衆議院

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第16号 平成26年5月16日(金曜日)

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平成二十六年五月十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺  周君

   理事 小熊 慎司君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    石川 昭政君

      石原 宏高君    河井 克行君

      木原 誠二君    黄川田仁志君

      小林 鷹之君    河野 太郎君

      島田 佳和君    渡海紀三朗君

      東郷 哲也君    星野 剛士君

      武藤 貴也君    小川 淳也君

      玄葉光一郎君    松本 剛明君

      石関 貴史君    阪口 直人君

      村上 政俊君    岡本 三成君

      青柳陽一郎君    笠井  亮君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   内閣官房副長官      加藤 勝信君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  武藤 義哉君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  近藤 正春君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   越川 和彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新美  潤君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 金杉 憲治君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    上月 豊久君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   石井 正文君

   政府参考人

   (水産庁漁港漁場整備部長)            宇賀神義宣君

   政府参考人

   (国土交通省航空局安全部長)           島村  淳君

   政府参考人

   (海上保安庁次長)    岸本 邦夫君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  星野 一昭君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 真部  朗君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  中島 明彦君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     石川 昭政君

  阪口 直人君     石関 貴史君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     あべ 俊子君

  石関 貴史君     阪口 直人君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 投資の促進及び保護に関する日本国とサウジアラビア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 投資の相互の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とモザンビーク共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とミャンマー連邦共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)

 航空業務に関する日本国政府とビルマ連邦政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一四号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長越川和彦君、大臣官房審議官新美潤君、大臣官房審議官金杉憲治君、北米局長冨田浩司君、欧州局長上月豊久君、国際法局長石井正文君、内閣官房内閣審議官武藤義哉君、内閣法制局第一部長近藤正春君、水産庁漁港漁場整備部長宇賀神義宣君、国土交通省航空局安全部長島村淳君、海上保安庁次長岸本邦夫君、環境省自然環境局長星野一昭君、防衛省防衛政策局次長真部朗君、運用企画局長中島明彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城内実君。

城内委員 自由民主党の城内実でございます。

 早速質問に入らせていただきたいと思います。

 昨日、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会、いわゆる安保法制懇が報告書を安倍総理に提出したところでありまして、その後、安倍総理の記者会見もございました。

 この報告書では、日本を取り巻く安全保障環境が大変厳しくなっている、そして、日本の平和と安全を維持するためには従来の憲法解釈では十分対応できないとしております。その上で、憲法上認められる必要最小限度の自衛権の中に集団的自衛権の行使も含まれると解釈すべきだとして、憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認するように求めた内容になっております。

 確かに、安全保障環境の変化ということにつきましては、憲法がつくられた約六十数年前と今では全く変わっておりまして、大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散、高度化、小型化が進んでおりますし、世界のどの地域で発生する事象であっても直ちに日本の平和と安全に影響を及ぼし得る、そういう状況になっております。

 また、東シナ海、南シナ海に目を転じますと、まさに、西沙諸島、南沙諸島をめぐって、ベトナム、フィリピン、そしてマレーシア等との間で島の領有権の問題があります。そして、現に、今まさにこの瞬間、ベトナムと中国の間で緊張関係が起きているわけであります。また、我が国の隣の北朝鮮は、いまだに拉致の問題が解決しておりませんし、核実験をやったり、あるいはミサイルをぶっ放している、こういう状況にあります。

 したがいまして、こうした中、日米同盟関係をより一層深化、拡大することが重要であります。

 また、私はよく野球に例えているんですけれども、やはりこれはチームプレーが大事だと思います。例えば、アメリカのピッチャーが投げた球を、日本が、例えばショートとしてベースカバーに入るのか入らないのか、そういうことをあらかじめ決めておかない、役割分担を曖昧にしておく、これは大変非効率でありますし、信頼関係にも、何だ、守ってくれないのかとピッチャーから怒られるわけであります。

 まさにアメリカは民主国家でありますから、いや、日本は今こういう状況で、憲法解釈がありますからできませんということで、ああ、わかりましたとアメリカの一般国民が納得していただければいいですけれども、私がもしアメリカの国民であれば、何だ、日本は公海上における米艦船の防護もやってくれないのかということになりますと、民主国家でありますから、朝鮮半島有事あるいは朝鮮半島にいる日本人の避難民のために、何も手伝ってくれない日本のために何で米軍が汗をかかなきゃいけないのか、そういうことに当然なるわけでありますから、私は、今回の安保法制懇の結果を踏まえてのきのう安倍晋三総理の記者会見で、国民の命を守る、そういう言葉に感銘を受けたわけでございます。

 そこで、当然、日米関係のかなめ、担当はまさに岸田大臣でありますから、今回の安保法制懇の報告書に対する大臣の御所見についてお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、委員御指摘のように、我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しい状況にあります。そして、サイバーを初めとする、国境を容易に越えてくる新しい脅威も登場しております。どの国であっても、一国のみではみずからの安全を守ることができない、こういった現実の中にあります。

 そういった中にありまして、今回の安保法制懇の報告書につきましては、いかなる事態においても国民の命と暮らしを守り抜く、こういった観点から提言が行われたと受けとめております。国民の命、暮らしを守るために何をするべきなのか、そして、将来見通し得る我が国の安全保障環境の変化といったものにも留意した上で、具体的な事例を踏まえて、安全保障の法的基盤のあり方について提言をいただきました。専門的あるいは現実的な議論を踏まえた提言であると、基本的に高く評価をさせていただいております。

 この提言を受けて、総理が、今後の検討の進め方につきまして、基本的な方向性を昨日示させていただきました。この基本的な方向性に基づいて、これから政府としましても、与党としっかり協議を行い、政府としての方針を決定していきたいと存じます。

 ぜひ、これからの議論においても、国民の皆様方にしっかり御理解いただけるように、丁寧な議論を続けていきたいと考えております。

城内委員 大臣からの前向きな御答弁、ありがとうございます。

 時間がないので次の質問に移らせていただきたいと思いますが、対外発信の強化についてであります。

 今まさに、中国、韓国の情報戦が激しさを増しております。確かに、さきの大戦で、いわゆる南京事件、あるいはいわゆる従軍慰安婦問題、これが全くなかったとか、南京で一人も殺されなかったとか、従軍慰安婦などというのはいなかった、そういうことを言うつもりは全くありませんが、それにしても、余りにも、歪曲、捏造、そういう情報がどんどん広まっている。例えば、いわゆる従軍慰安婦については、性奴隷、セックススレーブというような表現を使うようになってきております。

 こうした情報戦に対して、やはりこれから二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えて、世界各国に日本の正しい姿をしっかりと発信して国際社会に理解してもらうことが私は必要ではないかと思っております。一刻の猶予も許されないと思います。

 そこで、例えば、在外には公館長、大使、総領事がおりますし、大使、総領事以外の、公館長以外でも、外務省の外交官、あるいは各省から出向している人たちもいるわけです。例えば厚生労働省から出向している人とかは、厚生労働関係の仕事だけをすればいいということではないと思います。やはりオール・ジャパンで、こちらから歴史認識の問題について、こうです、こうですとやり過ぎるのもあれですけれども、逆に、聞かれたら、いや、そうじゃありませんよ、事実はこうですというような応答要領はみんなができるように、そういうことも含めて、私は、対外発信をしっかりやることが必要だと思いますし、そのためには、ちまちましたことではだめで、数百億、一千億円ぐらい使ってでも全世界で徹底的にやるべきじゃないかと思いますが、外務大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、委員におかれましては、自民党の外交再生戦略会議の事務局長としまして、対外発信につきましてもさまざまな貴重な御提言をいただいておりますことに感謝を申し上げます。

 御指摘のとおり、対外発信は大変重要だと認識をしております。我が国の立場、考え方をしっかりと、そして正しく理解されるべく、対外発信を強化していかなければならないと思っていますし、海外において誤解が生じる報道ですとか発言があった場合には、迅速な反論投稿などを行わなければならないと思っていますし、私自身も、外国プレスによるインタビュー等を通じて積極的な情報発信を行っていかなければならないと考えています。

 そういったことから、平成二十六年度予算、外務省の国際広報に関する予算は前年度四二・七%増加ということで、予算においてもしっかりと対応させていただいたわけですが、内容におきましても、新たに、海外において影響力のある有識者をつなげてネットワークを構築するなど、新しい試みも行っているところであります。質量ともにしっかりと対外発信の充実に努めていかなければならないと考えております。

 こういった努力をしつつ、本年三月には、ASEAN七カ国におきまして対日世論調査を行いました。最も信頼できる国として日本を選択した割合は、米、中国等十一カ国中トップという結果も得られました。ぜひ、こうした成果もしっかり確認しながら、今後とも対外発信についてしっかりと努力をしていきたいと考えております。

城内委員 二〇%、三〇%増というよりも、やはり今、世界じゅうにそういう誤解がありますので、三倍、五倍増で、別に毎年というわけじゃなくて、ある程度誤解が解けたら徐々に発信を、減らしていくと言うのもあれですけれども、やはり中国、韓国に対抗するには大胆なことをしなきゃいけないというふうに思いますが、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 次に、ODAの問題について御質問させていただきたいと思います。

 まさに今、日本の国内そして外国において、安倍政権が、歴史修正主義、右傾化というようなレッテルを一部で張られているわけでありますが、私は、そうだからこそ、我が国が、人間の安全保障やODA等を通じて、平和国家として世界にどんどん貢献すべきだと思うんです。

 財務当局から一律カットということでカットされてきたわけでありますけれども、調べてみたら、平成九年度、一九九七年度をピークに、現在、ODAの量が半減している、マイナス五三%。ODA大国日本はどこに行ってしまったのかなということで、非常に悲しくなってくるんです。

 私は、質を向上するのはもちろん大事だと思いますが、しかし、やはり全体の量ですね。統計上、では日本と中国と比べてみたらどうなのかとか、日本とアメリカとか、比べられるわけですから、質ももちろん向上すると同時に、量を飛躍的に拡大すべきだと思いますけれども、それについて大臣はどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 ODAにつきましては、ことし、我が国がODAを開始してから六十年という節目を迎えています。人間の安全保障を基本理念とした我が国のODA、東アジアを初めとする国際社会の平和と繁栄に大きく寄与してきたと考えています。

 先ほど紹介させていただきましたASEAN七カ国における対日世論調査においても、日本がアジアの発展に積極的な役割を果たしているとの回答が九二%、また、ODAを含む経済、技術協力が役立っているという回答が八九%と、高い支持を得たわけであります。

 我が国としましては、引き続き、人間の安全保障の観点を重視しながら、国際協調に基づく積極的平和主義を進め、国際社会の平和と繁栄に貢献していきたいと思いますが、その際に、やはりODAは積極的平和主義の一翼を担う最も重要なツールの一つであると認識をしております。

 このODAにつきましては、財政が厳しい中にありまして、おっしゃるように予算において厳しい状況が続いているわけでありますが、ぜひ、このODAの重要性を再確認しながら、しっかりと、予算においても確保に向けて最大限努力をしていきたいと考えております。

城内委員 維新の会の小熊先生も、サモアのSPREPに対する支援なども積極的にいつも頑張ってやってくださっておりますけれども、太平洋島嶼国の環境、あるいは防災とか、そういったことにきめ細かく、かつ、しっかりとした貢献を日本が世界じゅうにやることが日本への誤解を解く最善の道だと私は思っておりますので、これは、与党も野党も関係なしにみんなで協力して、オール・ジャパンでやっていただきたい。私もやっていく所存でございます。

 次の質問に移らせていただきたいと思いますけれども、日本の大使館あるいは総領事館といった公館の数、外務省定員は、ちょっと調べてみましたら、中国と比べて著しく劣っているんです。日本を国家承認している国と中国を国家承認している国というのは、日本の方が多いんですね。なぜかというと、一部のカリブ諸国やアフリカの国は台湾を承認しているんです。にもかかわらず、圧倒的に中国の公館の方が数が多いんですね。

 今、中国と日本の大使館数、定員数はどれぐらい違うのか、両国の在外公館数の推移、中国が大使館を置いているが日本が置いていない国の数、相手国は日本に大使館を置いているが我が国が置いていない国について質問したいと思うんです。

 実は、おととい、全然別件で、エリトリアの大使とサンマリノの大使が私のところに、議員会館に来まして、はっと気がついたんですけれども、彼らは東京に大使館があるんですけれども、エリトリアにもサンマリノにも日本の大使館はないんです。サンマリノには中国大使館はありませんけれども、エリトリアには中国大使館がありました。

 こういうことを踏まえて御答弁いただきたいと思います。

越川政府参考人 ただいまの御質問にお答えさせていただきます。

 まず、在外公館につきましては、大使館、これは、中国が百六十四カ国に大使館を置いております。日本、我が国は、百三十九カ国に大使館を置いております。総領事館につきましては、中国が八十一総領事館を設置し、日本、我が国が六十総領事館を今有しております。

 推移につきましては、過去十年間で見ますと、中国の場合、既に十年前に大使館を百五十七設置しておりまして、その後十年間で七公館新設しまして、現在百六十四カ国。日本の場合には、過去十年間で二十公館、大使館を新設させていただきまして、現在百三十九カ国、ことしの予算で三カ国つきまして、百三十九になってございます。総領事館につきましては、中国は、過去十年間で二十六総領事館を新設しております。その上で、五公館を廃止しております。現在、八十一でございます。日本は、三公館新設しまして、九公館廃止をして、現在六十になってございます。

 中国が大使館を設置しておりまして我が国、日本が設置していない国は、全部で三十六カ国に上っております。地域で見ますと、アジア地域で二カ国、大洋州地域では二カ国、中南米地域で七カ国、欧州地域で九カ国、アフリカ地域では十六カ国でございます。

 また、相手国が日本に大使館を設置しておって我が国が設置できていない国、これは現在十一カ国に上っております。

 あと、定員につきましては、中国の場合、必ずしも正確な人数を把握しているわけではございませんが、約九千人前後と考えております。日本の場合には五千七百八十七名でございます。

 以上でございます。

城内委員 今の数字を聞いて、私、愕然としたんですが、やはり中国に負けないぐらい、今年度の大使館の公館、三公館しかつかないんですよね。こんなんじゃだめだと思うんですね。毎年十公館、二十公館つくっていくということをやっていかないと、とてもこれは中国に追いつき追い越せないということがわかりましたので、ぜひ大臣、お願いしたいと思います。

 済みません、次に、最後の質問に移らせていただきたいんですけれども、四月二十三日に、この委員会で外務研修所を視察させていただきました。外務研修所で皆さん非常に一生懸命勉強しているということがわかったんです。

 ただ、ちょっと感じたのは、例えば語学力の養成についても、個々の外国人教師の方の趣味というか、自分の関心のあるところを教えているという感じだったんですね。やはり今、こういう形で日本が発信をしなきゃいけない段階に来ているわけですから、各語学共通の教材をつくって、それをその言葉に翻訳して、例えば、歴史認識の問題でこう言われたらこういうふうに応答するのがいいんですよというような、そういう実践的な教材をつくるべきだというふうに私は思います。

 これはそんなにお金もかかる話ではありませんし、やればすぐできる話だと思いますが、これについての大臣の御所見を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 先日、四月二十三日に、外務委員会におかれましても研修所を御視察いただいたと聞いております。

 外務省の研修においては、語学に加えて、さまざまな基礎知識を身につけさせる、こうした研修を実施しているわけですが、やはり、さまざまな外交案件について外国語でしっかりと発信をしていく、こうした実践的な能力の重要性は御指摘のとおりだと存じます。

