衆議院

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第26号 平成23年8月9日(火曜日)

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平成二十三年八月九日(火曜日)

    午前九時四十分開議

 出席委員

   委員長 原口 一博君

   理事 石津 政雄君 理事 稲見 哲男君

   理事 古賀 敬章君 理事 福田 昭夫君

   理事 皆吉 稲生君 理事 石田 真敏君

   理事 坂本 哲志君 理事 西  博義君

      石井  章君    内山  晃君

      小川 淳也君    緒方林太郎君

      大谷  啓君    大西 孝典君

      逢坂 誠二君    奥野総一郎君

      笠原多見子君    黄川田 徹君

      小室 寿明君    後藤 祐一君

      鈴木 克昌君    高井 崇志君

      中後  淳君    永江 孝子君

      畑  浩治君    平岡 秀夫君

      藤田 憲彦君    松崎 公昭君

      湯原 俊二君    赤澤 亮正君

      伊東 良孝君    加藤 紘一君

      佐藤  勉君    橘 慶一郎君

      谷  公一君    森山  裕君

      稲津  久君    塩川 鉄也君

      重野 安正君    柿澤 未途君

    …………………………………

   国務大臣

   (地域主権推進担当)   片山 善博君

   内閣府副大臣       東  祥三君

   内閣府副大臣       山口  壯君

   総務副大臣        鈴木 克昌君

   総務副大臣        平岡 秀夫君

   総務大臣政務官      逢坂 誠二君

   厚生労働大臣政務官    岡本 充功君

   国土交通大臣政務官    市村浩一郎君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  椎川  忍君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   飯塚  厚君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 中沖  剛君

   総務委員会専門員     白井  誠君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月四日

 辞任         補欠選任

  稲津  久君     赤松 正雄君

同月九日

 辞任         補欠選任

  奥野総一郎君     畑  浩治君

  後藤 祐一君     緒方林太郎君

  赤澤 亮正君     伊東 良孝君

  赤松 正雄君     稲津  久君

同日

 辞任         補欠選任

  緒方林太郎君     後藤 祐一君

  畑  浩治君     奥野総一郎君

  伊東 良孝君     赤澤 亮正君

  稲津  久君     赤松 正雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第四九号)


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     ――――◇―――――

原口委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治財政局長椎川忍君、財務省理財局次長飯塚厚君及び厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長中沖剛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。橘慶一郎君。

橘(慶)委員 おはようございます。

 二次一括法の質疑をさせていただく機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 万葉集で始めたいと思います。暦の上では秋になってしまったのですが、もう一首だけ夏の歌ということで、皆さん御存じのナデシコの歌を歌わせていただいて、入らせていただきたいと思います。

 巻八、千四百九十六番、大伴家持が、たくさん咲いているナデシコの花を折って、ぜひあの子に見せてあげたいなという歌を歌わせていただきます。

  我がにはのなでしこの花盛りなり手折りて一目見せむ子もがも

 どうもありがとうございました。(拍手)

 それでは質疑に入らせていただくんですが、二次一括法でありますので、せんだって、三本立ての第一次の一括法が通っているわけであります。

 これに基づきまして、国と地方の協議の場が法定化されて始まっているわけであります。第一回が六月十三日に開催されております。

 前回、国と地方の協議の場の法案のときにいろいろと、協議をすること自体は大事なんだけれども、この法案をいかに弾力的にうまく運用していくかということが大事である、ぜひ、かたくならない運用をお願いしますということを申し上げながら、採決では賛成をさせていただいた立場であります。そういう立場から、今、一回目をやってみた上での感じ、そしてまた、これからどうされていくかということを確認させていただきたいと思います。

 一回目の協議の場がありまして、そして法の規定に基づきまして、その概要ということで、七月下旬に、国会にこういう形で報告を上げていただきました。ただ、速やかにということにはなっているわけですが、現実一カ月半ぐらいかかったかなと思います。ちょっと時間があいているような気もいたします。これからもこのような間隔でされるのか、この辺、速やかにという法の規定を運用の方でどのようにお考えなのか、まず確認をさせてください。

逢坂大臣政務官 今回、六月十三日に協議の場を開催して、国会への報告が七月二十七日だったと承知をしておりますけれども、御指摘のとおり、若干時間がかかったかなというふうに思っております。今後は、さらにこれをスピードアップしてやれるようにしたいと思っております。

 今回時間がかかった理由としまして、初回だったということもありまして、あらかじめ準備はしていたんですが、実際協議をやってみた結果、さらに報告書の形式をどうするかということや、あるいは国会の事務局と、どういう手順で国会へ出しましょうかというようなことの調整もやっておりましたので、そのために時間がかかっておりました。

 二回目からは、さらにスピードアップを目指して頑張ってまいりたいと思います。

橘(慶)委員 法律では概要を報告するということになっておりまして、そこにある程度解釈の余地はあると思っているんですが、これをいただきまして、全部で十八ページ物ということで、最初の一ページ、二ページのあたりで大体協議の概要は終わるんですが、「協議内容」というところ、二ページ目から始まりまして、以下十八ページ目まで十七ページ間にわたって、ある意味で詳細に皆さんの御発言、やりとりを載せられたわけです。

 特に今回、税と社会保障の一体改革ということもありまして、実は後ろの方で最終的にはおまとめをなさっているんですが、例えば、国の方は閣僚間でも多少意見の相違がある。それをある意味できれいさっぱり出されるというのもまた一つの方法だとは思うんですが、ただ一面、地方六団体はそれぞれ団体ということですが、国はある意味で一つといえば一つ、内閣は一致といえば一致。まあ、そこはいろいろな見方があって、先に議論してしっかり心一つに臨む、チームの内閣ということで臨む方法もあるし、こういう形で議論されて収束するというのもいいんですけれども。

 ただ、どうもこんなに詳細にされていると、今ほど逢坂政務官、できるだけ急ぎたいというお話もありましたが、これを見た感じで言いますと、多分、テープ起こしをされ、お一人お一人の発言者にこれでいいかということを確認しないと、この形に仕上がってこないんじゃないか。なぜなら、おれのニュアンスとは違うとか、私はそんなつもりじゃなかったということもあると、きょう後ろにいるスタッフの方といろいろやりとりをさせていただいたんですけれども、これ一つつくるためにまた大変御苦労されることになる。要は、時間をかけて発言者の方とテープ起こししたものを確認したり、何かお仕事が非常にふえていくんじゃないかという懸念も持つわけです。

 もう一つ言いますと、このスタイルになると、だんだん、ああ、そんなに全部載るのだったら、ちょっとしゃべらないでおこうかなとなると、この協議の場自体が形骸化する可能性もないわけじゃない。

 私は、別にこれにこだわることはなくて、もう少し簡略なスタイル、さっぱりしたものにされていってもいいんじゃないかと個人的に思うんですが、いかがでしょうか。

逢坂大臣政務官 今回、報告をつくるに当たって、我々も随分議論をいたしました。どの程度の深まりで出すべきかということを議論いたしまして、今回の国、地方協議の場は、国だけの会議ではございませんので、地方の皆さんにも入っていただいて、ある種共同の会議の場でありますから、地方の皆さんにも御相談申し上げて今回はこのような形になっております。

 しかし、以前の国会審議のときにも申し上げましたとおり、この国、地方協議の場は、最初からどんな形でやるというのは必ずしも決まったものではなく、いろいろな取り組みを重ねていく中で深化をさせたいというふうに思っております。

 その意味におきまして、今回の報告書の形がよいのかどうかも含めて、今回、これは国権の最高機関である国会の審議に資するというようなことを目的にして報告書を出しておりますので、その目的が達成されるように、また改善すべきところは改善してまいりたいと思います。

橘(慶)委員 そのようにまたいろいろ改革、改善を加えていただくという御答弁、大変ありがたいと思います。

 国会の審議に資するためということもあるので、きょうも審議に使わせていただいている、こういうことでもございます。そこで、せっかくそういうふうにおっしゃっていただいて、最後の方の結論めいたところでの確認を幾つかしておきたいわけです。

 税と社会保障の一体改革について、最後の方で分科会云々という話になってまいります。ここはやりとりが正確に出てくるわけです。与謝野大臣は、最初はちょっと、余り大げさなことをされると機動力がなくなるんじゃないかと。これは結構、橘的な感じもあるんですが、これに対して片山大臣の方は、新しく通った法律によるとやらなければいけないんだ、余りかた苦しく考えないでほしいというようなことを言われて云々ということで、分科会、何となくやるのかなという感じで議事録的には終わっている。「協議が調った事項」では「分科会を活用し、話合いを継続していくこと。」となっております。

 そこで、確認をさせてください。この税と社会保障の一体改革について、国と地方の協議の場に関する法律に基づく分科会は設置されるお考えであるのかどうかを確認させてください。

逢坂大臣政務官 今回の第一回目の協議の場では、今御紹介いただいたとおり、「分科会を活用し、話合いを継続していく」、その方向で協議が調っているわけであります。したがいまして、今後、分科会の開催時期だとか、どういうふうに分科会を持つべきかといったような詳細については地方側とも、あるいは関係大臣ともよく相談をしながら検討してまいりたい、そのように思っております。

橘(慶)委員 そこで、次にこの法の解釈の問題になるんですが、分科会を設置する場合には、法第五条第三項というのがありまして、「分科会の開催、構成及び運営に関し必要な事項は、議長が」、これは内閣官房長官になりましたけれども、「協議の場に諮って定める。」となっております。

 これは法文を解釈していくと、多分、第二回協議の場にこれを諮らなきゃいけないんじゃないかなと橘は解釈をするわけです。本当は、そんなにかたいことをしないでやっていった方がいいんじゃないかなとも思いますけれども、法が法ですから、そういうふうに読めちゃうんです。そうすると、第二回の協議の場で諮って分科会を開催されるお考えであるかというのが通告した質問になっております。

 ただ、その通告をした後に、実は子ども手当についての三党合意というのがなされました。各幹事長、政調会長さんの署名したものを持っておるんですが、ここで、児童手当法に所要の改正を行って、現金給付を二十四年度以降やっていくわけです。当然そうなるわけですが、これについては、「地方との協議は、「国と地方の協議の場」において行う。」という文言があるわけです。そして、八月五日には地方六団体から、ぜひ協議の場を開催してほしい、こういう御案内が来たわけであります。

 今国会の会期は八月三十一日であります。今、子ども手当法は九月までのつなぎだけがなされていて、その後のつなぎもやらなければいけません。そうすると、では、第二回というのはこのお盆明けあたり、その辺でもう準備されているんでしょうかというのを、これは通告外ですけれども、あわせて質問させていただきます。

片山国務大臣 今お話しになったような経緯、事情がありますので、近々この協議の場を開こうと思っております。

 したがって、しゃくし定規に言いますと、仮にそういうことがなくても分科会を設置するための、根拠づけのための協議の場を開かなきゃいけないということでありましたけれども、今のような事情で、別の案件で協議の場を開くことになりますので、その際にあわせて分科会についても決める、こういうことになろうと思います。

橘(慶)委員 ひょっとすると、協議の場を開いたら、今度は児童手当の分科会もつくらなきゃいけなくなるかもしれないかななんて思うんですが、今いみじくも大臣の御答弁の中に、しゃくし定規という言葉がありました。私も心配していることはそこなのであります。

 何かしゃくし定規にやっていくと、非常にかたいものになってくる。あるいは、協議の場でいろいろやるとややこしくなるんだったら、みんな分科会におろして、国会は協議の場の報告だけだから、しゃんしゃんしゃんの協議の場の報告だけ国会にしておけばいいじゃないかということになると、いよいよ形骸化したり、あるいは分科会が重くなったり、その運営が何か必要以上に重苦しいものになる。あるいは、そのことによって、私は内閣府が肥大化しているのも反対論者なんですけれども、またそこの人がどんどん、そういうことでスタッフをふやさなきゃいけないなんということになりますと、何か目的と到達点が違ってくるんじゃないか、このように思っております。

 私から申し上げたいのは、どうか運営や報告を、しゃくし定規ではなくて、弾力的にやっていただきたいということ。そしてまた、できることなら閣僚側も、地方は六団体、どうしても六つの意見が出るということはあることですから、閣僚側はなるべく意思統一されて臨んだ方がより協議が迅速ではないか、こういうふうに考えるんですが、総括的に大臣の御答弁をいただきたいと思います。

片山国務大臣 協議の場は、本当に、しゃくし定規にならないように、形骸化しないように気をつけたいと思います。

 ただ、初めのときから法定された手続をいいかげんにするということもはばかられますので、やはりきちっと誠実に対応する。しかし、そういうお互いの信頼関係の中で、経験的に弾力的な運用、実質が上がるような運用というものが積み重ねてこられるんだろうと思います。そういうふうに努めたいと思います。

 それから、政府側の閣僚の間の意見というのは一致することが望ましいと思います。第一回目のときは、これはいささか異例だったと思うんですけれども、社会保障と税の一体改革のこれまでの議論というものがいささか私から見ると異例でありまして、必ずしも政府内の統一を経ないまま一定の結論に導こうとしたようなことがありました。そういう段階で国と地方の協議の場を開きましたので、お手元の議事録にありますようなことになりましたけれども、今後はそういうことのないように、事前に、完全に一致するかどうかというのはともかくとしまして、地方に臨む場合の大筋については各閣僚の間でさほど異論がないように、意見交換をして意思を統一するように努めたいと思います。

橘(慶)委員 今のところまで確認をさせていただいておいて、また第二回の協議の場を私としては見守らせていただきたい、このように思います。

 それでは、二次一括法、総論的なことから始めていきたいと思います。

 この二次一括法、地方分権の会議の第三次勧告で盛られたことの中で、一次一括法で先行したものの残りの部分で、可能な限りいろいろなことに取り組まれて、法案的にも二分冊で、一分冊だけでもかなり大部なものになされていまして、当然、関係者の方の御努力、大変御苦労があったものと推察するわけであります。

 ある程度、今まとめられるものはまとめたという感覚ではないかと思いますが、残ったものもあるという中で、残された課題についての今後の取り組みはどうされるのか、ここを確認させていただきます。

逢坂大臣政務官 三次勧告におきまして、八百八十九条項について見直しを行うようにという勧告がされたわけであります。しかしながら、今御指摘がありましたとおり、まだ二百五十三条項については見直し措置を講ずることを決定していないわけであります。

 ちょっと幾つかお知らせしますと、例えば、道路使用許可の基準を都道府県の条例に委任すべきというものはまだ手がついていない、あるいは、博物館登録の要件を都道府県の条例に委任すべきというものもまだ手がついていないというようなものがあります。

 これらのものについて、今回手をつけなかったからこれで終わりということではなくて、今回改正する条項も含めて、その執行状況も見ながら、今後、一生懸命この勧告の実現に向けて取り組んでまいりたいと思っております。

橘(慶)委員 数の上では五合目は越えたということで、六、七合目ということではあるんでしょうけれども、残された課題についてはまたぜひお取り組みをいただきたい、このように思うわけであります。

 そして、義務づけ・枠づけ、今申し上げたように数の面では五合目を越えてきて、だんだん一つのまとめという感じになってきているわけですが、地方分権といいますか、この改革にはさまざまな番地があるわけであります。とりわけ昨年から、公務員人件費の問題も多少絡みましたけれども、出先機関の原則廃止という問題、いわゆる国のブロック機関の事務をどうしていくかという問題については、昨年の十二月二十八日にアクション・プランの閣議決定がありまして、二月十七日に第一回の推進委員会が行われたわけであります。

