衆議院

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第6号 平成21年4月7日(火曜日)

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平成二十一年四月七日(火曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 水野 賢一君

   理事 小野 晋也君 理事 北川 知克君

   理事 小杉  隆君 理事 土屋 品子君

   理事 西野あきら君 理事 岩國 哲人君

   理事 伴野  豊君 理事 江田 康幸君

      上野賢一郎君    小島 敏男君

      木挽  司君    近藤三津枝君

      坂井  学君    鈴木 俊一君

      高鳥 修一君    中川 泰宏君

      平田 耕一君    藤野真紀子君

      古川 禎久君    馬渡 龍治君

      山本ともひろ君    末松 義規君

      田島 一成君    田名部匡代君

      三日月大造君    吉田  泉君

      古屋 範子君

    …………………………………

   環境大臣         斉藤 鉄夫君

   環境副大臣        吉野 正芳君

   環境大臣政務官      古川 禎久君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   木下 康司君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   谷津龍太郎君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       原  徳壽君

   環境委員会専門員     吉澤 秀明君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月七日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     高鳥 修一君

  船田  元君     平田 耕一君

  村井 宗明君     三日月大造君

同日

 辞任         補欠選任

  高鳥 修一君     あかま二郎君

  平田 耕一君     船田  元君

  三日月大造君     村井 宗明君

    ―――――――――――――

四月六日

 自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)

 環境の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

水野委員長 これより会議を開きます。

 環境の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長米田壯君、財務省主計局次長木下康司君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長谷津龍太郎君及び環境省総合環境政策局環境保健部長原徳壽君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

水野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

水野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也君。

小野(晋)委員 おはようございます。

 私は、実は次期の総選挙に出馬しないということを表明いたしております。したがいまして、この質問席に立たせていただくのも恐らくきょうが最後ということになるんだろうと思います。ぜひきょうは斉藤大臣と率直な意見交換をさせていただいて、きょうのこの質疑が環境行政関係者に対する遺言となる気持ちで行いたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 まず、私の基本的な考え方を少し述べさせていただきたいと思うのでございますけれども、このごろ、百年に一度の危機という言葉がよく使われます。先日の江田委員の御質問でも、この百年に一度というまくら言葉を使われて質問を始められたことが記憶にあるわけでありますけれども、百年に一度というのは一体どういう意味であるかということをるる考えてみますと、小さな循環論的な意味での変化ではあり得ないということを意味していると解釈してよろしいんだろうと思うのですね。人類の歴史の中において非常に大きな変化がこれから起こってくる、それは恐らく文明次元における変化であろうというふうに考えるべき問題だと思うのであります。

 振り返りますと、人類の歴史上、多くの文明が盛衰を繰り返してまいりました。多くの文明が次々とその役割を果たしながら、人類社会を進化させてきたと評価することができるのであろうと思うのでございます。その歴史を振り返るときの教訓というものは、必ず何かの中心軸を持っていたということが言えるのだろうと思うのであります。

 つまり、何らかのものがその中心役を果たし、そこに経済ですとか社会のさまざまな要素、教育、いろいろなものを巻き込みながら新しい人類の文明社会を築き上げてきたというふうにとらえてまいりましたときに、私は、基本的にこれからは環境問題がグローバル社会における大きな文明転換の中心軸になる可能性をはらんでいる、こう評価していいと思うのであります。

 随分大時代がかってくるのでありますが、かつて孔子は、政をなすに徳をもってすれば、北辰、北極星ですね、北辰のその場にいて衆星のこれに向かうがごとしと言い、徳治政治を訴え、徳こそがその中心になるものだと語ったのでありますが、これは恐らく、小国寡民という当時の社会の中にあって言うことができた論なんだろうと思います。

 その後、活動エリアが拡大される中でどういうものが力を持ってきたかといえば、文明学者でありますところのアルビン・トフラー氏によれば、当初は武力である、軍事的な力を持ち戦争に勝てるところがその力をもって文明を動かしたという評価を行い、そしてその次には金力、経済力ですね、経済こそがその中心軸である。現代は何であるかというと、トフラー氏いわく、知恵であるというふうなことを言われるのであります。

 この知恵というものを軸に考えてまいりますときに、私はまた三つの基本的な要素が存在すると思うのであります。その一つは、多くの人が深刻に課題を共有できるということが条件として必要だと思いますね。二つ目には、普遍的な手段をもってその問題を解決する道筋が理解できる、そういうものをつくることができるという問題が二つ目にあります。それから三つ目には、その取り組みが一過性のものではない、その取り組みを継続的に行うことを通して蓄積的に世の中の変化を導くという要素を持っているということ、こういうふうなことが満たされるときに大きな文明転換が起こる、こういうふうな気持ちがいたしておるわけであります。

 そこで、先ほど提起いたしました環境の問題でございますけれども、まさに現代の時代において、いろいろ疑義を唱える方もまだ一部にはいますけれども、その深刻な問題認識という面で見ますならば、地球温暖化問題を中心とするこの大規模な環境問題が人類の存亡にかかわる問題だとかなり幅広く認識されているというので、第一条件を満たしておるわけであります。

 それから第二の条件として、その原因と結果の間を結びつけるものがかなり明瞭になってきていることを通して、例えば二酸化炭素排出量を減らしましょうといったような、具体的であり、しかも普遍性を伴うところの解決策が我々の前に提示されている問題がございます。

 それから第三点目に蓄積性の問題を述べましたけれども、この取り組みは、決してきょうこれに対策を打てばそれで終わるという問題ではなく、一年で終わる問題でもなく、十年かかり百年かかる、こういう長大な期間を想定しながら取り組まねばならないという意味での条件も満たすということから考えますと、まさに環境問題こそが、今人類が知恵を絞り、また、さまざまな努力を重ねながら、新しい文明の地平を切り開くための中心の軸として動いていく要素になってくる問題である、こういうふうな認識を持つことができるのではなかろうかと思うわけであります。

 その大きな時代の潮流の中にあって、大変化と言われる潮流の中にあってこそ、いろいろな経済問題が発生し、また、人の心の問題が発生し、さまざまな社会問題が発生する。すなわち、これら全体を巻き込みながら、環境問題が軸となりつつ、全世界的であり、また、総合的な課題の解決に立ち向かっていくことが二十一世紀の時代というものを特色づけるのではなかろうか、これが私自身の見解でございますけれども、この点、非常に見識深く、幅広く問題に取り組んでおられる斉藤大臣、いかなる御所見をお持ちになっておられるか、まずお尋ねをしたいと思うのであります。

斉藤国務大臣 小野委員とは平成五年初当選以来ずっと一緒に活動をしてまいりまして、当初は与野党分かれておりましたけれども、お互い宇宙の出身ということもあり、最初は宇宙の未来を考える会というのを超党派でつくって、まさに地球問題、環境問題を一緒に勉強してきた仲間として、次回の選挙には出馬されないということで、小野さんのような方が国会からいらっしゃらなくなるのは大変残念な、寂しい思いでございますけれども、今お話しになったような基本的な考え方で、今の環境問題がこれからの人類のあり方を考える上で軸になっていき、そこを中心に新たな文明を切り開いていかなくてはいけないのではないかという思いに私も一〇〇%同意でございます。

小野(晋)委員 斉藤大臣からは国政を去るのは非常に残念だと、惜しまれながら去っていく幸せを今感じているところでございます。

 政治家というものは、やはりそのとき、場の中で、いかにみずからを尽くし、生きるかという職業なんだろうと私は思っております。ですから、この時代性の中にあって、一体いかなる振る舞いを行うことが最も国家のために役に立つのか、また、人類社会のための貢献をなし得るのか、そんな観点から考えるべき問題でありまして、ポストがいかなる権力を持つか、また、いかなる資金配分力を持つか、こういうふうな目先のことにとらわれるべきではない、これが私の信念でございまして、現状のこの日本政治の姿、日本社会の姿を見る中にあって、私は、政治家として選ぶべき道は在野の政治家である、こういう決意を持って去っていこうとしているわけでありますので、決してこれは後退ではなく前進である、こういうふうな御理解だけはお願い申し上げたいと思う次第なのであります。

 そこで、政治家論に少し触れさせていただきましたけれども、この時代に政治家というのは一体いかなる役割を果たすべきものであるのかということを考えてまいりましたときに、私は、大きく三つの役割を果たすことが極めて大事だと思うんですね。

