衆議院

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第7号 平成25年5月17日(金曜日)

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平成二十五年五月十七日(金曜日)

    午前九時二十九分開議

 出席委員

   委員長 河井 克行君

   理事 岸  信夫君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 薗浦健太郎君 理事 土屋 品子君

   理事 山口  壯君 理事 小熊 慎司君

   理事 佐藤 茂樹君

      あべ 俊子君    秋本 真利君

      黄川田仁志君    小林 鷹之君

      河野 太郎君    島田 佳和君

      田畑  毅君    東郷 哲也君

      星野 剛士君    牧原 秀樹君

      松島みどり君    三ッ矢憲生君

      宮澤 博行君    武藤 貴也君

      菊田真紀子君    玄葉光一郎君

      長島 昭久君    浦野 靖人君

      村上 政俊君    岡本 三成君

      山内 康一君    笠井  亮君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        鈴木 俊一君

   外務大臣政務官      あべ 俊子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  長田  太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 尚子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山田  淳君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 新美  潤君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 南   博君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   石井 正文君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    上村  司君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 星野 次彦君

   政府参考人

   (国税庁徴収部長)    岡南 啓司君

   政府参考人

   (水産庁長官)      本川 一善君

   政府参考人

   (海上保安庁次長)    桝野 竜二君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  城内  実君     宮澤 博行君

  河野 太郎君     秋本 真利君

  島田 佳和君     田畑  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     河野 太郎君

  田畑  毅君     島田 佳和君

  宮澤 博行君     城内  実君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とジャージー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 租税に関する情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とガーンジー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とポルトガル共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 租税に関する相互行政支援に関する条約及び租税に関する相互行政支援に関する条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とニュージーランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 旅券法の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)


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     ――――◇―――――

河井委員長 これより会議を開きます。

 脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とジャージー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、租税に関する情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とガーンジー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とポルトガル共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、租税に関する相互行政支援に関する条約及び租税に関する相互行政支援に関する条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とニュージーランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件及び内閣提出、旅券法の一部を改正する法律案の各案件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官齋木尚子君、大臣官房審議官山田淳君、大臣官房審議官山上信吾君、大臣官房参事官新美潤君、大臣官房参事官南博君、国際法局長石井正文君、領事局長上村司君、内閣官房内閣審議官長田太君、財務省大臣官房審議官星野次彦君、国税庁徴収部長岡南啓司君、水産庁長官本川一善君、海上保安庁次長桝野竜二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河井委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。薗浦健太郎君。

薗浦委員 自由民主党の薗浦健太郎でございます。

 本日は、租税条約六本そして旅券法ということで、まず租税条約から質問させていただきたいと思います。

 我が国企業の海外投資は年々ふえております。二〇一二年が約九兆六千億円ということでございまして、その投資からも、当然、我が国企業には収益が入っております。同じ二〇一二年に四兆二千億、これが我が国の企業が得た海外での収益ということで、我が国企業が海外での投資をふやしているということは今や周知の事実でございます。

 したがいまして、我が国の企業が海外で投資をする上で、また事業を行う上で、投資協定、租税条約、さまざまなものが非常に重要でございまして、きょう審議される租税条約につきましても、その観点から非常に重要であるというふうに考えております。これまでに我が国は相当数の租税条約を締結していると存じ上げておりますけれども、引き続きこの拡充に取り組んでいくべきだと考えております。

 まずは認識をお伺いしたいのですけれども、我が国が既に締結をしている租税条約の数がどのぐらいあって、その締結国というのは、我が国企業の海外投資に占める割合、どのぐらいの金銭的なカバー率を持っているのか、また、今、外務省として交渉を行っている国、また今後の方針について、それぞれ端的にお答えをいただければと思います。

岸田国務大臣 まず、我が国はこれまで、六十六カ国・地域を対象とする五十五の租税条約を締結しております。これにより、我が国の租税条約ネットワークは、金額ベースでいきますと、我が国からの対外直接投資先の約九割をカバーしているという状況にあります。

 政府としましては、二国間の経済関係ですとか我が国産業界からの要望、さらには脱税及び租税回避行為への対処に関する国際的な協力といった諸点を総合的に勘案して、この租税条約の新規締結あるいは改正に積極的に取り組んでいきたいと考えております。

 そして、現状ですが、具体的に申し上げるならば、二重課税の回避を主たる目的とした条約としましては、アラブ首長国連邦との間で、新規の条約として本年五月に署名を行いました。また、現在、英国、ドイツとの間で改正交渉を、そしてオマーンとの間で新規締結交渉を行っております。オマーンとの間では平成二十三年十二月に、英国との間では平成二十五年三月に、それぞれ基本合意に達しております。

 一方、租税に関する情報交換に主眼を置いた協定ということについては、新規締結交渉として、サモア、マカオ及び英領バージン諸島との間で基本合意に達している、こうした状況にあります。

薗浦委員 大臣、ありがとうございました。

 これは二つの側面があって、条約があるから出ていきやすいという部分と、それから、我が国がこれから、戦略的にここの地域は重要だ、例えばアフリカなんかは今、中国にかなり席巻されていると言われていますけれども、そうした戦略を、これは答弁は結構でございますので、これから持って、我が国がこことのいわゆる関係を重要視していかなければならない、民間レベルでもというところを重点的にやっていただければ、これは個人的な思いでございますけれども、そういう認識でいていただければと思います。

 加えて、今回の中身でございますけれども、いろいろありますが、とりわけ日米というのは切っても切れない関係でございますので、これは極めて重要であると考えております。お互いに、我が国にとっては最大の投資国ということもございますので、二重課税が生じる懸念も非常に大きいということでございます。

 今回、とりわけこの日米両国間の課税権の調整というものを行う枠組みが非常に重要になってくるということで、中身的には九年ぶりの改正だというふうに思っておりますけれども、まずその主なポイントを御説明いただきたいと思います。

あべ大臣政務官 薗浦委員にお答えいたします。

 今回、本当に重要な内容でございますが、主なポイントといたしまして、特に日米租税条約改正議定書、日米両国間の経済関係の現状などを適切に反映することを目的としたものでございまして、主なポイントは四つございます。

 まず、配当について、株式の保有割合に係る要件を緩和して、源泉地国免税の対象を拡大するということでございます。

 二点目といたしまして、利子について、原則、源泉地国の免税とする。

 三点目になりますが、条約の規定の適用に関する紛争の円滑な解決を図る観点から、相互協議手続の一環といたしまして、納税者から申し立てられた課税事案が、いわゆる税務当局間の検討、協議により解決することができない場合における仲裁手続を導入するということでございます。

 最後になりますが、四点目といたしまして、租税の徴収に際しまして、滞納者が国内に十分な資産を有していない場合などに適切に対処するために、徴収共助規定の対象を滞納租税債権一般に拡大するということでございます。

薗浦委員 政務官、ありがとうございました。

 日米両国のGDPというのは、相変わらず世界経済の中で両国だけで三割を占めておるということでございまして、この両国が経済関係でもこれからさらに関係を深化させていくということは、我が国と米国だけではなくて、世界経済全体にとって、最近のいわゆる経済的な株高を見てもわかるとおり、非常に緊密な関係にある上に、世界経済にとっても極めて重要な二国間関係であるという認識をしております。

 したがいまして、今回の、今政務官からいただきました四つのポイントを含めた日米租税条約の改定によって、具体的に、投資または経済交流に与える影響というものが、どういうふうにいい影響がある、またはこういう影響があると考えていらっしゃるのかということについても、ここで御答弁をいただきたいと思います。

あべ大臣政務官 委員にお答えいたします。

 今回の日米租税条約の改正、日米間の経済、投資交流に与える効果は、私どもも非常に大きいのではないかと思っております。

 委員がおっしゃるとおり、米国は我が国にとって最大の直接投資先国でございまして、また同時に最大の対日直接投資国でもございます。そういう中にありまして、今回の日米租税条約改正議定書の締結によりまして、脱税及び租税の回避行為が防止されるということと同時に、我が国と米国との間の課税権の調整がさらに図られることになりまして、日米両国間におきまして投資交流の一層の促進が期待されるというふうに私ども考えております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 今、利子の話がありました。いわゆる免税措置であります。

 今までの租税条約を見てまいりますと、銀行が受け取る利子については免税という国、いわゆる源泉地国の免税を規定したものがございますけれども、利子一般というのはたしかこれが初めてではなかったかなと思います。

 この利子一般について、これを免税しますよ、源泉地国免税をやりますよというのは、これは日本として実は初めてなんじゃないかと思っていますけれども、それが間違っていないかというのをまずお伺いしたいのと、それから、今回、いわゆる利子一般について免税をやりますよということについて踏み込んだ理由といいますか、どういう背景があってこういうことを新しく始めようと思ったのかという背景説明もこの場でお聞かせを願えればと思います。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、利子一般について源泉地国免税とする規定は、これまで我が国が締結した租税条約において例がないものであります。

 現行の日米租税条約第十一条は、国境を越える経済取引により生ずる利子について、源泉地国における限度税率を原則一〇%ととし、銀行等金融機関が受益者である利子については源泉地国免税としております。

 他方、近年、企業の資金調達の方法は多様化してきておりまして、金融機関からのみならず、国境を越えたグループ企業間の融資や個人向け社債の発行等が積極的に行われております。

 今般の改正は、このような状況の変化を踏まえ、原則として利子一般について源泉地国免税とし、企業による資金調達の円滑化、多様化に対応する環境の一層の整備を図るものであります。

 先ほど申し上げましたように、利子一般について免税とする規定は今回初めてでありますが、この規定によりまして、企業の資金調達がさらに円滑化され、日米両国間の投資がさらに促進されることが期待されます。

薗浦委員 ありがとうございます。

 今、多国間での調達とか個人向け社債という話をいただきました。

 そこを御理解いただいた上で、背景があって、多分、まずアメリカからという意図だろうと思いますけれども、これをやったのであれば、日米だけじゃなくて、今、改正を進めている国が幾つかあるというふうに先ほど御答弁いただきましたけれども、そういう改正の中でも日米でやったようないわゆる免税を盛り込むのか、もしくは、これからいわゆる改定の中で、企業が活動しやすいようにこういった個人向け社債等々も含めた免税をやっていくのか、アメリカだけなのかということをお伺いしたいのと、やるのであれば、その効果というものについてもお伺いをしたいと思います。

あべ大臣政務官 委員にお答えいたします。

 今回の利子一般についての源泉地国の免税などに関しまして、これまで締結のいわゆる租税条約においては例がないものでございまして、先ほどの答弁にもございましたが、企業の資金調達がさらに円滑化されるということを受けまして、今回の内容は、利子一般についての源泉地国の免税と滞納租税債権の一般を対象とする徴収共助の規定の導入など、我が国の二国間の租税条約には盛り込まれていなかったものが入っているものでございまして、これらの内容は、両国間の投資交流の促進、さらには国際的な脱税及び租税回避行為に対する効果的な対処などに対しての観点から、委員の御指摘のとおり、非常に重要なものだと思っております。

 したがって、政府といたしまして、今後の米国以外の国との租税条約の新規締結、さらには改正の交渉においても、積極的に取り上げてまいりたいと思っております。

 なお、滞納租税債権の一般を対象とする徴収共助の規定に関しまして、今般御審議をお願いしているニュージーランドとの間の租税条約にも盛り込んでいるところでございます。

薗浦委員 ありがとうございました。

 ぜひともどんどん進めていっていただきたいと思います。

 また、当局の徴収協力、いわゆる共助協定の拡充も今回含まれておりまして、共助協定の規定が拡充をされておりますが、それをもうちょっと具体的に教えていただけますか。また、できればその理由もあわせて教えてください。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 徴収共助とは、自国に認められた執行管轄権を超えて租税債権の徴収を行うことには制約がある中で、各国の税務当局が、租税条約に基づき、互いに相手国の租税債権を徴収すべく協力することであります。

 現行の日米租税条約における徴収共助の規定は、条約に基づく租税の減免が、これを受ける権利を有しない者により享受されないことを目的とする場合に限定して徴収共助を行うこととしております。しかしながら、この規定は、昨今のグローバル経済の進展において、納税者による財産の国外移転が容易となる中で、滞納租税債権を実効的に徴収する手段としては不十分なものとなっております。

 こうした観点から、今般、徴収共助の対象を滞納租税債権一般に拡大するとともに、徴収共助の実施のための要件、手続等を新たに規定することとしているところであります。

薗浦委員 ありがとうございました。

 まだ時間が残っておりますけれども、きょうは時間が大分ずれておりますので、これで最後にしたいと思いますので、よろしくお願いします。

 今答弁いただきましたように、租税債権というのは、納税義務があるにもかかわらず、国外に持っていって税金を免れるというような行為でございますので、これは断じて許さないということで、これも引き続き幅広く導入するように努力をしていただきたいというふうに思っています。

 最後に、ジャージーとガーンジーの話をお伺いしたいと思います。

 いわゆる日・ジャージー租税協定、また日・ガーンジー租税協定は、今ありましたような脱税また租税回避行為の防止を目的として情報交換を行うということを定めたものだと思っています。

 改めて、租税に関する情報交換を目的とした条約の概要とか、これを締結しなければならないのだという必要性を広く国民の皆さんにわかっていただく意味で、これを最後にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

あべ大臣政務官 日・ジャージーの租税協定及び日・ガーンジーの問題でございますが、いずれも、国際的な脱税及び租税回避行為を防止するため、また、税務当局間で租税に関する情報交換を実施することを主眼とするものでございます。

