衆議院

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第3号 平成21年3月27日(金曜日)

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平成二十一年三月二十七日(金曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 水野 賢一君

   理事 小野 晋也君 理事 北川 知克君

   理事 小杉  隆君 理事 土屋 品子君

   理事 西野あきら君 理事 伴野  豊君

   理事 江田 康幸君

      あかま二郎君    上野賢一郎君

      木原  稔君    小島 敏男君

      木挽  司君    近藤三津枝君

      坂井  学君    鈴木 俊一君

      中川 泰宏君    福岡 資麿君

      藤野真紀子君    古川 禎久君

      馬渡 龍治君   山本ともひろ君

      末松 義規君    田島 一成君

      田名部匡代君    村井 宗明君

      吉田  泉君    古屋 範子君

    …………………………………

   環境大臣政務官      古川 禎久君

   参考人

   (一橋大学大学院法学研究科教授)         高橋  滋君

   参考人

   (財団法人日本土壌協会会長)

   (東京大学名誉教授)   松本  聰君

   参考人

   (社団法人土壌環境センター副会長兼常務理事)   大野 眞里君

   環境委員会専門員     吉澤 秀明君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十七日

 辞任         補欠選任

  船田  元君     木原  稔君

同日

 辞任         補欠選任

  木原  稔君     船田  元君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 土壌汚染対策法の一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)

 土壌汚染対策法の一部を改正する法律案(参議院提出、第百六十八回国会参法第一一号)


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     ――――◇―――――

水野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、土壌汚染対策法の一部を改正する法律案及び第百六十八回国会、参議院提出、土壌汚染対策法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、両案審査のため、参考人として、一橋大学大学院法学研究科教授高橋滋君、財団法人日本土壌協会会長・東京大学名誉教授松本聰君、社団法人土壌環境センター副会長兼常務理事大野眞里君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ二十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず高橋参考人にお願いいたします。

高橋参考人 御紹介いただきました一橋大学の高橋でございます。

 早速、私の土壌汚染対策法の改正についての意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、自己紹介を兼ねまして、私が土壌汚染対策の法的検討にどのように関与してきたのかをお話しし、あわせて、今回の意見の概要について述べさせていただきたいと思います。

 お手元の資料をごらんください。

 まず第一ページでございますが、私は、大体十五年間にわたりまして土壌汚染対策の法的問題について研究をし、あわせてこの問題についての調査審議に加わってまいりました。一番下の五のところを見ていただければありがたいのでございますが、特に今回の改正の際の事前の論点整理を行います懇談会の座長を務めさせていただいたということでございます。

 二ページ目に移っていただければありがたいと思いますが、そういう経験から、今回は、環境省における調査審議の概要と審議結果、主として今申し上げました懇談会における調査審議等の法制的側面について御紹介をし、あわせて内閣提出法案についての評価を申し上げたいというふうに思います。

 本論の最初に、今回の改正の対象であります土壌汚染対策法、現行法の制定経緯と内容についてまず簡単に確認させていただきたいと思います。

 まず、その前提として、土壌汚染の特色というものを確認する必要があると思います。土壌汚染の特質というのは大まかに言って三点あると思います。

 まず第一が、蓄積性の汚染であるということでございます。浄化をしないと汚染物質は土壌に残存いたします。他方において、完全に掘削除去し浄化をするということには多大な費用がかかります。かつ、その場合の汚染土壌の持ち出しというのは、汚染拡大の新たなリスクを生み出すという問題をはらみます。

 第二番目が、地中、地下水の汚染であるということでございます。このような汚染は、適切な封じ込めにより被害発生を防止することができます。しかしながら、このような封じ込めでは、土壌に残存する汚染物質についてリスク管理をするという逆の問題も発生いたします。

 第三番目が、私人の支配権のもとにある土地の汚染であるということでございます。汚染の影響が敷地の境界を越えて発生しない限りは、強制的な対策を法律でもって課すということの根拠はなかなか見出しがたいという問題点がございます。他方において、開発が制限される土地が存在しておりますと、周囲の土地の利用や開発にマイナスの影響が生ずるという問題点もございます。

 以上のような非常に難しい問題が土壌汚染にはございますので、諸外国においても、土壌汚染対策法制は最も困難な立法課題であるというふうに認識されております。現在もEU等においては、新しい法制を統一的に確立すべき制度改正の動きが生じているということでございます。

 三ページに移らせていただきます。

 したがいまして、このような非常に困難をはらみます土壌汚染の特質を踏まえまして現行法が制定されているわけですが、その法制定の意義と問題点について確認したいというふうに思います。

 まず、土壌汚染対策法の意義と問題点ということでございますが、現行法の意義として次のような点があると思います。

 一つは、土壌汚染というのは非常に見つけにくいわけですが、その見つけにくい汚染の把握のための仕組みを設けたということでございます。具体的には、現行法の三条で、有害物質使用特定施設が廃止されたときにきちんと調査をかけるということでございます。それから、四条で、一般的に健康被害のリスクがある、そういう徴憑があるときに調査をかけるという一般的な調査規定を設けていることでございます。さらには、調査について、信用性を確保するために、指定調査機関による調査の仕組みを設けております。

 さらには、発見された汚染について指定区域の指定をし、かつ、それを台帳に記入するという制度を設けております。

 さらには、健康被害の防止をするための措置命令の制度を設けております。ただ、ここで確認しておきたいのは、現行法でのこのような命令は、被害防止に必要とされる限度で求められる措置で十分であることを明らかにしているという点でございます。この点を強調しておきたいと思います。

 さらには、その他、指定支援法人の制度を創設いたしました。

 このように、現行の土壌汚染対策法は、土壌汚染を把握し、人の健康被害が土壌汚染により生ずることを防止する措置を命ずる一応の筋道をつくったという点で大きな意義があるというふうに考えております。かつ、その際には、残存汚染物質の管理を中心としたリスクマネジメントをやってもらうという姿勢を明らかにしたということでございます。

 このような意義がある土壌汚染対策法でございますが、しかしながら、施行後に思ってもみなかったさまざまな問題点が発生してまいりました。

 具体的には、三ページの下に書いてありますが、まず、やはり汚染の把握のシステムが必ずしも十分でないことがわかったということです。かつ、法律によらずとも対策をすることが適法でございますので、汚染土壌の処理が行政に把握されることなく行われることが非常に多くなってしまったということでございます。他方、その場合も、自治体に届けるという形で行われているわけですが、行政指導という形で行われているため、規制の密室性や非透明性や不平等の問題が生じるという制度的な弊害があったということでございます。

 次に参ります。

 もう一点は、指定区域の指定と指定区域台帳の制度について、指定区域が解除されない限りは健康被害が生ずるおそれがある、こういう誤解を一般に招いてしまった、それを払拭する制度的な手当てが十分でなかったということでございます。そこで、土地所有者側としては土地の利用可能性を最大限に確保したいという思惑がございまして、掘削除去が支配的な傾向になってしまいました。

 さらには、掘削除去ということになりますと、搬出された汚染土壌の処理というのが問題になりますが、そのような処理行為を的確に把握し適正な法的コントロールに置く制度が十分ではなかったということでございます。

 ほかの問題として、指定調査機関の信頼性に疑問が寄せられたり、さらには、基金が活用されていないという問題点も生じました。

 そのような形で、法制定の当初の想定とは異なる運用が生じてきてしまいましたために、法制度の基本を維持しながら、補完的な修正を行う必要が生ずるということになったわけでございます。

 そこで、今回の改正法案が制定され、内閣により提出されることになったというふうに認識しているわけでございますが、以下、私の立場から、政府提出法案の改正方向について御紹介した上で、その評価を申し上げたいと思います。

 まず、改正方向の第一点でございますが、調査契機の拡大ということでございます。

 一定規模以上の土地の区画形質の変更について土壌汚染の状況調査を義務づけるということにいたしました。すなわち、三条、四条では不十分であるということでございますので、新たな調査契機を設けるということで、新しい四条が設けられるということになっております。その場合には、一定規模以上の土地の形質の変更について調査をかけるということでございます。

 もう一つは、三条では実は一定の場合に調査を猶予する仕組みが設けられていたわけですが、その場合についても、利用方法の変更が行われるときにはきちんと届け出をしてもらって、知事がチェックするシステムをつくろうということになりました。そこで、三条に四項と五項という形でこのようなシステムが入っております。

 さらには、法の外で行われる自主調査、この結果は必ずしも活用されてこなかったわけでございますので、その結果を活用するために、指定の申請、自主調査の結果を申請していただいて、それに基づいて法のもとに置くという制度を十四条で設けたということでございます。

