衆議院

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第4号 平成21年3月31日(火曜日)

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平成二十一年三月三十一日(火曜日)

    午前九時三十四分開議

 出席委員

   委員長 水野 賢一君

   理事 小野 晋也君 理事 北川 知克君

   理事 土屋 品子君 理事 西野あきら君

   理事 岩國 哲人君 理事 伴野  豊君

   理事 江田 康幸君

      あかま二郎君    上野賢一郎君

      小島 敏男君    木挽  司君

      近藤三津枝君    坂井  学君

      鈴木 俊一君    中川 泰宏君

      橋本  岳君    福岡 資麿君

      藤野真紀子君    古川 禎久君

      馬渡 龍治君    安井潤一郎君

      山本ともひろ君    若宮 健嗣君

      川内 博史君    末松 義規君

      田島 一成君    田名部匡代君

      村井 宗明君    吉田  泉君

      高木美智代君    古屋 範子君

      江田 憲司君

    …………………………………

   参議院議員        大石 正光君

   参議院議員        大河原雅子君

   参議院議員        岡崎トミ子君

   参議院議員        鈴木  寛君

   参議院議員        田中 康夫君

   参議院議員        轟木 利治君

   環境大臣         斉藤 鉄夫君

   農林水産副大臣      石田 祝稔君

   環境副大臣        吉野 正芳君

   環境大臣政務官      古川 禎久君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部技術参事官)  岡  誠一君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局次長)           平尾 豊徳君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西本 淳哉君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           石井喜三郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           松田 紀子君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 伊藤 哲夫君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   谷津龍太郎君

   環境委員会専門員     吉澤 秀明君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十一日

 辞任         補欠選任

  中川 泰宏君     安井潤一郎君

  福岡 資麿君     若宮 健嗣君

  船田  元君     橋本  岳君

  村井 宗明君     川内 博史君

  古屋 範子君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本  岳君     船田  元君

  安井潤一郎君     中川 泰宏君

  若宮 健嗣君     福岡 資麿君

  川内 博史君     村井 宗明君

  高木美智代君     古屋 範子君

    ―――――――――――――

三月三十一日

 大口排出源に対する削減義務化等実効ある温暖化対策を求めることに関する請願(辻元清美君紹介)(第一一五二号)

 同(日森文尋君紹介)(第一一六八号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第一一八三号)

 同(重野安正君紹介)(第一一八四号)

 アスベスト対策基本法の制定、すべての被害者の補償を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一二〇一号)

 すべてのアスベスト被害者の補償を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第一二〇二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一二〇三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二〇四号)

 すべてのアスベスト被害者を補償し、被害の根絶を求めることに関する請願(加藤公一君紹介)(第一二〇五号)

 同(末松義規君紹介)(第一二三一号)

 同(北村茂男君紹介)(第一二九五号)

 同(徳田毅君紹介)(第一二九六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 土壌汚染対策法の一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)

 土壌汚染対策法の一部を改正する法律案(参議院提出、第百六十八回国会参法第一一号)


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     ――――◇―――――

水野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、土壌汚染対策法の一部を改正する法律案及び第百六十八回国会、参議院提出、土壌汚染対策法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房文教施設企画部技術参事官岡誠一君、農林水産省総合食料局次長平尾豊徳君、経済産業省大臣官房審議官西本淳哉君、国土交通省大臣官房審議官石井喜三郎君、国土交通省大臣官房審議官松田紀子君、環境省大臣官房審議官伊藤哲夫君及び環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長谷津龍太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

水野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

水野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木美智代君。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 まず、こうした機会を与えていただき、また関係者の皆様に御配慮いただきまして、心より感謝申し上げます。

 本日は、日ごろから大変尊敬申し上げております斉藤大臣に初めて質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、この土壌汚染対策法でございますが、平成十四年に制定されまして十五年に施行された、典型七公害の最後の法制度とされております。目的としては、土壌汚染の状況の把握に関する調査、また、その汚染に対しまして健康被害の防止に関する措置を定めることにより、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の皆様の健康を保護するという内容でございます。

 施行後、法や条例に基づく場合以外に、一般の土地取引等の際にも土壌汚染の調査、対策が広く実施されることになりました。しかしながら、法に基づかない調査によりまして判明した土壌汚染の増加により、発見された汚染土壌の適正管理への不安が指摘されるようになっております。また、対策といたしましても掘削除去が選択される傾向が強いことから、当然、土地の所有者等への過剰な負担、またさらに、不適切な処理によります汚染の拡散が懸念されるなど、問題が生じてきております。

 私は東京の比例ブロック選出でございますので、地元は、住まいは江東区でございます。江東区も、六価クロム、また数々の公害等々今までありました。そうしたことから、大変身近な課題であると思っております。また、築地市場が移転されます豊洲につきましても、これもまた江東区にございますので、地元の課題であると思っております。

 そこで、まず斉藤大臣にお伺いいたしますが、今回の土壌汚染対策法の見直しのポイントにつきまして御答弁をお願いいたします。

斉藤国務大臣 先週金曜日からこの土壌汚染対策法の審議が始まりました。どうかよろしくお願い申し上げます。

 今回の改正法案のポイントは、現在実施されている土壌汚染の調査や対策の九八%が法律の枠外で行われているそうですが、これを法律のもとできちんと実施していただき、環境リスクを低減するための合理的な対策を進めることによって国民の安全、安心の確保を図ることでございます。

 もう少し詳しくお話しさせていただきますと、柱が三つございます。

 一番目の柱が、年間一万五千件程度の土壌汚染の調査が行われておりますが、法律でカバーされているのは二%程度にすぎず、発見された汚染土壌の管理に不安が高まっております。このため、改正法案では、一定規模以上の土地の形質の変更については、都道府県知事に届け出を義務づけ、土壌汚染のおそれのある場合、土壌汚染調査を命ずることとしております。この一定規模につきましては、東京都その他の条例を参考にして、三千平米以上と考えております。また、自主的な調査で汚染が見つかった場合には、土地所有者が都道府県知事に申請して、法律に基づいた適切な対策を講じることができることとしております。

 二番目の柱は、汚染された区域を、将来の土地の形質変更時に届け出を要する区域である形質変更届出区域、直ちに盛り土や封じ込めなどの人の健康被害のおそれを防ぐ措置が必要な区域である措置実施区域、この二つに分類し、汚染された区域の特性に応じて講ずべき措置の内容を明確化し、合理的な対応を推進することとしております。

 三つ目の柱が、掘削除去された汚染土壌が不適切に処理される例が各地で生じております。そのため、改正法案では、汚染土壌を搬出する場合は事前に届け出をし、都道府県知事の許可を受けた処理業者に汚染土壌の処理を委託しなければならないこととするとともに、汚染土壌の運搬及び処理を管理するために、管理票の交付、保存等を義務づけて、汚染土壌の適切な処理を確保することとしております。

 この三本柱がポイントでございます。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 そこで、築地市場の移転問題でございますが、大変身近な話でございます。恐らく、そうしたことがありましたので本日このような質問に立たせていただいたものと承知しております。

 この築地市場につきましては、開設して七十年がたちました。施設の老朽化、狭さが指摘をされております。また、一日に一万八千台もの自動車、バイクが入場することから、物損それから人身事故を合わせまして年間三百五十件という事故が発生をしております。一日に約一件の計算になります。また、入場待ちのトラックの渋滞であるとか、中にはアスベストが使われていたというのも大変有名な話でございまして、仲卸の場所の約半分ぐらいに使われている。封じ込め等の適切な処理はされておりますけれども、もし地震等があった場合にはむき出しになるというおそれが指摘をされております。

 石原都知事が、古い、狭い、危ない、このように指摘をしておりまして、東京都としてはかねてより、これは大きな課題であるということで、その場所で建てかえできないかとか、また思い切って移転はどうすればいいかとか、ずっと検討してまいりました。

 そこで、今回の土壌汚染対策法改正が検討されているわけですが、この豊洲新市場の予定地につきましては改正された土壌汚染対策法ではどのように扱われるのか、答弁をお願いいたします。

古川大臣政務官 改正案におきましては、一定規模面積以上の土地の形質変更が行われる場合に、汚染が認められる場合には、都道府県知事が調査命令を発することができるということになっておりますが、豊洲の新市場予定地は、これは四十ヘクタール、大規模な土地の形質の変更に当たりますので、本改正案が成立しますれば、当然対象となるものと考えております。

高木(美)委員 そうしますと、これは伊藤審議官にお答えいただくのがいいのでしょうが、そのような対象内に入った場合、その後の豊洲新市場の手続といいますか扱いにつきましては具体的にどのようになりますでしょうか。

伊藤政府参考人 豊洲市場につきましては、汚染があるということでございます。したがいまして、この法律の対象になりますれば、その汚染の調査の結果に基づきまして、東京都知事の方が規制の対象区域として指定するということでございます。

 指定後、東京都は、汚染土壌それから地下水についてはすべて環境基準を達成させる、こういうふうな対策をとるというふうに計画しております。これが計画どおり進みますれば、行く行くは、法律に基づく規制区域からの解除ということも行われることになるというふうに考えております。

高木(美)委員 豊洲新市場予定地ではどのような土壌汚染対策が行われるのか、恐らく東京都からさまざま報告も届いていると思いますので、答弁をお願いいたします。

古川大臣政務官 東京都にお聞きしますと、これはもともと東京ガスの旧工場があったわけですが、この地盤から地下二メートルの土壌を入れかえます。さらにその下の部分につきましても、汚染が認められれば、その部分は入れかえるということでございます。そして、今度は入れかえた土壌の上の方ですけれども、ここを二・五メートル新たに盛り土をしまして、その上にアスファルト舗装またはコンクリートの床を張るということにしておるそうでございます。

 また、地下水につきましては、当該区域は四十ヘクタールあるわけですけれども、これは三街区に分かれておりますが、この街区ごとに周辺に遮水壁を設置しまして、周りの地下水の流出入を断った上で、市場施設の着工までに環境基準が達成されるよう浄化を進めていくというふうに聞いております。そして、その後も毎月、地下水の水質の状況をモニタリングすることとされておるようでございます。

 なお、この新市場におきましては、東京都水道局の供給する水道水が使用されることとなっておりまして、地下水は一切使われないということをお聞きしております。

高木(美)委員 東京都としては、二度にわたる専門家の会議を立ち上げまして、最近の技術者会議によりますと、そこでこうした土壌汚染除去のための新しい技術を募集したところ、百二十件集まったそうです。その中でも、技術の面でも一番適切な処理ができるもの、高い技術、そしてまたもう一つはコストの面、恐らく両面から検討されたものと推察をしているのですが、そうした技術が果たして有効性を持つのかどうか、第三者の評価を求める声も実は一方にはございます。その技術が適切なのかどうか、第三者評価機関を行く行くは設置していただくのがふさわしいのかなと私は思います。

 現行では都道府県知事また地方自治体に任されておりますけれども、行われた処理自体、自治体からは適切な処理という報告が上がってくると思うんですが、それに対して、それが適切であるかどうかという認証といいますか、これも将来的には必要なのではないかと考えております。

 恐らく、これがほかの役所ですと、そこにぱっと予算をつけて第三者評価機関を立ち上げるとか、そういう形になるのかもしれませんが、環境省は、そこは地方自治体と信頼関係を持ちながら行政をやっていらっしゃるというふうに承知しております。ですので、そうしたことをまた将来的に御検討いただきたいと思っておりますが、もし御答弁いただけるようでしたらお願いしたいと思います。

伊藤政府参考人 豊洲における土壌汚染対策につきましては、東京都の方でしかるべくきちっとした対応がとられるというふうに私ども考えておりますが、私どもとしても、その状況等についてきちっとフォローしていきたいというふうに考えております。

高木(美)委員 よろしくお願いいたします。

 それでは、閣法と民主党改正案とどのように内容が異なるのか、その違いにつきまして答弁をお願いいたします。

吉野副大臣 先生御案内のように、現行法は、まず調査をして、指定をして、そして指定したらそこをどう管理していくか、こういう大きな枠組みの中で行われています。

 今度の改正法は、その調査をする範囲を、入り口を広げたわけであります。一定規模以上とか、あと、自主的に調査をした方々が、汚染が見つかった場合はきちんと届け出をするとかという形で、調査の範囲を広げました。

 そして、指定と管理の部分も、今まではちょっとあいまいだったんですけれども、きちんと対策を要するところ、そっとしておけばいいところ、こういう形で指定も基準を明確にしました。そして、対策を必要とするところは、その対策もきちんと法で明確化させていただいたわけです。

 もう一点は、搬出土壌です。これは現行法ではなかなか規制されていなかったところなんですけれども、搬出土壌についてもきちんとした規制をかけておく。

 もう一点は、この法の信頼性を上げるために、土壌を調査する機関は環境大臣が指定するわけですけれども、ここに更新制を取り入れたということです。

 これが改正案の大きな流れでございます。

 一方、民主党案の方では、調査の入り口を広げたという点では改正案と同じです。ただ、民主党案では、特定公共施設等、学校とか公園とか市場とか、こういうものに限定をしておりまして、入り口を広げたという点では同じですけれども、閣法は、そこの民主党案も取り入れた、一定規模以上、また自主的調査という、範囲を広くとったところが民主党案と閣法との違いでございます。

 そういう意味で、国民の信頼を得るために、ぜひ法案を通していただきたいと思います。

高木(美)委員 それでは、民主党の発議者の方たちにお伺いしたいと思います。

 民主党案で対象としている特定公共施設等の定義につきまして答弁をお願いします。

大河原参議院議員 答弁をさせていただきます。民主党の大河原雅子でございます。私も、東京の都議会議員を足かけ三期やりまして、参議院に参りました。

 今回出させていただいております法案は、高木先生のお地元の江東・豊洲の問題もありまして、私も共有した問題意識を持っているというふうに思っております。

 私どもの法案の中で、この特定公共施設等というものは、法文上は、「公園等の公共施設若しくは学校、卸売市場等の公益的施設又はこれらに準ずる施設であって、土壌の特定有害物質による汚染により人の健康に係る被害が生ずることを防止するため特に配慮が必要なものとして政令で定めるもの」というふうに附則第四条第一項で定めております。その考えは、不特定多数の人々が自由に利用する施設や人々の日常生活に密接に関連した施設ということで、土壌汚染による健康被害の防止の観点から対策が必ず必要だというふうに思っているものを対象としております。具体的には、公園、学校あるいは卸売市場のほかに、保育所や遊園地なども考えられるのではないかというふうに思っております。

 先生よく御承知のとおり、公園については、土壌が露出しているケースも多くて、かつ、子供や不特定多数の方々が利用するものであります。さらに、学校については、同じように土が露出しているというケースも多くて、子供たちが日常長時間にわたって過ごす施設でございます。そしてまた、卸売市場については、不特定多数の方々の口に入る生鮮食料品を扱う場所でございまして、多く野積み状態といいますか、そういう形もありますので、例えば化学物質の揮発性のあるものだと、空気による暴露というものも考えなくてはなりません。そういう形で取り扱うことから、それぞれ典型的な例をここにお出ししております。

 公明党の皆様には、環境ホルモン対策を初め有害化学物質対策を積極的に進められてきたことからも、御理解いただけるのではないかというふうに思っております。

高木(美)委員 何点か重ねてお伺いしたいと思います。

 一つは今大河原議員から答弁がありました公共施設等の範囲の問題ですけれども、国民の皆様の、人の健康に密接な影響があると考えられる、不特定多数の方が出入りする等々の答弁がございました。

 例えばその中で、学校を建てかえるということがあります。やはり今、少子化の流れですので新設校といいますのはほとんどないと思うんですが、そういう学校を建てかえるときにも、もう一度そこで調査をするということが発生するのかどうか。

 また、今、政令等で定めるというお話もありましたけれども、民主党さんはそもそも役所には頼らないとよくおっしゃっていらっしゃると承知しているんですが、この細目、細かい施設の対象につきまして政令で定めるというのも何かとても不自然な印象があるのですが、その点。

 そしてまた、もう一つは、施設用途だけですと、どうしても範囲に漏れが出てまいります。では児童養護施設はどうなのかとか、病院はどうなのかとか、こうした範囲の問題があると思うんですけれども、マンションとか公益の場合、当然閣法のように対象になった方がいいかと思うのですが、その点につきまして簡潔にお願いいたします。

大河原参議院議員 私どもの法案が対象としておりますのは公共施設等でございまして、一般的に、先ほど先生、学校を建てかえるとおっしゃったときには、それは建てかえでございますので、改めてこの対象にさせていただきたいというふうに思っております。

 そして、閣法は三千平米以上ということですが、おっしゃるとおり、子供たちがいる場所としては、例えば保育園あるいは小さな児童公園などは三千平米以下のものが多いということもございます。ですから、やはり用途によってきちんと対応するということはとても重要なことだというふうに認識しております。

高木(美)委員 とても不公平が生じているような思いがあります。例えば、保育所でも認証保育所はどうなのか、そしてまた、マンションといいましても土に現実に触れ合います、ではそういうところはどうなのか等々。恐らくこれは、ある程度の用途も必要かと思いますけれども、やはりこうした調査をきちんと義務づける、これは大事なことです。その上で、自治体がきちんと適切な処理ができる、こういうスキームにどうのせていくか。

 また、建てかえ等の場合に、もう一度ここに調査が発生しますと、その都度コストが相当かかるようになると思います。今あるところはある程度安心、そういう観点で、当然、自治体がそもそもその土地を購入するときに調査をしたというケースも多いかと思いますので、そうした点につきましてもう少し柔軟な対応がないと、学校の建てかえについても時間が物すごくかかる、その行政コストをどうするのか、保育所も今足りない、そこのところにまたさらにコストがかかる、そこをどうするのか等々の多くの課題が発生するのではないかと思っております。

 その点だけ指摘をさせていただきまして、お時間でございますので、御退席いただいて構いませんが。

大石(正)参議院議員 おはようございます。

 実は私は、十年前にこの土壌汚染法を実際に環境委員長として衆議院で議決をした人間でありまして、十年前にこれをつくったときには、与野党全部一致でつくりました。しかし、そのときには時間的な問題とさまざまな課題があって十二分に改正ができない部分がありましたので、十年以内に見直すということで今回出てきたわけであります。

 今おっしゃった部分は、順次少しずつでも答弁者、発言者の皆様に沿うような形で見直しをする。しかし、一番基本は、環境というものを考えたときに、コストを考えたら物事はできません。人間が汚染したものに対するコストは汚染した分だけかかって、払ってもとに戻すべきだ。人間が病気をしたときに同じようになるわけでありますから、そういう面で、そういう意識を持ってぜひやっていただきたいというのが私のお願いでございます。

高木(美)委員 今の御発言につきましては、恐らくこの環境委員会に所属している議員すべての方たちも同じ思いではないかと思っております。

 私は、そこまで民主党さんが考えられるのであれば、ではどうしてそういう汚染が発見された場合にそこの土地は使えないとか、今のままでいきますと、調査する、そしてその上でそれを公表する、そこでとどまっております。ここのところが、私は、実施の命令というところもありますけれども、いずれにしても、今、法改正にはそこまで盛り込まれておりますが、現行法ではそこはまだとても足りないという法律ではないかと思っております。ですので、とても申しわけないですけれども、中途半端といえば中途半端だなと。

 先ほど副大臣からとても狭いというお話がありましたけれども、やはりここをどういうふうに、広いこの中に入りまして、そこで、先ほど発議者からお話がありましたとおり、やはり全会一致で速やかに、国会の意思として国民の健康を守るというメッセージをはっきりと伝えられるかどうか、私は、そういうところでぜひ折り合いをつけていただきまして御努力いただきたいということをお願いさせていただきます。

 ありがとうございました。

水野委員長 質疑を続行してください。

高木(美)委員 それでは続きまして、先ほど来、築地移転問題につきましてさまざまお話をいただきました。本日は、石田副大臣にも農水省からお越しいただいております。

 農水省としては、この築地移転問題をどのように認識しておられるのか、また、東京都が十分な土壌汚染対策を行った上で許可を求めた場合、農水省としてはどのような対応をされるのか、お願いいたします。

石田(祝)副大臣 御質問いただきましてありがとうございます。

 私も実は、十数年前に築地に参りまして、そのとき、買い物をしようと思って行きましたが、大変に狭くて暗い。鮮魚の方に行きましたが、下も大変びちょびちょにぬれている。そういうところを歩いていきましたら、ターレというんですか、ああいう車で、どけどけというぐらいの感じで大変狭いところを走り回っている。これは事故が起きるなという印象は持ってまいりました。

