衆議院

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第8号 平成21年4月14日(火曜日)

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平成二十一年四月十四日(火曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 水野 賢一君

   理事 小野 晋也君 理事 北川 知克君

   理事 小杉  隆君 理事 土屋 品子君

   理事 西野あきら君 理事 岩國 哲人君

   理事 伴野  豊君 理事 江田 康幸君

      あかま二郎君    上野賢一郎君

      小島 敏男君    木挽  司君

      近藤三津枝君    坂井  学君

      鈴木 俊一君    中川 泰宏君

      長島 忠美君    平田 耕一君

      福岡 資麿君    藤野真紀子君

      古川 禎久君    馬渡 龍治君

      山本ともひろ君    末松 義規君

      田島 一成君    田名部匡代君

      村井 宗明君    吉田  泉君

      古屋 範子君    江田 憲司君

    …………………………………

   環境大臣         斉藤 鉄夫君

   環境副大臣        吉野 正芳君

   環境大臣政務官      古川 禎久君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            小林  光君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  黒田大三郎君

   環境委員会専門員     吉澤 秀明君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十四日

 辞任         補欠選任

  小島 敏男君     長島 忠美君

  船田  元君     平田 耕一君

同日

 辞任         補欠選任

  長島 忠美君     小島 敏男君

  平田 耕一君     船田  元君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)


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     ――――◇―――――

水野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として環境省総合環境政策局長小林光君及び環境省自然環境局長黒田大三郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

水野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

水野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 きょうは、内閣提出、環境委員会に付託された閣法の最後の、自然公園法及び自然環境保全法の一部改正案について質問をさせていただきたいと思います。

 時間を一時間もちょうだいし、大変ありがたいことなんですけれども、明快な答弁をいただけるならば、必ずしも時間いっぱいまで引き延ばすつもりは毛頭ございません。その点だけはどうぞ与党の皆さんも御理解をいただいて、ぜひ応援をいただけたらと思っております。

 今回の法改正を私は民主党の中で担当させていただきながら、どこに問題があるのか、また今回の法の改正の趣旨は何か、つぶさに検討をしてまいりました。長い歴史の中で先人がつくってこられたこの法規制を改正することの意義は一定理解をし、また、何が問題で何を今時代が求めているのか、そのあたりも照らし合わせながら改正するということは、大変問題も大きく、至難のわざではなかったかというふうに思っているところでもあります。

 しかし、今回の自然公園法そして自然環境保全法の改正案を通して、さまざまな問題また現状の抱える課題も浮き彫りになってきたことは事実であります。

 昨年、与党の議員の皆さんにも御理解をいただいて、委員長提案という形で生物多様性基本法を提出し、全会一致で成立をすることができました。それを受けて今回の自然公園法の改正に至ったと私どもも承知をしているところでありますが、現状、この自然公園法で所管するさまざまな公園また自然環境において、生物多様性基本法が制定されたことを受けてといいながらも、果たして優先順位は何なのか、何をメーンに置いて、そして規制等を加えていかなければならないのかを、一定、白紙の状態から議論する必要があったのではないかな、私は実はそのような認識を持っているものであります。

 もちろん、生物多様性基本法が制定をされ、生物多様性の確保に寄与するという文言をつければそれで改正事足りるという考え方もあろうかと思います。しかし、長い時代の中で色あせてきた部分、そして時代の背景にそぐわない部分等々も、全体を見渡して、私は今回のこの改正の時期に合わせて精査をするべきではなかったかなというふうに思っているところであります。

 この議論はきょうの委員会の一番最後にさせていただくとして、今回の法改正の背景等についての具体的な質問から入らせていただきたいと思います。

 私の手元に、平成二十年十二月四日に行われた中環審の自然環境部会自然公園のあり方検討小委員会第八回の議事録があります。今回の法案審議に当たって、この中環審の部会、小委員会での議論の経緯等々も拝見をさせていただきました。

 今回提出された法案の中には自然公園法及び自然環境保全法と二つの法律が上がっているわけでありますけれども、この審議会の議事録を拝見すると、どうも環境省のサイドから自然公園法と自然環境保全法を一本化させるような提案が見受けられたところであります。

 実際、シカによる自然植生への被害が、国立公園の中だけの課題ではなく、自然環境保全地域でも問題化しているということを御指摘いただいて、取り上げられたわけでありますけれども、残念ながら、議事録をひもといてみても、具体的な結果を導くまでには至っていらっしゃらず、議論が結局収縮してしまいました。

 省として、まず、先ほど申し上げた国立公園だけではなく自然環境保全地域でも問題となっているシカによる植生被害、この対策についてどのような見解をお持ちなのか。

 実際に二つの法律がある中で、その二つの法律を一本にしてもいいんじゃないかというような課題が今回このように提起をされていたわけですけれども、具体的に今回の法改正のときには一本化等々の議論にまでは至っていらっしゃらず、このような二つそれぞれの形で提案をされたわけですけれども、この背景は一体どうだったのか。

 そして、これから先、先ほど申し上げたシカの植生被害についての具体的な取り組みについてどのようにお考えなのか。

 一度に三つも申し上げましたけれども、お答えをいただきたいと思います。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 自然環境保全地域や国立公園で発生しておりますシカによる自然植生への被害状況でございますが、いろいろなケースがございまして、小規模な樹皮はぎ、皮はぎが発生している事例から、高山植物群落や森林植生に壊滅的な被害が生じているというような事例まで、さまざまでございます。そういう被害の状況に応じまして、シカの捕獲あるいは植生復元等の取り組みがそれぞれの地域で進められているという状況にございます。

 今回の法改正におきましては、自然環境保全地域あるいは国立・国定公園において、自然環境をモニタリングしながら個体数調整や植生復元等の対策を統合的に実施する生態系維持回復事業を、それぞれの制度の中で創設するというふうにしておるところでございます。

 実際のこの先の対応でございますが、例えばシカによる被害が非常に著しい影響を及ぼしている尾瀬国立公園であるとか南アルプスの国立公園、こういうところでは生態系維持回復事業を早期に実施して、生態系の適切な維持、回復を急ぐ必要がある、こういうふうに考えておるところでございます。また、その他の保護地域、国立公園等で被害の状況がさまざまであると申し上げましたが、そういうところにつきましては自然環境に関するモニタリングをしっかり行って、その結果を踏まえながら必要に応じ事業の具体化を図っていきたい、こういうふうに考えております。

田島(一)委員 法律を必ずしも一本化することがすべていいとも思いませんし、やはりそれぞれの目的があっての法体系があるわけであります。

 しかしながら、今や、自然公園法と自然環境保全法、このような公園等々の形態で区分けをしていくことが本当に望ましいのかなとさえ思う、その具体的な事例として今回のシカによる植生被害を提示されたのではないかというふうに思います。

 これから先、この法律を一本化させていくというような議論も今後検討はされていくのかどうか、その辺の方向性だけちょっとお示しをいただけないでしょうか。

黒田政府参考人 二つの法律、自然環境保全法と自然公園法につきましては、自然公園法の方を先に申し上げますと、非常に長い歴史がございまして、豊かな自然を守りながら、それを前提としてうまく使っていく、保護と利用をバランスよく使っていく、そういう考え方の法律でございます。自然環境保全法は、基本的に自然を保存する地域ということで、制度の性格としては大きく異なるということで、自然環境保全法は昭和四十七年に制定をされて今日に至っているということでございます。

 それぞれのそういう性格がございますが、非常に豊かな自然の地域を対象とするという部分では共通しておりますので、いろいろな保護管理の面で共通する施策は出てこようかと思っております。今の段階はそれぞれの法律に基づいてそれぞれの地域をしっかり管理していくということで考えておりまして、直ちに二つの制度を統合するという考えは今は持っておりません。

田島(一)委員 わかりました。

 恐らくこれから先も、シカの植生被害だけではなくさまざまな課題が出てきて、こうした法律等々のすき間であるとか、また両方にまたがるような事例、課題も多分出てくるかと思います。当然、目的が違うのだから、法体系が違うということで、区分けをした線引きをしなければならないかもしれませんが、ある意味、もはや法体系を超えた対策をしなければならないのが、これまた環境省の自然環境関係ではないかというふうに思っております。

 法律を一緒にする、しないはさておいたとしても、このようなすき間であるとか、また共通する課題についてどの根拠法でするかで足踏みをしたりおくれをとったりするようなことだけは絶対にあってはならないと考えております。そういった点にもぜひ御留意をいただきながら、これから先のこうした植生被害、自然環境保全に対しては前向きにお取り組みをいただきたい、そのことを強くお願いしておきたいと思います。