 ぜひ、語学研修の中でも、領土問題ですとか歴史認識ですとか、こういった問題を素材としてしっかり取り上げて、実践的な能力向上に努めていかなければならないと認識をいたします。ぜひ、そういった点につきましても真剣に検討し、不断の改善も行っていきたいと考えます。

城内委員 ぜひよろしくお願いします。

 大臣が十二時ぴったりにこの委員会を出なきゃいけないということで、ここで私の質問は終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 おはようございます。民主党の渡辺でございます。

 まず、岸田大臣、昨日に報告がなされました安保法制懇の報告書につきまして、どのような印象、感想を持っていらっしゃるか、まずお尋ねしたいと思います。

岸田国務大臣 昨日提出された安保法制懇の報告書ですが、昨年二月から合わせて七回の懇談会が開かれました。こうした時間をかけ、議論を積み重ねていただき、いかなる事態においても国民の命あるいは暮らしを守り抜く、こういった観点から提言をいただいたと認識をしております。

 我が国を取り巻く安全保障環境が変化する中にあって、国民の暮らし、命を守るためには何をするべきなのか、将来の変化の見通し等も踏まえつつ、具体的な事例を挙げ、安全保障の法的基盤について御提言をいただきました。専門的そして現実的な議論をいただいたというふうに評価をしております。

 ぜひ、これをしっかり受けとめて、今後、政府としましても、与党との議論を進めていきたいと考えています。

渡辺(周)委員 今まで、この委員会でも、外務大臣に対しましては、集団的自衛権の議論がなされているんだけれども大臣はどうお考えかと何度も尋ねましたけれども、法制懇の報告が出るまでは自分は閣僚の一人として今ここで言うのはいかがなものかということで、明確なお答えはいただけませんでした。それだけに、今回は、この懇談会の報告が出たわけですから、ぜひ、思うところを御答弁いただければというふうに思うわけであります。

 きのうの総理大臣の記者会見についても、大臣は当然認識していらっしゃるということでよろしいですか。

岸田国務大臣 きのうの総理の記者会見ですが、今後の検討の進め方につきまして、基本的な方向性を記者会見の中で示させていただきました。この基本的方向性につきましては、記者会見に先立ちまして、国家安全保障会議四大臣会合でも取り上げました。そこで議論を行った上で、総理はこの記者会見に臨まれた次第であります。

渡辺(周)委員 それでは、きのうの安倍総理の発言を受けて大臣はどう受けとめたかということにつきまして伺いたいのですが、こうおっしゃっています。

 報告書では、二つの異なる提言をいただいた。一つは、個別的か集団的かを問わず、自衛のための武力の行使は禁じられていない、また、国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上合法な活動には憲法上の制約はないものとするものである、これは報告書の中身ですね。それを受けて、安倍総理は、しかし、これはこれまでの政府の憲法解釈と論理的に整合しない。憲法がこうした活動の全てを許しているとは考えない。こうした活動というのは、この提言の中にあります集団安全保障措置への参加といった国際法上合法な活動を指すものと思いますが、これは全て許しているとは考えないんだ。よって、この提言は政府としては採用できない。つまり、憲法上の制約はあるということをおっしゃりたかったんだと思いますが、その後に、自衛隊が武力行使を目的として湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからも決してないということでございました。

 この点について大臣のお考えを伺いたいんですが、ということは、多国籍軍への参加ということはこれからも決してないということでよろしいのでしょうか、そのことを一点。

 それから、多国籍軍への後方支援、これは実は法的な整備がなされていない部分があるわけなんですが、こうした国際社会において、例えば国連の大多数の国が安保理決議をした、拒否権が一部発動はされたけれども、多国籍軍という形で一国のあるならず者国家に対して何らかの懲らしめをする場合に、日本は参加をしないということ、そのための具体的な手段として、恐らく、日本は、非常に要請される蓋然性が高いのは機雷の除去だと思うんですけれども、例えばこういう活動についてもできないということで今回総理は発言されたというふうに大臣も受けとめていらっしゃいますでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の点につきましては、総理は、国連の安全保障措置への参加といった国際法上合法的な活動に憲法上の制約はないとする、こうした報告書の結論についてはとらないということを申し上げたわけでありますが、こうした国連決議等に基づく安全保障の活動について、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性がない場合に我が国が武力行使に参加することはあり得ない、こういったことを申し上げたと理解をしております。

渡辺(周)委員 ということは、我が国に対して重大な影響を及ぼす場合があるときには、いわゆる多国籍軍型の集団安全保障に対して参加することはあると。したがって、遺棄機雷、つまり、戦争が終結をして、そのまま捨てられた機雷を除去することは、これは今でもできますけれども、そうでなくとも当然行う場合はあるというふうに、外務大臣は、この報告書と総理の会見を聞いていて、そのような認識でいるということでよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性がある場合ということについて申し上げるならば、総理は、先ほど御指摘いただいた発言の後に、もう一つの考え方について、今後さらに研究を進めていくという発言をしています。要は、発言のポイントは、我が国の平和と安全を維持するために必要最低限の範囲内に、この限定的な集団的自衛権、これが入るかどうかについては、今後さらに研究を進めていくという発言をしております。

 我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性についての対応については、今後また引き続き研究を進めていきたいとしておりますので、この議論の中で具体的な対応についても政府方針を決めていく、こういった議論を進めることになると認識をしています。

渡辺(周)委員 冒頭に、この報告を受けて与党と協議を進めていくということで、当然、肯定をした形で、閣僚のお一人として最初におっしゃいました。この点について、また改めての機会がありますけれども、集団安全保障というものに対して、なかなか国連軍というのは、拒否権を発動されることなく、全ての加盟国による国連軍というのは、これはなかなかできにくいというのが現実だろうと思います。その上で、いわゆる同盟国、密接な関係にある国々による多国籍軍、有志連合ができた場合に我が国はどうするのかということに関しては、まさに積極的平和主義の中で、ここは政府としてしっかりとしたお考えをこれからもまとめていただきたい、また、我々もしっかりとお尋ねをしていきたいと思うわけであります。

 今ここで、ちょっとペルシャ湾の話を先に出しましたけれども、この提言にあります中で、よく例示に出されるのが朝鮮半島ですが、もう一つ、台湾海峡であります。

 そもそも、九八年のガイドライン議論のときには、朝鮮半島と並んで中台問題というものが一つの具体例としてイメージをされておりましたけれども、この中台による紛争が起きた場合に、この提言にありますような「我が国と密接な関係にある外国に対して」、外国に台湾は入るのかどうなのか。我が国と密接な関係にあることは論をまたないわけでありますから、中台紛争が起きた場合に我が国はどのような立場をとることができるのか、その点については大臣はどうお考えですか。

岸田国務大臣 昨日、安保法制懇の最終報告を受けて、政府としましては、与党と協議をして、これから政府方針というものを確定することになるわけですが、これは我が国の安全保障における法的基盤について政府の方針をしっかり確定するということであります。ですから、具体的な事態についてどう対応するか、こういったことについて決定するというものではないとまず基本的に思っています。

 そして、御指摘のように、国際法上、集団的自衛権の発動の要件として、自国と密接な関係にある国からの要請または同意、こういった要件が挙げられているわけですが、先ほど申し上げましたように、この集団的自衛権について憲法解釈の変更等が必要なのかどうか、この点については、まだ政府として、これから与党と議論した上で方針を決めるということですので、国際法上の要件は御指摘のとおりでありますが、政府として集団的自衛権についても含めてまだ方針が決まっていない段階であるからして、御指摘のような具体的な話について今の段階で申し上げるというのは難しいと考えています。

渡辺(周)委員 大臣、非常に歯切れが悪いのは、この台湾という位置づけをどうするかということ、これまでも、二つの中国は認めないというようなことを、我々民主党も政権をとっていたときにこのような見解を踏襲していたわけなんです。

 ただ、我が国に重大な影響を及ぼすということを考えた場合に、シーレーン以上に、距離的にも、伝統、歴史的にも、日本の近海で起こることの方がはるかに重大な影響を及ぼすだろう。何よりも、安倍総理の会見で、今後、政府・与党において具体的な事例に即してさらなる検討を深めと言っているんですよね。ですから、きのうの会見でもパネルを出して、具体的な事例を二つ出しました。

 しかし、今のお話ですと、今、個別具体的なことについては云々とおっしゃいましたけれども、これまでも中台で緊張関係が高まった場合にガイドラインをどうするかという、いわゆるガイドライン法、ガイドラインの審議をしたときには、私は当選間もなかったんですが、朝鮮半島とあわせて中台問題というのが一つの想定の中にあったわけです。ですから、これは当然具体的に想定しておくべき問題だと思いますが、今のお答えですと余り想定されていないのかと思います。

 もう一回お尋ねしますけれども、中台問題というのは、あのときはたしか、李登輝総統の総統選挙があったときに、中国が演習と称して近海でミサイルを撃った。そのときにアメリカは空母を派遣して、中に割って入ったことによって、ある意味では中国に、これ以上の挑発行為のエスカレートを力で封じ込めたところがございました。今は台湾の馬英九、中国と比較的融和路線を走っているわけですけれども、そういうことが、今後、いつどうなるかわからないと考えれば、当然想定をしておくべきことだと思います。

 その際、例えばアメリカが割って入る、そのとき、同盟国たる日本に対して支援をせよ、何らかの形で協力をしてほしいと言われた場合に、これは中国の中での内紛、内乱だということについて、ここは参加できないのか。それとも、外国ということでいえば、台湾も、ある国へ行けば大使館を持って国交を樹立している国があるわけですね。台湾と国交を持っている国もありますから、国際社会の中では台湾は一個の独立した国家だと認めているところも世界の中にはあるわけでありまして、それは日本の理屈かもしれませんが、日本から見て台湾と中国は二つの中国ではないといったところで、実際何か起きた場合には、国際社会の中でどう見るか。

 特にアメリカが、同じように中台の緊張を望まない中で、何らかの形で実力行使をした場合に、日本に協力を求められることは、あるいは支援をすることはあると想定をしておくべきだと思うんですけれども、その際は、中台紛争というものも当然具体的な事例としてお考えになるかどうか、その点はいかがですか。

石井政府参考人 政策的な御判断につきましては大臣からお話があると思いますので、私の方から国際法の関係について若干御説明をできればと思います。

 委員おっしゃいましたとおり、集団的自衛権と申しますのは、国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利ということでございます。

 その上で、それでは、問題は、台湾が、国際法上、国か、外国に当たるのかということでございますが、これも従来から政府は一貫して答弁してきておりますけれども、我が国は、サンフランシスコ平和条約第二条により、台湾に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄しているので、台湾の法的地位に対して独自の認定を行う立場にはない。

 国際法的にはこの二つで尽きておると思います。

 その上で、大臣がおっしゃいましたように、憲法解釈を変えるかどうかについてはまだ何も決まっていないということが一つ。

 それからもう一つは、今後、総理もおっしゃいましたように、具体的な事例に即してさらなる検討を深めるということでございますが、このことは、特定の事態、例えば朝鮮半島だとか台湾とか、そういう特定の事態を念頭に置くという趣旨ではないということでございます。

 最後にもう一つ申し上げますと、これも従来から政府は申し上げておりますけれども、我が国は、この問題が関係当事者の話し合いにより平和的に解決することを強く希望しておりまして、それと異なる前提において議論することは適切でない、こういう立場も従来から申し上げておるところでございます。

岸田国務大臣 まず、基本的に、今回の議論を国民の皆様にわかりやすく理解していただくために、具体的な事例を挙げながら丁寧に説明していかなければならないと思っています。ですから、総理としましても、具体的な事例を挙げて説明したいというのはそういう趣旨であると理解しております。

 そして、今の段階で集団的自衛権を含めて我が国の政府の方針というものがまだ確定していないわけですから、具体的な対応についてもまだ確定的なことは申し上げられないわけですが、いずれにしましても、御指摘のような具体的な事態について、踏み込んで申し上げるということは考えにくいのではないかと考えています。

渡辺(周)委員 安全保障の議論というのは、ある意味では、こういう最悪の事態が起きたらどうしようか、最悪の事態が起きないためにどうするかということで、当然いろいろなことをシミュレーションしてつくり上げておくべきで、その際には外交的な努力ももちろん必要で、そこを回避するためには抑止力も必要でしょうけれども、ただ、その場合には、何ができて何ができないのかということをしっかりと当然事前に準備しておくことが、当たり前のことですけれども、安全保障の要諦だと思うわけですね。

 ですから、逆に言うと、この台湾と中国の関係の問題については、微妙な問題ですから、ここで公にしゃべることはできませんというんだったらまだ少しは納得できるんですが、考えていないのではなくて、考えてはいるんだけれども、ここで言えるわけがないだろう、野党の質問でうかつに言ってまた大変なことになってしまうから言えないというんだったらわかるんですけれども、そこはどうなんですか。実際は検討しているんじゃないんですか。だって、実際、ガイドライン協議のときにやったわけですから。

 最後にもう一回聞きますけれども、中台の問題については、何か起きた場合、緊張が高まって一触即発になって、アメリカが入ってきた、その際、日本が協力、何ができるかできないかということも含めて、当然そんなことは言えないけれども考えていますよというんだったらいいんですけれども、そこはもう一回聞きますが、いかがですか。

岸田国務大臣 具体的な事例を挙げてわかりやすく説明することは大事だと思っています。

 しかし、今、現段階では、集団的自衛権への対応も含めて、我が国の政府の方針は決まっていません。これから政府・与党での議論が開始されるという段階であります。

 政府の方針を決める中にあって、あるいは決めた後にどんな議論が行われるかということについては、今の段階でちょっと明確的に申し上げるのは難しいかと思います。

渡辺(周)委員 それでは聞きますけれども、与党の議論を今後していって、理解が得られない場合は、この報告書がお蔵入りすることはある。

 つまり、今回、この集団的自衛権を認めるということは、協議の行く末に、検討していく中で、結論が出ないでお蔵入りすることはあり得るということでもあるんじゃないですか、今のそういうおっしゃり方ですと。まだ方針は決まっていないということは、当然、与党の協議あるいは国民の理解が得られなければ断念するということもあり得る、大臣はそういう認識を持っていらっしゃるんですか、そういうことですか。

岸田国務大臣 今回の報告書については、国民の命、暮らしを守るためには何をするべきなのか、こういった観点で貴重な御提言をいただいたと思っています。

 そして、この提言の中身については、現状の憲法の解釈の範囲内においてもできることがあるというふうに認識をしております。そして、それに加えて、集団的自衛権を初め憲法解釈の変更が必要なのかどうか、これについて引き続き議論をしていくというのが政府の基本的な方向性であります。

 この報告書について、議論の土台としてしっかりと尊重していくという方針は変わらないと思いますが、その中において、どれだけ現実として、結果として採用するかどうか、これについては今後の議論に委ねられていると考えています。

渡辺(周)委員 では、この議論はまた改めてやりますけれども、外務大臣、御都合もあるから時間厳守でということでございますので長くやるつもりはございませんが、では、もし、総理が意欲を示される集団的自衛権の行使ができると踏み切った場合に、前も申し上げましたけれども、改めての確認ですが、いわゆる自衛権発動の三要件、我が国に対する急迫不正の侵害、これが変わるということ、それからもう一つは、専守防衛という考え方、この日本の概念は当然変わるということで、外務大臣も当然理解をされていると思います。それでよろしいかどうかというのが一つ。