 もちろん、その後、三月十一日の東日本大震災というだれもが予測できなかった事態もまたあるわけで、なかなか最初のもくろみどおりいかないということも十分理解しているわけでありますが、当初、二月十七日の委員会では、工程表の中の絵面では四―六月に基本的枠組み決定、七―九月、それもなるべく七月に近い方で移譲対象機関、いわゆるどの機関を対象にして検討しようかというところまで決定云々という工程表に実はなっていたわけであります。

 今申し上げたような、多少事情としては、大きなこともあったその後のことでありますけれども、現状、出先機関の問題についての取り組みの状況はどうなっているかということをここで確認させていただきたいと思います。

逢坂大臣政務官 御指摘のとおり、大震災がございまして多少スケジュールが、三カ月程度でありますけれども、おくれております。しかし、結論を申し上げますと、ゴールは変えておりません。と申しますのは、ブロック単位で移管するための法案につきましては、二十四年の通常国会への提出、そして二十六年度中の事務権限の移譲を目指してまいりたいというふうに思っております。

 スケジュールがおくれている点でございますが、まず、四月―六月に基本的枠組みの決定を行う、あるいは七月―九月に移譲対象機関の決定を行うといった部分でございますが、これについて、まず九月を目途に中間取りまとめをする、それから今年の十二月を目途に移譲対象機関あるいは移譲対象事務権限の決定を行うということで、この点、三カ月程度おくれているということであります。

 そして、関西と九州の両地域もこうした事情を十分御理解いただきまして、当面移譲する機関を、当初、八府省十五機関というような言い方をしていたんですが、今回は三機関に絞って関西、九州からも出されております。具体的に申し上げますと、経済産業局、地方整備局、地方環境事務所の三つを関西、九州ともに移譲してほしいという意思決定がなされております。

 こうしたことを踏まえまして、七月一日には第二回目のアクション・プラン推進委員会、それから、去る八月三日には第一回の人材調整準備会合を開催しているところであります。

 以上です。

橘(慶)委員 今お話がありましたように、広域連合的な取り組み、関西そしてまた九州ということが起こってまいりました。ぜひ、今お話があったように、そういった地方とのキャッチボールの中でまた詳細に御検討いただくということが大事だと思います。

 それと、震災ということもありまして、この震災で出てきたことは、私どもは今まで、どちらかというと分権あるいは権限を移していくことをやってきたわけですけれども、またそういうことが望ましいという論調で来ているわけですが、ちょっと手に負えないようなことが起こった場合とかそういう緊急事態という場合、ある意味で国というものが頼られるという部分も、この三月十一日以来いろいろな形で、きょう現在も、いろいろな意味で国が果たさなきゃいけない役割も問われているという状況にあるかと思います。そういったこともいろいろ勘案されながら、ぜひこのあたりを、どうあるべきかということを議論いただきたいな、こんなことを感じております。

 そしてまた、いつも申し上げるのですが、もちろん物事をストップさせてはいけないというのは理解しているんですが、しかしまた、どうしてもどうしてもということで期限に縛られて実質が伴わないということにならないように、ぜひ、そこは着実に階段を上っていただきたい、このように感じているところであります。

 それでは、いよいよ法案の中身のところへ入ってまいりたいと思います。

 地方債の起債協議と国への寄附の禁止の緩和、二つに絞って私は質問させていただきたいと思います。先ほど申し上げたとおり、そのほかいろいろなことがあるんですが、私はその部分については、気になるところは質問主意書も出させていただいたので、きょうは、当初、地方分権の勧告の中になかった地方債の部分、そして寄附の部分でお話を伺いたいと思います。

 まず、地方債の起債許可の部分。これは、私は自分なりに、勧告にはなかったけれども、地方財政の自由度を上げていくということは出ておりましたし、必ずしも今回の改正というのがすべてを巻き込むというよりは、ある程度条件づけをした、いわゆる起債でも団体を絞る、あるいは資金の出どころを絞るという形で、かなり絞られているんじゃないかなということで今理解を深めているわけであります。

 そこで、最初に、協議が不要となり得る地方公共団体の実質公債費率、政令で定められるわけですが、どの程度にするのか。そしてまた、協議が不要となり得る民間資金による起債は、年間の全起債額のどの程度のシェアを占めるのか。多分、大規模な団体に限られる話になるんじゃないかなと思うんですが、実態としてどのように想定されているかをお伺いいたします。

片山国務大臣 今回の地方債に対する国の関与の見直しといいますのは、今まで自治体の起債について各事業ごとに関与していたわけでありますけれども、そういう関与ではなくて、一定の場合には包括的関与といいますか枠でもって関与することで、中は自主性に任せよう、こういう趣旨であります。したがって、現在いわばつつがなく、それぞれの事業ごとに管理している仕組みというものをそんなに大きく変えないで、市場との関係では余り変化がないようにしながら新しい制度に移行しようということであります。そういう理念のもとでこの改正をしようと思っておりますので、いわば普通の団体であれば、新しい届け出制といいますか総枠管理の方に移行する、こういうことを念頭に置いております。

 したがって、まだ具体的には政令の内容というのは決めておりませんけれども、例えば現在、協議制、協議同意という仕組みではなくて許可制に移りますのが一八%という指標でありますから、そこが一つの分かれ目になるだろうと思います。少なくとも、それ以上に設定することはあり得ないと思います。それから、今協議をしている自治体の全国の率の平均が、都道府県が一三%、市区町村が一一・二%ということでありますので、これより下になるということもないだろうと思います。それから、平均よりちょっと上が悪いというわけでもありませんので、ですから、平均の水準と一八%、この場合の上限との間に設定をするということだろうと思います。

 その際に、最初からすべて将来を見込んで率を設定するのか、新しい試みなので多少段階を追って徐々に上げていくのか、その辺の選択はあると思いますので、よく検討したいと思います。

 それからシェアの話ですが、これは率の設定いかんによりますけれども、先ほど言いました一八%と全国の自治体の平均との間をとって、例えば一六%という数字を仮に設定したとした場合には、民間資金のうち七五%程度がこの新しい仕組みに移行する。これは、公的資金も含めた全起債額に占める比率でいいますと五五%程度になると見込んでおります。これもしかし、率の設定によって違ってくるということになります。

 それから、財政規模と今回の仕組みは直接関係ありませんので、財政力でありますとか過去の発行額でありますとか、それから負の財産のストックといいますか、公債残高でありますとか、そういうものとの兼ね合いで決まってきますので、一概に規模の大きいところが対象になりやすく、小さいところが対象になりにくいということではないと思います。

橘(慶)委員 大体数字のめどみたいなものも、問わず語り的に言うと、一五あたりのどこかその辺かなというところも見えましたし、大体どれくらいの割合ということも見えてまいりました。私は私なりに、自分の出身県が十五市町村あるんですが、どれくらいの実質公債費率かというのが大体わかりますので、今の感じでいくと、どちらかというと、都市部を中心にやや大きいところ、あるいは財政力の強いところが中心になっていくのかなという感じも大体つかめたところであります。

 それはそれで一つ御答弁として理解させていただいて、あと、ちょっと技術的ですけれども、地方財政法の五条の三第三項で、引き続き協議を必要とされる政令で定める公的資金は、具体的にどう想定されるのか伺っておきます。

逢坂大臣政務官 公的資金は、現在三種類ございます。この三種類については地方財政法施行令第四条で決められておりまして、一つが財政融資資金、もう一つが地方公共団体金融機構資金、それからもう一つですが、これが若干わかりにくいんですが、特定の事業を行う地方公共団体に対して国などが貸し付ける資金というふうになっております。

 最後の三番目の、国などが貸し付ける資金ですが、具体的に若干申し上げますと、例えば母子寡婦福祉資金貸付金、あるいは公害防止資金貸付金、こういったものが、それぞれ幾つかメニューが設けられている。

 この三つが公的資金ということになります。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 もう一問、技術的な部分ですが、協議が不要になる団体は、地方財政法の第五条の三第六項の規定に基づきまして、あらかじめ届け出をするということになってまいります。ここにおいて、届け出の方法や届け出事項の詳細、あるいは届け出を要しない軽微な事項というのは政省令に落とされているわけで、非常に技術的でありますが、ここはどういうことを想定されているか、局長さんの御答弁をいただきます。

椎川政府参考人 今回創設されます届け出制の政省令事項でございますけれども、まず、届け出の方法を政令で定めるということでございますが、これは許可や協議の場合と同様に、事業の区分ごとに、都道府県または指定都市にあっては総務大臣に、市町村にあっては都道府県知事に届け出ることを定める予定でございます。

 それから、先に、不要届け出債でございますけれども、これも許可、協議と同じでございまして、当然のことでございますけれども、軽微な場合その他の事項ということでございますので、例えば都道府県から借り入れる場合、それから借りかえを予定している地方債を借りかえる場合、さらに、条件等を不利にならないように、あるいは財政負担を増大させない、先送りさせない方法で条件を変更したりする場合には届け出が不要であるということを定めようと思っております。

 最後に、届け出事項のうち、法律で定めるもの以外の具体的な事項でございますけれども、これも、現在運用されております許可とか協議と基本的には同じにしようと思っております。というのは、現在でもA5で一、二枚のごく簡単なものでございまして、法律以外の事項といたしましては、事業費の総額、そしてその財源内訳、それから借入先、年間起債予定額、決算の状況といったごく簡単なものでございます。

橘(慶)委員 ここは確認をさせていただきました。ありがとうございます。

 あと残った時間、寄附の禁止を外す、原則、例外が逆になるという話であるわけですけれども、ここを最後にお伺いしておきたいと思います。

 私の思いは、今回、地方制度調査会ももう一度立ち上げていただいた、私としては非常にうれしかったんですけれども、せっかくそういうものもやられるのであれば、そういうところで少し、疑念のある部分、今、地方自治法の改正もそこへもう一度かけられると聞いておりますけれども、そういったものは少し慎重にもまれてもいいのかなという感じを実は私は持っているのです。

 まず最初に、今まで、地方から国への寄附を原則禁止していた理由というのがあると思います。それを今日的に外した方がいいという御判断の理由もあると思います。昔、どうしてそれを禁止したのか、なぜ今、外した方がいいとお思いになるのか、この理由をここで確認したいと思います。

逢坂大臣政務官 まず最初に、経過を申し上げます。

 戦後でございますけれども、自発的な寄附だと言いながらも、国の方から地方への負担を求めるという行為が非常に多かったというふうに聞いております。そこで、昭和二十七年に、地方財政法第四条の五の規定によりまして、国から地方に対して寄附金を割り当てて強制的に徴収することを禁止しております。これは国から地方に対してです。続きまして、昭和三十年ですが、これは旧地方財政再建促進特別措置法第二十四条におきまして、地方公共団体から国等への寄附金等の支出を原則禁止した。したがいまして、昭和二十七年と三十年で、国の側からも地方の側からも両方できないというような二重の規定を設けたということでございます。

 ところが、こういう規定は設けられているんですが、私も自治の現場におりましたときに、例えば国鉄の皆さんと一緒に地域づくりの相談をしている中で、仮に国鉄の施設であっても、これはやはり自治体の負担で多少は整備をした方がいいんじゃないかななんという経験も、私自身もございました。あるいは現在も、各地方公共団体から、例えば大学病院などに対して自治体がお金をある一定程度負担して、医療の水準を高めていきたいというような要望もあるというふうにも聞いております。

 そこで、総務省の中でいろいろ検討を進めました結果、これまでの原則禁止から、地方公共団体の自主的な判断にゆだねて執行していただいた方が適当ではないかというふうに判断をして今回の措置をとらせていただくものでございます。

橘(慶)委員 考えられることはそういうことだと思うんですが、それにしても何か、原則、例外を逆にするほどのことがあるのかな、例えば今言われた国鉄の話あるいは大学病院の話、そういうものを例外事項で風穴をあけていくということでも十分対応ができる。それをあえて原則、例外を逆にして全部いいんですよ、それで、その逆の縛りをどうされるかというと、閣議決定で縛るからいいんだというお話を、実はこれは大臣と特に町村会あたりとの話ではそうおっしゃるんですね。

 でも、僕がここで思うことは、今や、どうあれ政権交代ということもあるという世の中において、私は今立法府におりますから、閣議決定ということで行政府の中で自主規制されても、その閣議の閣僚、内閣のあるじがかわれば閣議決定はどうにでも変更できるということもだんだんわかってきている、そういう事例も積み重なってきているこの世の中であります。立法府との関係において、本当に私どもはそれを原則自由化ということが望ましいのかどうか。逆に言うと、なぜ閣議決定で、行政の自主規制で大丈夫だというふうに御判断されているのか、行政の側としての御見解をお伺いしておきたいわけです。

片山国務大臣 この問題は、一つは経緯の問題、それから理念の問題があると思います。

 経緯でいいますと、先ほど逢坂政務官が御答弁申し上げましたように、昭和二十年代それから三十年、そのころに寄附の禁止という規定が設けられたのでありますけれども、一九五四年、昭和二十九年に自治体の多くが赤字になりまして、私の記憶では八割ぐらいの自治体が赤字になったと思います。それで、財政を再建するための特別措置が必要だということで財政再建特別措置法ができたわけです。

 その多くの自治体が赤字になった要因の一つに、国に対して自発的な寄附を多額にしていた、自発的とはいえども、実質的には半強制のようなものもあった、そういう実態にかんがみて、この地方財政再建特別措置法の中に「当分の間、」ということで、そのころの財政再建を進めるために当分の間、国に対する寄附は禁止をする、例外として、当時の所管官庁の許可を得ればいい、こういう仕組みを設けたわけです。

 ですから、あくまでもその寄附の禁止というのは、昭和二十年代、三十年代初頭の地方財政の混乱を収束させるための規定だったわけであります。それが、ずっと当分の間が続きまして、あろうことか、夕張の破綻のときに新しい地方公共団体の財政の健全化に関する法律をつくりましたけれども、その中にもすっぽり入れてしまいまして、恒久法の中に入れてしまったわけでありまして、やはり昭和二十年代、三十年代初頭の対策のものはそれで収束させるべきだ。もとの、本来自治体の自主性に任せている、これは当初そうでありましたから、そこに戻すべきだというのが経緯からいう事柄であります。

 それから理念としては、自治体は主体性のある法人であります。ちゃんと議事機関もあって意思決定をするわけであります。ところが、その意思決定がまかりならぬ、国の許可がなければ寄附ができないというのは、これは非常に、自治体に対する行為制限であります。世の中で贈与を一般的にしてはならないとされておりますのは、未成年者、成年後見制度下にある方、それから地方公共団体でありまして、本当に地域主権改革とか地方分権改革を標榜して、これから地域を担っていく主体であるとされている地方公共団体が、未成年、成年後見制度、地方自治体という関係でいいのかどうかという、これは理念の問題であります。そういうことから、今回、これはすっぱりと外しておこうと。

 ただ、そうはいいましても、実態として国の方からいろいろ圧力がかかったりする可能性はないわけではない。しかし、それは昭和二十年代、三十年とは全く違います。ですから、あえて法律的手段によらずとも、閣議決定でいいのではないかという判断をしたわけであります。

 もし、これから、これを奇貨として各省がいろいろな、あの手この手で寄附を求めるようなことがあるとすれば、それはそのときまた、今日的な環境の中で法的措置をお願いせざるを得ないことも万が一あるかもしれませんけれども、今はそこまで考えなくてもいいのではないかという判断をしているところであります。

橘(慶)委員 詳細な御答弁をありがとうございました。

 私は逆に、万が一という、万が一あるいは千分の一、百分の一かもしれませんが、そこをまた私どもはしっかり考えていくのが、今、立法府としての役割でないかと思っております。

