジャーナル、ファイナンシャル・タイムズ、あるいは中国、韓国、ロシア、フランスのメジャーな新聞にも出していただいたわけでございますけれども、官邸なりの判断としては、これで十分だという判断もあったんだとは思いますが、各国から同等の善意が寄せられている中で、なかなか世界じゅうの国の新聞に謝意広告を出すというのは難しい面があるのは十分承知をしておりますけれども、しかし、やはり、相当御支援をいただいたにもかかわらず国内で報じられなかったという国にとってみれば、残念な思いもあるようでございます。

 先ほども申し上げましたように、きょうが二カ月目でございます。復旧復興が途上の中で、また、一定の時期をとらまえて、きょうの夕方も国内での感謝の集いがあるというふうには伺っておりますけれども、またいろいろ世界に対してけじめの時期に謝意を伝えるということも大変重要になってくると私は思っておりますので、そのときにはやはり地域的ないわば偏在というものに十分配慮して、四月十一日の媒体にも増した対応を考えていくということは、私は大変重要だと思っております。

 ぜひ、外務大臣におかれましては、総理なりともう少し広げていくという御相談をしていただきたいと思っていますが、この間の謝意の伝え方のあり方も含めてどういう御認識でいらっしゃるのか、また、今後の対応を伺っておきたいと存じます。

松本(剛)国務大臣 四月の十一日の日に一カ月をめどに七紙に広告を出したのは、今委員がお話しいただいたとおりであります。

 実は、その前にもう既に、現地の大使館の努力によって、大使などの、もしくは大使館などが広告もしくは寄稿といったような形で現地の新聞にお礼を出すことができている。広告なども、場合によっては無償でスペースを提供いただいたというケースがあったという報告が上がってきておりました。

 その意味で、私どもとしても、一カ月をめどに、それだけで足りる、有料の部分だけで足りるというふうにそもそも考えていたわけではないわけでありますけれども、他方で、もちろん全体から見ればわずかな額かもしれませんけれども、改めて税金をどう使い直すかということを考えているさなかに、最も効果的な方法はということを考えたときには、大変関係が深い、もしくは影響力が大きいような新聞には有料で出すことによって、また、あわせて、協力をいただくことによって謝意を広く伝えることができないかということで試みたところであります。

 現段階では、有償、無償、さまざまな形があったわけでありますが、ほとんど無償で御協力をいただいて、六十二カ国、百二十八メディアに謝意の報告をさせていただくことができたというふうに……(秋葉委員「六十三カ国と書いてある」と呼ぶ)六十三カ国ですか、正確な数字は日々変わっていますので、ちょっと確認をしたいと思いますが、報告をすることができたというふうに思っております。

 もちろん、謝意がどこまで伝わったかということがありますので、引き続き広く伝える努力をするようにしていきたいという御指摘はしっかり受けとめてまいりたい、このように思っております。

秋葉委員 米国を初め大変な御尽力をいただいておるわけでございまして、本当に感謝をいたしております。そういったお気持ちというものを、漏れがあると言うと語弊がありますけれども、それぞれの国の無料広告に頼るなんということではなくて、やはりもっと積極的に十分日本の気持ちを伝えていただきたい。それは何もお金のかかる広告を有償で枠をとるということでなくても、もちろんホームページにも掲載をしていただいておりますけれども、今いろいろな方法があるわけでございますので、しかるべき時期により十分手厚い対応ということで考えていただきたいと思います。

 震災から二カ月たちまして、仮設住宅への移住も少しずつ進みつつありますけれども、大事なことは、日常生活にしっかりと戻っていくということでございます。

 そういう中で、阪神・淡路大震災のときの話などを聞きますと、実は、仮設住宅に移ってからも、なかなか雇用が見つからなかったり、あるいは将来に展望が持てなかったりということで結構な数の自殺者の方が出られたという大変残念な事情も伺っております。今回の震災におきましてはそういうことがないように、被災をされて財産も失った、仕事もなくなったという方が早期に自立できるような環境整備に全力で取り組んでいかなければなりませんけれども、また、そうした被災者の皆さんに夢を与えるような、明るい、前向きの話もしていく必要があるのかなということも私は個人的に大変考えております。

 そういう意味で、きょうは、文科省からも政務官においでをいただいておりますけれども、実は昨年、東京都が二〇一六年のオリンピックに手を挙げていたわけでございますけれども、残念ながら落選をしてしまいまして、来年はロンドン、そして一六年はブラジルのリオデジャネイロに決まったわけでございます。

 オリンピックの参加要件というは大変に厳しい基準がございますので、一つの都市が主催都市になるというふうなことで大変ハードルは高いんですけれども、実際、東京都は今度どうするのかということもまだ表明もされておりませんし、福岡はどうするのかというようなこともあるわけであります。

 私ども、地元の思いとしては、やはり将来に向けて、今度の復興計画というのも、仙台市も宮城県もあるいは国も、恐らく大体十年ぐらいの期間で考えていくという方向になるんだと思うんですね。そうすると、このリオの後の二〇二〇年というのがおよそ十年後ということになってくるわけであります。

 これは、IOCの憲章の規定ですと、一つの都市しか立候補できないというようなことがあるんですが、私は、やはり東北復興というものに合わせてオリンピックを誘致する中で相乗効果を高めていくということが非常に大事じゃないかという夢を持っています。

 今までオリンピックを開催した都市で赤字になったところはほとんどない、みんな黒字になって、非常にプラスの波及効果が生まれているということをお伺いをしておりますものですから、これは国が主体で取り組む話ではありませんけれども、しかし、地元が、例えば仙台、盛岡、福島の三都市共催の形で進めていくということがもし認められれば、非常に実現可能性も出てくるんじゃないかなと。

 折しも、いろいろと調べてみますと、IOCの二〇二〇年の開催地選定の受け付けのスタートが来週の月曜日からなんですね。締め切りが九月の一日でございますから、なかなかいとまがないということがあります。しかし、私の個人的な思いの中では、二〇二〇年がなかなかスケジュール的に難しくても、二〇二四年には十分その気になれば間に合うということもございます。

 本当に、東京オリンピック以来の誘致を実現して東日本振興の大きなきっかけにしていきたい、こう思っているわけでございますが、まずは外務大臣に、そうしたオリンピック誘致についての私の考え方についてどのように御認識を持たれるか、伺っておきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 スポーツを担当している林文部科学大臣政務官からお答えがあろうかというふうに思っておりますが、一つ外務大臣の立場から申し上げれば、やはり復興に弾みをつける、希望を持たせるという意味で、国際的な会議であったりイベントであったりというものを被災地において行うべく努力をされるということについては、私どもとしてもしっかり支援を申し上げてまいりたい、このように思っております。

 そして二つ目は、ただいま委員御自身がおっしゃったように、オリンピックの場合は相当手続的にも、またいわば交渉というか政治的にもハードルが高い部分があるだろうというふうには思っておりますので、よく地元とも御相談をいただいてということになろうかというふうに思っております。

 なお、三つ目は、若干職の立場を離れて申し上げることをお許しいただければ、前回も広島、長崎というお話があったときに、私は一議員の立場でありましたけれども、やはりこれから日本として国際社会に出る場合には、そういったテーマを持っているということは大変訴求力、訴える力があるのではないのかなということは率直に感じたという感想は申し上げられると思いますので、今の委員の御提案についても同様の感想を持たせていただいているということは申し上げられると思います。

秋葉委員 きょうは林政務官にもおいでいただいておりますので、地元でぜひというような方向になれば、ぜひ応援していただきたいと思っておりますが、一言、文科省としての考えを最後にお伺いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

林大臣政務官 それではお答えさせていただきます。

 委員もよくよく御存じの上での御質問だったかと思いますが、今までのことで言うと、一都市開催という原則があったり、いろいろなハードルはあるんですけれども、しかしながら、今回の震災に当たりましては、復興についても、スポーツ界もたくさんの御尽力をいただいています。やはり、希望が見える、未来が見えるという復興の形をつくっていくために、しっかりと地元の皆さんの声を聞かせていただいて、当然、委員会の意向もありますけれども、しっかりと議論させていただきながら、そういうことがあれば、全力で応援をさせていただきたいというふうに思っています。

