衆議院

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第5号 平成25年4月19日(金曜日)

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平成二十五年四月十九日(金曜日)

    午前八時四十八分開議

 出席委員

   委員長 河井 克行君

   理事 岸  信夫君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 薗浦健太郎君 理事 土屋 品子君

   理事 原田 義昭君 理事 山口  壯君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      あべ 俊子君    井林 辰憲君

      黄川田仁志君    小林 鷹之君

      河野 太郎君    島田 佳和君

      東郷 哲也君    永岡 桂子君

      星野 剛士君    牧原 秀樹君

      松島みどり君    三ッ矢憲生君

      武藤 貴也君    山田 賢司君

      玄葉光一郎君    後藤 祐一君

      長島 昭久君    浦野 靖人君

      村上 政俊君    岡本 三成君

      三谷 英弘君    山内 康一君

      笠井  亮君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   法務副大臣        後藤 茂之君

   外務副大臣        鈴木 俊一君

   防衛副大臣        江渡 聡徳君

   外務大臣政務官      あべ 俊子君

   防衛大臣政務官      佐藤 正久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  石井喜三郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  種谷 良二君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 萩本  修君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 岩尾 信行君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 広瀬 行成君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 柳  秀直君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    上村  司君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  黒江 哲郎君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十九日

 辞任         補欠選任

  城内  実君     井林 辰憲君

  河野 太郎君     永岡 桂子君

  武藤 貴也君     山田 賢司君

  菊田真紀子君     後藤 祐一君

  山内 康一君     三谷 英弘君

同日

 辞任         補欠選任

  井林 辰憲君     城内  実君

  永岡 桂子君     河野 太郎君

  山田 賢司君     武藤 貴也君

  後藤 祐一君     菊田真紀子君

  三谷 英弘君     山内 康一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一号)


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     ――――◇―――――

河井委員長 これより会議を開きます。

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官広瀬行成君、大臣官房審議官柳秀直君、大臣官房審議官山上信吾君、総合外交政策局長平松賢司君、北米局長伊原純一君、領事局長上村司君、内閣官房内閣審議官石井喜三郎君、内閣審議官種谷良二君、法務省大臣官房審議官萩本修君、大臣官房審議官岩尾信行君、防衛省防衛政策局長徳地秀士君、運用企画局長黒江哲郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河井委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玄葉光一郎君。

玄葉委員 四カ月前まで外相をさせていただきましたので、守秘義務もございますし、質問は遠慮しようというふうに考えていたんですけれども、御存じのように、民主党、外務委員会は私を含めて四名でございます。山口さん、菊田さん、長島さん、それぞれ大変優秀な方々ではありますけれども、その負担を考えると私も質問しなければならないということで、きょう、こうして立たせていただいたわけでございます。

 一年四カ月務めさせていただきました。思ったようにできたこともあれば、思ったようにできなかったこともございます。外務省の職員には大変よく支えていただいたというふうに思っています。

 岸田外務大臣には、この国難にあって、ぜひ頑張ってほしいというふうにエールを送りたいと思っていますけれども、就任四カ月での率直な感想をまずお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、外務大臣に就任しましてから四カ月がたちますが、改めて、我が国の置かれている国際的な戦略環境の厳しさを痛感しております。北朝鮮の核実験の実施ですとか、中国艦船による火器管制レーダーの照射ですとか、アルジェリアのテロ事件ですとか、さまざまな出来事が発生をいたしました。

 こうした中にあって、我が国の外交をつかさどることの重みを痛感しておるところでございます。そして、こうした外交の継続性ということを考えますときに、玄葉前大臣の一年四カ月、大変な御苦労がおありになったんだろうなと思いをめぐらせているところでございます。

 ぜひ、我が国が置かれているこうした危機的な状況をしっかりと受けとめ、そして、外交の継続性の中で、日本の国益を守るために、玄葉大臣の一年四カ月の努力の上に立って、私も大きな責任を感じながら外交努力を続けていかなければいけないと改めて強く感じているところでございます。

 まだまだこれからさまざまな不透明な要因が想定されます。ぜひ心して外務大臣としての務めを果たしていきたいと存じます。引き続きましての御指導を心からお願い申し上げる次第でございます。

玄葉委員 やり残したことがございまして、ぜひ岸田外相に頑張ってほしいと重ねて申し上げたいというふうに思います。

 外務省で調べてくれたんですけれども、一年四カ月で三十五カ国、外遊したというか訪問したということであります。ヒラリー・クリントンさんが四年間で百十二カ国だそうです。これは、歴代国務長官の中で一番多いということのようであります。恐らく、イギリスとかドイツとかフランスも、一年四カ月くらいならこのくらいの数ではないかというふうに思うんですが、東大の佐々木毅先生初め何人かの学者さんがあるレポートを書いておりまして、私が一年四カ月で三十五カ国訪問をし、かつ、一年間で国会に出席をした日数というのが、平日二百六十日の中で百六十五日間だったということであります。対して、イギリスとドイツ、フランスというのは、そのレポートによりますと、それぞれ、二十二日間、十六日間、十七日間ということであります。

 このことを我々がどう考えるか、与党、野党を超えてですね。私は今、野に下ったわけであります。率直に言うと、そのとき岸田外相は国対委員長だったわけですけれども、答えにくいと思いますが、別に皮肉で申し上げているわけじゃなくて、この国会における一種の構造改革というのを、やはり真摯にお互い考えていかないといけない時期に来ているんじゃないかというふうに思うんですね。

 日本の歴代外相の海外への訪問の数をざっと見ますと、七、八年前までは必ずしも多くないんですよ。この七、八年、急激に多くなってきているんです。それはやはり、これからの時代というか今の時代は、かつてと違って、外相自身が直接訪問しなければならない国というのがふえているし、外相自身が直接出なければならない、そういう国際会議がふえているということでもあると思うんですね。

 日本外交あるいは日本国の世界における存在感というものを考えたときに、やはりこの問題、徐々にではありますけれども、よく考えていかないといけないテーマではないかと思いますけれども、岸田外相、いかがお考えになりますか。

岸田国務大臣 ただいま玄葉委員から、日本の外相の外国訪問が最近はふえているという御指摘もありましたが、一方、他の国におきましては、外務大臣を初めとする外交担当者の外国訪問はさらに数がふえているのではないか。結果として、各国の外交担当者の外国訪問に比べまして、日本の外務大臣を初めとする関係者の外国訪問はまだまだ見劣りをしているのではないか、数が少ないのではないか、これを痛感しております。

 また、私も、まだ四カ月ではありますが、幾つかの国を訪問させていただきました。その際に、たしかフィリピンでは、日本の外務大臣が訪問したのは七年ぶりだという話を聞かされました。オーストラリアでは、日本の総理大臣が二国間会談という形で訪問するのは十年間ないという話も聞かせていただきました。数ももちろんですが、国によって外国訪問のありようもさまざまなのかなということも感じてまいりました。

 やはり、こうした各国の動き等を見ますときに、我が国も、外務大臣あるいは首相の外国訪問をより戦略的に、数ももちろんですが、どのぐらいの間隔、ローテーションで訪問するべきなのか、あるいはどのような訪問を行うべきなのか、内容におきましてもしっかりと検討、吟味した上で、戦略的な外国訪問を考えていく必要があるのではないか。

 国会日程等なかなか厳しい条件もあるわけですが、他の国々が国益をかけて外交を展開している中にあって、我々も、そういった問題意識を持って、外務大臣を初め外交担当者の外国訪問を考えていかなければならないのではないか、こんなことを感じているところでございます。

 ぜひ、こういった実態もしっかりと我々からも説明をさせていただき、さまざまな関係者に御理解をいただき、有効な、戦略的な外国訪問を行い、そして、国益を守る、外交の成果につなげていきたいと感じておるところでございます。

玄葉委員 先ほど申し上げましたけれども、結局、問題は、国会との関係が一つあると思うんですね。つまり、一年間で私は百六十五日国会に出席をし、他方、イギリス、ドイツ、フランスは、二十二日、十六日、十七日である。ましてや、御存じのように、ロシアだとか中国は議会での説明というのはほとんどなされない、こういう状況にあるわけであります。

 国会における説明というのは非常に大事ですけれども、我々、副大臣の活用、副大臣の答弁というのをもともと一旦決めた経緯というのがあると思うんですね。ですから、残念ながら、立場がそれぞれ変わるとなかなかそういったことが進まないというところがあるんですけれども、私は野に下りましたけれども、できるだけ外務大臣の出張というのは認めていくべきであると。それは、将来またどういうふうな政権ができようとも、それをきちっと慣例としていくということをやはりこのあたりからしっかりと構築していくということが大事じゃないかというふうに考えているということでございます。

 ちなみに、この間のTICADの準備会合にしても何にしても、今、できるだけそういう方向に民主党は行っているのではないかと、私から見てもそう思っていますけれども、もう一言あれば。

岸田国務大臣 まず、国会の運営につきましては国会の先生方の御判断に委ねなければなりませんが、こうした外交のありよう、外国訪問の必要性については、しっかり我々は説明をさせていただき、御理解をいただかなければならないと思っております。ぜひ御理解をいただいた上で、日本外交、そして外務大臣の外国訪問等についてもどうあるべきなのか、国会におきましても、ぜひ御議論いただき、御指導いただきたいなと改めて思っております。

玄葉委員 外交の問題に本格的に入る前に、先般、岸田外務大臣に福島第一原子力発電所を視察していただきました。そのときに、岸田大臣として何を感じて、この視察をこれからどう生かしていこうというふうにお考えになったか、お聞かせをいただきたいと思います。

岸田国務大臣 今月六日の日に、東京電力福島第一原発の廃炉作業を視察させていただき、あわせて福島県の佐藤雄平知事と会談をさせていただきました。

 まず、福島第一原発を視察させていただきまして、改めて、大変厳しい環境の中でこの廃炉作業に多くの作業員の方々が取り組んでおられました。このことについては心から敬意を表し申し上げた次第ですが、一方で、最近、さまざまなトラブルも発生しております。このことにつきましては、ぜひ緊張感を持って引き続き取り組んでいただきたいということを申し上げさせていただいた次第でございます。

 そして、その後、佐藤雄平知事ともお会いをさせていただきましたが、その際に、福島第一原発の廃炉作業はもちろんですが、それ以外にも、除染ですとかあるいは風評被害の払拭ですとか、そしてこうした作業が進むことによって福島全体の復興にもつながるわけですから、こうしたさまざまな課題に外務省としても大変大きな責任を担っているんだな、こんなことを感じて帰ってきた次第でございます。

 廃炉作業につきましても、国際的な知見を得ていくことは大変重要であります。IAEA、あるいはOECDのNEA、経済協力開発機構原子力機関、こうした国際機関ですとかあるいは各国との間でまずは透明性を高めていく、そして、さまざまな知見を活用しながら廃炉を着実に進めていく、こういったことの重要性を感じた次第であります。

 また、これは昨年十二月ですか、玄葉委員も外務大臣の時代にみずから共同議長を務められました原子力安全に関する福島閣僚会議、この閣僚会議におきましても、IAEAの天野事務局長と福島の佐藤知事との間で覚書を交わしておられます。この覚書の中で、現在、福島県におけるIAEA緊急時対応能力研修センターの立ち上げですとか、除染、放射線モニタリング、また、人の健康等の分野での具体的な協力プロジェクト、こうした準備が進められています。こういったものについてもしっかりフォローしていかなければならない、こんなことを感じた次第でございます。

 外務省としましても、国際的な知見を活用する、あるいは、さまざまな国際機関、国々と連携していく、また、風評被害の払拭等においてはさまざまな働きかけを行っていかなければいけない等々、多くの責任を担っているんだなということを改めて痛感して帰ってきたということでございます。

玄葉委員 ぜひ外務大臣が先頭に立ってこの問題に取り組んでほしい。私も全力を挙げてきたんです、今御紹介いただきましたけれども。特に、廃炉プロセスを安定した形で進めるというのは、日本の国益を考えると、最重要テーマの一つだというふうに申し上げて間違いないと思います。

 汚染水漏れがあったり、ネズミによる停電、そして冷却機能の停止などという事態が頻繁に繰り返されているわけであります。

 先般も、IAEAの廃炉の専門家が第一原子力発電所を訪れたんですね。もちろん、燃料デブリの取り出しみたいな話というのは、どこの国も経験していませんので、我が国が技術開発をしながら進めていかなければならないんですけれども、ただ、国際社会の知見を結集する、IAEA、あるいはOECDの中にあるNEA、そういった機関から最大限協力をいただくという必要はあるし、あるいは、風評被害対策、渡航制限もあります。まだ輸入制限もあります。

 放射線量のリスクコミュニケーションというのが世界の中で進んでいないという側面がありまして、実は、会津若松とニューヨークというのは同じ放射線の空間線量なんです。でも、放射線量が高いんじゃないかとか、そういうふうに言われちゃうというところがあるんですね。

 ICRPなんかを上手に活用して、さまざまな国際会議の場で、こういった対策も外相が先頭に立ってぜひ進めていただきたいというふうに思いますが、もう一言決意をいただければと思います。

岸田国務大臣 先ほど申し上げましたように、今回の福島視察において、改めて、外務省の役割の大きさ、責任の大きさを感じているところですが、その上で、具体的にしっかりと成果、結果を出していくことの大切さも感じております。

 風評被害等につきましても、まだまだ、さまざまな輸入制限があり、さまざまな制限が各国に存在をいたします。このことについても、より具体的な取り組みを強めていかなければいけない、このように思っています。

 今御指摘がありましたICRP、こうした国際機関の知見をしっかり活用させていただき、科学的根拠によって、より説得力のある働きかけを行っていかなければならない、こんなことも感じるところであります。

 また、こうした具体策につきましては、今、外務省の中で検討させていただいているところではありますが、私の私見で申し上げますならば、こうした働きかけにつきましても、世界各国、また地域によりまして事情はさまざまでありまして、受けとめ方はさまざまのようであります。ですから、地域分けあるいはグループ分け等、よりきめ細かい働きかけが必要なのではないか。こうしたさまざまなグループ分け、地域分けを行った上で、それぞれ、さまざまな工夫をしながら働きかけをしていく等々、より具体的な働きかけを行っていかなければいけないのではないか。風評被害の払拭一つとりましても、そんなことを感じてきたところであります。

 そして、御指摘のように、廃炉作業というのは、まだ今まで誰も経験したことがない未知の分野への挑戦ということであります。こうした課題についても、さまざまな国際機関あるいは各国の知見をしっかり共有しながら立ち向かっていかなければいけない大きな課題でありますし、それにおける外務省の役割の大きさ、責任の大きさも改めて感じるところであります。

 こういったことを考えますときに、改めて、こうした復興にもしっかりと役割を担っていかなければいけないと強く感じているところでございます。

玄葉委員 奮闘を期待したいと思います。

 先ほど、外交の継続性というものを自分としてはしっかり確保する、大事にしたいという趣旨の話があったと思います。私は、外務大臣のときに、与野党で外交、安保の共通基盤をいかにつくるかということを意識していました。それは、野党時代からそういうところがございましたけれども、与党になって、自分が外相になって、このことは意識するべきであるというふうに考えていました。政権交代の効用の一つというのは、外交、安全保障政策についての共通の基盤というものがほぼ築かれてきたことだと思っているんですね。

 ですから、私は、殊さら、政権がかわって違いを強調する、レッテルを張って違いを強調するというようなことよりも、むしろ、外交、安全保障は政権がかわってもその根幹は変わらないのであるというふうに日本の政治を誘導していった方がよいと考えているんですけれども、外務大臣はいかがお考えですか。

岸田国務大臣 まず、おっしゃるように、我が国の国益を守り、そして平和と繁栄を確保していくに当たりまして、私も外交の継続性はまことに重要だと考えております。

 こうした基本的な継続性を守りながら、一方で、国際情勢は日々変化をしています。こうした変化に対して適切かつ柔軟に対応していく、こういった姿勢も大事にしなければいけない。このバランスを大事にしながらしっかりと国益を守っていく、こうした外交姿勢が重要ではないかと私も感じているところでございます。

玄葉委員 私は、政治あるいは政党政治にはオルタナティブが必要であるというふうに思っているんですね。ただ、先ほど申し上げたように、オルタナティブをつくるときに必要なのは、外交、安全保障政策の共通基盤。あとはやはり、外交、安全保障を政争の具にしない、これも大事だと思うんですね。

 歴史を見れば、例えば政友会、民政党時代の統帥権干犯問題などというのもあります。ですから、特に政党政治が政権交代可能な政治になっていくときに意識をしなきゃいけないのはそのことであるというふうに思っていますので、そのことを冒頭申し上げておきたいというふうに思います。

 その上で、幾つか各論を質問したいと思うんですけれども、いろいろありますが、TPPからいきましょうか。

 TPPは、若干私は厳しく指摘をしなければならない点があります。参加表明自体は私は評価をしています。問題は内容なんですね。これは、私も守秘義務がありますから、余りなことを申し上げるつもりはないんですけれども、先般も安倍総理に申し上げましたが、懸念している点は二つあって、一つは、日米首脳会談で日米の共同声明が出たんですけれども、私から申し上げれば、既に確認をされていることを紙にした、そういったある種のパフォーマンスを国内向けにしなければならない事情が総選挙公約との関係であったわけでありますけれども、その結果、何が起きたかというと、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処しなければならない、そして、その他の非関税措置に対処しなければならない、「なされるべき更なる作業が残されている。」ツー・ビー・ダンということで、ここに書き込まれたということがあります。

 それを受けて、今回の日米の合意でありますけれども、これも、私が非常に気になったのは、あのときに安倍総理に提案として申し上げておいたんですけれども、参加表明をするときは、しっかりとアメリカと握った上で表明をしないと、べた折れになっちゃうんじゃないか、足元を見られるんじゃないかということを言ったんですね。あのとき、岸田外務大臣もお聞きになっていたと思うんですね。

 日米は、何といっても同盟関係であります。総合的な、大局的な観点からこの参加については考えていかなければならないんですけれども、事TPPに関しては、つまり、アメリカの担当者は、安全保障を初めトータルな国益云々というよりは、完全に通商交渉モードに入っていますので、かなりこちらもしたたかにやらないと、段取りを間違えると国益上損失をこうむることになってしまうということではないかというふうに考えているんですけれども、これについていかがお考えですか。

岸田国務大臣 まず、御指摘の点、しっかり日米の中で固めた上で参加表明が行われるべきではなかったかということですが、この辺は、まず交渉の難しさなのかと感じております。まず、我が国が交渉参加になかなか踏み切れない中で、このTPP交渉自体は、既に開始から三年が経過しております。そして、ことしじゅうには交渉参加国の合意を目指している、こういった状況でありますので、残された時間はそう長くないと感じなければならないと思っています。

 その中にあって、安倍総理は、TPP交渉参加は国家百年の計であり、この機を逃してしまいますと世界のルールづくりから日本が取り残されてしまうのではないか、ラストチャンスだという思いで交渉参加を決断したということであります。

 そして、その後、日米間で協議が行われ、先日、一つの合意が発表されたわけですが、これは、こうしてTPP交渉が進み、交渉が進展して三年たつ中にあって、TPPの既参加国であり、なおかつ、今、TPP交渉参加国の中でも重要なメンバーである米国からの支持を取りつけなければならない。そして、米国においては、自動車業界等において、日本の参加を認めることについて大変慎重な意見がある。こういった中での協議ということになりました。

 こういった中で協議を行って、御案内のような合意内容になったわけですが、こういった中にあっても、自動車においては最終的に自動車関税が撤廃されることが確認された等、日本にとっても前進があったというふうに捉えています。日本のセンシティビティーである農業についても、今後の交渉の中でしっかりと考えていかなければいけない、こうしたことだと思っています。

 そして、これから仮に、日本の交渉参加が認められて交渉に入るということになりますと、まさに我が国は国益をかけてこの交渉に臨まなければなりません。そして、今度は、TPPの交渉については多国間交渉であります。二国間ではなくして多国間交渉、マルチの交渉であるという点をしっかりと念頭に置いて、二十一分野、さまざまな分野があるとされています。それぞれの分野において、その分野の課題においてはどの国と連携してどういった国益を守っていくのか、それぞれの分野において、実に緻密な、そして厳しい交渉が予想されますし、覚悟しなければならないと思っています。

 ぜひ、日本の外交交渉力の全てをかけて、国益を守るために、このTPP交渉に臨んでいかなければいけないと強く感じているところでございます。

玄葉委員 要は、参加表明自体は、私は、先ほど申し上げましたけれども、政治の判断として正しい。ただ、交渉の足を引っ張った二つの政治というのがあって、先ほど申し上げたような、国内向けに紙にしなければならなかった、そしてもう一つは、表明の時期について、私は、交渉担当者のミスではなくて、やはりこれは政治のミスだなと、率直に言うと思っているんです。

 ですから、これは甘利さんが責任者になってこれから進めていくということだとは思いますけれども、ただ、外務省関係者が多くこの交渉担当にこれから臨むということになると思いますので、ぜひ岸田外務大臣に、交渉が誤りのないように進むように、しっかりしてもらいたいというふうに思っているんですね。

 一言で言えば、切り札を早く切り過ぎているというふうに思っているんですよ。

 ここに日米協議の合意の概要があります。あるいは、USTRなどが発表した合意と私たちの協議の概要がそれぞれ違うのではないかなどという報道もありました。そのことよりも、今回、この協議の概要の中身が、もう既に、例えば自動車分野の貿易に関して、関税一つとっても、「最も長い段階的な引下げ期間によって撤廃され、かつ、最大限に後ろ倒しされ」て、「この扱いは米韓FTAにおける米国の自動車関税の取り扱いを実質的に上回るものとなる」と。

 これは、本来は、事前協議で確認されるというよりは、最終的にこのカードを切るなら、米は除外するとか、畜産は例外にするとか、日本が確保しなければならないこういった分野でのぎりぎりの交渉のときに使うべきカードの一つだと、私なんかはずっと思っていました。ですから、一定程度は仕方がないと思うんだけれども、早く切り過ぎているなというのが私は心配なんですね。

 ちなみに、先ほど多国間交渉とおっしゃいましたけれども、自動車分野は、TPP交渉と並行して、透明性、流通、基準、環境対応車、新技術搭載車、財政上のインセンティブ等、また、自動車分野以外でも、日米間でTPP交渉と並行して非関税措置に取り組む、対象分野は、保険、透明性、貿易円滑化、投資、規格・基準、衛生植物検疫措置。

 きょうは政府委員がいませんので、細かい技術的なことを聞くつもりはありませんけれども、したがって、この並行協議というのは、TPP交渉というのが一つあって、もう一つ、事実上、日米のFTA交渉が同時に行われる、大体こんなふうにイメージしてよろしいんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、最初の御指摘につきましては、やはり、交渉が三年間進み、残された時間が限られている中での交渉の難しさということだと思っております。

 そして、後半の御指摘につきましては、今回の日米合意においては、自動車分野、そして非関税分野、この二つの分野について並行協議を行うということになっています。そして、この並行協議については、まずスタートは、我が国がTPPに交渉参加が決まり、交渉参加がスタートする時点ということになります。

 そして、この日米合意の中で明記されておりますように、自動車分野については、最終的にはTPPの協定の中に盛り込まれるということになっています。非関税分野についても、こうして並行的に審議し、最終的に関連法令等で実現する、TPP合意までに実現していく、こういったことになっております。

 よって、自動車分野、そして非関税分野の並行協議、ともにTPP交渉のスケジュールと合わせて行われていく、こうした取り決めになっていると理解しております。

玄葉委員 それはそうなんだと思いますけれども、そうすると、例えば紛争解決手続なんかも、これはちょっと、通告していないから答えにくいですか、やや技術的なことかもしれませんけれども。そう考えると、二国間で並行協議で得られた結果は、それも含めて全て、例えばTPP交渉における紛争解決手続の対象になるということですかね。ちょっと細かいことで申しわけないけれども。

岸田国務大臣 今回の合意においては、自動車についてはTPP交渉の中に盛り込むということになっております。非関税分野については、並行して日米間で協議をしていく、こういった取り扱いになっています。

玄葉委員 きょうは結構です。

 いずれにしても、実質、日米FTAを同時並行で交渉するようなものだというのが率直なところではないかと思うんですね。ですから、かなり手綱を締めてやっていかないといけないということだと思います。

 さて、こればかりやっているとまた時間がなくなってしまいますので、せっかく北米局長もいらっしゃっているから、アメリカの話も若干申し上げたいと思います。

 言うまでもなく、日本外交の基軸は日米同盟でございます。ただ、最近、パワーバランスの変化がありますので、当然、日米同盟を強化していくという大きな方向性は私は正しいというふうに思いますし、私もその点、努力をしてきたつもりであります。ただ、アメリカ自身の財政赤字の削減等々もあって、私は、この財政赤字の削減が国防費に与える影響、そして我が国の安全保障に与える影響というのも、これはしっかりと見ておかないといけないぞというふうに思っているわけであります。

 二〇一一年の予算管理法によりますと、一三年から一七年の五年間で二千五百九十億ドル削減をするということでありますので、特に東アジアの戦略環境の中でパワーバランスの変化がある中で、さらにアメリカは、リバランスでアジア太平洋重視ということを言ってはいますけれども、しかし、これだけ財政赤字を削減する中で、どうやってバランスを保っていきますか、安定した秩序というものを維持していきますか、これが大事な課題なわけです。

 具体的に、日米同盟の強化ということをどのように岸田外務大臣としては捉えて進めていくおつもりか、お聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、アメリカの議会におきましては、財政をめぐってさまざまな議論が行われています。そして、防衛予算の削減の議論も行われている中にあって、まず、現状、基本的には、アメリカのアジア太平洋地域重視の姿勢が維持されているということは、我が国は高く評価しているところであります。

 しかし、今後、予算あるいは議会での議論の行方については、我々は関心を持って注視していかなければいけないと思っていますし、こうした議論の行方を注視する一方で、我が国自身がしっかりとした防衛努力に努めていく、我々自身の努力も問われていくことになるのではないか、このように思っております。

 我が国自身の努力、防衛費の増額、あるいは防衛大綱の見直し、こうした取り組み、さらには、日米安保体制の抑止力を向上させるために、さまざまな議論があります。拡大抑止、あるいは弾道ミサイル防衛、宇宙、サイバー等、こうした安保・防衛協力についてもしっかりと進めていく。さらには、日米間においては、ガイドラインの見直しといった課題もあります。こうした課題についてもしっかりと取り組んでいく。こういったことを考えていかなければいけないのではないかと思います。

 ぜひ、我が国自身の努力もしっかりと行いながら、アメリカの議会での議論も注視していきたいと考えております。

玄葉委員 確かに、我が国自身の防衛力整備の努力というのは大変大事だというふうに思います。それはそのとおりだと思います。

 そして、拡大抑止、サイバー、宇宙のほかに、計画検討ですね、これは、内容についてはもちろん守秘義務がありますから申し上げませんけれども、非常に大事だと思っているので、決意だけでもお聞かせいただけますか。

岸田国務大臣 御指摘、大変重要だと認識をしております。御指摘の点も踏まえて、しっかりとした努力を続けていきたいと考えております。

玄葉委員 再編のロードマップ、これも日米同盟の強化の一つだというふうに思うんです。

 昨年四月に2プラス2がございまして、あのときに、日米双方が難しい状況をお互いに抱えている中で、普天間飛行場の進展と嘉手納以南の土地の返還及び海兵隊のグアム移転をいわば切り離すということで合意をして、可能なところから進めていくというふうにしたわけであります。

 先般、嘉手納以南の土地の返還計画について発表があったわけでありますけれども、先ほど申し上げた趣旨、先ほどは全ての趣旨を申し上げたわけではないんですが、趣旨の一つを申し上げたんですが、そういったいわゆるリンケージを切り離すという、つまり、普天間の進展、普天間の固定化というのは絶対にあってはならないんだけれども、しかし、可能なところから、嘉手納以南の土地の返還にしても、あるいはグアム移転にしても、きょうの報道では、アメリカの上院軍事委員会ではグアム移転の凍結が提言されているなどという報道もございましたけれども、基本的に切り離して進めていくものなのだ、そういうふうに考えてよろしいですか。

岸田国務大臣 まず結論から言いますと、御指摘のように、方針は変わっておりません。

 沖縄の施設・区域の統合計画については、二〇〇五年十月の2プラス2の共同発表及び二〇〇六年五月の再編のロードマップにおいて作成され、そして七年越しの課題ということで議論が続けられてきました。その間、玄葉前大臣におかれましても大変な御努力をされたこと、改めて敬意を表し申し上げる次第でございます。

 こうしたさまざまな議論の積み重ねの結果、今般、一つの取りまとめが行われたわけでありますが、基本的な方針は変わらないということでございます。

玄葉委員 これは、普天間を含めて私どもは共同責任がございます。したがって、野党の立場でもしっかり協力をしていかなきゃいけないというふうに思っているんですけれども、着実な実施をお願いしたいと思います。

 ただ、嘉手納以南の土地の返還、若干、印象として、かなり先だなという印象を持った人たちが多いのではないかというふうに思うんですね。何でそんなに先になるのか。つまり、十年後とかですよね。例えば沖縄が非常に関心を持っている牧港補給地区の倉庫地区の大半、キャンプ・キンザー、こういったところも十年後ぐらいですよね、たしか。「二〇二五年度又はその後」と、オア・レイターまでついているんですけれども、やはり、なぜこのくらいかかるのかということについてわかりやすく説明していく必要があるんだというふうに思うんですね。

 これは政府委員でも結構なんですけれども、少し説明いただけますか。

伊原政府参考人 今先生御指摘のとおり、今回の統合計画につきましては、できるだけ、どういうプロセスでそれぞれの土地が返還されるのか、単にその目標の年次を示すだけではなくて、そこに至る手順について明らかにするとともに、それぞれの手順にかかる期間、これを終えるのにどれだけの日数がかかるかということについても、米側とすり合わせをした上で、それを全て統合計画の中に書き込んでおります。

