衆議院

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第4号 平成20年11月4日(火曜日)

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平成二十年十一月四日(火曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 田中 和徳君

   理事 江崎洋一郎君 理事 木村 隆秀君

   理事 竹本 直一君 理事 山本 明彦君

   理事 吉田六左エ門君 理事 中川 正春君

   理事 松野 頼久君 理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    江渡 聡徳君

      小川 友一君    越智 隆雄君

      亀井善太郎君    後藤田正純君

      佐藤ゆかり君    清水清一朗君

      鈴木 馨祐君  とかしきなおみ君

      中根 一幸君    林田  彪君

      原田 憲治君    平口  洋君

      平沢 勝栄君    広津 素子君

      松本 洋平君    宮下 一郎君

      盛山 正仁君    安井潤一郎君

      池田 元久君    小沢 鋭仁君

      大畠 章宏君    階   猛君

      下条 みつ君    鈴木 克昌君

      古本伸一郎君    和田 隆志君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      野呂田芳成君    中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       中川 昭一君

   内閣府副大臣       谷本 龍哉君

   財務副大臣        竹下  亘君

   農林水産副大臣      石田 祝稔君

   内閣府大臣政務官     宇野  治君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  内藤 純一君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    畑中龍太郎君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    三國谷勝範君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            横尾 英博君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月四日

 辞任         補欠選任

  小川 友一君     清水清一朗君

  関  芳弘君     安井潤一郎君

  三ッ矢憲生君     平沢 勝栄君

  山本 有二君     江渡 聡徳君

同日

 辞任         補欠選任

  江渡 聡徳君     山本 有二君

  清水清一朗君     小川 友一君

  平沢 勝栄君     三ッ矢憲生君

  安井潤一郎君     関  芳弘君

    ―――――――――――――

十一月四日

 保険業法の適用除外を求めることに関する請願(松野頼久君紹介)(第一五四号)

 保険業法を見直し、団体自治に干渉しないことに関する請願(村井宗明君紹介)(第二三五号)

 同(古賀一成君紹介)(第二六三号)

 計理士の公認会計士試験免除に関する請願(やまぎわ大志郎君紹介)(第二六二号)

 投機マネーを規制し、減税措置を行うなど経営と暮らしを守ることに関する請願(河村たかし君紹介)(第二八〇号)

 同(古賀一成君紹介)(第二八一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二八二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二八三号)

 同(鈴木克昌君紹介)(第二八四号)

 同(村井宗明君紹介)(第二八五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案、保険業法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局長内藤純一君、検査局長畑中龍太郎君、監督局長三國谷勝範君、農林水産省経営局長高橋博君及び中小企業庁事業環境部長横尾英博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石原宏高君。

石原(宏)委員 自由民主党の石原宏高です。金融機能強化法に関しまして質問をさせていただきます。

 少し前振りが長くなりますので、お許しをいただきたいと思います。

 現在の経済は、百年に一度の暴風雨が吹き荒れております。米国のサブプライム問題に端を発した今回の金融危機は、グリーンスパン元FRB議長の言葉をかりるまでもなく、まさに百年に一度の危機であります。

 この金融危機は、もともと遠い異国の米国の金融機関で発生した問題でありましたが、今や、急激な株価の下落を通じ、我が国の金融や実物経済にも影響を及ぼしつつあります。

 中小零細企業の経営者にとっては、みずからの非があるわけではないにもかかわらず、地域の実体経済の悪化や地域の金融機関のリスクテーク能力の低下を通じ、現在そしてこの年末に向けて大変厳しい状況を強いられています。

 こうした状況の中で何よりも大事なことは、全国の企業の事業所ベースで約九九%を占めていると言われている中小零細企業の経営者の方々の暮らしの不安を取り除くことだと思います。

 政府・与党は、先月の三十日に、国民のための経済対策を発表させていただきました。その中の柱の一つに、中小・小規模企業等支援対策があります。中小企業の資金繰りをより万全なものにするために、緊急信用保証枠と政府系金融の緊急融資枠を合わせて三十兆円まで拡大しました。こうした予算措置を伴うものに加えて、中小・小規模企業向け融資の貸し出し条件緩和が円滑に行われるための措置と金融検査における徹底という項目が対策として打ち出されました。

 中小企業の資金繰り対策としては、これまで予算措置を伴う資金繰り支援が中心でありましたが、やはり民間金融機関による金融仲介能力の強化も重要であります。中小零細企業の経営者の方々に聞きますと、新規融資が受けられないという悩みもありますが、過去の借金の返済が厳しく、条件緩和をしてもらえば楽になるのに、金融機関は条件緩和をすると不良債権になると言って応じてくれないという声も強いわけであります。

 今回の経済対策では、まさにこうした中小企業の声に応じるような中小・小規模企業向け融資の貸し出し条件緩和が円滑に行われるための措置と金融検査における徹底という新機軸が打ち出されました。

 先週の金曜日、民主党の松野委員の質問と重複してしまいますけれども、改めてお伺いさせていただきたいと思います。経済対策として打ち出される中小・小規模企業向け融資の貸し出し条件緩和が円滑に行われるための措置と金融検査における徹底とは具体的にどのような内容でしょうか、お伺いいたします。

谷本副大臣 石原委員の御質問にお答えさせていただきます。

 もう委員御指摘のとおり、現状、中小企業は非常に経営環境が厳しい状態にございます。そういう中で、今委員が指摘されたように、確かに融資枠を拡大して新規の融資をできるように努力する、このことも非常に大事ではありますけれども、同時に、言われたように、今既にある借金の返済の条件を緩和してそれに柔軟に対応していく、このことも非常に重要であるというふうに考えております。

 そういう中で、今回の対策におきましては、監督指針及び金融検査マニュアルを改定しまして、中小企業向け融資に関して、今までは、貸し出し条件を緩和した場合に、大抵の場合、不良債権、貸し出し条件緩和債権ということになってしまう、そうならない場合の要件を緩和しようということで対応いたしました。

 具体的には、現状では、貸し出し条件の緩和というのは、三年後に経営改善が完了するような経営改善計画が必要、この場合には不良債権にはしない、この部分を、今般の改定において、経営改善に時間がかかるという中小企業の特性を踏まえて、まず、中小企業についてはこれを三年から五年に緩和をする、また、経営改善がおおむね計画どおり進捗している場合には十年まで緩和するというふうにしております。

 また、今回の監督指針には、金融検査マニュアルの改定を実効あるものとするためには、金融機関による柔軟な対応に加えて、金融検査監督の現場において適切な対応が確保されることが必要不可欠だと考えております。したがって、財務局を含めたすべての検査官、監督担当官に対して、当該施策の趣旨を徹底すべく、今週中に大臣より文書で御提示いただくこととしております。さらに、金融機関に対し、条件緩和への対応を含めて中小企業の実態を踏まえた柔軟な対応をより一層徹底していただくよう、今週中に各金融団体に対して要請文を発出することとしております。

 これらの取り組みによって、民間金融機関による対応を促すとともに、金融行政の現場の職員に対する徹底を図ってまいりたい、このように考えております。

石原(宏)委員 麻生総理も常々、経済は全治三年とおっしゃっているわけですけれども、三年後に景気が上向きになったとしても、それまでの損失を挽回するためにはもう少し時間が必要だと思います。

 特に中小企業の場合はどうしても、大企業のようにリストラの余地も少なくて、経営改善に時間がかかりがちでありますから、三年の経営改善計画というのは今までは大変厳しかったのではないかと思います。その点、五年間の計画でよいということであれば、中小企業にとっても無理のない計画を作成できることになり、金融機関も中小企業の経営改善支援のための条件変更に柔軟に応じることができるようになるのではないかというふうに感じております。

 次に、この措置の効果について、金融庁としてはどのような効果が期待をされているか、そのことについてお伺いいたします。

谷本副大臣 金融機関が条件緩和、例えば返済期間を延長する、あるいは金利の減免を行う、こういうものを行った場合に、これまで、貸し出し条件緩和債権に該当した場合には、不良債権比率が上昇するほかに、貸倒引当金の引き当て率が高くなる、こういう状況がございました。このため、今までは金融機関が返済期間の延長や金利減免等に応じにくいという事情にあったと思います。

 今回の措置により、金融機関は、借り手に対する貸し出し条件の緩和により柔軟に応じることができるようになるというふうに考えております。

 今回の措置について、金融機関や経営改善支援機関の実務担当者からヒアリングを行ったのですが、そこでは、例えば、今回の措置は画期的で効果は非常に大きいというふうな意見や、あるいは、中小企業の場合三年で経営改善が完了するためには大きな金融支援が必要となる場合が多く計画策定が困難になっていた、これを緩和するのは実務に沿ったものであるといった意見、あるいは、三年を超える計画期間だと不良債権になることを理由に計画策定の協議に応じてくれない金融機関もある、今回の措置により協議に応じてもらいやすくなる、こういった意見が寄せられておりました。

 こうしたヒアリング結果を踏まえれば、中小企業の経営改善計画の策定と金融機関による条件緩和に対する取り組みがこれまで以上に促進され、中小企業金融の円滑化が進むものと期待をしております。

石原(宏)委員 金融機関の実務者の方からも前向きな反応があるということで、ぜひとも柔軟な対応が行われることを強く期待をいたします。

 また、条件変更に際して、経営改善計画というものが前提になっているというふうに聞いておりますけれども、中小企業の場合、精緻な経営改善計画を策定できないケースというのも間々あるんじゃないかと思うんですが、この経営改善計画というのは具体的にどのようなものが必要なのか、金融庁にお伺いいたします。

畑中政府参考人 お答えを申し上げます。

 一般的に、中小企業につきましては、御指摘にありましたように、大企業のように大部で精緻な経営改善計画を策定することは困難である、そういう事情がございます。したがいまして、貸し出し条件緩和債権に該当しないための経営改善計画につきましては、こうした中小企業の特性にも十分配意をし、形式的な意味での計画が策定されていない場合であっても、経営改善の見込みが確認できれば、これを経営改善計画と同じように取り扱うことにしたいと考えております。

 具体的には、債務者が経営改善計画を策定していない場合であっても、例えば今後の資産売却予定でありますとか役員報酬や諸経費の削減予定等、こういったものが確認される場合、あるいは債務者の実態に即して金融機関が作成、分析した資料によって経営改善の見込みが確認できる場合、こういった場合でも足りることにしたいと考えておりまして、この点、今回改定をいたします検査マニュアル別冊に留意事項として記載をしたいと考えております。

 また、こうした取り扱いが適切に運用されますよう、検査官、金融機関に対して周知徹底を図ってまいりたいと考えております。

石原(宏)委員 ぜひとも柔軟な対応をしていただきたいというふうに思います。

 次に、中小企業庁にお伺いしたいと思います。

 これまでの金融機能強化法の当委員会の質疑の中で、政府は、九〇年代後半の日本の金融危機に際して、公的資金の注入等さまざまな施策を講じてきたのに、中小企業向け貸し出しが減ってきているとの指摘がございました。

 理事会の許可をいただきまして、資料を皆様のお手元に配付させていただきました。中小企業庁からいただいた資料と民主党の松野委員の資料を使わせていただきまして、私の方で作成いたしました。確かに、中小企業貸し出しは、この棒グラフのように減少傾向であります。しかし同時に、中小企業数も減少をしております。

 中小企業庁は、中小企業貸し出しが減少している理由をどのように判断されているのでしょうか。私は、金融機関の姿勢の問題もあると思いますけれども、中小企業の数や中小企業の経営者の設備投資意欲とか、そして、一部かもしれませんが、私の知り合いのIT関係の方々に聞くと、IT関係の新規の会社は、銀行借り入れに頼らないで、出資、エクイティー重視の企業といったものも存在するというふうに聞いております。複数の要因から中小企業貸し出しの減少というのが起こっていると私は思うんですけれども、中小企業庁の見解をお伺いいたします。

横尾政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のようないろいろな要因があるかと思いますが、中小企業向けの貸出残高は、減少していたものが、今回の景気回復局面では増加に転じまして、昨年の夏ごろまでは増加をしておりました。これが、昨年九月からまた減少傾向に入っております。

 この要因としては、やはり原油、原材料高、あるいは建設着工のおくれなどを背景にしました業況の悪化が挙げられるかと思います。また、ここ数年改善しておりました借入難易度に関するいわゆるDIも、昨年の夏以降、悪化をしておりまして、金融機関が融資に慎重な姿勢を示しているというふうにも考えられます。

 さらに、今後、国際的な金融不安、円高・ドル安など、中小・小規模企業をめぐる経済環境は一層厳しくなっておりまして、年末の資金需要への対応も含め、万全の措置を講ずることが必要であるというふうに考えております。

石原(宏)委員 貸出残高だけが減っているから金融機関に問題があるというふうに短絡的に判断をするのは間違っているんじゃないか、やはり複合的な要因をしっかりと考えて判断をしなければいけないのではないかというふうに私は思います。

