衆議院

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第8号 平成28年3月30日(水曜日)

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平成二十八年三月三十日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 岸  信夫君

   理事 島田 佳和君 理事 新藤 義孝君

   理事 土屋 品子君 理事 中山 泰秀君

   理事 橋本  岳君 理事 小熊 慎司君

   理事 篠原  豪君 理事 武正 公一君

   理事 岡本 三成君

      石原 宏高君    小渕 優子君

      大野敬太郎君    城内  実君

      黄川田仁志君    小林 鷹之君

      佐々木 紀君    鈴木 隼人君

      瀬戸 隆一君    薗浦健太郎君

      田野瀬太道君    古川  康君

      三ッ矢憲生君    山田 美樹君

      大島  敦君    吉良 州司君

      寺田  学君    長島 昭久君

      浜地 雅一君    笠井  亮君

      宮本  徹君    丸山 穂高君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        武藤 容治君

   防衛副大臣        若宮 健嗣君

   外務大臣政務官      黄川田仁志君

   外務大臣政務官      浜地 雅一君

   外務大臣政務官      山田 美樹君

   国土交通大臣政務官    津島  淳君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大菅 岳史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 相木 俊宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大鷹 正人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宇山 智哉君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宮川  学君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 吉田 朋之君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局南部アジア部長)      梨田 和也君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    能化 正樹君

   政府参考人

   (外務省国際情報統括官) 鈴木  哲君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           平垣内久隆君

   政府参考人

   (国土交通省航空局航空ネットワーク部長)     和田 浩一君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 辰己 昌良君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十日

 辞任         補欠選任

  城内  実君     瀬戸 隆一君

  佐々木 紀君     田野瀬太道君

  辻  清人君     古川  康君

  松島みどり君     石原 宏高君

  笠井  亮君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     松島みどり君

  瀬戸 隆一君     城内  実君

  田野瀬太道君     佐々木 紀君

  古川  康君     辻  清人君

  宮本  徹君     笠井  亮君

同日

 理事篠原豪君同日理事辞任につき、その補欠として小熊慎司君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 航空業務に関する日本国とカンボジア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百八十九回国会条約第一三号)

 航空業務に関する日本国とラオス人民民主共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百八十九回国会条約第一四号)

 社会保障に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)


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     ――――◇―――――

岸委員長 これより会議を開きます。

 理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事篠原豪君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岸委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岸委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に小熊慎司君を指名いたします。

     ――――◇―――――

岸委員長 次に、第百八十九回国会提出、航空業務に関する日本国とカンボジア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国とラオス人民民主共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び今国会提出、社会保障に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官水嶋光一君、大臣官房審議官大菅岳史君、大臣官房審議官相木俊宏君、大臣官房参事官大鷹正人君、大臣官房参事官宇山智哉君、大臣官房参事官宮川学君、大臣官房参事官吉田朋之君、アジア大洋州局南部アジア部長梨田和也君、領事局長能化正樹君、国際情報統括官鈴木哲君、国土交通省大臣官房審議官平垣内久隆君、航空局航空ネットワーク部長和田浩一君、防衛省大臣官房審議官辰己昌良君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岸委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岸委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土屋品子君。

土屋(品)委員 自由民主党の土屋品子でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 それでは、早速、航空協定に関する質問をさせていただきたいと思います。

 昨年まで外務委員長を拝命しておりまして、積み残しとなっておりましたこの両国の航空協定については、その後大変気にしておりましたが、きょう、早いタイミングでこうして審議に入れたことを大変うれしく思っているところでございます。

 特にラオスに関しましては、今から二十七年前、私の父であります土屋義彦が、参議院議員でございましたけれども、その当時、ラオスにお邪魔した際に、一月の党大会まで国家主席でありましたチェンマリさんとそのときに大変親しくなりまして、それ以来のつき合いがありました。

 そのときに、帰国後に、父は、チェンマリさんと約束して、議員連盟をつくるということで、早速日本に帰りまして議員連盟を立ち上げましたが、その当時、社会党の高沢寅男衆議院議員さんと一緒に超党派の友好議連を立ち上げて、それ以来の御縁で、多くの要人と私も長いつき合いをさせていただいておりました。また、昨年は、ラオスが我が国と外交関係六十年の記念の年でございました。そしてまた、ラオス人民民主共和国建国の四十周年という年を迎えて、非常にいろいろな行事も進んだと思っております。

 カンボジアに関しても、二〇〇九年にカンボジアを私が訪問した際に大変親しくなりましたイン・カンタパビー女性省大臣とその後も何回もお会いしておりまして、会うたびに航空協定に関して非常に危惧をしておられました。そういう意味では、今回、非常によかったと思っております。

 早速本題に入りたいと思いますが、このたびのカンボジアそしてラオスとの航空協定を締結することによって、今後どのような人的交流また経済的な交流が期待されているのか、お伺いしたいと思います。

黄川田大臣政務官 土屋委員におかれましては、埼玉ラオス友好協会でも大変お世話になっておりまして、特にラオスとの航空協定に関して御心配いただいていると存じております。

 まず、期待についてでございますが、近年、我が国とカンボジア及びラオスとの間の人的交流、経済交流が急速に拡大しており、両国との間の航空需要も飛躍的に高まってきております。国会の御承認を得て両国との間で航空協定が締結されれば、我が国と両国との間で、要人往来のみならず、留学生を含む青少年、自治体間や民間友好団体との交流等、あらゆるレベルの人的交流がさらに進むことが期待をされます。また、両国への直接投資は日本の投資家の関心を集めており、日系企業の進出がさらに進むことも期待をされます。

 以上です。

土屋(品)委員 今お話がありましたように、まさにラオスに対する期待は高まっていると確信しております。

 ラオスというのは、皆様も御存じのように、東にベトナム、西にタイというような位置にありまして、私の考えではメコン地域内の結節地域という、まさにインドシナ半島の中心に位置しているところでございまして、東西回廊を中心に道路や橋の整備が進んでおりますけれども、これは日本が大分援助したということも認識しておりますが、最近では日本企業による投資、今もお話がありましたように、十年前と比べれば、本当に変わってきていると考えております。

 我が国としても、今、水力発電所の拡張事業など質の高いインフラ投資もしているということを存じておりますが、昨年十一月には、ビエンチャンにおける上下水道の拡張のため、約百億円の円借款貸付契約に調印も済ませたと聞いております。さらに、ラオス側から航空協定の早期調印等を望まれているところでございますが、そのような環境のもと、メコン流域国の結節国としてのラオスの国際社会での役割が高まってきていることを受けて、ラオスとの協力を積極的に進めていくことが重要であると考えております。

 そこで、航空協定の締結によって、今お話が黄川田政務官からありましたけれども、両国の人的交流及び経済的交流が増進されるだろうということでございますが、友好関係の一層の強化に資することとなることが期待されているのは当然のことだと思いますけれども、今回予定している二カ国との航空協定を締結する外交戦略上の意義についてどのように考えているか、お聞かせ願えればと思います。

岸田国務大臣 カンボジアとラオス、この両国はメコン地域に位置しています。その外交戦略上の意義という御質問ですが、まず、メコン地域というのは、陸上交通そして海上交通の要衝に位置しています。こうした地政学上の大変な重要性を持っている地域であると認識をいたします。加えて、経済成長ということを考えましても、大きな可能性を秘めている地域です。

 そして、そのメコン地域の中にあって、カンボジア、ラオスの両国は、他の国との関係において後発国と位置づけられています。この地域における後発国であるこの二つの国に対して連結性を強化する、こういったことは、この地域全体の底上げにもつながる、こういった意味合いもあるのではないかと思います。

 こうした航空協定を締結すれば、我が国と両国との連結性を強化することができます。我が国と両国、そして、ひいてはメコン地域全体との一層の関係強化に資する、こういった効果を期待できるのではないか、外交戦略上の意義としてはそのように考えております。

土屋(品)委員 どうもありがとうございます。まさに大臣がおっしゃったように、地政学的に非常に重要な位置にあるということなんだろうと思います。

 それでは、今回、二国間の航空協定に関して、協定締結後、日本からは民間航空機がカンボジアに就航を予定していると聞いておりますが、ラオスに関してはどのような状況でしょうか。さらに、今、日本の成田、羽田、大変過密な状況ということを聞いておりますが、離発着枠との関係についてもお聞かせ願えればと思います。

梨田政府参考人 お答え申し上げます。

 ラオスについては、現在、直行便の開設を発表したという航空会社はございません。一方で、ラオス政府によれば、ラオス国営航空が直行便の運航について検討中であるというふうに承知しております。

平垣内政府参考人 成田と羽田の空港の状況についてお答えさせていただきます。

 成田空港につきましては、二〇一四年度末に三十万回を達成しており、発着枠についてはまだ十分に余裕があるという状況になっておりますので、ラオス、カンボジア両国ともに航空便の就航が可能な状況というふうになっております。また、実際にも、先生も御案内のとおり、全日空によります成田―プノンペン線が本年九月一日から運航予定ということになっておる次第であります。

 一方、羽田空港につきましては、二〇一四年三月に国際線を増枠したところでございます。ただ、この増枠分につきましては、既に全ての航空交渉を終えており、発着枠については現在は残余がないという状況になっております。

 以上でございます。

土屋(品)委員 どうもありがとうございます。

 ラオスについては、政府側は非常に積極的であるというお話だったと思いますが、まだ民間航空機の予定は話し合いのテーブルに着いていないということなんだろうと思います。ラオス政府からも私もお話をいろいろ聞いておりますが、相当熱い思いを持って日本に入りたいという思いがあるようでございますので、今後もサポートをよろしくお願いしたいと思います。

 また、それから、成田の方がまだ十分に枠があるということを聞いておりますが、今後も、航空協定、いろいろな国との関係も出てくると思いますけれども、日本は観光立国で頑張ろうということでございますので、これは重要なことだと思いますので、これからも整備の方をよろしくお願いしたいと思います。

 これから交流が活発になりますけれども、民間企業の行き来が自由化されて、両国との経済的な発展に大いに期待したいところでございます。

 それで、協定ができましても、協定ができたから終わりということではなくて、今私がお話ししましたように、これからがいろいろな役割が重要になってくると思います。そして、今大臣からもお話がありましたように、外交戦略上も意味があるわけですから、しっかりと、名目上の協定ではなく、側面の政策においても引き続き大きくサポートしていただけるようにお願いしたいと思います。

 次に、地域間航空協定について質問をいたします。

 今回の二カ国締結によりまして全てのASEAN加盟国との協定が終了しますけれども、ASEAN航空協定の交渉、進捗状況とそのメリットについてお伺いしたいと思います。

梨田政府参考人 お答え申し上げます。

 ASEANとの航空協定につきましては、二〇一三年十二月に東京で開かれましたASEAN特別首脳会議において、日・ASEAN交通大臣会合の枠組みを通じてその締結可能性を検討することにしました。これを受けまして、まず、航空当局間の協議が二〇一四年それから二〇一五年に二回開催されて、ある程度お互いの立場が明確になったことを踏まえて、つい最近でございますけれども、ことしのまさに今月、東京で正式な第一回政府間協議を行ったところでございます。

 日・ASEAN航空協定につきましては、それぞれ各国と結んでいる協定に比べましてもより自由化の水準の高い内容を目指していきたい、それから、安全、保安を含むさまざまな課題への対応についてASEANで統一された基準というものを導入すべく、今後交渉を行っていきたいと考えております。

土屋(品)委員 ASEANとの多国間航空協定、話し合いに入るということでございますけれども、聞くところによりますと、中国が先行しているということを伺っているんですが、より一層の努力をいただいて、中国に負けないように、早期に合意形成することを期待しております。

 地域間航空協定については、外交戦略上も重要な意味を持つと考えておりますけれども、航空自由化のみだけでなく、安全、保安を含めたさまざまな課題への対応について、今後ASEAN単位で対応することが可能となることから、ASEAN各国との個別対応に比べて非常に重要だと思っております。ASEANとの外交、安全保障上の意義は大きいということで、さらによろしくお願いしたいと思います。

 そこで、最終的にASEANと日本の外交関係強化につながるのが最大のメリットと考えていますが、そのために加盟各国が均衡ある発展をしていくことが重要であると考えています。

 先ほど大臣が後発国というお話をされましたけれども、まさに、後発国にとってはASEANの中でも格差が広がりやすいということでは、この辺が非常に重要な課題だと思います。格差を広げないために、政府としてこれから力強いサポートをしていただければと思いますけれども、この辺の見解をお聞かせ願えればと思います。

岸田国務大臣 まず、ASEANは、普遍的な価値を共有する重要なパートナーだと思います。そして、日本企業が多数進出をしています。日本の経済にとりましても重要な地域でありますし、我が国のシーレーンに位置している、こういったことから、地域の安全保障上も大変重要な地域です。

 そして、御案内のように、ASEANは、昨年十二月、共同体を発足させました。さらなる統合の努力を続けているわけですが、その中にあって大きな課題は、委員の方から御指摘がありました、この地域において開発格差が生じている、これをしっかり是正していくということであると認識をしています。

 我が国としましては、ASEANがより統合され、安定し、そして繁栄することは日本及び地域の安定と発展のために重要であるという観点から、連結性強化を通じたASEANの格差是正など、さらなる統合努力を支援し、ASEAN各国との関係強化も図っていかなければならない、このように認識をいたします。

 こうした考え方に基づきまして、ぜひ具体的な支援ですとか関係強化の努力を積み上げていきたいと考えます。

土屋(品)委員 今大臣からお話しいただきましたように、まさに日本の役割というのはそういうところにあるのかなと。いろいろな国同士、ASEANの各国の差、そういうところもしっかりと見きわめてきめの細かいサポートをする必要が日本のよさであり、そういうところが大事なのかなと感じております。

 各国の事情、民間企業の主導によるもの等、外部要因や介入できない分野があることは十分に理解しておりますけれども、ASEAN域内の均衡ある発展をぜひとも視野に入れていただいて、今回の航空協定を契機に、さまざまな人的、経済的な交流がより活発になっていくことで相互理解が進み、我が国の外交上も意義あるものとなることを大いに期待しております。

 そして、私も国会議員の一人として、引き続きこの国々の支援を進めていきたいと考えております。先ほど黄川田議員からも紹介いただきましたように、埼玉には、民間でつくっております埼玉ラオス友好協会、そして埼玉カンボジア友好協会というのもありまして、私も名誉会長として参加させていただいております。そういう点におきましてもしっかりとサポートをできるよう頑張っていくことをお約束させていただきたいと思います。

 あとちょっと、数分時間があると思いますので、フィリピンの社会保障協定についてお伺いしたいと思います。

 社会保障協定、フィリピンは、経団連の方から前から要望が強かった国でもあると思いますけれども、そのほかに、フィリピンに続いて今後どのような国と社会保障協定を目指しているのか、お伺いしたいと思います。

能化政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、現在、中国、スウェーデン、トルコ及びスロバキアとの間で政府間交渉を実施しております。また、オーストリア及びフィンランドとの間で、相互の制度についての情報交換等を行いまして、政府間交渉に向けた当局間協議を実施しております。

 今後とも、相手国の社会保障制度における一般的な社会保険料の水準、それから相手国における在留邦人及び進出日系企業の具体的な社会保険料の負担額、さらには我が国の経済界からの具体的要望の有無、こういった点を総合的に考慮した上で、優先度が高いと判断される国から順次交渉または協議を行っていく考えでございます。

土屋(品)委員 時間となりました。どうもありがとうございました。

岸委員長 次に、鈴木隼人君。

鈴木(隼)委員 自由民主党の鈴木隼人です。本日は、質疑の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 私からは、フィリピンとの社会保障協定に関連した質疑をさせていただきます。

 まず、歴史的経緯を振り返りたいと思います。

 社会保障協定は、国家間の労働力移動を促進するため、ヨーロッパ諸国においてかなり早くから締結が進んでいました。やがてグローバル化が進み、企業の活動が国境を越えて広がる中、年金制度への二重加入や保険料掛け捨ての問題が指摘されるようになります。このため、一九八〇年代からヨーロッパ以外の先進国においても社会保障協定の締結が進みます。

 我が国でも一九八〇年代後半、円高の定着を契機とし、企業が生産拠点を海外に移転、これに伴い外国に駐在員を送る動きがふえました。このような中、産業界からの要望が高まり、政府は一九九〇年代半ばから各国との交渉に着手します。一九九五年のドイツとの交渉を皮切りに、現在までに我が国の締結国は十八カ国、フィリピンを加えれば十九カ国目となります。

 ここで、幾つかの国との社会保障協定の内容や交渉状況について触れさせていただきます。

 中国では、二〇一一年に施行された社会保険法と、中国国内で就業する外国人の社会保険参加暫定弁法により、外国人就業者は中国の社会保険に加入することが義務づけられています。日本貿易会の推計では、中国における社会保険料の二重払いによる日系企業の負担額は年間四百九十億円にも上ると試算をされています。

