衆議院

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第4号 平成20年6月11日(水曜日)

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平成二十年六月十一日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 山本  拓君

   理事 小杉  隆君 理事 近藤 基彦君

   理事 高木  毅君 理事 葉梨 康弘君

   理事 古屋 圭司君 理事 内山  晃君

   理事 末松 義規君 理事 江田 康幸君

      赤城 徳彦君    今津  寛君

      岡下 信子君    鍵田忠兵衛君

      木原 誠二君    薗浦健太郎君

      萩原 誠司君   山本ともひろ君

      若宮 健嗣君    北神 圭朗君

      園田 康博君    高山 智司君

      鷲尾英一郎君    渡辺  周君

      笠井  亮君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (拉致問題担当)     町村 信孝君

   外務副大臣        小野寺五典君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  中村耕一郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 五十嵐邦雄君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  富田 善範君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    北田 幹直君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           荒井 和夫君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          堤  貞雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十一日

 辞任         補欠選任

  渡部  篤君     若宮 健嗣君

  園田 康博君     渡辺  周君

同日

 辞任         補欠選任

  若宮 健嗣君     渡部  篤君

  渡辺  周君     園田 康博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官中村耕一郎君、警察庁長官官房審議官五十嵐邦雄君、法務省人権擁護局長富田善範君、公安調査庁次長北田幹直君、外務省大臣官房参事官石川和秀君及び厚生労働省大臣官房審議官荒井和夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決します。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鍵田忠兵衛君。

鍵田委員 自民党の鍵田忠兵衛でございます。

 私も、初当選以来、この衆議院の拉致問題特別委員会に所属をさせていただいてまいりました。そういった中で、質問も、きょうは官房長官でお見えの、当時の町村外務大臣、そしてまた麻生外務大臣、そしてきょうは小野寺副大臣と、歴代外務省の閣僚三代にわたる方々に質問をさせていただいてきたわけでございます。

 さて、昨年十月の六者会合では、成果文書において「朝鮮民主主義人民共和国と日本国は、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として早期に国交を正常化するため、誠実に努力する。朝鮮民主主義人民共和国と日本国は、そのために、両者間の精力的な協議を通じ、具体的な行動を実施していくことを約束した。」と明記されたわけでありますが、ここ最近まで何もなされなかった、いや、ナシのつぶてと言っても過言ではない状況が続いておったと思っております。

 がしかし、先週の六月七日土曜日に、急遽、在中国日本大使館において、齋木アジア大洋州局長と宋日昊朝日会談担当大使との非公式予備協議が行われ、六月十一日水曜日、まさにきょうでありますが、きょうの四時からと、そしてまた明日六月十二日木曜日、北京において日朝実務者協議が開催されることとなったわけであります。

 正直に申しますと、本日の実務者協議が行われる前にこの委員会での質問というのは少しタイミングが悪いのではないかと思うわけでありますが、きょうはあえて質問をさせていただきたいと思っております。

 さて、また外務省の閣僚の皆さんがかわっても、我が国の拉致問題に対する姿勢というものは変わりないと私は思っております。そんな中で、まず、小野寺副大臣に質問をさせていただきます。本日行われる北朝鮮との実務者協議に臨む政府の方針、これについて再度確認をさせていただきたいと思います。

小野寺副大臣 本日、実務者協議がございます。政府としましては、今までどおり、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現するなど、日朝間の諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去の清算、国交正常化を実現するとの方針のもと、最大限の努力を図っていく考えでございます。

 拉致問題を含む日朝関係につきましては、昨年十月の六者会合成果文書におきまして、日朝双方が平壌宣言に従って早期に国交を正常化するため誠実に努力すること、また、精力的な協議を通じて具体的な行動を実施していくことなどが約束をされております。

 七日に北京で行われました日朝間の協議を踏まえまして、本十一日から日朝実務者協議が行われることになりましたが、言うまでもなく、会合を行うこと自体が目的ではありません。今回の協議では、拉致問題を含む諸懸案につきまして突っ込んだ意見交換を行い、前進を図りたいというふうに考えております。この機会に改めて、北朝鮮側が拉致問題を含む諸懸案の解決に向けて具体的行動をとることを求めたい、そう思っております。

鍵田委員 ありがとうございます。

 今副大臣がおっしゃったように、目的というのはあくまでも、会合を開くんじゃないということ、拉致問題を解決するということ、これに本当に重点を置いていただいているというのは非常にありがたいことであると思っております。日本の国民もみんなそれを望んでおるわけでありますから、よろしくお願いしたいと思います。

 さて、次に入らせていただきますが、お隣の韓国では盧武鉉大統領から李明博大統領にかわり、核問題に加えて人権問題を重視するという姿勢を示しておられるわけでありますが、韓国も我が国同様、やはり拉致問題を日本以上に抱えておられると思っております。できれば、日韓連携のもとに、拉致問題の解決に向け両国の相互協力ということが望ましいと思うわけでありますが、現在の連携の状況についてお答えをいただきたいと思います。

小野寺副大臣 四月二十一日に行われました日韓首脳会談では、北朝鮮による拉致問題を含む人道、人権の問題が日韓両国にとって重要であることを両首脳間で確認をいたしました。特に、李明博大統領からは、拉致問題の解決のためできる限りの努力をしたいとの立場が示されました。また、五月十九日にワシントンで行われました、六者会合に関する日米韓三カ国会合におきましても、韓国との間で、拉致問題を含む日朝関係についての我が国の立場への理解と協力が改めて確認をされました。

 今後とも、非核化と拉致問題を含む日朝関係がともに前進するよう、韓国とも緊密に協力しつつ、北朝鮮に対して粘り強く働きかけていく考えでございます。

鍵田委員 ありがとうございます。

 やはり、大統領がかわられた中で、李明博大統領の今の考え方というもの、非常にこれは日本にとって大きな追い風になると思うんですね。しっかりとその辺、連携をとってやっていただければありがたいと思います。

 続きまして、町村官房長官に質問をさせていただきたいと思います。

 私がこの委員会で初めて質問に立ったとき、当時、外務大臣が現の町村官房長官でありました。あれは平成十七年の十月六日、私が初質問をさせていただいたのがちょうどこの拉致問題特別委員会であったわけであります。あれから二年半以上が経過をし、状況も変化をしてきたわけでありますが、政府は、拉致問題における今後の対応方針、これは平成十八年十月十六日に拉致対策本部で決定したものでありますが、この中で、「拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はあり得ない」との方針を確認しておるわけであります。

 私は、拉致問題が置き去りにされてしまうようなことがあってはならない、そういった思いの中からあえて質問をさせていただきたいと思います。この方針、現在も変わっていないと思うんですが、堅持されているかどうか、町村官房長官にお答えいただきたいと思います。

町村国務大臣 鍵田委員が、初当選以来この拉致問題に大変熱心に、関心を持ち、解決のために御尽力をいただいておりますことにまず感謝を申し上げます。

 委員御指摘の、平成十八年十月十六日、拉致問題対策本部決定の基本方針でございます。すなわち、「拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はあり得ない」、この一貫した方針は、もちろん福田内閣におきましても堅持をされているところでございまして、すべての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、拉致問題対策本部を中心にして、引き続き福田首相のリーダーシップのもとで最大限の努力を行っていきたい、私も担当大臣として全力を挙げているところでございます。

鍵田委員 ありがとうございます。

 特に官房長官の、こうやって外務大臣も経験された中でのきょうの御発言、基本方針は変わらないという力強いお言葉をいただいて非常に安心をしております。

 ただ、私は奈良出身でございますが、奈良というのは、拉致問題に関しては本当に無関心な方が非常に多いんですね。拉致被害に遭われた県、新潟であったり北陸等々、こういったところの皆さんというのは非常に関心を持って、そしてまた、一刻も早い被害者の帰国ということ、こういったことを考えておられるわけであります。ともかく、政府がしっかりと、拉致問題を解決しなければ北朝鮮との国交正常化はないという今の基本方針を貫いていただいて、国民みんなにももっとわかりやすくお伝えいただければありがたいと思います。

 さて、この拉致問題解決に向けた政府の方針ということを今理解させていただいたわけでありますが、最終的に政府が目指している拉致問題の解決とは具体的に一体何を指すのか、お答えをいただきたいと思います。

町村国務大臣 委員御指摘のように、拉致問題に関する国民の幅広い理解、御支援というものが解決にとって非常に重要な基盤になる、私どももそう思っております。そういう意味で、政府主催でいろいろな行事をやったり、あるいは御家族の皆さん方の懸命な御努力によって、かつてとは比べ物にならないぐらい、国民の幅広い共感、理解というものが広まっている、私はこう思っております。

 しかし、まだまだ、本当に十分かといえば、残念ながら無関心な方々も少なからずいる、その辺を、私どもも全力を挙げていきたいし、また、御家族の皆さん方も大変厳しい環境の中で懸命の努力をしていただいていることに私どもも大変感謝をしておりますし、また、こうした努力がいつまでも続くことのないように、一刻も早い問題の解決に向けてということで努力をしなければいけないと思います。

