衆議院

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第2号 平成26年2月21日(金曜日)

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平成二十六年二月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺  周君

   理事 小熊 慎司君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    石原 宏高君

      河井 克行君    木原 誠二君

      黄川田仁志君    小林 鷹之君

      河野 太郎君    島田 佳和君

      鈴木 憲和君    武部  新君

      渡海紀三朗君    東郷 哲也君

      星野 剛士君    武藤 貴也君

      村井 英樹君    山田 賢司君

      小川 淳也君    玄葉光一郎君

      松本 剛明君    阪口 直人君

      村上 政俊君    岡本 三成君

      青柳陽一郎君    笠井  亮君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        岸  信夫君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   防衛大臣政務官      若宮 健嗣君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山崎 和之君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  武川 恵子君

   政府参考人

   (内閣法制局長官事務代理)

   (内閣法制次長)     横畠 裕介君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       香川 剛広君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新美  潤君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 柳  秀直君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大菅 岳史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 正木  靖君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        住田 孝之君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           東井 芳隆君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  徳地 秀士君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十一日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     村井 英樹君

  小林 鷹之君     武部  新君

同日

 辞任         補欠選任

  武部  新君     山田 賢司君

  村井 英樹君     石原 宏高君

同日

 辞任         補欠選任

  山田 賢司君     鈴木 憲和君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 憲和君     小林 鷹之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官香川剛広君、大臣官房審議官新美潤君、大臣官房審議官柳秀直君、大臣官房参事官下川眞樹太君、大臣官房参事官大菅岳史君、大臣官房参事官正木靖君、内閣官房内閣審議官山崎和之君、内閣審議官武川恵子君、内閣法制局長官事務代理・内閣法制次長横畠裕介君、資源エネルギー庁資源・燃料部長住田孝之君、国土交通省大臣官房審議官東井芳隆君、防衛省防衛政策局長徳地秀士君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原田義昭君。

原田(義)委員 自由民主党の原田義昭でございます。

 予算委員会の方も山を越しつつあり、それぞれの委員会の審議がいよいよ稼働し始めました。私は、先国会に引き続き、与党側の筆頭理事として務めさせていただきたいと思います。委員会審議、しっかり果たさせていただきますし、また、委員各位にはいろいろ御迷惑もかけようかと思いますけれども、どうぞよろしくお願いをいたします。

 また、岸田外務大臣におかれましては、安倍内閣の外交方針、さらにはせんだっての所信表明、国際情勢は極めて多難なときでありますけれども、骨太の決意を表明していただいたところであります。どうぞ、私ども議会もできるだけの応援をさせていただきたいと思いますので、自信と誇りを持って岸田外交を進めていただきたい、こういうふうに思っております。どうぞよろしくお願いをいたします。

 その上で、私、きょうは限られた時間をいただきましたので、何点か大臣に質問、ないし御意見をいただきたいな、こう思っております。

 資料を幾つか配っておりますけれども、資料二というのが、私の顔が載っていてちょっと手前みそでありますけれども、これは自民党の機関紙に載って、本件はやはり一番中身を説明しているんじゃないかと思うものですから、参考までに載せていただきました。

 実は、私は、自民党の資源エネルギー戦略調査会の東シナ海資源開発問題のPT、プロジェクトチーム座長を九カ月ほどさせていただいております。その関係で、資料一に戻りますけれども、実は、昨年の暮れ、十二月二十日に最終的な取りまとめを自民党として出させていただきました。対処方針という形で、それを政府の方にも提言させてもらったところであります。直ちに、外務大臣、経産大臣、さらには官邸の方にも御報告に行ったところであります。

 これについて、まずは、外務大臣、当局からいろいろ、その後の検討状況、これからの行動方針についてお聞きしたいと思いますけれども、その前に、ちょっと簡単に状況だけ報告しておきたいと思います。

 実は、この東シナ海というのは、まさに日本と中国が一番接した難しい海域でございます。それゆえに、大体二〇〇三、四年ごろから、やはりきちっとしたお互いの国の取り決めをしなきゃいけないということから、十年余にわたって交渉ないしは協議が進められているところでございます。

 ところが、外交当局はそういうことでこの間しっかり対応してきたようでありますけれども、私どもも政治の側からこれをずっとフォローはしておりましたけれども、正直言って、これは私の感想ですけれども、中国側は、私から言えば極めて不真面目である、こういうことでありますし、また、日本の側もそれを十分とがめられないままにだらだら十年が過ぎたというのが率直な私の印象でございます。

 もちろん、何回にもわたって協議は行われましたし、そして、後で議論されますけれども、二〇〇八年の六月に合意書ができました。これは、いろいろ難しい技術的なものがありますけれども、一言で言えば、たくさんの空白部分、はっきりしないところがあるので、これはいずれにしても緊密な協議をやろう、交渉をやろうということで決まったんですけれども、その後、二〇一〇年九月の例の尖閣諸島における漁船衝突事件で、なぜか中国側が怒り出しまして、それ以来、この協議は途絶えておるというのが現状でございます。それが、私どもからすれば、再三にわたって日本の方から協議しようということは言っているようでありますけれども、しかし、今のところはそれが一向に進んでいない、これが一つでございます。

 もちろん、技術的な問題も含めて、中間線をどうするかということ、そういうことについて多くの課題は残っております。ただ、私が気になっておりますのは、この問題、いつも、中国側が何か言ってきたときにはこちらが応ずる、さらには、例えば構築物やら油ガス田の煙が見え始めると、慌てて日本の側がそれに抗議をしたりというようなことが続いておりまして、要は、常に後攻めといいますか、何か言われたらやるというようなやり方ではだめであって、私はやはり、こういうときこそ、しっかりこちらから攻め入るぐらいのつもり、積極的に攻勢をかけるぐらいのことが必要だ、こう思っております。

 なぜなら、この地域は、要するに海底を中国側がどんどん資源開発をしておる、見えないところで。ですから、今はおとなしいようだけれども、何も起こっていないようだけれども、この間も海底資源をひそかに開発しているのではないか、いや、間違いなく開発しているに違いない。

 こんな状況でもあるものですから、今は、その後は比較的静かではありますけれども、私は、ここはしっかりと我が国の立場を向こう側に訴える。そのためには、まずは窓を開かないかぬ。首脳間の窓の開き方についてはいろいろありますけれども、少なくともこういう技術的な問題については、正面から早く協議しよう、交渉しよう、こういうことを言うべきではないか、こう思っております。

 今のようなことを前提にして、自民党の対処方針提言、これについて、中国に対してもこういうことを申し入れておりますし、また、国内措置として、事業者の問題、さらには海域の資源調査の問題、こういうことについて私どもが提言をしておるところでありまして、これについて外務大臣からお答えをいただきたい、こう思っております。

岸田国務大臣 まず、東シナ海の資源開発問題につきましては、日中双方とも、国際海洋法条約の関連規定に基づきまして、領海基線から二百海里までの排他的経済水域、また大陸棚に関する権原は有しているわけですが、その上で、日中間では、排他的経済水域あるいは大陸棚の境界が未画定であるこの東シナ海を平和、協力、友好の海にする、こうした方針で協力していくこと、こういった点で一致しているにもかかわらず、日中双方の権原が重複する海域において、現状、中国が一方的に開発を進めている。このことについては、遺憾なことであると認識をしております。

 そして、その中で、御紹介いただきました自民党の東シナ海資源開発PTによる提言ですが、政府としましても、このPTの提言につきましては、真摯に受けとめさせていただいております。

 今後の対応等におきましても、ぜひ、このPTの提言を踏まえつつ、政府全体として戦略的な観点からしっかり取り組んでいきたいと考えております。

原田(義)委員 今大臣から、これからしっかり取り組んでいくというお答えでありました。

 ただ、私どもは、この提言を見ていただいてもわかるように、かなり具体的な案件について、もう大体総論はわかった、これからはそれぞれについてもう少し個別の形で、具体的な形で主張しなきゃだめだというようなことで、まずは早急に協議を申し込むということについて強く申し上げておるところでありますが、大臣、これはどうでしょうか。

岸田国務大臣 まず、日中両国にとって、排他的経済水域そして大陸棚の境界が未画定である東シナ海を平和、協力、友好の海にしていくということで協力をしていく、このことは、日中双方にとって共通の利益であると認識をしております。

 中国側に対しましては、引き続き、一方的な開発が行われないようしっかり求めているところでありますし、何よりも、御指摘がありました、二〇〇八年六月の東シナ海資源開発に関する日中間の協力を定めた合意、これを早期に実施するよう、さまざまな機会を捉えて強く求めているところです。

 まずは、今現状、この二〇〇八年六月の合意の実施をしっかり求めていくわけですが、その後の対応につきましては、政府にもお示しいただきましたこの自民党PTの提言の内容等を踏まえながら、政府全体として戦略的観点から取り組んでいかなければならないと思っています。現状は、二〇〇八年六月の合意をしっかり求めること、これが基本線ですが、しかし、今後については、ぜひPTの提言も参考にさせていただきたいと考えています。

原田(義)委員 もう一つ、外務省には、国際海洋法裁判所や国際司法裁判所への訴え、こういうことも具体的に書いておるんですけれども、これについてお答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の自民党PTの提言につきましては、真摯に受けとめさせていただいています。

 そして、その中で具体的な提案をいただいているわけですが、具体的にそれについて今現状でお答えするということになりますと、今後の交渉にも影響を及ぼすことになりますので、今現在において具体的な対応策について触れることは控えさせていただきたいと思いますが、今後、中国の対応もしっかり見きわめながら、権原への影響ですとか、あるいは国際法との整合性ですとか、こういったことも念頭に考えていかなければならないとは思っております。

原田(義)委員 私どもが言わんとするところは、要するに、目に見える形で行動をしないと、なかなか難しい国ですから乗ってこない、そういう意味で、私どもは、より積極的な、目に見える行動をとっていただきたい、こういう趣旨でございます。

 では、次のテーマに移りますが、私、戦略的外交という言葉を時々聞きまして、私も使いたいと思いますけれども、安倍内閣はしっかり外交政策を今進めておられますけれども、実は、昨年十二月二十六日、安倍総理が靖国に参拝されました。これ自体は大きな議論を呼んでおりますけれども、私は、個人的な立場を言わせていただきますと、日本の政治家として、さらには日本国民として、これはもう当然のことであり、よくやってくれた、こういうふうに思っております。

 そういう観点から、あえて言うなら、これは中国、韓国、どういう立場でこの問題が出ておるかというと、やはり外交カードとしてうまく使われているというのが私の考えでありまして、それについては、きょうはそういう場ではありませんのであえて深めて議論しませんけれども、私は、今回の安倍総理の靖国訪問で驚いたのは、アメリカを含む第三国が反応を示したことであります。これは、七年前か、小泉総理が五回か六回、靖国神社に参拝しましたけれども、そういうことはありませんでした。そういう意味では、今回、新しい事態というふうに考えております。

 その上で、特に米国がこういう挙に出たというのは、私は二つあると思うんですね。一つは、何といっても米国が、今の東アジア情勢に対してやはり非常に心配をしておられる、こういうことだろうと思いますね。それからもう一つは、中国、韓国、この両国が、アメリカを含む第三国に、この問題について、やはりしっかりと事前の情報なり働きかけをしていたというふうに私は思うわけであります。これは私は特に証拠は持っておりませんけれども、しかし、考えてみれば、靖国参拝後の中国の動きを見れば、これはもう間違いなくそういうことがあったに違いない。

 きょうは資料を少し用意しておりますけれども、例えば王毅外務大臣が、諸外国、六十何カ国に対して電話をかけまくった、こういうことでございます。ちょっと度が過ぎているなという感じもいたしますけれども、これぐらい中国がこの問題について第三国に働きかけるというのは、やはり何か意図がなければならないし、そういうことを考えますと、諸外国が動くのも、これらの国の働きかけもあったというふうな感じがするんです。

 資料の三、四を見ていただきますと、関係の新聞記事や何やらを集めさせますと、こんなに厚くなりますよ。要するに、二月に入ってからも、この問題について、中国、韓国は反日宣伝をやっておるわけであります。度が越しているとも思います。

 それで、聞くところによりますと、外務大臣も外務省も、多少おくればせながらと私は思うけれども、しかし、それぞれについてしっかり反応、また反論をしていただいたというようなことも聞いております。

 そういう意味では、外務大臣のその側面における対処ぶりについてお話をいただきたい、こう思っております。

岸田国務大臣 まず、総理の靖国参拝につきましては、その真意、考え方について、総理自身が談話という形で公表しております。国のためにとうとい命をささげられた方々に尊崇の念を示すという国のリーダーとしての姿勢、あるいは不戦の誓いを行うための参拝であったということ等、談話という形で発表していますが、まず、こうした総理の参拝の真意は、しっかり国際社会に伝えていかなければならないと思っています。

 そして、何よりも外務大臣として強調しておかなければならないことは、我が国の外交政策あるいは歴史認識というものは全く変わっていないということ、そして、戦後六十九年にわたって、自由、民主主義あるいは法の支配、こうした価値観を大事にし、地域や国際社会の平和に貢献してきた、こうした我が国の平和国家としての歩みは全く変わりませんし、今後も変わらないという点、こういった点につきまして、しっかり説明をしていかなければならないと思っています。

 例えば、総理の談話につきましても、英語、中国語、韓国語を初め八つの言語に翻訳をしまして、百二十カ国、六国際機関に対しまして、こうした談話を送付し、説明を行いました。また、各国におきましても、主要なメディアに対しまして、こうした我が国の考え方、そして我が国の姿勢につきましてしっかりと説明をし、また、時によっては反論を行う等、こういった努力を続けております。

 こうした努力を行うことによって、我が国の外交姿勢、歴史認識についてしっかり説明を行い、そして何よりも、このことが政治問題化あるいは外交問題化しないように努めるというのが、外務大臣として、あるいは外務省としての役割であると認識をしております。

 ぜひ、今後とも、この問題につきましてしっかりと説明を続けていきたいと思っておりますし、我が国の平和国家としての歩み、考え方、こんなことについてもしっかり理解がいただけるように努力をしていきたいと考えています。

原田(義)委員 そういう意味では、もちろん、目には目をとか歯には歯をというような形ではなくて、しかし、やはり日本の基本的な考えをしっかりとまた相手方に、むしろ第三者に届けていただきたい、こう思っております。

 その関連で、よく広報予算というのがございます。それについては、私は、絶対的に不足しているというような認識を今まで持っておりますけれども、しかし、現状どうなっているか、これについてお聞きをしたいと思っております。まず、外務省も持っておられますし、政府全体としても持っておられますから、その辺、御説明いただきたいと思います。

石原大臣政務官 先生にお答え申し上げます。

 御指摘のとおり、世界各国が対外的な働きかけを強化している中で、対日理解の向上に向けた国際広報の強化は、外務省だけではなくて、内閣官房を初めとする関係府省庁の重要なテーマというふうに考えております。

 平成二十六年度の予算の政府原案では、外務省の国際広報に関する予算を、増額を計上しているところであります。二十五年度が約八億五千万に対して十二億ということで、三億五千万上積みをして対外広報に努める所存でございます。

原田(義)委員 内閣府からも御報告いただきたいと思います。

武川政府参考人 御指摘のとおり、昨今、世界の各国が対外的な働きかけを強化しておりますので、政府一体となった国際広報の展開が重要と思っております。

 平成二十五年度の内閣府の国際広報予算では、こうした観点から、新規に五億円を積み増しいたしまして、計八・五億円を計上し、さらに補正予算で八・一億円追加していただいております。また、二十六年度におきましては、内閣府の国際広報予算として十八億円を計上して、対外発信の強化に努めているところでございます。

 今後とも、外務省と連携し、また、官邸を司令塔とした国際広報を戦略的に行うよう努めてまいります。

原田(義)委員 今、いわゆる広報の予算を紹介していただきましたけれども、国際政治、国際社会の中で、当然、政府から出てくる予算だけで物事が処理されているわけではありません。

 ここに私、資料五と六とお配りをしておりますけれども、では、先ほどの中国、韓国がどれぐらいの広報活動、いや、私は、広報と情報戦略というのは似て非なるものだと実は思っておりまして、今、広報を説明されましたけれども、この二カ国の抜き刷りをちょっと出してみました。

 これは実は、外務省に、それぞれの国が国際戦略の中でどれぐらい情報活動をやっているかと調べましたら、それぞれの国に十四、五ページずつの資料が出てきました。その一ページずつを出したんですけれども、これを見ると、本当にすさまじい活動をしているということが見てとれるわけであります。

 一つ、資料五の方の、「中国独自の主張に基づく宣伝活動」と書いていますけれども、どういうことをやっているか。これは、米国において、シンクタンク交流を通じた発信の強化、議会工作としての米ロビーイング事務所との契約、CCTVアメリカ開局、それから、孔子学院という言葉がございますけれども、これは有名な昔からのあれですけれども、世界に約九百拠点、これはいろいろ、文化施設ではありますけれども、中国語を教え、またその地域を学習する、ただ、実際には、やはり国のそういう情報をしっかりその国に普及する、こういうことらしいんですけれども、これもその一端でございます。

 時間がありませんが、資料六、「韓国による情報発信」、これを見ていただきましても、政府のみならず、地方自治体、民間団体等々、それから、司法府、裁判所も、私から見ればやはり動員されているなという感じもしないではありません。さらには、政府関係機関、シンクタンクといって、同じようなことが書いてありますが、世宗学堂という、この真ん中辺に書いております。これは、海外拠点に、今、四十四カ国に九十カ所といった数字があります。実はこれは、先ほどの孔子学院をまねたというか、それを学んで、韓国が今、世界各国に普及しているということのようであります。云々云々で、これぐらいの意図的な戦略的情報活動をやっておるということ。これはほんの一部であります。

 先ほど、日本の外務省、内閣府の広報予算を教えていただきましたけれども、私は、これは比較のしようがないけれども、はるかに十分ではない、こういうふうに思っております。

 割かしクオリティーペーパーで「選択」という雑誌がありますけれども、その中に、韓国や中国は米国内でのロビー活動では今や完全に日本を圧倒している、日本はどこでこんなに差をつけられたんだろうかと。さらには、日本は甚だしい周回おくれだ、運動会で一周おくれておる、ワシントンでの日本の存在感、外交力はどんどん希薄になっていると、非常に危機感を持ってこの論文は書かれておるわけであります。みんな何となく感じていることだと思うんですけれどもね。

 それで、最近にどう直接結びつくかはわかりませんけれども、今、よくアメリカで言われますけれども、慰安婦像があちこち、何カ所かに既に建てられておる、それから、日本海の呼称問題で、ついにバージニア州では州議会だかでこれが通過した、こういうようなことになりました。これは恐らく、我々が気がつかないところでしっかり外交活動、情報活動をこれらの国がやっている、その結果がこういう形になっているのではないかな、こう思うわけであります。

 実は、日本海呼称の問題を今申し上げましたけれども、私、六、七年前にどこかの委員会の視察旅行でヨーロッパに行ったときに、そのときに実はこの問題が大きく出ていましたよ。そのときに、私らは手分けして、少なくともイタリアとかポーランドとか、何カ国かに向かって、これは大変な話だということを申し上げました。そうしたら、それぞれの国が、それは日本の言うのがもっともだ、こういうことを言っておったものですから、私は、個人的にそういう体験があったところに、せんだってバージニア州がそれを州議会で決めたということに、本当にびっくりしておるところであります。

 時間が余りありませんので、私が言わんとするところは、外交においても、いわゆる広報、正しいと思ったことを透明性のもとで世の中に伝えるということも大事でありますけれども、情報戦略というか情報発信というのは、やはりもう少し戦略的でなければならないなというのが私の意見でございます。

 たまさか戦略という言葉を少し勉強してきましたら、戦略というのは、特定の目標を達成するために長期的な視野と複合的思考でもって力や資源を総合的に運用する技術であり科学である、広辞林的にこういう言葉が載っていました。戦略というのはいろいろなところで使われます。これは、政治ではもちろんでありますけれども、会社の経営やら学校の経営、全てにこの戦略という言葉は出てくるわけであります。

 この言葉自身は軍事用語であるようでありまして、古くは孫子の兵法からこういう問題は出てきたし、近世では、マキャベリが、軍事思想の祖と呼ばれているんですけれども、君主論を書いたイタリアの十五、六世紀の学者であります。そのマキャベリの理論を一番勉強して、それを実戦に役立たせたというのがナポレオン一世だそうですよ。それをしっかり勉強して、実際の国の統一戦争に使った。彼自身は戦略を、大戦術、こういうような文章で語っておるわけであります。

 また、そのナポレオン一世のさまを学問的にフォローしたのが、カール・フォン・クラウゼビッツ。彼は、一八三一年、「戦争論」の中で、要するに、戦術とか戦闘だけでなくて、戦略をしっかり立てるということがいかに大事なことか、クラウゼビッツ、これはもう戦争学の一番の泰斗でありますけれども、こういうことを言ったということであります。

 ちなみに、今、「軍師官兵衛」というのがNHKで出ております。私どもの福岡県も非常に大事なところでありまして、軍師官兵衛はどちらかというと戦略家と言われておりますけれども、彼自身は戦場における立派な将軍でございましたし、あわせて、三人の将軍にまみえて、戦略家としての名前を残したわけであります。

 いずれにしましても、一定の目標、すなわち、国益を守るためには、諸外国としっかり分け合うためには、やはり真面目な手段、またちゃんとした外交、しかしその裏には、相当総合的な、また複合的な戦略がなければならない、こんなことを感ずるところでございます。

 言いたいこと、十分ではありませんけれども、戦略、ストラテジー、ストラテジックな外交をぜひまた外務大臣に実践していただきたい、こう思っております。

 時間がなくなりましたので、今度、いよいよオバマ大統領を日本にお迎えすることになりました。これは極めて大事なエポックだと思います。このオバマ大統領の訪日に当たって、当然のことながら、総理また外務大臣、いろいろな思いをめぐらせながら、これからの日米外交また国際政治に臨んでおられると思いますので、その辺のことをお聞かせいただきたい、こう思っております。

岸田国務大臣 御指摘のオバマ米国大統領の訪日につきましては、四月下旬に予定をされております。

 その際に行われる首脳会談等におきましては、日米の二国間関係のみならず、アジア太平洋地域の地域情勢ですとか、さらには中東あるいはシリア等におけるグローバルな課題に対する日米協力、対応、こういったことも含めて幅広い議論が行われるものと想像されます。

 先日、七日の日ですか、私もワシントンに行かせていただきまして、日米外相会談を行わせていただきました。改めて日米同盟が強固なものであるという点を確認してきたわけですが、その際も、オバマ大統領の訪日成功に向けてしっかりと協力をしていくということを確認した次第でありますし、両首脳で力強い日米同盟を確認して、さらなる協力を打ち出していきたいという考えも、私の方から伝えさせていただきました。

 ぜひ、こうしたオバマ大統領の訪日等を通じましても、我が国の外交政策の基軸であります日米同盟が揺るぎないものであるという点をしっかりと確認する貴重な機会にしていきたいと考えております。

原田(義)委員 今大臣から決意を表明されましたけれども、日本は今、非常に大事なところに来ております。安倍政権にとって、ぜひとも外交の面からより世の中を守り立てていただきたいな、こう思います。

 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、上田勇君。

上田委員 おはようございます。公明党の上田勇でございます。

 今回、通常国会、事実上初めての質疑の時間となりまして、限られた時間でありますが、岸田外務大臣ほか外務省の皆様に質問させていただきたいと考えております。

 まず初めに、岸田大臣に、先般の訪米、そしてその際の日米外相会談等の成果についてお伺いをしたいというふうに思います。

 最近、重立ったマスコミ、その一部の報道ぶりなどで、日米両国政府の関係が若干ぎくしゃくしているんじゃないかというようなことも危惧をされているわけであります。現在の我が国を取り巻く東アジアでの安全保障環境が非常に厳しさを増している中で、日米関係の重要性というのはますます大きくなってきている。そして、そうした中で大臣が訪米をし、ケリー国務長官、ライス国家安全保障担当大統領補佐官ら米政府の要人と会談したことは、非常にタイムリーな対応であったというふうに受けとめております。

 今回の訪米を通じて、日米両国関係、決して私は悪くなっていたというふうには思っておりませんけれども、さらに強化をすることができたのか、その辺の成果、御所見を伺いたいというふうに思います。

岸田国務大臣 今回、二月七日に訪米させていただきまして、今御紹介いただきましたように、ケリー国務長官、ライス大統領補佐官、あるいはヘーゲル国防長官、こうした米国側の関係者と会談をさせていただきました。改めて日米同盟が揺るぎないものであるという点を確認する大変よい機会になったと認識をしております。