 五ページに行きたいと思います。

 調査契機の拡大について私がどのように評価するかということでございますが、もともと、土地売買の際に売り主に対して調査を義務づけるという形で調査の契機を一挙に広げるという選択肢も理論上はあると考えます。しかしながら、このような形で調査の契機を一挙に広げるということは、土地の取引に非常に大きな影響を与えますので、現時点においては必ずしも適当ではないというふうに考えております。その意味では、一定規模以上の土地の形質変更に内在するリスクの大きさ、このような行為は非常にリスクが大きいということでございますので、そこに潜在するリスクをとらえて調査をかけるシステムをつくるということは妥当な改正方向であろうというふうに思っております。

 さらには、法律外で対策をされるということについて抑制する、むしろそれをちゃんと法の制度のもとに置いてもらうための制度をつくったという点でも妥当な改正であるというふうに思っております。

 第二番目でございますが、汚染物質管理におけるマネジメントの強化ということでございます。

 まず、改正の方向でございますが、封じ込め、いわゆる汚染土壌の搬出という形ではなくて、その場できちんと封じ込めるという対策について、管理のシステムを強化するということでございます。すなわち、掘削除去等、汚染の除去がされていない場合についても、汚染経路の遮断等がされている場合には土地利用上の障害などはないということを制度上しっかり明示する仕組みをつくり上げるということでございます。

 具体的には、指定区域の制度を措置実施区域と形質変更届出区域とに区分いたしまして、後者の区域について、土地の形質変更をしなければ土地の利用上の障害はないということを制度として明確にしたということだろうと思います。そこで、六条、十一条以下の制度が設けられるということになったと理解しております。

 それから、封じ込めが採用される場合には、実施される対策を行政が明示する、これで十分であるということを行政が示すということによって、十分な対策がされているということを周辺の皆様に理解していただくという形になろうと思います。これが七条の改正でございます。

 さらには、地方公共団体に対して、封じ込め対策は十分であると確認する制度を設けることにしたというふうに理解しております。

 具体的には、一般的に、形質変更届出区域の指定については、知事がきちんとこれを確認するという制度が設けられています。これは、措置実施区域ということで対策をしてもらう、その上で、封じ込め対策が実施された後に措置実施区域の必要なしとして解除され、それが形質変更届出区域に指定がえをされるときに、知事がそれが正しいということをきちんと確認する機能を担うということが期待されているというふうに理解しております。これによって、封じ込め対策などが十分であるということが行政によって確認されるというふうに考えているわけでございます。

 六ページ目の評価に移らせていただきます。

 このようなシステムで、掘削除去でなくても封じ込め対策で十分であるということを法の制度として明示するということになろうと思いますが、実際にそのような制度の結果として掘削除去の割合が減少するかどうかというのは、リスクマネジメントの考え方の普及の度合いによると思います。しかしながら、これは、やはり今日、住民の側もリスクマネジメントということの重要性を御理解いただいているというふうに思っておりますので、かなり効果があるのではないかというふうに期待しております。

 それから、他方で、掘削除去というのは土地の利用の可能性の選択肢を最大限に確保するということもありますので、企業の合理的な判断で掘削除去を選択するということも企業経営上の合理性はあると考えております。しかしながら、その場合については、やはり汚染土壌の処理というのをきちんとしてもらうシステムが必要である。そういう意味では、後の搬出汚染土壌の適正処理のところがきちんと確保されているということが前提だというふうに思っております。

 そういう点でいいますと、結局、今申し上げましたように、封じ込め対策で十分であるということを明示し、法律によってきちんと処理していただく制度をつくるという点では、これまた妥当な改正方向であるというふうに私は思っております。

 最後、改正の第三点目でございますが、搬出汚染土壌の適正処理の確保ということでございます。

 改正の方向としては、現行法で極めて不十分でありました、いわゆる搬出汚染土壌の適正な処理のための法的コントロールをつくり上げる、そういう制度をつくり上げるということでございます。

 具体的には、掘削除去の抑制や、搬出土壌の運搬、保管、処分について基準をきちんと設定するということ、さらには、関係者に対して適正処理を義務づけ、汚染土壌の管理システムを創設するということ。これが具体的には第四章の汚染土壌の搬出等に関する規制という形での章の新設ということになっているというふうに理解しております。

 そこで、評価でございますが、区画形質の変更を管理、把握して、自主調査の結果も活用する制度変更のもとにおきまして、汚染土壌の適正処理のシステムがつくり上げられるという点では非常に妥当な改正方向であろうというふうに思っております。

 そして、最後でございますが、今回の改正には、そのほかにも、指定調査機関の指定の更新を通じて、指定調査機関による調査がきちんとされているということに対する信頼感を確保する、信頼性の向上の措置も盛り込まれているということも評価できるというふうに思っております。

 最後に、全体のまとめを申し上げたいと思います。

 七ページに移らせていただきます。

 以上申しましたように、全体としては、法の制定時に想定されていなかった運用の修正を適切に図るものであるというふうに私は理解しておりまして、基本的に妥当な改正方向であるというふうに思っております。

 しかしながら、ここで申し上げたいのは、土壌汚染というのは、最初に申し上げましたように非常に特殊な要素があります。大気の汚染であるとか水質の汚染であるとか、いわゆる拡散性の汚染と比べると蓄積性の汚染である、しかも土地の中にある、かつ、私人の支配権のもとにある、こういう非常に特殊な要素があるということでございます。そこで、対策をとるには独自の困難性があるというふうに考えております。

 したがいまして、私の研究してきましたドイツ、フランス、さらにはEU等でも対策に非常に揺れが生じている分野でございまして、今回の改正も、改正の効果を図りながら、さらなる制度の改善を図っていくという姿勢が極めて重要だろうというふうに思っております。

 具体的に将来の課題ということでございますが、これは予想の限りではございませんが、例えば、あえて挙げるとすれば、一定規模の土地の売買の際に調査を義務づけるといったようなことも考えられましょうし、土地の利用形態に応じて基準を定めて、リスク管理の姿勢をより明確にする、リスクマネジメントを強化する、そういう方向の改正も検討の対象になるというふうに考えております。

 全体として以上でございます。

 今回、このような陳述の機会を与えていただきまして心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

水野委員長 ありがとうございました。

 次に、松本参考人にお願いいたします。

松本参考人 御紹介いただきました松本聰でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、僣越ではございますが、自己紹介からさせていただきます。

 私は、土壌を自然科学の観点から研究してまいりました。ジャンルでいいますと環境土壌学というジャンルに入ります。

 土壌という物体は、私どもに非常に身近にある存在でありながら、その土壌中で行われる反応そのものは極めて複雑怪奇なものがございまして、いまだに未解明の部分が残されております。土壌化学、土壌物理、土壌生物、こうした分野に加えて、環境土壌学が最近はいろいろな方面で研究されてまいりました。土壌中で行われる基本的な化学的、物理的、生物学的な変化を究明することによって、この成果を私どもの地球、陸上地域で有利に、そして有効に活用させるために研究しているわけでございます。

 私は、つい最近まで、鳥取大学、東京大学、秋田県立大学の教壇に立ちまして、環境土壌学を学生に教授し、また研究してきたわけでございますけれども、研究の前半及び中盤のころは、主に地球環境、特に土壌の荒廃、土壌の砂漠化、こうした問題を、世界各地に調査地点を設定して、土壌の育成、さらにはそれをささやかでも防止しようという修復技術を行ってまいりました。

 その後、秋田県立大学に移りましてからは、御承知のように秋田は鉱山県で大小さまざまの鉱山がございまして、現在でもその土壌中には鉱山の当時に排出した重金属、特にカドミウムを中心とした集積がございます。こうしたカドミウムが農地に入りますと、お米の中にそのカドミウムが吸収されて非常に有害なお米が産出する、こういうことになります。

 私は、この土壌中のカドミウムを掘削除去で取り除くという方法よりも、もっと簡単に、土壌中にカドミウムが存在したまま、それを一種の封じ込めの方法で、植物体の方に移行しないような方法を開発してまいりました。

 先生方のお手元に私の最近の論文が届いているかもしれませんが、それはその一端を紹介させていただいたものでございまして、この結果によりますと、カドミウムに汚染された土壌でありながら、安全にお米の生産ができるというところまで技術的にはある程度確立した、そういうふうに自負しております。

 現在は、中央環境審議会の委員、その中にございます土壌農薬部会長、あるいは水環境・土壌農薬合同部会のバイオレメディエーション小委員会の委員長、あるいは土壌農薬部会の土壌制度小委員長を務めさせていただきました。現在は、こうした委員長を務めさせていただきながら、少しでもお役に立ちたいということで今回の答申をまとめさせていただいたわけでございますが、中央環境審議会土壌制度小委員会の開催経緯を、ただいまからごく簡単に紹介させていただきます。

