衆議院

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第12号 平成23年5月20日(金曜日)

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平成二十三年五月二十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小平 忠正君

   理事 吉良 州司君 理事 首藤 信彦君

   理事 長島 昭久君 理事 西村智奈美君

   理事 山口  壯君 理事 秋葉 賢也君

   理事 小野寺五典君 理事 赤松 正雄君

      浅野 貴博君    大泉ひろこ君

      勝又恒一郎君    菊田真紀子君

      阪口 直人君    道休誠一郎君

      中津川博郷君    中野  譲君

      萩原  仁君    浜本  宏君

      早川久美子君    伴野  豊君

      山尾志桜里君    山花 郁夫君

      梶山 弘志君    河井 克行君

      河野 太郎君    橘 慶一郎君

      馳   浩君    松野 博一君

      赤嶺 政賢君    笠井  亮君

      服部 良一君

    …………………………………

   外務大臣         松本 剛明君

   外務副大臣        伴野  豊君

   外務大臣政務官      菊田真紀子君

   外務大臣政務官      山花 郁夫君

   防衛大臣政務官      松本 大輔君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    原   優君

   政府参考人

   (文化庁次長)      吉田 大輔君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            佐々木伸彦君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十日

 辞任         補欠選任

  金田 勝年君     橘 慶一郎君

  高村 正彦君     梶山 弘志君

  松野 博一君     馳   浩君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  梶山 弘志君     高村 正彦君

  橘 慶一郎君     金田 勝年君

  馳   浩君     松野 博一君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

    ―――――――――――――

五月十九日

 東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律案(内閣提出第七二号)

同月十七日

 思いやり予算の削減・廃止を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六二六号)

 同(笠井亮君紹介)(第六二七号)

 核兵器全面禁止に関する請願(笠井亮君紹介)(第六四九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府と中華人民共和国香港特別行政区政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とサウジアラビア王国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得についての課税権の配分に関する日本国政府とケイマン諸島政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得についての課税権の配分に関する日本国政府とバハマ国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律案(内閣提出第七二号)


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     ――――◇―――――

小平委員長 これより会議を開きます。

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府と中華人民共和国香港特別行政区政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とサウジアラビア王国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件、脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得についての課税権の配分に関する日本国政府とケイマン諸島政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得についての課税権の配分に関する日本国政府とバハマ国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長原優君、文化庁次長吉田大輔君、経済産業省通商政策局長佐々木伸彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小平委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。おはようございます。

 きょうは、サウジと香港とケイマンとバハマ、この四つの国・地域との租税協定、租税条約、これについての質問をさせていただきます。

 まず冒頭、サウジとの条約について少しお聞きしますが、まず、これはあらかじめこういうことを聞くとは言っておりませんが、外務大臣、サウジで今、日本ブームが起きているという話を新聞報道を通じて聞いているんですが、そのことを御存じかどうか、そして、その背景にはどういうことがあるのかということについて、御自身の受けとめ方で、まず冒頭、お聞かせ願いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 サウジの方では、御案内のとおり、四月にサウジアラビア伝統と文化の国民祭、ジャナドリア祭と言われるものが行われたことは御案内のとおりでありまして、私の記憶では、これはサウジアラビアにとっては大変大きな祭典、イベントでありますが、毎年一つ外国がその中で出展をすることが認められており、ことしは日本がその立場にあったというふうに承知をしております。

 外務省からも徳永大臣政務官が出席をいたしまして、日本館のパビリオンを激励するなどさせていただきましたが、この日本館のパビリオンを初めとする日本の展示についても大変評判をいただいているというふうに報告を聞いておりまして、こういったことが契機になって日本に対する関心が高まる、今お話がありましたようにブームが起こっているとすれば大変うれしいことだ、このように思っております。

赤松(正)委員 サウジに対しては日本から八十社ほどの企業が進出をしている、もちろん石油とか天然ガス、こういった関連の企業が中心だろうと思いますが、それに対して、向こうから日本に進出をしてきている企業は二つぐらいという、非常にその辺の大きな落差というか、違いがあるわけです。

 サウジはやはり、中東地域、極めて重要な地域のまた重要な国であるということで、今、冒頭お聞きしましたような、そういう日本とサウジの間における、特にサウジは日本に大変に興味を持って、日本ブームとも言われるような、そういう流れが起きている。いろいろな意味で大事な中東外交を展開する上で、サウジとの関係というものもいろいろな角度から、これはどの国がどうということではなくて、後で、多分、時間切れになるかもしれませんが、バハマとかケイマン、そういった世界のいろいろな地域との関係というものはもちろんしっかりと培っていかなくちゃいけませんが、その中でもサウジの関係というのはやはり大事なポイントだろうと思うんですね。ところが、なかなかサウジと日本、わかっているようでわかっていないという側面があると思います。

 結構、外務省が、中東における日本の手が汚れていないというか、言葉遣いが適切かどうかわかりませんが、という観点から、独自の日本外交というものを展開しようということで、いろいろな試みが過去においてされてきたと思うんですけれども、結局、それが途中でついえてしまうというか、挫折するというか、これは、学者を巻き込んでの日本と中東地域とのそういう交流を進めていこうというものが、出ては消えしているように私には思えるんです。

 例えば、二〇〇八年に板垣さん、東京大学の名誉教授が中心になって文明間対話というものをやって、それは引き続き今も生きているんだろうと思いますけれども、そういう試みが、我々日本人、日本に生きている私たちに余り聞こえてこないということがあるわけですけれども、そういったサウジを含めた対中東外交の現況について、外務大臣の手ごたえというか、これからの進め方ということについて、若干述べていただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 お話がありましたように、我が国にとってはエネルギーという側面から、中東地域は原油、LNGの輸入先として、エネルギー安全保障上、大変重要な地域であります。

 また、経済成長が進んでいるということで、国際経済、金融においてもその存在感がふえてきているということもありまして、経済的な側面では、中東諸国との貿易・投資環境の整備、そして経済、貿易関係の一層の促進のためのGCC諸国とのFTAや、中東各国との租税・投資協定の締結交渉を進めているところでもありますし、また、昨年の十二月には日・アラブ経済フォーラムを開催いたしまして、官民一体となって中東諸国との経済関係強化の方策については協議を行っているところであることは、御案内のとおりであります。

 中東地域、対日投資促進という視点も今御示唆をいただいたというふうに思います。中東特有の事情とか、相手国の関心事項なども考慮しながら、今後ともこの取り組みを継続、発展させていきたい、こう考えております。

 また、今先生お話をいただきましたように、我が国と中東というのは、あえて欧米と比べれば、歴史的な経緯というのは全く異なる経緯があるわけでありますし、また、そのことを外交上においてもどう生かすことができるのかということは重要な視点でありますし、これまでもこういうことを生かしてきた部分もあることも事実だろうというふうに思います。

 加えて、有識者、学界も含めた交流ということで、多層、重層的なさまざまなチャンネル、交流が必要だということも御指摘のとおりでありまして、先ほどお話がありました文明間対話そのものであったかどうか、今正確に記憶をいたしておりませんけれども、幾つか、やはり枠組み、継続しているものは外務省としてもしっかり支援をしていきたいと思いますし、また、それが、今おっしゃったように、広く伝わることが重要であるという御指摘であるとすれば、これはそのとおりではないかというふうに思っております。

 私どもにとって大変重要な地域であるし、本質的な部分から関係を深めるという意味では、先生の御指摘のように、経済関係にとどまらない形で、広く理解を深めながら経済も深めていくという形を目指していくという方向については、私どももぜひ考えていきたい、このように思います。

赤松(正)委員 ぜひ、この租税条約を一つのきっかけにして、対サウジとの関係もしっかりと強化していっていただきたいと思います。

 二点目、香港との協定についてでありますけれども、香港に進出している日本の企業というのは約二千百社ほどあるというふうに聞いております。金融業やあるいは物流を中心に、こういったたくさんの企業が進出しているわけですけれども、今回の協定の締結と、こうした日本企業が進出している、そういう企業にとっての税負担に与えるメリット、こういう点はどういうものが考えられるかということについてお聞かせ願いたいと思います。

伴野副大臣 おはようございます。赤松委員にお答えいたします。

 先生御案内のように、香港は我が国ともさまざまな面で交流が活発でございまして、今先生御指摘の経済面、卸売、金融サービス業等々を中心に、約千社の日本の主要企業が進出しております。我が国からの対外直接投資の主要な投資先であるなど、我が国と緊密な経済関係を有する重要な地域と認識をしております。

 そうした香港との協定締結によりまして、日・香港間の国際的な二重課税の排除、投資先における課税関係の明確化、情報交換を初めとした税務当局間の協力体制の整備等が進むことにより、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、両者間のさらなる経済、投資交流の促進が期待されると承知をしております。

赤松(正)委員 情報交換協定というものを主体にした租税条約ではなくて、一般的な租税条約にするというのは、情報交換のみではなくて、配当や利子といった、そういう投資所得に対する源泉地国課税の軽減というものが企業にとって魅力である、こういうことであろうかと思うんですが、その点についての確認をしたいと思います。

伴野副大臣 赤松委員にお答えします。

 先生の御指摘どおりで結構でございます。

赤松(正)委員 香港ということになりますと、一九九七年、足かけ十五年というか、実質的には十四年になるんでしょうか、この七月の一日で。いわゆる香港が中国に返還をされるということをめぐって、二十世紀の後半、この香港にまつわる問題というものが、日本じゅう、世界じゅうの関心を大変に集めたわけですけれども、あれから今申し上げた約十四年がたって、香港をめぐる、対中国、香港、この関係がどのような状況になっているのかということを改めて振り返ってみたい、そんなふうに思うんです。

 当初、香港が中国に返還をされることによって、言ってみれば、香港が大陸に完全に吸収されるというふうなことで、かつての香港が持っていた、そういう自由な雰囲気というものがなくなるんじゃないのか、こういう懸念を持つ向きが多かったわけですけれども、その後の歴史の流れの中で、香港の現状というものはどのようになっているのか。そういう懸念というものが懸念どおりだったのか、あるいは、予想に反してというべきか、違った状況が生まれているのか。このあたりについて、外務大臣の感触というか、受けとめ方をお聞かせ願いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 返還後、十年以上が経過をしたわけでありますが、香港と我が国、中国というのは、相互に緊密な経済関係が維持され、発展をしてきているというふうに認識をいたしております。

 返還後の香港と中国との関係、特に今御指摘のありました一国二制度と呼ばれる香港の政治体制については、香港内でもさまざまな議論が行われているところであるというふうに承知をしております。私ども政府としては、香港返還後、この一国二制度は基本的に順調に機能してきている、全体として香港の状況は安定をしているというふうに認識をいたしております。

 幾つか改革も行われていますが、例えば、二〇一二年には行政長官と立法会の選挙が予定をされているところでありますが、選挙制度改革として、行政長官を選出する選挙委員と立法議員の増員が決まっておりまして、こういったことも、流れとしては民主化、民主的になっているというふうに評価をすることができるのではないかというふうに思っております。

 私ども、我が国としては、香港の繁栄、安定というのは、我が国を含むアジア地域の発展と繁栄にとって重要であるというふうに考えておりまして、香港が自由で開かれた体制を維持し、国際社会の信頼関係を一層増進させていくことを期待しているというふうに申し上げてきているところでございます。

赤松(正)委員 中国というのは、当然ですけれども、ひときわ多様な側面を持っているなということを、改めて対香港との関係を見て思うわけです。この間お話ししたような、南シナ海、南西諸島の問題等をめぐっては、かなり露骨な、そういう領土に対する関心、他国との関係を顧みず、かなり強引な行き方が見える。その反面、香港とのかかわり合いというか進め方というのは、なかなか見事だなというふうな思いを強めております。