 次に、当法案とは直接は関係ありませんけれども、金融安定化策の一つであります信用保証協会のセーフティーネット制度について少しお伺いしたいと思います。

 従来のセーフティーネット制度に加えて、十月三十一日から緊急保証制度がスタートしましたが、どのような状況の企業が従来のセーフティーネット制度の対象であり、また緊急保証制度によりどのような状況の企業が新たに対象になったのか、お聞かせいただきたいと思います。前の委員会の質疑の中で五百四十五業種というような話は聞きましたけれども、そうではなくて、会社の、企業の状況みたいなことについてちょっと説明をしていただきたいと思います。

 また、保証限度額や、今説明をさせていただきましたセーフティーネット制度の対象になる企業について、中小企業の経営者の方々が情報を得る方法として、中小企業庁のホームページとか、またいろいろなところに相談窓口ができるのではないかと思いますけれども、そのことについて御質問をさせていただきます。

横尾政府参考人 お答え申し上げます。

 先週十月三十一日より開始をいたしました緊急保証制度におきましては、従来のセーフティーネット保証の対象でありました売り上げ減少あるいは原油価格高騰の影響を受けている業種に加えまして、新たに原材料、仕入れ価格の高騰を受けている業種を加えました。その結果、建設業、各種製造業に加えまして、食品加工、飲食、卸、小売など五百四十五の幅広い業種を対象業種として指定しております。

 この対象業種に属する企業におきまして、例えば、平均の売上高、最近三カ月間で前年同期比マイナス三%、あるいは三カ月間の売上総利益率または平均営業利益率が同様にマイナス三%以上減少しているといった中小企業者の方が対象になるところでございます。

 また、制度の内容につきましては、これまで数十万枚のビラを作成いたしまして、中小企業団体あるいは地方公共団体などを通じて配布をしておりますし、新聞広告などの政府広報、それから私どものホームページでも周知をしております。

 加えまして、実際に御利用いただく方に対しては、制度の窓口であります信用保証協会、それから市区町村、それと商工会議所、商工会など、全国九百カ所に緊急相談窓口を設置して、説明、普及をする体制を整備しているところでございます。

石原(宏)委員 済みません、ちょっと今のにつけ加えてお伺いしたいんですけれども、クリーニング屋さんの集まりに行って、実は十月一日から溶剤が、今までは大体一五%ぐらいしか上がらなかったのが二六%上がったという話を聞きまして、大分燃油も下がってきているのになぜ上がったのだろうといっていろいろと聞き回ったりしたんですけれども、十月に二六%上がると、今言われた三カ月という要件みたいなものが厳しくなると、年末に借り入れたくても間に合わなくなってしまうんです。

 こういう、例えばクリーニング業界のように溶剤が十月一日に二六%上がった、過去三カ月をやるとどうなるかというときに、その辺は柔軟に対応していただけるのかどうか、ちょっと質問をさせていただきたいと思います。

横尾政府参考人 先ほど申し上げました、最近三カ月間で、例えば売上総利益率または平均営業利益率が前年同期比マイナス三%以上の中小企業者ということでございますが、算出困難な場合には直近の決算期も使ったり、柔軟にしていきたいというふうに思っております。

石原(宏)委員 そういうふうに、各業種によって急に原材料が上がっているような業種もありますので、ぜひとも柔軟に対応していただきたいと思います。

 再度、金融庁にお伺いしたいと思います。

 本案の審議の中で、新聞報道でもされておりますけれども、新銀行東京に対する資本注入の可能性について野党の皆さんが懸念をされています。新銀行東京が資本注入の申請をするかは定かではありませんけれども、新たに設立された銀行、例えばネットバンク等も含めて、金融庁の監督姿勢についてちょっとお伺いをしたいと思います。

 これはうわさベース、うわさで耳にしたんですけれども、ネットバンクの中には、当初計画では送金手数料等で収益を上げる予定であったものが、その収益は余り多くなくて、高金利で預金を集めて、その資金を有価証券等にて運用して、その運用益で大半の収益を得ている銀行があるということを聞くんですけれども、銀行免許取得後、免許取得申請時点と実際の業務運営が異なってしまっているような新設銀行に対して、どのような監督を金融庁は行っているのでしょうか。

 また、諸事情により当初の目的が達成できなくてもそれを目指す努力をしている、また、業務体制には問題がなく自己資本比率さえ維持していれば監督上は問題ないと判断をしているということでよいのでしょうか。金融庁の見解を伺います。

谷本副大臣 石原委員の御質問にお答えします。

 一般に、金融庁が銀行等を監督する場合には、当然、自己資本比率や収益性、こういう観点からも見ますけれども、それだけではなくて、コンプライアンスの体制であるとか、リスク管理の体制であるとか、あるいはガバナンスの体制、利用者保護の体制、そういった多面的な観点から基本的にはモニターをしております。その中で特定のどれか一つを、あるいはどれか一つ、二つを満たしているから大丈夫ということではなくて、全体を、健全性をしっかりと見ていくというのが基本でございます。

 なお、この多面的なモニタリングの結果、何らかの問題があるということであれば、基本的には、まず自主的な改善の努力をしていただくということを中心にしております。そしてなおかつ、それでもさらに必要があるという場合にのみ行政対応、報告徴求あるいは業務改善命令というものを出す、こういう手順になっております。

石原(宏)委員 やはりケース・バイ・ケースであるんじゃないかなというような感じがいたします。

 ただやはり、新設銀行だと、ネットバンクも含めて、思ったように、計画どおりにはなかなかうまくいっていない。金融業の難しさというものも、新設銀行の状況を見ていると感じることもあります。

 最後に、ちょっと金融庁にもう一問質問をさせていただきたいと思います。

 当案が成立した後に資本注入を申請した銀行は、経営強化計画の中で必ず中小企業貸し出しを伸ばすことを記載しなければならないのでしょうか。

 先ほども中小企業庁の方にお答えをしていただいたんですけれども、実際に中小企業数というのが年々減少している。例えば、不況が来て、地場の企業の倒産が相次いで、資本注入を受けたんですけれども貸し出しが伸ばせないということも私は想定されるんじゃないかと思うんです。

 そこで、これは私の個人的な意見でありますけれども、例えば現状の貸出残高をしっかりと維持する、もしくは先ほどの新機軸と言われる条件緩和を積極的に行う、そういうことを、残高を維持して、そして条件緩和をそれなりに対応していけば、私は金融安定化の目的はある程度達成することができるんじゃないかというふうに思うんですけれども、金融庁の見解をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 今御審議いただいているこの法案は、こういう世界的な金融状況の中で、先ほど石原委員も御指摘になりました日本の経済を支えている全国の中小企業に資金供給をする金融機関に対して、健全な金融機関が、先ほどから答弁いたしておりますように、多少今までと要件を柔軟にして、そして中小企業に資金が提供できるようにするという趣旨でございます。

 ただし、今御指摘のように、相手方の資金需要との間でのミスマッチなんということも当然予想されるわけでございますから、経営強化計画の中に大体このぐらい中小企業向けを向けますとかふやしますといって、そしてその計画どおりにいかないときには、また金融庁としてもいろいろな作業をしなければいけないわけでございまして、そういう意味で、強化策の中にぎちぎちにそれを書くということもなかなか難しい状況変化もあると思いますし、また計画にはきちっとしたものも出していただきたいということで、その辺の具体的な方策については、現実を見ながら、この法の趣旨に合致できるように、これからもう少し細かく詰めていきたいというふうに考えております。

石原(宏)委員 先ほど、中小企業貸し出しが減少している要因というのは多面性があるということを中小企業庁の方も述べられているわけで、私もそういうことだと思います。もちろん、金融機関の姿勢に問題があるのであれば、それはしっかりと改めていただかなければいけないわけでありますが、実際に景気が悪くなって、資金需要が減る、設備投資意欲が減る、そういう中で地場の産業が、会社が倒産するとか事業をやめてしまうようなときに、金融機関が伸ばしたくても伸ばせない局面というのもどうしてもあると思います。

 ですから、ぜひとも、計画には前向きに取り組んでいただきたいとは思いますけれども、それが達成できない局面があっても、その報告の内容を慎重に評価をいただいて、適切な処置をしていただければというふうに思います。

 ちょっと時間も余りましたけれども、これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

田中委員長 次に、下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 諸先輩、同僚議員含めて相当御質問が重なって、その中のすき間を見ながら、ここはどうかなという疑問点をこれからの時間内で御質問させていただきたいと思っています。

 まず、大きく分けていろいろあると思うんですが、農中さんの問題について幾つかお聞きしたいと思っています。

 既に農中さんの方は、理事長がこの間いらっしゃったり、それから参考人でいろいろ質疑をして、相当我々もストックをしてきたと思うんですが、いずれにしても、柳澤さんも、メガバンクに入れるとかいろいろな話が出ている中で、果たして農中さんの内容はどんな感じなのかなというのを含めて、これから一つ一つ時間の範囲内で御質問したいと思っています。

 まず、リスク管理という部分であります。

 農中さんがお出しになっている三月末の資産というのは、六十一兆一千九百何がし億円である。貸出金が九兆八千億、有価証券が三十六兆二千何百億、外債はそのうち二十六兆ということであります。その中で、証券化商品のうち米ドルが四兆八千億、ユーロが一兆一千億、英ポンドが六百七、八十億ということですね。

 まず、その部分について、当然ですけれども、外債ですから為替予約が入っていません。例えば、百二十円で農中さんが買いました、今九十九円でマーケットが推移している、そうすると、簡単に言えば、現実に二十一円損しちゃったよと。

 ですから、まず、その辺の為替リスクの現状の管理状態と、そして、それに対する対処方針をちょっと最初にお聞かせいただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 農林中金におけます為替リスクの管理の問題でございますけれども、委員御指摘のとおり、外国証券の保有残高、二十年三月で二十四兆五千七百九十億円、そのうち、外国債券が十四兆三千八百三十三億円等の有価証券を有しているわけでございます。

 これにつきましては、基本的に農林中金では、金利、為替、株価等の変動局面におけますリスクを最小に抑えるため、異なる地域や商品等のリスク、リターンを分析して、その特性を生かすいわゆる国際分散投資という形で投資の基本的な考え方を行っているところであります。

 このうち、為替リスクに関しましては、常に一定以上の外貨を保有いたしまして国際分散投資を行っておりますことから、短期間で外貨を円貨にかえる必要がないということで、為替予約ではなくて、通貨のスワップあるいは資金関連スワップ等のスワップ行為におきまして、外貨運用資産に見合います外貨調達の為替ヘッジを行っているところでございます。

下条委員 ありがとうございます。

 今、最後にちょろっとおっしゃった通貨スワップ、デリバティブですけれども、そういう通貨スワップ、デリバティブはどこに頼んでいるんですか。

高橋政府参考人 申しわけございません。ちょっと今質問の趣旨を聞きそびれたものでございますので、申しわけございませんが。

下条委員 外債を購入すると、それぞれドル建て、ユーロ建て等々含めて為替がオープンの状態、自由ですよね。それのリスク管理はどうでしょうかという私の質問に対して局長は通貨スワップというお言葉をお出しになったので、その通貨スワップはどこに頼んでいるんですかと、監督官庁として、主務官庁の方として御質問をさせていただきました。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 今のスワップの相手方でございますけれども、基本的には、それぞれの各農林中金の取引の中の一環といたしまして、商行為の個別の取引事由という形でございますので、これについては、恐縮でございますけれども、公表はされていないところでございます。

 ただし、一部リーマンとの関係につきましては、いわゆる直接投資は行っておりませんけれども、この通貨スワップ等を行っているということについては発表させていただいているところでございます。

下条委員 局長、そこですよ、ポイントは。リーマン・ブラザーズにお願いしているんですよ。

 それで、ちょっと今資料が多過ぎちゃってあれなんですが、おたくの通達がありましたよね、リーマンの与信についてという。あれは、現金担保になっているからたしか大丈夫とか何かそんな、ちょっと今手元を外しちゃったんだけれども。

 要するに、通貨スワップでリーマンにお願いしていますよ。一部デリバティブがあって、何兆円規模でしょうけれども。相手のリーマンはこういう状態に今なっていますよね。それで、それが例えば、現金担保といいますけれども、「現金担保等」というふうに書いてあります。現金担保等ということは、現金は担保になっていなくて、株式、債券が担保になっているんですよ。そうすると、もしリーマンがこういう状態だったら、このデリバティブも通貨スワップもマイナスになるんじゃないですか、局長。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 農林中央金庫がリーマン・ブラザーズ・グループ向けの通貨スワップ等のスワップ取引を行っているわけでございますけれども、これにつきましては、約十年以上も前から実施しております。今委員御指摘のとおり、この取引の大宗につきましては現金担保により保全されておりますけれども、その他のものも入っておるわけでございます。

 これについては、九月十七日の農林中央金庫の発表におきまして、今後、取引の解消に伴いまして金庫のエクスポージャーが発生する可能性がある、それについては、個別の債権債務の確定が行われた段階で全体としてきちんと別途開示をするという形で発表させていただいているところでございます。

下条委員 僕のところに今ちょっと中金さんの通知、通達が来ていますけれども、要は債権債務が確定した時点でということですけれども、これは、その担保になっている株式そして債券も当然値が落ちているわけです。上がっていないです、今。御存じのとおりの状態です。ということは、これから開示なさるので、楽しみにしているという言い方はあれですけれども、明白に、明確にこの部分のマイナスも、この委員会の議事録にずっと残りますけれども、恐らくマイナスになる、私はそう思っています。