 問題の解決とは一体どういうことを指すのかという御質問でございますが、これも従前から申し上げておりますけれども、すべての拉致被害者の安全の確保と帰国の実現、それと、なぜこういう犯罪が起きたのかということの真相の究明、そして拉致被疑者の引き渡し、犯人の引き渡しというものを、私どもはこの解決のためには絶対必要な要件である、こういう認識でいるわけであります。

 ちょうど、きょう、あすと実務者の協議が開かれますけれども、そうした基本を踏まえながら、齋木アジア局長を筆頭に、きょう、あすと北朝鮮側と全力を挙げての話し合い、交渉をしてくれるものと確信を持って送り出したところでございます。

鍵田委員 官房長官、ありがとうございます。

 さて、現在、我が国の失踪者の中にも、北朝鮮による拉致ではないかとする届け出やまた相談が数百件にも上ると聞き及んでおるわけでありますが、現在の捜査の進捗状況についてお聞かせをいただきたいと思います。これは警察庁の方でよろしくお願いいたします。

五十嵐政府参考人 お答えいたします。

 拉致容疑事案の捜査につきましては、警察では、被害者の所在が不明であり、事件発生の時点で目撃者等がおらず、証拠もほとんど残されていない困難な状況のもと、鋭意、関連情報の収集と証拠の積み上げに努めまして、長期間にわたる地道な捜査を行った上で、一連の捜査の結果を総合的に検討した結果、日本人拉致容疑事案十二件十七名及び朝鮮籍の兄弟が日本国内から拉致された事案一件二名、計十三件十九名を北朝鮮による拉致容疑事案と判断するに至ったものであります。また、これまでの捜査の結果、拉致の実行犯として八件十一名の逮捕状の発付を得て、ICPOを通じて国際手配を行っているところであります。

 警察は、これらの事案以外にも、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があるという認識のもと、北朝鮮による拉致容疑事案の全容解明に向け、鋭意所要の捜査や調査を進めているところでございます。

鍵田委員 ありがとうございます。

 今お聞きしていると、数百名に上る、その辺のところはまだまだ進んでいないかとは思うんですが、ともかく、私なんかも子供がおりますが、ある日突然子供がいなくなって帰ってこない、何の手がかりもない、非常に悔しい思いというか、寂しい思いだけでなく、本当に悔しい思いをしておられる方がたくさんおられると思うんですね。ですから、できる限り警察庁の方もその辺のところをしっかりと捜査していただいて、その数百名に上る方々のこともまた含めて、よろしくお願いしたいと思うわけでございます。

 前回三十分いただいたのに、きょうは十五分という持ち時間で短かったわけで、もう終わらせていただくわけでありますが、先ほども述べましたように、やはり都道府県によって非常に温度差がある。私は一生懸命、奈良で、今言ったように、自分の子供がある日突然おらなくなるとどうするんですかということを街頭なんかでもやっているんですが、なかなか興味を持っていただけない。興味と言ったら失礼ですね、関心を持っていただけないというのが現状だろうと思っております。

 ただ、我々国会議員一人一人もしっかりと地元でこういった発言をし、そしてまた話をして、拉致問題というものをもっと国民挙げての取り組みにしていかなければならないと思っております。国の方もどうぞよろしくお願い申し上げる次第でございます。

 これをもちまして終わらせていただきます。ありがとうございました。

山本委員長 次に、萩原誠司君。

萩原委員 ありがとうございます。自民党の萩原誠司です。

 きょうから始まる交渉でございますけれども、私は、北朝鮮の方々も、そろそろ、日本との交渉は世界との交渉だという認識を持っていただけないかなと思うんです。

 先ほどあったように、日本との国交正常化について、拉致の全面解決が前提となっている、当然でありますけれども、加えて、テロ指定問題の解除についても、やはり日本の拉致の問題が解決をしなければ動けないんだ、あるいは、国連におけるさまざまな、北朝鮮に対するいわゆる人権上の非難決議、国連人権委員会における決議等々、さまざまなマルチな場における対北朝鮮問題、これも恐らく、チャンピオン交渉というか、日本が納得をするかどうかというところを世界が見ている。

 私は、これまでの日本外交の地道な努力の中でそういう位置づけというのをつくってこれたのかなと思うし、だからこそ北朝鮮も、その中の一部、例えばアメリカとの関係も念頭に置きながら、この日本との交渉というのは大切なんだというふうに思ってほしいと思うし、思ってきたのではないかというふうに期待をしているわけであります。

 その中で、我が国として、世界的ないろいろな言い方があるわけですけれども、この問題について人権という切り口できちっと議論を整理してきた、もちろん、国家主権の侵害という整理もあるんですけれども。そして、さまざまな場で、リージョナルな場、六者会合、あるいはマルチの場、さらには、安倍総理のときにはすべてのバイの首脳会談においてこの問題を取り上げる等々、いろいろな努力を常にしてきた、こういうことであります。

 こういう、政府が今までしてきた拉致問題に関する努力、これはどういう効果を持ってきたのか。私が求めたい答えというのは、世界の理解が広まって、日本の交渉というのは世界の共通の利害になってきているんだという答えなんですけれども、いかがでございましょうか。お答えをいただきます。

    〔委員長退席、高木(毅)委員長代理着席〕

小野寺副大臣 我が国は、従来より、米国や韓国に加えまして、北朝鮮と国交を有する中国を初めとしますアジア諸国、欧州諸国等に対しても、拉致問題は重大な人道、人権問題であるとの観点から、拉致問題の解決に向けた働きかけを行ってきております。

 首脳レベルでの働きかけにつきましては、先ほど前の委員のところで述べさせていただきましたが、四月に行われました日韓首脳会談におきまして言及させていただきました。また、先月行われました日中首脳会談におきましては、拉致問題についても取り上げられまして、会談後に発表されました共同プレス発表におきまして、中国側が日朝関係の前進のために必要な協力を行うということが明記をされました。

 さらに、国連での活動につきまして申し上げますと、昨年十二月、ニューヨークで開催されました国連総会本会議におきまして、我が国は、拉致問題を含む北朝鮮の人権状況に関して、EUと共同で北朝鮮人権状況決議を提出しました。同決議は三年連続で採択をされました。

 同決議には、拉致問題について、それまでの決議で言及されていた懸念の表明に加え、北朝鮮当局に対して拉致問題を早急に解決することを強く要求するということが明記されておりますが、すべての国連加盟国から成る国連総会で採択されたことは、拉致問題の早期解決を含む北朝鮮の人権状況の改善に向けて国際社会が明確なメッセージを発して、北朝鮮の人権状況の改善を促すものになったと考えております。

 我が国としましては、引き続きあらゆる外交の機会をとらえまして、拉致問題を提起し、諸外国に対して拉致問題の解決に向けた働きを行う考えにあります。

萩原委員 ということでありますれば、重ねて副大臣にお尋ねしたいわけでありますけれども、今回の日朝交渉に対しては、国連やさまざまな国から深い、強い関心が寄せられている、そういうふうに考えてよろしいわけですね。

小野寺副大臣 もちろん、六者会合の当事者国以外にも、当然この拉致問題に関しては、人権問題ということで幾次の国連の場でも日本政府は表明しておりますので、多くの国が強い関心を持っていると思っております。

萩原委員 ありがとうございました。

 ブッシュ大統領に横田めぐみさんの御家族がお会いになったときに、大変忙しい中をありがとうございましたということで冒頭おっしゃったら、大統領の方から、私は人権問題を抱えている人に会わないほど忙しいことはない、こういう答えがあったということも仄聞しておりますが、そういう環境の中で、福田総理におかれましては、就任以来、拉致問題について人権問題という点を何となく強調しておられるように私には見受けられるわけでございます。この点、安倍前総理時代とは微妙に変わっているのかなと、わかりませんけれども、そういう感覚もあります。

 福田内閣として、拉致問題解決に向けて外交交渉を、今申し上げたような観点、仲間をつくっていく観点から、有利に進めるということで、人権、人道面をどう重視しておられるのか。その点、もしお伺いをできればと思います。官房長官、よろしくお願いします。

町村国務大臣 安倍政権と福田政権でどこがどう変わったかというと、私も明快に申し上げるほどの材料もないのでありますが、どちらもやはり、人権、もちろん国家の立場から見れば、それは我が国の国民が全く理由もなく連れ去られたという意味で国家主権の侵害である、そういう見方もできますし、同時に、まさに拉致された方々からすれば、人権の侵害という大変大きな、普遍的な性格を持つ、そういう問題であるということであろうと思います。その辺は、安倍内閣と福田内閣、そう大きな違いがあると、私はそう思ってはおりません。

 当然のことながら、福田内閣におきましては、大変大きな問題であるという認識のもと、総理も、自民党の総裁選挙のさなかにも、自分の手で北朝鮮による拉致の問題を解決したいという強い意欲を述べられたことを私は印象深く覚えているわけでございます。総理就任後も、そういう意味で、あらゆる機会をとらえて、ブッシュ大統領にも、また先ほど副大臣から御答弁のあった中国あるいは韓国等々バイの場でも、あるいはマルチの場でも、そうしたことに触れるようにしておられます。