 さて、次に、具体的な法改正の中身でもあります利用の状況についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 今回、法の「目的」の中にも利用の増進ということがうたわれているわけであります。自然公園は利用されて何ぼなのか、守って何ぼなのか、これは大変意見の分かれるところでもありますが、今回の法改正のメーンが生物多様性の保全である以上は、利用についても一定の適正な利用を促していかなければならない。そんなこともあって、条文の中には適正な利用ということが随所にちりばめられてあります。適正なという表現は非常にあいまいである、また、とり方によっては何が適正なのか何が不適正なのか非常に線引きが難しいキーワードでもありますが、それでも不適正ではないということだけは明確であります。

 この適正な利用が現在の国立公園を初めとする自然環境保全地域等々でどれぐらい進んでいるのか、どれぐらい問題が顕在化しているのかを事例を踏まえながら御紹介申し上げ、その見解をお尋ねしたいと思っております。

 沖縄の石垣島に西表石垣国立公園がございます。その中にある白保海中公園、ここは最近、沖縄の石垣島内外から多くのシュノーケル愛好家が訪れるエリアとして、大変にぎわっております。シュノーケル観光、いわゆる利用エリアと非利用エリアの違いでどのような問題が顕在化してきているのか。これから利用を一定進める上で、その利用状況というものを環境省としてもかなり把握を進めていかなければならないというふうに考えるわけでありますが、実際に、例えば、こうした海中公園の中での利用状況によって自然の破損であるとか被害であるとか、そういったものが非利用エリアと比べてどれぐらい進んでいるかというような調査というのは環境省サイドでなさっているのかどうか。もしあるならば、例えばこの白保海中公園での実態を御存じであるならば、御紹介いただけないでしょうか。

黒田政府参考人 白保の海中公園地区につきましては、今細かいデータを持っておりませんが、私ども石垣島にレンジャーを駐在させておりまして、その状況につきましては現状の把握等を行っておりますし、NGOがブランチを持っておりまして、そことの連携によりいろいろな情報を入手しておるところでございます。

 実態をかいつまんで申し上げますと、いわばシュノーケリングの利用が集中する地区というものがやはりございまして、そういう地区ではシュノーケリングをする遊泳客によるものと思われるサンゴの破損が結構多いという実態にあることは承知しております。

 こういうことに対応するため、白保地区では、地元の観光事業者を含む保全協議会が設立されておりまして、シュノーケリングの遊泳などに関する観光事業者の間で自主ルールというものをつくって、それに基づいて持続可能な観光というものを実現していこうという取り組みがなされておりまして、私どものレンジャーも、そういうところと連携をとって意見交換しながら、いろいろな協力をしています。

 具体的に申し上げますと、地域の自主的な取り組みを環境省の方でも広報というような形で応援するとか、それから環境省としてもサンゴ礁のモニタリング等を行って、白保海中公園地区の自然環境の保全と利用の適正化というものがバランスよく図られるように努力をしているところでございます。

田島(一)委員 御答弁ですと、モニタリング調査や広報等々で支援をしているというお話なんですけれども、環境省としては、この利用エリアと非利用エリアの、例えば環境の現状、また保全状況の調査というものは具体的にされているのか、NGOにお任せになっているのかどうか、その辺のかかわり方はどうなっているんですか。

黒田政府参考人 白保地区に関しましては、WWFジャパンのブランチが非常によく調査をし把握をしているということで、私どももサンゴ礁のモニタリングにつきまして実施をしておりますが、区域を分けての調査というのはWWFの調査結果を活用させていただいているという実態にございます。

田島(一)委員 私もそのデータというものを拝見いたしました。シュノーケル観光の利用エリアと非利用エリアのサンゴの枝の破損状況、これの調査結果では、最盛期でありますと十五倍から二十六倍もの破損上の差があるということであります。つまり、利用しなければ環境は破壊されずに保全されていくんだけれども、やはりそこにシュノーケルの観光エリアとして集中していくと、ますますその破損状況は拡大していくという具体的な数字だと思います。

 先ほどそうした民間NGOのデータ、調査結果というものを環境省が参考にされているというふうにお伺いをしたわけですが、利用が進めば進むほど自然環境の破壊は進んでいくということは十分におわかりをいただけたというふうに思います。

 先ほども、保全の協議会、白保魚湧く海保全協議会というものが地元で立ち上げられていて、自主ルールが定められているというお話がありました。果たして自主ルールというものだけで今後本当にこの二十六倍近くも破損されているような実態というものを守っていけるのかどうか。私は、その点、環境省として法律を改正し、しかも保全をしなければならないとおっしゃいながらも、NGOさんにお任せする、民間の、地元の地域住民の団体にお任せしているという体制が浮き彫りになっているんじゃないかなというふうに思うわけであります。

 当然、地元にもレンジャーがいらっしゃるでしょう。しかし、そのレンジャーが一人二人というような少人数で回り切れていないから、民間の団体、地域住民の協議会に頼らざるを得ない現状があるんじゃないでしょうか。

 例えば、白保と同様に多くの観光客が訪れる石垣島の米原、私の地元にはマイバラというのがあるんですけれども、読み方がヨネハラですよね。米原の海中公園、こちらにあっても、例えば実効的な利用調整というものの取り組み、調整、私が聞いた話では多分まだなされていないというふうに思うわけであります。

 もちろん、あそこもここもと欲張っても、限られた予算の中ではなかなか十分に人的な配置もできない、調査も十分にできないという現状があろうかというふうに思います。それはわかっているんですけれども、あえてこのシュノーケリング観光が、ますます秘島の地、だれも行かないエリア等々にどんどんシュノーケル愛好者が進出している現状からすると、イタチごっこのように、次から次へとこれをフォローしていかないと、どんなに法律で定めても、民間の団体が調査をしても、そして地域住民が自主ルールをつくっても、私はこの破壊のスピードは一向に直らないんじゃないかな、そんな危惧を持っているわけであります。

 さあ、果たしてこれから先、こうした過剰利用による生態系への負荷を軽減させるために、いろいろな方法をやらなきゃいけないと思います。自主ルールだけではない。環境省が独自にシュノーケル愛好家に対して呼びかけをする看板を設置するであるとか、いろいろな取り組みがあろうかと思います。ビジターズビューローでまずはシュノーケリングの愛好家を必ず呼んでレクチャーを受けさせるであるとか、いろいろな方法があろうかというふうに思うんです。人をふやさなければならないという課題とあわせて、現状、この白保もそうです、米原もそうです。石垣島におけるこうした海中公園の破損状況、生態系への負荷を軽減させることについて、どのような取り組みをしようとお考えなのか、お答えをいただけないでしょうか。

黒田政府参考人 今委員から御指摘がありましたとおり、環境省では従来から、海だけに限らず適正な利用というものが進むように、国立公園の利用拠点に環境省が設置しておりますビジターセンター等におきまして情報提供を行うとか、利用指導のためのいろいろな解説板、標識の類を整備したり、あるいはホームページを活用して情報提供をするとか、考えられることを、非常に体制も小さいということもあって、効率的な方法というのを考えていこうということで、公園利用者に対してどうやったら普及啓発、指導というのが行き渡るかということでいろいろ取り組んできております。

 また、これもお話の中にございましたが、近年、自然公園においていろいろな利用が行われるということで、従来は余り人の影響というのを受けなかったところまで観光客がいろいろな形で利用するということで、新たな自然環境保全上の支障というものも生じてきていると認識をしています。

 例えば、海に関しまして、今回、利用調整地区制度を法律に盛り込むということで、観光船の利用をコントロールするというやり方もあれば、ダイバー、シュノーケルを楽しむ人たちが集中する場合については、そういう利用を対象に利用調整地区を、この制度をうまく活用してしっかりと保護ができるようにして、快適な状態で例えばサンゴ礁の海を楽しんでもらうこともできるというふうに持っていきたいと思います。

 具体的な対応というのはこれからいろいろなことを考えていかないといけないと思っていますけれども、一つのポイントとしては、やはり、いろいろな普及啓発であるとか、そういう利用調整地区の新しい制度を組み合わせて総合的に対応していくということと、できるだけ早い段階で利用者に、要するに問題が起きてからいろいろ言うよりも、できるだけアドバンスというんですか、前に前に情報が行き渡るような形で、そしていろいろな形でやはりNGOなどとの連携をしながら、いろいろな方々の御協力もいただきながら、そういう形で情報が行き渡るように努力をして工夫をしていきたい、こういうふうに思っています。

田島(一)委員 もちろん、おっしゃってくださったように、予防的取り組みが何より大事であります。しかし、法律であるとかさまざまなルールで規制をすればするほど、人間の好奇心をかき立ててしまう可能性も当然あろうかというふうにも思います。もろ刃の剣で、この規制のあり方自体も大変厳しいですし、今回の法改正の中で適正な利用というものをどれだけ周知徹底させていくのか。限られた予算と言いながらも、今ここできちっとした対策をとっていかないと、先ほどおっしゃってくださったように、今予防的な対策を講じておかなければ、とんでもない環境を後世に送り込まなければならないという現状にあることを考えていくと、何よりも人的な力をいかに活用していくかが私は重要な課題ではないかなというふうに思います。

