衆議院

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第3号 平成23年11月30日(水曜日)

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平成二十三年十一月三十日(水曜日)

    午前九時六分開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 浅野 貴博君 理事 市村浩一郎君

   理事 菊田真紀子君 理事 長安  豊君

   理事 村越 祐民君 理事 河井 克行君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 赤松 正雄君

      相原 史乃君    磯谷香代子君

      打越あかし君    小川 淳也君

      小原  舞君    大泉ひろこ君

      勝又恒一郎君   木村たけつか君

      後藤 祐一君    阪口 直人君

      首藤 信彦君    中津川博郷君

      中野渡詔子君    萩原  仁君

      浜本  宏君    早川久美子君

      山尾志桜里君    山口  壯君

      秋葉 賢也君    小野寺五典君

      金田 勝年君    後藤田正純君

      高村 正彦君    赤嶺 政賢君

      笠井  亮君    服部 良一君

    …………………………………

   外務大臣         玄葉光一郎君

   外務副大臣        山口  壯君

   防衛副大臣        渡辺  周君

   防衛大臣政務官      下条 みつ君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 甲斐 行夫君

   政府参考人

   (財務省国際局次長)   山崎 達雄君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月三十日

 辞任         補欠選任

  阿久津幸彦君     後藤 祐一君

  阪口 直人君     小原  舞君

  中野  譲君     木村たけつか君

  萩原  仁君     中野渡詔子君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     阪口 直人君

  木村たけつか君    中野  譲君

  後藤 祐一君     打越あかし君

  中野渡詔子君     萩原  仁君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  打越あかし君     磯谷香代子君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     阿久津幸彦君

    ―――――――――――――

十一月二日

 思いやり予算の削減・廃止を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五四号)

 同(笠井亮君紹介)(第五五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第五六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第五七号)

 同(志位和夫君紹介)(第五八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六二号)

同月二十九日

 原子力空母の横須賀母港をやめることに関する請願(志位和夫君紹介)(第二二〇号)

 思いやり予算の削減・廃止を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二二一号)

 普天間基地の即時閉鎖・無条件撤去に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二六九号)

 普天間基地の無条件撤去に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三四三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とロシア連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百七十七回国会条約第二号)

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百七十七回国会条約第三号)

 原子力の開発及び平和的利用における協力のための日本国政府とベトナム社会主義共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百七十七回国会条約第四号)

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とヨルダン・ハシェミット王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百七十七回国会条約第一四号、参議院送付)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房審議官甲斐行夫君、財務省国際局次長山崎達雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河井克行君。

河井委員 皆様、おはようございます。自由民主党の河井克行です。

 大臣、異例の委員会審議ということになりました。本来でしたら政府提案の条約案の審議、質疑を行う順番なのに、そうではなくて、また一般質疑をする、繰り返すことになってしまった。きょうは玄葉外務大臣の御就任に当たっての所信表明、そのあいさつに対する一般質疑をやり直すことになったわけでありまして、なぜこのようなことになってしまったかということは、すべては玄葉大臣のせんだっての委員会における答弁の不安定さというところに原因を発しておりますので、きょうはしっかりとした御答弁をしていただきたい。

 十月二十六日の当委員会で所信に対する質疑を行いましたけれども、沖縄における米軍再編、普天間飛行場の辺野古移設問題や北方領土などの領土問題について、私や他の野党議員の質問に対する答弁に余りにも稚拙な部分があり、委員会質疑が紛糾して、田中眞紀子委員長の裁断もあって、この二つについて内閣としての統一見解を出していただく羽目になりました。

 これまで外務委員会をずっと見てきたある先輩議員が、民主党政権誕生後、玄葉さんは、見ていて最も危うい外務大臣かもしれないと言っています。のっけからですけれども、本当にこんな不安定な大臣に日本外交を任せることができるのか、私は実は大変心配になってきておりまして、就任されたのが九月二日、ちょうどきょうで九十日たって、いまだに一本の条約の実質審議も始まっていない、国会における外交諸問題の審議の停滞、すべての責任は玄葉外務大臣とそれを支えなければならない与党民主党の皆さんにあるということをこの場ではっきりと申し上げたいと存じます。

 よって、もしきょうの委員会質疑で再び御答弁が足らざるところなどありましたら、また所信に対するやり直し質疑のやり直しを要求せざるを得ませんので、あらかじめ通告をしておきます。

 昨日報じられた田中聡防衛省沖縄防衛局長の暴言について、まずは質問していきたい。

 沖縄県の仲井真県知事は、口が汚れるからコメントしたくないと言いましたが、私も全く同じ気持ちであります。気持ちでありますが、ここは国民の代表である私たちが国家の将来を議論しなきゃいけないので、紹介したくありませんが紹介せざるを得ない。

 田中沖縄防衛局長は記者団との懇談の席で、犯すときにこれから犯しますと言うかと発言したと言われております。

 防衛副大臣、簡潔にお答えいただきたい。この発言で間違いありませんね。

渡辺副大臣 昨日、一川防衛大臣、そして事務次官が会いまして、発言の中身についてただしたところ、このような新聞の、琉球新報の見出しになっているような直接的な言い方ではないけれども、そのようにとられても仕方ないという発言をしたということは御本人も認めております。

河井委員 米軍再編というのは、国策で今内閣を挙げてお進めになっている野田内閣の最重要課題ですね。その作業を沖縄の現地でさまざまに汗をかきながら進めている多くの関係者、防衛省関係者、その関係者の中でも責任ある立場の言葉。言葉というのは、言葉だけでなく、その背後にはそれを支える認識なり思想があるわけで、つまり、そういう認識や思想をこの田中さんはお持ちであるということであります。

 防衛省の最高責任者はだれですか。

渡辺副大臣 防衛大臣であります。

河井委員 では、なぜ大臣がきょう沖縄に謝罪に行かないんですか。お答えください。

渡辺副大臣 きょう沖縄に行っておりますのは中江事務次官でございまして、きょうの午後に知事に会うという約束を取りつけております。

 昨日、記者会見でも大臣が申し上げました、まずは事務の責任者であります事務次官が行くということで、きょうは、まず当面、そのような対応をさせていただいたところでございます。

河井委員 役人がしでかした失態を国民の皆様におわびをする、それは政治家でしかできないんですよ。事務次官の仕事ではない。役所の幹部の集まりで、一川防衛大臣がきょう行くということは議題には上らなかったんですか。

渡辺副大臣 昨日会見した際も、そのような御指摘をいただきました。その場で、まず大臣から、謝罪の言葉が冒頭ございました。そして、沖縄に対して直接ということにつきましては、日程的な問題もございますので、きょうは事務次官が沖縄に急遽向かったということでございます。

河井委員 今、副大臣は、日程的な問題からとおっしゃった。どういう日程的な問題ですか。

渡辺副大臣 ですので、政治的な立場からもし大臣の謝罪がどうしても沖縄に必要だということになれば、そこは当然調整をすることにもなるであろうというふうに考えております。

河井委員 副大臣、今防衛省にとって、あるいは外務省もそうだけれども、内閣にとって、日米同盟の根幹がずっと揺らいできた、その一番の源である辺野古移設問題よりも大事な問題がありますか。何が日程的な問題ですか。これより重要な日程がどこにあるのか。もう一度お答えいただきたい。あなたは今、日程の問題から行けないと言ったんですよ。

渡辺副大臣 日程といいますか、昨日の話でございましたので、きょう急遽大臣が行くということにはこれはなかなかなり得なかっただろう、ですから、事務次官が行きますということで申し上げた次第でございます。

河井委員 全くお答えになっていません。事の重大性をわかっていらっしゃるのか。

 最高責任者が、政治家が頭を下げに、頭を下げに行ったところで沖縄の怒りが静まるとは到底思えないけれども、何で事務次官なんですか、何で政治家が行かないんですか、何で大臣が行かないんですか。防衛省にとって、今回の発言というのはそれぐらい軽い発言なんですか。役所の中で何で議論しなかったのか。あなたはさっき、議論しなかったとお答えにはなりませんでしたか、もう一度確認をしたい。

渡辺副大臣 議論といいますか、今回の問題を、昨日の朝報じられたことを受けて、当然、省内でも断続的に協議をしております。ですから、このことについて協議はしております。

河井委員 一川大臣が沖縄に行かない本当の理由は何か。大臣みずから沖縄に行って頭を下げる、またこれが、一川さんに対する問責決議案、あるいは不信任決議案、その材料になるんじゃないかと、一川さん個人を守りたいがために、沖縄に大臣みずから足を運ばないんじゃないかという指摘がある。問責逃れじゃないかという指摘なんですよ。いかがですか。

渡辺副大臣 そのようなことは一切我々は考えておりませんし、また、一川大臣は、そのようなことで現場に行くことを避けるというようなひきょうな方でもないということは断言しておきます。

河井委員 ひきょうでないんだったら、何度も言うけれども、羽田と沖縄の間は一日何便飛んでいるんですか、飛行機は。

渡辺副大臣 私は専門家ではありませんので便数までわかりませんけれども、相当数の飛行機が飛んでいることは承知しております。

河井委員 六十便以上飛んでいるんですよ、毎日。一時間で三便、四便飛んでいる。日程的だとか、そんなのは言いわけにすぎない。

 なぜ、政府の謝罪をするのが一事務次官なのか。私は、役人がしでかしたことのさまざまな失態、不始末の処置は政治家でしかできない、そのようにかたく信じているし、今回のこの防衛大臣がすぐに飛んでいかないというところに、今の政権のこの問題についての関心の薄さ、言葉では一生懸命やるやると言っている、オバマ大統領と会ったときは野田さんも必ずやり遂げますと言っているけれども、言葉と行動が全然伴っていないあらわれだ、そのように思います。

 この女性や沖縄の人々をさげすんで傷つける発言によって、今、沖縄側は猛反発している。かねてより沖縄県知事は、年内の環境影響評価書の提出は認められないと。そして今月十四日には、沖縄県議会全会一致で評価書の年内提出を断念するよう求める意見書を採択した。そして今回の暴言。もうこの政権にとってはトリプルパンチというか、この問題にとってこれでとどめじゃないか。こういった環境の中で、それでも年内提出できると考えていらっしゃるんですか、玄葉大臣。

玄葉国務大臣 今回の沖縄の防衛局長の発言、言語道断の発言であります。それを受けて、おっしゃるとおり、沖縄をめぐる状況というのは厳しさを増したというふうに思います。また同時に、今回のことは、沖縄に関連する閣僚の一人として、私からも県民の皆様に心からおわびを申し上げたいというふうに考えております。

 その上で、ただいまの話でありますが、先ほども申し上げましたように、厳しさを増した、同時に、きのう、官房長官も、また防衛大臣も、影響評価書の問題についての見解を変えていないという状況でございます。あくまで、準備を進めているということについては、準備は準備として進めさせていただきたいということでございます。

河井委員 きのう、この暴言を受けて、官房長官や防衛大臣は、それでも予定どおり年内に提出する方針は堅持すると会見でおっしゃった。今、玄葉大臣は、厳しさを増してきた、厳しさを増してきたけれども、年内に提出する方針に変わりはないと。ただ、それは、提出するという明言ではなくて、提出するための準備を進めるという御答弁であったと思いますが、再度確認をいたします。

玄葉国務大臣 それは、まさに今準備を進めているということでございます。

河井委員 しからば、準備をしたけれども、今回のことも含め、結果として年内に提出できないという可能性も出てきたのかどうか、お答えをください。

玄葉国務大臣 申し上げたように、厳しさは増したというふうに思います。ただ、あくまで、もう一度信頼を取り戻すことができるように、改めて一つ一つ可能なことを全力を尽くして行っていくということでございます。

河井委員 今、あくまでも信頼を取り戻すべく全力を尽くして頑張っていくとお答えになりました。その結果として、もし年内に環境影響評価書が提出できないとき、玄葉大臣は責任をおとりになるんですか。

玄葉国務大臣 今はとにかく、先ほども申し上げましたけれども、私の思いとしては、一つ一つ努力をして、それを努力で終わらせずに、一つ一つ可能なことをやっていくということを沖縄の皆様にも、特に事件・事故、環境、騒音のことで申し上げてきました。その積み重ねを始めたところでございます。

 改めて、厳しさは増しましたけれども、またもう一度そういうことを真摯にやっていって、一つ一つ実現をしていく、今はそれだけでございます。

河井委員 重ねてお尋ねします。

 大事な問題ですから、そういう一つ一つの積み重ねの結果、もしできなかったときは、外務大臣としてどのような責任をおとりになるのか、再度お尋ねします。

玄葉国務大臣 これはまさに、環境影響評価書につきましては、先ほども申し上げましたように、準備を進めているというのが今政府としての全体の見解でございますので、とにかく一つ一つ努力をしていく、それ以外にございません。

河井委員 三たびお尋ねをします。

 準備を進めているのであって、年内に必ず出すという御答弁ではないわけですね。

玄葉国務大臣 とにかく、今は準備を進めているということでございます。

河井委員 前回の委員会で玄葉大臣は、民主党の沖縄選出の国会議員や県会議員、県連の皆さんの説得に、賛成してくれるように全力を尽くすとお約束をされました。その後、一月が過ぎ去ったわけですが、大臣の説得によって、民主党の議員さんの中から辺野古移設に賛成する議員は一人でも出てきたか、お答えをください。

玄葉国務大臣 まず、民主党の中で理解を深めていくというのは、おっしゃるように当然のことだというふうに思います。私としてもこの一カ月間、民主党の、県連の皆さんも含めて努力をしてきました。それが、距離が縮まったかと言われれば、必ずしもそうはなっていない。見解が変わったわけではありません。ただ、胸襟を開いて意見交換を今している、そういう状況でございます。

河井委員 日本外交にはさまざまな案件があります、さまざまな課題があります。ただ、大臣、私はやはり、今のこの日米同盟の揺らぎというものをきちっと根っこから正していく、これが日本外交にとって今一番大事なことだと思いますよ。外交の足元をまず固めていただきたい。そういうことなんです。

 先週あなたは中国に行って、中国政府から歓待を受けられた。それで喜ぶような大臣ではないと思うけれども、そんな場合じゃない、肝心の足元をしっかりと固めなさい。この辺野古への移設にあなた自身は政治生命をかけるおつもりがあるや否や、お聞かせください。

玄葉国務大臣 もともとこの問題は、少女暴行事件から始まって、普天間の固定化を避けるというところから始まっているというふうに思います。沖縄の全体の負担をとにかく軽減しながら、同時に抑止力というものを減じないようにするということで、私たちは、特に外交、安全保障を預かる立場の者として、そういう対応をしていかなきゃいけないという状況にございます。

 政治生命をかけるか云々ということよりも、とにかく私としては、沖縄にかかわって、それは自分が例えば被災地の問題を生涯負わなきゃいけないと思っているのと同時に、この沖縄の問題に関しては生涯関係をしていかなきゃいけない、そういう思いでおりますけれども、今はとにかく、この沖縄の問題について、どういうふうに最終的に解決をしていくかということについて、自分自身いろいろと考えているところでございます。

河井委員 私は、大臣、政治生命をかけてでもやり抜きたいという答弁を今期待していたんですよ。これまで沖縄にかかわってきた歴代の総理大臣、外務大臣、防衛庁長官あるいは防衛大臣、その覚悟でやってきた方を私はたくさん知っております。

 年内の提出を含めて、これからうまくいかないかもしれない。でも、そのときは自分で潔く責任をとる。そうならないために、もう自分が火の粉もすべてかぶって、所管大臣として命がけでやっていく、政治生命をかけてやっていく、そういう覚悟を大臣みずからがこの委員会の場で示すことがなくて、何でこの難しい問題が前に進むかと私は思いますよ。

 何で政治生命をかけて取り組んでいきたいということをお答えできないんですか。残念です、聞いていて。もう一度、はっきりと決意と覚悟をお示しいただきたい。

玄葉国務大臣 政治生命をかけるという言葉を多くの政治家は頻繁に使う傾向にありますけれども、私は、できる限り言葉というものを選んで話そうというふうに思っています。沖縄の問題に対して全力を尽くすし、それは死力を尽くしたいという思いは非常に強いです。強いですけれども、そういう表現が本当に適切なのかどうか。

 沖縄の問題、私としても生涯かけてかかわって、全力を尽くして、沖縄全体の負担軽減、しかし同時に、日本の安保環境が厳しい中で遺漏なきようにしていくということ、そのことも含めて、死力を尽くしたいというふうに考えています。

河井委員 言葉を選ぶ玄葉大臣が、私が重ねて質問したのに、とうとう最後まで、みずからの政治生命をかけてやっていくという答弁がなかったということは、きっちりと記憶をさせていただきたいと思います。

 今回の田中防衛局長の発言、暴言の後半部分、この部分が私は大変気になった。政治家はわからないが、審議官級の間では、来年夏までに米軍普天間飛行場の移設問題で具体的進展がなければ辺野古移設はやめる話になっている。これは、外務大臣、事実なんでしょうか。まず大臣にお尋ねをしたい。そういう話になっているのか。お答えください。

玄葉国務大臣 今のその発言は、率直に申し上げて、私は直接聞いておりませんし、恐らく報道ベースだというふうに思いますので、直接公の場で私がコメントをするというのは余り適切ではないのではないかというふうに思います。

河井委員 防衛副大臣、いかがですか。防衛省の審議官級の間でこういう話になっているんでしょうか。

渡辺副大臣 結論から申しますと、なっておりません。

 そして、きょう報道された発言の後半の部分につきましては、どのような発言を酒席でしたのかということについて先ほどの前段の部分とあわせて尋ねたところ、御本人はそのようなことを言った記憶はないというふうなきのうのやりとりでございました。

