衆議院

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第6号 平成25年4月26日(金曜日)

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平成二十五年四月二十六日(金曜日)

    午前八時四十五分開議

 出席委員

   委員長 河井 克行君

   理事 岸  信夫君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 薗浦健太郎君 理事 土屋 品子君

   理事 原田 義昭君 理事 山口  壯君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      城内  実君    黄川田仁志君

      小林 鷹之君    古賀  篤君

      河野 太郎君    島田 佳和君

      田畑  毅君    東郷 哲也君

      星野 剛士君    松島みどり君

      武藤 貴也君    菊田真紀子君

      玄葉光一郎君    長島 昭久君

      浦野 靖人君    村上 政俊君

      岡本 三成君    山内 康一君

      笠井  亮君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        鈴木 俊一君

   外務大臣政務官      城内  実君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       芝田 政之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡   浩君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 五嶋 賢二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 金杉 憲治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山野内勘二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 引原  毅君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 南   博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   山田  彰君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       岡村 善文君

   政府参考人

   (水産庁長官)      本川 一善君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 前田  哲君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  牧原 秀樹君     田畑  毅君

  三ッ矢憲生君     古賀  篤君

同日

 辞任         補欠選任

  古賀  篤君     三ッ矢憲生君

  田畑  毅君     牧原 秀樹君

    ―――――――――――――

四月二十五日

 脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とジャージー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 租税に関する情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とガーンジー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とポルトガル共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 租税に関する相互行政支援に関する条約及び租税に関する相互行政支援に関する条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とニュージーランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 旅券法の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)

同月二十三日

 米軍輸送機オスプレイの配備撤回・低空飛行訓練の中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五六七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五六八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とジャージー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 租税に関する情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とガーンジー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とポルトガル共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 租税に関する相互行政支援に関する条約及び租税に関する相互行政支援に関する条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とニュージーランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 旅券法の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

河井委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房国際文化交流審議官芝田政之君、大臣官房審議官岡浩君、大臣官房審議官五嶋賢二君、大臣官房参事官金杉憲治君、大臣官房参事官山野内勘二君、大臣官房参事官引原毅君、大臣官房参事官南博君、北米局長伊原純一君、中南米局長山田彰君、中東アフリカ局アフリカ部長岡村善文君、水産庁長官本川一善君、防衛省地方協力局次長前田哲君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菊田真紀子君。

菊田委員 おはようございます。民主党の菊田真紀子でございます。

 きょうは二十分という大変短い時間ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、昨日、北朝鮮の軍創建八十一周年記念日だったということで、けさの報道にもいろいろございましたけれども、直近の北朝鮮動向についてお伺いいたします。

岸田国務大臣 まず、北朝鮮が挑発的な言動を繰り返していることについては、まことに遺憾に感じております。

 ただ、客観的に言いますと、最近になって、北朝鮮による挑発的な言動の頻度は若干減少しております。また、韓国におきましても、開城工業団地の扱いも含めて北朝鮮に対して対話を呼びかけている、こうした事実もあります。

 しかしながら、ケリー米国務長官も述べておられますように、対話の前提になるには、北朝鮮が、非核化を含め、問題解決に向けた真摯な姿勢を示すことが重要であると認識をしております。

 今後とも、関係各国としっかり連携を深めながら、北朝鮮の動向については注視をしていかなければならないと考えております。

菊田委員 依然として核兵器保有を強調し、そしてまた日本に対しても言及をしているということでございましたし、また、現在、戦略ロケット軍の将兵の手は発射ボタンの上に置かれているというような威嚇も繰り返しているわけでありますので、我が国としては、万全の態勢、そして情報をしっかりと入手し、対応していかなければならないというふうに思っております。

 一九五〇年六月二十五日に始まった朝鮮戦争は、三年後、一九五三年七月二十七日、板門店において朝鮮国連軍と北朝鮮軍との間で休戦協定が締結をされました。休戦協定は国際法上の戦争を終わらせるものではないので、朝鮮半島は現在に至るも国際法上は戦争状態にあるという認識は間違いありませんか。

金杉政府参考人 事実関係ですので、私の方からお答えさせていただきます。

 先生御指摘のとおり、朝鮮戦争休戦協定は、前文で、この協定の目的としまして、最終的な平和的解決が実現するときまで休戦を打ち立てることを定めております。また、協定の当事者でありますアメリカも、法技術的には過去六十年間にわたり休戦の状況にあったという認識でございますので、先生御指摘のとおりだと思います。

菊田委員 アメリカと韓国は米韓相互防衛条約を結んでいますが、もし北朝鮮が韓国を武力攻撃すれば、米国はこの条約に基づきどのような行動をとることになるんでしょうか。

金杉政府参考人 お答えいたします。

 米国は、米韓相互防衛条約に基づきまして、韓国との間で同盟関係を結び、在韓米軍を駐留させているのは御承知のとおりでございます。

 この条約第三条では、いずれかの締約国に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の手続に従って共通の危険に対処するよう行動するということを宣言しております。

 また、先般の米韓外相会談の後に行われました共同記者会見で、アメリカのケリー国務長官も、自国、アメリカ及び条約の同盟国である韓国を防衛することにコミットメントするということを改めて表明しておりますので、仮に韓国が攻撃を受けるといったような場合には、韓国防衛のためにアメリカがしかるべき措置をとるということであろうと思います。

 以上でございます。

菊田委員 日米安保条約は、米国が極東の平和と安全のために日本における軍事施設を使用することを認めています。当然、極東には朝鮮半島が含まれるという理解でよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 日米安保条約六条に言う極東の範囲ですが、これは昭和三十五年に政府統一見解が示されております。

 日米両国が平和及び安全の維持に共通の関心を有する区域であって、かかる区域は、大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び台湾地域もこれに含まれているとされております。

 また、この区域に対して武力攻撃が行われ、あるいは、この区域の安全が周辺地域に起こった事情のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するためとることのある行動の範囲につきましては、その攻撃または脅威の性質いかんに係るのであって、必ずしも先ほど述べた区域に局限されるわけではない。

 このように昭和三十五年政府見解で述べておりますが、この極東の範囲につきましては、政府としてはこの認識を踏襲しております。

菊田委員 朝鮮半島有事は、日本の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態に該当します。周辺事態法に基づいて、日本は米軍に対して後方地域支援を行うことになっています。

 このように、一たび朝鮮半島有事が発生すれば、日米韓三カ国は緊密に協力をしてこれに対処する構造になっています。こうした観点からも、平素から韓国と密接に意思疎通を行うことは重要だと思いますが、大臣はこうした認識を共有しているでしょうか。

岸田国務大臣 北朝鮮問題を含む東アジアの現下の情勢を考えますと、日韓そして日米韓、こうした関係国との緊密な連携はまことに重要であると考えております。日韓の間でも安保協力について引き続き進めていくことは必要だと認識をしております。

菊田委員 中国と北朝鮮の関係について伺います。

 一九六一年に締結された中朝相互援助条約第二条はいかなる規定でしょうか。これは現在でも有効なのでしょうか。

金杉政府参考人 お答えいたします。

 中朝の援助条約でございますけれども、その第二条では、戦争状態に陥った場合は、他方の締約国は、直ちに全力を挙げて軍事上その他の援助を与えるというふうに規定をされております。

 また、その有効性につきましては、最近も中国の外交部の報道官が記者会見の中で明らかにしておりますが、この条約の有効性についてはいかなる変化もないという説明があったと承知しております。

 以上でございます。

菊田委員 今答弁がございましたとおり、中朝相互援助条約上、米韓両国が北朝鮮に対して軍事行動をとれば、中国は直ちに全力を挙げて北朝鮮を支援する義務を負います。すなわち、朝鮮半島有事が発生すれば、条約上、日米韓三カ国と中朝二カ国が全面的に対立する構造になっているわけですが、この点は冷戦時代から変わっていないと思われます。大臣はこうした認識をお持ちでしょうか。

 北朝鮮による挑発が続いている現在、日本の平和と安全のためには、北朝鮮との関係で微妙な立場に立つ中国との緊密な意思疎通が特に重要だと考えますが、大臣の見解を伺います。

岸田国務大臣 まず、条約等の解釈につきましては、先ほど来答弁させていただいているとおりでございます。しかし、現実の緊張する東アジア情勢の中で、各国ともそれぞれ、不測の事態を起こさないように、しっかりと平和と安定を維持するために努力をしていかなければならない、こうした立場にあると考えております。

 そして、その中にあって、中国の役割が大変重要ではないか、こうした指摘がございました。私もそのとおりだと認識をしております。北朝鮮と中国との長年にわたる関係、国連の安全保障理事国の一員であるという中国の立場、そして六者会合の議長国であるという中国の立場、こうした中国の立場を考えますときに、この北朝鮮問題において、こうした緊張を緩和する、そして北朝鮮にしっかりとしたメッセージを伝えていく、真摯な態度に向けさせる、こうしたことにおいて中国の果たす役割は大きいものがあると私も認識をしております。