 具体的に、OECDが策定いたしました情報交換に関する国際標準を踏まえつつ、租税に関する情報交換を行うための詳細な枠組みを定めているところでございまして、これらの協定を締結することによりまして、ガーンジー及びジャージーにおいてそれぞれ保有されている我が国の納税者に関する税務情報を入手することが可能になります。これによりまして、我が国の課税権が適切に確保されるとともに、国際的な脱税及び租税の回避行為の防止に向けた国際的な情報交換ネットワークの整備拡充に我が国も具体的な貢献を行うことができるということでございます。

薗浦委員 以上で終わります。ありがとうございました。

河井委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、租税条約関係六本と旅券法の一部を改正する法律案、あわせて審議の時間をいただきました。私の方からは、特に旅券法の改正案を中心に質問をさせていただきたいと思うわけでございます。

 特に、今回の改正案につきましては、これはICAOの国際標準を踏まえて、旅券の名義人の氏名等に変更が生じた場合に旅券の記載事項を訂正する制度を廃止して、いわゆる訂正旅券というものを廃止して、当該旅券の有効期間を残存有効期間と同一とする新たな旅券、今回はこれを記載事項変更旅券と呼んでおりますけれども、これを発給できるようにするというものでありまして、これは、国際標準から見ましても、海外において、記載事項の訂正が機械読み取り部分に反映されていない旅券については国際標準外とみなされて、旅券保持者が不利益をこうむる可能性がある。そういうことからすると、この改正というのは大筋では妥当である、私はそのように考えております。

 ただ、気になる点が何点かありまして、その一つがやはり旅券の手数料ですね。この問題についてどう考えておられるのかということについて最初に御質問をさせていただきたいんです。

 主要国の旅券手数料を比較いたしますと、十年有効旅券の比較というものが、調査室の資料でも、これは三月十九日時点の邦貨換算額で一覧として出ておりましたけれども、日本は、御存じのとおり、十年有効旅券というのは一万六千円でございます。しかし、アメリカは百三十五米ドル、この時点での換算でいうと一万二千九百十円、カナダは百六十カナダ・ドル、この時点では一万四千九百六十円、英国は九十四・二五ポンド、この時点では一万三千六百十円、フランスは八十九ユーロ、この時点では一万一千三十円、ドイツは八十一ユーロ、一万四十円、イタリアは八十二・七九ユーロ、一万二百六十円という数字が出ております。オーストラリアだけが日本よりも高くて、三百五十八オーストラリア・ドル、三万五千五百五十円。オーストラリアを除けば、我が国が極めて高額な旅券手数料を徴収している、そういう形になっております。

 この一万六千円の内訳はどうなっているのかということでございますが、国の収入分が一万四千円、都道府県の収入分が二千円でございます。この国の収入分一万四千円のうち約四千円が旅券の発給に係る直接行政経費。その四千円の内訳というのは、約二千円がIC旅券の冊子代、残り約二千円が、外務省や在外公館の旅券に携わっている職員の人件費であるとか、旅券ホストコンピューター及び業務端末の借料費等である、そういう説明を聞いております。

 もう一つは、この一万四千円から直接経費四千円を引いた約一万円が何に使われているのかというと、邦人保護に係る間接行政経費になるんだ、そういう説明を聞いているんですね。

 この間接行政経費は、外務省本省また在外公館において邦人保護にかかわる職員の方の人件費、通信費、施設費等のほか、有事の際の、何か緊急事態があった際の邦人の安全確保、在外公館の邦人保護、各国渡航情報の収集及び国内における海外安全情報の提供等の目的で支出されているということなんですが、表向きの理由はわかるんですけれども、先ほど申し上げましたように、海外と比較しても極めて高い旅券の手数料というものを、国民負担の軽減という観点からしても、私は、やはり見直すべきものはしっかりと見直していくべきだろうと。

 例えば、今説明した中にも、直接行政経費の中にも間接行政経費の中にも人件費等が含まれているのであれば、本来、やはりこれはおかしな話であって、これは一般会計でもしっかりと手当てしているわけですから、そういうところもやはり割愛できるものはしっかりと割愛していく、また事務の合理化等も含めて経費の縮減にしっかりと努めて、旅券発行のためのコスト削減努力というものをさらに図っていただいて、国民から見て安い旅券手数料でパスポートがとれる、やはりそういう不断の手数料の見直しというものを私は図っていくべきであると思うんですが、まず外務大臣の見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、御指摘の手数料ですが、この手数料の中に人件費等が含まれている、人件費につきましては、一般会計からまず出ているわけですから、その上で手数料の中にも人件費を含めること等についていろいろと検討すべきではないか、こういった御指摘でございます。

 こうした手数料につきまして、御指摘のように、海外との比較等も参考にしながら不断に見直していく、検討していく、この姿勢は大変重要だと認識をしております。

 その中で、今、人件費につきましては、一般的に、公共サービスの利用に当たって、利用者と非利用者との間の不公平を生じさせない、こういった観点から、公共料金の提供に係る人件費や物件費を手数料として徴収してきている、こうした実態があります。

 そして、この徴収された手数料、例えば特別会計にこれを放り込みますと、これは人件費につきまして二重取りではないかという指摘にもつながってしまいますので、徴収された手数料は一般の歳入として国庫に納付される、これが一般の公共サービスの利用に関する手数料の状況ですが、旅券手数料につきましても、今申し上げました考え方について、旅券作成に係る人件費等を手数料の一部として徴収している、こうした考え方に基づいて対応しているところです。

 しかし、いずれにしましても、こうした手数料についてしっかりと見直していく、絶えず国民負担にならないように検討していく、こういった姿勢は重要だと考えますので、引き続き努力はしていきたいと考えています。

佐藤(茂)委員 私も、そこの、今大臣言われた受益者負担の観点というのは、やはり引き続き維持しておかなければいけないと思うんですが、ただ、その名のもとに、もう少し縮減できるものも、今までのとおり当たり前のように積算根拠として使っている部分があるんじゃないのかということをぜひ見直していただきたいな、そういう観点でちょっと質問をさせていただきました。

 もう一つは、二点目にお聞きしたいのは、その上で、極めて特例の形で今まで認めてまいりました震災特例旅券の所持人に対する配慮というものをどう考えるかということで、これは外務省の考え方をぜひお聞きしたいと思うんです。

 いわゆる東日本大震災の被災者に対して、二〇一一年六月八日以降、国の手数料なしで、紛失等した旅券については、残存有効期間を限度とする震災特例旅券を発行するという特例措置を行ってまいりました。これが、二〇一三年、ですからことし三月三十一日に受け付けが終了して、これまでに約二千件の震災特例旅券が発給されているというふうにお聞きをしております。

 今回の改正に伴って、このような被災者である震災特例旅券の所持人に対しても、例えば結婚等で名義人の氏名等に変更が生じた場合に、一般の申請者と同じく手数料六千円が課せられることになるわけでございますが、被災者の厳しい状況に鑑みて震災特例旅券の発給で国の手数料を無料にした、そういう経緯から考えますと、私は、この二千件の震災特例旅券の所持人に対して、記載事項変更旅券に変更する方の手数料については、手数料減額の配慮を本来やはり検討すべきであったのではないか、そのように考えるわけでございます。

 そのことが、今回、いろいろ考慮された上でも、一般の方と同じ六千円という形で徴収をされる、そういうことになったということについては、やはり国民にわかりやすい、きちっとした説明が必要ではないか、そのように考えるんですが、外務省の考え方をお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の震災特例旅券ですが、震災により大きな被害を受けられた被災者の方々の御負担を軽減するために二〇一一年に導入されたわけですが、今回提案させていただいております旅券法改正においても、こうした御負担の軽減という考えにのっとって、附則の第八条にて所要の手当てを行いたいとまず考えております。

 すなわち、五年を超える残存有効期間を有していた旅券をもとに震災特例旅券を所持している方が、一度、記載事項の変更旅券を取得してしまうと、現在の旅券特例法上、五年を超えた分の二回目の震災特例旅券の申請を行うことができなくなってしまいます。こうした点に配慮して、今回の法改正におきましては、震災特例旅券を取得された被災者の方が結婚等で氏名等を変更して記載事項変更旅券を取得した場合でも二回目の震災特例旅券をさらに無料で取得できる、こういった配慮が今回の改正で行われているところです。

 そして、御指摘をいただきました、震災特例旅券保持者が変更を求める際に手数料等を減免するという考え方、これも一つの考え方であると存じますが、他方、例えば、同じ被災者の方でも、被災時に旅券をお持ちでなく、被災後に新たに旅券を取得した方については、その後、変更旅券に切りかえる際、やはり他の一般国民の方々と同じく六千円の手数料の負担をお願いするということになります。

 こういったことを考えますと、広く公平性の観点から、震災特例旅券保持者の方を対象として手数料を減免するということについては慎重に考えなければならない、こうした考え方に立っております。ぜひこの辺を御理解いただきたいと考えております。

佐藤(茂)委員 次に、旅券手数料の多くの部分が、先ほど言いましたけれども、例えば一万六千円のうち一万円が邦人保護に係る間接行政経費になるということに関連して、在外邦人、企業の保護のあり方について何点かお伺いをしたいと思います。

 これは、ことし一月の在アルジェリア邦人人質事件を受けまして、直近では、ゴールデンウイーク前の四月二十六日に、有識者懇談会の報告書がまとめられました。その前には、自民党、公明党の与党のプロジェクトチームの報告もまとめ、提出をさせていただきました。二月の二十八日には、政府の検証委員会の検証報告書が出されているわけでございます。政府全体にこういうことを取り組んでほしいということが提言されているんですが、その中で、外務省に関連する部分でどういう取り組みをされるのか、何点か残りの時間でお聞きをしたいんです。

 一つは、官民の情報共有・協力体制、官民のネットワークの強化策ということについてお聞きをしたいと思います。

 事件後も、すぐに、外務省としても、例えば、本邦においては、二月十五日に海外安全官民協力会議、またトラベルエージェンシー会合なども開催されたし、在外公館でも、安全対策連絡協議会をもう百七十三以上の公館で開催されたと伺っておりますけれども、この官民の情報共有やネットワークの強化については、先ほど言いました三つの報告書全てで、これはやはりきちっと強化し改善を図っていくべきである、そういうふうに提言しているわけでございます。

 一番直近の四月二十六日の有識者懇談会の報告書では、三点強調されておりました。

 一つは、海外で行うこととして二つ。

 一つは、危険地域等で就業する企業と政府との定期情報交換。これについては、定型化された用紙を用いて、政府、在外公館に企業が得た情報をしっかりと報告させて、それを逆にまた、政府の集めた情報というものを企業側にもきちっとフィードバックするシステムを確立すべきだということが言われております。

 二点目の提案としては、海外安全対策連絡協議会、これは在外公館で行われているんですが、これを、きちっと定期的開催を徹底するということを二点目に提言として入れておられました。

 三点目には、企業の危機管理のためということもありますけれども、官民合同海外安全セミナー・演習をしっかりと立ち上げていくべきであると。

 こういう具体的な提言がされているわけでございますが、有識者懇談会報告書のこの三点の提言について、外務省としてどのように取り組まれるのか、外務省の見解を伺っておきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、外務省としましては、御指摘の四月二十六日の有識者懇談会、また検証委員会報告書、また与党のPT報告、また外務省自身も対策チームを立ち上げましたが、こうした検討を踏まえて、直ちに実施することが可能な措置を迅速に実施し、そして施策に生かしていきたいと考えております。

 そうした中、まず、御指摘の官民情報共有ネットワークについては、海外、在外公館におきましては安全対策連絡協議会の拡充強化、また、国内においては海外安全官民協力会議、こうした既存の官民協力体制について活性化を図るということで、内容においても、また開催の回数においても、体制を強化しているところでございます。

 そして、御指摘、三点についてどう対応するのかということにつきましては、引き続き、この提言を踏まえまして、民間との間でより効率的な情報共有・協力体制を構築すること、また、邦人保護のための官民の情報共有ネットワーク強化のためにどうあるべきなのか、引き続きまして具体的に検討し、そして対策を講じていきたいと考えております。

 こうした指摘をしっかり重く受けとめて、対応を考えていきたいと思っております。

佐藤(茂)委員 もう一点は、危険情報を、海外におられる邦人あるいは日本の国民への情報発信をどうしていくのか、この情報発信の強化について、この三つの報告書でも提言されているわけでございます。

 総合すると、一つは、海外安全ホームページのアクセスや内容、構成の改善に取り組んでいくということが一点。もう一つは、在外公館のホームページの開設と情報内容の更新が重要であるということ。三つ目には、緊急事態のときに、今、メールサービス等もあるんですが、それに加えて、SMS、ショートメッセージサービス等のITを活用した情報発信をもう少し充実できないのか。そういう情報共有の強化、情報発信の強化、こういうところが必要であるということを三つの報告書とも訴えているわけでございます。

 こういう危険情報の情報発信の強化策について、外務省として具体的にどのように取り組まれていくのか、最後にお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の在外邦人の安全につきましては、渡航者、滞在者御本人に十分周知をし、そして本人自身が必要な注意、対策をとる、こうしたことがまず重要であると考えております。こういった観点から、危険情報などの渡航情報の発信を一層強化しなければならないと考えます。

 まず、海外安全ホームページに掲載されている情報をわかりやすくするために、ホームページの構成の変更に今着手したところであります。今後とも一層改善、工夫をしていきたいと思っています。

 また、同ホームページの渡航情報が更新された際には、これを自動的に更新情報として送信するメールサービスについても一層の周知を図っているところです。

 このようなサービスの内容について、引き続きまして改善の方策をしっかり検討していきたいと考えています。

 御指摘のSMSですが、こうした、活用することによって緊急に生じた危険に係る情報を邦人渡航者、滞在者の携帯電話に発信する方法につきましても、より効果的、迅速な情報の提供のあり方をぜひ検討したいと思っています。ぜひ、実現可能なものから実行する、こういった姿勢で臨んでいきたいと考えます。

