衆議院

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第12号 平成27年5月22日(金曜日)

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平成二十七年五月二十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 土屋 品子君

   理事 秋葉 賢也君 理事 大野敬太郎君

   理事 島田 佳和君 理事 辻  清人君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 寺田  学君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      小渕 優子君    大塚 高司君

      大西 宏幸君    河井 克行君

      小林 鷹之君    小松  裕君

      佐々木 紀君    笹川 博義君

      白須賀貴樹君    鈴木 隼人君

      渡海紀三朗君    中根 一幸君

      野中  厚君    藤井比早之君

      星野 剛士君    松島みどり君

      宮川 典子君    武藤 貴也君

      緒方林太郎君    吉良 州司君

      鈴木 貴子君    長島 昭久君

      青柳陽一郎君    木内 孝胤君

      岡本 三成君    穀田 恵二君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        城内  実君

   防衛副大臣

   兼内閣府副大臣      左藤  章君

   外務大臣政務官      中根 一幸君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  藤山 雄治君

   政府参考人

   (内閣官房産業遺産の世界遺産登録推進室次長)   成瀬 茂夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡田  隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 吉利君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡庭  健君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    林   肇君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 吉田 正紀君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 山脇 良雄君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         坂下 広朗君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  深山 延暁君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十二日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     小松  裕君

  小林 鷹之君     野中  厚君

  薗浦健太郎君     白須賀貴樹君

  渡海紀三朗君     藤井比早之君

  中根 一幸君     笹川 博義君

同日

 辞任         補欠選任

  小松  裕君     大塚 高司君

  笹川 博義君     中根 一幸君

  白須賀貴樹君     大西 宏幸君

  野中  厚君     小林 鷹之君

  藤井比早之君     渡海紀三朗君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     宮川 典子君

同日

 辞任         補欠選任

  宮川 典子君     薗浦健太郎君

    ―――――――――――――

五月二十一日

 投資の促進及び保護に関する日本国とカザフスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウルグアイ東方共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカタール国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 社会保障に関する日本国とルクセンブルク大公国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)

同日

 核兵器廃絶に関する請願(辻元清美君紹介)(第一〇一八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 投資の促進及び保護に関する日本国とカザフスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウルグアイ東方共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカタール国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 社会保障に関する日本国とルクセンブルク大公国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官岡田隆君、大臣官房審議官中村吉利君、大臣官房審議官下川眞樹太君、大臣官房審議官岡庭健君、大臣官房参事官水嶋光一君、大臣官房参事官滝崎成樹君、北米局長冨田浩司君、欧州局長林肇君、内閣官房内閣審議官前田哲君、内閣審議官藤山雄治君、産業遺産の世界遺産登録推進室次長成瀬茂夫君、財務省大臣官房審議官吉田正紀君、文部科学省国際統括官山脇良雄君、国土交通省大臣官房技術審議官坂下広朗君、防衛省運用企画局長深山延暁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。緒方林太郎君。

緒方委員 おはようございます。民主党、緒方林太郎でございます。

 本日、三十分、国際情勢に関する件ということで質疑をさせていただきます。

 まず、質疑に入ります前に、昨日出ましたISILの関係での報告書についてですが、一言、外務省に苦言を呈したいと思います。

 この委員会でも何度もISILの問題について、報告書が出たときにはしっかりと審議をしようといった話も含めて議論してきたわけでありますが、今回の報告書について、我々、特に外務委員会の理事、そして関係委員を含めて、誰一人としてこの件を事前に知らずに、新聞報道等をもって知ったわけですね。他省庁の人とも話してみると、普通の感覚であれば、うちの委員会ならばこれはとまる、うちの関係の省庁であればこういうことがあると必ずとまるというようなものであります。

 答弁は求めませんけれども、本当に外務省、私、中にいたことがある身として、そしてこっち側に来た身として、両方を知っているんですけれども、国会対応、むちゃくちゃ悪いんですよね。外務省の国会対応は本当に、私はいろいろな役所と接点がありますけれども、全省庁の中で恐らくびりなんじゃないかというふうに思います、正直なところ。

 さらに、始末が悪いのは、恐らく外務省の中の人たちは、多分それを余り気にしていない、多分気にしていないと思います。また、きょうのこの質疑を見ても、またあの緒方がやかましいことを言っているな、しかも、今回のこの件は内閣官房の安危室が報告書をつくる話であって、俺たち関係ないから、何で俺たちがこんなことを言われなきゃいけないんだぐらいの感覚で見ている可能性が非常に高いと思います。

 そういう体質を少し見直す方がいいんじゃないかなと思いますし、中にいた者としてもう一言言わせてもらうと、国会担当と原課の関係が、コミュニケーションが非常に弱いんですね。外務省で実際原課にいる人間というのは、国会対応についてどう思っているかというと、多分、官房と国際法局にやらせておけ、官房と国際法局だけにやらせておけばいいんだ、できるだけかかわりたくないと思っていて、だから、今回こういう報告書が出ることも、やはり省全体として、国会対応をやる大臣官房の中で、それはやらなきゃいけないなというふうな認識に至らなかったということだと思います。

 これからまだ条約もたくさん残っていますし、こういうことで、きょうはとまりませんでしたけれども、本当に一個一個とまっていくと交通渋滞を起こして、また、条約が成立しない、臨時国会に回すとか来年の通常国会に回すとかいうことになっていくので、私はこのことを言うのは本当は嫌だったんですけれども、外務省に、中で国会対応をしっかりやらないと、一生懸命頑張ってつくった成果の条約が通っていかないんだから、やれということを言っていただきたいと思います。

 国会対応が極めて悪いということと重なるんだと思いますけれども、私は外務省を見ていていつも思うことがあって、大臣はなかなかお気づきにならないと思いますけれども、外務省というのは、かつて政務三役を経験した人がアンチに回っていることが非常に多い役所です。

 政務三役をやった方というのは、大体、普通、その後、外務省のサポーターみたいな感じになっていくことが期待されているんですけれども、私、具体的な名前は出しませんけれども、外務省三役経験者の中で、その後見ていると、外務省大嫌いだという人が多いんですね。外務省大嫌いだという人がすごく多いんです。そこら辺がすごく下手だなというふうに思います。

 ここで、一つ質問をさせていただきたいと思います。

 きょう、この後の質問で通告をいたしております中根大臣政務官、一言質問させていただきたいと思います。外務省のことが好きですか。

中根大臣政務官 今、一生懸命いろいろな面で勉強させていただいております。基本的には好きであります。

緒方委員 ありがとうございます。

 本当にこの件、国会対応で、これから安保法制特等々も行われていきます。そのときに、ちょっとした対応で国会がとまってということになると、これは野党の私が言うことじゃありませんけれども、国会対応をしっかりやられた方がいいんじゃないかなというふうなことをあえて申し上げた上で、質問に移っていきたいと思います。

 きょう、最初、非常に技術性の高い話からスタートをさせていただきます。

 日本が主導して成立した条約として、国際海事機関、IMOで成立したものとしてシップリサイクル条約というのがございます。

 これは、船の解体等を行うことについて、実は船の解体というのは、今世界で大きいのは、インド、パキスタン、バングラデシュ、そして中国、こういったところで解体を行っています。そして、日本が今よりもはるかに造船華やかなりしころ、三十年前とかにつくった船が、実は今、そういうところに持ち込まれて解体をされています。

 中国とかインドとかいうのは、少しヤードが改善されて、しっかりとした環境でやっているところがふえてきているようでありますけれども、例えば、パキスタン、バングラデシュのようなところに行くと、もう海岸にぶわっと船を乗り上げて、それを、ヘルメットも貧弱なもの、安全靴も履かずに、そのままばっと切っている。そして、船の中には一部環境問題を引き起こすような物質も入っていたりするということで、こういうことを踏まえて、造船国であった日本が主導する形でシップリサイクル条約というのをつくりまして、二〇〇九年、香港で署名がされたものであります。

 まず、国土交通省にお伺いをいたしたいと思います。このシップリサイクル条約の意義について、御答弁いただければと思います。

坂下政府参考人 お答え申し上げます。

 船舶につきましては、その役割を終えた後は、今御指摘ございましたように、解体をされ、スクラップ鉄などとしてリサイクルをされております。

 委員から御説明ございましたように、船舶の解体は、主に、インドですとかあるいはバングラデシュなど、開発途上国で行われておりまして、解体作業における労働の安全や環境保護の面で十分な対策が講じられていないということが、大きな問題になってございます。

 こうした状況を改善するために、国連の専門機関でございます国際海事機関におきまして、安全で環境に配慮した船舶の解体のための国際的な枠組みづくりの検討が行われ、シップリサイクル条約が二〇〇九年に採択をされたところでございます。

 この条約では、船舶の解体時に環境対策を容易に講じることができるようにするために、船舶で使用されております有害物質の所在等を明らかにしておくこと、あるいは労働安全と環境対策について所定の基準を満たすことが確認されたリサイクル施設において解体を行うことなどを義務づけております。

 我が国は、世界有数の海運・造船国としてこの条約づくりを主導してまいりました。船舶の解体作業における労働の安全の確保あるいは環境保全の観点から、この条約は極めて重要なものだというふうに考えております。

 また、新しい船が建造されて、その役割を果たし、やがて解体されてリサイクルされるという循環を健全に機能させるという意味におきまして、世界の海事産業の持続的な発展にとって極めて重要な意義を持っておるものというふうに考えております。

緒方委員 ありがとうございました。そういうことだと思います。

 今、まだ締約国は少ないですけれども、EUがこの条約に若干上乗せ規制をする形で域内の規則を成立させておりまして、これから恐らくEU各国がばばばっと入ってくると思います。

 この件、実は、日本の造船関係の労働組合であります基幹労連というところも、世界の労働条件の改善ということも含めて、非常に頑張っている案件であります。

 日本は造船国でありますし、そして、それが環境問題を引き起こしたり、労働基準の極めて低いところで行われるということに対しては、やはり、船をつくった者として、最後の最後まできちっと手当てをしていくことというのはとても重要なことだと思います。

 これは二〇〇九年五月に採択をされております。もう既に採択をされて六年でありますが、国会に上がってくる予定はおありなのか。もっと言うと、早く国会で成立をさせていただきたいので、政府部内で手続を進めた上で、我々のこの外務委員会に上げてきてほしいなと思うところでありますが、中根外務大臣政務官、いかがでございますか。

中根大臣政務官 先ほど国交省からもお話ありましたとおり、この問題は極めて重要な問題だと心得ております。

 先ほど委員からもお話ありましたように、世界の解撤のシェアというと、やはりインドが一番多い。そして、バングラデシュ、中国、パキスタンというようなことで、ほとんどがそこの国でやられているということ。その中で、特に委員がお話ありましたバングラデシュ、パキスタンが、非常に劣悪な環境で仕事が行われたり、また環境への悪影響が指摘されているところでございます。

 こういったことを考えまして、外務省といたしましても、本条約は早期の発効が望ましいと考えております。

 委員御指摘のとおり、外務省として、国交省、また他省庁とも協議しながら、もちろん条約の意義、国内法制化の検討状況等を踏まえて、真剣に検討していきたいと思っております。

緒方委員 早期の締結が望ましいということと真剣に検討していきたいということで、力強い答弁を本当にありがとうございました。

 この条約を締結していこうとすると、国土交通省のみならず、環境省であるとか厚生労働省との協議が必要になるということで、国内法制度の整備だけでも結構時間がかかると思います。

 しかしながら、条約自体は外務省でありまして、やはり外務省がやるぞとゴーサインを出していただかないと、国土交通省もなかなか動きにくいというところがございます。

 私は外務省で国際法局にいましたのでわかるんですけれども、ともすれば、条約で上がってくるときに、そろそろこれは発効しそうだから日本も締結に動きますというような説明がなされることがよくあるんですね。

 ファウンディングメンバーに入りたいから、だから急いでやらなきゃいけないんです、締結の理由のところにそういうふうに書かれてくることがあるんですが、日本が主導した条約で様子見をしていて、そろそろ発効しそうだから、だからやりますというのは、余りに受動的な姿勢であって、この条約は日本が主導してやってきたものですので、発効しそうかどうかというのをじっと見ながら、いきそうだったらやるということではなくて、主体的な姿勢が欲しいと思います。

 大臣から一言だけいただければと思います。

岸田国務大臣 御指摘の条約につきましては、今答弁の中にもありましたように、日本が主導して作成した条約であります。早期の発効が望ましいと考えています。そして、その際に、関係省庁の連携、そして理解、協力、これは不可欠であります。

 ぜひ、この条約を担当する外務省として、この早期締結に向けてリーダーシップを発揮していきたいと考えます。

緒方委員 ありがとうございました。

 いずれ、この外務委員会に上がってくることを期待いたしております。

 それでは、質問を移したいと思います。

 きょう、少し分厚い資料を配っておりますが、安保法制についてです。結構分厚いんですけれども、これはこれまでの国会答弁の中で幾つか私の方でピックアップしたものでして、きょうは、これから来るべき特別委員会での審議に向けて、幾つかの答弁を確認させていただきたいということで持ち出させていただきました。

 まず、一つ目でありますが、平成二十七年一月二十九日、衆議院予算委員会での安倍総理の答弁を引かせていただきました。少し長いんですけれども、二ページ目のところで、今回の安保法制がもたらすリスクについて、安倍総理はこういうふうに語っておられます。読み上げます。

  いわば、火事が起こってそこに消防士が入っていくのは、これは当然リスクであります。でも、消防士が火事のときに家に入って救出をしないのであれば、救出されない人は命を落とすということになるのではないか、このように思うわけでありまして、国全体として考えれば、そういうときにこそいわば消防士は、これは危険を顧みない行為ではありますが、救出に向かっていく。もちろん、安全を確保する上において、最大限消防士の安全も確保するというのは当然のことであろう、このように思います。

  行動する自衛官においてもそうでございます。自衛官はまさに、事に当たって危険を顧みず、任務を全うするために全力を尽くしていく、こういう趣旨の宣誓をするわけでございます。もちろん、こうした仕事をする上において、その安全の確保について全力を尽くすのは当然のことであろう、このように思うわけでございます。

  リスクを恐れて何もしないということは、果たしてそれでいいのかということについては、常にこれは考えなければいけないわけでありますし、私は決してそれでいいとは考えていないわけでございます。

ということで、安倍総理、答弁しておられます。

 左藤副大臣、お伺いいたします。これでよろしいですね。

左藤副大臣 今のリスクの問題、当然、総理が答弁されたように、日ごろから訓練をし、我々もしっかり、自衛官の安全が確保されなければなりません、そのためにも万全を尽くしたい、このように思っております。

緒方委員 もう一言言いたいですけれども、次に進みます。

 2と書いてあるところですけれども、次は、今回の安保法制が整った後の予算的な措置等々についての答弁でありますが、これは、平成二十六年七月十五日、参議院予算委員会での安倍総理の答弁であります。二段目、

  今後、自衛隊に新たに求められる具体的な任務や役割については、こうした法整備あるいはまたガイドラインの見直しの作業の中で検討をしていくことになります。具体的にどのように行動していくか、そのためにどういう訓練が必要か等々についてはまさにその中で検討していくことになるわけでありますが、現時点では自衛隊の体制や防衛費の見直しを行う必要はないものと考えております。

と答弁しております。

 これでよろしいですね、副大臣。

左藤副大臣 これまでも申し上げているところでございますが、自衛隊の装備や予算については、今回の法整備とは別途、一昨年末に閣議決定した防衛計画の大綱、俗に言う大綱ですが、及び中期防衛力整備計画、中期防に基づき、着実に自衛隊の体制の充実強化を図っています。

 政府としては、今回の法整備によってこれらの計画を見直す必要があるとは考えておりません。引き続き、現行計画に従って着実な防衛力整備を行っていく考えでございます。

緒方委員 それでは、三枚目に移ります。

 これは岸田外務大臣の答弁でありますが、新三要件の中で今回で言う存立事態に当たるものがどういうものかということで、我が党の岡田代表の方から、「その同盟に大きな影響、深刻な影響が及ぶような事態というのは、ここで言う新三要件、つまり、我が国の存立が脅かされ、そして権利が根底から覆される明白な危険というのに該当する場合があるんですかということを聞いているわけです。」という問いに対して、岸田外務大臣、「日米同盟に基づく米国の存在、そしてその活動は、我が国の平和そして安定を維持する上で死活的に重要である、こういったことを前提とした場合に、このような米軍に対する武力攻撃、これは、それ以外の国に対する武力攻撃の場合に比較しても、この新三原則に当てはまる可能性は高いと考えなければならないと思っています。」と答弁をされました。

 これでよろしいですね。

岸田国務大臣 結論から申し上げると、そのとおりであります。

 密接な関係にある他国に武力攻撃が発生したときに、いかなる事態が、我が国の存立が脅かされ、そして国民の命や暮らしや幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に該当するか。

 これは事態の具体的、個別的な状況に即して総合的に勘案するわけですが、御指摘の米軍の活動については、我が国の平和と安全を維持する上で死活的に重要であるということから、それ以外の国に対する武力攻撃の場合に比較して、この三要件に当てはまる可能性は高いと考えており、御指摘の議事録の答弁につきましては、そのとおりであると考えております。