 そこはぜひ各委員の方々に、どうお考えになるのか、そこをある程度、少しは原則、例外をきちっとしておいた方がいいんじゃないのかというのはぜひ皆さんお考えをいただいてということを申し上げて、いろいろ、雇用促進住宅のこともありました。大学だってこれから厳しいかもしれない。この世の中、本当に本当にすべてが善意であるんだろうかということも考えていただきながら、きょうの質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

原口委員長 次に、伊東良孝君。

伊東委員 おはようございます。

 それでは、私は、今の橘先生と余りダブらないようにしたいと思いますが、二次一括法、権限移譲についてお伺いをいたします。

 この二次一括法が成立いたしますと、権限を移譲される基礎自治体の事務量がふえるのではないか、このような心配をされているわけであります。全国の基礎自治体でそれぞれ、恐らくここ十年くらいでありましょうか、特に三位一体改革以来、身を削る思いで行革に励んでいるわけであります。財政支出の削減あるいは組織のスリム化、さらには定員削減に真剣に取り組んできていることは御案内のとおりであります。

 本当に基礎自治体側に、この権限移譲のたくさんの権限を進んで受け入れる、そういった組織体制あるいは専門的な知識、さらには事務遂行能力が十分に今備わっている、こうお考えなのかどうか、まずこの点、片山大臣の御見解を伺いたいと思います。

片山国務大臣 これは、大半は心配ないと思います。

 ただ、すべての自治体において完璧かと言われますと、必ずしもそうとも言えない面はあるかもしれません。しかし、そこは、国の方がこうやっていわば身を削って努力をしようとしているわけでありますから、自治体の側もやはりそれに呼応して、住民の皆さんのためにより自主性を発揮できるような力量をぜひこの際改めて身につける、そういう努力をしていただきたいと思います。

伊東委員 私は、三位一体改革の地方交付税の削減以来、自治体は相当な努力をしてきた、自分自身もそう思っているところでもありますし、また周囲の自治体を見渡しても、そういった努力を大半の自治体が行ってきたというふうに思うわけであります。もちろん、合併もあったでありましょうし、これに伴う議会やあるいは行財政改革が真剣に行われてきた、こういうふうに思います。

 今回、内閣府地域主権戦略室がおつくりになりまして、何回も何回も説明されたり、あるいは配られたこの資料を見てみますと四十八事業がありまして、それぞれの法案に絡むわけでありますけれども、例えばこの中に業者への立入検査等というのがあります。これまで都道府県で立入検査していたものを、市で行えるようにしたものであります。家庭用品販売、あるいは第二種社会福祉事業の経営者、さらにはガス用品販売事業者、あるいは電気用品販売事業者、液化石油ガス器具等販売事業者、特定製品販売事業者、路外駐車場、あるいは特定路外駐車場、この八件の事務が、例えば都道府県または中核市から市に移譲されるわけであります。

 では、四十八のうちのこの八つの事業の立入検査に限っても、市が立入検査をする際には、少なくともそれぞれの専門知識を持った者、あるいは場合によっては危険物等々の資格を持った者が、立入検査でありますから、複数の人数で車を使って出かけることになるでありましょうし、場合によっては検査機器等も必要になるのではないか、こういうふうに思うわけであります。もちろんこれには余っている人員を充てることができるかもしれませんけれども、通常であれば新たなるセクションをつくらなければならない、新たなる職員をそこに配置しなければならない、私は、自分の体験からしてもこういった感じがするものであります。

 また、もう一つ別なところで、薬局の開設許可あるいは社会福祉法人の定款認可等、また未熟児の訪問指導、結核指定医療機関の指定など、やはり専門的な知識も必要なのではないか、資格も必要なのではないか、このような判断をせざるを得ないものも見受けられるわけであります。

 この四十八事務のうち、専門的知識を要するいわゆる職員増になるものとそうでないものが混在しているわけでありますけれども、この比率についてどういうふうに見ておられるか、お伺いするものであります。

逢坂大臣政務官 ただいま御指摘いただきましたとおり、例えば薬局の開設許可でありますとか、あるいは社会福祉法人の定款の認可など、新たな事務が加わってくるわけであります。こういった部分について、これまでにない自治体の専門性が求められるというのは御指摘のとおりだと思います。

 ただし、現状のそれぞれの自治体が具体的にどういう体制になっているかによって必要とされる人員体制も変わってまいりますので、一概にどの程度の割合、どの程度の人数が必要になるかといったようなことについては、この場で答えるのは簡単ではないなというふうに思っております。

 ただ、一点御留意いただきたいのは、今回のこの権限移譲でございますが、国の方でこれを必ずしも一方的に決めたということではございません。これまで地方分権改革推進委員会、これは旧政権のもとでありますけれども、そこで出された勧告がありまして、この勧告は、全国市長会などから提言があった事務、あるいはもう既に事務処理特例制度というのが自治法に設けられておりますが、これらを活用して既に各都道府県から市町村に移譲されている事務などについて行われておりますので、全く見ず知らずのものが天から降ってきたような形での事務権限の移譲ではないということも御理解いただきたいと思います。

伊東委員 これは、今、逢坂政務官お話しのとおり、これまでの長い経緯の中で、それぞれの自治体からお話もあったことでありましょうし、都道府県の意向等もあったでありましょう。もちろんそれは承知の上でお聞きしているのでありますけれども、片山大臣が、四月二十一日、この総務委員会で、単独の基礎自治体だけで事務処理が遂行できない場合は、近隣の市町村が共同で事務処理を行う工夫や、都道府県との垂直的な関係を築くということもある、このような趣旨の御答弁をされました。

 このように、広域的、垂直的な工夫が必要と思われる権限移譲もおありだという御認識でありますので、これらがどの程度あるとお考えなのか、お聞きをしたいと思います。

片山国務大臣 それは、地域それぞれの自治体で、今回の法改正が成立しましたら、それを受けとめて、実際にどういう事務体制にするかということを具体的に検討されます。その際に、自前で全部できるというところもありますし、それから、近隣が相談をして、じゃ一緒にやろうかと。例えば薬局、先ほど御指摘になりました幾つかの事務なども、一つの自治体の中に、大きな市ならともかくとして、中小の自治体でありましたらそんなに薬局なども多くあるわけではありませんので、それならば近隣で一緒にやろうかということも一つの方法だろうと思います。そういうのを具体的にこれから積み重ねていかれると思いますので、今、政府の方で、国の方でどこがどうなるということを詳細は承知しておりませんけれども、これから積み重なってきて、それが結果としてあらわれてくると思います。

 ぜひ、そういう水平関係における協力、それから、垂直というのは語弊があるかもしれませんけれども、都道府県と市町村との協力関係を使いながら、自主的に、住民の皆さんのために質の高い仕事ができるように創意工夫をしていただきたいと思っております。

伊東委員 私は、それぞれの自治体は、レベルもずっと上がってきておりますし、どんな事務でもこなせるだろう、このようには思っております。

 しかし、何回も言いますけれども、今、ぎりぎりまで職員の定数を削減して、可能な限り行財政改革の中で組織づくりを、スリム化を進めてきている町村にしてみると、新しいこうした事務事業がどさっと都道府県からおりてくる話になりますと、移譲される側としては、事務量は必ずふえるわけでありますし、職員もそこには張りつけなければならないということに相なります。

 しかし、残念ながら、ここのどこにもその財源手当てや、あるいは専門職のいわゆる研修や配置、そういったことが書かれていないわけであります。そこが担保されているのであれば、市町村も喜んでこういったものを受けることだと思います。このままでいきますと、都道府県だけが、事務事業が大幅に市町村に移譲されてしまって、自分たちはその分だけ身軽になるということになるわけであります。同じことが、しかし一方では市町村で事務量がふえ財政的にも厳しくなるわけでありますので、財源の移譲がなければ一方的な経費増ということになるわけであります。

 地方六団体、あるいは都道府県、市町村からの話というお話がありましたけれども、この財源や職員増についてどういった話し合いが今日までなされてきたのか、どういう了解を得ておられるのか、この点についてお伺いいたします。

片山国務大臣 国と地方の協議の場というのは、先ほど御質問にもありましたけれども、これは法定されてまだ一回しかやっておりませんけれども、それ以前に事実上の協議の場というのをやっておりまして、私が昨年の九月に大臣になりましてからも幾たびとなくやっております。そういう中でこういう問題も出てきておりますけれども、それ以前にもう既に、委員会をやっておりますときにヒアリングをやったり、いろいろなことをやっておりまして、その成果といいますか集大成がここに出てきているということであります。

 この法案には、確かにおっしゃるとおり、財源の話なんか出てきておりません。単に今まで都道府県の事務だったものを市町村に置きかえる、こういういわば非常に唯物的な条文だけでありますけれども、背景としましては、新しく都道府県から市町村に権限が移った場合には、地方交付税の基準財政需要額の算定などでは、そこで市町村の事務として今度は振りかわるわけでありまして、そこに基準財政需要額の増額措置がなされます。逆に、都道府県から事務がなくなりますので、そこは従来よりは減算される、こういうことになります。

 仮に、例えば保健師を市町村の方で採用しなきゃいけない、定数をふやさなきゃいけないということもあろうかと思いますけれども、そういう場合は、市町村の方の保健師の標準的な定数は改善をされて市町村の方で採用しやすくなる、そういう措置が当然なされるわけであります。これまでもずっとそういうことを権限移譲のときにしてきておりますので、そういうことを前提にしてこの法案ができ上がっているということであります。

伊東委員 大臣、市町村あるいは六団体との話し合いの中で双方納得ずくというか、それは織り込み済みというお話で理解をされているということでよろしいんでしょうか。再度確認します。

片山国務大臣 経験上、自治体の側もそういう制度自体をもう御存じいただいておりますし、それから、何回かの話し合いの中で、国からもそうですし、県から市町村もそうですけれども、そういう権限移譲がなされる場合にはちゃんとした財政措置をしてくださいよという話は伺っておりまして、それは当然しますということを申し上げております。ですから、そこは御懸念のないようにしていただければと思います。

伊東委員 交付税というのはなかなか中身がよくわからないものですから、どんな自治体も、算定の基準もその明細もわからないというのがこれまでの通例でありまして、私もそれは経験しているところであります。

 交付税がルールどおりにきちっと配られるぐらいであれば、交付税が年に一兆円も減らされ続けて、何年も減るなんということはあり得ない話でありまして、そうではないから交付税に対する信頼といったものが少しくない、こう思うわけでありまして、交付税で措置されるからすべてがうまくいくという話ではないというふうに私は思うわけであります。

 ですから、こうした権限移譲がなされるという、はっきりした事業量も事業名も全部決まってしまって、これが財政的にも人員的にも職員的にも市町村にとって大きな変化をもたらすことがはっきり目に見えるものでありますから、市町村が本当にこの法案について望み、そして市町村の側がこれを納得しているのかどうかというところが非常に心配になったものであります。

 これは大臣の答弁にもありましたけれども、市町村によっては、能力的に、あるいは財政的に、人的に、組織的に、この事務はどうしてもまだ私たちでは引き受けられませんよということもあり得るのではないかという気がするわけであります。その場合、この権限移譲を受けるか否か市町村に選択の余地があるのか、お伺いをいたします。

逢坂大臣政務官 まず、今の御質問の結論から申し上げますと、法令の改正により権限を移譲するということになるわけですので、市町村の側で事務の移譲を受けることを拒否することはできないというのが今の質問に対するお答えです。

 さらに、先ほど来何点か伊東委員の方から御懸念が示されておりました。財源の問題、職員体制の問題、あるいは研修の問題、御懸念が示されておりましたが、実は私どもも、この法案の前に閣議決定がございますけれども、昨年の六月に閣議決定をする段階で、さまざまなレベルでそうした問題点が指摘をされました。

 具体的に申し上げますと、その閣議決定の中に、今回の懸念についてのことを盛り込ませていただきました。

 まず財源の問題ですが、「国は、権限の移譲に伴い、適切に既存の財源措置を見直し、市町村に対して、地方交付税や国庫補助負担金などに関し確実な財源措置を行うこととする。」、これが一つです。

 それから、事務権限の移譲に伴いまして、「留意点等について確実な周知・助言を行うほか、市町村からの照会や相談に適切に対応していく。」というようなこと。

 さらに加えて、先ほども御心配がございましたけれども、推進体制ですが、自治体間連携の具体的手法の周知、円滑な引き継ぎや研修、職員の派遣、あるいは推進体制の構築を初めとする環境整備、これらについては都道府県がしっかりやることが期待されているけれども、そのことに対して国は、都道府県に対しても必要な支援に努めるように要請するというようなことも閣議決定の中で決めさせていただきました。これは昨年の六月二十二日のものでございます。

 ただいま伊東委員からいろいろ指摘をいただいた懸念も織り込んだ上での今回の法案というふうに御理解いただければと思います。

    〔委員長退席、福田(昭)委員長代理着席〕

伊東委員 私は、自治体が権限移譲を受けて、そして自分たちのレベルアップにもつながり、あるいはまた事務が速やかに行われる、住民にとってもこれはよいことだというふうに評価するものであります。

 しかし、今お話がありましたので、そうした懸念をする必要はないということであればそうなのでありますが、例えば国土交通省関係で、町村による都道府県道の管理なんという項目をぽんと出されるのを見ますと、国道を町村が管理するということになりますと、車も機材も人も必要になってくるわけでありまして、お金がどこからついてくるのかわからないなどという話では済まない、そして拒否できないという今のお話でありますから、本当にこれは町村にとって大変なことになりかねない、こう思うものであります。

 これはいつから施行されるかわかりませんけれども、それまでの間、その拒否できない市町村の側に立った指導体制、財源、あるいは人材の育成等々についてしっかり都道府県のしりをたたく、あるいは国としてこれを支える、少なくともこうしたルールを速やかにつくる必要があるのではないか、こう思います。

 二次一括法案のこの部分については私は最後の質問にさせていただきますけれども、大臣の御見解をぜひお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 ぜひ、議員が今御指摘になられましたような懸念が払拭されるように努力をしたいと思います。

 財源につきましては、交付税に対する不安について先ほどお触れになられまして、確かに今までの経緯を見てみますと、ばさっと巨額の交付税を総額として削られたなんということも、私も知事をしておりましたときにありました。ですから、そういうことはないようにしなければいけないということが一つであります。そのために今努力をしております。

 それから、ミクロの部分で、県から市町村に権限が移って、その財源はどうなるのかといいますと、その部分だけをとりますと、理論的には、都道府県の分がその分減って、その分が市町村分に加わっている、そういうトレードオフの関係にありますので、その点は御懸念のないように。その上で総額をちゃんと確保しなければいけないということは、確かにそのとおりであります。

 あと、事務が円滑に移行するようにとか、それから人的配置、さらに人員の研修、そういうことについて、市町村にも努力をしていただかなきゃいけませんけれども、都道府県がしっかりとそれを支援するようにということもお願いしたいと思いますし、国も一定の役割を果たす余地があると思いますので、各省にその点の協力をお願いしたいと思います。

逢坂大臣政務官 先ほど委員から、市町村への国道の管理という点を例示として御紹介いただきましたが、この改正につきましては、希望する市町村が国道の管理をするということでありますので、この点に関しましては、のべつすべての市町村がそれをやるということではございませんので、つけ加えさせていただきます。

伊東委員 国道というより、都道府県道ということを書いておりましたので、そうしますと都道府県も一緒ですね。これを一つだけ。

逢坂大臣政務官 同様でございます。

伊東委員 それでは次に、義務づけ・枠づけの見直しについてお伺いいたします。簡単に一つだけお願いします。

 従来、施設・公物設置管理の基準は政省令で規定されているところでありますが、今回の法改正で、地方自治体が条例で制定できるようになります。地方自治体の条例制定権が拡大することで、地方自治体の政策的な自由度も拡大するということでありますが、施設の整備に当たっては、事業を所管する各府省庁の補助金に財源を頼らざるを得ないわけであります。地域の実情を踏まえた政策的な自由度、そしてまた予算面での実質的な各省庁の縛りとの間に果たして本当に十分なバランスがとれているものなのかどうか、また現場で混乱は起きないのかということもあります。