 こうした中、二〇一一年十月から政府間の交渉が開始され、以降四回の交渉が行われていますが、日中関係が一時的に悪化したことも影響し、交渉の進捗状況は必ずしも芳しくありません。

 そこで、政府から日中社会保障協定の締結に向けた見解をお聞かせいただきたいと思います。

黄川田大臣政務官 委員御指摘のとおり、これまで中国とは、日中社会保障協定の締結に向けて、平成二十三年十月以降四回の政府間交渉を行ってきております。昨年十一月に東京で行われた第四回政府間交渉では、双方の国の社会保険制度の概要や、前回交渉以降双方の国で変更になった制度について確認いたしました。その上で、主要な論点について集中的な議論を行ってきております。

 日中双方は今後とも積極的に協議を推進していくことで一致しており、政府としては引き続き、協定の早期締結に向けて精力的に交渉を進めてまいります。

鈴木(隼)委員 ありがとうございました。

 日中関係が落ちつきを取り戻しつつあるこのタイミングで、ぜひ日中の社会保障協定を実現していただきたいというふうに考えております。

 次に、既に発効済みの韓国との社会保障協定について質疑をさせていただきます。

 本協定においては、二重加入の防止のための適用調整に関する規定は置かれているものの、保険期間の通算に関する規定は置かれておらず、保険料掛け捨ての問題が残されております。これは、韓国において国民年金が導入されたのは一九八八年と歴史が浅く、日韓社会保障協定の交渉当時において、韓国人の年金加入者が日本側の最低加入期間である二十五年間を満たすことが困難であったことから、韓国側が保険期間の通算を認めなかったという事情によるものでありました。

 しかし、協定発効から既に十年以上が経過し、既に韓国側の懸念は解消されつつあります。

 そこで、政府参考人にお尋ねいたします。

 韓国との間における保険期間の通算に関する協議の必要性について、政府の見解をお聞かせください。

大菅政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、二〇〇五年、平成十七年四月に発効しました韓国との協定では、保険期間の通算に関する規定は置かれておりません。また、どうして置かれていないかという理由につきましても、委員が御指摘になったとおりでございます。

 我が方としても、当時、通算規定について議論をこれ以上続けて交渉が長期化するよりも、なるべく早く入った方が利益になるだろうということで、そのように判断したところでございます。

 他方、両国ともに、協定を締結してから十年以上たちました。この結果、当時よりも保険期間の通算に関するニーズは日本側も韓国側もともに高まってきていると認識しておりますので、今後、通算規定を含む協定に改正する可能性を検討してまいりたいと思います。

鈴木(隼)委員 ありがとうございました。

 この後イタリアとイギリスとの社会保障協定についても御質問させていただこうと思っていたんですが、ちょっと時間の関係で飛ばさせていただいて、最後に一つ、フィリピンとの二国間関係について質疑をさせていただきます。

 フィリピンとの関係においては、我が国はフィリピンにとって最大の貿易相手国であり、最大の投資国でもあります。

 第二次世界大戦下、我が国がフィリピンを占領した経緯もあり、対日感情の改善には時間を要しましたが、現在は良好な関係にあり、安倍政権が日・フィリピン関係を共通の理念と目標のための戦略的パートナーシップと位置づけているのは周知のことであります。

 今後も、アジアの平和を維持していくため、アメリカはもとより、フィリピンとの関係を初め、アジア諸国との関係を深めていくことが重要であると思いますが、この点について政府の御見解をお願いいたします。

岸田国務大臣 我が国も、フィリピンを含むアジアとの関係を当然のことながら重視しております。私自身も、外務大臣として、日本外交の三本柱の一つとして近隣諸国との関係推進を掲げております。

 引き続き、日米同盟を基軸としながら、アジア太平洋地域との間において、例えばEASですとかARFですとか、あるいはASEAN関連外相会議、こうした対話の枠組みを活用しながら一層関係を深めていきたいと思っております。

 ことし、我が国はG7のサミット議長国を務めるわけですが、八年ぶりのアジアでのG7ですので、ぜひこういった枠組みもしっかり活用しながら、アジアについて議論を深めていきたいと考えます。

 フィリピンを初めとするアジアの国々、さらには豪州、インド等も含めまして、アジア太平洋諸国との関係、日米同盟を基軸としながらも、こういった地域との関係は一層深めていかなければならない、このように考えます。

鈴木(隼)委員 ありがとうございました。大臣から御答弁いただけると思っていなかったので、それがうれしく思います。

 私自身としても、持続可能で安心して暮らせる世界を実現していくために、政府・与党の一員として引き続き議員外交に力を入れていくことをお約束して、質疑を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。

岸委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。

 協定について質問させていただきたいと思います。

 前に質問された方が大臣から御答弁をいただいて喜ばれているのとは対照的に、ちょっと、ほとんど大臣には質問がないと思いますが、よろしくお願いします。

 まず、基本的なところからちょっと質問していきたいと思うんです。

 今回、航空協定を結ぶ、それを国会の方にかけて審議し、協定を発効させていくという流れですけれども、この協定があることとないことと定期便の就航というのはどのような関係にあるのか、基礎的なことですが、参考人の方で結構ですので、御答弁ください。

梨田政府参考人 お答え申し上げます。

 定期便の就航自体は、航空協定がなくても、当事国間の航空当局がそれぞれの国内法令上の手続に基づく許可を与えることによって可能ではあります。

 一方で、このような運航は、あくまで当事国の国内法令に基づいて許可されるものであることから、法令の改正あるいは行政裁量による一方的な措置により、例えば許可が取り消されるといった可能性が全く排除されるわけではございません。

 こうした事情を踏まえると、航空協定が締結されていないまま就航させることは、将来にわたる安定的な運航が必ずしも確保されているとは言いがたい状況にあるかと思います。

 定期航空路の開設というものは長期的な視点に立って多額な設備投資を伴う経営判断でございますので、相互主義に基づき、拘束力のある国際約束といった形で協定を締結して定期航空路を開設するということが国際的な慣行になっていると思います。

寺田(学)委員 きょう国交省の方も来られていると思います、どなたが御答弁されるのかわかりませんが。この審議をする前に、私も地元と行き帰りしているんですが、全日空の機内誌で、プノンペン便が就航しますということを大々的に広告されていました。航空協定との関係というのはどうなっているんだろうなということをいぶかしがりながらその広告を見たんですが。

 先ほどは、今御答弁の中で、国際的な慣行が、航空協定の後に定期便になるんだということでしたけれども、国交省の方が来られていると思うのでちょっとお伺いしたいんですが、許認可権限を持った国交省として、定期航空路線の開通と航空協定の関係というのはどのように捉えているんですか。

平垣内政府参考人 お答えさせていただきます。

 先生御指摘のように、全日空の方がカンボジア線を九月から就航ということで発表を行っていると思いますけれども、あくまで実際の運航に当たりましては、先生御指摘されたように、関係の許認可が要るということになっているわけであります。その発表というのはあくまでそういう関係の許認可がとれればということの前提でもっての仮定の発表という、正式に申すればそういうことになろうかと思います。

 さらに言いますと、その許認可の前提には、やはり、先ほど御答弁ありましたように、航空協定がありまして、安定的に今後も航空輸送ができるという観点で航空協定ができて、さらにそれに基づいて許認可できるというのが、非常に自然かつ安定的な姿ではなかろうかと思っております。

寺田(学)委員 私が斜め読みだったのかどうかわかりませんし、ちょっと記憶にないですし、その広告自体がそのような、今の御答弁の趣旨をしっかり明示した上でのものだったのかどうかわかりませんけれども、普通の方が見れば、これは定期航路ができ上がるんだよなというふうに思い、さまざまな仕事のプランであり、観光のプランでも立てられるんだろうなと思います。

 個人的には、私、カンボジアには、累計すると恐らく生涯で半年ぐらいいるぐらい入り浸っておりましたので、それは本当にプノンペンであってもシェムリアップであっても喜ばしいことだなと思うんですけれども、国会を軽視するなとか、そういうことは言うつもりは全くありませんけれども、そこら辺の関係がすごく不安定なままでそういう話になっていることは、どういうふうに捉えているのかなということでちょっとお伺いをしたというところです。

 そもそもなんですが、こういう航空協定を締結するに当たっての外務省の役割、コミット度合いというのはどういうものなんだろうと。今回質疑をする上で、どちらに聞こうかということを毎回悩むんですけれども、そこは参考人で結構ですので、これは外務省として、航空協定、バイのものを結んでいく積み重ねがあると思いますけれども、国交省との役割分担というのはどういう形になっているんですか。

梨田政府参考人 お答え申し上げます。

 国によって事情は若干異なるかもしれませんけれども、外務省の役割は、あくまで国際約束を締結する、ありとあらゆるものについて、国際約束を締結するといった交渉には外務省が出ていくということになっておりますが、航空協定に限って申し上げれば、まずは航空当局間の話し合いがあり、今もASEAN等でやっておりますけれども、その上である程度煮詰めたものを今度オール・ジャパン、政府間の正式な交渉として国際約束の形に仕上げていくというのが、最終的な外務省の役割と国交省の役割分担だと考えております。

寺田(学)委員 では、基本的に中身というものは、航空協定に関しては国交省というところでよろしいんですね。そこで煮詰めたものが最終的に条約という形で上がってくるので、外務省として引き取ってこういう形でやっているということなんだとは思いますけれども。何か大きな間違いがあれば御訂正いただきたいんですが、それでよろしいですか。

梨田政府参考人 委員おっしゃるとおり、技術的なところというのは航空当局の御判断にお任せするところが多々あろうかと思いますが、外務省としては、その他国際約束を結ぶに当たっての横並びの法的整合性等の観点からもいろいろ中身を見るところでございますので、そういった役割はあろうかと思います。

寺田(学)委員 今、ASEAN諸国の中では、今回のカンボジアとラオスでコンプリートするというか、全部バイで締結するということですが、それとは別途、ASEANとの航空協定の締結というのは模索しているんだというような御答弁と説明がありましたけれども、これは誰が旗を振っているんですか。

梨田政府参考人 これは、先ほども御答弁申し上げましたが、二〇一三年の日・ASEAN特別首脳会議での基本的な合意を受けまして、既に協議が行われているということでございます。そういう首脳間の合意を踏まえて、今、先ほど申し上げたとおり、航空当局間の協議を経て、正式な政府間交渉が今月から始まっている段階にございます。

寺田(学)委員 バイで全て航空協定が終わっている中で、もう一回マルチでASEANと結ぶ理由というのは、何があるんですか。

梨田政府参考人 非常に簡潔に申し上げれば、より高い自由化の水準を求めること、それから、ASEAN十カ国と結んだ協定の内容に、より統一された最新の規定を盛り込むことなどがあろうかと思います。

寺田(学)委員 ASEANとバイの場合であれば、その国と結んだそれぞれの航空協定があって、それは、最新のものもあれば、昔やったのであれば違う、その高低差があるとは思うんですが、画一的な、ASEAN全体として同じルール、同じ協定内容ということでやっていこうということ、うなずかれているので、そういうことなんですね。

 もう一つ、バイとマルチの話という、その二つの話ではなくて、今度はオープンスカイという大きな流れとこの航空協定との関係なんですが、このオープンスカイ、より自由度を高めましょうということでやられている方針ですが、これは誰が旗を振っているんですか。

梨田政府参考人 オープンスカイ政策ということにつきましては、一義的に国交省さんの方でやられていると思いますけれども、それを踏まえた、先ほどの繰り返しになりますけれども、外務省は航空協定の締結を所掌しておりまして、それの交渉あるいは締結事務といったところを担っているという役割分担でございます。

寺田(学)委員 では、国交省にお伺いしたいんですが、オープンスカイの大きなうねりというか、それを旗振っていらっしゃるのは国交省だと外務省は言っていますけれども、それと、この航空協定の関係はどうなっていますか。

平垣内政府参考人 お答えさせていただきます。

 オープンスカイの内容は、企業数あるいは路線数あるいは便数の制限を二国間で撤廃する、こういう内容になってございます。

 その内容は、航空協定、つまり条約そのものに修正をかける必要がありますので、その関係で、外務省さんと一緒にやるということになろうかと思います。

寺田(学)委員 オープンスカイを進めることによって、航空協定内容が変えられることが大いにあり得るということでいいんですか。

平垣内政府参考人 そのとおりでございます。

寺田(学)委員 それをどのように整合性をとって進めていくんでしょう。

 今回、外務委員会ということでこの協定案をやっていきますが、片方で、私が調べる限りにおいては、航空協定自体はまさしく、オープンスカイとは対極とまでは言わないまでも、さまざまなことを事前に両国間で決めていきましょう、そして安定性を図りましょうと、先ほども答弁もありましたけれども、そういう色合いのものです。

 オープンスカイというのは、そういうものじゃだめだから、もっと自由度を高めましょうよ、事前に決めるのなんてやめましょうよというのがオープンスカイ。アメリカ主導の一つの枠組みで、日本もそれに加わりながらやっていっている。ここの整合性をどうとるんですか。

 我々が今、一生懸命審議して、協定を発効したことに関しても、また同じように、実質的に中身を詰められている国交省が、片方では、いや、オープンスカイだ、オープンスカイだと言って、今回議論した内容がまた変えられるような話になるというところをどう整理するんですかということを聞きたいんです。御答弁願います。

平垣内政府参考人 お答えさせていただきます。

 一旦オープンスカイを結びますと、先ほども申し上げましたように、その内容といたしましては、企業数あるいは路線、便数が自由になるわけでございます。その自由になったことに関しましては、それに基づいて、もう今までのように二国間で事前に便数を合意していないと就航できないということがなくなるわけでありますので、このオープンスカイの航空協定が結ばれれば、その後は、もう二国間でそういう縛りをするということはないということでございます。

寺田(学)委員 その性質はわかるんです。

 だから、事前に物事を決めようとしている今回の航空協定と、言葉をあえて整理して言いますけれども、事前にそういう取り決めをしないようにするオープンスカイの航空協定と、全然毛色が違うので、同じように国交省として旗を振っているのであれば、オープンスカイを進めるんですということなのか、航空協定というものも、先ほど外務省が言っていたとおり、基本的には運輸当局間で中身を詰めることですということですから、国交省としてバイの航空協定を詰めていくんですという話なのか。どっちも歯車を回しておきながら、うまくいった方だけでいって、後でオープンスカイが出てきたら、今度はオープンスカイの考え方にのっとって事前の取り決めをやめますよという話なのか、どういう戦略というか、それこそ所管省庁ですから、考えてやっているんですかということを教えてほしいんです。

平垣内政府参考人 お答えさせていただきます。

 まず、全体的な方針といたしまして、基本的にオープンスカイを進めていくということでございます。それに基づいて、既にバイの交渉をASEANでは進めておりまして、それもオープンスカイに沿ってやっておるわけでございます。その流れに沿って、同じく整合性をとって、今回、マルチのASEANの協定の方も同じ流れでやるということでございますので、マルチの協定もバイの協定も、同じ方向性、整合性をとって、同じくオープンスカイという方向でやっているということでございます。

寺田(学)委員 ごめんなさいね、僕の勉強不足なんですが、オープンスカイの航空協定もバイで結ぶんですよね。マルチ以外ないんですか。オープンスカイの理念にのっとった航空協定というのは、もちろんバイで締結していくんですよね。ですよね。専門家がうんと言っていますので、あれですけれども。

 何でカンボジアとラオスはオープンスカイじゃないんですか。そこの方針を伺いたいので。何でですか。

平垣内政府参考人 お答えさせていただきます。

 ラオスとカンボジアは今まで航空協定がなかったわけで、今回初めて航空協定そのものをつくるわけでございますけれども、それに合わせてオープンスカイも一緒にやるということであります。

 ほかのASEAN諸国につきましては、既に航空協定があった国については、それに基づいて、航空協定に抵触する部分があれば航空協定をいじりますし、そうでない場合は当局間の合意だけでオープンスカイができる、こういうことになってございます。

寺田(学)委員 まず、いずれにせよ、オープンスカイ協定を結ぶ前提としては、こういうオーソドックスな航空協定を結んだ上で、次のステージとしてオープンスカイの航空協定の当局間での話し合いというステージになっていくという捉え方でよろしいですか。間違っていたら訂正してください。

平垣内政府参考人 お答えさせていただきます。

 航空協定がもう既にある場合は、その後にオープンスカイにしていくというスタイルでありますけれども、ラオスとカンボジアは、新しい協定でありますので、航空協定を結ぶとともに、同時にオープンスカイに持っていくということでございます。