 それをこれからどうされるかということでありますが、農林水産省が認可をするということになっておりますので、その前提でお話を申し上げたいと思います。

 築地市場の移転予定地の土壌汚染につきましては、国民の食生活はもとより、市場関係者の健康にも重大なかかわりを持つことから、東京都に対しましては、一つは、食の安全性や信頼が確保されるよう万全の対策を講じる、そして二つ目には、科学的見地に基づく対策の内容等について十分な説明を行い、消費者や国民の方々の理解を得るよう、これまでも強く求めてきたところでございます。

 今後は、東京都から築地市場の移転に係る認可申請があった場合には、その内容が卸売市場の業務の適正かつ健全な運営を確保する見地から適切であるかどうかなどに加えまして、十分な土壌汚染対策がなされているかどうかについて環境省とも連携して確認し、適切に判断をしてまいりたいと考えております。

高木(美)委員 土壌汚染対策を東京都がとり終わった場合、最後、移転のときに一番課題になりますのは、移転費用の問題であると思っております。特に仲卸業者の方たちは、数千万円という権利を購入していらっしゃいまして、しかしながら、最近、取扱量は激減しているという状況があります。したがって、移転費用を東京都としてどこまで捻出できるかという、恐らく最後はそうした経営の問題。高齢者の方は、もうこのままここで仕事を続けさせてもらいたい、こういうお声も伺っているところでございます。

 ですので、農水省におかれましては、この移転についての予算の確保、ぜひとも副大臣御尽力いただきまして、私どもも東京都議会とともに取り組ませていただく決意でございますが、ぜひとも応援をいただきたいと、この場をおかりしましてお願いをさせていただく次第でございます。

石田(祝)副大臣 予算等の問題につきましては関係各省と御相談もしなきゃいけませんけれども、やはり、市場の公益性ということも踏まえますと、業務の適正かつ健全な運営を確保する、これがまず大事な点だと思いますので、そういう見地から適切に行われるかどうか、こういうことは当然認可のときの判断にもなるわけでございますので、そういう点につきましてはしっかりと取り組みをしてまいりたいと思っております。

高木(美)委員 最後に環境大臣にお願いでございますが、特に、先ほど来、民主党さんの案の中には、「特定公共施設等」という中に突然「卸売市場」という言葉が出てくるわけでございまして、私は、これは移転反対のアリバイづくりのようにとられてもやむを得ないような書きぶりだなと、東京都の一人の議員として思っておりました。

 そこで私、一番懸念しますのは、風評被害でございます。東京都が適切な土壌汚染に対する処理をした。そして、例えば先ほど土に触れるような答弁がございましたけれども、そうではなくて、先ほど古川政務官からも答弁がありましたとおり、二メートルの処理をして、その上にさらに二・五メートルの盛り土をしてという、こういう処理をされ、しかも、水が浸出してこない、こういう処理まで適正にされるわけでございます。しかも、そこにアスファルトがあり、すべてのこうした遮断措置がとられるわけでございます。

 そこに、何かいかにも汚染された土地に触れるようなこうしたイメージ、そしてまた、それに対する健康への懸念がここで広がるということは、まさに国益を損じるということにもつながりかねないと思います。また、何よりも、国民の皆様の食の安心、安全を確保していこうという築地の皆様の取り組みに対しまして、私は、これは大変申しわけないことにならないようにしてまいりたいと考えている一人でございます。

 そういう意味で、この風評被害を防止するために、ぜひとも、東京都からこのような適正な申請が行われました場合には、やはり風評被害防止のために環境省からも明確なメッセージを出していただきまして、こうした対応に対しての評価を明確に発信していただければと思っております。

 最後に大臣の御所見を伺いまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

斉藤国務大臣 法律で定められた手続にのっとりまして科学的、技術的にきちんと対応し、そのことを国民の皆様にわかりやすく公表してまいりたいと思っております。

高木(美)委員 ありがとうございました。

水野委員長 次に、田名部匡代君。

田名部委員 おはようございます。民主党の田名部匡代でございます。

 今の高木委員の御質問、最後の方に、アリバイづくりだというようなお話がありました。そうではなくて、先ほど我が党の答弁にもあったように、どうやって人々の健康を守っていくのか、命を守っていくのか、取り返しのつかないことになる前にしっかりとした法整備をしていこう、こういう思いは与野党変わらず皆さんお持ちなんだというふうに思います。

 そういった中で、築地市場に限定するのではなくて、人の食の問題、今、高木委員もおっしゃったように、食の安全、安心という観点からも、どういった法律の整備をしていくことが重要なのか、そういったことを考えていくのが今私たちの置かれている立場だろう、そんなふうに思っております。

 土壌汚染による健康被害等が発生しないために、きょうの委員会の中で私もそういった観点から御質問させていただきたいと思いますが、汚染の調査、その状況の把握などが十分に行われていくということがまず重要だというふうに考えています。そこで、土壌汚染の状況調査に関する点について幾つかお伺いをしてまいりたいと思います。

 法案の第四条でありますけれども、土壌汚染のおそれがある土地の形質の変更が行われる場合の調査について確認をさせていただきたいと思います。

 今回、面積が一定規模以上の土地の掘削や土地の形質の変更が行われる場合を新たに土壌汚染状況調査を行うものに追加したわけでありますけれども、土壌汚染のおそれがあるものということについて、おそれがあるというのはどういうものなのか、御説明いただけますでしょうか。

伊藤政府参考人 先生御指摘のとおり、改正案におきましては、一定規模以上の土地であって、土壌汚染のおそれがある土地の形質の変更時に、都道府県知事は、土地の所有者等に対し土壌汚染の調査義務を課す、こういうことになっている次第でございます。

 このおそれのある土地として環境省令で定める基準でございますが、現段階で念頭に置いておりますのは、一つは、有害物質使用特定施設に係る工場または事業場の敷地である土地であった、そういったことが一つのメルクマールになるのではないかというふうに思っております。二つ目のメルクマールとしましては、特定有害物質が土壌に漏えいした記録がある、そういった土地についても念頭に置いております。さらには、法律に基づかない自主的な調査によりまして汚染が確認されている、そういった土地も一つのメルクマールになるのではないだろうかというふうに考えております。

 いずれにしても、この基準を具体的にどういうふうに定めるかということにつきましては、改正法案が可決されましたら、直ちに中央環境審議会において検討していただきたいというふうに考えております。その検討結果を踏まえて適切な基準を設定していきたい、こういうふうに考えている次第でございます。

田名部委員 今、自主的調査が行われていたかどうかというふうに御答弁いただきましたけれども、これはどのように把握されるんでしょうか。

伊藤政府参考人 自主的調査が行われていたかどうかということにつきましては、今回の法律案におきましても、都道府県知事の土壌汚染に対するいろいろな情報の収集、整理、提供についての努力義務といった条項も置いておるわけでございます。そういった条項に基づきまして、いろいろな自主的調査の結果について情報を収集する。場合によっては、事業者の方からいろいろな格好で相談が持ちかけられるということもあると思います。そういったことで、自主的調査というものが行われている状況についてできるだけ都道府県知事によって把握をしてもらいたい、こういうふうに考えている次第でございます。

田名部委員 できるだけ都道府県知事によって確認をしていただきたいと。そういったことで本当に自主的調査の信頼性というのが確保されるのかなと今伺っていて思ったんですが、どのように信頼性を確保していくんでしょうか。

伊藤政府参考人 本法律案におきましては、今言った一定規模以上の土地の形質変更の際にそれを一つの材料とするということに加えて、一つ大きな、自主的調査そのものによって規制対象区域の指定をしていこうというふうな条文も設けております。

 これはどういうことかといいますと、いろいろな自主的調査で、これは法律に定めるところの規制区域に該当するな、こういうふうに思料した場合には都道府県知事に届け出る、こういった制度でございます。その結果を踏まえて、都道府県知事は、確かにここは法律で規制しなければならないような汚染の地域であると認定をする、こういうことでございます。

 その場合に、自主的調査の信頼性をきちっと確保していかなければならないということが一番大きな課題であるかなというふうに考えております。

 その際、どういうふうにして確認するかということでございますが、都道府県知事の方において、自主的調査の結果を提出していただいたら、その結果が果たして法律で定めるようなレベルに達しているものかどうかといったことについて十分確認をする、場合によっては立ち入り等も行う、こういったことによって自主的調査の信頼性の確保というものを図ってまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。

田名部委員 そうではなくて、それは自主的調査をしてそれがきちんと届け出をされた後の話であって、自主的調査がきちんと行われてそれが届けられるかどうかという部分をどうやって担保していくのかということを伺っているのです。自主的調査をきちんとして、こういう問題がありましたとその調査をした人が届ければいいですけれども、そうじゃない、それがきちんと行われていたかどうかということはどのように確認をするんでしょうか。

伊藤政府参考人 自主的調査の信頼性が高いものであるかどうかということを確認しなければならない一番重要な場面は、汚染の規制区域になるかどうかという申請がされた場合にそれをチェックする、これが自主的調査の信頼性を確保するという観点から一番重要な局面である、こういうふうに考えている次第でございまして、その際におきましては都道府県知事がきちっとチェックをする、こういうことでございます。

田名部委員 ちょっとしつこくてごめんなさいね。自主的調査の結果ではなくて、自主的調査をした人が、何か問題があったときにきちんと届けているのかどうか、また自主的調査をきちんと行ったかどうかということも踏まえて、それは大丈夫なんですかということ。自主的調査の結果が出てきたときにそこに問題があったかどうかというのは判断できるわけですが、それまでの間きちんとそういうことが行われていたのか、そういう申請がきちんとされるのかどうかということ、それはどう確認するのかとお伺いしているんです。

伊藤政府参考人 今の自主的調査の状況につきましては、相当多くの場合が、自主的調査であっても、環境大臣が指定した指定調査機関によって調査が行われるということでございます。そういったことから、私ども、指定調査機関の信頼性の確保についてのさらなる取り組みについてもこの法律で規定しているわけでございますけれども、そういった指定調査機関を通じてきちっとした調査が行われるというようなことについても働きかけてまいりたいというふうに考えます。

 なお、自主的調査でございますので、これは、結果が出たときに汚染がありそうだということがわかったとしても、それを都道府県知事に届け出なければならないといった義務規定は今回置いておらないということでございます。そういった義務規定を置かない理由につきましては、これはあくまで自主的調査でございますので、もし自主的調査で何か見つかったら必ず報告しろというような義務規定を置いたとすると、かえってそういった自主的調査自身も行われなくなる、そういった懸念が高いということで、こういったことにしておるわけでございます。

田名部委員 自主的調査が行われなくなる可能性があるので義務づけなかったということですよね。義務づけなければ、自主的調査を行った結果、何か問題があっても届けなくてもいいということですか。

伊藤政府参考人 今回の法案におきましては、自主的調査の結果の報告義務ということまでは課しておりません。

 ただし、今、自主的調査がどういった場合に行われるのかということでございますけれども、大半が、土地の取引の際に、買い手の方で売り手の方に、土壌汚染があるのかどうかちゃんと調べてください、こういった要求がありまして、実際、そういった懸念がある場合は調査をしないと売れない、こういうふうな状況になっているわけでございます。

 そういった場合に、そういったことを契機として自主的調査を行ったらそれで汚染が見つかったという場合は、当然、買い手の方も、見つかったら、法律に基づいてきちっとした処理をやってください、こういうふうに求めるのが通例であると思いますし、また、売り手の方も、きちっと法律に基づいて申請をして、法律に基づいたきちっとした対策をやるということが十分期待できる、こういうふうに考えている次第でございます。

田名部委員 今のお話を伺っていて、そういった土地の売買のときにトラブルにならないのかなと。例えば、こういった特に百年に一度の不況と言われる中、皆さんなかなかそういった負担をすることさえ行われないんじゃないかということもあって、では、自主的調査も行わずに土地の売買がされました、土地を買った人がいました、実はそこから土壌汚染が発覚をしました。では、それはちゃんとしたのかしないのか、届け出をする義務もなくて、そういったことを確認することもできない。土地を買った人は、お金も払って土地を購入して、その後またそれを処理することもしなければならない。それを、裁判をやってお金を取るのか何なのか、こういう時間もかかっていく。

 自主的調査が行われなくなるかもしれないから何かあっても届け出をする義務がないというのは、私はちょっとそれは足りないんじゃないかなというふうに思うので、この問題だけやっているわけにいかないので進みますけれども、ぜひそういったことをもう少し今後検討していただいて、どうやって安全というものを確保していくのか、さらに検討していただきたいというふうに思います。御答弁は結構です、済みません。

 さらに、指定調査機関というものがありますけれども、こういったところに調査をしていただくときに、やはり一定の技術能力、かつ正確であること、そして公正な調査が行われるということが非常に大事だと思っております。それが健康被害を防ぐということにもつながっていくわけであります。しかし逆に、正確な、公正な調査がなかった場合、被害を生み出すということにもなりかねないということで、調査結果の信頼性が求められているわけです。

 これまで指定調査機関が行った調査で、その判断が不的確だったという事例があるのかないのか、教えていただけますか。

伊藤政府参考人 先生御指摘のように、指定調査機関というのは、土壌汚染の調査において重要な役割を担っているわけでございます。したがいまして、一定の技術能力を有し、正確な調査を実施してもらう必要があると考えているわけでございます。

 このため、現行法でも、環境大臣がその能力等を判断して指定するということになっているわけでございますけれども、これまで、私ども環境省として、指定調査機関が行った調査の判断が不的確だった、こういった事例については承知しておりません。(田名部委員「おりませんか」と呼ぶ)はい。

田名部委員 それはなぜですか。

伊藤政府参考人 私ども環境省として、例えば法律上、指定の取り消しといったような制度もあるわけでございますけれども、こういった指定の取り消しを行ったことはございませんし、地方公共団体から、あそこの指定調査機関の調査の判断はおかしい、こういったことについての報告を受けた例もない、こういうことでございます。

田名部委員 指定調査機関を取り消した……。調査をしていないんですから、何か問題があったかどうかわからないですよね。

 社団法人土壌環境センターの指定調査機関に関する自治体アンケートというものがあるんですが、その中では、都道府県及び政令市全百五十三自治体に対し、アンケート調査を平成十九年十月に実施いたしまして、百四十三の自治体から返事があった、こういう報告があるんですね。それで、この中に、二五%の自治体が指定調査機関の技術能力が不十分と回答しているというような結果があるんですが、こういうのは御存じですか。

伊藤政府参考人 確かに御指摘のとおり、指定調査機関について、もっときちっとした能力を持ってもらわなきゃいけないのではないかといった意見はよく聞いております。これは、中央環境審議会で今後の土壌汚染対策のあり方について検討していただいた際にも、そういった意見は多々ございました。

 そういったことも踏まえまして、さらに指定調査機関の能力を高める仕組みをつくることが重要だ、こういうふうな指摘をいただきまして、そのための改正も今回の改正案の中に取り込んだところでございます。

田名部委員 この指定機関というのは、環境大臣が指定する調査機関であるわけですよね。つまり、指定した機関が不的確な判断をして国民に健康被害が出たとしたら、これは環境大臣の責任になりませんか。

伊藤政府参考人 環境大臣が環境大臣の責任をもって指定するわけですから、その指定が適切であったかどうかといったことについては、当然、責任が生ずる場合はあり得ると思います。

 ただ、現在のところ、当然のことでございますけれども、何か指定調査機関の判断が誤ったから健康被害が生じたというふうな事例も、私ども承知しているわけではございません。

田名部委員 それは調査していないから承知をされていないわけであって、アンケート調査の結果、回答のあった二五%の自治体から、先ほど申し上げたように、不的確な判断というものも含めて「ある」という回答がなされているわけですよね。二五%の自治体の「生じた問題」の内容について、「試料採取ポイントの設定方法や汚染のおそれの区分の判断が不適切であったため指導を行ったなどの事例がみられた。」という報告なんですね。

 ですから、調査をしないで、今までそういうことがなかったとかいう話ではなくて、大臣の責任でもってその機関を指定するわけですから、大臣、大臣の責任において指定をした機関に対して、その後もその機関がきちんとした調査をしているのかどうか、ここはまさに基本中の基本、ここから始まるわけですから、責任を持って、指定した機関に何らかの問題がないのか、公正な、的確な判断がなされているのか、また、問題があったときにはきちんとした指導をするというようなところまで、大臣の責任においてやっていただけないでしょうか。大臣、御答弁をお願いします。

斉藤国務大臣 指定機関は大臣が指定をするわけですので、そこがきちんとした業務を行うということは当然だと思います。

 私もこの問題について特に深い知識を持っているわけではないんですけれども、先ほど田名部委員がおっしゃったアンケートは、平成何年ですか。(田名部委員「十九年です」と呼ぶ)平成十九年。各地方自治体の担当者の方のアンケートだと思うんですけれども、一〇〇%完璧ではないということで、いろいろこうしてほしいということではあるかと思うんですが、事故につながるようなものはまだ我々として報告を受けていないということだと思います。

 当然、そういう事故につながるような、また国民の安全や安心を脅かすような事例が報告された場合には、大臣として、また環境省としてきちんと指導していかなくてはならないと思います。

田名部委員 今私申し上げたように、「汚染のおそれの区分の判断が不適切であったため指導を行った」という報告があるんですね。「汚染のおそれの区分の判断」、つまり、土壌汚染があるのかないのかということの判断だと私はこのアンケートを見て思ったんですが、環境省が直接やった調査じゃなくても、こういう結果がある以上、私は責任を持って対処していただきたいと思うんですが、今後どのように調査の信頼性を高めていくのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

伊藤政府参考人 先生御指摘のように、都道府県が調査機関の調査ポイントについて、もっとここよりここの方がいいんじゃないかとか言うことは当然あり得ます。そこは、現場でいろいろ都道府県と調査機関が話し合いながら、必要に応じ、都道府県の指導のもと、よりきちっとした調査をやってもらうということは通常十分あり得ることだと思いますし、そういうことでちゃんと都道府県知事からも指導をしてもらいたいというふうに我々は考えております。

 なお、先生おっしゃいましたとおり、指定調査機関の信頼性を高めていかなければならない、これはまさにそのとおりでございまして、だからこそ、今回の改正案におきまして、この信頼性を高めるために、五年ごとの指定の更新を受けなければならない、こういった制度を導入しますとともに、指定調査機関が土壌汚染状況調査を行う際には、環境省令で定める基準に適合している技術管理者を選任して、この者に調査の監督をさせなければならない、こういった規定も新たに設けさせていただきたい、こういうふうに考えている次第でございます。

田名部委員 何か先ほどからちょっと不十分だなというふうに思うんですが、今言ったように、五年ごとの更新制ということ、これは、技術というものも調査方法というものも日々進んでいるわけですので、ぜひそういう最新情報というものも環境省として指定調査機関へ情報発信をしていただきたいというふうに思います。また、そういった情報の収集ということにも努めていただきたい、そんなふうに思うわけです。

 それだけではなくて、例えば土地の所有者と指定調査機関に何らかの利害関係がある場合というのも懸念されるわけでありまして、第三者から見たときに調査結果に疑問を感じるようなこともあるのかなと。そういった観点からも、信頼性の確保というものにしっかりと努めていただきたいというふうに思います。

 同じく四条に、都道府県知事は、一定規模以上の土地の形質の変更が行われる場合には届け出を受け、当該届け出のあった土地について土壌汚染のおそれがある場合には、これはさっき御説明いただきましたけれども、その土地の所有者に対して調査を命ずることとなるわけですが、都道府県に対して、情報の収集、整理、保存、適切な提供に関して、これはあくまで努力義務でありますよね。調査を命ずる側にしっかりとした情報がないのに、ここを調査しなさいと言うことができるのかなと。何でこれを努力義務でおさめたのかということについて御説明いただきたいんです。

伊藤政府参考人 改正案の四条で、都道府県知事は、形質変更の届け出があった土地について土壌汚染のおそれがあると認めるときには土壌汚染状況調査の実施を命ずる、こういうふうになっている。この命ずるときにどのようなデータを用いるのかということにつきましては、基本的には、当該土地に特定有害物質に係る施設があったかどうか、あるいは特定有害物質の漏えい事故等に関する情報があったかどうかということでございます。こういった情報は、水質汚濁防止法あるいは消防法などの関係法令の規定によりまして、従来から都道府県知事自身が保有をしているということでございます。したがいまして、当然都道府県知事が持っているはずのデータをもとに判断していただくということだろうというふうに考えております。