 私、何も海ばかりに関心を持っているわけではないんですけれども、現在、国立公園の管理であるとか利用の指導に関して、自然公園の指導員という方が任命されていらっしゃいます。二千人以上もいらっしゃるわけでありますが、しかしながら、現在のこの自然公園の管理や利用指導をするに十分な数字なのかどうかを考えると、私はまだまだ足りないというふうに考えます。

 前回の委員会でも、この自然公園指導員の任命について、せっかく能力を備え、そして蓄積をしてきたにもかかわらず雇いどめに遭ってしまう、こんなもったいないことをやっていていいのかという質問もありましたし、人材活用についてはさらに検討を重ねていかなければならない課題だというふうに思いますが、まずは現在いらっしゃる自然公園の指導員がそれぞれ担当する国立公園の現状、問題点を、各人が連携をとる、いわゆるネットワークでその課題をお互いが共有し合うような仕組みづくりが私は何より大事なのではないかというふうに思います。

 先ほども申し上げたように、白保であった問題は次の米原の方でも同じような問題が起こってくる可能性があります。予防的な取り組みをするということで、こうした連携をさらに深めて事前に対応をとっていくことが何より大切だというふうに思うわけでありますが、まずは今いらっしゃるこの自然公園の指導員の皆さんが連携をとるような仕組みというものができ上がっているのかどうか、この現状について御説明をいただきたいと思います。

黒田政府参考人 自然公園指導員でございますが、現在約三千名、昨年の数字で二千九百四十六名ということですが、その方々にボランティアとして委嘱をしておりまして、自然公園指導員の方々は非常に現地でいろいろな活動を熱心にしてくださっています。例えば、公園の中でのマナーであるとか事故防止に関して利用者にいろいろ指導というか情報提供をするとか、あるいは自然解説活動をしてくださっている方もおりますし、何かあると環境省の事務所であるとか都道府県に連絡をしてくれる、こういうような面で非常に活躍をしてくださっています。

 例えば、登山道が崩れたというような利用上のちょっと危険な場所の情報をすぐに連絡してくれて、国立公園の保護管理に生かさせてもらっているという実態がございます。

 御指摘の自然公園指導員間の連携ということでございますが、環境省では、都道府県とも連携しながら、自然公園におけるいろいろな課題にどういうふうに対応していくかということで、各地に自然公園指導員の方がおいでになります。いろいろな活動の仕方がありまして、東京にいる方が遠くに行って活動するということもあれば、それぞれの地域にお住まいの方が活動しているというケースもあるんですが、割合活動エリアに近い方々に声をかけて研修会をやったり、意見交換会をやるというのが、まだ全部に行き渡っていませんが、少しずつそういう実績は広がってきています。

 今後、自然保護官と自然公園指導員との間の情報共有であるとか、あるいはその連携というものを少しでも密にしていかないといけないというふうに考えておりますし、実際に実効性のある利用者指導が行えるように、自然公園指導員の方が参考にできるようなものも、インターネットを使ったり、あるいはマニュアルというようなものをまとめていこうという検討は進めているところでございます。

田島(一)委員 限られた予算、人的資源をいかに活用していくか、もうこれしか残された道がないのかなと、私は本当に残念に思っているところでもあります。しかしながら、利用を増進すればするほどこうした課題と向き合わなければならない。多くの自然に触れてもらいたいけれども、本当に適正な利用を進めなければならない、こういう大きな課題を背負っているわけであります。

 ボランティアというある意味では責任感をそうまで求めることができない立場の方々を、活用するというのは大変おこがましい表現ではありますけれども、使命感を持っていただくには限界もあろうかというふうに思います。そう考えると、いかに環境省が皆さんの立場で、そのような思いで自然破壊を食いとめ、また予防的な取り組みをしていくかしかないわけであります。

 せっかくですから大臣に、いきなり振って悪いんですけれども、このようにボランティアにお任せやお願いをしてもなかなか実効が上がらなかったりしている。そう考えると、人的なマンパワーをそこへ投入していかないと、やはりもう破壊というものはおさまらない。法律でどんなに規制をしたり地域住民が自主ルールをつくったとしても限界がある。

 そう考えると、私はやはり人的資源をきちっと充実させていくことが何より肝要だというふうに思うんですけれども、その辺、今年度この法律が成立してから、どのような形で自然公園、国立公園の管理や利用指導等々への人的な配置等々を考えていらっしゃるのか、その姿勢をぜひお聞かせいただきたいと思います。

斉藤国務大臣 今議論を聞いておりまして、まさに利用の促進と、しかし自然環境の保全、この二つをどう両立させるか、その難しさというのを感じた次第でございます。

 私も、いろいろなところで国立公園に行きまして、レンジャー、アクティブ・レンジャーそれから指導員の方々と話をさせていただいて、特にアクティブ・レンジャーや指導員の方は基本的にはボランティアベースで、大変な使命感を持って頑張ってくださっているというところに心からの敬意を表する次第です。

 環境省としても、予算、人員等を拡充していかなくては、先ほど申し上げたバランスというのはなかなか保てない、このように思っておりまして、現在作成を進めております「緑の経済と社会の変革」、グリーン・ニューディールということも案を今つくらせていただいているところでございますが、そういう中にあって自然共生社会というものを一つの大きな柱にしたいと思っておりまして、そういう中で経済の活性化ということも含めて考えていきたいと思っております。

田島(一)委員 ぜひ、今の発言を胸に刻んでいただいて、予算拡大に御尽力いただきたい、お願いをしておきたいと思います。

 何も国立公園のエリアだけではなく、例えば普通の地域でもいろいろな問題が起こっております。昨年この環境委員会で、同じように石垣島も視察にお邪魔もいたしました。その中の一つ、大変風光明媚な、国の名勝に指定をされている川平湾、ここでも観光船の無秩序な停泊を目の当たりにさせていただきました。

 利用に対しての問題というのは数多く提起されています。沖縄を、また石垣島を、またそれぞれの国立公園や自然を愛する方々は、やはり我慢ならない、抜き差しならないような状況にあるということを、ネットの中でも、またいろいろな場を通じて問題提起をされていらっしゃいます。

 それに一つ一つこたえていくには大変厳しい状況に今あろうかというふうに思いますが、それでも、数少ない人材の中で、いかにそういった現場の惨状等々を拾い集めるかは、環境省が持つネットワークをさらに拡大させていくことしか方法はないと思います。そして、それに対して適切に動けるかどうかが私は課題だと思います。

 どうぞ人的な問題また予算の問題をぜひクリアしていただいて、充実した管理、利用指導等々に当たっていただくことをお願い申し上げ、この項の質問については終わらせていただきたいと思います。

 さて、今改正法とそれから他の法令との関係、連携についての質問に移らせていただきたいと思います。

 今回のこの改正における生態系維持回復事業と非常に関係があろうかというふうに思われます、既存の法律、鳥獣保護法における特定鳥獣保護管理計画と、議員立法で成立をした、これは農水省の所管になりますけれども鳥獣被害防止特別措置法、こちらにおける被害防止計画の連結というものがどのようになっているのだろうか。

 私が読み取る限りではどうもあいまいなように受け取れるんですけれども、生態系維持回復事業と特定鳥獣保護管理計画、さらに鳥獣被害特措法の計画との連携についてどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

黒田政府参考人 今お話のありました三つの計画、鳥獣保護法に基づきます特定鳥獣保護管理計画はその個体数が著しく増減している鳥獣の保護を図るための制度でございますし、鳥獣被害特措法に基づく被害防止計画は鳥獣による農林業被害の防止を推進するために定めるもので、また、今回の改正案に盛り込んでおります生態系維持回復事業計画は、国立・国定公園や自然環境保全地域である山岳地等での生態系の被害対策を推進しようというものでございまして、委員御指摘のように三つは非常に関係が深いものになる。三つの計画が重なるケースも間々あろうかと思います。この三つをきちんと連携をとっていくことが非常に重要だというふうに認識しております。

 生態系維持回復事業計画の策定に当たりまして、仮に計画をつくろうという区域において既に例えば特定鳥獣保護管理計画あるいは被害防止計画等が定められているといったような場合には、これらの計画との整合を図っていくために、関係機関等との間で相互に情報の共有を図り、そして適切な役割分担というものについてきちんと議論をして、それぞれの面で効果的な事業の実施が行われるように努めていきたいというふうに考えております。実際に具体的な手順をどうするかということにつきましてはこれからということになりますが、今後、農林水産省とも連絡をとりながらしっかりとした手順を定めていきたい、こういうふうに思っております。

田島(一)委員 省庁の力関係とかという言葉をこういうところで申し上げるのは大変非常識かもしれないんですけれども、果たして環境省が、とりわけやはり鳥獣特措法の被害防止計画と、うまく省庁の壁を越えてやっていけるのかなという不安が私はあるんですね。

