衆議院

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第6号 平成22年3月9日(火曜日)

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平成二十二年三月九日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 藤村  修君

   理事 青木  愛君 理事 石森 久嗣君

   理事 内山  晃君 理事 黒田  雄君

   理事 中根 康浩君 理事 大村 秀章君

   理事 加藤 勝信君 理事 古屋 範子君

      相原 史乃君    磯谷香代子君

      大西 健介君    岡本 英子君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      斉藤  進君    菅川  洋君

      園田 康博君    田名部匡代君

      田中美絵子君    長尾  敬君

      仁木 博文君    初鹿 明博君

      樋口 俊一君    福田衣里子君

      藤田 一枝君    細川 律夫君

      三宅 雪子君    水野 智彦君

      宮崎 岳志君    室井 秀子君

      山口 和之君    山井 和則君

      あべ 俊子君    菅原 一秀君

      田村 憲久君    武部  勤君

      永岡 桂子君    長勢 甚遠君

      西村 康稔君    松浪 健太君

      松本  純君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    柿澤 未途君

    …………………………………

   厚生労働副大臣      細川 律夫君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   参考人

   (学校法人菊武学園名古屋経営短期大学学長)    古橋エツ子君

   参考人

   (三重県松阪市長)    山中 光茂君

   参考人

   (国立社会保障・人口問題研究所国際関係部第2室長)            阿部  彩君

   参考人

   (立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授)  高橋 紘士君

   参考人

   (株式会社東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長)  渥美 由喜君

   参考人

   (全日本教職員組合養護教員部長)         関口てるみ君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月九日

 辞任         補欠選任

  初鹿 明博君     菅川  洋君

  山崎 摩耶君     磯谷香代子君

  棚橋 泰文君     永岡 桂子君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     山崎 摩耶君

  菅川  洋君     初鹿 明博君

  永岡 桂子君     棚橋 泰文君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律案(内閣提出第六号)


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     ――――◇―――――

藤村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、学校法人菊武学園名古屋経営短期大学学長古橋エツ子君、三重県松阪市長山中光茂君、国立社会保障・人口問題研究所国際関係部第2室長阿部彩君、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授高橋紘士君、株式会社東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長渥美由喜君、全日本教職員組合養護教員部長関口てるみ君、以上六名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわりませず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず古橋参考人にお願い申し上げます。

古橋参考人 おはようございます。名古屋経営短期大学の古橋です。

 きょうは、子ども手当法案に関連して、私の意見を述べさせていただきます。

 お手元にレジュメと簡単な資料があるかと存じます。

 まず、家族による子育て支援への手当として、諸外国の児童手当と我が国の法制化に関連して述べます。

 一九二六年に既にニュージーランドで児童手当が法制化されておりますが、それから五十年近くたった一九七〇年には六十カ国で、約九割近くの国々が法制化しております。日本は、一九七一年に児童手当法を法制化しておりますので、余り早いスタートとは言えない状況です。

 その中で、子育て支援と公的支援の関連を見ますと、特にGDPとの比率は、このところマスコミでも随分取り上げられておりますので、皆様御承知のことと存じますが、現物給付が〇・五、現金給付が〇・三と、先進国の中では大変低い値を示しております。これをこのたび、子ども手当によって一・二、少なくともOECD並みにしたいということで提案されていると思います。

 これに関連しましては、さまざまな効果、経済効果とか出生率アップへの効果とか、いろいろございますが、出生率との関連で申しますと、児童手当のみ、いわゆる子ども手当のみで効果を言うということはできないのではないかと考えられます。

 というのは、出生率の高い国、中国とかインド、アメリカなどは、まず、児童手当そのものがございません。また、非常に高い児童手当を出している出生率の低いドイツ、イタリアなどを見ましても、その効果のほどというのは定かではありません。というのは、児童手当だけに視点を置いて子育て支援を考えた場合はこういう結果が出るのではないかと思います。

 では、子供への支援、すなわち、子育て支援としての手当を考えた場合、児童手当もあり出生率を上げている国として最近注目されているのがフランス、これは二・〇二という合計特殊出生率を上げておりますし、スウェーデンの場合も一・八三という出生率を上げております。ノルウェーも同じ一・八三でございます。

 これを見ますと、この差というのはどういうことかといいますと、ドイツ、イタリアとの差と、スウェーデン、フランスとの差というのは、二点あると思います。出生率も徐々に上げてきている国の場合は、一つは、子供のいる家庭の女性の就労率が非常に高いということです。それは、就労しやすい、子供がいても、子育てしながら就労しやすい雇用条件が、まず一つ条件整備として整えられているということです。それからもう二つ目は、男性、いわゆる父親が子育てをすることが非常にしやすいという条件、この二つの条件整備によって出生率が上がっているということが言えます。

 それでは、現実に、先進諸国の中で児童手当を支給している国々の場合は一体どうなっているのかといいますと、基本的には所得制限なしで支給しております。また、一番短い支給年齢でも十六歳です。この十六歳というのは、就学年齢が日本は六歳ですが、ヨーロッパの場合、秋学期から始まりまして七歳から入学というのが多いので、ちょうど義務教育を終了するのが、日本の場合ですと十五歳ですが、それが十六歳になるというので、今回法案で出ている十五歳までというのは、一番短い支給年齢の十六歳とほぼ同じだと思われます。

 ドイツの場合は、第一子から第三子までは月額百十ユーロです。第四子以降が多子加算がございます。

 二つ目のスウェーデンの場合は、第一子は千五十クローナ、大体一クローナは十五円程度です。第二子以降は多子加算でどんどんと上がっております。第五子の場合ですと、五番目の子供だけで二千三百六十五クローナです。そうしますと、五人いますと、合計七千六百十四クローナということになります。

 イギリスの場合は、第一子は、週で十八・一ポンド、それから、第二子以降は十二・一ポンドと、やや下がっております。

 フランスの場合は、第二子から児童手当が給付されます。月額百十九・七二ユーロで、第三子以降は多子加算がされます。第二子を目指すという意味ではこの支給方法はいいのではないかという声もありますが、実は、次に書きましたように、フランスの場合は、多様な子育て支援ということで、大きく家族手当という形で子育て支援をしております。

 第一子の場合、児童手当そのものは支給されませんが、胎児から、すなわち、妊娠七カ月目から出生するまでの間、月額八百五十九・五四ユーロ、これはちょっと年額で二万五千四百三十ユーロの所得制限がございますが、これが支給されています。

 それから、養育費が増加すると見られる十一歳から十六歳未満までは月額三十二・三六ユーロ、それから、十六歳から十九歳未満の間には月額五十七・五四ユーロというふうに、加算の形で給付しております。

 また、乳幼児受け入れ手当ということで、生まれてから、ウエルカムベビーということで三年間支給があります。これは、月収が四千百ユーロの所得制限がございますが、月額百七十一・九一ユーロです。

 また、新学期手当というのが、低所得世帯の六歳から十八歳未満の子供に対して、新学期である秋学期のときに、一人当たり二百七十三・九三ユーロが支給されます。

 多くの国が全額国庫負担という形で児童手当を支給しておりますが、フランスの場合は、事業主負担と国の負担ということで、家族金庫というのがございまして、そこから運営されております。

 続いて、スウェーデンの包括的な子育て支援です。

 スウェーデンの場合は、ミュルダールの「人口問題の危機」ということで、一九三四年にもう既に、子供の有無、それから数や所得が異なる世帯間への所得再分配を主張しております。

 そして、条件整備としては初めて児童手当が一九四七年に法制化されております。やはり、子供のいる家庭が経済的貧困に陥らないようにすること、所得制限をしないということをこのときに決めております。なぜならば、手当のほかに扶養控除等の拡充も一つの方法として検討するために実態調査が実施されておりますが、結果としては、低所得世帯ほど扶養控除に基づく減税効果が発揮されなかったということから、扶養控除から手当へということになり、それが所得制限をしないことということにつながっております。もう一つは、公平性、すべての子供に手当をという視点で、ユニバーサルシステムをとっております。

 そのほか、多様な保育サービスがございます。公立の保育サービスが多いのですが、やはりプライベートな保育サービスにも子供の安全性等々を考えて厳しい基準も設けておりますが、最近は、このプライベートな保育サービスもやや上昇しております。

 イギリスで言われた、ゆりかごから墓場までというのは、スウェーデンとか、それから先ほどのフランスもそうですが、胎児から墓場までということで、胎児の状態から非常に子育て支援の給付が手厚くなっております。

 時間の関係で、ちょっと、児童手当、育児期間中の年金加算とか、それから医療保険の出産費用、これは医療保険によって出産費用が全部賄われているということとか、出産手当が出産休暇中に出るということ。それから、両親休暇が四百八十日間ありまして、これは両親でシェアします。両親手当がその間、三百九十日間は八〇%保障、残りの九十日間が一律百八十クローナ。あとは、子供が病気になったとき、それから、ちょっとした予防注射を打ちに行くとか歯の治療をするといったときにも使うことのできる手当です。

 それから、日本でいう児童扶養手当法ですが、これは養育費補助ということで立てかえ払い方式になっています。離婚してすぐに単身家庭の親子が貧困に陥らないために、国がすぐにまず支給いたします。そして、その後、国は子供の監護権を持つ扶養義務のある親に求償権を請求いたします。養育費を立てかえ払いするという方法です。

 そして何よりも、ワーク・ライフ・バランスを充実させる。そのために、義務教育のときにもう既に社会保障と男女平等教育とを兼ね合わせた、この図がございますけれども、この図によって子供たちの社会保障に関連した認識を強めております。すなわち、働き方、お父さんもお母さんも子育てをしながら働き続けるということが、将来的には自分たちの年金の受給のときにこれだけ変わってくるよということをイラストで教えています。

 子ども手当の意義ですが、子育てで、まず第一位が、経済的な困難が挙げられております。その意味で、子ども手当というのはとても大事なことです。子ども手当というのは次世代への支援であり、児童手当をより普遍的な制度へと修正するという点で評価できると思います。それは所得制限がないということ、すべての子供を対象としていることということで、その意味では、おくればせながらスタートして、やっと先進諸国の児童手当に追いついたかなという気持ちがございます。

 国際会議に出たときに、日本はなぜというふうに、児童手当、子供に関連した支援施策に対して質問を受けます。何だかとてもつらい立場に置かれるということがございます。それがなくなるんじゃないかという期待がございます。

 所得制限のない現金給付に関連しては、子供が社会の子という認識、これがまず大事ではないかと思います。親が子供を育て、子供が親の面倒を見るといったような日本型の社会福祉の考え方というよりも、まず、社会を担う子供たちを社会全体で育てていくという視点がとても大事です。そのためには、非常に長期的な視点で政策を実施していかなければならないと思います。そのかわり長期的なメリットがありますし、子供のいる家庭に子育て支援の条件整備をそれと同時に行っていく、そのことが将来への社会への投資となると思います。

 投資となるという点では、まず、さまざまな問題もございますが、財源については資源配分のあり方、それから社会との、先ほど申しました子供は社会の子という点についてコンセンサスを得ること、これが大事かと思います。

 そして、今とても気になるのは、子ども手当か保育サービスかといったような二者選択的な議論が何か私には印象が強く、残念な気持ちでおります。というのは、均等法が制定されるときに、保護か平等かという議論でとてもつらい思いをいたしました。保護も平等もなんですね。

 そのことで考えますと、子供支援政策というのは、子ども手当だけか、それとも子ども手当とそして保育サービスどちらかに重点を置くのか、そうではないんです。子ども手当も、そして保育サービスもなんです。現実に仕事をしながら子育てをしていくというのがごくごく当たり前になってきているこの中で、なぜどちらかに偏ったような議論というのが出てくるのだろう、これがとても私にとっては悲しい思いでおります。

 どうか、子ども手当がほかの保育サービス等と、両輪になる保育サービス等々と同じレベルで議論されていって、子供を育てるという社会を、本当に育てやすい社会というのをつくり上げていけたらというのを願いながら、私の意見を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

藤村委員長 古橋参考人、ありがとうございました。

 次に、山中参考人にお願いいたします。

山中参考人 皆さん、おはようございます。

 本日は、厚生労働委員会の方に参考人として呼んでいただきまして、非常に光栄でございます。

 私自身、非常に緊張感を感じますのが、厚生労働委員会に来させていただいたからということではなくて、全国の自治体を代表させていただいて、子ども手当に関して明確な反対の意思を伝えさせていただきたい、この天下の愚策と考える子ども手当に対して地方の現実をしっかりと伝えさせていただきたい、このような思いで本日は来させていただいたことに緊張感を感じさせていただいております。

 松阪市としては、十七万人の都市です。全国で非常に平均的な都市であり、子ども手当、五・四兆円という大きな枠で議論がされておりますけれども、地方自治体の具体的な数字に今から落とさせていただいて話をさせていただき、なぜ子ども手当が地方自治体にとって、そしてそこに住む住民たちにとって天下の愚策であるかという話をさせていただきたいと思います。

 私自身、子ども手当に対して批判的な発言をさせていただくことで、市民から反対を受けたり、または国民の皆様方から批判を受ける、私自身の立場が危うくなるということは本当にどうでもいいことだと思っております。

 この子ども手当の五・四兆円、そして松阪市においては、ちょっとこの資料四というのを見ていただきたいんですけれども、ちょっと中途半端なこういうのもつくってきてしまったんですけれども、松阪市に子ども手当が支給される額というのは七十六億円でございます。

 七十六億円という額がどのような額か。恐らく五・四兆円というと大き過ぎてイメージがわかないと思うんですけれども、松阪市の個人市民税の収入、七十七億円でございます。今、河村市長さんが一〇%の市民税減税とか、いろいろな話が言われますけれども、松阪市、毎年毎年無税地域を実現していけます。子ども手当をやらないかわりに、無税地域を実現する。または、国民健康保険税、介護保険料、今問題となっている、民主党さんはいつされるかわかりませんけれども後期高齢者医療保険料、これをすべて合わせた松阪市の額が七十二億円です。もし子ども手当をやらないかわりに、国保税、介護保険料、後期医療保険料、全部無料にすることができます、高齢者施策として。

 私は、地方自治体の負担がどうこう、地方負担がどうこう、またはマニフェストがどうこう、そんな小さい部分で議論をさせていただくつもりは一切ございません。ただ、この松阪市に入ってくる七十六億円というものの機会費用、子供さんに対してかける機会費用、もしこのお金が子供さんに対して、私たち正直、きょう国会議員の皆様方、来ていただいておりますけれども、本当に、地方に来ている財源をどのように使うか、これは一番地方自治体が理解をしています。だからこそ、首長はこの子ども手当の制度に対して決して肯定的な意見を言わない。

 その中で、今松阪市においては、子育て環境その他さまざまな政策的な課題が多々ございます。

 保育料を無料化する、松阪市の公立、私立の保育園、大体四十ぐらいあるんですけれども、保育園全部保育料を無料化しても、大体この子ども手当の約一割、八億円で保育料をすべて無料化できます。給食費も、小学校、中学校、無料化するだけで大体二億円でできます。そして、こども医療費助成、一歳引き上げるだけで年間二千八百万円で引き上げることができます。または、保育園建設費、大体三億円という形で一園ができるので、毎年二十五園をつくることができます。

 これは極端な話じゃないかと言われるかもしれませんし、先ほど先生の方から話がありましたように、現金給付と現物給付のバランスをとって、民主党さんも子育て・子育ちビジョンをつくっているじゃないか、こういう話もあるかもしれません。

 資料一を見てください。これは十二月に各自治体に対して送られてきた資料ですし、現在も総務省のトップページから入れる、ホームページの方に載っている、民主党さん、今の政府から出されてきた子ども手当等についてのイメージ図です。

 これが来たときに、うちの財政の部分は本当に驚きました。二十二年度の子ども手当、この児童手当は地方の方で持っていただく、そのかわり、ことしに関しては、二十二年度に関しては子育て政策は国と地方で折半してくださいね、このままの体制でいきましょうねと。ただ、二十三年度以降どうしていくか。子ども手当、全額国費で持ちますよ、一方で、子育て政策は地方でやってくださいねと。今でもまだこれが総務省のホームページに載っています。

 子育て政策は、今の政府はしないんですか。これに関して、もし子育て政策をされないというのであるならば、今回の夏の参議院選挙において、子育て政策は地方に任せるので民主党は子育て政策しないですよ、こういう議論をしっかりとする中で選挙を戦っていただきたい、そして、市民に対しても説明責任を果たしていただきたい、このように思っています。

 もう一つフリップがあるんですけれども、二つ目の、この松阪市の子ども手当についてのイメージ図、これを松阪市に対して落とさせていただいて、つくらせていただきました。

 現在、子ども手当と児童手当、松阪市に入ってくるのが全部で三十四・二億円です、二十二年度予算です。これまで、児童手当でしたら大体十五億円で、松阪市の負担分が四・一億円ぐらいなんですけれども、子育て政策という部分では、ちょっと総務省の部分とバランスは大分違うんですけれども、市の単独で行っている子育て政策事業というのが、資料三の方にも子育て政策、具体的な事業があります。大体、保育園の施設整備費であったり耐震事業費、または児童扶養手当、こども医療費、一人親家庭の医療費、放課後児童クラブに対して、そして地域の子育て支援、ファミリーサポートセンターなど児童センター、そういうのがここの子育て政策、全部ピックアップすると、大体こういう枠組みになります。

 これが大体、松阪市の子育て政策の費用が五十五億円です。五十五億円のうち、市単独で行っているのが大体四十億、大体五分の四ぐらいですか、五分の四ぐらいを市の単独でやっています。国から入ってきている部分が七億円、そして県からが七・五億円という部分です。

 総務省の原口大臣がおっしゃられていたのは、(パネルを示す)今後この児童手当の部分が全部国で負担するんだから、今後はここの部分というのは地域で負担してくださいねという話でございました。ここの地方の負担分八億円というものとこの国の負担分が大体一致するんですよね。だから、大体どこでもそうなんですけれども、地方自治体としては、国がおっしゃっていることというのは、この国費の部分と地方の児童手当分をバーターにしよう、そのかわり、地方で全部これを持ってくださいねと。

 県の負担分もあるじゃないかと言われるんですけれども、大体、今の補助金制度においては、子育て政策に関しては、国の国庫支出金が出ている部分は県の部分とリンクしておりますので、今のままでは恐らく、この国と県の部分が地方自治体に対して分権されてくるであろうと。

 もし、こうしないというのであるならば、民主党さんはしっかりと説明をしていただきたい。ただ、これまで、民主党さんからここの部分に対しての説明を聞かせていただいたことはございませんし、うちの行政から厚生労働省の方に聞かせていただいても、一切説明をしっかりと受けることはできませんでした。民主党さんの方向性が明確ではないという話を聞かせていただいております。

 そのもとで、参議院選挙が終わってから説明するというのでは本当に遅い話であって、児童手当が三年前に一度改正があったときには、一年前から制度改正に対してしっかりと報告がある中で、地方自治体がそれに対して制度設計をしていく。そういう枠組みがあるにもかかわらず、現在、大幅な、これだけ大きい予算の変動が起こり得る可能性がある現状の中で、地方自治体に対して、今後の子育て政策のビジョン、国と地方の役割という部分に関して、今のところ、一切説明がございません。