 一方、御指摘の都道府県知事の情報の収集、整理、保存、適切な提供に関しての努力義務でございますが、ここで言うところの情報は、何も都道府県知事が自分で持っている情報にとどまらず、関係者から広く情報を収集し提供してもらう、こういうことでございますので、これは都道府県知事においてそういった努力をしてもらいたいということで、まさに命令をかけるときの情報と、この情報収集、整理、提供のところの情報というのは広さが全く違う、こういうふうに考えている次第でございます。

田名部委員 広いか狭いかの話ではなくて、調査してくださいよということを命ずる権限を持っているわけですよね。そのときに、今おっしゃったように、いろいろなところからその情報を提供してもらわなければならない。そうでなければ実態がわからないわけで、その情報提供をただ待つのではなくて、また、これから調査を命ずるに当たって、本当に人の健康被害を防ぐために、どれだけの情報をきちんと集めて、それを整理して指導していくか、調査を命ずるかというところにかかっている。さっきの話と同じですけれども、ここが基本なんですよ。この基本がちゃんとしていない。この基本をきちんと押さえておかないと、幾ら自主的調査だ、土壌汚染法改正だとかいっても守ることができない。私は、これは努力義務ではなくて、きちんとした情報を集めて、情報を提供していく、そして指導していくという立場で都道府県が行っていくべき事柄じゃないかなと思うんですが、大臣、どうお考えでしょうか。

斉藤国務大臣 適切な判断をするためにできるだけたくさんの情報が必要であるということは当然だと思います。

 ただ、これを義務化いたしますと、ではどこまでが必要かという線引きが必要になってまいりまして、これまた非常に技術的に難しい問題がございます。今回は努力義務ということで、指定された、また資格を与えられた技術者ができるだけ公正な判断ができる、そのためにできるだけたくさんの情報を提供するということを努力義務として規定したものと私は理解しております。

田名部委員 大臣、だからこそ、さっきの話にまたちょっと戻っちゃうんですが、指定された、きちんとした技術を持った資格者がそのことを判断、調査をしていく。だけれども、その調査が本当に的確に行われているかどうかの調査すら環境省としては行っていなくて、そして情報の収集についても都道府県には努力義務であるというようなことでは、私は、本当に人の健康、土壌汚染の被害を防ぐことはちょっとできないんじゃないかなというふうに思うんです。

 国土交通省が、土壌汚染情報のデータベースの構築ということで、土壌汚染要調査マップの作成ということをされている。二十一年度の予算が八百万でしょうか。これは環境省では御存じですか。

伊藤政府参考人 国土交通省におかれましては、平成十九年度から、土壌汚染地における土地の有効利用等に関する研究会を設置されまして、土壌汚染問題に関し、土地取引の円滑化による土地の有効利用の観点から現状と課題を整理し、具体的方策について検討しておりまして、環境省からもオブザーバーとして同研究会に出席してきたところでございます。この研究会でいろいろな報告書も出しておりまして、私どもも非常に参考となるような報告書も今既に取りまとめられておるところでございます。

 その後、土地の有効利用のための土壌汚染情報等に関する検討会におきまして、土壌汚染に関する情報マップの作成及び公表に関する意義や課題、作成方法等について議論されているということは、当然十分承知しております。

田名部委員 こういった取り組みは、縦割りの弊害なく、しっかりと省庁間で連携をとって行っていくことが私は望ましいというふうに思っておりまして、それは国土交通省さんが勝手にやってという話ではなくて、環境省としても、環境省さんのお立場でしっかりと意見を出しながら、データマップの作成に関しても私は協力して行っていくべきだというふうに思うんですが、大臣の御見解をお聞かせいただけますか。

斉藤国務大臣 先ほどからの議論を聞かせていただいて、田名部委員の御質問はかなり本質的な疑問なんだろうなと。つまり、いろいろな事業に対して、それがきちんと行われているかどうか、もしくは品質がどうなっているかどうかを検査する、その検査の信頼性はどうなんだということ、それをどう担保するんだと。

 しかし、我々は、行政庁だからといって、検査がすべて正しいかどうか、横についてずっと見ているというわけにはいきません。したがいまして、この検査をする立場の人の第三者性ということをできるだけ制度的に担保するということと、あとは、これはもう技術の倫理の世界に入ってきますけれども、そういう技術の世界で検査を位置づけるときに、きちんと仕事をするという技術者倫理に基づいて行うことをどう制度的に担保しているかということで検査結果の信頼性を担保するという世界。

 その境目をどこら辺に置くんだという議論だと思うんですね、今の議論は。だから、そういう意味では非常に大切な議論だと思いますけれども、今回は、我々、そういうものの担保をいろいろな指定機関制度等の中できちんと組み入れておるということでございます。

田名部委員 何でもかんでも厳しく目を光らせて取り締まればいいということではないですけれども、やはり、きちんとした調査また情報発信ができているかどうかということは、今後、環境省さんとして、せめて調査を行ってほしい。それでだめであれば次の手を考えていくということをしないと、信用しています、大丈夫ですという話ではないんだろうと。やはりそこは、国として責任を持って行っていく事柄だろうというふうに思います。

 ちょっと先に進ませていただきたいと思うんですが、面積が一定規模以上というのは三千平米なんですが、この数字の根拠というのは何でしょうか。

伊藤政府参考人 これは中央環境審議会でもいろいろ御議論を賜ったところでございますけれども、今、地方公共団体の条例等で既にいろいろ対策がとられているところがあるわけでございますけれども、実際、同様な制度を既に導入している八自治体の条例中、六自治体の条例においてその規模を三千平方メートルとしているということが一つございます。

 それからもう一つは、都市計画法第二十九条第一項の開発行為、これは、「主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更をいう。」ということでございますけれども、この許可申請の事務につきましては、開発面積が三千平米以上のものは件数ベースでは一五%にすぎないということでございますけれども、面積ベースでは七一%も占める、こういうことでございます。

 こういった条例による実務の実態を踏まえ、また、義務対象者を比較的少数に絞りつつ相当程度の規制効果を期待することができる、こういったことから三千平米としてはいかがかというふうに考えている次第でございます。

田名部委員 三千平米以下であっても届け出が必要なものがあるんじゃないかなと。例えば、三千平米以下である公園だとか保育園だとか、特に小さい子供たちがよく集まるような場所、そういったところはないのかどうかということをどのようにお考えなんでしょうか。

伊藤政府参考人 今回の私どもの法改正案におきましては、土地に土壌汚染が存在する場合に、形質の変更が行われる部分の規模が拡大するということになれば大量の土壌の搬出が生じる、それから当該土地の形質の変更に伴ういろいろな汚染の拡大も懸念される、こういったことから、一定の規模以上ということで整理をしているところでございます。

 もちろん、それ以下の規模であっても、現に土壌汚染によって健康被害を生じるおそれがあるといった場合には、現行法におきましても、都道府県知事によって調査命令をかける、こういった制度があるわけでございます。したがいまして、本当に危ないところは、規模にかかわらずそういった制度を活用して対処すべきというふうに思っています。

 また、何度も繰り返しになりますけれども、三千平米以下のものであっても、認定の申請といった制度も活用して十分効果を上げられるのではないだろうかというふうに考えている次第でございます。

田名部委員 では、三千平米以下のところで、公園だとか保育園だとかそういったところを現行制度の中でも調査するように都道府県知事ができると。その情報を知事が持っていらっしゃるんですか、把握できるんですか。

伊藤政府参考人 いろいろな土地に過去どういう施設があったかとか、そこにどういうふうな漏えい事故があったとか、あるいは周辺の地下水の状況がどうであったかといったことについては、地元の地方公共団体が当然最もデータを持っているはずでございます。都道府県知事がきちっとそういったデータも活用して、ここは現に危ないのではないかというふうな場合には当然そういった命令をかけることが望まれるというふうに考えております。

田名部委員 データを持っているはずでは困るんです。さっき言ったように、それぞれの自治体で、自分たちの地域ですから、いろいろそういった意味での情報はあるかもしれないけれども、さっき御答弁いただいたように、もっと幅広い情報を提供してもらうことが望まれるわけですよね。だから、その情報を収集して、それを整理して、調査を命ずるということになっているわけで、データを持っているはずだから、子供たちが遊ぶような公園や保育園、こういったところも現行の中できちんと行われるんだと。根拠も何も担保されていない、私はそんなふうに思うんですね。

 ですから、また話が戻るのですが、だからこそ、情報収集だとか整理だとか、そういったことを努力義務ではなくてきちんとした形で行ってもらうことが必要なのではないですか、そんなふうに話しているわけです。

 では、データを持っているはずですから、ちゃんと行われているはずですから、そこに公園ができました、保育園ができました、土壌汚染がありました、子供たちに被害がありました。これはだれが責任をとるのですか。

伊藤政府参考人 もちろん、現に公害によって被害が生ずるということがありましたら、第一義的には公害の原因者がその責任をとるべき筋合いだと思います。

 ただし、もちろん、せっかくこういった土壌汚染対策法で既にそういった条項も規定されているわけで、都道府県におきましても、地方の環境を守る自治事務という立場からも、この法律を活用して、あるいはこの法律に基づいて、きちっとした対応がとられなければならないというふうに思います。

 そのために、私どもとしましても、今回の法案が成立しまして、地方公共団体による情報の収集、提供についての努力義務の規定もできる、こういうことになりましたら、先生の御意向の趣旨を体してどういったことをやるべきかというふうな、例えばひな形を示すとか、そういったことをぜひやりたいというふうに考えております。

田名部委員 質問を始めてから何度も何度も同じことを繰り返し話してきたのでもう言いませんけれども、基本中の基本のところをしっかり押さえていただきたいんですよ、そこからスタートするわけですから。それがすべてなんですよ。

 だから、今後、さっき言ったような調査を含めて、また国交省さんのデータマップというものも含めて、環境省さんのお立場でしっかりとしたリーダーシップを持って、健康を守るんだという立場で、今後また検討しなければいけないことはしっかり検討して、基礎づくりというか、そういったことを行っていただきたいというふうに思います。

 今、一定規模の三千平米がいいのかどうかという話をしましたが、有害物質の基準、こういったことは、例えば、子供たちは大人と違って体重も軽い。さっき、前の高木先生からもありましたけれども、土と近いというか、よく遊び、よく転び、こういった中で、本当にこの基準というのは大丈夫なのかどうか。その辺、教えていただけますか。

伊藤政府参考人 土壌汚染対策法の指定基準につきましては、その基準値そのものにつきましては、長期間の有害物質の摂取を想定いたしまして、健康被害の防止の観点から定めているものでございます。

 直接摂取のリスクにつきましては、毎日の微量の摂取に伴う慢性影響は当然見ておりますけれども、例えば、年間一、二回程度見られると言われている幼児の非意図的な土壌の多量の摂食、これは一回十グラム程度と推定しておりますけれども、それに伴う急性影響につきましても問題がない、こういったレベルで基準を設定しているわけでございます。

 また、鉛につきましては、幼児期の毒性をも考慮して地下水の飲用リスクを評価し、必要に応じて子供について配慮した基準値をつくっているということでございます。

 今後とも、調査研究などの科学的な知見収集をさらにどんどん進めてまいりたいと思います。その上で、小児等の特徴をも考慮に入れた適切な健康影響の評価を実施しまして、基準の設定に努めてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。

田名部委員 始まってからようやく何か、ああ、そうですかと納得できる御答弁をいただきましたけれども、やはりこういった基本のところですから。

 ただ、今おっしゃったように、それで十分ということではなくて、日々いろいろな研究が進んでいくわけですから、そういった中において、本当に小さい子供たちにとっても安全なのかどうか、これを確保するための情報発信また情報収集というものを研究も含めて行っていただきたい、そんなふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、土壌汚染、これは人への健康被害というだけではなくて、生態系への影響ということも考えられるのじゃないかなというふうに思います。

 昨年、生物多様性基本法も成立をいたしましたし、今後、環境省としても、人の健康とあわせて生態系をどう守っていくかという観点からも取り組むべき課題なのではないかな、そんなふうに思うんです。

 さっき、国土交通省さんがデータベースをつくるというお話をしましたが、その中には、実は、自然由来の土壌汚染のデータベースも構築をしていくということも含まれています。自然由来の土壌汚染のデータベースと生態系の問題はちょっとまた違うのかもしれませんけれども、しかし、そういったことを含めて、生態系を基本法に基づいてどうやって守っていくのか、その取り組みをどうされるのか、お答えいただけますでしょうか。

伊藤政府参考人 先生御指摘のとおり、私ども、今回の法律についてもそうですけれども、土壌汚染から人の健康を守るといった観点、これをまず第一に取り組まなければいけないということで取り組んでいるところでございますけれども、土壌汚染の生態系への影響ということにつきましても、生物多様性についての基本法も制定していただきました。そういったことから、非常に重要な課題に今後なっていくというふうに考えております。

 このため、私どもとしましては、まずは知見の収集をしっかりして、土壌汚染に限りませんけれども、生物多様性の確保といった観点での今後の政策展開を図っていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。

田名部委員 さっきから伺っていると、その情報の収集がきちんと行われるのかなと。それがなければそこから前に進まないんだろうというふうに思うんですが、それは、環境省さんとして、さっきの国土交通省さんのデータベースマップと同じように、ここは何かこれまでも、こういった一緒になってデータマップをつくっていこうと、自然由来のもの、生態系にかかわること、またさっきの全体的な土地利用に関するもの、土地の売買も含まれてくるんだと思いますが、そういったことがもう既に連携して行われているのか、それとも、今後そうした連携を図って行っていくということなんでしょうか。

伊藤政府参考人 これまでも研究会に参加したりしていろいろ連携を図ってきたつもりではありますが、恐らく、先生の御期待している水準からすればまだまだこれからだというふうに思います。

 今後、関係省庁連携していくというのは、環境省だけでできることでもございませんし、あるいは国土交通省だけでできる問題ではない。特に生態系の保全という大きな問題になりますと各省の連携が必要だというふうに考えますので、ぜひ連携を強化していきたいというふうに考えている次第でございます。

田名部委員 ありがとうございます。

 全く立場が違うんだと思うんですね。国土交通省さんの考える土壌汚染に対する対策という視点と、環境省さんがやるべき視点というものが全く違うと思うので、ぜひ、環境省さんならではの、生態系も含めたそういった視点を持って今後の連携を深めていただきたいなと、本当に心からそれを願いますので、大臣にもそのことはお願いをしておきたいと思います。

 あわせて、今までは、今後どういう取り組みをするのかという基本的なことをお伺いしましたけれども、土壌汚染が起こる前に、どうやって土壌汚染が発生しないように未然に防ぐのか、そういったことも大事だと思うんですが、このことについて何らかの取り組みはお考えなのでしょうか。

伊藤政府参考人 土壌汚染、後で対策するより未然に防止した方が好ましいというのは当然でございます。

 土壌汚染の未然防止対策につきましては、水質汚濁防止法あるいは廃棄物処理法等において施策を講じております。とりわけ水質汚濁防止法につきましては、平成元年から、有害物質使用特定施設を有している工場や事業場から有害物質を含む水を地下に浸透させてはいけない、そういった規制措置を設けました。その結果、その規制を入れて以降、地下水汚染も相当改善したということでございまして、土壌汚染の発生も相当それによって抑制効果があったのかなというふうに思っております。

 そういうことで、今は水質汚濁防止法等で措置をしているところでございますが、さらに今、いろいろな未然防止対策の事例についての取りまとめもやっております。そういった調査も踏まえた上で、今後新たに、どうやっていったらいいのかといったマニュアルづくりみたいなことも検討していきたい。いずれにしても、未然防止についてもきちっとやっていきたいというふうに考えている次第でございます。

田名部委員 ぜひきちっとやっていただきたいと思います。

 もう時間になりましたけれども、最後に大臣、これまでいろいろ指摘をさせていただきました。調査の公平性、また自主的調査の信頼性をどう確保していくのか、また、自治体がどうやって情報を収集してそれをきちんと提供していけるのか、そういったことをいろいろ伺ってまいりました。

 御答弁を聞いていて、まだ不十分なのかなというような思いもいたしております。こういった人の健康を守るという法案がせっかく改正されようとしているわけですので、大臣、これからの意気込みも含めて、今私が指摘したようなことに今後どう取り組んでいかれるおつもりなのか、最後に御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。

斉藤国務大臣 水、大気、土壌というのは環境保全の三大要素でございまして、土壌汚染についてしっかり取り組んでいきたいと思います。

 そして、きょう五十分の質問時間の中で一貫して底を流れていた問題意識、検査なり制度の正確性をどう担保するかという問題につきましては、情報収集のあり方、検査制度のあり方、第三者性の担保のとり方等、問題があるということはよく認識をしておりますので、しっかり頑張っていきたいと思っております。

田名部委員 御認識をいただけてよかったです。本当に基本中の基本ですから、そこからすべてがスタートしますので、ぜひ今後ともしっかりと取り組みをいただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

水野委員長 次に、近藤三津枝君。

近藤(三)委員 自由民主党の近藤三津枝です。

 土壌汚染対策法の一部改正について、質問の機会をお与えいただきありがとうございます。

 本日は、法改正の趣旨、その内容、そして民主党の御提案について質問させていただくとともに、閣法の法施行後においてこの法律の実効性を上げていくために、私の提案も含め御質問申し上げます。

 まず最初に、現行法で定められている土壌汚染対策法の見直しの期限が二〇一三年となっていますが、今回かなり前倒しして法改正に踏み切ったねらい、そして法改正の趣旨について、斉藤環境大臣からお伺いしたいと思います。

斉藤国務大臣 前倒しの理由でございます。

 平成十五年二月の現行法の施行から六年が経過をいたしました。三つございまして、一つは、法に基づかない調査による土壌汚染の発見の増加により、発見された土壌汚染地の適正管理への不安が高まっていること、それから二番目に、環境リスクの低減の観点からも問題のある掘削除去が増加してきておりまして、汚染区域ごとの特性に応じた合理的な対策を推進する必要があること、三番目に、掘削除去によりまして搬出された汚染土壌が不適正に処理されている事案が現実に生じているといった問題への対応が必要になってきたことから、今回六年目で改正法案を提出させていただいたところでございます。

 改正法案の中身につきましては、先ほど高木委員にお答えさせていただいたところでございますが、三つの柱、土壌汚染を把握する機会の拡大、それから規制対象区域の分類によって必要な対策の内容を明確化した、そして搬出される汚染土壌の適正処理の確保のための規制、管理票等を設けたことという三つの柱でございます。

近藤(三)委員 斉藤大臣から、現行法の施行後の三つの土壌汚染対策の変化と、そしてそれに対して三本柱で規制強化する必要性について御説明をいただきました。

 ただいま斉藤大臣から御答弁いただきましたように、現行の法律に基づかない自主的な調査によって土壌汚染の発見が増加しております。

 平成二十年十二月十九日に、中央環境審議会から、今後の土壌汚染対策のあり方について答申がなされています。その中で、社団法人土壌環境センターの会員企業に対し行ったアンケート調査結果が示されています。それによりますと、平成十九年度の土壌調査七千三十九件のうち、土壌汚染が発見されたものはおよそ半数の三千二百六件にも上っております。このうち、現行法に基づくものが二%、条例、要綱に基づくものが一〇%、自主的な調査によるものが実に八八%を占めているという点でございます。

 すなわち、現行法令の枠組み以外の調査で我が国の土壌汚染の実態が判明され、それぞれの対策が講じられているということでございます。私も、こうした点を改善することが今回の法律改正の大きな柱の一つと考えております。

 改正案の第四条には、土地の形質の変更を行う予定で、土地の面積が一定規模以上であれば、都道府県知事に届け出を行わなくてはならないとあります。中央環境審議会の答申では、この一定規模以上の面積を三千平方メートル以上にすべきとあります。法律の成立後、省令で、この規模要件をどのような考え方でどのように定める考えなのか、お答えいただきたいと思います。

 また、先ほど申し上げました平成十九年度に土壌環境センターが会員企業に行ったアンケート結果の土壌調査件数七千三十九件のうち、三千平方メートル以上の調査案件の占めるおおよその割合をお示しください。さらに、この法律で言う土地の形質の変更とは土地所有者などが行うどのような行為を指すのか、具体的に御答弁ください。