 平常時、世の中が非常にうまく動いているときであると、それは機械的な意味合いの仕事を中心にする、また、儀礼的意味合いの仕事を中心にするような政治というものが大きく取り上げられるべきかもしれませんが、危機的な状況、百年に一度の危機と言われるような時代にあって政治家は何をなすべきか。そこで私は三点御指摘を申し上げたいと思うのであります。

 一つは何であるかというと、文明的視点ということを申し上げましたけれども、この文明的な変化が一体いかなる変化であり、我々はどこへ流れていこうとしているのか、また、その流れの中にあって、いかに国家や人類社会を誘導していくことができるのかというような意味での、文明に対する挑戦なのであります。この文明レベルの挑戦こそが政治の本質であり、与党と野党が国会で言い争っているような姿というのは微々たるものにすぎない。恐らくこれは、国民もそういう観点で今の日本政治を見ているんだろうと思うんですね。ですから、文明に対する研究、検討と、その議論を深める、これが必要なことだと思います。

 それから二つ目には、現実、現場の中からの具体的問題に我々がいかに答えていくかという問題にもっと真摯に取り組む必要があるだろうという気持ちがしてなりません。この点はまた後ほど詳しく述べさせていただくつもりでございますけれども、その現実の中にみずから身を投じながら、そこに持てる限りの知恵を尽くし、それを集積しながらこの国の未来のビジョンを描く、こういう具体的な仕事を進めていくというのが二つ目の課題であります。

 それから三つ目には、この文明の議論にしても、また、この国家ビジョンを描く作業にしても、ある意味では未来の問題を取り上げるわけでありまして、未来に一つの理想を描き夢をつくり上げる、こういうものと同時に現実というものが今あるわけであって、この現実と未来の理想というのは、当然のことながら大きなギャップをはらんでいるわけですね。そのギャップをはらんだものが実現されなかったら、この夢は虚言になってしまうんですね。

 それを具体的な実のものに変えていく役割を果たしているのは何だといえば、人なんですね。そこに人がいるから、理想に向かって挑戦し続ける人がいるからこそ、大きな夢を語って、それが現実に変わっていくことができる。つまり、その具体的な行動を起こす人を育成すること、これが政治に課せられた三つの基本条件であると私は認識をいたしておるのであります。

 非常に真摯に政治活動に取り組んでこられた斉藤大臣、こういう文明への挑戦、そして現実、現場の問題に対する解決への取り組み、そして人の育成、これが政治家の三条件だと思うのでありますが、御見解はいかがでございましょうか。

斉藤国務大臣 その三つの基本的な姿勢、資質、また方向性というのは、政治家の非常に重要な三つの資質である、また考え方であるというのは、私も同意をいたします。

 ただ、自分を振り返ったときに、努力をしているかということについては甚だ反省すべき点が多い、このように感じています。

小野(晋)委員 そこで、先ほど三つの観点を挙げましたが、それぞれについて御質問したいと思うのであります。

 まず第一に、文明問題であります。

 私は、これまでの近代文明、十五世紀末からの大航海時代以降、西洋の文明というものが世界の中で非常に大きな影響力を示し、指導する立場をとり続けてきた、こういうふうな気持ちがするのでありますが、この西洋諸国が持った文明の一番の基本の問題というのは、人為的取り組みがその秩序を形成するに十分な力を持ち得るんだという、その思い込みにあったという気がしてならないんですね。だから、人が自然を壊す、人がいろいろな社会の設計を行う、それに従えば人間はすべて幸せになれるというふうなことを考えたわけでありますし、また、平和だって、そういう観点で設計すればちゃんと実現できるというふうに思い込んできたわけであります。

 ある一定期間まではそういうものが非常に有効に働いた期間があったような気持ちが私はいたしますけれども、残念ながらこの近年の状況を見ますと、例えばイスラエル、パレスチナの問題にしたって、もう六十年を経て、あれだけ努力をしながらちっとも解決に向かっていないという現実があるわけでありますし、経済の格差問題にしても、これもなかなかその解決策が生まれてこない。

 また、社会のさまざまな問題、特に心の問題をはらむような課題に関しては、全く無力と言っていいような状況が続いてきているということを考えますと、これまでの近代文明と言われたものの見直しが迫られている、それが先ほど言った百年に一回の大変化というものの特質ではなかろうかという気がしているわけでありますが、そんな点から見ましたときに、私は改めて、ある意味では東洋思想と言われるものかもしれないが、天地自然であり、天と言われるようなものをもっと尊重する思想というものを持っていくことが必要ではなかろうかと思うわけであります。

 例えば、西郷南洲翁が遺訓として残した言葉の中に、人を相手にせず天を相手にせよ、天を相手にしておのれを尽くして人をとがめず、我が誠の足らざるを尋ぬべし。こういう言葉は非常に日本人に響く言葉だと私は思うわけであります。

 この人為性というものを超える、例えば経済の問題にしても、経済合理性がすべてだみたいなことを今言われますけれども、人の心がどこに行ったんだと、今の経済の議論の中で。経世済民といえば、経は世を貫くたて糸ですね、世を貫くたて糸を通してこの世のすべての人を助けていこうというのが経済の語源のはずだったわけでありますが、そういう理念がどこかへ置き去りにされてしまい、ただ数字の上で、一株当たりの利益は幾らだとか、労働力一人当たりの生産性が幾らだとか、こういう基準ばかりで物事が図られている世界というのはやはり基本的に間違っているんだ、こういう認識を改めて持たねばならないのではなかろうかと思うのであります。

 私は、そんな観点に立ったときに、改めて、天地自然に足場を置く文明社会の理解と構想が必要である、環境問題を軸にしてこういう構想が生まれてくるんだ、こういう視点を持っておるのでありますが、大臣の御所見をお聞かせいただきたいと存じます。

斉藤国務大臣 いわゆる西洋的な物の考え方、二元論的な考え方と東洋思想の考え方があって、現在の文明の行き詰まりは、一神教的な、また二元論的な物の考え方に原因があるのではないかということはよく私も理解をしております。

 であるならば、では東洋的な考え方をもとにいろいろな社会のシステムをつくっていく、政治を行っていくということも当然考えられるわけでございますけれども、まさに今この社会的な混乱の中でその試みがこれから行われていく、今は大きな転換点なんだろう、このように思っております。

 私自身は仏教徒でございますので、基本的には仏教の宇宙観というものを根底に持って、その上で環境問題をとらえていっておりますけれども、現実問題にそれを適用したときに、小野委員もそうです、私もそうですけれども、この西洋二元論的考え方に基づいた科学技術を勉強してきて、それを解決しようというその間にいろいろな矛盾を感じているということも確かで、これをどう乗り越えていくのかというのが、今、人類に課せられている課題なのではないかと思います。

小野(晋)委員 大臣、深い見識からの御答弁ありがとうございます。

 ただ、私は、仏教徒ということも述べられた、科学技術者ということも述べられて、そこの根底に二元論があるということも述べられたけれども、これは人間がつくった観念でありまして、あくまで天地自然は一つなんです。天地自然というものに立ち向かうときに、キリスト教徒であろうと仏教徒であろうとイスラム教徒であろうと、その他さまざまな宗教、またいろいろな思想、信条を持たれる方々も、すべて天地自然は同じものなんですね。

 つまり、そこに原点を置いて考えれば、一党一派がどうだとか宗派がどうだとか、こういうことを超えた全人類共通の足場をつくることができる。そこにこそ地球時代の、この地球全体が一つになって動こうとする時代の基本思想が生まれるはずでありますし、その基本思想、もう一党一派に偏するような議論ばかりやるから常にそこに対立が生まれ、みずからの利害がどうだこうだというようなせせこましい議論をしてしまうのでありますが、もっとおおらかに、我々が生きている世界は一つである、この認識に立ってそこに生きていく人類の未来の絵を描くということが必要なんだろう、こんな文明観をこれから樹立することにまたお互い努力をしていかねばならない問題ではなかろうかという気がしているわけであります。

 次に、ビジョンの問題についてお話をさせていただきたいと思うのでありますが、そこでちょっと一つ御紹介申し上げたいのは、先日の永田町人間学講座でフランクルを取り上げて議論させていただきました。

 ビクトール・フランクルというのは、ウィーンに生まれられた精神科医であり心理学者であって、その人はユダヤ人だったものですからナチスの強制収容所に収容される。そこでみずから被収容者としての体験の中で、人間は何によって生きるのかということを探求された方でございます。その収容所の厳しい環境の中で、倒れいく人は倒れていった、生き残る人は生き残っていった。それが世俗、通俗の考え方とは全然違っていたというんですね。