佐藤(茂)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

河井委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 まず、租税条約の締結についてお伺いをしたいと思います。

 全体的な戦略といいますか、経済外交で大変私は大事なポイントだというふうに思っていますので、今回の租税条約の締結、ネットワークの拡大、これは外務大臣として、海外に展開していく日本の企業をある意味では後押ししていく、これは、こちら側の投資だけじゃなくて、投資を呼び込んでいくということも含めて、双方向の投資促進という意味でも私は重要だと思いますが、今回の投資条約のネットワークの拡大というものの意義について、二つポイントを申し上げます。

 一つは、先ほど薗浦委員の質問もありましたけれども、これで五十四条約、こういうことになるわけです。英、仏、独、主要国はいずれも百以上締結をしているというふうに承っておりますけれども、ちょっと出おくれている感があるというのが一点。

 それからもう一つは、これから経済拡大が期待される、特に新興国ですね、そういう新興国に対してのやはり投資促進効果というのがあると思いますので、展開していく企業の後押しという観点も含めて、外務大臣の方から、全体的な経済外交戦略という観点から御所見を承りたいと思います。

岸田国務大臣 まず、御指摘のように、主要国が締結している租税条約の数、OECDの公表している資料によりますと、米国が八十五、英国が百四十、フランスが百三十九、ドイツが百十ということであります。我が国の締結数は五十五でありますので、今申し上げた国々と比較すれば、必ずしも多いものではありません。

 しかしながら、これは金額ベースで考えますと、対外直接投資の約九割をカバーしている、こうした状況にあります。

 数ももちろん大切ではありますが、数のみを追求するばかりではなくして、ぜひ、投資協定など、他の二国間の法的枠組み等も含めた多様な政策手段を通じて両国の経済の活性化を図っていく、こうした姿勢で臨んでいきたいと考えております。

 租税条約そのものの締結、これは、国際的な二重課税の調整ですとか脱税及び租税回避行為への対処等を通じて、二国間の健全な投資、経済交流の促進に資するものということで大変意義があることと存じますが、こうした租税条約と今申し上げました他の政策手段との組み合わせ、こういったことで全体を盛り上げていく、こういった姿勢でしっかり臨んでいきたいと考えています。

長島(昭)委員 引き続き御努力をいただきたいというふうに思います。

 それからもう一点、旅券法の一部を改正する法律案も出ておりますので、こちらも触れたいと思うんですが、これは先ほど佐藤委員の方から、私がきょう質問したいと思ったことをかなり詳しくやっていただきました。

 それは何かというと、今度の記載事項変更旅券の新設は大変いいことだというふうに思うんですが、少し手数料が高いという問題でありまして、私の方からも、大臣に、特に減額の今後の検討をぜひお考えいただきたいと一点申し上げておきたいというふうに思います。

岸田国務大臣 御指摘の手数料につきましては、国民の負担軽減という見地から、絶えず見直し、検討しなければいけない課題だと存じます。

 今後とも、この手数料について、適切なのか、他国の例等も比較しながら、引き続き努力、検討していきたいと考えます。

長島(昭)委員 よろしくお願いいたします。

 それでは、少し話題をかえまして、先ほども佐藤委員の方から話がありましたアルジェリアの人質殺害事件がありまして、それを受けて、自衛隊法の改正案が、いよいよ来週、安保委員会に付託をされることになるわけです。

 それに伴って、現地での自衛隊による活動の安全の確保、それから邦人保護の目的をきちっと達成できるために、私としては、そろそろ武器使用基準についてもう一度考え直す時期が来ているのではないだろうか、今回は、空と海に加えて陸上の輸送を行うわけですから、この点は私は個人的には避けて通れないんじゃないかということで、ちょうど一月前ですけれども、四月十六日の予算委員会で三角形の構造というのを、保護されるべき邦人がいて、それに対して危害を加えようとしている何者かがいて、そしてその邦人を助けに行こうとしている自衛隊の陸上部隊があって、目の前で助けよう、もうあとは車の車列に収容すれば自己の管理下に入る、保護下に入る、その寸前に国籍不明の何者かに襲われた場合に、もう目の前に助け出す邦人がありながら、その襲撃を抑止したり排除したりするために必要最小限度の武器の使用をすることが許されるのかどうか。

 こういう立法をすべきだという私の提案に対して、その日も法制局長官は、それは憲法九条、あるいは憲法に禁じられている武力の行使に当たる可能性があるということから、そういう立法は許されないんですという答弁でした。

 外務大臣もその場におられて、聞いておられたと思います。安倍総理は必ずしも本心ではその法制局長官の答弁を了としているようには見受けられなかったんですけれども、別に私はひっかけようと思っていません。

 外務大臣、政治家として、邦人を保護するその瞬間における必要最小限の武器の使用と、憲法九条が国際紛争を解決する手段として禁じている武力の行使、武力の威嚇と、一般常識からして、同じように扱うことの違和感が私はあるんですけれども、外務大臣のお立場としてそこをどうお考えになっているか、ぜひ政治家として御答弁いただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、四月十六日の委員と安倍総理とのやりとり、私もそのやりとりを聞かせていただきまして、まことに聞き応えのある、内容のあるやりとりであったなと感じておりました。

 武器の使用、いわゆる駆けつけ警護については、政府の従来の見解は、海外に派遣される自衛官に自己保存型を超える武器使用権限を付与することについては、憲法との関係等から慎重な検討を要するというものであります。これが従来の政府の見解であります。今回の自衛隊法改正についても、この考え方のもとで取りまとめられてはおります。

 その中で、これについて政治家としてどう考えるかという御質問でございます。

 私はこの問題については、任務遂行型の武器使用については課題は残っていると認識をしております。そして、この御指摘の点も含めて、安保法制懇、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会、ここで議論をいただいております。

 ぜひ、この議論の結果、検討の結果を待ちたいと思いますし、その結果を踏まえて、必要なものが何なのか、これを考えていきたいと思っております。

長島(昭)委員 今、外務大臣は、自己保存型の武器使用を超えた武器使用ということで、任務遂行型という例示を挙げられましたけれども、確かに任務遂行型の武器使用というのは、かなり烈度が高い可能性があるんですね。

 それは、私も防衛省におりましたので、今の陸上自衛隊の諸君とも話をさせていただきまして、任務遂行ということになると、相当大きな銃撃戦みたいな形で拡大する、双方の火砲を交えるような、そういう危険性が、可能性がありますので、そこについて慎重になるというお立場はよくわかるんです。

 ただ、自己保存型の武器使用と任務遂行型の武器使用の間に、さっき言ったように、自己の管理下にもうほぼ入ろうとしている、そのために助けを求めている邦人を、目の前にしたその邦人を保護する、私たちは政権にいるときにそれを保護措置というふうに呼びましたけれども、これは任務遂行型の武器使用とはちょっと違って、もう少し烈度の低い、必要最小限度の武器使用に私は考えていいのではないか。

 もっと言えば、自己保存型というのも、最初は自分の身を守ることまでしか許されていなかったものが、だんだんだんだん、法解釈の拡大というか変更によって、自分の管理のもとに置いているそういう人たちも含めて守れるようになったわけですよ。そのために武器使用をしても、それは武力の行使に当たらないという解釈になってきているわけです。

 だから、もうあとほんの少し、その保護されるべき人たちを保護するときにおいて行われる武器の使用、これぐらいは、憲法で禁じている武力の行使とは峻別した解釈がそろそろあっていいというのが私の見解です。ぜひそこは御検討いただきたいと思います。

 今、安保法制懇のお話をされましたけれども、確かに安保法制懇でそういった話が今なされていることは承知しておりますが、実は今私が大臣にぶつけているこの論点は、五年前の、つまり第一次安倍政権のときの安保法制懇でほぼ結論は出ているんです。

 あとは政治家が、有識者から受けた提案を、法制局をどうするか、それは御判断はお任せしますけれども、政治家として、それは正しい道であるとすれば、あとは政治判断できちっとやっていただけば済む話だと私は思うんですが、もう一回、御答弁をお願いできますか。

岸田国務大臣 御指摘の点については、引き続き課題として残っていると考えますし、ぜひ政治家として、それについて、この安保法制懇の結果も踏まえて考えていきたいと思っています。

長島(昭)委員 私の問題意識のもう一つは、これが同じ公務員でありながら、警察官や海上保安官、いずれも武器の使用については警職法七条で規定されている。その準用をしている海上保安官。警察官、海上保安官の武器使用の基準と、私が見る限り、同じ領域外での武器使用、例えば海だったら公海上の武器使用と、自衛隊の武器使用との間に、どうも必要以上に自衛隊の方に憲法の制約が重くかかっているような私は気がしたので、その点をただす質疑を一月前にやらせていただきました。

 きょうもちょっとその継続で、少し国際法の観点から、外務省の国際法局長、きょうお見えですから、伺いたいと思っていますし、また、法執行の観点から、きょうは海上保安庁の方もお見えいただいておりますので、海上保安庁からも答弁をいただきたいと思っています。

 どうもそういう差異が、同じ公務員、同じ国家機関でありながら、憲法九条の制約というのは、もし制約があるんだったら、警察官にも海上保安官にもひとしく及ぶはずなのに、例えば相手方の性格、つまり国または国に準ずる者といったようなわけのわからない概念が持ち出されて、必要以上に自衛隊の行動を縛るような、今、そういう法解釈、法制局の解釈がまかり通っているということを、きょうは引き続き明らかにしていきたいと思いますので、ぜひ聞いていただきたいというふうに思います。

 きょうは、その意味で、日本の領域外における日本の公務員による武器使用の法的性格というものについて少し議論を深めていきたいというふうに思っています。

 では、まず、皆さんにお配りをさせていただきましたけれども、私の平成二十年の質問主意書をちょっとおさらいしておきたいというふうに思います。

 漢数字の二の方を特に御注目いただきたいと思うんですけれども、先ほどもちょっと御紹介いたしましたが、助けを求めている日本船舶に対して国籍不明の船が銃撃を加えている、そこにSOSで駆けつけた海上保安庁の船、海上保安官がどう対処すべきか、そういう三角形の構図を設定いたしました。

 答弁書の二の方を見ていただきたいんですが、国籍を有していない船舶である場合、海上保安官が、海上において我が国の法令上の犯罪を取り締まるため、武器の使用をすることは、国際法上問題となることはない、私はこういう答弁をいただいているんです。

 これは、私の設定は公海上であります、上を見ていただければわかるように。常識的に考えれば、日本の領海を越えた公海上で起こった出来事に対して、ここで書いてあるように、我が国の法令上の犯罪を取り締まる、つまり、我が国の統治権が及ぶかのようなこういう記述があるわけですけれども、本当にそうだろうかという疑問もあろうかと思うんです。

 特に、日本船舶の中での銃撃戦ではなくて、外からの銃撃という私が設定した三角構造の中で、海上保安官というのはなぜ日本の刑罰法令に基づく取り締まりということが可能になるのか、これの国際法上の根拠をまず問いたいというふうに思います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、国連海洋法条約上、公海におきましては、船舶は旗国の排他的管轄権に服することになっておりますけれども、海賊行為や海賊放送などの場合、または先ほど委員から御指摘のありました無国籍船の場合には、関係国が管轄権を行使し、その国の国内法を適用して違反を取り締まることができるということになってございます。

 したがって、このような管轄権行使の一環といたしまして、我が国の海上保安官の方々などが公海上において我が国の法令上の犯罪を取り締まるため関係国内法に基づき武器を使用することは、国際法上問題はないということでございます。

 それ以外の場合におきましても、念のため申し上げますが、公海上で我が国船舶に危害が及ぶような場合、そのような行為を排除するために必要最小限の実力を行使してこれに対処することは、国際法上問題ないというふうに考えております。

長島(昭)委員 今、国際法局長が挙げられた国連海洋法条約、これに基づいてということであります。それで、旗国の排他的管轄権が及ぶんだけれども、無国籍であったりあるいは海賊であったりという場合については、我が国の刑罰法令に基づく取り締まりができる。

 これは、要するに、そういうケースでは日本の統治権の一部である警察権が行使できる、つまり、執行管轄権ということになるんでしょうか、我が国の統治権の一部である執行管轄権の行使ができる、こういう解釈でよろしいんでしょうか。

石井政府参考人 おっしゃるとおりでございます。

長島(昭)委員 それでは、一応念のため、これは論理必然だと思うんですけれども、あえて確認をさせていただきたいのは、今の答弁で明らかになったのは、無国籍であったり海賊であったりという場合には、国連海洋法条約に基づいて、日本の船舶が銃撃を受けたという場合には、我が国の統治権が及ぶ範囲で我が国の公務員が公権力を行使することができる、こういう解釈でよろしいという話だったんです。

 これを逆に裏返して言うと、日本の統治権が及ばないような事案については日本の公務員が公権力を行使することはできない、こういう論理でよろしいでしょうか。

石井政府参考人 基本的には委員おっしゃるとおりだと思いますが、例えば、他国の領土で日本としての管轄権を行使するという場合に、相手国の同意がある場合、そういう場合には、受けられるということはあろうかと思います。

 ただ、同意がない場合においてそういう交渉をするということは認められないというのは、おっしゃるとおりだと思います。

長島(昭)委員 それでは、先ほどの質問主意書にちょっと戻りたいと思うんですが、これは何度も申し上げているように、国籍不明の船舶が外部から銃撃をしかけてきた、そういう設定であります。これは、言うまでもなく、日本国における刑法第百九十九条、殺人あるいは殺人未遂といった罪を構成すると認められる行為、これは銃撃しているわけですから、そういった場合の設定でありました。