伊藤政府参考人 一定規模以上の面積についてどういうふうに定めるかということでございます。

 中央環境審議会の答申では、現在、全国の六つの自治体が三千平方メートル以上の形質変更時の調査義務に関する規定を設けていることや、都市計画法の開発許可の関係のデータによりますと、三千平米以上の開発行為を対象とすることにより、面積ベースで開発行為が行われる土地の約七〇%がカバーできる、こういったことから、三千平米以上とすることを予定しているところでございます。いずれにしても、再度、中央環境審議会の議論を経て決めることになると思いますけれども、その方向性については既に中央環境審議会で示されているということでございます。

 それから、御指摘の土壌環境センターのアンケート調査でございますけれども、これを確認しましたところ、このアンケート調査におきましては、面積についてはアンケートしていないということでございました。このため、残念ながらそのデータについては把握をしていないということでございます。

 それから、土地の形質の変更とはどういうことかということでございます。土地の形状または性質の変更ということでございますが、例えば、宅地の造成でありますとかあるいは土地の掘削、土壌の採取などがこれに当たるということでございます。

近藤(三)委員 ただいまの御答弁によりまして、土壌調査が行われている件数のうち、現行法の捕捉率、すなわちカバー率がおよそ二%であったものが、今回の法の改正によりまして、都市計画に基づく開発行為について見ますと、七割となることがわかったということでございます。

 ただいまの私の質問に対しまして、データがとらえられていないということでございましたけれども、土壌調査結果の内容、そして具体的な土壌汚染対策の実態をよく把握した上で、国民に納得していただける有効な対策をこれから講じていただくことをお願い申し上げたいと思います。

 第四条について、もう一点お伺いします。

 都道府県知事に土地の形質の変更を行う届け出があった場合、土壌汚染のおそれのあるときは、土地所有者などに調査とその調査結果の報告を命じることができるとありますが、どのような場合に調査と報告を求めるのか、今後環境省令で定められる判断基準を具体的にお答えください。

伊藤政府参考人 法律の第四条で言いますところの汚染のおそれの判断基準についてでございます。

 これにつきましては、例えば、有害物質使用特定施設が過去にあった工場または事業場の敷地であること、あるいは有害物質が土壌に漏えいしたということがかつてあったということ、さらには法に基づかない調査によりまして土壌が特定有害物質によって汚染されているということが把握されている、こういったことを今考えているところでございます。

 いずれにしましても、この改正法が成立しましたら、直ちに、中央環境審議会においてこういった考え方をもとに十分議論していただきまして、決定をしたいというふうに考えている次第でございます。

近藤(三)委員 調査の必要性の基準につきましては、土地取引や開発行為などにおきまして非常に重要なファクターとなりますので、十分に国民などへの周知を図っていただきたいと思っております。

 今回の法律改正では、土壌汚染による規制対象区域を現行法の指定区域一本から、健康被害の生ずるおそれがある措置実施区域と、健康被害の生ずるおそれがない形質変更届出区域の二つに分類されています。この二つの指定区分の具体的な判断基準をお示しください。

 また、規制対象区域に指定されますと、とりわけ周辺住民には不安が生じる可能性があります。また、指定によりましていわゆる風評被害の発生も懸念されます。これを防ぎますためには、今回の法改正の趣旨、そして目的などについて国民の理解を得るために、周知徹底に十分な準備期間が必要と考えております。法施行までに、今後、このような点につきまして、都道府県などと連携してどのような対応をしていこうとお考えなのか、お聞かせください。

伊藤政府参考人 まず、規制対象区域を措置実施区域と形質変更区域に分類をするということでございますが、その基準でございます。

 まず、土壌汚染が認められる区域のうち、人の立ち入りがあって汚染土壌を直接摂取する可能性がある土地、こういう土地と、あるいは、土壌汚染を原因として地下水汚染が発生し、その地下水が飲用に供される可能性がある土地、この二つの土地につきましては、土壌汚染による健康被害が生ずるおそれがあるため、措置実施区域というふうに指定するということでございます。この措置実施区域に指定されますれば、都道府県知事がどういった措置が必要かといったことを指示する、こういうふうな分類になるわけでございます。

 また、汚染はありましても今申し上げました措置実施区域に当たらない区域につきましては、形質変更届出区域ということで、これは当面、直ちに健康被害が生ずるおそれがない、ただし、土地の形状を変更する際には注意していただかなければいけないということで、形質変更届出区域というふうに分類をする。こういう考え方で二つの地域を分けたいというふうに考えております。

 それから、改正法が成立いたしますれば、国民に対する十分な周知を図るということは非常に重要な課題だと思います。

 私どもとしましても、それについての十分な時間的余裕を与えていただきたいというふうにも考えている次第でございますが、具体的には、関係政令や省令を制定する、こういった場合にも中央環境審議会で御議論をいただきますが、その際にも、いろいろなパブリックコメントを通じ、また都道府県や関係団体の意見もいろいろ聞きながらやりたいと思います。

 そして、そういったものを制定した後には、国民あるいは都道府県に対して、その運用の考え方、あるいは改正省令の内容はもちろんでございますけれども、これを十分に理解していただくというために、ぜひとも説明会というものも当然行いたいと思いますし、自治体や事業者用のパンフレットを作成する、こういったこと、あらゆる手段を通じて都道府県、事業者それから国民に対する周知徹底を十分に図りたいというふうに考えている次第でございます。

近藤(三)委員 ただいま御答弁いただきましたように、法の制定から法の施行まで十分な時間をとっていただきまして、国民の理解を得ていただくようお願いしたいと存じます。

 次に、民主党から提案されています参法に関してお聞きします。

 参法では、公園、学校、市場などの特定公共施設等を設置する場合には土壌汚染の調査を義務づけておられます。その趣旨は、調査により土壌汚染が判明した場所において、施設の設置を防止したり、必要な対策を講じた上で施設を設置することによって、特定公共施設等の利用者の安全、食の安全などを守ろうとしていると考えます。

 参法のように特定公共施設等の調査義務を法律で位置づけた場合でも、調査結果に基づく個別の施設の土壌汚染対策につきましては、その利用形態などに応じ、公園、学校、卸売市場などのそれぞれの設置基準、開設基準の見直しを行うことが合理的であると考えますが、この点につきまして、参法提案者の御見解をお示しください。

大石(正)参議院議員 近藤三津枝議員にお答えをさせていただきます。

 土壌汚染はまさしく環境汚染の問題でありまして、土壌汚染について適切な対策を講じ、土壌汚染による人の健康への被害を防止することは、環境省こそが責任を持って行うべきだと考えております。

 したがって、お尋ねのように、公共の施設の設置基準、開設基準によってそれぞれの設備の所管官庁がばらばらに、かつ、省令や通達レベルでの対応をするということではなくて、土壌汚染対策法を改正することにより、土壌汚染調査と土壌汚染があった場合の対策が環境省の責任のもとで法律にのっとってしっかりと行われること、この方が適当ではないかと思います。

近藤(三)委員 御見解をお示しいただき、ありがとうございました。

 今回の閣法の法律改正の効果を上げるためにも、参法で示されております公園、学校、卸売市場など、児童の健康そして食の安全にかかわる土地や施設につきましては、今回の閣法による法律改正にあわせ、それぞれの土地や施設の利用形態ごとに設置基準の見直しをすることが望ましいと考えております。

 この点につきまして、施設をそれぞれ所管する国土交通省、文部科学省、そして農林水産省の御見解を簡潔にお答えください。

松田政府参考人 今回の土壌汚染対策法の改正によりまして対策が強化されることになりますけれども、都市公園の敷地に関する土壌汚染対策につきましても、従来から引き続き、この法律が適用されることとなります。

 都市公園の敷地に関する土壌汚染対策につきましては、基本的には土壌汚染対策法の体系の中で対応していくことが適当というふうに考えておりますが、必要に応じまして、都市公園に係る技術的な基準の見直しの有無も含めて今後検討してまいりたいというふうに考えております。

岡政府参考人 お答えいたします。

 学校を設置しようとする者は、学校教育法によりまして、学校の種類に応じ、文部科学大臣の定める設置基準に従わなければならないということになっております。

 例えば、小学校設置基準においては、学校教育法その他の法令の規定によるとするとともに、施設及び設備は、指導上、保健衛生上、安全上及び管理上適切なものでなければならないとされているところでございます。

 また、学校施設の計画及び設計上の留意事項を示しました学校施設整備指針においては、校地環境の留意事項としまして、危険な埋蔵物や汚染のない土壌であることが重要であるなどとしているところでございます。

 文部科学省といたしましては、今回の法改正を踏まえ、学校設置基準や学校施設整備指針等の見直しが必要となる場合は、専門家の協力を得つつ、現在の規定で十分かどうか検討してまいりたいと考えているところでございます。

平尾政府参考人 卸売市場の問題でございます。

 卸売市場法では、卸売市場を開設する場合には、その開設しようとする方が業務規程を定めることになっております。現行法から、その業務規程の内容が法令に違反していないなどの一定の基準に適合しないと開設をしてはならないというふうなことに、今までしております。

 そういう意味では、土壌汚染対策に係る法令が遵守されていない場合には、当然、卸売市場が開設できないということになっておりますので、今後とも、こういうふうな枠組みを適正に運営していこうと思っております。

 以上でございます。

近藤(三)委員 各省の見解をお伺いしましたが、学校、公園、卸売市場の土壌汚染対策につきまして政策の実効性を上げるためには、今後、斉藤環境大臣は、施設を所管する国土交通大臣、文部科学大臣、そして農林水産大臣などとどのように連携していこうとお考えなのか、御答弁をお願い申し上げます。

斉藤国務大臣 土壌汚染のおそれがある土地についての調査については、当該土地がどのような用途に利用することとなっても土壌汚染の状況を調査することができるようにするため、その用途にかかわらず一律に、土地の形質の変更時に調査を行うこととしたものでございます。

 土壌汚染対策法の趣旨を踏まえ、土壌汚染による人の健康に係る被害の防止を図るため、環境省、環境大臣が政府の先頭に立って、農水大臣、国交大臣、そして文科大臣、それぞれの施設を所管する関係大臣ともよく連携してまいる所存でございます。

近藤(三)委員 ありがとうございます。

 斉藤環境大臣には、児童の健康、そして食の安全などをお守りいただくため、関係大臣との連携をよろしくお願い申し上げます。

 次に、今回の法律改正の効果を上げるために、私の提案を含め、政策連携の観点から質問をさせていただきます。少し質問の順番を変えさせていただきます。

 管理票のことについて取り上げさせていただきます。

 土壌汚染対策として実施されている掘削除去の場合ですが、汚染土壌がきちんと管理されて処分されていなければ、ほかの地域での新たな土壌汚染を招きかねません。汚染土壌が適正に運搬、処理されたことを確認するために、今回の法改正では管理票、いわゆるマニフェストによる適正処理のシステムがつくり上げられました。この点を大変評価しております。

 文書による管理票の管理も大変重要だと考えておりますが、一方で、私は、GPSなどを活用し、さらに精度を高く追跡調査できるシステムを構築すべきではないかと考えております。

 GPSなどを活用したトレーサビリティーを高める制度の導入について、政府の見解をお聞かせください。

伊藤政府参考人 御指摘のとおり、汚染土壌の運搬、処理についてきちっとしていくということは、非常に重要な課題になっていると思います。そのため、先生御指摘のとおり今回、管理票という制度を導入いたしました。まずは、この制度を円滑に実施して、きちっとした汚染土壌の管理を進めていきたいというふうに考えております。

 一方、先生御指摘のとおり、GPSにつきましては、一部の先進的な自治体におきまして、廃棄物の世界で導入されているというふうなことも聞いております。私どもは、そういった事例についてもよく勉強して、必要に応じてそういったことについても検討をしていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。

近藤(三)委員 このGPSを活用しましたトレーサビリティーが我が国で定着できますと、これからアジアなど各国での利用も期待できると思います。日本のすぐれた技術を活用して世界貢献することができる、そんな観点からも、関係機関との連携によりまして、GPSシステムの構築をぜひぜひお願い申し上げたいと思います。

 さて、今回の法律改正によりまして、土壌汚染に対する適切な対応が全国でさらに展開されることは、国民の健康、そして安全な生活環境の確保の観点で必要なことであります。一方で、資力の乏しい中小事業者が土壌汚染対策を講じやすくするためには、政府による土壌汚染に対する調査、そして対策に対する具体的な支援が必要ではないかと考えております。

 この点について、政府の対応をお聞かせください。

西本政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業事業者等の土壌汚染対策を促進するために、土壌汚染等を浄化するための施設を民間事業者が設置する場合に、当該施設の固定資産税の課税標準を三分の一に軽減するような措置を講じておるところでございます。

 また、土壌汚染に係る有害物質の中で、指定基準超過等の件数が特に多い物質として鉛がございます。経済産業省では、平成十八年度及び十九年度に民間事業者に助成を行いまして、鉛の土壌中からの溶出量を簡易かつ安価に分析できる技術を開発したところでございます。

 今後とも、中小事業者が土壌汚染対策を講じやすくするために、具体的なニーズの把握に努めまして、必要な施策を検討してまいりたいと思います。

近藤(三)委員 中小事業者が行います土壌汚染対策の実態を把握していただきまして、有効な政策がさらに講じられますよう、お願い申し上げます。

 最後に、土壌汚染対策としての掘削除去について申し上げます。

 中央環境審議会の答申などによりますと、土壌汚染対策によって掘削除去される土壌の量は、年間およそ三百万トンと見込まれています。そして、その最終的な搬出先を見ますと、現在でも、三百万トンのうちの二百二十一万トンがセメント工場で受け入れられています。

 汚染土壌を適正に処理する技術開発は、日本のみならずアジアを初めとした世界各国が共通に抱える課題だと考えております。この点から、セメント産業などにおける技術開発や処理に必要な新たな設備投資に対し、政府による助成措置を講じていくことも必要だと考えております。

 このように、土壌汚染問題を解決するためには、先ほど取り上げました個別法との連携、GPS技術の活用、汚染土壌を資源として再利用できるサイクルを構築するためのセメント産業などへの支援など、総合的な対策を講じていくことが必要だと考えております。

 一方で、今回の法改正について検討が開始された時点とは、その後のアメリカ発の金融危機に端を発し、経済情勢は大きく変化をしております。このような経済情勢の変化によりまして、土壌汚染対策も何らかの影響を受けざるを得ないと考えます。

 以上、土壌汚染対策を円滑に進めるためには、行政間、産業間の連携を総合的に図りつつ、経済状況の変化にも柔軟に対応し、推進していく必要があります。

 最後に、このような状況を念頭に置いていただきまして、斉藤環境大臣から総括的な取り組み方針をお示しください。

斉藤国務大臣 近藤委員、最初におっしゃいました、この土壌汚染対策そのものが経済の活性化に結びつく、ある意味ではグリーン・ニューディール的な考え方だと思います。そういう方向になるように、新たな産業を生み出していく、このことによって国際競争力のある新たな技術が生み出されていく、そういう方向に頑張らなくてはいけないと思っております。

 そして後段の部分、こういう非常に厳しい経済状況下だけれども、やるべきことはやらなきゃいけないということにつきましては、こういう経済状況ですけれども、人の健康を保護していくために土壌汚染対策を着実に進めていくことが必要であると思っております。建築基準法のときに、施行はしたけれども、それがかえって景気の足を引っ張ったというようなこともございました。そういうことがないように。逆に、このことによって土地の取引が円滑化されて、経済の活性化に結びつくのではないか、そういう観点も必要かと思っております。

 グリーン・ニューディールの考え方、土地の取引の円滑化、そして何よりも国民の健康ということを根底に置いて頑張っていきたいと思います。

近藤(三)委員 斉藤大臣、土壌汚染対策の改正に対する並々ならぬお気持ちを表明していただき、本当にありがとうございます。

 法律改正により土壌汚染対策が一層適正に推進されますことを期待しております。

 これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

水野委員長 次に、坂井学君。

坂井委員 自民党の坂井学でございます。

 質問をさせていただきます。

 まず、その前に、ちょっと私個人の感想がございまして、先ほど民主党さんの提出者の方から、環境問題に関するコストは幾らかけてもかけ過ぎではない、そんなことを考えてはいけないという趣旨の発言があったと思います。理想としては確かにそのとおりかと思いますが、私たちは実際に法を施行しまして、実際に社会にそれが影響していくということでありますし、また、その中で限られた予算というものもございます。本当に予算、コストを考えなくていいということであれば、すべての土地、小さいものから大きなものまですべての開発に報告義務や調査義務を義務づければいいわけでありますが、そうもいきませんので、実効性とそれから効率性のはざまの中で最もいい法のあり方というものに、審議していく中でぜひ到達していきたいな、このように思っております。

 そんな私の感想を申し上げさせていただきまして、スタートさせていただきますが、今までの議論の中でかなりダブった話もあるかと思いますが、そのときには御勘弁をいただきたいと思いますけれども、この土壌汚染対策法の現行の問題点といたしまして、また課題、課題だからこそ今度の新しい政府案の中では論点となる三つの点が先ほどお話がありました。

 一つは、申すまでもありませんが、法律でカバーしているものが何と二%しかないということでありまして、そのカバーする部分を少しでも広げていきたい、こういうことかと思います。二つ目は、適切な対応よりも、どうも掘削処理に傾き過ぎて、いわばきっちりとした処理ができていないのではないか、またやり過ぎではないか、こんな話もあったかと思います。三つ目といたしましては、掘削をして出てきた汚染された土壌を、本来であればしっかりと処理しなければいけないところでありますが、処理し切れずに、またせずに汚染が拡散してしまう、こういう現状、現実もあって、それの対策ということで、三つ大きな論点があったかと思います。

 その中で、民主党さんの提出をされております案は、この中の一番目で、二%しかカバーできないものを広げていくという意味では大変知恵を出されている案だと思いますし、これは先週の委員会でもいろいろな有識者の方々からお話があったかと思いますが、評価をされていたかと思います。しかし、実際にこれを法律として施行していったときにどうなっていくのかなと。私自身、ちょっと条文を読ませていただいておりましてわからない点がありまして、また御説明いただきたいなと思っております。

 それは、「特定公共施設等」ということで、この文章には「公園等の公共施設若しくは学校、卸売市場」、具体的に言えば公園それから学校、卸売市場ということが出てきているわけでありますが、その後に「これらに準ずる施設であって、土壌の特定有害物質による汚染により人の健康に係る被害が生ずることを防止するため特に配慮が必要なものとして政令で定めるものをいう。」ということでありますが、この「政令で定めるもの」というのは何を想定しているのかなと。法律の問題ではありますが、政令でちゃんと定めることができなければ法律の意味がありませんので、今は政令で何を定めることを想定しているのか。

 どういうことかというと、公園とか学校というレベルで、例えば先ほど出た保育園だとか幼稚園だとかそういう施設名をここで政令で定めると言っているのか、それとも、公園は公園でも、例えば都市公園なのか自然公園なのか、こういう公園の種類をこの政令で定めていくのか、これが議論の中で私ちょっとわからなくなってしまったので、御説明いただければと思います。

鈴木(寛)参議院議員 御質問ありがとうございます。

 もう先生に条文を読んでいただいていますのでよく御承知だと思いますが、私どもの案は、もともと平成十四年に土壌汚染状況調査というものをきちっと定めていただいて、これは本当に私は見識だと思いますが、使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場または事業場の敷地であった土地の調査をやりましょうということを決めていただけた。これは非常にすばらしいことであります。

 しかしながら、その附則の三条で、施行前に使用が廃止されたものについてはこの調査から外しますよということになっているわけですね。そこは、私どもが平成十九年の十二月に出した案はそこの附則を抜いてしまったんだけれども、このもともとの三条というのは非常にすばらしいものであります。しかし、おっしゃるように、これをすべてこの世に存在する工場だとか敷地にかけたならばコストが大変になってしまいますから、全部に三条を適用しようというのは明らかに社会的コストが高過ぎる、それはおっしゃるとおりです。

 したがいまして、さかのぼって調査をする対象といたしましては、特段、人の健康に係る被害を生ずることに特に配慮を要するもの、これに限っては特定公共施設というものにして、これについてはさかのぼって土壌汚染状況調査をしようではないかというのが、我々が平成十九年に出させていただいた法律の考え方でございます。