緒方委員 それでは、一ページめくりまして、4に移っていきたいと思います。

 これは、内閣法制局長官の、同じく新三要件の当てはめに関する答弁のところでありますけれども、一段落目の一番最後のところ、「単に日米同盟が揺らぐおそれがあるということが直ちにこれに当たるとは考えられません。」

 「これ」というのは新三要件だと思いますけれども、この単に日米同盟が揺らぐおそれがあるということが直ちに新三要件に該当するとは考えられませんという答弁でありますが、これは政府の見解ということでよろしいですね、副大臣。

左藤副大臣 憲法上、我が国が武力の行使を行い得るのは、あくまで新三要件を満たす場合に限られます。我が国または我が国と密接な関係のある他国に対する武力攻撃が発生したことを前提としております。

 何をもって武力攻撃の発生と見るかについては、個別具体的な状況によるため、一概に申すことは困難でございますが、その上で申し上げれば、委員御指摘のような、過去においても、単に日米同盟が揺らぐおそれがあるということが、さっき何かありましたけれども、新三要件に当たるとは考えられないや、周囲を海に囲まれている日本を武力をもって海上封鎖し、日本の国民の糧道を断ち、あるいは生産物資を断つ、そうして日本を危殆に陥らしめるというような手段を講ずるならば、それはまさに外部からの武力攻撃に該当する旨の政府答弁があるところでございます。

 いずれにしても、新三要件のもとでは、個別的自衛権の場合も集団的自衛権の場合も、十分かつ限定された厳格な要件のもとで武力の行使が容認されることとなっております。

緒方委員 スピードアップしてやりたいんですけれども、もう一回だけ確認させてください、ここだけ。

 法制局長官は、単に日米同盟が揺らぐおそれがあるということが直ちに新三要件に当たるとは考えられませんと言っていますが、これは政府の見解ということでよろしいですね、副大臣。

左藤副大臣 そのとおりでございます。

緒方委員 一枚めくって、次は、集団的自衛権の行使についての岸田外務大臣の答弁であります。

 集団的自衛権の行使については、国際司法裁判所のニカラグア事件判決でも判示されていますように、「武力攻撃を受けた国の要請、同意が求められる、」と。

 答弁をそのまま読み上げますと、

  国際法上、集団的自衛権の行使に当たりましては、武力攻撃を受けた国の要請、同意が求められる、これは国際法上そのように定義をされています。そして、今回の閣議決定におきましても、国際法に従い我が国の対応を考えていく、この閣議決定の中に明記をされています。国際法上の対応に従っていく、これはもう大前提であります。

  そういったことから、あえてそれに上乗せすることは行われなかった、このように認識をしております。

「それ」というのは今回の法律だと思いますけれども、この答弁で、岸田外務大臣、よろしゅうございますでしょうか。

岸田国務大臣 この答弁のとおりであります。

 集団的自衛権の行使に当たって、武力攻撃を受けた国の要請または同意が必要、これは国際法上当然の前提であると考えており、そして平成二十六年七月一日の閣議決定も、「我が国による「武力の行使」が国際法を遵守して行われることは当然である」、これが明記されております。

 答弁のとおりであります。

緒方委員 ありがとうございました。

 一枚めくって、六番目に行きたいと思います。

 これは国際法の話ですが、国際法上の武力の行使に対する違法性阻却事由ということについての答弁でございます。

 これは内閣法制局長官の答弁ですが、二段目、「国際法上の違法性阻却事由としては、個別的自衛権として認められる場合、集団的自衛権として認められる場合にあわせて、国連安保理決議によって武力行使が認められる場合がございます。」とございます。

 この認識でよろしいですね、副大臣。では、岸田外務大臣。

岸田国務大臣 憲法上の武力行使が許容される根拠、そして、一方、国際法上の根拠、これは別のものであり、整理して考えなければなりません。

 憲法上、我が国において武力行使が許容されるのは、あくまでも新三要件を満たす場合に限られます。そして、それが国際法上の根拠は何かと問われた場合に、集団的自衛権となる場合もあれば、あるいは国連安保理決議に採択されて集団的安全保障となる場合もある、こういったことであります。

緒方委員 これは通告いたしておりませんが、この三つに限定をされるというふうにお考えでしょうか。違法性阻却事由というのは、個別的自衛権で認められる場合、集団的自衛権で認められる場合、そして国連安保理決議によって武力行使が認められる場合、三つが書かれてありますが、これに限定をされるというふうに御理解されておられますでしょうか。

岸田国務大臣 済みません、手元に資料はありませんが、たしか国連憲章五十一条だったと思いますが、それは違法性が阻却される場合が明記されていたと記憶しております。

緒方委員 ありがとうございました。

 ここからは少し当てはめの話でありますが、七番目であります。

 イスラム国有志連合による空爆についてでありますが、それに対する、日本が後方支援ができるかどうかということについて、安倍晋三総理は次のように答弁されておられます。二段目の途中からですが、

 我々は戦闘現場ではない場所で後方支援することは、これは武力行使と一体化しない、つまり憲法違反ではないという考え方でございます。

  と同時に、また、政策的に、そういう法律が、もし可能となる法律ができたとしても、政策的にはそれは行わないということは申し上げているとおりでございます。

という答弁であります。

 この答弁でよろしいですね、副大臣。

左藤副大臣 いわゆる後方支援と言われる支援活動それ自体は、武力の行使に当たらない活動です。

 先般の閣議決定にあるとおり、他国が現に戦闘行為を行っている現場ではない場所で実施する補給、輸送などの我が国の支援活動については、当該他国の武力行使と一体化するものではなく、憲法上の問題は生じておりません。

 また、我が国として、憲法上の問題でなく、政策上の判断として、先ほど総理の答弁もありましたとおり、ISILの空爆等を実施している御指摘の連合への後方支援を行うことは、全く考えておりません。

緒方委員 もう一枚めくっていただきまして、八枚目であります。

 我が党の小川淳也議員が予算委員会で安倍総理に質問した際に、「イラク戦争、アフガン戦争、湾岸戦争に行かないと宣言しておられるのは、行かないんですか、行けないんですか、政策判断ですか、法的制約ですか。」というふうに質問をしています。

 それに対しまして安倍晋三総理大臣は、「政策判断ではございません。」一番最後のところですけれども、「イラク戦争やあるいはアフガン戦争や湾岸戦争等に自衛隊を派遣して戦闘に、戦争に参加することはない、これは今まで累次答弁をしているとおりでございまして、これは明確でございます。」というふうに答弁をしております。

 この認識でよろしいですね、副大臣。

左藤副大臣 そのとおりでございます。

 これまで繰り返して申し上げるように、総理が答弁されたとおり、自衛隊が武力行使を目的として、かつての湾岸戦争やイラク戦争あるいはアフガン戦争での戦闘、すなわち一般の方々が思い浮かべるような、敵を撃破するために大規模な空爆や砲撃を加えたり、敵地に攻め入るような行為に参加することは、決してありません。

緒方委員 ありがとうございました。

 一枚めくって、九ページ目であります。

 これは参議院の外防での質疑でありますが、政府参考人の方から自衛権の行使について以下のような答弁がございます。

 真ん中の辺でありますが、「単に武力攻撃のおそれや脅威があるだけでは自衛権の発動は認められません。よりまして、いわゆる先制攻撃や予防戦争などが国際法上認められないということは、従来から政府として申し上げているとおりでございます。」という答弁です。

 その後、もう少し質問が続きまして、最後のところで、「武力攻撃の存在というものが自衛権の発動の前提になるという考えに立って、国際法上認められない行為を我が国として支援することはないということでございます。」

 これは外務省の政府参考人の答弁でありますけれども、この認識でよろしいですね、副大臣。

左藤副大臣 憲法上、武力の行使が許されるのは、あくまで先般の閣議決定にある新三要件を満たす場合に限られ、我が国または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したことを前提としております。

 したがって、他国に対する武力攻撃のおそれや脅威があることをもって、それが新三要件を満たすことはありません。

 また、国連憲章上、武力攻撃の発生が自衛権の発動の前提となることから、仮に、ある国が、何ら武力攻撃を受けていないにもかかわらず違法な武力の行使を行うなど、国際法上認められない行為を行っている場合は、我が国がそのような国を支援することはございません。

緒方委員 最後に一問だけ、十番目であります。

 これは国会審議ではございませんが、NHKの番組で自由民主党の高村正彦副総裁が、集団的自衛権の行使について以下のようなことを言っておられます、存立事態に当てはまるかどうかということで。

 単なる経済的理由ではだめだ、原油が三割、五割上がる程度ではだめだ、新三要件はかなりしっかりした規定だという答弁がございます。

 この認識でよろしゅうございますか。最後の質問であります、副大臣。

左藤副大臣 いかなる事態が存立危機事態に該当するかについては、事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての状況を統合して客観的に、合理的に判断することになるため、一概に申し上げることは困難でございます。

 その上で、我が国と密接な関係がある国に対する武力攻撃とか云々とございますが、そういうことを踏まえて、単なる経済的影響にとどまらず、国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が生じた場合には、状況を総合的に判断して、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害に及ぶことが明らかな状況に当たる可能性があると考えております。

緒方委員 終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 皆さん、おはようございます。

 まず、冒頭、私もこの委員会でIS、イスラム国のことについて聞かせていただいた経緯もありますので、一点、大臣に質問させていただきたいと思います。

 報告書が作成をされ、また公表がなされましたが、ちなみに、その報告書の中には、情報の収集、集約、分析能力の強化、こういったものもまた今後への取り組みの一つにも挙げられております。

 そこで、ISから実際にメールが届いて、受け取っていらっしゃった後藤さんの奥様にも、検証する上で、この報告書を作成する上で、改めて検証委としては話を聞いていたのか。そしてまた、実際に、対策本部がヨルダンに置かれていたことが最善だったのか、こういった検証もなされていたのか。大臣として、今回公表された検証報告書、十分なものだという認識をお持ちでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の検証委員会の報告につきましては、政府として検証を行い、報告書をまとめ、公表したものだと承知をしております。ですので、政府の一員として、外務省として、この検証に最大限協力をしてまいりました。

 そして、御指摘の後藤さん、あるいはさらには湯川さんの御家族から話を伺ったのかということについてですが、今回の検証、政府として適切な対応ができたかどうか、こういった検証を行ったということでありますので、政府に属していない、私人である湯川さんあるいは後藤さんの御家族に対してお話を伺ったことはないと承知をしております。

 そして、十分なのかということにつきましては、政府としてこうした検証委員会の報告をまとめたわけですが、外務省は、外務省の中で、中根大臣政務官のもとにこうした具体的な対応について検討するチームを立ち上げてまいりました。こうした報告をもとに、外務省の立場からより具体的な対応もしっかりと検討しなければならないということで、並行して議論を行ってきたわけですが、このチームにおきましても、政府の検証報告を踏まえて、具体的な対応をしっかりと明らかにし、実行していきたいと存じます。

 こうしたことを積み重ねることによって、こうした痛ましい事件を受けて、我が国としてしっかりとした対応を行う、こういった結果につなげるよう努力をしていきたいと考えます。

鈴木(貴)委員 検証委員会の立ち上げ、また検証作業というのは、もちろん政府の方で責任といいますか、主導していらっしゃるものだと思いますが、だからといって、今答弁にあった奥さんは民間人であるからというのは、私は何ら説明になっていないのではないかということを申し添え、次の質問に早速移らせていただきたいと思います。

 私、水曜日に外務委員会で質問に立たせていただきまして、その際にも、ロシアのナルイシキン議長が訪日をされる、そのときに安倍総理は会う予定はあるのかということに対しまして、大臣からは、今のところ予定はない、こういった答弁が返ってまいりました。しかしながら、きのう、約十五分間ほどという、決して長いとは言えませんが、面会をされた。この報道を受けまして、私も非常に安堵したところであります。

 しかしながら、逆に言えば、大臣は答弁で、会う予定はないというお話だった。そして、その上で、その答弁を経ても、総理はお会いされた。裏を返せば、これは総理の強い意向が反映されたものである。そしてまた、言いかえれば、外務省として、果たして総理の意向をしっかりと常々酌んで動いてきたのかというところを私は危惧しているところであります。

 はっきり申せば、安倍総理が日ロ関係の発展、ひいては北方領土問題解決、平和条約締結、前向きな姿勢を持っているにもかかわらず、足を引っ張っているのは日本の外務省ではないのか、こういった懸念さえも持つところであります。

 そこでお尋ねをいたしますが、きのうホテルで十五分間ほど会ったということでありますが、プーチン大統領の側近中の側近とも言われているナルイシキン議長であります、堂々と官邸や国会で会うべきではないかと思うんですが、大臣の御見解はどのようでしょうか。

岸田国務大臣 まず、先日、委員から御質問を受けたのは二十日の段階だと思います。二十日の段階では、答弁させていただきましたように、予定はないということ、この答弁に間違いはございません。そして、二十一日、ぎりぎりのやりとりの中で、議長の総理表敬が決まり、それが行われたわけであります。

 外務省が足を引っ張っているというようなことはございません。政府一体となって、日ロ関係について前進させるべく取り組んでいるところであります。

 そして、後半の御質問でありますが、これは総理として表敬を受ける立場でありますが、今現在、福島のいわき市におきまして、太平洋・島サミットが行われております。昨日からさまざまな外交日程が予定されておりました。その中での対応ということであると我々は理解しております。

鈴木(貴)委員 続いてなんですけれども、これは事実確認をまずさせていただきたいんですけれども、六月の七日と八日、ドイツにおいてG7の首脳会議が開かれますが、その前、六月五日、六日と、安倍総理はウクライナを訪問する予定が検討されているという報道がありますが、これは事実でしょうか。

岸田国務大臣 まず、報道は承知しております。しかし、今現在、ウクライナ訪問について決まったことは何もございません。

鈴木(貴)委員 決まったことがないということは、行く可能性はあるという認識でよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 ウクライナ問題につきましては、我が国としまして、G7の連携を重視しながら、外交的、平和的な解決を関係各国に促している立場にあります。また、ウクライナ自身の改革の努力も促している、こうした立場であり、この問題につきまして、国際社会と協力しながら貢献しているわけであります。

 さまざまな取り組みが求められますが、いずれにしましても、今回、具体的に、G7直前にウクライナ訪問について決まったというようなことは何もないと理解しております。

鈴木(貴)委員 まだ決まっていないということなんですけれども、今おっしゃった、さまざま、るる課題が、厳しい現状の中で、もし安倍総理がウクライナを訪問されれば、これは間違いなくロシアを刺激することにつながりかねない。ひいては、北方領土問題の解決に向けた交渉、もちろん平和条約の締結、こういったことにも水を差す話になりかねない、このように思うんですけれども、大臣の見解はどのようでしょうか。

岸田国務大臣 我が国としましては、先ほど申し上げました国際法を遵守する立場から、ウクライナの主権あるいは領土の一体性、これは重視されなければいけない、こういった立場から、G7各国と連携をしながら、ロシア側に建設的な行動を働きかけている、こうした立場にあります。あくまでも平和的、外交的にこの問題が解決されるべきだという立場から、ロシアとの対話、これは大変重要であると考えております。

 ウクライナ問題につきましては、しっかりと平和的、外交的な手段で解決されるべく努力をしていかなければならないと思いますが、一方で、ロシアとの関係において、我が国は、ロシアとの二国間関係、大切な隣国関係であります。ぜひ政治的な対話は引き続き重視していきたいと考えます。

鈴木(貴)委員 対話の重要性ということは、よくよく、大臣がそのように考えていらっしゃること、また、政府としても対話の重要性、何度となく発表されていますので、私も存じ上げているところであります。

 ゆえに、その日ロ関係の重要性を説かれる岸田外務大臣、ひいてはまた政府、だからこそ、安倍総理がこのG7の前にウクライナを訪問するということは、私はいかがなものか、このように思っているんですけれども、その点について、総理がウクライナを訪問することによってロシアを刺激することにならないか、交渉の足を引っ張るようなことにつながりかねない、こういった可能性、危険性について、大臣はどのような認識を持っていらっしゃいますか。

岸田国務大臣 ウクライナ問題につきましては、あらゆる関係者に対して、この問題を外交的、平和的に解決するべく、努力を求めていかなければなりません。ロシアあるいはG7、さまざまな関係国にこうした努力を促していくべきであると考えております。そして、ウクライナ自身にも改革の努力を求めていかなければなりません。

 こうした関係各国に、それぞれさまざまな働きかけを行うことが求められると考えます。そうしたさまざまなバランスの中で、我が国の対応を考えていくべきであると考えます。

鈴木(貴)委員 今、ロシアを刺激し、北方領土だとかにも停滞の可能性があるということも申し上げましたが、同時に、今、直近の課題としては、以前、私もこの委員会でも大臣に質問させていただきましたが、サケ・マスの流し網の禁止法案、こういったことも、日本側にとって非常に難しい立場に追い込まれる、そういった側面も持ち合わせているかと思います。

 大臣は、以前、私が質問を、あれは四月十七日だったんですけれども、この問題の重要性をしっかりと認識した上で、「全力で取り組んでいきたい」、このように最後答弁をいただきました。大臣が述べられた「全力で取り組んでいきたい」、全力とは、具体的にどういった取り組みを、このサケ・マス流し網禁止法案に対して、政府としてロシアにどのような全力の取り組みをされるのか、具体的に教えていただけますでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のロシア連邦水域における流し網漁の禁止につきましては、ロシア国内で法律が提出され、そして審議が行われていると承知をしております。