 会談におきましては、日米両国間の関係のみならず、アジア太平洋地域における地域情勢、さらには中東和平等、グローバルな課題において日米が協力をしていること、日本の協力に対しましても謝意が示されるなど、さまざまな課題において日米の連携が進んでいることも確認させていただきましたし、また、ことしは、日米同盟強化という点においては、日米の防衛協力のガイドラインの見直しですとか、あるいは日米地位協定の環境補足協定の作成の議論ですとか、さまざまな課題が予定されています。こういった課題についても協力を確認する、こういった機会になりました。

 さらには、今回の日米外相会談等、米国政府との会談は、昨年末、我が国においてNSCがスタートをし、そしてNSS、国家安全保障戦略が作成された後初めての日米の外相会談等の会議となったということでありまして、改めて、国際協調主義に基づく我が国の積極的平和主義への取り組み、こういったものについても説明をするよい機会になったと考えております。

 そして、四月のオバマ大統領訪日に向けて、この成功に向けて協力をしていく、こういった点についても確認することができました。

 今申し上げましたようなさまざまな点を通じまして、日米同盟が揺るぎないものであるということを確認させていただきました。

 以上です。

上田委員 ありがとうございます。

 今大臣からもお話があったとおり、日米同盟、日米関係の強化というのは、今極めて重要なことだというふうに思っております。

 そして、今大臣の答弁の中にもあったんですが、日米外相会談では日米安保ガイドラインの見直しについても話し合われたというふうに報告を受けております。昨年十月の日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2において、見直しに着手することで合意をされたものでございます。本年末までにこの小委員会で作業を完了させるという方針が打ち出されているというふうに承知をしております。

 今後、どういう段取りで、途中経過、どういう手順を踏んでいくのか、そういったことも含めて、スケジュール感も御説明いただきたいというふうに思いますし、また、現在、議論の進捗状況についても御説明をいただければというふうに思います。

岸田国務大臣 御指摘の日米の防衛協力に関するガイドラインの見直しにつきましては、昨年十月の日米2プラス2の際に、見直しを行うということで一致をし、本年末までにこの見直し作業を完了させるべく検討を進めている、こうした状況にあります。

 このガイドラインにつきましては、現行のガイドライン、策定から既に十六年が経過しています。その間、国際情勢、そして特にアジア太平洋地域の情勢は大きく変化をしています。こうした変化にしっかり対応していかなければならないという問題意識が背景にあるわけですし、また、国際社会においては、サイバーですとか宇宙ですとか、新しい脅威も登場し、大きな課題となっております。

 こうした状況の変化に対応するべく、この日米の協力、防衛努力につきましても、まずは我が国自身の防衛努力を向上させていくことを考えなければいけませんが、あわせて、米国との協力も強化していかなければいけない、こういった考え方に基づいてガイドラインの見直しを進めていくということでございます。

 ぜひ、先ほど申し上げましたように、本年末までに幅広い議論を進めていきたいと考えております。

上田委員 まさに我が国を取り巻く安全保障の環境というのが、前回のガイドライン策定時から十六年経過をしているということでありますけれども、この間、本当にもう劇的に変化をしたのは間違いがないというふうに思います。日本としてどういう対応をするのか、また、日米同盟、どういうふうに機能させていくのか、これから非常に重要な論議になってくるんだというふうに思っております。

 何か部分部分だけが表に出て報道されると、全体のイメージというのがなかなかわかりにくい面もございます。そういう意味では、非常に機微な内容でありますので、なかなか公にすることができる部分というのは限られているものもあるというのは承知をしておりますけれども、ひとつ、国民に向けて、また世界に向けても、そういう発信もぜひお願いをしたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いをいたします。

 それで、外相会談において、もう一点ちょっとお伺いをいたしますが、ケリー長官から、日韓関係の改善を重視しているという旨の発言があったものと報告を受けております。

 北朝鮮情勢が依然として緊迫をし続けている中で、アメリカとしては、日本と韓国、これはいずれもアメリカにとっては同盟国でありますので、そのそれぞれとの連携強化というのが非常に重要である、そのためには、同じ同盟国であります日本と韓国、その両国間の関係改善を重視するということは、これはもう当然の考えなんだというふうに思います。

 現在の状況というのは、残念ながら、日韓関係、課題が山積をしております。これは私も専ら韓国政府の過剰なまでの対日批判が主な原因であるということは考えておりますが、しかしながら、東アジア全体の安全保障情勢を考えたときに、我が国としても、今の韓国政府の対応の問題ということはあるにしても、日韓関係の改善というのは重要な課題であるということはもうこれは間違いがないことだろうというふうに考えています。

 この会談において、岸田大臣は、日韓関係について、引き続き実利に基づく協力案件を積み上げて関係を改善したいという趣旨で御発言をしたというふうに報告を受けております。

 確かに、日本と韓国との間で、新たな実質的な問題というのはそんなにないんだろうというふうに思います。お互いが、特に韓国側の認識の問題であって、実質的に何か障害があるようなことがあるかといえば、それほどないんだろうというふうに考えております。その意味で、大臣から、具体的、実質的な話、実利の話を積み上げていこうじゃないかという姿勢は、私も大変よく理解をするものでございます。大臣の趣旨については、そういう意味では非常に賛成をいたします。

 しかし、とはいっても、糸口をどうやって見つけていくのかとなると、なかなか難しいというのも現実なんだろう。どんどんどんどんエスカレートするばかりという面も事実であります。

 そこで、実利に基づく協力案件を積み上げていくという方針でありますが、どういう分野、案件が念頭にあるのか、また、一つずつ積み上げていくという戦略はおありなのか、大臣のお考えを伺いたいというふうに思います。

岸田国務大臣 先日の日米外相会談におきましても、アジア太平洋地域の地域情勢における意見交換の中で、例えば北朝鮮情勢を考えましても、やはり日米韓、この三国の連携が重要であるという点において日米双方で一致をしたということでありました。

 そして、言うまでもなく、韓国は我が国にとりまして基本的なさまざまな価値を共有する大切な隣国であると認識をしております。日本と韓国、今や年間五百五十万人の人が行き来をする大変深い関係が存在いたします。ぜひ、未来志向で、大局的な観点から、この二国間関係をしっかり進めていかなければいけない、これは強く感じているところです。

 そして、日本と韓国、難しい問題が現状存在いたします。しかし、その中でこの関係を進めていくということであるならば、今御紹介いただきましたように、さまざまな実務的な協力を積み重ねていくことが重要だ、こういったことを私も申し上げたわけです。

 テーマとしましては、安全保障もあれば、あるいは文化交流もあります。そして、何よりも経済もあります。それ以外にも、環境ですとか防災ですとか、さまざまな課題があると思います。こうした具体的な課題において実務的な協力を積み重ねていくことがまず重要だと思っておりますし、また、これは政府間だけではなくして、民間交流等、さまざまなレベルでの交流を積み重ねることが大事ではないかと思っています。

 そして、こうした積み重ねを行いながら、やはり高い政治のレベルでの対話につなげていきたいと考えています。個別の問題があるからこうした高い政治のレベルでの対話ができないというのはいかがなものであるかと思っていますし、逆に、個別の問題があるからこそこうした政治対話が重要だという考え方、これからもしっかりと伝えていきたいと考えておりますし、ぜひ、韓国側にもこうした考え方を受け入れていただきたいと考えています。

上田委員 ありがとうございます。

 次に、我が国のODAについて若干御質問をさせていただきます。

 先日、二〇一三年版の政府開発援助、ODA白書を拝見させていただきました。その中で、いろいろと我が国が開発途上国の支援に貢献をしている内容が大変多く、また詳しく紹介をされておりまして、我が国のODAの果たしている意義もよくわかる内容になっているというふうに考えております。

 その中で、一点、ODA白書のデータの中に、主要DAC加盟国のODAの分野別配分のデータが掲載をされておりまして、二〇一一年のデータでありますが、それを見ると、我が国は、経済インフラ、これは輸送や電力、通信などの分野でありますけれども、このシェアが他のDAC諸国に比べると際立って高くなっております。経済インフラの分野のシェアが四〇・六%で、DAC平均の一五%、それを大きく上回っておりますし、また、主要欧米諸国のいずれよりも高い数字になっています。我が国のODAのあり方としては、ずっと続いている傾向だというふうにも承知をしております。

 基礎的なインフラが整備されて初めて産業が育つというのは当然のことでありまして、まずは経済インフラを整備し、その上でその国に合った自律的な産業の発展を促す、そういう我が国の方針、それが長期的な経済成長につながるという考え方であります。こうした我が国の支援のあり方というのは、例えば東南アジア諸国などにおいては確かな成果を上げてきているものだというふうにも承知をしております。

 こういう経済インフラの整備、それに対する支援を重視する援助方針、その趣旨と、それについてどのように評価をされているのか、御所見を伺いたいというふうに思います。

大菅政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、従来より、開発途上国における貧困を削減し、開発の成果を持続的なものとするためにも、開発途上国の持続的な経済成長が不可欠であるという考え方をとってきております。

 ODA大綱におきましても、重点課題の一つとしまして持続的成長を掲げ、そのために、人づくりへの協力と並びまして、経済インフラの整備も重視するということとしております。

 輸送、通信、電力等の経済インフラの整備は、教育、保健等の社会インフラに比べまして、一件当たりの事業規模が大変大きいということもございまして、金額ベースで比較しますと、我が国の二国間ODAの約四〇%という大きな割合を占めているのが現状でございます。

 同時に、我が国としましては、人間の安全保障の観点から、開発途上国の人材育成、社会開発への支援も重視しております。

 こういった、両面バランスのとれた協力に努めてまいる所存でございます。

上田委員 ありがとうございます。

 私は、我が国のこういったODAの方針というのが、若干欧米の考え方と違う部分もありますけれども、非常に効果を上げてきているんだ、その点はぜひこれからも積極的にアピールをしていかなければいけない課題だというふうに考えております。

 最後になりますが、ODAの関係で、これは我が国に本部を置く数少ない国際機関の一つ、横浜に本部を置いているわけでありますけれども、国際熱帯木材機関、ITTOというのがあります。ITTOは、熱帯森林の適正な管理、木材や木製品の販売や取引、それから木材産業の開発などを目的とした、熱帯木材の消費国と生産国の両方、六十数カ国が加盟をする国際機関でありまして、地球温暖化対策や生物多様性保全のために熱帯雨林の保全が非常に注視をされている中で、重要な役割を担う機関だというふうに考えております。

 ITTOは、適正な規模での木材利用と資源の再生を通じた持続可能な森林経営に取り組んでおりまして、我が国はその重要性を認識し、ITTOの最大のドナーであり、また、アフリカのコンゴ盆地などで連携をしたプロジェクトも実施していると承知をしております。

 近年、ちょっと任意拠出金は減少しているということもありますけれども、ぜひITTOの目的、活動の重要性に鑑み、今後とも我が国から充実した支援を継続していくべきだというふうに考えておりますが、お考えをお聞かせいただければと思います。

石原大臣政務官 上田先生の御質問と重複してしまいますが、国際熱帯木材機関は、熱帯林の持続可能な経営の促進及び合法的に伐採された熱帯木材の貿易の発展を目的とした、横浜に本部を有する国際機関であります。

 その活動の重要性に鑑み、我が国はホスト国としてその運営に貢献してきたほか、熱帯木材生産国における各種プロジェクトなどへの最大拠出国として積極的な支援を実施しているところであります。

 今後も、ITTOの本部運営及び世界各地での活動にできる限り支援をしていくというふうに考えております。

上田委員 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 松本剛明でございます。

 大臣におかれても、海外出張その他、何かと御多用の中でありますが、委員会審議をよろしくお願いいたします。

 まず、安重根の記念館の問題を取り上げたいと思います。これは今、現状、どのようになっていて、我が国の対応としてどう考えておられるのか、伺いたいと思います。

岸田国務大臣 安重根の記念館の建設問題についてですが、本件につきましては、これまでも中国、韓国両国に対しまして我が国の懸念を累次伝えてきました。しかし、にもかかわらず、このたび安重根記念館が建設されたこと、このことについては残念でありますし、極めて遺憾なことだとまず認識をしております。

 安重根に関する立場、これは、我が国と韓国、中国は全く異なっております。前世紀の事件につきまして、韓国、中国、こうした国々が連携して一方的な評価に基づく主張を展開すること、これは、地域の平和や協力ということを考えましても、前向きに資するものではないと言わざるを得ないと考えております。

 この問題につきましては、我が国のこうした考え方をこれからもしっかり粘り強く説明をしていかなければならないと思います。こうした考え方を説明しながら、状況を確認し、そして適切な対応を考えていきたいと思っております。

松本(剛)委員 背景であるとか、考え方、今幾つかあるというお話がありましたし、中国、韓国側の考え方というものについてもお話があったかというふうに理解をします。

 ぜひ、どのような主張があったかということについても、私としては議論をしたいところでありますが、それ以上にというか、あわせてというか、手段として、人を殺害するという手段を肯定的に認めるかのような形になるということそのものについて、やはり我が国としても、関係諸国だけではなくて、諸外国も含めて、しっかりそのことを問題を提起すべきではないか。このことを手段として認めるかどうかということそのものは、現代においても普遍的に課題となるべきことでもあろうというふうにも思いますので、その点に絞ってでもしっかり申し上げていただきたいというふうに思っております。

 本件をきょう取り上げさせていただいたのも、幾つか理由があります。パーソナルな背景もないわけではないんですが、そのことではなく、やはり一つは、認められない既成事実というものにどう対応するのかということだと思います。

 古くは竹島の問題もしかりでありますし、昨年の中国の防空識別圏の問題もしかりであります。認められないことであるということは、我が国の立場もはっきりさせていると思いますが、他方で、その既成事実をどのように打破して変えていくことができるのか。

 私も、今ここで、率直に申し上げて、解を持ってお話をさせていただいているわけではありませんけれども、他方では、やはり、我が国の立場を明らかにしているということだけでは、認められない既成事実が変わってこなかったということを受けとめて、どのような対応をするのかということではないかと思います。

 先ほど原田先生から戦略というお話がありました。戦略という言葉も、さまざま使われる中で非常に難しい面があろうかと思いますが、戦略の一つの目的は、しっかり勝ち切るのにはどうしたらいいのかということではないかと思います。

 第二次世界大戦においても、イギリスのチャーチルは、やはり、どのように米国と連携をしていくのかということの枠組みをつくることによって、その戦いに勝ち切るということに成功した一つの大きな戦略を立てたのではないかというふうに思います。

 ただ、他方で、勝つということと国益にかなうということと正しいということを、これをどのように整理していくのかという課題もあろうかというふうに思います。

 私も少しいろいろと学んでみると、当時のイギリスで、少数派ではありますが、リデル・ハートさんという、チャーチルが第二次世界大戦でドイツと戦うことには反対をし続けた著名な戦略家の方がおられます。

 この方が言われているポイントは、これから戦いを起こせば、当時は第一次と言っていたかどうかわかりませんが、恐らく、その前の世界大戦よりもさらに激烈な戦争になり、結果として、イギリスは植民地をほとんど失うことになり、大英帝国でなくなるということが本当に我が国の国益にかなうのかと。

 もう一つは、ヨーロッパで当時勢力を持っているドイツをもし勝ち切って壊滅させることができたとしても、その東側にある国が、ソ連のことを指していると思いますが、真空地帯に進入をしてくれば、やはり新たな脅威が起こることになって、本当に国益にかなうのかと。

 チャーチルがドイツと戦う前に、既にそういう指摘をしている戦略家がおられます。

 私は、正しいという意味では、ナチス・ドイツを残さなかったというチャーチルの判断はやはり正しかったと思います。しかし、国益という意味では、このリデル・ハートの指摘は結果としては全て正鵠を射ているということになってくるわけで、我々も、ここから国益と正しいということをどう整理しながらいくのかということが出てくるかと思います。

 ただ、私から見れば、先ほど既成事実のことで申し上げた三点は、正しく、なおかつ我が国の国益にもかなうことでもあるはずでありますから、ぜひ、正しさをしっかり伝えると同時に、そして、あえてきょうここで取り上げさせていただいたのも、先ほど申し上げたことは、これからも折あるごとにここで取り上げていきたいと思っております。

 少なくとも私どもが議会でできることは、我が国としてもこのことを取り上げ続けるべきであって、なおかつ、この認められない既成事実の問題が解消されるべきであるという、我が国の国民を代表する議会としての考えであるということを申し上げ続けるべきであろう、このように思いましたので、あえてここで取り上げさせていただきました。ぜひ、そういった視点から御対応を願いたいと思います。

 なお、きょうその話をするつもりはなかったんですが、原田理事がおっしゃったので。

 黒田官兵衛は、ちなみに、生まれたのは私のところでありまして、活動したのは、私やそこにおられる渡海元文科大臣の播州で若くして活躍をして、二代目になって、福岡に領地を得て、福岡に行かれたということであります。やはり、彼も戦略家という意味で評価を高めているのは、あらゆる戦いにいかにして勝ち切るかということを貫徹ができたということでの評価だろうというふうに思います。

 遺憾の意を表明しているということにとどめず、また、今ここで御開陳をいただけるものではないと思いますし、お考えもいただいているかとは思いますが、申し上げた既成事実について、しっかり最後まで、いわば勝ち切るためにどのような戦略を立てるかということに御尽力をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 大変貴重な御指摘をいただきまして、ありがとうございます。

 立場の違う既成事実に対してどう対応するかということですが、まずは基本的には、こうした問題につきましては毅然と、そして粘り強く対応していかなければならないと思います。

 そして、やはり国際社会の理解を得るという点から、戦略的に国際広報戦略を進めていかなければならない。先ほど来のこの質疑の中でも御指摘いただいたとおりだと思います。

 そして、安重根の記念館設立問題等を見ますときに、やはり一つ考えなければならないこととしては、中国、韓国、こうした大切な隣国との間において、現状、高い政治のレベルにおける対話が実現できていないという点ではないかと思っています。

 こうした具体的な個別の問題についても、高い政治のレベルでの対話が行われ、その中で両国が率直に話を行い、どうコントロールしていくのか、こういったことを話し合う姿勢が大事なのではないかと思います。

 そういった意味からも、個別の問題があるから話し合わないというのではなくして、個別の問題があるからこそ、両国のリーダーを初め高い政治のレベルでの対話を大切にしていかなければならない、このように考えます。

 ぜひ、こうしたさまざまな取り組みを通じまして、我が国の考え方に対する理解を得るべく努力をしていきたいと考えます。

松本(剛)委員 きょうはこの件についてはこれ以上申し上げませんが、今申し上げたように、幾つか外務省の御説明なども拝見をしていく中で、やはり、中韓両国とも、現代において、少なくとも政治的手段として人を殺傷するということは絶対に認められないということでは立場は一致をしなければいけないはずでありますし、そういった点にも一つの視点を置いていただいて、しっかり御対応いただきたいと思っております。

 次の課題に移りたいと思いますが、今、対応する中でも国際社会というお話がありました。G20という枠組みが新たに登場してまいりました。

 なかなかG20で物を決め切れるかどうかという指摘もあるようでありますし、必ずしもG20がかつてのG7、G8のような機能にまで至るかどうかということについてはまだこれからも議論があるだろうと思いますが、ある種、国際社会での有力なプレーヤーが集まる一つの大きな場所になっていることは事実だというふうに思います。

 このG20に対して現政権がどう対応されておられるのかということで、地図をつくってみました。お手元にお配りをさせていただきました。

 いろいろ色がついています。総理と外務大臣が両方行かれた国、総理だけが行かれた国、外務大臣だけが行かれた国、どちらも行かれていない国ということで、どちらも行かれていない国が黄色で塗られていることになります。中韓もその中に入ってくるわけでありますが、アフリカ、メキシコなども残ってきております。

 きょうお伺いをしたかったのは、過日の大臣の委員会冒頭での御報告で触れられた国、直接国名を挙げられた国も、G20の中では米、ロ、豪、中、韓、インド、六カ国ではないかと思います、ASEAN諸国という表現によってあれかと思いますけれども。

 このあたりを、G20というものを意識して総理ないしは大臣の訪問先というのをお考えなのか、他の閣僚もそうだと思いますが。また、これから先、こういったものを意識した形でお進めいただくことになるのかどうかということをちょっとお伺いしたいと思います。

 あわせて、恐らく今から、五月のゴールデンウイーク時期に各閣僚がどこの外国へ行くかということの御検討を各省で始めておられる時期ではないかというふうに思います。有意義な海外出張はぜひしていただきたいと私も思いますが、そのときに、各省の考えだけで決めるのではなく、ぜひ外務大臣のところで、政府全体としてどこに誰が行くべきなのかということをお考えいただきたいと思います。

 今手元に資料がありませんが、私の記憶では、昨年の五月に十二人ほどの閣僚が海外に行かれているのではないかと思いますが、うち六人ほどはアメリカ合衆国に行かれていたように記憶をいたしております。

 縦割りの部分がありますので、なかなか一朝一夕にはいかないと思いますが、ここでも申し上げたかったのは、たまたま今回は、オリンピックのこともあって、アルゼンチンに総理も外務大臣も行かれておられます。また、ブラジルは、恐らく意識して外務大臣もお運びをいただいたのではないかと思って、私はその方向性はぜひお進めをいただきたいと思っておりますが、やはりアフリカであるとか、アジアでもまだまだ課題はあるというふうに思いますので、G20を意識した今後の外交戦略を立てていただきたいという要請と、喫緊の課題としては、今後の海外出張が集中する時期は、ぜひ政府全体としての戦略を練っていただきたい、この要請について御答弁をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、G20につきましては、国際経済協調の第一のフォーラムという位置づけ、評価を近年得ています。こうしたG20、これはしっかりと重視していかなければいけない、これは御指摘のとおりだと思っています。

 G20につきましては、これは参加国が多数になる、そしてメンバーの多様性というようなことから、合意形成が容易ではない、こういった指摘もありますが、しかし、G20に参加しているこうした主要先進国あるいは新興国、こういった国々が集まって、特に世界経済あるいは金融、こういった問題について議論をするということは大変有意義なことだと認識をしております。

 そういった観点から、ぜひG20、今後も重視をしていきたいと考えております。

 そして、G20の訪問実績について、こうした地図もおつけいただきました。改めて、参考にさせていただいております。

 ただ、恐縮ですが、一つ申し上げますと、メキシコは昨年五月に、私、訪問しておりますので、行っております。それから、インドネシアは総理も私も行っておりますので、済みません、ちょっと余計なことかもしれませんが、つけ加えさせていただきます。

 このように、安倍総理と私で既に、G20のうち、たしか十四カ国訪問をさせていただいていると認識をしておりますが、ぜひ、こうしたG20の存在をまずしっかりと重視し、そしてG20加盟国との関係をしっかりと深めることによって、さまざまな成果を上げていきたいと思っております。

 そして、その際に、五月の閣僚の各国訪問につきましては、ぜひ、外務省としましても、官邸とよく相談をさせていただきまして、内閣全体の閣僚の海外訪問、戦略的に進めるよう努力をしていかなければならないと考えます。

松本(剛)委員 地図については大変申しわけありません。訂正をして、御活用いただきたいと思います。

 もう一つだけお願いは、G20の中のインドとブラジルと南アフリカでIBSAという枠組みで連携をしておる、もしくは三カ国で集まる機会をつくっているというふうに承知をしております。

 三カ国で集まっている機会に我々が直接入るわけではありませんが、やはりそことの対話というのもこれまでも検討をしてきたというふうに思いますので、ぜひ、そういったこれまでの幾つかの積み重ねも活用していただいて、お進めをいただきたいと思います。

 次のテーマに移りたいと思います。

 積極的平和主義という言葉が一つのテーマになってきておりますが、最初に私がお聞きをしたときは積極的平和主義という言葉でありましたが、先日の大臣の御報告でも、国際協調主義に基づく平和主義という言葉になっておられました。

 私もちょっと気になって、全てを網羅したわけではありませんが、総理と大臣の公式な御発言を幾つかピックアップさせていただきました。

 総理の御発言も、昨年、積極的平和主義という言葉をお使いになった九月からことしの二月まで、三十件近くの件数の中で、総理は、国際協調主義に基づくとおっしゃっているのは四、五回でございます。他方、大臣もそれ以上の機会でおっしゃっておられますが、大臣は、やはりかなり、半分近く、国際協調主義に基づくという表現が入っているケースが多い。ただ、総理も、ことしに入ってということに限って申し上げると、ほとんど国際協調主義に基づくという形容詞がついてきております。

 やはり、国際協調主義に基づくという言葉をつけるのかつけないのかによっては、受けとめは少なくとも相当変わってくると思います。また、もともと総理がおっしゃった九月の時点のお話は、我が国が出ていって何か平和にしますよという、かなり我が国の主語が強い言葉でありましたが、国際協調主義に基づくという形になれば、国際社会とともに歩むという姿勢がかなりはっきり見えてくるというふうに思います。