 たまたま、私、正確にきちっと読んだわけではありませんけれども、関心を持っている倉田徹という金沢大学の准教授が、「中国返還後の香港」というタイトルでサントリー学芸賞を去年とった。この本は、なかなか、先ほど来申し上げているような、香港をめぐる中国の対応というものをかなり詳しく的確にえぐり取った力作であるという評価が高いようでありますけれども、学者、倉田さんのこういう指摘を見ても、要するに不思議な共存状態である。

 さっき言ったような、香港が大陸に全部からめ捕られてしまうのではないかという懸念を払拭するような、そういううまい生かし方。さっき外務大臣が一国二制度ということを言われましたけれども、そういう観点から見ても、非常に示唆に富んだ、今後の二十一世紀の国際政治のありようというものを考えたときに、なかなかうまいやり方をしているんじゃないか、こう思います。

 それにつけても、これはちょっと飛躍したとらえ方かもしれませんが、沖縄をめぐる日本政府と沖縄との関係を見たときに、中国に少し見習った方がいいんじゃないのかと。私、かねてというか、沖縄というものを準国家的な扱いにすべきだというふうに言っております。かつて沖縄についても一国二制度というふうな議論が出たことがありますけれども、思うにつけて、今、沖縄の置かれている状況を見たときに、中国対香港の、何というか、取り扱い、中国の接し方、もちろん、香港に擬せた沖縄の対応の仕方、沖縄自身の日本とのつき合い方という問題もあります。日本政府としての対応というのは香港、中国から学ぶべきものが多い、そんなふうに思いますけれども、そのあたり、ちょっと自由な御意見を聞かせていただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 沖縄については、今先生からお話がありましたように、大変大切であると思っておりますし、同時に、やはり沖縄のこれまでの歴史、そして培ってきた文化というのを尊重するということは極めて重要なことだろうというふうに思っております。

 私どもは、地域主権という言葉、この言葉についてはいろいろな御意見がありますが、地方の自主性を高めていく、自立した形を高めていくということが重要であるということについては、恐らく当委員会の各理事、委員の先生方にも共有の認識を持っていただけるんだろうというふうに思いますが、とりわけ沖縄について、その独特の歴史、文化等も含めて、高い自主性、自立性が必要だという観点を、ある意味で、こちらから見て一国二制度的という表現をもしされるとすれば、そういった方向性というのは私どもも重要だろうというふうに思っております。

 今、さまざまな経緯もありまして、結果として沖縄については、私ども政府からすれば大変厳しい認識を持たなければいけない状況だということはよく理解をいたしておりますが、中長期的な視点からも、そういった御示唆も正面から受けとめられるような方向性もしっかり考えていけるようにしていくことが必要だ、このように考えているところでございます。

赤松(正)委員 中国、香港、このかかわりから日本の学ぶものは多いということを、沖縄問題に絡めて御指摘をさせていただきたいと思います。

 ケイマンとバハマ、この両方の協定でありますけれども、このケイマンとバハマの協定に退職年金などにかかわる課税権の配分規定を盛り込んだ理由について、どのような利点を考えておられるのか、これについてお聞かせ願いたいと思います。

伴野副大臣 赤松委員にお答えいたします。

 これらの協定の課税権の配分の規定につきましては、我が国の退職年金を受給する者が相手方に移住した場合に、退職年金について我が国の源泉地国課税を免除されたり、または相手方の学生が我が国に留学した場合に、相手方から送金される手当について我が国の居住地国課税を免除されたりすることによって、一定の種類の個人について人的交流の誘因となる効果があると考えております。

 いずれにしましても、本協定におけます退職年金等の特定個人の所得について課税を免除するということは、このような効果も踏まえまして、我が国とこれらの国・地域との間の人的交流を促進する観点から盛り込むことといたしました。

赤松(正)委員 いろいろ、今回のケイマン、バハマの前にバミューダとの協定があって、それをめぐって、要するに課税がなされないからそうした国・地域に永住する人がふえる、こういうことで、ちょっとアンバランスではないかというふうな指摘があった経緯もあるようですけれども、私は、それは余りリアリティーがないなという感じがするわけですね。

 だから、純粋に考えて、こうした観光をかなり国家の基本に置いている国との日本との交流ということをしっかりとこれから深め、強めていこうという部分でおおらかに受けとめていきたい、そんなふうに思うわけですが、こういうケイマン、バハマ、前のバミューダ、これは今三カ国との間に三本の協定があるわけですけれども、今後、四本目、五本目というのは考えておられるのかどうかをお聞かせ願いたいと思います。

伴野副大臣 赤松委員にお答えいたします。

 赤松先生御指摘のとおり、現在、グローバル化の進展によりまして、そういった国境を越えるさまざまな経済活動が一層高まっている中、近年、脱税及び租税回避行為を防止することの国際的な協力の機運が一層高まっていると承知をしております。

 日・ケイマン租税協定及び日・バハマ租税協定を締結することにより、租税に関する幅広い情報が、それぞれ相手方からも我が国の税務当局に対して提供されることとなり、英領ケイマン及びバハマを利用した国際的な脱税及び租税回避行為への対応及びこれらを行おうとする者に対する事実上の抑止効果も期待をされているところでございます。

 こういったような国際的な脱税及び租税回避行為を防止するためには、多数の国・地域間での租税に関する情報交換を可能とする国際約束を締結し、情報交換ネットワークを拡充することで、このような事実上の抑止効果を幅広く確保していくことが重要と考えているところでございます。このような観点から、現在、我が国は、類似の協定について、英領ガーンジー及び英領ジャージーとの間でもそれぞれの交渉を行っているところでございます。

 政府といたしましては、こうした交渉に引き続き取り組ませていただき、国際的な脱税及び租税回避行為の防止に向けた国際的な協力の推進に一層努めていく考えでございます。

 よろしくお願いします。

赤松(正)委員 今回のケイマン、バハマの二国間、バイの協定とは別に、多国間の徴税ネットワークであります税務行政執行共助条約がありますけれども、これになぜ日本は入らないのか。日本はぜひ入るべきだ、こんなふうな世論というか機運も強いわけですけれども、何ゆえに今まで入ってこなかったのか、今後はどうするつもりか、これを外務大臣にお聞かせ願いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 御指摘の税務執行共助条約、これはもう先生御案内のとおりでありますが、あらゆる種類の租税について、情報交換、徴収共助、文書送達共助の円滑化を目的とするものでありまして、経済のグローバル化が進展する中で、近年、租税に関する透明性の確保に消極的な国・地域が国際的な脱税及び租税回避行為の温床となっている状況を重く受けとめて、税務当局間の国際的な相互協力体制を拡充する必要性がG20などの場においても確認されていることは、御案内のとおりであります。

 そのような意義、経緯にかんがみて、我が国としても、本条約の締結の可能性について今検討を行っているところであるというふうに御報告を申し上げたいと思います。

赤松(正)委員 これはそうすると、十一月、カンヌ・サミットで日本がこの条約に参加をするというふうに見ていいんですね。

松本(剛)国務大臣 本年二月のG20の財務相・中央銀行総裁会議の共同声明においても、すべての国・地域に対して当該条約の署名を考慮するよう奨励されているというふうに承知をしておりまして、我が国としても、署名、締結の可能性について、現段階では検討を行っているという御報告にさせていただきたいと思っております。

赤松(正)委員 参加をするというふうに聞いて、終わりたいと思います。

 以上です。

小平委員長 次に、馳浩君。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩です。

 きょう委員会に付されております条約四案件については、自由民主党は賛成という立場から、私は、関連質問ということで、ここ数日で報道されている中で外交案件が動いておりますので、その件についてお伺いをしたいと思います。

 きょうは、ハーグ条約の問題と寺越武志さんの問題、二点について質問をさせていただきます。

 まず、先般私も当委員会で質問をさせていただきましたが、ハーグ条約の締結に向けて、非常に報道も揺らいでおりました。

 そこで、本日五月二十日、閣議了解をされたのでしょうか、まずお伺いしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 けさの閣議において、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、いわゆるハーグ条約の締結に向けた準備についてということで閣議了解をいたしました。

馳委員 締結に向けた準備について閣議了解ということでありますが、閣議了解と閣議決定はどういう違いがあるんですか。

松本(剛)国務大臣 申しわけありません、ちょっと質問の御趣旨が正確に理解できませんが、閣議において全員が確認をまさにするという意味で、了解の重みも大変重いものだというふうに思っております。

馳委員 その了解をするときには、こういう方向性ですよという文書に署名を全員がする、そういう趣旨なんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 準備についてという文書が、閣議において、まさに全員の了解が得られたという形で取り扱われるというふうに理解をしております。

馳委員 そういう文書には、署名は特にはしないんですか。

松本(剛)国務大臣 今手元でちょっと正確にはあれですけれども、閣議そのものにおいて、きょう、議題として取り上げておりますから、閣議で了解をしたことが決まったというふうに御理解をいただいていいと思いますし、閣議の内容については、私どもも、すべて署名をして確認をする内容だというふうに理解をいたしております。

馳委員 済みません、まだ閣議に出たことがないものですから、閣議了解というのはどういう筋合いのものか、ちょっと聞いてみたということであります。

 そこで、その具体的な内容は、どこまでの内容でしょうか。

松本(剛)国務大臣 少しお時間をいただいて、簡単にお話をさせていただくことを御容赦いただければと思います。

 本日了解をいたしましたことは、近年増加をしている国際結婚の破綻などにより影響を受けている子の利益を保護する必要があるという認識のもと、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約について、いわゆるハーグ条約でありますが、締結に向けた準備を進めることとする。このため、条約を実施するために必要となる法律案を作成することとし、関係行政機関は必要な協力を行う。法律案の作成に当たっては、関係閣僚会議了解事項に基づくこととする。この関係閣僚会議というのは、昨日、十九日に開催をさせていただきました。

 関係閣僚会議の了解事項も簡単に御紹介をさせていただければと思いますが、下記の内容を盛り込むとして、大きく二つの内容がございます。一つは中央当局、もう一つは子の返還命令に関する手続、こういう構成になっております。

 中央当局は、外務省に設置をいたします。

 まず先に、中央当局の任務を、この了解の中で規定をしているものを簡単に御紹介すると、子の所在の特定、子に対する虐待その他の危害を防止するための必要な措置を講じること、子の任意の返還または当事者間の解決をもたらすために助言をすること、司法上の手続を含め我が国の国内法制につき必要な情報を提供すること、中央当局は、その任務を遂行するために必要があると認める場合は、関係行政機関の長に対して、資料または情報提供その他必要な協力を求めることができること、子との面会交流に関する援助の申請に対して、中央当局は必要な事務を行うこと、子の返還に係る規定は、条約の規定を踏まえ、条約が我が国について効力を生じた後の事案についてのみ適用する、これは条約そのものを引っ張ってきているわけでありますけれども、こういったことが中央当局の任務と関連することとして確認をいたしたところであります。

 先般もここで御議論がありました。外国と接点という意味で外務省の要素もありますし、かなり法手続的なことという意味で、法務省を中心とした関係省庁の部分もありますが、政府内で議論をした結果、最終的には外務省で設置をするという形になりました。

 もう一つの柱の、子の返還命令に関する手続というのは、その命令に関する裁判手続を新設するということと、子の返還拒否事由、これについては条約に記載があるわけでありますけれども、これについては、大きく、子に対する暴力など、また、相手方、つまり配偶者というんでしょうか、元配偶者というか、相手方に対する暴力など、そして、相手方が子とともに帰国することができない事情、例えば、入国できるできない、逮捕、刑事訴追のおそれがある、帰国後の生計維持の問題などを取り上げているわけでありますが、そういった事情などが子の返還拒否事由として考えられる。

 もちろん、包括的なあれとして、子供が常居所地国、つまり、帰されるべき国に帰ることが、子に対して身体的もしくは精神的な害を及ぼし、子供を耐えがたい状況に、または子供を耐えがたい状況に置くこととなる重大な危険があることというような条項も設けるように、こういった法案を作成するようにというふうに了解をしたということであります。

