衆議院

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第5号 平成22年3月5日(金曜日)

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平成二十二年三月五日(金曜日)

    午前九時十六分開議

 出席委員

   委員長 川内 博史君

   理事 阿久津幸彦君 理事 小泉 俊明君

   理事 田中 康夫君 理事 橋本 清仁君

   理事 村井 宗明君 理事 岸田 文雄君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 竹内  譲君

      阿知波吉信君    石井  章君

      大山 昌宏君    加藤  学君

      勝又恒一郎君    金森  正君

      神山 洋介君    川島智太郎君

      川村秀三郎君   菊池長右ェ門君

      熊田 篤嗣君    黒岩 宇洋君

      小林 正枝君    高橋 英行君

      中川  治君    中島 正純君

      長安  豊君    早川久美子君

      馬淵 澄夫君    三日月大造君

      三村 和也君    向山 好一君

      山田 良司君    若井 康彦君

      赤澤 亮正君    小渕 優子君

      金子 一義君    金子 恭之君

      北村 茂男君    佐田玄一郎君

      徳田  毅君    野田 聖子君

      林  幹雄君    斉藤 鉄夫君

      穀田 恵二君    塩川 鉄也君

      中島 隆利君    柿澤 未途君

    …………………………………

   国土交通大臣       前原 誠司君

   内閣府副大臣       大島  敦君

   国土交通副大臣      馬淵 澄夫君

   国土交通大臣政務官    長安  豊君

   国土交通大臣政務官    三日月大造君

   国土交通委員会専門員   石澤 和範君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月五日

 辞任         補欠選任

  勝又恒一郎君     高橋 英行君

  川島智太郎君     大山 昌宏君

  畑  浩治君     山田 良司君

  谷田川 元君     金森  正君

  北村 茂男君     小渕 優子君

  穀田 恵二君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  大山 昌宏君     川島智太郎君

  金森  正君     谷田川 元君

  高橋 英行君     勝又恒一郎君

  山田 良司君     畑  浩治君

  小渕 優子君     北村 茂男君

  塩川 鉄也君     穀田 恵二君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 国土交通行政の基本施策に関する件(八ッ場ダム問題等)


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     ――――◇―――――

川内委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件、特に八ツ場ダム問題等について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子恭之君。

金子(恭)委員 おはようございます。自由民主党の金子恭之でございます。

 きょうは、全国的にも大変注目されており、また、今後の我が国の治水、防災の方向に非常に大きく影響を与える八ツ場ダムの集中審議、トップバッターということで大変ありがたく思っているところでございます。

 私は、御案内のとおり、東の八ツ場、西の川辺と言われるんでしょうか、川辺川ダムの地元から選出をされている議員でございます。川辺川ダムの本流であります球磨川の二十メーターぐらいのところに住んでおりまして、子供のころから、大雨が降るたびに、あの轟音ですね、いつ堤防が切れるかわからないような状況、避難をしたこともございます。そういうことがありまして、非常にやはりこの治水対策、防災対策というのは、私の政治生活の中においても中心に置いてやっているところでございます。

 きょうは、これから八ツ場の御地元の小渕先生、佐田先生が質問に立たれますので、私自身は、治水、防災、大きな基本的なところを、大臣もダムについては川辺にもしょっちゅう来ていただいたようでございますし、お互いに議論をさせていただければありがたいと思っております。

 我々国会議員あるいは国家というのは、国民の生命財産あるいは安全で安心な生活を守るというのが大きな責務の一つだというふうに考えております。ですから我々は、今、地球温暖化の影響もあるんでしょう、近年一時間に百ミリというのはざらにありますよね、ゲリラ的な豪雨がある。降らないときはからから、降るときは物すごく降ってしまうという意味で、私は、昔に比べて逆に今は治水、防災の面で大変厳しい対応が望まれているんだろうというふうに考えているところでございます。

 一たび自然災害、地震やあるいは台風、洪水等が起こりますと、大きな被害が出るわけですね。公共施設については公的な支援というのがありますけれども、国民個人においては、ひょっとしたら国家が、国がすべて補償してくれるんじゃないかというような、そういう思いの方も多分大勢おられると思うんですね。

 阪神・淡路の大震災以来、政府においても被災者の生活再建支援対策というのは充実をしていただいているところでございますが、今申し上げました自然災害、河川も含めた、あるいは洪水も含めたもので、一般の個人の方々の家とかそういう財産が破壊をされたり、流されたりしたときの支援というのはどういうものがあるのか、大変申しわけありません、大島副大臣、お答えいただきたいと思います。

大島副大臣 金子委員にお答えをいたします。

 一定規模以上の自然災害により生計維持者が死亡した場合には最大五百万円、その他の者が死亡した場合には最大二百五十万円の災害弔慰金を支給いたしております。

 もう一つ、先ほど委員からも御指摘がありました、一定規模以上の自然災害により住宅を失った場合、住宅の被害程度や再建方法等に応じ、最大三百万円の被災者生活再建支援金を支給いたしております。

 以上です。

金子(恭)委員 ありがとうございます。

 それでも、この支援制度でいくと、一たび災害が起きてしまったときに、個人への支援というのはほとんどわずかなものだというふうに思います。という意味では、その災害が起きないように、防災担当副大臣でございますので、しっかりやっていただきたいと思います。

 一つのデータとして、平成十七年のアメリカ・ニューオーリンズで起きましたハリケーンのカトリーナ、あれが来たときに、事前に予防措置をしておれば、防災対策をきっちりしていれば、堤防とかそういったものも含めて強化をしていれば二千二百億円で済んだものが、実際、十四兆円の災害が起きているわけですね。また、日本においても、平成十二年の東海豪雨、これも、まだ防災対策がうまくいっていなかったものだから、七百十六億あれば五千五百億の災害を防ぐことができた。

 ということを考えますと、今、残念ながらまだまだ、予防的な施設を強化しなければいけないということなんですが、できていないという状況の中で、ぜひ、今のことも踏まえて、起きてはもう遅いので、できるだけこれは起きないように努力をしていただきたいと思うんですが、そのことについて、大島副大臣の決意を表明していただきたいと思います。

大島副大臣 御質問いただきまして、まことにありがとうございます。

 前原大臣もつい先日までは防災担当の大臣でございまして、金子委員のそのお気持ちは十分に私たちも共有をさせていただいております。

 先生おっしゃるとおり、地震列島あるいは災害列島と言われている日本列島に私たちは暮らしておりまして、大きな自然災害が日本を見舞うときのために万全の備えをするのが政治の第一の役割だと私たちは考えております。これは金子先生と同じだと思います。

 御指摘のとおり、災害を未然に防ぐための事前対策は重要であり、例えば、住宅や学校、病院等の公共施設の耐震化など地震に強いまちづくり、そして、先般も津波がございました、津波、高潮に対する堤防の整備やハザードマップの整備などの対策を進めておりまして、御承知のとおり、地震、台風など、現実に発災した際には、政府の先頭に立って緊急的な応急対策や迅速な復旧復興に全力で取り組んでいるところでございます。

 最後に、防災は行政のさまざまな分野に横断的に関連する広がりを持ったテーマでございまして、関係各省連携して被害対策を進めてまいりたいと考えております。

 ありがとうございます。

金子(恭)委員 大島副大臣、どうぞもうお帰りいただいて結構でございます。

 今申し上げましたように、基本とするところは、災害を起こさない、これが第一なんだろうと思います。

 私、この前、前原大臣の所信表明を聞かせていただき、あるいは予算概要説明を聞きまして、ちょっとおかしいんじゃないかということを感じました。それは何でかというと、「治水事業については、できるだけダムに頼らない治水へ政策転換」と言われたんですね。

 私は、御案内のとおり、半年ぐらい前まではそちらに座らせていただいたわけでありますが、これまでもダム事業というのは検証しながらやってきたわけであります。ダムをつくるための事業ということで、ダムをつくりたいということではなくて、平成七年からこれまで、百十四の事業、ダムが中止されてきているのは御存じだと思います。特に平成十二年、自公の連立政権のときに、連立の合意の中できちんとこれをやっていこうということで、その年は四十七のダム事業を見直したということであります。そういうことからしても、私は、政策転換というようなことでなくて、これまでも、そこに幹部の方がおられますけれども、しっかりと頑張ってこられたんだろうと思います。

 私は、貴重な経験を昨年させていただきました。去年の三月に、第五回の世界水フォーラムに政府を代表して参加をさせていただきまして、閣僚級の国際会合、閣僚級の円卓会議の議長までやらせていただきました。

 話を聞いていますと、途上国の中には、うちは大きなダムをつくったとか、うちは堤防をつくったということを胸を張って言われるんですね。しかし、我が日本国は世界のトップリーダーだと私は思うんです。水系ごとに、ここはどういう治水対策がいいのか、堤防をした方がいいのか、掘削をした方がいいのか、遊水地をした方がいいのか、あるいはダムをつくった方がいいのか、そういうことをやりながら、あるいはダムをつくる場合は、濁った水をよけるために清水バイパスというのをつくったり、選択取水ということをつくったりして、これは本当に世界でもトップを走る、環境に優しい、そして治水対策もしっかりとやってきたのが我が日本であります。

 という意味では、大臣もいろいろ、今までの国土交通行政の中で官僚の皆さん方に対して不信があられるんだろうと思います。しかし、そのことを踏まえても、私はぜひ、政策転換というような言葉は私とすれば少し異議があるわけでございまして、そのことについてどうぞお願いします。

前原国務大臣 金子委員にお答えをいたします。

 国土交通副大臣として国土交通行政の推進に御尽力をいただいておりましたこと、心から敬意を表したいというふうに思いますし、また、昨年、川辺川ダムの見直しの会議を熊本県の人吉で行ったときに、わざわざ御出席をいただきましたことに御礼を申し上げたいと思います。

 今委員おっしゃったように、今までも、百十四のダム事業を中止するなど自公政権でもやってこられたというのはそのとおりだと思っております。

 それにまた、逆の言い方をするようでありますが、我々は別にダムがすべて悪いと言っているわけではございません。よくお話をするように、人口が減っていく、少子高齢化が進んでいく、GDPの一・七倍以上もの長期債務がある、そういった中で税金の使い方を見直していく、変えていくという中で、公共事業のあり方をすべて方向転換するというか、使い方を変えていくということが政権交代によって行われていることでございます。

 現在、堰堤の高さが十五メートル以上の既設ダムが二千八百九十以上あると思っております。これは、国とか県とかあるいは発電所管理者もすべて含めてですね。そうなると、今度、この維持もお金がかかってくるということになります。

 また、一たびダムをつくれば、砂がたまり、また砂が流れないために海岸の侵食なんかも起きるということで、水質の問題と同時にまた新たな公共事業というものをやらなきゃいけないということで、そういうトータルの観点からの公共事業の見直しをさせていただくということと同時に、先ほど委員がおっしゃった河川の基本方針、河川ごとの基本方針というのがありますけれども、基本方針に基づいて整備計画というのがなされているんですが、では、それを本当に突き詰めてやったときにどれだけのお金が一体かかるのかといったことも含めて、その考え方も含めて見直しをさせていただくということで、すべての百四十三のダムについての見直しをさせていただき、そして昨年末には、本体工事にかかっているか、かかっていないかを一つの判断材料として、進めるか凍結をするかということを決めさせていただいたわけでございます。

 今までの国土交通行政、河川行政をすべて否定するものでもありません。しかし、今の置かれている財政状況とか社会的変化の中でこの河川整備のあり方というものを根本的に見直す中で、水系ごとに河川の管理のあり方というものを考えていきたいと思っております。

 最後に、先ほど金子委員がおっしゃったように、ゲリラ豪雨というのがこれからふえてくると思います。ゲリラ豪雨というのはどこに降るかわからぬわけですよね。そういった場合に、上流にダムをつくるということも排除されない一つの選択肢だと思いますけれども、それよりは、どこで降るかわからないということであれば、やはり堤防の強化を含めて河川全体で、そういった新たな降り方にもどう対応していくかということも加味しながら河川整備を考えていくことがいいのではないか、そういう思いで申し上げているところでございます。

金子(恭)委員 しかし、我々も、ここに前金子大臣がおられるわけでありますが、長いことダム事業が時間がかかっているという中で、検証をしようということでダム事業プロセス検証タスクフォースというのをつくりまして、今の有識者会議とは多少違うんでしょうけれども、真剣にそのことも含めて議論を始めたところでございました。

 という意味では、我々も、政策転換というような大きな違いはないんだろうと私は思います。しかし、それを何か、いかにも我々だけがやっているみたいな、非常に誇張されると、我々もちょっといらっとする。ちょっと言い方はあれですが、その表現はやめてほしいなと。我々も一生懸命やってきたわけだから、そのことはぜひわかっていただきたいと思います。

 それから、質問をいろいろ考えていたんですが、今大臣が言われたので、触れることにさせていただきます。

 私も、一時期、事業を凍結する話があったわけでありますが、八ツ場ダムについては、予断をかけないでというような話ですけれども、実際は中止と言われているんでしょうけれども、一方、いろいろな談合問題等々で話題になっております胆沢ダム、この二つのダム、八ツ場には、副大臣のときに去年の六月、それから選挙後の十月に谷垣総裁と参りまして、十一月には国土交通部会で参りました。非常につぶさに現場の声も聞いてきたわけであります。胆沢にも行きました。確かに、あのダムについても、必要なダムだと私は思います。

 この二つを比べたときに、大臣はよくおわかりでしょうけれども、ダム事業というのは、すべてが終わって一つの完結になるわけですよ。八ツ場は今、総事業費でいくと進捗率が七割いっている、胆沢は六六%。ただダムに取っかかっているからというような話なわけでありますが、BバイCということでいくと、八ツ場は三・四、そして胆沢は一・七ということでありまして、私は、その線引きの仕方にどうも恣意的なものを感じるわけであります。私は、大臣は異論があるかもしれませんが、そのことはぜひ申し上げたいなと。胆沢のことはきょうは時間がないから言うつもりじゃありませんでしたけれども、今そういうことになりました。

 それから、マニフェストという意味で、八ツ場と我が地元の川辺と、二つが名指しをされたわけであります。民主党が政権をとったら、この二つのダムを中止するというふうに言われたわけであります。なぜか、小渕先生の選挙区にも私の選挙区にも、民主党の候補は出られなかった。これはなぜかはよくわかりませんけれども、何で八ツ場と川辺が名指しをされたのでしょうか、そのことをちょっとお答えいただきたいと思います。

前原国務大臣 我が党の候補者が立てられなかったのはお二人が強かったんだと思いますけれども、ダムの問題があるから我が党の候補者を立てなかったということではありません。

 それと、百四十三のダムすべてを検証する、見直すということであって、確かにマニフェストには八ツ場と川辺川ダムについての中止ということを申し上げたわけであります。重複は避けますが、先ほど、さまざまな条件の中から、金子前副大臣は政策変更とまでは言えないのではないかとおっしゃいますけれども、今の有識者会議では、河川整備の、哲学と言うと大げさかもしれませんが、基本的な考え方を見直していこうということなんです。ですから、前政権の河川整備の基本的な考え方を我々は見直していこう、今その作業をしているところでございます。

 その中にあって、長期間にわたって計画がされながら着手がされてこなかったこの二つのダムというものをその入り口として、中止ということを申し上げているわけでありますが、この国会が始まってから、私がこの立場についてから何度もお答えをしておりますけれども、中止という宣言はしておりますけれども、例えば特定多目的ダム法に基づく事業の中止は行っておりません。これは関係自治体との協議が必要でございますので、中止ということについては、あくまでも方針を我々は示しているということでございます。

金子(恭)委員 よく大臣が答弁されるときに、長い時間がかかっているから中止というような、極端に言えばそういうふうに聞こえるんですが、八ツ場については、昭和二十七年に調査着手をして五十七年、これだけがひとり歩きしているんです。川辺もそうであります。川辺川ダムも四十三年たつんですけれども、その間、何をやってきたかということなんですね。八ツ場はその間、水没地域の皆さん方の理解を得るために、丁寧に丁寧に理解を得るための努力をしてこられたんですね。それを強引な形でやってこなかった結果として、こうなってまいりました。川辺も同じであります。

 実際、八ツ場にしろ川辺にしろ、最終的な地元合意がとれてからは二十年弱ぐらいなんですね。そして、今ようやくその歯車が動き始めて、あと五年で完成をするというところまで来たんです。だから、ただ時間がかかったからというのは、それは非常に現地の皆さん方に対して失礼な話なんだろうと思います。