 今ここでおっしゃっていただけることがどのぐらいあるのかわかりませんが、両者に違いはあるのか、ことしに入ってふえてきたということはどういったことだと受けとめればいいのかということを、もし御見解をいただけるのであれば、伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、先ほどの発言の中で、IBSAとの関係、インド、ブラジル、そして南アフリカ、こういった国々との対話についてお触れをいただきましたが、こうしたIBSAとの対話、委員が外務大臣のときにも大変積極的に取り組まれたと承知をしております。

 こうした新興国の国際社会における影響力の増大等を考えますときに、こうしたIBSA諸国あるいは新興国との対話は大変重要だと認識をしております。引き続き努力をしていきたいと考えております。

 そして、ただいま積極的平和主義について御質問いただきました。国際協調主義がついているついていない、こういった違いについて御指摘をいただきました。

 まずもって、積極的平和主義という考え方そのものがどういった発想から出てきたのかということを申し上げますと、近年、国際社会、特にアジア太平洋地域の戦略環境は大変厳しい状況になっています。そして、あわせて、サイバーですとか宇宙ですとか、国境を越えた新しい脅威が指摘をされています。

 こういった時代ですので、どの国も、一国のみではそのみずからの国の平和と安定を守ることができない、やはり地域あるいは国際社会全体の平和と安定を確保することによってみずからの国の平和と安定を守っていく、こういった発想を持たなければならない、こういった現状があり、そして考え方があるわけです。

 そして、この考え方に基づいて、我が国としては、ぜひ、今まで以上に、より積極的に国際社会あるいは地域の平和と安定に貢献していこう、こういった考え方に至るわけです。そして、それをしっかりと表現するということから、積極的平和主義という言葉を国家安全保障戦略等の中にも明記させていただいている、こういったことであります。

 ですから、そういった背景ですとか考え方に基づいて出てきたこの積極的平和主義という言葉ですから、積極的平和主義そのものが国際協調主義に基づく理念であるということであります。

 ですから、国際協調主義という言葉がつくつかないにかかわらず、積極的平和主義とは、今申し上げた性質の中身の言葉でありますし、ついてもつかなくても基本的には全く同じであるということ、これは申し上げさせていただきたいと存じます。

松本(剛)委員 そうおっしゃるだろうと思っておりましたが、今大臣のおっしゃった言葉の中でも、従来から我が国がやってきた平和に貢献をする活動をさらに深めていくということ、これを積極的にしていくんだというお話であったかというふうに私も受けとめます。ただ、総理の御発言は、往々にして、従来とは違って、転換をするんだというようなニュアンスで聞き取れるようなときもあります。

 きょうはもうこれ以上お聞きをしませんし、お答えを求めても同じだと思いますので、私の感想だけ申し上げますが、大臣を初め御尽力をいただいて、ことしに入ってから国際協調主義に基づくがふえてきたのも、あるべき姿にしっかり御議論をいただいて持ってきておられるのではないかと思いますので、私はこの点では外務大臣の応援団だと思っていただいて、していただきたいと思っております。

 政権の中での御議論についてここで開陳をしてくれと申し上げるつもりもありませんし、必要な御議論はしていただいて、あるべき方向に向けていただけたらということも、あわせて申し上げたいと思います。

 きょうはちょっと議論する時間がありませんが、もう一つは、積極的平和主義に絡めて、総理も人間の安全保障のことを時々おっしゃることがありますが、これはある意味で、先ほど申し上げた国益と正しいか正しくないかという中に、国際社会にある種の正しさを持ち込もうという概念で、私は大変これは進めるべきことだと思いますが、従来の主権国家と国益というものとは相克をするのか超克をするのかわかりませんが、大きなテーマになると思います。このことは、また次回、機会があれば議論させていただきたいと思います。

 最後に、限られた時間ですけれども、経済外交の推進体制ということで、一点お話をさせていただきたいと思います。

 前から、ぜひ大臣のもとで民間とも連携をする枠組みをつくっていただきたいということをお願いしておりました。ぜひその点はまた、どこまでお進めをいただいたのかですが、お進めをいただきたいと思います。

 きょうは、お手元に資料を配らせていただきましたが、経済外交をしていくに当たっては省庁間の連携というのが必要になってくるんですが、各省の連絡をとれるような会議を持とうということにいたしますと、どうしても内閣か内閣府のもとでないとなかなか集まれないという、ある種の霞が関のおきてとまでは言いませんが、慣行がありますが、その結果、今与党の中でも御議論されているようですが、膨大な本部やら会議体が内閣府に出てきたり、内閣官房で行われたりということになります。

 少し比喩的な表現ですが、幾つかの省庁が一対一対一のものは内閣官房で仕切るしかないかというふうにも思いますが、六対二対二のようなものでも、各省がかかわるなら、どこどこの役所に仕切られるのはかなわぬ、もうどっちかに持っていってくれ、こういう話に往々にしてなりがちなことがあるわけであります。

 これは、あえてちょっとお配りをさせていただいたのは、EPAの対処方針のためにタスクフォースというのをつくりまして、二回会議をさせていただきました。ポイントは、これだけの省庁が集まるのですが、外務省が主催をするという形をとらせていただきました。第一回と裏に第二回があります。

 実は、第一回は外務省だけでは開き切れなくて、参考の一のところに、内閣府副大臣が出席しますということで、内閣府の看板もかりる形ですが、これだけの役所を集めて議論をスタートいたしました。第二回は、主宰は高橋外務副大臣ということで、各省を集めて議論をさせていただきました。

 ただ、これは日付を見ていただくとおわかりいただけると思いますが、第一回は実は二〇一一年の三月十一日、しかも、これは午後二時からでありまして、二時四十六分に震災が発生をいたしております。再開ということで、四月にもう一度行われておりますけれども、それ以降、震災対応も含めて、残念ながら、立ち消えになってしまいました。

 各省においても、こういうことが行われたということそのものを、政務の皆さんにまでどこまで御報告をされているかわかりませんが、少なくとも一度実例はあります。

 TPPについては、今内閣官房で強力に御推進をいただいているというふうに私も理解をいたしますけれども、そのような経済連携も、数々の課題がある中で、ぜひ、何でも内閣へ持っていくということではなく、外務省が主導的に縦割りを超える体制をつくっていただきたいということで御提起をさせていただきました。

 なお、時間がなくなりました、きょうは国土交通省さんにも審議官においでをいただいて、今回、国土交通省さんの方から、交通・都市開発事業支援機構法というのを提出されております。これが成立をするとこの機構ができるということになると思いますが、実際には、この機構で経済外交を推進する場合には、特に外務省を初めとする関係省庁の連携がここでも必要になってくると思いますので、これについてもぜひそのようにしていただきたいと御要請を申し上げ、先ほどの省庁縦割りについての御所見をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

岸田国務大臣 まず、経済外交等の課題に対応するに当たって、政府として一体感を持って、一丸となって対応していく、こういったことは重要だと存じます。

 しかし、その際に、外務省としてどうこの議論をリードしていくかという御指摘かと思いますが、現状、例えばさまざまな経済連携協定の議論におきましても、首席交渉官を外務省から出す、こういった形で議論をリードしている、こうした現状もあります。

 ぜひ、今後とも、政府としての一体感はしっかりと守っていかなければならないと思いますが、テーマによってあるいは状況によって外務省がその中心となって役割を果たしていく、こういった考え方も大事なのではないか、この点につきましては御指摘のとおりだと存じます。

 ぜひ、しっかりと、現実的な、そして効果的な体制づくりについて今後とも検討していきたいと考えます。

松本(剛)委員 終わりますが、外務省にとどまらず、国務大臣としては、全ての省庁で、他の省庁にもまたがる案件について必ずしも内閣に全部持っていくのではなくて、きちっとやっていただきたいという趣旨も込めてお願いをさせていただきましたので、よろしくお願いします。

 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、小川淳也君。

小川委員 民主党の小川淳也でございます。

 岸田大臣、連日お疲れさまでございます。

 また、ちょっと質問に入ります前に、私自身、不徳をおわびしたいと思っておりまして、先日は、予算委員会での御対応、まことにありがとうございました。その場で、私自身、安倍政権の現在の姿勢、あるいはアメリカとの関係を含めた国際社会からの見られ方、これについて、一定の懸念あるいは世論の動向に対する危うさのようなものを感じていることは事実です。しかし、いかにも言葉の選択それから文脈の組み立てにおいて私の配慮が欠けており、場合によっては大臣にも不愉快な思いをおかけしたのではないかと思っております。

 これはたくさんのお叱り、御批判をいただいておりますので、この公の場をおかりして少し反省と謝罪を申し上げさせていただきたい。大変御迷惑をおかけいたしました。

 その上で、お尋ねをさせていただきたいと思います。

 ちょっと通告順が前後いたしますが、最近、日韓で局長級会議が行われたというふうにお聞きしております。この狙い、そして成果、そして、今後首脳会談に向けた展望を含めて、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

岸田国務大臣 日韓の局長級会談についての御質問ですが、外務省の伊原アジア大洋州局長、十八日から十九日にかけまして、在韓公館長会議に出席する、こういった目的でソウルに出張いたしました。そして、その機会に、十八日、李相徳外交部東北アジア局長との間で日韓関係をめぐるお互いの関心事項について幅広く率直な意見交換を行った次第であります。

 先ほど来、さまざまな質疑の中にも出ておりますように、日韓、この二つの国の間には難しい問題は存在いたしますが、大切な隣国であると我々は韓国のことを認識しておりますし、北朝鮮問題への対応を考えますときに、日米韓の連携は大変重要だと認識をしております。こうしたさまざまな課題において、大局的な見地から協力関係をしっかり積み上げていかなければならないと思っております。

 粘り強く、さまざまなレベルで議論を積み重ねるという意味から、今回の日韓局長級会談も意義があったと認識をしております。

小川委員 先ほど来の御審議等の中にもあります、大臣もおっしゃったとおり、確かにやはり隣国との関係というのは本当に難しいと思います。歴史もあれば、単純ではありません、利害も錯綜します。しかし、やはりいろいろな課題をとにかく乗り越えて、お互いの対話のもとに良好な関係を将来に向けて築く、結論から言うとそれしかないんだろうと思います。

 そこに向けていろいろな努力を重ねていくという意味で、私は、政権発足後一年以上たってようやく局長会談が行われたというのは極めて異例の事態だと今でも思いますし、いろいろな課題があることを前提にしてでありますが、やはり健全な、良好な、前向きな関係構築に向けてさらなる努力をお願いしたいと思います。

 そしてもう一点、少し押さえさせていただきたいと思いますが、現在ソチにおきまして、日本選手団、一生懸命頑張っておられます。もちろん、結果においては残念だなと感じたこともありますが、しかし、その戦う姿が私たちに大変な感動なり勇気を与えていただいているということは、非常に、応援をしたい、感謝をしたい、そういう気持ちでいっぱいです。

 そういう中で、森元総理のきょうの報道されているような御発言は非常に残念なことでありますし、今後、東京オリンピックでさまざまな責任者として当たられることが予定されているわけですから、これは一定、反省、自粛をいただかなければならないのではないかなと思います。ちょっと指摘をさせていただきたいと思います。

 お聞きしたいのは、少し以前のことになりますが、開会式に安倍総理が御出席なされました。三点、ちょっと具体的にお聞きします。

 ロシアの国内情勢、いろいろあろうかと思いますが、時にはテロ事件に見舞われたりとかいうこともある。そういう意味での政情不安は抱えているんだと思います。

 それから、欧州を中心とした主要国の首脳が、これは人権問題に対する配慮ではなかったかと言われていますが、出席をいたしませんでした。その中で、日本の総理大臣が出かけていった。そういう意味で、ちょっと際立った行動になりました。

 そして三点目。同じく出かけていかれたのが中国の国家主席であります。これは異例のことだったと言われています。この間での日中間の対話も実現していないわけでありますが、何らかの意図なり、働きかけなり、成果があったのか。

 この三点。テロの危険性についてどうリスクを判断されたか。そして、欧州を中心とした関係主要国が出かけていない中で、日本が出かけていくことのリスクをどう判断したか。そして、中国との間で何らかの狙いなり、接触の努力なり、あるいは成果なりがあったのかなかったのか。三点、お願いいたします。

石原大臣政務官 小川委員にお答え申し上げます。

 まず、テロの対応でございますけれども、総理が訪問するからということだけではなくて、ソチにおけるオリンピック・パラリンピック競技大会の全般的な危機管理のために、外務次官を事務局長とするソチ冬季オリンピック・パラリンピック連絡調整事務局を立ち上げまして、関連情報の共有及び緊急連絡体制の確認を行ったところであります。

 また、緊急事態の発生に備えて、ソチに在ロシア大使館連絡事務所を設置し、館員及び本省からの出張者が常駐して、現地治安当局や日本オリンピック委員会、JOCとソチのオリンピック組織委員会側との情報収集、意見交換等を行い、邦人に対する適切な情報提供に努めてきたところであります。

 二点目の、人権問題等が起こって欧州諸国の首脳が来ていない中でという話でありますが、実は、人権問題に非常に関心を持っているオランダの首脳は、プーチン大統領にその問題について会談で発言をするために出席をされているケースもございます。

 日本の安倍総理が訪問されたのは、昨年の十月のバリにおけるAPEC首脳会合の際の日ロ首脳会談において、プーチン大統領からソチ・オリンピックの招待がございました。プーチン大統領はソチ・オリンピックを大変重視しており、同大統領の招待を受けて開会式に出席することは、安倍総理と同大統領との個人的信頼関係をより強固にするものであるというふうに考えました。

 また、二〇二〇年に東京でオリンピック・パラリンピックの開催を予定しておりますので、日本からのオリンピックムーブメントを世界に広めていく第一歩をアピールすることも、このプーチン大統領との会談でできたのではないかというふうに考えております。

 以上です。

小川委員 中国との関係はいかがですか。何らかの努力をしたのかしていないのか、成果はあったのかなかったのか。

石原大臣政務官 大変申しわけありませんでした。抜けてしまいました。

 安倍総理と習近平国家主席に接点はなかったものと承知しております。

 いずれにせよ、日中間では困難な課題があるからこそ、前提条件をつけることなく、率直に話し合うべきというのが我が方の立場であります。日本側の対話のドアは常にオープンであり、中国側に対しても同様の姿勢を期待しているところであります。

小川委員 ありがとうございました。

 何事もリスクをとらなければ成果は得られないでしょうし、ただ、いろいろなことについての、先ほどのような御説明ぶりへの努力、あるいは、いろいろな比較考量をした上での行動だということの発信、これに限らず、もっと重大な問題もたくさんあろうかと思いますが、引き続き努力をお願い申し上げたいと思います。

 少し歴史観に戻らせていただきます。

 予算委員会では時間の限りもございました。大臣は私の問いに対して、先ほども原田委員の質問にお答えになっておられました、やはり我が国の外交政策や歴史認識は従来と全く変わっていないということを説明、強調したいというお話でありました。

 しかし、変わったんじゃないかと見られかねないという現状が一方にあるということだと思います。これが、国際社会、特にアメリカなんかで言われています歴史に対する挑戦、歴史修正主義というようなキーワードに象徴されるような考え方だろうと思います。そういうことに対する問題意識は私はやはり必要だと思いますし、外務委員会で重ねてお尋ねしたいということの中には、大臣御自身の心情についてもやはりお聞きしたいという部分があったからであります。

 そこで、端的にお尋ねします。

 岸田大臣は、靖国参拝に対しては、大臣御自身として、過去どういう行動をとってこられたのか、そして、今後どういう行動をとられるおつもりか、端的にお答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、靖国参拝につきまして、考え方につきましては、ここは衆議院の外務委員会の場であります、こうした公式の場でありますし、私も外務大臣の立場で出席しておりますので、個人的な見解を申し上げることは控えさせていただきたいと存じます。

 そして、私自身の対応について御質問をいただきました。

 私は、靖国の参拝問題につきましては、安倍内閣の外務大臣として、適切に対応していくということを従来から申し上げさせていただいてきましたし、これからもそのような方針で臨んでいきたいと考えております。

小川委員 個人的な見解の表明は控えられるというのは、一つの賢明な御判断かもしれません。

 行動についてもそうですか。過去の行動、そして今後の行動の見通しについてもお述べいただくことはできませんか。

岸田国務大臣 まず、国のためにとうとい命をささげられた方に尊崇の念を示す、こういったことは政治家として大変重要な姿勢だと思っております。

 こうした考え方は大変重要だと考えておりますが、具体的なその思いをどう表現するか、どう対応するか、こういったことについては、それぞれ、立場において考えなければならないと思っています。

 そういった思いで、私としては、安倍内閣の外務大臣として、最も適切な対応を今までも考えてきましたし、これからも考えていきたいと思っています。

小川委員 難しいお尋ねをしていることは自覚したいと思います。また、そういう中で精いっぱいの御答弁をいただいているということにも敬意を表したいと思います。

 今、本当はお聞きしたかったのは、外務大臣としてのお立場は当然これはあり、しかし、政治家岸田先生としてのいろいろな心情もおありだろうというところに、もちろん苦悩も含めて、お尋ねしたかったというのが本意であります。

 もう一点、ちょっと突っ込んでお聞きさせてください。

 私は、昨年の十二月二十四日に、岡田克也さんの訪韓に同行させていただきました。与野党の国会議員、日本研究の専門家、メディアの関係者、あるいは場合によっては学生さん等々、さまざまな方々との対話の機会を設けさせていただきました。

 その中で、野党の議員ながら、やはり対話の窓口を開くべきだということを促したわけであります。しかし、韓国側の関係者の大半の見解は、いやいや、安倍政権とは対話すること自体がリスクなんだというような、私としては少し想像を超えた反応だというふうに受けとめておりました。

 これにはいろいろな背景がやはりあるんだろうと確かに思いました。それは、政権の姿勢のみならず、一つ私は大きいなと感じたのは、やはり韓国という国の国際的な地位の相対的向上と、そして、場合によっては日本の地位低下みたいなこともひょっとしたらあるのかもしれないというようなことも感じるぐらい、かつて日韓関係にあると言われた復元力、いろいろなことがあっても自動的に復元していくという力学が今までほど働かなくなっているというようなことに危機感も覚えて帰ってきました。

 そして、帰ってきた翌々日が総理の参拝、私どもからいえば強行でありました。そのときに、韓国側の関係者が話していたことが一つ形となってあらわれたということで、私は衝撃を受けたわけであります。

 そのときの政権内のオペレーションがどうだったかを少しお教えいただきたい。

 大臣は、総理が参拝されるということをいつお聞きになり、それに対して何とおっしゃり、対外関係含めて、リスクを最小化するためのどういう努力をされたのか、この観点からお答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、今の御発言の最初の部分、日韓関係につきましては、来年で国交正常化して五十年がたちますが、この五十年の間、アジア太平洋地域の環境も変化しましたし、それぞれの国の社会情勢、経済情勢は大きく変化してきた、そういった中でさまざまな考え方や意見の変化も生じている、こうした情勢分析については、おっしゃるとおりだと思います。

 そして、後段の部分、今回の靖国参拝について、政府としてのオペレーション、どう対応したかということでありますが、まず、靖国参拝につきまして、私自身、参拝の前に、事前に総理が参拝するということについて承知をしていたこと、このことについては申し上げさせていただきたいと存じます。

 しかし、今回の総理の靖国神社参拝につきましては、政府全体として対応いたしました。政府一丸となってこうした問題に対応したわけでありますので、政府の中でどんなやりとりがあったか、あるいは事前にどういった動きが政府の中であったのか、この点については公にさせていただくのは控えさせていただきたいと存じます。

 この問題について政府全体として対応した、その結果につきましては、先ほど来申し上げてきたとおりであります。

小川委員 経過を具体的にお話しになれないというのは一定、理解をいたします。

 しかし、これだけ重大な影響を及ぼしたこともまた事実でありまして、今後もその改善に向けて努力はされるんだろうと思いますが、しかし、やはりこの時点における結果責任という意味においては、重大な責任を感じていただく必要が内閣、政権全体にあるんだと思うんですね。

 その意味では、これはどういう経過で、そして各関係者、しかも、外務大臣というのは極めて責任を持ち、そして権限を預かっておられる、どうそれに関与したのか、この辺の経過については、きょう明らかにできなくても、これはほとぼりが冷めたらという言い方が的確なのかどうかわかりませんが、きちんと検証し、後の国民に対して、場合によっては国会に対して、きちんとその経過を共有していただく必要があるほどに重大な出来事であり、テーマではないかということを指摘させていただきたいと思います。

 残りの時間の中で、もう一つの、予算委員会が大詰めという話もありましたが、これから四月にかけて、やはり集団的自衛権の取り扱いは政権の命運を左右する、政権にとってどうこうも大事かもしれませんが、これは日本国にとって極めて重大な意思決定を挟んでせめぎ合うべき課題だという気がします。

 きょうは法制局にお越しをいただきました。

 過去、憲法解釈を明示的に政府の意思で変更した実例、その背景、内容、及ぼした効果について報告していただきたいと思います。

横畠政府参考人 お尋ねにつきましては、平成十六年六月十八日の島聡衆議院議員に対する政府答弁書におきましてお答えしているところでございます。内容を引用させていただきます。

 御指摘の「憲法の解釈・運用の変更」に当たり得るものを挙げれば、憲法第六十六条第二項に規定する「文民」と自衛官との関係に関する見解がある。すなわち、同項は、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」と定めているが、ここにいう「文民」については、その言葉の意味からすれば「武人」に対する語であって、「国の武力組織に職業上の地位を有しない者」を指すものと解されるところ、自衛隊が警察予備隊の後身である保安隊を改めて設けられたものであり、それまで、警察予備隊及び保安隊は警察機能を担う組織であって国の武力組織には当たらず、その隊員は文民に当たると解してきていたこと、現行憲法の下において認められる自衛隊は旧陸海軍の組織とは性格を異にすることなどから、当初は、自衛官は文民に当たると解していた。その後、自衛隊制度がある程度定着した状況の下で、憲法で認められる範囲内にあるものとはいえ、自衛隊も国の武力組織である以上、自衛官がその地位を有したままで国務大臣になるというのは、国政がいわゆる武断政治に陥ることを防ぐという憲法の精神からみて、好ましくないのではないかとの考え方に立って、昭和四十年に、自衛官は文民に当たらないという見解を示したものである。

以上であります。

 このような見解を示したのは昭和四十年五月三十一日の衆議院予算委員会においてであり、石橋政嗣委員の質問を受けて、佐藤栄作内閣総理大臣及び高辻正巳内閣法制局長官がお答えするという形であらわしております。

小川委員 逆に言うと、これ以外に明示的に政府が憲法の解釈を変更したということはありませんね。

横畠政府参考人 御指摘のとおりでございます。

小川委員 一つただしておきたいことがあります。

 自衛隊の創設を含めて、解釈改憲、通称解釈改憲という言葉が日本社会には横行しております。しかし、憲法の解釈の変更によって政策を大きく転換したという事例は基本的にはない。

 今お答えになられたのは、かつて、自衛官が憲法に言う文民に当たるかどうかが問われた際に、日本国憲法施行時において、国内に武力組織はありませんでした。実力部隊はいなかった。ということは、憲法に言う文民、あるいはこれに対義すべき武人に相当する人の存在が想定されなかった。

 したがって、ここで言う文民とは、武人以外。そこで言う武人とは、まさにおっしゃった、昭和四十年の答弁ではこういう表現になっています。「旧職業軍人の経歴を有する者であって軍国主義的思想に深く染まっている者」を武人と解釈し、それ以外を文民と解釈した。すなわち、その後、自衛官についても文民の範疇に含まれるという解釈をしてきた。

 しかし、その後の自衛隊における実力の機能の向上によって、明らかにこれは武力部隊である、実力部隊であるという状況、これは内外に向けてきちんと認識をすべきであるし、せざるを得ないという状況の変化が論理的に生まれてくる。そういう中で、自衛官を文民と解釈するわけにはいかないという必要性が出てきたという経過をたどっております。

 したがって、それまでの軍国主義とか旧職業軍人とかいう概念ではなく、実力部隊、実力組織の中に職業上の地位を占める者を武人と置き、それ以外を文民というというふうに解釈は変わってきたということであります。

 ここで、先ほどお答えいただいた、これは平成十六年の質問主意書に対する内閣の答弁を引用いただいたわけでありますが、そこにこういう記述があります。

 「憲法を始めとする法令の解釈は、」中段ちょっと省略いたしますが、「論理的に確定されるべき」である。「諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然であるとしても、なお、前記のような」、つまり論理的に確定されるべきであるという「考え方を離れて政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではない」ということを内閣の意思において決定しておられます。そして、「政府において、憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、」これは、この規範に対する国民の信頼を損なうと。

 したがって、集団的自衛権の行使に関して、やはり憲法解釈を変更するということであれば、かつてなかった武力装置、実力部隊を創設したということによって論理必然的に解釈の変更が生まれたというほどに、政府の説明責任は重く、そして、国民に対する理解を求める努力は極めてハードルは高いということをまず御認識いただかなければならないだろうと思います。

