衆議院

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第4号 平成21年3月24日(火曜日)

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平成二十一年三月二十四日(火曜日)

    午後二時十六分開議

 出席委員

   委員長 船田  元君

   理事 大野 松茂君 理事 岡下 信子君

   理事 岸田 文雄君 理事 七条  明君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 仙谷 由人君

   理事 園田 康博君 理事 大口 善徳君

      井澤 京子君    遠藤 宣彦君

      近江屋信広君    大塚 高司君

      鍵田忠兵衛君    亀井善太郎君

      北村 茂男君    佐藤  錬君

      平  将明君    玉沢徳一郎君

      土屋 正忠君  とかしきなおみ君

      土井 真樹君    中森ふくよ君

      永岡 桂子君    並木 正芳君

      西本 勝子君    宮腰 光寛君

      矢野 隆司君    泉  健太君

      枝野 幸男君    小川 淳也君

      小宮山洋子君    階   猛君

      田島 一成君    田名部匡代君

      田端 正広君    桝屋 敬悟君

      笠井  亮君    日森 文尋君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   内閣府大臣政務官     並木 正芳君

   参考人

   (金融オンブズネット代表)

   (消費者主役の新行政組織実現全国会議代表幹事)  原  早苗君

   参考人

   (桐蔭横浜大学法科大学院教授)

   (弁護士)        郷原 信郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十四日

 辞任         補欠選任

  吉井 英勝君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  笠井  亮君     吉井 英勝君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 消費者庁設置法案(内閣提出、第百七十回国会閣法第一号)

 消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、第百七十回国会閣法第二号)

 消費者安全法案(内閣提出、第百七十回国会閣法第三号)

 消費者権利院法案(枝野幸男君外二名提出、衆法第八号)

 消費者団体訴訟法案(小宮山洋子君外二名提出、衆法第九号)


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     ――――◇―――――

船田委員長 これより会議を開きます。

 第百七十回国会、内閣提出、消費者庁設置法案、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び消費者安全法案並びに枝野幸男君外二名提出、消費者権利院法案及び小宮山洋子君外二名提出、消費者団体訴訟法案の各案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 各案審査のため、来る二十六日、二十七日の両日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

船田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

船田委員長 本日は、各案審査のため、参考人として、金融オンブズネット代表・消費者主役の新行政組織実現全国会議代表幹事原早苗君、桐蔭横浜大学法科大学院教授・弁護士郷原信郎君、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じております。

 それでは、議事の順序について御説明申し上げます。

 まず最初に、参考人各位からお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。委員の質疑時間は限られておりますので、お答えはできるだけ簡潔明瞭にお願いいたします。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることとなっております。また、衆議院規則の規定により、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。

 それでは、まず原参考人にお願いいたします。

原参考人 本日は、消費者問題特別委員会に招致をいただきまして、大変ありがとうございます。私は、消費者主役の新行政組織実現全国会議の代表幹事を務めております。きょうは、その立場から意見を述べさせていただきたいと思っております。

 私自身は、三十年以上、消費者問題それから消費者運動に携わってきた者です。消費者主役の新行政組織実現全国会議は、昨年の三月に設立をしておりまして、現在、全国の消費者団体、消費生活相談員の団体、弁護士、司法書士の団体、七十二団体で構成をされております。消費者庁設置については、その中の主婦連合会が提唱をしてことしでもう四十七年目、それから日本弁護士連合会が提唱して二十年目の大きな課題です。衆議院に消費者問題特別委員会が設置されたことを大変評価しておりまして、ぜひこの特別委員会は継続をして設置をしていただきたいというふうに考えております。今回、ぜひ審議を尽くし、よりよい形での消費者庁の早い設置を私どもは望んでおります。

 今回の動きについてですけれども、二〇〇八年二月に官邸に設置された消費者行政推進会議の私は一員です。六月に最終取りまとめを行って、それを基本にして検討された政府提出三法案の策定に当たっては、私の意見、私どもの意見が反映をされているというふうに考えております。

 消費者行政推進会議で検討したことですけれども、非常に重要と考えていることは三点ございます。

 一つは、明治時代以来の殖産興国の政策、行政を改めるということです。これは、明治時代以来の殖産興国、それから第二次世界大戦後は経済復興優先という形で、産業が果実を得ることでその果実を消費者、労働者が得るという形の政策の限界ということを感じていて、それを改めるということです。二つ目は、霞が関に立派な省庁ができたのでは何の意味もないとして、地方消費者行政の充実をうたいました。三点目は、公務員の意識改革も重要としたことで、大きな行政改革であり、消費者庁の設置はその試金石であります。

 このことについては、もう本会議の席上でも随分審議をされておりましたので、皆さん御存じのとおりだと思います。

 私自身は長く消費者問題、消費者運動に携わってまいっておりますので、少しその観点からなのですけれども、消費というのは生産が生まれたときから当然生じているわけなんですけれども、現在のような消費者問題が意識されるようになったのは二十世紀であります。

 特に、情報力、資金力など力の格差がある存在の中でさまざまな問題が生じてきて、一九六二年、アメリカのケネディ大統領は消費者の四つの権利を発表し、同じ時期、ラルフ・ネーダーという弁護士が「どんなスピードでも車は危険だ」というのを著しました。このころから、消費者政策、消費者行政のあり方が意識されるようになってまいりました。

 消費者政策、消費者行政が適切に行われれば、ひいては、それは市場の健全性にもつながり、良質な事業者にとっては歓迎すべきことです。

 日本では、一九六八年に消費者保護基本法が制定をされました。そして、一九六九年に地方自治法が改正されて、消費者保護は地方の事務として規定をされております。各地に消費生活センターが設置され、消費生活条例も制定をされていきました。

 一応消費者行政の枠組みは整えられたわけなのですけれども、私も長年霞が関の片隅におりまして感じるのは、消費者政策や消費者行政というのは、全体の枠組みの中ではやはり片隅に置かれている存在だったということです。

 その後、八〇年代に入り、南北問題や地球規模の環境問題の登場、規制緩和、規制改革路線の中での事後ルールの整備として、製造物責任法、消費者契約法などの制定を進めてきました。

 二十一世紀に入るに当たり、消費者行政、消費者政策見直しの機運が高まり、消費者基本法の制定、公益通報者保護法の制定、消費者団体への団体訴権の付与をしたところですけれども、消費者行政の仕組みそのものを見直すことはありませんでした。消費者基本法に国民生活センターを位置づけたというところにあります。

 立法府においても、従前は物価問題特別委員会で消費者問題が審議されておりましたけれども、その後、細川政権のときに消費者問題特別委員会に改組いたしましたが、消失をしております。

 今まで私たちは何に困っていたかですが、一つは、情報の収集、分析、情報提供が一元化されていない。冷凍ギョーザの問題。

 二つ目は、判断が遅い。例えば、パロマガス湯沸かし器による一酸化炭素中毒の事故やNOVAの問題があります。

 三番目に、どこが責任を持つのかはっきりせず、原因究明機関も設けられない。シンドラーのエレベーターの事故があります。こういったシンドラーのエレベーターの事故も、パロマガス湯沸かし器による一酸化炭素中毒も、個人が訴訟を起こすことで、今、原因究明、被害救済を図ろうとしております。

 四つ目は、産業優先が見え隠れすることです。コンニャクゼリーはよくすき間事案で代表されておりますけれども、私自身は、これは産業優先の農水省が管轄をしていたことが大きかったと思っております。

 五番目に、省庁のはざまに落ちている。外国為替証拠金取引の規制の問題や何かは、省庁のはざまに落ちていた課題です。

 六番目に、省庁が重なり、どこが責任を持つのか明確でない。これは、有料老人ホームの問題が端的にそうで、厚生労働省なのか、経済産業省なのか、国土交通省なのか、公正取引委員会なのかということが明確ではなかった大きな事例です。

 それから七番目に、大きな問題になかなか手が出せない。例えば多重債務の問題は、大阪の八尾市で、三万円の借金から鉄道で自殺をなさった三人の御高齢の方がおられましたけれども、そういうことがない限り、多重債務対策にも手がつけられませんでした。

 八番目に、新しい問題が生じても後追いになります。これは情報通信分野のトラブルとか料金体系の問題ですけれども、若い人に消費者問題と聞くと、第一に出てくるのはこの情報通信分野の問題です。ここはまだまだ消費者の意見を反映していく必要があると思っております。

 九番目に、地方消費者行政の先細りとでこぼこ感があります。地方消費者行政予算はこの十年で半減をしておりますし、特商法の執行も圧倒的に少なく、地方によってでこぼこ感があります。

 そして、公務員の意識の希薄さ、消費者の声、意見が反映されていない、ばれなきゃいい、ほかもやっているということでの偽装が次々起こっているというのが今の実態、今の消費者行政の枠組みの中で起きている問題だというふうに思っております。

 消費者基本法に基づく消費者基本計画も、今四年、五年目になっているところなんですけれども、大変運用しづらいものです。消費生活センターに寄せられる相談、苦情は全体の五%にも満たないし、消費者被害は最大で三兆四千億円とも見込まれております。

 国会議員のところを回っても、私もたびたび皆様方のところをいろいろな案件で回っているんですけれども、いつも言われるのは、あんたたちは票にならないというふうに結構門前払いが多いんですね。確かに票にならないんだろうな、この一票はどこに雲散霧消しちゃうのかなというふうに見えるのだろうかと思いますが、しょっちゅうそう言われてきたということです。

 日本の消費者行政というのは国際的に見ても周回おくれというふうに言われておりまして、各国、工夫を凝らしております。昨年の十二月に出された国民生活白書ですけれども、ここでは、日本では約七割の消費者が公的機関に消費者権利を擁護されていると感じておりません。逆に、オランダ、北欧、英国では七割以上が擁護されていると感じております。これほどの落差があるということです。

 それでは、どのような消費者行政の姿を望んでいるかですが、七点あります。

 情報の素早い一元化、分析、消費者への情報提供の充実、これが一点目です。二点目は、確実に、消費者の目線で司令塔的に動けるところが欲しいということです。三点目は、素早く執行できること及び被害救済に結びつくこと。四点目は、決定過程の透明性を上げ、政策の企画立案に消費者の参画を図ること。五番目に、地方の隅々まで地方消費者行政が充実をしていること。六番目に、消費者教育、啓発は重要であり、その取り組みもなされること。七番目に、国際的にも消費者行政の核となることが挙げられます。

 そして、現在提出をされている五つの法案についての評価に移りたいと思います。

 それでは、ちょっと時間が迫っていますので、読み上げる形で大変恐縮です、七つのことを申し上げたいと思います。

 一つ目は、消費者庁の設置と消費者権利院についてです。

 消費者庁の設置が望ましいと考えます。閣法として提案されたことを評価いたします。消費者行政は、内在的に問題解決ができる仕組みとする方が効率的であり、有用です。

 消費者権利院構想は、消費者権利院を内閣の所管のもとに置くというふうに規定はあるんですが、外に置いて、全く外部から勧告をする形式になっておりますけれども、この仕組みを中心とするのでは、消費者政策の姿としては不十分だというふうに思っております。

 まず、権利官の位置づけというのを非常に高く強く感じるんですけれども、このような規定が可能なのか。一読したときに、半分司法で半分行政の姿のような印象があって、こういう規定が可能なのかどうかというのが疑問です。

 二つ目に、それとも関連するんですが、国の機関として設定されるわけですけれども、機関の公正さを保つための仕組みというものはどのように考えておられるのかということです。

