衆議院

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第9号 平成27年5月8日(金曜日)

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平成二十七年五月八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 土屋 品子君

   理事 秋葉 賢也君 理事 大野敬太郎君

   理事 島田 佳和君 理事 辻  清人君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 寺田  学君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      小渕 優子君    大塚 高司君

      河井 克行君    木村 弥生君

      小林 鷹之君    佐々木 紀君

      渡海紀三朗君    中根 一幸君

      長坂 康正君    星野 剛士君

      松島みどり君    武藤 貴也君

      緒方林太郎君    吉良 州司君

      鈴木 貴子君    長島 昭久君

      青柳陽一郎君    木内 孝胤君

      岡本 三成君    田村 貴昭君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        中山 泰秀君

   環境副大臣        北村 茂男君

   外務大臣政務官      中根 一幸君

   政府参考人

   (内閣官房産業遺産の世界遺産登録推進室次長)   成瀬 茂夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       尾池 厚之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鈴木  哲君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 吉田 朋之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           谷  明人君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           吉野 恭司君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     坂口 利彦君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       北島 智子君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            三好 信俊君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月八日

 辞任         補欠選任

  鈴木 隼人君     木村 弥生君

  薗浦健太郎君     長坂 康正君

  穀田 恵二君     田村 貴昭君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     鈴木 隼人君

  長坂 康正君     薗浦健太郎君

  田村 貴昭君     穀田 恵二君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 水銀に関する水俣条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより会議を開きます。

 水銀に関する水俣条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官尾池厚之君、大臣官房審議官鈴木哲君、大臣官房参事官滝崎成樹君、大臣官房参事官吉田朋之君、内閣官房産業遺産の世界遺産登録推進室次長成瀬茂夫君、経済産業省大臣官房審議官谷明人君、大臣官房審議官吉野恭司君、貿易経済協力局貿易管理部長坂口利彦君、環境省総合環境政策局環境保健部長北島智子君、水・大気環境局長三好信俊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉良州司君。

吉良委員 おはようございます。吉良州司です。

 二年間のブランクがあって、久しぶりの外務委員会での質問となります。与党を経験した人間として、野党的な追及、また、時に揚げ足取りということではなくて、自分が、また我々が与党であったならば、政府の人間であったならば、どう考えるか、どう行動するか、そういう観点に立っていろいろと質問を、また議論をさせていただきたいというふうに思っていますので、岸田外務大臣におかれても、本当に揚げ足をとったりする気はありませんので、大臣の本音のところを、閣僚という立場はありましょうけれども、本音で議論をさせていただければというふうに思っています。

 きょうは、委員長からもありましたように、水銀に関する水俣条約についての議論の場ではありますけれども、連休後初めての外務委員会でありますので、これは質問通告はしておりませんけれども、2プラス2、日米首脳会談、それから、岸田外務大臣はフィデル・カストロ議長との会談にも臨まれたと思いますので、その意義、成果について、大臣の口から説明をいただければと思っています。

岸田国務大臣 御指摘のように、私自身、連休中、国会のお許しをいただきまして、アメリカ、そしてキューバを訪問してまいりました。

 アメリカにおきましては、日米2プラス2に出席をし、十八年ぶりの改定となります日米のガイドラインについて議論をしてまいりました。そして、NPT運用検討会議に日本の外務大臣として十年ぶりに出席をし、演説をしてまいりました。そして、その後、日米首脳会談に同席をし、そして、アメリカ議会での総理演説、池田勇人総理から数えますと五十四年ぶり、上下院合同会議における演説としては歴史上初めての総理演説の場にも出席をしてまいりました。

 改めて、日米同盟の意義に思いをめぐらし、そして日米同盟の力強い関係を内外に示すことができたと振り返っております。

 そして、その後、日本の外務大臣として初めてキューバを訪問させていただきました。そして、フィデル・カストロ前議長、ラウル・カストロ現議長を初め、要人と会談をする機会がありました。日本とキューバの関係について、本格的な無償資金協力を再開するということ、あるいは経済関係につきましても官民合同会議を立ち上げるということ、そして、キューバは国際場裏におきまして大きな外交力を持っております、キューバとの間において日・キューバ国連対話を立ち上げるというようなこと、こうしたことを確認してまいりました。

 今、米国とキューバの関係が国際社会から大きな注目を集めています。米国との国交回復に向けて議論が進んでいるわけですが、こうした議論が進みますならば、より一層キューバは国際社会から大きな注目を集めることになります。ぜひ、日本としましても、このキューバとの関係をしっかり構築するべく努力をしていかなければならない、こういったことを感じて帰ってきた次第であります。

吉良委員 2プラス2、日米首脳会談、また日米同盟の意義ということについて、今話をされました。この点については、今後、私自身も含めた同僚議員も、回を重ねて議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 きょうも、水銀にかかわる条約の質問の後、時間が許せば、日米同盟というものも踏まえて、安倍総理談話というのが今政府内で検討されていると思いますけれども、その来るべき安倍総理談話もにらみながら、その辺の議論もさせていただきたいというふうに思っております。

 ただ、きょうは、今言った2プラス2、日米首脳会談等についてはあえて踏み込まないまま、水銀に関する水俣条約の締結についてということで話をさせていただきます。

 まず、この条約についてでありますけれども、世界的規模で、有害物質である水銀についての規制について取り組むということになっているわけであります。一方で、零細小規模金採掘における水銀使用等、必ずしも使用が禁止されていない、また、附属書に記載がされていない水銀添加製品についての規制もないということから、一方で目的、意義というものは十分評価できるものの、規制内容、その実施における観点からすると不十分ではないか、こういうような指摘もあるわけであります。

 日本政府として、そういう不十分という指摘がある中でこの条約を締結する、批准するという意義についてどう考えておられるのか、その辺についてお答えいただきたいと思います。

中根大臣政務官 ありがとうございます。

 本条約は、御案内のとおりですが、水銀が人の健康及び環境に及ぼす危険を低減するための包括的な規制を求めたものでございます。その上で、世界規模での実効的な水銀の規制を行うためには、途上国を含む多くの国々の参加を得ることが不可欠となってまいります。このために、本条約は一定の柔軟性を持って交渉が進められ、その結果、段階的に水銀の使用を削減するという内容になっているわけでございます。

 一方で、議員も御指摘のように、規制内容が不十分であるとの御指摘については、本条約は将来的に追加的な規制を検討するための規定が置かれております。また、条約実施のための措置等についての報告や、本条約の有効性を定期的に評価するための規定も置かれております。このように、本条約は、条約の目的を実現するために、現実的かつ効果的な枠組みを定めるものとなっております。

 このような条約を締結することにより、我が国としては、水銀から人の健康と環境を保護するための国際的取り組みの推進に積極的に貢献することができると考えております。

吉良委員 今政務官御指摘のように、柔軟性を持った条約だということでありますけれども、それぞれの参加国の発展段階に応じて政府の対応能力にむらがあるということを感じております。

 そういう中で、特に、先ほど言いました途上国における零細小規模金採掘にかかわる水銀使用の削減、使用量を減らしていくということについて、この条約がどれだけの強制力を持っているのかということについては疑問があります。その点についてはどう考えておられるのか、再度お答えいただきたいと思います。

尾池政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘がありましたように、途上国において十分な条約実施能力がないのではないかということは確かにあるかと思います。

 それを踏まえまして、本条約におきましては、一定の柔軟性を持って交渉が進められまして、その結果、段階的に水銀の使用を削減するような内容の条約となってございます。また同時に、途上国を中心とする締約国における条約の実施を促進するために、資金供与のための制度でありますとか、あるいは能力形成、技術援助等に関する規定も置かれてございます。

 我が国といたしましては、水俣病の経験及び教訓を踏まえまして、また、これまでも世界における水銀対策のための調査や技術移転に協力をしてきたということでございます。

 今後とも、途上国を含む各国に対して締結の働きかけを行いますとともに、日本が培ってきた環境技術を生かしまして、途上国による本条約の実施を支援していきたいと考えております。

吉良委員 私、若いころブラジルに実は住んでいた、留学していたことがありまして、その際、二つの思い出深い経験があります。

 一つは、ブラジルの友人に対して、アマゾンの乱開発をやめろという話をしました。それに対してそのブラジルの友人がどう答えたかといいますと、おまえたち、勝手なことを言うな、アマゾンというのは自分たちの国土だ、自分たちの資源だ、おまえたち先進国の人間は、自分たちが発展する段階においては、自国の資源はもちろん、他国の資源までさんざん使って、むさぼっていながら、いざ自分たちがまさに自分の国の資源である森林資源を使おうということになれば、途端に、やめろ、こういうふうに言うと。

 私の方では、アマゾン地域というのは地球の酸素の三分の一を生産しているんだ、おまえたちは国土だけで地球に貢献しているんだという話をしたんですけれども、もし、おまえがそういうふうに言うのであれば、我々が自国の資源を開発する、いわば得べかりし期待利益について、きちっと補填する、補償する用意があるのかということを言われたことがあります。

 そういう意味で、今の話にもありますように、先進国としていろいろ、資金的な支援だとか、その能力に応じて、能力向上に対する支援というのはありますけれども、これにある程度強制力を持っていかせようとすれば、今私が申し上げたような議論が浮上してくる、これは当然この条約締結の中でも議論されてきたことだというふうには思いますけれども。

 私のこの経験を踏まえて、先進国としてのある程度の責任を果たす、また、今御指摘があったように、水俣病を初め公害に苦しみ、それを克服してきた、またその過程において技術を磨いてきた、その日本としてどういう貢献ができるのか、その点についてお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 日本としての貢献、どんなような貢献ができるかという御質問ですが、我が国としましては、これまでも、水銀による環境汚染対策あるいは健康被害対策、あるいは代替技術の開発など、世界における水銀対策のための調査あるいは技術移転等の協力を行ってまいりました。