 こういう場合には、公海上、すなわち、日本の領域外であっても、日本の刑法に基づいて取り締まりを行うことができるという解釈だろうと思うんですが、この理解は正しいかどうか。これをまず国際法局長に。

 そして、その際の国内法の根拠条文となるのは一体何かというのを、これをもし海上保安庁でお答えできれば、伺いたいと思います。

石井政府参考人 まず、委員の最初の点につきましては、質問主意書の答弁書に書いてございますとおり、そのとおりであろうと思います。

桝野政府参考人 先ほどから、先生、繰り返しおっしゃっておられますように、私どもの場合は、警職法七条を引いております海上保安庁法二十条一項、これを法的根拠といたしまして、必要な範囲において、合理的な範囲において執行しているということでございます。

長島(昭)委員 今のは、権限としてそういう武器使用を行うことができるということだと思うんですけれども、我が国の領域外で取り締まりを行うことを可能にする実定法上の根拠というのは一体何なんでしょうか。

 例えば、刑法第三条の二に、国外犯の取り締まり、国外犯に対して、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪、つまり殺人であるとかそういった罪を犯した日本国民以外の者に適用するという記述があるわけですけれども、こういう刑法三条の二のような条文も援用して取り締まりをすることができると理解してよろしいんでしょうか。

桝野政府参考人 先生御指摘のとおりでございまして、例えば日本国籍船において外国人がそのような行為を行った場合には、日本の刑法を根拠として逮捕し、諸手続をとる。

 また、逆の場合、例えば外国において日本人が殺されたような場合、それは外国の執行権の範囲内でございますが、その当該犯人が日本の方に入っていった場合には、日本刑法を適用し、日本の手続で処していく、こういうことでございます。

長島(昭)委員 次に、皆さんのお手元にもう一枚資料を配らせていただきましたけれども、平成二十一年の七月、参議院の外防委員会における外務省の答弁ですが、これは御案内のとおり、特定貨物検査法案の審議の際の外務省の答弁であります。大事な答弁だと思いますので、これは領域外における武器の使用について、つまり執行管轄権の行使についての答弁でありますので、大変重要だと思いますので、きょう、皆さんにお配りをさせていただきました。

 四行目からだと思いますが、これは、その前は、先ほど石井局長が御指摘いただきました旗国主義があって、船舶は一般にその旗国以外の国の執行管轄を受けることはない、つまり排他的管轄権が行使されるということ、これが大原則なんだけれども、一方、執行管轄を旗国以外が行う場合としては、旗国の同意がある場合、安保理の決議による授権がある場合、それから、さっき出ておりました国連海洋法条約が認める場合、この場合には例外的に旗国以外の国が執行管轄権を行使することが可能になる、こういう答弁であります。

 これは一般論として、旗国以外の国がその統治権の一部である執行管轄権を行使するには、条約あるいは安保理の決議による授権以外では、その旗国の同意がなければならない、こういう理解でよろしいんでしょうか。

石井政府参考人 私、ここに書いてある答弁のとおりであろうと思います。今委員がおっしゃったとおりだろうと思います。

長島(昭)委員 つまりは、旗国の同意を得れば執行管轄権を行使してよいということになる、そういう理解でよろしいでしょうか。

石井政府参考人 そのとおりでございます。

長島(昭)委員 そこで、先ほどの私の平成二十年の質問主意書で設定した公海上の三角構造についてですけれども、ちょっと変形いたしまして、これはなかなか実際にどういうケースが考えられるかというのは難しいところなんですが、同じ三角構造です。

 つまり、被害に遭っている日本船舶、危害を加えようとしている船舶、そして助けに来た海上保安官。これが、危害を加えようとしている加害船舶に、仮に、国籍がはっきりしている、これはなかなか想定は難しいんですが、その国籍を持っている国、つまり旗国から、これはもうむちゃくちゃな暴走をしているから、日本政府に対して、とにかく襲撃をとめてくれ、そういう要請があった。つまり、さっきからのやりとりでいくと、旗国の同意というようなものが仮にあった場合を想定してください。

 それの場合には、先ほどの三角構造で認められていたような、我が国の統治権の一部である執行管轄権というものを、この加害船舶に対して、国籍が不明であるときと同じように、旗国の同意というものあるいは要請というものがあった場合には同様の取り締まりができるのかどうか、これの国際法上の問題点、あるいは国際法上これは認められるかどうか、お答えいただきたいと思います。

石井政府参考人 まさに今委員おっしゃいましたとおり、なかなかそういう事態になるかどうかというのは、想定は現実の世界ではしにくいかと思いますが、今おっしゃったような場面設定、先方が日本に対して管轄権行使を同意するという場合には、それは国際法上問題はないということであろうと思います。

長島(昭)委員 今の御答弁を受けてもう少し深めていきたいと思うんですけれども、これもまたあえて頭の体操をしたいと思っているんですが、今の御答弁でありますと、旗国の同意があれば、他国、旗国以外の国が、つまり、この設定だと日本の公務員ですが、統治権の一部である執行管轄権を行使できる、こういうことになるわけです。

 あえて加害者側の視点に立って考えると、態様としては危害を加えている、その危害を加えている、もちろん危害を加えている者に情状酌量の余地はないんですが、基本的には旗国の同意、つまり排他的な管轄権に服することにはなっているけれども、それ以外の管轄権に服するいわれはないわけですよね。

 それ以外の国、つまり日本の公務員がそれに対して取り締まりをしようとしているということなんですが、確かに国連海洋法条約の九十二条に、「国際条約又はこの条約に明文の規定がある特別の場合を除くほか、公海においてその国の排他的管轄権に服する。」ものだと。つまり、加害者は所属している国の管轄権には服するけれども、そうでない国の管轄権には服さないというのが一応大原則であります。

 今おっしゃったように、犯人はわかっていないわけですけれども、こいつを何とかとめてくれというような形で、その旗国の方から取り締まりをしてもいいという同意あるいは要請があった場合を想定しているわけですけれども、加害者の側から見ると、突然、海上保安官が来て、日本の統治権を振りかざして、武器の使用、実力の行使までいとわないという行動をとることは、犯人の側からすると不合理なことになるんだろうと思うんです。

 今のようなケースに対して、国際法の観点から、どのように説得力ある形で説明が可能か、局長から見解を承りたいと思います。

石井政府参考人 国際法の世界につきましては、まさに委員が御指摘のように、排他的管轄権を持っている旗国が、日本に対して、その行使を、自分はやらないので日本の方でやってくれというふうに同意をもらっているということで、そこで問題は尽きているのかと思います。

 一方、実際、その加害船との関係では、現実の世界で考えますと、突然、目の前の日本の船が幅寄せして撃ち出すということではございませんで、恐らく通常であれば、こういうやりとりがあったので、これから私たちはあなたに対して取り締まりを行います、ちゃんと旗国の同意を得ていますのでということは、可能な範囲でできるだけ伝えるようにするということは、現実の世界としてはやるんだろうと思います。

 ただ、もとへ戻りますと、国際法上それがないと違法であるかと言われると、それは恐らくそういうことではないのかなというふうに思っております。

長島(昭)委員 大変大事な御答弁をいただいたというふうに思います。実態的には恐らくそういうことなんでしょう。今から管轄権を行使するけれども、その背景には、旗国による我が国の管轄権行使の同意があったんだよということを恐らく言ってやるんだろうというふうに思います。

 もう一回確認しますが、旗国の同意というものが根拠となって日本の統治権、こういう今のケース、国籍不明ではなくて国籍がわかっているケースであっても、公海上、日本の領域外であっても、日本の統治権は加害者に対して正当に及び得る、こういう解釈でいいかどうか、もう一回お願いします。

石井政府参考人 そのとおりであろうと思います。

長島(昭)委員 これで私の質疑を終わりたいというふうに思いますけれども、今少し展開をさせていただきましたように、必ずしも我が国の領土、領海内ではない、領域の外であっても、武器の使用については、旗国の同意、これは海の話ですけれども、今度、陸上の話はまた別途やりたいというふうに思いますけれども、海の上では、先ほど言ったように、条約上の根拠、あるいは国連安保理決議の授権、そして今言った旗国の同意、こういったものが条件となるわけですけれども、場合によっては、その攻撃を排除するための武器の使用の可能性が排除されない、こういうことであります。

 この点と自衛隊をめぐる武器使用基準とのそごについて、また引き続き私も質疑を続けてまいりたいと思いますので、これは大臣と一緒に考えてまいりたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 質疑を終わります。ありがとうございました。

河井委員長 次に、村上政俊君。

村上(政)委員 日本維新の会の村上政俊です。

 きょうは三つの点についてお伺いしたいと思います。一つ目は、本日議題となっております旅券法そして租税条約について。二つ目は、岸田外務大臣、ゴールデンウイークに中南米に外遊されたわけですから、その成果と意義についてお伺いしたいと思います。そして三つは、先ほどの質疑の長島委員に引き続いて、海外における武器使用について伺っていきたいと思っております。

 まず一つ目は、大臣の方から、ゴールデンウイーク中の中南米の三カ国の歴訪された意義について、TPPについても焦点が当たって報道されているわけですけれども、御感想そして成果について外務委員会での御報告をお願いしたいと思います。

岸田国務大臣 私は、四月二十八日から五月の五日まで、メキシコ、ペルー、パナマ、そしてロサンゼルスを訪問させていただきました。そのうち中南米三カ国では、各国の大統領あるいは外務大臣、こうした要人と会談し、メキシコにおいては我が国の対中南米政策ということでスピーチも行わせていただきました。

 まず、中南米につきましては、製造拠点、資源の確保、成長する市場、あるいはインフラ輸出、こういった観点から、我が国にとってこの中南米地域、これは経済的重要性がますます増大しているということを感じて帰ってまいりました。

 各国の外相に対しまして、日本企業の進出増大を受けて、ビジネス環境の改善、こういったことを要請させていただきましたし、また、TPP交渉参加国でありますメキシコ、ペルー、こうした国との間では、環太平洋の経済連携を推進するということで一致をさせていただいた、こういったことであります。

 中南米につきましては、こういった経済的な視点からも我が国にとって重要度が増していると感じていますが、あわせて、中南米諸国は今三十三カ国あります。そして、G20の中にも三カ国が加わっている。こうした状況の中で、近年、国際場裏での影響力が高まっていると感じております。ですから、国連改革ですとか軍縮・不拡散、あるいは気候変動、こうした国際的な課題について中南米と対話を深めて連携を図ること、こうした重要性も感じてきたところであります。

 先ほど申し上げました中南米政策スピーチですが、日本の外務大臣としては六年ぶりということですが、中南米との間で、今言った視点を背景に、経済関係の強化とあわせてルールに基づいた国際社会の形成、こうしたことを進めていくということを訴えさせていただきました。

 中南米を回りまして全体的に感じましたのは、親日的な感情とそして日本に対する大きな期待でありました。日系人の方々あるいは現地関係者の方々との意見交換を通じて、二国間の関係、一層強化を図っていきたいと感じてきたところであります。

村上(政)委員 大臣、六年ぶりに中南米についての政策のスピーチをされたということで、中南米の諸国に対して非常に前向きなポジティブなメッセージを発することができたのではないかなと私自身も感じるところであります。

 そのスピーチの中で、グローバルに手を携えて、ルールが支配するよりよい国際社会を目指しましょうというふうに中南米の国々に対して呼びかけをされたというふうに私自身承知しておりますけれども、これは、中国という国を念頭に置きながら、法の支配を重視する我が国の外交姿勢というものを示されたというふうに私自身は理解しておりますけれども、外務大臣としてはどのようなことを念頭に置きながらこういった言及をされたのでしょうか。

岸田国務大臣 スピーチにつきましては、今申し上げた中南米の経済的な視点、また国際場裏における存在感、こうした点における重要性に鑑みて、ぜひ、ともに、国際的なルールづくりを通じて、国際社会においてしっかりと平和や繁栄に役立つよう努力をしていきたい、こういったことを申し上げた次第です。

 二、三十年前、中南米といいますと、内戦ですとか、債務不履行ですとか、通貨危機ですとか、こういったニュースが日本の国内で流れることが多くありました。しかし、今や中南米は、どの国においても民主主義が浸透し、そしてどの国も高い経済成長率を誇っています。

 日本の国も、近年、経済の厳しい状況が続いたわけですが、今、新しい政権のもとで経済の復活を図ろうとしている、ともにこうした経済の面でも協力をしていくことによって大きな成果につなげていきたい、こういったことを申し上げ、また、国際場裏においても、軍縮・不拡散ですとか、環境ですとか、あるいは気候変動ですとか、こうした国際的な課題について、ともにルールに基づいて協力していこう、こういったことを力を入れて申し上げたわけでございます。

 特定の国を意識した等というのではなくして、前向きに、ぜひ中南米と日本との間で今言ったような点において協力をしていきたい、こういった思いを強く込めさせていただきました。

村上(政)委員 中南米の訪問について、最後に一点だけ改めて確認させていただきたいと思いますが、TPPの交渉という点についてはどのような成果を上げてこられたのでしょうか。

 スピーチの中で、また御答弁の中でも、環太平洋の経済連携を推進するということで我が国と中南米の諸国で一致したということをお答えになっておられますけれども、TPPということに限定すれば、どのようなことが成果としてあるでしょうか。

岸田国務大臣 今回の訪問先のうち、TPP交渉参加国でありますメキシコ及びペルーの大統領初め要人からは、我が国のTPP交渉参加に対して、改めて支持と歓迎の意が述べられました。