 こうしたロシアに対して、ロシア連邦水域において、日ロ政府間協議の結果に基づいて我が国漁業者がサケ・マス流し網漁を行っていることから、ぜひこうした操業を継続できるよう働きかけを行っているところであります。こうした働きかけは引き続き続けております。

 こうした政府間の対話につきましては、ことし二月に日ロの次官級協議も行いました。そして、先日、五月に入ってから、経済分野における次官級協議も行いました。こうした対話を通じまして、日ロ関係をしっかりコントロールしていかなければならないと思いますが、御指摘の点も大変重要な課題であると認識をいたします。

鈴木(貴)委員 大臣が認識をしていただいていることは、私も十分認識をしているところであります。しかしながら、その認識の上でどのようなアクションを、全力で取り組まれると言ったその言葉の真意のほどを私はぜひとも伺いたかったところではありますが、少々といいますか、非常に残念な今思いで聞かせていただきました。

 また同時に、今、対話の重要性を説かれた大臣であります。であるならば、やはり私は、ナルイシキン議長、堂々と官邸もしくは国会、こういった場でしっかりとお会いするということが、まさに大臣が言っていらっしゃる対話の重要性、こういったところに資するのではなかったのかな、このように強く思うところであります。

 今、大臣も御存じかと思いますが、ビザなし四島交流、一回目のビザなし、そして自由訪問も中止となりました。さまざまな理由があるかと思いますが、私はやはり、ウクライナ問題、そしてまた日本のロシアにおける対応、姿勢、こういったところが影となって、影響になっているのではないか、このように思います。

 そういったことを打破する上でも、ウクライナ問題、今、停戦合意がなされ、一定の秩序が保たれているという上で、実効性のないロシアに対しての制裁というものはやめた方がいい、それが国益に資すると私は思っております。

 ぜひとも、G7の場において、ここは日本側から、各国に向けて制裁の解除に向けて働きかけをすべきだ、日本のリーダーシップを発揮するべきだ、それがまさに、大臣が先ほど来からおっしゃっていらっしゃる日ロとの対話につながってくると思います。

 この制裁解除に向けて、そしてまた日本がそれを発信していくことに対して、大臣のお考えはどうでしょうか。

岸田国務大臣 まず、冒頭御指摘がありました四島交流及び自由訪問につきましては、五月二十一日、昨日ですが、在ロシア日本大使館とロシア外務省の間で外交当局間協議を行い、本年の四島交流等の年間実施計画について確認し、五月下旬以降の四島交流等事業を予定どおり実施することで基本的に一致をしたところであります。

 その上で、対ロシア制裁について御質問をいただきましたが、この問題につきましては、まずは、ウクライナ問題につきまして、国際法がしっかり尊重されなければならない、そして、その上で、外交的、平和的に解決されなければならない、こうしたことで各国にそれぞれの努力を促す、こうした態度で臨んできた次第であります。

 まずは、これに関しましては、先日、ミンスク合意が関係者の間で合意をされています。この合意をしっかり履行することが大変重要であると認識をいたします。

 そうした基本を大事にしながら、今御指摘がありました制裁を初めとするさまざまな取り組みについて考えていくべきであると考えます。そういった全体を見ながら、我が国としての対応も考えていかなければならないと考えます。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 最後に、ロシア・クレムリンは、クレムリンの側において、もし日本から正式な招待状が送られれば、プーチン大統領の訪日の可能性は検討されるべきだ、こういった発言はことしの二月から既にされております。こういった発言を受けて、日本の政府として今後どのような対応をとっていくかだけ、一点、お聞かせをください。

岸田国務大臣 プーチン大統領の訪日については、昨年十一月の北京APECにおきます日ロ首脳会談におきまして、本年の適切な時期に実現するための準備を開始する、こういったことで一致をしております。

 具体的には、こうした訪日の実現に向けて、この準備の一環として、先ほど申し上げました、二月の日ロ外務次官級協議を実施いたしましたし、五月十八日に、モスクワにおきまして経済分野の次官級協議を行ったところであります。

 ぜひ、こうした対話、準備を積み重ねることによって、首脳間で一致しているプーチン大統領の訪日に向けて準備を進めていきたいと考えておりますが、ただ、具体的な日程については、まだ、種々の要素を総合的に考慮して検討していく必要があると考えます。

鈴木(貴)委員 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 維新の党、木内孝胤でございます。

 本日は、国際協力についてお話をお伺いしたいと思います。

 その前に、おととい、党首討論が行われました。我が党の新しい代表松野頼久氏も、火曜日に代表に選出され、その翌日がいきなりデビュー戦ということで、私も緊張しながら見守っていたわけでございますけれども、新代表が言うには、何でも反対の野党ではなくて是々非々でということが一つ、それとあと、安保法制等につきましては本当に丁寧な議論をお願いしたいということを申しております。

 昨日、我が党の中の話でございますけれども、第十六回目の安全保障調査会というのが開催されました。領域警備法等いろいろ、かんかんがくがくの党内の議論をしているわけでございますけれども、やはり、これだけ理解が進んだつもりでも、なかなかわかりにくい分野等々ございます。

 地元でも、余り外交、安全保障の話というのは今まではそう多く議論されることはなかったんですが、たまたま今外務委員会にいたりとか、安保法制の話が報道等でも話題になっているので、非常に議論される機会が多くなっております。

 こうした中で、きょう国際協力についてお伺いする問題意識としましては、昨今の緑の基金への拠出とかいろいろなイベントがあった際に、日本はさまざまな形で資金を拠出して国際貢献をしている、現場で話を聞いている分には非常にこれはすばらしい、いい話だ、国益に資する大切な話だということはわかるわけでございますけれども、やはり地元で話をしていると、なぜ今この日本の状況でこれだけ拠出する必要があるのかというような声も多うございます。

 私は、やはり日ごろから国民への説明責任、先般、ODA白書、私もかなり細かく熟読させていただきました。ODAができて昨年六十年を迎えましたけれども、本当にすばらしいことを日本はやってきております。

 ここで、改めて、日本の過去六十年の取り組み、その成果について、大臣にお伺いをしたいと思います。

岸田国務大臣 ただいま委員の方から平和安全法制の議論についても触れていただきましたが、一昨年の十二月、我が国は初めて国家安全保障戦略をまとめました。その中にも明記されていることですが、我が国としまして、まずは外交手段を通じて我が国にとって好ましい国際関係をつくっていく、これがまず第一であると考えております。その上で、万が一の場合に備えて切れ目のない安全保障体制をつくっていく、そして、そのことによって抑止力を高めてリスクを低減させていく、これが基本的な考え方だと思います。やはり外交努力というのは、我が国の外交・安全保障戦略において最も基本的なものであり、まずは重視されなければならない取り組みであると考えております。

 そして、ODAにつきましては、昨年六十年を迎えました。この六十年を振り返りますときに、我が国の大切な外交において最も重要な手段、外交手段がこのODA、国際協力であったと思っております。このODAがアジアを初めとする開発途上国の平和と安定に大きく貢献し、確かな成果を上げてきたと我々は認識をしております。そして、このことは国際社会からも高く評価されていると受けとめています。

 ぜひ、こうした大切なODA、そして国際協力につきまして、我が国はこれからも重視し、国際社会の平和や安定にしっかり貢献していきたいと考えます。

木内(孝)委員 ありがとうございます。

 私も、従来から、安保法制につきましては、至らない点、不明確な点等あるので、一部改正する必要がある、必要性等は重々感じておりますし、これは非常に大切な話だと思っております。

 一方で、それが余り前面に出てしまいますと、外交あるいは平和主義のところがどうしても薄く見えてしまう部分もございますので、大臣は非常にその点はバランスをとって日ごろ発信されているという認識でございますけれども、ぜひ、引き続き、そのバランスにつきましては十分に御配慮いただいて、丁寧な御議論を続けていただければと思います。

 それと、ことし、十二年ぶりにODA大綱が改定されました。

 我が国を取り巻く安全保障環境がいろいろ変化している中で、安保法制もその中で改定をする、同時に、海外に対する協力の体制というのも、国際情勢の変化に合わせていろいろ変えていかなければならないというふうに認識をしております。

 ことしの二月に改定されたわけでございますけれども、今までの国際情勢の変化を踏まえて、ODAの方向性、これについて大臣の御所見をいただければと思います。

岸田国務大臣 ODAにつきましては、まず、日本や国際社会をめぐる状況、環境が大きく変化しています。また、ODAに求められる役割も多様化しています。

 こうした状況を受けて、十二年ぶりにODA大綱を改定し、新たな開発協力大綱を決定したということでありますが、新大綱においては、まず、名称をODA大綱から開発協力大綱に変えたわけですが、このことに象徴されますように、まずは、官民連携を初め、国際協力についてはオール・ジャパンで協力しなければならない、こういった点。あるいは、一人当たりの国民所得だけで判断するのではなく、カリブの島嶼国等、特別な脆弱性を有する国への協力を実施するなど、協力のスコープをより広げなければならない、こういった点。さらには、一方的に援助するだけではなくして、それが開発途上国の雇用とかあるいは技術移転にもつながる、こうした対等なパートナーシップ、これを重視しなければいけない点。よりこういった点を重視しながら、我が国が貢献できるような援助を行わなければいけない、こういった内容を新大綱の中に盛り込んだ次第であります。

 今後とも、今申し上げた点を重視しながら、ぜひ、戦略的、効果的な国際協力を進めていきたいと考えます。

木内(孝)委員 ただいま、官民連携という御答弁を頂戴しました。

 現場から見ていまして、民間企業あるいはNGO、地方自治体等々との連携の取り組みについて、もし具体例等がございましたら御答弁いただければと思います。

城内副大臣 お答えいたします。

 途上国の開発におきまして、委員御指摘された民間企業、NGO、地方自治体といった政府以外の多様な主体がますます重要な役割を果たすようになってきております。こうしたことから、開発協力の実施に当たりましては、ODAが民間部門を含む多様な力を動員、結集するための触媒としての役割を果たし、さまざまな主体との互恵的な連携を強化することとしております。

 具体的な例を挙げますと、例えば、民間企業との連携ですが、中小企業等からの提案に基づきまして、製品、技術等を途上国の開発へ活用する可能性を検討するための調査を行う事業などを行っております。例えば、電気がないところにピコソーラーを普及させるだとか、あるいは湖水の汚染を浄化するとか、そういったような事業というのがあります。このような取り組みの結果、我が国民間企業の製品、技術等が途上国の経済社会開発に生かされる事例が形成されてきております。

 また、NGOとの連携の具体例でありますけれども、日本のNGOが途上国で実施する経済社会開発事業等に対する資金協力事業、これは日本NGO連携無償資金協力事業と言っておりますが、さらには、日本のNGOが提案する、途上国住民の生活改善、生計向上に直接役に立つことを目的とした技術協力事業などの、これはJICA草の根技術協力事業でありますが、NGOと連携したODAの実施を行っているところでございます。

 次に、地方自治体との連携ですが、実は、途上国におきまして、急速な経済発展が進む中で、都市化の進展で、水やエネルギー、廃棄物処理、都市交通、公害対策分野等の都市問題に対応するニーズが大変高まっております。

 実は、こういった、水、エネルギー、廃棄物処理のノウハウを地方自治体が持っておりますので、こうした地方自治体からの提案に基づく無償資金協力や草の根技術協力などを通じ、ODAにおける地方自治体との連携を図ってきております。

 いずれにしましても、政府といたしましては、今後とも、ODAにおけるこれらの主体との連携を積極的に推し進めながら、オール・ジャパンでより効果的な国際協力の実施に努めてまいる所存でございます。

木内(孝)委員 ありがとうございます。

 ODAの場合は、国民の多くが理解しているのは、ある意味、人道支援的な側面が大きい。これは非常に大切なことですし、それはそれで評価するし、理解もする。ただ、一方で、去年一年間も、株価が上がったりと言われている中で、実質賃金は年間で見ると三%下落、一九九一年以来の大幅な下落ということで、株価とは裏腹に、割合とというか、かなり生活実感が厳しい中で、気前よくこうした拠出をしていいのかという声があります。

 私が説明しておりますのは、やはり、例えばシリア、アフガニスタン、ああいうところは貧困から紛争につながるケースが非常に多い、貧困、あるいは平和を構築する仕組みそのものの支援をこうした開発協力を通じてやっているというようなことを申し上げております。

 ODAによる平和構築支援の仕組みというか、取り組みといいますか、これについて御説明いただければと思います。

城内副大臣 ただいま木内孝胤委員から、アフガニスタン、シリア平和構築支援という話がございましたが、我が国は、平和と安定の確保は国づくり及び開発の大前提である、そういった認識のもと、人間の安全保障の視点に立ちまして、ODAによる平和構築支援を積極的に進めております。

 こうした観点から、我が国は、貧困を含め紛争や不安定のさまざまな要因に包括的に対処するとともに、紛争予防や紛争下の緊急人道支援、紛争終結促進、紛争後の緊急人道支援から、さらには復旧復興・開発支援までの切れ目のない支援を行っているところでございます。

木内(孝)委員 以前にも一度申し上げましたが、二〇一〇年に、当時の外務委員会としまして、鈴木宗男外務委員長のもとでアフガニスタンに参りました。

 その中で非常に印象的でありましたのは、もうどこから手をつけていいのかわからないぐらいの、二〇一〇年当時でも相当厳しい状況であった中で、やはり、私ども、訪問した外務委員会としては、できる範囲内において、教育に重点を置いてもらえないのかと。

 といいますのは、二〇〇一年当時は、千二百万人程度いました十五歳以下の子供たちの就学数が約百万人であった。その時点で七百万人には改善はしていたわけですけれども、逆に言いますと、五百万人の子供たちが今なお学校に通うことができていないというのが当時の状況でございました。

 その後、継続的な皆様の御努力によってふえているというふうに聞いておりますけれども、アフガニスタンを支援した中身、とりわけ教育分野の支援に重点を置いてどのような取り組みがなされたか、その成果についてお聞かせいただければと思います。

城内副大臣 お答えいたします。

 我が国は、アフガニスタンを自立させ、再びテロの温床とはしないという強い決意のもと、二〇〇一年以降、アフガニスタンの治安維持能力の向上やタリバン等の元兵士の社会への再統合等、総額約五十八億ドルの支援を実施しております。

 特に、教育分野におきましては、八百三十以上の学校の建設、修復や、延べ百万人以上に対する識字教育支援を中心に、国際機関とも連携しながら、アフガニスタンの教育環境の改善に取り組んでまいりました。

 我が国を含む国際社会の支援の結果、二〇〇一年からこれまでの間に、アフガニスタンの教育環境は大きく改善しております。例えば、六歳から十五歳の就学児童数は、二〇〇一年、約百万人であったのが、二〇一三年には九百二十万人に増加しております。また、識字率も、二〇〇七年の二三%から、二〇一三年は三六%と改善しております。

 アフガニスタンの自立と復興を支える観点から、教育機会の提供を含めた人づくりの支援は極めて重要であります。我が国は、国際社会と連携しながら、この教育分野を含め、アフガニスタンに対する支援を引き続き行ってまいる考えであります。

木内(孝)委員 今の御答弁の中でもございましたけれども、百万人から九百二十万人の子供たちが学校に行けるようになったというのは、非常に大きな成果ですし、誇るべき成果だと思っております。

 こうした具体的な成果等を国民の皆様に継続的に発信を、地元でも続けていきたいと思っておりますが、開発協力の今後の課題、いろいろ予算的な制約も出てきている中で、ODA、開発協力の今後の課題についてお聞かせいただければと思います。

城内副大臣 先ほど大臣からも御答弁ありましたけれども、昨年六十周年を迎えました我が国のODAは、国際社会の平和と安定及び繁栄、さらには、我が国の国際社会における地位の向上に大きく寄与してきたというふうに考えております。

 一方で、今委員から御指摘ありましたように、我が国のODA予算、これは縮小傾向が続いております。

 こうした中、ことし二月に開発協力大綱を策定いたしましたが、その中でも示されておりますとおり、今後の課題として、我が国外交政策に基づいた戦略的な開発協力をさらに推進していくこと、そして、官民連携を初め、さまざまな資金、主体との連携も一層強化していく必要があると考えております。

 それと同時に、我が国開発協力の果たしている役割やその意義について、先ほど木内孝胤委員御指摘のとおり、内外での発信を一層強化し、積極的なアピールに努めていくことも重要であります。

 そうした観点から、これまでも我が国の開発協力につきまして、ホームページや各種メディアを通じた積極的な情報発信に努めてきておりますし、また、相手国においては、我が国開発協力の成果や意義をしっかりと理解してもらえるよう、現地のメディアに、日本はこういうODAをやりましたよと働きかけたり、あるいは我が国開発協力の現場視察をアレンジしたり、我が国の協力で建設された施設や供与した資材等に銘板やステッカーを張ったり設置する等の努力を行ってきております。

 今後とも、我が国の開発協力による貢献が十分に周知、評価されますよう、対外発信のさらなる拡充に取り組んでまいりたいと思います。

 なお、先ほど答弁申しました例ですが、識字率が、二〇〇七年は二三%と申しましたが、これは二〇〇〇年の誤りでありますので、訂正させていただきます。

木内(孝)委員 対外発信の点についてでございますけれども、日本は奥ゆかしさとかそういう文化がございますので、ぜひその点、今まで以上に、ある意味図々しくといいますか、御努力いただければと思います。

