衆議院

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第5号 平成23年12月7日(水曜日)

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平成二十三年十二月七日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 浅野 貴博君 理事 市村浩一郎君

   理事 菊田真紀子君 理事 長安  豊君

   理事 村越 祐民君 理事 河井 克行君

   理事 三ッ矢憲生君

      相原 史乃君    小川 淳也君

      大泉ひろこ君    勝又恒一郎君

      川村秀三郎君    阪口 直人君

      首藤 信彦君    中津川博郷君

      萩原  仁君    浜本  宏君

      早川久美子君    山尾志桜里君

      山岡 達丸君    山口  壯君

      小野寺五典君    金田 勝年君

      後藤田正純君    高村 正彦君

      松野 博一君    笠井  亮君

      服部 良一君

    …………………………………

   外務大臣         玄葉光一郎君

   外務副大臣        山口  壯君

   防衛副大臣        渡辺  周君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   木寺 昌人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石兼 公博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 西塔 雅彦君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  越川 和彦君

   政府参考人

   (文化庁長官官房審議官) 芝田 政之君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   金澤 博範君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  西  正典君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  松本隆太郎君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月六日

 辞任         補欠選任

  阿久津幸彦君     山岡 達丸君

同月七日

 辞任         補欠選任

  中野  譲君     川村秀三郎君

  秋葉 賢也君     松野 博一君

同日

 辞任         補欠選任

  川村秀三郎君     中野  譲君

  松野 博一君     秋葉 賢也君

    ―――――――――――――

十二月六日

 経済上の連携に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)(参議院送付)

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第二号)(参議院送付)

同月五日

 米軍機の低空飛行訓練の中止を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第五八二号)

 原子力空母の横須賀母港をやめることに関する請願(志位和夫君紹介)(第五八三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済上の連携に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)(参議院送付)

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第二号)(参議院送付)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長木寺昌人君、大臣官房審議官石兼公博君、大臣官房審議官西塔雅彦君、国際協力局長越川和彦君、文化庁長官官房審議官芝田政之君、防衛省大臣官房長金澤博範君、防衛政策局長西正典君、運用企画局長松本隆太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川淳也君。

小川委員 おはようございます。民主党の小川淳也でございます。

 たっての希望で、初めて外務委員会に所属をさせていただきました。委員長初め、理事の皆様、また委員の皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 また、大臣におかれましては、御就任から三カ月、大変目まぐるしい中を御勤務に精励されていることと存じます。心より敬意を表し、まだまだこれからではございますが、ひとまずこの時点において心より御慰労を申し上げたいと思っております。

 少し、これは触れないわけにまいりませんので、簡潔に触れさせていただきたいと思いますが、この間、外務委員会での主要な議題は原子力協定でございました。きのうまでで本会議の採決を終わった。ただ、党内の対応も含めて、さまざま議論になっていることは事実でございます。この点、衆議院においてはもう議了済みでございますので、事の是非についてはもはや議論いたしませんし、参議院での議論を見守るというのが正しい姿勢だろうと思います。

 ただ、閣僚の一人として、ぜひお気持ちにとめていただきたいのは、原子力行政にかかわらずでありますが、やはり国内政策と対外政策との一貫性、調和感あるいは一体性、こういうものについては、日本国政府としてやはり整えていく必要があろうかと思います。そういう意味で、ぜひ、今回のことを一つのきっかけとしまして、そういう面でも、ある種の責任が日本政府に生じていることも含めて、ぜひお気持ちのどこかに置いていただければと思います。

 大臣には、野党時代から、特に国内政策、地域主権改革等で大変御指導いただいてまいりました。国際舞台で活躍される大臣を拝見するのも、何といいますか、非常に魅力的な部分がございまして、ただ、私も外交に関してはほとんど知識とか経験が十分ではありませんだけに、きょうはちょっと胸をおかりしたいんですが、この三カ月、今週だけとりましても、ロシアの国内選挙、それから、きょう総理の訪中が延期をされるような報道がありました。また、大臣はミャンマーを初めとしたアジア諸国を訪問される予定ということも報じられております。また、党内外ではTPPをめぐる議論がありました。それから、APECやASEANなどの多国間会合、また当然、数え切れないほどの恐らく二国間の外交、こういうことを三カ月、精力的にこなされたわけであります。

 その間、非常に漠然としたお尋ねで恐縮です、外交に関して大臣なりの何か哲学といいますか、思想といいますか、外交理念のようなもの、何かこの時点で到達されたものがございましたら、お聞かせいただきたいと思います。

玄葉国務大臣 本当に小川さんとは国会に出馬をされるときからの強い縁があって、こうして外務委員会でやりとりができることを大変うれしく思います。

 その上で、今の御質疑でありますけれども、私は外務大臣になったときに、余りこれまで使ってきた表現ではないんですけれども、大言壮語するよりも実のある外交をしたいというふうに胸に秘めながら行ってまいりました。

 同時に、内向き思考にどうしても今の日本はなりがちでありますので、その内向き思考から私の在任中に脱却できるというような状況をつくりたいと。例えば、具体的に言うと、これからでありますけれどもODA予算の反転とか、そういったことも含めて、胸に秘めながらやってきたところでございます。

 さらに、まず、やはり日本の繁栄というのは、あるいは豊かさというのは、アジア太平洋とともにあるというのも現実だというふうに考えておりまして、この間、私が意識をしてきたのは、このアジア太平洋の中で、まず米国がアジア太平洋にしっかりとコミットするという状況をつくることと同時に、あわせて、やはり世界第二位、第三位の経済規模を誇る日中が、お互いに経済関係を強化しながら、地域の問題そして世界の問題に対して、ともに建設的な役割を果たしていくという方向に持っていくために、どのような環境をつくっていけばいいのかということで、ASEANの外交を含めて、この間展開をしてきたというふうに御理解をいただければと思うんです。

 私は、就任会見のときに、何が一番大切ですかと言われて、東アジアのリスクを最小化して成長の機会を最大化することであるという言い方をいたしましたけれども、やはりこのアジア太平洋の中で民主主義的な価値に支えられた豊かで安定した秩序をつくる。その場合の民主主義的な価値というのは、決して価値の押しつけということではなくて、やはり日本という国は、これまで独自の文明、文化というものを持ち、またアジア的な価値観を持ってきた中で、このアジアの中で最初に民主主義的な価値というものを取り入れたわけであります。そういう意味で、日本にはやはり独自の役割というものがあるという考えのもとで、今申し上げたようなことを意識しながら、例えばEASなどでのルールの確認などなど行ってまいりました。

 また、部分的に言えばさまざまございます。例えば、日米の地位協定の運用改善を初め、きずなを深めるためのこれまでの対話あるいは交渉、それぞれやってまいりましたけれども、ざくっと言えば、そういう意識を持ちながら、この間外交活動を行ってきた。

 したがって、経済連携についても、TPP初め、それぞれの経済連携についても積極的に推進をしてきた。それは冒頭申し上げたように、東アジアのリスクを最小化して成長の機会を最大化するということは、やはり極めて大切であるというふうに考えたからであります。

 長くなって申しわけありませんが、そもそも、やはり私は、外交というのは国益を最大化すること、そして成長の機会も最大化すること、そして国際社会の平和と繁栄に貢献をする。それは、国益と国際公益というものを常に重ね合わせながら、しっかりと国際社会の繁栄と平和にも貢献をしていく、プレゼンスも強化をしていく、そういうことを意識しながら、この間、外交活動を展開してきたつもりでございます。

小川委員 ありがとうございました。内向きからの脱却、アメリカとの関係、中国との関係等々、お話しいただきました。

 大臣の所信会見の中で、孔子の兵と食と信というお話をされていることを大変心強く思いました。多分、私も十分な見識を持ち合わせるには至っておりませんが、古典的には、軍事力、経済力、そして価値という三つの要素を駆使して、国際社会の荒波をくぐり抜けていくということだろうと思いますが、そういう意味で、私は、最近特に心に残りましたのは、やはりブータン国王の来日でありました。

 もちろん、若い国王、そして新婚間もなくという状況であり、歓迎ムード、祝賀ムードはこれ以上ない状態であったわけですが、それにしても、なぜ人口七十万人の、大変失礼な言い方かもしれませんが、世界でいえば小国です。その国王の来日に対して、あそこまで日本国民が注目をし、国会の演説も耳を傾けて、最近自信を失いがちな私たち日本人にとって、久々に、近年まれに見る名演説といいますか、非常に励まされる。涙ぐむ国会議員が多かったと聞いていますが、私もその一人でありました。

 あの存在感を考えれば考えるほど、やはりこれからは、もちろん経済力は大事です、軍事力も前提になるでしょう。しかし、国際的にいかなる価値を提供する国家であるのか、そこを、あの経験に照らして、みずからをしっかり振り返る必要があるような気がいたします。

 大臣、お疲れだといけませんし、山口副大臣、即答でもよろしいですか。ブータンの魅力は何か、そして日本はあの経験からどういうセールスポイントを掲げていくか、御見識を伺いたいと思います。

玄葉国務大臣 私も、あの国会演説、もちろん宮中晩さん会初め、国王御夫妻とは何度お会いしましたか、三度以上は、四度ぐらいお会いしたというふうに思います。やはりあの国会の演説を聞いて、まずは、今、小川さんが言われたように、非常に親愛の情にあふれる国会の演説であった、そして日本人、日本国に対する敬意というものを非常に感じました。多くの恐らく国会議員が、あるいはあの演説を聞いた日本人が、日本人としての誇りというものを改めて感じさせてくれるような演説をされた、そして、すべてにおける立ち居振る舞いの立派さというものに対して、多くの日本人が感動したのではないか。

 お尋ねの、価値の話も含めて申し上げれば、私自身も三・一一を地元で経験して、確かに自分の価値観とか人生観が変わりました。それは、幸せとは一体何だということを感じたんですね。国民総福祉とか国民総幸福量とか、そういう概念をみずから説明されて歩かれたということに対して、さまざまな意味で転換期にある日本人に対して、やはり心を打つものがあったのではないかというふうに感じます。

小川委員 おっしゃるとおりだと思います。

 先代国王も恐らく立派な方だったんだと思いますが、GNHという、国民の総幸福量という概念を打ち出したことそのもの、また王制でありながらみずから民主化にかじを切る、恐らく世界史上まれに見る変化をみずから遂げられたんだと思いますが、そういう、国際社会にボリュームとかスケールではない価値を示した。

 私は、日本はこれから先、恐らく今後も世界最長寿の国であり続けるし、あり続けなければならないと思います。どういう先進モデルを世界に示せるか、そして人口が減る中にあって、いかなる気構えと具体の政策で交流を拡大し、国の活力を維持するか。そして、大臣のお地元でも本当に今苦労されている方はたくさんおられますが、世界的なエネルギー、環境技術の革命期にあって、日本がいかに最先端を走るか。こういう点で、やはり世界に価値を高らかに示す国、こういう姿をぜひ夢見て、この政治の世界で頑張りたいという気がしております。

 国益を主張するということは、政府として極めて重要です。しかし、ともすると、ややトーンが下がりがちなのは、先ほど来のお話にもありますとおり、国際公益にいかに貢献するか。国際公益への貢献こそが実は最大の国防であり、最大の国益であり、価値であるということも、ぜひあわせて発信をしていただきたい。

 関連で、その文脈で具体的にお尋ねしたいんですが、今、欧州危機が大変な状況にございます。日本として、これにかかわるのか、かかわらないのか、どの程度かかわれるのか、かかわれないのか。きょうは、三谷政務官、財務省からお越しいただきました、ありがとうございます。この欧州危機をどう把握しておられるか。

 そして、もう時間もあれですので、具体的に。EUが発行しようとしております欧州金融安定化基金の発行債券の、どの程度の割合に対して日本は貢献しているのか。これはまさに国益と国際公益が円高問題を絡めてぶつかり合うテーマだと思いますが、現時点における財務大臣政務官としての御見識をお聞かせいただきたいと思います。

三谷大臣政務官 今欧州で起きている債務危機問題は、これは決して、我が国として対岸の火事と眺めるわけにはいかないと思っています。ただ、欧州の財政問題に関しては、やはり基本は、市場の信認を回復するために欧州みずから取り組んでいくことが重要である、これが基本であると考えております。

 また、御指摘のEFSF債購入については、これは御承知のとおり、起債のたびに一部買っております。約一〇%程度であります。今御指摘の話は、それを買い増してはどうかということだと思いますが、それは、欧州のみずからの取り組みを見きわめながら、また外為特会の保有するユーロの流動性や発行条件等を総合的に勘案しながら検討を進めてまいりたいと思っています。

小川委員 ありがとうございました。

 大臣、ぜひ数字を少し御紹介させていただきたいんですが、今、三谷政務官が御説明になった欧州安定化基金の債券の発行残高、ざっと計算で、日本円で一兆五千億です。日本がそのうち持っているのが三千億ぐらいですよね。外為特会の日本の資産は百兆円を超えています。百兆円を超えているうちの三千億です。