菊田委員 北朝鮮の核、そしてまたミサイルの発射については、中国も、水面下も含めて、抑制を相当働きかけたというような報道もございますが、しかし、依然として中国と北朝鮮は、国と国との約束、条約をしっかり持っているわけでございまして、長年にわたる血で固めた同盟というような関係がこの後どういうふうになっていくのか、注視をしていかなければなりません。

 しかし、この条約を破棄する、あるいは見直すということは、現実にはそう容易ではないことでありますので、私は、この中朝の関係を注視しながら、日本が中国としっかりと緊密な連携を図っていくことが非常に重要だというふうに考えております。

 この地域における最大の抑止力が、米韓相互防衛条約と日米安保条約に基づく米軍のプレゼンスであり、韓国の安全が日本自身の安全にとって非常に重要であるならば、日本と韓国の間においても安保協力を推進すべきは当然であろうが、大臣の見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 おっしゃるように、この北朝鮮問題を含む現下の東アジアの情勢を考えますと、日韓、そしてさらに韓米の緊密な連携は重要であります。日韓の安保協力についても、引き続き進めていくことが必要であると認識をしております。こういった観点から、韓国との間で、情報共有を含む安保分野における協力を適切なタイミングで推進していく必要があると考えております。

菊田委員 昨年、GSOMIAを締結しようとしましたけれども、韓国側の都合で土壇場で延期になりました。韓国国内は依然として非常に慎重論も強く、デリケートな扱いになっているわけでありますけれども、日本と韓国の間において安保協力を推進していくためのさまざまな努力、環境を整えていくことを引き続き求めてまいりたいと思います。

 続きまして、安倍政権閣僚による靖国神社参拝が日本外交に与える影響について伺います。

 政権ナンバーツーの麻生副総理を初め複数の閣僚が靖国神社を参拝し、安倍総理が御供物を奉納したことに対し、中国、韓国はそれぞれ反発を強めています。日中韓首脳会議は中国の反対で開催の見通しが立たず、開催実現に向けて汗をかいてきた韓国は、今月中で調整していた外相の訪日を取りやめました。高村自民党副総裁は、日中友好議連の会長として、五月初旬に訪中をし、習近平国家主席ら要人との会談を要請していたそうですが、これが成立しないため、中国訪問を断念したと聞いています。

 北朝鮮の挑発行為をやめさせるためには、中国による影響力が不可欠であります。中国が北朝鮮に影響力を有する理由は幾つもありますけれども、先ほど来申し上げてまいりました最も根源的な理由は、条約上、一朝有事のとき、中国は北朝鮮を援助する立場にあるからです。

 英霊のみたまに誠の気持ちをささげることは重要です。しかし、今この瞬間も北朝鮮によって日本の安全が脅かされているのに、重要閣僚が靖国神社を参拝し、韓国、中国の反発を招いたことは、外交上得策だったと考えますか。日本外交の責任者である外務大臣の見解を伺います。

岸田国務大臣 まず、二十五日に菅官房長官も申し上げておりますように、どの国であれ、国のために命をささげた方々に尊崇の念を表することは当然だと考えております。

 同時に、韓国そして中国ですが、日本にとって重要な隣国であり、靖国をめぐる問題でこれらの国との二国間関係全体に影響が及ぶことは、もちろん望んでおりません。日本としては、今後とも大局的観点からこれらの国々との関係を強化していく方針、これは従来と変わっておりません。

 その中にありまして、尹炳世外交部長官の訪日についても委員触れられましたが、これまでも、日韓両国の外相間では、意思疎通をよくしていくことが重要であるということについては認識が一致しておりましたし、韓国外交部長官の訪日は我が国から招請してきたところであります。そして、調整をしてきましたが、まだその具体的な訪日日程は決まっていないという状況でありました。今後とも調整は続けていかなければならないと考えております。

 そして、議連の訪中にも触れられました。日中友好議連につきましては、五月一日から三日まで訪中予定でありましたが、日程上の都合により中国側要人との会談を実施することができなくなったため訪中を延期することになった、このように承知をしております。

 日中関係は厳しい局面にありますが、議員交流を含む日中間のさまざまなレベルでの交流、意思疎通が行われるということ、これは大変有意義なことであると考えておりますし、引き続き政府としては適切に支援をしていきたいと考えております。

 いずれにしましても、こうした緊迫した東アジア情勢等を考えますときに、日本にとっても大切な二国間関係にある中国あるいは韓国、こうした隣国との関係については、しっかりとマネージしていかなければならないと認識をしております。

菊田委員 大臣、祖国のために亡くなった英霊に対して尊崇の念をあらわすことは重要だというふうに外務大臣の立場でおっしゃいましたけれども、それでは、なぜ外務大臣は参拝しなかったんですか。

岸田国務大臣 祖国のために命をささげられた方々に尊敬の念を表する、この表し方についてはさまざまな形があると存じます。それぞれの立場において適切な形をとるということになると存じます。

 私も、靖国参拝については、内閣の一員として適切に対応していきたいと考えています。

菊田委員 若林政務官も二十三日に靖国神社に参拝をしておりますけれども、上司である岸田大臣は事前に承知をしていましたか。知った上で了承していたんでしょうか。外交交渉に直接携わる外交当局の政務が参拝したことをどう考えるか、お伺いいたします。

岸田国務大臣 まず、若林政務官の参拝ですが、若林政務官は私人として参拝されたと理解をしております。政務官が私人の立場で参拝することについては、これは個人個人の私的な行動に関する事柄であり、政府としてお答えをするというのは控えさせていただきたいと考えております。

菊田委員 事前に知っていたかどうか、話があったかどうかについて聞いております。

岸田国務大臣 若林政務官は私人としての参拝をされたわけですが、若林政務官個人の判断と責任で参拝されたと認識をしております。

菊田委員 一議員ではなくて、外交の責任者である、最高責任者は大臣ですね、その部下である外務政務官が靖国神社をこのタイミングで参拝することの意味、そのことを私は問うているわけでありまして、私人、公人の線引きをどこでするのかということを今ここで議論する時間はありませんけれども、これは私は、非常に大きな問題だというふうに捉えております。現実に、どう言おうとも、今、外交上さまざまな影響が出ていることは事実であります。

 菅官房長官は、日韓関係、日中関係に与える影響について、全く出ないと強弁しました。麻生副総理は、外交に影響が出るということは余りないと語っています。新藤総務大臣は、近隣諸国に影響を及ぼすとは考えない、問題があるなら岸田外務大臣の方で処置してほしいと発言しています。

 大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 こうした参拝につきましては、それぞれの責任と判断で参拝されたものであると考えますが、外交を預かる立場からいたしますと、こうしたことで、外交関係、そしてそれぞれの二国間関係に影響が生じないように、さまざまな努力をしていかなければいけない、そうした立場にあると考えております。

河井委員長 菊田真紀子さん、既に持ち時間が過ぎておりますので、そろそろおまとめをいただきたいと思います。

菊田委員 わかりました。

 とにかく、今、中国、そして韓国との関係が悪化して、結局、得をするのは北朝鮮ではないか、こういう強い危機意識を持って私はきょうは質問させていただいております。私の意図を大臣にしっかりと受けとめていただきたいというふうに思います。

 それでは、時間ですので質問を終わります。ありがとうございました。

河井委員長 次に、村上政俊君。

村上(政)委員 日本維新の会の村上政俊です。

 本日、私からは、このゴールデンウイークに予定されている、岸田外務大臣と安倍総理のそれぞれの大型の外遊についてお伺いしていきたいと思っております。

 我々日本維新の会が掲げる維新八策の中でも、国会改革を実現して、総理が一年間の中で百日は外遊できるようにということをうたっております。国会審議の関係で、通常国会開催中は、まとまった時間をとって、何カ国か、三カ国、四カ国を続けて訪問するという形で我が国の外交を展開していくということがなかなか難しい中で、このゴールデンウイークの外遊というのは非常に重要な、そして非常に貴重な機会でございますので、それぞれの外遊の中でどういったことを成果として期待しておられて、また実現していこうとされているのか、この質疑の中で明らかにしていきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 まずは、大臣御自身の中南米の御訪問についてお伺いしたいと思います。

 まず、中南米という地域は、この国会の中で取り上げられる機会は非常に少ないと思いますが、我々の外交にとって、そして我々の国益にとって、中南米外交というのはどのように重要なのか、御答弁をお願いしたいと思っております。

 私自身考えてみますと、中南米地域と我が国とが非常に深い歴史で結ばれておるというのは、これは皆さん御承知のことであると思います。例えば、一八九三年にグアテマラに初めて日本人が移り住んで以来、日系人は、現在ではブラジルを中心に百六十七万人を数えるわけでありますし、また、資源や食料の供給元という観点からも中南米は非常に重要であると考えますが、改めて、中南米とは、我々の外交にとって、そして国益にとってどのように重要であるのか、御答弁をお願いいたします。

岸田国務大臣 委員御指摘のように、中南米諸国は、歴史的に見ましても我が国とは深い関係にあり、親日的な国々も大変多いと認識をしております。

 そして、その中で、この中南米地域は、近年著しい経済成長を遂げております。また、六億人の人口を有する巨大な市場でもあります。また、御指摘のように、我が国にとりまして、資源そして食料の重要な供給地でもあると認識をしております。