 私も、外資系の企業に八年ほど勤めておりましたけれども、やはり自分の成果以上に自分はこれをやったとアピールする力というのは、私は余りそういう形は好きではありませんけれども、国際社会の中においてはそういうことも時としては必要だと思いますので、ぜひ積極的なアピールを引き続きお願いできればと思っております。

 一つ、課題、副大臣も触れられましたけれども、やはり、今、安保法制の議論をしている中で、どうしても、何となく、武力とかそういうイメージを時として外国から持たれるリスクというのが当然ございます。

 そのリスクを持たれる議論のさなかに、我が国のODAの予算というのは、一九九七年をピークに、一旦ちょっと下げどまり等もありますけれども、明らかに上がって、九〇年代ずっと世界トップの、規模の面においてはトップの拠出額であったにもかかわらず、ここのところ、二位に落ち、さらに落ちという状況が続いております。

 今こそ、ODAの予算を明確にこれを反転させたのではないかというイメージを持たれる。今、我が国の財政状況を見ると、外務省だけがとか、なかなか予算をふやすというのは難しいかもしれません。しかしながら、安保法制でいろいろ誤解を持たれかねないときだからこそ、従来の平和主義の理念、これを強調する意味でも、ODA予算を明らかに反転させたんだというのは、非常に日本の国益にも資すると考えております。

 なかなか、限られた予算ですし、医療だ、介護だ、本当にいろいろ予算が足りない中で、気前よくできる状況なのかと地元でも言われますけれども、ぜひ、そこの点については、何とか絞れない雑巾から予算を絞り出して頑張っていただきたいと思います。

 それと、もともと予算が減っている中に加えて、私もたびたび申し上げておりますけれども、為替レートで一喜一憂してはいけないということは私も承知はしておりますけれども、三割、四割円安になったわけでありまして、私は、日本の開発援助の国際的評価というのが、海外から見たらドルベースで見られるケース、あるいは現地通貨建てで見られるケースが多うございますので、やはり援助額は絶対額で見たら三割、四割明確に減っているケースがございます。

 これは、国際評価あるいは日本の存在感、見えない外交的な立場ということから、どのようなふうに評価をされているのか、どのような危機感をお持ちなのかということを御答弁いただければと思います。

岡庭政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、我が国のODA予算は、平成九年度の一兆一千六百八十億円をピークとして減少傾向が続いております。本年度予算においては、政府全体で五千四百二十二億円となっております。

 最近の円安の影響を含むODA予算の減少につきましては、特に外貨払いが多い国際機関、任意拠出の国際機関について大きな影響が生じております。こうした国際機関からは、我が国に対してさまざま機会に懸念表明を受けているという状況です。

 外務省としては、補正予算や有償資金協力の枠組みを含め多様なツールも活用しまして、我が国外交政策について最も重要な手段である開発協力の効果的、戦略的な実施を図るとともに、必要なODA予算の確保のために、最大限、引き続き努力してまいりたいと思います。

木内(孝)委員 最後に、一昨日、質問させていただいた際に大臣はいらっしゃらなかったので、これは質問ではございませんけれども、AIIBに関して、その後、いろいろどういう状況なのかというふうに聞いているんですが、なかなか交渉中なので答えられないという話もある一方で、いろいろ漏れ聞こえてきていることもございます。

 私は、以前から、入るべきか入らないべきかということは、情報が不足しているので意見表明は避けたいというふうに申し上げておりますけれども、今回、やはり、審査体制において構造的な利益相反の可能性があるという懸念を強く持っております。

 これは、理事の数、十二名になるのかわかりませんけれども、そのうち何名が非中国圏の人たちだとか、仮に外形的に利益相反が回避されていたとしても、実態的にどう見ても私はこれは利益相反は避けられないというような危惧をしております。かつ、ADBと連携をして融資をするとなると、ADBの資金の拠出先がインドであり中国でありということになると、どうしてもこの利益相反を明確に回避するのは私は難しいと思っておりまして、この点も、新たな、これも審査体制やガバナンスというところと絡むとは思いますけれども、ぜひこの点につきましては、十分に考慮に入れた上で、慎重かつ十分に精査をした上で御判断をいただければと思います。

 あわせてですが、こういう微妙な交渉をしている際に、日本はADBを通して新たにインフラ投資を積極的にやるみたいなニュースが出ております。これはこれで私は結構なことだとは思いますけれども、今、こういう交渉中のときに、あえて他国を刺激するように、どうしても結果的に見えてしまっている。これは、たまたま、静かにやっていたのが報道されたからそう見えるのかもしれませんけれども、やはり私は、非常に、今こういう安保法制という微妙なことをやっているさなかに、いろいろなことが今の内閣は、一部の方かもしれませんけれども、丁寧さに欠けるというふうに感じておりますので、その点、最後にお願いを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 維新の党の青柳陽一郎でございます。

 本日は、質問の時間を二十五分いただきまして、ありがとうございます。早速ですが、質問に移ってまいりたいと思います。

 まずは、現在、国連本部で開催中といいますか、もう詰めの段階、最終局面だと思いますが、NPT運用検討会議についてお伺いをしたいと思います。

 そもそもNPTは、核軍縮の促進、核兵器拡散の防止、原子力の平和利用を目的として、現在百九十カ国が締約している核不拡散体制の根幹の条約ということだとは思いますけれども、この条約の最大のテーマである核軍縮というのが本当にできてきているのか、核保有国と非核国との利害対立を超えて実際に実効性あるものになっているのか、そして、核兵器削減の行動というのは実際に進んでいるのかどうか。まずは、NPTの意義について伺いたいと思います。

岸田国務大臣 NPT、核兵器不拡散条約ですが、全体の構造として、まず、一九六七年一月一日以前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国、これを核兵器国と定めています。米国、ロシア、英国、フランス、中国、この五カ国を核兵器国と定めているわけですが、この核兵器国には、こうした特別の立場を与えるわけですから、核軍縮交渉を義務づける、こうした義務を与えています。そして、それ以外の国を非核兵器国としているわけですが、こうした非核兵器国には、核兵器の拡散を防止し、そして原子力の平和的利用のための協力を促進する、こうしたことを定めています。

 こうした条約ですが、現在の国際的な核軍縮・不拡散体制の基礎をなす条約であると認識をしています。そして、NPTは五年ごとに運用検討会議を開催いたします。今現在、運用検討会議を行っているわけですが、この場におきまして、条約の運用を検討し、核軍縮・不拡散の促進に向けた具体的な措置を議論することになっております。

 ぜひ、こうした実施を通じて、国際的な核軍縮・不拡散の促進が図られることを期待するわけですが、いずれにしましても、先ほど申しました核兵器国と非核兵器国がともに協力することによって、現実的に、そして具体的に核兵器のない世界を目指す、こうした取り組みが前進することをこの条約の枠組みを通じて期待したいと考えています。

青柳委員 大変御丁寧に御答弁いただきまして、ありがとうございます。

 ただ、実際、これが実効性あるものなのか、あるいは核兵器の削減が行動として実際に進んでいるのかについては、どうお考えになられているかというのをお伺いしたかったんですけれども、この点、御答弁はありますか。

岸田国務大臣 NPT運用検討会議、五年に一度の会議ですが、その会議ごとに熱心な議論が行われてきました。

 そうした中にあって、我が国としては、NPDIという非核兵器国による枠組みの議論に貢献することによって、さまざまな提言を行ってきました。現実的、具体的な取り組みについて、少しずつ前進は図られていると認識はしておりますが、ただ、核兵器のない世界に向けてはまだ道半ばであると考えています。

青柳委員 ありがとうございます。

 それで、このNPT運用検討会議、本日、最終報告書をまとめることになっている、そういう段階だと聞いておりますが、岸田大臣もまさに四月二十七日の一般討論演説で、世界の政治指導者は広島、長崎を訪問すべきだ、こういうスピーチをされておられます。

 これは、まさに広島が選挙区である岸田大臣の強い思い入れのあるスピーチだったと思いますし、私も、核兵器の恐ろしさ、非人道性を理解してもらうという上においては、世界の政治指導者が広島、長崎を訪問するというのは効果的な方法だと思います。

 その岸田大臣もスピーチされた広島、長崎の政治指導者の訪問について、これは、五月八日に出された報告書の原案には本件が明記されていたということですが、修正案、そして、けさの報道にあるとおり、最終報告書の案には、残念ながらこの文言が抜け落ちているということが報道されております。

 なぜ、原案に入っていたものが、修正案、最終報告書の案で抜け落ちているのか。どういう理由で抜け落ちたということでしょうか。

岸田国務大臣 今回のNPT運用検討会議におきましては、我が国としまして、今御指摘のありました世界の政治指導者や若者等の広島、長崎訪問も含めて五つの大きな点について提案をし、成果文書に盛り込むべく努力を続けております。今、会議はまだ続行しています。そして、最終合意文書案は、正式には、日本時間のきょうの午前中、公になると聞いております。

 その途中経過につきましては、非公開が前提になっておりますので、この詳細について申し上げるのは控えますが、ただ、公の会議の場で、御指摘の世界の指導者やあるいは若者等の広島、長崎訪問については、中国代表が、会議の場において、広島、長崎訪問への招待は世界の人々が第二次世界大戦の悲劇について包括的に正しい評価をすることに資さない、こういった発言をしております。

 こうした議論は行われたわけでありますが、引き続き最後まで、我が国としましては、御指摘の項目も含めて五つの項目がしっかりと最終文書に盛り込まれるよう、全力で取り組んでいきたいと考えています。

青柳委員 中国の対応、認識、私も大変残念だと思いますし、NPT運用検討会議、これは五年に一回、最終報告書は全会一致が原則ということだと思います。

 今、五つの大きな提案があるということでしたけれども、やはり岸田大臣のスピーチの肝となる部分は、世界の指導者が広島、長崎を訪問すべきだと熱く訴えられたことだと思います。これが、現在、報道では抜け落ちているということです。

 本日採択される予定の最終報告書について、この文言がなければ政府は反対するという認識でよろしいんでしょうか。そしてまた、であれば、今回は前々回の会議と同じように報告書が採択されないという見通しでよろしいんでしょうか。御答弁をお願いします。

岸田国務大臣 我が国としましては、御指摘の項目も大変重要な項目だと思っていますが、他の項目、例えば、核戦力の透明性の確保、あるいは、あらゆる種類の核兵器のさらなる削減や核兵器削減交渉のマルチ化、さらには、核兵器の非人道的影響の認識の共有、そして、北朝鮮を初めとする地域の核拡散問題の解決、他の四つの項目につきましても、我が国にとりまして、これは大変重要な内容であると認識をしています。この全てについて、ぜひ最終合意文書に盛り込まれるべく努力をしていかなければならないと考えています。

 そして、全体の議論を見ておりますと、それ以外のさまざまな大きな議論も行われており、最終合意文書、コンセンサス合意に至るかどうか、これは予断を許されない、大変緊迫した状況にあると認識をしております。

 ただ、ぜひ我が国の提案している項目が最終合意文書に盛り込まれることとあわせて、最終合意文書がコンセンサスでしっかりと合意され、そして公表されること、これも大変重要であると認識をしています。

 いずれにしましても、NPT運用検討会議、現在も議論が続いています。最後まで努力をしていきたいと考えます。

青柳委員 ありがとうございます。

 大変御丁寧な答弁だと思いますが、大臣が一番思い入れのあるところが入らなかったとしたら、そもそも、今、NPT自体の存在意義そのものが問われているという報道もあるので、ここは存在感を示すような対応をされてもよろしいんじゃないかなとは思います。結果を見守りたいと思います。

 次に、今般提出されました安保法制について伺ってまいりたいと思います。

 来週から、安保法制の特別委員会が立ち上がりまして、十一本の法案の審査が始まるわけでございます。それぞれの法案の審査については、私も特別委員会のメンバーになりましたので、その機会に一つ一つ伺ってまいりたいと思いますが、本日は、一昨日行われました党首討論で総理が述べられた見解について、少し伺ってまいりたいと思います。

 まず、この党首討論、大臣はお聞きになりましたでしょうか。特に、安保法制の議論、民主党の岡田代表との議論、その総理の説明、これは大臣も同じ認識なのか。まずは、感想と同じ認識かどうかについて伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、今回の党首討論ですが、久々の党首討論となりました。そして、各党首の皆様方、それぞれ、強い関心を持っておられるテーマを取り上げられました。そして、その上で率直な意見交換が行われた、有意義な党首討論であったと振り返っております。

 そして、当然のことながら、内閣は一体性を保たなければなりません。総理の発言、これにつきましては私も同じ考えでいるということ、これは当然のことであります。

青柳委員 それでは、総理の発言について大臣の認識を伺ってまいりたいと思いますが、やはり、私もこの点については伺いたいと思います。

 自衛隊員が攻撃を受けるリスク、これは、安倍総理は、これまでと変わらないとこの党首討論でも改めて発言されたわけでありますが、今般のこの安保法制の改正で、例えば重要影響事態法あるいは国際平和支援法など、自衛隊の役割、活動範囲、活動現場、こういうものはこれまでよりは格段に広がっていくということはあり得ると思いますし、その活動現場が実際に戦闘地域に、戦闘現場に変わっていくということもあるという答弁はされているわけであります。

 これは、実際に、現実的に想定される事態だと思いますが、総理は、現場の判断で危険は回避するからこれまでと自衛隊員のリスクは変わらないという答弁のように聞こえます。

 いずれにしても、私は、活動範囲が広がっていく、活動現場が広がっていく、役割が広がっていくのであれば、当然、自衛隊員のリスクというのは高まるのが普通だと思いますが、なぜそれを正面から説明されないのか。なぜそのリスクは変わらないという説明しかしないのか。こういうことが、国民の理解を得られない、我々も非常に不信感を持って聞いているわけでございますが、大臣、この自衛隊員のリスクについて、今般の安保法制が改正された後でも変わらない、大臣も同じお考えでしょうか。

岸田国務大臣 リスクを議論する際に整理しておかなければならないことは、まず、今回の平和安全法制のこの議論、この大きな枠組みとして、外交努力を通じて好ましい国際環境を実現する、これが第一でありますが、しかし、その中にあっても、万が一の場合に備えて切れ目のない体制をつくっておかなければいけない、そして、この切れ目のない体制をつくることによって抑止力が向上し、そして、結果としてリスクが低減する、こうした大きな考えに基づいてこの議論をしています。

 そして、こうした大きな議論を進める中にあって、御指摘のように、さまざまな現場、場面においてはさまざまな状況が変化いたします。今までとは変わってくるわけです。

 その中にあって、リスクについてどうコントロールするか、これをしっかり考えなければなりません。例えば後方支援においても、現に戦闘行為が行われている現場では行わない、こういった考え方に変わっていくわけですが、その中にあっても、状況に応じて行為を中断する、あるいは撤退する、こうしたさまざまな対応や工夫を用意しています。

 それぞれの現場においては、今回の議論においてさまざまな変化は生じますが、その変化においてリスクをどうコントロールしていくのか、これをしっかり論じていかなければなりません。そして、それに向けて、さまざまな制度や工夫をさまざまな法律の中に盛り込んでいるということであります。

 こういったことによってリスクをコントロールしていくことができる、こういった考え方で議論していくべきだと私は思っております。

青柳委員 切れ目のない体制をつくって抑止力を高めればリスクは低減される、それは一方ではそのとおりだと思いますけれども、現実的には、米国でさえテロを受けるわけです。そして、自国が攻撃されたと判断をして自衛権を発動する、こういうことが現実に起こっている。そういう状況の中で、日本は、世界に向けては、集団的自衛権を行使できるようになりましたと宣言しているわけですから、要請があって海外に出ていくケースが高まる、こういうリスクをしょったとも言えるわけです。

 それが、幾ら戦闘が行われていない現場だと言っても、今、大臣がまさに答弁されたように、状況が変わり、戦闘現場になるということが現実にはある。だからこそ、こういう法整備にしていくんだ。しかしながら、そのリスクは高まらないんですかという質問に対しては、高まらないと答弁され続けるのは、これは私は、不誠実だと思いますし、なかなか国民の理解は得られないと思います。

 日米同盟も重要だと思います。国際貢献していくのも重要だと思いますし、抑止力を高めていくということについても、我が党は認識は近いと思います。しかし、国民の皆さんへの説明をやはり真正面からしていかないから、不信感が逆に広がっているんじゃないかと思います。

 そうした認識に立って、もう一問お伺いしたいと思います。

 自衛隊の海外派兵についても、総理は、海外派兵はしないというふうに答弁されておりますけれども、武力行使の新三要件を満たせば自衛隊は武力攻撃ができるというのが、今回の改正の一点だと思いますが、この認識は合っていますか。新三要件を満たすような事態が起これば、自衛隊は武力攻撃ができる。まず、この点についてはこういう認識でよろしいんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、結論はそのとおりであります。憲法との関係において、我が国が武力行使ができるのは、あくまでも新三要件を満たした場合のみという考え方に立って、議論をお願いしております。