 そのもとで、松阪市として、この六・八億円にしても、これはトータルにして十五億円になるにしても、ここに対して本当に私たちが負担をしなくてはいけないのか、子育て政策は地方で全面的に持つのか、もし地方で全面的に持つというのであるならば、私たちとしては、ここを全部任せてほしいと思っています。この七十六億円の部分とプラスアルファ、ここの部分を任せてほしい。

 もし私たちに七十六億円の子ども手当分を、例えば、一万三千円は私たちは現金給付として払います、そのかわり、現物給付として、地域にとって必要な部分に関してはどう判断するかというのは地方の首長が責任をとる、こういう制度づくりをやっていただくのであるならば、私たちは文句は言いません。

 ただ、子ども手当を垂れ流すように、七十六億円、松阪市の個人市民税収入と同じです、このような多額の額を何の目的もなく垂れ流す、このような亡国の制度である子ども手当という部分に関しては、私たち地方自治体としては本当に非常に反論がございますし、ここの部分に対して、一番地方自治体がどこに対して必要かわかっていますし、もし子ども手当を二万六千円支給されないことの説明責任は私たち地方自治体の首長が持てる、このような制度設計をするのが本来地域主権の一丁目一番地ではないでしょうか。

 子ども手当も一丁目一番地と民主党さんは言われています。地域主権も一丁目一番地と言われています。民主党さんの一丁目一番地、ちょっと多過ぎて本当に迷路になってしまいそうなんですけれども、私たち、一丁目一番地が本当に違和感があり過ぎて、子ども手当というのは完全に地域主権と逆行しているということだけは強く主張させていただくとともに、この子育て政策の位置づけというものをしっかりとビジョンを出していただく中で地方、地域に対しての配慮をしていただきたいと思っております。

 あとは、資料の六の方を見ていただきたいんですけれども、現在、地方自治体においては非常に混乱をしています。

 毎年六月に児童手当の給付の手続をするんですけれども、次年度の二十二年度においても、既に、新規の認定請求の事務というのが間違いなく四・七〇倍にはなるであろうというふうには試算がされております。

 そして、現況届の事務という部分においては、次年度においては、現況届は新規、増額は対象外となっておりますので混乱が起きないだろうと思いますけれども、二十三年度におきますと、これにおいても非常に大きく、一・五倍にはなるだろうという中で、実際、よく地方分権という中で予算と権限が移譲されるという言葉を言われるんですけれども、私は、地方自治体として、国の官僚の方々よりも地方自治体の職員の方の方が現場をよく知っている、そして能力も高いと信じているんですけれども、その中で、人手が足らないというのが一番の問題です。

 予算と権限に加えて、今余っている天下りの官僚の方々を、しようがないので地方公共団体で使ってあげてもいいかなと思うような部分がございます。天下り官僚さんがいるのであるならば、地方自治体に対して持ってきていただきたい。

 本当に地方に対しては、予算と権限が来ても、人というのがいないのが現実です。そこに対して、地方自治体の思いというものをしっかりと受けとめていただいて、無責任に地方分権、地域主権と言うのではなくて、まずは国の官僚組織をしっかりと壊していただいて、国をスリム化する中で地方に対して人を持ってくる、これが本当の意味での地方分権だと思いますので、そのあたりに対する御配慮もいただければと思っております。

 あとは、外国人の問題でございます。

 今、松阪市においても、日本に子供さんがおらず外国にだけ子供さんがいる部分に対しての児童手当の給付の人数が、大体百十人から二十人ぐらいいらっしゃる中で、もし子ども手当が全額給付ということになりましたら、総額で大体八千万から一億円ぐらいというふうに試算をされています。

 現在において、地方自治体としては、国外における外国人の子供さんの数というのを厳密に把握できる環境には全くない中で、このような制度設計に関しても、今後、子ども手当がある中で具体的にどうしていくか、今議論していただいているようですけれども、議論をしている、議論をしているではなくて、地方自治体としては、直近の、目の前の、市民の生きている方々の幸せや痛みが目の前にある。本当に目の前の市民の幸せや痛みに対して、皆様方が選挙目的なのかばらまきなのか、よくわかりませんけれども、皆様方が、一人二人国会議員さんがいなくなってもらってもそんなに世の中変わらないと思うんですけれども、この子ども手当の制度が二十三年度以降できてしまえば本当に取り返しがつかないことになる、そういう意識を本当に持っていただきたい。

 私自身は、地方自治体の首長として、本当に私自身の首をかけてもいいぐらいで、この子ども手当に対しては反対をしていきたい、これぐらいの覚悟で思っておりますので、国会議員の皆様方も、この松阪市においては七十六億円というのは本当に松阪のさまざまな諸課題がすべて解決してしまうのではないかというぐらいの規模の額であるという部分を考えていただく中で、改めてこの一年間、ゼロベースで子ども手当の位置づけを地方とともに議論をして御理解をいただきますよう、どうかよろしくお願いします。

 以上でございます。(拍手)

藤村委員長 山中参考人、ありがとうございました。

 次に、阿部参考人にお願いいたします。

阿部参考人 おはようございます。国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩と申します。

 私は、研究者として貧困問題を研究しておりますので、子供の貧困という立場から、この子ども手当についての意見を述べさせていただきたいと思います。

 今、市長の方から、非常にリアルな財政の点からお話がありましたけれども、私は、まず出発点として、やはり社会問題から始めるべきだと思います。

 問題として、今、子供の貧困率が一四%、七人に一人の子供が貧困であるという事実がある。それから、日本はOECD諸国の中でも唯一、政府の再分配後に子供の貧困率が上昇するという状況がある国であるということ。この二つの点をまず一番最初に考えるべきだと思います。

 その中で、子供の、もちろん、ほかにもやらなければならないことは山積みです。高齢者の問題であり、介護の問題であり、国保の問題であり。ですけれども、なぜ子供の貧困を最優先課題としなければいけないのか。それは、もちろん、子供だからかわいそうというような議論もありますけれども、子供への投資というのはペイするものだということです。

 七人に一人の子供が自分のポテンシャルを発揮できないような教育や機会しか与えられないのだとすれば、ただでさえ少なくなっている日本の人口の中の七人に一人が発揮できないようになったら、これは将来的にも膨大な経済的な損失になるはずなんです。そこまで踏まえて、子供に対する投資、特に不利な状況にある子供に対する投資というのは、政府が投入する額よりも将来的には何倍も何倍ものお金が返ってくるという前提で諸外国は子供の貧困に対して手当てをしているわけです。

 ですので、今確かにお財布が苦しいというような現状がある中でも、やはり将来を考えればこれは絶対に外してはいけない部分だと私は思っております。

 そういう中で、子供の貧困に対して何をするべきかというところで、お配りした丸のお花のような形をした図を見ていただきたいと思うんですけれども、子供の貧困ということを考えたときに、どうもそれは教育だけを介在して不利というのが蓄積されると考えていらっしゃる方も多いようですけれども、実は、子供の貧困というのは、子供の生活のいろいろな面にかかわってきます。

 それは健康であったり、それから何よりも不安定な生活基盤であるということ。お父さんやお母さんが夜まで働かなければいけないですとか、派遣労働者であるのでどんどん地域を変わっていかなければいけないですとか、そのような問題。

 それから、端っこの方にも書いてありますが、低い自己評価というところで、例えば、自分の好きなクラブ活動をすることができないですとか、自分だけが透け透けの体操着を着なければいけないですとか、いろいろな面で出てくると思うんですね。

 ですので、政府が用意できる、例えば教育ももちろんそうですし、医療ももちろんそうですし、現物給付だけではどうしても賄い切れない部分があります。やはりお金ですべては解決できないですけれども、お金がないと解決できない問題というものもあるわけです。ですので、私は、一枚めくっていただいて、現金給付と現物給付というのは両輪だと。政府の方も何遍も言っておりますけれども、これは両方とも必要であるものです。もちろん、現物給付としての教育の底上げですとか保育所の拡充というのも必要です。ですけれども、現金給付というのも決して外してはならないところです。

 そのような観点から、では子ども手当というのをどういうふうに見るかというところなんですけれども、まず、一番最初に、子ども手当は、今まで貧困対策、もちろん児童扶養手当ですとか生活保護はありますけれども、児童扶養手当は対象者が母子世帯と限られておりましたし、生活保護に係るお子さんがある世帯というのも非常にパーセンテージは少ないです。そのような中で、貧困層の子供を対象にしたという点では非常に画期的なステップであった、このことを忘れてはならないと思います。

 具体的に言えば、二親世帯に育っている子供ですね。先ほど申し上げました一四%の中での過半数は、二親世帯の子供です。ですので、母子世帯や、今回拡充されて父子世帯も対象になりまして、児童扶養手当だけでは手当てできていなかった部分なんです。そこの世帯は今まで児童手当しか受け取ることができていなかった。そこの部分は、保険料や税金を払うことによってますます貧困化していたところです。この方たちを対象にした。このことは、子ども手当を考える際に決して忘れてはいけないところだと思うんです、つい忘れがちになってしまうんですけれども。

 ですので、そういう意味で、これは非常に画期的であった。たとえ普遍的給付であっても、私は、最低限の生活を達成するという意味では、貧困層への便益の方が富裕層への便益より高いと思っております。

 それでは、次のグラフを見ていただきたいんですけれども、相対的剥奪という聞きなれない言葉が書いてありますが、これは、例えば食事をとることができるですとか、基礎的な部分ですね、物品的なもので、それがどれだけ達成されていないかというのを十六項目ぐらい挙げてみたものです。

 ここでわかることは、所得階級が下がれば下がるほど、もちろん剥奪の度合いというのは高くなるんですが、ある一定の所得以下になってしまうと、その剥奪の線のスロープが急激にきつくなるということなんですね。逆に言えば、貧困層の方に、少しの給付でも、少しということでは子ども手当は少しではないですけれども、給付することによって相対的剥奪の度合いを下げることができます。ですので、同じ給付額であっても、子供の最低限の生活を保障するという点では、貧困層においても非常に有益なものではあるかと思います。

 ただ、これを富裕層までやる必要があるかどうかという点については、これは私は政治的な判断かと思います。というのは、これから、財源の話も先ほどありましたけれども、何らかの形で負担の増加というのは避けて通れない道だと思います。そのときに、貧困層だけを対象にしたようなミーンズテスト的な制度というのは、負担増となるすべての国民の皆様に納得していただけるでしょうかというところなんですね。今まで何十年間も、生活保護もそうでしたし、児童扶養手当もそうでしたし、そのような制度というのは批判の対象になってきました。それよりも、子ども手当のような普遍的制度の方が国民的理解を得やすいというのは、それは確かだと思います。

 ただ、その上で、子供の貧困対策として今の子ども手当が十分であるかというと、それはまだ十分ではないという状況であるというのは、それは確かなことかと思います。ですので、貧困層の子供に対するさらなる政策の拡充というのは不可欠だというふうに考えております。

 最後に、もう一度現物給付に戻るんですけれども、貧困層の子供に対しての悪影響を軽減するために、安定的な生活基盤のために現金給付は必要であり、それをどのように支給していくのか。これは、子ども手当だけでは十分でないので、これを今後もどういうふうに拡充していくかという話。それから、教育の底上げということ。それから、保育所などによって今現在行われております児童福祉サービス。これは子供のお預けサービスではなくて、児童の福祉のサービスという点を忘れてはいけないと思います。

 実際に、保育所の先生方は、いろいろな不利を抱える子供たちの生活、それからそのお母さん方、御家庭まで含めてのいろいろなサポートをしておりますけれども、彼女、彼らが負っている児童福祉の部分というのは、決して、ただ単に子供を預けておくというだけのものではないということの認識の上で、現物給付の質の向上と自己負担費の軽減というのを考えていくべきかと思います。

 もちろん、これらはすべて非常にお金がかかるものです。ですけれども、政策というのは、まず一番最初に何が必要かということを考えた上で、では、その必要を満たすためにはどういうふうにしてそれを財源確保していくか、そういうステップで行くべきであって、これだけしかお金がないからこれしかできませんといって、弱者の相手にどちらを、こちらも大切、こちらも大切といって引っ張り合いをするものではないというふうに思います。

 ですので、これからの、今後の日本の姿を考えていく上で、日本の中でのプライオリティーというのがどこか、絶対に外せない部分はどこか、では、それを達成するためにはどのような財源が必要で、どのようにそれを確保していくかということについて、十分な議論をしていただければと思います。

 私の意見はこれで終わります。ありがとうございました。(拍手)

藤村委員長 阿部参考人、ありがとうございました。

 次に、高橋参考人にお願いいたします。

高橋参考人 立教大学の高橋でございます。

 たまたま先回、予算委員会の公聴会で、これは公明党さんからの推薦でございましたけれども、子ども手当を批判いたしましたら、それが御縁で今度は自民党さん。私は、かつて、今井澄先生の依頼で民主党さんから参考人に登場したことがございまして、野党の参考人になるというのが私の今までのポリシーでございます。

 申し上げたいことは二つございます。今回の子ども手当の政治プロセスの議論をさせていただきたいと思います。もう一つは、先ほどから参考人がるるお話しになったような社会保障政策、私は社会政策というふうに言った方がいいと思っていますが、その立場で、子ども手当というのは本当に社会保障政策なのかという問いかけを皆様に申し上げたいというふうに思っております。

 先ほど、松阪市長さんがおっしゃったように、自治体にとって、このような巨額な額が天から降ってくるわけです。市民税に匹敵するようなお金が降ってくるということは大変なことです。これが実は大変粗略なプロセスで導入をされたということを、私どもは看過できません。

 国からお金をいただくということについて、私が大変尊敬をいたします宮本常一という人のエピソードを一番初めにちょっと御紹介申し上げたいのですが、コンクリートと人の話が最近いろいろな形で取りざたされておりますが、宮本常一のふるさとに橋がかかりました。もちろん、国庫補助金です。そのとき宮本常一が、その島民にこういう碑を建てなさいと言いました。この橋は日本国民の負担によってかけられた橋である、そのことを我々島民は忘れない。

 多くの公共事業では、政治家や知事さんの銅像が建つはずでございますが、宮本常一は、これは国民の負担で建ったものだと。国の負担じゃないんです、国民の税金なんです。三月十五日に我々が汗して払う、そういう国民の税金。これは何かというと、さまざまな、国のお金を利用する、受益をする者にとっての矜持でございます。

 まさにその問題として、国が用意する給付というものをどう考えたらいいか。これは、私どもの自立の問題でございます。単に国に依存するということは、日本の最も、従来から我々の社会を支えてきた活力を失わせるものなんです。このことを、なぜそうなのかということを少しお話を申し上げたいと思いますし、単なる児童手当の話ではなくて、社会政策の中で、ヨーロッパの国々がなぜあれだけ負担をしながらこういう政策をつくってきたか。

 私は、阿部彩参考人の御発言に全面的に共感をしながら聞いておりました。私どもは最も重要なところに資源を割いてこなかったのではないか、そういう反省。これは、自民党政権としてはきちんと反省をしていただきたい。ただ、民主党にも、そういうことを推進した方々が今民主党でリーダーをされているわけですから、そういう意味では、民主党の方々も反省をしていただきたいというふうに思っております。

 私、何枚かの資料をつくってまいりました。前半の資料、後半に参考資料というのを用意いたしましたが、それをびりっと切り離していただきますと理解をしていただけますし、この資料は多分、大学の授業、半期分の授業を圧縮いたしましたので、とても十五分ではおさまりませんので、要点を申し上げながらお話を申し上げたいというふうに思っております。

 初めに、皆様、世間で子ども手当のことを何と言っているか御存じですか。親が使って子供が将来倍返しというふうに言っている方がいるんです。我が総理大臣は御存じなかったようでございますが、朝三暮四よりたちの悪い制度だというふうに言うわけですね。お金を出して、三つしかもらえない、文句を言ったら、夜上げるものを四つ上げて満足したという故事がございますが、それよりもどうもたちが悪い。くれておいて、後で倍返しする制度。いい話には裏がある。

 パーキンソンの法則に、その額が巨大になればなるほど、その案件の意思決定に要する時間は短く、その意思決定は粗略になるという、大変含蓄に富んだ表現があるが、どうもこの子ども手当はそういう制度ではないかということを、昨年の七月二十四日に読売新聞が報道し、二月二十八日に毎日新聞が子ども手当のいきさつを書いております。

 これは新聞の話で、当事者はどういうふうにおっしゃるかはわかりません。あれを素直に読む限りでは、子ども手当というのはどうも社会保障制度として発想されたものではないらしいということが、私としてはそう断ぜざるを得ないような報道が日本の有力紙二社から行われておりますから、多分それは真実なのでしょう。

 参考資料に出ておりますように、図表一に書きましたように、先ほど松阪市長さんが地方自治体の比喩で言いましたが、平年度化いたしますと、防衛費を上回る金額でございますし、文教科学振興費とほぼ匹敵するか、それ以上の金額でございます。このようなものが選挙対策として登場したことの不思議さというよりいかがわしさというのを感ぜざるを得ないのでございます。

 これは、政治主導ということでいえば、イギリスをモデルに民主党の主要な方がお勉強なさったそうでございますので、イギリスの政策決定過程に比べると、はるかにいいかげんであります。政治家の資質も恐らく、イギリスの政治家はオックスフォード、ケンブリッジのエリートが政治家になるのでありますから、多分、私どもの学者よりもよほど物を知っている方々が政治家になる、そして判断力のある政治家が多いというふうに言われておりますが、そういうことから比べますと、なぜ民主党さんが、マニフェストに書いたから、それを金科玉条に、棒を口にのんだようにそれにこだわるのか、私はわかりません。

 国民合意が必要なので、もし問題があるとしたら、きちんと国民に問いながら、納得の得られる、先ほどの松阪市長さんの話では自治体の首長さんは納得していないんです。そういうことを含めた検討をきちんとやるべきだったというふうに思います。

 もちろん、自民党も責任があります。定額給付金というあの変な制度をつくりましたが、これは一回きりです。民主党は毎年三回にわたって、恒久に民主党政権が続くと使うわけで、五兆円の額というのは、現実には、半分は税金かもしれませんが、半分は将来の子供たちの借金なんです。この不健全な制度というのを、私は、きちんと批判をしておかなければなりません。

 しかも、私は、阿部彩参考人がおっしゃったことは大変同感しながら聞いておりますが、この制度はそういう非常に支援を集中すべき人たちにきちんとフィットする制度なのかどうか、これを大変疑わしく思っております。

 現金給付とサービス給付論というのは少し考え方を整理した方がいいなと思って、やや難しい議論で、子ども手当というのをどう考えたらいいかというのは、社会政策の発達史でいえば、選別主義普遍主義論争というのがずっと続いておりました。

 社会政策というのは、所得制限をしてきちんと限定すべきか、いや、すべての国民に給付すべきか、そういう議論がずっとあって、ヨーロッパ人も苦し紛れなんです。積極的に選別する、積極的に選ぶ、そういう政策を考えようということを学者は言うんですが、実は大変難しいので、七転八倒していろいろな制度がつくられてまいります。

 ヨーロッパがどういう選択をしたかというと、できるだけ給付を受けることの責め、自尊心を損なわないような仕組みで、すべての国民に普遍的に提供する普遍主義の道を選びました。しかしながら、そこで、さまざまな特別な必要のある人には給付を集中するという政策をとって、先ほど参考人がおっしゃったような児童手当をつくってまいりました。

