衆議院

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第11号 平成27年5月20日(水曜日)

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平成二十七年五月二十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 土屋 品子君

   理事 秋葉 賢也君 理事 大野敬太郎君

   理事 島田 佳和君 理事 辻  清人君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 寺田  学君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      小渕 優子君    大塚 高司君

      河井 克行君    小林 鷹之君

      佐々木 紀君    鈴木 隼人君

      瀬戸 隆一君    渡海紀三朗君

      中根 一幸君    長坂 康正君

      星野 剛士君    松島みどり君

      武藤 貴也君    務台 俊介君

      緒方林太郎君    吉良 州司君

      鈴木 貴子君    長島 昭久君

      青柳陽一郎君    木内 孝胤君

      岡本 三成君    穀田 恵二君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        城内  実君

   防衛副大臣        左藤  章君

   外務大臣政務官      中根 一幸君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  藤山 雄治君

   政府参考人

   (内閣官房法曹養成制度改革推進室長)       大塲亮太郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 鈴木 秀生君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 吉田 朋之君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    林   肇君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    齋木 尚子君

   政府参考人

   (財務省国際局次長)   武内 良樹君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           長谷部正道君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           平井 裕秀君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           小川  誠君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     坂口 利彦君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    堂ノ上武夫君

   政府参考人

   (特許庁審査業務部長)  諸岡 秀行君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            秋本 茂雄君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 辰己 昌良君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  深山 延暁君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十日

 辞任         補欠選任

  薗浦健太郎君     瀬戸 隆一君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     長坂 康正君

同日

 辞任         補欠選任

  長坂 康正君     務台 俊介君

同日

 辞任         補欠選任

  務台 俊介君     薗浦健太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特許法条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 商標法に関するシンガポール条約の締結について承認を求めるの件(条約第六号)


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより会議を開きます。

 特許法条約の締結について承認を求めるの件及び商標法に関するシンガポール条約の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官山上信吾君、大臣官房参事官滝崎成樹君、大臣官房参事官鈴木秀生君、大臣官房参事官吉田朋之君、欧州局長林肇君、経済局長齋木尚子君、内閣官房内閣審議官澁谷和久君、内閣審議官藤山雄治君、法曹養成制度改革推進室長大塲亮太郎君、財務省国際局次長武内良樹君、農林水産省大臣官房審議官長谷部正道君、経済産業省大臣官房審議官平井裕秀君、大臣官房審議官小川誠君、貿易経済協力局貿易管理部長坂口利彦君、特許庁総務部長堂ノ上武夫君、審査業務部長諸岡秀行君、海上保安庁警備救難部長秋本茂雄君、防衛省大臣官房審議官辰己昌良君、運用企画局長深山延暁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 皆さん、おはようございます。

 きょうは気温も相当上がるというような朝の天気予報を見てまいりましたが、この外務委員会も同じように熱気あふれる質疑ができるべく頑張らせていただきたいな、このように思っております。

 それでは、まず、これは通告とは別なんですけれども、きのうの夜から、そしてまたけさも、ニュースなどで再三にわたって報道されておりますハワイで起きたオスプレイの事故について、大臣に伺わせていただきたいと思います。

 皆さんも御承知だとは思いますが、アメリカ海兵隊の新型輸送機オスプレイが訓練中に着陸に失敗をし、また炎上、そして一人が死亡、現在確認されているだけでも二十名以上が病院に運ばれている、このような報道がなされております。

 また、ここで特筆すべきは、現場となった基地というのも、ハワイで有名な、皆さんも行かれたこともあるかもしれませんが、オアフ島の東部、ラニカイビーチというところからわずか一キロというような場所で起こり、また、そこからは住宅地も非常に近い、そういった場で今回このような大きな事故が起こってしまったわけであります。

 しかしながら、アメリカ国防総省は、沖縄普天間基地に配備をされている同型のオスプレイについて、そしてまた東京横田基地に配備する計画に関しましても、影響もない、運用の計画を変更するつもりはない、このように断言をされております。

 日本政府としては、しっかりとまずは真相の究明が第一の優先事項ではないか、このような観点でアメリカ側にも強くその態度を示すべきだと思いますが、大臣の御見解はいかがでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の十八日に発生しましたハワイにおけるMV22の着陸失敗事故でありますが、この事故の発生を受けて、我が国としましては、米側に対しまして、着陸失敗の原因を含めて、関連情報を速やかに提供することを申し入れました。そして、あわせて、米側に対して、普天間飛行場所属のMV22オスプレイについて、引き続き安全面に最大限配慮するよう申し入れたところであります。

 この事案におきましては、まずは、MV22に搭乗しているのは米軍の兵士であり、そして米軍の兵士が実際死傷しているわけですから、この事故の原因を究明すること、そして再発防止等の措置をとるということ、これは米国側にとりましても大変重要な課題であると思います。まずは米国側において、原因究明あるいは再発防止についてしっかり検討が行われるものだと思います。

 日本側としましては、その情報をしっかり共有してもらわなければならないと思います。そういった観点から、米側にしっかりとした情報提供を求めていく所存であります。

 そして、今、米国政府においては調査が行われています。まだ調査の最中ではありますが、現時点で米側からの連絡によりますと、現状における米側の判断として、MV22オスプレイの設計に根本的な欠陥があると疑う理由は現状においてはなく、また、MV22オスプレイの通常運用を停止させるべき理由は発見されていない、こうした説明を受けているわけです。

 現状においてはこういった説明を受けておりますが、先ほども申し上げましたように、これは調査中であります。米側におきまして、先ほど申し上げましたような観点から、引き続き真剣に原因究明あるいは再発防止について検討が行われるものだと思います。

 ぜひ、引き続き、しっかりとした情報提供を受けるよう、我が国としてはしっかり働きかけをしていかなければならないと思いますし、あわせて、地元の関係者の皆様方にとりましては、こうした事案を受けてさまざまな不安を感じておられる、これは当然のことだと思います。こうした方々に対しまして丁寧な説明を行うということ、情報提供を受けた上でしっかりとした説明を行うということ、これにつきましてもしっかり努めていきたいと考えております。

鈴木(貴)委員 配慮をする、しっかりと真相究明はもちろんアメリカ側にあるわけでありますが、同型の機種を配備すると決めた日本政府としても、そしてまた国民においても、それは基地に配備される近隣住民のみならず、今、国民が非常に不安を抱いている事案でもあると思っております。

 そういった意味でも、岸田大臣、日にちまではちょっと忘れてしまいましたが、我が党の寺田委員が保守とは何かという質問をされたときにも、たしか岸田大臣は、最後の方で、謙虚な姿勢を持って国民の皆さんと向き合っていくという答弁をなされたように私も思っております。その答弁に私も感銘を受けたがゆえに覚えているということもあわせてつけさせていただきながら、ただ単に申し入れをするだけでは足りないのではないか、しっかりと真相を究明するまでは、それが明らかになるまでは、この運用の計画というものを一時停止する、運用の見直しをする、そこまではっきり断言するのが誠意ある国民への対応であり、それがまさに政治ではないかと私は思うわけであります。

 もしもう一言大臣からお聞かせ願えれば、一言お願いを申し上げます。

岸田国務大臣 米側に対しましては、原因究明あるいは再発防止に関する情報提供をしっかり求めていかなければなりません。

 そして、調査は続いております。そして、現時点においては、米側から、運用停止をする理由はまだ発見されていない、こうした説明を受けておりますが、引き続き情報提供をしっかり求め、地元の皆様方のさまざまな不安あるいは声に応えていかなければならないと思います。

鈴木(貴)委員 引き続き強い態度で、また、誠意ある国民への対応の方を強く求めさせていただきたいと思います。

 そして、きょうは、私の質疑時間の後半に大臣が席を外されるということなので、もう一点だけ先にお伺いをさせてください。

 ロシアのナルイシキン下院議長が、今、日本の方に来られております。

 そこで、さまざま新聞などでも報道もされているんですけれども、プーチン・ロシア大統領から安倍総理宛ての親書を持参することが関係筋の話で明らかになったという話が一点。これに対しての事実関係を、教えていただける範囲で教えていただきたい。

 そして、もう一つが、日本側の報道ではなくて、ロシア側のニュースサイトなどもちょっと見ていたら、議長の報道官を務めるエヴゲーニヤ・チュグノワ氏が、「先にそうした会見は、東京で」、会見というのはナルイシキン議長と安倍総理の会見です、「計画されていたが、現時点で状況は変化した」、このようにかぎ括弧つきで報道がなされております。

 また、このチュグノワ報道官は、記者団に対し、会見は現在確認されていない、このように断言もされたということなんですけれども、この事実関係、そしてまた、実際に計画があったものが、来られるこのタイミングで御破算になったというのであれば、その背景、理由というものを明らかにしていただけますでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のナルイシキン議長ですが、まさに本日、五月二十日ですが、日本におけるロシア文化フェスティバルの開会式へ参加する等のために訪日をしております。同議長の訪日は、基本的に民間ベースの招待によるものであり、政府が招待等をしているものではないわけです。

 そして、まず最初に、プーチン大統領からの親書について御質問をいただきました。こうした親書を持参するという報道があったことは承知していますが、御指摘の点につきましては、現時点ではまだ確認はされておりません。

 そして、安倍総理との会談について御質問いただきました。ナルイシキン議長は立法府の長でありますので、衆参両院議長との会談は予定されていると承知をしております。ただ、総理との会談については、現時点においてそういった予定は全くないと承知をしております。

鈴木(貴)委員 改めて確認をさせていただきたいんですが、この報道、特に向こう側のチュグノワ報道官によると、計画はあった、しかしながら現段階で状況は変化した、こういった言いぶりをされていらっしゃいます。

 ということは、この発言から考えても、素直に推察をしても、現況が変わる何かがあって会見を持つ予定がなくなったということだと思うんですけれども、そこまでの背景というか、そこまでの過程で、何か大臣で御存じなことがあれば教えていただけますでしょうか。

岸田国務大臣 ロシア側でどのような動きがあったかということについては、何か申し上げる、あるいは知る立場にはありませんが、少なくとも私の立場から申し上げるならば、ナルイシキン議長と総理との会談の予定は、現在まで全くないと承知しております。

鈴木(貴)委員 わかりました。

 ナルイシキン議長は、前回、日本に、東京にいらっしゃった際も私も御挨拶させていただきましたが、プーチン大統領のまさに側近と言われる方の一人であります。そういった意味でも、今、日ロ関係が非常に注目をされている、もちろんそれは北方領土問題、そしてまた平和条約締結を含めた意味でという中で、非常に重要なキーパーソンである。このような観点からも、ぜひとも政府に国益の観点からの対応を強く望むところであります。

 それでは、早速、二本の条約の質疑の方に入らせていただきたいと思います。

 まず、そもそも論だとは思うんですけれども、日本の知的財産に対する考え及び戦略についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 何度となく、前経産大臣もそうでありましたし、我々のもとに配付をされた資料の中でも、世界最高の知財立国日本を目指す、このような言いぶりがなされております。世界最高の知財立国というのは一体どういうイメージをされていらっしゃるのか、答弁を求めます。

堂ノ上政府参考人 研究活動、創造活動の成果を知的財産として戦略的に保護、活用しまして、我が国産業の国際競争力を強化することで知財立国は実現すると考えております。

 そのためには、単にイノベーションを生み出すというだけではなくて、特許権と営業・技術秘密、それから国際標準化、これらを適切に使い分けるいわゆるオープン・クローズ戦略によりまして、事業価値の最大化、国際的な優位性向上を図ることが重要であると認識しております。

 昨年六月に閣議決定をされました改訂版日本再興戦略においても、発明が権利として早期に保護され、利活用できるよう、特許の権利化までの期間を平成三十五年度までに平均十四カ月以内とするなど、世界最速、最高品質の審査を実現することを政府目標としておりまして、特許庁としてもその目標を着実に実施してまいります。

 あわせて、営業秘密の保護や標準化戦略の抜本的な強化といった取り組みも推進しまして、企業の知的財産戦略を積極的に支援してまいります。

鈴木(貴)委員 今、答弁の中でも、最速、最高品質でよかったでしょうか、というようなお話もありましたし、国際競争力を上げていくというようなこともあったかと思います。

 しかしながら、今、現状の方に目を向けてみますと、特許の出願推移、動向というのが、これは右肩上がりでは決してないようなデータが出ております。減少傾向と言ってもいいかと思うんですけれども。

 そこで、考え得る、減少傾向になってしまっているきっかけといいますか、背景、どのようにお考えでしょうか。

堂ノ上政府参考人 我が国におきましては、特許出願件数が二〇〇六年以降減少傾向にある一方で、出願年別の特許登録件数を見てみますと、こちらは二〇〇六年以降でも増加傾向にございます。

 このことは、企業の知財戦略が進化して、特許出願の量から質への転換が進んだということを示していると考えております。加えまして、企業活動のグローバル化に伴い、企業が一定の知財関係予算のもとで海外への特許出願比率を増加させた結果、国内への特許出願件数が減少している面もあると考えております。

 特許庁といたしましては、企業が質の高い特許を早期に取得できるよう、世界最速、最高品質の特許審査を実現しまして、世界の中で最もイノベーションに適した国となるよう環境整備を進めてまいりたいと存じます。

鈴木(貴)委員 量よりも質への転換ということもありましたが、これはまた、量の方も後押しをしていこうという政策も同時に図られているかと思います。

 そういった意味で、イノベーションであるだとか、国内ももちろんそうですが、国際社会の場においても競争力を高めるという意味では、日本の経済を支えている九割以上は中小企業であります。そういった観点からも、中小企業の皆さんへの支援の強化というものを図っていくということが、ボトムアップというか、この問題の根源的なところへの対策の一つになるのではないのかなと私なりに考えているのですが、中小企業への対策の現状、そしてまた、今後、国際競争力を増進させるために考えていらっしゃる新たな取り組みなどがあれば、ぜひお聞かせください。

諸岡政府参考人 中小企業が持ちますさまざまな技術やアイデアを知的財産として活用し、収益に結びつけることで、技術革新を推進し、産業競争力を強化していくということは大変重要でございます。

 このため、中小企業が知財について気軽に相談できる体制の整備や、中小企業の多様なニーズに応じた幅広い支援メニューを拡充するということとともに、世界に羽ばたく中小企業の海外展開を一気通貫で応援する支援メニューを拡充するということが必要でございます。

 そこで、平成二十七年度におきましては、全国四十七都道府県に設置されております知財総合支援窓口の弁理士、弁護士等の専門家を拡充するとともに、知財に着目した融資を促進する支援、また研究開発戦略等を支援するための特許情報分析支援等を創設したところでございます。

 また、あわせまして、海外展開に着目し、海外展開計画中の中小企業に対します外国出願費用の助成予算の拡充、それから中小企業の海外展示会出展等を支援する補助制度の創設、また事業展開において模倣品被害を受けた場合の調査とか、海外で訴えられた場合の係争費用の助成なども支援するということを拡充しておりますので、このような支援を通じまして、中小企業がグローバル競争に勝ち抜けるような応援をしてまいりたいと思っております。

