衆議院

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第13号 平成27年8月28日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十七年八月二十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 土屋 品子君

   理事 秋葉 賢也君 理事 大野敬太郎君

   理事 島田 佳和君 理事 辻  清人君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 寺田  学君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      石原 宏高君    小田原 潔君

      小渕 優子君    大塚 高司君

      木村 弥生君    小林 鷹之君

      佐々木 紀君    鈴木 隼人君

      薗浦健太郎君    渡海紀三朗君

      中根 一幸君    星野 剛士君

      松島みどり君    宮路 拓馬君

      緒方林太郎君    吉良 州司君

      鈴木 貴子君    長島 昭久君

      本村賢太郎君    青柳陽一郎君

      木内 孝胤君    岡本 三成君

      穀田 恵二君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   内閣府副大臣       西村 康稔君

   外務副大臣        中山 泰秀君

   防衛副大臣        左藤  章君

   外務大臣政務官      薗浦健太郎君

   外務大臣政務官      中根 一幸君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 伊藤 直樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡庭  健君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大菅 岳史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 鈴木 秀生君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 吉田 朋之君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   高瀬  寧君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    林   肇君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            上村  司君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 鈴木 敦夫君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  深山 延暁君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月二十日

 辞任         補欠選任

  武藤 貴也君     石原 宏高君

同月二十八日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     木村 弥生君

  小林 鷹之君     小田原 潔君

  鈴木 貴子君     本村賢太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     小林 鷹之君

  木村 弥生君     宮路 拓馬君

  本村賢太郎君     鈴木 貴子君

同日

 辞任         補欠選任

  宮路 拓馬君     河井 克行君

    ―――――――――――――

六月十六日

 辺野古新基地建設工事の中止と普天間基地の無条件撤去に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一九九五号)

 同(池内さおり君紹介)(第一九九六号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一九九七号)

 同(大平喜信君紹介)(第一九九八号)

 同(笠井亮君紹介)(第一九九九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二〇〇〇号)

 同(斉藤和子君紹介)(第二〇〇一号)

 同(志位和夫君紹介)(第二〇〇二号)

 同(清水忠史君紹介)(第二〇〇三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二〇〇四号)

 同(島津幸広君紹介)(第二〇〇五号)

 同(田村貴昭君紹介)(第二〇〇六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二〇〇七号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二〇〇八号)

 同(畠山和也君紹介)(第二〇〇九号)

 同(藤野保史君紹介)(第二〇一〇号)

 同(堀内照文君紹介)(第二〇一一号)

 同(真島省三君紹介)(第二〇一二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二〇一三号)

 同(宮本徹君紹介)(第二〇一四号)

 同(本村伸子君紹介)(第二〇一五号)

 女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二〇一六号)

 同(池内さおり君紹介)(第二〇一七号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第二〇一八号)

 同(大平喜信君紹介)(第二〇一九号)

 同(笠井亮君紹介)(第二〇二〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二〇二一号)

 同(斉藤和子君紹介)(第二〇二二号)

 同(志位和夫君紹介)(第二〇二三号)

 同(清水忠史君紹介)(第二〇二四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二〇二五号)

 同(島津幸広君紹介)(第二〇二六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第二〇二七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二〇二八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二〇二九号)

 同(畠山和也君紹介)(第二〇三〇号)

 同(藤野保史君紹介)(第二〇三一号)

 同(堀内照文君紹介)(第二〇三二号)

 同(真島省三君紹介)(第二〇三三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二〇三四号)

 同(宮本徹君紹介)(第二〇三五号)

 同(本村伸子君紹介)(第二〇三六号)

同月十七日

 辺野古新基地建設工事の中止と普天間基地の無条件撤去に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二二一八号)

 米軍輸送機オスプレイの配備撤回・低空飛行訓練の中止に関する請願(島津幸広君紹介)(第二六五二号)

 同(田村貴昭君紹介)(第二六五三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二六五四号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二六五五号)

 同(真島省三君紹介)(第二六五六号)

同月十八日

 辺野古新基地建設工事の中止と普天間基地の無条件撤去に関する請願(池内さおり君紹介)(第二九二八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二九二九号)

 普天間基地の即時閉鎖・無条件撤去に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第三二四六号)

七月九日

 辺野古新基地建設工事の中止と普天間基地の無条件撤去に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三三九一号)

 同(池内さおり君紹介)(第三三九二号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第三三九三号)

 同(大平喜信君紹介)(第三三九四号)

 同(笠井亮君紹介)(第三三九五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三三九六号)

 同(斉藤和子君紹介)(第三三九七号)

 同(志位和夫君紹介)(第三三九八号)

 同(清水忠史君紹介)(第三三九九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三四〇〇号)

 同(島津幸広君紹介)(第三四〇一号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三四〇二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三四〇三号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三四〇四号)

 同(畠山和也君紹介)(第三四〇五号)

 同(藤野保史君紹介)(第三四〇六号)

 同(堀内照文君紹介)(第三四〇七号)

 同(真島省三君紹介)(第三四〇八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三四〇九号)

 同(宮本徹君紹介)(第三四一〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第三四一一号)

 同(本村伸子君紹介)(第三四六七号)

 米軍輸送機オスプレイの配備撤回・低空飛行訓練の中止に関する請願(池内さおり君紹介)(第三四一二号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第三四一三号)

 同(大平喜信君紹介)(第三四一四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三四一五号)

 同(斉藤和子君紹介)(第三四一六号)

 同(清水忠史君紹介)(第三四一七号)

 同(島津幸広君紹介)(第三四一八号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三四一九号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三四二〇号)

 同(藤野保史君紹介)(第三四二一号)

 同(堀内照文君紹介)(第三四二二号)

 同(真島省三君紹介)(第三四二三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三四二四号)

 同(宮本徹君紹介)(第三四二五号)

 同(本村伸子君紹介)(第三四二六号)

同月二十四日

 辺野古新基地建設工事の中止と普天間基地の無条件撤去に関する請願(堀内照文君紹介)(第三六三九号)

八月七日

 辺野古新基地建設工事の中止と普天間基地の無条件撤去に関する請願(真島省三君紹介)(第三七四七号)

 同(宮本徹君紹介)(第三七四八号)

同月二十六日

 米軍輸送機オスプレイの配備撤回・低空飛行訓練の中止に関する請願(志位和夫君紹介)(第三九一四号)

 辺野古新基地建設工事の中止と普天間基地の無条件撤去に関する請願(志位和夫君紹介)(第三九二九号)

 同(清水忠史君紹介)(第四一一三号)

 原子力空母の横須賀母港をやめることに関する請願(志位和夫君紹介)(第四〇三二号)

 同(畑野君枝君紹介)(第四一一四号)

 核兵器全面禁止に関する請願(志位和夫君紹介)(第四一一一号)

 同(清水忠史君紹介)(第四一一二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 投資の促進及び保護に関する日本国とカザフスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウルグアイ東方共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカタール国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 社会保障に関する日本国とルクセンブルク大公国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより会議を開きます。

 投資の促進及び保護に関する日本国とカザフスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウルグアイ東方共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカタール国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び社会保障に関する日本国とルクセンブルク大公国との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官下川眞樹太君、大臣官房審議官伊藤直樹君、大臣官房審議官岡庭健君、大臣官房参事官大菅岳史君、大臣官房参事官鈴木秀生君、大臣官房参事官吉田朋之君、中南米局長高瀬寧君、欧州局長林肇君、中東アフリカ局長上村司君、防衛省防衛政策局次長鈴木敦夫君、運用企画局長深山延暁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻清人君。

辻委員 皆さん、おはようございます。自民党の辻清人です。

 三カ月ぶりの外務委員会ですね。この三カ月の間、戦後七十年の節目も迎えまして、国内外でさまざまな出来事、変化がございまして、お聞きしたいことはたくさんあるんですけれども、きょうは十五分という短い時間、かつ、今国会中に承認しなければならない協定が五本ありますので、法案審議に集中して、早速質問に入りたいと思いますので、よろしくお願いします。

 さて、きょうは、カザフスタン、ウクライナ、ウルグアイとの投資協定、カタールとの租税協定、ルクセンブルクとの社会保障協定、五本ありますけれども、まず、今回の投資、租税、社会保障協定に至る経緯とその意義について質問させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 投資協定、租税協定、社会保障協定、いずれも、日本企業の海外活動の支援や在留邦人の利便性、便益等を目的とする、経済的、社会的な意義の大きな二国間協定でございます。

 投資協定は、投資リスクの軽減によりまして、我が国企業の経済活動を促進するという意義を有しております。

 租税協定は、国際的な二重課税の回避、脱税及び租税回避行為への対処等を通じまして、二国間の健全な投資、経済交流を促進する意義を有しております。

 また、社会保障協定は、我が国企業の駐在員等が派遣先におきまして直面する年金、医療保険などの社会保障制度への二重加入、保険料の掛け捨てという問題に対処する、こういう意義を有しているところでございます。

 それぞれの協定のこのような意義に鑑みまして、相手国との経済交流の状況、我が国経済界からの要望、相手国からの締結打診といった事情を踏まえた上で、締結交渉を行い、今般、御指摘の五つの協定につき合意に至ったものでございます。

 具体的に申しますれば、日・カザフスタン投資協定につきましては二〇一〇年の三月から昨年十月にかけて、日・ウクライナ投資協定につきましては二〇一一年九月から昨年十一月にかけて、日・ウルグアイ投資協定につきましては二〇一二年十二月から昨年十一月にかけて、日・カタール租税協定につきましては当局間の非公式協議を経まして昨年十二月に、日・ルクセンブルク社会保障協定は二〇〇九年四月の当局間協議を経まして二〇一〇年五月から二〇一四年二月にかけて、それぞれ交渉を行い、その後の政府間での確認作業等を経て署名に至ったものでございます。

辻委員 今まさにTPPも交渉中ですし、RCEPも議論に上がっておりますが、こういった二国間の協定は、本当に、地球儀を俯瞰する外交と安倍総理は常々おっしゃっていますが、その成果の一つだと思っていますし、総理は、歴代総理トップの外遊数で、また岸田大臣は、現役国会議員最長の外務大臣在職期間を有していますので、安定した外交という意味では、これからも多くの国々とこういった協定を結んで、日本の経済、そして日本人に資する外交をこれからも継続していってほしいと思っております。

 二つ目の質問ですが、今週、台湾と中国の間で租税協定が締結されまして、こういった形で、特に今回の協定は、まさに地球儀を俯瞰して、世界じゅうの地域を対象にしているんですが、特に今、日系の企業の進出先を見ると七割がアジアなんですね。例えば中国ともまだ社会保障協定を締結していませんし、そういった意味では、現在交渉中、もしくはこれからの新たな締結先として展望している地域や国の進捗状況を教えていただければと思います。よろしくお願いします。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 投資協定、租税協定、社会保障協定の今後の見通しというお尋ねでございます。

 投資協定及び投資章を含む経済連携協定につきましては、これまでのところ、主な直接投資先であって重要な経済関係を有しますアジアの国々を中心に、三十三本締結をしているところでございます。これに加えまして、十六件の投資の関連の協定の交渉を進めておるところでございます。

 また、租税の関連の条約につきましては、これまで六十四の条約を締結しており、九十カ国・地域との間で適用されております。七月にはドイツとの間で実質合意に至っておる協定がございますので、これも今後署名に向けた手続を進めてまいります。これに加えまして、多くの国との間で、交渉開始の可能性を視野に入れた財務当局間の協議を行っておるところでございます。

 社会保障協定につきましても、これまでに十五カ国との間で締結をしておりまして、八月、フィリピンとの間で実質合意に達したところでございます。このほか、政府間交渉を三カ国との間で、また当局間協議を三カ国との間で実施しておるところでございます。

 こうした協定は日本企業支援のための重要なツールでございますので、こういう協定の積極的な締結ということを含めまして、引き続き、日本企業の海外展開に資する環境整備に努めてまいりたいというふうに考えております。

辻委員 ありがとうございます。

 こういった協定を結ぶことも大事なんですけれども、同時に、それをサポートする体制をしっかりとつくることも大事だと思うんですね。

 調べましたら、今、在外公館による日本企業の支援数は、この五年間で二倍以上にふえているんですね。平成二十二年で一・七万件、平成二十六年度で四・一万件と倍以上にふえているのでございます。そういった中で、日本が有する大使館数、昨年は三つ、ことしは六つ新設されまして、今現在、日本の大使館数は百四十五ですけれども、例えば、中国が百六十五、合衆国が百六十八、そして、日本が承認している国と大使館を保有している国との数の開きが五十あるんですね。

 そういった意味では、大使館、総領事館の新設と外務省の職員の補強も大事でございますが、これからこういった協定が結ばれていく中で、外務省としては、進出する日系企業をサポートする体制として、現在行っている、またこれから行う予定のものがあれば、教えていただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、日本経済の再生とその先の発展に資する戦略的な外交の強化というものが、我が国の外交政策の大きな柱でございます。

 日本企業の海外展開に向けた官民連携が、諸外国の成長を日本の成長に取り込んでいく上で極めて重要となっております。

 拡大する国際市場におきまして日本企業が存分に活躍できるように、外務大臣が本部長を務めます日本企業支援推進本部を外務省に立ち上げて、経済界の御意向を直接お伺いしながら、各国要人との会談におきまして日本企業の案件というものを積極的に取り上げるとともに、経済連携協定、投資協定、租税条約等の締結によるビジネス環境整備を含むさまざまな取り組みを進めてきているところでございます。

 委員から、在外公館の役割ということに御指摘をいただきましたけれども、まさに在外公館におきましては、大使や総領事が先頭に立ちまして、日本企業への各種の情報提供、外国政府への働きかけ等を行っております。

 日本企業支援担当官というものも設置をさせていただいております。そういう担当官を初めとする館員一同が、企業の海外展開の推進に支援、協力をしておりますし、また、このために、在外公館の施設、大使館、総領事館、公邸等々を積極的に活用させていただいているところでございます。

 今後とも、我が国の力強い成長を達成するために、あらゆる外交機会を最大限に活用して、オール・ジャパンで経済外交を大胆に推進していく所存でございます。

辻委員 ありがとうございます。

 御存じのように、来年は日本はサミット開催国でございまして、世界の中心で日本が活躍して、日本人に有利な国際環境をつくるためには、本当に外交力をこれから発揮していくしかないと私は思っているんです。

 ですので、こういった、きょう議題に上がっている五つの協定もそうですけれども、今まさに交渉中のTPPも含めて、二国間、多国間のルールづくりは本当に日本のこれからの輝かしい未来に向けては欠かせないということを、私は強調してもし尽くせません。ですので、これから本当に真っすぐ突き進んでまいりまして、安定した外交を岸田大臣初め外務省には行っていってほしいと思っております。

 かなり時間が短いですが、残りの時間は大野議員に譲って、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。

土屋委員長 次に、大野敬太郎君。

大野委員 おはようございます。

 辻先生、ありがとうございます。恐れ入ります。

 きょう、久しぶりに質問に立たせていただきました。というか、実は、私は常任委員会では初めての質問になりまして、どうぞ皆様、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 きょうは、三本の投資協定、それから租税条約、それからもう一つが社会保障ということでございますが、全て賛成の立場から質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、自由貿易についてですけれども、私は、一般論、総論といたしましては自由貿易賛成の立場でございますが、これはもちろん、平べったく申し上げますと、勝ち負けというよりはパイをふやしていくんだ、つまり、ビジネスの機会をふやしていくんだ、パイを、全体をふやして、地球規模の経済エコシステム、こういうものを考えていくんだということでございます。

 まず、非常に基本的なことでございますが、この自由貿易について大臣のお考えを賜りたいと思いますが、どうでございましょうか。

岸田国務大臣 まず、今の政権にとりまして、経済の再生、そして発展に資する経済外交を進めていくというのは大変重要な課題だと思います。そして、その経済外交を進める上において、今御指摘の自由貿易体制をしっかり維持していくというのは、我が国にとりまして大変重要な課題であるとも考えています。

 海洋国家であり、そして、こうした貿易、海外との取引において我が国の発展を考えていかなければならない我が国にとりまして、自由貿易体制をしっかり守っていく、これは大変重要な考え方であると思います。そして、この自由貿易体制を守っていく基盤が、WTOを中心とする多角的貿易体制であると考えております。

 ただ、このWTO体制が、今さまざまな困難に直面して膠着しております。そして、それを補完するために、さまざまな、EPAですとかFTAですとか、二国間の協定、取り組みが求められている、このように考えます。