秋葉委員 どうもありがとうございました。

小平委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 おはようございます。公明党の赤松正雄でございます。

 きょうは、日印の包括的経済連携協定について、それから日本とブラジル、また日本とスイスとの間の社会保障協定、三つの協定の審議をするわけですが、今、自由民主党、野党の自民党の皆さんから質問があった日印の包括的経済連携協定の問題についてから入りたいと思います。

 まず第一点目、民主党のマニフェスト。一昨年の七月に出されたマニフェストは、今日に至るまでの間にさまざまな問題が提起をされております。いわゆるEPAあるいはFTA、これに関しても、いささか、少し変質してきているのではないか、そんなふうな思いを抱きます。

 例えば、一昨年の七月のマニフェストの「外交」のくだり、「緊密で対等な日米関係を築く」という五十一番目の項目の中に、三つ挙げられているわけですね。

 一つは、鳩山前総理大臣の時代に大変このくだりが話題になりましたけれども、「緊密で対等な日米同盟関係をつくるため、主体的な外交戦略を構築した上で、米国と役割を分担しながら日本の責任を積極的に果たす。」これが一つ。

 二つ目が、「米国との間で自由貿易協定(FTA)の交渉を促進し、貿易・投資の自由化を進める。その際、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない。」これが二項目め。

 三つ目は、前回あるいは前々回でしばしば取り上げました「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む。」こうあります。

 きょうは、この二番目の「米国との間で自由貿易協定(FTA)の交渉を促進」する、このくだりについて、先ほど来のいろいろ同僚委員の質問、そして、外務大臣あるいは農水副大臣また経産副大臣等とのやりとりの中で、ある程度浮き彫りになりましたけれども、この民主党のマニフェストの位置づけというのは、どういうふうに理解したらよろしいんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 今御指摘をいただいたのは二〇〇九年七月のマニフェストであるというふうに理解をしておりますが、まさに積極的に経済連携を進めることが必要であるということでお話をさせていただいたということだと思いますし、また、日米という枠の中でお話をさせていただいているという意味では、日米間においてもさらに経済連携を進めることが望まれるということで、このようなことを記載させていただいたと理解をしております。

 なお、二国間のFTA、EPA交渉については、既に先ほどの議論で申し上げたとおりでありますけれども、昨年十一月の日米首脳会談でも、二国間の、またアジア太平洋の貿易投資等の自由化に関する協議を進める、さまざまなレベル、分野での経済対話、協力を推進するということで一致をしているというふうに理解をしております。

赤松(正)委員 要するに、私が言いたいのは、日米間におけるFTAを進めるということが後方に退いて、先ほど来の議論のように、TPPという問題が表面に出てきている、こういう経緯。さっきも、国民に対する説明あるいはそこへ行く前の党内におけるさまざまな議論、それは民主党だけではなくて、私どもの党にもさまざまな意見があります。そういう一連の、現時点におけるTPPにまつわる議論に行くまでの、民主党政権誕生以来の約一年十カ月、この流れの中で極めて混乱している。その辺が整理されないと、TPPやEPAやFTAや何とか、英語の頭文字三文字がいろいろはんらんして、何がどうなっているのかわからないというのが一般的な印象だということを私は申し上げたいわけですよ。

 今申し上げたように、民主党はこうやってアメリカとの間でFTAと掲げたんですから、これについてどういう位置を今占めているのか、TPPの議論の中においてこれがどういう位置を占めるのかということを機会あるごとに説明しないとわからないということを指摘したいわけです。

 例えば、二十一年の七月にこのマニフェストが出た。その後、二十二年の六月に新成長経済戦略ということで、ここでは日米の経済連携のあり方という項目が入っています。ところが、その後、約四カ月後の二十二年十月、ここでは、要するに総理大臣がこのTPPのことを高らかに宣言した所信表明という一つのエポックがあります。その後、一カ月後の二十二年の十一月に基本方針が出された。そこでは、もう既にアメリカのお話は飛んじゃって、アメリカのお話が飛んじゃっているというか、アメリカという字さえ出てこない。こういう流れが時系列的にいうとあるわけですね。

 そういうことを踏まえて今のTPP論議をしていかないと、途中過程では非常にやはり、いかにも民主党らしいと言えばいいのかもしれませんが、何か突然思いつきで出て、まあ思いつきじゃないと思いますよ、何か総理大臣が言った、そこへぎゅっと流れが行ってしまって、過去に自分たちが言ったことがどこかへ飛んじゃってしまっている。日米地位協定だってそうですよ。問題提起する、こう言ったけれども、実際にはほとんど提起されていない事態が続いているわけです。

 そういう点で、もう一遍、今申し上げた観点から、きちっと外務大臣としての、今の私の問題提起したことについてのとらえ方の整理をしていただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 日米の関係において、関係を強化するという意味でFTAの促進ということがこのマニフェストで記載をされてきたわけでありますし、私自身は、民主党、与党の一員ではありますけれども、直接、当初の一年間は、外交の、もしくは政府の中にいたわけではありませんけれども、大きな流れとして、日米の経済関係を強化するということは模索をされてきたと思っております。

 そして、その中で、FTAもしくはEPAというのが大きなツールであるという認識は共有をされていたというふうに思いますが、まさに委員がおっしゃったように、一昨年の十一月にオバマ大統領がTPPに参加されることを表明されたとたしか記憶をいたしておりまして、米国においても、先ほどお話しさせていただいたように、今後の新たな通商交渉というのは専らTPPに注力をする、こういう対応で臨んでいるということが私どもから見てもはっきりしてまいりました。

 他方で、TPPについては、もちろんさまざまな課題があるわけでありますが、ルールなどを含めて、私どもとしても議論に参加をすべき点がある、このように考えたところ、現在、日米のことも含めて、そういう意味ではTPPの議論というのが大変に重要になっているという位置づけで進めているというふうに私は理解をしております。

赤松(正)委員 ですから、外務大臣、マニフェストに掲げた日米のFTAの問題はTPPの今の議論の中に包括される、含み込まれる、こういう位置づけでよろしいんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 複数国と二カ国間のものは必ずしも同一と言えないということをあらかじめ前提として申し上げた上で申し上げれば、大きな意味での日米関係の経済強化はTPPの交渉によって促進されるということで、効果としては近いものが期待できるということはそのとおりだと思いますし、そのように考えていることも事実であります。

赤松(正)委員 しかし、日米間のFTAというのはやはり議論はしていくというか、そういう姿勢で臨まないと、TPPそのものは、先ほど来お話あるように、海のものとも山のものともわからないと言ったらこれは言い過ぎですけれども、そういう複雑な様相というか、側面を持っているという点では、やはりこういう点は、原初的な意味でマニフェストに掲げたんだから、その部分はしっかりと大事にしていく必要があるんじゃないかと思うんですね。

 それで、もう少しわかりやすく説明してほしいという意味では、例えば岡田前外務大臣が、これは百七十三回参議院予算委員会、二年前の十一月六日の予算委員会でこう言っていますね。

 要するに、EPAあるいはFTAを、これは質問する人が、WTOとの関係、マルチの関係と、FTAあるいはEPAとの関係を聞いた。それに対して岡田さんは、「EPAあるいはFTAをそのWTO協定と整合的な形で補完的に進めると、言わば二本立てでやるというのが、まあ私は今までの、最近の政府の考え方であり、それは私は現実的な考え方ではないか」と思う、こういうふうに答弁をしております。

 ということでいけば、FTA、EPA、そしてTPP、そしてその前に、古くからあるWTO、こういうものを全部ひっくるめて整理すると、外務大臣、岡田流に言うところの二本立て、こういう言い方の援用をしますと、いわゆる三本立てというか三頭立て、こういうことでよろしいかどうか。

    〔委員長退席、吉良委員長代理着席〕

松本(剛)国務大臣 赤松先生よく御案内のとおり、日本は、特にWTO、もしくはガットなど、マルチ中心で来たというのが過去の歴史だというふうに私は理解をしております。

 しかし、なかなかマルチでのコンセンサスというのが一朝一夕には進まなくなる中で、他方で、FTA、EPA、これも一応WTOというかマルチのルールの中で行われているものではありますけれども、こういったFTA網、EPA網というものが発達をしてくるような状況が出てくると、我が国としてもやはりそういった現実にも目を向けなければいけないということで二本立てになってきていたというふうに理解をしております。