 それから、この仕組みでは、私たちが問題にしてきた縦割りの問題をそのまま残しており、すき間事案にも対応できないのではないかという疑問も感じております。

 それから、次から次に勧告することは可能なのかということです。

 ただ、消費者権利院構想の消費者の目線から行政をチェックするという視点は重要であり、消費者政策委員会の機能を強化することで可能にならないかと考えております。

 二つ目は、法律の所管の是非についてです。

 消費者に身近な法律は消費者庁が所管し、みずから企画、立案、執行できるという点が重要である。消費者庁が所管する法律には、昨年、当実現全国会議が提示した所管すべき法律はほぼ入っております。そもそも今ある法律は、消費者にかかわりがあっても、わずかに、不十分にしかその規定を持っていない法律も多いものです。そして、新しく消費者にとって必要な法律をつくっていくことも消費者庁設置後の重要な役割と考えております。各省庁が所管する法律については、消費者安全法による内閣総理大臣の措置要求で手当てが可能と思っています。

 消費者権利院は所管する法律を持たない仕組みになっておりますが、すなわちゼロか所管するかの問題になりますけれども、二十九本という基本の法律を持っており、企画、立案、執行がみずからできる点において消費者庁の方が機能すると思っております。

 三点目ですが、消費者行政として有効に機能するのはどちらかということは、今申し上げた一点目と二点目とに重なってまいりますけれども、やはり消費者権利院制度は、もう少しいろいろな手法を組み合わせてみるということが必要ではないかというふうに考えています。

 消費者庁構想は万全かというと、これもまだ政令まで見てみないとはっきりしていない点がありますので、ただ、きめ細かく工夫を凝らす余地は残っているというふうに思います。少なくとも、一定の範囲において、みずから消費者目線で執行できる権限を持ち、閣内において企画立案できること、勧告よりも強い措置要求を持っている点で、消費者庁構想の方が有効に機能すると考えております。あとは、消費者政策委員会の機能をどこまで強化できるかが課題です。

 四番目。消費者団体訴訟についてどう考えるかですけれども、民主党の提案は、私は大変時宜にかなったものだというふうに思っております。本当に、これまで消費者被害というのは泣き寝入りが多くて、被害救済に結びついていないのです。これは本当に大きな問題です。

 国民生活審議会でも、消費者契約法に団体訴権を入れるときにも検討をしましたし、二〇〇七年の十月から去年三月にかけての「守る」ワーキングにも私も所属をして検討を重ねました。私自身も今、適格消費者団体の消費者機構日本に所属をしておりまして、昨年秋以来検討を重ねているのですが、非常に法律をつくるのが難しいというふうに思っていて、今五つぐらいの法律の案をいろいろ試してみて、どういうふうにやるといいのかというのを考えているのですけれども。

 民主党の提案の部分でも、ほかの消費者の人が訴える権利をまたどのように考えていくのかとか、配分の手続とか、適格消費者団体があそこまでの機能を担えるかというあたりでまだまだ検討すべき課題が残されているように思っておりまして、消費者庁の設置を先行させ、切り離して、消費者庁ができ上がったとき俎上に上げて検討を尽くしてはどうかと思っております。

 五番目に、地方消費者行政についてですが、地方消費者行政は、地方行政の中でこそ生きてくるというふうに考えます。消費者基本法でも、地方公共団体の責務を国と並べて条文上明確にしたところです。消費生活相談員を国家公務員とする消費者権利院法案は、地方消費者行政を分断するし、混乱を招くので反対です。

 現在、最も問題なのは、相談員の処遇に大変焦点が当たっておりますけれども、地方行政の中に消費者行政が明確に位置づけられていないことです。担当課を設けているところは希有です。五つしかないと思います。商工課、住民課、総務課などの中に係職として置いてあればいい方で、担当者さえいなくて兼職でやっているところがほとんど。これが私は一番大きな問題だというふうに思っております。

 その上で、消費生活センターの設置、それからそれを担う消費生活相談員の処遇改善ということに取り組んでいただきたいと思っております。そういう消費生活センターが核になったところで、各地の実情に応じた地方消費者行政の展開を期待したいと思っています。

 例えば、消費生活条例を工夫することができます。今、高齢者福祉の担当と結んで高齢者見守りネットワークづくりも盛んですし、教育委員会と結んでの消費者教育、啓発事業を活発に、これは徳島県が行っております。それから、多重債務問題の解決も、行政のあらゆるセクションが連携して解決を図っていくことが望まれます。

 六番目に、消費者への情報提供、消費者教育、啓発について述べたいと思います。

 これらは、いずれも重要です。確かに、消費者庁設置法案ではなかなか読み取るのが難しい。明文化されておりません。消費者権利院法案はそれを明文化されておられるのですが、実際には重要と考えている点では同義で、大きな違いはないと考えております。国民生活審議会の第一回目のテーマは消費者教育でした。ですから、この課題は、引き続きずっと大きな課題として取り上げてきております。

 七番目に、国際的な消費者行政の核が必要だと思っております。

 日本の消費者行政の核が見えません。中国からのメラミン混入食品の問題、立て続けに起こる中で、消費者は国産に走り、ここでまた偽装表示問題にぶつかる状況です。消費者の心情は、どこが食品の安全を守ってくれて他国と交渉しているのか、その結果どうなっているのかがわからない状況にあります。

 他方、EUなどでは、食、製品の安全について、日常的に国際的に意見交換できる場を持っています。複数国で被害が生じたメラミン問題に有効に対処するため、消費者庁を設置し、消費者行政担当大臣を置き、東アジア消費者行政担当大臣会議を開くべきだと思っております。日本はOECDには参画をしておりますが、諸外国から見れば、消費者行政の核がないというふうに映っていると思います。

 最後ですけれども、ちょっと時間を超過して申しわけありませんが、あと一、二分です。

 消費者庁構想というのは、日本独特の行政組織の提案です。消費者の目線から横ぐしを刺し、各行政を動かそうとしております。

 各国を見てみると、競争政策の観点から表示、取引に着目した消費者行政の姿をとるところもありますし、スウェーデンのように、オンブズマンと消費者庁構想をあわせたところもあります。アメリカのように、製品安全、食の安全は別の枠組みをつくっているところもありますし、ドイツでは、政府が消費者団体の活動を援助し、韓国は、日本の国民生活センターを核にしたような組織をつくっております。

 いずれも、行政の姿だけを並べてみることにとどまらず、消費者の置かれている位置、消費者運動の存在、かかわりから見てみることが重要です。欧米では、商品テスト誌など消費者への情報提供誌が、消費者、市民によって買い支えられておりますし、ボイコットも成立をいたします。この意識が日本では希薄です。日本ではきめ細かな消費者行政が求められると私が考えるゆえんです。

 消費者行政の充実は、国民を大事にする政治につながります。ぜひ今国会で充実した審議をお願いするとともに、法案の成立を図り、消費者庁の早期の設立を求めます。

 以上、どうぞよろしくお願いをいたします。(拍手)

船田委員長 ありがとうございました。

 次に、郷原参考人にお願いいたします。

郷原参考人 郷原でございます。よろしくお願いいたします。

 私、五年ほど前からコンプライアンス研究センターという組織をつくりまして、企業や官庁のコンプライアンスに関する活動を行ってまいりました。当然、そういう企業、官庁の活動の重要なステークホルダーが消費者ということになりますので、この消費者問題というのも、私がコンプライアンス問題を考える上での重要な視点でございました。

 そこで、きょうは、私なりに、この消費者問題をどう整理、分類したらいいのかという点からこの問題を考えてみたいと思います。

 このところ、中国からの毒入りギョーザの問題などを初めとして、消費者が不測の被害、損害を受けるような事案が多発していて、そのたびに、情報の伝達がうまくいっていない、所管にすき間があるというふうな指摘がなされてきました。

 ただ、私は、そういうことももちろん重要なんですけれども、まず、消費者に関する問題というのを全体としてどのように把握するのか。いろいろな観点の問題が入りまじっていて非常に複雑だと思うんですね、この消費者問題というのは。まず、そういう意味で分類をしてみた、それがこの一ページ目の図です。

 消費者に関する問題を、私は、1の消費者の経済的な利益の問題、そして2の生命身体の危険防止、安全の問題、そして三番目の消費者の自己選択権、要するに商品、サービスに関する正確な情報提供を受ける権利、この三つに分類して考えてみるのが有益ではないかと思います。もちろん、これは全部截然と明確に分かれるものではありませんし、密接に関連しておりますが、それぞれ性格の違う問題だということを認識することが重要なのではないかと思います。

 まず、消費者の経済的な利益の問題ですが、例えば悪徳業者にひっかかった消費者が不当な契約で損害を受けるとかいうことがあります。そういう個別的な契約で消費者の利益が害されないようにしないといけないという問題がある一方で、もう一つの消費者の経済的利益の問題のカテゴリーとして、市場取引が公正に、フェアに、市場メカニズムが機能することによって消費者の利益が守られるというカテゴリーの問題があります。これが独占禁止法の問題であり、また金融商品取引法が規律する証券市場の問題です。同じ消費者の経済的利益の問題でも、この二つの問題をまず区別して考えてみる必要があるんじゃないかと思います。

 個別の契約の問題というのは、その契約によって消費者がどれだけ不当な損害をこうむったかということを問題にしないといけないわけですし、そういった損害を与えるような悪徳業者は徹底して排除しないといけないという問題です。

 それに対して、市場取引の問題というのは、これは社会的にも十分その存在と活動を認められた大企業などがプレーヤーとして活動しているマーケットがどのようにして機能していくかという問題であって、その機能が十分でないときに間接的に消費者の利益が害されるという問題です。ですから、この種の問題については、個々の契約の問題よりもマーケットの機能、独禁法の問題であれば、全体的に市場の競争が機能しているのかどうか、そして金融商品取引法の証券市場の問題であれば、公正な、フェアな証券市場が維持されているのかという観点から考えて、それがきちんと維持されていないと、確保されていないと、それによって反射的に消費者の利益が害されるという問題のとらえ方をしないといけないんじゃないかと思います。

 この二つの問題は、どういう対応を行政として、そして社会として行うことが求められるかという観点にも大きな影響を及ぼします。

 個別の契約の問題であれば、まずは悪徳業者のようなそういうけしからぬ業者を排除することです。そして、被害をこうむった消費者を個別に救済することです。それに対して、市場取引の問題であれば、一番重要なことは、企業が自主的に、自律的に健全な努力をしていくことです。まさに私がテーマにしておりますコンプライアンスの問題です。

 そういうふうに考えますと、悪徳業者を排除していくという個別契約の利益侵害の問題と、企業のコンプライアンスによって企業を健全な方向に向けていくという市場取引における利益侵害の問題、方向性がかなり大きく違うということが言えるんじゃないかと思います。

 次に、二番目の生命身体の危険防止の問題ですが、これにも三つの、性格の違う、国として、行政としての対応があると思います。

 まず一つは、もともと安全が害される危険があるような事業、危険を伴う事業をどのようにして規制をして危険を生じさせないようにしていくのかという問題。例えばこれは、電力とかガスとかというような危険な施設を保有する、そういう事業についてどういう規制をしていくかという問題です。

 その次に、商品自体が何らかの危険性を伴う可能性があるという、例えば自動車であるとかガス器具であるとか、そういった商品自体の安全性をどう確保していくかという問題、これが二番目です。

 そして三番目に、商品自体に、そのものに独自の危険性があるわけではないんだけれども、使い方によっては危険が生じる、そういう場合には、こういう使い方をすると危険ですよという情報を消費者に与えることが必要になります。

 生命身体の危険防止という観点からの消費者問題への対応は、この三つのカテゴリーに分けて考える必要があるんじゃないかと思います。

 そして、この安全の問題に関して重要なことは、何といっても、何か事故が起きたとか、何かふぐあいがあって危険が発生したというときに、その原因を究明することです。その原因が的確に把握されないと、適切な対応もとれませんし、逆に消費者に不必要な不安を与えることになります。とにかく、この安全の問題に関しては、いかに的確な原因究明をするのかということが重要な問題になります。