 そして、こうした経済成長とともに、この中南米諸国は、国際社会における影響力、国際場裏における発言力もますます大きくなっていると考えています。こうしたことから、気象変動ですとか、あるいは軍縮、さらには国連改革、こうした課題においても、中南米諸国の存在感、役割はますます大きなものになっていると認識をしております。

 こうした我が国との関係、そして経済における著しい発展、そして国際場裏における存在感の大きさ、こういった点を考えますときに、我が国としてこの中南米諸国との関係は重視していかなければいけない、このように認識をしております。

村上(政)委員 今、大臣の御答弁の中で、親日的というお話もありましたが、やはり日本のファンが非常に多いこの中南米の地域に大臣みずからお出かけになって外交を行っていくということ、非常に重要であると思っております。

 大臣が今回訪問される意義ということについて質問を続けていきたいと思いますが、例えば、報道の中で、四月十二日に共同通信は、アメリカからシェールガスを輸入するという観点から、パナマ運河を持っているパナマという国を訪問するのは意味のあることであると報じておったり、例えば二十六日、けさですけれども、NHKは、TPPの交渉参加国にそれぞれ我が国から閣僚を派遣してTPP交渉を進めていくといった観点から大臣の訪問を説明しているところであります。

 こういった個別の国々に対する訪問の意義づけはそれぞれあると思います、シェールガスの輸入であったりTPPの問題であったり。しかしながら、三カ国、パナマ、それからペルー、メキシコを訪問されるわけですから、この三カ国を訪問される全体としての意義というのはどういったところにあるのか、大臣から御答弁をお願いしたいと思います。

 私自身は、この三カ国というのは、メキシコそしてペルーが参加している太平洋同盟、これは新しく中南米で立ち上がった、地域の協力する形でありますけれども、彼らとの間で我が国が戦略的に提携をしていくということは重要ではないかというふうに考えています。

 と申しますのも、太平洋同盟の国々は、彼らは、アジア太平洋地域と協力を深化させていこう、そして自由貿易を推進していこうという観点から、地域の協力を深化させていこうとしております。翻って我が国の外交を考えたときに、我が国にとっても、経済上も、そして安全保障上も、アジア太平洋地域というものは重要である。そして、自由貿易を推進していって、我が国の経済を再び力強いものにしていく。

 我々の戦略と非常に合致している地域であるというふうに考えますが、大臣御自身は今回の訪問にどういった意義があるとお考えでしょうか。

岸田国務大臣 おっしゃるように、訪問させていただく各国には、それぞれ具体的な課題もあり、そして意思疎通を深めなければいけない問題も存在いたしますが、今回、中南米を訪問させていただくに当たりまして、もともと我が国は、中南米外交の柱として、経済関係の強化、国際場裏における協力、あるいは中南米諸国の経済発展の支援、そして中南米における親日層の拡大、この四点を掲げていますが、こうした我が国の政策についてしっかり理解を得る、こうしたことをしながら、中南米全体に対しての我が国の姿勢についても理解を深めていただくよう努力をしなければならないと思っています。

 よって、これは今のところ、メキシコで四月二十九日に予定しておりますが、我が国の中南米全体へのメッセージということで、中南米政策スピーチというのをやらせていただこうと考えております。こうした機会を通じまして、我が国の中南米政策の全体像について理解を深めていただけるように、しっかりと努力をしていきたいと考えております。

 各国との関係、そして御指摘の太平洋同盟を初めとする国際連携との我が国の連携等々、こうしたさまざまな視点から、今回の訪問を有意義なものにしていきたいと考えております。

村上(政)委員 今大臣の御答弁があったとおり、中南米に対して我が国がどのような戦略を持っているかということについて包括的にスピーチの中でお話しするというのは、非常に中南米諸国に対してメッセージになるというふうに私自身も考えるところであります。

 また、我々日本維新の会は、TPPに参加して自由貿易を推進していくという形で、グローバル競争に乗り出していくという形で我が国の国益を増進していく、そして経済を成長させていくということを考えているわけですから、こういった保護主義的な動きをしている国々とは別に、自由で開かれた経済を志向している国々と提携していくというのは非常に重要であるというふうに私自身も考えているところであります。

 それでは、総理の外遊について伺っていきたいと思います。

 総理はこのゴールデンウイークに中東とロシアを訪問されるということでありますが、この中東訪問の意義についてお聞きしていきたいと思います。

 六年前の一次政権のときも安倍総理は中東を訪問されたわけですが、その際も経済ミッションを同行されて、また今回も経済ミッションを同行されるということで、経済外交を中心に進めていこうという総理の意思というものは我々も感じるところであります。

 それぞれの国について考えてみますと、例えばサウジアラビアという国は、イスラム世界の盟主でもあり、また、我が国にとって最大の原油の供給元でもあります。また、アラブ首長国連邦は、我が国の自主開発油田の四割を持っている。

 そういう意味で、今回の訪問は、原発がこれからどうなっていくかが不透明な中で、安定的なエネルギーの供給元を確保するという点でもこの中東訪問は意義深いものだというふうに考えておりますが、それだけにとどまるのか、あるいは、アラブの春を経験して地域の不安定さが増す中で、中東という地域を安定させることに貢献して、世界の平和に対して、そして我が国の国益に資する形で地域の安定に貢献していく、あるいは安全保障に関しても対話を深めていくといった、エネルギー以外の分野でも意義を見出しておられるのか、御答弁をお願いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、我が国と中東諸国は伝統的に非常に良好な関係を維持していると認識をしておりますが、ただ、振り返りますと、過去数年、総理の中東訪問というのは実現しておりませんでした。今回、総理の訪問により、力強い日本経済の復活をアピールするとともに、日本の存在感の回復を図る、こうした意義があると考えております。

 この観点から、今回の訪問では、御指摘の二〇〇七年の安倍総理の中東訪問で確認した重層的な関係をさらに発展させて、一つは、地域の安定に向けた政治的関係の強化、二つ目として、エネルギー分野を含む幅広い経済関係の拡大、三つ目として、文化・人的交流や人材育成の分野における関係強化、こうしたものを含む中東地域との包括的なパートナーシップの構築を目指していきたいと考えております。

 中東地域につきましては、私も、国際会議等に出席し、各国とそれぞれの地域情勢について意見交換をするわけですが、米国あるいは欧米諸国を中心に、中東地域に対する関心は大変大きいものがあると感じております。こうした国際的な関心のありようを考えますときに、この地域において、我が国が今申し上げましたような形で存在感を高めていくということは、国際社会において我が国の存在感を高める、あるいは、ひいては国際社会において平和と安定に我が国が貢献する、そういった意味からも意義があるのではないか、このように感じております。

村上(政)委員 今大臣からの御答弁は、エネルギーにとどまらず幅広い分野で、前回の訪問も踏まえて中東地域との関係を発展させていきたい、また、国際社会の中でも関心を持っている中東地域に対して我々としてコミットメントしていくというふうに私は理解しましたが、そういった理解というのは、やはり、国民の中では、あるいはメディアの中ではまだまだ薄い、エネルギーだけで中東を語るというところもあると思いますので、そういった意味でも、大臣からもきちっとした御説明というのがこれからも国民に向けてあってもいいのではないかなというふうに私は思いますが、いかがお考えでしょうか。

岸田国務大臣 おっしゃるように、中東と我が国との関係の意義については、エネルギー分野のみならず、幅広いものが今までもあり、そしてこれからも大切にしていかなければならない関係がたくさんあると認識をしております。こうした点に留意しながら外交を進めていくためにも、多くの国民の皆さんにこうした実態をしっかり理解していただくことが大変重要だと考えます。

 ぜひ、外交を進めるに当たりましても、国民の皆様方にしっかりとした説明責任を果たしながら今回の訪問も進めていかなければいけないと思いますし、これからも、こうした説明責任を果たすために努力をしていきたいと考えております。

村上(政)委員 続いては、総理のロシア訪問について伺っていきたいと思います。

 日ロ関係というものは、エネルギーの分野や安全保障の分野を中心に、最も可能性に富んだ二国間関係の一つであるというふうな表現も使われております。他方、北方領土問題という非常に難しい問題も存在する中で、今回の総理の訪問の意義はどういったところにございますでしょうか。政務官、よろしければ。

城内大臣政務官 今回の安倍総理のロシア訪問は、日本の総理大臣の公式訪問として十年ぶりとなるものであり、日ロ関係の発展に新たな弾みと長期的方向性を与えることを目指しているものであります。

 そのために、まず、安倍総理とプーチン大統領との間の個人的信頼関係をしっかりと構築する機会とすることが重要であります。

 また、ロシアとの間で、アジア太平洋地域のパートナーとしてふさわしい関係を構築すべく、経済や安全保障などあらゆる分野で協力を進め、日ロ関係を全体として高めていくとの方向性を示す機会としたいと考えておるところでございます。

 またさらに、日ロ間の最大の懸案である北方領土問題の解決に向けて、安倍総理とプーチン大統領が平和条約締結交渉を再スタートさせる政治的意思を示す機会とすることが重要であると考えております。