 私は、八ツ場のことは多分後から言われるんでしょうけれども、川辺については、五木村の水没者の方々は、我々はもう移転したくない、下流域の犠牲になりたくないということをさんざん言われていたんです。でも、下流域の人たちが、どうにか下流域のために我慢してくださいということで、何年も何年もかけて生活再建も含めてやってきたおかげで地元の合意がとれたんです。

 そうしたら、今まで何にも言わなかった人たちが、前に進み始めたら、どこかわかりませんよ、熊本以外の人たちが、川辺川のそばにも住んだことがないような人たちが来て、こんなきれいな川だからダムはつくらせてはいけないみたいな形で、合意をしてこれからだというときに今度また反対運動をしてきたという、非常に悲惨といいますか、我々からすれば怒り心頭ですね。では、最初からそういうふうに言ってくれよと言いたくなるわけであります。

 という意味では、この二つの事業は、長年かかってということでありますが、そういう歴史があるということをわかっていただきたいと思いますし、地元合意ができてからまだ二十年弱ですよ、今動き出しているんですよ、それをとめるというのはちょっと承服できない、私はそういう思いであります。

 もう一つ今の件について言わせていただくと、八ツ場が二百年に一度、川辺川ダムが八十年に一度の災害に耐え得るダムということでつくっているわけです。八ツ場については、五十七年です。二百年に一度という意味では、かかったけれども災害がなくてよかったなというふうに逆に思わなきゃいけない。八ツ場も川辺もです。下流域の人たちからすれば、長くかかったけれども、これから動き出すんだから、それが来たときはもう完全に大災害になるわけでありますから、そのことは、少し頭に血が上ってしまいましたが、そういう思いでいることはぜひわかっていただきたいと思います。

 それから、ダム事業については、やはり二つの合意というのが必要なんだろうと思います。さっき言いました、水没地の皆さん方の合意それから下流域の皆さん方の合意、この二つが調ってダム事業というのは進んでいくものだろうと思います。

 という意味では、八ツ場においては一都五県、治水、利水の恩恵をいただく関係の下流域、ここについては、一都五県すべての議会で議決をされ、そして、昭和六十一年の基本計画の告示、それから平成十三年、平成十六年、平成二十年、直近では平成二十年の変更の告示のときですら、一都五県の知事に河川管理者は意見を聞く。知事は、その前提として、都議会あるいは県議会の議決を経た後に変更するということになっているわけです。ということは、平成二十年です、二年前です、二年前に一都五県のすべての都県が承諾をしているわけです。やってくださいということになっているわけです。

 それから、水没地域については御案内のとおりでありますし、その後大臣も行っていただいていると思うわけであります。

 それともう一つ、八ツ場については、強力な推進力といいますか、よその地域にはないようなものがございました。それは、訴訟が起きているんですね。公金支出差しとめ等請求住民訴訟というのが、一都五県で起きているということは御案内のとおりだと思います。このダム事業に東京都あるいは埼玉県が公金をするのは違法であるというよな訴訟を出されたんですが、その六つの訴訟のうち四つが、実は一審はもう判決が出ました。すべて、都側、県側が勝訴をしているわけでございます。違法性がないということであります。

 下流域もオーケー、水没地もオーケー、そして法律的にも、まだこれは控訴されているわけでありますからそこまでは言えないかもしれませんが、少なくとも六つのうち四つ結審をして、その四つとも勝訴をしたということは、大きな推進力になっていくわけであります。

 それを踏まえても、大臣が、マニフェストに書いたから中止をすると言われています。前原大臣は熊本の方にはよくお越しいただいているようであります。菅大臣もそうです。鳩山代表もそうであります。しかし、八ツ場の方には大臣就任前は余り行かれていないというふうに聞いておるわけでございますが、就任して早々、現場も見ていないのに中止と言えるその根拠がどこにあるのか。今のことを言った限り、地域主権と言っているような民主党の代表の大臣がそういうことを言うというのはどうもおかしいんじゃないか。地域がすべてやってくださいと言っているのを大臣がとめるということは、私はあってはならないと思います。そのことについての御見解をお願いします。

前原国務大臣 まず、先ほど金子委員が、時間がかかったのは丁寧にやってきたからなんだという御主張をされました。それについて私は異論を挟むつもりはありません。地元合意をしっかりやってこられた結果として時間がかかったというのは、そういった面もあると思います。

 ただ、例えば、五十七年前にダムをつくろう、あるいは川辺ですと四十三年前ですけれども、社会状況はかなり変わっていると思うんですね。これは金子委員が一番御承知のとおり、もともと、金子委員ですから川辺の方をいいますと、発電とか農業用利水も含まれた多目的ダムでしたけれども、農業利水からは裁判も経て撤退をするとか、あるいは電源開発も撤退をするとか、やはり時間がたつとそういうさまざまな社会状況は変わるわけですね。

 そういう意味では、長い間かかってできていないものについて見直しをさせていただいている、さまざまな社会状況が変わって見直しをさせていただいているということを御理解いただきたいと思います。

 それから、一都五県からは進めてくれと言われているということでありますが、そのとおりであります。先ほど申し上げたように、政府としては中止の方針をお示ししておりますが、法律に基づいてのいわゆる中止の手続には入っておりません。これは、一都五県としっかり御相談をしながらやらせていただきたい、このように考えております。

 それから、訴訟についてでございますが、これも事実関係は委員がおっしゃったとおりでございますけれども、公金支出が違法とは言えない、こういう判決だったと思っておりまして、そういう意味においては、ダムをつくるのかどうなのかということについては、やはり政治、行政が判断をしていくものだろうと思っております。

 いずれも、今委員からもアドバイスをいただきましたけれども、最終的には、地域の御理解なくしては、我々が今中止の方向ということは言っておりますけれども、物事は進みませんので、しっかり、粘り強く、予断を持たずに検証結果に基づいて説明責任を果たしていきたい、このように考えております。

金子(恭)委員 時間が来てしまいまして、もっと言いたかったんですが、利水が電力が抜けたのは事実でありますが、基本は治水ですから、治水のためのダムをつくって、せっかくダムをつくるんだから農業用利水と発電が入ったということはぜひ御理解をいただきたいと思います。

 要は、予見されるような災害、八ツ場があれば防げたというようなものが起きたときに国家賠償責任みたいなことがやられたときに、大臣は責任をとれるんでしょうか。そのことだけは申し上げて、終わらせていただきたいと思います。

川内委員長 答弁を求めますか。

金子(恭)委員 では、済みません、お願いします。

前原国務大臣 では、簡単に。

 恐らく金子委員は大東水害訴訟の判決も踏まえておっしゃっているんだと思います。河川管理者というのは、自然条件、土地利用の状況、時間的、財政的な制約条件を加味してしっかりとやるということでありますので、今の置かれた状況の中でどうやったらしっかりと河川管理ができるか、その思いは一緒なんです。ただ、いろいろな制約要因がある中で、いわゆる基本的な考え方を見直しをさせていただいているということでございますので、御理解をいただきたいと思います。

金子(恭)委員 どうもありがとうございました。

川内委員長 金子恭之君の質疑を終了いたします。

 次に、小渕優子君。

小渕委員 おはようございます。自由民主党の小渕優子でございます。本日は、八ツ場ダムについて質問をさせていただきます。

 先ほどからお話がありますように、八ツ場ダムは群馬県の長野原町にあります。私の地元であります。きょうは、地元を代表いたしまして、地元の声を大臣にぜひとも御理解いただきたいという思いでこの場に立たせていただきました。貴重な時間をいただいたことを大変ありがたく思っておりますので、大臣からも明確な御回答をいただけますように、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 さて、昨年の九月に民主党政権が発足をいたしました。前原国土交通大臣が誕生いたしまして、九月十六日に、地元の声を聞かないまま、一方的に中止の宣言をされた。その後、ことしの一月二十四日、地元の皆さんと対話の集会を行っていただきましたけれども、それ以降、正直、地元との話し合いというものは進んでいないというふうに承知をしております。

 気がつきましたら、大臣が中止の宣言をされてから半年たとうとしているわけであります。簡単に半年と言ってしまいますと、我々、毎日生活していますと時間というものはすぐに過ぎてしまうのですけれども、この半年の間、住民の皆さん方がどんな思いを抱えて一日一日を過ごされていたのか、そのことをもう少し御理解いただきたいと思います。

 もちろん国土交通大臣には、八ツ場ダムのことだけでなくさまざまな課題がありますので、どうしてもなかなかそればかりに時間を費やせないという状況はよくわかるんですけれども、地元にしてみますと、正直、半年の間、中止という宣言がなされたまま、先も見えない、野ざらしにされているような、そんな印象さえ持つわけであります。

 これまで幾多の困難がありまして、八ツ場ダムについては私が生まれる前からの話でありますけれども、本当にいろいろな時代を経て今があります。そして、やっと平成二十七年に完成ができるというめどが立ってきたところでありまして、地元にしてみると、本当にこれまでいろいろなことはあったけれども、やっとめどが立ってきたね、私たちの地元も明るい未来というものが開けてくるのではないか、そんな大きな期待を持ちながら八ツ場ダムの完成というものを待ち望んでいたわけであります。

 そんな中、今回中止ということでありまして、今まで八ツ場ダム完成ありきでずっと生活、考え方も来たものですから、これが中止になるということは一体どういうことなのか。本当に先の見えない不安感の中で、長野原町また周辺の町の皆さん方は不安な思いで過ごしているわけであります。

 大臣は、この前来られたときに、ダムに頼らない治水を目指すんだ、そして、この地元において、ダムはつくらずに、もちろん生活再建に関してはしっかり進めていくんだというようなお話がありました。しかし、地元の皆さんにしてみると、ダムあっての生活再建なんです。ですから、ダムをつくらないということでの生活再建ということは、正直あり得ないわけでありまして、もしダムをつくらないのであれば、数十年前の、町からだれも出ていかずにしっかり町としての機能を果たしていたころの状態に戻していただきたい、どちらかしか考えられない、そのように言っているわけであります。

 大臣はこの前、一月二十四日に地元に足を運んでいただきまして、地域の方々とお話をしていただき、どんな思いがあるのか聞いていただいたかと思います。本当はふるさとを離れたくなかった、先祖代々の土地を手放したくなかった、しかし引っ越しをせざるを得なかった、そんな方々や、あるいは、代替地に引っ越すに当たって、先祖のお墓を掘り起こして移動させたという方々もおられます。

 みんな、いろいろな罪悪感というか、抱えながら生活をしてきまして、でも、ダムができるのだから、一都五県に対して大きな貢献ができるのだから、私たちの地元もダムとともに歩む地域として発展していこうという目的を持てるのだから、だからいいじゃないかというような思いで、いろいろな罪悪感、さまざまな感情というものをのみ込みながら今日まで来たわけであります。

 その歩みの中では、本当は起こしたくなかったけれども、町の中でいろいろな対立が起こって、隣の、近所の、本当は仲よくするような人たちとも対立をしたり、そんなさまざまなことがあったわけであります。そうした本当に長い歴史の中で、どんな思いで地域の方々が過ごしてきたかということをもっと御理解いただきたいというふうに思います。

 そんな中で、質問に移らせていただきますけれども、先日、群馬県選出の民主党の国会議員がある要望を出されました。それは、ごく一部の声を採用して、川原湯温泉街は現状のままでの生活再建を望んでいるので、その方向で検討してもらいたい、そういう旨の要望書を提出したというふうに聞いています。私は、これは本当に事実誤認も甚だしいのではないか、そのように思っています。

 今お話ししたように、川原湯温泉というのは、特に商売がかかっていることでありますので、本当にいろいろな思いの中でこれまで過ごしてきました。この要望書が提出されたというふうに聞いて、地元の旅館組合は大変怒り心頭、怒り心頭というか、不快感を通り越して、もう何もかも信じられない、どうしてこういう声が出るのかと。それを地元の声というふうに言っているんですけれども、では、地元の声というのであれば、どこからの声をこのような形で民主党の国会議員の方々は要望書として提出をされているのか、もう本当に信じられないというふうに言っています。

 多分、この前大臣が来られたときに、地元のいろいろな方々が要望ということでお立ちになってお話をされた中で、多分、旅館組合というか、川原湯温泉の代表者がお話をされたと思います。その中でも、もちろんダムをつくってほしいという声がすべての意見であるというふうに大臣もお聞きになっていただいたのではないかと思います。私も、当選以来ずっと、八ツ場ダム、川原湯温泉、長野原町とともに歩いてきました。いろいろな声を聞いてきました。私の先代もそのようにこの地域とつき合ってきたわけであります。

 にもかかわらず、どこからの声かわからないけれども、地域の声ということで、民主党の国会議員の方々がこういう要望書を提出される。これは本当に、不信感を通り越して、地元としたら、どうしていったらいいのかというような気持ちでいると思うんですけれども、大臣は、このことについて、またこの要望書についてどのような思いでおられるのか、お伺いしたいと思います。

前原国務大臣 小渕委員にお答えをいたします。

 まず、政権交代による政策変更があったとはいえ、地元の方々には塗炭の苦しみをおかけしているということについては、私は、九月の二十三日に伺ったときも、そしてこの間、一月の二十四日に伺ったときも、心からおわびを申し上げたわけであります。

 地元の方々に何の罪も瑕疵もありません。昔は、皆さん、むしろ旗を上げて反対をされていたという話も伺っておりますし、昔は中選挙区でありまして、総理経験者三名が選挙区でいらしたわけでありますけれども、いろいろな意見がまじりながら、最終的には苦渋の選択としてダムを受け入れられたという経過もお話を伺っております。そういう意味で、地元の皆さん方には本当に御迷惑をおかけしている、御心痛をおかけしているということについては、率直におわびを申し上げたいと思っております。

 その上で、今委員から、川原湯温泉についての要望書が民主党議員から提出されたというお尋ねでございますけれども、確かに、昨年十一月の十一日に群馬県選出の民主党国会議員六名が私のところに要望に来られまして、「川原湯温泉街は、原則として現在地での営業継続を前提に再建計画を策定すること。」という御要望はいただきました。

 ただ、もちろん、この六名の国会議員さんも地元の話をしっかり聞かれた上でこういう要望をされているんだと思いますけれども、現在、国土交通省といたしまして、水没予定地区の川原湯温泉を含む川原湯地域と川原畑地域に対して、住民の方々の移転に関する地元の御意向を把握するための調査、アンケートを行っているわけでございまして、その調査結果を踏まえて、住民の方々の御意向をできるだけ尊重する方向で対処していきたい、このように考えております。

小渕委員 大臣におかれましては、地元にお入りいただいたときにも率直に地域の皆さんにまずおわびをしていただいた、そのことについては大変ありがたいと思っておるんですけれども、私たちは大臣のおわびを聞きたいのではないんです。

 本当に、基本的なことなんですけれども、住民は、なぜ八ツ場ダムを中止しなければならないのか、その一番最初の原点のところを全く理解できずにいるんです。そこを説明なくしておわびだけいただいても、決して納得できることではありませんし、再検証というお話がありますけれども、中止ありきの再検証ということではなくて、ぜひとも中止、もう含めたのかもしれませんけれども、ゼロベースでの再検証というものを考えていただきたいというふうに思います。

 先ほどの質問に続けてちょっと申し上げたいんですけれども、この川原湯温泉、もちろんダムをつくったとするのであれば、一つの観光資源としてダムを生かしながら今後川原湯温泉の再建をしていく、そのように思っておりましたけれども、その要望書によると、川原湯温泉街は現状のままでの生活再建を望んでいるというようなお話がありました。

 実際、川原湯温泉を見ていただいたかと思うんですけれども、二十七年に新しくつくり直すつもりでいましたので、余り設備投資にお金をかけずに、本当にいろいろなところを取り繕いながら温泉を経営しているというような状況であります。また、消防法の防火扉とかスプリンクラーですとか、そうしたものは今猶予してもらっているという状況でありまして、私たちは、まさか同じところでもう一度、川原湯温泉を再建するんだという思いは全くないままでこれまで動いてきているわけです。ですから、もし川原湯をそのまま、現状維持しながら再建するということになると、財政面だけを考えても相当な、それこそ個々に負担が生じてくる、そのように思います。

 また、もう既に代替地に引っ越しをされた方々もおられます。代替地も見ていただきました。大変山の上に、断崖絶壁だったところを何とか平らにして、そこに今住んでおるわけであります。正直、もしダムで水が張られないのだとするのであれば、あんな山の上に住む人というのは余りいないんじゃないかと思うんですね。あそこの山の上に代替地ができたのは、もちろんダムができるものとして、あそこはレークサイドというような感じになって、かなり環境のいい中での生活が約束されているわけです。

