衆議院

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第3号 平成20年10月31日(金曜日)

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平成二十年十月三十一日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 田中 和徳君

   理事 江崎洋一郎君 理事 木村 隆秀君

   理事 竹本 直一君 理事 山本 明彦君

   理事 吉田六左エ門君 理事 中川 正春君

   理事 松野 頼久君 理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    浮島 敏男君

      小川 友一君    越智 隆雄君

      後藤田正純君    佐藤ゆかり君

      鈴木 馨祐君    関  芳弘君

      とかしきなおみ君    中根 一幸君

      林田  彪君    原田 憲治君

      平口  洋君    広津 素子君

      松本 洋平君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    盛山 正仁君

      安井潤一郎君    山本 有二君

      池田 元久君    小沢 鋭仁君

      大畠 章宏君    川内 博史君

      階   猛君    下条 みつ君

      鈴木 克昌君    古本伸一郎君

      細野 豪志君    谷口 隆義君

      佐々木憲昭君    中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       中川 昭一君

   内閣府副大臣       谷本 龍哉君

   農林水産副大臣      石田 祝稔君

   財務大臣政務官      三ッ矢憲生君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  内藤 純一君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    畑中龍太郎君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    三國谷勝範君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           小風  茂君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           大下 政司君

   参考人

   (成城大学社会イノベーション学部長)       村本  孜君

   参考人

   (全国中小企業団体中央会会長)          佐伯 昭雄君

   参考人

   (社団法人第二地方銀行協会会長)         横内 龍三君

   参考人

   (農林中央金庫代表理事理事長)          上野 博史君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月三十一日

 辞任         補欠選任

  亀井善太郎君     浮島 敏男君

  階   猛君     細野 豪志君

  和田 隆志君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     安井潤一郎君

  川内 博史君     和田 隆志君

  細野 豪志君     階   猛君

同日

 辞任         補欠選任

  安井潤一郎君     亀井善太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案、保険業法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、成城大学社会イノベーション学部長村本孜君、全国中小企業団体中央会会長佐伯昭雄君、社団法人第二地方銀行協会会長横内龍三君及び農林中央金庫代表理事理事長上野博史君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願いたいと存じます。

 それでは、まず村本参考人にお願いいたします。

村本参考人 おはようございます。村本でございます。本日は、発言の機会を与えていただきまして大変ありがとうございます。

 お手元に、ハンドアウトといいますか、印刷物がございます。これに従ってお話をさせていただきたいと存じます。

 私は、きょうは、金融機能強化法関連の発言をさせていただきたいと存じますけれども、金融機能強化法と申します法律は、ことしの三月でいわゆる申請期限が切れた法律でございますけれども、私はこれは、もう少しやっていてもいいんじゃないかなとちょっと思っていたくらいの法律でございます。

 と申しますのは、予防的に金融機関に資本注入をするという考え方のものでございまして、資本不足が発生してからこれを入れるという、いわゆるレギュラトリーキャピタルといいますか、そういうものではなくて、エコノミックキャピタルという学問的な用語を使いますけれども、あらかじめ入れておこうというものですから、いつでも整備しておくというのも重要なことではないかな、実はそんなふうに考えておったわけでございます。

 その後、どういうことが起きているかというのを幾つか図表で見ておきたいと思います。

 図の一、三ページ目でございますが、これは、景気の景況を調査するという幾つかの、日本銀行の短観でありますとか、あるいは中小企業庁、中小企業基盤整備機構で発表しているものとか、並べてみたのですけれども、動きを示している赤い四角のポツというのは、ここ数期で急に下がっております。実は、それ以前から、小規模の企業については、これはかなり下がってきておりまして、大分景気が悪いねというのは感じておったんですけれども、そういう意味で、地域に十分資金が回っているか、中小企業さんに資金が回っているか、特に小規模層に回っているか、これは大変に懸念されるところであったわけでございます。

 一つめくっていただきまして、図の二というのがございます、四ページ目ですが、ここでは借り入れ難易度という数字をピックアップしてございます。短期の資金あるいは長期の資金、かなり厳しくなっているなという感じがおわかりいただけるだろうと思います。かつて、二〇〇二年ぐらいに厳しい時期がございましたが、それにもう近づきつつある。この調査は例のリーマン・ショック以前のものでございますので、現況はかなり厳しくなっているのではないかな、こんなふうに考えておりまして、ここできちっとした手を打っておかなければいけないというのが現状だろうと思っております。

 あわせて、五ページ目を見ていただきますと、これはもうよく出てくるものでございますが、いわゆる企業の開業と廃業という問題でチェックいたしますと、廃業の率が非常に高まってきているということが言われまして、長期的には、日本の経済というのは、企業数が毎年数万社ずつ、十万ぐらい減っているという社会になりました。人口も減っているわけですが、企業数も減っている。企業減少社会に突入をしておりまして、経済の足元が非常に心配な状況になってきているわけでございます。そういうことで、それをどういう形でバックアップしていくかというのが非常に重要なことではないか、産業のすそ野をきちっと育てていきたいねということでございます。

 今回の法改正で中小企業に対する信用供与の円滑化ということが明記されましたことは、そういう意味では大変心強いことではないだろうかというふうに考えておりますものですから、そういう意味での評価は大いにしたいと思っておるところでございます。そういうことで、金融機能強化法がうまく機能すれば、現在の中小企業の問題に対してかなり力になるのではないかと思っているところでございます。

 そういう過程で、今さまざま議論されている問題は、一つは経営責任の問題があろうかと思いますし、あるいは数値目標のようなものがあろうかと思うんですが、これは一律に課すというのがなかなか難しい状況ではないかというのが私の判断でございます。一つは、数値目標を入れて、何%やりなさいということを言いますと、これは別な、例えばリレーションシップバンキングというところで議論したときに、数字づくりに終わってしまうということがありました。チェックリストに数字を入れておけばいいじゃないかということで、実効が上がらないことが出てまいります。

 したがいまして、こういうところをいかにモニタリングするか、フォローアップするかが私は重要なことではないかと思っております。この法律には審査会という機能がございまして、その審査会でさまざまフォローアップする、あるいは半期ごとにチェックするということができますので、そういう機能を十分生かしていけば、使いやすさあるいは実効性が上がるのではないだろうかというふうに考えておるところでございます。

 あわせて、そういう過程で、ちょっと話が飛んでしまうかもしれないんですが、七ページ、八ページの辺でございますけれども、例えば、現在、デット・デット・スワップというようなやり方ですが、借入金の一部を自己資本にカウントできるような考え方がだんだん定着して、金融検査マニュアルでも使えるようになってきております。こういったものを大いに活用しながらやっていただくというようなことが重要ではないか。

 あるいは、八ページ目は、実は現在我々が取り組んできた作業の一つなのですが、担保あるいは保証に過度に依存しない融資をしていただこうではないか。いわゆる地域密着型金融ですか、このときに、ソフト情報といいますが、ハード情報、いわゆる財務諸表に対して、目に見えない、経営者の資質ですね、非財務情報、あるいは定性情報をつかみ取るというのが重要なんですが、こういうときに、現在、知的資産という言葉を使ってあらわそうという問題がございます。

 こういうようなことにじっくり取り組む、あるいは、ABLという英語を使いますけれども、不動産ではないさまざまな担保を使う、こういったようなことによりましてこういう計画を立てていっていただく、そして地域に資金がきちっと回るような形をつくっていただく、これが重要なことなのではないだろうかというふうに考えておるところでございます。

 私は、六ページにちょっと説明を省いたところがございますけれども、廃業率が高まっていて開業が少ないというデータがよく使われるのですが、あえて一枚つけましたのは、実際に第三者を雇用している企業というカテゴリーで整理をしてみますと、実は、開業が直近では少し廃業を上回るという状況になってきております。かなり長い期間それをデータで見ますと、開業が多かったんですけれども、実際に雇用をつくれるような企業という元気な企業をやはり大いに育てていき、そしてそれを支えていくことが足元では重要なことでございますので、ぜひこういう形で進めていただければよろしいのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、佐伯参考人にお願いいたします。

佐伯参考人 中小企業団体中央会の佐伯と申します。

 私は、中小企業の経営者の立場から、現在の中小企業の現状並びに対策に関する要望等を述べさせていただきたいというふうに思います。

 なかなか中小企業団体中央会という名前を御存じでない方もいらっしゃるんじゃないかと思うので、ちょっとだけ説明させていただきますと、約三万二千組合、協同組合が全国にある。その傘下の中小企業が三百万社と言われている。日本の中小企業は約四百万社ですから、七割くらいが組合を結成して、協同組合の中で事業を継続しているというふうな現状でございます。

 そういう中で、我々中央会として全国の情勢を見ていますと、中小企業、九月に入ってからかなり厳しくなってきている。今、村本先生もおっしゃっているような、DI指数がずっと悪いという表がありましたけれども、さらに最近の我々中央会の調査におきましても、DI指数が、景気のよいから悪いを引いたのが物すごく大幅に、急激に悪化してきているというのが現状でございます。

 というのは、御承知のとおり、これは大企業を含めた、円高とかあるいは世界的な大不況の中で売り上げが伸びていない。大企業が伸びないということは中小企業の受注も減りますので、結局仕事量が非常に少ない。あるいは、原材料が値上がりしても価格になかなか転嫁できない。そういう中で、非常に苦労をしているというふうなことでございます。

 特に、私、宮城県の出身なんですけれども、中央会としまして、宮城県内の各企業を地区ごとに移動中央会と称して十月に回ったばかりなんです。仙台はまだまだいい方だと思うんですけれども、ちょっと三十分くらい車で行けば、中核都市と言われる地方のシャッター通りが目立ちます。それから、沿岸部の魚のとれない漁業基地というのは今大変な不況に入っている。

 そういう中で、さらに追い打ちをかけるように金融機関の貸し渋りということが起きている。これは中小企業にとっては死活の問題であります。そういうような現況が、麻生総理は暴風雨だと言っていますけれども、本当に大変な暴風雨で、中小企業がその中で生きているというふうなことを御理解いただければと思う次第でございます。

 ぜひ先生方も、地方の製造業とか、あるいはシャッター通りじゃないですけれども、商店街の現場をごらんいただければ、いかに中小企業が大変であるか、特に二十人以下あるいは五人以下の零細企業ですね。その辺もやはり生業、虚業じゃないんです、実業をやっているわけです。しかし、お金は貸してくれない。その日暮らしで、非常に大変な時代を迎えているということを御理解していただきたいと思います。

 では、貸し渋りというのは何で起こったんだろうか。これはいろいろな要因があると思います。銀行が貸さない要因というのはいろいろなことがあると思うんですけれども、一つは、私、銀行に金がないわけじゃないと思うんです、次に第二地銀の会長さんのお話もあるかと思いますけれども。金がないわけじゃないんですけれども、実は、福田総理が八月の三十一日に緊急経済対策を出された。これは我々にとっても非常にいいことなんです。四千億の真水で八兆から九兆の保証をするとか、中小企業にとっては非常にいいなと思ったんですけれども、発表した途端にやめられたものですから、政治空白が起きちゃった。

 本来なら九月に補正予算は通るべきはずが、十月のきょう実施になっているんですね。十月三十一日実施、きょうから実施なんです。この二カ月間というタイムラグは中小企業にとっては大変な重荷でございます。その間、銀行は、そういう保証がつくんだからそれまで待ちなさいということで、貸し渋りに入っちゃっている。それが大きな原因だと私は思うんです。

 政策としては非常に評価していい政策なんです、四千億円を出す。ただし、それが実行できなかったために、いい政策の反動で逆に悪くなってきたというのが現実じゃないかなというふうに思っております。きのうのテレビを見ていますと、麻生総理大臣もスピードが大切だと言っているので、もっともなことだと。本当に、現実にそのスピードの遅いおかげで中小企業がどのくらい苦しんだかということを申し上げたいと思います。

 さらに、これからが中小企業のまた正念場、年末を迎えて資金繰りが大変になってくるときに、ぜひスピードを持って次の対策、金融対策をやっていただけないかなというふうに思っているんです。ですから、今までの緊急経済対策もそうですし、今後の金融の強化法、いろいろな対策、これは私は非常に評価したいと思います、それなりに中小企業にとっては。ただ、うまく運用して、早く実施をしていただきたいというふうなことがあります。

 ただ、先ほどの中小企業、零細企業の中では、保証の枠が八兆円です。今度二十一兆ですか、何かきのうの新聞情報ですから。そのくらいを出そうと言っていても、実際は保証協会が保証しないところもあるんです。そうしたら、銀行も金を貸さないです。そのくらい大変なんです。特に十人以下とか、それが中小企業の大半なんですね。日本の企業の大半を占めているそういう中小零細企業についての配慮といいますか、そこら辺を十分に考慮をしていただきたい。そっちに行き渡らない、一番欲しいところに金が行かないというのが問題であるというふうに思います。

 それともう一つは、きのうも我々、全国の、特別委員会といいまして、各県の中央会の会長が全部集まりまして、いろいろな会議をやったんです。その中でもいろいろな意見が出まして、新しく保証枠をつくって借りる枠をつくった、これも非常にいいんですけれども、現在借りているお金を返済する、それの条件変更をして返済の猶予をすることが、やはり資金繰りを非常に楽にする一つの方法じゃないか。

 ただ、銀行は、条件変更というのは非常に嫌がると思います。しかし、資金繰りというのは、金を借りるだけじゃなくて、今借りているのを返す方を、全然返さないわけじゃなくて、例えば毎月三十万円ずつ返していたのを十五万に変更して期間を延ばしてもらう、そういうふうなことをすることによって、中小企業あるいは零細企業が資金繰りが楽になる。資金繰りが命ですから、それをぜひ御理解をしていただければなというふうに思っております。

 いろいろなことがありますけれども、もう一つ、新聞等の情報で、とにかく今に日本、世界が全部だめになるような大恐慌で、大変だ大変だ、中小企業も大変だと私も今言っていますけれども、それを言っているだけでは解決にならないので、我々中小企業、経営者というのはそれなりに、しぶといという言葉じゃなくて、非常に頑張って経営を続けていこうという努力の中で、もっと前向きな投資も必要じゃないか。

 先ほど言ったように、緊急な貸し渋りとか何かというのはもってのほかなんですけれども、我々の今本当に大変な資金繰りを、融資していただく、緊急的に出血をとめる、これは必要ですね。と同時に、いつまでも出血をとめているだけじゃなくて、食べ物で栄養をとって体に体力をつけたい、そういうふうに思うわけです。

 その一つは、もちろん受注拡大とか何かありますけれども、こういうちょうど不況のときというのは、中小企業は仕事がないものですから、時間はあるんです。それから、中小企業にはすごい技術を持っているところがいっぱいあります。そういう技術を活用した技術開発、こういうのに私は投資すべきだと思うんです。それが日本の技術立国の、あと何年後か、例えばの話ですけれども、五百億円の開発投資をしたら五年か十年後では何十兆になるかもしれない。それから、世界の競争に勝つには、中小企業の技術力をアップする、そういう絶好のチャンスだと逆に思うんです。

 ですから、そういうふうな前向きな施策もぜひ先生方に考えていただきながら、我々日本の中小企業を含めた発展、あるいは維持するということだけでも大変なんですけれども、そういうことをしていただきたいというふうなことを思っておりますので、よろしくお願いを申し上げて、私の発表といたしたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、横内参考人にお願いいたします。

横内参考人 第二地方銀行協会の会長を務めております、北洋銀行頭取の横内でございます。

 日ごろ先生方には、当業界に対しまして大変いろいろ御指導を賜っておりまして、厚く御礼申し上げます。また、本日は、この席で意見を申し述べる機会を与えていただき、まことにありがとうございます。

 私ども第二地方銀行と申しますのは、沿革的には、相互銀行をルーツにいたしまして、平成に入りまして普通銀行に転換した銀行でございます。したがいまして、私どものお取引の主体は、法人の取引ではまさに中小企業の取引がほとんど主体でございますので、まず、中小企業金融の現状から報告させていただきたいと思います。

 我が国経済が原油や原材料価格の高騰、個人消費の低迷といったような中で後退色を強めてきております中で、地方の経済も、これは一口に申しますと、極めて厳しい状況にございます。

 中小企業の状況について、佐伯会長のお話にもございましたけれども、若干、各地の状況を会員行から集めて整理いたしますと、各地域におきまして、総じて、製造業におきましては必要な設備投資を見合わせる、見送るような動きが出てきておりまして、投資態度は一段と慎重化してきております。

 住宅投資を見ますと、例えば分譲マンションみたいな分野におきましても、建築費に影響する鋼材価格の高騰等から、販売業者とそれから建設会社との間でなかなか請負の金額が折り合わない、こうした形で着工に至らないケースというようなものが出てきております。

 この間、輸出関連の下請の企業におきましては、米国向けを中心といたしまして、こうした受注額が大幅に減少してきております。減産が本格化してきております。

 また、百貨店の売り上げを見ましても、値段の高い商品や食品の落ち込みというようなことが目立ってきておりまして、消費の分野でも弱い動きが目立ってまいりました。

 こうした状況下、取引先の中小企業の皆様方の業績がここもと急速に悪化してきておりまして、企業倒産も増加の傾向にございます。つれまして、私ども金融機関自体の引き当てですとか償却の増加、貸し出しに対してこうしたものが非常にふえる、すなわち、信用コストも非常にこのところ目立って増加傾向にあります。

 こうした厳しい地方経済のもとで私ども第二地方銀行協会の加盟行は、総じて中小企業金融の円滑化に鋭意努めておりまして、地域を支える中小企業には私どもも最大限の応援を行うというようなことで、厳しい中でその対応に追われているというのが実情でございます。

 こうした状況のもとで、最近の異常な金融・証券市場におけます相場の下落によりまして、私ども金融機関の保有いたします有価証券の分野で評価損が発生しております。つれて、自己資本比率が低下傾向をたどってきております。

 この結果、金融機関のリスクテーク能力に影響が出始めておりまして、ひいては、中小企業金融の円滑化にも響きかねない、こういう懸念を深めてきております。特に、九月十五日のリーマン・ブラザーズの破綻以降、この様相は一変したというのが私どもの受けとめ方でございます。

 こうした状況に応じまして、金融機関といたしましては、必要に応じて、低下しつつある自己資本比率対策として、資本市場において自分の努力で自主的に資本を調達する、こういう努力をしていく、これが基本であるということはもちろんでございます。

 しかしながら、一方、現下の資本市場のこの混乱のもとでは、私どもが市場で資本調達を行うことはなかなか困難な状況になってきております。

 そこで、私どもといたしましては、時価会計ルールの見直しですとか、例えば十五年変動利付国債の新規発行を見送るようなこととか、満期保有への区分変更を認めていただきたいとか、外部要因による自己資本比率の最近の毀損を軽減する措置を各方面にお願いしてまいりました。

 これらについては、必要な措置や検討が現在進められているというふうに承っております。

 私どもといたしましては、ただいま申し上げましたような、こうした時価会計の見直し等により、現下の異常な情勢におきましても、自己資本比率低下を防止し、中小企業金融の円滑化を進める環境は少しずつ整備されつつあるというふうに認識しておりますが、しかしながら、昨今の国内外の金融情勢を見ますと、自主的な資本調達が難しい環境下、必要な場合には国による資本の注入が不測の事態に備えるという意味でも、大変有意義であるというふうに考えております。

 すなわち、今回の措置は、金融機関のリスクテーク能力を強化し、これが中小企業金融の一層の円滑化に資するものである、まことに時宜を得た対応であるというふうに考えております。また、こうした措置は、混乱をきわめておる市場の安定化にも資するというふうに考えます。

 もっとも、各金融機関が置かれている状況はそれぞれさまざまでございまして、中小企業金融の円滑化を目的とする資本の増強等は、あくまで各金融機関個別の自主的な、主体的な経営判断に基づき決定される事柄でございます。今回議論されております金融機能強化法においても、そのような各金融機関の立場が尊重され反映されるような、そういう形になるよう期待いたしております。

 各地域におきまして中小企業と運命をともにする私ども地域金融機関は、中小企業金融の円滑化に今後も積極的に取り組むこと、また、そのことにこそ私どもの存在の意義があるというふうに考えております。

 こうした考えのもと、個々の金融機関が、中小企業を初めとするお客様ニーズにこたえ、地域全体を活性化していくということが非常に重要になってきております。こうした方向に向けまして、お取引先と協力し、引き続き努力してまいる所存でございます。

 本委員会の先生方におかれましても、今後とも当業界に対しまして御指導を賜りますようお願い申し上げまして、私の発言を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、上野参考人にお願いいたします。

上野参考人 農林中央金庫の上野でございます。

 先生方には、日ごろ大変お世話になっておりまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。

 次に、本日は、本委員会に出席をさせていただきまして、私ども農林中央金庫、農協系統・漁協系統信用事業から見ました金融機能強化法についての意見陳述の機会を賜りましたことに対しまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。

 初めに、せっかくの機会でございますので、私どもJAバンクシステムの概要について御説明を申し上げたいと思います。

 お配りをいたしております資料をお開きいただきたいと思いますが、まず一ページをごらんいただきたいと思います。

 総合事業を営んでおります単位農協、都道府県段階、そして全国段階、この仕組みについて簡単に書いておるものでございます。

 ここで御理解をいただきたいのは、系統信用事業につきましては、単位農協、都道府県、全国というこの三段階の信用事業を実施する主体がそれぞれに独立した法人格を持ちながら、事業推進、セーフティーネットを一体的に運営いたしておりまして、全体をJAバンクシステム、こういうふうに称しているわけでございます。

 なお、信連は全国に三十六、JAは全国に七百六十一ございます。

 二ページをごらんいただきたいと思います。

 JAバンクは、個人貯金で一一%のシェアを占めておりまして、我が国金融システムの大変重要な一翼を担っているというふうに考えております。また、貯金残高は毎年確実に増加していることも御確認をいただけるかと存じます。

 三ページをごらんいただきたいと思います。

 JAバンクの役割、機能の変遷について御説明を申し上げます。

 左側の図でございますけれども、当初は、農林中金は系統内の資金の過不足を調整する、こういう役割を担っておりまして、この資金供給機能を通じまして、地域における農業者を含む中小規模の事業者に対して貢献をしてまいったわけでございます。

 これに対しまして、JAバンクシステムが定着をいたしております現在の絵姿が右側になりますけれども、私どもに求められております役割は、かつての資金供給ということから、会員に対します安定した利益の還元、リテール分野におきます機能の分担、そして、JAバンク基本方針に基づく経営指導、こういう方向に変化を遂げておりまして、この三つの柱を通じて、農林中金、信連、JAが一体となって地域の皆様に貢献をいたしておるわけでございます。この左から右への変遷が、八十年の歴史になるということでございます。

 次に、四ページをお開きいただきたいと思います。

 JAバンクは、特に農業分野への貢献を第一の目標といたしておりまして、下から二つ目に黄色い枠がございますけれども、この枠内にございます、地域の農業者でございますとか農業法人等のいわゆる中小規模の事業者に対しまして、さまざまな融資メニューで円滑な資金供給を図っているところでございます。

 皆様方も御承知のとおり、農業生産の規模そのものは落ち込んでおりますけれども、農業者の資金需要もそれほど大きくないわけでございますが、農業金融分野では、約七割を私どもJAバンクで対応いたしております。

 次に、五ページをお開きいただきたいと思います。

 JAバンクシステムでは、グループ独自のセーフティーネットも用意をいたしております。下段の、公的制度でございます貯金保険制度に加えまして、上段にある、自前の破綻未然防止システム、この二つのセーフティーネットで地域の皆様の大切な資産をお守りしているわけでございます。

 最後に、六ページをお開きいただきたいと存じます。

 農業者を初めといたします地域の皆様からお預かりをいたしました貯金は、都道府県段階の信連を通じまして農林中金に預けられ、農林中金からは信連、JAに対して利益還元を行い、この還元をされました利益を原資といたしまして、信連、JAは地域の皆様へさまざまな形で貢献をする、こういう流れになっております。資金運用とその利益の還元を通じまして、私ども農林中金も地域の皆様に貢献をさせていただいておるわけでございます。

 以上のように、農林中金、県信連、JAは全体として一つのJAバンクを構成いたしておりまして、おのおのの役割、機能、これを分担しながらも、全体として、組合員、利用者の利便性の向上に努めて、ひいては、地域の発展、活性化に貢献をしているものと考えているところでございます。

