衆議院

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第7号 平成27年4月22日(水曜日)

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平成二十七年四月二十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 土屋 品子君

   理事 秋葉 賢也君 理事 大野敬太郎君

   理事 島田 佳和君 理事 辻  清人君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 寺田  学君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      井上 貴博君    小渕 優子君

      大塚 高司君    河井 克行君

      小林 鷹之君    佐々木 紀君

      鈴木 隼人君    薗浦健太郎君

      渡海紀三朗君    中根 一幸君

      星野 剛士君    松島みどり君

      武藤 貴也君    緒方林太郎君

      逢坂 誠二君    吉良 州司君

      鈴木 貴子君    長島 昭久君

      青柳陽一郎君    木内 孝胤君

      岡本 三成君    穀田 恵二君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        城内  実君

   外務副大臣        中山 泰秀君

   防衛副大臣        左藤  章君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   外務大臣政務官      薗浦健太郎君

   外務大臣政務官      中根 一幸君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  高田  潔君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 鈴木 秀生君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 吉田 朋之君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    齋木 尚子君

   政府参考人

   (財務省大臣官房参事官) 三田 紀之君

   政府参考人

   (財務省国際局次長)   武内 良樹君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 辰己 昌良君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  三村  亨君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  中島 明彦君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  松島みどり君     井上 貴博君

  長島 昭久君     逢坂 誠二君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     松島みどり君

  逢坂 誠二君     長島 昭久君

    ―――――――――――――

四月二十二日

 水銀に関する水俣条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済上の連携に関する日本国とモンゴル国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 世界貿易機関を設立するマラケシュ協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 東南アジア諸国連合プラス三箇国マクロ経済調査事務局を設立する協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 二千七年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより会議を開きます。

 経済上の連携に関する日本国とモンゴル国との間の協定の締結について承認を求めるの件、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、東南アジア諸国連合プラス三箇国マクロ経済調査事務局を設立する協定の締結について承認を求めるの件及び二千七年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官山上信吾君、大臣官房参事官滝崎成樹君、大臣官房参事官鈴木秀生君、大臣官房参事官吉田朋之君、経済局長齋木尚子君、内閣官房内閣審議官高田潔君、財務省大臣官房参事官三田紀之君、国際局次長武内良樹君、防衛省大臣官房審議官辰己昌良君、経理装備局長三村亨君、地方協力局長中島明彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林鷹之君。

小林(鷹)委員 おはようございます。自由民主党の小林鷹之です。

 きょうは、十五分と時間が限られておりますので、早速質問に移らせていただきたいと思います。

 まず、ASEANプラス3マクロ経済調査事務局、いわゆるAMROの設立協定について伺います。

 このAMROは、二〇一一年にシンガポールの一般国内法人として設置されておりますが、これをあえて国際機関化する意義についてお答えください。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 現在シンガポールに設置されておりますASEANプラス3マクロ経済調査事務所は、ASEANプラス3地域の経済及び金融の安定性を確保するため、地域の経済及び金融状況に関する監視及び調査、分析を行う機関として設立されたものです。しかし、この事務所は、現在シンガポールの一般国内法人でしかないため、一部メンバー国やIMF等の国際機関が、マクロ経済分析に必要となる情報の提供をちゅうちょするといったような支障が生じております。

 今回お諮りするASEANプラス3マクロ経済調査事務局、AMRO設立協定に基づき、この事務所を国際機関とすることができますれば、この機関がメンバー国やIMFなどから任務に必要な情報を入手することが容易となります。これによりまして、AMROは、調査及び分析活動を円滑に行うことが可能となり、地域の経済及び金融状況の一層の安定化に貢献できると期待されております。

小林(鷹)委員 ありがとうございます。

 おっしゃっている意義はよく理解できます。

 ただ、現在のAMROについては、人数、そして情報の収集、分析の能力、あるいは、レポートの数も見ましたけれども、余りに少ない、対外発信能力を見ても、現時点ではまだまだ組織として貧弱ですから、単に国際機関化するだけでその存在価値が十分になるとは思えません。

 そもそも、アジア通貨危機での教訓を踏まえて、外貨融通の仕組みであるチェンマイ・イニシアチブ、これを支えることがAMROの本来の意義であるとすれば、それにふさわしい存在感や信頼性というのを身につけていくべきだと思います。今おっしゃったように、IMFから単に情報をもらうとか、分析能力もIMFに比べると劣る、そういう機関ではなくて、いずれ、ASEANプラス3の経済分析をするのであれば、IMFがAMROに頼るぐらいの実効性ある機関に育ってほしいと思います。

 我が国としても、人材供給の面で貢献できる部分は大きいと思いますし、その通貨危機時に、日本が主導したアジア通貨基金構想などがIMFや米国の反対で頓挫した、そうした経緯を踏まえれば、こうした枠組みづくりには、もっともっと日本こそが強いリーダーシップを発揮していくべきではないかと思います。今、所長は日本人でもありますから、スタッフの質や量、ともに大胆な拡充を含めて、野心的な取り組みを日本が主導していくべきだと思います。

 将来的にAMROをどのような国際機関へと育てていくべきと考えるか、大臣の見解を伺えればと思います。

岸田国務大臣 AMROの将来ということですが、まさに委員御指摘のように、このAMROというのは、チェンマイ・イニシアチブとあわさることによって、地域におけるIMFのような役割をしっかり果たしていかなければならない、このように考えます。地域の金融セーフティーネットとして重要な役割も期待されますし、地域の金融経済状況の監視役としても育てていきたい、このように思いますし、そして、そうした役割を果たすことによって、地域の金融とか経済が安定化する、これは我が国の利益にもなると考えます。

 そういったことから、ぜひ、AMROに関しましては、我が国としてリーダーシップを発揮して、人的あるいは組織的にも強化し、信頼される存在に育てていかなければならないと考えます。

 御指摘のように所長は日本人ですが、日本は最大の出資国でもあります。ぜひ、今申し上げましたような組織になるために、日本として積極的な取り組みを続けていきたいと考えます。

小林(鷹)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、中長期的に大きく育てていくという視点を持って、これからも我が国として、このAMROの存在について関与していただければと思います。

 次に、このAMROがそもそも支えようとしておりますチェンマイ・イニシアチブについてなんですけれども、このチェンマイ・イニシアチブは、金融危機時に、地域的な連鎖と拡大を防ぐために、各国が外貨準備をお互いに融通する仕組みであります。

 この外貨準備の運用という意味で、最近気になる報道がありました。今お手元に配付させていただいております、これは新聞記事なんですけれども、「米国債保有 日本首位に」と書かれている記事であります。米国債の保有額について注目すべき点というのは、別に、単に日本が中国を追い抜いたことではなくて、そもそも中国の米国債保有額が足元で減少しているということが気になる点であります。

 これまでは、中国が多額の米国債をファイナンスすることによって、米中間にある意味の相互依存関係が生まれて、それが微妙な安定ではあるとしても、東アジアの安定に寄与してきた側面があると思います。

 しかし、最近の中国が足元で米国債保有額を減らしていく動き、これを見ますと、単に中国経済の減速ですとか、これからアメリカが金融緩和を逆に引き締めに転じていく、そうした足元のマネーの流れによる影響だけではなくて、むしろ中国政府が、中長期的に、国際金融の枠を超えて外交政策の観点から、米国による中国のさまざまな政策に対する縛りを解消させていく、そういう意図を私個人としては強く感じています。

 その中で、こうしたアメリカと中国の間の相互依存関係が解消方向に向かうとすれば、東アジアのパワーバランス、勢力均衡についてどのような影響が及び得るのか、まず大臣の見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、米国財務省の統計によりますと、中国は、二〇〇八年九月末から二〇一五年一月末まで、国別の米国債保有額の首位でありました。ところが、二〇一五年二月末には、我が国が六年半ぶりに首位になったということであります。

 まず、このことについては、中国の米国債保有額の減少が我が国の保有額の減少を上回った、こういったことによって、今申し上げたような結果になったと承知をしています。ただ、引き続きまして中国は米国国債の約二割を保有しておりまして、我が国と並ぶ米国国債保有国である、このことには変わりないと思っています。

 そして、この背景につきましては、人民元・ドル為替相場への介入のための原資が必要とされたという見方、あるいはシルクロード基金への拠出に見られるような運用の多様化がある、こういった指摘があるということでありますが、ただ、御質問の中にありましたように、中国の方針ですとか意図、さらには、これがどういった影響を及ぼすのか、これを今の時点で一概に申し上げるのはなかなか難しいのではないかと思います。

 ただ、こういった動きにつきましては、関連動向も含めまして、今後ともしっかり注視をしていかなければいけない、大変重要な御指摘ではないかとは受けとめております。中国が国際社会のルールや法の支配を尊重する形で発展を遂げること、これは我が国にとっても大きな好機であると思いますし、大局的観点から戦略的互恵関係を進めていく、こうした中国との関係を考えましても、こうした中国の動向につきましては、引き続き注視をしていきたいと考えます。

小林(鷹)委員 大臣おっしゃるとおり、さまざまなファクターがあると思いますけれども、国際金融の分野に限らない、そういう意思が中国政府にあり得るということだけは常に念頭に置いてやっていただきたいと思います。

 それで、それに関連して、さらに中長期的に考えなければならないことは、足元で、人民元の国際化が加速をしております。その先に中国政府が何を見ているのかというのが私は気になります。私は、中国政府が、中長期あるいは超長期的に、人民元をドルと対峙し得る世界の基軸通貨へと成長させていく政治的な意図を感じてなりません。

 例えば、最近気になる現象としては、今まさに大臣おっしゃいましたシルクロード基金、AIIBのおかげで今目立たなくなってきておりますけれども、これはAIIBとは違って、原資が四兆円の外貨準備で、中国の人民銀行が自由に使えるお金であります。まさに外貨準備の運用の多様化に資するものであるということが一つ。

 次に、最近、新聞報道でもようやく出てきていますけれども、IMFのSDRと呼ばれる特別引き出し権、この価値を決める通貨バスケット、これはこれまでドルとユーロ、ポンドそして円の四つの通貨だったんですけれども、これに人民元を入れようとする動きが出てきています。これは何年か前から出てきていますが、ことし、年内のIMFの理事会で結論を出すこととなっている喫緊の課題であります。

 そして、加えて、リーマン・ショックの後、ロンドンやフランクフルトなどを中心に、人民元を決済通貨として中国政府が許可をしていく動きというのが出てきております。それは、恐らくAIIBと同じで、中国に対する安全保障面での脅威を感じにくい欧州に、経済的なメリットを中国がどんどんカードを切って付与していく、そういう動きだと私は理解しております。

 また、人民元というのはそもそも交換可能な通貨ではないというふうに言われていて、まさか世界の基軸通貨になるとは今の時点では思えませんけれども、最近、中国の国内でも、これまで人民元が使いにくいとされていた金利規制ですとか資本規制をどんどん今自由化していく動きが加速しております。

 そういう中で、そもそも中国経済が今後順調に成長していくのかどうかというそもそも論はあるんですけれども、仮に、人民元が基軸通貨となるような事態になるとすると、東アジアにおける広い意味での勢力均衡が大きく崩れかねないと私は思います。もちろん、そうした場合には日本円の相対的なプレゼンスも相当低下することになると思います。

 一方で、難しいのは、日本再興戦略にもあるように、東京を国際金融センターにしていかなければならない、そういう中で、多分、人民元の力も取り込んで成長していく観点もあると思うんですが、さまざまな課題の中で、今後、日本政府として、人民元という通貨に対してどのように対処していこうとしているのか、政府の見解を教えていただきたいと思います。

武内政府参考人 中国当局が経済改革の一環として人民元の国際化を進めていくことは承知しております。人民元が広範に取引されるためには、中国が金融資本規制改革を着実に進めることが重要であることがまず一つ言えると思います。あわせて、中国が他国と協調しつつ、適切なマクロ経済運営を行うことも、人民元の国際化の前提となっていると考えております。

 なお、委員の方から、日本円の存在感について御質問がございましたけれども、我が国も、これまで、日本の金融資本市場の活性化を通じて円の国際的な利用の拡大を図ってきているところであります。引き続きその努力を続けるとともに、必要に応じて、中国当局との間でも金融面での相互協力を努めてまいりたいと思っております。

小林(鷹)委員 時間が来たのでこれで終了させていただきますが、AIIBもそうなんですけれども、いわゆる国際金融政策というのは、これまでどちらかというと日本国内では財務省が主管としてやってきた部分があると思います。ただ、こうした国際金融政策というのは、言うまでもなく、外交政策ですとか安全保障政策と、私は密接に結びついているものだと思いますので、省庁間の連携を含めて、今後、日本が国家として戦略的に意思決定できる、そういう体制をしっかりと整えていっていただくことを要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、鈴木隼人君。

鈴木(隼)委員 自由民主党の鈴木隼人でございます。

 本日は、質問の機会をいただき、心より感謝申し上げます。

 まず初めに、日・モンゴルEPA及びWTO協定についてお尋ねいたします。

 諸外国との経済連携協定の締結は、我が国経済にとって大変有益なものであると理解をいたしております。そのことを国民に広く理解してもらうことが今後の経済連携推進の鍵にもなるのではないか、このように考えております。

 そこで、これまで締結した主要なEPAによって我が国にどのような恩恵があったのかについて、答弁をお願いいたします。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 自由貿易の推進は、我が国の通商政策の柱でございます。力強い経済成長を達成するためにも、自由貿易体制をこれまで以上に強化し、諸外国の活力を我が国の成長に取り込んでいく必要があると考えております。

 委員御指摘のとおり、経済連携協定は、一般に、締約国間の貿易及び投資の促進に寄与するとともに、経済的な恩恵といたしましては、次のようなものが挙げられると思います。

 まず第一に、関税撤廃により、締約国市場における日本企業の競争力が確保されるということでございます。第二に、投資の保護及び自由化、知的財産の保護、商用訪問者の入国許可の手続の簡素化などを通じ、日本企業が締約国において円滑に活動できる環境が整備をされるということでございます。第三に、締約国との関係強化により、ビジネス環境の改善及び経済関係の緊密化が一層進むということが記載をされているわけでございます。

 経済連携協定には、今申し上げましたように、貿易のみならず、投資、知的財産、競争、政府調達などさまざまな幅広い分野が含まれておりまして、これら全ての分野を含む経済効果を一概に定量的にお答えすることは困難ではありますけれども、その上で、幾つかの主要なEPAに即しまして、定量的な効果を御説明いたします。

 まず、関税収入、支払い額、貿易量等、定量的に把握できる範囲のお答えになることを御了解いただければと存じます。

 例えば、ことしの一月に発効いたしました日本とオーストラリアの経済連携協定のもとで、我が国からオーストラリアに支払われる関税の額は、将来的に輸出構成や金額が不変であるといった一定の仮定を置いて試算を行いますと、発効後八年目には約五百八十億円減少すると試算をしております。

 また、我が国の関税収入におきましては、同様の仮定の場合には、関税撤廃、削減等の最終年度で三百三十億円程度の減収と試算しております。

 別の例として、EPA相手国との貿易量を見てみますと、リーマン・ショックなど世界的な不況により貿易量は一時的に減少いたしましたが、その後はおおむね順調に増加をしておりまして、例えば、二〇〇五年にEPAが発効したメキシコとの貿易量を品目別に見ると、自動車の輸出は、二〇〇四年の八百二十七億円から二〇一一年の九百四十五億円と増加をしております。これは一四・二%の増加になります。

 また、熱延、冷延鋼板の輸出につきましては、二〇〇四年の六十七億円から二〇一一年には百八十六億円に拡大をしておりまして、これは約二・八倍の増加となります。

 こうした貿易拡大の背景には、相手国の景気や為替など他の要素もあると考えられますけれども、日・メキシコEPAの締結、発効による一定の積極的な経済効果が示されておると考えている次第でございます。

鈴木(隼)委員 大変具体的な御説明をありがとうございました。ぜひ、積極的に意義を発信していただきながら、各種のEPA交渉を前に進めていただきたい、このように思っております。

 さて、本日は、日・モンゴルEPAが議案となっております。そこで、日・モンゴルEPAは我が国及びモンゴルにとってそれぞれどのような恩恵をもたらすものであるのかについても、答弁をお願いいたします。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 日・モンゴル経済連携協定が、我が国それからモンゴルのそれぞれにどのような恩恵をもたらすかという御質問であったかと思います。

 まず、我が国にとっての恩恵ですけれども、現在、モンゴルは、ほぼ全ての輸入品に一律五%の関税を課しております。この経済連携協定の発効によりまして、日本からモンゴルへの関税のかからない輸出品目、無税輸出の割合が、現状の輸出額の一%未満から、発効後即時に約五割、それから十年間で約九六%まで拡大することになっております。