 そして三番目のカテゴリーが、消費者の自己選択権の問題です。

 消費者の権利意識の高まり、そして消費者の権利を社会においても大切にしていこう、そういう動きの中で、消費者は商品、サービスについての正確な情報を提供してもらう権利がある。その上で、消費者自身の意思で、消費者自身が判断してそういう商品、サービスを選ぶんだ、これは消費者にとって今や極めて重要な権利になっていると思います。

 そういう面で、消費者が適切な判断をするために情報を正確に消費者に提供するということ、これは企業や官庁にとっても極めて重要な責務であると言えるんじゃないかと思います。

 ただ、ここで重要なことは、この消費者の自己選択権というのは、1の消費者の経済的な利益の問題とか、2の安全の問題と密接に関連しますけれども、それとはやや違う問題だということです。例えば食品であれば、身体に有害な物質を含んでいるかどうかというのが基本的には安全の問題なんですけれども、客観的には全く安全に関係ない、危険はないという場合であっても、消費者としては、そういうものを含んでいるような食品を自分は選択したくない、食べたくないということを考える人もいるわけです。

 ですから、できる限り正確な情報を商品、サービスに関して提供するということと、客観的に危険を防止する、そして経済的利益の侵害を防止するということとはやや性格の異なる問題だということを認識する必要があるんじゃないかと思います。

 最近、特に食の問題などに関して、この消費者の自己選択権というところを十分に認識しないまま、経済的利益の問題とか安全の問題と混同してしまって、そこで行政の対応とか企業の対応が混乱するということがしばしば起きております。

 私は、今申し上げたこの1、2、3の問題のそれぞれのどの要素にどのように関連する問題なのかということを、まずその個別具体的な問題についてきちんと認識、把握した上で対応することが必要だと思いますし、そういうような適切な整理、分類を行うような、行えるような行政組織、そして社会全体のシステムをつくっていくことが重要なんじゃないかと考えております。

 そこで、そういう観点から、消費者の利益とか安全などの問題に関連する法律を、ざっと主なものを並べてみたのが、二ページ目から四ページ目までです。消費者の経済的利益に関しては、個別の契約による利益侵害をA、そして市場取引に関する消費者利益の確保の問題をBというふうに分けております。

 そして三ページ目、生命身体の危険防止に関して、先ほど申し上げた三つの観点に分けて考えております。

 そして、四ページ目ですね。消費者の自己選択権の確保、これに関する法令は、いろいろな官庁の所管のいろいろな法令があります。それを、商品の表示に関する規制とか、自己選択権が侵害されやすい販売形態に関する規制の問題とか、そして、先ほど申しましたように、使い方によっては危険が生じるということの情報提供を行う必要もあるという観点も交えて法運用が行われている消費生活用製品安全法、こういったものに分類してみたものです。

 こういう観点から、今回の消費者庁を設置するというこの法案、私なりにこの構想、この法案の問題点を申し述べさせていただきたいと思います。

 まず、私は、消費者問題に関しては、これまで官庁の所管事項のすき間ということが言われてきましたが、そのすき間というのは、結局、所管事項、所管事項ということばかりにこだわるからすき間が発生するわけです。すき間が発生するからといって、すき間を埋めるお役所をつくればいいということを考えると、そのすき間を埋めるお役所の所管と従来のお役所の所管との間にまたすき間が発生してしまうということの繰り返しなのではないか。むしろ、我々は、官庁が、所管事項を自分たちは守っていればいい、自分の役割はこうなんだというようなこだわりを持っている状態から脱却していかないといけないのではないか。

 先ほども申しましたように、消費者に関連する問題というのは、大きく分けるとこの三つの視点の問題が複雑に絡み合っているわけです。どのようにすき間を埋めようと思ったって、すき間は絶対に埋まりません。そういうことよりも、消費者問題全体をきちんと把握して、それぞれの問題の本質を正しく頭に入れた上での全体的な視野に基づいた対応をしていけるようなシステムをつくり上げていくことが重要ではないか。

 そういう意味で、消費者の問題に対応する専門の官庁をつくるということ自体は方向性として決して誤っていないと思うんですが、どうも私は、この消費者庁法案というのは、ややこのすき間を埋めることにこだわり過ぎているんじゃないかという感じがしております。

 そして、実際に、今回、この消費者庁法案の内容を見てみますと、例えば、そういう私の懸念は具体的にも幾つかの点にあらわれております。

 まず、先ほども申しましたように、市場取引をめぐる問題、マーケットをフェアにしていかないといけないという問題、そこでのプレーヤーである企業が公正な事業活動をしていかないといけないという問題と、消費者の自己選択権の問題、消費者に対してどういう情報が提供されるべきかという問題、これはやや性格の異なる問題です。そういう観点から考えますと、消費者庁法案の景品表示法を独禁法から切り離して消費者庁の所管にするというこのやり方、私は、果たしてうまくいくのかなというふうに懸念しております。

 景品表示法というのは、独占禁止法の不公正取引の規制の特則です。そもそも、今までの景表法の規制というのは、企業間の公正な競争のあり方として、景品とか表示のあり方を自主的に適正な方向に向けていこうという努力がベースにあって、その中で殊さらに不当な表示とか不当な景品の提供というふうなことをやる事業者に対する排除を行ってきた、そういう法律の枠組みです。そうした景表法の規制を独禁法という母屋から切り離して消費者保護というところにほうり込んだときに、果たしてうまくいくんだろうかという懸念があります。

 一番問題なのは、従来の景品表示法の枠組みというのは、企業間の自主的なルールづくりに支えられてきた面があります。業界ごとに公正競争規約というのがつくられて、それを公正取引委員会が認可するというやり方、これはその業界ごとにいろいろな、実情に応じたルールをつくっていかないといけない。いろいろな分野でいろいろな公正競争規約がつくられています。中には、からしめんたいこ公正競争規約というのがあるわけです。そういうような事業者の間での自主的なルールづくりの枠組みと、消費者庁が不当表示を規制するという枠組みとが果たしてうまくかみ合っていくんだろうかというのが、私が非常に心配するところです。

 そして、安全確保の問題ですけれども、これに関しては、重大事故の消費者への情報提供の部分、ここが消費者庁の所管になるということになっているんですが、私は、この安全の確保の問題に関して、やはり何といっても最大の問題は、商品の安全性の問題に関していえば、何か事故が起きたときに、その事故が製品に起因するものと言えるのかどうかの判断、これがなかなか適切に行い得ない。まさに火災とか事故が起きたときの原因究明の問題なんですが、これが消費生活用製品安全法の枠組みの中ではなかなかうまくいっていないというところに大きな問題があるんじゃないかと思います。

 今経産省の方でやっております製品安全に関する判定の小委員会の委員に私も加わらせていただいておりますが、いつもその中で思うのは、重大事故の報告というのは幅広くやらないといけない、製品に起因しているかどうかとは関係なく、とにかく経産省に報告しないといけない。そうすると、そのときにマスコミに、何々製のこういう製品でこんな事故が発生したと大きく報道されるわけです。

 では、本当にその製品に起因する事故だったのかということをそれから調査することになるわけですけれども、経産省自体にはその機能が余りありません。結局、消防署の火災原因調査などにゆだねることになるわけですが、実は消防署というのは火を消すのが専門でして、火災の原因調査というのは、放火か失火かというところはわかるとしても、製品起因の火災かなんというところはよくわかりません。

 結局、よくわからないまま、はっきりしないということで終わってしまう場合が多いんですね。その間ずっと消費者は新聞報道のイメージを引きずってしまって、あの製品は何か危険だから買うのをやめておこうというようなことになってしまう。本当に欲しいものを購入することもできないということもあるわけです。

 そういうふうに考えますと、とにかくこの問題に関して重要なことは、重大事故報告を行うような事故について、その原因を的確に把握する、解明するという組織をつくることです。それが、組織が経産省と消費者庁に分かれてしまうことで、ますますうまくいかなくなるんじゃないかというような心配をしております。

 この問題、なかなか正解が直ちに得られるようなものじゃないと思います。私も、民主党の消費者権利院の法案がベストなのかと言われると、まだちょっと不勉強で、そこまで断言する自信はないんですが、少なくとも、行政庁のすき間を埋めるということではなくて、もう少しオールラウンドに消費者問題を考えていこうという方向に関しては、民主党の法案というのはある意味では魅力のあるものではないかと考えております。

 そういったことも含めて、消費者問題への対応を適切な方向に向けていくことをぜひお願いしたいと考えております。

 以上、私の話はこれで終わりにさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

船田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

船田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平将明君。

平委員 自由民主党の平将明でございます。

 本日は、原参考人、郷原参考人、まことにありがとうございました。

 私も、勉強不足な方だと思うんですが、確かに大きなパラダイムチェンジをしなければいけないんだという認識は共有をしております。

 特にシンドラー社のエレベーターの事故は、私の選挙区の関係する方々も関与されていて、まさに行政のはざまに落ちてしまって、責任の所在がはっきりしない、事故も究明されない、そんな中で長い年月がたってしまった。御両親にしてみれば、全く不条理な思いをずっと持たれてきた。また、企業が外資系の企業ということで、個人の力ではなかなかその原因究明はできない。また、国土交通省と警察が、両方、原因究明という責任を負っているわけでありますけれども、国土交通省に聞くと、証拠の物は警察が持っていると。警察に聞くと、いや、そんなことはない、見せてくれと言われればいつでも見せるというようなやりとりが続いたわけであります。

 こういうことを考えれば、縦割り行政というものはそれはそれとして、消費者を救済するための強力な政治の力もしくは行政の力というのは必要だというふうに私も思っております。

 反面、今消費者の大きなムーブメントの中で、ちょっと待ってください、経済合理性や産業に対する部分についてはどうなんだといった議論をする際に、そういう議論をすると何か悪人のような感じの雰囲気もあって、この辺、私、実際冷静にやらなければいけないというふうに思っております。新たな消費行政は、消費者に安心、安全を提供するのと同時に、やはり産業を活性化するものでなければいけないと思いますし、消費者の主張がすべて正しくて、企業はほっておくと悪いことをやる、そういうようなイデオロギー的な対立にしては絶対にいけないというふうに思っているところでございます。

 そのような中で、救済をしなければいけないという人たちと、それに対する処方せんが本当に正しいのかどうか。今、郷原先生、私も質問することになって本を早速読ませていただきましたけれども、社会的要請と、いわゆるそれを解決するための法令に、大きなギャップがあるんではないかといった指摘は、私はまさにそのとおりだというふうに思います。

 そういった中で、確かに消費者は守らなければいけない、しかしながら、それを解決するための処方せんが実は過度な規制強化だったり、余りにも大きな影響を与えることによって、その消費者を救ったがために、周りの、何の不自由もなく利便性、便益を受けていた人に不自由を与える結果になっていないかといったこともあわせて考えていかなければいけないと思っております。

 今回、この消費者庁の議論は本当に大きな議論でありますので、消費者の視点からどんどん話が進んでいくと思いますけれども、結果、それが悪用されて、企業にとって暗黒の時代にならないようにしなければいけないといったことも同時に考えていかなければならないと思っております。

 そこで、まずは、一つの質問は、被害者救済制度についてお伺いをしたいと思います。

 政府案では、これは消費者庁ができてからおいおい考えますよということになっておりますし、民主党の方は、適格消費者団体に損害賠償請求ができるようにする、また、適格消費者団体というのを、これは登録制でできるようにするということかと思いますけれども、これが悪用されて、例えば、簡単に適格消費者団体になれるんだということであれば、消費者団体ということで、企業に、これこれこういうことで損害賠償するぞというおどしをして、企業とやりとりをするというようなことになってはいけないんだというふうに思います。

 その反面、本当に悪徳業者がひどいビジネスをして、ビジネスというよりはほとんど詐欺みたいなことをやって、大変お金をため込んでいるのに、それが被害者に戻らない、こういったことも重大な問題でありますので、解決をしていかなければいけないと思います。