河井委員 ちなみに、引用は、時事通信の十一月二十九日十三時十三分の配信の記事を引用させていただきました。

 ただ、実は同じようなことが十月十五日のNHKニュースで、米国移設先埋立申請要請へ、遅くても来年六月までにということで流れている。せんだっての日米首脳会談で、オバマ大統領は、来年六月を期限に具体的な進展を見せることを求めました。どのような動きを進展と位置づけるか明らかになっていなかったんですが、報道を引用しますと、これについて、アメリカ政府の複数の当局者は、具体的な進展とは、日本政府が沖縄県の仲井真知事に移設先沿岸部の埋立許可を申請することであるとした上で、今月下旬、これは十月だからもう一カ月前ですね、日本を訪れるパネッタ国防長官が一川防衛大臣との会談の中でこれを求める方針であることを明らかにした。

 今副大臣は、発言は記憶にないという供述だったということですが、来年夏までに動かなければ辺野古移設をやめるという話は、交渉相手のアメリカ政府から言われているのではありませんか。お二人にお答えをいただきたいと思います。

渡辺副大臣 パネッタ長官との会談、あるいはその夜の懇談の席、晩さんの席でも私は同席しておりますが、そのような具体的なお話は、いつまでに限ってという話はアセスの提出についてはございませんでしたし、また、審議官級のやりとりについては、我々も報告を受けていますが、やりとりについてここで申し上げるわけにはいきませんが、沖縄の田中局長が発言をしたような、そのような話になっているというようなことを、断定的に、我々はもちろん今現在の状況でなっているということはないということを申し上げたいと思います。

玄葉国務大臣 パネッタ国防長官とも私自身もバイで会談をし、また同時に、野田総理とオバマ大統領の首脳会談の最初の会談にも同席をいたしましたけれども、今御指摘のあったような具体的な時期の問題について言及はありませんでした。

河井委員 ただ、この時事通信の配信の前半には、政治家はわからないがと書いてあるんですよね。だから、今お答えになったのはお二人とも政治家ですから、政治家が知らないところでこうやって握っているんじゃないんですか。政治家はわからないがと言ったというふうに報道されている。

 先ほど副大臣は、断定的にはなっていないという持って回った答弁をされた。ということは、断定的ではないけれども、来年夏までに移らないときはやめる話に断定的にはなっていないと解釈していいんですか。お答えください、もう一度。

渡辺副大臣 これは、先ほどの新聞報道に田中局長の発言の趣旨という形で載っておりました。そして、それが六月までにできなければ何か普天間は固定化されるというようなことを断定的に申し上げているわけでございます。そんなようなことは一切話をアメリカとはしておりませんし、また、政治家はわからないかもしれないがという最初の冒頭の部分は私どもちょっと理解に苦しみますけれども、当然、必要な報告は受けているわけでありまして、事務方が政務三役の知らないところで何か握っているというようなことはあり得ないと、ここで私は申し上げておきたいと思います。

河井委員 外務大臣、今の関連で、来月、アメリカ議会の両院協議会はグアム移転の予算案の採決を行いますが、その見通しはどのように認識をしていらっしゃいますか。

玄葉国務大臣 そこは、確たることは現時点で申し上げられる段階ではないというふうに思います。当然、米国政府は議会に対してグアム予算について働きかけを行っていくものというふうに承知をしております。

河井委員 かなり厳しい結果が出てくるのではないかという観測がしきりに流れております。

 それでは、例の普天間飛行場の移設に関する特措法及び強制着工にかかわる統一見解、そして、竹島及び北方領土にかかわる表現についてということで、続けて大臣より、この間いろいろと議論をしていただいたと思いますが、見解をお示しいただきたいと思います。二つ一緒にお願いいたします。

玄葉国務大臣 特措法のことがまず一つあるのかというふうに思います。その後、改めて関係閣僚ですり合わせをして整理をしたところでございます。

 現在の日米合意は、全体として、少なくとも現状に比べると沖縄の大きな負担軽減につながると考えており、政府全体として沖縄の方々の理解を得るべく誠心誠意努力しているところであり、特措法を制定することは念頭に置いていないということで、これは改めて関係閣僚ですり合わせを行ったということでございます。

 それと、いわゆるこの間の竹島及び北方領土に係る表現、つまりは、法的根拠のない形で占拠あるいは不法占拠の違いいかん云々ということでありますけれども、法的根拠のない形で占拠や不法占拠といったいずれの表現でありましても、竹島及び北方領土が置かれた状況についての日本政府の法的評価は一貫しており、この点についての日本政府の法的立場に変わりはございません。

 これを踏まえて、どのような場でどのような表現を使うかについては、それぞれの政権のその時々の政策的な判断により異なり得るものである。その時々の政策的判断とは、例えば、領土問題は相手国との交渉等を通じて解決するべきものであるということや、そして、その時々の相手国との関係全般等を考慮した結果として行われる政策的判断を指すものである。

 これは、先般、河井委員からこの問題の指摘があって、いわば民主党政権になって岡田外務大臣からこういう表現を答弁で使うということについて、政権がかわった、野田政権になったんだから、野田政権としてもう一度整理をすべきだろうというお話をいただいて、その上で整理をさせていただいたということでございます。

河井委員 二つの問題について、今統一見解が示されました。最初から出していただけましたら、きょうの委員会を開く必要もなかったわけでありまして、しっかりと今後はお勉強して答弁をしていただきたい。

 今、領土問題について、民主党政権にかわってから表現が変わったという言い方でおっしゃいましたが、どうでしょうか、その前は、自民党政権時代にはどういう言葉を使っていたか御存じでしょうか。

玄葉国務大臣 麻生外相の当時の発言ということで手元にございますけれども、「竹島が韓国によって占拠をされているという状況につきましては、これは国際法上何ら根拠がないままにその状態が続いているという、いわゆる不法占拠ということになろうと思っております。」と。岡田外相時には今のような形で変わっていき、また、前原外相、松本外相と基本的に続いているということでございます。

 ちなみに、岡田外相は、これは認識ではなく表現の問題である、事実の問題ではなく表現の問題である、私としてはそういう表現は使わないということを申し上げている、前原外相は、我が国の固有の領土であるけれども、法的根拠がない形で支配されているということでございます、松本外相は、竹島については、我が国固有の領土であり、また、竹島が法的根拠のない形で占拠をされているというのが私どもの日本政府の立場であります、そのように答弁をしていると承知しています。

河井委員 今の答弁でもう一度確かめたいんですが、麻生さんが法的根拠のない占拠と言ったということも含め、日本の首相や外相らが不法占拠と言わなくなったのは、玄葉大臣、いつからですか。これは大事な点ですから、お答えをいただきたいと思います。さっきの、麻生さんは、いつ、どこで言った発言かということもあわせてお願いします。

玄葉国務大臣 ちょっと今、いつ、どこからかというのは少し確認をさせていただければと思います。

 麻生外相の当時の発言というのは、私の手元にございますのは、二〇〇七年の六月七日、参議院の外交防衛委員会ということでありまして、先ほど申し上げたように……(河井委員「二〇〇七年。では、外相時代」と呼ぶ)二〇〇七年、麻生外相ですね。麻生外相が、「いわゆる不法占拠ということになろうと思っております。」というふうに発言されていると承知をしております。

河井委員 玄葉大臣、玄葉大臣というか、外務省はもっとちゃんと後ろから出さなくちゃだめですよ、そんなことじゃ。

 麻生さんが首相になった後、ロシアとの間でさまざまなあつれきがあったわけでしょう。そのことを答弁してください、ちゃんと。

玄葉国務大臣 北方領土の方でありますけれども、麻生総理は二〇〇九年の五月二十日、参議院の予算委員会で、「北方四島はいまだかつて一度として外国の領土となったことがない我が国固有の領土であります。これは基本だと思っております。戦後六十年以上を経て、今現在もなおロシアによる不法占拠が続いているということは極めて遺憾なことだと、これは基本だと思っております。」というふうに、今度は、総理の時代の二〇〇九年の、これは北方領土に関する発言ということで承知をしております。

河井委員 それは、ですから、今、不法占拠という言葉だということですね。(玄葉国務大臣「はい」と呼ぶ)そうですね。

 それは、二十一年の二月二十七日の衆議院予算委員会、三月二十七日の参予算委員会、五月二十日の参予算委員会でも、麻生首相は不法占拠が続いていると言い続け、その結果として、メドベージェフ大統領が五月二十九日に、駐ロ大使の信任状奉呈式で不快感を示した。五月三十日の日ロ首脳電話会談で、メドベージェフ大統領は表現について自制を求めた。その結果、六月五日の衆議院の外務委員会で、中曽根外相は不法占拠という言葉は使わなかった。七月十日の日ロ首脳会談、イタリア・サミットで、麻生首相は、国際法上根拠のない占有という言い方に変えた。

 つまり、民主党政権にかわってから不法占拠という言い方をやめたわけではなく、自民党政権時代からずっと続いているということ、それをちゃんとやはりしっかりと勉強しておいていただきたい。そして、それはどうしてそうなったかということが、まさにさっきあなたがお示しになった統一見解の二、領土問題は相手国との交渉を通じて解決すべきことという事柄があるわけですよ。だから、そういうことをちゃんとわかった上で、この前も答弁をしてほしかったということを重ねて申し上げたい。

 一つ目の問題ですけれども、先ほど、各閣僚で精査をしたというふうにおっしゃいましたけれども、その中で、特措法の問題ですね、菅さんは去年の十月十二日の衆議院予算委員会において、特措法という形で強引なやり方をするということは念頭に全くありませんと答弁された。あなたはこの前は、現時点で政府全体として判断をしていないとおっしゃった。(玄葉国務大臣「そうです」と呼ぶ)だから、違うわけですよ。全く念頭にないという人と、判断していない。判断していないということは、これから考えたら念頭にあるかもしれない。

 だから、そこをしっかり統一見解をつくってくれと言ったんですけれども、なぜこのような食い違いが十月二十六日のこの委員会の席であったのか。実は将来、玄葉大臣自身が特措法を考えているからそのような発言が出たのか、それとも単なる勉強不足だったのか、どっちかだと思うんですけれども、お答えをください。

玄葉国務大臣 率直に、あのときにいわゆるその問題について、総理も含めて、その部分も含めた整理というものがその時点では十二分になされていなかったので、特にこの問題は、もちろん外務省は関係が深いですよ、ただ、防衛省が基本的に所管をして進めていく話なものですから、私自身が余り踏み込んだ発言というのをすべきじゃないだろうということで、とにかく関係大臣とすり合わせないといけないということで、その当時、私はそのように発言をしていたということでございます。

河井委員 大事な問題ですから。もうすぐ終わります。

 総理を含めて整理をしていなかったということ、その総理というのは野田総理のことを指すわけでしょうか。でも、菅総理は既に昨年の十月の答弁で、念頭に全くないということをお答えになった。野田内閣になって、十月二十六日に質問した時点では、内閣として整理していなかったから自分も答えられなかったという意味なんでしょうか、それともあなた自身が整理をしていなかったということ、どっちなんでしょうか、はっきりと。

玄葉国務大臣 私が質問をされたときに、関係者全体でのその特定の質問に対するすり合わせ、たしかあのとき、失礼ですけれども、多分個別の通告がなかったと思うんですけれども、あったら多分政府内で調整した上で答弁していると思うんですけれども、なかったものですから、すり合わせをして臨めなかったというふうになったのが実態でございます。

河井委員 これで終わりますが、個別の通告がなかったと今大臣おっしゃいましたけれども、大臣御自身の就任に当たっての所信表明の言葉の中に、この普天間基地の移設、米軍再編は最重要課題だ、日本の国益のためにも進めなくちゃいけないということをお書きになってお話しになったのは大臣御自身でありますので、私は、これはもう個別の通告以前の問題であり、それについてすり合わせがなかったという御答弁を聞いて、今大変びっくりもいたしております。

 きょうのところはこれで終わらせていただきます。終わります。

田中委員長 次に、三ッ矢憲生君。

三ッ矢委員 自由民主党の三ッ矢憲生でございます。

 前回の十月二十六日の委員会以降、一カ月ほどたったわけでありますが、今の河井委員とのやりとりを聞いていまして、特に普天間の問題、防衛省の問題でありますけれども、私、実は尖閣のときもそう思ったんですけれども、やはり今の政府のガバナンスというか、ガバナビリティーが相当問題があるんじゃないか、要するに、官僚組織が相当弛緩しているというふうに思いました。

 普天間の問題も、さっき河井委員が大臣が政治生命をかけるかどうかということをずっと聞かれましたけれども、こんなものうまくいかないのはみんなわかっているわけですよ。正直なところはそうだと思いますよ。アメリカに言われて一生懸命ポーズはとっているけれども、こんなものうまくいくはずがない。だから、政治生命をかけるなんて言えないわけですよ。

 それが証拠に、鳩山さんが総理のときに最低でも県外と言ったときに、では、民主党の中でそんなこと反対だと言った人、だれがいたんですか。だれもいなかったですよ。それを今になってひっくり返そうという話の方が無理に決まっているんです。

 それはともかくとして、この一カ月間に何が起こったか、きょうはTPPの話も含めてお伺いしたいと思います。

 十二日、APECがハワイでありまして、その席で、野田総理、玄葉大臣も含めてほかの閣僚の方も行かれたと思いますが、参加を前提にという言葉を使ったかどうか知りませんけれども、関係国と協議に入るという言い方をされましたね。

 これは、御本人がどう言おうが、受けとめる方は参加表明というふうに受けとめているわけですよ。現に、アメリカのホワイトハウスのプレスリリースは、例外なく日本は交渉に入るというか当たるんだということをリリースしたわけですね。それに対して、日本はそんなこと言っていないと言われたようですけれども、では、それを修正しろとか訂正しろということまでは言っていないし、ホワイトハウスもそんなものは訂正するつもりはないと言っているわけですから、外国の受けとめは、日本はこれでもう参加表明をしましたというふうに当然受けとめているんだと思うんですね。

 国内でどう言おうが、そんなことは詭弁にすぎなくて、国際的な場では、これはもう完全に日本は参加を表明しました、少なくとも交渉への参加は表明しましたということであります。

 野田総理は、いつも何か抽象的に、日本はTPPの交渉に参加しても守るべきものは守るんだと言われますけれども、その守るべきものとは具体的に一体何なのかということは、いつもはっきりおっしゃらないわけですよね。これが非常にわかりにくい。

 国際常識からしても、参加表明をしたというのはもう既成事実になっちゃっているわけですから、私はこの件に関しては余り言ってもしようがないと思っているんですけれども、国際的には全く通用しないレトリックですから、それはおかしな話ですなということだけを申し上げておきたいと思うんです。

 大臣は、TPPの交渉に参加する、現にTPPに加盟するということになったときに、今の枠組みで、九カ国プラス日本、カナダとメキシコ、これはちょっと後でまた話をしますが、参加表明をしたというようなことも報じられていますけれども、今の枠組みの中で日本にとって目に見えるタンジブルなメリット、何があるんですか。どうお考えですか。

玄葉国務大臣 目に見えるメリットは一体何なんだということでございます。

 多国間のTPPという経済協定の中で、一つは、ルールメーキングができる余地がまだ十二分にあるということではないだろうかというふうに思います。つまりは、我が国にとって得るべきというか獲得したいルールというものに対して、まさに、交渉に参加をした場合の話でありますけれども、参加をしたときに、それを得ていくということが一つございます。

 そして、外交、安全保障上の意義も私はあるというふうに思っています。それは、米国がアジア太平洋の中で関与を強めるということが一つあるだろう。そして、ASEAN、そして特にアジア全体とも重層的な関係、インドも含めて考えてもいいかもしれませんけれども、重層的な関係を築いていくということもあるだろうと思います。

 そして、中国も、すぐにというわけにいかなくとも、TPPという高いレベルの、しかも多国間の経済連携協定というものが動き出すことで、やはり高いレベルの経済連携というものに関与していくという一つの契機になっていくのではないかというふうに私自身は考えているところでございます。

 先般も三ッ矢議員と関税が幾らかとかという話があったのを記憶していますけれども、もちろん、関税が下がるとかという問題は当然メリットとしてあります。逆に、デメリットの部分も当然これはあるわけであります。ただ、それだけではなくて、いわゆるそういった投資環境のルールとか、あるいは特に知的財産権の問題など、我々がやはり獲得したいルールだと思うんです。そういったものについて、二国間のみならず多国間で適用されるルールをつくっていくというのは、やはりメリットになり得るんだろうというふうに思います。

三ッ矢委員 私が伺ったのは、今のTPPの枠組みの中でタンジブルなというのは、例えば日本の輸出がその九カ国を相手にふえるのか。あるいは、ルールメーキングと大臣おっしゃいますが、それによって日本が得るものがどういうものがあるのか。それから、安全保障上のメリットの話もされましたけれども、TPPに日本が入ることによって、例えば対中国との関係で本当にメリットがあるのかどうか。逆のケースももちろん考えられるわけでありまして、私は、TPPに中国は入らないと思いますよ。ちょっと思わせぶりなことを言っていますけれども、厳しいルールをつくってしまったら中国は絶対入ってこない。だから、逆のケースが十分に考えられるんじゃないかなというふうに思っているんですね。

 それで、物品に関しては、日本は多分、少なくとも今入っている相手の九カ国に関しては、カナダとメキシコを含めてもいいですけれども、ほとんど売るものはないんですよ。それらの国に対して日本からの輸出が飛躍的にふえるかといったら、ほとんど考えられない。逆に、これはもともとP4ということで始まった小国の仕組みですけれども、そこにアメリカが入ることによって劇的に変わったわけですね。言ってみれば、ガリバーが小人の国に入り込んでいって、リリパットにガリバーが行きましたよという感じじゃないかと私は思っているんですよ。

 日本にとって余りメリットがないというのは、これ以上申し上げてもしようがないので言いませんけれども、逆に、アメリカは、このTPPで、しかも、そこに日本が入ってくることによって何を期待しているというふうに大臣はお考えですか。

玄葉国務大臣 若干だけ補足させていただければと思うんですけれども、先ほど、メリットというときに、外交、安全保障上の意義をやや強調し過ぎた面がございますが、関税の率はもう既にすべて御存じのとおりで、確かに大きくはないんですけれども、ただ、実際は、為替が大きいとはいったって、やはり関税も一つの大事な要素であることは間違いない、低いとはいえ。それが一つある。