 そして、外交の責任者として、今回の報告書を受けての協議について、諸外国に対してどのような形で、同盟国アメリカは歓迎するというような新聞報道はありますが、アジアの国々も含めて、あるいはヨーロッパの国々も含めて、我が国がこういう方針転換を目指して今与党の協議をしているけれども、こういう状況だということについてはどのような外交努力をされていくか、そのことを伺いたいと思います。

岸田国務大臣 政府としましては、安保法制懇の報告書を受けて、これから集団的自衛権の問題を含むさまざまな課題を議論していくことになります。まだ、現状においては何も決まっているものではありませんが、ただ、専守防衛ということにつきましては、これは憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうものだと認識をしておりますが、我が国は戦後一貫して平和国家として歩んできました。専守防衛に徹して、他国に脅威を与えるような軍事大国とならず、非核三原則を守るとの基本方針を堅持してきました。こうした我が国の姿勢は今後とも変わらないと考えております。

 そして、その上で、各国に対する説明ですが、安保法制懇の報告書につきましても、昨日、報告書が提出された直後から、米国、韓国、中国、ASEANあるいはヨーロッパ諸国に対し説明を開始しております。

 ぜひ、今後とも、政府・与党、さらには国会での議論が進むわけでありますから、我が国のこうした考え方につきましては、さまざまな機会を捉えて、関係諸国、周辺諸国の理解を得るべく、外務省としても努力をしていきたいと考えています。

渡辺(周)委員 終わります。

鈴木委員長 次に、小川淳也君。

小川委員 民主党の小川淳也でございます。

 引き続いて、昨日の報告書の件についてお尋ねいたします。

 大臣、きのう、NSCが開催されたと思いますが、関係閣僚の方々の間で何らかコメント、御意見、質問、あられたのかどうか、お答えになれる範囲で結構です、お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 NSCの中身につきましては、基本的には、会議の後、官房長官からお示しするということでありまして、従来から、中身について詳細は私の方から発言することは控えさせていただいておりますが、昨日は、このNSC四大臣会合におきまして、安保法制懇の報告書が提出されたこと、そして、それに基づいて、検討の進め方について基本的な方向性を示すということ、こういったことについて報告され、そして議題となりました。

 詳細は控えなければなりませんが、これから丁寧に議論を進めていく、こういったことについては一致をした次第であります。

小川委員 法制懇の報告書が仕上がるいろいろなプロセスがおありだったと思いますが、一連の経過の中で、大臣は、外務省は、どの程度主体的にかかわられたんですか。

岸田国務大臣 安保法制懇の議論は、昨年の二月から昨日まで七回会議が開かれました。会議につきましては、総理は毎回出席をし、議論に耳を傾けてこられましたが、外務省としましては、毎回担当局長がオブザーバーとして出席をし、私自身は、その議論の中身について詳細に担当局長から報告を受けるという形で内容を把握してきた次第であります。

 そういったことを積み重ねながら、昨年二月からの安保法制懇の議論についてはある程度私自身も把握した上で、昨日のNSC四大臣会合に臨んだという次第であります。

小川委員 総理決裁で設立された懇談会でありますから、その法的な位置づけ等についてはいろいろと議論のあるところだろうと思います。また、各関係者、当事者がどういう思惑を持って、どういうかかわりをこれまで果たしてこられて昨日に至ったのか、この点もよく検証される必要があるだろうと思います。

 きのう報告書がまとまりましたので、手続面でちょっと改めてお聞きしますが、加藤副長官、これだけ国論を二分しかねない大変重大なテーマであります。それは、横軸でいってもそうですし、歴史という縦軸でいってもそうであります。これを、法制懇の法的な位置づけや権能の議論を仮におくとしても、これだけのテーマであれば、相当、慎重派、反対派、あるいは第三者的立場の方々、あるいは、場合によっては安全保障、防衛の素人の方もいてもいいと私は思いますが、この点、一連の経過の中で、防衛省OB、外務省OB、保守派の識者等々、極めて賛成派に偏ったのではないかという懸念、主張があります。

 この点、どういうふうに受けとめておられるか、お答えいただきたいと思います。

加藤内閣官房副長官 総理もきのうの記者会見で申し上げておりますけれども、まさに、こうした、今の我が国をめぐるさまざまな状況が厳しさを増す中で、どうすれば日本人の命を守ることができるのか、こういうことに対して真摯に取り組んでこられた、考えてきていただいた、そういう方々に集まっていただいて議論をさせていただいた、こういうことでございます。

小川委員 反対派や中立派、第三者的立場、素人、もっと多様な意見を反映した議論を進行すべきではなかったかという問いなんですが。

加藤内閣官房副長官 賛成、反対には基軸が要ると思うので、ちょっとどういう御視点で賛成、反対とおっしゃっているかわからないんですが、一つのテーマに対していろいろ考えてこられた、いわば専門家を集めて議論していただいた、こういうことであります。

小川委員 基軸は、大まかに申し上げて、集団的自衛権の行使に賛成か反対かということであります。

 それ以上なかなかお答えになりにくい部分もあろうかと思いますが、私どもとしても、これは、大臣初め責任ある立場にいらっしゃる方が、法制懇の結論が出るまでということで、極めて発言、発信を控えられてきた。そして、事務的にさまざまお聞きしようとしても、情報の提供というのは極めて限られておりました。ですから、公開された、あるいは報道された事実がそうなのかどうかということも、この公の場で確認していく以外に、なかなか方法論として具体的な詰め寄り方が限られていたわけでありますが、やはりきのうの一部報道で少し気になるものがございましたので、ちょっと確認させてください。

 三月十七日の夕刻に非公式会合が行われ、報道によれば、それは委員全員が参加する最後の会議だった。情報統制が極めて厳しかったんだと思いますが、報告書の原案を手元に持つことすら許されずに委員の方々が議論した。ある委員の発言を引用して、世間は我々が熟議したと思うだろうが、全くそうではない、今回は官僚が仕切っていた、私たちは政権のための駒だった、信頼されていなかったと感じた、概要を知ったのも先に新聞で知った等の発言がこの限られた委員の中から漏れ伝わり、公のものとなっているという点に関して、進め方の問題を含めて、所感をお聞きしたいと思いますが、いかがですか。

加藤内閣官房副長官 今のお話の中で、三月十七日に懇談会の委員の方々が非公式に集まられて議論されたというのは、そのとおりだと思います。ただ、それ以外の話については、私どもコメントする立場にはまずないと思います。

 その上で、この懇談会でありますけれども、御承知のように、第一次安倍政権のときに、ちょうど二〇〇七年からでありますけれども、約一年間、そして今回、昨年の二月から一年超、足せば二年半近く、足かけ七年かけて、これはかなり長期間にわたって懇談会の先生方には精力的に御議論いただいた、こういうふうに思っております。

 また、実際この報告書を頂戴したわけでありますけれども、それに至るまでも、こうした我が国を取り巻く安全環境の変化についての議論、そしてそれを踏まえた我が国の安全保障の法的基盤のあり方をさまざまな観点で、時には具体的な事例も踏まえながら、しっかりと御議論をいただけたというふうに思っております。

 それから、今お話がありました、報告書が云々というお話でありますけれども、少なくとも、この報告書については北岡座長代理を中心に委員の皆さん方の間で作成をしていただいた、こういうふうに承知をしております。

小川委員 七年がかりだというお話がございましたが、私も、率直に申し上げて、総理御自身のこの問題に対する執念といいますか念の強さは、賛否なり価値判断なり政策判断はちょっと別といたしましても、ある意味敬服しております、この問題に対する執念の強さ。そういう意味で、昨日にたどり着かれるまでいろいろな紆余曲折なり調整があったんだろうと思います。

 確実に、これは総理のリーダーシップ、総理の執念、総理の念の強さで始まった議論であり、もちろん一般論としてこういう政策課題があるというのは、歴史的な課題であり、当然重要な問題であると思います。しかし、この問題がこの時期に具体的に進んだのは、総理の執念であります。

 しかし、総理の人選によって選ばれたメンバーが、中にはこういうことが漏れ聞こえてくるような状況の中で議論をし、そして昨日の報告書案の公表、報告に至った。

 そこで、私はちょっとさらに違和感を感じるのは、この報告書は、かなり前のめりで、全面的に集団的自衛権の行使に道を開くものだと思います。その理論的支柱になり得るものだと思います。しかし、国際的な集団安全保障の枠組み、あるいはそれに関連した武力行使等については早々と否定をされる。この点はどう理解すればいいのか。

 総理の肝いりで始まった懇談会です。その意向を受けて報告書がまとまった。しかし、それを全部検討対象として引き取るというならまだしも、論理的には極めて重要な問題を提起していると思いますよ、しかし、この部分は政府見解としてはとり得ないなんということを早々と結論として公表する。ここにはどういう意図があるんですか、どういう経過があると受けとめればいいんですか。

加藤内閣官房副長官 今回のいわゆる法制懇の報告書は、まず、いかなる事態においても国民の命と暮らしを断固として守るんだ、こういう観点から何をなすべきなのか、あるいは、将来見通し得る安全保障環境の変化にも留意して、先ほど申し上げましたが、具体的な事例も踏まえながら、安全保障の法的基盤のあり方をどうすべきかということで、忌憚のない、かつ専門的な御意見または御提言をいただいたところでございます。

 その上で、きのう総理が申し上げたのは、今後どういう形で検討を進めていくのかということについての基本的な方向性、そして、具体的にはこれから与党との協議に入っていくわけであります。そうした中での政府としての進め方、そこの土台というんでしょうか、それをお示ししたということであります。

 御指摘ありましたように、今回の報告書で書かれている考え方のうちの一部のものについては、これまでの政府の憲法の解釈の基本的考え方と論理的に整合していない、こういうことで、政府としては、そこは採用しないということをその際に明らかにさせていただいた。

 そういうことで、有識者会議の方で御議論をいただいて、そして、それを受けた政府としては、これからこういう形で検討していく、その方向性をお示しさせていただいたということでありますが、ただ、最終的に、具体的な政府の考え方については、従前から申し上げているように、まだ決まっていない、これから議論して検討していくということでありまして、先ほど申し上げた基本的方向性に基づいて、与党とも十分協議をし、また、法制局の意見も聞きながら、政府としての対応というものを検討していきたい、こういうふうに考えております。

小川委員 確認ですが、最終的な政府としての方向性は定まっていないんですか。きのうの総理の御発言は最終的な政府の意向とは違うんですか。

加藤内閣官房副長官 きのう申し上げたのは、これから検討していく上においての基本的な方向性でありまして、それを踏まえて、いわゆる憲法の解釈をどうするか云々ということも含めた意味での政府の対応というのは、これから与党とも協議をしながら決めていく、こういうことであります。

小川委員 私も、自分自身が感じているこの気持ち悪さをきちんと表現し切れているかどうか、ちょっと自問自答しながらなんですが、問おうとしているのは、非常にお手盛り感が強くないですかということなんですよね。でき上がる経過、そして報告書の内容、政府としての受けとめ。

 副長官が御答弁になられた中身は、一般的に第三者機関、ここに法的な位置づけなり権能をどう議論するか、ちょっと今回は別問題です。これ自体議論されなければならないと思います。しかし、仮にそれをおくとしても、一般的に第三者機関から答申なり報告が上がってきたことに対して、一般的に政府として受けとめるという、一般論としてはあり得る世界観を御答弁されたと思います。

 しかし、繰り返し申し上げますが、これは極めて総理の強い執念で始まった政策論議であり、そして、委員の人選を含めて、相当な情報管理と人選へのこだわりも含めて進められてきた。その懇談会から、政府としてこれは受け入れることはできません、採用できませんとその日のうちに言わなければならないような答申、報告書が出てくるということ自体が極めて不自然だということを指摘しているわけであります。

 これは、重大な憲法解釈の変更、政策変更に手をかけるに当たって、この議論は一種の、ちょっと言葉は悪いですが、当て馬、カムフラージュという批判があっても、そう当たらずとも遠からずではありませんか。

加藤内閣官房副長官 当て馬とか云々というのは全く当たらないというふうに思います。

 まず、この有識者の懇談会でしっかりと御議論をいただいた。そして、先ほどお話がありましたように、それを踏まえて、政府としてそれをどう受けとめて、これからどう検討していくのかということをお示しさせていただいた。

 具体的に、今、報告書をもらって間なしじゃないかという議論もありますけれども、それは、先ほどもありましたけれども、懇談会の議論にも総理はずっと出席をして、その議論をしっかりと聞かせていただいておるわけでありますから、その辺は特段違和感はないもの、こういうふうに思います。

小川委員 極めて違和感が強いです。これだけ主導されて、その日のうちに、こんな解釈は採用できないと言わなければならないような報告書を受け取るというのは、一連の経過なりに対する信頼感を毀損しかねない、極めて違和感の強い経過であり、内容ではなかったかという点は、野党の立場からではありますが、指摘をしたいと思います。

 今後、どうあれ、受けとめた範囲内の解釈変更を前提に、国内法制等々の整備に乗り出されるということだろうと思います。

 これはちょっと通告外でありますので、わかる方がいればお答えください。

 国内法制、自衛隊法の改正を含めて、今回の憲法解釈の変更が及ぼしかねない法的な領域は、潜在的なものを含めて、国内的にはいろいろ議論されていると思います。私、ちょっと個人的に疑問に思っておりますのは日米安全保障条約でありまして、そこの第五条には、日本国施政下の領域における武力事態、武力脅威に対して、両国は共同して行動するという記載ぶりであります。

 今回の解釈変更は、場合によっては、日本国領域外でのさまざまな事案に対処するということを想定しなければならないんだと思いますが、これは、国内法制のみならず、日米安全保障条約の改定も視野に入るというふうに理解していいのか、受けとめていいのかどうか、その点、ちょっとわかる方がいらっしゃれば。

岸田国務大臣 まず、現状におきましては、憲法解釈を変更する必要があるかどうかも含めて、政府の方針はまだ決まっているものではありませんが、今、日米安全保障条約について御質問いただきました。

 今、日米安全保障条約を改正することを考えているものではありません。

小川委員 そうすると、基本的に、日本国施政下の領域、領土、領海、領空上における事案をあくまで想定しているということでいいんですね。

岸田国務大臣 日米安全保障条約ですから、その条約の中で、日本の施政下を対象とする、こういった中身になっています。これについて、今現在、変更するということは考えていない、こういったことであります。

小川委員 これは論理的な問いですので、憲法解釈が変更され、領域内であれば、当然、自国の防衛ですよね。領域外において米軍部隊が脅威にさらされた場合に、日本国としてどういう行動をすべきかという議論をこの間してきたわけだと思うんです。

 私の理解が間違っていればちょっと正していただき、これは通告外ですので、よく研究が必要だということであれば、そういう答弁で結構です。いかがですか。

岸田国務大臣 先ほど申し上げたように、我が国として、憲法解釈の変更が必要かどうかも含めて、まだ方針は決定していません。

 しかし、今の段階で日米安全保障条約について改正する、こういったことについては考えていない、これが現状であります。

小川委員 ということは、現行の日米安全保障条約の中で規定できる、想定し得る事案というのが、今考え得る最大輪郭だという理解でよろしいですね。違えばちょっと正していただきたいんですが。