 具体的には、例えば国立水俣病研究センターは、海外での水銀汚染の現地調査あるいは水銀モニタリング技術指導、あるいは海外研修生の受け入れ、こういったものを実施してまいりました。

 また、平成二十五年に水俣条約外交会議が開催されましたが、その際に発表しました水銀汚染の防止に特化した人材育成支援プログラム、このプログラムも既に開始をしています。昨年十一月ですが、七カ国、十名の研修を行ったということであります。

 ぜひ、今後とも、各国からの要請に基づきながら、我が国としまして、我が国の持つ環境技術、これをしっかり生かしながら、各国の水銀被害軽減に支援を続けていきたいと考えます。

吉良委員 先ほど言いましたように、途上国からしてみれば、得べかりし利益を失いつつも世界的な取り組みに協力をするということでありますので、日本として得意とするところで途上国への協力をしていただきたいというふうに思っています。

 そのことは理解した上で、先ほど、ブラジルで二つ経験をしたということを申し上げましたけれども、二つ目の経験としては、私、ブラジルを初め南米南部を、地球の半周分に当たる二万キロぐらいをバスで冒険旅行していったわけであります。その際に、ブラジルのカラジャス、カラジャスというのは鉄鉱石または金鉱山で有名でありますけれども、そのカラジャスの金鉱山のそばの金鉱城下町とでも言われるような町に行った経験があります。

 そのときの経験、余りこのような場で言うべきことではないかもしれませんけれども、正直言って、目つきの悪い方々の集まりの町でありました。いろいろな事業で失敗した方、それから、時には、罪を犯して刑期を終えた後出てこられた方、そういう方々を初め、一発屋、これで一発金を当てて、もう一回大金持ちになってやろう、もう一回この元手で事業を再興してやろうとか、そういう方々の集まりの場でありました。

 個人事業主たちなんですね、全て。チリにおけるコデルコのチュキカマタ鉱山みたいな近代的な設備とは全く違って、まさに個人で金を採掘している、また少人数の仲間で採掘をしている。そのような人たちが水銀を使用しながら金をとっている、純度の高い金にしていっている、こういうことであります。

 先ほど聞いた質問と重複するんですけれども、そのような個人事業主的な零細小規模金採掘の人たちは、まさにこれによって生計を立てているということであります。恐らく途上国というのは、先ほど言った政府の対応能力の問題もありますけれども、実際は、対応能力という以前に、やはり多くの人たちがそういう小規模な金採掘で生計を立てている、まさにそれが雇用の場であるというところから、この条約の意義、意味はわかっていながらも、そこに対して切り込むことができないということが予見されるわけであります。

 先ほど、この条約が持つ強制力というのはいかんという話をさせていただきましたけれども、内政干渉にならない範囲で、日本政府として、または日本を中心とした先進国、この条約を主導する国々の間で、今言った、それぞれの国のこの金採掘で生計を営んでいるという人たちに対する対策を、間接的ではありますけれども、どのように考えているのか、その辺についても見解をお聞きできればと思います。

尾池政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘になりましたブラジルにおける小規模金採掘の話は、まさに今回の水俣条約を交渉するきっかけにもなってございます。アマゾン流域における水銀被害の問題が深刻になっているのを見て、それが一つの契機となって今回の水俣条約の交渉が始まったという経緯もございますので、いろいろな意味で重要な位置づけのものかと考えております。

 実は、この条約自体も、そうしたまさに御指摘のような状況を考慮いたしまして、幾つかの配慮がなされてございます。

 小規模金採掘につきましては、したがって、禁止ということではなくて削減という形になっていることも、この配慮の一環でございます。また、条約の実施状況につきましても見直しを行って、途上国が果たしてちゃんとできているかどうかということも検討していくというような条文が、この条約の中にも含まれてございます。また、先ほども申し上げましたとおり、さまざまな形で途上国の能力を支援していく、そのためには、資金的な面についても技術的な面についても支援をしていくということが確保されてございます。

 このように、この条約自体、まさに御指摘いただいたいろいろな状況に配慮した構成になっているということでございまして、我が国といたしましても、具体的な協力を通じまして、この条約がより的確に実施をされていきますよう、支援をしていきたいと考えてございます。

吉良委員 基本的に、個人的にも、属する政党としても、条約の締結について異議はありませんので、今私自身が懸念することについて種々確認をさせていただいた次第であります。

 続いて、きょうは頭出しとして、今後数回に分けて話をさせていただきたい、戦後七十年を迎えて、さきの大戦を検証するというテーマに移らせていただきたいというふうに思っています。

 今回、私自身がさきの大戦を検証するということを取り上げたいと思う理由は、大きく二つあります。

 一つは、冒頭申し上げましたように、安倍総理談話。この安倍総理談話は、日本国民はもちろんのこと、近隣諸国、そして、さきの大戦において戦った相手国、世界からもきちっと評価をされる内容にしてほしいという思いがあります。その観点から、さきの大戦というものが一体どういうものであったのかということについて検証していきたい、また、岸田大臣初め外務省と議論をしていきたいというふうに思っています。

 二点目は、私の父の世代に当たるわけですけれども、きちっと物心がついて以降、戦争というものを明確に意識したというか、体験に基づいて戦争の悲惨さも経験をし、戦争から得られる教訓というものをまさに体にしみ込ませている世代が、今、残念ながら、この世から徐々に去っていこうとしております。そういう中で、さきの大戦について、数字的なことも含めて事実を知らない人たち、世代が大変多くなっています。

 若い世代の右傾化ということが言われます。それも、大戦についてきちっと数字的なことも含めて把握しているならともかく、感情論で近隣諸国を批判することで気勢を上げているというような傾向というものに対しては、私自身大きな懸念を抱いております。

 そういう意味で、大戦の事実関係についてきちっと、この場の議論を通して、国民に対しても、再度認識をしてもらいたい、こういう思いで、さきの大戦の検証ということについて取り上げさせていただこうというふうに思っています。

 そういう意味で、特に対中関係改善を意識した話をさせていただきたいと思っています。

 とかくこの対中関係改善ということを話をしますと、ある種のレッテルを張られてしまうわけでありますけれども、それを避ける意味で、きちっとした議論をさせてもらう意味で、私自身の基本的な立場ということについて、私の演説の機会ではありませんけれども、話をさせていただきたいというふうに思っています。

 対中改善が大事だというふうに申し上げておりますけれども、日本外交の中で一番大事なことは、先ほど岸田外務大臣が、2プラス2、日米首脳会談のところでまさにおっしゃられたように、日米関係、そして日米同盟だというふうに思っています。そして、その日米同盟の強化というものは、今我が国にとって最も重要なテーマだろうというふうにも思っています。

 私自身は、実は、この隣の隣にいる長島昭久議員と一緒に、民主党政権の時代に、当時の二二防衛大綱ということについて、実務的につかさどるという立場で大綱をつくりました。

 その際の我々の問題意識というのは、もう釈迦に説法になりますけれども、今、この東アジアを中心として、大きく国際環境、特に安全保障環境が変化している、それはもう言うまでもなく中国の経済的、軍事的な台頭にあるということを明確に意識した上で、我が国を取り巻く環境の変化、これに対応していくにはどうすればいいのか。

 その第一として、やはり日米同盟の強化であるということ、それから、米国のみならず、具体名を出してオーストラリアを初めとして友好国との安全保障上の関係強化をしていくということ、そして、当時の防衛の基本思想であった基盤的防衛力、これから、今言った安全保障環境の変化を踏まえて動的防衛力という概念を持ち出して、一つには、陸自ももちろん大事なんですけれども、海、空というものをより充実させるということ、それから、島嶼防衛等を踏まえて機動的な防衛力を整備していくというようなことを、我々自身うたったというふうに思っています。

 大変手前みそながら、今、現安倍政権で進めておられる、またはさきの防衛大綱についても、大きな流れからいえば、我々がつくった防衛大綱の延長にあるというふうに思っております。

 これは、ある意味では当然のことでありまして、安全保障に関して、与党、野党とか、政党が違えど、今言った大きな安全保障環境の変化、それに対してどう対処していかなければいけないのか、普通に考えれば当たり前のことでありまして、これは政党によって変化があろうはずがないというふうに思っています。

 大事なことは、脅威となり得るのは、その脅威となり得る潜在国、潜在集団が意思と能力を持つということであります。名指しはしませんけれども、近隣諸国の中で、かつてとは違って十分な能力を持つ国が存在している。だから、その国に対して意思を持たせないということが最も大事だろうというふうに思います。

 そういう意味で、先ほど、二二大綱のときの基本的な考え方だというふうに申し上げましたように、一方では、自主防衛力も踏まえて日米同盟を強化していく、そして一方では、きちっと、にこにこ笑いながらかたい握手を求めていくということが求められているんだろうというふうに思っています。

 そういう観点からすると、今の安倍総理の対応というのは、一方では、日米同盟の強化ということは、我々が望む以上にかもしれませんけれども、必死に取り組んでおられますけれども、一方で、かたい握手を求めていく、もちろん、先日も日中首脳会談というのが行われましたけれども、まだまだ私はその誠意が足りないのではないかというふうに思っています。

 そういう意味で、来るべき安倍総理談話については、先ほど言いましたように、日本国民はもちろんのこと、近隣諸国、さきの大戦で争った国からも評価してもらえる、そういう談話を期待したいというふうに思っております。

 そういう中で、この前の日米首脳会談でも言われたことでありますけれども、安倍総理が、未来志向、過去は過去として反省はしているけれども、もう未来志向でいこう、いつまでも過去にとらわれていないで先を見ていこうよ、こういう、気持ちはわからぬでもないんですけれども、なぜここまで、侵略またおわびということについて、ある意味、拒否をしていくのかということについて、ちょっと理解ができないんですね。