 しかし、その裏には、スウェーデン、デンマークは、七〇%から七五%の国民負担率の社会をつくってまいりました。そして、所得税制、直接税制では財源確保が難しいという政策判断を国民合意でやったんです。社会民主党も、これは日本の社会民主党ではございません、スウェーデンやドイツの社会民主党でございますが、あるいは保守党も、いろいろな国民的議論をいたしまして、負担をするという合意をつくって、消費税二〇%、二五%の社会をつくったわけです。

 最も給付を要求する方々の政党が、これにずっと反対をし続けております。自己矛盾としか言いようがございません。

 所得税というのは直接税でございますが、私は、財源調達の問題を考えますと非常に難しいんですね。直接税課税強化をいたしますと、その国は管理社会になります。恐らく、遠からずタックスペイヤーの反乱があることを恐れております。

 このことについて、週刊東洋経済の三月六日号に、民主党の論敵ではございますけれども、権丈善一先生が、実に歴史を踏まえた、善意を持ち誠意を持った政策が実は地獄をつくり出すという実例がイギリスの救貧法の歴史にあるんだということをお書きになっておりますので、ぜひお勉強してください。その上で、腐敗は国を滅ぼさないが正義は国を滅ぼすという山本夏彦の名言がございますが、どうも、腐敗と正義が合わさってしまうともっとひどいことになる、そういう意味でございます。

 子ども手当の政策効果について、残された時間、あと四分でさっとお話をいたしますが、ページ二はお読みください。

 子ども手当というのは、ここでは総合的な家族政策というふうに言いましょう。それは現金給付、これは生活支援というふうに考えましょう。それから、子供、子育て支援の決定的に重要なのは、その子供たちが社会で自立した活躍ができるようにするための発達支援という二つの領域がございます。

 子ども手当は、発達支援に有効なのか。お金持ちにとってみれば、二万六千円はたかが二万六千円です。しかし、かけがえのない二万六千円の方々もいらっしゃいますから、そのかけがえのない必要な方にどう資源を集中するかという議論を考えましょう。しかし、人はパンのみにて生くるにあらずなのであります。

 要するに、さまざまな現物サービスというものがあって初めて人は、要するに母親の温かい言葉、父親の厳しい言葉、あるいは地域の仲間との遊び、そしてさまざまな制度的な支援、これは「様々な子育て支援策」の中に例示をいたしましたけれども、お金と人と物と温かい心、これは命、友愛という言葉がお好きな総理大臣をトップにいただいておられる政党ですからすぐおわかりいただけると期待をしておりますが、そういうことを含めまして、さまざまな支援を総合的に展開し、そして、今の大きな問題は、実は、保育所でこういうことが起こっているんですね。朝晩の送り迎えのできる御両親のおられる方は保育所に通わせられるけれども、実は、さまざまな困難を抱えた送り迎えができない方々は通えなくなっているんです。これが先ほど言った貧困の現実であります。

 そこをどう支援したらいいのかというのは、今、保育園の主任保母さんの大きな仕事は、子供のサポートと同時に、親とか地域をどうつなげるか、私の専門でいえばソーシャルワークという、社会福祉士の仕事のようなことをやらざるを得なくなっている。保育士は素人でいいというお考えの方が相当いらっしゃるようでございますが、専門家、より熟達した専門家にきちんとした待遇で仕事をしていただく、そういう仕組みをつくらなきゃいけないんです。

 人間を育てるためには、それにかかわる人を育てなければいけないんです。そこを、親に二万六千円給付することでできますか。できないはずです。まさに松阪市長さんがおっしゃったように、地域の実情に応じて子育て支援政策をどういうふうにつくっていったらいいか、そういうことを真剣に考えるとすれば、誤りを改むるにはばかるなかれ、そういう言葉を申し上げたいというふうに思いますし、実は、子育て支援策はさまざまな、最近のはやり言葉でソーシャルキャピタルという言葉がありますが、人と人のかかわりをつくり直す、そういう施策が必要でございます。

 地域再生で大変有名な「やねだん」という、これは昨年、尾辻参議院議員会長が国会の代表質問で取り上げた場所がございます。私は何回もそこへ伺っておりますが、あそこでコミュニティービジネス、補助金を一切受け取らないで地域おこしをやったところ、まず、そこで上がった収益は子供たちに使いました。子供たちの学びを助ける、そういうことに使いました。要するに、子供とお年寄りが一緒に共同する地域社会、これは日本の地域共同体の中に脈々と流れている、そういうものを復活いたしました。五の十三に、さまざまな実例が実は外国にもあるよということをお話を申し上げますが、そういうものを含めて考えないといけない。

 そういう意味では、五兆円の、二万六千円を与えればよろしいというのは、旧態依然とした、ごめんなさい、自民党の古い体質の発想が民主党に持ち込まれた、そういうものだというふうに私は理解をしております。

 代替案は、私は住宅手当だというふうに思っておりますが、これは六の方に書いてございます。

 それから、政策形成。ちょうど今イギリスでは、ナショナル・ケア・サービスといいまして、介護保険のイギリス版をつくろうとしているんですが、これは延々時間をかけて議論しております。その上で、政治家がいわば選択をいたします。選択をするとマニフェストになって、政治主導になるんです。民主党の政治主導は、その前半が全く欠けております。素人の政治家がお考えになるという、そういう制度によって、イギリスをもうちょっと学びなさいというのが中西輝政先生のお言葉ですが、そういうことをやはり勉強しましょうよ。お役人、行政官からも学びましょうよ。そういうことが必要なんです。

 そういうことでいえば、防衛費に匹敵するような巨額な施策というのは、国民的合意を前提とした超党派的施策として推進することが、朝令暮改を防ぐ大変大事な、朝令暮改という言葉は御存じであった総理大臣がいらっしゃいますが、最後に、私の言葉を述べさせていただきます。

 成長以前の社会は、子捨てと親捨てが見られました。成長社会になって、社会的余剰を配分する仕組みができました。現代は、そういう社会の中で、ポスト成長社会で緩慢な親殺しと緩慢な子捨てが起こっている。これは社会政策の問題だけではなく、私たちの社会のあり方、国家のあり方にかかわる問題だ。

 今述べました私のお話を最後に、これで終わらせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

藤村委員長 高橋参考人、ありがとうございました。

 次に、渥美参考人にお願いいたします。

渥美参考人 皆様、こんにちは。渥美と申します。

 私はこれまで、海外十数カ国、ヒアリングをしてまいりました。また、都道府県あるいは政令市、ほぼ九割ヒアリングをして、先進的な取り組みをしている自治体には何度もお邪魔をしてお話を伺っております。さらに、子育て支援あるいはワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティーに取り組んでいる国内外の企業六百五十社、ヒアリングをしてまいりました。足で稼ぐ研究者だと自認しております。

 本日は、自治体あるいは企業で実際に子育て支援あるいは少子化対策に一生懸命取り組んでいる、そうした事例を踏まえて、どうしたらこの子ども手当をもっとよいものにできるかという観点から御提案申し上げたいと思います。

 まず、そもそも、この子ども手当には意義もあると思っています。基本的に、すべての子供がいる世帯に欧米諸国並みの配慮をする、あるいは、少子化対策の抜本的な拡充があらゆる主体から言われている中で、財政支出額が大きいこういう子ども手当のようなことはやはり国しかできないことですので、そういうことに取り組むというのは意義深いことだと思っています。

 ただ、一方で、今、子育て支援に取り組んでいる個人や主体、私も、実は二十代半ばから、週末に近くの公園で子供会の活動を十七年続けております。そういう子育てにかなり意識も高い、関心が深い私たちの周りの人たちほどこの子ども手当にはすごく残念な思いを感じているのは、全くもったいないことだと思っています。本当は手を携えて一緒にやっていくべき方々が批判的な意見を持っているのは、もっと改善の余地が大きい、知恵をもっと注ぐべき改善点が大きいからだと思います。

 私が考えている基本的な視点というのは、まず、きめ細やかでシームレス、切れ目のない子育て支援策を展開していかなければいけない。

 また、制度としても持続可能なものにするために、やはり財政システムではきちんとしたものをつくらないと、そもそも少子化対策としてこれから期待できるのか、これから子育てしていくに当たって頼りになるのかという点では少子化対策という実効性が損なわれかねないので、そういう観点からもシステムはきちんとしなければいけません。そもそも、国の土台である子供たち、そういう社会の根本的な部分をこれからどういうふうに持続可能なシステムの中ではぐくんでいくのかという視点がやはり不可欠だと思います。

 さらに、この子ども手当の議論というのは、どうしても部分最適で議論されて、そもそも子育て支援全体の枠組みの中でどう考えていくのかという全体最適の視点が欠けているように思います。

 この三つの観点から、私は、二つのシームレスというのを申し上げたいと思います。

 まず、子供の年齢に関する直線的なつながり、もう一つは、多様な主体が連携する面的なつながり。

 この直線的なつながりのうち、経済的支援に関しては、今回の子ども手当あるいは高校の実質無償化で、かなりつながったかなとは思います。ただ、一方で、先ほど来出ている、現金給付のみならず現物給付、この二項対立の議論は、私は余り意味がない、不毛な議論だと思っています。ただ、一方で、保育、教育、青少年健全育成、ここら辺がやはりいろいろな面で課題が大きい。例えば、保育所、学童保育の待機児童、私の周りにも本当にたくさん困っている親たちがいます。そういう点では、本来ならば、経済的支援とサービス支援とを結びつけたもっと全体最適なやり方というのがあるかと思います。これは、次に一で申し上げます。

 二つ目に、面的なつながりとして、やはり財政システムは避けられない議論ですけれども、今はもうばらばらになって本当にわけがわからなくなっているような仕組みを、一元的に給付と拠出を統合した財政システム、これはもう不可欠なものだと思います。さらに、単に子供や子育てをしている親たちを、現金であったりサービスであったりの受け手にとどめてはいけません。担い手にかえていく知恵がないと、やはり持続可能なシステムというのはできません。

 この三つの点について、本来であれば、もっとこの子ども手当の仕組みというのはよいものにできるはずです。

 まず、面的なつながりについて、そういうものが実現したらどういう状況が生まれるのかということで申し上げておきたいんですが、基本的にはネットワークをイメージしてください。社会のいろいろな構成員が手を結んで、ネットワークが網の目のように張りめぐらされれば張りめぐらされるほど、まず一つ目の意義として、ネットワークの網の目が細かくなって、子供を支える安全網が強固になります。トランポリン理論というのがございます。子育てとか介護とかで社会的に落後しかけるような方がいたとしても、この安全網があると、トランポリンで社会に復帰できる。こういう安全網の機能は、ネットワークが広がれば広がるほど、支えられる人たちが安全、安心面でメリットが大きいという点です。

 二つ目に、現場のニーズを吸い上げて行政に知らせる、また行政からの情報も現場に伝わる連絡網、これがネットワークの二つ目の意義です。

 先ほど来、自治体あるいは企業で取り組まれている事例を、知恵があると私は申し上げた、本当にそう思います。現場で取り組んでいる人たちは、お金がない中で、どうしたらもっといいものができるかと知恵を絞っています。それをいかに行政は吸い上げて、また行政の考えを伝えてというキャッチボールが生まれなきゃいけません。今の子ども手当だと、一方的に受け手にしてしまうと、そこでまた担い手にかわっていくというインセンティブが働かない。また、その周囲でサポートしている人たちの知恵というのが行政に伝わってこない。本当にそういう点ではもったいないと思います。

 三つ目に、地域の力を引き出して、子供と子育て家庭を支える土台、社会基盤が強固になります。これはちょっと抽象的でわかりにくいかもしれませんが、後で、右側にお示ししている三重県の事例でお話ししたいと思います。

 ここからが私の御提案なんですけれども、まず一つ目は、バウチャーに切りかえるべきだと思います。

 そもそも、今の子ども手当で、使途が限定されていない状況では、親が子供のために使う確証はございません。ただ、使えば消費に回るから経済活性化という議論があるんですが、一方で、最も子供にお金がかかる高校、実質無償化とはいっても、その後の進学を考えると、塾に通わせるとかあるいは習い事、いろいろな面でお金がかかる時代、さらに大学進学、そういうお金がかかるその後のことを考えると、貯蓄に回る可能性も高い。

 そういうふうに、乗数効果が低い、経済効果が低いようなことになりかねない状況を踏まえると、子ども手当は、子育て支援サービスに使途を限定するバウチャー給付に切りかえるべきだと思います。そうすることによって、政策効果を高めるとともに、民間保育サービス市場あるいは教育市場の拡大を通じて経済成長を図ることができる。福祉は経済に大きなメリットがあるというのは私もそう思いますが、そういうふうに歯車を回すためには知恵が必要です。

 二つ目に、一元的に給付と拠出を統合した財政システム、これは不可欠なものだと思います。

 そもそも、国や自治体以外に企業など多様な主体が参画しているフランスの全国家族手当金庫、先ほども御紹介がありましたが、こういう財政システムをつくって、またさらに各県の家族手当金庫にお金を流す、そういう中で、サービスの地域間格差、不均衡を是正する、そういう仕組みをつくらないとよくないと思います。

 というのは、今、かなり自治体の取り組みというのは濃淡があります。先進的な取り組みをやっている自治体は幾つもあるんですけれども、そういう知恵がなかなか広がっていかないです。

 私は、本年度の四月から内閣府の「共同参画」という雑誌で、地域戦略としてのワーク・ライフ・バランスというのをずっと連載してまいりました。例えば、三重県、石川県、埼玉県、神奈川県、兵庫県神戸市、福岡県福岡市、北九州市、そういったユニークな取り組みを取り上げてきましたけれども、そういう先進的な取り組みをしている自治体がある一方で、なかなか取り組みが進んでいない。かなり地域差が今広がってきています。地域でよい取り組みをしている事例には、どうして効果が上がっているのかという知恵を国は学ぶべきですし、また、悩んでいる地域にはそれを伝える義務があると思います。

 また、こういう国、自治体以外に、企業にも一定の割合を振ることによって、より政策効果の高い施策展開へと知恵を絞る動きが広がっていきます。今、企業も本当に、経営戦略としてワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティーに取り組み始めていますので、そもそも、シビアにこういう問題を考えています。そういう企業の知恵がなかなか行政に伝わってこないのは、これも本当に残念なことだと思っています。

 企業に拠出を求めることは、それはやはり経済団体の反対は容易に想像されるところではあるんですが、その一方で、企業にとってのメリットも、まずきちんとフランスのように講じれば、そこはやはり企業にとっても国にとってもウイン・ウインという状況が必ず生まれると思います。

 三つ目に、子育て世帯を男女ともに財政の担い手へと誘導する、こういう考え方が重要だと思います。

 今回、所得控除から手当へという観点から、十五歳以下の扶養控除あるいは特定扶養控除の一部が廃止されることになりました。これは基本的にいいことだと思います。ただ、一方で、配偶者控除が残っていて、これもよく皆さん御案内のとおり、今後、労働力人口、年少人口が大きく減少していく中で、財政制約を抱える国は、やはり共働きをしながら子育てもしやすい社会モデルというものへと大きく転換する、そういういい機会だと思います。

 配偶者控除を廃止する、片働き優遇施策を廃止することによって、子育て世帯を単なる手当の受け手ということではなくて男女ともに財政の担い手に変えていく、こういう視点が重要だと思います。

 三重県の次世代育成支援というのは、本当に知恵が詰まっています。本当に今、ピラミッドでいうと、一番トップに来るのは子供をめぐる深刻な課題です。毎日のようにメディアでは悲惨な事例というのを耳にして、私も今三歳とゼロ歳の子供を育てている親として、本当に涙が出るような思いで毎日、新聞記事を見ます。そういう深刻な課題にやはり行政のエネルギーというのはかなり費やされていて、なかなか、その手前にある不安、悩みを抱えている世帯であったり、また、そこまでは至らないけれども子育てで大変な思いをしている人、そこには行き届かないという状況があります。

 今は上の部分にエネルギーが使われている状況ですが、三重県は発想を変えて、この社会の基盤、一番下のところを広く厚くすることによって、行政はコーディネーターで、ほかの民間の、地域にいろいろな主体がありますから、そういうところがこの子育て世帯あるいは深刻な課題を持っている世帯に手を差し伸ばす、そういうネットワーク化というのをずっと取り組んでいます。みえ次世代育成ネットワークというものがあったり、こども会議、みえのこども応援プロジェクト、きょうは時間の関係もあって細かくはお話しできませんけれども、こういうふうに、社会基盤というのを厚くすることによって、行政コストとしてはそれほどかけなくても安心して暮らせる地域づくりというのは本当に可能です。

 そういうものを本当は、この子ども手当をきっかけにつくる、ネットワーク化というのを図るべきなのに、そこが、なかなかそういう知恵も集まってこない、また、そういう思いを持っている人たちが背を向けかねない状況というのは、本当に残念に思います。

 フランスの事例をここに書きました。全国家族手当金庫については、いろいろと御紹介されることも多いので割愛させていただきます。

 よく、こういうふうに企業に拠出を求めると、なかなか今のような状況だと財界はと言われるんですけれども、フランスの場合は、企業にとってもメリットを設けています。企業の支出に対して家族控除というのを設けていますので、こういうふうにあめとむちというのを示すことによって、日本の企業も、既に子育て支援あるいはワーク・ライフ、ダイバーシティーに取り組んでいる企業はいっぱいありますから、そういうところは必ず協力するはずです。協力したそういう企業の知恵をまた取り組んでいない企業に知らしめる、そういうネットワークづくり、これも国しかできないことだと思います。

 具体的にフランスがやっているのは、保育所の創設、運営への財政補助であったり、育休中の職業訓練費用、また、突発的なロスが発生した場合の保育費用であったり、また今回、育児・介護休業法で改正の一つの大きな柱である父親の育児参画、私も三年前、上の子が生まれたときに育児休業もとったんですが、本当に男性がこういうワーク・ライフ・バランスに取り組むと、そもそも当たり前のことを言うと、ワークの土台にあるライフ、家庭が、妻とのきずな、家族のきずなが強固になるとともに、本人にとってのメリットも本当に大きいと思います。

 従業員として、一労働者として働く中で、コミュニケーション能力というのは不可欠ですね。子育てを男性がやるということは、女性が普通に持っているコミュニケーション能力、男性はなかなか持っていないです。そこを持つのに不可欠な部分だと思います。

 そういう、企業が今既に父親子育て支援を進めようといったことでいろいろな施策をやっている、そういうものを今国はなかなか学ぶ場がない。そういう学ぶ場として、例えば、フランスのこの家族手当金庫の話し合いの場として家族会議、毎年数週間にわたり開催されていますけれども、NPOであったり、子育てをしている親の代表であったり、また企業の代表者、そういういろいろな人たちがディスカッションする中で、もっと国の子育て支援というのはこういうふうに環境を整備できていくんじゃないかということを、知恵を出し合います。そういう知恵を出す場というのが、今の日本に一番必要なものだと私は思っております。

 御清聴いただきまして、まことにありがとうございました。(拍手)

藤村委員長 渥美参考人、ありがとうございました。

 次に、関口参考人にお願いいたします。

関口参考人 私は、全日本教職員組合養護教員部の部長をしています関口てるみといいます。京都の中学校の方で養護教諭をしています。

 初めに、この間、議員の皆様の御努力により、生活保護の母子加算が復活し、十五歳以下の子供たちの無保険状態が解消されたことに心からお礼を申し上げます。

 私は、平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律案の審議に当たり、子供たちの貧困の実態、とりわけ、私たちの保健室から見える子供たちの貧困の実態を知っていただきたいと思い、発言させていただきます。