 これまで私も申し上げてまいりましたが、ハーグ条約の締結推進のいわばプラスの側面と、運用をもし間違えば負の側面が出てきかねない部分についてしっかりと対応できるような方向性を打ち出すものとして検討を進めてきた結果だと御報告を申し上げたいと思います。

馳委員 今の外務大臣の答弁について、法務省原民事局長、来ておられると思いますが、当然了解をしているということでよろしいですね。

原政府参考人 お答えいたします。

 法務省としても、今外務大臣から御答弁になりましたことを当然了解しております。

馳委員 今まで、どちらかというと法務省がブレーキ役になっておりました。原民事局長、一生懸命外務大臣に協力して作業を進めていただきたいと思いますが、決意のほどを述べてください。

原政府参考人 法務省といたしましても、外務省と協力いたしまして、国内法の整備に当たっていきたいと考えております。

馳委員 実は、前回の委員会で私は、リエゾンジャッジという制度を紹介いたしました。いわゆるハーグ条約に精通した裁判官が、両国間において電話やメールなどでお互いに情報交換をしながら対応をし、助言をしていく、こういう方式でありますけれども、我が国もやはりそういう対応をしていくことはできるのではないかと思いますが、法務省としてどうお考えですか。

原政府参考人 今委員からお話のありました件は、条約の具体的な運用についての一つのアイデア、各国もそういう方向で運用されているということでございますので、我が国がこの条約に入りましたときは、そういった点も含めて、条約が円滑に施行されるように考えてまいりたいと思っております。

馳委員 五月二十日、けさ閣議了解をされたということは、今後の外交日程を考えれば、来週のフランスのドービル・サミットにおいても、我が国の姿勢を明確に表明する必要があると思います。そのときには、菅総理の方からされるのか、あるいは関係大臣会合などで松本大臣の方からされるのか、どういうふうな形でサミットにおいて我が国の姿勢を表明されるのか、わかる限りで教えていただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 現在、G8サミットにおいてどのようなテーマで、またどのような場面でどなたが発言されるかということは、最終的に調整をされている局面だというふうに理解をいたしているところでありますが、ハーグ条約につきましては、G8参加国も大変高い関心を持っている事項であるというふうに理解をいたしておりますので、機会があればサミットの場において、サミットは総理しか出ておられませんので、総理からこの閣議了解の範囲内において確認されたことについて御説明をすることになるのではないか、このように考えております。

馳委員 実は、サミット参加国の中で、日本ともう一カ国ハーグ条約を締結していない国があるんです。ロシアですね。したがって、そうすると、ロシアだけがサミット参加国の中では残される。我が国においても、ロシア人との国際結婚もたくさんございます。そういう意味でいえば、この今回の政治的判断、外交的判断をさらに充実したものにしていくためにも、ロシアに対する働きかけも必要になるのではないかと私は思っています。

 そこで、国内法整備はいつまでにされますか。年内ですか、年度内ですか、それとも数年のうちにでしょうか。

松本(剛)国務大臣 法案については、今お話をさせていただきましたが、大きく二つの部分のうち、中央当局の任務については、外務省が中央当局をお受けすることとなって、私どもで進めてまいりたいと思っておりますが、子の返還手続に関しては法務省の方で法案を、かなり法律技術的なこともありますのでお取りまとめをいただく、そして最終的な法案のお取りまとめ自身は法務省の方にお願いをさせていただくことで両者で合意をというか、協力をしていくことになっております。

 外務省の中央当局部分についてはかなり議論が進んでおりますし、法務省の方においても議論を相当お進めいただいている、このように思いますが、先ほど申し上げたように、技術的な側面と、それから子の返還事由等ということであれば、実体的なことにもつながるものもあるという意味から、さらに検討を加えていただくということになるのではないかというふうに思います。

 この条約の趣旨と締結を定めた趣旨、これについては、外務大臣として申し上げれば、確かに多くの国が、私どもと関係の深い国も含めて多くの国が関心を持っていたという外交上の要請があることも事実でありますが、私自身としては、これはあくまでやはり子の福祉の観点から、そして我が国の家族といったような形態も考え合わせながら、子の福祉に資するかどうかという観点が確保できることが重要であると考えておりますので、その意味で、締結の方向で準備を進めることを私も決断したと御理解をいただけたらと思っておりますし、その趣旨から考えれば、できる限り早く準備をして進めていきたい、このように考えておるところでございます。

原政府参考人 今外務大臣から御答弁がありましたように、このハーグ条約を実施するための国内法におきましては、子の返還等を援助する中央当局の任務を定めるほか、子の返還手続等を定める必要がございます。

 このうち、子の返還等を援助する中央当局の任務等を定める部分については、中央当局を担っていただきます外務省において立案作業を進める。それから子の返還手続等を定める部分については、法務省において立案作業を進める予定でございます。その上で、両者を合体して法律案全体の取りまとめをすることは法務省において行う。こういうことで準備を進めてまいりたいと思っております。

 お尋ねの、国内法の整備についての政府内のスケジュールの点でございますが、これは現段階では未定と言わざるを得ません。法務省において立案作業を進める子の返還手続等を定める部分につきましては、法制審議会に諮問する方向で検討をしております。

 いずれにしましても、国内法をできるだけ早期に国会に御提出できるように作業を進めてまいりたいと考えております。

馳委員 希望を申し上げます。できるだけ早くお願いします。しかし、禍根を残さないように、法制審議会などを通じて、あらゆる方々の御意見を踏まえて対応を、法整備をお願いしたいと思います。

 大臣、一つだけ、次の寺越武志さんの問題についてお伺いして、参議院に行っていただいて結構ですが、今、寺越武志さんが現在どこに住んでいらっしゃるか、住所を含めて御存じですか。

松本(剛)国務大臣 寺越武志さんは、現在、北朝鮮内に居住をしているものと承知をしております。私どもの情報ということでは申し上げられませんが、報道などによれば、平壌に居住をしているとの情報もあるというふうに聞いております。

馳委員 私はここに、北朝鮮名金英浩、寺越武志さんの住所を持っております。大臣はもちろん持っておられますよね、この住所は。

松本(剛)国務大臣 私どもとして、情報に関する部分については、持っている持っていないも含めてお答えを差し控えさせていただかなければいけないところについては御容赦をいただきたいと思っております。先ほど、申し上げられる点については申し上げさせていただきました。

馳委員 わかりました。では、大臣、参議院に行かれてください。ありがとうございました。

 では、この後、続いて、寺越武志さんの問題について申し上げたいと思います。

 私はきょうは、いわゆる寺越事件という観点ではなく、寺越武志さんが、今大臣もおっしゃったように、北朝鮮の平壌にお住まいです。私は住所まですべてわかっております。連絡をつけることができます。

 外務省の役割として、在外邦人の安全確保、保護という任務があると思います。そういう観点から、現状と今後の課題ということについて認識を共有したいと思って質問をさせていただきます。

 ちなみに、伴野副大臣、寺越武志さんのお母さんの寺越友枝さんが、きのう平壌から帰国をされました。その件については、情報は把握しておられるでしょうか。

伴野副大臣 馳委員にお答えいたします。

 まず冒頭、馳委員がこの寺越武志さんの件に大変関心を高くお持ちいただいておりますこと、心から敬意を表したいと思います。その上で、今の質問に答えさせていただければと思います。

 報道等各種情報によりまして、今先生御指摘の寺越友枝さんが、十九日、北朝鮮から帰国途中に北京でメディア等の取材に応じて、昨十九日に帰国されたということは承知をしております。

馳委員 地元、北国新聞、けさの朝刊には、寺越武志さんの自筆で拉致ではありませんと書かれた戸籍謄本を持って帰られたようでありまして、これを政府に提出したいというふうにお母さんはおっしゃっておられます。この戸籍謄本を政府として受け取りますか。

伴野副大臣 馳委員にお答えさせていただきます。

 仮定のお話にはなかなかお答えしにくいものでございますが、そのような事案が発生したときには、政府として検討させていただきます。

馳委員 政府として検討しますということでありますが、「友枝さんが持参した戸籍謄本に「拉致ではありません」と記し、母印を押した」と報道ではあります。

 これは、拉致の認定にかかわる問題でもあります。今副大臣は、検討されると言いました。私は、政府としては、ある意味でいえば証拠物件になるものでありまして、なぜ八十歳になるお母さんの友枝さんが、この戸籍謄本をわざわざ平壌に持っていってサインをしてもらって拇印を押してもらって持ち帰って、政府に提出をしたいと言われているか、その背景を御理解いただきたいと思います。

 たった一言。母親として、いつまで平壌を訪問し、武志さんの生活を守り、保護をする、これはもちろん政府の仕事ではありますが、お母さんが行き来をしているということが北朝鮮の国内において武志さんの身柄の安全を確保する上において極めて重要なポイントになっているという意味から、私の命がいつまでかもわからないという切迫した思いでこういう行動に出られ、政府に提出をしたいというふうにおっしゃっておられるんですね。

 副大臣、改めて、この戸籍謄本を政府は受け取りますね。

伴野副大臣 馳委員に改めて、繰り返しで恐縮でございますが、その事案が発生したときに検討させていただければと思います。

馳委員 提出をされたら受け取っていただけるんだろうなという希望は持って、これ以上は追及しません。

 そこで、その寺越武志さんの北朝鮮での安全確保のためには、我が国外務省としてはどのような課題があると現段階での認識を持っておられますか。

伴野副大臣 御案内のように、寺越武志さんの置かれている環境、そういったものにつきまして、現在、北朝鮮の状況をかんがみたときに、北朝鮮の閉鎖性から考慮いたしましても、なかなか、確定的に申し上げることはお許しいただきたいと思います。

馳委員 では、もっと答えやすい質問にしますよ。

 寺越武志さんは日本人です、今現在、平壌にお住まいです。したがって、寺越武志さんの身の安全を確保するあるいは保護をするという責任は、外務省としてあるのではありませんか。

伴野副大臣 馳委員にお答えいたします。

 御案内のように、今お話ありました寺越さんは日本国籍を有しておりますので、一般論として、先生の御指摘は当たるかと思います。

馳委員 そういうことなんですね。

 やはり日本政府として、日本国籍を有している寺越武志さんが平壌にお住まいです、住所はわかっています、その身柄の安全の確保ということは、寺越さんは一人でお住まいなわけではありません、家族とともにお住まいです、家族の安全も確保する責務が日本政府にはあるんじゃないんですか。

伴野副大臣 馳委員にお答えいたします。

 一般論として、先生御指摘のとおりだと思いますが、先生もすべて承知の上で御質問されていると思いますが、繰り返しになりますが、いらっしゃると推定されておるところは一つ北朝鮮であるということも御理解いただければと思います。

馳委員 なかなか歯切れが悪いんですが、では、お聞きします。お母さんの友枝さんは、今回で何回目の訪朝か御存じですか。

伴野副大臣 報道等各種情報によれば、五十八回目であると承知をしております。

馳委員 およそ六十回ということでありまして、八十歳になるお母さんが、五十八回、それだけ繰り返し訪朝される経済的また精神的負担がいかばかりかということは、これは副大臣もよく御理解をいただけると思います。

 そこで、寺越武志さんは北朝鮮から日本に帰国をすることはできるんですか、今までに帰国をしたことはありますか。

伴野副大臣 馳委員にお答えいたします。

 入国の可否につきましては、先ほど申し上げましたように、寺越武志さんが日本国籍を有しておりますので、一般論として、日本人として入国されるのであれば、当然のことながら制限はございません。

