衆議院

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第3号 平成20年4月10日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十年四月十日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 山本  拓君

   理事 小杉  隆君 理事 近藤 基彦君

   理事 高木  毅君 理事 葉梨 康弘君

   理事 古屋 圭司君 理事 内山  晃君

   理事 末松 義規君 理事 江田 康幸君

      赤城 徳彦君    今津  寛君

      遠藤 武彦君    鍵田忠兵衛君

      木原 誠二君    薗浦健太郎君

      冨岡  勉君    西本 勝子君

      萩原 誠司君    安井潤一郎君

      山内 康一君   山本ともひろ君

      若宮 健嗣君    北神 圭朗君

      園田 康博君    高山 智司君

      鷲尾英一郎君    漆原 良夫君

      笠井  亮君

    …………………………………

   外務大臣         高村 正彦君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (拉致問題担当)     町村 信孝君

   内閣府副大臣       山本 明彦君

   総務副大臣        谷口 隆義君

   法務副大臣        河井 克行君

   外務副大臣        小野寺五典君

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長)

   (内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長)    河内  隆君

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題対策本部事務局政策企画室長)  山元  毅君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    池田 克彦君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            河野 正道君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 高橋 正樹君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 二階 尚人君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    倉吉  敬君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    北田 幹直君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 水上 正史君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            齋木 昭隆君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 永長 正士君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            城野  功君

   参考人

   (静岡県立大学国際関係学部教授)         伊豆見 元君

   参考人

   (読売新聞東京本社編集委員)           宇惠 一郎君

   参考人

   (早稲田大学国際教養学部教授)          重村 智計君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          堤  貞雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  岡下 信子君     冨岡  勉君

  木原 誠二君     安井潤一郎君

  萩原 誠司君     山内 康一君

  渡部  篤君     若宮 健嗣君

同日

 辞任         補欠選任

  冨岡  勉君     岡下 信子君

  安井潤一郎君     木原 誠二君

  山内 康一君     萩原 誠司君

  若宮 健嗣君     西本 勝子君

同日

 辞任         補欠選任

  西本 勝子君     渡部  篤君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 本日は、参考人として、静岡県立大学国際関係学部教授伊豆見元君、読売新聞東京本社編集委員宇惠一郎君及び早稲田大学国際教養学部教授重村智計君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順について申し上げます。

 まず、伊豆見参考人、宇惠参考人、重村参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御了承をいただきたいと存じます。

 そして、きょうのお一人、重村参考人は、交通の関係で若干おくれますので、御了承いただきたいと思います。持ち時間には間に合うそうでございます。

 それでは、伊豆見参考人にお願いいたします。

伊豆見参考人 静岡県立大学の伊豆見でございます。本日は、貴重な機会を与えていただきまして、感謝申し上げております。

 お時間も限られておりますので、今後の動きの中で注目される点といいますか、少し先のお話で、二点ほど申し上げたいというふうに思っております。

 最初は、いわゆる北朝鮮の非核化を目指すための六者会合のプロセスが、進んでいるといいますか、今停滞している状況でございますが、第二段階の措置という中での、とりわけ北朝鮮の核計画の申告という問題をめぐって、もう既に三カ月以上、最初に決定された十月四日の合意からしますと三カ月ほどおくれが出ておりますが、そろそろ、この第二段階をめぐる、すなわち北朝鮮の核計画の申告をめぐる問題が決着をし、第三段階に移るという可能性が今見えてきたかと思います。

 御案内のように、四月八日にシンガポールで、米朝のそれぞれの六者会合首席代表による協議が開催されました。アメリカはクリストファー・ヒル国務次官補、北朝鮮は金桂冠外務次官がそれぞれ首席代表を務めておりますが、二人が協議をいたしまして、今回の協議はそれなりの進展があったかということが伝えられております。

 実は、今回の四月八日の米朝協議というのは、二月十九日の北京、そして三月十三日のジュネーブにおける米朝協議に続く、ことしに入りまして三回目に当たる協議でございますが、ようやく北朝鮮がいわゆる妥協モードに入ってきたかということがうかがわれるかというふうに思います。

 二月十九日の北京における米朝協議では、双方全く立場を変えず、何ら進展がないというような状況でございました。その後、三月十三日のジュネーブにおける協議では、アメリカが最大限の柔軟性というものを北朝鮮に対して提示をいたしましたので、それを受けて、今回、四月八日に協議が持たれたわけでありますが、アメリカの方からの最大限の柔軟性、言いかえれば譲歩という、その幅がもう既に提示された後でもありますので、いよいよ北朝鮮側も、自分も譲歩をするということを考えつつ、妥協できる点というものを探って動き始めたということだろうと思います。

 したがいまして、この申告の問題は、かなり技術的に複雑なことがたくさんございますけれども、いずれ近いうちに妥協が米朝間で成立し、その後六者会合が開かれて、第二段階を終え、第三段階の、北朝鮮のいわば非核化のための措置という段階に進む可能性というものが今見えてきたと思います。早ければ、四月十五日だったと思いますが、韓国の李明博大統領が訪米いたします、訪米の後、日本にも立ち寄られるわけでありますが、その李明博訪米の前に、米朝間の申告問題についての妥協というものが成立するという可能性も排除できない状況になってきたと考えております。

 問題は、申告の問題が一応、妥協するといいますか、一たん片がつくということになりますと、アメリカはそれに対する見返りの措置をとるということでありますが、これはテロ国家指定、そこから、指定から除外することがありますし、もう一つは、敵性国貿易法、TWEAといいますけれども、その適用を終了させるという措置をアメリカはとる約束をいたしておりますけれども、それが、今回の北朝鮮側の申告の問題が片づくとほぼ時を同じくして実施されるんであろうというふうに考えられるということでございます。

 テロ国家指定に関しましては、以前、かつてアメリカは相当強く北朝鮮に対して、少なくともよど号の関係者あるいは犯人を日本側に引き渡すこと及び拉致問題に関する再調査というものを要求いたしておりましたが、この二つが実現しないままに恐らくアメリカはテロ国家指定というものを解除するという方向に動くものと現在では予想されます。

 しかし、この点で我々いま一度確認をしておかなければいけないと思いますのは、この拉致問題について大きな進展等がないままにアメリカがテロ国家指定から北朝鮮を除外することが拉致問題に相当大きなマイナスになるということは、私は基本的にはないというふうに考えております。

 まず第一に、アメリカが、このテロ国家指定の一つの理由として、日本の拉致問題の進展がないということを明確にいたしましたのはたしか二〇〇三年以降であったかと思いますが、そのように、アメリカがテロ指定国家の問題と拉致問題をきちっとリンクさせるということをやった後、そのことによって拉致問題が進展したということは基本的には何も認められない。逆に言いますと、したがって、今回アメリカがテロ国家指定から北朝鮮を除外するとしても、それによって拉致問題にマイナスということにはならないであろうと考えられることが第一点であります。

 それと第二点に、アメリカが常に、これは、ヒルが金桂冠と会うときには必ず提起しておりますのは、日本の拉致問題を必ず提起し、日本側の立場に立って、日本側の関心、要求にこたえるように北朝鮮に対して常々訴えかける、主張するということをアメリカはこれまでもしてまいりましたし、今後もそれを続けるということが考えられるということでございます。

 これは、報道が継続されているわけではありませんので余り知られていないことなんだろうと思いますけれども、しかし、アメリカ側はこの問題を常に提起し、常に日本の立場を北朝鮮側に対して主張している。このようなことをやっている国は世界じゅうにアメリカ以外どこもございませんので、アメリカのそういう形の協力は今後も引き続き我々は受けていくといいますか、その協力を得られるということがございますので、テロ国家指定から北朝鮮が除外されても、それによって特に拉致問題が後退するということにはならないのであろうと思います。

 いま一つの話は、日本のいわば独自の経済制裁でございますが、もうこれは、恐らく明日閣議決定があり、四月十三日からのまた六カ月間の延長ということが決められるのであろうかと思いますが、これは当然ということになろうかと思います。

 この経済制裁は、二〇〇六年七月の北朝鮮のミサイル発射を受けてまず第一次の制裁が始まり、そして、十月の核実験を受けて第二次の全面的な制裁ということが発動されて現在に至っておりますが、そこでは、我が国政府は、諸般の情勢を勘案して経済制裁を北朝鮮に発動するということをうたっております。

 この諸般の情勢の中にはもちろん、ミサイル、核そして拉致という主要な問題、三つ、大きな問題がございます。この三つの問題について特に目に見える進展がないという現状下では、これは延長ということになるのは当然だと思いますが、しかし、この制裁の目的ということを考えてみますと、やはり、日本側が問題にしている点について明確な進展、あるいは明確な北朝鮮の姿勢の変化というものを求める必要があるというのも当然だと思います。

 核問題につきましては、六者会合のプロセスの中で日本側の立場も明らかにしておりますし、進展ということが何であるかということも我々は理解できるわけであります。

 ただ、問題は、一つはミサイルでありまして、北朝鮮は確かに二〇〇六年の七月五日以降ミサイル発射をいたしておりませんが、しかし、ミサイル発射をしないというモラトリアムを再び宣言したわけではありません。二〇〇二年九月の日朝平壌宣言の中にも、北朝鮮はミサイル発射のモラトリアムというものを約束しておりましたので、これを、きちっと北朝鮮からモラトリアムという約束を取りつけるということが一つ、経済制裁を解除といいますか、経済制裁の一つの目的を達成するという意味で必要であろうか。しかし、この点が今等閑視されているということは私は非常に遺憾だと思います。

 さらにもう一つ、拉致問題につきましても、どのような進展が必要とされるのかということも明確にすることがやはりこれからは重要になってくるのであろうというふうに考えられます。

 もちろん、制裁は延長いたしますと六カ月間の期間でありますが、その制裁の目的というものが達成されればそれを解除することはいつでもできることでありますので、やはり制裁の目的というものをより明確にし、その目的が達成されたときに解除をするという方向に動くべきであろうかと思います。

 そして、この点につきましてもう一点だけ申し上げさせていただきたいと思いますが、制裁はそのまま維持しつつも、私は、その中の一部の項目でありますが、渡航自粛というものは解除すべきではないかというふうに考えております。これは、やはり日本から人が行き、日本の立場、日本の考え方というのを北朝鮮に正確に伝えるということが必要でありますし、また、北朝鮮側の考え方というものを聴取して戻ってくるということも必要であろう。

 現在、御案内のように、アメリカではそういう動きが相当たくさん頻繁にございますし、アメリカのモートン・アブラモウィッツという大使経験者を団長とする訪朝団が、本日から十二日までまた平壌を訪れるということもございます。こういうものを通じて、アメリカ側は、アメリカの立場、主張というものを北朝鮮に伝え、そして北朝鮮の考え方を聴取するということをやっておりまして、それがやはり北朝鮮との交渉には不可欠、あるいは非常に有効なものだと私は考えておりますので、日本にもそういうことが求められるのではないか。

 そういう点では、経済制裁を維持しつつも、その中の一部、国民の渡航自粛というものだけを解除しまして、我々の主張をきちっと北朝鮮に伝え、北朝鮮の考え方もきちっと踏まえるというような方向に持っていくことが必要ではないかと考えております。

 お時間になりましたので以上とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、宇惠参考人にお願いいたします。

宇惠参考人 貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。私、記者なりのこの問題に関する見解を述べさせていただきたいと思います。

 全般の情勢については、ただいま伊豆見教授の方からるる説明がありましたけれども、若干敷衍して説明させていただきますと、まず、米朝協議の進展については、結果的には妥協の方向へ大きく動いているという見解については伊豆見先生と意見を異にするものではありません。

 結局、細かな内容についてはまだ表には出ていませんけれども、昨日、北京においてヒル米国務次官補が記者団に対して語ったところによると、進展はあった、ただし、まだ、第二段階を終えるのにやるべきことは残っているという見解。そして、昨日夜になりまして、北朝鮮の外務省が出している、外務省のスポークスマンの見解でありますけれども、それは、今回の協議において、政治的補償措置と申告の問題について米国との間で見解の一致を見たということをうたっております。それで、こうした米朝協議、二国間の協議のあり方が非常に効果的であるということを示したものだと勝ち誇ったような言い方をしているわけですけれども。

 両者の意見を総合しますと、やはり、妥協に向けてアメリカが譲った部分について北朝鮮は受け入れる、すなわち、具体的に言いますと、問題になっているウランの濃縮の問題と、シリアとの核協力、すなわち核拡散の問題に関しては別文書の形で切り離して、いわゆるプルトニウム型の核開発の申告の問題と一定程度の切り離しを行うということについては合意を見たと見て間違いないんだろうと思います。

 あと、問題は、ヒル次官補も、要するに時間、タイムのことをきのうのブリーフィングでもしつこく言っているわけですけれども、アメリカにとっても、十一月の大統領選挙を踏まえると、もう残された時間というのは余りない。片や、北朝鮮にとってみれば、米国内では、もうブッシュ政権を相手にしないという態度に出ているんじゃないかという見解もこの間流されたわけですけれども、結果的には、九月九日に建国六十周年という記念日を迎える、正月の共同社説でも強くその重要性を訴えておりますので、そこでやはり外交的な成果というのを彼らなりに国内外的に示したい。そういう意味では、およそ、逆算していくとそろそろ今月、妥協するなら妥協の時期に入ったと見るのが妥当だろうと思います。

 そして、朝鮮半島をめぐります情勢でもう一点重要な動きというのは、昨日の韓国の総選挙において、ことし二月に政権が発足しました李明博大統領、与党のハンナラ党が辛うじて過半数を確保した。これまで第二党の位置にありましたので、これはやはり新政権の安定に向けては大きな要素になると思うんですね。

 それで、これまでの盧武鉉の政権は、ともすれば米韓及び日韓の間で摩擦を、特に対北朝鮮政策についてあったわけですけれども、およそ、なべて言いますと、日本と余り大差のない物の考え方で対北政策を展開してくるだろうということで、今後、近くあります大統領の訪米、そしてその帰途、日韓の首脳会談もあります。その際にどういうすり合わせをして、それが六カ国協議での日米韓の連携にどうつながってくるかということで、非常に重要な動きだろうと思われます。

 さて、それで、日本が北朝鮮にとっています制裁措置の問題についてでありますけれども、これはやはり原点に戻って、制裁のまず目的、そしてその制裁の効果について冷静な判断というのが必要になってくるんだろうと思います。

 恐らくあすの閣議でその三度目の延長ということは、これは拉致問題の進展及び国民感情ということを政府は言っていますけれども、それを考えると、やはり大きな進展がない中ではその延長というのは当然のことだろうと思いますが、ここで注意すべきは、制裁のための制裁ではなくて、少なくとも、拉致問題の進展、さらに、初回、二〇〇六年の十月の核実験を北朝鮮が実施したことに対する制裁の措置としてとられている、その前にはミサイルへの措置で一次措置はあるんですけれども、ミサイル、核の問題でとられているという原点からすると、やはりこれは、六カ国協議で一定の進展を見た場合にこのままでいいのかという議論が、当然、国内だけではなくて、六カ国協議の場も含めて問われてくる事態が近々に生じるだろうということを念頭に置く必要があると思います。

 そうすると、制裁措置が、まさに北朝鮮の国際協議の場への復帰及び核問題での真摯な態度というものを引き出す一つの目的があったとすると、それとこれをどう連携させるのか。そして、日本人としては看過することのできない拉致問題との関係で、この問題を、どの時点でどういう形で北が対応をとれば、どこまで段階的に解除していくことができるのかという道筋を北側にきちっと示す必要があるんだろうと思います。

 いわゆる核、ミサイル、拉致の包括的解決を目指している日本としては、そのすべてが片づかないとだめということになると、これは恐らく、要するに、彼らを対話の場に引き出すという目的よりも、まさに制裁のための制裁になってしまう。まさに拉致問題の進展をさせるためにも、道筋というのをきちっと示す必要があるんだろうと思います。

 さて、それで、北朝鮮が日本に対してこの間非常にかたくなな態度を崩していないわけですけれども、今後どう動くかということを考えてみますと、一つは、米朝協議を受けて、六カ国協議で第二段階の終了に向けて、恐らく、数日ということはないでしょうけれども、数週間の間には大きな動きがあるんだろうと思われます。

 その際に、では、北がそれに連動して、今強めています対日批判及び対韓国批判を控えて全面的対話の道に出るのかというと、どうもそうは思われない。逆に言うと、六カ国協議でのそごを来している原因というのは一つは日本にあるんだという物言いをしてくるんだろう。もう一つは、南が、二〇〇〇年の六月の南北共同宣言及び昨年十月の共同宣言に盛り込まれている、南北の和解及び具体的には経済協力の問題について前向きな態度をとるべきだということで、今回の総選挙の結果も踏まえて揺さぶりをかけてくるんだろうと思われます。

 さて、それでは、そうした北朝鮮の態度が日本にとって不利なのかというと、そうではなくて、彼らは、米朝を動かすだけではなくて、やはり日朝の問題を動かさない限り最終的な解決には至らないという認識は持っているんだろう。ちょうど二〇〇六年の七月のミサイル発射の際に私はたまたま別件で平壌におったんですけれども、そのときに、日朝交渉大使の宋日昊氏は、一定程度、あの時点でのミサイル発射ということについては日朝にそごを来すという若干の混乱を見せていた感じがします。彼らにしても、やはり日朝は動かしたいけれども、動かす理屈が今のところないということなんだろうと思います。

 それで、それを考えるに、お手元にお配りしてあります各種の文書、表裏ありますけれども、六カ国協議に関する二〇〇五年の九月以降の三つの文書の中で、日朝問題については、いずれも日朝平壌宣言に基づきという表現で盛り込まれていて、やはり日朝を動かすには平壌宣言の重要性ということをもう一度認識する必要があるんだろう。

 裏側にその平壌宣言の全文を書いておりますけれども、その中でもやはり、拉致の問題について、微妙な言い方ではありますけれども、「今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。」まあ、「今後」についてはそうですけれども、過去に現実に拉致された人間、及びそれを一部死んだと言って死んだ確認がなされていないという現状について、やはり日本側は強く北朝鮮側の対応を促す必要があるんだろうと思います。

 その具体的な方法については、では、進展がないから一切の交渉ができないという立場ではやはり何も動かないわけでして、やはり日朝平壌宣言に基づいて日朝が協議を再開するという方向に北朝鮮を追い込んでいく必要があるんだろうと思います。

 当然のことながら、彼らにしてみれば、経済的な利得を得るためにも、日朝平壌宣言の前段に書いてあることというのは彼らは無視するわけにいかないわけで、恐らくそこのところにこだわっても日朝の再開ということを彼らは期待してくるんだろうと思われます。

 それで、先ほど伊豆見先生から指摘がありましたように、私も、この日朝平壌宣言を再度見直してみますと、その最終段にありますミサイル発射のモラトリアムのくだりというのがやはり一つ重要な問題だろうと思います。

 これは、ミサイル発射を二〇〇六年七月に行って以降、日本の制裁措置というのは強化されてくるわけですけれども、現実に、彼らは平壌宣言に違背する行為をあの段階で行ったことは間違いないわけで、そのことについて、彼らの説明は、宋日昊大使の説明によりますと、日本側が敵対行為をするからだという。これは理屈にもなっていないわけで、やはり入り口のところで日本が要求する行為としては、まず、ここに盛り込まれているミサイル発射のモラトリアムについて再度確認させ、現実にしないと約束をもう一度させる。

 それから、もう一つ重要な点は、拉致の再発防止の確認もいいんですけれども、現実に、死んだと彼らが言っている、あるいはそのほかにも隠されている部分があるんだろうと思われる部分について、これは、出せと言っても彼らはないと言う。これだけではしようがないので、やはり、ひとつ再調査を日本側で行うということについて北朝鮮に強く訴えかけながら、現実に日朝で動きが出れば、その後には、彼らが期待する、彼らが補償措置と言っている戦後の清算の問題について日本側は話し合う余地があるということをインセンティブとして強く訴える必要があるんだろうと思います。

 以上、私の見解を述べさせていただきました。(拍手)

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、重村参考人にお願いいたします。

重村参考人 委員長並びに委員の皆様、本日は、北朝鮮に関する拉致特別委員会で意見を述べる機会を与えられましたことを感謝しております。短い時間でありますけれども、拉致問題解決のために、委員の皆様の参考になるお話ができればと考えております。

 さて、最近の北朝鮮をめぐる情勢は大きく変化しました。その変化をもたらしたのは、韓国での李明博大統領の当選です。それに、北朝鮮の国内事情の悪化です。

 李明博政権の誕生で、韓国と北朝鮮の関係は緊張しています。新政権になっても南北関係に変化はない、南北交流は拡大するとの見通しも語られましたが、事実上これは間違いでした。シンガポールで行われた米朝の話し合いはなお成果を生み出していません。また、昨日の韓国の国会議員選挙では、与党ハンナラ党が過半数を獲得しました。来週には米韓首脳会談が行われます。二十日と二十一日には日韓首脳会談も行われます。朝鮮半島をめぐる国際関係は激変しようとしているというのが現実です。

 結論を先に言いますと、北朝鮮は、内外ともに厳しい状況に直面しています。

 北朝鮮については、北朝鮮の内部情報や平壌の内部事情を確認せずに、根拠を示さない論議がしばしば行われてきました。また、北朝鮮を取り巻く内外の情勢を理解せずに、根拠のない主張がよく見られます。例えば、新聞報道や政治家の発言に、しばしば、日本外交行き詰まりという表現が見られますが、これは、大きな間違いか、北朝鮮の工作に乗せられていると指摘せざるを得ません。外交的に行き詰まっているのは北朝鮮であって日本ではないという事実がわかっていない。

 また、北朝鮮と話し合えとの主張があります。これはもっともな主張のようですが、話し合いを拒否しているのは北朝鮮であるという事実を忘れてはならないのです。日本は、問題は話し合いで解決するとの立場を明らかにしていますし、拉致問題について話し合うのならいつでも応じるとの立場を示しています。経済制裁は、北朝鮮との対話を拒否するために行っているのではなく、対話を引き出すための外交カードとして使っているわけです。

 ただし、経済制裁は、経済制裁する、すると言っておどして譲歩をとるのが一番の目的なんですが、それができない場合に、経済制裁をした以上は、途中で成果もないのに経済制裁を解除すれば、結局は北朝鮮側の理に乗せられるということになる。経済制裁をした以上、一定の成果が出ない限りは続けるしかないというのが、これは経済制裁の基本的な戦略でありまして、理由もなしに解除するのは、結局は日本外交の敗北だということになるだろうと思います。

 さて、まず平壌の内部状況について御説明してみようと思います。

 北朝鮮は、ことしの新年共同社説で、一昨年の核実験について全く言及しませんでした。これは異例なことです。昨年は大々的に核実験の成功と抑止力に言及しました。核実験の成功は金正日総書記と軍の偉大な成果であるはずですが、それに全く言及しなかった。これは、核実験をめぐる軍の立場が後退したか、内部での評価に変化があった事実を示していると言わざるを得ません。北朝鮮は二度と核実験ができない状況を理解していると見るべきではないでしょうか。

 これはまた、軍の発言力が以前よりもやや低下している事情を示唆していると思われます。

 平壌の内部は、現在、四人の実力者とその勢力が勢力争いを展開しており、不安定な状況にあります。その実力者は、中国の全面的な後押しで復帰した張成沢行政部長と、金永南最高人民会議常任委員長、呉克烈党作戦部長、李済剛組織指導部第一副部長の四人です。この勢力争いは今もなお続いています。このため、中間幹部の人事の入れかえがしばしば起きています。中国は張成沢部長の指導力を拡大させようとしていますが、他の勢力の反発や妨害もあり、期待どおりにはいっていません。

 北朝鮮は、今最大の危機に直面しようとしています。まず食糧が足りません。さらに外貨が極端に不足しています。エネルギーもありません。石油が足りません。

 石油は、昨年のレベルでいきますと、軍事用に使える石油は三十万トンしかありません。全体で、中国からの原油の輸入合わせて百六十五万トンしか昨年は輸入できていません。日本の自衛隊が一年間に使う油の量は百五十万トンですから、北朝鮮全部で、国軍から産業から全部合わせて、自衛隊が使っている程度の油しかないというのが現実なんですね。