 私どもの昨年の全国の会議の場で、北海道の高校の養護教諭が次のように語りました。

 私の勤務する学校は、生活保護家庭四二%、一人親家庭が五〇%を占める学校です。その生徒の中には、歯科検診で三十二本中二十本虫歯があっても歯科医に行かない、視力が〇・〇六、これはとんでもなく見えない状態なんですけれども、それでも眼鏡をかけない。親は病院に行くより借金を返す方が先だ。生活が苦しくなると、最初に切るのは医療費だというふうに語りました。

 その上で、ある男子の生徒は、中学校のときから頭痛に悩まされ、市販の薬を時々飲んで我慢していたが、どうにもそれが頻繁になるので、学校の方からお医者さんに行くように親御さんに連絡をしましたが、それでも行かなかった。二年生になってようやく病院へ連れていってもらったら、左半身にわずかな麻痺が認められ、脳梗塞になる可能性もあったと言われた。

 生徒の貧困の格差が大きくなっており、どう考えても格差によって平均寿命が変わってしまうのではないか、それぐらいに子供たちの健康状態、生活状態は悪くなっていると報告しました。

 また、埼玉の高校の養護教諭は、生徒が登校中、交通事故に遭ってけがをしたにもかかわらず、救急車に乗ろうとしない。それで、担任と養護教諭が呼び出されて、事故現場に行って生徒に話を聞くと、保険証がないので病院には行かないということでした。交通事故の場合は被害者の医療費には自己負担がないことを話して、ようやく救急車に乗せることができた。その生徒は父子家庭で、学費もアルバイトをして自分で支払っていた、このように語りました。

 ほかの出席者からも、貧困が子供たちの命と健康を脅かしている実態が次々と語られ、大きな課題というふうに私たちは受けとめました。

 そこで、私たちは、全国の仲間に呼びかけ、子供たちの貧困の実態を報告してもらい、集まった事例をまとめて、昨年七月に、A4でたった四枚の冊子でしたが、「保健室から見える子どもの貧困の実態」を発行しました。それが新聞にも報道されて大きな反響を呼び、また、新たな事例が集まり第二弾を十二月に発行し、きょう皆様のお手元に配らせていただきましたリーフレット、こちらの方も作成しているところです。そちらの方もごらんいただきながら話を聞いていただけたらと思います。

 もう少し事例を報告します。

 まず、小学校の事例を幾つか述べさせていただきます。

 滋賀の事例ですが、学校で高熱を出したため、父親と連絡をとったが、仕事で迎えに行くことはできない、保険証がないので病院には受診させないでほしいと言われた。容体が悪いので、父親に了解をとって、校長が市にかけ合って、何とか無事受診させることができた。その家庭は父子家庭で、父親は仕事に追われているというふうな状況です。

 また、大阪の事例です。学校でぜんそく発作を起こした子供の親と連絡をとろうとしたが、家の電話も携帯電話もとめられていて、連絡がとれない。その子の弟が帰宅するときに手紙を持たせて、何とか連絡をとることができた。ようやく迎えに来た父親は、吸入器のみで薬は持参せず、帰宅後病院に行ったかどうかも確認できない。父親は病気で無職となり、給食費も滞納しており、観劇や遠足も費用が払えないため、その日は欠席している、子供は親をかばって、保険証がないので病院には行かないとなかなか言いませんという報告がありました。

 また、京都の事例ですが、体重測定の日に、パンツを貸してほしいと男の子が言ってきました。聞くと、パンツは二、三枚しか持っていなくて、時々パンツをはかないまま学校へ登校してきている、たまたまパンツをはいていない日に体重測定があったということです。この事例だけでなく、毎日同じ服を着てくる、穴があいたままの靴下をずっとはいている、手首や襟元が汚れたままの服を着ている、そういった子供はいます。

 大企業による派遣切りなどの大量解雇が進み、労働者、国民が生活の破壊に見舞われ、子供たちの安心と希望の根拠地である家庭が直撃を受けました。そして、子供たちの学習権ばかりか命と健康が脅かされている、そういう事態になっています。

 次に、中学校の事例です。

 大阪の、四五%の子供が就学援助家庭という中学校です。ここには、朝食どころか昼食、夕食もまともに食べることができない、そういった子供たちがたくさんいます。一人親家庭が多く、その親は生活のためにダブルワーク、トリプルワークをしており、中には泊まりがけの仕事をしている母親もあり、食事の準備はできませんし、食事を買う、そういうお金もない、そういう状態です。親は生活に追われ、子供に十分かかわることができず、当然、子供たちの心は安定することもできません。お弁当を持ってこなくて、お昼の時間に居場所がなくて保健室にやってくる子供たちもいますし、人とのかかわりがうまくいかず、うつ症状を示す子、リストカットをする、そういった子供もいて、保健室は休み時間もいっぱいの状態であると報告しました。

 このように、貧困の状態が子供の心の発達まで影響しており、いらいらしたり、暴力的な行為をとったり、自分を傷つける、そういった行為になったりしている実態があります。

 また、和歌山の事例ですが、〇・九以下の視力の生徒に渡している視力手帳をすぐにぐしゃっと丸めてしまう。その子は、母子家庭で、トラック運転手をしている母親に遠慮して、眼鏡代の負担をかけまいと、視力手帳を渡さないでいる。

 ほかの事例ですが、足をけがして病院に行っていない様子なので、話を聞いてみると、トラックの運転手をしている父親が交通事故を起こし、免停になり、職を失った、そのような状態なので、けがのことも親御さんに話していないという状態だ。

 このように、子供たちは、親の生活を見て、負担をかけまいと気を使っている、そんな状況もあります。

 次に、高校の事例です。

 最初に二つの事例をお話ししましたが、埼玉の別の事例で、何しろ食事をとっていない、おなかをすかせている生徒が多い。休み時間になると、保健室に氷を食べに来る。お昼休みに、また同じように居場所がなくて保健室に来る。養護教員の顔を見るとおなかがすいたと言う子、しばらく食事をしていなくて、久しぶりに食べた食事が学食のフライドポテトだった、食べたら気持ち悪くなったというふうに話す女子生徒に、空腹に揚げ物じゃ気持ち悪くなるでしょう、考えて食べたらというふうに話したら、ポテトが一番安いんだものとその生徒が答えた、そういった報告もあります。

 また、特別支援学校の事例ですが、水頭症、二分脊椎などの障害があり、人工肛門の処置を受けている子供がいるが、その家庭は経済的に厳しい。節約のため、導尿用のカテーテルやパウチの交換が通常より回数が少なく、消毒薬も少量しか使っていない。そのため尿路感染を起こすことが時々あり、熱が出てもすぐには受診していない。命にかかわることなので、とても心配している。携帯電話の料金が未納のために連絡がとれないこともある、急な体調変化のときに連絡がとれないことにならないかと心配であるというふうな報告もあります。

 これまで報告しましたように、小学生も中学生も高校生も、満足に食事ができない子供たちがおり、おなかをすかせた子供たちが保健室に集まってくる、そんな事態が起きています。朝食を食べずに来る子供たちのために、養護教諭がポケットからあめ玉、クッキーを準備して、周囲に配慮しながら食べさせている、保健室にはインスタントのみそ汁やお菓子が置いてあって、必要なときにそれを食べさせているというふうな報告が寄せられます。

 また、北海道の漁村の小学校では、三割が一人親家庭、祖父母と暮らしている子供がいます。親は都会で働き、祖父母がその子供を預かって育てているという状態。その子供が野球部でレギュラーになったとき、背番号を養護教諭がよかったねと言って縫いつけた。手荒れのひどい子にはワセリンを持たせた。そういったふうに、貧困に苦しむ子供たちを全国の保健室で養護教諭が精いっぱい受けとめて対応しています。

 本当に、保健室は、学校や家庭、社会のあり方が子供たちを通してストレートにあらわれる場所です。しかし、子供たちは、家庭のしんどい状況や困っていることを自分からはなかなか話しません。丁寧に子供に向き合うことで、見えてきたり、聞き取れるようになります。その子の問題が、そうすることによって、やっと見えてくるんです。しかし、養護教諭からは、子供たちとの時間を確保したいが忙しくて大変、お昼のお弁当を食べる時間もないというふうに、十分な対応ができない苦しさも抱えています。

 ぜひとも、養護教諭を大幅にふやして、一人一人の子供たちにじっくり向き合える条件をつくっていただきたい、それも私たちの願いです。

 子供たちの貧困は深刻な状態にありますし、今法案の子ども手当の支給を将来にわたる子育て支援の体系の中にしっかりと位置づけて、子育ての土台の整備を抜本的に強化することを並行してお世話になりたいというふうに思っています。

 当面、高校生の無保険状態の解消を確実に実施していただきたい。また、各自治体の努力によって子供の医療費の無料化が実現していますが、住んでいる地域によって差が出ないよう、国の施策としてこちらの方も実施していただきたいと思います。

 そして、何よりも、これまで私の方から話させてもらった貧困で苦しむ子供たち、ここに手厚い支援をしていただきたいというのが思いです。特に、生活保護に準ずるとして市町村の方で制度化されている準要保護、ここに対する対象をふやしていただいたりとか、あと、高校の入学時における準備金とか給付型の奨学金、こちらの方の制度もぜひ実現していただきたいというふうに思っているところです。

 以上で私の意見陳述を終わります。よろしくお願いします。(拍手)

藤村委員長 関口参考人、ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

藤村委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菊田真紀子君。

菊田委員 おはようございます。民主党の菊田真紀子でございます。

 きょうは、大変お忙しい中、参考人の皆様には、この委員会に御出席を賜りまして、それぞれの立場でこの子ども手当法案に対する御意見、また、昨今の社会情勢の中でお考えになっておられる国政への御提言を賜りまして、まことにありがとうございました。

 中には大変激しい御意見もございましたけれども、私は、重要なことは、この国の未来を担っていく、次代を担っていく子供たちを本当にどうやって社会全体ではぐくんでいくか、そのことに対して、それぞれの立場で議論をしていく、国民的な議論を深めていくことが何より大切だと考えておりますので、きょうは大変貴重な御意見をいただいたこと、冒頭、心から感謝と御礼を申し上げたいと思います。

 思い起こしますと、昨年夏の総選挙、大変厳しい戦いでございましたけれども、多くの国民の皆さんから民主党政権への御期待をいただいたわけでございます。あれから半年がたちました。さまざまな時間的また財政的な制限がある中で、できること、できないこと、本当にさまざまな葛藤もあり、また私自身もじくじたる思いもございます。けれども、私たちは、あの選挙で国民の皆さんにお約束をさせていただいた、御期待をいただいた、その政策を一つ一つ着実に実現していきたい、その思いは今も少しも変わることがないわけでございます。そして、たくさんの期待をいただいた中で、とりわけこの子ども手当に対する関心また期待感は強かったというふうに思っております。

 今でも私は毎週地元に参りまして、さまざまなお話をお伺いいたします。やはり、若いお父さん、お母さん、今このような経済状況の中で子供を育てていくということは本当に大変なことだという中で、子ども手当、頼りにしています、助かります、ありがたいと思っていますという大きな御期待もいただいているところでございます。

 これまでの資源配分を変える、予算の配分、そして予算の使い方を変えて、私どもは、コンクリートから人へ、未来の子供たちに投資をしていきたい、そんな思いでいっぱいでございます。

 きょうは、たくさんの参考人の方から御意見を賜りましたけれども、まず、古橋参考人に御質問をさせていただきたいと思っております。

 先ほど、ヨーロッパ、とりわけスウェーデンやフランス、イギリスあるいはドイツの家族政策、少子化対策、子育て支援の状況について御説明をいただきました。先進国、さまざまあるわけでございますが、日本としても、これまで少子化対策として、実はさまざまな計画の策定あるいは対策が講じられてきたわけでございます。しかしながら、残念ながら、それが本当に国民の皆さんに、子育てをされている方たちに目に見える成果として生活の中では実感できない現状にあるというふうに私は思っているんですが、それはなぜだというふうにお考えでしょうか。

古橋参考人 お答えいたします。

 私も実は、さまざまな、例えばエンゼルプランプレリュードから始まりました子育て支援に大変期待をいたしておりました。しかし、実感できないというのは確かに感じておりました。というのは、実施された経緯が何だか目に見えてこない。これは私だけではなく、働きながら子育てをしている人、それから家庭で子育てにかかわっている専業主婦の方たちからもそういう声が上がっておりました。とりわけ、これから働きたいと思っている人たちの保育所の待機児童の問題などが、実は、さまざまな子育て支援のプランの中で、数字だけでちょっと操作された経緯がある。これが、実感できなかったことの一つかと思います。

 それは、保育所の待機児童の数値を下げるために、保育ママ制度を利用している場合、従来は、保育ママ制度を利用している場合は待機児童の数の中に入っておりました。それが、待機児童の数に算入しないという形、いわゆる保育ママに保育をしてもらっているんだからいいじゃないか、待機じゃないというふうに位置づけられて、それを待機児童の数に算入しなかったという方法を用いています。そのため、現状が全く変わらなかった。そういったことが、実感できなかった要因かと思います。

 以上です。

菊田委員 ありがとうございました。

 ことしの一月二十九日に、新政府といたしまして、「子どもの笑顔があふれる社会のために」と題されました子ども・子育てビジョンが策定をされております。これは、政府が少子化社会対策基本法に基づきまして、二〇一〇年から向こう五年間の包括的な施策をまとめたものであります。しっかりとした理念が打ち出されているということで、私は、この四つの政策の柱、また十二の主要施策を、具体的に数値を掲げて、そして政府の意欲を示していこうというものでありますので、大変評価をいたしているところでございます。

 今、子供を持っておられる御夫婦に、本当は、理想は子供さんを何人持ちたいですかという御質問をして、そして現実にはどうなのかといったときに、夫婦の七割が経済的な理由でなかなか理想の数を産めないという現状もあるわけでございます。また、今言ったように、子供を産んでも安心して子供を預けることができる保育所が身近にない、待機児童の問題等々がございます。

 また、これまでもさまざまな計画が策定されてきましたけれども、どちらかというと数字だけが上滑りをしたり、あるいは、策定したからこれで終わりというようなところも多々あったわけでありますので、民主党政権のもとで目標を掲げたからには、ぜひ、それを着実に実現、実行するために、私も一生懸命取り組んでいきたいというふうに思っております。

 そういう中で、今回、子ども手当というのは、本当に大きな柱として子育て支援をしていきたいということでございますが、この子ども手当の政策効果について、古橋参考人はどのようにお考えになっておられるか、少し詳しくお話をいただければと思います。

古橋参考人 お答えいたします。

 効果としては、先ほども意見陳述の中で申し上げましたように、少子化対策という点では緩やかな効果が認められると思います。ただ、子育て支援のような現金給付だけではなくて、もう一つ、現物給付についても充実させていくという子ども・子育てプランが実効性ある効果を発揮してくれれば、その緩やかさが実は迅速に効果を上げていくのではないかと思います。

 保育サービスに関連いたしましては、先ほどちょっと十分に御説明できませんでしたけれども、よく、福祉に関連して投資をすると、どぶに金を捨てるようなものだと言われたことがございます。特に、保育サービスに関連して福祉投資をいたしますと、実は三倍になって返ってくるという試算をしたものがあります。それが、先ほどの私の資料の表でございます。

 これによりますと、約百億円の投資、保育所をつくることによって、保育所に入所できる子供たちの数がふえます。そして、女性が働く、母親が働くこともできます。そして、得た収入、それから、保育所を利用するために保育士を雇用しなければいけないという雇用の増加も一つ挙げられます。そういったもろもろのこと、そして、女性が働くことによって所得税そして社会保険料を支払う人になる、そういった効果も大きくなってまいります。また、購買力も全体で六十億という結果も試算で出ております。

 これら、詳しくは後でごらんになっていただきたいと思いますが、結果論を言いますと、約百億円の税を投入することによって三百十五億円の所得を創出するという結果になっております。こういった意味で、経済効果というのも大きく期待できるのではないかと思います。

 また、子ども手当がどのように使われるかというと、私も学生とか卒業生たちにいろいろ聞きますと、まず貯金したい、でも、現実には、さまざまな学習塾とか、それからいろいろ買ってあげたいものがあるというのと、何か半々くらいの数字が挙がっております。

 ただ、先日公表されたのを見ますと、全体の金額の中の六千七十四円が支出として使われるので、経済効果は十分にあるのではないかというふうに試算されております。そういう意味では、景気に対する政策にも効果があるのではないかということ、それから、もちろん貧困対策として子ども手当というのは大きな効果があると確信しております。

 以上です。

    〔委員長退席、中根委員長代理着席〕

菊田委員 ありがとうございました。

 現物給付そして現金給付、私は、先ほど古橋参考人がおっしゃったように、どちらも大切だというふうに思っておりますが、先ほど古橋参考人が御提示をいただきました資料、またお話の中で、子育て支援と公的支援、これのGDPとの比率が示されております。

 OECDでは、現物給付が〇・八、そして、その一方で現金給付は一・二ということで、現金給付が上回っているわけでございます。しかし、日本の場合は、現物給付が〇・五、そして現金給付が〇・三ということで、現金給付が下回っております。フランスの例では、現物給付が一・六、そして現金給付が一・四という状況でございます。

 確かに現金給付というのは非常に難しいという面もあるわけでありますけれども、私は、車の両輪というからには、やはりこれをバランスよく行っていく、そのためにもぜひ子ども手当を実現してまいりたい、実行してまいりたいというふうに思っているのでございます。

 そこで、いま一度古橋参考人にお伺いいたしますけれども、この現金給付の大切さについて、ぜひこの場をおかりしまして、どのようにお考えになられているか、国民の皆様にもこの現金給付の大切さについてお話をいただければ大変ありがたいというふうに思います。

    〔中根委員長代理退席、委員長着席〕

古橋参考人 お答えいたします。

 先ほどから、現金給付としての子ども手当の効果というのは、やはり世界的に見ても非常に低い状況の中で、〇・三から、今の法案のとおりにいきますと約一・二、ということは四倍にふえるということですよね。それは、まず親の経済状態が非常によくなるという意味で、大きなことだと思います。

 それからもう一つ、これは学生たちがよく言う言葉なんですが、子育てをするのに、二人で子供はつくるんだから、二人で育てたい、そのためには二人で働かなければいけないけれども、不十分な分、やはり児童手当も含めた子ども手当が現金給付でいただけたら、もっといい子育てができるんじゃないか。実際に子育てをされた方はよくわかると思うんですが、本当に目に見えないいろいろな費用が子供にかかってまいります。

 その意味で、ぜひ、まずは現金給付がされて、そして同時に、それを第一歩として、第二歩に現物給付としての保育サービスを充実させる。その意味でも、まず最初にやっていただきたいのは子ども手当の実施だと確信しております。

菊田委員 ありがとうございました。

 実は、この議論の中で、子ども手当に関して所得制限、これの是非を問う議論がさまざまあるわけでございます。

 先進国の例を見ますと、私が聞いているところでは、イギリス、フランスあるいはドイツ、スウェーデンでは所得制限というものが設けられていないというふうに伺っているんですが、このヨーロッパの先進国の事情、一体どういう状況にあるのか確認をさせていただきたいということと、そして、もしも所得制限が設けられていないということが正しいのであれば、それはどういった理由から所得制限が設けられていないのかということをお教えいただければと思います。