 加えて、このときは文民の解釈を拡大したわけですから、安全保障上からいうと、むしろ歯どめをきかせたということであります。今回はそれを解除する方向で議論が進んでいるというふうに理解しています。

 憲法解釈を変更し、国内の法体系を変えた、法体系に影響を及ぼした、法制を変更したということは過去ないと思いますが、それはそれでよろしいですね。

横畠政府参考人 政府として、憲法の解釈、運用の変更に当たり得るものとしては、先ほどお答えした一件を挙げさせていただいております。

小川委員 文民の解釈ですから、これによって国内の法体系をさわったとか変更したということは過去ありません。

 現在、安倍総理が主張されている解釈の変更後は、自衛隊法の改正とかいうことを視野に入れておられるようでありますが、やはりこれは解釈の変更ではなく政策の変更、しかも大規模な、戦後の積み重ねてきた歴史の中でいえば、かなりの大転換に相当する政策の変更であります。

 事ほど、法的基盤の見直しは容易ではないということ、そのことに対する謙抑的な、慎重な姿勢を改めてお願い申し上げまして、ひとまず、きょうのところは質疑を終えさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 残った時間でいろいろ質問させていただきたいと思いますが、通告した順番が少々前後するかとは思います。今、同僚の小川委員から集団的自衛権の点についての質疑がございましたので、関係して、この点について、大臣の見解、政府の見解を伺いたいと思います。

 集団的自衛権が今後議論される中で憲法解釈が変更されるということに、総理が昨日の予算委員会の集中審議で大変強い決意を示されました。閣議決定をして憲法解釈が変更される、これは北岡伸一さんもそのようなことを言って、官房長官なり総理なりが発表する、それによって法的な効力、解釈が変わったということができるのだというような手段についてもいろいろお話をされておりました。

 では、外務省として、これは一般論で結構です、この集団的自衛権の憲法解釈を閣議決定しました、そしてそれによって、過去積み重ねてきた、集団的自衛権は認められないのだ、有すれども使えずという、この集団的自衛権の解釈が変わりましたということについて、これは当然、外交的に、対外的に、他国に対して、このことを説明して回るというようなアナウンスはしなければいけないと思うんですが、その点について、一般論で結構です、まだ仮定の話はお答えしないということで逃げられないように。伺うと、総理はあれだけの強い思いを持っていらっしゃる。では、解釈が変更になった場合は、どのようなことを今後外交的に考えていかなければいけないということを想定しているのか、お尋ねをいたします。

岸田国務大臣 まず、憲法の解釈の変更につきましては、先ほどの小川委員の質疑の中でも、もちろん安易に憲法解釈というものは変えられるものではありませんが、丁寧な議論に基づいて憲法解釈の変更という前例があったということが示されていたと認識をしています。

 そして、集団的自衛権に関する議論については、御指摘のように、今、安保法制懇、有識者会議において、集団的自衛権と憲法の関係等について議論が行われているわけですから、現状においては、その議論の結論を待たなければならないと思います。

 そして、今後の動きとしては、この安保法制懇、有識者会議において結論が出、そして報告書が提出されることになると思います。そして、報告書が提出されたならば、政府としましては、内閣法制局の意見も踏まえつつ、さらには与党とも相談した上で対応を決定し、閣議決定を行う、そして国会でもしっかりと御議論をいただく、こういったことが想定されます。

 そういったことが進んだならば、当然のことながら、外務省としましても、近隣諸国あるいは各国に対しまして、丁寧にこうしたことについても説明をしていかなければならない立場にあると認識をしております。

渡辺(周)委員 それでは、その場合、我が国の自衛権発動の三要件がございますね、これまで議論で重ねられてきた。これは、解釈を変更して集団的自衛権を認めた場合、この中にある、急迫不正の侵害が我が国に対してある、そしてもう一つは、ほかにとるべき手段がない、もう一つは、しかしそれは最小限であるという中で、急迫不正でない場合も今度は自衛権を、個別的も集団的もありませんから、国家が固有として持っている自衛権の立場に立てば、自衛権というものを考えるときに、急迫不正の侵害がなくても、集団的自衛権を容認することによって防衛出動できるということになるんですね。

 そうすると、これは、いわゆる自衛権発動の三要件も変更する、今までの議論が変わってくるということになると思いますけれども、大臣の御認識はいかがですか。

岸田国務大臣 集団的自衛権と従来の自衛権発動の三要件の関係についての御質問ですが、今現状、安保法制懇、有識者会議で集団的自衛権そのものについて議論が行われております。要するに、結論がまだ出ていない段階で、私の方からその内容について今この場で何か申し上げることは難しいと思っています。集団的自衛権の議論がどうなって、そしてそのことが自衛権発動の三要件にどう影響してくるのか、これはまさに、今現状においては、有識者会議の結論を待ってからでないと論ずるのは難しい段階であると認識をしております。

渡辺(周)委員 いや、だって、安倍内閣はこれをやるんだと言っていて、安倍内閣の一員として、閣議決定で憲法の解釈を変更するんだとおっしゃっているわけでしょう。閣議決定のときは当然一緒に意思を統一されるわけですから、今法制懇でやっている話を見てみないとわからないみたいな、だって、もうずっと、安倍内閣がやるということは皆さんわかっている。これは安倍内閣の使命でしょう。だって、あそこまで総理が言って、これだけ大きなテーマになっているわけですから。そんな、今さらみたいな議論をされて、大臣、それは答弁になりませんよ。そうなった場合にはその三要件をどうするかでしょう。

 では、また角度を変えて言いましょう。

 そうすると、日米安全保障条約はどうなりますか、集団的自衛権を認めた場合。つまり、安全保障条約における極東条項というものの解釈も変えるのか、それから、明記はされていないけれども、安全保障条約に書かれているいわゆる片務性と言われている部分について解釈をどうするのかということですね。

 この点については、当然、もし集団的自衛権というものが認められれば、先ほど申し上げた防衛出動の三要件、それから日米安全保障条約、こうしたものも解釈を変えていかなきゃいけないわけですけれども、その点については、関係する法令や条約に対してどう変わっていくかということを外務省の中で協議して考えているのかどうなのか、そういうことは実際議論されているのかどうか、そのときに備えて。その点はどうですか。

岸田国務大臣 まず、この議論のありよう、そして現状について整理をいたしますと、集団的自衛権については、これはもうたびたび申し上げているように、現状、安保法制懇、有識者会議において議論がされています。集団的自衛権と憲法の関係、集団的自衛権についても、具体的に、限定的なものにするかどうか等も含めて今議論が行われています。その部分が固まらなければ、先ほどの自衛権発動の三要件あるいは日米安全保障条約との関係、これを今の段階で具体的に申し上げるのは難しいと思っています。

 ですから、まず結論が出て、報告書が出た後、政府として対応を考えるということでありますので、今、報告書が出る前の段階で、既に政府として、これはこうだ、ああだと言うことは難しい、そういった段階にないということ、これは御理解いただきたいと存じます。

渡辺(周)委員 ですから、先ほどから私は、一般論という言葉も使っています。だって、憲法解釈が変わるということは、当然、条約の解釈や三要件、これまで積み重ねてきたことも変わるわけですよね、解釈が。

 もっと言えば、そのことについて、今までできなかったことができるようになるということは何であるのか、引き続きしてはならぬことはどこまでなのかとか、そういうことは、もし集団的自衛権というものが解釈変更になった場合には、どんなふうに議論していくことになるのか。あるいは、今から準備しておかなきゃならないことは当然ありますよね。そういうことは今外務省の中でお考えになっているんですかということがまず一つ。

 それから、一般論として、今までの解釈も、あらゆる法令や条約の解釈も変わりますよねということだけなんです。そうだと言っていただければいいんですけれども。

 そういうことですから、別に法制懇の議論を待たなくとも、憲法解釈が変われば条約の解釈や法律の解釈も変わっていくということでいいんですよね。

岸田国務大臣 やはり考え方として、今、集団的自衛権について有識者会議で議論をしています。それは、イエスかノーかという話ではなくして、集団的自衛権についてどういった考え方をするのか、限定的なものも含めて具体的にどういった結論を出すのか、これがまだ議論されている段階です。

 ですから、その中身によって、当然のこととして、個別的自衛権の発動要件やあるいは日米安全保障条約に対して影響が出ることもあるかもしれませんが、これは集団的自衛権についてどんな結論が出るかにかかっているわけですから、今現状でそれに予断を持って申し上げることはできない、これは当然のことだと思っております。

渡辺(周)委員 集団的自衛権を認めるお立場で発言されている方々で構成されている安保法制懇ですよ。だから、結論はある程度わかっている。

 言っておきますけれども、私は、去年の予算委員会でも言いましたけれども、集団的自衛権は、限定的に、例えば我が国の周辺事態における公海上の米軍との共同行動なんかに対してはやはり適用できるようにすべきだというのが私の持論です。ですから、別にためにする議論をするつもりはありませんが、ただ、それだけ大きな変更をすれば、できないことができるようになる反面で、他国に対しても、いろいろな形で、私どもの国は今まで戦後一貫してこういう一つの見解を持ってきたけれども、これを変えなきゃいけない、それは外務省としては外交努力をしていかなきゃいけないことですよというのが最初の質問です。

 安保法制懇の議論を待たないとまだわかりませんというのは、多分これはノーという答えは出てこないですよ。先ほど小川委員が言ったように、やはり我が国の論理的な結論が必要なんだということで、できません、集団的自衛権は今までどおり認められないというような答えは多分出てこないと思えば、それを待たずとも、何か外務省で、おい、これを認めたらどういう影響が出るんだと、今まで外務省がいっぱい答弁してきた中でどう変わってくるのかということは当然検討していると思うんですけれども、それもしていないということですか。

岸田国務大臣 集団的自衛権の議論は、今日まで長きにわたっていろいろなところで議論が行われてきました。いろいろな想定やら議論は存在するとは思いますが、今、現実において、先ほど言いました整理に基づいて議論が進められています。これは、あくまでも今の段階で、安保法制懇の最終報告が出る前の段階で、予断を持って外務大臣が何か申し上げるということは適切でないということは御理解いただきたいと存じます。

渡辺(周)委員 これ以上言ってもらちが明きませんから、また次のときにやりますけれども、でも、どう考えても、安倍内閣の一員が、総理大臣が何を考えているか、心象風景がわかっていて、ここまで言っていて、集団的自衛権の解釈を変えたらどういう法律にどういう影響が出るんだということはわかっていますよね、本当は。だって、安保法制懇がその後のことをやるんじゃなくて、最終的には、条約を担当する、そこを所掌する外務省がいろいろやらなきゃいけないわけですからね。

 でも、結論が出た後に、ではこれからアメリカと安全保障条約についての議論を始めますなどというのでは、とてもじゃないけれども随分な時間がかかるんじゃないかと思うから、当然やられているんだろうなということを聞いたんですが、お答えにならないので、もう時間がありませんから、幾つかの質問を飛ばしながら、次のテーマに行きます。

 先日、北朝鮮の人権に関する国連の調査委員会の報告書が発表になりましたけれども、ここで、北朝鮮のこれまでの拉致を含めた非人道的な、公開処刑や拷問や、あるいは政治犯を収容所に送り込んでやってきたことは人道に対する罪だということを断定しました。外務大臣も古屋拉致問題担当大臣も、肯定的な、歓迎する評価をコメントで出されているのは読んでおります。

 今後、この報告書を生かして、どのような形で、拉致問題の解決、そして我が国として極東の平和、安定に資するように取り組んでいくかということについては、外務省はどうお考えですか。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘がございましたとおり、二月十七日に、国連の北朝鮮の人権に関する調査委員会が、北朝鮮における人権に関する最終報告書を公表いたしました。まず、日本としてこれを歓迎したいということでございます。

 そして、今後のフォローアップといいますか、それをどういうふうに具体化していくかという御質問でございますけれども、この報告書は、そもそも、昨年の国連の人権理事会において日本が中心になりまして採択した決議に基づいてつくられた委員会でございまして、したがって、この委員会の出した報告書というのは、この三月、来月に開かれますジュネーブでの国連の人権理事会に出される、そういう性格のものでございます。

 したがって、今一番大事なことは、この報告書を踏まえて、この三月の人権理事会、日本もメンバーに入っております、そこでこれをきっかりと受けとめて、新しい人権理事会の三月の決議という形で、この報告書の内容を適切に反映して実施していくことだと考えております。

 ちなみに、この人権理事会、全部で四十七カ国がメンバーになっておりまして、去年は中国等は入っていなかったんですけれども、例えばことしは中国とかロシアが新しく入ってまいりました。そういう国々も含めて、まずは、この報告書、これはまだある意味で一報告書にすぎませんので、国連、具体的には人権理事会、そしてそこで中心的な役割を今担っております日本として、これを決議という形で実現していくということが大事だと考えております。

渡辺(周)委員 この報告書は、金ファミリーが命令をしたんだと。小泉訪朝のときに、冒険主義者と言ったか妄動的主義者と言ったかは忘れましたけれども、一部のはね返りが拉致をしたんだという当時の金正日総書記の言うことを覆す結論ですね。これは国家的、組織的にやったことなんだということが明記されました。

 しかも、これは国際刑事裁判所に付託するべきではないかと。現実的な問題は、いざとして国家元首というのはいわゆる免責特権があります。しかし、人道に対する罪ということで、国家元首もやはり裁きを受けるべきだということまで踏み込んだ、かなりの報告書であります。

 それだけに、これをしっかりと活用していただきたいというふうに思いますので、そこを中国も含めて説得をして、どう説得するかということは大臣に意気込みを聞きたいと思います。

 もう一つ気になることは、読売新聞が二月十八日に書いていますけれども、ここで、この聞き取り調査をした北朝鮮の朝鮮労働党三十五号室に所属していた元当局者という者にインタビューをして、そのときに、この三十五号室というのは、通常誘拐などの諜報活動を任務として、拉致を専門にする部門もあったと。そのときに、金正日総書記から拉致の命令があって、実行計画をこの室長がつくって、総書記から承認の署名をもらったなど、かなり詳しく書いてあります。

 そして、このときに、この当局者、取材に応じた人間は、「個人的に日本人拉致被害者の女性十人を知っていると述べた。」先ほど、小泉訪朝のときに、拉致対象は男性が六人で女性が七人、計十三人と言いましたけれども、例えばこのインタビューに答えた当局者は、日本人の女性十人を知っていると言ったわけですね。つまり、これで新しい事実が出てきているんです。

 こうしたことも含めて、この聞き取り調査をした、これは拉致対策本部の仕事かもしれませんが、しかし、オール・ジャパンで取り組めば、この報告書の聞き取り調査をした証言者も、これはやはり日本政府も当たって、新聞社のインタビューに答えているわけですから、政府として、その拉致被害者の日本人女性十人とは一体誰のことなのか、こういうことをやるべきだと思いますが、こうした報告を受けてそういう取り組みをやっているのかどうか、その点はいかがですか。

新美政府参考人 今委員から御指摘がございましたように、このCOIは、まず、調査を日本で行ったのみならず、アメリカ、タイ、イギリス等々、各国で行っております。そして、聞き取りあるいはインタビューを行った内容も非常に数多くになっております。

 他方、誰にどういうインタビューを行ったか、特に誰にインタビューを行ったかということについては、相手によっては、そのことを明らかにすること自身が、その方あるいはその方の後ろにおられる被害者の方々にとってマイナスになるということもあって、公表されていないものもございます。

 そういう制約もございますけれども、今委員から御指摘がございました、まさにこれだけ膨大な調査を行って、委員会として詳細な報告書を発表されたわけですから、私どもとして知り得る限りにおいて、その中身、具体的にCOIで調査したことで、日本として、今おっしゃったように裏づけをとるとか、フォローアップをするとか、そういうことも、今御指摘ありました拉致対策本部とも相談しながらできる限りやっていきたいと考えております。

渡辺(周)委員 調査委員会が守秘義務を約束してインタビューした対象、こういう人がいるんだということで、ここまでしゃべっているということは、それなりの方がいるんだろう。今後も、張成沢、側近の一族に至るまで全部粛清されている、殺されているという中で、恐れをなして韓国あたりに亡命申請をしている人たちもかなりいるというふうな話も聞いております。

 こうした今の状況の中で、一つには、この報告書を活用して、全世界に、拉致も含めた人道被害、人道的な北朝鮮の罪を、やはり国際世論をつくるために、日本が中心になって、先頭に立ってやっていくべきだろうということが一つ。

 それから、こういう新しい事実が出てきたところで、ぜひ、国を挙げて、ではその日本人とは一体誰なのかということについては、もちろん話せないことは話せなくて結構です、秘密にするべき部分があるのはわかっています。当然、証言者の生命を守るためには、別にここで名前を明かして大っぴらにしろとは言いません、物事の性質はよくわかっていますので。このことについて取り組んでいただく、このことを、ぜひ大臣から力強く、取り組む姿勢についてちょっと御発言をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、拉致問題につきましては、安倍内閣としましても、現内閣で解決をするんだという強い決意を表明させていただいております。ぜひしっかり取り組んでいかなければならないと思っていますし、先ほど来指摘されているさまざまな点につきましても、しっかり検討し、努力をしていかなければならないと思っています。

 COIのこの報告書につきましても、内容におきまして、ICCへの提訴ですとか、あるいは安保理の制裁強化ですとか、さまざまな具体的な提言が盛り込まれています。ぜひ、北朝鮮に対しまして、国際社会全体の強いメッセージとしてしっかりと活用していかなければいけないと思っていますし、そして、これをしっかりフォローアップする、こういった点が大変重要であると考えております。

 そして、こうしたことについて国際社会にしっかりと発信をしていく、こうした広報の努力が必要だという点、これも本当に大変重要な点だと認識をしております。外務省の国際広報予算、平成二十六年度予算は、前年度予算で四二・七%プラス、増加という予算をお願いしておりますが、予算をお認めいただきましたならば、こういった予算も活用しながら、しっかりと発信をしていきたいと考えております。

渡辺(周)委員 あと一分だけありますから、最後にちょっと私の意見を述べたいんですが、昨年のゴールデンウイークに、私、古屋大臣と一緒にアメリカに行きました。ニューヨークとワシントンに行って、拉致の国際シンポジウムというところに行ったんですね。これは多額の予算を使ってやりました。日本のメディアはみんな来ていました。報道されたのも日本のメディアばかりでした。外国のメディアも来ていましたけれども、その後どうなったと聞いたら、ほとんどというよりは、まるで報道されていませんでした。

 つまり、今おっしゃった国際広報予算、これだけふえましたと言いますけれども、実際、本当に実のあることをやっているのかどうなのかということ。パンフレットを山積みにして積んであってもしようがないんですね。これをしっかりと、やはり我が国の国益に資するような形で、きょうは時間がありませんからできませんでしたけれども、領土の問題についても我が国の正当性をしっかり伝える。公館に山積みにしてあってもだめなんですよ。パンフレットを並べてお好きなだけおとりくださいじゃだめなんだ。

 私は、議運の理事をやっているときに、昨年の夏、各委員会が視察に行くときには、外国語の拉致のパンフレットと領土問題のパンフレット、これを各視察団が持っていって、向こうで会う要人たちに、向こうの議長なり閣僚なりに渡せと。ここまで日本人はもう手分けしてやっているということぐらい姿勢として見せようと言って、私も議運でヨーロッパに行ったときには、行く先々の、その人がどれぐらいの立場なのか、どれぐらいの発言力があったかわかりませんけれども、少なくとも向こうで会った要人たちには全て渡しました。

 日本の国会議員はここまでしっかりとやっているということを見せることも、我々の努力もそうですが、ぜひ、広報予算だけがふえたからやっているんだじゃなくて、それをどう本当に実効あるものにしていくかということについてしっかりとチェックしながらやっていただきたい。

 そのことを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、阪口直人君。

阪口委員 日本維新の会の阪口直人と申します。

 きょうは、まず最初に、政治家の言葉について、公的な立場に立っている方の言葉について、これは質問通告はしておりませんが、大臣のお話、考えを伺って、その後、顔が見える外交をどのようにして実現していくのかという点で、カンボジアやミャンマーなどを例にとって質問をしたいと思います。

 まず、最近、大変に重要な地位についていらっしゃる方、公的な立場にいらっしゃる方々の失言、そしてその撤回が相次いでいると私は感じています。衛藤晟一首相補佐官、また、籾井NHK会長、百田尚樹NHK経営委員、さらに石破幹事長などが、私は、失言というよりは、信念を持って発言をされて、しかし、世間に批判をされるとそれをすぐに撤回する、こういったことが相次いでいて、結果的に信頼を損ねる結果になっていることを大変に憂慮しております。

 一方で、岸田外務大臣は、本当に慎重過ぎると思うほど言葉を選んで、大変に誠実な答弁をされていると思いますが、しかし、私は、政治家が、あるいは公的な立場に立っている方が、撤回をしたからといって、これはもう、今のはなしねというわけにはいかないと思います。

 ソチ・オリンピックを見ていて、本当にこれまで頑張って練習をしてきた選手が失敗をする。今のはなしねと言いたいと思いますけれども、でも、その中で頑張って大変に見事な演技をしていらっしゃる方、特に、きのう私、浅田真央さんのスケートに大変感動したんですが、こういったスポーツの世界と比べて、政治の世界、今のはなしね、これは通用するんでしょうか。

 岸田外務大臣の信念と照らし合わせて、まずこの点について、まさに個人的な思いで結構でございます、御意見を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 それぞれ重要な立場にある人間は、その発言にやはり責任を持たなければならないと考えます。その点は慎重でなければならないと思っております。

 発言について幾つか御指摘をいただきましたが、それぞれ立場やケースはさまざまであると認識をしております。衛藤首相補佐官の発言、これは個人的な発言であったということで撤回をされました。また、籾井NHK会長は、その後、発言を撤回されました。また、NHK委員の発言につきましては、政府の立場からNHK委員の発言についてコメントすることは控えなければならないと思いますが、ただ、思うこととして、あの発言は、我が国政府の立場、今までの認識、政府の答弁書等さまざまな場で申し上げてきている認識とは異なると私は思っております。

 このように、それぞれの発言、立場、内容はさまざまでありますし、対応もさまざまでありますが、結論としまして、重要な立場にある人間は、みずからの発言に責任を持ち、慎重でなければならない、このことについては強く感じております。

阪口委員 責任のある立場の方が、慎重である、責任をしっかりとれる発言をすることが大事であると同時に、やはり、人の心を動かす言葉、あるいは交渉においてしっかりと国益をかち取る、そういった言葉も必要だと思います。特に、外交の責任者である岸田外務大臣、このことが大変にこれからも問われていくと思います。

 私は、日本の外交の一つの大きなテーマは、いかに顔が見える外交をするかということだと思っています。私個人は、外交あるいは外務省にかかわって、外務省の方々、あるいはさまざまな国際協力、援助機関にかかわる方々の顔の見せ方、大きく分けて二通りあると思います。

 一つは、本当に草の根で顔を見せる、現地の方々とともに汗をかいて、同じ思いを共有して、そこで日本の顔を見せていく、これが一つだと思います。もう一つは、国際交渉の場においてしっかりと日本をアピールすることだと思います。

 その中で、私は、最も国際的な評価が高い顔を見せる場面というのは、平和に対する貢献、和平交渉であったり、あるいは紛争解決のための仲介を行う、そういった局面で顔を見せる、リーダーシップを発揮することだと思っております。

 ただ、これまで日本は、この点について積極的に行ってきたか、積極的な役割を果たしてきたかというと、私は、これからの大変に大きな課題だと思っています。

 この点について、岸田外務大臣、今後の日本の外交の大きなテーマとして、いかに顔が見える外交を行っていくか、お考えをお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 外交を進めるに当たって、国際社会において顔が見える、あるいは存在感を示す、こういったことは大変重要だと思います。

 そして、私自身も、外交を進めるに当たって、まずは外交の三本柱ということで、日米同盟の強化、近隣諸国との関係推進、さらには我が国の経済再生に資する経済外交の推進、この三つを挙げておりますが、こうした三本柱を通じて、国益を守る、国民の生命財産を守る、発展させていく、こういった視点はもちろん重要でありますが、これだけでは、我が国が国際社会において大きな存在感を示す、顔の見える外交を展開することにつながってはいかないと思っています。

 やはり、こうした国益を守ることとあわせて、さまざまなグローバルな課題、中東和平ですとか、シリアの和平ですとか、環境ですとか防災ですとか、あるいは、我が国は昨年五月に国際保健外交戦略という保健分野での貢献を発表いたしましたが、こうした分野での貢献ですとか、こうしたグローバルな課題において汗をかく、こういったことによって日本の国が国際社会の中において存在感を示すことにつながっていくのではないか、こういった認識を持っております。