 この関税撤廃によりまして、モンゴル市場における我が国企業の競争力が高まること、あるいは、投資、サービス、電子商取引、競争など広範囲な分野の約束などを通じまして、我が国企業がモンゴルにおいて円滑に活動できる環境が整備されるといった経済的なメリットがあるというふうに考えております。

 協定の実施が我が国の関税支払い及び関税収入に及ぼす影響につきましては、今後の貿易動向や為替変動などについての予測が困難ですので、正確に見積もることは困難であるということは御理解いただければと思いますが、その前提の上で申し上げますと、我が国からモンゴルへの関税支払い額に関しましては、鉱工業品について、将来的に輸出構成や金額が不変であるといったような一定の仮定を置いて試算を行いますと、発効初年度で約十億円、それから発効後十年目には約二十億円減少し得るというふうに試算がされます。

 次に、モンゴルにとってどのような恩恵があるかということについてお答えいたします。

 そもそもこの日・モンゴル経済連携協定は、モンゴル側から要望があって署名に至ったといった経緯があります。モンゴルが我が国を最初のEPA交渉相手国として選んだことは、民主化以降一貫してその支援を継続してきた我が国への信頼と期待のあらわれだというふうに我々は考えております。このEPAの締結によりまして、両国間の経済関係のみならず、政治、安全保障を含めた総合的な関係強化に寄与するというふうに考えております。

 その上で、経済的な効果について申し上げますと、物品貿易につきましては、モンゴルから日本への輸入額の一〇〇%が十年以内に無税となるということです。このうち、例えば繊維衣料製品につきましては、現行関税が〇%から一一%というものが全て撤廃される、ほとんど即時撤廃されることになるわけですけれども、カシミヤ製品を初めとするモンゴルの製品の日本市場へのアクセスの向上が期待されるということが言えるのではないかと思います。

鈴木(隼)委員 ありがとうございます。

 日・モンゴルEPAが、両国経済のさらなる発展の契機となることを祈念いたしております。

 次の質問に移ります。

 WTO交渉については、現在交渉中のドーハ・ラウンドの香港閣僚会議当時に、私自身も経済産業省の担当官として従事をしていたこともございまして、早期締結を願う者の一人であります。このWTO交渉について、現在の交渉状況の全体像について答弁をお願いいたします。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 WTOドーハ・ラウンド交渉は、二〇〇一年に開始をされ、残念ながら全体として膠着の状態が続いておりました。しかしながら、二〇一三年十二月の第九回WTO閣僚会議におきまして、部分合意として、貿易円滑化、農業、開発の三分野及びドーハ・ラウンドの今後の作業計画に関するバリ合意が妥結をし、一定の前進を見たところでございます。

 その後、WTO加盟国間の協議を経て、昨年、二〇一四年十一月に貿易円滑化協定に関するWTO協定改正議定書が採択をされました。

 今後、バリ合意の着実な実施や、ドーハ・ラウンド交渉の妥結に向けた作業計画の策定など、WTOにおける作業を着実に進めていくことが重要と認識をしております。

 また、現在、WTOのもとで、さらなる貿易自由化を進め、多角的貿易体制をより厚みのあるものとするために、情報技術協定拡大交渉、環境物品協定交渉、さらにはサービスの貿易に関する新しい協定交渉等、複数の有志国による自由化交渉が行われております。

 WTO体制には、今御説明申し上げました貿易自由化交渉に加えまして、各種ルールの履行監視及び紛争解決制度という役割もありまして、国際貿易におけるルールの作成、遵守についてWTOが果たす役割は非常に大きいと考えております。

 本年十二月に第十回WTO閣僚会議が開催される予定になっております。引き続き、多角的貿易体制の維持強化に我が国として積極的に取り組んでいく考えでございます。

鈴木(隼)委員 ありがとうございます。

 ここで、今回議案となっておりまして、今言及もいただきましたけれども、貿易円滑化協定につきまして、その意義をお訴えいただきたいと思います。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 貿易円滑化協定は、WTOが一九九五年に設立をされて以来初めて、全てのWTO加盟国が参加をし、作成をされた新しい協定であります。税関手続を含む貿易手続の透明化、迅速化等を目的としております。

 この貿易円滑化協定を我が国が締結し、この協定自体が発効することによりまして、我が国企業が主に途上国で直面する税関手続等に係る問題が改善をされ、完成品の輸出のみならず、サプライチェーンを国際的に展開している我が国企業の貿易を初めとする経済活動を後押しすることが、強く期待をされるところでございます。

 また、先ほど申し上げましたように、WTOを中心とする多角的貿易体制の維持強化は、我が国の通商政策の主要な柱でございまして、日本経済の再生に向けて大変重要だと認識をしております。貿易円滑化協定を含むこの改正議定書を締結することは、多角的貿易体制を推進するという観点からも極めて重要と考えております。

鈴木(隼)委員 ありがとうございます。

 WTOとEPAは通商交渉の両輪でありますので、どちらもぜひ引き続き精力的な交渉をお願いいたします。

 次に、安全保障についてお尋ねをいたします。

 安全保障を広義に捉えますと、国防、それから経済安全保障、食料安全保障、資源安全保障など、その射程範囲は極めて広いものでありますけれども、広義の安全保障に関する外務省の取り組みについて、答弁をお願いいたします。

中山副大臣 国家安全保障の要諦は、安定し、かつ、見通しやすい国際環境を創出し、脅威の出現を未然に防ぐことであると私どもは考えております。そのために、力強い外交の推進を通じた幅広い取り組みが、御指摘のとおり、求められるというふうに考えております。

 外務省では、日米同盟の強化を初めとするパートナーとの関係強化、またテロ対策、サイバーセキュリティーの確保等に向けた積極的な外交を展開いたしております。また、エネルギーを初めとする経済安全保障、環境問題への対応、人道支援など人間の安全保障の促進、開発援助協力、軍縮・不拡散の推進、海洋安全保障、また法の支配の強化、女性の権利を含む人権の擁護など、あらゆる外交努力を尽くしております。

 特に、委員からお知恵をまた拝借したいと思いますのは、サイバーセキュリティーにおきます日本独自のセキュリティー強化に関する技術力、こういったものの構築も含めてしっかりとお知恵をいただきながら、引き続き、世界と連帯をし、そういったリスクを回避するという観点からも、外務省といたしまして、安倍総理御指導のもと、積極的平和主義をテーマに、日本の安全保障を確実なものにし、世界の平和と繁栄のために、国際社会の一員としての責務を果たす外交をこれまで以上に強力かつ積極的に推進してまいりたい、そのように考えております。

鈴木(隼)委員 ありがとうございます。

 今後とも、日本の外交の窓口として、外務省には心から期待を寄せております。

 本日、防衛省さんにもお越しいただいておったんですけれども、時間が来てしまいました。申しわけございません。

 これで私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

土屋委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 おはようございます。民主党、緒方林太郎でございます。

 きょうは、四本の条約の審議ということで、本来、村山談話、河野談話といきたいところでありますけれども、きょうは条約審議ということでやらせていただきたいと思います。

 今回、日・モンゴル経済連携協定がかかっているわけでありますが、そもそも、こういった自由貿易協定、FTA、そういったものの成り立ちからスタートをさせていただきたいと思います。

 世界の貿易のルールというのは、WTO、ガット体制によって成立をしていて、そして、その中で最も基本的なルールとして最恵国待遇というものがございます。一つの国に、一つの相手に関税や非関税障壁を下げれば、それはその国だけではなくて全ての国に対して、どこか一つに下げたら全部に下げましょうというのが世界の貿易ルールであるというふうに思います。

 その中で、今回の日・モンゴル経済連携協定のように、そうではなくて一対一で、あなただけに関税を下げますということが今回条約で上がってきております。これの根拠となる規定について、外務省、お答えいただければと思います。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 WTOを中心とする多角的貿易体制の維持強化は、日本経済再生に向けた我が国の通商政策の柱でございます。同時に、二国間、多数国間の自由貿易協定、経済連携協定につきましては、有志国の間でWTO協定で約束した以上の貿易自由化を進めることを通じ、WTOを中心とする多角的貿易体制を補完するものと認識をしております。

 根拠でございますけれども、多角的貿易体制のもとでは、委員御指摘のとおり、関税及び貿易に関する一般協定、ガット第一条が最恵国待遇を定めております。この最恵国待遇を原則としつつ、ガットの第二十四条及びWTOのサービスの貿易に関する一般協定、GATSの第五条におきまして、実質上の全ての貿易について関税その他の制限的通商規則が撤廃されること等を条件といたしまして、自由貿易地域の設定を妨げるものではないとされていると理解しております。

緒方委員 そのとおりであります。

 ガット二十四条におきまして、関税及びその他の制限的な通商規則を実質的に全て撤廃することによってのみこういったものが認められているというのが国際法のルールの基本であります。

 その中で、こういった実質的に全ての関税及びその他の制限的な通商規則を撤廃する規定というのは、今、世の中でFTAとかEPAとかTPPとか、いろいろなカテゴリーの協定が言われておりますが、その適用については全く同じであるということでよろしいですね、外務省。

齋木政府参考人 ガット二十四条に関税同盟及び自由貿易地域の定義がございますけれども、委員が御指摘のそういった定義にはまるものであれば、それはガット、GATSで規定する自由貿易協定、FTA、EPAということであると認識しております。

緒方委員 実は、巷間言われる中で、二国間のFTAであれば関税の撤廃率は低くてもいいけれども、TPPみたいなものができれば非常に高いものが求められるというような議論がよくございますけれども、国際法上は、実はそこに求められている関税やその他の制限的通商規則の撤廃の要件というのは全く同じでありまして、実質的に全ての関税を撤廃することによってのみ、これがガット一条における最恵国待遇の例外として認められているというのが国際法上の考え方であります。

 そうやって考えるときに、私は、ガット二十四条というのは非常に古い規定でありまして、一九四七年にでき上がった規定でありますが、そもそもこの規定が現在のような世界を想定していたであろうかということについて若干の疑問を持つものであります。

 恐らく、こういうガット二十四条の規定というのは、私は、これは絶対そうかと言われると自信がないんですけれども、多分、ベネルクス三国みたいなものを想定してできた規定ではないかと思います。

 ベルギー、ルクセンブルク、そしてオランダ、こういった非常に小さな国がお互いに非常に相互依存をし合いながら貿易関係を維持している。そして、例えば日常品の購入においても、私も近くに住んでいたことがあるのでよくわかりますけれども、ベルギーから簡単に国境を越えて物を買いに行くんですね。

 それを、国境を越えて戻ってくるときに関税が課されるということになるとこれは余りに不合理であろうということに鑑みれば、そういったところに、例えばベルギーという国がルクセンブルクという国に関税を下げたときに、では、その関税を下げたものを日本やアメリカやほかの国に適用するというのは余りに非合理ではないかということから設けられた規定ではないかというふうに推察をいたしております。

 そうやって考えてみると、その条件として、好き勝手やっていいよということではなくて、ただ、それらの参加している国々が、まさに書いてあるとおりです、実質的に全ての関税及び制限的な通商規則を撤廃するのであれば、ベルギーがルクセンブルクに下げたものは日本には適用しなくていいよということではないかというふうに思うわけです。

 そういうふうな規定でスタートしたものが、現在のFTA華やかなこの時代に適用されている、そういうことであって、実は、私は、このガット二十四条の規定というのは、現在のFTAが百花繚乱のこの時代に適合していないんじゃないかというふうな思いも持つわけでありますけれども、外務省、いかがでしょうか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 ガットは一九四七年につくられたものでございます。ガット二十四条の規定は、今委員が御指摘のように、実質上全ての貿易について関税及びその他の制限的な通商規則が撤廃をされるという条件でございます。それ以上のことを書き込んでいるわけではございませんで、まさにその要件を満たしたものについては自由貿易地域であるということでございます。

 さらに、もう一言付言申し上げますと、ガット二十四条の規定自身が、多角的貿易体制を補完するためのさらなる自由化の法的枠組みとして、経済連携協定ないし自由貿易地域協定が重要な意義を有することを認めているわけでございます。

 さらに、WTOができましたウルグアイ・ラウンドのときにさまざまな条約交渉がございました。その一環といたしまして、WTO協定が発効の際に、一九九四年ガットに取り込まれた解釈了解がございます。このガット二十四条の解釈に関する解釈了解の前文におきましても、関税同盟や自由貿易地域というものが世界貿易の拡大に貢献しているという大きな意義を持っていることを認めているということを申し上げたいと思います。

緒方委員 ありがとうございました。

 そういうことなんだろうと思いますけれども、ただ、もともと、一九四七年、この規定ができた時代に今のような世界をそもそも想定していなかったわけでありまして、では、そのころ成立したものというと、例えば当時のECであるとかそういった、陸路でつながっていて、実質的に、本当に経済圏が一体化するようなものを想定している一方で、今起こっていることというのは、例えばTPPでも、太平洋をぶわっとまたいで、物の行き来がスムーズであれば、スムーズにしていくことはとても大事だと思いますけれども、ちょっと世界観が違うのではないかなということを、これは指摘だけにとめさせていただきたいと思います。

 その上で、このガット二十四条、先ほどから、実質的に全ての関税及び制限的な通商規則を撤廃するということでありますが、皆様御承知のとおり、さまざまな自由貿易交渉において例外というものを設けております。この例外が求められる根拠、そして、この例外がどの程度認められるというのが日本の相場観かということについて御答弁いただければと思います、外務省。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 ガット第二十四条8に規定をされております実質上の全ての貿易の要件につきまして、この具体的な判断基準は確立をしていないと理解をしております。

 他方におきまして、我が国としては、貿易量において実質上の全ての関税その他の制限的通商規則が廃止されなければならないという量的基準、そして、主要分野が自由貿易地域内の自由化の対象から外されてはならないとの質的基準、この量的基準と質的基準の両方を満たす必要があると考えております。

 なお、量的基準につきましては、貿易額の九〇%の関税撤廃を一つの目安と考えております。

緒方委員 実は今、御答弁の中にあったようで、なかったようなんですが、条約上に実質的に、英語でサブスタンシャリーと書いてありますけれども、実質的にという言葉が入っていることによって、実質的にということであれば例外が認められるだろうというふうに推定をして、そこから例外というものを見出しているというのが、今の自由貿易協定で例外交渉している唯一の取っかかりであるということでございます。

 そして、今、外務省齋木局長の方からもございました、量的な基準として九割ということでありました。九割という基準は、EUも大体九割というふうに言っておりますが、今、量的な基準と言いましたが、これは二つの考え方がありますね。金額ベースで見るケースと、品目ベースで、今回の日・モンゴル協定でも分厚い電話帳のようなものがついておりますけれども、これの一個一個の品目ベースで九割という考え方があると思います。

 品目ベースで九割をとらない根拠について、外務省、いかがお考えですか。

齋木政府参考人 多くの国におきまして、量的基準としては、貿易量の九〇%を一つの目安として考えているという事実がございまして、日本も同じような立場をとっているということでございます。

 先生御指摘のとおり、いずれの国も、それぞれ国内でセンシティブな品目を有していることから、国内産業の育成、振興とのバランスにも十分配慮しつつ、自由化に向けた努力を行っているということでございますので、こういうやり方で貿易実態を踏まえて自由化の度合いを判断する、すなわち、一律に品目数ベースでの自由化率のみで考えるのではなく、量的そして質的基準、量的にいえば貿易量の九〇%を超えることが一つの目安というような考え方には、一定の合理性があると認識をしております。

緒方委員 昔、その議論を山のように私は農林水産省とやったことがあるので、懐かしく思い出すわけであります。

 ただ、金額ベース、量的ベースで考えるときというのは、実は、例えばですけれども、物すごく関税障壁が高いせいで、現在、貿易実態が存在しないものというのは、そもそも視野に入ってこないんです。関税がむちゃくちゃ高いせいで、そもそも貿易が存在しない、撤廃するだけの九割のベースに入ってこないわけです。わかりますかね。関税障壁が余りに高いがゆえに、貿易がそもそも起こり得ないぐらい障壁が高いときは、量的、金額ベースで撤廃するときの視野にそのものが入ってこないということになります。

 こういったことがあるので、厳しい国になると品目で九割だということを言ってくるわけでありますが、それは余り議論を続けてもしようがないと思いますので、条約に少し即しながら議論をしていきたいと思います。