 それと、ルールは、私がこの間よく申し上げていたのは、例えば、投資をしたときに、ブラックボックスにしたいところを技術開示を求められるというようなことがよくあります。それをそのままにしておいていいのか。あるいは、ロイヤリティーの上限比率を定めている、そういうものがありますね。そういうことを、こういう交渉を通じてやはり我々は獲得していかなきゃいけない。あるいは、輸出手続の簡素化なんかもそうかもしれませんけれども、そういうことがまず十二分に考えられるんじゃないかというふうに思います。

 ある国は、自国製部品を使わなきゃ絶対だめだとか、そう言っているわけですよね。だから、そういうことを、やはり我々は、そうではないよということを獲得していかないといけない。そういう意味では、チャンスであるというふうに思います。

 それと、今の御質問の、ではアメリカのねらいは何なんだということですが、手元にございますのでオバマ大統領の発言ぶりからあえて引きます。一つは、太平洋国家として環太平洋地域の安全と繁栄にコミットする。二つ目は、米国の輸出増加、雇用の増大、経済の成長に資する。三つ目は、TPP協定は、アジア太平洋地域に限らず、将来の通商協定にとってもモデルとなり得るというのが、オバマ大統領が表で言っている発言であります。

 それで、先ほど中国の話が出ました。私も、この間、日中外相会談の中でもこの経済連携の話というのは出まして、報道なんかにも出ておりましたけれども、TPPはFTAAPの一つの基礎であると。まあ、思わせぶりだ、こういう話でありますが、ただ一方で、中国は日中韓のFTAに対して極めて前向きになってまいりました。そして、年内にもその前提となるいわゆる投資保護協定というのを日中韓でやろうじゃないかということも、温家宝総理御自身が私に述べておられたということもありますので、やはりこれは、TPPというものをまずしっかり押さえつつ、日中韓も含めて、ASEANも含めて進めていくということがよいのではないかというふうに思います。

三ッ矢委員 私は、実はアメリカのねらいははっきりしていると思っているんですよ。これは、日本が入らなければほとんど意味のない仕組みなんですね、残りの九カ国というのはみんな小さな国ばかりですから。しかも、マレーシアとかシンガポールに至っては、GDPより輸出額の方が大きいような国ですから、輸出主導の国なんですよ。だから、日本はもうほとんど売るものがないんですね。

 アメリカが何をねらっているかというのは、いみじくも大臣がおっしゃったように、オバマさんが、輸出を拡大して雇用を拡大するんだよと。来年に選挙を控えて、アメリカの経済は非常に調子が悪い、FTAもそうなんでしょうけれども、TPPを通じて、アメリカの経済の成長を図り、輸出を通じて雇用を拡大していくんだ、こう言っているわけですね。

 では、日本以外の国で、TPPの今のメンバーですよ、アメリカが何か売るものがあるかといったら、もうほとんどないですよ。だって、今度入ると言っているカナダやメキシコにしたってNAFTAに入っているんですし、ほかの小国に対してアメリカが何を売るんだといったら、むしろ競合する面が多い。例えば食料。穀物なんかについてはオーストラリア、あるいは乳製品についてはニュージーランドが競合している。こんなものないですよ。

 ただ、日本が入ったら全然違う。日本も二十年前と比べて衰えたりとはいえ、この間もちょっと構造協議の話をしましたけれども、あのころはまだ日本も余裕があった、だけれども、もう今ないわけです。しかし、人間が生活している以上、物は食べるわけですし、これが一つですね、食料。日本の食料に関する高い関税、例えば米、七七八%、牛肉については、これはTPPというよりはむしろBSEの問題かもしれませんけれども、月齢三十カ月まで云々というような話もされています。食うものは買うだろうと。あるいは穀物、飼料も含めて、これもアメリカからほとんど輸入していますから、これはもっと売れるんじゃないかと。だから、ここはねらっている。

 もう一つは、私は、日本人が持っている貯金だと思いますよ、千四百兆円と言われている個人の金融資産。これは、では、どうやってねらってくるんだといったら、金融であり保険であり、あるいは医療であり、しかも、高齢者がほとんどこの貯金を持っているわけですから、大部分は。それをねらってくる。言葉は悪いですけれども、アメリカによる振り込め詐欺だと私は思っていますけれども、これは別に違法だというわけじゃなくて、私がアメリカだって同じことを考えると思います。

 問題は、日本政府がそのお先棒を担いでいるということなんですよ。これはもうすってんてんにされますよ、私の構造協議をやった経験からいうと。日本にそんな交渉力があるか。対等の交渉相手じゃないんですから、アメリカは。さっきいみじくも大臣が安全保障との関係もありますと言ったのは、そこですよ。それをもし考えているとしたら大間違い。アメリカは、TPPに日本が入ろうが入るまいが、安全保障上やはり日本は必要なんです。私はそう思う。

 普天間でどじをやったから、大きな穴をあけちゃったから、そのかわりに、ではTPPで穴埋めしますよ、もしそんなことを考えているんだったら大間違いですよ。関係ないんです。私は関係ないと思っている。だから、そこは毅然たる態度をとらないと。ただ、アメリカにしてみたら、普天間の問題をいつまでも早くやれ、早くやれと言っておくと、これはカードとして使えるわけですし、私だってそう使いますよ。

 だから、今度の問題は、実は非常に大きな問題をはらんでいる。余り日本みたいに単細胞で、何でもかんでもアメリカの言うことを聞いて、はい、わかりました、それで、気がついたらすってんてんになっていました、これは非常に危ない状況だと私は思います。

 それから、カナダとメキシコが参加をすると言ったのも、これもやはり日本が参加を表明するということに連動しているんだと思いますよ。さっきも言いましたけれども、カナダ、メキシコは、日本がもし入らなかったら、ほとんどこれは入っても意味がない。では、カナダやメキシコは日本に対して何をしたいんだといったら、やはり穀物の輸出であり、あるいは乳製品の輸出であり、メキシコに関して言うと、今度EPAを改定もしようとしていますけれども、豚肉とか鶏肉とか、こういうのは、日本が入ってきたらこれはもっと売れるぞ、絶対そう考えているんですよ。当然だと思いますよ。

 だから、こういう状況の中で、日本がこれからどれだけの交渉力を発揮できるのか、私も非常に、はてなマークが三つぐらいついているんですが、非常に厳しい対応を迫られてくる。

 それから、ちょっと話をはしょりますが、TPPと日米の安全保障関係、今、もう大分触れましたけれども、私は、さっきも言いましたように、これは余り関係ないと思っているんです。関係なくも、アメリカは、東アジアの安全保障の関係については、海兵隊の例の米軍のローテーションの問題とか、現に動きをもうどんどん始めているわけですね。後ほど触れますが、オーストラリアの問題とか、そういうこともやろうとしている。

 大臣は、TPPの問題とも離れて、あるいは大臣が関係あるとおっしゃったんだったら、TPPと安全保障の問題についてもどういうふうに関係あると考えておられるのか。それから、最近の米軍の一連の軍事的なプレゼンスの変化というんでしょうかね、グアムに八千人海兵隊を移すとか、あるいはダーウィンに海兵隊を二千五百人ですか移駐させるとかいう話もありますけれども、大きなコンテクストの中で、大臣はこのアメリカの動きについてどういうふうに考えておられますか。

玄葉国務大臣 より正確に申し上げると、日米安保そのものと直接関係するわけでは私もないと思います。おっしゃるとおりです。ただ、外交、安全保障上の意義ということでいえば、先ほど申し上げたような大きな絵というのは、逆に言うと、全く関連しないというのも変な話だというふうに私は思っています。

 その中で、今お話があった例えばメキシコとかカナダの話というのも、率直に申し上げて、今、日本とスタートラインが一緒という状況にあるんだろう。それで、メキシコなりに、カナダなりに、当然自分たちで主体的に判断をしたというふうに思いますし、日本も、当然これは主体的に判断をしているということであります。

 先般も議論になりましたけれども、やはり私たちの国がこれだけ少子高齢化になって、人口減少が起きて、二〇四六年に一億人を切るという状況の中で、どうやって豊かさを子供たちに伝えていくのか、引き継いでいくのかということを考えたときに、このアジア太平洋、七十億の人口のうちの四十億がアジア太平洋にいるというのが実態だし、中間層がこれからどんどんふえていくというときに、この地域の中でのルールメーキングに私たち日本が主体的にかかわらずしてどうなのかということがやはりあるのではないかというふうに私は思っておりますので、そのことは繰り返し申し上げたいなというふうに思います。

三ッ矢委員 安全保障との関係でいいますと、TPPと絡めて言う人もいるんですけれども、私自身は、さっきも申し上げたように、余り関係ないと思っているんです。というのは、アメリカにとりましての日本の戦略的な地位といいますかね、ほとんど変わらないと思います、TPPに入ろうが入るまいが。もし中国包囲網の一環でやるんだといったら、それは話は別ですよ。だけれども、そんなこと思っていないわけでしょう。

 そうしたら、ではほとんど影響を受けないはずだし、むしろ、TPPに入ることによって日本がアメリカから経済的な非常にダメージ、さっきもちょっと申し上げました、むしり取られるというような状況が出てきたときに、日本側の反発の方が私は怖いと思っているんですよ。ナショナリズムが台頭してくる可能性もある。アメリカとの関係を見直さなきゃいかぬ、あるいは場合によっては、やはり自主防衛をやろうじゃないかというような話にだってなりかねない。むしろそっちの方を心配しているんです。

 ちょっと別の観点から聞きますが、TPPの交渉を通じて、国益に反するような事態が出てきたときには離脱をするというような言葉を使われた人がいますね。私は、離脱という言葉は使わない方がいいと思いますよ。離脱というのは、何か日本が悪いことをしてやめますみたいな感じの印象を受けるんですね。だから、それは、合意に達しなかったからやはり参加できませんと言った方がいい。外務省はよもや離脱なんという言葉は使っていないとは思いますが、そこはちょっと言葉も気をつけないと。

 それから、平成の開国なんという言葉も、余り安易に使っちゃいけないですよ。何か開国していないというイメージを与えているんですよね、諸外国に。だって、日本はほとんど開かれていますよ、経済の面でいうと。

 だから、そういうセンセーショナルな、マスコミ受けする言葉を、これはまた安易にマスコミも使うわけですけれども、少なくとも、政府はそういう言葉を使ってはいけないと私は思いますよ。誤ったイメージを、日本国民もそうですけれども、諸外国に対しても与えてしまっている。だから、そこはよっぽど注意してもらわないと。私は、むしろそこで国益を損ねているというふうに思いますので、そこだけ、注意といいますか、ぜひ気をつけていただきたいなということを申し上げておきたいと思います。

 時間がなくなってきたので、もっといっぱいいろいろ聞こうと思ったんですが、ちょっとASEANというか、バリの話に行きたいんです。

 大臣は行かれなかったようですけれども、いろいろなマルチ、ASEANプラス3とか6とか、EAS、それからバイの会談もいろいろやられたようですが、十日ほど前ですか、この一連の会議についての成果をお伺いしたいと思います。

玄葉国務大臣 おっしゃるように、実はEASそのものについて私自身は出席をしたわけではありませんけれども、ただ、ASEAN、特にシンガポール、マレーシア、インドネシアには私の方で訪問をした経緯がございますので、そういったことも含めて、当然、外相でもございますし、この間のやりとりは聞いてございます。(三ッ矢委員「簡潔にお願いします」と呼ぶ)はい。

 やはり大きな前進があったというふうに思っています。つまりは、このアジア、特にアジア太平洋の秩序の形成、地域の共通の理念、ルールの確認、協力のネットワークの強化ということに向けて、やはり前進があったと私自身考えております。

 特に、米国やロシアが新たに加わったことは御存じのとおりなので、政治、安保面での取り組みが強化されたということと、いわゆる公共財である海洋に関して、国際法の遵守ということ、その重要性というものがEAS全体で確認された意義というのは大きいというふうに私は思っています。

 また、もう一つだけ、時間がないということでありますが。日本・ASEANの首脳会議では、これは日本とASEANだけでやっていますけれども、いわゆるASEANの連結性の支援とか防災協力、このことがきちっと確認されて、きずなが強化されたということもあります。

 もう一つ言わせてください。南シナ海の話も、参加国から、国際法に従って平和的に解決されることが重要であるという発言があったり、あるいは七月の中国・ASEAN外相会議の際に南シナ海に関する行動宣言の、これはDOCといいますけれども、ガイドラインに合意されたことを歓迎して、今後、法的拘束力のある行動規範、COCが策定されることへの期待が表明されたりということで、私は、全体的に、ルールの確認という意味では、やはり大きな前進があったのではないかというふうに認識をしています。

三ッ矢委員 一つだけ指摘しておきますと、大臣の評価はそういうことなんでしょうけれども、実は、インドネシアの大統領と会えていないんですよね、ユドヨノ大統領と。これはAPECのときも会えなかったし、今回のバリでも会えていないわけです。私に言わせると、ていよく断られているわけですよ、時間がないからとか言って。だけれども、インドネシアは、きちんとアメリカや中国とはバイの会談をやっているんですよ。

 これは、要するに、相手にされていないと言うとちょっと言い過ぎかもしれないけれども、でも、ASEANの議長国であるインドネシアとバイの会談ができていないわけですから、それが全部すべて物語っていると思いますよ、私は。だって、大臣が行かれたときも表敬訪問できなかったんでしょう、ユドヨノさんに、十月に。(玄葉国務大臣「いいですか、委員長」と呼ぶ)いいです。知っていますから、いいです。

田中委員長 答弁求めますか。

三ッ矢委員 求めません。

 それで、ちょっとさっきのアメリカのダーウィンの話を聞きたいと思うんですが、オバマがバリに行く前にダーウィンに寄って、オーストラリアと包括的な協定について合意した。これは、海兵隊の移駐の話ばかり言われていますけれども、実は、港を使ったりあるいは空港を使ったり、自由に使えます、演習も自由にやってください、非常に包括的な協定を結んでいるんですよ。このインプリケーションですね、アメリカがあそこにプレゼンスを確保した。これは、インド洋、それから南シナ海とも関係があるのかもしれませんけれども、これに対するASEANの反応、私もつまびらかに知っているわけではないんですけれども、恐らく、嫌がっている面と喜んでいる面と両方あると思うんですけれども、大臣はどういう評価をされますか。

玄葉国務大臣 先ほど、おっしゃるように、インドネシアというのはすごく大事な国で、議長国だったんですね。私も、首脳会談はたまたま日程上できなかったんですけれども……(三ッ矢委員「そこは結構です」と呼ぶ)でも、一言だけちょっと。二カ月間で私は三回会いました、マルティ外相と。書簡もそのプラスアルファ、こういった問題でやっています。ですから、相当の地ならしというか……(三ッ矢委員「私が言ったのは、総理とユドヨノさんが会ったかということです」と呼ぶ)それはわかります。

 それで、今のお話でありますけれども、豪州における米軍のローテーションの展開についてのASEANの反応ということでありますが、例えば、先ほど申し上げたインドネシアのマルティ外相がどう言っているかといえば、我々は、ここ数日間で、オバマ米大統領及びギラード豪首相から、最近の米豪による進展は、地域のいかなる国に対しても敵意を示したものでも、あるいは非友好的なものではないというふうに聞いて非常に安心をしていると。これは公の発言でございます。

 また、例えばベトナムでございますが、我々は、各国間の協力の強化が、地域と世界における平和と安定、協力を維持するための共通の努力に積極的かつ責任のある形で貢献するということを希望していると。

 これは、やはりどうしても公の発言を引用せざるを得ないものですから、御理解いただければと思います。

三ッ矢委員 いつも最後にミャンマーのことを聞こうと思って聞けなくなっちゃうんですが、クリントンが今度ミャンマーに行きますね、近々。ミャンマー、これは三年後ですか、ASEANの議長国になると聞いていますし、文民政権になって相当対応も変わってきた。日本としてはいろいろな面で協力をしたい。しかも、地理的に非常に重要な位置にありますからね。アンダマン海に面していて、中東とかアフリカとかから物資を運んでくるのに、インドシナ半島の入り口になるわけですよ。だから、日本としても相当協力をしたいという気持ちがあるんだと思うんですけれども、いかんせん、過去の借金が多過ぎるんですよ、円借。これでは円借が出せない、そこにけりをつけない限り。

 そこで、では日本として、例えばミャンマーのインフラ整備についてどういう協力をしていくのか、どういうツールを使っていくのか。これは答えなくて結構ですけれども、いずれまた伺いたいと思いますが、ぜひそこは外務省としてもしっかり考えて、アメリカがどんどん入ってきますよ、今までは中国に一方的にやられていたけれども、次はアメリカ、日本は気がついたら蚊帳の外、絶対そうなっちゃいますから、そうならないように、ぜひいろいろな手段を考えて対応していただきますように、非常に重要な国ですから、そこだけお願いしておいて、もう時間が来ましたので、筆頭理事が早く終われと言っていますのでやめますが。

 いずれにしても、外務省、私は日本外交の正念場に来ていると思っていますので、気を引き締めて、ガバナンスの方もしっかりやっていただくように、役人をたるませないようにしっかり対応していただきたいなということを申し上げて、終わります。

田中委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 おはようございます。公明党の赤松正雄でございます。

 私は、きょうは一般質疑でありますけれども、前回の一般質疑の最後に触れましたヨルダンとの原子力協定という問題、これにほぼ絞って、大臣は十一時にここを退室されないといけないということなので、十分なくなっちゃいましたけれども、私も質問を四十分で終わろう、そう思っております。

 まず、ヨルダンの原子力協定をめぐって参考人質疑というのを八月の二十四日にやったわけですね。あのときの参考人質疑、これは、大臣や副大臣は直接この場にはおられなかったんだけれども、中身はよく聞いておられますね。聞いておられると思いますが。

 あのときの状況というのは、民主党の委員が非常に率直な意見表明をされた。なかなかよかったと思います。ただ、その質問をめぐって、参考人のある方の指摘がなかなか正鵠を射ているんじゃないのかという話になって、私どもも、事の真偽、外務省がどのようにこの問題をとらえているのかということについて非常に大きな関心を持ったわけです。