寺田(学)委員 ということは、今回議論している内容は、オープンスカイの航空協定も同時に議論している、うんとうなずかれる、ということでよろしいんですか。

平垣内政府参考人 ラオスとカンボジアの航空協定につきましては、そういう内容でございます。

寺田(学)委員 わかりました。

 去年も僕は外務委員会にいて、条約の議論とかというのをやっていましたけれども、基本的に、まさしく外務としてやりながらも、内実的に弾込めしているところはよく他省庁だったりするわけですね。条約の内容自体、大きく賛成、反対が分かれるようなものが多いわけではないので審議をしていくんですけれども、やはり本当に、そのことを結ぶ上での実質的な取り計らいをした省庁の方々を含めて戦略であったり意図とかを聞かないと、単純にこの外務委員会でさらっと通っていって終わるというのは誰にとってもいいことはないと思うので、ちょっといろいろ御答弁をいただきました。ありがとうございます。

 残り時間は、もう一個の社保協定の方に行きますけれども、ちょっと、先に質問された方々と重複する部分があるのでそれは避けたいと思いますが。

 これは通告していないんですが、すごく基本的なことなんですけれども、在留邦人が一番多い国というのはどこになるんですか。日本人が海外に住んでいる一番数の多いところはどこになるんですか。ごめんなさい。急に言ったので、わからなかったらわからなかったでいいですけれども。

能化政府参考人 手元に資料がございませんので断言するのが難しいところでございます。アメリカであったと記憶しております。米国でございます。

寺田(学)委員 ごめんなさい。急に聞いたので。事前のレクでさらっと聞いて、アメリカですかと言ったら、違いますよ、中国ですと僕は怒られたんですけれども。(発言する者あり)え、違う。アメリカ。どうぞ。

能化政府参考人 失礼いたします。

 平成二十六年の数字でございますけれども、米国が四十一万四千二百四十七名、中国が二位でございまして、十三万三千九百二名という数字がございます。

寺田(学)委員 では、断トツでアメリカなんですね。それなら、頭の回路をかえてやりますけれども。

 では、二番目の中国、るる議論ありましたけれども、基礎的なこととして、社保協定は結ばれていますか。

梨田政府参考人 まだ締結できておりません。交渉中でございます。

寺田(学)委員 航空協定もそうかもしれませんが、どの国と結ぶのかというインセンティブというか、国としての利益を考える場合に、単純明快に物すごく一番大きな指標は、どれだけそこに日本人がいるのかというところと、相手国の社会保障の制度というところだと思うんです。中国にも社会保障の制度はあると思いますので。

 今、十三万人と言われましたが、今回のフィリピンとは桁が違うぐらい在留邦人の方が多く、社保協定を望む声は高いとは思うんですが、これは何で現時点で締結できていないんでしょうか。

梨田政府参考人 おっしゃるとおり、中国との社会保障協定の締結ニーズは極めて高いものがあると思います。

 そういう意味で、平成二十三年十月以降、四回の政府間交渉を行ってきております。一番直近では、昨年十一月に東京で第四回交渉を行いました。さまざまな論点について、集中的な議論を行いました。

 委員御指摘のとおり、民間からも非常に強い要望がございますので、この交渉を加速化させて、なるべく早く合意に向けて努力したいと思います。

寺田(学)委員 経緯は先ほどの質問の中で私もお伺いしたので。何でそれだけニーズが高い中国との協定ができていないのか、何か問題があるとしたら何なのか。

 ちょっと、それを御答弁いただく前に、これも航空協定と一緒です、これは誰が実質的な旗を振って頑張ってやるものなんですか。厚労省でいいんですかね。

梨田政府参考人 当然、厚労省も絡みますけれども、社会保障協定につきましては、航空協定以上に外務省主導で協定締結交渉を行っています。

寺田(学)委員 では、何で一番ニーズの高い、アメリカの次に日本人が、私の会社のときの同期も今いますけれども、不利益を受けていることが続いているわけですよ。社会保障協定ができていれば免れていることも多々あるにもかかわらず、まだできていない。

 これは別に何か責めようというわけではないですよ、責めたい気持ちはありますけれども。問題は何ですかということは、せっかく審議の場なんですから、何が問題でスタックしているのか、それとも進むスピードが遅いのか、それを教えてください。

吉田政府参考人 中国との社会保障協定の交渉ですけれども、先ほども紹介がありましたように、中国がそういった外国人に対しても社会保障の強制加入、義務化をしたというのが二〇一一年ということでございまして、それから政府間交渉をすることになっておるわけです。過去四回やっております。

 一般的に、社会保障協定と申しますのは、相手国の社会保障制度、それから我が国の社会保障制度、これにある程度相互に見合うものがあるというようなことを確認しながらやります。したがいまして、中国側での社会保障制度について、詳細な、運用の実態を含めて、調整をする必要がございます。

 それから、どういう人を適用の対象にするかでありますとか、適用の対象にする制度ですとか、そういったものを詰めながら議論するという必要がございまして、いまだ議論すべき点がかなりあるという状況にあるのが、交渉に時間がかかっているということでございます。

 それからもう一つ、人的制約という問題もございまして、中国側も多くの国と同時並行的に交渉を進めているというふうに伺っております。そういったことで、日程調整といったことについてはそういった背景もございます。

寺田(学)委員 これは外務省主導でやられているということでしたので、内実をいろいろ教えてほしいんですが、こういう社保協定、国によると思いますよ、国によると思いますけれども、社保協定というのは、ある程度実質的な協議が始まって大体どれぐらいで平均的に、一般的には結ばれるものなんですか。一般的な話で結構です。

 ごめんなさい、詳細な通告までしていないので、急に言ったのであれなのかもしれないですけれども。

 中国というのは、実質的な協議へ入ってから、今回はフィリピンをやっていますけれども、他国に比べて協議の進行のスピードというのは遅い部類に入るのか、平均的な部類に入るのか。どういうふうに捉えたらいいんですか。

吉田政府参考人 具体的なデータをちょっと持ち合わせていないものですから、数字で御説明できませんけれども、交渉のスピードにつきましては、さまざまでございます。非常に短期で交渉が成立するところもございますし。当然、交渉に先立ちまして、もちろん厚生労働省さんと連携しながらでございますけれども、事前にいろいろなことを確認したりするプロセスもございます。ですから、そういった事前のところで相当進捗すれば、交渉に入ってからは早期に終結するという事例も当然ございます。

 中国につきましては、恐らく、既に数年、四年から五年かかっておりますから、そういう意味では、極めてスピーディーに進んでいるとまでは言えないかとは思いますけれども、先ほど申し上げたように、確認をすべき事項、それから、中国自身が制度を施行したのが最近のことでございますので、そういったことを確認することについては、ほかの国とはちょっと比較できない要素はあると思います。

寺田(学)委員 これも知っていたらでいいですけれども、中国はどの国ともまだ社会保障協定というのを結んでいないんですかね。知っていますか。どうぞ。

梨田政府参考人 お答え申し上げます。

 中国が結んでいる中で発効しているのはドイツと韓国のみだと承知しております。

 済みません、もう一つ、デンマークもございました。

寺田(学)委員 結構意外なところですね。ごめんなさいね、僕、専門的じゃないので。社会保障制度がかなりしっかりとしたところと、逆にだからこそ結びやすかったのかわかりませんけれども。結構そういう、ドイツであれお隣韓国であれ結べているのに、うちが結べていない理由はどこにあるんだろう。外務省の人数が足りないですか。その辺、どこに理由があるんですか。

 先ほど吉田さんからいろいろお話を伺いましたけれども、いろいろな国と結ぼうとしているのでスケジュールもとりにくいんだよねという理由があって、確かにそうだろうなと。二〇一一年から社会保障制度の義務加入が始まったというのであれば、ほかも横並びなのかなと思いきや、さくっといっているところもある。だとしたら、ネックは何なんだろうというところが知りたいというところですので、何かあれば。

梨田政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十三年十月から二十四年の三月まで三回にわたり、要するに、その半年間で三回交渉をやっていた。その後、平成二十七年十一月まで三年以上交渉ができなかったという背景がございます。それが若干おくれを。要するに、当初は半年で三回の交渉をやっておりましたが、さまざまな背景により三年半交渉ができなかったという経緯がございます。

寺田(学)委員 その交渉ができなかった理由を聞くのが多少怖いんですけれども、どういうことでそこの交渉がとまっていたんですか。そこは、もし自己反省があるとしたら反省しますので。

梨田政府参考人 日中間におけるさまざまな事情により、何も社保協定に限らず、さまざまな接触が停滞していた時期というのがあったということではないかと思います。

寺田(学)委員 よくわかりました。

 いろいろなところに何かをなすりつけるつもりもなく、素直にそこは受けとめながらやりたいと思います。

 いずれにせよ、今回フィリピンの社保協定をやりますけれども、そこにもかなり在留邦人は多いと思いますし、もともと日本との関係はいいところですけれども、これから伸びていくところだと思うので、こういう協定が結ばれることは歓迎したいと思います。

 先ほど申し上げたとおり、ニーズが高いところからというだけではだめかもしれませんが、ただ、中国は大きいところでもありますし、経済の減退が今叫ばれていますが、とはいえ、大きなプレーヤーですので、外務省、お忙しいと思いますが、リソースを使いながら頑張っていただきたいというふうに思います。

 時間が多少余っていますけれども、これで質疑を終わりたいと思います。以上です。

岸委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 民進党の小熊慎司です。

 先週とは私も立場が少し変わりましたけれども、国際情勢の変化に比べれば大した変化ではないのかなと思っていますけれども、早速質問に移らせていただきます。

 重なる質問もあるんですが、割愛していきますけれども、ちょうど五年ちょっと前に、私は参議院の外交防衛委員会の海外調査でメコン地域を訪れまして、非常に親日的な地域でもありますし、外交上しっかりと連携をとっていかなければならない国だなというのを実感してまいりました。

 ただ、当時、カンボジアなんかへの直行便がなかったんですけれども、アンコールワットの世界遺産には日本人観光客が一番多かった。でも、直行便がないがゆえに、五年ぐらい前から韓国の観光客の方がふえてしまったというところがあったり。もともと結びつきが強かったのに、いろいろおくれていた部分もあったというふうに思います。

 まして、カンボジアなんかは、今と政治体制は違いますけれども、第二次世界大戦後、真っ先にお米の支援とか日本に対してしていただいた国でもあるわけでありますから、この協定を機会に、さらにまた連携を強めていかなければならないというふうに思っています。

 その調査に行ったときは、ベトナム、ラオス、カンボジアと行ってきたんですけれども、自民党さんから共産党さんまでいましたけれども、行ったみんながどこが一番よかったかといったら、ラオスが一番よかったと。ベトナムに行ってどこがよかったですかと聞かれたときに、ベトナムに行っていながら、ベトナムですと言わずに、みんな口々にラオスと言っちゃったんですけれども。非常に牧歌的な、まさに日本の原風景が残っているような地域でありましたし、アジアの国々の方々は比較的我々と同じように温厚な国民性がある中でも、とりわけラオスは日本人にも近いなという部分がありました。

 ここは、農業が最大の産業の一つであります。経済的に豊かではなかったから化学的な農法に移れなかった、また入り込めなかったという点があって、逆にそれが幸運、今となってはこれは逆に世界の至宝だというふうに私は思っています。化学農法じゃなくて、しっかり農業が根づいている。もちろん、JICAを通じていろいろな農業支援も日本はしているところでありますけれども。

 これはやはり、当時、ラオスの方々とお話しすると、発展はしたいけれども失うものもあってはならないんだと。だから、我々が言ってきたのは、ある意味、日本は戦後復興期の中で急激に発展したけれども、どうしてもやはり失ってしまったもの、忘れてしまったものもある、この轍をラオスの人たちには踏んでほしくない、きちっと国力が向上しながらも、今ある大切な財産を守ってほしいというようなことを意見交換させていただいたところであります。

 そういう意味では、さはさりながら、今、中国とかいろいろな国の支援が入っていて近代化をしようとしているときに、ラオスに関して、私は、自然環境、自然農法といったものをしっかりと守っていく形で日本も支援をしていかなければならないというふうに思っています。

 今回、この航空協定で人的及び経済的な一層の促進をしていくということでありますけれども、ラオスに関しては、そういう急激な変化というよりも、こうしたものをしっかり守っていくんだということも留意をしてやっていかなければいけないと思いますが、見解をお伺いいたします。

岸田国務大臣 ラオスの発展のありようについて御質問をいただきました。

 御指摘のように、あるべき発展の姿というのは国によってもさまざまではありますが、委員がお感じになったような考え方も大切な考え方なのではないかと思います。

 そして、ラオスとの関係においては、ラオスはことしASEANの議長国も務めることになります。国際的な立場や存在を考えましても、日本はラオスとの関係をしっかりと重視していかなければならないと思います。

 今回、こうした航空協定によってラオスとの連結性を深めていく、こういったことになるわけでありますが、日本人の訪問客も、二〇〇九年から二〇一四年の五年間で一・五万人以上増加している、また、過去五年間で日系企業の進出も二倍に増加している、こうした日本の企業や関係者の関心も高まっているわけですので、こうした関係者ともぜひ意思疎通を図りながら、あるべきラオスの発展について日本としてどうかかわっていくのか、こういった取り組みを考えていくことは重要なことではないかと認識をいたします。

小熊委員 支援のあり方として、もちろん、その国のオーダーを聞いて日本がいろいろ選択していくわけでありますけれども、外務省の資料を見たら、農業関係の部分が実はオーダーが余りラオスは出ていなくて、やはり工業化の部分が多くて、あとインフラ整備等の方が多くて。逆に、国全体で有機農法が行われているなんて世界にないですよ。一部地域とか、一部の農家の人、一部の団体が取り組んでいるのは世界各国あります。日本でもあります。だけれども、国全体でこれが行われているというのは、これはたまたま偶然だったのかもしれませんが、これをしっかり守っていくというのは、ラオスのためだけじゃなくて、これは世界の宝だというふうに思います。

 逆に、ラオスの方々が気づいていない部分もありますから、この支援に関しては、逆に日本が外からの目で、オーダーを聞くだけではなくて、これは大切なものだから守っていく必要がありますよという支援の仕方ということが必要だというふうに思っています。そういう意味で今質問しているわけでありますので。

 国々によって、状況によって、いろいろな支援の仕方、交流の仕方が違うというのももちろんですけれども、ただ、とりわけこのラオスの農業に関しては、日本側から、これは高飛車に言ってはいけないんでしょうけれども、これはすごい大切なものだよと彼らに気づきを与えて。そして、とりわけ日本というのは、大規模型の農業でがさっとつくってやるわけでもなくて、丁寧な農業のやり方をやっていく技術も知見もあるわけでありますから。特に今でも頑張っている日本人の支援者もいますけれども、この部分にもうちょっと、ちょっと今の外務省の資料を見るとスポットが当たっていないように思いますので、この点について、農水省とも連携しながら。

 あと、この価値というのは、ラオスの価値ではないんです、世界の価値だと思いますので。その点、ぜひちょっと調査をして、スポットを当てて、逆にラオス側に伝えていく、気づきを与えていくというアプローチが必要じゃないかという私の意見なんです。

 その点に関してもう一度答弁をお願いします。

黄川田大臣政務官 委員御指摘のとおり、ラオスについては農薬使用頻度が非常に低いということが特徴でありまして、このことは、日本としても、また、日本政府を通じてJICAも非常に注目しているところでございます。

 そういうことで、二〇一三年九月から、JICA技術協力プロジェクトということで、有機農業促進プロジェクトを実施しております。この内容としましては、ラオスの有機農業の取り組みを後押しすべく、有機農業戦略の策定や普及啓発、制度づくり等について、専門家の派遣や資材の供与といった支援を行っております。

 これらを通じて、ラオス政府、またラオスの農業従事者において有機農業というものが大切だということも教育を、教育というのは上から目線かもしれませんが、指導をしているということでございます。

小熊委員 ラオスへ行った後ベトナムへ行ったら、三毛作、米をやっていても、化学肥料をばんばん使って、土地が痩せちゃってだめになっているというのを目の当たりにして、何で有機農法の方がいいかというと、大量生産で安直につくるよりも、その方が付加価値があって高く売れますよと、まさに流通の部分まで、いろいろ連携して気づきを与えていかなければ、何で、こんな面倒くさいことをやってつくるより簡単につくれた方がいいのにというのもありますから、ぜひそういったものも含めて、その価値をしっかりと、あるんだということを誇りに思っていただくという形で支援をしていくということが必要だと思いますので、ぜひ。