 位置づけというか、内容としては、TPPも複数国間のEPAもしくはFTAということに、位置づけというか、法的にと言っていいのかどうかわかりませんけれども、なるんだろうというふうに思いますけれども、実質の面では、先ほどからも御議論があるように、アジア太平洋地域の有力な国が構成をしてルールなどをつくるということは、場合によってはそれが世界の一つのスタンダードになってくるということでありますから、そういう意味では、違う形でのいわばマルチもしくは世界レベルでのアプローチということになってくるんだろう、そういう意味では新たな部分があるというふうに位置づけられるというのは御指摘のとおりではないかというふうに思います。

 なお、先ほど日米のお話でありましたが、TPPは九カ国でありますので、日米だけがすべてではありませんことは申し上げるまでもないことでありますけれども、日米のFTAというものについては、私どもも日米FTAというものが頭の中には常にあるわけでありますけれども、今進められる課題ということで、また、私どもとしても進めなければ、もしくは考えなければいけない課題ということで今TPPというのが出てきているし、そのことは同時に日米間の経済関係強化の効果もあるということで申し上げているという位置づけだと御理解をいただいていいかと思います。

赤松(正)委員 いずれにしても、今、外務大臣自身も、そのとらえ方がいささか、御自身はわかって言っておられるつもりなんでしょうけれども、発信するときに余り人の胸に落ちない伝わり方をしてきます。そういう点で、しっかりともう少し整理をして人に発信をしていただきたいということを言っておきたいと思うんですね。

 それに関連して、この問題の私自身の考え方は後で申し上げますが、ついでに、ついでにというか、さらに敷衍させて言いますと、このマニフェストで、「アジア・太平洋諸国をはじめとして、世界の国々との」云々、つまりEPAやFTAの交渉を積極的に推進するというくだりがあるわけですが、先ほど同僚委員からの指摘にもありましたが、自民党あるいは後半公明党が加わっての政権におけるさまざまな推進、その後で、この一年十カ月の間登場した民主党の政権による取り組み方、これは、やはりマニフェストにこのように大きく取り上げているからには、積極的なそういう取り組み姿勢があっていいと思うわけですけれども、現実には余りそう展開をしていないんじゃないのか、そういうふうに指摘する向きがあります。

 私もやはり、この一連の包括的経済連携協定については少し滞っている、それは、とりもなおさず、TPPというものが出てきて総理大臣がそのことを取り上げて、そこに一気に行く雰囲気が出てという要素もあって、マニフェストで掲げた当時のその取り組み姿勢が、つまりFTAやEPAに対する個別の取り組みが少し弱まっているんじゃないか、そういう印象を受けます。

 そういう印象は誤っているとおっしゃるなら、今の取り組み姿勢、いかにマニフェストどおりにこのEPAやFTAに取り組んでいるのかということについて、説明をしていただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 TPPというのは、先ほどお話ししたように、複数国でありますので少し違う要素がありますが、広い意味では、推進すべきEPA、FTAのうちの一つというふうな理解を私自身はいたしております。

 その上で申し上げれば、一昨年の九月に政権をお預かりして、昨年の十一月に、そういう意味では一年と二カ月たってからということになったわけでありますけれども、包括的経済連携に関する基本方針というのを定めて、一つ大きな一歩を踏み出したというふうに考えております。これに基づいて、事実上停滞をしていた豪州また韓国などとの交渉が再開をすることになったというふうに理解をしておりますし、また、EU、モンゴル等については、交渉開始に向けて今取り組んでいると言うことができるようになってまいったと思っております。また、日中韓はこれまでも共同研究を積み重ねてきたわけでありますし、カナダについてもそうでありますけれども、さらなる前進を行うべく今努力をしております。

 また、今回の基本方針というのは、やはり国際社会からも高く評価をされておりまして、これについての問い合わせ、照会というのは大分いただいておりまして、こういったものを端緒に、さらに積極的に推進をしてまいりたい、このように考えております。

赤松(正)委員 日中韓あるいはモンゴル、カナダ、共同研究というようなことで取り組みをされているようですけれども、やはり、当初マニフェストに掲げられたとおり、基本的なそういう二国間の、それぞれの国との包括的な経済連携協定というものはしっかりと進めていくべきであるということを言っておきたいと思います。

 そこで、先ほど来の議論の中で、私も聞いておりまして、農水副大臣の篠原さんの考え方、余り多くを彼はしゃべりませんでしたけれども、さっき外務大臣の発言の中で、今TPPあるいはFTA、EPAの議論が、特にTPPについては東日本大震災の影響を受けて中断をされている、中断という言葉を使われたと思うんですね。

 私は、このTPPをめぐる問題については、まさに震災で中断をされるというのではなくて、この震災が提起した問題というのが、むしろTPPが提起している、あるいはこの問題で、いみじくも菅総理大臣が所信表明の中で、環太平洋パートナーシップ協定交渉への参加を検討して、アジア太平洋自由貿易圏の構築を目指す、東アジア共同体構想の実現を見据え、国を開き、具体的な交渉を一歩でも進めてまいりたい、こういう発言をしています。この前後の政府の文書、さまざまな発表をされたものには、国を開く、いわゆる開国という言葉がしばしば出てくるわけですね。

 私がここで言いたいと思っているのは、要するに国を開くという思想、開国の思想というのは非常に大事な問題提起である、こう思うんですね。これは、もともとの開国、私は、この間の本会議のホスト・ネーション・サポートの問題で討論をさせていただいたときに、開国という話を申し上げました。今まで過去に二度の開国があって、今三度目の開国が迫られているというのが、実はこれ、もともと歴史家の松本健一さんがつくった言い方であると思います。彼は今、総理大臣の総理補佐官ですか……(松本(剛)国務大臣「内閣参与」と呼ぶ)内閣参与という立場で、かなり総理大臣や、あるいは仙谷官房副長官の学友ですから、影響を与えていると思うんですけれども、つまり、明治維新のときは鎖国に対する開国、文字どおり、第一回目は。二回目の、第二次大戦が敗戦に終わったときの二回目の開国というのは、まさに国家が一たん滅亡して、そこから真の意味で復興するという観点での開国。

 松本健一さんが使ってきた開国というのは、第一回目の開国の裏づけになったのが明治憲法。二回目の開国の裏づけが、いわゆる昭和憲法、今のいわゆる平和憲法。三回目の、今グローバル市場主義と言われるようなこの今の時代状況の中で、日本が新たに憲法をつくって、しっかりこれを新たな時代転換の基軸にしていくんだという意味で開国という言葉を使っているはずなんですね。そこへ大震災が起きたということです。

 つまり、私が思いますのは、この大震災で、文字どおり、さまざまな日本の国が直面している課題、例えばこのTPPという問題も、まさに日本の国のあり方というものに対して大きくかかわってくることであるから、震災によって中断をするのではなくて、むしろこの震災が提起しているさまざまな課題を、一緒にこの場面で国民的な大議論をしていく必要性がある、こういうことを言いたいわけであります。

 つまり、そういう意味では、方向性としては、私は、総理大臣が言うところの、国を開いて具体的なTPPをめぐる交渉ルールをつくるということには賛成なわけですが、まさにそういう点でしっかりとした考え方を持った国を開くという思想がないと、単なる思いつき的に開国という言葉を使ってはいけない、こういうふうに思うんですね。

 そういう点で、まさにその開国の姿勢が問われているという観点で、今申し上げた中断ではなくて、この東日本大震災が提起している問題は、まさに日本が抱えている問題を一気に前向きで取り組む大きなきっかけになる、そんなふうに思います。

 ある考古学者、環境考古学者というべきでしょうか、その方が、最近私、東北で東日本の震災の現場を見に行ったときに、いろいろ語り合う場面があったんですけれども、要するに、日本人が今心を開く、日本人が大きく変わっていかなくちゃいけない、そういう場面であると言うわけですね。さっき言ったような第一の開国、第二の開国には、それぞれ大きな外からのインパクトがあったわけです。外からの大きな衝撃があったわけです。ところが、第三の開国はなかなかそういう機縁がない、きっかけがないと言っているところに今回の大きな大震災が起きた。その学者は、まさに日本は大災害に直面しないと変わらないんだというふうな発言もされておりました。