 そしてまた、大臣や知事との協議が廃止になる、あるいは、同意あるいは認可、こうしたものが廃止になったり単純な協議になったりするわけでありますけれども、これが上部機関の責任回避に場合によってはつながらないかどうか、ちょっと心配な面もあるわけであります。

 これについて大臣の見解をお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 これは見方によると思うんですけれども、私は、今の日本の行政というのは国と県と市町村という三層構造になっていて、責任と権限というのが、いわばもたれ合いで、絡み合っているような部分が多いと思うんですね。結局、最終的にどこの責任であるかというのが必ずしも明確でないこともよくあります。

 そういう面でいいますと、この際、できるだけ責任の所在というものを明確にした方がいいと私はかねがね思っておりまして、今回の措置というものが、県なら県、市町村なら市町村というところに判断権が備わって、その結果についても結果責任を負う、こういうやり方の方がいい面が多いのではないかと思います。それを逆から見ると上部機関の責任逃れ、そういう見方もあるかもしれませんけれども、それはいい方に解釈したいと思っております。

伊東委員 この協議の廃止あるいは事後届け出制等々について、市町村、都道府県としっかりしたすり合わせというか打ち合わせというか納得というか、そういうものが行われたという解釈でよろしいでしょうか。

片山国務大臣 これらの内容につきましては、地方六団体の納得といいますか了解を得ておりまして、それぞれの団体からもこの法案の早期成立についての要請も出ているほどでありますので、御納得いただいているものと思います。

伊東委員 わかりました。

 それでは次に、地方公共団体の国等への寄附の原則禁止の見直しについて。

 これは先ほど橘委員の方から質問をしたところでありますけれども、私も、どうもこれがなかなかすとんと落ちない。先ほどの御答弁を聞いていても、本当にそうした経過だけの話なんだろうかという気がしてならないわけであります。

 これは、地方分権改革推進委員会の勧告にもなく、地域主権戦略大綱にも盛り込まれていなかったものでありますが、片山大臣の肝いりでこの二次一括法案に盛り込まれた、このように聞いているわけであります。昭和二十七年、国から地方に対する割り当ての禁止、三十年、地方から国に対する寄附の禁止、そのいきさつはわかりました。五十数年も前のお話であります。

 しかし、そもそも地方公共団体の国、国立大学法人等に対する寄附を原則禁止するこの規定の廃止ということが、経過はわかりましたし、先ほどの、昔々のありようでの改正だ、もう少し自治体に自主性といったものを持たせるんだということでありましたけれども、何となくまだすとんとこないものがあるものであります。

 私は、橘さんが言っているとおり、国が何かの事業をしようとするとき、あるいは施設をどこかに設置しようとするとき、自治体が土地を提供する、金を用意する、あるいは基金、積み立てしたものがあるから使ってくれのような話で、裕福な自治体、財産を持っている自治体は、そうした国に対するアピール、あるいはまた誘致要件のレベルアップなどなどとしてあるんでしょうけれども、しかし、場合によってはそれが自治体間の本当の不公平感を生み、さらには本当に必要なところに必要なものが設置されないことにもつながるのではないかという危惧をしているわけであります。

 国が自治体に寄附を求めるというのではなくて、国の施設を誘致する、あるいは自分のところへの有利な取り計らいを自治体が自分の土地や金を使って国に働きかける行為を是認するというより助長することになるのではないかという気がしてなりません。この点についてどうお考えか、お伺いいたします。

片山国務大臣 今おっしゃったような御懸念が全くないとは私も思いません。そういうことはあるかもしれません。ただ、そういうことをやられた団体は恐らく、財政が悪くなって、現行の地方公共団体の財政の健全化に関する法律の黄信号の指標なんかにひっかかる可能性が出てくる。そういう担保も既に今あるわけでありまして、余り個別の歳出について国がチェックするよりは、包括的に全体としてルールでもってチェックする仕組みができておりますので、その辺は最終的にはそんなに心配はないと思います。

 ただ、局面局面では今おっしゃったようないびつな競争というのはあり得ると思います。そこは、自治体の自覚、常識、それから議会のちゃんとしたチェックが必要だろうと私は思います。

 一方では、国の方がそういうものをあおり立てるようなことをしないとか半強制的のようなことを求めないという、これは当面閣議決定でということで処理したいと思いますけれども、万が一、自治体が国から何かそういうものを半強制的に押しつけられて、事実上身動きできないようなことがあるやもしれませんので、そういうときは、ちゃんと相談窓口を総務省に設けますので、そこに御相談いただいて、総務省の方で国に対して注意するというような仕組みをとりたいと思っております。

 それから、裕福な団体が得をするといいますか、そういうことが起こるのではないかということ、これも懸念はあります。

 実際、私も非常に苦い経験があるんです。ある液晶メーカーが地方に進出をしたい、工場の増設をしたいというようなことがありまして、早速手を挙げたんですけれども、結局は足元を見られまして、おたくは幾ら出せますか、大きな府県の方が百億円出しますと。鳥取県はそんなにお金を出せませんので、あえなくその誘致合戦に負けたというようなこともありました。

 それは、今は、国との関係よりは、企業誘致という方面で実はそういう弊害は出ておりまして、国だけが何かそういう悪い要素をもたらすということではないわけであります。もちろん、だからいいというわけではありません。国はちゃんと自主規制をするということが一方にあって、他方は、民間企業との関係で、民間経済との関係で、今いびつな関係にあるものをどういうふうにすればいいのかというのは、私は当時から問題意識を持っておりまして、これからの一つの検討課題だろうと思っております。

伊東委員 時間もありませんので最後にさせていただきたいんですが、先ほど橘委員が非常に最後まで懸念していたのは、まさに、自治体が求められるのではなくて、自治体が、これを提供するから我が地にこういった国の出先機関あるいは施設その他をぜひ設置してくれというような、国機関の誘致活動にそうした土地、金、あるいは既存の建物等々を提示しての誘致活動が行われるのではないか。そういうものを持っているところに、本来あるべきところに行かないで引っ張られる可能性があるのではないか。今まで、そういうことがだめだから、そういうことがかつて、五十数年前、戦後、弊害が生じたから禁止されたものを、あえて今ここで解禁して、そうした懸念があるものを国が助長することはないだろうということを先ほど橘委員はお話をしたかったんだというふうに私は最後思ったところであります。

 私も全く同様でありまして、何一つ打ち合わせをしたわけではありませんけれども、お互い、一瞬自治体に責任を持つ立場であったわけでありますので、我が身をちょっと振り返るとそういうことというのはたくさんあるお話でありまして、本来あるべきところに本当は設置されなければならないものが、そうでない要素がここで加味されてねじ曲がるということを国が認めてしまう、あるいは解禁してしまう、そういったことにつながるような気がしてならないものでありますから、なぜあえてここでこの寄附行為の禁止というものを解くのか、ここに問題があるというふうに私は思うところであります。

 大臣の答弁は答弁で、わからないわけではありません。しかし、すべてがすべて、今お話しのように、民間に対しては自治体がどんな誘致活動をしようと構いませんけれども、少なくとも国機関に対する誘致活動や働きかけという観点で金や物が有利に働くということだけは国が助長してはならない、そんな思いで私はこれに対する疑問を呈しまして、最後に一言だけ、この点もぜひ御理解いただきたいなという思いで質問しておりますので、お聞き届けをいただきたい、こう思う次第であります。

片山国務大臣 御懸念は御懸念としてよくわかります。わかりますけれども、五十年前とは随分自治体の力量も違ってきております。ぜひこれからは、そういう本質を外れたような行動に走らないようにきちっと自覚を持っていただきたいし、それをチェックするのが議会であり、かつ市民の皆さんの力だと私は思うんです。これから地域主権改革、地方分権改革の時代には、そちらの可能性にかける方が賢明だろうと思っております。

伊東委員 終わります。ありがとうございました。

福田(昭)委員長代理 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 通告に従いまして、順次質問をさせていただきます。

 まず最初は、基礎的自治体への権限移譲についてということで質問させていただきます。

 今回の権限移譲による事務量の増加に対する小規模自治体への影響はどうなのか、こういうことをまず最初にお聞かせいただきたいと思うんです。

 政府においては、都道府県と市町村の間の事務配分というのを補完性の原則に基づいて見直しをするんだということで、可能な限り多くの必要な行政事務を住民に身近な基礎自治体が担うべきという考え方、これは、平成二十二年六月の戦略大綱に、権限移譲等を行う事務としていわゆる六十八項目、二百五十一条項が盛り込まれて、そのうち、今回の第二次一括法では四十七の法律を改正するということで承知をしております。

 私は、まず最初に、基礎自治体に権限移譲を行うということは、その基礎自治体のいわゆる行財政能力というもので対応可能かどうかをまず一番最初に考えてあげなければいけないことだと思っております。もちろん、さまざまな権限移譲を行っていくということは否定するものでもありませんし、むしろそう進めるべきだろう、このように思っていますけれども、特に小規模自治体における事務量の負担というのは本当に大きな問題である、このように思います。このことについて先ほど来いろいろな議論もありまして、自治体間の協力という話もありました。

 そこで、まず三点お伺いしたいんですけれども、一つ目は、今回の権限移譲が基礎自治体にどの程度の事務負担になると考えていらっしゃるのか。それから二番目は、基礎自治体の人員体制とか事務処理のノウハウは、権限移譲を受けるのに十分な水準に達してきているのかどうかということ。それからもう一つは、これは先ほどありましたけれども、自治体によってはどうしても権限移譲に対応できない、そうなった場合に具体的にどうするのか。

 先ほどと同じ御答弁になる点もあるかもしれませんけれども、確認の意味を含めて質問させていただきたいと思います。

片山国務大臣 議員のおっしゃった御懸念というのは、大切にしなければいけないことだと思います。小規模の自治体に理念先行だけで大きな困難な事務を押しつけるということ、これはやはり慎まなければいけないと思います。それは今後の問題としてよく認識しておかなきゃいけないと思います。

 今回の上がっております事務につきましては、そういうことも含めて地方分権改革推進委員会の方で長らく御議論されて、その中でここに上がってきたものであります。実は、市長会とか町村会から権限移譲してくれと言ってきたものすべてが入っているわけでは必ずしもありませんで、今のような観点も含めた点検を経て整理されたものでありますので、まず大丈夫だろうと思っております。

 どの程度の事務が加わるのかということでありますが、これは自治体によって違うと思います。例えば一例で、未熟児の訪問指導というのが今回市町村の事務になるということでありますけれども、従来市町村は、母子手帳でありますとか、定期健診でありますとか、訪問指導でありますとか、母子保健に関する幾つかの仕事をやっております。そういうことをやっている中で、ある程度職場の体制に余裕があるというところもあるでしょうし、今目いっぱいというところもあるでしょう。ある程度余裕があるというところでしたら、新しい事務も今の体制で吸収できる可能性もあります。それから、目いっぱいのところだったら人を雇わなければいけない、こういうことになりますから、それぞれの自治体によって対応は違うと思いますので、ぜひ、それぞれの個別の自治体の適切な対応を考えていただきたいと思います。それに対する財政措置というのは、先ほど来申し上げておりますように、地方財政の中で、交付税措置を通じてあんばいされるということになります。

 それから、二つ目の質問の市町村のノウハウですけれども、これも事務によって違うと思います。先ほどの未熟児の訪問指導なんかでいいますと、もう既に母子保健業務をやっておりまして、その延長でありますので、一から新しいことをすることではない。しかし、そうはいっても、新しい作業を始めますので、それなりの研修とか職員の体制とかは必要になると思いますので、自治体にその自己努力をしていただきたいと思いますし、都道府県の方の全面的な支援というものが当面求められると思います。

 それから、対応できない自治体はどうするのかということでありますけれども、仮にそういう事例が出てきますと、例えば近隣の自治体に支援を求める、広域的な処理にゆだねるということも一つの方法でありますし、例外的に県の方がそこだけ個別に引き続きやるということも法的には可能であります。個別の移譲というのは今までもやっておりますけれども、それは、単に県から市町村に対しての移譲だけではなくて逆の移譲もあり得ますので、それぞれの自治体間の話し合いに応じてその問題を解決するということは可能であります。地域の実態に一番ふさわしいやり方を考えていただければと思います。

稲津委員 ありがとうございました。

 そこで、先ほど来お二人の先輩議員もさまざまお話をされました。私は財源問題を改めて聞かせていただこうと思ったんですけれども、恐らく同じ御答弁になると思いますので、あえてこのことについては伺いません。

 結局、突き詰めていくと、権限と財源が一体どのような形で来るのかとか、そういった先行きに対する不安とか、見通しみたいなものがなかなか見出せないという自治体側の懸念もあるというのは否定できないと思うんですね。

 そこで、もう一つ。これは非常に大事な問題だと思うんですけれども、基礎的自治体が、例えば合併しようにもなかなか合併ができなくてそのままになっている。過疎化が一段と進んで人口減少も、この時代ですから、やはり小さな自治体に限らず進んでいく。そういう状況の中で、果たして本当の意味での、近い将来も含めて見通しが立つのかどうか、こういう不安も私は一部あると思っております。そういうことに対することも含めて、ぜひしっかりとした丁寧な説明というか情報発信をしていただきたい、このことをまず一つ申し上げたいと思います。

 次に、義務づけ・枠づけの見直しについて何点か伺いたいと思うんです。

 最初は、地方要望分の百四条項について、これを伺っていきたいと思います。

 地方要望分のこの百四条項については、地方側からかねて主張があった、公立小中学校の学級編制ですとか、あるいは保育所ですとか、また高齢者、老人福祉施設関係の設置管理に関する基準ですとか、こういった現場のニーズが割と高いものである、このように思っております。

 平成二十二年七月の全国知事会からの要望を見ますと、この百四条項のうちの特に六十八条項については最優先で取り組むことを求められております。しかし、今回の第二次一括法には、このことについては反映されていない。

 これらのことについてはいろいろな議論がされると思うんですけれども、まず私がお伺いしたいのは、このことについての検討状況、今後の見通し、それから、そもそも今回の第二次一括法について、しっかりと地方側が納得した上でこれを提出されているのか、この点についてお示しいただきたいと思います。

逢坂大臣政務官 今回、御指摘のありました地方側要望分の百四条項でございますけれども、御指摘のとおり、勧告どおりまだ実施されていないものが六十六条項ございます。

 これにつきましては、ことし四月のいわゆる第一次一括法の審議の中で立法府の意思として新たな修正条項が一つ加わりまして、附則の四百十七条だったと思いますけれども、地方分権改革推進委員会の勧告に即した措置を講ずるものとするというふうに設けられておりますので、政府としては、その立法府の意思も踏まえて、残されたものについてもしっかり取り組んでまいりたい、そのように考えております。

 以上でございます。

稲津委員 それでは、もう一つ伺いたいことがあるんですけれども、それは従うべき基準についてなんです。

 これは、地方分権改革推進委員会の第三次勧告におきまして、「条例の内容を直接的に拘束する条例制定の基準等を設定することは厳に差し控えられるべき」、このようにされているわけです。

 先ほど私が申し上げました全国知事会の要望でも、先ほど伊東委員も触れておりましたけれども、施設・公物設置管理の基準の条例委任における従うべき基準、これはそもそも極めて限定的にされるべきものなのに、第一次一括法においても従うべき基準にされたものが余りにも多いのではないか、実はこういう指摘の声もありました。