 平成二十年五月に、環境大臣から中央環境審議会会長に対しまして、今後の土壌汚染対策のあり方について諮問がなされました。この諮問に対する答申を審議するために、中央環境審議会土壌農薬部会に本小委員会を設置いたしました。そして、同年六月から十二月にかけまして、九回の小委員会において審議をいたしました。そして、パブリックコメントを経て、十二月十九日に答申「今後の土壌汚染対策の在り方について」を取りまとめました。

 本小委員会は、法学、医学、自治体、産業界、法曹、環境土壌学、環境リスク学、消費者等から構成されておりまして、非常に幅広い、多岐にわたる分野から出席者を得て、幅広く議論してまいりました。

 次に、政府案に対する考え方を述べさせていただきます。政府案のポイントは、大きく分けて三点あろうかと思います。

 まず第一のポイントは、自主的な調査結果の活用と一定規模以上の土地の形質変更時の調査によりまして調査の契機を拡大した、そういうふうに考えます。

 二番目のポイントは、区域を分類して、対策が直ちに必要な区域と、現状では対策不要ではありますが形質変更時に注意しなければならない区域に分けてこれを指定し、必要な対策を明確化した、こういったところが第二のポイントであると考えます。

 そして、第三のポイントは、汚染土壌の搬出を抑制するとともに、運搬、処理基準を定めまして、管理票、いわゆるマニフェストを活用いたしまして適正な処理を確保していく、これが第三のポイントとして挙げられるのではないかと思います。

 このように整理いたしまして、こうしたものは上記の答申の内容を踏まえたものと委員長として私は評価している次第でございます。

 甚だ簡単ではございますが、私の意見陳述にかえさせていただきます。

 本日は、この場を設定していただき、まことにありがとうございました。(拍手)

水野委員長 ありがとうございました。

 次に、大野参考人にお願いいたします。

大野参考人 今御紹介にあずかりました土壌環境センターの副会長兼常務理事をやっています大野と申します。

 簡単な自己紹介をさせていただきますと、私自身は、株式会社エックス都市研究所という民間のシンクタンクの代表取締役もやっております。私どもの会社の方で、環境関係のいろいろな政策研究それからコンサルタントというようなことを行っておりまして、そういう取り組みの中で、汚染土壌の対策、調査、あるいは政策研究というようなことを過去二十年間ぐらいやっておりました。そのような関係で、土壌汚染対策というものの必要性が非常にわかっていながらなかなか表の世界で十分な対策をとることができなかったということで、いろいろとそういう問題に取り組んでいる方々と一緒になって勉強をしてまいりました。

 そういった勉強をする会として、今の土壌環境センターというのは平成八年四月に設立されたわけですけれども、その前に、土壌環境フォーラムというものをつくりまして、そういうものに取り組んでいる企業の方々と一緒にいろいろと研究をしてきたという経緯がございます。

 平成八年四月に土壌環境センターというものができたわけですけれども、そのセンターについてちょっと御紹介をしたいと思います。

 土壌環境センターは、ことしの三月時点で、土壌汚染対策にかかわる百六十五社の会員で構成されている団体でございます。センターは、会員会社の技術の向上や技術者の育成というようなことを目的として活動しておりまして、同時に、実際の土壌汚染対策を通じて得られた知見等を踏まえまして、政策提言、あるいは土壌汚染対策に係る国、環境省の施策のサポートというものを行ってきているところでございます。

 平成十九年十月には、土壌汚染対策法ができて五年たった後にいろいろな問題が出てきたということで、土壌汚染対策施策のあり方に関する提言というものを環境省に対しても行わせていただいております。

 また、土壌環境センターでは毎年会員による対策の実施状況を調査しておりまして、法対象外の自主的な調査、対策の現状の把握についても会員の調査の協力によって明らかになってきている面があったということで、今までの土壌汚染対策についてはかなり貢献をしてきたのではないかというふうに考えております。

 また、このセンターは、非常に数多くの自主的な、要は、汚染対策技術というのはなかなか確立されたものではなくて、いろいろな課題がございます。そういう課題をいろいろと自主的に研究いたしまして、我々なりにどういう対策のとり方が望ましいのかというようなことについても非常に研究してきたということで、そういう意味では、非常に技術的な研さんを図ってきた団体として、非常に特異な団体だというふうに自負しております。

 また、我々のセンターとして土壌環境監理士という資格制度を設けまして、きちっとした土壌汚染対策がとれるような人材の育成というものも図っておりました。

 そういうところの副会長として今取り組んでいるところでざいます。

 まず、平成十四年に土壌汚染対策法が制定されるときにどんなことを想定したのかということをちょっと最初に御紹介しておきたいというふうに思います。

 私のペーパーの第一ページ目に書いておりますけれども、この土壌汚染対策法につきましては、土地の改変による健康被害の防止ということが重要であるということで、法の対象となる汚染地というのは当時は非常に限定的になるだろうというふうに想定しておりました。また、過去の汚染地にかかわるということもありまして、調査義務の発動についてもかなり限定的にならざるを得ないのではないかというふうにも考えておりました。

 それから、環境基準はもう既に制定されていたわけでございますけれども、環境基準というのは、あくまでも、望ましい、あらまほしき土壌の質というものを定めたものでございましたので、それ自身は遵守しなければいけない基準ではないというふうに考えておりまして、盛り土とか封じ込めとかいうようなことを行えれば、そういう簡易な対策で十分ではないかということで、そういう対策が進むのではないかというふうにも考えておりました。

 それから一方で、法が一たん制定されますと、仮に法の外側、対象外であっても、それに準拠したような対策が進むのではないかというふうに考えておりました。

 その結果どういうことになったのかということで、次のページにありますけれども、「法制定後の起こったこと」ということで、法の対象となる調査発動のケースというのは想定どおり非常に少なかった。一方で、逆に、自主的な調査と対策のケースは予想以上に多かった。それから、自主的な調査により、汚染地が予想以上に数多く見つかったということが言えると思います。

 例えば、自主的な調査というのは、法の対象外では毎年大体七千件ぐらい行われております。これは、全体の調査の大体八〇%から九〇%は法の対象外のところで行われているということです。それから、対策の方も八〇%ぐらいは法の対象外のところで行われているというのが実態でございまして、これほど極端な形になるということまでは想定していなかったということが言えます。

 それから、もう一点想定していなかったのは、掘削除去が予想以上に行われてしまった、対策事例の中の約八割ぐらいは掘削除去であった。これは、封じ込めとかそういった対策に比べれば実は十倍のコストがかかるような対策でございまして、そういう対策が非常に進んだということがちょっと予想外であったということでございます。

 法制定後起こったことというのは、三点ほど「不合理な実態」ということでまとめさせていただいておりますけれども、要は、自主的な調査で汚染地が多数見つかったのにもかかわらず、法の外側に置かれてしまった、放置されてしまった。また、きちんとリスクを管理しておれば掘削除去という不合理な対策が行われなくてもいいのに、法の外側でそういうことがかなり進められてしまった。同時に、掘削土を外に持っていくということに伴いまして、新たな汚染の拡散というものを生み出すようなことになってしまった。こういうことが三つの不合理な実態であったというふうに考えております。

 そのほか、そういう不合理に加えまして、土壌汚染対策が行われたのは、実は、大体、首都圏が七〇%、名古屋が一〇%、それから関西が二〇%ぐらいということで、この三地域で大体九〇%ぐらいが行われておりまして、そのほかの地域につきましては、実質的には余り対策が進んでいないということが言えます。これは、基本的には土地の取引に関連して調査が行われたという実態を示しているというふうに思っております。

 法の対象外の自主的な調査がなぜ進んだかということが非常に大事なことになるわけですけれども、一つ目には、土壌汚染対策法が制定されたことはもう間違いございません。また、そのほかに、ISO14001という環境マネジメントシステムの基準ができまして、それに伴いまして企業がいろいろな調査をしなければならなかったということもあろうかと思います。

 もう一方、非常に大きなインパクトを持ったのが、平成十四年七月三日に、国土交通省が不動産鑑定評価基準運用上の留意事項というものを出しました。これは参考として一番最後のページにつけております。

 この中でやはり非常に大事なことは、1、2、3という下の方のパラグラフがございますけれども、その3のところで、要は法対象の指定区域のことでございますが、覆土とか盛り土とか、そういうようなことだけでは指定区域の指定が解除されないわけでございますけれども、その限り、汚染が残存するということを前提として鑑定評価をしなさいというふうになっております。これはやはり、土地売買のときに単に封じ込めとかそういうようなことをやっただけでは非常に問題であるというふうなことを示していることでございます。