鈴木(貴)委員 本当に、文字どおり目が覚めるような明瞭な答弁を今いただいたなと思っているところなんですが、ただ、内容でちょっと改めて確認をさせていただきたいんです。

 るる、さまざまな取り組みをしている、そしてまた、四十七都道府県、地方にまでしっかりとそういった網を張っていらっしゃるというようなお話であったんですけれども、ただ、同時に、今の日本における特許出願状況を見てみると、どうしても日本の企業は、国内での特許の出願の方は確かに質、量ともに伸びてきている、このような見解があるかもしれません。ただ、それこそグローバルスタンダードでいえば、アメリカにおいていえば半数以上、約五一%が海外にも出願をしている。そしてまた、欧州においては六三%ほどが、自国で出したものは同時に海外にも出している。しかしながら、国内に目を向けてみると、たかだか二四%、四分の一にも満たない。

 こういった現実を見てみると、国際化というのがなかなか進んでいないと受けとめるべきではないのかなと思うんですが、それに対しての見解はどんなようでしょうか。

諸岡政府参考人 先生御指摘のとおり、日本企業が外国に出願をする、ないしは外国の特許をとっていくという割合は、海外、欧米に比べて相対的に低うございます。

 ただ、特許等におきましても、また商標等におきましても、一斉に外国に出願する、そういうような仕組みもございまして、それにつきましては、まず、日本の皆様にそういう制度が利用できるということをお知らせするとともに、先生御指摘のように、特に中小企業につきましてはそういうような情報も届きにくいんじゃないのかということから、先ほど申し上げましたように、知財総合支援窓口において、何でも相談してくださいというようなワンストップの相談の場を設けるであるとか、また中小企業に対しましての海外出展の応援であるとか、また出願費用の助成であるとか、そういうようなものも順次メニューの多様化を図りつつ、かつ利用していただいて、促進をしていくということに努めてまいりたいと思います。

 御指摘ありがとうございます。

鈴木(貴)委員 私も、やはり知財を守っていくというのは、一つに、海外の潮流もそうでもありますし、世界の中の日本から世界を引っ張る日本にステップアップをする上でも、非常にこれは大事な話だ、このような意識を持っております。

 ゆえに、何点かその疑問点をあえて挙げさせていただきたいのですが、先ほども、世界最高の知財立国とは何かという一番最初の問いをさせていただいたときに、国際標準化、こういったことも一つで、取り組んでいかなくてはいけないテーマであるというような答弁をいただきました。

 であるならば、今度、特許の分類についての質問になってくるんですけれども、この特許分類、さまざま、それぞれの国が独自の方法を持っていると同時に、最近では、アメリカ、中国、韓国なども欧州特許分類というものをスタンダードに、流れを変えてきている。しかしながら、日本は、Fタームという日本独自の分類方式をとっている。

 まさに国際標準化に合わせていくんだというのであれば、こういった分類の種別も、諸外国の動きを見ながら欧州分類の方に合わせるというのも、私は標準化の一つではないかと思うんですが、今回そういったことが明記されていなかった。その現状、何ゆえ日本がFタームに、こだわっていると言うとちょっと言葉があれかもしれませんが、Fタームをとっているのか、背景ともども教えていただけますでしょうか。

堂ノ上政府参考人 迅速かつ質の高い審査を実現するためには、先行技術文献調査を効率よく、かつ的確に行うことが必要でございます。一方、多数の特許文献の中から目的とする文献を効率よく探すためには、精緻な特許分類を作成することが不可欠でございます。

 先生今おっしゃっていただきましたとおり、特許分類には世界共通の国際特許分類が存在しますけれども、国際特許分類は分類項目数が非常に少なく、このため、それだけでは十分な先行技術文献調査を行うことはできないという現状にございます。

 そこで、特許庁では、我が国の技術に即した形で、国際特許分類をさらに細かく分類した特許分類を独自に作成しまして、的確で効率的な先行技術文献調査を行っております。

 一方、先生御指摘いただきましたとおり、欧州や米国も独自の特許分類を作成しておりまして、近年、これらの特許分類と日本の特許分類をもとに、よりすぐれた特許分類を作成するための国際的な分類調和の議論がなされておるところでございます。

 特許庁といたしましては、我が国の特許分類のすぐれた点を主張しながら、分類調和の議論に積極的に参加してまいりたいと存じます。

鈴木(貴)委員 特許、そしてまた知財、私も、例えば大学だとかで専門で勉強をしてきたわけでもないので、今回この条約に当たってゼロから勉強をさせていただいたところなんですけれども、今のお話を聞けば、もちろん国際協調も大事だ、国際標準化が大事だ、しかしながら、分類は、今、日本独自のFタームを使っている。どうしても矛盾を私の中では解消し切れないんですね、今の答弁を聞いていても。

 また同時に、そういった難しさというか細かさが、中小企業の足を引っ張っているということにもつながりかねないんじゃないのかな、このように思っております。

 例えば数で出すと、出願件数に占める中小であるだとか個人企業の割合、例えばアメリカは二五%、日本においては何とそのアメリカの半分の一二%ほどである。ちなみに、お隣韓国も一五%と日本の上を行っております。

 そういった観点で、中小企業の支援をしていくんだと、先ほど、さまざま、本当にきめ細かい対応をとっていくんだという非常に前向きな答弁をいただいたんですけれども、であるならば、そういった分類であるだとかも、足並みをそろえる、また同時に、わかりやすい分類の方法を導入するというのも、これは一つの手ではないのかなと、改めて申し添えさせていただきたいと思います。

 また、先ほど、なるべく気軽に相談をできる窓口を開設されていらっしゃるということだったんですけれども、そういった場合において、やはり、わからないと、何から聞いていいかわからないというのが率直な思いだと思うんですね、特に中小の、町の家族経営でやっていらっしゃる皆さんであるとか。となった場合には、どうしても、そういった専門的知識を有する人たち、こういった方との直接的なコンタクトをとれるような環境整備というものが大事なのかな、このように思っております。

 そこで、知財における専門性を持ち、かつ、その知識を中小の皆さんだとかにも広くお伝えができるような人材育成というところも、一つ取り組んでいかないといけないと思うんですが、人材育成についてはどのような取り組みをされていらっしゃるでしょうか。

大塲政府参考人 法律家の養成、法曹の養成の観点から申し上げますと、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度、これは、国際社会も含めまして、幅広い分野で活躍し得る法曹を養成することを目指すものであります。

 こうした観点から、知的財産の分野につきましても、競争力と専門性を身につけた法曹が輩出されることが期待されている、こういうふうに考えております。

鈴木(貴)委員 正直、わかったようなわからないような答弁で、もう一度質問をさせていただきたいんです。

 養成をしていくと言っていただくのは非常にありがたいんですけれども、ただ、同時に、司法試験制度の見直しがなされたかと思います。その際に、選択の試験項目の中から知的財産というジャンルといいますか、教科、これが逆に廃止が今検討されている。

 というのは、冒頭申し上げましたが、世界最高の知財立国を目指す、このような戦略を打っている一方で、まさにその人材育成にも資する知財の教科を廃止する検討がなされているというのは、これは矛盾を感じるんですけれども、どういった経過なんでしょうか。

大塲政府参考人 司法試験の論文式試験の科目から、知的財産法を含む選択科目、これは八科目ありますけれども、これを廃止することにつきましては、両方の意見があります。

 一つは、司法試験受験者の負担軽減に資するという観点からこれを積極に解する、つまり、選択科目を司法試験の論文式試験から廃止するという考え方。他方で、選択科目を廃止することは、幅広い知識や教養を備えた多様な人材の育成という法曹養成の理念に沿わない結果を招く、こういう理由で消極に解する意見も強いところであります。

 司法試験における知的財産法を含む選択科目の廃止の是非につきましては、これらの科目の法科大学院での履修状況等も踏まえて、引き続き慎重に、慎重に検討してまいりたいと考えております。

鈴木(貴)委員 慎重に、慎重に議論をされて、ただ、廃止の議論の是非というものは、いつごろをめどに出されるんでしょうか。

大塲政府参考人 私どもの法曹養成制度改革推進室、これはことしの七月十五日を設置期限としております。それまでの間に結論を出したいというふうに考えておりますけれども、先ほど申し上げたとおり、司法試験の論文式試験の選択科目を廃止することにつきましては、さまざまな御指摘があるということもありますので、慎重に検討してまいりたいと考えております。

鈴木(貴)委員 直接所管の委員会ではないので深追いはしませんが、学生の負担軽減も考慮をしてということでありましたが、それと、目指している、しっかりとした知識を有する、国民の皆さんの負託に応えられるようなサービスといいますか、仕事を提供する人間を出していくという観点では、負担軽減にばかり余り偏重してしまうのは危ないのではないのかな。しっかりとそこら辺のバランスを組んでいただきたいというのと、改めて、知財立国日本を目指している、こういった方針に関連させると、肝心の知財の専門家、その強化がなくなるということは、何とも皮肉な話だなというのが率直なところであります。

 廃止のゼロか一かの話ではなくて、実際に今データを見てみましても、平成十八年、一五・八%、平成十九年、一六・一%。一%上がったと思ったら、今度は平成二十年からは、平成二十年、二十一年と一五%、二十二年で一四%、二十三年で一一・八%、二十四年で一一・三%、二十五年で一一・八%、どんどん選択者が下がっていっているということも踏まえると、知財に対して後押しをしようと国を挙げてやっている一方で、有識者の興味、関心というものが薄れているというようなアイロニーが生じている。

 こういった観点も踏まえながら、国民に対しての、そしてまた企業への支援、さまざまな広報活動にも、ぜひこういったデータをもしっかり反映させた上で、前向きな検討をしていっていただきたい、このようにお願いをさせていただきます。

 次に、商標権の侵害状況について、現状をお尋ねさせていただきます。

 いわゆる模倣品というもののニュースといいますか、よく我々も耳にするところでもありますが、模倣品を製造している主たる国というものはどのように認識をされていらっしゃいますか。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの商標権の侵害物品を製造している主な国を一概に特定することは困難でございますけれども、我が国の税関における知的財産侵害物品の差しとめ実績としては、商標権の侵害が大半を占めておりまして、仕出し地別の構成比では、九割以上が中国からの物品であると承知しております。

鈴木(貴)委員 九割以上が中国ということで、お答えするのが困難だと今おっしゃっていたので、どんな答弁が返ってくるのかなと思ったら、九割が中国と。これは非常に簡単な答弁ではなかったのかなと首をかしげるところでもあるんですが。

 さまざま、海外に在外公館があると思うんですけれども、そういったところに日本の企業から、こういった模倣品が市場に出回ってしまっているんだであるとか、実際に自分の企業がそういったことで不利益をこうむっているといったような相談だとかというのも、実際に受けられているかと思います。

 そこで、お尋ねをしたいんですけれども、在外公館において、知財の専門的な知識を有する専門官というのはいらっしゃるんでしょうか。

齋木政府参考人 外務省におきましては、ほぼ全ての在外公館において知的財産担当官を任命しております。

 知的財産関連問題について、海外において日本の企業、個人の方々を支援する体制を在外公館においてとっているところでございます。

鈴木(貴)委員 先ほど、税関のチェックでいくと九割が中国ということだったんですけれども、そうなると、中国には手厚い対策というか、例えば人員の配置だとかも行っていらっしゃるのかなと想像するところなんですけれども、現状はどのようになっているでしょうか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 今申し上げました知的財産担当官ということで申しますと、中国には北京に大使館がございまして、広州、上海、重慶、瀋陽、青島、香港等にも総領事館がございますが、そういったところ全てに知的財産担当官を任命して支援体制をとっているところでございます。

 また、それに加えまして、中国における知的財産の保護については、従来、さまざまなレベルの協議の場を活用して、中国の制度及びその運用の改善並びに個々の問題について、中国当局に働きかけを行ってきているところでございます。

鈴木(貴)委員 全てに配置がされていらっしゃるということですが、やはり全体の中の九割を中国が占めているというのは、非常に突出した数といいますか、現状かと思います。しっかりと、もし、今の人員でこれがまだ足りない、もしくはこういった制度がある、また、傾向をいろいろ検証してこういった人が欲しいというようなことがあれば、ぜひとも我々の方にも反映をしていただきたいな、このように念願をするところであります。

 やはり模倣品対策、しっかりと取り組んでいかなくてはいけないし、時代とともにといいますか、こういったグローバルな世の中において、事前に水際で、そしてまた、事前に対策をとっていくということが非常に求められていくのではないのかな、こういったところの対策もお願いをさせていただきます。

 最後に、この条約に関する質問でまとめ的な質問になるかと思うんですけれども、皆さんもきっと、この条約のレクを受けられたときに、二枚のポンチ絵をもとにレクを受けられたかと思います。その二枚のポンチ絵の下の部分に、この条約に我が国が、日本が入ることによって新興国も入ってくることを後押しする、そういった狙いがあるんだというようなことが、まとめのような一行で書かれていたかと思います。

 そこで、日本が今回入る審議を今まさにしているわけではありますけれども、新興国が後を追ってこないと元も子もないといいますか、その狙いがクリアされないかと思います。そういった意味で、具体的に新興国にどのような働きかけをしていく予定なのか、教えていただけますでしょうか。

岸田国務大臣 先ほど商標権の侵害について御質問いただきましたが、出願ということを考えますと、新興国の中でも中国及び韓国を初めとしたアジア諸国への我が国国民による出願、これは我が国国民による海外への特許出願の約四割、あるいは商標出願の約六割を占めています。したがって、我が国としては、これらのアジア諸国を中心に両条約の締結を促していくことが、我が国の産業振興あるいは国際競争力の強化のために重要であると認識をしています。

 一方、こうした多くの新興国においては、特許法条約及び商標法シンガポール条約を締結するに当たり、出願に関する制度を両条約の内容と整合的なものとするよう、それぞれの国内の知的財産制度を整備する必要があるというのが現実であります。よって、我が国は、アジア諸国を中心とした新興国を対象に、知的財産制度の整備に関するセミナーを開催したり、あるいは視察団や研修生を受け入れたり、また専門家の派遣などを行うなど、各種事業を実施しております。

 今後も、こうした人材育成事業を通じてこれらの新興国の知的財産関係部局との緊密な協力関係を構築しながら、我が国が両条約の締結に向けた働きかけを継続的に行う、そして締結のために必要なさまざまな支援を行う、こうした取り組みを積極的に行ってまいりたいと考えます。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 しっかりと、この狙いといいますか、我が国に対し、自国のもちろん国益を守るという観点、そしてまた国際競争力を向上させるという観点、そしてまた、説明にもあったように、新興国をリードしていく、そういった観点、さまざまあるかと思いますが、必要なしかるべき対策、取り組みを引き続き鋭意お願いしたいと思っております。

 そして、時間がもう限られているんですけれども、岸田外務大臣に一点だけ、最後、条約とまた関連しないところで、TPPについてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 さまざま、情報開示のことなどでも、報道、メディアがにぎわっておりましたが、今現在、鶴岡首席交渉官、そして大江次席交渉官から、岸田外務大臣御自身はどのような現状報告を受けていらっしゃるのか。