 そこで、私が申し上げたかったのは、国益だけを考えれば、この異常なまでの水準の円高を是正するために思い切って介入をし、欧州安定化基金債を大胆に買えばいい。

 しかし一方で、きょうはあえて資料をお配りさせていただいたんですが、これは、外貨準備高が各国政府のGDPの大体どのぐらいを占めるかという、これも余り、恐らくは知られていない数字です。中国と日本のGDPはほぼ匹敵している状況ですが、中国の外貨準備高はGDPの五〇%に到達しようとしています。日本は百兆円ですから、大体二〇%。ロシアや韓国が三〇%前後。ところが、欧州、ドイツ、フランス、イギリス、上から四番目以降にありますが、一けたです。つまり、これは当然、国際社会の反発も含めて、やり過ぎますと大変な批判にさらされますし、これは経済途上国であることの証左にもなりかねない。この点も注意する必要があります。

 しかし、国益と国際公益への貢献、時に背反するでしょう。しかし、いかに両立させるか。今回、私は、この欧州安定化基金の債券の大胆な買い取りなり積み増しは、国際貢献の名のもとに、一部国益もにらむ。そういう議論をするに当たっては、極めて議論としては重要な議論ではないかと思います。

 加えて、特に先進国向けの融資の機関として、いわゆる国際協力銀行ですか、JBICと言われる機関があります。ここが約十兆円前後の貸出残を持っています。今回、政府は、円高対策の名のもとに、十兆円規模に基金を積み増し、その融資枠を拡大するという政策をとられました。私は、これは大いに歓迎すべきことだと思います。しかし一方で、JBICの資本金が一兆円前後しかない。そうすると、自己資本比率との関係で、これ以上の拡大が難しいという制約があります。貸出残十兆円に対して、一兆円の自己資本です、ざっとした計算ですけれども。

 一方、途上国向けに、まさに大臣が冒頭おっしゃいましたODA予算の関連で、円借款を実施している機関としてJICAがあるわけです。

 これは外務省の事務方で結構です。JICAの貸出残と自己資本の厚み、事実関係を御報告いただきたいと思います。

越川政府参考人 お答え申し上げます。

 資産、貸付金残高は十一兆五百十一億円、これは二〇一〇年末のバランスシートでございます。そのうち、資本、純資産、民間で言う資本でございますが、八兆五千六百九十一億円でございます。

小川委員 ありがとうございました。

 大臣、今お聞きのとおりでございまして、片やJBIC、先進国向けは、貸出残約十兆に対して自己資本一兆、自己資本が薄いがためにこれ以上融資枠を拡大できないという制約に直面しています。片や、途上国向けのJICAは、約十兆、同じ程度の貸出残に対して、八兆円を超える自己資本を抱えている。

 これを外務大臣として、先進国向けも大事でしょう、途上国向けも大事でしょう、国内の限られた資本を最大限有効に活用し、円高対策を含めた国益の追求と、そしてそれに余りある国際公益への貢献、この両立をいかに図るか、いかにバランスをとり直すか、極めて重要な観点だと思います。

 これは事務方で結構です。このままを前提にすれば、自己資本との関係でいえば、途上国向けの円借款を大胆に拡大すれば、それは国際公益への貢献であり、なおかつ円高対策を含めた国益の追求でもあると思いますが、これはできないんですか。

越川政府参考人 円借款につきましては、財務の健全性を維持しつつ、その着実な実施にこれまでも努めてきたところでございます。

 なお、債務負担能力のある国という条件もございますので、そういう債務負担能力のある途上国につきましては、今後とも拡大あるいは一生懸命やっていきたいと考えてございます。

小川委員 恐らく、相手国のリスクの関係、また、先進国であれば、特にニーズがあるのかないのかも含めて、さまざま事情は難しいと思います。しかし、重ねて申し上げておりますとおり、いかに国際公益に貢献しつつ、しかし国益を、実はという言い方が当たっているのかどうかはわかりませんが、追求していくか。

 今まで日本は長らく成長期にありましたし、資源も余りあるものがありました。しかし、これから人口も減り、高齢化も進み、今までの思考回路で同じことを同じように続ける限り、この国に繁栄と、そして国際社会における存在感は大幅に薄れていくでしょう。

 今の、例えばですが、JICAとJBICのこのアンバランス、これを生かすのか、それとも是正するのかも含めて、大臣の大局的な御見識、御判断を最後にお聞かせいただいて、終わりたいと思います。

山口副大臣 端的に。

 例の円借款の場合には、逆ざやということで、貸し出すときには金利を安く、それから調達するときには金利は高くということもあって、そういう意味では自己資本をきちっと持っているということだと思います。

 JBICの場合には、いろいろこれから、ある意味で投資的な意味を持って、民間の出資も助けたりということだと思いますので、そこは若干違うと思うんですけれども、ただ、小川議員の言われるとおり、これから日本が世界のプロジェクトにきちっとサポートしていく、そんな中で、それが実は円高対策にもなっていく、それがまた将来、通貨の是正がなされる場合には大きな利益となって返ってくるということも踏まえて、長期的な観点からいろいろと相談させていただきたいと思います。

玄葉国務大臣 まず、冒頭指摘をされた少子高齢化、環境の問題。私は、世界に先駆けて、この問題について、例えば少子高齢化もそうなんですけれども、真っ先にやってきているのが日本です。一方、例えばお隣の中国は二〇一三年から労働力人口が減少し始めるわけですから、真っ先に解決してみせるということ、そのこと自体がまずは日本の世界に対する大変な貢献であるというふうに思います。

 それと、これからはお金を使うだけではなくて、やはりさまざまな構想を日本自身が示していく。そういう意味では、例えばEASでのルールづくりなどもそうだし、低炭素成長パートナーシップもそうだし、ASEANの防災のネットワークも日本自身が提案しています。

 さらに言えば、人間の安全保障というのは、これは自民党時代からでありますけれども、これはもともと、オリジナルは日本ですね。私が外相になってさまざまな会議に出ていくと、この人間の安全保障というのはますます光輝いているというふうに思いますので、そういった国際公益と国益を重ね合わせながら、構想力を持って取り組んでまいりたい。

 今のJBICとJICAの話は、私自身も問題意識を持って、これからよく注視をしたいというふうに思います。ただ、さっきの山口副大臣の答弁にあったように、金利の話は、また金利が上昇したらどうするんだ、率直に言うとこういう問題もございますので、そういった点も見ながら、また、欧州危機は、まずは欧州が克服してみせる、その気概を見ながら当然我々も必要な協力は行っていくということでないと、日本自身にだって、これは国際公益というよりは、日本自身の国益にも直接つながってくるというふうに考えていますので、そこのところは十二分に留意しながら対応していきたいというふうに考えております。

小川委員 ありがとうございました。

 私にとりましては本当に有意義な議論をさせていただきました。

 大変ハードな外交日程、また年末も押し迫っております。くれぐれもお体に御留意をいただき、事務当局の皆様も含めて、日本外交のためにさらなる御貢献をいただきますこと、また、私どもとしても、それをしっかり応援をしてまいる決意を申し上げて、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、後藤田正純君。

後藤田委員 玄葉大臣、ごぶさたしております。

 財務金融委員会では、委員長、そして理事の立場で私も、海江田さん、石田さん、委員長さんをお支えしてきた立場でございまして、改めて、お会いできて光栄でございます。

 まず最初にちょっとお伺いしたいのは、最近、民主党さん、政府内、また与党内でいろいろな事件を引き起こしてくださるので、それを一つ一つお伺いしなきゃいけない、申しわけございませんが。

 まず、この外務委員会でも議論をし、そしてきのう、原子力の協定の問題でございますが、我々野党としても、もちろん、被災地の検証の問題、大臣も選挙区でございますが、そういうことも含めた上でやらなきゃいけない、輸出も含めて成長戦略とは、その前に検証が必要だという意見もございました。しかしながら、我々は、それはもちろんしっかりやる中で、高度な検証をした上で、それを逆にまた成長に生かしていこうという判断のもとに賛成をしたわけでございますが、御党の方で逆に造反をされた。

 やはり法律を出してくるときには、我が自民党のときにも、けんけんがくがく、おどれすどれ、表に出ろと、灰皿が飛んだような、そんな部会を我々は調整した上で、国会に出すときには一糸乱れぬ、そういったことでやってまいりましたが、今回、与党のお出しになられた、閣法として出されたことについて与党からたくさんの造反が出たことに我々も大変驚いておりますし、不思議に思っております。

 そのことについて、まず、大臣の御見解をお聞かせください。

玄葉国務大臣 まずは冒頭、初めての質疑でございますので、後藤田委員とは、おっしゃるとおり、財務金融委員会でも御一緒させていただいて、また、その他の場面でも御一緒させていただく機会が何度もございました。この間、こういう言い方が適切かどうかということはありますけれども、ポピュリズムにあらがうというか、決して単純に世論に迎合せずに、本当に必要なことはお互いにやっていこうという立場を共有しているというふうに私は思っておりますので、ぜひ今後ともよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 ただいまの御指摘に対しましては、真摯に受けとめたいというふうに思います。おっしゃるように、政府が出した提案、条約について、与党、そして民主党の中で全員賛成じゃなかったという結果に対して、やはり真摯に受けとめなければならないのではないかというふうに考えております。

後藤田委員 もちろん、被災地出身の与党議員さんのお気持ちも私もわからないではないんですが、これから消費税の問題、またTPPの問題、さまざまございまして、こういうことを考えると、今お聞き及ぶ中では、おせっかいかもしれませんが、与党内での取りまとめがなかなか困難なようでございます。

 はっきり言えば、一回政策で党を分割して、多党制で連立というような考え方も含めて、我が党も同じ部分、同じとは言いませんが、そういう点もなきにしもあらずでありますが、やはり中選挙区制というもののいわゆる弊害、同じ党でありながら戦う、政党政治というのは、それはおかしいではないかということで小選挙区になり、そしてまたそれが政権交代を生んだわけでございます。私は、これはこれでいいことだったと思うんですが、やはりこれからはもう一度、過渡期として、政策でしっかり党を整理した方がいいんじゃないかなと思います。

 恐らく野田総理の後には総理候補になられるであろう玄葉大臣に、政党政治と政策のあり方について、政治家として御見解をいただけませんでしょうか。

玄葉国務大臣 外務大臣という立場で、しかも現職の閣僚という立場で、どこまで今の御質問に対してお答えできるかということに対して、極めて限界がございます。特にこういう委員会の場で発言をどこまでできるかということだろうと思います。

 ただ、一般論で言えば、やはり政策を中心に政党というものが形成をされていく、そのことが極めて大切だし、ただ、日本人全体が多様化をそもそもしている中で、その多様化している民意というものをそれぞれの政党が、先ほど私、真摯に受けとめると申し上げましたけれども、それぞれの政党の中で相当の議論を闘わせてまとめていくプロセスというものがやはり大切なんだろうというふうに思います。

 これは、民主党だって自民党だって、特に自民党は、古い歴史を持っていて、本当に、大変な議論を重ねてきた経緯があると思います。でも、今民主党はまさにそういう過渡期にあるというふうに思っていまして、いずれにしても、それぞれの政党がそういう鍛錬をしっかり次の時代に向けてまずはしていくということが大切ではないかというふうに思います。

後藤田委員 ありがとうございます。

 財務委員会時代は私は野田財務大臣に七回質問をしたんですが、必ずしゃくし定規な話でしたが、玄葉さんはいつも、ただしと踏み込んでいただくので、政治家としての議論ができて、大変ありがたく思っています。

 もう一つお伺いしたいのは、これもニュースというか事件でございますが、玄葉大臣が御苦労されて、野田総理と中国の国家主席を初めとする方々との段取りをされたと思うんですけれども、そもそもこれは、いろいろな憶測によりますと、十二、十三の日程というのは、もちろんいろいろな意味がある。中国側からすれば、十三日というのは日中戦争時の南京占領をした日に当たるとか、こういった話があったり、また一方で、TPPを推し進めるという中で、これは一つには中国包囲網等々との誤解も、また見解も中国にあろうかと思うんですが、このことで、せっかく、七二年から考えれば来年はたしか日中国交正常化四十周年でございますかね、そういったときのいろいろな御準備も外務大臣はされてきたと思いますが、なぜこのようなてんまつになったのか、教えていただければと思います。

玄葉国務大臣 まず、もともと日程が完全に固まって正式に発表しているという段階ではなかったということが大前提でございます。それが大前提でございます。正式に発表はしておりません。その上で、中国側の事情もこれあり、今回、いずれにしても、日程を再調整しようということになったわけでございます。

 一言で言うと、私自身も訪中をいたしました、地ならしはできたというふうに思っておりますけれども、日中双方とも、よい雰囲気の中で今回の野田総理の訪中を実現させたいというふうに考えておりまして、年内に実現すべく再調整をしているところでございます。

後藤田委員 先ほど申し上げたように、来年は非常に記念すべき年だと思いますし、そもそも、十三日というのは、歴史的なことがわかっていたのであれば、このような形で進めること自体がおかしかったのかなと。これは、外務省、大臣というよりは事務方の方で、どうしてこのような形になったのかということで非常に疑問を感じざるを得ません。

 私も昨年の秋口に超党派で中国にお邪魔して、トウカセンさんに、当時、SMAPを呼んだらどうだというのを逆に我々で提案して、それから、ことしのいろいろなSMAPの中国の上演ができたというふうに我々もありがたく思っておりますけれども、来年はやはり相当な、いろいろな官民交流、こういうことをしっかりやっていただきたい、そのように思っているところでございます。