岸田国務大臣 政府の考え方は、これから議論をした上で確定されることになります。

 ただ、今の段階で日米安全保障条約の変更を考えているということはないということを申し上げておきます。

小川委員 私ももう一回その辺はきちんと研究を重ね、そして、御通告をきちんと申し上げた上で精緻に議論させていただきたいと思いますが、輪郭が幾つかある中で、一つの重要な論点ではないかと思います。その点は改めて指摘をしたいと思います。

 ちょっときょうは短時間であり、なおかつ大臣のお時間に限りがあるということでありますので、指摘にとどめたいと思いますが、海上保安庁さん、いろいろ御準備いただいたと思います。ありがとうございました。

 この間、周辺事態をめぐっては、必ずしも安全保障の課題ではないかもしれませんが、やはり韓国の旅客船事故というのは、日本人として、隣国の国民として非常に胸を痛めました。日本として何かできることはなかったんだろうかということも、大変自問自答する日々でありました。それから、それに比べますとはるかに過激な事態でありますが、ベトナムと中国との公船の衝突というのも極めて衝撃的な事案でありました。

 日ごろ、韓国を初めとした隣国との関係が極めて良好、信頼関係のもとにあれば、これを直ちに直結するわけにはいかないのかもしれませんが、もしかしたら、もっと何らかの人道的貢献、技術的貢献ができたのではないかというような問題意識。

 それから、あのベトナムの事案から学ぶことがあるとすれば、中国の大変に横暴な振る舞いと私からは見えるわけですが、日本政府がどういうふうに外交的作為を持って働きかけをするのかということとあわせて、日本の海上保安庁の船も相当強度が強くないと、これはあらゆる事態を想定しなければならないなというふうに感じました。

 その点だけ、三十秒、一分で御答弁いただいて、終えたいと思います。

岸本政府参考人 私どもの巡視船の船体の強度、構造について今お尋ねがございました。

 ただ、私ども、どの程度の強度があるかということについては、警備業務に支障を生じさせないことから、具体的な答弁は差し控えさせていただきますが、巡視船は、業務環境を考慮した強度、構造としております。

小川委員 では、また次回以降、御議論させていただきます。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、村上政俊君。

村上(政)委員 日本維新の会の村上政俊です。

 昨日、安保法制懇の報告書が提出されました。報告書の内容について、私も方向性を支持したいと思います。ただ、今まで当委員会でも、我々野党が岸田大臣にこの集団的自衛権の問題を含めてさまざまお尋ねしてまいりましたが、なかなか前向きな御答弁がなかったことについては大変遺憾に思っております。

 まず初めに、岸田大臣にお尋ねいたします。

 今まで、この外務委員会において、集団的自衛権の議論について前向きな御答弁がなかったことについていかが思われるのか、そして、安保法制懇の報告書が出たことを契機にこれから我々野党とどのような議論を積み重ねていかれようとお考えになっておられるのか、まずお尋ねしたいと思います。

岸田国務大臣 我が国をめぐる安全保障環境が厳しさを増す中、また、新しい脅威が登場する中にあって、一国のみではみずからの安全を守ることができない、こうした認識のもとに、我が国の安全保障の法的基盤について安保法制懇において議論をお願いしてきたわけですが、従来から申し上げているように、安保法制懇の報告書を待ち、その上で政府・与党としての方針を議論し決定し、そして国会での議論をお願いする、こういったことを申し上げてきました。

 ですから、政府としての方針については、今現在も、これからまた議論が続くことになっています。ましてや、安保法制懇の報告書が出る前において確たることを申し上げることはできなかった、これはある意味では当然のことではなかったかなと思っております。

 今後、政府・与党としてしっかり議論を行い、その上で政府として方針をしっかり決定し、そして国会において充実した議論を行っていきたいと存じます。

 いずれにしましても、この議論につきましては、丁寧に行うことによって、多くの国民の皆さんに議論のありようがわかりやすく伝わるよう努力をしていきたいと考えています。

村上(政)委員 きのう総理が記者会見をされて、国民にも直接御説明されて、また、国民も世論も大変関心を持っているこの話題について、政府の方針の決定がなされてから国会においてきちっと議論されるということで、我々とこの委員会の場において突っ込んだ議論をされるのはまだ先であるというふうなお考えだと思うんですけれども、政府の方針の決定というものをなかなか我々としても待っておられませんので、いろいろと重ねてお尋ねしていきたいと思います。

 きのうの安倍総理の記者会見、パネルなどを使って大変工夫されて、国民に対して、また世論に対して訴えかけをしていこうとされる意図というものは私も感じました。ただ、率直に申し上げれば、非常にわかりにくい内容だったと思います。

 というのは、一つ目の理由は、まず、外交、安保を専門にする人以外にとってはなじみのない話題であって、そもそもこの内容自体が非常に難解なものであって理解しにくいという点もあると思います。その点は、総理御自身の責任ではないので仕方がないと思います。

 他方、もう一つ理由があるのじゃないかなと思います。それは、特定の国あるいは特定の事態というものを想定せずに、具体的な事例を示すとしながらも極めて抽象的な事例であって、これではなかなか普通の人にとっては理解しにくい、わかりにくい内容だったんだと思います。

 あのパネルを思い出していただいて、左側のパネルというのは、邦人の救出という内容だったと思います。その邦人の救出は、米軍が邦人を運んでいく、その米軍を救護できるかどうかという内容だったと思います。それは、内容からするに明らかに朝鮮半島有事を想定したものであって、北朝鮮が韓国に攻め入って朝鮮半島有事になる、その際にソウルの邦人をどのように助けるのかという内容だったと思います。

 そういうふうにはっきりとおっしゃれば、国民も非常に理解しやすいし、また、議論も積み重ねていきやすいんじゃないかと思います。簡単に申し上げれば、報告書を見ても、具体的な事例というものが示されずに抽象的な議論に終始している、あるいは総理の説明もそのような形で行われていたということで、わかりにくかった。

 政府としても、はっきりと具体的な事例を示しながら国民に対して説明されたらよいのではないかと思いますが、大臣、いかがお考えですか。

岸田国務大臣 具体的な事例を示して説明するというのは、国民にとってわかりやすい説明を心がける、あるいは国民の理解が一層進む、こういったことのためにぜひ行わなければならない、こういった認識に立っております。ですから、具体的な事例についてはこれからもしっかりとお示しをしていかなければならないと思いますが、これは、御指摘のような具体的な事態についてお示しをするということとは少し異なると思っています。

 ただ、先ほども申し上げましたように、これから政府・与党として議論を進めていきます。具体的な議論の進め方については、これから与党とも調整をしていかなければならないと考えています。

村上(政)委員 我が国が直面する具体的な事態というのは、やはり、今挙げさせていただいた朝鮮半島の有事、あるいは報告書の中でも取り上げている離島の防衛、これはつまり尖閣諸島を含む問題、東シナ海の問題、そして三つ目としては、先ほど渡辺委員からも指摘のあった台湾海峡有事の問題、こういった問題というのが大きく想定されますし、また、もしこういった事態を想定しないならば、この報告書の意義、あるいは我々が集団的自衛権について議論すること自体がナンセンスになってしまうのではないかと思います。当然、こうした具体的な事例というものを念頭に置いてお考えなんだと思います。

 そうしたことを踏まえて、集団的自衛権の中身というか定義についてなんですけれども、この定義の中で、自国と密接な関係にある国ということで述べられているわけであります。この密接な関係にある外国あるいは国というのは、どういう国として定義されるのでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 自国と密接な関係にある外国につきましては、一般的に、外部からの武力攻撃に対して共通の危険として対処しようとする共通の関心があることから、集団的自衛権の行使について要請または同意を行う国を指すものと考えられております。

村上(政)委員 この共通の関心を持つ国、すなわち密接な関係にある国の中には、アメリカも当然含まれるということですよね、大臣。

岸田国務大臣 今、石井局長から答弁させていただきました自国と密接な関係にある国の定義は、国際法上そのように定義されていると認識をしております。

 ただ、我が国は、集団的自衛権について、行使するかどうか、憲法解釈を変更するかどうか等も含めて、これからこの議論を進めていくということでありますので、まだ決定しているものではありません。ですから、我が国にとってどういう国が対象になるか等も含めて、今の段階で何か申し上げることは難しいと考えています。

村上(政)委員 具体的な事態を挙げて説明することができないということについては、さっき渡辺先生との質疑の中でもあったように、どういった事態、朝鮮半島有事、台湾海峡、あるいは尖閣、こういったことを外務大臣の口から明示的に述べることが、周辺諸国との関係あるいは我が国の政策の方向性を考えれば、百歩譲ってそれができないというのは理解できるのですが、密接な関係にある国にアメリカが含まれるかどうかについても今の時点で答えることができないというのは、ちょっと私はどうなのかなと思います。

 というのも、集団的自衛権の議論をする際に、アメリカとの関係、日米同盟を含めて議論していくのは当たり前の話であって、これについて、外務大臣がこの場で明確に、密接な関係にある国の中にアメリカが含まれるとおっしゃっても、アメリカとの関係に何ら問題ないと思いますし、また、周辺諸国との関係の中でも問題ないと思いますし、あるいは与党の中での、自民党の中での協議の中でも問題ないと思いますし、あるいは公明党さんとの協議の中でも、これは誰も驚かないし、問題ない発言なんだと思います。

 重ねてお尋ねいたしますが、自国と密接な関係にある国の中にアメリカは含まれますか。

岸田国務大臣 集団的自衛権、あるいは憲法解釈の変更等も含めて政府の方針は決まっていないわけですが、その上で申し上げるならば、米国につきましては、我が国の平和と安全を維持する上で、日米同盟の存在、そしてこれに基づく米軍の活動、これは、我が国にとりまして死活的に重要であるということは申し上げられると存じます。

村上(政)委員 先ほど石井局長が御答弁いただいた密接な関係にある国の定義の中で、共通の関心を持つというような定義がありました。

 同じような言い回しというので、振り返ってみると、二〇〇五年の日米2プラス2の際に、共通の戦略目標というものを定めたというふうに記憶いたしております。その中で、日米の間の共通の戦略目標が幾つか出ている中で、一つが、台湾海峡をめぐる問題を平和的に解決するということがその中に含まれていたと思います。ということは、台湾海峡の情勢の推移がどのようになっていくのかというのは、日米の間での共通の関心事なんだと思います。

 ということであれば、台湾海峡の事態というのも日米関係の射程の中に入りますし、また、集団的自衛権の議論の中にも当然入ってくるというふうに私は理解するのですが、大臣、いかがですか。

石井政府参考人 まず、事実関係についてだけお答えして、政策判断は大臣からいただきます。

 おっしゃるように、過去の日米間の共通戦略目標の中で、台湾海峡問題の当事者による平和的な解決を強く支持するということは、日米の共通関心事項として示されておるところでございます。

岸田国務大臣 台湾海峡をめぐる事態については日米の共通の関心事として示されているわけですが、我が国としましては、台湾をめぐる問題が両岸当事者間の直接の対話によって平和的に解決されることを期待しております。

 こうした認識に基づいて、我が国としましては、引き続き両岸関係の推移は注視していかなければならない問題であると認識をしています。

村上(政)委員 台湾の国際的な地位については先ほど国際法局長から御紹介があったとおりだと思います。ということであれば、台北の台湾当局というのは、我が国に対して集団的自衛権を行使するように要請したり、あるいは我が国に対して領域内において活動することについて同意を与えることができるのかどうか、この点はいかがでしょうか。

石井政府参考人 相当繰り返しの答弁になりまして恐縮でございますけれども、先ほど大臣からお話ありましたように、日本といたしましては、この問題が関係当事者間の話し合いによって平和的に解決されることを強く希望しておりますので、それと異なる前提を置いて議論することは適切ではないというふうに従来から申し上げておるところでございます。

 あと、先ほど申し上げましたように、国際法上の位置づけとしましては、台湾につきましては、サンフランシスコ平和条約二条で、その全ての権利、権原、請求権を我が国は放棄しておりますので、台湾の法的地位について独自の認定を行う立場にはないということでございます。

村上(政)委員 この話はこれぐらいにしたいと思います。

 というように、この集団的自衛権の問題を含めて、我々野党との間で詰めていただく問題、あるいは議論していただく問題というのは山のようにあると思いますので、外務大臣におかれましては、ぜひ、政府の方針というものを内閣の一員として早急に決定されて、我々との議論に臨んでいただいて、安全保障論議を前に進めていただければと思います。

 次に、集団的安全保障について伺いたいと思うんですが、昨日の安倍総理の記者会見の中で集団的安全保障について述べておられて、読み上げると、

  今回の報告書では、二つの異なる考え方を示していただきました。

  一つは、個別的か、集団的かを問わず、自衛のための武力の行使は禁じられていない、また、国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上、合法な活動には憲法上の制約はないとするものです。しかし、これはこれまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合しない。私は憲法がこうした活動の全てを許しているとは考えません。したがって、この考え方、いわゆる芦田修正論は政府として採用できません。自衛隊が武力行使を目的として湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してありません。

というふうに述べておられます。

 私は、この発言については幾つか問題があるんじゃないかなと思います。

 一つ目は、そもそも、集団的自衛権について憲法解釈を変更されようとしているという現状の中で、これまでの憲法解釈との整合性ということについては問題にならない、あるいは内閣の判断で閣議決定を通じて憲法解釈というものは変更できる、安倍内閣はそういう立場をとっておられるんだと思います。他方、国連の集団安全保障については、これまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合しないということを述べておられる。これは、集団的自衛権と国連の集団的安全保障については違った基準を用いて述べておられるんだと思います。

 なぜこのような違った基準を用いて議論されるのか。集団的自衛権については憲法解釈について変更する、集団安全保障措置については今までの憲法解釈との論理的な整合性について極めて重きを置く、このようになぜ違った解釈をするのか。別に、どちらもばんと、憲法解釈を変更するとおっしゃったらいいんじゃないかなと思うんですが、この点、いかがですか。

石井政府参考人 若干、総理の発言の若干事実にかかわる部分でございますので、集団安全保障の考え方について背景を御説明したいと思います。

 まさに委員おっしゃいましたとおり、総理は昨日、国連の集団安全保障措置といった国際法上合法な活動には憲法上の制約はないとする報告書の一部の提言は、政府としては採用できないということをおっしゃっております。

 ただ、これは一方、国連の集団安全保障措置に全く参加できないということを意味しているわけではございません。その後、総理がおっしゃいましたように、あくまでも、報告書の提言のうち、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときという限定的な場合に集団的自衛権を行使することは従来の憲法解釈に言う必要最小限の中に含まれるという提言について、今後さらに検討するということでございます。

 ですから、その検討の過程で、一般論として申し上げますと、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときに該当する場合には、例えば、武力攻撃の発生当初に自衛権が行使されて、その後、国連の集団安全保障措置に移行するといったような場合がこれに含まれることはあり得ると思います。

 いずれにしても、これはこれからの検討ということでございます。要は、必要最小限ということに沿った検討をして、その中で、集団的自衛権の行使も、場合によっては安保理決議がある場合も考えていくという考え方でございます。

村上(政)委員 今お尋ねしたのは、憲法上の制約はないとしているのに、ないとするのはいいと思うんですよ、私もそう思います。ただ、集団的自衛権とは憲法に対する違った考え方を用いてこれを説明しようとしている点は矛盾しているんじゃないかなということを私は指摘させていただいています。