馳委員 では、二つ目の質問で、今までに帰国をしたことはありますか。そのときは日本人としてですか、それとも違う立場での帰国でありましたか。

伴野副大臣 先生御指摘のところは、寺越武志さんが、以前、二〇〇二年十月に一時帰国をされたという点であろうかと思いますが、このあたりは御本人の御判断もあり、ここでのコメントは差し控えさせていただければと思います。

馳委員 委員の皆さんお聞きいただいたように、当時は、私が最初に申し上げました、金英浩という名前で、朝鮮労働党のいわゆる幹部という立場での帰国であったと思います。これ以上、外務省には追及はいたしません。

 そこで、最後の質問にいたします。

 寺越武志さん及びその家族、北朝鮮におけるまさしく身柄の安全確保と生活の保障はされているのでしょうか。そして、お母さん、八十歳になられましたが、日本と北朝鮮の自由往来については今後とも確保されていると判断してよろしいですか。

伴野副大臣 馳委員にお答えいたします。

 ここも繰り返しで恐縮でございますが、寺越武志さんがいらっしゃると思われる国、推定される国は北朝鮮であるということで、その閉鎖性から十分に確定的に申し上げることができない点、御理解いただければと思います。

 いま一つのお母様がという件でございますが、頻繁に訪朝されていらっしゃることは承知をしております。一方、政府としては、対北朝鮮措置の一環として、我が国から北朝鮮への渡航自粛を要請している次第でございます。

馳委員 寺越武志さん、日本人でありますから、身柄の安全、家族の安全、今後とも確保されることを最大限の外務省としての任務として自覚をいただいて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

小平委員長 次に、橘慶一郎君。

橘(慶)委員 おはようございます。

 きょうは、経済産業委員会の方から、後から合同審査でまたお世話になるわけですが、租税四条約の質問ということで、小野寺理事、秋葉理事のお計らいもありまして、こちらに来させていただきました。質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 橘は、質問を始める前に必ず万葉集を詠んでやることにしております。大伴家持卿は、実は万葉集の編者と言われておりますが、終えんの地は宮城県の多賀城市とも言われております。御縁もございます。ちょうど予算委員会の出張もさせていただいて、藤の花が咲いて、だんだん復興にも向かう東北という感じがございます。そのことに思いをいたしながら、万葉集巻三、三百三十番を詠んで質問に入らせていただきます。

  藤波の花は盛りになりにけり奈良の都を思ほすや君

 では、よろしくお願いします。

 それでは、租税四条約から始めます。

 この租税四条約につきましては、二つの種類の条約がございます。どちらかというと、これから日本が人的あるいは資本的交流を進めていこうという国との条約、そしてまた、むしろ、いろいろな犯罪や脱税とかいったものを防止する観点で結んでいく条約、二つに分けられると思っております。

 最初にまず、香港、サウジアラビア、どちらかというと、これから日本としては関係を深めていきたいという思いではないかと思いますが、こちらの二重課税回避条約につきましては、今回の二つの御提案でめでたく五十件になる、このように伺っております。かなりふえてきておるわけですが、今後の締結国拡大の方針についてお伺いをいたします。

伴野副大臣 橘委員にお答えをさせていただきたいと思います。すばらしい万葉集をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。

 その上でお答えさせていただければと思いますが、租税条約につきましては、先生御指摘のとおり、国境を越える経済活動に対する課税権を締結国間で調整することによりまして、国際的な二重課税を回避するとともに、投資所得に対して源泉地国課税を減免することを通じまして、国際的な投資交流を一層促進し、我が国経済の活性化にもつなげるための重要な法的基盤になっていることは、委員御指摘のとおりでございます。

 政府といたしましては、これを踏まえまして、経済関係を中心とする我が国との二国間関係や我が国産業界等からの要望等を総合的に考慮いたしまして、租税条約の締結や既存の租税条約の改正を進めてきているところでございます。

 我が国の租税条約ネットワークにつきましては、既に我が国からの対外直接投資の約九割をカバーしておりまして、政府としましては、我が国の企業の海外展開をさらに後押しする観点からも、引き続き、既存の租税条約の改正を含め、租税条約の締結に向けた交渉を推進していく所存でございます。

 こうした基本的な方針のもと、今般、香港及びサウジアラビアとの間で新たな条約についても御承認を現在お願いしているところでございますが、さらに、アラブ首長国連邦との間でも新規締結交渉を行っているところでございます。こうした交渉に一層積極的に取り組むとともに、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、国際的な投資交流の促進に努めてまいりたいと思っております。

橘(慶)委員 既に資本的な交流で九割の国をカバーされ、また今、UAEということで、次の予定ということもお話をいただきました。どうやら、だんだん日本と世界の関係が変わっていく中で、過去で言えば、やはり欧米の国々とということであったんでしょうけれども、アジアも伸びてまいりますし、産油国も伸びてまいりますし、世界のいろいろな国と日本が開かれていく、いろいろな交流を持っていくということが大事なんだろう、このように思います。

 この辺は少し自分自身の認識も確かめたいというところもありまして、今、対日直接投資あるいは人的交流ということで、伸び盛りといいますか、これから楽しみだ、そういうところ、どのあたりの国々ということでお考えになっているのか、どういう御要望があるのか、ここで、現在の我が国の実情についてお伺いをいたします。

伴野副大臣 具体的にということでございますけれども、繰り返しでございますけれども、さまざまな、経済関係を中心とする我が国との二国間関係や我が国産業界からの要望等を総合的に考慮して、現在やっているというところでございます。

橘(慶)委員 事前に通告はきちっと一問一問やっておりまして、できれば具体的な、そういうところもあわせてお答えいただきたいと事務方には申し上げているので、きょうはビジターですからこれぐらいにしておきますけれども、ぜひお願いしたいなと思います。

 次の質問に移ります。

 今度は、タックスヘイブンと言われている、そういう国々との租税条約の締結の方でございます。

 今回、ケイマンそしてバハマ、これはバミューダに続きまして三件目ということであります。こちらはまだかなり、言ってみれば、後からの質問にも出てきますが、ほかの国から見ると出おくれぎみということではあるわけですけれども、これはまた大変大事な目的があると思っております。

 今後、締約国拡大の方針について、どのようにお考えであるか、お伺いをいたします。

伴野副大臣 橘委員にお答えをさせていただきます。

 先ほど来から申し上げておりますように、そういった経済活動が活発化する中、脱税及び租税回避行為を防止する、そういった国際的な協力機運が一層高まっている中で、日・ケイマン租税協定及び日・バハマ租税協定を締結することによりまして、租税に関する幅広い情報がそれぞれ相手方から我が国の税務当局に対して提供されまして、英領ケイマン及びバハマを利用した国際的な脱税及び租税回避行為への対応及びこれらを行う者に対して事実上の抑止効果が期待されているところでございます。

 国際的な脱税及び租税回避行為を防止するためには、多数の国・地域間での租税に関する情報交換を可能とする国際約束を締結いたしまして、情報交換ネットワークを拡充することで、このような事実上の抑止効果を幅広く確保していくことが重要かと考えております。

 このような観点から、現在、我が国は、類似の協定について、英領ガーンジー及び英領ジャージーとの間でもそれぞれ交渉を行っているところでございまして、我が国が締結しております類似の協定の数は、他国と比してまだ必ずしも多くございませんけれども、政府といたしましては、こうした交渉に引き続き取り組みまして、国際的な脱税及び租税回避行為の防止に向けた国際的な協力の推進を一層進めていく所存でございます。

橘(慶)委員 今、伴野副大臣からお話がございましたように、実は海外のいわゆる先進国と言われる国々では、この協定の締結というのはかなり進んでおるわけであります。アメリカの十三本からオーストラリアの二十七本に至るまで、イギリス、フランス等、いろいろな事例も事前にお伺いをしているわけでございます。

 ただ、こういった数、日本から比べると一けたぐらい違う数になっているわけですが、そういった国でどういうところと締結をしているかということを拝見させていただくと、今たまたま英領のガーンジーとジャージーというところが出てまいりましたが、実は結構英領絡み、例えばジブラルタルとか、イギリスとアイルランドの間に浮かんでいるマン島、アイルオブマン、バージンアイランド、あるいは今おっしゃったジャージー、割合そういう英領に偏った形で締結も見られまして、もしかしたら、そういうところを選べばもっと一気に数が稼げるんじゃないか。

 言ってみれば、何でもこういうことで日本だけおくれているというのもちょっとしゃくな話のような気もいたしますし、数を稼ぐということであれば、ガーンジー、ジャージーといった、そういった仲間のところをどんとやってしまえば、かなりほかの国に追いつくような気もいたすのですけれども、この辺、外務省さんとして今どのようにお取り組みであるか、あるいはどういうものなのか、お答えをいただければ幸いです。

伴野副大臣 橘委員にお答えします。

 先生御指摘の視点はまさにそのとおりだと思っておりまして、そういったところにもたくさん声をかけさせていただきました。

 そうした中で、このような国・地域の中でも、このような取り組みに積極的な姿勢を示している国・地域を選定して、租税に関する情報交換協定の締結をさらに呼びかけを強めまして、英領ケイマン及びバハマから前向きな反応がございまして、いち早く締結交渉を行った次第でございます。

橘(慶)委員 もちろん、やはり実のある条約にしていかなければいけないということからすれば、日本との関係でいろいろな問題がある、あるいは生じかねない、そういったところを選ぶということも大変大事な観点だろうと思っております。

 そこで、今回、締結対象国になりました英領のケイマン諸島あるいはバハマであります。我が国との間で、課税上、何かそういう問題があったのかどうかということを一つお伺いいたします。

 そしてまた、我が国の企業の進出状況なのでありますが、事前に外務省さんからいただいたこのポンチ絵等を見ておりますと、ケイマンは多少、何となく私もわかるんですが、バハマあたりは余り具体的なことも書いていないというようなこともありまして、この辺、我が国の金融企業等の相手国への進出状況についてもあわせてお伺いをしたいと思います。

伴野副大臣 橘委員にお答えいたします。

 まず、前半の御質問につきましては、そのような何か懸念があったわけではございません。

 二つ目の御指摘につきましては、現在、英領ケイマンに進出している日本企業は三十社と承知しておりまして、現地法人数は六十九社、その内容は銀行、商社を中心としていると承知をしております。また、バハマにおきましては、日本企業数につきましては二社、現地法人数は三社でございまして、主に旅行業者等が進出しているものと承知をしております。

橘(慶)委員 バハマについては、観光関係の受け入れをするような企業だけということで、これはそういう問題はないかもしれません。

 ケイマンの方は、今お話がありましたように、金融企業を含めて結構進出が目立つということであります。カリブ海に浮かぶ島なんですけれども、そこで何かできるということでは多分ないんですが、どういう目的でそういう金融さんがかなり出ているのかということについては、そういう更問いもすると言っているんですけれども、いかがでしょうか。

伴野副大臣 所得に対する課税がないというところがポイントであると承知をしております。

橘(慶)委員 多分委員長もおわかりのとおり、ちょっと食い違っちゃっているんですけれども。

 それで、私は何をお願いしたいかというと、前に一度、北朝鮮の拉致の問題で、これは経済産業委員会では一年に一回承認案件があるんですけれども、そのときも感じたんですが、どうもなかなかお答えが、さらっとなぜるような話で、なかなか本質的なお答えが、もちろん外交上大変難しい問題については本質的なお答えがないというのはわかるんですが、ある程度事前にお話しした事実関係等につきましては、場合によっては、副大臣も大変でしょうから答弁者も分けていただいて、ぜひ実のある答弁をいただきたいという感じを外務省に対しては持っているということで、お願いをしたいと思います。

 きょうはその程度にしまして、別にここでがちがちやるつもりはございません。それぞれ租税四条約は目的があるので、しかもまだまだ、特にタックスヘイブン絡みの話については伸ばしていかなきゃいけないということだと思いますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 決してそういうことだけじゃなくて、お礼も申し上げたくて、きょうは参りました。小野寺理事の方の御指導もありまして、ちょっと順番を変えましたが、最初にお伺いをしようといいますかお礼を申し上げたかったのは、ニュージーランド地震における外務省さんの大変誠実な対応についてのお礼を申し上げたかったわけであります。