 七月七日から開かれますG8サミットの場におきましても、せっかくアジアで開かれるサミットでございますから、この問題も、やはり地域の安全、あるいは北朝鮮だけではございませんけれども、核兵器等々の拡散の問題、いろいろなコンテクストでこの問題がとらえられる、議論されるんだろう、こう思っておりますし、政府の方、福田総理の方からもこの問題を提起し、国際的な理解の広まりをつくっていきたい。

 国連の場で、人権委員会、意外と、これはそう簡単に多くの国々が賛同してくれるわけでもないんですね。そこで、まさに日本の外交の力で、他の国々とも協力しながら、毎回毎回、これで三年連続ですか、可決をされるという状況になっておりますけれども、やはりこうしたことを地道に続けながら、そうした世界の世論を背景にしながら、北朝鮮としっかりとした交渉をやっていくことが大切であると考えております。

萩原委員 ありがとうございました。

 そういうことを私も共通の理解をしているわけでございますけれども、先ほど李明博さんの話がありましたけれども、李明博大統領との会談で、総理が人権を強調されたというふうに伝え聞いておりまして、もちろん、李明博さんの持っている政治スタンスが全般的に盧武鉉と違うということはあるんですけれども、今回、韓国が国連決議において堂々と賛成に回った背景には、やはり福田総理のおっしゃった人権問題に関するポイントというのは非常に効果があったということを韓国から若干聞いておりますので、これについては非常に高く評価を申し上げたいんです。

 一方で、もしできればお答えいただきたいのは、安倍総理におかれては、あらゆる首脳会談の場でずっと拉致問題を取り上げてこられた。ところで、TICADがあって、アフリカ諸国の方がどっと来られて、すべての首脳と会談をされたというすばらしい成果、これは外交面の成果だと思いますけれども、そこでは一体どうだったのか。あるいは、欧州への御訪問をされましたけれども、そこでどこまでこの問題についてお触れになったかということについては若干の疑念もないではない。もしお答えがあれば、よろしくお願いいたします。

町村国務大臣 TICADあるいは欧州の首脳との会談の逐一の議事録を私も全部目を通しているわけではございませんから、また、しかもアフリカ四十数カ国、一カ国十五分とか二十分という極めて限られた時間の話でありましたから、そこまで話が至ったかどうか定かではございません。

 いずれにしても、多少ゆっくりと議論ができる、例えばG8の場等では、こうした問題、世界の政治問題も議論になる、そういうセッションもございますので、そうした場では当然のことながらこの問題を取り上げていくことになろうかと思います。

萩原委員 ところで、総理のみならず、これからまた国会後の外交シーズンというのが始まるわけでございまして、各大臣を初めとする政府・与党の方々におかれましては、それぞれの事業あるいはそれぞれの交渉はありますけれども、その中でぜひこの問題について、さまざまな論点、強調して、世界各国の日本に対する理解を得ていただきますように、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、人権の問題でありますけれども、こういう形で広がりを見せているわけでありますけれども、翻って私どもの日本国における国内制度上、人権の問題について十分なのかどうかというところも若干の議論になるわけでございます。

 殊に、ちょうど今、自民党でも党内議論が進んでおりますけれども、人権擁護法案、これについては、少なくとも公権力における侵害事案というものについて私どもが十分な対応をとっていないということに対しては、国連からも、ちょっと問題があるんじゃないかというような指摘をされているところであって、この人権問題であるところの拉致問題を解決する際に、バイの力だけではいけない、さっき申し上げたように、さまざまなマルチの力を援用しながら、日本との交渉は世界との交渉なんだというようなステークを上げて交渉しようとする際に、若干このことが問題なのかなというような気もいたすわけでございます。

 この点、つまり、日本における人権保護の問題についての現状認識、並びに人権擁護法、特に公権力についての措置を定めていないということについて、できれば外務省、そして法務省の方から御所見を賜れればと存じます。よろしくお願いいたします。

富田政府参考人 法務省の人権擁護機関では、国民一人一人の人権意識を高め人権への理解を深めてもらう人権啓発活動を通じ、人権侵害の防止を図るとともに、現実に発生する人権侵害による被害の救済を図るため、人権相談及び人権侵犯事件の調査、救済活動に努めております。とりわけ、ことしは世界人権宣言が採択されて六十周年に当たります。私どもとしても、引き続き、この人権啓発活動、人権相談及び人権侵犯事件の調査、救済活動の強化充実に努めてまいりたいと考えております。

 委員御指摘の人権擁護法案の問題につきましても、法務省は、平成十四年三月に、新たに独立の行政委員会として人権委員会を設置し、同委員会を担い手とする新しい人権救済制度を創設する人権擁護法案を国会に提出しましたけれども、同法案は、平成十五年十月、衆議院の解散に伴って廃案となっております。

 同法案は、平成八年十二月に成立した人権擁護施策推進法に基づいて設置された人権擁護推進審議会による平成十三年五月と十二月の各答申を踏まえて立案したものであり、同法成立の際の衆参両法務委員会の附帯決議では、政府は同審議会の答申等を最大限に尊重し、法的措置を含めて必要な措置を講ずるべく格段の努力をすべきこととされております。

 平成十年十一月には、委員御指摘の点はこれであろうかと思いますが、人権規約委員会が、我が国の報告に対する最終見解の中で、人権侵害の申し立てに対する調査のための独立した仕組みを設置することを勧告し、平成十五年八月、女子差別撤廃委員会が、平成十六年二月には児童の権利に関する委員会が、いずれも、我が国の報告に対する最終見解の中で独立した国内人権機構の設置を勧告するなど、人権諸条約に基づく各種委員会が、我が国の報告に対する見解において、国内人権機構の整備について言及しております。

 このような事情に照らし、同審議会の答申を踏まえた法案の国会への提出を目指すべきものと考えておりますが、今なおさまざまな御議論もあることから、自民党の現在の調査会での御議論も踏まえながら、各般の御意見を十分に承り、引き続き真摯に検討を進めてまいりたいと考えております。

萩原委員 十五分の持ち時間における答弁であるということを認識されて準備をしていただきたいというふうに思いますし、答えの一番基本的な部分がはっきりしなかったので、本来なら答弁漏れと言いたいところですが、審議促進の観点から、これで終わります。ありがとうございました。

高木(毅)委員長代理 次に、内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 町村官房長官に冒頭お尋ねをしたいと思っております。

 拉致認定被害者十二人とは別に新たな被害者情報が、昨年秋、米国に北朝鮮から伝えられたとの毎日新聞の五月二十七日の報道がございます。この新たな被害者の存在について政府はどのように認識をされておりますでしょうか、お尋ねいたします。

町村国務大臣 御指摘の報道を見て私も大変驚きまして、調べましたが、そのような事実はないということでございます。そのことは、私も報道があった直後の記者会見で明瞭に申し上げましたし、またさらに、ちょうど時を同じくしてアジア大洋州局長がヒル国務次官補と北京で会っていたものですから、そのことを確認したところ、ヒル次官補の方からもそのような事実はないということを明確に述べております。

 いずれにしても、どういう意図で、しかも名前を挙げた人に直接何ら取材もしないで、この新聞社が報道したということは甚だ遺憾なことであるということで、適正な取材を行った上で報道を行うように強く申し入れも行ったところでございます。

内山委員 今、ちょっと最後聞き取れませんでしたけれども、毎日新聞社に対しては訂正記事の要求はされたんでしょうか。

町村国務大臣 正しい報道をするようにということを申し入れ、翌日、その新聞社は、朝刊で、政府が否定したという旨の報道を行いました。

内山委員 私は、こういう情報は、新たな被害者は生きている、たくさん生存をしているというふうな形で私は願っておりまして、やはり何らかのそういう情報があって漏れ伝わっているんではなかろうか、そういうふうに思っているんです。

 今、町村官房長官が、外務省を通じてそういうところも確認をしたという話でありますとすれば、それでは警察庁並びに公安調査庁の皆さんにお尋ねをしたいと思うんですけれども、特定失踪者問題調査会というのは、拉致の疑いを排除できない行方不明者として四百七十人を登録しておりまして、そのうち三十六人が特に拉致濃厚だとしているわけであります。新たな被害者というのは、私は当然北朝鮮に生存しているものだろうと確信をしておりまして、公安調査庁並びに警察庁はこの新たな被害者が存在する情報を把握しているかどうか、確認したいと思います。それぞれでお答えをいただきたい。

五十嵐政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘の毎日新聞の記事でございますけれども、その報道された内容につきまして、警察としても事実は把握はいたしておりません。

 警察におきましては、北朝鮮による拉致容疑事案に関しさまざまな情報収集活動を行っているところでございますが、具体的な内容につきましては、今後の捜査に支障を来すおそれがありますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、警察としては、引き続き、拉致被害者全員が生存しているという前提のもと、北朝鮮による拉致容疑事案の全容解明に向け全力を尽くしていく所存であります。

北田政府参考人 公安調査庁では、北朝鮮によります日本人拉致被害者につきまして、政府認定の拉致被害者全員が生存しておられる、こういう前提に立ち、またそれ以外にも日本人拉致被害者が存在する可能性がある、こういう認識のもとに、この問題につきまして重大な関心を持って調査を推進してきているところでございます。