 今言いましたように、レッテルを張られるような立場ではない私のような立場の人間からしても、安倍総理の対応については大きな疑問を持っています。

 この点について、これまでも寺田議員それから緒方林太郎議員が何回も質問をして、なかなか、閣僚の一人として答えには限界があるとは思いますけれども、岸田大臣が侵略またおわびということについてどう考えておられるのか、お聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 総理のこれまでの発言、さらにはこれから予定されております戦後七十年談話、こうした機会においてどのような言葉を選び、どのような発言をするかということにつきましては、まず前提として、これはもう再三申し上げてきていることですが、安倍内閣として、村山談話あるいは小泉談話を初めとする歴代内閣の歴史認識を全体としてしっかり引き継いでいます。こうした歴代内閣の歴史認識を引き継いでいるということが大前提であると認識をしています。

 そして、その上で、総理としましては、これもたびたび発言されているわけですが、例えば戦後七十年談話にしましても、まずは、さきの大戦における反省を述べ、そして、戦後七十年間、平和国家として今日まで歩んできた歩みについて振り返り、そして、これからも平和国家として国際社会にどう貢献していくのか、どのような国であるべきなのか、こういったことについてしっかり発信していくということを基本にこの談話についても考えていくことを表明しております。

 具体的な言葉遣い等につきましては、今、二十一世紀構想懇談会においても議論が行われています。こうした議論を踏まえて、政府としてどのような談話を発するのか、これを検討していかなければならないと思います。

 具体的な言葉遣いはこれから詰めていくことになるとは思いますが、今申し上げましたような基本的な考え方をしっかりと踏まえながら、それぞれの談話、あるいはさまざまな場における発言、これを考えていくべきであると考えます。

吉良委員 これまでもさんざんやりとりをして、それ以上の答弁はないというふうに思っていますので、そこについて突っ込んでいく気はありません。

 先ほど、私、今の人たちが、さきの大戦について、数字的なことについても理解をしていない方が多いという話をしました。きょうは先ほど言いました頭出しで、これから数回にわたってやっていきたいというふうに思っていますけれども、おっしゃるように、全体として引き継ぐ、だけれども、いろいろな数字を見たときに、先ほど言った、何回謝っておわびをしたってし切れるものではないというぐらいの数字というものがあるというふうに思っています。

 そういう意味で、お聞きしたいと思いますけれども、第二次世界大戦において、幅はあることはもう十分承知していますけれども、世界全体でどれぐらいの方々が犠牲になられたか、亡くなられたのか、そしてまた、大戦を通じてどういう国の人たちがどれぐらいたくさん亡くなっているのか、それらについてちょっと、事務方で結構ですから、外務省として公表できる数字を述べていただきたいと思います。

中山副大臣 恐れ入ります。

 今御質問を賜りました、いわゆる第二次世界大戦におきます犠牲者数につきましては、対象といたします戦争それから戦闘の範囲等に差異があることを考えますと、さまざまな推計が存在をしておるという現実がございます。正確な数というものを具体にお答えすることは、ある意味で非常に困難であるというふうに考えてございます。

吉良委員 おっしゃるとおりで、これはもう正確な数字が出るはずがないんですね。だけれども、ある程度の幅を持っての数字は答えられるんだろうというふうに思っています。

 私も、国会図書館から膨大な資料を入手して、いろいろ調べてまいりました。はっきり言って、正確な数字と思われるような犠牲者数を公表できているのは、実際は米国とイギリスぐらい。あとは、戦火で国土が灰じんに帰しているような国がほとんどですので、その当時、政府としての機能もない、当然、犠牲者数を把握できるような能力を持ち合わせていなかったということがあり、また、ヨーロッパ戦線では、御承知のとおり、大戦中にナチが、いわゆる強制労働として何百万人単位で、特に東欧諸国、またはソ連の人たちを移動させている。戦争が終わったときには、その方々が難民化している。

 おっしゃるように、どういう戦争なのか、どこからどこまでをとるのか、どういう人たちまでその戦争の犠牲者とするのか、この辺の幅もあることは十分にわかっているんですね。

 そういう意味で、例えば百科事典的な数字でいうと、大戦で亡くなられた方というのは三千五百万人から六千万人。ただ、これだけの幅があるんですよね。

 私が言いたいのは、幅があっても結構なんです。ただ、一つのマグニチュードをきちっと把握していないと、さっき言った、さきの大戦、それはヨーロッパ戦線も、それからこの太平洋戦争も、どれだけの規模であったか、悲惨な戦争であったのかということについての把握ができないというふうに思っているんですね。

 そういう意味では、では、私が把握する、今言った、幅がある、統計上必ずしも正確なものではないということを前提として言わせていただくと、世界全体では、今申し上げました、三千五百万から六千万と言われている。一番多く亡くなった国というのはソ連、二千万人と言われています。次が中国、一千二百万人と言われています。

 もちろん、中国の場合は、ほかの国と同じように、直接的に戦闘等で亡くなった方のみならず、戦争がきっかけとなって、住む地域社会がある意味では崩壊をしたり、その当時の政府の機能が低下したりしたことによる、疾病であったり、災害があったときに適切な救助ができなかったりというようなことで亡くなられた方もいらっしゃいます。そういうことも含めて一千二百万人の方が亡くなられたというふうに言われています。

 それから、ドイツの七百万人。ポーランドの六百万人。ポーランドとユダヤの方々というのは重なるということもありますけれども、ユダヤの方々が五百数十万人。そして、日本は三百十五万人と言われています。

 この数字を見たときに、中国の方々に対して、一千二百万人もの方が結果的に亡くなられている、この方々に対する言葉というものは、おのずと出てくるのではないかというふうに思っています。

 もう時間が来ましたので、これは、先ほど言いましたように、シリーズでやっていきたいというふうに思っていますけれども、今私が申し上げたところで、もし大臣なり副大臣なり一言コメントがあれば、伺った上で質問を終了したいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の中で、特に中国との間における過去の戦争についてですが、今まで、さまざまな機会に、日本の国としても認識を示しています。

 一九七二年、日中共同声明の前文の中にも、「過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」と記しております。また、一九九八年、日中共同宣言にも、「過去の一時期の中国への侵略によって中国国民に多大な災難と損害を与えた責任を痛感し、これに対し深い反省を表明した。」と記しております。

 私、外務大臣の立場から、こうした記述につきましては同じ認識に立っていると考えております。

吉良委員 継続して議論させていただきます。

 質問を終わります。

土屋委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 維新の党、木内孝胤でございます。

 国内は、ゴールデンウイーク、大型休暇でお休みの方もいらしたかもしれませんけれども、その間、2プラス2、日米首脳会談、そしてキューバ訪問という、非常に大きな会談を、相も変わらず強行日程で、お疲れさまでございます。

 水銀にかかわる水俣条約について質問する前に、やはり私も、日米首脳会談の成果と意義について質問させていただきたいと思います。

 戦後七十年のこの節目の年に、日米両国が世界の平和と繁栄のために主導的な役割を果たす意思を明示した意義は極めて大きいと思います。とりわけ印象的なのは、ワシントンからそのままキューバに飛んだということでございます。東西冷戦が終わって、キューバとの関係がまだこういう状態であったというのを改めて感じるわけでございます。

 そうした中で、今回、日米同盟の意義について、先ほど既に成果と意義ということで答弁いただきましたけれども、ひとつ、東西冷戦の前、それと後、こういう見方で日米関係を見ていきたいというふうに思っております。

 東西冷戦期におきましては、ある意味、非常に緊張感のある、緊張度合いの高い東西対立があった中で、緊張が高い中での安定があった。

 しかしながら、その後、東西ドイツの統合、ソ連の解体等があった後に、より平和な時代が訪れるのかなと思っていましたところ、逆に、当時封じ込められていた民族問題あるいはさまざまな問題が今表面化している。

 あるいは、技術的な面での変化。例えば、サイバー攻撃、あるいは先々週も質疑になりましたドローンとか、さまざまな化学兵器等々、世界の安全保障のリスク、これが非常に多様化している、あるいは高度化というか複雑化しているというふうに考えております。

 こうした中で、日米同盟の意義というのが以前にも増してより重要性を増している、そういう中で、今回も意義深い日米首脳会談だったと思っております。

 この東西冷戦の前と後、そういう区分けにおきましての日米関係の変化について御答弁をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 今回の日米首脳会談におきましては、まず、戦後七十年を振り返って、かつて日米両国は敵対しておりました。その日本とアメリカが戦後和解して、強固な同盟国となりました。そして、ともに、地域あるいは国際社会の平和、繁栄に貢献してきた。こういった歴史を振り返り、改めてその間の日米同盟の意義を確認する機会となりました。

 その七十年の中には、今委員おっしゃったように、冷戦時代もありました。そして、その後の時代もありました。しかし、そうした時代の変化の中にあっても、日米両国は和解を行い、そしてともに強固な同盟国となり、そして世界の平和や繁栄に貢献してきた、こういったことを確認できたと思っています。そして、今後も引き続き世界の平和や繁栄に貢献していく強い意思を確認する、大変有意義な機会になったと振り返っています。

 おっしゃるように、この七十年間を振り返りましても、冷戦時代、そしてその後の時代、そして今の時代、時代とともに環境は変化してきましたが、そうした国際環境の変化の中にあっても、日米同盟の果たしてきた役割はまことに大きいものがあり、そしてこれからもその役割は大変重要であるということを確認したわけですが、こういったことは、時代の変化にかかわらず、しっかりと確認し、これからも重視していかなければならない大変重要なテーマであると認識をしております。