 本来ならばここへ農水省の参考人も呼んで、やるということの言質をとるのが皆さんにとってはよかったのかもしれないんですけれども、私はそういう回りくどいことをせずに、皆さんが本当にどこまで農水省に対して連携をとるように働きかけていくのかに期待をして、あえてお呼びをすることはいたしませんでした。

 連携をとる、これから先その準備を進めていくというふうに簡単におっしゃるんですけれども、本当に相反するいろいろな問題もあります、壁もあります。そういった中で、どのように譲り合う、もしくは受けて立つのか、その辺の姿勢をもう少しはっきり私はおっしゃっていただきたいんです。連携が重要だというキーワードだけでは、なかなかこれは、本当に大丈夫なのかよと思って私は引き下がるわけにいかないんですけれども。

 ちょっと局長、もう少し深掘りしたお答えを下さい。お願いします。

黒田政府参考人 先ほどの繰り返しになりますが、具体的な手順というのはこれからになろうと思いますけれども、これまでの鳥獣保護法の特定計画に関しましても、特措法の計画が実際に動くというここ二年ぐらいでしょうか、その間でも、農水省の本省それから林野庁とかなり突っ込んだ意見交換をして、決して役所の大きさで何かが決まるということではなくて、それぞれの計画、事業の役割というものをきちんと議論しながら、どういうふうにお互いに連携していくかということを真剣に議論していますので、それの延長線というかそれ以上に、今度は日本の宝と言えるような自然を、そういうところの生態系をどういうふうに回復していくかという非常に大きな問題がございますので、こういうものに向けてそれぞれがそれぞれの立場でしっかり、例えば個体数の管理であるとか防護さくの設置の仕方であるとかそういうものも含めて、具体的に役割分担ができるように詰めていきたいというふうに考えています。

田島(一)委員 そもそも、今回の生態系維持回復事業をわざわざ自然環境保全地域だけに限定する必要が本当にあったのかなということも実は私は考えるわけであります。これについて、これまでもいろいろと質問の中で御回答いただいていますから重複は避けますけれども、同じ省内であるならばまだまだ連携もとりやすいんでしょうけれども、あえて、どこかに遠慮があったりするのかなとか、そういうふうに思われないような働きかけ、そして農水省に対しても、それぞれの所管する法律と法律のぶつかり合いみたいなことであっては本当に意味がない、意味がないどころかかえってブレーキがかかってマイナスになってしまうと危惧しております。

 そのあたりはきちっと環境省のサイドから強く働きかけをしてもらう、そして矛盾する課題だとかぶつかり合うところをきれいにやはり解決をしていただいて、計画の連携がとれるように、その点は強くお願いをしておきたいと思います。

 次に、同じ省内でありますけれども、国立公園と、それから生物多様性基本法の中でもうたった生物多様性の地域戦略との関連であります。今度は、環境省とそれぞれの自治体という壁にどのように挑んでいらっしゃるのか。もちろん、これについても、国立公園はそれぞれの都道府県にまたがっているわけでありますから、各都道府県に検討していただいている生物多様性の地域戦略と矛盾であるとか問題があってはなりません。

 この連携等についてどのような取り組みをされようとしているのか、各都道府県の生物多様性担当職員等に対してどのように働きかけ等をされようとしているのか、そのあたりの御説明をお願いしたいと思います。

黒田政府参考人 国立公園は、言うまでもなく、我が国の生物多様性保全の屋台骨である。それは、とりもなおさず、地域の生物多様性保全上も核となるべき地域であるというふうに言えると思います。このため、生物多様性地域戦略が策定される際には、国立公園には公園計画というものがございますので、こういうものと整合性をとる形で地域戦略ができていくことが大事だ、こういうふうに思っています。

 国立公園を含む地域で生物多様性地域戦略を例えば県がつくるという際には、やはりこれにつきましても国と地方の間で相互に生物多様性に関する情報の共有をして、調整なり連携なりというのをしっかりしないといけないと思いますし、基本的にこれは目指すところが一緒でございますので、そういう調整の場をつくるとか、あるいは共通の専門家のアドバイスを受けるとか、そういうそごがない形で実施をしていきやすいのかなとは考えておるところでございます。

 その上で、何を具体的な施策としてどういうふうにするかという、実施面での役割分担というものも国と地方の間で適切に行う必要があろうかと思っておりまして、生物多様性地域戦略そして国立公園の公園計画を的確に実施することで、それぞれの地域の生物多様性の確保というものも着実に進めていくことに取り組んでいきたいというふうに考えています。

田島(一)委員 地域戦略をお立ていただく場合も、それこそ都道府県によって本当に温度差があるんだなということを、私、この基本法をつくってからわずか一年足らずの間でも、その温度差を肌身で感じてきたところがあります。

 非常に熱心なところ、とりわけ来年のCOP10を迎える愛知県あたりになりますと、それこそ、一夜漬けとは言いませんけれども、本当にピッチを上げて勉強していらっしゃる様子は感じ取れますし、地方の議員さんも市民の皆さんも本当に前向きに熱心にお取り組みをいただいているというふうに感じますが、それでもまだまだ被害鳥獣の方がメーンである自治体があることも事実であります。

 私は、今回はこの国立公園という、とりわけ自治体の行政区域をまたがるエリアがいい意味での接着剤役をして、地域戦略を扇動していくいいきっかけになるのではないかというふうに思うわけであります。ただ、各都道府県の進捗状況であるとか取り組みの温度差、これをクリアさせていかないと、同じ国立公園のエリアでありながら、片方の県は一生懸命だけれども片方はおくれている、この辺の足並みがそろわないということが私は一番不幸な課題になろうかというふうに思います。

 その点についても、地方分権の時代だということで、環境省の方から先導して、出てこい、一緒にテーブルに着けとなかなか言いにくいのかもしれませんけれども、ここは後でちぐはぐ、でこぼこの状況にしてもらってはやはり困りますので、地方分権といいながらも、そこはやはりその目的とするところをきちっと理解していただく、その取り組みを丁寧にやっていただきたい、そのことをぜひお願いしておきたいと思います。

 時間も限られてまいりました。たくさんの府県にまたがっている公園の一つ、瀬戸内海の国立公園についてちょっとお尋ねをしたいと思います。

 御承知のように、瀬戸内海の国立公園には、自然公園法で定められている公園だけではなく、瀬戸内海環境保全特別措置法もあって、埋め立てをできる限りしないというふうに定められている地域でもあります。このところ、橋をかけるかかけないかというような問題が新聞等でも話題になりましたし、もう一方では、随分長い時間をかけて議論もされてきている上関の原発計画問題について、環境省は今回の自然公園法を通してどのようなお考えでいらっしゃるのかをお尋ねしたいと思います。

 埋め立てをできる限りやらないというふうに特措法の中でも定められている地域に、上関の原発計画が立てられて随分時間がたっております。しかしながら、この原発の是非云々をやりますと所管外になりますから、あえてこの議論は避けますけれども、今回の自然公園法、そして瀬戸内海環境保全特措法の精神と真っ向からぶつかり合うような事業計画であり、ある意味、目的と照らし合わせていくと、この事業の検証というものがやはり十分になされるべきではないかなというふうに私は考えるわけであります。

 平成十二年の二月付で、当時、まだ環境庁だったころでありますけれども、「上関原子力発電所他に係る環境庁長官意見の提出について」ということで、オープンにされていらっしゃいます。もうこの段階で、上関原子力発電所の建設計画、いわゆる環境影響評価は済んだというふうにお考えなのかどうか、その点について現状を御説明いただきたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 この上関原発の環境アセスメントでございますけれども、今委員御指摘のとおりでございます。平成六年に立地環境調査が開始されて、十二年の二月に当時の環境庁長官の意見が環境影響評価の書面に対して提出をされ、十三年六月には最終的な環境影響評価書が経済産業大臣に提出をされ、そして、その後、いろいろな土地売買等が行われて本年四月から陸地部分の造成工事に着工したということで、御指摘のとおり、アセスメントの手続につきましては終了しているというふうに理解をしてございます。

田島(一)委員 この環境影響評価の環境庁長官意見が提出された段階で、それこそ国立公園の中でもありますので、いわゆる生態系等々についての配慮を記載されていらっしゃいます。その中で挙がってきている野生動植物の幾つかを紹介いたしますと、カクメイ科の貝類、それからスナメリ、そしてハヤブサ等々の動植物が挙がっているわけであります。

 ことしの二月の地元中国新聞にも報道されていたんですけれども、上関原発の埋立地域に、絶滅危惧種の1A類に指定されているウミスズメ、とりわけ絶滅危惧種となっているカンムリウミスズメが確認されたという報道がなされております。平成十二年の段階ではこのウミスズメの確認がなされていなかったわけでありますけれども、こうした新たな絶滅危惧種が確認をされている中で事業計画が一方で進んでいる。