 普通でいえばリーダーシップを振るい、大きな声でしゃべり、肉体的な体力もありそうな人間は生き残るだろうと思うのでありますが、収容所の中では全然違う。むしろ逆だったというんですよ。なよなよとして弱々しそうに見えた人の方が逆にその収容所で生き残った。それは何だ。みずから深い心の中に信ずるものを持つか持たないかだと。希望を未来に持てる人間は生き残った、希望を失った人間はたちまちにその厳しい環境の中で崩れていったということが書かれるわけであります。

 その議論を経て、人間には生きる意味こそがその人生の本質であるということを結論づけるわけでありますが、そこにこんな文章があります。

  ここで必要なのは、生きる意味についての問いを百八十度方向転換することだ。わたしたちが生きることからなにを期待するかではなく、むしろひたすら、生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題なのだ、ということを学び、絶望している人間に伝えねばならない。哲学用語を使えば、コペルニクス的転回が必要なのであり、もういいかげん、生きることの意味を問うことをやめ、わたしたち自身が問いの前に立っていることを思い知るべきなのだ。生きることは日々、そして時々刻々、問いかけてくる。わたしたちはその問いに答えを迫られている。考えこんだり言辞を弄することによってではなく、ひとえに行動によって、適切な態度によって、正しい答えは出される。生きるとはつまり、生きることの問いに正しく答える義務、生きることが各人に課す課題を果たす義務、時々刻々の要請を充たす義務を引き受けることにほかならない。

こういう言葉なんですね。

 これは少し解説が必要な文章なのかもしれませんが、私たちは、人生を生きるときに、自分の意思に基づいて周りが動いてくれなければその状況は異常であると判断する。それでこたえてくれない世の中であれば自分はもう生きている価値がないというふうに決めつける人がいて、その結果が、十一年続いた三万人を超える自殺の問題につながってきているんでしょう。

 しかし、フランクルは言うんですよ。そうじゃないんだ、人間が生きている意味というのは、周りのこの環境があなたに与えてくるものなんだ、周りの環境があなたに問いかけを常にしているんだと。

 いろいろな問題の姿をとることもあるんでしょう。いろいろな体験を通してそういう場面がつくられることもあるのでありましょうが、それに対してあなたがいかに答えるかということが問われている、その問題が生きるということなんだ、こういうふうに切りかえて考えていくべきなんだと。そうすると、この世に生まれてきたどんな人であれ、すべて周りの環境の中からあなたに求めるものがあるはずなんだ、どんな人であっても生きている意味のない人生などはないんだ、周りがあなたに意味を与えているのを気づかないだけじゃないか、どんな人であっても生きる価値のない人生などはないのだ、どんな人であっても生きる場所のない人生もないのだと。これがフランクルの思想の結論なんですね。

 だから、その問いかけ方を改めるべきなんだ。我々人類も、先ほど申し上げた文明の議論と相通ずるものが出てくるわけでありますけれども、人間がこういうふうに生きたいんだ、環境がこれではまずい、こういう議論ばかりやってきましたが、そうじゃない、地球という全体の中から人間がどうあるべきかということが逆に今問いかけられているんだ。この地球という、ガイア理論によれば一つの生き物だというふうに言われるわけでありますけれども、この地球というものが一人一人の人間に、一つ一つの国家に問いかけているんだ、あなたはこの地球の上でどういう責任を果たすつもりですかと。

 こういう観点に立ってこれからのビジョンを描き出していくということが必要でありますし、そこに人類がこれから新たな知恵を開いて、さらなる精神面を含めた大いなる成長に進んでいく基本的な考え方がある、こういうふうな気持ちがするのであります。これに対して大臣はどうお考えか。

 そして、この観点は、人間に対する非常に深い理解がなければ本当に生まれてこないんですね。人間はいかなるものであるのか、人間を取り巻く環境でいかに人間は生きていくべきものなのか。それはもう、数値でCO2濃度が幾らだとか亜硫酸ガス濃度が幾らだとか、こんな問題じゃないんですよ。もっと総合的で根本的な観点から人間いかに生きるべきかということに足場を置いて環境政策を考えないと、国民の魂に、人類の心に響く政策などはつくることができない。

 そんな観点からすると、これから環境省の中でも、ぜひ斉藤大臣を中心に、人間を学び合い、それをみずからのものにするというような動きをしていく必要があるのではないか。これは決して一党一派にかかわることじゃありません。もっと根本的な問題だと私は理解するのでありますが、御見解をお聞かせいただきたいと思います。

斉藤国務大臣 まさに生きることの意味ではなく、生きることに何が求められているか、そこを問えというのは大変深い言葉で、そこに人間が環境の中で生きていることの本当の位置づけを見出さなくてはならないのではないか、そして、そこを根底に置いて環境政策ということを論じなければ魂に響く環境政策は打ち出せないのではないかというお話、フランクルの言葉を引いてのお話、非常に深い言葉なので、今すぐ私わかりました、理解いたしました、こういうお答えをするわけにはいきませんけれども、しっかりと考えていきたいと思います。

 私自身は、自分が生きることの意味は一体何なんだろうかというようなことをよく考えますけれども、その逆方向の考え方で、実は正直申し上げて大変ある意味でショッキングな刺激的な新しい考え方で、自分自身でしっかりちょっと考えてみたいと思います。

小野(晋)委員 最後に、人の育成という問題を取り上げました。

 先ほども少し触れましたけれども、世の中で理想と現実にギャップがあるからだめだというふうなことを安易に語る人がいますが、これはとんでもない議論だと思うんですね。私たちが生きているということは、常に、みずからが理想を持つならば現実との間にギャップがあるのは当たり前のことであります。そのギャップが放置されないのはなぜかといえば、その理想と現実の間にその人間が身を横たえ、理想と現実をつなごうという努力をするから、その両者がつなぎ合わされ、現実を理想に向けて一歩でも近づけていくことができる、そこに人間の輝きがあると考えるのが私は本来の考え方であると思うのであります。

 そこで、私は、有為にして有徳なる人を育成するということも必要である、これが政治家として大きな仕事であると考える中で、「夢出せ、知恵出せ、元気出せ」という三つのスローガンを掲げる運動を展開いたしております。頭文字をとれば、ゆちげ運動というふうになるわけでありますが、その中で、基本的な精神を三つ取り上げております。

 一つは、私たちは困難を語るよりももっと多くの魅力的な夢を語ろう。今は困難ばかり語っていますけれども、夢を語ることができるのに夢を語ろうとしないのは、私は怠慢のきわみだと思っているんですね。どんな状況にあっても人間はみずからの生きる道を探ることができるわけでありまして、多くの夢を語るということが必要であります。

 二つ目は、私たちはお金で問題解決をするという発想ではなく、知恵によって問題解決を図っていこう。お金がないからできないというふうに言ってしまえば、もうそこで立ちどまってしまうんですね。そうじゃない、我々にはお金がなくても知恵がある、こういう決意を持つことが必要であります。

 それから三つ目には、私たちは法律、制度などによって状況を動かすのではなく、元気、誠意と情熱と言いかえておりますが、これによって人を動かし社会を動かしていこう。こういう観点に立てば、外部の環境がいかなるものであるかということを主原因としてできるできないを判断するのではなく、みずからの主体的意思においていかなる対応ができるか、周りのさまざまな問題について私はどうそれに答えることができるかというふうな視点を持つことができると思うのであります。

 環境行政がこれからの世の中を動かす中心軸となるためには、環境行政自身がこの発想を持たねばならない、こういう気持ちがするわけでありますが、御所見をお聞かせいただきたいと思います。

斉藤国務大臣 ゆちげ運動の基本的な考え方、私、オークツリーを毎回読ませていただいておりまして、その考えの深さと、あと本当に読んでびっくりするのは、小野さんの文章力のすごさ、確かさというのを感じておりますけれども、まさに夢と現実を結びつける、そこに政治家がいる、そのためにお金がないときにはあらゆる知恵を出しながら、元気を出しながら、夢、知恵、元気、政治家として本当に大事なことだと思います。