 食糧に関しては、昨年の収穫は決してよくありませんでした。最低でも五百万トンが必要なんですが、四百万トンにも達しなかったと言われています。この結果、ことしの米の値段は昨年の倍に値上がりしている。これはやみ市場ですね。この価格の上昇が食糧不足を雄弁に物語っている。

 最大の問題は、韓国の政権がかわり、支援が来なくなったこと。李明博大統領は、核開発を放棄しない限り経済支援はしないと明言しています。人道支援は行うと言っていますが、数量は調整されます。

 韓国では、過去十年間に、政府、民間合わせて約一兆円の北朝鮮支援が行われたと言われています。これまで北朝鮮が日朝交渉に応じなかった理由は、日本側が制裁をしたからではなく、韓国からの多額の援助があったためなんです。日本の経済協力に期待する必要がなかったからなんです。特に昨年は、盧武鉉大統領が任期の末期ということで、政府資金だけで一千億円を超える支援を北朝鮮に行っています。北朝鮮の国家予算は約四千億円しかありません。韓国からの無条件の支援が北朝鮮を支えたと言っても過言ではないのです。それがことしから激減します。北朝鮮は相当な危機に直面します。

 李明博大統領は、北朝鮮が核兵器を放棄すれば、十年後には、北朝鮮の一人当たりGDP、国内総生産を三千ドルにするという復興計画を発表しました。しかし、北朝鮮はこれに反発し、軍事的行動を辞さないと発言しています。しかし、北朝鮮は軍事行動とは言っていない、北朝鮮が言っているのは軍事的行動であるというところにトリックがあるんです。南北関係はしばらく緊張するでしょう。北朝鮮はいつもの瀬戸際外交やおどし外交を展開しようとしていますが、実際には効果がないだろうと思いますし、日本もこうしたおどしに乗せられるべきではないだろうと思います。

 李明博大統領は、韓国の拉致問題や人権問題についても、北朝鮮にはっきり立場を表明しました。また、日本の拉致問題解決にも積極的に協力する意向です。これは、これまでの左翼政権とは全く異なる立場で、日韓の協力が推進されると言っていいでしょう。金大中、盧武鉉政権の十年は、米韓関係は最悪でした。また日韓関係も悪化しました。李明博大統領の登場で、日米韓三国は、同盟と協力関係を十年ぶりに回復することになります。日米韓三国は、北朝鮮に対し、協力した外交を展開することができます。これまで、韓国が北朝鮮と協力して、日本とアメリカに対抗する姿勢を見せたために、日本の拉致外交も、あるいはアメリカの対北朝鮮外交も困難に直面してきました。

 日本は、李明博政権の登場という絶好の機会を生かし、日米韓三国の連携を強化し、拉致問題の解決に取り組むべきです。ブッシュ大統領はもとより、新しいアメリカの大統領に対しても、日本の拉致問題が解決しない限りアメリカも国交正常化しないという方針を要請すべきです。

 さて、最近の北朝鮮の情勢をめぐる情報の中で、金正日総書記の健康状態、あるいは健在なのかというのが常に問題にされますが、関係各国や各国の情報機関は非常に関心を持って情報を集めているわけですけれども、その中で、健康悪化説や影武者説の可能性も指摘されている。金正日総書記に影武者が存在する事実は、十年以上も前に既に確認されています。数人の影武者が存在します。実際に、数人の日本人が影武者と面会し、確認もしています。また、最近の金正日総書記と八〇年代の金正日総書記の声紋が異なる事実も何回か確認されています。影武者の存在とその活動はにわかには信じられないかもしれませんが、多くの疑問が提示されているのは事実です。

 さらに、金正日総書記が八〇年代に何度か東京の赤坂にひそかに姿を見せていた事実も、関係者の証言で明らかになっています。赤坂にあったレストランシアター、コルドンブルーというのがあったんですが、このコルドンブルーに、一九八二年から八九年まで毎年ひそかに出入りしていた事実が、当時の関係者の証言で確認されました。これは本になって出版もされています。これは明らかに不法入国でありました。

 信じられないかもしれませんが、北朝鮮は、拉致を初め予想外のことを行ってきました。北朝鮮に関しては、予想外のことが何でも起こり得るというのが現実なわけです。

 さて、北朝鮮は、南北関係が悪化すると米朝関係改善に乗り出し、米朝関係が好転しないと日朝対話を始めるという振り子外交をこれまでも展開してきました。シンガポールでの米朝会談も、南北関係の緊張を米朝関係進展で乗り切ろうとする作戦の一環と言わざるを得ません。うまくいくかどうかはわかりませんが、ヒルさんはうまくいきそうだと言っているんですが、大体ヒル国務次官補が言ってきたことはこれまで当たったためしがない。我々はうそつきおじさんと言っているんですけれども、国務省の外交官の中であんなに能力のなかった外交官は、私は取材した中で見たことがないと言わざるを得ません。ともかく、北朝鮮は、次はいずれにしろ日朝対話に動き出さざるを得ないという国際環境にあるということです。

 現在、北朝鮮には日本担当の党書記や党高官は任命されていません。日本と話し合う準備ができていません。日朝交渉を担当している宋日昊大使は高官ではありません。北朝鮮では、金正日総書記に直接面会できない人物は高官とは言わないのです。

 ともかく、日本は焦って手を出すべきではないというのが現実です。問題を対話で解決するとの立場を明確にし、原則を譲らないこと。政治家の中には、パフォーマンスで平壌に行ったり、北朝鮮の当局者と会談するような方がおられますが、これは日本外交を最も危うくする行為だと言わざるを得ません。北朝鮮による日本の国論や外交分断に利用されるだけなんです。政治家の皆さんには、過去に北朝鮮とかかわった政治家の中で、国民に尊敬され、政治生命を全うした政治家はいないという教訓を十分に学んでいただきたい。

 時間が来ましたので、終わります。(拍手)

山本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人各位の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原誠二君。

木原(誠)委員 自由民主党の木原誠二でございます。

 本日は、三人の参考人の皆様には、お忙しい中、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。

 二十分という非常に限られた時間でありますので、端的にお伺いをしていきたい、このように思います。

 今、お三人の御意見を拝聴しておりまして、基本的に、今非常に大きな転換点にあると。伊豆見先生、また宇惠参考人からは、妥協の段階に来ているという表現がございました。重村参考人からは、そういう言葉ではありませんでしたけれども、少なくとも、変換点にある、転換点にあるという共通の認識が示された、このように承知をいたしますし、また、日本の独自の経済制裁については、現段階においては延長していくことが適切であるということについても共通の理解があったのかな、こんなふうに思うところであります。

 今政府は、対話と圧力、こういう方針をとっているわけでありますけれども、やはり圧力があって初めて対話に引きずり出すことができるわけでありまして、私自身もまた、今の段階でこの圧力を緩めるという状況にはないのかなというふうに思っております。

 その中で、圧力を相手が感じるかどうかというのは、相手が困っているかどうか、どちらがより困っているかということに尽きるのだろう、このように思いますが、重村参考人からは、今北朝鮮は、本当に、内外ともに、壁にぶつかっているというよりも大変厳しい状況であるという認識が示された、このように思います。

 まず初めに、伊豆見、そして宇惠両参考人から、今の北朝鮮の状況、重村先生は、大変困っているという認識を示していただいたわけですけれども、簡潔に、簡単に御認識をいただければ、このように思います。

伊豆見参考人 北朝鮮が困っているというのは、これはもう間違いないところでありまして、それはずっと続いていることだろうと思うんですが、ことしでいえばとりわけ食糧が、昨年の自然災害の影響で百五十万トンぐらいは足らないんだろうということになりますと、そこが、これから秋の収穫までの間が相当厳しくなるということは考えられると思います。

 ただ、御案内のように、北朝鮮は、それを外からの援助でずっとしのいでくるといいますか、頼ってきたという状況がございます。これがことしどうなるかということであります。

 一つは中国、もちろん食糧の価格が上がっておりますので、中国からも減っているというようなうわさがありますが、これは単にうわさでありますのでわからない。中国からの援助というのが一つある。さらに、基本的には六月末までに金正日総書記が中国を訪問する可能性というのは極めて高く今考えられております、中国側はその準備を始めていますので。ということは、金正日訪中がありますと、中国は、また別途に、従来のレギュラーベースで出しておるのに加えた食糧援助をお土産で持たせますから、それが幾らか考えられるであろう。

 そして、もう一つは、東南アジアからかなり食糧の調達をしているという話がありますが、それがどうなるのか。とりわけベトナムから金正日総書記は招待を受けておりますが、またベトナムに行くということになれば、ベトナムから例えば米のお土産がもらえるということも考えられる。

 そして、最大の問題はもちろん韓国であります。李明博政権がどうするかでありますが、これは、人道援助は続けるという点については李明博政権は発言が全然ぶれておりませんので、私は必ず出すだろうと思います。ただ、昨年のレベルでいいますと、四十万トンの食糧、そして三十万トンの肥料をやったんですね。その水準が維持できるかどうかはわからない。韓国の国内でも、多く出すことについての不満というのはございますので、そこがわからない。

 あとは、アメリカが人道援助ということで準備しています。今、北朝鮮は欲しいと言っていないので出していませんけれども、アメリカからも十万トンぐらいの食糧支援が行く可能性もあるということで、これからいろいろなところから北朝鮮はかき集めてくるという時期になると思うのでありますが、それでどのくらいしのげるかということだと思います。

 いずれにせよ、ことしは相当厳しいということは間違いないと考えております。

宇惠参考人 どのぐらい厳しいかということですけれども、数字でいえば、まさに、ことし百五十万トン足りない。外から、どこかから持ってくるので大体帳じりが合っているわけですけれども。ここ数年の間は南からの援助というのが非常に大きいわけです。

 ただ、振り返ってみますと、九〇年代に、いわゆる飢餓線上にあったと言われる、彼らの表現で言うと苦難の行軍と言われた時期に比べると、当時は食糧生産も二百万トン台まで落ちていたわけですから、それからすると、国家全体として、食えないけれども死ぬほどじゃない。地域的には東北部あたりはかなり食糧が足りなくて、今も栄養失調及び餓死者が相次いでおるという報道等もありますが、かつてに比べれば楽だということが一点。

 それからあと、逆に言うと、日本からの援助がどのぐらいの意味を持つのかということからすると、九〇年代までの状況とは違って、南北がいい、及び中朝の交易が非常にふえているということからすると、日本の存在感というのがその点においてもなくなってくる。

 もう一点言いますと、六カ国協議の枠の中で、北朝鮮が核放棄に向けて行動する、まず、いわゆる第二段階で百万トンのエネルギー及び食糧支援ということがうたわれているわけですけれども、日本は拉致問題があるので拒否している。しかしながら、そのほかの四カ国持ち回りでの援助が続いている限りは、例えば一巡して、その後、日本の番になるところは今度はアメリカに回ってしまうということになると、結果的にはしのいでしまうということになるので、そこのところを、日本が効果的に、これまで大量のものを出していてとまるということであれば影響はあるでしょうけれども、そういう事態にはなっていないという認識が必要なんだろうと思います。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 困っていることは確かであるけれども、しかし救いの手はいろいろなところにあるよ、こういう御認識かな、このように拝聴いたしました。しかし、いずれにしても、何らかの形で、困っている中で北朝鮮が妥協に向けて動き出してきた、こういうことであろうというように思います。

 私がいつも懸念いたしますことは、困ってきたときにそのまま放置ができればいろいろな意味で圧力が加わっていくわけですけれども、瀬戸際外交と言えるのかもしれませんけれども、困った段階で、一番弱いところをついて生き延びていく、今回は恐らく米朝会談というところにその活路を見出しているんであろう、このように思います。

 伊豆見先生からは、最終的にはテロ支援国家指定解除までいくのではないか、恐らくいくであろう、こういうことであったというように思いますけれども、私自身は、完全かつ正確な申告ということを考えると、査察ということも含めて、相当程度の期間がないと指定解除というところにはいかないんではないかな、これは楽観的にこう思うわけでありますけれども、重村参考人、いかがでしょうか。

重村参考人 テロ支援国家指定解除についてはかなり難しいと言った方がいいだろうと思いますね。

 その理由は、ヒル国務次官補はかなり早い段階で解除したいというふうに思っていた、ライス国務長官も思っていたんですが、ブッシュ大統領が、安倍総理、福田総理との会見で、自分が最終的に決める、これは自分が日本と協議して決めるというふうに言っているものですから、決して簡単ではない。仰せのとおりだろうと思います。

 それからもう一つ、なぜ北朝鮮はテロ支援国家指定を解除してほしいと言っているのか、その理由をよく理解しておいていただきたいんですが、その理由は、現金収入が入ってくるからということなんです。

 実は、北朝鮮は中国との間で、海底油田の掘削協定を中国のペトロ中国、ペトロチャイナが結んでいるんですが、この際に、三十五億ドルの掘削料を支払うという約束なんです。実施直前まで行ったんですが、中国政府が、テロ支援国家指定が解除されない限り認めないと言った。つまり、テロ支援国家指定解除がないと三十五億ドルが入ってこない。それから、中国のいろいろな企業が開発しようとしている地下資源の開発ができない。

 逆に言うと、テロ支援国家指定を解除すると、北朝鮮は数十億ドルの資金が一遍に入ってくる。ということは、日朝正常化問題あるいは拉致問題を解決しない、拉致問題を棚上げにしてしばらくは生き残るということになるので、テロ支援国家指定解除の問題は拉致問題と極めて密接に関連した問題だ、これは解除すべきでないとやはりアメリカに言うべきだろうというふうに私は思います。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 重村参考人おっしゃったとおり、私自身も、この拉致事件、拉致の問題というのは深刻な主権侵害でありますし、日米同盟のよって立つ、人権という共通の意識に立っているんだろうと思いますから、我々として、今後ともやはり、アメリカには、解除しないように、あるいは少なくとも慎重にやっていただくように言っていくべきであろう、このように思っております。

 ただ、他方で、伊豆見先生がおっしゃったように、それはあくまでもアメリカが決することであろうというふうに思います。仮にテロ支援国家指定解除という方向に行った場合に、伊豆見先生からは、その場合であっても拉致の問題が置き去りになることはないんだということが示されたわけであります。そうであれば大変望ましいな、このように思いますけれども、そのことについて、残りの宇惠参考人、そしてまた重村参考人から、もし御意見があればちょうだいをいたしたいと思います。

宇惠参考人 拉致の問題とテロ支援国家指定解除の問題とどう連関するのかという御質問ですけれども、これは直接的には全く連携しないんだろうと思うんです。

 特に、アメリカの国務省の考え方の中では、それはあくまでも彼らの最大の目的である核拡散の防止、すなわち北朝鮮の核武装解除、核の開発の停止という問題との連携を考えているわけでして、六カ国の枠組みの中で、日朝の問題が動かない限りその問題も最終的な決着点に行かないという認識をアメリカは持っているんだろうと思うんです。

 手短に申し上げますと、お配りしてある資料の中で、六カ国の問題とそれから日朝の問題の連関というのは、実は日朝平壌宣言の中で先取りしているような部分があります。これは実は、日朝の二国間の文書ではあります、まだ六カ国協議が始まる前に結ばれていますけれども、始まる前に既に、後段、下から二段目あたりにありますけれども、この「地域の信頼醸成を図るための枠組みを整備していくことが重要である」、さらにその後、数行進みますと、「双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、」という表現で、逆に言うと、これが六カ国協議の枠の方に進んでいっている。

 ただ、この文書を結んだときには、拉致問題はこれで解決だという今の北朝鮮の主張に基づいた構成になっているわけでして、現実にそれが積み残されているという問題が出てきているわけですから、そういう意味で、遠い形で拉致問題とテロ支援国家の指定解除の問題というのは連携するけれども、直接には関係していない、こう見た方がいいんじゃないでしょうか。

重村参考人 テロ支援国家指定解除の問題は拉致問題と密接に関連していると言うべきだろうと思いますね。

 これは、ブッシュ大統領は、テロ支援国家指定解除と拉致の問題は非常に密接だということはよく理解している。なぜ理解しているかというと、テロ支援国家指定を解除すると日米同盟が非常に危機に瀕しかねないという現実を理解しているからですね。なぜ日米同盟が危機に瀕するかというと、同盟というのは二つの要素がないと成り立たない。一つは共通の敵と、共通の価値観。

 拉致問題の解決というのは日米にとって共通の価値観であるわけで、もしアメリカが拉致問題の解決なくしてテロ支援国家指定を解除すれば、日本国民のアメリカに対する信頼の意識が極めて薄くなる、なくなる。アメリカは日本の拉致問題、人権問題に全く関心がないのではないかと思われる。日米の人権問題に関する共通の価値観というのがある、ですからテロ支援国家指定解除は日米同盟の危機に瀕する可能性があるということをブッシュ大統領もシーファー大使も理解しているために、非常に今慎重になっているというのが現実であることを理解いただきたい。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 今お示しいただいた御認識は、相反するようでもあり、他方でやはり密接に関係しているということについては共通の認識かなと思います。

 他方で、アメリカがまかり間違ってこのテロ支援国家指定解除という方に進んでいった、その場合でもアメリカはちゃんと拉致の問題をやってくれる、それはそうであろう、こう期待をしますけれども、我々として、また何らかのバッファーを持っておかなければいけないのかなというふうに思います。

 そういう中で、李明博政権が今、対北ということでは大分政策を転換してきている、こういうところにあるのかなというふうに思います。拉致ということに関して言えば、同じ土俵に上がれるのは日韓かなと思いますけれども、韓国をどのように、活用するという言葉が適切かどうかわかりませんけれども、活用することができるかということについて、伊豆見参考人の御意見があれば拝聴したい、このように思います。

伊豆見参考人 李明博政権が誕生したことで、拉致問題についても日韓の協力というものが、前の政権と比べればはるかにできる部分が生じたというのは事実だと思いますけれども、しかし、韓国が我々に対して、我々の拉致問題の解決のために協力してくれる範囲というのは、私は、アメリカが現在日本に対してとっている姿勢、態度を超えるものはないと思います。すなわち、韓国がこれから南北対話を進める中で、常に日本の拉致問題を提起し、日本の拉致問題の解決のために北朝鮮が努力をするように訴えかけるということは期待できるであろう。しかし、それ以上のことが韓国側から得られると考えることは私はできないというふうに思います。

 それともう一点、韓国が抱えておりますのは、国軍捕虜と拉致、拉北者という言い方をしていますけれども、これを合わせますと千名を超える。実は安否確認も終わっていないところでありますので、まず第一が安否確認であり、第二が家族の再会、第三段階で希望者の帰国、こういう三段階でやろうとしているというのは、これは李明博政権も同じであります。

 解決するために李明博政権はこれを積極的に行おうとしていますが、どういう形でやるかといえば、恐らく取引の形になる。第一段階の、すなわち安否確認に北朝鮮がこたえてきた場合に何らかの見返りを韓国は出す、家族再会が実現すればまた何らかの見返りを出すというような形に恐らくなるのであろうと思います。あるいは、人道支援をここにリンクさせるかもしれない。人道支援として援助するのであれば、最初に北朝鮮が拉致あるいは国軍捕虜問題で譲歩すべきであるという姿勢をとるかもしれません。

 いずれにせよ、李明博政権下で、彼らの自国の拉致問題の解決のためにとり得る方法は取引になるということでありまして、これは今我が国がやろうとしていないことでありますから、この点で協力ができるのかどうかというのは全く別の問題だろうと思います。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 時間が大分なくなってきましたので、最後の質問にしたい、こう思います。

 宇惠参考人と重村参考人にそれぞれお伺いしたいと思いますけれども、今、伊豆見先生のお話を伺っておりますと、拉致の問題を考えるに当たって、やはり我々日本自身がかなりの決意を持って臨むということが基本であろう、このように思います。

 そういう中で、重村参考人には、今回、独自の経済制裁措置を継続するということになった場合、今後、これをより強化するということがあり得るのかどうか、強化するところがどこかあるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。

 宇惠参考人には、先ほど、むしろ拉致問題の解決のためには、この経済制裁についてもう一度効果と目的をはっきりすべきである、どのような状態になったら緩めるのかあるいは強めるのかということをはっきりする、こういうことであったと思いますけれども、なかなか、この拉致ということについて、フェーズを分けて効果と目的をはっきりさせるというのは難しいと思うんですけれども、具体的に何かお考えがあればお聞かせいただければというふうに思います。

重村参考人 拉致問題の解決にまず一番重要なのは、金正日総書記に直接話をしないとこれは解決しないという問題。金正日総書記に直接話をできる人はだれかといえば、各国の首脳ですね。韓国の大統領、中国の胡錦濤主席あるいはプーチン、ロシアの大統領、さらにはアメリカの大統領。そういう首脳に直接、金正日総書記に手紙を出すなり、あるいは会ったときに直接きちんと話してくれと。中国は、もともと日本の拉致問題には協力するつもりだったんですが、靖国の問題が出たために頓挫してしまった。ですから、中国としては積極的にやる意向があるということですね。

 それから、経済制裁の問題に関しては、最初にお話ししたように、経済制裁は、別に制裁の目的のためにやるのではなくて、相手が対話に乗ればいつでも段階的に解除する。ですから、目的は対話である、対話で問題を解決するということを常に言っていくことが重要で、さらに、経済制裁の話が出るたびに、北朝鮮が対話に応ずれば段階的に解除する準備があるという方針をはっきり言うこと、それを、相手にメッセージを伝える。

 ただ、それに応じない場合には、いろいろな、技術的には日本からの特に先端部品、先端技術の製品が、北朝鮮にとってはミサイルあるいは核開発にとって最も重要なもので、それの取り締まり、輸出させない、第三国経由で輸出させないという国際的な協力をつくっていくことが一番重要。

 よく経済制裁は効果がないと言う人がいる。これは真っ赤なうそでして、経済制裁が効果があるから制裁を解除してくれと言っているわけでして、細かい数字とかを挙げるとまた面倒くさいんですが、効果が上がっているから北朝鮮は困っている、だから解除してくれと言ってきているんだという現実を認識いただきたいと思います。

宇惠参考人 似たようなお話になるかと思うんですけれども、結局、制裁によって北朝鮮を対話の場に引き出すということが目的であったわけですけれども、現実には彼らは出てこない。しかも、拉致の問題について、生存者全員の帰国だといっても、彼らは、その事柄自体が存在しない、もう亡くなった方は亡くなったと言っておるんだという話であれば、これは幾ら制裁をしているから彼らは認めるだろうということにはならないわけですね。

 そうすると、やはり制裁によって、それを解除する条件として、北はきちっと誠実に拉致の問題も含めて対話に乗るということを約束させるということがやはり必要になってくるんだろうと思うんです。

 そうした対話がもう一度再開された中で、やはり日本側が要求すべき事柄は、拉致の問題について、いわゆる不明点に関しての再調査を、日本側はきちんと警察の組織人も入れた形の調査団を送り込むという形を要求すべきだろうと思われます。

木原(誠)委員 これで終わります。ありがとうございました。

山本委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、大変お忙しい中、三名の先生方には、この参考人質疑においでいただきまして、ありがとうございます。

 私の方からも二十分で質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど来からの先生方のお話で、今の北朝鮮の置かれている状況、また六者協議の方向、さらには対外的な、韓国等の状況等について、大変よく、わかりやすく御説明をしていただきましたので、頭の整理もできたところでございますけれども、それに関して多少質問をさせていただきます。

 最初に、伊豆見先生も、また宇惠先生も、それから重村先生も、同様に、この米朝協議が妥協に向かって大きく進むだろうという点では一致した見解でございました。

 六者会合をめぐっては、昨年の九月以来開かれていない状況が続いていたわけですけれども、そしてまた、先月においてもヒル国務次官補との協議は相調わなかった、しかし今回に至って、四月八日から米朝協議が再開されて、最終的な詰めに入ったところで大きく動き出したということでございます。

 その方向については、これまでの具体的な北朝鮮に対する対応が三点あったかと思うんです。そういうようなところで、具体的にこの協議が進んでいく、妥協に向かって進んでいくというその状況について、再度、これまで要求してきたアメリカの三点の問題についても、どのような方向でいくのか、それがどうして妥協に向かって進むと言えるのか、それを再確認させていただきたいと思います。

 伊豆見先生、そして宇惠先生にお願いしたいと思います。

伊豆見参考人 実はアメリカが要求していることはだんだんだんだん変わってきているというふうに思った方がいいと思うのでありますが、最初は一番きついことを言って、だんだんその部分が、のり代の部分がとれてくるという話だと思います。