 環境省としては、この絶滅危惧種に指定する海鳥のウミスズメの確認というものをどのように受けとめていらっしゃるのか、そのお考えをぜひ聞かせていただきたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のとおり、環境アセスメントの手続の中では、スナメリ等々のいろいろな貴重な生物についての存在が指摘をされています。

 カンムリウミスズメにつきましては、当時、そういった生息がないといいますか、海面の方に来るという指摘があったわけではございません。その後、そういうことが発見をされ、そして現在、調査も行われているというふうには承知をしてございます。

 アセスメントの手続の中におきましては、こういった希少種あるいは貴重な生物といったようなものが、その事業地におきまして手続の後に発見をされる、あるいは事業の実施段階で発見をされるというようなことも考えられるわけでございまして、私ども、先ほど、平成十二年の二月の環境庁長官の意見におきましても、例えば、工事中において新たに希少な動植物が確認された場合は、専門家の意見を聴取し、現地調査を実施した上で、その種の生息あるいは生育環境に対する影響が最小限となるよう適切な保全対策を講じること、こういった方針をアセスメント書にきっちり記載すると書いてございます。

 それを受けて、現在事業者において調査をされ、また、果たしてそこで営巣しているのか、あるいは繁殖しているのかということにもよると思いますけれども、その保護の対策というものが図られることになるというふうに理解をしてございます。

田島(一)委員 先ほど申し上げましたウミスズメだけでなく、カラスバトだとか、絶滅危惧種の存在を確認し、それに対しての対策を求める声というのが、日本生態学会からも上がっています。二〇〇一年に、農水大臣、経産大臣、環境大臣に向けて要望書であるとか見解が発表されてから、実に六回にわたって問題点の指摘や決議、要望書などが、環境省また経産省や事業者に対しても出されているというふうに聞いております。

 六回も出していらっしゃるにもかかわらず、その具体的な回答というものが出ているのかいないのか定かでないんですけれども、環境省は、具体的に、この学会に対しての答弁、見解というものはお示しをされているのか、対話というものはされているのかどうか。その辺をお聞かせください。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 私が承知をしておりますアセスメントのフォローアップといいますか、その中で意見を申し上げたこと、これがきっちり行われているかということの範疇の話だというふうに理解をさせていただきますけれども、私の方から特別そういったお答えを差し上げたことはございません。

 ただ、先ほどありましたカンムリウミスズメにつきましては、日本鳥学会等々の御参画も得まして、去年の五月から八月、そして四回にわたりまして、周辺の海面での実際のカンムリウミスズメの存在状況といったことの調査、それから営巣地に適するような場所が現にあるかどうか、そして、そういうところで営巣の実績があるのかといったようなこと、大変特殊な生態の鳥だというふうに聞いておりますけれども、そういったことの調査が既にされておりまして、現在のところ、ここに繁殖地があるというような兆候は見られないというような情報をいただいているというふうに承知はしてございます。

 そういう意味で、私どもも、このカンムリウミスズメの話につきましては今後とも注視をしていきたい、そういう立場でおります。

田島(一)委員 わかりました。必ずしもこうした学会やNGOと対立関係にあることが望ましいとは全然思いませんし、できる限り対話を重ねていく中で、どのような対応をとっていくのが一番いいのか。その辺についても、環境省が全く知らぬ顔をするんじゃない。事業者に対しても、またこれから先も、環境影響評価を終わって見解はもう発表されていることでありましょうけれども、しかしながら、新たな事実等々が出てきて、それを確認した上であるならば、やはりそれに対する真摯な取り組みというものもしていただかなければなりません。そのことだけは強く要望をしておいて、もう時間がありませんので、次に移らせていただきます。

 最後の質問にさせていただきます。

 きょう、実は皆さんのお手元に資料を一枚お配りさせていただきました。一番最初が明治四十五年四月二十二日に制定をされた法律であります。これは何と読むのか、私も最初読めませんでしたが、臘虎膃肭獣猟獲取締法という法律であります。この当時、環境省もありませんでしたから農水省所管の法律であったかというふうに思いますが、北海道でラッコ、オットセイが食肉または毛皮等々の利用目的で乱獲されるのを取り締まるという意味の法律であります。今はやりの漢字検定にも恐らくこういう文字が出るんだろうというふうに思います。

 漢字はさておきまして、ぱっと見てもわからないこの法律、実は今なお生き続けております。一番最近これが改正されたのが、一番上にありますね、最終改正が平成十一年の十二月二十二日。平成十一年といいますと今から十年前でありますが、十年前にもかかわらず、今なお平仮名ではなく片仮名であり、臘虎膃肭獣と、読みにくいタイトルもそのままであります。何が改正されたのか、どうしてその際についでに片仮名を平仮名に変えなかったのか、単純に見ても私は非常に疑問に思えてならないのであります。

 この法律の存在を知ったのは、私、実は生物多様性基本法を検討している段階であります。野生生物に関する法律にどんなものがあるだろうかと調べていて、このラッコ、オットセイの取締法に出会いました。

 大臣、実際にこの法律をごらんになられて、すらすらお読みになれたかどうか。率直な感想を聞かせてください。

斉藤国務大臣 すらすら読めませんでした。この表題そのものも何と読むんだろうと、先ほどお聞かせいただくまでわかりませんでした。

 感想ということでございますけれども、率直な感想は、できるだけ国民にわかりやすい表現にすべきだと。ただ、この法律をめぐって、長い歴史があればあるほど、それまでに積み重ねられた国会での議論、その議論が一つ一つの言葉に込められているということを考えますと、それも大切にしなきゃいけないという、その二つのバランスの問題なのかなというふうに感じております。

田島(一)委員 大変苦しい答弁だなというふうに私も思いました。

 実は、本当に先人の思い入れであるとかその時代背景というものを大切にするのであるならば、この下に附則、三つ目の附則が昭和二十五年の五月四日にまた改正されたんですけれども、ここから下は平仮名なんですね。法律をつくられた精神をと言うならば、ずっと片仮名を使用されたらいいと思うんですよ。にもかかわらず、ここから下は全部平仮名を使っていらっしゃるわけでありますし、表現も現代仮名遣いをお使いになられるようになりました。

 私は、法律というのは、つくられた法の精神を大切にすることは大事なんですけれども、その時代時代にふさわしい、その時代の国民が読んで理解できる法律にすることが何より大切なのではないかというふうに思ったわけであります。なぜ私が今回、わざわざこのようなラッコ、オットセイの猟獲取締法を出したのかというと、今回の自然公園法の改正部分について疑問を感じたからであります。

 一番下に、今回の自然公園法の第一条の「目的」を、現行法それから改正案、両方併記して比べてみました。右が現行法で、今回提案された改正案を左に書かせていただきました。今回新たに「生物の多様性の確保に寄与すること」というのを現行法の一番最後の部分につけ足しなさったわけですが、それ以外の文言についてはほとんど変えることなく、今回、改正案としておまとめになられました。

 しかし、この改正案の文言をよく読み取ってください。二行目。「その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的とする。」ぱっと読めば、そのとおり、意味は通るというふうにお考えになるかもしれませんが、私も先ほど質問の中でずっと申し上げてきたように、利用を増進させればさせるほどさまざまな問題点も上がっているということを、環境省の皆さんも大臣も認識をいただきました。しかし、法律の「目的」には「利用の増進」とあり、適正な利用だとか、ブレーキをかけるような話は一切入っていないのであります。

 利用を増進させていく、もちろん、国立公園で国民の皆さんに自然と触れ合っていただきたい、そんな思いが込められているのかもしれませんが、今や、時代の流れ、時代の背景、そしてこの自然公園をめぐる課題からすると、やみくもに利用の増進とうたって本当にいいのかどうかを私は疑問に感じたところであります。

 しかも、次の三行目、「国民の保健、休養及び教化に資する」とあります。

 教化という言葉、実はきょう内閣法制局の方に来ていただいて御説明いただこうかなと思いましたが、あえて遠慮させていただきました。教化という言葉は、辞書等々を調べると、教え導いて、よい方向に向かわせることという意味であります。民衆を教化するという例文も載っています。つまりこれは、一番最初に自然公園法が国立公園法という名のもとに昭和につくられた、そのときの精神が脈々と生き続けている言葉であります。

 国民を教化する。教化という言葉が法律の目的に書かれている法律は、今法律は数多くありますが、この自然公園法だけであります。国民を、民衆をよい方向へ教え導いて向かわせる時代錯誤の言葉ではないか、私は率直にそんな思いがいたしました。

 今回の改正のポイントとは外れておりますけれども、せっかく改正するのであるならば、なぜ目的全体を、そして違う条文も逐一チェックをされなかったのか、私はその点が非常に残念でなりません。

 また、先ほど例にとったラッコ、オットセイの猟獲取締法であったとしても、明治四十五年につくられたその精神を尊重してかどうか、ずっと同じように片仮名表記で、難しい、読めない漢字で法律が残っている。これが今の日本の法体系の問題点ではないのかな、私はそんなふうに実は思ったところであります。