 ぜひ、こうした考え方から、我が国の国益を守る、これはもちろん外交において重要でありますが、あわせて、国際社会において顔の見える、存在感のある日本外交であるために、こうしたグローバルな課題についても積極的に貢献していく、こういった考え方を大事にしていきたいと存じます。こういった考え方は、先ほど来議論になっております積極的平和主義の推進にもつながっていく考え方であると認識をしております。

阪口委員 国益を追求すると同時に、地球益また人類益を追求する、いかに高いレベルでそれを両立させるか、これこそがまさに今後問われる外交の大変に重要なポイントだと思います。この点については、外務大臣だけが、政府だけが頑張ってできるものではありません。市民社会、あるいは我々野党もあわせて、オール・ジャパンで外交を行っていくことが大変に重要だと思っています。

 一方で、この件に関して申し上げると、私は、日本及び日本政府は、特に平和の仲介、ピースメディエーションという分野については及び腰であったかと思います。

 極端な例を挙げると、日ごろからカウンターパートとして接している相手国政府と争っている武装ゲリラ集団の間に入って中立的な仲介者になる、また、和平のテーブルに着く、和平プロセスを進めていくことについて何らかの見返りを与えていく、これは政府の立場ではできないことも多々あると思います。

 例えば、大変に大きな津波の被害があったインドネシアのアチェにおいては、日本政府は、積極的にこの役割を果たそうとしたけれども、残念ながらうまくいかなかった。一方で、フィンランドの一ビジネスマンであるユハ・クリステンセンという方が、紛争の当事者を交渉のテーブルに着ける大変に重要な役割を果たし、そして、元大統領であるアハティサーリさんという方が、元大統領という世界的な名声と政治力を生かして、結果的にアチェの和平をまとめ上げた、そういった例もございます。

 ぜひ、オール・ジャパンで、紛争解決、紛争の仲介、こういった新しい分野にチャレンジをしていく、こういう思いを持ってこれから質問をさせていただくということで御理解をいただきたいと思います。

 実は今、日本政府として、そういった役回りを大変に期待されている、また、貢献できる可能性がある事例が幾つかございます。

 一つはカンボジアですね。昨年の七月二十八日に総選挙が行われました。現地の選挙管理委員会の発表では、与党の人民党が六十八議席、そして大躍進した野党救国党が五十五議席を獲得いたしました。しかし、野党の代表であるサム・ランシー、彼は、大変に大規模な不正があったのでこの選挙結果を受け入れることはできないということで、ボイコットをしている、当選をしたけれども国会への登院を拒否しているという状況が続いております。

 一方で、先日、フン・セン首相が来日されたときに、安倍総理との間で、カンボジアの選挙制度改革について日本が協力をする、そういう合意がなされました。私はこれは大変にすばらしいことだと思っておりますが、その直後にうちの事務所でこの中身についてヒアリングをしたところ、まだ何も決まっていないというような状況でもございました。

 それから二カ月ほどたっておりますが、このカンボジアの選挙制度改革について、今どのような状況なのか、まずはお答えをいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、カンボジアの総選挙、昨年七月に行われた総選挙ですが、その後の与野党対立につきましては、我が国としましては、やはり対話あるいは平和裏の解決、こういったことにつきまして呼びかけを続けております。

 昨年十一月十六日に安倍総理がカンボジアを訪問させていただいたときの首脳会談におきましても、安倍総理からフン・セン首相に対しまして働きかけを行わせていただきました。そして、昨年十二月、今委員御指摘の日・ASEAN特別首脳会談に合わせてフン・セン首相が訪日されました際に、カンボジア側の要望も踏まえまして、選挙改革という、現地へ調査団を派遣する、こうしたことを我が国としましても表明させていただいた、こういったことであります。

 ぜひ、こうした働きかけ、そして協力をしっかり続けていきたいと考えております。そして、こうした調査の結果を踏まえて、具体的な支援につなげていかなければならない、このように考えております。

 カンボジアの選挙改革につきましては、十八日に与野党が選挙改革に係る委員会設置で合意したということを承知しております。このあたりも前向きな動きとして捉えておりますし、選挙改革の方向性について共通認識が形成される、こうしたことによって我が国の調査や支援の素地もでき上がっていくと期待しております。こういった動きを見ながら、ぜひ今後の調査や支援をしっかり進めていきたいと考えております。

阪口委員 今の御答弁を聞いていると、まだ具体的にどのような方向性で行うかは決まっていない、カンボジア側の状況も見きわめてというように私は理解をしたんですが、例えば、どういう方がその調査に当たるのか、これは、選挙に詳しい方、あるいはカンボジアの情勢に詳しい方であるべきだと思いますけれども、どのような形でその人選を行って、そしてまた、どれぐらいの期間で方向性を出していくのかという点については、何らかの決定あるいは見込みというのはあるんでしょうか。

岸田国務大臣 調査団のメンバーとしましては、考えられるのは、日本やカンボジアの選挙制度に詳しい有識者の方々ですとか、あるいはカンボジア等に関する援助関連の実務者ですとか、こういった方々が想定されるのではないかと思います。

 そして、具体的な動きにつきましては、先ほど申し上げましたように、現地の情勢もしっかり把握しながら進めていかなければならないと思っていますが、派遣時期等、どういったスケジュールで対応していくかは現状まだ未定ですし、現地の要請ですとか、あるいは状況も見ながら確定をしていくことになるのではないかと考えます。

阪口委員 私自身、実は、カンボジアの選挙の支援に五回にわたってかかわったことがございます。最初は、一九九二年から三年にかけてUNTACが展開したときに、地域の、いわゆるディストリクト、郡レベルの責任者ということで、一年間かけて選挙人登録から選挙の実施まで行いました。その後、九八年、五年後の選挙には、日本政府の選挙監視チームの一員として派遣をしていただきまして、同じくテクニカルなアドバイスも含めた支援活動を行った経験がございます。加えて言うと、その後、二〇〇三年の選挙でも、今度はNGOの選挙監視チームを率いる形で現地に参りまして、そして七月の選挙も、現地でさまざまな角度から状況の監視を行った、そういう経験がございます。

 私が長年にわたってカンボジアの選挙の問題点を見てきた限りにおいて、一番問題なのは、私は、選挙人登録、ここの部分に信頼性が欠如しているということだと思います。

 国連が入って九二年から九三年にかけて選挙を実施したという、その遺産は割とずっと継続していまして、アジアのその他の国に比べても、私は決してレベルが低いとは思いません。しかし、選挙人登録の部分で信頼性が欠如していると、結局、二重登録であったり、あるいは投票に参加できないという方が多くあらわれて、この選挙結果は認めない、そのような口実を野党に与えてしまうことにもなるんですね。

 私自身も、現地に行って、どうすればこの問題を解決できるのかということを、今回、いろいろなアクターと話し合ってまいりました。具体的には、野党の党首であるサム・ランシーさんとも話をし、また、フン・セン首相の右腕とも言われておりますが、ソクアン副首相、また、フン・セン首相の三男であるフン・マニさんとも話をして、本当にざっくばらんに、日本としてどのような貢献ができるか、意見交換をしてまいりました。

 私の一つの提案は、選挙人登録の信頼性を少しでも高めるために、可能であれば、彼らが持っているIDカードを電子化する、ICチップを埋め込むことによって、少なくとも二重登録ができないようにしていく、こういった支援というのはあり得るのではないかなと思っています。

 実は、これにどれぐらいのコストがかかるのか、技術的に可能なのかというのは、私も今調べているところでして、まだそのコスト等々についてこの場で正確な見込みの数字を申し上げることはできませんけれども、ここの部分が必ず問題になるということを考えると、日本の知見そして日本の技術を生かす、一つの大きな突破口になり得るのではないかと思います。

 この点については、大臣はどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 まず、阪口委員の、今日までカンボジアの選挙あるいは復興にかかわってこられた、こういった御努力には心から敬意を表し申し上げたいと存じます。

 そして、そうした貴重な経験を踏まえて御提案をいただきました。

 私自身も、この御提案について評価する材料というものは今持ち合わせておりませんが、我が国として貢献できる形、さまざまなものがあると思います。その中において、今御指摘の点でいうならば、我が国のすぐれた技術等で貢献するということになるのだと思いますが、そういったさまざまな切り口を通じて我が国が貢献する道を具体的に考えていく、こういった姿勢については大変重要ではないかと認識をいたします。

阪口委員 この点についての可能性について、ぜひ調査をしていただきたいと思っております。

 一方で、ボイコットをしている野党の指導者サム・ランシーが私におっしゃったことは、今回の七月二十八日の選挙についての独立した調査委員会の設置を与党側が約束すれば、その時点でボイコットを解いて国民議会に参加するということも言っております。その結果が与党勝利であっても野党の勝利であってもそれは問わない、そしてその仲介役を日本に果たしていただきたいということを野党の党首が言っているんです。

 先ほど、選挙制度改革については、カンボジアの与野党が、十八日、つい数日前ですね、合意したということですが、この選挙制度改革をするということは、今回の選挙にどのような問題があったのかということを調査することとセットで行うことで、より効果的なもの、実効性のあるものになると私は思っております。

 私の提案としては、これを日本だけが行うのがいいのかどうかわかりません。恐らく、日本が提案をして、EUやアメリカなど、民主主義という共通の価値観を持った国と連携をしてやることで、より信頼性、実効性が高まる可能性はあると思います。

 どちらにしても、カンボジアの和平については、日本政府は、大変に長い間、リーダーシップをとってまいりました。そして、日本に対する大変に高い信頼と期待があることも事実でございます。ぜひ、この点について、まさに顔が見えるリーダーシップを発揮していただきたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の選挙改革支援につきましては、先ほど申し上げましたように、昨年十二月の日・カンボジア首脳会談におきまして、調査団の派遣を既に表明させていただいております。そして、その調査団派遣に当たっては、今委員の方から、日本に対する期待も大変高いという御指摘がありました。ぜひ、現地のニーズ等もしっかりと把握した上で調査を行い、そしてその後の支援につなげていく、このように努力をしていきたいと考えております。

阪口委員 ぜひこの点についてリーダーシップを発揮していただきたいと思いますし、これは、政府に対してお願いするだけではなくて、我々野党も、また市民社会も協力をして、オール・ジャパンで立ち向かっていく、協力をするテーマであろうと思っております。

 ただ、この際に、本当に中立性というものが問われると思うんですね。

 国連主導の選挙が九三年に行われた後、カンボジアにおいては、九七年に、当時の第二首相であったフン・セン現首相によってクーデターが行われて、そして翌年の総選挙においては、フン・セン首相そして人民党が選挙に勝つことで認知されたということがございました。

 実は、先ほど申し上げたように、このとき私は政府の選挙監視ミッションの一員だったのですが、その当時、たしか南東アジア一課の課長であったと思います、今はアジア太洋州局長の伊原純一さんがおっしゃったこと、私は実は非常に記憶に残っています。

 そのとき伊原課長は、我々が考えている落としどころは人民党の勝利である、日本はさまざまな選挙後の復興支援を約束していて、ここで人民党が勝つことがそれらの援助を効果的に行う上では重要であるというようなことをおっしゃいました。

 私は、これは、先ほど申し上げたいわゆる失言とは違うものだと思います。我々は仲間であり、一緒にカンボジアの平和に協力したいと思っている我々に対し率直な意見をおっしゃったんだと思いますけれども、しかし、選挙監視チームが、落としどころは与党の勝利だという考えを持って活動を行う、それが日本の国益にもつながるというふうな考えを持つことは、これは決していいことではないと思うんですね。ですから、特にこのような分野で協力をする場合は、徹底的な中立性というものをしっかりと持って活動していくことが重要であると思っております。

 次に、同じ民主化支援、紛争解決という文脈の中で、ミャンマーのことについてもお伺いをしたいと思います。

 ミャンマーについては、本当に日本政府もさまざまな苦労をしながら、結果的に、今、以前よりは民主化の方向にかじを切って、ミャンマーという国のいろいろな意味での可能性が高まってきたということは評価すべきだと思います。

 ミャンマーについては、私も実は、目が見えない人たちを支援する基金を自分でつくって活動していたことがありまして、しかし、それをNGOにするということが大変に難しいという時代がございました。現在においても、NGOの活動というのは、ミャンマーにおいてはいろいろな制約があると思います。

 その中で、ジャパン・プラットフォームが、ミャンマーからの帰還民、今外国にいる、主にタイにいる帰還民を支援する活動のための活動資金を政府からもらって、今さまざまな活動をしているんですが、彼らに話を聞くと、一点大きな問題があるということでございます。

 具体的には、緊急人道支援でありながら、政府が支配している地域については活動が許されているけれども、しかし、反政府勢力が実効支配しているところには入ってくれるなということを言われていて、目の前に本当に救える命、救える人々がいるにもかかわらず、誰が支配しているかによって活動のやり方が変わってくる、活動する可能性が失われる、これは人道支援という見地からは大変に耐えがたいということを聞きました。

 これを何とか変えていかなければいけないと私は思っているんですけれども、この点については大臣はどのようにお考えでしょうか。

石原大臣政務官 阪口委員の御質問にお答えいたします。

 ジャパン・プラットフォームが活動されている地域は、まさに安全な地域ということで、ホワイトエリアと言われているところだと思うんですけれども、そして、危ないところはブラックエリアと言われていて、一つ一つ反政府の武力勢力がいるようなところの話だと思うんです。

 阪口委員御承知のように、今、NGOが、そもそもなかなかミャンマーで活動できなかったものが、平成二十四年以降ぐらいに活躍できるようになっていて、その中でも、実は、ミャンマー政府がNGOの活動を許可制にしている状況がございます。

 ですから、ジャパン・プラットフォームの皆様がホワイトエリアではないところでも活動したいということなのかもしれませんけれども、一応、今のところ、ミャンマー政府自身が、やはり危険性があるということで、そこになれたNGOを許可しながら活動させているという現状ではないかというふうに思います。

阪口委員 このテーマは本当に古くて新しいテーマというか、実効性のある活動をすることと、その活動を継続するためにも、治安に対する配慮、安全対策を万全に行う、これは大変に難しいことだと思います。

 ただ、この地域について自分自身がさまざまな角度から見る限りにおいては、政治的に安定している地域、少数民族支配地域であっても、普通に人々がそこで活動している地域というものもございます。

 先ほどの紛争の仲介の可能性ということを考えてみても、政府は、カウンターパートが相手国政府ということからも、なかなか活動が難しいということが仮にあったとしても、経験がある、特に、世界じゅうの紛争地域あるいは災害地域で活躍をしてきたジャパン・プラットフォームのNGOなどは、少数民族地域で活動するノウハウ、経験というのは持っていると私は思います。

 そういう意味では、国際人道支援において何が一番大事なのかということを中心に据えて、そのあたりはぜひ、政府がミャンマー政府とも交渉して、せっかくの国民の税金をより有効に使えるような、そういった環境づくりを行っていただきたいと思います。

 このことは、実はもう一つ、私が今回のテーマにしている紛争の仲介ということについても大変に大きな意味がありまして、そういった政府と対立している地域で、少数民族の方々からも信頼を得て活動している人たちあるいは活動している団体が、仲介役として政府ができない役割を果たしていく大きなポテンシャルを持った、そういった存在になっていく可能性があると思うんですね。ですから、相手国政府以外のアクターとの信頼関係づくりということを考えても、ぜひこのあたりは、これまでのスキームにとらわれず、国際的な支援の可能性を追求していただきたいと思います。

 ミャンマーに関してもう一点なんですけれども、その中で、現地政府とも、あるいは山岳少数民族とも信頼関係を築いているということで、日本財団が五年で百億という大変に大きな額を日本政府から供与されて活動しています。

 ちょっと私、この日本財団の活動がどのようなものであるのか、詳細は把握していないんですけれども、このような大変に大きな額を政府から受け取って活動しているということは、政府としては、この活動について詳細を把握する義務、責任があると思いますが、現在どのような活動をしているのか、また、活動する上で、さまざまな実施部隊、現地のNGOあるいは日本のNGOとの連携はどうなっているのか、その点について教えていただきたいと思います。

石原大臣政務官 ミャンマーにおけるいわゆる少数民族支配地域、若干危ないブラックエリアの地域の、NGOとして日本財団が五年間で百億円規模の緊急人道支援を行うということでありますけれども、その決定に当たっては、現地のパートナーとの連携のあり方も含めて、案件の具体的内容、人道的意義や裨益効果、我が国の援助政策との整合性等について総合的に審査を行っているところであります。

 案件の進捗状況や成果について、御指摘のとおりに、国民への説明責任の観点から、しっかりとした検証の体制を構築し、適切なモニタリングを行っていかなければいけないというふうに思います。

 ただ、私、この話を聞いている中で、ブラックエリアみたいな危ないところでちゃんと支援をされているというところを、果たして、館員の方が行くんでしょうけれども、そんなに頻繁に行ってどれだけチェックができるのかなという疑念もちょっと持ったんですね。ですから、そういうこともあります。金額も大きいので、そういう状況をしっかりとフォローアップしてまいりたいと思います。

阪口委員 ここは大変に難しい課題だと思います、今おっしゃったことは。ただ、それこそ、いろいろなアクターを有効活用できると思うんですね。日本大使館が行くのが一番いいのか、あるいは、例えば少数民族の言葉ができる日本人、あるいは外国人などもいらっしゃると思います。そのような方々を有効活用することで、より多くの情報が得られるかもしれない。

 大切なことは、これも大変に大きな額を税金から拠出しているプロジェクトでございますから、活動を行う以上は、それをしっかりと検証できる体制、これは必ず構築をしていただきたいと思います。

 そのことが結果的に二国間の信頼関係を深め、そして、ミャンマーにおいても今後さまざまな局面があると思います。特に、来年選挙がありまして、その中で混乱が起こる可能性もあるかもしれない。NGOが少数民族地域も含めた現地で活動を続けてきたことによって得た信頼というのは、そういった際に必ず役に立つと思います。

 何とかその活動がより効果的になるような体制の構築をぜひ行っていただきたいと思いますし、我々も、野党の立場あるいは市民社会の立場から支えてまいりたいと思いますので、ぜひこの点については思いを一つにして頑張っていきたいと思っております。

 時間になりましたので、実は、海外の補習校についても質問したいと思っていたんですが、これは次回に回すということで、質問を終えたいと思います。ありがとうございました。

鈴木委員長 午後一時から委員会を再開することし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小熊慎司君。

小熊委員 日本維新の会の小熊慎司です。

 午前中は大変高尚な質疑が続きましたが、私も頑張りたいと思います。

 まず初めに、我が党の阪口委員も御指摘をされましたけれども、いわゆる衛藤晟一首相補佐官の発言について、これは公私の区別とかいろいろあるとは思うんですが、やはり政治家の発言というのは公私の区別ということで言い切れない部分もあるというふうに思いますし、発言は撤回されましたけれども、それによってアメリカも、それは問題にしないという大人の対応をしてもらっているのも事実ではありますが、人の記憶は消せませんし、そのことに対してアメリカも大人にはなっているところはありますけれども、やはり少なからずこれは不信を与えてしまったのではないかというふうに思っています。

 総理の靖国参拝に対する見解云々は、政治家それぞれもありますし、いろいろな見解はあるところではありますけれども、それを踏まえつつも、衛藤補佐官の発言はやはりちょっとまずかったなというふうに思います。撤回したとしても、それはもう消せない事実ではありますから。

 そういった中で、外務大臣も日米同盟の深化をしていかなきゃいけないということはさまざまな場面でおっしゃっていますけれども、この首相補佐官の発言をどう今後フォローアップしていくのか。お互いの国でなかったことにはしていますけれども、アメリカの高官の記者会見によれば、やはり不快感を示していたということもありますから、大臣としては今後どのように対応していくのか、お答えください。

岸田国務大臣 衛藤総理補佐官の発言についてですが、まず確認しておかなければならないことは、衛藤総理補佐官のこの発言は個人的見解であり、日本政府の見解ではないということ、これはまずしっかり確認しなければなりません。

 靖国問題については、総理自身も述べておりますとおり、謙虚に、礼儀正しく、そして誠意を持って説明し、理解を求めていく、これが政府の方針であり、考え方であります。

 ですから、外務大臣の立場からしましては、今申し上げたこの衛藤総理補佐官の発言は政府見解ではないということと、そして、政府の考え方は今申し上げたとおりであるということ、このことをしっかりと説明し、そして、我が国の考え方について理解を得るべく努力をしていく、これが私の役割だと考えています。

小熊委員 これは大臣だったら絶対言わないことですし、何となくの記者会見とかでぽろっと出た話でもなくて、ユーチューブでやったんですから、確信的なものであったというふうにやはり思わざるを得ません。

 今大臣のおっしゃったような努力を積み重ねていくしかないんですけれども、もうこれは取り返せないんですが、これがなければ別にマイナスではなかったんですよね。

 これはしっかりと安倍内閣の中で、外務大臣の発言とかはもう全て満点に近いというふうに思いますし、失言はないというふうに私も思いますけれども、ぜひ、岸田大臣、俺を見習えというような感じで、しっかり指導してくださいという言葉が合うのかわかりませんけれども、しっかりここは、おごらずに、やはり慎重にやっていただかないと、官邸のメンバーの一員でありますから、それが私的見解とはいえ、それは外交上やはり影響が全くゼロではないわけですよ。余計な努力をしなきゃいけないわけですよ、外務大臣としても。これはしっかりとチームワークの中で徹底していただきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 次に、先ほど渡辺委員からもありましたけれども、北朝鮮の人権調査委員会の報告書についてであります。

 先ほどの答弁のとおり、これからフォローアップをしていく、国連の人権理事会で決議を求めていくということであります。この決議の中で、北朝鮮の担当の監視体制をしっかりする、そういう具体的な措置を求めていくというふうにも聞いておるところでありますけれども、そこの決議、また、その決議にかかわる国際社会への提言、意見といったものはどのようになっていくのか、もう一度お願いをいたします。

岸副大臣 小熊委員の御質問にお答えをいたします。

 北朝鮮の人権に関する国連の調査委員会の報告書の件でございますけれども、我が国は、二月十七日に公表されましたこの国連調査委員会の最終報告書をまず歓迎するという立場でございます。

 この最終報告書の公表によりまして、拉致問題を含みます北朝鮮の人権状況の深刻さがより明確に、明らかになったというふうに考えておりますし、今後、そのフォローアップを確実に、着実に行っていくことが何よりも重要である、このように考えておるわけでございます。

 拉致問題を含みます北朝鮮の人権侵害の解決に向けていかなる方法が効果的かという観点につきましては、今後、関係各国と協議を行っていきたいと考えております。

 その中で、まずは、我が国及びEUが三月の人権理事会に提出する北朝鮮人権状況決議がこの報告書の勧告を適切に反映して採択されますように各国と協議を行っていく、このように考えております。

小熊委員 各国との連携という中に、これはアメリカもコメントしていますけれども、やはり最大の支援国の中国に対しては働きかけていかなければいけないという姿勢もアメリカ政府として発信をされています。

 今、日中間、大変冷え込んではいますけれども、副大臣から答弁がありましたとおり、関係各国という中で、とりわけ、支援国の中国に対してはどのようにこの報告書を生かして対処していきますか。

岸副大臣 中国に対しての働きかけでございますけれども、この報告書によりまして、拉致問題を含む北朝鮮の人権状況、このことが、深刻さが明らかになったということなんですけれども、中国に対しても中身は相当厳しいものになっているというふうには理解をしております。

 その中で、中国がどのようにこの報告書に対して反応してくるものか、また、その後の状況というのは、やはり我々も注意しなければいけない点はあるわけですけれども、いずれにいたしましても、この勧告に対して、我々も中国に対して支持をするようにさまざまな面から働きかけを行っていかなければいけないと考えております。

小熊委員 そういった意味では、先ほど渡辺委員の答弁の中にもあったように、人権理事会の理事国に中国も入っているということでもありますから、この人権理事会の中ででも、やはり中国とのやりとりをしていかなければいけないというふうに思っています。

 ただ一方で、この報告書に関しては北朝鮮はもうコメントを出していて、認めがたい、威信を落とすものだというふうに痛烈な批判をしているところでありますけれども、ぜひ、これは、北朝鮮と国交もある国も幾つかありますから、そういう国も含めてはもちろんでありますけれども、やはり支援をしている中国というのが一つの肝になってくるというふうに思います。

 しっかりとそこは、この報告書を生かして、中国に対する働きかけというのを、中国以外の関係各国としっかりと連携をとって、中国対策も関係各国と連携をとるべきだというふうに思います。

 その中にもやはり隣国の韓国も入るわけですけれども、なかなか、日韓の間も今冷え込んだ中で、大変ハードルが高いというか状況が厳しい部分はありますけれども、それを乗り越えて、やはり対中国の対策ということも北朝鮮対策においては非常に重要ですから、そういう意味においても関係各国と連携すべきだと思いますけれども、再度お願いをいたします。

