衆議院

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第6号 平成28年3月23日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十八年三月二十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 岸  信夫君

   理事 島田 佳和君 理事 新藤 義孝君

   理事 土屋 品子君 理事 中山 泰秀君

   理事 橋本  岳君 理事 篠原  豪君

   理事 武正 公一君 理事 岡本 三成君

      青山 周平君    小渕 優子君

      大野敬太郎君    城内  実君

      黄川田仁志君    小林 鷹之君

      佐々木 紀君    笹川 博義君

      白須賀貴樹君    鈴木 隼人君

      薗浦健太郎君    辻  清人君

      根本 幸典君    野中  厚君

      細田 健一君    堀井  学君

      三ッ矢憲生君    吉良 州司君

      寺田  学君    長島 昭久君

      原口 一博君    赤嶺 政賢君

      笠井  亮君    丸山 穂高君

      小熊 慎司君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        武藤 容治君

   経済産業副大臣      鈴木 淳司君

   外務大臣政務官      黄川田仁志君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 露木 康浩君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 辻  裕教君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 垂  秀夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 相木 俊宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 豊田 欣吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 道井緑一郎君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   相川 一俊君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    森  健良君

   政府参考人

   (外務省国際情報統括官) 鈴木  哲君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           松尾 泰樹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           樽見 英樹君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十三日

 辞任         補欠選任

  小渕 優子君     笹川 博義君

  小林 鷹之君     野中  厚君

  松島みどり君     堀井  学君

  山田 美樹君     根本 幸典君

  大島  敦君     原口 一博君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  笹川 博義君     小渕 優子君

  根本 幸典君     細田 健一君

  野中  厚君     小林 鷹之君

  堀井  学君     白須賀貴樹君

  原口 一博君     大島  敦君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  白須賀貴樹君     松島みどり君

  細田 健一君     青山 周平君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     山田 美樹君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

岸委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官水嶋光一君、大臣官房審議官垂秀夫君、大臣官房審議官相木俊宏君、大臣官房審議官滝崎成樹君、大臣官房審議官豊田欣吾君、大臣官房参事官道井緑一郎君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長相川一俊君、北米局長森健良君、国際情報統括官鈴木哲君、警察庁長官官房審議官露木康浩君、法務省大臣官房審議官辻裕教君、文部科学省大臣官房審議官松尾泰樹君、厚生労働省大臣官房審議官樽見英樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岸委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岸委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原口一博君。

原口委員 おはようございます。民主党の原口一博です。

 きょうは国際情勢、とりわけ核の問題について、北朝鮮の問題について、外務大臣それから法制局長官、お見えいただいていますが、議論していきたいと思います。

 その前に、二十二日にベルギー・ブラッセルで発生した一連のテロ事件において、多数の死傷者が出ています。この非道なテロを強く非難するとともに、テロに決して屈しない、犠牲者の皆様に哀悼とお見舞いを申し上げるとともに、皆様とともにこのテロに屈しないということを宣言し、国際社会と連帯して、テロの根絶に私も尽力をしていきたいと思います。

 外務大臣、日本人も巻き込まれているという情報がございますが、事実関係についてだけ、まずお尋ねをいたします。

岸田国務大臣 二十二日、ベルギーの首都ブリュッセルにおきまして爆弾テロ事件が発生し、多数の犠牲者が発生しています。まずは、こうしたテロ事件に対して強い憤りを感じ、そして、亡くなられた方々に哀悼の意を表し申し上げます。

 そして、その中で、邦人の被害につきましては、邦人の方、重傷一名そして軽傷一名が確認されております。負傷された方々にも一日も早い回復をお祈りするところであります。

 いずれにしましても、いかなる理由があってもこうしたテロは許すことはできず、断固非難をいたします。

 事件の状況につきましては、ベルギー当局において引き続き状況把握が続いておりますので、我が国としましても、情報収集に万全を期し、そして、邦人の安全確保に全力で努めていきたいと思います。

 あわせて、テロ対策、暴力的過激主義対策について、我が国としましても積極的に国際社会と連携しながら取り組んでいきたいと考えます。

原口委員 外務大臣、ありがとうございます。

 続いて、北朝鮮の問題について。

 北朝鮮による核実験及び弾道ミサイル発射に関する安保理決議、これを全会一致で、三月三日、未明になりますが採択をされました。いかなる脅迫にも私たちは屈しないし、この北朝鮮の態度を強く非難するものであります。

 制裁を大幅に追加、強化する強い内容の決議案が採択されたということは、核を廃絶し、北朝鮮の非道な今の現状に対して、それを変える大きな道になるのだと思います。

 そこで、一つだけ伺いますが、私たちは、拉致の問題についても決議案の中に入れてくださいと、これは自民党の谷垣幹事長も本会議で質問されていましたが、どのようになりましたでしょうか。

岸田国務大臣 今般採択されました決議二二七〇ですが、人権についての扱いは、従来と同様の内容としまして、国際社会が有する人道上の懸念に対応する重要性を改めて強調している、こういった内容となっております。この人道上の懸念には、当然、拉致問題も含まれると解されているところであります。

 そして、今般の決議は、従来の内容に加えまして、新たに、北朝鮮の人々が受けている深刻な苦難に深い懸念を表明するなど、北朝鮮の人権、人道問題に関する言及を強めたものになっております。

 拉致問題につきましては、こうした人道上のさまざまな懸念あるいは扱い、こういった内容の中に含まれている、こういった内容になっております。

原口委員 これは予算委員会でも御質問いたしましたけれども、ストックホルム合意を受けて、私たちは、今回の決議の中に特段拉致の文言を入れてほしい、拉致の問題について、過去の核実験決議と同様の、今外務大臣がお話しになった、国際社会が有する人道上の懸念への対応の重要性を強調ということが過去の決議でも入っている、今回のは特別やはり拉致の問題についても入れてほしいということを言っておりましたが、それは文言としては入っていないというのは遺憾であります。

 また、北朝鮮は、挑発言動を繰り返して、四月三十日ですか、米韓の軍事演習に恐れを募らせているというふうに考えます。北朝鮮の暴発など有事の場合、難民についてどう考えるか。私は、この間、防衛大臣とも議論をしましたが、難民問題あるいはサイバー攻撃、そういったものにしっかりと対応しておかなければいけないと思いますが、外務大臣の基本的な御認識を伺うとともに、今回の北朝鮮のリーダーは、そのお父さん、おじいさんの時代とは随分違う、中国のコントロールもききづらい、あるいは不確実性が増しているんじゃないかというふうに思うんですが、外務大臣の御認識をあわせて伺います。

岸田国務大臣 今般、この安保理決議が採択されたわけですが、こうした決議採択後も挑発的な行動が続いているということ、これは断じて許すことはできないと考えます。

 北朝鮮の状況につきましては、さまざまな情報収集、分析を行っております。今後の予見可能性ということについても、さまざまな議論があるわけですが、一つ申し上げられるのは、今の北朝鮮の体制の中で予見することが難しくなっている、こういったことを感じる次第であります。

 こういった点を考えますときに、我が国としまして、さまざまな事態に対応できるように万全の体制で臨んでおかなければなりません。御指摘の点等につきましても、政府として、あらゆる可能性を想定して準備をしていくべき課題であると認識をしております。

 五月には、三十六年ぶりとなります北朝鮮の党大会が予定されてもいます。こういった点もしっかり注視しながら、政府としての対応、しっかりと整えていきたいと考えます。

原口委員 朝鮮半島有事ということになれば、大量の難民が日本に押し寄せてくることも考えられるでしょう。そのときに、今ヨーロッパで起きているように、テロに加担をする人とそうでない人、あるいはその人たちに対する人道的な支援というのは、今からきっちり議論をしておかなきゃいけないというふうに思います。

 私は、いかなる核実験も許すべきではない、そして挑発的な言動を即刻やめるべきだというふうに思います。

 そこで、今度、四月十日ですか、G7外相会談が広島で行われます。原爆被爆そして核の問題について、少し議論をしていきたいと思います。

 大臣は広島の御出身なので、今までの放射線の安全基準というものについても、ABCC、原爆傷害調査委員会、放射線の人体への長期的影響を調査するためトルーマン大統領令により一九四七年に広島、長崎に設立されて、七五年から日米共同運営の放射線影響研究所がその研究を引き継いだというふうに認識をしています。

 このABCCの存在は非常に重要で、ICRP、国際放射線防護委員会が提唱する年間被曝線量の推奨値など、現在の放射線の安全基準はABCCのデータ、報告をもとにつくられているというふうに認識をしていますが、きょうは厚労省からもお見えいただいていますでしょうか、この認識でよろしいでしょうか。

樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 放射性物質が人体に与える一般的な影響の基準ということになりますと、必ずしも厚生労働省の所管ということになりませんけれども、便宜私から、経緯もございますので申し上げます。

 国際的な放射線防護に関する基準につきましては、民間の国際学術組織でございます御指摘のICRP、国際放射線防護委員会というものが各国に対して勧告をしているということでございますけれども、このICRP勧告の骨格というものにつきましては、広島や長崎の原爆被爆者の疫学調査を初めとする広範な科学的知見をもとにしているということになっているというふうに承知をしてございます。

原口委員 その基準が正しいかどうか、それを認定できる人に外務委員会に出てきてくださいと言っていたのに、厚労省が所管でないと言うんだったら、出てこないでください。

 ABCCのもとデータが、もしも残留放射線による外部被爆と内部被爆、死の灰、それから、その後広島市に入市された方もいらっしゃいますね、多くの人たちを救おうと、看護兵だったりいろいろなことで入られた人たち、その人たちのデータは入っていないんじゃないですか。

 放射線の推定被曝線量は、DS86やDS02、86というのは一九八六年、02というのは二〇〇二年方式で計算されてきましたけれども、この放射線被曝の歴史を考えてみると、爆心から二・二キロないし二キロ以内にて被爆した人だけを被爆者とし、それより外の人たちを全く被爆していない人と、両者を比較している。

 爆心から二・二キロ以遠にいる人たちも被爆している可能性は非常に高いにもかかわらず、もともと、外部被爆や残留放射線で内部被爆した人たちと狭義の被爆者を比べても、安全基準としての意味あるデータにはならないと私は思います。

 もう一つデータの信頼性に欠ける理由は、残留放射線の影響が十分反映されていないから。そもそも、DS86にしてもDS02についても、もともとは、T57D、T65D、つまり、原爆を落としたその国がABCCをつくって調査をし、多くの事実が隠されてきた、隠された被爆者がいるんだということを、私はこれまでずっと国会でも追及をしてきました。

 私は、核についての不必要な幻想は持つべきではない、核使用というのは、いかなる兵器よりも人道に対する罪の深い兵器であり、子孫に対しても、まだ広島、長崎の原爆から百年たっていません、七十年ですね、そういう中で本当の影響というのは出てこない。

 ですから、あらゆる核兵器を廃絶するというのが私たちの使命であり、そして今回、広島で外相会談が行われるということですから、ぜひ大臣にはその強い意思を示していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 核兵器のない世界を目指す上で、我が国は唯一の戦争被爆国として大きな責任を担っていると思います。そして、その立場から国際世論をリードするに当たって、委員御指摘のように、この被爆の実相、非人道性も含めて正確に把握するということは基本であります。その議論の基本となる正しい認識をしっかり持つこと、確認すること、これは大変重要なことだと思います。委員のそうした御努力には心から敬意を表し申し上げますし、そうした認識のもとに、これから行われますG7の外相会談においても、軍縮・不拡散の議論をしっかりリードしていかなければならないと考えます。

 ぜひそうした思いで議論をリードしたいと思いますし、特に、こうした核兵器のない世界を目指すに当たっては、核兵器国と非核兵器国の協力というものがなければ結果につながりません。G7は核兵器国と非核兵器国ともに含まれる枠組みでありますので、こうした枠組みはしっかりと活用する意味があると感じております。

原口委員 前向きの答弁をいただいてありがとうございます。

 実は、ABCCは、一九五〇年代に入市被爆者に関する調査をしている。アメリカはやはりすごい国だなと思うんです。当時は隠していたことでも、何十年かするとそれが公開されて、そのことがわかっています。ところが、ローウェル・A・ウッドベリーというABCCの科学者が、調査結果を推定線量に反映できないかを打診しているということまでわかっていますが、反映されない状態のまま現在に至っています。

 私は、今大臣がお答えになったように、世界が事実を知れば、核兵器を持つなどということはあり得ないんだと思うんです。ぜひ、大臣のリーダーシップで、今回のG7会議で、世界の中の核、広島の上空何百メーターで爆発したかさえずっと隠されてきたわけです、これを、世界の大規模で真摯な調査の取り組みを呼びかけていただきたい。そして、我が国を中心として、あるいは米国を中心として、核兵器の真実を知るということのプロジェクトを立ち上げていただきたいというふうに思います。

 そこで、横畠長官にもお見えいただいたので、安保法制改変と核兵器の保有、使用についてということで少し議論をしていきたいと思います。

 まず、質問の前提を申し上げます。ここで私がこれから伺うのは、政策論としてではなくて、法理論上のお話として答弁をいただきたいと思います。

 そこで、核兵器に関する過去の政府見解について確認しますが、我が国は、平成二十六年七月一日の閣議決定以前において、憲法上核兵器を保有できると解していたという理解でよろしいでしょうか。

横畠政府特別補佐人 お答えする前に、大事なことですので、誤解を招かないようにちょっと前提だけ申し上げさせていただきたいと思いますけれども、我が国は、いわゆる非核三原則により、憲法上保有することが禁じられていないものも含めて、政策上の方針として一切の核兵器を保有しないという原則を堅持しております。

 法的にも、原子力基本法におきまして、原子力利用は平和の目的に限るとされており、また、NPT、核兵器の不拡散に関する条約の締約国、非核兵器国でございまして、一切の核兵器を保有し得ないということになっているというのが大前提でございます。その上で、憲法上の法理、純粋に法理の問題としての議論というのがこれまでも行われてきているということです。その点についてのお尋ねだというふうに理解いたします。

 我が国には固有の自衛権がございますが、憲法第九条第二項によりまして、自衛のための必要最小限度を超える実力を保持することは禁止されていると解しております。すなわち戦力、憲法上禁止されている戦力ということでございます。これにより、性能上、専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためのみに用いられる、いわゆる攻撃的兵器を自衛隊が保持することは、自衛のための必要最小限度を超えるものであり、許されないと解してきております。

 他方、核兵器、すなわち核エネルギーを用いて人を殺傷し物を破壊する、その種の兵器ということになろうと思いますけれども、核兵器でございましても、仮に、自衛のための必要最小限度にとどまるものがあるとすれば、それを保有しまたは使用することは、法理上の話でございますが、必ずしも憲法上許されないものではないと解してきております。

 このことについては、例えば、古くは昭和三十九年でございますけれども、当時の林内閣法制局長官が、「戦闘的な目的として、殺傷用あるいは破壊用に核エネルギーを使った武器を使うということそれ自身だけで、直ちに憲法違反となるというものではあるまい。」「防御的なものは憲法違反じゃないということばになってくる」と答えておりますし、また、昭和五十三年四月三日の参議院予算委員会におきまして、当時の真田内閣法制局長官が、「通常兵器であっても自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるものは、その保有を許されないと解される一方、核兵器であっても仮に右の限度の範囲内にとどまるものがあるとすれば、憲法上その保有が許されることになるというのが法解釈論としての当然の論理的帰結であり、」と述べ、また、平成十年六月十七日の参議院予算委員会におきまして、当時の大森内閣法制局長官が「核兵器の使用も我が国を防衛するために必要最小限度のものにとどまるならばそれも可能であるということに論理的にはなろうかと考えます。」と答弁しているところでございます。