 日・モンゴル経済連携協定、金額ベースで、そして品目ベースでのそれぞれの撤廃率について、いかがでございますでしょうか。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 まず、品目ベースですけれども、十年間での関税撤廃は、品目数で申し上げますと、日本側については約八五・五%、モンゴル側については約八〇・七%ということになっております。

 それから、量的ベース、金額ベースで申し上げますと、自由化率が約九六%ということで、九〇%を超えることになっているということです。

 具体的に申し上げますと、日本のモンゴルからの輸入の約一〇〇%、それから、モンゴルの日本からの輸入の約九六%について、発効後十年以内に関税が撤廃されるということになっております。

緒方委員 ありがとうございました。

 金額ベースでは、九六%ということでかなり数字が高いですが、数量ベースでいくと、日本側は八五・五でしたか、モンゴル側は八〇・七ということでありますが、それを前提に、皆さん多分きょう持ってきている方も少ないと思いますが、この日・モンゴルとの協定のいわゆる譲許表と言われる関税の撤廃表を見ていると、日本が撤廃していないものの中に、例えばマグロとかニシンとか、そんなものが入っています。

 モンゴルという国は、これは大臣もおわかりになるとおり、内陸国です。どこの海から行っても恐らく千五百キロから二千キロぐらいは離れているところで、モンゴル産のマグロの漬け丼とかあり得るのかなと思ったりするわけですね。マグロとかニシンとかそういったものは、どう考えてもモンゴルでとれる可能性がない。これは加工品じゃなくて、生の魚です。生の魚について、今回の関税の撤廃のところから外れるんですね。外れているんです。

 恐らく、これは、これまでの経済連携協定で一度も撤廃したことがないからということで、そのまま置いているんだと思います。そして、多分、向こうから要望も当然ないわけでありまして、要望もないんですけれども、これは別に質問通告しているわけではありませんが、大臣にお伺いしたいと思います。

 日・モンゴル経済連携協定でマグロやニシンが関税の撤廃から外れているということについて、一議員として、国務大臣として、違和感を持たれませんでしょうか、大臣。

岸田国務大臣 御指摘のように、関税撤廃あるいは削減の対象から除外されているものがございます。その理由につきまして、今委員の方から御指摘になられたような事情もあるかと思いますし、それから、相手国側からの要望等、交渉の中でさまざまなやりとりがあったことは想像できると思います。

 いずれにしましても、そういった具体的な品目については、交渉ごとに個別具体的に決められるものではないかと思っております。御指摘の点につきましては、個別具体的な交渉の結果であると認識をいたします。

緒方委員 国会で答えられるのはきっとそこまでだというのもわかっておりますし、あえて、きょう、農林水産省を呼びませんでした。呼んでもせつない答弁が返ってくるだけなので、もうやめようと思いまして、呼びませんでした。

 ただ、今この議場におられる方、誰が聞いてもこれはおかしいと思うわけですよ。絶対にこれを聞いておかしいと思っていて、そのほかにも、例えばですけれども、ちょっとぺらぺらとめくってみると、カエデ糖とか、そういうのが書いてあります。何のことかというと、メープルシロップです。モンゴルでメープルシロップはとれないだろうと思うわけですね。

 しかも、なぜメープルシロップを守っているかといえば、北海道でビートをつくっている農家の方、さらには鹿児島、沖縄でサトウキビをつくっておられる方、そういった方々の砂糖産業を守るために、では、メープルシロップを除外するということが本当に日本の産業の育成につながるのかどうかということについては、これはもう答弁は求めませんので、この議場におられる方と、そして大臣、認識を持っていただければというふうに思います。

 それを踏まえた上で、これは民主党政権でもそうでしたし、自民党政権でもそうだったので、どこの政権を批判したいとか、今この条約を批判したいということではありませんけれども、やはり日本のFTAというのは、どこか、関税の撤廃率が伸びないことによって、もちろんお互いの交渉ですので、こっちが伸びなければ向こうも出てこないわけです。正直、どのFTAと、実はこれは民主党政権時代に締結したものでしたけれども、事実上農業を除外しているんじゃないかと思いたくなるようなFTAもないわけではない。ないわけではありません。これは民主党政権時代にやったものですけれども。

 若干、できばえからすると、皆さんが頑張っておられることはよくわかるけれども、できばえとして、こっちが出さないから向こうも出てこずに、実は貿易のブースターとなる機能が必ずしも高まっていないんじゃないかなというFTAがあると思います。

 もちろん、ここにかかわってくるのは、農業であったり一部鉱工業品が、どうしても、機微だから、センシティブだからということでかかわってこないわけでありますけれども、ただ、できるだけいろいろな関税とか非関税障壁の撤廃率を上げていって、そしてレベルの高いFTAを目指していくということは、これは日本の国の国是としてとても重要なことだというふうに思いますけれども、いかがですか。では、外務省。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 ガット二十四条、先ほど言及をして申し上げましたとおり、有志国の間の自由貿易地域協定というものが世界全体の貿易にとって有意義である、そういう認識が大変重要だと考えておりまして、我が国としても、高い自由化率を目指す自由貿易協定、経済連携協定を目指してまいりたいと思います。

緒方委員 農林水産委員会では絶対返ってこない答弁だったと思いますが、ありがとうございました。

 これまでの日本のFTAというのは、途上国とのFTAが非常に多かったというふうに思います、最初。いわゆる純然たる先進国ということでやっているのは、スイスやオーストラリアというものが主たるものだと思います。

 実は、これは余り知られていないことですけれども、途上国間でFTAを締結するときについては、その関税の撤廃率が、今言ったような九割とかを目指さなくていいというような国際法のルールがあるというふうに理解をいたしておりますが、外務省、いかがですか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の国際法といいますのは、一九七九年のガット締約国団の決定のことであろうかと思います。WTO上の授権条項と言われるものでございます。この授権条項に基づきますと、開発途上国の間の自由貿易協定に関してはMFNの例外という規定がございます。

緒方委員 そうなんですね。実は、途上国対策ということで、途上国間でFTAをするときには関税の撤廃率が必ずしも高くなくていいというようなことになっていて、実際、途上国間でやっているFTAの中には、さっき言った、我々が九割目指して頑張ろうというふうにやっているけれども、そんな水準に全く到達していないものも結構あります。

 私が一番よく思い出すのは、南アジアで行われている、インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、あのあたりでやっているFTAというのは非常に関税の撤廃率が低いというふうに理解をいたしておりますが、いかがでございますでしょうか、外務省。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 授権条項における要件と、先ほど来御議論いただいておりますガット二十四条における要件との関係について、直接的に規定をしているものはございませんけれども、しかし、実態としまして、一部の開発途上国間で締結をされた自由貿易協定について、自由化率が低いものもあると承知をしております。

緒方委員 南アジアでやっているものというのは、たしか撤廃率が五〇%いかないようなものも実はありまして、私は何が言いたいかというと、途上国というのは、みんながみんなそうではないですけれども、そういう緩いFTAになれているようなところもあります。しかしながら、先進国とやるときというのは、まさに、さっき言ったWTO、ガットの二十四条におけるところの、実質的に全ての関税及び制限的通商規則の撤廃ということについて、もうリアルにどかっと来るわけであります。

 だから、これまでのFTAは、結構二国間で融通がきいた、お互い交渉すれば、関税の撤廃率が少し低くてもよかった。けれども、実際に先進国とやるときというのが厳しいというのは、それは当たり前のことでありまして、実は、今、日本の中で、二国間FTAの方がよかった、TPPみたいなものをやるともう本当にリアルに厳しいものを求められると言っているのは、それは途上国が相手であるときというのと先進国が相手であるときというものの違いも一部にはあるのではないかというふうに思っております。

 これは、それが絶対に正しいかと言われると、私も証明する手段を持っておりませんけれども、そういうことがあるということだけ、今のTPPが厳しいのは、別に、特にアメリカという国は特殊だと思いますけれども、先進国同士でやるときというのはガチで厳しいわけでありまして、アメリカで厳しい、けれども、それはEUとやるときでも同じように厳しいんです。それは高いものを求められるんです。そういうことがあるということを、これは指摘にとめさせていただきたいと思います。

 それでは、少し質問をかえまして、今回、国会に上がってきております貿易円滑化協定について少し触れさせていただければと思います。

 この貿易円滑化の交渉を始めたとき、実は私は外務省で担当でありました。税関実務について、ガットで幾つかの条項で大まかな規定があるわけですが、それをもっとブレークダウンして、ガットに書いてある税関実務のところをより充実化させるということで、極めて実務性が高い条約ということで、私が担当していたときは、これはやり始めれば早く終わるだろうというふうに言われていた協定です。これはそんなに時間がかからない、あり得るとすれば、協定の中身に途上国がついてこられるかどうかということであって、途上国に対するキャパシティービルディングの問題があえて残るかなというぐらいの感覚で進めたものであります。

 しかしながら、この貿易円滑化協定であっても、このドーハ・ラウンド交渉、始まってもう既に十四年目であります。十四年目でようやくまとまった、ようやく唯一の成果がまとまったのがこの貿易円滑化協定ということで、前のラウンドのガット・ウルグアイ・ラウンドというのは七年六カ月でした。長い長い長いと言われた前のガット・ウルグアイ・ラウンドでも七年六カ月だった。しかし、今回は、十四年かかってようやくここまで来ている。

 実は、先ほども質問がございましたけれども、WTO交渉というのはこれからどう見通していったらいいのかなということについて、かなり私は懐疑的な思いを持っています。本当にこう言っていいかどうかわかりませんけれども、こういった非常に難易度が低い条約ですら十四年かかったということを踏まえれば、今後、実はWTOというのは、新たな多角的貿易体制の自由化を推進する組織ではなく、これまでつくった協定の管理とそして紛争処理だけをやる組織に下がっていってしまうのではないかという危惧を持つわけでありますが、外務省、いかがでございますでしょうか。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員が御指摘のとおり、ドーハ開発アジェンダは、貿易円滑化の分野も含めまして、二〇〇一年に開始をされたものでございます。このWTOにおけるドーハ開発アジェンダは八分野の交渉がございました。貿易円滑化はその一つであります。

 この八分野の交渉の一括妥結を前提として進められてきたというのは御承知のとおりでありまして、したがいまして、貿易円滑化そのものの難易度が仮に低かったといたしましても、その他、農業あるいはそれ以外のNAMAと呼ばれます関税撤廃、削減の問題、こういった非常に難航するものと一括して妥結するということが求められていたという背景をまず改めて御理解いただければと存じます。

 途上国として優遇措置を求める新興国、そして、こうした新興国に応分の市場開放を求める先進国という対立の中で、ドーハ・ラウンド交渉は、今申し上げました農業その他の分野において大変な困難に直面をし、二〇〇八年以降は交渉全体が膠着状態に陥ったわけであります。貿易円滑化の交渉も、その中で、大きな進展が得られないまま長期化をしたという事実があります。

 しかしながら、事態の打開のために、二〇一一年の第八回閣僚会議におきまして、全分野の一括妥結ではなく、部分合意の可能な成果を積み上げる新たなアプローチを採用しよう、そして、そういう新たなアプローチの上でドーハ・ラウンド交渉を継続するということが合意をされたわけです。

 この第八回閣僚会議の合意を受けまして、その二年後、二〇一三年の第九回閣僚会合におきまして貿易円滑化協定が採択をされたということでございまして、そういう意味で、全体の自由化交渉が進んでいないというよりは、まさに、どういうふうに自由化交渉を円滑に進めるかという知恵の出しどころであろうかと思っております。

 ことしの暮れには第十回閣僚会議が開かれますので、夏にはバリ合意の作業計画を策定いたします。このバリ合意を踏まえました作業計画を踏まえて、早期妥結に向けてしっかりと自由化交渉を進めてまいりたいと考えております。

緒方委員 専門用語で言うと、シングルアンダーテーキングをやっていくのがなかなか難しいから、一部でもアーリーハーベストをやろうということだろうというふうに思います。

 おっしゃるとおりでございまして、しかし、この貿易円滑化協定も、実は、まとまるときに全然これと関係ない、インドが国内の貧困層に対して農産品の補助金を出していることとリンクして、それで交渉が一度、最後の貿易円滑化交渉、この貿易円滑化協定の中身には全然何の問題もないんだけれども、これをまとめるのであればうちの国内の補助金を除外してくれというようなインドの要望があって、一回スタックしたことがあります。

 そういったことがあって、なかなかこれから多角的自由貿易化交渉というのが難しいんだろうなというふうに思うわけです。

 そういう中で、かつて日本というのは、まず、ガット、WTOの自由貿易体制というのを基本に置いた上で、その上でFTAというのが例外として、あくまでも例外として、ぽつぽつぽつとそれを補完するものとして載っているということでありましたが、ちょっと最近思うのが、世界のパラダイムは実は転換していて、そういうガット、WTO体制というのをベースに置いた上で、その上の補完要件としてFTAがあるということではもしかしたらないんじゃないかというような思いを持ったりすることがあるわけです。

 実は、もうFTA網自体が世界の貿易体系の基礎をつくっているような、そういう状態である、土台があって上に載っているではなくて、横に並列しているとか、もしかしたらFTAの方が世界の貿易パラダイムの基礎をなしているというふうに考えることすらできるのかななんということも思ったりするわけです。

 世界のパラダイムがそういうふうに転換しているのではないかなと思うわけでありますが、これはすごく大きな世界観の話です。大臣、どう思われますでしょうか。

岸田国務大臣 まず、我が国の歴史を振り返るときに、戦後、復興し、そして今日の発展を遂げることができたことにつきましては、ガット、WTO体制のもとで自由貿易が推進された、そして、そのことによる恩恵を受けてきたということ、これは大変重要な点であったと考えます。

 こうした歴史を踏まえますならば、我が国としまして、保護主義的な動きを抑止する、また、経済分野におけるルールを、受け身ではなくして、積極的につくる国でなければならない、これは当然のことだと思いますし、その観点から、多数国間の貿易自由化交渉は我が国の通商戦略の主要な柱であると思います。

 確かに、WTOドーハ・ラウンド交渉につきましては、交渉が長きにわたっている、難航している、こういった状況があるわけですが、WTO体制は、先ほど委員の方からも少し触れられましたが、貿易自由化交渉に加えて、各種ルールの履行監視及び紛争解決制度、こうした役割もあるわけでありますし、また、多国間貿易体制をより厚みのあるものにするために、有志の加盟国の間で、情報技術協定の拡大交渉ですとか、環境物品協定交渉ですとか、さらにはサービスの貿易に関する新しい協定交渉ですとか、こうした新たな自由化に向けた取り組み、こういったことも進められておりますので、WTOの果たす役割は引き続き大きいと考えております。

 そして、それを補完するという形からも、二国間、多国間のEPA、FTA交渉がこれまで以上に進んでいるということでございます。

 今、委員の御質問の中で、この主役はどちらなのか、土台はどちらなのか、こういった質問がありましたが、こうしたWTOと、そしてEPA、FTA交渉の存在があるわけですが、要は、こうしたものが全体として、より開放的で、透明性の高い、自由な貿易ルールのネットワークを広げていくということにつながるんだと認識をしております。どちらが土台かということにつきましては、これは、両方が相まって、全体としてしっかりとした結果を出していくよう努力をしていく、こうした見方、姿勢が重要なのではないか、このように認識をいたします。

緒方委員 ありがとうございました。

 全体としてという言葉を聞くと何か別のことを思い出しますけれども。相まってという言葉がありました。大分日本の政府のポジションもかつてに比べると変わったなというふうに思うわけでありますが、今の大臣の答弁、重く受けとめたいというふうに思います。

 それでは、ちょっとまた質問のトーンを変えまして、日・モンゴル経済連携協定の中に少し入りたいと思います。

 TPPのときにもよく出てきました、ISD条項というのがございます。日・モンゴル経済連携協定におきまして、ISD条項というのは含まれておりますでしょうか、外務省。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 この協定にも含まれております。

緒方委員 それでは、ISD条項というのは紛争解決のための条項でございますが、この日・モンゴル経済連携協定に入っているISD条項は、国の主権を害するようなものだというふうに思われますか、外務省。

滝崎政府参考人 そのようなものにはなっていないというふうに考えております。

緒方委員 では、もう少し範囲を広げて、日本がこれまで締結したEPA、FTA、さらには投資協定、さまざまな協定にISD条項というのが入っています。この中に、国の主権を害するようなものが含まれているというふうにお思いになりますでしょうか、外務省。

齋木政府参考人 これまで、投資協定や投資章を含む経済連携協定を締結してまいりましたが、その際には、我が国の規制権限に十分配慮してきておりまして、我が国として、必要かつ合理的な規制を行えなくなるようなISD条項は含まれておりません。