 以上で資料の方の説明を終わりたいと思います。

 次に、最近の金融市場についてでございますけれども、日本の株価の動向に象徴されますように、アメリカ発の金融危機は比較的傷が浅いと言われております日本にも影響が拡大をいたしておりまして、ここからさらに大規模な投げ売り相場が、二段、三段、こういうふうに展開をするということになりますれば、まさに未曾有の状況ということでございます。実体経済も混乱をするだろうと思いますけれども、日本全体が金融機能の維持に困難を来す、こういう可能性もなしとはしないのではないかと考える次第でございます。

 私はかねがね、こうした困難な事態に備えまして、G7で合意されました内容に沿った全面的な政策対応が必要だと考えておったわけでございますけれども、現在、総理のリーダーシップのもとに進めておられるさまざまな対策、例えば、日銀によります外貨や円貨の流動性供与でございますとか、株式の空売り規制強化等の対策、これらは、まさにG7の合意に即してスピード感を持ってお取り組みをいただいているものと受けとめているところでございます。

 また、昨日決定されました追加経済対策につきましても、市場の安定化対策が盛り込まれているなど、同じ流れの中で的確に御対応していただいているものと考えております。

 この委員会で審議をされます金融機能強化法につきましても、この趣旨にありますように、G7行動計画を具体化するための措置の一環、こういう位置づけをされました上で、金融機関の資本増強に関する特別の措置を講ずることによって、金融機能の健全かつ効率的な運営の確保でございますとか、あるいは地域における経済の活性化が図られる、こういうことになっているわけでございます。

 これによりまして、信用秩序の維持と国民経済の健全な発展の実現を目指して、借り手である中小規模の事業者への金融の円滑化、これのみならず、貸し手としての金融機関のセーフティーネット機能をも考えた、時宜を得た、重要な、意義のある法案だと認識をしているところでございます。また、この機能強化法のアナウンスメント効果が、実体経済さらには金融市場に寄与することも期待をいたしているところでございます。

 その中で、私ども農漁協系統金融機関につきましても、他の協同組織金融機関同様の措置をいただいているところでございまして、日本の金融機関全体のセーフティーネットの枠組み整備の中に位置づけていただいておりますことは、まことに適切なことだと考えているところでございます。

 このことに関しまして私どもが強く懸念をいたしますことは、民主党のホームページにございますような、ひとり農漁協系統金融機関のみが他業態とは異なる取り扱いを受ける、こういう修正提案でございます。

 先ほども申し上げましたとおり、私どもは自助努力としての独自のセーフティーネットの仕組みを備えておりますし、また、農林中金単体といたしましても経営に心配はないと考えておりますので、現時点で公的資金注入の要請を行うことは想定をいたしておりませんが、例えば、本法の一般的な取り扱いと異なる取り扱いということが措置をされますと、JAバンクの顧客でございますとかあるいは市場からの信認に影響が生ずるという懸念を払拭できません。この場合には、JAバンク、JFマリンバンク、この窓口に不測の事態が生ずるおそれでございますとか、あるいはこれによって、JAバンク、JFマリンバンクが地域で果たしております金融機能に大きな支障が生じるおそれがございます。

 ぜひ、この件につきましては、大局的な観点からの御審議をお願い申し上げたいと思います。

 最後になりますが、私自身、地域金融とともに国際金融市場と向き合っております中で、市場の動きは大変に速く、また、疑心暗鬼が非常に大きな振幅となって市場変動に即座に結びつくという現実を実感いたしております。日本の金融機関に対する信頼を下支えする今回の法案がスピード感を持って成立をいたしますよう、先生方に格段の御配慮をお願い申し上げます。

 以上、御清聴いただきましてまことにありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。関芳弘君。

関委員 私は、自由民主党の関芳弘でございます。

 本日は、参考人の皆様、本当にありがとうございます。現場の声をしっかりと聞かせていただきたいと思います。

 今、アメリカのサブプライム問題に端を発します世界同時不況が刻一刻と全世界をむしばんでいこう、このような状況になってきているわけでございますが、それを何とか食いとめないといけない、本当にオール・ジャパン一体となってそれを何とか食いとめていこう、このような状況だと思います。

 一番初めに、村本先生の方にちょっとお伺いをしたいと思うんですが、このような内容の中、いわゆる中小企業を救おうという名目のもと、今回のような法案をつくってきたわけでございます。このような中、中小企業を本当に助けていこう、この法律が本当に機能するために何をしていかないといけないのか。これは、法律だけでなくて、運用ベースは本当に難しい。私も金融機関で十七年ほど実体験がございますけれども、本当にこれが機能するのかというところが大きな問題だと思うんです。

 そのような中にありまして、企業並びに金融機関が本当に一体となった努力をしていかないといけないと思うんですが、企業側の方の立場からすれば、公的な資金というのを金融機関に資本注入するのではなくて、国として直接我々にくださいね、その方が直接的に我々やりやすいんだと思うんですよ。けれども、そんな方法というのは実際にはあり得ないと思うんです。やはり金融機関を通さざるを得ないと思うんです。

 このような中にあって、企業、金融機関一体となった動きをするための先生からのポイントといいますか、この点に注意してほしいなという点があれば、まず村本先生に一言御意見をいただきたいと思います。

村本参考人 関先生、大変貴重な御意見をありがとうございました。

 こういうシステムをつくった場合に一番重要なのは、まさにおっしゃるように、運用の過程ではないかと思っております。

 おっしゃられましたように、これは学者の中でも、個別の中小企業支援をするのであれば、個別の企業に資金を入れた方がよっぽどいいんじゃないかという御意見も実はございます。ただ、これをやりますと、外からのチェックといいましょうか、経営相談あるいはコンサルティング、こういうようなことが余り働かないということがございます。

 金融機関の大きな役割というのは、個別企業に対する経営指導あるいは経営相談に応ずる、あるいはコンサルティングに応ずる、さまざまな、ハンズオンといっていいんでしょうか、そういうことができることでございますので、そういうことを発揮していただく、それができるようなシステムとして動くことが一番大事なこと、したがいまして、金融機関がそういうものをまさに自分の使命だと感じていただく、ここにポイントがあるんじゃないかと考えております。

 以上でございます。

関委員 私も、本当に村本先生がおっしゃるとおりだと思うんです。一たん金融機関を通すということというのは、その金融機関がその一社一社の状況をお伺いして資金を貸し出しをする際に、今までのいろいろなほかの企業さんとのつながりがあるわけですから、そこからいろいろな情報を金融機関というのは持っているはずですよね。そのときに、先生が今おっしゃられたような、コンサルをされる、本当に企業を救っていこう、お金を貸して利益を得ようということが、いわゆる、株式会社であれば利益の極大化というのが目的でありますけれども、そうではなくて、今回のようなこのような世界同時不況が及んでこようというようなときにあっては、金融機関が持っているノウハウ、知識というのを本当にしっかりと企業にお与えし、お渡しをし、企業に何とかこのような不況を持ちこたえてもらう、そのことを一生懸命されること、それを私も金融機関に期待するところでございます。

 本当に、村本先生の貴重な御意見をありがとうございます。

 では、続きまして、第二地銀の横内会長に御意見を賜りたいと思います。

 今、村本先生がおっしゃられたような感じでコンサルという面をしっかりと行っていただきたい。しかしながら、このような不況の中、私も金融機関の経験がありますけれども、金融機関側とすれば、本当に大混乱するというのがもう目に見えて予想されると思います。

 例えば通常であれば、一つの金融機関の支店のところに、お金を貸してくださいと一日に十社の企業が相談に来る。というふうな状況が通常の経済状況であるとすれば、このような不況の中にありますと、百社、二百社が一挙に押し寄せてくる、お金を貸してくださいと相談に来るというふうな状況も想定されます。このような状況を受け切れる、いわゆる本当の金融機関としての運用面ですね、受け切れるような体制というのをとっておかないといけない。

 これは本当に私は重要なポイントだと思います。そのような中にあって通常よりも十二分なコンサルをやらないといけない。一方、そこまでしてもどんどん倒れていく企業が出てくるであろうというふうな状況まで想定されます。

 一方、そのような中、金融機関の体力、自己資本はどんどん低下していく。このような中にありましては、本当に十分なコンサルができ、十分な貸し出しができ、自分たちの自己資本の増強だけに今回の公的資金が使われていって、日本の企業の中で九九・七%をも占めると言われておりますその中小企業を救うために、金融機関自身の存続のためだけにその資本注入が使われるのではなくて、本当に中小企業を救うためにそのお金が融資という形で使われていくのかどうなのか。これって本当に大きなポイントだと思うし、今回の法案が、いわゆる法律の紙ベースで落とされた文章だけではなくて、運用面で、実経済で本当に実効性があるのかどうなのか。これって本当に、今回の世界経済、日本の経済を救うための最大のポイントだと思います。

 まず一つ目、会長にお伺いしたいのは、先般、山一証券や北海道拓殖銀行が残念ながらダウンしてしまった、前の国内におけるその金融危機の状況と比べて、今回の世界同時不況がどれぐらいの規模になるだろうか。前の状況でさえも、うわっ、もうこれはダウンしそうだ、もう我々の企業はだめだと言っているのが何とかぎりぎり持ちこたえたというふうな状況よりももっと大きな状況とお考えなのか、そこら辺の状況はどれぐらいなのかというのをまず一点目めどをお答えしていただきたいということと、先ほど申し上げたような、非常に難しい運用ベース、どのような体制で、例えば極端な話、銀行の一つの支店にたくさんの人、今の倍ぐらいの人を張らないと、人員配置をしないと、本当に中小企業のニーズにこたえられないようなそんな状況になっているんじゃないかと私思うんですが、そういうふうな人員増強だとかをすると、その金融機関自身の、自分たちの体力自身をどんどん食ってしまうわけです。それが、今回の資本注入のお金を全部自分たちの体力増強のために使ってしまう、中小企業にお金が流れない、このような状況さえ生まれてくるんじゃないかと思う中にあって、どのようなうまい経営方針をとられていこうとしているのか。

 この二点、会長、聞かせてください。

横内参考人 お答え申し上げます。

 まず第一点、過去の、経験したあのバブルのときの、例えば山一証券や北海道拓殖銀行が破綻したときの状況とどう違うかという点でございますけれども、事柄の内容は、日本で経験したバブルか、この発端がアメリカの住宅金融問題で発端があったか、こういういろいろな違いはございますけれども、金融機関にとっての影響というのは、いずれにしましても、金融機関の資産の劣化といいますか、こういう点では基本的には同じであると思います。ただし、前回の場合は、それが貸し出しの分野で大規模に起こりました。今回の場合は、有価証券運用の場合で大規模に起こっております。こういう性格の違いがありますけれども、金融機関にとりましては、いずれにいたしましても、自己資本の問題ということでは共通した根が食います。

 私ども、地方の金融機関ですが、地方の金融機関というのは、地方の経済活動、なかんずく中小企業に、お金、つまり経済の血液を供給する。例えて言えば、人体で言えば、送り出す心臓の役割を持っております。自己資本比率が低下してくるということは、この送り出す力にやはり相当問題が出てきている。

 もう先生方には釈迦に説法でございますけれども、自己資本比率と申しますのは、有価証券ですとか貸し出しだとか、こういう金融機関の運用の資産、リスク資産といいますが、これを分母として、上にこういう自己資本、そういう式で計算されますが、今、上の方の部分の自己資本が、金融機関の有価証券運用の評価損が出てまいりますと、これを自己資本から一定の計算式で引いていくことになりますので、どんどん分子が小さくなる。

 先ほど私の冒頭陳述でも申しましたが、今、では自己資本をふやそうという努力をしようとしても、こんな市場の混乱の中で、この努力がなかなか実現できません。そういうふうなことをこのまま放置しておきますと、どうしても、金融機関としては、分母の方を今度は小さくしないことには自己資本比率の向上が図れない。ここに問題の本質があると思います。

 こういう体制で過去と違う点というのは、評価の問題か、あるいは、貸し出しに起こった実際のそういう資産の毀損かという違いもありますが、金融機関経営にとりましては、同じ大規模な影響だと言うことができると思います。

 それでは、一般の市場で調達しにくいような万一の場合に、国のそういう資金を分子の方へ投入する仕組みをつくっていただく。これに対しましては、過去に経験がありますけれども、私ども金融機関が万一そういう事態に対応いたしまして、まさに先生が御指摘いただきましたように、それが本当に実効性のあるようなものになっていくのか。これはもう金融機関の最大の務めである。これなくして国民の皆様方の理解を得られない。

 先ほど、先生が例えばの例でお話しになりました、金融機関はお客様がそういうふうに仮に殺到したときに対応能力があるかどうか、こういう点でございますが、私ども第二地銀は、もともとが中小企業金融をベースに仕事をしてきております。中小企業金融をベースに仕事をするというのは、最近で申しますと、地域密着金融、こういう仕事のやり方をしておりまして、お客様と日常から密接なコンタクトをとっていく、こういうビジネスモデルになっております。

 したがって、そういうお客様の要望が出てくるという場合でも、日常のコンタクトの中であらかじめそういうようなことは予想がつくし、わかる。そういう形で、ある日突然に一気に出てくるということは決してなくて、順次、お客様との話し合いで処理できる、こういう日常の体制はしっかりつくっておりますので、この先生の御懸念は、現実問題としては、私どもはそれを受けとめ、しっかりやっていける体制ができております、こういうふうにお答えさせていただきたいと思います。

関委員 横内会長、今のお話、本当に私は期待したいと思います。

 いわゆる市場からの資金調達が非常に難しくなってきている、それぐらい今金融のマーケットの方も厳しい中にあって、それでもなお、一番初めに横内会長がお話をしていただいたように、いわゆるリスクテークをして中小企業を救っていくために今回の資金を使っていこう、物すごい大きな御決意だと思うんです。金融機関自身が非常に苦しい中にあっても、そのみずからの金融機関ではなくて、今回の資本注入、その資金については、いわゆる中小企業の方にお金をしっかりと流していこう、私はこの御決意を本当に重く受けとめさせていただいて、私ども議員の方で、議会の方でできることがあれば、さらにいろいろまた考えていくこともやぶさかでない、そのように一言申し上げておきたいと思います。

 では最後の質問をさせていただきますが、最後の質問は、佐伯中小企業中央会会長にお伺いしたいと思います。

 今、横内第二地銀、金融機関の会長の方にお話をお伺いしたわけでございますが、一方、では、資金を借りられる側の中小企業、もうことしの九月の段階、秋の初めの段階から、苦しい状況、この世界同時不況、いわゆる原材料が上がる中、アメリカ発のサブプライム問題に発する金融恐慌が起こるんではないか、こんなような状況になって、苦しい状況はもう既にスタートしておりますというふうなお話をお伺いしまして、私もまさにそのとおりだと思います。

 私は神戸の須磨区と垂水区が選挙区でございますけれども、地域の企業をいろいろ回らせていただいておりますと、本当に今大変なんだという状況を、生の声を物すごくたくさん聞いております。金融機関の方にお金を借りに行きたい、本当に我々も努力しているんだけれども、本当にもう朝から晩まで油にまみれ、汗だくになってしっかり働いているんだ、そして、それでも今この不況が押し寄せてくる中、何とかこの状況を乗り切って、自分たちの会社で雇っている従業員の方々の、またその方々の家族の生活を守っていくことにも我々は責任を負うんだ、経営者の方々の本当に悲痛な声を聞かせていただいている状況でございます。

 このような中にあって、皆様の協会の中で、いわゆる世界同時不況が発生するだろうということがもう既に新聞とかマスコミ報道の中でも言われていた中にあって、恐らく、同業者の方々へのいろいろないわゆる指導も既にされていらっしゃるんだと思います。どういうふうな指導をされて、みんなで生き抜いていこう、頑張っていこうというふうな指導をされているのか、ひとつお伺いをしたいのが一点目でございます。

 そしてもう一点、二点目でございますけれども、先ほど佐伯会長からも、金融機関に対しては、貸し出しのときにもっとスピード化をしてほしいな、なかなか企業の経営者の方も、企業経営の方に本当にいわゆる重点が行きますので、企業の運営の金繰りの方でこれまずくなったぞというのに気づくのも、前段階、前々段階から準備していこう、意外となかなか体制がとりにくいのも事実だと私思います。私も銀行で貸し出しを担当していたこともございますので、あっ、ここまで来てしまいましたか、初めて話が来た、急ごうというふうな場合が多々あったのも経験しております。

 そこからいたしますと、そういうふうな状況になって、それでもなおかつ、やはり企業の方々に生きていってほしいので、金融機関側も急いで対応をとっていかないといけないわけでございますけれども、そういう点にあって、金融機関側の方に対する要望というのを、二点目でございますけれども、そのまま、ありのまま、実感として教えていただけたらな、参考にさせていただきたいと思います。

佐伯参考人 今御質問をお受けしたように、中小企業にどんな指導をしているのかと。我々中央会というのはそういう指導機関でもあるわけですけれども、ただ、中小企業も、中堅クラスと本当の零細では大分差があると思います。申請書類一つも書けないというような、書けないというのは、書く暇もないとか、あるいはなかなかそういうレベルがないという、でも一生懸命技術は持っているという企業もいっぱいあるわけです。

 そういうことに関しては、指導員が各中央会におりますので、いろいろなそういう意味の指導、指導というのは言葉が悪いので、支援だというふうなことを私は言っているんですけれども。それから、各県の中央会の指導員が各組合を回って実地にいろいろなことを聞いて、いろいろなお手伝いをする。あるいはもう一つは、困った企業が直接中央会にいろいろな電話をして、担当者からこんな施策があるのかとかないのかとか、そういういろいろな要望を受けたりし、それからまた、我々としては、宮城県なら宮城県では、移動中央会という、海岸まで含めて全部を回ってみんなの意見を聞き、それを県とか何かに伝える。いろいろなあの手この手をやって、まだまだ十分とは言えませんけれども、それなりに一生懸命努力をしているというところでございます。

 それから、スピード化の要望ということで、これは我々前から思っているところなんですけれども、ぜひ早目にやってもらわないと、資金繰りというのは、ちょっと待ってくださいというわけにいかないというのが、先生はおわかりだろうと思います。ですから、そういう意味で、審査をもっと簡略化する、簡略というのは楽にするという意味ではなくても、何かシステム的にもうちょっと早くできるような、審査なり評価なり、あるいは、ふだんからその企業の動向を見ておいて、言ってきたらさっとすぐ出すというくらいの、融通のきくようなことをぜひ中小企業にやっていただきたい。

 特に、時間の関係で簡単に言いますけれども、例えば、現時点で半年先までの売り上げと利益の計画を出しなさいなと言われたって、正確なことを出せますかね。ほとんど出せないと思いますよ。ですから、そういうことをもとにして審査するというようなことだったら、審査できないですよ。そこら辺をちょっと改めていただければなと。苦言じゃないんですけれども、要望ということでちょっと意見を申し上げました。

 以上です。

関委員 もう時間となりましたのでこれで終わらせていただきますが、今回、やはり世界同時不況が目の前に来ているなという実感がありますもと、金融機関は金融機関、中小企業は中小企業ということではなくて、みんなで救っていって、倒産の状況が広がっていかないようにみんなで食いとめていきたいと思いますので、また、本当にオール・ジャパンの底力を発揮する時期だと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

 これで質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

田中委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 おはようございます。民主党の古本伸一郎と申します。

 きょうは、参考人の皆様におかれましては、大変お忙しい中、御対応いただきましてありがとうございます。

 私からは、きょういらっしゃっておられる皆様の中でできるだけ満遍なく御意見はいただきたいと思っておりますが、少し無作法な部分がありましたら、お許しをいただきたいと思っております。

 まず、農林中金の上野理事長からは、ただいま、現在の経営は安定している、現時点での予防的な注入は考えていない、それを受けることは考えていない、予防的注入を受けることは考えていないとおっしゃった。ただし、不測の事態に備え、この枠組みの中にぜひ入れていただきたい、そういう趣旨のように聞こえたんですが、逆にメガバンクなんかでは、昨今、まさに増資をし、みずから資金調達をするという動きを見せている中で、この枠組みに入らないことこそ、天下の農林中金だということであるならば、逆に入らない方がいいんじゃないか、こういう見方もあるんですが、この際、御辞退するというお考えはございますか。

上野参考人 おっしゃられましたとおり、私ども、現在、予防的な注入の必要性は全然感じておりません。

 ただ、農林中金だけが仮にこのセーフティーネット、私は、今回の法案は金融機関に対するセーフティーネットを張るという役割があるというふうに理解をいたしているから申し上げるわけでございますけれども、このセーフティーネットが農林中金だけかぶらないということになりますと、これはもう金融の世界で大変な農林中金に対する悪いレピュテーションといいますか、これを来すということを私は懸念をするわけでございます。

 そこまで決断をしろと言われて、それは、言葉としてそれに対する対応の意思を表示するということを考えないわけではないんですけれども、ここはやはり、セーフティーネットの対象にならないということのデメリットというのは御理解をいただきたいと思います。

古本委員 事前に、委員部でしょうか調査室でしょうか、いただいているいろいろな諸先生方の略歴を拝読させていただく中で、「理事長メッセージ」ということで、アニュアルレポートの中で恐らく書かれているんだと思いますが、農林中金が農林漁業系統協同組織の中で果たす基本的役割ということで、第一に、「融資や有価証券投資などの効率的かつ安定的な運用を行い、これらにより得られた収益を出資者および利用者である系統団体に還元しています。」こういうふうにここで言っていただいているんです。

 最初に「融資」と書いておられるんですが、今、全国の農家、漁家から集めておられる資金が、途中の系統県連、信連も含めて六十兆円の運用資金を持っておられると思います。この六十兆円のうち、融資をしている割合は何割ぐらいなんでしょうか。

上野参考人 約十兆程度かと思います。

古本委員 逆に、預証率といいましょうか、有価証券への投資あるいは国債運用、いわゆる投資に回しておられる割合はどのくらいありますでしょうか。

上野参考人 約三十六兆ぐらいだと思います。

古本委員 ありがとうございます。

 きょうは、第二地銀協会長ということで、北洋銀行の横内さんにもお越しをいただいております。ちなみに、会長行ということでお許しをいただいて、北洋銀行の場合の預貸率、預証率でいけば、大体何割ぐらいになるんでしょうか。

横内参考人 手前ども北洋銀行の場合は、預証率は三割くらい、業界全体で二割六分くらい、このようなことになっております。業界全体で、第二地銀全体で二六%ぐらいになります。

古本委員 あわせて、預貸率も、貸し出している割合もお尋ねさせていただきます。

横内参考人 失礼しました。

 貸し出しが、業界全体で預貸率が十九年度の統計では七六%、預証率が二三%。北洋銀行は、少し貸し出しの比率が低くて、約三割強が預貸率ということになっております。

古本委員 つまり、このたび、予防的に国の保証をつけ資金を注入しても、先ほど来、佐伯全国中小企業団体中央会長がまさに御懸念をいただいているように、毛細血管の細部にまでそのお金が回らないと意味がないわけでありまして、この預貸率がまさに問われるんです。

 そうしますと、実は、預貸金利ざやという言葉があると思うんです。つまり、銀行として百円のお金を稼ぐためには、幾らお金を貸せば百円を稼げるか、こういうことでちょっとお尋ねしたいと思うんです。これは、事前に技術的な数字ですのでお願いをしていると思いますので、北洋銀行の個別の例でいけば、この預貸金利ざや、大体何%ぐらいになるんでしょうか。

横内参考人 現在、北洋銀行のケースで申しますと、二十年の三月期で預貸金利ざやは〇・六五%となっております。

古本委員 つまり、会社として百円の収益を上げるためには、大体二万円ぐらい貸し出せば百円の収益が上がるという効率でいらっしゃると思います。

 さて、農林中央金庫さんの場合には、この預貸金利ざやは何%ぐらいなんでしょうか。

上野参考人 いわゆる預貸利ざやは〇・〇一%程度でございます。

古本委員 つまり、百円を農林中金さんとして稼ぐには、百万円を貸さないと百円の利益が出ないんです。

 これは、ディスクローズのこの資料で理事長御みずから、「融資や有価証券投資などの効率的かつ安定的な運用を行い、」とおっしゃっておられますけれども、実は、ビジネスのモデルとして、この融資業務に関しては、圧倒的に第二地銀協の皆様が、本当に切々と苦労されながら、リレバンとして地域の金融の役割を果たしておられる。そして、まさに佐伯会長の業界でいくところの皆様に何とかお金を貸そうという、そしてその中から収益が上がるように御努力をなさっている、こういうふうに感じるんですが、佐伯会長、今までのところで何か感想があれば。