原口委員 いろいろな前提を詳しく説明いただきまして、ありがとうございます。それは全部わかっていますので、以後はもう結構です。過去の答弁も全部ここに持っております。

 私はその解釈が、今、外務大臣と議論をさせていただきましたが、昭和三十年当時と今とでは、この核の影響、その後の研究、もう比べ物にならないと思うんですね。私は、憲法が核を保有したという論には立ちません。そういう中で少し議論を、ただ理論上のことについてだけ、もうこれからはお答えください。さっきから申し上げているので。

 そうすると、今、必要最小限ということのお話がございましたが、資料一をごらんになってください。

 これは、安倍総理が自民党の幹事長時代に大事な御質問をなさっています。この必要最小限の意味について、安倍総理が御議論されているんですね。ここには、傍線をいっぱい引っ張っていますけれども、必要最小限というのは量的概念なのかということを「数量的な概念を示しているわけでありまして、」と、一番上の段落のところに書いてあります。

 横畠長官に伺いますが、この必要最小限という概念は、安倍総理がこのときおっしゃっているように、数量的な概念でございますか。

横畠政府特別補佐人 必要最小限度という言葉が幾つかの場面で用いられております。一つは、戦力不保持を定めた憲法第九条のもとでの戦力、それに当たらないものとしての、自衛のための必要最小限度の範囲内の実力の保持は禁じられていないという場合の必要最小限度というものでございます。

 このほかに、御指摘の秋山内閣法制局長官の答弁は、集団的自衛権の発動が許されないことについての説明ぶりとして、第一要件を満たしていないからであるということを申し上げたものでございます。

 その際の、質問にございますその数量的という意味についてはちょっとわかりかねるところがございますけれども、法制局の立場といたしましては、いわゆる裁量的、数量的な考え方、判断、別の言い方をすれば、我が国の防衛あるいは我が国の安全のために必要なものは必要な限度で、アナログ的と言ってはあれですけれども、できるところまでできるんだというような、そういう考え方ではなくて、やはり規範性を持った、きっちりした要件を定めて、それに当たる、当たらないということで、武力の行使ができる、できないということを判断する、決めていくという、それが必要であるという考え方でございまして、いわゆる新三要件もそのような考え方に基づいて、憲法上の規範性を維持して、それを具体化したものというふうに理解しております。

原口委員 大事な御答弁ですね。

 つまり、安倍総理がこのときおっしゃっている数量的な概念というのではなくて、英語で言うとコンディションなんだ、要件なんだと。当時、三要件、今の新三要件の前にある、我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず外国のために実力を行使する、こういう要件になってしまうので憲法違反であるということを答弁されて、今も横畠長官が同様の答弁をされたというふうに理解をします。

 そうすると、同じく、我が国には固有の自衛権があり、自衛のための必要最小限の実力を保持することは憲法第九条二項によっても禁止されているわけではない、したがって、核兵器であっても、仮にそのような限度にとどまるものであるとすれば、それを保有することは必ずしも憲法の禁止することではないというのを、今前段でお話しになった。

 同じく、平成二十六年七月一日の閣議決定以前において、我が国は、憲法上、核兵器の使用をできると解されていたか、今度は使用ですね、これはどうでしょうか。

横畠政府特別補佐人 先ほどお答えしました昭和三十九年三月九日の参議院予算委員会における当時の林内閣法制局長官の答弁、これも使用についてでございますし、平成十年六月十七日の参議院予算委員会におきます、当時の大森内閣法制局長官の答弁も、使用について答弁したものでございます。

原口委員 今ずっと、平成二十六年七月一日閣議決定、つまり要件が変わる、前のことについて、要件が変わる前も、使用、保有も憲法上、理論上は許されていた。これは、要件が変わった後も、つまり昨年の安保法制成立後も、変わっていないということで認識してよろしいでしょうか。

横畠政府特別補佐人 御指摘のとおりでございます。

原口委員 核兵器の性質について、核兵器は通常、甚大な被害を広範囲に与えます。自国領域で使用するということは考えることはできない。攻撃国である他国領域での使用を想定している、こういう理解でよろしいでしょうか。

横畠政府特別補佐人 従来から、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと解してきております。

 すなわち、他国において武力を行使するということは、一般的に我が国の防衛のための必要最小限度を超えるということと解しておりまして、個別的自衛権の場合におきましても、誘導弾が多数我が国に飛来する、その発射基地をたたく以外に方法がないというときに他国の発射基地をたたくということも例外的にあり得るという、唯一の例外としてそのようなものを挙げさせてもらっていたわけでございます。

 今般、新三要件のもとで、国際法上は集団的自衛権の行使に当たるようなものも認めることになりましたが、いわゆる集団的自衛権行使一般を認めるものではございません。

 集団的自衛権の行使といいますと、一般の方からしますと、他国を助けるために他国に赴いてそこで戦闘をする、戦うというようなイメージを持たれる方もおられるかと思いますけれども、そのような集団的自衛権を認めたものではございません。

 そこが重要なポイントでございまして、あくまでも我が国と国民の生命、自由及び幸福追求の権利を守るための、我が国防衛のための武力の行使にとどまるということでございまして、言ってみますれば、個別的自衛権の行使でできることを超えること、そのような武力の行使を行うということではございませんし、海外での武力行使が我が国を防衛するための必要最小限度を超えるという考え方そのものは全く変わっていないということでございまして、新三要件のもとで他国に赴いて武力を行使するということは基本的にないということで、これまでも、例外があるじゃないかということでは、いわゆるホルムズ海峡の機雷掃海というのが唯一の考えられる例外ということで御説明させていただいております。

原口委員 法制局長官、私、限られた時間で議論を深めたいと思うので、議論を発散させないでください。

 私が伺っているのは、自国領域では核というのは使いませんねと。もちろん領有権を争った紛争があって、例えばフォークランド紛争とかクリミア紛争であるとか、そういったときに、核の使用が想定されなかったかというと、そうではないかもわからないんです。しかし、一般的に考えると、自国で核兵器を使用するというのはありませんねと。攻撃国である他国領域での使用を想定して、法理論上、憲法は許している、そういう理解でよろしいんでしょうかと聞いているので、聞いたことに直接答えてほしいんです。集団的自衛権について聞いているんじゃないんです。

 他国で核を使用するということは許されますね、法理論上。

横畠政府特別補佐人 他国での武力の行使につきましては先ほどお答えしたとおりで、憲法上、我が国を防衛するための必要最小限度を超えるというふうに解しておりまして、まさか核兵器を他国で使うことを憲法が許しているというふうに解しているわけでは、もちろんございません。

原口委員 今皆さんお聞きになって、では、今まで何回も、私が求めてもいないのに、過去の法制局長官の答弁、保有も使用もできると、それと矛盾しませんか。

 平成二十六年の七月一日閣議決定以前においてという、冒頭でそういう前提で御質問したのは、旧三要件では、我が国への直接の武力攻撃があることを第一要件としていたために、今長官がおっしゃったように、原則として他国領域での武力行使は想定されていなかったんです。このことから、憲法上の核兵器の保有はあり得るとしたとしても、自国領域では使用できないという核兵器の性質に照らし、自衛の措置としての核兵器の使用は現実的ではなく、いわば顕在化してこなかった。

 ところが、例外であったにしても、他国における、今、次の質問を先取りしてお答えになりましたけれども、ホルムズ海峡について例外を認めたために、核兵器を使う場面というのはどこなんだろうという議論になってきたわけであります。

 ホルムズ海峡での機雷掃海は、受動的かつ限定的であるため例外として許容されるのであれば、これが答弁だと思うんですけれども、政府の見解だと思うんですが、明らかに核兵器の使用というのはそれを超えているわけで、憲法上許されないと解するのが正しいんじゃないんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 機雷掃海のために核兵器を使うということは考えられないと思います。

原口委員 機雷掃海のために核兵器を使うなんか言っていませんよ。

 あなた方は、武力行使を、例外を認めたと。一方、先ほどからお答えいただいているように、憲法で核使用というものはできるということであるのであれば、では、それはどこでの核使用を憲法は認めているというんですか。そういう聞き方にしましょう。憲法が認めている核使用は、我が国国内における核使用ですか。

横畠政府特別補佐人 このまま議論していると、前提を忘れないように、やはり我が国は非核兵器国でございまして、核は持っていないわけです。現実的に使うという議論をしているわけではもちろんないわけで、あくまでも憲法の法理上どうなのかというところで、全ての核兵器が禁じられていると解しているわけではないのだということを申し上げているわけで、実際に使うことを考えて何か申し上げているわけでは全くございません。

原口委員 だから、あなたは、私が伺っていることを逆から同じことをおっしゃっているので、私は政策上のことは言っていません。政策上は非核三原則、持ち得ないと。だから、そこには踏み込まないでくださいと言っているわけです。だけれども、皆さんがホルムズ海峡を例外的に武力行使の例とされるから、では、核はどこで使うんですかと言っているわけです。

 私は、核兵器を保有することも使用することも、法理論上も絶対にあってはならないと考えますけれども、政府の論理によれば、この場面では核兵器の使用が許されることになってしまう。本来攻撃的な兵器である核兵器を我が国が保有、使用することは現実的じゃなかったんです。しかも、今回、安保法制による第一要件を拡大してしまっているから、他国領域における武力行使の余地が発生したんじゃないですか。つまり、その保有、使用の現実味が増してしまっているということを認識しなきゃいけない。

 もともと、この何十年にも及ぶ、憲法が核の保有や使用を認めているという考え方そのものが誤りじゃないのかというふうに思うんですが、横畠長官は同じ答弁をされますか。

横畠政府特別補佐人 純粋に憲法上の法理の問題としては、これまでお答えしているとおりであろうと思います。

原口委員 法理を裏づける現実が、だって、皆さんは、この厳しい国際環境に鑑みて、この第一要件、三つの、旧三要件を変えられたわけでしょう。現実に当てはめて、集団的自衛権の一部行使と見られることも認めるんだというふうにされたわけじゃないですか。私は、憲法といえども現実から遊離してあるものではないと思いますよ。

 あの安保法制については、私は、その道を選ぶのではなくて、堂々と憲法改変でやるべきだと思います。集団的自衛権が本当に必要だとすればですね。それと同じ論理を貫くのであれば、これだけ核兵器についての影響、外務大臣もお話しになりました、これから核兵器の真実というのはもっともっと多くの人たちが知ることになるでしょう。そして、この影響は、今ABCCが出しているような調査報告とは全く違うものだと思いますよ。内部被爆についても無視をし、そして、外から入ってきた人たち、死の灰を受けた人たちについてもネグレクトした中でできた安全基準。核兵器なんというのはどこでも使えないんですよ。使えないんだということ、それを持つ理由はどこにもない。

 今、NPTの枠組みも大きく変えなきゃいけないと思っているんです。核は、それを持つだけでもテロリストからも攻撃の目標になる。それが、旧ソ連のように国家が崩壊をしてしまうと、他国に売り渡されたり横流しをされたりする危険がある、リスクの方が高い兵器だ、私はそのように考えるんですが、外務大臣の御見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 先ほど来の議論を聞いておりまして、自分なりに頭の中を整理してみたんです。

 まず、昨年の平和安全法制の議論の中で、我が国は、憲法との関係において、新三要件に該当した場合に限って武力の行使は認められるという考えを示し、そして、その中にあっても、海外派兵については、三番目の要件、必要最小限を超えるということで、一般にこれは行えないという整理を行い、そして、その唯一の例として、受動的な、機雷掃海とかいうホルムズ海峡での行為を唯一の例として挙げた、こういった議論を行ったわけです。

 一方で、核兵器につきましては、憲法上、この保有や使用についての考え方は横畠長官から答弁があったとおりですが、その中にあっても、我が国として、非核三原則、NPT、あるいはCTBT、FMCTを初めとする国際約束、そして、原子力基本法とする国内法、これのどれをとりましても、現実には全く使う余地がないというのは、この議論の前も後も全く変わっていないということだと思います。このように整理して、我が国としては、核兵器の使用、保有、これは全くないということは改めて確認しなければなりません。

 その中にあって、我が国としては、国際社会に核兵器の非人道性をしっかり訴えていかなければなりません。そして、その基盤になるのが正確な認識であり、先ほどから委員が御指摘になられている、こうした現実をしっかり見なければならない、確認しなければならない、この認識であると考えます。

 御指摘の正確な認識の重要性は私も痛感するところであり、それをもとに、国際社会に対しまして、ぜひ、我が国として、唯一の戦争被爆国の立場から、責任ある議論をリードしていきたいと考えます。

原口委員 大臣、少し整理して答弁いただいてありがとうございます。

 さっきから申し上げているとおり、ごくごく例外的な措置としてのホルムズ海峡を挙げているのに、そこへ派兵して核兵器を使えと言っているんじゃないんです。例えば、日本がここから敵地に対して核攻撃をすることもあるでしょう、でも、そのことは憲法上最初から想定をされていないんだ、それは憲法上も許されないんだと考えるのが私は妥当ではないかということで、きょう議論をしてきました。

 残された時間で、あと数点だけ確認をしておきたいと思います。

 経産副大臣に来ていただいていますが、東芝ですね。ここは、同じ核でも原子力、世界の原子力を支える三つのメーカーの一つです。東芝・ウェスチングハウスで、東芝の原子力事業子会社に米国司法省及び米国証券取引委員会の取り調べが入っているという認識を持っていますが、これは取り調べなのか調査の依頼なのか、そこはちょっとわからないんですけれども、日本政府としてどういう認識をお持ちでしょうか。

鈴木副大臣 お尋ねの点につきまして、東芝の米国子会社が、米国司法省及び米国証券取引委員会から会計処理問題に関連して情報提供の要請を受けており、これに対応している旨は承知をいたしております。

 本件につきましては、米国政府が進めている手続でありまして、今後の調査の方向性等につきましては、私どもとしてお答えする立場にはないものと考えております。

 我々経産省としましては、産業を所管する立場から、関心を持って状況を見守ってまいりたいと思います。

原口委員 外務大臣、普通の会社であれば、私はここで取り上げることもしないと思います。ただ、今回、不適切会計の額、かなりの額ですね。報道によると、七千億。

 今、東芝の原子力事業子会社である米ウェスチングハウスの不適切会計について、米司法省は恐らく調査をしている、そういう報道がありました。そこは、事実は今の答弁ではわからないけれども、司法省は徹底して、粉飾決算があればそこに課徴金を課してくる。たしか三倍だったんじゃないですか。七千億、仮に欠損があって不適切会計があったら、課徴金は、その三倍だとすると二兆一千億ですね。

 これは巨大な損失、もし仮にそうなればですよ、ならないことを私は祈りますし、雇用や日本の原子力産業のみならず、世界の原子力の安全性についても極めて危機的な事態だと言わざるを得ない。日米当局間でよく連携をして、そして正しい方向に導くことが必要なのではないかというふうに思います。ここは指摘だけにとどめておきます。