古橋参考人 お答えいたします。

 所得制限というのは、実はヨーロッパの場合は児童手当に関してみんな所得制限はされておりません。それは、やはり子育ての役割を社会で担うということと、先ほども言いました、子供は社会の子供である、次世代を担っていく大事な子供であるという認識が、社会とのコンセンサスが十分に得られているということももちろんその土台にあります。

 所得制限の是非に関しては、所得制限をしないことでシステム的にも、支給する場合のシステムが非常にシンプルであるということも一つ言えると思います。

 先ほど、控除から手当へというふうに変わった理由を、ちょっとスウェーデンの例を挙げて御説明申し上げました。そこの中でも出ておりましたけれども、実は、今年度の所得で児童手当を受給していても来年の親の所得でまた変わってくるというような、そういった親の所得の変動で変化することへの対応が結構、支給するシステム上、非常に煩雑になるということも効果の中に、所得制限をしないという効果の中の一つにも挙げられております。

 もちろん、所得制限をしないということは、ユニバーサルシステムをとっているというその精神の中では、やはりすべての子供、いわゆる親が働いている場合、フルタイムで働いていても、自営業でも、公務員でも、失業者であっても、すべての子供が対象として支給される意義というのが大きいということです。

菊田委員 ありがとうございました。

 先ほど、阿部参考人そして関口参考人から、それぞれ子供の貧困の問題についてお話がございました。

 民主党政権になりまして、厚生労働省として初めて日本の子供の相対的貧困率を公表するなどしまして、いち早く、子供の貧困あるいは格差の問題について解決を図るべく今取り組んでいるところでございますが、阿部参考人そして関口参考人に、この子供の貧困の解消に向けてどのような政策が必要だと考えておられるか、具体的なお話をお伺いしたいと思います。

阿部参考人 ありがとうございます。

 子供の貧困の解消に向けて、先ほどお話しした内容にも返ってくるかと思いますけれども、幾つもの手だてが必要かと思います。

 それは、まず、現金給付という形での今回のような子ども手当を含めた支給ももちろん重要ですし、そのほかの各種のサービスというのが必要かと思います。諸外国では、特に子供の貧困は、ゼロ歳から六歳の間の子供の貧困が、将来的にその子供のウエルビーイングといいますかアウトカムに一番きいてくるというふうに言われております。ですので、この時期において集中的にサービスを投入するというのも一つの手かと思います。

 それから、教育の面ですけれども、今はもちろん義務教育という形で普遍的に教育がなされていますけれども、その普遍的なサービスの中で貧困層の子供たちが落ちこぼれていってしまっているという事実もあるかと思います。そのような子供たちに対してはやはり底上げ的な観点が必要で、特に不利な子供たちにより重点的な、例えば、いい先生をつけるですとか、補習的なものをつけるとかいうような形でもあるかと思いますけれども、そのような教育サービスをする。

 保育サービスの中では、いろいろな家庭の中での支援ということも含めて、児童福祉という言葉を先ほど何回か使わせていただきましたけれども、ただ単に子供を預かっているだけではなくて、その家庭に何が必要なのか。諸外国では、例えば、週に何回も家庭訪問という形で子育てをサポートするというような支援もしていると聞いております。そのようなきめ細かいサービスというのもやはり必要であって、現物給付も、ただ普遍的にというだけではなく、より不利な子供たちに重点的な政策を考えていただければと思います。

 ありがとうございます。

関口参考人 先ほど言いましたように、しんどい子供たちへの手厚い援助という制度が充実することが一番なんですけれども、私たちの願いとしては、ここに挙げさせてもらっているような、子供の医療費を全額無料にする国の制度を確立することであったり、当面、高校生世代の無保険状態を解消すること、また、学校給食を無料にして、みんながおいしい給食を、安全な給食を食べられるようにすることというあたりが必要だと考えています。

 さらに、やはり子供の親が安心して働ける社会をつくっていただきたいというのが大きな願いです。地域に自動車産業とか電機工業があって、そこに勤めている保護者が多い地域の小学校で、この不況で自宅待機を命じられて父親が常に自宅にいる状態で、お給料が大きく減額されて経済的にもしんどくなる。そうなると、親御さんは見通しが持てないので、手元にはお金はあってもやはり生活がすさんでいってしまう。そういう中で、家の片づけができなかったりとか、子育てが十分にできなくて、育児放棄というふうな状態になっているところもあります。

 そういう面で、やはり親御さん自身が安心して働ける、そういう社会をつくっていく。当面、労働者派遣法とか最低賃金の引き上げとか、いろいろな問題はあると思うんですけれども、そういう施策と並行して、していただきたいというふうに思います。

藤村委員長 菊田君、持ち時間が経過しております。

菊田委員 ほかの参考人の方に御質問ができずに申しわけありませんでしたが、きょうは、このような機会を与えていただきまして、本当にありがとうございました。

 質問を終わります。

藤村委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、この立法府において、子供の問題、またその中でも、関口参考人の先ほどの子供の貧困の問題、本当に胸をつくような実態が御紹介され、そのことについて、国会議員、特に厚生労働委員会のメンバーが真剣に論議する場を持てたということを、私は、日本の政治の歴史の中で大きな画期的な出来事と思います。

 と申しますのは、私は子供の医師をことしで三十六年やっております。子供たちの問題は、まず子供たちは投票権を持ちません。また、自分で働いて稼ぐといっても、それもできません。社会、家庭、あらゆる力を寄せ集めて守っていかねば子供が育つということはできないわけですから、そうしたことに向けて国会が総意を挙げるために、きょう皆さんがいろいろな御意見を下さったということをまず深く感謝いたします。

 冒頭、古橋参考人にお伺いいたします。

 参考人のきょうの陳述は、そもそも子ども手当の発祥の歴史に始まって現在に至るまで、総括的なお話でもありました。そして、お聞きすればするほど、なるほどと納得いたすものであります。

 しかしながら、世の中的にはというか、いろいろな調査をいたしますと、なかなか子ども手当について、本当に賛成だと言ってくれる声が少ないように私は思います。それはすごく残念なことでもあり、そして、やはり子供のことなんだから、みんなに喜ばれて、本当にそうしようという思いでこの政策がとられるべきだと思うのですが、私はいろいろ周りで意見を聞いていますと、例えば、お金をもらうよりも、端的に言って、保育所が足りないから、保育所は高いし、あるいは病院、子供のかかれる病院がないから、小児科は大変なのという言葉が返ってきます。これは、先生のレジュメに伴えば、現物給付と現金給付のところにかかわる課題だと思います。

 先ほど来、とりあえず現金給付をというふうに御指摘でありました。実は私も、社民党の政策の中で、一万三千円の現金給付はよしとしております。これは、子供の食費と被服費、十五歳までを調査した結果から編み出された、いわば生活基本費用であります。ところが、これを二万六千円に膨らませていくというときに、さて、その前に、まず保育、教育、医療、そちらに手をかけてほしいというのが私が受けとめる多くの子育て世代のお母さんの声かと思います。

 先ほど菊田委員の御質疑に対しまして、とりあえず現金給付だというお話をしてくださいましたけれども、さはさりながら、このあたりはいかがお考えでしょうか。これは悲しい対立に持っていくための論ではなくて、本当によかったと思ってもらえる政策にしたいための問いかけですので、一問お願いいたします。

古橋参考人 二万六千円の額の是非についてだと思いますが、これについては、私も、金額云々というよりも、今現在の児童手当の金額が、少なくとも世界的なレベルの、先進諸国と同じぐらいになってほしいという願いにはもちろん十二分に合致していると思います。

 ただ、この金額については、一定の議論をした上で決めるべきではないかと私自身は思っております。その額を決めるときの一つの目安としては、おっしゃったように、やはり現物給付との兼ね合い、そして今民主党の方が提案されております子ども・子育てプラン、これは政府で閣議決定されておりますけれども、これとの絡みで配分していかなければいけないと感じております。

阿部委員 ありがとうございます。

 次に、山中参考人にお伺いいたします。

 具体的な数字を挙げて、地方の、主に現物給付を担う側からの御提起で、私は、批判というよりは大変前向きに受けとめさせていただきました。

 そこでお伺いをしたいですが、今の古橋先生への御質問と同じなのですけれども、私は、ある程度最低のもの、諸外国に比べても余りにも低い現金給付、これについては、せめて一万三千円くらいはやはり国として給付すべきだと。しかし、その全額を、お示しいただいたようなこの資料二のように、子ども手当の全額国費想定七十六億になり、地方が今と同様の四十億で現物給付をやるとなると、これは現物給付はできないということになってくると思います。

 そこでお尋ねですが、御自身は現金給付の一万何がしについてはよしとなさるのか、それとも、これは極論で恐縮ですが、そこまで含めて、いろいろな、所得のより厳しい御家庭や、まあ実際、自治体を預かればそうではないかなという思いもいたしますが、私自身は、せめて子供たちの基本は社会のプレゼントとしたいので、そういう観点からお伺いいたします。

山中参考人 私自身も、実は阿部議員の御質問には非常に共感をする部分がございまして、私も、二万六千円の子ども手当を全面的に否定する、一万三千円のものを否定するという部分ではなくて、現実的に、これまでの地方自治体において、松阪市においては大体五十五億の子育て政策の予算がある中で、実は四十億は、松阪市が市の単独で子育て政策を実施してきました。その中で、ただ、さまざまな課題がある中で、先ほど関口参考人からもありましたけれども、医療費の無料化であったり、給食費の問題、本当は国がやっていただければ当然ありがたいなと思いながらも、地方自治体でさまざまなサポートをする。

 ただ、こういうことが本当に、子供の貧困の問題やさまざまな保育園の待機児童の問題、松阪市にまだまだ保育園の待機児童がございます。こういう子育て環境に関して本当に責任を持ってしっかりと整備をしていく、その声に対して対応ができたときに初めて、またちょっと順序が逆なんですけれども、現金給付という形で、これまで以上に対して現金給付をするという位置づけがあってもいいと思うんです。

 現在において、私は、これは民主党さんを批判するというよりは、これまでの自民党さんにおいても子育て政策が決して十分だったと思わないんです。ただ、総務省のホームページの、また自治体に対して来る部分を見せていただきますと、来年度から、その数少ない子育て政策の予算すらも民主党政権ではやらないよという通知が来ているんです。だから、これに関して、子育てプランとの整合性というのはどう図るんだということが私たちは全くわからない。だから、そこを明確にしていただきたいというのが思いでございます。

阿部委員 貴重な御指摘と思いますし、政権といたしまして、ぜひ地方のお声もしっかりと聞きながら、本当に子供たちが健全に育つための施策にしたいと思います。

 引き続いて、阿部彩参考人にお尋ねいたしますが、実は、子供の貧困という問題は、阿部彩さんがお書きになった岩波の御本の中にも大変に衝撃的に分析され、問題提起をしていただいたことと思います。

 既に一九九〇年代、アメリカやイギリスにおいては、政策目標の中に子供の貧困というものをどう削減していくかを具体的に述べ、例えばブレアもそうですし、きちんと自分の政権の中でこうするんだということを明示していたと思います。逆に、日本はなぜ子供の貧困対策がおくれたのであろうか。

 そしてもう一つは、私は、ある意味で現金給付は絶対に、まず貧困政策として第一と思いますからやらねばならないと思いますが、もう一つの現物給付の中核をなす保育という問題が、これはいろいろな家庭条件を、お金のない家庭も、あるいは家庭的ないろいろな関係性のうまくいかない家庭も、あるいは普通に家庭として機能している子供さんたちも、ある意味で一緒に学べる場として、保育というのはすごく前向きに位置づけるべきではないかと思います。

 この二点について、なぜ日本がおくれたのだろう、そして、保育政策のもっと前向きな位置づけについて、阿部参考人のお答えをお願いいたします。

阿部参考人 まず、なぜおくれたかについて、これは私も推論でしか申し上げることはできません。

 ただ、日本のいわゆる政策議論の中、これは政治家の皆さんや官僚の皆さんだけではなく、研究者の間でもそうですけれども、貧困問題ということについては久しく、子供であれ、大人であれ、若者であれ、論じてこなかったという現実はあるかと思います。一九六〇年代ぐらいを最後に、研究者の間でも日本の貧困というのはトピックとなることはありませんでしたし、そういうものがあるという認識さえも薄れてきたというふうに思います。

 それは、日本が高度成長する中で、すべての人の生活水準が上がってきているというように思うとき、その中で、伸びというのにいろいろなばらつきがあるですとか、そういうものが余り見えにくいというような背景があるのかと思います。それが、経済が低迷するようになって、より鮮明に見えてきたのではないかなと思います。

 ただ、なぜ二〇〇八年までかかったのかということについては、私自身も非常に不思議に思っております。

 二つ目の保育についてですけれども、これは私の著書の中でも書きましたけれども、私は日本の保育所というのは非常に期待をしております。というのは、まず、日本の保育所では、貧困層の子供、そうでないお子様もすべて一緒に生活をしているということ。それから、保育の面では、児童発達のプロがいらっしゃり、栄養のプロがいらっしゃり、それから、すべてではないですけれども、保健関係のプロの方もいらっしゃるという、非常に理想的な場ではあるんですね。

 ただ、そこの場だけでは足りないということもあります。どれくらい保育所が御家庭にかかわっていけるのか。それが、親御さんが保育所に来るときに二、三分ちょっとお話をするだけではなくて、もっと積極的に家庭が抱える問題というのを福祉の観点から見ていく必要があるのではないかと思います。それは、福祉事務所やそのほかのいろいろな児童福祉施設の連携もありますし、もっとスタッフを充実させなければいけないというようなこともあるかと思いますけれども、まだまだやれる余地があるのではないか。

 保育所についても、今まで、量の拡大ということですとか時間の拡大ということで、親がいかに働きやすいようにというような観点からの拡充を図られてきたかと思いますけれども、そこで行われている保育、特に不利な子供に対する保育で何ができているか、子供の発達を健全にするためにどういうお手伝いができるのかという、そこのところの質の観点というのが、いま一つ量の議論に比べて少ないように感じます。ですので、質と量、両方の点で保育というのを拡充していただきたいというのが私の願いです。

阿部委員 小児科医師としても、本当にそうありたいと思います。

 続いて、高橋参考人にお願いいたします。

 予算委員会でも、たしか介護のことでお話をしておられたと思うのですが、日本の福祉政策の中で、実は住宅政策というのは確かに立ちおくれていて、その極論が、ホームレスになってしまう非正規の皆さんの現状として私たちの目の前にクローズアップされたものだと思います。

 先ほどのお話の中で、子供の現金給付よりまず住宅だとおっしゃる部分も、私はある意味で理解をするもの、人間にとって巣でありますから、それが壊れれば丸裸の個人が投げ出されます。

 先生の書かれた中で、住宅手当と書いてございましたが、これは手当として理解するのか、それとも政策、例えばスウェーデンなどでは、御高齢になればそのような住宅に移り住むし、子育て世代についてはいろいろな費用がかかるから、また住宅として安く住めるというようなことがございます。先生のレジュメが手当となっておりましたので、そういう意味合いか、もう少し政策的な意味合いなのかについて、教えてください。

高橋参考人 私は、資源に制約がある、これをまず肝に銘じていただきたいんです。その中でどういう配分をするのがいいのかという議論で、要するに、消費税増税を封印したらもう方法はありません、はっきり言って。イギリス、スウェーデンは二〇%の消費税です。

 ということを前提にして、しかし、優先順位は、私は住宅手当だろうと。とりわけ、生活不安定層は、借家層とローン返済不安定層がこれからどんどん登場しますから、そういう意味では、もちろん住宅サービスの方の充実は、これは持ち家政策転換をやらざるを得ないんですが、そういうことを含めて、これは産業政策にもなりますし、それを両方やらなきゃいけないんです。

 ただし、夢物語は言えないんです。四兆円、五兆円出して、また三兆円、四兆円の住宅手当なんて、昭和二十一年と同じ、公債費が租税収入を上回る状況で。そういうことでいえば、むしろターゲティングをして住宅手当をやりますと、高齢、障害、子育て支援の不安定層は大体借家ですから、持ち家じゃないですから、そういう人たちにうまく、同じ五兆円を使うんだったらそっちに使ってほしい。その方が実は子育て支援になるという、そういうダイナミックな政策の視点がなくて、ただ、さっきから申しましたように、そういう考え方をするのでぐあいが悪くなるなということを申し上げました。お答えにちょっとなっていませんが。

阿部委員 貴重な御意見ですので、十分考慮というか、取り入れさせていただきたいと思います。

 引き続いて、渥美参考人にお願いいたします。

 いただきましたレジュメの中にも、例えば子ども手当はバウチャー給付に切りかえるべきだという御指摘もございます。今、子ども手当をもらったらどうしますかというふうに親御さんに聞きますと、三〇%くらいは、子供の将来のために貯蓄をしようという御意見もあります。私は、ある意味でそれもよしかと思います。高校から大学に行くときに、あるいは高校に行くときにも、子供たちにお金をためておこう、郵便局の学資保険に入れておこうとか、何でもいいんだと思います。イギリスでも、そうした貯蓄をして子供たちの将来に備えるというようなことを奨励していることもございます。このあたりはどうお考えでしょうか。

 私は、使えば投資効果ですぐお金は回りますが、しかし、子供自身にこのお金が渡ってほしいと思うところから、そうした考えもとり得るかなと思いますが、いかがでしょうか。

渥美参考人 ミクロの観点から申し上げると、そもそも、渡した後は個人の判断になりますから、どのような使われ方をするのもそれは各人の自由かと思います。

 ただ、マクロの観点というのは、国の施策である以上看過できない問題で、先ほど来、経済効果という言葉が出ていますが、やはり現金給付よりは明らかにバウチャーの方が経済効果が高いです。私の試算では、十倍近い効果が出ます。

 貯蓄に関しても、本当に子供のために使われるのであれば、それはタイムラグが発生するだけですから、将来の子供たちのためにという親御さんの気持ちは尊重すべきですけれども、一方で、児童手当のときもアンケート調査で、そもそも生計の足しにするという回答もございました。

 また、子ども手当に関しても、そもそも貯蓄以外に、自分たちの生活を楽しむ、だから、子供のためというよりは親が遊興費に使うような、ちょっと意識の低い親が少数であってもいる場合には、やはりそういう点で、本当に子供のために使われるという使途を明確にするバウチャーは、もともとの子ども手当の目的である子供のために使われるという意味からも合目的なものではないかなというふうに私は考えております。

阿部委員 今、多くの国民の中で子供のために使われるものならということになっておりますので、御指摘も受けとめて考えていきたいと思います。

 最後に、質疑の時間がございませんでしたが、関口参考人には、日ごろ、子供たちと最前線で、支え、そして貴重なお仕事をやってくださっていることを心からありがたく思います。また、きょうお伝えいただいたさまざまな子供たちの実相を私どもは忘れることなく、しっかりと政治に向き合っていきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

藤村委員長 次に、あべ俊子君。

あべ委員 自由民主党のあべ俊子でございます。

 きょうは、参考人の皆様、大変ありがとうございます。大変勉強になりました。

 私は、今回の子ども手当に関しまして、社会で子育てをしていくという考え方が一歩進んだ、しかしながら、現金給付と現物給付、これは両方必要でございます。そうした中におきまして、ここの部分に関しましては議論が余りにも少な過ぎるのではないかというふうに思っているところでございます。質問させていただきたいと思います。