 その後、外務省は現地に外務省のメンバーを派遣された、こう聞いておりますけれども、まず、なぜ現地に外務省のメンバーを送ったのか。そしてその概要、細かいことは後で聞きますけれども、何ゆえに送って、何をしてきたのか、それについて山口副大臣から御答弁をお願いします。

山口副大臣 赤松議員が今御指摘いただいたヨルダンのことに関して、これは、外務省の方では九月の二十九日に中東局の参事官がヨルダンを訪問して、いろいろとヨルダン政府からも直接聞かせてもらったような次第です。

 あと、今、民主党の同僚議員の方からいろいろ質問があったということで、その同僚議員も直接現地に赴いていろいろと見てきたというふうに聞いております。それを外交部門会議等の方でもいろいろと報告いただいたというふうに私も承知しております。

 そういう意味で、外務省として、このときに経済産業省の資源エネルギー庁からも一人一緒に行っていただいて、候補地域の視察ということも行ったようです。

赤松(正)委員 九月二十九日に現地を視察した。それまで外務省としては、民間、三菱重工業がこれに積極的に取り組んでいるということで、現地の状況等については掌握をしていなかったということですか。

山口副大臣 この協定についての議論の中で出てきたものですから、やはり外務省としても、直接行って確かめてきたかったというところであります。

赤松(正)委員 そのあたりが非常に後手に回っているという印象を強く受けるわけですね。

 その際に、参考人質疑で田辺参考人から指摘をされた問題点について、大きく言って五つほど挙げたいと思うんですが、一つは、冷却水の確保が困難な立地ではないのか。二点目が、不明確な周辺インフラ。耐震性について疑問がある。三点目、周辺人口が極めて多い。したがって、事故が起きたときに甚大な影響を与える。こういう問題の指摘。四つ目に、安全保障の面で高いリスクを負う。そういう地域情勢があるではないかというのが四点目。五つ目には、ヨルダン経済の脆弱性。こういう問題を彼は指摘をしたわけですけれども、これについて、現地視察を受けて、外務省は今、どういう判断をされているんでしょうか。

山口副大臣 特に水について議論になったようですけれども、冷却水については、近くのサムラ下水処理場の処理水を利用する予定ということで、またそれ以外にも、原発サイト内に運転用の貯水池、それから非常用の貯水池を設置する予定のようです。

 ちなみに、この運転用の貯水池には十四日間の運転継続が可能な水量を確保しているし、それから非常用の貯水池については冷却を可能とする水量三十日間分を確保しているということで、まず冷却水については大丈夫だろうというふうに判断をしています。

 ちなみに、下水処理場の処理水ということに関して、年間水量が二千五百万トン必要のようですけれども、この下水処理場からは八千万トンの処理水が生産されるので問題ないだろうという判断をしました。

 それから、耐震性については、日本の企業という観点からいけば、耐震設計の経験というものが非常に豊富なわけですから、ヨルダンの地震条件については、それを十分カバーし得る、そういう耐震設計が可能であるというふうに説明を受けております。

 それからさらに、安全面について、例えばテロの話とかいろいろあるかもしれません。それに備えて、軍による防護として、原子炉及び周辺インフラの防護に必要とされる訓練を受けた人員を配置する予定であるということがヨルダン政府から説明がなされ、また、原子力発電所の施設あるいは核物質等を防護する陸軍の特別治安部隊を編成したようです。そういうことを勘案して、この辺も大丈夫であろうというふうに判断をしております。

 それから、あと安全保障面についても、そういうことをヨルダン政府からずっと聞いていく中で、この際、大丈夫であろうというふうに総合的に判断をしております。

赤松(正)委員 大臣、今の副大臣の答弁を聞いてどう思いますか。要するに、大丈夫だろうと思いますと。しかも、聞いた相手がヨルダン政府。そんなの、今ごろ、こういうふうな参考人の指摘を受けて、それから一カ月後になって外務省の官僚また経済産業省の官僚が行って相手の政府に聞く。これって、それは向こうは都合のいいふうなことを言うに決まっているじゃないですか。

 それについて、今、もう少し違う答弁を、元外務省科学協力室長、それを最後に外務省をやめられた山口さん、もうちょっと明確な言い方をされるかと思ったら、極めて安易な、そういうことだろうと思いますと。こういうふうな答弁ぶりでは、極めて不信感が一層募る、そう思わざるを得ません。

 大臣、今のことについて、相手方のヨルダン政府にのみ会ってきた、そういう状況についてどう考えますか。

玄葉国務大臣 業務の一環で、ヨルダン政府、ヨルダンの方の現地視察をしたということで、まずヨルダン側の説明を聞くということは当然必要なことだというふうに思います。その上で、それぞれの参考人の方が指摘されたことについて、基本的にヨルダン政府の説明を踏まえつつも、我が国として判断すべき点については判断をしているというふうに思います。

 そして同時に、例えば、最終的な原発の安全性の確保は、一義的にはその国の責任だということもあるものですから、どうしてもそのヨルダン政府の説明というのは、やはり重要性は置かなきゃいけないんだろうというふうには思います。

 ただ、我が国として、そういったことを踏まえて、しっかり判断すべき点については判断をした上で、今、山口副大臣が説明をしたものというふうに思います。

赤松(正)委員 私がきょうこういう質問をするということはきのう伝えているわけで、私が今第一義的に言いたいのは、大臣、副大臣のこの二人の名コンビが赤松の質問に対してどのように答えるかという、その対応ができていないということを私は大きく不満に思うんですよ。

 私が助け船を出す場合じゃないけれども、多い周辺人口、この場所をなぜ選んだかということについては、IAEAにも協力を依頼しているんですよね。というふうなことも大事なポイントですよ。ヨルダン政府の言い分だけ聞いたんじゃない、IAEAもこれまでの選定プロセスを肯定的に評価した、こういうふうなことがあるというふうに私は聞いていますよ。だから、そういう点もしっかり言う。

 これは、私に対する答弁であると同時に、多くのこの問題について疑問を持っている人たちに対する政府の判断を表明する大事な場面なんですよ。そのことをまずしっかりとわきまえてほしいと思います。

 そして、こういう場合は、ある種、さっき後手後手になっていると言ったわけだから、一番最初に、そういう参考人の意見表明がある前に行っているんだったら、こういう調査でもいいかもしれません。だけれども、そういう鋭い指摘を受けた後なんだから、第三者的なる人を連れていくとか、そういうまなざしを持った人の評価もあわせて聞いて、そして客観的に見て、この場所についてはヨルダン政府の強い依頼もある、それは先ほど大臣が言われたようなこととも関係してくると思いますけれども、しかし客観的に見ても大丈夫だ、こういう判断を持つに至りました、こういうふうに言ってくれなきゃ多くの人たちにとって安心ができない、こういうふうに思うわけです。

 今、大臣、手を挙げられましたけれども、何か弁明があれば。

玄葉国務大臣 御助言ありがとうございました。

 おっしゃるように、IAEAは、今回のヨルダンにおけるこれまでのサイト選定プロセスについて、適切である、適切に行われているというふうに評価をしています。こういったことも含めて、それぞれの、我が国として判断すべき点についての判断があるというふうに御理解いただければというふうに思います。

赤松(正)委員 後出しじゃいけないんだということを言っておきたいと思いますね。よろしく頼みますよ。

 次に、一般的に、ヨルダンにおける原子力発電所問題、原子力協定を、日本政府が今、早く支援をしたい、こう言っていることについて、幾つかの論調を私、改めて確認いたしました。そういう幾つかの論調の中で二つほどまず取り上げて、外務大臣の見解を聞きたいと思います。

 まず、慎重論をとる立場の新聞論調の中で、一つの根拠として挙げられているもので、輸出先の原発事故で製造者責任を問われるリスクをどう回避するのか。そういう問題で、複数の報道機関あるいはこういう評論者が言っていることは、原子力損害の補完的補償に関する条約、CSCになぜ加盟しないのか、そういう指摘があります。

 三・一一が起こった後、こういう原子力発電の安全性というものに対して大きな疑問が突きつけられてきた状況の中で、慌ててCSCに対する加盟のことを云々している日本政府、これは外務省は極めて泥縄式な対応、無責任じゃないのか、こういう指摘がありますが、これについて外務大臣はどう考えておられますか。

玄葉国務大臣 私もこれまでの経緯を聞いたところでございますけれども、福島第一原発事故以前におきましても、原子力損害賠償に関する国際条約の必要性、課題については、さまざまな角度から検討を行ってきていたということであります。しかしながら、我が国は国際水準を上回る国内制度を既に整備していた、条約は関係国とともに締結しなければ意義に乏しい、そういう理由から、直ちに我が国が国際的枠組みに参加しなければならない状況であるとは考えていなかったため、検討を急ぐ状況ではなかったというふうに説明がありました。

 ただ、今は、まさに先ほど赤松先生が指摘をされましたけれども、いわゆる原子力の損害賠償、俗に言う三系統あるということで、そのメリットとかデメリットというものを具体的に検討している最中でございます。パリ条約、ウィーン条約、そしてCSC、三つの系統が存在しますけれども、これらの条約については、例えば裁判管轄権の集中、拠出金の負担、国内法整備等、検討すべきさまざまな内容を含んでいるので、このような種々の論点につきまして、我が国にとってのメリット、デメリットを十分に精査、検討して対応ぶりを判断していく必要があるということで、関係省庁と今早急に検討を進めているという状況でございます。

赤松(正)委員 この問題も非常に大きい問題だけれども、どうも今の大臣の御説明を聞いていると、にわか勉強をされたなという感じが否めない。大臣、この間申し上げましたように、大臣が先ほど御自分でも申されたように、原発は、それこそ玄葉大臣にとって、まさに死命を制する原発事故を起こした地域の選出の大事な代議士なんだから、本当にこの問題は重要なんですよ。だから、これはヨルダンに対する原子力発電所の輸出にかかわる問題であるにせよ、日本の原発の問題に、いたく深くかかわっている問題だと思うんですね。

 それで、今、メリット、デメリット両方ある、今急ぎ検討していると言われるんだけれども、ヨルダンの原子力協定という問題が本当に喫緊の課題になって上がってきている、そして、三・一一からはもう八カ月が優に過ぎちゃった、こういう状況で、まさにある意味で原発の国内的課題とは離れたところにいた玄葉大臣。しかしながら、こういう格好で原発そのものと向き合わなくちゃいけない外務大臣としての重大な立場を今持っておられるわけだから、もっとしっかりと、自信を持ってこの問題に対する表明をしてほしい、そう思いますよ。

 では、今そうおっしゃるなら、そんなのんきなことを言っていないで、いつまでにこの問題について決着をつけるお気持ちなんでしょうか。

玄葉国務大臣 今のこの問題というのは、原子力の損害賠償の問題というふうにお聞きをしましたけれども、三系統ありますので、今、メリット、デメリットをそれぞれ検討している最中でございます。おっしゃるとおり、いつまでも結論を出さないという状況ではいけませんので、これはできるだけ早く結論を出すようにしたいというふうに考えております。

赤松(正)委員 今のこの答弁も極めてあいまいさがにじみ出ているんですね。

 パリ条約、ウィーン条約があって、CSCもあって、要するに幾つもあるんだと。一般の論調は、あたかもCSCだけしかないような論調が多いんですよ。しかも、多くの原発先進国家がこれに入っているかのような印象を与える論評が多いんですよ。それが非常に誤認識を与えるわけだから、そういう点はちょっと違うと。

 だから、今明確に、どの条約にどういう形で入るのがいいのか、あるいは入らなくてもいいのかということについて、しっかりとした政府の考えはこうです、だから今まだ結論を出していないんですというふうに言って、いついつまでには決着をつけます、こういうふうに言ってくれなきゃ、聞いている方は極めて大丈夫なのかなという感じになっちゃう。それを指摘したいと思います。

 もう一点、ある大新聞の論調の中で、こういうのがありました。官民一体で進めていくことによっていろいろな制約を受ける、官が進めることに対していろいろな制約がある、だから、独自の技術力やネットワークで最強のチームを組んで、つまり民間主体で、官は後衛に退いてもらって受注増に挑む方が得策だ、そういうふうな主張を述べている、ある大新聞の社説がありました。これについては、どう考えられますか。

玄葉国務大臣 結局、個別の商談、つまり、原発輸出そのものの個別の商談というのは、これは民間企業の判断であるというふうに私自身は思います。

 他方、原子力協定、これはもう御存じのように、原子力の平和的な利用、そして不拡散を法的に担保するということでありますから、協定そのものについては、これはやはり政府が責任を持って対応していく、そういうふうに、ある意味、整理をすべきことなのではないかというふうに考えております。

赤松(正)委員 この新聞の論説は極めて一方に偏する、つまり、原子力協定の持つ意味というものを正確に理解していない、そういうふうに思います。だから、その点についてはしっかりと反論をしていかなくちゃいけない、そういう感じがいたします。

 さて、今、そういうふうなヨルダンとの原子力協定に関してどのようなスタンスでいるのかということについて、副大臣、大臣の御意見、考え方を聞かせていただきました。ここから先は、ヨルダンだけではなくて、もう少し、日本の原子力発電所というものを海外に対して輸出する、こういう状況の中で、どのように基本的な政府のスタンスというものを持っているのかということについて幾つか質問をしたいと思います。

 まず、政府の原子力発電への基本姿勢、これについて、やはりいまだにはっきりしない、政府から発信するものが極めてあいまいな点がぬぐい切れない、そんなふうに思います。

 例えば脱原発という表現、これは一般的によく使われております。これと、例えば脱原発依存、これはかなりニュアンスが違うと思いますね。脱原発は、限りなくゼロにすることを意味するというふうに私は理解をしています。一方、脱原発依存というとニュアンスが違って、いわゆる原発に依存する、つまり、日本のエネルギー政策全般の中で原発への依存度というものを減らしていく、こういうふうなニュアンスがあると思うんですね。

 そこで、外務大臣の原発についての考え方、これは政府と全く一体だと思いますけれども、改めてここでお聞きしたいのは、私は、先般の参考人質疑の際に四人の参考人の方にこう聞きました。

 つまり、皆さんは、原発について、直ちに原発をゼロにする、もうなくしてしまうという意見が一つ。

 二つ目は、ゼロという目標に向けて段階的に解消させていく、これが二つ目。

 三つ目は、ゼロではなくて、今、おおよそ日本のエネルギーの中で原発の占める割合が約二〇%ぐらい、そんなふうに認識していますけれども、それを、あの事故以前は三〇%あるいは五〇%、そういうふうに原発ルネサンスと呼ばれる中でふやしていこうとしていたのを、三・一一以降は一〇%ぐらいに下げていく、段階的に下げていく、これが三つ目。

 四つ目は、そういうふうなことではなくて、現状維持から安全性というものに最大の留意をして、一定の目安がつけば、さらに発展に向けて取り組んでいく。

 こういうふうに四つの選択肢がある、非常につづめた、概略的な選択肢の出し方ですけれども、そういう中でどれを選ばれますか、こういう質問をしたわけですけれども、大臣は、大臣はというよりも日本の政府は、この四つのうちのどれなんでしょうか。

玄葉国務大臣 これは赤松先生も御存じのように、私もエネルギー・環境会議のときに責任者を務めたわけです。そのときに減原発という言葉を使ったわけでありますけれども、政府として現時点で申し上げることができること、それは、中長期的なエネルギー構成のあり方については、先ほど原発の依存率の話がございましたけれども、確かに、おっしゃるように、今までは二〇%台である、将来五〇%にしよう、こういうエネルギー基本計画だったわけでありますけれども、このエネルギー基本計画を白紙から見直して、来年夏を目途に新しい戦略と計画を打ち出すというのがまず政府の基本的な考え方であります。

 そして、原発については二つあって、一つは世界最高水準の安全性を確保していく、もう一つは、やはり中長期的に原発への依存度を最大限減らす、省エネそして再生可能エネルギーの最先端のモデルを世界に発信するというのが今の政府の立場でございます。

 そこから先の議論というのは、私が責任者をしていたときもそうでございますし、現時点でも、まさにエネルギー基本計画そのものを白紙から、ゼロベースできちっと議論しているということでございますので、現時点で言えることは、最大限その依存度を減らしていくんだということのみではないかというふうに、現時点ではそういうこと。同時に、原発の安全性を最大限確保していくんだ。この二つのことは今政府として言えることではないかというふうに思います。

赤松(正)委員 なかなか、判じ物のようなことをおっしゃいましたね。依存度を最大限に減らす。最大限というのはゼロですよね。それを今、安全性云々と言われたから、それはゼロではないなと。

 そうすると、私がさっき言った質問にわかりやすいように答えてほしいんですが、完全にゼロか、段階的にゼロにするのか、段階的に仮に一〇%ぐらいにするのか、あるいはふやしていくのか。これでいくと、もう言わずともわかっていることだから、あえてこれにさわられなかったんだろうと思うんですが、三番目ですね、改めて。

玄葉国務大臣 今言えることは、おっしゃるとおり、段階的に減らしていくということは言えると思います。

赤松(正)委員 段階的に減らして、どこまで減らすかということについては、来年の七月、夏をめどに、全体的なエネルギー供給の状況というもの、それについての判断を見てから、そういう明確な言い方はすることになるだろうということなんですね。

 そういうことからしますと、発信力というものが、あいまいさではなくて、今のようなことについてももっとはっきりと言っていかなくちゃいけない。何となく自信のなさそうな、この三・一一以降、困ったな、これは日本の原発の根本的な安全性についての疑念が提起されていると。そういう状況の中で、何となく自虐的にとらえてしりすぼみになっていくということはふさわしくない。段階的に減らしていくということを消極的な観点で言うのではなくて、むしろこれを大きな転機として積極的に前に出していく、そういう言いぶりがぜひ大事だと私は思うんですね。