佐伯参考人 ちょっと私には専門外の預貸率とかなんとかと出ていますけれども、我々としましては、銀行も健全であってほしいですし、今、その日暮らしといいますか、中小企業はそういう例が多いので、資金がとまっちゃうとだめなので、どうしても資金の円滑な融資を望んでいるというのが現状でございます。

 以上です。

古本委員 その意味で、農林中金さんにおかれては、今後どういう経営努力をなされば貸し出しにおける収益が上がるようになるんだろうかというのが、恐らく、予防的とはいえ、不測の事態に備えてこのたびのスキームに入りたいとおっしゃる大前提になると思うんですよ。

 そこまで申し上げる背景に、実はこれも配付で事前にいただいた資料で拝読いたしましたが、今、理事長の右腕でいらっしゃるんでしょうか、河野さん、今は副理事長ですね、この方が、以前、ある雑誌のインタビューでこう答えておられます。うちにとって有価証券投資は主食である、メガバンクはせいぜいおかずにすぎない。

 なかなかおっしゃっておられまして、つまり農林中金は、今回の法案の主眼である中小零細に血流であるお金を回していくんだという部分においては、からっきしもうからないんです。百円のATM手数料を稼ぐために、百万円の融資をしなければ元手が取れない。片や、北洋さんを初め地銀の皆さんは、大体〇・六%というのはアベレージですよ、事前に金融庁から聞いております。つまり、百円の収益を上げるために、大体二万円貸せばそれで収益が上がるという中で頑張っておられるんですね。なぜならば、主食は中小にお金を貸す融資であり、逆に、有価証券への投資はおかずである。こういう感じで合っているんでしょうか、理事長。

上野参考人 先ほど、最初に御説明を申し上げました資料の中にございましたように、私どもの大事な役目は、JAバンクシステムを運営していく、これの円滑な運営という点が非常に大きな役割だと思っておりまして、先ほど申し上げましたように、JAが末端での農家その他利用者への資金の提供ということをやっておりますし、それから、都道府県段階のいわゆる信連でございますね、こういうところが地域の中小企業の皆様方への融資というような業務もやっておるわけでございます。

 このトータルとしてのJAバンクの運営が円滑にいくように、私どもとしては、リテールについては、必要な商品供給であるとか、あるいはそれに必要なノウハウなり情報の提供をしていく、あるいはJAバンクの参加者の経営状況をウオッチしていく、こういう大事な役割があるわけでございまして、いわば役割分担があるということを御理解をいただきたいと思います。

古本委員 理事長、ところが、当委員会で先日松野理事が資料を要求してもあいにく出していただけないことが、今理事長がおっしゃっているところなんですよ。

 実は、農家、漁家の皆様が、本当に地方で、今ゆうちょの人がバイクで来てくれなくなりましたので、その分を補完するかのごとくJAバンクの皆様が集めに来てくださいますよ。だから、JAバンクに預けるしかないというか、本当に頼みの綱で、各地方でJAバンクを利用されている農家の人が大勢いらっしゃいます。

 その皆様から集めたお金八十兆円、このうち、農家、その中でも米農家にはでは幾ら回ったんですか、あるいは花卉は幾ら回ったんですか、果樹は幾らですかと聞いても、数字がありませんと言われているんです。つまり、現実問題、ここに回ったかどうかがわからない、こういう感じなんですよ、理事長。

 ですから、前提としてそういう状況にありますので、引き続きそのことにつきましては御努力いただきたいのと、ちょっと理事長、これはまさに、二〇〇〇年、たしか平成十二年に御就任ということだと思うんですが、そこから一気に海外での投資というウエートがふえております。それで、「債券、株式など、個別商品ごとに収支を厳密に管理するのではなく、全体の収支バランスを重視」したいと、同じこの週刊ダイヤモンドのインタビューで当時の専務理事が答えておられるのですが、アセットアロケーション、つまり、どこに資源分配、投資をしていくかというのはトップダウンで決めると言われておるんです。

 これはずばり、二〇〇〇年の御就任から、九八年の金融危機のときにはほとんどアセットはなかったと言われておられる御庫の海外分野に、今や全体の四割を注入するに至るウエートにポジションを持ってきたというのは、理事長の経営判断ですか。

上野参考人 こういう農林中金の政策的な発展の方向といいましょうか、これが始まりましたのは、私の就任よりもうちょっと早いかと思います。

 しかし、そういう方向にかじを切ってまいった背景は、いわゆる日本の低金利時代という背景があるわけでございまして、農林中金は歴史的にも、先ほど説明を申し上げましたように、系統内での資金供給という役割を持っておりましたものですから、次第に上がってくる資金が多くなって運用をするということに立ち至りましたときに、なかなか思うようにその貸出先や何かを、見つけ出してといいましょうか、需要を把握して貸し出しをするということが難しい状況にあったわけでございます。

 それから、先ほど言いましたような、JAあるいは県段階、全国段階という役割分担もございまして、それほど全国に幅広い人材を配置して営業をやっているわけでもなかったわけでございまして、運用の仕方に大変な混乱があった。

 国内的な低金利、こういう状況の中で、いかにして系統への利益の収益還元を図っていくかということを考えた上での我々がとった策であったということでございまして、いわば、農林中金全体として考えた上でそういう判断をしてまいった、こういうことでございます。

古本委員 有価証券の種類別の保有残高が、今、国際部門で、十九年度、直近のアニュアルレポートベースですから、ここから拝読する限りは約二十五兆円弱があろうかと思うんですが、実はこれ、理事長が就任された時点では十一兆円だったんですね。ですから、まさに二・五倍増にふえております。

 今、経営としては、冒頭の意見陳述をいただいた中で、現時点では考えていない、経営は安定しているということでありましたが、これはずばり、この約二十五兆円になんなんとする海外への投資については、今はどうですか、調子はいいですか、大体。ずばり簿価でも聞きたいところですけれども、決算前でしょうから、九月決算はまだ発表前ですから細かいことは聞きませんですけれども、打率でいけばこれは大体何割ぐらい来ているんですか。打率でいいですよ、打率何割ぐらいですか。

上野参考人 九月三十日時点の上半期の仮決算、これの作業中でございまして、一定の監査法人等の監査を受けましたら速やかに公表をいたしたいと思っておりますけれども、現状心配な点はないというふうに考えております。

古本委員 現状心配はないというお言葉の中に、先ほどの陳述の中にありました、投げ売りをすればさらに状況が混乱するので、つまり、これは証券ですから、売らなければいい、こういうことだと思うんですけれども、これが将来、仮に、例えば百のものが、例えばですが、七十とか六十、毀損していく、含み損をどこかで損切りしなきゃいけないということになったときの経営責任はどこにありますか。理事長にありますか。

上野参考人 なかなかお答えしにくいんですが、今の先生の前提が、さらに二段、三段、金融業界の崩落とでもいいましょうか、そういう事態が起こるということを前提といたしますと、私ども、有価証券投資をする際には、その投資先あるいは資本との関係、こういうことを十分考慮に入れて従来やってまいっておりますので、資産内容はそんなに質の悪いものをたくさん抱えているわけではないというふうに思っておりますけれども、事態が先ほどおっしゃったような前提になりますと、これはどういうことになるかは、確かにわからない点があろうと思います。

 そのときの責任は、結果責任はそれはもちろん問われる可能性があるだろうと思いますが、そういう崩落ということを前提にする限り、個別の経営責任をはるかに超えるものではなかろうかと私は思います。

古本委員 もう時間が参ったようですのでこれでちょっと最後にいたしたいと思いますが、これは北洋銀行頭取の感覚も含めていろいろ皆さん聞いていただいたと思うんですが、実は、メガバンクと呼ばれるみずほ、東三、三井住友、りそな、いろいろな再編とかありましたから一概に言えませんが、現在の経営のトップというのは、みずほが四年、三菱UFJが二年と九カ月、三井住友が三年、りそなが一年なんです。地銀の皆様の数字もいただきましたら、ざっと見て、北洋銀行のまさに横内頭取は二年と五カ月です。大体二年から五年なんです、先生方。

 これは、農林中金だけ見事に十年間ずっと在職されているんですが、しかも、農水省事務次官がこの戦後の六十年間、見事に十年刻みでずっと十年ごとで次にたすきを送っているんですけれども、これは、何か十年いなきゃいけない理由というのがあるんでしょうか。それとも、余人をもってかえがたい何かが、農水事務次官というポストとの何か連動性みたいなのがあるんでしょうか。そこの何か多分いろいろエクスキューズもあるでしょうから、弁明も含めて。他の金融機関と同じ仲間に入ろうというスキームなんです。そのスキームに入るには突出しているんです、ここだけが。

 ちなみに、もう一つだけあわせて。給料は御自身でいろいろおっしゃっていただいたようでありますけれども、実は、十年前に前理事長が退任なさったときの退職金は、その際には五名の理事が退任されていますので、実は理事長が幾らいただいたかというのはわからないんですが、退職給与に引き当てられました二億三千八百万円を単純に五人で割りますと、一人約五千万円になるんです。恐らく平理事と理事長が一緒だとは思えないんですけれども、今在任されていますのでみずからの評価はなかなかわからないでしょうけれども、大体おれは一億円ぐらいの仕事をしたと言うなら、それも含めて、大体どんな感じなのかなというのも含めて聞かせていただけるとありがたいです。

田中委員長 古本君の申し合わせの時間が経過しておりますので、簡潔に御答弁願います。

上野参考人 農林中金の理事長、六十年とおっしゃいましたが、この間には昔の特殊法人の時代もございますので、その辺はちょっと私も何とも言えませんが、それ以後、民間法人になりましてからは、民間法人としてのガバナンスの中で理事長というのは選任をされております。したがいまして、農林中金のいろいろな事情を判断して組織が選んだものだというふうに理解をいたします。

 それから退職金は、これはちょっと何とも、そういうことが決まっておるわけでも何でもございませんし、ちょっと申し上げるのを差し控えさせていただきたいと思います。

古本委員 ありがとうございました。終わります。

田中委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 各参考人におかれては、本日は午前中からお越しをいただきまして、大変にありがとうございます。

 まず、佐伯参考人それから横内参考人お二方に、貸し渋り、貸しはがしの件についてお伺いしたいと思います。

 昨年の秋ごろから、建設、不動産業を中心として、中小企業への貸し渋り、貸しはがしが目立ってきた、こういう指摘がございます。それで、その実態がどうなっているのかということ。さらにあわせて、今の株価の下落ですとか景気の悪化によって、今後さらに中小企業への信用供与というのが少なくなってくるのではないかという懸念がございますので、そういった見通しにつきまして、借り手の代表として佐伯参考人に、貸し手の代表として横内参考人に御答弁をお願いいたしたいと思います。

佐伯参考人 今、貸し渋りの件という、これは個々の金融によって違うので、多少一般論にはなるかと思いますけれども、中小企業全体としては、やはり貸し渋りはあるというふうに私は思っております。

 それは、先ほどもちょっと申し上げましたようないろいろな、緊急経済対策のおくれとか、そういういろいろなスピードのおくれというようなこともありますでしょうし、金融機関自体も、株の評価損、いろいろなことがあると思いますけれども、特に、零細、二十人以下の企業等にとっては、かなりの貸し渋りが発生しているということは事実だというふうに私は認識しております。

 以上です。

横内参考人 まず、貸し渋り、貸しはがしの問題につきまして、地域の中小企業を取引先としている私どもの基本的な考え方ですけれども、預金をお客様からお預かりした部分をまず地域で運用を図る。

 地域によって経済活動のレベルというのはさまざまな違いがございますが、総じて見ると、第二地方銀行協会加盟行の場合には、先ほど言いましたように、それをすべて貸し出しで運用するという状況にはありません。どちらかと申しますと、経済活動のレベルから企業の資金需要が少ない。それから、景気の循環的なそういう波動がもちろんありますけれども、そういう資金需要につきまして、最近の状況を見ますれば、先ほど冒頭でも申し上げましたとおりに、企業の資金需要は全体として弱くなってきている、設備資金を控えたり、投資を控えたり、いろいろな形で弱くなってきております。

 では、金融機関がそれに対して意図的に何か貸さないような努力をしているかといいますと、これはそのようなことは全くございません。その一つ、地方における金融機関の競争というのは非常に激しい、厳しいものがございます。ここでこう見てまいりますと、中小企業のお取引先に貸し出す金利でございますね、貸出約定平均金利といいますけれども、これは、ここのところ月を追ってじりじりと下がってきている。ということは、全体として見て、お客様から見ると借りにくい状況が強く出ているということにはならない、そういう状況にあります。

 先ほど来、地方の私どもの金融機関は、地域密着金融を旨としておりますし、お客様とのリレーションを第一に考えて行っております。決して意図的な貸し渋りとかそういう問題は、私ども会員行においてそういうことはないというふうに申し上げたい、そのように認識いたしております。

石井(啓)委員 意図的な貸し渋りはしていないというお話でございますけれども、一方で、佐伯参考人の方からは、やはり零細企業は厳しいんだ、資金繰りは厳しいんだ、こういうお話でございました。

 そこで、今回の金融機能強化特措法の改正案におきましては、地域の中小企業への円滑な信用供与ということで公的資金の注入を可能とする、そういう仕組みをつくったわけでございますけれども、続いて、四人の参考人の方にお伺いをしたいと思うんです。

 資本注入の申請をしやすくするということと経営責任を明確化するということは、ある意味で矛盾したことなんですね。経営責任を余り厳しく問うと申請をしなくなってくる。逆に、申請しやすいように経営責任を緩めると、緩め過ぎると今度はモラルハザードが起きかねない。このバランスが非常に重要だ、こういうふうに思っております。

 今回の改正案では、現在の法律で申請が二件にとどまったということを踏まえて、申請時に一律に経営責任を問うということはやめよう、こういうふうにしています。ただ、それは、経営責任に全く目をつぶるということではなくて、実態に応じて運用で経営責任を問うというやり方にしているわけです。

 特に、今回の大幅な株下落といったような金融危機の影響ではなくて、もともと過去の経営姿勢によって財務状況が悪くなったような金融機関については、申請時に経営責任を問う、明らかにするという方向で金融庁の方も考えていらっしゃいます。これは、今までのこの委員会の質疑でも、そういう方向で考えているということで明らかになっています。

 そこで、今回の法案のバランス、資本注入の申請のしやすさ、経営責任の明確化、このバランスについてどのように評価をされているのか、四人の参考人にお伺いをいたしたいと存じます。

村本参考人 御指摘のように、経営責任とそれから申請のしやすさというのはトレードオフの関係にございます。したがいまして、前回のといいますか、旧法の段階ではなかなか申請が出なかったというふうに聞いております。

 したがいまして、どちらにウエートを置くかというのは、法律がどういう形で使われるか、現在のような、ある意味ではシステミックリスクに対応するようなところに重点を置くのであれば、これは申請のしやすさを重視せざるを得ないだろうなという感じがいたします。

 そこで、バランスをどうとるかということであれば、私は、まず申請時にきちっとやはりモニタリング、審査をする、そして、発言のときに申しましたけれども、その後の、事後のフォローアップをきちっとする、その中で責任をきちっと明確化するような運用をしていくことが一番最善ではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

佐伯参考人 今先生がおっしゃったような経営責任云々という、これは、我々は今、普通の時代じゃなくて本当の有事なんです。例外措置として窓口を広げて金融を安定化させる、そういう趣旨であれば、これはいたし方ないというよりも、これをやって中小企業に円滑に回るようにという趣旨においては私はいいんじゃないかというふうに思っております。

 それで、この法案の中で、中小企業に対する信用供与の円滑化等地域経済の活性化に資する方策とするということを盛り込んでいただくことを聞いておりますので、そういう意味であれば、ある程度今の、アフターフォローは金融庁でやるでしょうから、とりあえず緊急措置としての、緊急事態に対応するということで私は理解をしているということでございます。

 以上です。

横内参考人 経営責任の問題はすぐれて個別銀行の事情、状況に置かれておりますので、一括してこうだとなかなか言い切れない面がございますが、一般的に私ども金融機関は、日常的に監督官庁の監督を受けておりますし、それから、経営の責任を引き受ける者は経営の結果に対する責任ということは常時考えております。

 今回、この法改正により、責任の問題をどうするかという点が議論になっていることは承知しておりますが、この問題が過去の事例で申請が少なかったこととどのように関係があるのかということは、個別の問題なのでなかなかこれは一概に申し上げられない、私は個人的にはそこのところはよく承知しておりません。

 ただ、経営者は常に結果に対して責任を負う立場でございますので、事前でも事後でも、経営責任というものは必要であればとるべきものである、このように考えております。

上野参考人 私は、前回といいますか、日本の金融危機のときに資本注入が行われた、これは概略的に極めて大ざっぱに言えば、やはり個別の貸し出しが不良債権化したことに伴う銀行の資本不足、これを解消するための措置だったというふうに考えるわけでございまして、その場合の資本注入については、その責任のとり方というのがあろうと思いますが、今回のケースは、それもないとは言いませんけれども、大方としては、もうちょっと違う、全般的な経済の状況、こういうことに対応するための措置かというふうに考えますので、その辺についての差異は必要ではないか。何よりも、事態の悪化を食いとめる、あるいは改善をする、これに必要な迅速な手を打つ、このための方策であるということを考えて、そこは御判断をされるべきではなかろうかというふうに考える次第でございます。

石井(啓)委員 では、続いて、村本参考人それから横内参考人、お二人にお伺いしたいと思います。

 この改正案で資本注入して本当に中小企業への貸し出しがふえるのだろうか、こういう疑問を投げかけられております。法律の枠組みとしては、資本注入の申請の際に経営強化計画を出させて、そこで地域の中小企業への信用供与の円滑化に資する方策を出させて、それを半期ごとに報告を求める、その報告の状況によっては必要な監督の措置を行う。フォローアップをきちんとやることによってそれは可能なんだ、こういう説明を金融庁の方はしておりますけれども、この改正案による資本注入で本当に中小企業への貸し出しがふえる、少なくとも維持できるというふうにお考えかどうか、お二人にお伺いしたいと思います。

村本参考人 御指摘のように、経営強化計画を出すというのが前提でございますので、これを金融庁だけではなくて審査会でかなり細かくチェックをいたしますので、恐らく、御懸念のようなことがだんだんなくなってきているんだろうと思います。特に、フォローアップを半期ごとにやるということによりまして、数字をまた審査会のメンバーがウオッチしておりますので、かなり、パブリックプレッシャーといいますか、第三者的な目が入るということで実現されているのではないかなというような印象を持って見ております。

 以上でございます。

横内参考人 今回の資本注入の措置は、結果として、先ほど申しましたように、金融を送り出す、血液を送り出す心臓を強化する、つまり金融機関の能力を高めるというふうにプラスの効果がありますので、これは中小企業金融の円滑化に資するというふうに考えております。

 今、先生が、伸びるか伸びないかという問題は、資金需要、経済の状況によりますので一概に申せませんが、今のままでは資金需要が出ても応じにくい状況がだんだん形成されてきている、こういう非常事態の中で形成されてきている、ここをぜひ御理解賜りたいというふうに思います。

石井(啓)委員 それでは、最後の質問にいたしたいと思いますけれども、昨日、麻生総理の方から新経済対策が発表されましたので、この評価についてお伺いをいたしたいと思うんです。これは、佐伯参考人と横内参考人、お二方にお聞きしたいと思います。

 特に、中小企業への資金繰り支援、これを大幅に拡充しました。第一次の補正予算では、緊急保証六兆円、それからセーフティーネット貸し付け三兆円、合計九兆円だったんですけれども、今回の新たな経済対策で、緊急保証は二十兆円にふやしました、それからセーフティーネット貸し付けは十兆円にふやしました。合計三十兆円の資金繰り支援を行うということにさせていただいております。

 特に、緊急保証については先ほど佐伯参考人の方から、実際は困っているところはなかなか保証協会は保証をつけてくれないんだ、こういうお話がありましたけれども、従来のセーフティーネット保証と比べまして、従来のセーフティーネット保証というのが百八十五業種が対象だったのを、今度は五百四十五業種にふやしました。きょうからスタートします。さらに追加してこの対象業種もふやしていこう、こういう方向でございます。

 それから、従来は、例えば二期連続赤字決算だともう頭からだめだったんですね。だけれども、それを頭から否定するのではなくて、例えば二期連続赤字であってもこれから経営改善が見込まれるということであれば、それは対象にしていこうということで、運用も柔軟にしていくということで、本当に資金の必要なところに行き渡るようにしていこうということをさせていただく予定でございます。

 さらに、税制も中小企業に相当配慮しまして、例えば、欠損金の繰り戻し還付が今停止されていますよね。それを復活させよう、こういうことも考えていますし、あるいは中小企業の軽減税率、法人税の税率は二二%ですけれども、これをさらに下げていこう、こういうことも考えています。具体的なところは年末の税制改正で検討しますけれども、中小企業に対する支援ということを相当させていただいておりますので、これに対する御評価をぜひいただきたいと思います。

佐伯参考人 私も、けさの新聞あるいはきのうのテレビで見て、中小企業に対する思い切った対策、今先生がおっしゃるように、三十兆円という、ちびりちびりじゃなくて思い切った対策をしていただいたということは大いに評価をしたいというふうに思っていますし、先ほども申し上げましたけれども、特に、これから年末あるいは年度末を迎える中小企業の資金繰りに対して、これは大きな助けになるんじゃないかというふうに期待をしているところでございます。

 また、業種を五百四十五業種からさらにふやすというようなことで、ほとんどの中小企業がカバーできるようになることについては大いに評価をしたいなというふうに思っております。

 もう一つ、赤字企業云々という話も結構な話だと思うんですけれども、ちょっと逆に、私からはこういうお願いもしたいなというふうに思っていたんです。実は、敗者復活戦といいますか、そういうのがスポーツでも何でもあるんですけれども、企業においても、敗者復活はあるんですが、間接的な敗者復活、例えば、おやじさんがある企業をやっている、それで悪くなって、でも息子が後を立て直した、しかし同じ親子関係だったら、それはやはり倒産企業だというので新規融資は一切しない、保証はしない。それでは敗者復活はできないと思うんですね。ちゃんとした中小企業を実際は運営しているんです。でも、過去のそういうことがあると一切融資をとめるというのはいかがなものかというふうに私は思うので、この辺は金融庁も含めて、銀行も含めてしっかりした対応をしていただければというふうには思っております。

 いずれにせよ、この新経済対策がスピードを持って早くやっていただければこれにこしたことはないというので、大いに期待しておりますので、先生よろしくお願いいたします。

横内参考人 私ども金融機関の立場から見ましても、今佐伯会長がおっしゃられたと同じ評価をいたしております。

 金融というサイドから見ても、保証の話等を含めまして、これが具体的に実施されていくならば、中小企業金融にとりまして、あるいは中小企業経営にとりまして非常にプラスになる措置だ、いよいよ動き出したなという感想でございます。

石井(啓)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 最近の銀行の貸し出しの姿勢というのは、急に大変厳しくなったという声がたくさん聞かれてまいります。まず佐伯参考人にお伺いしますけれども、銀行の側の貸し出し姿勢というのは、この九月以降どのように変化していると感じておられるか。私が聞きますと、ともかく大変厳しくなりまして、貸しどめというようなことがあちこちで起こっているとか、それから金利をもっと上げてくれとか、本当に大変厳しい要請が銀行の側から来ているということをお聞きしますけれども、佐伯さんがお聞きし、また体験されているところでどのような実態になっているか、まずはこの点からお聞きしたいと思います。

佐伯参考人 今先生がおっしゃったように、中小企業、貸し渋りがあると私は認識しております。

 ただ、それは九月以降急に発生したんじゃないか、先ほどもお話し申し上げましたように、福田総理が経済対策を発表して、それでやめられてちょっと空白があったという中で、ではその保証を出るまで待とうじゃないかというような感じでの貸し渋りもあったんじゃないかなというふうな感じもします。また、銀行自体も、円高あるいは株価で、業績が全世界的におかしくなるというので、かなり安全策をとっている。その矛先はやはり中小企業に一番来ているというような感じはいたします。

 しかしながら、きょう、三十一日から例の緊急経済対策が実行されますので、少し様子が変わるんじゃないかなというふうに期待はしているんですけれども、きょうのきょうですから、ちょっとこれからの様子を見たいというふうに思っております。

 以上です。

佐々木(憲)委員 少しさかのぼりますけれども、信用保証協会の保証の範囲が全額保証から八割というふうになって、そのことをきっかけにして銀行の側が負担がふえるということで貸さなくなったという話もよく聞かれますけれども、この点で、要請としては、中小業者の側からは、一〇〇%、全額保証やってもらいたいという声もあるわけです。この点についてはどのようにお考えでしょうか。