 外務大臣、大丈夫ですか、瞑想にふけらないでくださいね。そういうことを指摘されておりましたけれども、今言ったような、そういう大災害をむしろきっかけにして日本が大きく変わっていく、このことについて、大臣の考え方を聞かせていただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 おっしゃったことは、まさにそのとおりだろうというふうに思います。中断というのは、経済連携も含めて、各省連携の会議も熱心に開いてきたわけでありますけれども、やはり三月、四月前半とそういったものを開くことができなかったという意味で、そのようにお話をさせていただきました。

 まさに今回も、私自身も農業再生の会議にも参加をしてまいりましたけれども、先ほどの議論でも申し上げましたが、復興、どういったものを目指していくのかといったときに、もとにあるものに戻すという復旧にとどまらず、最終的にはもっとよりいい形に、前へ進んだ形に進めるということが復興であるとすれば、それは農林漁業の再生で議論されてきたことも生かさなければいけないと思いますし、また、先生がおっしゃったように、これまでの課題として、課題への対応もしくは課題への対策として考えられてきたことというのを飛躍的に進めなければいけないというのも事実ではないかなと、その意味では全く同感であります。

赤松(正)委員 次に、日本とブラジルの社会保障協定について、若干、政府参考人にお聞きをいたしたいと思います。

 まず、日本とブラジルは、この約二十年の間に、ブラジルから日本に、約七十倍のブラジルの皆さんが日本にやってきている、こういう数字的な変遷があります。

 在日ブラジル人の、そういう急激なこの二十年間の増加という問題があって、そこに今回、この日本とブラジルの社会保障協定で、言ってみれば、日本に住まっておられるブラジルの皆さんの生活環境というものが大きくいい方向に変化する、今までのかなり経済的な負担という部分がなくなるということで、今後の見通しとして、この日本・ブラジル社会保障協定が発効することによって、そうした在日ブラジル人の生活環境あるいはまたこれから数量的な部分もどのように変化していくというふうに見ておられるのかどうか。これは内閣府の参事官ですかね、お願いします。

    〔吉良委員長代理退席、委員長着席〕

岡田政府参考人 お答えさせていただきたいと思います。

 内閣府では、在日のブラジル人、ペルー人というような日系定住外国人のための施策をいろいろと行っているところでございます。この方々につきましては、先ほど委員から御指摘ありましたように、二十数年前から大分日本に入られてきておりまして、直近平成二十年の秋に、世界的な経済危機のもとで相当生活が困難に陥る方が大変多くなったというようなこともございまして、政府として緊急な対策をとったところでございます。

 それに応じまして、一部の方は、帰られた方がそれなりの多数の方、いらっしゃったわけですが、依然として多くの方が日本に定住されているというような状況を踏まえまして、こうした方々を日本社会の一員としてしっかりと受けとめて、社会から排除されていかないようにしていくような取り組みが必要だということで、ことしの三月三十一日に日系定住外国人施策に関する行動計画というのを策定いたしまして、そうした日系の定住外国人の方を日本の社会に取り込むためのいろいろな、日本語の教育であるとか子供の教育であるとか雇用というような問題について、政府全体として取り組むことをこの計画の中に盛り込んで、そういうものについて取り組んでいくということにしているところでございます。

赤松(正)委員 その行動計画等、あるいはまた日系定住外国人に関する基本指針あるいは行動計画、こういうものの中に、厚生労働省関連の施策として、国民年金制度にそうした定住外国人の皆さんを、しっかり年金に加入していただくように取り組む、そういう年金加入率の向上という問題、あるいはまた外国人を雇用する事業者への指導、こういったくだりがありますけれども、この辺について、厚生労働省としてどういう取り組みをしているのか、お答え願いたいと思います。

今別府政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の年金制度といいますのは、一九八二年以来、国籍要件を撤廃しておりますので、年金制度の中で外国の方が何人おられるかという数字を把握するシステムにはなっておりません。

 ただ、政策の必要性でありますとか、あるいは政策の効果でありますとか、そういうものを把握する必要が当然あると考えておりますので、三年に一回、公的年金加入状況等調査というものをやっております。ちょうど二十二年度、昨年度でありますが、調査の実施年でありましたので、ここで国籍についての問いを加えて、まず現状把握をしようと思っております。

 それから、今先生おっしゃられました加入率の向上でありますけれども、かねてより、例えば外国語のリーフレットを事務所に設置したりというようなことを通じて制度の普及を広めておりますし、それから事業所につきましては、外国の方が働いておられる事業主、事業所の加入率が低いということが考えられますので、これらの事業所について、重点的にかねてから調査を実施して、加入の指導をしております。

 今年度はそれをさらに一歩進めまして、毎年一回、事業所に勤めておられる方々の標準報酬等を把握する調査をお願いしておりますが、この中で、外国の方が何人おられるのかという数字も把握をして、より効果的に対策を進めていこうというふうに考えております。

赤松(正)委員 次に、文科省にお聞きいたしますが、要するに、先ほど来申し上げているような、そういう外国人の労働者、その子供さんたちがたくさん日本の社会の中に存在しています。そういう方々の学校教育における日本語の習得という部分がなかなか難しいということがあって、いろいろな問題が起きてきているということがあります。そういう問題に対して、文科省として、虹の架け橋教室ということで、いろいろな支援をしているということは理解をしておりますけれども、そういう義務教育段階の子供たちだけではなくて、義務教育を終えて日本にやってきた子供たちというか前期青年というか、そういう人たちに対する、そういう今進められている支援というものは、もう少し柔軟的に、幅を広げて、そういうものについてもしっかりと取り組む必要があるんじゃないかということについてはどう考えておられるでしょうか。

前川政府参考人 定住外国人の子供の就学支援事業、いわゆる虹の架け橋教室事業でございますけれども、これは不就学あるいは自宅待機となっているブラジル人その他の外国人の義務教育段階の子供を主たる対象といたしまして、日本語等の指導や学習習慣の確保などを図るための場を外国人集住都市等に設けまして、公立の小中学校への円滑な転入等に資するようにするということを目的としております。

 この事業は平成二十一年度の補正予算で設けられまして、平成二十三年度までの三年間の時限の事業として実施しておりますけれども、二十二年の十月現在でいいますと、約千百人の子供が学んでいるという状況でございます。

 この事業は、事業の主体に対して文部科学省からお金を出しているわけでございますけれども、事業の対象といたしましては義務教育段階の子供ということになっておりますけれども、その事業主体の判断で、就学年齢を過ぎた子供等が参加すること自体は可能でございます。しかし、事業自体が義務教育段階の子供を対象としているということは事実でございます。

 二十四年度以降、この事業をどうするか。これは二十三年度までの時限の事業でございますが、二十四年度以降どうするかということでございますけれども、事業の評価あるいは検証ということをいたしまして、子供の就学状況や新たなニーズの把握などに努めまして、より効果的、効率的な事業ということを考えたいと思いますが、その際、この事業を継続することを検討する場合には、御指摘の対象年齢の弾力化といったことも含めまして、関係自治体や関係団体等の意見を聞きながら見直しを行ってまいりたいと考えております。

赤松(正)委員 日本社会の中における三十万人近い人たちが生活をしておるわけですから、あらゆる意味でしっかりと対応に取り組まないといけないと思います。よろしくお願いします。

 以上です。

小平委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 日本・ブラジル社会保障協定、日本・スイス社会保障協定については、いずれも賛成であります。その上で、日本・インドEPAについて質問いたします。

 まず、それに先立ちまして、TPPの問題が先ほど来ありましたので、若干そのことについて確認的に質問したいと思います。

 松本大臣に確認したいんですが、いろいろ議論がありました。きょう五月十一日は、東日本大震災からちょうど二カ月。引き続く被災者救援に全力を挙げるとともに、被災者の生活再建、地域社会と経済の立て直しはまだまだこれからということで、めどが立っておりません。こういう中で、先ほど来のやりとりがありましたが、要するに、TPPの交渉参加について、六月をめどに交渉参加についての結論を出すという従来の政府方針については、大震災を踏まえて、この方針を変更して、判断時期は、いわば、平たく言えば先送りをするということでよろしいのかどうか、その確認をお願いしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 政府として、成長戦略の中だったと思いますけれども、六月に判断をするということを変更する決定が何らかの形で行われたとは承知をしておりません。