 そういう点で、国際協力の基本方針という問題が先般、八月五日あるいは九月二十七日に閣議決定を受けた、質問主意書に対する答弁書という形で出されています。これもなかなかあいまいさがぬぐえない、本当に今の民主党の立ち位置をあらわしているような、極めておぼつかない感じになっているんですね。

 それは、例えば一つ、私がどういうことから思うかというと、国際的な原子力協力のあり方については、事故調査・検証委員会が行っている事故原因の調査やIAEAにおける原子力安全への取り組み強化の検討の状況を踏まえつつ、できるだけ早い時期に我が国としての考え方を取りまとめる、こういうふうに言っていますが、できるだけ早い時期にと言って、八月五日からもう既に、やがて四カ月がたとうとしています。

 これは、今も一生懸命考えている最中ですか。この考え方を取りまとめるというふうには至っていない、結論を出すのは、さっき言われたような、来年の夏をめどということなんでしょうか。それとはこの問題はまた別途で、事故調査・検証委員会が行っている事故原因の調査や原子力安全の問題なんだから、もっと前倒しで早い、この辺の時期についてどのように考えているのかということについて、御見解を示していただきたいと思います。

玄葉国務大臣 事故の検証の時期ということでございますけれども、私が知る限りでは、ことしの末に中間取りまとめが行われて、来年の夏から秋にかけて最終取りまとめが行われるものというふうに聞いているところでありますが、そのことについては、ストレートにお答えするとそういうことなのであります。

 関連で、小野寺議員の質問主意書に対しての御質問であったわけでありますけれども、そのことで答弁してもよろしいでしょうか。(赤松(正)委員「いや、もういいです」と呼ぶ)はい。

赤松(正)委員 何だか玄葉大臣、元気ないね。どうしたんですか。

 要するに、この問題については、今、事故調査・検証委員会の結論を待って我が国の原子力協力のあり方について考えを取りまとめるということ自体、私は極めて弱気になっているということがありありだと見えるんですね。

 先ほど周辺のことから言いましたけれども、今、ヨルダンとの原子力協定の問題で、私も含めてみんなが一番大きく疑問に思っているのは、事故の調査あるいは事故の総括すらできない状況の中で、何ゆえに輸出をするのか、そういうところ。

 自分の国が犯した問題について明確なる規定づけ、位置づけができない、そういう状況の中で外国に輸出をする。それというのは、もう前からやっていることだから、いろいろあるけれども、ともかく他国との関係、二国間関係があるから、これはもう向こうも早くやってくれと言っているんだからいいじゃない、こういうふうな言い方、やり方では、この疑念をぬぐうことはできない。それに対してどういう理路でもって立ち向かうかということについて、明確なる言いぶりを聞きたい、こう言っているんですよ。改めて、これについてどう思いますか。

玄葉国務大臣 まず、ちょっと補完させていただきたいんですけれども、先ほど減原発という話、段階的に減らすという話をいたしました。自信を持って言えということですが、全く私は、自分も議長をやっていましたので、積極的な意味でそのようにさせていただいたということでありまして、特に省エネ技術、環境技術、これはもう産業革命の分水嶺だというくらいの気持ちで、これから世界に向けて最先端の歩みをしていかなければならないし、日本人ならできるというふうに考えております。

 今の御質問は、我々としても整理をいたしましたので、その整理を踏まえて申し上げたいというふうに思います。

 今回の原発事故を踏まえて、事故の経験、教訓を世界と共有することが重要である。これにより国際的な原子力安全の向上に貢献していくことは、我が国が果たすべき責務と考えています。

 こうした観点から、諸外国が希望する場合には、相手国の事情というものを見きわめつつ、相手国の原子力安全の向上に貢献をするとともに、核不拡散、平和的利用等を確保しながら原子力協力を行っていくということは基本的な意義があるというふうに考えております。

 さらに、原子力協定という原子力協力の枠組みを整備するかどうかということについては、核不拡散の観点、相手国の原子力政策、相手国の日本の信頼と期待、そして二国間関係等を総合的に踏まえて個別に検討する必要があり、また、個別の商談については企業の判断となる。

 今回、協定の御承認をお願いしている四カ国につきましては、政府として、各国それぞれのケースに応じて個別に検討した結果、これらの国と原子力協力を行う意義があるという判断をしたということでございまして、これらの原子力協定を早期に御承認いただきたいというふうに考えております。

 また、既に原子力協定の交渉を開始している国及び交渉開始を決定している国についても、同様に、政府として、原子力協力を行う意義があるというふうに判断をしたところであり、今後、これらの国との原子力協定を締結し、原子力協力に対応できる枠組みを整備していきたいというふうに考えております。

赤松(正)委員 何か、前半はよくて、後半がえっという感じがしたり、いろいろ大臣の答弁を聞いていると、こちらも思い悩むところがあるんですが、要するに、今回の三・一一の大原発事故、この地震、大津波によって起こった問題と、それから、外に向けて、今、原子力発電をめぐっての国際情勢、こういうものと明確に立て分けて考える必要があると思うんです。

 安全性をどこまでも追求していく、これは、この事故が起こる前、日本は世界に冠たるそういう原発のいわゆる技術的なものは大きく持っていたわけでありますから、この事故によって根底までその自信が揺らぐという必要性は私はないと思うんですね。そういう点で、もう少し表現、発信にめり張りをつけて、きちっと言っていただきたいと思うんですよ。

 例えば、私なら、こういう国際社会全体として原子力発電に対する依存度を下げるという方向がない。今、世界じゅうで明確にそういうことに否定的なスタンスをとっているのはドイツとスイスだけですよ。あとはそういう流れにはない。そういうことをしっかり踏まえた上で、事故に過剰に萎縮する、そういうことは必要ないというふうな言いぶりがあってもいいと思うんですね。

 そういう点で、何かごちゃごちゃにしちゃって、そういう原発に対する日本の姿勢というものを明確に立て分けてきちっと言っていかないということは、聞いている国民の方としてはますます不安になる、不信を募らせる、そういうことになってしまう、そう思うので、その辺のことはしっかり整理をして発信をしていかないといけない、こう思うんですが、いかがですか。

玄葉国務大臣 おっしゃるアドバイスを踏まえながら、よりめり張りがきいた形で、わかりやすい説明を心がけたいというふうに思います。

 先ほど、この質問の前に質問がございましたけれども、新たな協力のあり方の取りまとめとの関連ではどうなんだということでもありましたけれども、まさにその考え方の取りまとめができたら、それはそれで、それを踏まえながら、先ほど申し上げた四点、核不拡散の観点、相手国の原子力政策、相手国の期待と信頼、そして二国間関係、そういったことをまた総合的に判断していく。ただ、取りまとめもきちっと踏まえながら判断をしていくというふうにしたいと考えております。

赤松(正)委員 大臣の言っているのは、何か微妙に私が聞いていないことも言われたり、つまりヨルダン以外のことをさっき言われましたけれども、そんなの今聞いてないんですよ、今度、金曜日にやるわけですから。

 例えば、前回の質疑の終わりの部分で、河井代議士の質問の中であった、つまり、新規のものについては一度立ちどまる、そういうことを強調されました。私は、それについて、前回の質疑の終わりの部分で、新規について一度立ちどまるということ、これは言わずもがなのことを言っている。交渉している最中に、今やっているのは前からのつながりがあるから交渉しますけれども、先行きのものは一遍立ちどまって、この新たな交渉をするのがいいのかどうか立ちどまって考えますというのは、色濃く今に影響を及ぼすわけですよ。

 それは、相手国は強く望んでいるから、そんなことを言ったって全然影響ないと思っておられるとしたら大間違いで、それは国民に対する発信が誤りをもたらす原因になっている。そういう言わずもがなのことを言わなくていい。粛々とやっていきますというふうに言うとか、言葉を選ぶと先ほどどなたかの答弁であったんですが、大臣、それこそ、そういう政治家としての陰影に満ちたいろいろな言いぶりをしっかりと学ばれてやっていかれた方がいいんじゃないか、そういうふうに思いますけれども、この点についてはどうでしょうか。もう十一時になりましたから、それについて少しお答えいただいて。

玄葉国務大臣 赤松先生の今の御指摘、アドバイスを踏まえて、私なりにしっかりと整理をしたいというふうに思います。

赤松(正)委員 基本的には十一時で終わると言っちゃったんですが、最後に、さっき手を挙げておられたから、山口副大臣に少し水を向けて御答弁願いたいと思います。

山口副大臣 大枠は玄葉大臣からお答えしたとおりだと思いますけれども、我々、三・一一を機に根本的に世界が変わったというふうに思う部分もあるわけだと思うんです。

 そういう意味で、原発については事故調査委員会の結果をきちっと踏まえなければいけない面はありつつも、地震については福島第一原発は大丈夫だったわけですね。きちっとして、制御棒がすぽっと入ってとまった、そこまでは大丈夫だったと思うんです。他方、津波によって非常用電源がぽんといったというところが、だから、これは事故調査委員会の結果を待たなきゃいけないので、ここで確定的なことは言えませんけれども。

 したがって、では、日本の原発について安全かどうかということでいえば、極めて安全だというふうに我々自信を持っています。では、その事故調査の結果で、例えば非常用電源をきちっとしていればよかったのか、例えばガスタービンでまた別の電源を用意しておけばよかったのか、いろいろなポイントがあるかと思います。

 そういうことを踏まえてやっていけば、このヨルダンとかを含めて、いろいろな、水の問題も現地へ行ったら大体オーケーだったということを踏まえれば、我々は、この既存のものについてはきちっとやっていきたい、日本の原発技術は安全であるというふうに思っています。

 ただ、この既存のもの、あるいは交渉中のものまでは手が回るかもしれませんけれども、東電は既にああいう状態ですから、現実に、新しいところを開発するまでの手当てはできないかもしれません。だから、そういう意味で、メーカーの人材の供給の可能性、あるいは、どこまで手が回るか、そこを全部踏まえて言われたのが、玄葉大臣の、一度、そういうことを全部踏まえて立ちどまって、そういう趣旨だというふうに私は理解しています。

 あと、新規のものについては、全体のエネルギーの、我々がどういうふうに考えていくか。例えばドイツは二〇二二年に全部ゼロにすると言っているけれども、それは隣のフランスから買えればいいということもあるかもしれない。でも、我々は隣から買えないわけですから、そういうことを踏まえて、どういうふうにするかということを夏までに検討して、その中でこの話も極めて明らかになってくるものだと私は理解しています。

赤松(正)委員 では、時間も来ましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

田中委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きのう、一川防衛大臣は、名護市辺野古への新基地建設に向けた環境影響評価書の提出時期をめぐって、沖縄県民と女性を侮辱する許しがたい暴言を行った田中沖縄防衛局長を更迭いたしました。

 まず、きのうからの経緯を防衛副大臣に説明していただきたいと思います。

渡辺副大臣 時系列に申し上げますと、昨日の朝の琉球新報に大きく報じられました後、朝、大臣が、このことについて記者会見で、とにかく本人を上京させてまずは事情を聞くということで、厳しい対応をしたいということを発言されました。その後、参議院の外交防衛委員会の場でも御指摘があり、同じような趣旨で答弁をされ、そして、上京された田中局長をまずは事務次官室に招いて話をし、その後、宮中行事を終えた大臣が大臣室で事情を聞いて、そして夜の八時に、昨日、もう報道されているように、その職を自分に任せてほしいということで、事実上更迭をしたということになったわけでございます。

 これでよろしいでしょうか。

赤嶺委員 日米両政府が普天間基地の返還に合意する直接の契機となったのは、九五年の少女暴行事件であります。あのときにも、アメリカの太平洋軍司令官が、彼らは車を借りる金で女が買えたという、こんな暴言を行い、更迭をされました。防衛局長は、懇談の場で、この発言に同調する認識まで示していたと言われています。更迭は当然です。

 一方で、沖縄に基地を押しつけてきた米軍司令官や政治家、官僚によって、この種の発言は繰り返されてきた、このことを重く受けとめるべきであります。県民の犠牲の上に基地を押しつけてきた政府の姿勢そのものが、今問われていると言わざるを得ません。

 今回の騒動で、政府に対する県民の怒りと不信は、もはや修復しがたいような状況になっています。ところが、防衛大臣も官房長官も、きのうから、評価書の年内提出に向けた準備を進める方針に変わりはない、このように述べているわけです。

 政府がまずやるべきことは、沖縄に行って陳謝することではありませんか。それもやらないうちに、とにかく評価書の提出方針だけは変えないと言う。結局、県民の意思など関係なく辺野古への基地建設を進めるということではありませんか。

渡辺副大臣 きょう、まずは事務次官が、ちょうどこの午後の時間に、今もう沖縄に到着して知事と会うこととしておりますが、私ども政務三役も、謝罪をするということは、メディアを通してだけではなく、会見の席だけではなく、やはり現地に足を向けて謝罪すべきだということであるならば、それは私自身はその準備をしたいと思っております。そして、今回の発言につきまして、政務三役の一人として、まずは率直におわびを申し上げたいというふうに思います。

 また、年内提出をめぐっては、私のところにも、先般県議会の方々が副大臣室にお見えになりまして、県議会での決議をお持ちいただきました。大変厳しい環境であることは私ども理解をしておりますけれども、その上に立って、これまでの、従来の答弁で申しわけないんですけれども、評価書の準備は進めさせていただくということを、これは官房長官、大臣初め私どもも、今、そのことについては準備をするということで、方針に変更はないということを申し上げているところでございます。

 ただ、今回のことも含めまして、沖縄の報道等も、けさ、すべて見ました。大変、県民の感情を本当に傷つけたことについては、また非常に厳しい状況であるということは十分認識をしております。

赤嶺委員 にわかに起こった県民感情じゃないんですよ。これまでも同じような発言を、あるときには米軍の高官、あるときには政府の高官、あるときには基地を押しつけようとする政治家、こういう方が暴言を繰り返してきたわけです。

 謝罪しても、基地を押しつけようとする本質は変わらないだろうと思っていたやさきに、謝罪よりも早く、評価書は年内に提出していただくということを防衛大臣や官房長官が言い、今副大臣がおっしゃり、きょうはアメリカからは、どんなことがあっても年内に評価書は提出するんだぞと。こういうことしか大きく報道されない。そういうやり方で、県民は絶対に納得いかないと思います。

 皆さんは、絶対できないことをやろうとしているんです。実行不可能な計画にしがみつくことはもうやめるべきだということを強く申し上げておきたいと思います。

 次に、外務大臣に対してですが、日米地位協定の問題について聞いていきます。

 日米両政府は、十一月二十三日、公務中に犯罪を犯した米軍属に対する裁判権の行使に関して新たな合意を交わしました。

 まず、今回の合意に至る経過について聞きますが、日米地位協定第十七条一項は、「合衆国の軍当局は、合衆国の軍法に服するすべての者に対し、合衆国の法令により与えられたすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。」これまでもこの委員会室で何度も繰り返してきた規定であります。そして、この「合衆国の軍法に服するすべての者」という規定の範囲について、これは一九五三年の日米合同委員会合意、刑事裁判管轄権に関する事項、この中で、「合衆国統一軍法第二条及び第三条に掲げるすべての者」と規定しており、軍人だけにとどまらず、軍属、家族を含むものと解されております。

 その上で、地位協定第十七条三項は、公務中の軍人軍属による犯罪について、米側が第一次裁判権を有することを規定しております。要するに、公務中の軍属による犯罪については米側が第一次裁判権を行使するというのが日米地位協定の枠組みであります。

 ところが、アメリカでは、一九六〇年に連邦最高裁判所の判決で、平時に軍属を軍法会議に付することは違憲であるとの判決が出されていたことが指摘されております。

 まず、この連邦最高裁判所の判決についての事実関係から説明していただきたいと思います。

玄葉国務大臣 ただいまの質問は、一九六〇年のアメリカの連邦最高裁の判決以降の経緯というか、その事実関係ということでございますので、その点だけお答えをいたします。

 日米地位協定のもとでは、先ほども御指摘がございましたように、米軍人軍属の公務中の犯罪、これはアメリカ側が第一次裁判権を有しているということなんですが、一九六〇年、米国連邦最高裁判決により、米側は平時において軍属を軍法会議にかけることはできないというふうになったと承知をしています。これを受けて、アメリカ側は一九六〇年代初めから、軍属の犯罪については、実際には公務中に行われたものであっても、いわゆるその証明書、公務の証明書の発行というのを行っていなかったということです。

 これまた御存じだと思いますけれども、結局、米国で二〇〇〇年にMEJAという新たな法律ができました。ミリタリー・エクストラテリトリアル・ジュリスディクション・アクト、軍事域外管轄権法というのが成立して、それで軍属を米国に移送して連邦裁判所の刑事裁判にかけることが米国の国内法上可能となったということで、結局、私もこのことの経緯を聞いて、二〇〇六年から、軍属の人たちが公務中にいわゆる犯罪を犯した、そのときに米国が裁判をする。それで、そのときに、いつも懲戒処分、行政処分にすべて終わるという状況が続いたものですから、果たしてこれでいいのかという問題意識を今回持って日米交渉に臨んだということでございます。

赤嶺委員 今、外務大臣の御説明にありましたように、日米地位協定上は、公務中の軍属による犯罪についてはアメリカ側が第一次裁判権を有するとしながら、当のアメリカ側は、軍属を軍事裁判にかける権限そのものを持っていなかったということになるわけですね。

 そして、公務証明書も発給しないと米側からあったということですが、米側から公務証明を発給しない、こういう表明は、いつどこでだれがだれに対して行ったものですか。(玄葉国務大臣「これはちょっとわからないな、事実関係なので、ごめんなさい」と呼ぶ)いや、いいですよ。事実関係で答えられる人、答えてください。

玄葉国務大臣 済みません、これはまさに事実関係の話でございますので、確認をして、答弁をするなり御報告をするなりというのをさせていただきたいというふうに思います。今のお話だと、一九六〇年代の話だというふうに思いますので、そのようにさせていただければと思います。