 現在も鋭意調査を継続しているところでございますが、その具体的な調査内容、これにつきましては、当庁の今後の調査業務に支障を来すおそれもございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

内山委員 拉致問題を解決できない、進展できない最大の原因について政府はどのような認識をされているかというのを確認したいんですけれども、相手がある外交交渉ですから、簡単に前進しないことは十分理解できます。しかし、今まで拉致被害者を早期に救済できなかったことは、大いにやはり反省すべき問題だと思っています。

 北朝鮮に対する日本のカードというのは、圧力の制裁だけでなく、国交正常化や経済活性化の資金援助というのもカードの一つだと思っておりまして、大変進捗状況がよくないのは歯がゆく思っている国民もたくさんいらっしゃるんじゃなかろうか、こう思うんです。

 拉致問題を解決できない、進展できない最大の原因というのは何だと認識されていますでしょうか。お願いいたします。

小野寺副大臣 拉致問題の解決につきましては、対話と圧力、その双方が必要であると考えております。それらのバランスをとることが重要と考えております。また、対話にしても圧力にしても、関係国、広く国際社会の理解と協力を得ることにより効率的、実効的なものになるということ、そのことに留意する必要があるとも考えております。

 日朝関係につきましては、昨年十月の六者会合成果文書においても、日朝双方が平壌宣言に従って早期に国交正常化するため誠実に努力すること、また、精力的な協議を通じて具体的な行動を実施していくことが約束をされております。このことを踏まえまして、我が国としては、累次の機会に、北朝鮮との間で真剣な対話を行う用意があることを明確に表明をしております。

 このような経緯を経まして、きょう十一日から、昨年九月の第二回日朝国交正常化作業部会以来の公式の日朝間の協議となる日朝実務者協議が行われることとなりました。今回の協議では、拉致問題を含む諸懸案について突っ込んだ意見交換を行い、前進を図りたい、そう考えております。

内山委員 私が聞きたいのは、拉致問題を解決できない最大の原因は何だろうということをお尋ねしたいわけでありますけれども、答弁をお願いします。

町村国務大臣 一言で言えば、それは北朝鮮側に問題があるからであります。彼らがこの問題を解決しようという考えといいましょうか、意欲といいましょうか、それが基本的に欠けている状況の中で、それでも、もちろん諸般の準備をした上で、小泉総理が訪朝し、数名の方を帰国させた、御家族も帰国させた、こういう成果を上げたことは事実でございます。

 ただ、それ以外の方々につきましてのさまざまな交渉、水面上の交渉あるいは水面下の交渉をやっておりますけれども、基本的には、彼らが拉致被害者を返すことによって、国家としてそうしたいと思うものが今までのところはなかったということなんだろうと思います。

 ただ、その点について言えば、彼らが客観的に、冷静に自分の国の置かれた状況を考えれば、拉致被害者を返すということが実は大変大きな彼らの国益にも合致する部分があるんだということを、冷静に考えれば理解をされるはずだと僕は思っております。

 思いますが、その辺の国家としての判断の尺度が、日本と、あるいはその他の国々と全く違う尺度で彼らが国家というものを成り立たせ、政権というものを運営しているということがあるがゆえに、通常の外交交渉であれば解決できる問題がなかなか前進をしないという状況に立ち至り、多くの国民の皆様方が大変歯がゆく、もどかしく、特に被害を受けた方々、拉致された方々、御家族の皆さん方の思いというものは本当に察するに余りあるものがあります。

 我々もそういう思いを共有しながら、さまざまなルートで北朝鮮を説得し、まさに対話と圧力という中で問題解決をしたいと全力で努力をしているところでございます。

内山委員 今官房長官は、北が悪いという話を冒頭されましたけれども、それでは、北に、日本人を、拉致した人たちをとどめておくメリットというのは何があるんでしょうか。こういう問題はさっさと解決をして、北が望んでいます国交正常化、まず経済的な支援というのをやはり求めるのが普通ではなかろうかと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。

町村国務大臣 余り先方の国家のリーダーの考え方を私が推測して物を言うのもいかがかと思いますので、余り多くを語るべきではなかろうとは思いますけれども、先ほど申し上げましたように、我々の考え方でいえば、拉致の被害者の方々を返し、そして国交正常化をして、北東アジアの平和と安定を保つ、そういう中で、日本から韓国に対して国交正常化に際してお渡しをしたような有償、無償のお金が当然北にも渡るんだから、それはメリットがあるではないか、こう考えるのが、ある意味では、我々のスタンダードからすればそうなんでしょうけれども、彼らはやはり違うスタンダードがあるんだろうと私は思うのであります。

 それが何であるのか、私もよくわからないわけではありますが、そこから先は想像の世界に入りますから、余り想像しても意味がないと思いますが、やはり国家の存立というものが一体何で成り立っているのかというあたりの考え方が違うのではないのかなと思ったりもいたします。

内山委員 そういうことであるとすれば、これからもやはり交渉するとすれば非常に難しい、なかなか前進が得られない、そんな状況も推測できるわけでありますけれども、でも、やはり交渉でありますから、向こうが望むカードというのも当然日本の中にはあるはずでありまして、例えば国交正常化である、経済的な支援である、こういうものを北朝鮮にもっともっと理解をさせて、拉致問題の早期解決を、譲歩を引き出すというところはできないんだろうかと、やはり、見ていて非常に歯がゆく思うわけであります。

 実際に、今まで、安倍政権の平成十八年九月二十九日に拉致問題対策本部が設置されておりまして、現在まで四回会議をされております。二回の会議においては、北朝鮮への対話の窓口を開きつつ、北朝鮮に誠意ある対応を促す云々とあります。

 しかし、対話と圧力によって、現在までに、ではどのような進展、成果があっただろうかと非常にやはり疑問に思っているんですけれども、何かありましたらお答えをいただけますでしょうか。

小野寺副大臣 対北朝鮮措置の北朝鮮全体に対する効果ということですが、例えば経済面を考えますと、北朝鮮に対して、経済状況を考えた場合一定の効果を及ぼしているものと考えております。加えて、北朝鮮に対する措置につきましては、その経済的効果だけでなく政治的意義にも着目しながら、それが諸懸案の解決に向けた具体的な行動を北朝鮮から引き出すという目的に資するかとの観点から評価、検討していくことが重要だと思っております。

 現在、六カ月ごとに継続を決定しております船舶入港禁止措置及び輸入禁止措置も、北朝鮮に対し、諸懸案の解決に向けた具体的な行動を求める我が国の立場を明確にする効果があると思っております。

 我が国としましては、北朝鮮が我が国と真摯な対話を行い、具体的な行動をとることを改めて求めたい、そのように思っております。

内山委員 我が国としては効果があると認めても、向こうにきいているかどうかというのが最大の問題だろうと思うんですね。やはり、こうやって解決ができないということは、なかなか相手にとってはきいていないような、的を得ていないような制裁なんじゃなかろうか。ですから、対話と圧力という形で決めているんですから、圧力の制裁だけではやはり解決できないんじゃなかろうか、こんなふうに思うわけであります。

 それでは、この日本の拉致問題に関して、米国政府はどのような支援体制を今までとってきたか、お尋ねをしたいと思います。

小野寺副大臣 米国は、拉致問題に関する我が国の立場をよく理解しております。これまでもあらゆる機会をとらえまして、北朝鮮に、拉致問題の解決に向けた具体的行動を働きかけるなど、協力をしてきております。

 ライス国務長官も、拉致問題が米国の非常に高い優先事項であり、米国にとっても重要な問題であるという旨を確認しています。五月二十二日に高村大臣がライス長官と電話会談を行った際にも、非核化と拉致問題を含む日朝関係の双方がともに前進するよう引き続き日米間で協力していくことを確認いたしました。また、五月二十七、二十八日に北京で行われました米朝協議におきましても、ヒル国務次官補は、金桂冠北朝鮮外務副大臣に対しまして、拉致問題の解決に向けた具体的な行動を働きかけたものと承知をしております。

 また、きょう十一日より北京におきまして日朝実務者協議が行われる予定でありますが、今回、北朝鮮が日本との協議に応じてきた背景には、このように日米が緊密に連絡しまして、北朝鮮に対して行ってきた働きかけもあったと考えております。

 政府としましては、引き続き米国と緊密に連携をしていく考えにあります。

内山委員 二〇〇三年八月、第一回の六カ国協議が北京で開催されたわけでありますけれども、そのときに、米朝二国間会議は絶対にしないとブッシュ政権は内外に明言していたはずなんですね。しかし、ある日から突然、二国間協議、会合を始めるようになりました。今やテロ支援国家指定解除を行おうとするところまで行っておりまして、このことに対してどう考えたらいいんでしょうか。答弁をいただきたいと思います。

小野寺副大臣 テロ支援国家指定解除の問題、これは米国国内の法律が適用する問題であります。米国は、現時点で北朝鮮のテロ支援国家指定解除を決定したということはありません。北朝鮮のテロ支援国家指定が解除されるかは北朝鮮による非核化措置次第であるという立場を維持する一方で、拉致問題に関する我が国の立場をよく理解をしております。これまでもあらゆる機会をとらえまして、北朝鮮に拉致問題の解決に向けた具体的な行動を働きかけるなど、協力をしております。