木内(孝)委員 冷戦が終結してから、さまざまな形で安全保障関連の法整備がなされてまいりました。しかしながら、現時点において、いろいろな法整備上不十分な点があるということで、そうした見直しがなされているというふうに理解をしておりますが、それで今一生懸命いろいろな取り組みがなされている中で、議会演説について一つ気にかかる点がございました。

 それは、今回、安全保障の法整備をするということは極めて重要なことですし、我々も前向きに、憲法の枠組みの範囲内で何をどういうふうにして平和貢献をできるのか、こういうことを一つ一つ丁寧に党内でも議論しております。しかしながら、ある意味、法案の中身がまだ決まっていない、閣議決定もされていない、委員会も立ち上がっていない状況の中で、他国の議会でこうしたことを期限を区切って約束をする。まあ、英語を見ると、ディターミンという表現にはなっておりますけれども、全体として見ると、実質的な意味での国際公約を他国の議会でしたというふうに、印象として私は受けとめております。こうした問題というのは、我が国の国民あるいは議会、これを軽視しているという印象を私は持っております。

 大臣はこの点について、これを国際公約とみなしているのか、あるいは、これはあくまでも安倍総理の個人的な決意を米国議会で申し述べたということなのか、その点の認識をお聞かせください。

岸田国務大臣 今、我が国としては、国民の命や暮らしを守るために、切れ目のない安全保障体制をつくらなければいけないということで、安全保障法制についても議論を行っているわけですが、これまでも安倍総理は、国会の場等におきまして、こうした安全保障法制については今国会における成立を図っていくんだということについて繰り返し述べてきたと記憶をしています。

 御指摘の米国議会における演説の部分ですが、これにつきましては、私としては、安倍総理は改めてこの課題に臨む総理自身の決意を述べたものであるというふうに認識をしております。そして、その議論において国会が重視されなければいけない、これは御指摘のとおりだと思います。

 ぜひ、こうした総理の決意のもと、政府としましては、国会の議論において、誠意を持って、そして丁寧に説明し、議論を行い、この法案の成立に向けて努力をしていかなければならない課題であると認識をしております。

木内(孝)委員 今、大臣、決意とおっしゃいましたが、では、決意ということは、すなわち、これは国際公約ではない、そういう理解でよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 こうした安保法制を成立させるかどうか、これはあくまでも我が国の国会において御議論いただいた上での結果である、こう思っています。これから国会の御議論をいただくわけですので、総理の決意は示させていただきましたが、これがどのような結論を得るのか、これはもう国会の議論にかかっていると認識をしています。

木内(孝)委員 今の答弁では、国際公約なのかそうでないのかというのがちょっと理解しづらかったわけですけれども。

 米国の議会でああいう形で発言をしたというもの自体は、恐らく、先方から見たら、実質的な意味での約束というふうに受けとめていると思います。国際間のこういう約束というのは、条約に落とされなければ法的な効力は持たないとしたとしても、ああいう公な場でああいう形の発言をしたことにおきましては、ある意味、明確な国際公約となってしまっているというふうに私は思います。

 夏までにこれを実現するという決意を述べて、そもそも国会の会期は六月ということですけれども、八月までにこれが実現しない場合、そうしたリスク、あるいは国際公約を破ったような形になるというリスクについて、大臣としてどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 米国議会における御指摘の安倍総理の演説の部分がどう受けとめられるかということですが、民主主義国家日本において法律が成立するためには、国会において議論を行い、国会の了承を経なければならないということは、基本的に多くの方々に御理解いただいているものと思います。それを前提として、総理としては、ぜひ安保法制の法案を成立させたい、こうした強い決意を述べたものだと認識をしております。

 どのように受けとめられるかということにつきましては、そうした前提の中で総理が決意を述べたものだと受けとめられているものだと私は認識をしております。

木内(孝)委員 そうであるならば、夏までにという期限を区切らずに、できる限り早くという表現で十分だったかと思います。

 なぜこれを申しているかといいますと、私は、安保法制の整備をすることは極めて重要だと思っております。しかし、この法整備というのは、憲法もかかわる話であり、極めて慎重に国民との議論を重ねなければならない。しかしながら、一昨年来、特定秘密保護法案の強行採決、あるいは昨年も集団的自衛権行使容認、国会が閉幕した直後に閣議決定をする、あるいは沖縄の知事が反対している立場の中で、強硬な姿勢で工事を続ける。私は、一つ一つ大切なことだと思っておりますし、いろいろ解決しなければならないことだと思っています。しかしながら、やることなすこと、幾ら何でも強引ではないか。

 要するに、国民の、信なくば立たず、これから大切な国の進路を決めて、我々も丁寧に丁寧に議論をしなければならないときに、夏というのが八月かわかりませんけれども、夏までにという期限を区切っているというのは、私は甚だ残念であります。

 これ以上これを申し上げましても仕方がございませんので、今回、この件につきましては、私は非常に残念であり、我々も党内で慎重な議論を重ねに重ねております。こういう形であらゆることが進むのではないかと、非常に今、私は政府に対して不信感を持っております。

 議会の演説の中、安倍総理らしい、美しい、甘い表現がたくさんございました。非常に未来志向の、前向きにということを意識されたんでしょう。スピーチライター、どなたかわかりませんけれども、総理のお考えをそんたくしてそういう表現になったんでしょう。しかしながら、ある意味、緊張感もなければ、犠牲者になった方への配慮が私は不十分だったのではないか、未来志向というのは、聞く人から見ると決して未来志向でないということもございますので、ぜひ、そこの議論の進め方、謙虚さを持って頑張っていただきたい、そのように考えております。

 続きまして、水俣条約の早期締結国となることの意義についてお伺いをいたします。

 水俣病の経験を有する我が国として、すぐれた水銀代替・削減技術を生かし、世界の水銀対策に取り組むことは、極めて重要なことでございます。

 二〇一三年十月の会議から一年半が経過しておりますけれども、条約が発効する前に締結をするというのは非常に重要なことだと思っておりますけれども、改めてこの早期締結の意義についてお伺いいたします。

岸田国務大臣 我が国としましては、水俣病の経験及び教訓を踏まえて、水銀による健康被害あるいは環境汚染を二度と繰り返してはならないとの強い決意のもとで、この条約の交渉に臨んでまいりました。

 我が国の提案に基づいて、条約の名称が水俣条約となった経緯もあります。ぜひ、こうした条約を早期に締結し、発効に寄与するということをもって、我が国の確固たる決意及び態度を示すことが重要であると思っています。

 そして、この早期締結を目指す意義ですが、もう少し、こうした思いだけではなくして、具体的な事柄においても意義があると思っています。

 といいますのは、条約の第一回締約国会議において、条約の実施に関する種々の議論が行われる予定になっています。ですから、我が国としまして、この条約を締結し、早期発効に寄与し、そして、我が国として、これらの議論に当初から締約国として参加し、それが我が国の国内事情に即したものになるよう、こうした取り組みを進めることが重要だと考えています。

 こうした議論に我が国の考え方、思いをしっかりと反映させるためにも、早期の締結が重要だという認識を持って取り組んでいる次第でございます。

 こういったことから、ぜひ御理解をいただき、早期の締結につなげていきたいと考えております。

木内(孝)委員 当然、我が党も本件につきまして賛成の立場でございますけれども、幾つか気になる点といいますか、お聞かせいただきたいんですが、日本の資金援助あるいは技術協力をすることによってこれを実効性を持たせるという話でございますけれども、例えば、地球環境ファシリティー、GEF、あるいはMOYAIイニシアティブ、こうした枠組みを活用した具体的な取り組みについてお聞かせください。

尾池政府参考人 お答えを申し上げます。

 今お尋ねのありました中で、地球環境基金、GEFでございますけれども、この条約を支援する費用を負担する機関としてGEFが条約上定められてございます。

 このGEFからの支援ということでございますけれども、本条約の作成を受けまして、GEFの方から既に、水銀の排出、放出削減に係る水銀対策関連分野での支援が開始をされてございます。

 また、二〇一四年から二〇一八年の五年間におきまして、GEFの方から合計一億四千万ドルの資金が水俣条約関連の活動に割り当てられることが既に決まっておりまして、これが具体的な成果につながることを期待してございます。

北島政府参考人 MOYAIイニシアティブにおける途上国支援といたしましては、日本の水銀対策技術の国際展開及び人材育成支援、水銀モニタリング等に関するアジア太平洋地域における協力等を行っているところでございます。これらを通じまして、途上国における条約の締結とその効果的な実施を後押しすることができると考えております。

 今後も引き続き、地球規模の水銀汚染の防止に向けて、世界の水銀対策をリードしてまいりたいと考えております。

木内(孝)委員 ぜひそうした取り組みを進めていただきたいと思います。

 一つ、説明をいただいた中で気になっていることが、できるだけ多くの国が参加できる条約としていると。ということは、逆に言いますと、ある程度柔軟性を持たせて、ある意味、条約の中身に妥協している部分がある、結果として、多くの国は参加できるけれども、ルールはちょっと緩いルールになっている。

 一回多くの国に参加いただいた後にルールを厳格化するというのは、それもそれで非常に難しいかと思うんですが、ルールを柔軟化させることと多くの国を参加させることの両立をどのように図っていくのか、お聞かせください。

中根大臣政務官 委員御指摘のとおり、途上国の多くの国々を、まずは参加していただかなければいけないという、確保するという柔軟性というものと、そしてまた厳格な規制を定めるという意味での実効性、その双方のバランスを確保するというのは、御指摘のように、非常に大きな課題となっていると思います。