 また、次の点ですが、憲法上の制約はないとする、そうでありながら、私は憲法がこうした活動の全てを許しているとは考えないというのは、憲法上の制約はないのに憲法がこうした活動の全てを許しているわけではないと言っているのは、これはどういう意味でしょうか。

石井政府参考人 憲法上の制約がないというのは報告書の考えでございまして、それを受けまして、総理は、それを全てとるわけにはいかない、それを全てできるというふうに憲法が言っているとは思わないというふうにお答えになっていると理解しております。

村上(政)委員 政府としては、先日、国際法局長も御答弁なさったように、国連の集団的安全保障については、国際法上違法性が阻却されていて、憲法上の制約というのはないというふうに考えていらっしゃるんだと思います。そうではないですかね。

 いずれにしても、これは、総理が、憲法がこうした活動の全てを許しているとは考えないということと、今までの政府の考え方ということは整合性はあるんでしょうか。

石井政府参考人 総理がきのうおっしゃいましたように、報告書の提言のうち、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときという限定的な場合に集団的自衛権を行使するということは、従来の政府の憲法解釈に言う必要最小限度の中に含まれる、そういう提言でございます。これは、政府の考え方と一定程度一貫しているのではないかと思います。

村上(政)委員 論理的な問題を離れて、政策的な判断について大臣に二つ伺いたいと思うんです。

 一つは、総理が、自衛隊が武力行使を目的として湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからも決してありませんというふうに述べておられて、なぜ総理は将来にわたっての判断に対して突然このようにたがをはめられたのか、制約をはめられたのかということですよね。自衛隊がこれから国連の集団的安全保障に対して、戦闘に参加しないということなのかもしれませんが、非常に誤解を与えやすい言い回しではないかと思います。

 これからも自衛隊が国際貢献をするために、あるいは我が国の国益を守るために、国連の集団的安全保障措置に対して参加していくべきだと私は思うんですが、なぜ突然このように将来にもわたる政策判断に対してたがをはめようとしているのか、どういう意図があるのか、こういうふうな政策判断というのは適切なのかというのは、大臣、どのようにお考えでしょうか。これが一つ目です。

岸田国務大臣 総理のこの発言ですが、実際の問題として、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性がない場合において自衛隊が武力行使を目的として戦闘に参加することはない、このような事例は検討の対象外である、こういったことを国民の皆様方にわかりやすく説明するためにかつての湾岸戦争あるいはイラク戦争といったものを挙げたというふうに理解をしております。今申し上げましたような考え方に基づいての発言だと認識をしております。

村上(政)委員 もう一つは、そもそも国連の集団的安全保障というのは憲法九条の問題ではないはずなんですよね。報告書にあるように、憲法上の制約はない。

 ただ、無制限に我が国が国連の集団的安全保障措置に対して出ていくのか。それは出ていかないと思います。あるいは、安保理決議があるからといって、全ての活動に我が国が参加することにはならないと思います。そういった制約というのは、我が国としてきちんと国内法制上はめていかなければならないと思います。

 どうやってはめていくかというときに、総理はあたかも、憲法において制約があるから我が国は全ての活動に参加しないと言っておられるように私には感じられます。これは、筋論としては、こういったことをとるべきではないと私は思います。

 憲法との関係では、我が国は全ての集団的安全保障措置に対して参加することができる、ただそれは、全て参加することは適切ではないので、一定の場合に限る必要がある、そのために、国内法制をきっちり整備して、その中で制約を加えていく、そうした筋論を踏まえていかなければならないのに、総理が、これは憲法に対する理解が甘いのか、集団的安全保障措置についてきちんと理解されていないのか、原因はわかりませんが、こういった筋論から離れた、憲法と集団的安全保障の問題についてごっちゃにして議論して発言されているように私は思います。

 こうした発言というのは、後々、我が国の安全保障政策に対して禍根を残しかねない、変な制約になってしまうのではないかなと私は心配するんですが、この点、いかがですか。

石井政府参考人 総理の発言の関係部分をごらんいただいていると思いますけれども、政府の従来の立場は、集団安全保障措置は憲法の規定する枠外であるという立場をとったことはございません。これは私から御答弁するのが適切かどうかという問題はございますけれども、政府の従来の立場は、昨日総理がおっしゃいましたように、憲法前文そして憲法十三条の趣旨を踏まえれば、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとることは憲法は禁じていない、それが基本的な考え方でございます。従来は、その中に、集団的自衛権は必要最小限を超えるものであるという判断をしてこられたということでございます。

 したがって、この同じ考え方が集団安全保障措置にも適用されてきたというのが今までの政府の考え方であろうと思います。

村上(政)委員 大臣、御答弁があれば。

岸田国務大臣 御指摘の点については、まず、報告書の方が、国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上合法な活動には憲法上の制約はない、これが報告書の立場であります。総理は、その立場はとらない、要は、制約があるという立場をとるということを申し上げているわけです。要は、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性がないのに自衛隊が武力行使を目的として戦闘に参加することはない、こういったことを説明しているわけであります。

 集団的安全保障と我が国の憲法との関係については、総理はそのように考え、整理し、きのうの記者会見で発言されたと認識をしています。

村上(政)委員 済みません、私も説明が足らないところがあって、混乱させてしまって申しわけないと思います。私が最終的に申し上げたかったのは、大臣が今おっしゃった制約というのは、憲法によらず、国内法制によるべきではないかというところを申し上げたかったということであります。

 時間も少なくなってきましたので、最後にお尋ねいたしますが、グレーゾーンの話であります。自衛隊と警察権の関係について伺いたいと思います。

 現行法上においても自衛隊が警察権を行使することはできるのか、あるいは、できるのであればどういった事例が考えられるのかについて伺いたいと思います。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 自衛隊法三条におきまして、自衛隊の任務を定めております。その三条第一項におきまして、自衛隊は、我が国を防衛することを主たる任務として、必要に応じ公共の秩序の維持に当たることとされるところでございます。

 この公共の秩序の維持につきましては、警察、海上保安庁といった警察機関が第一義的には対応の責任を有しているところでございますけれども、警察機関では対処できない場合に、治安出動あるいは海上警備行動などを発令いたしまして、自衛隊が警察機関と連携しつつ対処する、こういう形になっております。

 このような公共の秩序の維持を目的といたしました自衛隊の行動につきましては、これまで、警察権の行使というふうに位置づけられてきているところでございます。

村上(政)委員 グレーゾーンについては、自衛隊が警察機関と協力してきちんと対応できるような安全保障法制というものがきっちり整備されることを望みたいと思います。

 最後に、この報告書が出てきたわけですから、政府におかれましても、これから速やかに、さまざまな、この法制度に対する、あるいは根本的に憲法の解釈に対する理解あるいは方針というものを定められて、この国会の場において議論に臨まれるということを希望いたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、石関貴史君。

石関委員 日本維新の会の石関貴史です。質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 対ロシア、今、制裁中でございますが、このことの関係で幾つか御質問を申し上げたいと思います。

 まず、今、傍聴もされていますけれども、鳩山邦夫先生が先日訪ロされました。ただ、これについては、海外渡航許可について議運の理事会でも議論になりました、制裁をしている国に行っていいのかと。

 ぜひ委員の皆さんにも御理解いただきたいんですが、もともとは、議員がどこかの国に渡航するということについては、院の審議等に影響を与えない限りは、どこの国だからだめだということは過去にありませんでした。ただ、このゴールデンウイーク中に申請をした北朝鮮への渡航については、初めてそういう議論になりまして、異論があり協議が調わず、訪朝の許可がおりなかったということがございました。

 ただ、繰り返し申し上げますが、これは過去にはなかったことで、憲法にも移動の自由というのが当然あり、議員には議員外交を行う自由というものがあり、外交では、大臣はもちろん見識高い方だと思いますが、これはいろいろなチャンネルがあった方が国益にかなうということから、こういったことは過去にはなかったんですが、海外渡航の許可、不許可についての悪い例を今回つくられてしまったということから、その前には議論になるはずもなかった鳩山先生の訪ロについても議論がありまして、その場での許可とならなかったということがございました。

 ただ、訪ロされて、報道もされましたけれども、これは日程には入っていなかったんですけれども、これも今お尋ねをしているところなんですが、ロシアの下院議長のナルイシキンさんとロシアで面談をし、この方が六月に訪日をされる、こういうことが報道もされております。

 これについては、官房長官が、このナルイシキンさんというのは制裁の対象者ではないと。日本がロシアに対してウクライナの関係で行っている制裁というのは、ビザの発給をしない、こういう制裁だと承知をしておりますが、官房長官は、この方はこの制裁の対象者ではないというふうに言っています。

 では、お尋ねをいたしますが、ナルイシキンさんは官房長官が制裁対象者ではないと記者会見で明言をされておられますので、以下の方々について、制裁の対象者かどうなのかということをお尋ねいたします。

 資料をお配りしているうちの、米、EU、カナダの制裁対象者リストの中の、三番のマトビエンコ・ロシア連邦院議長、三十番のコバルチュク・ロシア銀行頭取、五十三番のネベロフ・ロシア国家院副議長、この三名は対象者になっていますか、お答えをお願いします。わかる方で結構です。

岸田国務大臣 査証発給停止対象者でありますが、これにつきましては、例えば、国連の安全保障理事会の決議に基づく場合、要は、安保理の決議において既に名前が明らかになっている場合ですとか、あるいは資産凍結を伴う措置を行う場合、この場合は、全国の金融機関に対して名前を明らかにしないとさまざまな影響がありますので、明らかにするわけですが、こういった例を除いては、慣行上、こうした名前は公表していないということであります。

 そして、今委員の方から、官房長官がナルイシキン議長の名前を明らかにしたではないかという御指摘がありました。

 これは、五月の十三日にナルイシキン議長が訪日の意向を明らかにされたということなんですが、その時点で、我が国としましては、既に査証発給停止者についてはロシアに対して伝えているわけですから、本人は発給停止になっていないことを認識した上でこういった発言をされたということですので、この時点で、事実上、査証発給停止の対象者でないということが公になってしまったということであります。

 こういったことから、官房長官の会見が五月十四日でありましたが、十四日の段階で、官房長官が、既に発給停止リストに入っていないことが本人を通じて認められたことから、これを確認したということで明らかになったということであります。

 ですから、今、三人ほど、これはどうかというふうに聞かれたわけですが、基本的には、我が国は従来から、先ほど申し上げました国連決議等で事前に名前が明らかになっている場合、あるいは資産凍結を伴わない場合、この場合については名前を明らかにしてこなかったというのが慣行であり、今回も、その点については従来の慣行に従って対応しているということであります。

石関委員 今の下院議長さんは、今御答弁のとおり、御本人がそれを前提に希望したのではないかということでしたけれども、本人に通知が行っている場合も、それでも日本に行きたいということで訪日の意向を示すことは当然あるのではないかと思うんですね。

 今の三名の方がそういう方かどうかわかりませんが、ちょっと特徴のある方なので三名挙げさせていただいたんですが、本人が希望した場合には、このように、違いますよと官房長官が発言をしているんですが、今のようにお尋ねをして答えられない理由というのは何なんですか。ちょっと違いがよくわからないんですが。

岸田国務大臣 ナルイシキン国家院議長のケースについては、先ほど説明させていただいたようなことから官房長官の発言につながったわけであります。

 ただあれは、そういう事情に基づいて明らかになったことであり、基本的には、先ほど来申し上げているように、我が国としては、査証の発給停止につきましては従来から名前を明らかにしてこなかった、そして今回もそれを踏襲しているということでありますので、我が国は二十三名を対象者にしておりますが、これを全て明らかにすることは従来どおり控えさせていただきたいと政府としては考えているところであります。

石関委員 であれば、慣行とおっしゃいましたけれども、控えさせていただいている根拠、理由、ちょっともう一度明確に教えてもらえますか。何に基づいてこれは控えているんですか。制裁しているんだから、こういう人たちですよと。

 大臣の談話でも、四月二十九日に、「二十三名に対し、日本への入国査証の発給を当分の間停止する」、こういうことが述べられておりますので、制裁しているのなら対象者を明確にしたらいいと思うんですけれども、何でだめなんですか。

上月政府参考人 お答えいたします。

 これまで査証発給停止対象者を公表しないことが慣行となっていることの根拠でございますけれども、査証発給につきましては、外務大臣の裁量には何らの制限も設けられておりません。全くの自由裁量に委ねられているところでございます。したがって、査証発給停止対象者を公表するか否かについても外務大臣の裁量に委ねられておりまして、外交的観点からこうした自由裁量を行使した結果として、これまで、公表しないという慣行としているということでございます。

石関委員 では、何で公表しないのか、大臣の裁量ということですから。何でですか。

岸田国務大臣 外務大臣の裁量で判断し、そして慣行として発表していないわけですが、それは、各国の対応も参考にしながら、念頭にしながら、そしてなおかつ、我が国の立場も考えながら、総合的に判断するということかと思います。

 査証発給禁止については、米国あるいはEUについては、入国制限あるいは資産凍結、こういった制裁もあわせて行っておりますのでこういった名前が挙がっていますが、例えば三月六日の米国のサキ国務省報道官の記者会見でも、査証発給禁止についてはリストがあり、しかし、法令によって公表することはできないと。ですから、査証発給部分についてはリストは発表していないというのが米国の対応であります。

 こういった対応等も勘案した上で、外務大臣の裁量として、査証停止の対象リストについては公表しないという対応を従来からとっている、こういったことであります。

石関委員 では、わからないので、この二十三名、ちょっと私自身は、ほかの国の人から仄聞している名前はあるんですが、ただ、それは今のように確認はできませんので。

 では、私がロシアに行って、このリストにあると思われる方と面談をするということは別に構わないんですよね、違う角度からですけれども。別に問題ないですよね。勝手にやってくれという話ですか。

岸田国務大臣 我が国の対応の趣旨から考えましても、委員がロシアを訪問されて面談されることまで何か差しさわりがあるとは私は考えません。

石関委員 わかりました。

 私もいつまで議運にいるかわかりませんけれども、今の外務大臣の言葉も踏まえて、今後の海外渡航の許可、不許可にまた生かしていきたいというふうに思います。

 続いてちょっと、今度は外務省のことになると思います、このことをきっかけにでございますが、お尋ねをしたいと思います。

 これは、今の制裁の件は、担当はロシア課というところで、今の二十三人のリストの話であるとか、幾つかのこと、今大臣がお答えになっていただいたこと、それから欧州局長がお答えになっていただいたこと、このことを明確にお尋ねしたい、聞きたいと思って、一昨日、ロシア課の担当のところにお電話をして、今のことを聞きたかったんですよ。

 そうしたら、公表、不公表について誰が決めているんですか、何か規則があるんですかと、ロシア課の担当者の高橋さんという課長補佐でしたけれども、尋ねたら、ううっとなって答えられなくなったので、今みたいに答えてくれればよかったんですよ。わからなかったみたいで、では、翌朝のファクスでも構わないから、よく整理をして、文書で、ファクスで構わないので送ってくださいと。

 翌朝になりました。何にも届いておりませんでしたので、おかしいではないですかと言ってロシア課にお電話をして、高橋課長補佐を出してください、きのうお話しした相手だからということで、女性の方が電話を受けて、男性にかわりました。これは、おととい依頼したことで来ていなかったので、きのうの朝、こちらからお電話をしましたら、そういうふうになって、男性にかわって、男性が話を始めました。きのうの九時四十分過ぎから十時ぐらいまでの間の二十分弱の電話のやりとりなんですが。