岸田国務大臣 中国との連携、御指摘の問題において大変重要だと認識をしております。人権理事会の場等を通じまして、中国にもしっかり働きかけていかなければならないと考えています。

 そして、今回の報告書につきましては、報告書自体、北朝鮮に対する強いメッセージということをしっかり強調していき、国際社会と連携して北朝鮮にしっかりと伝えていかなければならないわけですが、あわせて、具体的にこの報告書をフォローアップしなければなりません。フォローアップするための拠点をアジア等につくるという議論もあります。

 ぜひ、こうした具体的なフォローアップにおいても関係国としっかり連携をして、そして結果を出していきたいと考えています。

小熊委員 とりわけ拉致家族にとっては時間がないというのもありますから、ぜひ最大限の努力をして対応をとっていただきたいというふうに思います。

 次に移ります。

 いわゆる日台漁業協定ですけれども、二月七日の参議院の予算委員会で、我が党の儀間議員からも、この件については大臣と質疑をさせていただきました。

 その後、二月の十日、十一日と、日本維新の会の中に沖縄プロジェクトチームというのがありまして、同僚の阪口委員とも一緒に沖縄を訪れて、八重山諸島に行ってまいりました。その中で、漁業関係者とも意見交換をさせていただきましたけれども、二月七日の大臣の答弁と現場との温度差というのを非常に感じた次第であります。

 これは非常に重要な海域でありますし、その海洋資源をしっかりと保護していく、活用していくという狙いは、もちろんそれは漁業関係者も否定するものではないですけれども、やはり大きく台湾に譲ってしまっているという側面があります。

 なおのこと、残念ながら、台湾の漁業関係者のこの海域での漁業の仕方が、やはりちょっとルールにのっとっていない、非常に乱暴なやり方をしているということで、日本の漁船の網なんか勝手に切っちゃうし、逆に、台湾の漁船同士で漁具を奪い合ったり切ったりもしているというぐらい、非常に紳士的でないんですね。そういう中で、しっかりとこの漁業協定が本来の目的を達しなければいけないんですけれども、そのようになっていない。なおのこと、何で一番いい漁場を譲ってしまったのかというのが現場の大きな声でした。

 そこを何でしっかり確保できなかったのか、改めてお聞きいたします。

岸田国務大臣 まず、御指摘の日台民間漁業取り決めは、日台の民間窓口機関の間で十七年にわたり議論を積み重ねてきました。その間、漁業関係者を初め多くの関係者の意見も踏まえ、また、さまざまな議論が行われて、そして、昨年四月、署名に至ったものです。

 この十七年間の議論の結果、こうした署名に至ったこと自体は、日台の実務的協力関係の充実ぶりを示すものであり、歴史的な意義があると考えています。

 しかしながら、その署名後も関係者の中からさまざまな懸念が表明されているということ、このことについては真摯に受けとめなければならないと思っています。

 そして、昨年四月の署名以後、こうした枠組みが合意された後、その具体的な取り決め適用水域における操業の取り扱い、操業のルール等につきまして、引き続き議論が行われてきました。漁業関係者の皆様の意向を踏まえながら、こうした操業ルールについても精力的に議論が続けられてきたところです。

 そして、ことしの一月に、この議論につきましても、日台双方の漁業者の皆様の参加を得て、日台漁業委員会において結論に至ったと承知をしております。

 こうした長きにわたっての議論、漁業関係者を初めさまざまな方々に御参加いただき今日に至ったことについては、その間の御努力に対して心から敬意を表し申し上げたいと存じますし、ぜひこの取り決めが円滑に運用されることを期待したいと思いますが、ただ、委員御指摘のように、引き続き漁業関係者の中から懸念の声が上がり、また、いろいろな指摘があるということ、このこともまた引き続き真摯に受けとめなければならないと思っています。

 そして、今後の取り決めの扱いにつきましては、ルールの実施状況等を踏まえてレビューが行われるものと承知をしております。レビューが行われ、そして見直しが行われる、こういった運びになると我々は承知をしております。

 ぜひ、こうした動きもしっかりと確認しながら、これは基本的には民間の取り決めではありますが、政府としましても、こうした取り決めの運用に関しまして、現場の状況も注視しながら、必要な支援は行っていきたいと考えています。

小熊委員 十七年にわたる努力は充実していたのかもしれませんけれども、現場サイドではそれが伝わっていないですし、まだまだ意見の吸い上げが足りていなかった、その思いが、この沖縄の周辺海域で漁をしている漁業関係者からいうと、まだ不満が相当残っているということでもありますし、操業ルールが細かく詰められていない段階で協定を早期に決めてしまったということのこの順序にしても、納得、理解をしていないというふうに私たちは聞き取りで受けとめてまいりました。

 今後の操業ルールの決定に至っては、これはやはり、今そういう不信がある、意見が吸い上げられていないという不満があるという背景のもとに、より一層慎重に、より密にやっていただかないと、これは本来の協定の目的の、この海域の利活用、保護といったものを達成できなくなります。

 また一方で、台湾側の監視体制というものがやはり甘いという話も聞いてきました。日本の方が厳し過ぎて、五日前に出船するかどうか決めろとか、天気によって変わるんですから、そんな変なことを言われてもというのもありましたし、日本は真面目に取り締まりしていても、台湾側がやらなければ意味がないわけですね。

 そういう中で、一方で、この漁業協定とは別個に、これは日本が主導して、事務局も設置をした北太平洋公海漁業条約がありますね。これは、ことしじゅうに台湾が入ってくるというふうに聞いております。これは非常にしっかりとしたルールのもとで、また、対象国、締結国がそのルールを守るということです。そのペナルティーも厳しいということでもあります。

 これに台湾が入ってくるということでもありますので、そうした現場においては、無法な漁船が結構あるということでもありますから、これは日台漁業協定とは別のものですけれども、こういう国際社会のルールを持って、物差しを持って、これも利用しつつ、台湾の監視体制や、また漁業関係者の冷静な紳士的な操業といったものに私は利活用していくべきだというふうに思うんですね、特にこれは日本が主導してやっている条約で、事務局も日本にありますから。

 そういった観点から、複合的にあの海域での管理そして活用といったものをしていくべきだというふうに思いますが、直接は絡みませんけれども、いわゆる台湾の漁船の取り締まりやあり方について、北太平洋公海条約などを利活用して、てこ入れしてやっていくという考えについて、御見解を求めたいと思います。

岸田国務大臣 済みません、御指摘のこの条約につきまして、今手元に資料がないものですから、ちょっと私自身、十二分にこの内容を承知してはおりませんが、いずれにしましても、委員が御指摘になられておるように、この問題につきまして、地元の漁業者の方々の懸念とか意見、これは大変重要であるという認識については、そのとおりだと存じます。

 こうした現状、この取り決めについて署名が行われ、操業ルールについても一致を見た今日においても懸念が表明されていることについては、これは真摯に受けとめなければならないと思います。

 ぜひ、今後とも、この取り決め自体、しっかりと状況が確認され、レビューが行われ、必要であるならば見直しが行われる、そういった推移を見守っていきたいというふうに思いますし、政府としましても、実情をしっかり把握した上で、適切な支援は考えていかなければならないと考えます。

小熊委員 手元になくても、これは日本が主導してやった北太平洋公海漁業条約、この委員会でも質問しましたけれども。

 だから、法の支配とか安倍外交も言っていますから、そういう意味では、台湾も法の支配のもとにちゃんと操業していきましょうよということを我々が主張して、台湾に守ってもらうためにも、こういういい条約、事務局が日本ですから、台湾はことし締結国のメンバーの中に入ってくるということなので、ですから、こういうものも活用しながら台湾漁船の取り締まりをやってくださいという意味で言いましたので、これ、大臣、知らないというのは、日本が主導してやった条約ですから、これはぜひよろしくお願いをいたします。

 では、次に移ります。ODAの関連の質問です。

 来週にはODA白書も閣議決定をされるというふうに聞いております。また、大臣の外交演説、また所信の中でも出ましたけれども、ODA六十周年、節目の年でもありますが、六十周年という割には、来年度の予算があれっというような感じなんですね。

 この六十周年を契機に、もう本当に一九九〇年代後半からのピーク時から半減している中でありますし、また、今円安になっていて、それはドル建てにすれば予算立ても非常に厳しいというのはわかりますけれども、やはりここは、六十周年と高らかに言っている割には、かけ声倒れで、予算にしっかり反映していないというふうに思うんです。

 これまでの選択と集中で効果的にやっていくという方向性も踏まえつつ、さはさりながら、やはり量もふやしていかないと、選択と集中だけではやはりこれは国家戦略として広がりがないというふうに私は思います。

 大臣、もう予算も審議が始まっちゃって原案がありますけれども、何でもっとODA予算の増額を頑張れなかったのか、ちょっとその経緯を改めてお聞きいたします。

岸田国務大臣 まず、ODAにつきましては、我が国の外交にとりまして大変重要な手段でありますし、ODAが開始されてから六十周年という大きな節目を迎えるに当たりまして、改めてODAが我が国の外交において果たしていた役割を振り返り、そして国際社会からも高い評価を得てきているということをしっかりと確認した上で、今後のODAのあり方について考えていかなければならないと思っています。

 そして、予算について御指摘がありました。外務省のODA予算ということでいうなら、これは一応、四年連続増額はしております。ただ、増額の幅等を考えますときに、こうした円安の状況もあります、これが十分なのかという議論は確かにあると存じます。

 しかしながら、基本姿勢として、ODAの充実に向けては引き続き努力をしていきたいと存じますし、額そして質ともに国際的な高い評価を得られるように努力をしていきたいと考えています。

小熊委員 増加しているといっても本当に気持ち程度で、かつてあった予算から見たらちょっと戻しているぐらいの話で、全然やはり足りていないと思うんですね。

 これは六十周年契機ですから、今までの選択と集中というやり方で、そういう言葉を使いながら、やはりそれは削ってきた、削る、カットしていくというのを選択と集中という美名にかえて、外務省自身が自分自身を納得させていたというふうにしか私は見えていないんですよ。

 これは国家戦略です。以前も議論させてもらいましたけれども、震災の年、民主党政権時代でありましたけれども、このODA予算がやり玉に上がって削られました。そのとき、ODAの委員会で、昨年残念ながらお亡くなりになりましたけれども、中村博彦当時のODAの委員長が、超党派の署名を集めて、ODAを減らすな、そういう提言書を官邸に持っていきました。

 私も福島県の出身であります。地元からも、日本全国からも批判の声をいただきました。日本が大変なときに海外に金を出すのを賛成するなんて何事だ、削って当たり前だろうと。あのときから、多分、国民の皆さんも、やはりODAはチャリティーだということを、そういう認識が直っていないと思うんですよ。国家戦略だということを認識してもらっていない。

 ことし、せっかくODA六十年、六十年と言っているのであれば、ここはもっとエポックメーキング的に、どんと増額をするなりして、なおかつ、国民の皆さんにも、これが日本の国益のためにもなっているんだと、評価があるとかだけじゃなくて。

 それは、大臣だって委員の皆さんだって海外に行ってみれば、特に周辺諸国を見れば、中国や韓国の方がプレゼンスが上がっていて、日本のプレゼンスが下がっている、ODAだけのせいではないんですけれども。やはり、日本がしっかりと、先ほど阪口委員が地球益、人類益と言いましたけれども、そういうことに貢献することが、ひいては日本の国益になっているという、この絵図をもっと高らかに上げていかなきゃいけないと思うんですよ。

 大臣は本当に失言もなくて紳士的で、すばらしい大臣なんですけれども、そこはもっと積極的に声高に言っていかないと、このぐらいの増額で増額しましたと言ってもらっても困るんですよ。

 だから、私は倍増して、本当にピーク時ぐらいに持っていくべきだというふうに思いますし、今のこの国際状況を考えたときに、日本の果たす役割はさらに大きくなっているわけですし、あとは、他国のやり方を批判するわけではないんですけれども、やはりどうしてもほかの国の開発を見ていると、日本がやっている開発よりは、全然その国のためになっていない、そんな状況が間々見受けられますから、やはり日本が国際協力のスタンダードとして頑張らないと、逆に開発国が乱開発になってしまう。その国のためといって出ていっている国がやっていることが、その国のためになっていない。

 国際秩序を守る積極的平和主義というのも、やはり言葉だけじゃだめですよ。しっかりとそれはやっていかなきゃいけない。選択と集中というのも、あるいはそれを乗り越える新しいテーゼを、ぜひODAにおいて、この六十周年を契機に、外務大臣、出すべきじゃないですか。今までの選択と集中というやり方でずっとやっていっても、徐々に予算が伸びたり、徐々に減ったり、こんなことですよ。本当のV字回復はしないと思いますよ。

 六十周年を契機に、新しい戦略的ODAと言っていますけれども、それもちっちゃい範囲ですから、もっと新機軸を出すべきじゃないですか。大臣、どうですか。

岸田国務大臣 まず、委員のODAに対する御理解また応援につきましては、心から感謝を申し上げたいと存じます。

 ODAというもの、これは間違いなく、我が国の外交にとって大変重要なツールの一つであります。我が国の外交にとって好ましい環境をつくっていく、あるいは、我が国と対象国との信頼関係を醸成していく、さらには、ODAと民間投資等が合わさることによりまして、我が国の経済成長にも資する、そして、相手の国との間でウイン・ウインの好ましい関係ができ上がっていく、こういった可能性もあるわけですので、ODAの重要性については改めて申し上げるまでもないと考えます。

 ぜひ、財政厳しい状況の中にはありますが、外務省としましては、ODAの充実に向けてしっかり努力をしていきたいと考えておりますし、ODA六十周年という節目の年に当たりまして、改めて、ODAのあり方について、今日までの検証も踏まえながら、しっかりとした議論を盛り上げていきたいと考えます。

小熊委員 そういう中で、あと、人間の安全保障ということも先ほど出ましたけれども、そういう意味でも、もちろん、防衛力とかそういうハードな部分での安全保障もありますが、やはり人間の安全保障ということで、地域の安定、世界の安定、日本の平和を確保していく、重要なテーマでもあります。

 聞くところによると、ODA白書も、公明党さんがもっと頑張ればよかったんだけれども、三本ぐらいの柱で、三本目に人間の安全保障と入っている。いや、こういうのを逆に一番目に持ってきて、そういう観点からも主張して、国民全体を含めてやっていかなきゃいけないというふうに思うんですよ。

 こんなODA予算で、国際社会の中で貢献してください、お金だけじゃないんですけれども、しろといったってできようがないですし、あとは、日本の国益につながるという意味でも、さまざまな海外の国との交流、留学生をふやせ、こっちに来る留学生をふやそう、また、海外で活躍する企業もふやしていこうといっても、こんなのでは出ていって勝てるわけがないんですよ。

 やはりそれは、しっかりと世界の中での日本が発展をしていくバックグラウンドづくりとしても、このODAのあり方というのは、今のままだったら本当に、それは財務省の縛りが厳しいのかもしれませんけれども、こんな倍増なんかできるわけないです。倍増まで目指してどういう仕掛けをしていったらいいのか、ぜひ、大臣、本気で考えていただきたいと思います。

 今、内向き内向きと言われている日本の中で、これを転換していくという意味においても、このODA予算のあり方というのは、これからの日本人の、日本全体の生き方に通じる重要な予算ですから、これは本当に真剣に取り組んでいただいて、予算確保にしっかりと努めていただかないといけないと思いますし、その点については、我々は野党ではありますけれども、大いに賛成をするところでありますし、ぜひ、この程度の予算ではなくて、しっかりと増額を目指して、内容の充実もさることながら、やっていただきたいというふうに思います。

 また、ODAの質の部分でいえば、タイド、アンタイドといったテーマがあります。今ほかの国々も、どちらかといえば、タイドに変えていく。それぞれの国々で、どう国に還元されているんだ、国益にかなっているんだという議論も、それぞれの国の議会でもやはり議論しているというのを聞いております。

 タイド、アンタイドでやって、タイドにしても、結局、応札がないという話も聞きます。一社ぐらいしかない。そうすると、随意契約みたいになるから、やはり透明性を確保できないということで、結局はアンタイドにしてしまうという状況もあるわけですよ。

 ということを考えれば、この戦略的ODAの中に中小企業の海外支援も入っていますけれども、若者だけではなくて、企業も何で海外に出ていかないのか、そういう元気のない日本になってしまっているということも踏まえて、ODAの有効的な使い方を考えなければならないというふうに思っています。

 若者も企業も内向きになってしまっている、この背景を捉えて、しっかりそれを支援していくということが必要だというふうに思っています。それがないと、タイド、アンタイドで縛りをかけたとしても、結局、それが成立しないという状況が今の段階であるわけですから、企業支援という部分に関して、もっと、より一層やらなきゃいけないというふうに思います。

 今、私の地元も非常に大変な状況であるんですけれども、過日、福島県から元気を出していこう、福島県だけで頑張るのではなくて、福島県に拠点を置きながら、県外に出ていこう、海外にも出ていこうということで、中小企業支援のメニューもお聞きしたんですけれども、やはりなかなか、コンサルを入れないとこれがうまくいかない。

 それは、お金を出す方からすれば、やはりコンサルをかませた方が補助を出しやすい、支援しやすいという声もわかるんですけれども、逆にそういう、ふだん海外とつき合いのなかった中小企業を外に出すということですから、コンサルをかませなくてもそれを吸い上げられるという仕組みをやはり考えていかなければいけないというふうに思うんです。

 時間がありませんから、総論的に、先ほど言った、タイドにしたときに応札がないという状況も踏まえて、海外への企業支援、さらに充実していかないと、今、枠があるのに有効的に使われないという状況でありますから、少しこれは改善をする必要があるというふうに思いますので、その点についての見解をお聞きいたします。

岸田国務大臣 まず、我が国は、昨年来、国際協調主義に基づく積極的平和主義という外交・安全保障政策を掲げて、より国際社会に貢献しようということを表明しています。

 こうした我が国の外交政策の中においてODAがどんな役割を果たしていくのか、こういった点についてもしっかりと説明をし、そして国内初め多くの関係者にODAに対する理解を深める、そのことによってODAを充実させることについて理解を得ていく、こういったことを考えていかなければいけないと思っています。

 そして、あわせて、ODAの運用等につきましては、御指摘のような点、これはごもっともだと思います。ぜひ、こういった具体的な運用、活用の仕方等につきましても、六十周年のことし、また一度議論を深めていきたいと思っております。

小熊委員 ありがとうございます。

 ぜひ、選択と集中と拡大という新機軸でODAに取り組んでいただくことを申し述べて、質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 今国会から外務委員会に新しく加わりました結いの党の青柳陽一郎と申します。本日は質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本日、岸田大臣の所信についていろいろお伺いしたいと思いますが、質問通告しました内容は、正直申しまして、ほとんどきょうの議論で質問があったことばかりなので、重なってしまいますが、御了承いただきまして、質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、国際協調主義に基づく積極的平和主義についてやはり伺いたいと思います。

 今や、どの国も一国でみずからの平和と安全を維持できない、こうした国際状況の変化を受けて、日本は、国際協調に基づく積極的平和主義で、これまで以上に地域と国際社会の平和と安全に貢献するということでございますが、積極的平和主義自体を私も否定するわけではありませんが、しかし、現実に起こっている今の状況は、積極的平和主義を安倍政権が打ち出せば打ち出すほど、地域の平和と安全に本当に貢献しているような状況になっているのか、近隣諸国との国際協調を逆に乱しているのではないか。

 実際に、ごく一部ですが、一部の国から反発を招いているのは事実ですし、結果として、国際協調ということと矛盾した結果になっているのではないかということからすると、政府は、国際社会での、特に近隣諸国での一層の理解を得る努力をこれまで以上にしていかなければいけないのではないかと思います。

 そういう努力をしておられると思いますが、これで足りていると思われているのかどうか、外務省以外のさまざまな、きょうも議論になっているような発言や動きも踏まえて、大臣の見解をまずは伺いたいと思います。

岸田国務大臣 国際協調主義に基づく積極的平和主義につきましては、今委員の方からお話しいただいたような考え方に基づいて、我が国は外交政策の基本的な考え方として打ち出しをさせていただいているところであります。

 この考え方につきましては、昨年来、総理や外務大臣を初め各閣僚も、さまざまな場を通じまして各国に理解を求めてきました。

 そして、今日まで、インドネシアですとかシンガポールを初めとするASEAN諸国、また、欧米諸国においても、米国、英国、フランス、ドイツ、さらにはEU、それ以外にも豪州、こういった国々から、こうした我が国の積極的平和主義の考え方については歓迎する、あるいは支持する、こういった公式の発言を得ている、こういった状況にあります。しかし、一方で、今委員御指摘のように、一部近隣諸国の中で、こういった動きに対してさまざまな意見があるということも承知をしております。

 こういったこともありますので、我が国としては、こうした積極的平和主義について説明努力をする、さらには、昨年十二月に、我が国としまして初めて国家安全保障戦略を公にしたわけですが、この国家安全保障戦略の中にも、積極的平和主義に対する考え方あるいは具体的な取り組みについて明らかにしています。積極的平和主義の考え方の透明性をこういった形で高めていく、国際社会に明らかにしていく、こういった努力もしているところであります。

 ぜひ、引き続きまして、この考え方や具体的な取り組みにつきまして、しっかりと説明努力を続けていきたいと考えています。

青柳委員 ありがとうございます。

 今お話にも一部ありましたけれども、この積極的平和主義に基づいて、政権が二年目に入りましたし、大臣ももう二回目の予算を迎えることになりました。

 具体的に何をやったのかと言われれば、昨年はNSCを設置した、あるいはNSSを策定し、NDPGを策定されているということでございますが、こうした実際に策定した戦略を、あるいは政策を、あるいはそもそもの積極的平和主義を具体的に実践しようとする場合、午前中もいろいろ答弁されておりますが、現在、安保法制懇で議論している、この答申を待つということはもちろん承知しておりますが、そもそも、この今の戦略を実施しようと思うときに、現在の法律や法整備で足りるとお考えになられているのか、あるいは、足らざると思えば、どこをどのように改正していくおつもりなのか。

 あるいは、もうこれは安保法制懇での議論、答申を待つということではなくて、今、国民の大きな関心事の一つになっている集団的自衛権の行使、どうするのかということについて、これも午前中の議論で出ていますけれども、総理は閣議決定する方針をきのう明言したわけでございます。

 ぜひ、岸田大臣自身も、国民に対して、どうしていくのかということについては、安保法制懇の答申を待つという答弁一辺倒ではなくて、大臣自身も私は積極的に説明をしていくことが必要だと思いますが、そうしたことも踏まえて、御説明していただけませんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、積極的平和主義につきましては、こうした言葉を使って、より我が国の姿勢やメッセージを明らかにしたということでありますが、従来からも、こうした基本的な考え方は我が国の外交において大切にされてきました。

 昨年一年を振り返りましても、こうした積極的平和主義の考え方に基づいて、例えばフィリピンにおきましての台風被害において一千二百名の自衛隊員を緊急支援という形で派遣するというようなこと、さらには自衛隊によるソマリア沖・アデン湾における海賊対処活動も続けているわけでありますし、また、シリアにおける化学兵器の廃棄に向けた協力、こうしたことにつきましても我が国として貢献をしているわけでありますし、また、イランの核問題につきまして、イランに、我が国の伝統的な友好関係に基づいて、平和解決に向けて働きかける、こういったことも行ってきました。

 こういった積極的平和主義の考え方に基づいて、さまざまな活動を昨年も行ってきたわけでありますし、そして今後も、PKOを含む国際平和協力の推進、そして、先ほども議論になりましたODAの活用、あるいは人間の安全保障の実現、あるいは国連外交の強化、あるいは軍縮・不拡散といった取り組み、こういった具体的な取り組みは積極的平和主義の考えに基づいて進めていくべき課題だと思っています。

 そして、その中で、今質問にありました集団的自衛権の問題でありますが、集団的自衛権の問題も、ある意味では、我が国の平和や安定は一国だけでは守ることができない、やはり国際社会と連携して、地域や国際社会全体の平和や安定を守ることによって我が国の安全も守っていく、こういった発想から集団的自衛権についても議論するべきではないか、こういった議論につながっていると考えています。

 中身につきましては、繰り返しになりますが、これは安保法制懇、有識者会議で今議論が続けられていますので、今の段階で具体的なものを触れるのは適切ではないと思っていますが、基本的な考え方としては、こうした地域や国際社会全体の安定や平和を守っていかなければいけない、そのために我が国としては貢献をしなければならない、こうした発想に基づいての議論であるというふうに認識をしております。