 最後に、安田さん、シリアで連絡がとれなくなっている日本人ジャーナリストの安田純平氏と見られる人物がインターネットの動画で公開されていましたけれども、外務省、安否確認をされているのか、どのように行っているのか、そして救出に向けてどのようにお考えなのか、お尋ねをいたします。

岸田国務大臣 このたび、安田純平氏と思われる人物が映し出された映像が公開されたわけですが、この事案につきましては、安田純平氏が行方不明になっている、こういったことについては外務省としても認知をしておりました。行方不明になっていることが認知されてから今日に至るまでも、政府としましては、さまざまな情報網を駆使して対応に努めてまいりました。

 そして、今回、映像が公開されたことを受けて、総理としても改めて二点指示を出したということで、一つは、政府一丸となって情報の収集、事実関係の確認に全力を尽くすこと、引き続き、関係各国とも緊密に協力し、邦人の安全確保を最優先に対応すること、この二点を改めて指示として発出した次第です。

 引き続き、政府としまして、必要な体制をとって各国と緊密に連携しながら、さまざまな情報網を駆使して全力で対応をしていきたいと考えているところです。

 さまざまな情報に接しておりますが、今の段階では、事案の性質上、これ以上の認識とか評価については差し控えたいと考えます。

原口委員 時間が来ました。ありがとうございました。

 国民の知る権利を守るために、よく、ジャーナリストの自己責任論ということで、まるで見捨てるかのようなことを言う不届きな人もいますが、そんなことにはならないと思います。我が国は民主主義国家、その基盤である知る権利を保障する、そして邦人を救う、その強い決意を外務大臣に求め、また、きょうは質問できませんでしたけれども、ロシアとの北方領土問題解決、日ロ首脳会談、これは三月中かと思っていましたが、まだそのニュースに接していません。

 ぜひ、世界の厳しい状況ですけれども、外交という中で、基本をしっかりと守って日本の国益を最大限にしていただきたい、このことを申し上げて質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

岸委員長 大臣は御退席いただいて結構でございます。

 次に、辻清人君。

辻委員 おはようございます。自民党の辻でございます。

 きょうは、三十分、一般質疑で質問の機会をいただきまして、委員長、理事、委員各位の皆様に感謝を申し上げます。

 冒頭、昨日起こったベルギーでの一連のテロ行為に対して、犠牲者の皆様に心から哀悼の意を表しますとともに、我が国としましては、国際社会と連携して、現在の世界情勢に鑑みて、連携を強く持って、この問題に断固たる決意で対処していただきたいという念を持ちまして、質問を始めさせていただきます。

 今申し上げたとおり、今の中東政策に関して思うことは、仮に我々人類が皆歴史の教え子だと仮定するのであれば、今現在の中東情勢を正しく体系的に理解するためには、それこそ旧約聖書の時代までさかのぼらなければいけないと思うんです。

 ただ、近代の歴史を考えてみれば、これはやはり第一次世界大戦、特に、ヨーロッパと、当時オスマン帝国、中東との関係で制定された、これは当時イギリスが三枚舌外交というふうに批判されたんですが、サイクス・ピコ協定という、この委員会の皆さんだったらもう十分御承知だと思いますが、当時のイギリス、フランス、ロシアで秘密裏にオスマン帝国の領土を分割、割譲する、それが現在の中東の領土の礎になっているのでございます。

 ちょうどこのサイクス・ピコ協定が成立、調印されたのが、一九一六年の五月。それから百年後というのはまさにことしの五月でございまして、日本がサミットの議長国として、当時のアクターであったイギリス、フランス、ロシアはもとより、G7の首脳を伊勢志摩に、一堂に会して会議をするわけでございます。私は、その点について、テロの観点もそうですが、大変重要なサミットになるというふうに考えておりますので、そういった外交日程も含めて、我が国が今置かれている国際状況に照らし合わせて、時間の許す限り質問をさせていただきたいと思います。

 国際政治学上の観点からいえば、それこそテロは非伝統的なアクターでございますが、我が国が置かれている今の東アジアの状況を考えてみますと、依然として、伝統的な、主権国家を中心としたさまざまな課題が山積しております。

 特に、ここ最近で私が非常に懸念していますのは、南シナ海における中国の動向でございます。この点につきまして、ちょっとおさらいになるかもしれませんが、現在の中国の海洋進出の現状に対する政府、外務省の認識、また、中国が今、南シナ海の諸島で建設している空港、これは中国当局は民間航空機使用のものというふうに言っていますが、実際はどうなのか。中国の意図をどのように政府、外務省は分析しているのか。その点について見識を述べていただければと思います。

垂政府参考人 お答えいたします。

 南シナ海においては、島嶼等の領有権に関する関係国の主張が対立する中で、中国が大規模かつ急速な埋め立て、拠点構築、その軍事目的の利用等、一方的な現状変更とその既成事実化を進めており、我が国としても深刻に懸念しております。

 具体的には、本年に入り、中国政府が、南沙諸島ファイアリークロス礁における新たな飛行場の竣工及び民間航空機の試験飛行の実施について公表しました。さらに、海外メディア等が公開した衛星写真により、西沙諸島ウッディー島への地対空ミサイルの配備及び戦闘機の派遣、南沙諸島の四つの人工島におけるレーダーの設置、西沙諸島における新たな埋め立て等が確認されているところでございます。

 こうした中国の海洋進出の意図について断定的に申し上げることは困難でありますが、中国国内における海洋権益、領土、領海の防衛、シーレーンなどに関する関心の高まりといった要因がその背景として指摘されております。

 政府としては、南シナ海における中国の動向等について、平素から重大な関心を持って情報収集、分析に努めているところでありますが、個々の具体的な情報の内容については、事柄の性質上、コメントを差し控えさせていただきたいと存じます。

辻委員 ありがとうございます。

 事柄の性質上とおっしゃいましたが、私は、中国というのは、これから、日本にとって、もう地政学的に考えても、外交で解決するものを外交で解決しなければ健全な両国関係というのは築けないという立場でございます。さはさりながら、今現在南シナ海において中国が行っている行為というのは、歴史的に考えたら当然、今後どういうことが予想されるかといいますと、例えば、この南シナ海において防空識別圏を中国が制定したらどういうことになるか。今、日本はもとより、合衆国、また東南アジア諸国を含めて、日本がこれから、そうなる前に外交努力を結集することが、私は大変重要だと思っています。

 そんな中で、今こういう状況に鑑みて、日本として、特にオーストラリア、フィリピン、ベトナムなどとの連携を私は一層強化すべきと考えていますが、そうした連携強化のための二国間及び多国間の外交的取り組みについて、もう少し深掘りしてお答えいただけますでしょうか。よろしくお願いします。

垂政府参考人 お答えいたします。

 南シナ海をめぐる問題は、地域の平和と繁栄に直結するものであることから、日本にとってのみならず、国際社会共通の関心事項であります。政府としては、開かれた自由で平和な海を守るため、国際社会が連携していくことが非常に重要であると考えております。

 引き続き、関係国への外交上の働きかけ、フィリピン、ベトナムなど南シナ海周辺の国々に対する能力向上の支援等、地域の安定に寄与する活動に取り組んでいきたいと存じます。

 また、G7やASEAN関連の会議などさまざまな機会を捉え、法の支配と紛争の平和的解決の重要性について、関係国と改めて確認していきたいと存じます。

辻委員 ありがとうございます。

 これは、ここ最近始まったことではなくて、今までの、戦後七十年のさまざまな歴史的、外交的経緯の蓄積、そして、この課題に関しては、中国と我が国との関係というのは、外交努力をこれから積み重ねていかなければいけないと私は思うんですね。

 そんな中で、きょうはただいまの時間外務大臣不在ですが、武藤副大臣いらっしゃいますが、私としましては、こういった中国の海洋進出という新しい状況に対応するために、そういった分野を横断的に所管する新しい部署を外務省にぜひとも設けていただきたいと考えていますが、副大臣の所見というか意気込みをお聞かせ願いたいと思います。

武藤副大臣 辻委員にお答えさせていただきます。

 まず、委員も今触れていただきましたので、まず冒頭に、ベルギーで今回事故にお遭いをされてけがをされた方々に、私からも心からお見舞いを申し上げたいというふうに思います。

 また、今質問をお聞きしておりますと、大変、世界的歴史観、そして大局に立った御意見を頂戴しておりますけれども、ちょうどきのう、CSISのアジア経営戦略室の委員長、会長といいますか、バシェフスキーさんとお会いする機会がありました。大変いろいろな議論をさせていただきましたけれども、まさにそこに留学をされて修養された辻先生の大局観に、心から改めて敬意を申し上げたいと思います。

 今の御質問のことでございますけれども、南シナ海をめぐる問題につきましては、地域の平和と繁栄に直結した、我が国を含む国際社会共通の関心事項だというのは、今答弁させていただいたとおりであります。昨今の南シナ海情勢を踏まえて、地域協力、安全保障、国際法などさまざまな観点から外交政策の立案が求められるのは、議員と同じ意識を共有するところであります。

 よく言われます縦割り排除というのは当然でございますけれども、外務省といたしましても、関係部局で連携をしながら、今総合的に取り組んでいるところでもあります。また、外務省だけではなくて、関係省庁含めて、緊密に協力しながら、政府全体として南シナ海をめぐる問題に適切に対処していくことが肝要だというふうに思っております。

 まさに、議員の思いをしっかり受けとめて、引き続き頑張らせていただければと思っています。

辻委員 副大臣、ありがとうございます。逆にお褒めいただきまして、本当に、逆に恐縮でございます。

 中国と関連してなんですが、この問題も含めて、ちょっと話題をかえさせていただいて、ODAの話をさせていただきたいと思います。

 御承知のとおり、来年度の我が国の予算では、十七年ぶりにODAが増額されると。これは、例の中国が主導でつくったAIIBなどに対して、我が国としては、ADBを機能強化してこれからのアジアの繁栄につなげるという意図も背景にはあるんですが、今、中国に対するODAはどうなっているんですか。

 私が知り得る限りでは、中国へのODAは、国交が回復してから一九七九年に始まって、累積額で三兆円以上我が国が中国に対してODAを実施してきました。円借款は停止されていますが、たしか技術協力等々は続けられているというふうに私はお伺いしているんですが、ここ最近の予算における金額と事業内容をちょっと確認させていただけますでしょうか。よろしくお願いします。

豊田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、二〇一四年度の対中ODA実績額について申し上げます。二〇一四年度の対中ODA実績額でございますけれども、JICAによる技術協力が約十四億円、草の根無償、人間の安全保障無償資金協力が約八千五百万円となっておりまして、それぞれ前年度に比べて金額は減少しております。

 また、支援方針に関してでございますけれども、委員御指摘のとおり、中国へのODAの開発支援は既に一定の役割を果たしたものと認識しておりまして、その大部分を占めていた円借款は二〇〇七年、一般無償資金協力は二〇〇六年に新規供与を終了したところでございます。

 一方、例えば、越境公害や感染症、食品の安全等、日中両国の共通の課題であり、日本が協力することにより我が国国民が直接裨益する分野も存在いたします。現在は、こうした協力の必要性が真に認められる分野での技術協力、あるいは草の根無償、人間の安全保障無償資金協力を、一つ一つ内容を精査しながら限定的に実施することとしております。こうした対応に加えまして、最近では先方の費用負担を求める形での技術協力も開始したところでございます。

 対中ODAのあり方につきましては、こうした政府の立場、あるいは中国が置かれている状況も踏まえながら、引き続き不断の検討を行ってまいりたいと考えております。

辻委員 ありがとうございます。

 そういった意味では、全てのODAを中国に対しては否定しているわけではなくて、特に環境問題など、これからNGOやJICAを通して、草の根交流というのはより一層重要性は増してくると思うんです。ですので、その受け皿がODAを通じてのJICAなのか、そうじゃないのか、直接的なさまざまな支援も検討されているというふうに聞いていますが、特に民間の需要も考慮した上で、より機動的に使っていただければと思います。

 ここからちょっと、これからの外交日程に関連して御質問をさせていただきたいと思います。

 もう御承知のとおり、今月末から合衆国のワシントンで核セキュリティーサミットが行われます。総理も出席する予定ですが、それに関連して、ちょっと私、最近、懸念といいますか、報道を通じて知ったことで危惧していることがあります。アメリカの上院議会の公聴会で、月末にオバマ大統領も出席する核セキュリティーサミットに向けてヒアリングが行われまして、先週の話ですが、そこで合衆国のカントリーマンさんという国務次官補が、日本と中国を同列に、今の日本のプルトニウムの再処理施設、核燃料サイクルについて大変批判的な発言、異例的な発言をしたんですね。その中で、何が背景にあるかといいますと、日本のそういった再処理の方向性と、これから中国と韓国も同じような方向で検討を進めているが、これが核不拡散に反するんじゃないかという形で、上院のヒアリングで答弁をしているんです。

 日本は、もう一九八八年に、日米原子力協定以降、今のIAEAの査察も全て、抜き打ちのものも含めて受け入れていますし、透明性に関してはしっかりと担保している国でございます。ですので、そういった懸念を合衆国側が持つ、そして、そういった情報をもとに月末に行われる核セキュリティーサミットでオバマ大統領が挑むというのは、私は大変これはゆゆしきことだと思っています。

 そういった中で、日本側として、そういった月末のサミットもそうですが、反論といいますか、どういったお立場でこれは説明をしているのでしょうか。お願いします。

相川政府参考人 先生御指摘の米国務省次官補の発言でございますけれども、一般論として、民生用再処理に関する米国の従来の見解を述べたものと認識しております。我が国が再処理を含む核燃料サイクルを推進していくという方針に関しましては、米国政府も理解していると考えているところでございます。

 先生御指摘のとおり、我が国におけるプルトニウムを含む全ての核物質はIAEAの保障措置のもとに置かれておりまして、IAEAより平和的活動であるという結論を得ているところでございます。また、我が国は、プルトニウムに関し、国際的な指針よりもさらに詳細な情報を独自の自発的な措置として公表するなど、核物質の透明性を適切に確保しているところでございます。

辻委員 ありがとうございます。

 ちょうど昨日も、おととしの核セキュリティーサミットで我が国と合衆国が合意したプルトニウムの返還を、茨城県からその専用船が出港をしたやさきでございますので、そういった透明性を確保して、ぜひとも日米の原子力協定が切れる二〇一八年以降もしっかりと延長できるように取り組んでいただければと思っています。

 また、ちょっとこれはそれに付随してというか、この核セキュリティーサミットで日中の首脳会談が実現する可能性があるというふうに聞いているんですが、その可能性についてお答え願えますでしょうか。

武藤副大臣 お答えさせていただきます。

 中国はもちろんですけれども、核セキュリティーサミットの際の二国間会談につきましては、まだ何も決まっておりません。

 中国とは、累次の首脳会談、外相会談を通じて、戦略的互恵関係の考え方に基づいて、さらなる関係改善を図っていくことで一致しております。次の日中の首脳会談につきましては、具体的にまだ何も決まっておりませんけれども、日本側の対話の扉はいつもオープンであり、機会を捉えて実現していきたいと考えております。

辻委員 ありがとうございます。

 サミット、いわゆる伊勢志摩サミットの話をさせていただきたいと思います。

 これはちょっと総花的な質問なんですが、日本は議長国でございます。先ほど申し上げましたように、そういった、世界が今混沌としている状況の中で、さまざまな課題がそこで提唱されると思いますし、日本としては議長国として大いにイニシアチブをとっていただきたいと思っていますが、日本の議長国としての役割と目標についてお答え願います。