 そうした参議院での、私も答弁に立たせていただきましたが議論を踏まえて、今回、環境大臣のイニシアチブで、要するに予定されていた改正時期よりもさかのぼって、前倒しをして今回の法改正が提起されたということは、我々も参議院で議論をしたことを踏まえて大変評価をさせていただいております。

 そこで、御質問の点でございますが、まさにそういう状況の中で、特定公共施設を要するにさかのぼって調査を、調査ですから別に措置まで、膨大なコストがかかるわけじゃなくて、まず調査をする対象は特に人の健康に配慮が必要なもの。そこで、学校と公園と卸売市場は、これはまさに人の健康に直接影響があるだろうと。それ以外にも、人の健康に係る被害を生ずることを防止するために特に配慮が必要なものとしては、例えば保育所だとか、あるいは子供が遊ぶことが想定されている遊園地だとか、こういったことを追加的に政令で定めていこうということでございます。

 それで、今回政府から提出をされましたことも、土地形質の変更をしたものについては調査命令を課すということで、このこと自体は我々の参議院の議論を踏まえた方向には乗っかっていると思いますが、議論を伺っていますと、三千平米以上、それから、土地の形質変更という中から軽易な行為を外すということになっていますから、そうなりますと三千平米以下の人の健康に特に配慮が必要なものが抜けてしまいますから、その部分はやはり調査ができるスキームを残しておいた方がいいのではないかというふうに思っています。

 二%だったものが七〇%になることは大変すばらしいことだと我々評価しています。しかし、残る三〇%について、全部やるということだと社会コストが大変でございますが、その中でやはり人の健康に特に配慮が必要なものは、七〇%よりさらに、残りの三〇パーの中で抜き出して、しかもそれについてまず調査をしましょうと。

 要するに、この土対法というのは、まず情報をきちっと把握して、それを世の中と共有して、その後の措置はいろいろなことを考えられるわけですが、そこまでのコストは、人の命、人の健康との比較考量においてはやはり人の健康を重視すべきではないかということを先ほど大石議員も申し上げたわけでありますし、我々発議者もそのようなことを考えているということで御理解をいただきたいと思います。

坂井委員 例えば、公園であれば大小さまざまな公園があるわけでありますが、大きくても小さくてもそれはすべて、要は全部義務化するということでいいんでしょうか。

田中(康)参議院議員 参議院で民主党と統一会派を組ませていただいております新党日本の田中康夫でございます。

 きょうは、坂井学議員の御質問にお答えするというのは、私は大変光栄なことでございまして、坂井議員は皆様御存じのように汚水処理の会社でまさに土とまみれられた方で、私も改めてホームページを拝見させていただいたら、二〇〇七年十二月二十一日のホームページに土壌は私のすべてのスタート地点である、このようにお書きでいらっしゃいまして、大変身が引き締まる思いでございます。

 この中で、先ほど公共という言葉がございました。まさに読んで字のごとしで、公共というのは、これは管領ではなく、すべての人々の共有財産でございます。そして、公園というのは、これは面積の多寡ではなく、やはり公園というのはなぜ公という字がついているかといえば、これは、管ではなく、だれもがよい意味で自由に出入りできる。無論そこで人に迷惑をかけるようなことをしてはいけない。とするならば、だれもが出入りできる公園という場所こそは、そこに入られる方に迷惑をかけてはいけないという観点に立てば、三千平米というのは、これは九百坪以上の面積でございます。あるいは保育所や幼稚園というものも、親御さんも含めて未来を担う人々の公共的な場所でございます。

 こうした観点に立って、私どもは面積で仕切る、先ほど大臣官房審議官の伊藤さんも、必ずしも国がすべてのそうした土壌に関して把握されているわけではない、そして、恐らく自治体がなさっているであろう、しかし、自治体の中で具体的にその規則を設けているのが八つある自治体の中の六つが三千平米以上なのでこれを採用されたというような旨の御発言がございました。

 しかし、やはりコストと命、これは皆様も、例えばPAC3というもの、鴻池祥肇さんはこれは当たらないんじゃないかという大変に勇気ある御発言をなさいましたが、しかし、やはり私どもは生命と財産を皆様と一緒に守っていく。生きとし生けるもの、いつかは寿命がございますが。とするならば、やはりこうした土壌の問題、坂井さんも、まさに一センチ土壌ができるのに百年から四百年かかる、一センチできるのに人間一生分以上の時間がかかっていて、であるから生命が生きられる環境のために土壌はとても大事だということを、先ほどの私の原点というところでお書きでございます。

 私どもは、逆に、私どもの法案を坂井先生こそは全幅の御賛同をいただける、このように思って、きょうは教えを請う覚悟で立たせていただいております。よろしくお願い申し上げます。

坂井委員 先週の有識者の方々もそうですが、評価をしているところがあるのは私も思っております。ただ、そこでもう一つ質問をしたいのは、今回、土壌汚染対策法の目的というところをもう一回見ますと、土壌汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図って、最終的には国民の健康を保護するというのが大目標であります。

 そこで、ちょっと御質問をしたいのは、今回、公共施設それから公益的施設というように、公のもの、多くの人が使う公のものというところに用途を限定している、こういうことであります。

 しかし、例えば大型マンションなんかありますよね。マンションというのは私的な場所でありますけれども。しかし、そのマンションなんかを開発するときには、ここにはかかってこないんじゃないかな、こう思っているわけでありますが、そこに住む方々も国民でありますし、国民の健康を保護するということからいえば当然その対象にしていく必要はあるんじゃないかな、こう思っておりますので、その点の御見解をちょっとお聞きしたいなと思っております。

 ですから、そういった意味では、公共、公益というような形で狭めてしまうということは、逆に法の趣旨にそぐわないのではないか、上物に何が建つかによって変えるというのはそぐわないのではないか、こういうことに関してちょっと御答弁をお願いしたいと思います。

鈴木(寛)参議院議員 まず、マンションが入るかどうかということでございますが、マンションはプライベートなのかというアプリオリな議論をされていますけれども、例えば、いろいろな都市計画、あるいは建築基準の中でも、マンションの中にも公共スペースとか公共という概念はありますので、一律にその建物、施設の所有をもって公共、非公共を判断しているわけではございませんで、私どもの判断基準は、まさに先ほども申し上げましたけれども、人の健康に特に配慮が必要かどうかということが判断基準でございます。

 先ほども例示申し上げたことはこれは明らかに入るだろうと思いますが、その他のことについては、まさにこの環境委員会での御議論なども深めていただいて、必要があるものは随時追加をしていくという議論をしていただいたらいいと思います。

 ただ、そのときに、おっしゃるように人の命への、健康への影響と、そしてそれにかかる社会コスト、当然そのバランスというものは議論の上で考えていかなければいけません。ただ、私どもとしては、そのコストももちろん、要するに効率化できることについては効率化をすべきだと考えておりますが、しかし、やはり一番大事なことは人の健康だということは、この環境委員会のすべての委員の方々が共有をしていただいているのではないかというふうに思います。

 それから、後段の御質問の、上物によって変わってしまうのは法の趣旨に反するのではないか。もしも必要があれば田中発議者にも補足をしていただきたいと思いますが、これは現行法でも上物によって違いが出るような施行令あるいは施行規則というものがございます。

 例えば、土壌汚染対策法施行規則の第二十七条におきましては、除去の措置の対象土地区分としまして、「乳幼児の砂遊び若しくは土遊びに日常的に利用されている砂場若しくは園庭の敷地又は遊園地その他の遊戯設備により乳幼児に屋外において遊戯をさせる施設の用に供されている土地であって」云々ということがあるように、上物の用途によって現行の法律でも運用をきめ細かく対応していただいている。これはいいことだと思っておりますが、基本的に私どももその考え方を踏襲しているというふうに御理解をいただければと思います。

 補足があれば田中委員にしていただきたいと思います。

坂井委員 今御答弁をいただきましたけれども、私個人の感覚としては、今、第二十七条、除去の措置ということでたまたま具体的な一つの例を挙げていただきましたが、具体的な措置をどうするかというのは上物の状況その他によって、対象とするしない、またやり方が変わってくることはあり得ると思いますが、そもそも対象にするかしないかという時点で外してしまうというのは私はどうかなと思います。

 もう一つは、今おっしゃいました、例えばマンションの場合も、マンションの一部は公共施設であったりまた公共的な色彩が大変強いという部分があるとかないとかというように、いざ実際に政令でそういったものを具体個別に決めて、そしてそれを運用していくとなるとあいまいなところが大変に多くなってしまうのではないかなという不安が一つございます。

 一方で、政府案第四条では、土地そのものに着目をいたしまして、今回二%から七〇%までというような数字が出ておりますけれども、カバーするケースをふやしていこう、こういうことで設定されているかと思いますが、これは土地そのものに着目をしてやっていこう、こういうことでよろしいんでしょうか。

伊藤政府参考人 先生御指摘のとおり、政府案におきましては、土壌汚染状況調査の要否は、上物となる施設の種類によってではなくて、土地の土壌汚染の有無に応じて決められるべきものだ、こういうふうな考え方に立っております。

 なお、この考え方につきましては、中央環境審議会の答申でも明確に述べられているところでございます。

坂井委員 そこで、今までの議論を聞いてまいりましても、民主党案の提出者の方々から、もしくは先ほどの質問にもありましたが、三千平米以下のいわば小さな形質の変更が行われる土地について、簡単に言うと見逃しが出るのではないか、こういう不安が出ております。私自身も、率直に考えれば、小さな土地に関しては見逃しが出るんじゃないかなという心配もしているわけであります。その点、しっかりと、どう対策を考えているのかということをお話しいただければと思います。

伊藤政府参考人 一定規模未満の土地の形質変更の場合でございますけれども、まず、健康被害のおそれが本当にある、そういった場合には、現行法の第四条、これは改正後第五条になりますけれども、この規定に基づきまして都道府県知事は土地の所有者等に対し土壌汚染対策調査を命ずることができる、こういう規定がございます。したがいまして、この規定に基づきまして都道府県知事にしっかりと対応してもらうということが重要であり、そのことによって健康保護は図られるのではないかというふうに思っております。

 また、政府案第十四条におきまして、自主的な調査で汚染が明らかになった場合に規制対象区域に指定することを申請する仕組みもまた設けたところでございます。

 これらの措置により一定規模未満の土地についても人の健康保護の観点から必要な対応を行うことができる、こういうふうに確信しております。

坂井委員 二点、いいですか、もう一度質問させていただきたいんですが。

 現行法で対応できるとおっしゃいましたけれども、現行法そのものが今、全体のケースの二%しか当たっていない中で、現行法で対応できる部分、二%の中の幾つかはわかりませんが、今度小さなものになるわけですから、二%よりもっとパーセンテージは少なくなってしまうと思うんですね。そうすると、そこの部分で対応できる部分はかなり減ると思うんです、少ないと思うんですね、全体の中で見れば。

 そうすると、次は十四条の申請ができるという仕組みによって多くのところをカバーしていくしかないと思いますが、では、例えば民間の事業者等が自発的に申請をするようなことを実際に想定しているのか。民間の事業者もメリットがなければやらないわけでありますから、その辺のところを御説明いただければと思います。

伊藤政府参考人 現在の自主的調査の大部分は、土地取引において、土地の購入者の方に、土壌汚染があるかないか、あるいはあった場合はちゃんとした措置をとらないと売れない、こういうふうなことで相当部分の自主的調査が行われているわけでございます。

 現在は、自主的調査で汚染が見つかった場合に地方公共団体に相談しに行っても、これは法律に規定がないから、ある地方公共団体では相談を受け付けない、こういうふうな例もあるやに聞いております。

 そういうことで、今回、自主的な申請の仕組みを設けますれば、土地の売買におきまして、土壌汚染が見つかれば、法律に基づいて、法律の枠の中できちっとした対処をしてくださいということを、当然、買い手の方も求めるというふうに思われます。また、売り手の方にしても、ちゃんと法律に基づいて都道府県知事に申請し、必要な場合は都道府県知事から措置の内容についても指示を受ける。

 こういったことで法律の枠内で対応を行うということになれば、いろいろな関係者の理解が深まるにも大きく資する、こういうふうに考えておりますので、自主的な申請制度につきましては相当効果が上がるというふうに考えている次第でございます。

坂井委員 確認をさせていただきますが、今のは、要は、売り手、買い手の売買のときに、例えばちゃんと行政を通して、そしてこれはちゃんと浄化できましたというある種のお墨つきをもらえれば、それが売買をする方々にとっての安心料にもなるし、また第三者に対するアピールにもなるということで、この申請というのは十分利用がされるのではないか、こういうことでよろしいんでしょうか。

 ということで、一応政府の答弁はそうなんですが、こういう答弁に対して民主党の方々がどう思われているのかということと、これは質問していいのかどうかわからないんですが、さっき私、第二、第三と言いました。掘削手段と不適切処理で汚染が拡大をしていくわけですが、先ほど大臣が述べた政府案の柱の二番、三番に関して、民主党さんの発議者の方々でもし御意見があれば。この二つをお伺いしたいなと思っていますが、もしなければ結構でございます。

鈴木(寛)参議院議員 一点目の、現行法でできるんだということなのでございますが、先ほども私申し上げましたように、要するに、土壌汚染対策防止法というのは、附則の三条で、施行前に使用が廃止されたものは適用除外となっているわけですね。今回の改正案では、その附則の三条についてはいじっていないんです。だから、そこが私どもは問題だと。なので平成十九年にそれを出させていただいたわけでありますから、やはりそのことは必要だというふうに私どもは考えているということが今の答弁を聞いての感想でございまして、今のやりとりを聞いておりまして、坂井議員の非常な御炯眼に改めて感服をいたした次第でございます。

大石(正)参議院議員 坂井議員は環境の専門家でいらっしゃるということでありますが、最初のお話のときに、汚染に対してどんどんどんどん直していけば幾らでもお金がかかるということであります。私は、原則的には加害者が責任を持つべきであって、加害者が負担するのが原則だと思う。その原則の上に立って、環境を守っていくというのが一番大事なことだと思うんですね。

 それで、まず、環境がなぜこうなったかという環境省の発足は、御存じのように、要するに水俣病と四日市ぜんそくの、水と大気の問題が一番に出ました。ところが、土壌だけはなかなか法律的に、あのような急激な、劇的な死者や健康被害というものがなかなかなくてじわりじわりと来た部分がありまして、本当は大気と水と土壌の三つが一つになって初めて環境を守っていくという一つの土台ができる、その土台が、この前の新しい法律がようやくできて、三十年目でこの土壌汚染法が生まれたんです。

 ですから、私は、土壌汚染だけを取り上げてやるのではなくて全体の中でやることが必要であるし、環境省が言っている三千平米というのはたまたま各県が基準にしている平米をやっているだけということと、それからさらに、平米が狭くても土壌汚染が非常に密度の濃い場合には当然かぶさってくるわけでありますから、今やっている法律の中で、五年見直しというものをもっともっと短縮をして、順次必要に合わせて見直しをしていく。

 マンションにしてもそうでありますし、当面段階的に見直しをしていくだけであって、完全には直せないわけですから、そういう点で、これからも、この法律が成立をした後に、また必要な部分があったら、順次、短期間でもどんどんどんどん直すという姿勢をぜひ先生にも持っていただきたいなと率直に思いますし、環境省にもぜひそういう考えのもとに環境を守っていっていただきたいな、そのように思って答弁させていただきました。

坂井委員 どうもありがとうございました。

 きょうの質疑をさせていただきまして、私個人的には、やはり今回の土壌汚染対策法では第二番目、第三番目となります掘削除去の偏重というものを是正していくべきであろうと思いますし、また、適切な汚染土壌の処理ということも必要だと思います。

 また一方で、政府の案にございます土壌汚染の、発見されたものをいかに法律の枠内にうまく落とし込んでいくかということに関しましては、お互いのそれぞれの点もこれからまた考慮しながら、私はよりよいものをつくっていただきたいと思っております。

 最後に、せっかく田中先生から一言触れられましたので、私も土壌浄化法という汚水処理を実際にやってまいりました。最終的には、穴を掘ってその下にシートを敷いて、下には落ちないようにしながら、水が浸透しないようにしながら汚水を流して、浸潤といいますけれども、サイフォンの原理によって水が下から上に上がっていくんです。サイフォンの原理で上に上がっていく途中で土中の微生物によって有機物が浄化をされる、こういう方法で汚水処理をやってまいりました。

 三年間、一回もスーツを着ることなく、スコップを持って、一日六時間から穴を掘っていたわけでありますが、その中で感じたのは、やはり掘っていく中で土壌はどんどん変わってまいります。一メーターまでは大変に酸素がよく通りますので、空気が通りますので微生物もたくさんいて、汚水処理の効果もあるわけでありますが、一メーター二十とか一メーター四十とか、場所によってはどうしても深く掘らなければいけないところがありますが、そういうところでは明らかに処理能力が落ちるということも実感をいたしております。

 今回せっかく環境省さんがこの土壌汚染対策法を所管されているのであれば、土壌を単なる物として見るのではなくて、土壌は明らかに生命の総体、物すごく生命がいるわけでありまして、生命そのものであります。土壌はやはり生命だということを認識しながら、生態系と絡めた汚染土壌の対策法というものをこれから考えていただいて、ぜひ提言をいただければ。これでは環境省がやってもどこの役所がやっても全く一緒の中身だな、私はそのように思っておりますので、それを申し上げさせていただいて、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

水野委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時五十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時一分開議

水野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。吉田泉君。

吉田(泉)委員 民主党の吉田泉であります。

 私の方からも、土壌汚染対策法の改正案について質問をさせていただきます。

 最初に、汚染の未然防止というテーマで何問かお伺いしたいと思います。

 午前中、同僚の田名部議員もこの問題、最後の方に触れました。私も、未然防止というのが基本中の基本だと思って取り上げるところでございます。

 まず、全体像についてお伺いしたいと思います。

 平成十五年に法律が施行されて、もう五年以上たつわけですが、毎年毎年、汚染事例の判明件数がふえております。当初は三百件程度だったんですが、四百件、六百件、そして七百件と、毎年ふえ続けているところでございます。一体、潜在的に日本全体で土壌の汚染というのはどのぐらいあるのかと、非常に懸念されるところであります。

 環境省は、十九年の三月ですが、実際に土壌汚染が発生している可能性が高い土地、これは全国で十一万三千ヘクタールであると推定して公表いたしました。十一万ヘクタールというのは、例えばゴルフ場でいうと、ゴルフ場が千個ぐらい建つような大きい面積でございます。

 まず最初に、この推定はどのようになされたのか、お伺いします。

伊藤政府参考人 御指摘の土地面積十一万三千ヘクタールでございますが、これは、環境省の請負調査によりまして、平成十九年三月に土壌汚染をめぐるブラウンフィールド対策手法検討調査検討会が取りまとめた報告書に記述されているものでございます。

 この検討会は、土壌汚染の存在、あるいはその懸念から、本来その土地が有する潜在的な価値よりも著しく低い用途あるいは未利用となった土地、いわゆるブラウンフィールドについて幅広く実態を把握し、検討するために開催されたものでございます。

 本検討会で推計したわけですけれども、その推計方法は、まず、東京都の条例の土壌汚染調査実績に基づきまして、用途別に汚染発生確率を推計しております。その汚染発生確率に、国土交通省の土地基本調査を活用、整理して算出した我が国における用途地域別の面積を掛け合わせて、合計して、推定したものでございます。

吉田(泉)委員 用途別に確率を出して面積を掛けたということですが、例えば、工場、倉庫に用いられている土地についてはどのぐらいの汚染確率を使ったんでしょうか。

伊藤政府参考人 三五%であったと記憶しております。

吉田(泉)委員 汚染確率三五%、東京都の実績に基づいてこういう数字を使ったということであります。

 私は、最初にこの数字を聞いたときには、日本全国の工場、倉庫が三五%というのは大変高い感じがするなという印象を持ちました。しかしながら、何人かの人に聞いてみたんですけれども、昔のことを考えるとそんなものじゃなかろうかという御意見もありましたし、一〇〇%かと思っていた、三分の一ぐらいで済んでいるならいいんじゃないかという御意見もございました。せんだって、この委員会で参考人質疑もしたわけですが、その中で、大野参考人のお話では、土壌汚染というのはありふれたことなんだ、健康被害のリスク管理を十分すれば問題はないんだ、こういう意見も陳述されたわけでございます。