 そこで、試算をちょっと僕も出してみました。例えば、ここ三、四年にかけて為替のドル・円ベースだけでいったとしても、米ドル建ての証券化商品が五兆円ぐらいありますから、今百円としても、約百二十円で百円ですから、これだけでも今現在損失が八千億円ですよ。この米ドル建て債券の部分だけでも八千億、こういうことになります。

 これについて、まず、主務官庁である農林副大臣に御意見をちょうだいしたいと思います。

石田副大臣 今お尋ねがありましたけれども、具体的な為替差損は現在どういうことになっているか、こういうことにつきましては、個別の金融機関の資産運用に関する内容であり、また、今お話しのとおり公表されていないこと、こういうことをぜひ御了解をいただきたいと思います。

下条委員 そうおっしゃるかなと思って、ただ、私もちょっとあれなんですが、農林中央金庫法第八十二条に、主務大臣、農林大臣及び総理大臣は監督権限が明記されているんですよ。それで、もし資本注入するかもしれない、しないかもしれない、そんなことは知りませんが、もしするとしたら、そんな、開示できないよ、でも農協の方に今またいろいろな出資の会員も四千三百会員ですか、求めている、その金がどこに行くかも含めて、こうやって議事録や新聞にいろいろ載るわけですから、それを知らないよ、表にできないよということで、農家の方の貯金の保全や税金を入れるところの部分を補てんできるんですか。それは私、副大臣、ちょっと幾ら何でも……(発言する者あり)そうですね、無責任、そうだと思いますよ。

 八十二条の一項また二項に、監督権限の明記と、それから、私に言わせてもらうと、総理大臣の責任もあるんですよね、ひいて言えば。そのときの総理大臣の責任もある。

 まず一つ目は、為替について私は、今現在でさえもう既に、我々普通の方にとって八千億円のマイナスなんというのは到底考えられないぐらいのマイナスだと思いますけれども、それがまず一つであります。

 次、第二弾として、副大臣、フレディーマックとかファニーメイというのは主務官庁の副大臣として御存じですか、どういう会社かどうか。お答えをいただきたいと思います。

高橋政府参考人 副大臣から御答弁させていただきます前に、今の御指摘の二社でございますけれども、基本的には、米国の住宅供給公社ということでございまして、農林中金におきましてもこの関連の債券等も有しているところでございます。

石田副大臣 ファニーメイ、フレディーマックにつきましては、米国政府により公共目的で設立された私企業である。政府支援機関ということになっておりまして、私企業でありますけれども、暗黙の政府保証があると認識されている会社である、このように承知しております。

下条委員 なぜそれをお聞きするかというと、大変優秀な農林省の役人の方々の上に、責任と指導権を持って大臣、副大臣、政務官がいらっしゃるのでお聞きしたかったんです。

 というのは、局長、このファニーメイとフレディーマックの自己資本比率は御存じですか、今どのぐらいだか。自己資本比率、答えてください。

高橋政府参考人 恐縮でございます、ちょっと今手元に用意しておりません。(発言する者あり)

下条委員 そんなことも知らないでと今お声がありましたけれども、大変寂しい回答であります。きょうは農中さんのことを聞くんですよ、運用も外債を聞くんですよと、きのうの段階のちょっと遅くて十時半か十一時になりましたけれども、お話ししてあります。

 ファニーメイは自己資本比率が五・〇六ですよ。フレディーマックが四・七七、そういう状態。そして、保証、保有する住宅ローン債権が五・二兆ドルあるわけです。そういう会社ですよ。

 つまり、簡単に言えば、皆さんがサブプライムローンでこんだらはんだらと言って、これだけ負けていますよという話をしていますけれども、このファニーメイとフレディーマックもそういうところから債権を買って、自分のフレディーマックならフレディーマックの会社が債券を売っているんです。それを農中さんががんがん買っているということですよ。この辺の危機管理はどう思いますか、局長。

高橋政府参考人 今の御指摘の二社に関しますリスク管理でございますけれども、基本的に、農林中央金庫がどのような運用を行っていくのかということにつきましては、それぞれの商品、あるいは金利、為替、株価等、そういったものをトータルに勘案いたしまして、リスクを最小に抑えていくという前提のもとに国際分散投資をしているわけでございます。

 そのような手法の中で現状のような保有ということをやっておるわけでございますけれども、この両二社につきましても、こういったようなリスク面とそれからリターン面というものを勘案して保有をしているという状況でございます。

 なお、これら有価証券の保有につきましての現状におけます分析ということにつきましては、当然のことながら、農林中央金庫におきまして、現状の時価の状況等、あるいは適切な評価の手法を用いまして、必要なディスクロージャーを行うべく現在準備中というふうに聞いておるところでございます。

下条委員 その適切な評価というのは、農中さんの出しているこの証券化エクスポージャーの時価評価、これでいいですか。局長、ここに載っているもの、いいですね。質問じゃなくて、いいですよね、これ。

 これを見ていくと、簡単に言えば、時価評価が買ったときと比べて五割以上に下落しない限り損と載せないよと書いてあるんですよ。間違っていませんか、僕の考え方。お答えください。

高橋政府参考人 証券化商品の時価評価でございますけれども、この六月のディスクロージャー段階におきましては、企業会計基準委員会が定めます金融商品に関する会計基準、あるいは、日本公認会計士協会が定めます金融商品会計に関します実務指針に基づきまして提供されております時価を採用して評価しております。

 その際、評価時点におけます時価と帳簿価格との差額を評価差額として計上することとし、さらに、時価が取得原価等と比べまして五割超下落した場合に減損処理を行うということをしているわけでございます。

 このような会計基準に基づきまして、六月末段階におきましての数字が、評価損について四千三百二十九億円、損失額四十九億円というふうになったものと聞いております。

下条委員 私も会計基準を調べました、局長。会計基準というのは、あくまで、今おっしゃったのがぱあっと最初に前文で書いてあるんです。途中から、確かにそういう会計基準は存在するんですけれども、回復見込みのないときについてはそのときの時価で減損処理をするのが適正と載っています。これは金融商品会計基準実務指針の中に書いてあるのであります。

 もう一回言います。皆さんが今言っている、ないですよ、ないですよ、四十九億しか負けていませんよというのは、あくまでも皆さんが、一般的な部分で百円が五十円以上にマイナスになったときだけ報告すればいいというのだけを引っ張り出してきている。でも、日本国の金融商品会計基準実務指針には、回復見込みがないときはその時点で適正処理しろと書いてあります。

 そこで副大臣、要するに私が何を言いたいかというと、このフレディーだとかファニーメイというものは、今アメリカのブッシュさんが、大統領選挙の関係も含めて去年ぼんといってから金をどんどん入れているわけですよ。それで、きょう夜から投票が始まるんですか、非常にそれがあれになって、恐らくですけれども、ふたをあけないとこれはわかりませんよ、あと一日かかりますから。共和党がこうなっちゃっているという大きな要因の一つになっているわけです。

 そしてそれは、このフレディーマックやファニーメイのその先行きを見ていて、いいですか、もう株式は配当していないんですよ、局長、副大臣。その部分について本当に今の主務官庁や農林省の主管庁が回復あると思っているか、ここで明記してください。この委員会で報告してください。今現在回復見込みがあると宣言するのなら、これは残りますから。皆さんのお考えは間違いないと思うけれども。私は非常に微妙な段階だと思います。住宅ローン保証債権だけで、この二社だけで五兆ドル以上持っているんですよ、今、アメリカの住宅ローン債権保証部分の残高を。

 これからアメリカ経済が飛躍的に住宅ローンを含めて回復すると見ていらっしゃるのか、それとも、いや、かなり厳しいんじゃないかと思うのであれば、ここで、回復見込みがないという会計基準に沿ってきちっと明確に損を出すべきじゃないかと思いますが、副大臣、いかがでございますか。

石田副大臣 今の段階で回復見込みがないということは私は言えない、これしか現状ではお答えできないと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 いずれにいたしましても、この有価証券の評価につきましては、農林中金のみが適用される評価基準ではございません。したがって、それぞれの有価証券の評価について統一的な基準として示されておるというところでございますので、この適正な対応ということは、農林中央金庫においても行うということだろうと思っております。

下条委員 評価の仕方の質問と同時に、今言ったように、アメリカの経済状況、現状を踏まえて、住宅ローンを五兆ドル持っているところの債券を農中さんが持っているわけですよ。だから、そこを僕は懸念しているわけです。だから、それをここで、もし今後の話、きょうはもちろん採決とかないし、附帯も何にもないと思いますけれども、きちっとこの国会の場で話しましょうよ、副大臣。

 今の段階で大丈夫だと思うとおっしゃったけれども、では極端な話、副大臣、自分の金をそのファニーメイに出しますか。私は、個人だったらちょっと出しにくいですね、この内容で。配当もないし、とまっちゃっていますよ。ただ、ブッシュさんが金を入れてぴたっと抑えているだけですよ。今、あっちこっちアメリカじゅうフォーセールになっているんです。これからどんどんよくなるというのか、徐々に下がっていくのか、下げどまりするのか。また金を入れてくると思いますよ。

 だから、こういうのはすべて今現在で、アズ・オブ・トゥデー、きょう現在できちっと切っていって、日本国としてこれはちょっとねと明確に出して、主務官庁として農林中金に指導していかなければ、とても我々民主党としては、この農林中金に金を入れていって、そんなものはざるになっちゃいますよと僕は思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 先ほどもお答えいたしましたように、この二社の証券、債券につきましてどのように評価するかということにつきましては、統一的な会計基準、評価基準に基づいて行うわけではございますけれども、これは、農林中央金庫も当然のことながらこの基準に従うわけでございますが、やはり、全体的に統一的なものとして農林中央金庫以外も含めて評価されるということだろうと思っております。

下条委員 いや、局長、僕は農中さんはけたが違うということを言っているんですよ。そして、農中さんの運用の金は、ここにお集まりの方々の選挙区の農家の方が納めている預金じゃないですか。だから麻生さんも、急いでやれという指示を出したといううわさも聞いていますけれども、本当かどうか知りませんが。だから、それをやらなかったら、あなたたちの納めているお金は実を言うとポシャっちゃっているよ、あのサブプライムに関係している会社のあれを何兆も買っていて危ないんだよと言えないから急いでいるんじゃないんですか。どうですか、副大臣。私はそう思いますけれども、間違っていますかね。

石田副大臣 総理がそういうことをおっしゃったかどうかは当然私は聞いておりませんけれども、どちらにしても、この金融機能の強化、与信の円滑化ということは、どうしてもこれは早くやらなきゃいけないことは、私は、委員ももう既に御存じのことだろうと思います。

 ですから、このこと、委員がおっしゃったようなことをとって急いでいるということじゃなくて、やはり金融機能の強化ということで急いでいる、審議の促進をお願いしている、こういうことだろうと私は思っております。

下条委員 ここが野党のつらいところで、押し問答になっちゃうんですね。

 ここに一枚の、ファイナンシャル・タイムズという、運用をしている全世界のプロ連中がそれぞれの運用家、投資家に対してインタビューをした記事が今手元にあるんです、これはちょっとお出ししていないんですけれども。これは一応英語で書いてあるんです。それで、これは……(発言する者あり)信用ない記事と今お話しあったけれども、インタビューですから。

 それで、ここに載っている話は、高谷正伸専務理事というのは、これは農中のプロパーの方みたいですけれども、もともと向こうの住宅がぼんぼんいっちゃっている最中に、日本語で言えば資産担保証券とか債務担保証券、これについてさらにこれから運用を六兆円以上やろうじゃないかと言っているんです、八月二十五日に。これは御存じですか、副大臣。

石田副大臣 申しわけございません、勉強不足だと思いますが、その記事は見ておりませんので。

下条委員 局長、いかがですか、プロパーですよ。

高橋政府参考人 存じ上げておりません。

下条委員 存じ上げていないと言うとあれなんで、もう何とも言えないんですけれども、要するに、この方は実在する方だと思うんですね。高谷さん、専務理事として実在する方。

 私は何を言いたいかというと、これだけの運用をしている農中さんの全部の決裁権限は、局長、だれが持っているんですか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 農林中央金庫の業務運営につきましては、これは、法令の範囲内である限りにおきましては、農林中央金庫の中で最終的に決定されるものと思っております。

 なお、では具体的にどのようなものについての権限がその内部で統制されているかにつきましては、内部におきます権限の配分の議論だろうと思っております。

下条委員 申しわけないです、もう一回しつこい質問すると、だれが最終決定権を持っているんですか。

高橋政府参考人 今申し上げましたように、基本的に農林中央金庫において決定するわけでございますけれども、その金庫内の権限におきまして、どのような判断についてはどこまで行くかということについては、まず、内部でどのような権限配分が行われているかだと思います。

 ただ、最終的には、対外的という意味では、代表権を持っている者という形になろうかと思います。

下条委員 要は、最終的には理事長ということですよね。そういうことですよね。理事長が最終的にやりますよと言うと、それはすとんと通っていって、物を買って、こうだああだ、こうなるわけですね。