緒方委員 ISD条項については、いろいろな方が、例えば、憲法に定める裁判をある意味オーバーライドするような内容のものであって、憲法違反だというような議論もございます。紛争解決のためのISD条項が憲法違反だというその指摘について、外務省、いかがに思われますでしょうか。

齋木政府参考人 今し方申し上げたとおりでございますけれども、日本といたしましては、経済連携協定あるいは投資協定を結ぶに際しまして、我が国の規制権限に十分配慮をし、また、国内法のあり方も十分検討した上で結んできております。結果といたしまして、我が国が必要かつ合理的な規制を行えなくなるようなISD条項は含まれておらず、それが憲法に抵触するというふうな認識は持っておりません。

緒方委員 それでは、ISD条項の中身について入っていきたいと思います。

 ISD条項というのは、例えば日・モンゴル経済連携協定でいえば、この協定に違反するような行為があったときに、企業が政府を訴えることができるというような内容のものでありますが、これは、例えば、日本が合法的に行っている、食品や環境規制、さらには国民皆保険制度、年金制度、こういったものを訴えることができるような協定の内容になっている、そういうようなものでございますでしょうか、外務省齋木局長。

齋木政府参考人 一般論として、投資協定や投資章を含む経済連携協定におきまして、ISD条項があるからといいまして、日本が必要かつ合理的な規制を差別的でない態様で行うことが妨げられているわけではございません。

 したがいまして、健康、安全を守るためのいろいろな基準や規制が訴えられることはあるかということで御質問がございましたけれども、外国投資家からそういった訴えが行われるということは、通常想定をされない、蓋然性は低いと考えておりまして、実際問題、一九七八年にISD手続を含む投資協定を我が国は締結いたしましたが、それ以来、我が国がこの手続に基づいて提訴をされたことはございません。

緒方委員 ここまでが基礎的な情報でありまして、ここからは質問を進めていきたいと思います。

 私が資料で配っております、これは、自由民主党、二〇一二年の資料であります。「TPPについての考え方」ということで、恐らくこれが基本的に貫かれているということだと思いますけれども、下の交渉参加の判断基準、五ポツのところに「国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。」というふうにあります。

 これの読み方についてお伺いをいたしたいと思います。これは、ISD条項というのは国の主権を損なうようなものであり、そういったものには合意しない、そういう意味でしょうか。これはどなたがよろしいでしょうか。では、小泉政務官。

小泉大臣政務官 自民党の、J―ファイルというか、ファクスニュースですね。そのことについて、私が今、政府の立場で解釈どうこうというのは、お答えするのはなかなか難しいんですが。

 ISDSで訴えられることを余りに懸念して、国が本来必要な規制を行うことが抑制されることはあってはならない、そういったことでありますので、これは繰り返しになりますけれども、海外で活躍する日本企業を守ること、これが一つで、そしてもう一つが、投資を受け入れた国として我が国の規制の権限に十分配慮する、この両面を勘案して、そして国会で御承認をいただけるような内容の協定に仕上げていく、それが、今TPPを進めていく中での、こちらとして全力を尽くしていく、そういった考えであります。

緒方委員 これはファクスニュースですけれども、そのまま、二〇一二年の総選挙のときも大体このラインでお訴えになっていて、ISD条項というのは、先ほどもございましたとおり、これまで締結したISD条項の中に国の主権を損なうようなものは一つもないというようなお話でありました。

 この五ポツの、国の主権を損なうようなISD条項については合意しないというのは、ISD条項というものの中に仮に国の主権を損なうようなものがあるとすれば、そういうものには合意しない、そういう趣旨のことを自由民主党として主張されていた、そういう理解でよろしゅうございますでしょうか。では、小泉政務官。

小泉大臣政務官 繰り返しですけれども、自民党のこのファクスニュースの解釈というのは、私としては今答えにくい立場にありますが、いずれにしても、先ほど言いました、海外で活躍する企業の保護、そして、国内で投資を受け入れる側として適正に規制権限に配慮する、こういった両面をしっかり勘案して、それが国益をしっかり守れる、そういった形に仕上げていくのは交渉を担当するラインとして当然のことだと思っております。

緒方委員 お答えになっていないわけでありますが、広報本部長は、現在の内閣府特命担当大臣で、それこそTPP交渉で頑張っておられる甘利明さんの名前が編集責任者として書いてあります。今、自由民主党で二〇一二年に当選された方は、みんなこれを担いで、この内容のラインで選挙を戦われているんです。

 これは、内閣委員会で聞けということなのかもしれませんけれども、どなたか政務の方にお答えをいただきたい。

 この読み方というのは、ISD条項というのはいろいろなものがあるけれども、仮にそれが国の主権を損なうようなものであれば、そういったものについては合意しないということを言っている、それを皆様方担いで選挙を戦われたということでよろしゅうございますね。これは岸田外務大臣、お願いします。

岸田国務大臣 ISD条項につきましては、先ほど来外務省からお答えさせていただいていますように、今日までのさまざまな経済連携協定においても、交渉の段階でしっかりと国内法との整合性を図る、そして、その結果としまして、さまざまな国内法との内容において不都合が生じることはない、こういった状況が現実に起こっておりました。今日までずっとそういう結果をつくってまいりました。

 ここで言う自民党のJ―ファイルの内容につきましても、TPP交渉において、理屈として国益に反するようなISD条項というのはあるのかもしれませんが、交渉段階においてしっかりと国内法との整合性はとる、そのことによって不都合が生じないようにする、こういったことで対応するべき課題であると認識をしております。

 ぜひ、交渉において、しっかりとした交渉を行い、国内法との整合性をとるべく努力をしていかなければならない、これは当然のことであると認識をいたします。

緒方委員 今の答弁で明らかになりましたとおり、ISD条項そのものが国の主権を損なうようなものであるということではない、そういうふうに理解をいたしました。

 つまり、ここに書いてあることというのはまさにそういうことでありまして、ISD条項の中で国の主権を損なうようなものがあるとすれば、それは交渉の段階できちっと正していって、それをやらないということでありますが、実は、世間でこれを見た方はどう思っているかというと、反対派の人は、ISD条項というものは国の主権を損なうものであり、だから、そういうものには絶対合意しないというふうに読んだ方が結構多いんです。

 これは、別にそう読んだ方が、だました私が悪いのか、だまされた私が悪かったのかということなんだと思いますけれども、実は、そういうことだということが今明らかになったわけでありまして、非常に、錯誤を招くような、ある意味うまい書き方だなというふうに思うわけでありまして、今、恐らくこの審議を見ておられるTPP反対派の方は、ああ、やられてしまったというふうに思っていることだろうと思います。この点は指摘にとめさせていただきたいと思います。

 さらに、先ほど、ISD条項で、食品や環境規制、国民皆保険、年金制度、こういったものを訴えることができるかということでありましたが、基本的に、そういった合法的に行われているものについては、それを訴えるということはそもそもあり得ないだろうし、その蓋然性も低いということでありましたが、資料の二枚目であります。

 これは城内外務副大臣が二〇一〇年に、恐らくいろいろな方に配布をされた、TPPに関する城内副大臣の思いを書かれたペーパーでありますが、例えば5のところを見ていただきますと、下線のところに、「食品衛生や環境など国民の健康と安全を守るための基準や規制、制度まで外国から「参入障壁」とみなされ、撤廃を強制されるか、企業から国が訴えられる可能性があります(ISD条項)。」とございます。

 この認識は間違っていたということでよろしいですね、城内外務副大臣。

城内副大臣 お答えいたします。

 緒方委員が私のホームページに関心を持っていただいて、何年も前の古いホームページのブログの記事までごらんになっていただいていること、また、今回配付資料に加えていただいたことに心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 御指摘の資料は、民主党が与党時代、たしか野田政権のころだと思いますが、当時の情報に基づき、あくまで、我が国がTPP協定交渉を検討する際に、国益をしっかり守るという国民の視点から、慎重な検討を要する可能性がある論点を私なりにまとめたものでございます。

 その後、安倍総理が、TPP交渉参加に当たり、日本には美しい田園風景、農村の伝統文化、国民皆保険制度を基礎とした社会保障制度という世界に誇るべき国柄があり、これらの国柄は断固として守りますと述べられました。我が国として守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求する方針のもと、参加を表明したところであります。

 ISD条項に関しましては、政府として、海外で活躍する日本企業を保護しつつ、その一方で、投資受け入れ国としての我が国の規制権限に十分配慮するという両面を勘案し、国の主権を損なうようなISD条項には合意しないよう、引き続き交渉を通じて我が国の国益を実現していく考えであります。

緒方委員 つまり、限られた情報の中で、これは恐らく広い方にまかれていると思いますけれども、当時、情報が限られていたということの範囲内で、間違っていたという認識でよろしいですね、副大臣。

城内副大臣 今申し上げたとおりでありまして、これは当時のそういったさまざま論点を、いろいろな著作をもとにまとめたものでありまして、緒方委員は別だと思いますけれども、当時の与党の民主党議員からもよくできていると指摘された事実はございます。

緒方委員 それでは、限られた情報でということで、警句を鳴らしたということだというふうに聞いていますが、例えば二ポツを見ていただきますと、自動車について書いてあるのは、日本の主要輸出品である自動車について、アメリカの関税はわずか二・五%です、関税がゼロになることよりも、為替の変動の方が輸出量に大きな影響を及ぼしますとあります。

 今、為替が振れました。為替が振れて、円安になりました。円安になった結果として、日本の輸出産業が大きく伸びています。

 城内外務副大臣にお伺いいたします。自動車の二・五%の関税の撤廃は必要ないというふうに思われますか。

城内副大臣 お答えいたします。

 関税撤廃の必要はあると思います。

緒方委員 あたかも、二・五%なんてこんなのわずかだから、こんなものの撤廃に走らなくていいじゃないかというふうに、まあそこまでは書いていないですけれども、そういうふうに読めるわけでありますが、そういう意図をお持ちだったことはないですね。

城内副大臣 当然、関税二・五をゼロにすることが求められているというふうに考えております。

緒方委員 ありがとうございました。

 余りレトリックな話をしたくないんですけれども、一番上のところに結構衝撃的なことが書いてあって、TPPについては、実は国益擁護派対対米追従売国派の側面がありますというような表現が書いてあります。これは、普通に読む限り、TPPを推進している人間が対米追従売国派だというふうに思うわけでありますが、城内外務副大臣にお伺いします。今、TPPの交渉を推進している自民党政権は、対米追従売国派だというふうに思われますか。

城内副大臣 これは、安倍総理も甘利大臣も常々申し上げているとおりでありますが、国益に沿った形で、国益をしっかり守るという観点でTPP交渉に当たっているというふうに私は理解しております。

緒方委員 その他、このペーパーに基づくといろいろな質問ができるわけでありますが、一番右下のところの、四つ書いてありますけれども、「TPPについて「賛成から反対」に回った人は多いですが、逆に「反対から賛成」に変わった人はほとんどいないといってよいでしょう。それがTPPの真実です!」というふうに、城内副大臣、書いておられます。この、ほとんどいないお一人でありますでしょうか、城内副大臣。

城内副大臣 当時、民主党が与党の時代ですけれども、さまざまな議論があって、そもそもTPPについてどういう論点があるかということを御存じない方が多数いらっしゃいました。そういった中でいろいろ議論をして、そしてまた政権がかわりまして、繰り返しになりますけれども、国益をしっかり守るという観点で今まさにTPP交渉が行われているわけでございます。

緒方委員 そして、その下に、「TPPは国論を「二分する」問題と言われますが、政府がきちんと情報を開示し、国民が判断すれば、「みんな反対」することになるでしょう!」というふうに書いております。

 これから、我々民主党は、TPPの情報を開示するように求める議員立法を提出してまいります。城内副大臣、賛成していただけますね。

城内副大臣 ただし、TPPは今交渉中でございますので、交渉のいろいろなプロセス、中身については、当然、緒方委員も外務省出身の方でございますから、それは公表できないということは御理解いただけるというふうに思います。

緒方委員 みんな反対するための材料すらいただけないということでありまして、これから、我々、今準備しております、TPPの情報を開示するように。アメリカでも国会議員であれば自由に見ることができるというような状況になっているというふうに聞いております。ぜひ、これはどこの委員会にかかるのかわかりませんけれども、御審議のほどよろしくお願いを申し上げます。

 最後に、一点だけお伺いをいたしたいと思います。

 通商交渉の分野で、自分自身の昔からの関心事項でありますが、農産品の分野において、輸出補助金というのがよく使われます。輸出をしたら、輸出をしたことに応じてお金が支払われていく輸出補助金というのがあります。この輸出補助金というのは極めて貿易歪曲性の高いものであるというふうに、大体、国際貿易の教科書を見れば書いてあります。輸出補助金というのは交易条件をダイレクトに変えるそういう補助金でありますので、極めて貿易歪曲性の高いものであるという認識でよろしゅうございますでしょうか。これは、外務省ですね。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 輸出が行われること等に基づいて交付される補助金一般につきましては、WTOの補助金及び相殺措置に関する協定において、原則として、農業に関する協定上認められる場合を除き、禁止をされているところでございます。

 農産品に関する輸出補助金につきましては、農業に関する協定において、同協定及び自国の譲許表に明記されている約束に従って交付するほかは交付しない旨、また、同協定第九条1に掲げる輸出補助金は削減に関する約束の対象となる旨が規定をされているところでございます。

 この農業に関する協定の前文は、加盟国が農業に対する助成及び保護を実質的かつ漸進的に削減することを定めることにより、世界の農産品市場における制限及びゆがみを是正し並びにこれを防止する結果となるとしているところでございます。この協定の輸出補助金に関する規定は、前文の趣旨を踏まえたものと認識をしております。

緒方委員 ガット、WTO協定で規定をされているということでありますが、それ以前の問題として、経済学的に見たときに、輸出補助金というのは極めて貿易歪曲性が高いというふうに認識してよろしいですねということ、再確認であります。

齋木政府参考人 先ほどの御答弁の中で申し上げました、いろいろなWTOの協定の中で補助金に関する一定の規制がかけられているということは、補助金が持つ貿易歪曲効果に鑑みてのものでございます。

緒方委員 WTO協定でも、国内で出す補助金と輸出補助金というのは規定が違っておりまして、輸出補助金というのは、極めて厳格なルールがかかっているということから鑑みても、やはり貿易歪曲性が高いというふうに考えられるからそういったルールになっていると見ることが多分正しいんだろうと思います。

 これに加えてお伺いします。

 輸出補助金とはちょっとタイプが違いますけれども、輸出をするときにクレジットをつける、輸出信用、輸出に対して直接補助金を出すわけじゃないけれどもクレジットをつけることを例えばアメリカは行っています。輸出信用というのは、利率が物すごく低いとか償還期間が物すごく長いとかいうときには輸出補助金の要素を持つというふうに理解してよろしゅうございますか、外務省。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 農産品に関する輸出信用につきましては、WTOの農業に関する協定で、輸出補助金に関する約束の回避を防止する観点から、「国際的に合意された規律の作成に向けて努力する」と規定をされております。

 委員御指摘の点につきましては、個別具体的に判断する必要はありますが、場合によっては輸出信用が輸出補助金と同等の効果をもたらし得ることは否定されないと認識をしております。

緒方委員 ありがとうございました。

 そうなんです。EUというのはダイレクトに輸出補助金をばんとつけて輸出しているので目立つんですね。だから、輸出補助金の規定にかかってくるけれども、クレジットをつける行為、輸出をするときにいろいろな形で非常に有利なクレジットをつける行為というのは、これは輸出補助金の枠内で規定をつくっていくと言っているけれども、なかなかこれが今うまくいっていない。けれども、アメリカはやっている。そして、利率が低かったり償還期間が長かったりすることによって、かなり補助金的な要素があるというふうに言われていて、TPPの中でも珍しく農業分野において日本とオーストラリアが組んで、アメリカの輸出信用はおかしいというふうにやっているかのような報道を何度か見たことがあります。

 小泉政務官にお伺いをいたしたいと思います。

 輸出信用、輸出補助金的な要素がある輸出信用がついている産品が日本に輸出されてくるときに、そんな輸出補助金がついている産品に対して日本が関税を撤廃するというのは論理的におかしいというふうに思いますが、政務官、いかがですか。

小泉大臣政務官 今行われている交渉の中の具体的な中身というのはお答えすることはできませんが、今御指摘のあった輸出の補助金、そして輸出信用、こういったことについては政府の立場ははっきりしています。