 そんな中で、適格消費者団体、どう認定をするのか、それに損害賠償を導入する、この辺についての問題点について、原先生から御意見があればいただきたいと思います。

原参考人 御意見と質問とありましたけれども、二つ私の方から回答ということでお話ししたいと思います。

 一つは、製品安全の事故ですね。

 先ほどシンドラーのエレベーターの事故のことを取り上げていただきましたけれども、実は、エレベーターの事故が起きたのは私の家から二駅と離れていないところで、うちの子が行ったかもしれない高校のお子さんの事故で、大変胸が痛いものです。

 この製品安全の事故というのもほとんど救済されていないというふうに考えていただいていいです。今、シンドラーのエレベーターの事故は訴訟になっておりますけれども、個人が訴訟を起こす形でしか救済の道を得られないというのは、私は、非常に日本としてはおくれていると思っております。

 すぐに原因究明機関を設置することができないという今の仕組みも問題です。同様な事故は箱ブランコでも起きておりまして、それも訴訟になったんですけれども、お母さんが三十年間分の地方紙を全部調べて、同様な事故がないかを御自分で調べて訴訟に臨んでおられたというのも本当に悲しい現実だというふうに思っております。

 それから、取引による被害救済の部分については、今回民主党から、消費者団体による団体訴権ということで提案をされています。

 今は悪徳事業者のやり得になっていて、被害者は泣き寝入りという状況になっていて、何とか、悪質な事業者の懐に入っているお金を取り上げて被害に遭った方に分配をしたいというのは、これはもう本当に、国際的にもその流れで何とか法制度を図ろうとしております。各国ともいろいろな工夫をしているところなんです。

 一応、民主党の案は、適格消費者団体、登録制でというふうになっていますが、登録にしても、ほぼ、今適格消費者団体と呼ばれているところを想定しておられると思っているんですが、ただ、ここで実際にあれだけの作業をしようとなると本当に大変な作業になるというふうに感じておりまして、適格消費者団体と、それから行政と司法と、どのように組み合わせてやっていくと、多分一つの法律ではなくて二つぐらいの法律を組み合わせた方がいいのかもしれないし、今から本当に検討が始まるということでは、そこは期待をしたいというふうに思っております。

 以上です。

平委員 それでは、同じ質問を郷原先生、お願いいたします。

郷原参考人 まず前者の、港区でのエレベーター事故の問題ですが、私は、この問題は、もう一つ見過ごしてはいけない視点があるんじゃないかと思っています。それは、原因究明がおくれた理由なんですけれども、ここにちょっと資料を用意しております。九ページ以下です。

 実は、この港区のエレベーター事故には、明らかになっているだけでもいろいろな要因が関係しています。日本のエレベーターの規格の問題。エレベーターが下に落ちる方についてはダブルブレーキが定められているんですが、上に上がる方についてはブレーキが一重でしかない、これが日本のエレベーターの規格でした。ダブルになっていたらあの事故は起きませんでした。それから、今警察で主たる捜査の対象になっていると言われております保守点検の問題。それからもう一つ、救出が異常におくれたということなども重要な要因として指摘できるんじゃないかと思います。

 そういうふうに考えてみますと、これは決して、外国企業であるシンドラーという会社の、メーカーの問題というふうに単純化できる問題じゃないと思うんです。

 ところが、この二枚目、シンドラー社の事故後の対応がいろいろまずかったこともあって、日本社会から非常に反発を受けてしまった。そのために、もう一方的にシンドラーだけが悪い、殺人エレベーターメーカーだというような報道が行われて、世の中の人みんな、そう思ってしまいました。

 ところが、実際に事実がそうではない面があるものですから、そういうような、シンドラーが処罰されるべきだという期待を受けて警察が捜査していっても、なかなか結論が出ないんですね。遺族の方々もそういう思いでいる、だからそれにこたえないといけないと思って警察が捜査していると、結局三年近くもかかってしまう。それが、社会の中において本当に重要な問題である、みんなが毎日乗るエレベーターがどういう場合に危険なのかということについての原因究明をおくらせてしまったという面もあるのではないか。

 往々にして、事故とか企業不祥事については、こういうふうにして問題が単純化されて、マスコミ報道が一方向に行ってしまうために、結局、何か世の中がすべて誤解をしてしまって、それが根本的な問題解決をおくらせるということがよく起きます。そういうこともこれからは改めていくことを考えないといけないんじゃないかと思います。

 それから、適格消費者団体、消費者訴権の問題ですけれども、私は、訴訟によってしかこういう問題が解決できないというのは決して好ましいことではないと思います。先ほど、市場取引の問題と個別の消費者の利益の問題と違うんだということを申し上げましたけれども、やはりそういう、救済されるべき事案なのかということの認定を的確に行っていくことが必要だと思いますし、その団体訴訟というのが、かえって、今委員のおっしゃるような形で乱用されることがあると好ましくないと思いますし、その辺のバランスは必要なんじゃないかと考えております。

平委員 郷原先生の本の中でも、マスコミが、いわゆる法令遵守ということを盾にとって、物事の本質を見誤らせ、そして違う方向に持っていってしまうということが書いてありましたけれども、今、さまざまな郷原先生の御指摘を伺うと、いろいろな問題が起きました、しかしながら、本当にその問題の本質を解明して、本当に適切な処方せんで解決を今までしてきていないということだと思うんですね。そういった中で不二家の問題ありさまざまな問題があって、マスコミの劣化というもの、これはもう皆が感じているところだと思います。

 そこで、私が非常に不安に思うのは、消費者は救済をされるべきだし、行政のパラダイムチェンジはしなければいけないと思いますが、消費者庁ができて、消費者政策担当大臣というのが今度生まれるわけですね、担当大臣が。この人がパフォーマンス好きの政治家で、何か問題が起きたときに、非常に浅い知識で、こいつが悪いんだというようなことを言って、そこに、いわゆるメディアスクラムのような形でわあっと押しかけて、本来はそこまで悪いことではなかったような企業を一気につぶしてしまうんじゃないか。制度設計の中で、今、政治主導だという話がたくさん出ておりますけれども、大臣さえしっかりしていれば大丈夫だ、この改革は後戻りできないんだという制度設計をしても、大臣がだめだと終わっちゃうということはあるわけですよね。

 ですから、そういった中で、マスコミの環境と、今の雰囲気と、この組織と、非常に何か危ないな、これに対して何か冷静なストップをかける仕組みが必要ではないかなと思いますけれども、郷原先生、御意見を。

郷原参考人 大変私の本をよく読んでいただいたようで、私の考えていること、まさに今おっしゃったとおりだと思います。できたら、ついこの間出した新しい本がありますので、そちらの方にもっと詳しく今おっしゃられた事例について書いております。

 特に、今おっしゃられた、トップの対応が一方向にぶれてしまったために、その問題が全然別の問題として扱われて、逆に大きなマイナスを生じさせてしまったというのが、この資料の中でも書いておりますけれども、あの事故米問題じゃないかと思います。

 あの問題というのは、本来、その本質は、食の安全の問題と、もう一つあるはずです。経済犯罪の問題です。要するに、二束三文で払い下げた事故米、こんなものが食用として流通してしまった、取引の対象になった、これは経済犯罪の問題です。その問題と食の安全の問題とは別なんです。

 ですから、太田農水大臣が言われる気持ちはわかるんです、じたばた騒いでいないという気持ちは。しかし、それは食の安全の問題であって、食の安全という面では大した問題ではない、それほど被害が生じるような問題じゃないというのは確かにそのとおりかもしれませんけれども、問題の本質は、やはりあれは、農水省がそういう経済犯罪を防止できなかったというところに本質があった。

 それを見誤った状態で過剰な反応をしてしまったために、三百七十五業者全部を一気に公表して、中には、全くの被害者的な立場の業者まで大変な風評被害を受けて、自殺者まで出るということになってしまいました。

 まさに、今おっしゃることはそういうことじゃないかと思います。

 ベストの組織というのはなかなかないと思います。みんなが問題の本質を理解する努力をしていかないと、どんな組織をつくってもこういう問題が起きてしまうんじゃないかということを私は思っております。

平委員 まさに今の御指摘は、我々政治家も反省をしなければいけないと思います。社会的要請があって、処方せんをつくる、いわば法律をつくる、組織をつくるわけでありますけれども、そこにずれがある。

 それは、公務員倫理規程なんかで公務員と民間の接触が薄くなってきて、官僚が浮世離れをしてきてそういうずれが起きるという反面、私は、政治家自身がやはり浮世離れしてきているんだと思うんです。それは、官僚出身者、世襲議員とかがたくさんふえてきているところもあるし、そこは、政治家がちゃんとしていれば本来ずれない、ぶれないはずなんだと思います。その辺は我々もしっかり考えていかなければいけないと思います。

 ちょっと話をかえまして、次は、消費者庁の所管する法律について原先生にお伺いをしたいと思います。

 民主党案では、消費者権利院ということで、法律は所管をしない。政府・与党案では、二十九本の法律及び消費者安全法を所管するということになりました。この委員会の中で、民主党所属の委員から、こういう消費者庁をつくるに当たって二十九本では法律が少ないんじゃないかといった御指摘もありました。これを見ると民主党の方は所管しないらしいので、どういう意味かよくわかりませんが。

 この二十九本の法律、これは原先生から見られて、大体入っているのか、足りないのか、入れるならこれを入れるべきだといったような点がありましたら、御示唆いただければと思います。

原参考人 消費者庁は二十九本の法律を所管いたしますけれども、消費者にとって基本となる表示、取引、安全についての法律はまあほぼ所管をしておりまして、消費者主役の新行政組織実現全国会議が、たしか昨年の五月に、消費者庁ができるのであればこういった法律を所管してほしいというふうに申し上げていたものはほぼ入っていると思います。入っていないのはNPO法が入っていないんですけれども、NPO法は、消費者問題だけではなくて、たしか十七ぐらいのジャンルがあったかと思います。それはたしか除外されましたけれども、ほぼ入っているというふうに思っております。

 それから、法律を持つのか持たないのかということなんですけれども、私は、長く、いろいろと霞が関で委員とかやっておりまして感じるのは、やはり基本的には持っていた方が、いろいろ、すぐ改善に結びつけたいとか、それから、消費者基本法で消費者基本計画の策定、評価、検証作業というのをやっていて、これも実効あるものにしたいというふうに思っておりますので、そういう意味でも、みずから閣内で動けるということでの法律の所管というのは望んでいるところであります。

 それから、権利院法案でおっしゃっておられる、全体を横ぐしを刺して見るという機能は、これは私はやはり消費者政策委員会が果たしてほしいというふうに考えております。

 それから、共管があるわけなんですけれども、共管については、先週、岸田元消費者行政担当大臣が意見を述べられていたのを、私、傍聴で聞いておりまして、大変御苦労いただいたところで、私は、本当にそのままの心情というのでしょうか、そういう仕組みだというふうに思っておりまして、共管をするということで、お互いが無責任体制になるということではなくて、実際に各省庁それから各地方の実動部隊を動かせるということ、その仕組みになったというふうに私も共管については理解をしております。

 以上です。

平委員 続きまして、郷原先生にお尋ねをいたしますけれども、先生の主張でいけば、官僚がちゃんとして、政治家がちゃんとして、社会的要請にこたえられるようになれば、ほぼ問題は解決をするのかなと思います。そういった中で、二つの案の中で民主党の消費者権利院の方が望ましいんではないかというような御意見だったかと思いますけれども、政府・与党案と民主党案を含めて、こういうような組織がいいんじゃないか、もしくは、先生がおっしゃったことが実現できるならあえて組織をつくることもないというのか、その辺、ちょっと教えてください。