 そういう意味では、ここに示された何年度というのは、こういう手順をしっかり踏んでいけば確実にその年度までにはできるということで書いておりますが、同時に、それぞれの手順において今予見されないような問題もあり得る、あるいはさまざまなおくれる要因もやはりあるので、そういうことも含めて全て、できるだけ客観的に計画の中に盛り込んで、これをもとに、三年ごとにレビューをしながら、この計画達成のために日米で協力をしていこう、こういうことでございます。

玄葉委員 再編のロードマップというか、昨年の2プラス2の合意の中に、日米の相互運用のレベルを上げる、そういう目的で、グアム、テニアンの共同訓練場を整備しようではないかということで合意をしたんですけれども、その後どうなっていますでしょうか。

徳地政府参考人 御答弁申し上げます。

 グアムと北マリアナ諸島における自衛隊と米軍が共同使用する施設についてでございますが、まず、二〇〇五年十月の2プラス2の共同発表の中で、役割、任務、能力のために、二国間の安全保障・防衛協力の態勢を強化するための不可欠な措置の一環として、まさに先生御指摘の共同訓練、演習の機会の拡大というものがございました。

 これに基づきまして、今御指摘の点につきましては、昨年四月の2プラス2の共同発表を踏まえまして、地域における動的防衛協力を促進するという観点から、これまで、日本側と米側双方の訓練上の所要、あるいは日米間の具体的な費用分担とかいうような問題について、細かな実務的な協議を行っておるところでございます。

 今後、具体的な協力の分野を特定するためにしばらくお時間をいただきたいと考えておりますけれども、先ほどのような、もともと、二〇〇五年の2プラス2の共同発表に基づきまして、役割、任務、能力の強化という観点からやっておるものでもございますので、しっかりと進めてまいりたいと考えております。

玄葉委員 北朝鮮の問題でありますけれども、何かもう時間がなくなってきたので、幾つか指摘しておきたいというふうに思うんです。

 ありとあらゆる事態に対応しなければならないと思って、今、警戒を強めているというふうに思いますけれども、金正恩氏の意図というものをどう見ているかというのを、岸田外務大臣、答えられる範囲でお答えいただけますか。

岸田国務大臣 北朝鮮の意図について私が明確に申し上げる立場にはないわけでありますが、北朝鮮のたび重なる挑発的な言動については、まことに遺憾なことでありますし、まず、国際社会としては、こうした言動に振り回されることなく、そして、こうした言動を繰り返しても何のみずからの利益にならないことをしっかりとわからせる、こうした明確なメッセージを伝えることが重要だと考えております。

 今後とも、国際連携を強めながら、まずは、北朝鮮に、非核化を含めて真摯な態度を示すよう、明確な態度を示すようしっかり働きかけていく、そして、国際社会が連携してさきの国連安保理決議等をしっかり実施していく、こういった態度をとりながら北朝鮮の態度の変化を促していく、こうした方針で北朝鮮の状況を見守っていくということになると考えております。

玄葉委員 日米韓の連携が重要なのは言うまでもないんですが、この圧力と対話の力点の置き方で温度差を感じるんですね。今、杉山局長がアメリカに行っているという報道がありますけれども、ここは、足並みをそろえないと北朝鮮の思うつぼだというふうに思うので、ぜひこれは、外務大臣、ケリー長官ともよく話をしていると思うんですが、本当に呼吸を合わせてほしいです。

 それと、ミサイル、核実験も心配ですけれども、延坪島の砲撃事件の拡大版みたいなものもあり得るんじゃないかというふうに思うんですね。そうなってくると、従来からよく委員会などでも指摘をされていたんですけれども、邦人保護の問題が出てくる。もちろん北朝鮮の拉致被害者の方々の問題もあるんですけれども、韓国内の邦人保護に万全を期すのにどれだけのことをやっているかということだと思うんですね。

 これはなかなか言いにくいところもあるかもしれませんけれども、いわゆるNEO、非戦闘員の退避計画であるとか、他国との協調、韓国ともこれはやはり協議をしていかないといけないという課題だと思いますから、ぜひこれは、外務大臣、意識をしてもらいたいと思います。

 それと、中国がこの問題に果たす役割というのをどう考えるかということですよね。多くの人が指摘をします。先ほど、安保理決議を着実に実行に移すということなんですけれども、この安保理決議というのは、平松さんいますけれども、結局、報告だけで、レビューできないんですよね。日本は真面目に全て実施するんですよね。だけれども、どうも、措置済みである、実施済みである、そういうことをしていない国というのが出てきている。

 だから、簡単に言えば、中国がどれだけ本気でこの北の問題を考えるかということにかなりの程度この問題は行き着くという側面は、私はあると思っているんですね。何だかんだ言って、中朝貿易はまだまだ盛んです。もともと中朝は、いわば軍事同盟的な、自動介入ではないですけれども、条約を持っています。

 ですから、この中国の問題、特に安保理決議の実効性の問題等々もよく考え、最終的に、北朝鮮が、戦略的に核を放棄した方が得であるというふうにどう追い込むかということを、各国が連携してしっかりとやっていかなければならないだろうというふうに思います。指摘だけにとどめます。

 最後に、きょうはハーグ条約の委員会でありますので、一問だけ。これは私たちが提出をしていたものなので、質問するというのはいかがかと思うんですが、全く質問しないというのも問題であるということのようでありますので。

 このハーグ条約で、G8で日本のみがまだ未締結だったわけでありますけれども、これは、子供の利益が最重要であるという観点で構成されるのだということであります。

 そして、子供がもともと居住していた国で親権を行使するというのが基本であるということだと思うんですが、その中に、子の返還を拒否することができる三つの事由というのがあって、一つ目は、子が一年以上新しい環境になじんでいる、二つ目は、子が返還されることを拒んでいる、三つ目が、返還することにより、子供に対する暴力その他の、心身に害悪を及ぼし、または子を耐えがたい状況に置くこととなる重大な危険がある場合等と、こうあるわけであります。

 例えば、日本の女性が海外でDVを受けた、被害を受けたというケースが想定されるんですけれども、外国でDVがあったということを証明するというのはかなり難しいと思うんですね。そうなると、外務省の在外公館が相当支援をしていかないといけないのではないかというふうに思いますけれども、その点についていかがでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のように、海外におけるDVにつきましては、裁判で証明することに困難を伴う場合も想定されます。この点において、在外公館の役割は大変重要だと認識をしております。

 在外公館では、DVを含む家族問題に関して在留邦人の相談を受けた際、相談記録というものをつくるわけですが、こうした相談記録を本人に手渡すとか、あるいは裁判所に提出する、こうしたことも可能であります。

 こうしたさまざまな支援を在外公館としても果たしていかなければならないというふうに思いますし、また、裁判所が、当該国におけるDVの実態調査が必要と判断した場合には、我が国の中央当局に対して調査嘱託を行うということも可能であります。これを受けて、中央当局が、当該国の中央当局に対して情報の提供を求める、こうしたことも想定されます。

 こうしたさまざまな仕組みを活用しまして、海外におけるDVを裁判において証明する困難を乗り越えていかなければいけないと考えています。

玄葉委員 終わります。

河井委員長 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 ハーグ条約についてきょうは質問させていただきます。

 ハーグ条約といっても、国民はどういうものかよくわからないと思いますので、きょうは、私の質問を通じて、国民の皆さんが、ああ、ハーグ条約というのはそういうものなのかという理解が深まるようになればと思います。いつも私、大臣に端的な答弁をお願いしているんですけれども、きょうは、国民の皆さんがよくわかるように、じっくり答えていただければと思います。

 まず、このハーグ条約を結ぶことによってどういうふうに日本の人たちの利益が図られるのか。この辺、ざっくりいかがなものでしょう。よろしくお願いします。

岸田国務大臣 まず、国境を越えた人の往来が飛躍的にふえる中、日本人の国際結婚、またその破綻も増加しております。こうした動きに伴って、諸外国との間で、子の連れ去り等をめぐる問題も顕在化しております。

 そして、こうした状況にあって、このハーグ条約、子の利益が最重要であるとの認識に基づいて、国境を越えた子の連れ去り等の問題を解決するために一九八〇年に作成されたものですが、今や国際的ルールとして確立している中、G8諸国の中で我が国だけが締結していない、こういった状況にあります。

 国境を越えた不法な子の連れ去りによる一番の被害者は子供自身です。子の利益を保護するという見地からも、ハーグ条約を早期に締結することが極めて重要だと考えております。

 以上です。

山口(壯)委員 不法に連れ去った子供をどういうふうにというのが一つの意義だという話でした。

 実際に考えてみると、例えば日本の女性がアメリカの男性と結婚したときに、お父さんとお母さんがなかなかうまくいかなくなって、日本の女性と一緒に子供が帰ってくる。お母さんと一緒に暮らしていたいなという子供もいっぱいいると思うんですけれども、そこをアメリカのお父さんのところに何か無理やり連れ去ってしまうというのはいかがなものかなと。日本の習慣とか文化とか価値観等になじまないという気もするんですけれども、その辺はいかがでしょうか。

鈴木副大臣 ハーグ条約を締結いたしますと必ず子を返還しなければならない、そういうことではないわけでございます。そもそも、ハーグ条約上、子の返還の対象となるのは、他方の親の監護の権利を侵害する不法な連れ去りのみであります。したがいまして、監護権の侵害を伴わない連れ去りは、本条約の対象とはなりません。

 さらに、本条約は、不法な連れ去りであったとしても、子の利益の観点から、返還する義務を負わない、いわば例外が認められております。例外としては、返還によって子が心身に害悪を受け、または他の耐えがたい状態に置かれることとなる重大な危険がある場合、また、子自身が返還を拒否し、かつ、その意見を考慮に入れることが適当である年齢及び成熟度に達している場合、それから、連れ去りから一年以上が経過した後に返還手続が開始され、かつ、子が新たな環境に適応している場合などは、子を返還する義務を負わないこととなっております。

 条約実施法案におきましても、このような条約の規定が我が国における裁判手続において適切に考慮されるよう、必要な法的手当ても行っているところであります。

山口(壯)委員 日本の女性が自分の子供を連れて実家に帰る、日本に帰るというようなときに、それを誘拐だというふうに言われるというのが日本の習慣とか価値観には若干なじまないというのは私もよくわかるんです。

 現実に、例えば、二つ、三つの小さな子が、お母ちゃんと一緒にいたいんだ、お父ちゃんのところに帰りたくないというときに、その辺は、先ほどの鈴木副大臣の答弁からいけばどういうふうになるんでしょうか。

平松政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの御指摘の件でございますけれども、例えば、子供自身が返還を拒否するという事例ももちろんございます。そういった場合は、その意見、当該の子供の意見を考慮に入れることが適当である年齢あるいは成熟度に達しているということであれば、それを考慮いたしまして、場合によっては返還拒否を認めるという事例もございます。

山口(壯)委員 例えば、二歳とか三歳の小さな子が、お母ちゃんとどうしても一緒にいたいんだ、日本のおばあちゃんと一緒に暮らしたいんだというふうに言っている場合に、子の意見というのが果たしてどこまで裁判で適用されるのか、私、よくわかりませんが、その辺はいかがでしょうか。

平松政府参考人 まさに今申し上げたとおり、その意見を考慮に入れることが適当であるか、そういう年齢に達しているか、あるいは成熟度に達しているかということを判断いたしますので、今、山口先生おっしゃったようなケースで、二歳、三歳であっても、そういった子供の意見を入れる必要があると裁判所等が判断すれば、当然それは返還拒否事由になる、そういうことでございます。

山口(壯)委員 我が国がハーグ条約を締結すれば、我が国から連れ去られた子を取り戻すことができる。要するに、今度は例えば日本の男性がほかの国の女性を奥さんとしてもらっていた場合に、うまくいかなくて、その奥さんがもとの国に子供を連れて帰っていくというときに、では、その日本のお父さんが、どうしても俺の息子を返してほしいなというときに、このハーグ条約は今度は逆にメリットになるんでしょうけれども、これとあわせて、どういうメリットがこのハーグ条約によって生まれるのか、その辺をお聞かせください。

岸田国務大臣 御指摘のように、ハーグ条約を締結することによりまして、外国から我が国への子の連れ去り問題だけではなくして、我が国から子を外国に連れ去られた事案についても問題の解決が促進されることとなり、その意義は大変大きいと思っております。

 具体的には、以下三つほどの意義が考えられます。

 一つは、子の不法な連れ去り等が発生した際には、国際的なルールに従って問題の解決が図られるようになるほか、我が国がハーグ条約を未締結であることを前提として在留邦人が今実際に受けている制約等を回避することができる、こうした意義が一つ。また二つ目として、さらなる子の連れ去り事案の未然防止の効果が期待できる。また三つ目として、国境を越えて所在する親子の面会交流の機会の確保が期待できる。こうした意義が考えられます。

 本条約を締結しない状態が継続することは、我が国国民にとって大きな不利益であるとともに、国際社会における我が国の姿勢も問われかねないということであります。

 国境を越えた不法な子の連れ去りによる一番の被害者は子自身であり、子の利益を保護するという見地からも、国際的なルールにのっとって問題に対応できるよう、ハーグ条約の早期締結を実現することは、我が国にとって極めて重要だと考えております。

山口(壯)委員 条約を日本が結んだとして、例えばアジアの女性が子供と一緒に実家に帰ったということを想定した場合に、韓国とか中国とかフィリピンとか、そういうケースが考えられるわけですけれども、そういう国々はハーグ条約は既に結んでいるんでしたか。

平松政府参考人 韓国につきましては、たしかことしの三月に既に締結をしております。中国は、一部、香港等は対象になっておりますけれども、フィリピンは今のところ結んでおりません。フィリピンの中でもいろいろな議論があるということを承知しております。

山口(壯)委員 こういうものはお互いの状況が整って初めて効力を発生させるものですから、外務省として、例えば、今、平松局長が答弁された中国あるいはフィリピン等について、どういうふうにその締結を慫慂されるのか、お聞かせください。

平松政府参考人 いろいろな形で、幼児問題等についてはいろいろな協議がございます。そのほかにもいろいろな二国間の協議を各国とやっておりますので、こういった問題が日本との関係で発生している国については、今後とも、いろいろな協議を通じて、この条約の有効性、それに入ることのメリットについてよく相談をしながら慫慂していきたいというふうに思っています。

山口(壯)委員 アメリカが、去年一年、私も外務省に戻っていたときに、大分言ってきましたね、このハーグ条約。当時、日米関係についての宿題は、我々は四つだというふうに認識してやっていました。普天間、TPP、牛肉、そしてこのハーグ条約。牛肉については、二十カ月を三十カ月にということで、ほぼ解決しているんでしょう。このハーグ条約も、去年済ませるつもりが今になってしまっているわけですけれども、そういう中で、アメリカとしては、日本とアメリカとの関係の中で、宿題とまで言っていた、課題とはっきり言っていた。

 今、平松局長が言われたようなことでいけば、例えば、日本と中国との関係、あるいは日本とフィリピンとの関係、あるいはほかにもいっぱいあるんでしょう、そういうまだ締結していない国は。そういう中で、ハーグ条約というものをこれからそういうものとして言っていくんだというのが今の答弁でしょうか。

平松政府参考人 それぞれの国の置かれた状況はあろうかと思いますけれども、この条約というのはまさに国際的なルールを定めたものでございますので、多くの国がこれに賛同し、締結するということが極めて重要だと思いますので、さまざまな機会を通じてそういった必要性については訴えていきたいというふうに思っております。

山口(壯)委員 今、メリットというところから話をしているわけですけれども、日本の国民にどういうメリットがあるかということの広報をしっかりまたやっていかないと、そもそもハーグ条約自身もよくわからないし、そもそもどういうメリットがあるのかもわからないし、あるいは、不用意に子供を連れて帰ると誘拐だというふうに呼ばれかねないしとか、まだよくわからないいろいろな法的側面あるいは実態があると思うんです。

 外務省として、このハーグ条約について、どういうふうに国民一般に知ってもらうような努力をされるのか、お聞かせください。

鈴木副大臣 山口先生御指摘のとおりに、子の不法な連れ去り事案等を抱えている方々はもちろん、国際結婚をした夫婦、または国際結婚を考えている方を含め、国民にハーグ条約について広く知っていただくということが大変重要なことであると思っております。

 そのような認識のもとに、外務省といたしましても、これまで、外務省主催のシンポジウムの開催、在外公館におけるパンフレットの配布などの取り組みを行ってきたところでございます。

 今後も、外務省及び在外公館のホームページを通じた広報、説明会の開催等を初め、関係省庁、地方公共団体、各種団体等と協力しつつ、国内外における広報を行ってまいりたいと思っています。

山口(壯)委員 外務省がシンポジウムをやったりパンフレットをやったりというのが今の鈴木副大臣の答弁だと思います。正直、それは外務省としてしんどいことです。申しわけない。

 私も最初、これは外務省でとるのかと言ったら、とるなと私は言ったんです。法務省の仕事だろう、外務省でそこまで国内のことをやるのは無理だぞと。国外との連絡はしようがない。在外公館もあるし、それをお手伝いするというのは、もちろんそのとおりだ、しかし、外務省で国内の調整まで、実際の家庭の一件一件についてやっていくというのは、申しわけないけれども無理だぞということを、正直、私は当時申し上げて、法務省で持ってやってもらえということを言っていました。

 今、国会の答弁では、そうやって、きちっと対応していきますという答弁にならざるを得ないから、それはもうおっしゃるとおりです。だけれども、実態を考えた場合に、一件一件の家庭の事情に外務省がそこまで入り込むということが現実には求められていってしまうわけだけれども、私は、法務省との連携というのは極めて重要だし、それをしないと外務省自身が大変だと思います。

 その辺の法務省との連携についてどういうふうにお考えですか。

平松政府参考人 議員御指摘のとおりだと思います。外務省でできることを精いっぱいやりますけれども、限りがあるということだと思います。

 広報の面においても、外務省が持っているツールは使いますけれども、例えば、地方公共団体だとかほかのいろいろな機関、あるいは政府の団体等を通じまして、できる限りの広報をしていくということでございます。

 法務省とは、この条約を締結するに当たり、あるいは国内法をつくるに当たって、緊密に連携をしています。その中で、特に中央当局をつくる際には、法務省からも専門知識のある方に来ていただいて、できるだけそういった知識を活用しながら、実際上、運用していくということをやりたいと思っています。

 そのほかにも、正直、外務省で全部できるわけではございませんので、そういったいろいろな知見をかりながら、できるだけきめ細かい対応ができるように頑張っていきたいと思っております。

山口(壯)委員 例えば法務省から外務省の本省に出向して人が来るということもあるんでしょうか。

平松政府参考人 これから中央当局というのをつくってまいります。外務省の中に中央当局ができますけれども、その中には、今、三名程度の法務省の職員に来ていただきまして、それぞれいろいろな知見のある方でございます。そういった方に来ていただいて、その知見を生かしながら、きめ細かい日々の対応をしていただくということになります。

山口(壯)委員 今から外務省、それから法務省でやってもらったらいいとは思いますけれども、三名と言わずに、こういうのを外務省が、国内のことを一件一件個別の事案についてやっていくというのは正直無理があると思いますから、その辺は全部法務省にやってもらうつもりで、三名と言わずにたくさん来てもらってやってもらったらいいと思います。

 もしも答弁があればお願いします。

平松政府参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 今の想定では、中央当局は十名ぐらいの体制をとりあえず考えております。そのうちの三名は今申し上げたとおり法務省からでございますけれども、加えて、例えばソーシャルワーカーとかのドメスティック・バイオレンスに知見のある方に来てもらうとか、そういうことも考えております。これは立ち上がりでございますので、その結果を踏まえながら、徐々に拡大することもあろうかと思います。

山口(壯)委員 ハーグ条約について、そういう格好で、きょうは締結の審議、その採決はきょうできるか、これから理事会で議論しますけれども、これから、体制については、外務省で全部面倒を見るのじゃなくて、本来、法務省に行くべきものをうちでもちょっとやっているんだぐらいの言い方で、ぜひ法務省に人員の方は頼むようにしていただいた方がいいと思います。

 先ほど北朝鮮の話も出ていました。その意味では、北朝鮮については、私、一つパールハーバーのことを思い出すんです。

 これは大臣、別に詳しい答弁は要りませんけれども、パールハーバーのときにアメリカの議会はこう言っていたんですね。イフ・ウイ・スタンド・ファーム、要するに、我々が確固とした立場をとれば、ジャパン・ウイル・バック・ダウン、日本は屈服するだろうと。そのためにアメリカは、油をとめ、日本のアメリカにおける資産を凍結し、では、日本はバックダウンしたかどうか。現実には、「ニイタカヤマノボレ」、パールハーバーを攻撃したわけですね。

 そういう意味では、今、日米韓が連携をとって、イフ・ウイ・スタンド・ファーム・ノースコリア・ウイル・バック・ダウンという議論をしている面もあるわけですね。だから、そういう意味で、私は、最終的にネズミが猫をかまないように、やはりそこに一つの出口を見せておくということは、外交上とても大事なことだと思います。

 韓国、アメリカは、既にその出口を少しずつちらつかせながらやっていますね。北朝鮮としても、もちろん、すぐに応じるのではなくて、ハードルが高いところから応じてきているんでしょう。だから、日本も、そういう意味では、必ずしも米韓が表向きに拳を振り上げている面だけではなくて、ミサイル、核と同時に拉致もあるわけですね。だから、そういうところでどういうふうに出口を見せていくのか、これはとても大事なんです。

 私も深くは言いませんけれども、例えば、拉致についても言い方はいろいろあると思いますね。おやじさんがやっていたので、俺がやっていたんじゃないんだと、今の若い人がですね。だから、わからないから再調査に合意するかと。二〇〇八年八月に、再調査が、おやじさん、金正日と合意されていた。その後、一カ月後に、当時の福田総理が麻生総理にかわられたということで、向こうはそれを口実に、再調査はなしにしようかという経緯がありました。だから、おやじさんも合意していたんだから再調査に合意しようじゃないかと。

 いろいろな出口をちらつかせながら、対話の窓口を、ミサイル、核だけではなくて拉致についても、うまく向こうが乗りやすいようにというのも一つの知恵だと思いますから、そういう意味では、我々が確固たる立場をとれば、向こうは必ずバックダウンするかもしれないけれども、でも、しなかった歴史を我々自身が持っているわけですから、そこはうまく外交の妙味を発揮していただきたいと思うんです。

 岸田大臣、感想があればお願いいたします。

岸田国務大臣 まず、御指摘のように、我々は、歴史の教訓にはしっかりと学ばなければならないと思います。そしてその上で、今、現実どういった状況が起こっているのか、この情報収集、情報分析に努力していかなければならないと思います。

 そして、その上でどう対応するのか。我が国の基本的な姿勢としましては、日朝平壌宣言にのっとり、核、ミサイル、そして拉致問題、こうした諸問題を包括的に解決するべく、対話と圧力の方針で臨んでいくということでありますが、他の国々との連携の中で具体的にどう対応していくかは、しっかりと連携を深めながら、しっかりと検討していかなければいけない課題だと思っています。

山口(壯)委員 その小泉さんの平壌宣言、我々もそれは引き継いでいるんだということは私もメッセージを発して、あの中には、国交正常化交渉、含む経済協力とあるんですね。だから、その辺をうまく使ってやってください。もうこれ以上言うとよくないから、そこまでにしておきますけれども。

 話をかえて、TPPです。

 TPPについて、私はきょう、一問だけ、医療について事前に通告させていただいています。医療の国民皆保険、特に我々は守りたいわけですから、だから、それについてどういうふうに今取り組もうとしているのか、その辺をお聞かせください。

石井政府参考人 お答えをいたします。

 医療につきましては、まだテキスト等を入手しておりませんので詳細はわかりませんが、外務省を中心とした各国への情報収集の段階では、我が国の中で大変危惧をされている、公的医療保険そのものであるとか、混合診療というものの全面解禁というのは、議論の対象になっていない。さらに、昨年の三月一日に東京でアジア・ビジネスサミットが開催された際は、私も出席をさせていただきましたが、カトラー通商代表補の方から、改めて、TPPでは、日本や他の国に自国の医療保険制度の民営化を強いることはしない、混合診療を含め、民間の医療サービス提供を認めることを要求するものではないといった発言がされているところでございます。

 このような状況の中で、政府につきましては、先般の日米合意等もあり、政府一丸となって今後の交渉体制をつくっていくということで、四月五日に、閣議決定によりまして、TPPに関する主要閣僚会議のもとに甘利経済再生担当大臣を本部長とするTPP政府対策本部を設置して、これらに取り組んでいくこととしておるところでございます。

山口(壯)委員 今、石井さんが言っていただいたカトラーの去年の三月一日、二日の発言、これは非常に大事な発言だと思っているんです。結論的には、国民皆保険についてはこれで解決しているんじゃないかというふうな感覚を私はあのときに持ったんです。

 経緯的に、私はこのとき、非常に強い物の言い方でウェンディ・カトラーと大分やり合いました。それは、カトラーさん、当時、野田総理がTPP交渉の参加を考えているんだ、それはどうしてかわかるかと。それは、オバマさんが、輸出をふやして雇用をふやしたいと考えているんだろうと。そうしたら、輸出をふやしたときに、誰がその輸出を吸収できるんだと。ペルーか、違うだろう。チリか、違うだろう。ニュージーランドは無理だぞ。オーストラリアだって無理だぞ。ベトナム、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、全部無理だぞと。今、カナダとメキシコが加わったけれども、それでも無理だぞ、日本しか吸収できないぞと。そうしたら、日本は、アメリカの貿易がふえた場合に、日本の貿易収支はむしろネガティブなインパクトになるんだろうと。だったら、医療や保険で無理を言うなよと。もしもリーズナブルなことを言わないんだったら、野田さんには交渉参加の署名はさせないぞと、私は相当強く何度も何度も言いました。

 これは、間違いなくウェンディ・カトラーはワシントンで協議したと思いますね。その数カ月後に、この三月一日、二日に東京に政府の代表としてアメリカからやってきたときに、今、石井さんが紹介していただいたコメント、要するに、TPPは、日本や他の国の国民医療保険制度を民間ベースの医療保険制度に変更を求めるものではないと。要するにこれは、国民皆保険はいじりませんということをはっきり言っているんだと思います。

 それから、特に医師会でも心配している混合診療についても、今おっしゃっていただいた、混合診療を含め、民間の健康サービス提供者に関して、日本の制度変更を求めるものではないと明言しているんですね。

 だから、私は、医療については、もちろん、リコンファームする意味で、再確認する意味で体制を整えていただいているというのは、それはそれでもちろん否定しませんけれども、でも、アメリカとの関係、特にその中では、もうこの件は解決済みだろうというところをしっかり覚えておいてください。でないと、せっかく積み上げたものが、何かまるでゼロみたいに、向こうにまたそれをレバレッジで使われるのは意味がないですから。

 だから、その辺は、今、体制を整えているという答えもありましたけれども、でも、アメリカとやるときには特に、これはカトラーの発言でもってもう解決済みだな、これについてはおたくのこの発言を非常に多としているから、これでもって我々も次の話をしましょうというふうに、くれぐれもお願いしますね。

石井政府参考人 前副大臣のときに大変御尽力をいただきまして、ありがとうございます。

 おかげさまで、国民がある意味一番不安に思っている点について米国が明確にしていただいた点、これを決して蒸し返されないように十分に注意をして、体制を組みながらやってまいりたいと思いますし、先般の日米事前協議の合意の中でも、これらの点については先方の中に一切触れられておりませんことをここで付言させていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

山口(壯)委員 最後に、岸田大臣、先ほどのやりとりを聞いていただいて、一言お願いします。

岸田国務大臣 TPP交渉におきましても山口委員が大変な御努力をされたことに心から敬意を表し申し上げ、ただいま御紹介いただきました経緯につきましても、しっかり参考にさせていただきながら、国益を守るため、全力で取り組んでいきたいと存じます。引き続きましての御指導をお願いいたします。

山口(壯)委員 質問を終わります。どうもありがとうございました。

河井委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、ハーグ条約について質問させていただきます。

 過日の本会議でも、私自身、党を代表して質問させていただきました。非常に重要な条約でもあり、本会議場でも質疑をさせていただいたときに表現をさせていただきましたけれども、これはもう三十年出おくれているということと、あとは、今ほど山口委員の中でも北朝鮮の話も出ましたけれども、北朝鮮に対して拉致国家と言いながら、逆にハーグ条約に関しては取り組みがおくれていた点に関して、国際的には日本は拉致という言葉まで使われて早期の締結を施された、そうした側面もこれまでの経緯の中ではあります。

 そういった中で、子供の最善の利益を考えた、その理念に立ったこの条約。まさに今、安倍内閣が推し進めようとしている価値観外交といった側面をとっても、日本が、一方で、価値観が重要で、そうしたことで世界の価値を共有する国としっかり連携しながら外交をやっていこうという反面、価値観外交という点においては、ハーグ条約を見てみると、その価値観から外れていた、そうしたことが一つあるわけであります。

 そこで、改めて、きょうは我々三人質疑に立ちますので、具体的なことは村上委員、浦野委員に譲りますけれども、その前提となる理念の部分で、子の最善の利益が大事だということ。

 子の最善の利益を醸成する一つの要件として、親がいかに仲がよくなくなって離婚したとしても、子供にとっては、離婚した親だとしても、父親は父親であり、母親は母親である、そうした観点から、共同養育といったことが子の最善の利益になるんだ、離婚したとしても、物理的に会う時間は少なくなったとしても、やはり両方の親に子供が触れ合うこと、それが非常に重要だ、そうした理念、哲学といったものがこのハーグ条約には前提になっているというふうに思います。

 国際社会においても、この共同養育、共同親権といったものが重要だということを認識の上で、このハーグ条約が成り立っているというふうに思います。

 そこで、大臣に、本条約の理念、また共同養育という哲学、国際的な価値観についての御見解をお伺いいたします。

岸田国務大臣 ハーグ条約は、一方の親の都合によって不法に子が連れ去られることは有害な影響を子に与えるという認識のもとに、子の利益が最重要であるという考えに立って、子がもともと居住していた国、すなわち、子がなれ親しんできた生活環境がある国に返還するための手続、あるいは面会交流の促進のための手続を定めたものであります。