 これはたびたび関係閣僚からも発言がありますが、WTO農業交渉においては、加盟国間の競争条件の公平性を確保するために、全ての形態の輸出補助金は撤廃すべきであり、輸出信用についても規律の強化が必要である、そういった立場で臨んでおります。

緒方委員 交渉中の話なのでお答えしにくいというのはよくわかります。そして、今、交渉も最終盤に入っているということもあって、なかなかちゃぶ台返しができるということではないということもわかっています。

 ただ、日本の農家の方々の感情からすると、こっちは関税ゼロだとか関税撤廃だとかいうふうに言われる一方で、輸出してくるものには補助金がついているというようなこと、こんな不公平な条件で締結されるTPPについて、非常に危惧を持ち、そして、そんな不公平な条件で行われている協定についてはおかしいじゃないかというふうに思うのが、恐らく日本の農家の方々の共通した認識であろうと思います。

 交渉内容に入った答弁はもう求めませんけれども、そういった公正な条件で行われない貿易はきちっと正していくのだというその強い意思、もう一度、小泉政務官にお伺いできればと思います。

小泉大臣政務官 もちろん、農家の方、不安を持っている方は多いですから、情報公開も含めて、多くの方に納得をいただけて、また御理解がいただけるように、交渉に全力を尽くしていきたいと思っております。

緒方委員 ありがとうございました。

 この件は余り知られていない話なんですけれども、結構、交渉が明らかになったときにはどかっと盛り上がる話かなというふうにも思います。慎重な対応を求めたいと思います。

 一時間、長い時間質問させていただきましたが、貴重な機会となりました。貴重な答弁、本当にありがとうございました。感謝を申し上げます。

 終わります。

土屋委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 維新の党の小熊慎司です。

 通告に従って質問をいたします。

 まずは、日本・モンゴル経済連携協定、今まで質疑が続いたので同趣旨のものになるかもしれませんが、モンゴルが一番最初に経済連携協定は日本ということでやっていただいたということの意味は、経済的な連携だけではなくて、もっとまた広い意味での狙いというのも両国にもあるというふうに捉えています。

 そのとおり、二月十日に締結をされたときに、サイハンビレグ首相と共同記者会見をやった際にも、安倍総理も、今後も、戦略的パートナーシップに基づいて、安全保障や経済においてさらなる関係強化をしていくという発言もございました。

 今回の経済連携協定を踏まえて、もっと広い意味での連携を総理も言及しておられますから、そこの安全保障も含めた部分まで言及されています、これは具体的にどういうふうにしていくのかというのをまずお示しください。

岸田国務大臣 御指摘のように、今回の日・モンゴルEPAですが、経済関係のみならず、幅広い分野における関係強化に寄与するものであると認識をしております。

 日本とモンゴル、両国は、自由ですとか民主主義、基本的人権、法の支配など、普遍的な価値を共有しています。

 また、二〇一〇年以降は、戦略的パートナーシップの構築を掲げて、関係を深化させてきました。特に、二〇一三年三月の安倍総理のモンゴル訪問以降、ハイレベルの往来が活発化しています。これまでで最も緊密と言える関係が構築されていると認識をしています。二〇一三年九月には、政治・安全保障、そして経済、また文化・人的交流、これらを三本柱と称して、今後の両国の協力の方向性を規定した中期行動計画が策定をされています。

 こうした二国間関係において、今回、日・モンゴルEPAが締結されるということになれば、経済面のみならず、政治、安全保障を含めた総合的な関係強化に寄与すると期待をしています。ぜひ、こうしたEPA締結も一つの契機としまして、両国間においてあらゆる分野での協力関係を深めていきたいと考えます。

小熊委員 それはわかっているんですよ。安全保障の部分。地政学的にモンゴルはロシア、中国というところに挟まれた国ですし、日本にとっても重要な国の一つでありますから、今回の協定が契機となって、さらに両国の関係が深まるのは、もちろんそれもわかっていることです。

 とりわけ安全保障に総理も言及していますから、具体的にこの安全保障の連携というのはどういうふうにしていくんですか。来月、大統領も来られるということでもありますし、今、来月から安保法制も国会で審議をされていきます。日本の安全保障、とりわけ東アジア地域での安全保障のあり方というのも世界も注目しているところでもありますから、モンゴルとの安全保障上の強化というのは、具体的にどういうふうにこれから進んでいくんですか。

岸田国務大臣 日本とモンゴルとの関係において、安全保障について特にどう進めるかということですが、安全保障面では、二〇一三年から、両国の外交、防衛、安全保障当局間の協議を実施しています。昨年、二〇一四年十二月からは、ウランバートルにおいて第二回協議を行って、双方の情報認識や外交政策、あるいは安全保障、国防政策について意見交換を行いました。

 こうした安全保障面での協議、対話、これは引き続きしっかりと続けていきたいと存じます。そうした対話の中から具体的な協力関係についてしっかりと積み上げを行い、結果を出していきたいと考えます。

小熊委員 これはまだ始まったばかりの協議ですけれども、来月、大統領が来られるということもありますから、そこで一定程度の具体的なものというのは、そこでは出てこないんですかね。まだもっとかかるということですか。具体的な結果と今大臣がおっしゃいましたけれども、どの程度の時期にこういう積み上げてきたものが明らかになりますか。

岸田国務大臣 今申し上げましたように、両国におきましては、安全保障の面におきましても対話を積み重ねております。

 そして、首脳会談においてどのようなやりとりが行われるのか、これにつきましては、まだ調整中でありますので、具体的な中身はまだ確定してはおりませんが、少なくとも、今日まで安全保障面におきまして両国間で積み重ねてきたこうした成果については両首脳の間において確認をする、こういったことは当然予想されるのではないかと思います。そうした首脳間での確認のもとに、引き続き両国間の協力を進めていく、こうした方向性が確認されるのではないかと想像いたします。

小熊委員 先ほどお話しさせていただいたとおり、ロシアもいて、中国もいてというところでもありますから、これは関係強化はぜひしていくべきだと思いますけれども、しっかりとこの状況も踏まえながら、なおかつ、集団的自衛権の話もこれから進んでいきますから、そうした背景を見ながら、しっかりとした結果を出していくということを求めていきたいというふうに思います。

 それはしっかりやっていただくことと思いますけれども、国内外へのしっかりとした情報発信もあわせてしていかないと、要らぬ誤解を招いて、ほかの周辺国に要らぬ緊張をもたらしても仕方ありませんから、そうした時期的なもの、またその背景も含めて、しっかりと対応していただきたいと思います。

 次に移りますけれども、WTO協定改正議定書についてですが、WTOの成功例の一つとして、紛争解決機能がしっかり果たされているということが言われています。実際、二国間での紛争解決も、二国間ではなくて、逆にWTOに持ち込まれているという状況でもあります。本当にこれはWTOの中での一番の成功事例ということかもしれません。

 しかしながら、一方で、そのために持ち込まれる案件がふえてきていて、法律の専門家が、逆に、やりがいがないのか、お金の問題なのかわかりませんが、民間の方に移ってしまうという状況もあって、人材不足になっているという状況を聞いております。

 ちゃんとこれが国際的にも評価されている中で、この紛争解決機能、さらにこれからもっと頑張ってもらわなきゃいけない中で、逆に、組織としては、能力が質的にも低下しているという状況にありますから、今後、これを改善していくためには、もちろん人材確保というのをいろいろやってもらっています、WTOの事務局でもやってはいるんですが、一方で、事務的な簡素化など、そういったことの改革も、改正も必要になってくるんじゃないかと思います。

 人材の確保、一方で、紛争解決の手続の簡素化によって処理件数を上げていく、この二つの方向性が必要だとは思うんですが、この件についてお伺いいたします。

薗浦大臣政務官 小熊議員御指摘のとおり、WTO設立以来、紛争解決制度というのは極めて有効に機能しておりまして、紛争解決、またルールの明確化について大きな貢献があります。我が国も、もう先生御存じのとおりでございますけれども、この制度を有効的に活用して解決をしてまいりました。

 御指摘いただきましたとおり、紛争の案件というのは最近ふえております。二国間のものもございます。さらには、案件自体が非常に複雑化しているという側面もございまして、アゼベド事務局長も緊急の課題としてこの案件を取り上げております。

 二点お話をいただきました。人材の件と制度の件でございますけれども、人材の件に関しましては、今、事務局において、紛争処理に人材を優先的に配分するということを、既に取り組みを始めております。また、制度面でございますけれども、これは、加盟国間で、手続を効率化するということを含めて、制度への負担を軽減するために現実的に何ができるかということを議論しております。

 我が国としても、これはいいことでございますので、議論に積極的に参画をしておるところでございまして、こうしたWTOの制度というものが効果的にこれからも機能するように、各国と協調しながら積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

小熊委員 EPA、FTAが進んでいく、そこで、紛争解決も多分またWTOに持ち込まれることも、世界各国で二国間の協定がふえていますから、そういう中でいうと、逆に、二国間での紛争が、そこでの解決でなく、やはりWTOに持ち込まれるのも、右肩上がりになるのはもう見えています。

 今ほど言われた人材確保は事務局側の責任でやっていますけれども、まさに制度面においては、これは加盟各国の合意がなければ改正できませんから、これはもう喫緊の課題でありますので、やはり日本がしっかりリーダーシップをとって、早期にまた制度を改正して、この紛争解決に寄与できるようにさらに協力をしていく必要があると思います。

 ぜひ、加盟各国への働きかけ、またいろいろないい提案をしっかりとしていただきたい。そうじゃないと、急にどんどんほかのバイの協定がふえてくれば、紛争もふえてくるということになってくると思いますから、ぜひそこは力を入れてやっていただきたい。本当にこのWTOの一番の成功事例の制度でもありますので、ぜひそこは力を入れていただきますようお願い申し上げて、次に移ります。

 WTOも、今回の改正議定書は貿易円滑化だということを一番うたっているわけですけれども、もちろん、物が動けば、お金も動いて、人も動くわけです。昨年の外務委員会でも質問させていただきました、これはWTOとは少し外れてきますけれども、一定基準を満たした渡航者に対する自動化ゲート、この取り組みは日本がおくれているという話を昨年この委員会でさせていただきました。

 一つの例として、アメリカのグローバルエントリーのシステムを、これはどうなのと。アメリカはどうぞやりましょうと言っているのに、日本がちょっと立ちおくれていた。こういったものが、いろいろな仕組みがあります。

 このグローバルエントリーに限らず、こうした人の行き来の部分での簡素化といったことをしていかないと、実際、この貿易円滑化ということも、これはやはり全部包含できないというふうに私は思いますので、この人の行き来をしやすくするためのこうしたシステムの取り組みについて、改めて、今どうなっているか、お聞きいたします。

薗浦大臣政務官 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、貿易を円滑化していくためには、商用関係者を中心にした人の往来の迅速化というのは極めて重要な分野でございます。したがいまして、我が国は、従来より、商用関係者を中心とする自然人の移動、これは法人に対する自然人という言い方、ナチュラルパーソンという言い方をしていますけれども、この人の移動、それから投資、知財、競争等々、さまざまな分野において連携を進めてきております。

 これまで日本が締結をしたEPAに含まれている人の移動の章においては、双方、両方の国の関係者を中心とする入国及び一時滞在の許可等の手続を簡素化すること、迅速化すること、さらに加えて、透明性をいかに向上するかということについて規定をしておりまして、この規定を効果的に運用するということが非常に重要であるというふうに考えております。

 今、アメリカのグローバル・エントリー・プログラムについてお話しいただきましたけれども、このプログラムというのはアメリカが考案した枠組みでございまして、入国時の迅速化、効率化、加えてセキュリティーの強化までこれに含まれております。事前審査を受けた参加者が特定の空港に設置されているゲートを利用した場合、迅速に米国に入国することができるというふうに我々としては認識をしております。

 日本といたしましては、さまざまな国が進めている人の移動の迅速化について、どういう実務的な取り組みがあるのか、どういう事例があるのかということを踏まえた上で、広い意味で経済交流の円滑化にこれからも取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

小熊委員 抽象的な目的意識はそれはもちろんあれですけれども、具体的なところになると、去年ですよ、これを聞いたときに、アメリカ側も、片務的でもいい、日本人が先でいい、アメリカ人はなしでもいいと提案しているわけですよね、実際。何年も前から言っているのに、それは重要だと言いながら、取り組んでいないんです。運用しなきゃいけない、具体的に運用が、昨年質問したんですよ。今の政務官よりもっと前向きな答弁だったと思うよ、昨年の答弁は。誰がやったか、私、忘れましたけれども。

 では、これはあれから具体的に進んでいないということなんですかね。

薗浦大臣政務官 御質問いただいたこのエントリープログラムについては、私どもとしても、日米両国の手続が迅速化するという可能性については認識をしております。そのように考えております。

 したがって、このプログラムが入れられるか入れられないかというのを、関係省庁、いろいろな役所がかかわってくることでございますが、中で協議を開始し、加えて、日米間の協議も開始をしております。

小熊委員 これは本当は多分積み上がっちゃっていたもので、もっと早く取り組めばよかったなとは思いますが、これ以外のシステムはどうですか。これも、通告でも、グローバルエントリー等類似のシステムも取り組むべきと言ってありますから。ほかの部分は、こういう自動化ゲートのところというのはどんな取り組みがありますか。今のところはまだこれだけですか。グローバルエントリー以外のこうした類似のシステムというのもやるべきだということを言っているわけですけれども、これは取り組みはされていますか。

    〔委員長退席、三ッ矢委員長代理着席〕

薗浦大臣政務官 手元に詳細がないので余り詳しく答弁することはできませんが、アメリカの隣のカナダにも同じようなシステムはございます。それは承知をしておりますけれども、今申し上げたように、国内、それから日米間の協議をしておるところでございますので、ほかの国のさまざまなシステムを参考にはしておりますけれども、具体的にこの場でそのさまざまなシステムについてどうかというふうに申し上げる段階にはまだございません。

小熊委員 時は金なりといいますから、特にビジネスマンの人たちが空港でとられる時間を考えれば、やはりしっかりやっていかなきゃいけない。いろいろ、攻めの農業とかも言っていて、海外にどんどん展開しましょうと言っている中で、こうしたことで足をとられているわけにもいきませんので。

 やらない理由は何もないということは、政務官の答弁でもわかるとおり、こういうのはやっていかなきゃいけないと言っているんですから、事務的な作業だと思いますので、これはもうしっかりと時間をかけずにやるという、検討ではなくて、やるということで物事を進めていっていただきたい。

 特にグローバルエントリーは、アメリカから数年前から言われているのに、多分、外務省内でもそんなに検討してこなかった節もあるので、しっかりと、おくれた分を取り返す意味でも迅速な対応を求めたいと思います。

 次に移ります。

 二千七年の国際コーヒー協定についてですけれども、これは、コーヒーの値段も戦後いろいろ乱高下をして、コーヒー危機と言われたことも何回もありました。とりわけ、コーヒーの産出国、熱帯地方の国は、この貿易輸出額、コーヒーの占める割合の非常に多いところがいっぱいあるわけであります。

 消費者側も生産国側も、どっちもしっかりと利益を確保していかなきゃいけない中での協定ではあるんですけれども、実際、輸出国への割り当てはありますが、コーヒー協定の非加盟輸入国に対しても、しっかりと割り当てをはめた方がいいというユニバーサルの考えもあるわけです。それがないと、国際的なコーヒーの価格、また生産体制というものが、やはり脆弱なものであったり不安定なものであったりするという指摘もあるわけであります。

 そういう意味で、非加盟の輸入国も含めたユニバーサルクオータ、いわゆる単一割り当ての考え方に対して見解を求めます。

薗浦大臣政務官 お答え申し上げます。

 この協定は、かつては、輸出国に対する割り当て制度、それから、いわゆる需給バランスをとる意味での緩衝的な在庫制度というのがありましたけれども、現在は、直接この協定の加盟国が協定に基づいて市場に介入をして短期的に価格を安定させるというメカニズムを有しておりません。

 では、どうやってやっているかという話ですけれども、この機関というのは、今、加盟国に対して、各国でどういう生産動向になっているか、また、価格がどういう見通しになるかという情報を提供して、それで、それぞれの国が、その情報に基づいて代替の調達先を探るとかいうことによって、個別に需給の調整を図るシステムになっているという状況でございます。

小熊委員 国際協定の役割というのは一定程度はあるんですけれども、今政務官が答えたとおりが現状だと思いますが、それだと、やはり、今言った生産国側の安定性とか経済性の向上とかといったことになかなか寄与できないというのが指摘はされています。