道井政府参考人 御答弁申し上げます。

 本年は、国連安保理の非常任理事国入り、TICADの初めてのアフリカでの開催、日中韓サミットの我が国での開催など、日本外交が世界を引っ張っていく一年になるかと存じます。G7伊勢志摩サミットは、そのハイライトというふうに捉えております。

 このような伊勢志摩サミットにおきましては、我が国は、G7の議長国といたしまして、地域や世界の平和と安定のために、グローバルな視点に立って将来を見据え、最も適切な道筋を示すことによりまして世界をリードしていく、かような立場にあるものと考えます。

 具体的には、サミットの場におきまして、不透明性を増す世界経済をめぐる諸課題、また、テロ、難民問題、中東、ウクライナ問題といった地域情勢を含みます外交・安保問題、さらには気候変動や開発の問題など、世界が直面するさまざまな課題を取り上げてまいりたいというふうに考えております。

 また、四月には、岸田外務大臣が広島におきましてG7外相会合を主催いたしまして、政治、外交分野で率直な議論を行い、伊勢志摩サミットの成果につなげることとしております。

 以上、こうした機会を通じまして、国際社会に対し明確なメッセージを発出し、G7議長国としてのリーダーシップを発揮していく、かように考えている次第でございます。

辻委員 ありがとうございます。本当に、ぜひともそこは精力的に、慎重に取り組んでいただきたいと思います。

 それにまた関連してなんですが、先ほど原口委員も最後におっしゃっていましたが、ロシアとの関係についてです。

 四月にロシアの外相も来日しますし、五月上旬には、総理がソチを訪問時にプーチン大統領と首脳会談を予定されているなんという報道にも触れていますが、せんだって、NSCの谷内さんが合衆国に赴いた際に、特に欧米諸国からは、今の日ロ関係について大変懸念の声も上がっていることも事実でございます。

 ただ、特に北方領土も含めた日ロ間での平和条約締結というのは、これは日本が抱えている大きな外交課題の一つであると私は確信しています。

 個人的な話になりますが、昨年、ちょうどメドベージェフ首相が択捉島に上陸する際に、北方領土の国後島に有志でビザなし交流で訪問した際に、何もないといいますか本当に古い建物の中に、突如として、明らかに国費を投入してつくった建造物が乱立しているのを見て、これは日本としては今の安倍政権で、北方領土返還に向けて特にことしは大きなチャンスだと私は思う一方で、ロシアなくしては、今の中東政策も含めてさまざまな世界課題に対して歯抜け状態になってしまいますので、欧米諸国とのバランスをとりながら、これからのサミットに向けて、我が国が独自で抱えている利益、そして欧米諸国、世界の国々と共有する部分と、そこのバランスをとるということが非常に難しいと私は思うんですが、そこら辺の部分で、今外務省がどう取り組もうとしているのか、御見解をお願いします。

武藤副大臣 日ロ、ロシアとの問題の最大懸案であります北方領土問題を解決するためには首脳間のやりとりが不可欠であるというのは、我々の一貫したところであります。また、北朝鮮情勢、今先生がおっしゃられた、テロとかシリア、ウクライナなど、国際社会が直面するさまざまな問題についても、ロシアとの建設的な関与を得ていくことが大変大事であるというふうに思っております。

 そうした観点からは、さまざまな首脳対話の機会を持つことが重要でありまして、プーチン大統領の訪日前のしかるべき時期に、安倍総理がロシアを訪問する方向で調整を進めていくことになっております。

 今、アメリカのお話もございましたけれども、日米間の外交上のやりとりについてはお答えを差し控えさせていただきますけれども、対ロ政策をめぐっては、米国と緊密な意思疎通を図っております。ウクライナ情勢を初めとしまして、国際社会の直面する課題について、G7の連帯を重視しつつ、適切に対応していく方針に変わりはございません。

辻委員 副大臣、ありがとうございます。

 さまざまな外交日程が重なっている中でございますけれども、ぜひとも糸を通すような形で、本当にこれから外交を強化していかなければ日本は生き残れないと私は思っていますので、ことし、そういったさまざまなチャンスをつかんでいただければと思います。

 時間ももう迫っていますが、最後にどうしても、ちょっと私が個人的に本当に思いを寄せている問題について質問させていただければと思います。

 今、外務省が行っている日系人招聘プログラムについてですが、先週も日系人のリーダーの方々が日本に招かれまして、私も日米議連の一員としてそこに参加をさせていただきましたが、今具体的にどういうプログラムがあるのか、ちょっと御説明いただけますでしょうか。

武藤副大臣 日系人を対象とするさまざまな招聘プログラムでありますけれども、北米地域については、各界の指導的立場にある日系人を対象とする在米日系人リーダーの招聘、そして米国高校生を対象とする新日系人招聘を毎年実施しておりますが、これまでにそれぞれ計百八十六名及び計三十八名が訪日をしております。

 それから、在加日系人についても、在加日系人リーダー招聘を毎年実施しておりまして、これは計四十一名が訪日しております。

 またさらに、対日理解促進のためですけれども、KAKEHASHIプロジェクト、御存じのとおりだと思いますけれども、米国の大学生である日系人を対象といたしまして、これまでに計二百八十二名が訪日をしております。

 またさらに、中南米に関してですけれども、一九七〇年代から、日系人を含む若手、中堅の指導者の招聘を行っております。特に、一九八八年から二〇〇八年には、中南米諸国から若手日系人を毎年平均十名招聘しております。そして、このプログラムは二〇一二年にまた再開しておりますけれども、次世代のリーダーとなることが期待される日系人との連携強化やネットワーク構築を目的といたしまして、中南米各国から毎年計八名程度招聘をしておりまして、これまでに計四回の招聘を通じて累計三十名が訪日をしております。

 このほか、二〇一五年度には、対外発信強化を目的としまして、発信力に秀でた日系人を二十名招聘しております。

辻委員 ありがとうございます。

 なぜこの問題に対して関心が非常に強いかというと、私の父親も戦時中にアメリカの日系人収容所で生まれた日系人でございまして、そういう意味では、今もそうですが、片一方の親が日本人でありながら、成人するまで日本に来たことがない日系の方々がたくさんいます。

 イスラエルなんかは、バースライトといって、年間四万人、一九九九年から今まで延べ五十万人、十八歳から二十六歳に限定した、片方の親がイスラエル系だったら、イスラエル政府が援助をして、十日間全て宿泊費から交通費まで無料でイスラエルを見てもらう、そういったプログラムを実施しているんですね。私もアメリカにいるときに、同級生の学生がそれに行ってくるということで応募をして、大変高い倍率なんですが。

 それこそ第三親等内に日本人の方がいらっしゃる方とか、そういった枠組みで、ぜひともこれから日本にもっと招致するプログラムをつくっていただきたい。それは決して慈善事業じゃなくて、これから、それこそ合衆国における慰安婦像のことも含めたり、いろいろな観点で、現地におけるロビー活動も含めて、日系人に今の日本の味方に、応援団になっていただかなければいけない。これは、これから国際社会で国際結婚をしたり海外で御子息を育て上げる方々がふえていく中で、私は日本にとっては喫緊の課題だと思っています。

 これから国境の垣根が低まっていく中で、さまざまな課題があります。我が国を取り巻く国際環境は厳しさを増していますが、私は、きちっとした外交努力によって日本人の安全と平和を構築し守るということがまさに外交の一丁目一番地だと思っていますので、今の安倍政権の外交、そしてことしのさまざまな外交日程の成功を祈念しまして、質問にかえさせていただきます。

 ありがとうございます。

岸委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時十八分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時二十五分開議

岸委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。篠原豪君。

篠原(豪)委員 維新の党の篠原豪でございます。

 前回の所信質疑でもお話しさせていただきましたけれども、岸田外務大臣、所信の冒頭でも、本年は日本外交にとって重要で責任の重い一年だと述べられております。G7サミット議長国、そして国連安保理非常任理事国、日中韓サミット議長国、そしてアフリカ開発会議、これはこの間お話しさせていただきましたけれども。私としましても、ぜひこういった機会を通じて、日本の国益を増進させるために、グローバルな課題解決に日本が貢献していくように、本年は、国際関係において、特に我が国にとってはさまざまな場面で中心的な役割を果たしていく年だと考えておりますので、ぜひ頑張っていただきたいというふうに願っております。

 本日はこういったことに関連しましてお伺いしたいと思いますけれども、これに先立って、この国際関係を考える意味においても、先週、今週、きのうと、非常に大きな動きが起きています。ですので、こういった点から確認をさせていただきたいと思います。

 幾つかの質問がきょうの質疑と多少重なるところがあるかもしれませんけれども、その点は極めて重要な問題だと私も捉えておりますので、しっかりとお答えをいただきたいというふうに、どうぞよろしくお願いいたします。

 きのうのことからお話を伺いたいと思います。

 これは、大変痛ましい、憤りを感じる事件でございますけれども、日本から直行便が出ているベルギーのブリュッセルの空港、そして市内の地下鉄の駅でテロによる爆弾事件がございました。犠牲になられた方々に対しましては謹んで御冥福をお祈りいたしますとともに、被害に遭われた方々、これは先ほどの質疑でも外務大臣の方から、日本人の方も重傷者一名、軽傷者一名ということで、これは本当に大変なことでありまして、心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い回復をお祈り申し上げます。政府としてもこの方々をしっかりとサポートしていただきたいと思います。

 報道による直後の映像を私も拝見させていただきましたけれども、このベルギー、日本人の方が五千名以上暮らしているというふうに聞いています。大変多くの日系企業が、それこそヨーロッパの中心としてEUの本部もありますし、企業も非常に大きな企業がヨーロッパ戦略の拠点を構えるようなところでもございます。

 こういった中で、生活、活動の居を構えている当地のことで、まだきのうのきょうでありまして、これは厳戒態勢がしかれているということでありますので、大変心配しています。

 一部の報道によりますと、ベルギー当局はテロ警戒態勢を最高レベルに引き上げて、住民の方々には外出をなさらないように求めていたり、あるいはまた国境を封鎖して出入国を制限する動きにつながるといったようなことも見せているというふうに思います。

 こういったさまざまな情報が飛び交う中、きのうは日本からの直行便も飛行を続けて、最後ダイバートして違う空港に着陸したと聞いていますけれども、これも多くの日本人の方が乗っていますし、その空港も日々本当に多くの日本人の方々がいらっしゃるところであります。

 こういった中で、その真偽の状態というのがなかなか把握しづらい、こういうときはいつもそうだと思うんですけれども。それでも、やはり日本にいらっしゃる御家族の方々、五千名も向こうに暮らしていらっしゃいますから、あるいは関連企業、二百社以上が出ているというふうに聞いています、こういった中で大変心配なさっていると思います。

 そこで、先ほどの質疑におきましては、日本人の現状の被害というものについてお答えをいただきましたが、私としては、まず政府として、今いらっしゃる在留邦人の皆様そして関連企業の皆様に対し、現時点でどのような対応をとられてきているのかについて、具体的にお伺いできればと思います。

岸田国務大臣 二十二日の朝、ベルギー・ブリュッセルで爆弾テロ事件が発生したわけですが、現状、政府としましては、邦人の安全確保そしてそのための注意喚起、これが最も大切な任務であると考えます。

 そして、外務省におきましては、ベルギーにおけるテロの脅威に関しまして、十六日の日にベルギーで銃撃戦が発生いたしております、その銃撃戦の発生に伴って、既に海外安全情報、スポット情報を発出するなど注意喚起を行ってきました。

 そして、今回この爆弾テロ事件が発生したわけですので、本事案を受けまして、まず、外務省本省では情報連絡室、そして現地ベルギー大使館では現地対策本部、これを設置しまして邦人の保護に全力を尽くしている次第です。速やかに海外安全ホームページにおいて海外安全情報、スポット情報を発出し、そして日系企業を含めて在留邦人及び短期渡航者に対してメールを発出するとともに、現地の日本人会等を通じて注意喚起を行った次第であります。

 本事案についての犯行声明が発出されていると承知をしていますが、事件の背景等については現地ベルギー政府が捜査中であり、我が国としまして、ベルギー政府とも連携しつつ、引き続き海外の邦人の安全確保については万全を期して取り組んでいきたいと考えます。

篠原(豪)委員 ありがとうございます。

 迅速な対応をしてくださっているというふうに信じていますので、ぜひ引き続き、いろいろとあると思いますので、御対応いただければと思います。

 今回の事件が起きて、英仏が緊急閣議を行ったり治安当局幹部が参加する緊急会議を招集したり、対応を協議している中で、G7のサミット関係国の首脳も、これは大臣も含めてですけれども、メッセージを発しています。私が報道を見ている限りではロシアが早かったのかなというふうに、まあ、これは報道なので実際の順番はわかりませんけれども、どんどんと出てくる状態でございました。

 これに対して、我が国としても今回の件についてどのように考えており、現段階までに政府はどのような国際的なメッセージというのを発信しているのかということ、ここは大事だと思いますので、ぜひ確認させていただきたいと思います。

岸田国務大臣 今回のブリュッセルにおける非道、卑劣なテロ行為によって多くの犠牲者が発生していること、このことについて強い衝撃そして憤りを感じています。まずは、犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表し申し上げたいと思いますし、負傷された方々にお見舞いを申し上げます。そしてあわせて、ベルギー及びヨーロッパが困難に直面している今、強い連帯を表明したいと考えます。

 いかなる理由であれテロ行為は許されるものではなく、断固非難をいたします。我が国は、G7議長国として、ベルギーを含む国際社会と連携して、テロ、暴力的過激主義対策、これを強化するために積極的に取り組んでいきたいと考えています。

 そして、今申し上げたような趣旨のメッセージを、安倍総理からミシェル・ベルギー首相、そして私からレンデルス・ベルギー外相及びモゲリーニEU上級代表に対して伝達いたしました。こういった形で、日本政府からの対外的な発信、考え方あるいは受けとめに対する発信を行っている次第であります。

篠原(豪)委員 ヨーロッパではこういったことが最近どんどんと本当に顕在化してくるという状態で、非常に大変これからが心配されるというところにあると思っています。

 いつ何どきこういったような事件が起きるかというのが、想像の範疇を超えて起きてくるのがテロだというふうに理解しています。そのときに、政府としては何よりも、当該地域を中心に、今心配されている地域ですね、大きくこの問題が起きているところについて、外国の関連機関と連携をして対策を打っていただきたいというふうに、これはもう継続的にやられていることかもしれませんが、大事だというふうに思っております。

 このことに関連して、岸田大臣、先週末ですかね、三月の十九日から二十一日ですので、さきおとついまでですか、イタリアとバチカン、フランスを訪問されています。国会日程の合間の三連休を利用して、そういった外交活動に、お忙しい中当地まで出向いていってフルにされているということに対しましては、敬意を表します。

 その中で、今回の目的についてまずお伺いをさせていただきたいと思います。

岸田国務大臣 今般の私のイタリア及びフランス訪問の目的ですが、まず第一には、四月の十日、十一日にG7の外相会談が予定されています。もう三週間を切ったわけでありますが、この時点において、私自身G7の中で唯一訪問していなかったイタリアを訪問させていただき、あわせて、先日外務大臣が交代いたしましたフランスを訪問させていただき、イタリアの外相そしてフランスの新外相との間において、テロですとか暴力的過激主義対策など国際的な課題について意見交換を行い、そして、G7広島外相会談に向けて連携を確認し、準備をしっかりと確認する、こうしたことで行かせていただきました。