佐伯参考人 確かに、去年の十月から、八割保証で二割は銀行の共有責任制度ということになっております。

 ただ、それのために物すごく貸し渋りができたとは私は思っていないんです。最近の緊急経済対策とか、あるいは零細企業に対する千二百五十万までの保証というのは一〇〇%保証協会が保証するというふうになっておりますので、現時点においては緊急対策として一〇〇%の保証が得られるということなので、責任共有制度があるから貸さないとか云々ではないんじゃないかなというふうに私は思っているところでございます。

佐々木(憲)委員 私どもは、これは保証協会の制度そのものももっと改善した方がいいというふうに考えております。

 さて、それでは次に村本参考人にお伺いいたしますけれども、最近の経済情勢はアメリカ発の金融危機ということで非常に深刻化しております。ただ、株式の乱高下が今大変激しく進んでおりますけれども、株価というものは何によって決まるかというのは、長期的に言いますと、やはり実体経済、これの成長の可能性がどうなのか、そういう個々の企業の将来性といいますか、そういうものによって決まってくるんだというふうに思うんですね。

 この点で、今経済危機が非常に深刻になってきますと、大手企業の場合は、真っ先に非正規雇用といいますか派遣労働者などをどんどん減らしていく、そういうところに対応がいきますよね。それから、下請に対しては、単価をどんどん下げるようにという要請が強まってまいります。中小企業がそういう点では大変な事態になる。

 そういう意味で、実体経済ということを考えますと、株の乱高下によって、大企業の行動が利益の確保を優先するために、国民の所得あるいは下請の経営、こういうところにどんどんしわ寄せがいく形になって、全体としては内需を一層冷え込ませるという方向に作用しているというふうに私は思うんです。

 そこで、問題は、政策的な対応として株価対策というのは多少それは意味があるのかもしれませんけれども、私は、むしろ大事なことは、国民の家計、これがGDPの五五%でありますから、そういう面にもっと重点を置いた大きな経済政策の転換というものが必要ではないかと。これは短期でももちろんそうですけれども、日本経済全体の長期的な発展ということを考えれば、やはりそこに軸足を置くことが肝要だと思っておりますが、先生の御見解をお伺いしたいと思います。

村本参考人 経済の仕組みをどういうふうに考えていくかという基本的な問題、根本的な問題だと思います。

 アメリカの場合は、家計といいますか、消費が七割ということで、ここのところに大きなインパクトが出ているためにアメリカ経済が非常に今混乱している。その根本的な原因は住宅価格の下落ということになるわけですが、それが回り回って雇用にまた反作用し、そしてまたそれが家計にダイレクトに影響する、こういうようなメカニズムになってきております。

 ですから、そういうことで、家計だけにいくかというとなかなかそうもいかないなというのがございます。私はもともと家計を非常に重要視しなければいけないという立場を持っておりますけれども、どうやって企業のそういう行動とバランスをさせるか。企業も、消費を活性化させるためには、自分のところの職員をどんどんそういう形である意味では非正規化してしまうようなことをすれば、これは消費にまた回って、ぐるぐる回ってくれば自分のところの売り上げが上がらないというメカニズムになります。

 したがいまして、いかにうまいバランスをつくって経済を運営していくかというところに一番ポイントがあるんだろうというように考えておりますので、消費とそして企業行動をうまくバランスさせるような仕組みを構築する、これをある意味で日本型にシステムとしてつくっていく、これがポイントなのではないかというふうに聞いておりました。

 以上でございます。

佐々木(憲)委員 第二地銀の横内会長にお伺いしますけれども、今銀行業界としては大変な危機の中で不安を抱えていると思うんですけれども、資本注入がなければ貸し出しがうまくいかないというものなのかどうかですね。

 貸し出しというのは、やはり相手側の中小企業にとって、資金繰りとかあるいは長期的な資金とか、そういう点が確保できて初めて生き延びることができる、生き延びてこそ将来の金利収入というのも銀行に入ってくるわけであります。

 したがって、短期的な視点で相手の中小企業の経営が赤字が続いているからといって資金を引き揚げてしまいますと、将来的な利益のもとがこれは断たれてしまうわけでありまして、そういう意味では、やはり共存共栄といいますか、お互いの利益ということを考えますと、一方の銀行の利益だけを追求するというやり方はやはりよろしくないと私は思うんです。相手側の経営をどう安定させるかということを、まさにそれがリスクをとるということだと思うんですけれども、そういう立場の経営というものが非常に大事だというふうに思っております。

 そういう点で、今の危機の中で果たす銀行の役割、その点を踏まえて、どのようにお考えなのかお聞きしたいと思います。

横内参考人 先生が今御指摘された点は、私も非常に共感を覚えるところがございます。地域金融機関というのは、地域の発展や地域の中小企業の発展がなくて私どもの発展もない、これが地域金融機関の経営の原則論だというふうに考えます。

 したがって、銀行がもうければいいというような考え方では地域金融機関の経営というのはもう全くやっていけない、お客様から見放されるだろう。私どもはむしろお客様に選んでいただけるようでなければいけない、これは原点として、先生のお考えと共通するものがあります。

 企業の将来性を見たりとか、それからいろいろ、ただの財務諸表だけでない企業の見方とか、これも、金融機関の貸し出しの姿勢としては、地域密着を旨とする中小企業金融機関は一番心がけてやらなければいけない。それで、経営者の中小企業の皆様方と日常のコンタクトのある我々こそそれができるんだ、こういう自負と実力を備えていきたい、こんなふうに考えております。

佐々木(憲)委員 銀行の資産構成といいますか、第二地銀の場合、有価証券に対する依存度はどのくらいあるのか、それからそのうち外国の証券というのはどのくらいの比率があるのか。簡単でいいですけれども、お答えいただきたいと思います。

横内参考人 銀行が有価証券で運用している資産に対する比率は、私ども第二地方銀行の平均で二三・四%ということになっております。その有価証券の中で要するに海外の有価証券をどのくらい持っているかというのは、実は銀行によって多分さまざまで、一概に比率を言うことはできない状況だと思います。銀行によってその投資の考え方が違う。

 私の経験でいうと、いろいろリスクを分散させる投資が地方の金融機関の場合には重要でございまして、一カ所で大きなけがをつくらない、そういう観点から、こういう金融のグローバル化のもとで、これはちょっと直観になりますが、海外で運用する部分も、分散という観点からじりじりと少しずつふえてきていたかなと。ですが、サブプライムローン問題のこの大混乱を経験してみますと、そういう分散の考え方もまた新たな目で見直していかなければいけない、こんなふうに思います。

佐々木(憲)委員 農林中金の上野参考人にお伺いしますが、今と同じ質問ですけれども、資産のうちの、先ほども少し質問がありましたけれども、有価証券の比率、それから海外の比率、わかりましたら教えていただきたいと思います。

上野参考人 総資産残高約六十一兆の中で有価証券が三十六兆でございますので、大体半分強というような感じでございます。その中で、外国の有価証券というのが約二十五兆ぐらいあるというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 外国への依存度の高さ、それから有価証券の比率の高さというのは大変突出していると思うんですけれども、これは経営方針として、この十五年ぐらいの間でしょうか、外国の、とりわけアメリカの債券に投資をするという比率が大変高まってきていると思うんです。

 それで、上野さんが、これは去年の九月六日の日経金融新聞にインタビューが載っておりまして、その中で、経常利益五千億円を目指すと。それで、この中で、前期の経常利益は三千六百億円程度だが、今や六割程度が外貨建て資産から出るようになった、要するに、外国の債券で運用する比率をどんどんふやして、その運用益が経常利益の六割を占めている、こういうことで大変豪語しておりまして、サブプライムの影響なんかないというようなことをおっしゃっているわけですが、これは経営の姿として、こういうやり方というのは、一応、上野さんの経営方針として、この八年間ずっとやってこられているわけですが、基本方針として掲げてやってこられた、こう理解してよろしいですね。

上野参考人 先ほどの御質問にもお答えを申し上げましたように、農林中金の持っております能力あるいはJAバンク全体としてのシステムの中での農林中金の役割、こういうことから見まして、このグローバルな経済の中で海外投資のウエートが高まっているということでございます。

 この運用につきましては、金融機関としての、特にバンキングアカウントを持っている金融機関としてのレギュレーション、こういうものに当然従いながらその範囲内でやらなければいけませんし、なおかつ組織の中の体制としても、資本の安定性、資本と投資とのバランス、こういうものを十分に見ながら、かつ投資対象の安全についても格段の注意を払ってやる、こういうことで従来慎重に進めてまいっております。

 したがいまして、今回こういう事態が起こりまして、ダメージがないとは言いませんけれども、私は、状況がこれからどういうふうに変わるかということは見きわめる必要があろうかと思いますが、こういう考え方を現在のところは変えるつもりはございません。

佐々木(憲)委員 慎重にと言うけれども、これはかなり急速に海外の資産運用というのがふえてきているのが実態でありまして、これを変えるつもりはないと言うんですから、私は、この辺でもうちょっとこの方針を変えた方がいいと思いますよ。しかも、理事長の役割というのは非常に大きいわけであります。

 そこで、理事長自身のことについても先ほど少し御質問がありましたけれども、今の仕事におつきになる前は農林事務次官という仕事をされて、その後、農林漁業信用基金の理事長に就任されているということなんですが、この理事長を退任されて今の仕事についておられるわけですけれども、退任されたときには退職金というのは受け取っておられるんでしょうか。どのぐらい受け取っておられたでしょうか。

上野参考人 いただいたと思いますけれども、金額はちょっと記憶にございません。

佐々木(憲)委員 これは今、天下り問題というのがいろいろなことで言われておりまして、天下りと言うのか言わないのかというのは議論がありますけれども、事務次官を退職するときはもちろん退職金は受け取っておられると思うんですね。そしてまた別な、農林漁業信用基金というところの理事長、それを退任されたときも退職金を受け取っている。今度も、農林中金の理事長をされて、当然退職するときは退職金を受け取ると思うんですが、こう退職金を次から次へと受け取っていろいろな仕事をされるということは、一体どうなのかという疑問が一般的にはたくさん出ているわけですね。

 これは、自分がもらいたいと思ってもらっているんじゃない、制度だからしようがないんだ、こういう話でしょうけれども、これはやはり制度として、例えば、今のような農林中金の経営の実態からいいますと、大変な毀損が起きる可能性は大ですよ。外国の資産運用に傾斜した結果、その責任というのは非常に大きいわけでありまして、それを変えるつもりはないとおっしゃっていますけれども、しかし、そういう実態をつくって、仮に株価が大幅に下落して何兆円という毀損が生まれる、何兆円どころじゃないかもしれませんね、そういう場合に当然責任というのが問われるわけであります。

 退職金はやはり辞退すべきじゃないかと私は思いますが、いかがですか。

上野参考人 基本的な運用の考え方といたしまして、こういう事態になっていろいろ御意見が出てまいっているわけでございますけれども、グローバルな経済、こういう環境になってきたときに、国内のマーケットでなかなか運用の機会がなければ当然広い世界を見るというのは、これはやはり私は大事なことじゃないかというふうな考え方でもあるわけでございます。

 それから、退職金の件につきましては、私は、それぞれの組織がどういう評価をするかということにかかわっておると思いますので、私から特段の発言をすることは差し控えたいと思います。

佐々木(憲)委員 きょうは参考人質疑ですので参考にお伺いしておきますが、引き続き当委員会で法案審議がされるわけでありまして、今後きちっと実態に基づいて質疑をしていきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

田中委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案、保険業法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局長内藤純一君、検査局長畑中龍太郎君、監督局長三國谷勝範君、農林水産省大臣官房審議官小風茂君、経営局長高橋博君及び経済産業省大臣官房審議官大下政司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。広津素子君。

広津委員 本日は、御質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございました。

 米国のサブプライムローン問題に端を発した厳しい環境のもとで、地域経済の担い手である中小企業を支援していくことは、喫緊の課題であり、大変重要なことであると私も思っております。

 けれども、対応を考えるには、原因を明確にして、その原因をなくすか、弱い部分があればその部分を強化しなければなりませんので、まず、原因が何であったのかをもう少し詰めたいと思い、御質問させていただきます。

 また、今つくろうとしている金融機能の強化のための特別措置に関する法律につきましては、国の資本参加の要件を一部緩和して、金融機関の経営責任等の明確化の要件や、抜本的な組織再編を伴わない場合に加重されていた要件を、制度上、一律には求めないこととし、公的資金を注入しやすくしております。

 しかしながら、国が資本参加して金融機関の資金を潤沢にすれば、金融機関が中小企業に対して適切な仲介機能を発揮して中小企業への貸し付けをふやすか否かにつきましては、バブル時代から今まで金融機関の行動を見てきた私といたしましては疑問を感じております。

 実は、私は、公認会計士、税理士として、衆議院議員になる前に、大中小企業の監査とか税務コンサルティング、それから金融商品のアドバイスとか、それから金融機関の監査もやっておりましたので、中身も多少というか、かなり知っております。

 そして、その理由は、この数年間、金融緩和策がとられ、金融機関は、史上最低の金利で資金を調達できていたにもかかわらず、その間にその資金を、中小企業の将来性を見つけて、これを育て、我が国の産業を育成するために融資したという部分よりも、大量にある資金を大量にはくために、横並びで国債や株式を購入し、あるいはアメリカのサブプライムローンのような金融商品に投資してきたという部分が多かったと思うからです。

 どこにどれだけの資金を配分してきたのかというブレークダウンを金融庁に求めまして資料をもらいましたので、お配りした資料に書いてあります。

 まず、一ページ目は表紙なので、二ページ目をごらんください。

 サブプライムローンとは、低所得者向けの住宅ローンで、当初の金利は年五、六%と安く、数年後に住宅の担保価値が上がらなければ一〇%を超える高金利となり、住宅が値上がりすれば、担保価値が高まって、サブプライムより金利の低いプライムローンに借りかえができるというもので、低所得者向けの融資です。

 つまり、このスキームの中には、住宅価格が上昇すれば金利が下げられるけれども、そうでなければ金利が上がるというギャンブル的な要素が既に含まれており、低所得者にとってはリスキーな住宅ローンであると言わざるを得ません。

 次のページをごらんください。

 今回、住宅価格が上昇せずに、サブプライムローンの利用者は返済に行き詰まって、このページ三のように、二〇〇五年半ばまで一〇%台であった延滞率が、二〇〇六年の十月から十二月期には一三・三%に上昇しました。

 そして、二〇〇六年十二月以降、サブプライムローンを手がけていた中小ローン会社約二十社がローンの焦げつきのために経営破綻し、取引銀行から融資打ち切りを通告された大手のニューセンチュリー・フィナンシャルがニューヨーク証券取引所で上場廃止となって、先月のリーマン・ブラザーズの破綻と同じように、さらに破綻する会社が出てくるとの見方から、同日の株価が大幅に下落し、世界同時株安の一因となったものです。

 しかしながら、返済能力の低い低所得者に対して数年後には金利が上がる確率の高いちょっとギャンブル的な要素を組み込んだローンは、もともと高い貸し倒れのリスクを持っており、証券化商品としてそのリスクが多くの人にばらまかれたとしても、一人一人のリスクの高さには変わりがありません。

 このような低所得者に対して借り入れ時には低い利率で借りやすいけれども数年後に利率が上がる危険なローンに、大量の資金を投入していた我が国の金融機関も、注意力もしくは誠実性に欠けると思わざるを得ません。

 そのため、今後、中小企業の将来性を見て、こつこつとこれを育て、我が国の産業を育成させる目的で金融機関に公的資金を投入したいのであれば、そうさせるための縛りと申しますか、制限を設けなければならないと思いますが、いかがでしょうか。

 まず、全部御説明してから、質問をまとめます。

 次のページ四をごらんください。

 ページ四とページ五、ページ六に、国内の銀行、信用金庫、信用組合における資産運用残高の推移を載せました。貸出金の残高と有価証券残高が運用資産全体に対してどれだけのパーセンテージになっているかを、金融庁の資料をもとに計算したものです。

 この貸出金残高の中には、大企業への貸出金やサブプライムローンなどの貸出金、例えばハワイでゴルフ場をつくるための貸出金なども入っておりますので、この貸出金は中小企業のための貸出金だけではないんですが、まずは、国内銀行で六六から七〇%が貸出金に使われており、三〇から三四%ぐらいが有価証券に出資されているということです。ページ五の信用金庫になりますと、貸出金が六六から七〇%、有価証券残高は三〇から三四%です。六ページの信用組合になりますと、貸出金の割合がふえまして、七四から七六%、有価証券が二四から二六%であって、それでも全部が貸出金ではないということです。

 次に、銀行はどうなっているのかということで、具体的な個別の銀行を見ました。

 ページ七をごらんください。

 全部では、ページ七からページ十一に、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、地方銀行の代表の横浜銀行、北洋銀行の貸出金、有価証券の資産運用残高と貸出金残高、中小企業向け貸出金残高、有価証券残高、債権残高、株式残高を金額とパーセンテージで出しております。

 まず、みずほ銀行を見ますと、貸出金・有価証券合計残高、これが運用資産全体です。これは貸出金残高と有価証券残高の合計になっておりまして、これを足すと一〇〇%です。この貸出金残高の中に中小企業向け貸出金残高というのが入っておりまして、その他の貸出金は、大企業とかその他の部分です。あと、有価証券残高の中には、国債、公債、社債などの債権残高と株式残高があります。

 中小企業向けにどれだけ貸し出しをしているかといいますと、みずほ銀行の場合は四八%から五四%、債権残高が二四から三三%、株式残高が二から四%ということになります。先ほど、午前中の資料を見ましたら、JAバンクやゆうちょ銀行の預貯金残高が物すごく多いので、これも調べればよかったなと思ったんですが、そこまでやっていませんでした。

 次に、三菱東京UFJ銀行をごらんください。八ページになります。ここは、中小企業向けの貸出金残高は三五から三八%程度しかありません。債権残高は一八から二七%、株式残高が四から七%程度になります。かなり中小企業には薄いということになります。

 三井住友銀行のケースを見ますと、九ページです。中小企業向けの貸出金の残高は四五から四九%くらい、債権残高が一五から二二%、株式残高は四から七%です。

 横浜銀行、ページ十ですが、ここは中小企業向けに六七から七二%を貸してくれています。債権残高は一〇から一三%、株式残高は二から三%ということです。地方銀行ですから、当然といえば当然かもしれません。

 最後のページなんですが、同じ地方銀行の北洋銀行で、午前中に中小企業の貸し出しが本命と説明してくださった横内会長がここの頭取なんですけれども、四七から五〇%くらいが中小企業向け、それで債権残高が一六から二三%、株式残高が二から四%ということで、地方銀行でも五〇%程度ぐらいしかなくて、七〇%の中小企業向けの貸し出しはしてくれていないということになります。

 このグラフによれば、中小企業向けの貸出金残高が一番高いのは、地方銀行である横浜銀行の七〇%前後です。同じ地方銀行である北洋銀行は四八から四九%と低くなっております。地域に根差した地方銀行なんですから、有価証券での運用よりも中小企業への貸し出し割合をふやしていただきたいなと私は個人的に思います。

 また、ページ七の、都市銀行であるみずほ銀行の中小企業向け貸出金残高は五〇%前後であり、ページ八の三菱東京UFJ銀行では三五から三八%程度、ページ九の三井住友銀行では四五から五〇%程度ということで、同じ都市銀行の中でもいろいろな割合になっているということがわかります。銀行のポリシーによるのだと思います。大企業への融資があることを考えても、都市銀行でも五〇%くらいは中小企業に貸してもらえないかなと思います。

 このような状況ですから、サブプライムローンなどの余り感心できない、しかも外国の金融商品に投資しているよりは、地方銀行で七〇%、都市銀行では、大企業への貸し出しもありますから、五〇%程度の運用資産を、中小企業を育てて、次の日本の産業を育てる資金として運用されるよう求めたいと思います。そのために、そのような規制が入るよう提案をいたします。

 なお、米議会では、サブプライムローンの利用者保護や規制強化の動きが活発になっており、クリストファー・ドッド上院銀行住宅都市委員長は、ローン利用者の二百万人が家を失うかもしれない、こういう状況を黙って見ているわけにはいかないと述べ、公聴会を開いて利用者の支援を具体的に検討していく考えを表明されたそうです。また、バーニー・フランク下院金融サービス委員長も規制強化の法案を計画しているそうです。

 我が国も、このような利用者を食い物にするような危険な金融商品につきましては、サブプライムローンに限らず、何らかの規制がかけられないものかと思いますので、これも重ねて御検討をお願いします。

 まず、この二問、お願いします。

中川国務大臣 いろいろとお調べいただきまして、各金融機関の業態ごとの貸し出しあるいは有価証券比率、あるいは代表的ないわゆるメガバンク、地方銀行二つについてございました。

 本来、金融機関の使命があると同時に、金融機関は民間の企業でもございますから、その使命を果たしながら適正な利益を上げていくということも大事であり、金融機関の健全性というものも必要でございます。

 他方、資金を、お客様から預かった預金等で、企業等がそれを活用して事業等に使っていって、またいい結果をつくっていく。いいものをつくったり、いいサービスを提供する。それを利用者が利用したり買ったりするということがまさに信用創造という健全な形だろうと思います。

 個別の問題につきましては、それぞれ各銀行が中小企業向けにどのぐらいやるかという目標というものを立てておりまして、これは目標を何年も達成しないと改善命令が出るというようなこともちゃんとルールになっているわけでございます。

 そういう意味で、ここでの法案審議の御趣旨は、中小企業向けにいかに資金を提供するかという法案でございますから、そういう意味では、今、日本を支えている、経済の土台であります中小企業が大変苦しんでいる、そこに対して必要なお金を適切に供給するという趣旨で、きちっとお金が回っていくということは極めて大事なことだろうと思います。

 ただ、きちっとした数字を挙げるとか制限を設けるというのは、民間金融機関でございますから、資本注入ということになりますとまたルールが変わってまいるわけでありますけれども、一般論としては、なかなかそれを義務づけるということは難しいのではないかと思っております。

 いずれにしても、広津委員が冒頭申されたように、このサブプライムローン等の証券化商品というのは非常に混乱をして、わけがわからなくなって、きのう麻生総理も生活対策の記者会見の中で、詐欺的な融資とか、あるいは非常に複雑でわけのわからない金融商品がある、これを国際的にきちっとルールをつくっていく必要があるということを提言されたところでございますので、その中で、本来の健全な融資、とりわけ、この法案の審議という前提でいえば、中小企業に対してきちっと融資をしていくということが日本の経済全体のためにも極めて大事なことだろうというふうに思っております。

広津委員 お返事ありがとうございました。

 ただ、銀行は自己資本規制もありますし、いろいろ規制は設けてよいもので、社会の役に立つために国もお金を出しているし保護もしているわけですから、そういう規制を設けることは可能であると思います。ただ、あとはやる気があるかどうかだと思います。

 さらに、金融機能の強化のための特別措置に関する法律におきまして、国の資本参加の要件を一部緩和して、金融機関の経営責任等の明確化の要件や抜本的な組織再編成を伴わない場合に加重されていた要件を、制度上一律には求めないこととするそうですが、公的資金は国民の血税です。注入しても、金融機関にとっては資本となり、国にとっては有価証券として資産となりますので、寄附するわけではありませんけれども、要件を緩和する理由について、正当な理由かどうか、みんなが納得できるような御説明をいただければありがたいと存じます。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の金融機能強化法の見直しについてでございますが、世界的な金融市場の混乱を初めといたしまして、外的な環境変化によりまして適切な金融仲介機能の発揮が妨げられないように金融機関の資本基盤の強化を積極的に図るということが、今回の目的、趣旨でございます。このため、今後資本政策を検討される金融機関が申請を行いやすい環境を整えていくことも重要であるというふうに考えておりまして、国の資本参加の要件を一部緩和しているところでございます。

 他方、国の資本参加を受ける以上、責任ある経営等がなされることは申すまでもなく大原則であるというふうに考えております。このため、例えば、申請時に責任ある経営体制の確保を図るための枠組みを内閣府令において設けるとともに、資本参加後は経営強化計画の履行状況をフォローアップいたしまして、必要に応じ監督上の措置を講じていくことにより、責任ある経営が行われることを確保していく考えでございます。