 先ほど委員会でも、皆さん自身もお感じになったと思いますが、ニュージーランド・クライストチャーチ、二月二十二日に地震が発生いたしました。日本人語学学校の入居したビルの倒壊がございまして、私は富山県出身でありますけれども、富山外国語専門学校生徒の大変前途有為な方々十二名を初め、多くの日本人の方々が犠牲になられた大変残念な事案でありました。

 御冥福をお祈り申し上げながら、ただ、あのときテレビ等を見ておりまして、クライストチャーチの町並みの中で、なぜあの語学学校のビルだけがあんなに倒壊をしてしまったのか。そうなれば、私ども、遠い国のことではありますが、原因の究明はどうなっているんだろうか、そしてまた犠牲者の遺族の方々への補償あるいは支援といったことがどのように進んでいくのか、こういったことがやはり心配になるわけであります。

 あれから間もなく三カ月、その後の現地における事態の推移について外務省さんにお尋ねをしたいと思います。

伴野副大臣 橘委員にお答えいたします。

 ニュージーランド政府におきましては、三月十四日に、調査委員会を、いわゆる王立委員会でございますが、設置いたしまして、CTVビル倒壊の原因等につきまして調査を行っており、来年四月までに最終報告が公表される予定であると承知をしております。外務省といたしましても、ニュージーランド側に累次原因究明を求めるところでございまして、同委員会の調査の結果を注視しているところでございます。

 御家族の補償につきましては、ニュージーランドには、事故補償協会、いわゆるACCが補償を行う制度がございまして、国籍を問わず、医療費、葬儀費用や配偶者等への助成金等が補償されることとなっております。さらに、ニュージーランド政府は、特別助成金によりまして、留学生の御家族の渡航費用の一部を支援し、また支払い済みの授業料等の一部を返金することといたしております。それに加えまして、ニュージーランド赤十字社は、遺族見舞金として一万ニュージーランド・ドルを補償していると承知をしております。

 外務省といたしましても、御家族の方々がこうした補償を受け取ることができるよう、引き続き最大限の支援を行っていく所存でございます。

橘(慶)委員 詳細にありがとうございました。

 当時のニュージーランドの皆様方の対応には大変感謝を申し上げております。ただ、あのビルの壊れ方だけは本当に何ともやるせないという部分がありまして、ぜひ、この問題は最後まで、また現地の領事館とフォローアップをよろしくお願い申し上げます。

 続きまして、せっかく経済産業委員会から参りましたので、可能な限り、今経済産業側から外交絡みでお願いをしたいことについて御質問をさせていただきたいと思っております。

 風評被害の払拭、日本のよさのPRであります。

 福島第一原発の事故は海外でも話題になり、製品の検査の強化あるいは証明書の要求など、いろいろと我が国製品の輸出に支障が出ているという報道に接するわけであります。しかし、あれから二カ月という時間の経過もございます。外務省として、これまで把握されている主な事例、あるいは現状、事態は改善に向かっているのかどうかということについて、ここでお伺いをしたいと思います。

伴野副大臣 橘委員にお答えいたします。

 外務省といたしまして、在外公館に訓令を発出しておりまして、各国の規制強化の動き等を逐一調査させております。

 これまでに六十以上の国・地域が何らかの形で日本からの輸入に対する規制を強化していると承知をしております。規制の内容につきましては、国・地域によって若干、さまざまな点がございますが、その対象となる産品や産地も国・地域によって異なっておりまして、おおむね、通関の際の放射能検査の強化、産地証明書の添付要求、放射能レベルに関する証明書の添付要求、輸入禁止となっております。

 なお、調査の結果につきましては、随時各省庁に共有をさせていただいておりまして、各省庁よりさらに関係業界へ情報提供をしておりまして、また、外務省におきましても、主要国・地域の措置についてホームページで現在紹介をしているところでございます。

橘(慶)委員 当然、それぞれの国ではそれぞれの事情もあるでしょうから、多岐にわたるいろいろな申し入れがあるんだろう、このように思っております。

 情報の流通は大変大事でありますが、また一面、日本の国の実情、今一生懸命に努力をしているということ、あるいは放射能の拡散状況等も今は既に把握はされているわけであります、そのすべての地域に及んでいるわけではないというようなこと、いろいろなことを外務省さんの世界に広がる在外公館のネットワークを通じてPRをしていただくということも、私どもとしては大変期待をするところであります。

 在外公館における具体的な対応についてお伺いをいたします。

伴野副大臣 橘委員にお答えいたします。

 委員御指摘のように、そういった風評被害を回避していく上で在外公館の働きというのはまさに重要でございまして、先ほども若干触れさせていただきましたが、すべての在外公館におきまして、各国政府や国際機関等に対しまして我が国における取り組みについて情報提供、説明を行うとともに、当該国の政府における規制の現状等について情報収集をさせているところでございます。

 また、実際に規制措置をとっている国・地域に対しましても、個別に現地大使を初めさまざまなレベルで、外交当局だけではなく規制当局や税関当局に対しましても我が国の関連措置を説明することを初めとしまして、直接働きかけを行っているところでございます。

 さらに、外国の産業界や報道関係者に対する情報発信を強化するために、四月下旬からは、在外公館とジェトロが共催し、日本政府観光局などの出席も得まして、世界の十カ国以上の都市について説明会を繰り返し行っているところでございます。

橘(慶)委員 もちろん、こうやってスタッフの皆さんが頑張っていただく、これも大変大事であります。そしてまた、ちょうどこれから日中韓の会合あるいはサミットも控えているわけであります。さきの連休のときも含めて、各省庁の政務三役さん等におかれても、海外出張時には相手方でお会いになるそれぞれのランクの方々に我が国の実情を話していただくことは大変有益なことではないか、お一人お一人がやはりPRするということも大変大事じゃないか、これはチーム日本ということになりますが、このことを実は海江田経済産業大臣にお願いをいたしましたところ、また自分からもあちこち呼びかけておくよ、こういうお話もあったわけであります。

 せっかく外務委員会へ参りましたので、その後の取り組み状況について、ここで経済産業省、そしてまた外務省から、それぞれお答えをお願いいたします。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 海江田大臣初め経済産業省の政務三役も、あらゆる機会をとらえて外国政府の閣僚などに対しまして我が国の実情を話して、科学的根拠に基づく冷静な対応をとるように申し入れをしております。

 現在、米国で開催されておりますAPECの貿易担当大臣会合におきまして、中山政務官が出席して冷静な対応を申し入れしているところでございます。さらに、海江田大臣は、この週末、日中韓サミットのために来日をします中国、韓国の関係大臣に対しまして同様の申し入れを行う予定でございます。来週のOECD閣僚理事会にも、国会の御了解をいただくことを前提にしまして、当省の政務三役が出席をして冷静な対応を求めていくよう調整を進めているところでございます。また、各国要人による当省政務三役への表敬におきましても、日本製品の安全性を積極的に訴えているところでございます。

 今後とも、海外の要人と会談できるあらゆる機会をとらえまして、我が国事業者が不利な立場に置かれないよう全力を尽くしてまいる所存でございます。

松本(剛)国務大臣 最近の主な日程については、経済産業省からお話をいただいたとおりであります。

 モンタナの貿易担当大臣会合には高橋副大臣が私ども当省からは出席をいたしておりますし、OECDの閣僚会議の方も、国会の御了解をいただけたら私どもからも政務三役を派遣したい、このように考えておりますが、今外務省の方でも、経済産業省ともよく相談をいたしまして、両省にとどまらず、海外と接点のある政務三役が共通した形でこの輸入規制措置については働きかけられるように、連携を密にする体制を整えて進めているところでございます。

橘(慶)委員 大臣、ありがとうございます。ぜひそのように、ほかの省庁についてもお願いしたいと思います。

 さて、日本のいろいろな技術、それがあれば必ず今の福島の事案も克服できる、そういう技術力を持った日本である、このように確信をいたしております。しかしまた、日本のよさというのは、そういった未来へ向けての科学技術だけではなくて、過去から、きょうは万葉集で始めさせていただきましたが、そういった文化、歴史の積み重ね、これまた世界にPRできる日本のよさ、クール・ジャパンということではないかと思います。この展開についての外務省のお取り組みについて、ここでお伺いをいたします。

伴野副大臣 橘委員にお答えいたします。

 先ほどお詠みいただいた万葉集を初め、そういった日本の歴史、伝統、文化を知らせるということも、まさにクール・ジャパンの非常に重要な活動かと承知もしております。

 外務省といたしましては、これまでも諸外国国民の対日理解の増進、対日イメージの向上等を図るために、在外公館や国際交流基金の持つ強みやノウハウを生かしながら、広報文化活動を行っているところでございます。

 とりわけ、新成長戦略におきまして、二十一の国家戦略プロジェクトの一つとして位置づけられております先生御指摘のクール・ジャパンの推進につきましては、外務省といたしましても、在外公館を中心に、関係府省や民間とも連携いたしまして、海外でのPR活動やブランディングに積極的に取り組んでいるところでございます。

 例えば、昨年の補正予算の事業といたしまして、クール・ジャパンのPR映像やポスター等を製作し、各国テレビ局での放映や現地で開催される各種のイベントにつきまして活用をさせていただいているところでございます。

橘(慶)委員 我が国のこういった取り組みとあわせて、世界との関係、先ほど、風評被害で初めて、大変世界は厳しいなというところもあるんですけれども、いや、世界もなかなか温かいなと、もちろん、大変いろいろな支援、援助というところの温かさもありました。

 もう一つ、文化面で最近明るい話題といえば、すべて東北絡みでありますが、ユネスコにおいて、奥州平泉の世界遺産への登録勧告がなされた。これは、被災地岩手県に大きな元気を与えるものであります。

 このことの今後の見通しとあわせまして、もう一つ、仙台市博物館にございます支倉常長の慶長遣欧使節関係資料が、世界の記憶遺産、なかなか耳なれない新しい言葉ですが、記憶遺産推薦ということを、藤原道長の御堂関白記とともにされた、こういうこともまた宮城県にとっては大変明るい話題ではないかと思います。

 このあたりの現状、今後の取り組みについて、ここで文化庁さんにお伺いします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 まず、平泉の関係でございますけれども、先般、ユネスコの世界遺産委員会に対しまして専門的な立場から勧告を行います諮問機関、ICOMOSから、世界遺産として登録するにふさわしいという旨の評価を受けたところでございます。

 最終的な結論は、来月十九日からパリで開催されますユネスコ世界遺産委員会において決定される予定でございますけれども、これまでの実績を見てみますと、ICOMOSが登録することが適当と勧告を行いました遺産の大多数は世界遺産委員会でも登録をされているというものがございます。したがいまして、私どもとしては、登録の可能性はこれで高まったものというふうに認識をしております。

 私どもとしては、この六月に平泉が世界遺産に登録され、東日本大震災で被災されました方々に対して復興に向けた励みとなりますよう、全力を尽くしてまいりたいと考えております。

 また、もう一つの慶長遣欧使節関係資料の関係でございます。

 これは、先ほど申し上げました世界遺産条約とは別の枠組みということになりますけれども、ユネスコが行っております事業でございまして、世界の人々の記憶にとめ置くべき重要な文書遺産の保護と振興を目的とするものでございます。これまでに百九十三件が登録をされております。

 今回、ただいま御指摘をいただきました仙台市博物館が所蔵しております慶長遣欧使節関係資料、それから藤原道長の自筆日記でございます御堂関白記、この二件を今後推薦するということを日本ユネスコ国内委員会で決定いたしたところでございます。