青柳委員 ありがとうございます。

 重ねて申し上げますけれども、私は積極的平和主義は否定しているわけではございません。一層の理解を得る努力が必要だということを申し上げているわけでございます。

 そういう意味では、岸田大臣は、本年の一月三十一日、第五十回目となるドイツ・ミュンヘンでの安全保障会議にわざわざ出席されたということでございます。安全保障分野におけるダボス会議とも言えるこの会議に日本の閣僚として参加したのは二人目だということだそうでございますが、この会議で岸田大臣は何を発信して、どのような成果があったのでしょうか、教えていただければと思います。

岸田国務大臣 御指摘のミュンヘン安全保障会議ですが、今御指摘のように、安全保障におけるダボス会議などと言われている会議ですが、ことしで五十回目という歴史と伝統のある安全保障に関する会議であり、当日は、たしか四百名を超える参加者、各国の外務大臣、防衛大臣を初め多くの要人が集まっておられました。その五十回目の記念会議に、ぜひ日本の外務大臣にスピーカーとして参加してもらいたいという主催者からの招待がありましたので、我が国の外相としまして久々に出席をさせていただきました。

 そして、出席に当たりましては、まずは、今も議論になっておりました我が国の国際協調主義に基づく積極的平和主義、我が国の外交、安全保障の基本的な方針について説明をさせていただき、そして、具体的な取り組みとして我が国がどんな取り組みを行っているのか、こういったことを紹介させていただきまして、我が国としての国際的な平和や安定に寄与していく決意を表明させていただいた、こういったことでありました。

 冒頭申し上げたように、大変ハイレベルの安全保障関係者が多く集まる会議において、改めて我が国の外交・安全保障政策を紹介し、説明し、理解を求める大変よい機会をいただいたと感じながら会議に出席をしてまいりました。

青柳委員 ありがとうございます。

 次に移りますが、岸田大臣は所信表明でも戦略的な対外発信に努めるということを表明されておられますが、実際、二十六年度予算を見ましても、内閣官房や内閣府とあわせて、政府で実際にそういうことを取り組んでおられるということは見てとれるわけでございます。

 私は、きょうの午前中の質疑でもありましたけれども、戦略的な対外発信だけでなくて、これは外務省さんの仕事でないのかもしれませんが、国内での、日本国民向けの発信、あるいは、対外向けには広報だけでなくてロビー活動というのが重要視されるんじゃないかなと思います。先ほど来、渡辺先生の質疑でもありましたように、パンフレットをつくって配って終わりというのでは効果があらわれないというのはおっしゃるとおりだと思います。

 例えば韓国では、私も視察してまいりましたけれども、あらゆる公共スペースに竹島のライブ映像をわざわざネットで配信している、韓国の国民は竹島を見ない日はないというぐらいのことを相手はやっているわけでございまして、そういう意味で本当の戦略的な対外発信というのはどういうふうにやっていくおつもりなのか、お考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 外務省の広報につきましては、まず、今委員からも御指摘いただきましたように、国内に向けてもしっかりと外交政策を理解していただく、こうした国民の理解を背景に外交政策を力強く推し進めていく、こういった考え方ももちろん重要だと思っています。

 そして、あわせて、対外的な、国際的な広報戦略、対策、これも大変重要な点であります。午前中の議論で、平成二十六年度予算においては、外務省の国際広報政策としまして、二十五年度に比べまして四二・七%増加という予算をお願いしております。ぜひ御了解いただきまして、予算の額としましてもしっかりとしたものを確保したいと思っていますが、額だけではなくして中身が重要だということ、これも当然のことであります。

 中身としましても、引き続きまして、動画ですとかフライヤーですとか、こうした説明のツールにつきましてもより一層充実をさせていく、あるいは外務省のホームページの充実など、従来の努力をよりバージョンアップさせるということ、これももちろんでありますし、また、来年度の予算においては、例えば国際世論あるいはそれぞれの国の世論に大きな影響を持つ有識者の方々の横のネットワークをつくっていこう、そして各国の世論に大きな影響力を持つ有識者同士の国際的なネットワークをつくる、そのためのプラットホームを外務省でつくろうではないか、こうした新規予算もお願いをしているところです。

 ぜひ、こうした質、量ともに国際広報政策においてもしっかり充実させることによって、成果を上げていきたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間の関係で、日米関係についてもいろいろお伺いしたいことはあるんですが、特に日米関係のところで、四月にオバマ大統領も来日するということもありますが、やはりきょうの一番の問題は、今週末、まさにあしたから始まるTPPの閣僚会合、これが一つの大きな山場になると思っております。

 私は予算委員会で甘利大臣にもお伺いしましたが、外務大臣としてどのような役割を果たせるのか。大臣の所信でも、TPP交渉の妥結に向けて取り組んでいくとおっしゃられておりますが、今週末、まさに大きな山場を迎えるTPP交渉において大臣が果たす役割についてお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 TPP交渉、これは今日まで国益と国益がぶつかる大変激しい交渉が続いております。しかしながら、国家百年の計と言ってよい大変重要な交渉であると考えております。総理からも、関係閣僚に対しまして、しっかりと支援をするようにという指示も出ているところであります。

 TPP交渉には甘利担当大臣がシンガポールに出かけていくわけでありますが、私の立場からしましても、今日まで二国間交渉あるいはさまざまな会議の場を通じまして、TPP参加国に対しましてはこの重要性を言及し、連携強化を働きかける、こういったことを続けてきたわけでありますし、また、TPP交渉と並行して日米並行交渉も議論が進められています。米国との並行交渉については、TPPと足並みをそろえて、妥結を図るべく外務大臣として指揮をとっている、こういった立場であります。

 あわせて、交渉に当たって情報収集ということにつきましては、TPP参加国の在外公館を初め全世界の在外公館を通じて、しっかりと情報を収集して、交渉に資する材料とさせていただいている、こういった努力も続けてきたところであります。

 こういったことで、ぜひ、外務大臣としましても、内閣の一員としまして、TPP交渉を全面的にしっかりと引き続き支援をしていきたいと考えています。

青柳委員 ありがとうございます。

 TPP交渉でも日米間の認識のずれがあるのは事実ですし、重要五品目について、これが交渉の最大の課題となっているのはもう事実だと思います。

 日本の外務大臣として、あるいは自民党の大御所の国会議員として、自民党のバックにいると言われる農業の関連団体と大臣が乗り込んで交渉するおつもりはありませんでしょうか。

岸田国務大臣 交渉の担当者、やり方につきましては、政府一体となって、しっかり役割分担をしながら考えていかなければならないとは思っています。

 しかしながら、このTPP交渉、国益のかかった大変重要な交渉だと思っています。特に大きな議論になっております農業分野につきましては、衆参の農水委員会での決議等があります。こうした決議をしっかり踏まえて、全力で交渉に取り組んでいかなければならない、国益をしっかり守っていかなければならない、こういった覚悟や意識は内閣として共有するものであります。

 ぜひ、その思いを実現するべく、内閣一体となって取り組んでいきたいと考えています。

青柳委員 ありがとうございます。

 最後になりますが、せっかく岸副大臣にもお越しいただきましたので、ちょっと順番を変えまして、質問させていただきたいと思います。

 昨年、二〇二〇年の東京オリンピックの招致に成功しましたし、今まさにソチ・オリンピックが開催されて、日本人の選手が活躍して、多くの我々国民、感動の渦に浸っているわけでございますが、スポーツの力を外交にもぜひ生かしていくというのは、当然、国家戦略として必要だと思っております。

 そういう中で、今般、外務省の中にスポーツ外交強化懇談会というのを設置されたということをお伺いしております。私は大変いいことだなと思っておりますし、スポーツが持っている力をあわせて外交に使っていくというのも必要だと思いますし、スポーツ関係の国際機関にも日本人の方が多く入っていくということも、これは二〇二〇年の成功に向けて必要だと思っております。

 今般設置されたこのスポーツ外交強化懇談会や、あるいはオリンピック招致の際に打ち出されたスポーツ・フォー・トゥモローというのをどのように活用していかれるのか、副大臣のお考えをお伺いさせてください。

岸副大臣 お答えいたします。

 今委員がおっしゃられましたとおり、ソチ・オリンピックでのスポーツ、これが日本国民また国際社会の多くの方に感動を呼び起こしていることはもう間違いないところであります。また、昨年の東京オリンピック招致におきましては、我が国が一丸となって東京オリンピックの招致に向かい、そしてそれをなし遂げることができたわけでございます。

 先ほどのスポーツ外交強化に関する有識者懇談会でございますけれども、先般、二月十三日に第一回の会合が行われまして、私が岸田大臣の代理として出席をさせていただきました。

 東京オリンピック・パラリンピックの開催決定に鑑みまして、スポーツの持つ力をどのように我が国の外交強化に生かしていくか、このことについて幅広く、有識者の方、そしてアスリートの方、有森裕子さんもいらしていただきました、鈴木大地選手もいらしていただきました、小倉和夫国際交流基金顧問に座長になっていただいて、さまざまな意見を集めるために設置をしたものでございます。

 会合では、それぞれの現場での経験や、また、国際政治の観点を踏まえた活発な意見交換が行われたところでございます。本年末まで御議論いただいて、外務大臣に対して必要な施策等について提言をいただいて、その提言を踏まえて、またスポーツの持つ力をこれまで以上に外交に生かしていこう、こういう方針でございます。

 スポーツ・フォー・トゥモローのことについても御質問がございました。

 これは、スポーツの指導者の派遣やスポーツの関連施設の整備、器材の供与といったものを通じまして、東京オリンピックの開催の年であります二〇二〇年までに、百カ国、一千万人以上を対象にして、スポーツの価値、そしてオリンピックムーブメント、これを広げることを目標にしているわけでございます。

 この最初の案件といたしまして、本年一月の安倍総理のアフリカ訪問のときに、総理からコートジボワールの柔道武道連盟に対しまして、柔道着の百着の贈呈を行いました。また、柔道関係者の日本への招聘を発表したところです。また、今後、数年の間に、スポーツ分野で活動する青年海外協力隊の隊員の派遣数を倍増していく考えでございます。

 これからも着実に実施していきたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 時間が来ましたので終わりますが、相変わらず柔道着を配って終わりとか、そういうようなことでないようなことをやっていただきたいと思って期待しておりますので、それをお願いしまして、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 早速質問に入ります。

 去る二月十三、十四日と、メキシコのナジャリットで第二回核兵器の人道的影響に関する国際会議が開催されました。外務省岸副大臣、端的で結構ですが、その概要と評価について説明をお願いしたいと思います。

岸副大臣 委員お尋ねの第二回の核兵器の人道的影響に関する会議の結果、評価でございます。

 これは、核兵器の使用の影響について科学的見地から議論を行う専門家レベルの会議ということで開催をされまして、我が国からは、政府関係者、そして被曝医療の専門家、被爆者、また被爆三世の方に参加をしていただきまして、議論に積極的に貢献をしてきたところでございます。

 核廃絶に向けてどのようなステップを踏んでいくべきかについて、現実的な核軍縮措置の実施を重視する声もありましたけれども、核兵器は禁止されるべきとの意見も出され、議長総括では、核兵器の禁止に向けた法的拘束力のある規範づくりを志向するという考えが示されたところでございます。

笠井委員 この間、百二十五カ国が連名で、核兵器の非人道性に焦点を当ててその使用に反対をし、核兵器の廃絶を求めるという共同声明が出されました。核兵器のない世界に向けて、非常に積極的な動きだと思うんです。

 そういう動きの中で、今、副大臣からお話がありました今回の会議が開かれたわけですが、とりわけ、被爆者の方々が証言をして、核兵器の使用は人間性を否定する行為だ、今こそ核兵器廃絶をという訴えは、参加者の胸を打ったと伺いました。

 会議では、非同盟諸国など多くの政府代表が、核兵器禁止条約の交渉開始など具体的な措置を始める段階だという意見表明をしたということでありますが、そういう中で、今副大臣からありました、メキシコ政府がまとめた議長総括があって、我々はこれまで過去に兵器は違法化された後に廃絶されてきたことを考慮する必要がある、我々はこれが核兵器のない世界を実現するための道であると信じていると述べて、法的拘束力のある措置を通じた新たな国際基準または規範に到達するための国と市民社会のコミットメントへとつなげるべきであるというふうに述べておりますが、こうした総括について、大臣はどのように受けとめていらっしゃるでしょうか。

岸田国務大臣 メキシコで開催されました今回の会議ですが、核兵器の人道的影響に関しまして、科学的な見地から専門家が知見を深める大変重要な機会であったと私も認識をしております。

 そして、御指摘の議長総括につきましても、核兵器のない世界を目指すというこの大きな目標については、間違いなく我が国と共有をしていると認識をしております。そして、その同じ議長総括の中に、御指摘のように、法的拘束力のある規範づくりを志向する考え方が示されました。

 この点につきましては、現在の我が国の安全保障政策、拡大抑止政策を含む安全保障政策と両立する形で段階的に核軍縮を進めているという我が国のアプローチ、これとの整合性に関しまして確認、検討する点はあると考えております。

 いずれにしましても、核兵器のない世界というこの大きな目標については間違いなく共有しておりますし、ぜひ現実的かつ実践的な取り組みを着実に積み重ねていきたいと考えております。

笠井委員 会議の場でも、私に言わせれば残念ながら、日本政府代表は、現実的で実際的な努力を強めるというふうに述べただけで、核兵器禁止条約の必要性には触れなかったということでありますが、今、シリアの化学兵器全廃に向けた動きを踏まえて、核兵器の違法化と禁止条約を求める、そういう点からも声が高まっている状況です。

 化学兵器禁止条約が一九九三年に調印をされた、九七年に発効しましたけれども、今回新たに加わったシリアを含めて百九十カ国という圧倒的多数の国々が参加をしている。今回の一連の動きで、化学兵器の全面禁止、廃絶は実現できるのに、なぜ究極の破壊的、非人道的兵器である核兵器廃絶ができないのか、こういう声が上がっているのも説得力ある意見だと思うんです。

 今回の議長総括は、この目標に資する外交プロセスを立ち上げるときが到来したというふうに述べて、このプロセスが特定の期限、最適な議論の場の定義及び明確かつ中身のある枠組みを含むべきだというふうに強調して、今こそ行動のときである、広島、長崎への攻撃から七十周年の節目が我々の目的を達成するにふさわしい礎になる、もはや後戻りできない地点であるというふうに述べております。

 大臣、私は、本当に今こそ政府が被爆国政府としてイニシアチブを発揮すべきだと思うんですが、外務省の今回の評価を見ますと、「オーストリアが、本年後半に第三回会議を主催する旨表明し、メキシコ会議のフォローアップが行われることになったところ、我が国として如何なる対応をとるべきか検討する必要がある。」というふうに外務省の文書にあります。

 そこで、大臣、次回の会議に向けて、どういうことについて対応を検討する必要があるというふうにお考えなんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、核兵器の人道的影響について正確な認識を持つということは、軍縮・不拡散を進めていくための出発点であると認識をしております。核兵器の非人道性はいかなる核軍縮アプローチをとる際にも考慮されなければならないと思っておりますし、その議論は普遍的かつ開かれた形で進められることが重要であると考えております。

 ですから、まず今回のメキシコ会議ですが、科学的側面について知見を深めていくとともに、核兵器の非人道性について世代と国境を越えて認識を広げていく、こういった点は大変重要だと考えております。

 こうした非人道性の問題、ことし四月のNPDI外相会談においてもぜひしっかりと議論をして、有益な提案につなげていきたいと思っております。

 そして、今御指摘のオーストリア政府が本年後半に主催する予定になっております第三回の会議についての対応ですが、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界を目指すというこの目標については共有をしております。こうした大きな目標に向けてどのようにアプローチしていくのか、こういった点をしっかり考えながら参加について考えていかなければならないと思います。

 いずれにしましても、オーストリア政府がどんな方針で会議を主催するのか、この辺につきましては現状は明らかになっておりませんので、ぜひしっかりと意思疎通を図っていきたいと考えています。

笠井委員 次期開催国のオーストリア政府代表は、壊滅的な結果をもたらす核兵器は、軍事、安全保障ではなく、人間の安全の観点で取り組むべきだ、日本も引き続き積極的に関与してほしいというふうに述べております。

 今、大臣に伺っていると、見てみないと参加するかどうかもわからぬみたいな話なんですが、そういうことまで含めて考えるということですか。

岸田国務大臣 核兵器のない世界を目指すという目標を共有しているわけですから、さまざまな現実的なアプローチが認められなければならないと存じます。ぜひ、その目標に向けてともに協力できる、こうした環境をつくっていきたいと存じます。オーストリア政府ともしっかりと意思疎通を図っていきたいと思っています。

笠井委員 オーストリアを含めて世界から大きな期待がある被爆国ですので、しっかりと対応する必要があると思います。

 もう一点、外務大臣、今、拡大抑止という問題や核軍縮ということで、段階的にという話も言われたわけですが、一点伺いたいんです。

 大臣が一月二十日に長崎で、核軍縮・不拡散政策スピーチということで、政府の新たな核兵器に関する政策を明らかにされました。この中で大臣は、核兵器を保有する国は、核兵器の使用を個別的、集団的自衛権に基づく極限の状況下に限定するということを宣言すべきだというふうに主張されていると思うんですが、これはどういう意味ですか。

岸田国務大臣 ことし一月二十日ですが、長崎大学の会場をお借りしまして国民対話をさせていただきました。その際に、核軍縮・不拡散政策スピーチを行わせていただいたわけですが、その中身としまして、三つの低減ということで、核兵器の数の低減、役割の低減、さらには動機の低減、こうした三つの低減を通じて核兵器のない世界を目指す、こういった道筋、考え方を示させていただきました。

 そして、御指摘のスピーチの部分でありますが、あれは、核兵器の役割の低減の部分におきまして、まず、基本的に、核兵器が将来二度と使用されることがあってはならないというふうに考えます。そして、その上で、今、現実を見た場合には、核兵器を保有する国が存在いたします。そして、その国の中には、核兵器の使用の可能性を広くとっている国もある。しかし、やはり核兵器保有国は、個別的、集団的自衛権に基づく極限の状況下に使用を限定する、こういった宣言をみずから行うことによって核兵器の役割を低減することから始めて、そして、核兵器のない世界という大きな目標、最終的にはこういった大きな目標に向けてつなげていく。こういった考え方を今言った部分で示させていただいた、こういった次第です。

笠井委員 いろいろ説明されたんですが、要は、核兵器のない世界に至るまでは、個別的、集団的自衛権を行使するような戦闘であっても、つまり、広くとるんじゃなくて、狭い、極限の状況下と判断すれば核兵器の使用は許される、そういうことを被爆国の政府が言われた、外務大臣が言われたということなんでしょうか。

岸田国務大臣 今、現実に核を保有している国が存在いたします。その現実から核兵器のない世界という大きな目標にどうつなげていくのか、これを申し上げさせていただきました。その目標に向けて現実的にどういった考え方をするべきなのか、これを申し上げさせていただきました。

 核兵器は二度と使われてはならないと思いますし、ぜひ一日も早く核兵器のない世界という大きな目標を実現するべく努力をしていきたい、こういった考えに基づいて発言をしております。

笠井委員 それだったら、極限の状況下であればみたいな話はしない方がいいんですよ。したらいけないんですよ。

 それは、先ほどあった共同声明で、非人道性について告発して、それについて許されないということで日本も加わった。拒否をした経過はあったけれども加わった。いかなる状況下においても使用されないことに人類の生存がかかっているということをうたっているわけです。そういうことをうたったのとも明らかに矛盾する。極限であればいいという話になります。誰もそう受けとめるから、被爆者も、広島も長崎も、被爆地も、そして国民的にも怒りが広がっているわけです。

 しかも、そういうことになりますと、結局、非核保有国に対して、いろいろと、核兵器を使ったりあるいは威嚇しないことを約束するというようなことを求めるということをやったとしても、何の説得力もないということになります。

 まさにそういう点では、こういう発言は撤回すべきだと思うんですが、いかがですか。

岸田国務大臣 説得力がないという御指摘ですが、私はそうは思いません。

 現実に核兵器を保有している国が存在いたします。しかし、この現実から、核兵器のない世界を目指すという大きな目標に向けてどう近づけていくのか、これを、現実的に考え方を示すことこそ、責任のある態度ではないかと思っています。

 唯一の戦争被爆国として、核兵器の非人道性を最もよく知る国として、現実の世界に対して、どのように大きな目標に向けて進めていくのか、こういったものを示すということ、このことは大変重要な態度ではないかと考えています。

笠井委員 被爆国ですから、いかなる状況にあっても使っちゃいけないというのがやはり国民の原点ですし、あの被爆の原点なわけです。

 そういう点では、状況によっては使用が認められるというようなことについて、そういうことになるような発言を絶対やってはならないし、非核保有国がやること自体おかしいんですが、被爆国がやるということはもうあってはならないと思います。

 ことしはビキニ被災から六十年の年でありますけれども、まさにそういう年でもあり、来年、七十周年という被爆の年を迎えようとしている。今こそ、日本政府が根本的にこの態度を改めるということを強く求めていきたいと思います。

 次に、沖縄県名護市辺野古での新基地建設問題に関連して若干質問いたします。

 報道によれば、この新基地から米軍が最新鋭のF35Bステルス戦闘機の運用を想定していることが二月十二日の沖縄防衛局職員の発言で明らかになったとありますけれども、これは事実でしょうか。

若宮大臣政務官 お答えさせていただきます。

 笠井委員御指摘の報道については承知をいたしてございます。ただ、日米で合意をいたしました平成十八年五月の再編実施のための日米ロードマップに明確に記述をされておりますとおり、米国政府は、普天間飛行場代替施設におきまして戦闘機を運用する計画は有してございません。

笠井委員 それでは伺いますが、辺野古新基地、これからつくろうとしているという政府のあれですが、この配備が狙われているMV22オスプレイは強襲揚陸艦でも運用できる垂直離着陸機でありますけれども、F35Bというのも同じく短距離の離陸が可能な垂直離着陸機だと思うんですが、それは間違いありませんか。

若宮大臣政務官 お答えさせていただきます。

 今御指摘いただきましたF35Bの性能につきましては、アメリカ側より正式に通知を受けているわけではございませんが、一般的に申し上げますと、F35Bは、AV8ハリアー等の後継機として海兵隊向けに開発されました短距離離陸垂直着陸型の戦闘機でありまして、我が国に導入されるF35Aと比較いたしまして、兵器搭載量や最大離陸重量等が少なく、戦闘行動半径が短い機種である、そのように認識いたしております。

笠井委員 そうしますと、オスプレイと同様に短距離垂直離着陸が可能な機種であれば、今つくろうというふうに政府が言っている辺野古の新基地で予定される千八百メートルの滑走路でも十分運用できるということになりますね。

若宮大臣政務官 まことに恐縮でございますが、繰り返しになりますが、日米で合意をいたしましたロードマップに明確に記述をされておりますとおり、現在、米国は、普天間飛行場代替施設におきまして戦闘機を運用するという計画は有してございません。

笠井委員 計画の有無を聞いているんじゃないんです。垂直離着陸ができるということを今言われたので、千八百メートルの滑走路でも離着陸が可能ではないかと。可能性、そういう技術的な話をしているわけです。

若宮大臣政務官 重ね重ねでございますが、F35Bが、短距離の離陸、そして垂直の着陸、こういう機能を持っている機種であるということは承知をいたしてございます。その性能等の詳細につきましては、私どもとしては承知をしておりません。

 また、代替施設におきまして戦闘機を運用するという計画は現在ございません。この代替施設におきまして運用可能かどうかということについては、防衛省としては申し上げることができない状況でございます。

笠井委員 では、角度を変えて聞きますけれども、F35Bについては、昨年十月の2プラス2、日米安全保障協議委員会の共同発表の中で、米国外における初の前方配備ということで、二〇一七年の配備の開始が確認をされております。

 日本での具体的な配備計画というのはどうなっていますか。

若宮大臣政務官 委員御指摘のとおり、初めての配備ということで計画はされてございます。

 米海兵隊によるF35Bの米国外における初めての前方配備、二〇一七年の同機種の配備の開始につきまして、おっしゃるとおり、先般の2プラス2での共同発表におきまして日米両政府で確認をいたしておるところでありますが、配備先を含めまして、その詳細につきましては、今後日米間で協議をするという形になってございます。

笠井委員 先ほど答弁の中で若宮政務官がおっしゃっていて、F35Bはハリアーの後継機という話も認められましたが、宜野湾市の普天間基地では、これまでも岩国基地所属のハリアーが離着陸をしております。戦闘機を運用する計画はないというふうに言われますけれども、辺野古に新基地ができれば、ハリアーの後継機であるF35Bが岩国基地から飛来することもあり得るんじゃないんですか。これはどうですか。

若宮大臣政務官 まことに恐縮でございますが、繰り返しでございますが、現時点では一切そういった計画がないものですから、そういった想定にはお答えできない状況でございます。