村上(政)委員 北方領土問題を進めていく上で、首脳間の個人的な信頼関係というものを構築していくということ、政務官の御答弁のとおりだというふうに私も考えます。

 実は、プーチン大統領に贈られた秋田犬がありましたけれども、あれは我が党の同僚議員の遠藤議員がもともと飼っていた犬ですので、そういった点でも、個人的な信頼関係の構築という点で何らか利用していただけるのではないかと思います。

 北方領土問題についてお伺いしたいと思います。

 二月の森元総理のロシア訪問の中で、プーチン大統領からは、北方領土問題の引き分けというのは、勝ち負けなしの解決、そして双方受け入れ可能な解決であるというふうな説明があったと私は聞いております。

 また、今月二十三日の菅官房長官の記者会見の中では、今政務官の御答弁と同じラインの、北方領土交渉を再スタートさせて両国首脳の政治的な意思を示すというふうな説明がございましたけれども、今回の安倍総理の訪問の中で、実際、どこまで踏み込んだ議論ができるのか、また、具体的な成果というものは期待されるのか、この点については、政府としてどのようにお考えでしょうか。

城内大臣政務官 いずれにしても、これから首脳会談を行っていく中で、特に北方領土問題については我が方の立場は一貫しておりまして、まず四島の帰属の問題を解決して、そしてロシアとの間で平和条約を締結する、これが一貫した我が国の政府の立場でありますから、これをしっかりと訴えて、そして成果を上げていくということを目指していくわけであります。

村上(政)委員 我々としては、やはり、経済だけが進んで北方領土問題が置き去りになってしまうということを避けるためにも、今回の総理のロシア訪問が有意義なものになるということは、非常に我が党としても祈念するところであります。

 最後に、TPPについてお伺いしたいと思います。

 TPPはこれからどういうふうに交渉を進めていくのか、各分野についての質疑は国会の中でも行われているところでありますが、時間も少なくなってまいりましたので、TPPとは我が国の通商政策にとってどういう位置づけなのかという根本的な問いかけについて投げかけてみたいと思います。

 TPPというものは、我が国の通商政策の最終ゴールとなるのか、あるいは途中過程なのか。例えば、アジア太平洋自由貿易圏、いわゆるFTAAPといったものの途中のものとして存在しているのか。こういった中長期的な我が国の自由貿易に対する関与といった面でTPPというものをどういうふうに位置づけておられるのか、お願いいたします。

城内大臣政務官 やはり、まず多角的な貿易の自由化が重要でありまして、その中で、これは非常に多層的でありまして、WTOにおけるガットの交渉、これは現在、WTOドーハ・ラウンド交渉は膠着状態にありますけれども、こういったWTO、そして同時に、それを補完するものとして、各国との二国間のFTA、EPA、さらには広域の自由貿易協定、経済連携協定といったものがございます。

 委員御指摘のとおり、TPPを初め、例えばほかに、日中韓FTA、RCEP、さらには日・EU・FTAなどがございますけれども、こういったTPPを含めた地域間の取り組み、そして二国間の取り組み、さらにはWTO、こういったものがございますので、これらをやはり多層的に進めていくことが我が国の国益につながるというふうに考えております。

河井委員長 時間が過ぎておりますので、よろしくお願いします。

村上(政)委員 わかりました。

 最後に大臣から、TPPの交渉参加国に今回行かれるわけですから、具体的にどういった成果を期待されているのか、決意を伺って終わりたいと思います。

岸田国務大臣 TPPにつきましては、貿易立国であります我が国にとって、経済的な効果のみならず、安全保障を初めさまざまな課題において意義ある協定であると認識をしております。しかし、この交渉に参加するに当たって、やはり我が国は、国益を守るために、我が国の交渉力を総動員して、しっかりと交渉に臨まなければならないと考えております。

 TPPにつきましては、参加国が交渉を始めてから既に三年たっております。我が国がこれから交渉に参加したならば、恐らく大変厳しい交渉も予想されます。ぜひ、我が国の交渉力を最大限発揮して、国益を守るために全力で臨んでいきたいと考えております。

村上(政)委員 ありがとうございました。

河井委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 最初に、TICADにおける市民社会の役割について質問させていただきます。市民社会というと、いわゆるNGOやNPO、学者であるとか、あるいは民間企業の社会貢献なども含めた、広い意味の市民社会ということで質問させていただきます。

 今、アフリカ援助、アフリカの開発の文脈では、中国の非常にアグレッシブなアフリカ進出が話題になっております。中国の経済進出、あるいは資源獲得のための、言ってみればかなり派手な進出がありますけれども、日本は、それと同じことをやる必要もないし、やろうと思ってもできないと思いますが、別のやり方でアフリカに進出していくことが必要ではないかと思います。

 その中で、中国が逆立ちしたってできないのが、恐らく、市民社会との連携ではないかと思います。日本はこれまで、民主主義国家として、そして非西欧の平和的な民主国家として、第二次大戦後、ずっとやってきたわけですから、人権や環境などにも配慮した国際協力をずっとやっていけるし、これからもやっていかなくてはいけないと思います。

 アフリカで、日本は紛争に介入したこともなければ、植民地を持ったこともない、軍事援助もやったことはない。そういった意味で、ある意味クリーンな国だと認識されていると思いますから、日本がやるべきことは、もっと市民セクターと一緒になって、NGO、学者、そういった人も含めて、一緒になって、単なる政府と政府の協力だけではなくて、そういう市民社会を巻き込んだ協力をやるということが日本らしさではないかと思いますし、ぜひTICADでもそういう側面を打ち出していただきたいと思います。それは、中国だったら絶対にできないことだと思います。

 今回、ことし行われるTICADに合わせて、外務大臣御自身は、アフリカの市民社会の代表の皆さんと懇談されたり意見交換される場というのを持つ予定はあるんでしょうか、質問します。

岸田国務大臣 おっしゃるように、我が国がアフリカとの関係を考える際に、我が国独自の姿勢をしっかり示していかなければならない、中国を初めとする他の国々との違いをアピールしていかなければいけない、大変重要だと認識をしております。

 TICAD5におきましても、我が国のアフリカへの支援とか投資は、やはりパートナーシップとオーナーシップ、この二つがポイントだという点をしっかりとアピールしなければならないと思います。パートナーシップそれからオーナーシップ、要するに、上から目線ではなくして、ともにアフリカの発展について考える。オーナーシップ、要は、アフリカみずからの考えや判断といったものを尊重していく、こういった姿勢は大事な点ではないかと考えております。

 そして、そうした大きな考え方とあわせて、御指摘のように、TICAD5あるいは日本のアフリカ支援や投資、アフリカとの関係を考える際に、こうした市民社会というのは重要なパートナーだと認識をしております。こうした認識のもとに、これからも努力をしていきたいと考えております。

山内委員 ある意味、ちょっと言い方は悪いですが、中国モデルというものがあるとすれば、中国モデルのリスクは、時の軍事政権とかに国会議事堂を建ててあげたりスポーツスタジアムを建てたりと、時の政権と近過ぎると、アラブの春みたいなことがあるときに一気に結びつきが全部なくなってしまうというリスクがあります。

 その点、一般の国民、相手国のアフリカの一般の市民や、あるいはオピニオンリーダー、あるいはNPO、そういう人たちとのつながりをつくっておけば、どんなに政権がかわっても変わらない、ある意味、保険みたいな役割も果たせると思いますので、時の政府だけとつき合うのではなくて、ぜひ、市民社会の代表の皆さんと日本が結びつくような、そういう形こそ日本がとるべきだというふうに思っております。

 そのためにも、今回の横浜のTICADの会合ではいろいろな分科会がありますが、各分科会で必ず一度はアフリカの市民社会の代表者が発言する機会をぜひ議長国として設けていただきたいと思います。

 それについて、外務省の見解をお尋ねします。

岸田国務大臣 まず、委員の問題意識、そして御趣旨、大変重要な視点だと思います。

 そして、分科会等、TICADの会議の持ち方について御要望もいただいたわけです。この御要望についてもしっかり承りたいと存じますが、ただ、議事の具体的な運営のあり方については、引き続き今検討中ということでありますので、具体的な会議運営につきましては、引き続き検討させていただきたいと考えております。

山内委員 議事の運営ということでは、岸田外務大臣は国対委員長として少数意見に配慮した国会運営をなさっていただいたと理解しておりますので、そういった意味では、そういういろいろな人の声を聞くというところで、外務大臣としてぜひリーダーシップをとっていただきたいと思います。

 次に、今回のTICADに関して、日本とアフリカ双方のNGOの皆さんからの要望の一つとして、日本とアフリカの知的交流あるいは文化交流、こういったものをもっと広げてほしいという声がありました。

 アフリカ援助というとJICAが前面に出てくるというのが従来でしたけれども、これからは、例えば交流基金なんかがもっとアフリカに出ていって、日本とアフリカのオピニオンリーダーの人物交流、こういったことをやるべきじゃないかと思います。