 しかしながら、私はここが大事なところじゃないかと思うんですが、午前中の議論でも、土壌というのは、一センチの土壌をつくるのにこの自然界は百年かけているというお話もございました。土壌汚染がありふれているんだ、三五でも一〇〇でも、これはそんなものなんだというふうに考えるのかどうか、その辺の、この三五%という汚染率に対する評価をお伺いします。

伊藤政府参考人 この三五%という数字につきましては、東京都条例に基づく土壌汚染調査の実績を参考として、この検討会で採用したということでございます。

 この検討会のメンバーとしては、弁護士、学識経験者、不動産関連企業、自治体担当者など、我が国の土壌汚染の実態に詳しい委員構成となっておりますが、三五%と決め打ちしたというものではなくて、一つの参考値として採用するのが妥当であろう、こういうふうなことで採用したというふうに聞いております。

吉田(泉)委員 それは結構なんですが、その評価はいかがでしょうか。三五%、高いと考えているのか、低いと考えているのか。

伊藤政府参考人 今日からこの数字を見ますと、この推計の仕方が、東京都で土壌汚染調査を行った地域のうち、汚染があったのは工場地帯で三五%だったということでございます。

 そもそも、汚染調査をしなければならないという土地は全体の土地からかなり絞られていると思いますので、正直言って少し高目に出ているんじゃないかなと、今日の観点からは私自身はそういう気もしますけれども、それほどおかしい数字でもないというふうに感じております。

吉田(泉)委員 ちょっと追加でお伺いしますけれども、現行法でも、これは第四条だと思いますが、健康被害のおそれがあるような汚染の可能性がある土地については調査の命令をかけられるということですよね。施設が廃止にならなくとも、稼働中でもそういう命令をかけられるんですが、この四条の命令というのはどのぐらい発令されているものですか。

伊藤政府参考人 私ども報告を受けておりますのは、全国でこれまで五件でございます。

吉田(泉)委員 施行されて五年たって、五件ということです。

 そういうことも含めて、もう少し、現在進行中の汚染を何とかとめるという姿勢をもっと強く持った方がいいんじゃないかと私は感じたところでございます。

 さらに、現在の汚染の実態についてお伺いします。

 今まで、何千件というオーダーで土壌汚染が判明したわけですが、その事例ではどういう業種が多いんでしょうか。製造業、サービス業、小売業、いろいろあると思いますが。

伊藤政府参考人 土壌汚染が判明した事例につきまして、環境省が実施した平成十九年度の調査によりますと、基準を超過した七百三十二件ございましたが、そのうち、日本標準産業分類の大分類による分類項目では、製造業が一番多くて、二百三十四件でございます。次いで卸売、小売業が八十一件、次いでサービス業が三十九件になっている、こういう状況でございます。

吉田(泉)委員 ちょっと今の数字だけでは全体像がよくわかりませんが、私の計算では、今おっしゃった製造業二百三十四件、七百三十二件という全体の中では三割程度ですが、実は、よくわからない、分類ができないという項目がこれまた半分ぐらいあるんですね。そういう意味では、不明分を除いたベースでは製造業というのがやはり六割ぐらいになると見たんですが、どうですか。

伊藤政府参考人 先生御指摘のとおりでございまして、分類不能な産業というのが四八・六%あるということで、それを除けば、そういった数字になるということでございます。

吉田(泉)委員 それから次に、汚染の原因行為別の割合をお伺いしておきます。

 不適切な取り扱いのために汚染が起こったとか、施設が破損されたから起こったとか、そういう原因別に数字を出してください。

伊藤政府参考人 原因行為の割合につきましては、環境省が実施した平成十九年度の調査によると、基準を超過した事例、延べ件数七百六十六件のうち、最も多いのが、汚染原因物質の不適切な取り扱いによる漏えい、これが百七十六件で最も多くなっております。次いで、施設の破損等による汚染原因物質の漏えい事故が七十五件、次いで、汚染原因物質を含む排水の地下浸透が四十二件、廃棄物処理法施行前の廃棄物の処理が十八件、排ガス、排気中の汚染原因物質の降下、沈着等が十二件となっているところでございます。

吉田(泉)委員 これも、ちょっとその数字だけでは全体像が見えませんけれども、不明分というのが相当ありますが、その不明分を除けば、一番多い不適切な取り扱いというのはどのぐらいを占めると考えていますか。

伊藤政府参考人 不明が全体で三百七十七件ということで、半数近くございますので、それを除きますと、半分相当がこの不適切な取り扱いによる漏えいということになります。

吉田(泉)委員 土壌汚染が起こった原因の半分近くが不適切な取り扱いのためだったということでありますが、その不適切な取り扱いというのは、例えばどういう具体的な例がございますか。

伊藤政府参考人 不適切な取り扱いの具体例といたしましては、例えば、有害物質の入っているドラム缶を倒してしまったといった行為、あるいは、洗浄工程において本来覆うべきふたがあいてしまっていた、そのために特定有害物質が周辺に飛散してしまったという行為、さらには、排水処理槽の汚泥清掃作業の際に、汚泥がホースから漏れ出てしまった、こういったさまざまな例があるというふうに承知しているところでございます。

吉田(泉)委員 今、三つほど具体的な例を挙げてもらいましたけれども、例えばその三つは、違法行為ということになるんでしょうか、もしくは刑罰の対象になるんでしょうか。

伊藤政府参考人 先ほど御説明いたしました原因行為につきましては、水質汚濁防止法第十二条の三によりまして、有害物質使用特定施設を有する事業場につきましては、その有害物質の地下浸透が規制されております。したがって、そういった事業場につきましてはこれは相当部分カバーできると思いますけれども、そういった事業場につきましては、水質汚濁防止法の違反行為となります。

 ただし、この水質汚濁防止法では、この違反行為をしたからといって直接罰則の対象ということにはなっておらない状況でございます。さらに、こういった行為によって地下水汚染が生じた、その結果、健康被害を生ずるおそれがあるということで都道府県知事が措置命令、回復するような命令をかけて、それに従わないような場合には罰則がかかりますけれども、こういった行為をしたからといって直ちに罰則がかかるというような構造には現在のところなってございません。

吉田(泉)委員 要するに、原因行為に対して直接罰則はかけられない、そういうふうに現行法はなっていると考えていいですね。

 それからもう一つ、この法律を制定した五年前、附帯決議がいろいろつけられました。衆議院の附帯決議第一項は、未然防止について早急に検討を進められたいという決議がついたわけですが、その決議の処理状況というのは、その後、いかがでしょうか。

伊藤政府参考人 土壌汚染の未然防止対策につきましては、先ほど申しましたとおり、水質汚濁防止法あるいは廃棄物処理法等で規制措置を講じているところでございます。先ほど御説明申し上げました水質汚濁防止法は、平成元年に規制が始まりました。その結果、地下水の汚染状況は、地下水の浸透規制が施行されて著しく改善を見ているということでございます。そういったことから考えますと、現在、年々判明している土壌汚染につきましても、この水濁法の施行前に汚染原因があったのではないかということは類推しているところでございます。

 しかしながら、土壌汚染の未然防止の対策をさらに推進していくということは当然重要な課題というふうに考えております。私ども環境省におきましては、今、未然防止対策のいろいろな事業者の取り組み事例の収集等を行っております。こういったことも踏まえまして、今後、土壌汚染の未然防止対策のマニュアルを策定するといったことも予定しているところでございまして、さらに未然防止対策の充実強化を図ってまいりたいというふうに考えております。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 今までのところをちょっとまとめますと、潜在的に土壌汚染の広がりというのが大変大きいというふうに私は感じました。そして、その原因は、工場における有害物質の不適切な取り扱いがやはり大きいんだと。そして、それに対する法的な取り締まり、先ほどは罰則がないという話だったんですが、どうも取り締まりが余りよくなされていないという印象を持ちました。つまり、今までは土壌汚染対策の上で未然防止というところに余り重点が置かれてこなかった、どうしても汚染が判明した後の後始末に追われているんじゃないか、そういう現状の認識を持ったところでございます。

 ここで、工場経験もおありの吉野副大臣に伺いたいと思いますが、実は、この法律の「目的」には未然防止ということが明記されておりません。専門家によっては、やはりそれをきちんと明記して、未然防止の早期の具体化に取り組むべきではないか、こういう御意見があります。私もそう思うんですが、副大臣、いかがでしょうか。

吉野副大臣 ある宇宙飛行士が地球を眺めたときに、大気がフィルムのように薄かった、こういうお話がございました。大気はもう余りあるくらいと、地上に住んでいる私たちは思っているんですけれども、宇宙から見るとフィルムのように薄い存在だ。

 また、地球ができて四十六億年たちます。土壌は、一センチつくるのに百年かかる。でも、四十六億年かかってつくった厚さが陸地で平均十八センチなんです。いわゆる植物をはぐくむ、農作物をはぐくむ土壌の厚みが四十六億年かかってたった十八センチ、これは平均ですけれども。このくらい、命をはぐくむ土壌というものは、私たち地球にとって本当に少ないものでございます。

 そういう意味で、この土壌汚染という問題は、吉田委員と思いは同じでありまして、まず、目的のところに未然防止という理念、これはやはり私は思いを同じくしております。ただ、先ほど田名部委員の質問もありましたように、伊藤審議官が答弁しています、未然防止はいわゆる水質汚濁防止法とか廃棄物処理法等々の個別の法律で規制をしているから目的に書かなくてもいいんだ、そういう答弁で、役所としてはそういう答弁だと思うんですけれども、私は吉田委員と思いを同じくしているということを答弁させていただきます。

吉田(泉)委員 個別法で対応していても、こちらでも書いたって、別にダブったところで特段の支障はないと思いますので、今回はそれが織り込まれなかったわけですが、これからも方向性としてぜひ検討していただきたい。

 司馬遼太郎さんがバブルのころ「土地と日本人」という本を発刊されて、その中で、土地というのは私有地であっても究極の共有財産なんだという発想で考えなくちゃいかぬということを大分強調されておられましたが、この土壌汚染についても、自分の土地だから勝手にしていいという風潮はあると私は思うんです。それから、きちんと処理しようと思うといろいろお金もかかるという問題もあると思うんですが、今、四十六億年で十八センチというお話もございました。地球の共有財産だというお話だと思います。ひとつ、何か国民運動的に、やはりこの土壌汚染というのは極めて深刻なんだぞということを訴えていくべきではなかろうかと私は思ったところでございます。

 それから、次のテーマに移りますが、汚染土壌の掘削、搬出について何点かお伺いします。

 今回の改正案、提案理由説明というものを見ますと、改正の立法事実というのが大きく二つある。一つは、法定外の自主調査がどんどんふえているという事実が一つ。二つ目は、残土置き場や造成地等において、土壌汚染地から搬出された汚染土壌が不適正に処理される事例が見られると。つまり、不適切に汚染土壌が搬出されているということがこの立法事実の二番目に書かれているわけであります。

 そこで、この二番目に書かれた搬出された汚染土壌の不適正処理、件数と量が一体どのぐらいあるものなのか、お伺いします。

伊藤政府参考人 汚染土壌が不適正に処理された事例につきまして、今私ども環境省で把握しているものは約三十件でございます。

 それらの汚染土壌の量はどうなるのかということでございますが、例えば、六価クロム汚染土壌が放置された東京都の例というのがございます。その汚染土壌の量は一万五千立米というような報告を受けております。ただ、量について報告を受けていない事例もございまして、この三十事例全体の総量は現在のところ把握していないという状況でございます。

吉田(泉)委員 立法事実というにしては、全体像の把握が少し足りないんじゃないか、立法事実がはっきりしないんじゃないかという印象を今私は持ちました。

 かつて、数年前ですが、産業廃棄物処理事業振興財団という財団法人が、これは平成十八年度の汚染土不適正処理に関する実態調査というものを発表いたしました。ゼネコン二十五社のアンケート調査から推定したものということでありますが、それによると、これは平成十七年度ですね、約三百万トンの汚染土壌が現場から搬出されたということですが、一体その三百万トンはどこへ行ったものか。主要行き先及びその割合はどんなものだったんでしょうか。

伊藤政府参考人 御指摘の調査につきましては、ゼネコン二十五社のアンケートにより、平成十七年度の土壌汚染対策により搬出される汚染土壌の全体的な流れを推計したものでございます。

 この結果によりますと、汚染土壌の主要な行き先として、汚染土壌全体の約三百万トンのうち、二百二十一万トン、約七四%が汚染土壌をセメントの原材料として利用する施設に搬入されております。また、五十四万トン、約一八%が、汚染土壌を適切に処理することができるものとして、都道府県知事が認定した浄化施設に搬入されていると推計されております。そのほか、認定浄化施設以外の中間処理施設に約十八万トン、埋立場所に約六万トン、それから最終処分場に約十万トンが搬出されているという結果となっております。

吉田(泉)委員 そのうちのどの部分が不適正処理の可能性があるんでしょうか。

伊藤政府参考人 この調査は、ゼネコン二十五社のアンケート結果を集計したものでございます。したがって、どの過程で不適正処理が行われたのかということは、ゼネコンの方からも申請がないですし、恐らくこの二十五社においてはそういった不適正処理を行っている可能性もそれほど多くないというふうに考えますので、残念ながら、この集計からだけでは、どのような場所にどのような過程で不適正処理が行われているか、我々としては把握できないところでございます。

 なお、先ほど約三十件の事例を承知しているというふうに申しましたが、これは、この調査とは別に、地方公共団体を通じて調査して得た情報でございます。

吉田(泉)委員 三百万トンのうちどの部分が不適正処理かは承知していない、恐らくほとんど全部が適正処理だったんだろうというニュアンスの御答弁だったと思いますが、そこが一番大事なんじゃないでしょうか、今回の法改正に当たって。掘削、搬出で大変汚染が拡散されているという心配から法律を改正するわけですから、そこの把握が大事なんじゃないかと思うんです。

 例えば、先ほどの御答弁で、埋立場所に六万トン行ったという話がありましたが、これはどうですか、埋立場所、六万トン、適正処理と考えていいんですか。

伊藤政府参考人 これは廃棄物処理法に基づきまして認可されたところの廃棄物処分場ということでございますので……(吉田(泉)委員「処分場じゃないんじゃないですか、最終処分場じゃなくて、埋め立て」と呼ぶ)埋立処分におきましても、場所によるとは思いますけれども、きちっとその搬入する土壌をチェックした上で、ここの埋立処分場だったらどういうものであれば受け入れられるのかといったチェックもされていると思いますので、必ずしもそこは直ちに汚染の不適正処理ということにはならないと思いますが、もちろん、先生御指摘の可能性も全くないとは言い切れないというふうに考えております。

吉田(泉)委員 埋立場所に不適正処理があったかどうかは、それはケースごとによく見なくちゃいかぬと思いますが、搬出に際して不適正処理があった、つまり汚染が拡散されたという場合は、罰則はあるんでしょうか。

伊藤政府参考人 現在の法律、現行法におきましては、指定区域内の土地の形質変更をして汚染土壌を搬出しようとする者は、あらかじめ都道府県知事に届け出をするということになっております。この届け出をせずに、または虚偽の届け出をして汚染土壌を不適正に処理した場合、あるいは、届け出内容に対し都道府県から計画変更命令が出されたにもかかわらずそれに違反した場合には、罰則がかかることになっております。

 しかしながら、届け出をした者でない、例えば汚染土壌を運搬する者あるいは汚染土壌を処理する人が汚染土壌を不適正に処理した場合について、現行法では何の規制もかかっておりませんで、罰則もない状況でございます。

 このため、今回の改正法案におきましては、措置実施区域または形質変更届出区域から搬出された汚染土壌の処理を汚染土壌処理業者に委託しなかった場合、あるいは汚染土壌の運搬中に汚染土壌が不適正に処理された場合、こういった場合にも罰則を科す、こういうふうなことで提案申し上げているところでございます。

 さらには、汚染土壌処理業者が汚染土壌を不適正に処理した場合、こういった場合には都道府県知事が改善命令をかけ、この命令に違反した場合にも罰則が科される、こういったことで提案申し上げております。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 今回の改正である程度刑罰を厳しくしたという御答弁だったと思うんですが、ここで古川政務官に、今までの議論を聞いてもらって御意見をちょうだいしたいんです。

 汚染土壌をよそへ持っていって不適正処理したというのは極めて悪質な行為だと思います。ところが、今までは罰則がかかっていなかった。今回も、私が見た中では、例えば二十二条の第六項というので、業者は適正に汚染土壌の処理を行わなければならないという規定はできたんですが、それに対する罰則がどうも明記されていないようなふうに私は読んだんです。

 そんなことも含めて、極めて悪質な行為がなされた場合にどうやって厳しく規制をかけて処罰すべきなのか、その辺の御感想、御意見をちょうだいします。

古川大臣政務官 吉田先生、きょう御質問をお聞きしていまして、美しい私どもの国土、土、水、これは、今に生きる我々のもののみならず、先代からそして後世につなぐべきものであるわけですけれども、そういう貴重な宝に対する思いを一貫して抱いておられるということを感じつつ、御質問を拝聴いたしておりました。お聞きしますと、水源保護の運動にも熱心に取り組まれた御経験をお持ちだということもお聞きしております。そういうこともあって、やはり、不適正な処理、大事な土壌を汚す不届きな行為に対してお怒りをお感じになっているんだなということを、共感をしつつお聞きいたしておりました。

 今回の法改正におきましては、先ほど伊藤審議官からも個々具体的に御説明申し上げましたとおり、これまで規制あるいは処罰の対象になっておらなかったところまで広く問題点を把握して、規制、処罰の対象としたところであります。適正な内容であると私も考えております。

 したがいまして、本法案が成立しました際には、地方自治体それから業者に対しまして内容の説明等を徹底しまして、周知できるように努力をしたいと考えております。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。土壌汚染の拡散ということに対して厳しく対処していきたいと思います。

 さて、次のテーマですが、土壌汚染に対する措置ですね、工事方法についてお伺いします。

 今回の改正法案によりますと、健康被害のおそれがある場合に、措置実施区域、もっと端的に言うとこれは要措置区域ということだと思うんですが、措置を命ずるということになりました。都道府県知事が具体的な措置、つまり工事の方法を指示するということであります。そして、そのときの技術的な基準は環境省令で定めるということになっております。ただ、今までも、現行法でも措置命令という仕組みがありましたから、その技術的基準は環境省令で定められておりましたので、それを基本的には引き継ぐということだと思います。

 それで、その今もなされている、これからも使われる技術的基準について伺っておきますが、いろいろ工事方法はありますけれども、代表的には、盛り土というのがある、封じ込めというのがある、それから除去、この三つが代表的な措置だと思いますが、この技術的基準によりますと、このそれぞれの代表的な三つの措置が原則これだとして指示されるのはどういう場合か。

伊藤政府参考人 原則的な措置の考え方につきましては、先生御指摘のとおり、現行法におきましても、措置命令を発する場合に省令において規定しているということでございます。この現行法の考え方を踏襲したいというふうに考えております。

 具体的には、盛り土でございますが、盛り土の場合は、直接摂取の観点から基準を超過した汚染が存在する土地であって、なおかつ人の立ち入りがある、こういった場合には盛り土を指示するということになるわけでございます。

 それから、原位置封じ込めでございますが、これは、地下水経由の摂取の観点から基準を超過した汚染が存在する、すなわち、土壌汚染があって、それが地下水を汚染し、その地下水を飲用する、そういうふうな飲用に供されている場合には原位置の封じ込めの措置を指示するということでございます。

 最後に、汚染の除去でございますが、これは健康被害が生ずるおそれの観点から見て特別な場合に指示されることとなっております。これは特別の場合で、二つの場合がございます。

 第一の場合は、直接摂取の観点からの基準が超過した汚染が存在する土地であって、なおかつ乳幼児の遊戯のための砂場や園庭等でありまして、なおかつ土地の形質の変更が頻繁に行われる、その結果、盛り土等の効果の確保が困難な場合、そういった地域の概念が第一番目の場合でございます。

 それから第二番目の場合には、地下水が汚染されている、その地下水が飲用に供されており、なおかつその地下水汚染の濃度が基準を大幅に超えている、こういった場合には汚染の除去ということが指示されることになっておりまして、こういった考え方を新しい措置実施区域においても当てはめていきたいというふうに考えている次第でございます。

吉田(泉)委員 最後のところをちょっと確認しますが、除去がなされる場合、二つほど特別な例ということで出されましたが、基準を大幅に超えている場合、大幅というのは何か数字はあるんですか、十倍とか三十倍とか。