 この点についても、どのようにお考えになっているのか、お示しいただきたいと思います。

逢坂大臣政務官 先ほどの答弁で、私、間違いと、一つ漏れがございました。

 附則につきましては、四十七条でございました。四十七条です。

 それから、今回の二次一括法、地方からの理解は得られているのかというお話でございましたが、地方から逆にこの二次一括法についての早期の成立を望むという声も寄せられているところでございますので、理解は得られているというふうに認識をいたしております。

 その上で、従うべき基準が多いのではないかというお話でございますが、私自身も、この従うべき基準というのはなるべく少なくすべきだというふうに思っております。国において本当に必要だというようなものに限って従うべき基準というのは設けていくことが大切だろうというのが、基本的な考え方であります。

 今回も政府内でいろいろ議論をしましたけれども、その際に、そうはいうものの、国としてある一定の、一律の質的な確保が必要な分野というのはあるのではないか、そこについては従うべき基準というものを設けた方がよいのではないかという議論も随分ございまして、今回の場合、例えば保育室の面積ですとか保育士の配置数の基準など、これらについては従うべき基準というふうになったわけであります。

 しかしながら、これがずっとこのままの状態でいいのかということにつきましては、今後のこの法律の施行状況も見ながら国の基準のあり方を再検討するということも附則の中で設けさせていただいておりますので、その中で、なるべくこの従うべき基準というものを減らしていく方向で努力してまいりたいと思っております。

稲津委員 私、ぜひその視点でお取り組みいただきたいと思うんですね。この義務づけ・枠づけの見直しは、そもそもの考えが、そういうところに立った上でこういう法改正やさまざまな議論がなされてきていると思うんです。その中であえて二つ今質問させていただきましたけれども、少しこの課題について論点整理する思いでさせていただきました。今政務官がおっしゃった最後のところの御答弁をしっかり、ぜひ大事にしていただきたい、このことを申し上げたいと思います。

 次は、地方債の発行に係る協議制度及び、これも先ほどお話がありました、地方公共団体の国等への寄附の禁止事項の見直しについて質問をさせていただきたいと思います。

 今回の第二次一括法に盛り込まれる地方債の発行に係る協議制度は、第二次勧告では義務づけ・枠づけの存置を許容するメルクマールに該当するとされている、地方公共団体の国等への寄附の原則禁止の見直しに至っては第二次勧告の対象となっていないということ、それともう一つ、先ほども話がありましたけれども、戦略大綱にも盛り込まれているわけでもありません。

 四月二十一日の総務委員会の議論のことが先ほど何点か触れられました。私もこのときに質問いたしまして片山大臣から御答弁いただきましたけれども、それは、これまでの義務づけ・枠づけの見直しは画竜点睛を欠くものであった、自治体の側から見て、やるべきだというものが入っていないことに危惧を抱いている、このような御答弁をいただきました。そして、地方債の発行に対する国の関与の緩和及び自治体の国に対する寄附禁止事項の見直しを第二次一括法に盛り込んだ、このように御答弁されたというふうに私は記憶をしております。

 そこで、お伺いしたいんですけれども、まず一点目は、地方分権改革推進委員会の勧告とは違う結論のものを今回の第二次一括法に盛り込むに至った経緯はどういうことだったのかということ。それからもう一つは、この二つの事項は当初は地方側からも相当の懸念がもたらされていたのではないか、そういう状況の中で、国と地方の協議の場の法制化を待たずにこの第二次一括法に盛り込むほどのいわゆる緊急性があったのかどうか。このことについて見解を伺いたいと思います。

    〔福田(昭)委員長代理退席、委員長着席〕

片山国務大臣 経緯でありますが、やり方としては、地方分権改革推進委員会の勧告に盛り込まれたものの処理ということで、今御指摘の地方債と寄附の問題を外した法案として処理をしていただいて、地方債と寄附は別途の法案として提出するということも可能でありました。それも選択肢として考えたのでありますけれども、しかし、考えてみれば、地方債の関与の縮小それから寄附禁止の廃止も、これは典型的な国の関与の見直しになるわけですから、事柄が性質上一緒なものですから、せっかくでありますのでこの法案に盛り込んだということであります。

 それはそうなんですが、なぜ勧告になかったものをということでありますけれども、今、四月のやりとりを引用していただきましたけれども、私は、これまでの分権改革の中でやはり一つ欠落した面があったと思います。それは何かというと、当の総務省が関与している権限とか義務づけとか枠づけとか、そういうものに対する見直しの姿勢が著しく弱かったということは否めません。

 各省に対して正論を吐く、自治体の自主性を認めよ、余分な関与を廃止せよということは正しいんですけれども、まず隗より始めよ総務省というところがやはり欠けていたと、私は外から見て思っておりました。これは知事時代から思っておりました。案の定、地方分権改革推進委員会の勧告の中にも総務省関係のものはほとんど出てこなかった、そういうことで画竜点睛を欠くということを申し上げたわけであります。

 これをイーブンにするといいますか、他省並みにとは言いませんけれども、公正な面でもう一回見直しをして、正すべきものは正すという姿勢が必要だろうということをかねがね思っておりまして、せっかくの機会でありますから、今回、この二つを検討の上、見直すことにしたということであります。

 それから、地方から懸念があったのではないかということでありますが、確かにありました。特に、町村会、町村議長会、そういう町村の方から、これまでの総務省の関与が薄まったり、なくなったりすることに対する懸念がありました。

 私も、代表の方と何回か直接話し合いをいたしました。そもそも自治体というのは主体性を持った自立した法人でありますから、そこできちっと意思決定をしていただく、これが基本でありまして、余分な国の関与というのはなくすとか縮小するのが望ましいことですよというようなことを何回も繰り返しまして、最後、例えばどうしても御懸念があるのでありましたら、希望する自治体は今までと同様の関与を残す仕組みを考えても結構ですよということまで申し上げましたけれども、そんなことは要らない、そういう区別したようなことは要らないということで、最終的にはすべての地方六団体から賛同を得ております。

 それから、緊急性は、いいことは早くやった方がいいと私は思います。事柄はそんなに難しい問題ではありませんから、いいことは早くやった方がいいということで、今国会に提出をしたわけであります。

稲津委員 丁寧な御答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 今お話しいただいた中で、総務省の関与の見直しをしっかり図っていくべきだという御趣旨で御答弁いただいて、そのことを改めてきょうまたお話しいただいたので、そこは非常に明確になったというふうに思います。

 もう一つ、いわゆる地方側の懸念の問題ですね。この点についても、今いただいたのは、総務省との関与が切れてしまうと非常に不安だという声、これは一つの事実だと思います。もう一つあるのは、一番最初に私ちょっと指摘させていただきましたけれども、どんどん過疎化していく、人口は減っていく、そして財政力も非常に厳しくなってきている中で、果たしてさまざまな見直しについていけるのかどうかという、一番基本的な不安、懸念があると思うんですね。

 ですから、そこのところをきちんと丁寧にしていただくためにも、改めてこれからも地方の声に十分耳を傾けていただきたい、このことを申し上げたいと思います。ここのところは大臣の非常に強い思いがあるんじゃないかなと思っておりますので、改めてこのことについてはぜひ御検討いただきたい、このように思います。

 時間が参りましたので、最後に、本法案とは少し違うことになりますけれども、全く関連がないというわけではありませんので聞かせていただきたいのは、緑の分権改革の調査事業についてお伺いしたいと思います。幾つかお聞かせいただきたいと思ったんですが、時間も大分押しておりますので、簡潔にお伺いしたいと思います。

 きょうも義務づけ・枠づけの見直しについてはいろいろ議論させていただいて、物の考え方には、地域のことはできるだけ地域で決めてもらおう、これは時代のニーズに合った基本的な考え方だと思うんです。そういう中で実はこの緑の分権改革の調査事業というのが生まれてきたんだろうというふうに思っておりますが、三月十一日の東日本大震災の発災そして福島第一原発のことから、この緑の分権改革の調査事業についてもウエートが少しかかってきたのかな、実はこんなような思いをしているんです。

 この緑の分権改革調査事業については、平成二十一年度の補正予算から事業がスタートしております。この中には、再生可能エネルギー資源の活用等で地域活性化を行っていこう、こういったテーマのものも入っておりまして、これは非常に注目すべきものだと私は思っておりましたが、今回の発災に伴って、ある意味では少し位置づけも変わってきたんじゃないだろうかなと。それは何かというと、むしろこの緑の分権改革の調査事業のウエートが再生可能エネルギーのところでは増してきたんじゃないかな、実はそういう思いがあります。

 そのことについて、位置づけをどういうふうに考えていらっしゃるのか、高まってきたのかどうなのかということをまず一つお伺いさせていただきたいと思います。

逢坂大臣政務官 これまでも各地では、地域づくり、地域活性化のさまざまな取り組みが行われてきました。しかしながら、それらはいろいろな成果もあったのですが、一方で、地域の中で、人や物や金が地域の中の中心都市へ集積していくといいましょうか、元気になる地域もあれば、逆にそのことによって衰退する地域もあったのではないかという反省が我々にはございました。

 そこで、この緑の分権改革は、地域内の人や物や金、資源、それらを地域の中で最大限有効活用して、地域の中で創富力を高めていくといいましょうか、例えば地産地消なんかもそういう考えでありましょうし、何か物をつくっていくということも、最大限地域の資源を活用する中で地域自体の価値を高めていくというのが、この緑の分権改革の発想でありました。

 今回、三月十一日の大震災発生以降、日本のこれまでの取り組みの中で課題が見えてまいりました。それは、全国ネットワークでいろいろな物流を考えていたがために、一部の地域の、今回は広範な地域の震災ではありますけれども、あの震災によって日本全体の物流に大きな影響を与えるとか、例えば電力も、中央集権的といいましょうか、大きな発電プラントがたくさん発電をしてそれをいろいろな地域へ配分していくというようなことについても、本当にこれでよいのかということが指摘されるようになったわけです。

 そこで、今後、自立分散型の地域づくりといいましょうか、そういうことが必要になるということがいろいろな場面で言われるようになりまして、その点において、この緑の分権改革の思想、考え方、取り組みは、今まで以上に重要になっていくというふうに思っております。そのことも踏まえまして、実は今回の復興の基本方針の中にもそういった思想が盛り込まれているというふうに認識をいたしております。

稲津委員 基本的なお考えについてはわかりました。位置づけについてもわかったんですけれども、ただ、この予算の規模を見ますと、平成二十一年度の補正予算では三十二億八千万円ですか、この中には、特に地域におけるクリーンエネルギー資源量の調査を行うというのがはっきり出ている。二十二年度予算はどうか。これは一億円に下がっているんですね。それから、二十三年度の予算はどうかというと五・八億円。

 これだけ、乱高下という言葉は不適切かもしれませんけれども、予算の規模が年度によって随分違うということは、何かそこに意味するものがあるのかな、こう思うわけですけれども、この点についてお伺いさせていただきたいのと、もう一点、もう時間が来ましたので、今後、どういう方向でこの緑の分権改革の調査事業を進めていこうとされるのか、この二点をお伺いして、終わりたいと思います。

片山国務大臣 先ほど逢坂政務官からも御答弁申し上げましたけれども、三月十一日の発災以後、この分野というのはやはり意味づけが変わったといいますか深まったと思います。いわば先見の明が非常にあったと私は思います。

 したがって、そういう東日本大震災それから原発災害、節電という今日的な状況をけみした今日は、やはり予算面においてもしっかりした対応をしていく必要があるだろうという認識をしております。今後の予算編成に向けて、その点をよく認識して作業を進めたいと思います。

 今後の問題は、補助事業といいますか、今、国費でもって支援する、助成するという仕組みでありますけれども、これを例えば地方財政の中で普遍化をしていく。単にモデル的とか補助金が充たったところだけ進めるんじゃなくて、すべての自治体がやろうと思えばそういう事業をやれるというような普遍的な仕組みに変えていくというのも、一つのこれからの方向のあり方だろうと思います。そういうことも念頭に置きながら、よく検討してみたいと思います。

稲津委員 時間も来ましたので、ぜひ推進していただきたい、このことを最後に申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。

原口委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 第二次一括法案について質問いたします。

 今回、百八十八の法律の改正を行う第二次一括法案の中に、住生活基本法の改正も含まれております。これに関連して質問いたします。

 最初に、国土交通省、市村政務官においでいただいておりまして、お答えいただきたいのが、住生活基本法の基本理念の一つを掲げております第六条、居住の安定の確保、この内容と趣旨は何か、この点についてお答えください。

市村大臣政務官 委員のお尋ねについては、恐らく憲法との関係の話だと思いますが、それでよろしいでしょうか。

 憲法第二十五条一項に、委員御存じのように、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定されておりますが、住生活基本法第六条におきましても、「住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤である」とした上で、低額所得者、被災者、高齢者、子供を育成する御家庭、その他住宅の安定確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保について規定しておりまして、憲法第二十五条の趣旨を踏まえたものであるというふうに考えておるところでございます。

塩川委員 今お答えいただきましたように、この第六条におきましては、憲法の二十五条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」、この趣旨を踏まえたものであり、住宅は国民生活の基盤、低額所得者や被災者、高齢者、子供を育成する家庭等のいわゆる住宅困窮者に対する居住の安定の確保を図ることは住宅政策の重要な使命の一つということを掲げています。この中に被災者が例示されているということは、今回の大災害を受けた住宅政策を考える点で重要であります。

 この間、私は、被災者の住宅確保を求める立場から、仮設住宅、あるいは民間賃貸住宅の借り上げ、そして公的住宅における住環境の改善、特に、暑い夏、きょうも大変蒸し暑いですけれども、熱中症なども懸念される中で、エアコンの設置について取り上げてまいりました。

 今現在、応急仮設住宅は八月五日現在で三万二千九百十七戸、民間賃貸住宅の自治体借り上げは同じく八月五日時点で四万八千九百八十二戸になっております。これらはエアコン設置が標準装備でありますので、避難者がみずから借りている民間アパートについても、自治体借り上げとしてエアコン設置などを促進することが必要です。

 今、エアコン設置に関して対応が求められているのが公的な住宅であります。避難者が入居している公的住宅を仮設住宅扱いにするとともに、避難者の居住環境改善のため、仮設扱い待ちにならず、公的住宅を所有、管理する国や自治体、公的機関が直ちにエアコン設置を行うべきであります。

 そこでお尋ねしますが、国家公務員宿舎、雇用促進住宅、UR賃貸住宅、公営住宅など公的住宅への避難者の入居は、今はおよそ一万五千戸に上ります。エアコン設置状況について確認をいたします。

 最初に、財務省にお尋ねをいたします。

 国家公務員宿舎への避難者の入居数、仮設扱いの戸数及びエアコン設置戸数がどうなっているか、エアコン未設置の場合にどのように対応するのか、この点についてお尋ねいたします。

飯塚政府参考人 国家公務員宿舎についてお答えを申し上げます。

 直近時点で、自治体を通じて被災者の皆様に提供しております国家公務員宿舎の戸数でございますが、千二百七戸でございます。そのうち受け入れ自治体が応急仮設住宅としているものが九百八十六戸でございます。また、エアコン設置戸数についてでございますが、提供済み戸数の中には、被災者の入居が一たん決まりながら実際には入居がなされなかったというものでございますとかエアコンが不要な地域のものもあること等から、自治体がエアコンを設置することとしたものは八百四戸でございます。

 私どもの対応でございますが、国家公務員宿舎を提供する場合には国から自治体を通じて被災者に無償で提供する仕組みとなってございまして、当該宿舎は、厚生労働省とも協議した結果、災害救助法に基づく応急仮設住宅に該当するというふうにされておるところでございます。