 ここは国会の場であり、我々も国民の代表者としてこの場に立たせていただいている者として、答えられる範囲で結構ですので、その現状、認識、岸田大臣から答弁をお願いします。

岸田国務大臣 TPP交渉ですが、まず、現在、グアムにおきまして、五月十六日から二十五日までの予定で、首席交渉官会合を開催しています。

 今回の会合では、三月及び四月に開催されました首席交渉官会合において残された課題について、引き続き議論を行っています。事務レベルで解決できるものは解決し、閣僚に判断を仰ぐ必要がある課題についてはお互いの間合いを詰める、こうしたことを目指して、今、交渉が進められております。

 TPP交渉につきましては、最終局面に近づきつつあるところであると認識をしております。我が国としては、関係国と協力して、早期妥結に向け、交渉に全力を尽くす考えでおります。

鈴木(貴)委員 時間ということなんですが、最後、一点だけ、端的で結構です。衆参両院の国会決議についての大臣の決意のほどを伺いたいと思います。

 衆参両院で決議されたものでありますから、これはやはりいささかも揺るがず、しっかりと守っていく、こういった気構えが必要かと思いますが、大臣のお考えを述べていただけますでしょうか。

岸田国務大臣 今申し上げましたように、TPP交渉は最終局面に近づきつつあるわけですが、農産物のいわゆる重要五品目につきましては、当然のことながら、衆議院、参議院の農林水産委員会の決議をしっかり受けとめなければなりません。

 そして、TPPは、いずれ最後は国会で御承認をいただかなければ成立しないわけであります。国会での御承認をいただけるような内容の協定を早期に妥結するよう、全力で取り組んでいかなければなりません。

 決議との関係においては、今言った思いで、しっかりと国益にかなう最善の道を追求していきたいと考えます。

土屋委員長 ここで、外務大臣は、参議院本会議にて答弁の要求があるため、一時御退席いただいて結構でございます。

鈴木(貴)委員 質疑の方は続けさせていただきます。大臣、ありがとうございました。

 ここで、内閣官房かと思うんですけれども、TPP交渉参加の第一次、第二次、第三次産業におけるメリット、デメリットをどのように試算を出していらっしゃいますでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 TPPは、二十一世紀型の新しい経済統合ルールを構築する野心的な試みでございまして、物だけではなくて、サービス、投資、さらには先ほどお話ございました知的財産、金融サービス、電子商取引などなど、大変幅広い分野で新しいルールを構築する、それによってこの地域に大きなバリューチェーンをつくり出そうとするものでございます。

 この新しいバリューチェーンが創出されること、また、それを支える原産地規則の累積の概念が認められることで、例えば製造業の部品メーカーのような技術のある中小企業などが、空洞化することなく、我が国にいながらにして海外展開、新しい市場に展開できるということが期待できるものでございます。

 また、サービスや投資の自由化、さらには知的財産や電子商取引等のルールの整備により、サービス業など、これも大企業だけではなくて、中小企業も含めて、海外の市場で活躍できる機会が大きく広がると期待しているところでございます。

 一方で、我が国の農林水産業につきましては、先ほど外務大臣から御答弁いただいたように、農林水産委員会の決議をしっかり守りまして、これは守っていくということが基本だと思いますが、他方、知的財産とか、あるいは検疫などのルールが整備されることにより農林水産分野の輸出促進に資するということ、さらには、世界の食の市場の拡大をグローバルバリューチェーンに取り込むなど、プラスの効果も期待できるところでございます。

 ただいま申し上げました効果につきましては、全てこれを定量化してあらわすということは、まだまだ世界的にも発展途上でございますが、いずれ国会で御審議いただくときには、経済の効果、TPPの効果というものについてきちんと御説明をする必要があるということを認識しておりまして、わかりやすく国民の方々に御説明できるように引き続き検討してまいりたいと思っております。

鈴木(貴)委員 質疑時間が来ましたが、今、私の質問は、メリット及びデメリットは何かという質問でありました。しかしながら、デメリットの部分に関しては十分な今答弁をいただいていない、このように私は非常に今遺憾に思っているわけであります。

 同時に、二〇一三年三月、安倍総理は、この交渉に参加をされたときには、国民に交渉の進展に応じて丁寧に情報提供する、このように述べられているわけであります。

 そういった観点からも、メリットがあればデメリットがある、これは当たり前の話であります。ゆえに、デメリットについてもしっかりと国民に対して示していく、その上での評価をいただくというものが私は求められているということを強く訴えさせていただきまして、質疑時間を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、武藤貴也君。

武藤(貴)委員 おはようございます。自由民主党の武藤貴也でございます。

 質疑の時間を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 早速、質疑の中身に入りたいと思います。

 今回は特許法条約と商標法シンガポール条約について法案質疑ということであります。

 両条約は、世界的に商標や特許にかかわる知的財産権の保護という観点で、制度の世界的な均一化あるいは手続等の効率化に資するものであって、当然、日本も批准をして、これに基づいて知的財産権の保護というのを国際社会とともにやっていかなければいけないというふうに私も思います。

 しかし、こういう条約は、国際社会が広く批准をしていないと逆に不公平が生じかねないということが言えるだろうというふうに思います。先ほど鈴木委員の質疑の答弁の中で、中国が模倣品を生産している九割に及んでいるという答弁がありました。当然、中国がこの条約を批准して守っていただくということが、法の支配といいますか、法の執行の平等、法のもとの平等という観点から必要不可欠なことなんだろうというふうに思います。

 そこで、今回の条約なんですけれども、特許法条約について中国が批准をしていないというふうに伺っています。当然、九割の模倣品をつくっている中国が同条約に入らないということであれば、この条約は非常に不公平が生じてしまうものだと私は考えています。日本政府としても中国に働きかけを行うということでありますけれども、中国が働きかけを行って簡単に批准するのであれば苦労は要らないわけで、恐らく中国は日本の働きかけに簡単に応じることはないんだろうというふうに思います。

 というのも、中国の国内の事情を考えますと、それで、模倣品や特許や商標の法や条約を犯しながら利益を上げている企業が多数いるわけで、これを取り締まるというのは中国国内の企業にとっても利益が生まれない状況が生じるということで簡単に応じない。

 法の支配というものを価値観として中国が日本と共有できていないのではないかというふうに私は思います。それは、近年、皆さんも御承知のとおり、中国の公船が尖閣諸島の周辺に入ってくる、国連海洋法条約の条文を犯して入ってくる。まさに、働きかけをしても、法のもとの平等あるいは法による支配というものに価値観が共有できていないということは、これを見れば何よりも明らかなんだと思います。

 まず第一点目なんですけれども、先ほど、中国が模倣品を製造している原産地国として九割に及んでいる。中国にどのようにこの条約に入っていただくように働きかけをしていくのかという点について御所見を伺いたいと思います。

城内副大臣 お答えいたします。

 中国を初めとしたアジア諸国への我が国国民による出願は、我が国国民による海外への特許出願の約四割、商標出願の約六割を占めているところでございます。したがいまして、我が国としては、中国を初めとしたアジア諸国を中心にこの両条約の締結を促していくことが、我が国の産業振興及び国際競争力の強化のために重要であると認識しております。

 一方、中国におきましては、特許法条約及び商標法シンガポール条約を締結するに当たり、出願に関する制度を両条約の内容と整合的なものとするよう、国内の知的財産制度を整備する必要があると承知しております。

 これまで我が国は、アジア諸国を中心とした新興国を対象とする視察団や研修生の受け入れ、専門家の派遣などの各種事業を実施してまいりました。今後もこうした事業を通じて、我が国から中国に対しまして、両条約の締結に向けた働きかけを継続的に行ってまいりたいと考えております。

武藤(貴)委員 今、働きかけを行っていくということでありますけれども、先ほど申し上げたように、働きかけを行っても入らないということが予測されるわけですね。ですから、それを踏まえて、日本はどのように対応していくかということも検討しなければいけない。これは、今、日本政府が外交の柱としております法の支配という価値観を広める意味でも、非常に大きな課題といいますか、障壁といいますか、論点をはらんでいるだろうというふうに思います。

 一九八二年にフォークランド紛争というのが、皆さん御存じのようにありまして、そのとき、サッチャーが回顧録でその当時の状況を振り返って、このような言葉を残しています。安倍総理も国会の演説の中でも引用していましたけれども、人命にかえてでも我が英国領土を守らなければならない、なぜなら、国際法が力の行使に打ちかたなければならないからだ。つまり、国際法が法の支配、法のもとの平等というものをしっかり国際社会で担保するためには、それを守らせる執行力、警察力、時には軍事力や武力といったものを含めた実力が必要不可欠なものなんだろうというふうに思います。

 日本政府は法の支配というものを世界じゅうに広めていくということを言っています。法の支配を確立するためには、現実を踏まえた対応、時には、今申し上げましたように、警察力や武力、軍事力を含めた法の執行力という部分での日本政府の国際社会に対する貢献というのとセットでなければ、先ほど申し上げましたように、法の支配が片一方では確立されていて、片一方では確立されていない、片一方は条約に拘束され、片一方の国は拘束されないというのでは、不公平が生じてしまうわけであります。

 そういう意味では、今申し上げましたように、法の支配というのは、それを確立するための実力というのとセットでなければ非常に無責任なことになっていくんだろうというふうに思います。この辺の政府の御認識をお伺いしたいと思います。

城内副大臣 お答えします。

 委員御指摘のとおり、法の支配というものは、自由、民主主義、基本的人権の尊重と並ぶ我が国の掲げる基本的価値と位置づけておりまして、これらの普遍的価値やルールに基づく国際秩序を維持、擁護することが我が国の国益であるというふうに考えております。

 例えば、特に海洋におきまして、法の支配を尊重せず、力による一方的現状変更を図る動きが現在懸念されておりますが、昨年五月のシャングリラ・ダイアログにおきまして、安倍総理は、海における法の支配の三原則を提唱したところでございます。

 御指摘の法の支配、これを尊重せず、力による現状変更を図る動きに対しましては、安全保障面で十分な備えを維持することも重要でありますけれども、政府としては、安全保障面での必要な備えを維持しつつ、引き続き、国際社会における法の支配の確立を外交政策の柱の一つと位置づけまして、力による現状変更の動きに対しましては国際社会が一致して取り組むよう、最大限努力していく考えであります。

武藤(貴)委員 ただいま御答弁いただいたんですけれども、これは、日本国内においてだけ法の支配、日本を守るという意味でですね、実力が日本では認められるということだけでは、国際社会で法の支配を広めるということにはならないんだろうというふうに私は思います。

 つまり、極端な例を言えば、地球上どこにあっても、やはり、国内では法を守るために警察力というのがあります。沖縄から北海道まで法をしっかり守らせて治安を維持するためには、警察力、一定の実力といいますか、こういうものがあってこそ、法の支配、治安が維持されるんだろうと思います。それは地球全体にも当てはまっていて、日本だけが法の支配を確立するために、自衛権行使といいますか、それぞれ防衛出動や海上警備行動等々ありますけれども、これだけでは国際社会で法の支配を確立するというのは不十分でありまして、地球上どこにあってもそれを担保する、法の支配を担保するための国際協力というのが日本に求められている責任、課題であろうというふうに思います。

 ですから、今の答弁だと恐らく不十分なんだろうというふうに思いますので、国民的な議論も必要でありますけれども、法の支配と言うのであれば、それを担保する実力が必要なんだということをセットで、今後、広報なり政策立案をしていかなければいけないだろうというふうに思います。

 私は、今回の特許や商標に関する条約でありますけれども、同じことだと思うんですね。

 法の支配というのは二つ課題を抱えているというふうに思っておりまして、一つは、今申し上げました、どうやって法の支配、法のもとの平等というのを担保するのかという課題が一つ。実際、できていないところがたくさんあるわけでありますから。それともう一つは、法自体が公平公正なものとなっていないケースがあるんじゃないかという私の問題意識があります。

 鯨裁判なんかはいい例だと思うんですけれども、これはICJで争われた事件で、皆さんも御存じと思いますけれども、JARPA2という捕鯨計画、日本がつくったものでありますけれども、これが科学的研究を目的とするものじゃないという結論が出された。

 科学的研究として十分か不十分であるかというのは科学的な論争なわけで、裁判所が捕鯨に関する科学者たちの意見に意見を述べる知見は持っていないわけであります。しかし、ICJの判事の多数決によって、必ずしも公正公平と言われない判断が下されているというふうに私は思っています。

 捕鯨裁判では、その科学的知見についての論争、要するに、科学的調査としては未熟だと。しかし、それを指摘したからといって、直ちに商業捕鯨だと断じるのは問題があると思うんですね。

 その点と、もう一つ、当事者適格の問題でありまして、これを提訴したオーストラリアは実際の損害が生じていないんですね、日本が行った捕鯨によって実益損害は全くない。国際法上の確立されたルールによれば当事者適格がないわけであります。当時、そこを日本政府は裁判の中で主張しなかったことをもって、日本国内の国際法学者も、政府がなぜ当事者適格で抗弁をしなかったのかというような指摘もしているわけであります。

 本来、当事者適格というのは、人道に対する罪とか、ジェノサイドや拷問禁止条約とか、こういう人類一般に、ユス・コーゲンスと言われますけれども、普遍的に存在する強行規範に対する違反でなければ当事者適格はないというのが原則でありますけれども、このときは実益損害がないオーストラリアの主張、訴えを受け入れて、日本が全面敗訴したというようなことがあります。

 ですから、法の支配といってICJが判決を出す、これが本当に公正であり公平なのかというところにも私は問題があると思っています。

 つまり、二点、法の支配を確立するための実力がないという今の国際社会の現実、それと、法の支配が公正公平だというのに限らないという現実、この二つの現実を踏まえて、法の支配ということを日本政府は訴えていかなければいけない。

 この問題点に対する政府の御所見を伺いたいと思います。

城内副大臣 先ほど御指摘ございました実力がないという話でございますけれども、残念ながら、国際社会におきます強制的な管轄権を有する司法制度は現時点では十分に発達しておらず、法の支配を最終的に担保する警察機関というものも存在していないというのが現状でありますが、そういう中で、先ほど申しましたように、国際社会における法の支配の確立を外交政策の柱の一つと位置づけ、力による現状変更の動きに対しましては、他の国、国際社会と一致協力して取り組むよう最大限努力しているところでございます。

 また、公平公正ということでございますが、反捕鯨国の影響力が強いICJにおける捕鯨裁判でございますけれども、これは、日本としましては、政府関係機関が一体となりまして、内外の有力な専門家の協力も得て最大限の主張を行ったところでありますが、我が国の主張が認められなかったことは残念であります。

 いずれにしましても、法の支配の確立を、繰り返しになりますけれども、外交政策の柱の一つと位置づけまして、国際裁判対策を強化するとともに、国際法秩序の発展、強化のために最大限取り組み、結果として公平公正な判断がなされることをこれからも努力していく所存でございます。

武藤(貴)委員 御答弁いただいたんですけれども、日本政府が法の支配を外交の柱としていく上で、それを担保する実力、警察力を含めたものが必要だという認識を持っておられるというふうな理解をさせていただきます。その上で、それも含めて国際社会に訴えていくということなんだろうというふうに、今答弁を聞いて理解をさせていただきたいと思います。