 いずれにしましても、米国はテロ支援国家指定解除の問題につきまして日本側と十分に協議するとの立場でありますので、政府としては、この問題を含め、引き続き米国と緊密に連携をしていく考えであります。

内山委員 同じく、第一回の六カ国協議の会合では、日本人拉致問題は日朝の問題であり、中国は両国間の交渉を通じて適切に解決されるよう希望すると、王毅中国外交部副部長によるホスト国の総括がございました。

 なぜ、拉致問題解決のために、その後、日朝間で協議を進められなかったのか。当時、北朝鮮は日本を相手にせずというような態度をとっていたわけでありますけれども、原因、どのように分析をされていますでしょうか。

小野寺副大臣 委員御指摘ありました、二〇〇三年八月に開催されました第一回六者会合が終了した後の記者会見におきまして、当時の王毅外交部副部長は、拉致問題に関して、この問題は日朝間で懸案となっている問題であり、中国側は日朝間で協議を通じて問題を適切に解決することを希望しているという旨述べたことを承知しております。

 六者会合の中核的議題は核問題でありますが、我が国は、毎回拉致問題について取り上げてきております。こうした努力もありまして、日朝関係は、二〇〇五年九月の六者会合共同声明を初めとする累次の成果文書でも取り上げられておりまして、北朝鮮の非核化や米朝関係とともに、六者会合の枠組みの中に明確に位置づけられるに至っております。このことは、今後拉致問題を含む日朝関係の懸案事項に取り組んでいく上で有意義と考えております。

 我が国は、六者会合を通じまして、朝鮮半島の非核化と拉致問題を含む日朝関係の双方がともに前進するように努力しておりますが、中国を初めとする各国は、我が国のこのような立場を理解し、支持しております。政府としては、引き続き、六者会合共同声明を全体としてバランスよく実施すべく、米国を初めとする関係国と緊密に連携をしていく考えにあります。

内山委員 王毅外交部副部長は、もう一回読みますけれども、両国間の交渉を通じて適正に解決されるよう希望すると。ですから、日朝でこの拉致問題というのは、六カ国協議のテーブルではなく、別にどんどん協議を進めていくべきじゃなかったのか、こう思うわけでありまして、それをどうしてやらなかったのか、そういう質問なんですけれども、いかがでしょうか。

小野寺副大臣 先ほど官房長官からもお話がありました。これは、もちろん日本としては、あらゆる機会を通じて北朝鮮との対話をしていきたいと思っておりますが、何せ相手があることでありますので、あらゆる努力をする中で、この六者会合の場での議論ということも必要なことかと思っております。

内山委員 交渉ですから、相手がテーブルに着かないのであれば、着かせるような努力をするのも交渉の一つだろうと思います。相手だけが悪いということでは答えは出ないですよね。ですから、日本のこれからの北朝鮮に対する対応というのも今までと違ったものをやはり考えていかなきゃならないんじゃないんですか。

 それで、次に、続けたいと思うんですけれども、アメリカは、拉致問題こそありませんけれども、北朝鮮とは現在でも休戦中である、敵対国家であるということは間違いないわけであります。しかし、国連を舞台にして接触し、北京を足場にして、第三国を介したりして、常にパイプを保持していますよね。

 しかし、日本国政府は、「北朝鮮への対話の窓口を開きつつ、北朝鮮に誠意ある対応を促すため」等々と対応しているようでありますけれども、対話の窓口というのはどんなものを考えておられるのか。幅広い日朝間の交渉窓口のチャンネルというのもこれからもっと考えていかなきゃならないんじゃないか。特にお尋ねをしたいのは、議員外交についてどう考えておられるか、答弁をいただきたいと思います。

小野寺副大臣 行政府の方から議員外交についての言及というのはなかなか言いにくい部分もありますが、一般論として申し上げれば、国民の代表である国会議員が、外国政府等に、我が国の事情や国民の声を直接説明し、訴えかけることには意味があると考えております。しかし、万が一にも、政府の立場と異なる考え方が先方に伝わり、我が国の立場に関して誤ったメッセージが相手側に伝わることになったり、政府の交渉上の立場を弱めることになったりしないように、そのような注意は必要であると思っております。

 いずれにしましても、政府としては、引き続き、拉致問題を初めとする日朝間の諸懸案を包括的に解決し、日朝国交正常化を実現するために日朝協議に真剣に取り組んでいく考えにあります。

内山委員 基本的スタンスをやはり大きく変えていかなければならないんじゃなかろうか、こう思うわけであります。特に、日本の外交というのは米国追随外交、こう言われておりまして、我が国の今後の外交政策にもやはり及ぶことでありますけれども、もうアメリカ追随外交から脱皮して独立外交ができるように、やはり普通の国にすべきじゃなかろうか、こう思うんですけれども、官房長官、いかがでしょうか。

町村国務大臣 何をもってアメリカ追随と委員がおっしゃっているのか私にはわかりませんが、一つ、通常の国であれば、それはさまざまなルート、チャンネル、いろいろな話し合いというのがあっていいんだろうと思います。

 日本の国内にはいろいろな考え方がある。ただ、相手側は、ポーカーに例えれば、こちらの手は全部見える、日々の報道を見ていれば全部見える。幾らインテリジェンスを使ったって相手のポーカーの手のうちはほとんど見えない状態にある。こういう国と話し合いをしようというわけでありますから、そこは、アメリカ追随であろうとなかろうと、どうやったって大変困難が伴う国であるという点についてぜひ委員も御理解をいただきたい、こう思います。

 また、では、日本が北朝鮮と一体どういうチャンネルを使って交渉しているのか、これは、恐縮でありますが、そのすべてを今この場で語ることはもとよりできませんけれども、しかしそれは、表のチャンネルだけではない、いろいろなチャンネルを持ってやっているということは事実であります。

 この六者協議のフレームワークの中で、北朝鮮と何でたった四回しか話し合いができなかったのか、それはもうひとえに相手側が乗ってこないというまことに単純な話なんですね。

 交渉のやり方を変えろとおっしゃる。では、内山委員、何をどう変えろとおっしゃるのか。もうこちらが全部、好きなだけお金を持っていってください、差し上げますよ、そういう交渉のやり方も、それはあるのかもしれない。よもやそんなことをお考えではないと思います。どうぞひとつ、豊かなお知恵を、政府の方にも、こういう方法があるではないかということを積極的にアドバイス、御提言をいただければ幸いであります。

内山委員 所定の時間が来ていますけれども、私は、本日十一日から明日まで始まります、国交正常化に至るプロセスを考えますと、北朝鮮は、ある時期から、アメリカの暗示があって初めて活発化して動き出したように感じてならないんですね。それはだから、米国追随型の外交を日本がしている、主体性がないところで、日本を見ていず、アメリカさえ見ればこの問題が解決するというのは、私は、北朝鮮に足元を見られているんじゃなかろうか、こう思っているんですけれども、いかがでしょうか、それは。

町村国務大臣 恐縮だが、今の仮定のお話は全く間違っております。

内山委員 また質問させていただきます。終わります。

高木(毅)委員長代理 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 昨年までこの委員会の筆頭理事を務めておりまして、今委員長席に座っていらっしゃる高木委員とも、昨年は、中朝の国境に院外派遣で行かせていただきました。昨年の委員会で発言して以来でございますが、きょうは、こういう機会をいただきましたので、限られた時間でありますけれども、できるだけ本質に迫るような質問をしたいと思っております。

 今、きょうの質疑を聞いておりまして、最初に、冒頭申し上げたい、伺いたいのは、四月十日のこの委員会で我が党の高山委員がお尋ねをしたと記憶しておりますけれども、この七月にはサミットがあるわけでございまして、この北海道洞爺湖サミットが開かれる中で、我が国が、北朝鮮の問題、拉致の問題を、やはり、議長国としてぜひ自由討議の中でテーマとして、北朝鮮全般の問題あるいは拉致問題、北朝鮮の公開処刑、強制収容所といった人道問題、人権問題、この点について、日本として主導権をとって国際社会のリーダーたちと認識を共有するべきだと私は思います。

 拉致の問題は日本と北朝鮮の二国間の特殊な問題じゃなくて、ほかの国にもたくさん被害者がいるわけですね。タイにもいればマカオにもいるしレバノンにもいるし、十二カ国ですか、十一カ国、ひょっとしたらもっともっと、知らない、死亡とされた人たちが実は旅行中に失踪してかの国にいるかもしれない。

 こういうあらゆる可能性を考えれば、この拉致問題というのは日本と北朝鮮の間の、欧米から見たら極東の国同士の何か二国間にだけある特殊な問題だと認識している欧米の国民もいるでしょうから、この点については、私はやはり日本発で、拉致問題というのは実は世界各国に共通するテーマである可能性がある、そしてその最も当事国であるのが我が国であるから、この国でやるサミットの議長国として、世界の首脳とこの問題は自由に討議すべきだと思いますけれども、そういうお考えはないんでしょうか、日本政府には。いかがですか、長官。