 アフリカにも非常に優秀な人はたくさんいらっしゃいます。私ごとで恐縮ですが、私の大学院の指導教官はケニア人だったんです。そういう優秀な人はアフリカにもたくさんいますから、日本が学ぶものもたくさんあると思いますし、知的な、そういうオピニオンリーダー同士でつながっていれば、相手国の世論に対する影響力という意味でもいい影響があると思います。

 そういう知的交流、文化交流といったことについて、外務省のお考えをお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、知的交流あるいは文化交流を促進させていくということは、日本とアフリカ諸国との間の友好関係をより重層的なものにするために大変重要な交流のあり方だと認識をしております。アフリカ諸国首脳を初め数多くの参加者を得て開催されるTICAD5は、そのために大変重要な機会だと考えております。

 知的交流の観点では、アフリカからの留学生あるいはフェローの受け入れ等を行ってきました。また、高等教育機関の日本研究の支援を行っているほか、アフリカの教育機関の拠点となる汎アフリカ大学への協力を開始したところであります。

 また、文化交流の観点からは、アフリカ各国で在外公館を中心に文化交流事業を行っているほか、日本国内でも、アフリカン・フェスタ等、アフリカ文化紹介の取り組みを行っているところであります。

 ぜひ、TICAD5を契機に、日本、アフリカ間の知的交流あるいは文化交流に一層弾みをつけるとともに、これを中長期的に関係強化につなげられるよう、今後も努力をしていきたいと考えております。

山内委員 ぜひお願いしたいと思います。

 そのときに、アフリカから人を受け入れる方はもう何十年もやってきているんですけれども、日本人をアフリカに送り出すということもぜひやっていただきたいなというふうに思います。

 それから、同じく知的交流に関して、最後にもう一点質問をします。

 アフリカでは、国際交流基金の拠点が一カ所しかありません。それも、一カ所というのはカイロです。カイロの交流基金の拠点というのは、どっちかというと、アフリカの拠点というよりは中近東の拠点という位置づけのように思うんです。

 やはりアフリカ全体をカイロからカバーするというのはどう考えても無理がありますから、例えば、仏語圏のアフリカに一カ所、英語圏のアフリカに一カ所ぐらいは交流基金の拠点をつくってもいいんじゃないかなと思います。そういったことも、財政厳しき折ですが、ぜひ検討していただきたいと思いますが、その点について大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 国際交流基金の海外拠点ですが、国際交流基金は、世界二十一カ国、二十二都市に海外拠点を有しております。

 御指摘のとおり、アフリカにおいては、カイロ一カ所に設置されております。カイロ事務所は、中東地域及び北アフリカ地域における国際交流基金事業を統括しているというのが現状でございます。

 外務省にとりまして、国際交流基金は、海外における文化交流、人物交流、あるいは日本語教育等の分野で、パブリックディプロマシーを実施する上で不可欠のパートナーであると考えていますし、国際交流基金が果たす役割はますます重要になっております。

 御指摘のとおり、カイロ以外のアフリカ各国に拠点を置くことは理想ですが、国際交流基金の拠点のあり方につきましては、厳しい財政状況等も踏まえつつ、我が国のパブリックディプロマシーの成果を最大化する上で最も効果的そして効率的なものになるよう、引き続き検討していきたいと考えております。

 なお、国際交流基金の海外拠点がない国においては、国際交流基金の事業を実施する際には、在外公館が全面的に協力しているというのが現状でございます。

山内委員 ありがとうございます。

 次の質問に移ります。

 次に、日本のODAの水と衛生分野についての質問をしたいと思います。

 国際的なキャンペーンということでは、教育分野では、エデュケーション・フォー・オールというキャンペーンを何十年もやってきて、非常に成果が上がった、成功したプログラムだと思いますが、それと似たような感じで、エデュケーション・フォー・オールじゃなくて、サニテーション・アンド・ウオーター・フォー・オールという取り組みが二〇一〇年からスタートしました。

 これは、水と衛生分野で、国連機関、援助国、援助機関、それからNGO、それから援助を受け入れる側の開発途上国と、世銀なんかも含めて、いろいろ国際協調しながら水と衛生分野で目標を達成していこうという取り組みです。

 これは二〇一〇年にスタートしたばかりなんですけれども、余り知られておりません。日本としてどのようにこれまで関与してきたか、お尋ねします。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 水・衛生分野における取り組みは、ミレニアム開発目標、MDGsの達成にとっても非常に重要であると認識しております。

 我が国はこれまで、水・衛生分野におけるトップドナー、最大の貢献国として、途上国における安全な飲料及び衛生施設へのアクセスの確保に貢献してきているところでございます。我が国は、本年三月に国連において開催された水と災害に関する特別会合を初めとして、国際的な水と衛生分野の議論に積極的に関与してきているところでございます。

 今後とも、我が国の経験、知見、技術を活用して、国際社会に協力していく考えでございます。

 委員御指摘のサニテーション・アンド・ウオーター・フォー・オール、万人のための衛生の水は、委員御指摘のとおり、水と衛生の分野の支援に関する大きな国際的なパートナーシップであると認識しております。我が国も、二〇一〇年以来オブザーバーとして参加してきております。今後の参加のあり方につきましては、このパートナーシップの活動内容等を踏まえ、検討させていただきたいと思います。

山内委員 残念ながら、日本はまだオブザーバーなんですね。主要国の援助機関はもうメンバーに入っております。アメリカのUSAID、イギリスのDFID、主要国で日本よりも援助額の少ないいろいろな国も、みんなもう正式メンバーになっています。

 今お話あったように、日本は水の分野ではトップドナーなんです。堂々たるものなのに、なぜオブザーバーなのか。その気になれば、この分野の国際会議で、日本は、金額的に圧倒的に多いわけですから、トップドナーとしてもっと発言権を持てるはずなのに、オブザーバー。これは非常に残念だと思うんですが、ぜひ日本は、この水と衛生の分野でリーダーシップをとってもらいたいと思います。

 それについて、大臣、一言いただければと思います。

岸田国務大臣 御指摘の点を踏まえて、また、このパートナーシップの活動内容等を踏まえまして、検討していきたいと考えます。

山内委員 過去にこのSWAのハイレベルミーティングへは日本からは外務省の担当者の方が行っていると思うんですけれども、できれば大臣に行っていただきたいですし、日本はトップドナー、世界のトップドナーなわけです、水と衛生で。できれば大臣に行っていただきたいと思いますし、国会日程等あれば、ぜひ城内さんのように英語の堪能な政務官の方に行っていただいて日本のプレゼンスを示すべきだし、実際に金を出しているのに口を出さないというのは非常にもったいないと思います。

 ヨーロッパの小国は、大して金を出していないし事業もやっていないくせに、大きい顔をしているんですよ、このドナーリストを見ていると。それを考えると、ぜひ日本のプレゼンス、もう既にプレゼンスはあるのに宣伝していない、こんなもったいないことはないと思いますので、ぜひともこの分野で日本はリーダーシップを発揮していただきたいと思います。もし一言あれば。

城内大臣政務官 山内委員の御指摘を踏まえて、しっかりと検討してまいりたいと思います。

山内委員 ありがとうございます。

 時間の関係で最後の質問になると思いますが、岸田外務大臣の外遊日程を議運の理事会で拝見しまして、一つ興味を持ちましたのは、アメリカで日系アメリカ人との交流の機会を持たれるというふうに伺っております。

 実は、外務省が、日系アメリカ人のオピニオンリーダーを招くという招聘プログラムを、多分、七、八年前からやられていると思います。私も、鈴木馨祐さんとか自民党の若手議員もみんな、日系アメリカ人の外務省の招聘で来た人たちと意見交換の夕食会を開くというのを毎年自腹でやっていまして、私も三回ほど出させていただきました。そういった意味で、日系アメリカ人とのいい関係を築いていく、この前亡くなられたイノウエ上院議員のようなケースもありますし、日系人を大事にするというのは、日本の外交上、非常に資産になると思うんですね。

 そういった意味で、外務大臣、今回、ゴールデンウイークにロサンゼルスに行かれて日系人の皆さんと会われる、非常にいいことだと思います。今回の訪米では、どういったプログラム、どういった交流を予定されているのか、お尋ねします。

岸田国務大臣 在米の日系人の方々、これまでもさまざまな場面で日米関係の強化に御尽力をいただいてきたという経緯があります。私も、大臣になってから、外務省で、来日されました日系人の方々とお会いさせていただき、意見交換をさせていただくことがありました。

 今回、私もロサンゼルスを訪問させていただく予定にしておりますが、このロサンゼルス、多くの日系人の方々がおられると承知しております。今回の訪問においても、日米同盟強化の一環として、意見交換等を通じて在米日系人の方々との関係強化を図り、より深みのある日米関係を実現していく考えです。できるだけ多くの時間を割いて、日系人の方々と直接触れ合い、意見交換を行い、そして、今後の日米関係に重層的な厚みを加えていく成果につなげていきたいと考えております。

山内委員 中途半端に時間が残っているので、通告していないことで一言感想をと思います。

 アメリカの日系人は比較的そういう手厚いプログラムがあるのかもしれませんが、中南米、ラテンアメリカにもいろいろな日系人社会はたくさんあります。質問ではなくて、意見表明ということで申し上げたいと思います。ぜひ、アメリカに限らず、中南米あるいはカリブ諸国などにもいる日系社会に対する支援というのをこれからきっちりやっていただきたいという要望を申し上げて、質問時間が来ましたので、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