 ただ、三月十一日の未曾有の大震災を受けて、先ほどもお話をさせていただいたように、さまざまな作業が少なくとも三月から四月にかけて行えなかったことは事実でありますので、そのことを受けつつ、今後の作業を行っていくということになるというふうに理解をいたしております。

笠井委員 六月というのはもう間もなくですから、要するに、どこかの時点で変更するということの何か確認なり決定というのはあるということでよろしいんですか。

松本(剛)国務大臣 交渉参加を判断する時期というものが引き続き六月のままで変更の必要がないかどうかということは、率直に申し上げて、今議論しているというふうに申し上げられると思います。

笠井委員 篠原副大臣に伺っておきたいんですが、今回の大震災によって農林水産業の生産基盤が壊滅的な被害を受けたというもとで、依然として再生の計画をつくっていくこと自体が困難な作業を強いられている状況だと思うんですが、先日、私が当委員会で伺ったときに、御答弁の中で、東北の農家や漁業の皆さんの気持ちを考えて思いをはせるという大事な視点を述べられたと思います。

 このTPP交渉参加にかかわって、昨年十一月の閣議決定では、農業の問題、この六月をめどに基本方針をとにかく決定して、十月をめどに農業の改革について行動計画を策定するということで言っておりましたけれども、もう六月も間近ですが、この方針については現時点でどうなっているのか、どうするというふうに農水省はお考えなんでしょうか。

篠原副大臣 農業の基本方針につきましては、昨年の十一月九日のEPA等に関する基本方針にきちんと書かれておりまして、六月に取りまとめるということになっております。今、笠井委員御指摘のとおり、それを踏まえた行動計画を十月ということは、十一月のAPECの会合あるいは予算の策定、そういったものを考慮して六月、十月というふうにしたわけでございます。我々はそれに向けて着々と準備してまいりましたけれども、三月十一日で少々事情が変わってしまったのではないかと思っております。

 先ほど秋葉委員の御質問、御指摘に対してお答えしたとおりでございますけれども、三月下旬にも骨格をお示しして議論していただいてということを予定しておりましたけれども、それが延期になっております。これは松本外務大臣が今お答えしたとおりでございますが、明確に延期という決定はしておりませんけれども、被災をされた農業者、漁業者の心情を考えますと、TPPというようなことを今言っている段階ではないのではないかと私は思っております。まずは復旧復興に全力を挙げるということで今政府内では検討しているところでございます。

笠井委員 TPPの大きな論点の一つだった農業問題でも、震災があったために、当初の計画あるいは予定、できないという状況ですので、私は、四月の当委員会でも述べましたけれども、六月をめどに決めるという方針は、ここはもう根本から見直す、そして撤回をして、今副大臣言われましたが、復旧復興に全力を挙げるべきだということを強く言いたいと思います。

 そこで、本題の日印のEPAですが、日印関係が重要であることは言うまでもありません。しかし、本協定にはさまざまな問題点が盛り込まれていると思います。

 まず、本協定の農林水産分野で、譲許表を見ますと、若干の強弱はありますけれども、この間の日本・ベトナムEPAと同様に、今回も、冷凍品等の輸入実績がないHSコードについては譲許するとともに、輸入実績があるHSコードについても段階的もしくは即時の関税撤廃措置がとられております。外務省に伺いますけれども、その理由は何でしょうか。

山花大臣政務官 委員御案内のことかもしれませんけれども、そもそもEPAは、WTOを中心とする多角的な自由貿易体制を補完し、さらなる貿易の自由化や相手国との経済活動の連携強化を行うという趣旨のものでありますので、WTO上は、実質上、すべての貿易について、関税その他の制限的通商規定を撤廃するということが求められております。

 したがって、我が国がEPAを締結する際には、品目ごとの国内産業における重要性やセンシティビティーに配慮することはもちろん前提といたしておりますけれども、基本的には幅広い分野の産品を関税撤廃の対象としております。この幅広い産品の関税の撤廃によって、貿易の拡大、経済連携の強化が図られることが、このEPAによって期待をされているという理由でございます。

笠井委員 基本的にはすべての貿易分野の自由化を目指すということだからということであります。

 そこで、篠原農水副大臣に伺いますが、先ほどもありましたが、東日本大震災で農林水産業が大打撃を受けたもとで、私は、本協定のようにすべての分野ということで、その中には農林水産分野の輸入自由化政策も入っておって、ある意味、震災の後にこういう協定ですが、そういう自由化政策をさらに進めるという方をこれでやっていこうということになるわけですけれども、これはいかがなものかと。つまり、少なくとも、震災もあってこれだけ大変なんだから、農水分野、水産業の分野を考えたときには、まず立ちどまって再考するということもあってもいいんじゃないかと思うんですが、その辺、どのようにお考えでしょうか。

篠原副大臣 心情的には、私は笠井委員の御指摘のとおりだと思いますけれども、日印のEPAにつきましては、昨年の十月に首脳間で確認が行われました。そして、本年二月に署名しております。

 ですけれども、このEPAにつきましては、TPPはありとあらゆる関税を即時撤廃、例外はほとんど許さないというものでございますけれども、日本が取り組んでまいりましたEPA、FTAにつきましては、大体九〇%はそうするけれども、一〇%ぐらいの非常に微妙な品目、センシティブ品目というふうに称しておりますが、そういったものについては、お互いに痛みを分かち合って、それは例外にしましょうということになっております。

 今、農業者、漁業者が非常に痛みを感じているところに何だという御指摘でございますけれども、その点は、米、麦、肉類、それからカツオ、マグロ等、そういったものにつきましては自由化対象品目に入っておりません。一〇%近くの例外になっておりますので、被災地はもとより、我が国の農業、漁業、こういったことに大きな影響を与えることにはならないと思っております。

笠井委員 心情的にはとおっしゃったところで、被災者にとっては、そこが今大事なところなんですよね。つまり、これだけ大変なことになっているときに、政府がどういう方向で今進めるか。貿易の問題でも、やはり気持ちを考えてもらったら、少なくとも立ちどまって、今すぐ重大なことになるかどうかは別としても、これから広がっていくということがある項目が入っている以上、被災地、被災者の復旧復興の努力に水を差して希望を奪いかねないということにならないか、そこはやはり少なくともそのことをしっかり立ちどまって考えるべきだ、私はこのことを強く指摘しておきたいと思います。農水省も、しっかりその点で仕事をしていただきたいと思います。

 副大臣、これで結構です。どうもありがとうございました。

 次に、鉱工業分野であります。

 日本の大手調査会社帝国データバンクの経済レポートを読みますと、インド進出の日本企業は既に六百七十二社、五年間で二・七倍にふえております。年商規模では百億円超の企業が七割を占めているということでありますが、しかも、さらに大企業のインド進出が目立ってきているという状況であります。

 経済産業省に伺いますが、こうした日本の大企業のインド進出の動機といいますか、理由がどこにあるというふうに認識をされているでしょうか。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、年率九%でインド経済は成長をしております。インドの日系企業拠点数は、私どもの調べによりますと、二〇〇七年から三年間で倍増をしているという状況でございますが、その背景にあるものは、これはJBICの調査などによりますと、インド市場が有望であるということで、九割近くが、そういう現地マーケットの今後の成長性を理由にインドを有望視しているというところでございます。

 以上でございます。

笠井委員 経済産業省の資料によりますと、日本・インドEPAは、例えばサービス貿易とか投資の分野でも、高いレベルでの規律と自由化を確保したというふうな説明書きがございます。そういう点でいいますと、この協定に日本側の要求がおおむね実っている、そのように理解してよろしいんでしょうか。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の日印EPAにおきましては、投資・サービス分野を含めた幅広い分野で高いレベルの内容が確保できているものと認識しております。