 そして、あわせて、イタリアを訪問いたしましたので、バチカンを訪問いたしました。言うまでもなく、バチカンは国際的なさまざまな影響力、大きな影響力を持つ存在でありますので、日本の外務大臣としては久方ぶりでありますが、バチカンも訪問させていただきまして、ギャラガー外務長官とも会談をさせていただき、国際的な諸課題について認識を共有させていただいた。こういったことを行わせていただきました。

 こうした議論を通じまして、G7外相会談の準備という意味においても意義ある訪問を行うことができたと受けとめております。

篠原(豪)委員 私がちょっと見させていただいている中では、二十日、日曜日に、フランスの新しいエロー外務大臣と会談を行っていると伺っています。このときの時間が結構長かったと聞いていますので、今回のような件も含めて、フランスですので、具体的にいろいろとお話があったと思います。

 ですので、できる範囲で、どのようなお話をされてきたのかということをお伺いさせていただければと思います。

岸田国務大臣 エロー外務大臣、大変親日的な政治家であるという評価があり、そして、何よりも、フランスにおきまして、元首相でもあります。こうしたエロー新外務大臣と初めてお会いをし、意見交換を行い、何よりも我が国の外交方針、考え方についてしっかりとインプットさせていただく、このことは大変意義あることであったと思っております。

 加えて、暴力的過激主義対策あるいは軍縮・不拡散、あるいは海洋の安全保障、こういった国際的な課題、さらには地域情勢等についても幅広い議論を行いました。そして、G7外相会談に向けて連携を確認した、こういった次第であります。

 その中で、G7外相会談においては、やはりテロ、暴力的過激主義への対応、これが最重要課題の一つであるということについて外相間で一致をいたしました。この点に関しましては、エロー大臣に対しまして、我が国は今般、シリア国内、主に包囲された地域に対する五百万ドルの緊急人道支援の実施を決定した、こういった旨伝えさせていただきまして、評価を得た次第であります。

 そして、核軍縮・不拡散、この分野につきましては、核兵器国と非核兵器国の協力が重要であるということ、そして実践的かつ現実的な措置を積み上げることが重要であるということを申し上げ、核兵器国でありますフランスの外務大臣に御理解をいただき、そして、ともに核兵器のない世界に向けて力強いメッセージをG7外相会談で発していこうということについても一致をさせていただいた、こういった次第であります。

篠原(豪)委員 今、五百万ドルの緊急人道支援も含めて、いろいろとお話をなさってきたということでございますけれども、このヨーロッパ地域、今、緊急人道支援として、これは喫緊の課題で、日々情勢が変わっていってきているのが、難民の方々の問題だというふうに思います。

 この移民問題というか難民の問題というか、最近の流れで、本当にいろいろな問題が起きて各国の判断が変わってきている中で、他方で、日本としては、こういった難民の方々、緊急人道支援としてその五百万ドルの支援ということ以外に、具体的にどのような立場をとっていて、そして現段階ではどのような対応を、何かとっていることがあれば教えていただきたいと思います。

岸田国務大臣 難民問題に関しましては、欧州に二〇一五年だけで百万人を超える難民がシリアあるいはその周辺国から押し寄せている、こういった深刻な状況になっています。特に、ヨーロッパ諸国にとっては、この難民問題、大変大きな課題であるということで、恐らくG7外相会談においても大きな議論になると予想をしております。

 その中で、我が国がどう貢献するかということですが、こうした難民の流出の背景には、シリア、イラクを初めとする周辺国における大変非人道的な状況があるのだと思います。シリアにおいては、六百六十万人の国内避難民が発生をしています。海外にも四百八十万人の難民が流出しているわけですが、それとは別に六百六十万人の国内避難民も発生している。こういった状況でありますので、日本としては、このシリア、イラクを初めとする地域の安定にしっかり貢献するということ、これを我が国の役割としてしっかり考えていかなければならないと思います。

 この地域において安定した穏健な社会を築いていく、これが難民問題の根本解決のためには重要であるということを考えます。難民の受け入れ等においてヨーロッパ諸国は大変な苦労をしているわけですが、その中にあって、我が国はこの難民問題の背景にある地域の安定のためにしっかり貢献をしていく、これが我が国の強みで、我が国が果たすべき責務であり、役割であると認識をしております。

 そういった観点から、先ほど、この地域において、包囲された地域の非人道的な状況に勘案して、緊急人道支援五百万ドルを決定したと申し上げましたが、そもそもその以前の段階として、我が国は、シリア、イラク等の地域に十二億ドルの支援を実施しておりますし、その周辺国に対する支援三・五億ドル、合わせて約十六億ドルの支援を行ってきております。

 ぜひ、我が国としましては、こうした我が国の強みであります人道支援を中心にしっかりと貢献をしていきたいというふうに思いますが、G7各国におきましても、それぞれの強みを発揮することが重要であると思います。それぞれの強みを発揮し、それが補完的に成果を上げ、そしてお互いに相乗効果を発揮する、こういった全体をしっかりとつくり上げていくことが重要だと考えますので、G7外相会談におきましても、ぜひ、こうした各国の取り組み、全体像をしっかり確認する、意義ある会議にしていきたいと考えます。

    〔委員長退席、土屋(品)委員長代理着席〕

篠原(豪)委員 G7サミットにおいても、今後、このようなテロや移民問題に対して、国際社会が結束して、そして反対する姿勢を示すことが期待されている中で、今おっしゃったようなことを、この機会を捉えてしっかりと連携をしていっていただければというふうに思っています。

 岸田大臣は、これまでも、こうした中東における状態に対して、テロとか暴力的主義に対する対策においても、やはりG7各国がそれぞれの強みを生かした対応をとっていくことが重要であると考えている、また、各国がそれぞれ強みを生かした対策を行い、それがお互いに補完的な関係をつくり、さらには相乗的な効果を発揮する、そういった体制をメッセージとして発することが重要と考えている、それぞれの強みを生かした対応で、我が国日本としては、非軍事分野におけるというふうにおっしゃっていまして、非軍事分野における支援、今の人道的支援もそうでしょうけれども、貢献が大事だと思っていますというふうにおっしゃっていますので、この非軍事的分野における支援というのをこれからやはりしっかりやっていただきたいと思いますし、これはちょっと時間があれば、後ほどまた違う項目でも触れさせていただきたいと思っています。

 おっしゃられるとおり、日本は人道的な支援というのが最大の強みであるということは、それはそうなんですが、これはヨーロッパの話であって、では今度、北東アジアについて、地域をかえて見た場合について伺いたいと思うんです。

 こちらもつい先日の話で、先ほどの委員からも少しありましたけれども、北朝鮮が今月三日に新型のロケット六発を日本海に向けて撃って、さらに十日にも短距離弾道ミサイルと見られる二発を発射して、そして十八日には、韓国国防省がノドンと見る中距離弾道ミサイル二発を発射しました。これは射程距離を調整したんじゃないかなんということも言われているんですけれども、一つは八百キロ先の日本海に、もう一つは空中爆発したと見られて、緊張が再び走っています。一昨日の二十一日、またも五発の飛翔体を発射したということが伝えられています。

 やはり、心配なのは、北朝鮮メディアが、近いうちに核弾頭の爆発実験と核弾頭装着可能な数種類の弾道ロケット試射を断行するというふうに報じていまして、これを裏づける衛星写真がアメリカの北朝鮮分析サイトによって公開されているというふうに考えています。

 これに対して、韓国大統領が、今後も再び挑発を行うのであれば、これは懲らしめる万全の体制を備えると。そして、十八日には、アメリカのカーター国防長官も、米軍は北朝鮮ミサイルの発射に備えて、米国、韓国、日本を守るためにミサイル防衛システムを配備済みだというふうに報道がありました。

 そこで、まず、最近の北朝鮮の一連の動きに対して、政府はそれぞれに対しどのような評価を行っているのか、そして、現在までにどのような対応をとってきたのか。これは米韓との連携を含めて伺いたいと思います。

岸田国務大臣 ここのところの一連の北朝鮮の行動ですが、まずもって、年が明けてから核実験を行い、そして弾道ミサイルの発射を行う、こういったことは累次の安保理決議に反するものであり、国際社会としては強い対応を示さなければならないということで、各国とも独自の措置を公表し、そして強い内容の安保理決議を採択したということであります。

 しかしながら、この安保理決議採択後も挑発行動が続いているということ、引き続き、核開発、ミサイル開発を放棄する姿勢を示すことなく挑発的な行動を示しているということ、これは断じて容認できないと考える次第であります。

 北朝鮮に対しては、累次の安保理決議を遵守し挑発行動を行わない、挑発行動を自制する、こういったことをしっかり働きかけていかなければならないというふうに思っていますが、まずは安保理決議、そして各国の独自措置の実効性をしっかり確保することが大切だと考えております。その上で、北朝鮮の反応を見ながら、北朝鮮から前向きな反応を引き出すためにはどうあるべきなのか、これを国際社会としっかり連携しながら考えていかなければならないと考えております。

 いずれにしましても、あらゆる事態に備えなければなりません。我が国としましては、国民の安全、安心のために万全の体制で備えておかなければならないと考えます。

    〔土屋(品)委員長代理退席、委員長着席〕

篠原(豪)委員 関係各国と連携をしていて、そしてあらゆることをやっていかなければいけない、それはそうだと思うんですが、一番近いところで、私が報道等を見せていただいている中では、今月三十一日にアメリカのワシントンDCで核安全保障サミットが開かれるというふうに聞いております。その場において日米韓首脳会談、これも行われるというふうに聞いています。

 これに対抗して、二年前ですか、同じような会合をしたときに北朝鮮がミサイルを発射したというようなことがあったかどうか、そういった報道に接したような気もしますけれども、予測されない事態がまた起きることも。先ほどあらゆる可能性を想定し万全に備えるという話でしたので、このことについては、今月末というのが一つまたありますので、ぜひ、外務省としてもしっかりと連携をとって、どういうふうに対応するのか。これはなかなか相手があることですので、できること、できないことというのは現実にあるかもしれませんが、備えあれば憂いなしでございますので、できることはやっていただきたいというふうに思っています。

 この問題に関連して、先ほどおっしゃっていたところでもあるんですが、ことしだけで見ても、本年一月に核実験を強行した、二月には事実上の弾道ミサイルを発射した、そして二度の国会決議を我々も行っています。その上で、我が国は二月に独自の制裁を決定していますけれども、今月二日には、さらには、北朝鮮への制裁に関する新たな国連安保理決議が採択されています。

 そして、今申し上げましたように、ここ一連の動きを見ても、これらの制裁について本当にどう実効性を高めていくのか、そして、我が国が目指す拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決にやはりつなげていくというのが焦点となっているというふうに思います。

 そのためにも、今、G7サミットという枠組みで実は聞いているつもりなんですが、このG7サミットにおいて北朝鮮に関する強いメッセージを、やはり我が国が議長国でありますし、これを発していくことが重要なんだろうと思っています。では、そのときにどういうふうに外務大臣としては、やはり議論を主導していく立場でありますので、やられていくおつもりか、お伺いをさせていただきたいと思います。

岸田国務大臣 北朝鮮による核実験、そして弾道ミサイルの発射、これは国際社会の平和や安定にかかわる明白な脅威であると考えます。ぜひ、国際社会として断固たる姿勢を示さなければならないと考えます。その中にありまして、我が国は、この核、ミサイルとあわせて拉致問題、こうした問題、諸懸案を包括的に解決していかなければならないと考えます。

 かかる観点から、G7の会合におきましても、まずは四月のG7外相会談におきまして、北朝鮮問題を含めた諸課題についてしっかりと率直に議論しなければならないと思います。そして、五月の伊勢志摩サミットにおいては、経済問題を初めさまざまな議論が行われますが、その中において議論される外交・安保問題の議論に、ぜひこの外相会合での議論をしっかりつなげていく、こういったことで国際世論をリードしていくことが重要ではないかと考えます。

 北朝鮮問題につきましても、しっかりとした議論を行い、メッセージを発することにつなげていきたいと考えます。

篠原(豪)委員 もう一つ、サミットに対して、北東アジア情勢ということでいいますと、中国に対してどのような対応をとられていくのかということもお伺いさせていただきたいと思います。

 先週、ホスト・ネーション・サポートの議論の中でもありましたけれども、他の委員からも、私からもお話しさせていただきましたが、中国の尖閣諸島周辺での領海侵犯や南シナ海の人工島造成、滑走路建設等、中国の挑発的な行動が東アジア地域の海洋安全保障上の緊張を高めているというふうに考えています。これはやはり国際ルールの中では容認されるものではないんだろうという日本の立場だと思います。その中で、このサミットにおいて、このような今の中国の行動に対して、国際社会がやはり結束して、これに反対をする姿勢を示すことが期待されているんじゃないかというふうに思います。

 ですので、この点に対して、岸田大臣としてはどのように考えていて、また議長国の外務大臣としてどのように行動されていくおつもりなのかということについてお伺いいたします。

岸田国務大臣 まず、東シナ海においては、中国公船による領海侵入が繰り返されていますし、また一方的な資源開発も続けられています。また、南シナ海においては、一方的な現状変更の行為が継続しており、我が国としましても深刻に懸念をしているところです。

 G7外相会談におきましては、やはり開かれた、そして自由な平和な海を守るために国際社会が連携していくことが重要である、こういったことはしっかりと確認しなければならないと思いますし、法の支配と紛争の平和的解決の重要性、これについてもぜひ確認をしていきたいと考えます。こうした議論を行った上で、五月のG7伊勢志摩サミットに議論をつなげていきたいと考えます。

篠原(豪)委員 G7サミットについて、これまでいろいろと、国際関係の中で最近のいろいろと起きている事件であるとか課題というものについてお伺いをさせていただきました。その点について、G7という機会を生かして、外務省としては、外務大臣としては、また我が国としてはどうしていくのかということに対してお伺いしました。

 やはり、ちょっと話が戻るんですけれども、ひとつ気になるのがきのうの事件でございます。

 これはもう厳戒下の空港でも防げなかったということでございます。これは質問の通告はしていないんですけれども、サミットをこれからやるに当たって、今いろいろとお話を伺ってきた中で、岸田外務大臣もヨーロッパに行って、先週末もいろいろとこういった話もされてきていて、いろいろな身近にお話も聞いて、そして実際に行ってきたすぐそばのところで、あるいは行ったところでもそういったテロ事件が起きた。

 これから日本でG7サミットを迎えるに当たって、欧州各国の空港などでは昨年暮れから厳戒態勢をしいているにもかかわらず、これで再度大規模テロが防げなかったというふうになっています。これはやはり衝撃をなかなか隠せないですし、我が国がG7のときにいろいろな方々がいらっしゃるし、東京オリンピックもそうなんですけれども、そこを考えたとき、これは人ごとじゃないんだろうというふうに思います。