 そして、共同養育という考え方について御指摘をいただきましたが、ハーグ条約は今申し上げましたような国際ルールを定めたものでありますので、必ずしも御指摘の共同養育を達成することを、これは直接書かれているものではありませんが、両親がともに子を育てていくということ、このことが子にとって一番幸せであるということについては論をまたないものであり、私も、委員の価値観、共同養育という考え方については、考え方は共有するものであります。

 いずれにしましても、国境を越えた不法な子の連れ去りによる一番の被害者は子自身であり、子の利益を保護するという見地から、同条約の早期締結を実現することは我が国にとっても重要であると考えております。

小熊委員 ありがとうございます。

 我が党の橋下徹代表も、同僚の浦野議員が府議会議員時代に、大阪府議会では共同親権という言葉で議論されていましたけれども、これは大事な哲学だ、理念だということは、当時の府議会時代の我が党の代表も明確に言っていることであって、今大臣が言ったとおりのことなんです。

 ただ、ハーグ条約、細かな、親権についてどうだとか監護権についてはどうだというのは、これはそれぞれの国の国内法において細かく規定をされていくわけであります。

 再度ちょっと確認させていただきたいんですけれども、今言われた共同養育、共同親権といったものが大事だという大臣の発言においていえば、国内法においても、その理念はしっかりと国際的な基準に従って対応しているということで認識してよろしいですか。

岸田国務大臣 質問の趣旨は、ハーグ条約が国内法ともしっかりと連携し、一致しているかということかと思います。

 ハーグ条約、これは今、この条約自身の審議もお願いしております。あわせて、法務委員会におきましては、関連法案の審議もお願いしているところでございます。

 ぜひ、この条約に基づいて我が国が国際的な責任をしっかり果たしていけるように、そして、国内においてもこうしたしっかりとした体制ができるために、関連法案とあわせて、この国会で御承認いただくことが大変重要だと思っております。

小熊委員 これは大臣の所管ではないのであれですけれども、そうした理念であれば、これはやはり、私も本会議で言ったとおり、各国とのこの事案に対する対応なんですけれども、国内においてもいわゆる連れ去り事案みたいなことが多くありますから、国際的にも、いろいろな批判はこのハーグ条約を締結することによって今後解消はされていきますけれども、締結前の問題もあります。これも解決していかなければならない。

 ところが、一方で、やはり国際的に価値観を共有するんだというのであれば、ほかの国との間では、子の連れ去り事案は今後しっかりルールに従ってやっていきますよと言いながら、日本の国内は連れ去りが多いよねというふうに国際的には言われかねない側面もあるというふうに思います。

 価値観外交というのは自由とか民主とか人権といったものを共有すると言っているのでありますから、ぜひこれは、外務大臣の所管ではないんですけれども、国際的な共有する価値観が大事だから、これは国内の事案ですよ、例えば東京から北海道に連れ去りがあるとか、逆に、離婚の件数は、国際結婚よりも、それはもちろん日本人同士の方が多いわけですから、こうした国内での共同養育、共同親権といったものもしっかり、海外の人とだけ共同養育、共同親権をうたっていて、日本人同士のことは違うんだというのであれば、これは海外から見れば、おかしな国、価値観が共有できない国と言われかねませんから。

 そうしたことからすれば、やはり外務大臣としても、法務大臣また関係するさまざまな機関としっかり今後も連携をとって、国内のこうした法律についても、日本人同士の離婚の場合についても、これは外務大臣としてしっかり言及をしていかなきゃいけないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 子の利益をしっかりと保護するという同条約の考え方は、国内外を問わず、守っていかなければいけない大切な理念だと存じます。

 国内においても、さまざまな法令を通じまして、子の利益を守っていくためにさまざまな努力や工夫をしていかなければいけない、これも当然のことだと思います。

 具体的にはさまざまなケースがあるかと存じますが、ぜひ国内においても、子の利益を保護するという大きな目的に向けて努力を続けていくべきものだと外務大臣の立場からも考えます。

小熊委員 外務大臣は法務大臣を兼務した方がいいなと、今いい答弁でした。先日の本会議場では、法務大臣の答弁はちょっと後ろ向きだったなというふうに私は思いますし、法務省も何かやる気がないみたいな話が聞こえていますから、ぜひ、外務大臣、リーダーシップを発揮して、しっかりやっていただきたい。

 そうじゃないと、本当に、海外から見れば、価値観外交と言っているのに国内は別じゃないか、ダブルスタンダードじゃないかと言われかねませんから。日本がしっかりと外交をやっていく、そうやって堂々と価値を共有していくんだということを言うのであれば、これは、対ほかの国だけではなくて、国内においてもその哲学は貫かなければいけないんです。

 一方で、他党のことというか、みんなの党の渡辺喜美代表が、ことしの国会の冒頭の代表質問の中で、この条約の件について質問されています。安倍総理は、そのときの答弁が、細かな点ではありますけれども、私、今の大臣の答弁とちょっと認識が違うなと思ったのは、ハーグ条約、具体的には国内法で整理をされていくということがあります、親権についてとかいろいろな基準については。

 今大臣がおっしゃったこととちょっと違うのは、価値観とか基準とかは共有して、しっかりそれぞれの国で対応していくと言っていながら、あの一月末の渡辺喜美代表に対する安倍総理の答弁は、「各国に共通する基準はない」と言っているんですね、親権や監護権に関して。これは、だから、今大臣がせっかくいい答弁をされたハーグの理念や、そうした哲学といったものの認識とちょっと違うのかなと思うんですね。

 親権や監護権について各国に共通する基準がないんですよ。具体的な法律は違います。だけれども、価値観や基準といったものは、どう子供を育てるかということについては共通していなきゃいけないんですよ、これは。ところが、各国に共通する基準はないと言い切っちゃっているんですね。

 こういう考え方では、幾らハーグ条約を締結したとしても、今後、運用の中で、日本は全然だめじゃないかとなっちゃいますよ。大臣、どうですか。

平松政府参考人 お答え申し上げます。

 ハーグ条約におきましては、あくまでも、それぞれのケースにおきまして、子の不法な連れ去りが行われた場合、子がもともと居住していた国に返還するか否かが決定されるということでございます。

 したがって、子の監護に関する事項までは決定していないということでございまして、ハーグ条約はあくまでもその管轄を決定するまでを担当する条約であると言えますので、その先のそれぞれの法制度については、各国がそれぞれの立場あるいはそれぞれの状況において判断していく、こういうふうになります。

小熊委員 細かな点については各国違うわけでありますけれども、では、改めて問いますけれども、理念や、また監護権とか親権といったものに対する基本的な基準といったものは各国共有するものであるというふうに政府も認識しているということでいいですか。

平松政府参考人 ハーグ条約というのはあくまでも子の利益を中心にということが書いてございます。当然、子の福祉という観点が中心になるということはそうではございますけれども、他方、離婚後の共同親権をどうするか、あるいは各国の親権制度をどうするかということについてハーグ条約が何か決めているものはございませんので、あくまで、申し上げた、子の利益が第一だという大きな観点の中で、その後どうするかということについては各国の法制度に任されておりますので、親権制度そのものについてハーグ条約が規定する、そういうことではございません。

小熊委員 これは今ほども大臣がせっかくいい答弁をされて、子の最善の利益とは何だということでハーグ条約ができ上がっていますし、今各国の対応を見ても、これは連れ去り事案があっても、ほぼ返還拒否という判断をとらずに帰しちゃうわけですよ。この間、イギリスからアメリカに帰った子供もいましたよ。

 ところが、日本は、そこを今、この間、私が本会議の質疑でもやったとおり、拒否の判断事由に関しては、これは裁判所が四つの項目に従ってやるわけです。ここはちょっとハーグの理念と合わないんじゃないかという指摘も既に受けているところであります。

 ですから、細かな点は、それは各国のテクニカルな話なんですけれども、だから、まさに先ほど言ったように、理念とか基準といったものは共有化していないと、ほかの国から、日本はダブルスタンダードだろうと言われちゃうわけですよ。

 今言ったとおり、共同親権に関して明確な規定はないけれども、大臣の答弁では、子の最善の利益というのは、親が離婚したとしても、子供にとっての両親がしっかりと子供の教育に携わっていくことが大事だ、それがハーグの理念だというような答弁をいただいているんですよ。

 確かに明確な規定は別ですけれども、その理念といったものは大事でしょう、それは共有しているんでしょうということなんですよ。

岸田国務大臣 ただいま平松局長から答弁させていただきましたように、親権とか監護権、この具体的な権利等の規定については、それぞれの国、さまざまでございます。

 そして、基準につきましても、国内外共通するような明文化されたものは存在はいたしませんが、私が先ほど申し上げましたように、子の利益を尊重していくという基本的な考え方は国内外において尊重されるべきではないか、このように私は思っております。

小熊委員 まさに大臣の言うとおりですよ。

 だから、総理のあの一月末の答弁は、今大臣が言った、規定は各国によって違うんですよ。でも、理念や子供の最善の利益といった基準とか価値観といったものは一致していて各国共通じゃないと、今後、ハーグ条約の締結後の運用、また、先ほど大臣言っていただいた、国内の中のこうした事案に対する対応といったものも進まないんですよ。

 これは総理が書いた答弁ではないと思いますけれども、基準という言葉が、規定という言葉を使えば私もひっかからなかったけれども、親権や監護権に対する基準といったものは各国によって違うと言ったら、ハーグ条約、せっかくやろうとしているもの、価値を共有していこうということに関しては、これはやはりちょっと違うんだなというふうに思ったので、きょう質問しているんですけれども、しっかりやっていただいて、では、いいです。

平松政府参考人 基準とか価値観という言葉が適当かどうかという問題はあると思います。ただ、この条約全体の一つの考え方として、子の利益が最も重要であるという思想があるということでございますので、それに従ってこの条約締結国はいろいろな対応をとっていく。

 他方、先ほどから申し上げているとおり、それぞれの国の親権制度等についてはそれぞれの国が考えることでありまして、そういった具体的な各国の諸制度にまでこの条約が何らかの制約を設けているということはないということを御理解いただきたいと思います。

小熊委員 これは神学論争みたいになるのでやめますけれども、表づらはそうですけれども、ハーグ条約、子の最善の利益、では具体的には何といったら、共同養育、共同親権なんですよ。それが前提ですよ。それで首をかしげたら、多分違いますよ。

 具体的な事案の人たちと私も議論させてもらいましたけれども、子の連れ去りによって困っているということは、共同親権がしっかり確立していれば困らないんですよ。離婚した後も会わせるということは、これは共同養育、共同親権といったことが具体的な対応になっているわけですから。子の最善の利益、それは子供の決定権もありますけれども、基本的には、前提に立っているのは、離婚したとしても、子供に対しては両方の親が教育にかかわっていきましょうという、それがまさに世界の共通する理念だというふうに私は認識していますよ。

 それは、ずれはあります。ずれがありますから、これは、そうしたずれがあるとすれば、今ほどお話しさせていただいたとおり、これは私見かもしれませんけれども、そうした認識であると、これは運用しながらも、やはり、日本は締結したけれども、運用は厳しいよね、ちゃんと運用されていないよね、ダブルスタンダードだよねというようなことを指摘されかねませんよ。これは、確かに規定はしていなくても、いや、共同親権、共同養育、大事なことですよぐらい言い切らないと、これは世界からまた指摘されますよ、運用していく中で。

河井委員長 正確を期すためにもう一回答弁したいようですから。どちらですか。

 では、まずは外務大臣、お願いします。

岸田国務大臣 まず、共同養育の話ですが、両親ともに子を育てていくことが子にとって一番幸せであるということについては、価値観として私は共有するということを先ほど申し上げさせていただきました。ですから、それは私の価値観の話であります。

 そして、先ほど来ありますように、親権とか監護ですとか、こうした具体的な権利におけるこの法律のありよう、規定については、それぞれ、国さまざまであります。

 そして、その中にあって、子の利益というものを保護する、大切にしていく、こういったことは国内外において大事な考え方ではないか。

 ですから、私の個人的な価値観と、そして考え方と、そして具体的な規定はさまざまであるということと、ちょっと整理した上で申し上げなければいけないなと感じております。

 何か補足がありましたら、お願いします。

平松政府参考人 繰り返して大変申しわけないのでございますけれども、この条約というのは、あくまでも、子がもともと住んでいた国、すなわち、子がなれ親しんできた生活環境のある国においていろいろな監護に関する手続をやることが重要だということが、この条約の大きな思想でございますので、それに従って対応していくということでございます。

 ただ、委員御指摘の、今後の親権のあり方、共同親権のあり方等についてこの条約は何ら規定をしておりませんので、その点についてはそれぞれの国において判断をしていくということになるというふうに思います。

小熊委員 そのとおりなんですけれども、そういう状況でありながら、各国が規定を持ってやっていますけれども、今締結している国同士の中において、ちょっと違うんじゃないかという話は私は今出てきていないと思います。

 本会議場でも質問させていただいたとおり、返還拒否の裁判所のその事由に関しては、日本、ちょっとそれはハーグ条約の理念と違うんじゃないのと既に指摘を受けているところもありますよ。

 だから、やはりそれは、まさにその理念とか哲学といったものをちゃんと把握して国内の規定を設けなければいけない。だから、日本がダブルスタンダードと言われないように、ちゃんと理念をしっかり確認しておいてくださいよと今質問しているわけでありますし、また、その側面の一つとしては、大臣からいい答弁いただきましたけれども。

 だから、国内における親子の法律というものを整備しなければ、その理念が大事だと言っているのであれば、これは外務省の管轄じゃないけれども、もうきっちり整備していかないと、何だ、日本は外づらだけでこの条約を締結しているんだ、パフォーマンスでやっているんだなんて言われかねませんから。ちゃんとした理念、哲学のもとに、規定も整備され、そして国内の事案に関しても整理される、そういう法律も整備していくということが、本当に国際社会の中で価値を共有するということになるんですよ。表づらだけ、価値観共有です、皆さんのルールと同じですよと言っていたのでは、これはもう、底が浅い、見透かされることになりかねません。

 だから、それは確かに共同親権というところに入っています、規定をするものではないんですけれども、具体的には、各国間の今後の子の連れ去り事案に関して処理していくときに、対応していくときに、そこを見られますよということです。締結しているけれども、全然理念に従って日本はやっていないんじゃないかと言われかねないわけですよ。

 だから、ここをちゃんと、共同親権とか共同養育、大臣は価値観を共有すると言ってくれましたけれども、それは個人的な話ではなくて、ちゃんと国内の規定にも生かしていかなければ、今回のこのハーグの締結、これは非常にいいことだと思いますけれども、結局、締結したとしても、日本、違うなと言われかねませんよという指摘なんです。

 わかっていますよ、ここで共同親権なんて言っていないことは。でも、子の最善の利益はまずそれがあるでしょう。違う選択肢もあります、もちろん子供にとっては。だけれども、二親に触れるということが子の最善の利益であるということを、大前提なんです、これ。全てではないですよ。子供によっては、もうおやじと会いたくない、母親と会いたくないという子供もいますから。でも、そういうことがない限りは、親同士が離婚したとしても、しっかり子供に携わって教育をしていこう、養育をしていこうということを実現するためにできた条約だというふうに私は思っていますし、ほかの国の人としゃべっても、いろいろな大使館の参事官としゃべっても、そうだと言ってくれますから。それが、各国によって違うよ、規定は違うよと言ったら、このハーグ条約の理念というものは達成されませんから。

 これ、大臣の答弁のとおりでいいんです。国内法、また、それに携わるさまざまな法律も、また、運用に関しても、ぜひしっかり努力をしていただきたいというふうに思います。

 ちょっと時間がないんですけれども、次の質問に移ります。

 こうした価値を共有するということで、日本外交も今さまざまな努力をされているところでありますけれども、先ほど山口委員の触れた北朝鮮に関しても、過日、アメリカのケリー国務長官もアジアを歴訪されて、これはやはり一つには北朝鮮の問題があります。また、今月、軍縮・不拡散イニシアチブ、NPDI第六回外相会合を持たれました。北朝鮮に対する話題も議論をされたというふうに認識をしているところであります。

 やはり、北朝鮮に対しては、日本と北朝鮮とのやりとりもありますけれども、今ほど来お話しさせていただいた、価値観を共有する国とともに、しっかりグループの中でネットワークを組んで対応していかなければいけないというふうに思っています。

 そういう中では、北朝鮮に関してはやはり日米韓がしっかりやっていかなければいけない点もありますけれども、他方、やはり北朝鮮との地理的な要因、また、国との関係性でいえば、中国と北朝鮮の関係、北朝鮮とロシアとの関係性を見れば、日本がそうした、まさに価値観外交を推し進めるという意味でも、北朝鮮を意識して、中国、価値観を一緒にやっていこうよ、ロシア、一緒にやっていこうよということで北朝鮮に当たらせるという、これはちょっと北朝鮮に対しては直接的な話ではないんですけれども、やはりそういうことも必要だというふうに思います。

 北朝鮮に関して、まさに中国、ロシアとの、日本自身がどう連携を図っていくか、お伺いいたします。

岸田国務大臣 まず、先日のケリー国務長官との日米外相会談の中でも、北朝鮮問題につきまして、まず、しっかりと日米間の連携を深めていかなければいけないということで、日米間で高級実務者協議を行うこと、こういったことも確認させていただきましたし、日米韓三国の協力をさらに進めていく、こういったことも確認をさせていただきました。

 そして、一方、中国ですが、中国は、御案内のとおり、北朝鮮との長いさまざまな関係があります。そして、国連安保理常任理事国の一国であります。それから、六者会合の議長国でもあります。こうした中国の立場を考えますと、北朝鮮問題において大きな影響力を持っているということ、これは間違いないところだと思います。

 ロシアも国連安保理の常任理事国であります。

 こういったことを考えますと、まずは日米韓三国の連携をしっかり確認した上で、中国、さらにはロシア、こういった国々との連携も深め、そして、その結果として北朝鮮に対する影響力、強いメッセージを発していく、こうした国際連携を考えていくべきではないか、このように考えています。

小熊委員 価値観外交は非常に大事なので、そうした視点は私も大いに賛同するところでありますし、しっかりとそういう点に立ってこういうさまざまな事案をやっていかなきゃいけませんし、このハーグ条約を締結した後にしっかり運用していくということも、これは本当に、価値観外交、日本は言葉どおりなのかと見られる一つの視点でもありますから、ぜひ、今後、締結後は、その運用に関して、日本がダブルスタンダードだ、外づらだけだ、価値観外交も言葉だけだと言われないように、適切な対応をとっていくことを求めまして、残余の時間を同僚議員に譲ります。

 ありがとうございました。

河井委員長 次に、村上政俊君。

村上(政)委員 日本維新の会の村上政俊です。

 本日は、重要な条約でありますハーグ条約の審議ということでございますが、国会の中は〇増五減の区割り法案のことで非常にざわついておるわけでございます。

 私自身も大阪四区の選出で、また岸田大臣の広島一区も、両方の選挙区が高等裁判所から非常に厳しい指摘を受けているという状況でもございますし、また、私自身、公職選挙法改正の特別委員会の委員でもございますので、その問題は国会としても非常に重要な問題ではございますが、ハーグ条約の審議もしっかりと我々の間でやっていくべきだと思いますので、ハーグ条約についてこれから質問させていただきたいと思います。

 私の方からは、ハーグ条約を締結する意義、そして締結によって得られる効果、あるいは国内でさまざまに心配されておる問題について、そして締結後に考えられるような問題、そして中央当局を担っていく外務省として、このハーグ条約を実施する体制、これをどのように考えておられるのかについて、さまざまな点からお伺いしていきたいと思っておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、そもそもハーグ条約の審議に至る経緯でございますけれども、一九七〇年代に入って、人の移動や国際結婚の増加に伴い、一方の親による子の連れ去りや監護の権利をめぐる紛争の国際裁判管轄の問題、これが国際的な場で議論されるようになりました。

 こうした中、国際私法の統一を図るための研究及び条約の作成を行う政府間機関であるハーグ国際私法会議は、昭和五十四年の三月、そして十一月にこの問題に関する特別委員会を開催して、各締約国の指定された中央当局を通じて、我が国では外務省が担うということになっておりますけれども、この中央当局を通じて各締約国の裁判所と行政機関との協力により国際的な子の連れ去りを防止する、この条約の素案を作成しました。

 そして、昭和五十五年十月に開催されたハーグ国際私法会議第十四回会期では、この素案に基づく審議が行われて、本条約が採択されて、昭和五十八年、私が生まれた年でありますけれども、この年に効力を生じたというわけでございます。

 また、近年は急速なグローバル化が進展しております。我が党、日本維新の会としても、さきの総選挙で掲げさせていただきました骨太二〇一三―二〇一六という政策集でございますけれども、その中でも、グローバル化の進展について、我が国として真正面から向き合っていく必要があるということを申し上げておりますし、我が党としては、強く賢い日本にしていく、そして経済財政政策については自由貿易圏やTPPの交渉の参加を通じて我が国の国益を拡大していく、こういった考えを示させていただいておるわけでございます。

 そうした流れを受けて、岸田大臣も四月四日の本会議の中で趣旨説明をされたわけでありますけれども、この国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、いわゆるハーグ条約でございますけれども、我が国においても近年ふえ続けている国際結婚のいわゆる負の側面として無視できなくなってきた、諸外国との間で生じている子の連れ去りをめぐる問題に対処するため非常に重要であるというふうに、私自身も岸田大臣の趣旨説明と同じような認識を持っておるわけでございます。

 大臣から、我が国がハーグ条約を締結する意義について、改めてお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 国境を越えた人の往来が飛躍的にふえる中、日本人の国際結婚及びその破綻の増加も発生し、そして諸外国との間で子の連れ去り等をめぐる問題も顕在化しております。

 こういった状況にあって、今委員からも御指摘がありましたように、ハーグ条約は、子の利益が最重要であるという認識に基づいて、国境を越えた子の連れ去り等の問題を解決するために一九八〇年に作成され、今や国際的なルールとして確立をしているとされていますが、G8諸国の中で我が国だけ締結していない、こういった状況が続いております。

 国境を越えた不法な子の連れ去りによる一番の被害者は子供自身であります。子の利益を保護するという見地からも、ハーグ条約を早期に締結することは極めて重要だと認識をしております。

村上(政)委員 今大臣からもハーグ条約の締結の意義についてお答えいただいたわけでございますけれども、ハーグ条約は、まさに子の権利を最重視するという点で非常に重要なものであるというふうに考えております。

 また、監護の権利の侵害を伴う国境を越えた子の連れ去りが生じた場合には、子がもともといた国、これは今までの累次の審議で明らかになってきておることでもございますけれども、子がもともといた国に迅速に返還するための国際的な、協力するための枠組みであるというふうに私自身も理解しております。

 また、我が国の中でもこの条約を締結することについてはさまざまな不安が上がっているということも、私自身も承知しておりますし、大臣自身も御認識されておるところであると思います。

 まず、この不安についてですけれども、日本人がさまざまな事情で海外から子供を連れ帰らざるを得なくなったこと、そういった場合において、この条約を締結することによってそれができなくなってしまうのではないか、そういったケースが念頭に置かれていると思います。

 我が国がハーグ条約を締結すれば、我が国から不法に連れ去られた子供を逆に取り戻すことができるといったメリットもあるとは考えますが、ハーグ条約の締結によって期待される効果というところはどういったところになるでしょうか。

岸田国務大臣 まず、ハーグ条約を締結する意義、効果ということですが、具体的には、例えば、子の不法な連れ去り等が発生した際に、国際的なルールに従って問題解決が図られるようになるほか、現状で我が国がハーグ条約を未締結であることを前提として在留邦人が実際受けている制約がありますが、こうした制約も回避することができるのではないか、こうしたことがあります。さらには、さらなる子の連れ去り事案の未然防止の効果、これも期待できると思いますし、また、国境を越えて所在する親子の面会交流の機会の確保、こうしたことも期待できるのではないかと思います。

 ハーグ条約締結の効果ということでは、以上、申し上げたような効果が期待されるところであります。

 また、こうした締結しない状況が続くことが、我が国国民にとっても大きな不利益ということにもなるわけでありますし、また、我が国の姿勢も問われかねないということでありますので、こういった点でも早期締結は極めて重要だと考えております。

村上(政)委員 私が先ほど申し上げた、我が国がハーグ条約を締結すれば、我が国から不法に連れ去られた子供を取り戻す、こういったメリットもあるというふうにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 これは、国際結婚がふえ、そしてその破綻が増加するに従って、我が国に子が連れ去られる案件も多く存在しますが、一方で、我が国から子が連れ去られる案件、こういった案件も随分多く報告をされ、そうした相談もふえている現状であります。

 こういった点についても、しっかりとした国際ルールができることにより問題解決につながるのではないか、こうしたことを期待しております。

    〔委員長退席、岸委員長代理着席〕

村上(政)委員 我が国の中での議論や報道は、我が国に連れ去られた子供の問題について非常に集中している感がございましたので、今、私からお伺いした、我が国から不法に連れ去られた子供についてもメリットがあるということを大臣から改めて御確認いただけましたので、非常に有意義であったというふうに考えます。

 次に、国内でよく心配されていることでございますけれども、夫婦の間での問題を規定する法律は国ごとによって異なっているわけでございますけれども、例えば、不幸にも離婚する場合になったときに、国によっては、我が国とは異なる共同親権制度を導入している国との間で、子の監護権をめぐって争うこととなる場合もあると考えます。先ほど、我が党の小熊議員からも申し上げたような点でございます。

 各国における法律は、個々の国の古くからの風習や土着の文化、それとともに確立した価値観や国家観といったものに立脚してつくられているものでありますので、私たちは、そのようなそれぞれの法体系のもとで人間としての生活の営みを送っているものであります。

 ハーグ条約は、そうした中で、特に夫婦の間での問題に立ち入っていくことにもなるわけでありますけれども、果たして日本の文化や習慣になじむのかどうか、国内では不安に思っている向きもありますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

鈴木副大臣 先生御指摘のような不安の声があるということは私も耳にいたしているところでございますが、ハーグ条約は、特定の国や地域の習慣、文化、価値観等に立脚したものではございません。

 本条約は、一方の親の突然の都合によって不法に子が連れ去られることは、ある日突然に生活基盤が崩れて、他方の親との接触が切断され、異なる言語、異なる文化、環境での生活を余儀なくされているといった、有害な影響を子に与えるとの認識に立っているものであります。

 このような今申し述べた考え方は、我が国を含め、国際社会で共有されるものであると考えておりますので、我が国の習慣、文化、価値観等になじまないのではないか、そういう御心配には及ばないものであると思っております。

村上(政)委員 副大臣より丁寧な御説明があったわけでございますけれども、ありがとうございました。

 もう一度端的にお聞きすれば、我が国の中では、日本の習慣になじまない欧米主導の条約である、あるいは外圧による締結は問題であるといった声、これが、今私が伺った問いをさらに非常に先鋭な言い方でしたわけでございますけれども、もっときつい言い方をすれば、そういった考え方や不安の声があるわけでございますけれども、改めて、こういったことはないということでよろしいでしょうか。

 欧米主導の条約であって、外圧による締結というのは問題である、こういったものは当たらないということでよろしいでしょうか。

平松政府参考人 既にお答えをしておりますけれども、この条約というのはあくまでも子の利益を中心に考えるということで、国際的なルールを定めて、連れ去られた子供等について、それをどう返還するかということについての手続を定めたものでありまして、これは一定の何かの親権制度あるいは一定の文化などを背景にしたものではございませんで、こういったルールというのは既に国際的に確立しているものでございます。

 したがいまして、いわば国際的なルールを定めたということでございまして、一定の制度あるいは文化、背景というものを前提にしたものではないということははっきり申し上げることができると思います。

村上(政)委員 国際的な協力の枠組みに我が国としても参加していくという方向性であるというふうに、私自身も今理解いたしました。

 先ほど、大臣からは、ハーグ条約は一九八〇年に作成されたというふうな、答弁の中でも御紹介がありました。そして、日本政府は、まさに本年、この条約を締結しようとしているわけでありますけれども、現在に至るまで、実に三十年の時間を要したわけであります。

 この間、我が国政府は、ハーグ条約締結のメリット、デメリットを十分に検討してきたわけでありますし、特に、国内実施法を起草する段階では、有識者や実務家、さまざまなけんけんがくがくの議論が交わされてきたというふうに承知しています。

 その中でも最も懸念された問題というのは、先ほど山口議員からも御指摘のあったような、いわゆるDVの被害の問題であります。

 このドメスティック・バイオレンスの問題でありますけれども、ハーグ条約を締結すると、例えば、海外ではDVの被害を受けて、せっかく子供と一緒に逃げ帰ってきたにもかかわらず、必ず子供を返還しなければならない、こういった不安を持っていらっしゃる方もいると思いますけれども、改めてこの点についてお伺いしたいと思います。

鈴木副大臣 ハーグ条約を締結すれば、必ず子を返還しなければならないということではございません。

 そもそも、ハーグ条約上、子の返還の対象となるのは、他方の親の監護の権利を侵害する不法な連れ去りのみであります。したがいまして、監護権の侵害を伴わない連れ帰りは本条約の対象とならないところでございます。

 さらに、本条約には、不法な連れ去りであったとしても、子の利益の観点から返還する義務を負わない、いわば例外が認められております。三つございます。

 一つは、返還によって子が心身に害悪を受け、またはその他の、子が耐えがたい状況に置かれることとなる重大な危険がある場合、二つ目として、子自身が返還を拒否して、かつ、その意見を考慮に入れることが適当である年齢及び成熟度に達している場合、三つ目といたしまして、連れ去りから一年以上が経過した後で返還手続が開始され、かつ、子が新たな環境に適応している場合などは、子を返還する義務は負わないことになっております。

 条約実施法案におきましても、このような条約の規定が我が国における裁判手続において適切に考慮されるよう、必要な法的手当ても行っているところでございます。

    〔岸委員長代理退席、委員長着席〕

村上(政)委員 今、鈴木副大臣から、先ほど私が質問させていただいた点は誤解であるというきっちりとした御答弁をいただいたというふうに思っております。

 しかしながら、やはり、国内ではそうした誤解があるということは、現実として多くの方が不安に思っていらっしゃることだと思います。こうしたさまざまな不安の声、あるいは、必ず子供を返還しなければならないといった誤解を解消していくためには、きちんとした外務省からの説明というものが国内に向けて必要であるというふうに考えますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。