 しかし、川原湯温泉は現状のまま、代替地に引っ越した方はそのままということになると、これはもう集落として全く機能していないような状況になるわけですし、川原湯温泉の再建のための財政面での負担というものもかなり大きいんですけれども、代替地、山の上でのインフラ整備というものも相当なものがかかるというふうに思うんです。

 大臣、実際、あの現場に行かれて、もし自分が当事者だとして、あの山の上に住んで、ダムはできません、下までえらい谷が広がっています、橋がえらい高いところに建っています、そういう状況の中で生活される方々のことを思って、どのように考えられますか。

前原国務大臣 率直に私は申しわけないと思います。政策変更によってそういう生活の前提が変わるわけですので、いわゆるダム湖を観光資源として、それが観光資源になるかどうかという検証はまた別の観点から必要だとは思っておりますけれども、そういう前提で代替地に移られた、あるいは移られようとされている方々がおられるという中で、それは率直に申しわけないと私は思っています。

 先ほど、金子委員が御質問をされました。私も五木村には何度も行きましたけれども、五木村はもう完全に両側に代替地ができて、そこに移転が、一人だけが今、下に住んでおられますけれども、全員がもう代替地に移転をされておられますので、そういう意味では、高いところに二つの集落があって、そしてその高い代替地をつなぐ橋というものをこれからつくっていくということになるわけであります。

 今、小渕委員がおっしゃったように、川原湯温泉の皆さん方の御意向というものを最大限尊重していきたいと思っております。ただ、まだダム中止を前提としたお話し合いには応じていただいておりませんので、そういったところまではいっていないのが現状でございますけれども、これから、可能であれば何度も足を運んで、そして川原湯温泉の方々のみならず、まだ移転をされていない方々を含めて、どういった生活再建をしていくべきなのかということをしっかりとお話を伺いながら、丁寧に進めていきたい、このように考えております。

小渕委員 一月二十四日に対話集会を持っていただきました。それ以降、このような対話集会を持たれておられますか。

前原国務大臣 まだ持てておりません。

小渕委員 それはなぜだと思われますか。

前原国務大臣 まだ、ダム前提の皆さん方、お気持ちにお変わりがないということで、ダム中止というものを前提とした生活再建には応じられないというのが多くの方々のお気持ちではないかと思います。

 ただ、ためにする議論ではありませんが、事実として小渕委員には申し上げますけれども、さまざまな方からお手紙をいただいております。また、直接お話もいただいております。それは、水没する地域の方々であったり、水没地ではないけれども、長野原とか、そういったまさに近傍にお住まいの方々からいろいろな御意見もいただいておりまして、私が御意見をいただく方々のほとんどは、ダムの中止というものを宣言してもらってよかったということをおっしゃる方もおられるということであります。

 ただ、これは多い少ないの問題でなくて、先ほど申し上げたように、いかに政権交代があったとはいえ、政策変更で多大な御迷惑を何の罪も瑕疵もない住民の皆さん方におかけしているということについては、率直におわびを申し上げながら、我々の考え方を理解していただき、ダムに頼らない生活再建というものの議論をしていただけるような状況になれば、真摯にお話し合いをさせていただきたいと考えております。

小渕委員 そのあたりにやはりちょっと認識の差があるのかなというふうに思うんです。

 もちろん、先ほど、大臣のところに八ツ場ダム中止を宣言していただいてよかったというような声があるということですけれども、大臣のところにはやはりそういう声の方が多く来るのだというふうに思います。

 一月二十四日の会を開催するに当たって前提となっているのが、大臣が昨年の国土交通委員会でおっしゃっていることで、議論のテーブルに着いてもらうために予断なく再検証するということをおっしゃいました。認識の違いというのはちょっとこのあたりにあるのではないかと思うんですけれども、私たち地元の人間は、予断なく再検証するということについて、中止を前提で話をするのではなくて、もちろん再検証していただくのは構いません、しかしその再検証の上で、いろいろなことをトータルして考えたときに、ダムを継続してやっていくというようなことを含めた上での検証であり、その上でテーブルに私たちは着いたんです。ですけれども、それ以降、大臣の御発言を見たり、あるいはことしに入ってからの予算委員会での大臣の発言を見ても、やはり中止を前提ということは変わっていない。

 先ほど、金子委員の御質問の中で大臣がお答えになったことで、法律に基づく手続には入っていないからということをおっしゃいました。そのあたりについても、ちょっと地元としてはなかなか理解をしがたいところなんだと思うんです。住民の声を聞いていただくに当たって、中止ありきで話を聞くといってもやはり前に進まないのは当然のことでありまして、あくまでもゼロベースでの再検証、そして意見聴取というものを行っていただきたいと思います。

 大臣、どのようにお考えでしょうか。

前原国務大臣 今委員がおっしゃったとおり、住民の方々に話し合いをしていただく前提として、中止の方向性には変わりはありませんけれども、他のダムと同様、予断なく再検証させていただくということをお約束しております。それはそのままとっていただいたら結構であります。

 法律に基づいて中止の手続に入っていないということは、大きく言えば二つ理由がございまして、一つは、この法律のたてつけそのものが、特定多目的ダム法が関係自治体とのいわゆる議論をしなければ中止はできないということになっているというたてつけの問題が一つ。

 もう一つは、我々は生活再建はしっかりしていこうと。仮に中止になったときにも、先ほど小渕委員がおっしゃったように、では、代替地に住まわれるのか、あるいは今のところにお住まいになるのか、そういったことを踏まえて、インフラ整備も仕方が変わってくるかもしれません。あるいは、生活再建についてどういうものが必要なのかということをこれからまた、仮にダムの中止というものを前提として議論していただいた場合については、地元からの御要望や我々の案を御提示する中で意見交換をしていこうとすれば、今のダムの、いわゆる特定多目的ダム法という法律がなければ、生活再建、今続けているものも継続できないということもございます。

 あくまでも中止の方針は打ち出しておりますけれども、予断なく再検証する。そして、一都五県、流域の方々との意見交換というのは緊密に行いながら御理解をいただく、そして、必要な生活再建はしっかりやっていく。その前提で、法律の中止はしていないということをぜひ御理解いただければありがたいと考えております。

小渕委員 先ほどもちょっと触れさせていただきましたけれども、地元といたしますと、なぜ八ツ場ダムが中止をされなければならないのか、その一番の原点のところについて全く理解ができないというような状況であります。

 先ほど金子委員から、胆沢ダムと八ツ場ダムを比べたときに、BバイCを比べてみても必要なダムではないかというようなお話がありましたけれども、地元ももちろんそうした知識を持っております。もちろん七割進んでおりますし、あとは本当にダムをつくればいいだけ。中止の中の条件として、ダム本体に着工していなかった、そこだけに八ツ場ダムはひっかかったわけであります。

 しかし、一都五県の賛同もあり、治水、利水の面からも必要とされたダムであると言われ、そして七割ができている。この状況においてなぜ今から中止をしなければならないのか。本当にその原点を理解していただく必要があると思うんですね。

 そういう中で、地元の声を聞いていただく中で、やはり中止ということを前提に置いた中での対話はできないという思いがあります。もちろん、しっかりと地元の声を聞いていただきたいと思いますし、なぜ八ツ場が中止なのかということをもっとしっかりとというか、どういうふうに言っていただくと納得できるのか、ちょっと私自身も納得しておりませんのであれですけれども、納得のいく御説明をいただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 次の質問に移りたいと思います。湖面一号橋の必要性についてであります。

 先ほど大臣から、地元の意向調査を実施しているというふうにお伺いいたしました。その結果は出ましたでしょうか。

前原国務大臣 今委員から御指摘がございましたように、私が河川局、現場の事務所に指示をいたしまして、湖面一号橋の今後の扱いを判断するための材料の一つとして、川原湯地区と川原畑地区にお住まいの方々の移転に関する意向調査をアンケート方式によって実施しております。

 その内容につきましては、湖面一号橋が川原湯代替地と川原畑代替地を結ぶ橋梁として計画されていることを踏まえて、移転後の生活に支障を与えることは望ましくないとの観点から、現時点で両代替地への移転意向をお持ちの方がどの程度おられるかということを調べているものであります。

 現在、アンケートの回収がほぼ終わっている状況であって、今後、内容を十分に吟味していきたいと思っておりまして、まとめた結果についてはこの国土交通委員会にもしっかりと御提示をさせていただきたいと考えております。

小渕委員 ただいま大臣から、その結果を公表していただけるというようなお話がありました。具体的にどのくらいのときに公表していただけるんでしょうか。

前原国務大臣 精査ができ次第、公表させていただきます。

小渕委員 先ほども申し上げましたように、一日一日延びることがどれほど地元に対しての負担が大きいかということを説明させていただきました。できるだけ早く調査結果を出していただいて、公表をいただきたいと思います。

 また、この結果はどのように行政に反映させるおつもりでしょうか。

前原国務大臣 予算の計上をしております。先ほど申し上げたように、本体工事の中止の方針は示しておりますけれども、有識者会議の物差し、基準というものがまだできていないわけでありますし、予断なく再検証をさせていただくダムに含めておりますので、その結果というものも踏まえた対応になろうかと思います。

 本体工事には着工しませんが、今進んでいる生活関連事業について、必要なものはこれからも進めていくということでございまして、湖面一号橋も、そのアンケート結果を踏まえて、どのようにするかという判断をさせていただきたいと考えております。

小渕委員 どうも、こうした意向調査というものを行っていただくというのがジェスチャーのように見えて仕方がないんですね。というのは、やはり地元にとってみると、絶対にこれは中止していただきたくない事業でありますし、県としても、これは発注をもうしております。話がどうしても湖面一号橋については平行線だと私は思うんですね。私たち地元としては、ダムができる前提でこの橋は欲しいと思いますし、大臣の方からしてみると、ダムができないのであればこの一号橋は要らないのではないかというような話になるわけであります。

 できるだけ早くこの意向調査を出していただきまして、しっかりと行政として政策に生かしていただきたいと思いますし、ぜひともジェスチャーに終わらないようにお願いしたいと思います。

前原国務大臣 ジェスチャーでやっているつもりはありません。

 それから、繰り返しで恐縮でありますが、小渕議員のところに届く声というのは推進派の方々からの声が届きますし、私の耳に届いてくるのは湖面一号橋は要らないという声がやはり届くんですよね。

 ただ、それは全体としてどういう、少数なのかマジョリティーなのかといったことをちゃんと客観的に分析いたしますし、六十世帯のアンケート調査でありますので、それほど時間はかけずに公表させていただきたいと考えております。

小渕委員 それであるのであれば、どちらの側の意見も聞けるような、開かれた、私たちが納得をして出席できるような対話集会というものが開けるように、大臣も御努力をお願いしたいと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 ダムに頼らない治水ということを大臣は常日ごろおっしゃっておられます。治水の面では、代替案といたしまして、緑のダムであるとか堤防をかさ上げするとか、そういったことをお話しになっておるんですけれども、利水面ではどのようなことをお考えいただいているのでしょうか。

 というのも、先ほどもお話が出ていましたけれども、一都五県、水が必要だと言っている方々にとっては、これまで負担金も出していただきながらダム建設というものを進めてきたわけであります。決して、ほかのところから反対が出ているというようなダムではなくて、下流都県はみんなどこも水が欲しいということを言っているわけであります。

 国土交通省のデータによりますと、首都圏の主な渇水ということで、これは、昭和四十七年から平成十三年までの統計をとっているものがあるんですけれども、大体日数にして、少なくても一週間、多いと六十日ほど取水制限をしているというようなデータもあるわけであります。

 今、社会の状況が変わって、人口も少なくなってきて、水を必要としなくなったというお話もあるんですけれども、でも一方で、一都五県、水を使う方の皆さん方にとってはやはり水が欲しいということで、負担金も提供してきていただいているわけであります。実際、このような渇水状況というようなデータもあるわけであります。

 利水について、大臣、どのようにお考えになっていますでしょうか。

前原国務大臣 今開いております有識者会議におきましては、治水のみならず利水についても議論をしていただいているところでございます。今委員がおっしゃったように、一都五県含めて、下流域からは御要望もいただいているわけでございますけれども、どういった代替案があり得るのかということについて、その基準となる考え方について今御議論をいただいているところでございます。

 そうなると、最終的には、フルプランというものを見直すのか見直さないのかというところまでいくと思いますので、そういった根本にかかわる、先ほど金子委員は政策転換とは言えないとおっしゃいましたが、我々としては、今の財政状況やあるいは今の日本の置かれた制約状況を加味して、根本的な治水、利水のいわゆる基準軸を見直していこうということでございますので、そういった軸ができたときに、しっかりとお示しをしていきたいと考えております。

小渕委員 時間が参りましたので以上とさせていただきますが、引き続き、この八ツ場ダムにつきましてはしっかり議論させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

川内委員長 小渕優子君の質疑を終了いたします。

 次に、佐田玄一郎君。

佐田委員 それでは、十一月に引き続きまして質問をさせていただきたいと思います。

 今大臣の方から、我々、非常に要望が、中止の撤回をやってくれという話が相当うちの方にも来ておりますけれども、それは、あくまでもやはり地元の方々が中心となって、吾妻地区というんですけれども、吾妻地区の皆さん方が中心になって我々に陳情をいただいております。電話もいただいております。

 そしてまた、大臣も御案内のとおり、五万以上の陳情書をいただいている。それは御存じですよね。

前原国務大臣 萩原委員長初め、地元の方が直接五万以上の署名を持ってこられまして、持ってこられた署名、いろいろな署名を持ってこられておりますが、唯一大臣室に置いてある署名はそれ、五万以上の署名は大臣室に置いてございます。

佐田委員 ぜひ、そういう情熱を大臣もよく御理解いただいて、そして大臣もしっかりとした対話を持っていただきたい、私はそういうふうに個人的には思っております。

 また、私は大臣に御指摘申し上げたいのは、どうも大臣の言動が変わりつつあるんじゃないかなというような気もするんですよ。

 九月十七日に、大臣に就任されたときに、一度も視察もされておらない、そしてまた代替案も全く持っていないにもかかわらず、中止の決定をした。それはマニフェストに書いてあるから決定をしたんですよ、こう言われました。その後に、十一月に私が質問をしたときには、これは国会でしっかり審議していきます、こう言われておりました。そしてまた、ほかの委員の皆さん方の意見に答えて大臣は、私が言ったことが間違っていたら間違っていると言ってください、中止の方針は出しております、中止の手続はしておりません、これから予断を持たずに再検証していくんだ、こう言われました。

 私は、この言葉は非常に矛盾していて、日本語になっていないと思うんですよ。中止の方針で、自分の中で中止を決定していますと、大臣として心の中では。決定をしているのにもかかわらず、予断を持たずに今再検証する、そして有識者会議もつくったと。こういう考え方の違いというのはどう思われていますか、大臣。

前原国務大臣 考え方は全く変わっておりません。

 どういうことかと申し上げますと、これは後で委員が御質問されるかもしれませんが、特定多目的ダム法に基づいて言えば、一都五県の知事との協議を経なければ、法律として中止はできないわけでありまして、いかに国土交通大臣といえども、中止だと言って中止になるわけではないということであります。そういう意味では、中止の方針ということは、私が中止と言っても、法律を最後に変更して基本計画が廃止をされなければ中止にならないということを申し上げているわけであって、中止の方針という考え方は一貫して申し上げているところでございます。

 それと、予断を持たずに再検証するということを申し上げましたのは、先ほど小渕委員からもお話がございましたように、そう思われていないかもしれませんが、我々一番気に病んでおりますのは、やはり地元の方々なんです。地元の方々に何の罪もございませんし、また苦渋の選択でダムを受け入れていただいて、ダム湖を前提とした生活再建というものを考えておられていたにもかかわらず、それができないということになった場合に、どういう生活設計を今後していかれるのか、またそれをどう我々としてはバックアップをしていくのか。

 ずっと対話ができない状況でありましたので、対話をしていただく一つのきっかけとして、予断を持たずに再検証するということの中でテーブルに着いていただく。テーブルに着く条件は白紙撤回だということをずっとおっしゃられておりましたので、白紙撤回を我々としてはするわけにはいかないけれども、予断を持たずに再検証するということで、この間対話のテーブルにのっていただいた、こういうことでございまして、我々の考え方が変わったわけではございません。

佐田委員 今のお話がありましたけれども、後でまた質問させていただきます。

 予断を持たずに再検証するから、この間の一月二十四日の住民対話を、そして地元の方々がそれに応じたということでは私はないと思っております。やはり、生活再建について大臣が真剣に考えていただく、そしてそういう中において再検証するということに対して、要するに、大臣はまさに予断を持たずということで、白紙撤回ということではないですけれども、そういう傾向、そういう中において大臣の意見を聞いてみよう、こういうふうにいったのではないか、私はそういうふうに思っております。