 まず、古橋先生でございますが、御教鞭をとられている立場の中でお聞きしたいというふうに思います。

 私の地元にも、給食費を払えない子供が、本当に給食の時間になると、自分は給食費を払っていないからとその給食の場面から消え、給食を食べないという子供がいるというふうに聞いております。そうした中で、今、子ども手当だけでは出生率は上げられないというふうに先生はおっしゃったわけでございますが、いわゆる子ども手当という中で、現金給付、現物給付、このバランスということを何対何であるべきだとお考えなのか。

 また、御教鞭をとられている立場からいいますと、本当にどのような形で子育て環境を整えていくのかという内容をおっしゃっているんだと思いますが、財源論、特に北欧、フランス、イギリス、さまざま例を出されている中で、そこのいわゆる国民負担がどうなっているのかということも授業で教えられているのかどうかを教えていただきたいと思います。

古橋参考人 お答えいたします。

 私の授業の中では、財源論のところは、私は経済学者ではありませんが、諸外国の例を引きながら学生たちにしております。

 私が紹介いたしました例でいきますと、ヨーロッパのほとんどの国が国庫負担ということになっております。児童手当に関しては国庫負担ということです。

 ただ、フランスの場合は、先ほども言いましたように、事業主負担と国の負担ということで家族手当金庫という一つの基金を設けて、そこの中から給付をしていくという形をとっています。スウェーデンの場合ですと、国庫負担とはいいますが、その国庫の中に、実は事業主の方から社会保障費という項目で拠出をしてもらい、それが、配分するときにそういった子供支援施策の中の費用に配分されております。

 ですので、社会全体で子育てをするというコンセンサスをまず得て、そしてそういう形でしている、これが実際の財源論のときの議論の中で一番重要視されている点かと思います。

 それから、現物と現金。これは、どちらがどちらというのは、私にとって今も大変難しい問題だなと思いますが、私自身は、両方とも同じバランスで進めていただきたいと思っています。というのは、現金給付とそれから現物給付が非常にバランスよく支給されている国ほど女性の就労率も高いし、男性の子育ての状態も非常にいいということで効果を上げています。なので、私は、バランスとしてはどちらも同じ視点で重要視していただきたいなと思っております。

あべ委員 ありがとうございました。

 バランスを考えたときに、限定的な財源の中で何をしていくかということが、本当に国会議員として、今、政策立案能力が問われているときではないかというふうに思っております。

 松阪市長である山中さんにお伺いいたします。非常に激しいプレゼンテーションでございまして、御自分の市長としての首をかけられたお話であったと思っております。

 私は今回、いわゆる政権交代の中で、地域主権と言いながら、さまざまな部分で、大きな政府、国が決めることが余りにもふえ過ぎているのではないか、地域事情がばらばらであるにもかかわらず、国が一斉にやってしまうことだけで国の財源が枯渇してしまうということが起きてしまうのではないかと本当に懸念するものでございます。

 地方自治体の長として、この子ども手当、もし私が市長に同じ額をお渡ししたら、どのような形で考えられるのか。例えば、国からの配分はその半分でいい、地方自治体に半分欲しい、それとも、すべて渡していただきたい、どうお考えか、教えていただきたいと思います。

山中参考人 そもそもの総枠として、松阪市において、先ほど七十六億円と話をさせていただきましたけれども、これを国費として全額地方にいただく、いただかないという部分では、これだけの額をいただく必要は一切ございません。少なくても、この半分ぐらいをいただけましたら、さまざまな諸課題に対して、松阪市として、待機児童の課題に対して、または給食費、医療費の無料化に関して、または放課後児童クラブ、または地域の子育て支援センター、またはさまざまな児童センター、児童扶養手当のさまざまな増額に関して、このような問題に関して、半分いただけましたら、大概の子育て政策に関する課題は地域のもとで解決できる、このような額であると思っております。

 国として一律に対応するのであるならば、NICUの問題、または救急医療体制の問題も地域においては非常に緊迫した状況でございますので、そのような問題に対して、国として対応いただければと思っております。

 基本的に、子育て、子ども手当の問題に関しては、現金給付よりは、まずは地方に関して、その分け方を、現金給付にするのか現物給付にするのかはゆだねていただきたい。それが本当の意味での一丁目一番地、迷子にならない一丁目一番地ではないのかなと思っております。

あべ委員 おっしゃるとおりでございます。

 国会の方では待機児童の話がいつも話題になりますが、私の地元では子供がおらぬで、保育園の人数が集まらないという問題があるときに待機児童の話で議論されてしまうのは、全く地域のばらばらを無視していることだなというふうに思っているところであります。

 阿部先生にお伺いいたします。

 「子どもの貧困」、読ませていただきました。本当に私、感動いたしまして、このことに対してはしっかりやらなきゃいけないとずっと考えていたところでございまして、今回の子ども手当に関しましても、貧困問題を解消するということには、やはりこのことが抜本解決にはならないとおっしゃっているわけでございますが、例えば、同じ額、子ども手当に使うであろう額を阿部先生にお渡しするとすれば、先生は、まず三つ、もしくは五つでよいわけでございますが、この子供の貧困を解決するために、まず何をおやりになるか、教えてください。

阿部参考人 これは非常に難しい質問になります。といいますのも、一番先に申し上げましたように、貧困層の子供だけを対象とするようなプログラムを拡充するというのは、もちろん、貧困対策からすれば、お金対効果という意味では一番効果的だと思います。

 ただし、そのようなものというのが国民の方々に支持されるかどうかというのは、それはまた別問題であります。そこのところを考えずに、ただ単に、ではすべて所得制限をつけた、子供の医療の無料化をやって、それから義務教育、今就学援助費というのはありますけれども、それの拡充もミーンズテストをつけたものをきちんとやるというふうにやったときに、そうすると、そういういろいろな貧困対策にかかる子とかからない子というところで大きく分断されてしまうわけですよね。

 それで、それが例えば、生活保護なんかでもよく言われますけれども、親の勤労意欲に影響してしまうかもしれませんし、あらゆる点で、おまえはそのプログラムの子だろうみたいな形での子供のいじめに発達するかもしれませんしというようなこともあります。ですので、そのやり方というのは対お金的な観点で見て一番効果的か、ベストなのかどうかというところは、やはり運営面の方で非常に議論した上でつくられるべきだと思うんですね。

 ですので、私は、では貧困の子供だけを対象にしたプログラムをつくりましょう、医療もやります、給食費もやりますというようなことをやっていったとしても、それが結果的にいいものになるのかどうか。高橋先生のお話の中にもありましたように、いいことをやっているような意図を持ってやったとしても、結果的にそれが本当に役に立つのかというところについては、そう簡単には言うことはできないと思います。

 はっきりとしたお答えになっていなくて申しわけないんですけれども、そういう意味で、今の時点では、どれがベストというのをきちんと打ち出していくのは非常に難しいかと思います。

あべ委員 おっしゃるとおりだと思います。

 本当に、制度設計の部分で貧困層をまず把握するところも確かに難しいですし、例えば、さまざまな諸条件の中でどう対応していくかということは模索していきながら、そのことに対する制度設計をしていかなきゃいけないと思いますので、これからもぜひ御指導いただきたいというふうに思っております。

 高橋先生にお聞きいたします。

 本当に過激なプレゼンテーション、ありがとうございました。特に、私は、本当に今回の子ども手当に関しましては、財政小児虐待、中長期的に子供たちの負担をふやしてしまうということになってしまうのではないか。今がよければすべてよしではなく、やはり将来的に一体だれが支払うべきなのかということもセットで考えなきゃいけないというふうに思っております。

 このような現金給付だけで財源が枯渇してしまえば、政治というのは、制度設計、いわゆるお金の配分をどのようにしていくかという部分をおざなりにしてしまうのではないか。野党の参考人としていつもお出ましいただく高橋先生に、ぜひこのことに関しまして、もしつけ加えることがございましたら、お話をお伺いしたいというふうに思います。

高橋参考人 政策というのは単年度では効果は出ないんです、とりわけ子供の政策。

 そうしますと、今ある問題をどう解決するか。それから、これから起こってくる問題、これはある意味では予防です、そういうものをどうするか。そして、お金を使う部分と、人を育てなければいけないんですが、今の保育士さんでは、もっとレベルを上げていただくとか、そういうことをやると、かなり懐妊期間という経済学の言葉、時間がかかる。要するに、短期的政策と中期的政策と、あるいは超長期的政策とあえて言えば、日本は人口減少社会で子供がいなくなる社会だといったら、そこをどうするんだ、そういう視点を複合的に持つことを余りにも、七月でしたか、参議院選、そのことだけで考えなさんなというのが、きょうの私の全体のプレゼンテーションの意図でございます。

 それから、もう一つ。福祉の人はお金のことを余り言いませんが、お金がない、そうするとお金を稼ぐのは産業活動なんです。デンマークには、スウェーデンには、世界に冠たる付加価値の高い産業部門を持っているんです。そういう意味では、仕分けでああいう産業政策を切り捨てるようなことをされては、逆に言うと子供たちの稼ぐ場がなくなるというような政策になりかねない。そういうことを含めて総合的な政策をやらないと福祉は伸びませんということを申し上げたいと思います。

あべ委員 ありがとうございました。

 本当におっしゃるとおりでございます。

 渥美先生にお聞きしたいというふうに思いますが、子育てコンペということも、文献も読ませていただきました。バウチャー制のことも読ませていただきましたが、バウチャー制といったときにいつも問題となりますのがいわゆる地方間格差でございまして、選択するほど周りに何もないというところのバウチャーをどういうふうに先生はお考えでしょうか。

渥美参考人 バウチャーに関しては、確かに御指摘の議論はよく言われます。ただ、バウチャーをつくることによって、そもそも供給サイドを刺激しますから、今NPOがそもそも無償に近い形の労働、ここが市場化するということは大いに考えられます。実際に、海外でそういう事例はたくさんございます。

 ですから、そもそもニーズが子供関係に関してゼロということは全くあり得ません。先ほど来出ている、本当にニッチなニーズであったとしても、本当に深刻な、すぐにでも取り組まなければいけない重要な課題というのはたくさん子供をめぐってございます。そういう部分について志のある方が活動をする、そこが、今無償労働になっている部分が市場化される、そういうカンフル剤として極めてバウチャーは有効だと私は思っております。

あべ委員 ありがとうございました。

 このバウチャー制度に関しても、本当にこれから議論を進めていかなきゃいけない部分もあるのかな。特に、子供に本当に子育て手当が使われるのかということが大きな議論になっております。私も地元に帰りますと、親のパチンコ代に消えるんじゃないかとか、アル中の親がまた酒を飲む量をふやすんじゃないか、子供に使われたかどうかが本当にわかるんだろうかということが言われている中で、制度設計も、今回、来年度に向けてもしっかりと議論をしていかなきゃいけないというふうに思っております。

 また、関口先生の方にお伺いいたします。

 非常に詳細な、具体的な事例をいただきまして、そういう子もいたんだなということで、本当につらい思いをいたしました。そうした中で、本当に子供たちに手を差し伸べていかなければいけないという中にございまして、現金給付と現物給付のバランスは、先生がお話の中で言及されたところでございます。

 ただ、私どもちょっと懸念しておりますのが、今回の子ども手当に関しまして、国籍法が全く児童手当に絡みまして入っていない。外国人であっても子供たちが日本に住んでいれば、それは私は出してあげる必要があるというふうに思っておりますが、実は国内居住要件が全くない。

 すなわち、一夫多妻制の国の方々が、自分は二十人、三十人子供がいるんだと言って申請すれば、その額が出てしまうという問題点も出されているわけでございますが、特に関口先生に、国内に住んでいない子供たちに、この子ども手当をどう考えるかということに関して御意見をいただけたらと思います。

関口参考人 その国籍の関係と子ども手当の関係については、私は不勉強でして、全くきょうここへ来させてもらって知り得た状況なので、私自身、そういう子供たちをどう考えていったらいいのかというあたりは、まだ結論は出せません。

 ただ、本当に、この趣旨、子ども手当の趣旨から考えたときには、やはり社会で子供を育てるというところに合致するのであれば支給されるべきなのかなと思いますが、先ほど松阪市の市長さんからありましたように、その手続上の問題とかの大変さというあたりはあると思いますので、そういうところも含めて、それについては私自身の意見というのは持ち得ない状況です。済みません。

あべ委員 ありがとうございました。

 今回の子ども手当に関しまして、本当に恒久的な法案とするのであれば、財源をしっかり確保しなければ、余りにも無責任な、本当に亡国論につながるような法案であると私は思っておりまして、きょう、本当に、参考人の先生方からさまざまなお立場でお話を聞かせていただきました。必要である政策、しかし、その政策を続けるために一体国会議員が何をしなければいけないのかという話を整理することなくして議論が、余りにもイギリスの国会議員とレベルが違うという御批判もいただきました。

 そうした中におきまして、この法案だけを持ってきて、この国の制度がどうなっているのかを議論せずしてこの法案だけが急に出てきた。ということは、マニフェストで言ったからといって、そのマニフェストが国全体のバランスを崩してしまう。そのために選挙で皆さんが一票を投じたわけではない。マニフェストを読んでいる人はほとんどいない。何となくやってしまったということに対して、私は、後悔をしている国民の皆様とともに、この今回の法案に関しては、本当に、参考人の方々、いろいろなお話を聞かせていただきましてありがとうございました。

 終わります。

藤村委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、参考人の皆様、朝早くから国会においでいただき、貴重な御意見をいただきましたことに、心から御礼を申し上げたいというふうに思います。

 まず、渥美参考人からお伺いをしてまいりたいと思います。

 私たち、四年前に、公明党で少子社会トータルプランというものを一年半かけて作成いたしました。それは、一つには、生活を犠牲にしない働き方、ワーク・ライフ・バランスの確立、そしてもう一つの柱が、子育てが過重に負担とならない、そうした子育て支援、この二つを柱としてトータルプランを作成いたしました。そのときに、先生からも貴重な御助言をちょうだいいたしました。

 先ほどの先生の意見陳述の中でも、きめ細やかでシームレス、切れ目のない子育て支援施策の提供、このようなお話がございました。

 また、ある調査によりますと、例えば現金給付、私も現金給付というものは重要でありますし、公明党としても今まで児童手当を長い間かけて実現してきた、そうした歴史もございます。しかし、その現金給付があっても、一定程度の人々は、それでも自分たちは子供は持たない、あるいは子供が持てないという方々がいらっしゃいます。それは、やはり仕事と生活の調和が図られていないということが大きな原因だと思うんです。

 先生、こうした現金給付とともに、ワーク・ライフ・バランスをどう我が国でもっと推進していかなければいけないか、この点について御意見があればいただきたいと思います。

渥美参考人 私は、ずっとワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティーを研究して、今、実際に企業に出向いて職場改善のお手伝いをしています。そういう中で、現政権はワーク・ライフ・バランスに余り熱心でないという印象を持って、とても残念です。

 今回、事業仕分けに関しては賛否両論あるところですが、仕事と生活の調和推進事業、子ども手当の大々たる予算配分に比べればわずか十億円、そういう事業が見送られました。

 そもそもこの事業は、企業がワーク・ライフ・バランスというのに取り組もうとしたら、なかなか何をやっていいのかわからない。そもそも、ワーク・ライフ・バランス施策というのはかなり多岐にわたります。事業規模、従業員規模、業種、いろいろな要素によって最適なバランスというのは変わってきます。そういうものをアドバイスするコンサルタントを養成しようということを厚生労働省が始めようとしていた。それに関して、外郭団体、全基連が関連しているということで、そこはちょっと、ためにする事業じゃないかという御批判があったかと思います。

 ただ、そもそも企業は今かなり二極化していて、ワーク・ライフ・バランスに取り組んでいる先進企業というのは、こういうことに取り組まないと組織としての持続可能性がない、やはり、労働力人口が減っていく中で、女性も外国人も障害者も、いろいろな人たちが働きやすい職場環境をつくっていこう、そういう知恵をいっぱい持っています。そういうものをいろいろ吸い上げて、これからやろうとしているほかの企業に広げていく意味では、このコンサルタント養成講座は極めて有益な事業だと私はずっと考えておりました。今回は予算計上見送りですから、今後復活の可能性もあるかと思いますので、ぜひそういったときにはそもそもの事業の意義というのを考えていただきたいと思います。

 それで、今、子ども手当の議論ですので、私自身も三歳とゼロ歳の息子を養育している者として、経済的支援がありがたくないかといえばありがたいんですが、ただ、私は、給付されたら本当は受け取りたくはないです。それは、要らないということではなくて、そのお金の使い方に関して自分の意思を表明したいんですね。

 仮にフランスのような全国家族手当金庫みたいなものがあった場合に、そこに、私のような思いを持っている人たちは、それを財政システムの元締めのところに返上するから、こういうことに使ってほしい、例えば子供の貧困のためにもっとこういうふうに予算配分してほしい、そういう意思表示をするような場が今ないですね。

 NPOは、この間の自民党政権のときにも、幾つかのNPOがそういう受け皿になろうとして手を挙げていました。今回も、恐らくNPOに寄附をするという形でお金は回ります。ただ、それを個人の一つ一つの選択としてではなくて、志を持った人たちが、子育て支援に対してもっと国は力を入れてほしい、こういう部分に予算配分してほしい、そういう意思表示をする場という形での見える化。今は一方的に国から個人へという給付になっていますけれども、個人の意思表示を国が吸い上げる場というのもつくっていただきたい。

 そういうものがないと、やはり子ども手当の方がワーク・ライフ・バランス施策よりは単純にやりやすいので、ワーク・ライフ・バランス施策というのは、かなり知恵を絞らないと、本当の意味で有効な施策というのは打ち出せません。今、それを企業は実際に、しかも、私が申し上げている六百五十社というのは、半分以上が地方の中小企業です。本当に、お金もない、経済的環境も恵まれない中にあって一生懸命やっている企業がありますから、そういう知恵を吸い上げる場をぜひつくっていただきたいと思っています。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 経済状況が厳しく、ワーク・ライフ・バランスどころじゃない、経営だけでも大変だという時代なのかもしれませんが、逆に、こういうときこそ価値観を転換できる、働き方を変えていけるチャンスととらえて、ワーク・ライフ・バランスをさらに推進していかなければいけない、そのことがよくわかりました。

 先ほどの委員からも質問があった点なんですが、渥美参考人に、バウチャー給付についてさらにお伺いしてまいります。

 私たちも、四年前に発表しました少子社会トータルプランの議論の過程で、数十回会議を開いておりますが、このバウチャー制度についても議論があった点です。私自身は、これを導入すべきだと以前から考えております。また、どちらかというと女性議員の側はこれに非常に賛成だったんですが、実現する過程で非常に多くの課題があるという党内議論もございました。

 しかし、先生は、そうした課題は乗り越えられるというふうにお考えだと思うんですが、いかがでしょうか。

渥美参考人 バウチャーに関しては、本当に、保育に限らず、教育バウチャーでもかなり突っ込んだ議論が今までされています。

 バウチャーのデメリットもたくさんあると思います。ただ、やはりメリットはかなり大きくて、日本はまだ一回もバウチャーでやったことがありませんので、しかも、日本ほどITインフラが整っていて、いわゆる券が金券みたいな形で市場に出るなんということはあり得ませんから、イギリスにしても、日本以上にITインフラがおくれている企業であっても、保育に関してはかなりバウチャーで、利便性の高い制度がつくれています。