笠井委員 繰り返しになっている部分について、ちょっと私、根本的に問題提起をしたいんです。

 先ほど、平成十八年五月の再編実施のためのロードマップ、日米のロードマップということで、代替施設において戦闘機を運用する計画はないというふうに政務官は答えられました。ロードマップでそういうふうに書いてありますか。何と書いてありますか、その部分。

若宮大臣政務官 お答えさせていただきます。

 二〇〇六年五月一日の沖縄における再編につきましての項目でございますが、そのポイントのところだけ申し上げますと、「米国政府は、この施設から戦闘機を運用する計画を有していない。」こういった文章で明記をされてございます。

笠井委員 先ほど政務官は、それを読みかえて言ったんですよ、わざわざ。米国政府はこの施設においてとあなたは言われましたよね。違うんですよ。ここは、「この施設から戦闘機を運用する計画を有していない。」とあるんですよ。アットじゃなくて、フロムと書いてあるんですよ。そうでしょう。

 だから、ここにあってここから運用するというんじゃなくて、この代替施設から運用する計画を有していないというふうに言っているわけですから、違うんですよ。つまり、そういう点でいうと、代替施設において運用する計画は否定していないんじゃないですか。からと書いてあるんですよ。おいてじゃないんですよ。

 だから、一切ここでは使いませんよと書いてあるんじゃなくて、この代替施設から運用することはないと書いてあるんですよ。違うんじゃないですか。つまり、さっき私が言ったみたいに、飛来してきて、ここで使うということがあるということじゃないかと言っているんです。そのことを聞いているんです。

若宮大臣政務官 ちょっと私の言葉足らずでございました。大変失礼いたしました。

 「この施設から」とはフロムかということでございますが、そうではございませんで、この施設において戦闘機を運用することはないという意味合いでございます。

笠井委員 違います。ロードマップは、政務官が読み上げられたけれども、「米国政府は、この施設から戦闘機を運用する計画を有していない。」とあるんですよ。英語でもフロムと書いてあるんですよ。おいてじゃないんですよ。ここは大きな違い。

 だから、ここから運用することはないけれども、ここに来るということはあり得るということでしょう。それが、さっき私が言ったような、日本に配備したら、岩国からそれがここに来て、ここを使うということがあるということじゃないですか。

 だから、冒頭に聞いた、沖縄の防衛局の職員が言ったのは、正直に言っているのではないかという話なんですよ、可能性があるということを。ごまかしちゃだめですよ。

若宮大臣政務官 お答え申し上げます。

 本当に恐縮でございますが、当該職員が、一般論として性能上運用可能と思われるということでお話をしたのかもしれません。その内容について私も直接つまびらかに聞いたわけではないですが、その上司であります沖縄防衛局次長は、F35Bの代替施設におきましての配備予定はないということでしっかりと発言をいたしております。

笠井委員 技術的な話で言っているんじゃないんです。私は、今、技術的なことも議論しましたよ。だけれども、ロードマップに何と書いているかといったら、政務官は、において、この施設において運用する計画を有していないという話を繰り返し言われた。繰り返し繰り返し言われた。だけれども、違って、ここに正式に日米合意しているのは、この施設から運用する計画はないと言っているだけで、この施設で使うことがないと言っているわけじゃないんですよ。

 時間が来たので、委員長にちょっとお願いなんですが、防衛局が沖縄県に提出した辺野古の新基地建設に伴う環境アセスには、F35Bなどの戦闘機の離着陸を想定した住民生活への影響調査は行われておりません。それで、戦闘機の運用が想定されるのであれば、アセス自体の前提が変わってくる問題でありまして、発端になりました、そして地元新聞でも大きく報道されましたが、沖縄防衛局には、この二月十二日に防衛局職員が行ったという発言について詳細な記録があるはずであります。その記録について、防衛省に本委員会に対して提出するように求めたいと思うんですが、委員長、お計らいをお願いします。

鈴木委員長 今の御発言につきましては、後日、理事会で協議させていただきます。

笠井委員 では、時間になりましたので、この問題は引き続きやらせていただきます。終わります。(岸田国務大臣「ちょっと一言だけ、追加でいいですか」と呼ぶ)

鈴木委員長 外務大臣。

岸田国務大臣 済みません、ちょっと確認のためにつけ加えさせていただきます。

 先ほどの長崎スピーチの御指摘の点ですが、あの部分につきましては、核兵器の役割の低減について、核兵器のない世界に向けてどう進めていくのかという考え方を示したわけでありまして、その範囲であれば核兵器を使っていいなどということを申し上げているわけではありません。核兵器の使用があってはならないという考え方、このことにつきましてはいささかも変わりがないということは、確認のために申し上げさせていただきたいと存じます。(笠井委員「委員長、ちょっと。今一言あったので」と呼ぶ)

鈴木委員長 最後にしてください。

笠井委員 最後、終わりますけれども、にもかかわらず、極限の状況下に限定するということで核保有国に対して核兵器使用問題について宣言せよということは、そういう限定だったらいいよということを認めちゃう話になるんですよ。だからだめと私は言っているので、みんなそう思っていますから、大臣、よくそこを考えてください。

 また引き続きこの問題は議論したいと思います。終わります。

鈴木委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 早速質問させていただきます。

 きょうは、大臣の所信について、日米同盟の強化、そして、ASEAN諸国、インド、オーストラリアとの協力関係について、さらに中国との戦略的互恵関係についてなど、見解をお聞きしたいと思います。

 まず、日米同盟の強化についてですが、先ほども笠井委員の質問の中でやはり取り上げられていたのは、アメリカ海兵隊の普天間基地辺野古移設に係る問題であります。

 私も、この間さまざまな形で、アセスの不備でありますとか、あるいは、ヘリコプターの後継機だと言われているオスプレイが実は低周波などに相当な問題がある、それもアセスで行われていないというふうな事実も、安全保障委員会、外務委員会で意見を申し上げ、政府の見解をただしてきたところでありますが、この日米同盟の強化についてまず質問いたします。

 政府は、十八日、沖縄県の仲井真知事らと、米軍普天間飛行場の五年以内の運用停止に関する事項などについて話し合う普天間飛行場負担軽減推進会議、この初めての会合を総理官邸で開催しています。安倍総理の、沖縄県からの要求に対してできることは全て行うという意思による米軍基地等の負担軽減について、その議論が今後着実に行われるという取り組みが確認された席であったというふうに思っております。

 お伺いいたします。

 この会議において、作業部会などの実務協議が今後どのようなスキームで捉えて行われるのか、お答えください。

岸田国務大臣 御指摘の会議につきましては、沖縄県の仲井真知事、あるいは佐喜真宜野湾市長からの要請を受けて、内閣官房により設置されたものであります。

 十八日の第一回会議におきましては、安倍総理から、沖縄県とこれまで以上に連携を深めていくとともに、普天間飛行場の負担軽減について政府一丸となって取り組んでいくとの発言がありました。その上で、私と小野寺防衛大臣の方から、基地負担軽減の取り組み等につきまして説明をさせていただきました。

 政府としましては、こうした仲井真知事からの沖縄の負担軽減に向けての要請につきましては、やれることは全てやる、こうした方針でしっかり取り組んでいきたいと考えております。

 また、私の立場からは、日米地位協定の環境補足協定の交渉、これをしっかりと進めていかなければならない、特にこの部分には大きな責任があると考えております。この部分につきましては、二月十一日に第一回交渉を開始いたしましたが、ぜひ、引き続きまして、できるだけ早くしっかりとした結論が出るよう努力をしていきたい、このように考えております。

玉城委員 この普天間飛行場負担軽減推進会議において、実務協議に対応する相手となるアメリカ側とは、それではどのようなスキームあるいはスケジュールで協議を進めることが確認されていますでしょうか、あるいは予定されておりますでしょうか、お聞きいたします。

岸田国務大臣 この会議において、改めて、昨年十二月、仲井真沖縄県知事から要請された四項目の要請といったものについて、やれることは全てやる、こうした方針を確認した次第です。

 これにつきましては、先日、二月七日に開催しました日米外相会談、さらには私とヘーゲル米国国防長官との会談におきましても、我が国としてのこうした方針について説明をし、そして米国側に、このことについてぜひ協力をしてもらいたいと強く要請をしたところであります。これに対しまして、米国側からは、我が国の姿勢に対して理解を示し、米国側もぜひ協力をする、こういった発言を得たところであります。

 具体的なスケジュール等についてはまだ現段階では確認されておりませんが、今申し上げたような形で、米国側の協力も得ながら、ぜひ沖縄の負担軽減に向けて結果を出していきたいと考えております。

玉城委員 基地の固定化を避けるという目的に沿って現在の宜野湾市から普天間飛行場の移設先に予定されているアメリカ海兵隊キャンプ・シュワブがある名護市では、本年一月十九日に市長選挙が行われ、地元の陸にも海にも新しい基地はつくらせないという政策を訴えた稲嶺進候補が、今選挙で、明確に辺野古への移設推進を掲げ、自民党、公明党が推薦し、仲井真県知事が御自身の腰の痛みも何のそのと精力的に全面支援した末松文信候補に前回の市長選挙よりも大差をつけて、二期目の当選を果たしています。移設先予定地である名護市の選挙による地元の民意は、政府や与党の期待に強い反対の意思をはっきりと示したということにほかなりませんね。

 選挙の結果である地元の強い反対の姿勢を受けて、普天間基地の危険性の除去という方向性から鑑みても、沖縄県及び仲井真知事が求めている普天間の一日も早い危険性の除去ということと、普天間基地の五年以内の運用停止を実現すること、この運用停止というのはどういうことですかという記者の問いかけに、県の関係者は、米軍機が上空を飛ばないことだということを明確に言っています。つまり、そういう運用をやめること、それが五年以内の運用停止です。

 それをそのまま机上にのせるとすれば、移設作業にかなりの時間を要することや、相対的に見て沖縄における負担軽減とはならない県内移設案をやはり断念するということ、県外あるいは国外への訓練移転のみならず、基地機能と施設の移転協議を真摯に進めることこそが、日米同盟の強化という点においては極めて現実的であり、評価に値するものではないかと思料いたします。

 普天間飛行場負担軽減推進会議における協議が、現場実務に任せ切ることではなく、民意に基づく民主的判断に沿って進められることこそ、日米同盟の真の強化につながるのではありませんか。外務大臣にお伺いいたします。

岸田国務大臣 我が国周辺の安全保障環境は、ますます厳しいものになっております。こうした安全保障環境の厳しさが増す中にありまして、日米安全保障体制に基づく在日米軍の抑止力、これは、我が国の安全、ひいては地域の平和や安定の確保に不可欠であると考えております。そしてその中で、沖縄における米海兵隊のプレゼンスは極めて重要であると認識をしております。こういった認識のもとに、普天間飛行場の移設は、在日米軍の抑止力を維持しつつ沖縄の負担を軽減するため、これは重要な取り組みであると考えています。

 普天間飛行場の固定化は絶対避けなければならない、この点につきましては、我が国政府と沖縄県、共通認識であるというふうに私は考えております。そして、この普天間飛行場の移設につきましては地元沖縄県にさまざまな意見があるということ、これは承知をしております。

 政府としましては、今後とも、沖縄の皆様方に誠実に説明をしていかなければならないと思っていますし、理解をしっかり求めていかなければならないと思っています。こうした丁寧な作業を続けながら、ぜひ一日も早い移設、返還を実現したいと考えています。

玉城委員 私は大臣の丁寧な説明には大変敬意を持っておりますけれども、沖縄県民は、地元の名護市では明確な反対の意思を示したということは先ほど申し上げたとおりです。

 しかも、今、大臣のお話の中で、在沖米軍ではなく、在日米軍とおっしゃいました。在日米軍ですから、在日米軍の抑止力は沖縄だけが負担をするものではないと、常々、委員会でも、そしていろいろな場所でも、私はそういうことを言っておりますし、そのことは、沖縄に必ずしも海兵隊の基地を置いておく必要はない、しかし政治的にそこに置くんだと、森本元防衛大臣が辞任する前にそういう発言も行っています。

 つまり、政治的な判断で行われるのであれば、在日米軍の抑止力は欠かすことはないと思います。それを沖縄にこだわるからにっちもさっちもいかないということを、せんだって外務大臣にお話をさせていただいたんです。

 普天間飛行場のこの負担軽減、実は二十日の朝日新聞に、「「失望」の応酬 きしむ日米」という見出しで記事が掲載されております。これはもうこの委員会でも何人かの委員の皆さんが取り上げておりましたが、安倍総理の靖国参拝に対してアメリカ政府が失望と批判したことに対して、首相補佐官が、我々の方が失望したなどのコメントを御自身のホームページ、動画サイトに張りつけています。その後、菅官房長官の指示で発言を撤回し、動画を削除しています。そのほかにも、自民党総裁特別補佐の発言などを挙げて、こうしたアメリカ政府への不満は安倍総理自身が抱いているものであるという、総理に近い政府関係者のコメントもこの記事には掲載されています。

 つまり、アメリカに対して総理が持っている不満がそういうふうに側近の言葉となって出てきてしまっているんだ、問題はアメリカにあるんだと言わんばかりのそういうことに対して、アメリカはそれを冷静に受けとめているわけですね。

 このようなことが与党や総理側近から起こっていることについて、日米同盟の緊密な強化を目指す外交姿勢からは非常に憂慮すべきことではないかと思いますが、大臣、見解をお聞かせください。

岸田国務大臣 まず、衛藤総理補佐官の発言内容、これは、先ほども質疑の中で申し上げさせていただきましたが、個人的見解であり、日本政府の見解ではないということ、これはしっかり申し上げなければなりません。日本政府の考え方は、総理の靖国神社参拝について、総理自身が述べているとおり、謙虚に、礼儀正しく、誠意を持って説明し、理解を求めていく、これが政府の考え方、姿勢であります。

 そして、萩生田自民党総裁特別補佐ですが、萩生田補佐自身は、肩書からわかりますように、内閣の一員ではありません。個人としての見解を述べたものと理解をしております。

 こうしたさまざまな発言をめぐっていろいろな議論があるわけでありますが、基本的には、日米同盟、昨年来、さまざまな積み重ねによりまして、同盟の関係は強化されていると感じております。昨年二月の日米首脳会談から後、さまざまな努力が続けられ、十月の日米2プラス2を初め、さまざまな成果が上がってきました。そして、ことし、これからも、先日の日米外相会談等によりまして、日米防衛協力のガイドラインの見直しなど、さまざまな課題に向けて協力していこう、こういったことが確認をされています。

 このように、日米同盟自体は、昨年来、さまざまな努力によって強固なものが確認をされています。ぜひ、今後とも、日米間でしっかりと協力実績をつくりながら、意思疎通を図りながら、我が国外交政策にとって基軸である日米同盟については強固なものにしていかなければならないと考えております。

玉城委員 この普天間の件に関しましては、またこれからも委員会の方でしっかりとただしてまいりたいと思います。

 次に、ASEAN諸国、インド、オーストラリアとの協力関係についてお伺いいたします。

 日本と東南アジア諸国連合、ASEAN加盟国の防衛次官級会議が、十八日、これもまた沖縄にて開催されています。過去四回の開催地は東京であったんですが、今回は沖縄で開催されているということで、沖縄で開催した目的、意義、内容などについて防衛省に所見を伺います。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 日本とASEAN諸国の防衛当局間におきましても、例えば災害対処といったような非伝統的な安全保障課題を初めといたしまして、そうしたものについての相互理解を深める、あるいは協力関係を増進する、これは防衛当局としても大変重要なことと考えておりますので、そのような試みの一環といたしまして、御指摘のような日本とASEANとの間の防衛当局間の次官級会合も開催をしておるわけでございます。

 そして、先生今御指摘のとおり、過去四回は東京で開催をしておりましたけれども、政府といたしまして国際会議の沖縄での開催を推進しているということ、それから、防衛当局間でも、特にASEANの方々に日本文化の多様性に触れていただく、そして日本に対する理解をさらに深めていただくということは大変重要なことと考えて、今回、沖縄で開催したものでございます。

 我が国からは西防衛事務次官が議長を務めまして、ASEAN十カ国、それからASEAN防衛当局の次官級が参加をいたしております。

 この会合におきましては、能力構築支援の今後のあり方、それから、非伝統的安全保障分野における日本とASEANの装備・技術協力の可能性といった二つの議題のもとで意見交換が行われたところでございます。

玉城委員 今回の会合については、ASEAN諸国に対して、安倍政権が進めようとしております武器輸出禁止政策見直しへのASEAN諸国の理解、そして、今おっしゃったように、災害及びテロ対策分野においても、禁輸措置に抵触しない装備等の共同開発協力の拡大なども積極的に向こう側から関与させたいという意図があるのではないかと思いますが、その点についてはいかがですか。

若宮大臣政務官 お答えさせていただきます。

 今局長から御答弁申し上げましたように、本会合は、ASEAN諸国の防衛当局次官級を我が国にお招きいたしまして、地域の安全保障上の課題について率直な対話を行うことによって、二国間あるいは多国間の関係を強化することが一義的な目的でございます。

 今、局長の話の中に出ました非伝統的安全保障、災害等々でございますが、防衛省・自衛隊の装備、技術に関しますASEAN諸国からの関心が非常に高いということを踏まえまして、この非伝統的安全保障分野におけます日本とASEANとの関係で、装備・技術協力の可能性を議題の一つといたしまして、率直な意見交換を行ったところでございます。ただ、現在のところでは、ASEAN諸国との装備・技術協力の具体的な内容が決まっているというわけではございません。

 またさらに、委員御指摘の武器輸出三原則等につきましては、昨年の十二月に策定されました国家安全保障戦略に定められておりますとおり、国際協調主義に基づきます積極的平和主義の観点から、武器等の海外移転に関しまして、新たな安全保障環境に適合する明確な原則を定めることとされておりまして、その旨を今回の会合でもASEAN諸国の皆様方にも御説明申し上げたところでございます。

玉城委員 まさにその安全保障戦略に関しては、国会での議論を尽くしていくべきである、本員はそのように思います。

 中国との尖閣問題や太平洋への展開などの対処等、かかる現状において、今回の会合場所を沖縄にしたということは、ある面、南シナ海における中国の覇権的な行動に頭を悩ませているASEAN諸国と協力姿勢を明確に構築して、ASEAN諸国と非公式の防衛相会合を重ねているとされる中国に対しても、東シナ海から太平洋へ軍事活動を活発化しようということへの日本側の懸念から、地域的、包囲的な関係でもって牽制しようという意図があって沖縄で開催したのではないかと思いますが、その点についてはいかがでしょう。

若宮大臣政務官 委員の御指摘でございますが、冒頭、先ほど局長が申し上げましたように、過去、東京で例年は開催をされてございました。ただ、政府全体といたしまして、できるだけ国際会議を、委員の御地元でもあります沖縄で開催することによって、地域振興の一環にもなるし、また、特に沖縄の文化を含めまして日本の文化の多様性に東南アジア諸国、ASEAN諸国の方々に触れていただこう、そしてまた、日本に対する理解を深め、日本もまたもちろん各国への理解を深める、これが第一の目的でございまして、二国間、多国間、それぞれの関係を強化するということが目的でございまして、特定の国への対応ということを念頭に置いたものでは全くございません。

玉城委員 平和的に開催するのであれば、ぜひ、オブザーバーとして、あるいはゲストとして、中国にも、沖縄で開催しますのでどうぞ参加してくださいとおっしゃっていただければ、向こうも来やすいのではないかと思います、歴史的、文化的に。ぜひ、そういうことも含めて、平和的な意見をどんどん積み重ねて、ASEAN諸国とさらにきずなを深めていっていただきたい。そのことに関しては、私もしっかり地元で応援をしたいというふうに思います。ありがとうございます。

 さて、時間もありませんが、大臣所信では、このASEAN諸国と、それからオーストラリア、インドとの連携についても触れられておりましたが、二〇一三年度版の外交青書を見てみると、インドに対する記述が非常に少ない。

 ですから、そういうことを考えると、大臣所信でも、インドとの協力関係についてもう少しいろいろな形で述べられてもいいのではないかと思うんですが、この関係構築における外交政策、大臣はどのように進めていきたいというふうにお思いでしょうか。

岸副大臣 委員のおっしゃられる外交青書、一ページで記述が少ないということではございますけれども、インドはまさに、我が国と民主主義や法の支配などの基本的価値を共有する地域の大国であります。我が国としても、日印戦略的グローバルパートナーシップのもとで包括的な強化に取り組んでいるところです。

 首脳間の交流については、二〇〇五年からほぼ毎年、年次首脳会談が行われているところではございますし、また、岸田大臣も、昨年三月、先方のクルシード・インド外相との間で戦略対話を行われ、また、十一月にはインドでASEMの会合のときに外相会談が行われた。このように、さまざまなレベルで、また、防衛当局の間でも、防衛大臣の会談、また二国間の海上共同訓練も行われているところであります。そうした中で、引き続き、政治、安全保障協力の強化に努めていかなければならない、こう考えております。

 経済分野につきましても、インドは日本の円借款の最大の受け取り国でございます。一月の総理訪問時には、二千億円の新規のプレッジを行ったわけであります。また、日印間の経済関係も順調に進んでいまして、インドへの進出企業数も千社を超え、毎年百社のレベルでふえている、こういうようなことです。

 私も、昨年の八月に、副大臣になる前でしたけれども、インドを訪問したときも、先方から、日本の経済に対する、企業の進出に対する期待というものが大変高まっている、そういうことを実感した次第でございますけれども、こうした日本企業のインド進出を積極的に支援して、さらに二国間の関係を強力にしてまいりたいと考えております。

玉城委員 ありがとうございます。

 今答弁にございましたように、私は、このインドという国は、国名で単独で特出しをして、もっと集中的にいろいろ、外交でこういうふうな形で取り組んでいきたいということをもっと積極的に行ってもいいのではないか、そういう相手国に十分なり得るのではないかというふうに思います。引き続き取り組んでいただきたいと思います。

 さて、時間が少なくなりましたが、中国との戦略的互恵関係について最後に質問させていただきます。

 最も重要な二国間関係、戦略的互恵関係の原点に立ち戻り、関係改善を図ると大臣所信で述べられておりますが、昨今の二国間の関係性は、懸念こそ強いものの、双方の外交的なパイプは非常に細くなっているという現実について、やはり真摯に向き合うべきだというふうに思います。

 中国による航空識別圏の一方的な設定は認めがたいものではありますが、アメリカは、これに関して一定の認識と方策を中国側と協議するなど、外交摩擦を生じさせないための協議を米中間で実務的に行っていると思料いたします。

 中国との外交関係の回復に向けた努力のためには、米国との連携と協議はますます重要となってくるのではないか。その件について外務大臣にお伺いいたします。

岸副大臣 中国との関係でございますけれども、まさに、アジア太平洋地域における平和と安定のためには、この対中政策も含めて、日米両国の連携がますます重要になってきているわけでございます。

 先般の日米外相会談においても、岸田大臣とケリー国務長官との間で、中国を含みますアジア太平洋の地域情勢についても議論が交わされました。ケリー国務長官は、その後訪中をされて、中国側との間で、我が国の立場を踏まえながら対応していただいたものと理解をしておるところでございます。

 我が国として、国際社会及び地域の安定と平和のために引き続き日米同盟の強化を図っていきたいと思いますし、中国との間では、大局的な見地から戦略的互恵関係を進めてまいりたい、このように考えております。

玉城委員 もう時間ですので、最後に大臣の所見を一言だけお伺いしたいと思います。

 安倍総理、それから総理側近のさまざまな発言、NHK会長の発言などなど、いろいろなところで、日米関係において、ややもするとタカ派的な色合いが強く出ているということにアメリカは相当懸念を示しているということもいろいろな記事で紹介されております。ここは、穏健派でいらっしゃる外務大臣から、この政権に対して、私はこういうふうに外交を進めるんだというふうな、その気持ち、理念をぜひお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、安倍政権の外交政策の基本は、地球儀を俯瞰する外交という言葉を使わせていただいていますが、地球儀を俯瞰する観点から戦略的に外交を進めていくというものであります。そして、そのために、私自身、外交政策としまして、日米同盟の強化、近隣諸国との関係推進、そして経済外交の推進、この三つの柱を立てて、まずは国益の増進にしっかり努力をする、あわせて、日本の国際社会における存在感を示す意味からも、グローバルな課題について積極的に取り組んでいく、これが基本的な政策であります。こういった考え方については、安倍総理も私も、そして内閣のメンバーも一致をしていると思っています。

 ぜひ、総理のトップ外交あるいは私自身の外務大臣としての活動、こういったものをしっかり進めて、それぞれ相乗効果を上げることによって、日本の外交が強化される、こうした結果につなげていきたいと考えております。

玉城委員 ありがとうございました。

 ぜひ平和的な外交に邁進なさっていただきますようお願いいたしまして、質問を終わります。ニフェーデービタン。ありがとうございました。

鈴木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三分散会


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