 その上で、世界規模での実効的な水銀の規制を行うためには、やはり、先ほどお話ししたように、幅広い国の参加を得ることが不可欠であるので、一定の柔軟性を持って交渉を進め、その中で段階的に水銀の使用を削減するというふうな内容になっております。同時に、この条約の実効性をさらに高めていく余地を確保するために、先ほどもお話がありましたが、本条約には、将来的に追加的な規制を検討するための規定が置かれております。また、条約実施のための措置等についての報告、本条約の有効性を定期的に評価するとの規定も置かれておりまして、現実的かつ効果的な枠組みを定めるものとなっていると考えております。

木内(孝)委員 ありがとうございます。

 平成二十五年十一月一日の環境委員会におきまして、当時の石原大臣の答弁で、「我々は何をするのか。やはり、国内法の整備はまだまだ」という答弁がございました。

 当時、どこの部分がまだまだで、その後、国内法の整備、本国会、環境委員会等でもこの点が審議されるのではなかろうかと理解しておりますけれども、その進展状況につき、お聞かせください。

北島政府参考人 お答えいたします。

 水銀に関する水俣条約につきましては、平成二十五年十月に採択された当時、条約の締結のためにいかなる国内担保措置が必要か、関係省庁において政府としての検討の途上であったことから、御指摘の答弁におきましては、国内法の整備が未了である旨をお答え申し上げました。

 その後、条約を締結するための必要な措置の検討が中央環境審議会等において行われ、取りまとめられた答申を踏まえて、既存法令で担保されておらず、条約担保のために新たに必要な措置等を規定する法案として、水銀を使用する製品の製造規制等を措置する、水銀による環境の汚染の防止に関する法律案、そして、水銀の大気排出規制等を措置する、大気汚染防止法の一部を改正する法律案を本年三月に閣議決定し、国会に提出したところでございます。

木内(孝)委員 ぜひ、どんどん前に進めていただければと思います。

 本条約、効力発生は、五十カ国が参加した後九十日がたってからということでございます。きょう採決されるのではなかろうかと思いますが、他国の状況なので状況をつかんでいるかわかりませんけれども、どのタイミングで、二〇一五年から一六年程度という見込みのようでございますけれども、万が一にも日本が第一陣に入れないということをちょっと心配しての質問です。タイミングについてお伺いいたします。

尾池政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のとおり、本条約は、五十カ国が締結した日の後九十日で効力を生ずることになってございます。

 現在、締約国は、米国等十一カ国でございます。

 現時点で発効の見通しにつき確定的なことは申し上げられませんけれども、国連環境計画、UNEPによりますれば、二〇一三年十月の本条約の採択の際に、二、三年のうちには発効を目指すというような発言がなされてございます。このため、今後、各国による締結に向けた努力が一層進むものというふうに期待をしております。

 我が国につきましては、現在、本条約とともに、先ほど答弁がありましたように、本条約を実施するための関連法案を国会に提出しているところでございます。条約についての国会の御承認及び関連法案の成立が得られれば、必要な政省令の整備等、速やかに締結に向けた手続を進めてまいりたいと考えてございます。

木内(孝)委員 本条約は、環境問題の解決に向けて日本が主導している大変意義深い条約だと理解しております。皆様の御努力に敬意を表して、次の質問に移りたいと思います。

 四月三十日に、日中韓環境大臣会合がございました。これは、今回で十七回目、開催され、PM二・五について議論がなされたと聞いております。

 水銀の話をしていますと、同時に、天気予報でも時々PM二・五のことがニュースになったりしますので、こうした水俣条約への取り組みの経験、これをPM二・五対策へ生かせる部分というのはないのか。

 それと、先般の会合におきまして、共同行動計画というのが採択されております。中身の詳細は別としまして、どんな内容なのかというのをお聞かせいただければと思います。

三好政府参考人 お尋ねの日中韓三カ国環境大臣会合におきましては、御指摘のとおり、今後五年間の共同計画に、PM二・五などの大気汚染対策として、科学的な対策効果の分析やモニタリング技術と予測手法についての協力を進めるために新たに二つのワーキンググループを設置いたしまして、三カ国の協力を強化していくということが盛り込まれたところでございます。

 これまでも、三カ国での政策の対話でございますとか、日中、日韓の二国間での協力を実施してきたところでございますけれども、今回採択されました共同計画に基づきまして、三カ国が連携いたしまして、大気汚染物質の排出量の推計でございますとか対策の費用対効果の分析、モニタリング技術や予測モデルの精度向上などに取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 環境分野はさまざまございます。先生御指摘のとおりこの水銀の分野もございますし、やはり私どもがこれまで公害対策ということで非常に苦い経験と効果的な対策を進めてきたという両面がございますので、そういう経験を生かしまして、北東アジア地域における大気環境改善のための取り組みを積極的に推進してまいりたいというふうに考えております。

木内(孝)委員 中国や韓国との関係改善の中で、こうした外交ではない環境分野で連携をとりながら進めていくというのも、非常に有効なやり方だと考えております。ぜひこの日中韓環境大臣会合も、具体的な進展があれば、それが結果的に日中韓の、三月に外相会談が行われましたけれども、そうしたものにもいい形で展開するのではないかと期待しております。

 続きまして、明治期の産業施設の世界遺産登録についてお伺いをいたします。

 内閣官房が主導する形で、文化庁及び関係省庁と連携して、先般、イコモスで世界遺産登録が勧告されました。最終的にどうなるかはわかりませんけれども、現時点で極めていい方向に行っているのかなと思っております。

 こうした世界遺産登録は、我が国が進めています観光立国としてのあり方、観光客も大分ふえているという状況の中で、今後の進め方等について、働きかけについてお聞かせいただければと思います。

成瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」が世界遺産委員会の専門的な諮問機関である国際記念物遺跡会議、いわゆるイコモスから世界遺産としてふさわしいとの評価と勧告を受けたことは、大変喜ばしいことだと考えております。この勧告を受けまして、本年六月末から七月にドイツのボンで開催される世界遺産委員会において、登録の可否が最終決定されることになっております。

 報道にありますように、韓国が本件遺産の世界遺産登録に反対しておりますけれども、本件遺産が対象とするのは一八五〇年代から一九一〇年でありまして、第二次世界大戦中の朝鮮半島出身の旧民間人徴用工の問題とは、対象となる年代や歴史的位置づけ、その背景が異なっております。

 本件遺産は、あくまでも、一八五〇年代から一九一〇年までの産業遺産としての顕著な普遍的価値に着目して推薦したものでございまして、これに対して、イコモスが世界遺産にふさわしいと評価し、本件を世界遺産に登録すべき旨の勧告が五月四日に通知されたところでございます。

 世界遺産において、イコモス勧告を尊重し、本推薦案件が技術的、専門的見地から審議され、勧告どおり世界遺産が決定されるよう、内閣官房、外務省、文化庁を初め政府一体となって、韓国はもとより世界遺産委員国に対して十分説明し、理解を求めていく所存でございます。

木内(孝)委員 ちょうどこの発表がゴールデンウイーク中でもありまして、多くの施設において観光客が、三倍、四倍から、中には十倍を超えたところもあると伺っております。

 こうした世界遺産となると、もちろん国内の旅行者もそうですけれども、地方創生の立場からも非常に意義深いと考えておりまして、引き続きの御努力をお願いいたします。

 ことし、長崎も今回勧告されましたけれども、来年ももう一つ、長崎の、今登録を目指しているキリスト教群の案件があると承知しております。その状況につきましてもあわせてお伺いできればと思います。

土屋委員長 誰かわかる人はいますか。

 これは通告はありましたか。

木内(孝)委員 いえ、していないので。

 来年も、長崎においてキリスト教群の世界遺産登録を目指している件がございますので、ぜひこの件につきましても関係省庁がいい形で連携をして、今回も内閣官房、文化庁、外務省、いい形で連携をしているというふうに理解をしております。引き続きの御努力をお願いいたします。

 時間も参りましたので、私の質問は以上とさせていただきます。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 水銀に関する水俣条約の締結に賛成します。

 条約の名前に込められた世界の決意というのは、水俣病と同じような被害を繰り返してはならぬということであります。

 その水俣病ですけれども、公式発表から半世紀たった今に至るも、多くの患者が苦しみ、そして救済を受けていません。

 最初に、岸田外務大臣に伺います。

 この条約には水俣の文字が冠されています。条約の意義について、また水俣病についての御所見を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 我が国としましては、水俣病のこうした経験を踏まえて、世界各国における水銀汚染対策の強化を進めるべきとの立場から、本条約の交渉に積極的に参画してきました。

 特に、水俣病と同様の健康被害及び環境汚染が二度と繰り返されてはならない、こうした強い決意を示すために、我が国は、条約採択の外交会議を我が国に誘致いたしました。また、同様の観点から、この条約の名称を水俣条約とすることを提案し、そして各国の幅広い賛意を得た次第です。

 本条約は、水銀が人の健康及び環境に及ぼすリスクを低減するための包括的な規制を定める重要な条約であると認識をしております。本条約の締結によって、水俣病の経験を有する我が国として、水銀から人の健康と環境を保護するための国際的取り組みの推進に積極的に貢献していきたいと考えております。

田村(貴)委員 水俣病の公式確認から五十九年、水俣病認定の判断基準のハードルは高くて、認定患者となったのはわずか三千人足らずであります。

 二度にわたる政治的解決が図られ、二〇一二年七月末に申請が締め切られた特措法では、六万五千百五十一人が申請をしました。このうち九千六百四十九人の方が対象外とされ、六千十三人の方は、療養費のみの支給となって、一時金を受け取ることはできませんでした。

 政府があたう限りの救済とうたった特措法でも対象から外され、また申請に至らなかった人が、今、裁判を通じて救済を求めています。ノーモア・ミナマタ第二次訴訟の原告は日増しにふえて、先月、第八陣の提訴時には一千一名、一千名を突破しました。