 これに対して、私の方からは、メキシコあるいはペルーに対しまして、日本の国としては、ぜひスムーズに、そして早期に交渉に参加したいと考えていることからして、ぜひスムーズかつ早期の交渉参加に御協力をお願いしたいということを申し上げさせていただきました。両国からも、日本の交渉参加に向けて協力していきたい、こういった意向が示されました。

村上(政)委員 それでは、租税条約に移りたいと思います。

 先ほど、冒頭に薗浦委員の方から概括的な質問がございましたので、私の方からは特定の条約に絞ってお伺いしていきたいと思います。

 日本とポルトガルの間の租税条約ですけれども、我が国とEUの間で、現在、EPAの交渉も行われているところでありまして、我が国とそれからヨーロッパの間の経済連携というものを深めていかなければならないという点、これは双方が一致しているところであると思います。

 ポルトガルという国については、我が国の自動車メーカーを中心にして、三十四カ国が平成二十三年十月の時点で進出していて、我が国にとってもヨーロッパの中で極めて重要な生産拠点であるというふうに理解しておりますが、日本とポルトガルの間で租税条約を結ぶ意義というのはどういったところにありますでしょうか。

鈴木副大臣 まず、日本とポルトガルの租税条約の概要についてお話をさせていただきたいと思います。

 この日・ポルトガル租税条約、これは、我が国が諸外国との間で締結した租税条約と同様に、国際的な二重課税の回避を主たる目的としたものでございます。そして、我が国とポルトガルとの間での課税権の調整を行うというものでございます。

 それで、主な内容でありますけれども、まず一つに、事業活動によって生じる所得につきましては、企業が進出先に工場などの恒久的な施設を設けて事業活動を行っている場合においてのみ、その恒久的施設の行う事業活動によって生じる所得に限定して、進出先において課税をする。

 そして、二つ目に、利子、配当及び使用料に対する源泉地国課税を減免する。

 そして、三つ目といたしまして、本条約に適合しない課税というものが発生した場合には、納税者からの申し立てに基づいて、税務当局間で協議を行い、合意によって事態を解決することができる。そして、移転価格課税事案につきましては、二年以内に税務当局間の協議で解決できない場合には、納税者からの要請に基づいて、当該事案は仲裁に付託される。

 四つ目として、税務当局間で租税に関する情報交換を実施するという概要でございます。

 そして、その意義につきましては、この条約を締結することによりまして、日本とポルトガルとの間の二重課税を回避するための法的枠組みが整備されることとなりまして、脱税等を防止しつつ、両国間の人的交流及び経済交流が一層促進される、そういう意義があると考えております。

村上(政)委員 副大臣の御答弁の中で、利子とか、それから源泉地国免税についてもお述べになったと思いますが、我が国と、それからほかの欧州諸国、ポルトガル以外の欧州諸国と近年締結した租税条約においては、例えば使用料や金融機関の受取利子については源泉地国免税としていますけれども、今回の我が国とポルトガルの租税条約については、それらの所得について源泉地国免税としてはおりません。

 その理由というのはどういったところにあるのでしょうか。

鈴木副大臣 租税条約について一般論として申し上げますと、投資所得の限度税率の水準というものは、これは二国間、両国間の投資の方向性等を踏まえて交渉を行うことで決定される、そういうものでございまして、何か一定の基準に統一するといったものではない、そういう発想はなじまないものであると思っております。

 我が国の租税条約の中には、条約相手国との投資交流を促進する観点から、先生御指摘のように、使用料等について源泉地免税としている条約もございますが、本条約につきましては、ポルトガル側の税収確保の要請等もございましたので、それを考慮しつつ交渉を行った結果、使用料等につきましては源泉地免除の規定を設けないということになったわけであります。

村上(政)委員 それでは、次に、旅券法について伺いたいと思います。

 旅券法についても、先ほど佐藤委員の方から極めて詳細な御質疑がありましたので、私からは、次の一点、人権の観点からお伺いしたいと思います。

 パスポートの性別欄は、現在、男性または女性の表記しかありませんが、例えば性同一性障害の方々の希望も踏まえて、今回の法改正後、何らかの対応ということは外務省の方でお考えでしょうか。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、国際民間航空機関、ICAOの規則によりますと、旅券における性別の表記につきましては、女性はF、男性はM、または、特定されていない場合にはXということが明記できることになっております。

 他方、我が国のパスポートにおきます性別の欄は、これは戸籍に基づいて記載するという法律の構成になってございます。日本の戸籍には、性別としては男と女しかございません。したがいまして、今後、政府全体として性の問題について検討される場合に、外務省として、旅券についてもどのような扱いが可能か検討していきたいと考えております。

村上(政)委員 それでは、次の、海外における武器使用についてお伺いしていきたいと思います。

 先ほど、長島委員からの質疑の中で、公務員の中で武器使用をする主体、これが違うことによって差異が生じてくるのは極めて不正常な状態ではないかという指摘があったというふうに思います。

 私の方からは、武器使用の相手が違うことによって基準なりが異なってくるというのはおかしいのではないかということについて、順を追って質疑の中で明らかにしていきたいと思います。

 それでは、まず、自衛隊の海外における武器使用というものが憲法九条の違反となる理由について、まずは最初にお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 憲法第九条第一項が禁ずる武力の行使とは、国家の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうと解しております。自衛隊の海外における武器の使用がこれに該当する場合、憲法違反ということになります。

 他方、武器使用が全て憲法第九条一項の禁止する武力の行使に当たるわけではありません。例えば、我が国の個別的自衛権の発動たる武力の行使は当然認められますし、また、警察権の行使としての武器の使用、さらには、いわば自己保存のための自然的権利としての武器の使用、また、防護のための武器の使用、自衛隊法第九十五条にあるような事例ですが、こうしたものにつきましては憲法第九条一項の禁ずる武力の行使には当たらない、このように解されております。

村上(政)委員 武力行使に当たらない場合として、個別的自衛権の発動、あるいは自己保存型の防護といったものを挙げておられましたけれども、相手が国または国に準ずる組織である場合には憲法九条が禁じる武力行使に当たるおそれがあるという理解でよろしいでしょうか。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今大臣からも御説明いたしましたとおり、武力の行使の定義、武器の使用については御説明させていただいたとおりでございますが、まず、国際法上の概念といたしまして、今委員から御指摘ありましたような、国家に準ずる組織ということの意味について確立された定義があるとは承知しておりません。

 その上で、我が国においての憲法解釈上、まさに国家に準ずる組織について、国家そのものではないけれども、これに準ずる者として、国際紛争の主体になり得る者という概念がございまして、そのコンテクストで、憲法の解釈との関係で武力行使の関係が問題になるわけでございます。

村上(政)委員 今、参事官から、国に準ずる組織についての概念としてというお話がありましたけれども、国に準ずる組織というものの定義というものはどういったところになるのでしょうか。

新美政府参考人 国家に準ずる組織、これは憲法解釈上の考え方でございまして、国家そのものではないが、これに準ずる者として、国際紛争の主体となり得る者を用いるものというふうに考えております。

村上(政)委員 国際法上の定義はない。翻って、国内法上は、武力紛争の主体となり得る者として今まで国内で用いてきているということだと私自身は理解いたしましたが、これは定義が存在するということなんでしょうか、それとも、定義は存在しないけれども法の基準として運用されてきたということなのでしょうか。

新美政府参考人 今委員からも御指摘ございましたとおり、また、私からも説明させていただきましたとおり、これは憲法解釈上の概念といいますか整理でございます。

 そして、国家に準ずる組織と申しますのは、まさに自衛隊が活動する地域におきまして、国際的な武力紛争、すなわち、国家または国家に準ずる組織との間において生じる武力を用いた争いでございますけれども、それが存在するか否かということを判断する際の要素でございます。

 したがって、具体的に、一体どういう場合、どういう主体ついてこれが該当するかということにつきましては、実際は個別具体的に判断をするということになっております。

村上(政)委員 今、これは外務省の所管の法律ではございませんが、自衛隊法の改正案が政府として提出されておられるわけで、自衛隊法を改正して、邦人救出のために陸上輸送を追加する。

 しかしながら、こういったことをしても、例えば、国に準ずる組織という定義が曖昧であることによって、自国民を海外で見捨てなければならないという場合が生じるのではないかというふうに私自身は考えますが、この点についてはいかがでしょうか。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 これは外務省からお答えすることが適当かどうかはあれですけれども、あくまでも、この国または国に準ずる組織という考え方につきましては、憲法上の解釈として、従来より、国会も含めて議論され、そして整理されてきた話でございますので、今委員御指摘のとおり、実際の現場での問題もおっしゃるとおりでございますけれども、やはり憲法の解釈との関係については、これは慎重にきちっと検討する必要があるというふうに考えております。

村上(政)委員 もう少し個別の事例というものに踏み込みながら考えていきたいと思います。

 海賊の対処法に基づいて、自衛隊の武器使用が憲法九条の禁じる武力行使ではない理由というのは、どういうところでしょうか。

長田政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の海賊対処法でございますが、これは、海賊行為に関する罪と、海上保安庁あるいは自衛隊による海賊行為への対処について規定をしております。

 同法に基づきまして自衛隊の武器使用が認められておりますが、これは、ある行為が海賊対処法に規定する海賊行為に該当する場合に限られております。

 我が国の刑罰法令が適用される犯罪たる海賊行為を行った者に対しまして、自衛隊が同法で認められる警察権の行使として、法令の範囲内で武器を使用することにつきましては、憲法九条で禁止をする武力の行使には当たらないというふうに解釈をしております。

村上(政)委員 今の御答弁について、海賊対処法において、自己または自己の管理下にある者の防護のための武器使用でも、自衛隊自身の武器を防護するための武器使用でもないというのに、海賊に対処するために武器使用が認められている、これというのは、武器使用に関する政府統一見解と矛盾するのではないかというふうに考えますが、この点についてはいかがでしょうか。

長田政府参考人 大臣が先ほど答弁された中にもございますが、これはあくまでも警察権の行使としての武器使用であるという観点から、これは憲法九条で禁止をしている武器使用には当たらないというふうに考えております。

村上(政)委員 このように、海外における武器使用について、解釈と現実が最も矛盾していると思われるのは、この海賊対処の問題ではないかというふうに考えます。

 なぜかと申しますと、例えば、一つの事例を考えてみたいと思うのですが、現在、我が国がソマリア沖で海賊対処を現実に行っているわけであります。ソマリア沖の公海の上で、例えばP3Cが哨戒を行っていたところ、海賊対処法に規定する海賊行為が行われたと確認された場合、この海賊は私人である、すなわち、今まで質疑の中で出てきた国でもなく、国に準ずる組織でもないというふうに理解いたしますが、この私自身の理解で正しいでしょうか。

長田政府参考人 委員の御指摘のとおりで結構だと思います。

村上(政)委員 それでは、今申し上げたように、海賊が国でも国に準ずる組織でもない、その海賊が海賊対処法に規定している海賊行為をほかの国の艦船に対して行っていた場合、例えば、米海軍の艦船が取り締まりを行っていたところ、その海賊が海賊対処法に規定する海賊行為を行っている、その海賊がアメリカの艦船に対してロケットランチャーで攻撃をしかけたとする、この場合に、その場に急行した自衛隊の艦船、近くにいた自衛隊の艦船がアメリカの艦船を防護するために武器を使用する。

 そうした場合に、この自衛隊が武器を使用した相手というのは海賊なので、国でも国に準ずる組織でもない、そういうふうに理解するのであれば、憲法上の評価というのはどういったところになるのでしょうか。九条に違反するのか違反しないのか、この点についてはいかがでしょうか。

長田政府参考人 あくまで海賊対処法で想定をしておりますのは、いわゆる私有の船舶等の乗組員が私的目的のために行う不法な暴力行為、抑留または略奪行為ということを考えておりまして、今先生の御指摘のような行為が現実にソマリア等の沖で発生をしているということは考えておりません。

村上(政)委員 済みません、私は仮定でお尋ねしているわけでございます。また、ソマリアの沖で米艦船に対して実際に海賊が攻撃をしかけている、こういった事例は発生しているわけでございます。

 ですので、改めてお伺いいたしますが、ソマリアの沖で海賊がアメリカの艦船に対して攻撃をしかける、その場合に、自衛隊の艦船が現場に急行して、この自衛隊の艦船が海賊に対して武器を使用する、その場合、この海賊というのは国でも国に準ずる組織でもないということになると思いますが、この場合の武器使用についての憲法上の評価、そして九条に違反するのかしないのか、この点についてお伺いしたいと思います。

長田政府参考人 あくまで海賊対処法で想定をしておりますのは、海賊がいわゆる民間の船に対してそういう不法な暴力行為、抑留、略奪行為を行うということについて自衛隊の武器使用を認めているわけでありまして、先生の仮定のケースについては特に想定をしておりません。

村上(政)委員 海賊対処法が想定している範囲を超えた場合の事例について、私自身、今お伺いしているわけであります。

 もう一度お伺いいたします。ソマリア沖で海賊がアメリカの艦船に対して攻撃を行う、そして、その場に自衛隊の艦船が向かう、自衛隊の艦船が海賊に対して武器を使用する、その相手方は国でも国に準ずる組織でもない、海賊である、そして、我が国の自衛隊の艦船がこの海賊に対して武器を使用するというのは海賊対処法の範囲内ではないかと私は考えますが、この点、そして、この武器使用というのは、憲法上、九条でどのように考えられるのか、これについてお伺いしたいと思います。