青柳委員 新三要件を満たした場合に武力攻撃ができる、その武力攻撃を行使する場所には制限はありますか、ありませんか。

岸田国務大臣 きのうも参議院の委員会で同じような質問を受けましたが、先ほども申し上げましたように、我が国が武力行使を認められるのは、新三要件に該当する場合であります。

 どういった場所が想定されるのか、これは、公海を初めさまざまな場所が考えられます。あくまでも新三要件に該当した場合に武力行使が認められる、こういった考え方に立っております。

青柳委員 ということは、新三要件を満たせば武力攻撃ができる、この場所に、基本的には、地理的、場所的な概念はないというふうに理解できるんですけれども、ということは、海外に自衛隊が出ていく、海外に自衛隊が派兵されるということはあり得るというふうに理解できますけれども、その理解でよろしいのか、違うのであれば、何が違うんでしょうか。

岸田国務大臣 これはもう再三申し上げているとおりでありますが、海外派兵については一般的に禁止されている、これは長年維持してきた考え方でありますし、これは変わりません。

 その上で、他国における武力行使については、新三要件に該当するものであれば、理論として、そのような行動が許されないわけではない、こういった説明をさせていただいています。

 そして、その上で、かつての湾岸戦争、イラク戦争での戦闘、すなわち、一般の方々が思い浮かべるような、敵を撃破するような大規模な空爆や砲撃を加えたり、敵の領土に攻め込むような行為、これは許されない、こうした説明を再三させていただいております。

青柳委員 時間が来ましたので、続きは安全保障、安保法制の特別委員会の方でやらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

土屋委員長 大臣は、ここで、参議院本会議の方へ出席しますので、退室をいたします。

 次に、岡本三成君。

岡本(三)委員 皆さん、こんにちは。公明党の岡本三成です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。本日、十一時二十五分までお時間を頂戴しております。よろしくお願いいたします。

 本日は、二つの大きなトピックについて御質問をさせていただきたいと思います。とりわけ、それぞれの質問に対しまして、手段と目的ということを意識しながら質問を進めさせていただきたいですし、そこに重きを置いた御答弁をいただきたいと思うんです。

 どういうことかというと、さまざま委員会の中で議論をされていることに関して、必ずしも、その目的を達成するために最も効果的な手段が議論されているというような場合だけではなくて、ある手段を決めたら、その手段をどのように成功裏に持っていくかということばかりに議論が集中をして、その手段がちょっとベクトルを外れてしまうと、その手段の中としては最高の手段の実現につながっているけれども、目的の達成のためには余り役に立っていなかったというようなことがあるのではないかという問題意識を持っています。

 したがいまして、きょうの質問も、そういうポイントにフォーカスをしながら質問をさせていただきたいと思います。

 一つ目に、アジアの経済発展、開発、貧困の削減に対する我が国の貢献という点について、質問をさせていただきたいと思います。

 この大トピックの中で、三つのことを初めに伺いたいと思うんですけれども、まず一つ目は、中国が構想を持っていますいわゆる一帯一路構想であります。

 これは、昨年の十一月にAPECで習近平国家主席が提案をされたもので、いわゆる一帯というのは陸路のシルクロード、中国の西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる経済ベルト、そして、一路の方は海のシルクロードで、中国の沿岸部から東南アジア、インド、アラビア半島、そしてアフリカの東海岸を結ぶ、この二つの大きな地域について、交通インフラ、貿易促進、そこに資金を提供していこうというふうな考え方であります。

 あくまでも中国の構想でありますので、我が国がそれを主体的にどうこうということではないというふうに思っていますけれども、仮にこの構想が実現をするというようなところに向かうのであれば、そこにかかわるような国・地域は六十五カ国、そして、人口にしますと世界の人口の六〇%、経済規模でいうと世界の経済規模の三〇%ということですから、どのようにそれが本当に実現されるのかどうかということに関して、注視をしながら対応していくということは重要だというふうに思います。

 また、昨今話題になっておりますAIIBに関しましても、この一帯一路構想を実現するための手段というふうな考え方もなされているんですけれども、外務省といたしまして、この構想についてどのように評価をされているかということをまずお伺いできればと思います。

城内副大臣 ただいまの岡本委員から御指摘がありました中国の一帯一路構想でございますが、二〇一三年九月と十月に習近平国家主席が相次いで発表いたしました、欧州とアジア諸国の経済関係強化を目的とするシルクロード経済ベルト構想、これが一つでございまして、二つ目は、中国とASEAN等との経済関係強化を目的とする二十一世紀海上シルクロード構想、陸と海を合わせた概念というふうに承知しております。

 中国政府は本年三月に本件構想に関する計画概要を発表し、アジア、欧州、アフリカ及び世界各国の互恵協力のために必要な国際協力及びグローバルガバナンスの新モデルと位置づけるとともに、AIIBやシルクロード基金等を同構想の資金面での支えとしておりますが、実は、現時点で計画の詳細は明らかにされておりません。

 また、我が国として他国の外交政策の一つ一つにコメントする立場にはございません。

 いずれにしましても、本構想が今後どのように具体化されていくのか、そういったこと等について、引き続きしっかりと注視してまいりたいと考えております。

岡本(三)委員 この構想にかかわる可能性がある国の多くは、日本といたしましては、個別で、ワン・ツー・ワンでさまざまな経済関係があるわけですので、その意味で、我が国のこととして捉えながら、その構想についても注視をしていただきながら御対応をいただきたいというふうに思うんです。

 今の御答弁の中で切られてしまっているのかもしれませんが、どのように行われるかということを、対応はしなくても分析をすることは我が国の今後の政策を考える上で重要だと思いますので、ぜひ分析はしていてほしいんですけれども、仮にこの構想が実現に向かって進んでいくとしたら、どれぐらいの年月がかかって、総額どれぐらいの費用がかかるかということに関しまして、分析はしていらっしゃいますでしょうか。

城内副大臣 一帯一路構想は中国政府の政策であり、先ほど申しましたように、その詳しい内容につきましては現時点でまだ明らかになっておりません。したがいまして、岡本委員の御質問の諸点について、我が国として予断を持って申し上げることは困難であります。

 ただ、その上で、あえて申し上げるとしますと、中国政府が一帯一路構想を資金面で支えるものとして公表しておりますAIIB、BRICS銀行、上海協力機構融資機関、シルクロード基金、この中のシルクロード基金につきましては、一帯一路構想の沿線国のインフラ建設の支援を目的とし、中国は最終的に四百億ドル、これは日本円に直しますと約四兆五千億円ですが、これを出資する予定である旨が明らかになっております。

 いずれにしましても、繰り返しになりますけれども、本構想が今後どのように具体化されていくか、引き続きしっかり注視してまいりたいと思います。

岡本(三)委員 今御答弁いただきましたとおり、直接的にリンクするものとして、AIIBの構想は一帯一路構想の実現の一つのエンティティー手段だというふうに議論をされていることも多いんですけれども、このAIIBも含めまして、開発金融、貧困を撲滅するための経済支援等に関します日本の政策金融の考え方、あり方について話を移させていただきたいと思うんです。

 私は、AIIBの参加の是非については、今、日本の政府がとっていらっしゃるスタンスは適当だというふうに思いますし、これから六月末の、次のデッドラインと言われているようなところに関しても、本日の報道ですと、基本的に参加しない方向性で考えていらっしゃるというふうな報道もなされていましたけれども、そのようなことに関しましても、今懸念を持っているような、ガバナンス等に対する懸念、また同盟国であるアメリカとの協調的なスタンス等を十分に吟味しながら、スタンスはとっていただければいいというふうに思うんです。

 ただ、個人的に思っておりますのは、三月の時点までは、こんなに多くの国が参加するはずではなかったというふうに思っていたのではないかなというふうに思っています。これは、日本もアメリカも両方ともですけれども。

 その上で、五十七カ国がこのAIIBに参加を表明したわけですけれども、これはAIIBのことを今後この質疑の中で進めていこうという趣旨ではありません。大きな意味での、アジア地域における政策金融についての日本の貢献のあり方の一つの側面として、AIIBのことを初めに導入として質問させていただきたいんです。この参加を表明した五十七カ国が、自国のどういう側面に関してAIIBへの参加がメリットがあるというふうに考えて参加を表明したのかということをどういうふうにお考えかということを御答弁いただければと思います。

    〔委員長退席、三ッ矢委員長代理着席〕

吉田政府参考人 お答えを申し上げます。

 日本といたしましては、第三国の立場についてコメントをする立場にはございませんけれども、例えば英国は、このAIIBの交渉への参加を表明するに当たりまして、交渉を通じて説明責任、透明性及びガバナンスにおいて重要な役割を果たすことができるということを意義として説明しているところでございます。

 委員御指摘のとおり、日本といたしましては、AIIBにつきましては、公正なガバナンスの確保、特に加盟国を代表する理事会がきちんと個別案件の審査、承認を行うこと、それから債務の持続可能性や環境、社会に対する影響への配慮が確保されるということを非常に重要だと考えておりまして、これらにつきまして、現在に至るまで、まだ明確な回答がないということでございます。

 こうした中におきまして、日本は域内国として中国に次ぐGDPを有しておりまして、中国はAIIBに対する日本の動向に関心を持っているというふうに認識しております。このため、交渉に直接参加するというよりも、交渉の外から直接中国に働きかける方が、AIIBにおける公正なガバナンスや環境、社会への配慮等の確保に向けて影響力を行使できるというふうに判断しているところでございます。

岡本(三)委員 そういう質問ではなくて、では、他国のことを推測するのははばかられるということであれば、我が日本は、ガバナンス等に不透明感が高いので参加をまだ表明しておりませんけれども、もし参加するときには、どういうメリットが我が国に得られるというふうに思うがゆえに参加を検討するというようなことで、そのメリットは何だと考えていらっしゃるんでしょうか。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもといたしましては、繰り返しになりますけれども、債務の持続性の確保であるとか、社会、環境への配慮ということが徹底されるということが、極めて重要であるというふうに考えてございまして、現時点で仮定のお話は差し控えさせていただきたいと思っております。申しわけございません。

岡本(三)委員 私の昨日の質問の通告のやり方が、ちゃんと趣旨が伝わっていなかったかもしれませんが、要は、こぞって参加しているわけですし、我が国も、さまざまな不透明なところが解消されれば参加したいというふうに、参加する可能性のメリット、デメリットを検証していらっしゃるわけでしょうから、そのメリットを何と考えていらっしゃるかとお伺いしたかったんです。

 私がそのことをお伺いしたかったのは、要は、国際的な開発金融でありますから、その目的というのは、基本的には、その地域における経済開発に対する支援であったり、貧困の削減であったり、雇用の創出であったり、そういうことを大目的に掲げることが、適切な今までの国際金融の秩序だったというふうに思うんです。

 その中で、世界的には、世銀ができ、世銀をアメリカ中心に動かしながら、全世界をIMFが管轄する中で、IMFはヨーロッパにその運営の主なところを任せて、アジア地域に関してはADBを日本の主導でこれまでやってきたわけです。そして、ADBの加盟国のほとんどが今回のAIIBの出資国になっているわけですので、要は、ADBが顧客に対する、クライアントに対するニーズをしっかり満たしていることができれば、AIIBへのこれほどの期待は起こり得なかったのではないかなというふうに思っているんですね。

 つまりは、我が国は、今、ADBの最大の出資国として、また総裁を出している国として、このアジア地域の開発金融、貧困の削減に対するミッションを一手に担っているリーダーなわけですから、今考えるべきことというのは、ADBをどのようにその顧客に対して満足度が高いような体制に変え、そして、日本の出資の後に続いている少ない出資比率の国々に対しても、彼らのニーズを満たすような組織体制にしていき、今後、運営できるかどうかということをより考えていくべきではないかというのが私の問題意識なんです。

 特に、AIIBの構想が示され、参加国が多くなった後に、中尾総裁もADBの改革案をいろいろなところでお話をされるようになりました。また、きょうの報道にもありますように、昨日、安倍総理御自身も、第二十一回国際交流会議の晩さん会の中で、日本のアジア地域における貢献に言及をされながら、その中で、ADBを主要な戦略の一つのツールとしながら、ADBと強く連携をして、アジア地域におけるインフラの拡大にコミットしていくというようなことを述べていらっしゃるわけです。

 まず初めの質問といたしまして、クライアントであるアジア地域の低所得国、そして、その参加国である日本以外の出資国、その顧客のニーズと今のADBがサービスを提供できる体制、どこにギャップがあるというふうにお考えかということをお伺いできればと思います。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 アジア開発銀行は、委員御指摘のとおり、アジア地域の貧困削減及び持続的な経済成長を実現するため、主にアジア途上国におけるインフラ整備のための融資を行ってきたところでございます。

 他方、アジア地域には膨大なインフラ投資の需要がございまして、これらの地域の国々からは、まず、ADBの融資規模が限られているということ、それから、ADBの案件承認に要する時間が長いというような意見があるというふうにも承知しております。

 こうした中で、ADBにおきましても、途上国のニーズに応えるべく、不断の努力を行っているというふうに認識しております。

岡本(三)委員 要は、クライアントのニーズは、金額としてもっと大きなニーズがあって、そして、案件を持ち込んだときに、決断までにもっとスピーディーに資金実行していただきたいというニーズがあるにもかかわらず、現実的には、その資金面の大きさのニーズにも応えられていなくて、そのスピード感にも応えられていないということが利用者側の不満であり、それによって、もっと違う資金の拠出をできるようなエンティティーに対する期待が高まっているというふうに思うんですね。

 ただ、一方で、私もADBの友人はたくさんおりますけれども、物すごく頑張っています。これでもかというぐらい働いていてこういう状況ですから、根本的な組織改革をやっていくべきではないかなというふうに思っているんですね。

 ちなみに、昨日の安倍総理のお話の中では、これから五年間で日本流の貢献としてアジアに約十三兆円を投じるというふうにおっしゃっておりまして、その中で、ADBを通じた資金に関しても大幅に拡大していくというふうにおっしゃっていらっしゃいます。

 ただ、実際は、ADBは現在、融資残高が六兆円、年間の融資実行が約一兆円です。この領域におけるクライアントの年間の資金需要というのは約百兆円だと言われていますので、一%満たせるか満たせないかぐらいの金額を毎年資金実行しているわけです。

 その点において、資本を拡大するというようなことであるとか、また、レバレッジを拡大するというようなことであるとか、さまざまな取り組みが必要だというふうに思うんですけれども、まず、より多くの資金をADBからクライアントに拠出するために現在行おうとしていらっしゃる改革、どういうものがあるかということについてお聞かせください。

吉田政府参考人 お答えを申し上げます。

 アジア地域における開発支援の需要に応えるために、ADBといたしましても、機能強化等さまざまな取り組みを進めております。

 今御指摘の規模についてでございますけれども、具体的に、これまで一年半にわたりまして議論を進めてまいりましたけれども、低所得国向けのアジア開発基金というものがございまして、それと通常資本財源の勘定を統合いたします。これを本年四月に正式に決定したところでございまして、それによりまして融資能力を最大五割拡大するということが決まったところでございます。

 こういった改革努力を私どもとしても最大限支援していきたい、かように考えております。

岡本(三)委員 第一歩としては大切な考え方で、資本を効率よく使うことによって提供できる資金実行を多くしていこうということを、ぜひさらに、それでも全く足らないような状況ですので、進めていただきたいと思うんです。

 加えて、人的な補充というのもぜひ御検討いただきたいんです。ADBは、専門スタッフ千六十六人のうち、実際の資金実行にかかわっていらっしゃる方というのは、この何分の一、数百人だと思うんですが、年間の約一兆円の資金実行は、一件の平均が百億円ですので、年間百件、資金実行をやっているんですね。数百人の与信体制、これはプロジェクトファイナンスもやっていますので、キャッシュフローを書いたりというふうなことは物すごく緻密な作業なんですが、数百人で年間百件のプロジェクトを管理するような民間金融機関はほとんどありません。

 本当に、かかわっていらっしゃる方は物すごく高い能力で、民間の金融機関で働けばきっと給料も何倍ももらえるような方が、使命感で働いていらっしゃるわけですけれども、ぜひ、人的な拡大についてもさらに努力をしていただければというふうに思います。

 その上で、最後に、開発金融について申し上げたかったのは、要は、開発金融の目的というのは、自国のいろいろな企業が開発の中にかかわることによって収益を上げるというのは主たる目的ではなくて、結果的にそういうことが起これば、よりメリットが副次的に起こるということなんだと思うんですね。であるがゆえに、ADBのミッションステートメントは、貧困の撲滅であり、途上国の生活レベルの向上なわけです。その結果、日本も、例えばODAであっても、今はもうほとんどアンタイドが基本で、日本が資金を拠出しても、日本の企業が仕事をとれるなんというのは、多分、二割、三割もないと思います。

 ですから、そういう役割の中で、アジアの諸国に対して日本がこれまで積み上げてきた経済的な恩恵を共有していこうというのがADBの目的でもありますし、そういう戦略でAIIBも設立されるのではないかというふうに性善説で期待をしますと、要は、途上国を支援するためのパイを大きくできることが一番重要で、私はよく申し上げますけれども、小さなパイのままであれば、どんなに大きなポーションをとっても、しょせん小さなパイで、大きなパイになればなるほど、日本の役割が例えば小さなポーションになっても、その絶対面積は大きいわけです。