赤嶺委員 一九六〇年代以降、軍属の裁判権は、第一次裁判権はアメリカにあると言われながら、アメリカでは裁くすべを持たずに、公務証明書も発行しなかった。

 この問題というのは、公務中の軍属に対する裁判権を日米のどちらが行使するかという、いわば根本にかかわる問題であるわけですね。私は、答えられないということが本当に不思議でなりませんが、きちんと調査の上、明らかにされるということですから、そのようにしていただきたい。

 そこで、連邦最高裁判所の判決が出されたのは一九六〇年、いわば日米地位協定が締結、発効をしたのと同じ年であります。地位協定の規定と実態が、スタート地点から乖離していたことになるわけですね。なぜ地位協定の締結時に、軍属については公務中の犯罪であっても日本側が裁判権を行使するという、実態に即した規定にしなかったのですか。(玄葉国務大臣「当時はわからない、当時のことはわからないね」と呼ぶ)どうぞ、わかる人、答えてください。

玄葉国務大臣 今、私の方でわかっていることは、一九六〇年代初めから、米側は、軍属の犯罪につきましては、実際に公務中に行われたものであっても公務証明書の発行を行わないとの対応をとってきたということを、私としては聞いております。

 詳細については、現時点で今手元に持ち合わせていないものですから、その点については御理解をいただければというふうに思います。

赤嶺委員 外務省はよく御存じなんですよ、きのうも通告してありますのでね。一九六〇年、日米地位協定をつくるときから、軍属については、米側は軍事裁判にかけないということになっていた。そういう実態がありながら、何で地位協定では軍属も第一次裁判権は米側が持つと。最初から実態と合わせておけばよかったんじゃないか。

 私は、文書のやりとりもあると思いますよ。外務大臣、一九六〇年のことだからわからない、そんなことをおっしゃらないで、この日米地位協定によって沖縄県民は辱めを受け、苦しみを受け、米軍基地周辺の自治体住民もそういう事態になっているわけですから、アメリカと日本とやりとりをした文書、これをきちんと調べて報告していただきたいと思いますが、いかがですか。

玄葉国務大臣 そこは調査をしたいというふうに思います。

赤嶺委員 改めて確認しますが、今の説明でいくと、要するに、一九六〇年の連邦最高裁判所の判決以降は、公務中の軍属による犯罪については米側は公務証明を発給してこなかった、つまり、日本側が裁判権を行使してきたということであるわけですね。

玄葉国務大臣 結局、今、一九六〇年の話をされておられます。改めて私の理解も含めて申し上げますと、日米地位協定上、軍人軍属の公務中の犯罪は米側が一次裁判権を有する。ところが、今お話がありましたように、一九六〇年、米連邦最高裁が、平時において軍属に合衆国統一軍法を適用することは違憲であるというふうに判決をした。これによって、米軍当局は平時において軍属に対して刑事裁判を行えなくなったということで、軍属の犯罪については公務の認定をいわば自粛していたというか、今の御質問だと思いますけれども、つまり事実上、おっしゃるように、日本側に裁判権を譲ってきたんです。そういうふうに私自身は理解をしています。

 ただ、先ほども若干申し上げましたけれども、そういう中で、結局、二〇〇〇年にMEJAという法律ができたということなんですね。MEJAという法律ができたらば、今度は逆に、おっしゃるように、日本側に裁判権をそのまま譲ってきた経緯があったのに、それなのに、二〇〇〇年のMEJAというこの法律が成立をした結果、軍属を米国に移送してアメリカの連邦裁、これは先ほど申し上げたような軍法会議ではありません。結局、アメリカの連邦裁の刑事裁判にかけることがアメリカの国内法上可能になったということだと思うんです。それで、これを受けて二〇〇六年から、アメリカ側は軍属の犯罪についての公務の認定及び第一次裁判権の行使を再開していたというふうに承知しています。

 だから、今、結局何が起きてきたかというと、これまで起きてきたことは、結局、こういった犯罪があったときに、いわゆる米側が行政処分である懲戒処分しか科さないという状態が続いているというふうに私自身報告を受けましたので、これはいけないということで問題意識を持って、今回新しい枠組みづくりに動いたということでございます。

田中委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

田中委員長 では、速記を起こしてください。

 静粛に。着席してください。

 では、赤嶺政賢君、質問を続行してください。

赤嶺委員 答えられないという答弁が出ることは、きのうのレクでも私承知しておりますので、答えられないからといって私の質問が前に進まないということではありませんから。外務大臣も答弁席に積極的に出ていただいて、外務大臣がお困りのときはまた政府参考人も出ていただくということで、一向これは構いません。

 ただ、今、六〇年代のことだから知らないという答弁は許されませんよねというのははっきりさせておきたいと思いますよ。日米地位協定の根幹にかかわる問題ということですよね。

 ただ、今、外務大臣の答弁で、繰り返しますと、一九六〇年の連邦最高裁判所の判決以降は、公務中の軍属による犯罪については米側は公務証明を発給してこなかった。つまり、日本側が裁判権を行使してきた。それは一九六〇年からいわば二〇〇六年八月まではということで、それまでは日本の裁判所で公務中の軍属の裁判もやっていたわけですね。

 それはそのとおりで理解してよろしいでしょうか。これは答えられますでしょう。

玄葉国務大臣 先ほども私、説明をさせていただいたとおり、私の理解もそういう理解でございます。

赤嶺委員 私は、二〇〇五年七月一日の外務委員会で、旧安保条約が発効した一九五二年以降、アメリカ側が裁判権を行使した事件、事故について、軍事裁判にかけられた件数、懲戒処分が出された件数について質問をいたしました。当時の法務省の大林刑事局長は、「法務省において統計資料等を把握しております昭和六十年から平成十六年まででお答えいたしますと、軍事裁判を受けた者は一名、懲戒処分を受けた者は合計三百十八名であると承知しております。」このように答弁しておられます。

 この中には、これらはすべて軍人に関するもので、軍属は一切含まれていないということでしょうか、法務省。

甲斐政府参考人 取り急ぎ調べてみましたけれども、御指摘の数値については、軍人による公務中犯罪についての数値というふうに思われます。

赤嶺委員 思われますでは困るんですが。きちんと答えてください。

甲斐政府参考人 今申し上げましたのは、つい先ほど御指摘がございましたので、取り急ぎ調べたということでございますが、このときのやりとりにつきまして申し上げますと、米軍関係者について、日本人に対する犯罪で、今お話がありましたように、軍事裁判を受けた者あるいは懲戒処分を受けた者という数値をお答えしたものでございます。

 先ほど大臣からも御答弁ございましたけれども、当時は、軍属については日本側が裁判権を行使していたというふうに思われますので、この数値につきましては軍人を対象としたものというふうに考えられます。

赤嶺委員 軍人を対象にしていた。当時は、軍属は日本側で、公務中であっても裁いていた。

 実態はよく確認する必要がありますが、いずれにしても、公務中の軍属による犯罪については、地位協定の規定はあったにせよ、実質的には日本側が裁判権を行使してきた、こういう説明であります。

 ところが、その後、先ほど外務大臣も説明されておりましたように、アメリカでは二〇〇〇年にいわゆるMEJA法が、これは軍事域外管轄権法と呼ばれていますが、このMEJA法が制定されていたことが明らかになりました。

 この法律は、平時にアメリカの国外において、軍属などがアメリカの国内でいえば懲役一年以上に該当する犯罪を犯した場合に、アメリカ国内の連邦裁判所で裁くことを可能にしたものと指摘されておりますが、外務大臣も先ほどからそういう御説明ですが、そういう理解でよろしいわけですね。確認の質問です。

玄葉国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、結局、このMEJAというのは、軍属を米国に移送して、米国が、これは軍法会議ではなくて連邦裁で裁ける、刑事裁判にかけるということが可能になって、これを受けて、まさに先ほど来から御指摘が、また私自身が説明をさせていただいたように、二〇〇六年からは裁判権の行使をいわば再開したというか、そういう形、再開というか、おっしゃるとおり一九六〇年からずっとこっちだったんですけれども、米国側が持っている、そういうことでこの運用がなされていたということだと思います。

赤嶺委員 そうしますと、従来は実質的には日本側が裁判権を行使してきた公務中の軍属による犯罪について、アメリカ側がアメリカの国内で裁判にかけることができる法律が新たにつくられ、そしてMEJA法が制定された事実、そのもとで米側が軍属に対する裁判権の行使をどうするかについて、これも、いつ、どのような形で日本側に話があったんですか。だれが答えてもいいですよ、私は。だって、大事なことでしょう。持っていた裁判権がなくなるんだから、大事なことでしょう。

玄葉国務大臣 それも、いわゆる二〇〇〇年のMEJA法は何でできて、逆に言えば日本はそれをある意味認めたのかという、その経緯の御質疑だというふうに思いますので、二〇〇〇年当時のことについて調査をさせていただきたいというふうに思います。

赤嶺委員 一九六〇年、地位協定ができたときでも、地位協定では軍属でも第一次裁判権はアメリカ側にあるとしながら、実態としては日本側が裁いてきた。そもそもの最初からですよ。MEJA法ができたのは二〇〇〇年、二〇〇六年になって、MEJA法でやりますからということで、日本は裁判権を行使できなくなった。そのころから、軍属で第一次裁判権を返せということを私はこの国会で何度も主張してきたわけですね。

 問題は、日本側からすれば、実質的には行使してきた平時の軍属に対する裁判権をアメリカ側に奪われかねない事態が起こっていたということであります。MEJA法が制定された二〇〇〇年の当時から、軍属に対する公務証明書の発給が始まったとする二〇〇六年にかけて、日本政府はどういうスタンスでこのアメリカ側の新たな動きに対応してきたのですか。少なくとも、公務中の軍属による犯罪については公務証明書の発給は行わないとする従来のアメリカ側の方針を維持するよう求めるべきであったと思いますが、求めてきたのですか。

玄葉国務大臣 これはとにかく、MEJA、米国の法律でございます。それで、そのときに赤嶺委員が外務委員会などで質問されていたということでございますけれども、その当時、赤嶺委員が指摘をされるようなことをされてきたかどうかも含めて、これは調査をさせていただければというふうに思います。

赤嶺委員 私が質問してきたかどうかまで調査する必要はないですよ。自明の……(玄葉国務大臣「いやいや、それに対してどうお答えしたか」と呼ぶ)どう答えてきたかということですね。

 でも、大臣、MEJA法ができたら、今まで日本の裁判所で裁いていた米軍属の平時の裁判、実際上、第一次裁判権は日本が持っていたようなものですよ、これが奪われるかもしれない、そのときに外務省は何の危機感も感じなかったんですか。公務証明が発行されたら、今まで日本が持っていた第一次裁判権が奪われることになる、そういう危機感を持って対米交渉に臨んでいなかったんですか。いかがですか。

玄葉国務大臣 本当に当時の状況は、私は、今おっしゃるようなことまで含めて、聞いていないんです。

 ただ、私が先ほど来から申し上げていますけれども、結局、二〇〇六年からはそういう状況だったと私自身が聞いたので、これは何とか、この不公平感は少しでも、十分じゃないと思います、だけれども、少しでも是正していこうということで今回の新しい枠組み合意に動いたということは御理解をいただければというふうに思います。

赤嶺委員 では、今の大臣の御発言の中身に論点を移していきたいと思います。持っていた裁判権がMEJA法によって奪われたということははっきりしたと思います。

 今回の合意は、公務中の軍属による犯罪について、アメリカ側が刑事訴追をしない場合に、日本側による裁判権の行使にアメリカ側が好意的考慮を払うことを定めておりますが、原則として合衆国が軍属に対し第一次裁判権を行使する権利を有することを確認しております。原則はアメリカで変わらないわけですね。その上で、合衆国の軍当局が、軍属を、合衆国の法に基づき、合衆国の領域内において、合衆国の連邦裁判所における裁判に付すための準備を行うことができると規定しております。これがMEJA法のことであります。

 つまり、今回の合意で、これまで地位協定の規定はあったにせよ、実質的には日本側が裁判権を行使してきた公務中の軍属による犯罪について、地位協定の規定どおりに米側が第一次裁判権を行使することを認め、アメリカ側がMEJA法に従ってアメリカ国内で裁判にかけることを認めてしまった、こういうことではありませんか。

玄葉国務大臣 この枠組みのもとでは、確かに、米側が、事案に応じ米国において刑事裁判にかけるという手続を整備しているということは、そのとおりのところがございます。

 ただ、先ほど来から申し上げておりますけれども、米側が刑事裁判にかけないというふうになった、そして被害者が亡くなったような事案などについては、確かに、同意を求めて、好意的考慮を払うという形になっていますけれども、例えばこの好意的考慮そのものについては、一月のような事案については、私は、今後ともこういったいわゆる好意的考慮というものが払われるものというふうに思っているということでございます。

 確かに、十分か、おまえ、それで満足しているのか、こういうふうに問われれば、私も、本当に一定の前進というふうに評価をしていて、とにかく一つでも二つでも、一歩一歩、在日米軍基地のある地域の皆様、もちろん沖縄の皆様の期待にこたえていく、こういう姿勢で取り組んでいるということはぜひとも御理解をいただければというふうに思います。

赤嶺委員 今、大臣、自問自答なさいましたけれども、私はまだその問いかけはやっておりません。

 私が今問いかけているのは、少なくとも二〇〇六年以前までは、実態として軍属の第一次裁判権は日本の側にありました。二〇〇〇年にMEJA法ができてから、アメリカは国内で裁くようになりました。今回の地位協定の運用改善の中には、そういうMEJA法でアメリカで裁くという原則が入っているわけですね。二〇〇六年以前は入っていなかったんですよ、一九六〇年から二〇〇六年までは。そうすると、第一次裁判権は米側にあると言われてきても実態としては日本側が裁いていた、しかし、今回の運用改善によって原則アメリカが裁くということになった、これを日本側が認めたということになりませんか、この問いであります。

玄葉国務大臣 これは、私の理解では、法的には米側にもともと一貫してあったのではないかと。先ほど申し上げたように、いわゆる事実上裁判権をかつて日本側に譲っていた時期があった、そういうことなのではないかというふうに思います。

赤嶺委員 地位協定の考え方に関して、外務省も存在は認め、持っているということも認めている地位協定に関する機密文書、「日米地位協定の考え方」増補版があります。これは一九八三年に作成されております。この中で外務省がどんな説明をしているか。一九八三年です。

 「我が国においては、建前上は軍属・家族も軍法に服する者に含まれるかたちとなつているが、刑事裁判権の実際の運用としては、軍属の犯罪について米軍当局は、地位協定上米軍当局に第一次裁判権のある場合でも(例えば軍属の公務中の犯罪については、公務証明を出さないとか、第一次裁判権の不行使を我が方に通告して来るとかして)裁判権を行使しないことにより軍属・家族の犯罪には事実上我が国が専属的裁判権を行使している如き現象を呈している等の実情もあつて、前述の合同委員会合意は実態と相当乖離しているので、右合意はなるべく早い機会に実態に合わせて改めるべきである。」実態に合わせて第一次裁判権は日本が持つように軍属については改めるべきである、このように述べているわけですよ。外務省自身が、公務中の軍属による犯罪について、専属的裁判権を行使している実態に合わせて合同委員会合意を改める必要性を認識しておりました。

 ところが、その改定作業を怠った上に、アメリカが国内法で裁く方針を打ち出してきたことから、今回、それに合わせて、軍属は日本側が裁くという原則を譲り渡してしまったのが今回の合意ではありませんか。これは運用改善どころか、運用改悪だと思いますが、外務大臣、いかがですか。

玄葉国務大臣 運用改悪だとは全く思っておりません。

赤嶺委員 筋が通らないですよ。

 前は、第一次裁判権を日本が持っているがごとき様相を呈していたということを、一九八三年の外務省の文書に書いてあるんですよ。そして、その実態に合わせて改定すべきだということを言っているんですよ。ところが、その実態に合わせて改定するどころか、第一次裁判権、持っていたものを、今度のMEJA法によってアメリカ側が原則持つというぐあいにしてしまった、こういうことであるわけですよ。これが改悪と言わずに何と言おうかというところですが、議論が分かれるところでしょうから、今後この点について議論をしていきたいと思います。

 ただ、一点確認をしますけれども、那覇検察審査会の議決では、韓国では大法院において、韓半島が平時のときは軍属の裁判権は米軍にはないとの判決が出され、韓国で裁判権が行使された事件があることも明らかにしています。NATO諸国においても、軍属の裁判権は駐留軍ではなく当該国で行使されていることを明らかにしております。これらの国々がMEJA法に沿って合意をアメリカと行った事例はありますか。

甲斐政府参考人 そういった事例については承知をいたしておりません。

赤嶺委員 外国では、MEJA法に譲り渡すということはしていないんですね。これも精査する必要がありますが、この点でいうと、日本ではMEJA法で裁くことになったぞということで、NATOも韓国も日本のとおりにやれという運用改悪の先鞭をつけたことになりかねない、こういう可能性も否定できない。

 大臣、もう一つ重要な点があるんですよ。

 MEJA法との関係で、MEJA法は確かに平時における軍属による犯罪についてアメリカ国内の連邦裁判所で裁くことを可能にしておりますが、一方、セクション三二六一の(b)という項目で、外国政府、つまり接受国、わかりやすく言えば日本ですね、刑事訴追を行った場合には、刑事訴追を開始することはできないことを原則として規定しております。MEJA法にはそういう規定があるかどうか、まずその点を確認したいと思います。

 ちょっとロスタイム、今は何か複雑なことを聞いているんじゃないんですよ。(玄葉国務大臣「それはでも責任持って答えなきゃいけない」と呼ぶ)だから、責任持って。きのうもちゃんとレクをやっていますから、責任を持って。答えなかったら、私が悪いみたいな雰囲気をつくらぬでください。

玄葉国務大臣 今の御質問は、ちょっと事実関係をきちっと確認させていただいてから申し上げたいというふうに思います。

赤嶺委員 そうお答えになればいいんです、わからないならわからないということで。ただ、MEJA法の中にはそういうことがあるというのを申し上げておきたいと思うんです。