長田政府参考人 あくまで海賊対処法を所管する私どもの立場としては、先ほど申し上げましたように、民間の船に対して海賊行為を行った場合についての現行の海賊対処法での理解としては、それが警察権の行使として、憲法九条が禁止をしている武力の行使ではないというふうに考えておりまして、先生の御指摘のような例につきましてどう判断するかについては、現在、政府内で、まだ確たることについて、私どもから答弁する権限といいますか、そういう立場でないというふうに考えています。

村上(政)委員 済みません、きょうは法制局においでいただいていないわけですので、なかなか踏み込んだ御答弁がないということ自体は私自身は理解いたしますが、このように、今、順を追って明らかにしてきたように、私が今申し上げたこのケースというのは、第一次安倍内閣で安保法制懇が示した四類型、集団的自衛権の四類型のうちの米艦防護の事例に極めて近似しているのではないかというふうに私自身は考えます。

 あと、先ほど長島委員の質疑の中でもありましたとおり、現場の指揮官が、攻撃をしかけている者について、国なのか、国に準ずる組織なのか、あるいは海賊なのかについて、即座に判断するということは極めて難しいわけであります。また、その判断が異なっていたからといって、遡及的に憲法上の問題が生じる、あるいは法的な責任を問われるということもないわけであります。

 そうであるならば、私が今御紹介したようなケースというのは、先ほど申し上げた、安保法制懇が示した四類型のうちの集団的自衛権の米艦防護の事例について極めて近似しているというふうに考えられますので、実際に、先ほどお話し申し上げたような、ソマリア沖でこういった事例が起こるのであれば、我が国は既に集団的自衛権を行使し得る立場にあるというふうにも考えられるというふうに私自身は考えます。

 何を申し上げたいかというと、これは別に言葉遊びとか、あるいはこういう事例があるから政府として困るだろう、そういったことを申し上げたいのではなくて、事ほどさように、今まで、海外における武器使用に関するこれまでの政府の憲法解釈ということについて、極めてそごがあったり、おかしな点があるということを私から御指摘申し上げたい。

 こういった点をしっかりと政府として検討して、そして、例えば安保法制懇で示されているような四類型の集団的自衛権についてもきっちりと考えていく。そして何よりも、個別の事案、ケースにおいて、指揮官が困らないように、そして、一人一人の我が国の公務員がこういった法的な解釈の問題によって命を落とさないようにしていくのが我々の政治家としての務めであるというふうに考えますが、最後に大臣から御決意、御感想をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、安保法制懇の議論につきましては、引き続き議論が続けられています。この議論の成果、しっかり確認をしたいと存じます。

 そして、先ほど来の委員の質疑を聞いておりまして、改めて、法律上の議論と、そして具体的な事例との兼ね合いにおいて、より現実的な解釈が求められる、こういった問題意識は共有いたします。これをしっかり埋めていくのが政治の役割かと存じます。そうした問題意識を持って、引き続き取り組んでいきたいと考えます。

村上(政)委員 たまたま、きょうは長島委員の、武器使用する主体として、主体が違うことによって差異が生じるのはおかしいのではないかという点、御質疑がありました。そして、私の方からは、武器使用する相手方によって、相手方が異なるからといってさまざまな差異が生じてくるというのはおかしいのではないかということを御指摘させていただいたと思います。

 改めて、政府でもしっかりとした検討を進めていただければと思います。

 これで私の質疑を終わります。ありがとうございました。

河井委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 税務行政執行共助条約について、まず幾つか質問いたします。

 大企業や富裕層による租税回避行為や脱税、租税滞納行為というのは社会秩序を乱すものであって、国税当局が法を遵守して課税するのは当然のことだと思います。

 そこで、岸田大臣、この条約は、一九八八年に採択をされて、一九九五年四月に発効しましたが、それから今日は十八年たっております。日本が署名したのは一昨年の十一月でありますが、なぜこんなに時間がかかったのか、ようやく締結するということに至った理由を端的にお答えください。

岸田国務大臣 税務行政執行共助条約ですが、各国の租税当局間における租税に関する情報交換、徴収共助及び送達共助の枠組みについて定めるものです。

 政府は、OECD等における本条約の草案作成のための議論、この段階から参加はしてきました。しかしながら、本条約を締結し、徴収共助等を国内で実施するためには、外国租税債権の優先権の否定、あるいは徴収共助の拒否事由等に関する国内法令の整備が必要でありました。本条約の締結に当たり、関係部局においてこの点を慎重に検討を行ってきたということでありました。

 そして、本条約の実施のための国内法の整備ですが、平成二十四年度の税制改正においてようやく措置されました。また、国際社会においては、G20等の場で、脱税及び租税回避行為に対処するための取り組みの重要性がハイレベルで確認されてきております。

 こういった状況に鑑み、政府としましては、本条約を締結すべく、平成二十三年十一月に本条約に署名して、昨年の第百八十回通常国会及び今次通常国会に本条約を提出した、これが今日までの経緯でございます。

笠井委員 そこで、国税庁に伺いますが、この条約の必要性にかかわってですけれども、これまで、どんな海外滞納事案が発生をして、国税庁がどんなふうに対応困難となって、どれだけの適切な税収が確保できなかったのか、端的にお答えください。

岡南政府参考人 お答えいたします。

 一般論の形で申し上げたいと思います。

 まず、課税の局面におきましては、我が国の納税者と海外法人との取引に不明な事項がある場合に、租税条約がなければ、当該取引に係る情報を入手することは困難であり、適切に課税できないケースがございます。具体例で申し上げますと、特定の海外取引につきまして、海外法人だけが取引の記録や証拠書類を保存しているような事例がございます。

 また、徴収の局面につきましては、滞納者が我が国の徴収権限が及ばない外国に財産を移転した場合に、徴収ができないことがございます。具体例で申し上げますと、滞納者が国外にある預金口座に送金しているような事例でございます。

 これらの事案に対しまして、税務執行共助条約等が発効いたしますと、相手国税務当局と情報交換及び徴収共助を行い、適正な課税、徴収を行うことができるようになるということでございます。

笠井委員 日本国憲法が要請する租税徴収の主権が及ぶ範囲というのは国内であります。

 今回、海外にある租税債権を共助という形で徴収できる具体的な根拠規定はどれによって担保されているのか、それから、それを行うに当たっての国内法の規定というのは具体的にどういうふうに整備されたのか、これも端的にお願いします。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、徴収共助を実施する条約上の根拠規定といたしましては、今回の御審議をいただいております共助条約の十一条から十六条の規定がございます。

 それから、これに対応する国内法といたしましては、先ほど大臣から答弁がございましたとおり、昨年度の税制改正におきまして、租税条約等実施特例法につき所要の改正を行いまして、具体的には第十一条及び第十一条の二が整備されたというところでございます。

笠井委員 財産を海外移転する、いわゆる悪質滞納案件について、これまで国税庁としては、財産の海外移転をされる前に、国内法をどれだけ駆使して対応してきたんでしょうか。なかなか苦労があったという話ですが。

岡南政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの回答と一部重複するところがございますけれども、例えば、海外取引におきまして不明な点等がございますれば、まず国内にある滞納者に対しまして質問、検査等を行いまして、そういったことを通じまして、極力、国内において滞納等の整理に当たる情報を入手するわけでございますけれども、やはり相手側がそれに応じないとか出さないとか、あるいはその証拠が既に保管されていないとか、そういった状況につきましては、なかなか課税あるいは徴収が困難な事情があったということでございます。

笠井委員 外務省に伺いますが、この共助条約において、課税当局の間違いというか過誤、あるいは運用の濫用の歯どめについては条文上どういう規定になっているか、そして、徴収共助の際の納税者の抗弁の機会あるいは争える範囲というのはどうなるでしょうか。

岸田国務大臣 徴収共助の実施につきましては、本条約第十一条におきまして、被要請国は、要請国の要請があったときは、要請国の租税債権を自国の租税債権を徴収する場合と同様に徴収するため、必要な措置をとること等が規定されています。

 また、本条約第二十一条におきましては、本条約のいかなる規定も、税務当局がとる措置の対象となる納税者に対し、被要請国の法令または行政上の慣行によって保障される権利及び保護に影響を及ぼさない等が規定されております。

 したがって、本条約に基づく徴収共助は、我が国が被要請国であるか、あるいは要請国であるか、これはどちらであっても我が国国内法及び条約の規定に基づき実施されることとなることから、我が国税務当局が本条約を濫用するような状況は想定されないということでございます。

笠井委員 幾つかにわたって質問しましたが、国内の滞納処分で、海外に財産移転したいわゆる悪質案件の対応であるとはいえ、法的根拠と条約の運用にかかわる部分については、国民に対する説明は丁寧に行っていく必要がある、尽くさなきゃいけない。なかなか文章はそういうことが読み込めないんですよね。だから、そのことはちゃんとやっていく必要があるということを申し上げておきたいと思います。

 なお、本日の委員会審査案件における七案件ですが、日本・ポルトガル、日本・ニュージーランド租税条約と日米租税条約改正議定書の三件については、第二の多国籍企業優遇税制とも呼ばれる源泉地国課税の免税措置が含まれているので、我が党は反対であります。

 この際、TPP交渉への参加問題について一点だけ、この間の論戦を踏まえて、先立って交渉に参加している十一カ国との関係について、大臣に確認しておきたいと思うんです。

 これら十一カ国については、去る四月の二十日に、インドネシアのスラバヤの閣僚会合で、趣旨としては、日本の交渉参加を歓迎する、そういう声明を発表したということであります。

 三月十八日の予算委員会で、私は、メキシコ、カナダは、参加表明後に、現行の交渉参加九カ国が既に合意した条文は全て受け入れて、再協議は行わないなどの三つの不利な参加条件の念書を受け取って、参加を認められたということがあると指摘しました。日本も、参加表明後、そういう念書が来るのではないか、こうただしたところ、安倍総理は、まだ来ていない、私は明確に覚えているんですが、まだ来ていないというふうに答弁されて、これからどうなるかについては定かではないと言われました。

 そこで伺いますが、その後、四月二十日の十一カ国の閣僚会議までの間、あるいは今日までの間に、そうした日本が参加するに当たっての条件に関する念書のようなもの、あるいはそういう文書が来たのか、交わされたものがあるんでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の条件、その念書につきましては、今日まで、メキシコ、カナダの当事国も、その念書の受け取り等については公に明らかにしていないということであります。

 こうしたやりとりにつきましては、相手国との関係もあり、明らかにすることは控えさせていただきたいと思います。

笠井委員 では、伺いますけれども、外務省のホームページに、この十一カ国の声明というのが全文仮訳がございます。

 これを見ますと、こう書いてあります。「他の参加国が進捗中の交渉に参加した時と同様に、妥結に向けて交渉が引き続き速やかに進められるような方法により、日本の参加プロセスを完了させることをコンセンサス(全会一致)により合意した。」こう書いてありますけれども、これはどういう意味ですか。

岸田国務大臣 交渉に際しまして、全ての物品を対象とし、そして、他の交渉参加国とともに包括的で高い水準の協定を達していく、こうした認識のことであります。

笠井委員 ですから、聞きますけれども、「他の参加国が進捗中の交渉に参加した時」というのは、明らかにこれは、カナダ、メキシコが後から参加したときということだと思うんですね。それと、「同様に、妥結に向けて交渉が引き続き速やかに進められるような方法により、」というのは、カナダ、メキシコ、つまり他の参加国が進捗中の交渉に参加した、そうしたときと同じように、「妥結に向けて交渉が引き続き速やかに進められるような方法により、」というのは、何らかの条件を日本にもつけられたということを言っているんじゃないんですか。これはそういう意味じゃないんですか。

岸田国務大臣 現TPP交渉参加国は、これまでも、新たな国の参加により交渉の進展をおくらせないといった考え方を示してきております。

 我が国としても、こうした考えや、これまで積み上げてきた議論について尊重すべきであるというふうに思っていますし、前向きかつ建設的に交渉をする用意であります。

 こうした姿勢については、今申し上げた点、しっかり大切にしていきたいと思っています。その上で、我が国としては、国益を守るため、我が国の交渉力を駆使して最大限の努力をしていかなければならない、そのように思っています。

笠井委員 おくらせないというのが方法の全てということになりますか。

 カナダ、メキシコの場合に言われたのは、先行して交渉してきた九カ国が合意した条文は全て受け入れる、将来、ある交渉分野について九カ国が合意した場合、その合意に従う、交渉を打ち切る権利は九カ国にあり、おくれて交渉入りした国には認められないということがありました。

 それは、おくらせないというよりも、もっと具体的なことがあった。さっき大臣は、メキシコ、カナダもいまだにその中身については明らかにしていないと言われましたけれども、これは日本にとっては、国会との関係でも国民との関係でも、非常に重要な問題です。参加して、これからちゃんと言えるのか。

 それは、交渉に入って頑張るんだというふうに大臣も総理も言われるけれども、しかし、できないようになっているんじゃないかというのが問題になっているわけですが、この「方法により、」というようなことについて、もう少しきちっと説明してください。

岸田国務大臣 TPP交渉につきましては、昨年来、さまざまな二国間交渉、あるいはさまざまな国際会議等を通じて、我が国としましては、この交渉の状況について最大限情報収集に努めてきました。そして、TPP交渉につきましては、関税を含め、重要な論点については、いまだ交渉が継続していると承知をしております。

 こうした状況の中で、我が国としては、一日も早く交渉に参加し、そしてしっかり情報を共有して、そして強い交渉力を持って主張すべきことをしっかり主張していく、国益を最大限実現するよう努力をする、こうした姿勢で臨んでいきたいと思っています。

笠井委員 さっき大臣が言った、おくらせないというのはどういう中身でしょうか。

岸田国務大臣 TPP交渉につきましては、交渉が開始してから既に三年がたっております。さまざまな交渉が行われてきた、これは十分想像できるわけですが、そういった交渉をおくらせない……(笠井委員「どういう行為かということです」と呼ぶ)これは、こうした今日までの交渉の積み上げをしっかり尊重するということであります。