 そして、そういう中において、大臣今言われましたけれども、予断を持たずにというふうな話がありましたけれども、これはぜひ、大臣、やめていただいた方がいいと思うんですね、予断を持たずにというのは。大臣は、あくまでも大臣として、もう八ツ場ダムは中止の方向、そういうふうな気持ちを持っているわけですから、私はそういうふうに持っているんだということをはっきりと前面に出して言うべきだと思いますよ。どうですか。

前原国務大臣 繰り返しになって恐縮でございますが、我々としては、住民の方々はあくまでも白紙撤回でなければ議論に臨まないということをおっしゃり、しかし、今まで御苦労されて、そしてその前提条件が崩れて、先ほど小渕委員から、一日一日本当にどのような心境で生活をされているのかということを考えれば、やはり早く対話をさせていただき、生活再建の議論もさせていただければという思いを、これは本音で強く持っているところでございます。

 そういうお気持ちになっていただければという思いの中で、川辺と八ツ場については、再検証はしないということでおりましたけれども、再検証のテーブルにのせさせていただく中で、ぜひ議論をさせていただきたいということを申し上げているわけでございます。

佐田委員 つまり、再検証するということに対して、住民の方々はやはり一縷の望みを感じたわけですよ。完全中止だというふうに言っておったのが再検証の中に入れると言われたことは、じゃ、これはもしかしたら中止の撤回もあり得るんじゃないか、そういう希望を持って住民の方は行ったにもかかわらず、今もお話ありましたように、二十四日に大臣は、住民と、そういう再検証するという前提のもとに対話に臨まれたわけですよね。

 その中で、大臣は、困惑と怒り、迷惑、不安を抱かせているのはすべて政治の責任、まず心からおわびを申し上げますと。これはどういう意味ですか、こういうふうに述べたと書いてあるんですけれども。

前原国務大臣 昭和二十七年の事業計画以来、地元の皆さん方は、当初皆さん方が反対をされていたわけでございますけれども、しかし、下流域の治水、利水のことを考えて、苦渋の選択としてダム建設を受け入れられた。しかし、政権交代によって、その苦渋の選択を受け入れられたダム建設というものが中止という方向性が示されたということで、私は、繰り返し申し上げていることでありますけれども、地元の皆さん方に何の罪もないし瑕疵もない、御苦労、御心痛をおかけしていることについて率直におわびを申し上げたということで、その言葉を理解していただければありがたいと考えております。

佐田委員 一つの歴史の中で、五十七年間、大変に地元の方は苦労してきた。私は、その苦労を思ったときに、同じ群馬県人として、しっかりとそれは大臣に申し上げていきたいと思っているんですよ。

 この基本になる基本計画のときには、前にも他の委員から質問がありましたけれども、大臣もさきがけにおって、自社さの時代でありましたから、その責任はあるわけですよ。そういう意味のおわびというのもあるんですか、これは。

前原国務大臣 これは、九月二十三日に現地に初めて行きましたときに、そういった御指摘がございまして、それについては率直に認めた上で、そのことについておわびを申し上げ、そして、今どうして方向転換、方向転換というのは、できるだけダムに頼らない治水をということに我が党の考え方として至ったのかということについても御説明をさせていただきました。

佐田委員 それで、その対話の中で大臣が、ダムのない生活再建、これについて考えているということを述べられて、地元の方々は非常に失望したということを聞いております。

 五地区の連合の対策委員長は、中止方針を受け入れたわけではない、ダム湖前提に代替地での生活再建を望んでいる、こういうふうに言っておったそうであります。

 また、これは新聞の紙面でありますけれども、「続いて水没五地区の代表や町議ら十二人が、長年の反対闘争を経て「苦渋の決断」としてダム計画を受け入れ、ダム湖を前提に生活再建を考えてきた地元の歴史を説明。「ダムが中止になれば水泡に帰す」「もう苦しめないでほしい。一刻も早くダムを完成させてほしい」」こういう切実な声があったというふうにお聞きしております。

 大臣はこれをお聞きになったと思いますけれども、どうお考えになりましたか。

前原国務大臣 今委員がおっしゃったとおりでございまして、十二名か十三名から意見陳述がございまして、涙ながらにお訴えをされる方々もおられました。特に、これは委員ですか、去年のこの委員会で御指摘をされました。つまりは、先祖代々のお墓を代替地に移転しなくてはいけない苦労がわかるかという御指摘を、委員だったと思いますけれどもされて、同様のことをおっしゃった方がおられました。しかも、反対をしながら亡くなられた方、あるいは反対をしながら苦渋の選択としてダムを受け入れると言って亡くなられた方々、そういった方々を含めて、どうやって先祖に顔向けをしたらいいんだというようなお話をされましたことについては、極めて胸の締めつけられる思いでございました。

 こういった皆さん方の思い、意見陳述については、率直に申しわけないという思いでございましたけれども、先ほど小渕委員は原点がわからないということをおっしゃいましたが、十数分間にわたって、なぜダムに頼らない治水に変えていくのかというバックグラウンドをお話ししました。もちろん理解や納得はされていないと思いますけれども、私なりにはそういった思いをお伝えしながら御説明をしたところでございまして、これからも誠心誠意お話し合いを継続させていただければ、このように思っております。

佐田委員 つまり、大臣、再検証するということで、地元の方は一縷の望みを持って大臣と対話に臨んだわけですよ。それまでは、要するにダム中止ありきで、対話しないと言っていたわけです。そういう対話の中で、大臣が言われた、ダム湖なしの、ダムなしの生活再建をやるんだということに対して、大変な失望をしたということを私は聞いております。

 そして、今お墓の話もありましたけれども、もうもとに戻れないんですよ、大臣。先ほど小渕先生の方からもありましたけれども、本当に切実な思いで、地元の方々は苦しんでいる。そして、不承不承ではありますけれども、大臣が来られる、その中で対話をさせていただいたわけです。その中で、大臣は結局中止の方針は変わらないような話をされたということに対して、大変がっかりしておった。

 なおかつ、今お話がありましたように、生活再建の中で、生活再建は必ずやりますよと今まで言っていたにもかかわらず、いや、必要のないものについては生活再建もできないかもしれませんねというふうな発言があったというふうに聞いておるんですけれども、これはそうなんですか。

前原国務大臣 私は三つのことを申し上げたんです。

 一つは、とにかくおわびをしたいということと、なぜ見直すに至ったかという理由を御説明したいということと、もう一つは、言葉のあやなのかもしれませんが、お許しをいただければ、ダムを前提としない生活再建について議論させていただきたいということで、前提条件をつけてお話し合いをし、当然ながら、意見陳述をされた方は、ダムが前提だということで、その前提には乗れないというお話をされたことは事実でございます。

 また、委員にはお話をさせていただきたいことが一つだけあるのは、多い少ないとか、そういう数の多い少ないを議論するつもりはありませんが、対話集会をした後に何人かの方から手紙やあるいは御意見をいただきましたのは、自分はあの集会に参加をした、自分はダムについては反対だ、しかし、あの会の仕切りとして、要は、もう発言する人が決まっていて、自分の意見を言うことはできなかったという方もおられるということは、多い少ないではありませんが、ぜひ事実として委員にはお伝えをしておきたいと思います。

 そして、やらないものもあるかどうかということについては、それはそのとおりのことを申し上げております。しかし、生活再建をやっていく、そして、先ほど小渕委員にもお答えをいたしましたように、代替地に移られるのか移られないのかということで、本当に必要になってくるかどうかということが変わってくる事業もございます。

 客観的に見て必要のない事業を、今のダムを前提として生活関連でもあるから続けるというよりは、もし本当にダムがない生活という前提で考えたときに、この事業は必要ないんじゃないかという事業についてはやらなくて、その分、他に、生活関連に回せる方が私はより地元の皆さん方のプラスになるという思いから、別にけちって削るという思いではなくて、本当に必要なところにお金をかけるという意味で申し上げているわけでありまして、だからこそ湖面一号橋についても意向調査を今させていただいているということでございます。

佐田委員 今大臣が理解をいただくように努力をしていきたいと言われましたけれども、私は、今もう繰り返しませんけれども、地元の住民の皆さん方の思いを考えたときに、では、ダム湖はなくてもいいですよというふうにはならないと思いますよ。そういうことになった場合に、この間の一月二十四日の会合というのは重要だったんですよ。それを大臣は完全に壊してしまっているということなんですよ。

 なぜかというと、住民の人たちがこれをやる前提というのは二つあるんですよ。一つは、再検証ということで一縷の望みができたということですよね、今申し上げましたように。それと、やはり生活再建を必ず全部やってくれると。こういう条件二つがあって、この中で住民は、大臣が来られるんだから、では話をしてみようじゃないかと。行ったら、全部否定されたわけですよ。これは、住民の方々は完全に裏切られたと思っていますけれども、大臣はどう思いますか。

前原国務大臣 繰り返しになって恐縮でありますが、住民の方々という中にもいろいろな御意見があるわけです。佐田先生のところに届く意見と私どもに届く意見というのは、さっき小渕委員にもお答えしましたけれども、真逆な意見が届くわけであります。

 例えば、水没地域になる方々でも、湖面一号橋は要らない、もし湖面一号橋をつくるお金があれば、ほかのことに、より生活再建、本当にしっかりするように回してくれという御意見もあるわけでございまして、別に、つくるかつくらないかはこれからの判断でございますけれども、いろいろな御意見の中で我々は判断をさせていただきたいというふうに思っております。

 したがって、そういう意味においては、生活再建をするという言葉にうそはない、それだけはお伝えをしておきたいと思います。

佐田委員 大臣、お気づきでしょうけれども、そういう中においてこれからまた対話を開きたいといっても、これはなかなか難しいと思いますよ、はっきり言って。大臣は、これから将来に向けて対話をして御理解をいただきたい、その繰り返しですよ、はっきり言って。あともう一つは、予断なくこれからも考えていきたいと言っている。みんな矛盾して、大臣は本当に心にそういうことがあるのかなというふうに疑いたくなるような、そういう気もするわけであります。

 では、もう一つだけちょっとお聞きしたいのは、大臣が考えているダム湖がない生活再建というのは、どういうイメージで考えておられますか。

前原国務大臣 これは、この間、人吉で金子委員にも御出席いただいて対話集会をやりましたけれども、地域地域で、生活再建案というのはやはり一義的には地元がお考えになるものだと思っています。国がここはこういうものがいいんじゃないかということを押しつけるものではないと私は思っております。

 したがって、時間をかけ過ぎるのは、本当に皆さん方の生活を考えた場合、じくじたるものがありますけれども、しかし、しっかりと御説明をし、そして納得いただければ、地元からこういう生活再建をしたいということ、あるいは、何か地元から逆に国に、いろいろと知恵を出してくれ、こういう御要望がありましたら考えさせていただく。そういうスタンスで、これから川辺にしても五木村にしても長野原にしても臨ませていただきたいと考えております。

佐田委員 財政面の問題もありますから、どこまでできるかということはありますけれども、大臣の今のイメージですと、地元の方から上げてもらったことを考えていきたい、こういうふうに言われていますけれども、地元の方としては、これは完全にダム湖が必要だ、それを前提でやっているんだからと。いつまでたっても平行線なんですよ、大臣。

 そして、私はある人に、ではダム湖なしの生活再建というのはどうなんですかと聞いたら、大臣もいろいろな御意見を聞いているかもしれませんけれども、もとに全部戻してくれと言っている人もいるんですよ。もう百四十五号もJRも全部上へ上がって、そしてまた、今も言ったように、お墓も全部移して、そして生活の拠点が、今、小渕議員が言われたように、もう絶壁の横のところでやっておる。要するに、そういう方々に、そういう状況の中で、では、中止であるならばもう全部もとに、昔のままのふるさとに戻してくれというふうな意見もあるんですよ。かなり多い数字でありますよ。大臣、これについてどう思いますか。

前原国務大臣 ダム建設の本体工事を中止するということで御理解をいただいた前提で、そういう御要望があれば、それも一つの考えとして検討させていただきたいと考えております。

佐田委員 だから、大臣、自分が確固たる意思で中止の方針だというふうに思うぐらいであるならば、そして生活再建をきちっとやりますと言うんだったら、大臣が本当に、地元の方々の意見をこの間聞いたわけですから、そういう中において、イメージ、では、地元の方々にどういうことをすれば御理解いただけるかな、生活再建ができるかな、そういうことをしっかりと考えていただきたいんですけれども、そのイメージをちょっとお聞かせ願いたい。

前原国務大臣 今、確固としたイメージを持っているわけではありませんが、地元の佐田委員や小渕委員が、仮に、そういうことを考えてもいいぞということで、国がそういう案を出すことも、地元の皆さん方が本当に今、ダムでなきゃ絶対だめだとおっしゃっている方々も含めて、そういう御意見をいただくのであれば、それは私としては真剣にそういった案を考えさせていただきたいと思います。

佐田委員 それと、有識者会議をつくられて再検証されているということなんでありますけれども、既に審議会があるからこれはおかしいんじゃないかというふうなことを前、脇先生も質問されておりましたけれども、まさにそういうことであって、この間、私が質問をさせていただきましたけれども、代替地に移るかどうかということで大変に御苦労している地元の方々がいらっしゃるわけですよ。もう一日も待てないと。しかしながら、あの断崖絶壁の上で住めるのかどうか、こういう不安もあるわけですね、はっきり言って。

 そういう中において、ことしの夏までに要するに再検証の基準をつくりましょう、その後にまた一つ一つ検証していきましょうと。どのぐらいの時間を考えておられるんですか、大臣は。

前原国務大臣 基準づくりを夏までに行っていただくということになれば、それぞれの水系ごとの個別のいわゆるヒアリングとかもやっていかなくてはいけませんので、川辺は今、流域の自治体の皆さん方にも御協力をいただいて御議論いただき、ことしには一定の方向性は出るのではないかと期待はしておりますけれども、他の河川については、ことし基準をつくっていただいても、それを当てはめてそれぞれの水系で議論するということになれば、それなりの時間がかかるのではないかと思っております。

佐田委員 大臣に申し上げたいのは、もう本当に時間がないんですよ。ことしの夏、そしてまたそれからその基準にのっとって議論をしていくということになったら、先の先に行くわけですね。そういう形で、そういうことに対する不安というのは物すごく大きいんですよ。ぜひ、そういうところを大臣も御理解いただきたい。

 そして、先延ばしというふうに言われないようにしてくださいね。はっきり言ってこれは完全な先延ばしですよ、私に言わせれば。最初は、中止ですよ。そして次は、手続はしていませんから、これは国会で議論していきますよ。そして今度はまた、有識者会議で基準をつくりますよ。どんどん延びているんですよ、大臣。大臣は、そうじゃない、私は信念は一本だと言われても、周りから見ていると、ずっと先延ばしなんですよ、単なる。そういうことの印象が非常に深いということを申し上げます。これは結構です。

 もう時間がなくなってまいりましたので、一つ次の質問につながる質問をさせていただきたいんですけれども、大臣はふだんから、ダムのない治水、これを考えていきたいというふうに言っていますよね。それは一体どういうことなんですか、ダムのない治水というのは。

前原国務大臣 ダムのないではなくて、できるだけダムに頼らない治水ということであります。

 すべてのダムが悪いと申し上げているわけではありません。先ほど金子委員にもお答えをしましたけれども、堰堤の高さが十五メートル以上の規模のダムは、もう既に二千八百九十以上もつくられております。そして、前政権からもダムの更新、再開発というものをやられているものもたくさん出てきておりまして、砂もたまっているし、老朽化による更新、維持補修というものもやっていかなくてはいけない。そして、砂がたまれば、それだけ河川を通じて海岸に砂の供給というものが減るわけでありまして、海岸の侵食が起きているところも現実問題としてあるという中で、今のような方向性を続けていったときに、どんどん公共事業というものが自己増殖していくのではないかという危機感を持っているわけです。

 財政が豊かで公共投資に大きなお金を割けるような状況であれば、また違った見方があるかもしれませんけれども、人口減少、少子高齢化ということで、これから社会保障にもお金がかかる。医師も足りないとか、介護の施設が足りないとか、年金も不安定だと言われている中で、そっちにもお金がこれからどんどんかかっていく。半分以上が社会保障ですから、今。

 そういう中で新たなものをつくれば、またそれに対してのメンテナンスコストもかかってくる。今までつくったものの維持管理もやっていかなきゃいけないということを考えた場合、できるだけダムに頼らない形で、しかし、治水治山というのは、これは有史以来、国を治める根本中の根本ですから、これについては、では、仮にダムに頼らなければどういった代替案というものがあり得るのかということを、基準をまずつくっていただく。