 今後は、来年三月までのユネスコへの申請書提出に向けまして、英文の申請書の作成などの作業を進めることとしております。申請を行いました後は、平成二十五年、二〇一三年五月ごろにユネスコの国際諮問委員会が開催される予定でございますが、そこで登録の可否が決定されるというふうに承知をしております。

 この平成二十五年、二〇一三年というのは、慶長遣欧使節が石巻市の月浦を出帆いたしましてからちょうど四百年という記念の年でもございます。文部科学省としては、この記憶遺産の登録に向けまして、必要な準備を着実に進めてまいりたいと考えております。

橘(慶)委員 ぜひ、そういう形にならないもの、しかし、それは地域の大事な宝であり、これからの復興再生計画をいろいろつくっていく際にも必ず大きなテーマになってくると確信をいたしております。

 外務省さんにおかれては、ユネスコ担当の係官、事務担当の方もいらっしゃいますし、文化庁長官は外務省の御出身でもあります。どうか連携をいただいて、後押しをよろしくお願いいたします。

 時間は限られております。本当に、チェックする立場でいえば、平田オリザさんの問題云々というのもあるんですが、飛ばしまして、最後にTPPの話で、やはりここで、これからサミット、いろいろございますので、現状を確認しておきたいと思います。TPPというよりもEPAです。

 EUとのEPAの関係について、五月十九日に対日交流議員団長ハンス・ファンバーレン議員が、来年初めにも正式交渉を開始できるとの見通しを示したという報道にも接しております。この日・EU・EPAの現状、行方について御答弁をお願いして、終わりたいと思います。

松本(剛)国務大臣 日・EU・EPAについては、できるだけ早く推進、そして交渉開始をした上で締結に結びつけたいということでこれまでも取り組んできたところでありまして、私自身も、五月に入りまして、国会の御了解をいただいて海外出張した際には、EUの担当するデグフト委員を初め、関係する委員と会談をいたしてまいりました。

 EUの場合は、御案内のとおり、私どもは直接の交渉相手は欧州委員会でありますけれども、各国の首脳の閣僚理事会があり、他方で、お会いをいただいた、承認をいただく欧州議会がありということで、それぞれの間の御理解をいただいていかなければいけないわけでありますけれども、今私どもとしては、この五月に予定をされている日・EU定期首脳会議でぜひ交渉プロセスが開始をできるようにしっかりと取り組んでいきたいということで、今それに向けて、もうわずかな日にちになってまいりますけれども、必死の交渉をしているところであります。

 これまでに比べますと、EU各国の首脳そして欧州委員会からも、前を向いた動き、発言というのがふえてきた、このように思っておりますけれども、実際に手続上前進をするように、そしてまた具体的な成果がさらに加速をできるようにこれから懸命に努めてまいりたい、我が国経済の再活性化にとっても極めて重要なテーマだという認識で取り組んでまいりたい、このように思っております。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 TPPという難しい山に登るより、確実に登れるEPAの積み重ね、ぜひそのようにお願いをしたいと私は思っております。

 最後に、歌を歌ってこの場を去らせていただきたいと思います。大伴家持卿が立山の歌を歌っております。

  立山に降り置ける雪を常夏に見れども飽かず神(かむ)からならし

 ちょっとでも涼しさを感じていただければと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

小平委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、租税条約について冒頭伺います。

 日本・ケイマン、そして日本・バハマ租税条約は、日本の多国籍銀行やヘッジファンド、富裕層、投資家などに対する課税の公平性を確保するために国際的に要請された必要な措置であり、我が党として賛成であります。

 日本・サウジアラビア、日本・香港租税協定に関連して聞きます。

 今回の租税協定も、日米新租税条約に準拠する形で、投資所得に係る源泉地国課税の減免が措置されております。日本の多国籍企業の今年度の税制改正要望書を読みますと、源泉地国課税措置のさらなる撤廃、外国子会社配当益金不算入制度の適用拡大を求めて、外国子会社の持ち株比率の低下を求めております。今後予定される租税条約改正や新条約締結において、こういう方向をどこまで考慮するのか、基本姿勢を外務省から聞きたいと思います。

    〔委員長退席、長島(昭)委員長代理着席〕

伴野副大臣 赤嶺委員にお答えいたします。

 今回の協定等々の締結する意味合い等々、先ほど来から申し上げているとおりでございますけれども、先生御指摘の国際課税連絡協議会につきましては、経済産業省に要望を提出しているものと承知をしておりまして、また、政府といたしましては、特定の団体の要望のみに左右されるのではないという観点から、さまざまな方面から御意見、御参考をお聞きしているところでございます。

 そうした中で、知り得たさまざまな御意見や御参考とさせていただくべきことを交渉等に一層取り入れさせていただいているところではございますけれども、それらを通じて、脱税及び租税回避行為の防止と国際的な投資交流の促進に一層努めてまいりたいと考えている所存でございます。

赤嶺委員 一般的に言いまして、日本の多国籍企業とその海外子会社は、進出先の外資優遇税制のメリットを十二分に享受しながら、その上に、租税条約で投資に対する源泉地国課税が劇的に軽くされ、また、国内の配当の非課税措置の強化と大企業優遇税制という一連の税制優遇措置を二重、三重に享受することが可能になっているわけです。租税条約は、国際課税分野における日本の大企業優遇税制を国内外でさらに拡大、補強する性格を持つものであり、私たちはこういう政策手法は容認できないということを表明しておきたいと思います。

 そこで、次に、日本と中国の間の海上警備面での連携について聞きたいと思います。

 五月十三日付の日経新聞によりますと、今月九日、中国国家海洋局の劉局長と丹羽中国大使が会談し、海上保安分野を含む海洋政策での連携について、日中当局間で具体策の検討を行うことを確認したと報じられております。具体的には、「中国で海上警備などを担う中国海監総隊と日本の海上保安庁との間でのホットラインの確立や、現場での相互連絡体制の整備などを想定している」とのことであります。

 この点での事実関係と、今後、外務省としてどのように対応していくのかについて伺いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 御指摘のとおり、五月の九日に丹羽宇一郎駐中国大使が劉賜貴中国国家海洋局長と会見をした際に、先方から海洋分野での協力に関して幾つかの提案がなされました。その中の一つが、日中の法執行機関の間での現場レベルにおける連絡メカニズムの構築といった案があったというふうに承知をいたしております。

 日中間について一般論で申し上げれば、日中間の安定した戦略的互恵関係の増進、そしてまた誤解や摩擦を減じるといったようなこと、意思疎通を強化するといったようなこと、万一の不測の事態が発生をした場合に備えるといった意味でも、危機管理的な側面といった意味からも、重層的なチャンネルが開かれるということは望ましいことだと考えておりまして、重層的な危機管理メカニズム、危機管理にとどまらないと思いますが、こういったものを構築していきたいと私も考えております。

 このような認識のもとで、今回の中国側の提案については、現在、政府内で検討をいたしているところと御報告を申し上げさせていただきます。

赤嶺委員 韓国との間では、韓国の海洋警察庁と海上保安庁との間で、九九年四月以降、長官級協議が定期的に行われ、二〇〇一年四月には地域レベルの連絡窓口も設定されるなど、連携強化が進められてきております。中国公安部と海上保安庁との間では既に連絡窓口も設定されておりますが、それにとどまらず、関係する機関との間で相互に連絡窓口を定めておくことは、無用なトラブルを回避する点で重要だと思います。とりわけ、昨年の尖閣諸島沖の衝突事件以降の海上警備当局間の対応を見ても、この点は非常に大事だと思います。外務大臣の答弁がありましたが、日中両政府の積極的な対応を求めたいと思います。

 この点にかかわって、あと一点聞きますが、きのうの報道ですが、中国人民解放軍の陳総参謀長とアメリカのマレン統合参謀本部議長が共同記者会見を行い、災害救援と人道支援の分野で合同訓練を来年中に実施することを合意したということを明らかにしました。また、両氏は、今後、専用回線で連絡をとり合うことについても確認をしたとあります。今回の米中の合意についての外務大臣の認識についても伺いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 今委員が指摘をされました、五月十七日から十八日にかけての陳炳徳中国総参謀長の訪米、マレン統合参謀本部議長との会談、そしてまた今お話がありましたように、災害、海賊対策を含む幅広い米中軍事交流の強化で合意というふうに承知をしております。

 私どもとしては、軍事交流を含む米中間の対話の進展は地域及び国際社会における平和と安定の観点から望ましい、このように考えております。また、私どもも、先ほど申し上げたように、中国との間で安定した戦略的互恵関係の構築を進めるのが我が国の考え方でありますけれども、米国が中国に対する関与政策を強めることは考えを同じくすることであって望ましい、このように考えているところであります。

 今お話がありましたように、災害、海賊対策というのは、今、国際社会においても喫緊の課題でもある、このように考えておりまして、こういった面での協力の推進というものについては私どもも歓迎ができるものではないか、このように思っているところであります。

赤嶺委員 せんだって行われました三回目の米中戦略・経済対話では、誤解に基づく軍事衝突などを防ぐことを目的に、米中の両軍、国防、外務官僚から成る戦略安全保障対話を初めて開催いたしました。また、アジア太平洋地域における共通の利益や課題をめぐる協議を年内に新設することでも合意をしております。中国の軍事力強化を理由として日米軍事同盟の強化を求める議論がありますが、経済分野でも安全保障分野でも相互に関係を深めているこうした米中関係の大局、これをよく見る必要があるのではないか、こういうことを指摘しておきたいと思います。

 それでは次に、沖縄で起こっている問題について聞いていきたいと思います。

 読谷村のトリイ通信基地の中に楚辺ビーチというビーチがあります。四月の下旬、読谷村のアメリカ陸軍トリイ通信施設内のビーチの海岸に、米軍が砂を無断で掘削して、汚濁拡散防止のネットも設置せずに赤土のついた石約八十トンを投入し、長さ百メートルの石積みを造成したことが明らかになりました。

 この海域は、小魚からジンベイザメまで多種の魚が寄りつく県内有数の好漁場であります。読谷村の漁協の比嘉組合長は、工作物によって潮流が確実に変わる、そうなれば漁獲量が減る、護岸は強固ではなく崩れれば被害は拡大する、そのまま放置することは許されない、このように言って、工作物の撤去を求めております。

 私も現場を見てきましたが、ずさんな工事で、台風が来たら一挙に崩れる危険があります。既に沖縄県からも関係当局に原状回復、撤去の申し入れが行われているところでありますが、政府はこの石積み撤去を要求すべきだと思いますが、いかがですか。

松本大臣政務官 お答えいたします。

 まず、事実関係でありますけれども、トリイ通信施設提供水域内の石積みについては、砂及び赤土の流出防止のため先月米軍が設置したものと承知をしております。これに対して沖縄防衛局は、先ほどおっしゃっていただきました沖縄県、読谷村、それから漁協、さらには現地米軍及び沖縄防衛局、五者による現地確認を行い、その際、米側に対して、地元に懸念を与える可能性のある作業については事前に地元自治体等に情報提供してほしい旨を申し入れまして、米側からは、今後は事前に情報提供したいとの発言があったところであります。

 それから、御指摘の石積みの撤去についてでありますが、本石積みにつきましては、沖縄県及び読谷村から現地米軍及び沖縄防衛局に対しまして、漁業活動に影響ないよう撤去を含め適切に対応してほしい旨の要請がありまして、先週、五月十一日にも沖縄防衛局は地元関係者との話し合いの場を持ったところであります。

 防衛省としましては、具体的な漁業への影響及び砂や赤土の流出防止の効果などの状況について地元の方々にも伺いながら把握をしまして、必要に応じ米側とも調整してまいりたいと考えております。