 もう一つ申し上げると、一川大臣の問題。これも我々、またかということで、きのうも、自分は本来のいわゆる責任を問われる致命的なミスをしていない、このようなことを発言され、野田総理も擁護されているわけでございますが、まさしく、きのう、致命的な発言をしてしまったと私は思っておるんですね。

 あれだけの沖縄県民の怒り、県議会議長の涙の訴え、また、仲井真知事の明らかに途中で会談を打ち切るあの憤り、そしてまた市町村長の怒りの声を聞く中で、致命的でないということを御本人がおっしゃっているんですが、玄葉大臣はどうお考えでございますか。

玄葉国務大臣 これはやや紋切り型で申しわけございませんけれども、私は、今置かれている沖縄の状況というものをもう一度踏まえながら、一つ一つ信頼関係を築いていきたいと思っています。

 この間も、一つ一つ信頼関係を築こうということで、地位協定の運用改善を初め、改めて沖縄の歴史の重みを感じよう、みずから感じたいという思いでさまざまな場所を訪ねたり、知事とも公式、非公式に、この短い期間ながら数多く意見交換をさせていただいていたところでございます。

 したがって、今置かれた状況は置かれた状況として、所与のものであるというふうに私自身認識をして、一つ一つまた積み重ねをしていこうというふうに考えているだけでございますので、その点は御理解をいただければというふうに思います。

後藤田委員 玄葉大臣らしくない答弁でございます。

 もう一つ伺いますが、沖縄前防衛局長の、オフレコと言いつつも、あのような本当に言語道断な発言をされました。これについて、更迭という判断をされましたが、これは適切であり、当然であるとお思いですか。

玄葉国務大臣 これも、私が申し上げる立場にあるかどうかというのがそもそもございます。

 ただ、私は、言語道断の発言をした以上は、処分が必要であるというふうに、やや越権かもしれませんけれども、そう思うというのは率直なところでございます。

後藤田委員 今、沖縄防衛局長、いわゆる役人の発言に対して、言語道断、また処分が必要だということですが、一川大臣も、オンの発言で、いわゆる沖縄県民の気持ちを踏みにじる発言をオンでされています。これについては、局長とは違う、お仲間意識で同情されるんですか。そこの違いが私はよくわからないんですよ。局長は言語道断だと。

 皆さんの民主党政権を見ていて、もちろんいいこともおやりになっているんでしょうが、何か問題があると役人のせいにして、いいことがあると手柄は全部政治家がとる。ちょっとそこら辺は、手柄は部下に、責任は自分だというのが、私はリーダーの基本だと思っているんです。

 そういう点で、なぜ局長はけしからぬで、一川大臣のオンでのさまざまな発言、また行動、これについては問題ないのか、そこがわからないので、教えてください。

玄葉国務大臣 おっしゃるように、一つは、越権であるがということを先ほど申し上げました。そして、一川大臣については、私は、御自分でさまざまなことをお考えになっておられるだろうと。お考えになっておられるだろうというのは、余り深読みされると困るんですけれども、同時に、それはまさに総理大臣に任命権があるわけでございまして、そういう意味では、私が申し上げるのはやはり適切ではないんだろうと。

 ただ、先ほどおっしゃった、部下に手柄をというのは、私は全くそのとおりだというふうに思います。ですから、私は公の場でも何回も申し上げていますけれども、例えば、この間の地位協定の運用改善なども、本当に地位協定室が寝ずに頑張ったんですね。本当によく頑張ったというふうに思っています。ですから、そういう意味では、そういう姿勢は私も極めて大切なことであるというふうに思います。

後藤田委員 今、非常に深い、深く読ませていただきたい発言ですね。お考えになっているんだろう、恐らくみずからお引きになるんだろうと。(玄葉国務大臣「処分、処分」と呼ぶ)処分ですかね。総理がするんですかね。それは当然、総理がする。

 御提案ですが、僕は、玄葉さんが防衛大臣に横滑りして、田中委員長が外務大臣になるのが一番いいと思っているんですよ。来年、日中国交正常化四十周年、こういうことを多分総理がおやりになるんじゃないかなと思っています。そこはわかりませんが、そういうふうに予測をさせていただきながら。

 もう一つ、今度はまた、元総理という方がいろいろな発言をさまざまされていますね。鳩山元総理でございます。先般、いわゆる普天間の移設について、辺野古以外があるか、私は決してないとは思っていないという御発言をされたようでございます。しかし、鳩山さんは、大臣もたしか閣議の場にいらっしゃったと思いますが、昨年五月に、移設先を辺野古周辺という閣議決定に加わっていると思いますが、それに対して藤村官房長官が、既にいろいろ考え尽くしたというのが今の政府の見解だ、鳩山さんは妄言であるというような話をしていましたが、外務大臣としてはどれが御見解ですか。

玄葉国務大臣 実は、きのう記者会見で聞かれまして、ノーコメントというふうに申し上げましたが、その後、藤村官房長官と話をいたしまして、政権として、内閣として真意を尋ねるということを、代表して官房長官にやっていただこうということにいたしました。つまり、やはり元総理でございますので、対話をしていかなきゃいけないということではないかというふうに思うんです。

 ちなみに、私は、閣僚になったのは去年の六月からなので、当時の五月の閣議決定には入ってございません。ただ、さはさりながら、さまざまな経緯があっての五月の日米合意であり閣議決定でありますから、これについてはやはり内閣として真意をお伺いするというふうにさせていただくということで、官房長官に話をし、官房長官もそのようにされるというふうに思っております。

後藤田委員 先ほど申し上げたように、今、鳩山さんも小沢さんの系列で、いろいろ政局も含めてやられているようですが、今の普天間の移設のことも、消費税のこともTPPも、ばらんばらんになっているんですね。

 もう一つは、政治家の言葉というのは非常に重たいんだということを、やはりぜひ改めて考えていただきたい。

 私は、沖縄戦のときに最後まで海軍の最先任者として、まさに最後の戦いを指揮した大田中将さんを非常に尊敬しております。大田中将さんが最後に、沖縄戦の後に、自決する前に海軍次官あての電報を送っているんですが、これはどんな電報だったか、大臣は御存じですか。

玄葉国務大臣 済みません、正確ではありませんが、要は、沖縄のことを頼むという思いを込めて書かれたものだというふうに承知しています。

後藤田委員 おっしゃるとおりです。「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」ということを大田中将さんはおっしゃっております。まさに、本当に心の底からの叫びだと思います。

 実は、我が自民党時代に小渕総理が、総理大臣になる前からも、大田中将さんのお子様、お嬢様、そしてお嬢様は海外にお住まいになっていた方であられましたが、そこにもお訪ねをして、いろいろな、沖縄県民の心にしっかり入っていく、理解を本当にしようという努力をしてきたわけでございまして、それに対して、余りにも、先般我が党の河井議員さんからも御指摘あったとおり、普天間の県外移設、国外移設、そしてまたこのたびの大臣の発言、鳩山元総理の発言、非常に我々としては怒りを通り越してあきれるばかりでございまして、改めて、このようにしっかりと日本のために戦ってきた方々の気持ちとまた気概を酌んでいただきたい。

 その中で、きょう外務副大臣いらっしゃっていますが、これもちょっと一つお伺いしたいのは、外務副大臣がある雑誌で、戦後の日本はまだギブ・ミー・チョコレート症候群だということをおっしゃっていますね。僕は、これはいささか、戦後の政治を担ってきた方々に、また官僚の方々も含めて、失礼なことではないかなと。もちろん、そういうときもあった。では、そういう時期はいつからいつまでなのか。

 私は、吉田茂先生も大変尊敬しておりまして、戦後、まさに国際政治に復帰するために講和条約を泣く泣くのむというか、こういったこともしながら、日米安保そして安保改正、こういったことに努力をし、そして田中総理の日中国交回復、また、先ほど来の小渕総理初め多くの方々の沖縄への対応、対策、こういうことをやってきたわけでございます。

 これに対して、山口副大臣が、今までの政治、官僚、これはギブ・ミー・チョコレートだと、現職の副大臣がそうおっしゃったことに私はいささか疑問を感じたんですが、これはどういう御趣旨で、また、いつの時期のいつの問題がギブ・ミー・チョコレートだったのか、教えていただきたいと思います。

山口副大臣 私も、外務省の大先輩の吉田茂総理は非常に尊敬しております。

 吉田総理のときにこういうことがありました。例えば、アメリカから、統合司令部、ユニファイドコマンドというのを安保条約の後、提起されたわけです。それは、NATOが一九四九年にできて、アイゼンハワーさんがアメリカから行って、イギリス軍、フランス軍、全軍を指揮する。アメリカは、当然日本にも、その統合司令部、当時はリッジウェーさんが日本とアメリカ両方を指揮するということを当然のごとく言ってきたわけです。

 ところが、吉田当時の総理兼外務大臣、総理は、これじゃ日本とアメリカは対等じゃない、まるで日本がアメリカのこまみたいに国民はとるから、この統合司令部、ユニファイドコマンドというのは絶対だめだと相当押し返したんです。

 ところが、最後はアメリカは、ダレスが来ました。吉田さん、もしもこれを認めないんだったら、上院で今安保条約と平和条約の批准をやっているけれども、もうおれは手を引くよ、日本はもう一回占領国に戻ったらいいよというところまで来て、相当吉田さんも迷われたんだけれども、最後は国務省が国防省を説得して、もうこれ以上圧力をかけたら日本はちょっとおかしなことになるから、ここはもうこれでいこうということで、日本の指揮権とアメリカの指揮権は別々と。したがって、日本の司令官は自衛隊だけを指揮する、アメリカの方は別、アメリカの司令官もアメリカ軍だけを指揮する、自衛隊の方は別ということで、いろいろとNATOあるいは韓国の状況とは違ってきたわけですね。

 ところが、その後、私の目から見ると、池田勇人総理のころに所得倍増と、一たんアメリカとの間にレールが敷かれた後は、大戦略を吉田茂総理は考えられたと私は思いますけれども、その後、むしろ、経済中心で所得倍増、あるいは経済中心で何とか日本を回復させようということで、私は、ある意味での思考停止があったんじゃないのかなと。それは、結果的にはよかったんです。だけれども、我々がどういう戦略で日本を外交的に考えていくかということについては、私は、私の先輩も含めて、思考がもう少し立体的あるいはダイナミックにあるべきだったと思っています。だから、そういう意味で、私はそのことを書かせていただきました。

後藤田委員 今のお話に関連するんですが、民主党さんの今度はマニフェストの外交戦略について現状をお伺いしたいんですが、今山口さんもおっしゃったようなことを踏まえているんでしょうか、主体的な外交戦略を構築し、緊密で対等な日米関係をつくりますと。これは一体、何が対等でなくて、何を対等にしなきゃいけないのか、外務大臣、現状の認識をお聞かせいただけますか。

玄葉国務大臣 やはり日米のきずなというものを深めていく。その深めていく中で、実は、これまでも全くそうではなかったかといえば、必ずしも、お互いにしっかりと意見を言い合ってきた時代というのもあったわけでありますけれども、きずなを深める中で、お互いがお互いの役割について、より忌憚なくしっかりと議論をし、役割分担をしていくということについて記したんだろうというふうに、私自身はこのマニフェストについては理解をしているところでございます。

後藤田委員 対等というのは、やはり主権国家として、自国民をしっかり守れて、対外からの攻撃にもしっかり国民の生命と財産を守れるということが前提だと私は思うんですね。ただ、我が国も含めて、ドイツ、韓国はいまだに駐留米軍がいます。フィリピン、パナマは、九一年、九九年にそれぞれアメリカが撤退しております。

 こういう中で、我が国としてこれからどうしていくのか。これは今まで委員会でも質問があったかと思うんですが、本当に基本的な質問をさせていただきます。憲法九条の問題ですけれども、ここに、後段の方に、我々は、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」と書いておるんですけれども、大臣、今我々が、我が国が持っている陸海空の防衛力というのは、これは軍隊ですか、戦力ですか。どういう位置づけですか。

玄葉国務大臣 この二十四万の陸海空、これはまさに、日本の領土、領空、領海を守るための戦力だというふうに思っております。

後藤田委員 今、外務大臣が戦力だというふうな御発言をされた。これは非常に大きな御発言かと思います。戦力は保持しないということの中で、これは戦力だということで。

 常識的に考えて、この条項で、国民も皆、悶々としたものを持っていると思いますよ。あれは戦力じゃないのか、戦闘機や戦車は戦力じゃないのかと。これは戦力だと思いますよ。今の御発言を聞いて、これはまた、憲法改正も含めて、大臣にいろいろと、ともどもに活躍していただきたいと思います。

 あと、もう一つ申し上げますと、今回、大規模震災のときに、国家非常事態宣言というもの、私は、これを本来出すべきだったのかなと。

 つまり、日本の憲法というのは、国民主権、基本的人権というものは相当しっかりと守ってきましたが、国家主権という概念、時に国家を守るために国民の人権も国家のために抑制をお願いする、それを余儀なくする、こういう場面もこれから出てくると私は思います。一つには災害、そしてまた国防、もう一つは財政だと私は思っています。

 先ほどもお話しいただいたように、財政では大臣とは長くおつき合いしてきましたが、憲法の中に、財政という条項、我が国もしくは国民が財政の健全化を図るという条項は一つもないんですね。つまり、一方で二十五条には、生存権ということで、福祉向上、そして最低限の生活を維持する、こうなると、財政が肥大化するのは当たり前なんですね。