鈴木副大臣 村上先生が御指摘のとおりに、この条約に関する広報をしっかりする、国民の皆さんに周知を図るということは大変重要なことである、そのように思っております。

 したがいまして、子の不法な連れ去り事案等を抱えている方々はもちろんでありますけれども、国際結婚をした夫婦、または国際結婚をすることを考えている方を含めて、国民の皆さんにハーグ条約について広く知っていただく手だてをしていかなければならないと思っております。

 外務省といたしましても、これまで、外務省主催のシンポジウムの開催、在外公館におけるパンフレットの配布などの取り組みを行ってまいりました。

 今後も、外務省及び在外公館のホームページを通じた広報、説明会の開催等を初め、関係省庁、地方公共団体、各種団体等と協力をしつつ、国内外における広報を行ってまいりたいと思っております。

村上(政)委員 国内に限らず、在外公館からも海外に住んでおられる方にも広報していかなければならないといった点、鈴木副大臣の御答弁でも明らかになってきたと思います。

 この点についてさらにしっかりとお伺いしたいのですが、海外にいらっしゃる方はこの条約の対象になる方も非常に多いわけですけれども、海外での広報をしっかりやっていくという点、改めて御決意というかお考えについてお伺いしたいと思います。

平松政府参考人 おっしゃるとおりでございまして、特に在外に住んでおられます在留邦人の方につきましては、本件がどういうふうに適用されるのかということについていろいろ御不安な面があるというふうに承知しておりますので、特に海外における広報、在外公館を通じた広報は重要だというふうに認識しております。

 在外公館はいろいろなツールを持っておりますので、そのツールを使って情報発信をする、いろいろなパンフレットを配布するとか説明会を開催するとか、いろいろな手段もございます。

 既に我々の方で在外公館に対していろいろな指示を出しておりまして、しかるべく対応するように、体制を整えるようにということを既に指示しておりますので、この条約をお認めいただいた暁には、さらにそういった体制を強化していきたいというふうに考えております。

村上(政)委員 それでは、このハーグ条約が締結されて承認された後に、効力が発生した場合に、どのようなことが起こり得るかという問題についてお伺いしたいと思います。

 発効した後に、発効前に既に生じている我が国への不法な連れ去り事案についての扱い、これがまた問題になってくると考えます。

 発効前の子の不法な連れ去りによって子供の利益が侵害されているのであれば、子の利益を重視する見地から、条約に基づいて返還手続の対象とすべきではないかという意見も国内にあるというふうに承知しておりますが、政府としてはどのように対応していかれるお考えでしょうか。

鈴木副大臣 ハーグ条約の効力が発生する前に生じました不法な連れ去りにつきましては、ハーグ条約に基づく返還の対象とはなっておりません。このような事案につきましては、それぞれの国内法令に従って、友好的な解決が図られるよう、政府として可能な限りの支援を行う、そのような対応をしてまいります。

 なお、条約の効力発生前に生じた事案に関しましても、条約発効後に面会交流の権利が侵害されている場合には、面会交流に関して、ハーグ条約に基づく支援を受けることは可能であります。

 今後とも、個別の事案についての関係国間での情報交換、関係国の協力のもとでの面会交流の実現に向けた支援の実施等、子の利益を重視することを基本としつつ、個別事案の解決に向け取り組んでまいりたいと思っております。

村上(政)委員 今、鈴木副大臣の御答弁の中にあった、個別の事案を解決していくためには、条約で定められていますとおり、各国に中央当局を置いていくということになると思います。

 まず、我が国の中で中央当局を外務省が担われることになった経緯あるいは意義についてお伺いしたいと思います。

平松政府参考人 御指摘のとおり、日本の場合、中央当局は外務省でございます。

 いろいろな議論の結果そうなったわけでございますけれども、外務省というのは、いろいろな国との関係を処理するということがあります。したがって、各国の中央当局といろいろ議論する際に、やはり外務省が窓口になるのが適当であろうということもございますし、それから、いろいろな国際法の解釈等の件においても外務省が解釈権を持っておりますし、加えまして、外務省として、いろいろな形で広報をするだとか、いろいろな国において、先ほど申し上げた在外公館を通じていろいろな手助けをするということもございますので、外務省がそういった役割を果たすのが最も適当だろうということで外務省に中央当局を置いた、そういう経緯がございます。

村上(政)委員 経緯の説明、ありがとうございました。

 しかしながら、条約によれば、中央当局の任務というのは、子の所在の特定、子に対するさらなる害の防止、そして、子の任意の返還または当事者間の問題解決の促進、司法上の手続のための便宜の供与、子の安全な返還の確保といった、一見、外務省の業務となじまないようなものも、少なくとも私が外務省で経験したことから申し上げれば、そのような面もあるかと考えます。果たして外務省はこういった業務を十分にこなせるのかといった不安の声も国民の中にあるというふうに承知しております。

 特に、先ほど質問申し上げたような、中央当局たる外務省は、子の所在の特定を行う過程で、DVの被害者を含めた個人情報を取り扱うことにもなるというふうに聞いております。個人情報を取り扱うということは極めて重大な責任を負うわけでございます。

 この点、外務省としてはどのような体制でハーグ条約の実施に取り組んでいかれるのか、決意と、それから国民の不安の払拭に向けた御決意をお伺いしたいと思います。

鈴木副大臣 まず、中央当局の体制についてでありますけれども、中央当局には外務省と法務省から人材を適切に配置するほか、子の連れ去り、面会交流等に対応できる専門家であるソーシャルワーカーでありますとか弁護士を外務省の職員として採用する予定でございます。発足当初は全体として十名程度の体制となる見込みであります。

 そして、子の所在特定を行う過程で、DV被害者を含めた個人情報を扱う重大な責務を有しているがという御質問がございましたけれども、このDV被害者の個人情報の扱いに対する懸念があることは十分に認識をしているところでございます。

 中央当局は、個人情報を厳重に扱って、裁判所等に提供する場合等の限られた場合以外は、所在に関する情報を提供してはならないことを条約実施法においても規定をしているところでございます。

村上(政)委員 個人情報を扱っていくということになりますけれども、今まさにその厳重な処理が必要であるといった御決意を鈴木副大臣から伺ったわけでありますが、より具体的な対策として、仕組みの問題であったり、あるいは規則の問題であったりということについては何か具体的なお考えはありますでしょうか。

平松政府参考人 情報管理の重要性というのは今副大臣から御答弁させていただいたとおりでございます。非常に重要なことだと我々は受けとめております。

 具体的にどうそれを確保するかについては、これからいろいろな制度設計をつくってまいりますので、その過程で考えてまいりますけれども、特に、やはり例えば、その情報を扱える人の数を減らすということだとか、あるいはしっかりしたキャビネットをつくって、そこでしか情報は管理しないとか、あるいは部屋の立ち入りを制限するだとか、そういうことによって必要な個人情報をしっかり確保できるようにしたいと思いますし、当然、その中央当局の職員に対する指導、教育はしっかりやっていく必要があるというふうに考えております。

村上(政)委員 先ほど鈴木副大臣から御答弁のあったような、専門家を外務省の中にも採用するといった点も御答弁の中にありましたが、これについては具体的に今後どのように進めていかれるお考えでしょうか。

平松政府参考人 これから中央当局が立ち上がるに当たって、いろいろな経験とか知識を持った方を採用する必要があると思っています。

 先ほど御答弁申し上げたとおり、例えばソーシャルワーカー、特にドメスティック・バイオレンスについての経験があるソーシャルワーカーを採用するだとか、あるいは法律に詳しい弁護士を採用するだとか、そういうことをして、外務省に必ずしも十分でない、知識がないところについて、そういったことを十分補って余りある人をぜひ採用したいと思っておりまして、今、どういう人を採用するかも含めて、全体の構成について鋭意検討しているところでございます。

村上(政)委員 最後に、改めて法務省との連携についてお伺いしたいと思います。

 今、中央当局を立ち上げていく際に、さまざまな専門家に中央当局である外務省の中においでいただいて、ソーシャルワーカーの方や法曹資格の方においでいただく形で、個人情報を含めたしっかりとした体制を築いていくという御答弁がありました。

 他方、先ほどの議論の中でもありましたとおり、法務省との連携についても非常に重要であるというふうに考えますが、これについて具体的な点をお伺いしたいと思います。

平松政府参考人 この条約を検討する、あるいは実施法を考える際において、外務省と法務省はまさに二人三脚で取り組んできたということでございます。

 この条約を御承認いただいて、中央当局が立ち上がるということになった場合は、先ほども少し申し上げましたけれども、全体の中で、十人ぐらいの中央当局の体制を考えていますけれども、そのうちの三名は法務省から来ていただいて、そういった法務省としての知見を共有いただくということになると思いますし、ただ来ていただくだけではなくて、今後とも、この条約のしっかりした執行を確保するためにおいて、引き続き外務省、法務省との間で緊密な連携をとっていきたい、かように考えています。

村上(政)委員 そろそろ時間も参りましたので、最後に一言申し上げて終わりたいと思います。

 私も外務省の担当者から説明を聞いているところでは、先ほど累次御答弁があったとおり、法曹の資格者やソーシャルワーカーといった専門当局を中央当局に迎えてしっかりと対応していただく、あるいは、今御答弁にあったとおり、各省とも連携を十分に図っていって、政府一丸として中央当局としての役割を担っていただくということで、私自身も、さまざまな声、不安の声に対して、この委員会の中できちんとした政府としての説明ができていくのではないかというふうに考えております。

 私自身も外務省の出身者として応援していきたい考えですので、何とぞ重責をしっかりと果たしていただきたいと考えます。

 ありがとうございました。

河井委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 それでは、よろしくお願いをいたします。

 ハーグ条約実施法の不法な連れ去りの定義については、常居所地国の法令に基づく監護権が侵害された場合とされていますが、この監護権には居所指定権が入るという理解でいいのか。そうでなければ、ハーグ条約第五条a違反の実施法ということになりますが、いかがでしょうか。

萩本政府参考人 委員御指摘のとおり、実施法案で用いている監護の権利には居所指定権が含まれるものでございます。

浦野委員 ハーグ条約第五条bに規定する「接触の権利」とはどのようなものでしょうか。児童の権利条約第九条三に規定する権利と同様のものと理解していいのか。実施法ではこの接触の権利について一切規定をしていませんが、なぜでしょうか。ハーグ条約違反ではないですか。

平松政府参考人 お答えいたします。

 ハーグ条約締約国の実効等を踏まえれば、ハーグ条約第五条bに規定されております「接触の権利」というものには、子と直接面会することに加えまして、手紙や電話等の媒体を通じて子と連絡することも含まれているというふうに解釈しております。

 また、児童の権利条約第九条三にございます「人的な関係及び直接の接触を維持する」ということは、児童が直接の面会、手紙、電話等の媒体を介する等して父母との間で相互に連絡を維持することも含むものと解されてございます。

 したがって、ハーグ条約五条bにおける「接触の権利」というものと児童の権利条約第九条三の「人的な関係及び直接の接触」と、ほぼ同義であると我々は考えておるわけでございます。

 ハーグ条約は、接触の権利というのは一定の締約国の法令に基づくことを前提としております。我が国は、民法第七百六十六条第一項において、協議離婚に際して定めるべき子の監護に関する事項として、父または母と子との面会及びその他の交流を例示いたしまして、その協議が調わないときなどは、家庭裁判所がこれを定めるものとしております。同条の第二項でございます。これが条約上の接触の権利の概念に対応するものと解されております。

 このように、我が国の法令上、条約に言う接触の権利に対応すると解される規定が既にあるものでございますから、ハーグ条約実施法案に特別の規定を置く必要はないということで処理をしているわけでございます。

浦野委員 ハーグ条約五条bでは、接触の権利には、一定期間、常居所以外の場所に連れていく権利を含むとあります。

 一定期間とは具体的にどの程度の期間を指すのか、各国の実態はどのようになっているか、お聞かせください。

平松政府参考人 御指摘のとおり、条約第五条bには、接触の権利について「一定の期間子をその常居所以外の場所に連れて行く権利を含む。」と規定しております。これは、本条約に言う接触の権利の行使には、子がその常居所を有する国以外の国において行う面会交流というものが含まれることを明確にするという趣旨の条文でございます。

 御質問のございました「一定の期間」という言葉でございますけれども、その趣旨は、接触の権利の行使のために子をその常居所以外の場所に連れていく、あくまでも一時的な限られた期間であるということでございます。それは、国境を越えた不法な連れ去りとは異なることであるということを明確にするために挿入されたものというふうに理解されてございます。

 接触の権利の行使に当たり、その具体的な期間がどうかということについて条約上の定めはございませんで、それはあくまでも接触の権利を有している者と現に子を監護している者との間で決められることになるというふうに承知してございます。

 各国の実態についての御質問がございましたけれども、大変申しわけございませんけれども、個別のケースについて、かなりケース・バイ・ケースで変わってくるというふうに承知してございまして、どういうケースが一番あり得るケースかということについては、ちょっと明確には承知していないというのが実態でございます。

浦野委員 ということは、国内法次第だということでよろしいですか。

平松政府参考人 これは、まさにそれぞれの国の運用に従うということでございますので、特段、どの期間をとらなきゃいけないとか、どういう態様で接触の権利が実行されるかということを定めたものではございません。

浦野委員 ハーグ条約は、接触の権利を認め、監護者とならなかった親と子供が一定期間面会交流することを前提とするように見えますが、その解釈でよろしいでしょうか。

 そうであれば、実施法に規定する面会その他の交流とは、一定の期間、監護者ではない親と子供がともに生活することと理解をしていいのか。

 もし、そう解釈しないのであれば、外国にいる親が監護者と指定された場合、日本にいる親は当該国から日本に一定の期間子供を連れてきてともに生活することが認められないことになり、ハーグ条約違反となりますけれども、いかがでしょうか。

平松政府参考人 実施法に規定してございます面会その他の交流ということでございますけれども、これは、監護者とならなかった親と子供が一定期間面会交流をすること、及び、一定の期間監護者でない親と子供がともに生活することを含むものであるというふうに解釈しております。

 したがって、今御指摘のございましたケースについても、実施法に規定する面会その他の交流に該当するということではございます。

 ただ、先ほど申し上げましたとおり、実際にどのような形で面会その他の交流が行われるかについては、まさに個別の事案に応じまして、あるいは文通だとか電話だとか会話だとか、いろいろな態様がございますので、必ずしも、今御指摘のあった、監護者とならなかった親と子供が一定期間面会を行うこと自体がハーグ条約上の前提となっているということまでは言えないというふうに思います。

浦野委員 日本の裁判所は、これまで、面会その他の交流とは、月に多くて二回、一回数時間、施設の中で第三者の監視つきで親子を会わせることと解釈をしているようです。

 実施法に規定する面会その他の交流とは、そのような日本の裁判所の従来の解釈とは全く異なるという理解でいいのか。

 そうだとした場合で、従来の裁判所の運用が一切変わらないのであれば、両親が別の国に住むケースにおいて、日本国内で一定の期間親子が面会その他の交流ができることを日本政府は保障する一方で、日本国内に両親がいるケースでは、子供は上記のような極めて制限的な面会その他の交流しか認められないということになりますけれども、そのような不均衡を正当化できる理由というのはございますでしょうか。

萩本政府参考人 今、日本の裁判所における解釈の話がありましたけれども、日本の裁判所が今解釈をしている民法七百六十六条に「面会及びその他の交流」という言葉がございます。この言葉と、今回提出しております条約実施法案の「面会その他の交流」、これはどちらも同じ意味でございまして、面会、手紙やメールのやりとり、電話、学校行事への参加など、その時々の状況に応じて、子の利益に最も適した方法で行う子と親との交流を意味するものでございまして、頻度やその態様を含め、画一的に決まった方法があるわけではありません。

 ハーグ条約は、先ほど来の答弁にもありますとおり、国境を越えて所在する親子の面会交流の実現のために支援する仕組みを定めるにすぎないものでありまして、実際にどのような頻度や態様で面会交流を実施するかについては、各締約国の法制や運用に委ねられているところでございます。

 したがいまして、両親が別の国に住んでいるケースであっても、あるいは、両親がどちらも日本国内に住んでいるケースであっても、いずれにつきましても、面会交流の頻度や一回当たりの時間などにつきましては、個々の事案における具体的な事情を考慮して、裁判所において適切に判断されることになるものと考えております。

浦野委員 返還拒否事由としてDVが盛り込まれています。DVの認定はどのように行っているのか。日本に子供を連れ去った親の多くが、DVを避けるために逃げざるを得なかったというふうに主張していると聞いています。その実態を聴取はしているのか。聴取したとすれば、DVの主張が虚偽かどうかの確認をしたのか。この件でアメリカの国務次官補が、DVの主張は大半は根拠がないということも言っております。

 日本の裁判所が一定の調査をせずにDVの認定をし、数多くのDV冤罪が生じていると言われております。もし日本の裁判官にのみDVの事実認定をされれば、虚偽のDVの主張に基づき返還拒否を日本の裁判所がすることになり、外交問題になりかねないんじゃないかと危惧しております。

 日本政府は、虚偽のDVの主張をするケースについてどのような対策をとるのか。常居所地国政府の調査協力などは必須であると考えますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 虚偽のDVの主張に対してどう対応するかという点についてお答えをさせていただきます。

 条約第十三条一に規定されている子の返還を命ずる義務の例外措置については、条約上、各国の司法当局等において適切な認定が行われることが前提とされており、我が国においても裁判所において適切な認定がされるものと考えております。

 具体的には、ハーグ条約の実施に当たり、子の返還申し立て事件の手続においては、当事者双方にそれぞれ主張、反論の機会や、みずから主張を裏づける資料を提出する機会が十分に付与されていること、また、裁判所においても、調査の嘱託や、家庭裁判所調査官による調査等を活用して、職権で必要な調査を行うことができるものとされているなど、裁判所による適切な認定が担保されていると承知をしております。

 こうした対応によって、虚偽のDVの主張にも対応できると考えております。そして、そうした対応を講ずることによって、外交問題になることはないと考えている次第でございます。

萩本政府参考人 前半のお尋ねについてお答えしたいと思いますが、まず、家庭内暴力、これが返還拒否事由になっているという御指摘がありましたけれども、実施法案におきましては、またハーグ条約そのものもそうですけれども、家庭内暴力そのものを返還拒否事由としているわけではありませんで、家庭内暴力があったという事実は、返還拒否事由の一つである「常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること。」という子の返還拒否事由の判断において考慮されることになるというように理解しております。

 家庭内暴力があったかどうかの事実認定のお尋ねがありましたけれども、家庭内暴力があったかどうかにつきましては、傷害があった事実を立証する医師の診断書あるいは写真、それから一時避難先の関係者の陳述書、それから警察などに対する相談時の申立人の状況などの照会結果、こういった資料に基づきまして裁判所において客観的な事実認定がされることになるものと考えております。

浦野委員 ということは、国務次官補がおっしゃった、大半は根拠がないということは否定をされるということでよろしいですね。

萩本政府参考人 アメリカなどにおいて、子を連れ去った者が、DVの被害を受けた、こう主張するのは大半は虚偽だ、こういう分析をしている調査結果とか、そういうことを主張している学者がいるのは事実と認識しております。

 ただ、その一方で、別の調査結果も存在すると認識しておりまして、その別の調査結果によりますと、連れ去った親が主張するDVが虚偽か調べてみたところ、そんなことはなく、七割、八割は真実であって、その大半が虚偽であるという結果自体が誤りである、こういう調査結果もあるところでして、そこは認識が分かれているところではないかと考えております。

浦野委員 この国務次官補の発言は平成二十三年九月四日の記者会見です。それでは、正式に抗議はされましたか。

平松政府参考人 ちょっとその具体的な内容を承知しておりませんけれども、具体的に何かそれに抗議した事実はございません。

浦野委員 ぜひ、された方がよろしいかと思います。

 このように、ハーグ条約が求めるルールと国内の裁判官らが創設して運用してきたルールとは著しい乖離があります。国内の裁判官に対し、国際的なルールに従い運用を改めるよう要請すべきではないでしょうか。

 要請に従わないようであれば、国内の連れ去り、引き離しを抑止するため、親権、監護権の決定の基準を明確に定める新法を制定し、裁判官らの運用を縛る必要があるのではないでしょうか。

後藤副大臣 浦野委員にお答えを申し上げます。

 委員の御指摘は、継続性の原則から、国内においては子の連れ去りが許容されることを前提とされていると思われるわけでございますけれども、実際の裁判実務におきましては、親権者や監護者の指定や変更についての判断に当たりまして、それまで子を監護してきた者が誰かということのほか、現在の監護者が監護を開始するに至った経緯や父母双方の子に対する愛情や監護に対する熱意、また面会交流に対する姿勢、養育能力や居住環境、子の年齢、子の心情、意向等の諸事情を総合的に考慮して判断がなされているものと承知をいたしております。

 また、国内において子の連れ去り等が行われた場合に、その後の裁判において争いになるのは、親権や監護権の判断そのものが問題になります。しかし、親権や監護権については判断せずに、不法な連れ去り等が行われた子をもとの居住国に戻すというハーグ条約に基づく子の返還申し立て事件、それとは、そういう意味では根本的に判断の枠組みが異なるものと考えられますので、これらを同じように取り扱って議論することは困難というふうに考えております。

 もう一つ御指摘がございましたが、加えて、ハーグ条約においても、子の親権や監護権のあり方については各国の国内法制に委ねることとされておりますから、国内において連れ去りが行われた場合の取り扱いと本法律案の内容及び趣旨との整合性が直接問題になることはないというふうに考えております。

 したがって、御指摘のような要請を行ったり新法を制定したりする必要はないものというふうに考えております。

浦野委員 先ほど民法七百六十六条の話が出ましたけれども、この七百六十六条を改正した結果、この立法趣旨を裁判官が十分に踏まえた運用をしていれば、新法は、本来、今おっしゃったように、必要はないと思います。

 七百六十六条改正の国会審議の中で明らかにされたように、子供の連れ去りや引き離しを行った親は、親権者、監護者指定に当たり不利な推定が働くとする裁判規範を裁判官が遵守すれば、ハーグ条約で定める国際ルールと整合性のとれたルールが国内にも適用されるはずです。

 法務省は、この民法七百六十六条の立法趣旨を司法にさらに周知徹底させるべきだと考えておりますが、いかがですか。

後藤副大臣 浦野委員にお答え申し上げます。

 民法七百六十六条は、離婚の際に父母が協議で定めるべき事項の具体例として面会交流そして養育費の分担を明示することによりまして、協議上の離婚をするに際しまして、当事者間での面会交流及び養育費の分担の取り決めを促すことを目的とするのは御指摘のとおりでございます。

 裁判所においても、その立法趣旨を踏まえまして、個別具体的な事情を考慮しながら監護について必要な事項を適切に判断しているものと承知しておりますけれども、法務省としても、御指摘のように、その立法趣旨を広く、引き続き一般に徹底してまいりたいというふうに考えております。

浦野委員 先ほど小熊委員の質問の中にもありました、このハーグ条約を締結することによって、我々は国内法もやはり整理をすべきじゃないか、今ある国内法をやはり変えなければいけないんじゃないかというふうに思っています。

 といいますのも、先ほどから答弁をいただいていますけれども、結局、国内法とハーグ条約の中身というのは非常に密接に絡み合う部分がたくさん出てくるわけですね。

 例えば、今おっしゃっていただいていた七百六十六条の件でも、裁判所は、もちろん自分たちの仕事ですから、この七百六十六条をよく御理解をいただいているかもしれません。ところが、こういう事例が実はあったんですね。私が大阪府議会議員のときに、平成二十二年の十月十四日に委員会で質問させていただいた、実際にあったことなんです。

 離婚された両親が、子供のお父さんが子供の小学校の運動会を見に行きたいと。親権は母親が持っているわけですね、日本は片親しか親権を持っていませんから。学校に問い合わせをしました、いつですか、子供の運動会を見に行きたいから。ところが、小学校は、あなたは親権者じゃないからということで、情報の提供を拒否しました。お父さんはそれはおかしいと言って、教育委員会に問い合わせをしました。教育委員会も、確認しますと。親権者である母親の方に、どうしますか、言っていいですかと言ったら、母親は、言わないでくれと断ってきた。それをもって、教育委員会はお父さんには運動会の日にちを言いませんでした。それは、例えば民法七百六十六条であれば、それは別に権利として認められていますよね。ところが、教育委員会はそれを拒否しました。

 そして、これはおかしいということで、内容証明をもって、もう一度回答を寄せるように手続をとりました。教育委員会はその問いに対しても、正式に、親権者でないあなたに情報を提供することは拒否しますということで、離婚しているとはいえ、自分の子供の小学校の運動会の日程すら、小学校、教育委員会は情報を提供することを拒否しました。これは裁判所では恐らく認められていることだと思います。

 質問通告していないですけれども、これはいかがですか。

萩本政府参考人 学校側の対応につきましてはお答えする立場にありませんので、離婚後の親権制度のあり方という観点で、親権制度を所管する立場からのコメントということになりますけれども、今のようなケースは、恐らく、学校に問い合わせるということは、親権者になった別れた母親に聞けない状況なのではないかと考えられます。

 そうしますと、そのような状況のもと、つまり、父親と母親がうまくいっていない状況の中で、母親が現在監護している子供のテリトリーに父親が入るということを意味するんだと思います。

 それが適当なのかどうかは、それはなかなか一概には判断できない、あるいは評価するのは難しいのではないかというように思います。

 ですから、先ほど面会交流について御答弁いたしましたけれども、面会及びその他の交流というものは、面会そのものはもとより、手紙やメールのやりとり、あるいは電話、学校行事への参加など、まさにその時々の状況に応じて、子の利益に最も適した方法で行うというのが望ましいということで、そのような観点から話し合いがされるべきだと考えておりますし、話し合いができずに裁判所の調停なり審判になった場面でも、そのような観点から裁判が行われるべきと考えております。

浦野委員 いや、そういう話ができないからこそ離婚されているんだと思うんですよね。両親の中でそういう話ができるのであれば、恐らく離婚までいっていないんじゃないかなと思います。それはちょっと認識がおかしいかなと思いますね。

 では、これが例えばお父さんが外国人だったらどうですか。教えてもらえないんですよ。でも、これはハーグ条約の趣旨と反する話になるんですね。

 日本は、伝統的に片親、これは明治民法で定めたまま、以来、ずっと片親にしか親権がないというやり方をやっているんですね。これが共同親権であれば、こういう考え方というのは恐らくなくなっていくと思うんですね。

 だから、私はやはり、ハーグ条約を締結するこの機会に、日本も、今の親権制度でいいのか、共同親権にするべきなのか、そういったところは考えるべきだと思います。そういう要望があれば検討していくというようなことを過去に法務大臣が答弁はされていますけれども、その検討をすべき時期にもう既に来ているのではないかというふうに私は国内の状況を見て思います。

 片方の親に親権がある、そのおかげで、例えばもう片方の親が、悪い親ですよ、もう自分の子供に興味を持っていない親が出てくる、それではおかしいんですね。

 私も過去の大阪府議会の質問で指摘をしましたけれども、この国の人たちは、権利はたくさん主張するんですけれども、その裏に義務があるということを教育で全く教えられないんですね。権利ばかりが主張されて、権利を持っているということは、その分、義務もあるということを教育で教えてこなかった、これは教育の非常に悪いところだと思います。

 自分の子供に対する会う権利というのはもちろん持っていますけれども、自分の子供を育てる義務もあるわけですね。そういったところが片親の親権制度では果たせない。

 私はなぜこういうことを言うかというと、虐待につながるんです、この片親というのは。だからこそ両親で子供を育てていく。たとえ両親の性格の不一致で、離婚の一番の原因は性格の不一致ですから、性格の不一致で別れようとも、その子供にとってお父さんとお母さんは変わらない。これは外務委員会なので、こんなおかしな質問になっていますけれども、これは非常に密接に絡み合っている問題なんです。

 大阪で、子供二人が餓死をするという虐待事件がありましたね。あのとき、お父さんは何と言ったか。インタビューを受けている方もどうかとは僕は思いますけれども、いつかこんなことになると思っていたと平気で答えたわけです。でも、これは、親権制度が共同親権であれば、お父さんにも義務が発生するわけですね。子供がどういうふうになっているかというのをお父さんも知っておかないといけないということになるんですね。私はこれがこの国の虐待を助長している一つの原因だと思っています。

 だから、私は、ハーグ条約の締結を機に、日本と同じように片親の親権を認めている国は少数ありますけれども、ハーグ条約を締結しているほとんどの国が恐らく共同親権なんですね。これは、やはり司法も、この国の制度、これは明治からずっと変わっていない。日本のこれまでの歴史を思えば、親権制度が片親にしかないというのは当時の常識ではあったかもしれません。ただ、恐らく、これは子供の権利を重要視してつくったものではないと思います。そのころ、そういった意識があったかどうかも私は疑問です。しかし、今は平成の時代、この時代に明治につくったものをやはり変えていくということはしなければいけないと思います。

 これは外務委員会ですので、答弁は別にいいんですけれども、もしこのことについて感想があれば、大臣、よろしいですか。

岸田国務大臣 先ほど共同養育ということで少し意見を申し上げさせていただきましたが、さらに委員の方からは、一歩踏み込んで共同親権という課題についてお話をいただきました。

 委員の御経験ですとか、それから事例につきましては大変興味深く聞かせていただきましたが、この共同親権という部分については、私自身としては、また少し勉強させていただきたいと考えます。

後藤副大臣 今、浦野委員から大変御示唆に富む御意見も伺ったというふうに思っております。

 少し法律的、制度的に整理させていただきますれば、先ほどからたびたび御説明させていただいているハーグ条約の性格と、それからそれぞれの国における法律というのが独立している問題であるということでございますので、そういう意味では、ハーグ条約を機会に日本が共同親権にならないといけないということでは決してないということでございます。