 自由貿易体制を守るために、こうした体制をしっかり守りながら経済外交を進めていきたいと考えています。

大野委員 ありがとうございます。

 自由貿易体制は非常に重要な土台となるわけでございます。そして、パイをふやしていく、地球規模でチャンスをふやしていくんだ、こういうことになると思いますので、ぜひとも積極的に進めていただければと思うんです。

 一方で、そこの理想、パイをふやしていくという理想に行き着くまでに、結局は、国家間の競争、勝ち負けの話になりますし、一方で、産業界の競争にも、勝ち負けという話にもなってくるわけであります。

 それを考えたときに一つ思いつくことがあります。それは何かというと、実は、先般党内でクールジャパンの議論をさせていただいたときに、ハリウッドの映画俳優でマシ・オカさんという方がいらっしゃいます。日本人でありまして、非常にギフテッドでIQが一八〇以上あるという方らしいんですけれども、ブラウン大学を出たという方なんです。

 この方の話を聞いてなるほどなと思ったのが、アメリカと日本との比較ということをちょっとおっしゃっていただいたんですが、アメリカは勝てないことを恐れるんだ、日本は負けることを恐れるんだ、そういうざっくりとした違いがあるように思うということをおっしゃっていただいて、ああ、なるほどな、そんな観点があるんだなと思ったんです。

 それで、今、自由貿易を考えたときに、結局、チャンスがふえるわけですから、やはり負けることを恐れるよりは勝てないことというのを恐れていかないと、ふえたパイというのはしっかりと享受できないわけでありますので、しっかりと勝つような、国益、つまり、例えば、勝ち負けでいえば、地政学的な観点というのも、当然、経済外交の重要なポイントになってまいりますでしょうし、産業競争力という意味でも、当然、そういった観点が必要でありましょうし、一方で、地方創生という観点でも、当然、国益というのをしっかり考えていかなくちゃいけない、そんなことを思っていますので、またどうぞ御尽力を賜れれば、そんな思いでございます。

 その中で、一つ、ドーハ・ラウンド、先ほど大臣もお触れいただきましたけれども、WTO、膠着状態に随分なっているという話でありますが、一つブレークスルーが見えたなというのは、いわゆるITA、情報技術協定、拡大交渉をずっと続けていらっしゃったかと思うんですけれども、これは非常に、物すごく大きな基本的合意を得られたんだなと。

 というのは、私、多少報道は出ましたけれども、それほど話題になっていないのは不思議だなと思うんです。これほど大きな交渉が基本的な合意に至ったということで、まだ年末に向けて、詳細な、詰めた交渉というのをやっていかなくちゃいけないんでしょうけれども、これについて改めて触れておきたいと思いまして、きょうは質問させていただきたいと思います。

 改めて、この意義とか交渉の経緯とか、あるいは、どんな品目が改めて対象に加わったのか、それから、これによって日本としての経済的な規模、経済効果というのはどんなものなんだろうか、これについてお伺いをさせていただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 情報技術協定、ITAについてのお尋ねがございました。

 もともと、ITAにつきましては、一九九七年に、百四十四という品目のIT製品を対象にして、関税を撤廃する枠組みとして始まったものでございます。

 委員御指摘いただきましたのは、ITAの拡大交渉を先般来進めておりまして、それがまさに、ことしの七月に対象とする品目が確定をいたしました。

 拡大交渉と呼んでおりますけれども、このITAの拡大交渉というものは、技術の進歩に伴うIT製品の機能の向上、それから新製品の開発に対応して、対象となる品目を拡大するために、二〇一二年の五月に交渉が開始をされました。その後、累次にわたり交渉会合を開催して、本年の七月に二百一の対象品目が確定をしたわけでございますが、そこの品目には、新型の半導体でありますとか、デジタル複合機・印刷機、デジタルAV機器、こういった品目が新たに含まれたところでございます。

 ITAの拡大交渉、この経済効果についてのお尋ねもございましたけれども、経済産業省の試算によりますと、我が国から輸出されるこれらの拡大品目について、年間約千七百億円の関税の削減効果が見込まれるところでございます。

 ITAの拡大交渉につきましては、まだ国別、品目別に関税の撤廃の期間を確定するという作業が残っておりますので、我が国といたしましては、本年十二月に予定をされております第十回のWTOの閣僚会議までに、こうした点も含めて確定をし、交渉を妥結というところに運んでいきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

大野委員 ありがとうございました。

 積極的にどんどん進めていただければと思いますし、これをきっかけにWTOの基盤というのをしっかりと確固たるものにしていくような、突破口にできるような、そんな流れをつくっていただければと思います。

 もう一つは、ついでに、環境技術に関する協議、あるいはサービス貿易に関する協議も行われていると思うんですけれども、これについての経過というか、今、現状どうなっているのか、もしお伝えいただけることがありましたらお願いしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 環境物品協定についても交渉が行われておりまして、これはWTOに加盟をする国々の中から、有志国・地域によって、環境の関連物品についての関税撤廃を目指して交渉が行われております。この交渉は、昨年の七月にジュネーブで開始をされて、四十四カ国・地域が参加をしております。関係国・地域の間で、可能な限りの早期の合意というものを目指して、現在交渉が行われているところでございます。

 それから、委員からは、新サービス貿易協定と言われるもの、TiSAというふうに呼んでおりますけれども、この交渉についてのお尋ねもございました。

 新サービス貿易協定につきましては、二〇一二年以降、現行のサービスの貿易に関する一般協定、GATSと呼んでおりますけれども、このGATSを踏まえつつ、サービス貿易分野においてさらなる自由化を進めるということを目的として、五十二カ国・地域が参加をして、可能な限りの早期の合意ということを目指して交渉が行われているところでございます。

 以上でございます。

大野委員 ありがとうございます。

 先ほど、情報技術の協定について、何となく、すぐデジタル家電とかそういうものだろうなとよくわかるんですけれども、いま一度、環境の方とかサービスの方、日本に対するインパクトはどんなものなのか、ちょっとわかりやすく御説明いただければありがたいなと思っています。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 環境物品協定の交渉ということでございますけれども、もともと、この環境物品の協定につきましては、二〇一二年にAPECの中で、どういう品目を対象にして関税の撤廃を目指すかということについての合意がなされたところでございます。

 これまで八回交渉を開催しておるところでございますけれども、二〇一二年の九月には、APECの首脳会議におきましても、実行関税率の引き下げということに合意をした五十四品目というのがございます。こうした五十四品目は、まさに日本の経済にとっても大きな意義のある品目が含まれておりまして、その中には、再生可能エネルギーの関連製品であるとか、汚水処理の関連機材、あるいは大気汚染の制御装置といったものが含まれております。

 こうした品目につきまして、ジュネーブの場におきまして四十四カ国・地域で合意に至るということになりますと、まさにこうした品目を各国に対して輸出している日本の企業にとっても、非常に大きな、意義のある協定になる、かように考えております。

大野委員 ありがとうございます。

 特に環境関係というのは、非常に日本の技術というのはすぐれているんだというような期待というのが結構あると思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、三カ国の投資協定、今回、カザフスタン、ウクライナ、それからウルグアイという三カ国に対しての投資協定という議論でありますが、この中で、ウクライナという国についてであります。

 このウクライナという国は、重工業、重化学工業とかが有名でございますが、実は最近、IT、特にソフトウエアの輸出国に徐々になりつつある、こういう国であるそうでありまして、大体二千ぐらいの会社、七万五千ぐらいのプログラマーがいる、こういう統計もあるみたいでございます。

 これは、その北にある隣接国のベラルーシというのも当然有名なところでありますし、もっと北へ行けば、バルト三国、エストニアとかラトビアとかリトアニア、この辺の国というのは、ソフトウエアというのが非常に盛んなところであります。

 ここで一つ思いつくのは、イスラエルという国なんです。きょうは、日本、イスラエルの投資協定についてちょっとお伺いをしたいなと思って、改めて取り上げさせていただきました。

 何でイスラエルなのか。皆様御存じのとおり、一月に安倍総理が首脳会談を行ったときに、ことしじゅうに投資協定を結んでいくんだ、こういうことに相なりましたけれども、このイスラエルという国は、実はスタートアップビジネスというのがすごく盛んな国でありまして、いろいろな大手のIT関係の企業、アップルとかグーグルとかフェイスブックとか、そういうふうな、巨額の投資をされていらっしゃいます。それも、一社につき、例えば何百億円という規模ですね。全体にすれば、もう一兆に届かんばかりの勢いの投資を行っている。

 一方で、イスラエルにしてみれば、イグジットが、ある種の経済のエコシステムにもうなりつつあるんだ、そういう話を聞いて、スタートアップのベンチャーの社長さんなんか、もうそれを五、六回繰り返しているんだというような、そんな方もいらっしゃるそうであります。非常に元気な、こういったスタートアップのゼロから一を埋めるようなそういうエネルギーというのは、やはり日本も取り込んでいかなければいけないんだろうな、そんなことを私はすごく思うところでございます。

 現在、年間に、例えば、四、五百社ぐらいのスタートアップカンパニーがあるそうでありまして、現在、五千社ぐらいの会社ということであります。例えば、最近でいえば、ウエアラブル関係ですけれども、ゴーグルにヘッドアップディスプレーをつけて、もうまさにそこに全部情報が集約して出てくる。これは、仮に選挙なんかに利用したら大変有効に利用できるななんて思うんです。

 それはおいておきまして、こういったスタートアップカンパニーがすごくたくさんあるところでありますので、改めて私は注目をしているんですが、今、この日・イスラエルの投資協定の状況について、改めてお伺いをさせていただきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 イスラエルとの投資協定についてのお尋ねでございました。

 まさに大野先生御指摘のとおり、イスラエルとの関係では、昨今、急速に二国間の経済関係の進展に伴う関心の高まりが見られております。経団連、日商のミッション、あるいは、先様からのいろいろなミッションが来ておられます。

 御指摘のとおり、イスラエルでは、さまざまな革新的な技術を生み出しているスタートアップ企業が毎年数百社創設されておりまして、イノベーションの一つの中心でございます。

 本年一月の安倍総理のイスラエル訪問の際には、かの地の経済セミナーで総理が表明なさいましたとおり、イノベーションを経済成長のエンジンと位置づける我が国として、イスラエルとの協力を進めない理由はないとの認識に立っております。

 その結果、今行われております投資協定交渉でございますけれども、現在までに、二月に予備的協議、五月、八月に本交渉を実施するなど、日・イスラエル双方とも、スピード感を持って真剣に取り組んでおります。

 今後、できるだけスピード感を持ちまして、両国間の投資環境を整えるべく、他国との投資協定に比べ遜色のないレベルの協定となるように、引き続き努力をしていく所存でございます。

大野委員 ぼちぼち時間が参りましたけれども、一番重要なポイントというのは、もちろん日本がイスラエルに積極的に投資するなり進出をしていって、そして向こうの技術というのをしっかりと連携していく、そして、現地に拠点を確保して、そこに集まってくる人とかあるいは知恵とか、そういうものもまた逆に引き込んでいくということだと思うんです。

 それにおいては、やはり重層的、複層的と申しますか、いろいろな日本の会社がアクセスをできるようになることというのも結構重要なことなんだろうと思うんです。

 もう一つ言えば、日本の地方創生という観点でいえば、田舎にも非常にすぐれた技術を持っている会社というのは結構あるわけでありますので、そういった田舎の会社が比較的自由にというか、簡単にそういったところにアクセスできるようになるような一つのきっかけづくりが、多分投資協定になるんだと思いますので、そういった開かれたというか、より日本の会社がどんどん進出できるような枠組みというのをぜひ努力してつくっていかなくちゃいけないと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げまして、もう時間が参りましたので、私の質問にさせていただきます。

 きょうはありがとうございました。

土屋委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民主党の緒方林太郎でございます。

 三カ月ぶりですか、この外務委員会で質問させていただくこと、本当に感謝を申し上げます。

 本日は経済関係五条約ということで、ウクライナの投資協定からスタートをさせていただきたいと思います。

 ウクライナは、現在、紛争地域でありまして、ウクライナ東部、さらにはロシアが併合したと言われているクリミアの地域がございます。この投資条約の適用範囲として、例えばウクライナ東部、そしてクリミア、これらの地域にこの条約は適用されますでしょうか、外務省。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、クリミアでございますけれども、この日・ウクライナ投資協定の地理的な適用範囲を定めております第一条(5)の「区域」、ウクライナの区域という中に含まれております。

 しかしながら、委員の御指摘にもありましたけれども、クリミアをロシアが一方的に併合している状況のもとにおきましては、ウクライナは、不可抗力を根拠として、クリミアにおいて本協定上の義務を履行できないということによって生ずる違法性を阻却するということが認められていることとなります。この点につきましては、この日・ウクライナ投資協定の交渉過程におきまして、ウクライナ政府側との間で確認したところでございます。

 それから、ウクライナ東部地域でございます。

 委員の御発言にもございましたけれども、東部の二つの州、ドネツク州、ルハンスク州において、依然として情勢は流動的でございます。他方において、現状におきましては、日・ウクライナ投資協定が同地域においても規定どおり適用されるということになります。もっとも、実際に戦闘が行われているこの二つの州におきまして現在活動を行っている日本企業はないというふうに承知をしております。

 また、外務省は昨年の七月から、この地域への、すなわちドネツク州、ルハンスク州の東部二州でございますが、渡航の延期を求める危険情報を発出しておりまして、現状において、日本企業がこの地域へ進出するということは想定されていないというふうに考えている次第でございます。

緒方委員 それでは、ロシアが一方的に併合したとされるクリミアにおいてですが、日本とロシアの間には投資保護協定がございます。クリミアに進出をした、そういう企業が仮にあるとして、ロシア側から日ロ投資保護協定の適用を日本の事業者が求められるとき、日本の事業者はこのときどういうふうに立ち振る舞うべきだというふうにお考えでしょうか、外務省。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、ウクライナの主権及び領土の一体性を尊重しておりまして、ロシアによるクリミアの一方的な併合というものは、力による現状変更であって、断じて認めないという立場をとっているところでございます。

 クリミアがウクライナの一部である以上、クリミアに滞在する日本人に対しまして、あるいは日本企業に対しまして、日本とロシアとの間で締結された条約、あるいはロシアの国内法令が適用されるということは、日本政府の立場と相入れないというふうに考えている次第でございます。

緒方委員 相入れないというお言葉でありましたが、相入れなくても、相手が求めてくるときに、やはりそれに、もう最後は従うことはやむを得ないということなのか。それは日本政府の立場と違うから、進出した日本人であれ法人であれ、そういった方々はこの条約に基づく適用をある意味拒否しなきゃいけないのか。これはいかがでございますでしょうか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 日本政府の立場と相入れないということでございまして、仮に、日ロ間の条約、締結された条約なり、あるいはロシアの国内法令が適用される、そのもとに服するようにという主張がロシア側からなされた場合にも、日本政府としてこれを受け入れることはできないということでございます。

 他方におきまして、クリミアにおいても、先ほど、ウクライナ東部地域二州、ドネツク州、ルハンスク州について御紹介させていただいたように、現在、活動を行っている日本企業というものはないというふうに承知しております。

 また、外務省といたしましては、クリミアにつきましても、渡航の延期を求める危険情報を発出しているというところでございます。

緒方委員 それでは、今の答弁に若干かぶるところもありますけれども、この投資協定のみならず、日本とロシアの間にさまざまな条約がございます。例えば、例示ですけれども、刑事共助に関する条約とか、公権力同士のコミュニケーションの問題ですけれども、さらには査証関係でも条約がございます。

 一般論として、ロシアが日ロ間に存在している諸条約の適用を求めてくるときは、例えば、公権力同士のやりとりを行う日ロの刑事共助の条約であるとか、あとは個人がその条約に適用を求められる査証関係の条約とか、そういったものについても基本的には今と同じという考え方でよろしゅうございますでしょうか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 日ロ間の個々の条約あるいは取り決め等につきまして、その具体的な適用が現実のものとなったときに、その対象がいかなるものかを精査しながら判断してまいりたい、このように考える次第でございます。

緒方委員 ありがとうございました。

 今、なぜこういった議論を行わなくてはいけないかというと、ウクライナ情勢が非常に厳しいものになっているということでございます。

 現在、ウクライナ、先ほど、二州において情勢が安定しない、さらには、クリミア半島においてはロシアが一方的に併合をしたということでありますが、今こういう状態になっていること、これの発端は何だというふうに思われますでしょうか。誰が火をつけたからこういう状態になっているというふうに外務省はお考えでしょうか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 現下のウクライナ情勢の発端につきましては、国際的にさまざまな見方があるというふうに承知しております。そう申し上げた上でお答え申し上げたいと思いますのは、ウクライナのEUとの連合協定締結につきまして、ウクライナの国民の中に強い支持が存在していたということでございます。