 そこで、財務諸表があるんですよ。これは金融の方の話も含まれているんです。中川大臣にお聞きしたいんですけれども、同じみずほグループの一員ですから、私も富士銀行、そちらは興銀で。大臣、申しわけないです、非常に初歩的な話なんですが、これはもう非常に失礼な質問かもしれません、債務超過の御認識をちょっとお聞きしたいんですけれども。

中川国務大臣 ちょっと細かく今は法律的にはきちっと申し上げられませんけれども、毎年毎年の赤字とは違って、本当に資本を使って、そしてその超過分を補わなければいけないような、ちょっと正確じゃないですけれども、例えて言うならば、そんな状況に経営状態が陥っているというふうに認識をしております。

下条委員 例えば、債務超過と今まさにおっしゃったとおり、簡単に言えば、バランスシートで資産と負債があって、負債が資産部分を食っちゃってマイナスになることですね。

 今、農中さんのあれを見ると、約六十一兆が資産です、負債が五十八兆です。ということは、負債の部分まで三兆円しか差がないということです。そうですよね。ということは、三兆円分のもしくはリスクをしょって、今現在、きょう十一月四日で切ったときに、もし運用していたり、デリバティブが出ていない分もある、担保証券も含めてまだ表に出ていない、五割以上割っていない、つまり四九%、百円が五十一円であれば報告しなくていい、会計基準でいいと今局長おっしゃいましたけれども、大臣、今これだけの何十兆もやっている中で、本当に金融の統括者としてこのままでいいと思いますか。

 それとも、いや、国民の前にきちっとそのリスク部分をさらけ出すために、会計基準を含めてもう一度、例えばこの十一月末でもいいですけれども、きちっと切って、そこの部分で損益がどうかを見せて、債務超過があれば、ごめんなさいと国民に謝るべきですよと僕は思うんですけれども、いかがでございますか。大臣に聞いています。

中川国務大臣 下条委員は本当にプロ中のプロで、金融も農業側のこともよくおわかりになっていらっしゃる上での御質問だと思いますので、農林中金個別の話というよりも、一般論として、金融機関というのは常に債務超過に陥ってはならない、出資者を守らなければいけない、あるいはまた預金等を守っていかなければいけない、健全経営をしなければいけない、当然のことでございまして、単年度赤字はおろか、債務超過なんということは、これは金融機関である以上はあってはならないことだろうと思います。

 そして、他方、時価会計という原則の中で日々動いているわけでございまして、そういう中で、特にアメリカ発のいわゆるCDSとかMBSといったものが大変に下落をしてしまっている。さっきから、フレディーマックとかファニーメイのお話が出ております。これも、さっき答弁がありましたように、隠れた政府保証金融機関、大恐慌のときにルーズベルトが住宅所持の促進のためにつくった機関でございますけれども、ここがいろいろな証券をつくって、そしてまた証券化商品として売っているということもあって、それから、根っこにはサブプライムローン問題があってこういう状況になりましたけれども、このいわゆる二つの住宅専門政府系金融機関は、まさに厳しい状況に陥ったからこそ、これは上場しておりましたから、陥ったからこそ政府が乗り出して、流動性の担保であるとか、あるいはまたいろいろな、それこそ資本の増強のために今政府が乗り出しているわけでございますので、そういう意味では、私は、この二つについては、さっきのリーマンのような状況には全くないというふうに思っております。

 御質問の趣旨で、資産と債務との関係が三兆円しかないけれども、今この瞬間に切ったらどうなるかということについては、個別の案件でございますが、いずれにしても、ルールにのっとって、きちっと会計にのっとって、そして決算期ごとに発表すべきものは発表していく、そしてまた監督官庁に報告するものはきちっと報告していくということによって、預金者や債権者あるいは出資者等に迷惑がかからないように努力していくことが経営者の責任だろうというふうに考えております。

下条委員 大臣のお立場としての御意見だと思いますけれども、僕が申し上げているのは、要は、こういう時期で、先ほど会計基準の話を局長おっしゃっていますけれども、会計基準は、回復の見込みないと思われる等を含めてというときは、三割でも四割でも、百円が七十円とか六十円になった時点で、五十円まで行かなくても、一たんきちっと損を出しましょうという会計基準になっているんですよ、実務指針が。

 だからそれは、こうやって公の場でいろいろ話をしている中で金融庁のトップとしてぜひ指示をしていただいて、一回ちょっと見直してみなさいよと。それをやっても僕は逆に、おっ、自民党は随分勇気出てきたなと。大臣のところも農業多いですから、今それで会員に出資を求めていますでしょう。それを、僕らがこれをまたマニフェストの中へチラシをつくってこうだよとやったら、それよりも、自民党さんは率先して、権利を持っているわけですから。

 別に、僕は起きたことはしようがないといつも思っているんです。だから国会をやっているんですから。起きたことはしようがないから、国会をやって直していくだけなんだから。主務官庁の大臣として、これはもう一回きちっと、だって大臣、フレディーとかファニーメイ、今、アメリカのフォーセールのあの中で飛躍的によくなって、普通株、優先株の配当が全くない状態がどんどん改善されて債権がきちっと戻ってくる、まあ、先ほど副大臣も今の段階ではそれしか言えないとおっしゃっていますけれども、だから、起きたことはしようがないから、これからの手段として、会計基準の監査方針は、実務指針で見込みがないと思われるところはもう一回直していいんですから。三割、四割でもいいんですよ、百円が七十円、六十円になっちゃったら。五十円まで行かなくても、もう一回損益を出しなさいと言うことはできるわけですよ。どう思いますか、大臣。このままでいいですか。

中川国務大臣 ですから、世界的なこの金融危機、アメリカ発、サブプライムローン発でこういうことになって、日本でも金融機関あるいは実体経済にも外的な要因で影響を受けているわけであります。そして、繰り返しますけれども、リーマンとかほかの破綻と、いわゆる暗黙の政府保証のこのGSE二社とはちょっと状況が違って、完全に政府のコントロールというか、政府の支援のもとにあるわけでございます。

 他方、今、下条委員おっしゃったように、この根っこにある住宅債権買い取り会社あるいは住宅資金提供会社であるこのGSE二社、あるいはアメリカの住宅事情がどうなるか、これについては現状非常に厳しいですし、あるいはまた、先物の見通しなんかも時々出ておりますけれども、それはそれとして、今、日本の金融のシステムをどうやって健全なまま持続させていくかということが、我々にとっては最重要の課題だと思います。

 もう下条委員は大変お詳しくて、私もさっきから勉強になっておりますけれども、この会計のやり方につきまして、今見直すとか見直さないとかいうことは別にして、ちょっと金融庁の方から事務的にもう少し詳しく説明をさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 会計基準につきましては、金融庁といわば独立した立場にございます企業会計基準委員会というものがございます。そこで検討され、企業会計基準という形で公表される。私どもは、それをいわば一般的に公正妥当な会計基準という形で受け入れて、開示行政の中にそれを反映させていく。そういうふうな立場でございます。

 それから、企業会計基準が制定をされますと、通常は、それを受けて、公認会計士の監査の現場に役立てるような形で日本公認会計士協会が実務指針というようなものを出すのが通常でございます。

 今、委員お話しの減損会計の問題でございますけれども、この点についても、会計監査の現場でのやり方と申し上げますと、おおむね三割から五割減価をしたというような場合に、かつ、これが回復の見込みが立ちがたいというようなときに減損を行うということで、ある程度は幅を持って実務が行われているというふうに理解をしております。

下条委員 だから、その理解を実行に移してもらいたいと思うんですよ。

 だから、さっき言って、もう何回も同じことを言っていますけれども、いろいろな外債も持っている、担保証券も持っている、デリバティブも持っている、それが現金化などしたら、債権がまた来て株が落ちてと、物すごい状態に今なっているんじゃないかと僕は推測します。

 だからこそ、そして、もしかすると物すごい金額を、柳澤伯夫さんも、何かああいうふうにメガバンクどこだと言っていますから、あるとしたら、これは、国民の負託をいただいた、バッジをつけている方々が責任を持って行政府の方に追及するのが、それが僕らの責任じゃないですか。だからこそ何回も言っているんですよ、今。だから、ここで、一般的なことではなくて、それだけ金が入るかもしれないということですよ、僕が言いたいのは。

 それと、今後ももっともっと悪くなることもよくなることもあるんだったら、一度これをしっかり会計基準まで、まさにおっしゃったじゃないですか、三、四割でもやるべきときはやらなきゃいけないとおっしゃった。理解しているんだったら、実際これを一度やってくださいよ。やっていただきたいと思います。いかがですか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 会計監査につきましては繰り返しになろうかと思いますが、そのそれぞれの決算期末におきまして、財務諸表を会計監査、あるいはまた検査の現場でもそれをチェックして行われていく。そこで適正な監査が行われる。当然ながら、その開示において、財務諸表において透明性を極力高めていくということは当然でございます。

 それから、金融機能強化法の関連につきまして申し上げますと、国による資本参加の決定の基準ということの中で、いろいろございますけれども、公的資金の回収が困難でないといったこともございますけれども、それに加えまして、適切な資産査定がなされていることというものがございますので、それを踏まえまして適正な審査を行うということになろうかと思います。

下条委員 なかなかお答えいただけないけれども、こうやって議事録に残って、さっき都知事の御子息の先生がお話しになったけれども、新銀行東京もきょう本当はやりたかったんです、何か時間がどんどん迫っちゃったんですけれども。

 あれも、私が三月に言ったときは、臭いですよと僕は言いました。これでは終わらないですよと言って、わずか七カ月ですよ。だから、国のお金として資本注入はよもやないと思いますけれども、都の銀行ですから、都税を払っている人は、あのとき、六千八百円か何か一人頭払わなければならない。その後、業況は決してよくなっていないです。私は予言者じゃないですけれども、嫌な言い方、この件は確実に悪くなっています。これは宣言しておきます。私もいろいろな情報があります。きょうもディーラーと深夜から随分話しています、海外の友人とも話しておりますけれども、とてもそういう状態じゃない。

 そこで、何かあっという間に時間がたっちゃったんですが、私は、最後にこの件で申し上げたいのは、先ほど局長がおっしゃったように、最終権限が代表にあるとおっしゃいました。つまり理事長ですよ。そうですよね。ここで問題にしたいのが、例えば、一億とか五十億とか百億とか、その程度だったらいいとは言いませんが、それとけたが違うわけですよ、決定権を持っている人のけたが、大臣。六十一兆円もの投資の決定権を農林の事務次官の方々が過去においてずっとやってきたんです。私は、ここに、新銀行東京も二〇パーの資本がどうだ、範囲だ、言いにくいけれども、僕に言わせればあれも素人がやっています。この件も、このままでいいのかという僕は非常にクエスチョンを抱いているんです、大臣。

 この国のため、農林のために頑張ってこられたお役所の方々、これは頭が下がります、それは功罪あったかもしれないが。だけれども、いろいろな農家の方の預金を集めて、貸し金が一兆何千億、それ以外にもいろいろある。この債券の運用を決定する代表の人が、引き続き過去において僕は間違っていた人事だと思っているんです。農林行政のトップが運用で何十兆ものものを続けてやってきた結果が、今こういう資料になって目の前にあらわれてきたわけです。(発言する者あり)簡単に言えば、今お話があった天下りの方々がおやりになってきたということだと僕は思うんですよ。

 さっきも言いました、過去は仕方ないです、もう終わったことですから。今後の話として、大臣、農林省もそうですけれども、この何十兆という運用を、プロではなく、決定権を最終に持っている代表者に引き続き農林の方のOBを入れる気持ちがあるかどうか、まず副大臣からお聞きしたいと思います。責任論になりますよ、これは。

石田副大臣 最終責任者は代表理事、こういうことになるわけですけれども、この人事については、農林水産省があの人、この人と言うことはございません。

下条委員 副大臣、それは農家の方が聞いたら怒りますよ。これだけのことが出ていて、自分たちが積んでいた貯金が、共済も含めて運用している先が、申しわけないですけれども、僕はきょうのお話は全部議事録に残して配りたいと思っています、どういうふうに政府側が誠意を持って答えてくれたのか。だから、僕は何回も言うように、起きたことは仕方ないけれども、どうやって直すかなんですよ、国会の委員会の議論というのは。だからこの強化法も改正するわけじゃないですか。だけれども、今みたいな形だと、何だ、おらたちの預金は何かどっかへ行っちゃって返ってこないかもしれないぞというふうな心理が、農家の方一世帯一世帯に来ますよ、これ。

 だからこそ私は、今後は、農林の頭については、これだけの投資を持っているわけですから、それとプロパーの方も、さっき言いましたように、インタビューで、さらに六兆円を三月まで上積みすると普通に言っているんですよ。僕はあのタイムズの記者にあれしましたけれども、意気盛んにやるとこぶしを上げていたらしいですよ。余りにも現実逃避というか、自分の足元がわかっていない運用者だな、決定権者だなと私は思っているんです。

 金融庁の大臣にお聞きしたいんですが、決定権を持つのは、大臣も金融機関にいたからそうでしょうけれども、運用が得意な人、その修正が得意な人、これはやはり加えるべきだと思います、これは農林行政ではないんですから、運用ですから。この農中さんに関しては、貸し金なんて本当に一兆何千億しか貸していないんですから。ほとんど全部運用ですよ。