 例えば投資でございますけれども、内国民待遇、これは日本企業がインドに投資をする場合の内国民待遇、それから投資を設立した後の最恵国待遇、それから、パフォーマンス要求と呼ばれます、例えば現地人を社長に据えろとか、そういった要求はできないといったことを決めるなど、産業界の要望にこたえる高いレベルの規定が確保されているのではないかというふうに考えております。

 また、サービス分野におきましても、例えば経済産業省が所管する流通分野におきましては、インド側は、単一ブランドの小売サービス、それからフランチャイズサービスなどについて日本資本に関する約束をしておりますけれども、これは、インドがこれまでほかのEPAでは約束したことがないものでございます。

 こうした国際法の裏づけを持って透明性が確保されるということで、日本企業の投資環境が改善される。本協定によって日印両国の経済関係がより一層強化されるものと期待しているところでございます。

笠井委員 今言われましたけれども、産業界の要望にこたえるものになっていると。

 日本経団連は二〇〇六年に、日本・インドEPAの早期実現を求めるというコメントを出しておりますが、その内容は、投資、労働のルール策定から外資規制の緩和、関税措置など多岐にわたっております。政府の要望が実ったということでありますけれども、経団連のコメントを見ますと、産業界の要望ということもありましたが、この協定はそういう要望が多く実っているということがわかります。

 日本の多国籍企業は、この間の日本・ASEAN包括連携協定、EPA、それから日本・ベトナムEPA、そして今回の日本・インドEPAという一連の自由貿易網を手にしたことになります。

 そこで、松本大臣に伺いますが、今後、日本の多国籍企業やそれを支える下請の中小企業に、こうした自由貿易網というのがどのような影響を与えるというふうに分析をされているでしょうか。

松本(剛)国務大臣 委員のおっしゃる多国籍企業の定義というのが、必ずしも認識が一致をしているかどうかわかりませんけれども、我が国の経済界、企業は、やはりその卓越した技術などをもとに国際的な社会で活躍をしているわけでありまして、この日印のEPAを初めとしてさまざまな、これは関税、非関税の障壁が取り除かれる、また投資の障壁が取り除かれることによって、生産そして市場としての拠点を拡大するチャンスがふえる。

 これは大企業もそうでありますけれども、中堅、中小の企業においても、例えばこの日印のEPAのように、鉱工業製品の関税を引き下げることによって、現地での生産コストに比べて、日本からの生産、調達コストが引き下げられることによって、日本での活動という選択肢もまた引き続き残るといったようなことも考えられる。選択肢の幅が広がることによって、活動の幅が広がるチャンスを広げるものだというふうに理解をしております。

笠井委員 選択肢の幅ということでチャンスだという話があったんですが、私は、いささか楽観的ではないかと思うんですね。

 フィリピンやベトナム、ASEANのEPAでも私も指摘しましたけれども、経営体力がある中小企業についてはASEAN圏への進出をして、そして、国内に残るのは進出できない中小企業と零細企業だけになる実態がある。EPAが、日本の多国籍企業のアジア、ASEAN圏内の生産拠点と生産品目再編の契機になっている。このEPAでも、日本の中小零細企業に対する新たな選別も始まるという問題もあるということは指摘をしなきゃいけないし、見なきゃいけない問題だと思います。

 次に、これに関連してですけれども、草履とか履物とか繊維、衣料品の日本側のHSコードも、軒並み即時ないし段階的関税撤廃がとられております。

 経済産業省に伺いますが、こうした業界に対して本協定は悪影響を及ぼすんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

長尾政府参考人 お答え申し上げます。

 日印EPAの交渉に当たりましては、国内産業への影響に十分留意して進めてまいってきたところでございます。

 委員御指摘の履物ですとか繊維製品などにつきましては、全世界からの輸入に対するインドからの輸入の割合、非常にごくわずかでございまして、例えば履物で申し上げますと〇・四%弱、繊維製品で一・一%でございます。同国からの輸入増による業界への影響は限定的であるというふうに承知しております。

 他方、繊維製品などにつきましては、日印のEPAをきっかけといたしまして、輸出拡大というところも期待されるところでございます。インドを初めとした海外市場の開拓の取り組みの方にも、我々も尽力してまいりたいと思っています。

笠井委員 履物その他はまだごくわずかだということでありましたけれども、インドからの草履、履物、繊維、衣料品の輸入量については、近年、少しずつふえてきているという傾向にあって、日本をターゲットにした素早い品質改良と価格競争力に対応する力はインド側に十分あるというふうに予測をされております。したがって、我が国の中小零細企業の経営に与える将来の悪影響も過小評価しちゃいけないという問題点は指摘しなきゃいけないと思います。

 次に、本協定の第九十六条の投資家対国の紛争解決規定、いわゆるISDS条項について伺います。

 これは外務省の説明によりますと、この規定というのは、投資家が訴訟を起こす側、国が訴訟を受ける側ということでありますが、要するに、この紛争解決規定というのは投資家と国の何の関係を規定しているというふうに理解すればいいんでしょうか。

山花大臣政務官 第九十六条についてでございますけれども、我が国が過去に締結した投資協定及びEPA投資章における規定ぶりをベースとしつつ、国対投資家の紛争解決手続を規定したものでございます。

 締約国が本協定に基づく義務に違反した疑いがあり、このことによって投資家が損害を受けたと考えるその投資家が、紛争締約国との間の友好的な協議等により解決がなされない場合には、紛争解決のために、国際調停、仲裁に直接付託することができるという内容でございます。

 この仲裁の付託を受けた仲裁裁判所が下した裁定というのは、これは最終的なものであって、紛争当事者を拘束するという性質のものであります。締約国の義務違反による損害が生じると判断される場合には、締約国が損害賠償金の支払い等を行うことによって裁定を実施することになるものでございます。

笠井委員 これまでもという話がありましたが、日本・フィリピンEPAの場合には、フィリピン側の要求によってこの規定の条項が設けられなかった。フィリピン側がこの条文を置かないように求めた理由は何だったのか。それから、日本・ASEANのEPAにおいてもこの紛争解決の規定というのが置かれなかったわけですが、その理由は何でしょうか。それぞれお答えください。

山花大臣政務官 御指摘のように、日比の、フィリピンとの間のEPAにつきましては、この規定が置かれておりません。置かれていないんですけれども、なぜフィリピンがこれに難色を示されたのかということについては、これは交渉事ですので、お答えは控えさせていただきたいと思います。つまりは、現状、協定発効後の追加的な交渉にゆだねられているという状況だからということを御理解いただきたいと思います。

 ASEANの包括的経済協定につきましても、この規定は含まれていないんですけれども、これにつきましては引き続き検討し、交渉することとなっておりまして、そのために、投資分野に関して小委員会を設置することが規定されているというような状況でございます。

笠井委員 それでは、世界の先進国の中で、投資家対国の紛争解決規定、このISDSを入れてはならないというふうに主張している国はあるでしょうか。

山花大臣政務官 入れてはならないということでは、正確に言うとちょっと違うのかなと思いますけれども、豪州が今の政策として、紛争解決規定を、むしろそれまでは入れるようにという主張をしてきたんですけれども、現政権、ギラード政権になりましてから、それを支持しないという形で政策転換をしたと承知をいたしております。

笠井委員 オーストラリアは、アメリカとの協定も含めて、このISDS規定が含まれていないということで、なぜ今、現政権はそういう措置をとっているんでしょうか。

山花大臣政務官 ギラード政権は、国内の投資家よりも外国の投資家に対してより大きな権利を与えたり、あるいは社会、環境、経済等に関する豪州政府の立法権限を制約する可能性があるという理由で、その規定を支持しないという政策を今とっております。

笠井委員 大事な点だと思うんですが、では、実際に世界の中でこの規定が使われた例があるかと思うんです。

 引き続き外務省に、山花政務官に伺いますけれども、NAFTAの十一章のセクションBに、類似の投資家対国の紛争解決規定があります。それで、NAFTAの発足以来、この規定を根拠にして、カナダ政府を相手取って投資家から起こされた訴訟があると思うんですけれども、何件あるか、そして主にどの国の企業が多いのか、どういう制度が不当であるというふうに訴えられているのか、お答えいただきたいと思います。