 私は今、自分の子供の待機児童で本当に困っています。それは、そもそも預け場所がないという単純な問題ではなくて、わざわざ何回も何回も足を運ばないと進んでいかないですね。

 こんなふうにITインフラが整っている国で、そんなふうに保育に関して、現地まで行かないとというのは、本当に利用者の利便性というのを全く無視した、本当に親御さんのことを考えて、もっといろいろ利便性を高める仕組みというのが考えられる、バウチャーというのはそういう議論の一つのきっかけにもなり得る。

 やはり、今の日本の保育システムというのは、供給サイドで組まれていた経緯があったために、需要者サイドのニーズというのは基本的には無視されてきた。そこのひずみがいろいろなところであらわれていると思いますので、利用者の意思表示という形で、バウチャーは極めて有効な施策だと思っています。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 こうした巨額の財源を投入するのであれば、やはり、子供に使われる、こうした仕組みづくりへの議論がさらに深まっていく必要がある、このように感じました。ありがとうございました。

 次に、高橋参考人にお伺いいたします。

 公明党の新・介護公明ビジョン作成の過程におきましては、高橋先生からもさまざま貴重な御示唆をちょうだいいたしました。ありがとうございました。そのときも、高齢者対策、介護問題の中でも住宅政策の重要性ということを強調されていらっしゃいました。

 先ほども質問が既にあったんですが、先生のこの「代替案の提示」という中でも、現在の日本では子ども手当よりも住宅手当が優先されるべき、このようにおっしゃっています。

 こうした対象を借家世帯、ローン返済困窮世帯等を対象とされていますが、やはり、高齢者になりますとスペースもある程度少なくてよいという考え方もあろうかと思いますし、また、子供というのは日々成長していきます。本当に、あっという間に成長していく。その短い期間にどう支援をしていくか、環境を整えてあげられるか、これが非常に重要でありまして、この対象の中でも、やはり子育て中の生活不安定子育て世帯、ここに優先されるべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

高橋参考人 福祉政策にはターゲティングという考え方が、低所得世帯に限定するというのもそれですけれども、日本ではクロヨン、トーゴーサンの問題がありますので、必ずしも低所得という概念と実際の生活実態がつながらないという問題があって、なかなか難しいんですが、そういうことを含めて、住宅手当、これは給付機構をつくるのがとても大変なんですが、住宅手当をつくると割とターゲティングがスムーズにいくんですよね、とりわけ生活不安定を。

 ですから、アメリカでさえと言っては失礼ですが、ローン返済世帯にも住宅手当が出るような仕掛けが、アメリカでさえ連邦制度としてありますし、そういうことを含めて、社会的消費と階層消費、住宅というのは今まで、お金持ちはいい住まいに住むのではなくて、ヨーロッパ的にいえば、ベースを保障する。そこに、もし、日本ではまだ住宅の現物給付がなかなかできないので、それを補足する住宅手当という立体的な政策の執行が必要。そうすると、実は子供の支援にもなるわけですよね。一番不安定層は住宅の出費が物すごくつらいので、二万六千円をもらうよりは住宅手当を有効に入れた方が、対象も限られますから。

 ただし、これは地域性があります。そういう意味で、私は、もっと地方と相談、同じ二万六千円でも、多分、松阪の二万六千円と沖永良部の二万六千円と東京の二万六千円は全く違いますから、そういうことを含めた調整は、地域主権を元締めする方が先ほど言ったように、松阪市長さん、山中市長さんの意見をちゃんとまじめに聞いてくださいということですよね。そういうふうに、全国市長会もございますし、知事会もございますので、そういうことをやらずに上から降ってくる政策はよくないということを何回も申し上げます。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 そうした地域性も含めた上で、住宅政策の重要性、確かに、子供を育てる上では、生活、また教育、住宅が基本であろう、このように思います。

 続けて、高橋参考人にもう一問お伺いいたします。

 この中で、財源の壁は厚いと。資源は限られていると先ほどもおっしゃいました。このような施策は財源対策とセットで超党派的に実施すべきだ、このように結論づけられています。

 政権交代が起きる、その中で当然政策というものは大きな転換をするわけなんですが、年金も含めまして、こうした非常に巨額の財源を要するもの、あるいは国民の生活のベースとなるもの、そういうものが政権交代とともに、ことしあるいは三年後、くるくると変わってくる、これは非常に国民にとって不幸である、このように思います。

 ですので、社会保障に関しましては、年金等も含め、こうした子育て支援施策も含めて、与野党含めた超党派的な協議機関を設け、一定の方向性というものを持たなければいけないのではないか、このように思いますけれども、いかがでしょうか。

高橋参考人 全くおっしゃるとおりでございまして、そのことをきょうずっと申し上げた。

 要するに、この間も申し上げました、百年後に民主党があるか、自民党があるか、公明党さんがあるか、共産党さんがあるか、わからないです。だけれども、今の政策は確実に二十年、三十年、四十年を拘束するわけですから、やはりコンセンサスは必要です。

 実は、イギリスの話は、そういうコンサルテーションペーパーをつくります。さまざまな意見を聞いて、どういうふうにやれるかということを政治主導で決断する。これは、ビバリッジ・レポートがその典型です。政権交代があっても安定的にやって、そこで揺らぎはあります、マニフェストはそこですが、しかし大筋は変わらないようにするというのが、これはイギリスの政党政治の経験なんです。そのことまでは、どうも研究されなかったのではないかと想像しております。

古屋(範)委員 やはり選挙になりますと、普通のことを言っているよりは、過激な、ドラスチックなことを言った方が選挙民から支持を得られる、こういう方向に走りやすい、先生のおっしゃるとおりだというふうに思います。私も、こうした重要な政策については党派を超えて議論が必要だ、このように考えております。

 それから次に、山中参考人にお伺いいたします。

 先ほど資料を提供いただきましたこの図に、松阪市における現在の児童手当の割合プラス子ども手当の構図をお示しいただきました。

 この児童手当、一九七一年から、公明党が地方において設立し、長い期間かけて徐々に拡充をし、また、国民的なコンセンサスも、地方とのコンセンサスも得つつ、今日まで拡充をしてまいりました。ちょうど松阪市の場合も、国、三重県、松阪市がほぼ同額の負担になっておりまして、事業主がそこの六割程度というバランスになっておりまして、非常に国全体で子育てを支えるというような、そういうパターンになっているかと思います。

 そこで、今回の子ども手当につきまして、先ほどもございましたように、地方の意見、これがどこまで吸い上げられ、反映をしたのか。地方の実情によっても、必要なサービスは大きく異なっていると思います。ですので、その議論の形成過程、また今後の議論について、地方の意見をどんなふうに反映させていくか、御意見があればお伺いいたします。

山中参考人 先ほどの高橋先生の議論の中でもございましたけれども、本当に、スウェーデンなどにおいては、年金制度を変えていくときには超党派で議論が行われて、年金制度が大きく変わってまいりました。この子ども手当の問題に関しても、本当にこれは政争の具にする問題ではなくて、国も地方も、そして党派も一体となって、実際に子供さんの環境そのものに大きく影響が出る、または未来の国の財政状況に大きくインパクトが出る問題でございますので、本当に基礎的自治体の声もしっかりと聞いていただきたい。

 ただ、基礎的自治体が子ども手当に、皆さんはもう水面下の潜在的な意識では一〇〇%反対であるにもかかわらず、表立って私のようになかなか言えないのは、それを言ってしまうと、直接的に分配するのは地方の責任ですので、市民や、それこそ選挙を考えてしまったりとか、市民の声が直接響いてきますので、本当にそれが言えなくなってしまう。逆に、国会議員の皆様方も、一度二万六千円でつくってしまうと、その後、本当に財政が厳しいから、もっとほかに事情が、必要だからといって、変えられなくなってしまう。

 だからこそ、本当にこの一年間の中で、党派を超えて、そして地方の声も、それもしっかりと物を言っていただける首長さんの声をしっかりと聞いていただく中で、県もやはり中間自治体ですので、ぜひ基礎的自治体の声をしっかりと今後聞いていただく中で制度設計を、民主党さん、自民党さん、公明党さん、共産党さん、みんなの党さん、きょう来ていただいておりますけれども、本当に皆さんが集まって真剣になって考えていただきたい、これだけお願いさせていただきます。

古屋(範)委員 市町村の声をどう反映させていくか、その重要性がわかりました。ありがとうございました。

 次に、阿部参考人にお伺いいたします。

 阿部先生、党の方にも来て、講演をしていただきました。私も著書も読ませていただきましたけれども、やはり子供の貧困率の高さ、そして所得再分配後のさらに子供の貧困率が高まるという逆転現象、これは是正をしていかなければいけない、このように考えております。

 そこで、子ども手当のみならず、所得再分配機能の強化ということで、税制と、それから医療、年金等の保険料の問題、そしてさらにいえば若年層の雇用対策、こうしたものが総合的に必要かと思うのですが、この辺はいかがでしょうか。

阿部参考人 おっしゃるとおりだと思います。税と社会保険料と働き方の問題ということで、三つどもえで考えていかなければいけないのかと思います。

 税に関しても、日本は累進性が非常に低い方の国、OECD諸国の中では低い方の国ですし、社会保険料に関してはかなり逆進的な部分が高いということで、先ほどおっしゃった子供の貧困率の逆転現象のところは、社会保険料が低所得層に非常に厳しいというところから出てくるかと思います。

 この点については、免除制度というのがございまして、その拡充というのを政府の方も図ってきたかと思いますけれども、それでもうまく機能していない部分というのは、やはり、国民健康保険の人数割りのところで、例えば子供が多くある世帯には非常に大きな負担になっている点ですとか。

 そうですね、先ほどからちょっと地方分権のお話を聞いていて思ったんですけれども、このように、今、地方ごとに決められているようなものもある中で、でも、やはり最低限これだけを確保しなきゃいけないよというのがあるかと思います。その中では、社会保険料の構成と、低所得者に対してどういうふうにしていくべきかという負担のあり方については、国の方からきちんと決めていただいて、その逆転現象が起こることがないようにというふうにしていただければと思います。

古屋(範)委員 皆様の貴重な御意見、参考にし、これからも議論を深めてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、六人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。いずれも非常に興味深い、また貴重な御意見であったと思います。時間の関係で全員には質問できないことを、最初に御了承いただきたいと思います。

 お話の中で、やはり現金給付か現物給付かではなく、現金給付も現物給付も一体なのだ、車の両輪でということをどなたもおっしゃったと思うんです。ですから、目指す方向というのはほとんど余り違いがないのであろう。ただ、そのプロセスですとか財源の構成のあり方などにおいて、まだまだ、理想と実態がどうなのか、あるいは考え方がやはり合っていない、そういうことが指摘をされていた。そうすると、やはりその点のところについては、さらにもっとこの委員会でも議論を重ねていく必要があるのであろうということを改めて感じることができました。

 そこで、最初に山中参考人に伺いたいと思うんです。

 松阪市への手当分七十六億円の意味を、例えば地方税と匹敵するという例えで表現をされて、大変わかりやすく受けとめることができました。

 実は私、先週のこの委員会で、地方税の扶養控除の廃止について質問しまして、地方の増収分が地方に入るけれども、国から出している国庫補助金、例えば民間保育所の運営費などが一般財源化という形で、回り回って子ども手当の負担分になるのである、そういう説明だったと思うんですね。現物給付は地方でという思想である、これは総務省の政務官の答弁でございました。先ほど山中参考人がおっしゃったバーターですよね。

 国庫補助と地方負担の分のバーターというのもまさに同じ考え方で、そうすると、車の両輪で進めますと政府は言っているんですけれども、バーターするだけなので、要するに、現物給付の部分は拡充はしていない、そういうことになるのではないか。つまり、現物給付に国が責任を持っているのか。あるいは薄まってくるのではないかということさえ思わざるを得ないわけですよね。

 この点について、ぜひ御見解を伺いたいと思います。

山中参考人 少なくとも、総務省から来ている資料においては間違いなく、薄めるというよりはなしにするというふうに、政府の見解として明確に出しております。

 正直、現在においてもそれほど国、県の比率というものが子育て政策で大きいわけではなくて、先ほどから、菊田議員の話で、待機児童の話であったりとかさまざま子育て政策の話が出ましたけれども、ほとんどが実は市町村の基礎的自治体が現在担っている役割で、それに対して、例えば保育園の運営補助などにおいても、大体、国からは一割程度の国庫支出金でございます。ただ、次年度以降の位置づけに関しては、恐らく、そのあたりに関してはなしになるのではないかなというふうに地方自治体としては考えさせていただいております。

 だから、子育てプランという部分がどういう位置づけで、それは市町村にやってくれという部分の位置づけで、押しつけて、自治体によって格差が生まれるのを見逃していくような政策なのかなと。子ども手当だけはしっかりと支給するけれども、子育て政策に関しては地方でやってもらって、その財源確保も地方で頑張ってくれよというのがこの総務省の通達なのかなというふうに私は見ております。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 非常に重要な指摘ではなかったかと思っております。政府の答弁も、長妻大臣なども繰り返し、いや、車の両輪なんだ、現金給付と現物給付は一体で進めるんだと言っているんだけれども、国の方向が決してそうではないということが指摘をされているのではないかと思っております。引き続いてこの問題は議論していきたいなと思っております。

 次に、関口参考人に伺いたいと思います。

 保健室を通して、本当に深刻な子供たちの実態が語られたと思います。私が本当に胸にひっかかるといいますか胸打たれるところは、子供たちが、本当に命と暮らしが脅かされる、健康が脅かされる状態にありながら、やはり親に気を使っているという指摘が幾つもあったのではないかと思っております。

 そこで、やはり今回、子ども手当が子供たちの健やかな育ちを応援するという趣旨だとは言っております。ただ、実際には、親に支給されても、こういう状態では生活費の一部に吸収されて、貧しい子供ほどその効果が見えにくいのではないか。つまり、余裕のある家庭では塾の費用や、使い道も自由で、むしろ格差の拡大になるのではないかという心配もございますけれども、意見を伺いたいと思います。

関口参考人 私たちの仲間からも、保護者の手元に渡っても、それが本当に子供に使われるのか、なかなかそうは思えないという意見はあります。もっと子供に直接還元されるような、具体的には、先ほどから言わせてもらっていますように、十八歳までの子供の医療費が無料になったり、給食費が無料になったり、高校の教科書が無料にされたり、あと、予防接種が無料になったりとか、そういうふうなものに使ってほしいという意見はあります。

 生活費の一部になることによって、その子供がきちっと食事が食べられたりとか身に合った服が着られたりとか、そういう形になるのならば、それはそれで望ましいかなと思うんですけれども、先ほど心配されたような、親御さんのお金になるというような心配というあたりについては、現実問題として私たちの仲間からも出ているところです。それよりも、やはり社会で子供を育てるというこの法案の趣旨にのっとった形で使われるというようなことが一番望ましいと思いますし、この視点は私たちも大事にしたい視点だと思っています。

 そういう面では、本当に、子ども手当にとどまらずに、先ほどから論議されています現物給付というところもあわせて実施していただきながら、子育ての土台の整備を総合的に進めていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 今、親御さんに使われるという表現をしたわけですけれども、やはり先ほどの関口参考人のお話の中にもありましたように、子供を通して親たちの本当に深刻な経済的な状態、仕事や暮らしに追われている状態というのが見えているということだったと思うんですね。だから、ちまたでよく言われているように、親が好きなことに使うんじゃないかとか、そういうだけの話ではない。そこにもきちんと向き合わなければならないということを提起されているのではないかなと思っております。

 保健室が、子供の貧困やあるいは虐待などの家庭的問題を見つける上でも大きな役割を果たしていると思います。こうした点で、具体的に実感した点、つまり、親御さんとアドバイスをしたり相談所との連携を図るなどしてそうした問題が解決できたとか、そういうことを紹介していただけたらありがたいなと思うのと、この際、そういう点でも、やはり保健室の体制というのがもっと拡充されていく必要があるなと思っているんですけれども、御意見を伺いたいと思います。

関口参考人 事例ですけれども、佐賀県の高校の方です。

 父親が失職し、その後行方不明になり、母親も病気で働けず、経済的に困窮し、食事も満足にとれない状態だった高校生なんですけれども、先ほどは保健室で氷を食べるというふうに言いましたが、この子は水を飲んで空腹を満たしていた。ふらふらして保健室へやってきたときには、もう皮膚は乾燥しているし、体もやせぎみで、生気のない表情をしていたというふうな状況だったようです。

 保健室で、バナナとかあめとかチョコレートとか、糖分の補給をしたりしながら対応していたんですけれども、やはり目の前の子供を助けるだけでは、対応しているだけでは進みませんので、その後、担任と連絡し、保護者とも連絡をとり、生活保護を何とか受けることができた。やはり、保健室でそういうふうにかかわりながら、法の中で使える制度を使っていくというふうなことで、食生活も学業の維持もできたというふうな事例を聞いています。

 ほかにも、子供たちに丁寧にかかわることで、不登校とかあってなかなかかかわりができないながらもかかわっていく中で、お父さんに首を絞められたというふうな虐待の事実をつかんだという養護教諭の仲間もおります。

 そういうふうに、やはり私たちは子供たち一人一人に向き合いながらかかわっていくことをしたいわけなんですけれども、先ほども申しましたように、なかなかそれが十分にできないというふうな状況があります。

 定数法というのがありまして、そちらの方で養護教諭の定数が定められています。大きな学校については養護教諭の複数配置がされているんですけれども、小学校では児童数が八百五十一人以上、中学校、高校では八百一人以上が複数配置というふうになっていますが、これではまだまだ不十分です。この基準を引き下げて、ぜひとも養護教諭の複数配置への拡充をしていただきたいというふうに思っています。

 また、この定数法で、三学級以上に養護教諭を配置するというふうになっておりますので、二学級以下の学校、小規模の学校には養護教諭を配置しなくてもいいというふうなことになってしまいます。どんな小さな学校にでも、やはり子供がいる限りは養護教諭は必要だと考えますし、ぜひともこちらの方も全校配置をして、すべての子供たちに養護教諭との出会いを保障していきたい。そして、やはりきめ細やかに子供たちの生活実態を把握して、支援をしていきたいというふうに思っています。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 子供を社会で育てるという大きな理想のためには、そこで、前線で頑張っている、今の養護教諭の配置の問題もそうですし、保育であれば保育士であったり、あるいは児童福祉司であったり、そういうマンパワーの拡充ということもやはりあわせてやっていくべきだということを改めて考えさせられました。ありがとうございました。

 次に、阿部参考人に伺いたいと思うんです。

 先ほど来紹介されている、阿部参考人が出されました「子どもの貧困」の中でも、子供の貧困ゼロ社会への十一のステップという形で提言をまとめられております。その中に、私が今質問をしてきたこととの関連で、やはり大事だなと思うことがあるんですけれども、四番目に「大人に対する所得保障」という言葉がございます。やはり理想は一人一人子供を育てるんだということなんだけれども、しかし、親の実態を改善しなければそこは引き上がっていかないだろうという大事な提言ではないかと思います。