 どうぞ大臣、例えば、この教化という言葉であるとか利用の増進であるとか、しっくりこない表現があります。これを一言一句御説明いただこうというふうには思いません。あえてそれを言うならば、へ理屈にへ理屈を上塗りしてしまってもう後へ下がれないような状況になってしまうかもしれませんが、法改正をするのであるならば、そのポイントをパッチワークのようにつけ足すだけではなく、全体のバランス、全体の問題点も含め、何を優先順位として取り上げなければならないかを、隅から隅までしっかり見ていただく改正の手続を踏んでいただきたいと私は思うんです。

 最後に、この私の考えに対する大臣の御見解、そして、これから先さまざまな法改正に取り組まれるだろうと思いますが、その取り組みに対する姿勢について、覚悟と決意を聞かせてください。

斉藤国務大臣 ちょっと個別的な話をさせていただきますと、最初、前段におっしゃいました、利用の増進だけではなく保護と規制ということも今後強調していくべきではないかということにつきましては、今後の大きな検討課題だと思っております。

 それから、教化という言葉につきましても、確かに我々、ぱっと読んだときに違和感を私自身覚えたのも確かでございますが、昔の答弁を見ておりますと、これは答弁なんですけれども、「たとえば自然の非常によい景勝もしくはまた天然自然の植物、動物、そういうものにたとえば青少年等が触れます」「非常に美しいような気持になる、」こういう答弁がありまして、ある意味では、自然からの教化というふうに読むというのが最初の立法時の皆さんのお気持ちだったのではないかなということも感じた次第でございます。

 その問題、今、田島委員の私への質問の答えでございますが、新たな仕組みをどのようにつくっていくかというときに、これまでの議論も大切にしなければならないということとバランスさせながら、しかしながら国民にわかりやすい形で法律をつくるということも大切でございますので、その点、重要な御指摘だと感じた次第でございます。

田島(一)委員 豊かな自然、そして生態系が確保され、生物多様性が確保されていて初めて、公園が利用できます。利用を増進して生態系が確保できるというようなことはまずあり得ないと考えますが、へ理屈を並べれば幾らでも反論もできようかと思います。しかし、言葉は非常に難しく、また、その表現によって何通りもの解釈がある、そのような法律であってはならない。国民が読んですとんと心の中に落ちるような、そういうわかりやすい表現、わかりやすい言葉、わかりやすい例えで、私はこれから法改正や新法をつくっていただく取り組みをしていただきたいと思います。

 どうぞ、そのことだけを心からお願い申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。

水野委員長 次に、伴野豊君。

伴野委員 民主党の伴野豊でございます。(発言する者あり)今、トリだというお声をいただきましたが、あと三十分で多分終局すると思いますので、どうかおつき合いいただければと思います。

 閣法がこれで二つということでございますので、大臣におかれましては必修科目がほぼ終わってくるのかなと。それで来週、イタリアでしたか、会議に行かれるということで、地震があったところでございますので気をつけて行ってきていただいて、お帰りになってくると、いよいよそろそろかなという感じもしないでもないんですけれども、それはそれとして、きょうは三十分、質問をさせていただきたいと思います。

 先ほどるるいろいろ質問をさせていただきまして、総括的な質問をこの三十分間させていただき、場合によっては重複するところもあるかもしれませんが、確認の意味も込めて質問をさせていただきますので、どうかおつき合いいただきますよう、よろしくお願いしたいと思います。

 では、まず一点目ですが、何を今さらと言われるかもしれませんが、今回の改正の目的を改めてお聞きしておきたいと思います。

 御案内のように、今回の改正には、生物多様性基本法ができた、海洋基本法ができた、生態系の被害が顕著になってきた、そういった事柄があるんですけれども、そういった中で、今回の改正の目的を改めてお聞きしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の自然公園法と自然環境保全法の改正でございますが、今委員からお話がございましたとおり、昨年、生物多様性基本法をおつくりいただいた。さらに、近年、生物多様性の保全に関する国民の関心というのが非常に高まっている、あるいは海洋の関係の条約から国内の計画までいろいろなものができている、そういういろいろなことを背景といたしまして、国立・国定公園等における生物多様性の確保を推進するための施策を充実していこう、これが柱でございます。

 具体的には、国立・国定公園あるいは自然環境保全地域におきまして、海域の保全施策をどういうふうに拡充するか、また、シカの食害によって被害を受けた生態系の維持回復等のために所要の規定を設ける、こういう内容でございまして、これにあわせまして、こういう新しい措置を含めまして、自然公園法に基づく措置を的確に講ずることが生物多様性の確保に寄与するものであるということを、先ほども議論がございましたが法の目的において明確にする、こういう中身にしておるところでございます。

伴野委員 事実としてはそうなんだと思うんですね。

 それでは、この三十分間、事実関係、細かい数字については局長に承り、そして、考え方や基本的な姿勢については大臣に承る、そういうパターンでいかせていただきたいと思います。

 事実関係は、まさに今局長がおっしゃった、そのとおりだと思います。それから、作業的にも多分そういう作業手順でやっていくんだと思うんですけれども、私がここで何を申し上げたいかといいますと、生物多様性基本法で、この委員会で各委員がそれぞれの立場で尽力し、私はすばらしい法案をつくらせていただいたんだと思います。そうした中で、そこで生きている精神は、環境省さんのこれからのお仕事、ほとんどとは言いませんが、大きな大きなお仕事の、ミッションの支柱であることは間違いないだろうと思っているんですね。

 そうした中で、先ほど申し上げましたが、それにおいてその考え方ができた、あるいはその精神的支柱に合わせてさまざまな法律を、過去に成立したものを帰納法的に作業していかれるということは、作業的にはそのとおりだと思うんですね。しかしながら、生きとし生けるものがともに生きていける、これが私は究極的な環境省のお仕事の目的であるとするならば、やはりこれからは演繹的なアプローチもきちっとしていただく。

 ちょっと数学的な用語で恐縮ですが、多分、大臣は、数学の証明の方法に帰納法的な証明と演繹的な証明の仕方があるということは御存じだと思いますが、悪く言えば、帰納法というのは対処法的、パッチワーク的になりがち。今回の説明の中でも、どうしても今までのものに対して生物多様性の考え方や確保がプラスアルファして今回の改正。それは、私は、本当はちょっと主客逆転しているのではないのかなと。すべてにおいて生物多様性基本法や海洋基本法のものが上位にあって、それを達成するために、すべからく例えば今回の自然公園法やあるいは環境保全の法律も、手段としてどうあるべきかというのを、全面的な改定も含めて見直すということがこれからは必要になってくるんだと思います。

 先ほど田島一成委員のお話にもございましたように、文言も当然ですし、先ほどラッコのものが明治何年ですか。ですから、作業的には帰納法的なやり方は、マンパワーに限界がありますから、時間的な制約もあると思いますし、やはり演繹的な見方で全部一回すべての法律を見直してみる。文言、あるいは時代の変化、国民の意識の変化に合わせて、場合によってはその意識の変化を先取りするぐらいの法改正も必要になってくるし、当然、現代人が読むわけですから、現代人にわかる文言や言葉へやはり私は改正すべきではないかと思います。

 このあたり、大臣いかがですか。

斉藤国務大臣 今、伴野委員、演繹的な方法でということをおっしゃいました。

 実は、生物多様性基本法の附則に、この法律に基づいて、生物の多様性の保全に係る法律の施行の状況について検討を加え、必要な措置を講じろというふうに書いてございまして、まさしく演繹的な方法でやりなさいというふうなことが書いてございます。

 しかしながら、現実には、一つ一つ問題点を見ながら、帰納法的なことでやっているのが現実であるのはおっしゃるとおりでございます。例えば鳥獣被害法ですとか特定外来生物法などで問題問題に対応しているというのが現実であるということも御理解をいただきたいと思いますけれども、今後、よりこの附則の精神にのっとって、各制度間の連携を強化するという演繹的な方法でいろいろな問題点を見直していくということも重要だと考えております。

伴野委員 大臣の認識と一致していてありがたいなと思いますし、ぜひ積極的におやりいただければと。

 これを繰り返すつもりはありませんが、今回の、すぐれた自然の風景地の保護とその利用の増進というこの目的、場合によっては、極端な言い方をすれば、生物多様性の基本精神を守るがために風景地を壊すということだってあり得るという考え方だってあるということなんです。つまりは、見かけの、形のものだけがきれいになっていれば、そこの中に生きているものがすべて壊れてしまってもいいわけではないはずであって、つまり、何が究極的な目的かということで法律を見直すということが今大事なのではないかなと。