小野(晋)委員 大臣、どうもありがとうございました。

 遺言は以上でございますが、最後にもう一言触れさせていただきます。

 最近私が気になっている言葉、これは中国の詩人であります陶淵明の言葉なんですね。帰りなんいざ、田園まさに荒れなんとす、何ぞ帰らざる。この詩をつくり、それで故郷に戻っていくんですね。官職を辞して故郷に戻る。この田園まさに荒れなんとすというのは、自分が戻ろうとするふるさとの田園が荒れているというふうに言葉では書いているけれども、実は、社会そのものが荒れているので、むしろその荒れた心をいやすために、またそれを取り戻すために私はふるさとに帰るんだと、これは後段の方を読むとそういう表現になってきているのであります。

 ならば、我々日本人は、日本の国は、どこへ今から戻ろうとするんでしょう。帰りなんいざ。どこに帰ろうとするのか。その帰ろうとするところを描き出していくことを通して、この現在の社会の混迷を私たちは終息させることができる、人々を幸せにすることができる、それを行えるのが環境省のこれからのとうといお仕事である、こういう気持ちがいたしますので、ぜひ皆さんのこれからますますの御活躍を心からお祈りして、遺言とさせていただきます。

 ありがとうございました。

水野委員長 次に、末松義規君。

末松委員 民主党の末松でございます。

 ただいまの小野晋也先生のお話に聞きほれておりまして、本当にすばらしい、こういった議論を国会でもっともっとやっていくことが我々日本を本当によくしていくもとになると思います。その意味で、今の小野晋也先生のお話に心からエールを送りたいと思います。

 もうちょっと言わせていただければ、小野先生はフランクルを引いて言われましたように、私ども人間というものがどこから来てどこに行くのか、こういう根本的な問いでございますし、我々のある意味での修行の場なのかもしれません、この三次元という世界が。そういった世界が、近代文明によって構成員の心が荒れてきた、その荒れてきたことが環境を荒らしていくというふうな形につながってきているんだろうと思います。そういった意味で、心がいやされないと、あるいは満たされないと環境も満たされない。同時に、その荒れた心が地球全体を荒らしてきたことによって、我々地球という生き物そのものが今度は人類の生存に対して危機的な状況になってきた、こういったことは一体化しているということでございます。

 そういったことを素直に感じながら、そして人間の幸せというものがいかにあるべきか、常にそこを我々政治家として考えていかなきゃいけないと思っているわけでございます。その非常に壮大なレベルと違って、私の質問は今度は極めて現実的な問題に移っていくわけでございます。そこは御容赦をいただきたいと思います。

 私、政治というものは人助けということを基本としておりますので、その中で、先ほど、ゆちげ運動というすばらしい運動を御提唱されておられましたけれども、元気が出せない人がいる。環境の健康被害によって元気が出せない方々に対して、我々社会がやはりそこはしっかりと助けていかなきゃいけない、そういった思いから、前回、茨城県の神栖の毒ガスの被害対策についてお聞きをしたわけでございます。

 そのときに大臣の方から、しっかりと、広島県の忠海の、国の従業員に対する救済と同レベルの救済をやっていくべきだというお考えが示されたことに対して、私は大変感動したわけでございます。その場で、感動しましたと申し上げました。そこを被害者の方々にお伝えしたら、非常に光が見えたということで大変喜んでいるわけでございます。そういったことを、私の政治家としての立場から言わせていただければ、それをきちんと今度は環境省全体として、あるいは政府全体として進めていっていただくことが必要だと思いますので、その観点から質問させていただきます。

 まず、ちょっと宿題になるんですけれども、歯の問題ですね。特にお子さんの歯が非常に大変になったということの御答弁の中で、事務方というか政府側から、しっかりとそこは一回調べてくださいと私の方で言ったら、これは原さんだったと思いますけれども、「臨床検討会あるいはそのワーキンググループの方に申して、的確な調査をしてみたいと思います。」と。そして私は「ありがとうございます。」と言ったのでございますけれども、その後どういうふうになっているか、お聞きしたいと思います。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 前回の委員会で御指摘のありました歯への影響につきまして、平成二十一年度の第一回臨床検討会を開催する際に御議論をいただく予定にしております。

 現在、その開催に向けて、過去の健康手帳保持者からのさまざまな聞き取り調査の結果や、あるいは砒素による歯への影響事例の検索、それから動物実験結果の再調査などの準備を私どもで行っております。通常、第一回の検討会は毎年度五月ないし六月ごろに開催しておりまして、今年度につきましてもできるだけ早期の開催を目指して、私どもで調べたさまざまな結果についてお諮りをしていきたい、そのように考えております。

末松委員 五月、六月というのは、それまでにいろいろな準備を、調べるということですね、ちょっと改めて。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 過去にいろいろとさまざまな研究がございますので、そういう中にこういう砒素と歯の関係、影響があったのかどうか等々について、まず、会議を開きます前にやはり資料を準備しなければいけませんので、そういう意味で過去の事例あるいは神栖におけるいろいろな方々からの聞き取り、そういうような中で歯の問題があったかどうか、そういうのも今整理をして検討会に諮って、その結果、さらに細かく調査が必要であれば、その際にはそのように対応していきたい、そのように考えております。

末松委員 数週間前に現地調査を民主党で行いましたけれども、そのときにその問題を訴えられる方がおられましたので、その方にも、あるいはその方の関係を含めて一回現地に行っていただいて、ぜひそこでの聞き取り調査もやってください。お願いします。

原政府参考人 具体的にどの方かというのをまたお聞かせ願った上で、さまざまな健康相談等もやっておりますし、保健所等でも訪問等をやっておりますので、そういう中で対応していきたいと思っております。

末松委員 あと、警察の方がおられると思いますけれども、この原因について、そこは茨城県警とも協力していくんだというようなニュアンスの答弁をいただきましたけれども、その後、茨城県警の方あるいは警察の方でどういうふうに対応しているのか、お聞きしたいと思います。

米田政府参考人 お尋ねの事件につきましては関係者から告訴が出されておりまして、これを受理して、捜査を進めております。

 告訴のうちの一つの業務上過失傷害につきましては、平成十八年十二月に検察庁に送付をしております。もう一方の殺人未遂罪でございますが、問題になっておる物質、ジフェニルアルシン酸、これが旧日本軍の毒ガスに由来する可能性があるということで、その関係の資料を広範に集めまして、また、現地に捜査員を派遣するなど、事情聴取にも努めてまいっております。

 その過程で、旧日本軍にこれを納入していたとされる民間会社あるいは終戦後払い下げを受けた可能性がある会社などに対する捜査も進めてまいりました。一方、現地にはコンクリート塊がございます。これの分析、鑑定、それからその中に異物も含まれております。その異物から犯人にたどり着けないかという捜査もしているところでございます。それから運搬手段につきまして、生コンクリート会社あるいは生コンミキサー会社、こういったところに対する捜査も進めているところでございます。

 現在、茨城県警において鋭意捜査を進めておりますが、現在までのところ、まだ被疑者の特定には至っておらないということでございます。

末松委員 そのことは前回も聞いたわけですけれども、警察庁の方から茨城県警の方には、国会でこういった議論があったということも含めて、何らかのお話をしていただいたんでしょうか。

米田政府参考人 茨城県警に対しましては、国会においても大変関心の高い問題であるということで、鋭意捜査を進めてくれるようにお願いしておりますが、県警の方は、そんなことを言われるまでもなく自分たちは一生懸命やっているということでございました。

末松委員 またこれについてはお聞きしますので、捜査の進捗状況はぜひお願いしたいと思います。

 そこで、大臣の方にお伺いします。

 忠海ですね、広島県の忠海、大臣の御地元でもございますが、そこで戦前から政府の工場で働いていた毒ガスの障害者に対する救済対策、これと同等の救済が与えられるべきだということで、そこで私も関係者の方から、及びそれ以外にも資料をいろいろといただいて、研究をしてみたんでございます。

 ちょっと私、驚いたのは、この忠海の、毒ガス被害者の救済の制度というのが一九六八年にできているんですね。これは、戦前からこういった問題が出てきたと思うんですけれども、一九四五年から二十三年ぐらいを経てようやく救済対策がなされている。その間にも、死亡された方もおられるし大変悩んだ方も、あるいは御苦労された方いろいろおられると思うんです。政治が、国民全体が厳しい状況だったんでそこまで余裕がなかったと言われればそうなのかもしれませんけれども、そういったことができる状況になったらすぐにやっていく、そこが必要なんだと思います。