 北村環境副大臣、お越しでございます。お尋ねします。

 いまだこれだけ多くの患者が、病気の体を押して、裁判を闘ってでも救済を求めている、この現状についてどのように受けとめておられますでしょうか。

北村副大臣 お答えいたします。

 公健法の未処分者数や、御指摘のありました特措法にかかわる訴訟を提起されている方が大変増加しているという事実については、行政として重く受けとめているところであります。

 環境省といたしましては、水俣病による被害の深刻さをしっかりと認識した上で、世界全体で二度と同じ過ちを繰り返させない、地域の皆様が安心して暮らせる社会を実現する、そのために、真摯に考え、水銀対策、水俣病対策に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

田村(貴)委員 特措法の申請期間は、二〇一〇年の五月から二〇一二年の七月末のわずか二年余りでありました。患者団体や日本弁護士連合会初め、申請を締め切るなと多くの声が上がったにもかかわらず、政府は二年で申請を打ち切りました。

 私は、九州・沖縄ブロックの選出であります。候補者の時代から水俣病患者さんの声を聞いてまいりました。ノーモア・ミナマタ第二次訴訟の第八陣提訴の四月三十日、熊本県で原告や患者さん、被害者の方と直接会ってお話を伺ってまいりました。

 ためらいがあって特措法に手を挙げられなかった、特措法の制度そのものを知らなかったと申請をしなかった人たちが、今度、原告に多くおられます。つまり、特措法でうたったあたう限りの救済というのは、至らなかったわけであります。

 申請を二年で打ち切るべきではなかったのではないでしょうか。いかがでしょうか。

北島政府参考人 お答えいたします。

 特措法におきましては、「早期にあたう限りの救済を果たす見地から、相互に連携して、救済措置の開始後三年以内を目途に」「対象者を確定し、速やかに支給を行うよう努めなければならない。」とされていたところです。

 また、当時の環境大臣や関係県の知事も、テレビ等を通じて広く呼びかけるとともに、チラシやパンフレット等で広範に御案内するなど、心当たりのある方は誰でも申請いただくよう周知、広報に努めたところでございます。

 さらに、平成二十四年七月三十一日までに申請書を提出していただければ、ほかに必要な申請書類等の提出は後日でも認めるなど、柔軟な対応に努めてまいりました。

 このようなさまざまな取り組みによって、特措法に定めるあたう限りの救済のため、行政としてできる限りの努力を行ったものと考えており、現に、六万五千人もの方に申請いただき、三万八千人もの方が救済対象となったことは、水俣病問題において大きな前進であったと認識しております。

田村(貴)委員 全てを否定するものではありませんけれども、たくさんの問題があります。

 こんな指摘もあります。原告の方です。水俣市の六十六歳女性。両親は水俣病で救済されています。お姉さんは鹿児島大学で一時間の診察を受けて該当となりました。ところが、自分たち妹は公立病院でわずか数分の診察で非該当となった。感覚障害の検査でも腕のつけ根と指先などの比較の検査はなかったとずさんな検診を批判されています。審査のあり方を初め、この特措法ではいろいろ問題があったのではないかと私は思います。

 その特措法では、一万人近くの方が対象外となりました。悲しんでいる人、悔しい思いをされている方、水俣病の救済は今からどうやっていったらいいんでしょうか。

北島政府参考人 特措法の救済措置につきましては、法律に基づいて、申請受付期限終了後は申請を受け付けることはできませんが、公害健康被害補償法に基づく認定申請は引き続きお受けしております。

 また、特措法の対象外となった方に対しましては健康管理事業を実施しているほか、今回の救済措置に申請されなかった方を対象として、健康不安を訴える方に対しても健診を実施するなど、お一人お一人のニーズに対応した事業を進めてまいります。

田村(貴)委員 唯一ある救済策が公健法に基づく水俣病認定申請ということであります。

 では、その公健法認定審査数はどういう状況になっているでしょうか。未処分者数の状況について述べてください。

北島政府参考人 お答えいたします。

 公健法未処分者数は、平成二十七年三月末時点で千六百六十人でございます。

田村(貴)委員 千六百六十人の方が救済認定を求めておられます。申請を受けて、審査会の開催状況はどうなっていますか。

北島政府参考人 平成二十五年四月以降の各県市の公健法認定審査会の開催状況について申し上げます。

 熊本県に関しましては、平成二十七年三月に委員の任期更新等のために開催されたのみであると承知しております。鹿児島県に関しましては、平成二十六年十一月及び平成二十七年三月に開催しております。新潟県、新潟市に関しましては、平成二十七年三月に新潟県・新潟市公害健康被害認定審査会の参考人による意見報告がなされております。

田村(貴)委員 国の審査会、臨水審の状況についてはどうでしょうか。漏れていませんか。

北島政府参考人 臨水審におきましては、総合的検討の具体化通知に沿った審査を二回開催しております。

田村(貴)委員 そこでの結果について、もうちょっと詳しく述べていただけませんか。どれだけの方が該当になったのか、棄却された方は何人なのか。

北島政府参考人 十一名が棄却され、一名が保留となっております。

田村(貴)委員 一番多い一千七人もの申請者を抱える熊本県では、一昨年の三月から審査会そのものが開かれていません。臨水審や鹿児島では、開かれているものの、認定を受けた方は鹿児島でわずか一名であります。つまり、一千六百六十名の方が行政認定を申し込んでいるけれども、審査会が開かれていない。開かれたとしても、ほとんど棄却か保留となってしまう。

 五月二日の朝日新聞で紹介されていた人がいます。熊本県の四十九歳の方なんですけれども、一度目の行政認定は二十年かかって棄却された。二度目の申請では既に八年間待たされている。

 一体いつまで待ち続けなければいけないんですか。唯一の救済策がこんな調子でいいんですか。では、あたう限りの救済はどうやって果たすんですか。裁判を闘えということなんでしょうか。御答弁いただきたいと思います。

北村副大臣 現在、平成二十五年四月の最高裁判決を踏まえ、臨時水俣病認定審査会において、昨年発出した総合的検討の具体化通知に沿った審査を進めているところでございます。

 臨水審は、関係県市における審査の参考となることも念頭に置いたものでありまして、昨年十一月には鹿児島県の認定審査会も再開され、この通知に基づいた審査をいただいているものと承知をいたしております。

 認定審査会の開催については各自治体において判断されることでありますが、残る県、市においても審査を再開する準備を進めていると伺っているところであります。

 環境省と関係県市が二人三脚となって公健法の丁寧な運用を積み重ねることが重要であると認識をいたしているところでございます。

田村(貴)委員 それでは全然追いつかないと思います。

 審査会が開かれず、救済を妨げてきたのが、政府がかたくなに患者認定の根拠とする昭和五十二年判断条件であります。そして、昨年の三月七日に出した「公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定における総合的検討について」と題する運用指針であります。

 一昨年の四月、水俣病の認定をめぐって画期的な判決が最高裁判所で下されました。最高裁判決は、政府が水俣病の認定の根拠としてきた昭和五十二年判断で定めた複数症状の組み合わせがなくても、証拠を総合検討した上で、個別の判断で水俣病と認定する余地を認めたわけであります。これは、水俣病として認定されるべき患者が厳しい認定基準によって切り捨てられてきたことを裁判所が厳しく指摘したものであります。

 ところが、政府は、この最高裁判決が昭和五十二年判断条件は否定していないとし、これを前提として、新指針、新通知を出したわけであります。

 そこで、お伺いしますけれども、これまで行政認定された患者さんは約三千名であると聞いています。では、申請をした人は一体何人に上るんでしょうか。

北島政府参考人 お答えいたします。

 水俣病について公健法の申請をされた方々の数は、平成二十七年三月末現在で累計三万二千七百七十七人でございます。

田村(貴)委員 三万二千人を超える方が申請をして、そして認定された方が三千名。いかに昭和五十二年判断基準が厳しくて、そして被害者を救済する上で実態に合っていないかということがうかがえます。

 そして、新通知では、感覚障害だけで水俣病かどうかを判断するときは、有機水銀に汚染された魚介類を多食したことを確認して、有機水銀の体内濃度などを検討することを求めています。

 これは、できますか。四十年前、五十年前、あるいはそれ以上昔のへその緒を提出することができるのか。お母さんの髪の毛がどうやって探し出せるのか。できるわけないじゃないですか。

 二〇一三年の四月の最高裁判決で昭和五十二年判断は否定されたにも等しいと日弁連も意見を上げています。最高裁判決を曲げて、幅を狭めてハードルを高くしていると、患者団体、多くの関係者から強い批判の声が上がっています。

 昭和五十二年基準と新指針は改めるべきだと思いますけれども、いかがですか。

北村副大臣 公健法の運用についてでありますが、平成二十五年四月の最高裁判決において昭和五十二年判断条件は否定されてはおらず、水俣病の認定に当たっては総合的検討を行うことが重要であることが改めて指摘されたことを踏まえた上で、現行の認定基準である昭和五十二年判断条件に示されている総合的検討をどのように行うかを具体化した通知を昨年三月に発出したところであります。

 環境省としては、最高裁判決を踏まえた通知に沿って臨水審において丁寧な審査を積み重ねているところでありまして、昨年十一月には鹿児島県の認定審査会も再開をされました。この通知に沿って審査をいただいているものと承知をいたしているところであります。

 環境省としては、今後も、関係県と二人三脚となって、公健法に基づく丁寧な審査を行ってまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 丁寧な審査という言葉は厳し過ぎる判断基準である。一割の人しか認定されていないんですよ。これが唯一の救済策なんですよ。そんなかたくなな態度では、水俣病はいつまでたっても解決しないと思います。