 その上で、では、国内として親権の問題をどうするかという問題はございます。そして、そのことについては、共同親権の方がいいのか、あるいは単独親権がいいのかということについては、賛否の意見が日本国内でも大きく分かれているというふうに認識もいたしております。単独親権の従来の所論からいえば、離婚に至った夫婦間では意思疎通がうまく図れないので、子の養育監護に必要な合意を適時適切にすることができないとか、そういうような、かえって子の利益の観点から見て好ましくないという議論も出ております。

 そういう意味でありますので、この点につきましても、いろいろな御意見を聞きながら慎重に検討していくべき問題だというふうに考えております。

河井委員長 浦野靖人君、おまとめをお願いします。

浦野委員 やってくれと言っているわけじゃなくて、ぜひ検討をしていただきたいということですので、よろしくお願いをいたします。

 以上で質問を終わります。

河井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

河井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。

 外務委員会におきましては初めての質問をさせていただきます。

 ハーグ条約の締結につきましては、私、衆議院の本会議場におきましても質問させていただいたとおり、子供の連れ去り事案といったものが国内、国外を問わず数多く発生しているということにつきましては、周知の事実だと思います。

 私自身、国会議員となる前には弁護士として仕事をしておりましたけれども、その仕事の一環として、突然子供を連れ去られてしまい、本当につらい思いをしている、そういった方にお会いをしたことがございます。また、一方的に連れ去られて、もう永遠に会えない、こういったつらさから、自分で命を絶つ、そういった決断をされた方すらいるという話を伺ったこともございます。自分の子供に会えなくなる状況というのは、私も二人の娘を育てる立場ですから、想像するに余りあるものがございます。

 しかしながら、その一方で、やむにやまれぬ事情から、子供を連れて日本に戻ってくるという決断を迫られた方も少なくありません。子供のためを思えばこそ、そのような決断をした方々の思いというものを理解することもまた重要です。

 この問題は、その両者の思いをしっかりと受けとめていくことが、大切な子供の奪い合いという不幸な結果を避けるためにも、どちらを優先するということではなく、いかに処遇することが子の福祉に最も合致するのかという視点をしっかりと持つことが最も重要である、このように考えております。

 この観点から、本件のハーグ条約についてさまざまな御質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、このハーグ条約第二章に規定されている中央当局の指定について伺います。

 この中央当局として外務大臣が指定されることになると伺っておりますけれども、この中央当局の役割とは何か、具体的にどのようなことを行うのかを含めてお答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 ハーグ条約におきましては、中央当局の任務を第七条に定めております。具体的には、一つ、子の所在の特定、二つ目として、子に対するさらなる害悪の防止、三つ目として、子の任意の返還または当事者間の友好的な問題解決の促進、四つ目として、子の社会的背景に関する情報の交換、そして五つ目として、司法上の手続のための便宜の供与、六つ目として、子の安全な返還の確保、こうしたものが定められております。

 子の所在の特定のために全ての適当な措置をとること、これは、ハーグ条約上、中央当局に課せられた義務であります。これを踏まえまして、条約実施法案において、中央当局が、国内の関係機関が有する必要な情報の提供を求め、入手し得ることとしております。中央当局は、同法案及び今後定める予定の政令の規定に従って、関係機関の協力を得ながら、子の所在の特定に関する措置をとるとされております。

 外務省としましては、ハーグ条約の実施に取り組むに当たり、中央当局としての任をしっかり果たしていく考えであり、そのためにも、国内の関係府省庁と緊密に協力、連携しつつ、政府全体が一丸となって必要な任務を遂行すべく、適切な体制の整備をしっかりと進めていきたいと考えております。

三谷委員 ありがとうございます。

 今お答えいただきました中に、全ての適当な措置を講じていくということが義務として課せられております。

 その中で、ぜひとも伺いたいと思います。子供の所在がわからないというときに、具体的にどのようなことをやれば子供が見つかるのかということについてお答えいただきたい。

 それはなぜかといえば、人を捜していくというような観点、これはもしかしたらもう何度も聞かれていることかもしれませんけれども、そういったことを従来からやってきた官庁ではないのではないかというようなことを感じているわけでございます。警察それから司法というようなことであれば、そういったことを従前よりやってきたというところはあるかと思いますけれども、外務省が具体的にどのように人を捜していくのか、しかも国内でということについて、具体的な手法についてお伺いしたいと思います。

平松政府参考人 御指摘のとおり、全ての適当な措置をとるということでございまして、外務省といたしましては、できる限りの措置をとるということでございます。

 当然、子の住所等の情報を有していると思われます関係機関に対しまして当該情報の提供を求めるということがまず第一でございますし、その中には、地方自治体もございますれば、関係する中央省庁もあるということだと思います。そういった中で、できる限りの措置をとりまして、その子供たちの所在を特定するということでございます。

 その具体的なやり方については、今後、政令等で決めていくということを考えております。

三谷委員 ありがとうございました。

 そしてもう一点、この中央当局の仕事、今お答えいただいた中にございました。しっかりと援助を行っていくということで、この後にもちろん裁判手続というものが待ち構えているところでございますけれども、できることならば、裁判手続を使わない形で解決をしていくということもしっかりと考えていくべきで、そこに中央当局が積極的な役割をぜひとも果たしていただきたいというふうに思っております。

 この中央当局としての役割が形骸化しないための今の体制づくりについて伺いたいと思います。どのような体制を整えていかれる御予定でしょうか。

岸田国務大臣 まず、中央当局には、外務省そして法務省から人材を適切に配置するほか、子の連れ去り、面会交流等に対応できる専門家でありますソーシャルワーカー及び弁護士を外務省職員として採用する予定にしております。発足当初は、全体として十名程度の体制となる見込みです。

 外務省としましては、平成二十五年度の予算案におけるハーグ条約締結関連経費として、中央当局関連経費や在外公館における相談対応・支援体制の強化や研修に関する経費等を含めまして、計約一億三千五百万円を計上しております。

三谷委員 その十名のスタッフ、そして一億三千万円余りというものを使って、子供を連れ去られてしまって困っているという方々のためにまずはしっかりと働いていただきたい、これはもう心からお願いをさせていただきたいと思います。

 今までも弁護士として仕事をさせていただいておりましたけれども、例えば月に五件から十件、そういった新しい相談が来るとした場合に、一回の電話で、一回の話のやりとりでその仕事が終わるということはまずありません。一回話をして、その後、二カ月、三カ月して思い出したようにまた話が来て、それでまた裁判手続になって、一つの事案について何度も何度もやりとりが行われていく、それがどんどん積み重なっていくという形で、最初は、こんなに少ない案件をこんな人数で対応していいのかなと思われることがあるかと思うんですけれども、それが半年、一年、二年、三年と続いていくことによって、飛躍的に負担というのはふえていくという形になるかと思います。ぜひとも、子供を連れ去られた方の立場に立って親身に対応していただく、そういう中央当局になっていただきたい、これは心からお願いをさせていただきます。

 続きまして、この中央当局の行う事項に関連して、一点、これは質問通告にないことですけれども、簡単な観点ですので、お答えいただきたいと思います。

 子供を捜していく、相手方を捜していくといったときに、もちろん、逃げ帰っているわけです。そういった逃げ帰った方の情報が相手方に行かないようにするために、特段の配慮というものはされておりますでしょうか。プライバシー保護の観点からお伺いをいたします。

平松政府参考人 個人情報の管理というのは非常に重要なポイントでございまして、基本的には、その情報というのは、裁判等で使うこと以外は決して外に漏らさないということでございます。

 したがいまして、中央当局が得た個人情報、特に、例えばドメスティック・バイオレンスに遭っておられる方のようなケースにつきましては、できるだけそれに触れる人の数を少なくするということが大事だと思いますし、あるいはいろいろな書類でメモをとるということもあると思いますけれども、そういった書類の管理をきっちりやるということを通じまして、あるいは、職員の教育をいたしまして、そういった管理をしっかりやるということを徹底したいというふうに思っております。

三谷委員 ありがとうございました。ぜひとも、安心して使える、そういった制度に仕上げていただきたい、これを心からお願いさせていただきます。

 続きまして、ハーグ条約第五条におきます監護の権利ということについてお伺いをいたします。

 ここにおきます監護の権利とは具体的に何を意味するのでしょうか、お答えいただきたいと思います。

あべ大臣政務官 お答えいたします。

 ハーグ条約上、監護の権利に含まれる具体的内容といたしましては、その居場所における決定の権利を含むという規定がございますが、そのほかには、監護の権利について具体的に定める規定はございません。

 したがって、子の監護の権利につきまして、子がもともと居住していた国の法令に基づいて、これは条約の第三条になりますが、判断されることとなるものというふうに理解されます。

三谷委員 監護の権利を有する者というのが誰かというのが一つ大きな争点になってこようかと思っております。

 日本法におきますと、親権というものを持っているかどうかというのは、これはもう明確です。そして、親権を変更するということにつきましては、家庭裁判所への申し立てというものが必要になってまいります。

 しかしながら、監護権者というものは、基本的には親権者と同一ではありますけれども、当事者間での協議、合意によって監護権者を変更するということが可能になっております。だからこそ、監護の権利を有する者に該当するかどうかというのは、これは実は非常に繊細な判断が求められるような局面が多々出てまいります。

 そこで、伺います。

 どこまで疎明または立証、証明すれば、ここで言う監護の権利を有する者に該当するものとして取り扱われるのでしょうか。

平松政府参考人 まず、前提といたしまして、この条約自体が、監護の権利について定めたものではございません。あくまでも、監護の権利というのは、それぞれの国が定めるということでございます。

 その監護の権利が侵されたかどうかというのがまさにこの条約のポイントなんですけれども、それをどう判断するかというのは、これはまさにそれぞれの国が判断するということになります。それは、最終的にそれぞれの国が一定の裁判手続をとって決めていくことになると思います。

 したがって、この条約というのは、まずは、連れ去られた子供をもといたところに戻すということでありまして、そこから先の監護権の問題、あるいは親権の問題というのは、その国の裁判で決まっていく、こういうふうになっているわけでございます。

三谷委員 今のお答えですと、もちろん、最終的にその国に戻した後に誰が監護権を行使すべきかという話は別途争われるべきものというふうに規定はされておりますけれども、そもそもこの手続を使えるかどうかというのも、監護の権利を有する者が監護の権利を侵害されたというぐあいになっているはずですので、そこの認定というのが一つまず難しくなってくるというところを御指摘させていただきたいと思います。

 この監護の権利ですけれども、これが広く認められる、そのような国はございますでしょうか。

 では、一つ質問を追加します。

 例えば、日本の場合は、離婚をした場合には妻または夫が親権者となる、相手方は基本的に親権者でもないという観点から、基本的には監護権がないというふうに言われるところではございますけれども、監護の権利というものが広く認められる、生物学的に父であるというだけで認められる、そういった国はありますでしょうか。

平松政府参考人 大変恐縮でございますけれども、今この時点で、どの国がそういう制度を持っているかということは、手元に資料がございません。

三谷委員 ありがとうございました。

 監護の権利というのがどういった国で広く認められるかということにつきましては、実は、日本のように共同親権というものが認められていない国については、離婚をした後には、親権を持たない当事者に関しては監護権というものを認めにくいというような状況はあるんですけれども、いわゆる共同親権というものを認める国におきましては、実際に監護をしているかどうかにかかわらず、親権という権利がありますから、そういったものに基づいて、監護権というものを主張することができるようになっている。

 そして、今お答えいただいて、どの国が具体的にそういった共同親権というものを持っているかについて情報がないということでしたけれども、アメリカ、フランス、ドイツ、広くヨーロッパの国々、そして韓国や中国、そういった国々まで広く共同親権が認められているというふうに資料には書いてあるところでございます。

 ですから、この前提で質問をいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、父親であるというだけで監護の権利が認められる国における、共同親権が認められている、そういった場合には、離婚後も父親と母親双方が親権者であるということから、当然に監護の権利を有するというふうになりますけれども、一方で、日本の場合には、離婚をした後、親権というものをとらなければ基本的に監護の権利もないということで、ハーグ条約に基づく手続というのはとることができないという形になるわけです。

 これは何を意味するか、どういう結果になるかと申しますと、例えば、アメリカから子供を連れ戻した後に、ハーグ条約の手続に基づいて、裁判手続で無理やりアメリカに戻すというような判断が出されることが考えられるのに対して、日本からアメリカに連れ去られてしまったというような場合には、日本の親権を持たない一方当事者、配偶者に関しては、アメリカの手続で日本にその子供を引き戻すということができない。

 これは、見方によっては、一方的な、片務的な形になっているというふうに理解をすることができるんですけれども、そういう結果になるとすると、もしかしたらハーグ条約に入らなかった方がよかったのではないかというような声さえ聞こえてくるかもしれません。その点を解決するために、共同親権というものを認めていく、そういった考えがございますでしょうか。

後藤副大臣 ただいま三谷委員から御指摘をいただいたとおりでありまして、単独親権制度の国におきまして、今おっしゃったような、親権を持っている親が外国に連れていったような場合に、親権のない相手方の親が対応できないのではないかという点については、結果としてそういうことになるような仕組みではございます。

 しかしながら、離婚後の親権制度を共同親権にするのか単独親権にするのかといったような問題については、これは、それぞれの国の制度の中で考えていく問題だというふうに思っております。

 日本が単独親権をとっておりますのは、子の養育監護について必要な合意を適時適切にとることがかえってできないのではないか、そのことが子の利益にならないのではないか、そういう観点から慎重に検討する必要もあるのではないかというふうに思っておりますが、さまざまな御意見があることはよく承知しております。

三谷委員 そのさまざまな問題、これは、日本だけが先んじて挑戦をする、試していくという制度では決してありません。他国で、数多くの国々でそういった問題は乗り越えられているというような問題でございますから、日本でもしっかりと検討していただいて、そういった問題を含めて乗り越えていただきたいというふうに考えております。

 共同親権というものにつきましては、実は、世間にはこれを求めている方々が本当に多くおります。子供の福祉ということを考えると、どっちかだけの子供ではない、親権をとらなかったからといってその子供の親でないということになるわけではない、これは明らかであります。

 いずれにしても、これは権利というよりはむしろ義務の側面が多いんですけれども、親としての義務をしっかりと果たしていただく、そして親としての自覚をしっかりと持っていただく、その観点からも、この共同親権というものを進めていくべきではないか、このように考えている次第でございます。

 それでは続きまして、次の質問に移らせていただきます。返還拒否事由の問題に移ります。

 条約第十三条第一項bにおきまして、子が心身に害悪を受けることとなる重大な危険、これは原文ではグレーブリスクというふうになっておりますけれども、この重大な危険とはどこまでの危険性を必要とするかというようなことについて伺ってまいります。

 この条約十三条一項bの文言を受けまして、実施法二十八条一項第四号におきまして、「子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険がある」場合には、子の返還を拒否することができるものとし、同条第二項において幾つかの考慮要素が認められているのは御承知のことだと思います。

 例えば、DV、ドメスティック・バイオレンスの場合、これは、子供に対して暴力が振るわれるということではなく、配偶者に対して暴力が振るわれるおそれがあるということについて、この中に含まれるという理解でよろしいのでしょうか。

萩本政府参考人 実施法の枠組みにつきましては、今委員にきれいに整理して御紹介いただいたとおりでございます。

 実施法案におきましては、家庭内暴力そのものは返還拒否事由とされておりませんけれども、返還拒否事由の一つとして掲げられております、「常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること。」この判断において家庭内暴力というものが考慮されることになると整理しているところでございます。

 もっとも、この「重大な危険があること。」という文言は抽象的であって、その判断についていかなる事情が考慮されるかが必ずしも明確でないため、実施法案におきましては、これもまた御紹介いただいたとおりですが、幾つかの考慮事由を掲げておりまして、その考慮事由として、相手方が常居所地国に入国した場合に相手方が申立人から子に心理的外傷を与えることとなる暴力等を受けるおそれの有無というのを掲げておりますし、あるいは、相手方がその常居所地国において子を監護することが困難な事情、これもまた考慮事由として掲げているところでございます。

 お尋ねの家庭内暴力ですけれども、例えば、申立人の相手方に対する暴力が子の面前で行われていたというような場合ですと、前者の、子に心理的外傷を与えることとなる暴力ということに該当することになると考えられますし、申立人の相手方に対する暴力が子の面前でされた場合でなくても、相手方が暴力によって精神的に不安定な状態に陥り、子の心身にも悪影響を及ぼすような場合には、やはり前者の考慮事由に該当することになると考えているところでございます。

 また、相手方に対する暴力が子の面前で行われたか否かにかかわらず、相手方が過去に受けた家庭内暴力のため、その常居所地国に戻った場合に精神疾患を発症するおそれがあり、子とともにもとの居住国に戻ることが困難である場合や、もとの居住国に戻っても子を監護することができる精神状態にないような場合、このような場合には、先ほど御紹介しました後者の考慮事由、すなわち、子を監護することが困難な事情に該当することになると考えられるところでございます。

 したがいまして、具体的な事案において、これらの考慮事由に該当する事実その他一切の事情を総合的に考慮した結果、「子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険がある」と判断される場合には、返還拒否事由に当たることになって、裁判所は、子の返還を命じないことになると考えているところでございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 本当におっしゃるとおりなんです。そこに規定されている内容がそのまま適切に運用されているということであれば、まさに子の福祉をしっかりと守っていくことにつながる、私もそのように考えているところではございますけれども、しかしながら、今の家庭裁判所の実務というものを見ていますと、必ずしも安心してこの規定に委ねるということができないのではないかというふうに思われるわけでございます。

 今の家庭裁判所の実務を見ますと、これは実は、専門家としての調査官に事実関係の調査というものを職権でさせて、それに基づいて作成された報告書に記載させる、家庭裁判所の裁判官は、事実関係を含めて基本的にはそのまま認定していくということになるわけです。事実認定については、本来は、裁判官というものは事実認定のプロですけれども、調査官は事実認定のプロではありません。もちろん、心理学にはたけているかもしれないけれども、証拠に基づいて事実を認定していくということの訓練は受けていないはずなんです。しかしながら、実務上は、その調査官がつくった報告書というものが、事実認定を含めてほぼ全てを決定してしまっているというような傾向があるわけです。

 だからこそ、今、この規定において恐れられているのが、いわゆるDV冤罪の話です。DVを受けたんですといってそれを騒ぎ立てる、まあ、騒ぎ立てるという表現が適切かわかりませんけれども、冤罪という観点からすれば、受けてもいないことを大げさに言うというようなことによって、本当にやってもいないDVが認められてしまう、またはそのおそれがあるというふうに認められてしまうというのが現状なんです。

 今のままの制度では、今の返還拒否事由のもとで安心して裁判を使っていくことはなかなか難しいというような状況ではございますけれども、この点、今の家庭裁判所の事実認定のあり方というものを含めて、これを是正していくというような意向があるかということを含めて、法務省の見解を伺いたいと思います。

後藤副大臣 今、三谷委員から、家庭裁判所の裁判官は家庭裁判所調査官の事実認定をうのみにして事実認定を行っているのではないかという御指摘がありました。

 制度的には、おっしゃるように、家庭裁判所は、当事者の双方に十分な主張やあるいは裁判資料の提出の機会を与えるとともに、必要に応じて裁判所が家庭裁判所調査官に事実の調査をさせるなど、職権で裁判資料を収集することとされております。

 この家庭裁判所調査官の報告は、重要な裁判資料の一つではあります。しかし、家庭裁判所は、当事者双方の主張を踏まえつつ、その他の裁判資料を含む一切の裁判資料に基づいて事実認定を行っているものというふうに承知をしておりまして、家庭裁判所調査官の事実認定をうのみにしていることはないというふうに思っております。

三谷委員 そういったものを確認調査していただける、そういった機会をぜひとも持っていただきたい、これは心からお願いをさせていただきたいと思います。

 この点につきましてはそれに委ねるといたしまして、続きまして、今のハーグ条約とそれの実施法との関係について伺いたいと思います。

 まず、刑事事件の取り扱いについて伺います。

 日本の中で子供を連れ去った場合につきましては、未成年者略取誘拐罪というものが成立をいたします。これは、別居中でまだ婚姻関係にあるという共同親権者、これが相手方と同居している子供を連れ去ったときですらこの未成年者略取誘拐罪というものが成立する場合があるんだというような判例もあるところでございます。

 アメリカから日本に連れ戻したことを理由として、もちろん、アメリカにおけるいわゆる未成年者略取誘拐に相当する犯罪によって指名手配されているという例があると言われております。ハーグ条約に加入することによって、アメリカから日本に連れ去ってきたというような方の犯罪の関係といいますか、そういったものが例えば変更を受けるのかということについて伺いたいと思います。

 補足いたします。ハーグ条約に加入することによってアメリカでの犯罪の成否に何らかの影響があるのかということについて、法務省の見解を伺いたいと思います。

後藤副大臣 アメリカでの犯罪への影響について、法務省でお答えする問題でもないというふうには思っておるのでございますけれども、ハーグ条約と、それぞれの国におきます、いわゆるその国における刑事司法の取り扱いについては、これは別の問題であるというふうに考えております。

 もし私がきちんと理解していなかったのなら一言補足いたしますけれども、例えば、刑事訴追をされるおそれのある人に、ハーグ条約の適用によって、それがいわゆる返還拒否事由に該当するのかどうかということであれば、その点については、ハーグ条約においては、子の返還拒否事由に該当するかどうかの考慮要素の一つとして、刑事訴追が行われているかどうかということについては考慮の対象になります。

 ただ、そのことをお聞きになられたのではないかもしれないので、ちょっと失礼いたしました。

平松政府参考人 実際の、例えばアメリカにおける刑事訴追とハーグ条約が直接関係するわけではないと思います。

 他方、ハーグ条約に入ったことによって、子供がハーグ条約の結果として返還されることになるというようなことになった場合、例えば向こうにいる親が刑事訴追を取り下げるとか、そういうケースはあろうかと思いますので、結果的に、刑事訴追がなくなって、より帰りやすい環境をつくるということもあろうと思います。

 他方、それに加えて、ハーグ条約をできるだけ適用する観点からは、例えば、そういう事件であってもなるべく刑事訴追しないようにした方がいいんじゃないか、そういうようなことを勧めているという例もありますので、そういうことによって、間接的にではありますけれども、刑事訴追とハーグ条約の適用が関係をするということはあると思います。

三谷委員 ありがとうございました。

 実は、これは民事上の側面に関する条約なので刑事的には全く影響ありませんと答えていただいてもよかったというか、質問が悪かったのかもしれないんですけれども、刑事的には全く影響を受けないということだと思います。

 そういうことによって何が起きるかというと、実施法の中で、刑事訴追を受ける可能性があるという場合には返還拒否をしてもよいと、返還拒否事由になっているわけでございます。刑事訴追を受ける可能性がある場合には返さなくてもよいという文言は、ハーグ条約原文の中にはございません。実施法の中にある話でございます。

 だとすると、ハーグ条約の規定、内容と実施法の内容に実はそごがあるんじゃないかというふうに思うわけですけれども、この点についてお答えいただきたいと思います。

平松政府参考人 実施法の中身というのは、これまでのいろいろなハーグ条約の運用等を踏まえまして、実際、運用の中でどういうふうに適用されているのかということをいわば確認的、例示的に示したものでございまして、それが全体としてハーグ条約の考え方に反しているかというと、そうではなくて、あくまでもそれをわかりやすく、確認的に書いたというのが実施法の精神でございます。

三谷委員 今の運用だとそうだけれども、将来的に運用が変わった場合には、この規定だけが取り残されるという可能性もあるということを一言指摘させていただきます。

 ハーグ条約と実施法との関係という観点から、もう一点御質問させていただきます。

 条約の十三条第一項におきましては、返還拒否事由の事実というのは、子の返還に異議を申し立てる個人などなどが証明する場合には、返還する義務を負わないという規定になっています。この条約の原文におきましても、イフ・ザ・パーソン・エスタブリッシーズ、その人がそういったことを証明できた場合にはと、立証責任を負う主体は返還拒否事由を主張する側であるということは明らかです。

 しかしながら、実施法ではその条約の規定が必ずしも反映されていないのではないかという懸念がございます。

 それは何かと申しますと、通常の事件では、弁論主義がとられ、主張する側が立証責任の負担も負うことになっています。自分が何かを求める場合には、それを言うだけではなく、立証しなければいけない。しかしながら、家庭裁判所の実務、いわゆる家事事件におきましてはこの限りではありません。弁論主義の適用が排除され、これは職権調査といいますけれども、当事者が主張しない事実をしんしゃくして、かつ職権で証拠調べを行うことができる、いわゆる職権探知主義というものがとられております。

 実施法に基づく手続について伺いますけれども、この実施法の中での手続というのは、弁論主義が適用されているのでしょうか、それとも職権探知主義が適用されるのでしょうか、伺いたいと思います。

萩本政府参考人 職権探知主義が適用される場面でございます。

三谷委員 そうなんです。職権探知主義が適用されるということになるわけです。

 もし職権探知主義だとすると、必ずしもその個人が返還拒否事由というものを立証できないとしても、裁判所があれやこれや資料、主張を追加して、結果として、そういったものがある、ないということを判断するという形になってしまうわけでございます。

 この法律というのは、個人がそういった事実、そういった返還拒否事由を立証できたときというような規定とは明らかにそごがあるんじゃないかというふうに考えておりますけれども、その点についてお答えをいただきたいと思います。

後藤副大臣 お答えをいたします。

 子の返還申し立て事件の手続におきましては、子の利益の観点から、実体的真実に合致した判断が求められることを考慮し、裁判所が職権で事実の調査をする、申し立てにより、または職権で、必要と認める証拠調べをしなければならないものとしているのは、今御答弁させていただいたとおりでございます。

 もっとも、職権による資料の収集にも限界がありまして、また、子の返還申し立て事件の性質上、適正迅速な判断のためには当事者の協力が不可欠であるというふうに考えられることから、返還事由については申立人が、返還拒否事由については相手方が、それぞれ資料を提出する旨を定めておりまして、これにより、必要な資料の迅速な収集を促すことにいたしております。七十七条二項でございます。

 このように、返還拒否事由については、一次的には、子の返還拒否事由があると主張する相手方において資料を提出するものとされておりまして、必要に応じて職権による調査もされますが、これによってもその事実の存否が不明である場合には、返還拒否事由は存しないものとして取り扱われまして、相手方が不利益を受けることになります。そういう意味では、真偽不明だった場合には不利益を受けるという、客観的な立証責任を負っているということでございます。

三谷委員 その点は条文をどう解釈するかという観点ですけれども、誤解があるのではないかと思われるわけです。

 裁判所がそういった立証責任に基づいて事実を認めるか否かという観点でいけば、そのとおりだと思います。しかしながら、ハーグ条約においては、その人が立証できたときにはということ、証明できたときにはというふうに明確に規定されている、これは原文を見てもそのとおりです。そういうふうに書いてあるわけですから、今の扱いというのは確実にそごがあるというふうに言わざるを得ません。

 この法案というものがこのままの文言でいくということであるとすれば、ぜひとも、この立証責任の分担、負担というものについて慎重に配慮いただいた事実認定をされるように心がけていただきたいというふうに思いますけれども、その点についていかがでしょうか。

後藤副大臣 先ほど御質問もありまして、今の質問と関係があることなので、もう一度整理してお話をさせていただきます。

 ハーグ条約十三条第一項は、子の返還に異議を申し立てる相手方が、子の返還申し立て事件における当事者として返還拒否事由を裏づける資料を提出することを前提として、「証明する場合には、」と表現しているというふうに考えておりまして、その趣旨は、裁判所において返還拒否事由が認められる場合にはということと同義であるというふうに解されております。

 そういう意味で、裁判所が返還拒否事由を判断するに際して職権で事実の調査をすることを否定するものではない、したがって、家庭裁判所が事実の調査をすることがハーグ条約第十三条第一項に反するものではないというふうに思料しておりますし、いずれにしましても、適切な判断をすることになるというふうに思っております。

三谷委員 自分がなぜこの問題にこだわるのかといいますと、先ほど申し上げた、いわゆる家庭裁判所の実務に対する不信感というものがあるからであります。

 自分自身も幾つか家事事件に携わらせていただきましたけれども、やはり、しっかりとした事実認定というものがまだまだ行われていない。もちろん、職場の人間関係のことでございますから、調査官と裁判官がうまくやっていくというのは必要な観点だと思います。しかしながら、調査官が行った事実認定をそっくりそのままひっくり返すということを、ぜひとも勇気を持って裁判官にもやっていただきたい。これは、事実認定のプロとしてしっかりその職を全うしていただきたいということを、ここにいない裁判官の方々にお願いをさせていただくという形になるかと思います。

 それでは続きまして、ダブルスタンダードという観点からの質問に移らせていただきます。ハーグ条約については最後になります。ハーグ条約の締結の意義について伺いたいと思います。

 これは、以前から、ハーグ条約を締結しないということで、子供を連れ帰ってくればそれで勝ちだというような、いわゆる拉致司法といって世界からやゆされたり非難されたりというような実態がございました。今回、ハーグ条約を締結することでそういった汚名を払拭するということで、画期的なことだと私は考えております。だからこそ、国外からの拉致司法という汚名を払拭するのであれば、国内においての拉致司法との悪評もしっかりと拭い去っていただきたいということをお願いさせていただきます。

 民法七百六十六条というものが改正された今でも、事実上、子供を連れ去った方が勝ちと言われるような対応がまかり通っているわけでございます。ぜひとも、離婚した後に誰が監護するのかということも含めてしっかりと協議をするんだ、それの趣旨を踏まえて、ただ単に、事実関係がある、子供を育てている、そういう関係があれば子供の監護権を認めていくというような今までのあり方というものは、ぜひとも変えていただきたいというふうに思います。

 ぜひとも法務省にお伺いをいたします。

 最高裁との間で、もしくは現場の家庭裁判所の裁判官との間で、さまざまな事実認定、それから制度のより効率的な運用に関して情報交換等を行ったりする、そういった機会はございますでしょうか。

萩本政府参考人 裁判手続に関する法律を所管している立場でございますので、その手続に関するルールを考えるに当たって、実際それがどのように運用されているか、それは、事実認定の点も含めて一般的な形での意見交換をする機会はもちろんございます。