 その次の質問と絡みますけれども、今、日本はやっていると言うんですけれども、中国が大分入り込んできているというのもありますから、そうなると、安直にそういう化学肥料を買ってやっていくという流れもやはり一方では見受けられますので、そこをきちっと守っていく、プロテクトしていくということも意識して、ただ日本が支援していますよだけでは足りませんから、ほかの余計なものが入り込まないように守っていくということもぜひ意識して、これから支援を進めていただきたいなというふうに思っています。

 次の質問に移りますけれども、今回、この協定についての必要性が人的及び経済的一層の促進ということではあるんですが、人的の中に入っているんでしょうけれども、これは外務省でもちゃんと文化の交流という項目立てがホームページ上にありますが、この文化的な交流というのもしっかりやっていかなければいけないというふうに思っています。

 とりわけ、カンボジア、ラオスには世界遺産もあって、私も参議院のときに調査で行ったときに、アンコールワットはいろいろな国が支援をしていて、遺跡を保存したり修復したりしているわけであります。日本もしっかりやっていると評価も高くなっているところではあるんですが。実は、アンコールワット以上に古い遺跡がラオス側にあって、同じクメール文化で、ワット・プーというところですけれども、これは日本も保存の調査はしたんですね、過去に。ユネスコ文化遺産保存日本信託基金というのをやって、この調査したんですが、その後の動きがない。

 私も、五年前に行ったときに、あれは上智の先生だったかな、早稲田の先生だったか、ちょっと失念しましたけれども、聞いたときに、実はこのラオス側の遺跡も古くて、これはいい遺跡なんだけれども、日本が直接この保存、修復にかかわっていない、中国がやっているんだと。中国も、アンコールワットで他国がいるような地域では丁寧にやっているんだけれども、自分の国だけでやっているときは、はっきり言って、めちゃくちゃな修復とか、セメントでやっちゃったり、全然歴史的な検証もせずにやっちゃったりしているんだというその教授からの提言があって、ぜひ日本も積極的に関与しないとこれは簡単にやられちゃう。

 中国だけじゃなくて、アンコールワットの一番高い塔のところも、これはイタリアがやっているんですけれども、もちろん石の文化ですから、そういう経験、技術もあるんですが、イタリアの悪口を言うわけじゃないんですけれども、イタリアも、ほかの国がいないところだと結構適当になっちゃうということで、やはり日本の技術、真面目さでしっかりそういうのは守っていかないといけないんだという話をされました。

 これは、人的、経済的一層の促進だけれども、文化的にはやはりこういう促進もしていかなければいけないという意味では、こういう遺跡保存に関して、日本はしっかりとした知見も技術もあるわけであります。過去に調査もしているわけでありますけれども。限られた予算の中ではありますが、今回のこの交流を契機に、アンコールワット、カンボジアの方は日本もしっかりやっているのは皆さん御承知のとおりでありますけれども、ラオス側にもやるべき遺跡が、かかわるべき遺跡があるわけですね。

 過去に調査をしていながら、その後予算立てがされていないということについて、今後どうしていくのか、お伺いをいたします。

黄川田大臣政務官 ラオスに対しては、同国及び近隣の世界遺産に関連する博物館のネットワーク整備等のための支援を、二〇一一年から五年間にわたって行ってまいりました。我が国としては、引き続き文化遺産保護のための支援を積極的に行う考えでございます。

 また、議員御指摘の御心配の点についてはまた確認をしてまいりたいと思いますし、ラオスから個別の要望がなされた場合は、その都度しっかり検討してまいりたいと考えております。

小熊委員 ラオスだけじゃなくて、我々も、例えば地元でこれはいいものだよと外の人から気づきを与えてもらうというのはよくありますから。

 あと、クメール文化一体なので、カンボジア、ラオスと分けるのではなくて、アンコールワット遺跡群の、またカテゴリー的には一緒でありますから、そういうくくりの中で、ラオス側にある遺跡もどうしていくのかというのをしっかりと対応をとっていかないと、これは世界遺産ですから、ラオスの宝だけでもなくて、みんなの、我々全人類の遺産であるということであれば、これが適当にされてしまっている現状をやはり看過するわけにはいきませんので。限られた予算でしかないんですけれども、アンコールワットで今、遺跡保存、修復している人たちとも連携しながらやっていけば、近隣でもありますので、可能じゃないかなというふうに思います。

 これは積極的な取り組みを、今答弁でもあったように調査をして、日本がどうすべきか、かかわっていくべきかということを早急に対応していただきたいというふうに思っています。

 次の質問に移ります。

 何でこういう心配が起きるかというと、やはりAIIBとか、当時、五年前も、昆明からシンガポールの中国の高速鉄道の計画があって、そのときラオスもカンボジアでもちょっとネガティブな対応というか意識があったんですけれども、でも、これは徐々に進んできているということがあります。もちろん、その地域の発展のためには全く否定するものではありませんけれども、やはり開発の仕方を間違えると取り返せないということです。

 実際、その調査に行ったときも、プノンペンからホーチミンまで国道一号線を、これは日本がやっている支援ですけれども、車で八時間もかけて我々は移動したんですけれども、やはり日本の開発の仕方というのは丁寧であるし、いいものをつくるから残っていくんですけれども、ほかの国がやると、簡易舗装みたいなもので、ばさっとつくるのは早いけれどもすぐぼろぼろになって、よくないものをつくってしまっていたとかというのも見たり。日本はやはりこれまで、開発の仕方が、また土地買収とかにかかわる部分もしっかり丁寧にやりながら、人権とか環境とか、そういったものを丁寧にアプローチをしてきて評価を得ているところではあるんですが、中国の台頭によって過当競争になりかねないという懸念もあります。

 我々も、中国に負けないように、プレゼンスを高めるために開発に対してちょっと力を入れ過ぎるというのも出てくるのを、冷静にやっていかなければいけないんですけれども、向こうは向こうでどんどんやってきているのも事実でありますから、こうした中国の急激な動きに対して、我々も同じレベルでやってしまうのではなくて、しっかりと今までの評価のあるやり方でやりながら、それで終わるんじゃなくて、こっちのちょっと無理くりな開発の仕方に対してもブロックしていかなきゃいけないと思うんですね。

 そういう意識を持ちながら今回のラオスやカンボジアとの連携を深めていく、そういう多角的な視点、複合的な対策というのが必要になってくるというふうに思います。日本が、今まで一生懸命やってきました、これからもやっていきますではなくて、ある意味、中国には申しわけないけれども、中国のやり方に対しては、物によってはちょっと横やりを入れる、そういう視点も必要だというふうに思いますが、これはどうでしょうか。

黄川田大臣政務官 委員御指摘のとおり、援助する国がどのように援助していくかということは非常に大事だと思っております。また一方、援助される国についても、意識を高めていかなければならないと思っております。

 そういう意味で、日本は双方に対して、私たちはしっかりとした質の高い支援を行っておりますが、他の国に対してもメッセージを発していかなければならないというふうに思っております。

 我が国としては、こういった視点で、国連、世銀、G20等のいろいろなルートを活用し、国際社会と連携しながら、中国の援助について、国際的な取り組みや基準をしっかり、それらに対して整合性を持つとともに、透明性を持った形で援助が行われること、また、環境面、社会面に十分配慮した援助を行うこと、これらについて働きかけを今までも行ってまいりましたし、これからも行っていく所存でございます。

 また、ラオスに関しても、公共事業実施におけるガバナンスをしっかりと強化する支援も実施をしております。具体的には、JICAの支援を通じて、JICAは厳しいガイドラインを持ってやっておりますので、それらに沿って、ラオスも公共事業に対して労働環境、安全や人権といった面に配慮するように促すということでやってきております。

小熊委員 AIIBもできたので、今後はさらにそういうことを意識していかないと、中国はそのルールに入っていませんから、開発すると、自国から労働者を連れてきて、ばあんと置いていっちゃうわけですよ、カンボジアなんかでもその問題がありましたけれども。こうした問題についても、しっかりその国々を支えていって、いろいろな知恵を共有していく。

 まさに積極的平和主義、法の支配、価値観の共有ですから、しっかり価値観を共有すれば、その国自身がそういう無理な開発はブロックしていくはずなんですけれども、やはりブロックし切れていないし、今のAIIBの設立の動き、まだ具体的に乱開発とかということは聞いてはおりませんが、やはり懸念する材料の一つでもあります。

 また、先ほど御紹介した高速鉄道のプロジェクトも進んでいくに当たって、これがちゃんとなされればいいですけれども、これもしっかり見ていかなければならないということがありますから、しっかり価値観の共有、積極的平和主義というのであれば、開発に関して他国の動き、とりわけ中国の動きというのも注視をしながらしっかり対応していくということをより一層しなければいけないということです。

 その点を指摘して、次に移ります。

 これは、協定、条約とは関係ありませんが、ジャパン・ハウスが設立をされる、サンパウロ、ロンドン、ロサンゼルスと。当初、いろいろありましたが、オール・ジャパンの情報発信をしていくということであります。

 今、政府においては、安倍総理自身も、これは民主党政権から言っていることですが、福島の復興なくして日本の再生なし、東北の復興なくして日本の再生なし。このキャッチフレーズ、お題目はいいんですけれども、では、中身はどうなんだといえば、なかなか、我々被災地からすると、ちょっと足りていないよね、キャッチフレーズだけだよねという思いもあるので、残念ながら東北の各地域では全国平均よりも安倍政権の支持率も低いというのも世論調査では出ているのも事実であります。

 ぜひこれはしっかり、言葉だけじゃなくて、形に変えて結果を出してもらいたいという意味では、オール・ジャパンの情報発信。でも、日本の再生というのは、東北の復興、福島の復興がなければないわけです。それは言っているわけですから、総理初め各大臣も。であれば、このオール・ジャパンの取り組みの中にもしっかりそれを入れていかなければいけない。

 二〇二〇年に行われる東京パラリンピック・オリンピックでも、サッカーの試合は宮城県で行われる。また、前年に行われるラグビーのワールドカップも岩手県では行われる。福島県ではまだ何も決まっていません、残念ながら。どう復興したか、また原発事故災害がどう抑えられているか、情報発信したいと言っていながら、福島でやることが一番情報発信になるわけじゃないですか。まして、今、外務省も取り組んでいるインバウンド、外国人誘客、何回も言っていますけれども、福島県は来ていない。かつては来ていた、来ていない。

 このジャパン・ハウスの取り組みというのは非常にいいことだと思います。私もいろいろな委員会、またいろいろなプログラムで海外に行かせていただいていますけれども、やはり、とりわけこのアジア地域においては、中国、韓国の方が情報発信の仕方というのはうまいなと思いますし、お金をかけているなと思いました。日本はどちらかというと、そういう情報発信のところがあれば、シドニーにも行ったんですけれども、町の真ん中から郊外に移転してしまうみたいな話があったりですね、予算が限られているからということで。でも、今回は攻めの姿勢になっています。これはいい取り組みだというふうに思います。

 とりわけ、やはり今、国際的な風評被害も受けているわけでありますので、このジャパン・ハウスの中で大震災、原子力災害に関してはどのように情報発信していくのか、それとも何の展示物も情報発信のツールもないのか、教えてください。

黄川田大臣政務官 お答えします。

 ジャパン・ハウスについても、これまでどおり、東日本大震災等の復興状況について積極的に発信をしていきたいというふうに思っております。

 ジャパン・ハウスの中には、セミナーを実施したり、展示、企画、またワークショップの開催もできるようになっておりますし、レストラン、物販といった機能を有しておりますので、被災地を初めとする地方のさまざまな魅力発信をこれらを通じて行ってまいりたいと考えております。

小熊委員 何度も繰り返しますが、この間の委員会でも言ったけれども、エチオピアではそういうミスを犯しているわけですから、ぜひそういうことのないように。国際的な風評被害にも対応していきますと言っているのであれば、こんな質問が出る前に、こういうのがありますよと言ってもらわなきゃ困るんです。しっかり意識してやっていただきたいと思います。

 まして、ロサンゼルスのあるカリフォルニアには、明治維新後にアメリカに初めて集団入植したのは福島県人なんですよ。近年、カリフォルニアのエルドラド郡というところに、若松ティーコロニーパークというのができましたけれども、まさに我々は、そうしたチャレンジをして、フロンティアスピリッツを持って日系社会の礎をつくった県人でありますから、それを忘れないで今後も対応していただく、しっかり情報発信をしていただく。とりわけ、これは予算を使ってやるわけですから、そこを意識してぜひ取り組んでいただきたいというふうに思います。

 ことし選挙がなければ見に行きたいなというふうに思うんですが、恐らく選挙があるというのは、外務大臣に聞いてもしようがないので聞きませんけれども、落ちついたら、これはどういうふうに情報発信されているのかをしっかり見てきたいというふうに思いますので、しっかりとした対応をお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岸委員長 次に、篠原豪君。

篠原(豪)委員 民進党の篠原豪でございます。

 本日、民進党としての私の初めての質疑でございますので、ぜひ皆様よろしくお願いいたします。

 本日は、カンボジア王国、ラオスとの協定にかかわる質疑ということでありますので、私としては、主に我が国の航空政策全般について、関係省庁の方々に対しましてもお伺いしたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

 この質疑に当たっては、私も、現場の民間の航空会社の方々の声はどうなっているんだろうということを伺ってまいりまして、そういう中で、本当に、国際間競争をやっていくというのは、なかなか口で言うほど簡単じゃないんだなということをいろいろと学びました。

 その中で、これは率直な意見なんですけれども、ぜひ、前向きに質疑させていただきたいと思っているんですけれども、国内そして国外、課題がいろいろと両方ともあるということですので、それもあわせて伺っていきたいと思います。

 まず、国内ですけれども、ヒアリングでは、ことしはどの会社もおおむね順調であるというふうに聞いています。これは二〇一二年に最初のLCC、ローコストキャリアが就航して以降、何社も今進出してきている状況です。それまでは、日本の国内ではこれはなかなか無理なんじゃないかというふうに言われていたLCCですけれども、フルサービスキャリアにとってみれば旅客をとられている面も多分にあるということなんですが、国内航空会社間がコードシェアの融通をきかせて、競争しながらも、お客様の利便性が成り立つ部分で、座席の売買をすることなども含めて、コスト面を抑える努力をしている。そういうこともあって、今のところはうまくすみ分けができているといった状況だと聞いてきました。

 他方で、国内LCCの課題として今何が出てきつつあるのかなということを伺ったときに、外資系はネットワーク上にバッティングしていくので、これを警戒しているところだそうです。

 そこで、実際の日本の航空法を見てみました。見てみますと、第百一条に、外国人が代表者である法人または外国人の役員三分の一以上もしくは議決権の三分の一以上を占める法人は、航空運送事業の許可を受けることができないというふうになっております。

 ということは、言いかえれば、この条件さえクリアすればいいということでございまして、実際には、ガバナンスが、中国系の春秋航空日本、そしてマレーシア系のエアアジア・ジャパン、そしてオーストラリア系のジェットスター・ジャパンといった、さきに取り上げた航空法上の要件を満たしているものの、外国企業が一部出資した形で設立されているということです。

 法的にはクリアしていても、今後、どういうやり方になっていくかわかりませんけれども、適正な価格競争になっていかなくて、ダンピングのようなことも起きていくんじゃないかというようなことを言っています。

 このことに対して、これらのLCCの存在、そして、これらと国内の既存航空企業との競争関係について、政府はどのような見解をお持ちでいらっしゃるのか、そしてまた、課題についてはどう捉えているのか、これをお伺いいたします。

津島大臣政務官 篠原委員にお答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、いわゆるLCCについて、外国企業が一部出資したLCCであっても、外資規制を初めとした航空法の規定に基づいて我が国の航空運送事業の許可を受けた航空会社が我が国の航空会社として事業を行うこと自体については、問題はございません。

 しかし、御指摘にあった運賃の問題、ダンピングの問題、これは、まず、国内路線の航空運賃は、航空法上、事前届け出制となっております。国土交通大臣は、いわゆるダンピングも含め、ほかの航空運送事業者との間に不当な競争を引き起こすこととなるおそれがある場合等には、変更命令を発出することができます。

 そして、現状ですが、御指摘のような航空会社の運航において、変更命令を発出すべき事案はないと承知をしております。

 今後も、そういう事案があるかないかというところはしっかりと監視をしてまいりますし、国土交通省としては、まずは安全の確保を第一としていただく、その上で、航空会社間の健全な競争を通じて利用者の利便の向上を図るという航空政策の基本的な考え方に立って、今後とも競争環境の確保を図ってまいりたいと考えております。

 以上です。

篠原(豪)委員 きょうは国土大臣政務官にわざわざおいでをいただきましてありがとうございました。いろいろとこれからもお伺いしたいことがありますので、ぜひ丁寧にお答えいただければと思います。よろしくお願いします。