山花大臣政務官 これは第三国間の協定に関する御質問でございますので、承知している限りでお答えをさせていただきたいと思いますが、NAFTAに基づき投資家がカナダ政府に対して投資仲裁を提起した例というのは、これまで二十八件と承知をいたしております。そのほとんどが米国の企業及び投資家によるものであると承知をいたしておりまして、承知をしている限りは、二十八のうち二十七が米国で、一件がメキシコでございます。

 各事案において問題とされた制度とか措置はそれぞれ異なりますけれども、最終的な仲裁判断が出された事案としては、カナダ国内の環境規制が問題にされた例が多いと承知をいたしております。

笠井委員 まさにそういう先例もあるということでありますが、オーストラリアの生産性委員会の報告書を見ますと、二国間と地域貿易協定という中では、貿易交渉において政府は投資家対国の紛争解決条項の受諾を回避するように努めるべきである、外国投資家は国内の投資家より多くを享受するからだというふうに勧告をしております。主権国家が国民のための政策を導入すると、それが投資企業に、外国から訴えられて、国民の税金が取られると。

 カナダの例を見ればわかるように、国の規制を問題として投資家訴訟がふえる傾向にありまして、主権にかかわる条項だから受諾回避は当然の措置だとしているわけであります。私は、こういう姿勢を日本は学ぶべきだと。

 ところが、本協定には、インドに対する問題の中で、結局こういう形で入っているということになりますと、お互いに規制緩和ということで、それがてこになっていく可能性があるということで、明文化されて入っているのは重大と私は思います。

 大臣、こういう問題が入っている協定についての、メリットは言われるんですが、デメリットについてはどういうふうにお考えになりますか。

松本(剛)国務大臣 国対投資家の紛争解決というのも、やはり、紛争をどのような場面で解決するかという必要性があるからこそそういう国際的な枠組みも設けられていると思いますし、また、我が国においても、もちろん、我が国の国民も我が国の企業も、我が国に対する投資という面からも保護されなければいけませんけれども、我が国から投資をする投資家としての側面もあるということでありまして、私どもとしては、そういうことを総合的に勘案して、今回の日印EPAの条項も規定も締結し、また承認をお願いしていると理解しております。

笠井委員 最後に、この協定についての我が党の態度について一言して終わりたいと思います。

 この日本・インドEPAは、日本の多国籍企業がアジア、ASEAN圏内に展開する製造開発拠点再編の有力な手段を得ることになる一方で、日本国内における下請中小企業群に対して新たな選別と経営上の苦難をもたらす懸念を払拭することはできません。また、東日本大震災による被害が甚大なもとで、さらなる自由化は日本の農林水産業の将来に懸念を与えるおもしとなります。

 さらに、今質疑しました投資家対国の紛争解決条項については、通称毒素条項の一つで、インド側多国籍企業の損害賠償請求や原状回復を恐れる日本政府が、国民の生活と安全を守る規制強化をためらう可能性が増大いたします。人の移動の問題も含めて我が党は本EPAには反対である、このことを表明して、質問を終わりたいと思います。

小平委員長 次に、服部良一君。

服部委員 社民党の服部良一です。

 まず、日印のEPA協定について御質問いたします。

 協定第七章及び附属書七の自然人の移動にかかわり、インドの看護師及び介護福祉士の日本による受け入れについて、協定発効後、可能な場合には一年以内、遅くとも二年以内に結論に達することを目的としてインドと交渉を開始するというふうにされておるわけですけれども、これは規模とかスケジュールとか、今後どのような展望の中で行われるのか。あるいは、インド側から規模等含めて具体的な要望がもう既に出ているのかどうか、それについてお聞きをいたします。

山花大臣政務官 お答えいたします。

 インド側は、本協定の交渉において、インド人看護師、介護福祉士の受け入れというのを強く要望されておりまして、この要望を受けまして、本協定においては、先ほど委員が御指摘いただきましたような、「可能な場合には一年以内に、遅くとも二年以内に結論に達することを目的として、」ということで、インド側と交渉を開始することを約束いたしました。

 交渉に当たっては、二〇一〇年の十一月に閣議決定された包括的経済連携に関する基本方針に基づきまして、国家戦略担当大臣のもとに設置されました人の移動検討グループにおける検討、また他の協定による受け入れの実施状況や二国間関係等にかんがみまして、各方面の意見を十分に踏まえつつ対応する考えでございます。

服部委員 具体的な規模だとか、インド側の要望という点ではどうなんですか。

山花大臣政務官 これは協定の発効後に継続交渉が行われるということでございますので、ちょっとこれはまた両国間の具体的な交渉内容になりますので、済みません、恐縮ですが、お答えは控えさせていただきたいと思います。

服部委員 それ以外の分野について、インド側から、過去、インド側と接触する中で、人の受け入れについて追加的な要望というのはあるんでしょうか。

山花大臣政務官 インド側からは、交渉の過程におきまして、インドヨガなどの指導員であるとか、あるいはインド料理人などの受け入れを初めとしまして、さまざまな要望を提示いただいております。

服部委員 インドといえばIT産業というのがちょっと思い浮かぶんですけれども、IT技術者の受け入れとか、そういった要望というのは出ていないんですか。

山花大臣政務官 インド人のITの技術者につきましては、従前から、出入国管理法令に基づきまして、日本企業または外国企業での雇用を目的とした就業の査証、あるいは短期商用目的での短期滞在査証というのを発給いたしまして、我が国への入国や就労を認めてきているところでございます。

 日印のEPAにおきましては、インド人のIT技術者だけに限った規定というのがあるわけではないんですけれども、「自然人の移動」という章におきまして、インドからの企業内の転勤者、公私の機関との契約に基づく専門家などの入国などにつきまして、入管法の範囲内かつ一般的な形での約束というのが盛り込まれております。

 また、昨年十月にシン首相が訪日されたときに署名され、十二月から実施されております、日・インド査証手続の簡素化に関する覚書というのがあるんですけれども、そこにおきまして、これもインド人IT技術者に特化した形ではないんですけれども、短期商用目的での数次短期滞在査証の最長有効期間を三年から五年に延長するなどの措置が盛り込まれております。

 こういったこともあってかもしれませんけれども、現時点ではインド側から、今申し上げましたような日印EPA及び査証手続の簡素化に関する覚書の規定を超えるような形でのインド人の技術者の入国であるとか、あるいはその受け入れということに係る要望がなされているとは承知はいたしておりません。

服部委員 ありがとうございます。

 我々、別に受け入れに反対ということで言っているわけではなくて、インドネシアからの看護師、介護福祉士の受け入れの問題、これもいろいろ問題が生じましたし、受け入れた場合の日本の労働者への影響であるとか、あるいは受け入れた本人たちの生活や人権に問題があってはいけない、そういう思いもありますので、その辺はぜひ外務省として十分な配慮、気配りをしていただければというふうに要望を申し上げておきたいと思います。

 続きまして、沖縄の基地問題で幾つか御質問をさせていただきます。

 グアム移転協定について、ウィキリークスで流出したアメリカ公電で、米軍のグアム移転費が水増しをされた、日本の負担割合を低く見せかけられているという疑惑が報道されましたね。大臣、何かそんなことあったかというような顔をされていましたけれども。

 日本政府は、これについてはコメントしないということをおっしゃっているわけですけれども、大臣、もしこれが事実だとすれば、これは問題だというふうに思いますよね。

松本(剛)国務大臣 ウィキリークスについては、不正な方法によって外交上の秘密とされる文書が公開をされたということで、極めて遺憾だということをまず申し上げることと、ウィキリークスについて確認もコメントもしないということは改めて申し上げたいと思います。

 その上で、グアムの移転関連費用としては、百二億七千万ドルというのがロードマップそれから二〇〇九年のグアム移転協定の前文に書かれているということでありまして、その内容の説明は私ども政府としても受けているわけであります。ただ、これはあくまで試算の数字であるということも改めて申し上げなければいけないというふうに思っております。

 その上で、委員の御質問の趣旨は私もわかりかねますけれども、一般的に、信頼関係のある二国間の関係で、もし虚偽なりがあるとすれば、それは問題だということになるということであるとすれば、そうだと思います。

