第2号 平成21年4月28日(火曜日)
平成二十一年四月二十八日(火曜日)午前十時二分開議
出席小委員
小委員長 三ッ林隆志君
井上 信治君 上川 陽子君
鴨下 一郎君 川条 志嘉君
清水鴻一郎君 西川 京子君
林 潤君 福岡 資麿君
郡 和子君 園田 康博君
藤村 修君 山井 和則君
桝屋 敬悟君 高橋千鶴子君
阿部 知子君 糸川 正晃君
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議員 山内 康一君
議員 阿部 知子君
厚生労働委員会専門員 榊原 志俊君
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本日の会議に付した案件
臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案(中山太郎君外五名提出、第百六十四回国会衆法第一四号)
臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案(石井啓一君外一名提出、第百六十四回国会衆法第一五号)
臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案(金田誠一君外二名提出、第百六十八回国会衆法第一八号)
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○三ッ林小委員長 これより厚生労働委員会臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案審査小委員会を開会いたします。
第百六十四回国会、中山太郎君外五名提出、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案、第百六十四回国会、石井啓一君外一名提出、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案及び第百六十八回国会、金田誠一君外二名提出、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
本小委員会は、第百六十六回国会に設置されて以来、参考人二十名からの意見聴取及び参考人に対する質疑並びに視察を行ってまいりました。
つきましては、委員会に中間報告いたします本小委員会における審査の経過及び論点等について申し上げます。
本小委員会におきましては、第百六十八回国会の平成十九年十二月十一日に、中山太郎君外五名提出の臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案及び石井啓一君外一名提出の臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案の両案について、第百六十九回国会の平成二十年六月三日、十日及び第百七十一回国会の本年四月二十一日に、両案及び金田誠一君外二名提出の臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案の各案について、それぞれ参考人質疑を行ったほか、本年四月七日には、臓器移植施設である東京女子医科大学病院及び臓器提供施設である日本医科大学付属病院を視察し、病院関係者等から移植や脳死判定の現状等についてお話を伺いました。
参考人質疑におきましては、医療界・法曹界・宗教界の方々のほか、移植を受けられた方、御家族の臓器を提供された方、お子様が長期の脳死状態となった方、さらには世界保健機関の移植医療の担当者といった幅広い分野の方々をお招きし、さまざまな御意見をちょうだいしました。
以下、項目ごとに主な参考人質疑の概略を御説明申し上げます。
まず、我が国における移植医療の現状についてであります。
我が国においては、欧米諸国と比較して、移植の機会が非常に少なく、多くの患者が移植を待ち望みながら亡くなっているとの指摘がありました。このため、本人による臓器の提供意思が不明である場合には、家族の同意により移植を可能とする制度とすべきとの意見がありました。
これに対して、現段階では、脳死を人の死とする社会的合意が得られていないため、臓器の摘出に当たっては、本人の生前の意思表示が必要であるとの意見がありました。
第二に、移植医療の評価についてであります。
現行の臓器移植法の施行以来、我が国の脳死下における臓器移植の成績は大変すぐれているとの発言がありました。
ただ、この点については、臓器の摘出の前に、まず助かるはずの命を助けるとの観点から、救命医療の充実を図るべきであるとの意見もありました。
第三に、小児患者への移植についてであります。
現行法においては、十五歳未満の者の臓器提供の意思表示は認められていないため、海外に渡航して移植を受けている小児が多数います。このように日本人が海外で移植を受けることについて国際社会から厳しい批判を受けており、今後は海外での移植も困難な状況になることが予想されるとの指摘がありました。
そこで、家族の同意による小児の臓器提供を認めるべきであり、この場合、親が本人にかわって意思表示をすることが自然の姿であるとの意見がありました。
これに対して、小児からの臓器摘出は本人にとって医療上の利益はないことから、親がかわって承諾することは親権者の権限を越えているとの意見がありました。
また、小児からの移植を容認するに当たっては、いきなり年齢制限をなくすのではなく、当面、臓器提供の意思表示可能年齢を十二歳まで引き下げて対応すべきであるとの意見がありました。
これに対して、十二、三歳の年少者に臓器提供の意思表示を迫り、これに依拠するという臓器移植は余りに不自然であるとの意見がありました。
また、小児の長期脳死例が数多く見受けられることから、小児の脳死が即座に心臓死に至らない場合もあるとの指摘や脳死と診断された小児の身長が伸びた事例を、広く国民に知っていただく必要があるとの意見がありました。
なお、この長期脳死例については、無呼吸テストを実施しておらず、法的な脳死判定基準に該当するものではないとの指摘がありました。
さらに、被虐待児からの臓器の摘出の防止策を検討する必要があるとの意見がありました。その一方で、小児科医の多くは、小児ドナーが被虐待児であるかの診断を適正に行うことができないと考えているとの意見もありました。
これに対して、児童虐待問題をあえて小児の臓器移植に結びつけることは、臓器移植全体に負のイメージを与えるばかりでなく、深刻な児童虐待問題の本質から人々の目をそらせることにもなるとの意見もありました。
第四に、脳死を人の死とすることについてであります。
この問題については、脳死は人の死であり、社会的、倫理的問題や臓器提供の有無とは無関係に、脳死の診断は科学的になされるべきものであるとの意見がありました。
これに対して、脳死体といっても体が動くといったことがあり、脳死が人の死であるということと直観的に相反する事柄が多く存在することから、我が国では脳死を人の死と考える人は少ないとの意見がありました。
また、脳死を人の死とする社会的合意ができたのかを検証していく必要があり、改めて脳死臨調を設置し、社会的コンセンサスができるまで誠実に議論を重ねていくべきであるとの意見もありました。
第五に、臓器移植に当たり、自己の臓器を親族に優先的に提供することについてであります。
この点について、親族を救いたいという意思を尊重することはあってもよいことであり、法的な障害はないとの意見がありました。
これに対して、親族に対する優先提供を認めることは、公平性を求める臓器移植法の基本理念に反するとの意見がありました。
これらの事項以外にも、臓器移植は、ドナーとその家族により成立するものであることから、ドナー家族をたたえ、これに対するケア体制を整備することが必要であるとの意見や、臓器提供施設においては、法的脳死判定により救急医療等に支障を来すほどの負担が生じており、経験のある医師チームの応援が必要であるとの意見等、さまざまな意見をいただきました。
なお、世界保健機関の移植医療の担当者から、次のような意見が表明されました。
日本の臓器移植は、欧米諸国と比較して非常に限られており、脳死を含め、死体ドナーからの臓器提供をより増大させることが重要であること、
脳死判定に基づいて死を宣告された小児の臓器提供に関して、日本はプログラムを持つべきであること、
小児からの臓器摘出は、子供に対する緊急の医療介入の場合と同じように、親の判断によるべきであること、
WHOは、加盟国とともに、移植ツーリズムの削減に向けた努力を行っていること
等であります。
以上であります。
本日をもって、一応、委員会への審議に移すことといたしたいと存じます。
本日は、これにて散会いたします。
午前十時十一分散会