 また、広く言えば、市場調整能力をある程度否定するという、国際商品協定というのはある意味逆のベクトルもあるんですが、一方で、やはり市場性も意識しながらやっていかないとこの協定の効果も出てこないという、二律背反みたいなところもあるんですね。

 そこで、次の質問と一緒にしますけれども、そういう意味では、長期的には、市場の圧力、市場調整能力を否定し切っても、価格というのは安定しないし、需給バランスがとれない。でも、一方で、国際的な商品協定の全てがそうですけれども、やはり市場調整能力というのをある程度否定する側面もあるわけですね。ここの部分の整合性をこれからどうやってとっていって、国際的に、生産国側も消費国側も、どっちもウイン・ウインの関係になれるようにとっていこうとしているのか。アメリカなんかは、いわゆる市場調整能力を少し入れろよと主張しているわけですよ。日本はどういうスタンスですか、ここは。

薗浦大臣政務官 御指摘いただきましたとおり、今この協定が、直接市場に介入してそういう価格安定というメカニズムを有しない以上、基本的には、この協定において、コーヒー価格それから需給というのは、いわゆる市場メカニズムに委ねられております。

 ただし、今この機関で何をやっているかということを申し上げますと、このメカニズムは前提としていますけれども、長い目で見て、直近は少し乱高下しましたけれども、例えば、天候による不順、それから病害虫の被害による価格変動、こういうものがございますので、こういうふうなものを抑制する意味で、全体的な情報収集、提供、それから、こうした病害虫対策の調査や研究というものもこの機関で行っております。

 したがって、この協定のメカニズムによるさまざまな作業が、いわゆる市場メカニズムというものを補完しながら中長期的に価格を安定させるというシステムを今有しているというふうに考えております。

小熊委員 コーヒーに関しては、市場というとニューヨーク市場がほとんどメーンになっていて、なおかつ四大企業が大体牛耳っているという状況でもあります。もちろん、ニューヨーク市場以外の取引をしている大手も、ヨーロッパには各社あります。

 また、一方で、逆に、生産国側が非常に取り組んで、先進国側も応援していますけれども、フェアトレードも、まあフェアトレードでこれが解決はできないので、この一部でしかないんですけれども、そうした複合的にやっていかなきゃいけないなというふうに思っていますので、今、政務官のとおり、協定だけではなくて、また違った、多極的に見ていく、複眼的に見ていかないと、コーヒー価格、生産国側も喜んでもらえる、そして消費者も喜んでもらえるという状況はできませんから、これは魔法のつえ、万能のつえではないので、ぜひ、それを踏まえて今後対応していっていただきたい、努力をしていっていただきたい。

 そういう意味では、本当にごくわずかの部類ですけれども、やはりフェアトレードというのも、有用性も、私も万能ではないと思いますけれども、こうした分野もしっかりやっていくということが重要だと思いますので、その点もあわせてスポットを当てて取り組んでいただきたい。

 あわせて、コーヒー協定もありますが、ほかの国際商品協定もあるんですけれども、破綻したものもかつてありましたし、今、有用性がないという国際商品協定もあって、国際的に言われているのは、コーヒー協定とカカオ協定ぐらいはまあまあ有用性があるけれども、ほかのものはちょっとうまく機能していないなというふうには言われていたりもしますが、では、この際、お聞きいたします。

 このコーヒー協定以外の国際商品協定に対して、雑駁に、取り組みをお伺いいたします。

薗浦大臣政務官 コーヒー協定以外の協定ということでございますけれども、現在有効な商品協定としては、まず穀物、それから砂糖、熱帯木材、ココアに関する協定がございます。

 この協定の中で我が国が国会の御承認をいただきまして締結をしている協定としては、国際穀物協定、それから国際熱帯木材協定がございます。

 以上でございます。

    〔三ッ矢委員長代理退席、委員長着席〕

小熊委員 だから、協定の果たす役割を考えれば、このコーヒー協定と同じですけれども、カカオぐらいですよ、カカオとコーヒーぐらいがちゃんと機能していて、ほかのはなかなか機能し切れていないというのがありますから、そういう意味では、今、中国とか東アジアも含め経済的に発展してきた国が、このコーヒーにしたって、カカオにしたって、ほかのいろいろなものが消費が上がっているという中でいうと、国際的なこういう一次産品の価格安定というものは、さらに複雑化してくるいろいろな要因が入ってくるということであります。

 だから、コーヒー、カカオは多少うまく機能しているから、先ほど政務官が言われたほかに補完するいろいろな取り組みをしていきながらも、今挙げたほかのものはなかなかうまく機能していると言われていないわけです。ですから、違う取り組みが必要だというふうに私は思います。

 その点についてもこれからしっかりと検証して、なおかつ、とりわけ経済発展の著しいアジア地域での、いろいろな物流も変わってくる、消費がふえてくるはずですから、ぜひ、これは日本政府としても、こうした一次産品の価格安定のために、協定があるからいいでしょうという態度ではなくて、まさにほかの手段をしっかりと見出して、関係各国と連携をとって、安定供給、安定生産、そして、まさにこれはODAとも絡みますけれども、そうした開発国は輸出国でもありますから、その国の経済を安定させるという意味でも、やはり複合的にこれも見ていかなきゃいけないというふうに思いますので、ぜひ、今ほど挙げた、ほかの協定があるからいいんだということではなくて、しっかりと対応していくという決意のほどをお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

薗浦大臣政務官 委員御指摘のとおり、さまざまな協定というのは、世界的に見て、一次産品の価格の安定、それから需給の均衡とか、加えて、一次産品に頼っている途上国に対しても非常に有効な国際約束でございます。

 したがいまして、我々として、さまざまの協定に、ただ単にやっていますよという話ではなくて、今委員から御指摘いただきましたように、さらなる市場情報を充実させていく、商品の消費を振興していく、また、加工について少し情報提供する、研究に対して我々ができることをやっていくという多様な機能をさらに充実強化させるための取り組みを進めてまいりたいというふうに思っております。

小熊委員 時間が来ましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 維新の党の青柳陽一郎でございます。

 本日は、三十分の時間をいただきましてありがとうございます。五番目ともなりますと、事前に通告した内容が若干ダブることはありますけれども、よろしくお願いしたいと思います。

 まず最初に、ちょっと通告した内容の順番を変えまして、外務省の人員体制について伺いたいと思います。

 経済関係の条約、これは近年、重要性が増してきておりますし、それから締約数もふえてきているという状況だと思います。現在、貿易総額に占めるFTA、EPAのカバー率というのは、米国では約三八%、中国では約二一%、こうした国に比較すると、我が国はまだ一七%でありますので、若干おくれているという指摘もありますし、これからますます取り組みが重要になってくるということであろうと思います。

 こうした状況の中で、外務省においては、経済関係の条約締結を担う人材の不足というのが指摘されていると思います。ちょうど今離席されておりますけれども、二十五年の十一月の外務委員会で、当時の三ッ矢外務副大臣は、実際に外務省のマンパワー不足というのを認めて、これからさらに検討していくという旨を述べられているということでございますが、これまで、こうした人材の補充について、実際に検討していくと述べられておりますから、それ以降、どのように人材の補充が行われて、どういう取り組みを行ってこられたのか、どういう成果があったのかについて、外務省にお伺いしたいと思います。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘いただきました経済連携協定ですとか、本日の委員会で各委員の方々からお話も頂戴しましたWTOのドーハ・ラウンド交渉の重要性、こういったものを踏まえまして、対外的な経済外交を一層精力的に進めるために、経済局の定員を過去二年間で百六十八名から百八十七名に増加することができました。十九名ふえたということでございます。

 また、経済関係の条約、こうした関連作業を進めていくためには、弁護士の方を初めとした、専門知識を持った有為の民間の人材にも外務省にお越しをいただいて、現在積極的に活躍をいただいております。具体的には、現在、そうした民間の人材の方、法曹有資格者の方々十七名が、経済関係の条約交渉のために任期つき職員として関与していただいておるところです。

 これで十分ということでは全くありませんけれども、経済関係条約に関する業務を積極的かつ一層効果的に進めていくために、こうした民間の方の一層の活用を含め、人的体制を強化してまいりたいと考えているところです。

 外務省全体の定員や予算といった問題が制約となり得ますので、今後とも、委員各位の御支援と御理解をいただきながら、外務省の全体の定員の増加も含めまして、必要な体制をしっかりと整えていきたいと考えております。どうもありがとうございます。

青柳委員 ありがとうございます。

 二十五年からこれだけの成果があるということなので、一定の成果は認められると思いますが、今の答弁にあったように、まだそれでは十分と言える状況ではないということだと思います。その十分ではないという状況の中で、日・モンゴル経済協定、今回提案されているものについては、どれほどメリットがあるのかということだと思います。

 この両国間は、モンゴルが初めて行うEPAだという意味は大きいというのは、今、小熊委員の質疑でも明らかになっておりますけれども、貿易の規模でいえば非常に小さいわけでございまして、外務省の人的なマンパワーの不足が指摘されている中で、貿易の規模が小さい国とあえてEPAを締結していくということの具体的なメリットについて、いま一度御説明をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 モンゴルに対する我が国の認識ですが、一九九〇年に民主化、市場経済化しました。そして、今後も中長期的な高成長が見込まれる国だと認識をしております。

 また、モンゴルは、石炭、蛍石、銅等の資源ポテンシャルを有しており、エネルギー、鉱物資源の供給源の多角化の観点からも、これらの分野を含むモンゴルにおける投資環境を改善すること、これは、天然資源に乏しい我が国にとって大きな経済意義を有すると認識をしています。

 こうした中、モンゴルとの関係の発展を図るために、他国に先んじて、モンゴルとの間で経済連携協定を締結する意義は大きいと考えています。

 また、モンゴルの持つ地政学的な重要性ですが、中国、ロシアという二つの隣国との良好な関係を維持発展しつつも、我が国を第三の隣国と位置づけて、関係発展を希求してきました。

 こうしたモンゴルを我が国としまして一貫して支援してきたわけですが、近年、特に両国関係は緊密になり、戦略的パートナーシップを強化しています。そのモンゴルが、最初のEPA交渉相手国として我が国を選んだということも、我が国に対する信頼、期待のあらわれであると考えます。

 こうしたモンゴルの状況を考えますときに、日・モンゴルEPAを締結するということは、経済関係のみならず、政治ですとか、あるいは安全保障ですとか、さまざまな幅広い分野にわたって総合的な関係強化に寄与する、こうした観点から、今回、日・モンゴルEPAの締結に向けて取り組んできた次第であります。

青柳委員 ありがとうございました。

 今いろいろ御説明いただいた点の中で、政治的な意味合いもあるという御発言がありました。この政治的な意味合い、政治的なメリットについてお伺いしたいと思います。

 御案内のように、モンゴルは北朝鮮と国交がある国でございますし、拉致問題の局面でも、たびたびモンゴルという国が登場してきたわけでございます。あるいは、横田御夫妻がモンゴルに行って、その娘とされる人と会談したということもありますが、こうした政治的な意味合い、北朝鮮との関係、拉致問題との関係について、モンゴルとの関係をどのように持っていくのかについても、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 今、モンゴルとの関係を強化する、そしてEPAを締結することの意義の一つとして、政治的な意味合いがあると申し上げたわけですが、まずもって、先ほど申し上げましたような地政学的に重要な位置にあるモンゴルの民主化、さらには市場経済化の成功、これは、北東アジアの平和と安定に寄与するということで大変重要だと認識をいたします。こうしたモンゴルを一貫して我が国が支援してきたわけです。

 その中にあって、御指摘の拉致問題ですが、モンゴルは、二〇一二年十一月のウランバートルにおける日朝政府間協議の開催に協力をしてくれました。また、昨年九月の日・モンゴル首脳会談においても、北朝鮮の拉致問題等について今後も協力をしていく、こういった旨確認をしています。

 政府としましては、モンゴルを含む関係国と緊密に連携しつつ、対話と圧力の方針のもとに、日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決するべく、全力を尽くしていく考えであります。こうした取り組みの中で、モンゴルとの協力も大変重要であると認識をいたしております。

青柳委員 ありがとうございます。

 政治的な意味合いも大きい国だと思いますので、しっかり取り組んでいっていただきたいなと思っております。

 次に、WTO協定改正議定書、貿易円滑化協定について伺ってまいりたいと思います。

 これまで、本日の議論でもあったとおり、WTOの交渉、重要視して取り組んでいるという御説明が多々ありましたし、これはもう我が国の経済発展には必要だというのは論をまたないところでありますが、外務省、岸田大臣においては、ことし二月の外交演説でも、WTOに積極的に参画するということは述べられております。

 ところが、安倍内閣全体でいけば、日本再興戦略について経済外交の分野がありますが、そこで述べられているのは、TPP、RCEP、FTA、FTAAPというのは積極的に取り組んでいきます、戦略的に取り組んでいきますということがしっかり明記されておりますけれども、このWTOについての記述は、日本再興戦略においては記述がありませんということです。

 本日の議論の中では、WTO、しっかり取り組んでいきますということを何遍も答弁されておりますけれども、実際、日本再興戦略の中でしっかりやりますというTPPについてさえ非常に難航している状況ですが、日本再興戦略の中で明記されていないWTO交渉について、安倍内閣として本気で取り組んでいかれるおつもりなのか、大臣にお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 日本再興戦略の内容、記述につきましては、特に最近の動きとして特筆すべきものを挙げ、そして、特にその中で我が国の取り組みを記載するということで、御指摘のような記述になっていると認識をいたしております。

 しかし、先ほど来申し上げておりますように、我が国にとりまして、多角的貿易体制の維持強化、これは我が国の通商政策の柱であると認識をしております。こうしたWTOを中心とする多角的貿易体制をしっかり重視し、一方で、それを補完する形でFTA、EPA交渉にも臨んでいく、こうした取り組み、全体として日本の貿易体制、経済体制をしっかり充実させていく、こういった視点が重要であると認識をいたします。

 こうした認識のもとに、ぜひ引き続き努力をしていきたいと考えます。

青柳委員 ありがとうございます。

 それでは、実際にどのようにやっていくかということでございますが、今回の貿易円滑化協定も、百六十カ国の加盟国のうち百七カ国が承認しないと発効できないということだと思いますが、現在受諾している国というのは、米国、シンガポール、香港、モーリシャスの四カ国だけということでございます。

 途上国に対する支援も含めて、承認を百七カ国に持っていくためにどのように取り組んでいかれるかという点と、それから、残っている対象八分野のうちの五分野については、まだ全くコンセンサスがとれていないという状況でございますが、この残された対象分野についてもどのように取り組んでいくかの二点についてお伺いできればと思います。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、この改正議定書は、WTO協定第十条3の規定に従い、WTO加盟国の三分の二が受諾したときに受諾した加盟国について効力を生じ、その後は、その他の各加盟国について、それぞれによる受諾のときに効力を生ずるということになってございます。

 この改正議定書は、全ての加盟国が参加する一般理事会において全会一致で採択されたものであり、また、全ての加盟国に恩恵をもたらすものでございます。したがって、我が国としては、全ての加盟国が本協定の規定の実施に向けた意図を有し、我が国同様、迅速に国内の締結手続を進めていくものと理解をしております。

 そして、多くの国の締結に向けた努力の一環として、途上国を中心とした働きかけについて一言申し上げます。

 貿易円滑化は、開発途上国への輸出に当たって、通関等の手続上さまざまな支障に直面している先進国の企業にとって利益となるというのは当然でございますが、そこにとどまらず、物流を促進し、経済開発を後押しすることによりまして、開発途上国にとっても大きな利益となるものと認識をしています。

 私どもとしては、開発途上国を含む関係各国に、このような考え方を踏まえて、さまざまな形で積極的に働きかけてまいりますけれども、特に、この貿易円滑化の分野において、開発途上国の能力支援というのも重要な役割を果たします。この開発途上国支援には従来から日本として積極的に取り組んでまいりましたけれども、今後も、日本の知見を活用し、貿易円滑化を促進するため、こうした支援を継続していきたいと考えております。

 そして、二点目でございますが、WTOのドーハ・ラウンドの残りの分野について御質問をいただきました。

 ことしの一月、ダボスにおきましてWTO非公式閣僚会合が開かれまして、ドーハ・ラウンド交渉の残りの事項に関する詳細で具体的な作業計画を本年七月までに策定すること、また、農業や非農産品市場アクセス、サービス、この三分野を核に、実行可能な野心のレベルの設定が重要だとの点で一致したところでございます。