服部委員 問題があるというふうに受けとめたんですけれども。

 軍用道路という十億ドルを上積みして、この比率を掛けたということになるわけですけれども、そのことによって約六億ドルが、ある意味ごまかされたと。この公電を信じるならばですね。しかし、政府として、税金を預かるという立場からすれば、こういうことがあったら、やはりこれはまずいですよね、どう考えても。事実であればですよ。ですから、そういう意味で、改めてグアム移転費の金額を、もう一度精査すべきだなというふうには思われませんか。

松本(剛)国務大臣 先ほど、試算だということで申し上げさせていただいたわけでありますが、グアムの移転経費で必要となってくる金額については、精査をされた上で予算に計上して、御審議をいただいて支出をされるという位置づけになっているというふうに理解をいたしております。

 なお、このグアムの移転協定においては、ある意味で定められているということで大切な点は、いわゆる真水資金の上限二十八億ドルというふうに定められているということだと私は理解をしております。

服部委員 当時も大変な問題になりました。というのは、米軍住宅の単価が高過ぎるじゃないかと。当初、一戸当たり八千万以上ということで、しかも土地代は別なんですよ。我々が分譲住宅を買うのに、土地つきで三千万とか、東京はもっと高いかもしれませんけれども、そういうレベルで買うわけですね。建屋だけだったら大体一千万とか二千万という話なんですよね。それが何で建屋だけで八千万もするのかという議論があって、そしてこれを修正されまして、七千万台に修正をされたという経過があるわけですね。

 そのときは、もちろん土地代は入っていないけれども、上下水とかそういうインフラの整備の金が要るんだとか、いろいろなことをおっしゃっていました。労働者を海外から持ってこなければいかぬだとか、台風が多いからとか、何かよくわからぬような説明も私いろいろ聞きましたけれども、そのときから、やはり何かこのグアム移転の経費というのはおかしいなというふうに感じていたわけなんですよ。

 それで、もう一回お聞きしますけれども、こういうニュースの信憑性は別として、一割水増しされたかもしれないということが、まさに朝日新聞の五月四日のトップニュースで出ているわけですから、これに対する説明責任はあるというふうに思われるでしょう。

松本(剛)国務大臣 五月四日は、ちょうど私は出張から帰る日でありまして、電子版で、帰国の飛行機の中でその記事は拝見をさせていただきました。帰国の飛行機はすべて睡眠になるかと思いましたけれども、その新聞をしっかりおもしろく読ませていただいたということを御報告させていただきます。

 その上で申し上げましたら、少なくともその報道についてはウィキリークスを起源としているというふうに私は理解をしておりますし、これについては、先ほど申し上げたように、不正な方法によって外交上の秘密を得たものであるということを考えますと、これについてはコメントも確認もしないという立場を私はしっかり申し上げてまいりたいと思いますし、これをもとに何らかの確認の行動を起こすという予定はありません。

服部委員 大臣、私、それはちょっと異論がありますね。異論がある。

 ウィキリークスのこの報道が正しいかどうかという議論はおいておきましょうよ。それは一応おいておいて、しかし、これが、ひょっとしたらそういう水増しがあったんじゃないかということがこういう新聞のトップニュースで出たのであれば、当然、外務省として、念のために当時の査定金額をやはりもう一度ちょっと見直してみようというのが当たり前じゃないですか。こう思いますよ、私は。どうですか。

松本(剛)国務大臣 やはり、ウィキリークスについて、先ほど遺憾であるというふうに申し上げたわけでありまして、これに基づいて私どもがコメントをする、確認をする、行動を起こすということはすべきではないと考えているので、そのように申し上げさせていただきました。

服部委員 では、ウィキリークスはいいですよ。私が言ったとしましょう。私が、ちょっとこれは水増ししているんじゃないんですかと。外務省としては、そういう国民の声、あるいは国会議員でもいいですけれども、そういう声があれば、それはもう一度やはり精査しないといけないなというふうに思うのが当たり前だと思うんですけれども、そういう意味で、どうですか。

松本(剛)国務大臣 私自身は、実は直接はグアム協定について質疑をしたという記憶はないんですけれども、民主党としてさまざまな議論をしてきたということはよく承知をいたしております。その上で、議論の結果成立をしたものを、政権交代という形で政府として引き継がせていただいたということであります。現段階で、これを特に私どもとして破棄をするとか、そういうことなく引き継がせていただいております。

 さらに申し上げれば、今委員もお話がありましたけれども、今後も、協定に基づく支出になるとはいえ、内容については、この百二億七千万ドルは試算であるということで、詳細な金額については、毎年の予算で計上するに当たって、精査の上計上して審査をしていただくということでありますので、国民の税金という意味では、計上するに当たっては私どももしっかり毎年、今政権をお預かりしている立場として精査をしなければいけない、そのことは肝に銘じて進めたいと思っております。

服部委員 これは税金をどう使うかという話ですからね。ですから、一たんこういう疑惑が、信憑性は十分検証していただいたら結構ですけれども、上がった以上は、しかも一般紙のトップニュースで国民がみんな知ることになった、そのことに対して、やはりこれは外務省として説明責任があるというふうに思われるのは当然だと僕は思うんですね。しかも、仮定の話ですけれども、もしこれが事実だとすれば問題であるという認識も今大臣は表明されたというふうに私は認識しましたので、そういう点からすれば、今後、その点、しっかりお願いをしたいという要望を申し上げておきます。

 そして、二点目、同じく海兵隊が一体何人グアムに行くかという話ですね。これも水増しと報道をされたわけです、ウィキリークスでは。

 実は、その当時どんな議論になっていたかなというのをいろいろ探っていましたら、資料を探していましたら、二〇〇九年、ちょうどグアム移転協定の審議の中で、朝日新聞に「「八千人移転」は水増し?」というのが出ているんですよ。物すごい先見の明があると思いませんか。というのは、全然おかしかったんですよ、人数の話が。

 そもそも、ロードマップが合意された二〇〇六年のとき、沖縄には海兵隊は一万三千二百人しかいなかった。その後、減りました。最近ちょっとふえているということなんですけれども、今現在は沖縄の海兵隊員は何人いるんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 ちょっとその前に一つだけお話をさせていただきたいと思いますけれども、先ほどのウィキリークスの話。

 法律というか裁判でも、基本的な考え方として、違法な手段によって収集された証拠は、正しいか正しくないかを別にして、採用されないという考え方があるというふうに私は理解をしております。ウィキリークスについても、私はそういう趣旨も含めてお話をさせていただいたと思っております。

 今、海兵隊の実数の話ですが、二〇一〇年三月末現在で、私どもが承知をしているのは一万五千人ということでございます。

服部委員 実数として、この一万五千人が、グアムに何人移るんですか。

松本(剛)国務大臣 グアム移転に係る協定第一条などに言う第三海兵機動展開部隊の要員約八千人及びその家族九千人というのは、この要員八千人というのは実員数ではなくて、ロードマップに係る協議の過程で米側から示された海兵隊要員については定員数というふうに理解をいたしております。

 実員については、常に変動する数字であるというふうに理解をしておりますので、グアムに移転する具体的な人数については、この八千人という定員数に基づいて、移転の実施に伴って最終的に決まるというふうに理解をしております。

服部委員 ということは、八千名じゃないということですか、実数で。

松本(剛)国務大臣 今申し上げられるのは、八千人は定員ということであり、実員数というのは必ずしも定員と一致する概念ではないということであります。

服部委員 これはまたゆっくり議論させていただきたいんですけれども、本当に数字のトリックなんですよ。そして、海兵隊が八千、家族が九千移るからということで、我々の税金を使ってその住宅をグアムに建設しようという話なわけですね。

 ですから、いずれにしても、やはり税金を預かる政府の立場として、これはもっときちんとした説明責任を果たしていただかないと。ウィキリークスは違法だとかいろいろおっしゃいますけれども、みんなそう思っていないですよ、正直言うて。もうこれ以上申し上げませんけれども、私の言いたいことは、恐らく大臣は百も承知だと思います。

 この件は、私は非常にこだわっていますので、ぜひ引き続き今後とも議論をさせていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

小平委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小平委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、社会保障に関する日本国とブラジル連邦共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小平委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、社会保障に関する日本国とスイス連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小平委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、日本国とインド共和国との間の包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小平委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

小平委員長 次回は、来る十三日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十分散会


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