 現在では、今回の申告の問題に関しては、大きく三つの分野について、北朝鮮がいわゆる完全で正確な申告をすべきだと要求をしております。第一が核物質、第二が施設、第三が核計画、そういう三つの分野に分けてアメリカは要求をいたしております。

 核物質の部分は、主たるものはプルトニウムの量でありまして、これもちょっとあいまいになりますのは、九二年以前に北朝鮮が抽出したプルトニウム、さらに二〇〇三年以降に抽出したプルトニウム、本当はもっと峻別して考えた方がいいのかもしれませんが、一応それを認めた形で、一体どれだけこれまで北朝鮮がプルトニウムを生産したのかということを明らかにさせるということが一点です。

 それと、二番目の施設というのは、そのプルトニウムをつくってきた施設ということになりますし、あるいは核実験の施設、あるいは核実験を行うためのデザインを行った施設等もそこに入ってくるか。しかし、ここにはウラン濃縮に関する施設は恐らく入っていないんだろうと思います。

 そして、三番目の核計画というのが一番面倒くさいといいますか大変なところでありまして、この核計画は、一つは、もちろんプルトニウムによる核兵器計画を彼らはやってきたわけですから、それが第一。第二がウラン濃縮による核計画。そして第三に外国との核協力。言ってみればシリアの話が今一番もめておりますので、その話であるということです。

 この三つの分野について北朝鮮がきちっとした申告をするようにという求め方をいたしております。

 が、そもそもは、完全かつ正確な申告というのを、技術的に考えて、文字どおりそれをやらせようと思ったら、これはほとんど不可能ですし、現実には数年から五年ぐらいかかってもおかしくない話であります。というのは、完全かつ正確であることのためには我々がその過程を検証するということが必要になる、そのやりとりが、往復が相当なきゃいけないわけです。

 しかし、今回の話は、六カ国の合意はそういうものではないと我々は考えるべきであって、まずは申告がなされ、それについて検証はその次の段階で、進めながらやるという話になるだろうと思います。

 一番大きな問題はもちろんプルトニウムでありまして、プルトニウムに関しては、技術的に考えた場合に、上限で六十キログラム、下限で三十キログラム、北朝鮮が抽出して持っていると考えられます。したがって、このレンジ、六十キロから三十キロの中に入っている範囲で北朝鮮が申告をしてくるのであれば、一応それは受け入れられる。しかし、その北朝鮮の申告した内容を今後は第三段階で、ベリフィケーションですから、調べてどのくらいあるかとベリファイをして、その上でそれを吐き出させる、国外に搬出する、すなわちアメリカに引き渡すという意味ですけれども、そういう方に持っていこうとしているということでありまして、これが一番問題になる。

 あとはウランとシリアの問題ですが、これは、過去確実にやっていたことを我々は知っておるわけであります。ウラン濃縮を北朝鮮が計画として持っていた、それを進めていた。あるいは、シリアとの間に何らかの核協力があったということもわかっている。ということは、それを最低北朝鮮は認めることが今回の申告で必要でありますし、それがどういうものであったのか、そしていつ彼らはそれをやめたのか、あるいは今もやっているならばそれは現在どうなっているのかということを検証していく過程は第三段階になってから始まるということになろうかと思います。

 今はそういう形で米朝で話が進んでおりまして、問題になったのは、ウランとシリアの問題が一番ひっかかっておりましたが、どうやらそこがある程度まとまるということであれば、プルトニウムに関しては、先ほど申し上げましたように、ともかく六十キログラムから三十キログラムの間のレンジに入った形が出てくれば、次はそれを第三段階で検証する、検証して吐き出させる、そういう順番になっていくと思います。

宇惠参考人 北朝鮮の核問題、特に現在問題になっている第二段階、次の段階の問題というのは二点あって、一つは既存の施設の無能力化の問題、それからもう一つは完全かつ正確な計画の申告、計画及び施設、核物質の申告の問題であります。

 これは、切り口を変えると、こういう切り口ではなくて、アメリカが問題にしているのは、現在及び未来の問題、これが一つ、それからもう一つは過去の問題、そういう仕分けが逆に可能なんだろうと思うんです。

 まずは、将来の問題、現在の問題。すなわち、現在持っている施設について無能力化して、将来的にもそこから新たな核物質を生み出さない、それがある意味では一義的、最大の目的になっているんだろう。

 ただし、伊豆見先生もおっしゃったように、もう一つは、それぞれの問題についての過去の問題。これは、プルトニウムの抽出についても、現在、将来とめるにしても、過去どれだけあったのか、どれだけ出したのか。特に九四年の第一次危機のときにもごまかしてしまった、それ以前の抜き出したものから、あるいは途中で稼働停止したと言われている中でどのぐらい抽出したのかという過去の問題、これを積み上げないと一体幾ら持っているのかわからない。

 もう一つは、ウランの問題については、もう今持っていないよと言っている、あるいはもともとないと言っているんだけれども、過去にどこまでやろうとしたのか、それはどこの協力でやろうとしたのかということが、これは将来的な、先ほど言った現在、将来の問題とはかかわらないけれども、核の拡散の問題とも非常に重要なかかわりを持ってくる。

 もう一つは、まさに核の拡散の問題も、シリアに対して、あるいはシリアのみならずパキスタンとの協力の問題、あるいはイランとどうなっているのかという問題等について、アメリカとの間では、現在はないよ、それは御存じでしょう、将来的にもないよと、恐らくその辺でごまかそうとしている。では、過去、いわゆるパキスタンのカーン博士との協力問題も含めて、どういう形で彼らが計画全体を持っていたのか。

 過去の問題について、アメリカは、こだわりつつも、現在、将来の問題が先に進めば、それは二義的な問題として処理する、それが妥協の本質だろうと思われます。

江田(康)委員 ありがとうございました。

 より正確に申していただきましたので、今後の六者協議が妥協へ進むということが理解できるんですが、おっしゃられるように、第二段階でできるところまでのことを妥協して第三段階へ向かうというような点で進むんだろうと思われます。

 次の質問でございますけれども、先ほど伊豆見先生がおっしゃいましたが、米朝協議が妥協へ向かって大きく進む、そういう中において、アメリカは、拉致問題の解決なしにテロ指定国家の解除をしていく可能性があるだろう、それは、我が国にとっては、この拉致問題の解決にとってはマイナスではないのではないかということを先ほど述べられました。その点について、そう思われる、確信を再度お聞きしたいと思うんですが。

    〔委員長退席、高木(毅)委員長代理着席〕

伊豆見参考人 ありがとうございました。

 繰り返しになりますので恐縮でございますが、そもそも、アメリカがテロ国家指定を北朝鮮に対してかけましたのは一九八七年の大韓航空機事件がきっかけでありまして、そこから、テロ・スポンサリング・ステートということですから、テロを支援するだけじゃなくて、自分で主宰するというか主管するので、自分がテロを発動する国でもあるわけですね、そういうことでやってまいりましたが、日本政府の強い要請を受け入れて、拉致問題の進展、解決というものに対しても背を向けているということは問題だ、それもテロ国家の一つの理由であるということで、加えたのは二〇〇三年以降だったと思います。

 三、四、五、六、七と四年間きたわけでありますが、途中から加わったことによって拉致問題が何か前進したか、進展したか、アメリカのその強い姿勢が何か功を奏したかということになりますと、残念ながらなかった。

 今回に関しても、例えばよど号の関係者が日本に引き渡されるということになりますと、よど号のハイジャック犯そしてその家族の中で、三名、拉致問題の容疑者がいるわけでありますが、その容疑者が引き渡される、そういうことにもなるわけですが、それも実は、アメリカがその指定をかけていることで実現はしなかったということでもあります。

 そういうことを考えますと、今回解除されたからといって特にマイナスになるということは私はないんであろうと思うのは、今まで、指定の中にその拉致問題という条件を入れておいたことで実は拉致問題にとって大きなプラスだったという、目に見える形での進展があったということを我々は認めることができないからであります。

 それともう一つ、先ほど強調させていただきましたのは、アメリカは実は本当に、ブッシュ大統領自身が、決してこの問題は忘れない、この問題を日本人が非常に重視していることを自分はよく理解しているということに何回か言及したように、この問題を必ず首席代表会議では提起しています。こういうことをやってくれている国はほかにどこにもないわけでありまして、もちろん、韓国は、去年南北首脳会談の際に、盧武鉉大統領が日本人拉致問題のことを提起されましたけれども、アメリカの場合はともかくその数が多いといいますか、しつこいわけでありまして、ともかく何回でもそれを言うということであります。

 しかも、六カ国協議、六者会合のプロセスが今後進展していくのであれば、必ず正常化という問題が出てくる。それは二〇〇五年九月の合意にそういう項目が含まれているわけでありまして、これは宇惠参考人がお配りした紙で見ていただければわかるわけでありますが、その正常化というのは、アメリカと北朝鮮及び日本と北朝鮮の正常化なんですね。ですから、六者会合の合意というのが実現されて非核化が実現されるためには日朝の正常化も必要ということをアメリカは強く言っていますし、その日朝の正常化が実現するためには拉致問題の解決が必ず必要だということももちろん言っている。

 そういうアメリカの強い主張あるいはこれまでとってきた姿勢に今後も変化があるとは全く考えられませんので、それも、私は、アメリカの姿勢としては結構なことではないかと考えている次第であります。

 ありがとうございます。

江田(康)委員 あっという間に時間がたってしまいましたので、最後に重村参考人にお聞きをしたいんですが、特に重要な日本側の対応についてということなんです。

 福田総理、福田政権にかわってどうだったかということでございますけれども、施政方針演説の中では、総理は、この六者協議の場を通じて関係各国と連携して核の放棄を求めていく、また、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現して、不幸な過去を清算して日朝国交正常化を図るべく、引き続き最大限の努力を行っていくと述べてスタートをしたわけですけれども、対北朝鮮政策、具体的なアクションとしては私は非常に消極的ではないのかと思うわけでございます。

 やはり、今、大変日本の姿勢とリーダーシップが問われていると強く思うわけでございますけれども、きょう参考人の先生方に説明をしていただきました、今回六者協議が大いに妥協へ向けて進むその背景には、それこそ北朝鮮の行き詰まった現状、それとやはり韓国の対北朝鮮政策の大きな方向転換というような外的な要因等も大変大きい。そういう中で、福田政権、我が国の政府がこの拉致問題の解決に向けて、これは日朝と六カ国協議、これを同時に進めていくことが大変重要であるわけでございますけれども、先ほど来もございましたけれども、どう明確に行動をとっていくべきか。

 重村先生も、はっきりと、拉致問題を解決すれば経済支援は可能であるとか、明確に伝えながら、一方で、核問題が解決しない限り国交正常化は難しい、こういうふうに明言して進むべきだというようなこともこれまでにもおっしゃっておられますが、現状の段階で我が国のとるべき強い姿勢としてどのようにあるべきか、それを最後にお聞かせいただきたいと思います。

重村参考人 二つだけ、間違わないでいただきたいと思います。

 今、六カ国協議が急進展して問題が解決するような御指摘がありました。六カ国協議は急進展して問題が解決する状況には今はないということを私は申し上げているんですね。ヒル国務次官補と金桂冠さん、二人が会って、あたかも進展しているように見せているのが現状でして、自分たちの責任を回避するために進展しようと、それから、先ほど御説明したように、南北関係がうまくいかないので米朝で何とかできないかと今思って動いているというのが現状ですので、そういう外交のトリックに余りだまされないで、事実関係をよく理解していただきたいというのが一つ。

 それから、拉致問題に関しては、福田政権と以前の政権との決定的な違いは何かというと、これまでの政権は、拉致問題で何とか北朝鮮と話し合いをしたいというようなことで、北朝鮮と接触しようとして、正規の外交ルート以外のルートを使う。端的に言うと、暴力団まがいの人を使ったり、あるいは北朝鮮の工作機関まがいの組織の責任者を使ったり、非常に異常な外交手段をとろうとしている。

 それに対して、福田政権の場合には、正規の外交ルート以外やらないという基本的な方針をとる、これは非常に正しいんだろうと思うんです。ですから、なかなか進展が見えない、進まないように見えるんですが、本来の外交の基本姿勢としては非常に正しい姿勢をとっている。

 ただし、それに加えて、やはり、拉致問題が解決しない限り国交正常化はしない、それから経済制裁にしても、あくまでもこれは対話のためのものであるということを繰り返し言っていくことが一番重要ですね。

 それから、先ほど木原委員の御質問に対して回答を忘れたんですけれども、もう一つ。日本政府が取り組むべき一つは、実は、御存じのように特定失踪者調査会、いわゆる拉致被害者がいるのではないかと調査している機関があるんですが、どうしてこれを民間に任せているのかというのがよくわからない。政府が、きちんとした組織あるいは予算をつくって、日本人が本当にもういないのか、あるいはどういう証拠があるのかというのを組織立ててきちんと調査して北朝鮮に突きつけていく、証拠を出していく。そのためには、李明博政権は日本に対して非常に協力的ですから、北朝鮮から来た脱北者にしろ、あるいはひそかに脱北してきて韓国に保護されている高官あるいは工作員、そういう人たちからそういう情報をとるような公式のルートなり、組織立った活動をしていくのが一番重要だろうと思います。

 以上です。

江田(康)委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

高木(毅)委員長代理 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 本日、お三方の先生方、それぞれのお立場から、今般の六者協議に関するお話、あるいは北朝鮮情勢に関するお話ということでお聞かせをいただきまして、まことにありがとうございます。時間も限られておりますので、私からも、少し重複もございますけれども、ちょっと踏み込んだ御質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、今の北朝鮮情勢につきまして、先ほど来お三方の先生方からのお話もございますけれども、我が国は経済制裁を行っている、しかしながら、他国がさらにまた支援を行っているという現状がもしあるということであるならば我が国の経済制裁は一体何だったんであろうかと、私どもの制裁の効果についての話が少し先ほど出たわけでありますけれども、例えば中国とロシア、この両国が支援を具体的なところで行っているということがほかにあるということであるならば、少しその状況をお聞かせいただきたいというふうに思っております。もしお三方の先生方でおわかりのことがありましたら、教えていただきたいと思います。

伊豆見参考人 これはよくわからない話でございますが、ただ、中国が北朝鮮に対して支援をしている、それを継続的に行っているということは、ここまでは確認できます。しかし、どのくらいの量のいわば援助という形で渡しているかということについては、我々はその実態をつかんだことは一度もない。いろいろなうわさ、推測というものがこれまでたくさん出てきましたけれども、正確なものは我々はつかみ得ていないというのが実情だと思います。

 しかし、中国が一定の援助、支援というものを北朝鮮にずっと与え続けてきているということは間違いない。それに加えて、今、中国は、一般の貿易の部分あるいは投資も含めて始めましたので、相当程度北朝鮮を支えている意味があるであろうと考えられます。

 それと、ロシアにつきましては、援助は基本的に全くないということだと思います。これは、現在のロシアの法律によりますと、まだロシアと北朝鮮の間は対外債務の問題が片づいておりません。何十億ドルになるのかというのは余り意味のない数字なんですけれども、いつかはこの対外債務がチャラになるといいますか、ロシア側が放棄するという段階が来ると思いますけれども、今現在は財務省が相当それに対して否定的でありますので、この対外債務が残っている限り、ロシアは新たな借款援助というものを提供できないということになっておりますので、ロシアから北朝鮮に対する援助というものは基本的にないと考えられると思います。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 そして、さらに北朝鮮の国内状況の、政治体制の話でありますけれども、先ほど重村先生からは、四人の実力者が、その中でかなりの、政権を担うような形のさまざまな力の配分があるんだというようなお話でございました。この点についてもう少し詳しく教えていただきたいというふうに思っておるんですけれども、今の金正日体制が、軍に対する発言、勢力、そういったものは一体どの程度まできちっと統制されているのか、その点も含めてさらに少し詳しく教えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

    〔高木(毅)委員長代理退席、委員長着席〕

重村参考人 金正日体制自身が混乱しているとか不安定になっているという事実はないんですね。

 問題は、一番の関心は、ここ数年、かつての金正日総書記のような偉大な決断ができていない。かつてオルブライト国務長官を平壌に呼んだり、あるいはナンバーツーの趙明録国防委員会第一副委員長をワシントンに派遣したり、あるいは六カ国協議に応ずるという方針を転換したり、そういう大きな決断がここ数年全く見られない。果たして金正日総書記が機能しているのかどうかということが言われる。

 北朝鮮と交渉している、高官と接触している中国あるいはロシアの関係者によると、どうも集団指導体制ではないかという判断をせざるを得ない要素がたくさんある。確かに金正日総書記は存在しているんだけれども、その決定はそれぞれの勢力の中で決まる。その中での最も発言力の強いのは軍であるということですね。ですから、今、私が示した四人のうち、呉克烈さんは軍を掌握している、それから李済剛さんという組織指導部第一副部長は秘密警察と軍の関係を持っていると言われていまして、その勢力の中で物事が決まっていくというのがどうも現実です。

 ただ、いずれの勢力も、金正日総書記を掲げていないと北朝鮮は統治できないという事実はみんな理解している、その範囲の中でやっている。そういう意味では、体制自身、統制自身が混乱したり不安定になっているという現実ではないというのが現在の状況です。

園田(康)委員 そうしますと、伊豆見参考人の御著書の中から、ことし九月の九日に建国六十周年を迎えるということでございますけれども、そういう情勢の中でも、いわゆる中期目標と言われるものがことしになって発表されている、その意味合いについて少し触れられていたというふうに私も受けとめさせていただいたわけであります。

 一月一日に発表されている中期目標、これは、いわゆる二〇一二年に経済大国、強盛大国になるんだというようなメッセージがこの中で触れられているということでありますけれども、建国六十周年と、それから二〇一二年に向けての北朝鮮の金正日総書記のいわゆる目標的なもの、メッセージ、これをわざわざ一月一日に発表した、その意味合いというものはどのような形になってくるんでしょうか。

 これは伊豆見先生と、もしこのことについて重村先生もおわかりでしたら教えていただきたいと思います。

伊豆見参考人 今御指摘のお話は、一月一日の三紙共同社説の中でうたわれたということでありますが、これは実は、昨年の十一月から二〇一二年ということが言われるようになりまして、現在もさまざまな機会で北朝鮮がそれを繰り返すということになっております。最近のでいうと、つい最近、金正日国防委員長推戴十五周年か何かがあったんですけれども、そういうときの演説の中にも出てくるのであります。

 二〇一二年というのはちょうど金日成が生誕百周年を迎えるという年でありますが、そこで強盛大国と彼らが言っておりますものの大門を開くという言い方でありますので、強盛大国が二〇一二年に完成するわけではないわけですね。二〇一二年から、ある意味で強盛大国のめどがついてくるか、それがスタートされるかという話だと思います。

 そして、その強盛大国と彼らが言っているものは、大きな要素が三つありまして、一つは政治思想、二つ目が軍事、三番目が経済でありまして、結局、三番目の経済ができないから強盛大国ができないわけでありますし、その強盛大国を二〇一二年から何とかできるようにしようという話なのであろうと思います。

 これは極めて異例なことでありまして、北朝鮮が中期目標を立てるということは基本的にはないんです。大体、中期目標を立てれば達成できないわけですから、それを避けてきたんだろうと思いますが、今回我々が注目をいたしましたのは、一月一日の共同社説に出たということは、これは金正日の言葉として受け取れるからであります。一月一日の共同社説に出てこなければ、一応そういうことは言っているけれども、いいかげんに済ますということもできたかもしれませんが、これはいわば金正日の公約にしたということであります。

 そういう面では、二〇一二年まで、逆に言いますと経済的にはうまくいかないということであります。しかし、二〇一二年まである仕込みをして、二〇一二年以降は経済的に何とかできるようにしたいという北朝鮮側の意図というものを明らかにしているんだろうと私は思います。

 もう一つは、逆に言いますと、二〇一三年以降というのは見通しとして非常に厳しいということもあるんであろう。

 二〇一二年というのは、実は金正日が七十歳になる年でもありますので、そこからは後継問題というのも本格化しなきゃいけないときであろうと考えられますし、しかも、二〇一二年で、中国の方の今の胡錦濤体制は終わります。習近平に恐らく移るのでありましょうが、世代交代がなされるということになると、中国からの継続した援助というものがその段階で期待できるかどうかもわからないという状況になることは今から明確に読めるということもありますので、実は二〇一三年以降は非常に厳しくなるという認識のあらわれとしてもとらえられる。

 そして、もし二〇一二年を起点に二〇一三年以降何とか生きていこうと思うのであれば、恐らく、北朝鮮がやらなきゃいけないことは、過去二十年間やろうと思って失敗してきたことをやらなきゃいけない。それは何かといえば、アメリカとの関係の正常化と日本との関係の正常化です。

 彼らは、八〇年代の後半から、ちょうど、特に冷戦の終えん、ソ連の崩壊等々の時期にやろうとしたことは、日本との正常化でありアメリカとの正常化ということだったんですが、これにずっと失敗の連続で二十年来ていますので、いよいよもう失敗できない、ここから五年の間にアメリカそして日本との正常化というものを考え始めているのではないかというふうに私は考えております。

 ありがとうございました。

重村参考人 一言で申しますと、一九九五年以降、北朝鮮はいろいろなスローガンを掲げてきたんですが、一度も成功したものはないというのが現実ですね。

 強盛大国も先軍政治も掲げてずっとやってきたんですが、次のスローガンがない。強盛大国もうまくいかなかった、先軍政治をやってみたんだけれども、経済はどうもうまくいかない。もちろん統制はとれているんですが、しかし、どうもうまくいかない、次のスローガンを考えなきゃいけない。というところで、なかなかいいスローガンがない。いろいろないわゆる何十周年記念の予定行事がありますから、それで思いついたのだろうと思うんですが、今伊豆見教授もおっしゃったように、事実上、経済復興はほとんど無理な話です。いろいろなものが実現する可能性は全くないと言っていいだろうと思います。

 それから、今お話があった米朝正常化と日朝正常化に関して言えば、米朝正常化はここ数年で実現する可能性は全くないと言っていいだろう。

 なぜかというと、米朝正常化のために一番重要なのは、核を放棄しなきゃいけない。核を放棄するためには何が必要かというと、核査察をしなきゃいけない。北朝鮮は、これまで一度として核査察を受けない、核査察を何としても避けようとしているわけですね。北朝鮮の要求は、では核査察はしてもいい、しかし、そのかわり先に国交正常化してくれ、国交正常化してくれたら核査察を受けてもいいという立場ですね。しかし、アメリカは、いや、核査察を受けなければ国交正常化はしない。ところが、核査察も、実際に核査察を実施して完了するのにやはり二、三年の時間がかかる。何カ月ですぐできる問題ではない。ですから、そういうタイムスケジュールから見ても、米朝正常化というのは決して簡単な話じゃないということ。

 それから、アメリカとして、アメリカの特に議会が人権問題を物すごく重要視しますから、北朝鮮が強制収容所や拉致問題なり人権問題を解決しない限り、アメリカとの国交正常化は決して簡単ではないというのが現実だと思います。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 そこで、この米朝協議の話でございますけれども、多少妥協の点が見えてきたという点では一致、しかし、それが大いなる進展につながるかどうかというのは、それぞれの参考人の先生方で表現が、御認識が少しずつ違うのかなという印象は、私は持たせていただいているわけであります。

 そこで、アメリカにとって、この拉致の問題がどれほどのものであるのか。すなわち、先ほど伊豆見先生からは、毎回、米朝協議等々で話をしているときには必ずそれは持ち出している、しかし、持ち出しているのは持ち出しているのかもしれませんけれども、そこに対してアメリカがどのような回答を引き出しているのか。そういったところが、私どもはまだちょっと見えないところがあります。

 したがって、アメリカにとって、日本の拉致問題というものにどれほどの問題意識を持って取り組み、そして、それに対してアメリカとして答えを引き出していただいているのかどうか。その点は、もしおわかりでしたら教えていただければと思います。

伊豆見参考人 アメリカにとっての日本の拉致問題の位置づけというのは、核問題より低いということははっきりしていると私は思います。それは、アメリカにとってみますと、核問題の方をより優先させる。