笠井委員 積み上げてきたものは受け入れるという話になるということでしょう、中身はまだわからない。

 私は、ある意味、不利な条件を丸のみさせられるようなTPP交渉への参加は撤回すべきだと言ってまいりましたが、改めて、きょうの質疑を通じても感じました。

 そのことを強く申し上げて、きょうはこれで終わります。

河井委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 きょうは、外務大臣にまず、包括的といいますか、所見を伺いたいと思います。

 日・ジャージー租税協定を初め二国間の協定についてなんですが、私も、今般提案されています条約の締結承認を求めるの件は、二重課税の回避や脱税の防止、日本と諸外国との安定的な外交が、相互の信頼関係の醸成、積極的な投資を促進させていく大きな期待を持たせるものであるというふうに思っておりますが、ぜひ大臣の所見をお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 今御指摘になられました諸点を通じて、こうした協定が締結することによって、それぞれの二国間においても、さらなる経済関係の強化等、大きな成果が期待されます。ぜひ、こうした条約、協定を通じまして、我が国と相手国との間の経済連携を深め、国際社会の繁栄のために大きな成果を上げられるよう努力をしていきたいと考えています。

玉城委員 ありがとうございました。

 まさに、その大きな成果を上げるためには、経済的な連携、先ほどは別の委員からTPPの懸念もありましたけれども、私も、また後日改めて、経済の今後の方向についてはしっかりと質問をさせていただけたらというふうに思っております。ありがとうございます。

 さて、続いて、やはり外交問題でありますので、そのことについて、先般の日台漁業協定についての質問をさせていただきたいと思います。

 四月二十六日に本委員会で質疑をさせていただいた日台間の漁業協定についてですが、実は今般、憂慮する事態が生じていることに鑑みて、本日、質問をさせていただきたいと思います。

 この五月十日に発効となった日台漁業協定について、前回の本委員会において、私は、地元漁業関係者からの声、例えば、操業範囲を設定するに当たり、尖閣諸島周辺海域や久米島西近辺の良好なマグロ漁場での競合に対するさまざまな不安と懸念、並びに率直かつ重要な意見がありますよということをお伝えさせていただきました。

 そのことについて岸田外務大臣からは、東シナ海における平和及び安定の維持などなど、さまざまなこれからの方向性の目的、長年の議論が積み重ねられて意見がまとまった旨の答弁をいただきました。

 また、鈴木外務副大臣から、協定締結に当たっては、沖縄の漁業者の声に耳を傾け、その意向を酌み取る指示をした旨の答弁があり、今後の協議が委ねられるとされます日台漁業委員会で、現場海域での漁業秩序の形成に関する具体的な検討がなされていくという、ある一定の、安堵とする答弁をいただいたと理解したものであります。

 ところが、協定発効のわずか四日後の五月十四日、この日、日台漁業協定で定めている合意水域から大きく外れた先島諸島の南側水域で、台湾はえ縄漁船正昌発二号約四十八トンが違法に操業したとして水産庁が拿捕して、孫居民容疑者五十一歳を、漁業主権法違反、無許可操業の疑いで逮捕したという報道が、五月十五日に沖縄県内の地元紙に掲載されました。

 また、この漁業主権法違反の、同法に基づく担保金を支払うという保証書が台北駐日経済文化代表処の那覇分処から沖縄総合事務局に提出され、この船長は釈放されたということも報道されています。

 まず、水産庁長官に伺います。

 かかる重大な事態が惹起したことについて、どのような判断、対処をされたのかをお聞かせください。

本川政府参考人 この委員会でも私お答えさせていただいたと思いますが、五月十日に協定が法的効力を持つ、このような事態を受け、マグロの最盛期でございますので、従来、この海域は、水産庁としまして五隻体制で取り締まりをしておりましたが、ことし五月、六月は倍の十隻体制にいたしまして、水産庁四十一隻の保有の中の四分の一を割いて取り締まりを行っているところでございます。

 当然ながら、適用水域の周辺でも配置をしておりますし、この南側水域についても、こういう違反が想定されましたので配置をいたしたところ、今御指摘のあったような拿捕につながる事態に至ったということでございます。これは、私どもが重点的な警戒をしておった、そのようなことが効果をあらわしたというふうに考えております。

玉城委員 これまで日台間は、民間の窓口を通して、非常に丁寧かつ丹念な議論、さまざまな意見交換などを積み重ねてきたという、温かい積み上げがあるわけですね。

 この日台間の今後の良好な連携に関して具体的にどう対応するべきか、この問題を通して、鈴木副大臣にぜひ見解を伺いたいと思います。

鈴木副大臣 先生御指摘のとおり、公益財団法人の交流協会、それと台湾側の亜東関係協会、そこで日台漁業委員会を開いているわけでありますが、先生御承知のとおり、第一回目の委員会を五月七日に台北で開催いたしまして、さらに、きのう十六日から本日にかけまして日台漁業者間の会合が那覇市で開催をされて、取り決め適用水域における操業の取り扱いについて意見交換をまさに進めているということを承知しているところでございます。

 政府といたしましては、この取り決めの目的が達せられまして円滑な実施が確保されるように、この日台漁業委員会のもとで、沖縄県の漁業関係者の意向と懸念をしっかりと踏まえた建設的な議論が進められて、具体的な進展が早急に得られることを期待しているところでございます。

 いずれにいたしましても、本取り決めの実施状況を踏まえまして、台湾漁船の操業のあり方に関する諸問題が解決されるように、政府といたしましても全力を尽くす考えでございます。

 それとともに、やはり影響はあるんだと思います。本取り決めの実施に伴う関係漁業者への影響につきましては、関係者の意見も十分お聞きをいたしまして、そしてそれをしっかりと把握した上で、関係省庁が連携をして必要な対策を検討してまいりたいと思っております。

 それから、先ほど、違法操業の取り締まり、拿捕の話がございましたけれども、本取り決めの適用水域に含まれない海域におきましては、外国漁船の違法操業に対する取り締まり、これは徹底して行いまして、我が国の漁業者の操業の安全を確保してまいりたいと思っています。

玉城委員 ありがとうございます。

 取り締まりを徹底していただくことによって安心につながるわけですが、しかし一方で、このような違法操業が起こる以前に、本協定の発効前に双方の漁業者間による操業ルールが策定できなかったということが一番大きな懸念だということを地元の漁業者の方々も言っていたんですね。

 そこで、水産庁に再び伺います。

 先ほど副大臣から答弁がありましたとおり、きのう、きょう、まさに日台双方の漁業関係者による意見交換が行われています。操業ルール等の取り決めについて今後どのようにしていくのか、改めて確認をさせてください。

本川政府参考人 昨日から、日台漁業委員会の下に位置づけられる民間の漁業者間の協議が行われております。感情的な対立ということではなくて、非常に実務的ないい話し合いが行われているというふうに伺っております。きょうまで会合をやるということでございます。

 私ども、この会合、さらには、それを踏まえてさらにきちんとした操業ルールができるように取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。

玉城委員 この海域は、やはり尖閣諸島周辺海域です。ですから、そこは、私個人としては平和活用するべきであるというふうに思います。

 そのためには、この漁業協力について、大変重要なポジションといいますか、意味があるというふうに思っておりますが、北緯二十七度線から南側などの東シナ海における安全な操業体制も重ねて整備、構築することは、日本と台湾のみならず、当然、日本と中国の関係においても互恵的、平和的な共存関係につながるものと私は思料するものでありますが、このことについて大臣からぜひ御見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 この水域において平和的、安定的な秩序が保たれるということは、日台間のみならず、日中間、この周辺諸国との関係においてもこれは重要な課題だと認識をいたします。

玉城委員 今後ともその御努力に、微力ではありますが、力を注いでいきたい、尽くしてまいりたいというふうに思います。

 さて、またさらに別の質問をさせていただきますが、今国会では、歴史認識などをめぐる発言や慰安婦問題に対する発言などについての報道が喧伝され、国民からは政治家の発言に対する極めて厳しい意見や反論が巻き起こっていることは、私個人も、一政治家たらんとする意味で、改めて襟を正さなければならないとみずからを省みるものであります。

 歴史認識に関する発言は、四月二十二日、参議院予算委員会での、安倍内閣として村山談話をそのまま継承しているわけではないという安倍総理の発言について、官房長官は、村山談話を引き継いだ上で未来志向の案を出したいなど、内閣における考えにも現在温度差があるのではないかという不安を覚えますが、安倍総理に対しては、アメリカの議会調査局、CRSの報告書の内容が先般報道されています。その中には、幾分強目の口調、強固なナショナリストとして知られている、あるいは、東アジアの国際関係を混乱させ、米国の国益を損なう可能性があるとの懸念を生じさせてきたなどなどと記されています。

 私は、このことに対しては、必ずしも議会の公式見解ではないと理解しているものの、総理あるいは内閣周辺のこれまでの発言が、このアメリカの議会調査局の報告書の信憑性を逆にアメリカ側の国民に対しては強めてしまうことになっているのではないかというふうに懸念します。

 外務大臣にこのことに関しての見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、我が国はかつて、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大な損害と苦痛を与えました。この認識においては、安倍内閣としても同じであります。これまでの歴代内閣の立場を全体として引き継ぐ考えでおります。

 我が国の考え方は今申し上げたとおりですが、御指摘の米国連邦議会調査局の報告書等、こうした考え方が十分理解されていないとしたならば、それは大変残念なことであります。我が国の考え方が正しく理解されるよう、今後とも一層積極的に発信に努めていきたいと考えております。

玉城委員 このほかにも、橋下日本維新の会共同代表の海兵隊に対する侮辱的な発言、あれはもう、人権侵害そのものとして、慰安婦問題とは別に考えている、アメリカとしては絶対に相入れない。ましてや、沖縄からも物すごい反発の声が上がっている。

 そういうことは、基本的に人権を守るということに我が国もしっかりとウエートを置いているということを、外務大臣を初め、示していただきたい。先般、この委員会でもハーグ条約の議論がありましたことも踏まえて、我々は人権を尊重する国家であるということをやはり声高に言えるような、そういう姿勢を示していただきたいと思います。

 さて、時間がないので、一点紹介いたします。

 このアメリカ議会調査局が一日付でまとめた日米関係の報告書は、安倍晋三政権の誕生以来、周辺国との外交や日米関係、日米同盟や政治や経済など五章にわたってまとめたものですが、米議会では、県内移設を定めた現行計画の総費用や期間に関する懐疑的な見方もここで記されています。沖縄では反対がより強固になるなどと分析し、実現性を疑問視している。日本が米国による安全保障の利益を得ている間、沖縄県民は不相応な重荷に耐えているなどと、ここでもやはり踏み込んだ発言がなされています。長期間にわたり日米同盟をいら立たせてきている、この突出した海兵隊基地の再配置をめぐる問題は、コストがさらに膨らみ、期間も長期化する、住民の怒りをあおるなど、外国の軍隊の存在に対し沖縄県民が何十年もためてきた不平は弱まりそうにないようだと結論づけています。

 これは、いわゆる歴史認識、慰安婦の問題などなど、この歴史、我が国のいわゆる国政が行ってきた河野談話あるいは村山談話などの重みをやはり改めて認識することも必要であるというふうに思います。

 大臣、ぜひ最後にその見解をお聞かせください。

岸田国務大臣 我が国の、我が政府の、我が内閣の歴史認識については、先ほど申し上げたとおりであります。

 国際社会において、こうした我が国の、我が内閣の方針が十分理解されていないとしたならば、外交努力等さまざまなツールを使って、その理解のために努力をしなければならないと考えます。外務大臣としても、その大きな責任を担っていると認識をしております。ぜひ、一層の理解を得るために、そして国際社会から日本が正しく理解されるように、努力をしていきたいと考えます。

玉城委員 ありがとうございました。

 ぜひ、我が国の憲法の理念もしっかり尊重する方向で行ってまいりたいというふうに希望いたします。

 ありがとうございました。ニフェーデービタン。

河井委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 最初に、旅券法の改正について質問させていただきます。

 まず、日本の旅券というのは、ビザなしで行ける国が多いので、悪いことを考える人にとっては非常に利用価値のある旅券だと思います。日本の旅券、どれぐらい世界じゅうで不正使用が発生しているのか、また、どのような不正使用が行われているのか、外務省にお尋ねします。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 旅券の不正使用とは、一般に、正規な方法によらずに旅券を使用して出入国等をすることを指します。その形態といたしましては、旅券冊子自体の偽造、それから、他人に成り済ましてその人物の真正な旅券を使用すること、写真を含む旅券面の身分事項の一部改ざんなどの手法がございます。

 この不正使用の発生する場でございますが、これは主として海外でございます。成田とか、そういう日本国内の出入国に使うことはほぼ不可能と思われます。

 件数でございますが、平成二十四年が五十二件、二十三年が四十六件、二十二年が八十六件、不正使用の事案がございます。

 これらは主に、海外で日本人ではない保持者が不正使用する、どういう国籍の者かといいますと、中国人あるいはアフガニスタン人というものが、欧州諸国への出入国のときに、我が国の偽造、変造旅券を使用するというケースが目立っております。

 なお、ICチップのデータまで書きかえました偽造、変造旅券につきましては、我が国の旅券を含めまして、国際社会では報告されておりません。したがいまして、一般的には、不正の使用者は、ICチップの読み取り機械が設置されていないような出入国の地点を狙うことが多いということでございます。