 被災者に提供いたしました国家公務員宿舎に実際にエアコンを設置するかどうかという点につきましては受け入れ自治体の判断となるわけでございますけれども、私ども財務省といたしましては、被災者のための住居として宿舎を提供した場合には災害救助法上の応急仮設住宅として取り扱いが可能であり、エアコン設置等に係る費用が国庫負担の対象となる旨、財務局、財務事務所を通じて都道府県に対して周知を図らせていただいているところでございます。

塩川委員 次に、厚生労働省にお尋ねします。

 雇用促進住宅への避難者の入居戸数、仮設扱い戸数及びエアコン設置戸数がどうなっているか、厚労省として雇用促進住宅へのエアコン設置についてどのように対応したのか、お尋ねします。

中沖政府参考人 お答えを申し上げます。

 雇用促進住宅におけますエアコン設置でございますが、都道府県等が雇用促進住宅の借り上げを行った場合、災害救助法に基づき設置費用が国庫補助の対象となる旨、七月十五日付で各都道府県に通知したところでございます。

 また、エアコンの設置は、当然、先生御指摘のとおり、大変喫緊の課題でございまして、早急に対応する必要があるということ、また都道府県からも迅速な対応を要望されておりましたので、災害救助法の手続を待たずに、住居、住宅の所有者でございます独立行政法人雇用・能力開発機構みずからが設置するように七月二十五日付でさらに通知をいたしました。

 お尋ねの数字でございますが、被災されました方の受け入れにつきましては、八月四日現在でございますが、入居決定戸数が六千八十五戸、そのうち、災害救助法に基づく応急仮設住宅として借り上げた戸数はゼロでございますが、エアコンの設置につきましては、八月五日時点で約二千戸について発注を行ったところでございます。

塩川委員 財務省の方は、国家公務員宿舎は仮設扱いという方向での対応ということで努力されてきているわけですが、引き続き課題も残っている。雇用促進住宅については、厚労省として所有者である機構に対し、みずから設置してもらいたいという要請をされておられる、そういう中での迅速な対応を求めてこられているわけであります。避難者第一の対応として重要だと考えます。

 そこで、国交省にお尋ねしますが、UR賃貸住宅と、あわせて公営住宅について、それぞれ入居戸数、仮設扱い戸数、エアコン設置戸数、未設置の場合にどう対応するのかについてお答えいただけますでしょうか。

市村大臣政務官 まずUR賃貸住宅でございますけれども、今現在のUR賃貸住宅への被災者の入居戸数は約八百四十戸でございます。このうち応急仮設住宅として借り上げていただいている戸数は二十戸でございます。そして、その中で地方公共団体がエアコンを設置している戸数は十一戸、これは八月八日時点、きのう時点でございます。

 次に公営住宅でございますが、公営住宅等への入居戸数は約六千七百戸、これも昨日、八月八日時点でございます。このうち応急仮設住宅扱いの戸数は東京都管理の約千二百戸というふうに把握をさせていただいております。

 このエアコンの設置についてでありますが、国交省としましても、災害救助法の枠組みの中で対応すべきでありまして、今現在、関係都道府県に対しまして、UR賃貸住宅及び公営住宅等を応急仮設住宅として借り上げていただけるよう、改めて協力を依頼したところでございます。

 引き続き、厚生労働省と連携を図りつつ、国土交通省としましても、災害救助法の枠組みの中で適切に対応してまいりたいと存じております。

塩川委員 UR賃貸についてはエアコンの設置の数が極めて少ないという点では、私は、厚労省が雇用促進住宅に対応したと同じように、やはりURに対して、所有者としてきちっとつけてもらいたい、こういう要請こそ国として行うべきだ、このことを改めて申し上げておくものであります。

 公営住宅についても、仮設扱いは東京都ぐらいで、あとの状況は、現状は検討中という話だというふうに承知をしておりますが、改めて協力を要請したということであります。

 大臣にこの点では一つお取り組みをお願いしたいのが、やはりこういった避難者の暮らしを第一に考えても、公営住宅におけるエアコン設置について、それぞれの自治体に対し、しっかりと対応した取り組み、エアコン設置についてもぜひ取り組んでいただきたい、こういうことについて総務大臣として働きかけをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

片山国務大臣 総務大臣としてというよりは、私も被災地支援連絡会議のメンバーになっておりますので、毎週、定例的にそこで懸案事項の提起とそれの処理について協議しておりますので、その場で今の問題を取り上げて、各地方公共団体に必要な情報提供でありますとか要請が届くようにしたいと思います。

塩川委員 公営住宅法そのものが、二十五条の立場で健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備する、それを住宅困窮者に提供するというものであります。そういう点でも、住生活基本法で掲げている、被災者を初めとした住宅困窮者に対してのしっかりとした安定した居住の確保、こういうことこそ今求められているわけであります。

 実際に、住宅に困窮する低額所得者も増加をし、貧困層は、年収二百万円以下が一千万人に上るとか、年収二百万円未満の世帯のうち、公営住宅の入居が九十七万世帯に対し、民間住宅が三百四十万世帯になる。都営住宅への入居を希望する方の倍率というのが、二〇〇九年度でも三十・五倍に上るという状況であります。この間の公営住宅の新規建設ですとか供給がとめられたということが大きな原因ともなっているという状況であります。

 ですから、住生活基本法に基づき住生活基本計画、全国計画を策定したわけですけれども、これはことしの三月に改定をされました。この中でも、「住宅困窮者が多様化する中で、住生活の分野において憲法第二十五条の趣旨が具体化されるよう、公平かつ的確な住宅セーフティネットの確保を図っていくことが求められている。」としています。貧困層が増加をし、また多数の被災者が生まれた大震災直後に閣議決定されているのが今回の計画であります。こういった被災者を初めとした住宅困窮者の意見が計画に反映される必要があったわけであります。

 そこで、国土交通省、市村大臣政務官にお尋ねしますが、東日本大震災、原発事故という未曾有の大災害が起こったわけですが、今回の全国計画には、この大災害を踏まえた内容というのが盛り込まれているんでしょうか。被災者の声が反映されているのか、この点をお尋ねします。

市村大臣政務官 今のお尋ねでございますが、被災者のことも入っておるということであります。

塩川委員 今回の大震災、原発事故を踏まえた内容が入っているかどうかをお尋ねしたんですが、いかがでしょうか。

市村大臣政務官 先ほど申し上げましたように、法律の第六条に、先ほど委員も御指摘いただきましたように、被災者という言葉が入っています。ただ、今お尋ねの、今回の東日本大震災ということに対して、特に具体的に入れているということはまだありません。

塩川委員 これだけ未曾有の大災害、加えて原発事故。この計画を見ても、この全国計画には、目標四、「特に配慮を要する者の居住の安定の確保」に、被災者は入っていますけれども、津波という言葉もないわけですよ。ですから、具体的に今回の大震災を踏まえた中身になっていない。ましてや、原発事故では、約十五万人の方に避難の指示を呼びかけて、実際に今でも十万人以上の方が避難をして、その居住の安定の確保こそ求められているのに、発災直後に計画を閣議決定しておきながら、これについて何ら盛り込まれていない。

 これは三月十五日の閣議決定なわけですけれども、本来であれば、こういう全国計画をつくって、これに基づいて都道府県の計画をつくる、そういうときに、全国計画、三月十五日閣議決定は少し延ばしたっていいじゃないか。今回の大震災や原発事故を踏まえた住宅の確保について、被災者の声も踏まえた対策こそ行うべきであったんだということが問われているわけであります。そういう点では、この計画には被災者を初めとした住宅困窮者の声が盛り込まれていないという実情になっております。

 その上に、今回の二次一括法案では、この住生活基本計画の都道府県計画について、住民の意見を反映させるための仕組みが変更されております。都道府県計画案の作成に当たって、全国計画と同様、住民の意見を反映させながら案を作成していくパブリックインボルブメント方式を義務づけていたわけですが、都道府県計画については、これを努力義務に変更するものであります。これでは住民の声が反映されないんじゃないのか。

 この点について、国土交通省としてのお考えと、提出されている大臣の見解をお聞かせください。

市村大臣政務官 まず、最初の御指摘の中で、いわゆる三月十五日の閣議決定のときになぜ反映されなかったかということでありますが、審議会の決定が二月二十四日でございました。閣議決定が三月十五日でありましたが、私としても、配慮が足りなかったのかもしれないなということを、今御指摘いただいて感じているところでございます。

 ただ、住生活基本計画というのは大きな全体的な取り組みであろうかと思いますから、今回の被災ということにつきましては、また改めてといいますか、別個に起こすということも重要かというふうに思います。(発言する者あり)はい、やらせていただきます。

 それから、今の後半のお尋ねでございますが、今回は、御指摘のように、義務づけ・枠づけの見直しということになりまして、努力規定になるということでございます。ただ、これは、この住生活基本法ができた平成十八年の段階では盛り込まれておりましたけれども、その後、平成二十一年十月七日に地方分権改革推進委員会が第三次勧告を出しておりまして、「自治立法権の拡大による「地方政府」の実現へ」というのがありまして、その中の第一章の三項の五というところに大方針を示されております。

 ある意味でいえば、都道府県が住民の意見を聞いて住生活を進めるというのは当たり前のことでありまして、当たり前でありますから、これはこの住生活基本法だけに当たり前じゃなくて、今後の地方分権という観点では当たり前ということでありますので、努力義務ということでも十分に都道府県は住民の意見を聞かれるのではないかということを想定しているところでございます。

片山国務大臣 今いみじくも当たり前という表現がありましたが、本当にそうだと思います。そもそも、住生活に関する政策の体系といいますのは住民の皆さんのためでありますから、その住民の皆さんの意見を基本となる計画に反映させるというのは、まさに当たり前のことであります。

 その当たり前のことを国がわざわざ義務づけして、国に対して説明責任を果たさせるというのが今までの仕組みでありますけれども、地方分権改革、地域主権改革の理念のもとに、そういうことは住民の皆さんが最終的には判断をすることでありますから、自治体において議会がまずはその当たり前のことが実施されているかどうかをチェックする、それを包括的に住民の皆さんがみずからの問題として第二次的にチェックをする、そういうことを実現しようというのがこの大ぐくりにした法案であります。一見何か義務を弱めたような印象を与えるということで塩川議員御質問になったんだと思いますけれども、そうではなくて、説明責任を果たす相手はだれか、だれが主体的に物事を決めていくのかという、一つのパラダイム転換の法案の中の一項目だというふうに御理解いただければと思います。

塩川委員 住生活基本計画について、震災対応が入っていないというのは配慮が足りなかったと。配慮が足りなかったということじゃなくて、政府の姿勢が問われているんじゃないですか。こういう重大な問題が起こったときに、この計画について閣議決定を少し延ばしてでもきちんと反映させようということこそ行うべきだ。だって、十万世帯の方が今仮設等々に避難をしておられるんですから、これだけの住宅についてどうしていくのかということこそ政治の大方針として示されるべきだったんだ。

 災害について計画を改めて立てる必要があるかもというんですけれども、具体的には計画があるわけじゃない。見直すことについて決めているという状況じゃないでしょう。そういう点でも、私は、この問題についての政府の姿勢は、被災者の声を聞いていないということがはっきりあらわれている、そういう中での今回の住民の意見反映について、義務を努力義務にするという流れ自身が一層被災者の声を遠ざけるものにしかならない、このことを言わざるを得ません。

 住民の声を聞くのは当たり前だというのであれば、義務というのは国が地方を縛るという話ではなくて、住民の立場から、国や地方に対し、しっかりとやってもらう、このことを求めることを規定しているという立場こそ必要だ、こういう立場で今こそ対応すべきで、今回の改正では都道府県計画の公表義務を努力義務にするということも上げられているという点では、地方行政の住民参画及び住民への情報公開を後退させるものだと言わざるを得ないということは指摘をして、質問を終わります。

原口委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正でございます。

 まず、基礎自治体の人員あるいは財政に関連して質問いたします。

 今回の法案では、特に県から市町村への権限移譲が多数盛り込まれております。権限を移譲することに異論はありません。しかし、法案を見ておりますと、専門的な知識が必要なものも少なくありませんし、現在、基礎自治体は国の方針によって大幅な人員削減が続けられてきました。その結果、どの部署もぎりぎりの人員で仕事が行われているというのが実態です。また、東日本大震災で被災した自治体はもちろん、それ以外の自治体でも、被災自治体への応援業務などで一層厳しい状況にある。

 法案を見ますと、施行期日は多くのものが来年四月となっておりますが、残り八カ月で果たして体制の整備ができるのかな、こういう不安を感じるところでございます。増員とあわせて国や県からの適切な支援が必要だと考えますが、いかがでありましょうか。逆に、これまで県でその業務に従事していた職員はどのような扱いになるのか。特に、福祉関係では非常勤の方も少なからずおられると思いますが、こうした方の雇用はどうなるのか。

 マンパワーの問題とあわせて財政的な措置も重要です。この点はどのようになっておりますか。特に、県から市町村に権限が移譲されるもののうち、県が持ち出して行っていたようなものがあった場合は、引き続き県が持ち出し分を負担するのか、市が新たな負担を行うのか、この点はどうなるのか。

 以上、説明をお願いいたします。

片山国務大臣 今回、都道府県から市町村に事務が移りまして、受ける方の職員体制の問題でありますけれども、これは従来からも権限移譲というのを全国的にやってきておりますし、それから個別の自治体で、都道府県と市町村との間でやっているケースもありますので、そういう先例に倣って、それぞれの自治体でこの問題に対応していただくことになります。

 例えば、都道府県から当面、職員を派遣する。小さな自治体でなかなか難しい、そういうケースがありましたら、都道府県から市町村に職員を派遣するということも、これまでもやってきたことでありますし、今回も想定されると思います。それから全県的な、新しく任務に携わる市町村の職員の研修を綿密に行うということも、これはぜひやっていただきたいと思いますし、既にそういう段取りができているところが多いと思います。それから、広域的に対応しようということで、近隣の市町村と共同で職員の共有化を図るというようなこともあると思います。

 それから、これは被災県から伺いますと、福島県などは個別に被災自治体の事情を伺って、当面、当分の間は引き続き県の方で事務を処理するというようなことも考えておられるようであります。いずれにしても、それぞれの地域の実態に応じて創意工夫をしていただきたいと思います。

 それからマンパワーの問題でありますけれども、例えば、先ほど言いましたように、都道府県から市町村に職員が派遣されるということもあると思いますし、そうでない場合は、都道府県のそれに従事していた職員は都道府県の他の事務に従事する、配置がえになるということになると思います。非常勤職員の場合も同じようなことだと思いますし、場合によっては、その非常勤職員が、都道府県の職員であった者が、今度は新しく市町村の方で採用されるということもあろうかと思いますが、これも具体的にそれぞれの自治体において、円滑にマンパワーの異動なり手当てが行われるようにしていただければと思います。

 それから財源の問題でありますが、法定の範囲内のものは、先ほど来申し上げておりますように、地方財政措置で都道府県から市町村にシフトするということになります。

 御指摘の、都道府県が今まで上乗せをしていた場合にどうなるのかというのは、非常に重要な指摘であります。これはぜひ、都道府県の方でこれからも、市町村に事務が移譲されても自分の県の中は上乗せの措置をしてもらいたいという意思がありましたら、多分私が知事をしておりましたら、その単独の上乗せ部分は、市町村に対する県からの交付金というようなことをすると思います。市町村の判断ですよ、勝手ですよということになればまた違った対応になるかもしれませんけれども、恐らくは、従前続けていたものを市町村でもぜひやっていただきたい、それを交付金なり、市町村に配分する特別交付税などで配慮するということを多分されると思いますが、いずれにしても個別に協議をしていただければと思います。