 一方で、今回の協定にも密接に関係しますけれども、では、海外ではどうなっているかということです。

 これも伺いますと、先ほども少し申し上げましたけれども、国際競争環境というのは日本にとって非常に厳しいという状態にあるそうです。欧米ですと、一時期いろいろな会社がローコストキャリアも含めて乱立をして、そして一定の荒波があって、その中では倒産をするような企業もあって、そして航空会社がどんどんと集約されていくといったことの動きにつながってきています。

 他方で、アジア地域を見てみますと、今まさにそういう状態だというふうに考えています。先ほど適正な価格ということをしっかりと国土交通省さんは指導していくということでございましたけれども、実際にホームページを見てみると、中国まで数千円とか台湾まで何千円とか、これが本当に適切な価格かどうかというのはやはり議論の残るところだと思います。

 そういった中で、これからどうしていくかということで、日本の航空会社にとって今後大切になってくるのは、こういう乱立している状態の中でも、やはりASEANというのは非常に航空需要が旺盛であって増加していくというふうに見込まれていますので、その市場におくれずに打って出ることは大切なんだということです。

 そして、その戦略をどう描いていくかということだったんですが、何でアジアに出ていかなければいけないのかというのを考えたときに、昔は、日本にいらっしゃる方々あるいは日本からどちらかへいらっしゃる方々、これをお客様として成り立たせてきたということであります。つまり、一路線ですよね、その先へ動くこともあるかもしれませんけれども。ですので、大型機材で、向こうの大きな空港を選んで、みんな747みたいな話で、世界で一番最大の747を持っていたのは、私の記憶では、ちょっと間違っていたら申しわけないですけれども、一時期、日本航空だったというふうに思います、世界じゅうでですよ。そういう戦略を打ってきたのは、バイの関係でやればそれで事足りていた。

 しかし、今はもうそうなっていなくて、これからは、アジアのお客様を実際にどうやって、日本にまず来ていただいて、そこからこの日本をハブとして行っていただくかということが大事だというふうに思っています。

 その意味においては、ASEANから成田を経由して、そして、北米はもちろんですけれども南米とか、実際に南米の需要もこれからふえてくるだろうということも、全体的に世界はふえてくるんですけれども、そういうこともあって、いかにこれを取り込んでいくのか。

 今まで日本は、余りその辺はうまくいっていたかどうかということだったんですけれども、地政学的に考えれば、太平洋のアジア側の一番のところにあるわけで、そういったことも含めて、いかに路線を、うまくこういったことを活用して、地政学的な位置を捉えてやっていくのかが重要になってくるんじゃないかと言っていました。

 既に皆様も御承知のとおり、実際に航空ダイヤを見てみますと、アジアからの便というのは大体夕方前までに到着をいたします。そして北米に行く飛行機というのは、大体夕方以降、一列になって飛んでいくということになっているんですけれども。そして、実際に、成田から国際線のお客様はトランジットをメーンに考えているので、逆に、今日本からアメリカに行くお客様の方が既に少なくなっているということだそうです、日本の航空会社にとっては。これが実態だそうです。

 羽田の場合は、首都圏からのアクセスがいいので、国内地方空港から国際線に乗り継いでもらうというのが一つあるけれども、成田は、今申し上げたように、そういった戦略になってくるということであります。

 この北東アジア地域を見ますと、やはりこういった動きを、競合というか、先ほどの委員の質問でもありましたけれども、カンボジアには既に韓国の航空会社、中国の航空会社が出ております。日本は出ていません。先ほど、オープンスカイ、合意をどうするかという話もありましたけれども。

 そういった中で、やはり競合となるのが、我が国の空港にとっては韓国の仁川空港。そして、これから、そういった中において、ハブ空港としての我が国の立ち位置というものをしっかりと確立していくことができるのかどうかというのは本当に待ったなしのところだと思います。

 そういった中において、政府としては、このことについてどのような御見解をお持ちでいらっしゃるか。そして、空港の機能強化というのも実は求められているというふうに聞いておりまして、やはり使いやすくなければこれはなかなか難しいということなので、その点についてどのような施策を行っていくのかということをお伺いいたします。

    〔委員長退席、新藤委員長代理着席〕

津島大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、地政学的に、北米からアジアを見た場合、日本というのはゲートウエーに位置するわけであります。また、ハブ空港の役割というのも、羽田、成田の関係性において、御指摘のような役割分担があろうかと思っております。

 その上で、今後、我が国の主要空港が東アジアにおいてハブ空港としての地位を確立するためには、アジア―北米間を初めとする国際線の乗り継ぎ需要を取り込んでいくことが重要である、このように考えます。

 こうした役割が特に期待される成田空港におきましては、国際線の乗り継ぎ需要の高い時間帯において航空便のダイヤが適切に設定されるよう、高速離脱誘導路の整備や第三滑走路の整備に向けた協議など、容量拡大に向けた取り組みを進めているところでございます。

 また、ハブ化促進のためには、国際線誘致のための空港利用コストの低減も重要であると考えております。具体的な取り組みとして、成田空港では、新規路線の開設等に対する着陸料軽減が行われております。

 国土交通省としては、引き続き、空港会社等とも連携しながら、成田空港などのハブ空港化に向けた取り組みを進めてまいりたいと考えております。

篠原(豪)委員 そうはいっても、財源は有限でありますので、しっかりとした戦略をつくるというのがまず第一だというふうに思います。その戦略に基づいて需要の事業シミュレーションをきちっと行っていただいた上で、そしてどういう計画をもとにしてやっていくかということ、ここが大事なところだと思いますので、ぜひしっかりとしていただいた上で、今、韓国が北東アジアでは乗り継ぎは第一位、そして次は中国ということになってきますので、我が国としては勝っていかなきゃいけないわけですから、しっかりと対応していただきたいというふうに思っております。

 今回の協定において、勉強になりましたのが、先ほどからありますカンボジアへの直行便、これが就航するかどうかというところでありますけれども、それできょうもまさにその協定の質疑をさせていただいているんですが。このような新興国への路線というのは、何で飛ばすんですかという話を伺いました。そうしたら、お答えは、就航当初からの黒字化は予定していませんと。将来を見据えて路線を育てていく、そういう戦略がやはり求められる、その会社じゃなくて日本の航空市場全体でですよ、航空需要を喚起していくことを目指すんだということでした。

 ASEAN全体の航空需要が大きくなっている状況にあっても、今回ラオスの協定をやっていますが、このラオスは、飛ばす飛ばさないという市場調査を民間の航空会社はしっかりやっていまして、この市場調査をやった結果では、定期便の直行便の就航は現時点では難しいというふうに考えていらっしゃるというようなことを仄聞しています。

 そのような中で、今回ラオスと航空協定を締結しようとする意義は、実際にどういうことに我が国にとってつながっていくのか。日本からの飛行機は現状では難しい、しかし、その中において航空協定を締結するという意義はどのような点にあるのか、これは外務大臣にお伺いします。

岸田国務大臣 今回、ラオスとの航空協定を考えるに当たりまして、先ほども触れさせていただきましたが、日本とラオスの間においては、ラオスへの日本人訪問者数は五年間で一・五万人以上増加しております、進出日系企業も五年間で約二倍に増加している、こうした状況が背景にあるわけですが、その中にあって、直行便を飛ばす予定はないのではないか、こういった御指摘がありました。

 現時点で、直行便の開設を発表した航空企業はないと承知しています。

 ただ、いろいろ状況を把握してみますと、ラオス政府によれば、ラオス国営航空が直行便の運航について検討中ということも承知しております。そして、ラオス国営航空においては、現行の機材、エアバス320で航行可能なラオス―福岡間の直行便を検討している、そしてさらには新規の機材の調達についても検討中ということで、具体的な検討作業を行っているということも承知しております。

 こうした状況も踏まえながら、航空会社がより安定した法的保護のもとで日本とラオスとの間の定期直行便の運航を行うことが可能となるように同協定を締結していく、こういった意義は大きいのではないかと思います。

 そして、先ほど来質疑の中で出ておりますが、ASEANの中でカンボジアとラオス二カ国のみが航空協定未締結ということになっているわけですが、こうした両国との間において協定を締結することによって、我が国の航空会社にとっても、既に締結している他のASEAN各国との航空協定と組み合わせることによって、より機動的かつ柔軟な航空路線の設定も可能になる、こういったメリットもありますので、今回、ラオスとの協定についてぜひ前向きに考え、国会において御審議をお願いしている、こういった次第でございます。

篠原(豪)委員 ありがとうございました。

 カンボジア、ラオスと航空協定を結べばASEAN十カ国全てとなる。他方で、航空協定を締結しても、二国間の経済関係の強化につながっていけばいいということになると思うんですけれども、その後、路線を開設し、維持していくというのが、ASEAN全体ではありますけれども、各国間であればやはり重要になってくるんだろう。その上でラオスの国営航空が日本に飛んでくるということは、まだ検討中の段階とはいえ、やはりそういうのがちゃんとあるというのは、路線開設、維持がないと、結局バイではなかなかうまくいかない。

 そういった中で、カンボジアの方ですけれども、先ほども申し上げましたけれども、中国と韓国の会社はもう既に参入をしていて、これからASEAN地域、いろいろなところがそうですけれども、このような相手国企業との競争のもとで日本の航空会社が路線を維持していくということは、それはもう航空会社だけの努力に任せるのか、あるいは、特定の個別支援というのは難しいんでしょうけれども、政府としてそういったことに対して取り組みを、支援も含めてですけれども、今後、ASEAN十カ国を結んで、恐らくアジア地域に路線がふえていくということになりますので、そのことに対して何かお考えがあればお伺いしたいと思います。

和田政府参考人 お答えをいたします。

 航空路線の開設、維持は航空会社の経営判断により行われるものでございますけれども、国といたしましては、本邦の航空会社が飛んでいただけるような環境整備を図っていくことが重要だというふうに認識をしております。そのためには、基地となります我が国拠点空港の機能強化が最優先の課題という認識のもとで、現在取り組みを進めております。

 具体的に申し上げますと、羽田空港の機能強化として、地元の理解を得て、飛行経路の見直し等により国際線の発着枠を二〇二〇年までに年約四万回ふやすほか、成田空港の機能強化として、管制機能の高度化等によりまして、同様に年約四万回の発着枠を拡大するとともに、第三滑走路の整備を含む方策の具体化に向けて協議を進めているところでございます。

 こうした取り組みによりまして、旺盛な訪日需要の取り込みを図るほか、アジア―北米間を初め、国際間の乗り継ぎ需要の積極的な取り込みを図ることで我が国航空会社の競争力の強化を図りたいと考えております。

篠原(豪)委員 旺盛な需要がこれから起きてくるので取り込むというために、もう一つ観点として大事なのが、これからASEAN地域は、後発地域という話もいろいろとありましたけれども、中間層が経済成長と一緒にどんどんとふえてくるというふうになります。そういったときに、ASEAN地域の方々が日本に来るときに、ビザの緩和をやはりしていく必要が、人と人の行き来というのは後ろ盾が必要ですから、政府がやることですから、やはりやっていかなければいけないんだろうというふうに思っています。

 政府もこれまで東南アジア向けには、シンガポールは訪日観光客のビザが取得免除されていましたけれども、二〇一三年でしたか、タイとかマレーシアはビザの取得を免除しましたし、ベトナム、フィリピン、インドネシアなども、期間を延ばすとか数次ビザを使えるようにするとか、いろいろと御対応をなさってきている、そういう流れだと思います。

 我が国の一つの目標として、成長戦略として取り組んで、訪日観光客数を大幅に伸ばしていこうという話でございますので、航空需要を喚起するためにも、そして、訪日外国人数を増加させるためのビザの緩和の施策というものが、これまでない国に対してもしっかりしていかなければいけないんだと思っていますので、この点について、岸田外務大臣、どう思われているか、お伺いいたします。

岸田国務大臣 まず、外務省としましては、委員御指摘のように、これまでも、ASEAN諸国あるいは中国など訪日外国人が多く見込まれる国を中心に、不法滞在あるいは犯罪等の国内への影響が可能な限り生じないように工夫しながら、戦略的にビザ緩和に取り組んできました。

 こうしたビザ緩和に加えて、継続的な訪日プロモーションあるいは免税範囲の拡大など、観光客誘致のための取り組みがあり、また円安などの要因もありました。こういったことが相まって、昨年の訪日外国人旅行者数が一千九百七十四万人となったこと、これは大変喜ばしいことだと思います。

 そして、今後の方向性ということで申し上げるならば、総理を議長とする明日の日本を支える観光ビジョン構想会議という会議が設けられておりますが、その中で、有識者の意見あるいは関係省庁間の検討を行っているわけですが、ちょうど本日、この会議において構想を発表することになっております。

 その中において、訪日外国人の数をふやすということ、これはもちろん大事ですが、あわせて、富裕層あるいはリピーター、若年層の誘致など、量だけではなくして質、量両面で観光立国に貢献できるよう、引き続き戦略的ビザ緩和に取り組んでいく、こういった考え方をしっかり示していき、努力をしていきたいと考えます。

篠原(豪)委員 私は実は横浜市というところで市会議員をやらせていただいたことがあって、以前も質疑させていただいたんですけれども、その横浜市は、国際局というのをつくってやっておりまして、これは自治体では一つだけだというふうに伺っています。

 それと同時に、国際局をつくるに当たっては、これまで文化観光局というのがありまして、そこがこれまでは大きな会議の誘致であるとか、いろいろ外国の方々をどうされるか、横浜市は大きな桟橋を持っていますので、大さん橋という旅客ターミナルがありますので、海外の船が入ってきたりもするところなんですけれども。

 その中で、昔、特別委員会があって、私議論をしていたんですけれども、タイにテレビ番組があって、今番組名がどうなっているかわかりませんけれども、「マジでジャパン」ですよと話したんです。「マジでジャパン」というのは番組の名前なんです。「マジでジャパン」ですよと言ったら、皆さんが、えっ、大丈夫、篠原君みたいな顔をしていたので、いや、実はですねと。

 この番組は、タイの方々が、今言った富裕層であるとか文化的なものを求めている方々に対して、日本の文化というのはどこにあるのか、福島にもいいところがあると思いますし、本当にいろいろないいところがあって、温泉もいいし、スキーだけじゃなくて、文化を知りたいということで番組をやっているんですよ。有名なレポーターがいて、日本で取材して、日本のコーディネーターと、そういう本当に文化的なところにちゃんとスポットを当ててやっていく。ただ単に、何かうわっとするんじゃなくて、お米のつくり方も含めたりいろいろと、日本の伝統文化というのは何なのかというところに焦点を当てて多くやっているんですけれども、これが物すごく受けていまして、この影響でタイの方がうわっと来る。来る場所が今までと違いますので、やっている方々も驚かれるというところです。

 京都へ行っても、外国人が一番来るところはどこですかというと、実はなぜか伏見稲荷だったりするとかという話も聞いたことがあります。それは、トリップアドバイザーというサイトがあるんですけれども、それを参考にして来ますので、ああいうところで上がると、今までは外国の方が、少なくともガイドで小さくしか載っていなかったところが、本当にいいところなんだよというふうになる。

 そういったこともありますので、ここまでは、ハードもそうですけれども、ソフトパワー、外交としてもしっかりとやっていただきたいということで、実際こういうことが起きています。これは私が今まで横浜にいたときはまだ知らない方が多かったですし、今ここでお話をしても、皆さんは御存じだと思いますけれども、こういったことが広がってきていますので、しっかりとやっていただきたいということです。これは意見です。

 日本は、ASEANで協定を結びましたけれども、これから東南アジア、北東アジアの方々が日本より先の行き先として中南米や、あるいは向こうから来てアフリカとか、地域の路線というのを開設するということも期待されるということを聞いています。

 こういったASEAN以外の地域とは航空協定を結んでいる数は日本は多くない、アフリカとか、南米とかだというふうに聞いていまして、これらの地域に今後どうしていくかというと、多分、日本の企業も、例えば、TICADもやりますけれども、どんどんと旺盛にこれからアフリカの地域などにも進出をしていくんじゃないかというふうに思います。

 そういったときに、これは今回の委員会で、きょうじゃないですけれども、ほかの協定として、投資協定、租税協定、そして社会保障協定はきょうはフィリピンですけれども、こういったことが全部連関して初めて企業が出やすくなって、あるいは人の往来がやりやすくなって、そして全体で日本の国際戦略を上げていこうと。そして、これまで行っていない地域に対して、ほかのアジアの地域が旺盛に先に進出しているということであれば、そことどう戦っていくのかということになっていきますので、その中で、今回、航空協定ですので、またほかの質疑のときでもそういった話もしっかりとしたいと思っているんですけれども。