小野寺副大臣 御指摘の、七月七日から九日開催予定の北海道洞爺湖サミットにつきましては、主要議題としまして、世界経済、環境・気候変動、開発・アフリカ、政治問題を取り上げる予定であります。

 拉致問題を含む北朝鮮に関する問題については、このうち政治問題の中で取り上げたいというふうに考えております。我が国としましては、北海道洞爺湖サミットの機会において、各国から拉致問題に関する我が国の立場への理解を得られるよう積極的に取り組んでいく考えにあります。

渡辺(周)委員 それは、政治のテーマの中で北朝鮮を取り上げるんじゃなくて、北朝鮮問題を取り上げるべきだと思いますけれども、官房長官、いかがですか。

町村国務大臣 大きく四つのテーマがありますということは、今副大臣が御答弁をしたとおりであります。

 広い意味の政治という中には、例えばアフガンの問題というのもあるでしょう、あるいはイラクの問題もあるでしょう、中東の問題もあるでしょう。アジアで開かれるサミットでございますから、アジアの大きな政治問題といえば、当然、今六カ国協議を中心として開かれている北朝鮮の問題、そして北朝鮮の問題といえば、一つは核の問題、そしてミサイル、拉致、こうした問題があるということになるわけでありまして、その中で、拉致の問題が当然福田総理から提起をされるであろうと私は考えております。

渡辺(周)委員 いや、あろうではなくて、期待をするんではなくて、議長国なんですから、まさにセッションで、北朝鮮問題、あるいは極東、北東問題、あるいは朝鮮半島問題というテーマで設けてやっても構わないと思いますよ。そもそも拉致問題担当大臣の御地元の北海道で開かれるわけですし。

 福田総理大臣は自分の任期中には解決すると言ったわけですから、今回ほど、最も世界に同じ認識を共有してもらえるまたとない機会だと思いますが、どうしてそれをやらないんですか。本当は及び腰なんですか。本当にその覚悟はありますか。

町村国務大臣 特別の北朝鮮拉致問題のセッションというのをこのG8で持つ、それは、各国共通の、お互いに関心を持っている話題を事前に調整をしながらやっていくわけですから、その中で私どもがその問題を提起するということは当然でございます。

 その中で、特別セッションをつくったらどうかというようなお話が今あったが、それは大きな政治というセッションの中で、サブテーマが幾つかあるということであろうと思いますし、そういう中で議論が行われるということだろうと思います。

 しかし同時に、今、六者協議という、まさに一番の関係国が話し合っているフレームワークがあり、その中で日朝の話し合いも行われているということでありますから、やはり六者協議は六者協議という中で、まさに拉致、核、ミサイルあるいはエネルギー支援等々の問題が議論をされるわけでありますから、G8はG8として、それは一つの話題になるかもしれませんけれども、しかし、ほかにはエネルギーの問題があるし、いろいろな問題もまた出てくるわけでありますから、何か拉致の問題のためだけのG8の会議であるという位置づけをせよというお話のようでありますが、それはちょっと違うのではないかと私は思いますよ。

    〔高木(毅)委員長代理退席、委員長着席〕

渡辺(周)委員 いや、担当大臣に私が伺いたいのは、もっとこれは日本の本気度を見せるわけですよ。日本の本気度、日本の決意ですよ。日本で開かれるサミットで、最も拉致の被害者がいる我が国がやる中で、政治のテーマでもいいでしょう、では、その政治のテーマの中で、例えば朝鮮半島問題、拉致問題を最優先とする諸懸案の問題。

 それから、ちょっと一言言いますけれども、先ほどから拉致問題を含む諸懸案と言われますけれども、これは、拉致問題をワン・オブ・ゼムにしてはだめなんですよ。拉致問題を最優先とする諸懸案とか、これから言い方を変えないといけないと思いますよ。そうしないと、日本側がトーンダウンしたと北朝鮮側に誤ったメッセージを伝えてしまいますから。

 ぜひ、この問題は政治のテーマの中でやはり提起すべきですよ。朝鮮半島問題、あるいは朝鮮半島の人道問題、人権問題、この問題をやることによって、日本はサミットという舞台でこの問題を取り上げる、やはり本気なんだと、世界の首脳に対して、あるいは世界からマスメディアも来るでしょう。いろいろなテーマを取材する中で、この問題が、いろいろな国のメディアも来る、ジャーナリストもいっぱい来ますよ、その中で、やはり一人でも多くの人に真相を伝えて、理解してもらいたい。私はそういうことをすべきだと思いますけれども、その点についてもう一度伺います。

 この問題を、私は一つの、議題とは言いません、ただ、政治をテーマに議論する中で絶対間違いなくやる、その決意だけお聞かせください。

町村国務大臣 グレンイーグルズにおきましても、ハイリゲンダムにおきましても、日本国の総理大臣はその問題を提起しております。今回もまた同様でございます。まして、今委員御指摘のように、アジアで開かれる八年ぶりのサミットでございますから、この問題を我が方から持ち上げるというのは当然のことであるということは先ほど来から申し上げているつもりであります。

渡辺(周)委員 その点は、これは私たちも、できれば本当に、この後、この委員会でなくともさまざまな場で提起をしてまいりたい。これは日本の本気度、日本のやはり覚悟というものを見せるまたとない機会ですので、この点、強く求めたいと思います。

 それから、先ほどからお話が出ています六カ国協議の日朝交渉、きょうの夕方から開かれる中で、北朝鮮がここへ来て、とにかくアメリカからテロ支援国家の指定を外してもらいたい、もうしゃにむにそのことだけを念頭に置いて、そうなるのも、今、北朝鮮自身の非常に厳しい経済情勢、食料飢饉がある。今、一九九〇年代の半ば並みの非常に食料不足になっていて、韓国系の報道によりますと、金正日総書記が、北朝鮮の国内を視察したときに、今この国の国民に食料を供給する以上に重要な問題はない、そう言ったというような報道もあるわけでございます。

 北朝鮮としては、核実験以降かなり厳しい状況に追い込まれて、とにかく食料なりを支援してほしいということで、今一生懸命いい子を演じているわけですね。反テロ宣言なんということを、このテロ国家が今になって何を言っていると私なんか思いますけれども、テロ国家北朝鮮が世界のテロには反対するなんという、どこの国のだれが言ったかとびっくりするようなことを言い始めて、テロ支援国家の指定を解除すべく、あらゆる手続を今一生懸命進めているわけでございます。

 そうしますと、この日朝交渉でも、北朝鮮はとにかく背に腹はかえられませんから、向こう側もどんなカードを出してくるかわからない。

 ただ、これは、一つ間違えると危険だなと思いますのは、これまで日本側は、拉致解決なしに国交正常化やあるいは重油の支援はあり得ないんだと言っていたのが、途中から、拉致問題の進展なしにという話になってきた。解決から進展ということで、これはハードルを下げてきましたね、日本側は。

 そうしますと、では、そもそも何をもってして進展とするのかということは、これまでも、私も昨年のこの委員会でもお尋ねしましたけれども、ここへ来て、日朝交渉のまさに直前において、この日朝交渉の経過と結果次第では、六カ国協議が加速して、テロ支援国家指定の解除にまでつながる可能性もある。そのことを考えますと、我が国としてこの拉致問題の進展というのは何を指すのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

町村国務大臣 進展の中身を一般的に言うことは困難でございます。先方がどういう具体的なアクションをとってくるのか、個別具体的に先方の対応を見た上で判断をするということであります。

渡辺(周)委員 前回からずっと政府の見解はそうなんですね。

 例えばよど号犯を帰国させる、追放するとなった場合は、ヨーロッパでよど号犯が有本恵子さんを初め数名の日本人を言葉巧みに連れていって拉致をした、そこによど号犯の妻の関与が言われているわけでございますから、例えば北朝鮮がよど号犯を、このテロリストを今までかくまってきたことがアメリカのテロ支援国家の一つの要件であるならば、追放する、もう既に中国経由で返すというような一部観測もありますけれども、よど号犯を返すことと拉致問題の進展とは関係がありますか、それとも、これは進展とみなさないのか。どちらですか。

町村国務大臣 これは進展と関係がありません。

渡辺(周)委員 では、よど号犯は、帰ってきて、追放されて、日本側が身柄を拘束することになっても、これは拉致問題の進展ではないと。そうすると、今までと姿勢は変わらないということですね。

 それでは、先ほど内山委員の質問の中にありましたけれども、一部報道で、アメリカ発の情報として、ほかにも拉致被害者がいて、この人たちを返す用意があるんだと。私は、これは多分観測記事だろうと思います。これで日本の世論がどう動くか、あるいは北朝鮮強硬派の人たちがどういう姿勢を見せるかということでアドバルーンを上げたんだろう、そのためにどこかが、だれかがリークしたのかなとも、うがった見方をするわけでありますが、それならば、新たな拉致被害者がいるということが何らかの形でわかった、その情報を提供してもいいということがもしこの交渉であった場合は、これは拉致問題の進展ということになるんでしょうか。いかがですか。