郷原参考人 私は、全体として、先ほど申しましたように、すき間を埋める、所管をどうするというようなことだけで解決するというのは余り問題の根本的な解決にならないんじゃないかということで、この消費者庁法案には若干疑問があります。そういう面では、全体をカバーする組織をつくろうという民主党法案の方が望ましい方向じゃないかと思っているんです。

 ただ、一方で、先ほどおっしゃった団体訴権の問題など、もう少しよく検討してみる必要があるのではないか、本当にそれが、先ほど申し上げたような問題整理に基づいて、今、バランスのとれた消費者問題に対する対応を行う組織と言えるのかどうか、そこにはもう少し、まだなお検討の余地があるんじゃないかという気はしております。

 ですから、どっちがいいということではないんですけれども、方向としては、民主党法案の消費者権利院の方が、こういった組織の方が私のイメージには近いなという感じがしております。

平委員 終わります。ありがとうございました。

船田委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 きょうは、原参考人、郷原参考人、ありがとうございます。

 両先生のお話を聞かせていただきまして、原先生は、もうこの道ウン十年ということで、専門家であられますし、今回の法案をつくられた生みの親でもあるのかなということで、本当に敬意を表したいと思います。また、郷原参考人は、やはり法曹として冷静なお考えを持っておられる、それから不二家の件についてもかかわっておられるということで、きょうは、お二人の御経験に即してお話をお伺いしたい、こういうふうに思っております。

 まず、今回の消費者庁という組織、そして地方消費者行政というもののあり方、政府案がこれがあるわけですが、それと、民主党の消費者権利院そして地方消費者権利局、こういう、国と地方の構造がかなり違う、目指すところは同じなんでしょうけれども、かなり違うということでございます。

 そして、原参考人がいろいろなこれまでの事件を紹介されました。その中に類型を七つに分けて紹介していただいたわけです。七つの類型に分けて、こういう問題を少なくしていくためには、やはり政府の消費者庁のような司令塔、それから情報が一元的に集まる仕組み、それと地方消費者行政との連動、そして、地方消費者行政の中では、やはり地方の行政ということで自治事務という中でいろいろと連携をしていく、そういう構造の方が機能しやすいのではないか、今の七つの類型等含めて消費者問題の抜本的な解決に向けて非常に有効なのではないか、こういうことにつきましてお伺いをさせていただきたいと思います。

 それに対して、郷原参考人は、経産省は経産省、農水省は農水省、厚労省は厚労省、国交省は国交省、あるいは金融庁は金融庁と、それぞれの所管があって、各所管がそれぞれの専門の分野を持って、技術を持って、知識を持っているわけだから、そこがしっかりやるべきだ、いろいろといじくらない方がいいと。ただ、それに対して、全体を監視するような形のものがあった方がいいんじゃないかということで、民主党の案をよく勉強されたわけじゃないけれども、イメージとしてはその方がいい、こういうことであったわけであります。

 すき間については、要するに、いろいろな消費者被害を防止するとか予防するとかいうことにおいて、行政がいろいろ行政処分等をやっていくにおいて根拠となる法律がない場合ですので、これをやはり何らかの形で埋めておかないと、要するに、それぞれの所管がしっかりやればいいというだけじゃなくて、権限をつくって埋めておくということも必要ではないか。そういうことで、今回、消費者安全法でその権限を消費者庁に持たせて埋めていくということも意義のあることではないか、私はこう思っておる次第でございます。

 お二人の参考人から、政府案、また民主案、そして、これまでいろいろな事件、事故があった、これを抜本的に消費者の目線で解決、そして被害の防止をしていくためのお考えをお伺いしたいと思います。では、原参考人から。

原参考人 パラダイムの転換という言葉が、今の、ここの委員会でも何度か出ておりますけれども、消費者行政推進会議でも、一番のねらいとしたのはこのパラダイムの転換というところにあります。ですから、これまでの行政の仕組みというのを、産業優先、省庁縦割り、そういった形ではなく、消費者、労働者、生活をしている側から組み立て直そうというところにあります。ですから、そういう中での中央の行政のあり方、地方の行政のあり方というところが問われているのだというふうに思います。

 消費者行政というのを全体の中でどういうふうに考えるのかというのは、ずっと私も長く、パートタイマーみたいな感じなんですけれども、霞が関の委員会なんかに行っているんですが、どこの省庁も、消費者の意見は、聞いてくださるんですが、聞きおくという感じですよね。参考にさせてくださいということで、必ずしも消費者中心ではない、各省庁の片隅に置かれているという印象がとても強いわけです。ですから、消費者庁ができ上がると、やはり風景はちょっと、がらりと変わるかなというふうな感じはしております。

 先ほど郷原参考人がすき間事案のお話をなさったんですけれども、私は、金融オンブズネットという、金融に特化した消費者グループにも加わっているんですが、為替が自由化されたので、外国為替証拠金取引というのが、二〇〇〇年に入ってから、お年寄りに外貨預金のようなものだという形で売られて、被害が大変大きくなったわけです。

 ただ、これはどこが管轄をするのだ、規制をするのだというふうになると、金融庁は、これは先物みたいなものだから、先物をやっている商品取引所法を管轄している経産とか農水かなという言い方もするし、為替だから財務省かなとも思うし、かと思うと、経産に行くと、いや、金融だから金融庁でしょうと言うので、二〇〇三年の十月だったと思うんですけれども、一斉に全部の省庁を私たちは回って、全部意見を聞いて回りました。

 そのときに言われたのが、この問題は金融庁と経済産業省の間の道路に落ちているような問題だというふうに言われて、だれも拾わないよというふうにおっしゃったんですけれども、ただ、やはりそういうふうにして動き回っていた中で、ようやく金融庁が十二月になって拾ってくれたということです。金融庁に後から聞くと、私たちが動いたおかげで、ここに問題があるんだ、だれかが責任を持ってやらなきゃいけないんだということで、だからそれで拾えたというところもあったということです。

 ですから、私は、ずっと各省庁の方々を見ていて思うのは、やはり法律を根拠にしてお仕事をしておられるので、法律に根拠がないとやれませんということで、すぐ、やれないとかできないとかというようなことをおっしゃられて、それで一番しわ寄せを受けているのが消費者問題の部分ではないかなというふうに思っておりまして、そこをやはり直していきたい。司令塔になって、各省庁に、新しい問題であればこの問題をやってくださいとか、すき間になっているんだったらどこか責任を持ってやってください、複雑に絡んでいるんだったら、でも連携してやってくださいとか、ではあなたのところでやってくださいというふうに言えるような制度設計にしていきたいというふうに考えているところです。

 それから、地方なんですが、先ほど随分はしょってしまったんですけれども、地方の消費者行政というもののとらえ方が非常に幅が狭いというふうに私は思っていて、私も、各地の、地方の消費者行政の担当のところとか消費生活センターに呼ばれてお話をしたりすることがあるんですけれども、消費者相談を受けるということ、これは非常に大きい仕事なんです。それと、啓発の事業をやっておられるんですが、これが二本の柱なんですよね。それは本当に大変大きくて、それを担っておられる相談員の方々というのも大変大きなお仕事をされておられるので、ここのところの充実というのは大変考えているんですが、私は、一人の消費者として、地元に住んでいてすごく感じるのは、そういったものを核にして、地方に住んでいる消費者が安全で安心して暮らせる仕組みをつくっていくことができるんですね。

 例えば、ちょっと今難しくなりましたけれども、秋田県の消費生活条例では不招請勧誘の規制を検討しておりましたし、そういうように、それぞれの地方の消費者条例に工夫をすることができます。それから、消費生活センターに来ている相談を核にして、高齢者見守りネットワークというものの構築も進んでおります。それから、消費生活センターと教育委員会が連携をして、消費者教育とか啓発とか、消費者への情報提供を一生懸命やっておられるところがあります。それから、悪質事業者お断りというようなステッカーをつくられて、これはちょっと、個人で張ると怖いんですけれども、その地域一帯で全部張ると、やはり悪質事業者が立ち寄りにくい、そういう仕組みというんでしょうか、そういうのを地元でつくっておられるようなところもありますので、核にしていろいろなことができる。

 長野県が消費生活条例を一番最後に制定して、ことし一月から施行だったと思うんですけれども、ちょうど去年の定例議会でその審議をなさっておられるときに、一緒にかかっていた案件が、バス路線の廃止の話がかかっていて、乗る乗客が少ないのでこれをどうしたものかという話をちょうど消費生活条例と同じときに県の議会にかけておられて、私は、やはりああいう感じで地方の消費者生活、地方の消費者行政の姿もあるべきだというふうに考えております。

 そういう、拠点、核になるような形での地方消費者行政の姿が望ましいというふうに思っております。

 以上です。済みません、長くなりました。

郷原参考人 先ほども、すき間を埋めていくということだけでは足りないんじゃないかというふうに申し上げたんですが、私は、今までの官庁の枠組みと官の考え方のままで単にすき間を埋めるということではなくて、やはり官と民、そして官と消費者との関係、目線と関係をどう変えていくかということの方が重要なんじゃないかと思うんですね。

 それは企業と消費者との関係についても言えることで、重大事故が起きたときの加害者と被害者との関係についても言えることだと思うんですね。

 たまたまきのう、ある記者が、JRの尼崎の事故、もうすぐ四年になりますよね、その関係で取材に来ていて、私、その話を聞いて驚いたんですけれども、今被害者遺族の間から、JRの方と一緒に、事故の原因についての検証の組織をつくろうという話が出ているらしいんです。

 今までにない発想だと思うんですね。今までは、とにかく加害者と遺族が徹底的に対立、対決関係にあって、そこに法令とか法的責任というものが絡み合うものですから、絶対にまじり合えないという関係だったんですけれども、本当に遺族が望んでいることはそういうことではなくて、その事故の原因を究明して将来に役立ててほしいということだということが徐々に顕在化してきたのかな、そういう思いが顕在化してきたのかなという気がするんですね。

 それと同じように、絶対にまじり合えない部分はありますけれども、悪徳業者とか暴力団系の業者とか、そんなのは徹底して排除するしかないんですけれども、多くの企業というのは、最終的には消費者とちゃんと理解し合える存在じゃないかと私は思うんですね。

 そこに断絶があるわけです。情報のギャップがある、コミュニケーションのギャップがある、そして、マスメディアが変な方向で問題を伝えてしまいますから、問題の本質から目がそらされてしまう。そういうようなことを是正していく。本当の意味で企業と消費者との間で最終的にはいいコラボレーションができる関係をつくるための官という存在にこれから変わっていかないといけないんじゃないか。

 そういう面で、私は、所管という考え方を少し改めて、先ほど原参考人がおっしゃった新たな取引なんというのもあるんですけれども、そういった取引をすべて詳細に把握して規制して、絶対間違いが起きないようにしようということ自体がもう無理なんじゃないかと思うんですね。マーケットというものがそこにあって、マーケットがいかに健全に機能していくかということをベースに考えていきながら、その中で、そこを逸脱した業者がいれば徹底的に闘わないといけない。そこには基本的な考え方が示される必要はありますけれども、どこかががっちり所管して守っていないといけないということではないのではないか。そういう意味で、その考え方を抜本的に変えていく必要があるんじゃないかと考えております。

 そういう面から、ちょっと雑駁な意見になるんですけれども、私は、消費者庁法案よりも、もっとオールラウンドな組織の方が、所管の枠にとらわれない組織の方が望ましいのではないかと考えているところです。

大口委員 消費者庁が、二十九本の法律に限定されたものではなくて、実は非常にオールラウンドなものであるということについても国民に御理解いただく必要が私はあると思います。この辺について、原参考人、これはオールラウンドなものであるということをずっと推進会議等でも議論されてこられました。そして、長年にわたる消費者問題を扱ってこられたその立場から、お話しいただきたいと思います。

原参考人 消費者庁の一番の基本は消費者からの情報なんです。消費者からの情報というのは、あらゆる形であらゆるものが入ってくるというふうに思っておりまして、それを起点にして動く組織にしたいというふうに政府提案も、御苦労なさってつくっておられるというふうに思っております。