 ただ、個々の事件の事実認定についてどうかと言われますと、それは当然のことながら司法の御判断でございますので、それについて何かこちらから意見を申し上げるとかいう関係ではございません。

三谷委員 ぜひとも、よりよい制度の構築を目指してしっかりと取り組んでいただきたい、これをお願いさせていただきます。

 続きまして、国境を越える連れ去りに関連をいたしまして、国境をいかに考えるかということも非常に重要なテーマでございます。そこで、多少こじつけかもしれませんが、日本が抱える領土問題について、尖閣諸島及び竹島の二点に絞って質問をさせていただきたいと思います。

 まず、その前に、一点だけ通告にない質問をさせていただきます。

 本日は、いわゆるひげの隊長でおなじみの佐藤政務官にもお越しいただいておりますけれども、実は私の父親も海上自衛官でございまして、父親の背中を見て成長してまいりました。命をかけて日本を守るということ、その精神が、自分を弁護士という職業から政治家への道へと突き動かしたのではないかというふうに感じているところでございます。

 そこで、まず政務官に伺います。

 自衛官であったという経験が政治家としての仕事にどのように生きていらっしゃるのか、その点について伺いたいと思います。

佐藤(正)大臣政務官 三谷委員にお答えいたします。

 自衛隊に入隊するときに宣誓をいたします。その一番最後の部分で「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」と、何かあったら自分の命を犠牲にしても国家国民のためにということを宣誓し、署名捺印して自衛隊に入ります。

 この覚悟というのは、私は、政治家、とりわけ国会議員にとっては共通する部分があるというふうに思っています。そういう思いで、現場の実情というものをいかに政策や法律あるいは制度というものに反映するかというのが非常に大事で、私は、この六年間、その観点でさまざまな活動をさせていただいたというふうに思っております。

 以上です。

三谷委員 ありがとうございました。

 では、尖閣問題について質問をさせていただきます。

 最近では、尖閣諸島近辺が非常に慌ただしくなっております。この尖閣諸島は、もちろん日本固有の領土でございます、今、実効支配を行っているところでございますけれども、これをしっかりと守っていくということは極めて重要なところでございます。

 この問題、必ずしもなかなかうまくいくという話ではないかもしれませんけれども、この実効支配をしっかり守っていくことについての意気込みをまず外務大臣から伺いたいと思います。

岸田国務大臣 尖閣諸島をめぐる状況については、関係機関と緊密に連携をしつつ、我が国固有の領土、領海、領空は断固として守り抜くという決意で外務省としても取り組んでいかなければならないと考えております。

三谷委員 ありがとうございました。

 この尖閣の問題、まずはしっかりと外交交渉、その中でその解決に向けて取り組んでいただきたいと思っておりますけれども、必ずしもそれだけでうまくいくというわけにもいかないかもしれません。

 この点で非常に参考になるのが、以前行われたフォークランド紛争でございます。このフォークランド紛争が起きたときには、アルゼンチンの中で国内のさまざまな波乱要因があった。そういった不満から目を外に向けさせるというような観点、そして民間人が次々にそういったところに上陸をしていったというようなことの延長線で軍事衝突へとつながったわけでございます。

 今、この尖閣におきましても同様の事態が生じているのではないかというふうに考えられますけれども、もし軍事衝突というものがあり得るとした場合に、それについての備えというのはどのようにされているのでしょうか、伺いたいと思います。

佐藤(正)大臣政務官 お答えいたします。

 国境の領土、領海、領空を守る、これにつきましては、三谷委員のお父様の熱い思いというものをお受けになって三谷委員がこの国政の場に進出されたということから考えますと、これは、一緒にいろいろ考えて、しっかりと守っていくという体制をとっていきたいと思っています。

 当然、我が国の領土、領海、領空を守るのは政府の責務です。その意味におきまして、昨年の九月以降、中国の公船が尖閣諸島周辺の我が国の領海に断続的に侵入している、これは我が国に対する主権の侵害であり、まことに遺憾だというふうに考えています。

 防衛省・自衛隊といたしましては、P3C哨戒機などを柔軟、機敏に活用して警戒監視を適切に行い、その際、得られた情報については、尖閣周辺で中国公船に対応しております海上保安庁、これらにも提供するなど、関係省庁と連携をしながらその対応をとっております。

 また、昨年十二月十三日の中国の国家海洋局所属の固定翼機Y12による尖閣諸島領空侵犯事案を踏まえまして、早期警戒管制機などを活用し、より実効的な対処に現在努めております。その後、同型機による尖閣諸島周辺における一連の飛行に対しましても、適切な対応をしているという状況であります。

 他方、日本と中国との関係は非常に重要な二国間関係の一つであることから、個別の問題はあるにしても、大局的な観点から中国との関係を進めていく必要もございます。

 そういう政府全体としての取り組みの中で、軍の動向を含め、各種ケースに対応できるよう、警戒監視活動や対領空侵犯措置に万全を期すなど、我が国の領土、領海、領空を守り抜くため、必要なあらゆる措置をとってまいります。そういう覚悟であります。

 以上です。

三谷委員 ありがとうございました。

 この尖閣の問題、しっかりと対応していただきたいと思います。

 続いて、竹島の問題について伺います。

 先日私は、島根県で行われました竹島の日記念式典に参列し、その中で御挨拶もさせていただいてまいりました。この竹島の問題というのは、長年、島根県の重要な懸案事項でございまして、竹島問題の解決というのは、長年にわたって島根県最大の要望事項であったというふうにも聞いております。

 この竹島の日記念式典というのは以前からございましたけれども、これに日本政府が参加したことはことしが初めてということで、昨年に至るまでなく、また、地元選出の自民党の国会議員本人がこの式典に参加したこともほぼなかったというふうに聞いております。どうしても、尖閣の問題に対して、竹島の問題については、及び腰という印象を拭い去ることができません。

 そこで、伺います。

 この竹島の問題の解決ということを考えたときには、国際司法裁判所というものを使って解決するんだというようなことが必ず出てまいりますけれども、まず、この国際司法裁判所でそういった問題を解決したという例がどれぐらいございますでしょうか、お伺いいたします。

岸田国務大臣 国際司法裁判所が設立されてから、領土の境界画定に関する事例と島等の領有権を争った事例をあわせ、判決の出ているものに限って申し上げますと、現在までに十五件、例があると承知しております。十五件の中でアジアの例としましては、マレーシアとシンガポールが争ったペドラブランカ、バトゥプテ島、ミドル岩礁と南レッジに対する主権事件、こういった事件が含まれております。

三谷委員 十五件というのは決して少なくない数だと思うんです。国際司法裁判所というのは、双方がそれによって解決することについて同意をしない限りは、この手続によって解決はできないという前提になっておりますけれども、そういった十五件の問題というものが、この国際司法裁判所で領土問題が解決されたということであるのですから、ぜひとも、そういった問題の中で、何で双方当事者がその手続によって解決しようというふうに思うに至ったのかということをしっかりと分析していただいて、何が足りないのか、韓国に対してそういった手続を使っていくということに同意をさせるために何が必要なのかという観点をしっかり分析していただいて、この竹島の問題についても、ぜひともしっかりと解決をしていただきたいというふうにお願いをさせていただきまして、質疑の持ち時間が終了いたしましたので、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

河井委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、いわゆるハーグ条約について、この間、質疑がありましたけれども、まず、基本的なことを岸田大臣に伺っておきます。

 この条約は、一九八〇年に採択をされて、一九八三年に発効し、現在、八十九カ国が加盟をしている。G8では日本だけが締結しておらず、とりわけこのことを欧米諸国が問題視をし、そして締結を求める要請が繰り返し行われるようになってきたところでございます。

 この条約に日本が加わることによってどのようなことが改善されるのか。子の連れ去り問題、及び、それを含めて各国との関係発展という、二つの面と言ってもいいかもしれませんが、双方の視点から、大臣の基本的な認識を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 我が国がこのハーグ条約を締結することで、子の不法な連れ去りが発生する際には、国際的なルールに従って問題が解決されるようになります。具体的には、国境を越えた子の連れ去りに対し、中央当局による支援を受けつつ、条約に基づいた手続をとることができるようになります。

 また、条約未締結を理由とする、我が国への子を伴う渡航制限が改善される、こういったことも期待されます。具体的に、現在、子の居住する国の裁判所が、ハーグ条約に基づく返還が保障されないことを理由として、子の出国を認めない事案が発生しております。こうした事案につきましても、我が国の条約締結により事態が改善されること、こういったことも期待されます。

 さらには、国境を越えて所在する親子の面会交流の機会の確保につきましても、中央当局の支援を受けることができる。

 このように、さまざまな効果が期待されるわけであります。この締結は、大変重要な意義を有していると認識をしております。

笠井委員 もう一点大臣に伺っておきますが、国際結婚した親の一方が、日常生活している国から子を連れ去る理由というのはさまざまあると思うんですけれども、外国人の配偶者から、先ほどもありましたドメスティック・バイオレンスや児童虐待を受けて、それから逃れるためにやむなく子を連れて自国に戻るケースも少なからずある。そのような場合に、本条約が適用されて子の返還が命令されるということについて、ドメスティック・バイオレンスの被害を受けた母親が不安を感じているというケースが多くある。

 仮に母親の意に反して子の返還命令が下された場合に、親が、子の利益を考えると、常居所地国に戻るという判断をせざるを得ないということもある。その場合に、常居所地国で連れ去りについての刑事訴追を受けるおそれや、再びドメスティック・バイオレンスを受ける可能性もあって、連れ去った親としては、過酷な選択を強いられるということになります。

 そういう中で、ドメスティック・バイオレンスの被害を受けている女性あるいは関係者、弁護士の方々などから、国内の実情における審査、運用の過程でこのドメスティック・バイオレンスがどのように考慮されるのか、極めて重大な問題だというふうに捉えていらっしゃる。問題とされております。

 この問題の重要性について大臣の認識を伺えればと思うんですが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 政府としましては、御指摘のようにDVの被害者の方々から強い懸念が示されているということ、これは認識をしております。こうした強い懸念に応ずるべく、当事者や国際家事事案の専門家等も含め、さまざまな方面から御意見を丁寧にお伺いしながら、条約の締結準備を慎重に、また丁寧に進めてきた次第です。

 具体的には、条約実施法案において、子の返還拒否事由を認定する際の考慮要素として、DVに関する規定を盛り込んでおります。また、同法案については、DV加害者に被害者の所在を知られることがないように十分配慮して情報を管理するとの観点から、関連する情報についても厳格に取り扱う旨、規定しております。

 また、在外公館においては、現地の保護・救済制度の説明、弁護士等の紹介、現地団体と連携した支援等を行っているほか、さまざまな相談を受けるわけですが、受けた相談について記録を作成するとか、あるいは相談本人が希望する場合には当該相談記録を提供するとか、さまざまな支援を考えていかなければなりません。

 こういった支援は従来も行ってきたわけですが、条約を締結したならば、さらなる支援体制の強化も考えていかなければいけない、こうした問題意識を持って取り組んでおります。

笠井委員 そこで、法務省に伺いますが、ハーグ条約第十三条では、子の返還を拒否することができると規定されております。特に、一項bでは、「返還することによって子が心身に害悪を受け、又は他の耐え難い状態に置かれることとなる重大な危険がある」ときは、子の返還を拒否することができると規定をしているわけであります。本会議等の答弁でも、DV被害者の不安とのかかわりでこの規定が説明をされてまいりました。

 しかし、この規定は極めて抽象的な表現であり、昨年三月の政府答弁でも、この規定自体は非常に規定内容が抽象的で、裁判所において具体的にどのような事情を考慮して判断すべきかが必ずしも明確でないということで、考慮要素を別途規定することにしたというふうに述べてきたわけであります。

 そこで伺いますが、どのような別途規定を置いたのか、具体的に改めて紹介してください。

後藤副大臣 お答えを申し上げます。

 二十八条の第二項におきまして、三つの考慮事情を規定いたしております。その一号は、「常居所地国において子が申立人から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無」、二号、「相手方及び子が常居所地国に入国した場合に相手方が申立人から子に心理的外傷を与えることとなる暴力等を受けるおそれの有無」、三号として、「申立人又は相手方が常居所地国において子を監護することが困難な事情の有無」、この三点を規定いたしております。

笠井委員 今副大臣から三点の規定の紹介がありましたが、実施法の中でこれら三つの事例の規定を盛り込んだ意図といいますか、理由というのはどういうことでしょうか。

後藤副大臣 ただいま笠井委員の方からも御指摘がありましたように、二十八条第一項第四号の返還拒否事由の文言が抽象的であって、その判断においていかなる事情が考慮されるか、必ずしも明確ではないということでございます。

 このため、本法律案では、二十八条第二項におきまして、ただいま御紹介申し上げたような三つの点につきまして、諸外国の裁判例も参考としつつ、子の返還拒否事由の判断に当たって裁判所が考慮すべき事情のうち、比較的多く想定され、かつ重要な事情を例示したものでございます。

笠井委員 考慮すべき事項について、四月四日の本会議で次のようなやりとりがございました。問いの方で、連れ去った親がもとの居住国で逮捕、刑事訴追のおそれがある場合、もとの居住国への帰国後の生計維持が困難等の事情がある場合、連れ去った親が、過去のDVのために、もとの居住国に戻るとPTSDの精神症状が出て、子が耐えがたい状況に置かれる場合に、第二十八条二項の重要な考慮要素として返還拒否事由に該当することになるのか、こういう質問がありました。これに対して谷垣法務大臣が、御指摘の事情はいずれもこの重要な考慮事項に当たる、こう答弁されました。

 そこで確認したいんですけれども、第二十八条二項では、今、後藤副大臣から紹介がありました三つの考慮事情が例示されておりますけれども、見ますと、それとは別に、「その他の一切の事情を考慮する」ということも書かれております。なぜ、あえて「その他の一切の事情を考慮する」ということも明記をしたのでしょうか。

後藤副大臣 たびたび申し上げているとおりでございますが、二十八条第一項第四号の返還拒否事由として掲げられております文言は抽象的でありまして、その判断においていかなる事情が考慮されるかが必ずしも明確でないために、本法律案では、第二十八条第二項において、その考慮事情のうち重要なものを例示したということでございます。

 しかしながら、重大な危険があるか否かは、本来、このような例示された事情に限らずに、裁判にあらわれた一切の事情を総合的に考慮して判断すべきものということでこういう規定になっております。このような趣旨を明らかにするために、その他一切の事情を考慮事由としたものでございます。

笠井委員 この実施法第二十八条二項の規定というのは、一項四号の規定、すなわち「子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること。」の事由の有無を判断するに当たって規定をされたというものだと思います。

 「その他の一切の事情」を明記したということは、裁判所等が第二十八条二項の各号に掲げられていない事情を「その他の一切の事情」として考慮することによって子の返還拒否事由が存在すると判断することも可能だということになると思うんですが、その場合でも、子の返還の是非の最終判断というのは裁判所の判断というか裁量に委ねられるということになる、そういう理解でよろしいでしょうか。

後藤副大臣 二十八条第二項は、二十八条第一項第四号の返還拒否事由の判断をするために考慮すべき事情のうち重要なものを例示したというふうに申し上げているとおりでございまして、このような例示は、裁判所が子の返還拒否事由の判断をするに際して、その他一切の事情として考慮することができる内容のうち重要なものを具体的に明示することによりまして、その裁量を限定する効果があるというふうに認識をいたしております。

 そういう意味では、結局、裁判官の裁量に委ねられることになってしまうのかという点につきましては、それは当たらないものというふうに考えます。

笠井委員 こうした二十八条二項の規定というのは、DV被害者等とのかかわりで、各国の国内法と比べても踏み込んだ規定になっているというふうに思います。政府も、諸外国に余り例がない規定として、スイスが、条約第十三条一項bに定める子を耐えがたい状態に置くこととなる場合というのを具体的に国内法で定めているが、米、英、豪、ニュージーランドは条約の文言をそのまま引用して定めている、このように、平成二十三年といいますから二年前、四月の衆議院の法務委員会で説明をしておりました。

 こうした実施法の規定そのものは、DV被害者等にとっても、ハーグ条約を受け入れる上で具体的で必要なことだというふうに思います。しかしながら、同時に、こうした国内法の規定を適用して子の返還を拒否した場合に、そういう規定まで条約にはないではないかというふうに申立人から異論が出されたらどうするのか。もちろん、日本の法体系は我が国独自の判断で行うことは言うまでもありませんけれども、この点はどういうふうに考えたらいいのか、外務省に改めて確認しておきたいと思います。

岸田国務大臣 先ほど来、法務省の後藤副大臣からの答弁にありましたように、条約第十三条第一項bの規定に基づき返還拒否事由を判断するための考慮事項が二十八条第二項に規定されているわけですが、これは、そもそも規定されているのは、裁判規範としての明確化を図り、当事者による予測可能性を確保する観点から規定されているわけです。その規定に当たりまして、この内容ですが、これはハーグ条約の各締約国の判例等も参考にしながら、その典型的な例を確認的に例示したということで、こういった内容が盛り込まれております。

 こうしたことから、かかる法案の規定は条約の趣旨と合致すると考えておりますし、これらの規定に基づいて我が国裁判所において適切に判断した結果については、国際的にもこれは理解が得られるものだと認識をしております。

笠井委員 ハーグ条約の第十三条一項bにかかわって、スイスが日本と同様に踏み込んだ国内法規定を盛り込んでいるというふうに承知しているんですけれども、なぜなのかという話とのかかわりなんですけれども、スイスとオーストラリアとの間で起きた子の連れ去り問題で、連れ帰った母親がもとの居住国に帰国をしたら刑事訴追を受けるおそれがあるということで、子だけが返還をされた。しかし、父親に養育能力がなかったので、子が一年半の間に三軒の里親を転々とさせられて、最終的に母親のところに戻された。そういうことがあって、スイス政府は、この問題を重視して、二〇〇六年のハーグ国際会議で第十三条一項bの追加条項を提案したけれども、他国からは賛成がなかなか得られないということで、結果として単独で国内法を改正したということであります。

 この例が示すように、条約第十三条一項bの捉え方というのは締約国間でさまざまだとは思うんですけれども、この問題をどう考えたらよろしいでしょうか。

平松政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、スイスにおきましては、条約第十三条第一項bの定める子が耐えがたい状況に置かれている場合について、国内法で具体的な定めがございます。それについては、条約制定当時のいろいろな経緯があったということも承知しております。

 ただこれも、条約そのものについて何か新しい条件を付す、あるいはそれについて追加的なことをやっているということは言えないと思いますし、また、返還を原則としないというふうな国内法であるとも承知しておりません。

 いずれにしましても、そういったスイスの法律について何か異議が唱えられているということがあるということも承知しておりませんで、先ほど大臣から御答弁があったとおり、あくまでもそれは、条約の範囲内でそれをいわば例示し、あるいは確定的に確認するために例示したという解釈だというふうに承知しております。

笠井委員 外務省が調査している裁判事例を見ますと、第十三条一項bで規定している返還拒否事由について、各国は、押しなべてというか、極めて制限的に適用しているというふうに私は読んだんですけれども、その中で、さらに、アンダーテーキングを考慮して子供の返還を認めている事例もある。申立人が裁判所に対して、子供とは一緒に住まない、子供を虐待しない、母親には会わないということなどを約束して、それを考慮して裁判所が重大な危険はないと判断して、返還が認められたというものでございます。

 しかし、このアンダーテーキングというのは、ハーグ条約自体に規定があるわけではなく、必ず履行される保証があるかといえば、ないということだと思うんです。

 そうすると、約束が守られなければ、結局、被害が繰り返されて、返還することによって子が心身に害悪を受けて、または他の耐えがたい状態に置かれることになってしまうことになりかねないというふうに思うんですけれども、申立人が日本の裁判所にアンダーテーキングを出してきた場合には、これはどういう扱いをされるということになるんでしょうか。

後藤副大臣 諸外国におきましては、子の返還申し立て事件が係属する裁判所に対して、申立人の方から、子の返還に関連する事項についてみずから一定の義務を負う旨を約束し、裁判所がこれを考慮して返還を命ずることがあり、そのような約束が、先生御指摘の、一般にアンダーテーキングと呼ばれているものと承知をいたしております。

 そういう意味でのアンダーテーキングについては、相手方による任意の返還を促す条件を整備するものとしてその有用性が指摘されてはおりますけれども、まさに御指摘のように、申立人が約束を履行する保証がない、そういう問題もあるものでございます。

 子の返還申し立て事件の裁判において、申立人が何らかの条件を提示し、それが裁判所において、返還拒否事由の存否をめぐる一切の事情の一つとして考慮されることはあり得るが、しかし、一般論として言えば、御指摘のような懸念があることも踏まえて判断がされるものと考えております。

笠井委員 そうすると、確認なんですが、国内の実施法の考慮事項というのが全体として優先される、その中で、一切ということの中には、その一要素としてはあり得るけれどもという位置づけということでよろしいんですね。

後藤副大臣 そういうことでございます。

笠井委員 ハーグ条約は、前文で子の利益が最も重要であることを明記した上で、子の国外への連れ去りや留置というのは子の利益にならないこと、子の常居所地国への返還こそが子の利益を促進するということを大前提にしていると思います。

 他方で、一九九〇年発効の、日本は一九九四年の締結だと思うんですけれども、子どもの権利条約では、第三条で、児童の最善の利益が主として考慮されること、第九条で、親子不分離の原則、第十一条で、子供の不法な国外への移送を除去すること、第十八条で、子供の養育、発達について共同の責任を有するということなどが明記をされております。

 そこで、ハーグ条約と子どもの権利条約というのは、その理念としては共通する内容を持っているというふうに思うんですけれども、この両者についての見方というか、外務省、どういうふうに見たらよろしいでしょうか。

平松政府参考人 お答え申し上げます。

 子どもの権利条約と申しますのは、子供の権利の尊重、確保の観点から必要となる詳細かつ具体的な事項を盛り込んだ条約でございます。

 先生御指摘のとおり、同条約を起草するための作業部会等におきまして、子の不法な連れ去りにおける児童の権利の保護についても議論が行われました。その結果、同条約十一条において、児童が不法に国外へ移送されることを防止すること等について規定がございます。

 こうした作成過程を踏まえますれば、児童の権利条約及びハーグ条約は、いずれも子の利益を重視するとの観点から、国境を越えた子の不法な連れ去り等の発生を防止するとともに、発生した事態に迅速に対応するという共通の目的を有しているというふうに思っております。

笠井委員 次に、子の連れ去り問題にかかわって、先ほど岸田大臣も触れられました在外公館の役割について若干聞きたいと思うんです。

 ハーグ条約は、国境を越えた子の連れ去りを解決するための国際的な仕組みを定めたものでありますけれども、特に日本人女性との事案では、子供に対する虐待やDVを受けた日本人女性が、問題を解決し切れずにやむを得ず連れ帰ることが多いということであります。

 問題は、DVや夫婦間の問題を抱える日本人女性が、最終的に子を連れ帰らなければ解決しないということに追い込まれる前に、やはり、トラブルを現地においてどのように解決するか。適切な対処がなされれば、子を連れ帰らないで済むわけであります。

 そこで、在外公館として、これまでも、さまざまに相談活動、あるいは対応する、支援をするということでおっしゃってきて、強めるとおっしゃったんですが、もう少し具体的に、大臣、どのようなことをやってきて、どのような面でこのハーグ条約締結を機に強化をするということで考えておられるか。

岸田国務大臣 在外公館ですが、従来より、在留邦人からDV被害や児童虐待の相談を受けた場合に、任国の保護・救済制度を説明する、あるいは弁護士や福祉専門家、シェルターの紹介、こういったことを行っております。また、在外公館にて家族問題について相談を受けた際に、在外公館は、相談記録を作成し、本人が希望する場合は当該相談記録を提供しております。さらに、生命に危害が及ぶ場合など緊急と判断される場合には、現地の警察や裁判所に通報、救援要請も行ってきております。

 在留邦人による家族問題に関する相談に対し一層適切に対応できるようにするために、外務省としては、ハーグ条約締約国に所在する我が方在外公館の領事担当者を対象としてハーグ条約に関する研修を実施し、支援体制の強化を図っているところでございます。

 さらには、現地事情に詳しく、現地でDV被害者支援ですとか緊急用シェルター運営等を行う団体と在外公館が連携して在留邦人の相談に応じている、こういった場合があります。外務省としましては、今後、こういった団体とのネットワーク、連携体制をさらに強化していきたい、このように考えております。

笠井委員 今大臣がおっしゃったような在外公館内の領事担当者の研修をやったりとか、あるいは現地のいろいろな団体とも連携をしていくということも含めて、これまでの支援体制をさらに充実させるというのは非常に大事だというふうに私は思うんです。

 ところが、DVの問題や夫婦間の問題を抱えている日本人女性の側から見ると、なかなか現地で適切な相談機関とか救済機関がないんじゃないかということで、訴える事例も結構多かったり、つまり、先ほどもハーグ条約の周知という話もありましたが、こういう条約があるんだ、今度日本が入ったんです、そしてそれに伴って、いろいろなことを抱えていらっしゃる方はここに来られれば相談できますよとかということも含めて、やはり知られていないというか、だから、これから条約締結を機に知らせていくということになると思うんですけれども、私も海外で三年ほど在住していたことがあって、なかなかそういう点で、外国人社会の中にいていろいろな悩みがあったときに、どこに相談に行ってどうしようかということもあったりするので、やはり大使館というのはなかなか大事な役割を持っていらっしゃると思うんです。

 そういう点で、国際結婚して外国で生活する日本人に対して、ハーグ条約の周知という問題ももちろんあるんだけれども、そうした活動をやっているんですよ、さらにやりますよということ自体も広報するというか、そういう活動、あるいはパンフレットを出すのもあるんでしょうけれども、例えば、日本人会があったりとか、いろいろな機会の場合とか、あるいは講演会とかパネルディスカッションがあったりとか、いろいろなかかわりで、そういう場があるということを知らせていくというか、共有しながらこの問題に取り組んでいくというのがやはり大事かなというふうに思うんですけれども、その点については、大臣、どのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 国によりましては、配偶者の同意あるいは裁判所の許可を得ずに子の居所を移動することが犯罪になるというようなケースもあります。こうしたことも考えますときに、委員御指摘のとおり、在外公館において強化している対応について在留邦人等に周知徹底させることは大変重要だと思っております。

 こうしたハーグ条約の内容の周知徹底ももちろん大事ですが、それとあわせて、在外公館における支援策、これをぜひ活用していただくために周知徹底する、こうしたことのために、外務省及び在外公館のホームページ、メールマガジン、あるいは在留邦人との連絡会議、こうしたツールを通じまして、在留邦人に対して広報と周知をこれからもしっかりと図っていきたいと考えております。

笠井委員 日本における子供の連れ去り事案というのは、日本人女性にかかわるケースが圧倒的で、その多くが欧米諸国との関係ということだと聞いております。そのことから、欧米諸国から、日本に条約締結を求める要請もとりわけ強く出されてきた。

 他方で、アジア諸国間では、子供を連れ去る事案というのがそれほど、顕在化していないと言うと変ですけれども、問題にされていない。しかし、潜在的には多いともされている。

 アジアにおける子供の連れ去りの現状をどのように外務省は認識されているでしょうか。アジアとの関係でということです。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 アジアの国、特にハーグ条約に入っておらない国との子供の連れ去りの関係につきまして、全貌につきまして、我々も全てを把握できているわけではございません。

 他方で、二〇一一年、二〇一二年ということで、在外公館を通じて我々は調査を行いました。その結果、日本から外国に日本国籍のお子様が連れ去られた事案ということで我々が把握しておりますのが六十九件ございます。そのうち十八件がハーグ条約の締結国ということでありますが、六十九件のうち一番多いのは、例えば、ハーグ条約には入っていませんが、フィリピンということもわかってきております。その次が中国、イランということで、ハーグ条約締結国ではない国に子供が連れ去られたケースがあるということは承知をいたしております。

笠井委員 今、掌握している数字も紹介がありましたが、締結している国、していない国ということでも具体的にあったわけですけれども、アジア諸国の中でのハーグ条約締結状況というのは今どういうふうになっていますか。

平松政府参考人 例えば、今、ハーグ条約を締結しているアジアの国で申し上げれば、タイ、それから韓国といった国がございます。その他の国についても、いろいろ議論はされていると思います。全てではないと思いますが、例を挙げればそういうことです。

笠井委員 二カ国ということですか。

平松政府参考人 済みません、もう少し正確に申し上げると、韓国、タイ、スリランカ、シンガポール、中国の場合は香港、マカオが対象になっております。

笠井委員 五カ国ということになりますか。他の地域と比べても少ないということだと思います。

 それで、入っていない国ということで、そことの関係が事例としても多いというのをつかんでいるということで、日本もこれまで入っていなかったのであれかもしれませんが、これから締結する、入るということになれば、この締結を機に、むしろアジア諸国に対しては、日本も入るからまたやろうよということで働きかけていくということになるんでしょうか。その点はどういうふうになっていきますか。

平松政府参考人 おっしゃるとおり、日本からの連れ去りの件を考えれば、できるだけ多くの国がハーグ条約を締結することは利益だと思います。とりわけ、アジアの国がたくさん入ってくるということを日本としてもぜひ慫慂したいと思っておりますので、いろいろな二国間の対話の機会、我々領事関係のいろいろな議論の機会にそういったことを申し上げていきたいというふうに思っております。

笠井委員 大臣も当然、いろいろな機会に、これからそういうことでということになるでしょうか。

岸田国務大臣 今答弁の中にありましたように、日本からの連れ去り事案も数多いという実情を考えますときに、我が国として、まずは我が国がしっかりとこの締結に向けて作業を進め、そしてその上で、各国に対してこのハーグ条約の重要性を説明し、ともに締約国になるべく働きかけていくという活動は、大変重要だと認識をしております。その時点においては、ぜひ私も、自分の立場から、そうした理解を得るべく努力をしていきたいと考えております。