広津委員 一応わかりました。国民の血税ですから、これを入れるためには世の中のためになるような規制と一緒にしていただきたいなというふうに思っている次第でございます。

 本日は、丁寧な御説明ありがとうございました。

田中委員長 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。おとといに引き続きまして、きょう、またこうして質問の時間をいただきました。

 けさ、この財務金融委員会で参考人の質疑をやりました。中小企業団体中央会の会長さんであります佐伯会長からも、今回の金融機能強化法で新しい、ニューマネーが借りやすくなるのもありがたいけれども、やはり過去の債務に関して条件緩和をしていただくと大変ありがたいということを借り手の代表の方が申しておりました。一昨日も大臣とこの議論をさせていただいて、大臣も大変前向きな答弁をしていただいたんですけれども、もう少し具体的に伺いたいと思って、再度質問に立たせていただきました。

 今まで金融機関が、借り手が過去の債務を、例えば期間を延長してもらいたいとか、もっと極端なことを言うと、ちょっとしばらくの間金利だけ払うので元本返済は待ってくれないかというふうに言うと、金融検査マニュアルの中では要注意先債権とか破綻懸念先債権にその債権が区分をされる、だから、金融機関が条件変更をしてあげたくても、その分の資本の積み増しを金融機関が金融庁から指導されてしなければいけないということで、なかなかこの条件変更に応じられないというような実態があるわけです。

 今回、中小企業に対する貸し出しの条件変更を行った場合でも、監督指針や金融機能の検査マニュアルの中で、内容を具体的に、そこを見直せばその条件緩和ができるようになるというふうに思うんですね。それを前向きにおととい答弁をしていただいたと思うんですが、具体的にはどのような方法でその条件緩和をやりやすくするのかということを、大臣、お答えいただければありがたいと思います。

中川国務大臣 前回、松野委員からそういう御指摘をいただきまして、もっともだなと思って、いろいろなことを指示いたしました。

 この法の趣旨が、とにかく健全な金融機関に資本注入をすることによって、さらに中小企業に有益なお金が行けるようにしようというのが趣旨でございます。そういう意味で、その趣旨に抗するような、反するようなといいましょうか、阻害するようなマニュアルあるいは指針があればこれは改めなければいけないということで、何点かマニュアル等の改定を考えております。

 例えば、現状、貸し出しの条件の緩和を行っても貸し出し条件緩和債権に該当しない、つまりさっきのマニュアル上の変更にならないようにするためには、三年後に経営改善が完了するような経営改善計画が必要とされておりますけれども、今回、経営改善に時間がかかるという中小企業の特性を踏まえまして、中小企業についてはこれを三年から五年に緩和をいたします。また、改善が大体計画どおりに進捗している場合は十年まで緩和をするということについては、同じように見ていくというようなことにしていきたい、こういうふうに思います。これによりまして、金融機関において柔軟な対応が期待できるものというふうに考えます。

 私自身、目安箱でいろいろな御意見というかいただいておりますけれども、なるほど、こんなことで条件が変わって要注意先になっちゃうのかなという例がございますので、これからもほかにそういうものがあれば、これでおしまいということではなく対応していきたいと思っております。

松野(頼)委員 大変前向きな答弁、ありがとうございます。

 ただ、実際に借り手としては、一度条件変更をすると、例えば、これが今度条件変更債権だというデータが残って、また新規の融資がやりづらくなるというようなことがあるのではないかという心配を持っている場合もあります。その辺、ちょっとお答えいただけますでしょうか。そういうことがあるのかないのか、一回条件変更をしてもまたニューマネーが出てくるのか出てこないのか。局長で結構です。

畑中政府参考人 お答えを申し上げます。

 一度条件緩和債権になった場合に、それをデータとして蓄積をして、以後不利な取り扱いをするというようなことは、特に私どもルール化して指導しているわけでもございませんし、金融機関においてもそういうことはないと思います。そこはあくまでも個々の金融機関が個々の債務者の実態に応じて、きめ細かく指導なり管理をしていっていただきたい、このように考えております。

松野(頼)委員 あと大臣、せっかくきょう、実は、今大臣は大変大きな答弁をしていただいたと思います。これは、借り手から見ると本当に助かるんですね。

 ただ、ここで、国会の中でこういう答弁をしていただいても、検査の現場とか、あと金融機関にそれがきちんと伝わって、最終的に借り手である中小企業が助かるところまで行かなければなりませんので、これは周知徹底はどのようになさるつもりか、お答えいただけないでしょうか。

中川国務大臣 今、金融庁の方から、いや、そういう指導はしていない、でも金融機関の方あるいはまた相手の、借り手の方がそういうふうに判断をしてしまうということは、これはもう大変残念なことであり、これはあってはならないことでございますので、前回のときもどなたかの指摘に対してもっともだなと思ったものですから、私から職員に周知徹底させますというふうに申し上げましたが、この件につきましても、またほかの件につきましても、ここできちっとお答えをしたことにつきましては、私の名前で、つまり金融大臣の名前で公文書としてきちっと職員に行き渡るようにしたいというふうに思います。

松野(頼)委員 あと一点、現場の金融機関にも何らかの形で、全国銀行協会なり地方銀行協会なり第二地方銀行なり等々の業界団体を通じても結構ですから、ぜひ各現場の店舗にまで行き渡るようにしていただきたいと思いますが、一言御答弁いただきたいと思います。

中川国務大臣 金融行政の中でもやりますし、今御指摘のように業界団体を通じてもやっていきたいと思います。

松野(頼)委員 これは局長で結構です。きょうこうやって御答弁をいただいて、文書が出るということでありますが、実際いつごろからこれが実行があって、今、年末に向けて非常に中小企業が資金繰りの心配をしております。また、この不況で売り上げが下がっている。このままの融資の返済がいつになったら楽になるのかという精神的な部分もあると思いますので、大体いつごろをめどにそれが実行されるか、大体のめどで結構ですから、御答弁いただけないでしょうか。

畑中政府参考人 お答えをいたします。

 監督指針及び検査マニュアルの改定につきましては、御指摘のありました現下の中小企業を取り巻く厳しい状況にかんがみまして、準備が整い次第、速やかに実施することとしたいと考えておりまして、来週中にも改定できるように、事務的に準備をいたしているところでございます。

松野(頼)委員 来週ということで、大変迅速な対応をしていただいていると思います。このことに対しては本当に高く評価をさせていただきます。

 日本を支えているのは中小企業でありますので、大変前向きな対応だというふうに評価をさせていただいて、また、きょうお時間をいただいたことを感謝申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

田中委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木克昌であります。私からも、金融機能強化法について、少しお時間をいただいて質問をさせていただきたいと思います。

 まず、それぞれ各委員から、この法案の目的についてかなり突っ込んだやりとり、議論が展開をされてきておるわけでありますが、私からも、もう一度整理をしながら、そしてまた私の考え方等もぜひお聞きをいただきたいということで、少し質問をさせていただきたいと思います。

 申すまでもありません、この金融機能強化法は、ことしの三月をもって期限が切れた法案であります。この経過を見てみますると、二件、紀陽ホールディングスの三百十五億、それから豊和銀行の九十億ということで、合わせて四百五億の二例あっただけの結果に終わったわけです。それを踏まえて今回は、もう少し使い勝手のいいというか、実効の上がるような法案にということで御訂正をされておるわけであります。

 私も、アメリカ発の世界同時不況、百年来の大変な金融不安がこれだけ広がっておる中で、政府が早目早目に手を打っていこうということについては一定の評価をさせていただいておるつもりでおりますが、しかし、何点かやはり問題点もあるというふうに思っております。

 今、我が党の松野議員の質問に対して、検査マニュアルで、規制緩和等で本当に踏み込んだ、しかも迅速な決定をいただいておるわけでありますが、私もぜひ一つお願いをしたいところがあるわけでございます。

 この法案が、要するに、何遍も言われておりますけれども、本当に中小零細企業の資金繰りがよくなるための法案なのか、それとも金融機関の救済のための法案なのかというところが、どうしても私はまだいまいち腑に落ちないところがあります。

 金融機関のためということであるならば、俗に言う輸血であります。しかし、今本当にやらなきゃならないのはカンフルではないのかなというふうに思うわけでありまして、そういう意味で、大変悪い言い方をすれば、中小零細企業の資金繰り支援を装いながら、実は金融機関の救済のための法案ではないかな、これが私の脳裏から離れないわけであります。それは、陰でちらちら出てくるのは、農林中金それからまた新銀行東京という一つの形が浮かび上がってくるということでございます。

 そこで、私がまず最初に申し上げたいのは、お願いということなんですけれども、中小企業の資金繰りを支援するという目的、方法であるならば、金融機関に資本を注入するという方法、いわゆる輸血という方法もあるわけでありますが、もう一方は、借り手である中小企業に対して、例えば借入金の利子補給というような形で借りやすくする、このことが私は今いわゆるカンフルとして最も大切なことではないのかな、こういうふうに思うんです。

 そういうことで、いわゆる借入金に対する利子補給というようなことをお考えになるという考え方はあるかどうか、その点をちょっと大臣からお聞かせをいただきたいと思います。

中川国務大臣 まずこれは、銀行を救うか中小企業を救うか、さあ右か左かという議論ではないと思いますね。

 今、血液のお話をされましたけれども、預金者からいただいた大事なお金、つまり血液が、金融機関という血管を通って、最終的に体の隅々にある大事な中小企業にお役に立っていただく栄養分として資金を供給しよう、ですから、中小企業が仮に傷んでしまったら、金融機関、貸出先も困るということもありますし、もっと困るのは、金融機関が十分に必要な資金を供給できなければ中小企業は困るということでございますから。

 現在は、健全な金融機関という前提のもとで必要な資金を、外的な、世界的なこの金融危機の中で自己資本問題等々が出かねない。これは、何も経営が悪いわけでもない、また、ずさんな経営をしているわけでもない、そして、中小企業側はもちろん頑張っている、責任はないわけでございますから、そういうところに必要があればお金を貸したいから資本注入をさせてください、審査をして、では資本注入をさせてもらいましょうということで注入をして、中小企業の方に使っていただくというのがこの法の目指すところだと思います。

 他方、利子補給をしたらいいのではないかというのは、本当に中小企業は今困っているわけでございます。したがいまして、きのう麻生総理が発表いたしました中小企業対策の方で、特別保証と並んで特別融資というものをさらに大幅に増額いたしまして、十兆円規模にするという総理の考え方をお示しいたしました。あれは、低利の融資を中小企業の方に用意するということを念頭に置いているというふうに考えております。

 ここはあくまでも、何でもかんでも政府が出ていって安い金利を出すということではなくて、やはり、健全な金融機関と大事なお取引先との間での関係において、通常の融資のための原資を補強するための制度としてこの法律があるというふうに私は理解をしております。

鈴木(克)委員 そこで、もう少しこの問題で大臣と議論させていただきたいんですが、御案内のように、不動産と建設業の倒産が相次いでおりますよね。これはもう御承知のとおりです。

 そこで、帝国データバンクが貸し渋りというものについて調査をしたデータがあるんですが、これはちょっとお配りをしておりませんけれども、不動産が全体の二五・七%、建設業は一一・四%、小売業は九・四%が貸し渋りや貸しはがしに遭っておる、こういうことを言われておるわけであります。現実に三大金融グループは、この一年間で五千億円も不動産向けの融資を減らしたということであります。

 そこで、何が言いたいかということですが、信用保証協会の融資保証が、去年からことしにかけて激減しているんです。ということは、今言うように、中小零細企業はお金を借りるというところまで行かないんですよ。要するに、信用保証協会までたどりつけないんです。なぜかといえば、当然当たり前のことでありますけれども、借りたお金は利息がついて、その利息をつけてお返ししなきゃならぬということです。そこで結局、保証協会で保証をしてもらうまでたどり着けないというのが実は実態なんです。現実に、金融機関の方も貸出先がないわけです。優良貸出先と言うべきなのかはよくわかりませんけれども、貸出先がない。極端なことを言うと、だから金融ビジネスに手を出した、こういう構図ではないのかな。少し飛躍するかもしれませんけれども。

 したがって、くどくなりますけれども、私は、本当に、先ほどのカンフルとして体全体に血液が回る、そして元気な体にしていくということになれば、やはり銀行を強化するということではなくて、借り手の側が借りやすくするための施策というのをここは考えていくべきではないかということをくどく大臣にお尋ねをしておるわけですけれども、そういう考え方は今全くございませんか。

中川国務大臣 中小企業が大事だということは私は先ほども申し上げたわけでございまして、中小企業支援のためのいろいろな方策を、既にあるわけでございます。無担保無保証制度もございますし、あるいは、今機能していないとおっしゃいましたけれども、信用保証制度、あるいは今回の一〇〇%特別保証とか、いろいろな制度があります。

 もとより、中小企業そのものを支援するということは政府においても重要な施策であり、きのうも、わざわざ中小企業支援という一項目のもとで生活対策を発表させていただいたところでございますので、特に現在厳しい中小企業に対してさらに中小企業支援をしていくということは、政府としてももちろん考えているところでございます。

鈴木(克)委員 このことはすれ違いというか考え方の違いもあるようでありますが、本当の意味で中小企業を支援する、そして元気な日本を再生していく上においては、ここはやはり大胆に、利子補給制度というような形で本当に中小企業の方々が安心してお金を借りられるという制度に踏み込んでいただきたい、私はこのことを強く大臣に御要望申し上げて、一刻も早くそういう考え方を採択していただくようにお願いをして、次の質問に入らせていただきたいというふうに思います。

 次は、これも大分我が党の各議員もいろいろと質問をしておるわけでありますが、農林中金についてであります。私は、この体質改善というところに目線を当てて質問をさせていただきたいというふうに思うんです。

 例の住専問題、今からもう十二年前でありますけれども、農林中金は住専七社に対して最も多い五兆五千億という融資を行ってきた、これはもう御案内のとおりであります。そして、その処理に当たっては、母体行や一般行が合わせて五兆円を超える債権放棄を行ったのに対して、最も融資額が多かった農林中金が五千三百億円を贈与として負担しただけでありました。そのときに農水省と旧大蔵省の間に密約とも言われる覚書があったということが明るみに出て、事態が大変混迷をしたということも御記憶にあるのではないのかなというふうに思います。その結果、国民の税金である財政負担が六千八百億円生じたということであります。

 それは、末端の農家に迷惑をかけないため、こういうことであったわけでありますけれども、しかし、当然これ、末端の農家を助けるということはいいわけでありますが、農林中金のいわゆる体質について、その当時、非常にいろいろな角度から指摘を受けたわけであります。

 例えば、当時、政府・与党からも、系統金融も日本の金融の一環であることをしっかり認識するようにとか、効率化や整備をしっかりやるというような趣旨のことは声明文でもうたわれておったわけでありますが、果たして、本当にそれが実行されてきたのかどうかということであります。

 農林中金で総資産六十一兆円というふうに言われておるわけですけれども、その二分の一以上が有価証券で運用されておる。これは明らかな事実であります。それは本来の目的をかなり逸脱しておるのではないか、このように私は考えるわけでありますが、いわゆる住専問題が起きて以来、系統金融の効率化や整備はどのように行われてきたのか、国民の皆さんにわかるように説明をしていただきたい。農水省、お願いいたします。

高橋政府参考人 お答えさせていただきます。

 最初に、住専問題の経緯でございますけれども、これにつきましては、今委員御指摘ございましたけれども、当時、五・五兆円についての住専への貸し付けということでございますが、これは、農林中央金庫本体のみならず、いわゆる信用農業協同組合連合会等、農林中央金庫を初めといたします農林系統全体としての貸し付けでございました。

 また、住専処理の際の公的資金の投入問題につきましては、当時の総理大臣答弁にもございますように、基本的なスキームは、系統金融機関救済ということで決められたものではなくて、むしろ、住専問題を処理するために住専そのものをなくしてしまう必要がある、そのために必要な措置を講じたというところでございます。

 ただし、当然のことながら、住専問題が生じました際に、農協系統金融機関につきまして、金融機関として十全ではないという面があった、これについてさまざまな方面から指摘があり、これを踏まえた反省と改革が必要であるという御指摘がございました。

 このことを受けまして、農林系統金融機関につきましては、その後、平成八年及び平成十三年、二度にわたります法律を改正いたしまして、いわゆる生産現場におきます農業協同組合、あるいは県レベルの信連等については、理事等役員の兼職、兼業等の規制の導入あるいは経営管理委員会制度の導入、そして信連については義務化とするというような組織管理体制の強化、農林中央金庫につきましても、経営管理委員会制度の導入、さらには、農協系統信用事業の再編強化のために、いわゆる別法人ではございますけれども、信連あるいは単協等に対する指導事業の強化というような措置を講じたわけでございます。

 このような措置を踏まえまして、住専問題が顕在化いたしました平成七年度末時点から現在までの間に、信用事業を行います農業協同組合の数は、二千四百七十二から、現状、三分の一以下の七百七十まで減っております。また、信用農業協同組合連合会につきましても、四十七から三十六に減少するなど、事業、組織の合理化、効率化を図ってきたところでございます。

 また、先ほど、有価証券運用につきましての御指摘でございましたけれども、農林中央金庫につきましては、その法律第一条の目的におきまして、農業協同組合、漁業協同組合などの協同組織を基盤とする金融機関として、これらの協同組織のために金融の円滑を図るということが目的とされております。この協同組織の金融の円滑化を図るということは、農林漁業者への貸し付けなどにつきましては農協レベル、あるいは、県段階における調整については信連等が補完をすることを前提といたしまして、農林中央金庫そのものは、農協、信連等の会員に対しまして、預金の受け入れ、貸し出し等の資金面や決済システム等の機能面での役割を提供するとともに、系統外の一般金融、経済市場との接点に立ちまして、資金供給者であります会員の負託にこたえて、資金を系統外の需要者と結びつけて効率的に運用し、収益を会員に還元するということが大きな課題となっているところでございます。

 この結果、例えば平成十九年度では、その果実といたしまして三千億円強を還元するなど、農協系統金融機関の経営基盤の強化、JAバンク全体として農林漁業に向けました適切な資金を融通することによりまして、農林漁業者の経営の安定、農林漁業の経営の発展に寄与するという法目的に資するということでございます。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

鈴木(克)委員 今いろいろと経過をつまびらかにしていただいたわけでありますが、私は、抜本的な部分は変わっていない、いわゆる体質は変わっていないというふうに指摘をしたいと思うんです。

 いわゆる資産運用の中身について少し入っていきたいんですが、当然、今お話がありましたように、各農家が各地の農協に貯金をされて、その貯金が農林中金に集まって、そして農林中金で運用されておるということでありますが、しかし、本来の目的は、今お話にもありましたように、農家等の農業事業資金として貸し出すというのが使命であるわけであります。それで、その農林水産事業への貸し出しはどうなっているかということであります。

 これは、我が党の同僚議員からもいろいろと指摘があったわけでありますけれども、実際には、今お話がありましたように、多くの資金を有価証券で運用しておるのが実態でありまして、有価証券で運用しておる三十六兆円のうち、国債での運用は八兆円強、実に七割強の二十六兆円がその他の証券ということで運用されておるわけであります。

 では、その他の証券の二十六兆円の内訳というのはどういうふうになっておるのか、できるだけ詳細にお示しをいただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 農林中央金庫によりますと、平成二十年三月末におけます農林中央金庫の有価証券の保有残高三十六兆二千六百二十三億円、うち二十六兆千六百八十三億円がその他証券ということになっているわけでございますが、このその他証券につきましては、外国債券が十四兆三千八百三十三億円、外国株式六百六十九億円、投資信託その他で十一兆七千百八十億円ということになっております。

鈴木(克)委員 お配りをした資料の二に今御答弁のお話があるわけですが、その他の証券が二十六兆、そして外国債が二十四兆五千億、こういうことであります。

 私は、この資料要求で、外国債の発行国とそれから発行機関をぜひひとつ開示をしろということでありますが、この資料の下にもありますように非開示である、こういうことであります。

 しかし、こういう部分が明確にされなくて、本当に実態を我々は知る余地がないわけですよ。これを見ただけでも、二十六兆のうち二十四兆五千億が外国債で運用されておるという、これで本当に、先ほどちょっと系統外の金融機関で運用をというような話があったんですけれども、系統外といえばそれは系統外でしょうけれども、いずれにしても、なぜこれだけ外国債にウエートを置かなきゃならないのかということを指摘しておきたいというふうに思います。

 それから次に、もう一方の方の資料一をごらんになっていただきたいわけでありますけれども、貸出金九兆七千億のうち、先ほど申し上げました、本来の使命である農林水産への貸し出しはわずかに千百五十億ということ、これは、一・一%ですか、一%ですよね。残りの九九%が農林水産業以外の産業に貸し出されておる、こういうことであります。

 これは、先ほど目的ということでおっしゃいましたけれども、農林中央金庫法の第一条に、農林水産業者の金融機関としてこれらの協同組織のために金融の円滑化を図ることにより、農林水産業の発展に寄与し云々というふうにあるわけでありますが、この点をどういうふうに説明をされるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 先ほども御説明させていただきましたけれども、農林漁業系統金融組織におけます農業向けの貸し出しということでございます。

 基本は、一番生産現場に近い農業協同組合あるいは漁業協同組合が農業者あるいは漁業者に貸し出しする。これが生産現場の実態を一番知っておりますので、ここがまず基本的な貸し出しを行うわけでございます。そこで農業者、漁業者から集められた貯金とそして生産に必要な貸し出しとの間の差額、その余裕金の部分、これを、今度は県にございますそれぞれの連合会に貯金として預けて入れていく。県のこの信用農業協同組合連合会あるいは信漁連の場におきまして、県の広域的な資金需要に対して、またそこで貸し出しを行っていく。

 ただし、そこでまた発生いたします余裕金については、これを農林中央金庫に全国から一括して集めまして、ここで集められたものについては、先ほどの農林中央金庫法の目的にもございますように、いわゆる会員である農協、漁協、信農連、信漁連の協同組織を基盤といたします金融機関、これらの金融機関の金融の円滑化を図るということで、いわゆるリテールの部分、農業者、漁業者等に対する貸し付けは農協、漁協等に行っていただき、そして、必要であれば信漁連、信農連が貸し付けをする。

 さらに、全国的な貸し出しの場合には農林中金もいたしますけれども、基本的には、集められた余裕金を一括して有利運用することによりまして、傘下の会員であります信農連、信漁連、農協、漁協等に利益の還元をするということで、農林中央金庫の業務、目的を果たしているというところでございます。

鈴木(克)委員 そうすると、それぞれの機関で融資をして、そして、足らざるところを農林中金が補っていくという御説明であったように理解をしておるわけですが、しかしそれにしても、設立の目的ということから見ると、私は、実態とかなり違っておるのではないのかなということを指摘をしておきたいというふうに思います。

 そして、先ほど有利運用というお話がありました。では、この有価証券での運用実態の資料を拝見して私はびっくりしたんですけれども、有価証券での運用三十六兆円のうち七割強の二十六兆円が、先ほどのように、その他の証券でありますけれども、その二十六兆円のうちの九三%が外国債で運用されておる。なぜ、リスクの高い外国債での運用を主体にしておるのか。

 そして、もしあれであるならば、発行国の内訳、先ほどもちょっと示せと申し上げたんですけれども、このところを多い順から三カ国を示していただきたい、そして、金額と割合を示していただきたい。

 それからもう一つ、いわゆる外国債を購入するには証券会社等の金融機関に手数料を払うわけでありますが、この手数料は何%で、二十四兆円に対して幾ら手数料を払っているのか、それをちょっとお知らせをいただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 外国債等の外国証券に対します運用が多くなっているところでございますけれども、これにつきましては、午前中の上野参考人からも若干御説明があったかと思いますけれども、先ほどのいわゆる農業者、漁業者から集まりました資金、これを着実に運用して、さらに最大限有利に運用するということが基本的な使命になるわけでございますけれども、その際には、やはり経営体力に応じましたリスクテークと適切なリスクマネジメントを行っていく、そして、それに見合った投資先という形になりますと、どうしてもグローバルな展開、資金量との関係でもそのような形になっているわけでございます。

 そして、先ほども申し上げましたけれども、これまで、結果といたしまして、大体、十九年度の決算ベースで、果実としての三千億円の還元を行ってきたということでございます。

 また、もう一つ御指摘の外国債券についての内訳でございますけれども、農林中金によりますと、その詳細は発表されておりませんが、発行額の多い国といたしましては、アメリカ、ドイツ、フランス等というふうに聞いているところでございます。