 そこで僕は、この責任論を含めて、過去における方も含めて本当はここで農林大臣とお話ししたかったんですけれども、でも、きょうは理事会が昼だったので、農中さんを含めて間に合わなかったので本当はあれなんですけれども。

 大臣、これは本当に大変なことになりますよ。もう自民党が勝つ負けるなんというレベルじゃないです。麻生さんが急がせたかどうかは僕は知りません、うわさでしか聞いていないから。麻生さんが、頼む、これは至急やらなきゃいけないと中川さんに言ったかもしれないといううわさも立っているわけですよ、実際。その理由というのは、早いところ補てんしておかないと、これが北海道や四国や九州の、また関東地方の農家に知れたら、大変な状態が放置されているよということがわかったらとても選挙は勝てないなということがもしあるとしたら、僕は残念だと思いますね、選挙のためにやっているわけじゃないから。

 だから、今後の話としては、農中の理事長については、決定権を持っている方については、民間の、投資の修正やいろいろな配分をやり直すことができるプロをぜひ入れるべきだと僕は思います。いかがですか、大臣。

中川国務大臣 下条委員もおっしゃっているように、国会のこういう正式の委員会でございますから、記録は世界じゅうに、そして長く残るわけでありますので、ちょっと改めて申し上げておきたいんですけれども、農家の預金者の皆さんはもとより、やはり、一般の方々に我々は不必要な不安を与えるということは何としても避けなければいけないというふうに思います。

 それから、この法案が、個別行が手を挙げるかどうかは別にして、先ほどから何回か総理が云々というお話がありましたが、私にはそんな指示はございませんが、私自身、これを早く上げていただきたいと率直に思っているんであります。

 というのは、中小企業は本当に融資を受けたい、しかし、先ほど石原委員の御指摘にもあったように、金融機関の方にも事情があるので、これはやはり、金融機関に一定の経営強化方針とか経営強化計画等の手続を踏んだ上で問題ないということであれば、資本注入ができれば、これによって中小企業向けの貸し出しがより量的にもまた柔軟にできるという意味で、私は、早くこの法案を上げて実施をさせていただきたいというのが、率直なところでございます。

 個別の民間の経営機関のトップについては、そのときそのときで適切な人が選ばれるのが当然のことだろうというふうに思っております。

下条委員 もう時間が来ちゃったのでちょっと残念なんですが、中小企業もやりたかったんですが。

 今まさに大臣の口でおっしゃった、不安心理をあおらないためにも、実態を報告するということだと僕も思うんですよ。だから、申しわけない、これだけこうなっているから、悪いけれども国で面倒を見て、こうなっているから安心してくれだったらわかるんです。実態は、もう来年の三月までいいよ。だから、そこを僕は申し上げておりました。

 しかし、ここで時間が参りましたので、これで以上にします。ありがとうございました。

田中委員長 次に、和田隆志君。

和田委員 民主党の和田隆志でございます。

 きょう、実は繰り上げ当選後初めて財務金融委員会で質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私の場合、十五年間、国家公務員として携わってまいりましたときに、この財務金融委員会も随分お伺いしまして勉強させていただきました。

 最近は、麻生総理のいろいろな御意向もありまして地元の活動に忙しくしなければいけない環境で、なかなか統計をひっくり返しながらきょうの質疑をやらせていただくという環境でございませんでしたので、きょうは、せっかく中川大臣以下、諸閣僚いらっしゃいますので、私自身が十五年間勤務しまして、金融分野に携わらせていただいたときに感じました金融という機能について、もう少し大臣の所見等をお伺いしながら、どうやったらこの機能、この表題のとおり強化できるのかということを少し質疑の中で考えてまいりたいと思います。

 金融機能を強化する法案の審議でございますので、これを成立させた後には強化していただかなければなりません。そこで、大臣以下、大変恐縮でございますが、昨晩質疑通告に出した項目というのはどちらかというともっと実務的なことでございましたが、まず概念について大臣の御所見をいろいろお聞かせいただければというふうに思います。

 私自身、金融の業務に携わらせていただいたときに思いましたのは、普通に考えれば、お金をとにかくいろいろなところにできるだけ早く迅速に行き渡らせて、そしてそこで活発な活動を行っていただく原資として、それによって利益がもたらされ、それを返済原資としていただく、これが金融機能なのかなというふうに思いながら仕事をしてまいりました。

 一方、預金を入れてくださる方がいらっしゃらなければ金融機能は成り立ちませんので、お金を預けていただく方々には、どうやって預けていただいたお金を将来きちっと利ざやをつけてお返しするかということを担保しなければいけない。

 つまり、今申し上げた、お金を貸して、平たい言葉で言うとどんどんもうけていただいて、そして将来返していただくという機能と、お金を預けていただいて、その方々にきっちりと利ざやをお返しするという機能が二大機能ではないかというふうに思っているんですが、そうした私の認識ともし諸大臣の御認識とが異なっているのであれば前提が違ってまいりますが、こういった機能について、今、中川金融担当大臣、御就任後いろいろとお考えだと思いますが、大臣なりの御所見をお伺いできればと思います。

中川国務大臣 御専門で長くやられていたわけですけれども、基本的に考え方は同じだと思いますね。

 例えば一万円札、原価二十円か三十円の紙ですけれども、これに一万円の価値をみんなで確認し合う。そこには国家なり日銀なりの担保というものもありますけれども、国民が、お金を預ける人も使う人も、みんなこれは一万円の価値があるんだということで、給料をもらったり、あるいはいろいろ消費に使ったり、そして預ける。そこで今度、預けたときには、金融機関でちゃんと預けて、普通預金、当座預金であればいつでも引き出しができるし、一年後、三年後、五年後、預けてもちゃんと利息がついて戻ってくるんだという信頼が預金者と金融機関との間になければいけないわけですね。

 預かった金融機関は、今度はそれを金庫の中にしまって凍結するわけにもいきませんから、ビジネスとして、これをお金を借りてお仕事をしたいという人にお貸しをする。そのときには、審査とやはり信頼というものがあるんだろうと思います。そして、お金を借りた人が一生懸命そのお金でもって必要なものを調えて、そして努力をして、いろいろなものをつくったりサービスをしたりして、またそこから利益を得て、そして従業員に給料を払って、金融機関との関係も健全にしていく。そういう一つの循環が健全な金融のあるべき姿だろうと私は思います。

 残念ながら、日本はこの数年間、景気が低迷して、労働分配率が非常に落ちている、所得が伸びていかないという状況もございましたし、ここ一年ちょっとの間は、先ほどから申し上げております、アメリカ発の信用不安が日本にも世界的にも大きな影響を及ぼしているということで、いろいろな意味で、金融という信用をベースにしたシステムが欧米等で崩れかけているし、日本においては何としてもそういう事態にしてはならないということで、今この法案あるいはそれ以外のことも含めまして、いろいろと御審議をいただいているところでございます。

和田委員 今の御答弁をお伺いしておりまして、概念の前提としては安心させていただきました。

 そうであればということになりますが、今回、各金融機関に対して資本注入を行って、健全な金融機関であり続けてもらおうという趣旨での法案でございますが、この資本注入というものをやるかやらないかはどこかで判断するときが来るとしまして、その資本注入をした後に、金融機関にどんな現象が起きているべきなのかということなんでございます。

 当然のことながら、資本注入をすれば自己資本比率は上昇に向かい、不良債権をできるだけ少なくする方向に向かわなければ、先ほど来いろいろ議論が出ておりますが、金融の監督当局から金融機関は指導を受ける。よって、それを健全化する方向に向かうわけでございますが、私が実際にいろいろ担当させていただいてみて感じましたのは、その意識が金融機関に強固に植えつけられる余り、実際の金融機関の本業の一つであります貸し付けということが健全な姿で行われているんだろうかということを疑問に思う場面が幾つかございました。

 そこで、昨日質疑通告をさせていただいた中に、過去の例を一つずつある程度検証されているんだろうと思います。今までいろいろなスキームの資本注入がございますけれども、少なくとも、どのスキームによりましても、資本注入をした後の金融機関がどのようなオペレーションをしているかということについて金融監督当局なりに分析をされて、それが本当にあるべき姿になっているのかどうか、それを検証していただいているんだと思いますが、その点について少しお聞かせいただければと思います。

 私が質疑通告で投げましたのは、今回話題となっておるのが金融機能強化法でございますので、その関連での資本注入を受けた金融機関について、どのような貸付実績にその後なっているのかということをお聞きいたしました。数字の方を若干事務方から御紹介いただけますでしょうか。

三國谷政府参考人 お答えいたします。

 現行の金融機能強化法に基づきまして国が資本参加を行いました事例は、紀陽銀行の持ち株会社である紀陽ホールディングス、それと豊和銀行の二件でございます。

 この金融機能強化法における経営強化計画には、中小企業等に対する信用供与の残高の総資産に占める割合を記載することとなっております。中小企業等に対する貸出残高の増加は義務づけられておりませんが、紀陽銀行及び豊和銀行における資本参加直後からの貸出残高、これは全体の推移を四半期ごとに見てまいりますと、まず紀陽銀行でございますが、十八年の十二月末二兆六百六十四億円、これが十九年の三月末で二兆一千百十四億円、六月末二兆一千四百四十二億円、九月末二兆一千九百八十九億円、十二月末二兆二千三百九十億円、二十年三月末二兆二千七百二十五億円、六月末二兆二千四百七十二億円となっているところであります。

 次に、豊和銀行につきましては、十八年十二月末が三千五百五十四億円、十九年三月末が三千五百七十三億円、六月末が三千五百六十七億円、九月末が三千六百五億円、十二月末が三千六百三十五億円、二十年の三月末が三千六百六十九億円、六月末が三千四百九十六億円となっているところでございます。

和田委員 私も、事前に資料をいただきましたのでその数字を確認したところでございますが、以降は私の方から御紹介したいと思います。

 今答弁いただいたのが全体の貸付残高の推移でございます。定義ははっきりとは書いてございませんでしたが、今般議論で有名になっております中小企業への貸し渋りが起きているのかどうかということについての過去の資料を出していただきますと、御紹介しますと、先ほどの最初の例の紀陽銀行は、十九年三月末で一兆百四十二億円、九月末で一兆四百五十九億円、二十年三月末で一兆六百八億円というふうに、少しずつでありますが伸びてはおります。

 もう一つの方の銀行ははしょりまして、この一つの事例を見ましたときに、どのようなところまで詳細に分析をなさっておられるのかということでございますが、実際に、全体の貸付残高が伸びているのに比べて中小企業への貸付残高の伸びが低くなっているのが、この直近のデータをいただいた半年になっているということでございます。

 そういった、諸々の考え方はございますのでそれを御披露いただければと思いますが、もう少し、私が実際に、先ほど申し上げたように地元におる期間が多いものですから、中小企業の皆様方や実際に融資に携わっておられる方々にお聞きしましたところ、本当に全部生の声でございます、この紀陽銀行では残念ながらございませんが、しかし大分共通しているというふうに当事者がおっしゃっておられます。

 まず、中小企業に対する融資残高は、今のいろいろな地域金融機関の方々の御意向としては、総額をある程度維持、ちょっとずつ伸ばさなければ金融監督当局の目が怖いというふうにおっしゃっておられます。そこで、今御紹介したとおり、数字は伸びてまいります。しかし、実際に起きている現象というのは、中小企業が何万、何十万とある中で、どの企業にどれぐらい貸しているかの構成比が変わっているのであるというふうに融資の当事者もおっしゃっておられます。

 こういったことが生の声として、お一人だけであれば御紹介は控えたのでございますが、何十人の単位でこういったことが声として上がってまいります。こうしたことを金融監督当局としては、さらに中小企業への融資の実態についていろいろ分析されているのか、されているのであれば御紹介いただければと思います。

三國谷政府参考人 私どもも、ことしに入りましてからさまざまな形で、金融の借り手の方がどういうお考えをお持ちなのか、その声を把握することに努めてきているところでございます。具体的には、私どもといたしましても、五月あるいは八月にアンケート調査を実施するほか、八月には全国に私どもの職員が出かけまして、私も出かけましたけれども、貸し手のみならず借り手の方々からいろいろな御意見をお伺いしてきているところでございます。

 もとより全体の御意見を拝聴するというわけにはまいりませんが、そういった中から借り手の立場の声というものも私ども真剣に受けとめながら、中小企業金融の円滑化に努めてまいりたいと考えているところでございます。

 なお、大臣からもそういった御指示をいただいておりますし、大臣みずから目安箱をこしらえられる、あるいは金融機関の首脳を集めてそういった指示をされるといったこともございますし、私ども職員といたしましても、これからもさまざまな形で、貸し手の方のみならず借り手の方々の声を酌みながら、この金融機能の円滑化に努めてまいりたいと考えているところでございます。

和田委員 今局長から御答弁いただいた内容を一言で言えば、声を聞くようにしています、それを酌み上げるようにしていますという御答弁だったように思いますが、実際にその中身について分析をなさっておられますでしょうか。

 いわゆる中小企業への貸付債権がそれぞれあって、それらが、個々の企業別にお話しになることは難しいと思いますが、全体として業況がすぐれている企業への融資に若干集中しがちになっていないかという問題意識を当事者も述べておられます。