 次に、ちょっと話はかわるんですけれども、法の支配にもかかわることで、グレーゾーン事態の対応についてお聞きしたいと思います。

 これから衆議院で安保法制について、平和安全保障法制ですか、議論が行われていくというふうに思います。それの中に、実はグレーゾーン事態に関する法律というのは含まれていない。

 グレーゾーン事態に対応するといいますか、もうちょっと細かく言いますと、尖閣諸島周辺における、まあ、その辺の想定だと思うんですけれども、外国軍艦の無害通航に該当しない航行についての閣議決定、それから、公海上で国の民間船舶に対して侵害行為を行う外国船舶を自衛隊の船舶等が認知した場合における当該侵害行為への対処についての閣議決定、それと、離島等、島に対する武装集団による不法上陸等事案に対する政府の対処についてという閣議決定がなされています。

 実は、今行われている中国公船による領海侵犯に関してはこの閣議決定では全く触れられていない、つまり、切れ目になっている、すき間になっていると私は考えています。

 昨年、安倍総理が設置をした安保法制懇というところで出された報告書で、これに対してきちんと法整備をしなきゃいけないという報告がなされています。安保法制懇の具体的な報告書の内容は、軍船または政府公船である外国船舶を停止するための武器使用がどの程度認められるかについて、国際法上の基準に照らし、警察官職務執行法の範囲にとらわれず、国内法における検討を進めていく必要がある。

 しかし、政府は、この報告書を無視するというか、採用せず、軍艦と民間船舶の領海侵入に対してのみ閣議決定を行う、法整備をせずに、閣議決定を行うという対処のみを今回行っているわけであります。

 国連海洋法条約には、その三十二条で、「軍艦及び非商業的目的のために運航するその他の政府船舶」というふうに、軍艦と、今、領海侵犯をしている中国公船、これを一緒に書いているわけですけれども、日本政府は分けて、今、領海侵犯をしている公船に関しては分離して、何も対応に関しての検討を、閣議決定としては、あるいは法律としては、立案していないという現状があります。

 この閣議決定が行われた十四日の次の日、領海侵犯がなされています。ここずっと、近年の状況を見ますと、毎月三回領海侵犯が繰り返されている。これは必ず三回と言えるぐらい、規則的に領海侵犯が繰り返されている。

 中国の目的は、実効支配を揺るがして、例えば日米安保は施政下における領土に対する侵害があった場合に発動されるわけですね、施政権を揺るがせようとしている。アメリカは、主権に関してはどちらに帰属するかというのは明確にしていません。実効支配は日本がしている、要するに施政権は日本にあると言っているだけなんですね。ですから、中国の作戦としては、領海侵犯を繰り返して、施政権が及んでいない、確立されていないということを証明しようということなんだと私は解釈をしています。

 近年、どんどんエスカレートしていまして、平成二十五年なんかは、これは東シナ海の公海上でありますけれども、尖閣諸島の北百数十キロというふうに聞いていますが、海上自衛隊の護衛艦がレーダーの照射を受けた。火器管制レーダーの照射というのは、攻撃する直前に行う行為であって、非常に危険な行為であります。レーダーを照射しただけで、自衛権の発動だといってこっちが攻撃するというようなことも国際法上は考えられるわけです。ですから、非常に緊迫して、危険な状態がずっと二年以上続いているということが言えるんですね。

 今、中国公船が頻繁に入っていますけれども、その接続水域を越えた公海上では、中国海軍が待機しているんだということも考えなければいけない。この海軍の船が今にも入りそうだというところにいるという理解のもとで、私たちは、やはり現状を許してはいけないと思うんですね、この入ってくるという現状を。

 国連海洋法条約には、その二十五条で、「沿岸国は、無害でない通航を防止するため、自国の領海内において必要な措置をとることができる。」というふうになっています。無害でない通航、今、中国公船がやっているのは、無害通航権の行使ではありません、有害通航権です。これを、侵入を防止するために、日本は必要な措置をとることができるんです。ところが、政府は、防止するために必要な措置はとっていない。今回の閣議決定も、中国公船の侵入に対して防止するようなこと、論点は、全く含まれていません。

 この点について、政府の見解を伺いたいと思います。

藤山政府参考人 今お尋ねの、今回についてはというのは、恐らく五月十四日の閣議決定についてということだと思いますけれども、この閣議決定に向けては、昨年の七月一日に定められた閣議決定に基づいて、これまで武力攻撃に至らない事態への対応はどうあるべきかということを我々政府部内で検討してきたということです。

 今回の閣議決定、つまり、自衛隊への下令の手続の迅速化という閣議決定ですけれども、これは当然ながら、さまざまなそういった緊急事態に対応するために、自衛隊に何がしかの下令をする必要がある場合の手続の迅速化ということで定めております。

 先生お尋ねの、平素といいますか、入ってきている中国の海警のことを公船とおっしゃっていると思いますけれども、この公船、海警につきましては、政府としては、一義的には海上における警察機関である海上保安庁が対応する任務であるというふうに考えておりまして、そういった意味で、まずは海上保安庁が適切に対応し得るということで、今回の閣議決定には公船に対する対応は含まれていないということでございます。

武藤(貴)委員 そういうことじゃなくて、中国公船の有害通航権を防止するためにどのような措置がとれるかという質問です。中国公船の有害通航を防止するつもりはありますか。

山上政府参考人 お答えいたします。

 まず、無害通航かどうかということを委員御指摘になりました。

 国際法上……(武藤(貴)委員「有害か無害か聞いていないです。それはもう答弁出ています」と呼ぶ)

 その上で、お尋ねの趣旨は、領海侵入を繰り返す外国公船に対してどういう対応がとれるのかということであったかと理解いたします。

 あくまでも国際法上の一般的な理解として申し上げれば、国際法上、一般に公船は旗国以外の国の管轄権からの免除を有しているというのは委員御案内のとおりかと思います。したがいまして、旗国以外の国は、旗国の同意なく立入検査あるいは乗員の逮捕といった行為を行うことはできないと考えられております。

 また、領海におきまして外国の公船が無害通航に当たらない航行を行っているような場合には、沿岸国としましては、公船が有する免除を侵害しない範囲で、先ほど委員から御指摘がございました国連海洋法条約第二十五条一項に言う「無害でない通航を防止するため、自国の領海内において必要な措置をとることができる。」ということになっています。

 ただ、この点で一つ留意すべきことは、そのような措置は、侵入してきました公船、当該公船の侵害行為との比例性が確保されたものでなければならないというのも国際法上の考えでございます。

武藤(貴)委員 その比例性の要件ということなんですけれども、まずスウェーデンが、法律で、一九八三年に国連海洋法条約に基づいて、外国の国の船舶が敵対意図を示してスウェーデン領域境界を越える場合は事前の警告を与えることなく武力を行使すると法律に定めています。それまでソ連の潜水艦とか船が領海侵犯を繰り返していたんですけれども、事前通告なしで武力を行使するという法律が定められれば、当然、怖くて領海侵入をやめますよね。それでとまったというケースがあります。

 今、比例性の要件と言いましたけれども、中国公船に関しての免除は、無害通航権の行使をしている場合に刑事裁判権と民事裁判権の免除を規定しているのであって、有害通航権の防止に対して何ら免除を与えていません。ですから、必要な措置をとることができるんですね、防止するために。

 これは安保法制懇の資料の中にも入っているんですけれども、「個々の侵害行為が単独では「武力攻撃」に当たらない場合でも、そうした侵害が「集積」している場合は、これを「武力攻撃」とみなすことができ、自衛権を行使することが国際法上可能であるとの考え方も否定はされない。」これは衆議院の安全保障委員会の、一九八六年ですね、小和田外務省条約局長の答弁で出ています。

 この武力攻撃に当たらない場合でも集積している場合は武力攻撃とみなすことができるというのは、これは尖閣に当てはまった場合にどういうことが言えるんでしょうか。

山上政府参考人 今委員からスウェーデンの例に言及がございました。

 実際に、日本が尖閣においてどういう措置をとるかということにつきましては、まさに個別具体的な状況によるんだろうと思います。個別具体的な状況に応じて適切に対応していくということに尽きるかと思いますので、この場で一概に、断定的に申し上げることは困難かと存じます。

 他方、政府としましては、今回の平和安保法制によりまして、現下の安全保障環境におきまして、武力攻撃に至らない侵害に際し、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保しようということで、体制の整備をしたところでございます。

 御指摘のような観点も踏まえまして、今後も、訓練等の取り組みを着実に実施する、あるいは我が国を取り巻く安全保障環境の変化にも的確に対応し得るよう不断の検討を行っていくということかと思います。

武藤(貴)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、今月に入って二回領海侵犯がされています。今までの傾向でいうと、あと一回、今月が終わるまでに領海侵犯がされると思います。これを日本政府はしっかり防止しなければ、実効支配が確立されているとは言えなくなってくる状況が生まれると私は思います。ですから、防止するために、きちんと必要な措置を検討して、とっていただきたいというふうに思います。

 以上で質疑を終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 維新の党の小熊慎司です。

 特許法条約についてお聞きしますが、これは非常にいい条約で、しっかり進めていかなければならないわけでありますが、一方で、国際的にもなのかもしれませんし、国民の多くは、まあまあ、日本は物まねだみたいなイメージがあって、でも、ちゃんとデータを見れば、日本は知財に関してはトップクラスですし、企業別においても日本の企業がトップを占めているという状況であります。

 ただ、やはり、ほかの特許の出願件数が多い国を見てみると、査定率においては、日本は、なかなか、ちょっと低い部分があるなというふうに思っています。こうやって知財をしっかりやっていこうということであれば、海外からも来るでしょうし、日本が出す場合はその国の事情ですけれども、この査定率を上げるという意味では、人的にも、いろいろな意味でも、充実化させていかなきゃいけないという側面もあります。

 今回、この条約によって、いろいろな意味で事務的な部分が整理をされていくということになっていくわけでありますけれども、それにしても、ほかの国と比べれば査定率が低いという点に関しては、これは改善をしていかなきゃいけないというふうに思っています。そうした査定率を上げていくために、今後どう取り組んでいくのか、まずお聞きいたします。

堂ノ上政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の特許査定率につきましては、二〇〇九年におきましては約五〇%という水準でございましたけれども、その後、直近の二〇一三年に至りまして、約七〇%、この数字はアメリカなどとほぼ同様の水準まで推移してきております。この原因でございますけれども、我が国の出願人が出願の厳選を進めまして、より質の高い発明を出願するよう取り組んできたことの証左だと考えております。

 特許庁といたしましては、これに対しまして、質の高い特許権を付与していくということが重要だと考えておりまして、審査の質の一層の向上に取り組んでおります。具体的には、品質管理を担当する者の増員など品質管理体制の強化、審査基準の抜本的な見直し、それから面接審査の充実など出願人とのコミュニケーションの強化、出願人等に対する満足度調査の継続的な実施など、審査の質の向上につながるさまざまな取り組みを進めているところでございます。

 こうした取り組みを通じまして、審査の迅速性を維持しながら、強く、広く、役に立つ特許権の付与に向けて審査の質の一層の向上に注力してまいりたいと存じます。

小熊委員 これまでの努力で査定率が上がってきたということでありますから、これからなお一層そこを努力していただきたいというのと、あわせてお聞きしますけれども、日本の場合、特許取得が重要という形になっているんですが、一方で、まさに特許出願率が高いアメリカでいうと、まず、とにかく出願だ、取得する前にそこでまたいろいろな訴訟に持ち込んで勝てばいいんだみたいな傾向があるわけですね、米国流、アメリカ流というところが。

 日本はちゃんと取得をするというところに重要性を置いているんですが、この特許法条約によって世界の垣根がなくなってくる、ここの競争性も発揮されてくるという中では、この戦い方の、特許に対する各企業なりなんなりの取り組みの姿勢の違いというものが今でもあるわけです。これからもそれが如実になって出てくると思いますし、アメリカみたいに、出願しておいて、似たようなのがあれば訴訟を起こして、それで勝って金を得ていく、こういう部分に対して、特許庁はどういうふうに取り組んでいきますか、この対策をとっていきますか。

堂ノ上政府参考人 御指摘のとおり、各国ビジネス界それから司法においても、知財の活用の仕方においてはさまざまな違いがございます。

 こうした各国で我が国の企業がきちんとビジネスができるように、特に中小企業を含めまして、こういった権利のとり方、それから権利の活用につきまして、さまざまな取り組みができるように、特許庁としても、情報収集とともに、こうした情報の提供を積極的に行いまして、支援をしてまいりたいと存じます。

小熊委員 国際的に平準化していくわけですから、といいながらも、同じルールで同じ価値観で競争しているかといえば、そうじゃない背景があるということでありますから、日本の国益のためには、そういった裏のルールというか攻め方の違いという部分に関しては、しっかりスポットを当てて、対策をとっていかなきゃいけないという意味では、今後の努力としての課題だというふうに思っています。

 そうした意味で、海外にも出願しやすくなってくるということであれば、これに対する支援はどういうふうに取り組んでいかれますか。

諸岡政府参考人 世界的に特許を出願する、または商標を出していくということをしっかり後押ししていかなきゃいけない、こう思っておるわけでございまして、海外での事業活動において必要となる知的財産権の取得ということをしっかり応援していくということでございます。

 特許庁におきましては、全国四十七都道府県に設置されております知財総合支援窓口におきまして、弁護士、弁理士等の専門家を活用いたしまして、特に中小企業の外国出願の際の手続とかノウハウといったものに対する助言を実施しておりますとともに、中小企業の外国出願に係る費用負担の軽減のために、外国出願費用の補助金、国際出願手数料等の軽減措置を実施しまして、資金面からの支援を実施しているところでございます。

 二十七年度におきまして外国出願補助金の予算額を大幅に拡充するなど、今後とも、外国への出願支援の強化を図ってまいりたいと思っております。

 よろしくお願いいたします。

小熊委員 そこで、それはそれでやっていただいていいんですが、担当のあれを超えるのかもしれませんけれども、入り口をしっかり整備する、しっかり日本の国益を確保していくということはもちろんいいんですが、出口を見ると、出口というのは、結局、特許をとった結果どうなっているのかといえば、日本は特許をいっぱいとっているんですけれども、企業別に見ても結構とっていて、例えば、企業別でもトップクラスである電機業界、特許をいっぱいとっている、世界のトップを走っているといいながら、実際、電機業界は韓国やそういうところに負けちゃっているわけですよ。結局、知財がちゃんと財産となっていないということ、ビジネスに結びつけていないということになっているわけですね。

 件数をいっぱい持っている、特許取得も多い、国際的にも、ほかの国でも特許をいっぱいとっている、電機業界を一つとっても。でも、それが、量産体制の違いとかもありますから、業界として発展していっていない、それが並行していない、逆に反比例しているという状況なんですね。