 この点、少し詳しく御紹介いただければと思います。

阿部参考人 私がその本で紹介したのは、実はイギリスのチャイルド・ポバティー・アクション・グループという、非常に影響力の強い市民団体ですけれども、研究者やいろいろな方々から成っているものですが、そこが行ったイギリスにおける子供の貧困撲滅のための十のステップというものに一つつけ加えて、十一のステップとさせていただいたものです。御紹介いただきました大人への支援というのも、そのイギリスのもともとの十のステップの中に入っていたものです。

 イギリスのチャイルド・ポバティー・アクション・グループの考えとして、そして私の考えにも重なるところなんですけれども、子供重視、子供に直接届くとかいろいろ、もちろんそれは正論ではあるんですけれども、子供について、一番その人のケアを、一次的に見ているのは家庭であって、その家庭の親が、もう仕事でへろへろで、疲弊してしまってうつ状況になっていてというふうな状況で、自分自身も全く将来の展望も持てないというような状況の中で、子供だけが希望を持って明るく生きるというのは、やはりそれは無理なところがあるというところなんですね。

 なので、これは結局のところ労働する人たち全員になるかと思いますけれども、イギリスのCPAGの中では、これから子供を持つような人たちも対象に含めて、大人への支援というのをきちんとしていかなければいけない、大人が希望を失っているような社会では子供も希望を持てないであろうということだと思います。

 ですので、これは結局のところすべてではないかということになってしまうんですけれども、労働市場の中での底辺層で働く人たちの家庭それぞれをやはりサポートしていく、それらを改善していくというマインドを持たなければ、結局のところ子供の貧困は解消できないですよということを言っているんだと思います。

高橋(千)委員 どうもありがとうございました。

 また、今の問題に関連して、今度は古橋参考人に伺いたいと思うんです。

 先ほど、諸外国のいろいろな取り組みなどを御紹介いただきました。

 やはりスウェーデンの、例えば育児休暇の制度などに日本がどのように学ぶべきかということだと思うんです。日本も、育児・介護休業制度を大いに拡充してきたとは思うんですけれども、まだまだ諸外国にはおくれている。例えば、休業をとりなさいといっても、給付が非常に少ないわけですので、やはり、男性が一家の大黒柱で、休むととても経済的にも支えられないというような問題ですとか、あとは全体の底上げですとか、そういうことが課題としてあると思うんです。

 やはりそれは、男女平等に対する考え方ですとか、国がもっと子供と家族を支えるという思想の問題ですとか、そこに大きな違いがあるのではないかというふうに思っておりますけれども、少し御紹介いただければと思います。

古橋参考人 実は、日本の育児休業、男性労働者も取得できるというときに、ちょうど北欧三カ国を回ってまいりまして調査したとき以来、その取得の仕方、休暇のあり方とか、それから休暇中の所得保障というのがとても大事だというのがよくわかりました。

 育児休暇、さっき少し、両親休暇という言い方をわざわざいたしましたが、両親を対象としているということと、それから、スウェーデンの場合は両親に、両方に平等に担っていただく。出産は女性しかできないけれども、育児は男性も十分できるということ。それから、父親と接する、子供に接する、子供にとって父親と接する権利、それから父親にとって子育てをする権利、この両方を保障しようではないかということから始まっています。

 当初は、全日休暇制といって、日本の前の形だったんですが、ずっと続けて休暇をとらなければいけない。そうなりますと、どうしても一人でずっと子供と向き合っている。これは子育てした方がいつも悩むことですが、大人と会話がしたいという気持ちがとても大きくなるんですね。そこで、時間短縮型の休暇が取り入れられているということです。

 それからもう一つは、その時間短縮型も、今では八分の一、いわゆる一日の労働時間八時間のうちに一時間休む、二時間休む、それから三時間、四時間というふうに、それから六時間というのももちろんあるんですが、そういう形で自由に選べるということです。

 しかも、これはぜひ私、この場をかりてお願いしたいんですが、今、日本の場合ですと、全日休暇型のときは失業保険の方から所得保障されますけれども、時間単位でとったときというのは所得保障がないんですよね。

 スウェーデンの場合を見ていますと、例えば、一日二時間ずつ育児休暇をとったとした場合、四日間で一日分とカウントされます。そういう支給の仕方をしていますので、休暇と休暇中の所得保障がうまくマッチしている。ですから、共働きの場合は、片方が、お父さんの方が二時間、お母さんが二時間とすると、子供自体も保育所にいる時間が短くなる。送っていったりお迎えに行ったりする、時間が短くなるので、親と接する時間も長くなる、そういう効果が非常にあるということです。

 日本の場合、ちょっとまだ、一時五〇%になりましたけれども、やはりそれが一つネックではないかな。とりやすさということ、それから十分お父さんにもとっていただくということを考えますと、やはりそこの底上げをぜひしていただきたいと思っております。

 それで、先ほどちょっと言いましたが、お父さんの方が育児休暇をとったときに、非常に効果として、メリットとデメリットというのが実態調査をしたときに出てまいりました。

 北欧三カ国で、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーでしたけれども、共通して言えることは、復職後、仕事内容も待遇も同じであるという、復職を非常にきちっと保障していることと、父親としての父性に関する理解が非常に深まった。それから、自分の仕事内容が、多くの場合、人とのコミュニケーションを必要とすることなので、人間を深く理解するためには子育てが非常に不可欠であったということに気がついたということ。それから、夫婦の関係でいいますと、非常に夫婦の危機があったのが免れて離婚しなくて済んだとか、それから、子育てに関して、子供というのは自分の思いどおりにならないということで、愚痴を夫婦で言い合ってお互いに慰め合う、そういうコミュニケーションをとれるというプラスがありました。

 デメリットとしては、休暇中の所得保障が給与の八〇%だから何とか一〇〇%にしろという、非常にうらやましいデメリットでした。それから、職場復帰した後に労働能力が低下するのではないか、そういう不安。ですから、休暇中に職場との連携をぜひとっていただきたい。これは、日本で育児休業をとった親御さんたちから最もよく出ていた要望でした。

 ですから、今現在、時間短縮が日本も育児休業で認められていますが、もうちょっと幅広くしていただけたら、もっとお父さんもとりやすくなるんじゃないかなと思います。

高橋(千)委員 どうも本当にありがとうございました。

 時間が来ましたので、終わらせていただきます。

藤村委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょうは、六人の参考人の皆さん、貴重なお話をありがとうございました。

 顔ぶれを見ますと、この参考人質疑に立つ各会派の皆さんの顔ぶれの中で、私がただ一人、男性なんですね。こういうこともあるんだなと。子ども手当法案の審議ならではかもしれませんが、そういう意味で、ちょっとお尋ねをしたいんです。

 先日、日経新聞の「経済教室」に、慶応大学の赤林英夫先生という方の論文が載っておりました。「「家族の経済学」からみた子ども手当」ということでありまして、イギリスでは、子ども手当というか子供に対する現金給付に関して、父親から母親に支給金の支給先を変更した、そうしたら子供の被服にかける費用がふえたということが報告をされているというんですね。そういう意味では、父親の方にお金を支給するよりも、母親に直接渡るような形に支給をした方が子供に対して使われやすいんじゃないか、こういうことを日経新聞の「経済教室」で慶応の赤林先生がおっしゃられております。

 先ほど、バウチャーの話がありました。このバウチャー制度、私も基本的に賛成をするところであります。現金給付の名あて人を母親にするのは、極めて難しいように思います。一方で、バウチャーに関しては、券をつくって支給をするわけですから、その名あて人を母親にするということは技術的に可能なことのようにも思われます。そして、先ほど渥美先生がおっしゃられたように、バウチャーにすれば、渥美さんの御試算では十倍の効果がある、こんなことも言われているわけです。

 この子ども手当の支給について、バウチャーにいっそのこと切りかえて、なおかつ、名あて人を母親にする、こういう考え方があり得るのではないかというふうに思いますが、これについては古橋先生にお尋ねを申し上げたいと思います。

古橋参考人 大変おもしろい質問ですが、実は、支給の相手を父親から母親にかえたというのは、もともと、スウェーデンとかヨーロッパの場合は母親に行っています。それはなぜかといいますと、日本の場合は、男性は給料をほとんど奥さん、女性に渡してしまいますが、ヨーロッパの場合は、自分が稼いだものは自分のものだというのが強くて、そして、奥さん、いわゆる母親に渡すお金というのは非常に少ないんです。生活費しか渡さない。それから、もし共働きの場合でも、それぞれが得た給料の中から、それに比例した形で家計をプールするということがあります。なので、母親にかえたという意味は、日本とちょっと異なるかもしれません。

 日本の場合は、もともと家計をしっかりと女性が握っておりますのであれかなと思いますが、でも、やはり子供に関するさまざまな決済をするというのは、どうしても、いかんせん、どこの国も多くが母親である女性がかかわっておりますので、これは私、ばっちりいいんじゃないかと思っております。

柿澤委員 ばっちりいいんじゃないか、こういうお話でありましたけれども、現金給付ではなくバウチャーという選択をする、そういう選択をした場合、どうなのか。このバウチャー制度に対する御評価という点については、古橋先生あるいは阿部先生、いかがかと思います。お尋ねをさせていただければと思います。

古橋参考人 方式においても、バウチャー方式というのは、私もいろいろな意味でプラスの面が多いかと思います。ただ、先ほど渥美さんがおっしゃったように、やはり使途をきちっと明確にしないとその効果が難しいかなというのを感じております。

阿部参考人 私は、子供に関する手当をすべてバウチャー制度にすることには反対です。

 といいますのは、その子供、子供さんにおいて何が必要かという判断が、その親よりも政府の方がよくできると考えるのは間違っていると思います。

 もちろん、できない親御さんもいらっしゃるかと思います。そのような場合は、まさに児童福祉サービスの部門で、ペアレンティング教室みたいなものが諸外国で行われているところがあるんですけれども、そのような手だてで支援していくべきであって、原則として、例えば先ほどのお話でパンツがないお子さんがいらっしゃった、では、私たちはパンツに関するバウチャーをつくるんですかということなんですね。パンツに関するバウチャーをつくって、これに関するバウチャーをつくってということまでやるんですかと。

 それよりも、やはり現実的には、色のつかない現金給付にしておく方が家庭にとって非常に役立つというのが現実的なところかと思います。それができない御家庭については、これはサービスの方で御支援するべきだと思っております。

柿澤委員 それぞれの御見識を語っていただきました。

 バウチャーという言葉が何度も何度も、私も今質問で使わせていただいたにもかかわらず、バウチャー論者であるところの渥美参考人からまだお話を伺っておりませんので、うずうずしておられる部分もあるのではないかと思います。

 先ほど来までの議論を聞いておられて、母親に対する支給、そして今の阿部参考人の、バウチャーでは政府が使用目的をある種限定することになるので反対だ、こういう意見についてどう思われるか。

渥美参考人 先ほど阿部先生がおっしゃった、親よりも国の方が使途を明確にするという意味において賢い選択ができるというのは間違っているというのは、そもそもバウチャーの目的が、使途を明確にするというのは、子供のために本当に使われるように、親がそれを勝手に使わないようにという意味の方が大きいと私は思っていますから、国と親という議論はちょっと違うかなと思いました。

 もう一方で、子育て支援に関しては、このバウチャーも、その議論だけになっちゃうと、結局どうしても部分最適の話になってしまうかと思います。全体最適の話というのは絶対必要で、パンツさえ困っているような子供というのは、そもそも親御さんの養育権というものが、本当に親だけが抱え込む状況をもっと、今までも既に皆さん議論なさっている親権の話ですね、その部分を広げないと、本当に子供の幸せというのは考えられないですね。

 ですから、バウチャーが一〇〇%解決するなんて幻想は私は全く持っていなくて、ただ、今まで余りにも、少なくとも保育システムに関しては利用者視点が薄かった。それは、親の一人として本当に憤りさえ感じている。その部分を変えるきっかけとして、今まで供給者サイドが強過ぎた、そこの部分を変える。

 だから、私は、むしろ国の今までの供給者サイドに寄っていた施策を変える、そこを親の視点に立って変えていくという考えですので、国と親という意味でいえば、親の判断力というものにもう少し期待を持っていただく。性善説に立って、親がどういうサービスを選ぶのか。また、私なんかは、自分のためにバウチャーを使うんじゃなくて、ほかの子供たちに社会的に意義のある使われ方をしたいという、そこの投資の部分に意思表示できるような場をつくっていただきたい、そういうふうに思っています。

 以上です。

柿澤委員 渥美参考人の視点に、私も大変共感をいたします。大変有意義な議論が今展開できたのではないかなと思います。

 残された時間で、山中市長にお尋ね申し上げたいと思います。

 もとを正せば、去年の一月二十五日ですけれども、三重県松阪市長選挙に当選をされた。その直前に、自民党を離党した渡辺喜美議員が応援に入って、結果的に、松阪市長選挙は山中市長の当選につながったということで、そこから一つの勢いをいただいて、みんなの党は衆議院選挙で議席をいただいたというふうに思っておりますので、そういう意味では、こういう場で御議論させていただくことは大変ありがたいなというふうに思っているところでございます。

 先ほど、プレゼンテーションの中で、子ども手当満額支給となれば七十六億円、これは市税収入の七十七億円に匹敵をする、無税化ができちゃうんじゃないか、こういうお話でありました。こうしたことについて早くから山中市長は問題提起をされてきて、児童手当の地方負担分の部分について予算に計上しない、こうしたことをおっしゃったこともあると聞いております。結果的に、これは不公平になるということで、今回そうした対応はされておられないようでありますけれども、このような形で地方からさまざまな声が出ているというのは現実だと思います。

 例えば、神奈川県の松沢知事は、やはり児童手当というか子ども手当の県負担分について、約束をたがえて地方負担をいきなり押しつけてきた、おかしいじゃないかということで、一度ボイコットの姿勢をお見せになられました。これもやはり撤回をされましたけれども、しかし、その後、国の政策と自治行財政施策にかかわる検討会議というものを設けられて、国がこうした形で地方負担を押しつけてくるということが憲法に照らして問題があるのではないか、そして、その問題点について、子ども手当をケーススタディーにして検討していこうじゃないか、こういう県庁内の会議を立ち上げられて、今、都立大学の兼子仁先生が座長になって、会合が既に開かれているということであります。

 先ほど、再来年度以降の二万六千円を本当にやるのかということも、議論としておっしゃられておりました。そしてまた、水面下では全国の自治体の首長さんも、本当にこれでいいんだろうかと思っている人が多いということをおっしゃっておりました。

 そういう意味では、二万六千円の満額支給についてはまだまだ議論の余地が、期間としてはあるわけであります。平成二十二年度における一万三千円の支給については、まさに国会審議が今行われている状況ですから、なかなかこれから大きな声を上げてもというところはあると思いますけれども、先ほど社民党の阿部知子先生も、二万六千円の支給については、本当にそれが望ましいことなのかどうか、もう一度議論をしてみるべきなのではないかというような趣旨のお考えをお話しされていました。そういう意味では、与野党の垣根なく、再来年度以降の満額支給が本当に妥当な政策であるのかどうかということについては、今まさに国民的な議論が行われなければならないというふうに思います。

 そういう意味で、まさに地方の声として、山中市長が本当にきょうはかなり強い言葉でおっしゃられました。これから、地方の首長さんなどの横のつながりをつくって、例えば子ども手当を考える首長の集まりみたいなものを主導されて、そうした地方の声を上げていく、そうしたことが考え得るのではないかと思いますが、市長の御見解をお尋ねしたいと思います。

山中参考人 ありがとうございます。

 現在、東海市長会の方にも、子ども手当を二十三年度以降に関してゼロベースで見直してほしい、これに関してはしっかりとゼロから議論をすべきだという話を持ち出させていただいておりますし、昨年末におきましては、若手、青年市長会という部分におきまして、私自身が声をかけさせていただきましたら、三十五名の首長さんが同じ思いのもとで、民主党さんに対しては物を言っていかなくてはいけないと。

 この松阪市における七十六億円という規模においては、先ほどもお話をいただきましたように、本当に市税収入と、個人市民税と全く同額であるとともに、民主党さんが選挙前のばらまきだと否定された定額給付金においては、松阪市においては二十七億円と、たかだか二十七億円の、一回こっきりのものでした。大体三分の一ですね。

 これに関しても、松阪市としては、例えばバウチャー制度という形で、各自治体においてプレミア商品券などそういう形で、経済効果も考えたそういうリンクをさせる施策を、地方自治体と国とがリンクする形で行ったという経緯もございました。

 先ほどのバウチャー制度の話も、いいかどうかは別としても、本当にバウチャー制度としての経済効果を考えるというあり方、または、現物給付という中で、さまざまな福祉施策に対して、子育て施策に関して地方と国がどういう役割分担をしていくのか、そして、国として、NICUや救急医療体制などに関しての、子供さんの医療や命を守る体制に対してどう考えるのか。そういうことを本当に、この一年間、パッケージで考える中で、各首長さんとしっかりと連携をとる中で、今の地方自治体の現状の話をさせていただき、これは、マニフェストに書かれているからどうこうとか、政治家としての信念どうこうではなくて、自民党の方も民主党の方も、各政党の方々がしっかりと現場を見ていただいて、現状に対して今何が一番求められているのか、これをこの一年間議論をいただきたい、このように思っております。

柿澤委員 そのためには、やはり現場を知る地元の自治体の首長の声だと思うんです。しかも、これはワンイシューでぜひ声を上げていただきたいというふうに思います。市長会で話している、あるいは青年市長会、若手市長会でそうした賛同を募っているということではなくて、この子ども手当に関して、平成二十三年度からの制度設計について山中市長と志を同じゅうする首長を集めて国に対して詰め寄っていく、こうした姿勢がやはり必要なのではないかと思います。

 といいますのも、先ほど申し上げたように、児童手当の負担分について当初予算に計上しない姿勢を当初見せたこの山中市長の問題提起がやはり大きく波紋を及ぼして、そして、本当にこれでいいのかという議論が首長の間あるいは地方政府の間に広がってきたということがあると思うんです。その投じた一石をやはり具体的な成果にしていくためには、このワンイシューにこだわって首長の集まりをつくるということが大事なのではないかと思いますが、再度そのことをお尋ね申し上げたいと思います。

山中参考人 正直、私が、予算計上しない、またはこの子ども手当に関して問題提起をしたときに、多くの首長さんから秘書室に対してお礼の電話が来ました。ただ、私たちはなかなか同じようには声が上げられない、同じように思っているんだけれども、それを言ってしまうと住民の方々から批判が来る、私は選挙がさらに近い、そういうような声も、正直、数多く聞かれました。

 ただ、思っている問題意識は全く同じであって、この限られた、今本当に地方自体が財源が厳しくて、子ども手当分を除くと必ず緊縮財政でやっています。ただ、子ども手当分を乗せることによって、多くの自治体が拡大財政になってしまっている。この現実のもとで、本当に一円たりとも税金を無駄にしない、国税、地方税関係なしにして、今のままの本当に無責任で無計画な子ども手当のままでしたら、本当に子供の未来破壊手当であるのかなと私自身思わされる、本当に天下の愚策であると私自身は考えておりますので、これに関しては一年間しっかりと、子ども手当のあり方というよりは、そのお金の使い道、現場へのお金の使い道ということを改めて議論をいただきたいなと思っておりますし、首長さんは連携をお互いにとらせていただく中でしっかりと声を上げていきたい、このように思っております。国の方からもよろしくお願いします。

柿澤委員 時間も参りましたので、終わります。

 ありがとうございました。

藤村委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)

 次回は、明十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十一分散会


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