 まずちょっと、これは大臣として部下の方にそういう形で同等の救済措置をとるように言っていただいたかどうか、そこは大臣から一言お願いしたいと思います。

斉藤国務大臣 実は基本的に今回のこの問題について、被害に遭われた皆さんが安心して治療にかかっていただけるように、大久野島の場合と実質的に同等の治療等の措置をいたしますという基本方針は既にございました。

 ということで、先ほど感動したと言っていただいたんですけれども、そう言っていただくのは大変ありがたいんですが、基本的にそういう方向で進んでいたと私は理解をしております。

 先日の末松委員の質問を受けて、改めてそういう基本的な方向で進むということを確認したところでございまして、当然そのように指示をしているところでございます。

末松委員 ちょっと今の御発言ですけれども、忠海での軍需工場の被害者救済、行政としてこの方向に行く、その方向性だということで確認させていただいてよろしいですね。

斉藤国務大臣 そのとおりでございます。

末松委員 私の方でいろいろとチェックをしてみたんですね。そして二〇〇三年六月六日の閣議了解、これは茨城県の神栖における毒ガス被害者の救済、対策はいろいろあります。その中で救済事業、これは今医療手帳なんかが百五十四人ですか、現在そういう形で配付されていると聞いていますけれども。

 一方、忠海の大久野島の被害者の医療手当が平成十九年度末現在で二千六十八人というふうに伺っているんですね。そういった意味で、被害救済はこちらの方が対象人数は非常に多いということなんでございます。そこの中で、この違いを私も調べてみたんですね。そうすると、やはりかなり大久野島の軍需工場の被害者に対する救済レベルの方が高いということがわかったわけでございます。

 まずはちょっとお聞きするんですが、政府として、忠海の救済措置と今回の神栖の救済措置の違いは何なのかということからまず御説明いただきたいと思います。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 救済措置を比較する場合、三つの大きな視点があるのではないかと考えております。

 一つは、この前も議論になりましたけれども、救済措置の実施期間の問題、それから二つ目は救済の対象となる方とそれからその症状の問題、三つ目は具体的な救済措置の内容というふうに考えております。

 救済措置の一つ目の実施期間につきましては、御承知のとおり、私どもは一応五年あるいは三年という期限を切って、そこで改めて考えていくという形をとっております。一方、大久野島関係のものにつきましては、一応恒久的措置という中で、それぞれの手当については年限を限って、三年あるいは五年ごとに確認をしていくという形をとっているというふうに聞いております。

 それから、二点目の救済の対象となる方及び症状の問題でありますけれども、これは私どもは当時、広く住民の方々に砒素の濃度をはからせていただきまして、明らかに砒素が含まれている地下水を飲まれた方につきましてはすべてその対象としております。また、医療の給付についての症状につきましては、明らかにほかのものでない限り、その対象としております。

 それに対しまして、大久野島の方は、原因物質が明らかな猛毒ガスということでありまして、呼吸器症状あるいは皮膚の症状がある方を対象にしておって、そのうち、例えば皮膚がんであるとか呼吸器系のがんであるとかあるいは消化器のがんでありますとか、そういう方々の対象の中で、限られた症状について給付をするというふうになっていると承知をしております。

 また、救済措置の具体的な内容としましては、医療費の自己負担分の支給でありますとか、あるいは、名称はいろいろありますけれども健康管理のための手当等について、それはそれぞれのところで、金額の多寡はございますが給付をされているというふうに承知をしております。

末松委員 今、平成十九年現在で、大久野島の方、介護手当というのは毎月七万とか出ているときがあるんですけれども、これを受けている方がゼロ人なんですね、一人もいないんです。わかる範囲で結構ですけれども、つまりそういう重症の方の特別の手当というのが六十四人、私の方の資料では平成十九年三月末現在でいるんですね。その方々は六十四人いるんですが、介護が必要な方がだれもいないんです。これはどういうことなのかとちょっと疑問に思ったんですが、わかる範囲で答えていただけますか。

原政府参考人 それは共済組合でやっているのと厚生労働省でやっているのと若干制度は違うようですが、詳細についてはちょっと承知しておりません。

末松委員 そうしたら、詳細がわかったら私の方に教えていただけますか。そういうのがあったら、この委員会でまたやってもよろしいですけれども。

 つまり、対象は二千六十八人と非常に多い。神栖の場合は百五十七名で、三名が交通事故で亡くなられたということで今百五十四名ですか。ということで対象者は今のところ少ないんですが、この方々が現地調査に行っても、非常にやはり全身神経系がやられていることがあって、本当に困っていて、仕事にもつけない、あるいは集中力がない。そういったことで、私どもも御要望に対して何とかせねばと思ったわけなんです。

 そこで、今この神栖の救済レベルと大久野島の救済レベルを比較したわけなんですが、そうすると何か遜色がないように見えるんですけれども、これは症状が神栖の場合は軽い、こういうことを言いたいわけでしょうか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども少し触れましたけれども、大久野島の場合はいわゆる猛毒ガスが原因になっているということが一点ございます。それに対しまして神栖の場合はジフェニルアルシン酸、これはいわゆるくしゃみ剤の原料になる部分でございまして、まず毒性という意味においては無機砒素と同程度あるいはそれ以下のものであるということがございます。その違いが一点。

 それから、実は神栖におきます症状はさまざまあるというのは私どもも承知しておりますが、それらについて、他の地域と比べて多いのか少ないのか等々について、まだ十分に解明をされているわけではございませんので、そういう意味で、現在引き続き調査を進めているというふうに考えております。

末松委員 大久野島でつくっていたのは、主にジフェニルアルシン酸じゃないですか。何か今、原さんは猛毒ガスとジフェニルアルシン酸が違うような言い方をされていますけれども、あれはジフェニルアルシン酸がつくられていたんじゃないですか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 大久野島においては、マスタードガスであるとかあるいはルイサイト、そういう毒ガスをつくっていた、そのほかにも当然ながらくしゃみ剤等もありますので、ジフェニルアルシン酸も当然使われていたと思料いたします。

末松委員 この大久野島の方で、調査研究事業ということで、毒ガス障害者対策に資するため総合的な調査研究の推進ということでやってきているわけなんですけれども、この中にジフェニルアルシン酸の調査も当然その当時からずっとやってきたと思うんですが、それは確認されていますよね。

原政府参考人 申しわけございませんが、承知をしておりません。

末松委員 それはちょっと調査を、どんな調査がやられているか。ちょっと私が心外なのは、今ジフェニルアルシン酸でくしゃみ剤と言った、まさしくくしゃみ剤の一番の主原因の材料がジフェニルアルシン酸なんですよね。だから、そこについてのいろいろな症状が出ている話だと思うんですね。

 今、環境省の中でいろいろと予算をつけて、ジフェニルアルシン酸の長期的な毒性検査の調査とか、いろいろとまたさまざまにこの緊急措置の中で調査というのをやっていますけれども、その調査をやるときに、まさしくこの大久野島の被害者の方々のジフェニルアルシン酸の毒性の調査なんかも全く知らずにやっているというのは、おかしな話なんだと思うんですね。

 それは別に原さんが隅々まで知るということはできないと思いますけれども、そこを環境省でも大体一億円ぐらいかけて長期的な毒性の検討を、実験用の動物のラットなんかでやっているという話なんですね。ですから、ここも長期的な調査というのが行われている中で参考にしていると思うんです。だから、そういったところもきちんとみんな結果を総合的に調査してやってもらわなきゃいけないんですね。そこは何かコメントございますか。

原政府参考人 恐らくこの緊急措置事業を始める際、あるいはそういう調査研究事業を始める際に、過去の事例を探していたと思います。

 そういう中で、私どもとしては、毒ガスそのものじゃなくて、その原料物質であるジフェニルアルシン酸への暴露による健康影響というのは恐らくそのときにはなかったという結果で、新しくやっているというふうに聞いております。ですから、今御指摘の文献等、それもございましたら、また早急に調査をしてみたいというふうに考えます。

末松委員 事務方の人が何か今いろいろと話をして新たな知識を得ているのかもしれませんけれども、少なくとも、私が申し上げたいのは、特に神栖の方は、実際に地下水に流れ込んだのを飲んで被害を受けているわけですから、症状が重い軽いというよりも、本当に被害者の方々がどうやって生きていって、どうやって健康を取り戻すんだということを中心に考えてもらいたいと思うんですね。