 もう一つ、三ページ目にちょっと戻っていただきまして、平成十六年十二月に、もう皆さんの御記憶にあるのではないかと思いますけれども、大阪アメニティパークというところで、これは三菱マテリアルさんの跡地で、住宅が建ったところでございますけれども、そこの用地に対しまして、三菱地所や三菱マテリアルの方が宅建業法の告知義務違反ということで書類送検をされまして、その関係で三菱地所の会長や高木社長が引責辞任をするということがございました。そういう意味で、これは非常にインパクトがございまして、土地取引に対しては土壌汚染調査というのが必須要件になったというふうに考えます。

 そういうようなことがありまして、自主的な調査というのが非常に進んだということになろうかと思います。

 それから、なぜ掘削除去のような不合理な対策が進んだかということでございますが、これは、指定区域に指定されて、それなりに盛り土、封じ込めが行われ適切な対策が行われれば土地利用上問題ないということが十分理解されなかったのではないかというふうに思います。

 また、先ほど御説明申しました不動産鑑定での評価の問題ということがございます。

 これは指定区域のみを対象にしたものでございますが、実質的には、自主的な調査でもし汚染が見つかった場合には、指定区域ではないわけでございますけれども、汚染ということに関しては、指定区域も、あるいは自主的な調査で汚染が見つかったところも同じでございます。そういたしますと、やはり一度汚染というものが見つかったら、評価の鑑定でもって、指定区域が解除されるようなところまで対策をとらないと土地売買上どうしてもやはり障害になってしまうと思われたということがあるのではないかということでございます。そういうことでもって、結果的に、掘削除去をして土地を入れかえるというようなことに進んだのだというふうに思います。

 もう一点、これはちょっと技術的な話になりますけれども、完全な汚染浄化対策というのは非常に難しいという問題があります。

 これは、土の原位置でもっていろいろな浄化対策をやるわけでございますけれども、例えば、全部完璧に濃度をはかってとか含有量をはかって調査をやるということは不可能でございます。そういう意味で、完璧な対策、本当にリスクがゼロになるような対策というのは非常に難しいという面があります。やはり、後で調べてみたら汚染が見つかったということも可能性としてはあり得るわけです。そういたしますと、やはり全部除去してしまうというのが一番安心な対策になってしまうということで、汚染のない状態にするということが進んでしまったのかなというふうに思っております。

 あと、汚染土の場外搬出により新たな汚染をもたらす可能性でございます。

 これも、基本的には、指定区域についてはそれなりのコントロールをするような仕組みというものが汚染土管理票ということでできたわけでございますけれども、自主的な対策の部分については、なかなかそういうようなことがきちっとはいかない、管理ができないという面がやはり残ったと思います。

 ただ、当センターの方についてちょっと紹介させていただきますと、汚染土管理票というものは土壌環境センターで販売しておりまして、これは毎年、平成十九年度では二十万枚ちゃんと売っております。そういう意味で、当センターでできるだけそういうふうな自主的な対策でも変なことにならないような対応に協力してきたわけですけれども、土壌汚染対策をやっているところが全部我々の会員とは限らないわけでございまして、そういう意味で、非常に問題があるといいますか、行き先がはっきりわからないような対策もかなりあったのではないかというふうに考えております。そういう意味で、そういう危険性というものが掘削土壌の搬出ということにおきまして生じたということが言えると思います。

 あとは、どうすべきか。今回の土壌汚染対策法の改正案ということで、ちょっと時間がございませんので簡単にしたいと思いますけれども、目指すべき着地点ということで、形質変更に伴って、これまで自主的な調査で発見された場合というのが多かったわけですけれども、そういうような場合については、一定の土地の広さがあるようなところについての形質変更については法の枠組みの中に入ってもらうことが必要なのではないかというふうに考えておりますが、それについては今回の改正法の中できちっと書かれているというふうに思います。

 それから、汚染が発見され、かつ、健康被害のおそれがある対策措置が必要な場合であっても、過剰な対策にならないように、あるいは摂取するような経路を遮断したものがあればそれで十分であるということを公的に担保する必要があるだろうというふうに考えておりましたけれども、その方についても改正法の中できちっと対応されているというふうに考えます。

 それから、汚染が発見され、かつ、健康被害のおそれがないような区域については情報管理レベルでよいということを認めて、なおかつ、仮にそういうところで土地の形質変更をさらに行う場合についても対策ができるようになったということで、これも今回の法律の改正案の中で対応されているというふうに思います。

 それから、摂取経路を遮断する対策がとられた場合でも、汚染土が対象地に残っている場合には、措置実施区域は一応解除されることになりますけれども、汚染土としては残っておりますので、その辺については情報の管理が必要である、また、それをさらに形質変更する場合には届け出が必要であるというふうに考えておりましたけれども、それについても一応対処されております。

 そのほか、不動産鑑定方式についても今回の法律の改正に伴って見直しをしていただければというふうに考えてございます。

 次の五ページ目で最後になりますけれども、簡単に申し上げます。今後、来年の四月から、会計基準によりまして資産除去債務ということが出てまいります。その辺についても、今回の法律のきちっとした枠組みができれば過剰な資産除去債務の計上というようなことをしなくて済むのではないかというふうなことで、今回の法律が、過剰な対策あるいは過剰な評価損というようなことに対してもそれなりに防止ができるのではないかというふうに思います。

 最後に、汚染土を場外に搬出した場合についても今回改めて法の中に規定されておりますので、きちっとした管理の体制、それから汚染土を搬出したときの汚染土壌処理業の規定も設けられておりますので、そういうことによって十分管理ができるのではないかというふうに思っております。

 以上でございまして、我々が実際にいろいろな対策をやっておりまして不合理な現実があったということに対して、今回の改正法案というのはその辺のところを満たしていただいているのではないかというふうに考えて、非常に評価をしております。

 以上をもちまして私の意見陳述とさせていただきたいと思います。このような機会を設けていただきまして、どうもありがとうございました。(拍手)

水野委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

水野委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北川知克君。

北川委員 自由民主党の北川知克でございます。

 参考人の皆様方には、御多忙の中、本委員会に御出席を賜りまして、また、貴重なる御意見をちょうだいいたしまして、ありがとうございます。

 松本参考人におかれましては、先ほど来、土の問題といいますか砂漠、鉱山、人間を初めとして、植物も含め生きとし生けるものが生きていく中で大事なものはやはり土、水、空気、光だと思うんですけれども、その土という一つの点について大変御尽力を賜り、ここまで御努力をしてこられました。改めて敬意を表しますと同時に、中央環境審議会の土壌農薬部会長として、また土壌制度小委員長として、今後の土壌汚染対策のあり方について答申の取りまとめに御尽力をいただきました。重ねて感謝を申し上げる次第であります。

 また、大野参考人及び高橋参考人におかれましては、我が党の二月四日の環境部会フロン・化学物質対策小委員会に御出席をいただきまして、土壌汚染対策のあり方についての御意見を賜りました。まことにありがとうございました。

 両参考人の御意見も踏まえ、これまで政府・与党として土壌汚染対策のあり方について検討を重ね、今回の土壌汚染対策法改正案が提出されたわけでありますけれども、まず、先ほど松本参考人もお話しいただきましたけれども、今回政府が提出をいたしました土壌汚染対策法改正案に対しまして、いま一度全般的な御意見を賜ればと思います。

松本参考人 それでは、回答させていただきます。

 今回の政府提出の改正案は、昨年十二月の中央環境審議会答申を踏まえまして、法にのっとり詰められた案であると考えております。すなわち、汚染土壌に関する合理的な対策を促進するために必要な対策を確実かつ厳正に実施することが重要である、そういうふうに思います。

 そのためにはまず汚染の存在をしっかりと把握する必要がございまして、法の調査対象の契機を拡大する必要がございます。すなわち、自主的な調査の結果を以前よりももっと広く活用していく、それから二番目には、大規模な土地改変を行う場合にはその調査を行うということでございます。

 これらの調査結果によりまして区域を区分する、すなわち、すぐに措置が必要な区域、土壌の搬出時のみに注意を要する区域などというふうに区域を明確化することによりまして、必要とする対策がもっと合理的に推進できるのではないかと考えます。

 やむを得ず現場の外に汚染土壌を持ち出す場合につきましては、運搬、処分などの基準を定め、罰則でこれを担保するとともに、管理票を用いてしっかりと管理する、そういうところが今回明確に提示されておりまして、私は評価しているわけでございます。