伊藤政府参考人 これは、汚染物質ごとに特別の基準を定めております。物質によって、通常の基準の三倍で設定しているものもあれば、三十倍で設定しているものもあります。相当厳しいというか高濃度であるといったことで、きちっとした基準はつくっております。

吉田(泉)委員 数値的な基準もあるということであります。

 参考人質疑のときにこういうお話が出ました。高橋参考人からは、封じ込めによる残存物質の管理が十分な対策であることを今回の改正で示したいんだと。それから大野参考人は、搬出、つまり除去ですね、搬出除去という措置は汚染の拡散の可能性があるからできる限り抑制することが望ましいと考えている、こういう意見陳述がございました。

 確認ですけれども、先ほど三つ代表的な措置の方法を挙げましたけれども、その中の一番最後の除去、これを減らすんだというのが今回の改正の趣旨なんでしょうか。

伊藤政府参考人 先ほど申しました除去をしなければならない汚染の程度があった場合、これはもちろんすぐ除去、具体的には掘削除去していただかなければならないケースだというふうに考えております。ただ、現状におきましては、こういったケースではないにもかかわらず、事業者の方で、健康を保護する観点からは封じ込めで十分であるというふうに考えられた場合であっても掘削除去にいきがちである、こういうふうな傾向があることは事実ということでございます。

 この掘削除去につきましては、必要な場合はもちろんやっていただかなければならないわけですけれども、参考人の方々もおっしゃられていましたけれども、掘削除去で汚染土をほかに持っていくと汚染のリスクをかえって拡散してしまう、こういった懸念もあるということで、できるだけ合理的な対策を推進することが必要であろう、こういったことが中央環境審議会などでも強く議論されたところでございます。

 そういったことを踏まえまして、今回の改正案では、汚染区域の汚染の程度や健康被害のおそれの有無に応じて必要な対策の内容を明確化する、さらには、汚染区域からどうしても搬出されなければならない土壌については適正確保のための事前の届け出、あるいは管理票の交付を義務づけている、こういったことでございます。

吉田(泉)委員 ここでちょっと話は変わるんですが、廃棄物対策部長にお伺いします。

 今までのお話は土壌汚染の話なんですが、どういう措置がいいのか、基準を決めて指示しているということでありますが、同じ考え方が不法投棄の措置、工事のあり方に適用できるんじゃないかというふうに私は感じているものですから、ちょっとお伺いします。

 全国各地、例えば滋賀県の栗東市、それから、工事は済みましたけれども三重県の桑名市、これは我々きのう視察にも行ったんですが、そういうところで、不法投棄を処理するときに除去するのがいいのか、封じ込めるのがいいのか、それぞれの現場で、県単位で大変議論があるところでございます。そのときに、土壌汚染対策法の省令で考えているような技術的な基準を不法投棄の場合にも応用できないかと思うんですが、いかがでしょうか。

谷津政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の土壌汚染対策法に基づきます技術基準でございますけれども、土壌汚染対策法の汚染の除去等の措置については、人の健康被害の防止、これを目的にしている。その支障については、土壌から直接摂取する、その健康影響、もう一つは地下水経由で摂取する、この二点を防ぐために、原則として、それぞれに応じて例えば封じ込めなどを命ずる措置を定めておるわけでございます。したがって、土壌汚染の場合には、目的が人の健康の保護、それと経路が直接摂取と地下水経路、この二つに限定をした上での技術基準というふうに認識をしているわけでございます。

 一方、御指摘の不法投棄でございますけれども、廃棄物処理法に基づきまして、人の健康被害、これは土壌汚染対策法と同じわけでございますけれども、それに加えまして、廃棄物の飛散あるいは流出、それと不法投棄で積まれた廃棄物の崩壊、また悪臭、こういった周辺の生活環境の保全、この健康被害と生活環境の保全の二つの観点から支障の除去を行うという仕組みになっておるわけでございます。

 このように、支障を限定しております土壌汚染に比べて、不法投棄による支障はそれぞれの場所場所で千差万別でございます。例えば木くずがある、あるいは廃油がある、また建廃がある、それがまじっている、さまざまな状況がございまして、そこから生じる環境保全上の支障も千差万別でございますので、支障に応じて原則として例えば除去なんだ、封じ込めなんだということを一律で定めることは、今の段階では困難ではないかと思っております。

 このため、私どもの廃棄物処理対策の中では、不法投棄の事案ごとに都道府県等が専門家の意見も聞きながら、支障の程度あるいは支障の状況に応じて、支障除去あるいはその発生を防止するための最も合理的な手段を選択する、こういうことにしておるわけでございます。

 しかしながら、きょうの御質疑の中でも、廃棄物対策また土壌汚染対策、関連する部分もございますので、私どもとしては、幅広くさまざまな観点から検討してまいりたいと思っております。

吉田(泉)委員 結局都道府県に任せているというような現状だと思うんですが、なかなか都道府県も苦労しているんですよね。廃棄物の不法投棄、私は、土壌汚染でできることがこっちでもできるような気がする。もちろん技術基準は違っていいんですが、ひとつ検討をしていただきたいとお願いしたいと思います。

 最後になりますが、今まで、未然防止の必要性の問題、汚染土壌の拡散の問題、それから適正な措置の問題、こういう三つの問題を見てきたつもりなんですが、これ以外にも、法の目的として、人の健康に今限られていますけれども、環境の保護というのも入れたらどうだという御意見があったり、それから、直接摂取とか飲料水経由じゃない食べ物とか吸引とか、そういうことも法律で考えるべきじゃないかと、いろいろ御意見があるんです。

 それらを含めまして、大臣の方から今後の土壌汚染対策に関する御見解、そして御決意をお伺いします。

斉藤国務大臣 きょう、吉田委員の質疑、三つの大きなテーマがあったかと思います。未然防止こそ大切ではないか、また汚染土壌が拡散をしている、それをどう防ぐか、またその汚染土壌の適正な、合理的な処理という議論を聞かせていただきました。その上で、人の健康以外にも環境の保護ということも入れるべきではないかという今御質問あったわけでございますが、今回の改正は、人の健康被害の防止を徹底するという大目的で、土壌の汚染の状況の把握、今まで二%しか見ていなかったものを七〇%以上見ていこう、それから、きちんと分類して合理的な措置をとれるようにしよう、そして搬出した土壌についてはこれをしっかり追いかけていって適正処理を確保しよう、こういう三つを人の健康を守るという観点からまとめたものでございます。

 今お話がございましたように、我々この法律では直接摂取それから地下水経由摂取ということをルートとして考えているわけですが、それ以外にも、吸引とか食物経由摂取等への考慮など、土壌汚染対策として必要ではないかという御指摘で、そういう御指摘があることは我々も承知しているところでございます。

 今回は人の健康被害の防止を徹底するために改正案を提出したところでございますけれども、改正後の法の施行にしっかりと取り組むとともに、御指摘の吸引などにつきましても引き続き知見の集積に努めていきたい、このように考えております。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。終わります。

水野委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 委員長、理事の先生方に御許可をいただきまして、環境委員会で発言の機会をいただきました。ありがとうございます。心から感謝を申し上げます。

 まず、斉藤大臣にお伺いをいたします。

 私たち民主党そして民主党を初めとする野党は、昨年、参議院に議員提案で土壌汚染対策法の一部を改正する法律案を提出し、参議院で可決をし、現在、衆議院の本委員会で並行審議をされておるという状況でございます。

 今回、政府が提出をされておる土壌汚染対策法の改正案、この内容は、私どもが議員提案で提案をさせていただいている趣旨を踏まえたものであるという理解でよろしいでしょうか。

斉藤国務大臣 今回、平成十五年の土壌汚染対策法施行以降、法律に基づかない調査によって多くの地域で土壌汚染が発見されるようになった、また、多くの場合において法の枠外で対策が行われていること等から土壌汚染に対する国民の不安が生じるなど、そういう状況になってきております。

 また、豊洲地区における土壌汚染問題を一つの契機として、国会や与野党においてさまざまな検討、議論がなされてきたところでございます。

 こうした状況を踏まえまして、政府における検討を加速し、昨年十二月に中央環境審議会において「今後の土壌汚染対策の在り方について」という答申を取りまとめていただいたところでございまして、本答申を踏まえ、今般、この法律を国会に提出させていただいたところでございます。

 御質問のように、国会や与野党においてさまざまな検討、議論がなされてきたというのが、今回、我々が法案を提出した背景でございます。

川内委員 そこで、民主党提案者にお伺いいたします。

 民主党案提出の背景の一つとして、今斉藤大臣からも言及があったように、東京都の築地中央卸売市場が江東区豊洲の東京ガス工場跡地に移転するという問題がある。大変な汚染土壌地帯であるわけでございますが、現行法では全く土壌汚染地域であるというふうには法律上なっていないが、現実に大変な土壌汚染地域であるという問題があるわけでございます。民主党がこの土壌汚染対策法の改正案を提出した背景、経緯、そしてまた、どのような改善が期待できるのかということについて、御説明をいただきたいと思います。

大河原参議院議員 御答弁申し上げます。

 私は、都議会に九三年に初当選いたしまして、初めに配属されたのが東京都の衛生労働委員会というところで、市場を所管する委員会でございました。当時は、現場築地で建てかえを、営業しながら再整備をやるということで、八八年にその計画が決まって進められていたわけなんですが、石原都知事が九九年に御当選なさいまして、二キロ先の豊洲へ移転をするという方針が二〇〇一年に立てられ、変わっております。

 現在もなお、移転については、現地で再整備を求められる方たちの声も高いというふうにぜひ御理解をいただきたいと思うんですけれども、そんな中、移転先の豊洲の場所は、今川内議員が御指摘のとおり、東京ガスの豊洲工場の跡地でございます。操業自体は既に昭和六十三年に終わっておりまして、使用は終わっているわけなんですけれども、この土壌対策法の施行日よりも前であることから、現行の対策法附則第三条の規定によって、土壌汚染対策法第三条の土壌汚染状況調査の対象外になっているわけなんです。このことからも、さらに土壌汚染の調査をすればするほど高濃度のものが出てきたという新しい発見もありまして、大変この移転については危惧をされております。

 そして、実際に土壌汚染対策法第四条第一項の土壌汚染状況調査の対象になるかどうかということについても、現状は豊洲工場の跡地は一般の立ち入りというものが行われておりませんので健康被害が生ずるおそれがないということから、これは否定をされるのではないかと解釈されております。

 このように、現行の土壌汚染対策法では東京ガスの豊洲跡地への中央卸売市場の移転問題については何らの対策も打てないというのが現状でございますので、こうした事情も背景として、私ども改正案を提案させていただいたものでございます。

 私どものこの改正案に則して言えば、この東京ガスの豊洲工場は土壌汚染対策法の有害物質使用特定施設に係る工場または事業場の跡地ということになりまして、卸売市場の方は特定公共施設等というものに該当すると考えられます。とするならば、土壌汚染対策法上の土壌汚染状況調査を行うことになりますので、もし、その調査の結果、指定地区の指定に関する汚染状況の基準に適合しないと認められる場合は、指定地区の指定等、必要な措置を講じることができるということで、この豊洲の汚染対策に資するものというふうに思っております。

川内委員 民主党案では、今御説明いただいたとおり、土壌汚染対策法の施行前に廃止された有害物質使用特定施設に係る工場または事業場の跡地であった土地で、土壌汚染状況調査が行われていないものを新たに学校、公園、卸売市場等の特定公共施設等の用に供しようとする場合に汚染状況調査の対象とするというふうにしているわけでございますが、この改正の目指すところというのをもうちょっと詳しく御説明いただけますでしょうか。

岡崎参議院議員 お答え申し上げます。

 ただいまの大河原議員のとも少し重なろうかと思いますけれども、現行の土壌汚染対策法では、この法律の施行日、平成十五年、二〇〇三年二月十五日前に廃止された有害物質使用特定施設の跡地はこの法律の附則第三条によって土壌汚染状況調査の対象から外されております。このことによって、例えば東京卸売市場が豊洲工場の跡地へ移転するような場合でも土壌汚染状況調査の対象にはならないわけでございます。

 この土壌汚染状況調査の対象にならないということで、当然、現在の土壌汚染対策法の措置は講ずることができない、この法に基づいて講ずることができないというわけですから、不特定多数の人々が利用するような施設、あるいは人々が日常生活、大変生活に密着した、そういう関連する場所におきまして、もし健康被害防止をしなければならない、対策を講じなければならないというようなことがあっても、この防止をすることができないということになってしまいます。

 そこで、私たちは、対策が必要な特定公共施設の用に供しようとする場合には土壌汚染状況調査の対象にするということによって、土壌汚染対策を講ずることができるようにしていく、こういうことが私たちの目指しているものでございます。

川内委員 政府案では、面積がその要件になっているようでございますけれども、民主党案との違いをちょっと御説明いただけますか。

岡崎参議院議員 私たちは、有害物質使用特定施設の敷地を特定公共施設の用に供しようとする場合に土壌汚染状況調査の対象とならないのはおかしいと。特に緊急の対策が必要だということで、このような場合をカバーしなければいけないという意味で、用途に着目した改正案を出したわけでございます。

 一方、政府案でありますけれども、これは私たちの議員立法による問題提起にこたえて政府が準備をして出してくれたものだということ、斉藤大臣も少しお触れくださいましたけれども、このように受けとめております。政府案は、用途を問わずに一定規模以上の土地の形質の変更をしようとする場合を対象とすることになっているわけです。

 このように、それぞれ切り口が違うということでありますから、一概にこの一定規模以上のところの方が広いですとか、あるいは私どもの方が狭いとかいうふうに論じることはできないと思いまして、広いか狭いか、この違いからいいますと、政府案の方が広いというのは、用途に限らないという意味で、私たちの方は対象範囲が広いという意味で、どちらがいいかということよりも、お互いに補い合って、対立するようなものではないというふうに私たちは考えております。

 いずれにしましても、土壌汚染状況調査がしっかりできて、そして安心な土地を得る、健康に対しても心配がない、被害がない、そういうようなものとするためにはしっかりとした対策をとっていく必要があるというふうに考えております。

川内委員 二つを合体させたらよりいい案になるということです。

 大臣、どうですか。

斉藤国務大臣 今、岡崎議員から、どちらがいいということではない、お互いいいところがあるんだと。(川内委員「よりいい」と呼ぶ)それで、よりいいものにすればいいんだという御答弁があった。ちょっと私としては答えにくいところもあるんですけれども、政府案の方がちょっといいのではないかということをちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 まず、面積要件で三千平米以上ということで、これはもうしっかり、大きなものについてはやる。それ以下のものについて必要なものを取りこぼしてはいけないということで、これは土壌汚染のおそれのあるものについてはしっかりと法の対象にしていくということも担保しているという点でございます。

 いずれにいたしましても、そういう取りこぼしのないきちんとした法律に最終的に仕上げていく必要があるのではないかと思っております。

川内委員 だから、最終的に仕上げるために私は両方のいいところをとればいいんじゃないかなと。そうすると、斉藤大臣が政府案の方がちょっといいよと今おっしゃったわけですが、そのちょっといい政府案がもっといいということになると思いますからね。その辺、また与野党で御協議をいただきたいというふうに思います。

 さらに、民主党案についてあと二つぐらい聞かせていただきます。

 土壌汚染状況調査が行われていない土地を新たに特定公共施設等の用に供しようとする者は、都道府県知事に土地の所在地等を届け出なければならないものとし、届け出を受けた都道府県知事は、その土地が状況調査の対象の土地であるかどうかを調査し、その結果を、届け出をした者に速やかに通知しなければならないものとしている。

 この改正の趣旨を教えていただきたいと思います。

岡崎参議院議員 私たちの案の附則第四条によりまして、特定公共施設等の用に供しようとする土地につきましては、土壌汚染状況調査をさせるためには、まずその前提として、その土地が有害物質使用特定施設の跡地であるかどうかを調査する必要があると思います。そこで、御質問にありますとおり、附則第五条第一項で、法制度上、有害物質使用特定施設の設置あるいは廃止に関する情報を把握しているはずの都道府県知事にこの調査をさせることにしております。

 しかし、そもそもその土地が特定公共施設の用に供しようとされているということを知らなければ、都道府県知事は調査のしようがありません。そこで、附則第五条第二項で、土壌汚染状況調査が行われていない土地を新しく特定公共施設等の用に供しようとする者は、都道府県知事に届け出をしなければならないというふうにいたしました。そして、この届け出を受けた都道府県知事が有害物質使用特定施設の跡地であるかを調査した上で、附則第五条第三項で、速やかにその調査の結果を届け出をした者に通知しなければならないというふうに規定をいたしております。

川内委員 さらに民主党案では、政府は土地の土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する方策等について、速やかに検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとしていると。これはどのような取り組みを想定しているのか。水質汚濁防止法や大気汚染防止法、廃棄物処理法や農薬取締法などとの関係も含めて総合的な検討が必要であるというふうにお考えなのか、教えていただきたいと思います。

大石(正)参議院議員 川内先生の御質問でございますが、我々の案では、土壌汚染対策法施行前に使用が廃止された有害物質使用特定施設の跡地のうち、緊急に対策を講ずべきものとして新たに特定公共施設等の用に供しようとする場合に土壌汚染状況調査の対象とするものでありますが、その他の跡地についても、土壌の有害物質による汚染により人の健康被害が生じ得る以上、放置しておくわけにはいかない、今後の課題であることから、御質問にあったとおり、附則第七条第一項を設けて、土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する方策等について、速やかに検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものと規定しております。

 この改正案が施行されれば、速やかに制度改正等の検討を行うべきものであると考えますが、土壌汚染の問題は、水質汚濁、産業廃棄物等の処理、農薬の使用といった問題が大きく関係するものでありますから、これらの問題と関係をよく踏まえた制度づくりが必要であると考えております。

 午前中の近藤議員や坂井議員の御質問に一部お答えをいたしましたが、実は土壌汚染というものだけで環境を守るわけではありません。川内議員がおっしゃったように、水質と大気というその三つが一つにならなければこの制度はうまくいかないわけであります。

 午前中にお話ししましたように、実は、水質汚濁も大気汚染も、水俣病という水銀汚染と四日市ぜんそくという大気の汚染の問題があって、死者が出るような大きな被害があって、環境庁が発足をして、人の命を守るという前提のもとからその二つの法律が早急に必要になって制度がつくられました。それから三十年間、環境庁が環境省に変わるまで、土壌汚染法だけはなぜか法律ができませんでした。

 私が衆議院の環境委員長をしているときに、自民党の谷津義男先生、たまたま自民党時代に同期でありました彼が、委員長にぜひ土壌汚染法を超党派で出してくれという話になって、実は自民党案と民主党案が出ました。そのときに私は、それぞれがかみ合わない部分を全部、民主党案を自民党に持っていかせて、自民党案は民主党に持っていって、問題点を全部整理して二つを一つにまとめて、環境省がそれを一カ所にしてできたのが土壌汚染法でありました。

 しかるに、その法律はありましたけれども、東京都やさまざまな問題、大臣は三千平米という平米がその基準であるという話をされましたけれども、既に前から三千平米でありますし、東京都や各都道府県は三千平方メートルを基準として土壌汚染の部分をやっているわけでありますから、特別に新しくできたわけではないと、私は大臣の答弁を聞いて感じておりました。

 ただ、いいことは、十年で見直しが五年で見直しに変わったこと、そして罰則規定を厳しくし始めたことは、非常にいいわけでありますね。三千平米で土壌汚染が大したことなくても千平米で大変な土壌汚染をすれば、そっちの方の影響が強いわけでありますから、平米だけではなくてその汚染度に合わせて見直しをするのが大事であります。

 そういうことを考えますと、かつて十年前につくった法律は、とにかく三つの法律が一つにセットされることが一番大事であるから、まずそのセットをして、それからできるだけ見直しをしていくという条件で、実は超党派で通させていただいたわけであります。ですから、今回、環境省が、さまざまな課題があって見直しをしていただくということは、その当時の当事者として大変うれしく思うわけであります。

 坂井さんのお話にもいろいろありましたように、例えば土建会社が土地を掘削します。その掘削した土を外に捨てていけば、それが産業廃棄物になります。すなわち、スーパーでも生ごみやさまざまなものを出した場合には、それは農林水産省ではなくて、厚生労働省ではなくて、結局は産業廃棄物として環境省が最終的な処分の部分の責任を負わなきゃならない。