 患者さんの声を紹介したいと思います。

 Tさん、一九七二年生まれの四十三歳です。昭和四十七年生まれです。熊本県の芦北町で生まれ育っています。指定地域であります。特措法では、暴露が認められないと非該当となりました。四歳年上のお兄さんは該当しています。おじいさんは認定患者で、両親は九五年の政治決着で救済を受けています。五歳のころから耳鳴りがし、七歳で手の震え。甘いものがわかりづらい味覚障害。風呂のお湯の温度がわからない。病院では水俣病と診断を受けています。

 特措法では、一九六九年十二月以降に生まれた人、つまり今まで対象となっていない方が、この特措法で対象となった、該当された方がいるのか、これについてお伺いしたいと思います。

北島政府参考人 昭和四十四年十二月以降出生された方で救済対象となった方は六人おられます。

田村(貴)委員 これまでの年齢による線引きを超えて六人の方が救済されているんだったら、少なくとも年齢による線引きはもうやめるべきではないでしょうか。

 チッソが工場排水を停止したのは昭和四十三年です。国が水俣病を発症する可能性がなくなったとするのは翌年の昭和四十四年です。しかし、海底は水銀汚泥でどろどろですよ。熊本大学の研究班が魚から高濃度の有機水銀を検出したのは昭和四十八年であります。やはり、ここの魚介類を食べたら水俣病になるというのは、これは素人が考えても当たり前じゃないですか。

 地域における線引きも見直すべきだと思います。

 特措法の対象地域でないところ、例えば熊本県の天草市などで、特措法の申請をして該当された方はおられますか。部長、いかがですか。

北島政府参考人 お答えいたします。

 確かにいらっしゃいますが、正確な人数は手元にございません。

田村(貴)委員 正確な人数はいいですけれども、該当者がいるということです。ですから、これまで国が、環境省が基準としてきたところの年齢や地域の線引きを超えるところでの該当者がいるということは、これはやはり多くの潜在的な患者さんがいるということではないでしょうか。

 昨年十一月に行われた水俣病健康被害一斉大検診、これで九七%の人に水俣病の症状があったと報告をされています。民間が行うこの大検診で水俣病と診断され、公的検診を受けて特措法で救済された方もたくさんおられるわけです。大検診の結果を環境省としてはどのように受けとめておられますか。

北島政府参考人 水俣病対策の推進に当たりましては、水俣病を正しく知っていただくことが重要であると認識しております。環境省といたしましても、関係県市と連携しながら情報発信に努めているところでございます。

 健康に不安を持たれている方につきましては、公健法のみならず、健診等を行うフォローアップ事業に申請いただくことが可能であり、こうした情報についても、今後も、関係県市と連携しながら、引き続き提供してまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 ちょっとお答えになっていないと思いますけれども、時間がありませんから進みます。

 昔から指摘されてきたことなんですけれども、水俣病被害者の実相をつかまずして対策は立てられません。これは熊本県も、実態調査をやってくれとずっと言い続けていますよね。今こそ、不知火海沿岸での実態調査と公的検診が必要ではないでしょうか。副大臣、いかがですか。

北村副大臣 特措法においては、政府は、メチル水銀が人の健康に与える影響等に関する調査研究を行う、その実施のため、まずは手法の開発を図ると定められております。

 このため、調査研究の実施のための手法の開発に向けて、有効な診断方法の開発、患者の症状の経年的変化等の把握、水銀への暴露の量と症状等の関係の解明等の課題について、基礎的知見を得るために研究を行っているところであります。

 具体的には、国立水俣病総合研究センターにおいて、脳磁計等を活用した客観的な診断方法の開発を行っておりまして、また、環境省においては、メチル水銀に関する最新の研究の国際的な文献調査等に取り組んでおるところでございます。

 水俣病の公式確認から五十九年が経過をいたしました今日、メチル水銀の健康影響に係る調査研究の手法開発は大変困難な作業でありますが、新たに最新の医療技術を用いた水俣病の治療法の向上に係る取り組みも含め、引き続き、水俣病に関する各種調査事業を着実に進めてまいりたいと考えているところでございます。

田村(貴)委員 簡単なことなんですよ。検診したらいいんです、全ての沿岸住民に。そして、救済策を求めて、該当される方が多かった、これが歴史なんですから。ぜひやっていただきたいと思います。

 熊本県で、原告それから支援者の声を聞いてまいりました。

 天草市倉岳の男性。自分は特措法で該当となりました。しかし、同じ地域で育った妻は、魚の多食を個人の漁師の証言であったために非該当となりました。裁判に参加しています。特措法には申請しなかった母親も原告になった。家族の救済のために頑張っていきたい。

 上天草市姫戸の男性です。ここは第二次訴訟で原告が最も多い地域であります。特措法の申請をなぜしなかったのか。水俣病患者がいると風評被害を受けると昔から伝えられてきた、だから、手を挙げることができなかった。自分は特措法で該当となったけれども、地域の数百人の原告全員の救済のために支援するということであります。

 いろいろなしがらみ、それから地域の偏見とか誤解、そうしたものを乗り越えて手を挙げてくる方が今多くなっています。ためらいが勇気に変わってきています。自分も家族も救済してほしいが、同じ症状で苦しむ集落や地域の者の全員救済を求めています。相当の住民が取り残されていると私たちは考えています。

 これから、潜在的な患者さんが、また裁判の判決によって救済され、さらに声を上げて救済を求めていくと考えていますけれども、環境省はこうした動向をちゃんと見据えておられるでしょうか。いかがでしょうか。

北村副大臣 特措法によりまして、一時金対象者、療養費対象者を合わせて約三万八千人の方々が救済の対象となったことについては、水俣病問題において大きな前進であったと認識をいたしております。

 環境省としては、今なお苦しんでいる方々がいらっしゃるという事実は重く受けとめておりまして、今後も水俣病問題に真摯に向き合ってまいりたいと考えております。

 引き続き、関係県市と連携しながら、地域の人々が安心して暮らせる社会を実現できるよう、しっかりと取り組みを進めてまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 これから潜在的な患者さんがもっと声を上げていく、そういう認識に立っていただきたいと思います。

 それから、ここを確認しておきたいんですけれども、チッソの子会社、JNC株の売却についてです。

 特措法では、環境大臣が承認すれば、チッソはJNC株を上場、売却して、会社を清算することができます。それはすなわち、水俣病の幕引きを促進するものであります。チッソが加害企業として水俣病の損害賠償責任を全うしていくことは当然のことであります。被害者団体も強く株式売却に反対しています。

 これまで環境大臣は、今の状況の中で承認できる状況にないと言明されてきていますけれども、今の段階では、環境省、いかがでしょうか。

北村副大臣 チッソの株式譲渡につきましては、水俣病特別措置法第十三条において、「救済の終了及び市況の好転まで、暫時凍結する。」こととされております。

 環境省といたしましては、現状において救済の終了とは言いがたく、株式譲渡を承認できる環境にはないと認識をいたしております。

田村(貴)委員 それはわかりました。

 副大臣、もう一つお答えいただきたいと思います。

 あたう限りの救済方針に変わりはございませんか。環境省は、今後どうやって、患者、被害者、家族の苦しみ、その願いに応えていかれるんでしょうか。環境省としての決意をお伺いしたいと思います。

北村副大臣 水俣病は、環境が破壊され、大変多くの方が健康被害に苦しまれてきた、我が国の公害、環境問題の原点となる問題であります。

 行政としては、その時々に、関係者と協力をしつつ、できる限りの努力をしてきたつもりでありますが、公式確認から五十九年が経過した今もなお、この問題に苦しんでいる方々がいらっしゃることは重く受けとめております。

 環境省としては、公健法の適切な運用を積み重ねていくことが重要であると認識をいたしており、今後も、関係県市と二人三脚、水俣病対策に取り組んでまいりたいと考えております。あわせて、地域の人々が安心して暮らせる社会を実現するための取り組みを進めてまいります。

 以上であります。

田村(貴)委員 外務大臣に、最後、お伺いします。

 水銀に関する水俣条約の締結に際して、日本は条約の作成段階から積極的に参加されてきました。二度と水俣病のような健康被害を世界で繰り返してはならない、この世界と日本の決意が見直されるためにも、きょうずっと私はお話ししました、いまだ解決にはほど遠い水俣病の被害者の救済を一日も早くなし遂げていただきたいと思います。安倍政権として取り組んでいただきたいと思います。政府一丸となって、これだけ多くの患者さんがまだ苦しんでいる、救済のために力を尽くしていただきたいと思いますけれども、お伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、先ほど来委員の質疑を聞いておりまして、水俣病が大変大きな惨禍をもたらし、そして、今もなお多くの方々がこの問題で苦しんでおられるということについて、大変重く受けとめなければならないと考えます。水俣の名を冠する本条約を契機として、改めて、政府として、水銀がもたらす健康被害について真摯に考え、そして取り組んでいくべきであるとの強い思いを持つに至っているところです。

 そのためにも、水銀から人の健康と環境を保護するための国際的取り組みの推進に積極的に貢献することが重要であると考えます。本条約の実施に当たって、外務省としましても、関係省庁としっかりと連携しつつ、しっかり取り組んでいきたいと考えます。

田村(貴)委員 あたう限りの救済を、文字どおり実践してください。

 質問を終わります。

土屋委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党と山本太郎となかまたちの玉城デニーです。

 水銀に関する水俣条約の締結について承認を求める件、最後の質疑者になりますので、重なる質問、それから御答弁などもあるかと思いますが、どうぞ真摯な答弁をお願い申し上げたいと思います。