 今申し上げたことを考えながらやっていくときに、この航空協定を初めとする経済、社会の分野にかかわる協定も含めての交渉、これは全部ないところであれば、この地域はこれであっちはこれだけしかやっていないみたいな話になるとこれはもったいないんだろうというふうに思いますので、そういったことに対してどのような方針をお持ちか、そして、その方針の実現のためにはどのような取り組みが、あるのであればお伺いしたいと思います。これは外務大臣にお伺いします。

    〔新藤委員長代理退席、委員長着席〕

岸田国務大臣 御指摘のように、社会保障協定、航空協定、今回御審議をいただいている協定のみならず、投資協定、さらにはFTAを初めとするさまざまな経済連携、こうした取り決めは、さまざまな意味で大きな意義を有していると思います。人的交流、経済的な交流はもちろんでありますし、その国に対する支援やさまざまな外交的な見地からの関係推進、こういったことからも重要であります。

 いずれにしましても、こうしたさまざまな交流や関係を推進していく上で、外交の立場からはしっかりと環境整備をしていかなければなりません。そうした環境整備をするに当たりまして、今申し上げましたさまざまな協定、取り決めは、大変重要な意義があると思います。

 環境整備をした上で、民間企業においても、そして個々の日本人の方々においても、意欲的に交流をしていただき、そして経済関係を進めていただく、こうした取り組みが積み重なっていく、こうした考え方は大変重要だと考えます。

 引き続き、環境整備という観点から、外交の立場から、さまざまな協定締結についてしっかり取り組んでいきたい、このように考えます。

篠原(豪)委員 ぜひ取り組んでいただければと、よろしくお願い申し上げます。

 次に、テロ対策について、これまでもお伺いしているんですけれども、伺いたいと思います。

 前回の私の質疑で、ちょうどブリュッセルであったテロの翌日だったと思いますけれども、その日に質疑がありまして、それで、政府として在留邦人の皆さん、関連企業の皆さんに対してどのような対応をしてきたのかということ、そしてまた、国際的なメッセージも含めた連携というのはどうなっているのかということを伺ってまいりました。

 その後、今回のテロに対する政府の対応、現在まで何か進捗しているものがあれば、簡潔に伺いたいと思います。

岸田国務大臣 ブリュッセルでのテロ事件に対する対応ですが、これはもう既に御報告していたかと思いますが、発生直後から外務本省に情報連絡室、そして在ベルギー大使館に現地対策本部を設置し、邦人の安否確認、そして安全確保に全力で対応しておりましたが、その中で、邦人の被害としまして、一名の重傷、一名の軽傷を確認しているということを申し上げておりました。

 その中で、一名の重傷の方、ようやく意識が回復されたということであり、今状況は安定しているという報告を受けております。引き続き、現地大使館がしっかり支援しており、一日も早い回復をお祈りするところであります。

 そして、邦人に対する注意喚起ということにつきましても、その事件に先立って、十六日、海外安全情報、スポット情報を発出していたわけですが、その後、発生を受けて、たびレジに登録している短期渡航者に対してメールを発出して注意喚起を行いました。また、海外安全情報、スポット情報及び広域情報ですが、これも、さらにこの事件発生後、発出もいたしたところであります。

 そして、欧州地域の全在外公館に在外邦人の安全対策の徹底を指示いたしました。現地においてはこうした取り組みを引き続きしっかりと徹底するように、外務省としても指示を出しているところであります。

 引き続き、こうしたテロ、暴力的過激主義対策ということにつきましても、G7議長国として、しっかりと国際的な議論をリードしていきたいと考えております。

篠原(豪)委員 ぜひ引き続き御対応いただければと思うんです。

 最後におっしゃられました伊勢志摩G7サミット、これが開かれます。大臣のお膝元でも外相会合が開かれる、もう間もなくですけれども。

 その中で、今回のテロ事件、何だったかというと、これまでは、いわゆるクリーンエリアといって、通関のところから先どうするか、飛行機どうするかという話だったんですが、今回の事件の、これは航空会社としてこういうやり方をしているらしいんですけれども、ダーティーエリアといって誰でも入れるところ、このダーティーエリアにおいて一たび爆弾をああいうふうにやってしまえば、実は一国の空港が全く機能しなくなるということが証明された事件だったんだろうというふうに言われています。

 ここに対しての対策というのは非常に難しい、厳しいものがあるというふうに聞いていますけれども、今回のブリュッセルの件を受けて、政府において、ダーティーエリアについても、あと、空港へのアクセスについても、電車が地下に入ってくるとかいうことも含めてテロの対策というのを充実しなければいけないんだということも、実際にどうしたらいいかというのは航空会社の方々は議論しなければいけないと言っているんですけれども、こういった問題というのは、航空保安というのは民間でできないので、今回の件もあるので、国においてしっかりと真剣な議論をしていただきたいというようなことも伺っております。

 ですので、この点についてどういうふうに思われているか、最後にお伺いして、私の質問を終わります。

黄川田大臣政務官 政府におきまして、総理から、今般のテロ事案に際し、海外の邦人の安全確保、国内の警戒警備の徹底など、より一層緊張感を持ってテロ対策に当たるよう指示がありました。

 上記の指示を受けて、官邸に情報連絡室を設置するとともに、警視庁や国土交通省、法務省といった関係省庁において、情報収集の強化、水際対策の徹底、空港や公共機関を含む関係施設の警備強化等、国内におけるテロ対策の徹底を図ることとしたところと承知しております。

 また、テロを未然に防ぐ観点から、委員御指摘のとおり、ダーティーエリアといった、出入りに制限を設けることのできないエリアについては、事前にテロリストの把握に努めることがテロ対策において重要であり、そのためのテロ情報の収集、分析はますます重要となってきております。

 こうした中、外務省としては、昨年十二月の国際テロ情報収集ユニットの新設を初め、官邸を司令塔とした新たな国際テロ対策の体制が発足しております。政府一丸となって国際テロ情報収集の強化に努めているところでございます。

 また、我が国国民の安全にかかわるテロ関連情報について、外務省は、在外公館のネットワーク等を通じて収集を行うとともに、関係国との間で緊密に情報共有を行ってきております。

 また、いざというときの情報共有のため、連絡体制の構築に加え、日ごろから関係国との協力関係の維持強化に努めているところでございます。

篠原(豪)委員 引き続きこういった議論をさせていただきたいと思いますが、ぜひ、なかなか水際は難しいということもありますけれども、そうはいっても何もしないというわけにいきませんので、しっかりと対応していただきたいと思います。

 きょうは、津島国土交通大臣政務官、来ていただきましてありがとうございました。引き続きまた議論をさせていただきたいと思っておりますので、その際には何とぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

岸委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 我が党は、日・カンボジア航空協定、日・ラオス航空協定及び日・フィリピン社会保障協定は、いずれも賛成です。

 社会保障協定について一点聞きます。

 我が国と社会保障協定がある国は今十八カ国ということになっておりますが、未締結のままになっているのが三つあります。我が国が国会で批准してから、イタリアとの協定では六年以上、インドとの協定は二年以上たっても未締結のままということになっておりますが、この二カ国の発効に向けた見通しについてお伺いしておきたいと思います。

梨田政府参考人 お答え申し上げます。

 イタリアにつきましてはおっしゃるとおり平成二十一年七月、インドにつきましては平成二十五年十二月に国会の御承認をいただいておりますが、イタリアにつきましては先方の協定締結に伴う予算措置がなかなか議会に提出がおくれていたという問題、それから、インドは署名後にインド側の年金制度の改正が行われたという問題、それの調整に時間を要しましたが、それぞれ、イタリアにつきましては、昨年の夏、議会の審議を了しました。また、インドにつきましては、ことしの一月に政府間の協議が合意に達しました。

 以上を踏まえまして、なるべく早期の実施に向けた、現在は最終調整を行っているところでございます。

宮本(徹)委員 わかりました。早期の発効に向けた努力をよろしくお願いします。

 話題をかえます。

 きょうはASEAN各国との関係が議論になっておりますけれども、ASEANとの関係という点では、昨日発効した安保法制も大きくかかわります。

 法律で新たに可能となった、平時からの米軍等武器等防護について、質問をさせていただきます。

 南シナ海での共同訓練や警戒監視でも、この適用は可能になっているということであります。

 三月二十二日の記者会見で、中谷防衛大臣は、この米軍等武器等防護についてこう言っております。制度の適正な運用を図るために、米軍等による本制度に対する十分な理解を得る必要があって、米軍に対して説明、調整を行っていると。裏を返せば、まだ十分な理解は得られていない、調整もついていないということだと思います。

 国会審議の中で、政府は、自衛隊法改正九十五条の二による米軍等武器等防護については、極めて受動的かつ限定的なものだ、こう説明をしてきました。その中で、五要件が必要だということで、相手が襲撃を中止して逃走した場合には武器の使用はできない、そして、こちら側が武器の退避が不可能な場合に限る、あるいは、正当防衛、緊急避難に当たる場合にしか人に危害を与えてはならない、こういうことを答弁してきたわけです。

 この武器使用の五要件については、アメリカ側に説明し、理解は得られたんでしょうか。若宮防衛副大臣、きょう来ていただいていますので、よろしくお願いします。

若宮副大臣 宮本議員にお答えさせていただきます。

 今議員が御指摘になりました武器等防護等々の件でございます。

 自衛隊法の第九十五条の二におきましては、同法の九十五条と同様に、武器等の退避によってもその防護が不可能である場合など、ほかに手段のない、やむを得ない場合でなければ武器を使用することはできないこと、また、防護対象の武器等が破壊された場合や、相手方が襲撃を中止し、または逃走した場合には武器の使用ができなくなること、さらに、正当防衛または緊急避難に当たる場合でなければ人に危害を与えてはならないことなどの厳格な要件が満たされていなければならないという、今御指摘にもいただきました極めて受動的かつ限定的な必要最小限度の武器使用が認められているというものでございます。

 そのために、本条によります警護を要請する米軍等に対しましては、これらの武器使用の要件等を事前に十分に説明いたしまして、これらに合致をしない場合に自衛隊が武器を使用することはないということについて、しっかりとした理解を得ることが必要となろうかと思います。そうした理解が得られるということが、警護実施の前提ということになります。

 このため、現在、アメリカに対しまして、武器使用の要件も含めまして、制度についての説明をしっかりと行っているところでございまして、アメリカ側の一定の理解が得られていると考えてはおるところでございますけれども、引き続き、本制度の適正な運用を図るために必要な対応を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

宮本(徹)委員 一定の理解というのは、五要件全部をわかりましたというふうにアメリカ側が言ったということですか。一定の理解じゃよくわからないです。

若宮副大臣 米軍との調整でございますので、細部については、今、お答えを差し控えさせていただければと思っております。

宮本(徹)委員 細部を答えなかったら、一定の理解といって、この五要件のうち、一つや二つは認めたけれども、ほかは認めていないという話かもわからないじゃないですか。

 国会で答弁したことですよ、国会で答弁したことが守られているかどうかというのは、やはり国会で明らかにされなきゃいけないと思うんですけれども、どうですか。

若宮副大臣 今、議員が御指摘になりましたように、この五要件につきましてもきちっと御説明をさせていただきまして理解をいただき、そしてまた、その後の対応も、しっかりといろいろな御説明等々してまいりたいというふうに考えているところでございます。

宮本(徹)委員 理解してもらいたいという話であって、理解してもらったという話じゃないわけですね。

 特別委員会では、宮崎礼壹元内閣法制局長官もいらっしゃって、こうおっしゃったわけですね。事前回避義務と事後追撃禁止については、アメリカ側も守らなければ憲法違反になるというふうにおっしゃられたわけです。

 アメリカ側に対しても、事前回避義務、事後追撃禁止については求めているんでしょうか、求めて理解は得られたのでしょうか。

辰己政府参考人 お答え申し上げます。

 今おっしゃった武器使用の五要件でございますが、これに対しては、米側にも十分御説明をし、理解を得られていることがこの警護の前提になっております。

 実際の警護に当たっては、まさにそういうこれまでの自衛隊と米軍との共同訓練等で武器使用に係る認識も深まっておりまして、当然それは米側にも理解を得られるものと考えています。

宮本(徹)委員 理解が得られるものと考えていますというふうに言うんですけれども、では、アメリカの側も武器は事前回避する、事後追撃はしないということを得られるというふうに思っているということですか。理解は得られていないと思いますけれども。

 アメリカ側のROE、交戦規則はどうなっているかというと、敵対行為だけではなくて、敵対的な意図に対しても対応すると書いているわけですよ。つまり、行為だけじゃなくて意図に対してやるということは、攻撃がある前に先にアメリカの側からやり返すというのがアメリカのROE、交戦規則になっているわけですよ。だから、アメリカの側がこのROEを変えない限り、宮崎礼壹内閣法制局長官が言っている事前回避義務、事後追撃禁止をのんだということにならないんですよ。そういう話し合いはしているんですか。

辰己政府参考人 当然、自衛隊法の九十五条の二の武器使用の考え方については、今おっしゃられた五要件を含めまして、米側には御説明をしているところでございます。

 日米両国の部隊等はそれぞれ異なる国内法令に基づいて行動しますので、当然、ROEが全く同じということではないものでございますけれども、日米間においては、日ごろからの共同訓練などを通じまして、それぞれの武器使用について理解が深まっているところでございまして、整合のとれた対処を行うことができるよう、米側の理解を得ることができると考えております。

宮本(徹)委員 つまり、日本に警護をアメリカ側が依頼するときはアメリカ側も事前回避義務を負う、事後追撃禁止義務を負う、この話をしているのかという話を聞いているんですよ。

辰己政府参考人 当然、九十五条の二の考え方は、国会でも御説明しているとおり、五要件がございます。これについては、米側に説明をし、理解を得ることができるものと考えております。

宮本(徹)委員 結局、同じ答弁を繰り返して、去年の特別委員会でも、宮崎礼壹さんが言ったこの指摘に対しては何も答えなかったんですよ、政府は。

 日本側はこの五要件について説明する、日本の自衛隊についての五要件の話はしているという話はするけれども、宮崎礼壹さんは、憲法との関係でいえば、自衛隊が防護する以上、武器が攻撃されそうになったら事前回避の義務を負うんですよ、あるいは、攻撃があった場合に、相手側が逃げた場合は事後追撃しちゃいけないんですよ、これをアメリカ側も認めなきゃだめですよということをおっしゃったわけですよ。その話し合いをしているという話はちっとも出てこないわけです。

 憲法との関係で極めて重大な問題をはらんだままだということを厳しく指摘しておきたいというふうに思います。

 それで、今の話だと、どの程度アメリカから理解を得られているのかということもさっぱりわからないわけですが、防衛省内でどんな検討を行っているのかというのも含めて、私たち全く見えてこないわけですね。

 もう一つお聞きしたいのは、防衛大学の准教授の黒崎将広さんが、「国際問題」の一・二月号で、この米軍等武器等防護の規定について、これは米軍等の武器の駆けつけ警護を認める規定と見ることができる、こういう議論を展開していらっしゃいます。

 例えばと言って、こう言っているんですね。重要影響事態や国際平和共同対処事態において、自衛隊が実施区域における活動を終えた後、同域を離れて帰還中に当該空母が国籍不明の不審船舶または無人航空機から遠距離攻撃を受けたとする。この場合、警護任務を付与された自衛隊の艦船や航空機は引き返して武器等防護のための武器使用により当該空母と艦上機とその乗組員の生命及び身体を守ることは不可能ではないだろうと。

 こんな議論、国会の中では全然なかったわけですけれども、果たして政府は、自衛隊法九十五条の二の法解釈として、こんなことが可能だと考えているんでしょうか。

若宮副大臣 お答えさせていただきます。

 今議員が御指摘になりました論文につきましては、私どもも承知をいたしているところでございますが、この論文といいますのが、黒崎准教授が研究者として独自の立場で執筆をされたものというふうに考えております。もちろん、防衛省としても、それからまた政府としても、正式な見解として取りまとめたものではないということをまず御理解いただきたいと思っております。

 その上で、自衛隊法の九十五条の二について申し上げますと、同条はあくまでも、自衛隊と連携をして我が国の防衛に資する活動に現に従事をしている、ここのところが大事なんでございます。我が国の防衛ということと、それから現に従事をしているかどうかというところ、その上で米軍等の武器等防護に関係してくるということでございまして、例えば、重要影響事態について申し上げれば、米軍等の部隊が自衛隊と連携して輸送や補給といった活動に現に従事をしているということが、本条に基づく防護の前提ということになります。

 御指摘の論文の箇所がどのような趣旨で書かれたものかというのは、私どもの方では明らかというところではございませんけれども、自衛隊が活動を終えた後、今ちょうど委員が読まれましたけれども、同域を離れて帰還中に自衛隊が引き返してといった記載を踏まえて考えますと、本条に基づきます、本来の、私どもで昨年成立いたしました武器使用の要件には当てはまらないというふうに考えているところでございます。