町村国務大臣 こういうことをこの場で全部話すことが、相手側に全部ポーカーのカードを見せることになります。

渡辺(周)委員 私は一般論として聞いているんですよ。

 つまり、進展というのは、何らかの、今いる十二名、拉致されて死亡されたと言われた人間たち、その人たちの新たな情報が出てくること、あるいは、それまでの全く我々が思いもしていなかった方が実はいるということである場合、これは新たな情報がわかったことで進展とするのかどうか、そこだけです、聞きますが。新たな情報が出てくればそれを進展とするのかということですね。いかがですか。そこだけお答えください。新たな情報が進展とみなされるか。

町村国務大臣 こういう場合において一般論を言うことは全く意味がないと思います。

渡辺(周)委員 この質疑をやっていると時間がなくなりますけれども、よど号犯は関係がないと。それならば、ここで、きょう、あすの交渉の成果について、あるいはプロセスについて、質問をちょっとかえます。

 この問題について、この経過や結果については特にアメリカのテロ支援国家指定に大変大きな影響を与えると思いますが、この経過や結果について当然アメリカに対してその旨を伝える、あるいは何らかの形で、支援国家解除をするしないに関して、日本側として何らかの、交渉のプロセスを踏まえて伝える用意はあるかどうか、あるいはそれはもう既に行っているのかどうか、その点についてお答えいただけますか。

小野寺副大臣 いずれにしましても、日米連携をとりましてこの問題解決にも当たっておりますので、私ども、必要な情報が得られれば、それはアメリカ側と情報を共有することはあり得るというふうに思います。

渡辺(周)委員 それは当然リアルタイムである程度送るということで理解してよろしいんですかね。北朝鮮とこういう交渉をしてこういうことが出てきた、それが表に出せる出せないは別にしても、アメリカとはその情報は共有する、そのためにも、何らかの形でこの日朝交渉の経過や結果についてはアメリカに伝えるということで理解してよろしいですか。

 その結果次第では、とにかく支援国家指定解除をやめてくれと言うぐらいまでの強い要請をする覚悟はありますか。

小野寺副大臣 さきの米朝協議の中でも、必要な情報はアメリカ側から日本側に伝わっております。

 今回のこの実務者協議に関しても、必要な状況にあれば、日本政府からアメリカ側にその情報を共有し、また対策についても考えていくことが大事かと思っております。

 内容につきましては、日本政府は今までもスタンスをずっと変えておりませんし、これからもこの拉致問題に関してはしっかりと対応していきたい、そう思っております。

渡辺(周)委員 それでは、時間がもうあと十分を切りましたのでちょっとテーマをかえますけれども、ただ、この日朝交渉の安易な妥協はぜひしていただきたくない。もうこれで拉致問題の進展とできるということで功を焦って、もっと言えば、北朝鮮は、はっきり言って、交渉に関してこれまでも何カ国もの大国をだましてきたような国ですから、日本あたりをだますのはもうわけない。北朝鮮の外交戦術というのは、そこら辺は、中国やソ連やアメリカを手玉にとってだまくらかして、軍優先の国家でありながらここまで生き延びてきている国ですから、それこそ我が国はだまされてきたわけですので、この点については決して安易な妥協は絶対にしてはならない、そのことをこの場で申し上げておきたいと思います。

 そして、もしアメリカがテロ支援国家の指定解除に本当に加速するようなときがあったら、とにかく日本は同盟国として今までこれだけやってきて、なぜ最後の最後に来て日本を置き去りにしてアメリカは功を急ぐのかということに対して強く申し入れをして、ぜひともテロ支援国家の指定解除などということが安易に行われないように、日本の最大限の努力をすべきだと思います。

 ちょっとこれから脱北者の話にかわらせていただきます。

 ことしの三月二十七日にラオスの日本大使館に、北朝鮮を逃げた青年、もともとこの人は親が日本人である、つまり日本人妻の子供として、関西の方の出身の方らしいんですが、この方がラオスの日本大使館に逃げ込んだ、そういう報道がありましたけれども、今、現状どうなっているのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

小野寺副大臣 一般に脱北者事案につきましては、政府としては、北朝鮮人権法の趣旨も踏まえまして、個別具体的な事情を勘案しながら適切に対処することにしております。

 しかしながら、この種の事案に関する事実関係につきましては、本人及び北朝鮮に残っている親族など関係者の身の安全、関係国との信頼関係並びに今後の類似の事案に及ぼし得る影響等を考慮しまして、その有無を含めコメントを差し控えることとしておりますので、その点、御理解をお願いしたいと思います。

 その上で、あえて申し上げれば、一般に脱北者事案につきまして、我が国としては、人道的観点に立ちつつ、脱北者の人定事項を慎重に確認するとともに、本人の希望等を総合的に考慮した上で、脱北者が現に滞在している国及び行き先となる国との間で慎重に調整を行うことにしております。

渡辺(周)委員 私も、この問題で余り事細かに聞いて、もしそれが事実であって、滞在している人間、あるいは特定されて、その親族が北朝鮮国内にいる場合、これがどんな迫害を受けるかということを考えれば、そこまでつまびらかにせよということはここでは申しません。

 こういう方が日本への入国を希望している。例えば韓国にあるハナ院、こういうところに希望して韓国社会に入れるならまだいいけれども、日本に来ても身寄りがないけれども、自分のルーツは日本人なんだ。例えば親族もいて受け入れてくれるという方もいれば、そうでない方もいる。そこで、これは本人の希望と受け入れ国というのはなかなかうまくマッチしない場合があるんですけれども、例えば、これは一般論として、難民支援団体、UNHCRだとかあるいはNGOに依頼をして何らかの形で受け入れてもらうということをやはり考えていくべきだと思います。

 人権法をつくってもう二年になります、成立してから三年かになりますけれども、この趣旨に基づいて、こういう例を想定して我々はやってきました。ですので、多分ラオスもそうでしょうし、中国の領事館や大使館にもいるという話もございます。こういう脱北者の処遇について今後どうされるのかということについてもう一度改めて伺いたいと思います。それは日本政府だけでやるのではなくて、NGOであるとかあるいは国際機関だとかと連携をしてやっていくというお考えかどうか、その点をちょっと最後に伺いたいと思います。

小野寺副大臣 一般に脱北者事案につきましては、我が国としては、人道的観点に立ちつつ、脱北者の人定事項を慎重に確認するとともに、本人の希望等を総合的に考慮した上で、脱北者が現に滞在している国及び行き先となる国の間で慎重に調整を行うこととしております。

 政府としては、これまでのところ、滞在国や行き先となる国などの関係国との調整を通じ、脱北者に関して必要な保護、支援を行ってきておりますが、今後、国連難民高等弁務官事務所等の国際機関との連携についても必要に応じて検討していきたい、そのように思っております。

渡辺(周)委員 ぜひ、本人の希望等、そして、やはり脱北する、外務省なんですよね、入国するまで。ところが、そこで生活するとなると今度は厚生労働省で、結果として、生活保護を受けていて、働く場もなかったりという相談を私も個人的に受けています。ですから、こういう方々にどう対応していくかというのは、これはやはりなかなか難しい問題でありますが、取り組んでいかなきゃいけない課題だなと思います。ただ、今保護されている方々につきましては最大限の配慮を持って我が国の施設でぜひケアをしていただきたいというふうなことをお願いしたいと思います。

 そして、最後ですが、この方の親もそうなんですけれども、帰還運動ですね。

 一九六〇年代、帰還事業で北朝鮮に帰っていった方についていった日本人妻、日本国籍者が約七千人、六千八百人とも言われていまして、この脱北者の女性が、今日本にいる方が、今回は朝鮮総連を訴える、提訴する。朝鮮総連の帰還事業によって、自分たちは、地上の楽園と言われてきたけれども、全く虚偽の説明をして送り出された、北朝鮮で生活をして人生をめちゃくちゃにされたということで。そのときにはもちろん朝鮮総連のみならず日本政府、日赤だとか、あるいは当然与野党も含めてですね。私もこの日本人妻の問題、随分本を読みました。

 これについて今現在日本政府で、これというのは帰還事業の問題です、これについてどのように総括をしているのか、官房長官のお考えを伺いたいと思います。

 あわせて、今回は総連を提訴するということでありますが、日本政府だってこれは訴えられるかもしれませんね。日本政府も一緒になって帰還事業をしたではないかと。地上の楽園と言いながら送り出された国は本当に暗黒の世界であった、そして向こうの国へ行って、北朝鮮からは、日本から来た人間だと言われて、成分が悪いと言われ、成分というのはその国でのもうある意味じゃ階級です、悪いと言われて、とにかく迫害をされ、人間的な生活ができなかった、そういう話を聞くわけです。

 今この現状において、いわゆる北朝鮮の帰還事業を今ここで総括するとすれば官房長官はどのような御見解をお持ちか。将来日本政府が訴えられることだってあるわけでございますけれども、そのための準備はされるかどうか。この問題についてもう一回検証すべきと思いますが、最後に伺いたいと思います。