 一昨年、二〇一三年の十一月に、当時のヤヌコビッチ大統領が、ウクライナとEUとの連合協定の署名を延期するという決定をしたわけでございますが、これがウクライナの国民の強い反発を招いた、こうしたことが現下の情勢に至る極めて重要な契機であった、この署名延期の決定の後、これに反発する市民による反政府集会等が発生、拡大していった、こういう事情があったというふうに認識している次第でございます。

緒方委員 もともとあの地域には、昔、キエフ公国というものがございまして、これがロシアの起源だろうというふうに私も思います。キエフ公国というのは、正式な名称をルーシといいまして、まさにロシアという名前はこのルーシから来ている。そういう国が、まさにウクライナの、キエフのところにあったキエフ公国なわけですね。ロシアからすると原点のような地域ではないか。これは、麻生大臣が、キエフというのは日本にとっての高天原のようなものだという発言がございました。

 ここは薗浦大臣政務官にお伺いいたしたいと思います、同じ認識をお持ちでしょうか。

薗浦大臣政務官 歴史的な経緯について、それぞれ個々の認識があるということは重々承知をしておりますけれども、外務省としてこうであるというものを断定的に申し上げるのは、この場では差し控えさせていただきたいと思います。

緒方委員 キエフ公国が存在をしていて、その後そこにモンゴルが入ってきて、そして、その後モスクワ大公国というのができて、それが今のロシアを形づくっていったというその歴史的経緯があるんだと思います。ロシアにとって高天原という表現がいいかどうかわかりませんけれども、非常に、自分たちの原点だ、この地域が原点なんだという思いを持っているように思うんですけれども、大臣政務官、いかがお考えでございますでしょうか。

薗浦大臣政務官 私自身、今委員が申し上げた話をお伺いしたことはありますけれども、先ほどの繰り返しになって恐縮でございますけれども、この立場で、この場で断定的なことを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。

緒方委員 第二次世界大戦のときの激戦地というのは、大体ウクライナにあるんですね。昔、映画でもありましたけれども、「戦艦ポチョムキン」とか、あれも、ちょっと離れますけれども、ウクライナの黒海沿岸のところにありまして、ロシアからすると本当に、国民がたくさん亡くなっている地域でもあるし、非常に重要な地域だというふうにロシアは考えているんじゃないかなというふうに思うんですね。

 そのウクライナが、先ほど御答弁にもありましたが、EUとの連合協定を締結するということで、私、今ロシアがやっていることを正当化するつもりが全くない、全くないという前提でお話をさせていただきたいと思いますが、ただ、心の里であるウクライナ、そして、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツと戦ったときに多くの人間が亡くなっているウクライナ、この地域がEUとの連合協定を結ぶこと、そして、恐らくロシアは、その後に、この推察が正しいかどうかわかりませんけれども、もしかしたらNATOに入ってしまうんじゃないかというような危惧まで持っているんじゃないかと思うんですね。何となく、ロシアはそこにすごく寂しい思いをしているのではないかというふうに思うわけです。

 もう一度強調しますけれども、今ロシアがやっていることを正当化するつもりは全くないということを前提に言うと、EUの連合協定というのは少しやり過ぎたのではないかというふうに私の目に見えてしまうんですけれども、外務省、いかがでございますでしょうか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナとEUとの連合協定に対するウクライナ国民の中の強い支持につきましては、先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。

 他方におきまして、ウクライナあるいはロシアの国家、民族としての経緯等についてはさまざまな議論があるということもまた事実かと存じます。

 そのいずれについてどうであるかについては、先ほど薗浦大臣政務官が御答弁されたとおり、私ども日本政府として何か確定的なことを申し上げる立場ではございませんけれども、さまざまな議論というのがあるということはそのとおりかと存じます。

緒方委員 ウクライナは、穀倉地帯でもありますし、非常に豊かな地域でありまして、早くこの投資協定を使って日本企業がどんどんと出ていけるような環境になることを心から祈念いたしたいと思いますし、外務省もぜひ頑張っていただければというふうに思います。

 それでは、国をかえまして、今回、投資協定で出てきておりますカザフスタンという国についてお伺いをいたしたいと思います。

 現在のヌルスルタン・ナザルバエフ大統領、非常に任期が長くなっておりますが、在任何年でございますでしょうか。

林政府参考人 カザフスタンについてお答え申し上げます。

 カザフスタンは、旧ソ連が崩壊、分裂して後に独立いたしまして、一九九一年でございますので、その独立以来、ナザルバエフ大統領はカザフスタンの大統領の職を継続しておられます。したがいまして、この時点で、二十四年間、大統領職を務められているというふうに承知しております。

緒方委員 そして、このナザルバエフ大統領、二〇〇七年ぐらいではなかったかと思いますが、議会の方から、終身大統領だ、終身大統領にしよう、そんな法律が上がってきて、終身大統領については大統領本人が断ったということでありますが、それのかわりかどうかわかりませんが、初代大統領法というのがございます。何と呼ぶのか正式には知りませんけれども、恐らく初代大統領法で通じると思います。

 この初代大統領法というのは、どのような内容のものでございますでしょうか、外務省。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘いただいた法律そのものを手元に持っているわけではございませんので、概要だけ申し述べさせていただければと思いますけれども、カザフスタンにおきましては、大統領の任期というのは二期まで、三期以上務めてはならないということが決まっておるところでございますが、それに対しまして、初代大統領についてはこの規定の適用の例外とするということが定められている、そういう法律ではなかったかというふうに承知しております。

緒方委員 私も全く同じ認識であります。

 本来、二期までということで憲法にも書いてあるわけですが、初代大統領についてはその任期制限がないという法律がカザフスタンにはございます。

 たしか最近、カザフスタンでは大統領選挙がございました。いつごろ再選をされ、大まかで結構ですので、どれぐらい圧倒的に大統領選挙で勝利をしたということか、情報をお持ちでしたら、質問通告から少し外れますので、局長に失礼を申し上げますけれども、もしわかるようでありましたら、いつ再選されたか、そしてその得票率がどの程度のものであったか、御答弁いただければと思います。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 手元にある資料から引用させていただきますと、本年の四月二十六日にカザフスタンにおきまして大統領選挙が実施されているところでございまして、ここで、現職のナザルバエフ大統領が九七・七%の得票率で五回目の当選を果たしたというふうに承知しております。

緒方委員 そうなんです。物すごい、九十数%という、普通、選挙をすると、我々も九十数%で当選することというのはなかなかないわけでございまして、すごいな、うらやましいなと思うわけでありますが、旧ソ連が崩壊した後にできた国の中には、こういった形で、ソ連が崩壊して最初に国ができたときからずっと大統領をやっている方というのが結構おられます。タジキスタンのラフモン大統領、そしてウズベキスタンのカリモフ大統領、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領、このあたりが非常に長いわけでありまして、大体二十四年とか、二十年を超えてきているわけです。

 非常にこういうふうに長くなってきていることというのは、一般的に長期政権だと思うわけですけれども、こういった状態について、外務省、何らかの見解をお持ちでしたら御答弁いただければと思います。

薗浦大臣政務官 お答えを申し上げます。

 個々の国それぞれについて我々がどうだこうだと言うのは控えたいと思いますけれども、今おっしゃったカザフも私もお伺いしました、タジキスタンもお伺いをしてお会いをしましたし、それぞれの国の中で一貫した政権の座にあるということは、安定した統治状況、国内政治のもとでそれぞれの国づくりが進められているのではないかというふうには私どもとしては認識をしております。

緒方委員 大体、長期政権の国というのは、行ってみると物すごく安定しているんですね、物すごく安定しています。私もアフリカ勤務を経験しましたけれども、国の名前は出しませんけれども、近くの隣国、むちゃくちゃ安定していました。安定していましたが、一旦がたっといったときに、その大統領はすぐに放逐をされたということでありまして、私自身の経験からも、仮にそれを強権政治と呼ぶのであれば、安定している強権政治というのは、見た目は安定しているんですけれども、一旦何か歯車がうまく合わなくなったときというのは、非常にがたがたっといくことがあり得るというふうに思います。

 外務省の資料、特に経済協力の資料を見ておりますと、グッドガバナンスというものを確保していくということがよく書かれています。このガバナンスという表現、多分、民主主義とも違うし、例えばほかにも、報道の自由とかそういったものとも違うんだと思うんですね。

 外務省にお伺いをいたしたいと思います。このグッドガバナンスという表現で使われるガバナンス、これは中に何が含まれているというふうにお考えでしょうか。

岡庭政府参考人 お答えいたします。

 ガバナンスという言葉の指す範囲、内容というのは多岐にわたりまして、一義的な定義があるわけではございません。国際協力の文脈におきましては、一般的に、統治機構や制度の効率性や透明性、行政能力などを指すと認識をしております。

 本年二月に策定をいたしました開発協力大綱におきましては、グッドガバナンスの実現を、法の支配の確立、民主化の促進、定着、女性の権利を含む基本的人権の尊重などと並立して、「効果的・効率的かつ安定した経済社会活動の基礎をなし、経済社会開発を支えるものであると同時に、格差の是正を始め、公正で包摂的な社会を実現するための鍵である。」というふうに位置づけております。

緒方委員 例えばですけれども、政治の世界において多元性が確保されていること、こういったことはガバナンスの定義の中に含まれるというふうにお考えでしょうか、外務省。

岡庭政府参考人 先ほど申し上げたとおり、一元的な定義というのはございませんが、例えば国民の参加というような観点から、ガバナンスの内容としても、ある意味一部を構成するという考え方はございます。

緒方委員 あれだけグッドガバナンス、グッドガバナンス、いい統治を確保していきたい、そしてそれを援助政策の中でも結構大きく書き込んでいるわけですよね。決まった定義がないというふうになると、では、それは何を目指しているんだということになるんだろうというふうに思いますけれども、これはもう、これ以上は申し上げません。

 では、一般論としてですけれども、大統領の任期が長い状態というのはガバナンスが低下している、低下する傾向があるというふうに、薗浦大臣政務官、お考えになりますでしょうか。

薗浦大臣政務官 私が経験している限りで申し上げますと、例えば、任期が短いところでも、統治機構に混乱を来してガバナンスが十分できていないという国もあれば、委員御指摘の長期政権においても、弊害がある国もありますれば、大統領が大変尊敬を受けていて、国の統治機構が安定をし、そして国づくりが進められているという国もあると私自身は考えておりますので、一概に、長期政権イコール、ガバナンスがないという御指摘には当たらないと私自身は考えております。

 いずれにしても、先ほど委員御指摘のグッドガバナンスというものに関しては、先ほど岡庭さんから答弁申し上げたとおりというふうに我々は考えております。

緒方委員 必ずしもそうでない例があるわけですが、確かに例外的に、長期でやっていても尊敬を集める大統領、国家元首というのがいるわけですが、例えば、任期が長い大統領とか、もう一つ、カザフスタンのケースでいうと大統領選挙をやると九七%で当選するとか、そういう状態というのは、あくまでも相関性の観点から見ると、やはりガバナンスがきいていない可能性が高いんじゃないかというふうに思うわけですが、大臣政務官、いかがでしょうか。

薗浦大臣政務官 個々の国の選挙それから選挙結果について、この場で私から予断を持って何かを申し上げることは、大変申しわけないけれども、差し控えさせていただきたいと思います。

緒方委員 では、少しだけしつこく、もう一問だけ。

 大統領選挙をやって九七%で当選していくという状況というのは、少し、何かおかしいんじゃないかな、そういう感想はお持ちになりませんか。

薗浦大臣政務官 大変恐縮ですが、私の立場で、他国の選挙結果について感想またそうした類いのことをこの場で申し上げることは、申しわけないけれども、差し控えさせていただければと思います。

緒方委員 はい、わかりました。

 ただ、地域を少し離れますけれども、アフリカを見ておりますと、タンザニアの大統領、ジャカヤ・キクウェテという方ですけれども、二期十年で、ことし退任のはずであります。その前の大統領ベンジャミン・ムカパも、二期十年で退任をしています。二期十年で安定的に回していける国というのは、恐らく、国としてもガバナンスが発揮されやすいし、安定勢力になっていくんじゃないか。タンザニアという国は今、我々が見ていても、恐らくアフリカの中では優等生の部類に入ってきているというふうに思います。

 その一方で、すぐお隣の、今非常にもめておりますけれども、ブルンジという国を見ておりますと、ピエール・ンクルンジザ大統領ですけれども、憲法を改正して、大体二期までと普通書いてあることが多いんですが、三期目の憲法改正をするや否や国内でクーデター事件が起こったとか、その後も、大統領選挙も周囲の国からも批判されている、アメリカのケリー長官からも非民主的ではないかという批判を受けたりしている。

 そのほかにも、アフリカを見ておりますと、最近この手の、大統領の任期を憲法を改正して拡大しようとした結果として崩れていった国家元首として、ブルキナファソという国のブレーズ・コンパオレ大統領も全く同じであります。

 少し先ほどの質問の続きになりますけれども、憲法を改正してこれまで二期だった大統領の任期を三期、四期と拡大するというのは、これは、一般的に、ガバナンスがきいていないし、よくない事態なんじゃないかなと私は思うんですね。私はそう思います。大臣政務官、いかがでございますか。

薗浦大臣政務官 個々の事例については、申しわけないですけれどもあれですが、いずれにしても、委員のおっしゃっていることというのは、いわゆる法の支配、憲法を含む法の支配がきちんと確立をしていること、そして、世界共通の認識であるいわゆる民主化というものが定着をしていること、さらには、国内において基本的な人権が尊重される、この三つを大きな要素として運営がなされ、そして、そこにガバナンスがきくという状態が非常に好ましいということは、一般論として申し上げることができるかと思います。

緒方委員 最後に、一問だけ、これは岡庭審議官にお伺いをいたしたいと思います。

 日本の経済協力政策の中で、やはり、ガバナンスがきいている、きいていないというのは、国に対する援助をしていく上での重要な指標であるというふうに理解をしてよろしゅうございますでしょうか、審議官。

岡庭政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、開発協力大綱におきましては、グッドガバナンスの実現というものが、「効果的・効率的かつ安定した経済社会活動の基礎をなし、経済社会開発を支えるものである」という意味で、重視をしております。

 さらに申し上げれば、開発協力の適正性確保のための原則というものを大綱の中で書いておりまして、その中では、我が国が相手国に経済協力を行う場合において、民主化の定着や法の支配、基本的人権の保障にかかわる状況というものに十分に注意を払うという原則を書いておりまして、我が国としてはこの大綱に従って支援をしていくという考えでございます。

緒方委員 質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 久しぶりの外務委員会、恐らく今国会、多分、まだまだ続けていきたいというふうに思います。

 ちょっと質問通告をしていないんですけれども、この間に、大事な、戦後七十年談話が発表されました。私の感想を申し上げると、非常によくできた、よくできたと言うとちょっと偉そうな物言いでありますけれども、非常に練られた、歴史的な文書になったのではないかというふうに私は感じました。

 国際関係論では非常に重要な言葉である国際秩序に対する挑戦者、こういう言葉を使って、我が国の明治から大正、昭和にかけての来し方を非常に深いレベルで反省し、そして、将来に向けての誓いといったようなものを最後に四つぐらいのパラグラフで示した。これは、私は少し読み過ぎかもしれませんが、国際秩序の挑戦者になることなかれというのは、みずからに対する戒めと同時に、今台頭している新興国に対する、ずばり言えば中国に対する警告というか牽制というか、そういう意味合いもこもっていたのではないか、こういうふうに感じています。

 また、私たちの次の世代に対してまで、いわゆるおわび、謝罪といったものを残さない、今回が一つの区切りだという決意を非常に強く示し、しかし、反省すべき点は十九世紀にさかのぼってきちっと反省をする。

 そして、感謝すべきこと、我が国を国際社会に迎え入れてくれた、あるいは、過去のさまざまな困難を乗り越えて許してくれた、そういう国々に対するきめの細かい感謝の意というものが表された。

 こういう意味で、本当に、これから近現代史を学ぶ子供たちに対する非常に大きな教材に、基礎的な教材になるのではないかというふうに思っています。

 ただ、一点、不満があるのは、大正から昭和にかけての、日本が国際秩序の挑戦者になってしまったその原因を、世界恐慌から経済ブロックができていった、あの外部的要因に何か帰しているようなニュアンスの部分があった。これについては、やはり二大政党制の未熟さとか、マスコミがそのころだんだん拡大していくわけですけれども、国民の世論をあおった、激情をあおっていったそういうプロセス、あるいは軍部における下克上とか、こういった内在的な要因についてももう少しバランスよく言及してほしかったなという思いは残りましたけれども、いずれにしても、私は非常に大事な文書が発出されたなというふうに思っております。