 また、これらの証券も含みます市場運用資産総額、これは大体四十五兆円程度ございますけれども、これについて通貨別でどのような形になっているかという割合を見ますと、円建てが当然あるわけでございますが、これが十六兆円程度、米ドル建てで二十二兆円程度、ユーロ建てで五兆円程度、英ポンド建てその他で一兆円程度というふうになっているというところでございます。

 なお、証券会社に支払っております手数料等の詳細でございますけれども、これは、個別金融機関の投資戦略あるいは取引自体そのものに係る事項でございますので、従来から外部には一切公表されていないというところでございます。

鈴木(克)委員 肝心なところになると個別であるということであるわけですけれども、例えば手数料をとりましても、一%仮に証券会社へ払ったとしても、二十四兆円の一%というと二千四百億ですか、ということになりませんか。もちろん、手数料を払うことが悪いということではありませんけれども、適切なリスクマネジメントということで、今回こういうような状況になりましたよね、アメリカ発の金融不況そして株価暴落ということになったわけでありますが、これは、直近の何かデータ、資料というのはお持ちですか。

高橋政府参考人 先ほども申し上げさせていただきましたけれども、個々の、個別の有価証券の取引に当たりまして、仲介しております証券会社等々の間での手数料、これにつきましては、実態的にも私ども承知している、あるいは、これについて個々の取引ごとに詳細について承知しているというものではございませんので、御理解いただきたいと思います。

鈴木(克)委員 今私たちは、まさに実態を知り、それに対して対策を真剣に考えていこうというときですよね。実態もわからない、それは出せない、支援だけはしろ。私は、これは本当に一体全体どうなっているのかな、国民の皆さんはこれで本当に納得をされるのかなというふうに思うんですよ。

 例えば、百歩譲って、では、今後公的資金の注入を受けることになったとした場合に、この辺のところを開示する、そして、国民の皆さんに判断をしてもらえるような重要な資料を出していくということは約束していただけますか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 有価証券取引に当たりまして、仲介します証券会社との間での手数料につきましては、これは純粋の商行為に当たりますし、個々の取引の問題でございます。したがいまして、当然ながら、いわゆる事業者間の競争条件等の問題に当たるものもございますし、実際にこれを開示することによりまして、業務の遂行に当たって不当な不利益を与える、そういったようなことも懸念されるわけでございます。

 このような非常に個別の取引に当たるものについては、農林中央金庫だけではなく、個々の取引についての詳細については、従来から不開示というふうにさせていただいているところでございます。

鈴木(克)委員 大臣、申しわけない、今のやりとりをお聞きになりまして、もちろん手数料が幾らかということではなくて、本当に今の資産の内容を、資産というのは、運用の状況をやはり私は当然開示をすべきだと思います。それでなければ、今回の法案、我々はこれはどうしようもないですよ。大臣、その辺をお聞きになっておって、何かコメントをいただけませんでしょうか。これはこんなことでいいんでしょうか。

中川国務大臣 前回に引き続きまして本日も、農林中央金庫についていろいろ御指摘の議論、ずっと聞かせていただいております。

 農林中央金庫は、農中法に基づいて、さっき農水省が説明しておりましたように、農家の皆さん方の預金を農協が預かり、そして都道府県段階でそれをまた預かり、そしてその一部を農中が預かっていろいろと運用している。それは、貸し出しであったり有価証券投資であったりいろいろある。そこまではほかの金融機関と一緒なのに、あるいはほかの中央協同機関と一緒なのに、なぜ農中だけ御議論が突出するのかな。労働金庫あるいは全信連等々とは違って、なぜ農中だけ出てくるのかな。

 多分、私の想像では、巨額な資産を持ち、そしてその多くが、貸し出しではなくて有価証券、とりわけ外国有価証券に回っているから、ちょっと感情の入った言い方ですけれども、けしからぬ、こういうお気持ちなのかなというふうに思っております。

 金融機関を監督する立場の私といたしましては、ルール違反、あるいはまた何か明らかな経営に関する問題が発生しない限りは、個々の経営については我々もきちっと監督もしておりますし、また、開示すべきものは開示しておる、今不十分だというおしかりもございますけれども、開示すべきものは開示しているという前提で私は金融監督行政をこの農林中金に対してもやってまいりましたし、これからもやってまいるつもりでございます。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木(克)委員 なぜ農林中金だけが突出をしてということで、私は、別にこれだけが突出してどうのこうのということではなくて、今まさに国民の皆さんの税を投入するということですから、きちっとした情報開示をされて、国民も納得をした上でそういうことがなされていかなきゃいけないし、国会というものは、そういうものをチェックするのが我々の責務だというふうに思っていまして、突出して農林中金だけをやり玉に上げようとかということでは全くありません。

 しかしいずれにしても、今我々が審議しておるこの法案の中で、後で申し上げますけれども、新銀行東京と農林中金、この二つは、やはり我々自身納得ができない。恐らく、多くの国民の皆さんも御納得いただけないんじゃないかという立場で質問をさせていただいておるということを大臣に申し上げておきたいというふうに思います。

 それで、公的資金が投入をされる、注入されるということになった、そうすると、傘下の系統金融機関に資金的な支援がされていく、そして、そうなってきた場合に、今度は、まさに透明性を確保するという視点においても、それぞれの金融機関の個別名を明らかにしてもらいたい、こういうふうに思っておりますが、その点についてこの場で明確に御答弁いただけますでしょうか。

石田副大臣 お答え申し上げたいと思います。

 資本注入された個別の農協の名称を公表するかどうかについては、当該農協に風評被害、この心配もある。ですから、必ずしも公開、公表することが適当であるとは考えておりません。

 一方で、農林中金が資本参加の申請を行う場合には、協同組織金融機能強化方針を提出することになっておりまして、農林水産省といたしましては、この方針が円滑にまた確実に実施される見込みがあるかどうか、そういうものを審査し、また、履行状況を継続的にフォローアップしていく、こういう形にいたしております。こういうことを通して透明性を確保していきたい、こういうふうに考えております。

 再度申し上げますけれども、必ずしも適当ではない、こういうふうに考えております。

鈴木(克)委員 また一番最初の議論に戻ってしまうわけでありますが、今回のこの法案で、中小零細企業に円滑に資金が流れていくための制度として我々は今回の法律を通していこうということになっているわけであります。しかし、それにはやはり、実際にどれだけ金融機関から中小企業の皆さんのところにお金が行ったのか、そして、系統の機関を通してどれだけのところが流れておるのかというのは、これは、チェックするのは当然の私どもの義務だというふうに思うんですよ。

 そういうことができないというのは、なぜそういう形でしか答弁されておらないのかなと思うんですけれども、私は、そういう意味からいっても、この法案が、冒頭申し上げた、何か問題を抱えたままどんどん事が進められようとしておるのではないのかなということを強く申し上げて、時間になってしまいました、まだ残余の質問はあるわけでありますが、またの機会にさせていただきたいと思います。

 以上で終わります。

田中委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 委員長、理事の先生方にお許しをいただきまして発言の機会をいただいたこと、感謝申し上げます。ありがとうございます。

 それでは、早速質疑に入らせていただきます。

 昨日、麻生総理から生活対策なるものが発表をされたわけでございますが、それに対して中川大臣が、総理会見後の会見で記者さんのこういう質問に対して、特別会計の積立金を取り崩してこの生活対策に使うというのは財政再建にはマイナスの効果もあると考えられますが、そのあたりを含めてどうお考えでしょうかという質問に対して、数字的には御指摘なようなことになることは私も認めますというふうにお答えになっていらっしゃいます。今回のこの生活対策が財政再建にはマイナスの効果である、中川大臣の大臣会見での御発言はこのとおりでよろしいんでしょうか。

中川国務大臣 財投特会から剰余金を法律の規定によって国債整理基金に繰り入れなさいというものを、今回、緊急の生活対策として、赤字国債を発行するわけにはいきませんが、いろいろなところから財源を手当てしなければいけないという中で、ことしでいいますと約二兆六千億ほどの繰り入れなければいけない財投特会の剰余金がある、したがいまして、それを活用させていただく。

 そうしますと、本来繰り入れておかなければいけない、そして赤字国債を減らしていくということにならないということになりますので、そういう意味では、その部分をほかのところの財源で持ってくる、あるいは赤字国債を発行するのと結果的に数字としては同じになります。

 ただし、なぜそういうことまでしてやったかというと、緊急に暮らしや中小企業や地方を守るために対策をとらなければいけないので、こういう財源を使わせていただきますという趣旨で申し上げました。

川内委員 私は、政府の認識として百年に一度の経済危機であるという認識においては、その認識を共有するところでありますけれども、昨日発表された対策が、一年限りの二兆円の給付金、高速道路を乗用車だけ休日に限って千円乗り放題、千円乗り放題だからといって、では東京から大阪まで車で行こうかとか、そういう人は恐らく余りいないわけでございまして、しかも、三年後には消費税を上げるよ、上げざるを得ませんねということをおっしゃっていらっしゃる。これでは、景気対策あるいは経済対策、さらには、今回の金融危機、マネーゲームに狂奔をし大穴をあけた、それに反省し、実体経済を厚くしていこうねということの対策にはなかなかなり得ないのではないかというふうに残念ながら思います。

 そこで、今申し上げたマネーゲーム経済と実体経済を明確に区別する。そして、こういう資本注入などというのは、もしかしたら将来国民負担になるかもしれない。実際に、バブル崩壊以降、私どもの政府あるいは国民の皆さんに大変大きな負担をおかけしてやっとこさここまで来たわけですけれども、また今回、世界じゅうがこういうことになっている。これは、マネーゲームについて大いに反省をし、そして実体経済を厚くしていくことを考えなければいけない。

 では、その投機マネーをどうやって監視をし規制をしていくのかということだと思うんですけれども、七月の洞爺湖サミットでは、商品先物市場の透明性の向上というのが議長声明で明記をされております。先生方にお配りをしております資料の一ページ目、東京の原油先物市場、昨年の八月二十日の取引の記録であります。商品先物取引は日本が発祥の地だ、堂島の米相場ですね、ということですが、日本では、だれがどのように幾ら売り買いしたのかというのが、手口が毎日公開される。非常に透明性が高い。ところが、日本の何十倍もの取引規模があるニューヨークやロンドンの市場では、全くその手口が公開されないと聞いております。

 そこで、経済産業省にきょう来ていただいておりますのでお伺いしますが、このサミットの議長声明にも明記されている透明性の向上のために、アメリカやイギリスに対して、商品先物市場の手口を毎日しっかりと、だれがどの商品をどういうふうに売買したかということを公開すべきである。情報の公開こそが私は、この投機マネーを監視していく最重要の、そしてまた最大に効果を上げるツールだというふうに思いますが、経済産業省としての見解をまず教えてください。

大下政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、商品先物市場の透明性を確保し、公正な価格形成を図ってまいりますことは、我が国のみならず、国際的にも重要な課題であるというふうに承知をいたしております。このため、商品先物市場の利便性を確保しながら、透明性を向上させていくために必要な施策につきまして、諸外国の規制当局間ともよく議論を進めていくべきであると考えているところであります。

 そこで、御指摘をいただきました会員ごとの取引高を公表する制度でございますが、諸外国におきましては、事業者の事業戦略やノウハウの流出を招きかねないという指摘もありまして採用されていないところでございますが、我が国の場合は、商品取引所が自主的な取り組みとして採用しているところでございます。

 こうした公表制度のあり方につきましては、そのメリットとデメリットに関しましてアメリカの規制当局とも認識を共有し、議論を深めてまいりたいと考えており、日米規制改革イニシアチブに関する本年の年次改革要望におきましても、その旨、問題提起をさせていただいたところでございます。

川内委員 大臣、日本が発祥の地のこの商品先物市場というのは、やはり、実体の経済をヘッジするために、先物で、将来大きな変動があったときに損害を受けないようにあらかじめの取引をしておきましょうねということでずっと成長してきて、そういう意味では、日本はノウハウを積み重ねてきているわけです。どの国よりも積み重ねてきている。そういう中で、日本の市場というのは手口をしっかりと公開するよということになっている。この知恵というか経験というものは、アメリカやイギリスに対しても、商品先物市場を金もうけのためのマーケットとしてとらえている人たちに、それは違うんだ、あなた方、考え違うよということをしっかりこちらから申し上げていくべきであるというふうに思うんです。

 ワシントンで十一月十五日にG20というものが、金融サミットが開かれる。財務大臣にはまだ招待状が届いていないということだそうですが、恐らく私は届くんだろうと思うんです。金融サミットに財務大臣が行かないなんてことはちょっとあり得ないと思いますので、届くと思います。

 それを前提として、ぜひこの商品先物市場については、二階経済産業大臣とも御相談の上、手口をしっかりと毎日公開をし、投機マネーが暴れ回らないようにしていくことが今後の世界経済をしっかりとコントロールする上では大事なことだよということを御発言いただきたいというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

中川国務大臣 これは、川内委員の御指摘、私は基本的に考え方は同じです。

 今回に限らず過去何回か、今から四百年近く前の堂島の米先物相場でありますとか、オランダのチューリップ相場から始まって、四百年の間に一体何回金融が実物からかけ離れて過熱して、そしてやがてその泡が崩壊していくということは、もう世界じゅうで何回も何回も繰り返されているわけでございます。特に今回は、コンピューターの制度を思い切り使ってやっていく。

 さっき川内委員も御指摘になったように、そもそもこの先物にしても、これはリスクヘッジという概念があるわけでありますけれども、途端に、リスクヘッジどころかリスクを拡散するみたいなことになっちゃいまして、いわゆるデリバティブズ、金融派生商品というものの問題になってまいりました。今回のあのCDSなんかも、まさに債権が破綻したときのための保証商品であったものが、これが世界の金融を脅かしているわけであります。

 今のこの商品先物相場につきましても、商品相場派生商品みたいな感じなんだろうと思いますけれども、早くから、今経産省からも、日米で要求をしているというふうに、日本はそういう立場でございますし、この問題、きのう麻生総理も、国際的な問題として、会計基準の見直しと格付機関の見直しと、そして、こういった商品の異常な動きに対してのルールづくりをワシントンで提言したいというふうにはっきり申し上げておられるわけでございます。また、既にIOSCO、証券監督者国際機構の中で九月から商品先物市場タスクフォースというものがスタートしております。

 日本はもとより、川内委員御指摘のとおり、そういう経験と、また失敗も学んできているわけでありますから、十五日に私が行くかどうかは決まっておりませんけれども、少なくとも私が行けば、その辺のことを今回の反省の大きな原因の一つとして、川内委員の御指摘をいただいて、はっきり申し上げてきたいと思います。

川内委員 よろしくお願いいたします。

 それでは、この金融機能強化法、法律そのものの議論をちょっとさせていただきたいんです。

 先ほど、鈴木克昌議員の方からも、農林中央金庫を経由して農協単体に資本注入された場合に、個別の農協の名称の公開というものをすべきであるということを主張させていただいたわけでございますが、谷本副大臣の方からは、必ずしも適当ではないと……(発言する者あり)副大臣じゃなかったっけ。だったよね、答弁したのは。違ったっけ。役所が言ったんだっけ。農水副大臣か、ごめんなさい。必ずしも適当ではないという御答弁だったわけでございますが、私もこの問題をちょっと引き続きやらせていただきたいんです。

 前回の金融機能強化法のとき、農協単体への資本注入というものが議論になったときに、農協組織というのは、経済事業、あるいは共済事業、そして信用事業と、三つの事業をやっている、したがって、資本注入をすることが果たして信用事業のためのものになるのかどうかが判然としないということで、農協単体への資本注入が見送られたという経緯があるわけでございます。

 そこでちょっとお尋ねをしますが、今回、期限が延長される、そしてまた新たな枠組みが設けられる現行法においては、個別の信金、信組への資本注入は可能であるという理解でよろしいでしょうか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 現行の金融機能強化法におきましては、個別の協同組織金融機関は制度の対象に含まれておりますことから、国が直接資本参加することは可能でございます。

川内委員 それでは、今私が説明しましたけれども、農協単体への資本参加は、現行法では不可能ですよね。

内藤政府参考人 さようでございます。

川内委員 それでは、現行法では、個別の信金、信組へ資本参加をした場合、その信金、信組の名称、名前は公表されるという理解でよろしいでしょうか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 さようでございまして、現行の機能強化法に基づきまして、個別の協同組織金融機関が国に直接資本参加を求める場合には、経営強化計画の提出が義務づけられております。当該金融機関の名称につきましては、資本参加が決定された場合、計画の内容などとともに公表されることになっております。

川内委員 現行法では、信金、信組に資本参加した場合、名称は公表される。

 では、今審議をされている改正案においては、個別の信金、信組に資本参加をする場合、協同組織中央金融機関を通じて資本参加をする場合、名称は公表されますか。

内藤政府参考人 御審議いただいております本法案におきましては、協同組織金融機関全体で提供している金融機能の発揮の促進を目的といたしまして、国があらかじめ中央機関に資本参加し、当該中央機関の自主的な判断に基づきまして傘下の金融機関に対して必要な資本提供を行うことを可能にする、これは新しい枠組みとして設けているところでございます。

 傘下の資本支援先の名称のお尋ねでございますけれども、新たな制度が、傘下の金融機関の経営等を熟知している中央機関によるモニタリング、経営指導機能を最大限活用する枠組みとなっておりますことから、あえて支援先名を公表してパブリックプレッシャーにかける必要性が相対的に低い一方で、当該金融機関に風評リスクが生じるおそれや本制度の利用が阻害されるおそれが相対的に大きいというふうに考えられますことから、改正法案上は公表されないというふうになっております。

川内委員 改正案では、簡単に言えば名称は公開されないと。農協についても、同じ理由で公開されない、公表されないということですね。ちょっと、そうですと言ってください。

内藤政府参考人 さようでございます。

川内委員 今まで、現行法の金融機能強化法では、信金、信組の名称は公表されていた。しかし、改正案では、農協が加わったために公表されなくなってしまった。いろいろ理屈はおっしゃいましたよ。しかし、新たな農協という枠組みが加わってきたら、名称は公表されなくなってしまったということですね。これは大変不思議なことだと私は思います。

 実は、金融庁の中に協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループというものがあって、ずっとこの間議論をされております。信金、信組について議論されている。このワーキング・グループの中で、資本参加あるいは資本注入を受けた場合に、いや、名称を公開されると困りますわ、大変なことになりますわ、風評被害ですわみたいな議論が行われていましたか。

内藤政府参考人 今お話しの協同組織に関するワーキング・グループにつきましては、専ら、協同組織全般のコーポレートガバナンスの問題について中心に討議をしておりまして、今委員御指摘のような点についての議論は、私の記憶しているところ、ございません。

川内委員 私の御記憶とおっしゃられたが、私も議事録と資料を確認しましたが、セーフティーネットのあり方についての議論のところで、情報の公開性は高めていくべきであるということの議論はあるが、情報の公開性について、個別金融機関の名称について、それを非公開にする方がより円滑になるのだというような議論は一切されていないですね。

 今回、この法律のそもそもの目的は、中川大臣が十月十四日に発表されている談話、中小企業の金融の円滑化というものが目的であると私は思います。

 この法律の条文の中には中小の事業者という言葉で出てくるわけですけれども、資本参加するあるいは資本注入することによって、その銀行なり信金、信組なりがどんどん中小企業の方々にお金を貸していくようにしましょうね、そのためのあらかじめの資本参加だよ、したがって、今回資本参加を受けるあるいは資本参加の申請をするところは、中小企業の金融に資するために資本参加を受けるのだというのがそもそもの理屈でしょうから、全然システミックリスクとは関係ないんですよ、本来。

 上野さんは午前中の議論で、システミックリスクに対応するにはこういう枠組みが農中にもぜひ必要なんだと一生懸命おっしゃっていたけれども、本法はシステミックリスクとは関係ない。なぜなら、システミックリスクと関係するのは、預金保険法に定められている金融危機対応措置というものがしっかりあるからであると思います。

 今回のこの枠組みというのは、本来、資本参加を受けたところがちゃんと中小企業に貸しているよ、地域の経済の活性化のために頑張っているよということが国民的に検証される仕組みでなければ全く意味をなさないわけです。細野さん一人が拍手をしてくれるわけですけれども。そういう意味では、新しく加わった、農林中金を経由しての資本参加のこの枠組みというものが、私はちょっと問題なんじゃないかと。

 きょうは農水省にも来ていただいていますけれども、これは、名称を公開するな、名称を公開しないでくださいと要請したのは農水省ですか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 今回の法案の枠組み、先ほど委員が御説明ありましたように、中川大臣の談話を踏まえて急遽、早急につくるという時点で、私ども農林水産省といたしましても、この地域におけます農林漁業系統金融機関の地域の金融におけます重要性、農林漁業者、これも中小規模の事業者でございます、そこにおけます資金需要に適切に対応していくということから、このシステムについて、農林漁業系統についてもきちんと他の同様の協同組合金融機関と同様の形で位置づけていただきたいということを申し入れております。これにつきましては、たしか私どもの記録によりますと、十月の十五日だったと思います。

 この段階では、まだ基本的な枠組みということ、私ども、そういった段階での申し入れを行っておりまして、その段階では、個別農協の名称の公表をどうするかどうかというようなことを検討した上で申し入れを行ったというようなことではございません。

川内委員 ここは非常に大事なところなので農水省は正直に答えていただきたいんですけれども、農水省から金融庁に対して、この金融機能強化法の改正案に対して要望書が出ております。この農水省から金融庁に出た要望書を読むと、「個別行としての農林中金・JAバンクにおける協同組織中央機関としての農林中金のいずれの場合にあっても、資本注入が可能となるよう、条文上の手当てをお願いしたい。」というふうに農水省は金融庁に申し入れているわけです。

 この「条文上の手当て」とは何かということだと思うんですが、農水省としては、この「条文上の手当て」というのは、個別行の名称を公開しない、公表しないということまで含むんですよということを金融庁に説明されていますか、あるいは要請されていますか。

高橋政府参考人 先ほどもお答え申し上げましたとおり、私どもが金融庁に要請をさせていただきましたのは十月の十五日でございます。その段階では、この法律につきまして、三月段階で切れておりました申請期限を延長するということでございます。当然のことながら、その延長の際には、他の金融機関と同様に、従前規定されております農林漁業系統の機関についても同様の措置をしていただきたい、これは当然、条文上の措置というふうに認識しております。

 また、新たな仕組みということも検討されているというふうに伺っております。協同組織の金融機関について新たな注入方式ということも検討されているということでございました。

 したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、農林漁業系統組織も、地域におけます農林漁業者等に対しましての金融ということで非常に重要な役割を果たしているということでございますので、他の協同組合金融機関と同様の措置をお願いをいたしたい、これもまた条文上の措置ということで申し上げたわけでございます。

 ただ、そのスキームの細かい詳細の段階まで私ども承知をした上で、検討した上で申し上げたということではございません。基本的な枠組みで同様の措置をお願いしたいということでございます。

川内委員 ほかと同じ扱いでいいですよということですね。

高橋政府参考人 農業系統、漁協系統の組織につきましても、信用金庫あるいは信用組合、労働金庫等の金融機関と同様の扱いをお願いをしたいということでございます。

川内委員 それでは、金融庁に確認しますが、本改正案策定過程において、全信組連とか全信金連から、あらかじめの資本参加によって個別信金、個別信組に対して資本参加あるいは資本注入を行う場合、その名称までは公表しないでくださいという要請がありましたか。

内藤政府参考人 私どもの法案の作成の検討段階におきましては、この今回の新しい制度、中央組織から個別の信金あるいは信組に資本を参加するというような枠組みを検討していく過程におきまして、現在の相互支援制度を参考にしまして、この相互支援制度をサポートしていくというような考えで検討をしてまいりました。

 現在の相互支援制度におきましては、中央機関から個別の信金、信組に資本参加をする場合には名称を伏せておるという形で、これは、理由は先ほど申し上げたとおりでございますけれども、そういう形で公表しないということでやっておりまして、経営指導でございますとかその後のフォローアップ、それはきちんとやっていく。そういう枠組みは基本的に今回の制度においても受け継ぐという形でやっておりましたので、そういう形で検討をしてまいった次第でございます。

川内委員 金融庁の方はちょっとひどいんじゃないですか。現在、全信金連とか全信組連が独自にやっている取り組みの中でのことと、国が公にやる、国民の皆さんの税金を使うかもしれないことをごっちゃにして答弁しないでくださいよ。