 出願とかそういうことに支援していくというのはもう当たり前のことなんですが、これはやはり戦略的にいうと、結果、ビジネスにどう結びつくのかということも含めてやっていかないと、はいはい、取得率が上がってよかったですねといって、自己満足で終わっちゃうわけですよ。ビジネスにしっかり結びつけていく、利益に結びつけていくという観点から答弁できますか、どうですか。

諸岡政府参考人 委員御指摘のとおり、特許権というのは、取得という段階は大変大事でございます、権利化をするということは大変大事でございますが、ビジネスの面からいたしますと、やはり収益にどう結びつけるか、もうけにどうつながるか、ビジネスとして事業化するということは大変大事だと思っています。

 私どもも、特許を単に取得することのお手伝いというのも当然でございますし、また、先ほど申し上げました知財総合支援窓口におきましても、それをどうビジネス化するかという観点のお手伝いも順次拡充していきたいと思っております。

 そのような御指摘も踏まえながら、しっかりこれから収益にどう結びつけるかという対策も、メニュー強化を図りながら、拡充しながら取り組んでいきたいと思っております。

小熊委員 さっき堂ノ上総務部長も、質の部分もと言ったというのは、まさに質というのは、だから、そういうことなんですよ。これをしっかりやっていかないと、査定率が上がったから喜んでいるだけじゃなくて、質を見ると言ったんですから、それは結果もこうなっていますよと言わないと、質を見ていますねということになっていきませんから。これは皆さんの担当の枠を超えて、業界のあり方とか、日本のいろいろな規制とか支援制度とかというものも含めて総合的に考えていかないといけないんです。

 特許件数が多い割には結びついていない、打率が悪いという意味では、これは本当に大きな課題ですから、今後しっかりと、この条約も締結すれば、これがまたさらに競争性、いろいろなグローバル化が進んでいく、この特許の世界でなっていくわけですから、より今以上に努力をしなければいけないというふうに思っていますので、今後の努力、対策をしっかりとしていただくようお願いしまして、次の質問に移ります。

 特許関係はもう結構です。

土屋委員長 では、特許庁のお二人、どうぞ御退席ください。

小熊委員 それで、次の質問はちょっと条約とは関係ないんですが、急遽起こった事件で、他の委員会でもちょっと話題になっていましたけれども、台湾が輸入規制を強化する、偽装によって。

 今、外務省を初め関係省庁が科学的根拠に基づかない原発事故以後の輸入規制に関しては努力をしていて、この四年間の中で科学的根拠に基づく対応をしていっていただく国がふえたというのは、これも事実であります。再三この委員会でも言ってきましたけれども、でも、残念ながら、貿易量の多いアジア地域においては逆にその規制がかかったままで、これを努力しているところでありますが、結果が出ていないという状況は、これまでの質疑でも明らかになったところであります。

 そうしたさなかに、台湾がさらに規制を強化するということ、これも政府の方はいろいろな対応をとろうというところでありますけれども、では、この原因をつくった、偽装した会社、どんな会社かと聞いたら、まだわからないというのが問い合わせした結果だったんですが、現状、今どういうふうになっているか、お願いをいたします。

城内副大臣 お答えいたします。

 委員御承知のとおり、台湾は、東日本大震災直後から、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の五県からの食品の輸入を全面的に停止しております。

 これに加えまして、ことしの四月十五日、台湾当局は、五月十五日から日本産食品の輸入規制を強化する旨の公告を発出し、新たな規制措置がその公告どおり施行されているところでございます。

 その結果、現在、台湾におきましては、先ほど述べた五県からの輸入は引き続き停止されたまま、それ以外の四十二都道府県の全ての食品について産地を証明する書類の添付が必要になったほか、一部の地域の特定産品につきましては、放射性物質の検査書類が必要となっております。

 今般のこうした台湾当局による輸入規制強化は、科学的根拠に基づかない一方的な措置でありまして、極めて遺憾であります。政府としては、交流協会を通じて、台湾側に対しまして規制の強化の撤廃を求めてきているところであり、また、交流協会を通じまして、既に累次にわたり申し入れを行っているところでございます。

 一連の申し入れにおきまして、我が方から、根拠や科学的データを示すことなく規制が強化されたことは受け入れられないということを伝えながら、また、輸入規制の撤廃、緩和を強く要請するとともに、具体的な進展が見られない場合には国際機関等の場に持ち込むことも考えなければならない点、こういったことも台湾側に伝えてきております。

 いずれにしましても、引き続き、早期撤廃が実現するよう努力してまいる所存でございます。

小熊委員 だから、その原因をつくった会社への、ちゃんと調査をして、その会社が明らかになれば、台湾当局だけではなくて、そうした会社に対しても、わかっていないということ自体が、情報をまだつかんでいないということがちょっと私は信じられないんですけれども、これはしっかり情報を得て、その会社に対しても抗議すべきだと思うんですけれども、明らかになった際は、それは、する予定はありますか。

長谷部政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省といたしましては、本件の産地偽装とされる問題につきましては、日台が協力して事実関係の解明に取り組んでいるところでございます。

 ただし、台湾側が産地偽装とする根拠について、台湾の輸入申告書の問題なのか、あるいは商品に添付されている包装ラベルの記載ルールの問題なのか、こういったことにつきまして、事実関係も含めて台湾側に現在説明を求めているところでございまして、これまでのところ、残念ながら、台湾側から十分明確な回答が得られていないというような状況でございます。

 このため、日本側といたしましては、引き続き、事実関係の解明に向けまして、経済産業省を初めとする関係省庁と連携しながら、国内関係事業者からの情報収集等を進めているところでございます。引き続き、台湾側に対しましては、早急に明確な回答を行っていただくよう求めていきたいと考えているところでございます。

小熊委員 その際、明らかに企業が特定されれば、その企業に対しての何か対策をとるんですかという質問をさせていただいているんですが、そこはどうでしょうか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省といたしましても、日本産食品の産地偽装とされる問題につきましては、偽装の有無であるとか、日台の関係事業者等に何らかの問題となる事実があったかなど、事実関係の解明がまずもって重要だというふうに考えております。

 現在、日台が協力をいたしまして、事実関係の解明に取り組んでいるところでございます。偽装とされる根拠であるとか事実を明確化するため、台湾側に説明を求めているところでございます。また、事実関係の把握のため、農林水産省と連携をいたしまして、国内関係事業者に対して情報収集等を行っているところでございます。

 今後とも、関係省庁と連携しつつ、まずは事実関係の解明に向けて取り組んでまいりたいというふうに考えております。

小熊委員 何のために事実を解明するかといえば、再発防止なわけですから、起こした会社に対してどうするんだという話なんですよ。今までやっていること、事実解明というようなことは、何回も二人とも答弁してわかっているんです。

 何のために解明するのかといったら、再発防止じゃないですか。であれば、それは仮定の話かもしれないけれども、そんなのは別に言える話ですから、それに対して、再発防止のために、そうやって起こした会社に対してしっかり抗議すべき、何か対応すべきでしょうという話で、それをやらないんですか、事実解明が、わかった段階で。解明して、ああ、こういう会社がやっていたんですね、はいはいで終わるんですか。対応してもらわなきゃ困るんですけれども。こういうことでもまた国際的にも風評被害が広がっていくわけですから、とんでもない話なんですよ。

 事実解明に努めます、それは何回も聞いていますからわかっています、当たり前のことだし。再発防止のためにそういう会社にもしっかりやるべきでしょう、どうですかという話なんです。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、事実関係の解明に向けて全力で取り組んでいるところでございますけれども、仮に関係者が問題とされていることについて関与していたということであれば、しっかり適切に対処をしてまいりたいと思っております。

 具体的にどのような再発防止策を講じていくかということにつきましては、事実関係に基づきましてしっかりと検討し、台湾側とも協議をしてまいりたいというふうに考えております。

小熊委員 しっかりやってくださいよ。

 前に、外務省が頑張ってくれたんですけれども、香港の吉野家が福島県産を使っていないから安全ですというポスターをばばっと張ったときには、あのときは香港側とは何の協議もなく、しっかり抗議したから外したんですよ。これはとんでもないことなんだから。事実関係がわかったら、しっかり、厳しく対応してもらわなきゃ困るんですよ。

 なお、後でまた副大臣に聞きますけれども、国際的な機関での提訴も視野に入れているということでありますが、今回、台湾、厳しく対応をとったからそういうことも出てきたんですけれども、いまだに中国初め科学的根拠に基づかない規制をかけていますから、この際、台湾だけではなくて、現在において輸入規制をかけているほかの国、まだ残っている国に対しても、国際的機関への提訴なりなんなりも検討すべきだと思います。再三再四これまで関係省庁が努力してきていながら、科学的根拠に基づかない輸入規制がかけられているわけですから、もうこれはいろいろな手段を講じていくということだと思います。

 今回、台湾に対してはそうした厳しい対応も視野に入れているということですから、台湾だけではなくて、現在、輸入規制をかけている国に対してもそうした対応を検討すべきだと思いますが、副大臣、どうでしょうか。

城内副大臣 政府といたしましては、関係省庁、機関が緊密に連携しまして、安全管理や出荷制限等の我が国の措置について、各国政府等に正確な情報を迅速に伝達し、科学的根拠に基づき輸入規制の緩和及び撤廃を行うよう、粘り強く現在も働きかけを行っているところでございます。また、政治レベルでも、要人往来や会談等あらゆる機会を捉えて、積極的に申し入れを行っております。

 また、岸田外務大臣が本部長を務める日本企業支援推進本部におきましても、風評被害対策を含む日本企業の海外展開支援を一層強力に進めるよう、全在外公館に対しまして訓令をしております。

 こうした取り組みの結果、計十三カ国が規制を撤廃したというふうになっております。また、EUは三度にわたり規制の見直しを行い、シンガポールが福島県産品の輸入停止の縮小を含む規制緩和を行うなど、各国で規制を見直す動きが見られております。

 三月十二日には、飯倉公館におきまして、岸田大臣及び内堀福島県知事の共催によるレセプションを開催しました。風評被害払拭に向け、在京外交団等約二百二十名の参加者に対しまして、福島県産の食材を用いた料理等を提供し、福島県産食品の安全性に対して理解を求めました。

 このような被災地を初めとする地方との連携を含め、引き続き、輸入規制の緩和、撤廃に向けて、粘り強く働きかけを行ってまいりたいと思います。

 また、具体的な進展が見られない場合には、場合によっては国際機関等の場に持ち込むことも含め、しかるべき対応を検討していく考えであります。

小熊委員 ちょっと答弁が、余り答弁が長過ぎる指示を受けない方がいいですよ、役人に。城内さんらしくない、そんなの。そんなのは今までも聞いてきたことですから。今、最後のところが大事だったんです。

 今まで努力したのはわかっていて、やっていないんですから。中国の全人代の人が日本に来たとき、私も交流してしゃべったら、こっちも科学的根拠でやっているんだともうなっていますから。多分にあれは政治的にやられちゃっているんですけれども。今までの努力で結果は出ていないし、これから先も多分出ないですよ、あの国は。

 であるならば、今言った最後の段で、国際的機関にもう持ち出す段階じゃないですか。具体的に検討してくださいよ。この台湾のことを契機に、台湾だけやっちゃだめですよ、だったら、今外していない国も含めて、あわせてやるべきだということに対して、最後、城内さんらしい明確な答弁をお願いします。

城内副大臣 繰り返しになりますけれども、やはり、具体的な進展が見られない場合には、これを放置するわけにはまいりませんので、しっかりと、国際機関等の場に持ち込むことも含めて、対応を検討していく考えであります。

小熊委員 私としては、具体的進展が四年もたって見られていないし、今後新しい兆しも見られないので、もうその段階に来ていると思いますから、ぜひ御検討、そして対応、決断をよろしくお願いいたします。

 以上です。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 維新の党、木内孝胤でございます。

 本日は、特許法条約、そして商標権にかかわるシンガポール条約、二本について質疑をさせていただきます。

 基本的に賛成の立場での質疑でございますが、何点か、気になる点というか、お伺いしたい点を聞きたいと思います。

 技術立国あるいは工業立国の日本として、知財戦略が極めて重要であるというのはきょうの質疑の中でも明らかでございます。

 私は、この仕事につく前に、もともと投資銀行におりまして、その投資銀行の中でも、総合電機メーカー、家電メーカー、半導体部品等の担当の責任チームなんかもやっておりまして、当時から非常に知財戦略ということに関しては高い関心を持って進めてまいりました。

 当時、といいますのは二〇〇〇年前半ぐらいのころでございますけれども、そのころの問題意識としましては、日本というのは非常にいい研究、いい技術を持っている、しかしながら、高い技術の割には特許料収入というのが比較的小さいのではないか、すなわち、特許戦略というのがややもったいないのではないか、そんなような問題意識がございました。当時から、特許庁さんあるいは経済産業省さんを中心に、知的財産におけるこうした戦略強化というのを取り組んできたという理解でございますけれども、きょうも、知的財産支援についてということで、さまざまな取り組みをお伺いしております。

 この中で何点かお伺いしたいんですが、二〇〇三年とか五年当時は、例えば米国のIBMという会社は、業績が必ずしもそんなによくなかったころに、特許料収入がたしか、ちょっと記憶ベースなので定かではありませんけれども、二千五百億とか三千億円ぐらい、特許料収入がありました。一方で、当時のIBMよりもしかしていい技術をたくさん持っていそうな会社も含めて、あるいは出願件数が非常に多い、そういう会社が、特許料収入が桁違いに少なかった、そういうような事実がございます。

 その後もう十数年たっておりますけれども、定量的な正確な数字は結構でございますけれども、その後、日本の会社の取り組み、技術力の高さ低さではなくて、むしろ特許料収入がどういうふうに推移していったのか、雰囲気的な話で結構でございますので、もしおわかりになれば教えてください。

堂ノ上政府参考人 御指摘のように、日本企業は、すぐれた技術を持ちながら、それが十分な知的財産収入に結びついていないという御指摘がなされていたことは事実でございます。

 こうした中、企業は、権利を単に権利化するだけではなくて、その利益、価値を最大化するための取り組み、いろいろ、オープン・クローズ戦略なども含めて取り組んできた結果、個々の数字はわかりませんけれども、知的財産の収入という意味では、国際収入という意味では、現在、黒字化に転じて、黒字幅が大きくなってきているというふうに認識しているところでございます。

木内(孝)委員 私も、当時から経産省さんあるいは特許庁さんの知財戦略を非常に評価しておりまして、今も、特許料収入が黒字化したというのは非常に喜ばしいニュースだと思います。

 今、オープン・クローズ戦略という話がございました。例えば、最近話題になっておりますトヨタの水素カー。水素カーというのは、今後どういう形で発展するのか、まだ不透明な状況でございます、いろいろな方がこれに参入しようとしている。しかしながら、基礎研究にかかわるところが非常に膨大な研究開発コストがかかるということで、むしろ、トヨタ自動車さんは知財をまさにオープン化した。

 恐らく、これがオープン・クローズ戦略の事例の一つではないかと推察しておりますけれども、トヨタさんのこの戦略、一部をオープンにして、一部、本当に肝となるところはクローズにする、こうした取り組み等の事例がほかにもしございましたら、お教えいただければと思います。