 だから、恒久的措置ということ、確かに大久野島の方も特別手当は三年とかいって、これは継続的にやっていますよね、結局。それがずっととられているからその対象者はあるわけです。この神栖の方も、大臣の方で恒久的な形でやっていくんだというのはこの前答弁をしていただいたわけですけれども、とにかくその被害者の皆さんが、今、単に健康回復だけではなくて、生活のために本当に困っているということ、ぜひそこは考えてもらいたいと思います。

 それから、損害賠償というのは当然やられなきゃいけないんですね。損害賠償は、この前の質問のときに、国としての責任がまだあいまいでありますけれども、だれも損害賠償の相手を特定できないわけですよ、国が責任者でないという位置づけになっちゃうと。そこを含めて、損害賠償もしっかりとこの裁判でやられることにはなるんだろうと思いますけれども、大久野島に関する中で、損害賠償というのはやられたことがあるんでしょうか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと、直接的に大久野島においてそういうことであったかどうかわかりませんが、そこで働いていた方々に対して、使用者といいますか、労使の関係の中で救済、補償をしていくということで、いわゆる昔の共済組合に入っていた方は、今現在、国家公務員の共済組合で支援をしておりますし、それから、その他のそこで働いておられた、いわゆる学徒の方々等につきましては、軍の責任を引き継いだ厚生労働省で措置をしているというふうに考えております。

末松委員 こちらの方でも調べて、そこはまた質問し直しますけれども。実は、昨日ちょっと資料が手元に届くのが本当に間近だったので、きちんとした調査がこちらの方もされていないんですけれども。

 正直言って、交通事故なんかも、例えば、実際の交通事故で健康被害が生じた、と同時に、それに対する慰謝料とか損害賠償というのは当然つくわけであります。ですから、この神栖の方々なんかも、健康回復というだけではなくて、逸失機会というんですか、本当に自分の人生を楽しむ、実はその権利があったところが不当に侵害されたということでございますから、救済するためには裁判ということが当然出てくるわけですね。

 そういったときに一番必要なのが、事実関係がわからない、あるいは病気とジフェニルアルシン酸との因果関係がはっきりわかっていないと、結局、裁判でも却下されるという話になります。最後になりますけれども、国、大久野島と同等のレベルという方向性が確認された部分もありますので、財務省の方、来ていると思いますけれども、その財政措置についてもこれからしっかりと意識をしてもらいたい、認識してもらいたいということで、御答弁いただけますか。

木下政府参考人 二十一年度予算におきましては、当該健康被害の対応として医療費等の給付、健康管理調査等の実施などに必要な予算を計上しておるところでございますが、この事案の救済の今後の進め方につきましては、環境省においてさらに議論を深めていただいた上で、今後、その点に関する予算の御要求があれば、その内容をよく伺ってまいりたいと思います。

末松委員 質問時間が終了しましたけれども、大臣、最後に一言。大臣の答弁で、国と同レベル、大久野島と同レベルの救済をやっていくということにおいて、これからさらにきちんと、神栖の事件の被害者救済にしっかりした対応をやっていくということ、そこを改めて決意としておっしゃっていただけませんか。

斉藤国務大臣 神栖市の被害に遭われた方々がこれからも安心して治療に当たっていかれるように、大久野島の方の被害がこの程度であったらこの程度の治療やいろいろな手当がされているという、同等レベルの対応がされるように、これからも環境省として頑張っていきたいと思います。

末松委員 どうもありがとうございました。

水野委員長 次に、三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月大造です。

 環境委員会で質問の機会をいただきました。御配慮いただきました理事初め委員の皆様方に感謝を申し上げたいと存じます。

 限られた時間ですので、順次、資料に基づき、質問をさせていただきます。

 お手元の資料一枚目にありますように、私の地元滋賀県栗東市というところにRD最終処分場というものがありました。ここで行われた不適正処分を何とかしようということに端を発し、産廃特措法を初め廃掃法もそうなんですが、今の廃棄物行政のあり方について考えております。当委員会の吉田泉委員を座長にいたしまして、私たちは、廃棄物、特に産廃最終処分場について、また産廃特措法の期限延長について、現地視察を行って、そして検討を行ってまいりました。きょうは、それに基づく問題提起を皆様方にさせていただきたいと思います。

 お手元の資料に、極めてミクロの問題ですので、大体どんな施設概要かということについて、まず紹介をさせていただきます。安定型処分場でした。焼却施設を二基持っていた、非常に大規模な処分場です。

 二ページ目に経緯、経過を記しておりますが、平成十一年に硫化水素ガスが発生をいたしまして、それ以来、その前からなんですけれども、住民の皆様方ともども大変悩み、何とかこの問題を解決しようということでやってまいりましたが、平成十八年にこの会社は破産をいたしました。以降、行政の対応が迫られまして、対策委員会、行政対応検証委員会等が行われております。

 三ページをごらんいただきますと、この処分場は安定型処分場なんですが、許可品目以外のものを埋め立てています。かつ、許可容量を超えた埋め立てを行っています。したがって、ここの写真にありますように、ドラム缶ですとか木くずですとか、また医療廃棄物もそうなんですけれども、考えられないようなものが出てきております。そして、ここには書いておりませんが、当該栗東市の住民の七割が地下水脈に頼る上水道で生活をされているという実態も付言をしておきます。

 四ページにありますように、この左側の赤で記したところは、許可時の底面、いわゆる底よりもさらに深いところを掘ってしまっております。このような深掘りもすることによって、許可容量は約四十万立米だったんですが、今、七十二万立米、一・八倍のものが埋まっていると言われております、わかっているだけで。非常に現地ではうずたかく積まれておりまして、先般視察に行ったときも、同僚議員ともども大変閉口したというか、あいた口がふさがらなかった状態です。

 この四ページの右側に、有害物質がこれまで地下水、浸透水に出た状況、これは丸印で表示をさせていただいています。

 そういうこともありましたので、五ページにありますように、ちょっと手書きの書き込みもあって見にくいんですが、県として代執行、産廃特措法に基づく事業を検討してきました。もとの位置にあるまま浄化していくのがいいのか。それとも、そこにあるものをどける全量撤去がいいのか。はたまた、先ほど申し上げたように、粘土層が破壊されていますから、深掘りしていますから、この粘土層を修復する必要もあるのではないか。さまざまな角度から検証をしてきたわけなんですけれども、このときネックになりましたのが時間的制約。すなわち、産廃特措法というものが平成二十四年度末、平成二十五年三月三十一日に切れるではないかということでありました。

 したがって、その理解を得るべく、県としても、この五ページの一番左側の案、工期として約三年プラスアルファ、コストとして四十五億円プラスアルファのこの案が、産廃特措法に基づいて処理をするならば最も適切であろうという方針のもとで住民説明を行ってまいりましたが、六ページにありますように、同意を得ていこうと目標にしておりました周辺の七自治会があるんですけれども、ここに記しておりますように、七自治会のうち一つだけ賛同されましたが残る六つが不同意ということになりました。この状況を受けて、県は、現時点で、先ほどお示ししました五ページにありますこの案に基づく対策工の実施を今見合わせております。やはり住民の同意、合意がまず前提にあるだろうということで、再度対策工の練り直しをしているところであります。

 以上が私の住んでいるところの産廃処分場の問題でして、大臣初め副大臣、政務官にも、先般の予算委員会分科会で御説明を申し上げ、一定御理解をいただいているところなんですけれども、個別事案はまた後ほど議論をすることといたしまして、まずお伺いをしたいのは、この栗東市の事案だけではなくて、全国に産廃の不法投棄事案があるものと承知をしています。現時点でどの程度不法投棄の残存事案があるのか、環境省にお伺いいたします。

谷津政府参考人 お答え申し上げます。

 不法投棄の残存事案のお尋ねでございますが、先生御指摘の産廃特措法の対象となる可能性のある平成十年五月以前の案件について御説明を申し上げたいと思います。

 その事案は、数といたしまして八十三、量といたしまして約七百五万トンでございます。

 平成十九年度、私どもから各都道府県に照会をいたしまして、都道府県等から報告のあったものでございますけれども、内訳を見ますと、調査の時点で特措法の対象となって支障除去の事業が行われているものが九事案で約三百九十二万トン。また、先月末に大臣同意をさせていただきました福岡県の一事案、また、現在、法に基づく支援を希望して事前の相談をいただいている二事案、この中には滋賀県の案件も含まれるわけでございますけれども、その合計が二百七万トン。合わせますと、七百五万トン残っているうちの六百万トンが、特措法に絡めて今対策が進んでいるか、検討が行われているというものでございます。