 つまり、確実に回収できる相手には、たくさんの民間地域金融機関が借りてください借りてくださいと言って駆けつけて、そして貸し出し競争をするがために、金利は本来の市場原理からするとこのくらいと言われているのが安くなってしまう。一方で、今度は、そこにお金を集中する関係で、余りたくさんの金額を中小企業に割くのも難しい。もしくは、リスク管理債権のカウント上非常に操作を要求されているということもあって、リスクがあると認定される企業にはどんどん回収してしまうという実態が、この一年、本当に地元を回っておりましてたくさんお聞きできるようでございます。

 こういったことについて、金融庁の方で何らかの分析を行っていらっしゃるのであればまた教えていただければと思いますが、私の方からは、時間をセーブするためにも、私が感じましたこと、聞きましたことは以上のとおりでございますが、中川金融担当大臣の方で、この直近一年間の中小企業への金融の実態についてどの程度当局から御説明をお聞きになられ、自分としてどのような対処策が必要だと思っていらっしゃいますでしょうか。

中川国務大臣 この一年というと、この職につく前からということになるわけでありますが、私の北海道は非常に景気が悪いので、そういう中で地場の中小企業に対して、特に地元の金融機関とのつながりが深いわけでありますけれども、なかなかお金を融通してもらえないという声もよく聞いておりました。また金融機関の方も、今御指摘があったように、本来だったらといいましょうか、安全を見越したら優良なところに貸したいんだけれども、とにかく全体が資金需要が落ちているというぐらいに景気が低迷しているわけでありますけれども、やはり十分に金融機関からお金を借りられないという原因は幾つかあるんだろうと思います。

 その点についての一つは金融監督行政。これは、金融行政というのも法律あるいはまたいろいろなルールに基づいてやっているわけでございますけれども、そこがひょっとしたら少し厳し過ぎるのではないかというようなことで、一議員として、システムの問題として金融庁に事情をお聞きしたことは過去においてございました。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

和田委員 今のお話をお聞きしておりまして、もっと分析を深めていただきたいというふうに思いましたが、先ほど冒頭に申し上げたとおり、金融の機能というのは、お金を貸して、いろいろな先でもうけていただいて、収益として今度は返していただくということが本質的な機能でございますので、この貸し付けをとにかくふやしていく努力をもっともっとすべきではないかと思って地域の実情をお伺いするわけでございます。

 先ほど申し上げましたが、本来の金融機能を強化するためにあるべき方策として、今議論しているのは資本注入でございますが、この金融のあり方そのものをもう一度国として見直すべきではないかというふうに思う次第です。つまり、リスクをとってお金を貸すのが金融業であって、リスクをとらなくなった金融業は、各産業分野から見るとお金の取り立て亡者にしか映らないということなんでございます。

 これらについては、恐らくこの部分については与野党問わず、地域を見守っていらっしゃる各委員共通していらっしゃるんじゃないでしょうか。こうした声をぜひしっかりと大臣として酌み上げていただきまして、本来の金融機能を発揮するためには、これぐらいの企業にはこれぐらいの金利をつけねばならないのであるというふうに金融機関そのものに考えさせるような行政を行っていただきたいというふうに思うわけでございます。つまり、貸して収益が返ってくるような相手に対して適正な金利がついていなければ、それ以上状況が悪いところをどうやって貸し付けを行って立ち直らせるか、もしくは新規創業の企業に対して、ああ、お金を貸してくれてよかったというふうに思ってもらえるか、そうした資金も供給できないわけでございます。

 こうした資金供給の部分を全体としてはじき出すためにも、全体として健全な金利体系をきちっと金融機関に持たせるという行政が必要なのではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

中川国務大臣 多分、金利とリスクというのは相関関係があるんだろうと思うわけです。特に、今は世界的なこういう状況でありますけれども、安定した状況の中であれば、ハイリスク・ハイリターンあるいはローリスク・ローリターンというのは多分マーケットの一つの原理だろうと思います。

 ただ、御指摘の面はわかるわけでありますけれども、余りにもリスクをとって、大変言葉は悪いのかもしれませんが、ここでひとつリスクを冒してということも、昔は何か伝説的な話として、ほかから見ればすごいリスクだけれども、融資担当者の目ききでもって、ここはひとつこの経営者にかけてみるかといって、失敗した例もありますし、見事にそれが成功して、その金融機関も借りた方の会社も、具体的には言いませんけれども、今世界のトップクラスの会社になっているような会社もあるわけでございまして、今日本から世界で活躍している世界的な企業というのはみんなそういう危機を何回か乗り越えて今日来ている。それは、やはり金融機関との連携というものもあったんだろうというふうに思います。

 他方、その原資の主たるものは、一般的には個々人の、国民の皆様方の預金でありますから、この預金についても、やはりそこはしっかり、お預かりしたものを冒頭申し上げたようにきちっとお返しをしなければいけないということも大原則だろうと思います。

 したがいまして、現在、金融庁としましては、私がいつも言っているのは、リスクを管理するのも大事ですけれども、余りにもそればかりに偏って、特に地場の金融機関が地場の企業に貸すときには、いろいろなプロとしての、あるいは地場ならではの情報あるいはまた経験を生かして、多少のリスクもとって、そしてともにいい結果になるように頑張っていけるような金融行政というもので、金融機関に対しても監督あるいは行政を行っていくことが大事なのではないかということを私は何回も金融庁の担当に申し上げているところでございます。

和田委員 問題意識をもっと深めていただければと思って申し上げました。

 付言すれば、金融機関の融資姿勢について、今大臣のおっしゃった、リスクをとにかくとり切って、とにかくかけに出るというようなことを、どこかでは適正なラインを引っ張って算出しなければいけないんだと思いますけれども、そういったときに、自分だけではしょい切れないけれども一緒にパートナーがいればということで、補完機能を果たしているのが政府系金融機関ではないかと思いますけれども、実際に私が現場に出ていましたときには、どちらかというと政府系金融機関の方がさらに金利競争を促進させるような行動に出てしまっているような事例がたくさん見受けられました。

 私自身、担当してきた一員としてまだまだ不十分であったなというふうに反省する次第でございますが、全体の金融機能を強化するという観点から、今回の資本注入を考えるに当たっては、本来の業務として健全になるのかどうかということをもう一度お考えいただければと思います。

 次に移ります。

 この資本注入を行う際によく議論として出てくるのが、対象機関となる民間銀行において経営責任をどのように明確化してとっていくのかということでございます。

 いろいろと諸説はございます。実際に経営責任をとることが最もその銀行のためでもあり、また銀行が果たすべき金融機能を強化するためでもあるというふうに言う方もいれば、いや、踏ん張って頑張ることこそいいんだと言う方もいらっしゃいます。しかし、実際に金融分野以外での産業分野で広がっている情景を目にした上で、金融システムというのは確かに資金を全体に流す上で大切なシステムではございますが、ほかの業態と比べまして余りにも優遇されていないだろうかという観点からお聞きしたいと思います。

 今までいろいろと金融危機に陥った状況の中で、各銀行には資本注入が行われてまいりました。その際に、本当に大きな事態、今回の場合はアメリカに端を発しているわけでございますが、こういう大きな事態によって金融機関が苦境に陥った部分があるのは確かでございますが、それぞれの個別事情の中で、それまでにたくさんためてきたうみと言ったらちょっと失礼かもわかりませんが、負の資産の部分があるはずでございます。その部分を、金融監督当局としていざ資本注入を決定される際にはきちっと切り分けて、ここの部分については全体にシステミックリスクがあるから資本注入をするんだ、ここの部分については、本来ならば自己責任で、どんなに苦しくても自分が収益を上げることによって返していくんだということを切り分けて考えるべきではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

中川国務大臣 現在日本でシステムリスクがあるからこの法案の御審議をお願いしているわけではないということは、和田委員も御理解いただいていると思います。その上で、御質問で、システムリスクである程度やむを得ない部分と個々の経営によって問題が起きている部分ときちっと切り分けるべきではないかというこの原則は、私も同感でございます。

 そういう意味で、この法案につきましては、やはり中小企業等に対しての資金供給をより柔軟にするための方策として、金融機関への資本注入をして、さらに貸し出し余力をつけてもらうということでこの法案を御審議いただいているところでございます。

 しかし、個々の案件、まさに御指摘のように案件ごとに具体的には違うんだろうと思いますけれども、経営強化計画等を出していただいたときにきちっとしたものであるかどうかを第三者の御意見も聞きながら判断をし、そしてその後、計画に沿ってやっているかということをチェックしながら、ゆめゆめ、ずさんな経営者あるいは経営体であってはならないという大前提で、これから、この法律ができ上がったならば、そういう目的で実行させていただきたいというふうに思っております。

和田委員 切り分けて考えることには御同意いただいたようでございますので、いざ事態が起きたときには、きちっと切り分けた上での説明責任を果たしていただければと思います。

 つまり、これから先、もし将来、資本注入の事例が生じた場合に、経営者が経営責任をとらなかったという場合には、大臣の認定としては、それはシステミックリスクに基づくものであって、経営者それぞれに帰する事由ではないと認定された、私の申し上げた前者に当たる部分はないのであるというふうに認定されたと思ってよろしいんでしょうか。

中川国務大臣 済みません、もう一度お願いいたします。

和田委員 先ほど申し上げたのは、二つの場合がある、それをきちっと切り分ける必要があることまでは大臣に御同意いただきました。前者の方は、個々の銀行の事情によって生じている部分、後者の方は、システミックリスクによって生じている部分。そして、それを審査された大臣は、最終的には資本注入をお認めになる立場にございますけれども、その資本注入を認められるときに、経営者が責任をとらなかった、つまり辞任されなかったということであれば、それは大臣としては、システミックリスクによってこの金融機関は危なくなったのであり、経営陣の責任はなかったというふうに認定されたと考えてよろしいのでしょうかということでございます。

中川国務大臣 この法案が法律化されたことによって資本注入をしたいと言ってくる金融機関というのは、計画を出していただいて、個々に判断をするわけでございます。その場合に、ふだんから金融監督はやっておりますけれども、改めてチェックをして、ずさんな経営をやっているとか、あるいはまたこの計画が本当に実現できるだろうかとか、あるいは、現に自己資本比率四%を切っているような場合には、果たしてきちっと四%を回復できるようないろいろな方策等がきちっと対応できているんだろうかというような個々の判断でやっていくわけでございます。

 それによって、これからもう少し具体的細かなルールを法律に基づいてつくっていかなければならないと思っておりますけれども、第三者の御意見も聞きながら判断をさせていただくということで、経営責任と直接的にすぐ結びつくかどうかということになりますと、この経営責任というのが、数年前、私が国会答弁で責任をとりますと言ったら、辞任だといって予算委員会が一日とまったことがございますけれども、なかなかその経営責任という言葉がどこまでを言うのかというのも、これから非常に難しいところ、辞任を意味するのか、あるいは役員報酬等をカットするのか云々といろいろ出てくることにもなるかと思います。

 システムリスクではない、この法案自体がシステムリスクを想定しておりませんけれども、ではすべて個々の経営責任かというと、必ずしも、御地元もそうかもしれませんが、経済状況が非常に厳しくて、そしてなかなか貸し手の期待に沿うことができないとか、相手のあることでございますし、また、世界的なシステムリスクによって個々の経営が、資産価値が減損したりなんかということによって影響がある場合もございますので、お考えはわかるんですけれども、個々の具体例で、これはこっちのケースかあっちのケースか、こっちのケースだったら経営責任が必ず伴ってくるかということについては、一概には言えないと思います。

 ただし、では実際にどうしたらいいんだということになると、何もルールがないというのも、これもまた不安定なことになりますので、もう少し法律に基づいて具体的な要件というのをさらに細かく決めて、お示しをしなければならないというふうに考えます。

和田委員 少し歯切れの悪さを感じましたが、私の申し上げたかったことは、各個別の金融機関の経営者に責任があると認定できる部分があったのかなかったのか、それにかかっているわけでございます。ほかの事情はほかの事情でいろいろあるのは大臣がおっしゃったとおりですが、その個々の経営陣に対して責任があると認定されたときに、経営責任、とり方は辞任もあれば役員報酬のカットもございますが、幾つかの中からきちっとそれをやりましたと言えるような事態になっているかどうかという観点からお伺いしました。

 これ以上は、今までおっしゃったように、法律そのものがそこまでの段階でございますので、具体的に詰めていただく中でまた議論してまいりたいと思います。

 一つ、この経営責任の明確化についての議論の中で、またこれも大臣に御報告差し上げたいと思いますが、銀行の内部でお勤めになっておられる行員の方々の御意見として私が承りました。

 実は経営責任をとるということは、資本注入を契機にして、要するに、外向けに自分たちの銀行が生まれ変わってしっかりとやるんですという意思のあらわれにもとられるんだ、逆に、経営責任をとらなければ、その意思が不明確だと外部で言われ、自分たちの業務には実は差しさわりが生じるんだというお声も、現場で融資を担当していらっしゃる方々、少なからずいらっしゃるようでございます。