堂ノ上政府参考人 個別の会社の事例を今手元には持っておりませんけれども、実は、中小企業も含めまして、オープン・クローズによって大変画期的な成果を上げているという事例もございまして、こういった事例をまさに活用して、私ども、企業経営幹部に対して、この事例を踏まえたような研修ということで、これを広めていくというお手伝いをしているところでございます。

 また資料等ございましたら、御説明に上がりたいと存じます。

木内(孝)委員 ありがとうございます。

 当時から持っていましたもう一つの問題意識でございますけれども、やはり、日本の企業からヘッドハンティングによって外資系の企業に転職をする、そういった場合、保有している知財、これが、人に帰属するのかあるいは会社に帰属するのか、非常に曖昧なケースがございます。明らかに知財を盗用して、新商品を外資系の企業で開発したのではないかと推察されるケースが非常に多かったというふうに聞いております。

 こうした観点から、私は、ある種の罰則規定を強化するべきではないか、そのように当時から考えてまいりました。それを縛る取り組みとしては、不正競争防止法等々あろうと思いますけれども、その視点からの、海外にこうした日本の特許が不正な形で流出するのを防ぐ取り組み等というのはございますでしょうか。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御質問の特許に関しましては、そもそも情報が公開されているものでございますので、その情報を利用して他人の特許を害した場合には、特許の侵害だということで処罰されるわけでございますが、それに加えまして、営業秘密ということで、本来的には会社の中で閉じているべきものが、そうした従業員、OB等を通じて情報漏えいするといったような場合については、これまで、不正競争防止法という法律の枠組みで、こうしたものに対する罰則を設けて対処してきたわけでございます。

 基本的に、そうした技術者を通じた、もしくはそうした従業員を通じた技術情報漏えいというのは、転職の自由を縛るというわけにはなかなかまいりませんので、そうした人々を通じた技術そのものの漏えいということを取り締まることが、産業競争力の強化の視点からも極めて重要だと考えているところでございます。

 こうした職業選択の自由といったような他の価値といったものとの調和ということで、保護される技術情報の範囲については、一定の限度をした上で、その対象範囲を決めているわけでございます。

 具体的には、平成十五年に営業秘密侵害罪というのを創設しまして、その後も、累次の法改正を通じて罰則を強化してきております。さらに、今国会におきましても、外国における情報の流出といった行為に対する処罰を強化する、海外漏えいの目的での情報の取得行為を処罰対象に加える、さらには罰金額を引き上げるといったような、大幅な罰則の強化を含めた不正競争防止法の改正案を現在提出させていただいているところでございます。

 経産省といたしましては、こうした法律の改正とともに、実態的な産官民の協力を通じまして、企業が保有する技術情報の流出防衛に努めてまいるという所存でございます。

木内(孝)委員 さまざまな取り組み、大変評価させていただいております。

 きょうの質問通告にはないので、特にお答えいただかなくて結構ですが、TPPにおきましても、知財の扱いというのは非常に懸念されるところでございます。

 TPPの内容、こちらも内容を承知しておりませんので、定かなことは言えませんけれども、推察される中身から、日本の知財戦略にとっても若干の影響が出てくるかと思いますので、ぜひそこは前広に情報を収集していただき、事前にそうした手段を講じていただければと思います。これは質問しておりませんので、もし何かTPP関連であればあれですけれども、なければ結構でございます。

 続きまして、商標等に関するシンガポール条約についてお伺いをいたします。

 製品に関する商標、サービスに関する商標、さまざまな出願、登録にかかわる各国の制度を調和させ、手続を簡素化するということで、これは特許法と並び、非常に意義のある大切な条約だと考えております。

 改めて、条約締結の意義についてお伺いいたします。

    〔委員長退席、三ッ矢委員長代理着席〕

城内副大臣 この条約締結の意義についてのお尋ねがございました。

 現在、経済のグローバル化が進んでおりまして、こうした状況を背景といたしまして、複数の国で特許権や商標権を取得する必要性が高まっております。そうした中、出願人が、各国独自の特許出願及び商標出願等に関する制度にそれぞれ別々に、個別に対応するために、当然、事務負担が増大しているわけでありまして、こうした状況に対応すべく、特許法条約及び商標法シンガポール条約は、各国の出願等に関する手続の国際調和及び簡素化を目的として作成されたものであります。

 これらの条約を既に締約している国は、条約に従ってそれぞれの手続を国際的に調和させることによりまして、出願人等の事務の負担を軽減させ、もって自国の企業の国際競争力を高めているところでございます。

 我が国としても、早期にこれらの条約を締結し、これらの条約に従って我が国手続を調和させることにより、知財先進国としての魅力を高め、もって我が国企業の国際競争力を強化することが期待されるところでございます。

木内(孝)委員 本条約の締結により、我が国が負うことになる義務と、あと、先ほど、武藤委員からの質問と重なる部分があるかもしれませんが、テレビ等を見ていましても、例えば他国の遊園地で、ドラえもんそっくりの人形と、なぜかディズニーそっくりのと、あとキティちゃん人形と、三つの違う種類の縫いぐるみを羽織った遊園地などが存在します。こうした条約、非常に意義深いと思う一方で、何か、義務を一方的に課されて、正直者がばかを見る的な条約にならないのかという懸念が少々ございます。

 そこで、我が国がこの条約によって負う義務と、条約を締結していない国、こういう国をどうやって参加させるのかという取り組みについて、もし取り組み等ございましたら、お聞かせいただければと思います。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、この条約を我が国が締結することによりまして課される義務であります。

 主なものを申し上げますと、これまで商標法条約の適用対象でありました、視認することができる標識によって構成される商標等に加え、視認することができない標識等によって構成される商標等について、条約の規定を適用することが義務づけられます。より具体的に申し上げますと、視認することができない標識、例えば音により構成される標識等でございます。

 また、電子手続に対応した書類の提出につきましても、このシンガポール条約の規定に従って日本の制度を調和させる義務がございます。

 さらに、出願人等が出願または登録に関する手続における行為のための期間を遵守しなかった場合における救済措置についても、我が国法制の中に定める必要が出てまいります。

 さらに、使用権の記録の申請等に係る手続について、この条約の規定に従って制度を調和することが義務づけられる。

 これが、条約に入った場合の我が国が負う主な義務でございます。

 二番目にお尋ねをいただきました、特にアジア新興国に対して、この条約への締結をどのように呼びかけていくかという点でございますけれども、まず一つは、いろいろな場を活用いたしまして、この条約に締結するようしっかりと働きかけをしていきたいと思います。

 加えまして、新興国の中には、この条約に入るための法制度を整備するのになかなか時間がかかる、能力が足りないという国もあろうかと思いますので、そういった国の能力の構築、増強のために、私ども、これまでも随分支援をしてまいりましたけれども、セミナーの開催ですとか専門家の派遣ですとか、こういった形で、そういった新興国のキャパシティービルディング、能力構築に向けて協力をすることによりまして、この条約への締結を一層効果的に働きかけていきたいと考えております。

木内(孝)委員 ありがとうございます。

 引き続き、こうした新興国が参加するような取り組みに御努力いただければと思います。

 最後に、AIIBについて質問させていただきたいと思います。

 三月末の、一定の交渉期限があった際に、それを挟んで前後何回か質疑をさせていただきました。ガバナンス体制あるいは審査体制、こうしたことが重要だというのは当然でございます。その後、一定期間時間が経過しましたけれども、その後の交渉の進捗状況、交渉内容ですので、なかなか、開示できる部分、できない部分はあろうかと思いますけれども、現時点でおわかりの交渉状況について御開示いただければと思います。

武内政府参考人 お答え申し上げます。

 アジアインフラ投資銀行の交渉状況でございますけれども、私どもの立場は以前と変わってございません。公正なガバナンスの確保、特に加盟国を代表する理事会がきちんと個別の案件を審査するのか、それが一点。

 さらには、債務の持続可能性や環境、社会に対する影響への配慮が確保されるのか、そういったものについて重大な関心を持っているところでございますけれども、現在に至るまで、これらの点について明らかになっていないのが現状でございます。

    〔三ッ矢委員長代理退席、委員長着席〕

木内(孝)委員 三月末を挟んだ質疑のころに、英国が参加する情報とかそういった面で、これはある意味の失態ではないかというようなコメントをさせていただいたわけで、したがって、私が、さも参加するべきだという論調に捉えていらした方もいるかもしれないんですけれども、私は、今、もう期限を一旦過ぎましたので、ここはもう、一回腰を据えて、今おっしゃったようなガバナンス、審査体制、それをしっかりと確認するべきだという立場でございます。

 その中でも、私、もう一つの懸念点、これは審査体制ということに入るのかもしれませんが、利益相反の点からのガバナンスあるいは審査体制についてお伺いをしたいと思います。

 結局、新しい金融機関のある種の一定の支配権を中国が得ることになった場合、その金融機関が拠出するあるいは貸し出しをする先が中国内であった場合、あるいは中国に関連する企業であった場合、プロジェクトであった場合、私はこれは明らかな利益相反だと思っています。

 これは、幾ら理事国があるとかなんとか説明をしたところで、余りにも明快な利益相反が存在するわけで、この点について、それは審査体制という大きな枠組みの中での説明を超えて、仮に理事会ができ上がったとしても、仮に副総裁が何人かいたとしても、私は、若干、この利益相反の問題というのは明らかに解決されないのではないか、そういう問題意識を持っております。

 これは同様に、アジア開発銀行については、ある程度理事会がしっかりしているということではございますけれども、出資国が、例えば中国、インドが入っている、最大の貸出国がインド、中国である、これはやはり一定の利益相反があると思うんですね。

 日本の金融機関というのは全般的に、この利益相反の問題、例えば平気で官民ファンドをつくったりとか、あるいは銀行系のファンドを平気でつくって、明らかな利益相反が存在する中でこういうのを設立する傾向がございますけれども、この利益相反の視点からの審査体制、ガバナンス体制の御懸念についてお聞かせください。

武内政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の点、ガバナンスの本当のコアの部分だと思います。アジア開発銀行、世界銀行、そういった機関もいろいろな国々から出資を仰いでいるわけでございますけれども、その際に、個別の案件ごとにゆがんだ判断にならないように、いろいろなチェックが設けられております。そういったことが今般のAIIBにおいてもどこまで盛り込まれるのか、そこら辺を非常に多くの国々も注目していますし、我々もその点についてきちんと見ていかなきゃいけないと思います。

 個別のプロジェクトについて判断をする前に、全体の業務方針、そういったところできちんとルールを明確化し、例えば調達について言えば、それはオープンです、どういう手順で決めますということを定めることによって、個々の案件ごとに判断がゆがむような余地がないように、きちんと確保していくことが肝要ではないかと考えてございます。

木内(孝)委員 今おっしゃった中で、仮に形式的な審査体制が確立されたとしても、私は、利益相反の問題が残るのではないかという質問なんですけれども、そこの点についてお答えいただいていないように感じるんですが、そこはいかがでしょうか。

武内政府参考人 御指摘のとおり、利益相反が全くないような状況なのかという観点からいえば、あるプロジェクトがあって、それに加盟する企業がある、あるいはそのプロジェクトが行われる国がある以上、それは、それが参加国である限り、ある意味、利益相反的な状況は生じ得ます。

 ただ、それが本当に利益相反として判断をゆがめられるのかどうか、そういうものとして大きな問題として存在するかどうかについてチェックしなきゃいけないわけで、それをどのようにして排除する手順があるのかということが重要ではないかと考えてございます。

木内(孝)委員 ある程度、この新しい国際機関とアジア開発銀行が協調して融資をする可能性があったりした場合も含めて、これはADBの最大の貸出国がインドであり中国であるという時点で、明確な利益相反問題が生じる可能性があるということを念頭に、今後の検討作業、余りこの利益相反という言われ方はしていないんですね、今までの審査体制、ガバナンス。私は、これは形式要件を幾らクリアしたとしても、実態面での利益相反が明らかに残るという強い懸念を持っておりますので、その点はぜひ十分に御判断いただいて、御検討いただければというふうに思っております。

 若干時間が残っておりますが、このAIIB、時間は焦らずにやっていただきたいですけれども、一年半時間があったときに、私は、若干悠長にやり過ぎたのではないかという反省、そこの部分はきっちり反省していただき、その上で、今となっては本当に慎重に、米国初めあるいは参加を表明した国とも連携をきっちりとっていただき、作業を進めていただければというふうに思っております。

 以上で質問を終わります。

土屋委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 特許法条約、商標シンガポール条約については、いずれも、出願人の負担軽減に資するものと考えられることから、我が党は賛成する立場であります。

 そこで、きょうは、CV22オスプレイの横田基地への配備問題について質問します。

 最初に、ハワイで起きたMV22オスプレイの墜落事故についてですけれども、私は、この問題で、事故が起きた当日の十八日、拉致問題特別委員会で岸田大臣と議論をしました。改めて伺いたいと思います。

 今回の事故を受けて、菅官房長官は、十八日の記者会見で、MV22オスプレイは安全だと思っていると述べています。そして、安全性に問題ないという考えを示しましたが、岸田大臣も官房長官と同じ認識なのかどうか、お伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 今回のMV22の着陸失敗事故ですが、この事故を受けて政府としては、着陸失敗の原因を含め、関連情報の速やかな提供、そして、普天間飛行場所属のMV22オスプレイについて引き続き安全面に最大限配慮するよう、あわせて申し入れたところであります。

 そして、今、米国において調査が進められています。米国の調査は、まずもってこの事故によって米国の兵士が死傷しているわけですし、これからも米国の兵士が搭乗するわけですので、原因究明あるいは再発防止、これは米国にとりまして大変重要な課題だと思いますし、真剣な取り組みが行われるものと考えます。その情報共有をしっかり我が国から求めていかなければならないと思っています。

 そして、その調査、現段階において米国側から、MV22オスプレイの設計に根本的な欠陥があると疑う理由は発見されていない、あるいはMV22オスプレイの通常運用を停止させるべき理由は発見されていない、こういった説明を受けているわけです。

 官房長官の発言について御指摘がありました。官房長官の発言の真意、私も十分把握はしておりませんが、我が国のMV22の安全についての考え方の根拠になっているのは、今申し上げました米軍の取り組みであり、さらには、政府として、二〇一二年九月までに、みずから安全性の確認も行っています。こうしたさまざまな確認等を基礎として、安全性について認識をしておるところでございます。

穀田委員 るるお話がありましたけれども、大臣、私が聞いているのは、官房長官と同じく、今度の墜落があってもオスプレイは安全だという認識なのかどうかということなんですよね。

 中谷防衛大臣に至っては、昨日の十九日の記者会見で、機体の安全性を、現時点で政府としては保証する状況だ、ここまで述べているわけですね。

 だから、岸田大臣も、中谷大臣と同じく、先ほど、安全の根拠というのは、アメリカ側の話と二〇一二年の話、二つありましたけれども、政府として今安全を保証するということなのかどうか、お聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 MV22につきましては、先ほども触れましたが、まず、二〇一二年九月までに、我が国政府として、改めて安全性を確認いたしました。それ以前の事故を踏まえた十分な再発防止もとられているということ、これを確認しているわけです。