 ですから、ある意味、国家主権という、今まさにEUの方では、財政政策、金融政策までもが、国家主権を放棄させられる。他国から、あなた方は財政をしっかりしなさい、金融政策もしっかりやりなさい、このようなことを言われるような国になってはいけない、私はこのように思っています。

 ただ、日本には今、国家非常事態宣言について規定があるのかないのかについて、外務大臣の今の御見解、副大臣でも結構ですよ、防衛副大臣でも結構です。

玄葉国務大臣 非常事態宣言の方は副大臣に答弁していただきますが、念のためですが、先ほど私が申し上げたことは、戦力ということで申し上げましたが、この答弁は変えませんけれども、つまりは、九条二項というのは戦力の保持を禁止しているけれども、このことは、自衛のための必要最小限度の実力を保持することまで禁止する趣旨のものではなく、これを超える実力を保持することを禁止する趣旨のものであるということでございますので、念のため、つけ加えたいというふうに思います。

山口副大臣 今、後藤田議員が言われた国家非常事態についての法的な枠組みは、まだ日本にはないと承知しています。

後藤田委員 なぜないかというと、やはり我が国の憲法が、占領下にあった、先ほど山口副大臣がおっしゃったように、まさにアメリカの庇護のもとにあるという中で、こういった、何かあったときに守ってくれるであろうということでありますが。

 今回、特に被災地では放射能災害の問題がございましたが、これについて、きょうは防衛副大臣にお越しいただいていますが、防衛省として放射能災害についての備えはしてこられていましたか。

渡辺副大臣 正直申しまして、これだけの規模の放射能事故というもの、原発事故というものを想定しての準備は、装備品の質、量からも考えて、想定してこなかったということが現実だったと思います。

後藤田委員 まさに、災害だけじゃなくて核兵器の戦争に脅かされている中で、もし核が万が一落とされたときに、その放射能問題、これは広島、長崎という本当に悲しい犠牲者、現実がございますが、その後の蓄積というものはどのように生かされてきたんでしょうか。そこは、今、ないというふうにおっしゃったけれども、そのようなことは全く生かされていないということなんでしょうか。

渡辺副大臣 こういう言い方は大変恐縮ですが、戦後の歴代政権の中で、それは蓄積されてきたかというと、いわゆる核攻撃であるとかあるいは原発テロのようなことというのは、正直言って、現有の化学防護車や除染車等々の装備はありますけれども、とても対応できるようなものではない。

 かつて、いわゆる自衛隊法の警護出動に原子力発電所を加えるべきではないかというような議論が一時期されたことはございました。しかし、結果、いろいろ立法上の議論の中でそこは外れたようないきさつもございます。それ一つとっても、正直これは、我々野党でありました、どこの党がというよりも、現実問題として余り本気で取り組んでいなかったということは、私は、これは国会に議席を持った者としての実感でございます。

後藤田委員 おっしゃるとおりで、我々、与党時代の責任も当然免れないと思っています。ぜひ、憲法にそういったものをどう規定するかとか、おっしゃるように、やはり放射能問題というのは、自衛隊の方はかなりその知見を持っていると思うんです、特に海上自衛隊でしょうか。そういった方々の出身者がやはり電力関係の、原子力関係のところにしっかり、これはまた、やると天下りみたいに言われますが、聞くところによると、そこに行くと何か危険があるということをもう認めてしまっているからそこに行かせてはいけないんだみたいなことがあったように防衛省さんから聞きました。やはりそういうことは、想定されるんだというふうになった場合は、なった場合というか、これは検証をこれからするんでしょうけれども、しっかりそういった危機管理をやっていただきたいと思います。

 最後に、TPPでございますが、まず、私、自由貿易、開国ということを大臣も総理もよくおっしゃるんですけれども、もともと、いわゆる世界が、またいわゆる大国が決めてきたブロック経済がよろしくないということでWTOという自由貿易協定ができたんだと思っているんです、歴史的な流れの中で。そして、ガット・ウルグアイ・ラウンドで、九三年ですか、また九二年には欧米が合意しておりますけれども、欧米は、必ず構造問題について国内でしっかり議論した上で合意している。

 あのときも、不幸なことに、細川内閣のときに決めてしまって、政権がかわり、我が党がその後のガット・ウルグアイ対策、六兆百億円でございますか、ああいうお金を使わざるを得なくなった。そして、その使途について、それはいろいろ与党内でも検証されていると思います。

 その中でも、ミニマムアクセスという数量でしっかり我々は守ってきたわけでございます。それを今度またTPPというブロック経済に戻すことがなぜ自由経済なのか、なぜ開国なのか、ここが我々は全く理解不能なんですね。やはり自由貿易であれば、WTO、ドーハをしっかりやればいいじゃないか、そして皆様方がマニフェストに書いてあるとおり、FTA、EPA、二国間をやればいいわけで、そこは私どもは、全くその歴史的背景、自由貿易という定義、開国という定義があいまいに使われているものですから、国民がわけがわからなくなる、こういう状況でございます。

 TPPというのはブロック経済じゃないですか、自由貿易ですか、どっちですか。

玄葉国務大臣 まず、恐らく、私がどこまで開国という言葉をたびたび使っているかは調べないとわからないんですが、開国という言葉は、私はできるだけ控えています。

 その上で、推測も含めて言うと、恐らく、FTAのカバー率が低いということがあって、そういう表現をしたのではないかと推測するんです。例えば、よく使われる割合ですけれども、お隣の韓国はカバー率が大体倍あるということがあって、そういう言葉が使われているのではないか。

 そして、自由貿易というならWTOである、私もそう思います。WTOを進めていくというのが、実は日本全体の国益に最もかなうというふうにも実は思っています。ただ、残念ながら、停滞をしているのが現状です。その現状打開のための努力も当然行ってまいります。

 ただ、一方で、そういう状況にある中で、各国が二国間EPAなりマルチのものを進めていくという状況にあるのが現状だと思います。それで、二国間のEPAをそれぞれ組み合わせていくというのは一つの有効な手段であり、私は否定いたしません。

 ただ、TPPというのも、これはアジア太平洋全体、七十億の人口の中で四十億を占める、さらにこれから人口がどんどんふえる、恐らく十年後に中間層が二十億になるんじゃないかと言われている中で、このアジア太平洋全体の活力というものをどう取り込んでいくのか。一億二千七百万の私たちの人口が、二〇四六年に一億人を切るという状況の中で、このTPPのみならず、TPPというものがあって、そして日中韓、ASEANプラス3あるいはASEANプラス6というものを組み合わせながら自由貿易圏をつくっていくというのは日本全体の国益にかなうのだろう。

 進め方に対して、ハンドリングに対して、当然、さまざまな留意が必要であるということは言えますけれども、やはり全体として進めていくべき話であるというふうに考えています。

後藤田委員 最後に、また、米を守りますか、守りませんか、一言で。イエス、ノーで。

玄葉国務大臣 これはちょっと一言でなかなか言いにくいのは、もうざっくばらんに申し上げますけれども、結局、二国間の交渉に入るまでの事前の協議とか調整というのがあって、そして、参加国の同意を得て初めて交渉に入ります。交渉でまた、かち取るべきもの、守るべきものが出てきます。

 ですから、いわゆる手のうちをどこまでさらすかということがあるものですから、ここは明確に申し上げられないことについては御理解をいただきたいというふうに思っています。

後藤田委員 どうもありがとうございました。

田中委員長 次に、小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。

 質問をさせていただきます。

 まず冒頭、玄葉大臣におわびをしていただきたいと思います。原子力協定、これは、松本前大臣そして玄葉大臣も含めて、熱心に私どもにこの協定の重要さをずっと説いてこられて、そしてこの委員会の中で、私ども、これはやはりそこまで政府が考えるのであればということで、さまざまな決断をしました。それは、賛成の党もあれば反対の党もあれば、それぞれ決断をしたんです。党の中でまとめて決断をしたんです。私どもも、玄葉大臣を信じて賛成をさせていただきました。ところが、昨日の本会議の採決で、十数人の方がこれは反対だと造反をされた。

 このことについて、まず、玄葉大臣からおわびをいただき、そして、これからこのようなことがないように党をしっかりまとめていただくこと、これをお願いしたいと思います。

玄葉国務大臣 先ほど後藤田委員のお話にもお答えをいたしましたけれども、やはり担当大臣として真摯に受けとめなければならない。それに対して自民党の皆さんが賛成をしてくださったわけでありますけれども、我々の中でそういったいわば反対とかあるいは退席者が出たということは非常に残念で、申しわけなく思っております。

小野寺委員 今、申しわけないというお話がございました。これは、これからの経済連携協定を含めて、この審議をする中で重要なことですので、しっかり今後党内をまとめていただく、その努力をお願いしたい、そう思っております。

 さて、同じく後藤田委員から質問がありましたが、首相の訪中についてちょっとお伺いします。

 十二、十三の訪中、実はこれは、私どもの国会対策のところにも政府の方から了解のお問い合わせがありまして、私どもも了解をしていた。いわば日程が既に決まっている、決定済みの総理の訪中ということ。こういうことが、突然、一週間前に中国側からドタキャンされるという、私は、日本の外交上、多分前代未聞の状況だと思っております。

 そして、実はこの訪中をまとめたのは玄葉大臣自身ですね。十一月の二十三日、恐らく一千万ぐらいかかるんでしょう、チャーター機を使ってわざわざ北京を日帰りされて、そしてしっかりここで……(発言する者あり)一千二百万。わざわざ訪中をされて、この話をまとめてこられて、そしてこの直前でドタキャン。このことに関して、やはり玄葉大臣は怒るべきだと私は思いますよ。日中関係のことを考えることは大事ですが、こんななめられた対応を私ども日本がされたことは今までありません。

 ですから、今回のこの訪中については、日本側からしっかり抗議をするぐらいの姿勢がなければ、これからさまざま難しい交渉をするに当たって、この中国側の対応というのはひどいんじゃないでしょうか。

    〔委員長退席、長安委員長代理着席〕

玄葉国務大臣 チャーターの話は、外交と国会との両立の中で、一部報道がございましたけれども、本当に私自身最後まで商用機にこだわっておりましたので、その点は御理解をいただきたい。議運の了解を得て訪問しましたので、よろしくお願いをしたいと思います。

 今の御指摘なんですが、これについては、正式に発表せずとも確かに内々そういう調整をしていたのは、今お話があったとおりなんです。ただ、やはり最もよい雰囲気というものをつくっていこうということで出てきた話でありますので、実は、そのときに日程をまとめてきたわけではございませんけれども、中身を大体地ならししてきたということでありますけれども、私は、このことによって日中関係に悪い影響を与えることはない、そしてもっと言えば、むしろ、そのままこの日程で行うよりもよい結果をもたらす可能性が高いというふうに思っています。

小野寺委員 先ほどの後藤田委員の質問に対して玄葉大臣は、よい雰囲気のときに行いたいというお話をされておりました。

 確認しますが、そうすると、今は日中間は悪い雰囲気ということになるんでしょうか。

玄葉国務大臣 そういうことではございませんけれども、つまりは、今云々というよりも、最もよい時期、よい時期という意味は、いわゆる短期間の時期での話でありますので、その短期間の時期で最もよい雰囲気の中で首脳会談を行いたいということで、このようなことになったということでございます。

小野寺委員 済みません、今のお話を聞くと、何か日中間の雰囲気というのは日がわりで変わって、何か数日のうちによくなったり悪くなったりすると。お天気じゃないんですから。

 今お話しされたように、今は、では悪い雰囲気ということなんですか。改めてお伺いしたいと思います。お天気じゃないんですから、そんな、いいとか悪いとか。

玄葉国務大臣 今ということというより、いわゆる、もうわかって聞いておられると思いますけれども、当初想定されていた総理の訪中日程ということよりも、そうじゃない日程の方が日中関係によい効果をもたらすだろう、こういうことであります。

小野寺委員 改めてお伺いしますが、総理が訪中をするという大変重要な、これは外交上の大きな考え方あるいは方針です。これは通常、来週行きます、再来週行きますではなくて、実は、少なくとも数カ月前からさまざまな下打ち合わせがあって、その上で、最終的に、先月二十三日に外務大臣が行かれて、決めて固めた日程だと思います。

 ここまで重要な国で、しかも日本の総理が行くというこのタイミングを、こんな直前にドタキャンされた過去の事例はありますか。

玄葉国務大臣 それは承知していません。

小野寺委員 ないんですよ。ないから私たちは、なぜこのタイミングで急にドタキャンをされる、しかも外務大臣自身が行って詰めてきた話が、逆に言えば、これは日本の面目、メンツの問題じゃないですか。それを軽々とここで言ってほしくないんですよ。

 やはりこの問題というのは、日本政府として大変遺憾である、なぜこの直前になってということ、少なくともこういうメッセージは発するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

玄葉国務大臣 そういったことも含めて、さまざまなやりとりというのは、当然、外交ルートの中で、私が言うかどうかはともかくとして、あるいは内々言うかどうかはともかくとして、さまざまなやりとりをしています。

 そういう中で、やはり日中首脳会談の成果が一番出る、そういう時期をきちっと選びたいということで、年末も含めて、年内含めて再調整したいというふうに考えているところでございます。