 つまり、トップの方々が社会的責任を自分でどう果たすかということをお考えの範疇の中に、組織の人間そのものが本当にやる気と意欲を持ってやれるようにするために、自分はどう対処したらいいのかという視点がまだあってもよかろうかというふうに思った次第です。御報告まで申し上げます。

 続きまして、次の質問に移らせていただければと思います。

 以降は、農林中金についてお問い合わせしたいと思います。石田農水副大臣、よろしくお願いいたします。

 私、先ほど申し上げたとおり、まだ財務金融委員会に所属することになってごくわずかでございますが、今回の法案の中に農林中金を資本注入の対象として加えるというのが入ってくるんだということをお伺いしまして、正直言って本当にびっくりいたしました。今まで各金融機関のあり方について、端パイではございましたが、いろいろ加えていただいて検討してきた公務員の一人として申し上げれば、今なぜそういうことになったんだという意識を非常に強くした次第でございます。

 まず、農林中金について、そもそも論でございますが、石田副大臣の御認識として農林中金というのは何のためにある組織でしょうか。ぜひ御所見をお伺いいたしたいと思います。

石田副大臣 農林中金の大きな使命としては、やはり農業、林業、また漁業、こういう方々を守っていく、これが一番大きな使命ではないかと思います。

和田委員 私もそのとおりだと思います。

 私のこの頭で考える限り、農林中金があるべき存在価値としてはおっしゃるとおりで、そうであれば、やっていただく仕事は農林水産業の振興のために資金を供給する、先ほど冒頭申し上げた金融機能を発揮するということでございます。

 しかし、副大臣も何度も追及されておられるんだと思いますが、農林中金の今の実態はいかがでしょうか。副大臣、実際の金融機関としてこの内容で本当に正しいと思われますでしょうか。私がいただいた資料によれば、農林中金の資産運用の中で六割近くは有価証券の運用になっている、貸し付けよりもはるかに大きな規模でございます。これで本当に農林水産業の振興ということを役割として果たしているというふうに私には思えないんですが、いかがでしょうか。

石田副大臣 これは、御存じのように、農林中金、そして信連、それから単協、こうあるわけですね。単位農協はお金を預かる、それを信連また農林中金に預けていく。そういう中で、今回も決定しているようでありますけれども、農林中金は配当という形で三千億円を信連、単協に配当していく。そういう形をとって、いわゆる貸し出しをしている金融も含めて、単位農協の健全な経営に資することをやっていると私は思います。

 それは、すなわち単位農協が地域の金融機関として、また農業、林業、水産業、漁業の方のお役に立っていっているのではないか、こういうふうに思っております。

和田委員 今副大臣は、農林中金は各地域にある農林関係金融機関の資産を預かっているから、その資産を今度は有価証券で運用しているんだという御答弁になっているんだと思いますが、実際に、ではその単位金融機関に対してそれだけの利ざやをもって還元している資金がどれぐらい農林水産業にしっかりと回されているか、そのチェックは行われていますでしょうか。

 実際に農林水産業への貸し付けは、どの一定期間かにせよ、どれぐらい伸びているのか減っているのか、それらについて、本来ならば、中央金融機関として各地域金融機関を指導しながら、これだけ収益を還元してやっているんだからしっかりと貸せよというふうに指導しなければいけない立場ではないかと思いますが、その面でのチェックはいかがでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 今副大臣が申し上げましたように、農林中央金庫は、その第一条の目的におきまして、傘下の会員であります信連あるいは農協等の金融の便宜を図るということでございます。

 この機能は、協同組合系統金融機関といたしまして、他の信用組合でございますとか、あるいは信用金庫、労働金庫と同様の系統を構成しているわけでございます。したがって、中央機関におけます大体の資金運用の状況については、基本的に有価証券比率が高くなるというのは、この生産現場から上がってくる余裕金、それを各段階で貸し付けた後の金額が上がってくるということで、必然的にそういう余裕金の運用になるということでございます。

 今委員お尋ねの、農林水産業に対して、どのように発展をしていくかということでございます。これは、当然ながら、私どもも、農林中央金庫を初めといたします系統金融機関の貸し出しが伸び、そして農業粗生産額全体が大きく伸展するということを政策の重要な課題だと思っておりますけれども、貸し出しの基本的な基盤の部分、農林水産業をめぐる全体状況、粗生産額の伸展の状況等々、これはいわゆる貸付対象であります農林水産業そのものがどのような状況にあるかというところ、いわゆる需要サイドの面におけます状況がこの貸し出しの部分にも大きく影響する。

 私ども、今の状態では、非常に残念なわけでございますけれども、農林水産業そのものの状況が非常に厳しい状況にある。したがって、ここを何とか貸し出しを大きくするべく、例えば農林中央金庫においても、担い手に対します必要な資金手当てを行う等の努力をしているところでございます。

和田委員 今の事務方の御答弁を聞いておりまして、最初に申し上げた、金融機能を積極的に果たす機関として動いていらっしゃるようにはとても私には感じられません。本来、金融機能をどこかの、今回の場合は農業分野でございますが、農林水産業の分野で本来の機能を果たすならば、もっと積極的にそれぞれの産業分野に携わっていらっしゃる方々にこのお金を使って、何かしっかりと収益を上げてくださいという指導まで含めてやってもよいのではないかと思うぐらいです。

 しかし、今おっしゃったことは、お金が集まってくるんだからしようがない、そのお金を、要するに貸し付ける実情には、実需が余りないからできないんだ、結果的にそれを有価証券で運用することになるんだというふうにおっしゃいますが、そうであれば、そもそもこの分野にこの金融機関が存在している意義は余り認められないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 農林水産業分野におけます資金の供与という形につきましては、委員御承知のとおり、まず、農家から預かります貯金は、生産現場の単位農協、これに貯金を預け、そして必要な資金は、一番現場の状況をわかっております農協が貸し出すということがまず基本になるわけでございます。そして、そこで出てまいります余裕金、これについては、各県ごとにあります信用農業協同組合連合会、いわゆる信連が県傘下の会員農協から貯金という形で預け入れを受けまして、そして、県下におけます調整、県下におきまして必要な、単位農協ではなかなか貸し出しが難しいものに対して、この信連が対応していくという形になります。

 そして、全国四十七都道府県にございますこのような信連等からの余裕金についてまた全体として農林中央金庫が預かって、必要に応じてまた貸し出しも行うわけではございますけれども、基本的には、単位農協あるいは信用連合会が貸し出した後でございますので、資金需要という面では、全国的な需要以外でありますと、これは、貸し出しの問題については、先ほどの他の協同金融機関と同様に、やはり貸し出しサイドというよりは、これをきちんと運用した上で、それをまた会員の信連あるいは農協に還元するというのが大きな役割でございます。

和田委員 これ以上は時間の無駄になりますので続けませんが、今の御答弁をお聞きしておりましても、本当に農林中金の機能として有価証券による運用が主体であるべきとお考えになれば、ぜひとも民間金融機関にお渡しいただいた方が、もっと収益が高くなるように思います。

 今回の資本注入に農林中金を対象として加えるというこのお話を聞いたときの私のびっくりした度合いというのはこの部分にございまして、有価証券の運用でこれだけたくさんの規模を持っていて、その運用がたまたま、サブプライムローンでしょうか、そういったものに影響を受けて非常に損失をこうむっているからといって、それを救わなければいけないという方で農林中金の将来を考えていただくということよりも、今までこうやって有価証券で運用してこられたものに何かの原因でこうやって穴があいたのであれば、この際、きっぱりとやめていただいた方がよろしいのではないかというふうに思った次第でございます。

 実際に、要するに国家的な財政論からいえば、これだけの巨額なお金を農林中金にもう一回、もし将来、いざといったときに資本注入で突っ込んだ場合、これをもう一回お返しいただくまでの期間損失を考えれば、農林中金に一切合財すっぱりと組織としてやめていただいて、民間金融機関に農業経営者、農業者、それぞれが行って資産を運用される方が、はるかに国全体として効率的ではないかというふうに思った次第です。

 今回、私の意見を申し上げたまででございますが、最後に、時間が少なくなってまいりましたので、副大臣にお聞きしたいと思います。

 質疑で通告したところでございますが、百歩譲って、農林中金に今回、預金保険機構の資本注入のスキームの中に入っていただくというふうに仮定すると、その部分では預金保険機構の機能を使うことになるんですけれども、ほかのところで対象となっていないのもよく御存じのとおりでございますが、これはいかに言っても、普通の一般的な常識からすると、いいとこ取りになっているというように感じるわけでございます。

 実際に、農林中金の方は私はまだお会いしたことはございませんが、農業従事者の方々までもが、自分たちが大体好きこのんで地域の農業系の金融機関にお金を預けているのではないというところまで今ごろおっしゃっておりまして、無理やりお金を拠出されているんだ、そのお金をもってそういうふうなところに資産運用されているんだ、自分たちは本当は農林中金に物申したいというところまでおっしゃっておられる方々が、地元を回っておってたくさんいらっしゃいました。

 農林中金がこのスキームに入られるということは、まず第一の前提として、どなたが発案なさったんでしょうか。副大臣、お聞かせいただけますでしょうか。

高橋政府参考人 基本的に、今回のスキームにつきましては、他の協同組合系統金融機関と同様の措置ということで、農林系統金融機関についても措置をしたところでございます。

和田委員 たくさんある一つだという御答弁ですね。そういった意味では、農林中金サイドで資本注入をしてくれという御意向が反映されたということではないんだと了解しますが、新聞紙上でもそのように出ておりました。

 今度は、要するに、いわゆる金融監督当局、金融庁も含めて、農林水産省としましても今この機能を組み込む必要があるというふうにお考えになったと判断いたしますが、そうであれば、今回、農林中金に資本注入をするということが可能になるような条項を入れるのであれば、預金保険機構にあるいろいろな、各金融機関の果たすべき一番の責務は保険料を納入することでございますが、そうしたことがなぜ定められないんでしょうか。お聞かせいただけますでしょうか。

 これは副大臣にお伺いしたいと思います。

石田副大臣 これは、預金保険機構を使うというのは、資本注入のスキームのときに使うということであって、今委員がおっしゃっているのは保険の、預金保険機構と貯金のことは分かれているということをおっしゃっているんだと思います。

 そもそも、今回のこの農林中金については、貯金保険機構でやっている。ですから、これは御存じのとおりだというふうに思います。制度発足のときと申しますか、仕組みの創設時において、一般金融機関の預金保険制度の対象外とされた。ですから、別の仕組みとして農協等の貯金保険制度ができていった、こういう歴史的な経緯があるわけです。

 そして、現在の預金保険制度と貯金保険制度の両制度は、保険金の支払い等の制度内容は基本的に同じでありますけれども、これまでの破綻の規模等反映をして、責任準備金の水準が違っている、また、保険料水準が異なっている、こういうふうな違いがあるわけでございますので、それぞれの貯金保険制度、また預金保険制度に従ってそれぞれの金融機関が対応される、このように思っております。

和田委員 時間が参っておるようでございますので、簡単にコメントをして終えたいと思います。

 今の副大臣の御答弁を聞いておりますと、今までの歴史的な経緯があって、法律がこのようにできているから、この中で対処をしたんだというお話でございますが、何も法律というのは絶対的な前提ではございませんで、一番使いやすいように法律を変えて臨めばよいものではないでしょうか。

 そもそも、農林中金に対して、今のどちらが前提でも私は結構だと思いますが、資本注入を預金保険機構のスキームを使って実現できる可能性をとるのであれば、素直にほかの金融機関と同じように預金保険機構に入り直していただければよろしいはず、そもそも貯金保険制度を廃止すればいいだけでございます。逆に、それがそもそも歴史上、農林水産省にとって非常に大切なものであれば、あくまで自立していただきまして、貯金保険制度の中につくるのか、また別の国のスキームをつくって資本注入の可能性を探っていただくのか、そのようにされる方が、国民の皆様方がお聞きになられても、制度としてはっきりとそれぞれ認識ができるものと思います。

 時間も参っておりますので、答弁をいただければと思いますが、時間が許せばお願いできますでしょうか。

石田副大臣 この問題を現時点における制度ということでお話ししたわけですから、当然、法改正云々ということであれば、それはまた別の話になろうかと思います。

和田委員 まだ納得はできませんが、また次以降に譲りたいと思います。終わります。

山本(明)委員長代理 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 この提案されている金融機能強化法案というのは、麻生総理が十月三十日に発表いたしました追加経済対策の重要な柱となっておりますが、きょうは、その経済対策に基づく第二次補正予算案についてお聞きをしたいと思います。

 今、編成作業が行われているようですけれども、これはいつごろ完成する予定でしょうか。

中川国務大臣 今回の生活支援は、予算を伴うものもありますし、また、そうでないものもあるわけでございます。そういう中で総理からは、とにかくできるものからどんどん速やかにやれという指示を強く受けているわけであります。

 予算を伴うものにつきましては、予算編成作業がございますので、それとのタイミングを見てということで、総理も、もう佐々木委員御承知のとおり、今国会でやるともやらないとも言えないということを申し上げているところでございます。