 外務大臣の御感想を伺えればと思います。

岸田国務大臣 今回の戦後七十年に当たっての総理談話ですが、過去の総理談話と比較しましても、ボリューム的に大変大きなものとなりました。その内容につきましても、歴代内閣の立場は揺るぎない、この基本は改めてしっかり確認した上で、例えば過ちの内容につきましても、どのような過ちであったのか、これを丁寧に書き込むなど工夫がされております。その上で、さまざまな国々、関係者に感謝を伝え、これから我が国としてどんな国をつくっていくのか、こうした思いを述べたものであると受けとめています。

 総理談話につきましては、その総理談話の中に書いてある文言が全てでありますが、幸い、その後、各国から、この総理談話に対しまして前向きな評価が寄せられていると受けとめております。

長島(昭)委員 ありがとうございました。

 それでは、投資協定等々の質疑に移りたいというふうに思います。

 今回、カザフスタン、ウルグアイ、ウクライナが承認されれば、さきに承認されたモンゴルと合わせて四つふえるわけですが、依然として、これが全部承認されたとしても三十七だというふうに思いますが、少ない印象なんですね。ヨーロッパの主要国、イギリスが九十六、フランスが九十二、ドイツが百二十七、中国が百六、韓国が八十三ですから、主要国は大体百前後の投資協定を締結しているわけです。日本のこのプロセスは非常に遅い、少ないという印象を受けるんですが、この点について、外務大臣、どうお考えでしょうか。

薗浦大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、今御審議をいただいております三本を加えまして三十七本ということになります。米国が今締結している条約が四十本でございますので、こことは大差ございませんけれども、御指摘いただきましたとおり、欧州それから中国、韓国に比べると極めて少ないということは言えると思います。

 この背景といたしまして、まず、欧州の国々、イギリス、フランスに御言及いただきましたけれども、ここはやはり、直接投資の歴史が長い、いわゆる旧植民地の諸国を中心に協定を結んできたという背景がございます。また、中国、韓国については、開発途上にあった段階、期間が非常に長かったものですから、この期間の外資誘致の観点から積極的にこうした協定を締結してきたという事実がございます。

 また、我が国は、非常に注力をしておりましたOECDの多国間投資協定、この協定交渉が九八年に打ち切られた後に、二〇〇〇年代に入って協定の交渉を本格的に開始したという背景がございまして、委員御指摘のような状況になっているというふうに認識をしております。

 いずれにしても、ほかの主要国と、協定の本数が少ないことは事実でございますので、従来以上に積極的に協定交渉を進めてまいりたいというふうに考えております。

長島(昭)委員 米国が四十ということで、米国も日本と似たような数字になっている。アメリカが少ない理由は何でしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 米国につきましては、主に周辺国といいますか、まさにNAFTAに代表されるようなカナダ、メキシコとの関係、あるいは中南米との関係を中心に、こうした協定の関係の整備ということで、ビジネスの環境整備に努めておりますので、それは確かに、今、薗浦政務官から申し上げましたような、欧州諸国と比べた場合の歴史的な違いということがございますので、そうしたあたりが、米国についてはほぼ日本と同様の数の投資協定になっているものというふうに考えております。

長島(昭)委員 いや、私は、いろいろレクを受けながら学んだことは、今回、投資協定、二つに分けると保護型と自由化型とあって、アメリカ側は自由化型でアプローチする傾向が当然ありますね。そうしますと、相手国の市場開放に伴う措置を相当ドラスチックにやっていかなきゃいけないので、結構交渉には時間がかかる、難航するというような点があると理解をしているんですが、その点、いかがでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 失礼いたしました。まさにアメリカはそういう傾向がございますし、それは日本にとっても、自由化型の投資協定を志向してきたという経緯もございます。

長島(昭)委員 それで、ウクライナに行きたいんですが、先ほど緒方委員がクリミアに適用されるのかという非常に興味深い質問をされていましたが、それぐらいウクライナは、今、激変、激動真っただ中、何で今のタイミングでこの投資協定を結ぶのかなというのは素朴な疑問としてあるんですけれども、現状、どうなっているか、停戦協定はきちっと履行されているのか、不確定要因は引き続き存在するのかどうか、この点について伺いたいと思います。

岸田国務大臣 ウクライナの現状ですが、御指摘のように、停戦合意はなされたわけでありますが、現実には、依然として局地的な戦闘が続いております。

 そういった中ですので、我が国としましても、ウクライナ東部につきましては、渡航の延期を求める危険情報を発出するなど、企業関係者を含む邦人の安全確保に全力を挙げているという現状にあります。

長島(昭)委員 もちろん、投資協定は大事だと思いますよ。ウクライナ経済をある意味では立て直すという意味においても大事だし、進出している企業を守るという意味でも大事だと思います。

 今、渡航制限の情報もという話がありましたが、これまでのウクライナ紛争の中で被害を受けた日本企業あるいは邦人、これはどのようになっているんでしょうか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナ東部の紛争の関連で申しますと、東部に営業所、支店を置いていた企業がございます。こうした企業の中で、武装勢力によりまして営業所、支店が攻撃対象になったという話は承知しているところでございますが、他方で、犠牲者等については特になかったというふうに聞いておるところでございます。

長島(昭)委員 こういう状況の中で、なお、今このタイミングでウクライナの投資協定を国会に承認を求めたい、ずばり何が一番決め手なんでしょうか。

岸田国務大臣 ウクライナ東部の状況については、今答弁させていただいたとおりであります。

 今現在、ウクライナ東部、この二つの州において活動している日本企業はないわけでありますが、その一方で、御質問のなぜ投資協定を締結するのかということですが、この東部二州を除く地域を考えた場合に、情勢は当然、比較的安定をしております。

 そして、我が国の企業のありようですが、現在も首都キエフを中心としたウクライナの他の地域での投資活動は進められており、投資協定の締結によって、こうした我が国企業の投資活動が適切に保護され、円滑に進むことにつきましては、日本企業からの希望、要望、大変強いものがあると認識をしております。

 そして、ウクライナは約六十カ国と投資協定をもう締結済みであります。そうなりますと、我が国の企業が競争の上において相対的に不利な立場に立たされる、こうした観点も重視しなければなりません。

 そして、あわせて、今委員の方からも御指摘がありました、ウクライナの経済状況を改善させ、安定化を図る、これはウクライナの支援という観点からも大切であり、そのために投資協定を締結し、我が国からウクライナへの投資を促進する、こうした考え方も大切にしているところであります。

 こういった諸点を勘案して、この投資協定を早期に締結することを重視した次第であります。

長島(昭)委員 次に、ウルグアイなんですけれども、中南米、これは吉良さんに聞いた方がいいかもしれませんが。

 ウルグアイというと、アルゼンチンとブラジルに囲まれて、いわば小国ですよね、人口も三百四十一万人、進出企業も、邦人二百人、十五社というふうに外務省からいただいた資料に書かれているんですが、ブラジルとアルゼンチンとは投資協定をまだ結んでいない。何でウルグアイなのか、これも実は素朴な疑問としてあるんですが、ウルグアイとの投資協定をブラジルやアルゼンチンに先駆けて行うその意義について教えていただければと思います。

岸田国務大臣 確かに、南米を見た場合に、南米の大国としてはブラジル、アルゼンチンを挙げることができます。こうした国ではなくして、なぜウルグアイと投資協定を締結しようとしているのか、こういった御質問です。

 ブラジルを見ますと、これまでブラジルは十八本の投資協定を署名しておりますが、いずれも議会の承認を得られず発効していない、こういった状況が続いています。また、アルゼンチンを見ますと、二〇〇〇年以降、投資協定を締結した例がないという状況にあります。

 したがって、それぞれ、我が国との投資協定交渉に応じられる状況にはない、こうした判断をしているところであります。

 そして、そういった中にあって、ウルグアイは、御案内のとおり、ブラジルとアルゼンチンの間に存在する国であります。ブラジルやアルゼンチンを含む南米市場のアクセスを考えた際、進出拠点として考えられる国ではないかと思います。

 そういった観点から、ウルグアイとの間において投資協定を締結して、我が国企業の投資環境を一層整備する、この意義は大きいものだと考え、この投資協定締結を進めようと考えた次第であります。

長島(昭)委員 この問題はここで終わりたいと思うんですけれども、具体的にどんな企業が進出していて、どんな投資を日本側としては期待し、そしてそれがブラジルやアルゼンチンにどう波及していくというふうな想定、戦略なんでしょうか。

高瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど先生御指摘がございましたとおり、二〇一三年十月現在で、十五社の日系企業が進出しております。

 そのうちには、例えば矢崎さん、タカタさん、これは自動車の部品メーカーでいらっしゃいまして、ウルグアイに投資をされて、そこで自動車の部品をつくられて、アルゼンチンやブラジルにある自動車メーカーに供給するということを行っております。

 そのほかにはパナソニックさんやソニーさん、島津製作所さん等も最近御進出されておりまして、これらの企業はウルグアイでロジスティックハブというような役割を果たされているというふうに了解しております。

長島(昭)委員 ありがとうございました。

 極めて明確な構想というか戦略、経済外交戦略の輪郭が見えてきたような気がいたします。

 残り時間を使って、今、私が参議院の安全保障法制の議論を聞いていて少し危惧をしている点について、外務大臣、あるいは防衛副大臣左藤さん、お見えですので、伺いたいと思います。それは核兵器に関する問題であります。

 今、参議院で、核兵器を輸送するのか、これを法律に書き込めとか、そういう議論が盛んになされている。確かに、戦後七十年だし、唯一の被爆国。核兵器というのは、我が国国民にとっては物すごくデリケートな、センシティブな問題であることは間違いありません。

 したがって、私たちは、国連の場でも、国際社会全体においても、核廃絶に向けてどの国よりも努力してきたし、これからもリーダーシップを発揮していかなければならない、こういう特別な経験を持った国だし、外務大臣も、広島の御出身ですから、その思いは誰よりも強くお持ちだろうと思うんですね。

 しかし一方で、核が全く廃絶されない、そういう現状の中で、我が国はアメリカの拡大抑止に安全保障の根幹を託している部分はあるんですね。これは現実としてある。そういう中で、核兵器を輸送する、しない、核兵器を積んだ船を防護するか、しないか、あるいは核兵器を搭載する航空機への給油がどうだこうだ、こういう話をぎりぎり詰めていくと、まさにイエス・オア・ノー、感情的な話になりかねないんですね。私は、拡大抑止の信頼性を毀損することになってはいけないと思っております。

 したがって、ここはきちっと、外務大臣、防衛副大臣に、我が国政府の立場をはっきりと、国民の皆さんにわかりやすくお述べになっていただきたい、そういう思いで質問を少しさせていただきたいというふうに思うんです。

 防衛省にまず伺いたいのは、我が国の核政策ですね。核軍縮あるいは拡大抑止、核に対する我が国の安全保障政策、現状、どういう政策となっているか、御説明いただけますか。

左藤副大臣 お答え申し上げます。

 現在、防衛計画の大綱において、「我が国は、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本方針に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備する。」としており、非核三原則を堅持していくことを確認しております。

 あわせて、核兵器を含む大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散が依然として大きな懸念となっている認識のもと、核兵器の脅威に対しても、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠であり、その信頼性の維持強化のために米国と緊密に協力してやっていくことになっております。

 同時に、長期的な課題でございますけれども、核兵器のない世界の実現へ向け、核軍縮・不拡散のための取り組みに積極的に、また能動的に役割を果たしていくこととしております。

長島(昭)委員 ありがとうございます。

 一昨年策定された国家安全保障戦略にも同じような記述があって、現に北朝鮮による核開発、弾道ミサイル開発の進展という脅威がある、そういう脅威や、アジア太平洋地域における将来の核戦力バランスの動向、軍事技術の急速な進展を踏まえ、日米同盟のもとでの拡大抑止への信頼性維持と整合性をとりつつ、北朝鮮による核・ミサイル開発問題やイランの核問題の解決を含む軍縮・不拡散に向けた国際的取り組みを主導する。

 これは、非核三原則を中心とする核廃絶に向けた世界的な動向を主導していくという立場、それと、我が国の周りにある核の脅威に対しては現実的に米国と協力をしながら進めていくという、この二つの柱をしっかり立てていかなきゃならない。これは、実は、私たち民主党政権でつくった二二大綱も同じ理念を共有しているんですね。このことを、私はぜひ同僚議員にもきちっと踏まえて質問していただきたいというふうに思っております。特に参議院の同僚に向けて、今発言をさせていただきました。

 実は、九〇年代にも同じような議論があったんです。これは、廃案になった国際平和協力法案でしたか、このときも、個名を挙げていいかどうかわかりませんが、公明党の遠藤乙彦議員、非常に私が尊敬している議員でありますが、彼がやはり輸送の問題についてただしているんですね。非核三原則は、つくらず、持たず、持ち込ませずだ、場合によっては、輸送せずも入れて四原則にしろというような提案もした議論が実はありました。

 確かに、九〇年代は、米国の戦術核は前線に幾らでもありました。ペルシャ湾にも展開していたでしょうし、北東アジアにもありました。しかし、これは外務省に確認ですけれども、米国は今、戦術核を前方に展開していないというふうに私は理解していて、それを前提にすれば、そもそも輸送するか、しないかという議論そのものの根幹が誤っているというか、少し感情的になり過ぎているというか、あり得ない議論を立てて法案のあり方について質問するというのはいかがなものかと私は思うんですが、現状、アメリカの文書、公式政策の中で戦術核がどういう扱いになっているか、御説明いただけますでしょうか。

岸田国務大臣 御質問の米国の政策ですが、まず、一九九一年のブッシュ・イニシアチブにおいて、水上艦船及び攻撃型潜水艦を含む米海軍の艦船及び航空機からの戦術核兵器の撤去を表明しています。そして、一九九四年の核態勢見直しにおいて、水上艦船及び空母艦載機からの戦術核兵器の搭載能力の撤去を表明しています。そして、二〇一〇年の核態勢見直しにおいて、太平洋地域からの前方配備の核兵器の撤退及び核搭載海上発射型巡航ミサイルの退役、これを表明していると承知をしております。

長島(昭)委員 そこで、外務大臣がちょっと、これはいろいろな雰囲気、その場の雰囲気もあるんでしょうけれども、私から見ると懸念すべき御答弁をなさっておられます。

 非核三原則があるから、そういう輸送なんというのは絶対行わないんだという答弁を防衛大臣も外務大臣もなさった上で、ある委員の質問が、では、非核三原則と輸送しないということの論理的な整合性というか因果関係はどこにあるんだ、ないんじゃないか、必ずしも直接ないんじゃないか、そういう質問をしたところ、外務大臣が、この法律に基づいて輸送するかどうかと、この非核三原則、これは関係ないのではないかという御質問ですが、私は関係あると思いますとおっしゃった。

 それで、紛糾したんです、どこが関係あるんだ、言ってみろみたいな話になって。統一見解を求めています。これが八月の十一日ですから、もう二週間以上たっているわけですね。

 統一見解をきちっと政府でおまとめになったのかどうか、非核三原則という我が国の国是と、そして今回の安保法制に係る核兵器の輸送の是非について、政府として現状でどういう整理をされたのか、お示しをいただきたいというふうに思います。

岸田国務大臣 私が、非核三原則と、そしてこの法律に基づいて後方支援をすることが関連していると申し上げた趣旨ですが、まず、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器の廃絶、不拡散について国際社会をリードする責務を負っていると認識をしております。その我が国の政策の象徴的なものが非核三原則であると考えます。

 そして、この非核三原則は、国の内外に我が国の政策としてさまざまな形で公式に明らかにしています。例えば、ことし日米で合意しました新ガイドラインの中にも、非核三原則、この文言は盛り込まれております。また、一昨年十二月に我が国が初めて策定しました国家安全保障戦略の中にも、非核三原則、この言葉は明記されています。

 こうしたことから、非核三原則というものは揺るぎないものであるということを申し上げ、そして、こうした我が国の基本的な方針でありますので、我が国が施行するさまざまな具体的な法律もこうした基本方針とは無関係ではいられないのではないか、そういった思いで、関連するということを申し上げた次第であります。