 このことについて、これはいろいろな関係省庁があると思うんですけれども、サミットを主催する外務大臣として、空港も含めて、海外からの、先ほどはいろいろと難民のお話ありましたけれども、いろいろな方々が入ってくる中で、これをどうしていくのかということについて、どういうふうにお考えをされていて、今回の件をもう一度考えたときに、どういうふうにG7サミットまでやっていかなければいけないというふうにお考えか、今思われている範囲で結構ですので、教えていただければと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、テロ対策、テロとの闘い、これは国際社会の最も重大な課題のうちの一つであると考えます。

 そして、テロにどう対応していくのかということについては、まずもって多くの国々と連携しながら国際社会全体として取り組んでいかなければならないという課題です。そして、まずはテロ対策ということで、水際対策ですとか資金対策ですとか、こうした具体的なテロ対策を各国と連携しながら進めていかなければなりません。また、必要とされる国や地域に対しましては、テロ対応能力を向上するための支援も必要になってくる、こういったことを感じます。

 ただ、この問題は、中長期的に考えたならば、やはり、暴力的過激主義に走らない、寛容で穏健な社会をつくっていくということを考えていかなければなりません。そのためには、先ほど申し上げました、シリア、イラクを初めとする、難民等が多く発生している地域に対する支援も大切でありますし、また、こういったテロの背景には、やはり貧困とか格差、こういったものが存在いたします。こうした問題にもしっかり取り組んでいかなければならないと思います。

 さらには、中東地域等、紛争や非人道的な状況が発生している地域とさまざまな人的交流等を通じて理解し合う、こういった取り組みも重要なのではないかと思います。この地域における青少年の雇用対策、教育あるいは人的交流、こういった点についても、我が国を初め国際社会がしっかり貢献していく、こういった観点も重要なのではないかと思います。

 このように、直近のテロ対策から中長期的な課題に至るまで、国際社会全体として取り組むべき課題であると考えます。

篠原(豪)委員 先ほどもおっしゃっていましたけれども、こういった問題の解決に向けては、非軍事的な分野で日本が貢献できるところは大きいんだろうというようなところもありましたので、そういったことはぜひ中長期的に、今から始めればいいんですけれども、やっていくということはあると思うんです。

 ちょっと論点を、平和であるとか非軍事的な話でできるというのが、今回、国内に話を移してみれば、三週間後に迫っている広島での外相会合でございますか。この外相会合でやはり、先ほども少しおっしゃっていましたけれども、G7の外相会合が被爆地の一つである広島において開かれるということは、唯一の戦争被爆国である我が国が世界をリードして、世界における軍縮・不拡散、そしていろいろ人道的な取り組みに対しても、これは世界をリードして推進させていく大きなチャンスだというふうに捉えています。

 日本の役割としては、非軍事的な分野であることをしっかりアピールしていくということに対して、これは強みであるということは私も先ほども申し上げましたけれども、この点につきましては、先ほどの委員からも少しありましたが、外相会談が広島開催であります。この広島で開催されることの意義そのものですね。先ほど、安保理の話、外相会談の中でいろいろと安保理のメンバーとやっていこうという話がありましたけれども、このときに、岸田大臣、この広島開催の意義をどのように考えて、そしてこの機会を積極的にどう活用していこうかということを教えていただければと思います。

岸田国務大臣 この被爆地広島の地名ですが、私は、外務大臣をやる中で、この広島という地名が国際的に大きな存在感を示すような場面に随分とたくさん出会いました。会議の場においても、私自身が広島の出身だと言った途端に会議の雰囲気が変わる、そのぐらい、広島という地名、これはもちろん長崎という地名も同じだと思いますが、被爆地の地名というのは国際社会において大きな存在感のある地名であるということを感じてきました。やはり、原爆投下からよみがえった、平和、あるいは希望の象徴であるということなのかと思っていますが、そこでG7外相会談を開くということの重みを今感じております。

 こうした地で外相会談を行うわけですが、その際に、先ほど申し上げましたテロあるいは難民問題など、国際社会共通の課題についてしっかり議論しなければいけない、これは当然のことでありますが、あわせて、軍縮・不拡散についても意義ある議論を行い、ぜひ成果を上げたいと考えています。

 核兵器のない世界を目指すためには、核兵器国と非核兵器国が協力しなければ結果を出すことができないと痛感しています。G7は、核兵器国と非核兵器国のそれぞれの主要国が含まれる枠組みでありますので、ここで明確なメッセージを出すということは大変重要なことだと思いますし、あわせて、世界の政治の指導者に被爆地に足を運んでもらって被爆の実相に触れてもらうということは、国際社会において核兵器のない世界を目指そうという機運を高めるという意味においても意義があるのではないか、このように感じております。

 こういった思いで、ぜひ、G7外相会談、しっかり準備をし、成功させていきたいと考えます。

篠原(豪)委員 御地元の広島ですし、今度のG7に参加される大臣の方々の中で任期が一番長いんですよね。ですので、これ以上ない、保有国も非保有国も含めて、不拡散そして核をどうしていくのかという、本当に外務大臣がしっかりとやっていただける機会だというふうに考えていますので、ぜひしっかりした議論をしていただきたいと思います。

 また、外相会談は広島で行われると聞いていますけれども、その他関連の会議もいろいろな地域でこれからスタートしていくというふうに聞いています。それぞれの都市にとっても、外交上、これは自治体外交も含めてのことかもしれませんけれども、テーマが絞られていますので、こういったことも、これからの議論として、引き続きさせていただきたいと思っています。

 その際に、やはり、リーダーとしてサミットを引っ張っていく、岸田外務大臣、各関係省庁も含めていろいろな会議が行われていますので、これは外交の大きな、地域も含めていろいろなところがありますので、ぜひしっかりとサポートをしていただいて、そして自治体も含めて、いろいろと情報を発信することもできますので、そういったことも支えていただきたいと思います。

 そのことをお願いいたしまして、時間ですので、本日の質疑は終了させていただきます。ありがとうございました。

岸委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、外務委員会で質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、三月十三日に沖縄県の那覇市で起きた、米兵による女性暴行事件について質問をいたします。

 まず、警察庁にこの事件の概要を説明していただきたいと思います。

露木政府参考人 お尋ねの事件でございますけれども、三月十三日、沖縄県那覇市内のホテルにおいて、熟睡して抵抗できない状態の女性が性的な被害を受けたものでございます。同日、沖縄県警察が、二十四歳の米軍人の男を準強姦罪で緊急逮捕いたしております。

 現在、沖縄県警察において、事案の全容解明に向けて捜査を進めているものと承知しております。

赤嶺委員 報道等でも、今回の事件について、準強姦事件、このようにされておりますが、この準強姦とはどういう犯罪なのか、ちょっと説明していただきたいと思うんです。

 つまり、準という言葉がついていることから、未遂だとか、あるいは強姦よりも軽い罪だとか、こう受けとめられていることもあると聞くわけですが、どのような犯罪なのか、説明していただけますか。

辻政府参考人 お尋ねの準強姦罪でございますが、構成要件といたしましては、女子の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、または心身を喪失させ、もしくは抗拒不能にさせて姦淫する罪とされてございます。

 その法定刑でございますが、強姦の罪と同じとされておりまして、三年以上の有期懲役刑となってございます。

赤嶺委員 強姦罪と法定刑上同様のものだと。女性の人権を著しく踏みにじる重大犯罪であります。

 また、被害者は、観光で那覇を訪れ、安全、安心であるべきホテルでこのような被害に遭いました。熟睡状態で抵抗できない被害者を自室に連れ込んで、米兵が犯行に及んだ。これはいかなる理由があっても絶対に許されないものであります。

 外務大臣は、この事件についてどのような認識を持っておりますか。

岸田国務大臣 まず、米軍人による事件、事故、こうしたものはあってはならないものであり、極めて遺憾なことであると考えます。

 また、日米同盟を維持する観点から考えましても、国民の支持のもとに日米同盟は維持していかなければなりません。日本国民の米軍に対する信頼が損なわれるような事態、こうしたこともあってはならないと考えます。

 そういったことから、外務省としまして、今回の事件発生後、三月十三日午後、森北米局長からハイランド駐日米国臨時代理大使、山田北米局参事官からワイズ在日米軍副司令官、水上沖縄担当大使からニコルソン在沖米軍四軍調整官に対して、極めて遺憾であるということ、綱紀粛正及び再発防止、これを強く申し入れた次第であります。

赤嶺委員 いつもこういう事件が起こるたびに、綱紀粛正だの再発防止だのそういう言葉が使われるわけですが、沖縄の人たちは、この事件をやはり七十年間の歴史に重ねて、事件が起きたときに受けとめるわけです。

 きのう全会一致で県議会で抗議決議が上がっておりますが、女性に対するこのような行為は、肉体的、精神的苦痛を与えるだけでなく、人間としての尊厳をじゅうりんする極めて悪質な犯罪。また、事件が起こった那覇市から遠く離れた宜野座村の村議会でも決議は上がっておりまして、同様な事件は宜野座村でも発生しかねず、村民は恐怖の中での生活を強いられている。

 繰り返される犯罪に直接ぶつかっている県民の意識に比べて、私は、政府の当事者意識というのは本当にどのぐらいあるんだろうかというようなことで、いつも怒りを禁じ得ません。

 政府は、今外務大臣もおっしゃっておりましたが、綱紀粛正、再発防止、このように言いますが、具体的に何をやってきたかという問題です。

 今回の事件の被疑者は、キャンプ・シュワブに所属する海軍の一等水兵であります。米軍は現在も外出規制措置をとっていると思いますが、一等水兵というのは外出規制措置の対象に該当いたしますか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 在日米軍は、勤務時間外行動の指針、いわゆるリバティー制度を設けておりまして、在日米軍人等に対して、施設区域外の公共の場における飲酒制限、外出時間の制限、外出時の同伴義務づけなどを求めていると承知しております。

 同制度によりますと、日本国内に所在し活動している軍人、これは軍種を問わない人たちですが、そうした軍人であって、米軍の階級でいいますとE5クラス以下のクラスの全ての者は、午前一時から午前五時までの間、外出が禁止されているという状況でございます。

 今回の事件の被疑者は、いわゆるE3クラスの米海軍一等水兵ということでございますので、午前一時から午前五時までの間は外出が禁止される対象であったというふうに理解しております。

赤嶺委員 この容疑者である一等水兵は、外出規制措置の対象であった。

 ところで、沖縄県警によりますと、今回の事件の発生日時は十三日の午前一時十四分から四時五分の間としています。まさに外出が規制されている時間帯に事件が発生しているのであります。

 なぜ外出規制の対象者が禁止時間帯に那覇市内のホテルにいたんですか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御答弁申し上げましたとおり、規則上、その対象者として理解されるということでございますけれども、個々具体、その事件の当時におきましてどういう状況であったかということに関しましては、このリバティー制度が米軍の自主的措置であるということで、したがいまして、その運用の詳細、今回、容疑者がこの制度との関係で具体的にどういう状況であったかということについて、政府として断定的にお答えするのは困難であるということでございます。

赤嶺委員 外務大臣、こういう北米局長の、リバティー制度は米軍の自主的な規制であるのでわからないと言う。関心を持っていないんですね。何で外出禁止時間帯に、外出禁止をされている兵隊が事件を起こすのかというぐあいに疑問が出るのは当然じゃないですか。なぜですかと聞いたら、わかりませんと言う。

 これはわからないんじゃないんですよ。よくわかっているんですが、昔から、かなり以前から、外出規制措置というけれども抜け穴だらけだ、このように言われてきたんです。

 二〇〇八年当時も、重大な事件が起こりました。そのときも外出規制措置がとられました。ところが、当時、外出禁止令抜け道、朝帰りなら問題にされず、基地への帰還確認なし、こういう新聞の見出しの記事が載っております。

 記事によりますと、米軍が綱紀粛正策として実施している兵士らの夜間外出禁止措置は、実際には基地ゲートの出入りをとめるだけで、基地内に戻ったことを確認していない実態が十八日、外務省の説明などでわかった。同日未明、そのときもキャンプ・シュワブの兵士です、名護市辺野古の民家への住居侵入容疑で逮捕されました。海兵隊の伍長は、禁止時間帯に基地の外にいたけれども、禁止時間帯を過ぎて朝帰れば問題視されないということで、その時間まで基地の外にいたわけですね。抜け穴が明らかになり、外務省も、問題はあると、対策を検討する考えを当時示しております。

 外務省は、その抜け穴について対策を検討した結果、具体的にどういう措置をとったんですか、求めたんですか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、こうした事案があるごとに、御指摘のとおり、綱紀粛正、再発防止を申し入れるとともに、具体的には、さまざまな場で米側に対して働きかけを行っております。

 一つは、米軍、沖縄県、関係市町村などから成る米軍人・軍属等による事件・事故防止のための協力ワーキング・チーム、これが平成十二年から二十三回にわたり開催されております。そうした場で、米側からリバティー制度の具体的な運用状況について説明を求め、その改善などについて議論をするということを積み重ねてきております。

 また、綱紀粛正、あるいは米軍人への教育強化などについても協議を行って、具体的な効果的な取り組みを行うべく議論をして、その積み重ねをしてきているということでございます。

赤嶺委員 私が聞いたのは、ワーキング・チームでリバティー制度をいろいろやってきたというんですが、実際に外出規制をとったそのときから、結局、朝帰りをすればゲートでは取り締まりもなくなって何のおとがめもないからということで、一旦基地の外に出た米兵たちが明け方まで基地の外をうろつき回る。これが犯罪に結びついている、この抜け穴があるではないかと。その抜け穴を、当時、外務省も認識しておりました。その抜け穴についてどういう対策をとったかということを聞いているのであります。

森政府参考人 繰り返しの答弁でございますけれども、その時々に応じまして、具体的な制度の改善などについて議論をしてきております。また、このリバティー制度につきましては、違反をした場合の措置、ペナルティーも当然ございまして、そうしたことについても説明を受け、協議の対象にしてきているということでございます。

赤嶺委員 私は、米側がペナルティーをかけようにも、抜け穴だらけではペナルティーもかけられない、その抜け穴について対策をとることが大事じゃないか、外務省はその抜け穴があることも認識していたはずだと、繰り返し聞いているわけですよ。答弁は、別の答弁を繰り返しているわけですね。まともに向き合おうとしていないんですよ、そういう米兵の犯罪について。

 例えば、当時の外務省の発表文書があります。その発表文書の中でも、やはりリバティー制度について、二〇〇八年二月二十二日に公表した「米海兵隊員逮捕に伴う再発防止策について」という文書を持ってきました。この中で、いろいろ検討しながら、米側はワーキング・チームを通じてリバティーカード制度を含むさまざまな犯罪防止策を検討する、このように述べています。リバティーカード制度の抜け穴対策というのを認識していて、そしてそれの犯罪防止策を再検討するというのが外務省の文書の中に書かれております。

 そのときに再検討した結果、抜け穴についてどのような措置をとったんですか。

岸委員長 答えられますか。

 森北米局長。

森政府参考人 お答えします。

 手元の私の書類におきましても、リバティーカード制度について議論を行ったという記述がございます。一方、それに基づいて具体的にいかなる措置がとられたかということについては、恐縮ながら、手元にない状況でございます。