 しかし、拉致問題というのが日米関係あるいは日米同盟を維持発展させていく上で極めて重要だという認識ももちろん強く持っていますから、拉致問題をないがしろにするとか無視するという姿勢は全くないということであろうかと思います。

 これは、今のところ、私は、ワシントンの雰囲気でいえば、ほぼコンセンサスであろうかというふうには思います。

園田(康)委員 そうしましたら、逆に、これは重村先生にお伺いをしたいんですが、北朝鮮は、日本との日朝正常化を将来的にはやらなければいけない、そこまで追い込まれているのではないかということでございましたけれども、では、この拉致問題をどのような形で認識しているか。

 そして、言葉ではそんなものは存在しないんだというような話が言われてしまっている、もう終わってしまっていることだというふうに言われてしまっているわけですが、これをどのように問題として持ち上げて解決をしなければいけないのか。

 北朝鮮としては、この問題に対してどれほどの認識を持っているのか。これは米朝協議が終わった後で、その解決が、正常化あるいはテロ支援国家の指定解除が起きた後に考えられてくるのかどうか。その点の見通しも含めて、もしあれば教えていただきたいと思います。

重村参考人 拉致問題について北朝鮮の立場から御説明しますと、北朝鮮の立場からすれば、日本は一度として北朝鮮に拉致被害者を返せと公式に言ったことがないというのが北朝鮮の立場ですね。

 これはどういうことかといいますと、北朝鮮は、御存じのように、これまで何回も工作員を日本に送って主権侵害をしてきたんですが、そのたびに、日本政府は一度として主権侵害だと言ったことはない、工作員を送るなと言ったことがないんです。しかも、麻薬の密輸をやめろと言ったことはなかったんです、横田めぐみさんの拉致問題が大きくなるまでは。さらに、日朝首脳会談のときに、小泉総理は、拉致被害者についての安否情報を教えてくれと言った、拉致被害者を返せとは言わなかったんです。

 ですから、これは、北朝鮮の立場からすれば、外交のルールからすると、日本は返せと要求しなかったんだ、ただ、後でうるさくなったから、国民が騒いだから、しようがないから、では、日本が頼むと言うから応じてあげただけだというのが北朝鮮の見解、立場ですね。

 それからもう一つは、北朝鮮とすれば、拉致問題について決断できる、語れる人は金正日総書記しかいない。宋日昊大使にしろ、下の人たちは、幾ら言ったって、決定権はない。拉致、返してくださいよということは言えない。上から言われたとおりのことをやっているわけですから。その水準の人たちと幾ら話したって拉致問題が解決するわけがない。

 ですから、いかにして、拉致問題を解決しないと北朝鮮は大変なことになる、拉致問題を解決しないと日本とはどうしようもないんだということを指導部が、首脳が認識することですね。

 さらに、北朝鮮が一番心配しているのは、では、拉致被害者を返しましょう、横田めぐみさんをお返ししましょうといったときに、日本でまた騒ぎが大きくなって、結局日朝正常化ができなくなるのではないか。つまり、拉致被害者を次から次へ返した場合には、拉致問題がさらに大きくなって、北朝鮮が望んでいる日朝正常化と経済協力支援がもらえないんじゃないかというのが北朝鮮の一番の心配ですね。ですから、日本側は出してほしい、だけれども北朝鮮側は出せない、こういう主張であります。

 ただ、最近になって日朝の外務省の接触の中で北朝鮮側が言い出しているのは、死亡したとした八人については、金正日総書記がそう明言したので今さら覆すわけにいかない。今さら覆すわけにいかないというのは、生きている人がいるということですね。ただし、そのかわり、特定失踪者と言われる人の中から三、四名なら考えてもいいということを言い出した。これは宋日昊が言い出した。宋日昊が言い出したというのは、上からそう言ってもいいという許可があったということですね。ということは、拉致被害者が、まだかなりの方が生きているのは間違いない。

 ですから、そういうふうに、北朝鮮は追い詰められて状況が悪くなってくれば譲歩をしてくる。いかにして北朝鮮を譲歩させるか、金正日総書記に決断をさせるかという戦略というか外交力を日本が発揮するかという問題で、ただ、やはり日本側にも、外交のこれまでのやりとりの中でいろいろな問題があったんだということはよく理解しておくべきだろうと思うんですね。

園田(康)委員 時間が来てしまいましたので、宇惠先生にはちょっと質問ができませんでしたけれども、大変参考になる御意見をいただきました。お三方の先生に御礼申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、伊豆見参考人、宇惠参考人、重村参考人、大変お忙しいところ、貴重な御意見、本当にありがとうございました。今ありましたように、いろいろな意味で大事な段階に来ているということで、私も大変勉強になりました。

 そこで、幾つか伺いたいと思います。きょうは最後になりまして、大体主な問題は既に聞かれてしまったんですけれども。

 まず最初に、北朝鮮の核問題をめぐる六者会合のプロセスにおいて、先日の米朝協議での問題がお話ありまして、妥協の方向、それから停滞から進展へということで、第三段階へと移る可能性について、特に伊豆見参考人、宇惠参考人から、それぞれのニュアンスでお話がありました。

 そこで、もう既に触れられていることはあるんですが、今回の米朝の協議の問題で一番評価できると思われるポイントはどこなのかということについて、お二方から一言いただければと思うんですが、いかがでしょうか。

伊豆見参考人 ずっともめておりました申告の問題の中の、とりわけウラン濃縮及びシリアに関する核協力の問題について、何とか形をつけて、前に進める方向の形をとったんだろうと思います。

 これは、やろうとすると、ある種のあいまいさがどうしてもつきまといます。今この話をすると、恐らく一つのキーワードは、クリエーティブアンビギュイティーというんですけれども、創造的なあいまい性という言葉がありまして、前向きなというか、ちょっとキッシンジャー流の話でありますが、そういうことがかなりまとまったんだろう。それは外交的に見れば、前進するという点では評価できる点だと思います。

 それからもう一つは、やはり第三段階の話を、実は二月十九日、三月十三日もやりましたが、今回もかなりの時間を割いて第三段階の話をしていると思います。これは、本来ですと第三段階に入らなきゃいけない時間が既に三カ月なくなってしまっておりますので、米朝でその話が進んでいるということが私は実は評価できる。要するに、米朝でまず話をしてくれないと六者会談で決まることは何もないというのが今我々が認めなきゃいけない事実でございますので、そういうことだと思います。

宇惠参考人 何が評価できるのかということですけれども、非常に皮肉っぽく言うと、過去の問題は別にしても、将来的な北朝鮮の核開発をとめるという問題については一歩前進だろうというふうに受けとめられるということなんです。

 ただ、それが評価と言えるのかどうかという点は、考えてみれば、その話は九四年の十月に既に米朝で決着している話じゃないのか。その一たん閉めていた箱があいたことで、ここまでようやく、まだあの段階にまでたどり着いていないわけですけれども、それに近いところまで来ただけで評価だと考えざるを得ないというのは非常に残念なことであります。

 ただ、日本に関係して言いますと、少なくとも日朝の国交正常化という問題が、先ほどお配りした資料の中に、六カ国協議の三つの文書の中に必ず盛り込まれているということを考え合わせますと、核の問題の進展によって、拉致の問題も含めて日朝の国交正常化へ向けた動きに、次の段階に動かざるを得ないという状況は生まれつつあるということは言えるんだろう。

笠井委員 ありがとうございました。

 こうした中での日朝関係の現状と対応の問題なんですけれども、日本政府は、先ほども御紹介もありましたが、改めて、日朝平壌宣言に基づいて、不幸な過去を清算して、核、拉致、ミサイルということで、諸懸案を包括的に解決して日朝国交正常化を実現するという問題と、朝鮮半島の非核化、そして拉致問題を含む、日朝双方がともに前進するように最大限努力を行っていくという立場であるわけでありますが、日朝関係の現状を見ると、もう申すまでもなく、残念ながら膠着状態にあるということであります。

 この点で、既にあったことでもあるんですが、日本の外交交渉のあり方についてどのように、特に今ここはもうちょっとこうした方がということも含めて、あるいは、こう改める必要があるというようなことも含めて、お感じになっている点はどこにあるのか、お二方に。

 そして、重村参考人は、そういう点でいいますと、挙げて膠着の責任は向こうにありというふうにおっしゃいました。それも一つの御意見だと思うんですが、同時に、これは交渉ですので、そこをこじあけるというのが逆に日本の外交としてはやりどころだというふうに思うんです。そして膠着状態を動かすということが、向こう側の問題も当然あるわけですが、日本の外交独自にやはり必要だと思うんです。その辺で、この辺についてはもう少し考えなきゃいけないんじゃないかとかという点がありましたら御意見を伺いたいんです。

 お三方、それぞれお願いしたいと思います。

伊豆見参考人 私は、今、日朝交渉が途絶えているかなり大きな理由は、北朝鮮の目から見て、福田政権の不安定さにあるのであろうと思うんです。本格的に福田政権と交渉し、ある取引をするという方向に北朝鮮は踏み込めないんだろうと思いますので、まずはやはり、北朝鮮との交渉で我々が非常に大きな力を持つかどうかというのは、国内政治が安定し、政権の基盤が安定するということが一番重要なんだろうと思います。そうでないと北朝鮮はまじめな交渉に取り組まないであろうということが一点であります。

 二点目には、しかし、とはいえ、日朝交渉は、第三段階にこの六カ国協議の履行問題が入ってくれば必ず開かれることになる。それは、第三段階でどのような形で北朝鮮に非核化を迫り、それに対して我々がどのような対応、見返り措置をとるかということを具体的に決めていかなきゃいけないことにもなりますので、必ず日朝の協議というのは再び第三段階の枠内で始まることになると思います。そこを使って、有効に、どこまで我々は北朝鮮から態度変化を引き出せるかということであろうかと思います。

 もちろん、重要なことは核問題であり拉致問題ということだと思いますけれども、私は、もう一つ、先ほども申し上げましたけれども、やはりミサイルの問題を日本は出すべきであろうと常々思っております。

 ミサイルに関しては、今日本が出さない限りだれもやらないし、ブッシュ政権も全然関心を失いました。ですが、日本は、そもそも一貫して、拉致、核、ミサイル、この三つを包括的に解決するということを言っていながら、一番熱が入っていないといいますか等閑視しているのはミサイル問題だろうと私は思いますので、そういう姿勢は北朝鮮に、本当にまじめに交渉に取り組もうとしているのか、まじめに正常化に今向かおうとしているのかという、日本の意思を疑わせしめるものだと思うんですね。口で拉致、核、ミサイルと言っておきながらミサイルを出さないというのはやはり不誠実だというふうに北朝鮮はとるかもしれません。

 私は、一つ日本政府が今できることは、ミサイル問題というものをもっと前面に出し、そして、包括的にともかく解決を図ろうとしている、その中で、だから拉致問題が重要だ、こういう方向に持っていくことが必要ではないかと考えております。

宇惠参考人 やはり日本の、現状での日朝外交で欠けているものというのは、主体的にこの問題にかかわるという姿勢がどうも見えないというか、後ろに隠れてしまっているのではないのか。先ほどから各委員の質問の中でも、アメリカのテロ支援国家指定解除の問題、彼らは本気でやるんでしょうかね、こういう話になるんです。彼らはやるんです。やるとすれば、それの見返りに、逆にアメリカに何を突きつけるのかという事柄が問われていない。よろしくお願いしますで終わってしまっているという問題です。

 それからすると、やはり二〇〇二年の小泉訪朝、これは毀誉褒貶いろいろありますけれども、現実に残っている平壌宣言が今も唯一日朝の間をつないでいるということは間違いないわけです。あれはまさに、六カ国の枠もない中で日朝でつないだ形の外交であって、外交文書なんですね。その後、あの中にも事実上うたってある地域安保、六カ国協議の枠組みが動いているわけですから。

 今必要なのは、多国間で動いている事柄と日朝二国間の事柄をいかに絡めて物事を進めていくか。今、拉致があるからもうすべてだめですよと六カ国の中で多分受けとめられかねない状況だと思うんですね。エネルギー支援はできませんよ、拉致があるから、この問題は拉致があるからと。拉致問題を解決するために日朝交渉があって、それで、核問題を解決するために六カ国協議があって、その二つの協議が並行して動いているわけですから、動き得るわけですから、それをいかに連動させるか、それを主体的に連動させるかということが問われているんだろうと思います。

重村参考人 外交について言えば、外交というのは双方向のものなんです。実は、今我々が論議している北朝鮮をどうすべきかという問題のときに、平壌はどうなっているんだということをだれも確認しない。福田政権とは対話しないと言っているって、だれが言っているのか、だれが決めたのか、確認していない。平壌の情報なしにみんな勝手なことを言っている。やはりこれが日本の外交を危うくしている一番の問題ですね。

 平壌の今の状況はどうだといえば、日本と対日交渉をする責任者が決まっていない。責任者というのは、党の書記、何らかの部長あるいは外務次官が担当することになるんですが、だれが対日を担当するか決まっていない。決まっていないということは北朝鮮側に準備がないということですね。準備がないのに、日本側だけ幾ら右往左往して、対話が大切だとか交渉しようとか言っても出てこないんです。北朝鮮の状況をよく判断した上で交渉するのが一番重要だ、これが一つですね。

 それからもう一つは、これまで北朝鮮のだれが対日交渉を担当してきたのかということをよく考えていただきたいと思うんですが、北朝鮮の対日交渉を担当してきたのは統一戦線部という工作機関なんです。ですから、北朝鮮の日本に対する外交は、外交ではなくて工作をやってきたわけです。皆さんがよく御存じの金容淳さんという書記は統一戦線部の部長だったんですね。ですから、彼がやってきたのは工作であって外交ではなかった。

 アメリカは、統一戦線部の介入を一切拒否して、北朝鮮の外務省とだけ交渉をやると言って排除してきたわけですが、日本の場合は、日本の政治家の中に、金容淳さんとお友達だということを自慢げに話す人がたくさんいて、結局、金容淳さんに競い合って会いに行くとか、金容淳が困っているから米を出してやらなきゃいけないとか言って、そういう外交まがいのことをしてきた。それがやはり日本の外務省、日本の外交を誤らせた最大の問題だっただろうと思うんです。

 だから、そこをきちんと整理して、日本の外交を一本化して支援してやっていくという姿勢をとらないと、幾ら日本が、手を差し伸べる、日朝は対話でいかなきゃいけないと言っても、なかなか駆け引きはうまくいかないという現実を理解いただきたいですね。

笠井委員 ありがとうございました。

 先ほど来、独自制裁の問題が話題になっております。ミサイル発射に続いて、また一昨年の核実験という極めて重大な事態という中で制裁措置もとられてきたということであります。

 もちろん諸般勘案してというお話もありました。同時に、一番のポイントは、何を受けてかというと、ミサイル発射と、それから核実験を、北朝鮮はけしからぬことをやったということで、そういう重大事態に対してとった措置で、そしてそれは、目的は、お話もありましたが、対話に復帰をさせる、そして核問題でのやはり外交的解決をきちっと図るということが一番の眼目だったというふうに私は当時理解をしたわけであります。

 その後、前向きの進展、核問題でいえば六者会合の枠組みの中であって、そして、その後また一たん停滞状況で、また今回シンガポールの話があったということで、そういう意味で、いわば進展といいますか、ある意味前向きの動きがあって、第三段階も見通せるようになり始めたようだという新しい情勢ということになりますと、これは、経過からしても、制裁措置をこのまま続ける合理的理由があるのかどうかということについては、やはり情勢に即して対応をとっていくということが必要ではないかというふうに思うんです。

 もちろん、あした決定するかどうかということについても含めてなんですけれども、今後のことも含めて、そういうことについて、制裁という位置づけとのかかわりでどのようにお考えか。残った時間、一言ずつで結構ですが、お三方から伺いたいと思います。

伊豆見参考人 先ほどの繰り返しになるかと思いますが、やはり諸般の情勢というものを勘案しなきゃいけないとすると、ミサイル、核、拉致というこの三点は外せないということだと思います。

 核問題につきましては、今委員御指摘のように、動いていくかもしれないということでいけるかもしれませんが、ミサイルに関しては、少なくとも、平壌宣言にあるモラトリアムを北朝鮮が再公約といいますか再確認するということが私は最低必要ではないかなと思いますし、もう一つは、拉致問題については、何をもってその具体的な進展とするかということがなかなか日本政府は明確に言えないわけですが、やはりそういうものを示すことも重要ではないかと思います。

宇惠参考人 同じような話になるかと思うんですけれども、国際社会はミサイルと核に関して制裁をかけたわけですけれども、結局、諸般の事情を考慮し、拉致問題も含めて日本は制裁をさらに継続しているわけですね。それからすると、裏返して言いますと、国際社会の中で核の問題が動いたときに、拉致の問題は、やはり、諸般の事情を考慮して段階的にそれをどうするのかということを考える必要が出てくるんだろうと思います。この十三日で切れるのが三回目の延長になった、それが六カ月間と、余り固定的に考えていると外交のタイミングは失うんだろうと思います。

重村参考人 制裁の問題については、日本はこれまで北朝鮮に対して国家の意思をはっきりしてこなかったということをよく考えていただきたい。拉致がされていてもだれも文句を言わなかった、工作員が来てもだれも文句を言わなかった、国家の意思を表明しなかった。経済制裁は、日本が、拉致問題解決しないと許さない、日本の国民を救出するんだという国家の意思を初めて示したことになるんですね。そういう意味では非常に重要なことだと思うんです。

 ただし、最初にお話ししたように、制裁というのは、制裁する、すると言っておどすために本当はやるんです。それで譲歩を引き出すために本当はやるものなんですね。できれば制裁はしない方がいい。しかし、制裁をした以上、成果が出るまでやめるわけにはいかなくなる、その覚悟を持っていないと制裁はできない。ですから、制裁をしたということは、その覚悟があったということ。

 制裁を解除する場合には、北朝鮮が拉致問題について話し合う、少なくとも話し合うという対応が来れば、こちらとしても譲歩できる。しかし、拉致問題について話し合うということを約束ができないのに、こちら側が一方的に譲歩するというのは、これは外交の駆け引き上できないことですね。あくまでもこれは、問題は、対話で解決するための外交の駆け引きだということをはっきり言っていくことは重要だということですね。

 それからもう一つは、核問題の解決について間違っていただかないでほしいのは、核問題については、北朝鮮はアメリカと話をすると言っている、北朝鮮は日本と話をするとは言っていない、そこをよく御理解いただきたいと思うんです。

笠井委員 時間になりましたので終わりますが、いろいろ私も議論していきたい大変重要な問題があって、六者会合の中には日本も入っているわけで、その中で核問題を協議しているわけですが、これも、核問題ということで、核実験という事態、ミサイル発射ということをきっかけにしながら、それに対してとった措置に対しては、その状況の進展に応じてそれはそれできちっとどうするかを判断する、そして、全体として包括的な解決のためどうするかということは見きわめが要るんだろうというふうに思っています。その辺では私自身も大いに意見を持っていますが、きょうは大変にいろいろな意味で勉強になりました。ありがとうございました。

山本委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人各位におかれましては、本当に貴重な御意見を賜りまして、心から、委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。

 各位におかれましては、健康に十分留意されまして、ますます御活躍いただきますことを期待をいたします。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時五十八分開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長兼内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長河内隆君、内閣官房拉致問題対策本部事務局政策企画室長山元毅君、警察庁警備局長池田克彦君、金融庁総務企画局審議官河野正道君、総務省大臣官房審議官高橋正樹君、法務省大臣官房審議官三浦守君、法務省大臣官房審議官二階尚人君、法務省民事局長倉吉敬君、公安調査庁次長北田幹直君、外務省大臣官房審議官水上正史君、外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、外務省アジア大洋州局長齋木昭隆君、財務省大臣官房審議官永長正士君及び海上保安庁警備救難部長城野功君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 早速質疑を始めさせていただきたいと思います。

 きょうは、拉致問題ということの質問もさせていただきたいと思いますが、関連をして、より根本的な問題でもあります人権問題、拉致問題もまた人権問題でございます、その関連もございまして、最近はチベット族の弾圧の問題についてかなり報道でも細かくなされているところもございますので、それについて政府の見解をただしてまいりたいと思います。

 北京五輪の聖火リレーが大荒れな状態で、特にヨーロッパ含めまして、欧米各国でチベット弾圧に抗議する行動がなされている。ドイツやポーランドなどは、大統領、首相は八月八日の開会式を欠席するということも固めましたし、アメリカでも、ペロシ下院議長が大統領へ、開会式を欠席すべきだ、もう一度考え直せ、そういうことを促しておるところでございます。

 特に、きょうはダライ・ラマ十四世も来日されておるというところでありますので、日本政府が今までチベット族の弾圧に対してどういうようなスタンスで対応をしてきたかということと、今回のダライ・ラマ十四世が来日した折に政府として会うつもりかどうかということについてお聞かせ願いたいと思います。

 これは官房長官にお答え願えたらなと思います。外務大臣ですか。では、どちらでも、政府当局からお話を聞きたいと思います。

高村国務大臣 日本政府といたしましては、チベット自治区ラサ市において、市民と当局の衝突により死傷者が発生したことが確認された直後の三月十五日、情勢を懸念し、注視するとともに、関係者の冷静な対応を求め、事態が早期にかつ平和裏に鎮静化することを強く期待する旨の外務報道官談話を発出しました。また、こうした立場を中国側に申し入れるとともに、邦人の安全確保を要請してまいりました。

 さらに、中国側に対し、国際社会の関心を踏まえ、透明性を確保し、状況の全容をオープンにしていくことが中国自身にとっても利益になる旨を伝えるとともに、状況の改善のために双方が受け入れられる形で関係者間の対話が行われるのであれば、それは歓迎すべきことであるとの立場も伝えてきているところでございます。

 今後とも、チベット情勢をめぐる事態の推移を注視しつつ、政府として適切に対処していく考えであります。

 なお、北京オリンピックについては、日本政府としてその成功を期待しており、オリンピックに大きな影響が出ないよう、引き続き関係者の冷静な対応を求めるとともに、事態が早期かつ平和裏に鎮静化することを期待しております。

 ダライ・ラマと会うかというのも聞きましたか。(鷲尾委員「はい」と呼ぶ)現在、ダライ・ラマ氏が我が国にトランジットのために立ち寄っていることは承知をしております。ダライ・ラマ氏との接触については、従来から、チベットをめぐるさまざまな要素を総合的に勘案しつつ対応することとしてきており、今回の立ち寄りの際に政府として同氏と接触する予定はありません。

 いずれにせよ、チベット情勢については、引き続き懸念を持って注視しつつ、関連の情報収集を行っていく所存でございます。

鷲尾委員 一部報道によりますと、安倍元総理の夫人でございます昭恵夫人がダライ・ラマ十四世とインド政府の仕切りによって会うという話になったということなんですが、なぜ昭恵夫人なのかなという思いもありますし、なぜ政府が会わないのか。総合的に勘案してという以外で御答弁願いたいと思います。

高村国務大臣 総合的に勘案しつつ以外に、こういうふうにおっしゃいましたが、まさに総合的に勘案しつつ、今後ともそうしていく考えでございます。

鷲尾委員 このチベット族の弾圧というのは、いろいろな報道で知ることができるわけですけれども、正直申し上げて、大変深刻な人権侵害が中国のチベット自治区で行われていたり、民族浄化に近いような政策が実際とられているというところも見聞きすることであります。それは、ダライ・ラマ十四世がチベット文化の虐殺だというコメントもされているわけですから、やはりそれにたぐいする政策が実際現地で、私も見てきたわけじゃないですけれども、なされているんだろう。

 それに対して日本政府が的確なメッセージを発しないというのは、ある意味、国際社会に誤ったメッセージを送りかねないと思っております。

 というのは、要するに、北朝鮮の拉致問題というのは国家の主権侵害であり、そしてまたこれは人権侵害なんだということで、世界各国を巻き込んで、全世界でいろいろ運動を展開しているというふうに私は思っておりますが、では、チベット族の人権弾圧に対しては、日本として注視して対処するとか総合的に勘案するなんというメッセージを与えてしまっては、逆に、日本国家として国際社会に対して誤ったメッセージを送りかねないと思うんですが、この点は外務大臣はどのようにお考えですか。