 そして、その上で、今回のMV22の事故がありましたが、米国政府としては、引き続き調査を行っているものの、現時点において、先ほど申し上げました、設計に根本的な欠陥があるとか、通常運用を停止されるべき理由は発見されていない、こうした報告を受けているところであります。

 官房長官、そして中谷大臣の発言について御質問がありました。こうした発言は、今申し上げましたような事実に基づいての発言であると認識をいたします。

穀田委員 事実はまだ、今回の墜落事故の原因という問題についての究明はされていないわけですよね。今までの話で大丈夫だというような話は通用しないんじゃないか、そういうことを私は考えます。

 米国防総省のウォーレン報道部長は、十八日、今回の事故原因はまだわかっておらず、原因が判明するまで数カ月かかる可能性があると述べている。だから、事故原因もわかっていないのに、なぜ政府は、安全だとか、保証する、こう言い切れるのかということについて、まあ、二〇一二年問題は後から、左藤さんもお見えですから聞きますけれども。

 私は、今事故が起こっている、そして一二年までの話は聞いている、今回の事故は機体による話じゃないんだという相手の報告を受けている、別に何がどうだという話は全くないんですよ。科学的根拠もなければ原因究明も定かでないというもとで、なぜ政府は安全を保証すると言い切れるのかということを聞いているんです。いかがですか。

岸田国務大臣 政府のMV22の安全性に対する判断ですが、まずもって、我が国政府自身が二〇一二年九月までにこの確認をいたしました。そして、それに基づいて安全性を判断してきているわけですが、今回の事故につきましても、おっしゃるように、これは調査中であります。現時点において、設計における根本的な欠陥等を疑う理由等は発見されていない、こうした米側の報告を受けています。

 現時点の材料を総合的に判断した上で、官房長官あるいは防衛大臣は発言したものだと認識をいたします。

穀田委員 余り、根拠が薄弱で、何で安全なんやと言うと、相手がこう言っている、一二年にこうやったから、この二つしか言わへんわけですよね。

 そこで、では、二〇一二年の問題について聞きましょう。

 防衛省は、横田基地への配備を発表したCV22オスプレイが、今回事故を起こしたMV22と機体構造及び基本性能が同一で、安全性も同等だと説明してきました。二〇一二年六月にフロリダで起きたCV22の墜落事故について、今お話ありましたけれども、政府として独自に分析評価し、機体の安全性を十分に確認したと述べてきましたけれども、改めて聞きますが、左藤副大臣、これで間違いありませんね。簡潔にお願いします。

左藤副大臣 お答え申し上げます。

 今御指摘の件でございますが、二〇一二年の六月、米国フロリダ州において、米空軍のCV22オスプレイが訓練中に墜落し、乗員五名が負傷する事故が発生しました。

 同年七月、防衛省は、オスプレイの安全性の判断に資することを目的として、防衛省内外の航空安全、事故調査に関する知見を活用し、米国によるオスプレイの事故調査結果等について分析評価を行う分析評価チームを設置し、環境上の要因、それから人的要因、機体の要因、管理上の要因及び飛行支援上の要因に関して、独自に客観的な分析を行ったところでございます。

穀田委員 さまざまな要因を分析したと言われておられます。

 では、防衛省が二〇一二年九月に出したフロリダにおけるCV22墜落事故に関する分析評価報告書によれば、防衛省は、同年の八月三十日、米側から提供された米空軍航空機事故調査委員会報告書、こういうものですけれども、分析報告書というのは、防衛省が出したのはこれですけれども、派遣をしたということなわけですよね。だから、その報告書を受けて、今述べた分析評価チームを派遣しているわけですよね。

 米国防省からのブリーフィングや事故に関する質疑を行ったと書いていますけれども、そのとおりでいいですね。

左藤副大臣 今先生の御指摘の、二〇一二年の八月三十一日のときに訪米し、米空軍航空機事故調査委員会報告書に関する米国防省からのブリーフィングを受けました。

 その上で、当該報告書の内容について、環境上の要因、人的要因、機体の要因、管理上の要因及び飛行支援上の要因の観点から、米国と必要な質疑を行ったところでございます。先生の御指摘のとおりです。

穀田委員 米側から提供された事故報告書では、フロリダでの事故について、CV22は事故の当日どんな訓練をしていたか、その書かれた内容について報告いただきたいと思います。

左藤副大臣 フロリダにおけるCV22墜落事故に関する分析評価報告書においては、事故機は、当時、二機編隊での戦術飛行訓練の一環としての訓練飛行を行っていたと記述をされております。

 なお、事故機を含む編隊は、その後、昼間射撃訓練や夜間射撃訓練等を行う予定であったことを承知しております。

穀田委員 というと、戦術訓練の一環としての飛行訓練と書いているわけですよね。

 報告書によりますと、一番機の後方乱気流で二番機の揚力が低下したとか、樹木にぶつかったとか、こういうふうに書いているわけですけれども、CV22は、特殊作戦という独自の任務所要のため、より過酷な条件下での訓練活動を実施することから、MV22オスプレイより事故率が高いとされてきました。

 そこで聞きますが、防衛省の分析評価チームが行った米国での事故報告書に関する調査の中で、アメリカ側は、フロリダでの墜落事故時の訓練、今お話あった二機編隊での訓練ですね、これについてどのように説明したのか。CV22特有の過酷な条件下での訓練だったと説明していたのか、それとも通常の訓練だったと説明したのか、お答えいただきたいと思います。

左藤副大臣 日本側に提出された米空軍航空機事故調査委員会報告書においては、アメリカ側は、機体の機械的な不都合は事故の要因ではなく、事故時に二機編隊を組んでいた事故機と一番機との相対位置に係る誤認識により、事故機の機長及び副操縦士が事故機を一番機の後流から離隔させなかったことが事故の原因と結論をしております。

穀田委員 事故の原因は、私も言っているし、左藤さんも見ている文書なんですよ。

 もうちょっと言うと、その訓練というのはどんな訓練だったのかということを聞いているわけですよね。要するに、CV22というのは特殊作戦をやる飛行機なわけだから、今の話を聞いていても、どうも特殊作戦じゃないというのはわかるんだけれども、やはりCV22特有の過酷な条件下での訓練だったのか、それとも通常の訓練だったのか、その点をアメリカ側はどのように説明したのかを聞いているわけですやんか。

辰己政府参考人 お答えします。

 米側の報告書によりますと、二機編隊での戦術編隊飛行訓練の一環としての飛行訓練だったということでございます。

穀田委員 だから、そのことは、戦術上の普通の訓練だったということを言っているわけですよね。つまり、二機編隊で動いていて、左藤さん、要するに過酷な条件下での訓練というんじゃなくて、簡単に言うと、二機編隊でがあっと動いていて、しかも木にぶつかったという話で、いわゆる通常の訓練だったというふうに見てとれるわけですよね。それでよろしいね。

左藤副大臣 それについては米国は特に触れておりませんので、コメントのしようがございません。

穀田委員 そんなことはないですよ。その文書をずっと見たら、特殊な訓練をやっていたなんというのは書いていませんやんか。(左藤副大臣「そのとおり」と呼ぶ)そうでしょう。そのとおりと、やじじゃあるまいし、そんなところで言ってもらっても困るんだけれども。

 だから、普通の訓練だったということははっきりしている。文書の中に、これが通常の訓練だったとか、普通の訓練なんというのは書きますかいな、訓練の中身を書いているわけやから。その中身を読めば、二機編隊で動いていて樹木のところに行った、普通の訓練をしているということは明らかじゃないですか。

 そこで、防衛省の分析評価チームが二〇一二年八月三十日に実施した、フロリダで発生したCV22オスプレイの墜落事故に関するブリーフィングの概要があります。これなんですけれども、概要があります。

 これを読むと、「八月三十日十四時から約二時間、米国防省において、本年六月にフロリダで発生したCV―22オスプレイの墜落事故について米側配付資料に基づきブリーフィングが行われたところ、その後の質疑応答でのやりとりを含め、特筆すべき点は以下のとおり。」として、事故に関する質疑のポイントが記されています。

 これを見ると、防衛省側が、「CV―22は、特殊作戦軍に所属するものであり、今回の事故についても、特殊作戦に特有の訓練中に起こったものであると対外的に説明可能であるか問うた」と書いているんですね。これに対し、米国防省側は、「今回のような訓練は何ら特別なものではなく、CV―22に特有の装備を使用するものでない。よって、このような編隊飛行は、非常に標準的なものとして、MV―22も通常実施しているものである。」と説明したとあります。

 これは事実ですか。

辰己政府参考人 防衛省においてアメリカから受けた報告書というのは、先ほど申したように、戦闘隊形訓練の一環としての二機編隊での射撃訓練であるというようなこと、それから事故の概要等でございまして、御指摘のようなやりとりについて、今、公式には確認できません。(穀田委員「公式には」と呼ぶ)確認できません。

穀田委員 今、公式には確認できないと。

 当時あったかどうかと聞いているんだけれども、左藤さんも余り後ろの話をいつも聞かずに。

 今の話は全然答弁になっていないんですよね。同じ話をしているだけで、だめなんですよ。問題は、ブリーフィングの際にそういう説明があったか、そして、そのことを記載している文書があるけれども、これは事実かということを聞いているわけですやんか。

 今、確認できないと。ということは、左藤さんも御存じないということですか。

左藤副大臣 失礼します。

 今、お話を聞いたわけですが、私はちょっと、それは存じ上げておりません。

穀田委員 もし、こういうものについて、フロリダで墜落事故で起こった問題の防衛省側の文書が、ブリーフィングですね、今述べたような極めて重要な内容を持っていることについて知らないということとなると、これはえらいこっちゃなと私は思います。

 というのは、ブリーフィングの際に米側が説明した、つまり通常のやり方なんだと。しかも、防衛省側はこの問題について、特殊作戦に特有の訓練中に起こったものであると対外的に説明可能であるかと、わざわざ、外に向かって説明するときに特殊訓練でやっていたということで説明してええかと聞いているわけですやんか。それに対してアメリカ側は、違うと言っているわけですよね。だから、この文書の中にそのことが抜けているじゃないかということを言っているわけであります。

 今お話ししたように、結局のところ、言いかえれば、CV22というのはMV22が行っているような通常訓練でも事故を起こす危険があるということじゃないかと思うんですね。

 大体、皆さんは、CV22の事故調査結果について、独自に分析評価し、機体の安全性を確認したと必ず言うわけですよ。しかし、防衛省の当時の分析評価書には、私が読み上げたブリーフィング時の米側の説明は一行も書かれていないんですね。

 左藤副大臣は知らずにこれを答弁されたということになるわけですね。それでいいんですね。

左藤副大臣 事前に質問通告がなかったものですから。しかも、また、それは防衛省としては公表しておりませんので。

穀田委員 防衛省は公表していないと。先ほどは知らないと。これは明らかな違いがあるわけですよね。

 だから、ということは、公表していないけれども、そういう文書、その文言というのはあったということを、今、後ろからアドバイスを受けて、確認したということですか。

左藤副大臣 先ほど申し上げたように、私は、その文書については存じ上げておりませんし、公表していないことも事実ですから、あるのかどうかも含めて、わかりません。

穀田委員 岸田大臣、私は、今お話ししたように、米側とのやりとりの中で、結局のところ、分析評価書でやったというわけでしょう、これで大丈夫だというわけでしょう。その分析評価書の中に抜けているところがある。ブリーフィングで聞いたときに、特殊訓練だということで言ってええかと。要するに、オスプレイというのは、通常訓練でないことで落ちたんだからということを理由にしたいわけでしょう。ところが、相手は、いや、普通の訓練でっせと言ってきた。そのことだけすぽっと隠しているというような事実が今明らかになった。

 だから、アメリカの説明のとおりならば、繰り返しますけれども、フロリダでの墜落事故というのは、特殊作戦というCV22の特有の訓練任務、いわゆる過酷な条件下での訓練によるものではなく、非常に標準的で、MV22も通常実施している訓練で起きた事故だったということになるわけですね。だから、CV22というのは、MV22が行うような通常訓練でも事故を起こす危険があるということだと思うんですね。

 だから、こんな重大な事実を全く明らかにしない、公表していませんというようなことを平気で言っている、そういうものを隠しているような分析評価報告書を根拠に、幾ら安全性は十分に確認されたと強調したところで、先ほど来、言うと必ず二〇一二年の分析評価書とくるものだから、その分析評価書自身に一番大事なところが抜けているじゃないか、これでは、安全を確認したということを言うけれども、何の根拠にもならないのではないかと思うんですが、いかがですか。

岸田国務大臣 二〇一二年当時の米側とのやりとりについて、私は詳細を承知する立場にはありませんが、日本政府としては、二〇一二年九月までに、それ以前の事故を踏まえた十分な再発防止もとられていること、こういったことも確認した上で、政府としての安全性の確認を行ったと承知をしております。

 ですから、その確認までのさまざまな事故等について、再発防止策等、さまざまな点を確認した上での判断であったと私は考えます。

穀田委員 事は、住民の安全、基地周辺の住民だけじゃありません、そういう国民の安全にかかわる、命にかかわる重大問題なわけですね。

 私は、本委員会に、防衛省の分析評価チームが二〇一二年八月三十日に実施した米国防省からのブリーフィング及び事故に関する質疑に関する資料の提出を求めたいと思います。

 委員長、理事会での協議をお願いしたいと思います。

土屋委員長 これについては、理事会で協議をさせていただきます。

穀田委員 やはり資料の提出は、これを機に、先ほど、公表していない、それから、左藤副大臣は知らないと言っている。だけれども、私はあると言っている、持っている。だから、きちんと公にしてもらう必要があると思うんですね。

 そこで、最後に、横田の問題についても一言言っておきたいんです。

 横田ではCV22が、通常の飛行訓練に加え、低空飛行訓練、夜間飛行訓練を行うというけれども、横田基地は五市一町にまたがっていて、極めて大変な場所です。約五十万人が生活する市街地のど真ん中にあります。世界一危険な基地と言われている沖縄の普天間基地と同じような状況であります。滑走路の中心から半径三キロ以内に、この間も言いましたけれども、学校が三十以上ある。基地騒音では、地元住民による訴訟が係争中だ。

 こうした実態を岸田大臣は御存じですよね。

岸田国務大臣 CV22の横田基地への配備につきましては、十一日の日、米側から正式に接受国としての通報を受けました。

 そして、地元あるいは関係者から、こうしたCV22に対する安全性に対するさまざまな懸念や声があるということについては、我々としても承知をしています。

 こういった声を受けて、政府としましては、ぜひ、米側に対しまして、しっかりとした安全な運航に向けて努力をしてもらわなければなりませんし、そのために米側としっかり協議をしていかなければならないと考えます。

 そして、CV22の正式な配備は、二〇一七年後半であると承知をしています。二年余りあります。その間に、米側に対しまして、しっかりとした運航を求め、説明を求め、そして、それに基づいて地元の皆様方にしっかりと説明をしていき、地元の声に応えていかなければならないと考えます。