 いい例かどうかわかりませんけれども、犬猫のようにという表現があると思うんですね。私も、子供のときに、そんな下手くそな食べ方をすると、父親から、おまえ、犬や猫のように食べるんじゃないと言われたんですが、今は多分犬や猫の方が上品に食べる、いいものを食べる可能性がある。ですから、これはつまり、場合によっては犬や猫に蔑視の表現の仕方も入っているかもしれないというようなことを最近考ながら、自分もいろいろな講演会やスピーチをするんですけれども。

 だから、時代はやはりどんどん変わってきて、人類自体も生物の中の一つだという謙虚さとともに法律も全部見直していかないと、人間が見た風景がきれいであったらそこに生きているものはいいのかとか、あるいは逆に、風景が悪くても守らなきゃいけないところはあるのではないかというような見方で全部私はこれから見直していくことが必要なのではないかなと思います。

 それから、これもちょっと笑い話にしては恐縮なんですが、たまたま、今回の法律を勉強させていただく中で、環境省の担当者の方といろいろお話をさせていただく中で、やはり担当者の方というのは御担当された法律というのがかわいいんですよね、きっと。かわいくて愛情もあって。

 だから、いろいろ話をしていくと、この公園法を今まで環境省はしっかり守ってきたんですよと非常に力説されて、だから、ある面、使命感があってやっていらっしゃるということはひしひしとわかるんですけれども、現状の法律を守ることが法律の究極的な根本的なものを守ることではない時代に今入っていることもあるかもしれないという、常に謙虚な見直しも必要ではないかなということも若干感じました。

 やはり、本来何を究極的に仕事の目的にされるかというところで、うまくいっているものを見直さなきゃいけない時代に入ってきているんだと思うんですね。当然、よくない事象が出てきているものは見直すのは当たり前なんですが、今までよかったということも見直していかなきゃいけない時代に入ってきていると思いますので、ぜひ、そういった視点で、大臣が先頭に立っていただければな、そんなふうに思います。

 いろいろ考えていく中で思いましたのは、先ほどちょっと、すぐれた自然の風景地以外のところのいわゆるホットスポットというところ、そのホットスポットとのギャップがそろそろ私は出てきているような気がいたします。例示として沖縄のヤンバルクイナの生息地というのがよく出てくるんですが、ここはいわゆる風景地ではないと思います。当然、自然公園と一致していません。しかしながら、種を保全するためには、風景地ではない、あるいは自然公園ではないというところを積極的に優先順位を高めて対応していっていただかなきゃいけない時代に入っているんじゃないかと思いますが、局長、その事実関係も含めまして、今どんな現状なんでしょうか。

黒田政府参考人 環境省では、平成十九年度から、全国を対象にしまして、国立・国定公園の総点検事業に着手しております。自然公園の今日的な意味合いを踏まえまして、国立・国定公園として指定すべきすぐれた自然の風景地というのはどういうところかというもののまず評価方法について見直しを進めております。かなり基本的なところでございます。

 これまでの検討の中で、生物多様性の豊かな地域、例えば照葉樹林に覆われた地域につきましては、国立・国定公園の区域として積極的に今日評価すべきである、そういう方針を見定めたところでございます。

 とりわけ、生物多様性豊かな照葉樹林の地域であります、今お話のありました沖縄県の山原地域、あるいは鹿児島県の奄美群島地域、こういったところにつきましては、その重要性にかんがみまして、国立公園の指定に向けた検討に既に着手しておりまして、地元の関係機関等との意見交換をいろいろステップを踏みながら進めているところでございます。

 この国立・国定公園の総点検事業でございますが、全国の国立・国定公園につきまして、平成二十三年度をめどとして総点検を行うというふうにしておりまして、その結果を踏まえまして、これまでの公園区域というのを見直して、新たな公園の指定であるとか、あるいは生物多様性豊かな地域をしっかり保全していく、こういう努力を進めていきたいというふうに考えています。

伴野委員 ぜひそれを促進して進めていただきたいと思いますし、直接な景気回復の対策ではないかもしれませんが、これは生物あるいは人類にとって非常に重要なことになってまいりますので、ぜひ、大臣、積極的に調査を進めていただくということが、まだ埋もれた、守らなきゃいけないものを発掘するという非常に重要なことになりますので、ここはぜひ、我々もお手伝いさせていただきますので、財務省と渡り合っていただいてお金をとってきていただいて、積極的にやっていただきたいと思いますが、ここの決意に関していかがでしょうか。

斉藤国務大臣 国立公園の中にあるようなものについては、先ほど局長が答弁申し上げましたように総点検事業を実施してきちっとやっていきたい。それから、国立公園の外にあるホットスポットにつきましても、生態系ネットワークの核となる地域として、鳥獣保護区等の保護地域の指定、見直しをあわせて進めていきたいと思っておりまして、そのためにはお金も必要でございますので、しっかりと頑張っていきたいと思います。

伴野委員 そのあたりは、大臣も科学者でいらっしゃいますので、科学的見地に基づく調査をぜひ進めていただいて、こういう自然科学的な見地に基づいて守らなきゃいけないからこれだけの予算が要るんだと言ったら、多分、ノーと言う国民は少ないんじゃないかと思うんですね。

 そうじゃなくて、一方で、よくわからないけれども守らなきゃいけないんだ、仕組みがあるからやらなきゃいけないんだ、どこか手を挙げてくださいというやり方だと、なかなかということになってまいりますので、ぜひ自然科学的な調査を推進していただいて、まず調査し、その調査した結果を国民の前に明らかにしていただいて、そして国民に問うということをぜひしていただければな、そんなふうに思います。

 では、次の質問に行かせていただきたいんですが、これも環境省の役人の方とやりとりをしている中で多少笑い話にもなったんですが、今回、海域公園地区の制度ということで干潟も入ってきた、では沖はどうするんだという質問をしたら、やっと干潟が入れたんです、そこをまず褒めてくださいと言われて、まあそこはわかったと。だけれども、やはり海洋資源ということになると、確かに干潟や陸地側も重要なのはすごくわかるけれども、行く行くはやはり海域側を、沖合をしっかりやらないと多分海というものの自然環境を守るということにはなっていかないんだろうということをお尋ねしたんですが、そのあたり、現状と今後の見通しについて、局長、いかがですか。

黒田政府参考人 国立・国定公園の沿岸域でございますが、従来は、主として陸域の背景とかあるいは緩衝地域というような役割を担うものとして考えられておりまして、瀬戸内海であるとか、石垣島と西表島の間のサンゴ礁の海である石西礁湖などの、内湾になっているようなところを別にいたしますと、原則として沿岸から一キロの範囲を国立公園の海の区域とするのを通例としてきたところでございます。

 しかしながら、近年、自然環境の保全あるいは利用の多様化ということに対応するために、保全すべき対象範囲というのをどうするかということを検討する必要が出てきたというところで、例えば、近年、世界自然遺産にも登録いたしました知床国立公園であるとか、あるいは先ほどちょっと触れましたが西表石垣国立公園の東シナ海なり太平洋側のところでは、海の区域をかなり幅広く拡張しております。

 そういうものに加えまして、現在まだ公園の区域の拡張を検討中のところでございますが、小笠原の国立公園でございます。ホエールウオッチング等の場となっている父島とか母島あるいは聟島列島の沖合などにつきましては、最大で沿岸から沖合五キロまでを国立公園の区域に含めて、そういう海域を国立公園にするという見直し案を取りまとめて、現在、関係機関との調整を行っているところでございます。

 今後、今回の法改正によります海域公園地区の拡充などを踏まえまして、自然公園の保護と利用両方の観点から、重要な沿岸域につきましては、例えば公園区域の見直しというような機会がありますので、そういうときに自然環境の評価というのを進めて、積極的に海の区域の拡張を検討していきたいというふうに考えています。

伴野委員 方向性、あり方というのはそのとおりだと思います。これからは具体論だと思うんです。

 それで、具体論に進んでいく中で、やはり、多少沖合に行くと、水産庁さん初めいわゆる農水関係との調整も必要ですし、海域の話も出てくれば、あるいは隣接している国との関係も出てくれば外務省さん、あるいはそこに何らか大陸棚等々での資源がかかわるとすれば経産省さんにも出てきてもらわなければいけないのかもしれません。そうすると、他省庁と連携しながら特に沖合等々の自然環境保護というのは考えていかなきゃいけないと思いますが、そのあたりの意気込みはいかがでしょうか。

斉藤国務大臣 沖合の問題点は、やはりそこにどれだけ保護すべき自然のいろいろな財産があるかどうかを調査するという、その調査結果、情報がまだたくさんは得られていないということだと思います。

 今回は、基本計画や海洋基本法に基づきまして、藻場、干潟、岩礁というところをまず対象にしたわけですけれども、今後、沖合に向かって調査を進めながら頑張っていきたいと思います。