笠井委員 幾つか伺ってまいりましたが、日本人の国際結婚とその破綻、離婚が増加するという中で、子の連れ去り問題というのは深刻な問題になっている。こうした問題を解決するためには、国際的なルール及び国家間の協力が必要だということで、特に、きょうも質問しましたが、DV被害者などから、ハーグ条約が原則として子供をもといた国に戻し、そこでどちらが養育するかを判断するとしていることへの不安の声があった。その点では、子をもといた国に戻すことで子の心や体に悪い影響を与える場合や、それから子が戻ることを拒否している場合などは返還拒否できるというハーグ条約の規定、これをきちんと運用させるということがこれから大事になってくるというふうに思います。

 政府は、条約締結を機に、問題解決のために運用をきちっとするように進めて、そして積極的な役割を果たすべきだ、このことを強調して、質問を終わります。

河井委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーでございます。

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、ハーグ条約について質問させていただきます。

 初めに、大臣、これは通告はしていないんですが、お答えできる範囲でぜひお答えいただきたいと思う件がございまして、実は昨日、北谷町の野国町長が私の事務所を訪ねてこられました。いわゆる嘉手納以南の基地のキャンプ桑江、キャンプ瑞慶覧を抱えている、いわゆる三連協という、これは嘉手納基地を取り巻く沖縄市、嘉手納町、北谷町の、そのメンバーのお一人でもいらっしゃるんですが、どういう話をなさったかといいますと、今、北谷町は、キャンプ桑江の跡地、いわゆる海軍病院が宜野湾市の普天間神宮の近くにもう移設をしましたので、その海軍病院の跡地利用で、嘉手納基地の中にあるアメリカの大学を誘致して、ぜひその跡地利用を軍用地主の皆さんと協力をしてスムーズにできるように、今その大学設置に関する準備会といいますか協議会を、県内の各大学の学院長の先生方と一緒にテーブルをつくって、一生懸命話し合いを進めておられるんですね。

 ところが、先般、嘉手納以南の基地の返還について四月五日に発表になった、それによりますと、キャンプ桑江は二〇二五年またはその後ということで、十二年以上後になってしまう。そういうふうなことになった場合に、やはり町づくりをするときには、ぜひとも当該市町村と連携ができるような形で、今何を考え、何をしようとしているのかということについて、ぜひ、私には、政府の方へもそういうふうなお話を届けていただきたいということと、地元でもできる限りそういう声を届けられるように頑張っていきたいという、その思いを伝えていただきました。

 基地を抱えている市町村の基地の跡地利用について、さまざまな御意見がありますが、大臣の方でぜひ前向きにといいますか、それに向けたお気持ちを聞かせていただければありがたいと思いますが、いかがですか。

岸田国務大臣 まず、今お話にありました海軍病院につきましては、先日、私も沖縄を訪問させていただいた際に現地を拝見させていただきました。

 そして、先日、嘉手納以南の土地の統合計画を発表したわけでありますが、この計画自体は、一千ヘクタール以上のこの土地について、なおかつ沖縄の中でも人口密集地域において返還が進むということ、さらには、返還日時について具体的なものを盛り込むことによって、現地においてさまざまな跡地利用の一つのめどにすることができる等々、沖縄の負担軽減という意味では大きな意義があると認識をしております。

 しかしながら、今委員の方から御指摘がありましたように、具体的な返還に当たってはさまざまな具体的な心配があり、要望があり、そして配慮が必要になってくるかと存じます。

 御指摘を踏まえて、やはり一つ一つ丁寧に、地元の関係者の皆様方の意見を聞きながら進めていかなければならない。御指摘を受けて、改めて思うところでございます。

 ぜひ、これからもそうした地元の声に真摯に耳を傾けていきたいと考えております。

玉城委員 ありがとうございます。

 基地問題は、語ると、一つ一つ具体的には大変難しいところがありますが、ぜひ負担軽減、やはり将来の基地の跡地利用が地元にとって有益な形で進むように、ぜひ御考慮、御配慮をいただきたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。

 では、ハーグ条約について質問を進めさせていただきたいと思います。

 まず、条約の締結に関する件について質問をいたします。

 今や、多くの国々へ気楽に旅ができ、インターネットを通じた情報共有性が常識的になりつつある国際社会の中で、さらにさまざまな個人的な関係性なども容易に接点が生まれている、そういう環境も身近にあるということは考えられます。

 他方、文化的、社会生活的な面の相違点や、価値観の多様性の違いなどから、国際結婚、離婚、生まれた子供に関する影響などなど、年を追って、国の制度や国家間の条約批准の現実的な状況によって問題の深刻さが高まってきていることは、容易に想起されるということもあります。

 沖縄県内には、二十五カ国以上の国と地域の方々がこれまでも生活をしております。歴史、文化的に見ても、例えば中国から渡ってこられた方々、南方から来られた方々、東南アジアから来られた方々、あるいは、当然ですが、米軍基地がありますので、アメリカ国籍の方々との接点もたくさんある、そういう状況がございまして、国際結婚ももちろん多くの方々が望み、またそこで苦労しているという状況があります。

 そこで、本委員会で今般提案されていますハーグ条約について、国際的などのような背景があって批准されてきているかについて伺いたいと思います。

岸田国務大臣 国境を越えた人の往来が飛躍的にふえる中、日本人の国際結婚、そしてその破綻も増加しております。こうした中で、諸外国との間で子の連れ去り等をめぐる問題も顕在化している、こうした現状の中にあります。

 このような状況にあって、このハーグ条約、子の利益が最重要であるとの認識に基づいて、国境を越えた子の連れ去り等の問題を解決するために一九八〇年に作成されたわけですが、今や国際ルールとして確立をしていると言われている中にあって、G8諸国の中で我が国だけが締結していない、こういった状況の中にあります。

 国境を越えた不法な子の連れ去りによる一番の被害者が子自身であります。子の利益を保護するという見地から、ハーグ条約を早期に締結することが極めて重要であると認識をしております。

 このような背景やら認識に基づいて、今、国会でこの条約について御審議をお願いしているということでございます。

玉城委員 では、その国際関係の中にあって、日本はこれまで批准していなかったんですが、その間、その条約を先に締結している国々からどのようなアプローチが、どのような形で行われてこられたのでしょうか。

岸田国務大臣 米国あるいは欧州など、ハーグ条約を既に締約している国々からは、日本への不法な子の連れ去り等が発生していることから、日本もハーグ条約を速やかに締結すべきであるとの要望が寄せられておりました。

 そして、これまで、主要先進国を中心とする各国からさまざまなハーグ条約締結の要請を受けてきたわけですが、最近でも、先日訪日されましたケリー米国国務長官からもハーグ条約について提起がありました。その際に、私の方から、同条約及びこの条約実施法案を今、国会で審議を行っているということ、審議の状況について御説明をさせていただいた、こういったやりとりもあった次第でございます。

玉城委員 そして、今般、こうやってハーグ条約締結に進むということになるわけですが、日本がその国際的なルールに従うことによって、逆に、いまだこの条約締結に至っていない、これまで日本とも関係の深い国々との関係性についてはどのようになるとお考えでしょうか。

岸田国務大臣 ハーグ条約未締結国との間におきましては、我が国がこの条約締結を果たしたとしても、条約上の手続を利用することができません。そのため、それぞれの国内法令に従って、友好的な解決が図られるよう、政府として可能な支援を行っていく、こういったことになると存じます。

 我が国を含む各国がこのハーグ条約を締結すること、これは、子の利益を保護する国際的なネットワークを構築するという上で有意義なものだと考えております。

 我が国としては、今後、子の連れ去りをめぐる問題が生ずる可能性が潜在的に高いと考えられる国々、特にアジアの国々が想定されますが、こういった国々を初めとして、ハーグ条約未締結の国々との間で本条約締結の重要性についても協議していかなければならないと考えています。

玉城委員 ありがとうございます。

 一九八三年十二月に発効してから現在まで、アメリカ、カナダ、EU全加盟国など八十九カ国が締結してきた中で、我が国日本だけが締結せずに時間を要したことは、国際社会からも厳しい批判があったということは容易に想像されます。

 二〇一一年の二月に、私、訪米いたしましたときに、二十四回のミーティングを重ねて、上院、下院議員、政府関係者、あるいは議員のスタッフの方々とも、米軍基地問題それから地位協定問題についていろいろな意見交換をさせていただきました。地位協定については、やはり人権を侵害しているというふうな認識があるという沖縄県民の心情を伝えたところ、あるスタッフから、いや、日本には人権を守る意思はないとはっきり言われたんですね。それは何ですかと聞いたら、ハーグに入っていないんだと明確に言われたんです。

 大臣、では、何で今までこのハーグ条約に入っていなかったんでしょう、締結していなかったんでしょうか。

岸田国務大臣 今日まで締結がおくれているという事情については、さまざまな理由は存在いたしますが、例えば、この条約締結自体について日本国内に懸念する意見があったということもあります。また、ハーグ条約を締結した場合に、条約の適切な実施という観点から、必要な論点として、新たな裁判手続の導入ですとか中央当局の制度設計のあり方など、検討すべき重要な論点が多数あったという事情もあったと存じます。これらの論点を検討する作業に時間を要した、こういった点もあったのではないかと認識をしています。

 しかし、昨年三月、そして本年三月、条約及び条約締結法案を国会に提出した次第ですので、ぜひ一日も早い締結に向けて努力をしていきたいと考えております。

玉城委員 やはり、これまで三十年という時間が経過し、日本がG8の中で唯一締結をしていなかったということを考えますと、これからは国内法の整備もいろいろとやはり進めていかなくてはいけないというふうに思うんです。

 締結することで、今後は法的に政府が関与して子供の返還を求めることが可能となってくる一方で、人間関係に起因する個人的な過去のいきさつから、やはりこのハーグ条約の締結には不安を覚える方も相当数いるのではないかということも想像されるわけですね。

 そのような場合の、本日までの時点で懸念される状況、懸念される点というのは残っていない、もうハーグ条約で、しっかり締結をして、これから、どんどん国内法も含めて各国との連携はさらに進んでいくというふうに考えてよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 ハーグ条約締結に当たりまして、我が国における最も強い懸念が示されていたのは、子とともに帰国したDV被害者への対応に関するものであったと承知をしております。

 このようなDV被害者への対応については、国内実施法における子の返還拒否事由の考慮要素の規定ですとか、子の所在に関する情報の厳格な取り扱いに関する規定ですとか、さらにはDV被害に関する相談受け付けや相談記録の手交を含む在外公館における支援など、さまざまな手段を尽くしてきたところでございます。

 条約及び国内実施法が施行された後の段階においても、これらの懸念につきましては、さらに改善すべき点が出てくれば、運用や実施体制の面で不断の見直しを行っていく所存であります。

玉城委員 では、少し条約の内容について、返還に関する取り決めについて質問させていただきたいと思います。

 このハーグ条約において、子供の返還の申請を受けた場合、申請を求めた親の届け出の時点から問題の最終的な解決を見るまでには、相当の時間を要するということが考えられます。

 まず、この場合、有効な期限、あるいは有効な期間などというのはどのようになっているのか、お聞かせください。

平松政府参考人 お答え申し上げます。

 ハーグ条約上は、返還援助申請に係る特定の有効期間というのを定める規定はございません。したがって、子の返還について、任意の解決や裁判等で何らかの結果が出るまで、申請は有効なものとして扱われるということでございます。

 ただし、本条約の中で、子供が十六歳に達した場合には適用しないという規定もございますので、子の年齢を理由として申請が却下されるという場合も想定されるわけでございます。

玉城委員 そうすると、かなりの時間を要するということは、かなりの精神的な負担、あるいは、当然ですけれども、金銭的な負担ということも考えられるわけですね。

 申請する側の親が中央当局へ届け出る、中央当局における審査が行われる、裁判所へ送られてさらに審査が進む、そして返還の可否が判断されて、子供の返還が行われる、こういうふうな進み方を少し思い描いてみた場合に、親と当局、親と裁判所、それから、またはその間の移動及びそのための費用など、現実的な金銭面での問題が生じてくるのではないかということ、もうこれは最も現実的に心配されるというか、懸念されるところだと思います。

 申請する親及び返還する親との費用関係については、どの部分までが公費で賄えることになっているのかについてお聞かせください。

平松政府参考人 条約上は、残された親が中央当局に対して返還または面会交流に係る援助のための申請を行う場合は、中央当局としては、申請者から申請に係る手数料を徴収することはできないということにまずなっております。したがって、残された親が申請を行うに当たって必要な費用というのは、恐らく、いわば郵便代だとか、あるいは電話相談のための実費というものに限られるということが想定されます。

 加えまして、条約上は、子の所在の特定を初め、中央当局がいわば任務として行う措置につきましては、連れ去り親を含む当事者に対して費用を請求することはないということも決まっております。

 ただし、恐らく、実際に子の返還のために必要な渡航費用等は当然かかると思いますし、それにつきましては、当事者間の合意または裁判においてその負担者が定められるものと承知しております。

玉城委員 例えば、沖縄で相談を求められた場合には、今のこの内容ですと、大阪から沖縄に専門員が来て、さまざまな聴取をしたり、いろいろな相談に乗ったりすると思いますが、その場合の費用はどこが負担しますか。

萩本政府参考人 お尋ねのありました費用の点について、裁判の場面でどのようなものがかかり、どういう支援があるかということを、まず前提として御説明したいと思います。

 子の返還申し立て事件の手続に要する費用としましては、例えば、申立人は、子の返還の申し立ての申し立て手数料、これは千二百円ですけれども、これを負担する必要がございます。また、申立人、相手方、両方に当てはまることですけれども、裁判所が定めた期日に出頭するための費用、これもかかるところでして、条約実施法案におきましては、これらの費用は原則として当事者が各自それぞれ負担するものとしております。

 もっとも、子の返還申し立て事件の当事者は、資力の状況に応じまして、例えば必要な裁判費用を支払う資力がない場合には、手続上の救助の裁判という制度を用意しておりまして、申し立て手数料等の裁判費用の支払いの猶予を受けることができることとしております。

 また、総合法律支援法に基づく民事法律扶助という制度もございまして、この制度を利用することによりまして、手続の準備及び追行のための弁護士費用の立てかえ払いを受けることができるとされているところでございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 今、法務省さんからは、裁判におけるさまざまな費用についてお話を伺いましたが、まず、申請者が最初に申請をする場合は、外務省の中央当局に申請をして、そこで任意の返還、問題の友好的解決の促進まで中央当局が担当するということになっております。そして、そこから司法当局における返還可否の判断というふうな形に進んでいくというふうに理解をしているわけです。

 例えば、国内では、関西と沖縄には特命全権大使がいらっしゃいます。沖縄は現在、竹内春久大使がいらっしゃいまして、外務省沖縄事務所がある、まずそこに窓口があるということが一つと、それから、各地方裁判所が各県に置かれているということを考えると、その場合に、相談をした方の金銭的な状況、あるいは、例えば小さい子供がいるのでなかなか大阪まで行けませんよというふうな場合、あるいは、大阪から来ていただくことはできるかもしれないんですけれども、県内でもまた移動の手段がないというふうなこととか、さまざまなことが考えられるわけです。

 その場合の地域での費用について、その辺に関しては何か特に取り決めですとかサポートするシステムがございますか。

平松政府参考人 御指摘のような事例もあろうかと思います。

 中央当局は外務省に置くということでございますので、基本的ないろいろなあっせんだとか手続の支援だとか、そういうのは中央当局である外務省がやるということになります。

 他方、地方にいらっしゃる方、特に沖縄にいらっしゃる方についてどういう形でより支援を申し上げるかということについては、御指摘のように、沖縄事務所というのもございますので、そういったことの活用も含めて、もう少し検討してみたいと思っております。

玉城委員 ありがとうございます。

 そういう意味では、外務省、これからたくさんの、一つ一つの個人的ないろいろな案件に対応せざるを得ないということになってくると、ますます地域での窓口の必要性が進んでくるのではないかと思いますが、ぜひ御考慮いただきたいと思います。

 さて、子供を取り巻く環境について質問をさせていただきたいと思います。

 先ほども答弁いただいたんですが、例えば、肉体的、精神的な苦痛を伴う被害を恐れる余りに、子供を連れて日本へ帰国した、あるいは、生活文化の違う配偶者の祖国への帰国に同行せず、子供の将来のために日本国内にとどまったなど、子供を保護しておきたいと希望する監護者に対して考慮すべきこともまたあるのではないかと思います。

 この場合の法的な対応はどのようにされるかについて伺いたいと思います。

萩本政府参考人 繰り返しの答弁になりますけれども、ハーグ条約におきましては、子の返還を原則としつつも、子の利益の観点から、今委員御指摘のような、子が危険を受けるおそれがあるような場合、子の返還を拒否することができるということで、返還拒否事由も定められているところでございまして、国内の実施法案におきましても、この条約の規定に即した返還拒否事由を定めているところでございます。

 今の場面で問題になりますのは、具体的に申しますと、二十八条第一項第四号ですけれども、返還によって、子の心身に害悪を及ぼすこと、その他、子を耐えがたい状況に置くこととなる重大な危険があること、こういうことが挙げられておりますので、この拒否事由があるかどうかということで考慮されることになるものと考えております。

玉城委員 先ほども、返還の判断がなされるまでには相応の時間を要することから、時間の経過の中では、返還を求める親、あるいは返還を求められている親の双方に、何らかの要因で、経済的に相談を継続することが困難になることが考えられます。

 例えば、返還が決定して、後日、生活状況が困窮しているということが明らかになった場合、実は、決まってから後、経済状況が激変してしまったということが明らかになった場合、この場合はどのような対応が考えられますか。

萩本政府参考人 実施法案におきましては、子の返還を命ずる決定が確定した後、裁判所は、事情の変更によりその決定を維持することを不当と認めるに至った場合には、その決定を変更することができるという規定を設けてございます。これは、子の返還を命ずる裁判が子に対して重大な影響を与えることに鑑み、子の返還を命ずる決定が一旦確定しても、その後に、その決定を維持することが不当であると認めるに至った場合には、子の利益のために、これを取り消して変更することができるものとする趣旨でございます。

 したがいまして、子を返還する決定が確定した後であっても、子が実際に返還される前であれば、限定的な場合ではありますけれども、当事者の生活状況の変化の内容いかんによっては、申し立てにより、返還を決めた決定が変更されることもあり得るということでございます。

玉城委員 今度は締結国間のやりとりについて伺いたいと思います。

 中央当局の友好的解決が見られなかった場合は、裁判所において返還可否の判断が下される、先ほど私も、外務省の方から説明をいただいたポンチ絵を見て、そのお話をさせていただいたんですが、返還命令あるいは返還拒否、この相応の判断が裁判所で下された場合、それぞれのその後の対応、特に子供との接触の機会がどういうふうになるかについてお尋ねしたいと思います。

平松政府参考人 我が国の裁判所において返還命令が出た場合ということでございますけれども、我が国の中央当局は、ハーグ条約第七条第二項hに基づきまして、子の安全な返還を確保するための措置をとる必要がございます。

 具体的には、事案に応じますけれども、例えば、相手国において利用し得る保護措置、サービスについて相手国の中央当局からの情報収集をするとか、あるいは、子の帰国方法等、返還後の子の安全の確保のために返還先の中央当局と連絡をとるということが考えられます。

 返還拒否の判断が出た場合でございますけれども、我が国の中央当局といたしましては、相手国の中央当局または申請者に対しましてその事実を連絡するということだけでございまして、その他に条約上とるべき措置は想定されておりません。

玉城委員 ということは、返還拒否をされたら、その返還を求めた方はもう子供とは会えないということになるわけですか。

平松政府参考人 いわゆるハーグ条約の中では、面会とか接触をするという権利も認められております。そういう中で、もしそういう申請があれば、中央当局として、いかなる措置ができるかを検討いたしまして、しかるべき支援はできるということはあると思います。

玉城委員 やはり、子供からすると、親に会いたいという気持ちも、そこもちゃんと認めてあげるというか、サポートできるということであるわけですね。

 今度は、関係法令についてちょっと伺いたいと思います。

 ハーグ条約を締結した場合、子供の利益に資すること等を目的とする条約の実施に伴う日本国内の関係法令の整備も行われていくと思います。

 条約の締結に即しては、さまざまな点が考えられると思いますが、例えば、これはメディアの記事なんですが、琉球大学法科大学院の武田教授は、養育費を回収するハーグ条約に日本が加盟していないことを疑問視し、当事者の総合的な保護を考えるなら、子供を奪取する条約だけでなく、養育費回収の条約にも加盟すべきだということでコメントを寄せております。

 ですから、条約の締結に即して、今後、国内法としてどのような点がまず法整備として考えられるのかということをお聞かせいただきたいと思います。

後藤副大臣 さまざまな慎重な御意見があることももちろん承知をいたしておりますし、そうしたものに対しまして、特に外国で配偶者から暴力を受けて、やむなく子を連れて帰国したような場合だとか、そういうことについては、先ほども大臣の方からもお話がありまして、ハーグ条約とその実施法においてできる限りの対応をするということで対応済みでございます。

 このように、本法律案では、想定される懸念事項についての対応も含めまして、ハーグ条約の的確な実施を確保するために、現時点において考え得る必要にして十分な規定を設けたものであるというふうに考えております。

 したがって、今後直ちに他の法整備が必要であるというふうに認識してはおりませんけれども、事案の集積状況や中央当局及び裁判所の運用状況等を踏まえまして、将来、必要に応じて、検討するのが相当であると考えられますれば、そのように進めてまいりたいというふうに思います。

玉城委員 状況としては、特に国内法令について、各国の状況、あるいは、きょうのこれまでの質疑の中でも、さまざまな委員の意見の中にも、明治以来の法律を改正する時期に来ているのではないかということを考えると、ハーグ条約に加盟しなかった背景、あるいは、ハーグ条約に加盟して、ここからどう日本の国内法を整備していかなければならないのかということが、きょうの審議でもかなり浮き彫りになってきているのではないかというふうに思います。

 それ以外にも、連れ去った親側の保護について、身体的、精神的な苦痛、いわゆるDVの被害等から逃れるために隠しておいてもらいたいなどの要請などがなされるとした場合、これもまたやはり対処する基準が必要になってくると思います。あるいは、その対処される基準、つまり、もう二度と過去には戻りたくないという被害を受けた側の当たり前の気持ちについて、大臣、その辺をおもんぱかると、これから先、どういうふうなことが考えられると思いますか。

岸田国務大臣 まず、条約締結に向けて努力をし、締結がなされた後においては、ハーグ条約の趣旨にのっとって、しっかりとこの運用、適用に努めていかなければならないと存じます。そして、その上で、本日の議論の中にも出ておりました、関係者にはさまざまな懸念も残されています。そうした懸念、御意見も踏まえながら、我々としても何をなすべきなのか、引き続きしっかりと検討していかなければいけない。

 こうした条約、そしてルールが定着するまで、引き続きまして丁寧な対応が求められるのではないか、このように認識をしております。

玉城委員 ありがとうございます。

 今大臣がおっしゃったように、これから先、さまざまなルールをつくっていくという、国際ルールに、日本もしっかり締結し、協力していくからには、国内のそういう法的な整備も必要になってくる。そのためにはさまざまな意見を聞いていただきたい。

 私は、実は冒頭で、基地の返還については地元の意見を聞いていただきたいという声を大臣にもお話をさせていただきましたが、沖縄県内には、国際結婚をなさった方々、あるいはそういう方々の悩みを受けとめる民間のグループもございます。これからは、日本国全体のことを考えますと、こういうグループの方々との窓口をぜひ外務省にもつくっていただきたいと思うんですね。そして、さまざまな国内の状況にはやはり積極的に対応していくことによって、日本は人権を守る国であるということをぜひこれからは諸外国にしっかりと示していっていただきたいと思います。

 そして、そこからはぜひ日米地位協定の改定にも進んでいただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

河井委員長 次に、土屋品子君。

土屋(品)委員 自由民主党の土屋品子でございます。

 きょうは、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、ハーグ条約について質問させていただきます。

 きょうはもう五時間ということでございまして、大臣等も大分お疲れかと思いますが、あと二人でございますので、よろしくお願いしたいと思います。

 アメリカ時間十五日にボストン・マラソンの爆発事件があり、このところ、いろいろな意味で緊張状態が続いていると思いますが、大臣におかれましては、四月九日には、軍縮・不拡散イニシアチブで、今回審議する条約が採択されたハーグにも行かれたということでございます。十日にはG8外相会合でカナダのベアード外相との会談、つい最近は米国のケリー国務長官との会談、そして十六日夜にはミャンマーのNLD党首アウン・サン・スー・チーさんとの会談と、精力的に活動されて、また、北朝鮮情勢も緊迫しておりますし、TPP交渉も非常にシビアな状況になっておりますが、外交課題山積の中、委員会への対応、まことにありがとうございます。

 私は、平成十四年から十五年にかけて外務大臣政務官を務めさせていただきました。私の担当は欧州全域と中南米諸国そして国連ということでもありまして、当時からハーグ条約についてはいろいろな議論があったと思います。外務大臣政務官としては、ジュネーブの国連欧州本部の本会議場で日本政府の人権に対する立場を表明させていただき、人権委員会が人権理事会に昇格するよう働きかけもしてまいりました。

 同様に、特に社会で弱い立場にあります子供の人権に関しても、非常に重要であるとの認識を持っているところでございます。

 もう何回も質問が出ておりますので重なると思いますけれども、ハーグ条約ができてから三十年以上たっているわけでございますけれども、我が国としていまだに締結できない背景には、ハーグ条約があくまで子の利益を最優先に考える条約であるという点が誤解されていて、子供のためだというところが非常に認識が伝わっていなかったのではないかと考えております。

 近年、国際結婚、国際離婚の数が増加して、国境を越えた不法な子の連れ去り問題が顕在化する中、これらの問題に対する国民の意識を呼び起こしていかなければならないのかなと思っておりますが、問題に対応するための国際ルールであるハーグ条約を締結すべきであるというのは、もう私が言うまでもなく、みんな認識は一つだと思っております。

 もう何度も大臣にはお答えいただいておりますけれども、改めて、この条約の意義そして重要性ということについてお答えをお願いしたいと思います。

岸田国務大臣 ただいま土屋委員からお話がありましたように、ハーグ条約が作成されたのが一九八〇年ということですから、今日まで長い道のりの中で、我が国はまだ締約ができていない、こうした現状にあります。そして、その中にあっては、日本国内においてもさまざまな懸念もあり、また議論も行われてきました。

 しかし、最近の世論調査等を見ますと、国内においてもハーグ条約に対する理解が着々と進んでいるのではないか、こんなことも感じているところでございます。

 改めてハーグ条約締結の意義ということについて申し上げるならば、子の不法な連れ去り等が発生した際に、国際的なルールに従って問題が解決されるということ、そして、現状において我が国がハーグ条約未締結であることを前提として在留邦人が実際に受けている制約、さまざまなこうした制約を回避することができるというようなこと、また、さらなる子の連れ去り事案の未然防止の効果が期待できること、また、国境を越えて所在する親子の面会交流の機会を確保することが期待できるというようなこと、こういったことをいま一度しっかりと国民の皆様方にも御説明をさせていただき、このハーグ条約早期締結が極めて我が国にとって重要だということ、我が国の国民にとっても大変重要だということをしっかり理解していただきたいと思います。

 こうした説明を続けながら、一日も早く締結につなげていきたいと考えています。

土屋(品)委員 たびたびありがとうございます。

 国際的なルールに従った問題の解決という、これは本当に重要な条約であると思います。

 ちょっと私の記憶が確かであるかどうかわからないんですけれども、二〇〇九年ごろなんですけれども、ちょうど自民党政権のときだったと思いますが、日本の各国の大使館、大使とか公使とかが非常にハーグ条約締結に向けて活動した時期があったと記憶しております。いろいろなところにお願いに歩いたというようなことはあったと思います。

 それから、最近のことでも、バイの会議などで、外務大臣もハーグ条約をお願いしますということは随分言われてきたのではないかと思いますけれども、やはり、諸外国からの要請を受けて我々は条約を締結するというのではなくて、我が国にとってこの締結がどのような利益があるのかということが一番大事な点だと思っています。その点について、大臣はどうお考えでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のように、米国あるいは欧州各国から、我が国に対しまして、ハーグ条約早期締結について要請がなされてきたというのは事実であります。

 しかしながら、昨今、日本人の国際結婚そして国際離婚が増加するに伴って、外国から我が国への不法な子の連れ去りの事例のみならず、逆に、我が国から外国に不法に子を連れ去られた事例も多く見られるようになってきています。

 こうした実態を考えますときに、我が国の国民が当事者となっている子の不法な連れ去り問題に待ったなしで取り組むということは大変重要な点であり、そして、ハーグ条約早期締結は、我が国の国益ということを考えても、大変重要な課題ではないかと認識をしております。

 これは要請を受けたというのではなくして、我が国の今置かれている状況、そして国民の利益ということを考えても、我々は積極的にこの早期締結に向けて努力をしなければならないのではないか、このように認識をしております。

土屋(品)委員 ありがとうございます。

 まさに本当にその時期が来たのだということで、一刻も早くということだと思います。

 今回の条約では、条約上の返還拒否事由という面から、日常的に在外の日本人に対する相談窓口を設けるなど、きめの細かい対応が必要になってくると考えます。先ほども笠井議員などがいろいろお話をしていましたけれども、まさにそこの部分が一番重要になってくるのかなと思うわけでございます。

 結婚後の経済的な問題や文化、語学の違いからくる諸問題、特にまたDVの問題は大変重い問題だと思いますが、領事業務範囲を超える問題にも対応することが必要になるのではと思っています。

 外国に在住する日本人に対する家族問題対策が一層重要になってくる中、ハーグ条約締結を機に、今後、外務省としてどのような支援策を充実させていくのか、御説明をお願いしたいと思います。

あべ大臣政務官 土屋委員の御指摘のとおりでございまして、特に、家族内暴力、DVでございますが、児童虐待を受けた邦人、また子の相談等に適切に対処していくことは極めて重要でございます。

 従来より、在外公館は、在留邦人のこのような相談を受けました場合に、その保護・救済制度を説明いたしまして、弁護士、また福祉専門家、シェルターの紹介を行っているところでございます。

 また、在外公館におきまして、家族問題につきまして相談を受けた際におきましても、在外公館は相談記録を作成し、本人が希望する場合においては当該相談記録を提供しているところでございます。