宮本(徹)委員 当てはまらないと明快な答弁をいただきましたけれども、防衛大学校は学校教育法に基づく大学とは違いまして、幹部自衛官を育てる防衛省の教育訓練機関ですよね。そこで、個人が研究論文として発表する分には研究なのかもわからないですけれども、もし、政府見解をも踏み越えた拡大解釈を幹部自衛官の皆さんに教えているとしたら、これは大問題になると思うんですけれども、これは調査が必要じゃないですか。

若宮副大臣 確かに委員御指摘のとおり、指導に当たっているということであればあれなんですが、一研究者の考え方で論文というものを書いたということでございますので、これは直接の指導に当たったというふうには、明らかでないものですから、この場で何とも申し上げるところはないところでございます。

宮本(徹)委員 だから、論文でこういう見解で、もしこの中身で幹部自衛官に教えていたら問題になるわけですから、それは確認されたらどうですかということを言っているわけですよ。

若宮副大臣 今御指摘のとおり、しっかりと確認をしてまいりたいと思っておりますが、今、大学校の中で、では、実際に、昨日から施行になりました平和安全法制にかかわる教育の内容についてはまだ現在検討中ということで聞いてございますので、適切な教育を将来の幹部自衛官に行うべく、引き続き慎重にしっかりとした教育を行っていこうというふうに考えているところでございますので、御了解いただければと思っています。

宮本(徹)委員 確認をよろしくお願いします。

 さらに、この米軍等武器等防護について、きょうは国際法上の根拠についてもお伺いしたいと思います。岸田大臣、お待たせいたしました。

 前国会で質問主意書のやりとりもこの問題でされております。それを見ると、国際法上の根拠については国連憲章や国際条約に明文的なものはない、慣習法だというのが政府の説明でした。その慣習法の根拠として挙げているのは、主意書で出てきたのは二つだけなんですね。日米ガイドラインでおのおののアセットを相互に防衛すると書かれているということと、もう一つは、イタリア・サンレモの国際人道法研究所が二〇〇九年に発行した交戦規定ハンドブックで認められている、この二つだけが例としては書かれております。

 では、このハンドブックは、何カ国の例を調べて書いたのかというと、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアの四カ国の専門家チームが四カ国のROEを調べてつくったということになっております。世界百九十の国がある中で、どうしてわずか四カ国の専門家チームがつくったものしか示せずに国際慣習法と言えるんですか。

岸田国務大臣 武器等防護と国際法の関係について御質問いただきましたが、まず、国際法上、武器等を武力攻撃に至らない侵害から防護する、これは認められているわけですが、その中にありまして、部隊防衛、ユニットセルフディフェンスにつきましては、各国の交戦規定、ROEにおいて採用されている概念であり、これ自体、必ずしも国際法上の概念として確立しているわけではありませんが、部隊に対する外部からの侵害に対し、侵害が行われた現場で部隊の防衛のために必要な措置をとることを指す、このように承知をしております。

 そして、根拠として二つしか挙げていないのではないか、一つは日米ガイドライン、及び御指摘のサンレモ・ハンドブック、この二つしか示していないのではないか、なおかつ、サンレモ・ハンドブックにおいては限られた国の例しか示されていないのではないか、このような御指摘がありました。

 このROEにつきましては、国によって明らかにしている国、していない国、明らかにしている国が限定されているという現実があります。その中で、国際慣習法上認められている例として、このサンレモ・ハンドブックを挙げたわけであります。

 そして、加えて、それ以外の例を挙げさせていただくならば、ベルギーを本拠とする軍事戦争法学会が多数の国の実務家の参加を得てまとめた二〇一三年の報告書の中において、やはり、このROEを明らかにしている国、米国ですとかオランダですとかノルウェー等の国が部隊防衛の対象には他国部隊も含み得るとの立場を表明している、こうした例もあります。

 こうしたことを根拠としまして、この武器使用が国際慣習法上認められている、このように我が国は理解し、そして説明をさせていただいた次第であります。

宮本(徹)委員 オランダとノルウェーが出てきたので、やっとこれで六カ国ですよ、百九十カ国のうち。日本は今まで認めていなかったように、ROE、全部調べたわけじゃないでしょうから、世界で認めていない国もたくさんあるんじゃないかというふうに思いますよ。

 しかも、先ほどユニットセルフディフェンスについて、大臣自身が、国際法上の概念として確立しているわけではないと言っているわけですよ。国際法上の理念として確立しているわけでもないものが、何で国際慣習法だと言えるのか。物すごい論理の飛躍がある、乱暴だと言わざるを得ないと思います。

 もう一点お伺いしますけれども、ユニットセルフディフェンスと称して、実際に、ある国が他国の部隊を防護した実例というのは示していただけるでしょうか。

岸田国務大臣 自衛隊法九十五条の二の規定の立案に当たりまして、我が国としては、主要国政府とさまざまなやりとりを行いました。ただ、公表を前提としたものではありませんので、具体的な内容について我が国から明らかにすることは控えなければならないとは思いますが、ただ、二〇一二年五月に多くの学者あるいは実務者が参加して開催された軍事戦争法学会第十五回総会の報告において、幾つかの国が見解を示しております。

 米国、ノルウェー、そしてオランダが見解を示しておりますが、その中で、米国からは、部隊は自己を防護できるとともに、自国の他の部隊、要員及び装備を防護することができる、また、任務がある場合には同盟国の部隊を防護することができる、こうした見解が表明され、ノルウェーからは、部隊防衛はノルウェーの部隊には限らない、部隊防衛は同一ミッションにおいて協力する他国部隊をもカバーするものである。また、オランダからは、武力紛争が発生していない状況(個人的または任務外における攻撃、平和維持活動等)においてオランダは部隊防衛の権利を認めている、合同、多国籍部隊を含め、より大規模な部隊から成る部隊は、それがともに一つの部隊として行動している場合には、部隊防衛の行使として相互に防衛できる。こうした見解が示されております。

 各国の例としましては、こういったことを念頭に考えていくべきだと思います。

宮本(徹)委員 だから、私が聞いているのは、各国が何を主張しているかということじゃなくて、実際に他国部隊を防護した実例はあるのかということを聞いたわけですよ。それを示せないわけですね。

岸田国務大臣 先ほどの答弁の冒頭に申し上げましたように、各国とはさまざまな意思疎通を行いました。しかし、具体的な実例については、相手との関係がありますので、公表は控えさせていただきます。考え方を先ほど示させていただいた次第です。

宮本(徹)委員 実例も示せないわけですよ。

 私もいろいろ調べましたけれども、国際社会である国が、これはユニットセルフディフェンスをもとに武器使用したんだと主張した例というのは見つからないですよ、私の調べた範囲では。もしあるんだったら示してください。実例も示さずに、幾つかの国がこれはできるんだということを主張していることをもって国際慣習法として成立していると言うことは、本当に乱暴な議論だと思います。

 国際法的な根拠も、いろいろな学者のものを読みましたけれども、個人的自衛説だとか、部隊防護説だとか、国家的自衛説だとか、諸説あって定まっていないんですね。それは、防衛大の准教授の黒崎さんの論文でも、根拠については定まっていないということも言っているわけですよね。そんなものは国際慣習法になるはずがないというふうに思います。

 その上で、もう時間がないので、最後に一問だけお伺いしますけれども、国際慣習法、国際法に照らしても、防衛大の黒崎准教授の挙げられた例というのはユニットセルフディフェンスから外れるんじゃないですか。そこは確認したいんですけれども。

岸田国務大臣 まず、国際法との関係を考えるに当たっては、個別具体的な事例に即して判断する必要があると考えます。

 その上で、自国の部隊の近傍で共通の任務を遂行する他国の部隊に対する武力攻撃に至らない侵害、さらには他に適当な手段がない場合、そして現場において、そして必要最小限の実力を行使して当該侵害を排除する、こうした要件を満たすものであれば国際法上は問題ないと考えております。

岸委員長 宮本君、時間が来ております。

宮本(徹)委員 それだとさっぱりわからないんですけれども、その規定からいけば黒崎さんのは当たらないということでよろしいかというふうに思いますが、時間になっていますので終わります。

 とにかく、自衛隊法九十五条の二を含めて、今回施行になった安保法は憲法違反明確です。きのうも、国会前に三万七千人もの方が集まって、この法律は廃止しろ、そのためには野党は共同して安倍政権を倒せと声を上げました。

 私たち、この法律を廃止するために全力を挙げることを表明しまして、質問を終わります。

岸委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 本日、この条約の質疑ということでございます。おおさか維新の会党内でも見せていただきまして、この条約をしっかり前に進めていくべきだと我々も考えておりますし、何より、今回、航空協定が結ばれております日本とその他の国との行き来をどんどん活発化させるために必ず必要だと思いますので、ぜひ政府としてもいろいろな国との条約の締結を急いでいただきたいと思います。

 そうした中で、航空協定を結んでも、来ていただく人をふやすためには、戦略的に日本のよさ、魅力の発信を対外的にしていかなければならないというふうに思うんですけれども、そういった意味で、安倍内閣の方で戦略的対外発信の強化ということで予算を組まれております。いわゆるジャパン・ハウス、先ほども少しほかの委員が触れられていましたけれども、ジャパン・ハウス。全部で五百億、そしてジャパン・ハウス自体の箱物の予算は本年度、もうあしたで最終日ですかね、三十六億円で、きのう通りました当初予算では四十二・二億円組んでいるというふうに聞いております。

 何とかハウスと聞くと、かつて北方領土にあった何とかハウスというのを思い出しますけれども、これもジャパン・ハウスということで、何かしらちょっと、うんっと思うところがあるんですが、まず、このジャパン・ハウスの趣旨と予算について、外務省、伺えますか。

大鷹政府参考人 お答えいたします。

 国際社会におきまして情報量の増大ですとか伝達手段の多様化が顕著となっております中で、これまで日本への関心が高くなかった人々を含む層に対しまして、日本の正しい姿ですとか多様な魅力を発信して、親日派、知日派の裾野を広げていくことが重要、それは御指摘のとおりでございます。

 予算につきましては、御指摘のとおり、ジャパン・ハウスを主要国の市内一等地に設置すべく、平成二十七年度予算におきましては三十六億円、平成二十八年度予算、政府案におきましては四十二億円を計上させていただいております。

 このジャパン・ハウスの設置を通じまして、日本に対するさまざまな情報を入手できるワンストップサービスの提供、そして民間の活力、地方の魅力を積極的に活用したオール・ジャパンの発信、そして現地のニーズにきめ細かく対応した、共感を呼ぶ発信を実現していきたいというふうに思っております。

丸山委員 方向性自体は私は間違っていないと思っていまして、非常にしっかりやっていただきたいと思うんです。

 一方で、これは現時点で、もういろいろな機関が既にやっているわけですよ。例えば、ジェトロもやっているし、そして国際交流基金だって世界じゅうにありますし、観光局もありますし、各省庁でこれを一つにまとめていくのかという御説明かと思いきや、各省との調整、ほかの機関との調整は適宜やっていくみたいな御説明がきのうあって、本当に大丈夫かなというのが正直なところなんです。

 そうした中で、先日報道がありまして気になっているんですが、このジャパン・ハウスの位置づけは、ほかの省庁の、例えばクールジャパンだったら経産省、あとは観光局だったら国交省がそれぞれ、縦割りと言うと政府は怒るかもしれませんけれども、やっている。

 その中で、このジャパン・ハウスの位置づけは何かなと思ったときに、私は、中国がこれまで孔子学院みたいな形で世界じゅうにつくってきていて、自分の立場を戦略的に発信している、それに対して、日本も何かしないのかという声が上がって、先般の慰安婦の話もありまして、まだまだ世界じゅうで誤解を生んでいる中で、正しい、しかもそれは学術的、客観的な事実に基づいた日本の立場を発信していくものだ、てっきり外務省としてはそれをつくるんだというふうに思っていたんですけれども、先日の報道では、こうした領土問題とか歴史認識を発信する拠点にはしないという報道があったんですけれども、本当にそれは事実なんでしょうか。

 そして、もう一つ重ねて聞きたいのは、このジャパン・ハウスの目的に、日本の正しい姿の発信というのを、外務省がつくったポンチ絵にも描かれているんですけれども、この正しい姿というのは、そうしましたら何になるんでしょうか。お伺いできますか。

大鷹政府参考人 お答えいたします。

 このジャパン・ハウスにつきましては、オール・ジャパンという取り組みでございますので、まず、御指摘のあった各機関との協力につきましては、当然、現地を中心に今後とも取り進めたいというふうに思っております。

 例えば、国際交流基金ですとか日本政府観光局につきましてはジャパン・ハウスの中に入居する方向で話が進んでおりますし、個別の各広報文化センター、ジェトロ、その他いろいろな取り組みがございますけれども、そういったものが現地で実施されるイベントにつきましてはジャパン・ハウスも大いに活用していただくという方向で考えてございます。

 今の政策広報のお話でございますけれども、報道にございました方針云々ということにつきましては、まず、ジャパン・ハウスの方針を変更したという事実はございません。

 いろいろ重要な政策についてしかるべき発信をするということは重要というふうに考えておりますので、当然、ジャパン・ハウスにおきましても、例えばセミナーですとか講演会の開催とかいろいろな方策があり得ると思いますので、そういったいろいろな政策について説明をすることもあり得るというふうに考えてございます。

 ただ、その際には、現地の理解と共感が得られることも重要でございますので、その個別具体的な進め方につきましては、現地の運営委員会ともよく協議して取り組んでいきたいと思っております。

 そして、正しい姿については、当然、各種いろいろな重要政策がございますので、そういったものについてきちっと発信していく、そういったものが含まれるというふうに考えてございます。

 以上です。

丸山委員 適切な形でやられるといういつものパターンだと思うんですけれども、これにこの正しい姿、やられるというのに領土問題や歴史認識が入っているということでよろしいんですね。

大鷹政府参考人 お答えいたします。

 重要政策、正しい姿、そういったものの中には、当然、領土保全の問題ですとか歴史認識、その他の問題が入っているというふうに認識しております。

丸山委員 ぜひ、国益にかなう形でやっていただくのが重要だと思いますが、何も中国のように、逆に反感を買っているという話も聞きますので、反感を買わないように、しかして欧米だと学術的にお話をするとすごく通りがいいというふうに聞きますので、発信の仕方をしっかりやっていただいて、このジャパン・ハウスだけじゃなくて、いろいろなセミナーでやっていただきたい。

 今、やるぞというお答えがありましたので、中に入っているという話だったので、やっていただきたいんですけれども、ちょっと、そういう意味では、この報道は誤報だということで間違いない、これを確認したかったんですが。

 しかし、私、今回のジャパン・ハウス、少しいろいろ手を出し過ぎて、どれもどっちつかずにならないのかなというのがすごく心配なところです。

 先ほどの、最初の発信にはこの歴史認識や領土問題の部分から正しい姿を発信していくというのがメーン、下部にあって、そしてそれが大きくなっていって、今回の戦略的対外発信の予算、その中にジャパン・ハウスがあったというふうに私はいろいろなところから聞いて、外務省さんからも聞いて認識しているところなんです。

 一方で、この歴史問題や領土問題、政治的なものを少し薄める形での今御答弁、発信になったことで、むしろ逆に、ほかのもの、例えば日本食だとか、もしくは日本の魅力、伝統文化、アニメ、そういった魅力的なものを出して、それによって人を呼び込んでいこうという形が強くなってきて、そうすると、ほかの既存のものとの違いというのが非常にわかりにくい。何十億というお金をかけてこれをやるというのは本当に外務省としてやるべきものなのかというところに、国民の皆さんの疑問符がつく可能性があると思います。

 そういった意味でお伺いしていきたいんですけれども、いろいろな事業を既にいろいろなところがやっております。例えば、クールジャパン機構でも、海外向けジャパン・コンテンツ関連だとかジャパン・モールみたいなのをやったり、日本食のフードタウンみたいなものをやっております。

 現に、今回検討されておりますところだと、ロンドンとロサンゼルスとサンパウロということでございますけれども、一方で、例えばロサンゼルスだと、既にロサンゼルスには国際交流基金の日本文化センターがございまして、そこにはもちろん、箱でイベントをできるようなものをお持ちなんですね。それにもかかわらず、今回、再度こういったものをつくっていくということで、クールジャパンだけじゃなく、国際交流基金は一緒になる可能性があるということでした。ジェトロもやっています。

 そういった意味で、箱をつくるという部分でデマーケーションがうまくできていないんじゃないか、ほかの省庁との連携が本当にうまくできていないんじゃないかなというのをすごく思うんです。もったいないというふうに思うんですが、このあたり、デマーケーションをどうお答えになりますか。