 私が答弁させていただいた趣旨は、以上のように考えております。

長島(昭)委員 私が想定した答弁とはちょっと違うというか、もう少しきちっとした政府の立場、私は今、重要な問題提起をしているつもりでいるんですよ。

 非核三原則に対する外務大臣の思いはよくわかりました。我が国の国是として確立していることもよくわかります。

 しかし、そのことと、輸送する、しないという話とをきちっと関連づけて、現在の日本の核政策がどうなっているのかということを政府の統一見解としておまとめになったんでしょう。それをしっかりお答えください。そうしなかったら、これは終わらないです。

岸田国務大臣 これは、八月十八日、参議院の平和安全特理事会に提出した我が国の考え方、これを改めて紹介させていただきますと、我が国が核兵器を輸送しないとの考え方は、核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずという三つの原則、非核三原則の趣旨、精神にのっとったものであり、その意味において両者は関係があるとするものであるとまず述べています。

 そして、政府としては、非核三原則を堅持する方針であり、また、非核三原則を堅持する我が国は核兵器を輸送するために必要な知見等も有しておらず、現在国会で審議中の平和安全法制に基づき、支援対象国からの要請を受けてその核兵器を自衛隊が輸送することはあり得ないとしています。

 そして、三つ目として、我が国がこの非核三原則を堅持していることは世界各国に知られており、また、核兵器については、その高度な秘匿性や安全確保の観点から、支援対象国が我が国に対し核兵器の輸送を要請することはあり得ない、米国との間でも、米国が我が国に核兵器の輸送を要請することはないことを確認している。

 政府としまして、この考え方を整理したもの、今申し上げました内容のものを既に国会に提出をしております。

長島(昭)委員 大事なことは、今外務大臣がおっしゃっていただいた内容というのは、我々が政権をとっていたときの、ただいまは代表の岡田外務大臣の答弁にも軌を一にしているんです、継続しているんです。外交安全保障政策というのは継続するんです。

 この点を踏まえて、与党、野党の間でこれから議論を深めていかなければいけないということを申し上げて、質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 維新の党の小熊慎司です。

 三つの投資協定、租税協定、社会保障協定とありますけれども、質疑をさせていただきます。

 日本・ウクライナ投資協定について、通告はしていたんですけれども、もう既に緒方委員、また長島委員からも同様のが出ていますが、今、クリミア問題を抱えている中でのこの協定でもあります。事前の外務省とのやりとりの中でも、クリミアが、しっかり範囲に含む、ただ、現状としてはここでの活動ができないというのも確認をさせていただいているところであります。

 こうした特殊事情を抱えている中で、この協定、ほかの国との協定もそうですけれども、国益にかなうものでもありますし、どんどんほかの国にも進めていかなきゃいけない、同僚議員がそういう趣旨の発言もしていますけれども、まさにそのとおりであります。協定を結ぶ以上、しっかり成果を上げていかなきゃいけないということもあります。

 そういった中で、このウクライナについては、こうしたクリミアの問題も抱えている中で、しっかりと成果を上げていくためにはどのようにやっていくのか、お聞きをいたします。

薗浦大臣政務官 今委員御指摘いただきましたとおり、ウクライナとの協定の審議をお願いしているわけでございますけれども、先ほども申し上げましたが、いわゆる東部のドネツク、ルハンスク、それからクリミアを除く地域においては、企業からの投資協定締結の要望が非常に強いというふうに認識をしております。このことは、私自身が四月の末にウクライナを訪問し、現地の企業関係者と懇談をし、確認をさせていただいたところでございます。

 こうした流れの中で、やはり、協定を御承認いただきまして、キエフを中心とする情勢が安定した地域において我が国企業が適切に保護をされ、そして投資活動が円滑に進むことということが非常に期待が強いわけでございまして、ほかの国との関係上、六十カ国と既に結んでいるということからも、我が国企業が不利な立場に立たないためにも早期の御審議をお願いしている、こういうことでございます。

小熊委員 クリミアがちゃんとこの範囲内に入っているということは、ロシアに対しては、力による現状変更は認めないということの一つのメッセージ性にもなるわけでありますし、ロシアとの友好もしっかり図っていかなければならないところでありますけれども、力による変更を認めないというある意味のメッセージ性という意味では、北方領土の問題にもかかわってくると思いますので、ここはしっかりやっていくと同時に、とりわけ、ウクライナというのはトップレベルの武器輸出国で、それに直接ということじゃなくても、それに派生するいろいろな産業もあったわけです。武器産業の工場がとりわけクリミアに多かったというのもあります。

 そういった意味からおいても、実は今クリミアはそういう状態ではありますが、いろいろな形で日本企業がウクライナで活動していく上では、この協定の発効が重要だというのはありますけれども、またそれ以上に、日本企業への支援が、こういう特殊事情を抱えている国ですから、必要であるというふうに思いますので、そういった面も、協定の範囲内ということだけではなくて、それ以外の部分もしっかりと支えていって、日本とウクライナの経済活動、交流を進めていく必要があるというふうに思いますので、ぜひそういった観点からも、今後、両国の関係性を深めていくという努力をしていただきたいということを申し述べて、次の質問に移ります。

 いわゆる七十年談話についてでありますけれども、これにつきましては世論調査でもおおむね高評価を得ているというところもありますし、大臣の答弁にも先ほどもありましたとおり、国外からも一定の評価の声が上がっているというのも、これも私も確認しているところでもございます。

 一方で、安倍首相らしさが消えているというような意見もあったりしますが、それはやはり、国内のいろいろな意見をお持ちの方々、国民への配慮、また国外での受け取られ方についても配慮をした結果、こういったおおむね好意的に受け取られる、エッジは立っていなかったかもしれないですけれども、多くの人に受け入れられるような談話になったのではないかなというふうに私自身も思っています。

 そういう中で、ただ、やはり、戦後七十年ということではあるんですけれども、皆さんもそうですけれども、中学校でも高校でも大学でも、近現代史となると、大体三学期の終わりの方でやって、何かちょこちょこっとやって終わって、テストにも受験にも余り出てこないというようなところで、結構おろそかになっちゃっているなというふうに思います。

 やはり、近現代史をしっかり日本国民としてどう学ぶかということもこれから、戦争といったものをどう受けとめていくかということにもつながってくるので、これは外務委員会での話題ではないんですが、こういったことも含めて、今回、七十年という節目に考えていかなければならないというふうに私は思っています。

 そこで、談話の中に、「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。」という文言がありました。これについて私は、違和感というよりは、賛成とか反対とかという意味ではなくて、ここは何となく心にすとんと落ちなかった部分なんですね。

 というのは、私は会津人でもあって、総理は長州人ですけれども、百四十七年、三年後には百五十年という節目の年ですが、これは本当にパフォーマンスではなくて、地元でも、戊辰戦争については、語らない人は語らないですけれども、世代関係なく、こだわりというか戊辰戦争への思いというのは本当に多くの人たちが持っています。

 そういう中で、私も地域の人たちと話すと、許す、許さないという議論はいろいろあるんですが、それを飛び越えても、絶対忘れちゃいけないんだ、こだわり続けなきゃいけない、あれはなくてもよかった不幸だ、歴史の悲劇だ、二度とそういうことを起こさないためにも、この百四十七年前のことは、忘れるということは絶対できない、こだわり続けなきゃいけないというのは、我々会津人の矜持の一つでもあります。そういう意味では、自分が生きていなかったときの出来事です。しかしながら、その地域に住む者として、歴史をしっかり背負っていこうという気概を持っています。

 そういう意味では、七十年前の戦争については、総理も言われていますけれども、日本国民の多くの人がその時代に生きていません。だけれども、この歴史をどう背負うかです。

 とりわけ、もと我が党の代表の橋下徹さん、大阪市長も、あと私が仕えていた新井将敬さんも、実は同様のことを言っていたのは、これは国民とはちょっと切り分けている部分もあるんですけれども、国家として、政治家として、自分の関与していない歴史をどう背負うかというのが非常に重要なことだということを言っています。

 というのであれば、多くの国民の、この先の世代の人たちに謝罪を続けろというのはまた別の問題としてあったとしても、政治を担う我々としては、やはりこれは謝罪を続けていくという態度が必要だというふうに私は思うんです。

 そういう観点から、この文言について、外務大臣はどう受けとめますか。

岸田国務大臣 総理談話の御指摘の部分につきましては、総理自身、会見等で述べておられます。

 御指摘の部分につきましては、戦後七十年が経過し、戦争と何らかかわりのない私たちの子や孫、その先の世代の子供たちが謝罪を続けなければならないような状況をつくってはならない、これは今生きる私たち世代の責任である、このように総理は述べておられます。

 そして、その御指摘の部分と同時に、この談話においては、私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければならない、御指摘の部分の直後にこれが記述されております。

 そして、何よりも、あの戦争の後、敵であった日本に善意や支援の手を差し伸べ、国際社会へと再び受け入れてくれた国々、その寛容の心に感謝すべきであると述べ、そしてさらにその直後に、同時に、過去を反省すべきである、歴史の教訓を胸に刻み、よりよい未来を切り開く責任がある、こういったことを明らかにしています。

 総理談話につきましては、もうその談話の中で述べられているものが全てですので、私が何かつけ加えるのは適切ではないと思いますが、今御指摘の部分とあわせて、今申し上げたことが並べて述べられている、この全体を受けとめるべきであると考えます。

小熊委員 優秀な答弁だとは思いますが、悲劇を味わった側からすると、それは実は甘いんですね。反省しなきゃいけない、直視するのは当たり前です。私が先ほど言ったとおり、国民の側に立った場合と、政治家として歴史を背負っていく、その中でどう行動していくという意味では、政治家としては謝罪はし続けなきゃいけないという意見もあるわけです。

 実際、皆さんどう受けとめるかわからないけれども、我々にとってはこれは大事な話で、安倍首相が、二〇〇七年ですから幹事長当時ですかね、そのときは私も自民党さんにお世話になっていましたけれども、参議院の補選で応援に来られたんです、会津に。

 これも、長州の方が会津に来るのはいいのかという話も実はあって、郭外であればいい、郭外というのは城郭外であればいいだろうということで、会津若松のインターの近くの広い空き地で、当時人気がありましたから結構な人数が来たんです。

 そのときの、当時の安倍さんが言ったのは、先輩が御迷惑をおかけしたことにおわびしなければいけないという言葉から始まったんです、演説が。これを聞いた会津の人たち、当時集まっていた会津の人たちはやはり胸に刺さるものがありましたよ、パフォーマンスであったかもしれないけれども。当時のニュースにも載るぐらいですから。これは笑うような逸話ではないんです、歴史とかいろいろなことを考えれば。

 これは逆に、日中とか日韓とか、ほかのアジアの諸国の側に立てば、やはり日本人の観光客が一々謝るなんというのもあほですし、謝る必要もないと思いますけれども、政治家としてはどう歴史を背負って、反省し直視するというのは全体の話です、二度と悲劇が起きないように。だけれども、やはり政治家としては謝罪をし続けるということが、一つには、本当に日本の国の、世界に貢献したいんですといっても、謝罪もしなければ、いざ戦争となって終わったら謝らない国かというふうな印象も、これはうがった見方かもしれませんけれども与えかねません。

 あとは、いろいろな理屈とか筋というのもあるんですけれども、やはり人間は感情の部分も大きいです。こうやって安倍さんが会津に来て謝られたら、我々も、おお、よく言ってくれたというふうには思いますし、恨みつらみをずっと言うつもりも我々はない。多分アジアの国々の人もない。だけれども、やはりいろいろな心証があるし、戦争が終わった後もいろいろなことがあります、ありました。そういうものがやはり積み重なってくるわけです。

 そういう意味で、私は、国民の側に立って謝罪をし続けるようなことはないというのはいいと思うんですけれども、もう一方で、プラスして今回は、政治家としてはどうだというのがあれば、私はよりすばらしい談話だったなというふうに思っています。

 これはもう生き方の問題でもありますので、ぜひそういった点も考慮をして、今後、特に外務大臣初め日本の外交をどうやっていくかという意味では、そういう意見もある、そういう側面、心証もあるということを踏まえて外交を進めていっていただきたいなというふうに思っていますし、だから、私も一会津人として、我々の戦後というのは一八六八年でもありますし、まだ総括をされていないという思いでもありますので、徹底的にこだわっていかなきゃいけないと思います。

 そういう意味では、私も第二次世界大戦を経験していない世代ではありますけれども、やはり日本国民として、また日本の国会の政治家として、どうこの歴史を背負って、どう発言していくかというのは、国民の人たちと同じ発言の部分と、政治家として責任を持って発言する部分が別にあってしかるべきだというふうに、そういう生き方をしていかなきゃいけないというふうに私は思っていますので、そういう考え方もぜひ、少し検討するというか、大臣の中で整理をして今後外交に当たっていただきたいというふうに思います。

 次に移ります。

 今月の二十日に、政府の方が、韓国に対しまして、いわゆる科学的根拠のない水産物の輸入規制に対してWTOに提訴されました。

 東電の原発事故後、さまざまな国が輸入に関しての規制をかけてきましたけれども、これまで、外務省、外務大臣を先頭に、この輸入規制に対して、科学的根拠のないものについてはこれを解除していただくよう努力をして、相当結果も出ていますけれども、残念なことに、とりわけ交流の多いアジア地域においてはこの規制が残っているというのも事実であります。

 そういった中で、韓国が、いろいろな東電での事故処理のトラブルの中で、さらに規制をまたやっているということを考えれば、WTOに提訴をしたということは、ちょっと遅いなという感じはしましたけれども、やったことは評価に値するというふうに思います。

 九月にはこれが具体的にWTOの中で処理をされていくわけでありますが、官房長官も、WTOの結果を見る前に韓国に自主的な判断も求めているところではありますが、この提訴の今後の推移についてまず確認をさせてください。

薗浦大臣政務官 委員御指摘のとおり、八月二十日、我が国はWTOにパネル設置の要請をいたしました。

 八月二十日になりましたのは、五月二十一日に二国間協議の要請を行いましたけれども、この協議期間が六十日というふうに定められておりますので、その六十日の期間に韓国側から撤廃に向けた見通しが示されなかったということで、この設置要請となったわけでございます。

 今後でございますけれども、まず八月三十一日に審議をされますけれども、一回目は韓国側に拒否権がございます。二回目となる九月二十八日の会合においてこのパネル設置が今後見込まれるという流れになっております。

 今委員御指摘いただきましたとおり、そういう流れではございますけれども、WTOで得られる結論を待つまでもなく、本件規制を早期に撤廃するということを韓国側に強く期待しているところであります。

小熊委員 規制に関しては韓国以外もまだ残っている国々がありますけれども、そうした国や地域に対してはWTOへの提訴というのは検討されていますか、どうですか。

薗浦大臣政務官 それぞれの国に対しまして、関係省庁とも連携をしながら、情報収集を行い、また粘り強い働きかけも行っております。

 委員にも御出席をいただきましたああいうレセプションの機会、それから外遊の機会、海外出張の機会も捉まえて、さまざまなレベルで働きかけを行っているところでございますけれども、それぞれの国に対してどういう手段が有効であるかということを考えながら検討していきたいというふうに思っております。

 今御指摘いただいたWTOの手段を使うかどうかということについては、今後のさまざまな働きかけの結果も踏まえて判断をしてまいりたいというふうに考えておりますので、今、現時点で、何らかの予断を持ってこの国に対してこういうWTOをやるのだということをお答え申し上げるのは、この場では差し控えさせていただきたいというふうに考えます。

小熊委員 これまでも政府は努力してきたんです。努力を積み上げてきたんですけれども、結果が出ていない国々があるということです。

 ケース・バイ・ケースによってよりよい手段をとりたいと言いましたけれども、もうこれまで大体の手段はとってきたと思うんですね。その結果、残っているということですから、これ以上何か考えられる新たな手段というのは、よほどのことがない限り、ほぼほぼ私はないと思います。というのであれば、やはり、より厳しい対応というのは、もう決断する時期に、四年半以上たっているわけですから、来ているんじゃないかなというふうに思っています。

 ただ、輸入規制が解除されても、国内でもそうですけれども、風評被害というのは残ります。それはそれとして、輸入規制が解除されているからもうこの国はオーケーでしょうということではなくて、この風評被害対策も規制解除後にはやっていかなければならないというところでもありますし、多分に、科学的根拠で規制をかけているわけじゃなくて、心理的なところでやっていたり、政治的なものに利用されてしまったりしているというのも事実でありますから、そういう意味では総合力で当たっていかないと、輸入規制解除だけの努力ではなくて、ほかの部分も含めて、逆に意地悪されているというか、言葉は悪いですけれども、いじめられているようなところがあるのも私は一つの側面だと思いますので、総合的な努力でやっていかなきゃいけないというふうに思っています。