赤嶺委員 赤土の流出防止というのは米軍の言い分であって、現場には赤土が流出するような場所は全くありません。そして、砂が流れていくのを食いとめるというんですが、その石積みの間を何で固めているかというと、海岸の砂をショベルで掘って固めているわけですよ。海岸の砂を無断で掘削して、それで環境に配慮していますというような言い分は通らないんですよ。米側に撤去を求めるどころか、それが必要かどうか、今、日本側と沖縄側で話し合っていますといって、肝心なことはちっとも米側に要求していないんですね。

 この海域は海岸法に基づく許可が必要な区域で、沖縄県としては海岸保全上も大変重要な区域としております。ところが、米軍基地内であるために国内法が適用されない。米軍が無許可で勝手に工事を行った問題であります。

 こんなこと許されるんですかね、自然を傷つけるような勝手な行動。そして、これからは連絡をします、そういう仕組みに変えますという、連絡するだけじゃ足りないんです。あの護岸は台風が来たら崩れて漁場を汚すということになっているんです。これはやはり撤去を要求すべきではありませんか。

松本大臣政務官 お答えいたします。

 この問題につきましては、おとといの参議院の決算委員会でも御指摘をいただきまして、大臣からは、五月十一日にも沖縄防衛局が地元の関係者と話し合いの場を持っていろいろ説明しております、米側は赤土や何かが流出するのを避けるために何とかするようなことを言っておるわけでありますが、しかし、お互い一方的な話は何の解決もしませんから、我々防衛局が中へ入って、しっかりとした話し合いをして解決に向けていきたいというふうに御答弁をさせていただいておりまして、片や漁業に影響がある、片や赤土の流出防止のためだというふうに一方的に説明をしているだけでは解決に結びつかないので、しっかりと沖縄防衛局がその間に入って解決に向けていきたいと御答弁をさせていただいております。

 現に、十一日の沖縄防衛局と読谷村それから漁協などからの意見聴取の場では、読谷村側からは、どのような影響があるのか、調査を実施する方向で検討したいと。つまり、漁業にどんな影響があるのか、調査を実施する方向で検討したいというお話をいただいていますので、まずはこの読谷村側の調査などを踏まえて、どのような影響があるのか、御意見を伺って解決に向けて進めてまいりたいというふうに考えております。

    〔長島(昭)委員長代理退席、委員長着席〕

赤嶺委員 読谷村に調査責任を押しつけたわけですね。台風はもうシーズン間近ですよ。来たら壊れて漁場を壊す。はっきりしているんですよ。現場に行った人であれば、だれでも認識することですよ。何で米軍基地に、こんな腰の引けた態度をとるんですか。米側に撤去せよと言うべきではありませんか。

 これは、赤松先生、そばにいらっしゃいますけれども、ふだん基地の問題について私たちと立場が違う公明党県本も米軍基地の司令に会って、そうすべきだと言っているんですよ。それをしないのは防衛省だけなんです、日本政府だけなんですよ。そんなことは許されないんじゃないですか。

松本大臣政務官 米側には米側なりの、赤土の流出の防止という運用上の説明があったわけで、それを、一方的な説明をお互いにし合っているだけでは解決はしませんので、では一体その積み石の流出防止効果とはどういうものなのか、なぜそれをしなきゃいけないのかというのは米側からも聞かなきゃいけませんし、一方で、漁業に本当に影響があるのかどうかということも含めて、漁協等からも、関係者の意見を聞かなきゃいけませんので、双方の主張をしっかりとまずは聞いて、防衛局としてその間に入って解決に向けて進めていきたいということでありまして、一方的に米側に譲歩しているという御指摘は当たらないものと考えております。

赤嶺委員 間に立って何もやらないということですよ。

 今回の工作物についてですが、沖縄の米軍基地の使用条件を定めたいわゆる五・一五メモがあります。この五・一五メモとの関係でも問題があります。トリイ通信基地は、基地の水域で、「日本国政府は、継続的投錨、破壊、建設又はいかなる種類の継続的使用も許可しない。合衆国政府は、この水域内での漁業及び海産物の採取を制限しない。」こうしております。

 今回の工作物の造成は、この五・一五メモの使用条件に反するのではありませんか。

小平委員長 答弁を。(赤嶺委員「残り時間が少ないですから答弁を急いでください」と呼ぶ)速やかに答弁を。松本政務官。

松本大臣政務官 済みません。ちょっと今、五・一五メモというものを手元に、突然のお尋ねでありますので、今答弁のための資料が用意してございませんので、確認をして、御説明をさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 基地の使い方として間違っているという指摘をされる場合は、五・一五メモで決めた使用条件に立ち返るのは当たり前のことですよ。それさえやっていないんですか。それをやらないで、間に立ってと言うんですか。何を根拠に間に立つんですか。(発言する者あり)

小平委員長 それでは、ちょっと速記をとめて。

    〔速記中止〕

小平委員長 速記を起こしてください。

 それでは、次回の委員会で改めて答弁をいただきます。よろしいですね。

 では、次に……(赤嶺委員「いや、答弁させてください、まずどういう立場でいるんだと。調査するのか」と呼ぶ)

 答えられますか。

 では、松本政務官。

松本大臣政務官 申しわけありませんが、次回の委員会で、確認をして答弁をさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 五・一五メモというのは、一九七二年、沖縄が復帰をするときに、沖縄の復帰以前の基地の乱暴な使い方を安保条約のもとではこのように使いましょうと定めた、日米間の政府の一番大事なメモなんです。それでもほとんど守られていないということなんですが、この五・一五メモでは明らかに、トリイ通信基地では、基地の水域で「いかなる種類の継続的使用も許可しない。」そして、「合衆国政府は、この水域内での漁業及び海産物の採取を制限しない。」として、トリイ通信基地というのを調べたらどこにでも書いてある文書であります。これを知らないで間に立つと言っても、そもそも間に立つ基本が、姿勢が間違っていると思います。

 この海岸は、去った沖縄戦で米軍が上陸した地点の海岸であります。海岸の周辺には、先祖代々の沖縄の伝統的な亀甲墓も残っております。亀甲墓は金網の中であります。米軍は沖縄戦上陸以来、この海岸を接収し、保養施設として使ってきた。八〇年代には、ビーチを拡張し、ベンチや休憩所を設置しようとして、三年余にわたる住民の反対運動が起こりました。住民からすれば、このビーチは先祖代々引き継がれてきた大切な漁場であります。砂浜であります。そして聖域ですよ。こういう聖域を、いわば米軍の娯楽施設として、乱暴なやり方で漁場も環境も無視してやっていく。大体、砂浜を掘り起こすという行為は、たとえ米軍であっても、日本の自然環境に配慮すれば絶対やらないことですよ。やっちゃいけないことですよ。

 基地の使い方について、自然環境であってもアメリカの勝手だ、防衛省はそういう認識ですか。

松本大臣政務官 環境に配慮していないとか、一方的にというふうな御指摘をいただいているようでありますけれども、決してそんなことはなくて、繰り返しになりますが、双方の説明をしっかりと聞いて解決に向けて進めていきたいという立場は、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

赤嶺委員 理解できない態度であります。

 松本政務官、現場に行ってみてください。本当に赤土が流出しているか、本当に必要な石積みか、漁業に影響を与えないか、一目瞭然ですよ。それを、読谷村に説明責任を押しつけて、読谷の側の調査を待っていますというのはとんでもない話です。

 五・一五メモをもう一度よく読んで、私は、五・一五メモを基地提供者の責任者が知らなかったということが、きょう大変な驚きであります。五・一五メモに従って、即刻、台風が来る前に、この石積み工作物撤去を強く求めて、質問を終わります。

小平委員長 次に、服部良一君。

服部委員 社民党の服部良一です。

 まず、ケイマン及びバハマとの租税協定について御質問をいたします。

 両協定では、銀行秘密であるということのみを理由として情報提供を拒否することはできないということなんですけれども、一方で、営業上、事業上、産業上、商業上もしくは職業上の秘密または取引の過程を明らかにするような情報を要請された場合、あるいは要請された情報を公開することが被要請者の公の秩序に反することになる場合には情報提供要請を拒否できるということなんですけれども、銀行秘密というのは結局顧客情報だというふうに思うんです。その違いがちょっとよくわからないんですけれども、具体的にどのような事態を想定されているというふうなことなんでしょうか。

伴野副大臣 服部委員にお答えいたします。

 服部委員におかれましても、協定等をもう既に何度もお読みいただいていると思いますが、改めてこれらの協定につきましては、それぞれ第七条の1におきまして、被要請者、これは被要請国とも読みかえていただいて結構かと思いますが、要請者並びに要請国が、みずからが被要請者あるいは被要請国の立場にあったとしても自己の法令に基づいて、または自己の通常の行政上の慣行を通じて入手することができないであろう情報を入手し、または提供することを要求されない。被要請者あるいは被要請国の権限のある当局は、要請者または要請国の要請が協定に従って行われていない場合には、その当局が支援を拒否することができると規定をしております。

 さらに、これらの協定のそれぞれ第七条2につきましては、営業上、事業上、産業上、商業上もしくは職業上の秘密または取引の過程を明らかにするような情報を提供する義務を課するものではないと規定をしております。

 これらの規定は、情報提供を要請する側の利益と情報を提供する側の負担をバランスさせるために必要な規定でございまして、OECDのモデル情報交換協定に沿ったものでございまして、十分に合理的なものでございます。

 また、OECD等における議論と国際的潮流を背景に、先方との間では、実効的な情報交換の実施という政策目標を共有しているものでございます。

 これらを踏まえまして、このような規定が濫用されることなく、これらの協定に基づく情報交換は実効的に実施されるものと考えております。

服部委員 条文はそういうことだとして、具体的にどういうことを想定されているんですか。もっとリアルな話をお聞きしたいと思うんです。片や、銀行秘密であれば情報提供は拒否できないということなんですけれども。

伴野副大臣 服部委員にお答えいたします。

 営業上の秘密は出さなくてもいいという解釈でございます。

服部委員 何かようわからぬな。

 そうですか。まあ、いずれにしても、適切な運用、対応をよろしくお願いしたいと思います。

 先ほど、退職年金の問題が出ましたけれども、これもちょっと質問します。

 ケイマン、バハマには所得課税が存在しないために、当地に移住した場合には課税が免除される。これは、ケイマン、バハマへの退職者への誘致とか、あるいは人的交流の促進を目指したものというふうにも理解できるわけですけれども、このスキームを利用して脱税を図る人がいないとも限らないわけなんです。先ほど、おおらかに受け入れてもいいんじゃないかという議論もありましたけれども、適切な利用というものはどういうふうに確保されるんでしょうか。

伴野副大臣 服部委員にお答えします。

 先ほどの、同質の御質問の回答を繰り返すことで恐縮でございますが、これらの協定におきましては、退職年金につきまして、課税権を居住地国に配分することによりまして、例えば我が国の退職年金を受給する者が相手国に移住した場合に、退職年金について我が国の源泉地国課税が免除され、退職年金受給者につきまして人的交流の誘因となる効果を持っていると考えられます。

 本協定における退職年金等の特定の個人の所得につきましての課税の免除におきましては、以上のような効果も踏まえまして、我が国とこれらの国・地域との間の人的交流を一層促進する観点から盛り込むことといたした次第でございます。

 また、退職年金につきましては、このような協定上の特典を享受するには、対象となる個人は実際に相手国の居住者となる必要がございますので、これが極端な形で濫用され、国際的な租税回避行為を助長することにならないものと考えておる次第でございます。

服部委員 おおらかに受け入れておけばいい、そういうことでいいんですね。

 昨年、租税条約実施特例法が改正をされ、国会承認を要する租税条約を締結しなくても、行政取り決めによって租税に関する情報を相互に提供することができる、こうなっております。租税情報交換の根拠を租税条約とするのか、行政取り決めでよいとするのかの基準について、大平三原則に基づいてということが答弁されているわけですけれども、タックスヘイブンの国・地域との協定で、情報交換のみの目的で条約を結ぶケースが本当に行政取り決めでいいのか。あるいは、恣意的にならないような立場で、もう少し、より明確な基準を設定した方がいいんじゃないかなというふうに思うんですけれども、それについてはどういうふうにお考えでしょうか。