小野寺委員 これは、今、内々というお話でありますが、当然、日本政府としては抗議なり遺憾の意は示しているということで考えてよろしいんでしょうか。

玄葉国務大臣 先方とのやりとりですから詳細は控えますけれども、さまざまな、今おっしゃったようなことも含めていろいろやりとりはしています。

小野寺委員 今私が言った例えば抗議なり遺憾の意ということを含めてさまざまなやりとりをしているということは、水面下でやっているというふうに改めて理解をしたいと思っています。

 やはり日本国民として、中国との友好関係それから対等な関係、これは重要だと思っています。そして、ここまで国会の承認も得て決まったスケジュールを中国側の一方的な理由で直前で断られてしまうということは、これは日本として本当に面目丸つぶれのことになる。私は、せっかく野田総理になられて中国重視の発言もされている中で、こういうことがあったときには毅然とした対応を日本がすべきだ、そう思っておりますので、今そういう姿勢で臨まれているということを改めて確認させていただきました。

 もう一点確認したいと思うんですが、野田総理、年内の訪中という、今ちょっとお話がありましたが、スケジュールをもう一度変更されて年内の訪中というのは、大体日程は固まっているんでしょうか。

玄葉国務大臣 まさに、今調整中ということでございます。年内に実現したいということで、もともと日中首脳会談で、年内に日中首脳会談をしよう、訪中しようということを確認し合っているものですから、年内に実現すべく調整をしているというふうに理解していただければと思います。

小野寺委員 次の質問に移りたいと思います。

 普天間移設問題をちょっと確認したいと思うんです。

 今回の一川大臣の件で、これはもう大変多くの国民が憤っている、そういう状況だと思います。特に、沖縄の皆さんの憤りは大変激しいんだと思います。その中で、政府は、この辺野古への環境影響評価書を年内に提出するということの方針を変えていないと。改めて確認をしたいと思います。

玄葉国務大臣 年内に提出すべく準備をさせていただいているという方針は変わっておりません。

小野寺委員 準備をされているということは、準備はしたけれども年内に提出しないこともあり得るということでよろしいんでしょうか。

玄葉国務大臣 ここはワンボイスで政府として申し上げているんですけれども、あくまで現時点、年内に提出すべく準備をさせていただいている、こういうことでございます。

小野寺委員 ということは、ワンボイスで言えないということは、年内に出すこともあるし、準備だから年内を越して来年になることもあるということでよろしいんでしょうか。

玄葉国務大臣 ワンボイスという意味は、関係の閣僚で、皆さんで現時点このような形で答弁をさせていただいているわけです。

 つまり、あくまで年内に提出すべく準備をしているということで、現時点、それ以上でもそれ以下でもないということでございます。

小野寺委員 ということは、来年になる可能性もあるということでよろしいんでしょうか。改めてお伺いいたします。

玄葉国務大臣 いずれにしても、繰り返して申しわけないんですけれども、年内に提出すべく準備をしていて、これは最終的には防衛大臣でありますので、防衛大臣を中心に適切なタイミングを判断していくということになります。

小野寺委員 ですから、私、ちょっと心配をしているんです。沖縄の方は、もう一川大臣とはお話をしたくない、顔も見たくない。その方が、この影響評価書を沖縄に提出するということになる。そうすれば、当然、火に油を注ぐような状況、これはもうだれが見ても感じますよ。傷つけた張本人が、今度はそこにある面では塩を塗りつけるような、そんな状況を改めてするようにもし沖縄の方が感じた場合には、もっとこの問題は複雑になる。

 ですから、私は、政府がやるべきことは二つだ、どちらかを選ぶしかないんだと思います。環境影響評価書を出すのを今の時点では控えるか、もしくは、大臣をかえて、そして新しい大臣のもとで環境影響評価書を出すしかないんだと思うんですが、今、一川大臣のままで環境影響評価書を出した、この場合の、それこそ沖縄の環境影響の評価について大臣にお伺いしたいと思います。

    〔長安委員長代理退席、委員長着席〕

玄葉国務大臣 それは、小野寺委員の御意見として承っておきたいというふうに思います。

小野寺委員 沖縄の皆さんに、少しでも努力して理解していただくのであれば、まず、一川大臣、それは御本人はさまざまな、いろいろな意見があると思いますよ。ですが、今まで、政治家が責任をとるというのは、本人の思いやさまざまな考えがあっても、今私がこの職を続けたら国としての方針を逆に阻害してしまう、そういう思いがあったら、みずから身を引くというのが政治家の責任ある出処進退の問題だと私は思います。

 多分、一川大臣のさまざまな思いもあるし、さまざまな言い分もあると思うんですが、少なくとも、ここまで傷つけてしまった沖縄の人たちの気持ちに対して、環境影響評価書という大変重要なメッセージをこの方が伝えに行くということは、私は、かえってこれは後々もっとひどいことに、複雑なことになってしまう、だから政府としてしっかり決断をしていただきたい、こう思っております。

 もちろん、これは外務大臣の専権事項ではないと思っておりますが、ともにこの問題を進めなきゃいけないお立場として、ぜひこの内容については政権内でしっかり議論をしていただくよう、あるいは総理に伝えていただくようお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

玄葉国務大臣 先ほども申し上げましたように、環境影響評価書につきましては、防衛大臣を中心に適切なタイミングというものを考えていきますけれども、当然、関係閣僚全体で問題について共有をしながら、ともに考えていく必要があるというふうに考えております。

小野寺委員 改めてお話をしますが、やはりこの環境影響評価書という沖縄にとっては大変重いメッセージを伝えるというそのメッセンジャーの役割を、沖縄の方々に少なくともある程度好意的な気持ちを持っていただける方、こういう方に託さないと、かえってこの問題は複雑になるということ、それをぜひ重く受けとめていただきたい、そう私は思っております。

 それからもう一つ、何で私どもはいつもこういうことで質問しなきゃいけないかと悲しくなりますが、やはり民主党内の問題です。

 鳩山元総理。このお話は、嫌な顔をされたと思いますが、昨日も参議院の外防委員会で、外務大臣自身が、この問題については鳩山さんと対話しなきゃいけないなという御答弁をされております。

 もう既に対話をされたのか、あるいは、これから対話をするに当たってどのようなお話をされるのか、お伺いしたいと思います。

玄葉国務大臣 これまでも、この場でも御指摘いただいていたんですね。例えば、沖縄県の選出の国会議員はどうなんだ、民主党の沖縄県連はどうなんだ、そして元総理はどうなんだ、こういう話なんだと思います。

 私は、きのう、対話をしなければならないというふうに申し上げた後で、藤村官房長官と話をいたしました。それで、内閣として、代表して藤村官房長官が真意をお伺いするという形にしたいというふうに考えておりまして、もう藤村官房長官が連絡をとられたかどうかはまだ聞いておりませんけれども、そのような形をとらせていただきたいというふうに思っております。

小野寺委員 鳩山元総理の問題、それからもう一つは、沖縄選出の民主党議員の皆さん、この方々へのある面では説得というんでしょうか、そういうことの努力も私ども見えないんですが、これは今後やられるおつもりはありますか。

玄葉国務大臣 実は、この間も沖縄に伺ったときに、県連の方々とも話し合いの場を持ちました。当然、東京に来たときにもそうしてもらいたいというお願いも含めていたしました。

 それは、この場でも、私も説得していきます、距離を縮める努力をしますと言ったわけですから、それはいわば公約ですから、そのための努力を今している最中でございます。

小野寺委員 政府が一生懸命そうやって動かれるというのはいいんですが、やはり党内をまとめていただかないと、私どもが玄葉大臣を信頼して、ではこの問題については同一歩調でいきましょうねと、最後に国会でまたばらばらになってしまって、結局、私ども党内のさまざまな意見をまとめること、各党それぞれ審議を通じてまとめることがまた御破算になるようなことがないように、足元からしっかりやっていただきたい、そう思っております。

 その中で、もう一つ確認をしたいのは、実は、日本政府のこういう状況がありますので、アメリカ議会の中でもさまざまな動きがございます。下院の方ではグアム移転の支出を求めて了承していただきましたが、実は上院では、支出を認めない、そういう決議が今回採決されました。ということは、アメリカの議会の中で、下院はグアム移転予算は賛成だけれども、上院は反対、そして今、上下院の協議になるというふうになっていますが、この見通しについて教えてください。

玄葉国務大臣 ちょっと今手元には資料がございませんが、おっしゃるとおりの状況なんですね。ですから、下院は認めていて、上院は認めない。しかも、アメリカの場合の予算は、たしか授権法、権限法と歳出法と二つあるというふうに思いますけれども、下院はグアム移転予算を認めてくれている、しかし上院は認めない、かつ、これまでの予算についての執行も、一部執行しているわけでありますけれども、その分についてもどうもなかなか難しい、こういう状況だと聞いています。

 それで、これは年末にかけて両院でこれから調整が行われるというふうに聞いていまして、その調整の方向とか、どうなるかということについては、率直に言うと、まだ予見しにくいというのが現状だというふうに思います。

小野寺委員 アメリカの上下院も、実は日本政府を見ています。ですから、今回の環境影響評価書をきちっと沖縄に伝えられて、そして約束したとおりのスケジュールでいくかどうかを見ているんです。だから、そこに今大きなおもしになっているのが一川防衛大臣。ですから、改めて、防衛大臣の思いはあるんでしょうが、これを進めるために政治家としてどういう決断をすべきかということ、そこはやはり御本人も含めて閣内で検討していただかないと、これは難しい問題だと思っております。

 さて、もう一つ、TPPについてお伺いしたいと思います。

 アメリカの議会に当然日本の加入について諮る必要があるというのがアメリカ国内の今までのルールでありますが、今回、日本が交渉に入りたいという中で、アメリカの公報、官報にも公示をされ、そして議会からこれからさまざまな意見を聞くというスケジュールがあるために、どうも来年のかなり、春先ぐらいまで日本の加入についての議会の承認というのがおくれそうだと伺っておりますが、この見通しについて教えてください。

玄葉国務大臣 おっしゃるとおり、今アメリカで行われていることは一種のパブリックコメントなんですね。

 それで、すべてこれも御存じだとは思いますが、念のため申し上げると、今参加国が九カ国あるわけでありますけれども、それぞれ独自の手続がございます。ただ、アメリカだけが、いわゆるTPA法というのがある。もともと通商権限は議会にあったのに、それをいわばUSTRに授権する。実はそれは失効しているにもかかわらず、その手続をとる。それは、結果論として、よい場合もあるんだと思うんです。つまりは、後で承認するという必要がないので、事実上。事実上ですよ。ということは、アメリカの場合はそういう手続をとっている。ほかの国は必ずしもそうじゃないんですね。

 そういう意味では、アメリカの議会の動向というのは、このTPP交渉を考える上では非常に大事であることは、全く御指摘のとおりであります。

 それで、ではどのくらいかかるのかというと、結局、議会自身はいわゆる九十日ルールということでありますけれども、議会にかける前に、おおよその見通しをつけて議会にかけるというのが、大体、我々のそれこそ見通しなんですね。ですから、そのことがどのくらいかかるのかということについて、まだはっきりは言えません、はっきりは。ですから、春ごろなのか夏ごろなのかとか、さまざまな憶測があるということで、議会にかけるまでにどのくらいかかるかということではないかというふうに思います。

小野寺委員 TPPの交渉の合意というのは、USTRの代表が、来年末までに大体決まるだろうという見通しを言っています。そうすると、春ぐらいにようやく議会から日本が交渉に入るときの前提条件が出てきて、それを国内で、えっ、こんなのがあるのか、こんなのがあるのかと見ているうちに、もう既に交渉の大枠が決まって、はい、締め切り。そして、これに入るかどうかの決断を、結局、日本政府が物を言って交渉の中に入る前に決められてしまう。こういうことが大変心配されます。

 ですから、むしろ、もし今回、こうやってアメリカからさまざまな議会からの情報が来るのであれば、これはもう早目に言ってもらわないと、結局、日本としての大きな国益を失うんじゃないか、そう思っております。

 そんな中、一つ、ちょっと気になるニュースがありました。これは十二月四日の東京新聞に出ていたんですが、このTPPの交渉に当たって、USTRのカトラー代表補、この方に日本の元政府関係者が、外圧をかけて、TPP参加が日本にとっていいことであることを伝えてもらえないかということを言ったと報道されておりますが、この元日本政府の関係者というのはどなたでしょうか。

玄葉国務大臣 済みません、その報道自体を私は実は読んでおりませんので、まず報道を読まなきゃいけませんし、その報道が真実かどうかということも確認をしなきゃいけませんし、その関係者も私自身確認できておりませんので、ちょっとこの場では申し上げられないということでございます。

小野寺委員 ちょっと確認をしていただいて、そのような事実がなかったといえば私どもはそれで安心しますので、あったかなかったかだけちょっと確認をしていただければと思うんですが。

玄葉国務大臣 ちなみに、先ほど、来年末までに交渉が終わるんじゃないか、合意するんじゃないか、こういう話でありますが、例えばオバマ大統領でも、たしか野心的な目標として来年末、こういう言い方をしています。ですから、本当に来年末までに交渉が終わるかどうかというのは、私はどうかなというふうに思っているということは、せっかくなので申し上げたいと思います。