重野委員 今の説明で理解をいたします。

 次に、計画の策定あるいは意見反映、公開等々について、関連して質問いたします。

 第一次に引き続きまして、今回も義務づけ・枠づけの見直しが法案に盛り込まれております。前回の審議でも指摘をいたしましたけれども、義務づけ・枠づけの見直しはあくまでも地域の自主性を反映させることが目的であって、ナショナルミニマムが後退するようなことがあってはならないということを最初に申し上げておきたいと思うんです。

 今回は、計画等の策定の部分についてお尋ねをいたします。

 今回の改正では百三十近い法律で、計画等の策定及び手続についての見直しが行われようとしている。それを見ますと、例えば福祉関係では、計画の策定に係る意見反映のための措置や計画の内容の公表が、義務から努力義務になっている。

 例えば、社会福祉法の百七条では市町村地域福祉計画が規定されております。この計画は、地域における福祉サービスの適切な利用の推進、地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達、地域福祉に関する活動への住民の参加の促進を一体的に進めるものとなっておりますが、この計画を市民や当事者、関係団体の意見反映をせずに策定する、そして計画の内容を公表しないというようなことは私はあってはならぬと思うんですね。そんな計画は、計画でも何でもないんだというふうに断ぜざるを得ない。

 また、東南海・南海地震に係る特措法の改正でも、推進計画の策定義務が廃止されて努力義務となっている。この推進計画で定めるものは、避難地、避難路、消防用施設の整備、津波からの防護及び円滑な避難の確保、防災訓練、地震防災上重要な対策となっておりますが、これらは、どんなことがあっても真っ先に策定しなければならないものではないでしょうか。

 社会福祉法もあわせて、これらの計画の策定義務や意見反映義務、公開義務をなぜ努力義務としたのか、まずお尋ねをいたします。

 義務から努力義務への変更は、後退しているというイメージを私は持つ。努力義務規定によって福祉や防災が後退することがあってはならない。その点についてはどのようにお考えか。

 あわせて、私は災害対策の委員も兼ねておりますが、防災に関するこのような重要事項を、災害対策特別委員会では、私の記憶では議論したことがない。また、さきの社会福祉法も恐らく厚生労働委員会で議論されていないと思われるのですが、一体だれと相談してこうした改正案を作成したのか。

 以上、お尋ねをいたします。

岡本大臣政務官 お尋ねをいただきました社会福祉法第百七条では、市町村の地域福祉計画の策定に当たって、住民の参加が不可欠であることから、地域住民等の意見の聴取や公表を義務づけている。同じく第百八条では、都道府県の地域福祉支援計画の策定を定めております。

 こういった、地域における特色をとらえて、将来を見据えたさまざまな特色ある取り組みが行われている状況の中、昨年六月に閣議決定された地域主権戦略大綱において、地方公共団体みずからの判断と責任において行政を実施することにより、地域の実情に合った最適な行政サービスの提供を実現することを目指す、そして、その中で、地方公共団体の事務に係る国の義務づけの見直し等を行うとされたところでありまして、こうした考えのもと、このたび、今御指摘の社会福祉法第百七条におきます市町村地域福祉計画の策定に係る現行の義務規定についても、努力義務規定というふうに変えたところであります。

 だれに相談をしたかということでありますけれども、この大綱に基づいて判断をしたということであります。

 また、それに基づいて定められる市町村地域福祉計画におきましては、もちろん義務づけがあったからというだけではなくて、地域にとって必要な計画を定めるに当たって、地域の皆さんの声を聞いていくということはこれまでもさまざまに行ってきたところであり、これが努力義務規定になったからといって、地域住民の意見や考えを無視したものができるということにはならないというふうに考えております。

 そういった意味で、後ろ向きじゃないか、こういうような御指摘は当たらないと考えていますし、先ほどもお話をしましたように、地域の実情に合った最適な行政サービスが実現されるものと考えております。

東副大臣 お答えいたします。

 二つ質問があったと思うんですが、東南海・南海地震防災対策推進計画の作成が義務から努力義務に改正されることになる、そのことが津波対策を推進する上で支障はないのか、これが一点目で、二点目は、災対特での議論をしていないじゃないか、こういう御質問だと思います。

 第一点目に関しては、今回の東南海・南海法の改正は、今般の地方分権改革の趣旨にかんがみて、地方公共団体に対する国の関与を縮小して、地方防災会議等の自主的かつ積極的な検討を促す観点から、東南海・南海地震防災対策推進計画の作成を義務とするのではなくて、努力義務とすることとしたものである。これは、ざっくり言えば、国からやれというふうに言われてやるのか、地震、津波、それは被災自治体といいますか地方公共団体にとって、まさに命にかかわる問題でありますから、そういうことを言われなくても、今回の地域主権の趣旨にかんがみれば当然やらなければいけないことである、このように思います。

 そういう意味におきましては、このことが、国の関与を縮小して地方の自主的判断にゆだねることが、すなわち、東南海・南海地震の津波対策を不要としているものでは何らなくて、また地震、津波対策など、国民の命、身体等にかかわることについては国及び地方公共団体の行政の責務が何ら変わるものではないというふうに考えております。

 さらにつけ加えさせていただければ、今般の東日本大震災による甚大な津波被害にかんがみますと、津波対策の推進というのは極めて重要であることは言うまでもありません。このため、本年六月に公布、施行されました津波対策の推進に関する法律、そしてまた現在精力的に行わせていただいておりますけれども、中央防災会議、東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会における今後の地震、津波対策の検討などを踏まえて、津波対策の一層の充実に努めてまいりたいというふうに思っております。

 二点目の問題に関しては、これまたざっくり言えば、国会の中のある意味で分担でありますから、ぜひ議論をしていただきたいというふうに思います。

 以上です。

重野委員 もう時間が来ました。あと三点ほど通告をしておりましたけれども、大変済みません、この次の機会に答弁いただければありがたいと思います。

 以上で終わります。

原口委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 今回の法案はいわゆる地域主権改革の第二次一括法でありまして、国から地方への義務づけ・枠づけを取っ払う、こういう内容が含まれております。

 地方が自主自立して、みずからの裁量と判断で住民のための行政施策を行おう、こういう考え方が根底にあると思います。逢坂政務官がある場所でおっしゃっていますけれども、義務づけ・枠づけの見直しというのは規制緩和ではない、規制のレベルを国が決めていたのが地域で決めるようになる。地域で実情が違う、規制が強化されることもある、一方で緩和されることもある、そのままのこともある、まさにその責任を持つのが地方になる、こういうことだと思います。

 省庁の抵抗もありますので、まだまだ非常に不十分だと思いますけれども、民より官の方が偉くて、地方より国の方が立派だ、立派な官が民を庇護して、弱い地方を国が指導しなくてはならない、そういういわば官尊民卑、中央集権の思想に根差したパターナリズムを脱却するために、私は必要な改革だというふうに思います。

 義務づけについてでありますが、このところ気になっていることがあるので御質問をしたいと思うんです。

 議員立法をやっていると、特定のテーマに関する何とか基本法というものの制定を超党派の議員立法で手がけることがあります。例えば、最近成立したものではスポーツ基本法。市民立法として注目を集めた、がん対策基本法というものもあります。私が議連でかかわっているもので法制定を目指しているものとしては、例えば水循環基本法の法案などもあります。

 こうした基本法には必ず、都道府県、市町村は○○基本計画を定めるものとする、こういう条項がつきものとしてある。今回いろいろと見直しはされているわけですけれども、新たにつけ加わってもいるわけであります。これまで光の当たってこなかった、地方においておろそかにされてきた政策テーマについて基本法を定めて、地方に計画策定をしてもらって、必要な政策を推進する体制を全国あまねくつくっていく。基本法はそれに資するものだというふうに思いますが、しかし、どうも、いささかやはり多いんじゃないかという気もしております。

 先ほど来、計画が努力義務になるということについて、これは国の責任を弱めるものだ、こういう議論も取り上げられているところでありますが、しかし、では、基本法というものに基づいて都道府県や市町村に計画策定が義務づけられている、こういうものがどのぐらいあるのかということを確認のためにお伺いしたいというふうに思います。

    〔委員長退席、福田(昭)委員長代理着席〕

片山国務大臣 これは、正直言いまして、今把握をしておりません。丹念に一つ一つ、時間をかけて、人員を投じて調べればわかると思いますけれども、現時点では把握をしておりません。

 ただ、今回の義務づけ・枠づけの見直し法の中では、御指摘の基本法に関連する見直しというのは五本あります。

 全体像は、現時点では把握をしておりません。

柿澤委員 これは、全体像を把握していないという御答弁をいただくとは実は思っていなくて、幾つ幾つありますというので、大変多いですね、こういうやりとりをするつもりだったんですが、把握していないということはそれだけ数も多い、多岐にわたる、各省庁が所管をしている、こういうことだと思いますので、私は、国による義務づけ・枠づけという議論をする際に、まさにこれこそ、いわば自治体の行政事務をふやして、なおかつ国から地方に、はしの上げおろし、これについてしっかり遺漏なきようやれ、こういうことの典型的なものであると思いますから、しっかりレビューをして見直していく必要があるというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

片山国務大臣 それはよく心がけたいと思います。

 せっかくの機会ですから少しお話しさせていただきますと、自治体の経験が私にもありますけれども、この基本計画なるものは非常にアンビバレントといいますか、功罪相半ばするところがあると思います。

 例えば、議員もさっき少しお触れになったと思いますけれども、今まで自治体が余り気がつかなかった分野、本当は重要なんだけれども、当事者の声が小さい、弱い立場であって、なかなか政策に反映しないようなところを、国が先導的に基本法をつくって基本計画の策定義務を設けるということ、これは実態としては有効な面もあります。例えば、DV関係の基本計画などはそういうものだと思います。

 ところが、他方では、基本計画があってそれをつくるというのが形骸化していて、国に提出をしなければいけないためにつくる。したがって、つくったものは国があらかじめ示したお手本どおりに、お手本になぞらえてつくって、ほとんど地域の事情とか主体性が組み込まれていないというものもありまして、実に形骸化しているものもあります。

 そういうものは今回のように策定義務を外して、努力義務とありますけれども、一種の注意喚起にとどめて、それは自治体の方で自主的に、自分の問題としてちゃんとやってくださいよというやり方の方がいいと思いますので、そういう一種の仕分けといいましょうか評価をすることは必要だろうと思いますので、御指摘の点はよく頭に入れておきたいと思います。

柿澤委員 この際、基本法に基づいた基本計画の策定というのがどのぐらい多岐にわたっているのか私も見てみたいと思いますので、いずれ御提示をいただければというふうにも思います。

 あと、地方の自主自立というテーマで、地方自治法の改正についてお伺いをしたいと思うんです。

 地方自治法の改正案の九十六条二項で、地方議会の議決権を制約する規定が置かれています。条文をひもとくと、もともとは、「普通地方公共団体は、条例で普通地方公共団体に関する事件(法定受託事務に係るものを除く。)につき議会の議決すべきものを定めることができる。」こういうことになっていたわけです。

 法定受託事務も地方公共団体の事務であるのに、「(法定受託事務に係るものを除く。)」こういう括弧書きは一体何なんだということで、今回、これは改正されることになりました。ところが、「(法定受託事務に係るものを除く。)」がなくなるかわりに、「(法定受託事務に係るものにあつては、国の安全に関することその他の事由により議会の議決すべきものとすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。)」というふうに規定をされるようになります。

 これについて、国際基督教大学大学院の今村都南雄先生が、地方自治総合研究所のホームページのコラムで物すごく怒っているんですね。何ゆえにこんな括弧書きが必要なのか、福島原発事故が国の安全にかかわることは明らかだ、沖縄の基地問題だってそうだ、それについて地方議会がみずからの議決事件とすることが、国の政令次第で適当でないものになってしまうというのはどういうことなのかと。

 それに加えて言うと、地方自治体がみずからの事務について、法令に違反しない限りにおいて条例を定めることができるというのは十四条一項で原則的な規定があるわけで、それに加えて、この九十六条二項でわざわざ、国の安全にかかわるものは地方議会としては法定受託事務に関して議決案件にしてはいけないんだ、こういうことを書く。これは、結局、殊さら枠づけておかないと地方また地方議会は何をするかわからない、こういう典型的なパターナリズムの考え方に基づく規定なのではないかというふうに思います。

 改正をしても、この文言をあえてこの条文に入れているのはどういうわけなのかということをお尋ね申し上げたいと思います。

片山国務大臣 これは、かつての機関委任事務のときには一切、機関委任事務に関しては長の事務といいますか執行機関の事務とされて、議会の権能が及ばなかったわけでありますが、それを、二〇〇〇年に施行された分権改革でもって機関委任事務をやめて、自治事務と法定受託事務にしたわけであります。これは大きな進歩だったと思います。その際に、法定受託事務についてはやはり議会の関与というものを制限したわけでありますが、今回の見直しでそこを解除するということになりまして、これも大きな前進になると思います。

 ただ、法定受託事務にもいろいろありまして、すべてを議会の関与のもとに置くのが適当かどうかというのは議論のあるところでありまして、私も分権原理主義者を自任しておりますけれども、やはり何らかの、一部においては例外的に議会の関与を認めないものが当面あってしかるべきだという考え方を持っております。そこで、これは限定的でありますけれども、政令で議会の関与の及ばないものを設けざるを得ないということであります。

 例えばどんなものかといいますと、これは例外的でありますけれども、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律というのがあります。有事法制でありますけれども、例えば、その際の関連する法定受託事務でありますとか、それから自衛隊法でも法定受託事務がありまして、例えば、自衛隊の展開予定地における物資の収用でありますとか、土地の使用でありますとかいう問題がありまして、そういう点については、やはり当面、議会の関与ではなくて、全国的な統一的な国の指針のもとに事務が行われるということの方が妥当だろうと思っております。

 ただ、議員おっしゃったように、これはあくまでも地域主権改革、地方分権を推進するための立法措置でありますので、その趣旨からいっても、この政令で定めるものは極めて限定的に解されるものだと思っております。

柿澤委員 極めて限定的に解されるものだという理解をされている、こういうことでありますので、これが濫用されて、地方議会における議決権の行使、また地方にゆだねられた裁量権に基づく自由な行政権の行使を不当に限定するものにはならない、こういう考え方だということがわかりました。

 まさにこういう方向性に基づいて改革がなされてきて、法定受託事務を除くから、法定受託事務のごく一部について限定するという文言に、前には進んできたわけですけれども、実際の運用によって、この辺は非常に幅を持たせ得る余地のあるところでもありますので、ぜひ御留意をいただければというふうに思います。

 国が地方に対して、このお金をこのように使いなさい、こういうやり方をするのが補助金行政だと思います。しかし一方で、私たちは、例えば今回の子ども手当についてもそういう側面があるというふうに思っております。

 子ども手当の平成二十二年度分の法案をやったときに、三重県松阪市から、山中市長が参考人で厚生労働委員会へ来られました。子ども手当、全額二万六千円がもし自分の松阪市に入ってくれば、何と松阪市の一年間の税収を上回る。それだけのお金が、子ども手当としてそのまま配れといって松阪市の懐に入ってくる。これを半分でもいいから自由に、子育て支援策で松阪市の裁量で使わせてくれたら、よほどその方がいい、こういう話がありました。私たちは、こうした考えに基づいて、子ども手当相当分のお金を交付金として地方に、自由裁量でどんな施策でも、現物支給でも現金支給でも、またバウチャーをやったりすることでもいい、こういうことにすべきだということを申し上げてまいりました。