伴野副大臣 服部委員にお答えいたします。

 脱税及び租税回避行為の防止のために国際的な情報交換ネットワークを整備することが急務であるということは委員も御承知かと思いますけれども、そういった点を踏まえまして、外国の税務当局との間の情報交換を実効的に行うための国内法上の基盤を強化したのが今回の案件でございます。税務当局間の情報交換に関する協定をどのような形式とするかにつきましては、我が国、相手方、それぞれのニーズを踏まえまして個別に検討し、交渉を行う中で決まっていくこととなります。

 したがって、今後の協定の形式に関する基準をあらかじめお示しすることは差し控えさせていただければと思いますが、先ほど先生御指摘のございましたように、政府といたしましては、個別の国際約束ごとに、引き続き、いわゆる大平三原則に従って、国会の承認を得るべく必要の有無を判断していくことに変わりはないものと承知をしております。

服部委員 昨年五月の参議院の外交防衛委員会でも、福山当時外務副大臣が大平三原則でということを答弁されているわけですけれども、いかにも抽象的な答弁だというふうに私は思っておりまして、それは引き続き、そういう意味で国会にすべからくかけて、きちっとやはり議論すべきものは議論すべきものとして、その辺の基準というものをもう少し具体的、明確にしていただければというふうな意見を申し上げておきたいと思います。

 続きまして、前回の委員会でも質問をさせていただきました普天間移設のロードマップの見直しの問題、外務大臣、また御質問をいたします。

 きょうは、その議題を取り上げる気はなかったんですけれども、北澤防衛大臣が昨日の安保委員会で、日米の間で率直に、難しいものは難しいという認識を共有して、新たにどうするのかという議論があってもいいのではないかと。それから、いつまでもしゃくし定規なことを言っていないでというような答弁もされているわけですね。

 前回の松本大臣の答弁も、議事録をよく読んでみましたら、例えば、スケジュールどおりに進んでいたのかと言われれば、そうではない面があると言わざるを得ないとか、それから、上院の軍事委員長自身の存在というものは大変重いと思っておりますので、その内容自身は私どもも注視をしていきたいと。これは、辺野古は現実的ではないといった発言に絡む話なんですけれども。それから、沖縄の皆様に御理解をいただきたいと思っておりますが、その状況は厳しいとか、あるいは、状況は率直に認識をしているとか、ここまで言いたいことがあるのかなと思うようなことをいろいろ言っておられるんです。

 新聞報道では、六月の二十日か二十一日には外務、防衛の2プラス2を開くかのような話も出ております。その中でロードマップを見直すんじゃないか、そういうニュアンスの報道なり、あるいは北澤大臣の発言もそれを前提として発言されたんじゃないかというふうに受けとめられる節もあるわけですけれども、これは2プラス2ということですから、外務省としてこの北澤さんの発言をどういうふうに受けとめておられるのか、改めてお聞きをいたします。

松本(剛)国務大臣 委員もよく御存じのとおり、安全保障委員会での発言も私も横で聞いておりました。また、これまでの発言については既に引用をいただいたかというふうに思います。

 ただ、北澤大臣も発言をされ続けておりますし、私も発言を申し上げている点で、今御引用がなかった部分を申し上げると、昨年五月の合意を着実に実施をしてまいりたいという部分も発言としてあったか、このように考えております。

 確かに、今御指摘がありましたし、私自身も申し上げているように、スケジュールという面で後ろへ後ろへ来ています。私どもが、二〇〇九年に民主党が政権を引き継いだ時点で、二〇〇六年スタートのロードマップは既に三年たっていたわけでありますけれども、その間も、二〇一四年までということに関していえば、幾つかやはり後ろへ行っていた部分もあると思います。二〇〇九年、私どもがお受けをして以降についても、まさに率直に、その後のスケジュールの進み方ということについては実情を私どもも見詰めなければいけない、こう考えていることは申し上げられると思っていますが、他方で、普天間移設をして、そして返還に結びつける、大変危険性の高いものを除去する、危険性を除去するということは大変重要な課題だという共通の認識で、これまで日米も努力をしてきたというふうに考えております。

 そして、これは北澤大臣も申し上げておりますけれども、今私たちは、その進むべき道としては、昨年五月の合意というものが日米の合意であると同時に、我々にとっての進むべき道であるというのが現在の共通の認識であるというふうに考えておりますので、その点が変わりないことは改めて申し上げたい、このように思っております。

服部委員 きのうの北澤防衛大臣の発言は、かなり踏み込まれているんですよ。要するに、難しいものは難しいという認識を共有して、新たにどうするかと。リセットしようじゃないかというふうにもとれるわけですね。とれるんですよ。これは、こういう発言が出たということは、閣内の統一した見解なのか、あるいは北澤大臣の個人的な言い回しなのか、それはどうなんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 繰り返しになりますが、北澤大臣は昨年の五月の合意を着実に実施するということ自身をやめるとかリセットするとかいうようなことを言われたというふうに私は聞いておりませんし、理解もしておりません。

 他方で、私自身も申し上げてまいりましたけれども、ロードマップ、考えられていたスケジュールどおりに進んでいるのかといえば、後ろに行きつつあることは事実であるということは私自身も答弁をさせていただきましたが、北澤大臣のお話も、その文脈の中でお話があったものと考えておりまして、現状についての認識が私と北澤大臣と、また政府内において大きく離れているというふうには考えておりません。

服部委員 大きく離れていないということは、北澤さんの発言に近い認識を大臣も持っておられるとも聞こえるわけですけれども、いずれにしましても、ロードマップをつくったときと大きく情勢が変わっている、これは大臣自身も認められておりますし、先日来議論にもなっておりますけれども、コストの問題、あるいは部隊のいわゆる移設の中身の問題、人員の問題、こういったことを含めて、やはり改めて外務省として、このグアム移転協定を含めて見直しをするという意思、前回もお聞きしているんですけれども、改めてその意思があるのかないのか、お聞きをしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 今、私自身、そしてこれは外務省としてということになると思いますが、これまでの積み重ねてきたものを白紙にして見直すという考え方は持っておりません。

服部委員 いずれ見直さざるを得ない時期が来るだろうということを申し上げて、とりあえず、この議論はそこでとめておきますが。

 先日、新下田会議で配付されたジェラルド・カーティスさんの「日米関係の将来」というのをお渡ししたと思うんですが、あれをお読みになりましたか。

松本(剛)国務大臣 そのとき、いただいたときにさらっと拝見をして、ゆっくり熟読をしなければいけないと思っておりますが、そこまではまだ至っておりません。

服部委員 では、ぜひ熟読をお願いしておきます。

 前回、この新下田会議のジェラルド・カーティスさんの論文を紹介させていただきましたし、また、レビン上院軍事委員長の訪日、訪沖、それからそのレポート、その問題も議論をさせていただきました。今、アメリカからさまざまなメッセージが発せられているんですね。

 一つ、抑止力に絡む議論なんですけれども、五月の連休に超党派で行った、うちの阿部議員も行ったわけですけれども、その中で、オバマ政権の安全保障担当のジョーンズ前大統領補佐官、この方がこういうことを言われているんですね。この方は元海兵隊の総司令官でもあるので、大変重たい発言だと私は思うんですけれども、「海兵隊はどこに移転しても構わない部隊であり、米軍全体の計画が在沖海兵隊の移転先に左右されることはない」、要するに、海兵隊はどこに移転してもいいんだ、どこにおってもいいんだと。それで、韓国移転もあり得る、こういうことも言われているんですね。

 それと、これはその発言を報じた沖縄タイムスの一面のトップなんですけれども、これを聞いてびっくりしたのは、この方は大浦湾という辺野古の建設場所、ここでダイビングをした経験についても触れて、「日米両政府が辺野古移設に初めて合意したときから大浦湾が埋め立てられるとは思えず、計画の実現すら想像できなかった」、ここまで言われているんですね。どうせ同じことを言うんだったら、何でもっとはよ言わぬのやと思うんですけれども。

 これはアメリカが言うんだという話で、辺野古に基地をつくらなかったら日米関係がとんでもないことになるんだとか、そういうことでいろいろマスコミが書いたり、いろいろありましたけれども、やはり見ている人は見ておるんですね、アメリカでもきちっと。

 鳩山さんが、在沖海兵隊の抑止力は方便だったという発言をされましたけれども、大臣、この発言に対してはどういうふうな御感想をお持ちですか。

松本(剛)国務大臣 ジョーンズ米大統領補佐官も、先ほど私が申し上げた昨年五月の合意時には、ホワイトハウスにおいて責任ある立場におられた方ではないかというふうに理解をいたしております。おやめになった後の発言ということについて、一つ一つ申し上げればいろいろあるかもしれませんが、今外務大臣の現職をお引き受けしている者としては、コメントをするのが適当ではないというふうに思っております。

 また、鳩山総理の御発言についても今御指摘がありましたけれども、既に総理の職を引かれた方について外務大臣として何か申し上げるというのは適切ではない、このように思っておりますが、これまで行動をともにしてきた民主党の先輩である鳩山議員、先輩には、この発言そのものは私は大変残念に思うと申し上げたいと思います。

服部委員 時間が来ましたので終わりますけれども、グアム移転協定の前文には、沖縄からグアムへの移駐がアジア太平洋地域における抑止力を強化するものであると両政府は認識しておると。

 要するに、抑止力というものは、アジア太平洋全域での米軍の抑止力、プレゼンスということであって、それが何が何でも沖縄でなければならないというような議論はもはや通用しないというふうに私は考えております。大臣自身も、沖縄の基地の負担軽減ということは、ずっと民主党のそういう政調の中でも柱の議論としてやってこられたというふうに思っております。

 そういう文脈の中で、この際、沖縄からの負担軽減、せっかくこういうアメリカからのさまざまなメッセージが出てきておるという時期でありますので、ぜひ、そのために外務大臣として、松本大臣のときに辺野古が動いたと、これも歴史ですよ。ぜひその実現のために頑張っていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

小平委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小平委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府と中華人民共和国香港特別行政区政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小平委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とサウジアラビア王国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小平委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得についての課税権の配分に関する日本国政府とケイマン諸島政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小平委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得についての課税権の配分に関する日本国政府とバハマ国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小平委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

小平委員長 次に、内閣提出、東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律案を議題といたします。

 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣松本剛明君。

    ―――――――――――――

 東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

松本(剛)国務大臣 ただいま議題となりました東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律案について御説明いたします。

 この法律案は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震による災害により多数の被災者が一般旅券を紛失し、または焼失したことに対処するため、一般旅券の発給の特例を定めるものであります。

 次に、この法律案の主要点について御説明申し上げます。

 主要点の第一は、震災特例旅券の導入であります。

 東北地方太平洋沖地震による災害の被災者であってその居住する住宅が滅失し、または損壊した者として政令で定めるものが、平成二十三年三月十一日において現に有効な一般旅券を当該災害により紛失等した場合において、この法律の施行日から平成二十五年三月三十一日までの間に国内において一般旅券の発給を受けるべく申請を行うときは、外務大臣が、紛失等した旅券の残余の有効期間とほぼ同じ有効期間の震災特例旅券を発行できることとしています。

 主要点の第二は、震災特例旅券の発給に係る国の手数料は徴収しないということであります。

 主要点の第三は、震災特例旅券の発給に係る都道府県の事務についての規定であります。

 震災特例旅券の発給に係る事務を都道府県において行うことができるようにするため、震災特例旅券の交付に係る事務を地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とするとともに、震災特例旅券の発行に係る事務の一部を政令により都道府県知事が行うことができることとしています。

 以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。

 何とぞよろしく御審議をお願いいたします。

小平委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十五日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時二十一分散会


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