 水銀に関する水俣条約の参考資料などを見ますと、この条約提出の経緯、るる述べられている資料を見ますと、水銀は水に溶けにくいため、一旦、大気中に放出されると、自然界を循環し続けるという性質を持っている、そのため、工業化が進むにつれ、水銀の人為的な排出による環境中の水銀濃度は増加し、我が国で発生した水俣病のような水銀化合物による健康被害や環境汚染が世界各地で発生しているということについて、これを世界的にやはり食いとめていこうという方向であるということで、この条約を積極的に我が国、本邦としては取り組んでいきたい、進めていきたいというその必要性も述べられています。

 その水俣病の重く苦しい経験を有する我が国として、すぐれた水銀代替・削減技術を生かすこと、世界の水銀対策に主導的に取り組むことが重要である。それから、条約発効前に締結をし、条約実施に関する各種の手引等を議論する第一回締約国会議に締約国として参加できるようにする必要もあるというふうに必要性が述べられていて、その必要性に関しては我が党としても了とするところであります。

 その上から、この水銀に関する水俣条約の承認を求めるに際して、少し逐条的になりますけれども、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、水銀の一次採掘についてお伺いいたします。

 水銀の一次採掘については、第三条において、その関係がここで述べられていますが、まずお伺いいたしますのは、新規の一次採掘禁止がこの三条でうたわれていることについての趣旨を、外務省にまず説明をお願いしたいと思います。

中根大臣政務官 本条約は、御案内のとおり、水銀の採掘から最終廃棄まで包括的に規制することを目的としております。

 特に、先ほどお話が委員からありました、水銀というのは、一度、環境中に排出されると、分解することなく環境中を循環する特性を有しております。このために、環境中の水銀濃度は、産業革命以降、人為的な排出等により大幅に増加し続けているという状況でございます。

 本条約においては、新規の水銀の一次採掘を即時禁止する趣旨は、このような環境中の水銀濃度の拡大の抑制に資することになると思っております。

玉城委員 では、我が国における一次採掘のこれまでの経緯に関しては、経産省にお伺いしたいと思います。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 我が国における水銀の一次採掘につきましては、国内での水俣病などの公害問題発生を教訓とした水銀の排出等の規制及び使用の削減によりまして、鉱山が相次いで閉山をしております。昭和四十九年までには全ての鉱山が閉山をしておりまして、それ以降、国内での水銀の一次採掘は行われておりません。

玉城委員 この三条では、この条約が自国について発効した日に自国の領域で行われていなかった水銀の一次採掘は、今の答弁で、禁止する、許可してはならないということになっているんですが、一方で、この発効した日に行われていた水銀の一次採掘に関しては、最長十五年の期間を経て全面禁止するというふうになっております。

 この十五年を経て全面禁止することという趣旨についてお伺いしたいと思います。

尾池政府参考人 お答えを申し上げます。

 水銀の一次採掘につきましては、交渉におきまして、これらの採掘を現に行っている国から、既存の鉱山の閉鎖は困難であり、一定の柔軟性が必要であるとの意見が出されました。

 そうした意見も踏まえまして、種々議論を行った結果といたしまして、既存の水銀の一次採掘は、自国について条約が発効してから最長十五年の間は許可されることになったということでございます。

 ただ、この条約は、このような柔軟性は認める一方で、十五年の猶予期間内に一次採掘により得られた水銀の用途あるいは処分方法につきましては、一定の場合に限定をしてございます。その上で、猶予期間の後、水銀の一次採掘が全面禁止されることになれば、人為的な排出または放出による環境中の水銀濃度の拡大の抑制が図られることになると考えてございます。

玉城委員 その点に関しては、強調するといいますか、日本が主導的な役割を果たすべきポジションでしっかり発言をしていただきたいというふうに思います。

 続いて、水銀添加製品の取り扱い、第四条関連についてお伺いいたします。

 この水銀添加製品の製造及び輸出入が許可されなくなる製品、これは附属書に記載されている品目ですね、その製品と期限について御説明をお願いします。

尾池政府参考人 お答えを申し上げます。

 本条約上、製造及び輸出入が禁止される水銀添加製品は、まず第一に、一定量以上の水銀を含有する電池あるいはスイッチ、蛍光ランプ、温度計、血圧計等となってございます。

 これらの製品につきましては、いずれも、二〇二一年以降、製造及び輸出入が禁止されることになってございます。

玉城委員 では、その附属書の水銀添加製品、使用年限の延長についての趣旨が第六条で述べられています。この使用年限の延長についての説明をお願いしたいと思います。

尾池政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のとおり、本条約上、附属書A及び附属書Bの段階的廃止期間につきまして、適用除外を登録することが可能になってございます。これにより、適用除外を登録する国は最長五年間、また、締約国会議が決定する場合には、さらに最長五年間の期限の延長が可能となってございます。

 水銀の規制に効果的に取り組むためには、各国ごとに経済社会事情が異なることにも配慮をしつつ、できる限り多くの国の条約参加を確保することが重要でございます。このことを踏まえまして、この規定は、一部の国が条約上の期限までに必要な措置をとることが困難との事情を抱えていることに鑑み、設けられたものでございます。

 なお、いずれの適用除外も、段階的廃止期限から十年を経過した後は、効力を有することはできないというふうにされてございます。したがって、適用除外を登録した国につきましても、この期限までには条約上の措置をとることが求められてございます。

玉城委員 水俣病のこれまでの訴訟などの取り組みを考えてみますと、時間がたつということが、この条約の中では五年、十年という非常に短いスパンのように思えても、五年、十年という間が非常に重要なのではないか。そこで、どのようにして技術的に、あるいは多面的に支援していけるのかということが、日本における立ち位置の重要性ではないかというふうに思料するわけですね。

 では、廃止品目がそれぞれ述べられております。この代替製品の技術開発に関する我が国の開発の現況等についてはどのようになっているか、経産省にお伺いいたします。

谷政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の産業界は、これまで、水銀の代替や低減技術の開発及び普及を世界に先駆けて、鋭意、進めてまいっております。

 条約の対象となります電池、蛍光ランプ、スイッチ、計測器等の水銀添加製品に含まれます水銀量は、現時点で、条約で定められた基準値を既に下回っているか、または段階的廃止期限までに下回る見込みであると認識しております。

玉城委員 ありがとうございます。

 では、今度は、条約の全体に対する総論について、お話を聞かせていただきたいと思います。

 世界における水銀使用量の内訳の中で、合計三千七百九十八トンのうち、小規模の金採掘に使われる水銀の使用量が全体の二一%を占めております。

 資料を見ますと、世界における水銀の大気排出量、二〇一〇年度の統計によりますと、合計一千九百六十トン。我が国における水銀の大気排出量は十七トンないし二十一トンというふうになっておりますが、世界における水銀の大気排出量、合計千九百六十トンのうち、先ほどの水銀使用量と同じように、やはり小規模における金の採掘が三七%というふうになっております。

 そこで、資料を見てみますと、零細及び小規模な金の採掘は、アフリカ、アジア、南米地域の開発途上国を中心に、安価かつ簡単な方法として水銀を用いた金の採掘が行われているわけですが、従事者数は全世界で一千万から一千五百万人程度というふうに言われていて、そのうち四百五十万人が女性、百万人は子供であるというふうな資料もございます。

 そこでお伺いいたしますが、総論において、附属書のA及びB記載以外の製品が規制されないことへの今後の対応等について、外務省にお伺いしたいと思います。

尾池政府参考人 お答え申し上げます。

 本条約は、その二十三条におきまして、締約国会議は、条約の実施について絶えず再検討及び評価をすること、条約の対象となる水銀添加製品につきまして定める附属書Aについても再検討することなどを規定してございます。

 したがって、締約国会議におきまして附属書の見直しが行われ、その結果、現在は条約の規制対象となっていない製品が将来規制対象となる可能性は排除されないということでございます。

 なお、附属書Aの見直しに係る期間につきましては、条約第四条におきまして、本条約の発効後五年以内に同附属書を再検討することが規定されてございます。

玉城委員 先ほど、零細及び小規模な金の採掘における水銀使用について説明をさせていただきましたが、やはり、アフリカ、アジア、南米地域などの開発途上国において、従事していらっしゃる方の人数が非常に多いということが懸念されるわけです。

 この零細及び小規模な金採掘を行っている国への今後の対応等について、外務省と経産省に最後にそれぞれお伺いしたいと思いますが、まず、外務省に、この金採掘を行っている諸国への条約上の取り決めにおける対応はどのようになりますでしょうか。お聞かせください。

岸田国務大臣 途上国におきましては、金鉱石に水銀を加えて、鉱石中の金を抽出するために水銀が用いられ、水銀汚染や健康被害等の問題が発生しております。

 こうした状況を踏まえて、この条約におきましては、このような金の採掘及び加工を行う締約国に対し、金の採掘等における水銀等の使用並びに水銀の環境への排出及び放出を削減し、そして実行可能な場合には廃絶するための措置をとる、こうしたことを求めている内容になっております。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 零細及び小規模な金採掘を目的とする水銀等の輸出につきましては、水銀に関する水俣条約上は可能でございます。

 しかしながら、我が国は、水俣病の重要な教訓を踏まえ、世界から水銀被害をなくするために力を尽くし、我が国から輸出される水銀等が世界の他の地域で健康被害や環境汚染につながることを避けるよう、最大限の配慮をする必要があると考えております。このため、我が国は、独自の措置といたしまして、外国為替及び外国貿易法に基づきまして、零細及び小規模な金採掘を目的とする水銀等の輸出を全面的に禁止することとしております。

玉城委員 ありがとうございました。

 できるだけ各国においても時間をかけずに取り組んでいけるように、日本の主体的な技術提供、それから、さまざまな関連での支援を積極的に行っていくことをあわせてお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ニフェーデービタン。ありがとうございました。

土屋委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 水銀に関する水俣条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

土屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時六分散会


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