 ところが、今回の合意には、アメリカが刑事訴追を行わなかった場合に限って日本側が同意要請を行い、アメリカ側の同意が得られた場合にのみ裁判権を行使できる枠組みになっています。これは、接受国が刑事訴追をするか否かを判断することを認めたMEJA法の原則からいっても、それ以上にアメリカ側に有利な内容で今回の合意が行われてしまったことになると思います。

 この点について、外務大臣は、MEJA法での接受国の権利について、まだ調査していないということでありましたので、調査の上、今度の地位協定の運用改善では、MEJA法でさえ持っていた日本側の権利を、それ以上の権利をアメリカ側に譲ってしまったんじゃないか。この点についてちゃんと調査していただきたいと思いますが、いかがですか。

玄葉国務大臣 調査いたしますが、運用の改悪であるという御指摘は、私は当たらないと。それでは、今までのまま、二〇〇六年以降の状態を放置した方が本当によかったのかということを考えれば、私は絶対にそうではないというふうに思っておりまして、私はよい合意ができたというふうに思っています。

赤嶺委員 大臣、勘違いしないでくださいよ。

 一九六〇年から二〇〇六年までのやり方を何で今度主張しなかったか。第一次裁判権を持っていたわけでしょう。持っていたのを、いつから、どんなふうに公務証明書が発行されたか、皆さん、その認識もないわけでしょう。危機感もなかったわけでしょう。だから、一方的に公務証明書が発行されるような事態になって、今度、二〇〇六年よりは改善になるからといって運用改善してみたらアメリカ側の権利がより大きくなっていた、こういう結果になっているじゃないですか。

 MEJA法ができたときの危機感もない。一九六〇年の地位協定ができたときにも、第一次裁判権は、もう既に軍属は軍事裁判にかけられないような状態になっているという認識もない。今度も、アメリカ側に権利をとられていながら、それを運用改善だと主張する。これは絶対納得できないですよ。今後、そのことについて、外務大臣が改善と言えば言うほど、それは改善になっているかどうかを当委員会でも議論をしていきたいと思います。

 最後にちょっと質問を、少し、ロスタイムのあれでさせていただきます。

 米側が裁判権を行使した結果の通報の問題について聞きます。

 十一月二十二日の参議院法務委員会で、我が党の井上哲士議員に対して平岡法務大臣は、軍属による公務中犯罪のうち日本国民に対して犯されたものに関して、検察当局が米軍当局に照会して得た懲戒処分の結果を明らかにしております。それによると、二〇〇六年九月以降、二〇一〇年までの間に、軍法会議にかけられた件数はゼロ、懲戒処分は三十五件、処分なしが二十七件で、全体の四四%は何の処分も受けていないという驚くべき実態が明らかになりました。

 今までは軍属の議論でした。では、軍人の場合はどうか。先ほど紹介しました二〇〇五年七月の答弁では、当時の刑事局長は、昭和六十年から平成十六年までで、軍事裁判を受けた者は一名、懲戒処分を受けた者は合計三百十八名であることを明らかにしております。

 昭和六十年以降の軍人の公務中犯罪について、軍事裁判、懲戒処分、処分なしの件数をそれぞれ明らかにしていただきたいのですが、調査の上、明らかにしていただけますか。法務省、どうですか。

甲斐政府参考人 取り急ぎ確認いたしましたところ、軍人による公務中犯罪は、平成十八年から二十二年までの間、おおむね百数十件程度発生しているということが確認されておりますけれども、処分結果につきましては、調査の上、外務当局とも協議の上で対応してまいりたいというふうに思っております。

赤嶺委員 法務省、外務当局と調整することも必要ですが、皆さん、日々、当局同士で犯罪の結果についてやりとりしているわけでしょう。それをきちんと報告すればいいんですよ。きちんと今の質問の中身で資料を提出するよう求めて、それから、外務大臣が日ごろおっしゃっていた公の催事の際の飲酒の運転についても、まだ地位協定の交渉が続いているというお話ですが、こんなのは地位協定の改定を堂々と求める方が事態の解決は早くなるということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

田中委員長 次に、服部良一君。

服部委員 社民党の服部良一です。

 最後の質問になりますけれども、多くの先輩の議員が、私が質問したいことをかなり質問していただきました。中身的にダブるところもあるかもしれませんし、また、人がかわれば、政党がかわれば、同じ質問でも違う質問になるかもしれません。よろしくお願いをいたします。

 今回の田中沖縄防衛局前局長の発言、本当に心の底から憤りを感じるわけです。テレビで玄葉大臣が言語道断であるということを明確におっしゃっておりまして、かなり強い調子でおっしゃっているなということで、私も本当に同感だなというふうに思ったわけなんです。

 そこでお聞きするんですけれども、どういう意味で言語道断なのか、中身ですね。どういう意味で、要するにアセスが進められないから言語道断なのか、その中身について、玄葉大臣の温かい思いをぜひ伝えていただきたい、国民あるいは沖縄の人たちに伝えていただきたいと思います。

玄葉国務大臣 もう言語道断で、絶対に許されない発言だ。つまり、沖縄の皆さんの気持ち、特に、これまでの歴史、経緯、そして今回の、特に盛んに取り上げられているこの普天間の問題がどこから発生したか、そういったことも含めて、どんなにお酒を飲もうが、どんな席だろうが、どんな場だろうが、絶対に発言をしてはいけない、そういうことを彼は言ったということだと私は思っています。まさに言語道断だというふうに思います。

服部委員 私は、もう少し、どういう意味での言語道断かということの中身について、ただ言語道断だではちょっとやはりわかりにくいわけで、例えば琉球新報の社説は、名護市辺野古への代替施設建設を犯すと表現することで、県内移設が正義にもとる行為だとみずから白状したと。どうですか、この社説に対して。

玄葉国務大臣 いや、いずれにしても、もう論外の発言というか、さまざまなことを沖縄県民の皆さんがそういうふうに考えてしまう、連想してしまう、そういうようなことも今御指摘のようにあるかもしれない、あったんだろうというふうに思えば、さらにそれは許されない話だというふうに思います。

服部委員 この文脈からいって、環境アセスを出す出さない、その話の中で犯すという言葉が出てきたということになれば、環境アセスを、評価書を出すという行為そのものが犯す行為、犯罪行為ということを防衛省みずからが言っているように私には聞こえるわけですけれども、文脈的に見ますとそういうふうに思われませんか。

玄葉国務大臣 これは田中防衛局長の発言でありますので、それを私がこの公の場でこれ以上ああだこうだというふうに申し上げるのは余り適切ではないだろうというふうに思います。

服部委員 沖縄は、環境アセスはノーだということを県議会を挙げて決議をしています、嫌だと。嫌だと言う者に、なおかつそれを無理強いしてくる。まさに防衛省の、これは沖縄のトップですからね、防衛省の顔ですよ。この方がやはりそういう姿勢でいたのかということになるじゃないですか。

 この発言は、沖縄に対する差別だと思われませんか。

玄葉国務大臣 ありとあらゆる角度から、もう言語道断であるということでございます。

服部委員 沖縄に対する差別であるというふうに思われませんか。

玄葉国務大臣 本当にさまざまなとらえ方をされてしまうような発言であるというふうに思います。

服部委員 沖縄に米軍基地が集中している構造的な問題、あるいは過去、沖縄戦という地上戦を経験した歴史、あるいは沖縄には琉球処分という言葉もあるのを御存じだと思うんですね。ですから、こういった言葉というのは、やはり沖縄に対する差別だというふうに沖縄の人は受けとめていると私は思うんですね。

 ですから、私、玄葉大臣はそういう認識をお持ちだろうと思って、当然のごとくお聞きしたんですけれども、もう一度ちょっとそこを、玄葉大臣の歴史観について、沖縄に対する思いについて一言しゃべっていただけませんか、沖縄の人に伝わる形で。

玄葉国務大臣 沖縄の歴史につきましては、まさに私も、琉球王朝の歴史も、「琉球処分」という本も読ませていただきました。薩摩侵攻の話はいろいろ解釈が最近出てきているということでございますけれども、そういった琉球王朝、私は琉球王朝というのはとても尊厳を感じます。この間、博物館にも行って、琉球王朝の歴史を、短時間ではあったんですけれども、本で読むのではなくて今度は見るということで、博物館の方を案内していただいたんですけれども、尊厳を感じました。同時に、やはり唯一の地上戦が沖縄戦であって、本当に沖縄で繰り広げられたということです。

 琉球王朝は、御存じのように、実は武器は持っていたということなんですが、極めて軽武装であったということであります。そういう中で薩摩侵攻があって、その解釈はいろいろあるけれども、その後、まさに住民の四人に一人が犠牲になるというような、そういう地上戦が日本で唯一沖縄で繰り広げられた。

 この間、糸数壕にも私は参りまして、あのごうの中で、最終的には病院ごうのような形になっていったわけでありますけれども、あの沖縄戦の凄惨きわまりない状況というものが生々しく伝わります。そういう状況を経て、さらに米軍統治下二十七年、そういう中で沖縄がある。

 同時に、おっしゃるように、〇・六%の面積の中に米軍専用基地が七四%も集中しているというこれまた現実で、本当に心苦しいです、率直に申し上げて。やはり日本全体でもっと負担を分かち合うということをしなきゃいけないというふうにつくづく思います。

 思う中で、ただ、今の安保環境とかさまざまなことを総合的に勘案して今の考え方になっているということなんですが、先ほど思いを語ってくださいということをおっしゃっていただいたので申し上げれば、これまでの歴史に思いをいたすときに、本当にさまざまなことを深く考えさせられるというのが率直なところでございます。

服部委員 もう一つ申し上げたいのは、これは女性に対する人権侵害であるということは大臣もお認めなさると思うんですね。

 沖縄での米軍のレイプ事件が頻繁にあるわけですけれども、まさに普天間問題の出発は、御存じのように、九五年の少女暴行事件なわけですよね。あれから十数年、すったもんだ、いろいろ議論しながら、普天間基地の危険性をどうやって除去するか、こういう議論をしてきたわけですけれども、その問題に携わっている日本のトップの官僚の中からこういう発言が出てくるということは、普天間問題を何にもわかっていない、沖縄の状況を何にもわかっていない。

 私、言語道断の中身は何ですかということをお聞きしたのは、そういうことを大臣の口からきちっとしゃべっていただきたかったわけなんですよ。ただ言語道断じゃ、意味がわからないじゃないですか。そういうことをまず冒頭に申し上げておきます。

 次に、きょう朝、河井委員の方から、十月二十六日の外務委員会でのいわゆる特措法の問題について、当時の議事録を読み返してみますと、頭にないという言葉を何回も大臣は繰り返し発言されているわけですが、きょう、その特措法については念頭にないと。頭にないと念頭にないがどう違うかよくわかりませんけれども、前の頭にないというのは何かよくわかりませんでしたという話で、今回の念頭にないというのは、その意味をわかって、そういうことはいたしません、しませんという意味の念頭にないというふうに私は理解するわけです。

 ただ、何か、通告がなかったからとか、その当時、野田政権としてすり合わせをしていなかっただのというような話がされましたけれども、私、その話を聞いてびっくりしたんですよ。

 何でかといいますと、玄葉大臣、それまでに沖縄にも行かれているでしょう。野田総理もアメリカのオバマ大統領と会談もされている。アメリカの国防大臣もやがて来られるという局面の中で、前も議論させていただきましたけれども、日本政府にアメリカ側が具体的な進展を求める。具体的進展というのは、環境アセスを出し、評価書を出し、出したら、その後に公有水面の埋め立てというプロセスになるのは、これは明らかな話であって、政権としては、環境影響評価書を出すということは、その最後、次はどうなる、次はどうなる、これを全部政治のプロセスの中に読み込んでおっしゃるわけでしょう、普通は。後のことを何も考えずに、ただ出しますと。出した後、例えば公有水面の埋め立てが議論になったときにどうするかということについては、一切、頭から何にもそういうことがなかったと。

 これは、少なくとも外務大臣は沖縄関係閣僚の中心的な方ですから、事業の実施主体は防衛省かもしれませんけれども、私はどうも、先ほどのああいう言い方は非常に軽く聞こえました。玄葉大臣は余り沖縄のことに関心がないのかなとさえ実は思ったんですね。ですから、さっき、冒頭の発言みたいに、沖縄に対する認識もあえてお聞きしたわけですけれども。

 実は、もう一点お聞きしますと、あのときは、公有水面の埋め立ての許認可権を持つ県知事の権限を奪う特措法をつくるのか、そういうことをするのかという質問だったんですけれども、それは、要するに、沖縄がノーと言っているのに対して強行をするんですかという意味の中の一つの象徴的な問題として特措法ということを言っているわけですね。

 それで、先ほども出ましたけれども、去年十月の予算委員会の菅総理の答弁は、強引なやり方をするということは全く念頭にありません、決して沖縄の皆さんの声を無視した形ではやりませんということを予算委員会でおっしゃっているわけですけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。

玄葉国務大臣 菅内閣のときの菅総理大臣の答弁が変更されたということではないというふうに申し上げたいと思います。

服部委員 環境影響評価の評価書を出すということになりますと、九十日以内に知事の意見を聞き、その後、公有水面の埋め立てとなるわけですけれども、その埋め立てのプロセスの中に、いわゆる助言、勧告をして、是正の指示をして、裁判に訴える、そういういわゆる強制代執行をするという、特措法をつくらずとも強制代執行をするということも法的には可能なのかどうかということが一部議論にあるというふうに私は承知しておるんですけれども、特措法だけじゃないそういったことも含めて、菅総理が言われたみたいに、決して沖縄の皆さんの声を無視した形ではしない、そういう理解でよろしいですか。

玄葉国務大臣 とにかく、菅総理の答弁は変わったというふうに認識していません。

服部委員 それでは、玄葉大臣も、特措法についても念頭にない、それ以外の強行的な措置についてはしない、あくまでそういう強引なやり方はしない、決して沖縄の皆さんの声を無視した形では強行はしない、そういう趣旨の大臣の答弁であるというふうに私は受けとめました。もし違うなら、違うとおっしゃってください。(玄葉国務大臣「同じです」と呼ぶ)はい、ありがとうございます。では、そういうふうにしっかり受けとめさせていただきました。

 実は、この前の議論の中でもう一つ、防衛省にお聞きした中で、沖縄県から質問が出ている件、これがいつ回答されるんだということについても、結局、明確な御返事がありませんでした。ちょっとその件、防衛省の方、沖縄県からの六月一日付の「在日米軍・海兵隊の意義及び役割」についての質問書、これに対する回答がいつになるのか、お答えいただきます。

下条大臣政務官 先生の御質問は、先般のときに御質問のことだというふうに認識しておりますが、知事からお出しになった部分については、一つ一つ丁寧に、今省内で細かく検討しております。

 できる限りその回答については出していくということで努力をさせていただいていますけれども、期限を明確に切ることについてはなかなかちょっと今難しい段階でありまして、できる限り、準備ができ次第、発表できるようにしていきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

服部委員 この前と同じようなやりとりになるんですけれども、ことしの六月に出て二年後に回答が出ましたでは、これはしゃれにならぬわけですよね。ですから、いつごろのめどなんですか。例えば、努力しています、年内には何とか、目標でやっていますとか、普通はそういう言い方をするじゃないですか。そこはどうですか。もう少し明確に。

下条大臣政務官 先生、ありがとうございます。

 省内でも、今申し上げたとおり、細かく一件一件丁寧に答えさせていただくように準備を進めておりますけれども、できましたら年内、遅くとも来年の半ばまでにはというふうに、目標に向かって今努力をしているところでございます。

 以上でございます。

服部委員 年内もしくは来年の半ばというのは、来年一月の半ばという意味ですか。年内もしくは来年の半ばという来年の半ばというのは、いつのことでしょうか。

下条大臣政務官 来年中の後半にならないという意味でございます。できるだけ早くということでございます。

服部委員 年内とおっしゃる割には、来年の半ばと。どうも何かあき過ぎる気がしますけれども、いずれにしても、よろしくお願いします。

 ちょっと防衛省に、今回の田中発言について。

 これは、いろいろな見方があります。言語道断の中身について、公務員としての適格性は一体どうなんだ、そういう議論もあるでしょうし、一体、防衛省は職員みんなそんななのかと言われても仕方ないですよね、何せ防衛省の沖縄に派遣されているトップがああいう言い方をされているわけですから。

 防衛省としては、もう少し人権教育といいますか、女性に対する、あるいは沖縄に対する、もっと基本的なところからやり直さないかぬのじゃないですか。その点、何かお考えはありませんか。

下条大臣政務官 このたびの件については、省として本当におわびを申し上げなきゃいけないというふうに思っております。これを踏まえて一人一人が反省し直し、また、士気高揚に向けて、しっかりとまたもう一度心を改めて対応したいというふうに思っております。

服部委員 きょうの新聞を見ていますと、防衛省の中からも、防衛省の幹部がこんなことを言っていると、いろいろ新聞の端々に書かれています。もう辺野古建設は無理じゃないかというような声も出ている、防衛省の幹部とかいって出ているわけですけれども、今回の事件を踏まえて、準備、準備とおっしゃるんですけれども、防衛省としては、本当に環境アセスの評価書を年末に出されるつもりなんですか。それを思いとどまって、ここはちょっと一回じっくり考えてみよう、考え直してみよう、そういうお考えはありませんか。

下条大臣政務官 お答え申し上げます。

 今回のことは、本当に深く反省させていただきたいというふうに思っております。

 ただ、御承知のとおり、日米合意がございます。その中で、環境アセスの部分については、その準備が年内にできるように進めていきたいというふうに思っております。

 いずれにしても、私どもが今まで以上に真摯に努力して、沖縄のそれぞれの方々に御理解いただけるように努めていきたいというふうに思っております。

服部委員 環境アセスの評価書の提出をやめて、出したら、次はまた、やれ埋め立てがどうとかいう形になるわけですから、一つのプロセスとして。ですから、ここはやはり政権としても本当によくよく熟慮して、アメリカ側からもいろいろなメッセージが発せられています、私は、やはりここは決断のときだと。辺野古の新基地建設をやめて別の形を考えていく決断のときだということを申し上げておきたいと思います。