 また、生命に被害が及ぶなどの場合におきましては、緊急と判断されるときにおきまして、現地の警察、裁判所に通報、また救援要請も行っているところでございます。

土屋(品)委員 それでは、視点を少し変えまして、数字の面から質問したいと思います。

 我が国として、違法な子の連れ去りの削減にしっかり取り組んでいくことはもちろんのことでございますが、実態として、どの程度の年間対応数になるかを想定することも重要と考えております。

 国内における離婚訴訟ほどにはならないと思いますが、既存の締約国の間では一年間に何件くらいの返還申請がなされているのか、また、現在、日本への連れ去りと日本からの連れ去りの件数については、どの程度の割合であると考えられるか、わかっている範囲で結構でございますけれども、お願いします。

平松政府参考人 お答え申し上げます。

 ハーグ国際私法会議事務局というのがございまして、そこが作成した分析報告書によりますと、回答があった五十四のハーグ条約締約国のうち、主な締約国が二〇〇八年の一年間において受理した件数でございます。返還申請件数は、アメリカの場合二百八十三件、英国の場合二百二十一件、メキシコの場合百六十八件という例がございます。

 それから、国際的な子の連れ去りの発生について、なかなか水際で把握することは難しゅうございますけれども、したがって、現在何件の連れ去り、あるいは連れ去られた案件があるかを正確に把握するのはなかなか難しいという事情はございます。

 その上で、あえて申し上げれば、例えば、外務省でもいろいろなアンケートをとっておりまして、その調査、あるいは日弁連の方でもいろいろな調査を行っておりますので、その結果によれば、大まかに言えば、海外から日本への連れ去りについての回答数、それから、日本から海外への連れ去りの回答数は、ほぼ同じ程度とお考えいただいて結構だと思います。

土屋(品)委員 なかなか、今の段階で、条約を締結していない中で、数というのは難しいかと思いますけれども、それだけの数があるということは、この条約を締結することによって非常に、助かるというか、力になる方が多くなるのではないかと思います。

 国際的ルールに従って問題の解決をしていくわけですが、多くの国民が抱える不安としては、やはり、さっきも申しましたように、DVが挙げられると思います。アメリカから日本へ来る方の中でDVが多いということを聞いておりますけれども、その中で、これは実際はDVではないということがアメリカ政府の当局とかそういうところから、それを理由に逃げているのだというような話もありますけれども、ただ、先ほどのデータによりますと、七割ぐらいは実際本当にDVなんだということもあるということを聞いておりますので、そういう点もしっかりとチェックをしていただかなきゃいけないかなと思います。

 先ほどの、領事業務の中の支援でも触れましたけれども、緊急避難的に日本に帰国した場合、残された親から条約に基づく返還申し立てが想定されるわけですけれども、ハーグ条約実施法案においては、DV問題に対する国内の懸念に配慮して、子の返還拒否事由について工夫をしたと聞いていますが、どのような法的な工夫をされたのか、お聞きしたいと思います。

後藤副大臣 ただいま土屋先生から御指摘をいただきましたとおり、DV問題に対する国内の懸念は大きな問題でございます。

 子や配偶者が他方の配偶者から暴力を受けたという事由は、返還拒否事由の一つである「常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること。」二十八条第一項第四号の判断において考慮されます。

 もっとも、この文言が抽象的であり、その判断においていかなる事情が考慮されるか必ずしも明確ではないということであるために、本法律案では、二十八条第二項において、その考慮事情のうち重要なものを例示いたしております。そして、その考慮事情として、「子が申立人から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無」「相手方及び子が常居所地国に入国した場合に相手方が申立人から子に心理的外傷を与えることとなる暴力等を受けるおそれの有無」を規定し、家庭内暴力が子の返還拒否事由の判断において重要な判断要素となることを明確にしておりまして、このような法律の立て方をいたしまして、この事案に対する工夫とさせていただいております。

土屋(品)委員 このハーグ条約に加盟している国の中には、原案のみの国もあると聞いております。国内法をきちっと整備するという国は少ないと聞いております。

 そういう中で、日本は、遅くはなりましたが、国内法をきちっと整備し、こうして、法務委員会でも外務委員会でも、両方で議論しているということ、これはすごく重要な点だと思います。このハーグ条約を締結した場合に、しっかりと国内法においても運用がされるようによろしくお願いしたいと思います。

 それから、多くの国民の不安を解消するためにも、あくまで条約が親権を制限し、子供にとって害悪を受けない環境を保障するものであることを広く周知する必要があると思います。中央当局の果たす役割というのが非常に重要なことは誰の目にも明らかであることはもう言うまでもありません。

 そこで、米国を初めとする締約国では、中央当局はどのようになっているのか、お聞かせ願いたいと思います。

平松政府参考人 お答えいたします。

 幾つかの例を申し上げたいと思いますけれども、アメリカ、アルゼンチン、メキシコ等の一部の締約国では、外交当局、例えば国務省であったり外務省がハーグ条約の中央当局を務めております。

 他方、イギリス、フランス等、その他の多くの締約国では、法務当局、司法省、法務省等が中央当局を務めていると承知しております。

土屋(品)委員 それでは、日本が、中央当局が外務大臣ということで、外務省に決定した経緯と、条約締結後の対応についての具体的組織をどうするのか、お聞かせ願いたいと思います。

岸田国務大臣 中央当局の設置につきましては、今各国の例をお示しさせていただきましたが、この各国の例も参考にしつつ、慎重に検討を行い、結果としまして、外国の中央当局との緊密な連携ですとか、在外公館を通じた適切な支援、こういったことを行う体制を確保するという観点から、我が国におきましては、中央当局を外務大臣として、外務省を実施の窓口とするとともに、法務省を初めとする関係府省庁との間で緊密に連携することにより、政府全体が一丸となって必要な任務を遂行することが適当であると総合的に判断をした次第でございます。

 そして、中央当局の具体的な組織につきましては、外務省及び法務省から人材を適切に配置するほか、ソーシャルワーカー、弁護士といった各分野からの専門家を中央当局の職員として採用し、全体として発足当初は十名程度の体制で取り組む考えでおります。

 外務省としまして、中央当局としての任をしっかり果たしていく考えでありますし、それとともに、政府全体として取り組むべく、関係府省庁と緊密に協力連携しつつ、適切な体制を整備し、準備を着実に進めていきたいと考えております。

土屋(品)委員 どうもありがとうございます。

 先ほども大臣の方からの答弁の中で、国内におけるこのハーグ条約に対する国民の認知度は非常に、高まっているというほどではないかもしれませんけれども、浸透してきたというお話があるんですが、実は、私、先週だったか、地元へ帰ったときに、ハーグ条約を外務委員会で審議するんですよとお話をしたら、そこにいた方は、約三十名を超えていたんですけれども、一人もハーグ条約について理解していない状況でございました。そういうことを考えますと、国内的な認知度を高めるためにもぜひ御努力をいただきたいなと思います。

 それは、ひいては、今、国際結婚、日本人の男性に奥様が外国人というのがふえていると思います。そうした場合に、連れ去られた日本の男性がそういうことを知らないで泣き寝入りということが非常に多くなるのではないかと思いまして、そういう意味でも、ぜひその点もしっかりと周知するように活動していただきたいと思います。

 聞くところによりますと、女性が連れ去る件が圧倒的に多いということを聞いておりますが、それは、よくわかっていないで男性側が去られたままということもあるのではないかと思います。

 そういう点について、ちょっと御意見があればということで、よろしくお願いします。

岸田国務大臣 ハーグ条約の認知度につきましては、やはり、調査の仕方、またそうした意見のとり方によってさまざまな結果が出てくることも考えられますが、ただ、傾向といたしましては、外務省におきまして、二〇一一年あるいは二〇一三年、このハーグ条約に関する世論調査を行っております。

 二〇一一年の調査においては、全体の六六・五%が日本がハーグ条約を締結することについて前向きな回答、要は、賛成及びどちらかといえば賛成と答えているのに対して、二〇一三年の調査によりますと、全体の七七%が前向きな回答をしているということであります。これは、調査の仕方とか対象によりまして数字等は当然変わってくることは考えられるわけですが、傾向としましては、少しずつ認知が進んでいるのではないかと思っております。

 ただ、それでも、まだまだ十分とは言えないわけでありますし、ぜひこれからもハーグ条約そのものに対する認知度を上げるためにも努力しなければいけませんし、そして、この条約を締結したことによってどういったメリットが考えられるのか、そして、それを実際我が身に置きかえてどのように活用できるのか、そして、外務省、政府はどんな支援をしてくれるのか等々、こういった視点でよりきめ細かく丁寧に説明をしていく、こういったことも大事なのではないかと存じます。

 基本的な認知度アップとあわせて、具体的な条約のありようや活用についても丁寧に説明責任を果たしていきたいと考えております。

土屋(品)委員 大臣の力強い決意をお聞きしまして、ほっとしたところでございます。

 この世論調査、多分、ハーグ条約という名前は知っているけれども、中身はまだまだなのではないかと思います。ただ、この条約が締結になった暁には、もう少し中身についても進むのかなと期待しているところでございます。

 中央当局が外務省ということでございますので、大臣にはしっかりとリードしていただいて、ハーグ条約浸透に向けてよろしくお願いします。

 また、法務省においては、国民の権利が損なわれないように、国内法の整備をすることでしっかりと取り組んでいただきたいと思います。特に子供を守るということでは本当に大事な条約だと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 ちょっと一瞬早いですが、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

河井委員長 次に、岡本三成君。

岡本委員 公明党の岡本三成でございます。どうかよろしくお願いいたします。

 一期生議員でございまして、本日、初めて外務委員会にて質問させていただく機会を頂戴いたしました。委員長初め関係者の皆様、本当にありがとうございます。

 まず初めに、岸田外務大臣には、先日、予算委員会でお願いを申し上げましたけれども、ぜひとも外務大臣として、日本の顔として、各国をめぐっていただきたいというのが私の率直な、まず初めのお願いでございます。

 私は、大学ですとか、就職をした後も長く海外に住んでまいりましたけれども、やはり外務大臣の顔が諸外国で知られているということは非常に重要だというふうに思います。

 きょう、ラストバッターを務めさせていただきますが、トップバッターの玄葉前外務大臣がおっしゃっていましたけれども、やはり、トップとして同じ責任感に立たれた方は、与党も野党もなく、大切な重要な哲学というのを共有されるんだなと思いました。玄葉前外務大臣も、国会を軽視するということがない範囲で、外務大臣の役割ということの大切さをおっしゃっていたように思います。

 とりわけ、私がそのようなことが重要だというふうに思っておりますのは、例えば、玄葉前大臣もおっしゃっていたように、ヒラリー・クリントン前国務長官は百十二カ国訪問されていますけれども、国連加盟国の約六割を四年間で回っていらっしゃいますので、これは全部新しい国ですので、二週間に一回は新しい国を訪問されているということになります。

 そして、あるインタビューでヒラリー・クリントンさんはこうおっしゃっていたんですね。特技は何ですかと聞かれまして、それは移動中の飛行機で熟睡することですというふうにおっしゃっていたぐらい各国をめぐられています。ただ、それは、やはりそれが一番国益にかなうと思っていらっしゃったはずですし、御自分の役割だと思っていたはずですし、米国の主張を彼女の立場で海外に伝えて、信頼をかち取って、最終的にそれが国益につながるというふうに思っていたからだと思うんです。

 ただ、若干、各国の外務大臣の外遊の中で、私は残念だなと思っているのは、例えば、ジョン・ケリーさんが先日アジアにいらっしゃったときには世界じゅうのメディアが取り上げるにもかかわらず、日本の外務大臣が海外に行かれるときには必ずしもそういう状況になっていない。

 仮に、例えば、アメリカに行くときにはワシントン・ポストやウォールストリート・ジャーナルやアメリカのメジャーな新聞、ヨーロッパに行くときはメジャーな新聞に事前にこちらからアプローチをかけて、積極的にインタビューにも応じていただくようなことをやっていただくと、諸外国に住んでいる邦人の方々もさらに母国に対する愛着というのもふえて、いいのではないかなというふうに思います。

 一つ大切なエピソードを御紹介したいと思うんですが、私は、国会議員になる前、昨年まで二十二年間、アメリカの金融機関に勤めておりまして、その際に、ジョージ・ブッシュ・ジュニア大統領が、勇退された後に、ゲストスピーカーとして役員会においでになりました。役員はほとんどアメリカ人です。ですから、日本にリップサービスをする必要なんか何もないんですけれども、ジョージ・ブッシュ元大統領がおっしゃっていたのは、御自分が大統領の時代に最も信頼を厚く持って、そして個人的に好きだったのは小泉純一郎総理です、それがゆえに、本来であればアメリカとして日本に要請をしなければいけないことはたくさんあったんだけれども、こんなことを言ってしまうと親友である小泉さんが困っちゃうので、握り潰したものがたくさんあるんだとおっしゃっていたんですね。

 つまり、やはり個人の人間関係が国と国との外交のベースだというふうなことをそのときに実感いたしましたので、ぜひとも、国会は重視していただきながらも、一年の多くを海外で過ごされるような、そのような日々になることを初めにお願いしたいというふうに思います。

 今回のハーグ条約でございますけれども、その目的は、今まで十分に議論されたように、子供の利益を保護することということは申し上げるまでもありません。しかしながら、一旦この条約を締結してしまいますと、条約の内容を読み進めば読み進むほど、国境を越えて連れ去りが起こったときに、機械的にその子供をもともと住んでいたところに帰すプロセスがひたすら書かれているように感じてしまうんですね。

 したがいまして、実際にこのような事案が起こったときに、どちらに住む方がその子の本当の幸せにかなうかというようなプロセスを十分に守るという観点から、この条約に加盟することが子供の不利益にならないということを担保するための質問とさせていただければと思います。

 その中で、最も重要なものが返還拒否の事由、返還拒否をできる事由が五項目大きく掲げられているわけです。この返還拒否を各国の司法に委ねられているわけですが、この司法の判断において、ある程度その国の、日本であれば我が国の文化や慣習や歴史というものを大きな土俵として、実際のその案件についての司法の判断を促していきたいと思うんです。

 もちろん、個々の事案につきまして政治が介入するということはできないわけですけれども、議論の土俵の価値観というものに関して、司法に対しても十分な価値の共有ということをしていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

後藤副大臣 岡本委員にお答えを申し上げます。

 ハーグ条約と申しますのは、監護の権利を侵害する子の連れ去りまたは留置があった場合に、原則として子を常居所地国に返還することとして、その手続を定めるものでありまして、例えば子の親権や監護権に関する事項については、各締約国の法制に委ねられているという仕組みになっております。

 ただし、例えば、離婚後単独親権制度と日本から外国への子の連れ去りの事案との関係を考えてみますと、ハーグ条約が適用されるためには、連れ去りまたは留置により監護の権利が侵害されたことが必要であります。しかし、離婚後単独親権制度のもとでは、離婚後に監護の権利を有する一方の親が我が国から連れ去り、または日本国外において留置をしても、他方の親の監護の権利を侵害することにはならないため、ハーグ条約に基づく子の返還を求めることはできないというようなことは発生をいたします。

 しかしながら、こうした問題もありますけれども、親権の問題について判断するに当たっては、それぞれ、婚姻のあり方に対する国内の全ての婚姻事件に多大な影響を与えるということでありますから、親権制度をどうすべきかとか、そういった問題等につきまして丁寧な議論が必要であるというふうに考えております。

 いずれにしても、国内の問題とハーグ条約を締結した場合の手続的な問題については、すぐに直接の影響を与えるものではないということだけは申し上げさせていただきたいと思います。

岡本委員 ありがとうございます。

 子の返還拒否事由の中でやはり最も重要なものの一つは、条約十三条1bにあります、子供が心身に害悪を受け、また他の耐えがたい状況に置かれることとなる重大な危険がある場合ということなんだと思うんです。

 体に暴力としてさまざまな害を加えられる、これは比較的わかりやすいので、それが子供自身に対してであったり、または、連れ去った側の配偶者であってもわかりやすい事例なんだと思うんですけれども、一方で、心に対する傷が大きくなる場合についても、司法の中で十分な御検討をいただいた上での判断としていただきたいと思います。

 例えば、実際的にはしつけだというふうに思っている暴力的なもの、または言葉の暴力であっても、子供の気持ちには大きな傷を与えるようなことがあるかもしれません。例えば、私も女の子がおりますけれども、お父さんが他の女性と不適切な関係を持って離婚になった場合に、その父親と一緒に暮らすこと自体が、そのお嬢さんからしてみると、物すごい嫌悪感になるかもしれません。

 また一方で、今までの他国の例の中では、もともと住んでいた国に返還をされた子供をその親が養育できずに、結局、施設に入って暮らしているようなお子さんもたくさんいらっしゃるように聞いておりますので、拒否事由の中の特に心の部分につきましても、司法の判断が適切になされるような価値観の共有ということをお願いできればと思います。

 続きまして、オペレーションを担います中央当局につきまして質問させていただきたいと思います。

 海外で事案が起こった場合に、当然、日本人であっても、その住んでおります国の中央当局にサポートを求めることになると思いますけれども、その国にあります日本の大使館や領事館からも十分なサポートが受けられる体制になるというふうに思ってよろしいんでしょうか。

平松政府参考人 お答えいたします。

 中央当局がそれぞれの中央当局と相談をしながらいろいろな形で支援をするというのが基本的な形でございます。

 他方、裁判等になった場合におきまして、大使館が持っていますいろいろな資料、例えばDVを受けたという相談を受けたというような記録とか、そういうものは必要に応じて提出することはできますし、あるいは、そういったいろいろな形での法律的な相談とか、そういうことも大使館、総領事館はできることになっておりますので、基本は中央当局でございますけれども、いろいろな過程で大使館、総領事館は御支援を申し上げる、そういう体制でございます。

岡本委員 今後、日本の国内で組織されます中央当局につきまして、今までの議論の中で、外務省を中心として、法務省からも出向者を迎え入れて、十人ぐらいの体制でというふうなお話がありましたけれども、実際のオペレーション、運用につきまして、ぜひ、お尋ね、お願いをしたいことがあります。

 それは、対象になっている親御さんとコミュニケーションをとる際に、いわゆるお役所仕事的に、ある案件についてはこの十人の組織の方のAさんがコミュニケーションをとって、法的な角度の別の案件についてはBさんが同じ人にコミュニケーションをとってというふうに、いろいろな方が細切れ的に対応するのではなくて、例えば主担当みたいな方を決めて、どういう側面の切り口の事項であっても、その主担当の方が実際に対応されるというようなオペレーションにぜひしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

平松政府参考人 大変有益な御示唆、ありがとうございます。

 これから、中央当局の役割についていろいろ考えていかなきゃいけないと思っております。大体十名ぐらいの体制で始めますけれども、その中には、法務省の関係者、弁護士だとかソーシャルワーカーを含めまして、いろいろな専門的な知識を持つ人に来てもらうということでございます。

 なるべくそういった人々に寄り添った対応をすべきだというふうに考えておりますし、今おっしゃったとおり、できるだけ一貫性のある対応をしなきゃいけないというふうにも思っておりますので、中央当局が全体像をよく見ながら、よくその全体の工程を管理できるような体制をつくるべく努力をしたいというふうに考えております。

岡本委員 ありがとうございます。

 その中で、今回の条約の目的が子の利益を確保するということであるのであれば、中央当局のスタッフの中に、子供の心理的なカウンセルを、サポートを行えるような、心理カウンセラーみたいな方もぜひ入れていただきながら、オペレーションとして進めるのではなくて、子供の心理面までもサポートしながらスムーズにお子さんの利益の最大化ができるというようなことを目指していただきたいというふうに思いますが、スタッフィングはいかがでしょうか。

平松政府参考人 御指摘のとおりだと思います。

 子の利益を最優先に考えるというのがハーグ条約の精神でございますので、子供の心理的負担をいかに軽減するか、最小限に抑えるかというのは極めて重要なポイントだと思います。

 そういう観点から、中央当局におきましては、ソーシャルワーカーといった形で子の福祉に関する専門的知識を有する専門家を採用いたしまして、代替執行の場面に立ち会うといった措置も検討しておりますので、そういった人たちのサジェスチョン、助言をいただきながら万全を期したいというふうに思っております。

岡本委員 ありがとうございます。

 続きまして、今回の条約締結に当たりまして、政府は、実は二つの項目に関しまして留保をつけていらっしゃいます。その一つは二十六条第三項でして、これは訴訟の費用を誰が持つかということで、中央当局が負担するとされていることに留保をつけていらっしゃいまして、基本的には本人負担を義務化していらっしゃいます。

 しかしながら、他国では、全て国が負担をするという加盟国もあるというのが事実でありまして、実際には、その対象の方というのは法テラス等に御相談をされると思うんですが、国際間にまたがる訴訟ということになりますと、翻訳の費用ですとか通訳の費用ですとか、大変高い費用がかかると思うんですけれども、政府の支援として、もうちょっと費用的な面もお考えいただくような余地はございませんでしょうか。

平松政府参考人 条約上の留保について御質問がございました。

 御指摘のとおり、条約第二十六条三項の規定に基づきまして、弁護士その他の法律に関する助言者の参加または裁判所における手続により生じる費用について、自国の法律に関する援助あるいは助言に係る制度によって負担することができる場合を除くほか、負担する義務を負わないことを内容とする留保を付す予定でございます。

 これは、国内の現行の他の裁判手続における当事者の負担との均衡や、あるいは財政上の制約等に鑑みまして、本条約に基づく裁判手続におきましても、現行の他の裁判手続において利用できる援助制度による援助を除いては、申請者に費用負担をお願いするということが適当であると考えまして、留保を付すということにした次第でございます。

岡本委員 今後さまざまに国際結婚の関係が広くなっていくと思いますけれども、実際には、足元、多くの場合は、外国人の御主人と日本人の女性の場合が案件になっています。これは、日本人の女性の人格や教養が世界的に高く評価されているということで、私はすばらしいと思っているんですけれども、実際には、そのお母様方が日本にお子さんを連れていらっしゃるときには、相手の元御主人に対して何か犯罪的な気持ちを持っているというよりは、そのお子さんのことを考えて、母性愛でお連れになっていることが多いわけで、実際に今回の条約の締結の後に御自分がさまざまに対応される際に、大きな経済的な負担までも押しつけてしまうというのは、心情的に忍びないものがあります。

 したがいまして、国内でのさまざまな事案とのバランスもあると思いますけれども、費用の件につきましては、ぜひ継続的に御議論をいただいて、御検討いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、けさ、民主党の山口委員が御質問された内容で、返還の拒否の事由の一つに、そのお子さんが御自分の意思でもう一人の親の方には帰りたくないという意思表示をしたときには、そのことも十分に裁判所が評価をしながら、吟味をしながら判断していくというふうなお話があったように記憶をしておりますけれども、その中の御答弁で、例えばそのお子さんが、二歳であっても三歳であっても、十分な自己主張ができれば、それも十分に加味しますというような会話がなされておりました。

 ただ、これは他国の例を調べてみますと、実際には、このような事案が起きたときに、そのお子さんが御自分の意思を判断して主張できているというふうに思われている基準はおおむね十歳です。十歳以上のお子さんの御意見は裁判所の判断の基準になっておりますけれども、それよりも小さいお子さんの御意見というのはほとんど採用されていないというのが現実です。

 しかしながら、十歳以下のお子さんでも、そのお子さんごとに、たとえ五歳であっても自分の意思をちゃんと主張できるお子さんはたくさんいらっしゃるわけですから、午前中の答弁のように、一つの年齢で切ってしまうということではなくて、その事案ごとに十分な吟味をしていただきたいと思いますが、御答弁いただけますでしょうか。

平松政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、条約の第十三条におきまして、子が返還されることを拒み、かつ、その意見を考慮に入れることが適当である年齢、成熟度に達していると認める場合には、子の返還を命ずることを拒むことができるという規定がございます。

 確かに、これは子供がどういう意思を表示するか、あるいはそれがどれだけ考慮できる熟度に達しているかということによるケースが多いわけでございますけれども、確かに国際的な一つの基準として十歳というのがあるのは私も承知しておりますけれども、要は、こういった子供が返還されることを拒否する事案については、今申し上げた点も含めまして、さまざまな要素があると思いますので、そういった要素を総合的に判断いたしまして裁判所として最終的な判断をするということでございますけれども、今申し上げた条項というのは重要な条項でございますので、判断に当たっては当然考慮されるということでございます。

岡本委員 ありがとうございます。

 続きまして、目下の国民の最も高い関心の一つでありますので、北朝鮮問題につきましても何点か質問させていただきたいと思います。

 先日、ジョン・ケリー米国国務長官が韓国、中国、日本を訪問されまして、さまざまな議論がなされたというふうに認識をしております。ケリー国務長官が訪問された後に、例えば朴大統領も中国の王毅外相も、さまざまな方々が北朝鮮との新たな対話の可能性ということを言及されていますけれども、アメリカそしてこの三国、四国の北朝鮮に対する大きな政策の変換があったというふうに考えてよろしいんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、岡本委員におかれましては、冒頭、外務大臣の外国訪問につきまして御理解と応援をいただきました。心から感謝を申し上げます。

 その上で御質問にお答えさせていただきますが、まず韓国の朴大統領、そしてまたケリー国務長官、対話ということに言及されたということ、私も承知をしております。

 我が国の基本的なスタンスですが、これは従来から、日朝平壌宣言にのっとって、拉致、核、さらにはミサイル、こうした諸懸案を包括的に解決するために対話と圧力の方針を貫いていく、こうした方針を一貫してとってきているところでございます。

 対話につきましても、我が国は、対話の窓、決して閉ざしてはおりません。六者会合は引き続き諸懸案解決のための有効な枠組みであると認識をしています。

 しかしながら、これはやはり、こうした対話のためにも、まずは北朝鮮自身が、非核化を含めて、問題解決に向けた真摯な姿勢を示すことが何よりも重要だと思っています。各国における、対話ということに対する言及につきましても、これは同じだと思っています。

 北朝鮮みずからが非核化を含む真摯な態度をまず示すということが何よりも重要であり、そうしたことが対話にもつながっていくという認識では各国とも一致しているのではないか、このように考えております。

岡本委員 ありがとうございます。

 昨日、北朝鮮国防委員会、声明を発表しておりまして、対話の条件として三つ大きく報道しています。国連制裁決議の撤回、米韓合同軍事演習の中止、廃止、核搭載の米軍爆撃機の撤収の三つなんですが、私自身は聞いてあきれるような内容だと思いますけれども、見方を変えれば、北朝鮮も、対話の窓口、解決の糸口、落としどころを探しているというような見方もできるのではないかなと思いますが、この昨日の北朝鮮の声明に対しての外務省の受けとめ方、御教示をいただければと思います。

岸田国務大臣 北朝鮮からは、さまざまなコメントが発せられております。そして、挑発的な言動も重ねられているところですが、やはり何よりも大切なのは、こうした言動に国際社会が振り回されないことだと思っています。そして、北朝鮮がこうした言動を繰り返しても何らみずからの利益につながらない、こうしたことをわからせるために、国際社会が連携して強いメッセージを送り続けることが重要だと考えております。

 こうした姿勢のもとに、北朝鮮のこの言動について注視していかなければならないと思いますが、何よりも、みずからが非核化を含む真摯な態度、行動を示すということ、これが重要だということについては変わらないと認識をしております。

岡本委員 ありがとうございます。

 続きまして、五月二十五日に開く予定だというふうに報道されておりました日中韓の首脳会談、これは一部の報道で延期されることが決定したというふうに報道されておりますけれども、その経緯について御説明いただけませんでしょうか。

岸田国務大臣 日中韓サミットにつきましては、例年開催されているわけですが、これにつきましては、ことしの議長国は韓国であります。現状、その議長国である韓国がこの開催に向けて今調整を行っている状況にありまして、今現在も調整中ということであります。

 ですから、まだ、ことしの開催については、日程も含めて、何ら決まっていない、これが現状でございます。

岡本委員 万が一延期するようなことがあれば、そのこと自体を北朝鮮に利用されるようなことがあってもいけませんし、もし、トップのさまざまな予定が合わないのであれば、例年、一カ月ぐらい前には三カ国の外相会合が行われているわけで、少なくとも外相会議は必ず行うような日本の明確な意思を他国に伝えながら、その開催というのを目指していただければというふうに思います。

 最後に、先ほど、ジョン・ケリー国務長官がアジア地域を回られたことに言及をされましたけれども、もちろん、朝鮮半島並びにアジア全体の安保を考えたときの米国の役割は非常に重要なんですけれども、アジア外交ということに関しては、ぜひ日本にもっと積極的にイニシアチブをとっていただきたいということをお願いしたいと思います。

 例えば、現状で、岸田外務大臣から、王毅外相であったり、またはロシアのラブロフ外相でもいいですけれども、積極的にコミュニケーションをとっていただくようなアプローチをしながら、アジア全体の安全保障の先頭に日本が立つようなメッセージを送っていただければありがたいと思います。

 加えまして、よく大臣も総理も、対話の窓はオープンだとおっしゃるんですけれども、先方がもし対話の窓はオープンだと言いますと、お互い窓を開いて見合った状態になっていまして、何も進みませんので、こちらから乗り出していって対話をするぐらいの勢いでやっていただければと思いますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、北朝鮮問題を含めて、このさまざまな課題に際して、御指摘のように、中国、ロシアといった関係国と協力すること、大変重要だと認識をしております。我が国は、日米韓の緊密な連携に加えて、こうした国々ともさまざまなレベルで連携をしていかなければならないと考えております。

 例えば、ロシアとの間では、ラブロフ外相とは二月二十一日に電話会談を行いましたし、また、先般のG8外相会合の機会にも、四月十日、日ロ外相会談を行っているところであります。

 また、中国の王毅外交部長とも、今後、機会を捉えて、意思疎通を考えていきたいと考えております。

 ぜひ、今後とも、さまざまな機会を捉えて、具体的なこうした対話の機会を具体化するために、我々も努力をしていきたいと考えています。

岡本委員 誠実な御答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 以上で終了いたします。

河井委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後三時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時四分開議

河井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これにて国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結について承認を求めるの件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河井委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河井委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

河井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五分散会


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