 以上で回答を終わらせていただきます。

北川委員 ありがとうございます。

 次に、大野参考人にお尋ねをいたしたいと存じます。

 先ほど来の御意見の中にも、今回、土壌汚染に関する自主的な調査がふえてきているということで、その一つの理由といたしまして、国交省が平成十四年の七月三日に出しました不動産鑑定評価基準運用上の留意事項も原因ということであります。その前に、やはり、この法の施行によって不合理な実態が明らかになってきた、こういう背景があると思います。

 よくおっしゃられます、土地利用をされないまま塩漬け状態のブラウンフィールド等々、このような問題点があろうと思いますけれども、こういう点も踏まえ、このほかにどのような背景があるのか。

 そして、もう一点は、我々、規制改革といいますか、改革を進めていく上において、社会というのはやはり業の深い部分があると思います。こういう中で、人々の求める利便性にどう対応していくのか、こたえていくのか、それと同時に、社会や生活の中での安全性をどのように確保していくのか、こういう点が改革をしていく上において注意をしなければならない両面であろうと私は思っております。

 そういう点も踏まえまして、今回の改正案について、先ほど評価もいただいておりますけれども、もう一度御意見も賜れればと思いますので、よろしくお願いをいたします。

大野参考人 今のお話でございますけれども、自主的な調査が行われる、そういうことの一つの大きな背景は先ほど述べた面があろうかと思いますけれども、一つ、大きな話で、やはり、工場移転とかそういうことが首都圏あるいは関西でも非常に多くなったということが大きな背景ではないか。やはりそれを寝かせておくわけにいかないわけで、有効に活用しようということになりますと、どうしても、平成十四年に法が制定されたということがやはり大きな契機になったのではないかというふうに思います。それによりまして、法の対象外ではあったとしても、それなりにそれに準じたようなきちっとした対策をとらないと、やはり土地売買上は問題である。

 それをさらに決定づけてしまったのが、先ほど三菱マテリアルのテーマパークの話がありましたけれども、辞任に至ったというようなことで、これは土地取引の関係者には何が何でもきちっとした対応をとっていかないとならないというふうに認識されたということが、まず非常に大きいことだったというふうに思います。

 一方、そういうもので健康の大きな問題、被害を起こしちゃいけないということがあるわけでございますけれども、その辺につきましては、先ほどもお話をいたしましたように、これはどこまで本当に対策をやれば許されるのかというようなところが、実際の土地取引をやっている方々には十分認識が届かなかったかなというふうなことがございます。

 一方で、国土交通省の不動産鑑定のそういう指針もございましたものですから、あれはあくまでも法の対象で指定された区域だけを扱ったものではございますけれども、それに準じた形でやらざるを得ないというふうになってしまったということが非常に不幸なことであったかなというふうに思います。

 ただ、土壌汚染というのは非常に一般的なことでございまして、どこでも、ちょっと工場を利用したような土地であればそういう可能性がございます。ただ、そういったものを地下水を通じて飲料で飲むとか、あるいは、極端に言えば、その土に接触するといいますか、要は食べるということによってそういうものに暴露するわけでございますけれども、そういう機会というものをきちっとやればかなり抑えられる。それで非常にリスクがなく対応がとれるということがまだ十分理解できなかったもので、逆に言うと、実は地方のところでいっぱい汚染地があるんですけれども、対策がとられないでそのまま空き地になって放置されている。先ほどブラウンフィールドと言いましたけれども、そういうことが起こってしまったということがあろうかと思います。

 今回、そういうものに対して法の枠組みの中できちっと管理して、なおかつ行き過ぎにならないようなそれなりの基準というものをつくってやっていくということになりますので、そういう意味で、非常に正常化されるのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

北川委員 ありがとうございます。

 それでは次に、高橋参考人にお尋ねをいたしたいと存じます。

 先ほど国や地方自治体の役割等についてもお話をいただきましたけれども、今後、国や地方自治体が公共施設を設置するために土地を取得するに際しまして、当該土地の価格査定のために自主的な土壌汚染調査が行われ、土壌汚染があることが判明した場合においては、国や地方公共団体はどのように対処をしていくのが適正であるのか、正しいのか、参考人の御意見を賜れればと思います。

高橋参考人 御質問ありがとうございました。

 まず、汚染が判明した場合の価格の問題がございますが、これはやはり、汚染があったということを前提とした適切な価格ということになるのではないかと思います。それは、鑑定基準とかそういうところできちんと把握される話だろうと思います。

 逆に、それとは別に、汚染をどうするのかという問題でございますが、これは要するに、売り主である私人が対応する場合もあろうかと思いますし、買い主が、国、公共団体が取得後に対応する場合もあると思います。

 私人がやる場合でも、これは国にわかっている、公共団体にわかっている話ですので、基本的には適正に処理されると思いますし、新しい十四条のシステムが用いられて、法のもとに置かれるということがあろうかと思います。

 取得後に国、公共団体が対策をするという場合もこれまたあるわけですが、これは、やはり同じく十四条の指定の申請をしていただいて、法のもとに置かれる。もともと国、公共団体はおろそかな対策をするはずはないということでございますが、やはりそこは、指定のシステム、土地所有者としての指定の申請というのを使っていただいて、周辺住民に対しても法できちっとやっているということを明らかにしていただいて、処理をしていただく。

 これで結局抜け穴がなくなるということでございますので、やはり新設する十四条の意味というのは非常に大きいのではないかと思います。

 以上でございます。

北川委員 ありがとうございます。

 今の点については十四条の対応でということでございますけれども、先ほど来、高橋参考人の方から、一定規模以上の形質変更等のお話もいただきました。

 ちょっと私の方がいま一つ理解できていなかったものでありますから、いま一度、今回の対策法で、新たな調査の契機として土地の形質変更時の調査を規定いたしておりますけれども、その対象を一定規模以上としたことについて、また、一定規模以上に至らないような土地の形質変更については第四条第二項の調査の対象とならないこととなっておりますけれども、この点についてもう一度、解説といいますか、していただければと思います。よろしくお願いいたします。

高橋参考人 この点につきましては、まず、原則として、現行の四条の一般調査がある。新しい五条でございますが、五条で、健康被害のおそれがある場合には基本的に調査ができるというシステムになっております。

 ただ、先ほど申しましたように、土壌汚染というのは非常に特殊な汚染でございまして、地中にあるとか、いわゆる私人の支配下にあるということがございますので、なかなか見つけにくいということがございます。そこで、そういうことにかんがみまして、特殊の契機がある場合についてはそこできちんと調べていただこうということになりまして、現行の三条で、有害物質を取り扱った施設が廃止される場合には調査してもらいましょうということになりました。

 ただ、やはりそれは、一般的にすべての場合について網羅的に調査をかけるというのは、国民にとっても、調査の額も数億円になる場合もございますし、過大になります。そういう意味では、やはり明確な危険、リスクがある場合に限って、こういうリスクの場合には定型的に調査をしていただこうということで現行の三条がつくられているということでございます。

 しかしながら、今回、それでもやはり調査の契機が狭いということで、調査の契機を広げることになったわけでございますが、そこで考えられるのは、土地の改変、土地をいじるわけですから、そのいじるということのリスクをとらえて調査をしてもらいましょうということになりました。

 ただ、その場合でも、すべての土地改変につきまして調査をお願いするというのは、非常に際限のない話でございますし、かつ、調査の負担を考えれば適当ではない。そういう意味では、リスクというのは、やはり土地をいじる面積、基本的には面積であろうと思いますが、そういうものに着目して調査をお願いするというのがやはり適当だろうというふうに考えた次第でございます。そうすると、結局、それに満たない一般的な小規模の土地改変につきましては、明確な徴憑があれば五条で調査していただく、こういう形になろうかと思います。

 以上でございます。

北川委員 ありがとうございます。

 ただいま高橋参考人の方からも一定規模以上というお話がありましたけれども、今回の法第四条第二項においても、一定規模以上の土地の形質変更の届け出を受けて、環境省令で定める基準に該当すると認めるときに調査及び報告を求める命令を出すこととされておりますけれども、環境省令で足りるのかどうか、そしてこの基準としてどのようなものが想定をされるのか、高橋参考人にお伺いをできればと思いますが、よろしくお願いいたします。

高橋参考人 いろいろ考えられると思いますが、一つは、ずっと以前に有害物質が取り扱われて、もう使われていない、法施行以前でございますので、これは三条の調査の対象になりません。そういう場合については、有害物質が使われていたということでリスクが非常に高いわけでございますので、調査をお願いするというのが適当だろうと思います。