河井委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 冒頭に、岸田大臣に伺います。

 日本政府は、ジュネーブで開催中のNPT再検討会議第二回準備委員会の中で、四月二十四日、スイスなど七十カ国以上が支持した、核兵器の非人道性を指摘した共同声明に賛同しないと表明いたしました。これに対して、広島、長崎の被爆地、被爆者を初め多くの国民から、失望と怒り、抗議の声が上がっております。私も広島の被爆二世ですが、全く同じ思いであります。

 日本政府は、いかなる状況下でも核兵器が二度と使われないことは人類生存の利益という表現が相入れないということで、賛同しなかったということでありますが、ということは、状況によっては核兵器が使われることが人類生存の利益になる場合があるという認識を、被爆地広島選出の岸田大臣が、外務大臣としてお持ちなのかどうか、伺いたいと思います。

岸田国務大臣 委員御指摘のこの共同ステートメントにつきましては、我が国を取り巻く安全保障環境にも鑑み、その表現ぶりについて、慎重かつ真剣に検討を行いました。そして、南アフリカを初め関係国ともぎりぎりの修文協議を行ってきたわけですが、残念ながら、時間切れということで協議が調わなかった。そして、最終的に、今回は賛同することを見送るということになってしまいました。

 ただ、我が国は唯一の戦争被爆国であります。核兵器の使用の影響に関してはどの国よりも実態を知っており、共同ステートメントの中で言及があります、核兵器の使用が、直後の被害のみならず、社会経済あるいは将来世代にわたって耐えがたい損害をもたらす点など基本的な考え方は我が国は支持しているところです。

 今回は、先ほど申し上げましたような経緯で賛同には至りませんでしたが、今後とも、同様のテーマのステートメントに参加する可能性は真剣に考えていきたいと思っています。前向きに取り組んでいきたいと考えております。

 我が国としましては、引き続きまして、国際的な核軍縮努力を主導するべく努力をしていきたいと考えておりますし、また、先般のNPDIでも私が提案させていただきましたユース非核特使を含め、関連施策は強化していきたいと考えております。

笠井委員 私が質問した、状況によっては核兵器が使われることが人類生存の利益になるという認識はあるのか、逆にそういう認識は持っていらっしゃるのかどうかと聞いたんですが、そのことについてはどうですか。つまり、その部分に賛同しなかったわけですから。

岸田国務大臣 この表現の中身については、関係国といろいろなやりとりをさせていただきました。結果として、我が国の安全保障環境に鑑み、ふさわしい表現であるかどうか、慎重な検討を行った結果でございます。

 このやりとりについては、具体的なものをお示しすることは控えさせていただきたいと思いますが、我が国は、核軍縮に向けて、より現実的に、具体的に進めていく、こうした方針のもとに核軍縮に臨んでおります。そうした我が国の方針との関係において調整を行いましたが、残念ながら、合意に至らなかったということであります。

笠井委員 あれこれ言われましたけれども、今回の共同声明に賛同しないというのは、被爆国として誤ったメッセージを世界に発するものだ、根本姿勢が問われると思います。

 共同声明は、核兵器が二度と使われないことを保証する唯一の手段は核兵器の全廃だとしております。国連では核兵器禁止条約の交渉開始を求める決議が繰り返し採択されて、世界の流れになっている。日本はその先頭に立ってイニシアチブを発揮することこそ必要だということを強く申し上げたいと思います。

 次に、防衛省。米軍再編に係る訓練移転の二〇一二年、平成二十四年度の実績について聞きます。

 防衛省に確認しますと、国内で二回、グアム等への訓練移転が五回となっております。その移転訓練に係る経費は、二〇〇七年の日米合意で、日本側がその経費の四分の三を負担することが決まっております。

 そこで確認しますが、国内分二回、グアム等分の五回の負担金額はそれぞれ幾らか、あわせて、今年度の日本側負担の予算額は幾らかお答えください。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生お尋ねの米軍再編に係る訓練移転の経費でございますが、平成二十四年度につきましては、訓練移転経費の予算額につきましては約四十億二千二百万円でございます。また、同じく二十四年度の移転経費の執行額というか日本側の負担額、実績は約十八億三千九百万円となってございます。

 それから、お尋ねのございました二十五年度の予算額は……(笠井委員「国内とグアムのそれぞれ幾らか」と呼ぶ)二十五年度の予算額は約四十二億二千万円でございます。

 それから、国内、国外のそれぞれの実績ということでございますが、この訓練移転経費につきましては、当該年度内における経費の総額によって整理をしている関係で、訓練ごとの執行実績額をお示しすることができないということを御理解いただきたいと思います。

笠井委員 訓練移転に係る経費負担は、二〇一一年度の実績、予算額八億六千七百万円、決算額八億八千二百万円に対して、二〇一二年度は予算額四十億二千二百万円ということで、今報告もありましたが、要するに、前年度からすると五倍にも増加している。

 なぜこんなにふえているんでしょうか。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十三年度の予算額、二十四年度の予算額は先生御指摘のとおりでございますが、平成二十三年度の予算額につきましては、平成二十三年度の途中におきましてグアムへの訓練移転というものを日米で合意いたしたところでございまして、その年度から始まったものですから、予算計上されておりませんでした。したがって、その分のことがございますので、御指摘のとおり、約五倍という予算額の開きになってございます。

笠井委員 二〇一一年一月の日米合意では、移転先として、グアムを含む米国の施政のもとにある領域を追加し、訓練の支援航空機の機種も、空中給油機、輸送機、AWACSを含むが、さらに、それに限定されないというふうにしました。

 十月の合意では、嘉手納の航空機による訓練だけじゃなくて、三沢、岩国の航空機が嘉手納飛行場に飛来して実施している空対地の訓練も対象にされた。その合意によって、負担額が五倍にふえたということだと思います。

 さらに伺いますが、昨年度の実績を見ますと、グアム等で実施した五回の訓練移転のうち三回が岩国飛行場からの訓練移転で、参加部隊は第十二海兵航空群等となっております。防衛省に伺いますけれども、この第十二海兵航空群等は、訓練移転前に岩国から嘉手納飛行場に飛来して、どんな訓練をやっていたんですか。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のございました二十四年度の五回ありましたグアム等への移転訓練、そのうち一回目から三回目のものが岩国からの移転でございます。

 これはそれぞれ、本来でございましたらば、嘉手納飛行場に飛来をいたしまして実施予定でございました戦闘機戦闘訓練及び空対地射爆撃訓練、これらをグアム島の方で行ったというものでございます。

笠井委員 昨年度の五回目の訓練というのは、防衛省の資料を見ますと、ことし一月二十九日から二月十五日に単独訓練として行われております。参加部隊は第十八航空団(嘉手納)、訓練場所はグアム島のアンダーセン空軍基地及びその周辺区域、参加機種はF15戦闘機十二機程度、空中給油機二機、早期警戒管制機一機等、人員約二百六十名程度となっております。

 当然、これら参加基地の訓練移転に係る経費の四分の三というのは日本側が負担しているということでありますね。

前田政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申しましたとおり、年度を通じての訓練移転経費、これの四分の三を日本側が負担する、こういう合意になってございます。したがって、理論的には、先生が今おっしゃいました嘉手納飛行場からのグアム島への移転訓練の分の四分の三を日本側が負担している、こういうことになっております。

笠井委員 グアムでは、同時期、一月十四日から二月二十七日に、多国間演習、コープノースも行われております。これには嘉手納のF15戦闘機を含む第十八航空団が参加をしております。

 結果として、F15は、訓練移転の単独訓練にとどまらず、多国間演習にも参加したことになるんじゃないか。この経費も含めて、今理論的にと言われましたが、四分の三は日本側が負担したということでしょうか。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもが訓練移転の経費として負担しておりますのは、あくまで、この時期に行われました嘉手納のF15の移転訓練、この分の経費の四分の三を負担している、こういう認識でございます。

笠井委員 では、その単独訓練で日本側が負担したものが多国間の訓練に参加したのかどうかを確認しましたか、日本側の負担にかかわりますから。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の、その共同訓練があった事実は承知をいたしておりますが、私どもが負担している経費はあくまでも訓練移転に伴った経費、このように認識をしております。

笠井委員 同じ部隊が行っていて、単独訓練と多国間訓練をやっているけれども、日本側は単独訓練の部分だけ出したと言うけれども、向こうは両方に参加しているとなれば、単独訓練で出す防衛省の資料でいったって、日本側の負担というのは、航空機の飛行経費、人員、物資の輸送、給食、宿舎管理サービス費というのが入っているわけですよね、そういうのに負担している。

 ここまでは単独訓練分で、ここからは多国間演習分だという、区別ができないじゃないですか。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 いずれにいたしましても、私どもが負担をしていますのは訓練移転に関するもの、それ以外のものについては負担をしていない、このような理解でございます。