 ですから、ADBが何かやる中で、例えば、やはり、クライアントニーズに満たないということで資金的なニーズが大きくなれば、喜んでAIIBからもその資金というのを共同で融資してもらえるような共同のプロジェクトにすべきですし、仮にAIIBが何かやる中で、その資金の金額、性質に関しまして、日本がリードしているADBがそこに参加をした方がよりクライアントニーズにミートできるようなことであれば、やるべきだと思うんですね。

 申し上げたように、開発金融の目的というのは、地域の経済全体を底上げしながら貧困を撲滅することなので、間違っても、ADBがAIIBと競争するとか、向こうのプロジェクトを分捕ってくるとか、向こうのやることに関しては私たちの主導できないことなので、本当は協力できるんだけれどもしないとか、こちら側に関しては、総理の言葉で言うと、ADBのドアは常にオープンですというような形で、招待、インビテーションをかけるような姿勢で、日本が主導しているADBの運営についてぜひリードしていただきたいと思いますけれども、一言コメントをいただければと思います。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘のとおり、世界じゅうで、とりわけアジアにおきまして、膨大なインフラ需要、資金需要があることは事実でございます。こういったことにどうやって応えていくかということで、世銀を初めアジア開発銀行を含めまして既存の開発金融機関が、これまでも協力関係を築きながら、どうやってクライアントニーズに応えていくかというような努力を続けてきているところでございまして、今後ともそういう努力を各機関とも主体的に継続していくというふうに認識しております。

    〔三ッ矢委員長代理退席、委員長着席〕

岡本(三)委員 続きまして、アジア地域の経済開発に関する支援という中において、日本のASEAN支援についてお伺いいたしたいと思います。

 ことし十二月に、いよいよASEAN共同体が発足をされます。ここに関して、日本は、二〇一〇年の十月にASEAN連結性マスタープランを発表いたしまして、その後、二〇一三年には七十件の新しい連結性支援のプロジェクトを提示いたしました。それと同時に、今後五年間で約二兆円のODAを実施するというふうに表明されているんですが、要は、一つ一つが言いっ放しになっているんじゃなくて、これをちゃんと連携させて、具体的に実現を目指すべきだというふうに思うんです。

 そこで、現状において、このそれぞれのプロジェクトに関して、二兆円という金額の幾らをどういうふうなタイミングでどれぐらい使って、最終的にどのタイミングで完結をさせていくかというロードマップをつくっていくことが重要だと思うんですけれども、この議論が始まってかなり時間がたった上で、本年十二月にいよいよスタートするわけですから、このロードマップが現在でき上がっているのか、または作成の途中なのか、または、作成されていないのであれば、つくる用意があるのかどうかということに関して、御答弁いただければと思います。

城内副大臣 ASEAN共同体構築につきましては、より統合され、発展したASEANは、同地域の平和と安定等の観点から極めて重要であります。ことしのASEAN共同体構築及びそれ以降のさらなる統合を支援することは、我が国にとりましても最も重要な外交課題の一つであります。

 他方で、ASEAN統合におきましては、連結性の強化及び域内の格差是正が大きな課題となっております。我が国は、そうした認識に基づきまして、ASEANの連結性強化の取り組みに対しまして、二〇一一年及び二〇一三年の二度にわたりまして、連結性支援プロジェクトリストの取りまとめを行った上で、陸や海の物理的な連結性、ASEAN地域の制度的な連結性の強化を支援しております。

 これらの個別のプロジェクトは、プロジェクトごとのスケジュールに沿って進められております。例えば、カンボジアのネアックルン橋やベトナムのノイバイ国際空港第二旅客ターミナルビルが本年完成するなど、連結性強化の取り組みは着実に進展しております。

 また、我が国は、こうしたプロジェクトの進捗状況について、そういった具体的なロードマップというのはあるわけではないんですが、しっかりと日・ASEAN首脳会議等の機会を捉えて確認を行ってきておるところでございます。

 このASEAN連結性マスタープランは二〇一五年の共同体構築を念頭に置いたものでありますが、ASEAN統合の努力は来年以降も引き続き続くものでありますから、我が国としても、そういった個別ばらばらではなくて全体のことも視野に入れながら、引き続きASEAN統合への支援の努力を続けていく所存でございます。

岡本(三)委員 このプロジェクトリストに沿って、一つ一つ最大の努力をしていらっしゃるのはわかるわけですけれども、要は、やるだけやって、頑張ったけれどもできませんでしたというのがぼろぼろ出てきてしまってはいけないわけですから、先ほど申し上げたように、それぞれに対して日付と金額とを入れた具体的なロードマップをつくるようなことも、まだ実現できていないプロジェクトについてはぜひ御検討いただければと思います。

 その上で、ことし、このASEAN共同体が十二月に発足した後の次の目標としまして、ASEAN各国は、ポスト二〇一五年ビジョンを策定するということで、現在検討がなされているというふうに思います。

 このASEAN共同体ですけれども、ASEAN憲章の中の第一条の目的は、地域の平和、安全の維持強化、そして二つ目は貧困の削減ですので、先ほど申し上げましたように、我が国のASEANに対する協力支援についても、その中で協力をして、地域の安全と平和に貢献をすることと同時に、その地域の貧困を削減することが目的であって、結果的に、最高品質水準の技術をその国々が導入しようとしたときに、我が国の企業が持っている技術力が最高水準であるがゆえに経済的なメリットも来ましたというふうな関係にならなければいけないというふうに思います。

 その意味で、このポスト二〇一五年ビジョンを策定するに当たり、日本がどのように貢献をしていくのか、また、助言と言うとちょっと失礼な物言いかもしれませんけれども、どのように提案をしているのか、何かやっていらっしゃることがあれば御答弁をいただきたいと思います。

城内副大臣 お答えいたします。

 ポスト二〇一五ビジョンの策定は、基本的にはASEAN内部の課題でありますが、我が国としても、外から、ASEAN統合を重視するとの立場から、このプロセスを注意深く見守るとともに、機会を捉えて我が国の考え方をASEAN側に説明してきております。

 具体的には、ASEAN側の優先分野もしっかりと踏まえながら、法の支配あるいは民主主義といった価値の推進、制度的、物理的連結性の強化や格差是正、海洋協力、防災等の面で、我が国として引き続き協力していきたいということを先方に伝達しております。

 我が国としては、あらゆるレベルでの対話を通じてASEAN統合をさらに促すという観点から、引き続きASEAN側と緊密に連携していく考えであります。

岡本(三)委員 今御答弁いただいた中で、とりわけ重要だと思うのは、防災分野での支援について、さまざまな経験をした我が国が支援を拡大していくということではないかなと思います。

 AHA、ASEAN防災人道支援調整センターに対する支援、これは今まで日本も、ICTのシステムの整備であったり、ロジのシステムをつくったり、さまざまに支援をしてきて、その結果、例えば二〇一三年の十一月に発生をしたハイエン台風等で多くの支援が身を結んだわけですけれども、とりわけ、このポスト二〇一五年のビジョンに関しましては、我が国の防災に対する支援を拡大していただきたいということをお願いいたしまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 きょう二つ目のトピックは、これが最後のトピックですけれども、明治日本の産業革命遺産の世界遺産登録に関する質問であります。

 うれしいことに、ゴールデンウイーク中の五月四日に、イコモスが登録を勧告したというニュースが伝わってまいりました。

 この英語版の分厚い、すばらしい資料は、内閣府がつくりました、登録されるように推薦をいたしました資産を世界じゅうの方々に読んでいただくためにまとめたものですけれども、これまで、このような勧告に至るまで、それぞれの自治体の方々や関係役所の方々が、多大な、物すごい努力をされたことに関しまして、初めに心から感謝を申し上げたいと思います。

 その上で、最終的に決定をいたしますのは、ことしの六月の終わりから七月の上旬にかけまして、議長国のドイツのボンで行われます会議において最終的に採択が決定されるわけですけれども、今までイコモスの勧告を受けて採択がされなかったような例はほとんどございません。

 ただ、一方で、残念ながら、今回のこの世界遺産の登録に対する動きに対しまして、韓国では、その遺産の登録を何とか阻止しようという動きが広がっております。大変残念な動きだと思いますけれども、この遺産登録の勧告がイコモスから行われた直後の五月十二日には、韓国の国会で、今回の推薦に対する非難決議が採択をされております。そして、二日前の五月二十日には、朴大統領がユネスコのボコバ事務局長に直接登録反対を伝え、そして日本を批判するようなことが行われているわけです。

 ちょっと私自身は、日本の基本的なこの遺産登録に対する考え方、目的と、韓国がどのように考えているかというところに関して、その目的の理解にそごがあるのではないかなというふうに思っています。ですから、現状におきまして、日本の目的、どのような目的でこの遺産登録をしようとしているのか、そして、それについて韓国の主張、それぞれお聞かせいただければと思います。

成瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」を構成する一部の施設において、朝鮮半島出身の旧民間人徴用工が従事していたことから、韓国が本件遺産の世界遺産登録に対しまして反対を表明しております。

 我々といたしましては、本件遺産が対象とするのは、一八五〇年代から一九一〇年でございまして、第二次世界大戦中、一九四〇年代の朝鮮半島出身の旧民間人徴用工の問題とは、対象とする年代や歴史的位置づけ、その背景が異なっている、そういうふうに考えております。

 本件遺産は、あくまでも、一八五〇年代から一九一〇年までの産業遺産としての顕著な普遍的価値に着目して推薦してきたのでございまして、これに対して、専門的な諮問機関であるイコモスから、世界遺産登録すべきという勧告がなされたものであると考えております。

 我が国といたしましては、世界遺産委員会において、イコモス勧告を尊重し、本推薦案件が技術的、専門的見地から審議され、勧告どおり世界遺産登録が決定されることを期待しております。

岡本(三)委員 要は、今おっしゃったのは、日本は、産業的な価値を、幕末から明治の前後、その短期間、五十年の間に、急激な産業革新が行われたことが遺産の価値であると思っているにもかかわらず、韓国は、タイミングの違う、第二次世界大戦終戦直前の七カ月間で、そこで強制的な労働が五万八千人ぐらい行われたというようなところに注目をして、産業遺産としてはふさわしくないというふうに言っているので、観点が違うとおっしゃっているんだと思うんですが、そのとおりだと思うんです。

 加えて、これが、五月の十二日に韓国で非難決議が行われましたその非難決議の全文で、私、入手いたしました。

 要は、日本は、産業遺産登録のその考え方としての人類の普遍的遺産の価値を有する世界遺産を保護するという意味において、今回のこの二十三施設に関してはその意味が十分に満たされているということなんだと思うんです。つまり、その遺産の価値というのを後世にちゃんと残していきたいということなんだと思うんですが、韓国は、今回の日本の登録の目的をそのように思っていないんですね。

 この決議の中で彼らは日本の遺産登録の目的を何というふうに想像しているかというと、北東アジアの平和と安定に深刻な否定的影響を及ぼす外交的挑発行為が目的だというふうに言っておりまして、加えまして、過去の植民地支配を美化することが今回の産業遺産の登録の目的だというふうに、これは全くの目的の事実認識が違っているんだと思うんです。

 つまり、さまざま、手段として、登録をこうやって実現させたいという気持ちはわかるわけですけれども、もともとの目的意識が全く違うということをやはり改めて確認することが重要なんじゃないかなというふうに思っているんです。

 そこで、ユネスコの事務局長は韓国の外相と面談された折に、日本と直接対話して解決策を見出してくれというふうに促したと報道されまして、それを受けてかどうかわかりませんが、本日、日本で、日韓の担当者の協議が行われるというふうに聞いていますけれども、お話しできる範囲で、どういうふうなお話を進めて、どういう解決策を生み出そうとしているのか、落としどころをどうしようとしているのかということを御答弁いただければと思います。

城内副大臣 韓国に対しましては、これまで、機会を捉えまして、本件遺産の顕著な普遍的価値について、誠意を持って説明してきております。ただし、やりとりの詳細につきましては、相手国政府との関係上、きょうの協議も含めて、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにしましても、政府といたしましては、世界遺産委員会において、イコモスによる記載勧告を踏まえまして、本推薦案件が技術的、専門的見地から審議され、勧告どおり世界遺産登録が決定されることを強く期待しておりまして、韓国側に対しましても、引き続き粘り強く理解を求めていく考えであります。

岡本(三)委員 今回の私たちの目的は、遺産登録が実現することであります。ですから、それに最も効果的な手段をやるべきであって、当然、この賛成を判断する二十一カ国のメンバーにさまざま説明することは重要ですけれども、最もその目的を達成するために適切な手段というのは、韓国に、非難をしている状況をやめさせることなんだと思うんです。

 ということは、直接対話こそが最も目的を達成するために重要であり、そのために、報道では、ユネスコ、また議長国のドイツからも、仲介和解案みたいなもの、例えば、過去の歴史において事実であったという認識ができることについて、そこに碑を建てたらどうだとか、言及したらどうだとかということもいろいろ提案されているわけですけれども、そういうことも含めて、今回の私たちの目的、その遺産を将来に引き継ぐことができて、そして遺産登録がその地域にも恩恵を及ぼすということの目的に沿った対話を続けていただければと思います。

 最後に、一つ、委員長にお願いをしたいことがあります。

 現在、日韓両国、大変厳しい外交課題はあるんですけれども、本年は韓国と日本が国交正常化いたしまして五十年を迎えます。きょう、五月二十二日ですから、きょうからちょうど一カ月後の六月二十二日、五十年前の六月二十二日が日韓国交正常化をしたときであります。

 そのときの基本条約、私は原文を全部読みましたけれども、このときに、この基本条約を結ぶために献身的に御苦労された方々が、どれほどの御苦労を持ってこの基本条約を結んだかというのがよくわかる条約になっておりまして、大変未来志向なんです。

 ただ、残念なことに、この先人たちの思いを十分に引き継げていない現状があるわけですけれども、安倍総理が掲げられる積極的な平和外交の重要な柱の一つが日韓関係の改善だというふうに思います。

 したがいまして、少なくとも我が外務委員会として、一層の日韓関係の友好拡大に取り組むという真摯な決意を表明するために、委員会としてそのような決議をするというようなことをぜひ理事会で御議論いただきまして、世界に日本の姿勢というものを示していただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

土屋委員長 ただいまの岡本三成君の意見に対しましては、理事会で話し合いをさせていただきたいと思います。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 以上で終わります。

土屋委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 五月二十日の質疑に続いて、オスプレイの問題について質問したいと思います。

 左藤防衛副大臣に聞きますが、政府は、オスプレイの日本配備の理屈づけの一つに、大規模災害が発生した場合の災害救援活動を挙げています。一体どのような災害を想定してのことなのか、お答えいただきたいと思います。

左藤副大臣 お尋ねの件でございますけれども、高い機動性や空輸力をあわせて持つオスプレイは、大規模災害や離島における災害など、さまざまな災害での救援活動に有効であり、特定の状況の災害に限定して使用するわけではないと考えております。

 具体的には、航続距離が長く、かつスピードも速く、地震や津波被害により空港の滑走路の使用の可否が不明な場合にあっても、垂直離着陸能力により離発着場所が限定的にならず、被災地への敏速な救助部隊等の進出や、広域的な救助者等の輸送が可能でございます。そして、人員や物資などの輸送にすぐれる、そういうオスプレイでございますので、かかる能力が必要とされる災害時において幅広い貢献が期待できるものと考えております。

穀田委員 そういう意味での大きな災害に想定をして、人員や物資その他がうまく活用できるということですよね。と言っておられる。

 昨年十月に和歌山県が実施した津波災害対応実践訓練がございます。この防災訓練には、普天間基地所属のMV22オスプレイが二機参加しています。

 改めて確認しますが、この和歌山県主催の防災訓練は、どの程度の規模の地震を想定した訓練だったのか、訓練には、防衛省・自衛隊、それから在日米軍、それぞれどれだけの部隊が参加したのか、お答えいただきたい。

左藤副大臣 今先生御指摘の和歌山県の件でございますが、二十六年十月十九日に実施されました和歌山県津波災害対応実践訓練については、陸海空自衛隊約千五百名、それから、第三海兵機動展開部隊約十名が参加しております。

穀田委員 千五百名と十名が参加された。その中で、オスプレイはどのような訓練をしましたか。

深山政府参考人 事実関係でございますので、私の方から御報告いたします。

 オスプレイにつきましては、この訓練におきまして、患者の搬送、救援物資の輸送及び災害派遣医療チーム、いわゆるDMATでございますが、DMATの輸送の訓練を実施いたしたところでございます。

穀田委員 訓練には、左藤副大臣も参加、視察され、串本町潮岬にある望楼の芝から護衛艦「いせ」までオスプレイにも搭乗された。間違いありませんね。

左藤副大臣 今、先生の御指摘のとおり、私は、その訓練を視察して、在日米軍のオスプレイにも搭乗させていただいた。そして、今の、望楼の芝から乗りまして、そして護衛艦「いせ」にも着艦をさせていただいて、訓練を見てまいりました。

穀田委員 近畿中部防衛局広報誌、それに載っているわけですけれども、これですね。左藤副大臣は、和歌山県庁で記者会見をその後しています。その中で、初めてオスプレイに搭乗し、その機動力、輸送力のすばらしさを身をもって実感したと述べています。