 ただ、その河川ごとにいろいろな特性がありますので、例えば遊水地がつくれる地形の河川とつくれない河川もございますし、堤防強化といっても、人口が違うということになったときに、その堤防強化が果たしてどうなのかという、いろいろな河川によっての考え方が違ってくることもあると思います。

 そういう基準づくりをやっていただいて、そして予算はある程度圧縮しながら、しかし、その河川ごとにできるだけ、洪水というのが起こらない、未然に防止できるような治水対策を限られた制約要因の中でやっていく。こういう意味で、私は、できるだけダムに頼らない治水をということを申し上げているわけであります。

佐田委員 もう時間が尽きましたので、最後に一言。

 これは大臣、今も申し上げましたが、私は、うちの県というのはキャサリン台風がありまして、群馬県で六百人近くの方が亡くなられた。栃木県でも三百五十人ぐらいの方が、貴重な生命が、亡くなられたわけですね。我々国会議員、大臣もそうですけれども、我々は、やはり国民の生命財産を守っていくということが最大の目標なんですよ、目的なんですよ。そういうことについて、ぜひ大臣には御理解いただきたい。

 今みたいな抽象的な、できるだけダムに頼らない、できるだけダムに頼らない治水をやるというのであるならば、ちゃんとそのレベルで、八ツ場ダムをつくっても、同じようなレベルの治水対策はこうやるべきだと。自分の頭の中で、例えば放水路であるとかため池であるとか、堰堤、堤防の強化をするとか川のしゅんせつをするとか、そういうことを全部含めて、では、ダムはこうで、できるだけ必要ないようにできるね、そういうふうに考えてもらわないと、災害が起こった後では大変なことになるんですよ、大臣。ぜひ、それを御理解いただきたい。

 最後になりますけれども、大臣、これはもう答えなくて結構ですけれども、八ツ場ダムは二〇一五年に完成の予定です。もしもこれでできなかった場合、そして災害が起きた場合には、大変なことにもなります、先ほど金子委員からも話がありましたけれども。要するにそれからずっと利根水系の方々を危険の中に入れるということになりますからね、大臣。これはぜひ御理解いただきたい。二〇一五年以降においては、完全に治水においても利水においても大変な状況になるということをぜひ御理解いただきたい。そして、質問を終わらせていただきます。

前原国務大臣 御指摘の点は極めて大事なことだというふうに思っておりますが、ただ、今の基本方針にのっとってそれを全部やれということになると、莫大な費用がかかるというのはこれは御承知のとおりだと思います。それを本当に今の前提でやっていくのかどうなのかということ。

 そうでなければ、先ほど委員がおっしゃったように、我々もちろん、仮にダムをなくすということであれば、さまざまな手段でこの利根川水系の治水というものをやっていくということになるわけでありますけれども、私どもは政権交代で、先ほど金子委員は政策転換ではないとおっしゃいましたけれども、私どもが完全に政策転換だと思っているのは、今までの河川の基本方針を本当に今の制約要因の中で続けていけるかというと、続けていけないような状況にあるから、では、どうしましょうかというところで、この根本である概念を、哲学を見直していくということをやらせていただいているということは、御理解いただけないかもしれませんが、申し上げておきたいと思います。

佐田委員 具体的に……

川内委員長 佐田玄一郎君、指名されてから質問してください。

佐田委員 済みません。

 ダムに頼らない治水というものをぜひ今度議論させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。終わります。

川内委員長 佐田玄一郎君の質疑を終了いたします。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 本日は八ツ場ダム問題の集中審議が行われるということで、私自身、この十年間、八ツ場ダムの問題を一貫して取り上げてきた者として、こういう機会を与えていただいて本当にありがたいと思っております。

 我が党は、この八ツ場ダムにつきまして、利水面でも治水面でも不要なダムであり、無駄で環境破壊につながるダムということで中止を求めてまいりました。私自身、何度も現地に足を運んでまいりましたし、そういう中で、長野原の町長さんやあるいは町議会議員の方と率直な意見交換も、中止という立場を表明した上でお話もさせていただいたところであります。また、我が党の場合は、一都五県、流域都県の各議会におきましても、我が党の議員団が中止の立場から論戦を行ってきた。

 そういう点では、国と地方と、そして住民団体と協力をして中止を求める取り組みを行ってきたところであります。ですから、今回の鳩山政権になっての八ツ場ダムの中止声明そのものは当然の対応であり、評価をしているものであります。

 同時に、その表明というものが、やはり、中止の根拠ですとか今後の対策について十分具体的な説明抜きに行われたために、住民の方や下流都県からの反発を招く原因となってきたということもしっかりと見ておかなければなりません。

 我が党は、このような鳩山政権の対応に対して、政府として真摯な謝罪を表明することが必要だ、また、住民の不安や要望に謙虚に耳を傾けてダム中止の理由を丁寧に説明するべきだ、そして、生活再建、地域振興策を住民とともにつくり上げる、このことを表明し、住民の理解と合意を得る民主的なプロセスが必要だと国交省に申し入れもし、要請も行ってきたところであります。

 そこで、前原大臣に伺います。十二月十七日あるいは一月十五日の記者会見でも述べておられることですが、前原大臣が、一月二十四日開催の水没予定地区住民との懇談会において、住民の皆さんに何を訴えようと考えていたのか、この点についてまず確認させていただきたい。

前原国務大臣 塩川委員にお答えをいたします。

 今委員御指摘のように、一月二十四日に水没地区住民の方々との意見交換会を開催させていただきました。

 私が申し上げた趣旨は三点ございまして、一点目は、政策転換により御迷惑をおかけしている地元住民の方々におわびを申し上げたかったということであります。二つ目は、できるだけダムに頼らない治水への政策転換を進めるために、全国の事業中のダムの検証をするという考え方を説明するということでございました。三点目は、仮にダムが中止になった場合の生活再建のあり方について、もしお許しをいただけるのであれば、住民の方々と具体的なお話し合いをして御要望をお聞きしたい。この三点でございました。

塩川委員 今、一月二十四日で、ぜひ住民の皆さんにお話をしたいと言っていた三点というのは、私どもも求めてきた点でもございますし、そういう点での前向きな対応だと思っております。

 私たち、昨年の十二月に、党として、水没予定地区の住民の方への訪問と対話の行動を行いました。一軒一軒訪問いたしまして、百二十軒余り訪問し、そのうち六十軒の方とは直接意見交換もさせていただきました。私も、旅館組合、旅館街のところに足を運んで、厳しい御意見もいただきながら、率直な今のお気持ちを伺ってきたところであります。

 そういう中で出された声も幾つか御紹介したいと思うんです。何の説明もなく突然中止はひどい、こういう声。今まで反対だったが、無理やり賛成させられた、引っ越していった人は気の毒だ、住民の気持ちをもっとわかってほしい、こういう声や、旅館がかわいそうだ、できなくては困る。また、以前は地域全体が家族のようだった、借家に住み、移転しなければならないが、土地代が高く移転先が見つかっていない、本心では中止は仕方がないかなと思うけれども、ダム湖ができないとだまされたという気持ちにもなる、こういう声や、どっちに片がつくにしろ早くしてほしいとか、生活再建をちゃんとしてもらえばダムがなくても構わないんじゃないかと思う、こういう声。はっきり言ってダムが必要なのか、ダムをつくる前はいいことばかり聞かされたが、今、政権がかわっていろいろな話を聞くと疑問がある、こういう声も出されておりました。

 誤った国策に翻弄された住民の皆さんのつらい思いを受けとめて、真摯に謝罪することが必要であります。

 また、ここでやめるとお金が無駄になるとか、観光資源としてダムが必要だとか、中止後の生活再建はどうなるのかといった疑問や不安の声が出されています。これらに丁寧に答えるという情報提供が必要であり、説明責任を果たす必要が求められております。だからこそ、私どもも述べ、大臣も表明をされておられた三点に基づいた丁寧な対応が求められていると考えています。

 そこで、もう一点お聞きしたいんですが、当日の懇談会では、これは私は新聞報道で承知している限りなんですが、大臣は、住民の皆さんには何の瑕疵もない、政権交代でダム中止を申し上げ、御迷惑と将来への不安を抱かせてしまったことはすべて政治の責任で、心からおわび申し上げたい、皆さんは被害者だと述べたと聞いておりますが、そのように述べたということでよろしいですか。

    〔委員長退席、橋本(清)委員長代理着席〕

前原国務大臣 そのとおりでございます。

塩川委員 こういった、住民の皆さんに真摯におわび申し上げたいという大臣の率直な思いというのを表明する機会というのが、やはり必要だろうと思っております。

 民主党中心の政権で政治主導と言われておるわけですから、水没予定地区の住民の方、百数十世帯でございます。そうなれば、政務三役で、合わせて六人でしょうか、一軒一軒訪問して、やはり、直接思いも伝えるし、おわびもして、丁寧な説明を行う、こういう取り組みもぜひ行っていただきたいと思いますけれども、そういうお考えはございませんか。

前原国務大臣 御意見として拝聴させていただきたいと思います。

塩川委員 そういう真摯な対応というのが、住民の皆さんのさまざまな思いを解きほぐす上でも力になるのではないかというのを、率直に提案はさせていただきます。

 一月二十四日の懇談会の場での発言者の方というのは、各地区からの代表での発言ということでもありました。一軒一軒訪問していて感じていることは、要するに一様ではないわけであります。一軒の家でも、御主人はダムつくれと言いながら、奥さんの方はダムがなくてもいいんじゃないかという声の方もいらっしゃいます。また、地つきの土地持ちの方と、借地借家の方での思いというのも一様ではありません。

 また、水没予定地区の対策委員会の役員の方とお話をお聞きしたときにも、生活再建をしっかりやってもらえばダムがなくてもいいんだという声で、同時に、一番心配なのが旅館組合の人たちのことなんだと。旅館組合の皆さんがダム湖観光を前提にして営業を立て直したいと思っている、そういう旅館組合の人の思いにきっちりこたえるようなことはぜひともやってもらいたい、こういう声もございました。

 そういう意味でも、だからこそ私は、おわびをしっかりすることと同時に、中止の理由を明確に説明するということが必要だ、それでこそ、誤解と不安を解いて前に事を動かしていく一番の力になると考えるものであります。

 そこでお尋ねしたいのが、懇談会の場で、八ツ場ダムの中止の理由についてはどのような御説明をされたんでしょうか。

前原国務大臣 中止の理由につきましては、まず、政権交代による政策変更によって、できるだけダムに頼らない治水を考えていると。その理由は何かということで、現在の日本の置かれている人口減少、少子高齢化、莫大な財政赤字、そして、既存のいわゆるダム等のストックの維持管理費がこれから相当程度かかってくるということ、あるいは、ダムというものが水流を遮断して、水質の汚染、あるいは、砂がたまることによって砂の供給が海岸になされなくて、結果として海岸の侵食などが起きる地域も生まれて、そして、それが新たな公共事業というものを生み出していくというようなこと。

 そのさまざまなダムの、もちろん効用もあればマイナスの面もあるということで、現状認識をお話しし、そして、できるだけダムに頼らない治水をということの入り口として、計画着手以来多年にわたって完成をしていない二つのダムを中止したということでございます。それが、八ツ場ダムと川辺川ダムということでございます。

 さらに、我々、野党のときにいろいろ議論をしてまいりましたのは、治水面で申し上げますならば、カスリーン台風という台風のことがよく言われるわけでございますが、当然ながら、その後、いろいろな形でダムもできましたし、巨額の費用が投じられて河川整備も行われてきたところでございますけれども、果たして、伊勢崎の八斗島のいわゆる基準点における基本高水、こういったものが本当に今のいろいろな制約要因のもとで達成できるのかどうなのかといった問題もございます。

 また、利水については、もちろん今一都五県では要望されているところでありますけれども、当然ながら五十七年前というのは、人口もふえて、そして水需要もふえていったわけでありますが、現在の節水傾向とか、あるいはさまざまな形での人口減少というものもこれから生まれてくるということを考えたときには、水需要の将来的なベクトルを考えた場合には、当然ながら、フルプランの見直しもやっていかなくてはいけないだろうということです。

 利水面、治水面、今は一つの事例を申し上げましたけれども、我々なりに野党時代に治水面、利水面でのさまざまな分析も加えてきたところでございまして、そういったところから、我々は、八ツ場ダムの中止ということを方針として表明させていただいているということでございます。

塩川委員 今のお話を伺っても、八ツ場ダム固有の中止の理由というのが住民の皆さんに届いていないんじゃないでしょうか。八斗島におけます基本高水のピーク流量の毎秒二万二千立米というのが過大なのではないか、これは前から指摘をされているところで、まさにその点で不必要なダムがつくり続けられてきたのではないかという、そこまで踏み込んで言っているかどうかというと、そこまではなっておりません。

 また、水余りの問題につきましても、将来的なフルプランの見直しというのはありますけれども、もともと中止を掲げたわけですから、であれば、水余りの現況の中で、水需要に対する利水対応としては八ツ場ダムが不必要になったんだ、そういう説明がなければ、住民の皆さんの誤解を解くことにはつながらないんじゃないのかと率直に思うんですけれども、今のように、治水上、利水上も必要がなくなったということを八ツ場ダムについて明確に語っていく必要があるんじゃありませんか。

前原国務大臣 まさにそのとおりだと思います。野党のときに、さまざまなデータをもとに、我々は、私は現地には足を運んでおりませんが、さまざまな同僚議員が足を運んで、意見交換も重ねながら、そしてさまざまな分析を加えて、中止という方向性をマニフェストに盛り入れたわけでございます。

 ただ、我々は今与党になりました。政府を預かる身になりました。そして、住民の皆さん方にも再検証するというお約束をいたしました。再検証の基準をつくって、治水や利水も含めて基準をつくって、具体的に、もちろん予断を持たずに我々は再検証するわけでございますけれども、治水面では今こうですよ、利水面ではこうですよということを政府として責任を持ってお示しする準備を今しているということを御理解いただきたいと思います。

 委員のアドバイスは、私は率直に、前向きなアドバイスとして承っておきたいと思います。

塩川委員 マニフェストでは八ツ場ダムの中止が掲げられて、民主党中心の政権が生まれると同時に八ツ場ダムの中止が表明をされる。当然のことながら、党としては八ツ場ダムの中止の理由を掲げているわけですけれども、そのことについて率直に語るということはないんでしょうか。

    〔橋本(清)委員長代理退席、委員長着席〕

前原国務大臣 それは、委員会の場でも、先ほど申し上げました基本高水それから計画高水の差の問題であるとか、今までさまざまな形での利根川水系での、これは自民党政権でありますけれども、ダムがつくられてきたり、河川整備、堤防強化、さまざまな対応策がとられてきた中で、果たして我々はさらに進めていくことが本当に必要なのかといったところが治水については大きなポイントであることは、そのとおりであります。

 ただ、それを、やはり政府をお預かりすることになった以上は、しっかりとバックグラウンドというものをお示しする必要があるということでございまして、方向性とか基本的な考え方は、利水でも治水でも先ほどから申し上げているように大きな変化が起きているわけですから、お話をすることができますけれども、やはりそれにプラスをして、政府としての説明責任ということで今作業をさせていただいているということを御理解いただければと思います。

塩川委員 下流の一都五県から国交相に対しても質問書なども出されておりますけれども、それに対する回答なども、マニフェストで八ツ場ダム中止を掲げた理由についてどう考えているのかという問いがあるとすると、それは民主党に聞いてください、そういう答弁の中身になっているわけですよ。そういうのはやはり誠実な対応ではないと率直に思います。

 また、八ツ場ダムの現地の工事事務所のウエブサイトを見ましても、いまだに八ツ場ダムの必要性というのを掲げて、QアンドAも置かれているわけですね。これで政策転換をしているんだろうかと思うんですが、こういうことをごらんになっていませんか。

前原国務大臣 それは知りませんでした。早速チェックをして、もしそれが出ているのであれば取り下げたいと思います。

塩川委員 「八ツ場ダムの役割」というので、「洪水から暮らしを守る」とか「増え続ける水需要を支える」というので、QアンドAなんかも後に出てくるわけですから、そういう点については、やはり政策転換をしたということが見えるような形で現場の対応はぜひお願いしたいと思っております。

 私は、やはりここで、中止表明から半年という時期を考えても、住民の皆さんはこれまで、もともと反対であったにもかかわらず、国の圧力のもとで賛成の立場を受け入れざるを得なかったという苦渋の選択をされてこられた。その際に国の方が盛んに言ったのが、治水上も利水上も必要なんだと。この理屈について、国が責任を持って答えることなしには本当の意味での納得を得ることができないということであります。