 それからもう一つは、過去において有害物質が施設から地中に漏えいしたというようなことがわかっている場合もございますので、これはやはり明示的に、そういうリスクに応じて健康被害がないかどうかをきちんと調査していただくということで、特に例示をするということがあろうかと思います。

 これが主な例だと私は思いますが、それ以外にも、例えば自主調査を活用して、自主調査でもわかっていて、それが周辺にも公にされているという場合は、汚染の存在がわかっておりますので、これはきちんと調査していただくとか、さらには、隣の土地が汚染されていて、地下水の流れがわかっているときに、その地下水の流れで土地に汚染が移動している、そういうときの土地の汚染についても調査していただく。このぐらいで大体網羅できるのではないかと思っております。

 以上でございます。

北川委員 ありがとうございました。

 各参考人の皆様方には、重ねて大変参考になる御意見を賜りました。そして、御陳述も受けました。ありがとうございます。

 先ほど来、各参考人の方からも、今回の改正案等々の評価をいただいておりました。それと同時に、土地も含め、時代というのは動いていくわけでありますから、その時代時代に応じての改正もまた今後必要になろうかと思いますけれども、今後とも、この土壌汚染並びに日本の環境問題について、各参考人の皆様方にも御尽力を重ねてお願い申し上げますと同時に、きょう御陳述をいただきましたことに重ねて御礼を申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 きょうはどうもありがとうございました。

水野委員長 次に、伴野豊君。

伴野委員 民主党の伴野豊でございます。

 本日は、土壌汚染対策法の一部を改正する法律案、閣法第五十九号、また、同じ名称でございますが、土壌汚染対策法の一部を改正する法律案ということで我が党の方から出させていただきました参法第十一号、両法を議論していく中での参考人質疑ということで、高橋先生、松本先生、大野先生、大変お忙しい中、国会にお越しいただきまして参考人の意見陳述をしていただきましたことに、まずもって御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 順番にお聞きしたいと思いますが、個人的な私見も含めまして、今回、土壌汚染対策法を私なりに勉強させていただきました視点、観点を少し述べさせていただき、そういった視点でお三方に順番に質問させていただきたいと思っております。

 今回、この土壌汚染対策法という名称にあります土壌、土のではないんですね、土壌。まさに、これは松本先生の一番お得意の分野かと思いますが、あえて醸し出すという、これは多分、微生物が何らかの動きをして、生物的な有機的な特質を持った土をきちっと汚染から守りなさいという、だからこの土壌という言葉が使われたのではないかなと思うんですね。

 私、こう見えましても技術屋の端くれでありまして、今はもうさびついちゃっておりますけれども、私どもが学生時代にやってきた都市計画で土というものを学ぶときには、土質工学なんですね。この土質工学の中には、微生物、生物の観点は全くございません、先生よく御存じだと思いますが。

 土質工学における土というのは、土粒子と水と空気、つまりはここには物理学、言ってみれば応用物理の世界が支配をしていまして、今回先生のお話のある環境土壌、つまり、そこに生き物のにおいというのは全く考えなくてもよかった。私もそれを学んできてしまったということがあり、我が国において、そういった中で経済成長あるいは開発というときに現場においてどういう人たちが施工をするかというと、やはり土質工学を学んできた人が中心にやってきた。

 だから、そこには、土が生き物であるとかいう視点とか、土はもともと人間と触れ合うものだという観点がどこかに欠如してきたツケが今いろいろ来ているのではないかなという問題意識の中で、これは小野先生のお得意の分野かもしれませんが、我が党もそういった視点から今回議員立法をさせていただきまして、早ければいいというものではないんですが、私どもは前回の国会で提出させていただき、参議院で通過させていただき、今回閣法が出てきたということで、両方議論をしていただくということでございますが、そういった意味合いの中で、幾つか先生方に質問をさせていただきたいと思っております。

 一点目は、これは閣法と我が党提出の民主党案との一つの違いにも出てきているのですが、方向性としてはそれほど変わらないとは思うんですけれども、我が党は、さらに抜けさせたくないという気持ちが強くて、先ほども話題になっていましたが、閣法においては、土地の形質の変更であって、対象面積が一定規模以上の場合に、都道府県知事に届け出を義務づけている。これを下回るものであっても、土壌汚染による人の健康被害が生ずることを防止するために配慮が必要であるとは我々考えるんですけれども、民主党案では、学校、病院、公園等の特定公共施設等の用に供するために土地の形質を変更しようとする場合も、届け出を義務づけているんですね。

 やはりリスクマネジメントからすると、どこかに基準をというか、全部やるわけにはいかないという現実論も我々わかっているつもりなんですが、抜けさせてはいけないというような施設、例えば学校、病院、公園、人がすごく触れ合うものについてはやはり何か必要なのではないかなと、どうしてもここは我々思っております。

 こういった観点から、先ほども御報告ありましたが、当然、いろいろな懇談会や部会でそういう議論があったのかもしれませんが、用途に応じた規制等のあり方、一定規模を下回るんだけれどもこの用途だけはきちっとしておいてもらわなきゃいけないという議論が、まずあったのかどうか。しかし、あったけれども現実的にはというお話になったのか。この点、ぜひ閣法、民主党案との比較の上でお聞かせいただければ。

 高橋先生、松本先生、大野先生、順番によろしくお願いいたします。

高橋参考人 先ほど多少御紹介いただきましたが、各国を調べまして、例えばドイツなどでは用途に応じたある種のリスクマネジメントをかなり徹底しているということがございました。

 それも参考にするということも一たん考えたわけですが、やはりドイツと違うのは、御案内のように、土地の利用規制が非常に整然としておりまして、その前提の上できちっと把握できるというところで一日の長がドイツにありまして、それを日本の制度に持ってきた場合には、なかなかまだ十分、用途別の規制、それが例えば用途が変更された場合にどうするのかとか、いろいろ問題があるということもありまして、残念ながら今回の対応にはなっておりません。

 民主党の案は、私どもも勉強させていただきまして、非常にインパクトがある。そういう意味で閣法をつくる際の非常に大きな推進力になったんだろうと私は思っております。そういった意味で、非常に意味があると思います。

 その上で、では用途別にきちんとやる、かつ、その用途についても、例えば覆土をしてしまった場合にどうかとかいろいろございますので、つかまえることができるのかというところが立法技術的に見るとどうかなというところがあります。その辺は、ぜひまた御議論いただければありがたいと思っております。

 以上でございます。

松本参考人 土と土壌とはどう違うか。まさにそのとおりでございまして、土壌というのは、醸すという、酒へんではございませんが、土へんを書きます。そういう意味で、土壌というのは生物も入れた一つの自然体である、これは大方の一致した意見でございます。

 しかしながら、公園とかそれから学校、あるいは施設、特に都市における学校では、既にアスファルトとかコンクリートに埋設されておりまして、土壌の顔すらも表面には出ていないわけで、これは、そういう意味では、先ほど御指摘がございましたように、いわゆる土木工学的な、物理化学的なそういう手法で、我々が土壌を踏まないで、土壌を中に介した格好でやっているわけでございます。

 そうした土壌が、それでは土壌という格好ですべて必要かというと、これはとても無理な話でございまして、そういう意味からいって、すべてではございませんが、無理をしない限り、私はやはり可能な限り土壌というのは表面に出して、そして、その土壌がきれいであればそれは一番いいわけですが、万が一、その土壌が汚染されている場合には、覆土なりあるいはアスファルトなりコンクリートにして埋設させて、その土壌が表面に出ないような工法をとるべきではないかなと考えております。

 現実に、学校といいましても、専門学校等では運動場と言われるようなところはございませんし、また、ありましても既にそうした無機物で完全にシールされている状態でございますので、先生の御指摘は、すべてが当てはまるとは私は考えておりません。

 以上で回答を終わります。

大野参考人 民主党の法律改正案を読ませていただきましたけれども、今度の政府案と基本的な方向は同じであるというふうに思っておりまして、非常に評価をしたいと思います。

 ただし、一点違うのは、要は、調査をやるところの規模を定めるかどうか、そういうところを公共施設については区域の規模にかかわらず一応対象にするというのが民主党案だというふうに思います。

 一つ、テクニカルな話になりますけれども、特定公共施設等を判定するということを書かれておりますけれども、これはやはりなかなか難しいのではないか。例えば、同じ用地でも、その土地の利用の仕方。グラウンドでも、全部覆土だけでやるような公共用地とか、そういうものもございますから、そういうことも全部含めて公平な基準を定めるのは、テクニカルな観点からいうと非常に難しいのではないかなというふうに考えます。