 串本町の望楼の芝では、オスプレイの離陸後、排気熱で火災が発生し、消防団が消火活動に追われていたことを御存じでしょうか。

左藤副大臣 和歌山県庁を出てから、その事実は聞いております。

穀田委員 事実は聞いておられる。そうすると、私が言った、排気熱で火災が発生し、消防団が消火活動に追われていたことは御存じだと。それを知ってはりますかと聞いたわけですから、知っていると。(左藤副大臣「後で聞きました」と呼ぶ)後で聞いたと。

 問題は、防災訓練に参加したオスプレイの離着陸時における排気熱で芝が焼け焦げているわけですが、そのことを予測していた地元消防団員が消火したということなんですね。

 これが、ちょっと見にくいんですけれども、放水している姿なんです。水が横になっているのが見えますやろ。これなんですけれども。

 それで、ネット上で既に、芝が焼け焦げ、待機していた消防団が放水し、火災を消火している光景が動画でアップされています。

 もともと和歌山県当局は、着陸時には芝が焦げる可能性があることは把握していたと議会で答弁しているんですね。オスプレイの排気熱の問題を事前に認識し、米軍と協議していますとまで報告しています。

 地元の関係者に私が話を聞きますと、県からは、着陸の目印の白線を引いてほしいということで、芝を刈れとの指示ではなかったそうです。しかし、白線を引こうと思いますと、少し芝を刈らぬとできへんわけですよね。大体十センチぐらい残した。

 この場所は、先ほども副大臣おっしゃいましたが、望楼の芝というところで、ここは火祭り、望楼の芝焼きということで有名なところであります。だから、それ以上刈ることはできなかったと言っているんですね。

 県から、事前にたくさん水をまいておくようにとの話もあったけれども、芝を刈ったので、大量でなくともよいんじゃないかということを判断して、いろいろやったみたいです。しかし、結果としては五メートルも焼け焦げた。これが五メートルほどの焼け焦げた図であります。

 このことも、五メートル焼け焦げたという実態も報告がありましたか。

左藤副大臣 今、私ども、芝が少し焼けたという認識でございまして、先ほど御指摘の火災とは思っておりません。それは後で見ました。

 以上です。

穀田委員 火災とは思っていない、これはけったいな話ですね。

 消防庁は、では、火災というのはどう言っているか。定義があるわけですね、火災というのは。これはどういう定義があるかといいますと、人の意思に反して火が起こる、それから消火の必要がある、それから消火施設の利用を必要とする、この三つが条件なんですね。これが火災というんですね。

 今ので言うと、少し焼けた程度だと。焼けたということは報告を受けているということは、焼けたということは、人の意思に反して発生している。先ほど見せましたように、では、放水しなければ焼ける、だから放水した。こうなりますと、消防庁が言っている三つの要件からすれば、これは火災だと私は思うんですね。

 そして、結局のところ、防災訓練で火災を起こしているなんて、そんなあほなことがどこにありますかいな。ですから、私は、今、火災じゃないと言っていますが、どういう判断で火災じゃないと言っているのか、一度お聞きしたいですね。どうぞ。

左藤副大臣 それは、想定をされていたことが一点と、もう一つ、今、火災という一般的に大きなものではないということで、火災とまでは言えないということでございます。

穀田委員 県当局やそれから副大臣が火災と認定されておらないというのは、それはわかりますよ、それはそういうことで思いたいと。

 しかし、火災とは何ぞやということまで私はきちんと消防庁の定義まで言っているのに、では、ほっておいたらこれはよかったんか、火災じゃないのやったら。ほっておいたらえらいことになるからみんな消したわけでしょう。

 想定をされていた。想定されているというんじゃなく、それは、排気熱が起こるということから、水をまいてくれよと言われていた、水をまいたけれども、それ以上のことが起こって焼けた、これを火災というんですよ。一体全体何というのか、これは。では、火事というのか。同じですやんか、火事も火災も。

 だから、では、これは一体全体何というんだ、火がつかない字で言っていただいて、何ということなのか、ちょっともう一度言ってください。

左藤副大臣 消火の必要性も含めて、あったかどうかというのは正直言ってわかりにくいので、火災とまでは言えないということでございます。

穀田委員 これ以上やっても、どうもそっちに分がないことははっきりしているので。

 消防団の皆さんが放水までしているのに、しかもさっき見せましたやんか。大体、県当局がどう言っているかというと、散水と言っているんですよ。皆さんおわかりかと思いますが、消防団活動その他やっている人なら誰でも知っているんですよ。ノズルがあって、開くと、散水というのはシャワー状況なんですよ。放水というのはこうなんですよ。だから、放水しているということは明らかに、散水でもええねんけれども、放水しているというのは火事だということなんですよ。

 こんなことをやって、住民の命や暮らしを語ったり、火災を語ったりすることがないとしたら、防衛省とは一体何なんだ。要するに、あの程度の火災やったらほっておいてもええのやということだということだけはわかった。恐ろしいことだな、人の命を守ることにおよそ、まあ、わかっていないというのがようわかったということだけ言っておきましょう。

 では、これだけか。オスプレイの排気熱による事故は今回だけじゃありません。二〇一三年に、アメリカのノースカロライナ州のチェリーポイント海兵隊航空基地で、オスプレイが訓練中に地表の草が燃える火災を起こし、機体の一部が焦げる事故になっています。

 防災どころか、火災や事故を起こすオスプレイ。防災訓練にオスプレイをもう使うべきじゃないんじゃないですか。左藤さん、どうですか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省といたしましては、冒頭、左藤副大臣からもお話がございましたけれども、オスプレイの輸送力等は大変有用な装備であると考えておりまして、今後とも防災訓練等に活用していきたいと思っております。

穀田委員 質疑に何の関係もなくよくそういうことが言えるね、しかし。おっしゃったのは、有用だと。有用な事態の問題が、仮にあなた方が言おうとしても、こういうことが起こっているじゃないか、大変じゃないかということを言っているわけであります。

 確かに、この有用性の問題について、アメリカはこの問題を環境レビューなんかを使っていろいろ言っていることもありますよ。

 では、お聞きしますけれども、左藤副大臣、やはりこの危険性が、この問題について、排気熱によるさまざまな危険があって事故が起こっている、そういった問題についてどんなふうな報告があるか御存じですか。

深山政府参考人 今御指摘のありましたノースカロライナ州における草の発火でございますけれども、防衛省も、二〇一三年六月にノースカロライナ州デア・レンジにおきまして、エンジンの排気熱により草が発火したという事故があったということは承知しております。これは不整地でございまして、草が非常に伸びた状態で発火したというふうに聞いております。

穀田委員 草が伸びたということだけを言っておられるわけだけれども。

 実は、ノースカロライナの事故について米軍は、当初の発表は、機体の一部が焦げたと言っているんですけれども、その後、実際には機体の炎上だったということまで報告しているんです。要するに、草が燃えて今度は機体にまで火が来まして。だから、米海軍安全センターは最も深刻な度合いに当たるAクラスに指定している。これがその文書なんですね。

 だから、オスプレイというのは、排気熱が高い、そのことによって、今、草があれしたらといって草の話をしてはりましたけれども、草が燃える、今度はそればかりじゃなくて機体まで炎上する、こういうふうなことになっているわけですよね。だから、極めて危険だということがわかるかと思います。

 そこで、では、もう一つ言いましょう。

 日本だけか、アメリカだけかと思ったら、今度は、ネパールの大地震の救援の活動に出かけたMV22は、民家の屋根を吹き飛ばすトラブルを起こしています。これが、カンティプールという地元紙の五月五日付の報道なんですけれども、それによりますと、米軍普天間基地所属と見られるMV22が、ネパール大地震の被災者救援中に民家の屋根を吹き飛ばしたということなんですね。救援どころか、住民に深刻な被害をもたらしていることを写真つきで紹介しています。

 こうした報道があったことを左藤副大臣は御存じですか。

左藤副大臣 報道では見ておりますが、詳細については詳しく私は存じ上げておりません。

穀田委員 左藤副大臣、今私が言ったのは、まず和歌山県でこういう事故が起きている、先ほども、火災の事故について、私はだから一番最初に火災と言ったら、うんと言ってはったんやけれども、そこから話をスタートしたんやけれども、途中から火災でないとかなんとか言うてはりますけれども、そういう火災が起きている。あわせて、ノースカロライナではそういう事故も起きていて、炎上までしている。それから、こっちではまた人を救援どころか屋根まで壊して、民家まで壊している。こういったことが起きているということについて、報道について承知しているという程度では困るんですよね。

 先ほど副大臣は言いましたように、極めて有用だと言ったから、私は聞いているわけですよ。有用どころか、いろいろなことが起きているじゃないか、そのことを総合的に調べさせて、きちんと掌握しているかということを私は聞いているわけです。もう一度お答えください。

深山政府参考人 まず、防衛省の方で把握している事実を申し上げますと、今回のネパールの地震災害に対する対応につきまして、各国、オスプレイも行っておると承知しておりますし、ほかのヘリも運用に参加していたと承知しております。

 御指摘のような報道は承知しております。ヘリコプターにしろ、オスプレイにしましても、下降気流が出ますので、確かに、その直下では非常に強い風が起こるということもありまして、そうした点においては救助の難しさがあったというふうに承知しておるところでございます。

穀田委員 直下においては難しいということを聞いているんじゃないんです。それはそれでいいですけれども。

 では、和歌山県でこの問題が起きたときに、今、排気熱という話を私はしましたよね、副大臣、排気熱という話をしているんですよね。和歌山県の串本町、そのところでいいますと、町議会などでは、もともとそういうことが起こるという可能性があるというので、実はその改善方を申し入れている。だから、排気熱が下へおりないようにしているということを、改善したということを言っているわけだけれども、事実はそうじゃないんじゃないか。だから、今わざわざ深山さんがいろいろ言ってはるから、そういう機体を、少なくとも、排気熱が出る、それで下ではやらないようにしているということを言っているわけだけれども、議会では、そういうことで米軍や防衛省その他に相談したら、その下へおろすというのは少し変えたんだと言って、変えたんですか。では、ちょっとそこだけ。専門家だから詳しいようだし。

深山政府参考人 大変申しわけありませんが、下におろすということについて、訓練を行います際にいろいろと調整をいたしましたけれども、下におろす、つまり望楼の芝に着陸をして離陸をしたということは御指摘のとおりでありますし、下におろすのを変えたという点が、ちょっと意味をつかみかねておりますが……(穀田委員「では、もう一遍言おうか」と呼ぶ)はい。

穀田委員 では、答弁の中身を読みましょう。

 要するに、二〇一三年ですよね、この排気をやっている、公園のところなんかで排気熱による火災事故を取り上げたら、排気熱による火災、事故後、排気熱を下に落とす方式を変えたので安全だというような答弁までしているわけですよ。

 ですから、要するに、わかりましたね、下に落とす、そういう排気熱を、その方式を変えたということを言っているんだが、どうなんですか。

深山政府参考人 今伺いました、県当局の御発言ということで先生がお話しになりました点について、それがもし、必ずしも私の理解が十分でないかもしれませんが、機材的に、つまりオスプレイの機体を改修して下に排気熱が行かないようにしたということをしたかということでありますれば、そのような明示的な改修は、我々は承知しておりません。

 確認いたしますが、現在のところ承知しておりません。

穀田委員 だから、そういうことはないということなんですよね。だから、極めて、事故が起こったことに対して、そういうものがあるでと、県も言うわ、準備はするわ、水はまくわ、芝は刈るわ、そうしたら燃えた、そうしたら火災だといって放水したら、いや、それは火災と違うなんて言う人がいる。そういうことを言っているようじゃ大変だなと私は思います。

 そこで、岸田大臣に一言だけ聞いておきたいんですけれども、政府は、人道支援、そして災害救援活動というものを口実に、日本全土にオスプレイの訓練を拡大しようとしていますけれども、和歌山県での防災訓練、さらにネパールの被災者救援で起きた事態を見れば、オスプレイが離着陸時に出す排気熱、ダウンウオッシュと呼ばれているような激しい吹きおろしが、かえって災害救助時に二次災害を招く危険があることを証明しているんじゃないでしょうか。そして、先ほどもあったように、町当局やその他では、下へ向きをおろすことは変えたということまでして、何とか静めようとしているけれども、実際は変えてもいない。

 ですから、そういうものに向いていないだけじゃなくて二次災害まで招くという危険があるんじゃないかということを思うんですが、いかがですか。

岸田国務大臣 まず、オスプレイを人道支援あるいは災害救援活動に使うということにつきましては、先ほど防衛省の答弁の中にもあったかと思いますが、オスプレイが高い機動力あるいは広範な活動範囲を持っているということで、多くの物資を遠くに速く運ぶことができるなど効果的な能力を有するということで、これは意味があると思います。

 ただ、一方で、御指摘のように、オスプレイの安全性につきましてはさまざまな意見があります。

 我が国としましては、平成二十四年九月の日米合同委員会の合意を遵守するよう米側に求めており、また、安全性の確保についても、最大限配慮するように申し入れを行っているところであります。

 米側も、こうした二十四年九月の日米合同委員会の合意、これは遵守すると言っていますし、安全性の確保、あるいは地元に与える影響を最小限にとどめる、こうしたことについて努力をする、こうしたことについては表明をしています。

 ぜひ、日米で引き続き必要な協議を行っていきたいと思います。そして、そのことによって、安全性に対する不安に対して説明を行い、応えていかなければならないと考えます。

穀田委員 大臣、私は、いわゆる墜落事故を起こしている安全性という問題も一つあります。同時に、災害の訓練の、実際にあったところで起きているそういう火災というのは、本当にどうしようもないことだということを言っているわけです。

 今お話がありましたように、アメリカと共同で、我が国での訓練、運用に際しては日米合同委員会の合意を含む、何とかが何とかといってやる、こういう話をいつもされますよね。では、和歌山県で訓練したときどうだったのかということについてお聞きしたいと思います。

 ここは、白浜町、それから串本町というところでオスプレイが入ってきているんですけれども、そのときに、では、左藤副大臣にお聞きしますけれども、和歌山県に入ってくるオスプレイはその約束を守りましたか。

深山政府参考人 和歌山県の防災訓練に参加いたしましたオスプレイの運用は、日米地位協定等に合致したものだったと考えております。

穀田委員 考えておりますということなんだけれども、では、事実はどうか。

 二〇一四年の九月の県議会で、私どもの党の日本共産党の高田由一県議が、住宅地や病院などの上空を飛ばないようにと求めたのに対し、県当局は、米軍に住宅地の上空は避けることを要請、米軍は応じると回答した、このように答弁しているんですね。そこまでは局長がおっしゃるとおりですよ。

 ところが、南紀白浜空港への進入時、オスプレイ一機が役場や学校がある白浜町中心部の温泉街上空を飛行して、多くの住民が目撃しています。そして、県当局もこれを認めています、残念だと。

 だから、県当局でさえ認めていることを、いや、守っていると。この話だから困るんですよ。住民が見ている。県当局も認めている。そして、当局、防衛省だけが、守っていると。こういうことではだめなんですよ。

 やはり、事、防災訓練です。防災訓練をやっているときに、市街地を飛ばないという安全飛行の約束をしながら、平気で破る。そして、破っておいて、破ったことはみんな知っているのに、防衛省だけは、守っていると言っている。

 こんな図柄というのは、平気でおられますか。一体全体どこの国の人なんやと。別に、米軍の言うことを聞くのはかまへんけれども、ある意味では、それはそのとおりだったらいいですよ。

 違う事実を住民も県も認めているのに、防衛省は、アメリカ軍も守ったとは言っていないんです、あそこは黙っているだけなんです、それで、弁護している。

 こういうことをいかが思いますか、左藤さん。局長はいいです、もう。あなたに聞いているんじゃないから。それは左藤さんに聞いているんです、これでいいのかと。事実はもう確かめているから。

左藤副大臣 今の御指摘のことでございますが、できるだけ言われたとおり避けてやりたいと思いますが、天候上等その他の理由によってそうなったんだと思いますが、そういう面、しっかりやっていきたいと思います。

穀田委員 これも、今、局長の答弁と副大臣の答弁が違うというので、守っていると言って、いや、空港の気候の関係でと。当時、気候の関係は、二メートルぐらいの風で、どこから入ってきても大丈夫だと、空港まで言っているんですよ。私、確かめているんですよ。だから、そんな話、一つも二つもうそを並べちゃだめですよ。

 ですから、こういうことからしても、住民の安全だとか防災だとかなんという名前で、そんなこと冗談じゃないということを言っておきたいと思うんですね。

 だから、私は、オスプレイの飛行はやめ、配備は撤回する以外に、この点からも、ないなということがはっきりしたということを述べて、終わります。

土屋委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党と山本太郎となかまたち、玉城デニーです。

 きょうは、一般質問で、もろもろ安全保障情勢に関して質問をさせていただきたいと思いますが、まず、安倍総理と野党三党首との二十日に行われた党首討論について質問をさせていただきたいと思います。

 この党首討論も、前日に維新の党の代表も新しく選出され、岡田代表、そして松野代表、志位委員長、お三方からそれぞれ、政府の姿勢、総理の考えについての討論がなされたわけですが、しかし、私としては、その場で実際にその討論を拝聴させていただいたんですが、議論がかみ合っていなかったのではないかという印象を一番強く受けました。