 確かに、所管する法律の数を見るとたった二十九本かというふうに見えるかもしれませんけれども、先ほども申し上げたように、基本となる法律は所管をしているということと、それから、設置法の中には、各省庁への協力を要請ができることにもなっておりますし、安全法の中では、措置要求ができるという仕組みを入れておりますので、どんな法律に対しても、どんな所管に対しても、消費者庁が措置要求ができるということで思っておりますので、非常に狭い範囲のことでしか動けないということではなくて、消費者庁もオールラウンドに動ける部分を持っているということは理解をしていただきたいと思っております。

 それから、所管をする法律が少ないというのは、私は少し違和感を感じるところがありまして、というのは、確かに、消費者が関連する法律というのはたくさんあるんですけれども、条文の中にわずかに書き込まれているにすぎないとか、消費者側から見ると消費者法制というわけでもないというようなものもあるわけなので、やはり、それだけ数が少なかったということを、今の霞が関の中での消費者政策のポジションのような感じもしております。ですから、数の多寡というようなところに焦点が当たるのは違和感を感じておりまして、オールラウンドにも動けるということは理解していただきたいと思います。

 以上です。

大口委員 その上で、消費者庁自身が、これは、例えば公取から今度は消費者庁に景表法が移るので、公取のその部分も消費者庁に移るとか、かなり特商法の関係が移るので、例えば経産省のその部門のかなりの人が移るとか、二百四名でありますが、非常勤で専門家も入れてやるということのようであります。

 そういう中で消費者庁がどう機能していくのかということが大事なんですが、消費者庁自体がやはりお役人の集まりである、そうすると、消費者の目線というのが、消費者庁がどう消費者の目線で動けるのか、司令塔になれるのかということに対する御意見もいろいろあるわけです。

 そういう点で、原参考人も書いておられますが、消費政策委員会というものは、非常にこれが大事になってくると思うんですね。消費政策委員会というのは、原参考人のような、消費者団体で本当に長年現場のことをわかっておられるような方ですとか、あるいは、郷原先生のように企業のコンプライアンスを一生懸命やってこられて、その立場からいろいろと発言されている方でありますとか、あるいは日弁連、いろいろ消費者問題を扱っておられるような方、こういう、本当に実務をわかって、それこそ役所に対して、消費者庁に対して、あるいは総理に対して、担当大臣に対して、各省庁に対していろいろ意見具申、あるいは調査をしていろいろ要求できるわけでありますから、そういう点では消費者政策委員会というのは大事だと私は思います。

 特に、消費者政策委員のメンバーが大事だということと、あと事務局も大事でして、やはり消費者のサイドに立った事務局でなければならない、こういうふうに思っておるところでございます。

 そういうことで、原参考人から、この消費政策委員会の役割、そしてこうあるべきだということの御意見を、それでまた、郷原参考人からは、とにかく官の意識を変えなきゃいけないというお話がございました。そういう点で、消費政策委員会に対する、こうあるべきではないかという御意見を賜れればと思います。

 では、まず原参考人からお願いします。

原参考人 消費者政策委員会の機能が大事だということについては私も大変同感です。ここをどういうふうに消費者の声で、消費者の目線でここの会議を持つことができるか、委員会を持つことができるかということが大変大きなポイントになってくると思っております。

 人員については十五人というふうに書かれていて、では、だれがこの十五人になるのかというところなんですけれども、私も、単純にどういったポジションの人というようなことを考えるよりは、現場のこともよくわかり、消費者問題について真剣に考えてくださる人がその委員になっていただきたいというふうに考えております。

 それから、実際に条文の中の置き方というのは、審議に応じるという部分もありますけれども、意見を述べることができるということも入っておりますので、ここの、意見を述べるという部分を最大限活用したいということを考えていること。

 それから、機能するためには、条文に幾ら書かれてあっても、おっしゃられたように事務局機能が大事ですね。やはり事務局機能というものを、例えば規制改革会議だと三十人ぐらい事務局がいたと思いますが、半分は民間が入っていたと思います。それから、総合科学技術会議は、たしか事務局は八十人ぐらい存在をしていると思いました。ですから、そういった日常的に動ける事務局スタッフというのは必要だというふうに考えております。

 以上です。

郷原参考人 消費者庁法案における消費政策委員会、非常に重要だと思いますし、これは、民主党の消費者権利院という構想の中でも、権利官一人で何も全部決めるんじゃなくて、それをサポートするような組織が当然必要になってくると思います。

 いずれにしても、そういった組織で、本当にバランスのとれた考え方を出していかないといけないと思いますし、そのための人選が非常に重要になると思います。消費者問題の専門家と言われる方々の中にも、原参考人のように非常にバランスのとれた方もいらっしゃる一方で、結構、なかなかお話が合わないなという方もいらっしゃいまして、今度は逆に、企業の側でも消費者問題に対する理解がなかなかない企業人もいますし、やはりそこは、本当に全体として、その辺のバランスのとれた人選をしていくことが重要だと思います。

 そうした中で、とにかく白紙に戻して物事を見ていくという視点をぜひ持っていただきたいと思います。今、いろいろな企業不祥事の問題なども、マスコミは何かのバイアスで物事をゆがめてとらえてしまうという傾向があって、そういう消費政策委員会のようなところは常に冷静に、客観的に物を見るという姿勢を貫いていただくことが重要なんじゃないかと思います。

大口委員 時間が参りましたのでこれで終了します。

 ありがとうございました。

船田委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 お二方には、お忙しいところ、きょうは本当にありがとうございます。

 まず、郷原参考人にお尋ねをしたいというふうに思うんですけれども、先ほど来の、すき間を埋めるという発想ではうまくいかないんではないかということについてさらに突っ込んでお話を伺いたいんですが、私はこういうふうに理解をしたんです。

 例えば、一例として、郷原さんの資料の九ページにあるエレベーター事故のケースでいうと、これは、最初の段階ではというか、今でもわからないわけですけれども、原因がはっきりしない。そうすると、最初の規格の問題だとすれば、これは警察は全然、立法不作為みたいな話ですから、入れないし、あえて言えば国土交通省の建築基準法の話なのかなという話でしょうし、保守点検なら業務上過失の可能性があるだろうなということで警察の話かもしれないし、救出のおくれという話だと今度はまた別の、総務省消防庁所管の、そこの制度の話。

 つまり、一つの事象が起きたときに、その事象がどの問題、どの原因なのかということ自体がわからないことが多くの消費者問題の場合には起こる。そうすると、例えば消費者問題を所管する役所がどこかの法律を持っていても、そこにひっかかるのかどうか自体がそもそも消費者問題の本質的なところにあるということで、そのすき間のところを埋めていくということには必ずしも余り効果がないんではないか、こういう意味で理解をしたんですけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。

郷原参考人 おっしゃるとおりだと思います。ほとんどの問題が、問題の所在もなかなかよくわからない形で始まるわけですね。ですから、いかにそのすき間を埋める所管をつくったところで、どうしても埋まらない部分が必ず出てきて、世の中が、この経済社会が急激に変化すればするほど、ますますそこの難しい問題は大きくなっていくんじゃないかと思っています。

 ですから、そこは所管の問題をさらにオールラウンドでもう一つカバーするような機能もあるんだと、今の消費者庁法案、消費者庁のあり方に関して言ってみたところで、今度は、そうなると、カバーする力がなくなっていって、所管の法律が中心で、どうしてもそれ以外の全体的なところについては力が希薄になっていきますから、結局重要な問題に対する対応ができないんじゃないか。やはりそういう意味で、所管をどうしていくのか、すき間をどうしていくのかという発想だけでは適切な対応はできないんじゃないかというふうに思っております。

枝野委員 もう一点、今のこととも絡むのかとも思うんですが、最後の十一ページのところでまとめていただいている中で、特に行政組織をどう組んでいくかという観点からは二番目と三番目が一つ大きな意味を持つのかというふうに思うんですけれども、事故原因調査体制というのはどういう形のものを組み立てていったらいいのか。運輸事故調査委員会みたいな恒常的なものを、さすがにありとあらゆることを想定してつくっておくこともできないだろうし、これは郷原さんはどういうイメージをお持ちでしょうか。

郷原参考人 この十一ページの二番目と三番目の問題というのは結局刑事司法にかかわる問題で、そこの部分が非常に解決困難だというところに最大の問題があるんだと思うんです。

 やはり事故の問題というのは社会にとって重要な問題ですし、それを社会としてどう解決していくか、どうやってその事故を将来の事故防止に生かしていくのかということを考えないといけないんですけれども、その前に立ちはだかっているのが、刑事司法の独善のような考え方が、ここもまた一つの領域をつくってしまっているんですね。業務上過失致死傷罪が成立する限り、必ず捜査の対象にして、その捜査を遂げるまでは一切ほかの機関の介入を許さないというような考え方が昔からあって、結局、その問題が未解決のままでは、幾らその外のところですき間を埋めたところで、この問題は全然解決しません。

 そういう意味では、根本的な問題というのは、今までの官庁のすき間だけではなくて、もっといろいろなところにすき間が生じているんじゃないか、それ全体を解決していくことを考えた場合には、官庁間のすき間よりも、やはり官と民の関係とか企業と消費者の関係、被害者遺族の関係というようなところまでどんどん話を発展させていかないといけないんじゃないか、そういうことです。

枝野委員 ありがとうございます。

 もう一点だけ郷原さんにまず聞いて、その後、一度、原さんに伺いたいんです。

 郷原さんにもう一点だけ。せっかくレジュメを用意してきていただいて、私、最新の著書も読ませていただいておりますので大体中身は理解しているつもりなんですが、せっかく御用意いただいたので、中で不二家問題と伊藤ハム問題については時間もなくて言及されておられないと思うので、消費者問題との絡みの中で、この二点について言及していただければと思います。

郷原参考人 不二家問題について、六ページにちょっと簡単にまとめております。

 要するに、この問題、世の中の多くの人は、不二家という食品メーカーが、消費期限切れの原料を、牛乳を使ってシュークリームをつくったという食品メーカーにあるまじきとんでもないことをやって、それがわかって、これがばれたら大変だ、雪印の二の舞になるといって、箝口令までしいて問題を隠ぺいしようとしたという事案だというふうに思われていますが、そうじゃないわけですね。

 この原料として使った牛乳というのは、食品衛生上も品質上も全く問題ありません。単なる形式的なコンプライアンス違反、社内基準違反にしかすぎません。そういった、実はそれだけの本当に軽微な問題なんですけれども、なぜそれがこんなに、雪印の二の舞などという言葉で、世の中から隠ぺい企業というふうに批判されたかといったら、実は、ここに書いていますように、この言葉、雪印の二の舞という言葉を考えたのは不二家の内部者ではないわけです。

 不二家が委託した外部コンサルタント会社が、業務の見直しの過程でたまたまこの消費期限切れの牛乳の使用の問題を見つけ出して、言うことを聞いてくれない社内の人間にプレッシャーをかけようとして、これがばれたら大変だぞという内容の報告書をつくって、それを社内会議の場にいきなり出した、それが社外に流出して、不二家は大変な誤解を受けて、とんでもないバッシングを受けた。その中には、ここに書いていますように、その先鋒に立ってたたいたのはTBS「朝ズバッ!」、みのもんたの番組なんですけれども。

 そういうようなことをほとんどの人が知らないんですね。消費者もわからないんです。消費者は単に、不二家という会社が不衛生なものをわざわざ使って、使った事実も隠ぺいした、そんなとんでもない企業だというふうに一方的に思わされて、そして、不二家のフランチャイズチェーンのうちの二割は廃業しました。その経営者も職を失いました。そういったことが生じているというのが現実なんですね。