伴野委員 限られた予算、限られたマンパワーということでございますので理解はいたしますが、ぜひ攻めの姿勢で沖合に出ていっていただければいいかな、そんなふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 土対法のときもいろいろ現場のお話をさせていただきましたが、今回の法案に関しても、いろいろ調べていくと、やはり現場の理解力、あるいは、例えば事業者対お客ということからすると、国民全体の環境保護に対する意識というのをどんどん高めていかなきゃいけないんだと思うんですね。

 そうした中で、あの漢検というのが、今回もうけ過ぎたとか理事長さんの対応ということで、どちらかというと悪いイメージに今なっていますけれども、日本人というのは、ランクづけというのはよくないかもしれませんが、一つの目指すべきものの到達点が何級とかランク何とかというと、結構頑張ってやるんですね。

 うちの娘も、今回あの案件が出てからやめちゃいましたけれども、あれまでは、お父さん、今度漢検の何級受けるからとかいって、お父さんわかるかといって、お父さんの方が負けているケースの方が多かったんですけれども。だから、そういう励みの目標みたいなものをつくりながら、能力アップ、知識アップということはあっていいと私は思うんです。

 すぐ国家検定イコール国家資格で云々という話になると、なかなかそれができないんですよという御時世なのかもしれませんが、何かうまいやり方で、漢検のようにもうけ過ぎず、かつ、試験なんかも多少安くできる仕組みをもうそろそろつくっていってもいいのではないかなと私は思います。

 例えば国土交通省系の方では、観光カリスマという呼び方で、皆さん観光カリスマになりたいということで、ボランティアを中心に、御自身の地域において勉学を積みながらその認定にあずかろうとしている動きがあったり、環境においても、まあいろいろあるのかもしれませんが、ぜひ環境省さんが主導して、楽しくおもしろく環境知識を高めていき、かつ、それが具体的な行動になるような仕組みづくりというのをお考えになることが、やはり行き過ぎたオーバーユースにならないことにつながっていくのではないかと思いますが、局長、今の現状や今後の見通しはいかがですか。

黒田政府参考人 環境省では、先ほども少しお話をさせていただきましたが、三千人近い方々に自然公園指導員をお願いしています。社会的には、自然公園指導員の方々もそれなりに立派なことをやっているということで結構広く知られていて、自然公園指導員を目指すという方もおいでになります。

 また、私どもの施策で、例えば自然学校という、地域の自然であるとか歴史、文化を守りながらその魅力を伝えていく、あるいはいろいろな学びの体験をさせる、そういう自然学校の指導者であるとか、エコツアーのガイドであるとか、そういう者の育成をする事業も実施しておるところでございます。

 直ちに、例えば環境省がこういう専門家の公的認定制度をつくるというのは今日なかなか難しいかとは思いますが、民間の団体、NPOとか財団法人等でいろいろな認定の資格もございます、そういうものに関して、私どもも一緒になって考えたり助言をしたりということでバックアップをしてきているところでございます。

伴野委員 こうなってくると、多少、環境教育とのかね合いにもなってくるのかもしれませんが、私は、郷土愛の一つの中に、自分の生まれ育ったところの自然を守っていくという、その意識をどんどん高める方策というのは、環境省さんが外郭団体をつくってリードしていくという時代じゃないかもしれませんが、ぜひ側面的な支援の仕方の中でまさに涵養していっていただければな、そんなふうに思います。

 時間も若干来ておりますが、最後にCOP10のお話、先般もお話があったかと思いますが、ぜひいろいろ教えていただきたい、あるいは確認させていただきたいことがあります。

 今、私の地元名古屋市では名古屋市長選挙が行われていまして、大臣も御存じだと思いますが、いろいろな盛り上がり方をしている中で、やはりCOP10のあり方も問われているんだと思います。選挙は別として、では今市民的な高まり、県民的な高まりがあるかといいますと、アンケート結果にありますように、言葉自身も難しいということもあるんでしょう、なかなか市民レベルの盛り上がり方がいま一つなのかなと思うんです。

 例えば、愛知県の小中学校では結構ビオトープをしっかりつくっているところもありまして、例えばビオトープコンテストを愛知県小中学校の全域で企画してもらうとか、これは東山動植物園がいいのかどうかわかりませんが、生物に非常に関係した既存の園を何らかの生物多様性のメッカにしていただくとか、やはり何か目に見える形で市民に、名古屋にCOP10が来るとこれだけ目に見える形で自然環境に貢献することがどんどん行われているんだよ、そしてそこに市民も県民も参加していくということが必要なのではないかなと思うんです。

 ですから、いわゆる有識者、専門家が会議を成功させる、どういう宣言を確立させるかという重要な目的は一つあって、その側面的に、やはりせっかく名古屋でやる、せっかく愛知でやる、せっかく日本でやるという位置づけの中で、市民、県民、国民が目に見える形で参加して、ああ、こういうことなんだとわかるような動きをぜひしていただきたいなと思うんですが、現状と今後の見通しについて局長の方からもお話しいただけますか。

黒田政府参考人 今お話がありましたとおり、生物多様性条約第十回の締約国会議、COP10の成功というのは、やはり地元の名古屋市そして愛知県民の方々の非常に深い理解また参画というものを得ることが物すごく大事だ、こういうふうに思っています。

 全国を対象にして、生物多様性に対する理解を深めるための普及啓発、広報プロジェクトということで、地球いきもの応援団というものをつくったり、いろいろな活動をしておりますが、とりわけ愛知県内での理解を深めていただくために、ことしは国内外の若者にも参加してもらって、生物多様性国際ユース会議というものを開いていこうとか、あるいは既に愛知県内で市民、NGO、経済界との定期的な対話会合を開いたり、いろいろな普及、広報イベントも推進していく予定でございます。

 加えて、やはり地域における生物多様性保全の具体的な取り組みというものが大事だということは、御指摘のとおりだと思います。愛知県や名古屋市とも相談しながら検討しつつありますが、お話のありました東山の動物園の園長さん、植物園の園長さん、ともに直接お話もしております。まだ具体的に何をということは定まっておりませんが、もう六百日を切っているということもございますので、ポイントとしてはCOP10以降に成果を引き継ぐことができるような具体的な取り組みというものをしっかり見きわめていきたい、こういうふうに考えております。

伴野委員 では、最後に大臣、このCOP10に対する意気込み等々をまたお聞かせいただけますか。

斉藤国務大臣 COP10は、今世紀に入って日本で行われる国際会議最大のものになって、一万人を超える海外の方が名古屋にお集まりになるということで、環境省としても全力を挙げて今取り組んでいるところです。

 昨年私、大臣になりまして最初の国際会議がエコ・アジア、名古屋でございました。伴野委員にも御参加をいただいたわけでございますけれども、市長、県知事そして経済界の方そして民間の団体の方こぞって大成功に向けて頑張ろうというふうに誓い合ったところでございまして、今後、市民レベル、県民レベル、国民レベルの盛り上がりがあるように、生物多様性という言葉も非常に難しいということで「地球のいのち、つないでいこう」という標語もつくったところでございます。

 全力を挙げて頑張っていきたいと思います。

伴野委員 ぜひ目に見える形で具体的な行動でお示しいただければ、そんなふうに思います。

 本日は、ありがとうございました。

水野委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

水野委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

水野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

水野委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、北川知克君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。田島一成君。

田島(一)委員 私は、ただいま議決されました自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につき、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

 一 公園計画の策定等に当たっては、同計画が適正かつ効果的な自然公園の管理運営に資するものとなるよう、多様な主体が参画して協議するための場を設けるなど、可能な限り幅広く意見を聴くよう努めること。また、そこで集約された意見については、同計画に反映させるよう努めること。

 二 海域公園地区及び海域特別地区の指定に当たっては、利害関係者等にも配慮しつつ、関係省庁間等の連携・協力を十分図ることによって、貴重な海洋生態系の保護・保全にとって重要な海域が指定対象に含まれるよう努めること。

 三 生態系維持回復事業に係る認定等に当たっては、絶滅のおそれのある野生生物への影響や現行の鳥獣被害の防止施策との整合性にも留意しつつ、科学的データ等に準拠しながら厳正かつ適切に行うこと。

 四 自然公園の利用調整地区については、生物の多様性の確保及び持続可能な利用の観点から、住民、関係団体、土地所有者等との十分な調整を図りつつ、指定の拡大に向けて積極的に取り組むこと。

 五 自然公園等の適切な管理運営のために必要な人材の確保に最大限努めること。特に、知識及び経験等が豊富なアクティブ・レンジャー経験者を積極的に活用するよう努めること。また、自然公園等を地元住民の雇用創出の場として活用すべく、グリーンワーカー事業等の拡充等をはじめとする積極的な施策の展開を図ること。

 六 自然公園及び自然環境保全地域等の自然保護地域体系のあり方について法制度も含めて検討を行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

水野委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

水野委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。斉藤環境大臣。

斉藤国務大臣 ただいま御決議のございました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして、努力する所存でございます。

    ―――――――――――――

水野委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

水野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

水野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時九分散会


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