赤嶺委員 あれだけ抜け穴が問題になって犯罪に結びついておきながら、そのことを議論したけれども、それがどんな具体的な措置がとられたか、北米局長が知らない。

 こういうワーキング・チームが過去何回も開かれておりますが、そのワーキング・チームの全ての議事録を公開していただけますか。

森政府参考人 このワーキング・チームは、日本側、米側、そして自治体、こういった多様な構成メンバーでございますけれども、かなり踏み込んだ議論をいたしますので、米側の内規あるいはプライバシーに関することもいろいろと議論に上ります。したがいまして、その議論の状況につきましては一定の形で公表させていただいておりますけれども、全ての議事録を御提示するということにはなじまないものと考えます。

赤嶺委員 ワーキング・チームで検討の課題になったことについてどんな結論が出たか、今定かでないと言う。それで公開を求めたら、公開できないと言う。これでは、日本政府が、米軍犯罪の再発防止だというけれども、どんな対策をとったか、県民には全然納得できないじゃないですか。

 もう一点、私は伺いたいと思うんです。リバティー制度の規制内容が緩和されてきたこととの関係です。

 二〇一二年にまた重大な事件が起こりまして、そのときに、それを受けて、在日米軍の全ての兵士を対象に外出禁止措置をとりました。それに加えて、在沖米軍については、終日、基地の外での飲酒を禁止する措置をとりました。かなり厳しい規制措置をとったということでしたが、その後、これらの措置はどのようになりましたか。

森政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のとおり、平成二十四年に在沖縄米軍軍人による集団強姦致傷事件がございまして、この事件をきっかけにリバティー制度が強化されました。

 今委員の御指摘のとおり、階級、軍種を問わず、全ての米軍人の二十三時から五時までの夜間外出禁止など、相当強い措置がとられ、その後、累次にわたって徐々に緩和をされてきて、今日に至るという状況でございます。

赤嶺委員 その後、緩和されて、二〇一四年の十二月に基地の外での飲酒を解禁して以降、事件が再び頻発するようになりました。

 とりわけ那覇市内では、昨年五月から六月にかけて、米軍絡みの事件、事故が立て続けに起こりました。那覇市内の国際通りで、ビルの軒下で休んでいた男性がいきなり顔を殴られ、現金を奪われる事件が発生しています。その後、酒気帯び運転や衝突事故で六人が相次いで逮捕されました。

 なぜ那覇市か。基地の近くだと憲兵のパトロールも厳しいので、比較的警戒態勢の薄い那覇市に繰り出してくるようになって、そこで事件が頻発したわけです。

 こうした事態を受けて、那覇市議会は、二〇一五年六月十五日、去年のことです、抗議の意見書を可決しています。それによりますと、「昨年十二月米軍は、事件・事故の減少を理由に、軍人・軍属の勤務時間外行動指針(リバティー制度)を変更し、飲酒に関する制限を大幅に緩和した。ところが緩和措置が取られた直後から、酒気帯び運転や住居侵入など飲酒絡みの米軍兵士の逮捕が相次ぐなど、極めて憂慮される事態を招いている。」那覇市議会の意見書にはこのように書かれております。実効性のある再発防止を求めております。

 去年の六月の那覇市議会のこの意見書を受けて、外務省はどんな対応をとったんですか。これは、外務大臣、答えてくれますか。

岸田国務大臣 御指摘の意見書についてですが、先ほども申し上げましたが、米軍人等による事件、事故、まことに遺憾なことであり、あってはならないことだと考えており、そして、事件、事故の発生は、地元の皆様に多大な不安と懸念を与えるもの、このような認識を強く持っております。

 そういった認識のもとにおいて事件を考えますときに、米軍人等による事件、事故の防止には、米側の努力、これがまず重要であります。この米側の努力を促すということで、先ほど来、取り組みについて、さまざまなやりとり、質疑がありましたが、やはり政府レベルとしましては、日米合同委員会、この場をしっかり活用しながら、こうした地元の皆様方の思いをしっかり伝えていく、こういった対応をとった次第であります。

 そして、こうした意見書を受けた後、また今回の事件が発生したわけでありますが、今回の事件の後、御指摘のリバティー制度はもちろんあるわけですが、それに加えまして、沖縄駐在の第三遠征海兵隊が、司令官の権限によりまして、全てのランクの米軍人に対する牧港補給地区以南の地域への外泊禁止、そして追加の研修の実施、これを決定したと承知しております。今後、こうしたものの実効性をぜひ確保していかなければなりません。

 今、調整中ではありますが、四月十九日に、先ほど来質疑の中に出ておりますワーキング・チームを開催する予定になっております。このワーキング・チームにおいても、まずはこうした米側が発表したさまざまな対策の実効性を確保するべく、政府としましてしっかりと議論をしていきたいと考えます。

赤嶺委員 リバティー制度の抜け穴についても曖昧な認識、規制緩和をした後に那覇市内で事故が頻発して、那覇市議会で意見書が上がっているにもかかわらず、具体的な対応は米軍がやることだと言って、大体、基地を提供している外務省や防衛省に当事者意識が全くないわけですよ。

 外務大臣は今、牧港以南の基地の立入禁止を言いましたが、宜野座村は牧港より北側にあるんですよ。同じ恐怖を感じると言っているんですよ、基地のそばの人たちは。

 今のような当事者意識のない無責任な対応がこの米軍の事件を頻発、拡大させている、その責任は重大だ、米軍の事故をなくすためには、やはり県民みんなが言っている、基地を撤去する以外にないんだということを強く申し上げて、質問を終わります。

岸委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 先ほどの赤嶺委員の御質疑、非常に大事な問題ではございますが、しかし、時間はしっかり守っていただけますと、後ろがつかえておりますので、助かります。よろしくお願い申し上げます。(発言する者あり)いや、押しておりましたので、よろしくお願い申し上げます。(発言する者あり)いずれにしても、時間をきっちり守っていただけますよう、お願い申し上げます。

 私からは、十五分しかお時間がありませんので、質疑に入らせていただきたいと思います。

 午前中も、また先ほどお話もありましたけれども、北朝鮮のミサイル発射問題についてお伺いしていきたいんですが、ここのところかなり頻発しておりまして、国民の皆さんからも、また地元を回っておりましても、大丈夫かというお声を伺うところでございます。

 まず、政府としても何度も御認識を出されていると思います。特に、防衛省がこのたび、習志野に置いている第一高射隊、いわゆるPAC3を市ケ谷の方に常備、常設するという話も、具体的な行動も出ておりまして、きっちり万全の体制も備えていただきたいとは思うんですが、改めまして、大臣として、外務省としてどのように見解されて、そしてどう対策をとられていくのか、お答えいただけますでしょうか。

岸田国務大臣 まず、政府全体として、国民の命や暮らしを守るために万全の体制で臨まなければなりませんが、その中にありまして、外務省の対応についてどうかという御質問をいただきました。

 北朝鮮による核実験、そして弾道ミサイル発射、これは国際社会の平和と安全に対する明白な脅威であります。まずは強いメッセージを発出しなければならないということで、我が国独自の措置を発表し、そして、安保理におきまして強い内容の決議の採択に努力をいたしました。これは、米国や韓国の独自の措置とも相まって、国際社会の強いメッセージを示すことになったと考えております。引き続き、関係各国と連携していかなければなりません。

 連携ということで申し上げるならば、二月七日、弾道ミサイル発射後、米国あるいは韓国とは首脳電話会談を行いました。私自身も、ケリー国務長官、尹炳世外交部長官と直ちに電話会談を行いました。

 こうした緊密な連携協力を確認したわけでありますが、引き続き北朝鮮の動向については予測が難しい状況が続いていきます。情報収集におきましても、さまざまな対応におきましても、国際的な関係国との連携をしっかり行っていきたいと考えます。

丸山委員 そういった意味で、予測が難しいというお言葉もありましたけれども、しかし、しっかり状況を分析して動きを読んでいかなければいけないというふうに思いますので、もちろん、いざというときの、万が一のための防衛の配備をきっちりやっていただいていると思います。

 重ねて、外交の中での読み合いというのは非常に大事だと思うんですが。北朝鮮はここのところ、ことしに入ってからもう三度も四度もミサイルを向けていますけれども、どうしてかなと見ると、いろいろな報道もされております、分析も専門の方がいろいろな話をされていますが、一つは、今、米韓が軍事演習をされているというのを非常に北朝鮮は気にしているのかなというふうに思うんですが、一方で、いろいろな国際的な動きの中で、外務省として、この北朝鮮の動き、特に軍事的なミサイル発射の動き、活発化している理由についてはどのようにお考えですか。

垂政府参考人 お答えさせていただきます。

 北朝鮮がミサイル発射を続けている意図等に関する分析については、政府として、事柄の性質上、お答えすることは差し控えたいと存じますが、その上で申し上げれば、北朝鮮の現体制は極めて予見可能性が低くなっているということ、また、先ほど委員が御指摘されましたとおり、現在、米韓合同軍事演習が行われている、そういうこと、また、五月には三十六年ぶりとなる党大会が予定されており、そうした意味では、国威発揚という側面がある、そのような点を要因とする見方があるものと承知しております。

丸山委員 今お話もありましたように、合同訓練もそうですけれども、五月の三十六年ぶりの党大会を北朝鮮がやるということ、また、五月、G7も日本でございますので、極東の、日本のこの周辺において国際的な注目も集まる時期でございますので、そういった意味で、より警戒を強くしなければいけないというのは我が国の立場だと思います。先ほど、国会での答弁は難しいけれどもという話がありましたけれども、しかし、十分にわかってくださっているというふうに思いますので、外務省としても万全を期していただきますように、お願い申し上げます。

 そういった意味で、きのう、東京でと聞いているんですが、日韓で外務省局長協議をやられていると思うんですけれども。実は慰安婦像の話も聞きたいんですが、その前に、この話もされたという理解でよろしいんでしょうか。

垂政府参考人 お答えいたします。

 二十二日午後、日韓局長協議が行われました。日本側からは石兼アジア大洋州局長、また韓国側からは訪日中の鄭炳元韓国外交部東北アジア局長との間で、日韓間の諸課題に関して幅広く協議が行われております。両局長は、北朝鮮が挑発行動を繰り返す中、今後も日韓両国が一層緊密に連携して対応していくことを確認しております。

丸山委員 韓国とも連携が大事だと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 引き続きこの局長協議についてお話をお伺いしたいんですけれども、昨年の末に大臣が汗をかかれて結ばれた合意以降、初めての局長級の協議だというふうに伺っておるんですけれども、特段、あのときの合意で、財団の話と、もう一つ、日本大使館前の慰安婦像の撤去の話について、たしか表現ぶりが、その像について韓国政府が適切に解決されるよう努力するという表現で合意を結ばれたということでございます。

 この点、どうなっているのか、お話しされたのかとか、進捗状況についてどのように向こうが回答されたのかとか、それも含めて、進捗状況はどうでしょうか。お答えいただけますか。

垂政府参考人 お答えさせていただきます。

 昨日の日韓局長協議におきましても、昨年末の慰安婦問題に関する日韓合意のフォローアップについて、率直な意見交換を行っております。

 先ほど委員が御指摘されました韓国にございます大使館前の少女像につきましても、これまで累次にわたり、日本側から、公館の安寧、威厳の維持の観点から懸念を表明しており、早期に移転することを求めてきております。

 今回の合意において、韓国側は、日本政府が日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧、威厳の維持の視点から懸念していることを認知し、韓国政府としても適切に解決されるよう努力するとの表明がございました。この合意に基づいて、韓国政府において適切に対処されるものと認識しております。

 昨日の局長級協議におきましても、この日韓合意のフォローアップについて率直に意見交換を行い、引き続き緊密に連携していくことで一致しております。

丸山委員 率直に意見交換をされたというのは今お話がありましたが、進捗があったのかどうかという点では、外務省、どういう見解でいらっしゃいますか。

垂政府参考人 具体的なやりとりにつきましては、外交上のやりとりであり、議論の詳細を明らかにすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

丸山委員 具体的な内容は言えないということですけれども、進捗があったかどうかということも言えないんですか。これは合意されたということだと思うんですけれども、その合意を誠実に韓国側が履行していくというのは外交の基本だと思うんですが、そういった意味で、三カ月たっていますけれども、進捗したかどうかという見解は、外務省、どうなんですか。

垂政府参考人 現時点におきましては、引き続き緊密に連携していくことで一致しているということに尽きるところでございます。

岸田国務大臣 進捗があったのかという御質問ですので、何か具体的な結果が出たのかということかと思いますが、要は、御指摘の問題につきましては、今、韓国政府が国内において説明努力を続けている段階だと承知をしております。今は、韓国政府のこの努力をしっかり見守っていくことが大事ではないかと考えております。

丸山委員 大臣、フォローありがとうございます。

 今のお話だと、進捗とまでは、具体的な動きというわけにはいかないけれども、韓国政府はやっているという理解は外務省は持っていて、それをきちんと見守っていくという今段階だということですね。

 これは、具体的なスケジュール感としては、我々議会側、国民側はどのように捉えればいいのかというのはどうなんですか。

岸田国務大臣 昨年の十二月二十八日の日韓合意においては、日韓それぞれがこの合意の内容を明らかにし、そしてそれぞれ果たすべき役割を誠実に行っていく、こういったことを確認した次第です。ただ、その際に、スケジュール感とかいつまでとか、そういったものは何も含まれておりません。日韓合意は、二十八日、日韓の両外相が共同発表において発表した、発言した内容、あれが全てであります。

 いずれにしましても、双方がしっかりと合意内容を誠実に履行することが重要であり、できるだけ迅速にその役割を果たしていくべきであると考えます。

丸山委員 スケジュール感がないということと、あとは、努力義務、努力するということなので非常にもどかしいところではありますけれども、しかし、局長協議でお話もされているということでございますので、向こうに誠実な履行を求めていくという日本の立場を堅持していただいて、一日も早い撤去につながるように努力いただきたいというふうに思います。

 次に、きょう午後、辺野古基地の関連で、和解後初協議を県側とされるというふうに聞いております。これは岸田大臣もお出になるという、協議会のメンバーだというふうに聞いているんですけれども、和解の受け入れは、もちろんあってからの動きもありまして、特にその直後、辺野古の埋立承認を取り消した知事への是正指示を国側が出している関係で、県からかなり不信感の声も出ている。そういった意味で、少しすれ違いが既に出始めているんじゃないかなというふうに思うところなんですけれども。

 まず、きょうからこの協議が進められると思いますけれども、これに当たる姿勢等について、外務省の見解をお伺いできますか。

岸田国務大臣 御指摘のように、きょう昼、間もなくですが、和解を受けた後初めての政府・沖縄県協議会が開催されることになっております。

 残念ながら、きょうの会合は、この委員会がありますので、私自身ちょっと出席が難しいのではないかとは思っておりますが、この協議会は大変重要な協議会であると認識をしております。

 協議会を通じまして、普天間飛行場の危険性除去と辺野古移設に関する政府の考え方、さらには、沖縄の負担軽減を目に見える形で実現するという政府の取り組み、これを改めて丁寧に説明をさせていただきたいと考えております。

 ぜひ、この重要な協議会を大事にし、丁寧に議論を進めていきたいと考えます。

丸山委員 先ほどの北朝鮮の飛翔体、ミサイルの件もありましたけれども、この東アジアの情勢の中で、今、日米同盟の抑止力をどう維持していくかというのは非常に大事な観点です。

 一方で、沖縄の方々の現状を考えたときの負担をどう軽減するかというバランスの話で、これまで国がどうしてもかたくなだというふうに沖縄の方から言われていた中で今回の協議が始まるわけで、そうした中で非常に大事な第一ステップだと思うんです。