 念のため、今御指摘の件も調べますけれども、私は、そんなことを果たして言うかなという感じがしますが、調べます。

小野寺委員 もし外務大臣が知らない中で政府の一部が勝手にこういうことをしていたとすれば、これはやはり日本の私どもこの国会、あるいは政府の姿勢ということをむしろ愚弄するような活動になりますから、今の外務大臣のお話を聞いて、当然、外務大臣は知らなかったし、指示も出していなかった、これは事実だと思います。ぜひ中で調べていただいて、もしそのような事実があった場合、やはりこういうこそくなことはやめて、正々堂々としっかり、この議論は正面から国会の中でも議論するべきだ、そう思っております。

 さて、最後、時間になりましたので、一つ、パレスチナのことについてお伺いしたいと思います。

 御案内のとおり、今、パレスチナ、国連の加盟、安保理への加盟、さまざま働きかけをしております。そして、これが大変悩ましいのは、アメリカがもう初めから、これは拒否権も使う、絶対入れないという形で今動いています。そして今、国連の中でどういうことになっているかというと、国連の全体の雰囲気はパレスチナに同情的です。

 そして、御存じのとおり、例えばユネスコに今回加盟を申請したら、ユネスコへの加盟が認められる。恐らくこれからこういう形で、本体ではないけれども、専門機関にどんどんパレスチナが加盟を申請し、そしてその加盟を申請されたら、パレスチナに同情的な多くの国は恐らく受け入れるでしょう。受け入れることになると、今度はアメリカは、方針としてその国際機関から脱退をしていく。実は、パレスチナが入る、アメリカが抜ける、こういうドミノがどんどん起きていくんだと思います。そして最終的には、日本の姿勢、これを問われることになる。

 パレスチナの加入について、日本はどのような姿勢で臨まれるか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。(山口副大臣「委員長」と呼ぶ)これは大事な、御専門ですけれども、大臣にも、両方。

田中委員長 では、山口副大臣が言ってから。

山口副大臣 御存じのとおり、九月二十三日に国連加盟申請をアッバス大統領が潘基文事務総長に行った。安保理の加盟国審査委員会では、パレスチナの加盟を認める勧告をすることについて意見が分かれて全会一致に至らず、現時点では採決は行われていません。

 我が国の立場というのは、御存じのとおりに、まずパレスチナ人の国家建設への悲願を理解する、これが一つ。それから、交渉を通じたイスラエルと将来のパレスチナ国家が平和かつ安全に共存する二国家解決を支持してきている。そのためにも、当事者間の交渉は早期に再開。

 今おっしゃられた、例えばユネスコで認められたと。このことに対して、これはいいことか悪いことかは別にして、事実として、アメリカあるいはイスラエルを中心に相当圧力をかけているものですから、そういう意味では、アッバス大統領は相当困っているみたいなんですね。次の手をどうするか、それは相当考えておられると思います。そういう、今、小野寺議員のおっしゃられたような懸念ももちろん念頭に置きながらですけれども、他方でそういうこともあるようだ。

 我々としては、そういう意味で、この安保理における議論、今おっしゃられたように、流れはそっちの方にあるものの、やはり今後の推移というのをきっちり見守ってやりたいというふうに思っています。

玄葉国務大臣 もう言うまでもなく、パレスチナの国家建設の悲願を理解し、かつ二国家解決というのが我々の立場であります。

 やや私的なことを申し上げて恐縮ですけれども、小渕外務大臣になられる直前に、小渕団長のもとで、私、パレスチナの選挙監視に行ったことがございます。一期目だったと記憶しておりますけれども、あのときに、パレスチナの投票所を歩くんですけれども、実は、徒歩で、二人一組で選挙監視をしたんですね。一般の市民の方々に触れ合う機会が非常に多かったです。そのときにつくづく思いました。パレスチナ人というのは、日本に対する期待が非常に高いです。小野寺委員も副大臣のときにパレスチナを担当されていたのかもしれませんけれども、非常に高いですね。

 ですから、やはりそういったことも当然意識をしつつ、しかし、先ほど申し上げたように、直接交渉を通じて解決をしていく。そのために、日本としたらどういう立場をとっていくのか、カルテットとどう連携をするのか、では米国とはどういう話し合いをするのかということを常に注視をし、意識をしながら物事を判断していきたい、一つ一つの判断をしていきたいというふうに考えております。

 そういう意味では、実は、飯村代表をたびたび派遣しています。十一月中旬にもイスラエル、パレスチナ双方に実は派遣をしまして、その点については、日本政府の考え方を改めて伝えつつ、日本政府としてできることというものを常に模索している、そういう状況でございます。

小野寺委員 田中委員長も、外相のときに、この問題に大変心を配っておられました。

 今、アラブの春ということで、中東社会あるいはイスラム社会は相当いろいろな形で変化が大きくなっています。今、日本のハンドリングはすごく難しい。一つの決定というのは、このパレスチナ問題。アメリカの言い分だけを聞いていくと、これは日本の国益を損なう可能性もある、かといって、今までの同盟関係を含めた西側諸国の関係をどうするか、かなり難しいタイミングに来ていますので、これを相当意識してやっていただきたい、きょうはそのことの喚起のために提案させていただきました。

 ありがとうございました。終わります。

田中委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 温室効果ガスの排出削減に向けた新たな枠組みを議論するために、国連の気候変動枠組み条約の締約国会議、COP17が南アフリカのダーバンで開催中で、閣僚級会合も昨日から始まったわけであります。

 今回の会議について言えば、これまでの合意から出発をするということが大前提ということになると思いますが、二〇〇九年のコペンハーゲンでのCOP15、そして昨年のカンクンでのCOP16には私も出席いたしましたけれども、その中では、産業革命以前からの気温上昇を二度以内に抑えるということで合意をしておりますが、ところが、現状はどうか。OECDは、もし適切な対策をしなければ三度から六度上昇すると警告し、IPCCは異常気象による被害の拡大を指摘し、IEAは対策を先送りする余裕はないと厳しく断じております。

 そこで、基本的な認識を玄葉大臣に伺いたいんですが、温室効果ガスの削減に向けて、このまま適切な対策をとらなければ取り返しのつかない大変なことになる、そういう認識は当然お持ちですね。

玄葉国務大臣 委員がおっしゃるように、温暖化ガスの排出削減というのは非常に大切なテーマであるというふうに認識をしております。

笠井委員 そうしますと、COP3で削減のための法的拘束力のある合意として結ばれたのが京都議定書でありますが、その第一約束期間は来年二〇一二年末で終了いたします。期限内に新たな合意が得られなければ、世界的な温暖化対策にいわば空白が生じるという事態になります。主要国が参加する効果的な合意の達成が必要であって、拘束力ある排出削減目標に合意できるか、まさにそういう意味ではぎりぎりのタイミングに来ている。だから、非常に今神経を使っての交渉が行われていると思うんです。

 ところが、日本政府は、いわゆる京都議定書の延長と言われます第二約束期間の設定にも反対をしている。これでは、せっかくの京都議定書の議長国なのに、交渉の足を引っ張って、むしろ対策に削減義務のない空白を生じさせることになるのではないかということだと思うんですが、ここはどうお考えでしょうか。

玄葉国務大臣 笠井委員、京都議定書の話を指摘されましたけれども、結局、京都議定書の場合は、つまり、実効性、公平性という観点でどうなのかという議論が今出ているのは御承知のとおりでございます。つまり、米中が入っていない枠組みである。米中で、たしか世界全体の四〇%の温暖化ガスの排出の割合ではなかったかと思います。第一京都議定書、この京都議定書でカバーできているのは、たしか、記憶では、世界全体の二六%くらいではないか。だから、やはり大事なことは、その主要排出国がしっかり入った形で法的枠組みをつくっていくことだというふうに思うんです。今の笠井委員の御指摘は、では、つくれなかったら空白になるじゃないか、こういう御指摘なんだと思うんですね。

 ですから、本当に残念ながら、現在、米中を含めて、全体が歩み寄っているという状況にないというふうに承知しています。懸命の交渉が今繰り広げられておりますけれども、少なくとも、法的枠組みの空白期間ができてしまうということであれば、行動の空白期間はつくらないというような形、工夫ができないか、知恵を出せないかということで考えていくべきではないかというふうに私は考えているところでございます。

笠井委員 すべての主要国が入る枠組みが必要というのは当然そうなんですが、今度の会議でも、潘基文国連事務総長が開会式で、温暖化対策に空白期間をつくってはならないと。まさに今大臣も言われたように、今言われたようなことで空白がなくなるのかといえば、そういう意味では、法的拘束力を持たせた京都議定書がどれだけカバーしているかという議論もあるかもしれないけれども、少なくともそういうものがあったけれども、それが一たんなくなるという事態になる。

 行動の空白というわけですが、では、それで自主的な取り組み、大いにやろうじゃないかと言ったところで、それで本当に進むのかといえば、今の枠組みでもまだ十分じゃないというふうなことを言われているところで、だから、京都議定書でいえば、法的拘束力というのを持たせるとしてやられて、そして、やはりそういう中で、自主的な行動任せでは十分な対策をとれないという批判もEUからもあるという状況になっているわけです。

 日本政府は、そういう形で行動の空白をつくらないと言うんだけれども、しかし、結局のところ、枠組みとしての拘束力という点では、第二約束期間について参加しないという形で、同時にその一方では、京都議定書が定めるようなCDMなんかについては活用するとなると、これは御都合主義という話も出てくるわけです。まさにそういう点では、やはり今どうやって空白期間をつくらずに、みんなが本当に枠組みを決めてやるかというところになっているわけです。

 玄葉大臣、COP17では、今新しい動きが出始めていると言われている。京都議定書延長を前提にしながら、新たな枠組み合意に向けて、EUそして中国も新たにそういう動きを始めた。これまでにない新しい変化ということが指摘をされております。

 アメリカについても、二〇二〇年以降の新たな枠組みということも言い出すという状況なので、やはりそうした状況が生まれているので、細野大臣がきょう報道でも、できるだけ早くにやるんだと言われているけれども、しかし、日本政府が、いわば、国内でいえば財界や産業九団体が要求していることを受けながら延長反対に固執するとなれば、これは国際的には孤立ということになりかねない。現実になっている。

 そういう意味では、政府の対処方針、今の状況を踏まえて見直して、転換をして、先進国と途上国の、これは枠組み条約のもともとの原則です、共通だが差異ある責任の原則に基づいて、やはりここは京都議定書の延長を前提とした、二〇一五年までに法的拘束力がある合意の達成を目指す、こういう方向に切りかえるべきじゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。

玄葉国務大臣 先ほども御質問にお答えいたしましたけれども、残念ながら、京都議定書の枠組みだと二六%しかカバーしないというのが現状で、いわば一部の国々しか義務を負わないということについて、その枠組みを固定化させてよいのかという問題がまず一つあるんだと思います。

 ですから、将来の包括的な枠組みを構築しなければならない。それは、先ほどの繰り返しでここは恐縮でありますけれども、すべての主要排出国が入る形で、しかも公平性かつ実効性のある形で枠組みがつくられるということが必要だ。

 これが最終目標ですが、先ほどは行動の空白期間をつくらないというふうに申し上げましたけれども、もう一つ申し上げると、やはりそういった将来の枠組み、最終目標がもしつくれない、なかなか正直つくりにくいというのが今の状況ですね。だとすれば、それに至る道筋というものを日本として提案していく、そのために建設的な役割を果たしていく、そういうことが必要だろうというふうに思います。

 あわせて申し上げれば、低炭素成長パートナーシップとか、あるいは、CDMの議論が先ほどありましたけれども、二国間オフセットクレジットなども含めて、やはりさまざまな建設的な提案を日本としてしていくことが大切なのではないかというふうに考えているところでございます。

笠井委員 決して固定化じゃなくて、主要国を含めてつくろうという方向、流れに今なっている中で、まずカバーしているところがちゃんとつないでやっていくということも含めてやるというのが大事だと私は思うんです。

 温暖化防止には、京都議定書から離脱したアメリカを初めとして、歴史的に温室効果ガスを大量に排出してきた先進国が率先して責任を果たすことが決定的であると同時に、やはり排出量をふやしている新興国もそれにふさわしい取り組みが求められる。だから、COP17が、すべての国、すべての主要国がこぞって参加する枠組みに向けて、実のある展望を開くものになるようにつないでいく。そこがやはり京都議定書の議長国、先進国にふさわしい日本の役割だし、責任を果たすべきだと強く求めておきたいと思います。これはまだ交渉中ですから、今からでも遅くないということを申し上げたい。

 次に、TPPについて質問いたします。

 私は、去る十一月十七日の本会議で、交渉参加九カ国の首脳が発表したTPPのアウトライン、外務省の仮訳では輪郭というように呼んでいますが、この文書について質問をいたしました。この質問後に、この原文と仮訳がセットで外務省のホームページで公表されまして、これによれば、この文書は冒頭で、「野心的で二十一世紀型のTPPの大まかな輪郭を達成した」とあります。

 つまり、玄葉大臣、これは基本的なことなんですが、達成したとこの九カ国の首脳が言っているわけですから、APEC議長の総括会見で明らかにした。オバマ大統領を含む交渉参加の九カ国の首脳が、TPPの大まかな輪郭、アウトラインについてはこういう方向でいこうということで一致をして、そういう意味では合意したということで理解してよろしいんでしょうね。

玄葉国務大臣 一言で申し上げますと、やはり各国、センシティブ品目というものがございます。そういったものについては合意をしていないというふうに思います、そういったものについてはですよ。