 高橋さんをお願いしますといって男性が出たので、当然高橋さんだと思ってしばらく話をして、返事もないのはおかしいではないかと。今みたいな整理がついているんだったら、ありのまましゃべってくれたり、紙にして送ってくれればよかったんですが、そこでもただ要領を得ないことで、その男性は、まだ省内で調整が必要だし、組織でやっていることだからお答えはできません、こういう話を延々されて、私が繰り返し尋ねることにも一切明確な答えがなくて、自分のペースでずっとだらだらだらだらと話をされたので、ちょっといいかげんにしてくれという話をしました。きのうこういう話をしたではないかという話をしたら、その段になって、私は高橋ではありませんと。ではあんたは誰なんだと言ったら、私はロシア課首席事務官の高澤令則という者ですと。入省は何年ですか、平成十一年ですと。聞いたら初めて答えているんですね。

 私は、高橋さんだと思って話したわけですよ。こんなおかしなことが外務省という立派な役所で行われるということは、私、たまげましたよ。これはおかしな話。(発言する者あり)そう、研修し直しだと言われましたけれども、お尋ねしたいんですけれども、どんな研修をしているのかとか、こんな者がいていいのかというのが率直な感想でした。

 でも、今みたいに明確にお答えいただけることを聞いているわけですから、それを紙にして、別に持ってこいと言っていないですよ、ファクスでいいですよ、こういう話をしているにもかかわらず、組織で調整がついていないんです、私は組織の人間ですからと、たらい回しみたいな話をされたので、小役人みたいなことを言われたら困るよと、この首席事務官の高澤令則さんに言いました。そうしたら、私は小役人ですから、こういうことをおっしゃったので、これもたまげましたよ。私は党内でも非常に温厚な性格だと知られているんですけれども、この私ですら極めて暗たんたる気持ちにさせられました。

 この内容をちょっと御紹介します。

 きょう、参考人でこの高澤令則首席事務官を要求したんですよ。参考人については過去の申し合わせがありますが、責任ある者、このことは彼との会話ですから、責任を持てるのは彼しかいないので彼を要求したけれども、応じてもらえなかったということがあります。私が一方づいた話だと思われると困るから、彼に来てもらって、役所の上司の話では優秀だと言うんだから、自信を持って答えてくれると思ったら、参考人になっていなくて残念なんですが。

 最初驚いたのは、今みたいに、名前を名乗らず、ずっと高橋さんのようなていで話をされていたということ。それから、人の話は一切聞かずに、メモをとったんですよね、小役人みたいなことを言うなよ、困るじゃないかと言ったら、小役人ですからと。会話の最初では、ではこれから私が行きますよと言っていたんですけれども、紙ができていないのなら来てもらってもしようがないですよと。ただ、余り話しぶりが尋常ではないので、ちょっと顔を見て話さないとわからないから、ではさっき言ったように来てくださいと言ったら、行きませんと。さっき来ると言ったのに何で来なくなったのと。高澤令則さんですよ、首席事務官の。そうしたら、その理由も一切言わずに、まただらだらだらだらとわけのわからないことをしゃべり始めて、組織ですからと。こういうことをずっとやってきたんですね。

 でも、その朝、彼のところにかける前に国会対応の審議官の引原さんのところに御連絡をしたら、これはロシア課の対応ですと言われて私はかけているので、それはおかしいでしょうという話をしたら、この方がまたたまげたことに、それは事務所間のディスコミュニケーションじゃないんですかと。どういう意味ですか、このディスコミュニケーションというのは。何か立派な言葉を使っておっしゃっておられました。これはたまげましたよ。

 ここでこういう質問をしているのは、何も私のうっぷんを晴らすとか留飲を下げるためじゃないんです。これは委員の皆さんにもよく御理解をいただきたいと思います。

 私のところには、その後、欧州局長が二度、官房長という偉い方も一度、おわびにおいでになりましたよ。だから、私は、ここでまたおわびしてくれとか、国会議員だからとか、そういうつもりじゃないんです。私のところには、国会議員だからこういう偉い人がおわびに来てくれましたよ。だけれども、一般の国民の方がこういう目に遭ったら、うっぷんを晴らすとか、誰かに正してもらうとか、ましてや偉い人がおわびに来ることはないですから、こういう体質の外務省では困ると思ってこういう類いの質問をここでさせていただいているんです。

 この方が今後どうなるかわかりませんけれども、普通にいって、外務省のキャリアのたどる道でいえば、どこかの国の領事になるとか総領事になるとか、大使館に勤めるとか、外務省出身の方がよく御存じだと思いますけれども、一般の国民の方とそこでまた会話をする場面があったりとか、ビジネスマンと話をする、外国の方ともお話をする機会があるでしょう。こういう話をされる方が、日本の代表の一人として、ディスコミュニケーションを招くような方が行ってもらったら困る、研修でもし直してもらってやってもらわないと困るのではないか、こういう観点からお話をしているんです。

 私もここで、ああすっきりした、偉い人が謝ってくれてと、そういうつもりでもないし、彼も、うまくあしらってすっきりしたと一瞬思ったかもしれないけれども、すっきりしたじゃ済まないんですね、こういう話は。そういうお話をさせていただいております。

 優秀だ優秀だというふうに上司の方々はおっしゃったんですけれども、上司に対しては優秀かもしれません。反省もしているというお言葉がありましたよね。だけれども、反省しているのは、私も何年か役所にいたことがありますけれども、欧州局長とか上司の官房長とか、偉い方が出動して、たまげて反省しているんじゃないかと思いますよ。

 今後、彼がどういうふうに成長するか。首席事務官の平成十一年入省の高澤令則さんという方ですね。平成十一年入省の首席事務官のロシア課の高澤令則さん、こういう方なんですけれども……(発言する者あり)そうなんです、ぜひ皆さん覚えてください。役人というのも、公職をやっていますから、別に匿名性があるものではないので。

 自分の言動には、我々は選挙の洗礼がもちろんありますし、その他の責任もあります。これは一般の公務員の皆さんも当然ある話だし、外務省という、国益を担って外国で日本を代表してやる方々でありますので、今後、後の方で聞きますけれども、外務省の研修とか、そういうものがどうなっているのかということも含めて、これは一例かもしれませんし、これだけかもしれません。私は、外務省の皆さん、役所の皆さんが、みんなディスコミュニケーションを招くような人だとは全く思っておりません。真面目に仕事をされているし、普通の感覚もあるというふうに思っていますが、これは一つの顕著な例だと思って、わざわざここで時間をいただきました。

 私は、こういうところで御質問をしたり、偉い方とお話をする機会もいただきましたけれども、では、普通の生活をしている国民の方がこういう目に遭ったらどうしたらいいんだろうなと思っていろいろ調べたら、総務省に行政相談室というのがあるんですね、皆さんのところに資料をお配りしていますけれども。

 私も相談してみましたよ。こんな目に遭ったんだけれども、国会議員なんですけれども、私も相談に乗ってもらえますかと。内容を話しましたら、仕事で密接な関係のある国会の人にこういう対応をしているようでは、これは普通の国民の方に対する対応を想像すると、推して知るべし、尋常ではない、喜んで相談に乗ります、こういう話だったので、また改めて相談をしたいというふうに思っている。これは、私のためではなくて、国民の方々がこういう目に遭わないようにという観点から、私は相談をしようと思っています。

 これは、温厚な私だからこの程度ですけれども、厳格な渡辺先生とか小熊先生とかだったらもっと大変なことになっていると思いますよ。

 私は、もうこれ以上にするつもりはありません。平成十一年入省の首席事務官の高澤令則さん、まずこの方は、ちょっと、いろいろ大臣の方も御指導いただいて、今後、国民に対してちゃんとした会話ができるように、ぜひ御指導いただきたいというふうに思います。

 私の今の話、会話のメモを御披露いたしましたが、大臣だったらどう思いますか、大臣がこんな対応をされたら。小役人みたいなことをしたら困るよ、小役人ですから、あなたの事務所のディスコミュニケーションじゃないんですかと言われたら、大臣はどう思いますか。

岸田国務大臣 まず、政府としましては、議会ですとか議員から資料提供なり説明を求められた場合、可能な限りしっかりと対応しなければならない、これは当然のことであります。加えて、国民に対してしっかり説明責任を果たさなければならない、誠実に対応しなければいけない、これも大変重要な点だと認識をいたします。

 そして、ただいま委員の方から、やりとりについてお話を聞かせていただきました。

 私自身、その場にいたわけではありませんが、しかし、お話を聞いておりまして、このやりとりの中で、要は、誠実さを感じられない、そしてしっかりとした対応が行われていない、こういったことであるならば、外務省として、これは大変申しわけないことであると認識をいたします。

 こういったことも含めて、ぜひ、教育、指導といった点について対応を考えてみたいと存じます。

石関委員 真面目にそのようにお願いしたいと思います。

 これは、お尋ねしたことを何度も言いましたけれども、今、大臣や局長がすらすら答えてくれたことですよ。こんなものを、組織ですからと言いながら、組織の中でそういう考え方というのはもともとあるわけでしょう、大臣の裁量ですと。それがあるのにもかかわらず、組織だ組織だと偉そうなことを言いながら、そのことすらも答えない。

 これは、彼の問題はあると思いますけれども、組織的な問題もあると思いますよ。答えれば、別に私がここで質問することはないんですよ。すらすらと、大臣の裁量です、慣行です、わかりましたと。それ以上ぎりぎりやるつもりはないですよ。それが何でできないのかというのは、これは組織の問題だと思うし、私は、この平成十一年入省のロシア課の首席事務官の高澤令則さん、これは氷山の一角ではなくて、彼だけがこういう対応だったと思いたいですよ。

 ほかの皆さんも、外交官が、普通の国民の皆さんに対しても、外国に行って日本を代表するときも、ぜひこんな事態を招かないように、今の研修も含めてですね。

 小役人が、小役人を自認するような者が外交をやってもらっては困るんですよ。ロシア語がしゃべれます、英語がしゃべれますなどというよりも、それ以前に、普通の国民の皆さんとコミュニケーションがとれます、ちゃんとした日本語がしゃべれます、ごまかしません、あるものはちゃんと公表します、こういう人が日本の国益を代表して外務省で頑張っていただきたいと私は思います。

 どういうつもりで彼が言ったのか、また電話をして聞いてみたいと思いますよ。もし私がここで言った今のメモの内容や何かが違っているのなら彼にも反論の機会があると思って私は参考人で要求したけれども、出てこない、出せないということですから、本人にも、私の言っていることがもし間違っているのであれば、またちゃんとここでお時間をいただければ、こういうことでした、そういう話をさせていただきます。

 ぜひ、外交官の研修がどうなっているのか、時間もなくなってきたので、もっともっと話したいことはありますけれども、語学研修とか留学をして皆さん立派な勉強をされているのは知っていますけれども、コミュニケーションという意味では、一回、マクドナルドにでもお願いをしてちょっと研修させてもらうというようなことはどうですか、大臣。

岸田国務大臣 外交官の資質あるいは研修ということにつきまして、おっしゃるように、語学のみならず、さまざまな専門的な基本的な知識はもちろんですが、それに加えて、コミュニケーション、要するに、人的なつながり、人との交流の仕方等、基本的な人間性にかかわる部分についてもしっかりとしたものを持ち備えなければならないと考えます。そうした総合的な力が外交官として求められるのではないかと認識をいたします。

 今後とも、研修のあり方あるいは外交官の資質を考える上において、今申し上げましたような考え方に基づいて不断の努力を続けていきたいと存じます。

石関委員 ありがとうございました。

 今の大臣のお考え、大臣在任中に、実行の端緒でもいいですからぜひつけていただきたいと思いますし、立派な上司の皆さんには、役所の中の評価というのはありますよ、優秀だ、法律がよくわかる。だけれども、国家公務員ですから、国民が見たときにどういう人なのかというのも、ぜひあわせて指導もいただきたいと思います。私は、そういう方々が外務省の幹部で頑張っていると思いますよ。

 ぜひ、この平成十一年入省の首席事務官の高澤令則さん、この方も成長して立派な外交官になることを心から祈念申し上げまして、私の質問を終わりにします。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 結いの党の青柳陽一郎でございます。

 本日は、質問の機会を十五分いただきました。

 早速ですが、質問に移りたいと思います。

 本日の委員会でも既に多くの議論が行われておりますが、安保法制懇の報告書、そして安倍総理が記者会見で示した政府の基本的方向性について、大臣の認識を中心に伺ってまいりたいと思います。

 報告書は、これまで自民党政権、歴代政権が数十年の長きにわたって積み重ねてきた、築き上げてきた憲法解釈を変更することを提言しておりますし、総理は、それを容認する、憲法解釈の変更の必要性を示した。大変重みのある報告書、そして記者会見でありました。我々も当然重く受けとめております。

 報告書では、集団的自衛権の行使容認、憲法解釈の見直しを明確に提言しておりますが、まず、改めて伺いたいと思いますが、政府、政権は憲法解釈を変更できるというふうにお考えになられるか、大臣の御認識をまず伺いたいと思います。

岸田国務大臣 政府としましては、安保法制懇の報告書を受け、そして昨日、総理としましても検討の進め方に関する基本的な方向性を示させていただき、これから与党との協議に臨んでいきたいと考えております。

 総理もきのうの記者会見で申し上げたように、引き続き今後さらに研究を進めていきたいというような表現で、今現在で集団的自衛権の問題あるいは憲法解釈の変更の問題について何か決まっているものではありませんが、例えば安保法制懇の議論の中にあっても、従来から、自衛権につきまして、個別的自衛権そして集団的自衛権、こうしたものが議論されてきたわけですが、個別的自衛権そのものについても、憲法においては明確な定義、条文はないわけであります。個別的自衛権とて、さまざまな議論の積み重ねにおいて今日に至っている、よって、集団的自衛権についてもまた議論を行う余地がある、こういった内容が報告書の中でも指摘をされています。

 こういった点も踏まえて、引き続き、政府としての方針を確定するべく、議論を続けていきたいと考えています。

青柳委員 集団的自衛権の行使容認も含めますが、一般論として、政府、政権が憲法の解釈をその政権ごとに変更できるというふうに大臣は御認識されているかどうかをお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 憲法解釈につきましては、やはり慎重でなければならないということではありますが、議論の中で、過去、憲法解釈についても変更ということが行われたというふうに解する議論もあるということは認識をしております。

青柳委員 慎重ですが、解釈を変えることは可能だというふうに理解いたしました。

 であれば、安倍政権がかわれば、いつかは終わるわけですから、そうすれば、今やろうとしている解釈が仮に変更できたとして、またそれが別の解釈に変更されるということもあり得るということでよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 法的な安定性というのは大変重要でありますし、憲法解釈につきましては慎重に対応しなければならないとは認識をしております。

 いずれにせよ、こうした議論を進めるに当たりましては、多くの国民の皆さんの理解なくしてはこの議論を進めるわけにはいきません。ぜひ多くの国民の皆様方に理解がされるような、わかりやすい議論を丁寧に進めていくことが重要だと認識をしております。

青柳委員 安倍総理は昨日の会見で、積極的平和主義の実現に向けて集団的自衛権を限定的に行使することは許されるということに前向きであったと思いますし、あるいは、日本を取り巻く安保環境が厳しさを増している状況で、国民の命と暮らしを守るための法整備がこれまでの憲法解釈のままで十分なのか、検討が必要だというふうにも述べられております。さらに、あらゆる事態に対処できる法整備によってこそ抑止力が高まると述べられておりますが、これは大臣も同じ御認識でよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 我が国を取り巻く安全保障環境は、大変厳しくなっていると認識をしております。そして、今後も変化を続けていくものと考えます。