 そういった中で、政府側からはやはり辺野古にはこだわっているという話も出ますけれども、その辺についてはどうなんですか。

岸田国務大臣 三月四日の日に、裁判所の和解勧告を受け入れ、政府として和解することを決定いたしました。何よりも大切なのは、裁判所から示されたこの和解案を誠実に履行するべく努力をすることであると認識をしております。

 この和解条項においては、国と沖縄県が、国土交通大臣が行う是正の指示から始まる、翁長知事による埋立承認の取り消しの是非を争う訴訟に向けた手続を進めるとともに、その訴訟の判決が確定するまでの間、国と沖縄県が普天間飛行場の返還及び埋立事業の解決に向けた協議を行う、このようにされています。この二つを同時並行的に行う、これがこの和解案の中身であります。

 これを誠実に履行していくことが、政府にとっても、また沖縄県にとっても大事であると認識をしております。

丸山委員 質問を終わります。

 ありがとうございました。

岸委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 改革結集の会の小熊慎司です。

 まず初めに、冒頭、ベルギーで起きたテロにおきましては、犠牲となられた、亡くなられた方々、また負傷された方々には心から哀悼の意とお見舞いを申し上げる次第でありますし、また、こうしたテロ行為に関しては、日本も、国際的な連携の中で、テロに屈しない、闘っていくということをしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 それに関連して、今ほども話に出ていた来月の外相会合、またサミットの議長国として、さまざまな国際的な課題を日本がリードしてやっていかなければいけない、また、非常任理事国としての責務も果たさなければならない中で、日本は約八・一億米ドルほど拠出をするということでありますが、シリアの難民について、もちろん、難民の発生を抑制していくという根本的なことに関与していくということもありながら、現在多くの難民が発生をしてしまっている中で、日本がどう難民の受け入れをしていくのかということについて。

 シリアだけではありませんけれども、年々難民申請もふえている。二〇一四年では約五千人だったものが、昨年では七千五百八十人申請をされている。二〇一四年では、五千人中十一人ほどしか難民認定がなされていません。また、このシリアに関しても、およそ四百人の方が日本におられて、六十三人申請しておられますが、実際、認定を受けたのは三人、人道的配慮から在留特別許可が出たのは四十七人ということ。

 国際的にも、難民条約、八一年に加盟して、八二年から批准されていますけれども、そうした中でも、日本の認定が非常に基準が厳しい。迫害のおそれがあるというのをしっかり証明しなきゃいけないというところもありますけれども、国際的にはやはり非常に狭き門となっているというのも事実であります。

 そうしたさなかでも、国連難民高等弁務官事務所のトップに緒方さんがついていたときに、イラクでのクルド人保護に関しては、あのときの緒方さんの判断で国際的潮流が変わったというふうに思います。やはり、目の前で困っている人をしっかり助けていこうということで、難民認定に関しては柔軟な対応をとっていくというまさに流れができたんですけれども、非常に日本はそれがまだ改善されていないという事実があります。

 ただ、かつては、インドシナ難民を約一万人受け入れたという実績もあります。もちろん、シリアで起きていることと日本の距離感もありますけれども、でもオーストラリアやアメリカでもこの難民受け入れは積極的に行っているところでもありますから、やはり、サミットの議長国として、このシリア難民問題というテーマも避けて通れない課題だというふうに思いますので、とりわけシリアの難民問題に関してどのように取り組んでいって、こうした議長国としてこの課題についてどうリードしていくのかをお伺いいたします。

岸田国務大臣 御指摘のように、G7の外相会談あるいはサミットの準備を進める中において、各国の関心を探る中で、この難民問題というのは間違いなく最も重要なテーマのうちの一つであると認識をしています。

 その中にあって、我が国は議長国としてこの議論をリードしなければならないわけですが、難民問題にどう対応していくのか。もちろん、御指摘のように、難民をどれだけ受け入れるか、これも大変重要な取り組みであります。ただ、難民自体がどこの国に行きたいかというような状況もしっかりと勘案した上で難民の受け入れについても考えていかなければなりませんし、そもそも我が国として難民についてどう考えるのか、これもしっかり議論しなければなりません。

 加えて、この難民問題の背景には、シリア、イラクを初めとする中東地域における大変厳しい状況、非人道的な状況が存在いたします。事実、この地域においては、国外難民よりももっと多くの国内避難民が存在するという現実があります。この問題を全体として解決するためには、この地域における状況を改善するということも大変重要な取り組みであると思います。

 我が国の取り組みとしましては、この地域に非軍事的な、人道的な支援を行うというのが、最も我が国として貢献できる、最も強みのある支援であるというふうに考えます。

 我が国は、そういった立場からこの問題に取り組んでいき、そして、各国のさまざまな取り組みと相まって、お互いに補完し合い、そしてお互いに相乗効果を発揮して、全体としての成果につなげていく。この全体をしっかりとコーディネートし、そして整理をする、こういった議論をリードしていくことがサミットや外相会談において大事なのではないか、このように考えます。

小熊委員 私も、それはそれでいいと思うんです、周辺国、八・一億米ドル出すわけですから、今大臣がおっしゃったことはそのためでもあるわけですけれども。

 そういうことを国際的に表明していながらも、難民受け入れはどうするんですかという国際的な問いかけがありますし、もちろん、シリアの人が大量に日本に来たいという状況でもないのも事実ですが、今ほど質問の冒頭でお話しさせていただいたとおり、六十三人申請して三人しか出ていないという、パーセンテージにすれば国際的にもめちゃくちゃ低いわけですし、シリアだけじゃなくてこれまでの難民受け入れも、狭き門、難民鎖国とまで言われてしまっている状況がありますから、ここは、難民受け入れに対して、迫害のおそれがあるという基準が厳し過ぎるという指摘を受けています。

 先ほど言ったとおり、緒方さんが高等弁務官事務所のトップだったときに、まさに柔軟な対応をしようということで国際的な流れをつくったわけです。実際、日本に来たいという難民、いろいろな国の難民が、それは地理的な要因もあるから決して多くはないと思いますけれども、その受け入れ体制は、国際比較として日本はやはり高いハードルがあるということですから、ここはもう一度見直すということが、まさに地球儀を俯瞰して積極的平和主義で外交をやっていくんだということのあらわれになると思いますし、国際的な発信にもなっていくというふうに思います。

 そうでなければ、この積極的平和主義というのは単なる一国平和主義なのかという誤解を恐れるわけですし、今大臣がおっしゃったことも、昨年来、安倍首相初め、国際的にしっかりとそれは発信されましたけれども、そういうことをしていても、国際的には、でも、難民受け入れは余りしていないんじゃないんですかという指摘を受けているわけですから。ここはまさに、議長国として、もう少し踏み込んだ柔軟な対応というのをしっかりしていくことが重要だと思います。

 いきなりの提案ですけれども、このことに関しては、まさにこの国際的な流れをつくった緒方さんにもぜひいろいろ御所見をお伺いして、日本の難民受け入れのあり方というのを、新たな積極的平和主義のもとに取り組む姿というのを求めていくということも、また御意見をお伺いしたらいいんじゃないかなというふうに御提案申し上げて、次の質問に移ります。

 過日の外務委員会でも質問させていただいたエチオピアでの大震災展について、中止になってしまったということで、その際に、各国でほかに同じようなことがあって、実際、開催にこぎつけている国があるということを調べてくださいと言いましたが、その結果はどうだったでしょうか。

黄川田大臣政務官 これまで、情報発信をテーマとした震災関連の事業は四百八十件ございました。その中で、このような中止の事例があったかという問いに対しては、今までこの一件だけということになっております。

小熊委員 あわせて、開催をしていた場所も調査してくださいということを言ったんですが、これは通告もしてありますから、これまでの五年間の中で開催したというのは。

黄川田大臣政務官 場所については、四百八十ございますので、この委員会の場では申し上げにくいのでございますが、種類としては、在外公館文化広報事業として百四十五件、復興写真展は九十八公館でやられております。また、在外公館等を通じたPR事業は九十三件、観光展等への出展は四十件、地方文化紹介事業としては百件、風評被害対策海外発信支援事業としては二十六年度で二件、二十七年度も同様に二件、計四百八十件ということでございます。

小熊委員 私も震災直後に県内の若手経済人とアメリカで福島の物産展をやったりしていて、そのときは外務省も積極的にかかわっていただいていたというのがありますから、今回、エチオピアのことは、一件だけということでありますけれども、まさにこれも一つの、時間経過とともに、風化の象徴なのかなというふうに思います。

 今後とも積極的に、いろいろな修正しなきゃいけないプランもあるとは思いますけれども、まず開催をしていくんだという前提で、折衝、いろいろな主催者との取り組みをしていただきたいというふうに思いますので、こういうエチオピアで起きたようなことが二度とないようにしていただきたいと思います。

 さはさりながら、大臣もこれまで、風評被害対策とか、外務省を挙げて取り組んでいただいていますが、特にアジア近隣諸国では、科学的根拠のない禁輸措置がいまだに続いているところでもあります。

 先ほど、広島の話を大臣がされて、希望の象徴であると。同じ島がついている福島は、まだそこまで。震災以前は、福島の出身ですよと言っても、全然、どこですかみたいな海外の人の反応でしたけれども、震災以降は、福島と言うと、おっとなるんです。大臣が言ったように、広島が希望の象徴というような感想、地元広島のことを述べられましたけれども、私は、福島と言って、希望の象徴とはまだなっていないんですね、海外的にも。

 これは、しっかりと正しい情報発信をして、復興につなげていかなければならないんですが、禁輸措置をとっている、とりわけ韓国や中国。韓国との外相会談もありましたが、そのときにこのテーマがあったのかどうか。また、日中外相会談もこれから行われるのでありましょうけれども。

 いろいろな課題があります、日中も、日韓の中にも。その中でも、やはり震災の対応といったものもしっかりと交渉の中で入れ込んでいただきたいというふうに思いますが、日韓の中でそういう話題があったのかどうか、今後、日中外相会談を行われるのであれば、こうした禁輸措置に関してどう交渉していくのか、あわせてお聞きをいたします。

岸田国務大臣 御指摘の日本産水産物等の輸入規制につきましては、韓国政府に対しまして、これまで、外相会談、次官協議、局長協議、日韓ハイレベル経済協議など、さまざまな機会を捉えて、措置の早期撤廃を求めてまいりました。

 外相会談、私の記憶の限りでは、ほとんどの外相会談で必ずこの問題を取り上げてきたと思っております。

 ぜひ、今後とも、しっかりと韓国政府に伝えていきたいと思いますが、この問題につきましては、韓国政府との間において、WTO協定のルールに従って対応を行う、こうした方針も明らかにしています。WTO協定のルールにのっとって誠実に対応する、これも重要でありますが、これも進めながら、WTOにおける結論を待つことなく、本件規制を早期に撤廃するよう働きかけていきたいと考えます。

 そして、中国との間においても、これまで、首脳会談を初め、さまざまな場で働きかけを行ってきました。これからも、ぜひ、中国側に対して、粘り強く働きかけていきたいと考えます。

小熊委員 昨年、日中の議員間交流で中国の全人代の方々が来たときに、議運の方々がアテンドしていましたけれども、私もそこにまじって全人代の方々としゃべったときにこの話をしたら、科学的根拠はわかるけれども、やはり多分に政治的なことに絡んでしまっていますという。その一人のメンバーの発言ですからそれが全てではないかもしれませんが、そういう観点もあるのかなというふうに、お聞きして思っていました。

 そういう意味では、こちらも正論をしっかりやっていきながら、複雑な日中関係、日韓関係の中での政治的な思惑でこういう禁輸措置が外されないというところもありますので、高度な政治技術を使いながら、外交技術を使いながら、ぜひこの問題は改善をしていってもらいたいと思います。

 本当に、外国人の観光客も含め、日本には二千万人を超えるぐらい来ているわけですけれども、いろいろな委員も質問していますけれども、福島県は四十位以下ということで来ていないということであります。かつては福島空港に上海便も飛んでいて、今、中国の民間航空会社が、福島に飛ばしたいと向こうが言っているのにそれを政府がとめているということでもありますので、今後のいろいろな外相会談の中でもしっかり結果が出るように、ぜひお願いをしたいというふうに思います。

 次に移りますが、グローバルな人材育成。

 日本は、少子高齢化、人口が残念ながら縮小していく中でも、縮小していくからこそとりわけ国際関係の中ではより一層力をかけていかなきゃいけないんですけれども、御承知のとおり、留学生が減っている。日本から行く留学生も減っている、日本に来る留学生も減っているということであります。これは、外務省だけじゃない、文科省もしっかりと取り組んでいるところでありますが、なかなか改善が見られない。

 と同時に、アメリカの関係者とお話をしたら、卒業してから行くというのじゃなくて、大学同士の交換留学で、アメリカの中で今、日本との交換留学をやめようかという議論が少しなされている。何でですかと聞いたら、授業料が全然違うんだと。ざっくり言うと、日本は年間百万ぐらいで、アメリカはちょっと高騰していて、これはアメリカ国内でも教育格差につながるということで問題になっていますけれども、五百万と百万で全然条件が違うから交換留学に差が出るだろうということです。

 こういうこともしっかりと見据えて、留学しやすい環境づくりをやっていくためにも、この問題点については今政府としてはどう捉えていますか。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、社会や経済がグローバル化する中で日本企業等も世界に展開しております。個々の能力を高め、グローバル化した社会で活躍する人材を育成していくことは喫緊の課題だというふうに認識しております。

 特に御指摘の日米間でございますけれども、特に若い世代の間での人的交流は両国関係の重要な柱でございまして、日米関係の将来にわたる強さを確実なものとするためにも、両政府は現在、二〇二〇年までに双方の学生交流を二倍にするという目標を共有してございます。

 しかしながら、経済的な理由により留学を断念する学生も少なくない中で、御指摘のとおり、米国における授業料が高騰しておりまして、これも留学の阻害要因となりかねません。したがいまして、大学間交流協定に基づきます交換留学を促進することも一つの方策だというふうに考えてございます。

 実際には、米国の大学との大学間交流協定の数は近年増加傾向にございます。これに基づきます日本人学生の米国留学の数も、短期留学ではございますけれども、これを中心に、平成二十一年度から二十五年度までの間には約二倍に増加をしているところでございます。

 文科省といたしましては、協定に基づく短期の留学を支援する奨学金を充実するとともに、大学間交流協定に基づきます交換留学の促進、そして留学を促進するそのような大学の支援を通じまして、グローバル人材の育成に努めてまいりたいと思っております。

小熊委員 そういう方向で頑張っていただきたい。まだ顕在化はしていませんが、アメリカの大学一つ一つを見れば、日本との授業料の格差の中で交換留学というのに余り利益がないなという不満がやはりありますから、そうしたものも見据えながらしっかりと留学支援をしていくということをお願い申し上げます。

 あと、私は、恐らく改革結集の会として質問するのはきょうが最後となります。短い期間ではありましたが、委員長初め皆様方には大変お世話になりました。

 今後も、外務委員会にい続けることがあれば、しっかりと外務省を俯瞰しながら、積極的平和主義の構築に向けて私も努力していくことを改めて宣言申し上げ、質問を終わります。ありがとうございました。

岸委員長 次回は、来る二十五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十五分散会


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