 つまりは、現実に、ネガティブリスト方式で留保すべきことについて出し合っているという状況にございますので、その大枠、つまりは高いレベルでいくんだということについての合意はあるというふうに思いますけれども、一方で、センシティブ品目などの取り扱い等については定まっていないというのが現状だというふうに認識しています。

笠井委員 大枠については合意したということでありますが、野田総理はAPECで、TPP交渉参加に向けての関係国との協議に入ると言われたそのときに、実際にはアメリカを初め相手の関係国は、既に関税・非関税措置に関する協定の、大枠と今大臣言われましたが、大まかなアウトラインを達成している、合意している。あのホノルルでの九カ国の会議で一段階進んだということであります。

 そこで、改めて大臣に確認しますけれども、日本が関係国から交渉参加を認められた場合に、認められたら、この協定の大まかな輪郭、アウトライン、大枠が示す方向に沿って交渉に参加していくということになるわけなのか。それとも、交渉参加が認められたら、それについても、いや、ここは大きな変更が必要だとかということを後から入って言うという場合もあるのかどうか。そこはどうなんでしょうか。

玄葉国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、まず、TPP首脳声明で、十一月十二日のことに触れられましたので、改めて申し上げますけれども、「我々は各国により様々に異なるセンシティブな問題の交渉が残されていることを認識し、各国の多様な発展のレベルを考慮しつつ、包括的かつバランスのとれたパッケージの文脈の中で、これらの問題に対処する適切な方法を見出す必要があることに合意した。」正確に引用すると、そういうことになっているわけです。

 今の笠井委員の御指摘は、日本は交渉に参加したら、今までの大枠合意の部分にまで改めて口を出すのか、こういうことでございますけれども、それは、では全く出さないかと言われると、出す可能性はあるとは思います。

 ただ、基本的に、大枠の合意というのがある中で、TPPというものに対して参加をするためのいわゆる協議に入るということでございますから、基本的にはその大枠の合意というものは、大体、大枠は前提にしなければならないんだろうが、ただ、それは時と場合によって、それについても物を言うということも、それは可能性としてはあるだろうというふうに思います。

笠井委員 可能性としてはあるといっても、そういう国々にいいよと言って入れてもらうわけですから、これは大変な話になると思います。

 先ほど、オバマ大統領が野心的なということで来年末というふうな話もあったんですけれども、USTRのカーク代表が十一月三十日に言明したところによると、USTRは来年末までに協定を締結するために交渉チームを結成したということであります。期限は来年末ということで明言して今作業をやっているわけで、既に大まかな輪郭、アウトラインまで達成しているけれども、日本が九カ国から交渉参加の同意を得るにはまだ時間がかかる、春かも夏かもしれない。そうなると、たとえ日本の交渉参加が認められても期限はわずかに限られている、実際には交渉の余地というのは極めて厳しい、こういうことになりますか。

山口副大臣 笠井議員御存じのように、我々は、本当は六月に基本方針、それから十月に行動計画ということで、もう少し早く本当は交渉に対してのいろいろな話ができればよかったと思ったわけですけれども、地震の関係で十月、それから十一月ということ、それで、その中で関係国との協議ということです。

 御指摘のとおり、確かに向こうの定めている期間というのは年末、そのとおりにいくどうかわかりませんけれども、ただ、向こうはそう言っている。その中で、我々としてはできるだけ早く交渉にできればかかわって、交渉の余地が残っている段階で話ができればということを思っておる次第です。

笠井委員 それでは、この文書を幾つかちょっと具体的に見たいと思うんですが、細かいことを言うわけじゃありません。大きな点ですが、外務省訳でいうと三ページになりますが、「条文案」という項目があります。「条文案」というところがありますが、こう書いてあります。「交渉グループは事実上全てのグループにおいて統合条文案を作成した。いくつかの分野においては、条文案はほとんど完成しており、他の分野においては、特定の問題についての条文案を仕上げるために更なる作業を必要としている。条文案には、相違点が残っている部分を示すために括弧が付されている。」こう書かれておりまして、その後に、例えば「越境サービス」のところを見ますと、「TPP参加国は、越境サービスの条文案について核となる要素のほとんどについて合意した。」と書かれています。

 私は、これを見て、相当進んでいるなと思ったんです。大枠、大まかと言われましたけれども、要するに、もうTPPの条文案が幾つかの分野ではほとんど完成している。特定の問題について仕上げる作業が必要だけれども、その中で相違点が残っている部分が括弧つきで書かれている。中には、もうほとんど合意したというふうな条文もあるとまで書かれている。つまり、協定の交渉が最後の詰めの段階に来ているな、相違点を書いて条約交渉をしているということは相当詰まっているという話なわけです。ほとんど合意した点もあるという部分もある。つまり、大まかな輪郭、大枠といいながら、実際にはここまでテキスト交渉が進んでいるということだと思うんですね。

 だから、これから入っていくんだけれども、テキストはもうここまで合意していますよという話、そこからチャラにするんですかという話を、後から入ってきて言うのかということになってくるので、私は、実際にはもうかなり進んで重大な事態になっていると思うんですけれども、外務省は現時点での条文案のテキストそのものは入手しているんですか。

山口副大臣 まだ我々、その交渉の参加ということに同意がとれていませんので、正式な形で入手はできていません。

笠井委員 参加するという意向を表明して、これから協議に入るというわけですよね。その上で、どこまで進んでいるかというのは決定的な問題だと思うんです。

 そして、日本政府としては、参加国との、関係国との事前協議に入る、やっていく。情報収集と言われていましたけれども、条文案というのはコアの問題ですよね。そういうのは見せないんですか、交渉参加しようとする国に対しては。参加してから見せるんですか。

玄葉国務大臣 これは、笠井委員、やはり入らないと、個別に、断片的にもらうということはそれぞれあっても、参加国の中で申し合わせをしているんですね。テキスト、条文案は外に出さないということで申し合わせをしているものですから、そういう意味で、テキスト、条文案は有していないということでございます。

笠井委員 そうすると、入ってみたら大変な条約だったという話になる可能性が強いということじゃないかと思うんですね。これはなかなか大変な話になると思います。

 この文書の前書きのところで、一番最初に書いてあるのは、「協定の大まかな骨格は以下のとおり。」というふうに始まりまして、文章があるんですけれども、その中で、まず最初の見出しが「重要な特徴」と書いてあって、その冒頭に「包括的な市場アクセス」という項目が掲げられて、こうあります。「関税並びに物品・サービスの貿易及び投資に対するその他の障壁を撤廃する。」と書いてあります。これは、要するにTPP協定の最も重要な特徴だということで、アメリカを含む九カ国が一致したということを表現していると理解していいんでしょうか。

山口副大臣 文言上はこういうふうになっている。

 他方、我々の断片的な情報収集かもしれませんけれども、一つ聞いているのは、アメリカの言い分の一部です。例えば、米豪との間で彼らは二国間のFTAを結んでいるわけですけれども、その中で百八の品目について例外を認めている、これをTPPでも同じようにやってくれということを言っているやに我々は聞き及んでいます。

 向こうは一万品目使っていますから、百八品目というのは一%ということで、そういう意味では、文言はこうなっているけれども、どうも交渉というのは、かなり複雑なところがまだあるようだというふうに認識しています。

笠井委員 私が聞いているのは、「関税並びに物品・サービスの貿易及び投資に対するその他の障壁を撤廃する。」ということがTPP協定の「重要な特徴」の筆頭に挙がっている。こういう形で、九カ国は少なくとも、細かい話は今言われたことがあるかもしれないけれども、合意したかどうか。それはそういうことでいいんですね。

玄葉国務大臣 今御指摘の文章は確かにございます。「関税並びに物品・サービスの貿易及び投資に対するその他の障壁を撤廃する。」ただ、これはこういうふうに解して間違いないと思います。つまりは、今おっしゃったような、すべての関税・非関税措置を全面撤廃するというようなことではなくて、先ほど申し上げたように、センシティブな品目、問題、そういう交渉が残されているので、そのことについてはこれからしっかりと対応していきましょう、ネガティブリスト方式を採用しながら、留保すべきは留保することも含めて対応していきましょう、こういうふうに理解していただければというふうに思います。

笠井委員 その点でいうと、条文案について、後で「条文案」という項目の中に「物品市場アクセス」の項目があって、私、これを見て、率直に、かなり入っているなと思いました。その文書でいうと五ページになると思うんですけれども、「物品貿易に関する条文案では、協定参加国がWTO協定上負っている義務を上回る重要な約束を含む参加国間の関税撤廃、及び貿易障壁となりうる非関税措置の撤廃も扱われている。」「農産品の輸出競争や食料安全保障に関する規定も議論されている。」そういう方向に向かって、かなり突っ込んでやっているわけですね。そして、大きな特徴としては撤廃ということを確認しながら、そういうことを具体的にやっている。

 私は、こういう点でいうと、この物品貿易に関する条文案とかテキストというのはやはり手にしないと、これはなかなか大変なことだと思うんですけれども、これは必要だと。入っていないと言うんですけれども、これはやはり要りますよね。

玄葉国務大臣 これは先ほど申し上げましたが、残念ながら九カ国の申し合わせがあるんです。ただ、当然ながら、米国のみならず、それぞれの参加国から、複数さまざまな形で情報収集しておりますので、先ほど申し上げたようなことを、自信を持って私は申し上げることができるということでございます。

 ただ、おっしゃるように、では条文案があった方がいいというのは、それはあった方がいいんです。ですから、それをどこかの時点でしっかりといただくことも必要なのかもしれません。ただ、結局、今動いている条文案でありますから、もう動いていないものはともかくとして、動いている条文案について、その都度出してくれるかというと、それは、私たちが交渉に入ってほかの国に出すかといえば、そう簡単には出さないというふうに思いますので、そのあたりも含めてしっかり情報収集はしていきます。

 適宜情報を出し、また、どうしても出せない情報というのも、それはあるかもしれません、交渉に入れば。ですけれども、整理された情報をしっかりと国民の皆様にお伝えできるように、当然、国会にもお伝えできるようにしたいというふうに思います。

笠井委員 動いている情報だから、なかなかこれは出してもらえないのでと言うけれども、それがとまっちゃったら、もう固まったということですよね。固まったものをもらっても、そこからどうするのかといったら、交渉の余地はあるのか。私たち九カ国は合意しました、後から日本がお入りになるんだったら、どうぞ、いいけれども、しかしそれを、ちゃぶ台をひっくり返したり、固まったのをまたやり直すなんて話にならないでしょうということになるんじゃないかと思うんですよ。

 だから、これは今参加表明したけれども、実際、入るプロセスというのが非常に大変なものだ。要するに、情報をくれるものは、もうこれはいいですよというのは九カ国合意していますからということになっちゃうと、幾らそれをもらったって、それは承りました、わかりました、それはわかった上で入るという話になるので、TPP交渉のテキスト交渉がここまで進んで、来年末には結論を出そうという中で、例えば、先ほどからありますけれども、農林水産分野にしてもセンシティブ品目を守ることができるのかどうか。客観的に見ても、かなり疑問符がついてくる話に一日一日たてばたつほどなるということになってくる。

 私は、そういう点では、こういう交渉に入っていくというのは非常に危ないということ、同時に、条文案があるんだったら、原文と翻訳、大至急それはちゃんと取り寄せて、国会にも提出する。国民に、それでもいいですかという話にならないと、これは先に進まない話になるし、そういう交渉には参加すべきでないと改めて痛感いたしました。

 終わります。

田中委員長 次に、服部良一君。

服部委員 社民党の服部良一です。

 きょうは、二つの戦後処理案件について質疑をいたします。

 まず、著作権の保護期間の戦時加算についてお尋ねします。

 著作権は、死後一定の期間、保護されます。第二次世界大戦当時は三十年であったわけですけれども、日本はサンフランシスコ平和条約の第十五条(c)項に基づき、一九四一年十二月八日時点で有効であった著作権の保護期間について、連合国のうち十五カ国については十年程度を加算する、つまり、三十年を約四十年に延ばすということ。そして、一九七〇年の著作権法改正で保護期間が五十年になったわけですけれども、戦時加算は解消されず、五十年に加算をして、つまり六十年保護するということになり、今に至っております。

 現在、著作権保護期間を七十年にしようというふうに検討されていると聞いておりますけれども、この際、戦時加算を解消すべきではないかというふうに考えますけれども、文化庁の認識をお聞きいたします。

芝田政府参考人 お答えいたします。

 既に戦後六十年以上が経過しておりまして、著作権の保護期間の延長も重要な検討課題となっております。

 戦時加算は、文化庁としても、検討すべき重要な課題であると承知しております。一方で、戦時加算につきましては、サンフランシスコ平和条約との関係など、その取り扱いには慎重な検討が必要でございます。このことも踏まえまして、著作権の保護期間の延長問題とあわせて、この課題について検討を行ってまいりたいと考えております。

服部委員 二〇〇七年に、民間の国際団体、著作権協会国際連合が、日本における戦時加算に関する決議というものをして、民間ベースではもう日本に戦時加算を求めるのはやめようという合意がされているわけですね。