 ただ、また言いますけれども、解除されたとしても、多分こういうことは続くんです。買ってもらえない、変な風評が続く、国内においてもまだそれが残っているし。これも品目によって変わってきています、今、実際。震災前に戻ったものもある、震災前より値段も上がったものもある、でも、全然だめなものもあるというところでもありますし、応援してもらっていたものも、だんだん、やはり四年も五年もたつと、これも風化していって、応援消費もなくなって落ちるものもあります。

 ただ、それでありながら、原発事故はまだ現在進行形の災害ですから、この風評というのはずっと続く問題でありますので、長い取り組みだということ、終わりが、ある意味では我々が生きているうちには終わらないと思います。完全収束したとしても、それは一つの筋目ですけれども、完全収束でさえ、三十年、四十年先と言われているんですから、これはもう長い取り組みだということの覚悟で、輸入規制解除と風評被害対策というのはしていただきたいというふうに思います。

 とりわけ韓国は、この間もちょっと福島県で事件というかトラブルというかがありまして、韓国と日本の交流のイベントを福島でやろうというのがあったんですね。向こうの芸能人の方が来ていただける、そこから、福島から情報発信して、福島の元気のよさを伝えようというイベントだったんですが、韓国のネット社会の中で、出演をしようとしていた韓国の芸能人の方々が、日本の政府の間違った情報発信に加担するようなことをおまえはするのかというようなことをネット上で騒がれて、一部の韓国の出演者がそのイベントの出演を取りやめというようなこともありました。

 政府としても、正しい情報発信をしていただいていると思います。私は、それはまだ弱くて、もっと、どんどんやってほしいと思うんですが、片や、その国に行けば、その政府のものは間違っていて、それに惑わされるなというのも、これは今、自由社会でネットが発展している国ではそういう間違った意見というのも流布されやすいという背景もありますので、そういったある意味アウエーの中で、厳しい状況の中で情報発信するという意味では、より強く、より賢く情報発信をしなければ、ただ通り一遍に情報発信したとしても、この問題は解決できないという状況にあります。

 ぜひ、そういった背景を考慮に入れながら、より強く、より工夫した情報発信、取り組みを、より一層、心を強くして、もう一度原点に返って、この取り組みをしていただくことをお願い申し上げますし、今のイベントの件とかということも、そういった情報収集もぜひしていただいた上での取り組みをお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 維新の党、木内孝胤でございます。

 本日は、投資協定、租税協定、そして社会保障協定、五つの協定についてお伺いをいたします。

 私も、今の仕事をするまで二十年間、日本の銀行と外資系の投資銀行におりましたので、社会保障の締結国の地図あるいは投資協定の地図を見ますと、当時からこうした協定が結ばれていれば非常によかったなと。

 きょうは、全面的に賛成の立場での質問になります。投資環境の透明性、あるいは法的安定性、予見可能性、経済界からの要請、さまざまな面で、当然、これは早期に締結する必要性があると認識をしております。

 きょう、協定にありますカザフスタンでございますけれども、二〇一〇年、この外務委員会におきまして、当時、鈴木宗男外務委員長でございましたが、アフガニスタンあるいはタジキスタンと一緒に、中央アジアを視察してまいりました。

 当時、カザフスタンに参りましたときに一つ感じましたのは、日本はちょうど二〇一〇年の三月にこの投資協定の交渉を開始した直後であったわけですが、例えば、中国人あるいは韓国人の存在感が非常に強い。あるいは、ホテルに行っても、テレビは、CNN、BBC、アルジャジーラとか、そういうのは当然やっているんですが、中国のテレビあるいは韓国の放送もやっているにもかかわらず、日本のNHKは取り上げられていないというか見られない状態であった。

 中国、韓国は既にこうした投資協定をやっている中で、日本だけがやっていないということでございますけれども、こういうことからも、ぜひ、先ほど長島委員からも話がございましたが、積極的に、今交渉中の国もスピード感を持って御対応いただければと思います。

 このルクセンブルクも、日系企業の負担が大体三億円ぐらい軽減されるとしております。私も、九〇年代、ロンドンを中心に欧州に七年半ほどおりまして、どこに拠点を出すかというような話をしているときに、やはり社会保障の二重払いというのが極めてネックになって、どうしても日本人の駐在員を減らさないといけない、そのような話もございましたので、三億円というと、国の財政からするとごくわずかな感じもいたしますけれども、駐在している立場からすると極めて大きな三億円でございますので、こうした社会保障の協定につきましても、あわせて早期締結をお願いできればと思います。

 もう既に似たような質問が出ているので、ちょっと重複はいたしますが、やはり、一つちょっと気になったのがウクライナとの投資協定でございます。

 ロシアは、北方四島の実効支配の計画を発表したり、あるいは、メドベージェフ首相が択捉島を訪問したりという状況でございます。これは、当然、クリミアの問題に対して日本が対ロシア制裁を行ったことに関しての、ある意味揺さぶりであろうかなというふうに推察されるわけでございます。

 こうした中で、私は、きちっとした形でウクライナとの投資協定を進めることに賛成の立場ではあるんですが、こうした問題を抱えている中で、これは政治的意味合いをそもそも持つのか持たなかったのかとか、あるいは、ちょっとちゅうちょする可能性があった話なのかどうか、そこら辺の意思決定のプロセスといいますか、政治的意義あるいは問題点があったのか、その点についてお伺いをいたします。

薗浦大臣政務官 お答えを申し上げます。

 このウクライナとの投資協定でございますけれども、さまざまな経緯から交渉を進めてまいったものでございまして、基本的には我が国とウクライナとの間の二国間協定であります。したがって、第三国のロシアとの関係とか、また、この協定を結ぶことによってロシアとの関係に影響を与えるというふうに我々は考えてございません。

木内(孝)委員 私も、対ロシアとの関係を意識する必要はないという立場での質問ですので、そういう形でよろしいかと思いますが、来年、伊勢志摩サミットがございます。残念ながら、今こういう状況でございますのでG7サミットになっていて、ロシアが抜けた状態になっております。

 先般の択捉島の訪問等もあり、恐らく首脳会談等がなかなか開催されないのであろうと思いますが、こうした中で、来年の伊勢志摩サミットに向けて、ロシアとの、まあ、なかなか今積極的に呼びかけをできるような状況にないという認識ではございますけれども、対ロシア外交、今、若干行き詰まっているような状況だと思いますが、その点についての今後の展望についてお聞かせいただければと思います。

岸田国務大臣 今後、ロシアとの関係をどのように進めていくかということですが、まずもって、最近のロシアの政府要人による北方四島の訪問、これはまことに遺憾なことであります。

 遺憾なことではありますが、同時に、大事なことは、この背景にある根本の問題をしっかり解決しなければなりません。要は、北方四島の帰属の問題を明らかにして、平和条約問題を解決すること、これが何よりも重要だということはしっかり念頭に置いておかなければならないと思っています。

 そのために、まず日ロ両国の首脳間においては、問題解決に向けて両国間で精力的に交渉を続けていく、こうした必要があるということについては一致をしております。ぜひ、交渉を粘り強く続けていくという意味から、ロシアとの政治的な対話は重視していかなければならないと思います。

 そして、その中で一つ考えなければいけないことは、日ロの首脳間で、年内にプーチン大統領の訪日を実現する、こういった点で既に一致をしています。この問題についてどう取り組むかということがあり、そして、さらには、プーチン大統領の年内訪日の準備という意味合いから、日本の外務大臣のロシア訪問ということも検討していくということになっています。

 これらの課題につきましては、具体的な日程は今現在まだ何も決まっておりません。しかし、さまざまな動き、さまざまな観点をぜひ総合的に勘案した上でこういった問題を考えていかなければならないと思っていますし、こうした課題をどのように解決するかということが、おっしゃるように、来年に向けてのロシアとの関係に影響してくるのではないか、そのように思っています。

 今現在、まだ具体的なものは、今申し上げた道筋において何も決まっておりませんが、基本的には、大きな流れとしてそういったものを考えていかなければならないと考えます。

木内(孝)委員 ぜひ、短期的な成果を追い求めずに、原理原則を引き続き貫いていただければと存じます。

 次の質問に参ります。

 この委員会におきましても何回か質問させていただいておりますけれども、アジアインフラ投資銀行についてお伺いいたします。

 その後、さまざまな参加国からの情報等も追加で入っているかと思いますが、幾つか既に指摘されている問題、すなわち、ガバナンスあるいは審査体制、中国の出資比率とその拒否権の問題等、あるいはアジア開銀も含めた利益相反の問題、あるいは米国ときちんと共同歩調を合わせる、こうした問題が解決しなければ、私は、当然参加するべきでないと思いますし、こうした原則は貫き通すべきだろうと思っております。

 一方で、やはりアジアのインフラを取り込むということは大切なことですし、日本の企業も、できれば入ってほしいと思っている企業も、一方で、あるというのも事実でございます。

 その後、ガバナンス等あるいは出資比率等、そこら辺の追加の情報、あるいは日本の検討状況について進捗がございましたら、ぜひお聞かせいただければと思います。

大菅政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のアジアインフラ投資銀行でございますが、六月二十九日に北京におきまして、設立協定の、AOAと申しますが、署名式が行われました。五十カ国が署名をいたしました。本年末の運営開始を目指しまして、現在、創設メンバー候補国の間でAOAの細則等について交渉が行われていると承知しております。

 さらに、八月の二十四日、二十五日、第六回の首席交渉官会合というのが行われまして、ここで、AIIB多国間暫定事務局長の金立群、この方が初代のAIIB総裁候補に選出されたと承知しております。

 六月に署名されましたAOAにつきましては公表されておりますが、AIIBの暫定事務局の発表によりますと、AIIBは、本部を北京に置いて、総務会、理事会、事務局から構成される、このうち理事会は、理事十二名によって構成されるということになっております。

 今後の新規の加盟国の受け入れにつきましては、AOAが発効しました後に、この協定の規定に基づき、総務会の決定で新規加盟国を受け入れることができる、そのように定められていると承知しております。

 我が国としての検討状況でございますが、我が国としては、AIIBが、ガバナンスを含め国際金融機関にふさわしい機関となる、それによってアジア地域の持続的な発展に資する役割を果たすようになることを期待しております。

 こうした観点から、引き続き、AIIBの外部から、実際のその運用も含めて、今後の動きを注視してまいりたいと考えております。

木内(孝)委員 一連の参加検討の期間というのが、主に言えば、三月十日、イギリスが参加表明をしてから、三月末あるいは六月末とありました。この期間は、振り返りますと、ちょうど一年前の八月二十九日、上海の総合指数というのは二一九三、そこから今月の八月二十六日、一年かけて約二・三倍に上海の総合指数が上がり、その一番上がりつつある状態の中で、要するに飛ぶ鳥を落とす勢いの中国の経済状況の中で、こうしたアジアインフラ投資銀行の交渉があった。

 しかしながら、六月十二日にピークをつけましてから、御案内のとおり、きょう現在で約四五%、上海の総合指数は落ちております。三〇%以上落ちると恐慌という定義にも該当する状況でございますので、非常に中国の経済状況は厳しくなっているというのが認識でございます。

 中国の経済状況を語るときになかなか難しいのは、さまざまな経済指標の統計がどこまで信頼性があるのかわからないと言われているところです。

 李克強指数というのがございまして、御存じかもしれませんが、なかなか指標は信頼がないんだけれども、実は信頼できるのが三つあるんだと。それは、電力消費、貨物の輸送量、銀行融資、この三つだけが信頼できるんだというようなことを李克強首相みずからが語ったというのがウィキリークスで言われております。ただ、実はこの数字と中国の成長率の相関性は意外と一致しているので。中国の成長率は必ずしも事実でないという見方があります。

 もう一つ大切な経済指標は、輸出入の統計数字でございます。ことし一月から七月に入って、約一四%中国の輸入は減っております。一四%減っているということは、ことしの中国の経済成長率が引き続き六とか七で成長するというのは相当考えづらい。今後、中国というのは、必死の思いでこうしたインフラ投資の需要を取り込まなければならない。

 AIIBの重要性が、今まで以上に重要になってくる。相手の足元を見て交渉しろというつもりは全くございませんが、やはり中国にとりましても、交渉している前提条件が大きく異なってきているという、まあ、劇的な経済状況の変化がある。

 今までは、私は、米国の議会がAIIBに参加することに非常に否定的でありますし、そういう意味でいうと、米国も参加する可能性が低いのかなと。米国は参加しない、あるいは協調した方がいいであろう状況の中で、日本だけが参加するということはないとは思うんですが、できれば、今は私は仕掛けの時期ではないかと思っておりまして、今も虎視たんたんと、もしかしたら参加検討をなさっているかもしれませんけれども、一回ぜひ、米国とも共同歩調をとりながら、AIIBの参加状況、きちんと拒否権等々さえ確保できるのであれば、私は参加する必要は十分あると思っております。

 繰り返しになりますけれども、幾つかの問題点があり過ぎて現状では厳しいのは、昨今の大臣答弁、皆様の答弁からそのとおりだとは思っているものの、ガバナンスは、向こうが譲歩さえすれば、拒否権の比率に達する出資比率になれば、私は、これは十分に検討に値する話だと思っております。

 その四五%の上海指数の下落、これで方針が変わるとか、株価あるいは為替で一喜一憂する話ではございませんが、これは相当深刻な状況と思っておりますので、今後、AIIBに対する方針、まあ、検討は引き続きなさるということでしょうけれども、ちょっとギアを、今、多分一ぐらいな状態だと思っておりますので、二か三ぐらいに上げていただくことが可能なのかどうか、ぜひ御検討いただければと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、中国は世界第二の経済大国ですし、我が国にとっても緊密な経済関係を有する隣国であります。その中国の経済指数についての委員のお話、大変興味深く聞かせていただきました。

 経済指標に関しましては、私の立場から何か申し上げるのは適切ではないとは思いますが、注視はしていかなければならないと思います。

 その上で、AIIBとの関係でありますが、まず、AIIBというのは、アジアのインフラ整備あるいはインフラ需要にしっかりと応えるという点において、一つの取り組みであると思っています。そして、そのガバナンス、国際金融機関にふさわしいガバナンスを備えているのか、そしてアジアの持続的な経済発展に資するものであるか、ぜひそうした役割をしっかり果たしてもらうこと、これは期待したいと思います。

 ただ、現状においては、このガバナンスにつきましても、今まだ実際の運用が行われておりません。実際の貸し出しも行われておりません。我が国の立場としては、こうした実際の貸し出し等をしっかりと見きわめる、しっかりと確認をしていく、外部からこういったものをしっかりと見ていく、これが今、現状の立場であります。

 ガバナンス等においてふさわしいものであるかどうか、まずは外部からしっかり確認をする、運用をしっかり確認する、こうした立場であることには今現在は変わりはありません。ただ、引き続き、こうしたものをしっかり注視していく必要はあると考えております。

 また、一方で、我が国もこうしたインフラ需要にしっかりと応えるべく努力をしていかなければなりません。そういった点においては、我が国の取り組みを進めると同時に、中国との対話、これは継続していかなければならないと考えます。

木内(孝)委員 現時点ではどちらかというと後ろ向きな検討状況かなというふうに、印象論でございますけれども、見えますので、ぜひ、せめてニュートラルか、できれば前向きな検討ということも御検討いただければと思います。

 次の質問に移ります。

 韓国と北朝鮮の問題についてお尋ねをいたします。

 御案内のとおり、八月四日に、北朝鮮が設置した地雷によって韓国兵が二名負傷し、その後の緊張状態は、先般の予算委員会あるいは二十五日にありました参議院の安保委員会でも大臣も答弁をなさっていらっしゃいますので、ある程度の状況は理解をしているつもりですが、刻々とその後も状況は変化しているかと思います。その点につきましての事実関係、今後の展開についてお尋ねをいたします。

岸田国務大臣 今回の南北間の緊張についてですが、今月四日の日に、南北非武装地帯において韓国兵二名が地雷爆発により負傷する事件が発生し、その後、緊張が高まりました。

 こうした緊張の高まりは我が国の安全保障にも直結するものであり、政府として強く懸念し、米国、韓国とも緊密に連携しながら、南北間の接触について注視をいたしました。そして、御案内のとおり、南北間の接触によって合意がなされました。このことを我が国としては歓迎いたします。

 ただし、この合意、共同報道文というものが合意に達したわけでありますが、六つの項目が含まれています。こうした項目が実際に実行されるのかどうか、これは大切なポイントであると思っています。ですから、今、こうした接触によって合意に達したこと、これは歓迎いたしますが、引き続きこの状況についてはフォローしていかなければならない、このように認識をしております。