大鷹政府参考人 お答えいたします。

 海外への日本のよさの発信ということにつきましては、決して十分できているとは、まだまだやることはたくさんあるというのが現状だというふうに思っております。

 御指摘いただきましたように、国際交流基金ですとか経産省の各種の取り組みはございますけれども、そこで飽和しているということではなくて、どんどん積極的に、むしろイニシアチブを発揮していくべき局面にあると私どもは思っているところでございます。

 そういう中で、経産省におかれましては、クールジャパン機構によりまして、民間企業による海外での需要開拓の事業にいろいろ出資するとか、そういうまた新しいことに取り組んでいるわけです。

 それに対しまして、ジャパン・ハウスにおきましては、民間企業の事業に対する、出資まではいたしませんけれども、オール・ジャパンの発信をしていく、つまり官民あわせての発信をしていくという観点から、物販ですとか和食レストランの提供を含めて、いろいろ民間活力の積極的な活用をしていきたいというふうに思っております。

 今、三カ所の拠点についてのお話がございましたけれども、そういったいろいろな既存のものとの相乗効果とか、いろいろ考えながら、慎重に三カ所選んでおります。国際交流基金はLAにも拠点がございます。先ほど申し上げましたように、国際交流基金につきましては同居するという方向で、まさにワンストップサービスの提供ということを実現しながら、LAの拠点を通じて日本のよさを発信していきたいというふうに考えている次第です。

丸山委員 今、委員の皆さん、聞いていただいて、何が違うんだというのははてなだと思うんですけれども、ちょっともう一回、違いをお伺いしたいんですよ。

 予算を別に組んでやっていらっしゃる意味は本当にないと思うんです。ジェトロや観光局もあって、今、国際交流基金は中に入る予定だと。これは、もちろん、外務省さんが持っているからだと思うんですけれども。他省庁でもやっていて、現に今、箱物で常時常設の場所をつくるという話なんですけれども、私は常設である必要は全くないと思っていて、例えば、ロンドンで昨年、ハイパージャパンという、日本の魅力を知ってもらおうというイベントを夏と冬のクリスマスのときにやって、合計十三万人の方が来られて、いろいろな日本の、コスプレだとか今お話があった日本食だとか、同じようなことを体感されて、ファンになって帰られている。

 常設だったらそこに行かなきゃないのに、近くに来たから寄ってみようとか。いろいろな場所で機動的にできるはずなのに、常設の場所、しかも、また重ねて、同じようなものがある場所でやろうとされている。このデマーケーションが本当にわからないんですよ。

 もう一回、今既存のあるものと何が違うんだというのを外務省として説明をお願いできますか。

岸田国務大臣 このジャパン・ハウスにつきましては、我が国として、まず戦略的な対外発信をしなければいけない、こうした強い意識のもとに。対外発信をする際に、今、情報をめぐる環境が大きく変化している。まず、情報量が増大している。また、個人としても、さまざまな情報を発信する手段がどんどんと新しく発生している。こうした状況の変化の中で、我が国が効果的な情報発信をするにはどうしたらいいのかという問題意識が、このジャパン・ハウスの出発点だったと思います。

 そのためには、やはり、個人の情報発信の手段や量が多様化し増大しているわけですから、今まで日本に関心を持っていない人にも日本に関心を持ってもらう、そこから始めなければいけないのではないか、こういった問題意識を持ち、ぜひ、日本の情報に触れてもらう人の裾野を広げなければならない。これは従来の対応では不十分だということで新しい取り組みを考え、だからこそ、今回、各国の大都市の中心地に場所を選び、そこを発信拠点とする。

 さらには、役所的な一方的な目線で情報発信をしても多くの人たちを引きつけることができない。だからして、現地の専門家あるいは民間の方々、こういった方々を取り込んで現地委員会を立ち上げて、より地元そして多くの広い目線で物事を考えられる、こういった取り組みを進められるような仕掛けもつくったということです。

 こうした従来の発想や取り組みでは不十分な裾野の広がりを目指すためにジャパン・ハウスをつくり、そして有効な活用をしていこうということを進めています。

 その中にあって、御指摘のありました領土問題や我が国として主張すべきこともしっかり主張し、そして日本の魅力も発信していく、これがジャパン・ハウスを新たに立ち上げる大きなポイントだということをぜひしっかり説明しなければならないと思います。

丸山委員 今大臣が御説明されたことは、既にやっているところがあるわけですよ。ショッピングモールみたいなものがあったり、ジェトロも同じようなことをやっていて、例えば先ほどの国際交流基金みたいなものもやっている。

 しかし、それを一等地に外務省がお金を出してつくるという意味で、今大臣がおっしゃったのは、興味のない人を新たに引きつけるということですか。そのためにこの三十六億、四十何億というのをつくるということなんですか。

 私は、現に今あるもの、例えば先ほどのハイパージャパンみたいなものに対して新たにこの三十六億なりをつぎ込めば、もっと興味のある人ができると思うんです。

 ロンドンの中心に外務省が主体になって日本ハウスというものをつくって、本当に人が来るのかどうか。今あるものにかわるような、今あるもので来ない人たちが来るようなものができるのかということに対して、私は非常に疑問であって、外務省の役割はそこではなくて、それは例えばクールジャパン機構だとか観光局とかジェトロがやればいい話で。例えばオックスフォードに日本研究所がありますけれども、むしろそういった日本研究所みたいな、各大学との連携みたいな形で、先ほどの歴史認識だとかそういったものを学術的に研究する予算にがんがんお金を入れていくとか。

 もっと言えば、韓国なんかはうまいですね。例えば、そういうテーマパークとかに行かない方でも、ドラマみたいな形でテレビから流れることで自然に韓国の文化や歴史に触れていく。下手すると、竹島の話まで、さりげなく彼らの主張を入れてドラマを世界じゅうに配信している。

 戦略的対外発信というのはまさしくそういったものにあると私は思っていて、箱物を、しかも今あるようなものと同じような、日本食だとか、もしくは日本のアニメとかそういったものを中心にやるのであれば、これは外務省さんがやるべきものではなくて、むしろ今申し上げたほかのところに予算を入れていくべきだというふうに私はすごく思うんですよ。(岸田国務大臣「委員長」と呼ぶ)

 大臣もお話があると思うので、最後に重ねてお伺いしたいんですが、もう一つ、これはロジスティックもすごくもったいないことをしているなと思っています。

 これは、最初に役所の方にお答えいただいて、最後に大臣にお答えいただきたいんですけれども、この事業をやる中で、今回、外務省が急遽フォーラムを開催していまして、三月十八日にフォーラムの開催をホームページにアップして、締め切りはその三日後、三月二十一日までにお申し込みくださいといって、そして、この発表をする開催は二十五日なんですよ。

 聞いたら、もっと多くの方に来てほしかったんですみたいな話をされているんですけれども、ロジスティックもすごく適当になっているし、そして、戦略性があるかというと、私はすごく疑問だと思うんです。

 では、事務方に、この話はどうしてこんなに短くなったのか、そして、次にやる機会もあるということなので、次はしっかり時間をとって周知していただけるかどうかというのをお聞きして、そして最後に、大臣、何かお話をされたそうだったのでお話しいただいて、私の質疑を終わりたいと思います。

大鷹政府参考人 お答えいたします。

 先週開催されましたジャパン・ハウス・フォーラムにつきましては、国内のコンテンツホルダーを含む方々に対しましてジャパン・ハウスの事業コンセプトを提示しまして、それに基づきまして日本の魅力の発信のあり方について活発に議論していただく、そのことによりましてジャパン・ハウスに対する理解の促進を図るという観点から開催したものでございます。

 このフォーラムの参加者募集につきましては、開催日の一週間前に開始しまして、当日多数の方々の御参加、出席を得ることができまして、そこで、総合プロデューサーの方から提示された事業コンセプトを踏まえて、日本の魅力の発信のあり方等について幅広く議論ができました。

 今後とも同様のイベントを定期的に開催していくつもりですけれども、御指摘の点も踏まえまして、またいろいろ工夫しながら開催していきたいというふうには思っております。

岸田国務大臣 まず、委員からの御指摘につきましては、それはそれでしっかりと受けとめさせていただき、我々としても今後の取り組みの参考にさせていただきたいと思いますが、ただ、従来のさまざまな組織や取り組みを強化するだけでは、今の時代において我が国は効果的な対外発信は十分できないのではないかという問題意識については、委員と意識を共有できているのではないかと思います。

 ですから、従来の方向、従来の取り組みだけではなくして、例えば裾野を広げるということを考えても、委員の方からドラマ、ソフトウエアの話もありましたが、何か工夫をしなければならないということでジャパン・ハウスの発想があったと思うんです。このジャパン・ハウスにしましても、箱物をつくることがポイントではないと思っています。より幅広く、日本に関心を持っていない方にも裾野を広く日本の情報に接してもらうためにはどうしたらいいのか、その一つの取り組みとしてジャパン・ハウスがあると考えています。

 ぜひ、ジャパン・ハウスもそういった点をしっかり念頭に置きながら、効果的な結果につながるように努力したいと思いますし、あわせて、委員の方からいろいろ御指摘ありました、そういった点も踏まえて、よりさらに何ができるかについても考えていかなければならない、結果として国際的な、効果的な広報戦略を実現したいと考えます。

丸山委員 以上で質疑を終わります。

岸委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党と山本太郎となかまたち、玉城デニーです。

 きょう最後の質疑に立ちますが、質問が重複することもあるかと思いますが、どうぞ答弁もまたよろしくお願い申し上げたいと思います。

 日・カンボジア航空協定、日・ラオス航空協定、そしてきょうは日・フィリピン社会保障協定、この三つの協定、まずは航空協定について質問をさせていただきたいと思います。

 この航空協定、日・カンボジア航空協定、ラオス航空協定それぞれ、ASEAN十カ国中この二カ国のみ航空協定が未締結であるというふうに、早期締結の必要性からもそのことが挙げられています。

 カンボジアは、在留邦人、これは二〇一四年十月現在ですが、二千二百七十人、進出日系企業は二〇〇九年五十社から二〇一四年では百八十二社、さらに、ラオスは、在留邦人が一四年十月で六百七十七人、進出日系企業が二〇〇九年五十八社から一四年では百十四社というふうに、やはり伸びを見せております。

 ですから、当然、この航空協定の締結についても、非常にその背景からして必要不可欠ということが思料されるわけですが、では、この両国間との航空協定の締結における本邦の受益についてをお聞かせいただきたいと思います。

 まず、進出企業におけるメリットについてお聞かせください。

梨田政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、日本のビジネス界、非常に両国に目が向いております。当然、その直行便ができれば、バンコクその他を経由しないで、非常に、真っすぐ行き来ができるということで、人的交流あるいは経済交流が活発になるということが想定されております。

玉城委員 私は非常に、ASEAN各国と我が国との今後の連携について大きく期待をするものであります。

 ASEAN諸国との連携は、投資、貿易のみならず、観光や技術の提供、人材・文化交流、当然インフラ整備などなど、本当に、これからの私たちの国の人材や将来に向けての取り組みがますます高まっていくものと思います。そのためには、まずやはり向こうの国々からも日本にお迎えし、日本からもASEAN各国に足を延ばしていただくということが重要だと思います。

 観光産業などにおけるメリットについてお聞かせください。

梨田政府参考人 ラオス、カンボジア両国からの訪問者数というのは、こちらから行く数にはまだまだ及びませんが、右肩上がりになっていると思います。

 あと、当然、このたびカンボジアへの直行便ができれば、日本人に大変人気のあるアンコールワットを中心とした日本からの観光客は一層ふえるものと期待されます。

玉城委員 ありがとうございます。

 先ほども申し上げましたとおり、ASEAN十カ国中、カンボジアとラオスのみ航空協定が未締結ということでの必要性が述べられておりますが、それでは、ASEAN諸国間との航空網の連携については、これからどのような計画でしょうか。きょうはこの質問も重なっていると思いますが、よろしくお願いいたします。

梨田政府参考人 言うまでもなく、ASEAN全体は、まさに経済の成長センターであり、日本の経済成長にとっても大変死活的な地域でございます。そういう意味からすれば、この二国間の協定を締結した上でASEANとのマルチの協定、これは今月、正式政府間交渉が始められたところでございまして、より高い自由化、より包括的な統一したルールを目指して交渉を進めていきたいと思っています。

玉城委員 では、ちょっと航空協定の現状という点に関して質問をさせていただきたいと思います。

 このように、ASEAN十カ国が我が国と最も近い、しかも経済的にもこれからの将来に非常に期待が持てるという意味で考えますと、実はまだ航空協定を締結していない中南米諸国、それからアフリカなどの非常に豊富な資源を有する国との航空協定はまだ未締結の状態であります。

 この中南米諸国及びアフリカ地域諸国との今後の取り組みについて、どのような展開になりますでしょうか。お聞かせください。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 中南米及びアフリカ諸国の中で申し上げますと、これまでブラジル、メキシコ、南アフリカ、エチオピア、この四カ国との間で我が国は航空協定を締結をしております。それで、ほかの幾つかの国からも航空協定の締結の要望を受けているといった状況にございます。

 その上で、今後いかなる国との間で航空協定の締結を行うかということにつきましては、定期航空路線開設に対する需要の見込み、それから政治、経済、文化等の各分野における二国間関係、ひいては相手国の航空企業の安全基準、こういった諸点を総合的に考慮した上で判断していくということになるというふうに考えております。

玉城委員 ありがとうございました。

 それでは、続いて、社会保障協定についてお伺いをいたします。

 今般、本邦とフィリピンとの社会保障協定が締結されるわけですが、フィリピンはこれまでに、イギリス、フランスを初め九カ国の国と地域と社会保障協定を締結済みです。

 日本はといいますと、二〇一三年九月に交渉を開始し、二〇一五年十一月に署名をしたということなんです。フィリピンと日本との国際関係はもっと緊密で、しかも近い関係にあるというふうに受けとめているわけなんですが、今回の協定に至るまでやや遅かったのではないかという印象もありますけれども、この経緯についてお聞かせください。

梨田政府参考人 今御指摘のとおり、政府間交渉は平成二十五年から始まって、二回の交渉、二年でまとめ上げたわけですが、実際に最初の接触、作業部会という形で始めたのが平成二十一年ですので、若干長かったかなという印象はございますが、他国と比べてというのは、先ほども御答弁申し上げたとおり、一概に比べられるものではございません。

 ただ、おっしゃるとおり、フィリピンとの経済関係、それから向こうで働く企業の方々への御負担を考えれば、一刻も早く御承認賜り、二重支払いなどを回避させていただければと願うものでございます。

玉城委員 時間が残り少なくなりましたが、大臣に一点お伺いいたします。

 先ほども私は、ASEAN諸国と日本との関係において非常に重要であるというふうに申し上げました。さらに、総理は昨年の十一月にASEANビジネス投資サミットでもスピーチをされておりまして、非常に、ASEANの国々との連携強化については、今回の社会保障協定のみならず、さまざまな協定をしっかり進めていくべきであるというふうに思っております。

 そこで、このASEAN諸国との協定協議についての大臣の見解をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 こうした社会保障協定等を結ぶということは、国際社会において影響力や存在感を増しているASEANとの間において人的交流や経済交流を進めていく上で大変重要であると認識をしています。

 ですから、これからもASEAN諸国との社会保障協定等の可能性はしっかり検討していきたいと思います。

 ただ、現状を見ておりますと、例えば社会保障協定でいいますと、シンガポール、ベトナム、インドネシア、こうした国々の社会保障制度においては外国人が強制加入になっていない、こういった現状もあります。こういったことから、ニーズがどれだけあるのか、こういったこともしっかり考えながら、ASEAN諸国との協定締結の可能性を考えていかなければなりません。

 社会保険料の負担ですとか経済界からの具体的な要望等、これらを総合的に勘案しながら、この可能性を追求していきたいと考えます。

玉城委員 もう時間ですので、最後に一問だけ聞かせてください。

 政府間交渉中の四カ国が、現在、スウェーデン、中国、トルコ、スロバキアとなっておりますが、その四カ国との進行状況について最後にお聞きしたいと思います。

岸委員長 相木審議官、簡潔にお願いします。

相木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、我が国は現在、中国、スウェーデン、トルコ及びスロバキアとの間で政府間交渉を実施しております。これまでに、中国、トルコにつきましては政府間交渉を四回、スウェーデン、スロバキアにつきましては政府間交渉を一回行ってきております。

 我が国としては、早期妥結に至るよう、鋭意交渉を進めていく考えでございます。

玉城委員 ありがとうございました。

 終わります。ニフェーデービタン。

岸委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

岸委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、航空業務に関する日本国とカンボジア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

岸委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、航空業務に関する日本国とラオス人民民主共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

岸委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、社会保障に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

岸委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岸委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

岸委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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