 残り約百五万トンでございますけれども、この内訳でございますが、調査の時点で既に支障除去の事業が完了しているものが二事案十二万トン、一部着手している事案が二十九事案六十七万トン、まだ支障除去等に着手されていない事案が四十事案二十七万トンとなっております。

三日月委員 部長、次に聞こうとしていることまで答えたらあかんで。次に聞こうと思っていたんですから、それは。

 答えるなら答えるで、もうちょっときちんと答えていただけたらありがたいなと思うんですけれども、今の部長の御説明は、皆さんのお手元の資料の八ページのところに、私どもで、衆議院の調査局にお手伝いいただいてまとめた資料があるんです。

 つまり、毎年、産廃特措法の方針に基づいて不法投棄の残存事案の調査をしていただいています。今部長がおっしゃったように、平成十年五月以前のいわゆる産廃特措法の対象になり得るもので、支障ありとされるものが八十三件、七百五万トン。これはオレンジで一番上に印をつけさせていただいているところなんです。そして、この八十三件の内訳を見ますと、大きな円グラフの右側にあります。法対象のものが十件、法の相談中が二件、この中に先ほど紹介申し上げました栗東市の事案が入るんですけれども、事業完了のもの、一部事業着手のもの、未着手のものというものが内訳としてあります。

 それで、これだけではなくて、時期不明のもの、支障があるかないか不明のものもあると思うんです。そういうものも含めて、どの程度あるんですか。国としての把握の状況を教えてください。

谷津政府参考人 同じく平成十九年度末時点の数字でございますが、先生御指摘の時期不明あるいは支障のありなしもわからないというものも含めますと、残存件数で二千七百五十三件、残存量といたしまして一千六百三十数万トンという状況でございます。

三日月委員 そうしますと、この八ページの図にありますように、ぜひ大臣初め他の委員の皆様方にも、最新、現時点でわかっているだけでどのような状況になっているかということですが、時期が平成十年五月以前のものは、支障あり八十三件、不明が三十四件。量は、支障ありが七百五万トン、そして不明が約四十八万トン。支障あるか、もしくはあるかもしれないものが、トン数にして七百五十万トンあります。

 それで、右側の円グラフ二つにありますように、時期不明、いつ捨てられたものかわからないというものの中で支障あり、環境保全上支障のあるものが百七十二万トン、そして、支障があるかないかもわからないものが百二十五万トン、合計しまして約三百万トン。この手書きで書かせていただいています一つ目と二つ目の合計で約一千五十万トンのものが、時期が不明、支障あるかないかがわからない、あるものも含まれているという状態になっているんです。

 時期がわからない、支障があるかないかわからないという状態のままではなくて、もう少しこのあたりの実態を詳細に調査する必要があると考えるんですけれども、いかがでございましょうか。

谷津政府参考人 私どもといたしましては、不法投棄案件の解決というものを図っていく必要があると思っておりまして、都道府県と連携をいたしまして、なお調査に努めたいと思っております。

三日月委員 ちょっと部長、そんな紋切り型の答弁じゃなくて、都道府県と連携して調査だけではなくて、こうやってまだ不明のものがたくさんあるし、先般、栗東の事案だけではなくてまだまだこれから産廃処分場の不適正事案も出てくるかもしれないから産廃特措法の期限を延長すべきじゃないですかと私が発言したときに、現時点では考えられないという御答弁だったんですけれども、最新の調査でも時期がわからないものがある、そして支障があるかないかわからないものがあるということの状況を、これまでの調査よりもさらに詳細に踏み込んで行う必要があるのではないかという問題意識は共有できないんでしょうか。

谷津政府参考人 環境省といたしましても、なお一歩踏み込んだ実態の把握が必要だと思っております。

三日月委員 最初からそう言ってくれはったらいいのに。

 一歩踏み込んだ調査をしようということなんですけれども、では、その際に、ちょっとまた現状をお伺いしたいと思うんです。

 先ほどおっしゃいました、今、産廃特措法で処理しようと思っている事案、法の適用を相談している事案、その事案の例えば一番時間のかかる工法を採用した場合に、除去にどれぐらいの期間が必要だというふうに見込まれているんですか。

谷津政府参考人 お答え申し上げます。

 今、滋賀県で御検討中の事案につきましては、先ほど来、御紹介いただいているような実態を私どもとしても把握しております。また、現在、私どもとして産廃特措法に基づく法的措置に関する事前の相談を受けているのは、滋賀県のほかにもう一件、三重県四日市市の事案がございます。

 この二件につきましては、まだ県として対策工法を含めた最終的な結論というのは今の時点では得られていないと承知しております。検討中の実態はわかっておりますけれども、最終的な結論はまだ得られていないというようなことで、今の時点で、この二つの事案について、支障の除去にどのくらい時間がかかるかということについてつまびらかにはできないというふうに認識をしております。

三日月委員 法の相談をしている二件の約二百七万トンのうち一件の栗東市の案件については、五ページにありますようにさまざまな角度から検証されているんですが、私の質問で申し上げれば、最も長い工期の対策工を採用した場合約十三年かかる。その工法を採用するかどうかは別にして、十三年かかるという選択肢もあるんです。

 さらにはもう一件、三重県四日市市の事案が法の相談を適用されていまして、まだ具体的に対策工の検討がなされていない、産廃特措法の期限があと三年少しと迫っているこのときにおいてそういう状況だということを御認識いただければと思います。

 さらに、もう一つお伺いしたいのは、こういう処分場の対策工は、全部どけて、すべて無害化しない限り、封じ込めて原位置で浄化しようと思ったら、中から地下水をくみ出す等々の大変長いモニタリングが必要になってきます。

 このモニタリングの状況ですね、今事業が行われているもの、また事業が終わったもの、このモニタリングの状況、そこにかかる費用というものについては、国としてどのような把握をされておりますか。

谷津政府参考人 モニタリングについてでございますが、支障除去の実際の代執行を行う都道府県などにおきまして、モニタリングをしっかりやっていただいているところでございます。

 私どもとしては、そういったモニタリングの結果なども県から御報告をちょうだいしながら、適切な対応に努めているところでございます。

三日月委員 済みません、私、一言一句、前日に通告したとおり質問していないので、いろいろな答弁の仕方になるのもわかるんですけれども、もうちょっと、部長、各地で悩みながら行っている産廃の不適正処分について、その御苦労に思いをはせながら答弁していただければと思うんです。

 支障の除去だけではなくて、除去せずにそのまま置いておいた場合、地下水のくみ上げ、その除去もしくは浄化に物すごく費用が実はかかるんだということが、この産廃特措法に基いてやった場合にわかってきたんです。その点のことについて、今どのように把握をされているんですかということです。

谷津政府参考人 お答え申し上げます。

 モニタリングの中身とその費用についてのお尋ねでございます。

 例えば、福井県の敦賀市の事例を見てみますと、水質についてのモニタリングが行われておりまして、その費用でございますけれども、二億弱ぐらいかかっているというふうに承知しております。

 また、産廃特措法に基づいて事業を行っております横浜市の事例を見ますと、水質のモニタリング、また大気のモニタリングなどを含めて、一億数千万ぐらいの費用がかかっているというふうに認識しております。

三日月委員 きょうはその点の資料を私の方から提示をしませんでしたので、皆様方につまびらかに確認をしていただくことはできないんですが、繰り返しますと、冒頭確認したように、現時点でこの栗東市以外全国にどれぐらいの不適正処分があるかどうかわからない、あったとしてもそれが支障あるかどうかがまだわかっていないという案件が大変たくさんある。かつ、今法の適用を相談している事案が二件あって、そのうちの一件で選択肢に入っている工期、これが産廃特措法の期限を超えているものもある。時間的制約がそこにかかってくるだろうという問題がある。さらには、三重県四日市のようにこれから対策をどうするかということを考えなくちゃいけない事案がある。

 さらには、今御指摘申し上げたように、こういう支障除去の対策工だけではなくて、モニタリング等々で引き続き長くこの処分場の安定化に向けた取り組みに費用をかけて、財政難の自治体が費用をかけて監視をしていかなければならないという実態がある。さらには、つけ加えますけれども、先ほど環境省の皆さんがさらに踏み込んで調査をするとおっしゃった以上、私は出てこないことを祈っておりますが、さらに不法投棄の事案、不適正処分の事案が出てくる可能性もある。