 この後の七ページ目の伊藤ハム問題も、これも大変誤解をされた問題じゃないかと思います。

 この問題は、伊藤ハムの東京工場で、ピザ、ソーセージの製造に使用していた地下水から水道法の水質基準を超えるシアン化合物が検出された、そして、一カ月後にもう一回それを調べてみたらまた検出されたので、若干基準を超えていたので保健所に相談したところ、直ちに公表しろと言われて、公表したら大変な騒ぎになって、大変なバッシングを受けたという話なんです。

 この次に書いていますように、このシアン化合物で問題にされた基準、日本は〇・〇一ミリグラム・パー・リットルなんですが、〇・〇二ミリグラム・パー・リットルという今回の検出された量も、WHOの基準でいえば三分の一以下です。しかも、水道法の水質基準というのは、その水を飲用に使う場合の話です。食品製造工場でそれを使っただけであれば、体の中に入る量は極めて微量です。そういう意味では、ほとんどというか、全く健康被害は考えられない例です。

 しかし、とはいっても、先ほどお話ししましたように、消費者に対する正確な情報提供という観点からすると、健康被害と関係なくても、食品の中に何が含まれているかということは知りたいと消費者が思っているのであれば、それに対して情報を提供しないといけないということは一応言えます。しかし、それでは、あらゆる情報を消費者に提供しないといけないのかというと、逆に、そういう情報を提供されることによって、消費者の方がいたずらに不安になり、事態を誤解してしまって誤った行動をとってしまう場合もあるわけです。

 そういう意味では、こういった事態に対して、この問題というのはどう評価されるのか、食の安全の問題としてどの程度のレベルなのか、それを公表させるということは一体どういう影響を及ぼすのか、消費者全体にとって本当に利益になるのかということを客観的に判断できるような機関をつくること、これが消費者庁であれ消費者権利院であれ、絶対に不可欠じゃないかと思います。

 そういう面の機能というのは、少なくとも、諸外国のこういう食品安全に関して活動している機関と比べると明らかに劣っていて、とにかくこういう問題が起きると、マスメディアにセンセーショナルに取り上げられて、一方的に企業がバッシングされるというのが現実です。そういった実情を改められるような力を持った組織でなければならない、これがこれから消費者問題を担当する組織において不可欠なんじゃないかと思います。

 以上です。

枝野委員 ありがとうございます。

 そういう意味では、例えば水道法とか食品衛生法とかという所管、個別の特定目的の法律を持って、消費者の、最初に先生がおっしゃっていただいた五つの分類でやっていくということは不可能ですから、全体を消費者の利益で三分類、さらにそれが五つに別れてということをトータルに見て、そしてそれぞれの個別の法律との整合性をそこからとっていきながら消費者の保護をするという我々の組み立ての方が合理性があるのかなと思いながら伺わせていただきました。ありがとうございます。

 その上で、今度は原さんにお伺いをさせていただきたいんですが、原さんは金融のオンブズの活動をされておられる。我々の認識では、最近はやはり金融絡みの消費者被害といいますか消費者問題が非常に多いというふうに思っているんですが、その状況や、それに対して原さんの団体でどういう活動をされておられるのかをまず教えてください。

原参考人 私自身は、本来は金融は専門家ではないんですが、消費者問題については長くやっておりますけれども、金融分野の規制緩和が非常に声高に言われるようになった十年ぐらい前から金融問題にかかわっております。

 金融オンブズネットという消費者グループは二〇〇〇年から活動を開始しているわけなんですけれども、金融の問題というのは本当に大変難しいんですけれども、各地の消費生活センターなんかにもやはり金融関係の相談というのがふえてくる。

 以前は、それこそ護送船団方式ですし、規制の中で金融行政をやられていたので、消費者トラブルというのは、例えば変額保険なんかは非常に大きな被害でしたけれども、消費者一般にとって身近なというところではなかったんですが、確かにこの十年、トラブルがふえている。それから広告も、明らかに誤認を誘うような形の広告もあるし、それから、例えば未公開株なんかというのは完全に詐欺だというふうに思うんですけれども、金融をかたった詐欺商法というのも非常にふえてきている、そういう印象を持っております。

枝野委員 私は、消費者庁を全面否定しているわけではなくて、消費者庁はあればあってもいいんだけれども、本質になるのは、横ぐしで、法律の所管を持ってということではない消費者権利院的なやり方がベースにあって、あと行政の内部の一機関として消費者庁があることは否定しないんです。

 それにしても今回の政府案について全く理解ができないのは、消費者被害の中の一つの大きな柱になっている金融の問題。今お話があった変額保険の話も、私自身、議員になっていましたし、この問題について、いろいろなところからいろいろな声を聞きました。それから、最近だとFXの問題もたくさんあります。それから、生命保険などの不払い問題、これなどは、生命保険はほとんどの国民の皆さんが加入しているわけですから大変身近なわけなんですが、なぜか貸金業法以外の金融関係の法律は全く所管に入っていないわけで、あえて言えば、一種、ここは手も足も出ない。消費者安全法もありますが、消費者安全法でいわゆるすき間を埋めているもののうち、大きな力を持っているのは生命身体にかかわるところなので、財産的なところの被害については余り大きな力を持っていない。

 この点について、どうお考えになっているんでしょうか。

原参考人 確かに、消費者トラブルが多いので、金融関係をどうするのかというのは大きな課題だというふうに思っておりますけれども、それが即法律を所管するということとは必ずしも結びついていないというふうに思っています。

 最終的な判断をしたのは、例えば銀行法それから保険業法がありますけれども、銀行法は、第十二条に消費者への情報提供についての規定があります。それから第十三条に断定的判断の提供をしてはいけないといった禁止事項が入っているんですが、条文全体でやはりそこぐらいしか消費者関連がないですね。それから保険業法は、物すごい、これぐらい厚いんですけれども、読むと本当に業法ですね。業を規制する条文がずっとあって、政省令があって監督指針があるという構図になっていて、そして消費者に関連する法律は、三百何条ある中で本当に二条とか三条ぐらいしかない。

 これをそのまま直接持つというよりは、そのとき非常に考えたのは、消費者に直接関連があるとしても、そのまま持つということではなくて、業法の中には参入規制の話とかそれから業務自体の監督の話も全部入ってきているので、やはりそこを、消費者庁が意見を言ったりとか、そういうことができるような仕組みにした方がいいのではないかなというのが金融について考えた部分です。

 それから、貸し金については一応共管になっているんですが、貸金業については、貸金業法の改正で、全面施行はことしの十二月なんですけれども、法律の改正だけでは多重債務は解決ができないというふうに考えていて、多重債務者対策本部が設けられて、そのもとに有識者会議が金融庁に置かれているんですが、ここの中で、やみ金の問題、金融経済教育の問題、相談の問題、セーフティーネットの問題というのをまだ継続をしてやっているところです。

 これは本当に、省庁横断的、それから地方も巻き込んで取り組んでいかないとやれない課題だというふうに考えて、消費者問題ともリンクする部分、接点も非常に多いと思って、共管という形にいたしました。

 それからもう一つは、金融庁は、消費者行政推進会議のワーキング、ヒアリングにお見えになったとき、唯一、消費者庁ができることは賛成だというふうに冒頭からおっしゃられたところなんですが、実は、金融庁の設置法の第三条に任務規定があるのですが、その中に既に、預金者、保険の契約者、それから有価証券の投資家、これについての保護を図るということがもう入っております。ですから、任務として、消費者保護を図るということは私どもの省庁の責務ですということもあったのが大きかったということになります。

 以上です。

枝野委員 設置法の省庁の目的に書いてある、それが機能するならば、すべての役所の目的規定に置けば消費者庁は逆に要らなくなるんじゃないですか。

 実際に金融庁が消費者を守るためにどれぐらい今力を発揮しているのかということを考えたときに、私は金融庁ができるプロセスのところ、金融国会でもかんでいますので、我々の意図に反して余計なことをしている部分と、それから消費者を守るということの意味では必ずしも機能していない。

 それは根拠条文が少ないからではなくて、そこは、やはりそこに対してしっかりと消費者の目線からアプローチするためのルートといいますか、逆に専門性が高いだけに金融機関との結びつきが非常に強い。それだけにどうしてもそちらに引っ張られる傾向が強くなってしまっていて、そして、やはり国民生活、すべての人が銀行とは取引するし、生命保険はほとんどの人が入っているので、もし個別の所管法を持つのであるならば、これが入っていないというのは、私は、決定的に何かずれているというか、アンバランスであるなと物すごく強く思っています。

 だからこそ、なぜこれを消費者庁が持ったのか持たないのかという話自体がそういう話になるので、全部持って、消費者が関連するときにはどこにでも口を出せますという形にせざるを得ないんじゃないのかなというふうに思っているんですけれども。

 郷原さん、検事の時代に金融犯罪にどの程度関与されたことがあるのかお伺いをしていないんですけれども、まさに金融は複雑、専門性が高い。特に銀行とか生命保険。悪徳商法にひっかかって、金融詐欺にひっかかってということについては、逆に言えばわかりやすいんですけれども。

 銀行や証券会社、生命保険などのところが、これは先ほどの郷原さんの分類整理で言うと1の後者の方のケースかなというふうに思うんですが、こういったケースというのは、私は、一種消費者問題のみそというかポイントだと思うんですけれども、法律家という観点から、場合によっては、もし金融犯罪も捜査した経験などおありだったらそういうことも含めて、御意見があったらいただければと思います。

郷原参考人 まず、金融問題に対して所管をどう考えるかという問題をちょっと先に申し上げたいと思うんですが、先ほど来の話題ですね。

 私は、今の金融分野にとって、お役所は恐らく業界としては十分で、これ以上つくってもらってもどうにもならないというのが本音のところだと思うんですね。それは、金融庁の今の業界への対応も、金融ビッグバン以降随分変わりましたし、従来型の行政の対応としてはかなり厳しいものをやっているわけですね。ですから、所管のすき間という発想からすると、別にすき間があるわけではない。だから、特に消費者庁として何か所管を持つ話ではないと言われると、そのとおりになってしまうということじゃないかと思うんです。

 ですから、だからこそ、そういう問題ではなくて、今まで金融庁が行ってきたそういう行政とは違った観点で何か新たなものをつくっていかないといけない。それは、先ほどから枝野委員がおっしゃっている、今までの金融分野においてまだ害されている消費者利益の部分をどうするかというものもあるし、それから、証券市場の問題に関して言えば、マーケットの機能が本当にきちんと十分に果たされているのかというと全くそうではないわけですね。

 経済危機、金融危機の震源地のアメリカよりも日本の株価の下落の方がなぜ大きいのかというと、マーケットのフェアネスを確保する仕組みが全然ないわけです。十分に機能していないわけです。そうした問題を従来の官庁の発想とは違う観点から、消費者の視点とかあるいは司法の問題、今までアンタッチャブルだった司法の問題も含めてきちんと考えていかないといけないと思うんです。

 企業犯罪の捜査という観点からいいますと、そういう面で最も弱いのが、犯罪捜査という意味では経済司法の分野です。経済司法はほとんど貧困と言っていいぐらいの状態です。それはなぜかというと、日本の司法がマーケット的な発想に物すごく弱いからですね。ですから、マーケットの公正を著しく害することによって投資家の利益を損なうようなそういう犯罪に対しては、日本の司法は全く機能していません。

 その一つが、村上ファンド事件。この前、何と執行猶予になってしまった。一方で、なぜかライブドアの堀江被告は実刑になっているという、このアンバランスですね。こういったものが生じてしまって、本当にただすべきものがほとんどただされていないというところに重大な問題があると思います。

 そしてもう一つ、最初にも申し上げたことですけれども、考えないといけないのは、経済犯罪、企業犯罪にも二通りあって、本当はまともな経済活動が期待できるような企業にまともな方向に向かってもらうことができるようにするための犯罪の摘発、制裁というのと、もうこれは排除しかない、徹底した処罰しかないというタイプの犯罪に対する処罰、これを別に考えていかないといけないということではないかと思います。