 私が聞いたのは、名前を公表しないでくれという要請がありましたかということを聞いているんですよ。何でたらめを答えているんですか。

内藤政府参考人 私どもの法案の作成、検討の段階におきまして、具体的にそうした申し出があったというふうには聞いておりません。

川内委員 大臣、情報公開というのはすごく大事なことで、やはりあらゆることというのは、情報を公開することで適正化、適切な方向に向かうと私は思います。

 なぜか個別行の名称が公表されないということが、この条文上、三十四条の八の二項で入ってしまっている。しかも括弧書きですよ。非常にわかりにくく書いてあるんです。条文を読み上げると、「第三十四条の五の規定は、主務大臣が前項の規定により同項各号に掲げる事項について報告を受けた場合における当該報告(同項第一号に係るものを除く。)」「同項第一号」というのが金融機関の名称なんですよ、「について準用する。」要するに、金融機関の名称を除くよということを、括弧書きの中で、しかも物すごいわかりにくく書いてあるわけです。これは、この括弧書きを外すだけでいいんですよ。括弧書きを外すだけでいいんです。

 国民の皆さんのもしかしたら国民負担になるかもしれないお金が金融機関に入り、それが本当に中小企業そしてまたその地域の経済のために使われたか否かということを、しっかりと国民の皆さんが、あるいは中小企業の経営者の皆さんが、いや、あんたのところは資本注入を受けたでしょう、その分ちゃんと貸してよ、ちゃんと貸し出しに回しなさいよということをきちんと言えるように仕組みをつくっていくのが、本来の、この法律が十全に役割を発揮する方法であるというふうに私は思います。

 大臣、この括弧を外すだけでいいんですよ。あとは何にも修正は要らないんです。括弧を外すだけでいいんです。ぜひ、この名称の公開、名称の公表というものについては、大臣の今決断で、だれも望んでいないんですよ、農水省だってほかと同じでいいですと言っているんですよ、今までは信金、信組は公表するよということでやっているわけですから、これは公表するという枠組みで当然いいということですよね。

 これは括弧書きを外すというふうに御答弁いただきたいと思います。

中川国務大臣 とにかく、協同組合組織の中央機関に資本を注入した場合、その下部組織にそのお金が行った場合に、そのことを公表するかどうかということについては、もちろん情報公開のルールというものもございますし、他方、先ほど局長の方から、それによる風評被害等々の問題もあるというふうなことも頭の中に入れておかなければいけないと思います。

 そしてもう一つは、私は、これをやることによって中央機関の判断の重さというものがますます要求されてくるんだろうと。自分の判断で自分の傘下の組織に国のお金を回していくという判断をしなければいけないということですから、ある意味では、今まで以上に中央機関がしっかりと注入すべき下部組織をきちっと調べて、そしてその上で、申請書、ちょっと忘れましたけれども、組合の場合は何というんでしたっけ。経営強化方針を出して、そして手続をきちっと金融庁の方で審査会等の御意見も聞きながらやっていくということで組み立てられているわけでございまして、私は、中央機関の方ももっと今まで以上にしっかり、しっかりというか、しっかり調査をしてもらいたい。そしてまた、大事なお金をきちっとやってもらいたい。

 片っ方では、それが特に、風評、うちのあそこの末端組織にはどうも公的資金が入っているのではないかというようなことは、極力あってはならないことでございますということを総合的に判断してこういう条文をつくらせていただいたわけでございます。

川内委員 大臣、この農林中金は、JAバンクという形で信用事業をやっていらっしゃる。他方で農協は、先ほど申し上げたように、購買事業そしてまた共済事業という形で別な事業もやっている。農協の経営の成り立ちというのは、経済事業はもう非常に苦しい経営をしている。それを信用事業で、農林中金から来る、農林中金が運用でもうけたお金で穴埋めしている。しかし、その農林中金も、今、物すごい為替の円高そしてまた外国証券の価格の暴落という形の中で非常に不安を感じていらっしゃるというふうに思うんです。

 では、これをどうしていくのかというと、本法の目的である中小企業の金融の円滑化に資するようにするよということに関していえば、農林中金を経由して、経済事業で大赤字を食っている農協にお金が流れます。これは全然法律の趣旨に反しているからやっちゃいけないことなんですけれども、しかし、名称が公表されなければ、全然そういうことさえ我々はチェックすることができなくなるわけです。

 だから、これは名称を公表しないということであれば、その枠組みを崩さないんだということであれば、農林中金の枠組みを外すということでなければこの本法の目的は担保されないというふうに私は思いますよ。

 今、与野党で協議をしているわけですから、せめて大臣として、与野党協議でまとまるのであれば、名前の公表については、政府としてもそれは異存ないということをおっしゃっていただきたいというふうに思います。

中川国務大臣 今、与野党でいろいろと協議していただいているということを聞いております。具体的な中身は承知しておりませんけれども、与野党の協議がまとまれば、当然それは我々尊重しなければいけないというふうに思っています。

川内委員 それでは最後に、私は、農協のJAバンクが重大な法令違反を犯しているということについて、一点確認をさせてください。

 個人情報保護法の十五条、十六条では、個人情報の利用目的の特定、利用目的の制限については、金融分野における個人情報保護に関するガイドライン第三条、第四条、第五条があり、これは中川大臣が主務大臣ということですが、金融機関、JAバンクの支店長が、融資先リストを持って勤務時間中にJAバンクが融資している融資先のおうちに行って、特定政党あるいは特定の政治家の政治活動用ポスターを張らせてくれと言って回っているということに関しては、これは個人情報保護法の違反の事例に一般的に当たると思いますが、御答弁をいただきたい。最後、それを確認させてください。

三國谷政府参考人 一般論といたしまして、個人情報保護法及びそのガイドラインにおきましては、個人情報取扱事業者、これは個人情報を五千人以上扱う者でございますが、個人情報を取り扱うに当たりまして、その利用目的をできる限り特定しなければならないとされているところでございます。

 また、この法律のガイドラインにおきましては、個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ずに、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならないとされているところでございます。

 なお、今御指摘の件につきましては、具体的な事例を承知しておりませんので、個別の話につきましてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 なお、これも一般論でございますが、農業協同組合の信用事業における法令違反の疑い等につきましては、まずは、監督権限のある都道府県が必要に応じまして農協法九十三条に基づき報告を求める、そういう事柄であると承知しております。

川内委員 今、何と言ったのかよくわからなかったんですけれども、一般論として、融資先リストを持って融資先を回って、特定政党、特定政治家の政治活動用ポスターを張って回ることは、名簿の目的外利用である、個人情報保護法の違反である、一般論としてはそうですねということを確認しているんですけれども。私、別に具体のことを聞いていませんよ。

三國谷政府参考人 具体的な事象にはさまざまなことがあるかと思いますので、そのようなことにつきまして現段階で具体的な形でお答えすることは困難でございますが、今申し上げましたように、一般論として申し上げれば、御指摘の行為というのが、あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱った場合には、個人情報保護法及び同ガイドラインに抵触するものでございますが、これはあくまでも一般論でございます。

川内委員 終わります。

田中委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 財務金融委員会で質問の機会をいただきました。委員長そして理事の皆さんにまず感謝を申し上げたいと思います。

 私の方も、農林中金の問題を中心に質問したいと思うんですが、その前に、きのう発表された経済対策について、ごく簡潔に幾つか聞きたいと思います。

 まず、中川大臣に確認をしたいんですが、二兆円を財源として、一つの家庭で大体六万円ぐらいの給付金を出すということですが、これは一回こっきりで終わりですか。もしくは継続の可能性もあるんですか。

中川国務大臣 これは臨時異例として、次ということは考えておりません。

細野委員 総理自身も、全治三年とおっしゃっているわけですね。ことし給付金を出す。税金を出している人に関して言うと減税ということになるんでしょうか。出していない方については所得の増加ということになるわけですね。

 では、その次の年は所得が減るということになりますね。これは、経済、消費に対してマイナスのインパクトにはなりませんか。

中川国務大臣 経済の状況によってはそういうことになりますし、ならないかもしれません。

細野委員 経済の状況によっては継続する可能性もあるということですか。

中川国務大臣 二回目をやるということは考えておりません。

細野委員 ということは、二年目以降は、経済が悪くなってもよくなってもできないわけですから、悪くなっていた場合には、さらなるマイナスのインパクトを経済に与える可能性がある。それはお認めになりますね。

中川国務大臣 麻生総理も私も、こういう対策等々をとって、三年と言っておりますけれども、ことしよりは来年、来年よりは再来年で全治するというふうに思っておりますので、最初から悪くなるという前提でこの対策もとっておりませんし、また、悪くなるという前提でお答えをするというのは、半分の可能性ということでありまして、いい場合もあるということも、私どもはむしろ期待をしているわけでございます。

細野委員 極めて希望的な観測を今おっしゃいました。

 もう一点。この二兆円の財源は、巷間言われております財投特会から、いわゆる積立金、我々は埋蔵金と呼んでいるもの、ここから出すということでよろしいですか。

中川国務大臣 財源については、例えば建設公債の部分で出せるものについては建設公債を出すことを考えておりますし、それ以外についてはほかの財源からということで、御指摘のとおり、多分この財投特会の中からの財源が原資になるだろうというふうに思っております。

細野委員 大臣、給付金の話をしているんですよ。給付金の財源で建設国債を使えるんですか。

中川国務大臣 だから、今回の予算五兆円の中で、建設国債で充てられるものについては建設国債ですが、それ以外はということです。

細野委員 では、二兆円の財源については財投特会から出すという御答弁をされたわけですが、財投特会の積立金を取り崩して、そしてそれを財源とするには法律が必要ですね。この法律は年内にやるということ、給付金を出すということをおっしゃっているということは、年内に法改正も出す、そういうことでよろしいですね。

中川国務大臣 生活支援定額給付金については年度内に実施する、できるだけ早くやりたいとは思いますけれども。そして、細野委員御指摘のとおり、これは法律を改正しないと整理基金からこちらの方に持ってくることができません。それに間に合うように法律改正をしていかなければいけないと思っております。

細野委員 そうおっしゃるということになると、給付金もいつ出るか、これはよくわからないということになるわけですね。わかりました。

 もう一つだけ。きのう、麻生総理の会見の中で、正直言いまして給付金についてはなんだなと思っておりますが、私が一つだけなるほどなと思ったことをおっしゃったので、それにつき聞きたいと思うんですが、証券化商品の情報が極めて不透明だという話をされました。その後、問題点を見過ごした監督体制は大いに反省すべきだということも、冒頭会見で御自身からおっしゃっています。

 話を農林中金に移したいと思うんですが、二枚目、先にちょっと資料をごらんいただけますか、大臣。これは農協グループの資金の流れですが、一番右の列になっているのが農林中金の、下が入りです、上が出です。四十四・一兆円の有価証券、金銭の信託をやっていて、そのうち、ディスクロージャーの資料によりますと、いわゆる証券化商品と言われるものに、七・一兆円以上、七兆円以上の資金を出しています。大臣よろしいですか。

 証券化商品の情報が不十分であり、かつ監督が不行き届きであるということの反省が必要であると。農林中金自身が七兆円、証券化商品に金を出している。ここには書いてないんですが、これはディスクロージャー資料で出ているんです。農林中金自身が認めているんです。これについて、監督責任、どういうふうにお考えになるか。総理自身がおっしゃっていますから、御答弁いただきたいと思います。

中川国務大臣 農林中金がどのぐらいの証券化商品を持っているか、私、ちょっとわかりませんけれども、要するに、総理がきのう発表されたことというのは、生活対策の中で、国内の生活者、中小企業、地方、それからいろいろな方々あるいは対象に対していろいろなことをやりますということと、国際的にやるべきことがあるんだと。

 それはまさに、今細野委員がおっしゃったように、証券化商品等が余りにも横暴になってといいましょうか、詐欺的な融資というお言葉をきのう使っておられましたけれども、そういう問題を何とかしなければいけない、だから証券化商品についてのルールづくりのようなものをやっていかなければいけない。あるいは、格付についてももう一度見直さなければいけない、時価会計等、会計の問題もどうあるべきかということをやっていかなければいけないということを、国際社会の中で自分がリーダーシップをとってやっていきたい。十五日のワシントンでもそのことをぜひ自分は言いたい、やっていきたいということを述べたわけでございます。

 これと、日本の金融機関、世界の金融機関が現在持っておる証券化商品について、これをどうこうしろということとは、直接的には関係ないというふうに思います。

細野委員 農林中金は日本国内で最大の投資家というふうに言われておるんですよね。この農林中金が、七兆円以上のいわゆる証券化商品、一番リスクがあると言われている商品を買っているんですね。

 さらに私が深刻だと思いますのは、大臣、もう一回この表を見ていただきたいんですが、これはなかなか情報がすべて出てこないので、推測の域をある程度出ないんですけれども、証券化商品を買っているのは恐らく農中だけではないのではないか。例えば、右から二列目に出ております信農連、信連と言われるところですね、県に存在をする組織ですが、ここでも有価証券、金銭の信託に十六・九兆円。仮に約二割証券化商品を買っているとすると、ここでも四兆円ぐらいそこに金が流れているわけですね。さらにその下に行くと、市町村のJA段階ですね。これは有価証券等で四・二兆円。ここもかなり、数千億円、いわゆる証券化商品を買っている可能性がある。

 ここ数日、この問題を大分やって、マーケット関係者と話をしていたんですが、大臣、この証券化商品というのはばば抜きみたいなものだと彼は言うんです。ある投資家は、証券関係者ですが、言うんですね。結局そこに何が入っているかわからないです。どんなリスクが入っているかわからない。例えばサブプライムローンでいえば、アメリカのある地域のある家庭の家のローンを、なぜか日本の高齢者が老後の資金で買わされていたりするわけですね、信託なんかに入っていて。そういう、やはり非常に、ばば抜きでいうと、どれがばばか判定できない人が多いわけですよ、プロであれば別として。そういう商品なんですよね。

 ですから、国際社会で、それはそれで一つの規制のあり方を議論していただくのは結構だけれども、日本国内でも、やはり流通の規制なりリスク管理のあり方、これはもう早急に検討した方がいいと思いますよ。それについて、ちょっと御見解をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 一昔前までは、金融についても何についてもグローバル化だグローバル化だと言って、おくれているおくれているという話だった。ある意味では、私はそのツケの一つがこれだろうと思っております。

 細野委員はばば抜きと言いましたけれども、私はもっとひどい表現なので、ここでは言いませんけれども、まさに細野委員がおっしゃっているばば抜きという意味は、私はよくわかります。言いたいんですけれども、言えないところがつらいところでありますけれども。

 みんなが買っているうちはいいんですよ。ばば抜きでも何でもないんですよ、みんながハッピーなんですよ。でも、そんなのあり得ないので、一たんおかしくなっちゃうと、みんながばばを持っちゃうんだろうと思うんですよね。でも、みんながハッピーでいるなんていうのはあり得ないということは、過去の歴史においても、あるいはちょっと考えればわかるわけでありまして、これはこの前、ワシントンで世界銀行のボブ・ゼーリックが私に、これはもう心理学の世界だと言っておりましたけれども、どういう形で規制するのか。

 世界でやるなんてのんびりしたことを言っていないでとおっしゃいますけれども、これは世界で規制をしないと、日本だけ、こういう商品はこういうふうに規制するとか、ああいう商品はいいとか、こういうこともなかなか、このグローバル化してしまった、特に金融の世界では難しいかなと思いますけれども、お気持ちはわかります。

細野委員 確かに、一つの幻想をみんなで抱いて、その幻想をみんなが抱いている間はよかったんだけれども、これが幻想であったということに気がついたときにばらばらと崩れている。方向として、もう一回この幻想をもう一つ大きくしてつくるのか、もしくは、幻想はあくまで幻想であったので現実を見ようというふうにするのか、道は二つあって、当然、日本としては後者を選択すべきだと私は思うんですね。大臣もそのことは、御自身が専門家でいらっしゃるので、よくわかっていらっしゃると思うので、やはり国内でもやれることがあるということを私は申し上げたかったんです。

 こればかり話をしていると時間がなくなりますので、この法案の具体的な中身に入りたいと思うんですが、まず大臣、これは簡潔に御答弁いただきたいんです。

 今回の法改正で、現行法では入っていなかった信連や単協、JAに対する公的資金を、農中を通じて間接的に入れるという仕組みが導入されますね。まずお伺いしたいのは、従来はなぜ農協や信連は抜けていたのか、今回新たにこれが入った理由は何なのか。なぜ抜けていて、今回新たに入ったのか。そのわけを教えてください。

中川国務大臣 前半部分は私がお答えしますけれども、順番としては、なぜ前回抜けていたのかについては、ちょっと事務的に答えさせていいですか。

細野委員 通告していませんので答えていただきたいんですが。質問自体は通告しています、質問自体は通告していますし、政府委員登録していませんので。これは事前に、大臣向けにということできちっと通告しているんです。なぜ前回抜けていて、今回新たに導入されたのかというのは、これは技術的な問題ではなくて、この法案の、改正案の大きな論点の一つですから、答えていただきたいと思います。

中川国務大臣 失礼しました。いただいておりました。

 従来の制度では、信連は国による資本参加の対象としていたものの、個別の農協等についてはその対象とはなっていなかった。これは、農協等が信用事業以外の事業も取り組むことから、信用事業に着目した収益性の数値目標を設定させ、これを国が継続的にモニターをするとの組み合わせになじまなかったことによるものだということでございます。

細野委員 ありがとうございました。簡潔に御答弁いただきました。

 要するに、信用事業以外もやっているから、そこが信金とか信組と違ったので、そこに公的資金を入れることについては、前回まではこれはやってこなかった。今回から入れるというんですね。

 それで、今度私がここで問題にしたいのは、では、信用事業以外をやっている農協が、その事業に公的資金を流す可能性はないのかどうかということについて聞きたいんです。

 表を出しておりますので、ごらんください。これは、二日前に古本委員もお使いになった資料ですが、農林水産省の方で把握をしている、一組合当たりのそれぞれの事業における平均的な収益ですね。

 これは見ていただければ一目瞭然で、農協、これは単協ですが、信用事業と共済事業はもうかっているけれども、いわゆる経済事業と言われる農業関連はもうかっていなくて、生活その他、これは子会社も恐らく入っているんだと思うんですが、農協はいろいろやっていますね。ガソリンスタンドをやったりとか、セレモニーホールみたいなことをやっているところもありますし、いろいろなことをやっています。そういうものがマイナス、こういう状況なんですよ。ですから、これを見ると、単協の経営が悪化をしているのは、必ずしも信用事業で傷ついているわけではなくて、そのほかの事業で傷ついているところがむしろ多いんですね。

 まず、農水省にお伺いします、副大臣に来ていただいていますので。それぞれの単協においてそれぞれの事業ごとの区分経理が認められているのは、私存じ上げています、区分経理が義務づけられているのはわかっています。ただし、事業間の内部での補てん、これで補てんをすることは認められていますね。逆に、認められていないと農協は存続し得ませんから。これを御答弁ください。

石田副大臣 委員もお話をされましたように、経理は区分をされているわけです。しかし、農協というのは、一体として、信用事業、共済事業、または経済事業、生活関連といろいろなことをやっているわけです。総合的に実施をしているということで、これらの事業を通して農家組合員に最大の奉仕をする、こういうことが目的になっております。したがって、それぞれの事業が一定の規模を有して、かつ適正に行われていれば、事業間である程度の収支のやりとりが行われて、全体として単位の農協としての健全性が保たれる、これで目的が達成される、こういうふうに思っております。

 しかしながら、農業者の協同組織である以上は、農業関係の購買、販売などの経済事業が健全かつ着実に行われているということは重要である。

 以上です。

細野委員 内部補てんが認められていると。

 副大臣にお伺いをしたいのは、では、今回、特定の農協が公的資金を間接的に農中から提供を受ける場合に、信用事業以外のことに補てんをすることは、これはこの法律の趣旨からいって許されませんね。確認させてください。

石田副大臣 今回の法律の目的は、中小規模の事業者の金融の円滑化、こういうことが大きな目的になっておりますので、単位農協としてしっかりとそういう趣旨、目的に沿った形になれば、それはそれで法の目的に合致している、私はこう思います。

細野委員 副大臣、そこははっきり答えてください、税金を出すんですから。

 信用事業以外に使うことは法律の趣旨に反していて違反ですねということを聞いているんです。望ましいとかそういうレベルの話じゃないんです。答弁してください。

石田副大臣 これは、先ほど申し上げましたように、今回、中小規模の事業者に対する円滑化ということでやっているわけですから、これはその本来の目的が達成されるために、実際の融資をする場合はそれぞれ単位農協で動いているわけですね。ですから、そこのところで、単位農協での融資が行われなくなるということは、これは問題だと思いますけれども、それが直ちに法律違反だとか、委員のおっしゃることが法律に違反しているだとか、私はそうは言えないんじゃないかと思います。

細野委員 今、副大臣、非常に重要な答弁ですよ。今副大臣がおっしゃったことは、今回農協に、単協に公的資金が導入をされたら、信用事業ではなくて、例えば農協が持っている子会社のスタンドやセレモニーホールの赤字まで補てんできる、そういう答弁ですよ。

 これは、この法律の根本的な信用の問題、金融機能の強化ということと全く外れる答弁を今されたんですよ。副大臣、本当にそれでいいんですか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、農業協同組合は信用事業その他の事業を総合的に行っておるわけでございます。区分経理も実施しているわけでございますけれども、今回の新しいこの法律の枠組みにおきましては、農林中央金庫を中心といたします農協系統の資本支援機能について、これは先ほど金融庁の方からお答えがございましたけれども、この協同組織中央金融機関に対する支援システムは、その協同組織が持っております相互支援機能を使うということでございます。

 ただし、この相互支援機能について、農協の場合には、既に法律によりまして、農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律、いわゆる再編強化法、こういったものを使いまして、農林中央金庫からではなく、農林中央金庫を通じて、支援法人、こういった既にあります法的な枠組みを通して、これも従来から信用事業の再編強化という形でやっております。したがって、委員御指摘のような事態が生じないような法的な枠組みを用意しておりまして、そこに今回の支援システムを注入するということで措置をすることにいたしております。

 ですから、先ほど来申し上げておりますように、農業協同組合等に対して、信用事業を中心にしてやっているということでございます。

細野委員 全然答えていないんです。局長、もう一回だけ聞きます。簡潔に答えてください。

 このスキームでは、信用事業以外の農協がやっている業務に対して公的資金が導入をされることは法的に許されているのか許されていないのか、この法律でどうなんだということを聞いているんです。内部補てんは認められているというのは副大臣がさっきおっしゃったんだから、この法律に関して聞いています。

高橋政府参考人 この法律におきましては、基本的に、信用事業の再編及び強化ということが目的で、最終的には地域金融のいわゆる中小規模の事業者に対する信用供与ということでございますけれども、そこに着目をいたしますのは農協の信用事業ということでございます。(発言する者あり)

 もう一度お答えさせていただきますけれども、今回のこの法律、農協の場合には、別途、先ほど申し上げております再編強化法という法律がございます。その再編強化法、これは信用事業に着目して農協の支援を行うということでございます。これは信用事業でございます。したがって、そのスキームに今回の法律によります資金を供給するということですから、信用事業に対して出ていく、既にあります法的スキームに今回の法律によって公的資金を注入する、そのスキームに注入するということで、信用事業に行くということでございます。基本的に、ほかには行かないということでございます。

細野委員 ちょっとよくわからないんですが、では、再編強化法の何条何項でそこに行った資金というのが信用事業以外に行かないということが担保されているのか、御説明ください。

高橋政府参考人 まず、この信用事業再編強化法の目的でございますけれども、基本的スキームが信用事業の強化を図るための措置ということでございます。そして、そういうシステムに今回この新しい法律で資金を投入するわけでございますけれども、当然のことながら、そこに入れるのは、信用事業に着目した形で入れるわけでございまして、信用事業の強化措置に対して、今回の法律の目的である信用事業に着目した資金を投入するということで、他の事業には行かないという形になるわけでございます。

細野委員 条文を答えられないんですね。しっかりここを整理してきてください、これは重大なところですから。(発言する者あり)

 では、一回とめてください。

田中委員長 農水省、答えられるでしょう、高橋局長。(細野委員「さっきから同じことを聞いているから、一回とめてください」と呼ぶ)

 では、ちょっととめましょう。

    〔速記中止〕

田中委員長 速記を起こしてください。

 細野豪志君。

細野委員 では、どうやって信用事業に限定をするのか。信用事業以外に補てんをした場合に法律違反になるという根拠を簡潔に答弁してください。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正法におけます新たな第三十四条の三で、第一項でございますけれども、協同組織中央金融機関等が注入の申し込みをする場合は、機構を通じまして、次に掲げる事項であって金融機能の発揮に係るものを記載した協同組織金融機能強化方針、これを定めるということでございます。