高村国務大臣 拉致問題とチベット問題を同列に扱え、こういうことでしょうか。(鷲尾委員「いや、そういう趣旨ではないです。全然違います」と呼ぶ)私はそうではないと思っています。北朝鮮の国内にいろいろ人権問題があります。それで、それについていろいろ日本も注文をつけておりますが、それと日本人が拉致された問題とは全然別次元の話をしているわけであります。

 そして、そういう中で、チベットの話については、現時点で何が一番問題かというと、ダライ・ラマ十四世の側が言うことと中国側から発出していることに物すごい差があるわけですよ。真実が那辺にあるかということがはっきりわからない点がある。ですから、さらに透明性を高めてオープンにしろというメッセージを私自身が再三再四出しております。これは公にも言っておりますし、中国側にも言っているところでございます。

 そのことについて、国際社会から何か足りないと、国内からは一部の人から言われますが、国際社会から何か言われたことは私はないと思っています。

鷲尾委員 国際社会から言われるとかいうことではなくて、世界に対して日本が、人権侵害にたぐいする政策が行われているであろうという中においてどうメッセージを発信していくかという問題です。

 欧米各国は、こういうチベットの問題が解決しない限りは大統領が開会式を欠席するとか、解決しない限りはと明言されているわけではない国もあるというのも私も知っていますけれども、そういう対応がされている中で、日本として、それこそ、人権を大事にするよという、日本が日本国家として何か国際社会にメッセージを出した方がいいんじゃないか、私はそう思っているわけです。世界にどういうふうに言われたことがあるかどうかとかじゃなくて、そういう判断はないんですかという話です。

高村国務大臣 私自身が、このチベットの問題は、中国の内政問題であると同時に、世界が関心を持つべき人権の問題であるから、これについては中国側はきっちり情報を開示するべきである、オープンにすべきである、こういうメッセージを中国側にも伝えていますし、再三再四、公のところで言っているところでございます。

 そして、何か、欧米諸国はと言いますが、欧米諸国もみんなそれぞれ差があるんです。そういう中で日本は、私が言ったようなメッセージを私が出している、こういうことで御理解をいただきたい、こう思います。

鷲尾委員 ですから、世界が関心を持っているということで、日本は特に世界から誤解されている部分も一部あるのではないかというふうに私は感じています。

 それはどういうことかというと、去年もありましたけれども、アメリカの下院で慰安婦の非難決議も出されていました。アメリカの議会で出されましたし、カナダでも出されましたし、オランダでも出されましたし、フィリピンもそうですし、人権侵害ということで非難決議を出されているわけですよね。それはもう大臣も御存じだと思います。

 ですから、そうじゃないんだ、日本は人権というのをしっかり守っている国なんだということをよりアピールする意味がある。日本というのは、どうも情報戦略として世界に発信するメッセージ、情報発信能力がないというふうに言われていますけれども、こういう問題をきっかけに、やはり世界に対してメッセージをしっかりと送っていくということが大事なんじゃないかなと思うんです。

 ですから、そういう意味において、今回せっかくダライ・ラマ法王も来日されるわけですから、そのときに政府として会うということも、一つの、中国に対する物すごい痛烈なメッセージになるんじゃないか、国際社会に対する日本のアピールにもなるんじゃないか、そういうことを私は考えているわけです、言っているわけです。

 どうしてこういうことが必要か。やはり、人権を守る国なんだとアピールすることは、拉致問題に対しても少なからずいい影響を与えると思いますよ、拉致問題の進展に対しても。日本はそういう国なんだとアピールするわけですから。

 どう思いますか、大臣。

高村国務大臣 日本がそんなに世界から誤解されているかどうかというのは、私は、そうでもないと思います。

 BBCで調査をして、世界に肯定的影響を与えている国はどこか。三年連続、日本はトップクラスです。微差で二位だけれども、ほとんどトップと言っていいのを三年連続続けているわけです。BBCが多くの方にアンケート調査をしているんです。だから、現在の日本に対して余り自虐的になる必要はないんだろう、私はそういうふうに思いますね。

 それから、さっきから言っているように、私は私のメッセージを発出しております。

 それから、北朝鮮の拉致問題を解決するためには、残念ながら、日本一国の力ではなかなか難しい。そういう中で、六カ国協議というのが一番大きいので、そこで一対五の関係をつくっていかなければいけない現在、中国の影響力もかりなければいけないときに、そういうことも総合的に判断して外交をやっているんだということは御理解いただきたいと思います。

鷲尾委員 それと、あと一つ私が気になっているのが、こういうことに対しても、日本国内からもやはり声が上がっているわけじゃないですか。チベットに対してしっかりとしたメッセージを送るべきだとか、それは上がっているのは御存じだと思いますよ。

 そういうことに対して、本当に、総合的に配慮するんだ、総合的に勘案して、日本政府としては余り他国を刺激するようなことを言えないという解釈を、私は今大臣から言われてとりましたけれども、そういうことをずっとやってしまっていると、それこそ日本国内で偏狭なナショナリズムが育ってしまう余地も生まれると思うんですね。ですから、そういう部分も私は総合的に勘案してほしいというふうに思います。

高村国務大臣 委員が、偏狭なナショナリズムが生まれるのを防ぎたい、こういうお気持ちをおっしゃったことを私は評価いたします。

 今、日本と中国は戦略的互恵関係をやろうとしているわけであります。戦略的互恵関係は、政府と政府の間ではできているんだけれども、残念ながら、国民感情の点ではまだまだ脆弱なんですね。

 政府と政府、首脳と首脳は、私は、皆さんが思っている以上にきっちりした話ができる間だと思います。外相同士も、はっきりした話がお互いにできる間だと思っています。何かを言ったからそれが悪くなるとか、そういう話ではないと思っています。ただ、国民感情はまだ脆弱でありまして、公に日本の外務大臣が何かを言ったことを、中国の国民感情的にはののしられたと感じる。これは、違っても、そういう部分はある。それに対してまた日本側がけしからぬという、偏狭なナショナリズムが爆発するおそれがまだあるんです。

 これは、そういう中で、私とヨウケツチ外相の間でははっきり物事を言い合えますよ。恐らく胡錦濤主席と福田総理の間でも、皆さんが想像している以上のかなりのことが言えるだろう、言っているだろうと思います。ただ、それはそれとして、まだ国民感情がお互いに脆弱で、お互いがののしられたと感じかねない状況にあるということも、国民感情をおかしく、刺激しないようなことも考えてやっているということは御理解いただきたいと思います。

 まさに、偏狭なナショナリズム、両方にある、両方の国に偏狭なナショナリズムがあるんですよ。言わないとそれが出てくるというふうにおっしゃったけれども、言うと出てくる部分もある、そういうことを考えながらやっているということを御理解いただきたい。

鷲尾委員 大臣、そうおっしゃいますけれども、中国政府が、政府としていろいろ反日教育をしているとか、そういう現状も我々は知っているわけですよ、国内で。我々は、民主主義の国でいろいろ言論の自由も保障されていますから、情報でいろいろ知ることができるわけですから。では、相手の国がどういうことをしているかというと、やはりそれは、いろいろな各国の報道を見ればある程度わかるわけですよね、推測することができるわけですよ。

 そう考えると、それは、偏狭なナショナリズムを抑える、そのために、総合的に勘案して何もしない方がいいんだと。国内的には何もアピールしていないことになっているじゃないですか、そうしたら。うまいアピールの仕方というのも、やはりこれからも考慮してしてもらいたいなというふうに思います、もっと、より強く。私は立法府ですから、行政府と違いますから、そういうことを立法府の一委員が言っていたと強く認識していただきたいと思います。

 済みません、これもちょっと時間がなくなってきますね。これに関連して、一つ、ちょっと別の話をしたいなと思います。

 五輪の聖火リレーの話で、かなり激しい行動がある。その抗議行動がある中で、聖火のトーチを守るグループというのがちゃんといるんですよね。これが五輪の組織委員会から派遣されている警備隊だという話なんですけれども、どうも、各国の報道によりますと、この五輪組織委員会の警備隊が、聖火を持っているリレー走者に対しても非常に強硬な態度に出ていたり、そしてまた活動家に対しても、当然トーチを守るという意味もあるんでしょうけれども、かなり激しい行動に出ているということがイギリス国内でも懸念されていて、実は、イギリスのタイムズという新聞ですけれども、この警備隊が、その背景がどういう人たちなのかということをしっかり調べろということで、政府もどうやら調査にも乗り出してきているという話なんです。

 実は、長野に聖火リレーが来るわけで、こういう問題に対してどういうふうに今、日本政府が調査をいたしているのかということを含めて、少し御説明いただきたいと思います。

小野寺副大臣 聖火リレーをめぐる動きにつきましては、これは第三国のことでありますので、詳細なお答えは差し控えたいと思っております。

鷲尾委員 もう時間がないので一つコメントさせていただきますが、その警備隊が実は中国の警察部隊、中国の治安機構の武装警察に匹敵する人たちであるという情報があって、そういう人たちが実際に日本国内に入って実質的には警察権の行使に当たるわけですから、そういう問題が起こりかねない、国際法上の問題も起こりかねない。事前にこういう問題がイギリスで出ているわけですから、あらかじめ出ているわけですから、日本政府として、しっかりと調査の上で問題が起こらないように対処していただきたい、そういうことなんですけれども、では官房長官、一言コメントください。

町村国務大臣 長野で、たしか来週の土曜日ですか、聖火リレーが行われるということで、これに対応してどういうような、混乱が起きないようにしていくのかということにつきましては、既に関係者が寄り寄り集まって相談をしているというふうに承知しております。

 スポーツの祭典である北京五輪の成功ということを多くの世界の人が望んでいる、その過程での聖火リレーが、日本で混乱が生じないようにしていくということは、オリンピックの成功に向けても大切なことだろう、こう思って、日本政府としても万全を期していきたい、かように考えておりますし、また、必要な情報収集もやらなければいけないと思っております。

鷲尾委員 済みません。

 それでは、次の質問に移りたいと思いますけれども、今、中国と北朝鮮がかなり経済連携を深めているという報道がございまして、道路、鉄道整備含めて、人民元の決済を追認したとか、いろいろな報道があるわけですけれども、これに関連して、やはり日本の経済制裁というのが効果が薄まってしまうのではないかという懸念もあるわけです。

 ですから、先ほど高村大臣がおっしゃったように、中国を含めてしっかりと拉致問題に取り組ませるための方向づけというのをしていかなきゃいけない、非常によくわかるんですけれども、今日本がやっている経済制裁が効果が薄まってしまうのではないかという懸念がある中で、では、経済制裁以外にどういうことを北朝鮮に対して、制裁措置に匹敵するような、北朝鮮の資金源をできる限り抑えていくんだ、そういう方向性の中で、日本政府としてどういう政策がとれるのかということを少し議論したいなというふうに思っているんです。

 と申しますのは、以前これは国会でも議論されたんですけれども、朝鮮総連の施設に対する固定資産の減免措置について少し議論させていただきたいと思うんです。

 釈迦に説法ですけれども、東京都が課税して以降、だんだんと自治体が減免措置をなくしていくというような方向性になってきているわけですけれども、昨年の十二月に、熊本市が最高裁に上告した減免措置に対する違法性が最高裁で確定したということなので、これを受けて、その固定資産税の減免措置について総務省さんが各自治体に対してどのような対応をされているのかということについてお聞きしたいと思います。

谷口副大臣 今委員がお尋ねになったのは、朝鮮総連施設に対する固定資産税の減免措置についてお聞きになったと理解しておりますが、一般的に、地方税の減免措置につきましては、特別な理由がある場合に限って税負担の軽減を図るということでございまして、各自治体は適正かつ公平な運用に努める必要がある、こういうように言っておるわけであります。

 それで、お尋ねの朝鮮総連施設に対する固定資産税の減免措置の取り扱いにつきましては、今先生がおっしゃったように、熊本市におきましては訴訟がございまして、平成十八年二月の高裁判決におきまして、減免対象資産の使用実態やその公益性判断が問題とされたわけであります。

 このことも踏まえまして、減免対象資産の使用実態を的確に把握した上で、公益性の有無等条例で定める要件に該当するかを厳正に判断するよう通知を発出するなど、注意喚起をいたしておるところでございます。

 ちなみに、熊本市におきましては、本年の二月二十五日にこの減免措置が廃止をされたというような状況になっております。

 それで、朝鮮総連施設に対する固定資産税の平成十九年度課税状況につきましては、関係する地方団体を対象として調査をいたしましたところ、税額のすべてを減免いたしております団体が四十三団体から二十八団体に減少しているというような状況など、各自治体において見直しが進められているところでございますけれども、総務省におきましても、これから引き続き、適切な対応をしてまいりたいと考えております。

鷲尾委員 やはり、資金が北朝鮮に行くというところについてはできる限りしっかりと抑えるということで、総務省としても、残りの二十八団体、ほかにも団体いっぱいあるわけですけれども、引き続き、どういう減免措置がなされているのか、個別的事情も含めてしっかりと調査して、是正していっていただきたいと思います。

 もう一点ですけれども、二〇〇七年、去年の十一月の中日新聞の報道なんですが、伊賀市のもとの総務部長さんが逮捕、起訴されたということで新聞記事が載っていたんですけれども、これは一千八百万円資金を着服していましたと。ただ、一千八百万の資金を着服していただけだったら、それは大して大きくはないんですけれども、一千八百万着服していた、その原資となるのはどこかというと、これは、在日韓国人の方から、住民税を半分に抑える、半分に抑える見返りとしておれのところに資金を持ってこいということで、その千八百万の着服が発覚したということなんですね。

 かねてから、民団や総連に対して、団体交渉権、国税庁はこれを認めていない。国会でも議論されていました。国税当局で団体交渉権というのは、これはないんだと。ところが、地方自治体の住民税の話になりますと、課税当局が、実は現場では住民税の減免措置を行っていたという現状があったわけですね。それに対して今総務省さんは……。もう国税庁はないと言って話をしているんですね、国会でも議論をしていましたけれども。では、地方自治体の課税当局の状況はどうなのか、これについてもちょっと状況をお聞かせ願いたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 個人住民税の減免は、個々の納税者の担税力などについて特別の事情がある場合に限り、各市町村の条例の定めるところによりまして税負担の軽減を図るものでございまして、各市町村は適正かつ公平な運用に努める必要があるものでございます。

 お話にございました、報道されました、三重県内の一部の市における在日韓国及び朝鮮人に係る個人住民税の減免の事例については既にすべて廃止されたというふうに聞いておるところでございます。

 全国的な調査は実施していないところでございまして、承知していないところでございます。

鷲尾委員 いや、これは全国的にしっかりと調査していただきたい問題だと思っています。

 こういうことが過去行われているのか、そして現状はどうなのか、これは、総務省としてそういう調査をしっかりとしてもらいたいですし、さらにそういう通達も含めて、固定資産の減免については通達を出されたという話は私も聞いたんですけれども、これは地方の課税当局の話ですから、これについても総務省がしっかりと監督、是正してもらわなきゃ困ると思うんですけれども、谷口先生、どうですか。コメントをいただきたいんですけれども、しっかりと。

谷口副大臣 先生のおっしゃるように、実態を調査させていただきたいと思います。

鷲尾委員 ありがとうございます。これで質問を終わります。

山本委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 民主党の北神圭朗でございます。きょうは、当委員会初めての質問であります。

 官房長官、記者会見がありますので、もう質問しませんので。

 きょうは、北朝鮮の、一九九四年のジュネーブの合意された枠組みの中で、日本の国際協力銀行がずっと北朝鮮に融資をしてきた、その問題について質問したいんですが、その前に、先ほど大変有意義な参考人質疑がありまして、ちょっと通告はないんですけれども、非常に大事な質問をしたいと思います。

 重村先生が、日本の政府は拉致問題について、一遍も北朝鮮に、拉致の人たちを返してほしいと言ったことはない、こういう発言をされたんですね。これは皆さんにとっては聞き捨てならない話かもしれませんが、この委員会でそういう発言がありましたので、やはりそこはちゃんとはっきりさせないといけないというふうに思いますので、いかがでしょうか。

高村国務大臣 重村さんとは私は非常に親しい、十年以上前から親しい間柄でありますが、どういう意味でそういうことをおっしゃったのかよくわかりませんが、金正日氏が拉致ということを認めるよりずっと前から、返せということは言っております。日朝協議で拉致の話を出した途端に席を立ってしまう、そういう時代から、ずっと言っているわけであります。

北神委員 文脈として、おっしゃられたのは、たしか笠井委員が、日本の今の拉致問題に関する外交について改善点があれば教えてほしいと各参考人に聞かれて、そのときにたしか重村先生が、それはやはり、まず返してほしいという意思が北朝鮮に伝わっていないとそもそも話にならない、北朝鮮側は恐らく、そんなに日本は一生懸命返してほしいと言ってきていないというような発言だったんですね。

 私は何も、重村先生、割と一番いい話をされていたと思いますし、彼を批判するつもりは全くございませんけれども、やはりこれは誤解を招くのであれば、本当に大臣がおっしゃるように、そんなことはないというんだったら、誤解を招く話ですから、ぜひそれは重村先生の方にやはり伝えるべきだというふうに思います。

 もう一つ言うならば、彼が言うのは、小泉総理が訪朝されたときも、拉致の人たちを返してほしいということは一切言わなかった、安否確認はしたけれども返してほしいということは一切言わなかったと、そこまでおっしゃったんですよ。

 ですから、話は聞いていないので、一回それはぜひ議事録でも見ていただいて、確認をしていただきたいというふうに思います。

高村国務大臣 どういう意味で、どういう文脈で言ったか、重村氏自身に私が確かめてみます。

北神委員 ぜひお願いしたいというふうに思います。

 次に、本題に移りたいと思いますが、今、六者会合の方で、先ほども、それこそ参考人質疑で、大きな転換点に差しかかっているかもしれないという話でありました。

 この北朝鮮に対する核問題というのは、拉致問題もそれに密接にかかわってくるわけでありますが、もともと、先ほども申し上げた一九九四年のジュネーブでの合意された枠組みから始まっているというふうに思います。それが、私に言わせれば、外交の失敗があった。これは日本だけじゃなくて、アメリカもそうですし、韓国も私は失敗をしたというふうに思っております。その仕切り直しということで、昨年の二月ですか、六者会合というものがスタートしたというふうに理解しているわけであります。

 この問題については私もいろいろ疑問点もたくさんありますが、この六者会合、これからも大臣がその中で交渉される上でも、一つやはりはっきりさせていかないといけない問題があるというふうに思います。これは余り知られていないので、あえてこの委員会で申し上げたいというふうに思いますが、私は二回ほど、予算委員会の分科会の方でこの質問をさせていただきました。

 御存じのように、さっきの合意された枠組みの中で、軽水炉の原発を二基北朝鮮につくる、その支援というものをアメリカと韓国と日本でやろうということが合意されたわけであります。その中で、十年間にわたって、日本の国際協力銀行から、円レートの問題もありますが、全部で大体四百八十億円ぐらいの貸し付けが行われてきた。これは当然、北朝鮮に対する慈善活動でも何でもなくて、核の開発の疑惑があったから、それをやめることと引きかえに、その約束と引きかえに、では日本も支援に応じるということであったというふうに思います。

 ところが、二〇〇五年に、北朝鮮は堂々と核兵器保有宣言をするわけであります。そういったことで、当然ですけれども、その翌年にこの軽水炉の事業というものが廃止になる。それはそれで、北朝鮮が悪いんですから、私はそれでしようがないというふうに思いますが、問題は、その国際協力銀行の貸し付けが残っている、四百八十億円ぐらいだというふうに思います。私は、おととしも麻生大臣にも質問しましたし、去年は尾身財務大臣に質問をしました。

 北朝鮮という国は、今までの経緯からいっても、アメリカでもローグ国家、ならず者国家というふうに言われているぐらいで、誠意のかけらも私は感じておりません。そんな国に貸し付けをして、安易に約束をのんでしまったわけでありますが、その四百八十億円貸し付けたお金、これは普通の常識で考えれば回収しなければならない。返してくれと、北朝鮮に、おまえら約束を破ったんだから今まで貸し付けたお金を全部返せと言うのが筋で、一応そういうことも外務省の方でやっているというふうに思いますが、どう考えても返すような国ではないと思います。

 そういう中で、その努力はやられたらいいと思いますが、やはりこれはどう考えても、どんな知恵を絞っても、結局国民の血税で、国際協力銀行の焦げついた四百八十億円ぐらいのお金を肩がわりしないといけない。そういうことを私もたびたび、毎年申し上げたつもりだったんですが、ずっと、いや、もう、引き続き返済を要求していきます、仮の質問にはお答えできませんということだったんです。

 きょうのお配りしている資料にもありますが、どうも昨年の年末に、恐らく平成十九年度の補正予算に九十億円、国際協力銀行に国民の税金で返すということが決まったわけであります。これについて、大臣、この九十億円を返すということは、北朝鮮に貸し付けた金額というのは全部で大体四百八十億円ぐらいだというふうに理解しているんですが、なぜ九十億円なのかということをまずお聞きしたいと思います。

小野寺副大臣 KEDOへの出資金についてでございますが、このKEDO、一九九四年の米朝間の合意された枠組みの合意を実施するために設立され、北朝鮮との間で、北朝鮮に軽水炉を供給するために協定を締結いたしました。我が国とKEDOとの契約に基づき、JBICがKEDOの軽水炉プロジェクトのために貸し付けを行いましたが、その返済には、軽水炉完成後、北朝鮮からKEDOへの返済を充てることとなっておりました。

 しかし、北朝鮮が二〇〇二年十月にウラン濃縮計画の存在を認めて、その後供給協定違反行為を繰り返したということで、KEDOは、二〇〇六年五月に軽水炉プロジェクトの終了を決定するとともに、北朝鮮への供給協定違反の結果、KEDOは、こうむった損失の支払いを北朝鮮に要求いたしました。しかし、北朝鮮は、現在までこの要求に応じておりません。

 そのような中、KEDOは、二〇〇七年五月、事務局を大幅に縮小し、最も遅くて五年後には閉鎖することを決定しました。したがって、KEDOのJBICに対する債務については五年以内に処理する必要が生じ、JBICはKEDOに対し、五年間での債務の返済を求めました。

 以上の経緯を踏まえまして、政府としては、引き続きKEDOから北朝鮮に対する支払い要求は行いつつも、平成十九年度の補正予算に、貸付残高の五分の一に相当する九十億円をKEDOに対する拠出金として計上し、予算成立後、昨年度末に拠出いたしました。KEDOは、この拠出金の全額を、既にJBICへの債務の一部の返済に用いました。

北神委員 これは大臣御存じですよね、この話は、今まで。初めてお聞きになりますか。

高村国務大臣 詳しい話は初めてです。

 ただ、JBICの債権の保全について、政府が頼んでやってもらったわけですよね、これは。それについては政府が何かしなきゃいけないということは、このKEDOの枠組みがおかしくなり始めたときから、それはそういうふうには思っていたわけですが、詳しい話については聞いておりませんでした。

北神委員 私も、この問題を取り上げるのは、恐らく、余りずっと話題になってこなかった、これを載せたのは読売新聞ぐらいかな。

 私は、次にお聞きしたいのは、この新聞記事によると、これは肩がわりではないというふうに説明を、多分外務省の方から、しているということなんですね。それは、理由をぜひお聞きしたいですけれども、なぜ肩がわりじゃないのか。

 でも、やはり、これは大臣として、今までのこういう日本の外交は、明らかにこれは一九九四年の合意された枠組みについては失敗をしたんだと、それを認めることは大事だ。その結果、日本の国民の血税が五百億円弱ぐらいこのしりぬぐいに使われるんだということをやはり明らかにしないといけないと思うんです。

 これは何も、何か責任を追及するとかそういう意味じゃなくて、こういうことで、北朝鮮というのはどういう国なのかということをやはり広く認識してもらわないといけないし、これはやはり国民の税金ですから、税金がなぜこういうことに使われるのかということも明らかにしないといけない、そういう意味できょう取り上げさせていただいているわけでございます。

 これはもうはっきりと、やはりあの外交は失敗をしたと。別に日本だけじゃないですよ、私は、カーター元大統領がちょっと軽率だったというふうに思いますが、それにおつき合いをした日本が、これまで幾多の政権の中で十年間もこの貸し付けをして、核開発をやめさせようと思ったけれども、結局それが、北朝鮮はしゃあしゃあと核兵器を保有していますと宣言までして、それで今まで貸してきたお金について回収もできない、それで国民がそのツケを回された。これはやはり、大臣が、この外交は失敗して、責任を感じているということを言わないといけないというふうに思いますが、いかがでしょうか。