 そういった意味から、引き続き、米国、韓国を初めとする関係国と緊密に連携しながら、情報収集等、万全を期していかなければならないと考えます。

木内(孝)委員 現在審議されています安保法制ともかかわる話かと思いますが、今回、韓国におきましては、有事レベルが、五段階、五のうち、四になっているというふうに伺っております。

 この有事レベルが四から三になると、韓国軍が米軍の指揮下に入って共同作戦をとるという形。その場合、当然、日本の米軍基地から米軍が出動する可能性があるわけで、そうした可能性にある程度近づいていた状況の中で、中距離弾道ミサイル、ノドン、あるいは短距離ミサイル、スカッド、こうしたものの準備がなされていたという報道がございます。

 これは、私、報道ですので、事実の確認のしようがございませんが、そういう意味でいうと、一部日本も射程に入った状態だという認識を日本の政府は今持っているのか、持っていないのか。

 あるいは、こうした状態になった場合、今の安保法制、いろいろ議論されておりますけれども、現状の法制では対応できないこと、あるいは新しい法制であれば対応できること、この変化等はございますでしょうか。

岸田国務大臣 まず、現状につきましては、先ほども申し上げましたように、我が国としまして、引き続き、情報収集そして管理に努めなければならないと考えています。そして、その分析の中身とか判断については、これはインテリジェンスにかかわる部分もありますし、こうした公の場では控えさせていただきたいと思います。

 そして、もう一つの御質問、平和安全法制によってどのように変わるのか、こういった御質問についてですが、まずもって、今回の平和安全法制は特定の国とか特定の地域を対象としたものではないということは、申し上げなければなりません。また、仮に我が国近隣において武力紛争が発生したとしても、直ちに、存立危機事態になるとか、重要影響事態に該当すると言えるわけではありません。これは、厳格な要件が存在するわけであります。

 その上で、あくまでも一般論として申し上げるならば、今回の平和安全法制が成立したならば、新三要件を満たす場合においては、例えば、これまで個別自衛権ではできなかった、邦人を輸送している米国の船舶の防護ですとか、我が国のために警戒監視の任務に当たっている米艦の防護、こうしたものが可能になる場合があるということは申し上げられると存じます。

木内(孝)委員 こうした現状、動いている事案に関連していろいろ御説明いただけますと、安保法制につきましてもいろいろ国民の議論が深まると思います。進んでいるからこそいろいろ説明できない部分はあるかもしれませんが、ぜひ、国民に向けてわかりやすい形で、安保法制、引き続き審議いただければと思います。

 私の質問は以上で終わります。ありがとうございます。

土屋委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 当委員会の審議案件について、我が党は、日本とカザフスタン、ウクライナ、ウルグアイとの三つの投資協定及び日本とカタール租税協定については反対です。そして、日本とルクセンブルク社会保障協定には賛成します。

 きょうは、この機会に、経済問題に絡んで、四月に続いてTPP交渉について質問します。

 私は、今言いましたように、四月の当委員会で、米国議会に提出された二〇一五年超党派議会通商優先事項及び説明責任法案の内容と、日本政府のTPPの情報公開の姿勢をただしました。それ以降、六月の下旬に今述べた法案が成立し、七月にTPPのハワイ閣僚会合が開かれました。

 私は、衆参で行われたTPPの質疑や報道、さらに生産現場に従事しておられる多くの方々の声に接して、交渉の推移を本当に憂慮しています。

 そこで、まず改めて、政府の情報公開の姿勢から聞いていきたいと考えます。

 西村副大臣に、私は、政府の情報公開内容について国民はわかっているかということについて、四月の質疑でただしました。その際、副大臣は、多くの国民が関心を持っていることも承知しておりますと答弁がありました。

 私は、国民と与野党の国会議員は、国民生活の安心や安全、安定に資する非関税、関税措置のTPP交渉の論点や対決点が何なのか、どういう経過をたどって現在に至っているのか、さらには、テキスト条文の書きぶりは具体的にどういう経過をたどっているのか、結局、国民にとって私たちの生活にどんな影響が出るのか等々、さまざまな角度から詳しく知りたいと強く求めていると、各地を訪問して、とりわけ農村地帯の方々といろいろお話をしているとそういう実感をしています。

 副大臣は、国民が、TPP交渉がどのような内容かを知りたいという強い、具体的な要望や要求があるということに対して、どのように認識しておられますか。

西村(康)副大臣 御案内のとおり、TPP交渉は、非常に幅広い分野を含んで交渉が進められております。これまでの通商協定にある、いわゆる関税の交渉であるとか投資に関する交渉であるとか、そういったものに加えて、今回は、環境とか労働とか、二十一世紀にふさわしいものをつくっていこうということで、幅広い分野を対象として交渉が進められてきておりますので、その点についても、国民の皆さんがいろいろな関心、さまざまな関心、自分にかかわる、御自身の職業にかかわる分野のみならず、幅広く関心を有しているというふうに認識をいたしております。

穀田委員 だから、幅広い分野だからこそ、逆に言うと、国民の多くが、今までと違って、単に農業分野だけじゃなくて、ありとあらゆる形で、この問題についてどないなってんねんということについて関心を持っているということなんですよね。

 報道によると、野党を中心に情報開示の拡充を求める声が高まっており、甘利大臣は五月八日の記者会見で、情報開示で、できることがあるのか、各国の状況を引き続き精査したいと述べた、こういうふうになっています。

 そこで、聞きますけれども、精査したいと言っているんだから、そういう検討をしたんだと思うんですけれども、この検討結果、改善点はどのようになっているんですか。

西村(康)副大臣 私ども、これまでも、できる限り開示をしていきたいということ、一方で、十二カ国で結んだ秘密保持のルールもありますので、そのバランスを考えながら、悩みながら、工夫をしながら進めてきたところであります。

 これは前にもお答えをしましたけれども、それぞれの交渉の終わった後には、その交渉の内容、あるいは大臣がブリーフィングをしたときの記者とのやりとり、こうしたものをできる限り細かくホームページに掲載いたしておりますし、その後、このホームページを見ていただきますと、TPP交渉の、もちろんその都度その都度の交渉会合の結果についての報告もありますし、あわせて、全体として交渉に関する資料、テキストそのものは公開をいたしておりませんけれども、しかし、国民の関心の高いと思われる分野について、食の安全にかかわる分野とかですね、これについてはこのような交渉になっているということを、可能な範囲で、できる限り詳しく記載をしているところでございます。

穀田委員 国民はそういうふうに思っていますかね。大体いつも、言うと、副大臣が言うのは、できる限り、こう言うわけだよね。その次は、秘密保持の、こう言うんだよね。三つ目は、悩みながら、こう言うんだよね。大体いつもこの同じフレーズなんですよ。国民は、副大臣が悩んでいるぐらいでは困るんですよ、もっと大変な事態になっているんじゃないかということで気にしてはるわけやから。そう言うと、最後、ホームページと。この四つのフレーズがあれば大体おしまいなんですよ。この問題について私が問うと、大体この四つのフレーズを使ってはりますわ。

 では、聞きますけれども、ハワイの閣僚会合の交渉結果の説明ぶりについて聞いてみたいと思うんですね。

 八月三日の報道によると、農林水産物交渉の重要五品目の最終調整状況は、米は、米国、豪州に輸入枠を設定、米国には上限七万トンの枠。牛肉、現行三八・五%の関税率を十五年目に九%へ。豚肉、一キログラムの従量税を十年目に五十円にする等々。私からすれば、とんでもない内容が書いてあるわけですね。

 では、今おっしゃったんだけれども、国民経済にかかわる重大な内容にもかかわらず、政府のホームページには一言も触れられていない。聞くけれども、私が紹介したこれらの数字は事実ですか、どうですか。

西村(康)副大臣 まず、交渉の内容については、これはまだ交渉中の話であります。相手がある話でありますし、まさに手のうちを示すわけにもいかないという面もございます。ですので、特に関税交渉の部分については、これは各国とも全く外には出しておりませんというか、公開もしておりません。

 御案内のとおり、アメリカでも、一部に、秘密保持を宣誓して、厳しいルールのもとで、テキスト文の開示ということが議員に認められております。

 しかし、譲許表を初めとする関税の交渉の部分については開示をいたしておりませんし、これはお互い非常に大事な交渉であるということでありますし、相手がある話ということでありますので、手のうちを明かすわけにもいかないという、申し上げたとおりでありますので、この部分については、私どもは、国会の決議をしっかりと受けとめて、粘り強く交渉しているところでございます。

穀田委員 二つあると思うんですよね。では、なぜこういう数字が出たのかということと、ホームページに載っているかというと、こんなものは載ってもいないんですよ。

 それで、いつも必ず、国会決議を受けとめてと、これも同じことを繰り返しているんですよね。

 では、ふたを開けてみたら違っていたといったら、どないしますのや。だから、そういう問題で、私はこれが事実だとすれば重大じゃないかというふうに思うから聞いているわけですよね。

 甘利大臣は七月三十一日の記者会見で、TPPの交渉をまとめることができた、決着させることができた、相当絞り込まれたと言って、さらに、頭を冷やしてもらう等の発言をしています。

 しかし、例えば、農産物交渉で繰り広げられた具体的な品目の交渉内容や、今述べた関税率だとか関税割り当ては、全く言及していないですよね。知的財産やISD等の非関税措置の具体的交渉経過も、政府のホームページには一切出ていませんよ。

 副大臣、なぜこういう内容が出ていないのかということについて、改めて聞いておきたいと思うんですね。

 だから、国民は、この交渉経過について、そういう土壇場まで来ている、こういった問題があるということについて知りたいと思うのに対して、誠実に向き合うことは必要じゃないと考えているんですか。

西村(康)副大臣 交渉は、全体で、パッケージで行われているということでもありますので、一つ一つのパーツについて何が今の段階で決まったということではなくて、最後、全体で全てのピースが埋まって、いろいろな駆け引きのもとで決着をするということでありますので、ある意味で、特に関税交渉にかかわる部分はそういう色彩が強いものですから、いまだに決まったものはないということでありますし、まさに手のうちを明かすわけにいかないという部分もありますので、これはどの国も、この部分については開示に非常に慎重になっておりますし、全く示されていないということであります。

 ただ、繰り返しになりますけれども、国会の決議をいただいておりますから、決議を守ったと認めていただかないと、これは国会で承認をされないということになりますので、最終的に国会できちんと御承認をいただけるような内容になるということを目指して、粘り強く交渉をしていきたいと思っております。

 もちろん、交渉がまとまった段階では、しっかり開示をして説明をして、国会で御承認いただけるようにしっかり努力をしていきたいというふうに思っております。

穀田委員 それはないですよ。幾ら努力すると言ったって、現実、その過程がさっぱりわかりもしないのに、最後は国会が決めるんだからと。国会は、それは与党が多数なんだから、平気で、そういうことについて言えば、今までも裏切ってきたことは何ぼでもあるわけで、そんなこと簡単に信用できるはずがないじゃないですか。

 では、具体的な数字が出ている米の問題について聞きたいと思うんですね。

 甘利担当大臣は、今度はもうちょっとさかのぼって七月二十一日の会見で、米の問題は重要五品目の中でも最重要の問題だと認識しています、日本が五万トンという主張をし、アメリカが十七万五千トンという主張をした、それは事実であります、こう述べていますよね。

 岸田大臣や西村副大臣は、他国に関する発言は控えるということをよく答弁しますけれども、甘利大臣は、アメリカがと珍しく名指しでコメントしていたので、聞きたいと思うんですね。

 まず、前提として、この発言は事実として確認できますね、西村さん。

西村(康)副大臣 甘利大臣は、いわゆる米の交渉について、これは非常に厳しい状況にある、厳しい交渉をしているということについて言及をされたというふうに承知をいたしております。

 具体的な日米間の交渉内容については、コメントすることを差し控えたいというふうに思います。

穀田委員 聞いていることと違いますやんか。そういうことをしゃべったことが報道で出ている、これは事実やなと聞いているのであって、もう一度。

西村(康)副大臣 アメリカ側から、米について非常に厳しい要求がなされているということは事実でございます。

 ただ、その具体的な内容についてはコメントを差し控えたいと思います。

穀田委員 それはちょっとおかしい。委員長、それはおかしいですよ。だって、内閣府で発表している内容について、そう書いているものを、それは事実やな、こう聞いているわけでしょう。

 では、内閣府は発表していないんですか。それを確かめて物を言ってくださいよ。はっきりしてくれなくちゃ困るよ。そんないいかげんな話をして話をそらしたらあきませんで。そういう発表をしていることは事実やなと聞いているだけの話でしょう。

西村(康)副大臣 記者会見の内容については発表いたしておりますけれども、その具体的な交渉内容について、何か内閣府として公表したものはありません。(穀田委員「違うやんか。ちょっと委員長、それはおかしいですよ。報道されている内容を確認しているだけの話じゃないか」と呼ぶ)

土屋委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

土屋委員長 速記を起こしてください。

 西村副大臣。

西村(康)副大臣 お答えを申し上げます。

 七月二十一日の甘利大臣の記者会見要旨の中で、御指摘のあったことを大臣が答えているということを、その内容をホームページで公表しているのは事実であります。

穀田委員 だから、回りくどい話をしているんじゃなくて、最初からそう言って、そういうふうに事実として出ているのやから、こんなこと。それを二度も三度も、そういう答弁を曖昧にしたらあきませんよ、そんなこと。そんな程度で国民の知る権利を、出ていることまでああだこうだ言って、あっちゃこっちゃ言うなんて、およそ考えられへんわ。あほらしなってあかんわ、そんなことやっておったんじゃ。そう思いませんか、皆さん。

 だから、それだったら、事実として、今、内閣府としてちゃんと報道していることを聞いているだけで、それをあれやこれや言っていたんじゃ、そっちが、西村さん、ほんまにこういう、できるだけ事実を公表するとか、何かいろいろなことを国民に知らせようなんて、全くうそだということがはっきりしたんじゃないですか。

 では、聞きたいんですけれども、日本が五万トンという主張をしたとされるけれども、ここではそう言っているんですよ、内閣府が出している文書にそう書いているんですよ、そういう会見をしたと。その五万トンという主張については、いつ、どこで、どのようなレベルの会合ででもいいですけれども、誰が誰に対してどのように主張したのか、明確にされたい。

西村(康)副大臣 これはまさに交渉の内容にかかわることでありますので、そのことについてはコメントは差し控えたいというふうに思います。

穀田委員 でも、交渉の内容にかかわると言うんだけれども、それは五万トンという話が出ているわけじゃないですか。その内容について既にこれは出ている。

 だから、これは、では、ちょっと違う角度で聞くけれども、「TPPの概要」だとか政府のホームページには書いていないので、私は、みんな、多くの人たちが、この問題についてはほんまかといって驚いたわけですやんか。それは西村さんも一生懸命隠すぐらいやから、そういうことについては知りたくないのかもしらぬけれども、日本側の米輸入五万トンを発言した根拠というのは、では、一体何なんですか。五万トンという話の根拠。

西村(康)副大臣 まさに交渉の内容そのものであって、交渉にかかわる大事な内容でありますので、そのことについてはコメントを控えたいと思います。

穀田委員 この繰り返しやねんね。前段でまず防御線を張って、話の内容に踏み込ませないということで、ずるずるやっていく。これは繰り返しなんですよね。

 しかし、数字が出たのは、大臣がみずから五万トンとか十七万五千トンと言ったことは、これは初めてなんですよ。だから聞いているんですよ。

 では、別な方に聞きたいんですけれども、この会見の発言について、この会見の発言についてですよ、まあ、あなたはなかなか認めようとしなかったけれども、日本政府はアメリカ政府の了解をとって行ったということですか。それはどうですか。

西村(康)副大臣 これは、甘利大臣が、アメリカと厳しい交渉をしているというその厳しさを、なされているということを言おうとして発言をなされたものというふうに認識をいたしております。

穀田委員 すると、厳しいということだよね。そこは言えると。厳しさがある。どういう厳しい話なんですか。

 つまり、五万トンのそういう問題と十七万五千トンというそれぞれの根拠を言い合って厳しいやりとりをしたということなんですか。何が厳しいと言っているんですか。

西村(康)副大臣 何が厳しいのか何が厳しくないのかというのが交渉のまさに内容そのものでありますし、手のうちを明かしていくことになりますので、これは答弁を差し控えたいというふうに思います。