 したがって、金融機能の発揮に係るということでございますので、当然のことながら、他事業の欠損の補てんに当たるものはこの方針には掲げることができない。したがって、先ほど以来委員がおっしゃられているような他事業の穴に充てることはできないということでございます。

細野委員 三十四条の三は私も読みましたが、大臣、これは大事なところなので申し上げますが、これは中央機関、すなわち農中がこういうふうにしますよという方針を書くということを書いているのであって、それ以外のことに使いませんということを担保する条文ではないんです。

 私も事前に何度も確認しましたが、農水省の基本的な認識は、ほかに補てんをすることも農協の機能を考えれば仕方がないですというのがもともとの考えなんです。今再編強化法の話をされましたが、今のは後からとった理屈であって、この法律とは関係ない話なんです。大臣、いいですか。

 それでは、この条文をよく読んでください。ほかに使えないということを、はっきり限定してそれを特定するものではありません。また、仮に百歩譲って、ここで投入をされる公的資金がそれに使われるとしても、大臣、いいですか、ここで事前に内部補てんが認められているんだから、事前もしくは事後に、信用事業には補てんをしてもらえるから今ほかの、例えば農業関係とか子会社で穴があいているから埋めておいて、こういう財務状況ですよというのを農協がやれるんですよ。

 これは、金融担当の大臣としてこんなことを許していいんですか。これを国民に対して、いや、公的資金は金融にきちっと使われていますよという、大臣、ここできちっと説明できないと、このスキーム自体破綻していますよ。大臣に答弁願います。

中川国務大臣 私は、一番最初に出てくる四条の中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化云々、随分そういうのが出てまいります。それから三十四条も今読みましたけれども、今何か農協の方の法律が出てきてしまったので非常に混乱しましたけれども、そもそもこれは公的資金を中小事業者に対して供給するための法律でございますから、だから、農協はいろいろな事業をやっていても、それが信用事業に行かずに何か購買事業へ行ってしまったり、生活事業へ行ってしまったりということは、これは国民の税金を使うという大変な目的から見ると絶対にあってはならないことでございます。

 したがって、仮にそういうことにならないようにチェックもしますし、それから半年に一遍のいろいろな検査であるとか、何か届け出を出してもらってチェックをするとか、そういうこと等々を含めて、絶対にそういうことがあってはならないようにしていかなければいけないと思います。

細野委員 大臣、精神論をおっしゃいましたが、では、個別の農協を金融庁は監査できますか、検査できますか。そういう権限は与えられていますか。

中川国務大臣 個別の農協は都道府県です。

細野委員 できないんじゃないですか。今、大臣、その前に検査しますとおっしゃったけれども、できないじゃないですか。

 そうなると、内部で補てんをすることを金融庁は防げない、そういう答弁ですよ、今のは。

中川国務大臣 だから、さっき申し上げたように、相互支援制度を活用し、しかも、お金を出す方の中央機関がもっと厳しくこういう体制の中でやっていくことが必要だということをさっき申し上げたわけであります。それを金融庁が監督するということであります。

細野委員 時間がなくなりましたからこれはきょうはやりませんが、大臣自身が、これは石破大臣が答弁されて、同じ認識だと思うんですが、農中自身は民間の金融機関だとはっきりおっしゃっているんですよ、民間だと。私は違うと思いますが、大臣は少なくともそういうふうにおっしゃっているんです。民間の金融機関が税金を預かって、そういうふうにやってくれることを期待しますなんというのは、法律論としてあり得ないし、政治的にもそんなことは国民には全く説明になっていませんよ。

 委員長にまずお願いしますが、少なくとも、どうやって内部の補てんを防ぐのか、法律的にどうやるのか、実務的にどういうふうに検査でチェックをするのか、これは共通見解を出していただかないと、とてもじゃないけれどもこんな法案は私は通せないと思います。きちっと見解を出していただきたいと思いますので、御回答をお願いします。

田中委員長 後刻、理事会等で十分協議をいたします。

 ただ、行政の方からも重ねて答弁していただければと思います。どうぞ。

中川国務大臣 おっしゃっている意味はわかりますので、政府としてきちっと考え方をもう一度整理してお答えしたいと思います。

細野委員 時間も少なくなってきましたので、では、もう少し民間だということについて。

 まず確認ですが、大臣、石破大臣の方から本会議で、農中は民間の金融機関なので、天下りの人の給料も、これも公表しませんという話がありました。私はこれは話にならない答弁だと思うんですが、まず確認しますが、民間だというふうに答弁をされる根拠は、私が資料の三枚目で示した臨調の第五次答申に書いてある三つの条件、すなわち、国が出資をしていないこと、役員の選任が自主的に行われていること、運営が国等の補助金に依存していないこと、この三つの条件だという理解でよろしいですね。イエス、ノーでお答えください、農水省。

高橋政府参考人 おっしゃられるとおりでございます。

細野委員 もう一枚めくっていただきたいんですが、まず、二つ目の役員の選任です。歴代の農林中金の理事長はすべて農水の事務次官です。これは全部自主的に本当に決めたんですか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 農林中央金庫につきましての役員の選任につきましては、これまで変遷があるわけでございますけれども、昭和三十六年以降につきましては主務大臣の関与というものはございません。基本的に、会員であります農協、漁協等から直接選ばれた、あるいは総代で選ばれた経営委員によります決議によって決められるということでございます。

細野委員 今の上野理事長、きょう午前中来られていましたが、この方は、農林中金の理事長になる前に農林漁業信用基金の理事長をやられています。大臣、よろしいですか。農水省をやめた後に農林漁業信用基金の理事長に就任をして、ここで一年ウエーティングポストについてから理事長になっているんですね。

 その前の角道謙一理事長、この方も、農中の理事長になられる前に同じ農林漁業信用基金の理事長をウエーティングポストで経験をされています。

 これは偶然ですか。このお二人がこの漁業の基金のところにたまたま行かれて、その後たまたま請われて農中の理事長をやられたと。これは役員を本当に自主的に決めていると大臣、思われますか。

中川国務大臣 たしか、残念ながら、私、十年前と二年前に農水大臣をやりましたけれども、直接そのときの人事ではないと思いますので、何ともコメントは控えたいというふうに思います。

細野委員 どこもそうなんですけれども、大臣、トップが天下りで来ることが決まっている組織というのは、中の職員の、本当にこの組織を何とかしていこうという、最後に社長になれないわけだから、これはやる気をそぐんですよね。私は、こういう部分は中川大臣はかなり危機意識を持っておられて、こういう問題には厳しくこれまで対応してこられたと思います。だから、わかっていらっしゃると思う。この組織は民間の機関ではありません。はっきり農水省が、基本的な監督権限のもとに、大物次官を送り込んで十年間仕事をやらせる、そういう機関なんですよ。

 もう一つ。民間法人の要件として、三つ目、運営が国の補助金等に依存しないことというふうに書かれていますが、これも農水省に確認をしますが、農中の傘下にある農協、信連はさまざまな補助金を毎年のように受け取っていませんか。農水関係の予算はその配下にある単協であるとか信連を通じて出ている。これを確認させてください。

高橋政府参考人 農協、漁協等は、農林中央金庫とは別法人の立場でそれぞれの事業の補助金を受けているということでございます。

細野委員 午前中も上野理事長が盛んに、農中というのは単独の組織ではないんです、JAグループとして一体としてやっているんですとさんざん強調されましたよ。そして、単位農協と信連で集めたお金をここで運用しているんでしょう。組織として補助金を受け取っているじゃないですか。これは否定できますか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 午前中に理事長が御答弁いたしましたのは、信用事業について、農林中央金庫、信用農業協同組合連合会、そしてそれぞれの単位農協が一体的な事業運営を実施しているということでございます。信用事業の関係につきましては、国からの補助金というものは出ておりません。

 先ほど来委員御指摘のものは、総合事業として経済事業等で出ているものでございます。

細野委員 局長はわかっておっしゃっているんだと思うんですが、なぜ農協にこんなにお金が集まるのか、理由があるんですよね。農協が農水関係の補助金の受け皿であり、農家にとって欠かせないものだから、そこにお金が集まるんですよ。組織として補助金に依存していて、そこでお金を集めて、それを運用しているのが農中じゃないですか。一体としてやっているからここにお金が集まるんでしょう。これは否定できますか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと手元に詳しい資料がございませんけれども、農業協同組合に対する補助金につきましては、大きく分けて二つございます。一つは、農家あるいは漁家等に最終的には帰属するものについて農協という組織を経由していくものと、もう一つは、例えば、先ほども御指摘がございましたけれども、農業の共同利用施設、農家のための共同利用施設を農協等が設置をする、それに対して補助金を助成するということでございまして、先ほど来申し上げておりますように、そういう農業生産に係るものを通じて農家組合員が生産をする、その生産物の販売等によります販売金額についてが預貯金等として回ってくるものでございます。

細野委員 大臣に確認をしたいんですが、私、民間であるということを考えるときに、もう一つ臨調のにあえてつけ加えるとすれば、参入が自由化されているということがあると思うんですよ。民間であれば、例えば新たな参入機会が認められていて競争環境にあるところは、これはまさに民間ですね。農中の場合、それもないですね。農協から集まるお金に関してはすべて自動的に農中に集まる形になっている、そういう法律構成になっていますから。

 このことも含めて大臣にこれは確認の答弁をしていただきたいんですが、この臨調による条件、そして実質的なもの、役員の問題、補助金漬けの問題、参入機会がないということ、本当に農中は民間金融機関だとこの実情を見て大臣は思われますか。中川大臣に伺います。

中川国務大臣 逆に細野委員に、では民間の定義とは何ですかとお聞きしたくなるぐらい議論を聞いていましたけれども、私は、単協はもちろん民間ですし、信連も民間ですし、農中もそういう意味では民間だ、そして、お金の流れの中で、農中が下から上がってきたお金を運用しているということだと思います。

 ただし、以前は、農中というのは、特に農業関係者のお金を預かっているということもあり、農林水産省とやはり非常に近い。今でももちろんいい意味で近いというふうには私は思っておりますけれども、過去においていろいろな、全体の行革だとか民営化だとか、いろいろな議論の中で、私は農中が民間としてきちっとやっていかなければいけないと思いますけれども、過去においては相当農林省が農中に対して影響力を及ぼすということも、ほかの例も多々あったと思いますけれども、ひょっとしたら農中においてもあったのかもしれません。

細野委員 最後に、もう時間が来ましたので、お許しをいただいて一問だけ。

 大臣、私は、農中という組織は官の関与の極めて強い、公的の色彩の強い組織だというふうに思います。そこに公的資金を導入する可能性というのがそんなに遠くない将来に来る可能性もあるというふうに見ています。

 最後にお伺いをしたいのは責任問題なんですが、実は住専のときも同じような議論があったんだけれども、さっき鈴木克昌委員が質問された、実は農中を初めとした農協系統のものについて公的資金が導入をされた。ところが、改めて驚くんですが、公的資金が導入をされて、税金が投入をされたんだけれども、理事長さんはそのまま居座っておられますね。やはりこの政治力、それも含めて、それは農中というのはすごい力を持っているんですよ。

 少なくとも公的資金が導入をされたときには当然理事長は責任をとるべきである、その責任は少なくとも免れないと私は思いますが、大臣、そこを御答弁いただきたいと思います。

中川国務大臣 この法案の審議の中で、責任の議論が随分ございました。前回は、もう少し具体的になるようにルールを決めてお示ししたいということを申し上げました。

 したがいまして、一般論としては、経営責任というものは一律に問われるものではないというのがこの法律の規定でございます。

細野委員 住専のときも、結局、母体行なんかは責任があるからといって、それでおやめになった方が多いですよね。そのときも農中は、いや、住専のことに関しては責任を持っていませんからと逃げ切ったんですよ。今回も、午前中の上野理事長の答弁を聞いていると、いや、世界的な金融危機ですからそのときはしようがありませんみたいな答弁がありましたね。

 また、これだけ投機にそれこそ突っ込んだ農中が、結局、そういう外的な要因でそうなったんだということを言いわけにして逃げ切る可能性があるな、今率直に大臣の答弁を聞いてそう感じました。我々は、そういうことは絶対許さないということをはっきり申し上げておきたいと思います。

 以上で終わります。

田中委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず、金融機能強化法の仕組みについて確認をしたいと思います。

 この法案では、資本注入の資金、これは預金保険機構が政府保証によって調達し、最終的な損失が出た場合は税金で負担する、そういう仕組みになっております。利益が出ればいいけれども、損失が出たら最終的にツケが国民に回る、そういう仕組みだというふうに理解をしておりますが、この点、もう一度確認したいと思います。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 資本注入に係る資金は預金保険機構から調達をいたしておりまして、預金保険機構は政府保証に基づきまして資金調達をするということで運営をされておりますが、委員御指摘のとおり、損失が発生をいたしまして返済ができないということになりましたら、最終的には政府の負担ということになろうかと思います。

佐々木(憲)委員 そこで、アメリカの緊急経済安定化法、これはどういう仕組みになっているかということを確認したいんです。

 この法案は十月一日に上院で可決されまして、十月三日には下院を通過し、即日成立をしております。この緊急経済安定化法では、報道等によりますと、不良債権等の買い取りや資本注入などに利用できる資金として最大七千億ドルの権限を財務長官に与えております。すぐに使えるのは二千五百億ドルだけでありまして、その後、大統領が必要と判断した場合にはさらに一千億ドルの支出が可能となっています。しかし、それを超える三千五百億ドルについては議会の承認が必要だということで、議会に要請して十五日以内に否認されたら執行できない、こういう仕組みだというふうに思われますが、こう理解してよろしいですね。

内藤政府参考人 米国の緊急経済安定化法でございますが、不良資産救済プログラムを通じまして最大七千億ドルの不良資産の買い取り権限が政府に与えられていると承知しております。

 その内訳といたしまして、法案成立時に二千五百億ドルの買い取り権限が財務長官に付与され、財務長官の権限行使に当たり追加資金が必要であると大統領が承認した場合には、この買い取り権限に千億ドルが追加され、その後、大統領が財務長官の買い取り計画に関する報告書を議会に提出し、十五日以内に合同決議がなされた場合には、残りの三千五百億ドルの買い取り権限が財務長官に与えられるものと承知をしております。

 なお、現時点では、十月十四日に大統領が一千億ドルの追加を承認しておりますことから、財務長官の買い取り権限は三千五百億ドルとなっているものと認識しております。

佐々木(憲)委員 基本的には私が言ったとおりだと思うんです。

 そこで、次に問題は、買い取った不良資産を処分する、あるいは資本注入で手に入れた株式等を売却して五年後になお損失が出た場合、それはどうなるのか。損失は直ちに財政負担となる、そういう仕組みになっているんでしょうか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 米国の緊急経済安定化法では、その施行から五年が経過した段階で、行政管理予算局長が議会予算局長と協議の上、同法に基づく不良資産救済プログラムを通じまして政府が保有することとなった金融資産の純資産額を議会に報告することとされております。

 なお、その際、万一欠損が生じていた場合には、大統領が金融業界に当該欠損額を求償する法案を提出する旨の規定が盛り込まれているものと承知しております。

佐々木(憲)委員 今の説明では、最終的に欠損が生じた場合、損失が生じた場合は、五年後にこの金額について確定をして大統領が法案を提出する、その場合、財政負担にならないように銀行業界に負担を求める、こういうものになっているということでよろしいですね。

内藤政府参考人 金融業界に当該欠損額を求償する法案を提出する旨の規定が盛り込まれているということでございます。

佐々木(憲)委員 このアメリカの法律は、日本が今金融機能強化法を提案しておりますが、最終的な損失の処理の仕方が根本的に違うんです。

 アメリカでは、あれだけ大変な金融危機が発生をして、それに対して対応しなきゃならぬ、一定の財政負担を当面はする、しかし、五年後にこの損失が残っていた場合には、最終的には銀行業界にその負担を求める、こういう仕組みになっているわけです。大統領がそういう法律を提出できる、こうなっているわけです。

 この点では日本は、最初に確認しましたけれども、損失が出たら、これは全部丸々、即、いわば財政負担、国民負担というふうになる。これはやはりアメリカと日本の違いだと思いますけれども、財務大臣、この違いというのはお認めになりますか。

中川国務大臣 アメリカにはアメリカのやり方、日本には日本のやり方でやります。

佐々木(憲)委員 したがって、日本はアメリカとは随分違って、国民負担が簡単に発生する、そういう法案を提案されているということが確認されました。これ自体、私は非常に重大な問題だと思いますよ。やはり国民負担がない方法だって考えられるわけでありまして、それを選択しなかったというのは、私は根本的にこれは容認できないシステムであると思っております。

 次に、金融機能強化法案の資本注入の対象でありますが、地域金融機関の範囲についてであります。これは、ノンバンクというのは適用の対象外というふうに考えてよろしいですね。

谷本副大臣 金融機能強化法は銀行等の預金等取扱金融機関を対象としておりますので、ノンバンクは対象とはなっておりません。

佐々木(憲)委員 金融機能強化法の中心的な目的は、中小企業金融の円滑化を図るということであります。これは、簡単に言いますと、大臣、貸し出しをふやすということ、あるいは貸し出しを少なくとも減らさない、そういう目標を持って当たるということだと思いますが、そう理解してよろしいですね。

中川国務大臣 その金融機関の取引先のニーズにできるだけこたえるということだと思います。

佐々木(憲)委員 ニーズにこたえるということは、中小企業に対して親切に対応し、融資を拡大する、あるいはそう簡単に引き揚げるというようなことはしない、こういうふうに理解してよろしいかと思います。

 さて、そこで、この中小企業向け貸し出しでありますが、例えば、毎年、大幅に貸し出し計画を減らす、そういう計画を持っている、こういう銀行の場合は、当然そんなのは注入の対象にならないと思いますけれども、いかがでしょうか。

内藤政府参考人 金融庁といたしましては、国の資本参加後においては、当該金融機関の中小企業向け貸し出しの円滑な方策等の実施状況について、定期的にフォローアップを行うこととなっております。仮に計画の履行に改善が見られない場合には、報告徴求によりまして原因を精査いたしまして、さらに改善の努力が認められないという場合には、必要に応じて計画を履行するための監督上の措置を講ずるということにしております。

 なお、具体的な方策につきましては、今後の政府令等の作業の中で検討していくこととなっておりますけれども、その際には、現行の実務におきまして、中小企業向け貸し出しの総資産に占める割合が計画の始期を下回る場合には、業務改善命令の発動をも検討するということを考えておりまして、今後、中小企業向け貸し出しの水準が適切に確保されるような制度、運用となるよう検討を進めてまいりたいと考えております。

佐々木(憲)委員 中小企業向け貸し出しの金額全体が毎年毎年減るような、そういう計画を持っている銀行、あるいは貸し出しの比率がどんどん低下するような、そういう銀行というのは、これは当然最初から注入の対象にならないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

内藤政府参考人 今回の金融機能強化法案の提出の大きな理由といたしましては、やはり世界の経済、金融が激変をいたしまして、それに基づく大きなダメージを受けたということに対して、放置しておりますとさまざまな悪影響が生じる、これを改善し、さらによくしていこう、中小企業金融の円滑化を図っていこうというのが趣旨でございます。

 そういう観点から、先ほど申し上げましたように、金融機関の状況について常に密接にフォローアップをしまして、問題があればこれを是正していく、そういう対応をとっていきたいということでございます。

佐々木(憲)委員 質問に答えていないんですけれども。

内藤政府参考人 もう少し申し上げますと、現行の監督指針における監督上の措置におきましても、経営強化計画に盛り込まれた指標が、これは中小企業向け信用供与の総資産に占める割合でございますけれども、これが経営強化計画の始期を下回った場合に、まず一期目の場合には報告徴求ということで、必要に応じて業務改善命令の発動を検討する。二期目につきましては……

佐々木(憲)委員 そういう意味ではなくて、それは注入後の、要するに、経営計画を出させた後の対応でしょう。それを聞いているんじゃないんです。本来この金融機能強化法の対象となるべき金融機関というのは、中小企業に対する貸し出しをどんどん減らすような銀行、最初からそんな計画を持っている銀行というのはまれだと思いますけれども、そんなところは対象にならぬということだということはどうなんですか。

内藤政府参考人 申請時におきましては、私ども現在検討しておりますのは、例えば四%の基準の未達行におきまして、従来であれば一律に経営責任を求めるというような取り扱いでございましたけれども、今回は、例えば内生的な要因でそういった状況に陥ったのか、あるいは外生的な要因で陥ったのかというようなことを分析いたしまして、仮に内生的な問題で陥ったという場合には、やはり経営体制というものが責任ある形で確立しているかどうかということを精査いたしまして、それがそうであるならば申請に乗ってくるというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 大体、質問にまともに答えないのはけしからぬよ。そんな話を聞いているんじゃないでしょう、私は。私は、なぜこんな質問をしたかというと、新銀行東京を念頭に置いているからなんです。

 地方自治体が支配株主となっている金融機関というのは全国に何行ありますか。これは初歩的なことですから答えてください。

内藤政府参考人 一行だけでございます。

佐々木(憲)委員 極めて特殊な銀行でありまして、この新銀行東京は、石原都知事が二〇〇三年の知事選挙で設立を公約し、東京都が一千億円を出資して二〇〇五年四月に開業したものです。当時、自民、公明、民主がこの設立に賛成しております。しかし、赤字決算が続いて、ことし三月決算では累積欠損が一千億円を超えております。この春に多くの反対を押し切って、自民、公明が賛成して四百億円もの追加出資を決めた。極めて異常な事態であります。

 経営陣に知事側近の副知事が送り込まれており、知事がつくらせたマスタープランによって高利の預金と無謀な融資拡大を行ってきた。その結果、欠損がどんどん累積したということであります。一年で九十二億円、二年目七百五十七億円、三年目百六十七億円。開業三年目で累積欠損が資本金の八五%、千十六億円に達しているわけです。

 有価証券などの資金運用による損失も巨額なものであります。四百億円の追加出資のほとんどは、リスクの高いファンド事業、それのために使われた、そういうふうに言われておる。

 この新銀行東京というものは、もはや銀行としての体をなしていないと私は思いますけれども、大臣、どのように思いますか。

中川国務大臣 金融監督行政のルールにのっとって見てまいりたいと思います。

佐々木(憲)委員 この金融監督行政のルールだけれども、検査はこの前やったそうですが、中身はまだ公表されておりません。

 十月二十七日になりますと、融資を行う際業者の決算書類を改ざんし、五千万円を不正にだまし取ったということで、元行員と不正融資を受けた業者が詐欺容疑で逮捕されております。銀行の内部調査で不正が疑われる融資が三十件以上も見つかった。政治家や議員秘書らの口ききも取りざたされております。

 再建計画が出ておりますが、この計画自体が大問題で、融資対象は、この三月一万三千社、これをどんどん減らしていく、六千社に減らす、二分の一以下に削る計画になっておりまして、新規の融資拡大はほとんどありません。

 石原知事は、発足当時、こういうことを言っていたんです。何でもかんでも困っている中小企業にお金を貸すわけにはいかない。この間インタビューなどで、お魚屋さんだか八百屋さんだか、うちには貸してくれないと言うが、それはそんなところには貸せないよ、商店街つぶれつつあるんだからと。まあ驚くべき発言でありますが、こんなことを言って、何のための銀行なんでしょうね。

 しかも、預金が、最初高利で四千億円集めた。計画では、その預金はどんどん減らしていく、二百億円に減らす、二十分の一に減らすというんですよ。資金の調達先は、有価証券の運用、こういうところに偏っている。事実上、これはノンバンクであります。投資組合化しているとも言われておりまして、店舗が六店舗あったのが一店舗になる。初めからこんな銀行は公的資金の対象になるわけがない。

 大臣、こういう要件を欠いているようなところは最初から対象にすべきじゃないんじゃありませんか。

中川国務大臣 この法律ができ上がった後のいろいろなルールもさらに細かくつくって、そのルールどおりにやっていきたいと思います。

佐々木(憲)委員 大体、こんなところに公的資金を投入するのは私は間違いだと思うんですよ。税金をどぶに捨てるようなものだとも言われているんです。

 したがって、金融庁は厳しくこういうものに対応すべきだということを最後に申し上げまして、終わります。

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時一分散会


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