 有識者会議でしっかりとした検討を行うのも当然なんですけれども、やはり一日も早く、もともと中止ということを掲げてきた党が政権についたわけですから、その点を進めるということが何よりも重要で、そういう明確な説明が先延ばしをされることは、結果として、いたずらに住民の皆さんの悩み、苦しみも引き延ばすことになるんだということをぜひ受けとめていただきたいというのが私の思いであります。

 私どもは、過大の洪水予測を前提にした治水対策が問題だ、あるいは、首都圏は水余り状態になっている、ダムをつくれば現地での地すべりの危険性を高める、こういう角度での問題点や、ダム湖観光というのは本当に現実的なのか、こういうことについても、率直に、地域振興、地域経済の振興策という点でも、きっぱりと転換を図ることが前向きな対応につながっていく、こういうことを、中止を表明した以上、政府としてもぜひ明らかにしていただきたいと思っております。いかがでしょうか。

前原国務大臣 今御指摘をされた点は、我々が野党時代に申し上げている点であります。したがって、問題意識の観点というのは同じなんです。

 例えば、地すべり一つとりましても、野党のときには、その危険性がある、果たしてそれができるのかということもありましたし、あるいは同僚議員がこれから議論してくれるであろう砒素の問題等もございました。

 しかし、政府としてこの問題を主体的に扱うようになった以上、では、本当に地すべりが起きるかどうかということについては、やるという前提で精密な調査をまたやり直さなきゃいけないということでありますが、我々は、本体工事はもうやらないということでありますので、今おっしゃったようなことについては、今、触れていないわけです。

 つまりは、野党のときに言っていたことと違うということではなくて、我々は、ダムに頼らない、ダムを中止するという前提になったために、その点についての調査はもうしないということになったために、前はそう言っていたよという言い方はできるのかもしれませんが、今はそういうことについては申し上げていないということであります。

 砒素についても、できるだけ情報公開、今までの政権で隠していた砒素の情報というものは徹底的に公開をしていくということは、我々からやらせていただいているわけでございますけれども、では、砒素がどのぐらい流れてきてそれがコンクリートを溶かして、そういう危険性があるということは野党のときに言っていましたよ。しかし、それはもうつくらないということになった以上は、厳密なそういった分析はもうする必要はないということで申し上げていないと。

 つまりは、そういうことで、我々は今まで言っていたことについて、すべてを申し上げていないこともあるんだということは御理解をいただきたいと思います。

塩川委員 住民の皆さんのわだかまりを解きほぐすという観点で対応していただきたいという点では、大臣もその方向でとおっしゃっておられますので、ぜひ明確で丁寧な中止の理由の説明をお願いしたいということが、指摘する第一点であります。

 もう一つ指摘をしたいのが、生活再建の方策の問題でございます。我が党は、大型公共事業の中止に当たって、地域住民が受けた困難を償うなどの観点から、国や関係自治体などの、地域住民を交えた地域振興のための協議会をつくり、住民の生活再建や地域振興を図ることを義務づける、公共事業の中止に伴う住民の生活再建、地域振興を促進する法律を制定することを求めてまいりました。民主党もほぼ同趣旨の立法提案を行っていると承知しております。

 前原大臣は、八ツ場ダム中止表明の際に、何らかの補償が必要だということも述べておられますが、一月の住民懇談会の場には、お許しをいただければというお話もありまして、現実にはなかなかそういう場にならなかったということで、この点での御提案をされる機会にはならなかったわけであります。大臣から生活再建策についての説明の機会は、現状ではいまだにないということであります。

 私は、具体的に決めていくのは住民の皆さんを中心に行っていくわけですけれども、しかし、こういう大枠として、方向性としてどういうものを考えているのか、この点については、やはり国として明確に示すことが必要だ。そういう点でも、こういうダムの中止に当たって、住民に対する補償措置はどうするのか、これについてはどのようにお考えでしょうか。

前原国務大臣 委員御指摘のとおり、今までの公共事業というのは、一たん着手をすれば最後までやり遂げるという前提に立っておりまして、途中でやめるということを前提にしておりません。したがいまして、途中でやめた場合の何らかの補償措置とかそういったものについての手当てや法律や、あるいはそういったものの財政的な裏づけがないというのはそのとおりでございますし、我々も、野党のときにそういった法案が必要だと。つまりは、公共事業をとめたときに、どうその地域の皆さん方の生活再建をバックアップするのかという裏づけの法律をもとにした財政的な支援が必要だということを言ってまいりました。

 そのことは、この国会に提出するかどうかということも内部で検討いたしましたけれども、具体的に、恐らく一番早くいってそういった議論がなされるのは、金子恭之議員の御地元の川辺川ダムではないかと思っております。今、県も白紙撤回ということを表明され、また、関係市町村、自治体が、ダムに頼らない治水対策というものを御議論いただく中で、五木村の皆さん方は、下流の人たちのために自分たちは犠牲になるという思いを強く持っておられるわけでございまして、下流の方々がもしその意見でまとまるのであれば、また今の推進というものの考え方を見直していただけるのかもしれません。

 そういった具体的な個別のダムの事案ができたときに、それにどう担保するかという法案というのは必要だと思っております。したがって、これは金子委員にも御協力いただいて、もし、そういった具体的な、計画中のダムをとめる、そして、それに対する住民の方々の生活再建をやるということになれば、当然ながら新たな法律を出させていただいて、そして、その法律に基づく財政措置をしっかりやっていくということになろうかと思っておりまして、その中身は内部で検討しているところでございます。

塩川委員 先ほども紹介しましたけれども、一月二十四日の懇談会では、住民の皆さんには何の瑕疵もない、政権交代でダム中止を申し上げ、御迷惑と将来への不安を抱かせてしまったことはすべて政治の責任で、心からおわび申し上げたい、皆さんは被害者だと大臣は述べられた。

 何の瑕疵もない被害者である住民の皆さんに対し、個人への補償措置を行う考えはございますか。

前原国務大臣 まだ中身については精査をしておりませんけれども、大事なことは、先ほど来から、八ツ場について申し上げれば、ダム湖を前提とした生活というものを考えて苦渋の選択を受け入れられたということでございますけれども、では、ダムがなかったらどうやって生活していくんだといったところが一番大きなポイントでございまして、やはり、生活再建というものが大きな柱になってくるんじゃないかと考えております。

塩川委員 誤った国の政策によって住民が被害をこうむった、そのことに対する措置、おわびをする、つまり、過ちを、政策転換という形で、今までの政策を変更するということによって多大な迷惑をかけるということを政府として認めたわけですから、そのことに対し、迷惑を受けた方々に対する個人補償というのは、お考えはございませんか。

前原国務大臣 今、予断を持って中身について言及することは避けたいと思いますし、いずれにしても、新たな立法措置が必要で、その中身については今後検討していきたいと考えております。

塩川委員 国策に翻弄された住民に対して、何らかの補償措置を行うということは当然のことだということを改めて指摘しておきます。

 それで、先ほどの、ダム計画をとめる、それに伴って何らかの補償措置が必要で、法律をもとにした財政措置が必要となってくる、このことは川辺川ダムを具体的な事例として考えていきたいという話でありますけれども、時期的には今国会は難しいというおっしゃり方をしておられたかと思うんですが、いつぐらいというお考えでありましょうか。

前原国務大臣 川辺川ダムのいわゆるダムに頼らない関係自治体の協議というものが、どのような形でいつまとまるのかといったところにもかかわってくると思いますし、私もその意味では、また、人吉や五木村、あるいは相良村、そういった地域に足を運んで、皆さん方との意見交換をさせていただかなくてはいけないと思っております。

 仮にことしまとまれば、意見交換をさせていただく中でどういった立法が必要なのかという検討を早急にしなければ、せっかくダムの中止で合意をしていただいたのに、何の法的な裏づけもない、また、法律がないために財政的な裏づけもできないまま、合意をしていただいた住民の皆さん方を放置するというわけにはいきませんので、できるだけ早く法案をまとめて、法案を提出し、当然ながらその法案に基づいた予算措置をつけるということになろうかと思います。

塩川委員 今、この補償に関する法案、立法措置については、川辺川ダムや八ツ場ダムなどを想定されるということで、ダムということでの話として私は承知をしているんですが、ダムに限らず、つまり公共工事一般について、大型公共事業の中止に伴う住民の生活再建や地域振興を促進する法律、そういうものにするというお考えはございますか。

前原国務大臣 現時点におきましては、ダムを中止した場合ということで考えております。

 ただ、他の公共事業を中止してどのような被害が出るのか、出ないのかということについては精査をする必要がありますので、具体的な事例が出てきた時点で考えなければならないと考えております。

塩川委員 時間が参りましたが、もう終わりにしますけれども、民主党としても、この立法提案の中には、公共事業一般の話として提案もされておられます。そういう立場での具体化をお願いしたいと思っておりますし、地元の皆さんの意見をどう反映するのかという仕組みづくりというのもやはり工夫が必要だ、このように考えております。

 政府に、引き続く住民の皆さんとの懇談、対話の機会を設けることを求めると同時に、この八ツ場ダム中止の理由を明確に示すということを早急に行ってもらいたい。そして、この住民補償、生活再建の立法措置を住民の声を踏まえてしっかりつくっていただくということを要望し、質問を終わります。

川内委員長 塩川鉄也君の質疑を終了いたしました。

 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 前原大臣は、就任早々、八ツ場ダム、川辺川ダム建設中止を打ち出されました。ダムによらない治水対策の検討に着手をしていただきました。公共事業はとまらないと考えられてきたわけでありますが、推進中の事業が中止があり得るとの判断を下したことは大きな意義があると思います。それだけに、今までも質問ございましたが、大臣以下政務三役の方々、ダム建設の是非をめぐって苦しんできた地元住民の方々の理解を得るために相当の御努力をされている、これについては非常に敬意を表したいと思います。

 そこで、まず、八ツ場ダムの事業費についてお伺いしたいと思いますが、総事業費が四千六百億円は、ダム事業費として日本の最大規模のダムであります。二〇〇四年の基本計画見直し前は二千百十億円でした。なぜこのように総事業費が膨れ上がったのか、その要因を教えていただきたいと思います。

三日月大臣政務官 中島議員にお答えをいたします。

 今委員御指摘のとおり、昭和六十一年に約二千百十億円と定めた事業費が、平成十六年の基本計画の変更の際に約四千六百億円ということでふえております。

 この増加の理由は、より詳細な調査が可能になったことに伴う工事費の増加及び補償基準の確定による用地補償費の増加と、加えて物価の上昇等ということで説明を受けております。

中島(隆)委員 ということは、計画時点に余りにもずさんといいますか、工事費の積算、あるいは補償問題については新たに出る部分はあると思いますが、そういう形で予算がふえたということでありますが、関連事業を含めますと九千億近くが八ツ場ダムに投下されるというふうに聞いております。

 そうであるならば、関係地域、そしてその住民の皆さん方の今後の生活補償を含めて、早く事業を中止して、そういう膨張する財源を防げるのではないかというふうに思います。そういう面では、この点、今後の処理の問題、大変でございますが、私は、中止をして、早くそういう無駄な財源を生活再建に充てていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 次にお伺いしたいのは、ダムの治水対策の効果についてですけれども、八ツ場ダムの、利根川の洪水対策の目標とされる、中流の八斗島で最大毎秒二万二千トンの水が流れることを前提に、ダムの治水効果が期待されるわけであります。この二万二千トンという基本高水のピーク流量ですが、前提となる上流地域の堤防工事は大半が手つかずであるというふうに言われていますし、さらには、森林の貯水力、これも過小評価して、ダム建設のために過大に設定された数字ではないかという指摘がされています。多く出ているわけでありますが、この点についてどういうお考えでしょうか。

三日月大臣政務官 今委員御指摘の基準地点、八斗島における基本高水のピーク流量というのは、現在、毎秒二万二千立方メートルというものを計画値としての流量として定めております。これは、カスリーン台風と同じ規模の降雨があった場合について、将来的な河道の断面等を想定して、かつ、洪水調節施設、これはダム等ですね、こういうものがない条件で検討した結果から定められた流量です。

 今委員御指摘のとおり、これは実績の降雨、実際に起こった降雨と流量の関係をモデルで再現して、そして計画値として決定している数値なんですけれども、いずれにしても、かねてから大臣も申し上げているとおり、この基本高水のピーク流量の定め方そのものも含めて、今現在行っております今後の治水対策のあり方に関する有識者会議において、委員の皆様ともども議論をし、新しい評価軸を定めてまいりたいというふうに考えております。

中島(隆)委員 今御答弁がありましたように、基本高水そのものについての基準、大変な矛盾があるというふうに指摘されています。ダムをつくるための基本高水ではないかということも言われているわけで、検討委員会でそのことも十分審議されるということでありますので、ぜひ、本当に治水に必要な基本高水、この設定を十分出していただきたいと思います。

 治水の方はそうでありますが、利水の方も先ほどから質問があっております。人口減少、節水等によって、水需要が関係六都県でもかなり減少している。先ほどはちょっと足らないという部分もございましたが、東京都では、保有水源がふえ続けて、一日当たり七百一万立方メートルの供給能力を持っているということであります。実際の給水量は一日当たり五百三十万立方メートルとも伺っております。

 完全な水余りでありますし、八ツ場ダムがなくても、関係六都県、水は安定的な供給が続けられるのではないかというように思いますが、この点についてお答えを願います。

三日月大臣政務官 まず、利水の面で事実関係だけ申し上げれば、例えば、平成に入って以降、首都圏ですね、利根川下流域で六回もの渇水に見舞われて、平成八年には、夏、冬合わせて百十七日もの長期の取水制限も行われているなど、必ずしも利水の面で安定的な供給が行われている状況とは言えないというふうに思っております。そういう指摘もあります。

 一方、いろいろな節水機器の普及でありますとか漏水防止の対策が進んできたことに伴って、水需要に余分があるのではないかという指摘もございます。

 今委員から指摘のありますように、それぞれの地域の実情に即した安定的な水利用を可能とする状況をつくり出していくということが必要だと思いますが、人口の動向、また近年の降雨の状況、そして水の利用の状況等を勘案して、しっかりと水需給の見通しについても点検を行ってまいりたいというふうに思います。

中島(隆)委員 今後の見直しの中でも、やはりそういう治水、利水が目標でありますし、十分住民に対して、検証していただいて、明らかにしていただきたいというふうに思います。

 次に、八ツ場ダムの上流に品木ダムというダムがあります。この品木ダムでは、吾妻川の酸性水を中和するために四十数年前から大量の石灰を投入してきたわけでありますが、この品木ダムの湖底の堆積土から非常に高い砒素濃度が記録されているとの報道がございます。これは事実でしょうか。

 さらに、湖底の堆積土はダムに近い産業廃棄物処分場に廃棄され、既に二つの処分場で二十一万七千立方メートルがたまっておると言われています。現在の三つ目の処分場もあと数年で満杯であると言われます。基準値を超えた砒素を含んだ堆積土は、最終的にどのように管理され、処分されようとしているのか。

 その二つをお尋ねいたします。

三日月大臣政務官 今委員御指摘の高い砒素濃度を記録している堆積土があるかどうか、これも事実でございますし、三つの処分場、土捨て場のうち二つが既に空き容量がゼロであり、残る三つ目の処分場について、これは三十三万立方メートルのところ空き容量として二十九万立方メートルあるということが事実でございます。

 御案内のとおり、品木ダムは、昭和四十年以降、酸性の強い吾妻川水系の支川の中和ダムとしてこの事業が行われておりまして、石灰を流し込むことによってそれが流れて品木ダムにその分も含めて堆積をし、その中に砒素というものが含まれているという状況がございます。

 現在、ダム貯水池の堆積土は、場所によって異なりますが、おおむね三十から五千六百ミリグラム・パー・キログラム程度の濃度の砒素が含まれていると言われております。

中島(隆)委員 今の数値を見ていただいただけでも、大変な濃度の砒素が含まれた堆積土があるということですが、これが一応、今言われたように、二つはもう満杯、あと一つも、今あと二十七万立米は残っていますが、それも近々満杯になるという状況であります。もしこれが地震等で崩落をして下流に流れ込んだ場合、被害も想定されるわけでありまして、これについては、国土交通省は十分なる安全対策が必要ではないかというふうに思っております。

 それとさらに、この水質の中和事業は毎年十億近くかかると聞いているんですけれども、こんなに、四十年近くも今続いているわけでありまして、大変重大な問題だと思います。これについても早急に抜本的な対策が必要ではないかというふうに思っております。