 子ども手当は今回、民主党、自民党、公明党さんの三党で協議を行われて、基本的には今のスキームを改めて、廃止というべきかどうかわかりませんが、児童手当の所得制限つきのスキームに来年度から移行する、こういうことになるようであります。

 これで最も影響をこうむるのは地方自治体だと思います。私たちの今の理想は先ほど申し上げたとおりですけれども、一方で、こうした形で、一年という期間でまた制度が変わっていく、特に、所得制限をつけるつけないということでかなり行政事務のありようは変わっていくというのがこれまでの議論だったと思いますので、こうしたことが地方にどういう行政事務上の、あるいはさまざまな意味合いでの影響を与えるのかなというふうに思っております。こうしたことが地方にどういう影響を与えるかということについて、もしお考えがあったらお聞かせをいただきたいと思います。

片山国務大臣 この種の国全体にわたる施策というのは、できればやはり安定的であってほしいと、元自治体の首長として私は思います。福祉でありますとか教育でありますとか、そういう多くの住民の皆さんを対象にする分野で、余りくるくると猫の目的に変わるというのは自治体にとっては非常に大きな戸惑いでありますから、できれば安定的であってほしいと思います。

 ただ、いろいろな事情が国において発生して、その中で一種の妥協といいますか協議の結果、一つの成案が得られるということは、これはこれとして受けとめなければいけないと思いますが、しかし、その場合でも、自治体が当事者になりますので、自治体の皆さんの理解をよく得る、十分理解をしていただくということが必要だろうと思いますから、改めて、これは国と地方の協議の場を至急開いて、理解を求める作業を政府としてはしなければいけないと思います。

 その上で、どんなことが自治体に対して発生するだろうかということでありますけれども、財政的な面は、今回の協議の結果を私なりに判断して、ないだろうと思いますけれども、一つは、例えば所得の把握の問題が出てまいります、来年度から。ですから、改めて所得の捕捉をしなければいけないということが出てまいりますし、それから何よりも電算のシステムを変えなきゃいけませんので、このための手間とかなりの費用負担がかかるだろうと思います。

 そういう認識を政府においても共有して、必要な財政面などでの手当てをしっかりとしていくということが必要で、それがなければ自治体の方の理解はなかなか得にくいのではないかと思っております。

 いずれにしても、理解を得なければいけませんので、そのための措置を政府として講じなければいけないと思います。

柿澤委員 時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

福田(昭)委員長代理 次に、中後淳君。

中後委員 民主党の中後淳です。

 時間も短いことですので、質問の機会を与えていただいたことに感謝しつつ、早速質問に入らせていただきます。

 いわゆる地域主権改革関連法案第二弾ということになると思いますが、私がこの法案、第一弾、第二弾と見る中で、当初、民主党が、地域主権改革は一丁目一番地の政策だと掲げていた割には、どうも推進力が弱いというか、小さな議論になっているような気がして仕方がありません。

 その背景を考えてみると、どうも、大枠、受け皿の方の形ですとか財源の話だとか、そういう本当の受け皿の方の話が余り進んでいない中で、現行の体制の中で義務づけ・枠づけをどうしましょう、権限をどうしましょうという議論をしていく中で、現行の体制下でできることを今しているからだというふうに認識しているわけです。

 都道府県でいっても、東京都千三百万人、大臣が知事時代にいらっしゃった鳥取県が一番少なくて、もう六十万人を切っていて、これは人口だけで見れば中核市と同じ規模の県ということになりますし、市だけで見ても、横浜市が三百六十万人以上いる、北海道の歌志内市は四千人台の市だという中で、一つの権限を移譲するにしても、先ほど小規模自治体のお話も出ていましたが、受け皿側の体制がいろいろとまちまちな中で検討を進めているところについて、もう一段思い切った、枠組みそのものについて考えを至らせていかなければならないのかなというふうに思っています。

 そういう意味では、二〇〇〇年の当初に地方分権一括法案で地方分権が始まったとき、機関委任事務や地方事務官が廃止されたときの方が、私にすると、何か地域主権とか地方分権ということに対する推進力が強かったような気さえしています。

 そういう問題認識を持ちながら、今回はちょっと変化球的になるかもしれませんが、本来であれば厚生労働省や国土交通省にお尋ねするような質問ですが、あえて総務大臣に伺いたいということで一つ質問させていただきます。

 国が事業主体であって窓口が市町村という事務、以前は機関委任事務などでたくさん行われていたもので、非常にわかりやすい例では年金の事務なんかがあると思いますが、今は、年金は日本年金機構または年金事務所で事務取り扱いをするようになっております。

 私の選挙区は千葉県南房総で、千葉県の中では一番広い選挙区で七市一町あるわけですが、その中で年金事務所は一カ所です。公共交通機関も余り整っていない中で、二時間ぐらいバス、電車を乗り継いで年金事務所に行って、また一時間、二時間待ち時間がある中で、手続をしようとすると、書類が整っていないので出直してくださいなんということでまた二時間かけて帰る。交通費も三千円近くかかる、そういう状況があったりします。

 こういう事務などは圧倒的に市町村の窓口の方が身近であって、事務取り扱いをする上では適切なんじゃないかなということを考えております。市町村でやるかどうかは別にしまして、市町村の窓口と同じぐらいの数が必要なのではないかなという感じがしますし、児童相談所、これは都道府県の事務になりますが、これも同じような問題で、いろいろな方から改善できないかということを要求されたりしております。

 ハローワークの問題も、以前これも機関委任事務だったと思うんですが、今、アクション・プランに従って進めているところではありますけれども、もう少し連携をとって、国や県の事務を市町村の窓口で扱えるような仕組み。今、法定受託事務というのがそれに当たるのかと思いますが、もう一歩踏み込んだというか、以前の機関委任事務のいいところを吸収できるような、そういう見直しも含めた検討が必要なのではないのかな。これは専ら、効率的に、住民の利便性を向上させるための視点でそういう考え方ができないかなと思っているわけですが、大臣の所感を伺います。

    〔福田(昭)委員長代理退席、委員長着席〕

片山国務大臣 非常に重要な論点提起だと思います。

 もちろん、単に窓口だけを活用するということであってはいけないと思うんです。やはり自分の事務として行う。その際に、市町村が窓口になるということは、これは住民の皆さんにとって非常に便宜が増すという面は恐らくあるだろうと思います。

 例えば、御指摘の年金でいいますと、これは二〇〇〇年の第一次の地方分権改革以前は、県の中に国民年金課がありまして、そのもとで市町村に協力をしていただく、そういう仕組みになっておりました。したがって住民の皆さんとの関係も、市町村を通じて行うということで、情報の収集も非常に良好でありましたし、それから納付率も非常に高かったわけでありますが、二〇〇〇年以来、国の方で全部やるということになって切り離したものですから、今日に至っております。

 ですから、その時点で、これを市町村の事務にしておいた方がいいのではないか、自治体が関与する事務にしておいた方がいいのではないかというのは、選択肢としては当然あったわけでありますけれども、それを選ばなかったということであります。ですから、年金問題の行方ということを考えた場合には、今後も一つの選択肢としてはあると思います。当面は、ちょっとお取り込み中でありますので市町村の方も受けがたいと思いますけれども、将来的な方向としては、選択肢としてはあるだろうと思います。

 児童相談所なども、大きな市だったらちゃんとできます。ただ、町村になりますと、児童福祉司のような専門職を全部そろえるということはできませんので、この辺は都道府県の仕事になりますけれども、市町村との間でよく連携をとるということは当然可能だと思いますので、住民の皆さんとの橋渡しを市町村がするとか、そういうことは可能だろうと思います。

 そういうことはぜひこれから、余り県、国、市町村と峻別をした考え方ではなくて、有機的な連携、ただし、それはかつての機関委任事務のように上下関係ではなくて、それぞれ自立した主体の間で連携がとれるような、そういうソフトな関係をつくっていくということは非常に重要なことだと思います。

中後委員 ぜひそういった視点で、効率もありますけれども、とにかく住民の利便性を重視しながら、制度の見直し等の検討を進めていただければと思います。

 先ほど小規模自治体の問題の話もありましたけれども、現在市町村が事務を行っているものであって、逆に、市町村ではなくてもっと大きな、広域連合であったり国であったりが事務を行うべきものなんじゃないかなと思うものもたくさんあります。例としては、今、社会保障と税の一体改革の議論なんかも進んでいますけれども、国保などは、私が住んでいる富津市というところは、ことし、保険料五%増ということで大変厳しい決断をしておりました。

 私が市議会でお世話になっていた二〇〇二年か三年ぐらいのところだったと思いますが、当時、これで保険料を上げるのは最後ですという説明を聞きました。なぜかというと、広域連合なり県なりが保険の業務はやるからだという話だったんですが、実際ふたをあけてみたら、後期高齢者医療制度のみが切り分けられて広域連合の方に行って、そのほかの保険の事務は市町村に残ったということがあります。

 ちょっと古いデータ、二〇〇八年と書いてありましたけれども、所得が二百万円で夫婦子供二人の四人世帯、固定資産が五万円程度のモデルケースで、国保税を幾ら納付しなきゃいけないかということを見ると、最高で五十万円を超えるところがある中で、最低は十四万円、平均で三十二万。これは、医療のサービスを受けるために納付するにしては差があり過ぎると私は思います。自治体のいろいろな考え方もありますけれども、高い保険料を納めて高いサービスが受けられるかというと、全く逆の方が多くて、保険料が安いところの方がかえって医療機関が充実しているなんという例はたくさん見受けられると思います。

 こういう例などを考えても、乳幼児医療も同じような事例があって、財政力の高いところがどんどん先行していって小学生、中学生と進む中で、財政力の厳しいところはやっと三歳未満の乳幼児医療費について考えられるような状況になってくるとか、財政力の高いところと低いところでナショナルミニマムと言えるような社会保障に関してもかなりの差が出てきているところは、国全体として見直していこうということが必要なんじゃないかと思います。

 これは国保だけではなくて、いろいろなところでこういう事例が見られると思いますので、先ほどもありましたけれども、ぜひとも、制度全体は国で、窓口が市町村という体制が、情報化も進んでいて十分可能な背景ができてきていると思いますので、国がやるべきことと地方がやるべきこと、連携のとり方等について再度整理する必要があると思います。ぜひ大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

片山国務大臣 今おっしゃった観点での検討というのは必要だと思いますし、重要だと思います。

 何が何でも市町村にというような方向で今までやってきた嫌いがないわけではない。しかしやってみると、ちょっとどうもぐあいが悪いというのはあります。例えば障害者福祉の面でいいますと、精神障害の分野は、やはり私なんかは経験上、県がやった方がいいだろうと思います。それはなぜかというと、財政の問題もないわけではありませんけれども、スタッフ、専門職の問題で、やはり県に集約をした方が多分質の高い仕事ができるだろうというのはあります。これは、この間の一連の地方分権改革の、私の個人的な見解ですけれども、これから見直す一つの対象になるのではないかと思います。

 それから、御指摘のように、従前からあるような国保は市町村でやってきていますけれども、やはりなかなか無理があります。国保が始まったころは、その地域の住民の大半は国保の対象者でありました、農業を含めて自営業者が大半でありましたから。今、地域の住民の大半は給与所得者になっておりますから、国保に該当する人はごくわずかになっておりまして、母体がごくわずかで保険をやるというのはなかなか無理があります。

 その中で、なおかつ、また後期高齢者を、これも基本的には市町村の仕事になっているんですけれども、これは無理だということで全国的に広域連合でやっていますけれども、広域連合でやらなきゃいけないということはもう市町村ではできないということを認めたようなものでありまして、これらも国保とあわせて、本来ならば都道府県がやってもいい。私は全国知事会に所属しておりましたときにそう主張しておりました。多勢に無勢でありましたが、最近大分変わってまいりまして、多くの知事の皆さんも、やはり都道府県で受けた方がいいんじゃないかという意見も出てきておりまして、これからの一つの大きな、急を要する課題だろうと思います。

 そういう観点での見直しを、ぜひこれから大胆に進めていく必要があると思います。

中後委員 今の問題の背景には、国保特別会計に一般会計から繰り入れを幾らするかみたいな話もありますので、これは総務省にとっても大きなかかわりがある問題だと思いますし、私はもっと、広域連合ではなくて、本当に全国で同じような基準でやるべきなのではないかと思います。鳥取県六十万人で十分かというと、そうではなかったりすることもありましょうし、また地域間格差というものが保険、医療という部分で出てくるのはどうかなというふうに思いますので、もっと大きな視点の検討も必要なのではないかなと思います。

 個別の最後の質問になりますが、財源の適正な配分の仕方がどうなのかということについて質問させていただきます。

 私は以前から思っているんですが、大きな国道というのは、地方に行くと、両側に幅三メーター、五メーターの歩道がついていたりします。そこに人が歩いているかというと、ほとんど歩いておりません。自転車も通っていない。一方、市道を見ると、本当に高校生、中学生が毎日たくさん通る市道であっても、歩道が整備できない、財源上の問題でなかなか整備が進んでいないようなところもたくさんある。

 あと、高速道路をつくるときには、一般道を分断しますので、それを高架だとかカルバートとかでどんどんつないでいくような作業がありますけれども、非常に大きなお金がかかっております。自治体から見ると本当に莫大なお金がかかっている。用地買収なんかも、国が用地買収する場合と、県、市町村がやる場合では全然単価が違ったりするようなこともあります。

 あと、道路構造令ですとか補助基準に見合ったような補助事業で整備をしていこうとすると、かえってコスト高になるからということで、長野県の栄村ですとか下條村などで、村独自で道路を設置しましょう、補助は要らないというようなところが出てきている。この背景は、全国一律の道路構造令だとか補助基準とかということだと思います。

 これは一括交付金の議論とも大変かかわってくるんだと思いますが、生きたお金を使うという観点からは、予算配分をする制度そのものもそうですし、道路設置基準の見直しも入るでしょうし、交付税だとか一括交付金のような、地方にとって自由度の高い財源をどうやって渡していくかという、いろいろな観点からの改革が必要になってくると思います。本当に必要なところに必要な整備をするということは、住民にとっては決して悪いことではありませんし、利便性、生活向上につながるものだと思いますので、ぜひとも、そういうことについての大臣の所感を最後にお伺いさせていただきます。

片山国務大臣 地域で必要な仕事ができるためには、できるだけ自由度の高い財源が望ましいと思います。ひもつきで、ある特定の目的にしか使えないというものは、それはそれでありがたいんですけれども、非常に使い勝手が悪いとか、その分は使わなければ損だというようなことも起きてきます。自由度の高いもので地域に選択権を与える、優先順位づけを地域が行うということになりますと、一般的には、節約をして創意工夫をするものであります。

 ぜひ、そういう方面での改革が望まれると思いますし、現に今年度から一括交付金を都道府県については始めまして、これは、実は大変大きな改革であると思います。後世、恐らくかなり高い評価が得られるのではないかと自負しておりますけれども、初めてこれに乗り出したわけであります。ぜひ、そういう一括交付金のようなものにウエートを置いていくという改革がこれからも必要だろうと思います。

 ただ、もう一つは、自由度が高いと責任も当然生じますので、自由度の高いものが自治体に交付されたら、その中でだれかボスのような人が勝手に決めるということではかえってよくありませんので、自由度の高い制度にすると、今度は自治体の中で住民の皆さんの意向というもの、考えというものができるだけスムーズに、ストレートに反映されるような行政運営、自治体運営でなければいけない、そういう方面での、いわば住民自治の進展という面での改革が並行してなされるべきだろうと思います。

中後委員 ぜひ、国と地方の受け皿ですとか、連携をとるための体制だとか、そういうところも含めて、さらに地域主権改革が進むような検討を進めていただきたいということをお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

原口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十九分散会


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