小野寺副大臣 先ほど大臣からもお話がありましたが、このJBICのKEDOに対する貸し付けが我が国政府の依頼により実施されたということ、平成十一年四月二十七日の閣議決定におきまして、このJBICのKEDOに対する貸し付けについて、「政府としても、その債権の償還の確保につき万全の措置を講ずる」と表明していることにかんがみ、JBICへの返済を目的にKEDOに拠出するものです。

 今回このようなことが起こりましたが、北朝鮮がKEDOとの間の供給協定に違反し、供給協定に従ってKEDOの金銭的な損失の支払いの義務を負っているということに変わりはなく、我が国政府としては、他のKEDO理事国とも協議しつつ、KEDOとして北朝鮮に対する支払い要求を続けてまいります。

北神委員 それはつまり、支払い要求をしているから、まだ外交は失敗したかどうかわからぬ、そういう意味ですか。

 私が聞いているのは、これはやはり外交は失敗したと。ある意味ではそうなんですよ。仕切り直して、まさに六者会合というものを設定して、より厳密に、北朝鮮がああいうふうに裏切り行為をしないように何回か段階を設けて、彼らが約束を履行しなければ支援をしないという枠組みをつくったというふうに私は理解をしておりますが、やはりそこは、外交の失敗を国民の血税でツケ回しをしてしまったということを表明しないといけないと思いますが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 はっきりしていることは、米朝枠組み合意が、想定されたとおりうまくいかなった、これははっきりしているわけですよね。

 米朝枠組み合意に基づいてKEDOというものが出てきた。アメリカにとって選択肢というのはいろいろあの当時あったわけですよ。何らかの話し合いで決めるか、それとも軍事的手段に訴えるか。あのときあった。そこに対して、あれが失敗だったと断ずるためには、想定どおりうまくいかなかったことは事実なんだけれども、その選択肢の一つの、あのとき韓国やら日本が軍事的行動に訴える方がよかったと言うべきかどうか、そこまで言わないと、あれが失敗だったというふうに断ずることはなかなか難しいわけですよね。その選択肢。

 そして、日本が、仮にそこで軍事的行動に移ることに反対したのは、当時のことを私は詳しく知っているわけじゃないんですが、韓国や日本が軍事的行動に対して非常に消極的であったことは事実だと思うんですね。それで、消極的であって、なおかつその枠組み合意に乗らないという選択肢があり得るのかどうかという話はあるわけですよね。

 だから、想定どおりうまくいかなかったことは、これは間違いない。これはアメリカ自身もそう思っているでしょう。私たちからしても、想定どおりうまくはいかなかった。ただ、それを失敗だと断ずるためには、よりいい選択肢があったということが言えるかどうかという話。

 少なくとも、黒鉛炉は凍結されて、その間にプルトニウムは生産されていなかったわけですよね。どんどん核を開発させるのを野放しにするのか、軍事的にやるのか、それとも何らかの合意をつくってそこでとめるのか、そういう選択肢の中で、想定したようにはうまくいかなかった、これは間違いない。だけれども、ほかのどういう選択肢を、アメリカがどうだったということもあるし、アメリカがそうおっしゃったときに日本が乗らないという選択肢があったかどうかという話もあるわけですね。そういうこともしないで、大失敗だった、単にオール・オア・ナッシング、オンかオフかでこれは失敗だ、こう言えるかどうかということは考えなければいけない話だと思います。

北神委員 余り失敗ということを私も強調したいわけではなくて、おっしゃるように、想定どおりにはいかなかった、これはもうだれが見てもそのとおりだということであります。目的が核開発をやめさせることだったのに、核兵器を保有したわけですから。それで、今これで、我々もみんな苦労しているわけですから。

 お聞きしたいのは、でも、これは結局、貸し付けたお金が非常に無駄なことに終わってしまって、税金で肩がわりをしている、これは認めますよね。

高村国務大臣 肩がわりという日本語を使いたくない人と、そうだろうなと言う人とはいますけれども、それはそれとして、税金が、想定したとおりいかなかったがゆえに、それが北朝鮮から返済されないで、最終的には日本人の税金で、少なくとも九十億円については今そうなっている。

 まだ北朝鮮に請求はしますけれども。我々がもうあたかも放棄したごとく言うつもりは全くありません。

北神委員 ありがとうございます。

 次にお聞きしたいのは、これはずっと貸し付けてきて、当然利子というものが発生をする。十年以上貸し付けてきたわけでありますから、利子をやってきた。しかも、軽水炉の原発の事業が廃止になったのがたしか三年前ですから、そこから、事実上北朝鮮から返済を求めないといけないということであります。

 この三年間延ばしてきた、いろいろな理由があると思います。当然、最初は北朝鮮に返せと言うのが筋ですから、すぐ予算で、税金で賄うというのはよくないと思いますが、私が去年の三月一日にこの質問をしたときの時点で、もう既に五回北朝鮮に要求をしていたんですね。そのときでも尾身大臣は、相変わらず、もう壊れたテープレコーダーのように、仮定の質問にはお答えできませんということで、ずっと来た。その間の利子というものが発生して、これも結局国民の税金の負担になるわけですよ、当然利子も国際協力銀行に返さないといけないですから。

 この利子は、全体としてどのぐらい発生をしたのかお聞きしたいと思います。

小野寺副大臣 JBICのKEDOに対する貸し付けについては、我が国とKEDOとの間の資金供与協定の規定に基づき利子が発生します。

 この算出方法ですが、貸付実行日の長期プライムレートマイナス〇・二%、または当該日の資金運用部からの借入金の利率のうち、どちらか高い方の金利を適用し、また貸付実行日から十年を経過するごとに同様の方法で調整するということになっております。

 これまでの利子相当額として五十四億円を拠出いたしました。

北神委員 要するに、今までの貸し付けの中で、五十四億円利子の分が発生したということですね。これは、この二年間、要するにKEDOの事業がもう事実上終わった、軽水炉事業は終わったと言ってから五十四億円ですか。

小野寺副大臣 全体として五十四億円で、十九年度は八億百五十万円、二十年度は六億六千五百万円の拠出を予定しております。

北神委員 ですから、この延ばした分、今のお話だったら、大体十五億円ぐらい利子が発生してしまった。早目にこれを予算措置していたら、少なくともその半分ぐらいはもしかしたら軽くなっていた。これもやはり、私は反省をしないといけないというふうに思います。

 それは、もちろん、去年の三月の時点で五回も北朝鮮に要求をして、それで結局何の、あのときの外務省の事務方の方は、基本的に門前払いだというようなニュアンスでありましたが、私は、逆に、もっと早く予算の措置を決めていくべきだと。ここはやはり冷厳な事実に基づいて、北朝鮮からもうこれを引き出すことはできないというのであれば、早目に、国民の負担をむしろ軽くする方向で考えるべきだったと思います。

 次に質問したいのは、現実的な問題として、これはもう過去の話ですから余り言ってもしようがないですから、これからの話として、去年の補正予算で九十億円措置をして、五年間にわたって国際協力銀行に、国民の税金で肩がわりをするということであります。

 これは、五年間というのは恐らく、KEDOが五年で解散しますから、それまでに均等に割って毎年九十億円乗せるということであるかもしれませんが、これは最初に四百八十億円分ぐらい予算措置した方が、利子の分が発生されないんじゃないですか。これは、五年間にわたって毎年その利子が発生して、それをまた国民が負担しなければならないんだったら、ちょっとこのスキームはよくないなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

小野寺副大臣 我が国としましては、引き続き、KEDOを通じて、北朝鮮に対してこの債務の返済ということを求めていく、その姿勢は変わりません。一括してというお話がありますが、仮にそうなった場合に、また違ったメッセージを北朝鮮に伝えるかもしれませんので、私どもは、この債務の返済の責任は北朝鮮にある、それはこれからも引き続き北朝鮮に強く指摘をしていく、そういうことだと思っております。

北神委員 要するに、五年間の中でまだ引き続き返済を要求していく、これを一括しちゃうと、北朝鮮に、日本もこれは税金で賄ったからもういいんだなというふうに思わせてしまうということですよね。これも理屈としては理解しますよ、理屈としては。でも、北朝鮮にそんな理屈は通用しないと思いますよ。彼らは全く払う意思もないと思いますし、我々は、今までの不誠実な彼らの対応を見ていて、そのぐらいは冷厳な事実として認めるべきだというふうに思います。

 ですから、去年の補正予算で九十億円措置したのはもう過去の話ですからいいですけれども、次はぜひ一括して、最後の五分の四の分というのは一括して利子の分を国民の税金で負担させて、こんなの、見通しがある程度あったらいいですよ、あったらいいけれども、北朝鮮が返すはずがないですよ。

 私は、これは本当に憤っている問題で、十年間で四百八十億円と簡単に言いましたが、毎年分割で貸し付けてきたんですよ、北朝鮮に。その間に何が起きたかというと、拉致問題が起きた、不審船が鹿児島にも来る、新潟にも来る、テポドンが撃たれる。その間ずっと、日本は、こんな不誠実な国家にお金を貸してきたんですよ。そのあげくの果てが、核兵器、やはり保有しました、お金も全く返すつもりがない。

 私たちは、やはり冷厳に、こういう国はこういう国なんだということで、こういう事態になったのは、大臣は直接やっておられないので大臣の個人的な責任はないと私は思いますが、やはりこれは、国民の負担をできるだけ軽くするために、利子の分がありますからね、今のお話だったら、一年間で大体八億円ぐらいの利子が発生するわけですから。どんどん減っていくのかもしれませんが、四年たつと三十億円ぐらいの利子の負担というものが国民のツケに回るということですから、こんなものを五年間北朝鮮に、どうせこんな、言うことを聞かないならず者国家を相手にやるんじゃなくて、やはりもうきっぱりと、この国は返さないから、これも予算措置でできるだけ利子の負担を軽くしてあげるということで一括措置をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

小野寺副大臣 政府としましては、とにかく北朝鮮に、この返済を含めた責任の履行を強く求めていくということであります。

北神委員 いや、それであるならば、では私はもう一つ言わせていただきますが、一九九四年の合意された枠組みで、こういうひどい目に日本は遭わされた。国家としても威厳を傷つけられた、国民としても税金の負担を負わされた。それなのに、六者会合という、これはある意味で同じ話ですよ、核の話ですよ、そこでほいほいと六者会合に乗るというのは、私はやはり効き目ないと思いますよ。

 ないけれども、このお金をどうするのと。韓国だって日本以上に焦げついているんですよ、金額は。だから、日本と韓国ぐらいで組んで、このお金、まずどうするんですか、これを総括してもらわないと次のこんな協議なんか乗れませんよ、そのぐらいやはり言うべきなんですよ。

 これも去年、外務省の方に言いましたけれども、彼らは、いや、九四年の枠組みと今回の六者会合というのは別だからそれは関係ない、間に引き続き北朝鮮に返済を要求すると言うんだけれども、これはやはり理屈じゃなくて現実を見据えて、今や、失敗だ、失敗というか想定どおりいかなかったというのは明らかなんだから、国民の負担を減らすことに主眼を置くべきだと思いますが、最後に、いかがでしょうか。

高村国務大臣 委員の気持ちはよくわかります。よくわかりますが、六カ国協議へ乗らないというのは、核をどんどんつくっていくのを放置するという話でありますから、それは、国民の安全を守る日本の政府としてはできない、これだけは御理解をいただきたいと思います。

北神委員 もう時間でございますので、またこの問題について引き続き議論していきたいと思います。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。当委員会、久しぶりに質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 福田内閣、発足して六カ月になるわけでありますけれども、まず、福田内閣の拉致問題に対する基本的なスタンスということを再度私はここで確認させていただきたいというふうに思っております。

 第一点は、北朝鮮による日本人の拉致行為、これは国家的テロである、また日本に対する主権の侵犯である、さらにまた個人として見れば、国民として見れば、重大な人権侵害行為であるというふうに私は認識しておりますが、政府の認識はいかがでしょうか。

山本副大臣 漆原委員の質問にお答えさせていただきます。

 政府の基本的な認識はどうかということでありますけれども、今お話がありましたとおりに、この拉致問題というのは、我が日本国家に対する主権の侵害でありますし、我が日本国民の生命と安全に対する重大な侵害でありますので、大変これは我々にとりましては許すことができない問題だというふうに考えております。

 しかも、まさに国家による犯罪行為でありますから、そして重大な人権侵害でもありますので、政府として、福田総理のリーダーシップのもと、今までと同じような形でこの問題にしっかりと全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに考えております。

漆原委員 その認識、私は本当にそのとおりだというふうに思っております。

 それを前提としまして、日朝の国交回復、国交正常化というのは、北東アジアの平和にとっても我が国の平和にとっても大変大きな意味を持っておるというふうに思っております。しかし、今おっしゃった拉致問題を不問にしたまま国交正常化をするということは、とても国民感情として許されないことだというふうに私は思います。

 したがって、従来からの政府の見解でございますが、拉致問題の解決なくして日朝国交正常化はなしというこの原則を福田内閣も維持されるかどうか、お尋ねしたいと思います。

高村国務大臣 当然、維持しております。

漆原委員 それが当然の認識だ、国交正常化は拉致問題解決が大前提だというふうに外務大臣からお答えいただきました。

 その上で、今までこの拉致問題の解決、我々は対話と圧力という二つのファクターで解決すべきであるというふうに思ってきたし、また、日本政府もそういうふうに取り組んでこられたというふうに思っております。

 安倍内閣はどちらかというと、対話ではだめだな、やはり相当の圧力をかけていかないと対話に結びつかないなということで、安倍内閣時代は重点を対話から圧力の方に置いたんじゃないかなというふうに私は思っておりますが、この点、福田内閣は、対話と圧力、どちらの方に重点を置かれて今後の交渉に臨まんとされているのか、お尋ねをしたいと思います。

山本副大臣 今、対話と圧力というお話がございました。

 従来からそうでありますけれども、圧力を加えながら対話をすることによって北朝鮮の具体的な対応を引き出す、こうした姿勢で来たところであります。福田内閣におきましても、拉致問題の解決のためにはこの対話と圧力を、双方が両方とも必要でありますけれども、バランスをよくするということが大切であるというふうに考えて、バランスよくやるということが重要だと考えております。

漆原委員 この点は若干、福田内閣は、圧力じゃだめだな、対話を重視しなきゃだめだなというふうな印象で国民に受けとめられている節がありますが、対話と圧力を有効に使っていくんだ、圧力をかけることによって対話を導き出していくんだ、こういう考えでよろしいんでしょうか。もう一度確認します。

高村国務大臣 対話も圧力も拉致問題を解決する手段でありますから、その状況状況において、今は圧力をかけるべきだ、あるいは今は対話をすべきだ、あるいは両方だ、そのときそのときによって違うんだと思うんですね。例えば、ブッシュ大統領が悪の枢軸だなどと言って、ある意味で北朝鮮が恐れおののいているときにはどういうやり方がきくかということと、今ヒル次官補が行って対話の方向に行っているときに日本はどういうふうにやった方がこれがきくかとか、その状況状況だと思います。

 あくまで拉致問題を解決する目的に向かって、今の状況でどちらがどういうふうにきくのか、そういうところでバランスをとっていくということだと考えております。

漆原委員 私もそのとおりだと思っております。

 そこで、福田内閣発足以来六カ月になるわけでありますけれども、いろいろな取り組みを、例えば拉致被害者の皆さんに総理がお会いになって本当に温かい言葉をかけていただいた、喜んでおるところでございますけれども、この六カ月の間、この解決に向かって福田内閣はどのような取り組みをされてきたのか、そしてまたどのような成果をおさめられたのか、一応、半年の総括をお願いしたいというふうに思います。

山本副大臣 福田総理、九月の就任以来、各国の首脳会議等も何回か出席をさせていただいておりますけれども、その折にも、各国首脳の皆様方に日本の今の拉致問題に対する立場をしっかりと説明させていただきまして、そうした結果、拉致問題に対する国際社会の理解と支持が得られた。これはやはり、その機会ごとに総理が説明しておられますので大変な理解が得られた、そのように判断をしております。こうしたことが成果だというふうに思います。

 そして、個々の問題につきましては、例えば拉致被害者御本人を励ます、そうしたことを目的に、北朝鮮に届くということで、「ふるさとの風」という北朝鮮向けラジオ放送、これは毎日今放送させていただいております。これが届くことによって拉致被害者御本人が勇気づけられればという形でやらせていただいております。それとか、シンポジウムのようなものも開催させていただいておりますし、映画も、「アブダクション」という映画ができたわけですけれども、この上映権を買い上げまして学校で放映したりしております。さらに、アニメの「めぐみ」を制作いたしまして、そうしたことで、いろいろな広報活動をさせていただいております。

 政府といたしましては、福田総理の強いリーダーシップのもと、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現すべく、政府一体となって引き続き最大の努力をさせていただきたいと思っておるところであります。

漆原委員 拉致問題の解決には、日本だけじゃなくて、アメリカ、中国、韓国、ロシア、こういう国々との協力も大変重要だろうというふうに思っております。

 韓国の李明博新大統領は、従来の金大中大統領あるいは盧武鉉大統領のいわゆる太陽政策をおとりにならないというふうに私は認識しておるんですけれども、太陽政策を変更するということと、拉致問題に対する李明博大統領の取り組みに変化があるのかどうか、日本政府はどのように認識されているんでしょうか。

小野寺副大臣 李明博大統領は、これまでに、非核・開放・三〇〇〇政策を表明し、北朝鮮による核放棄と対北朝鮮支援を比較的明確に関連づけるなど、前政権とは重点の置き方が異なる方針を示しております。

 また、李明博大統領は、拉致問題を含む人権問題を重視する姿勢も明確にしております。最近のインタビューでは、拉致問題は、韓国、北朝鮮、米国、日本、中国が互いに協力しなければならない問題であると述べるなど、拉致問題の解決に向けた協力の必要性を認識している旨の発言をしております。

 四日に行われました日韓外相会談におきましても、大臣から、拉致問題を含む人道的な問題についても日韓で一層緊密に連携していきたい旨を述べたところ、柳明桓外交通商部長から、韓国政府としてもできるだけの協力をしていきたい旨の発言がございました。

 日本も韓国も、拉致問題を人道的な問題ととらえ、被害者の帰国を願う気持ちに何ら変わりはなく、今後緊密に連携していきたい、そう思っております。

漆原委員 韓国内でもたくさんの、何百人という人が拉致をされているというふうに私はお伺いをしております。しかし、今までの大統領は、自国の拉致問題に対して必ずしも積極的ではなかった。韓国の拉致問題、拉致被害者の方が日本の拉致の大会に来られまして、その辺の窮状も訴えておられました。むしろ、日本から韓国に向かって圧力をかけていただけないかというふうな話も伺ったところであります。

 李明博新大統領は、自国の拉致に対する取り扱いはどのようにお考えになっておるのか、その辺は御存じなんでしょうか。

齋木政府参考人 委員が今御指摘になりましたように、李明博大統領は、人権問題を大変に重視する立場から、いわゆる拉北者問題、北朝鮮によって拉致された韓国国民の奪還というか返還に向けて、大変に強い立場を実は表明しております。今、南北の対話が、新しい政権になってから、北朝鮮側からのいろいろな動きによって中断しておる状況ではございますけれども、韓国の新政権は、人権問題としての切り口から、日本の拉致問題とは十分に連携を密にしながら臨んでいきたい、こういう立場を表明しております。

 今後、日韓の間、またアメリカも含めて、日米韓で、人権問題という側面からも、拉致問題、拉北問題についてはきちんと対応していく、今、そういう観点で三カ国の間での連携を密にしていく、こういう方針でございます。

漆原委員 その韓国、李明博新大統領が四月の二十日に訪日される、さらには、五月には中国の胡錦濤国家主席が訪日されるというふうに聞いておりますが、日本として、拉致問題の解決にやはり中国の協力が絶対に必要だと思うんですね。韓国も同じです。経済制裁、船舶の入港禁止措置をとっても、あるいは物資の輸入禁止の措置をとっても、これは、北朝鮮に隣接する韓国と中国が日本と同じように協力をしてくれなければ、ある意味では有名無実になってしまうという危険性があるというふうに思っております。

 そういう意味で、この四月、五月、両国の首脳が来られるに際して、一緒に協力しようと言うだけではなくて、日本政府は、李明博大統領及び胡錦濤国家主席に対して、拉致問題解決に向けての具体的な提案を用意されているのかどうか。用意されていれば、その内容を、許せる範囲でお聞かせ願いたい、こう思います。

高村国務大臣 李明博政権は、拉致問題を含む北朝鮮の人権問題を極めて重視しているわけで、私も、先般の日韓外相会談におきまして、拉致問題を含む北朝鮮問題について、柳明桓長官との間でよい議論を行うことができた、こういうふうに思っております。私から、拉致問題を含む人道問題についても日韓間で一層緊密に連携していきたいと述べたのに対して、柳長官から、日本の立場に対する理解と支持が表明され、拉致問題については韓国政府としてもできるだけの協力をしていきたい旨の発言がありました。

 現時点で首脳会談の内容を予断することはちょっと差し控えたいと思いますが、日韓外相会談のやりとりも踏まえ、来る日韓首脳会談において、拉致問題を含む北朝鮮問題について有意義な議論を行っていただくようにしたいと思います。現時点で申し上げられるような具体的な提案というのはまだちょっとありませんが、有意義な議論を行っていただきたいと思っております。

 それから、中国の方でありますが、六者会合の議長国である中国にとって、北朝鮮問題が大きな関心事項であることは言うまでもなく、我が国は、さまざまな機会をとらえて、中国との連携を確認してきているわけであります。北朝鮮問題につきましても日中両国が協力を進めることによって、日中間の戦略的互恵関係の構築に向けた協力が強化される面もあると考えているわけであります。

 昨年十二月に福田総理が訪中された際には、総理より温家宝総理に対して、拉致問題を含む日朝関係に関する日本の方針を説明し、六者会合プロセスが全体としてバランスよく前進するよう努力することなどを述べ、温家宝総理よりは、拉致問題に関する日本の関心を理解する、日朝関係の改善を強く支持する旨の発言がありました。最近では、先般、二月にトウカセン国務委員が来日した際も、同様の議論が行われたところであります。

 政府としては、六者会合共同声明を完全に実施するために、朝鮮半島の非核化と拉致問題を含む日朝関係の双方がともに前進するように、今後の首脳会談等さまざまな機会をとらえて、中国を含む関係国と連携しつつ、最大限努力を行っていく考えであります。

 現時点で、委員がおっしゃった具体的な提案というところまで行っておりませんが、いい連携関係を韓国とも中国ともつくっていきたい、こういうふうに思っております。

漆原委員 六者協議の話が出ましたが、これは核の問題が中心的なテーマになっておりまして、拉致の問題はメーンのテーマになっておらない。せっかく拉致問題を解決するのに最も適する国々の皆さんが集まって協議をしているにもかかわらず、拉致問題が共通の話題になっていない。私は、この六者協議を見るたびに、まことに歯がゆい思いがしてならないわけであります。こんな状況で、どうやって政府は拉致問題に取り組んでいかれるのかな、六者協議を生かしながらどう取り組んでいかれるのかなというふうに思います。

 私は、本当に外務大臣には申しわけないですが、拉致問題、拉致の被害者を取り戻すんだ、こういう観点から見ると、福田総理の姿が残念ながら見えないなというふうに率直な感じを持っております。本当に、家族の、関係者の高齢化が進んでおりますし、皆様は一日千秋の思いで被害者が帰ってくるのを待っておりますが、福田内閣としては拉致問題をこうやって解決するんだという、具体的な方針と熱意をぜひともお示しいただきたいというふうに思います。

    〔委員長退席、高木(毅)委員長代理着席〕

山本副大臣 委員御指摘のように、御家族の皆様方も大分お年をとられており、大変長い時間がたっておるわけであります。その中で、福田総理は、就任以来、どうしてもこの拉致問題を自分の任期中に解決したいという強い意思を持っておみえになりますので、私どもも、政府といたしましても、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現すべく、総理みずからを本部長といたします拉致問題対策本部を中心として、政府一体となって引き続き最大限の努力を払ってまいりたいと考えておるところであります。