 我が国としましては、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、これまで以上に世界の平和に貢献をしていかなければならないと考えていますが、その中で、あらゆる事態に対処できる法整備を行って、そして日米同盟あるいは関係各国との協力を強化することによって、すきのない備えをするということが重要であり、こうしたすきのない備えをすることによってこそ、抑止力が高まり、紛争が回避され、そして我が国が戦争に巻き込まれることがなくなっていく、こういった考えに基づいて、引き続き議論をし、努力をしていかなければならないと認識をしています。

青柳委員 私も今の大臣の答弁とほとんど一緒の理解であります。

 であれば、現在の憲法第九条と今の大臣の御答弁、あるいは安保法制懇の報告書、あるいは昨日の総理の記者会見、これを、現行憲法のまま解釈の変更だけで対応していくということには、私は無理があるんじゃないかと思いますし、これから与党協議、あるいはいろいろなところで協議がなされると思いますが、乗り切れないんじゃないかと思っております。

 私は、今の政権、調査によれば改憲勢力が三分の二を超えると言われているわけですから、むしろ堂々と憲法改正を発議する、そこにチャレンジしていくべきじゃないか、最大のチャンスが今訪れているのではないかと思いますが、大臣は解釈の変更で乗り切っていくということでやっていくのか。あるいは、今御答弁されたような内容を本当に実現していくには、私はむしろ憲法改正を堂々とやるべきじゃないかと思いますが、大臣はどのような御見識なのか、伺いたいと思います。

岸田国務大臣 昨日提出されました安保法制懇の報告書ですが、これは、時間をかけ、専門的、具体的な提言をいただいたと評価をしております。

 そして、この報告書の中身ですが、現行の憲法の範囲内においても対応できる、こういった内容も、この報告書の中においてさまざまな提言をいただいております。そして、それに加えて、憲法解釈の変更等、現行の憲法解釈の範囲内において対応できるかどうか検討しなければいけない、こういった課題についても御提言いただいたと存じます。

 憲法解釈の変更が必要なのかどうかも含めて、政府としましては、与党とこれから議論を行い、丁寧に議論を進めていきたいと考えております。憲法解釈の変更なのか憲法改正なのか、その憲法の議論については、これからぜひ与党と丁寧に議論していくことになるのではないかと考えます。

青柳委員 ありがとうございます。

 当然、国会でもこの問題を徹底的に審議するということは必要だと思いますし、先ほど来答弁のあるように、国民の皆様に対して丁寧に説明していくということも必要だと思いますが、この今の最大の機会を生かすべきだというふうにも私は思います。

 いずれにしましても、この問題、まだまだ聞きたいことがたくさんありますが、本日は時間的な制約もあってまた次回に回したいと思いますが、ぜひ、本件では、集中審議を開催するなど対応をお願いしたい、これは委員長にもお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

 残された時間で、シリアの情勢、シリアの人権問題について、国連安保理によるICCへの付託についても最後に伺っておきたいと思います。

 現在のシリアの国内情勢、これはもう大臣御案内のとおりだと思いますが、政府の弾圧、あるいは反政府勢力による武装グループが介入し、ゲリラ戦が展開されている、泥沼化している、死者は全土で十五万人、国外に流出した難民は二百七十万人、国内避難民は六百五十万人と、本当に深刻化した状況になっている。

 こういう状況の中で、我が国は、スイス政府の要請に応じて、シリア事態をICCに付託するということを要請する共同書簡に署名しているわけであります。これが、早ければ来週にも、シリアの事態をICCに付託する決議案というのが安保理にかけられるという動きに現在なっているということです。

 本件は、実は、同様の案件、北朝鮮の人権問題を安保理に付託すべきだということを考えているわけでございますが、同じような案件を持っている日本にもこの対応は大きな影響があるということでございまして、私は、このシリアの問題、日本は積極的な対応をぜひすべきだと思いますが、現在の日本政府の対応、シリア問題をICCに付託するということに対する対応について、現在の対応をお伺いしたいと思います。

新美政府参考人 事実関係でございますので、事務方から説明させていただきます。

 今委員からも御指摘ございましたとおり、シリア情勢についての問題、フランスが、安保理のメンバーでございますが、ICCに付託する安保理の決議案を起案しまして、スイスとともに、国連加盟国に対して決議の共同提案国になることを呼びかけております。また、この決議案に関連いたしまして、スイスから、日本を含む国連加盟国に対しまして、この決議案の共同提案国に参加を呼びかける共同書簡、及び本決議案の採択を求める公開声明文に各国が名前を連ねるということを要請していると承知しております。この決議案は、恐らく来週にも採決に付される可能性があるのではないかと思っております。

 今の御質問の点についてでございますけれども、日本として、シリア当局による人権侵害の問題については、今まで、非難する複数の国連総会の決議の共同提案国になる等、一貫してシリアに対する人権侵害に対して懸念を表明してまいりました。

 その決議案につきましては、実はまだ最終版というのができておりませんので、まだ暫定版、先生御承知と思いますが、国連でブルーといいますけれども、その最終版が間もなく出てくると思いますので、それも踏まえて今現在検討を進めているところでございます。

青柳委員 ありがとうございます。

 私が申し上げたかったのは、もっと積極的に介入すべきではないかということを申し上げました。

 あるいは、こうした対応、今フランスやスイスがやっているような、ICCに付託を求めるレターをつくって共同執筆国、共同提案国を募るという行為を北朝鮮の人権問題で日本はやっているのかどうか。私は、ぜひこういうやり方を北朝鮮の問題でもやるべきじゃないかと思いますが、最後に大臣にその御決意をお伺いして、質問を終えたいと思います。

岸田国務大臣 まず、シリアの問題につきましては、私も、ことし一月、スイスで開催されましたジュネーブ2会議に出席をさせていただきました。しかし、その後、御指摘のように、ますます状況は悪化していると認識をしております。

 そして、ジュネーブ2会議の枠組みで開始されたシリア政府と反体制派の直接対話、これも現在、中断をしております。見通しも厳しいと考えております。

 ですから、このシリアの問題につきましても、御指摘の決議案につきまして、今、最終調整中でありますが、ぜひ我が国としましてもしっかりと貢献しなければいけないと認識はしております。

 加えて、北朝鮮問題についてでありますが、まず、三月に北朝鮮の人権状況決議が採択をされています。この決議の中に、ICCを含む適切な国際刑事司法メカニズムへの安保理による付託についても言及されております。ですから、この決議をしっかりフォローアップする、こういったことが重要だと認識をしております。四月十七日に安保理のアリア・フォーミュラ会合も開催されていますが、適切な行動をとることを我が国としましても表明しております。ぜひこういった形で努力は続けていきたいと考えています。

青柳委員 ICCに付託を求めるレターをつくるなど、そういう取り組みを求めたいと思いますが、質問を終えます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 冒頭、昨日、五月十五日に安保法制懇が、集団的自衛権の行使を禁止してきた従来の政府解釈は適当でないとして、その容認を公然と求める報告書を発表いたしました。これは、海外での武力行使はしてはならないという憲法上の歯どめを外そうとするものであります。

 これを受けて、安倍首相は基本的方向性なるものを明らかにしましたが、政府が、こんな方向で、一内閣の判断によって憲法解釈を自由勝手に変えるなど断じて許されないと思います。

 憲法を破壊して、海外で戦争する国をつくる企ては許されない、撤回すべきだと強く求めたいし、この重大問題については、別途、十分質疑時間をとって集中審議を行うことを委員長に強く求めたいと思います。委員長、お願いします。

鈴木委員長 理事会で協議いたします。

笠井委員 きょうは限られた時間ですので、三月二十六日の当委員会での質疑に引き続いて、米軍の無人偵察機グローバルホークの配備問題について質問いたします。

 まず、国土交通省に伺いますが、四月十七日、国交省では、今月下旬から、つまり五月下旬から三沢基地で運用される米軍の高高度滞空型無人偵察機グローバルホークに関して、同基地周辺を飛行する小型機の操縦者向けに管制官への事前確認を求める周知文書を発出したと思うんですけれども、それを出した目的、そして主な内容について端的にお答えください。

島村政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省では、米軍のグローバルホークの三沢飛行場の運用に関し、主にVFR、有視界飛行方式で飛行する小型機の運航者に対し、安全確保のための周知文書を本年四月十七日に発出しております。

 グローバルホークは地上からの遠隔操作により飛行する無人機ですが、IFR、計器飛行方式で飛行する他の大型機との管制間隔を維持し、安全を確保するために、常時、管制官の指示に従って飛行、運航することとなっております。

 一方、主に有視界飛行、VFRで飛行する小型機は、安全確保のために、みずから周辺を監視しつつ飛行することが求められておりますが、グローバルホークの運用に当たり、さらに安全確保に万全を期すため、小型機の民間航空機に対し、本文書により、飛行前に航空情報によりグローバルホークの運航の有無を確認することを求めております。

 また、グローバルホークの運航が確認された場合には、自機の位置を自動で通報するためのトランスポンダーを作動させた上、関係管制機関との通信設定を行うことにより自機の位置を示すとともに、また、グローバルホークの動向について情報を受けることを求めております。

笠井委員 いろいろなことをやらなきゃいけないということになるわけですが、グローバルホークの配備に当たって、国交省が新たにそうした周知、航空情報を出した目的から見ますと、同機が地上からの遠隔操作によって無人飛行することから、一層の安全確保を図る必要がある、それをやらなければ、民間機との異常接近や空中衝突を引き起こす可能性もあるということでしょうか。その点はどうですか。

島村政府参考人 お答えいたします。

 今般の文書を出した目的でございますが、先ほど申し上げましたように、VFR機、有視界飛行機は、目視により周囲の安全を確保しながら飛行するものですが、今回の文書は、グローバルホークの運用に当たり、さらに安全確保に万全を期すために発出したものでございます。

笠井委員 グローバルホークの安全性については、地元三沢市長も三月二十六日の会見で、市民は特に遠隔操作のことを心配していると述べておりましたけれども、地元では無人機の飛行について不安視する市民の声が広がっている現実がございます。

 そこで、三沢基地周辺を飛行する小型機には、今後、管制官に連絡を入れて、グローバルホークが飛行しているかどうか事前確認するように求められるわけでありますけれども、大型の旅客機に対してはこうした対応を求めなかったのはなぜでしょうか。

島村政府参考人 お答えいたします。

 民間の大型航空機などは、計器飛行方式、IFRにおいて飛行しておりますが、これは、グローバルホークと同様に、管制官の指示に常時従って飛行することによって、それらの管制間隔を維持することが求められております。このため、VFRで飛行する航空機と同様な措置は不要となっております。

笠井委員 管制上はということでありますが、大型旅客機には特別な対応が求められているわけですが、外務省に伺いますけれども、アメリカ・フロリダ州のタラハシーの空港近くで、ことし三月二十二日に、アメリカン航空グループの旅客機に無人機が異常接近をして、あわや衝突寸前という事態が発生した。

 外務省は、原因を含めて、そのことを掌握していますか。

冨田政府参考人 お答えをいたします。

 私どもといたしましても、報道を通じて、本年三月に、米国フロリダ州の上空で、先生御指摘のような事案が発生したということは承知をしております。

 現時点におきましては、報道以上の事案の詳細について把握しているわけではございませんけれども、私どもから米側に確認したところでは、この小型無人機は米軍の航空機ではないこと、それから、航空当局によって管制されていなかった非常に小さな無人機であったというふうな説明を受けているところでございます。

笠井委員 いずれにしても、そういう事態があったということでありますが、アメリカの連邦航空局、FAAは、無人機の導入に際して、ここに文書もありますけれども、安全確保を最優先させると強調するということで、声明も発表したりしているわけであります。

 そこで、岸田大臣、三月二十六日の質疑の際に、グローバルホークは、無人機だけれども、有人の航空機と同じく管制の指示に従って運航する機能等を備えており、他の航空機と同様に安全運用が確保されているという認識を示されました。

 しかし、今回の国交省の対応からも明らかなように、グローバルホークは他の航空機との異常接近や空中衝突する危険性も排除できないということではないかと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、先ほど、フロリダの無人機の件について御指摘がありました。

 この案件につきましては、小型無人機は、米軍の航空機でなく、航空当局によって管制されていなかった非常に小さな無人機であったという説明を受けております。

 そして、それに対して、このグローバルホークについて言えば、同航空機は、無人機でありますが、有人の航空機と同じく管制の指示に従って航行する機能等を備えており、また、既に米国、欧州等を初めとする他の国、地域においても安全に運用されているものと承知をしております。

 そして、先ほど国交省から答弁がありました情報提供についてですが、より安全に万全を期すためというふうに先ほども答弁がありました。

 このグローバルホークの運用に当たっては、米軍は、我が国の管制の指示に従って運航を行うこととなっているほか、飛行場の使用や安全の確保のために、我が国の関係当局との調整を経た手続に従って運用するということになっております。

 ぜひ、こうしたしっかりとした運用を行っていかなければならないと思っておりますし、いずれにせよ、米軍側も、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきということ、これは当然のことでありまして、米軍に対しましても、安全面に最大限の考慮を払うよう、しっかりと働きかけは続けていきたいと考えています。

笠井委員 国交省に確認しますが、航空機の飛行方式には、操縦者、パイロットの判断で飛行する有視界飛行方式、VFRという形と、それから、常時、管制機関の指示に従って飛行する計器飛行方式、IFRというのがある。

 グローバルホークの場合は、IFR機として、他の計器飛行方式と同様の管制間隔で運用されるということで、そういうふうになっているのかどうか、確認です。

島村政府参考人 お答えいたします。

 有視界飛行方式というのは、他機との衝突を防止するため、操縦者が常時、機外の見張りを行いつつ飛行をするといった方式です。一方、計器飛行方式は、他機との衝突を防止するため、常時、管制の指示に従って飛行するといった飛行の方式です。

 なお、米軍のグローバルホークに関しましては、後者のIFRにより、常時、管制の指示に従って飛行するものと承知しております。

笠井委員 このIFR機とVFR機との異常接近をめぐっては、これまで、少なくない事案が発生していると思うんですが、例えば二〇〇五年十一月十六日に起きた異常接近というのはどんな内容でしたか、端的にお答えください。

島村政府参考人 御指摘の平成十七年十一月十六日に発生した事案でございますが、IFRにより進入中の海上自衛隊機と、VFRで付近を飛行していた民間の小型回転翼航空機が異常接近をいたしました。

 これを受けて、航空局では、VFRで飛行する運航者に対して、みずからの位置を示すための、先ほど申し上げましたが、トランスポンダーの常時発信に努めるように周知するなどの対策をとっております。

笠井委員 この二〇〇五年十一月の事案について、航空・鉄道事故調査委員会が二〇〇六年七月に公表した調査報告書によれば、海上自衛隊の所属機が個人所属機を確認するのがおくれたこと、個人所属機が海上自衛隊所属機を目で確認、視認できない状態で飛行していたことが原因だったとしております。

 この事案は、航空管制機関の指示に従って飛行する有人のIFR機との間でのトラブルでありまして、ましてやグローバルホークは無人機であります。IFR機と同様に管制間隔で運用されていると言っても、無人機だけに、異常接近や空中衝突の危険は有人機よりも高まることは明らかだと思うんです。