 そういうことを考えますと、各役所の上に環境省という一つの大きな網をかぶせて、そのすべての最終処分をきちっとする最後の監督の役所が環境省だと私は考えておるわけでありまして、それはもう十年以上、私も参議院の環境委員長もしましたので、どっちのときにも役所にそれを繰り返してまいりました。

 そういう意味においては、とにかく前進することはいいことでありますから、ちょっとよくなったという政府案だけではなくて、川内議員が言ったように、民主党案のいいところも取り入れて、お互いに自民党と民主党が修正を加えて、よりいいものとしてこの法律ができれば、お互いにプラスになりますし、人間の健康を安全に守るためにはその三つのバランスがとれた法律ができて初めてよくなる。そういう意味で、この三つの法律を総合的に考えて、ぜひとも皆さんのお力で法律を進めてつくっていただきたい。

 そういう意味においては、総合的な検討と考察と、そして、どれか秀でるのではなくて、三つの法律のバランスがとれてきちっとなることによって、すべてがバランスのとれたいいものができるわけであります。バランスがないものは、どこか欠点が出てだめになる。それを直すのが政治の力だと私は思うわけでありまして、ぜひその三つの法律のバランスをとっていただきますように、よろしくお願い申し上げます。

川内委員 では、斉藤大臣にお伺いしますが、民主党案では、豊洲の東京ガス工場跡地は、法律が施行されれば必ず対象になるわけですね。政府案では、東京築地市場の移転予定地である江東区豊洲の東京ガス工場跡地は政府改正案の対象になりますか。

斉藤国務大臣 改正案におきましては、一定規模以上の土地の形質の変更時において、当該土地に土壌汚染のおそれがあると判断される場合に都道府県知事が土壌汚染状況調査命令を発することが新たに規定されております。

 したがいまして、豊洲におきましては大規模な土地の形質の変更が予定されており、本法案が今国会で成立すれば、当然、法の規制の対象になるものと考えております。

川内委員 委員長、今のは重要な答弁なんですよ。環境大臣は、考えておりますと言ったんですね、今。ということは、東京都が手続をさあっと進めれば対象にならない可能性もあるということを今おっしゃられたわけです。事務局、そうですよね。

伊藤政府参考人 私どもが東京都から今の時点でお聞きしているのは、いろいろな手続、東京都条例に基づく手続等々ございますので、急いだとしても、当然、私ども今国会で成立させていただければ対象となるというふうに考えておりますし、それは間違いないというふうに思っております。

川内委員 それでは、民主党案ではこの豊洲がなぜ法律の対象になるかというと、有害物質使用特定施設の跡地であるから対象になるわけですね。

 では、政府案では、なぜ豊洲は本法の対象になるのですか。

伊藤政府参考人 それは、先ほど大臣から答弁していただいたとおり、豊洲につきましては、一定規模以上の土地の形質の変更が予定されているということで、本法案の対象になります。

 なお、もちろん、今回の私どもの改正案では、汚染があるということを思料して自主的に申請するという条項もございます。そちらで申請していただくことも可能であるとは思っております。

川内委員 政府案では、要するに形質を変更しようとしたら汚れていましたと。今汚れていました、今触ろうとしたら汚れていたんです、びっくりしましたと。これが、政府案が豊洲が対象になることの理由なんですよ。

 本来、立法事実としてあるのは、豊洲の東京ガス工場がそこに位置をしていて、先ほどから民主党提案者から累次の御説明があったとおり、昭和六十三年まで操業していました、そしてそこに大変な生成物を含めて汚染があるんです、それが明白なんです。なぜかなら、有害物質使用特定施設がその東京ガスの工場だったからということですよね。

 ところが、政府案では、その立法事実を捨象して、今汚れています、だから対象ですということになっている。そこは、私は政府案の不備。なぜかなら、先ほど大石提出者から御説明があったとおり、水質汚濁防止法も大気汚染防止法も、水俣病という大変痛ましい事件を立法事実として法律が制定されたのだと。やはりそういう具体の事実があって法律があるわけですから、そこは私たちは見失ってはならないのではないかというふうに思います。だからこそ、民主党案もかなりいいところを突いているんじゃないかなというふうに私は思うんですよね。

 大臣、どうでしょうか。まあ、大臣が修正してもいいよとはなかなか言えないでしょうから、でも、私の今の話を聞いて、なるほど、そうだね、東京ガスの工場がそこにあった、有害物質使用特定施設がそこにあったから本法の対象になるんですよというのは、そもそもこの法律ができたときの考え方ですよね。その考え方を踏襲するという意味においては、なるほどねというふうにお思いになりませんか。

斉藤国務大臣 民主党案の法律の立て方も一つの考え方だと思います。そして、今、我々政府案も、形質の変更の大きさ、そして汚染されているおそれがある場合については当然その規模にかかわらず対象になるという考え方、これも法律の立て方としては一つの考え方だと思います。

川内委員 民主党案も一つの考え方であるということで、否定をされない、前向きに評価をしていただいたということで、ぜひ与野党の理事の先生方、御協議をいただきたいというふうに思います。大臣に感謝します。ありがとうございます。

 では、具体的に豊洲の東京ガス工場跡地について聞かせていただきます。

 平成二十一年二月六日付の東京の中央卸売市場の「豊洲新市場整備方針について」という文書によりますと、平成二十一年度から平成二十二年度の十七カ月間で環境影響評価と都市計画決定を行い、平成二十二年度の半ばから土壌汚染対策工事が始まるという紙をいただきました。

 政府提案の本法律案の施行は、公布の日から一年以内ということでありますから、平成二十二年の四月か五月、ちょっと微妙な時期じゃないかというふうに思うんですね。

 そこで、卸売市場開設許可を担当する農林水産省にお伺いしますが、豊洲の環境影響評価は、平成十六年九月から平成十九年の三月まで手続が実際には進んでいるわけでございます。豊洲の土壌汚染問題で手続が中断をしている、さらには今後、再開される予定であるというふうに思いますが、これはいつから再開されるのか、再開されるとどのような手続を踏むのか、具体的に教えていただきたいと思います。

平尾政府参考人 豊洲新市場の建設工事についての環境影響評価の進捗状況と今後の段取りについてのお尋ねでございます。

 これは、東京都に確認いたしましたところ、委員先ほどおっしゃいましたように、まず環境影響評価書の案を平成十九年二月に公示、縦覧して、あわせて説明会をした段階でございます。その後、三月に都民からの意見が提出されております。その後、委員も御指摘あったように、十九年三月に土壌汚染対策について専門家の意見を聞くこととされたわけでございます。そのために、この段階で、この環境影響評価は進んでいません。

 それで、今後の予定でございます。御案内のように、東京都では、豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議の報告が昨年出ております。また、その後、この報告書を踏まえて、豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事に関する技術会議で検討を重ね、技術、工法の提言を受けて、当初の工事内容を変更することとしているようでございます。これに伴いまして、環境影響評価についても、改めて、その進め方について都の環境影響評価担当部局と調整が進められていると伺っております。

 では、今後どういうふうに進めるかということでございます。今申しましたように、工事計画が当初の案と違ってきているということでございますので、環境影響評価につきましても、まず、現行ですと十八年の十月に行われました調査計画書の提出の段階までさかのぼって進めるというふうなことで検討が進んでいるようでございます。

 今後どのくらいのスケジュールで進むのかということでございますけれども、都としては二十一年度のできるだけ早い時期に再開をしたいということを現段階では聞いております。では再開されたらどのぐらいかかるのかということでございますけれども、これは、いろいろ手続の中で変わってきますけれども、委員も先ほどおっしゃいましたように、東京都はおおむね十七カ月ぐらいはかかるんであろうというふうなことを考えていると報告を受けております。

 以上でございます。

川内委員 さらに都市計画決定もしなければならないわけでございますが、その十七カ月というのは環境影響評価と都市計画決定を同時並行的に進めるという理解でよろしいでしょうか、これは国土交通省ですか。要するに、環境影響評価と都市計画決定の関連について御説明ください。

石井政府参考人 ただいま先生の方から環境影響評価と都市計画手続との関係についてお尋ねがございました。

 大規模な卸売市場、豊洲ということだろうと思いますが、東京都の条例では環境影響評価の対象になっておりますのでその手続が進められますが、都市計画については、都市計画の中で案を決め、その案を住民に縦覧をして意見書を出していただいて、さらに都市計画審議会という最終の専門家の場に付して決定をするという手続になっております。

 この場合に、環境影響評価とそれから都市計画手続はどういうふうに重なるかということでございますが、手続は一部同時並行的に行くところがございますが、都市計画の案が審議会に付議されるというときには、環境影響評価書が都市計画審議会に送付されて、その評価書を踏まえて、その内容等も勘案しながら、都市計画決定がなされるというふうに承知をしております。

川内委員 そうすると、環境影響評価書が送付されて、都市計画審議会が開かれる、先ほどの答弁とトータルすると、およそ十七カ月ぐらいかけて環境影響評価がされるでしょう、その後、都市計画審議会にその評価書が送付されますよ、そういう理解でよろしいんですね。

石井政府参考人 都市計画の方のサイドには、実は、案を作成してから最終的な審議会を経て公告縦覧、告示をするというまでに、いついつまでの中でしなければいけないという絶対的な期間は決まっておりません。

 都市計画で決まっているのは、住民に対して縦覧期間は二週間を設けなさいといった、いわゆる周知期間というものが決まっているだけですので、もし自治体の方の条例の手続で、本件の場合は東京都ということになりますが、都市計画審議会には評価書を付してやるということになると、その期間がどれくらいになるかは私どもの予知するところではありませんが、その期間を踏まえた形で決められていくものではないかというふうに承知いたします。

川内委員 これは、都市計画決定は東京都知事の何か権限らしいんですけれども、東京都知事というのはめちゃめちゃ権限ありますよね。もうオールマイティーですね。ちょっと、私、地方自治法を改正した方がいいんじゃないかと思うぐらいなんですけれども。

 では、国土交通省として、都市計画決定に当たって一般論としての考え方をお聞かせいただきたいんですけれども、中央防災会議などでは直下型の東京湾北部地震などによる液状化の被害というものの議論がされているわけでございますし、また、東京都の専門家会議の報告書でも、この液状化の問題というのは残っているよということが指摘をされておるわけでございますが、この震災時における液状化に対する安全性確保のための対策というのは、都市計画決定をする上でどのように考慮をすべきものであるというふうに国土交通省として考えているのかということをお聞かせください。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 都市施設ということに今回の市場等はなろうかと思いますが、都市施設は、都市計画の決定権者である市町村なり知事が、地域の実情を踏まえて、都市活動や良好な都市環境を確保する観点から、周辺の土地利用あるいはその他の都市施設、例えばネットワークであるとか、こういうものを勘案して決めていくということになります。

 今御指摘の安全性ということになろうかと思いますが、これは、都市計画を決定していく際の、例えば道路をがけ崩れが必ず起きるところにそのままつくることはしないというように、いわば当然の前提というふうに私どもは考えております。

 豊洲の新市場につきましても、私ども伺っているところでは、専門家により構成される技術会議というところで、今御指摘の液状化対策等の安全確保を含めて検討されているというふうに伺っております。今後、このような検討結果を踏まえて、都市計画決定権者である東京都において検討が進められるものというふうに承知をしております。

川内委員 国土交通省、そこは僕はちょっとごまかしがあるといつも指摘をしているんですけれども、液状化の対策をしますよというのは、震災時に土壌が液状化しても建物が倒壊しないように対策をしますよという意味であって、土壌中の汚染物質が噴き出すことを対策しますよという意味では決してないわけですよ、それは。そこは液状化対策をしますというと、何となく土壌中の汚染物質が噴き出さないようにしますよみたいに我々は思うじゃないですか。ところが、そうじゃないんですよ。建物が倒壊しないようにしますよというだけの話で、土壌中の汚染物質が噴き出さないようになんかできないわけですよ、それは液状化するわけですから。

 液状化対策というのは、土壌が液状化しても建物が倒壊しないようにすることを液状化対策というんでしょう。それだけのことでしょう。

石井政府参考人 ちょっと個別のことになりますので、私もにわかに判断がつきかねますが、一般論として言えば、私どもが液状化対策と言う場合には、建物等の安全性あるいは土木施設等の安全性を勘案したものを念頭に置いております。

川内委員 だから、さまざまに問題があるわけですよね。

 なぜこんなことを言うかというと、斉藤大臣、専門家会議の報告書にはこんなことが書いてあります。「仮に地下水中のベンゼンやシアン化合物が揮発して室内に侵入し、室内空気に含まれるベンゼンやシアン化合物が生鮮食料品の表面に付着している水分に溶け込んだとしても、その濃度はベンゼンが飲料水の水質基準の千分の一未満、シアン化合物が十分の一未満と非常にわずかであり、食の安全・安心の観点から見ても、悪影響が及ぼされる可能性は小さいと考えられる。」専門家会議はこう言っているわけですね。

 シアン化合物というのは、水に溶けると青酸カリなんですよ。青酸カリが付着しても、微量だから大丈夫ですよと言っているわけです。付着するということは認めちゃっているわけですよ、この専門家会議は。だけれども、微量だからいいんだと言っているわけですね。

 シアン化合物というのは、普通、自然界には存在しない物質ですよ。存在してはならないんですよ、水に溶けると青酸カリですから。それが、東京都が豊洲の新市場を計画しているとすれば、築地というのは世界じゅうの観光客の方が、日本でどこに一番行きたいですかと聞くと築地と。最近は一位ですから。それを、豊洲に移りました、豊洲に観光客が来て、このマグロは珍しいんですよ、青酸カリがついています、そんなことを言って市場が成り立つわけがないんですよね。

 私は、青酸カリが付着したマグロを取り扱うということが農水省的に、農水省は卸売市場整備基本方針というのをつくっていますから、それには食の安全、安心というものが卸売市場にとっては大事だよということを言っているわけですね。では、青酸カリが付着した水産物を売ることが食の安全、安心につながるのかということを農水省にちょっと御答弁いただけますか。

平尾政府参考人 お答えいたします。

 まず、水に含まれますベンゼンあるいはシアン化合物の濃度についての規制でございます。これは、水道法第四条に基づき定められた水道水の水質基準というのがあるわけでございます。これは、御案内のように、生涯にわたって飲用しても人の健康に影響を与えないように設定するというふうなことで決められた水準と理解しておるわけでございます。

 このため、私どもは、生鮮食料品に付着する水分、例えば水道水も同じでございますけれども、そういうものにつきましては、この水道水の水質基準を十分満たすものでなければならないと考えているわけでございます。

川内委員 今、大変なことを言ったわけです。基準を満たせばいいですよと言ったんですよ、今。これが農水省なんですね。だから汚染米なんかを平気で売るわけですよ。もうでたらめでしょう。だから農水省は解体した方がいいと言われるんですよ。

 食の安全、安心を、安全という意味においては、人間が一生それを飲み続けても大丈夫だと、科学的には安全だということは言えるかもしれません。安心という面において、青酸カリが付着している世界の築地のマグロを売ることが農水省として認められるんですかと聞いて、はい、基準を満たしていれば大丈夫でございます、そんな答弁がありますか。

平尾政府参考人 私ども、食の安全、安心は大事だというふうに理解しております。

 一方、水道水というのは、私ども、日常に飲用していただいているものでございます。その水道水の安全基準として、先ほどのベンゼンあるいはシアン化合物の濃度が決められているわけでございます。

 そうしますと、当然それは、私どもの健康、先生も含めて国民の皆様の食の安全、安心、あるいは健康に問題がないというふうなことで決められているものと私は理解しているわけでございます。ですから、それを前提とした考えをさせていただくというふうなことでございます。

川内委員 だったら、この場で農水省にお約束をいただきたいんですけれども、普通、我々が飲む水には青酸カリは絶対に含まれていませんよ。なぜかならば、自然界に存在しないからです。ところが、豊洲の東京ガス工場跡地のマグロには、もしかしたら付着しているんですよ。付着するんですよ、専門家会議は付着しますと言っているわけだから。

 そのことを、開設を認可するときは、リスクコミュニケーションをきちんとしなきゃいかぬ。都民なりあるいは国民に対して、東京都が移転しようとしている豊洲の東京ガス工場跡地の市場では汚染物質が付着します、ごく微量だが付着します、だけれども安全です、そういうふうにたくさんの人にちゃんと説明しますか。

平尾政府参考人 豊洲の新市場でございます。これにつきましては、委員も御指摘のとおり、国民の食生活や市場関係者の健康にも直接かかわる問題でございます。

 そういう観点から、私ども、東京都には、かねてから委員にも御説明をさせていただいていますように、食品の安全や信頼が確保されるように、科学的な見地から万全な対策を講じること、それから、対策の内容については消費者や国民への十分な説明を行って理解を得るように指導しているところでございます。

 引き続き、そういうことで進めさせていただきたいと思っております。

川内委員 これは、与党の先生方も、斉藤大臣を初めとする、所管は違うと思いますけれども、これが農水省ですよ。別に基準以下だったらいいんです、どうぞと言っているわけですよね。

 最後に、ちょっと時間がありますから田中康夫さんに、今のこの議論を聞いていて感想を手短に、これはもう信じられない、一体何を農水省は考えているんだということで、ちょっと御答弁をいただきたいと思いますけれども。

田中(康)参議院議員 皆様御存じのように、築地の市場というものは、データ的に、東京ガスが販売をすると言った段階でも、ベンゼンが環境基準値の千五百倍、シアンが四百九十倍を超えました。砒素は四十九倍でございます。水銀も二十四倍。砒素ミルク事件や水俣病のような悲劇をはるかに上回る数値。

 ところが、これはマイペンライだ、大丈夫だと、東京都が行って調べてみたら、ベンゼンは四万三千倍でございます。そしてシアンは八百六十倍でございまして、シアンが先ほどおっしゃった青酸カリでございます。そして、埋立地でございますから、水銀であったりベンゼンであったり、これは気化性のものでございますから、仮にアスファルトを敷いたとしてもそこからわき上がってきます。

 私、今回のこの問題というのは、数字の多寡ではなくて、マイケル・ポランニーが述べるところの人間の暗黙知というものこそが、まさに数字だけではない、政治判断のリーダーシップであろうと思っております。

 そして、この問題は、私、先般も実は国土交通委員会でも述べたんですが、今社会を揺るがしているのは金融工学であったり河川工学であったり。しかし、金融工学も、同じサイコロを振ったら同じように出るという確率のもとで、しかしそれはほとんどあり得ない。なぜならば経済は歴史現象ですから、全く同じことが二度と起きることはないわけでございます。

 にもかかわらず、金融工学上こう行きますと言って実際に破綻をすれば、それは、それをつくった人の責任ではなくてそれぞれ買った人の責任だと言って、金融の大家もいらっしゃいますけれども、だれも責任をとらない。河川工学も同様でございまして、科学は自然現象でございますから、二度と同じことは起きないわけでございます。ですから、そこにこそ暗黙知があり、そこにこそ、今までのような箇所づけというような政治判断ではなく、政治というものが暗黙知をもって判断しなければならないことが私はあろうと思います。これは恐らく大臣も重々御承知なことであろうと思います。

 官僚の組織というものは、よくも悪くも積み上げ型でございます。そのときにやはり多くの方々が不安を感じていらっしゃる。そのときに政治は暗黙知のもとでどういう判断をするのか。私は、今この危機の中で、この問題のみならず、あらゆる点で暗黙知を用いて的確な認識や迅速な決断や、そして明確な責任を持てる政治がどうあるのかと、その象徴がまさにここでございまして、一たんここまで動き出したから築地の跡地をどう転用するのかというような形で戻れないというのでは、これは、全国の方がいまだに疑問を感じていらっしゃる、一たん始めた諫早湾の干拓を、農水省の個々の職員の方も疑問を抱いていても二度と戻れない。これではまさに、私は、山本七平氏が述べるところの「「空気」の研究」で、だれもが疑問を抱いていたのにとめようと述べられず、天皇陛下に出撃の空気でございますと言ったことと同じであろうかと思います。

 大変長くなりましたが、これは極めて、今のこの政治が、私どもが政治不信の中で抱える象徴的な問題の一つであろう、このように思っております。

 川内議員の先ほど来の御質問には私は大変深く感銘をいたしまして、私も川内議員のような答弁の引き出し方ができるように、今後も勉強をいたしたいと思います。

 ありがとうございました。

川内委員 終わります。

水野委員長 次回は、来る四月三日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十四分散会


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