 次に、八ツ場ダム建設中止の際の最大の課題は、現地の生活を、一番こうむっておられる住民の方々の再建はもちろんでありますけれども、最大の課題は、関係六都県、こういう方々にどう理解を求めていくか、そこが一番重要であろうというふうに思っております。

 その際、ダム建設の中止に伴う生活再建の補償をどうするかについても、今後の課題あるいは今後の計画の道筋について御答弁を願いたいと思います。

前原国務大臣 今、中島委員御指摘のように、関係六都県や現地住民等の皆さん方との対話というのは、極めて大事なことだというふうに思っておりまして、一都五県の知事とは昨年十月二十七日に話し合いの場を設け、地元住民の方々とは去る一月二十四日に意見交換を実施したところでございます。

 中でも、できるだけダムに頼らない治水への政策転換により、長年にわたりダム問題に苦しんでこられた地元住民の方々に対して、多大な御迷惑をおかけしていると認識しております。

 今後の生活再建につきましては、生活に支障を来さないための基本的なインフラ整備もさることながら、雇用も含めて、持続的に生活ができるような状況をつくり出すことが重要と考えております。

 今後とも、地元の方々、関係都県知事などに対して、この政策転換について御理解をいただく努力を粘り強く続けつつ、地元住民の方々の御意見や御要望を十分に伺った上で、ダムを中止した場合の生活再建について検討してまいりたいと考えております。

中島(隆)委員 八ツ場ダムについては、今申されましたような形で慎重に取り組んでいただきたいと思います。

 先ほど、地元の川辺川ダムについては金子代議士から御質問があったと思います。私も地元であります。川辺川ダムについては、全国のモデルとして、地域再建も含めて取り組まれています。ぜひ、先ほど答弁がありましたように、まず地元の意向が非常に重要でありますけれども、やはり国としても、生活再建に向けて具体的な課題等を、双方の意見を十分議論いただいて、地元の振興に努力をしていただきたいと思います。

 次に、私の地元の荒瀬ダムの撤去の問題についてお聞かせいただきたいと思います。

 大臣にはもう二回ほど御質問をいたしましてやっているんですが、先日、二月二十四日に土地占有権の申請がなされました。これは、ダムの利水の期限が三月三十一日切れるということで、知事も撤去を表明されました。河川使用者の漁協の同意がない水利権申請がされたということで、極めて異例な事態であります。この点をどのように受けとめておられるか。さらに、漁協を含め住民の多くが、二年後ではなく、ダムの即時撤去を求めている中であります。申請の許可、不許可を判断する今後の手続について、漁協や住民の意向を聴取される等の判断があられるのかどうか、その点についてお尋ねします。

前原国務大臣 中島議員につきましては、地元の議員として、川辺川ダムの建設の中止、あるいは県として白紙撤回、それを受けての流域でのダムに頼らない治水対策に対して、多大なるお力添えをいただいていることに心から感謝を申し上げたいと思います。また、八代市長をされていたという御経験から、極めて地元に密着をした建設的な御意見を賜っていることに深く御礼を申し上げたいというふうに思います。

 荒瀬ダムにつきましては、二月二十四日、熊本県から、荒瀬ダムにおける水力発電のための流水占用、これは河川法の第二十三条でございますが、それと河川区域内の土地占用、これは第二十四条でございますが、許可申請がなされたところでございます。

 この申請には関係河川使用者の同意がございませんでした。したがいまして、三月一日、河川法に基づく手続として、球磨川漁業協同組合に対し、損失の有無について意見を求める通知を行わせていただきました。

 今後とも、河川法の規定に基づき、有識者からの助言もいただきながら、しっかりと関係者の方々の御意見を承り、適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。

中島(隆)委員 ぜひ、地元の漁協や住民の皆さん方は即時撤去を求めておられますので、国交省としては、地元住民の意向を十分踏まえて、早急にひとつ慎重に対応していただきたいと思います。

 そこで、これは要望です。再三要望いたしておりますが、ダムの支援の問題。

 現行法ではできないということでございますが、荒瀬ダムが全国初めての撤去事例になります。しかも、老朽ではなくて不要ダムという撤去が決まったわけでありまして、このことによって環境復元、直るわけであります。ぜひこれについても、知事も決断しましたし、支援策を考えていただきたいということと、もう一つ、この前も答弁がありました、発電ダムだけで五十年から九十年以上たったのが九百ほどあると。また大変な数ですけれども、しかし、それだけ老朽が進んでいるんですね。今後やはり撤去が出てきます。そうなったときに、現行法ではできませんという形で放置したら、熊本県も、撤去できないから無許可で申請ということは、全然残るわけですね。こういう事例が続出するというふうに思います。

 ですから、ぜひ、今検討されています補助ダムの老朽化の見直しの補助や支援、この検討の対象に入れていただいて、モデルとしてこの荒瀬ダム撤去の問題もひとつ取り上げていただきたい、切にお願いしておきたいと思います。

 次に、最後にですが、熊本県の路木ダムについてお尋ねします。

 路木ダムについては、これも非常に、治水、利水ですけれども、治水については、欺瞞の、偽装的な申請をやっておりますし、それから利水についても、地元から余り求められていない部分もあるという形でございます。

 それともう一つ、今度出てきたのは、ここは雲仙国立公園の中です、第二種の。今、県の調査でも、生物多様性の保護、希少動物が四百から一千種近くおる。こういうような非常に環境のすばらしいところで、照葉樹の綾町に次ぐ森林ではないかと言われています。ここがダムの建設の場所になっています。

 これは本体着工ダムだということで、もう既に三月の三日に発注されました。四十億です。しかし、これは補助ダムですから、欺瞞と、利水についても問題があるというダムでありますので、八月に見直しの指針が出されて、補助ダムについてはそれに基づいて各都道府県が検証するということになっていますが、これも、契約はされました、発注の予算は組まれましたけれども、まだまだ建設は先になるんですが、ぜひそういうことも含めて検証するように、地元に、やはりそういう実態を十分検証して見直しをやられるように御指導いただきたいと思いますが、その点について御意見を。

前原国務大臣 路木ダムを含みます補助ダム事業につきましては、昨年十二月十五日に、各都道府県知事に対して、国として、直轄ダムについては再検証しているので、補助ダムについても同様の再検証をしてほしいというお願いはしております。

 ただ、この委員会でも何度かお答えをしておりますように、あくまでも補助事業というのは都道府県がお決めになることでございまして、法的な権限はなかなか国には及ばないということでございます。その点をぜひ御理解いただきたいというふうに思っております。

中島(隆)委員 それでは、時間が来ましたので質問を終わりますが、補助ダムについては、それぞれ事業者である都道府県知事が責任を持ってやるということですけれども、やはり国が半分以上予算を組んで、投じるわけです。予算づけをするわけですので、ぜひ十分検証を、県の指導を含めて慎重にやっていただきたいというふうに思います。

 終わります。

川内委員長 中島隆利君の質疑を終了いたします。

 次に、熊田篤嗣君。

熊田委員 民主党の熊田篤嗣です。国会においての初質問で少々緊張しておりますが、精いっぱい頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします。

 今、中島代議士の方からもありました砒素の問題、あるいは品木ダム、八ツ場ダム、こういったところで私は質問をさせていただきたいと思っております。少々別の角度も含めてお尋ねをさせていただきたいと思っております。

 この問題、昨年の十一月十三日に朝日新聞で、八ツ場ダム予定サイトの上流に当たる貝瀬を初めとする地域で基準値を大幅に上回る砒素が検出をされていたにもかかわらず、そのデータが隠ぺいされていた、こういったことが明らかになったと、村井理事の追及があったところであると思います。こういったところから大きな課題として広がってきたのではないかと思いますが、この砒素の問題、私は、まだもっと重大な部分が明らかになっていないのではないかと考えています。

 この砒素の問題あるいは中和事業の問題、これは八ツ場ダムの建設の大前提として考えなければならないと思います。八ツ場ダムは、御存じのとおり、昭和二十七年から計画があったはずでございますが、その後、二十八年の調査で、吾妻川の強い酸性で一たん計画が白紙になっています。その後、この中和事業の開始により計画が再開をしている。この品木ダムは、すなわち八ツ場ダムにとって必要不可欠のものであると考えます。

 そして、このダム、先ほど三日月政務官からのお答えの中にもありましたが、もはや堆積している中和沈殿物でほぼいっぱいになっているということでございますが、この中和沈殿物をしゅんせつして、A、B、Cの、今、土捨て場とおっしゃっておりましたが、そこに捨てている。この土捨て場というもの、法律にのっとって正確に言うとどういった名称であるのか、また、このしゅんせつ土砂は何と呼ばれているんでしょうか。

三日月大臣政務官 熊田委員の初めての御質問に、私も緊張感を持ってお答えをしてまいりたいというふうに思います。また、この品木ダム及び砒素の問題に本当に詳しく研究をしていただきまして質問していただいていることに、私からも敬意を表したいと思います。

 今の御質問に端的にお答えすれば、品木ダムの堆積物の土捨て場は、産業廃棄物処理施設です。また、しゅんせつ土砂は、産業廃棄物の種類として汚泥として取り扱っております。

熊田委員 この処分場は、産業廃棄物の最終処分場であると思いますが、安定型処分場なのか、あるいは管理型処分場なのか。また、今言われた汚泥はどんな状態で処分されているんでしょうか。

三日月大臣政務官 安定型か管理型か。結論から言えば、管理型処分場でございます。これは群馬県知事から許可をされた処分場です。また、この許可に従って、しゅんせつ土砂は、脱水されて、さらにセメントと混合されて、処分場に搬入された後、雨水による流出から守るために覆土、上から土をかぶせて、現在置かれております。

熊田委員 これは管理型ということでございますが、本来、管理型であれば、遮水シートがなければならないのではないかと思います。また、セメントで固められているということでございますが、現場を確認すれば、非常に薄いセメント、実質野積みに近い状態であり、今言われたのとは非常に異なる状態の中で管理をされている、このように私は確認をさせていただいてまいりました。こういった現場と違う部分が報告をされている、ここにも一つ私は大きな課題があるのではないかと考えています。

 この中で、先ほどございましたが、砒素が確認されているということでございますが、国土交通省の品木ダム水質管理所はいつの時点でこの砒素のことを把握されていたのでしょうか。

三日月大臣政務官 国土交通省の手元にある最も古い資料で、堆積土の土質調査について、昭和五十五年十二月に百三十から九百ミリグラム・パー・キログラムの濃度の砒素が検出されているということが判明いたしております。

熊田委員 ありがとうございます。

 私、これは自分で確認をしてきたところでございますが、現在群馬県の県議会議員である後藤克己議員という方がいらっしゃいます。彼が群馬県の県庁の職員をしていました平成十三年時点、国の今のC土捨て場の申請を受ける立場だったということです。彼は、このしゅんせつ土砂、今言われたように、昭和五十五年からもう砒素が高濃度に含まれているのが見えていた。ということで、遮水シートなどの手当てをしなければ許可できない、許可をおろせない、こういったことで許可をされなかったということを、二月十一日、前橋市で開かれた市民団体の集会で証言をしています。私自身も、きのう御本人に直接電話をして確認をいたしました。

 確認をされていた、国交省もわかっていたはずです。しかし、先ほど申し上げたとおり、C土捨て場、私は、そういった遮水シートなどのきちんとした管理がなされている状態にはないというように認識をいたします。結局、後藤議員が担当の窓口を外れた後に、再び国土交通省が申請をして、その遮水シートがない形で認められたというように聞いております。

 余りにも責任感に欠ける対応、こういった状況にあったのではないかと私は考えますが、その部分について所見をお伺いさせていただけないでしょうか。

川内委員長 三日月大臣政務官、遮水シートがあるのかないのか、まず答弁してください。

三日月大臣政務官 遮水シートはこの処分場にはありません。それは許可権者である群馬県の判断によるものです。

 遮水シートはなぜないのかということで確認をいたしましたところ、群馬県が出した資料、このときに許可をした関連資料があるんですが、次の理由から遮水シートの施工は必要ないとしたと。一つは、砒素を含む中和生成物は、もともと自然状態の河川水に含まれていたものが中和過程で取り込まれたものであること、二つ目、この処分場自体がダム湖の上流部に設置されるため、結果、遮水シートがなくても、浸出した水はすべてダム湖に集まるということ、さらには、確かに砒素が基準を超えた年があるが、周辺河川の水質状況はそれを大きく上回る状況にありますので問題ないと判断をされたと承知をしております。

熊田委員 今、群馬県からの資料で本来の河川に戻るということでございましたが、吾妻川の砒素、私が確認したところは、昭和四十五年に上流の硫黄鉱山を掘削した折に万代鉱という源泉から湧出をした、これが原因になっている。本来もともとこの川に昔からあったのではなく、昭和四十五年から湧出をして、そして昭和六十年ごろより急激に濃度が高まっている、これは上智大学の木川田教授の論文にも書かれており、判明しているところでございます。

 そういった意味では、本来の川にあったものではないのではないか。そして、昭和六十年から急に濃度が高まっている、こういった状況が明らかであるはずでございます。

 それを踏まえた上で、お手元にお配りをした資料でございますが、平成二十一年二月二十日、大宮ソニックシティで開催されました平成二十年度吾妻川水質改善対策検討委員会で配付された資料でございます。その資料一の二にありますように、品木ダムの中の砒素濃度のデータがその時点でついておりますが、平成元年十月の計測値、すなわち、まだ砒素濃度が高まり始めたころのデータを使って平成二十一年に論議をしています。

 しかし、資料二にありますように、国交省は、平成二十年ダム湖堆積物等調査分析業務、地質調査・分析結果報告書というものを作成しています。すなわち、この時点で平成二十年の最新の調査を持ち、砒素汚染がさらに悪化をしていたことを把握していた。にもかかわらず、砒素汚染がまだ進んでいないときの分析データでこの分析の有識者会議を行った、検討委員会を行ったということでございます。先ほどのC土捨て場ともつながるのかもしれませんが、こういった部分で、非常にずさんではないか。

 ちなみに、資料一の二の方を見ていただければわかりますが、平成元年時点では、砒素濃度は一番高い部分でも六百五十から二千ミリグラム・パー・キログラムでございますが、二の四を見ていただければわかりますが、GL二・〇メーターのところでは、最も濃いところ、砒素濃度は五千三百ミリグラム・パー・キログラムになっております。これは環境基本法十六条に定められた農用地における砒素の環境基準十五ミリグラム・パー・キログラムの三百五十倍以上の高濃度になっています。

 こうした形で、二十一年二月における検討委員会において、二十年のデータが存在しながら平成元年のデータしか有識者に見せずに検討を行うというのは、意図的な情報操作すら感じさせる部分がございます。前政権時代、八ツ場ダム建設を前提にした議論を行う余り、把握できていた客観的データすら隠ぺいして、都合のいいデータによって都合のいい結論、すなわち、ダム建設へと議論を誘導していった、こう思われても仕方がないような進め方であったのではないでしょうか。

 先ほどのずさんな体質、甘えの体質も含め、これだけ巨大なダム、そして大きな影響を持つものをこうした形で客観的データを隠ぺいしながら進めていくという姿勢は、私は、非常に大きな問題がある。この前政権時代の国交省の姿勢、先ほど前原大臣が、今後しっかりとデータはオープンにしていくということでございましたが、改めて、かつてのこの状況についての所見と、そしてまた今後の本来あるべき姿に対しての見解をお伺いできないでしょうか。

三日月大臣政務官 さまざまな観点からこれまでの問題点を御指摘いただいております。

 今委員お示しの資料一の一は二月二十日に行われたもので、資料二の一以降にある分析結果は二十一年三月にまとまったもので、その時々の時系列で最新のものでこうした説明や報告が行われていたのかということについては、再度私どもでも調査をしたいと思います。ただ、いずれにしても、砒素というのは、火山のある我が国の列島において、自然界にもあるし、そこからわき出てくる水だとか温泉水にも高濃度で含まれる傾向があるということを承知しております。

 いずれにいたしましても、こうしたデータ、またそのデータに基づく評価がきちんと公表されていなかったことにやはり問題があると思いますので、これまでの委員会の村井委員初め多くの皆様方の御指摘によって、調査したデータ、それに基づいて行った評価はきちんと公表していこうということを前原大臣の指示で行っているところでありまして、引き続きその体制をしっかりと整えてまいりたいというふうに思います。

熊田委員 今、その時点での最新データであったかどうか確認をいただけるということでございましたが、私が昨日確認した段階では、少なくとも平成十六年、十七年は調査結果が出ていたということでございますので、そういった部分も含めて、しっかりと、本当にしっかりと確認をしていただきたいと思います。