穀田委員 地元の声に応えていくと言いますけれども、現に沖縄では、オスプレイは連日飛行しているわけですよ。事故原因が明確にならないのに、そんなことを許してええのかと思うんですね。翁長知事も飛行の停止を申し入れていますし、沖縄選出の野党の五国会議員も、オスプレイの即時撤去、飛行禁止を政府に申し入れています。

 きょうの質疑で明らかにしましたけれども、オスプレイの安全性にかかわるアメリカの調査において、ブリーフィングを受けた肝心の部分は国民に隠す、事故が起きても平然と安全と言う。一体、国民の命や安全が大事なのか、アメリカが言うことが優先で、日米軍事同盟が大事なのかということが問われているわけですよね。

 横田基地上空では、パラシュート降下訓練が日常的に行われておって、住民は現状も、低空飛行訓練や夜間飛行訓練の被害を受けているわけです。CV22が配備されれば、一層危険な訓練がこれに加わり、拡大することになります。

 本土でも、沖縄でも、住民の命と安全を脅かすオスプレイの配備は絶対に認められない。少なくとも事故原因が明確になるまで飛行の停止を求め、同時に配備撤回を求めまして、きょうの質問は終わります。

土屋委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党と山本太郎となかまたちの玉城デニーです。

 きょうは、特許法条約の締結について承認を求めるの件、商標法に関するシンガポール条約の締結について承認を求めるの件以外に、トップバッターの鈴木委員からも冒頭から質問が出ていますオスプレイの件に関して、あわせて質問をさせていただきたいと思います。

 では、まず、二つの条約の承認を求めるの件について質問をさせていただきたいと思います。

 先般、レクをいただきまして、この二つの条約について、手続の国際調和、簡素化、利便性の向上、それから出願人の負担軽減などを図る上で見直しをするというふうなことでの説明をいただきました。

 まず、特許法条約についてお伺いいたします。

 一九九五年から手続的要件を調和させるための議論が始まり、二〇〇〇年六月、本条約の採択、二〇〇五年四月、本条約の十カ国による発効、そして、二〇一五年三月末現在では、三十六カ国が締結をしております。アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリアなどですね。

 九五年から議論が始まり、そして本日、後ほど採決に至るということになるんですが、条約の採択から発効するまでに時間を要したことについて、まず御説明を求めたいと思います。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 特許法条約は、十カ国が批准書または加入書を世界知的所有権機関事務局長に寄託した後三カ月で効力を生ずる旨定めているところでございます。

 実際に特許法条約を締結するに当たっては、多くの国において、特許出願に関する国内制度をあらかじめ本条約の内容と整合的なものとするために、所要の法令等の整備を行う必要があります。このことが、本条約の採択から発効までに一定の期間を要した理由と考えております。

玉城委員 では、この条約の内容について、二点ほどお伺いしたいと思います。

 この条約の中で、それぞれの条文によって、さまざまな目的、意義などが述べられています。

 まず、出願日の取得手続の簡素化について、簡素化することの意義あるいは利点などについてお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 特許制度においては、同一の発明について複数の者から出願された場合には、先に特許出願した者に特許権が付与されるとされています。したがって、出願人にとって、特許出願の出願日は非常に重要な意義を有することになります。

 特許法条約においては、締約国に対して、条約に規定する三つの要素の提出があった場合には、出願日を付与することを義務づけるとしています。これは、出願人に対して、出願日の取得要件を簡素化し、明確化するものです。

 この三つの要件というのは、具体的には、出願を意図する旨の表示、二つ目として、出願人の特定または出願人への連絡を可能とする表示、そして三つ目として、発明の詳細な説明である明細書と外見上認められる部分、この三つですが、この三つの要素が提出されれば出願日を認定することとなり、その他の要件を課すことは原則として禁止されるとしています。

 こうした制度が導入されることによって、特許制度の利便性が高まり、出願人の負担が大きく軽減されることになると考えております。

玉城委員 出願人が出したその権利を守るということは非常に重要なことであるということは、どのような届け出であっても非常に重要なポイントだと思います。

 そして、この条約の中では、例えば、所定の期間を過ぎた手続や、あるいは一旦喪失した権利の救済なども述べられていますね。この内容についてお伺いしたいと思います。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員御指摘いただきましたように、この条約では、特許出願等に関する所定の期間を過ぎた手続や、こうした手続上の不備により一度は喪失した権利を救済するための措置の導入を義務づけるとの規定が置かれているところでございます。これは、産業の発展に寄与する貴重な発明が、手続的な不備のみにより特許権を取得できなくなるような事態の発生を可能な限り回避することを目的としているものでございます。

 具体的には、締約国の官庁が設定する期間を過ぎて特許出願等に関する手続が行われた場合、また、手続のための期間を過ぎたことの直接的な結果として特許出願等に関する権利が喪失した場合、また、出願がおくれたことにより優先権を主張できない場合、こういった場合などにつきまして、一定の要件に基づき救済することを締約国に義務づけているものであります。

 こうした制度の導入により、出願人や権利者にとっての手続の負担が軽減をされ、有用な発明の権利化が促進されることが大きく期待されているところでございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 こういう条約あるいは条文によって権利の回復等が図られるということは、非常に有意義であるというふうに思います。

 では、続いて、商標法に関するシンガポール条約の締結について承認を求めるの件で、商標法シンガポール条約の質問をさせていただきたいと思います。

 提出されています背景に、商標法条約採択後に生じた電子出願手続等の新たなニーズに対応するための議論が始まり、それによって、二〇〇六年三月、本条約採択、二〇〇九年三月、本条約発効、二〇一五年三月末現在三十七カ国及び一政府機関、ベネルクス三カ国の政府機関が締結をしているというふうに説明を受けました。

 この電子出願手続に関する近年の増加推移等について、その背景を御説明いただきたいと思います。

諸岡政府参考人 我が国では、商標法に関するシンガポール条約についての議論がなされる二〇〇二年よりも前の二〇〇〇年から、商標の電子出願の受け付けを開始しております。

 電子出願の割合、電子出願率は、二〇〇一年は八四%、二〇〇二年は八四%、それ以降も、直近の二〇一四年に至るまで、おおむね八〇%前半で安定的に推移している、こういう実態でございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 八〇%の推移であるということは、非常に高い割合であるということが今の答弁からもうかがえます。

 その条約の主な内容について、条約が適用され得る商標等の種類の拡大が述べられています。この種類の拡大については、どのような内容になっておりますでしょうか。

齋木政府参考人 商標法シンガポール条約のもととなりました先行条約がございます。商標法条約でありますけれども、この商標法条約では、音、においなどから構成される視認することのできない商標等については、条約は適用されないと規定をされていました。

 しかし、この商標法条約が発効した後、音やにおいから成る商標等の登録を認める国が欧米を中心に増加をいたしまして、そのような商標等に関する出願や、登録の手続の国際的な調和を求める新しいニーズが発生をしておりました。

 そこで、今御議論いただいております商標法シンガポール条約は、締約国に対し、商標等の種類を拡大することまでは義務づけておりませんが、締約国の法令が音やにおいから成る商標等の登録を認める場合には、そのような商標等についても条約を適用することとし、商標等の登録の出願及び登録に関する手続のさらなる調和を図っているところでございます。

 なお、我が国では、本年四月一日から、音から構成される商標についても登録が認められることとなっております。したがいまして、我が国が商標法シンガポール条約を締結し、この条約が我が国に対して効力を生ずる際には、この条約の規定が、今申し上げました、本年四月一日から登録が認められた新しい商標についても適用されることになります。

玉城委員 では、あと二点お伺いしたいと思います。

 使用権の記録の申請等に係る手続に関する調和について、この条約では十七条から二十条までそれが述べられていますが、それに、我が国は、防護標章につき条約に基づく留保を付す予定であるというふうになっております。この留保を付すということについて、御説明をお願いしたいと思います。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 商標法シンガポール条約は、商標に関する出願手続の調和を図る商標法条約の内容を更新するものでございます。

 具体的には、電子出願への対応、商標等の種類の拡大、使用権の記録の申請等に係る手続、手続期間を過ぎた場合の救済措置等に関する規定を追加しております。

 防護標章でございますけれども、特定分野の商品等での使用を目的に登録された著名な商標等に関し、他の分野の商品等についても他人による使用等を防ぐ目的で登録できる制度でございます。

 防護標章は、既に登録されている商標等を基礎として出願されるものでありますので、その出願等の手続が、このシンガポール条約が定める一般的な商標等に関する手続とは異なっております。このため、防護標章については、特定の規定を適用しない旨の留保を付すことが、そもそも条約上認められているところでありまして、我が国は、この条約の規定に基づき、本条約の締結に際して留保を付す予定にしております。

玉城委員 では、最後に、特許庁にお伺いいたします。

 いわゆる防護標章という、なかなか耳なれないものなんですが、この防護標章の対象となる場合の審査及び結果の公表等について、国内法の状況はどのようになっているかをお伺いしたいと思います。

諸岡政府参考人 防護標章制度、改めまして若干解説させていただきますと、まず著名な登録商標でございますけれども、その商標につきまして、あらかじめ、商品等の出所の混同を生ずるおそれがある範囲というものをまず明らかにしてください。それで、他人がその登録商標を受ける危険を防止し、もし他人が使用した場合に商標権侵害とみなして迅速な救済を図ろう、こういう制度なのでございます。

 その具体的な審査に当たりましては、出願人から防護標章として出願いただくわけですけれども、特許庁は、その審査に当たって、まず著名であることにつきましては、その商標の使用期間、使用範囲、広告宣伝の程度等を勘案いたします。また、混同を生ずるおそれがあることにつきましては、商品等との関連性をそれぞれ勘案いたします。いずれにしても、総合的に勘案して判断するということでございます。

 また、その出願をされたこと、また審査をした結果について登録されたものにつきましては、公報におきまして掲載し、公表するということになってございます。

玉城委員 ありがとうございました。

 では、最後の時間は、オスプレイの墜落事故に関する件について質問をさせていただきたいと思います。

 きょうも、るる委員からいろいろ質問が出ておりますが、アメリカ、ハワイ州オアフ島の空軍基地で、十七日午前十一時四十分ごろ、訓練中の米海兵隊の垂直離着陸型輸送機MV22オスプレイが着陸に失敗して炎上、乗員一名が死亡、二十一人が病院に搬送されています。

 鈴木委員への答弁の内容では、大臣の方から、アメリカ側の説明として、このオスプレイの事故原因を現在調査中であるということと、それから停止する特段の理由がないということ、それから機体の設計に欠陥はないなどの説明があったとのことですが、改めて大臣の方から、その説明といいますか、それを求めたいと思います。

岸田国務大臣 今回のハワイにおけるオスプレイの事故を受けて、政府としましては、米側に対しまして、着陸失敗の原因等を含め関連情報の速やかな提供を求め、そして、普天間飛行場所属のMV22オスプレイについて引き続き安全面で最大限配慮するよう求める、こうした申し入れを行ったところであります。

 今回の事故において、オスプレイに搭乗していたのは米国の兵士であります。そして、米国の兵士が死傷いたしました。そして、オスプレイにはこれからも米国の兵士が乗り続けるわけですから、まずもってこの原因究明、そして再発防止、これは米国にとりまして大変重要な課題だと思います。米国においても、これは真剣に、こうした原因究明、再発防止に取り組むものだと考えます。

 我が国としましては、米国におけるその調査の情報をしっかり共有するべく、しっかり求めていかなければなりません。そういった思いで米国に申し入れを行い、そして、これからもしっかりと要求をしていかなければならないと思います。

 その中にあって、米国はまだ調査中ではありますが、米国側から今現時点においての判断として、MV22の設計に根本的な欠陥があると疑うような理由、また、MV22の通常運用を停止させるべきであるという理由、こういったものは発見されていない、こういった説明を受けているところであります。

 いずれにしましても、調査はまだ続行中です。しっかりとした調査を求めると同時に、しっかりとした情報共有を求めていきたいと考えます。

玉城委員 CH46の後継機であるMV22オスプレイは、胴体に沿ってローターを配置したCH46やCH53ヘリと違って、主翼の両端にローターを配置してあります。この二つのローターによる下降気流が中央でぶつかり、空気が押し上げられ、機体の前方、後方に噴水流、空気の流れを発生させるということがアメリカの環境審査で明らかになっています。

 さらに、オスプレイが排出する下降気流は、機体の構造上、そのCH46より格段に強いということも言われております。

 アメリカ政府監査院、二〇〇九年の報告書では、オスプレイが回転翼モードで進行中、前進速度と降下率が一定範囲を超えると、みずからの回転翼がもたらす下降気流、下方気流で揚力を失う危険性を指摘しています。いわゆるこれがボルテックス・リング・ステート、VRSという現象なんですね。

 きょうの琉球新報では、アメリカ国防研究所、IDAでオスプレイの主任分析官を務めたレックス・リボロ氏は、今回の事故原因について、「パイロットがボルテックス・リング状態に入って制御不能に陥ってしまった。今後も同様の事故を繰り返すだろう」と述べ、オスプレイに構造的な欠陥があり、パイロットの操縦ミスと合わさることで今後も事故が発生するという見方を発表しています。

 つまり、主任分析官は、明らかに構造上オスプレイには欠陥があるということをはっきり言っているわけですね。機体が重いため下降速度に制限があるが、恐らく分速約九百から千五百メートルで下降しており、明らかに制限速度を超えている、そういう分析もなされています。

 米国防総省のウォーレン報道部長は、海兵隊の職務が平時でも危険であることを改めて明確にしたというふうに強調しているというコメントも出しています。

 そして、先ほどの主任分析官のリボロ氏は、飛行場から飛行場に人や荷物を運ぶ分には非常にいい飛行機かもしれないが、下降速度が低速に制限されており、戦闘作戦では役に立たない、硬着陸、ハードランディングは機体がほとんど破損しなかった場合を指すが、今回は機体が壊れ、炎上しており、明らかな墜落の状態であるというふうに言っています。

 陸上自衛隊もMV22を導入する計画を発表しています。さらに、CV22は横田に配備するということも明らかになっています。MV22オスプレイ、普天間に配備されているその飛行群は、昨日既に、事故後、通常訓練を開始しています。

 つまり、我々は、こういう状況の中でしっかり分析をし、調査結果を明らかにすること、そのためにはオスプレイの飛行を中止するということを、昨日、沖縄県選出国会議員五人の連名で、ハワイ州空軍基地におけるMV22オスプレイ墜落事故等に対する緊急アピールをさせていただきました。

 私たちは、これ以上、県民、国民を危険にさらすわけにはいかないというふうにかたく決意をし、MV22オスプレイの即時撤去、県外、海外からの一切の飛行禁止を強く求め、日本政府のオスプレイの安全宣言を今すぐ撤回すべきであるというふうに、このようにかたく、緊急アピールを申し上げさせていただきました。

 つまり、アメリカで起こったことではありません。今現在、日本国内で運用されている機体による同じような事故が起こり得るという状況なんですね。大臣、そのことを強く、しっかりと調査し、国民に対して、本当に安全かどうかということを正直におっしゃっていただくために調査することを申し述べて、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。ニフェーデービタン。

土屋委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、特許法条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、商標法に関するシンガポール条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

土屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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