 そのことは、後ほど質問の中で述べさせていただきますが、まずは、外務大臣から、この行われた党首討論についての御感想、御所見をまず伺いたいと思います。

岸田国務大臣 先日の党首討論ですが、久しぶりの党首討論でありました。そして、新しく就任された松野代表を初め、今の顔ぶれでの党首討論、これは初めてのことでありました。

 その中で、それぞれの党首がそれぞれの関心事について問題提起をし、真摯な議論が行われたと思っています。党首討論として、意義ある党首討論であったと私は思って聞いておりました。

玉城委員 党首討論の中でも要求といいますか要望が出されておりましたが、できれば月に一回、こういう党首討論で、国民の皆さんに、政府の考えと、そしてそれぞれの政党の皆さん、あるいは所属していらっしゃる議員の皆さんの国民の代表としての意見をしっかりと闘わせたいというふうな筋の意見も述べられておりました。だからこそ、私が、かみ合っていなかったのではないかというふうなところを、細かい点をたくさん述べると時間がありませんので、二点について私の意見を質問として述べさせていただきたいと思います。

 まず、戦後の安全法制の大変革がなされようとしております安全保障法制関連の法案審議がこれから進んでいくわけですが、その中で、民主党の岡田克也代表は、再三再四、これから活動していく自衛隊の活動拡大と、それから、それによってリスクを生じるのではないかということを述べておられました。

 これは、リスクという捉え方をどういうふうに見るかということでもまたそれぞれ違うのではないかと思うんですが、私のリスクという考え方は、二点あると思います。一つは、自衛隊がこれまでになく米軍や同盟国とともにその活動の範囲を我が国周辺から中東までも広げていくのではないかということに伴う、自衛隊に対する直接的な他国からのリスク、いわゆる攻撃あるいは何がしかの圧力が加えられることのリスク。そしてもう一つは、自衛隊がアメリカとともに中東へ出ていった際に、今度は同盟国の一員として見られるがために、国民に対してはね返ってくるリスク。この二つのリスクがあるのではないかというふうに思います。

 しかし、そのことについて安倍総理はきちんとお答えになりませんでした。岡田代表は、リスクがあるならある、それに対してどういう対処をするのかということがこの法案の中でもしっかり議論されるべきではないかということを恐らく問いただしていらしたのではないかと思うんですが、ついぞ、それに対する直接的なお答えはなかったものというふうに思料いたしました。

 自衛隊活動の拡大とこのリスクについて、外務大臣はどのように考えていらっしゃいますでしょうか、お聞かせください。

岸田国務大臣 委員御指摘のように、リスクを論じる際には、やはり整理して議論しなければならないと思います。

 一つは、大きな枠組みとして、我が国の安全保障環境が厳しさを増す中にあって、まずしっかりとした外交努力を行い、好ましい環境をつくるべく努力をしなければならない。しかしながら、万が一に備えて切れ目のない対応を考えていかなければならない。そして、そのことによって抑止力が向上し、結果としてリスクが低減する。こうした議論におけるリスクというものに対する考え方があり、そして一方で、こうした議論を進めていきますと、おっしゃるように、現場におきましては、自衛隊をめぐる環境、あるいは自衛隊に対する対応が変わってくるわけです。そうした変化の中にあっても、現場のリスクをどうコントロールしていくのか、こうした考え方をしっかり持たなければなりません。

 そういったことから、今政府が提出させていただいている法案の中にあっても、例えば後方支援において活動を中断する場合、あるいは撤退する場合、さまざまな取り組み、工夫を盛り込んでいるところであります。こうしたさまざまな具体的な対応によって現場のリスクをコントロールする、こういった議論、これもリスクの議論として大変重要であると思っています。それぞれのリスクに関する議論をしっかり深めていくべきであると思います。

玉城委員 従来の憲法解釈の中での法制度の中であれば、今、外務大臣がおっしゃったこと、外交努力を重ねて、そして、私は本来これ以上高めるべきではないと思っている抑止力をもって、それが相手国に対してのリスクの低下につながっていくという考え、私はこういう考えはとりませんが、そういうことがあるのであれば、やはりきちんとそれを総理は説明されるべきだと思いますが、しかし、今回の法案の改正は、そのリスクが広がっていくという懸念が国民の中にあるわけですね。

 当然、今まで制限されていたことをやろうとする、あるいは制限されていた武器を携帯、携行しようとする、使用、使うということも考えられる、さまざまなリスクが想起されてくると思います。そのリスクは、今までの概念、法的概念からのリスクをはるかに超えているということを私は懸念するわけです。だからこそ、岡田代表も、そのリスクについてどのような考えなのかということをまず最初に総理に対して質問されたのではないかというふうに思っております。

 先ほど外務大臣は後方支援の考え方についても述べておられましたが、では、その後方支援についての捉え方をお伺いしたいと思います。

 他国の軍隊であれば、司令部、戦闘部隊、弾薬や物資を補給する兵たん部隊、大まかに言うとこの三つの組織が同時に動いていく、あるいは機能していくということは、一般的な、いわゆる戦時における軍事体制の構築といいますか、あり方だと思います。

 当然ですが、特に沖縄での海兵隊は、この三つが機能するということが地理的優位性となって、だからオスプレイの基地は沖縄じゃなきゃだめなんだ、そういう三位一体的な捉え方の中で、ロジックで語られているわけですね。

 このことを考えると、自衛隊が同盟国アメリカとともに、では、中東に行ったとしましょう。アメリカは、当然ですが、現場においてさまざまな対処をすることが可能でありますし、またそれをすることによってアメリカの存在意義を世界に示そう、そういう立場です。

 しかし、その同盟国の立場と日本の立場が違うのであれば、もし、その同盟国が行っている戦闘の後方支援をする、兵士を戦場へ送る、あるいは燃料を送る、弾薬を送る、もしくは食料を送る程度でもいいかもしれませんが、しかしそれは、兵たんという、ロジスティクスという考え方をすると、この三つの部隊、司令部、地上部隊、兵たん部隊が一緒になって動いているという、同じ同盟国の仲間だというふうに敵対国からは捉えられるという、これもまた一つのリスクであり、懸念が強くなっていくわけですね。

 この後方支援に対する捉え方について、従来の自衛隊のあり方とこれからの自衛隊のあり方が変わらないというふうに考えるのか、それとも、これからは、その同盟国の一環としてその場所に出かけるけれども、その後方支援を途中で撤退をする、中止をして帰ることが本当に可能なのかどうか、この後方支援の捉え方によっては、日本に対して、自衛隊に対して、リスクはやはり高まっているままであるというふうに思うわけですね。

 大臣が考えていらっしゃる後方支援という捉え方についての見解をお聞かせください。

岸田国務大臣 まず、後方支援につきましては、今回の平和安全法制の中で、我が国の平和や安定に資する活動あるいは国際社会の平和や安全に資する活動という目的を定めた法律にしっかり従うものでなければなりません。

 そして、この後方支援を考える場合に、まず戦闘行為というのは何かということを確認しなければならないと思いますが、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷しまたは物を破壊する行為、このように一般的に解されています。

 後方支援、我が国の支援活動は、こうした行為に当たるものではありません。こうした我が国が行う後方支援と言われる支援活動自体、これは武力の行使に当たるものではありません。

 こうした武力の行使に当たらない支援行為に対して、仮に武力の行使が行われたとしたならば、そのこと自体が国際法違反になります。我が国の支援活動を攻撃することは、国際法上違法な武力行使に当たり、正当化されない、こうした評価になります。

 こうした基本的な評価の上で、我が国としてどう対応するのかということであります。

 現実的には、先ほど申し上げましたように、後方支援において、状況の変化に応じて、行動を中止する、あるいは撤退する、さまざまな事態に対してしっかりとリスクをコントロールするための制度、仕掛け、工夫を用意してあります。こうした制度の中で、我が国として、しっかりとした責任を果たし、目的を果たしていくべく努力をしなければいけない、このように考えます。

玉城委員 従来の平時の場合の後方支援、それから、戦闘地域に同盟国とともにこれからは自衛隊も参加していこうとする、その場合の後方支援は、明らかに、明白に違いが出てくるものというふうに思います。

 本来であれば、生活の党と山本太郎となかまたちも、この安全保障法制の議論に加わりたかったところではありますが、従来の五十人体制の特別委員会ではなく、今回はあえて四十五人でやるということで、委員会の設置が議運で決まっております。そして、国会でもそれが承認されていますけれども、どのような立場であろうとも、国会での議論に参加をする、それが我々国民の代表たる者の責任でもあると思います。

 その責任は、今大臣がおっしゃったように、総理が答えなかったことでも、大臣はどのように閣僚のお一人としてお答えになりますかということも真摯にお答えいただく、そして、それを国民に披瀝して、国民の考え、判断のもとにしていくということは非常に重要だと思います。

 ですから、きょう、まず最初に、党首討論についての御感想と、私が受けた、その党首討論におけるかみ合わなかった議論の中での最も入り口といいますか端緒のところについて、二点だけ質問をさせていただいた次第です。

 これからの安全保障法制の中では、忌憚のない意見交換をし、そして、今の日本の平和が果たしてこの法案を成立させることで確保できるのかどうかということを、国民がしっかりと考え、国民が判断をする、そういう国会論戦の場としていただきますよう、お願いを申し上げたいと思います。

 さて、では、残りの時間、質問をかえさせていただきます。

 今度は国連人権理事会について伺いたいと思いますが、日本は、さまざまな国連の機関と協力をして、世界各国との協調、これこそ、積極的な平和主義はまさにこういう国連機関との協調によって構築していけるものだというふうに考えるものですが、この国連人権理事会、UNHRCと我が国との関係について、まず説明をお聞きしたいと思います。

城内副大臣 お答えいたします。

 国連では、人権問題の対応の強化を目的に、二〇〇六年にそれまで経済社会理事会のもとで置かれました人権委員会が人権理事会に発展的に改組されまして、人権の保護、促進のための審議、勧告を行っております。

 我が国は、自由、民主主義、基本的人権を重視する外交を推進しており、これまで人権分野に積極的に取り組んでまいりました。また、現在、人権理事会の理事国を務めているなど、国連の人権機関の活動にも積極的に参加、協力しております。

 一例を挙げますと、我が国はEUと共同で、二〇〇八年以来、ことしで八年連続でありますが、毎年三月の国連人権理事会に北朝鮮人権状況決議を提出し、採択されております。

 我が国といたしましては、国際社会における人権の保護、促進のため、引き続き積極的に取り組んでまいる考えであります。

玉城委員 ありがとうございます。

 実は、この国連人権理事会に、沖縄「建白書」を実現し未来を拓く島ぐるみ会議という団体から、代表で琉球大学の教授の島袋純国連部会長が、米国に改善を勧告する旨、各国に働きかけ、呼びかけをさせていただいた、そういうニュースが地元で報道されております。

 国連人権理事会の普遍定期審査のアメリカに対する対米審査報告書というものが出されるわけですが、それに対して、スイスのジュネーブで開かれた事前セッションで、島ぐるみ会議の島袋教授は、七カ国の代表者に働きかけ、ほかの国にも資料を送付しています。その内容は、自己決定権と土地権に関して、それから環境権に関して、女性の権利に関して及び表現の自由の侵害などを訴えたという意見書を出させていただいています。

 報告書の中で、例えば中国は、自治、自己決定権を尊重し、土地や環境、言語などの問題に関し、国内外の先住民と十分に対話すべきだと勧告をするというふうに述べたそうですが、少なくともアルゼンチン、マケドニア、フィンランド、ユーゴスラビアも沖縄を初めとする米国外の米軍基地に関連すると見られる記述を盛り込むというふうに報道されています。

 この改善勧告について、沖縄からこのように、国連の機関に対して勧告が提出されたことについての見解を伺いたいと思います。

城内副大臣 委員が今御指摘されましたことにつきましては、琉球新報、沖縄タイムスで報道されたということは承知しておりますが、まず、普遍的・定期的レビューについてですが、これは人権理事会におきまして、国連加盟国百九十三カ国全ての国の人権状況を普遍的に審査する枠組みといたしまして、二〇〇八年から実施されている制度であります。

 五月十一日に、人権理事会のもとの作業部会におきまして、アメリカに対する対米審査、これが実施され、十五日に対米審査の勧告部分が採択されました。採択された主な勧告には、未批准の条約の締結に向けた努力の継続、人種差別に対する取り組みの継続、銃規制あるいはグアンタナモ刑務所の閉鎖等が含まれております。他方で、先住民の諸権利の尊重や暴力の犠牲者となった先住民女性の権利の保障等についても言及はされておりますが、明示的に沖縄に言及した勧告はないというふうに承知しております。

 今後、九月の人権理事会におきまして、対米審査の議事録を含む全体報告書が採択される予定でありますが、我が国といたしましては、米国が受諾した勧告について誠実に対応することを期待するものであります。

玉城委員 時間が来ましたので、残余の質問はまた次の機会へと回させていただきたいと思います。

 最後に一言だけ。先日、五月十七日、沖縄県の那覇市セルラースタジアムで、主催者発表三万五千人という辺野古新基地建設反対の県民集会が開催されました。その中で、翁長知事も挨拶をさせていただきましたけれども、沖縄はみずから基地を提供したことは一度もない、普天間飛行場もそれ以外の基地も、戦後、県民が収容所に収容されている間に接収をされ、また、居住場所を初め、戦後も銃剣とブルドーザーで強制接収をされ、基地建設がなされたということですね。

 自国民に自由と人権、民主主義という価値観を保障できない国が、世界の国々とその価値観を共有できるのだろうか。日米安保体制、日米同盟というものは、もっと品格のある、世界に冠たる、誇れるものであってほしいと思っているというふうに挨拶の中で述べております。

 つまり、この人権理事会の中で、さまざまな問題、その国の国民が抱えている問題は、自国の政府が解決に向かって努力をするために必要なことではありますけれども、他方で、沖縄に置かれている米軍基地によるさまざまな人権侵害は、国連機関の中でしっかりアメリカに対して提起されるべきであるということがこの翁長知事の挨拶の文脈からも受け取れるものというふうに思います。

 そして、翁長知事は最後に、日本の国が独立は神話だと言われないように、安倍総理、頑張ってくださいと述べました。これは、キャラウェー高等弁務官が沖縄の自治は神話であると言ったことにひっかけて、日本が独立国であれば独立国たる対応、自国民のこの意見に対して真摯に耳を傾けてアメリカと協議をしてください、よもやアメリカに日本の独立は神話ですよなどと言われないように頑張ってくださいとエールを送っています。

 そして、挨拶の結びには、ウチナーンチュ、ウシェーティナイビランドーとウチナーグチで締めくくっています。これは、知事によりますと、沖縄県民をないがしろにしてはいけませんよということなんですが、ウシェーティナイビランドーという丁寧な言葉で締めくくっているんです。つまり、日本政府がしっかりとこの国民の民意をアメリカに伝えること、そこからまさに沖縄と日本政府の胸襟が開いていくということになるのではないかということを私の考えとして添えさせていただき、質問を終了いたします。

 ありがとうございました。ニフェーデービタン。

     ――――◇―――――

土屋委員長 次に、投資の促進及び保護に関する日本国とカザフスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウルグアイ東方共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカタール国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び社会保障に関する日本国とルクセンブルク大公国との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 投資の促進及び保護に関する日本国とカザフスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の締結について承認を求めるの件

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウルグアイ東方共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカタール国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 社会保障に関する日本国とルクセンブルク大公国との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田国務大臣 ただいま議題となりました投資の促進及び保護に関する日本国とカザフスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十二年三月以来、カザフスタン政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十六年十月にアスタナにおいて、我が方在カザフスタン大使と先方投資発展大臣との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、主に、投資の許可後の投資家及び投資財産の保護を定めております。

 この協定の締結は、我が国とカザフスタンとの間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十三年九月以来、ウクライナ政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十七年二月にキエフにおいて、我が方在ウクライナ大使と先方経済発展・貿易大臣との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、先ほど御説明したカザフスタンとの間の協定と同様、主に、投資の許可後の投資家及び投資財産の保護を定めております。

 この協定の締結は、我が国とウクライナとの間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウルグアイ東方共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十四年十二月以来、ウルグアイ政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十七年一月にモンテビデオにおいて、我が方在ウルグアイ大使と先方外務大臣代行との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、投資の許可後の投資家及び投資財産の保護に加え、投資の許可段階の内国民待遇等についても定めております。

 この協定の締結は、我が国とウルグアイとの間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカタール国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十六年十二月以来、カタール政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十七年二月に東京において、我が方在カタール大使と先方駐日大使との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、我が国とカタールとの間で二重課税の回避を目的とした課税権の調整を行うとともに、両国における配当、利子及び使用料に対する源泉地国課税の限度税率等を定めるものであります。

 この協定の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、社会保障に関する日本国とルクセンブルク大公国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十二年五月以来、ルクセンブルク政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十六年十月に東京において、我が方外務副大臣と先方副首相兼経済大臣との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、我が国とルクセンブルクとの間で年金制度、医療保険制度等に関する法令の適用について調整を行うこと、両国の年金制度の加入期間を通算することによって年金の受給権を確立すること等を定めております。

 この協定の締結により、両国間の人的交流が円滑化し、ひいては経済交流を含む両国間の関係がより一層緊密化することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 以上五件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

土屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十八分散会


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