 外務省は、恐らくサンフランシスコ条約そのものを変えるのは大変だということだろうと思うんですが、そのサンフランシスコ条約の第十四条には、日本の「文学的及び美術的著作権を各国の一般的事情が許す限り日本国に有利に取り扱う」という規定がございます。事前にヒアリングしたときに、外務省は、条約の改定は難しいというふうに言われますけれども、それは十五条に限った話であって、十四条に基づき、交渉ができるんじゃないか。関係国から理解が得られる状況が今まさにできているわけですから、それを二国間交渉するなりして、戦時加算の解消に取り組むべきだというふうに思いますけれども、外務省の見解をお聞きいたします。

西塔政府参考人 お答え申し上げます。

 サンフランシスコ平和条約でございますが、これは我が国の法的な戦後処理の基本となるものでございまして、当該条約上の義務の免除につきまして関係国と交渉を行うことは現実的ではなく、それはたとえ新たな二国間協定によるものであっても同様であると考えております。

服部委員 玄葉大臣、この戦時加算という問題なんですけれども、これは戦争中に著作権を日本が保護できなかったから十年加算しようということなんですよ。しかし、戦争というのは、戦勝国であれ敗戦国であれ、お互いにそういう文化的な著作権が本当に保護されていたのかという、その疑問もあります、まず。

 それから、敗戦国という意味においては、例えばドイツやイタリアも、こういった戦時加算はないわけですよ。日本だけが、戦後、今六十六年たっても、この戦時加算が続いている。これは、私はどう考えてもおかしい。もちろん日本の戦争責任の問題はあるとしてですよ、ちょっとおかしいんじゃないかと。

 こういう著作権を延長するときに、そういうタイミングでやはりきちっと見直しをしていく、これはサンフランシスコ条約の十四条には、そういうことはできるという趣旨のことが書いてあるわけですから、これは私はもう外務省の怠慢以外の何物でもないというふうに思うわけです。大臣、ひとつ決意をお願いします。

玄葉国務大臣 今の服部委員の問題意識について、私も理解いたします。

 それで、やや紋切り型の答弁が続きましたけれども、ただ、文化庁としては非常に重要視している、こういうお話もあったところでございますので、これはやはり将来的にこの戦時加算の問題をどういうふうに扱うかということについては、保護期間の問題もございます、著作権の保護期間をどうするかという問題も。ですから、これは文化庁に恐らく文化審議会等もありますから、そういったところの議論も含めて、将来の議論を経て検討したいというふうに思っています。

服部委員 ぜひ検討をよろしくお願いしたいと思います。

 続く戦後補償問題で、韓国人の元従軍慰安婦の方々に対する謝罪と賠償の問題についてお聞きをいたします。

 ソウルの日本大使館前で毎週水曜日に、元従軍慰安婦や支援者の皆さんが謝罪と賠償を求めて水曜集会、水曜デモを行っておられるわけです。来週水曜日、十二月十四日に千回目を迎えるということなんですね。第一回目は一九九二年の一月八日、もう実に二十年も謝罪と補償を求めて行動が続いている事実というものは非常に重たくて、韓国国内でも、一千回を前にして関心が非常に高まっております。

 この慰安婦の問題については、過去、河野談話も出されました。ここにコピーを、河野談話とそれから去年の菅総理の談話を、ちょっと参考までにおつけしたわけです。

 まず、玄葉大臣、この河野談話、村山談話、あるいは昨年の菅談話、この談話は外務大臣として尊重し引き継いでいくという理解でよろしいでしょうか。

玄葉国務大臣 一連の日本国政府の今おっしゃられた談話について、引き継いでまいります。

服部委員 この河野談話を見ますと、「旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。」「心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。」ただ、どうあらわすかについては今後とも真剣に検討するということを書かれております。

 それから、菅さんの談話を見ますと、「歴史の事実を直視する勇気とそれを受け止める謙虚さを持ち、自らの過ちを省みることに率直でありたい」「痛みを与えた側は忘れやすく、与えられた側はそれを容易に忘れることは出来ないものです。」と。私は非常に重たい言葉だなというふうに思うわけです。

 実は、きょう、慰安婦の一人である方の証言をここに準備させていただいております。吉元玉ハルモニ、ハルモニというのはおばあさんということなんですけれども。

 元慰安婦の方は、アメリカの議会でも証言をされているんですね。しかし、当の日本の国会ではその証言がされたことがない。私は、やはり日本こそが、こういった皆さんの肉声を聞いて、その痛みは重いというものを受けとめるべきだというふうに思っておるわけですけれども、きょうは、そういう思いも込めて、あえて皆さん方に、この昨年四月に尼崎の集会で証言をされた吉元玉さんの言葉を紹介しているわけです。

 吉さんは十三歳で何もわからないまま連行され、その体験は言葉で簡単にあらわすことのできないものだというふうに思います。私も本当に心が痛むわけですけれども、大臣、こういった吉さんの証言、これは、外務大臣であると同時に一人の国会議員として、あるいは一人の人間としてと言ってもいいと思うんですけれども、どういうふうに受けとめられますか。

玄葉国務大臣 非常に胸が痛みます。

服部委員 非常に胸が痛む。

 八月に韓国の憲法裁判所が、従軍慰安婦問題を解決せずにいる韓国政府の不作為について、違憲であるという判決を下しました。これを受けて、韓国政府は、日本政府に対して公式に協議を申し入れ、また国連総会第三委員会でも提起をしているわけです。しかし、今に至るまで日本政府は協議を拒否しているわけですけれども、このまま十二月十四日を迎えるということになれば、私は、やはり日韓関係についても非常にまずいんじゃないかなというふうに思うわけですね。

 それで、日本政府あるいは外務省は、韓国政府が求めるこの間の協議になぜ応じないんですか。

石兼政府参考人 今、服部委員から御指摘ございましたように、韓国における憲法裁判所の決定を受けて、本年の九月と十一月に、韓国政府から我が国に対して協議の申し入れがあったことは事実でございます。

 他方、私ども、この財産、請求権の問題に関する政府の一貫した立場というのは、これはもう請求権・経済協力協定により完全かつ最終的に解決済みであるということで、この立場をしっかりと先方に伝える次第でございます。

服部委員 では、外務大臣にお聞きしますけれども、何で今もなお謝罪を求めて抗議を続けておられるというふうに思われますか。

玄葉国務大臣 今も答弁がありましたけれども、我が国の立場は一貫をしているわけであります。つまりは、請求権そして経済協力協定で完全かつ最終的に解決済みであると。

 ただ、そういった問題とは別に、私ももう既に国会議員になっておりましたのでよく覚えておりますけれども、村山内閣のときにアジア女性基金というものをつくりました。正式には女性のためのアジア平和国民基金ということで、既に高齢になられた元慰安婦の方々の現実的な救済を図るということでございました。そして現実に、元慰安婦の方々への医療とか福祉支援事業、そして償い金の支給等の基金の事業に対して、私たちとして最大限の努力を払ってきた経緯もあるというのは御存じのとおりでございます。

 ただ、この基金というのは、これまた御存じのように、解散になりました。ただ、その後も、そのフォローアップ事業をきちっとやっていこうということにしております。

 ただ、どこまでまた公の場で申し上げてよいかということはあるんですけれども、韓国でも、いわゆる日本の外交官が、そういったお一人お一人にできる限りお気持ちをお聞きする、そういう触れ合いを持つように努力をしているというのが今の実情でございます。

服部委員 大臣、それならば、韓国政府は公式に日本の外務省に、この問題の解決を求めて話し合いをしようということを言ってきているわけですから、何でそれをされないんですか。

玄葉国務大臣 これは、服部委員、気持ちの問題というよりは協定そのものの問題でございますので、実際に、韓国は韓国で、いわゆる憲法裁判所から言われた、その中で要求しているということは理解はしておりますけれども、やはり協定上、私たちは私たちの立場というものがございますので、その立場を申し上げているということでございます。

服部委員 先ほど基金の話も出ましたけれども、結局、端的に言えば、被害者の方に日本の国としての謝罪の気持ちというのがやはり伝わっていないんですよ。ですから、今まで、きょうのきょうまでそういう抗議が続いている。

 日韓問題というものは非常に重要だということは、これは大臣もよく認識のことですよね。韓国では、日本統治下で韓国の労働者に対して補償していない日本企業を公共入札の対象から排除する、そういう動きもあるわけです。日中韓のFTA、あるいはASEANプラス3とか6とか、日韓の経済関係を深めるということを一方で言いながら、また先日、十一月十七日の本会議で、ロシアから北朝鮮経由で韓国に天然ガスのパイプラインを引くということもちょっと私は指摘をさせていただいて、その点に対して野田総理は、このような動きに対しては注目しているという答弁も実はありました。

 日韓関係を考えると、こういう両国間に刺さっているいわゆるとげをやはり丁寧に丁寧に抜いていく、そのことがまさに外交じゃないんですか。今までみたいに、しゃくし定規に、こうだからだめだということじゃなくて、今もこういう抗議が続いているわけですから。

 どうですか、外務大臣、このままほったらかしにするんですか。

玄葉国務大臣 私たちの立場は先ほど来から申し上げているとおりであります。だからといって、では何の意思疎通も韓国側としていないかといえば、そうではございません。

服部委員 最近、玄葉大臣はアメリカとオーストラリアの戦争捕虜の方にお会いになったと思うんですね。これは外務省のホームページからですけれども、十月の十七日、米国人元戦争捕虜、ここで外務大臣は非常にいいことを言っておられるんです。心の和解を促進するということを言われているんですね。そしてまた、オーストラリアの戦争捕虜の方にも会われて、改めて深い反省と心からのおわびの気持ちを表明されております。

 この問題も、アメリカの藤崎駐米大使がその被害者のもとを訪ねて謝罪をして、そこから交流が始まったわけです。この十月には、昨年に続き二回目の日本招致が実現をして、玄葉大臣もお会いになって、そういったおわびもされ、そういう意味で和解のプロセスが少しずつ進んでいるわけです。

 先ほど、何か意味ありげなことをちょっとおっしゃったんですけれども、例えば水曜集会に、被害者の本当にもうお年寄りが座っておられるわけですよ、日本大使館の前で。そこに大使が出向いて一言あいさつするとか、それが良心というものじゃないですか。どうですか、大臣。

玄葉国務大臣 心の和解の方法は、ある意味、普遍的なものもあるだろうし、それぞれの国によって、さまざまなところもあるんだろうというふうに思います。

 今、韓国の話でございますけれども、そのことについても、先ほど申し上げたように、この間一貫して努力をしてきた、そのことを改めて申し上げつつ、意思疎通をいろいろ、コミュニケーションをいろいろとっているということでございます。

服部委員 私は、前原さんがどういう思いで言われたのかよくわかりませんけれども、十月ですか、韓国に行かれたときに、人道的観点から考える余地がないかお互いに議論をしたい、あるいは、人道的な仕組みを検討する余地があるのではないかということもおっしゃっているわけですね。

 今、慰安婦の皆さんというのは、もう本当に御高齢なわけですよ。名乗り出られた方が二百三十四名おられるわけですけれども、存命なのは六十五名になってしまっておられるわけですね。一日一日が非常に貴重な時間なわけです。戦後六十六年たち、しかも今、韓国の中でも非常に注目が集まっている。そのことが少なからず日韓関係にもマイナスの影響があるということは、大局的な視点で見れば、そこはやはり大臣もよくおわかりだというふうに思います。

 ですから、このタイミングで、何か意思疎通を図っているというのはどこで何をされているのかよくわかりませんけれども、具体的に外務省として動く、何らかのことをするという決意を述べてください。

玄葉国務大臣 日韓関係を大局的にとらまえる、しかも重層的に考えていくというのは、私は全くそのとおり、同感であるというふうに思います。

 ただ、今提起された問題につきましては、我が国の政府の立場は一貫をしている、そういう中で一定の意思疎通をさせていただいている、それだけでございます。

服部委員 もう時間が来ましたので終わりますけれども、こういう問題を質問すると、すぐ売国だとか言う人がいるんですけれども、日本が歴史の問題をきちっと認識して謝罪することが、より日本の世界的な良識を高める、むしろ、そのことが日本にとってプラスであるということを最後に申し上げまして、きょうの質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

     ――――◇―――――

田中委員長 次に、経済上の連携に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣玄葉光一郎君。

    ―――――――――――――

 経済上の連携に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

玄葉国務大臣 ただいま議題となりました経済上の連携に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十一年五月以来、ペルーとの間で協定の締結交渉を行いました。その結果、本年五月三十一日に東京において、我が方外務大臣と先方通商観光大臣との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、両国間において、物品及び国境を越えるサービスの貿易の自由化及び円滑化を進め、自然人の移動、競争、知的財産等の幅広い分野での枠組みを構築するものであります。

 この協定の締結により、幅広い分野において両国間における経済上の連携が強化され、そのことを通じ、両国経済が一段と活性化し、また、両国関係が一層緊密化することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十年九月以来、メキシコとの間で改正議定書の締結交渉を行いました。その結果、本年九月二十二日にメキシコ市において、我が方在メキシコ大使と先方経済大臣との間で、この改正議定書の署名が行われた次第であります。

 この改正議定書は、両国間において、物品の貿易をさらに自由化及び円滑化するものであります。

 この改正議定書の締結により、両国間における経済上の連携が一層強化され、そのことを通じ、両国経済が一段と活性化し、また、両国関係が一層緊密化することが期待されます。

 よって、ここに、この改正議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

田中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る九日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十三分散会


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