 日米地位協定の問題について、先ほど赤嶺議員の方からも詳しく質疑がございました。

 私も、この問題に何でこだわっているかといいますと、赤嶺議員は沖縄出身ですから当然なんですけれども、兵庫県の方の息子さんが、海老原さんという方なんですけれども、米兵との事故で沖縄国際大学に入学する直前に亡くなって、そのサポートをさせていただいたことがあるわけです。ですから、いわゆる事件、事故があって、日本の裁判でも裁けない、その遺族の気持ちというものを本当に真剣に外務省に考えていただきたいわけです。

 先ほどの議論でもありましたけれども、軍属というのは、いわゆる軍が雇っている民間人なわけですね。これを軍人と同じ処遇ではおかしかろうということで、アメリカの裁判所が、軍事法廷じゃなくて司法手続ですべきということを決めているわけじゃないですか。

 ところが、日米地位協定では、軍属も、軍人と同じように公務中の事件に対する裁判権がない。ですから、先ほど二〇〇六年とか二〇〇二年とかいろいろ出ておりますけれども、まさに、アメリカでは当たり前のことが地位協定で当たり前じゃない。ですから、地位協定の改定をすべきだということを我々は言っているわけなんですよ、沖縄を含めて。

 今回、運用の改善ということなんですけれども、好意的配慮ということでしょう、あくまで。それは、ないよりましと言ってはいけないですけれども、確かに一歩前進であるのはそうでしょう。しかし、これを見ますと、まず、米側が公務中に犯罪を犯した軍属を刑事訴追するか否かを決定して、日本側に通告する、そしてそういう事件に対して米側が好意的配慮を行うと。

 玄葉大臣、先ほど、じくじたる思いもおありなのかもわかりませんけれども、満足はしないけれども一定の前進だという趣旨のことをおっしゃったと思うんですが、ここを改定まで持っていく。少なくとも、連立政権が発足したときの合意は、改定を提起する、その前の民主党のマニフェストは、改定を実現するということだったわけでしょう。それが、改定を提起もできないまま今まで来ているわけじゃないですか。どうですか、外務大臣として、その決意は。

玄葉国務大臣 一応、念のためでありますけれども、誤解のないように申し上げますと、結局、第一次裁判権の話というのは、専ら犯と軍人軍属の公務中は、第一次裁判権はアメリカである。しかし、当然ながら、それ以外は日本が第一次裁判権を持っているということですよね。そこはまず大前提だと思うんです。それが混同してしまうと大前提が崩れるし、余り関心のない方なんかには誤解を与えてしまうのであえて申し上げたんですけれども、結局、公務中以外の方はもともと日本に裁判権がある。

 では、問題は、公務中の軍人軍属の裁判権、これを本当にアメリカ側に持たせておいていいのかという問いがまず一つあるんだと思います。

 それは、例えばNATOの地位協定もそうであります。軍人等の公務執行中の罪、これは、NATOもいわゆる米韓の地位協定も、基本的には派遣国側、つまり米側が第一次裁判権を持つのだというふうに思います。逆に、第三国と米側が締結をしている地位協定で、いわゆる公務執行中の罪について接受国側が第一次裁判権を持つというふうにされているものを私は知りません。

服部委員 先ほどの赤嶺議員との議論、余り理解されていないんじゃないですか。軍属と軍人と違う。だから、米軍人と軍属、軍が雇っている民間人は違いますよという話なんですよ、今ずっと先ほどから議論になっているのは。

 それで、日本の地位協定には軍人も軍属も一緒になっているわけですよ。ところが、アメリカの最高裁判決とかは、軍属も軍人と一緒に軍事法廷で裁くのはおかしかろうということで、軍属については通常の司法手続で裁こうという話なんですね。ところが、日本は、日米地位協定で軍人も軍属もとなっている。実際は、運用で公務中の認定をアメリカがあえてしてこなかったのが、ずっと二〇〇六年まで続いているわけですね。ところが、それをいつの間にか、公務証明を米側が発行して、結果的には裁判権を向こうが奪うという形になっていると、それはさっきさんざん議論したじゃないですか。

 だから、NATOがどうだろうと、それは軍人の話をおっしゃっているのであって、軍属もですか。(玄葉国務大臣「軍属もですよ」と呼ぶ)

田中委員長 挙手してから発言してください。

 玄葉大臣に聞きますか。

服部委員 いや、ちょっと待ってください。

 それは、よその国のこと、NATOがどうなっているか、私はそこはちょっと、はっきり言って知りません。しかし、アメリカで国内法で軍属は司法手続で裁くということになっていて、その運用が二〇〇六年までずっと続いているのに、日米地位協定の改定もせずにずっと来たという、そのことはどうなんですかということをお聞きしているわけです。

玄葉国務大臣 さっき私が申し上げたことは決して間違ってはいなくて、NATOも、軍人も軍属も第一次裁判権はアメリカなんです。これはまず、ファクトというか事実関係としてございます。

 それで、おっしゃった、御指摘の、いわばMEJAができて、もっと言えば、以前に日本に裁判権を譲っていたのに何だという話は、率直に言うと、私もじくじたる思いがありましたよ、報告を聞いて。二〇〇六年から、しかも、懲戒処分しかできていないというわけですから。

 だから、私は、今できる範囲で、とにかく一つでも二つでも解決しよう、そういうことで、今回の日米の新しい枠組み合意に動いたんですね。

 おっしゃるように、日米地位協定そのものに対してそのほかの問題も、やはり問題意識として私もあることはあるんです、いろいろな。ただ、第一次裁判権の話は、さっき申し上げたように、米韓もNATOもそういうふうになっていますから、そこは誤解のないようにしていただきたいんですけれども。

 その上で、やはり日米地位協定全般の話というのは、実際、今回の話になると、そうはいったって刑事裁判にかかわる根幹の話です。しかも、できるだけ早くその解を出さなきゃいけないということがあったので、私は、今回は今回で一歩前進で、一定の前進だというふうに思っています。さらに一つ一つ積み重ねていくということをまずやっていきたいというふうに思います。

 日米地位協定そのものを、また全体をどうするかということになると、やはり相当の時間がかかるというふうに思います。その中で、今申し上げたような運用の改善が並行してできるならいいんですけれども、恐らく、それはそれとしてまた大変な時間がかかって、運用の改善はできないということになってしまうおそれが私はあるなというふうに思っておりましたので、今のようなアプローチの仕方をしたということです。

 地位協定そのものについては、これまでも申し上げてきましたけれども、全体の、基地も含めた全般的な進展を踏まえながら、地位協定全般の、全般というか、いわゆる改定全般、そういう問題については検討していきたいというふうに考えています。今は、一つ一つ積み重ねていきたい。そして、できるだけ早く、一つ一つ、努力だけじゃなくて実現をする、結果を出すということがどこまでできるかということを今追求しているというのが今の状況であり、私の今の考え方でございます。

服部委員 改定を提起するじゃなくて、検討するということですか、今のは、検討という言葉が出ましたけれども。いやいや、それは時間がかかるというか、今まで時間がかかっているわけですよ。今からまたさらに時間がかかるでは、これは未来永劫できないということをおっしゃっているに等しいわけです。

 韓国でも、SOFAの改定をやっていますよ、アメリカと交渉して、二度ほど。全然改定がないのは日本だけですよ、これだけいろいろ問題がありながら。

 ですから、そのことを、新しい政権になって、ひょっとしたら改定が動き出すのかなというふうに恐らく沖縄の県民は期待したと思うんですね。そこはぜひ、大臣、大臣の間に提起するぐらいの強いアタックでやってくださいよ。でないと、いつまでたっても、大臣が、頭がかわるだけで全然進展しない。ぜひよろしくお願いします。

 時間がなくなってきたので、ちょっと原発の問題を最後に大臣にお聞きしておきます。

 玄葉大臣は、福島県の御出身、それから、前の県知事の佐藤栄佐久さんとは何か非常にお近しい親族関係ということで、私もしょっちゅう、最近、佐藤栄佐久前知事とあちこちでお会いするんですよ、脱原発の集会で。聞いてください、私のことを知っておられますので。

 それで、例えば、大臣は、原発の十四基の増設についても、三・一一の早い段階で、原発の十四基増設はあり得ないというようなこともおっしゃっている。それから、九月二日の就任会見で、原発輸出に関して、私自身は、やはり気持ちの中でどうしても積極的になれるかと言われたら、私は必ずしもなれないということをおっしゃっている。これは事実ですよね。

 ですから、本当は、減原発とかいう中途半端なことじゃなくて、先ほど非常に力強く、原発は減らしたいんだとおっしゃった。しかし、やはり一つの問題は、では、国内では減らすけれども海外には持っていく、これは一体どうなんだという議論があります。

 それから、原発を減らすというふうに方向づけした途端、大学の原子力の科には学生が集まらない。結局、産業そのものが斜陽になるんですよ。仕事がなくなったら、民間企業というのは早いですよ。その部署の技術屋はばあっと移す。

 ですから、ここはやはり原子力のリスクというものを、我々が本当に、国民が共有したわけですから、大臣の、中途半端な言い方じゃなくて、脱原発に向けて、福島の出身の議員として、やるんだ、その決意をぜひ一言しゃべってくださいよ。

玄葉国務大臣 今御指摘がありましたように、私も、三・一一の後、十四基つくるような状況じゃないというふうに言ったのも事実でありますし、新規十四基というもともと計画があったんですね。ですから、先ほども私も申し上げましたが、減原発が中途半端だということでありますが、私としては、やはり段階的に依存率を引き下げていくというのがよろしいと思いますし、政府全体としても基本的にはそういった方針を共有しているものというふうに思っています。

 さっき赤松先生から元気がないなと言われたので少し申し上げますけれども、本当に、日本は、省エネ技術、環境技術は世界一になれる、特に最大のポイントは実は省エネだと思っています。

 つまりは、エネルギー基本計画は、服部委員も御存じかもしれませんけれども、二〇〇七年と二〇三〇年を比べているんですけれども、同じ総発電量にしているんですね。それで依存率を実は計算しています。でも、実際は、既存技術の改良を初めとする省エネ技術、また二〇三〇年になれば、次の世代というか次の時代の省エネの新しい技術がかなり出てきます。

 例えば、今、リチウムイオン電池といっていますけれども、次はリチウム空気電池です。空気電池の方にはやはり政府が、民間はすぐ投資しませんから、研究開発投資をして、そういうことをきちっと行っていけば、私は段階的に依存率を引き下げることはできるというふうに思っていますので、それがまた日本の売りになる。私は、外務省にも、そういったものをこれから海外に売り込むんだということを、いわばハッパをかけているというのが今の現状でございます。

 さはさりながら、先ほどから申し上げていますけれども、いわゆる原子力協力というのは、これは基本的な意義があるものである。個々にきちっと判断をして、その上で我々は提案をさせていただいているということは御理解をいただきたいというふうに思います。

服部委員 また議論させていただきたいんですけれども、最後に、財務省の方にちょっと事実関係だけお聞きをして、質問を終わりたいと思うんです。

 私も営業を長いことやっていましたので、資金回収ができないということは営業にとって致命的なことなんですね。資金回収問題、それからコストが高くつく。それで、この日越の合議ではJBICの融資というのが見えるわけですけれども、JBICが融資をするために間断なき審査が求められる。その際に、環境社会配慮ガイドライン、あるいは今後策定する原発輸出にかかわるガイドラインに合致するということが必要であるというふうに理解しているわけですけれども、それでいいのか、これが一つ。

 それと、そのガイドラインに基づく審査をどのように行うのか。形式的に書類だけ見てオーケーということにならないと思うわけですけれども、審査の結果、融資が不可能になるということもあるというふうに理解していいのか。ヨルダンでは水の少ない砂漠地帯、ベトナムでも国立公園の中あるいはウミガメの産卵地に原発の建設が進められるというふうにしているわけで、あるいはそういった財政基盤の非常に弱いところに巨額の投資をして本当に回収ができるのか、その辺の考え方について最後にお聞きをしておきます。

山崎政府参考人 ベトナムへの融資の件でございますけれども、これはまだ、現時点では具体的な融資の主体でありますとか条件等は決まっておりませんで、今後、ベトナム側からの要請でありますとか準備調査等の進展を踏まえて、両国の関係者で協議していくということになります。

 仮に、もしJBICが融資をすることとなった場合、まず返済不能かどうかという点につきまして、これはもともと法律上、JBICはきちんと償還確実性というものを見なければいけません。そういう観点からきちんと審査を行って、必要に応じて担保等についてもきちんと考えるということになります。

 それから、環境社会配慮の点、原発の安全の点につきましては、それぞれガイドラインでありますとか、あるいは原発の安全については今まさに政府全体として安全確保の取り組みが行われておりますから、これをきちんと踏まえて、その上でJBICは融資等の審査をしっかり行っていくということになります。

 当然、それに照らして融資ができるかどうかということを考えるわけでございまして、まず融資ありきということではございません。

服部委員 質問を終わります。どうもありがとうございました。

田中委員長 この際、先ほどの赤嶺政賢君の質疑に関しまして、外務大臣から補足の答弁を求められておりますので、これを許します。玄葉外務大臣。

玄葉国務大臣 先ほどの赤嶺委員の問い、事実関係、経緯についての問いについて、担当者の方から参りましたので、私の方から答弁をさせていただきます。

 一九六〇年代に米側が公務証明書の発給を停止していたのは具体的にいつか。日米間で協議があったのか。

 一九六〇年代初めに本件について日米間で協議を行っているけれども、それ以上の詳細は、米国との信頼関係もあり、お答えを差し控えたい。

 次の問いですが、日米地位協定が発効した一九六〇年に米連邦最高裁判所判決が出ている。最初から軍属に対して米側は刑事裁判を行えなかったのではないか。そのような事実を日本側は知っていたのか。

 先般外交文書が公開をされた一九六〇年の日米地位協定締結交渉の記録には、一九六〇年の連邦最高裁判決についての言及は出てきておりません。それ以上は承知をしていないということでございます。

 そして、二〇〇〇年にMEJA法ができたときに米側から説明があったかということでありますが、二〇〇六年の米側による公務証明書の発給再開の前から、本件について日米間で協議を行っているということでございます。

 最後に、MEJA法によれば接受国で刑事裁判を行った場合には米国は裁判を行えないとしているが、今回の合意はMEJA法で認められた日本の権利を放棄しているのではないかという問いであります。

 御指摘の規定は、接受国が地位協定の規定などにより刑事裁判を行っている場合に米側がMEJA法による訴追はできないという一事不再理の原則を定めたものであり、MEJA法による訴追に優先して接受国による裁判管轄権を創設的に認めた規定ではないというふうに理解をしているということでございます。

赤嶺委員 もう時間はないんですが、外務大臣に申し上げたいことは、六〇年代の当初のころから、軍属の公務中の第一次裁判権について、専属的に日本側にあるような実態が長く続いてきたということですよね。

 その詳しい経過も、今度の運用改善というのは、まさに、六〇年、九五年、今回なんですよ、地位協定の運用改善というのは。だから、六〇年にさかのぼって、刑事裁判権についてきちんと認識の上、臨むべきで、合意してみたら違うところに行っていたというような、私が言っている改悪なんですが、そのことをもう一度強く指摘しまして、質問を終わります。

 以上です。

     ――――◇―――――

田中委員長 次に、第百七十七回国会提出、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とロシア連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、原子力の開発及び平和的利用における協力のための日本国政府とベトナム社会主義共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び第百七十七回国会参議院送付、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とヨルダン・ハシェミット王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 第百七十七回国会提出、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とロシア連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び原子力の開発及び平和的利用における協力のための日本国政府とベトナム社会主義共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件につきまして、順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣玄葉光一郎君。

    ―――――――――――――

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とロシア連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 原子力の開発及び平和的利用における協力のための日本国政府とベトナム社会主義共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

玄葉国務大臣 ただいま議題となりました原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とロシア連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を説明いたします。

 政府は、平成十九年四月以来、ロシアとの間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十一年五月十二日に東京において、我が方外務大臣と先方国営公社ロスアトム社長との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、原子力の平和的利用に関する我が国とロシアとの間の協力のための法的枠組みを提供するものであり、核物質等の平和的非爆発目的利用、国際原子力機関による保障措置の適用、核物質防護措置の実施等について定めております。

 この協定の締結により、両国間で移転される核物質等の平和的利用等が法的に確保され、両国間の原子力協力における安定的な基盤の整備に資することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十一年七月以来、韓国との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十二年十二月二十日に東京において、我が方外務大臣と先方駐日大使との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、原子力の平和的利用に関する我が国と韓国との間の協力のための法的枠組みを提供するものであり、核物質等の平和的非爆発目的利用、国際原子力機関による保障措置の適用、核物質防護措置の実施等につき定めております。

 この協定の締結により、両国間で移転される原子力関連資機材等の平和的利用等が法的に確保され、両国間の原子力協力における安定的な基盤の整備に資することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、原子力の開発及び平和的利用における協力のための日本国政府とベトナム社会主義共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十二年六月以来、ベトナムとの間でこの協定の交渉を行いました。その結果、本年一月二十日にハノイにおきまして、我が方在ベトナム大使と先方科学技術副大臣との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、原子力の平和的利用に関する我が国とベトナムとの間の協力のための法的枠組みを提供するものであり、核物質等の平和的非爆発目的利用、国際原子力機関による保障措置の適用、核物質防護措置の実施等につき定めております。

 この協定の締結により、両国間で移転される原子力関連資機材等の平和的利用等が法的に確保され、両国間の原子力協力における安定的な基盤の整備に資することが期待をされます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 ついては、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

 以上です。

田中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 この際、お諮りいたします。

 第百七十七回国会参議院送付、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とヨルダン・ハシェミット王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきましては、第百七十七回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とヨルダン・ハシェミット王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

田中委員長 次回は、来る十二月二日金曜日午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十六分散会


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