 あわせて、今言った問題、体質としての問題、そしてまた今後国交省がどうあるべきかという部分、前原大臣の所見をぜひお伺いさせていただけたらと思います。

前原国務大臣 熊田議員が大変よく調査をされて御質問されていることに敬意を表したいと思います。

 その熊田委員の御努力も踏まえて、しっかりと我々は、砒素の情報そして沈殿物の濃度を含めたあらゆる情報を適宜情報公開していきたいと考えております。

熊田委員 ありがとうございます。

 本当に安全対策という意味においても大切なことであると考えますが、同時に、これは一事が万事だと私は思いますが、こういった体質の中で、八ツ場に限らずさまざまなダムあるいはいろいろな事業が、時の政権の思惑か何かわかりませんが、そういった中でデータが隠ぺいをされたりあるいは客観的な判断ができない形で進んでいく、これは今後あってはならないことだと考えます。

 そういった意味で、ぜひ、深刻な危機意識を持ちながら、せっかく政権交代したわけでございますので、過去のそういった部分に決別をし、改めて進んでいっていただけたらと思います。

 そしてまた、安全対策のために、私は、今後こういったものを、今、三日月政務官が一層の調査をしてくださるとおっしゃっておりましたが、どのように事実を把握してきたか、これを、全体を率直に国土交通委員会に示していただく、報告をしていただくということを委員長にお願いさせていただきまして、時間が近づいてまいりましたので、私からの質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

川内委員長 ただいまの熊田君の申し出につきましては、三日月政務官の方で事実関係を早急に調べていただいて、いつデータが整っていたのか、二十一年の二月とそれから二十一年の三月との関係をしっかり当委員会に御報告を早急にいただきたいというふうに思います。

 熊田篤嗣君の質疑を終了いたしました。

 次に、中島正純君。

中島(正)委員 民主党・無所属クラブの中島正純でございます。

 本日も、八ツ場ダムのことについて御質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 私は元捜査二課の刑事だったという経験から、談合捜査のプロとして、八ツ場ダム工事にはさまざまな疑念を抱いております。先週の二十四日にも、八ツ場ダムの談合の疑いに対する質問や、工事受注業者から議員に対する献金の道徳性についての御質問などをさせていただきました。そしてまた、きょうは、大きな問題点が見つかりましたので、御質問をさせていただきたいと思います。

 問題点といいますのは、一般競争入札方式を行っているのに、二年間で、二年間といいましても、正式に言えば二年もなく、約二十二カ月間で百三十六件中四十四件の工事が一者応札であったということがわかりました。そして、その落札率も、最高が九九・九%というものもありました。そして、この四十四件の平均をすると九六・一一%という、考えられないような高い落札率で競り落とされているということです。一般競争入札で一者しか入札がされず、その会社が九九%というような高い確率で落札するという、聞いたことのないような異常な状況が明るみになりました。

 本日の内容につきましても、前政権のもとで行われてきた事業でありますので、本来、前原大臣に質問をすること自体お門違いなことかもしれませんが、この八ツ場ダム事業でこれまで行われてきた実情を全国の皆様に知っていただくためにも、あえて質問をさせていただきます。

 それはなぜか。国民の莫大なる税金が使われているからです。国民の皆様に、これまで行われてきた不透明で疑惑だらけのこの事業をすべてオープンにして、国民の審判を得ようではありませんか。

 前回質問させていただいた後、多くの方から質問内容に対して御支持をいただくお電話をいただきました。それは、やはり国民の一人一人が、納めた税金が適正に使われてきたのかどうかと国民は関心があるのです。この八ツ場ダム事業には莫大な額の国民の税金が投入されております。だから、国民の皆さんの関心というものは非常に大きいものがあります。

 八ツ場ダムについては、昭和二十七年ごろから計画が持ち上がり、五十七年が経過いたしました。最初は総事業費二千百十億円が計上されておりましたが、その後、四千六百億円に増額されました。しかし、そのお金も、昨年末、平成二十一年末時点で既に三千四百三十四億五千万円が使われており、残り一千百六十五億五千万円しか残っておりません。しかし、ダムの本体工事はいまだ何も着手されていない。そして、この一千百六十五億円で完成することも難しい状況になってきている。五十七年間経過して三千四百三十四億五千万円が使われて、本体工事が何もできていない。一体、今まで消えていったこれらの国民の税金はどこに行ったのでしょうか。

 本日も、冒頭、八ツ場ダム問題に関して地元の皆様の御意思を尊重され、意見交換を重ねていらっしゃる前原大臣に敬意を表しながら、建設を中止すべきであるということを前提とした御質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、皆様方のお手元にお配りしている資料をごらんいただけますでしょうか。

 資料一は、国土交通省関東地方整備局公表の入札結果データをそのまま活用し、その中でも一者応札のみをピックアップして、それに落札率を入れさせていただきました。

 まず、表紙に、「八ツ場ダムにおける「一社応札」三二・四%」、百三十六件中四十四件と書いております。これは、関東地方整備局管内で契約締結された予定価格が二百五十万円以上の工事及び百万円以上の業務について、平成二十年の四月から平成二十二年一月分、約二十二カ月分の、随意契約と簡易公募型プロポーザルを除くというふうになっております。そして、百三十六件中四十四件が一者応札という、考えられないようなことが明るみになりました。

 それでは、一枚おめくりいただいて、中をごらんいただけますでしょうか。

 まず、資料の説明をさせていただきます。左から、番号、これは一体何件あるのかということを一目瞭然でわかっていただくために番号を打ちました。次に、工事名、それから入札日、契約日、それから工種区分、入札方式、入札業者名、予定価格、そして入札結果の一回目、二回目、三回目とあります。そして、その横に落札率。そして、一つ飛ばしまして、備考欄にどこが落札したかということが記載されております。

 そして次に、おめくりいただきまして、資料二を見ていただけますでしょうか。四ページ目の次でございます。これは、つい最近、三月三日の朝刊、東京新聞の記事でございます。このように非常に大きく取り上げられております。「応札一社だけ」ということが明るみになった、そのことがこのように大きく取り上げられました。

 そして、また資料一に戻っていただきまして、この一覧表で見ていただいてもわかるように、直近の約二年弱二十二カ月分で四十四回の一者応札がありました。一者応札をピックアップする前の原本資料で数えると、百三十六回の入札が行われ、そのうち四十四回が一者応札、率にすると三二・四%というような、極めて異常なほどの確率で一者応札が行われておりました。

 このことに関しまして、馬淵副大臣と前原大臣にそれぞれお考えをお聞きしたいんですが、まず、率直な印象で、この表をごらんになっていかが思われるか。また、一般競争入札なのに一者しか入札していない状況が多数ある、このような一般競争入札が現に行われていた、この事実についていかが思われますか。馬淵副大臣から、よろしくお願いいたします。

馬淵副大臣 委員にお答えをさせていただきます。

 委員はかつて談合事案を摘発してきたということで、大変造詣の深いお立場から詳細な調査をされたこうした資料を眺めさせていただきました。

 私も、一者応札ということに関しては問題があるのではないかという声もよく承知しております。しかし一方で、一者応札ということの事情というものも、全府省においてどういう状況かというのも御承知をいただきたいと思っております。政府内における、すべての各省における一者応札の実績値でいいますと、合計で三二%、これは平成二十年度実績でございます。一般競争入札八万三千五百七十九件のうちの三二%、これは各省すべてであります。

 こうした状況があるという数値を見ますと、役務、物品、こういったものに関してはどうしても一者になりがちである。工事という部分が入りますからそこはまた違った数字になるのかというふうに思いますが、国土交通省内における公共事業の中での工事を見ますと、恐らくは平均して二割程度が一者応札というような形になるのではないかと推測されますが、決して好ましいことではないというふうに私も承知しております。

 一方で、競争に付す中で最終的に、結果的に、工事の手持ち量であるとか、あるいは人繰りや機材の調達の問題で一者になったという結果そのものが、絶対にこれを是としないかというと、また別の問題でもあるかなというふうに私は思っております。

 いずれにせよ、問題意識を持ちながら、それこそ委員が御指摘の談合事案となるようなことが決してあってはならない、このように思っております。

前原国務大臣 興味深い資料を見せていただきまして、ありがとうございます。

 今、馬淵副大臣から答弁がありましたように、私自身も、一者応札の比率が高いことは好ましいことではないと考えております。特に、委員にお示しをいただきましたこの資料については、複数の応札者があって、辞退をして、そして一者に決まっていて、それが極めて高い落札率であるということは不自然な感じが私もいたしております。

 先般、委員から、談合があったのではないかという御指摘をいただきまして、我々としては、過去の事例ではございますけれども、前政権の事例ではありますけれども、しっかりと調査をする中で、そういった疑わしきがないかということを、委員のこういった資料をもとにしっかり精査させていただきたい、このように思っております。

中島(正)委員 このような一者しか応札していないという状況になれば、普通で考えれば、やり直しをするとかいうことをしないのかなというふうに思うんです。

 大臣政務官にお伺いいたします。一般競争入札で一者しか入札がなかった場合、もう一度公募のやり直しをするなど、そのようなことは普通は行われないんでしょうか。

三日月大臣政務官 一般競争入札を実施するときに、当該事業の内容や当該入札に係る工事の実績、営業所の所在地などの入札参加要件を満たす潜在的な入札参加可能業者が競争を行うのに十分な数存在することを確認して、まず公告を行っております。

 また、一般競争入札の場合は、入札者は、他に入札に参加した者がいるかどうか、いるとしてそれがだれであるかを知ることはできません。基本的には、みずからの意思として入札に参加する、しないを決断するものであるから、入札の結果として一者入札であったとしても、競争性は確保されているものと考えて、入札を取りやめることはしなかったということを聞いております。

中島(正)委員 また、この表の中で幾つか注目したい点があります。

 先ほども前原大臣からお話しいただきましたが、入札結果という項目を見ていただければ、辞退という文字が非常に目立ちます。一般競争入札ですから、当然競り落としたいという気持ちを持って参加したのはもちろんのことだと思います。それなのに、なぜ途中で辞退しなければならなかったのかが疑問でございます。

 入札というものは、当然、競争相手が幾らの額で入札したかということはわかりませんから、本当に競り落としたいという気持ちがあれば辞退をしないのではないでしょうか。辞退をして、結局、最終的には一者が残り、落札する、このような状況についていかが思われるでしょうか。副大臣からよろしくお願いいたします。

馬淵副大臣 辞退については、それぞれ各社の状況というのがあるのかと思料されます。また、現実に、一般競争入札という中で、入札書の提出前であれば自由に入札を辞退することができるということにしています。

 これは、私も委員と同じ問題意識を持っておりますが、例えば、入札を辞退するときに何らかの理由書の添付などというものを義務づければ、その辞退の理由というものがより明らかに、透明性が高まるのではないかということも考えたわけでありますが、逆に、これは自由な応札を阻害する要因になりかねないといったことから、一般競争入札の本来の趣旨から外れるのではないか、こうした議論もございます。

 いずれにせよ、これが談合とみなされるような事態があってはならないことは間違いございません。その意味で、この結果も踏まえて、我々としては、一者応札という状況を今後どのように対処していくかということについては、大臣の御指示のもと、取り組んでまいりたいというふうには思っております。

前原国務大臣 一般論として、例えば、一回目、応札をして落とせなかった、あるいは不調に終わった、そして、これ以上切るときついなということでやめるということはあるかもしれませんが、この表を見る限り、議員が御指摘をされるような、すべて納得ができるかどうかというと不自然な点もございますし、先ほどお答えをしたとおりでございますが、過去の入札の経緯についてできるだけ検証していきたい、このように考えております。

中島(正)委員 途中で辞退をされるということについてはそうだとは思うんですが、実は、もっともっとおかしいことがあるんです。

 今から言う番号を見ていただきたいんですが、番号の一番、三番、十番、十三番、三十番、三十五番、三十六番、三十九番、四十番、四十一番、これは戦う前から辞退されております。

 前原大臣にお伺いしたいんですが、相手が幾らの入札を入れているかということは、当然わかるはずがありません。それなのに、戦う前に辞退することは非常におかしいと思います。戦う前から辞退するのであれば、最初から入札申し込みをしなければよかったと思うのですが、いかが思われますでしょうか。

前原国務大臣 あくまでも一般論ですよ、一般論では、事業者は、入札の参加を表明した後であっても、国や自治体が発注する工事等の応札状況を踏まえ、必要となる資機材の調達や技術者の配置が困難となった場合には、入札を辞退することもあり得るのではないかと思っております。

 したがって、一般論としては、一概に、戦う前から辞退したからおかしいということではないのではないかと思います。

中島(正)委員 副大臣と大臣にお伺いいたします。

 このように、私は本当に不透明な入札であるというふうに思います。一者応札について今後調査されるおつもりはあられますでしょうか。

馬淵副大臣 前原大臣が、八ツ場ダムについて、去る二月二十四日のこの委員会で中島議員の質問に答えて、調査を行う旨表明されているところでございます。

 ただ、一方で、捜査権限があるわけではございません。調査ということについては、入札調書、これはもう公知のものでございますので、これらを徴収して調べるということについては取り組みをさせていただきたいというふうに思っております。

前原国務大臣 以前お答えをしたように、しっかりとできる範囲の中で調べてまいりたいと考えております。

中島(正)委員 次に、資料一の八番を見てください。佐田建設というところが一者応札をしております。

 この佐田建設は、自民党佐田玄一郎衆議院議員の祖父に当たる元参議院議員佐田一郎さんが設立された会社で、平成十六年四月まで、佐田玄一郎衆議院議員のお父さんが代表取締役をしていた会社です。

 さらには、資料五を見ていただければわかるように、昨年の八月三十日現在で、佐田衆議院議員が、佐田建設の株を二十二万五千八百七十五株保有しておられます。会社というものは株主のものです。また、資料三のような、八ツ場ダム受注業者からの献金状況もございます。資料四は、その献金業者の受注状況でございます。

 大臣にお伺いいたします。一般的に、ある公共事業の受注業者から多額の献金を集めている議員が、その公共事業の再開を国会質疑で主張することをどのように思われますか。(発言する者あり)

川内委員長 御静粛に。

前原国務大臣 国会議員は、地元から選挙で選ばれてきているわけでありまして、この場で発言をすることはすべて妨げられるものではございません。

 ただ、他方で、これは一般論として申し上げますと、建設業、公共事業を受注している企業から多額の献金をもらうというのはいかがなものかという思いを持っております。

中島(正)委員 だとすれば、大臣にお伺いいたしますが、八ツ場ダム工事の受注をしている佐田建設の株主が、八ツ場ダム受注企業から四百四十六万円の献金を集めている佐田議員が、八ツ場ダムの再開を国会質疑で主張したことをどのように思われますでしょうか。(発言する者あり)

川内委員長 静粛にしてください。ちょっと静粛にしてください。これは出てもらいますよ。(発言する者あり)理事会で協議して認められているんです。

 馬淵副大臣。

馬淵副大臣 先ほど大臣がお述べになられたように、国会議員としてということについては、さまざま倫理観については大臣がお述べになられたところだと思います。そして、株主であることあるいは親族が建設会社を経営されていること、それと、そしてまた一方で議員の質疑権ということについては、これは全く区分して考えるべきものではないかというふうに私の方は思っております。

 質疑権に関しましては、先ほど大臣もお述べになられましたが、これは国民に選ばれた国会議員として衆議院規則において守られたものであり、固有の権利である、このように考えております。

前原国務大臣 あくまでも一般論で申し上げるわけでございますけれども、我々議員がやはり厳に慎まなくてはいけないのは、業界団体からの要望とかあるいはお世話になっているところからの要望をそのまま国会で、質問をその立場に立ってするということはよくないことであるし、ましてや、そういったところからの献金があれば問題になる可能性もあるわけでありまして、そういったところの、いわゆる政治家としての矜持が問われる問題ではないかと考えております。

中島(正)委員 次に、資料六をごらんになってください。

 小渕優子衆議院議員についても、一覧表のとおり、八ツ場ダム受注業者、いわゆる公共工事受注業者から八百七十三万円も総支部と関連団体に資金を集めている小渕議員が、八ツ場ダムの再開を国会質疑で主張されたことについて、どのように思われますでしょうか。

川内委員長 時間ですので、短く答弁してください。

前原国務大臣 国会議員は議場ではその発言について制約は受けないというふうに私は認識をしておりますが、一般論として、公共事業を受注している企業から多額の献金をもらうことはいかがなものか、そういう思いを持っております。

中島(正)委員 ありがとうございました。以上で終わります。

川内委員長 中島正純君の質疑を終了いたしました。

    ―――――――――――――

川内委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 国土交通行政の基本施策に関する件、特に八ツ場ダム問題等について調査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十三分散会


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