町村国務大臣 政府は、昭和三十四年、閣議了解を行っております。もう内容等はきっと渡辺委員全部御承知のとおりだろうと思いますが、居住地選択の自由という国際通念に基づいて処理されるべきであるということを確認した上で、帰還を希望する方々の意思の確認等がきちんと行われるよう、赤十字国際委員会に必要な仲介を依頼することとする、こういう閣議決定を行ったわけであります。したがって、あくまでも個人の自由意思による任意帰還であるということで、その意思を尊重する形で一定程度のお手伝いをしたことは、またこれは事実でございます。

 現実に、期待とはかなりかけ離れた厳しい生活が北朝鮮で待っていたという意味で、大変な思いをされておられる方々も多数おられるんだろうと思います。そういう意味で、日本政府として何か考えることがあるのではないかという御指摘であれば、それは私も、幾ら自由意思とはいうものの、その余のことは本人の意思なんだから我関せずということで本当に済むのかどうか、これはやはり真剣に考えなければいけない問題ではないかな、このように思うわけでございます。

 ただ、それ以前に、日本人配偶者の安否の確認と里帰りの問題というのが現実の問題としてあるし、実際、過去三回、四回ですか、行われました。最近は何年間か行われておりませんが、そういう問題も重要な人道的な問題であるということで、やはり今後北朝鮮側との話し合いのテーブルにこの問題ものせて、彼らの前向きな対応を求めなければいけないと思います。

 なお、今回朝鮮総連を相手取ったこの訴訟については、これにつきましては、恐縮ですが、政府がコメントをする立場にはないとしかちょっと申し上げようがございません。

渡辺(周)委員 時間が来たので終わりますが、ぜひこの拉致問題、決して安易な妥協をすることなく、この二日間、もう本当に日朝交渉が成功することを祈って、質問を終わります。

 以上です。

山本委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 先ほど来ありましたけれども、去る六月七日の日朝の非公式の協議を経て、本日から、本格的な実務者協議が九カ月ぶりに開催されるに至ったことは大変重要だと思います。

 そこで、冒頭に町村官房長官に伺いますが、先日の日朝の非公式の協議では、外務省の齋木局長が、会合を重ねるだけではだめで会合を開くたびに日朝関係の前進を図ることが大事だと述べたのに対して、北朝鮮の宋日昊担当大使も、同じ考えだと応じたということでありますけれども、今回の公式協議に日本政府としてはどのような方針で臨んでおられるのか、改めて官房長官、いかがでしょうか。

町村国務大臣 まさに今お話あったように、会合を開けばいいというものではございません。会合を開いて、やはり前進を見なければいけない。拉致問題の解決、拉致問題を含む諸懸案の解決に向けて北朝鮮側が具体的な行動をとることを日本政府としては求め続けてまいりましたし、また、今回の会合においてもそのことを求めてまいることでございます。

笠井委員 昨年九月の日朝国交正常化作業部会の際に、北朝鮮の金哲虎外務省副局長は、記者会見の中で、拉致問題について日本側から疑問が残っているという考えが示されたので、今後両国間の立場の差を縮めるために、狭めるために協議を続けると述べて、拉致問題の再調査の問題についても、まだ両国間の関係が悪化したままだ、環境が整い信頼関係ができれば議論し得る、このように語っておりました。

 今回の公式協議の中で、こうした点がどこまで協議されて日朝関係の前進に結びつくかが注目される点の一つだと思います。

 そこで、北朝鮮側が何らかの一歩を踏み出し具体的な行動をとるなら、日本政府としてもそれに応じて一歩を踏み出して何らかの行動をとる、こういうふうになるのか、こういうお考えはあるのか、官房長官の所見を伺いたいんですが、いかがでしょうか。

町村国務大臣 今、再調査という具体のお話がありました。今この時点で予断を持って再調査云々ということを申し上げることは差し控えさせていただきますけれども、要は、北朝鮮側がこの問題の解決に向かってその意思を明らかにし、そのために具体的にどういう行動をとるのか、そのことを見きわめる必要があるわけでありまして、そのことを見きわめた上で、それが評価をし得るものであれば、それは日本側としても一定の対応をしていくということはあり得ると思います。

 それはあくまでも、北朝鮮側がどういう対応をとるのかということにかかっているということであります。

笠井委員 あくまでも、北朝鮮側がどういう対応をとるかにかかっている、まさにそのとおりだと思うんです。

 これもどうなるかということでは、交渉事ですが、例えば、相手の側が大きく一歩を踏み出して具体的な行動をとるとなれば、それに応じて我が方もそういう対応をしていく。あるいは、少しでも、小さい一歩をとるというのであれば、またそれに応じて日本側も何らかのことを考えていく。交渉ですから、そしてやりとりですから、そういうふうなことを念頭に置いていらっしゃるのか、その辺はいかがですか。

町村国務大臣 ちょっと、定かな記憶でもありませんし、メモはありませんが、高村外務大臣が、今委員が言われたような趣旨の、おおよその趣旨のことを言われたという報道を私も拝見いたしました。

 ここは正確に、まさに先方がどういう行動をとるのか、そして今後、さらにそれをどのように発展させるのかということを具体的に判断しながら、我が方もそれにどう対応していくのかということを具体的に考えなければいけないという趣旨であると私は考えております。

笠井委員 この際、日本政府が求めている拉致実行犯の身柄引き渡しについて伺っておきたいと思うんです。

 昨年十一月十六日の衆議院の外務委員会で小野寺副大臣は、よど号のハイジャック犯の身柄引き渡しについて、基本的に我が国としては、拉致問題の中でよど号ハイジャック犯の引き渡しというのは、拉致問題の解決に直接関与するものではないと考えているという見解を述べられました。先ほど官房長官も、進展に直接関係あるものじゃないという趣旨を言われたと思うんですが、政府が北朝鮮側に身柄引き渡しを求めているよど号グループには拉致を実行した容疑者が含まれているわけでありますけれども、そのことをどう見るか、改めて今の時点で、外務省の見解で結構ですが、伺っておきたいと思います。

小野寺副大臣 本十一日より北京におきまして日朝実務者協議が開催される予定が立っておりますが、同協議において、我が方よりは、よど号ハイジャック犯人の引き渡しについても北朝鮮側に要求することになると考えております。

 北朝鮮側が我が方の要求に対していかなる対応をとるかは予断できませんが、よど号ハイジャック犯人の引き渡しの問題は拉致問題とは必ずしも直接関係するものではないと考えております。

 ただし、よど号ハイジャック犯人の中には、拉致事案の被疑者となっている者、魚本、旧姓安部公博もおりますので、同人等の供述により拉致問題の解決に資する新たな事実が明らかになること、それを期待しております。

笠井委員 これを拉致問題の進展とみなすかどうかは別として、よど号グループの身柄引き渡しというのは、拉致問題の真相の解明ということ、それはもとより、日朝の国交正常化を進める上でも重要な問題であることは、当然そうだと思いますので、そのことは指摘しておきたいと思います。

 最後の問題ですが、北朝鮮をめぐっては、日朝協議に並行して、米朝間でも昨日十日から実務者の協議が開催をされて、核施設の無能力化を完了する時期などについて協議が行われるなど、関係国間の動きが活発化している、まさにそういう時期だと思います。

 そこで、こうした現在の状況についてなんですけれども、外務省の薮中事務次官は、去る九日の記者会見の中で、核に関連した部分は、米朝の間で相当な作業が進んできている、恐らく相当最終段階に近いところに第二段階は来ていると思っているという形で認識を明らかにされております。

 核問題に関連して相当な作業が進んでいる、そして相当最終段階に近いところに第二段階が来ているということで認識を言われて、私、注目をしたんですけれども、小野寺副大臣、このことで、どういうことをもってそう判断を外務省がされているのか、外務省の認識についてお答えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小野寺副大臣 北朝鮮が寧辺の五メガワット実験炉及び再処理工場の運転記録等に関する資料を米国に提出したことを踏まえ、五月二十七日及び二十八日には、北京で米朝協議が行われ、二十八日夜、齋木アジア大洋州局長がヒル国務次官補と意見交換を行い、米朝協議の結果について詳細に説明を受けました。

 米側の説明によりますと、米朝協議においては、米側から北朝鮮側に対し、五月十九日に行われた日米韓三カ国会合の結果を踏まえ、申告を早期に議長国中国に提出することを求めるとともに、今後のプロセスについても議論を行ったということでありました。

 このように申告についてさまざまな動きが見られますが、他方、北朝鮮が申告を議長国中国に提出する具体的な時期が決まっているわけではありません。また、無能力化措置につきましても、安全性にも配慮しながら着実に作業が進められていますが、完了のめどが立っているわけではありません。このように、第二段階の措置にかかわる作業は進められておりますが、まだ北朝鮮が実施すべき措置は残されております。

 まずは北朝鮮が早期に申告を行い、六者会合プロセスが前進するよう、引き続き米国を初めとする関係国と協力をしていく考えにあります。

笠井委員 いずれにしても、今、日朝平壌宣言に基づいて、諸懸案の包括的解決ということがいよいよ大事になっている。政府の一層の努力を求めて、質問を終わります。

山本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十五分散会


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