 それからもう一点は、仮に公共施設あるいは民間の関連での公益施設というようなことであっても、これは利用の重大さというようなことも考えれば、現行法でも第四条で、要は都道府県が調査命令をかけることができます。そういう意味で、特に、そういうような用途なんかに利用するようなところが仮に区域より小さくても、そういうような土地が過去の履歴で何らかの工場用とかそういうようなことがある場合には、やはり都道府県の調査命令とか、そういうようなところで小さいところも担保されるのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

伴野委員 ありがとうございました。

 いずれにしましても、先生お三方とも、科学的な分析評価に基づいて、きちっとしたリスクマネジメントをすることが重要だということはよくわかりました。その方法としての現実的な仕組みをどうするかなんだと思います。我々も知恵を絞らせていただきたいと思いますので、今後とも、その点につきましてもぜひ御指導いただければと思います。

 では、二つ目のお話で、これは今回かかわっている我々環境委員会のメンバーや御専門の方は、先ほどの土壌汚染に対して今回の法案がどう改正されていったかというのは認識しているつもりなんですけれども、国民の方に周知徹底していくためには、やはりトピックス的な例を用いてきっちり周知徹底すべきであろう。

 そうすると、何を言いたいか、もう先生も笑っていらっしゃいますけれども、豊洲の問題というのは、よくも悪くもという言い方は変ですが、余り感情的になる必要はないと思いますけれども、ケーススタディーとしては非常に重要なものであると私どもは思っております。

 先ほども大野先生のお話にもございましたように、リスクゼロというのはなかなか難しいのではないか。それから、技術的に完全な浄化、そうすると除去ということを考えていかなきゃいけないということになってきますと、この豊洲の問題、さらには、先ほど心理的嫌悪感というものが評価の中でも非常に大きいというようなこともおっしゃっていたということになると、私も個人的に今度、環境委員会の若いメンバーでまた築地を勉強していこうかなとは思うんですけれども、ガス工場跡地ということと、有害物質がかなり出ているという現状を聞きますと、本当にその安全性が確保されて、仮にされたとしても先ほどの心理的嫌悪感まで除去できるのだろうかというようなことを考えたり、あるいは、汚染土壌を全部除去するということになると、すさまじい膨大な費用がかかるのではないか、そんなふうに思っております。

 また、築地における文化的な、まさに醸し出されているものもあるということを考慮すると、現時点においていかがなものかなという気もしないでもないんですが、先生方、この今の豊洲の移転問題についてどんなお考えをお持ちか、お聞かせいただければと。お願いいたします。

高橋参考人 私は、法的な観点からでございますので、技術的な問題については詳しくないので、そちらはお二人の参考人にゆだねたいと思いますが。

 法律に対する影響ということでございますが、これは非常に特殊なケースだろう。今いろいろと議論になっていますが、やはり使途が特別な使途でございますので、ある種、一般的な法の網羅できるようなケースではちょっとないのかなと思っておりまして、そこがこの問題の特殊な対応。かつ、東京都ということでございまして公共団体のものでございますので、それがきちんとやれるかどうかということが非常に法律的な問題だろう。

 あとは、実際上、コストと技術上の問題で、きちんと国民、都民の安心のできるものになっているかどうか。これは技術的な問題でございますので、お二人の先生にゆだねたいと思います。

 以上でございます。

松本参考人 豊洲の問題、これは、先ほどの先生のお言葉をもう一度借用させていただきますと、土壌か土かという問題で非常に難しいところがございます。

 豊洲のところは、土壌であると言い切ってしまいますと、私は、普通の土壌ではない。これはやはり、ヘドロ、そうしたものを固化して人工的につくった土壌で、完全にいわゆる健全な土壌の状態にはまだ至っていない。そういう意味では、土と考えるべきである、こういうふうに私は思います。

 ただ、残念ながら、まことに申しわけございませんが、私は豊洲についてはコメントできるだけの知識はございません。私も勉強させていただきますが、新聞報道等によりますと、卸売市場という食の安全の観点を踏まえて、私は、慎重に対策が検討されるべきものである、こういうふうに思っております。

 終わります。

大野参考人 私も、豊洲の問題に直接かかわっているわけではございませんので、詳しいことは承知をしておりません。ただ、新聞とかいろいろな情報によりますと、我々、土壌汚染対策をやっていろいろなリスクの管理をやっている立場からいいますと、今、二メートルぐらいの覆土をするというふうなことが出されております。

 今我々の、これまでの環境省の封じ込めであれば、五十センチメートルぐらいでいいというふうに考えております。あの土地でいえば、地下水を横で利用する方がいるわけでもございませんし、五十センチぐらいの覆土があれば、二メートルを積もうが、要は、接触して常時土を食べるというような、そういう危険性というのは同じではないかというふうに、技術的にはやはり考えます。

 ただ、実は、技術はそれでいいというふうに思っても、この土壌汚染対策法というのは安心まで担保しているような法律ではないので、やはり安心ということになるとこれはまた別の次元の話でございますので、それが二メートルまでやらないと安心というふうにいかないということであれば、それはそれでまた政策判断としてはあり得る話なのかなというふうに思います。そこまで、要は、五十センチメートルの覆土に対して二メートルまでやれば、それだけお金が相当かかることになりますけれども、それも、かかった追加的なコストでもってやはり安心を買うのかなというふうに思います。

 やはりそういうものでできるだけ避けていくためには、法律にもありますように、リスクコミュニケーションという手法がございます。これは、もともとからもっと情報をきちっと開示されて、きちっとやはりオープンにしてやっていけば、そこまでいかなくても済んだのではないかな、ちょっと個人的な感想でございますけれども、そういうふうに思っております。

伴野委員 きょうは高橋先生、松本先生、大野先生、本当に貴重な御示唆をありがとうございます。我々もしっかりと参考にさせていただき、いい法律をつくっていきたいと思いますので、今後とも御指導のほどをよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

水野委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、三人の参考人の皆様、国会においでいただき、貴重な御意見を賜りました。大変にありがとうございます。心から御礼を申し上げます。

 まず、松本参考人にお伺いをしてまいります。

 松本参考人におかれましては、昨年から、中央環境審議会の土壌制度小委員会の座長として、土壌汚染対策に関する検討及び提言の取りまとめをされてこられました。これら土壌汚染対策に関する検討及び提言の取りまとめをされるに当たりまして、大変御苦労されたのではないかというふうに思いますけれども、その取りまとめに当たって一番御苦労された点をお教えいただきたいと思います。

松本参考人 冒頭で申しましたように、この小委員会は九回行っておりますが、最初二、三回の間は、特に産業界から、土壌汚染による問題事例は極めて少ないと。当時提出しました資料は、土壌汚染問題で出ておりますのは十一例でございました。この数字でもっては非常に少ないのではないかという御指摘で、しかも健康被害が出ていない、また、自主的な取り組みも適切に行っているので、あえてここで法案の見直しをやる必要はないのではないかという非常に強い意見が出て、委員長である私は、大変その点は苦労をいたしました。

 しかしながら、審議が進行するうちに、汚染土壌が法律の枠外で大量に移動していることの問題に対する認識が深まりまして、まず、適正な処理の確保をやらなければいけない。次に、それが空転しないように調査の契機を拡大することと、それに加えて、現場のリスクに応じたより合理的な対策を進める方向で委員会全体が一致した、そういう点でございます。

 終わります。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 産業界、経済界の意向も踏まえながら、そことの意見の一致を見たということで、大変御苦労されたこと、よくわかりました。

 次に、続いて松本参考人にもう一つお伺いいたします。

 子供たちが健やかに育つためには、子供たちが安心して遊んだり学んだり、そういう環境整備が非常に大事かと思います。私も母親の一人としてそのことは非常に重要ととらえております。

 そのためにも、子供たちが学んだり遊ぶ学校、公園、また食を扱う市場などが設置される場所、これも、人の健康の観点からも安全でなければならない、これは当然のことと思います。

 今回の改正案では、学校や公園のグラウンドあるいは砂場に土壌汚染の恐れがある場合には、改正後の第五条、改正前の第四条でありますけれども、これによりまして土壌汚染の調査を命令できる仕組みがございます。しかしその一方で、過剰な対策を求めて過剰なコストを必要とした場合には、そうした施設整備というものが推進できない、こういう側面もあろうかと思います。

 今回、政府が提出した改正案では、掘削の対策が不要な区域とまた対策が必要な区域に分けて指定をする。こうした過剰な対策を防止するためのものではないのか。私たち責任与党として、やはり土壌汚染というものが人の健康被害にどのような影響を与えるのか、またその対策としてどのような措置を行えば健康の観点から大丈夫なのかということは、科学的な見地からも正確に理解をして、必要十分な措置を講じつつ国民が安心できる環境を整備する、この促進が必要ではないかと考えております。