 そこで、国交省に確認しますが、そもそも、日本の航空法あるいは国内法では、小型で、極めて小さいとさっきアメリカの話を言っていましたけれども、グローバルホークのような大型の無人機の運用について、明確な定め、ルールというのは存在しているかどうか。

島村政府参考人 米軍機につきましては、日米地位協定に基づく特例法により、航空法における航空機の運航に係る規定は、航空交通の指示、航空情報の入手のための連絡、飛行計画及びその承認、到着の通知のみが適用されることとなっております。

 三沢飛行場に配備される米軍のグローバルホークも、他の米軍機と同様に、飛行計画を提出し、管制官の指示に常時従う飛行をする計器飛行方式という飛行方式で運航することとなっております。

笠井委員 違うんです。無人機の運用について、特定のエリアの中だけで、ほかとぶつかるようなことなんか全然関係ないときにやるような無人機じゃなくて、ああいう形で無人機が飛行する運用についてルールがあるかどうかを聞いているんです。

島村政府参考人 お答えいたします。

 再度同じ答弁になるかと思いますが、米軍のグローバルホークにつきましてのルールといたしましては、他の米軍機と同様に、飛行計画を提出し、管制官の指示に常時従って飛行する計器飛行方式で運航するというルールになっております。

笠井委員 飛行方式でいうと、計器飛行方式というのは、管制上の違いはないと先ほどあったんですけれども、しかし、有人の場合には、国内法でいえば見張り義務というのがあります。ところが、米軍機については、先ほど説明もあったけれども、日米地位協定の適用除外になるので、国内法上の見張り義務はないと思うんですね。そういう状況のもとで、まして無人機グローバルホークがああやって民家の上も含めて飛行するという事態になるわけです。そういう形になると、まさにこの安全性という問題が問われてくると思うんです。

 最後に岸田大臣に伺いますけれども、日本の航空法には、無人機を運用するという点では、そういう点での想定をしていない、それから、特定の限られたエリアだけで、ほかとぶつかるとか行き交うというような状況に全然なくて、閉鎖的なところがあったとしたって、こういう形で無人機を運用するというルールはないんですよ。

 その上、おとといの本委員会でも指摘したように、グローバルホークが展開する青森県にも、東北電力の東通原発とか、日本原燃の核燃料サイクル施設などの原子力施設が多数存在する。航空機とのトラブルばかりか、原子力施設に墜落すれば大惨事になることは明らかだと思うんですけれども、万が一、無人機で事故が起こった場合に、政府はどういう責任をとるか、この問題については、大臣、最後に、どうでしょうか。

岸田国務大臣 グローバルホークの運用に当たっては、まず、先ほど申し上げましたように、米軍は我が国の管制の指示に従って運航することとなっております。それに加えて、飛行場の使用、あるいは安全性の確保のために、我が国関係当局との調整をしっかり経た上で手続に従って運用する、こういったこととされています。

 安全の確保、これは大変重要な視点であります。こういった点から、しっかり調整も経た上で安全な運用を実現したいと考えます。

笠井委員 安全な運用と言われましたけれども、極めて危険性がある、こういう点でいうと、改めてグローバルホークの配備そのものの撤回を強く求めて、きょうは終わります。

鈴木委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 質問の前に、冒頭、委員長にお願いをしたいと思います。

 昨日、安保法制懇の提言を受けて、安倍総理が、いわゆる憲法の解釈改憲等々についての会見を述べられました。

 この件に関しては、安倍政権の外交姿勢をしっかり本委員会でも問いただすべきだというふうに思いますので、集中審議の設定をお願いしたいと思います。

鈴木委員長 理事会で協議いたします。

玉城委員 ありがとうございます。

 では、五月十四日の本委員会で質問させていただきました、米軍普天間飛行場辺野古移設の件についてお伺いしたいと思います。

 きょうは、水産庁の宇賀神漁港漁場整備部長に来ていただいておりますので、確認の意味で質問させていただきたいと思います。

 普天間基地の名護市辺野古への移設ですが、防衛局から名護市へ提出されていた辺野古漁港の許可申請についてもろもろ質問をしましたところ、まず、法令の遵守について、防衛局側は、漁港漁場整備法の見解で、許可は必要なく、協議で足りるという認識を示しておりますが、名護市の漁港管理条例は、占用の許可等において、許可権限者である市長の許可を得ることが必要であるということが明確にうたわれております。その答弁は、議事録を確認いたしましたところ、しっかりと、名護市長に対しても甲種漁港施設占用等許可申請書を提出するということで、関係法令に従い、適切に進めていくというふうな答弁もいただいております。

 そこで、水産庁に改めて確認の意味でお伺いいたします。

 この法令遵守における水産庁の見解をお聞かせいただきたいと思います。

宇賀神政府参考人 お答えを申し上げます。

 一般的に、漁港区域内におきまして、漁港施設の占用等の行為を行おうとする場合には、法令等に基づき必要な手続を行う必要があります。

 具体的には、漁港区域内の水域または砂浜などの公共空地におきまして、土砂の採取、土地の掘削などの行為や、水面もしくは土地の一部の占用等を行う場合には、漁港漁場整備法第三十九条第一項に基づき、漁港管理者の許可を受けなければならないこととされております。

 ただし、国の機関または地方公共団体については、その許可のための申請はできますが、同法第三十九条第四項に基づきまして、漁港管理者にあらかじめ協議することをもって足りることとされております。

 また、名護市の管理する漁港施設を占用しようとする場合には、名護市の漁港管理条例において、市長の許可を受けなければならないこととされております。

 以上のように、漁港区域内の水面の占用等を行う場合及び名護市の管理する漁港施設の占用を行う場合には、それぞれ、漁港漁場整備法及び名護市漁港管理条例に基づく手続を適切に進めていく必要があると考えております。

玉城委員 ありがとうございました。その点について水産庁からも確認がとれたということだと思います。

 質問は以上ですので、御退室いただいて結構です。ありがとうございました。

 それでは、続いて、国際的な生物多様性を保全、保護するという観点から、環境省にお伺いいたします。

 環境省の有識者会議は、海の生物の多様性を守るため、日本の排他的経済水域内で重要海域というものを初めて選定いたしました。具体的な区域の確定、区域についての特徴などを整理した後、ことしの夏ごろに公表すると言われておりますが、二〇一〇年に名古屋市で合意した生物多様性条約の愛知目標は、二〇二〇年までに少なくとも海域の一〇%を保護区などとして保全すると掲げており、環境省は海洋保護区の拡大にしっかり取り組むという方向も確認できるものと思います。

 では、お伺いいたしますが、今回のこの重要海域選定における、会議の審査、選定の基準及びその結果などについてお伺いいたします。

星野政府参考人 環境省では、平成二十三年度に専門家による検討会を設置いたしまして、平成二十五年度までの三カ年をかけて、生物多様性等の観点から、重要海域の抽出作業を行ったところでございます。

 抽出に当たりましては、生物多様性条約締約国会議の決定を踏まえまして、生物学的多様性や生物学的生産性など八つの基準を採用したところでございます。

 これらの基準を踏まえて、全国の海域について検討を行った結果でございますが、三百二十カ所が重要海域として抽出されたということでございます。

 この重要海域は、水深二百メートル以浅の場所である沿岸域と、それ以外の海域ということで沖合域に分けて選定してございます。沿岸域では二百六十九カ所、沖合では五十一カ所が選定されているところでございます。

 先生御関心の沖縄県の関係でございますが、沿岸域二百六十九カ所のうち沖縄県で選定されたものは十八カ所、沖縄島に関しましてはこのうち五カ所に該当しているということでございます。

玉城委員 県内のほぼ全域に当たる沖縄県内十八カ所の中に辺野古海域が含まれているというふうに思われます。

 ことしの二月二十六日の予算委員会の第六分科会で同じように政府参考人に質問をさせていただいた際に、その際にはいわゆる世界自然遺産への登録について主に質問をさせていただきましたが、その陸域に連動して豊かな生物多様性を育む大浦湾、辺野古沿岸海域につきましても、ぜひここも取り上げていただきたいというふうなことを質問させていただいたところ、政府参考人からは、山原地域の陸域、河川、海域は、豊かな生物多様性を有する地域である、しかし、世界自然遺産の候補地という観点からは、特にヤンバルクイナ等の希少な固有種が生息、生育する陸域の生態系が世界的にそこにしかない貴重な価値を有すると評価されたものというふうな答弁をいただいております。

 しかし、今回はこの重要海域の中に、まさに生物多様性に富む海域の中に辺野古沿岸、大浦湾一帯が含まれるというふうなことは、誰が考えても当然であり、種の保存それから生育環境の保全に関しては、後世、将来に対して残すべき重要な一帯であるということは論をまたないというふうに思います。

 この生物多様性について、辺野古海域あるいは沖縄県内の十八カ所、どのような評価をしていらっしゃるのか、お聞かせください。

星野政府参考人 重要海域の選定に当たっての基準、先ほど八つあると申し上げましたけれども、具体的に申し上げますと、唯一性または希少性、二番目が種の生活史における重要性、三番目が絶滅危惧種等の生育、生息地、四番目が脆弱性、感受性または低回復性、五番目が生物学的生産性、六番目が生物学的多様性、七番目が自然性、八番目が典型性、代表性、この八つの基準に照らして、全国の海域で抽出作業を行ったということでございます。

 委員御指摘の辺野古地区につきましては、沖縄島の沿岸域のほぼ全域に相当する五カ所、このうちの一つであります沖縄島中北部沿岸という区域の中に含まれております。この沖縄島中北部沿岸と申しますのは、本部湾から辺戸岬を経て金武湾まで、沖縄島沿岸域のほぼ半分近くに相当する、こういう区域でございますけれども、この区域につきましては、先ほど申し上げました八つの抽出基準のうち七つ、生物学的生産性以外の七つの基準に該当しているということで抽出されたものでございます。

玉城委員 八つの項目のうち七つに該当する。これは、その地域が私の選挙区でありますので、もう何遍もその地域に訪問をし、足を運び、そしてその沿岸で生活をするいわゆる漁民の皆さん、ウミンチュの方々とも意見交換をさせていただき、去る大戦で焦土になり、そして逃げ場を山原の山奥に求めなければならなかった人々は、その生きる糧をどこから得られたかというと、間違いなく海から命の糧をいただいたということを皆さん異口同音にお話をしていただきます。

 つまり、魚だけではなく、サンゴ礁やさまざまな海草藻場、海藻類などがそこに生息をし、その海藻をいかにして食べられるように工夫するか、あるいはそのサンゴ礁を守るために必要最小限度、命を保つためにはどのようなとり方、あるいはその魚の生育方法が適しているかということを、その海域の方々、沿岸に住む方々は、その自然とともにみずからの命を助けられ、育み、ともに共生してきたわけです。

 ですから、そういう海域が、今回、このように八つの選定基準のうち七つの項目に当てはまるということ、そのことを踏まえますと、その海域で今工事が進められよう、事業が進められようとしております普天間基地の辺野古移設、まさに、その生物多様性を破壊する環境破壊行為でしかないというふうに明言できるものと思います。

 今回、重要海域に選定された名護市辺野古沖は海洋保護区に最優先で設定されるべきではないかと地元新聞の社説でも語られています。国の天然記念物、国際自然保護連合の絶滅危惧種に指定されているジュゴンの主要な生息地、絶滅危惧種のアカウミガメ、アオウミガメも生息、そして、辺野古沖の大浦湾には希少種アオサンゴの大群落、生物多様性に富む海草藻場では環境省が準絶滅危惧種に指定する海草七種が広がっている、海洋保護区設定に異論を挟む余地はない。まさに、その自然環境を丁寧に調査した結果、このように重要海域に選定されるということになったわけであります。

 しかし一方、この重要海域の選定については、漁業や開発などの規制をかけないということにもなっていますが、しかし、重要海域について今後どのような保全計画、保護計画を立てるものか、私はそのことに多くの国民にぜひ注目をしていただきたいというふうに思うわけですが、その計画のいかんについて伺います。

星野政府参考人 まず、重要海域の性格について申し上げたいと思います。

 重要海域につきましては、科学的な観点、特に海洋における生物多様性の観点からデータを評価いたしまして、その結果として重要な海域が抽出されたということでございます。

 したがいまして、抽出された重要海域について、法的な規制がかかるということではまずございません。科学的な観点から重要な海域を客観的に評価して抽出をしたというものが現在の状況でございます。

 環境省といたしましては、この抽出された重要海域というのは、海洋における生物多様性の保全、これを推進していく上での基礎になるというふうに考えてございます。

 現在、抽出された重要海域の詳細な情報を精査しておりますので、早急に公表したいとは考えておりますけれども、この重要海域の情報を踏まえて、関係省庁とも連携を図って、海洋の生物多様性の効果的な保全に活用してまいりたいと考えております。

玉城委員 私は、その海域、あるいは日本全体の重要海域について、もしそこで何らかの開発計画、あるいは埋め立て等の計画が行われているのであれば、その計画を一時中断し、しっかりと調査をし、環境省が、ここの海域は日本の国民のためあるいは将来のためにこういうふうな計画が必要ですねということを、各省庁と連携して、明確に生物多様性の自然環境を未来に伝えていく、その計画を発表することこそ重要であるということを申し上げて、質問を終わります。

 ニフェーデービタン。

     ――――◇―――――

鈴木委員長 次に、投資の促進及び保護に関する日本国とサウジアラビア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の相互の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とモザンビーク共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とミャンマー連邦共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び航空業務に関する日本国政府とビルマ連邦政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 投資の促進及び保護に関する日本国とサウジアラビア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 投資の相互の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とモザンビーク共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とミャンマー連邦共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 航空業務に関する日本国政府とビルマ連邦政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田国務大臣 ただいま議題となりました投資の促進及び保護に関する日本国とサウジアラビア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成十八年十月以来、サウジアラビア政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十五年四月にジッダにおいて、我が方在サウジアラビア大使と先方総合投資院総裁との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、主に、投資の許可後の投資家及び投資財産の保護を定めております。

 この協定の締結は、我が国とサウジアラビアとの間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に大いに資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、投資の相互の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とモザンビーク共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十四年八月以来、モザンビーク政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十五年六月に横浜において、私と先方企画開発大臣との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、投資の許可後の投資家及び投資財産の保護に加え、投資の許可段階の内国民待遇等についても定めております。

 この協定の締結は、我が国とモザンビークとの間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に大いに資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とミャンマー連邦共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十四年十二月以来、ミャンマー政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十五年十二月に東京において、私と先方国家計画・経済開発大臣との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、先ほど御説明したモザンビークとの間の協定と同様、投資の許可後の投資家及び投資財産の保護に加え、投資の許可段階の内国民待遇等についても定めております。

 この協定の締結は、我が国とミャンマーとの間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に大いに資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、航空業務に関する日本国政府とビルマ連邦政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、昭和四十七年二月に署名された航空業務に関する日本国政府とビルマ連邦政府との間の協定を改正する議定書を締結するため、ミャンマー政府との間で交渉を行いました。その結果、本年一月にヤンゴンにおいて、我が方在ミャンマー大使と先方運輸省民間航空局長との間で、この議定書の署名を行った次第であります。

 この議定書は、定期航空業務の運営のため、両締約国が指定できる自国の航空企業の数を現行の一から二以上に改めること等につき定めるものです。

 この議定書の締結により、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 以上四件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

鈴木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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