 先ほどの答弁の中でも言及申し上げましたが、本年十二月に第十回WTO閣僚会議が開催予定であります。この第十回WTO閣僚会議において一定の成果を達成すべきであるという主要加盟国間の認識、機運を踏まえまして、残された分野も含めたドーハ・ラウンドの早期妥結に向けて、今後、バリ合意の着実な実施及び妥結に向けた作業計画の策定に我が国として積極的に取り組んでまいります。

青柳委員 ありがとうございました。

 とはいえ、交渉に非常に時間がかかっていると思いますし、経済界からも強い要望があると思いますので、しっかりと取り組んでいっていただきたいなと思います。

 次に、AMRO設立協定について伺いたいと思います。

 本協定は、チェンマイ・イニシアチブのもとに設けられた有限責任法人AMROを国際機関化する協定でありますけれども、これも、しっかり機能させればアジア経済の安定と発展に役立つものであるというのは当然のことだろうと思いますし、だからこそ、しっかり機能させていく必要があるということだと思います。

 このAMROを有限責任法人から国際機関化していくということで、具体的に国際機関化すると何が変わるんでしょうか。その具体的なメリットを御説明いただきたいと思います。

薗浦大臣政務官 お答え申し上げます。

 現在、この調査事務所はシンガポールに設置をされ、地域の経済及び金融状況に関する調査、分析を行っておりますけれども、御指摘いただきましたとおり、今はシンガポールの一般国内法人であります。したがって、現在、一部のメンバー国、それから、IMFもそうでございますけれども、こうした国際機関が、さまざまな分析に必要となる情報の提供についてちゅうちょをしているという事態が生じております。

 これが、今回お諮りをしておりますこの協定に基づきまして国際機関になれば、今ちゅうちょしている部分について情報を入手することが極めて容易になるという意味で、AMROが行います経済そして金融の分析がより充実をし、また、地域の経済、金融の一層の安定化について資するというふうに考えております。

青柳委員 今の御答弁、本当にそうなるとお考えなんでしょうかということをもう一度伺いたいと思うんですけれども、一部の国、具体的に言えば中国は、幾ら国際機関化されても、自国の国内の財政状況というのは非常にセンシティブな分野であって、情報提供していくことについて非常に疑問視しているという発言をしているということが指摘されております。

 まず、この中国が、単純に、国際機関化されればちゅうちょなく情報提供するということを本当にお考えになっておられるのか、本当にそれで実効性が担保されるのかという点と、中国以外の加盟国は、今政務官が答弁されたように、我が国と同じような認識に立たれているというふうに考えられているのか、二点についてお伺いしたいと思います。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 ASEANプラス3のマクロ経済調査事務所の国際機関化を通じて、世界経済の牽引役となっているこの地域の金融セーフティーネットが強化されるということは、世界経済、金融の安定と発展に資するものでもありますし、地域の諸国にも大きなメリットをもたらすものだというふうに考えております。

 このような意義につきましては、この国際機関の構成国ですけれども、ASEANプラス3の各国の間でも共有されておりますし、例えば去年十一月に開催されたASEANプラス3、これには当然中国も入っているわけですけれども、その首脳会議でも確認されているところということですので、中国につきましても、このような経済事務所を国際機関にするということについては共通の理解を持っているものというふうに考えております。

 ほかの国につきましても、ASEANプラス3、全部の国が同じような理解のもとに取り組んでいるということだと御理解いただければと思います。

青柳委員 それでは、本当に今の答弁のとおりになるということを期待しております、メリットや意義は当然誰もが認めることですから。ただ、これまでの中国の発言を見ていると、国際機関化されればしっかりと情報提供がなされるというのは、必ずしもそう簡単ではないのではないかなと思いますので、一応指摘をしておきたいと思います。

 そして、次に、AMROの人事方針について伺いたいと思います。

 具体的には、今のAMROの所長のポストというのは日本人が獲得していると思いますが、国際機関化した後の、これは事務局長と言われるようですけれども、この事務局長のポストについて、当然日本が獲得していくべきポストだと思いますが、そういう方針でよろしいのか、そのためにはどういうふうに取り組んでいくのか、さらには事務局の人員についてどのぐらい派遣していく方針なのか、政府の方針をお伺いしたいと思います。

 もう時間もありませんので加えてお伺いすると、独立性、運営の方針、どうやって独立性を担保していくのか、この運営の方針についても伺いたいと思います。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 今委員からも御指摘のありましたように、現在の事務所長は日本人で、根本さんという方が務めております。この方が、これが国際機関になった後も、当面は事務局長を務めるということになっております。

 その後につきまして、日本として新たに候補を出すかどうかということにつきましては、現時点では何ら決定していないというところではありますけれども、そもそも事務所としてできた経緯、あるいは今回国際機関とするということに至った経緯も含めまして、日本としてリーダーシップを発揮してこういうような形になっているということもありますし、今後もリーダーシップを発揮していくという観点も踏まえて、さまざまな要素を勘案した上で適切に対応していきたいというふうに考えております。

 それから、独立性がどのように確保されるのかという御質問がございましたけれども、今回、国際機関になることによりまして、経済調査事務所自体、それから職員が、任務の遂行上、文書の不可侵とか通信が検閲されないといったような特権・免除を加盟国から付与されることが確保されることになります。

 したがって、国際機関として、今までのような、国内法人としてシンガポール政府のいろいろな関与があるといったような形ではなくて、各加盟国から独立した形で活動することができるようになるということで、御懸念の点は解消するということになると思います。

青柳委員 ありがとうございます。

 それでは、残された時間で、現在のTPP交渉について伺いたいと思います。

 二十一日の未明まで続けられたTPP交渉の日米閣僚協議、報道では、課題は残っているけれども一定の前進があった、総理は九合目まで来ているというふうなことが伝えられておりますが、政府の方から、正確に現状について説明をいただきたいと思います。

 そして、加えて、この四月二十八日にも行われる予定の日米首脳会談、この会談でトップ同士の合意を当然目指しているんだと思いますけれども、そういうことでいいのか。そして、さらに加えて言えば、TPP交渉全体の妥結は五月下旬を目指している、一つの目標だと言われておりますが、こうしたスケジュール感でよろしいのかについてお伺いしたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 まず、十九日夜から二十一日未明まで、甘利大臣と米国フロマン通商代表との間で、日米間の残された課題である米を含む農産品と自動車について、これまでの事務レベルでの協議を踏まえ、閣僚間で厳しい協議が行われたところでございます。

 両大臣による夜を徹した努力により二国間の距離は相当狭まったが、米を含む農産品及び自動車については依然として課題が残っており、まだ合意までには努力を要するところでございます。両大臣は、双方のチームに、残された課題に対処するため作業を継続するように指示したところでございます。

 交渉は最終局面にあります。国益を最大限に実現すべく、引き続き、早期妥結に向けて全力を尽くしてまいりたいと考えております。

 スケジュールでございますが、首脳会談における議題については調整中と伺っております。それから、次回の閣僚会合につきましては、何ら決まったものはございません。

青柳委員 ありがとうございます。

 では、このTPP交渉において、外務大臣はどのような役割を果たしておられるのでしょうか。

岸田国務大臣 今、内閣官房から答弁がありましたように、今回の甘利大臣そしてフロマン代表との交渉によりまして、TPP交渉、両国の距離は大幅に縮まったものの引き続き努力をしていく、こうした状況に至っております。

 その中にあって、私、外務大臣の立場からの役割ですが、まずは米国との並行交渉につきましては、TPP交渉と足並みをそろえて妥結をしていくべく努力が続けられています。こちらの並行交渉の方は、外務大臣としてしっかり指揮をとっていかなければなりません。

 そして、やはり、交渉の材料となるTPP参加国の情報収集、これは大変重要であります。この情報収集の部分におきまして、外務省としましても、関係在外公館にしっかり指示を出して努力をしていかなければならない、これも大切な役割であると認識をしております。

 今申し上げましたような点を中心に、ぜひ外務大臣の立場からもしっかり努力をし、そして関係閣僚全員でしっかりと交渉に臨んでいかなければならないと考えております。

青柳委員 これまで外務委員会でも、TPPの内容についていろいろ質問があったと思うんですけれども、その際、これは外交交渉であるということと、TPP参加国に課せられている秘密保持契約によって具体的な内容は明かせないという答弁がこれまでなされてきておりますけれども、一方、米国では、USTRは、米国連邦議員に幅広く交渉状況、内容を提供しているというのをUSTRのホームページに掲載されております。

 この件についてどのように分析をされていますでしょうか。

 我が国も、これは国民生活、国民経済、あるいは関係団体にとっても大変重要な、大きな影響のある内容ですから、進捗状況というのは皆さん聞きたいと思っているところだと思いますし、国民の皆さんの合意を得ていくということにおいても非常に重要な意味があると思います。

 米国は、同じように秘密保持契約をしているにもかかわらず、連邦議員には情報提供をしっかりしているという対応をされているということでございますが、我が国は、一切、この国会の場においても交渉状況は明かさないという方針です。この違いについて、なぜ、米国は秘密保持契約があるにもかかわらず連邦議員には情報提供していて、我が国は幾ら聞いても一切内容は明かせないと言っているのか、この辺の御認識について大臣に最後にお伺いして、質問を終えたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 TPP交渉におきましては、交渉上の秘密の保持と議会や国民への透明性の確保のバランスをどうとるかについては、各国ともそれぞれ悩みながら対応しているところでございます。米国も、秘密を保持しつつTPP交渉の透明性を高めるために、さまざまな努力をしているものと承知しております。

 米国政府は、以前からホームページにおいて、全ての交渉テキストを連邦議員の誰でもアクセスできるようにしている旨掲載しております。しかしながら、その運用はさまざまであり、必ずしも全ての交渉テキストを議員に開示しているわけではない模様でございます。現に、連邦議員からUSTRに対して、交渉内容が秘密にされていることについて不満を表明する書簡が送られているところでございます。

 我が国においても、これまで、TPP交渉の進捗状況、交渉に取り組む我が国の基本方針等について、国会初めさまざまな場で御説明してきております。

 今後とも、交渉上の守秘義務の制約はあるものの、工夫しながら、できる限りの情報提供に努めてまいりたいと考えております。

岸田国務大臣 米国の状況につきましては、今答弁があったとおりです。

 米国の状況についても確認はしていかなければならないと思いますが、いずれにしましても、我が国として、TPP交渉を進めるに当たって国民の理解は大変重要だと思いますし、そして、最終的には国会の御承認をいただかなければ、TPPは機能しないわけであります。この限られた条件の中で、最大限情報提供に向けて努力しなければならない、これは当然のことだと思います。

 他国の状況も参考にしながら、我が国の対応についても考えていきたいと存じます。

青柳委員 終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日・モンゴル、WTO協定については、後ほど討論の中で触れたいと思います。

 きょうは、沖縄県の米軍普天間基地の問題について質問します。

 これまで政府は、普天間基地の五年以内の運用停止について、関係閣僚と知事らで構成する普天間飛行場負担軽減推進会議の初会合があった二〇一四年二月を起点に、二〇一九年二月までの実現を目指す方針であるとの考え方を明らかにしてきました。この方針に変わりはないのかどうか、まず最初にお尋ねします。

岸田国務大臣 普天間飛行場の五年以内の運用停止を含む沖縄の負担軽減につきましては、相手があることではありますが、できることは全て行うとの政府の基本方針であり、こうした政府の姿勢は、翁長知事就任後も不変であります。

 その上で、この普天間飛行場の五年以内の運用停止については、沖縄県から、平成二十六年二月から五年をめどとするとの考え方が示されております。政府としましては、このような同県の考え方に基づいて取り組んでいくこととしております。

穀田委員 二〇一九年二月までの運用停止は、政府の基本姿勢、今お話あったように、翁長知事就任後も不変とは言うんですが、地元の沖縄紙によりますと、今月二十七日にも行われる2プラス2の共同発表には普天間基地の五年以内の運用停止が盛り込まれない方向だと報じられていますけれども、これは事実ですか。

岸田国務大臣 近日予定されております日米2プラス2ですが、この2プラス2におきましては、日米間のさまざまな安全保障上の協力等についても確認されることになると承知をしておりますが、具体的な内容については、まだ調整中、最終調整の段階にあります。確定はしておりません。

 沖縄の負担軽減の問題につきましては、さまざまなレベルを通じて、我が国の取り組み方、立場、さらには沖縄の皆様方の意向、こういったものにつきまして正確に米国側に伝えていかなければならないとは認識をしております。

穀田委員 正確に伝えていかなければならないということですと、この間、知事と首相との会談もありました。その中で知事が、オバマ大統領に沖縄県知事、県民が明確に反対していることを伝えてくれということを言っていたことを、私は、大事に思ってやってくれな困る。いつもおっしゃるのは、しっかり伝えていきたい、こう言うんですけれども、そこを伝えてくれな困るということなんです。

 岸田大臣は、昨年十一月四日の参議院予算委員会で、普天間基地の五年以内の運用停止に関して、米側からも負担軽減のコミットメントが示されておりますと答弁されています。これが事実ならば、今、確かに、調整中とか、さまざまなレベルを通じてとありますが、一番大事な問題について、それが事実であればですよ、今回の2プラス2の共同発表に運用停止を盛り込むのは当然だと思うんですが、それはいかがお考えですか。

岸田国務大臣 2プラス2の中身につきましては、最終調整中であり、これは相手のある話ですので、私から確定的なことを申し上げるのは今の段階では控えなければならないと考えます。

 ただ、先ほど申し上げましたように、我が国の立場、沖縄の負担軽減につきましては、普天間飛行場の五年以内の運用停止を含む、沖縄の前仲井真知事からいただいた四項目の要望等については、相手のあることでありますが、できることは全て行う、この基本方針のもとに臨んでおり、これは全く変わっていないということ、こういったことについては、さまざまな機会、レベルを通じてしっかり伝えていかなければならない、これは当然のことだと認識をいたします。

穀田委員 大臣、同じ答弁を繰り返しているように、私はそうしか聞こえへんわけやね。

 つまり、このときの答弁で、アメリカ側のコミットメントが示されていると強調しているわけですやんか。さらに、その後に、こうした日米でのやりとりは大変重たいものだとまで答弁されているんですね。にもかかわらず、今回の2プラス2の共同発表にその運用停止を盛り込むことがどうかという質問に対して明言できないというのは、極めて私はわからぬ、不可解だと思うんですね。

 となると、実際は、普天間基地の五年以内の運用停止について、米側からコミットメントなど示されていないんじゃないかと疑わざるを得ないわけですが、その辺はいかがですか。

岸田国務大臣 2プラス2における具体的な中身については、調整中であるからして、今の段階で私から一方的に申し上げるのは控えると申し上げています。

 ただ、沖縄の負担軽減に対する我が国の立場、これは再三にわたって米国側に伝え、米国側からコミットメントをいただいております。このことにつきましては、日米首脳会談においても、あるいは日米外相会談においても、ハイレベルの両国の意思疎通についてもしっかり確認をしているところであります。

 今申し上げた我が国の立場をしっかり伝えるということ、そして米国側から負担軽減に対してコミットメントを受けているということ、こういったことは間違いないことであります。

穀田委員 そのコミットメントが間違いないと言うんですが、私は、その問題の中身について少し言わないと、オバマ大統領は確かに負担軽減と述べたかもしれない、しかし、明確な項目として五年以内の運用停止について取り組みたいと述べたのかどうかという問題は、私は発言していないんじゃないかと思うんですね。

 といいますのは、ことしの二月の沖縄の地元紙によりますと、米上院軍事委員会のジョン・マケイン委員長は、普天間基地の五年以内の運用停止について、それはあり得ない、我々は少なくとも二〇二三年ごろまで継続使用すると聞いている、だから普天間を維持する必要な予算を承認したと述べています。

 また、国防総省当局も、代替施設の完成前に運用停止はあり得ない、我々が打診の段階で拒否した案件、二国間の正式な協議に発展するはずがないと否定しています。

 さらに、国務省高官も、日米が合意した二二年度以降の返還が唯一の方策として、五年以内を検討するならば、日米合意を見直し、計画全体がおくれるという認識を示しているとも報道しているんですね。

 このことからも、私は、米側からコミットメントなど、具体的なこの問題について、示されていないんじゃないか、それが真相じゃないかと思うんですが、いかがですか。

岸田国務大臣 米国の関係者、あるいはさまざまな関係者からいろいろなコメントが出ていることについて、一つ一つ何か申し上げることは控えます。

 ただ、先ほど来申し上げておりますように、日米の間においては、日米首脳会談、オバマ大統領と我が安倍総理の会談において、我が国として普天間飛行場の五年以内の運用停止を含む沖縄の負担軽減はしっかり取り上げさせていただいております。こうした両国の最も高いレベルの会談において、こうした普天間飛行場の五年以内の運用停止を含む沖縄の負担軽減は取り上げられています。私自身も、日米の外相会談においてこうした問題を取り上げて議論をし、米国側からコミットメントを受けております。