漆原委員 最後に一点だけお尋ねしたいと思うんですが、入港禁止及び輸入禁止の両措置が四月十三日に期限切れになるわけであります。私は、当然、再延長すべきというふうに思っておりますが、政府のお考えを最後に尋ねたいと思います。

高村国務大臣 当然、延長されることになるだろうと思います、あした正式に決めるわけでありますが。まことに残念ながら、延長しないような動きは北朝鮮側に全く見られないわけでありますから、当然、延長されることになるだろうと思っております。

漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。

高木(毅)委員長代理 次に、山本ともひろ君。

山本(と)委員 自由民主党の山本ともひろです。

 本日は、大変貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、まず最初に外務大臣にお伺いをしたいんですが、この四月の十三日に対北朝鮮の措置が期限を迎えます。報道機関等々では、あす、何かしらの閣議決定をなされるというふうに報道されております。

 外務大臣として、その閣議決定の前に明確にお答えになるというのは大変難しいとは思いますが、ここでいま一度、外務大臣としての決意といいますか、およそ、今現在、北朝鮮に対していわゆる制裁措置を解くような現状ではないと私は思っておりますし、ぜひ延長をしていただきたいと思っておりますので、外務大臣としての御決意をお聞かせください。

高村国務大臣 北朝鮮が六者会合で二〇〇七年末までの実施を約束したすべての核計画の完全かつ正確な申告をいまだ実施していない、また、拉致問題についても具体的な対応をとっていない。北朝鮮をめぐる諸般の情勢を総合的に勘案すれば、これらの措置を継続すべきという方向で政府内部で検討中でございます。あした決めます。

山本(と)委員 今外務大臣が御答弁されたとおり、昨年末までに北朝鮮のいわゆる核計画の全容を完全かつ正確に申告するという約束がまだ果たされておりません。果たされておらずに、もう既に三カ月以上もたっています。そしてまた、拉致の問題も、北朝鮮に言わせれば、既に解決済みだというような強弁をしております。そういう環境下では、このいわゆる制裁措置を解くというような事態ではないと私もかたく信じておりますので、ぜひ外務大臣としても、閣議決定の際には、延長をということでお願いをしたいと思います。

 そして、このいわゆる制裁措置というものですが、私は、正直、現状としては足りないのじゃないのかなと。

 いわゆる船舶も入港禁止、北朝鮮籍船はすべて今は入港禁止ということになっておりますが、では、北朝鮮が他の国の船舶を借りて日本に入ってくることはどうなんだ。あるいは、北朝鮮からの輸出は我々はもう受け入れないということになっておりますが、別に情報機関の人でもないようないわゆる一般の国民でも、いや、実は北朝鮮からシジミが韓国に行って、そこから袋を詰めかえて日本に持ってきているよというような声も聞こえてきます。あるいは、資金、お金も、これはミサイルですとか大量破壊兵器の拡散にかかわるようなことに対しては、日本からその資金を北朝鮮に送金はしてはいけないという防止の措置がなされていますが、一般の人であれば、北朝鮮に、上限がなく幾らでも送金ができるという今のこの現状、これでは北朝鮮に対して不十分ではないかな。

 今の措置を厳格にするということプラス追加制裁があってもいいのではないのかなと私は思いますが、大臣、いかがお考えですか。

高村国務大臣 我が国がこれまで実施してきている対北朝鮮措置につきましては、北朝鮮経済に一定の効果を及ぼしているものと考えております。また、その政治的意義に着目すれば、我が国が六カ月ごとに北朝鮮籍船の入港禁止措置及び北朝鮮からの輸入禁止措置を延長していることは、北朝鮮に対し諸懸案の解決に向けた具体的な行動を求める我が国の立場を明確にする効果がそれなりにあると考えているわけであります。

 我が国の対北朝鮮措置の今後の対応につきましては、拉致、核、ミサイルといった諸懸案に対する北朝鮮の対応や、六者会合、国連安保理等における国際社会の動き等を踏まえて総合的に判断するということにしております。今現在で、北朝鮮に対する追加的な措置について具体的な検討が行われているということはありません。

山本(と)委員 今現在、追加措置、追加制裁といいましょうか、そういうものはまだ検討をされていないということでありますが、交渉のプロセスの中で、そういったことが少しでも北朝鮮に対してのブラフになるというようなことであれば、私は、どんどん交渉の中でもそういったものをにおわせて、北朝鮮に対しての圧力をしっかりとかけていただきたいなと思っております。

 また、これもマスコミ等報道機関でしばしば報じられておりますが、米国政府が北朝鮮のテロ支援国家というものを解除するのではないかというような報道が多々出ておりますし、私も見聞きしております。それは米国政府の判断でしょうから、日本政府として実際どれだけ関与ができるのかというと難しいところはあると思いますが、やはり、米国政府に対しても、引き続き日本政府として、北朝鮮はけしからぬ国なんだ、国家として拉致を認めたような国なんだ、そういう、テロ支援といいますか、テロを行っている国でありますから、そのテロ支援国家というものを引き続き継続して米国政府も定義づけていくべきだし、また、仮の話は答えにくいのかもしれませんが、仮にアメリカ政府がそういったものを解除したとしても、それはアメリカ政府の話であって、日本政府としては断固たる立場で、相変わらずあれはけしからぬ国なんだというような立場を貫いていただきたいと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。

高村国務大臣 米国は、拉致問題に関する我が国の立場をよく理解していると思います、辟易するほど言っていますから。

 これまでも、あらゆる機会をとらえ、北朝鮮に拉致問題の解決に向けた具体的行動を働きかけるなど、アメリカは、日本に対して協力をしてきてくれているわけであります。二月末に来日したライス長官は、拉致問題が引き続き米国の非常に高い優先事項であることを保証し、拉致問題は米国にとっても重要な問題である旨を確認しました。米国は、テロ支援国家指定解除の問題については日本側と十分に協議するとの立場であり、この問題を含め、引き続き緊密に連携していく考えであります。

 テロ支援国家指定を解除するかどうかというのは、これは最終的にはアメリカがアメリカ法の解釈として決めることであります。ただ、日本が日本としてこのことをどう考えるかというのは日本の判断でする、これは当然のことでございます。

山本(と)委員 外務大臣から力強いお言葉をいただいて、私も本当にうれしい限りであります。アメリカはアメリカ、国家としての、国益としての判断があるでしょうし、それはそれとして、我々日本は日本としてきちっとこの問題に対応していく。そしてまた、引き続きアメリカ政府に対しても協力要請をしていただく。アメリカ政府は辟易としているかもしれませんが、それでも、被害者にとってみれば毎日が苦しい苦難の日々でありますので、アメリカ政府が辟易としたとしても、引き続き、何とか日本政府としてアメリカと共同歩調がきちっととれるように、よろしくお願いをしたいと思います。

 この拉致問題ですが、残念ながら、私自身肌身で感じるのは、やや風化しつつあるのではないかという危機感を持っております。

 これに対して、「めぐみ」という映画があります。これは、三月十日付で、内閣から全国の小中学校あるいは高校、そういったところに、学校で上映会をするのであれば内閣として協力しますよというような通達を出していただいたようでありますが、どうも話を聞いていますと、なかなか自由に上映会をするわけにはいかぬということであるようです。恐らく、それは映画の放映権の問題ですとかいろいろあるんだとは思いますが、どのような手続になるんでしょうか。担当の方、よろしくお願いいたします。

河内政府参考人 学校現場での映画「めぐみ」の上映に関する御質問にお答えさせていただきます。

 政府といたしましては、児童生徒らが拉致問題について理解を深め、拉致問題を人権問題としてしっかり考えるよい契機となるととらえ、学校現場で映画「めぐみ」の上映ができるように、映画の制作会社及び配給会社の許諾を得たところでございます。現在、全国の教育委員会や政府のホームページ等を通じまして、学校における上映会の開催を呼びかけており、既に数校において上映会を実施したところであります。

 議員が御指摘になられたように、全国の小中学校に、映画「めぐみ」の、例えばDVDを配付するというようなこと、これにつきましては、商業ベースでのDVD販売等に支障を生ずることになりますことから、映画の配給会社との関係でできないわけでございますが、上映を希望する学校が拉致問題対策本部事務局に直接電話やあるいはファクスで連絡をいただければ、いつでも上映会の開催ができるようにしているところでございます。

 政府といたしましては、今後とも、この映画「めぐみ」上映会の開催などによりまして、学校現場におきます拉致問題の啓発に努めてまいりたい、かように考えているところでございます。

山本(と)委員 放映権の問題等々いろいろ権利の問題があるようでありますが、私の個人的な感想からいいますと、学校の現場の人が内閣にわざわざ電話をしてくるというのはなかなか敷居が高いような気がするんです。やってみようかなと思っても、要するに、内閣に電話をするということになると、なかなか、二の足を踏むのではないか。人権問題であれば、教育教材にするとか、あるいはもっと何か簡単に小学生、中学生にも見てもらえるような、何かそういう制度にしてもらう。

 あるいは、もう既にPRはされているでしょうけれども、もっとしっかりPRをして、どこの小学校、中学校の先生に聞いても、ああ、知っていますよ、うちの学校でもやろうと思っていますよ、内閣に電話したらいいんでしょうねというぐらいのPRの徹底をお願いしたいなと思うんですが、山本副大臣、いかがですか。

山本副大臣 お答えさせていただきます。

 今、もっと簡単に見られるようなという話がございましたけれども、アニメ「めぐみ」ができましたので、これは配付ができるかというふうに思います。そうしたことで、皆さん方の要望にこたえることができるんじゃないか、こんなふうに考えております。

山本(と)委員 では、ぜひアニメの「めぐみ」を配付していただいて、すべての小中学校で見られる、そして人権問題に教育現場でも取り組んでいただいて、ぜひ、この拉致の問題を絶対に風化させないというような強い姿勢を政府としても内外にアピールをしていただきたい、そのように思います。

 そのめぐみさん、横田めぐみさんの問題ですが、私は京都の人間なんですが、京都の堀川高校をめぐみさんのお母様が卒業されているという御縁もありまして、京都では仲間がたくさんいまして、この拉致の問題に取り組んでおります。

 めぐみさんのいわゆる遺骨と言われているもの、これは北朝鮮が出してまいりました。この遺骨のDNA鑑定を日本で行った。警察でも行い、帝京大学でも行い、警察では、科警研ではDNAの鑑定ができなかった、帝京大学ではできた。これが、なぜ警察の科警研でできなかったようなことが帝京大学でできたのか。恐らく分析の方法が違ったのでありましょう。しかし、警察でできないものを大学の一先生が行ったのかなという、多少なりとも疑問もわいてきます。

 その疑問を解消するためには、きちっと、DNAがどういった結果だったのかというものも、私はしっかりと公表した方がいいのではないのかなと思いますが、このあたりいかがでしょうか。

池田政府参考人 第三回の日朝実務者協議におきまして北朝鮮側から横田めぐみさんの遺骨であるとして提供されたものにつきましては、新潟県警察から、事案の重大性にかんがみまして、警察庁の科学警察研究所のほかに、帝京大学に同時に鑑定を嘱託したところでございます。

 具体的には、提供された遺骨につきまして、その中から、DNA鑑定に知見を有する専門の方が、これならDNAを検出できるのではないかという可能性のある骨片、これを十個選んでおります。大きさとか、高温にさらされていないとか、そういう観点から十個選定いたしまして、五個ずつ、片方を科警研、片方を帝京大学、こういうふうに鑑定嘱託をしたところでございます。

 それで、両機関でそれぞれの方法で鑑定をしたところ、科警研ではDNAは検出できずに帝京大学ではできた、こういうことでございますけれども、これは両方の機関が、それぞれの役目が若干違うということで、ふだん行っている鑑定方法も少し異なっております。

 科警研の方は、いわば生の犯罪を扱うということもありまして、比較的すぐに、簡単に検出できるようなPCR法という法をとっておりまして、帝京大学の吉井先生は、例えばシベリア抑留者の遺骨鑑定などをされているということで、非常に古い骨などからもDNAを検出するというネステッドPCR法という法をとっておりまして、それもあって両者の鑑定が分かれたのかなということも考えられるというふうに思います。

 それから、鑑定結果の公表でございますが、御指摘の鑑定結果につきましては、当時の村田国家公安委員会委員長から国会両院の北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会において報告をさせていただいているところでございます。また、内閣官房にも報告いたしまして、当時、官房長官から記者発表されたというふうに承知しております。

山本(と)委員 そのDNAの鑑定を報告されたというのは、いわゆる完全な形で報告されたものではなくて、ある程度粗削りなものだと伺っております。正確なものをすべてなぜ出さないのかなという素朴な疑問がありますし、この今おっしゃった帝京大学の吉井先生というのは、とある雑誌の中で、実は、そういう熱処理されたような遺骨を以前自分は鑑定した経験はない、今回の鑑定も確定的なものではないというような、インタビューにお答えになられているようです。

 マスコミの方々が接触をしようと思ったけれども、結局接触し切れずに、帝京大学をもう退職されて、今は警察の方にお勤めだと聞いておりますが、私は横田めぐみさんが生存されていると強く信じております。おりますから、ゆえに、別の遺骨であったのであれば、それはけしからぬことでもありますし、北朝鮮がそういうものを提供したということはけしからぬことでありますし、その事実関係をきちっと明白にするということも、やはり日本という交渉者の立場としても私は必要ではないのかなと思うんですが、いかがでしょうか。

池田政府参考人 本件に関する鑑定書につきましては、これは、新潟県警の方が、現在捜査中の拉致事件の捜査の一環として作成したものでございます。

 刑事訴訟法の四十七条で、公判の開廷前に訴訟に関する書類はこれを公にしてはならないという規定がございまして、もちろんこれは、一部相当と認められる場合にはこの限りではないというふうには書いておるのですが、そういう制約を踏まえて、本件の鑑定結果も、高い公益性にかんがみて、御家族において本件を積極的に公表されるという御意向もあったところから、関係省庁とも協議の上、鑑定結果についてのみ公表したものでございます。

 それから、ネイチャーの関係でございますけれども、この吉井先生の研究基準、これにつきましては国内最高水準であるというふうに認識しておりまして、信頼性も極めて高いと考えております。

 御指摘の件につきましては、当方でも取材を受けた方に直接事実関係を確認したところ、取材におきましては、焼かれた骨によるDNA鑑定の困難性についての一般論を述べたにすぎない、当該鑑定結果が確定的でない旨の発言はしていないということでございます。それから、検体が汚染された可能性につきましても、DNA鑑定についての一般論を述べたにすぎない、こういうことでございます。

 先ほども申し上げましたように、遺骨収集に係る事業など、劣化した検体からDNA鑑定、検出を行うこと、これにつきましては非常に多くの実績を有しておられる方でございますので、鑑定結果については信頼性は高いものというふうに考えております。

山本(と)委員 そういうことであれば私も信じたいですし、そもそも、横田めぐみさんが生きておられる、そういうふうに私も思っております。法的な問題もあってなかなかすべてのことは公表できない、そういうことであって、また、その吉井先生は大変第一人者だから大丈夫だろうということなんだと思いますけれども。

 私が聞いた限りの範囲では、北朝鮮も相当、日本政府があれはにせものだと言った際に、いやいや、実は我々はきちっと本物を出しているんだ、信用してくれということを再三アメリカ政府に言ったと。その際、アメリカ政府も、北朝鮮が余りにも熱心に言ってくるものですから、ヒル国務次官補が、アメリカの政府機関でもDNAの鑑定はできるからやってもいいですよというようなことを日本側にも言ったというふうに私聞いておるのですが、このあたりは、きょうは齋木局長いらっしゃっておりますけれども、いかがでしょうか。仮にアメリカ側からそういう提案があったとすれば、なぜそれを受け入れなかったのか。いかがでしょうか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 私が承知する限り、アメリカ側からそのような話は一切来ておりません。ヒル国務次官補がそういうことを日本側に対して申し出てきたこともございません。

山本(と)委員 そういう事実がないということであれば、お断りをしたという必要性も全くないわけですから、うわさだということで、私はそれでいいと思います。こういった公的な場でそういうことがきちっと公にされたことによって、こういった無駄な議論ももう生じてこないだろうと私は思いますので。

 これからまたいろいろな場面場面で、日本政府として北朝鮮側にコンタクトをとっていただいて、何とか拉致被害者の皆さんが帰国されるように政府としても努力をしていただいて、我々議員も一人一人一生懸命努力をしてサポートしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 外務大臣、最後に一言、今の議論を聞いておられて御感想があれば、決意でもあればよろしくお願いいたします。(高村国務大臣「遺骨ですか」と呼ぶ)いえ、この拉致の解決に向けて一言いただければと思います。

高村国務大臣 福田内閣の総力を挙げて解決へ向かって努力をいたします。

高木(毅)委員長代理 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 まず、きょう、先ほどの山本議員もちょっと聞いていたので、ちょっと順番を入れかえるだけにしますけれども、北朝鮮への制裁について伺います。

 特に金融の制裁について伺いたいと思うんですけれども、金融制裁で、私が財務省の方に聞きましたら、十五法人一個人を指定して、その口座をというような話を聞いたんですけれども、実際、それ以外の日本から北朝鮮に対する送金だとか、あるいは何か北朝鮮の政府関係と思わしいような、そういう口座へのお金の出入りというのは、金融庁としてはどういうふうに今処理をしているのか、あるいは金融機関に対して指示を出しているのか、金融庁、お願いします。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまのお尋ねで、私ども金融庁といたしましては、まず、監督指針におきまして、金融機関が疑わしい取引の届け出を行うに当たりましては、顧客が行っております事業などの顧客属性、それから、取引の種別でございますけれども、外為取引か国内取引か等の区別、それから、金額、回数などの取引の態様といった具体的な情報を総合的に勘案いたしまして、適切な検討、判断を行うということで、その体制が整備されているかどうかを着眼点というふうに位置づけてございます。

 また、この北朝鮮の関係でございますけれども、これに関しましては、平成十八年九月に、安保理決議及びそれを受けました閣議了解がございましたときに、改めまして、外為法上の規制対象となりました団体等に関連する取引につきましては、疑わしい取引の届け出の徹底を要請するといったことを行っておりまして、金融機関におきましても、こういった監督指針あるいはこういった私どもからの要請を踏まえて、北朝鮮に関連する取引につきましては、外為法上指定された者への支払いや資本取引でないかどうか、あるいはその制裁対象となっている貿易取引ではないかといった確認に加えまして、さらに顧客属性やその取引態様などに十分注意を払っているものと考えております。

高山委員 今の金融庁の答弁にもありましたけれども、国連決議があって指定している部分があって、具体的な個名を挙げてやっている、それはわかります。

 それ以外の取引、送金であるとかこういうのにどういう規制をかけていますかという質問を私はしたんです。そうしたら、それは疑わしい取引の中でという話だったんですけれども、総合的に勘案と言いますけれども、金融庁として、いわゆる北朝鮮関係の、日本から北朝鮮に送金するものはこうだとか、あるいは、向こうからのがこうであるとか、あるいは、こういう名称の会社だとか個人だとか、あるいは、北朝鮮関連には特別こうしなさいという何か指示をしているかどうかというところを聞きたいわけです。

 ほかの疑わしい取引とはまた別に、政府として、この北朝鮮関連だけは特にこういうふうにやってもらいたいということを金融庁から金融機関にどういう指示を出されているか、そこを教えてください。

河野政府参考人 ただいま委員御指摘の点でございますが、私どもから、外為法上指定されていない者について名前を特定したり、あるいは特にこういう取引というようなことを指定することはしておりません。これはやはり法的根拠に基づいて行う必要がございますので、あくまでこれは一般的な制度の中で、疑わしい取引の届け出の中では北朝鮮に関連するものは十分注意しているものとは思いますし、また、私どもとしてはその範囲で指導しているところでございます。

高山委員 そうなんですよ。物すごい具体的な個名を挙げての指定がないと、一般的な制度の中で何とか運用でやっているんですというような話なんですけれども、例えば北朝鮮関連の日本の中の施設で朝鮮総連というのがあって、それ関連のいろいろな施設がある。その中で、特にいろいろな地方本部なんかがもう既に競売にかけられて売却済みのものもあるんです。

 これは法務省に伺いたいんですけれども、またその後金融庁にも聞きますけれども、つまり、競売をして、その買い受けた人が、これは私の方で調べまして、裁判所の競売の手続ですので、だれがいつ買いましたというのが全部出てくるんですけれども、これは本当に具体的な個人の、会社の名前が出ているので、きょうはあえて配りませんでしたけれども、そういうのがあります。

 こういうのに関して、実際、ある意味、債務者と事実上同一の人が買い受けてしまっているというおそれも当然ありましょうし、また、これは法務省、特に公安調査庁に伺いたいんですけれども、買い受けた企業がどういう属性を持っている企業あるいは個人だということは調査されておりますか、あるいは把握しているかどうか。そこについて、まず金融庁、その後法務省の順番でお答えください。

河野政府参考人 まず、申しわけありません、個別の入札等の情報につきましては、従来から、円滑な債権の回収等の観点からコメントを差し控えさせていただいております。

 このケースにつきましても、あくまで一般論ということになりますけれども、私どもといたしましては、これは整理回収機構においてということになりますけれども、その競売手続において民事執行法の規定に基づき厳正に対応しておりまして、その際に裁判所の御判断をいただいているものというふうに承知しております。

高山委員 ちょっと、まず今の金融庁なんですけれども、個別のと言いますけれども、競売は公表情報ですから、官報なんかに出たり、裁判所の横に紙が張ってありますよね。それで、これは別に私なんかでも手に入れられるもので、だれが買っているというのは、有限会社何々とか、これは全部出ていますよ。個人の名前で、東京都何々市のだれだとか、全部出ているんですね。こういうのを見て、実際に債務者と同一かどうかというのをきちんとチェックされているかどうか。

 それはどういうことかというと、朝鮮総連という名前でお金を借りて、朝鮮総連という名前で建物を所有してというのじゃないでしょう、今、現状。いろいろな名義で借りたりして、RCCや金融庁の方でも債務名義をとったりするのに随分御苦労されていると思うんですけれども、実際、競売して、またその関連企業が買ったりなんということになりますと、債務者と同一の人が買っていることになるわけですから、そういうチェックをどのようにやられていますか、また今までの事例ではどうでしたかということを、まず金融庁に伺います。

河野政府参考人 まさにこれは個別ではございますけれども、ただ、過去の事例というお話ではございますが……。

 実際に裁判所の方で競売の許可をいただくという場合には、当然これは法令に適合した許可であるということが前提でございますので、整理回収機構といたしましても、みずからの判断でどうこうということではございませんで、手続の中で適法に進めさせていただくということです。もちろん、整理回収機構の立場といたしましては、できる限り財産を確認し、回収できるところから最大限回収するということは当然の方針でございますので、この点に揺らぎはございませんけれども、最後の競売に関する判断につきましては、これは裁判所の御判断をいただいているということかと存じます。

高山委員 今、法務省にも聞きますが、官房長官、これはよく聞いておいてください。これは結構各省がばらばらの対応で、何かそのすき間を縫っていくような形で債務逃れをしている人がちょっといるような気配がするものですから、今聞いているので。

 次、法務省に伺いますけれども、各地方の総連本部というのですか、地方本部、これも今までにも七、八件の売却があったわけですけれども、それぞれ買い受け人がいるわけですね。これは公表情報ですから、こういう人たちがどういう属性を持っているのか、もっとありていに言えば、買った人の中にひょっとすると北朝鮮関連の人がいたかとか、あるいは全然、むしろ債務者と同一のような人物で、ほとんど執行をかけた意味がなかったとかいうことになると困るので、また、どのように買い受け人たちの属性を調べているか、どういう把握をしているか、お答えください。

北田政府参考人 お答え申し上げます。

 朝鮮総連の動向につきましては、公安調査庁といたしましては、重大な関心を持ってかねてから調査してきたところでございます。

 先生今お尋ねの、各地方組織の建物の競売状況の点でございますが、この点につきましても、当庁といたしましては、朝鮮総連に対する調査の一環として関心を持って調べてきておるところでございます。その結果としまして、これまで当庁把握分といたしまして、十数カ所のそういった地方組織の施設が競売に付されているということは把握し、また、どういう人物がそれを競落したかということも把握しているところでございます。

 その具体的な把握の方法でありますとか、そして把握できた内容、これにつきましては、当庁の調査の方法や内容にかかわることでございますので答弁は差し控えさせていただきたい、このように思います。