佐々木(憲)委員 ですから、この第二次補正予算案というのは、でき上がるのはいつごろなのかというのを聞いたわけです。

中川国務大臣 予算編成作業が終わればでき上がるということでございます。

佐々木(憲)委員 だから、それはいつごろかと聞いておるわけです。

中川国務大臣 今、一生懸命やっているところでございます。

佐々木(憲)委員 なかなかはっきりしたことを言わないんですが、今月二十日ごろにできるんじゃないかという報道がありますけれども。

 この第二次補正予算案というのは、この国会に当然できたら出すというのは当たり前のことだと思いますが、いかがでしょうか。

中川国務大臣 ですから、生活対策というのは、これはもうできるだけ早く実行したい、これが総理の強い意向でございますから、できるものからやっていくということで指示を受けているわけでございまして、この予算を伴うものについても、予算編成作業を終えて、そして、その段階でどういう状況になっているか、国会の状況も見ながら判断をせざるを得ないというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 総理は記者会見で、この政策というものをぜひ実現して、結果として国民の生活不安にこたえる必要があるというのが僕は優先順位からいったら一番なんだと、私自身はそう思っています、こう述べているわけです。優先順位一番でありますから、第二次補正の編成が終わったら、関連法案とともに直ちに国会に提出をする、今国会に提出する、これが普通の受けとめ方だと思うんですが、そうしないわけですか。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

中川国務大臣 国会にはおのずから、現時点では十一月三十日という期間があるわけでありまして、我々はとにかく、今、佐々木委員も御指摘のとおり、できるだけ早く、全体としても早く、できるものからどんどんやっていくということで作業をしているわけでございます。

佐々木(憲)委員 だから、早く作業をして、できるだけ早く編成を終えて国会に出す。今国会には出さないということですか。出さないと言うのであれば、何のために編成しているんですか。

中川国務大臣 出さないなんて一言も言っていないんでありまして、我々は一生懸命今、この対策を予算面で実現するために予算編成作業をやっているわけでございまして、急いでやっておりますけれども、その編成作業ができ上がった段階で国会がどうなっているかということはわからないということを申し上げているわけであります。

佐々木(憲)委員 国会がどうなっているかは、国会の中の状況、それぞれ与野党のいろいろな議論というのはあると思いますが、編成作業が終わっても、国会の状況によっては出さないということもあり得るという答弁ですね、今は。

中川国務大臣 まさに佐々木委員が今おっしゃっていただきましたように、国会のことは国会がお決めになるわけでございます。我々は、できるだけ早くということで作業をしているわけでございます。

佐々木(憲)委員 はぐらかしてばかりいるのでなかなかこれが詰まっていかないんですがね。

 これは要するに、この第二次補正予算案を編成は急ぐ急ぐと言いながら、国会の状況では出さない、出す、はっきり言わない。つまり、普通は、編成作業が終わってすぐ出して、国会を延長するなら延長する、そういうことでぜひこの国会で通していただきたいというのが内閣としての基本姿勢だと思うんですが、そういう姿勢をとっていないということは、出さないで解散もあり得る、こういうことなのかなというふうに思いますけれども、その姿勢がどうもよくわかりませんね。

 それでは次の問題についてお聞きしますけれども、二兆円の定額給付金、これはクーポン券かどうかわかりませんが、全世帯に配る。これは、一回のみということで理解してよろしいんですね。

中川国務大臣 生活支援定額給付金、クーポン券にするかどうかは決めておりませんが、これは、定額減税の議論のときにもここで申し上げましたが、一回限りの措置として考えております。

佐々木(憲)委員 与謝野経済財政担当大臣は、所得制限を設けるべきだ、こう主張しておられるようです。この与謝野さんが、高所得者を支給対象から外すべきだ、こうおっしゃっているんです。これは中川大臣も同じ考えでしょうか。

中川国務大臣 私も、二兆円の範囲内でということで、総理も標準家庭で大体六万円程度、こうおっしゃっておられますが、高額所得者にも同じようにするよりは、一定の所得制限を設けて、低所得者の方々に少しでも厚くした方がいいと私も思います。

 ただし、他方、迅速性あるいは事務手続の問題等々のことも考えたときに、できるだけ早くお渡しをするということも重要だろうということで、現時点においては、迅速性を最重要課題として、我々としては所得制限を設けないということで今提案をしたところでございます。

佐々木(憲)委員 麻生総理はこの記者会見では、給付金を全世帯について実施する、こういうふうにおっしゃっていまして、所得制限については触れられていないわけで、そうすると、この与謝野大臣の発言は内閣の基本方針とは違う、こう理解してよろしいですね。

中川国務大臣 総理がおっしゃっているのは、できるだけ早くということを考えたときには、これは市町村の窓口でやっていただく作業になりますので、そういった自治体の方の作業のことも考えた上で、迅速性という観点からそういうふうに申し上げました。

 与謝野大臣のことは報道でしか私知りませんけれども、さっき私が申し上げたような、できれば私もそうしたいなという趣旨で所得制限を設けたらいいのではないかとおっしゃっているのではないかというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 総理はこうおっしゃっているんですね。定額減税については給付金方式で、全世帯について実施します、規模は約二兆円、詳細は今後詰めてまいりますが、単純に計算すると、四人家族で約六万円になるはずです。これは明確に全世帯とおっしゃっているわけです。中川大臣は、これは実務的な手続上やりやすい方式なのだ。この与謝野大臣が、高い所得層の人にお金を渡すのは生活支援の名前に反しているというふうにお話しになっているんですよ。一千万円前後の所得額を基準に高所得者を支給対象から外すべきだとおっしゃっているんです。これは複数の報道であります。

 そうすると、総理と中川大臣と与謝野大臣の立場というのはかなり違うんじゃないでしょうか。与謝野大臣のこの方式は、結局、所得制限を一千万で設けるという、これは明確にはっきりと公言しているわけですから、経済財政担当大臣ですから。そうおっしゃっているわけです。これは内閣不一致なんじゃないんですか。

中川国務大臣 私が総理と違うことをおっしゃっているという意味で佐々木委員から質問されたのであれば、私も自分の責任においてお答えいたしますけれども、与謝野大臣の発言ですから、ぜひ与謝野大臣にお聞きいただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 機会があれば与謝野大臣に聞いてみたいと思いますが、予算委員会が開かれませんので、なかなかその機会がないのでお聞きしているわけです。大臣の間でこれだけ見解が違うのは、これは予算編成にも大変大きな影響を与えるわけでありまして、ここで一致しないと、これは基本方針ですからね。

 この問題について、実は細田幹事長も、所得制限を設けるかどうかについて、政府・与党で早期に詰め、国民に向かってきちんと説明することが望ましい、できるだけ早くやりたい、こう言っているわけで、これは、違いを認めた上で調整してくれという話をしているわけなんですが、これは内閣としてどういうふうになるんですか。

 中川大臣の考えはわかりました。しかし、これは中川大臣に聞いても、与謝野さんに聞いてくれという話ですから、なかなかはっきりしないわけです。これは違いがあるということは明確で、調整もしてくれと言われているんですから、これはどうするんですか。

中川国務大臣 先週の金曜日の経済財政諮問会議でこのことが議論になりまして、最終的に与謝野大臣から、この取りまとめは私にやってもらいたいという指示があって、その場で御了承をいただいたところでございます。

 これはあくまでも案でございまして、これから与党ともよく協議をして、ほかのことも含めて細部を詰めていかなければならないと思っております。

 いずれにいたしましても、私は総理の指示に基づいてこの仕事をやっていきたいと思っております。

佐々木(憲)委員 この具体的な方式について、所得制限を設けて、窓口で申請時に制限以下の所得であることを申告し、虚偽の申し込みをした場合、処罰する方法も検討されているとか、あるいは苦肉の策として、高所得者に受け取り自粛を呼びかけるやり方もあるという意見も出ている。これは、意見ですからいろいろな意見が出るんでしょうけれども、そんなこともあり得るんですか。

中川国務大臣 いろいろな意見が出て私は結構だろうと思います。

佐々木(憲)委員 いずれにしても、この二兆円の、各家庭に対する六万円の配付というのは、非常にばらまき的色彩が強くて、これだけ所得制限一つとりましてもいろいろな議論が出てきていて、これは内閣でさえその統一ができていないような状況、しかも、景気対策としてはほとんど役に立たない、三分の一消費に回るかどうかというようなことでありまして、本当に選挙対策というようなことが言われているのは、全くそのとおりだと私は思いますね。

 次に、小泉内閣以来の国民に対するいろいろな負担というのは大変なものでありまして、今配付した資料、四十六項目、十二兆七千億円に上っております。これだけ負担をいたしますと消費を冷やす方向に作用すると私は思うんですが、大臣はどういう感想をお持ちでしょうか。

中川国務大臣 いろいろな負担のところだけ出してこういう数字になっていると思いますけれども、これによって効果のあるものも私は裏側にあるというふうに思っておりますので、一概に、これだけで負担がふえたというふうには私は言えないと思っております。

佐々木(憲)委員 それは軽減があるのならいいけれども、軽減のリストなんというのは出てこないですよ、実際上。これで一人当たり約十万円、四人家族で四十万の負担増ですよ。これは、小泉内閣以前と比べると、毎年四十万円、各家庭が余分に負担をしているわけです。一回だけ六万円ぽんと返したって、次の年からまた四十万ですから、これは焼け石に水と言わざるを得ない。

 しかも総理は、三年後に消費税の引き上げをお願いしたい、こういうふうにおっしゃっているわけです。その率については、三十一日の記者会見で、中央公論の総理の論文を踏まえて質問がありました、一〇%というふうに書いていることで。それに対して総理は、そのぐらいのものが要るのじゃないかと思う、こう述べたそうです。

 消費税率一〇%というふうになりますと、現在の消費税は、国、地方を合わせて大体十三兆ですね。ですから、五%で十三兆ですから、一〇%になりますとその倍の消費税になる、こういう理解になりますが、そんなことでよろしいですね。

中川国務大臣 総理はよく全治三年という言葉を使われますけれども、三年以内には何としても景気をよくして、そして、税収も上がるし、何よりも国民の所得が少しでもふえていく、それによって、そのときにこの消費税の議論というものもしなければいけない。

 もちろん、中期プログラムの中で今後作成してまいりますけれども、今の御質問は、単純に五%が十三兆数千億でその倍ということになれば、今の景気状況のままで掛け算すれば、そういうことになるんだろうと思います。

佐々木(憲)委員 景気が冷えれば消費も冷えますから若干落ちるかもしれませんが、いずれにしましても、十三兆円という税収が上がっているものが、税率がその倍の一〇%になれば、当然その倍の二十六兆円程度になる。これは、十三兆ですから、人口で割りますと一人十万円ですよね。四人家族ですと四十万円の負担、そういう増税ということになると思いますが、いかがですか。

中川国務大臣 景気がよくなったときに、福祉、社会保障に充てるための安定的な財源が何であるかという前提でこの議論になっているわけでございまして、そういう前提で、何としてもそれまでに景気をよくするということが最優先で我々は取り組んでいるわけであります。

佐々木(憲)委員 税金というのは、大きく言うと、消費税、法人税、所得税であります。法人税の方はこの数年間ずっと減税が続けてこられまして、四三%の税率だったのが今は三〇%に下がっている。ところが、所得税、住民税はどんどんつり上がっていく。これは逆じゃないかと私は思うんです。家計は赤字なのに増税で、黒字でバブルのピークよりも倍近い利益の上がっている大企業は税金が横ばいという状況、しかも、この前もここでやりましたが、大銀行は大体十年間法人税ゼロ、こういう状況がおおむね続いているというわけであります。

 ですから、財源ということであるならば、三年後、当然この法人税の税率を見直すとか、きちっとそういう方向に切りかえることをやらないと、すべてこれ国民負担ですよ。今まで小泉内閣以来、各家庭四十万負担した、一回だけ六万円ぽんと返す、それが四十万またその次の年から負担が続くわけですよ。しかも、その上に消費税が三年後上がれば、一家庭当たり四十万の負担になる。合わせて八十万の負担じゃないですか。こんなことで本当に、日本の経済の発展、内需拡大、その中心である家計消費の拡大になるのか。私はその基本がどうもおかしいんじゃないかと思います。

 最後に中川大臣に聞きたいんですけれども、やはり大事なことは、家計の負担を本当に減らして、経済の一番の基本である内需の中心、その家計消費を拡大していくという方向に全体の政策の基軸を転換するということが一番基本だと私は思うんですけれども、そういう方向に踏み出すという意思はありませんか。

中川国務大臣 まさにそういう趣旨で、今、家計が非常に厳しいですから、緊急的に生活支援ということで発表し、できるものからやっていくということでございますし、中長期的に景気がよくなり、経済が成長していったときに、抜本的な税制改正をやるという前提の中で今の消費税も含めた議論をやっていきますというプログラムを年内にまとめるという作業をするわけでございます。

佐々木(憲)委員 しかしやっていることは、実際に今度の二回目の経済対策を見ましても、家計に対する支援というのは一応掲げているようでありますけれども、実際には、三年後にどんと増税になるようなことを同時に言って、家計がこれで本当に消費に踏み出すかどうか。私は、冷水を浴びせるような内容になっていると言わざるを得ないと思うんです。

 そういう意味で、まだまだ質疑はあしたもありますので、やらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十一分散会


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