 こうしたやりとりがあるということは、もう一度しっかりと確認をしておきたいと存じます。両国においてこの問題に対する意思疎通についてはこのような状況にあるということを申し上げさせていただきます。

穀田委員 私は何度も言うんですが、今大臣も言っておられるように、五年以内の停止を含む、いつも必ず含むと言うんですけれども、この問題について、相手は、含むという話のコミットメントを出してはいないんですよね、よく見ていると。

 大臣が一生懸命含む含むと言うんだけれども、アメリカのオバマさんの話は、負担軽減の話は一般論としては触れているけれども、その前に、括弧五年以内の停止を含む括弧閉じという話はしていないんですね。そのコミットメントは出していないということははっきりしていると思うんですね。

 今、こう言うと、必ずいつも、一つ一つについて申し上げることはないとくるんですけれども、私は一つ一つじゃないと思うんですね。米政府内での勝手な意思疎通ではないんだというふうには、済まされない問題があると思うんです。

 ですから、普天間基地のピーター・リー司令官も、昨年の十月のNHKインタビューに、日米両政府がそれほど早い時期の運用停止に合意しているわけではないと言っていますし、先週の十七日、米上院歳出委員会の公聴会でも、米太平洋軍司令部戦略計画・政策部長のマイケル・ダナ少将が、代替施設ができない限り普天間から移ることはないと述べ、普天間の返還は辺野古新基地の完成が条件との認識を改めて示しているんですね。

 岸田大臣が言われるように本当にアメリカ側からコミットメントが示されているならば、こうした米側からの発言が相次ぐことなどあり得ないと思うんですね。議会でも言っている、それから、国防も国務も、軍事関係者、直接の担当者も言っている。こういう関係からしても、私は、そういうことからするとおかしいんじゃないか、これが普通の認識だということを言っておきたいと思います。

 次に、もう一つ見過ごすことができない問題があります。

 先ほど述べましたけれども、米上院軍事委員会のジョン・マケイン委員長が、普天間基地の五年以内の運用停止を否定する一方、少なくとも二三年ごろまで継続使用するために、維持に必要な予算を承認したと述べている点であります。

 そこで、防衛省に聞きますが、二〇一二年四月に行われた2プラス2では、普天間基地に関して一体どんな合意が行われたのか、答弁願います。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一二年四月二十七日、日米安全保障協議委員会における該当部分を読み上げます。

  両政府は、普天間飛行場において、同飛行場の代替施設が完全に運用可能となるまでの安全な任務能力の保持、環境の保全等の目的のための必要な補修事業について、個々の案件に応じ、また、在日米軍駐留経費負担を含め、既存の二国間の取決めに従って、相互に貢献するとのコミットメントを表明した。

以上でございます。

穀田委員 二〇一二年四月の2プラス2では、普天間基地での補修事業について合意が行われています。その日米合意に基づいて、日本政府として今日までどんな補修事業に幾ら負担しているのか、事業の種類、年度ごとの合計を報告ください。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 普天間飛行場の補修事業でございますけれども、設置から五十年以上経過しております普天間飛行場におきましては、老朽化が著しい施設もございますことから、航空機の運航の安全性、また環境への保全といった配慮が必要となっておりまして、先ほど読み上げさせていただきました2プラス2の共同発表におきましてもその旨を確認しているところでございます。

 日本側におきましては、平成二十五年度に、今から申し上げます五つの事案を一括採択して、逐次実施してきておるところでございます。

 この五つの事案を今から申し上げますが、まず第一に、管制塔及び消防署用の非常用発電施設の改修、二つ目といたしまして、給電設備の改修、第三に、雨水排水施設の改修、第四に、汚水排水施設の改修、第五に、隊舎の改修、こんなふうになっております。

 これら五つの事案の平成二十五年度から平成二十七年度までの歳出ベースと契約ベースの合計額について申し上げます。

 平成二十五年度が、歳出ベース、契約ベースともに約一億三千四百万円、平成二十六年度が、歳出ベースで約八億一千七百万円、契約ベースで約二十五億四千六百万円、平成二十七年度が、歳出ベースで十三億一千二百万円、契約ベースで約九億三千六百万円となっております。

 ただいま申し上げました平成二十五年度から平成二十七年度までの予算額を合計いたしますと、契約ベースが約三十六億一千七百万円、歳出ベースが約二十二億六千三百万円となっているところでございます。

穀田委員 契約が三十六億、それから歳出が二十二億ということになると、まだ事業を続けるということに普通はなりますわな。

 防衛副大臣に聞きたいんですけれども、五つの補修事業に、今述べたように、契約ベースで三十六億円余りを思いやり予算から計上している。普天間基地を五年以内、二〇一九年二月までに運用停止すると言いながら、基地の継続使用を前提としたアメリカ側の補修事業を負担してやるというのは一体どういうことか、これは全く矛盾する行為じゃないかと思うんですが、見解をお聞きしたい。

左藤副大臣 お答え申し上げます。

 先ほど政府参考人からの答弁があったとおり、普天間の飛行場補修事業については、平成二十四年四月二十七日の日米2プラス2共同発表においてその実施を確認し、現在、日本側において、管制塔及び消防署用の非常用発電施設の改修や隊舎の改修など、五つの事案を実施しておるところでございます。

 現在実施しているこれらの五つの事案については、平成二十八年度に完了した後、別に特に、さらに補修事案については、現在予定をしておらないところでございます。

 そして、先ほどお話がありましたように、平成二十六年二月十八日の普天間飛行場負担軽減推進会議の開催から五年をめどとする考え方が示されておりますので、このような県の考え方を踏まえて取り組んでおります。

 また、設置から五十年、先ほどお話がありましたけれども、五十年以上経過した普天間飛行場においては、老朽化が著しい施設もあることから、航空機の運用に際し、安全面や環境面の配慮が必要と思っております。

穀田委員 二〇一二年四月の2プラス2の合意は、普天間飛行場の代替施設が完全に運用可能となるまでの間、補修事業を行うこと、つまり、辺野古の新基地が運用できるまでは普天間基地の補修事業を継続するということになるわけですよね。

 二〇一三年四月の日米合意の統合計画によりますと、辺野古の新基地の建設に伴う返還というのは、二〇二二年度またはその後とされています。それでいけば、少なくとも七年間は普天間基地で補修事業が行われるということになる。基地機能の強化、固定化以外の何物でもないんじゃないですか、副大臣。

左藤副大臣 先ほど、五つの事案なんですが、ちょっと説明をさせていただきます。

 一つは、汚水排水施設の改修については平成二十六年度から三年度にわたって、また、二について、二つ目ですね、雨水排水施設の改修と隊舎の改修については平成二十七年度から二カ年度にわたって国庫債務負担行為が行われることを念頭に置いております。

 具体的には今後の予算編成の過程において財政当局との調整をすることになりますので、平成二十八年度以降について歳出が行われることも想定されております。

 いずれにしても、先ほど申し上げたように、現在実施しているこれらの五つの事案が平成二十八年度に完了した後のさらなる補修事案については、現時点は予定をしているものではありません。

 いずれにしても、普天間飛行場の危険性の除去を少しでも早く実現する観点から、普天間飛行場の五年以内の運用停止についても、仲井真前知事から強い要望を受けて、政府として全力で取り組んでいるところでございます。

穀田委員 私は、あなた方の資料に基づいて、返還条件が満たされ、返還のための必要な手続の完了後、二〇二二年度に返還可能だ、七年間続くことになるじゃないか、こういう数字の話をしているわけですやんか。別に、極めて単純で、計算をすればそうなるやんかという話をしているわけで、それが左藤副大臣は二年間で終わるとかなんとか言っているんだけれども、そう続けばなるでという話をしているわけですやんか。

 それで、必要最小限のものとか、基地を固定化させるものでない、果たして本当か。こっちを聞いてください、後ろの話はええから。

 ここに私は持ってきたんですけれども、地方協力局提供施設課、「普天間飛行場における補修事業について」という文書です。これは取扱注意とされているんですけれども、これを見ると、二〇一二年の四月の2プラス2の経緯として、補修事業をめぐり、日米合同委員会のもとにある施設整備移設部会を通じて調整を行ってきたこと、課長級の日米協議や現地視察を実施し、米側から出された要望事案を一件ずつ確認、精査したことなどが書かれています。

 そして、「米側は補修事業として全事案四十一事案(約百十四億円)を計画。このうち八事案(約三十一億円)を日本側で採択予定」と明記されているわけですね。

 この防衛省の資料にあるように、アメリカ側は、普天間基地の補修事業として、日本政府に四十一事案、約百十四億円の費用負担を求めていたことになるわけですが、それは間違いありませんか。

左藤副大臣 御指摘の普天間飛行場の補修事業については、日米間でさまざまな協議を行っておりますが、その具体的内容については、米国との関係がございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにしても、普天間飛行場の補修事業については、平成二十四年四月二十七日の2プラス2共同発表を受け、日米間で協議を進めた結果、日本側として、先ほど申し上げた管制塔及び消防署用の非常用発電施設の改修、そういうものをしっかりやっていくとしているところでございます。

穀田委員 私は、差し控えたいという話では済まぬと。

 これは「普天間飛行場における補修事業について」ということなんですよね。そこの中に、「我が方の対処方針(基本的な考え方)」としまして、「事案の精査に当たっては、普天間飛行場の固定化につながるものではない旨対外説明が可能となるよう以下の事項を勘案」とあって、いわゆるオスプレイ配備に直接関係しないものなど四項目が列記されているんです。

 さらに、「米側は複数年にわたる補修事業リストを提示してきたが、固定化ととられないよう、日本側で行うことが可能な補修事業については、原則として、平成二十五年度で全て採択」とあります。

 つまり、ここまで来ているわけなんですよね。

 同時に、「仮に、普天間飛行場移設事業の進捗等が遅れた場合は、米側と再度協議。」とまで書いているわけです。

 だから、辺野古の新基地建設がおくれた場合、その都度米側と協議し、日本側が補修事業の費用負担を行っていくという方針が明記されているわけですね。ここが大事なんですよ。

 必要最小限だとか、基地を固定化させるものではないと言うけれども、辺野古の新基地の進捗状況によっては米側が日本に負担増を求められる仕組みになっているんじゃないかということを聞きたいんですが、いかがですか。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生がお示しされました資料の確認がちょっとできないことと、それから、アメリカとの関係の協議の具体的内容についてはちょっとお答えを控える部分がございますけれども、これらの補修事業につきましては、航空運航の安全性の確保、環境の保全などに資するもの、飛行場を当面運用する上で必要最小限かつ緊急性の高いもの、それから、原則として、平成二十五年度に全て採択し、補修工事を短期間で完了できるものという事項に留意いたしまして、事案を一件ずつ確認、精査したものでございます。

 その結果、今般必要な補修事業を実施することとしたものでございまして、飛行場を固定化させないということで、あくまでもそういう点に留意して採択したものでございます。

穀田委員 何かこういう文書を出すと、確認できないからと言うねんけれども、確認できないじゃ済まないと言っているんですよ。

 事は重大なんですよ。その後もずっと続けるつもりだ、補修をやる。七年間はやるわ、それから、もし進捗状況があかんなんだらまたやりまっさときている。

 もしそういう内容だったら、左藤副大臣、それはあかんで、そんなことは約束してへんでと言ってもらわな困るわけです。そんな重大なことがあるのか、初めて知ったわ、文句言うわというようなことを言ってくれへんなんだらあかんのちゃうかと思うんやけれども、いかが。

左藤副大臣 お答え申し上げます。

 今いろいろお話ありましたけれども、日米で進めている普天間飛行場の補修事業は、設置から五十年以上たっております、老朽化が著しい施設でもある同飛行場において、現在の海兵隊の運用に必要な航空機の安全な任務能力を確保し、環境を保全するために必要最低限のものであり、同飛行場の固定化につながるものではございません。

穀田委員 さっきと同じ答弁を繰り返しているだけなんですよ。だから、私は、必要最小限とか固定化とかいうことを必ず言わはるけれども、そうなっていないじゃないかと。

 その文書自身が、そういうことにとられないようにとか、そういうことを言っちゃまずいからということまで言って、書いているんですよ。だから、それほど彼らも気にしてやっているということは確かなんですよ。

 そういう事実について明らかにしているわけで、それは余りひどいなとか、そういう同じ紙を持ってきて、必要最小限とか固定化とか、その二つのフレーズだけ言っていればええというわけじゃないんですよ。

 事は、沖縄県民のかかわる問題だし、普天間基地の今後にかかわる問題だ。五年とか言っているけれどもどうなんだという話をしているときに、五十年の、老朽化したからとか、それから、こういう約束だからというような話をしていたんじゃあかんということを言っているんですよ。

 最後に、では、大臣に聞きますよ。

 アメリカ側は、辺野古の新基地が完成するまで普天間基地を継続使用するために、大規模な補修事業を計画している。このような計画に日本側が費用負担することは、政府が言う、今言いましたけれども、危険性の除去、固定化の回避に逆行するばかりか、岸田大臣が一番最初に言いましたように、不変だと強調される二〇一九年までの運用停止が口約束にすぎないということを自己暴露するものと違うかと思うんですが、お答えいただきたい。

岸田国務大臣 まず、二〇一二年の2プラス2において日米間で合意した点について御指摘がありました。そして、その後、沖縄県、仲井真前知事の方から、普天間飛行場の五年以内の運用停止を含む要望が出されました。そして、先ほど来、今、現実、政府として、補修等に関して支出を予定している予算について説明がありました。

 今、現実において支出を予定している予算につきましては、今申し上げました、二〇一二年の2プラス2、そして、その後の沖縄の負担軽減の要望、その範囲内におさまっているというふうに認識をいたします。

 その上で、今御指摘の資料について御質問がありましたが、この資料の中身については、私自身も、十分把握しておりませんし、承知しておりませんので、コメントは控えたいと存じます。

 いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、政府としましては、普天間飛行場の五年以内の運用停止を含む沖縄の負担軽減につきましては、できることは全て行う、その方針で、全力で取り組んでいきたいと考えております。

穀田委員 私、さらに大規模な補修計画があるのかもしれぬというぐらい不安に思っているんですね。補修するということは、世界一危険な基地であることについては何ら変わらないだけじゃなくて、さらに強化し、米軍にとっては使いやすいことになることにほかならない、まさに固定化につながるということを言っておきたいと思うんです。

 私は、基地機能の強化、固定化する補修事業への費用負担の中止と、改めて、普天間基地の即時閉鎖、無条件撤去を強く求めて、質問を終わります。

土屋委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 ただいま議題となっております各件中、まず、経済上の連携に関する日本国とモンゴル国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び世界貿易機関を設立するマラケシュ協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の両件について議事を進めます。

 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党を代表して、日・モンゴル経済連携協定及びWTO協定改正議定書に対する反対討論を行います。

 日・モンゴル経済連携協定は、日本企業によるモンゴルへの経済進出を促進するためのものであります。

 特に、鉱物資源、エネルギー分野での投資環境を整備することにより、現在、日本向けの輸出の主力である石炭やレアアースの開発投資にとどまらず、ウランの資源開発を後押しするもので、安倍政権が成長戦略の柱に位置づけて推進する海外での原子力ビジネスの拡大につながるものであることから容認できません。

 また、WTO協定改正議定書は、ドーハ・ラウンドから十年間議論してきた貿易の円滑化等について合意したものであります。

 貿易手続の透明性の向上、迅速化、税関当局の協力は、我が国が結んだFTA、EPA等の二国間協定で盛り込まれたものであり、我が国においては既に整備済みであり、我が国が実施するものに変更はありません。今回の改定は、これらの措置をWTO全体に広げるものであります。

 我が党は、一九九五年のWTO協定の締結の国会承認の際、この協定は、主権制限を無差別に全ての国に押しつけ、多国籍企業、大企業の利益を図る一方、発展途上国をいつまでも不利益な状態に置き続けるものとの立場で反対しましたが、今回の改定でその本質が変わるものではありません。

 以上が、二つの協定に対する反対の理由であります。

土屋委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 これより採決に入ります。

 まず、経済上の連携に関する日本国とモンゴル国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、東南アジア諸国連合プラス三箇国マクロ経済調査事務局を設立する協定の締結について承認を求めるの件及び二千七年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件の両件について議事を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、東南アジア諸国連合プラス三箇国マクロ経済調査事務局を設立する協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、二千七年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

土屋委員長 次回は、来る二十四日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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