 そうしますと、前回も申し上げましたが、平成二十四年度末に失効をする産廃特措法というものの期限を延長して、これ以上産廃処分の不適正事案の汚染、支障を後世に残していかないんだという対策を私はとっていく必要があるのではないかと考えるんです。

 大臣が先日おっしゃった、もともと立法趣旨は早期に解決すべきだったんですと。それもわかります。今から延ばせば、早くやった自治体とのモラルハザードが生じてしまうという事情もわかります。

 しかし、これだけあれば、またこれから出てくる可能性があれば、さらには住民合意の取りつけ、モニタリングで長期化、新たにわかってきたこういう課題もあるのであれば、やはりこの法を延ばして根本的な対策をとっていくということが必要ではないかと考えるんですけれども、大臣に御答弁を求めます。

斉藤国務大臣 三日月委員からは先日予算委員会の分科会でこの趣旨の質問をされまして、持っていらっしゃる問題意識は非常に我々理解をしているつもりでございます。

 今、私がこれから答弁しようとすることをすべて三日月委員におっしゃっていただいたわけですけれども、もう一度確認をさせていただきますと、負の遺産はできるだけ早く解決をしたい。それから、もう既に法施行後六年近く経過しておりまして、容積的には七百のうち五百以上が今法に基づいて順調に処理をされている。そして、地方自治体の皆さんも、法の期限内に終わらそうということで大変な御努力をいただいているという現実がございます。

 こういう中で、今の時点で延長しますというようなことを安易に判断するということは、早期解決についての都道府県の意欲を減退させるという問題点がある。それは先ほど三日月委員おっしゃったとおりでございます。

 他方で、今も指摘がございましたように、不法投棄などの残存事案が依然として残されていることも重要な課題でございまして、前回、委員の指摘もございまして、どういうことができるか検討していきたい旨答弁申し上げたところでございます。

 環境省として、滋賀県の事案も含め、不法投棄などの残存事案の詳細な調査を早急に実施していきたい、このように考えているところでございます。

三日月委員 恐らく答弁書にはそれ以上のことが書いてあるんじゃないですか。

 詳細な調査を実施して、私が提起申し上げた法の延長、期限の延長について、やはり環境省としても踏み込んで検討すべきだと私は考えるんですけれども、繰り返しこの点いかがですか。

斉藤国務大臣 今の時点で期限の延長を考えるということは申し上げられませんが、先ほども谷津廃リ部長からも答弁申し上げましたとおり、より踏み込んで現状の調査をしていきたい、このように思っております。

三日月委員 理性的で尊敬申し上げる斉藤大臣もなかなかその点で踏み込んできていただけないのが大変残念なんですけれども、さらにいろいろな実例や私たちなりの理論を積み上げて政府に迫ってまいりたいと思いますし、法の不備は立法機関でやはりきちんと変えていくという措置も必要だと私は考えますので、そのための準備を我々なりにさせていただきたいと思います。

 もう一点、きょうのお手元の資料の九ページ、産廃の適正処分、処理は大変複雑で根っこの深い問題があることがだんだんわかってきました。

 ちなみにお伺いをいたしますが、この資料に基づいての御説明でもいいんですけれども、産廃特措法に基づいて実施したことはやはり原因者に費用負担を求めていくということが基本だと思うんですけれども、その求償の状況はどうなっていますか。

谷津政府参考人 求償の実態について御説明申し上げます。これまで大臣同意を行いました十二事案につきまして、排出事業者などが自主的に撤去した分も含めて実績を申し上げたいと思います。

 まず、香川県豊島事案では、排出事業者より一億七千万の費用を徴収してございます。青森・岩手事案におきましては、排出事業者より約四億円、それと廃棄物の撤去一万トンということでございます。

 それ以外にも例がございますが、とりあえずこういう状況にあるということを御報告させていただきたいと思います。

三日月委員 部長、どれだけ取らなあかんのですか。どれだけを求償する対象の数字ととらえていらっしゃるんですか。

谷津政府参考人 基本的には、代執行を行政が行っておりますので、その分の費用の回収というのが原則だと……(三日月委員「金額は」と呼ぶ)金額は、代執行でかかった費用というふうに考えております。

三日月委員 そうすると、私の資料のピンクで色づけをした、代執行でかかった費用約千百七十九億円というのが費用を求償するべき金額ということでいいですか。よろしいですね。(谷津政府参考人「はい」と呼ぶ)そうなんです。

 ここはぜひ御認識いただきたいんですけれども、代執行で千百七十九億円かけて、取れたのが、これを見ていただければ六億数千万円で一割も取れていないんですね。だから、これは大変難しい問題で、私はここに何らかの対策が必要じゃないかと思うんです。

 つまりは、措置命令を発しても、それを実行するかどうかわからない。また、対策工を確定しようと思ったら、代執行しようと思ったら住民合意を取りつけなければならない、これに大変時間がかかる。そうこうしている間に、例えば行為を行った行為者がいろいろと資産を隠匿、散逸させる時間を与えてしまっているんですね。

 この時間を与えないための対策を早急に検討しなければ、ルールを破った者が言ってみれば得をする、やった者勝ちのような、こういう最大のモラルハザードがここにあると私は思うんですけれども、この点について、環境大臣の御見解、問題意識、そして検討の必要性についての認識をお伺いしたいと思います。

斉藤国務大臣 まさにやり得、そして逃げてしまうというようなことを許してはならない、社会正義という観点からもそのように思います。

 しかしながら、その裏には大変難しい法律上の問題もあると認識しておりますけれども、このような社会不正を許さない仕組みを考えていかなくてはいけないという意味での問題意識は共通しております。

三日月委員 ぜひ環境省だけではなくて、財務省も含めて、財産保全に何ができるのか、代執行にかかるときにどこまで仮差し押さえができるのか、これをやはり早急に検討する必要があると思います。これから単に法を延ばして、行政代執行のための国から地方への補助だけを考えるのではなくて、私はそういう部分もぜひ考えていく必要があると思いますので、その点御要請申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

水野委員長 次に、内閣提出、自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。斉藤環境大臣。

    ―――――――――――――

 自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

斉藤国務大臣 ただいま議題となりました自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容を御説明申し上げます。

 我が国は、狭い国土ながら、非常に豊かで多様な自然に恵まれており、この自然に応じて多種多様な生物が推定で三十万種も存在しています。

 自然公園制度及び自然環境保全地域制度では、このように豊かな自然を代表する傑出した風景地である国立公園等を指定し、自然環境の保全を目的とする他の関係制度と密接に連携しつつ、国土に存在する自然を体系的に保全することにより、生物の多様性の確保に寄与しているところです。

 このような状況の中、昨年、豊かな生物の多様性を保全し、その恵沢を将来にわたって享受できる、自然と共生する社会の実現を図る生物多様性基本法が制定されるなど、近年、生物の多様性に対する国民的な関心が極めて高まってきております。

 本法律案は、こうした状況を踏まえ、国立公園等における自然環境の保全対策の強化等を図り、より積極的に生物の多様性の確保に寄与するため、海域における保護施策の充実、生態系の維持または回復を図るための事業の創設等の措置を講じようとするものであります。

 次に、本法律案の内容を御説明申し上げます。

 自然公園法に関して申し上げます。

 第一に、法の目的において、すぐれた自然の風景地を保護することが生物の多様性の確保に寄与することを明らかにすることとしております。

 第二に、海中の景観を維持するための海中公園地区を、海域の景観を維持するための海域公園地区に改めることとしております。また、海域公園地区の景観の維持とその適正な利用を図るため、海域公園地区内に利用調整地区を指定することができることとしております。

 第三に、国立公園等における生態系の維持または回復を図るため、国等は生態系維持回復事業計画を作成し、これに従って生態系維持回復事業を行うとともに、国等の公的主体以外の者についても、環境大臣等の認定を受けて、自然公園法上の許可等を要しないで生態系維持回復事業を行うことができることとしております。

 第四に、国立公園等の特別地域において環境大臣等の許可を要する行為として、一定の区域内での木竹の損傷、本来の生息地以外への動植物の放出等を追加することとしております。

 また、自然環境保全法に関しても、これらの措置に準じた措置を講ずることとしております。

 以上が、本法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

水野委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 この際、申し上げます。

 内閣提出、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案についての経済産業委員会、環境委員会の連合審査会は、明八日水曜日午後一時から開会することとなりましたので、念のため御報告申し上げます。

 次回は、来る十日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時九分散会


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