 そこで、土壌汚染の影響とその対策につきまして、土壌汚染があれば直ちにそれが健康被害を生ずるということを私なども、専門知識のない者はそう考えがちでございますけれども、自然科学の御専門家として、この考え方について科学的見地からどのようにお考えか、お教えいただきたいと思います。

松本参考人 土壌汚染といいますと、一般には、土壌汚染されますと、先生が今御指摘のように、直ちにそれが人の健康に影響を及ぼす非常に危険な状態に陥ったと考えられるようでございますが、私は、それはかなり大きな誤解があると思います。

 土壌汚染といいますと、その土壌の危険性がどのように人の健康あるいは生物の健康に影響するか、その拡散を調べてみますと、まず、汚染された土壌が風とかそうしたものであおられて、土砂が空中に舞って、そのものが、汚染された粉じんが人の衣服についたり、あるいは子供たちの皮膚そのものに砂場等で接触したり、そういう家庭内への持ち込み、そういう場合と、それから雨等で汚染物質が水質を汚濁する場合、汚染の拡散にはこの二通りがあろうかと思います。

 風等による粉じん、こうしたものは、これを被覆、盛り土でございます、あるいはアスファルトで完全に覆う。砂の遊び場であれば、その上に新鮮な、全く汚染のない安全な土を盛ることによって子供たちの遊び場に提供することができますし、水質汚染を行うような危険性がある場合には、遮水層を設けて、その水がほかに拡散しないような技法は現在普通にとられているところでございまして、私は、いたずらに土壌汚染という状態をあおらない方がむしろ自然な状態ではないかな、そういうふうに考えます。

 以上で終わります。

古屋(範)委員 わかりやすい御説明をありがとうございました。

 土壌汚染については、そうした対策がとられることによって健康被害を招かない、このような方向をつくることができるという御説明であったかと存じます。

 次に、松本参考人、大野参考人、お二人にお伺いをしてまいります。

 たとえ土壌汚染があっても、先ほどおっしゃられましたように、盛り土あるいは舗装といったような十分な対策を講じれば、その土地の上で人が生活しても全く健康の被害が生ずるおそれがないということでございます。しかし、例えば、土壌汚染がある土地であっても十分な対策を講じれば、その上で子供たちが遊んでも本当に健康に被害がないのかどうか、再度確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

松本参考人 先ほど申し上げました土壌の汚染の拡大の観点から申しますと、要するに、汚染された土壌の粉じんが外に舞い上がらないように、中に封じ込める、あるいは盛り土をして完全にそれが人の生活空間に入らないような処理をすることで、そのリスクを大幅に軽減し、ほとんどリスクのない状態にすることはできる、私はそういうふうに考えます。

 以上で終わります。

大野参考人 今の件については、松本先生と全く同じでございます。

 ただし、一つちょっと補足をいたしますと、現行法では、盛り土とか封じ込めをやるときには、それなりの土壌の濃度の基準以下でないとだめなようになっています。それで、仮にそれが漏れ出たとしても、物すごく急性の毒性でもって問題が起きるとか、そういうことはないと思いますし、ちょっと触れたぐらいであったとしても、それが将来的に大きな問題を引き起こすというようなことは、まず考えにくいのではないかというふうに思います。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 かなりリスクは軽減できるというお話でもございました。また、長期的な観点からさらにフォローする必要があるのかなというふうにも考えます。

 次に、松本参考人、大野参考人、またお二人にお伺いしてまいります。

 こうした土壌汚染がある土地につきまして、健康被害が生じないように適切に管理することが必要ということでございます。土壌汚染の対策につきましては、中小企業等から、その対策費用が高額となる、負担ができないという声も上がっているかと思います。こうした声にこたえるために、対策費用が大きな負担とならないよう、対策技術の高度化とともに低コスト化が必要と考えますけれども、そのためにどのような施策が必要か、お教えいただきたいと思います。

松本参考人 御指摘のとおり、現在の土壌の修復技術というのは、日進月歩の非常に速い速度で、より高度の技術が浸透しております。

 例えて言いますと、難分解性の有機化合物、これは非常に難しい問題を含んでおりますが、こうした、要するに水にある程度溶け、なおかつ非常に土壌微生物による分解が進まないような物質に対しては、封じ込め、長期間にわたって我々の通常のライフサイクルでは劣化しない程度の非常に強力な、そういった無機資材でその場で固化する。これは従来の掘削除去に対する費用よりもはるかに低コストで修復ができますので、中小企業の方にとっても非常に朗報ではないかなと私は思います。

 以上で私からは終わります。

大野参考人 ただいまのお話につきましても、基本的に松本先生と同じでございます。

 たまたま、我々は業界の中におりますけれども、まず、有機溶剤系の地下水汚染にかかわるような技術に関しましては、これはまさに市場があるわけですね、競争があるわけです。非常に競争が激しいです。きちっとした提案をして、安い値段で提案していかないと仕事はいただけないという世界になっております。そういう意味で、業界の中でもそういう低コストのための努力というものが熾烈に行われているというのが実態でございますので、今後とも、そういうようなことで、安い、できるだけリーズナブルなコストで提供できるようなサービスというものが我々の会員の中から出てくるのではないかというふうに思います。

 もう一点、重金属類というのは、要は含有量の問題ですね。そういったもので問題があるところにつきましては、先ほど松本先生がおっしゃったように、掘削除去するというのは非常に高くなりますので、それなりにきちっと押さえた状況の中で管理していくというような対策のとり方とこれからうまく折り合っていただくということが大事ではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 掘削というような高コストな方法ではなく、また、非常に新たな技術が開発をされているということ、現実的にはそういったものを活用しなければなかなか進まないんだろうなということがよくわかりました。

 次に、三人の参考人の先生方にお伺いいたします。

 今回、政府が提出いたしました土壌汚染対策法、本来、十年後の見直し規定があったものを、施行五年で見直しを行うということでございます。国、自治体、経済情勢等の現状を踏まえまして、現時点においてはベストに近い案となっているというふうに認識をいたしておりますけれども、それぞれの参考人の方々の御意見を伺いたいと思います。

高橋参考人 陳述の最後に申し上げましたが、将来的には、例えばいわゆる売買時に調査を義務づけるとか、さらには利用の形態に応じた形でリスクマネジメントの基準をきちんと定めるということも考えられると思いますが、まずは、やはり売買取引については、現状でそういうものをかけるというのは売買に対する影響が非常に大きいだろうということがございます。さらにはリスクマネジメントのやり方についても、ほかの法制との兼ね合いというのもございますので、なかなかここだけでやれるものではないというところがございます。

 そういうことを考えれば、現在のところではベストに近いものだというふうに私は思っております。ただ、この分野は日進月歩でございますので、また近い将来、何らかの手直しが必要になるかどうかわかりません。とりあえず、現状ではベストだというふうに私は思っております。

 以上でございます。

松本参考人 法の専門家でもない私がこのようなことを申し上げるのは大変僣越かもしれませんが、法というのは、やはり現実の社会に一たん適用して、おろして、それにいろいろな不備が出てきたときにはまた考え直す、そういった格好で、より完成度の高いものに向かって法改正というのはあるのではないかな。これは私のあくまでも私見でございますが。そういう観点から見ますと、現在の時点では、私は、高橋先生と同じように、極めてベストに近い状態にある、そういうふうに考えます。

 以上です。

大野参考人 この点は私も両先生方と同じような考え方でございますけれども、一つ、今回の政府の方の法改正案の中身で、やはり、仮に汚染地が発見されても、直ちに健康に影響があるおそれのある場合とそうでない場合によって、措置実施区域という話と形質変更届出区域というふうに二つに分けたということについては、これは非常にいいのではないか、現実的ではないか。それによって、対策の弾力性、それから行き過ぎた対策の抑制ということができるようになったのではないかということで非常に評価されておりますし、また、場外搬出関係についても適切に管理することができるような案になっておりますので、以上によりまして、法律における穴といいますか、抜け穴みたいなところがかなり埋められたのではないかというふうに評価しております。

 以上でございます。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 ほぼベストに近い形の改正案になったのではないか、そのような評価をちょうだいできたのではないかと思っております。本日の参考人の皆様の貴重な御意見を踏まえまして、しっかりまたこれから国会で審議をしてまいりたいと思います。本日は大変にありがとうございました。

 以上で終わります。

水野委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、来る三十一日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時二十三分散会


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