高山委員 公安調査庁にさらに伺いますけれども、調査の方法は、それは公安調査庁の手法を明かせということになりますから、そこは聞きません。

 ただ、競落した、つまり買い受けた人がどういう属性を持っているのか、もっと、ありていに言えば、実際、皆さんが、公安調査庁が監視をしている朝鮮総連関係の人が結果としては全部買い受けていて、余り現状は変わっていないということなのかどうなのか、そこを、結果を教えてください。

北田政府参考人 朝鮮総連に対する調査の一環としまして、今言いました地方組織の物権の競落人の属性、こういったことも当然関心事項でございまして、当庁としてもそれなりに把握しているところでございますけれども、具体的なものについてはお答えを差し控えさせていただきたい、このように思います。

高山委員 何か公安調査庁は歯切れが悪いなという部分は、私は去年の六月ぐらいからずっと思っているんです。

 この件に関しまして本題に入りますけれども、今お配りした資料ですけれども、新聞記事が三つ四つ出ていると思うんです。去年の六月に朝鮮総連の本部が競売手続にかかった、それで、そのかかったときに、何と、公安調査庁の元長官をされていた弁護士の先生が朝鮮総連と、初めは共謀してといいますか、強制執行逃れの手伝いをしたんだというようなことで、本当にびっくりした事件で、これは私も法務委員会などで質問もさせていただいたんです。

 ところが、私、二重にびっくりしたんですけれども、今、この記事の内容を、ちょっと、議事録に残すために言葉で言いますけれども、朝鮮総連がRCCに対して負っている六百二十億近い債務、それの執行として、朝鮮総連本部を執行にかけようとしたら、執行逃れでハーベスト何とかという投資顧問会社に登記が移されていた、そこの社長は、緒方さんという公安調査庁の元長官の方が社長をやっていて、しかも、どうも事前にいろいろな相談をしたり、総連側から何か四億のお金が出ているだとか、いろいろその後も記事が出てまいりました。

 この件に関しては官房長官にも私伺いたいと思っているんですけれども、まず公安調査庁に伺いたいと思うんです。

 この件で、そもそもなんですけれども、調査対象ですというふうに先ほども言っていたこの北朝鮮の総連本部、そこに公安調査庁の元長官の方が、何か同じような、執行逃れの手伝いというかつき合いが出るという、ミイラ取りがミイラのような状態にこれはなっているなと世間は思ったと思うんですけれども、その後、公安調査庁の中でどのようにこれは改善措置をとられましたか。

北田政府参考人 お尋ねの点につきましてお答え申し上げたいと思います。

 朝鮮総連本部の中央会館の土地建物の売買に元公安調査庁長官が関与されていたという点につきましては、既に退職された個人の行為とはいえ、そういう枢要な職にあった方が、対象団体の総連との間で、そういう不信、疑念を抱かれかねない取引に関与したということ、これは、公安調査庁に対する信用そしてまた信頼を損ないかねない事態であると重く受けとめてきたところでございます。まことに遺憾なものと考えておるところでございます。

 この件につきましては、先生御案内のとおり、昨年六月十二日にまずマスコミで大きく報道されまして、その後、六月十七日におきましては、公安調査庁の現職の職員が公安元長官に、その取引を仲介した者を紹介したのではないか、こういうような記事も出た経緯がございます。

 こういうことから、当庁といたしましては、内部的な調査を行いまして、いろいろ調べたところでございます。その結果、当庁といたしましては、この取引には現職の職員は全くかかわっていなかったということを把握、確認したところでございます。また、本件取引につきましては、緒方元長官が長官として在職されていた当時の職務とは全く関係がない、かかわりがないというふうに私どもは把握したところでございます。

 その後、こういった調査結果も踏まえまして、公安調査庁におきましては、長官以下の幹部が全国の公安調査局を回りまして、各職員に対しまして直接、公安庁に課せられました職責をよく自覚して、在職中はもとよりその職を離れた後においても、いやしくも当庁に対する信頼を損なうような事態を招かないよう身を持していくことが肝要である、こういったことの周知徹底を図ったところでございます。

高山委員 ちょっと今の公安調査庁の答弁も長いのであれですけれども、要は、周知徹底を図ったというのも、何か口頭で図っているらしいんですよね、文書が出たとかそういうわけでもなくて。どうも何か身内の不祥事を隠しているなという印象があるんです。

 政治家として、今法務省で綱紀粛正を図られている河井副大臣にも伺いたいと思うんですけれども、まず、今やっているのは、法務委員会じゃなくて北朝鮮による拉致特別委員会なんですよ。これはもう与党も野党もなく、国内において北朝鮮関係にプレッシャーをかけていこうというのは、これは当然公安調査庁がしっかりやってくれていると思ったら、こういう、何か相手方を助けるようなことでどんどん名前が出てきてしまう。

 副大臣、公安調査庁に対して今後どのような御指示をされますか。

河井副大臣 高山委員のただいまの御指摘はもっともでありまして、幾ら現職ではない個人の行為といっても、調査対象団体である朝鮮総連との間の取引にかかわった事案ということでありますので、これはもう国民感情からいっても許されざるべきことだ、そのように考えております。国民に不信感を抱かせ、ひいては、まじめに仕事をやっている法務省や公安調査庁の現場の調査官の皆さんに至るまで、この結果、多大なる迷惑をこうむったことは間違いないわけであります。

 今委員が、口頭でしかいろいろと指示をしていないということでございますけれども、口頭よりも、より厳格に綱紀粛正するべきだということで、平成十九年六月二十二日に総務部長を本部長として調査チームを立ち上げて、九百人以上の職員を対象に聞き取り調査など徹底した調査を実施しております。それに並行しまして、公安調査庁の長官初め幹部が、全国にある地方の公安調査局もずっと回って、文書の通達よりも、直接足を運んで現場の皆さんに改めて周知徹底を図っているというふうな状況でございまして、二度とこのようなことが起こらないように、しかとまたいろいろと指示をしていきたいと考えております。

高山委員 河井副大臣、ありがとうございます。

 しかし、もう一つ驚くことがあるんですよ。

 初め、この新聞報道によれば、総連本部の競売逃れのために、朝鮮総連側と緒方元長官、共謀して登記を移したような感じでずっと来たんですけれども、いざ起訴されてみると、朝鮮総連は起訴されていないんですね。しかも、朝鮮総連が被害者になっているんですよ、いつの間にか。

 ちょっとこの起訴に関して伺いたいんですけれども、まず河井副大臣に、政治家としてちょっと伺いたいんですが、本当に朝鮮総連が被害者だというふうに言えるのかどうか。

 私は、いかにも法務省あるいは公安調査庁全体が、身内の不祥事を隠ぺいするためにとにかく早く事件を終わらせなきゃという印象で、慌てて緒方さんだけを悪者にして終わっているという印象を持ったんですけれども、実際、河井副大臣はどういう印象を持たれましたか。

河井副大臣 法務副大臣としてのお尋ねでございますので、申しわけございませんが、御指摘の事件につきましては、現在、東京地方検察庁において詐欺の公訴事実により公訴提起し、東京地方裁判所において公判係属中でありますので、私の意見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。申しわけありません。

高山委員 ちょっとこの私の出しました資料の中の左下を見ていただきたいんです。読売新聞七月十五日というものなんですけれども、緒方容疑者の訴追を求めずと。朝鮮総連の方が、だまされた認識はないですということを、記者会見まで開いて、しかも確認書というのまで出しているんですね。被害者じゃないんですよ。

 だから、どうして緒方さんが詐欺の加害者になっているのか。私は、緒方さんを助けろと言っているのではなくて、本来加害者的な地位にいる朝鮮総連を何か被害者のように法務省の中では扱い、また朝鮮総連本人は、私は被害者じゃないと言っているという非常に不思議な事案なので、これは官房長官に事案の印象を伺いたいと思うんです。官房長官に伺います。

 この話、委員会は拉致特で今やっています。それで、もう与野党もなく、しっかりと北朝鮮に対して、政府に対してどんどんプレッシャーをかけてもらいたいという趣旨で私は質問しているんですけれども、実際、法務省の方で、総連は被害者、そして元公安調査庁長官を加害者として起訴して、今裁判をどんどん進めております。裁判の適否を言うことは司法に対する介入になりますから、そこを伺うんじゃないんですけれども、町村官房長官としても、非常に不可解だな、なぜ北朝鮮が加害者じゃないんだろう、そういう印象をお持ちになったかどうかを教えてください。

町村国務大臣 私も、この件はこうした新聞報道等でおおよそのことは知っているつもりでございますが、今改めてこうやって見ると、今委員が言われたような、まさに不可思議な、加害者と被害者が一体どういう関係に立っているのかというような印象を持つのが多分普通なんだろう、こう思います。

 ただ、事案は事案として、今、河井副大臣が述べられたように、現在公判中ということでございますから、それ以上のことを申し上げるのは差し控えたいと思いますが、非常に不思議な事件の推移だなという印象は持っております。

    〔高木(毅)委員長代理退席、委員長着席〕

高山委員 きょうは、官房長官から、また河井副大臣からもなかなか苦しい御答弁をいただいたんですけれども、実際、本当は、役所の中でただの不祥事隠しで終わってしまうような小さい話じゃないと思うんですね。この拉致特別委員会でまさに論じられるような内容、つまり、国が一丸となって北朝鮮という政府に対してどういうプレッシャーをかけていくかという問題であって、単なる公安調査庁の何か不祥事だから事件を隠ぺいしていこうみたいなことではちょっと困るなというふうに私は思っておりますので、今答弁は求めませんけれども、しっかりと、本当に一丸となってやっていただきたいと思っております。

 それともう一つ、ちょっと時間がないので、サミットについて伺います。洞爺湖サミットの件でございます。

 洞爺湖サミットがもう近づいてきて、議長国ということでいろいろとお忙しいと思うんですけれども、見ていくと、先ほどの拉致の映画のDVDをプレスセンターで配るという程度で、あと全然このサミットの議題の中に拉致問題が入ってこないんですね。だから、くどいぐらい、事あるごとに外交チャンネルでいろいろ日本はやっているのかと思いきや、自分が一番のイニシアチブをとれるサミットで拉致問題をどのように扱っていく今予定なのか、教えてください。

 外務大臣にお願いします。

高村国務大臣 我が国は、これまで、G8サミットを初めとする国際会議やさまざまな二国間の首脳会談等において、拉致問題を含む北朝鮮問題を取り上げ、各国から、この問題に関する我が国の立場への理解と協力が得られてきていると思っております。

 G8プロセスは他のG8諸国との協議を得て進めていくものでありますが、我が国としては、北海道洞爺湖サミットの機会においても、各国からこの問題に関する我が国の立場への理解が得られるよう、積極的に取り組んでいく考えでございます。

高山委員 エビアン・サミットの記者会見であるとか、私も、そういうのをみんな見ました。それで、自由討議の中で日本側からこういう提案をしたら同意を得られましたですとか、そういうのが出てくるのは当然わかるんですよ。

 官房長官にも、これはすごく大事なことなので伺いたいんですけれども、とにかくサミットのホームページとか見ていても、何か、拉致を扱う会議であるとか、あるいは、テロとの闘いみたいなのはちょっとあるんですけれども、なかなか、この拉致問題を日本としてクローズアップして取り上げるというのがないんですけれども、今後、日本、議長国として、そういう拉致の問題を取り上げるようなセッションや何かをセットしていく、こういう予定というのはありますか。

町村国務大臣 何を議題にするか。これは、準備されるシェルパという方々を中心に各国と相談をしながら進めて、最終的に議題設定がされるということで、ただいま現在ではまだ何を議題にするのか、大きく、例えば開発・アフリカ問題とか環境問題、そういうようなことはあるんだろうと思います。しかし、その中でさらに細分化された議題、ここで何を議論するのかということはまだ決まっていないと思います。各国それぞれ合意をしながら、その議題をこれからつくっていく過程にあるんだろうと思っております。

高山委員 何か残念ですね。議長国なので、議題として、例えばこのテロ対策であるとかそういうときに、拉致問題という項目立てをして入れ込みたい、あるいは入れ込みますというような答弁はいただけませんか。

 担当大臣の方。どちらが担当大臣なんでしょうか。私が指名した方がいいですか。では、官房長官、お願いします。

町村国務大臣 それぞれの国がどういう関心を持って取り組んでいくのかということにかかわるんだろうと思いますから、今後、各国としっかりと相談をしていきたいと思います。

高山委員 時間が迫っております。

 では、外務大臣に伺います。

 拉致問題をサミットの議題にしていただけますか。

高村国務大臣 議長国が自由になるものではないということであります。

 ただ、大きな議題としては、もう既に開発・アフリカ、そして気候変動、そしてサブプライムを含む喫緊の経済問題、そして政治問題。だから、政治問題の中でこういうことに取り組むということは十分にあり得るわけで、ある意味で、首脳同士でこれは自由に話し合えるわけでありますので、この問題に全く触れられないということは私はないと思っております。大きな議題の四つは、それはもうシェルパ同士で大体そういう方向になっておりますが、その政治問題の中の不拡散を含む政治問題というようなこと、その中で当然触れられる話である、こういうふうに思っております。

高山委員 これはもう与野党問わずこの拉致特別委員会の総意というふうに、私が言うと生意気ですけれども、政府に対して、拉致問題をきっちりとこの機会にサミットで取り上げていただきたいということをお願いして、終わります。

山本委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 先日、北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議、六者会合で米朝の首席代表を務めるヒル国務次官補と金桂冠外務次官が、シンガポールで会談をして、昨年十月の六カ国協議の成果文書に基づく核開発計画の申告問題で協議が行われました。

 もちろん、この詳細については、交渉事ですので言えないことも多々あるとは思うんですが、外務省としては、今回の米朝協議の結果を全体としてどのように見ておられるか。齋木局長、お答えいただけるでしょうか。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 八日にシンガポールで、アメリカのヒル国務次官補と北朝鮮の金桂冠外務副相との間で米朝交渉が行われました。この結果につきましては、翌日の九日に、私も北京でヒル次官補と合流いたしまして、米朝協議の結果について詳細に説明を受けたわけでございます。

 交渉はまだ途中段階でもございますので、その詳細について今述べることは差し控えさせていただきますけれども、米朝間では、主に核の申告の問題を中心に、特にウランの濃縮問題、またシリアに対する核の協力疑惑の問題等を中心に実質的な意見交換が行われたということで、一定の前進は得られたようでございます。

 ただ、これはまだ部分的な交渉、すなわち、申告全体の中でいえば、今申し上げたウラン濃縮の話、シリアに対する核協力疑惑の問題というのは全体のまだ一部であるということでございます。私ども、六カ国協議の中で北朝鮮に対して要求しております完全かつ正確な申告、これがいまだに行われていないというのが事実でございます。

 したがって、今後一日も早く、北朝鮮から、自分たちが行ってきております核の開発に関する計画のすべての側面をきちっと申告させるということ、そして完全かつ正確な形での申告をほかの五カ国に対して行うようにということを引き続き求めていく、こういうことでございます。

笠井委員 ヒル次官補は、九日の会見で、具体的なことをマスコミに発表できる段階にはないとしながらも、今回の協議は最終合意には至らなかったけれども重要な進展があって、重大な障害物がなくなったというふうに評価をして、今後必要なことは時間と相応措置だということで述べておりました。米朝間で事態打開を目指す粘り強い努力が行われて、核問題をめぐる情勢が、今実質的意見交換ということで一定の前進が見られたようだということでしたが、進展しつつあることはよく見ていく必要があるんだろうというふうに私も思います。

 それでは、そういう中で日朝の場合はどうなのかということですが、昨年十月の六カ国協議の成果文書は、北朝鮮の核施設の無能力化や核計画の完全申告とともに、日朝の国交正常化に向けて、両者間の精力的な協議を通じて具体的な行動を実施していくことが約束をされました。しかし、日朝間の協議というのは、それ以降残念ながら開かれていない。精力的な協議で合意されたにもかかわらず協議が行われなくなった。この理由については何なんでしょうか。局長、いかがですか。

齋木政府参考人 委員が今お述べになりましたとおり、昨年十月の六者会合の合意文書、成果文書におきましては、その中の一項に、日朝双方が、平壌宣言に従って早期に国交を正常化するために誠実に努力すること、また、精力的な協議を通じて具体的な行動を実施していくことが明記されておるわけでございます。

 このことも踏まえまして、日本側は北朝鮮との間で真剣な交渉を行う用意があるということを明確にしてきております。累次、私どもの方からは、北朝鮮側に対して、交渉を行うべきであるということで呼びかけてきておりますが、遺憾ながら、これまでのところ、北朝鮮側からは前向きな対応が得られておらず、日朝の正常化、いわゆる作業部会という形での協議の場というのは、昨年の九月のモンゴルのウランバートルにおける協議以降開催されておらないわけでございます。

 恐らく、これは推測でございますけれども、北朝鮮側は、まずは米朝間で精力的に交渉を進めていって、その間日朝についてはやらないということで、いわば日米の間にくさびを打ち込む、日朝はやらないことによって、日本が全体から取り残されるのではないかという気持ちを持つことをあるいは期待して、くさびを打ち込んでいる、そういうつもりなのかもしれませんけれども、このような、北朝鮮側のねらいがもしそうであるとすれば、それは全く的を外れた作戦であろうと思っております。

 いずれにしましても、六者協議全体の中で、米朝はもちろんやらなきゃいけないし、また日朝もやらなきゃいけないわけでございますから、日朝、米朝も含めてすべてが交渉がきちんと進み、妥結していくことがあって、初めて六者協議の出口というところに達することができるということは、これは六カ国すべてが認識しているはずでございます。

 したがって、我々は、北朝鮮側に対して、早く日朝が交渉の場に着くべきであるということを引き続き呼びかけていく所存でございます。

笠井委員 今局長からもありましたが、六者協議の前に行われた昨年九月の初めの日朝協議というのでは、外務省の資料によりますと、拉致問題を初めとする日朝間の諸懸案の解決に向けた具体的な合意等は得られなかったが、互いの関心事項について誠意を持って協議していくことを確認したというふうにあります。

 当時の報道によれば、北朝鮮側も、宋日昊担当大使が協議終了後に記者団に対して、これまでの日本との対話の中で一番よかった、日本との関係は最悪の状況にあったが、これからは話し合いを進めなければならないというふうに述べておりました。

 このように、昨年九月の六者協議、六カ国協議の時点までは、日朝の間では協議が合意されていた。にもかかわらず、それ以降どうして開かれなくなったのかというのはあると思うんですが、やはり、今局長が言ったような理由だというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。

齋木政府参考人 何ゆえに日朝協議が去年の九月以降開かれていないかというその理由につきましては、先ほど私は、推測としてそういうこともあるのかなということを述べたわけでございますが、北朝鮮側からは、特段、なぜ日朝協議をやらないかということについての理由の説明はございません。

 我々は、早くやろうということは繰り返し呼びかけているわけでございます。

笠井委員 高村大臣に伺いたいんですが、そういう状況にあるということであります。

 それで、拉致問題と核問題との関係でいいますと、やはり日朝平壌宣言は本当に大事なものがあるわけですが、この精神に立って諸問題の包括的解決を図る立場が重要だというふうに思います。

 この包括的解決を図る過程で、ある問題が先行することも当然あるわけでありまして、それぞれ課題があるわけですから、全部一緒になって進んで全部ばんといくというふうには、必ずしもなるというふうにはいかないんだと思うんです。そういう先行するという状況が、ある問題で解決して見えてくる、あるいはあらわれるということで、しかし、一つの問題で前向きの突破が図られていくということになれば、それはほかの問題の解決にとっては、これは邪魔になるというか妨げになるんじゃなくて、むしろ促進になっていくんだというふうに思うんです。包括的ということで今この課題があるわけですから。

 すなわち、現在進行中のプロセスで、核問題で道理ある解決、これが図られるならば、拉致問題にとっても早期解決の新しい条件が開かれてくる。今、冒頭のやりとりもあったわけですが、要するに、核問題での道理ある解決が図られるなら、拉致問題についても早期解決の新しい条件が開かれることになるというふうに考えるんですが、その点はどういうふうに大臣は考えていらっしゃるでしょうか。

高村国務大臣 政府としては、引き続き、日朝平壌宣言にのっとり、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して日朝国交正常化を早期に実現するとの方針であり、六者会合共同声明を全体としてバランスよく実施するために、朝鮮半島の非核化と拉致問題双方を含む日朝関係がともに前進するように最大限努力を行っていく考えであります。

 一方が進んでしまうのを邪魔するつもりは毛頭ありません。委員が言うような面もありますが、おくれないように一緒に行こう、そういうふうに思っているところでございます。

笠井委員 拉致問題早期解決の上でも、日本には、六カ国協議の合意に即して、やはりそういう点では、その面でいえば、核問題解決のための積極的な役割を発揮するということが求められていると思うんです。

 そこで、町村官房長官に伺いますが、政府が一昨年十月にとった、すべての北朝鮮籍船舶の入港禁止と北朝鮮からのすべての品目の輸入禁止という二つの制裁措置でありますけれども、これは北朝鮮の核実験実施の発表を受けて講じられたものだったと思うんですけれども、その点はそういうことでよろしいですね。

町村国務大臣 二年前の十月に、当時の塩崎官房長官が声明を出しております。

 そこで明らかでございますけれども、核実験そして北朝鮮のミサイル開発、あわせて、北朝鮮が拉致問題に対しても何ら誠意ある対応を見せていないこと等の諸般の情勢を総合的に勘案して、我が国として以下のような厳格な措置をとることを決定したということでございまして、核問題だけではないということでございます。

笠井委員 核実験という事態を受けてやったということは間違いないと思うんですが、長官は今、拉致問題も含めて総合的に勘案したというふうに言われましたが、二〇〇六年の十月にとった二つの制裁措置というのは、そういう意味では、北朝鮮による核実験を契機にとられたものである、そして、核実験という新たな重大事態に際して、北朝鮮を対話の道に復帰させて、核兵器問題での外交的解決を図るための手段だったというふうに思います。

 そこで、官房長官に伺いますが、核問題をめぐって情勢が、一定のという話もありましたが、前向きに進展しつつある中で、これらの制裁措置を延長するということが、日本が核問題の解決で積極的な役割を発揮する上で障害になってはならないと思うんですが、そのことについては、長官、どういうふうにお考えになるでしょうか。

町村国務大臣 四月十三日に、この制裁、半年ごとにレビューをするということになっております。これはあすの閣議決定の事項でございますが、政府としては、拉致、核、ミサイル、残念ながらいずれも具体的な前進がないという状況のもとでございますので、私どもとしては、この制裁についての措置の延長というものは明日正式に閣議で決定する必要があるものだ、こう思っております。

 そして、この制裁措置が、今委員が言われたような、日本が核問題の解決に向けての積極的な役割を果たす上で障害になるのではないかという御指摘でございましたが、私どもは決してそのようには考えておりません。

笠井委員 なるのではないかというか、なってはならないということだったんですが、それはそういうことですね、やっぱり。それはもう当たり前ですね。

町村国務大臣 現実に前進がないわけでございますから。

 前進があれば、それはよく内容を精査しなければなりませんが、その場合の制裁の、一部か全部か知りません、全員の人質、拉致された方々が帰ってくる、すっかり核のない北朝鮮になるということになれば、それは制裁を全面解除ということもあるかもしれません。そこは、まさに北朝鮮の対応を見ながら私どもとしては判断をしていかなければいけないと思います。

笠井委員 冒頭にも伺いましたが、核問題をめぐっては、米朝間の話もある、六者協議の中では一定の前進というふうなことも見られるという話もあった中でのことでありまして、日本が六カ国協議の枠組みで協力を強めて、核兵器のない朝鮮半島を実現するために先頭に立つということは、北東アジアの平和と安定、日本の平和と安全にとっても重要だと私は思います。

 そういう点でいいますと、日本が核問題の解決で積極的な役割を果たすためにも、独自の措置、制裁措置というものについては、やはり政府として、情勢の進展に即した対応をとることが非常に大事だ。あすという話もありましたが、そういう意味では、私は、情勢というのは動いてきている話なので、そういう中で、やはりあくまで進展に即した対応をとっていくということが、包括的解決ということを展望する上でも大事だということを重ねて強調させていただきまして、質問を終わります。

山本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十一分散会


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