笠井委員 でも、目的を明確にして、訓練移転については出すと言っているんだけれども、それが違うこともやっている、それが、日本から向こうに飛んでいってやるという経費も含めてやっているとなったら、これは少なくとも約束と違う話ですから。

 外務大臣、最後に伺いますけれども、コープノースというのは一九七八年から日本国内で実施されてきた日米の空軍演習で、九八年からグアムでやるようになりました。ことし、豪州の参加が二回目で、韓国の空軍も初めてオブザーバー参加しているわけですけれども、文字どおり、米、日、豪、韓国による多国間演習であります。

 日本国民向けには、沖縄の負担軽減のために訓練移転する、その単独訓練経費の四分の三を日本が負担すると言いながら、グアムに行ったら、それは実は多国間演習にも参加している、それも確認したかどうかわからないとかいう話をしていますけれども、そんな応用や流用があったとしたら、許されますか。少なくとも確認すべきじゃないですか。

岸田国務大臣 まず、基本的には、我が国は、在日米軍の訓練が周辺住民の生活環境に影響する場合に、その訓練を他の場所に移転することにより、かかる影響を軽減すること、このことは日米安保体制の円滑な運用を確保する上で重要だという観点から、訓練移転費の全部または一部を負担してきている、こうしたことであります。

 基本的には、日本側が訓練移転を要請する以上、移転に伴う追加的な経費を負担すること、このこと自体は適当だと認識をしています。

 政府として、日米安全保障条約の目的達成と周辺住民の要望との調和を図る観点から、米軍機の訓練移転は必要であると考えており、これを通じて沖縄を初めとする地元の皆様が負担軽減を実感できるよう、引き続き取り組んでいきたいと考えていますが、その明細について今御指摘がありました。それにつきましては、私自身、ちょっといま一度実態について勉強してみたいと思います。

笠井委員 きちっと調べてもらいたいと思います。

 オスプレイだってこれに入ってくることになるわけで、一旦沖縄に配備すれば、訓練移転、負担軽減ということで、結局、あとは、ほかへ移転してやったとしても日本側が肩がわりして持ってくれるという話になったら、とんでもない話になるわけで、そんなことは許されないということを申し上げて、質問を終わります。

河井委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 きょうは、日本と台湾の間における漁業協議について質問をさせていただきたいと思います。

 本委員会で本年三月十五日に質疑をさせていただいた本件につきまして、日本と台湾、日台間の漁業協議について、改めて足取りを見てみますと、一九九六年から協議が行われていましたが、二〇〇九年に一時中断、二〇一二年の十一月から協議再開に向けた会合が開催され、本年、二〇一三年三月十三日に、昨年に続いて二回目の会合、そして今般、四月十日、日本側、交流協会と台湾側は亜東関係協会で合意、署名をし、その合意の内容が関係者へ伝えられています。

 ここに至るまでにかなりの時間を要したことからも、相当な議論が交わされたものと推察をいたしますが、今回の漁業協定で取り決められた内容と、その決定に至る会議の様子や経緯について、大臣に説明を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 今回の日台民間漁業取り決めですが、一つは、東シナ海における平和及び安定の維持、二つ目として、友好及び互恵協力の推進、三つ目としまして、海洋生物資源の保存及び合理的な利用、四つ目として、操業秩序の維持を図ること、これらを目的としまして、日台双方の民間窓口機関である交流協会と亜東関係協会との間で作成されたものと承知をしております。

 本取り決めが適用される水域は、東シナ海の北緯二十七度以南の一定の排他的経済水域であり、適用除外水域と特別協力水域という二つの水域から構成されていると承知しております。

 また、本取り決めの具体的かつ円滑な執行のため、両協会の間で日台漁業委員会を新設し、さまざまな協力に関する議論を行っていくこととなったということであります。

 本取り決めの作成、海洋生物資源の保存及び合理的な利用並びに操業の秩序の維持について、長年にわたり議論が行われてきました。御指摘のように、十七年間、そして十七回目の会議において署名が行われたということですが、こうした、海洋生物資源の保存、合理的な利用、そして操業秩序の維持ということについて、長年にわたって議論が積み重ねられ、そして、ようやく今回、両協会で一致した結果だ、このように理解しております。

玉城委員 この日台の漁業協定以外にも、一九五五年の共同宣言からスタートし、一九七五年に旧協定締結、さらに、二〇〇〇年六月に新しく改定、発効された中国との漁業協定、それから、一九六五年の国交樹立から協定が始まり、一九九九年一月に改定、発効された韓国との漁業協定がそれぞれ存在するわけですね。

 今回の日台の協定合意に当たり、中国及び韓国との協定との関係で配慮された点があったとすれば、どのような内容であったか、伺いたいと思います。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 本取り決めの作成に当たりましては、優良な漁場が多く、漁業実態が非常に複雑な海域に関する海洋生物資源の保存や操業秩序などについて、両協会間でさまざまな議論が行われてきたというふうに承知しております。

 その際に、日中漁業協定や日韓漁業協定など、既存の漁業協定もある程度念頭に置かれていたものというふうに理解しておるところでございます。

 他方、中国あるいは韓国の漁船と、台湾の漁船とでは、操業実態が異なっているということもございます。

 そういうことで、本取り決めは、あくまでも日台双方の民間窓口機関との間で、海洋生物資源の保存及び合理的な利用並びに操業秩序の維持を図り、日台間の友好及び互恵協力を推進するという観点から作成されたものというふうに理解しております。

玉城委員 この日台漁業協定については、沖縄県、沖縄県漁業協同組合連合会及び地元の漁民代表の方々が、本漁業協定の協議が再開した当初から、東シナ海及び尖閣諸島周辺海域のマグロ漁場においては台湾漁船と地元漁業者とが競合する漁場があることから、強い不安並びに危機感を持ち、先島の北、東経百二十五度三十分より東の水域で台湾漁船の操業を認めないこと、先島の南で操業を認めないこと、排他的経済水域の地理的中間線を基本に協議をすることなど、平成二十四年十一月十八日に農水大臣、平成二十五年は一月十五日に外務省、二月二十五日には総理官邸、農水省、外務省、そして四月十日にも改めて官邸と外務省へ、具体的な内容の文書を持って繰り返し要請を続けてこられました。

 その際に、外務副大臣からは、沖縄の漁業者の意向は理解しています、頭越しに協定を締結することはありませんという口頭での返答も受けているわけですね。

 本協定の合意について、地元の漁業者の操業に対し配慮された具体的な点はどのような内容か、聞かせてください。

鈴木副大臣 委員の御指摘のとおり、私、この署名が行われる前に陳情を受けました。沖縄の漁業関係者の皆様方が、二十人ぐらいでしょうか、おいでをいただいたわけでございます。

 私自身、かつて全漁連に勤務をしておりました。そして、自民党の水産部会長もいたしまして、水産にはかなり深い思い入れを持っております。そういう思いの中で、沖縄県の漁業関係者の皆様方の陳情、本当に真摯に受けとめさせていただきました。そして、外務省内部におきましても、事務方に対して、交渉事でありますから日本の主張が一〇〇%通ることはないにせよ、沖縄の漁業者の方々の声にも耳を傾け、その意向をできるだけ酌み取るよう意を用いるべきだ、そういうことをたびたび指示を出してきたところでございます。

 頭越しということでございますが、実際に、二月には当省の担当参事官が沖縄を訪問いたしまして、漁業協同組合長ほかとも膝を突き合わせて地元の意向を聴取してまいりました。また、水産庁の担当部長も複数回沖縄を訪問して、地元漁業関係者の声に耳を傾けてきたことも承知をいたしております。

 そのような中で、今回、相手がいる中で、我々の主張が反映されるように最大限の努力をしたわけでございますけれども、厳しい交渉の結果、最終的に本取り決めが合意されたと承知をしているところでございます。

 今後、本取り決めに基づいて設置される日台漁業委員会におきまして、現場水域における漁業秩序の形成に関する具体的な検討が進められていくものと承知をしております。

 政府といたしましては、同委員会での議論が沖縄漁業関係者の意向と懸念を踏まえて進められるよう期待をしているところであります。

玉城委員 それでは、具体的にお伺いいたしましょう。

 きょうは、この二枚の、青い海域図と白い海域図の両方、資料を御用意させていただきましたので、これを横に並べてぜひごらんいただきたいと思います。

 委員の手元にありますのは、本日の資料として配付しました二枚の海域図、青い方の海域図は、三月十五日にも配付した、台湾主張の暫定執法線と、その西側で主に操業している台湾の漁船などが記されている周辺海域図、それから、沖縄県農林水産部から提供していただいた、今回の日台漁業協定の合意によって新たに指定された、ほぼ中央に位置する特別協力水域及びその海域を含む漁業関係法令適用除外水域が記された、白い方の周辺海域図の二枚となっています。

 白い方の海域図をごらんください。黄色い矢印の流れで記してある黒潮の上に、青い海域図で台湾漁船が操業しているマグロ漁場の赤い点線が重なっているのがおわかりいただけると思います。つまり、この海域こそが、地元の漁業関係者にとっても手放せない海域、漁場であり、何とかそこを守っていただきたいと、外務大臣、副大臣、水産庁を初め総理官邸へも足を運び、何度も何度も地元からの要請活動を行ってきた、それは先ほどの答弁にあったとおりだと思います。