 なお、不正取得という別の不正のやり方もございます。これは取得をする方でございます。これは日本国内で行われている手口でございますが、件数で申し上げますと、平成二十四年が五十四件、平成二十三年が六十一件、平成二十二年が百十七件ということで、成り済まして申請をする、あるいは虚偽の申告をする、あるいは複数の取得をするといった手法が見られております。

山内委員 中国人が日本人に成り済ますというのは想像できるんですけれども、アフガニスタン人というのはちょっとびっくりしましたが、そういう偽造が実際に行われていると。実際、この五十何件だ、八十件だというのは、わかった、判明したケースですから、本当はもっと多いのかもしれません。

 そういった意味では、今後、どのような偽造防止策、不正使用防止策をとっていくお考えなのか、お尋ねします。

上村政府参考人 公安上の理由から、偽造、変造防止技術にかかわります詳細な説明につきましては、必ずしもここで御説明することは適切ではないと思います。御理解賜りたいと思いますけれども、我が国旅券には、日本銀行券などに施されるような高度な偽造、変造防止技術が採用されております。また、ICチップにつきましても、作成後の書きかえができないような高度な情報セキュリティー措置を施しているところであります。

 幾つか御説明できます手法を申し上げますと、例えば、高品質の微小文字の印刷、それから特殊潜像模様、いわゆる像が潜行している、旅券を傾けますと違う像が見えるというような技術、あるいは透かしといった技術が用いられており、世界でも極めて高い水準のセキュリティー性を有しております。これは、適時に行います仕様の切りかえの際に、そのときの最高レベルの技術を投入しております。

 今後の取り組みでございますが、もとより、各国の警察、出入国管理当局とは密接に情報交換をして、こういう不正な偽造・使用につきましては、防ぐような努力をいたしております。

 特に、国際民間航空機関、ICAOが運営しております公開鍵ディレクトリーという仕組み、これはICチップの偽変造を防ぐ国際的取り組みと御理解いただきたいと思いますが、ここには積極的に参画をしておりまして、将来懸念されますICチップの偽造については、こういう取り組みで、決してそういう偽造を許さないという手だてをとっております。

 今後とも、そういう努力を続けてまいりたいと思います。

山内委員 年間の不正使用が五十件とか六十件、これが多いのか少ないのかわかりませんが、できる限りゼロに近づけていけるように、引き続き努力をしていただきたいと思います。

 次に、租税に関する条約について質問をいたします。

 脱税防止や二重課税の回避のための二国間の条約や協定、今、六十五カ国と租税関係の協定を結んでいると聞いておりますが、今後、大体何カ国ぐらいを目標にふやしていきたいのか、あるいはそのためにはどうやってスピードアップしていくかということについて、外務省にお尋ねをしたいと思います。

岸田国務大臣 政府としましては、国際的な投資交流を促進して我が国の経済の活性化につなげる、また、我が国の企業の海外展開を後押しする、さらには、脱税及び租税回避行為を防止する、こういった考え方のもとに、総合的に考慮し、既存条約の改正も含めて、租税条約の締結に今後積極的に取り組んでいきたいと考えております。

 こうした考えに基づき、今般御審議いただいている条約のほかには、例えばアラブ首長国連邦との間の条約について、先日、総理の中東訪問の際に署名をさせていただきました。また、オマーン、英国、ドイツ等との間で、新規締結、既存条約の改正、こうした取り組みを行っております。

 そして、締結数、今、六十五カ国と御紹介いただきましたが、全部で五十五条約ということであります。これは、数からいいますと、他の主要国と比べて必ずしも多いわけではありませんが、先ほども少し触れさせていただきましたが、金額ベースでは、我が国の対外直接投資先の約九割を既にカバーしている、こうしたことであります。

 政府としましては、引き続きこの租税条約ネットワークの拡充に取り組んでいきたいと思いますが、その際に、考え方としまして、条約の数を追求するだけではなくして、投資協定など他の二国間の法的枠組みを含めた多様な政策手段を組み合わせる、そしてそのことによって、二国間の投資促進、そしてそれを通じた両国経済の活性化を図っていく、こうした視点が重要だと考えております。

山内委員 ありがとうございました。

 では、残り半分の時間は、関係のない、別の案件の質問をさせていただきます。

 まず最初に、広報文化外交について質問をします。

 平成二十四年七月に、外務省の広報文化外交の制度的あり方に関する有識者懇談会という懇談会が提言をなされました。私、これを読んで、非常にいい内容だったと思います。その前に、平成二十年ごろに海外交流審議会というものの答申が出ているんですけれども、それに比べると、非常に実践的で、中身のある提言になっていました。

 海外交流審議会は、聞けば知っているような大企業の社長さんとか、非常に大物がいっぱいメンバーに連なっている審議会ですが、出てくる内容は、正直言って、誰でも考えそうな内容が多くて、余りいいものではなかったです。

 他方、去年、二十四年七月に出た有識者懇談会の方が非常に中身がよかった理由の一つは、メンバーが比較的、四十代、五十代ぐらいの、第一線で働いている研究者の人、あるいは学者、あるいはNGOの関係者、そういう、非常に実務的なことがわかるメンバーが書いているのでよかったんじゃないかなというふうに思います。

 そういう感想を申し上げた上で、質問します。

 この去年の七月の有識者懇談会の報告書、提言を踏まえて、具体的に何か外務省で変わったことはあったのでしょうか。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省といたしましては、広報文化外交がますます重要になっているとの認識のもと、昨年八月、機構改編を行いました。報道対策、国内外への広報、文化交流を統一的な司令塔のもとで戦略的、有機的に対応する体制を強化したところでございます。そのもとで、現在、広報文化外交の推進に積極的に取り組んできているところでございます。

 委員御指摘の有識者懇談会の報告書の提言でございますけれども、これを踏まえて既にいろいろな措置を実施してきておりますが、新たな取り組みといたしまして、具体的なものを二、三申し上げます。

 まずは、外務大臣を本部長とするパブリック・ディプロマシー戦略本部を立ち上げました。このパブリック・ディプロマシー戦略本部は、主要外交課題において広報文化が重要な役割を果たし得るという認識のもとで、主要外交課題と広報文化との連携を深め、もって政策の企画立案、そして実施の面で戦略性を高めていくということを目的としてございます。

 また、日本ブランド発信事業の充実なども、新たに今年度の予算に計上しているところでございます。

 さらに、政府全体の調整、枠組みの強化のために、官房長官が主宰をされまして、外務副大臣、その他関係省庁等の責任の方々をメンバーとする国際広報強化連絡会議も立ち上げられたところでございます。

山内委員 ありがとうございました。

 いろいろな組織ができたというのはわかりましたし、戦略性を高めるということもわかりました。

 ところで、この二十四年の提言の中で、一つ非常に具体的なものとして、インソーシングという耳なれないものが提案されていました。アウトソーシングというのが普通ですけれども、この提言の中であったインソーシングというものの意味は、官の多様なアクターと連携をして、外務省なり国際交流基金が場を設定して、大学、民間の企業、あるいはNGOなどがそこに人を派遣してもらう、アウトソースの逆方向ですね、そういったものをやるべきだという提言がありました。

 これについては外務省はフォローされているんでしょうか、それとも、この提案は生きなかったんでしょうか、どちらでしょうか。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問いただきましたインソーシングでございますけれども、既に在外公館においては、任期つき採用や官民人事交流法といったいろいろな枠組みがございまして、こういった枠組みを通じて、民間の御出身の方々の、まさに多様なアクター、多様な方々に在外公館の職員として働いていただいているところでございます。

 こういった方々、そして現地の関係者の人たちとも連携をしながら、日本の魅力や強み、価値の発信に引き続き取り組んでいきたい、そういう中で、またさらなる可能性、改善の道も検討していきたいと考えているところでございます。

山内委員 いわゆる任期つき採用とかで外務省で雇うと、その人件費は外務省が払うわけだと思うんですけれども、このインソーシングで言っているのは、人件費も親元に出してもらう。

 美術館なり大学なり、例えば京都大学とかがよく、ジャカルタとかに研究センターを持っています。そういうのを持つと、事務所の経費からいろいろな経費がかかります。箱を全部用意するのは大変だから、箱は外務省あるいは交流基金が用意します、人だけ出してください、人の人件費は手弁当で、親元の、大学でもNGOでも企業でも、そういうところが出してくれ、そういうことを提案していると思うんですね。ですから、単に任期つき採用で民間出身を雇っていますということではないんじゃないかなと思うんですね。

 実際、ジェトロなんかに行くと、ジェトロの在外事務所は地方自治体派遣の人がいて、人件費は県庁が出してくれる、ジェトロはデスクまで用意する、あとは何をやってもいいですよというか、要するに、プラットホームを官で用意して、民間がその上でいろいろ自由な発意でやれる、それがインソーシングのよさだと思うんです。

 単に、任期つき採用で、外務省の指揮命令系統下に民間出身者を置く、それをインソーシングと言っているのではないのかなと思うんですけれども、その点、どうなんでしょうか。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘をいただいた点も踏まえまして、やはり何といいましても、広報文化外交を積極的、効果的に推進していくためには官民の連携が極めて重要であると考えてございますので、オール・ジャパンの体制で、何ができるのか、何をすべきか、さらなる可能性をしっかりと検討してまいりたいと思います。

山内委員 単にお金が削れるということだけではなくて、もっと民間の人材も知恵も自由に使えるという意味で、このインソーシングをぜひやっていただきたいと思います。齋木さんも、前、会計課長時代にいろいろ歳出削減に努力されたのは十分承知しておりますので、経費の節減プラスアルファがあると思いますので、ぜひ力を入れていただきたいと思います。

 それから、広報文化外交の強化のためには、この有識者の提言、去年の七月の提言でも、特に文化庁あるいは文部科学省との連携が重要だというふうに指摘をされておりました。たまたま今、文化庁の長官は、外務省の、外交官出身の近藤さんがやられています。こういうタイミングで、ぜひ文化庁と交流基金あるいは外務省の連携というのをさらに深めていただきたい。

 特に、例えば日本語教育でいうと、海外の日本語教育は交流基金、国内の日本語教育は文化庁、そういうすみ分けがありますけれども、こういうすみ分けをもっと取っ払って、人もノウハウももっと双方向で行き来するような、そういう連携の体制が望ましいと思いますが、具体的に何か、外務省と文化庁あるいは文科省との連携、どのようになさっているんでしょうか、現状についてお尋ねします。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘されましたように、外務省と文化庁との連携は大変重要でございまして、まさにその重要性に鑑みて、文化外交に関する諸施策の効果的な推進と重複の排除を目的として、平成二十二年から、外務省と文化庁との間で定期的な連絡会議を立ち上げ、密接な連携を図ってきているところでございます。

 また、当省が所管をする独立行政法人でございます国際交流基金につきましても、文化庁とよく連携をするように指示を行っております。

 日本語教育の分野につきましても、特に文化庁との協力連携は重要だと考えております。具体的には、外務大臣のもとに、海外における日本語の普及促進に関する有識者懇談会を外務省は先般立ち上げたところでございますが、この懇談会には文化庁の担当の方にも御出席をいただいております。また、文化庁が日本語教育推進会議を主催しておられますけれども、この会議にも外務省の担当者が今度は出席をするということをしてございます。

 こういった形で、緊密な情報交換と協力連携のもとに、国の内外における日本語教育の普及が総合的に推進できるように、外務省と文化庁、それぞれの所掌に基づく役割分担はございますけれども、しっかりと協力しながら取り組んでいきたいと考えております。

山内委員 何となく思うのは、外務省でも日本語教育の有識者会議を持ち、文科省でも日本語教育の有識者会議を持ちと、それ自体無駄な気がしまして、できればこういうものを一緒にしていくというのが、本来、オール・ジャパンで日本語教育を考える上で重要じゃないかなと思いますが、指摘するにとどめて、以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

河井委員長 質問しないの。質問したらいいのに。

山内委員 では、せっかくだから、最後にコメントを。

齋木政府参考人 それでは、お答えを申し上げます。

 先ほど、役割分担と申し上げまして、外務省においては、外国における日本文化の紹介に関することと、外国における日本語の普及に関することというのを事務にいたしておりまして、その観点、問題意識から、懇談会を立ち上げて、いろいろな方に御議論をいただいているわけでございます。

 また、文部科学省、文化庁については、日本における外国人に対する日本語教育に関することという形で、設置法、組織令が規定されていると理解をしております。

 そういう中の役割分担はございますけれども、しかし、先生御指摘のとおり、どういう形で、無駄を排除しつつ、より効果的な、そして戦略的な日本語教育、そしてさらには文化交流を推進できるか、また考えてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

山内委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

河井委員長 これにて各案件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河井委員長 これより各案件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とジャージー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河井委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、租税に関する情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とガーンジー政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河井委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とポルトガル共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河井委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、租税に関する相互行政支援に関する条約及び租税に関する相互行政支援に関する条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河井委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河井委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とニュージーランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河井委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、旅券法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河井委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

河井委員長 ただいま議決いたしました旅券法の一部を改正する法律案に対し、岸信夫君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党、みんなの党、日本共産党及び生活の党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。山口壯君。

山口(壯)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表させていただいて、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    旅券法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  旅券が広く国民に普及している現状に鑑み、政府は、本法の施行にあたり、旅券の発行に係る手数料について、国民負担軽減の観点から、手数料減額を図るべく、事務の合理化等を含め、経費縮減に努めるべきである。

  右決議する。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

河井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河井委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣岸田文雄君。

岸田国務大臣 旅券法の一部を改正する法律案を可決いただきまして、まことにありがとうございました。外務省としましては、ただいまの附帯決議の御趣旨を踏まえつつ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

河井委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各案件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

河井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十五分散会


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