穀田委員 いや、あなたが厳しいと言うから、どういうふうに厳しいのと聞いているだけの話やんか。そんな大した話じゃないやんか。

 だから、アメリカの主張を会見で言っているわけでしょう、十七万五千トンで出てきた、うちは五万トンで言ったと。そうしたら、国民的に言うと、ああ、そうかとくるじゃないですか、日本は五万トンと言うたんやなと。

 何で五万トンと言うたんやということについて言えば、国民の側は今まで、五万トンと言うなんて許可したことはないわけですよ。そういう話も、公約でするという話もないわけですやんか。そうすると、厳しいとか厳しくないとか言っているけれども、要するに、その線を出したんやなということだけははっきりしたわけですよ、これで。ということとなると、そこから妥協が始まるということになるわね、誰が考えたかて。

 そうすると、五万トンの根拠は何やと聞くのが、国民は思うじゃないですか。相手がどう言おうがこう言おうが、大臣が五万トンと言って相手が十七万五千トンと言うとるのやから、それぞれの根拠というのは何なんだと。

 厳しいと言うけれども、その厳しさを打開する上では、こういう国民的合意が必要だから頼むという、これが筋じゃないですか。当たり前の話じゃないですか。何が厳しいだ。厳しくないからこうなっているんじゃないんですか。言ってくださいよ。根拠は。

西村(康)副大臣 私ども、政権の公約を出しておりますし、その公約のもとで選挙で勝たせていただいて、政権を負託されて、今、そのもとで責任を持って交渉を進めているところでございます。

 最終的には、国会の決議も守ったと言っていただいて、国会の御承認もいただかなきゃいけませんし、自民党としてもその公約を守ったと言っていただけるように、私ども、粘り強く交渉しているところでございます。

穀田委員 もうその話は聞き飽きているのやわ。公約は守ったと言うけれども、五万トンという話が出た瞬間に、では、西村さん、あなた、五万トンと公約していたの、選挙のときに。では、一言言ってよ。

西村(康)副大臣 今、自民党の公約を全て私は覚えているわけではありませんけれども、私自身は、TPP交渉を、日本の農業の基盤をしっかり守りながら、しかし、TPPの交渉はしっかりと進めて、日本の利益になるような形で、目指していくということを私自身も申しておりました。

穀田委員 それは自民党の多くがそう言っている。だけれども、五万トンという数字が出て、少なくとも、出した限りに、相手は十七万五千トンときておるのやから、大体この辺でうろうろでやるのやなとみんな思うわけやんか。そうすると、五万トンと西村さんは公約してたんかと。

 だって、公約は、守るために頑張ります、それから、決着をつけるためにも頑張ります、国益を守るために頑張ります、国会決議を履行できるように頑張りますと言っているんだけれども、では、西村さんは、そういうものの内閣府の副大臣として、五万トンというものを公約していたかと聞いているんですよ。

西村(康)副大臣 私自身は、日本の国益にかなう形でTPP交渉を進めて、妥結するということで申し上げておりましたので、私自身としては、その範囲内で、国民の御理解、有権者の御理解をいただいて、しっかりとまとめていきたいというふうに思っております。

穀田委員 個別にそんな西村さんだけを詰めるつもりはないんですよ。ただ、五万トンという数字が出たから言っているので、そこは、範囲内でと言っているから、五万トンがひょっとしたら、では、そういう範囲内というふうに理解してええのかなと思ったりもしますけれども、これ以上やったってもう無駄やから。

 では、聞くけれども、西村さんは、四月の私の質問の際に、TPP交渉の内容は細かく全てホームページに掲載していると答弁しているんですよね。何かというとホームページを見ろと言うんですよね。

 私も、今回、再度「TPPの概要」というのを読みましたけれども、四月から今日に至るまで、全部で六ページ。議員限りということで報告されたページは、たしか私どもにも配られて、赤い字もありました、それは八ページでしたけれども。六ページで、内容は同一じゃないか。

 そもそも、千ページとする条文テキストの論点を六ページにまとめること自体が、私は無理があると思うんですけれども、この交渉内容がさまざまな報道がある中で、オファーリクエストを出す形で二国間協議が行われている、規律を確保、整備を図るとの表現をとっていますけれども、これでは、事実関係だとか、この点が対立点だと。

 つまり、交渉事だからという話はいいんですよ。だけれども、今だって五万トンと十七万五千トンが出たわけじゃないですか。そういう意味での対決点や論点というのはさっぱりわからぬという意味では、副大臣は何かというと見ていただいたらわかると言うので、これでわかる人はなかなかいないと思うんですよね。

 だから、その点の記述をせめてもう少し改善すべきではありませんか。

西村(康)副大臣 できる限り詳しくという思いで私も事務方にも言っておりますし、事務方もそれなりに努力をしてきているんだと思います。

 できるだけ多くの方に知っていただくということで、ホームページを活用して、御案内のとおり、説明会を開いたりして多くの方が来ていただいたりしておりますけれども、できる限り広く知っていただくためにホームページということで活用させていただいておりますので、引き続き、このホームページでの情報開示も含めて、工夫をしながら、できる限りの開示に努めていきたいというふうに思います。

穀田委員 工夫はするということで、少なくとももう少し改善してくれるというふうに見ていいんだね。

西村(康)副大臣 引き続き、できる限り工夫をして、改善に向けて努力は続けていきたいというふうに思います。

穀田委員 工夫して改善していただくということについては、約束してもらったということになると思うんですね。

 では、次に、米国通商代表部というのが、御存じかと思うんですが、外国貿易障壁報告書を発表しています。アメリカは、国民生活の安心、安全、安定を担保する関税、非関税措置をバリアそして障壁と呼ぶものであります。私もこれを持ってまいりましたけれども、二〇一五年外国貿易障壁報告書です。

 これを見ますと、米国は日本に対して、牛肉は全月齢の牛由来製品を含め完全自由化を求める、水産物は関税撤廃、非関税障壁の除去を求める、ミニマムアクセス米は輸入量の約束を監視するなどと書いています。

 大臣に聞きたいんですけれども、アメリカは日本に対して、TPP参加交渉から批准後の将来にわたって、貿易障壁報告書に記載された項目に対する関税、非関税措置の撤廃を求め続け、強要する。そして、この間、超党派通商優先事項法の成立で、日本に対する米議会の発言も強まる。本当はこういう構図がぐっと強まっているんじゃないかと思うんですが、その辺はいかがお考えですか。

岸田国務大臣 御指摘の外国貿易障壁報告書ですが、これは米国の国内法に基づいて、毎年、行政府から議会へ提出される米国の貿易相手国に対する関心事項についての報告書だと認識をしております。そして、その一部として日米通商関係に関する事項が述べられています。そして、言及がある分野の中には、TPPや日米並行交渉において議論されている分野、これも当然含まれています。

 米国としては、こうした関心事項について、政府として議会に提出をし、その姿勢を示しているわけですが、これはあくまでも、日本とアメリカの間においては交渉が行われるわけです。TPPを含め、さまざまな場において交渉が行われるわけですので、我が国としましては、当然のことながら、反論すべきことは反論するべきであると思いますし、国益を最大にするべく努力をする、これは当然のことであると思います。

 結果は、その交渉、我が国との間のさまざまな議論の結果になりますので、その結果がどうなるかは予断することはできないと思います。

 少なくとも、この報告書の中身どおり全て物事が決まるものではない、これだけは申し上げることができるのではないかと思います。

穀田委員 この間、一連のアメリカ側の要求というのは、ずっと三十年近く見ていますと、そういう労働分野における問題だとか、それから通商分野における問題だとか、公共事業の予算だとかを含めてずっとありましたよね。

 だから、それはその年に実現できたかどうかは別として、結構、長い距離で見ると、やってきているというのがあるものだから、そういう点では、反論するものは反論すると言っているんだけれども、先ほどの程度の、五万トン、十七万五千トンでも大した反論をしているふうな感じじゃなくて、それを言われたら、秘密だと。そんなことを言っているようじゃ、それはあきまへんで。

 私は、この際に、この問題について改めて委員長に提起しておきたいんですけれども、これほど国民生活の重要問題で、先ほどの答弁というのは、結局、秘密だ、それから、情報公開をなるべく、それから、あとは交渉事だ、こういう話でお茶を濁すというやり方は、私は納得いきません。

 したがって、TPP交渉全般の現状について、詳細な説明と資料の要求をしておきたい。きちんと出せということを要求しておきたいので、取り計らっていただきたいと思います。

土屋委員長 後ほど理事会で審議させていただきます。

穀田委員 最後に、国連専門官が発表している勧告について、若干、岸田大臣に聞きたいと思います。

 まず、この六月、国連の人権問題を専門とする特別報告者や専門家の十人は、TPP協定を含む自由貿易協定や投資協定が、健康保護、食品安全、労働基準の引き下げ、医薬品を独占する権益を企業に与え、知的財産権の保護期間を延長することによって、人権の保護と促進に逆行する影響をもたらしかねないと指摘しています。現物はこれです。

 岸田大臣に聞きたいんですけれども、国連の専門官たちがなぜ声を上げたのか、その理由についてどうお考えか、所見をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 六月二日に、国連人権高等弁務官事務所のホームページに、自由貿易及び投資協定による人権への悪影響に関する国連専門家による懸念表明というものが掲載されたと承知をしております。

 御質問は、なぜこれが掲載されたのか、要は、この意図は何なのか、こういった御質問の趣旨だと思いますが、この理由ですとか背景、あるいは、ましてや意図について、私から何か申し上げるような直接の材料はありません。ちょっと、そういう御質問に直接お答えする材料は持ち合わせておりません。

穀田委員 では、ちょっと角度を変えましょう。

 勧告は、中身でいいますと、このやり方、つまりTPPのやり方でいけば、貧困問題なんかを深刻化させる否定的影響が懸念される、そういう立場の声明なんですよね。

 これらの方々は非常に重要なセクションを持っておられて、障害者の問題や健康や文化的権利、さらには法曹の関係の独立や食品の権利や安全性など、そういう専門に研究されている方々なんですね。あえてそういう方々が述べておられて、しかも、勧告は、労働組合、消費者団体、環境保護団体、保健専門家など全ての関係者の協議や参加によって透明性を持つこと、さらに、国会議員や市民団体が検討できるように条文草案を公表すること、ここまで書いているんですね。

 ですから、もちろん、今大臣がおっしゃったように、意図やその他理由については承知していないと言いますけれども、問題は、その勧告の中身が、私は極めて真っ当じゃないかと思うんですけれども、その辺はいかがですか。

岸田国務大臣 この勧告、声明ですかでは、貿易投資協定が新たな経済機会を生み出す、一方で、御指摘のように、まずは健康保護、労働水準、知的財産等について人権保護の面で懸念があること、そして、さらに、ISDSが国家の規制機能や公共の利益を法制化する権限を危険にさらしていること、こういった指摘をしていると承知をしております。

 TPP交渉につきましては、食品の安全確保、あるいは環境基準や労働基準の確保、また権利保護と利益保護のバランスのとれた知的財産保護のあり方について議論が行われていると承知しております。また、ISDSについても、保健、安全及び環境保護を含む公共の利益を保護する政府の権限に配慮した規定が挿入されていると認識をしております。

 我が国としましては、引き続き、国益を最大限に実現するべく、しっかりと交渉をしていくことになると考えております。

穀田委員 今大臣は、この懸念の表明の声明の内容を私よりも少し詳しく述べられたというだけなんですよね。それが、交渉を進めるということに、すぐそっちの方に文章的には行くんだけれども、そういう内容については、私は、今のTPPのあり方に対して大きな疑問を投げかけて懸念を表明している、そういう問題提起じゃないだろうか、そういうことについて、ある意味では、世界的に言ったら当然のことじゃないかと思うわけですよね。

 ですから、その評価についてもう少し述べていただかないと。それを聞いているんですが。

岸田国務大臣 この声明の中で御指摘のような懸念が示されている、これはそのとおりであります。

 しかし、現実のTPP交渉等においては、我が国としまして、そうした懸念がないように、そうしたマイナス面がないように最大限努力をしているということをしっかり説明していかなければなりません。そういった交渉をしっかり行った上で、その成果として国民の皆様方にしっかりと説明をしていく、これは大事な取り組みではないかと考えます。

穀田委員 どうも、中身は、評価については飛ばして言うというのが大体パターンになっていますよね。

 ただ、私は、この問題は農水委員会でも私どもの畠山議員が質問していまして、そういうときの語感といいますか感覚からしますと、簡単に言って、こういう勧告というのは法的強制力がないから対応する必要がないというふうに考えているんじゃないか、そういう向きが私は受け取れるわけですよね。

 でも、こういう交渉事に対して、各分野の専門家がそろって、しかも、そういう内容、とりわけ人権という角度から物を考えて、懸念を表明する。もちろん、先ほど大臣もおっしゃっていましたように、経済の新しい機会を生み出す可能性がある、これは言っていることは事実なんですね。私、それを否定しているわけじゃないんですよ。その一方で、こういう問題の、人権の保護と促進に逆行する影響をもたらしかねないということをあえて言っている。そのときに、それが検証されるためにはどうすべきかという問題を提起しているわけですよね。

 だから、一方で、経済的なそういう意味での可能性がある、しかし、こういう懸念がある、それらをどうしたらいいかというときには、公表して事前に評価する、事後に評価する、そして、それらが透明性を持つべきだということに対して、それは交渉事だ、それから、ある意味では、先ほど言いましたけれども、法的強制力がないから対応する必要がない、こういうふうにお考えだということですか。

岸田国務大臣 声明の中で懸念を示し、そして交渉の進め方についても指摘があるという委員の御指摘だったと思いますが、交渉につきましては、従来から御説明させていただいておりますように、参加国間での当初合意したルールに基づき、そして、それぞれ参加国で協議をしながら交渉を進めているわけであります。TPPにおきまして決められたルールに基づいて、しっかりと協議を進めていくべきだと思います。

 その上で、妥結をすることによって、結果を出した上で、その結果がそうした懸念に当たらないように、当たっていないということをしっかり説明する、こういったことは政府として取り組むべき課題ではないかと思います。

穀田委員 懸念が当たらないようにと言うけれども、それは最後の段階でわかったのではおしまいなんですよ。私は言っておきたいと思います。

 ですから、きょうは時間の関係で取り上げなかったですけれども、TPP発効の条件として、経済規模が八五%を占める六カ国で発効することを日本が提案し、条文の最終規定章で発効条件が議論されているというような報道もありました。これが事実ならば、私は、驚くべき、許しがたい見切り発車を日本が企てているということになって、各国の国民を無視してTPP交渉の推進者になったということになると思うんですね。

 このまま妥結に進み、交渉テキストの全貌が明らかになったときに、政府の当初の説明とは異なると内容が判明したときに、一体誰が責任をとるのか。まさにここには、私は、国民がいないといいますか、国民不在の考え方があると言わなければならないと思います。国民の前に明らかにしていて、そして合意をかち取っていくということが必要だ。

 その意味で、私はTPP交渉の即時中止と交渉からの脱退を強く求めて、きょうは質問を終わります。

土屋委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 ただいま議題となっております各件中、まず、投資の促進及び保護に関する日本国とカザフスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウルグアイ東方共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカタール国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の以上四件について議事を進めます。

 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党を代表して、日本とカザフスタン、ウクライナ、ウルグアイとの三つの投資協定及び日本とカタールとの租税協定に対する反対討論を行います。

 三つの投資協定は、安倍政権が経済政策の柱とする成長戦略に基づき、日本の多国籍企業が海外で最大限の利益を上げるための投資を促進する協定であります。

 日本の経済界は、国内にあっては、法人税の減税や労働法制の改悪を要望し、国外においては、日本の多国籍企業が多額の収益を上げられるよう条件整備を求めています。三つの投資協定は、こうした経済界からの強い要望を受けて、投資のさらなる促進を行うものにほかなりません。

 租税協定にしても、日本の大企業とその海外子会社は、カタール国内の外資優遇税制のメリットを十二分に受けつつ、投資に対する源泉地国課税の軽減によって、税制優遇措置を二重、三重に享受することが可能となります。

 このように、本租税協定は、国際課税分野における日本の大企業優遇税制を国内外でさらに拡大強化するものであり、容認できません。

 以上が、三つの投資協定及び租税協定に反対する理由であります。

土屋委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 これより採決に入ります。

 まず、投資の促進及び保護に関する日本国とカザフスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウルグアイ東方共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカタール国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、社会保障に関する日本国とルクセンブルク大公国との間の協定の締結について承認を求めるの件について議事を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 社会保障に関する日本国とルクセンブルク大公国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

土屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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