 しかし、白い海域図をごらんください。一目瞭然です。日本が主張する地理的中間線あるいは台湾の主張する暫定執法線の枠内どころか、法令適用除外水域や特別協力水域の設定、あるいは北緯二十七度線との交差の海域が若干広げられている点、それから、北緯二十四度と東経百二十四度が当たる海域などは大幅に台湾側の条件が取り入れられ、自由に操業できる海域が広がってしまっているのが実態なんですね。

 このような大幅に譲歩する取り決めに関して地元の憤りが大変なものとなっておりまして、四月十二日には官房副長官、農水大臣、外務政務官に抗議を行い、仲井真弘多沖縄県知事と県漁業協同組合連合会会長、漁業協同組合長会会長連名による日台漁業取り決めの見直しを求める要請が上がっております。

 この取り決めは一生取り返しがつかない、あるいは久米島の西と石垣の北は撤回してほしい、ここの漁場を失うと、漁業も活力を失い、若い者も操業できないという悲嘆と怒りの声は、信頼を裏切られた我が国の政府に向けられているんです。

 地元の声を無視して、先ほどは、副大臣は頭越しではないとおっしゃいましたけれども、まるで頭越しのように行われてしまったこの合意の内容に対して、こういう激しい反対の意見が上がっています。

 このことに対して、大臣、どのように受けとめていらっしゃいますか。

岸田国務大臣 政府としましては、厳しい交渉の結果、本件取り決めの署名が行われ、そして、この署名の結果について、沖縄県漁業関係者に懸念を与えていることについては重く受けとめております。

 私自身も沖縄の方々の声にしっかり耳を傾けなければならないという考えのもとに、二十二日には沖縄県議会の皆様方にお会いをさせていただきましたし、昨日、二十五日ですが、仲井真沖縄県知事を初めとした沖縄県漁業関係者の皆様方と面会をさせていただきました。この日台民間漁業取り決めに関する要望を改めて聞かせていただいたところであります。

 今後、取り決めに基づいて設置される日台漁業委員会におきまして、現場水域の漁業秩序の形成に関する具体的な検討が進められていくものと承知しておりますが、政府としましては、同委員会での議論が沖縄県関係者の意向と懸念を踏まえて進められるよう期待していきたいと思いますし、同時に、本取り決めの実施に伴う影響については、今後、関係漁業者の意見も十分に踏まえつつ、関係省庁の連携による必要な対策の検討が重要だと考えております。

玉城委員 今後の予定として、五月二日に水産庁長官が沖縄へ出向いて説明会を開催するということも伺っております。そして、この協定は、国は漁業主権法施行令を改正して、五月十日までに取り決めを発効するという、もう目の前まで来ているという状況にあります。

 現状では、取り決め適用水域での漁業ルールの確認がされないまま、クロマグロ漁業の最盛期を迎えます。以前から危険で問題となっている現場海域での操業の際の懸念や、台湾漁船が操業する海域が広くなることで、地元漁業者が危険を回避するために不本意ながらも操業の自粛を強いられたのでは、我が国の漁業振興への大きなダメージとなることは十分予想されることだと思います。

 大臣、先ほど、地元の漁業者の意見を取り入れるというふうなお話がありましたが、このようなさまざま懸念される問題について、今後は、ぜひ地元の漁業者もそのルールを作成する協議会の中に入っていただいて実際に対応するということを考えていただきたいと思いますが、その件に関して見解をお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 今後、現場水域の漁業秩序の形成に関する具体的な検討、日台漁業委員会においてこの議論が進むことになると存じますが、その際に、ぜひ、地元漁業関係者の皆様方の声、意向もしっかり酌み取れるように、具体的に工夫をしなければならないと認識をしております。

玉城委員 ぜひ全国のウミンチュを守っていただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。ニフェーデービタン。

     ――――◇―――――

河井委員長 次に、脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とジャージー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、租税に関する情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とガーンジー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とポルトガル共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、租税に関する相互行政支援に関する条約及び租税に関する相互行政支援に関する条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とニュージーランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件及び内閣提出、旅券法の一部を改正する法律案の各案件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とジャージー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 租税に関する情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とガーンジー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とポルトガル共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 租税に関する相互行政支援に関する条約及び租税に関する相互行政支援に関する条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とニュージーランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件

 旅券法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田国務大臣 ただいま議題となりました脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とジャージー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十三年三月以来、ジャージー政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十三年十二月二日にロンドンにおいて、我が方在英国大使と先方首席大臣との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、我が国と英国王室属領であるジャージーとの間で、国際的な脱税及び租税回避行為の防止を目的として、租税に関する情報の交換を行うための詳細な枠組みを主に定めるものであります。

 この協定の締結により、国際的な脱税及び租税回避行為を防止するための国際的な情報交換ネットワークがさらに拡充されること等が期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、租税に関する情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とガーンジー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十二年十一月以来、ガーンジー政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十三年十二月六日にロンドンにおいて、我が方在英国大使と先方首席大臣との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、先ほど御説明したジャージーとの間の協定とほぼ同様のものであり、我が国と英国王室属領であるガーンジーとの間で、租税に関する情報の交換を行うための詳細な枠組みを主に定めるものであります。

 この協定の締結により、国際的な脱税及び租税回避行為を防止するための国際的な情報交換ネットワークがさらに拡充されること等が期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とポルトガル共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十三年六月以来、ポルトガル共和国との間でこの条約の交渉を行いました。その結果、平成二十三年十二月十九日にリスボンにおいて、我が方在ポルトガル大使と先方財務副大臣との間で、この条約の署名を行った次第であります。

 この条約は、二重課税の回避を目的として、日・ポルトガル間で課税権の調整を行うとともに、両国における配当、利子及び使用料に対する源泉地国課税の限度税率等を定めるものであります。

 この条約の締結により、両国間の人的交流及び経済的交流の一層の促進等が期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、租税に関する相互行政支援に関する条約及び租税に関する相互行政支援に関する条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、昭和六十三年一月に作成されたものであります。また、議定書は、平成二十二年五月にこの条約の一部の規定を改正するために作成されたものであります。

 この条約及び議定書は、各国の税務当局間において、租税に関する情報交換、徴収共助及び送達共助の枠組み等について定めるものであります。

 我が国がこの条約及び議定書を締結することは、各国の税務当局との協力の強化及び協力網の拡大を通じ、国際的な脱税及び租税回避行為に適切に対処するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約及び議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十三年六月以来、米国政府との間で現行の租税条約を改正する議定書の交渉を行いました。その結果、平成二十五年一月二十四日にワシントンにおいて、我が方在米国大使と先方財務副長官との間で、この議定書の署名を行った次第であります。

 この議定書は、先ほど御説明したポルトガルとの間の条約と同様に、二重課税の回避を主たる目的とし、投資所得に対する源泉地国における限度税率のさらなる引き下げ、税務当局間の徴収共助の手続の整備等の措置を講ずるための規定等を設けることとしています。

 この議定書の締結により、課税権のより効果的な調整を通じ、両国間の人的交流及び経済的交流の一層の促進等が期待されます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とニュージーランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十四年六月以来、ニュージーランドとの間で現行の租税条約にかわる新たな租税条約を締結するための交渉を行いました。その結果、同年十二月十日に東京において、我が方外務副大臣と先方駐日大使との間で、この条約の署名を行った次第であります。

 この条約は、先ほど御説明したポルトガルとの間の条約や米国との間の議定書と同様に、二重課税の回避を主たる目的とし、投資所得に対する源泉地国における限度税率のさらなる引き下げ、税務当局間の徴収共助の手続の整備等の措置を講ずるための規定等を設けることとしています。

 この条約の締結により、課税権のより効果的な調整を通じ、両国間の人的交流及び経済的交流の一層の促進等が期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上六件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

 次に、旅券法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明いたします。

 現行旅券法上、一般旅券の名義人は、氏名等に変更が生じた場合、記載事項の訂正を申請することができますが、訂正に係る旅券情報は、当該一般旅券の追記欄にタイプにより印字するにとどまるため、機械読み取り部分には反映されません。旅券の国際標準を定める国際民間航空機関は、二〇一五年十一月二十四日までに全ての非機械読み取り式旅券を失効すべきとしており、記載事項の訂正が機械読み取り部分に反映されていない旅券は、海外において国際標準外とみなされ、旅券保持者が不利益をこうむる可能性があります。

 この法律案は、以上に述べた状況に鑑み、現行の記載事項の訂正という制度を廃止し、これにかわる制度を導入するほか、所要の規定の整備を行うため、旅券法の一部を改正するものであります。

 次に、この法律案の主要点について御説明申し上げます。

 改正の第一は、旅券の記載事項を訂正する制度の廃止及び記載事項に変更を生じた場合の一般旅券の発給に関する規定の整備を行うことであります。

 改正の第二は、旅券手数料を改定することであります。

 これらの改正内容は、海外に渡航する国民の生活に直結する問題に対処するためのものであります。

 以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。

 何とぞよろしく御審議をお願いいたします。

河井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時三十二分散会


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