枝野委員 終わります。ありがとうございました。

船田委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、原参考人、郷原参考人、お忙しいところ、それぞれの御意見を拝聴しまして、ありがとうございました。

 私も、伺っていながら、ぜひ質問にと思ったこと、既にかなりやられておりますが、重複しない範囲で御質問させていただきます。

 まず消費者行政について、それぞれの具体的な事例に即して、判断のおくれなど、どのような問題があったのか、それから法律上も不備があったのか、体制上の問題点があったなど、やはり具体的に検証していくことが大事かなということを非常に感じております。また伺っていても思うんです。また、そうした問題の背景に、先ほどもお話ありました産業優先など、政策上もいかなる問題があったかということもきちっと見ていく必要があるというふうに考えます。

 そこで、まず原参考人に伺いますけれども、具体的な問題ということなんですが、先ほどからお触れになってはいらっしゃるんですけれども、契約、解約について多くの受講生から苦情が相次いだ英会話教室のNOVAの問題、それからたくさんの亡くなる方、死者を出しましたパロマガスの湯沸かし器による中毒事故、それからコンニャクゼリー事故についてなんですが、その三つの事例で結構なんですけれども、それぞれどのような行政の対応の問題点があったというふうに考えていらっしゃるか、お答えいただきたいと思うんですが、いかがですか。

原参考人 具体的にそれぞれの事例なんですが、NOVA、英会話学校ですけれども、駅前留学という形でテレビコマーシャルが登場してきたのが九〇年代の半ばだったんですが、そのときから、既に消費生活センターには苦情が寄せられてきておりました。

 どういうことが起きていたかというと、駅前留学だというので、みんなが勤め帰りに英会話をちょっと勉強しようというふうに思って、契約をして、そして予約をとろうと思うと、みんな、例えば金曜日の夕方とか木曜日の夕方に殺到するので、予約がとれない。そうすると、三週間後ぐらいになってしまう。だけれども、その時点で三年分ぐらいのチケットを購入しているものだから、とてもこれはやれないというので、解約をしたいというふうに思うんですが、解約をしたいと思ったとき、その当時、契約書の中には解約の条項はなかったんですね。

 まずそのこと自体が問題だったんですが、ただ、どうしても解約をしたいというときには応じてくれるんですが、異様に高い解約損料を取るということがあって、これがまた苦情になって消費生活センターに寄せられていた。

 私はちょうどそのとき東京都の被害救済委員会の委員をしておりましたので、二十人の方々の、一種集団訴訟的だったんですけれども、ヒアリングをして、そしてNOVAと実際にお話し合いをさせていただきました。やはり解約損料の計算方法が、高くなるんですね、これはおかしいということをその当時お話を申し上げて、被害救済委員会もその結論として、NOVAもそれで了承したんです。

 そのこと自体は経産にもお伝えしてあったんですが、その経済産業省がなかなか動いてくれなかったというのが今回の案件で、ですから、相談員泣かせというふうによく言われていて、解決が非常に困難だったということなんです。

 二〇〇〇年になって、今度はピンクのNOVAウサギが登場してきて同じようなパターンでやったものですから、また同じように苦情が上がってくるということ、経産省がなかなか動かなかったということです。それがNOVAの場合です。

 それから、パロマガスの湯沸かし器の事故なんですが、これは今訴訟を起こされていて、二十一人目の死者の方で本当にお気の毒なんですけれども。実は私は、このパロマガス湯沸かし器、パロマに、九三年か四年に名古屋の工場にお伺いしております。リコールについて調査を生協総研から研究助成を得てやっておりまして、四十社調査をいたしまして、そのうち五社ヒアリングに伺って、そのうちの一つがパロマでした。

 パロマにお伺いしたときに、担当者の方が、自分のところに情報が集まってきていないのが非常に不安だというふうなお話をなさったのが非常に私は印象的です。やはりそれは、ガス湯沸かし器というのは、自分はメーカーだ、でも設置をするところもあるし、それから修理をするところもあるし、そしてガスを供給しているところもある。それから全国各地ですよね。自分のところに情報が全部入ってきていないというのが非常に不安だというふうにおっしゃられたことが、やはり私は、今回の事件、事故にもあらわれているというふうに思って、もっと早く手を打つことはできたと思っております。

 それから、コンニャクゼリーについてですが、コンニャクゼリーも九〇年代の半ばに新発売ということで発売をされました。すぐに死亡事故が起きて、二人お子さんが亡くなられて、その後二人お年寄りの方が亡くなられて、そしてその後また二人お子さんが亡くなられたんですね。

 ちょうどうちは同じぐらいの男の子がいたので、大変気になって、農林水産省にも連絡をして、そしてお話をした。新製品の失敗なんだから、今だったら市場からなくなってもみんな、本当に人が一人亡くなれば、どんな製品であれ、やはり立ちどまって考えますよね。ですから、半年の間にそういうふうにたくさん死亡事故が起きるわけだから、これは新製品の失敗として市場から撤退したらどうかというふうにお話をしたんですが、農水省の担当は、今中小企業はこれで活路を見出したときだからそれはできないと。ですから、形状の改善と警告表示だけで、申しわけないけれども、そういう措置をとらせていただきたいというお話をなさったということです。

 でも、それが、やはり二〇〇〇年明けてまた事故が起きていたということです。この間にも国民生活センターは注意情報を出しておりましたけれども、ほとんどの人の目に触れることがなかったということです。

 これが、消費者庁というようなものができて、一元的に、本当に消費者に提供したい情報ですとか、それから事故情報で早くに公表すべきものの公表がされれば、私はこれほどの悲しい事故というのは、今後は本当に防いでいきたいというふうに考えております。

 以上です。

笠井委員 ありがとうございます。

 あと、具体的事例の問題ですけれども、先ほどからはざま、すき間という問題がありましたが、原参考人が書かれたものの中にも、例えば、携帯電話の電池の規格づくりという問題だとか、それから地デジ放送の問題もこういう問題としては取り上げられていると思うんですが、端的に、どんな問題意識を持っていらっしゃるか、どんなふうな問題というふうに思っていらっしゃるか伺いたいと思うんですが、どうでしょうか。

原参考人 情報通信の分野は私も不案内なんですが、不案内ということは、やはりそれだけいろいろと相談とか困った事例とかというのがあるということなんですね。やはり、これほどの情報通信の進展している部分に消費者が追いついていないということはあると思います。

 先ほどの電池の話は、情報通信は一応総務省が所管をしておりますけれども、電池のようなものの規格は経済産業省の規格になりますので、両方で合意をして規格づくりへ入っていかなきゃいけない。こういった総務省と経済産業省の間でいろいろ絡んでくる幾つかの問題、これは、取引とか契約のルールについても同様な困った案件というものが生じてきております。

 それから、地上デジタルについては、これは二〇一一年の七月でしたよね。随分コマーシャルをされるようにもなりましたけれども、いつ、いかなる、どのような経緯で決まったかなというのはやや不透明な感じもあります。

 それで、今、随分宣伝はしておられますけれども、本当に個々の消費者のところまで情報が行き渡っているかどうかというところについてはまだ懸念をしているところで、これも、二〇一一年、二年後ですけれども、またかなり大きな消費者問題になってくる。それから、廃棄の問題も出てきますから、廃棄物とすると環境省関連ですね、環境問題のところ、廃棄物の関連のところもかかわってくるというふうに思います。

笠井委員 食の安心、安全の問題を伺っていきたい、これは両参考人にと思っているんですが、まず、原参考人に伺います。

 これは、やはり消費者にとっては関心の非常に高い問題であり、当然だと思うんですが、米で見ますと、例えば米の輸入というのは消費者にとって必要なのかという問題とか、それから、食料自給率が低いままでいいのか、これを高めていく必要があるのかなど、やはり消費者問題と農政のあり方というのは密接に関連しているというふうに思うんです。

 そういう意味で、農政の転換というのがやはり必要じゃないかというふうに考えるんですけれども、その点は、原参考人はどういうふうにお考えでしょうか。

原参考人 食の問題とか農業の問題ですけれども、消費者団体に最も関心があるテーマは何ですかという調査をすると、食の問題と環境の問題、両方がトップで上がってくるんですね。製品事故というのは本当に突発的にひどい被害を生じますけれども、食べるということは毎日だれもがやっていることなので、やはり食の表示とか安全については消費者の関心は最も高いというふうに思っていただいていいと思います。

 それから、米の輸入については、ミニマムアクセス米ということで今輸入していて、これがカビで汚染をされていたということなんですが、最初に輸入が始まったあたりは消費者団体の中では結構反対があって、日本の自給率がこんなに下がっているのに、下げてまで何で輸入するんだとかというような話ももちろん消費者団体の中ではありまして、国際的な場に行くと、国際派を自称される方々からは、日本の消費者は何を考えているんだというような言われ方をしたというふうなこともありました。

 やはり食は、農業もですけれども、大変基本だというふうに私は思っておりますし、私自身も農家の娘なので、今の農村の状況、それから農業の状況、食の自給の問題というのは、国民として、消費者としてでもありますけれども、大きな課題だというふうには考えております。消費者問題としても大きいと思います。

笠井委員 ありがとうございます。

 郷原参考人に伺います。

 参考人が書かれた「食の不祥事を考える」という中で、「食品業界のコンプライアンスを考えるには、食品業界に対する社会の要請とは何かを考え、常に見直していくことから始めなければならない。」というふうに言われておられるんですけれども、この指摘にかかわってなんですが、郷原参考人は、食品業界に対する社会の要請というのはどのようなものだというふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。

郷原参考人 まず第一に、食の安全の確保です。絶対に健康被害を生じない、これはもう当然最も重要な社会の要請だと思います。その次に、消費者に対して、その商品の質、品質、価値についての正しい情報を提供するということが求められているんだと思います。

 ただ、ここのところは相対的なものですし、イメージにも非常に左右されるものなので、非常に難しいわけですね。例えば、賞味期限、消費期限という形で食品の品質が表示できている、十分に表現できているかといったら全然そうではなくて、そこのギャップが当然生じてきます。そういった問題を乗り越えて、どうやって消費者に必要な情報を、とりわけ食品表示を中心にして情報を提供していくのかというのが二番目の社会の要請の問題であると思います。

 そしてもう一つは、三番目は、やはり限られた資源である食品ですから、有効に、大切に、効率的に生産し、消費、流通させていくということが食品企業に対する社会の要請でもあると思います。

 その三つの社会の要請をバランスよく満たしていかないといけないというのが食品企業の真のコンプライアンスではないかと思います。

 これまでいろいろな食品不祥事において、どうも問題の本質が見きわめられないまま、マスメディアが問題を単純化して、企業に対する単純なバッシングが生じたり、消費者が大変な誤解をしたりということがあったのは、やはり、そのコンプライアンスの本質がとらえられていなかったという面があるんじゃないかというふうに私は思っております。

笠井委員 関連してなんですけれども、今伺った三つの社会の要請をバランスよくというお話なんですが、そうしますと、それを常に見直していくことから始めるという点でいいますと、一方では、コンプライアンス、そして定められた法令、規則というのが社会の要請に見合っていないということもやはり含意されているのかなというふうに受けとめるんですけれども、その点はどうなのかということ。そして、行政の側での要因、あるいは対策についての参考人の御意見はいかがでしょうか。

郷原参考人 最初の質問は、済みません。

笠井委員 一方で、常に見直すということになりますから、つまり、コンプライアンス、定められた法令、規則が社会の要請に見合っていないということが含意されているんじゃないか、そういう点はどうかということと、行政の側の要因、対策について御意見はどうかということです。

郷原参考人 まず、端的な例が、今、社会の要請の二番目、食品の表示をどうするのかという問題ですね。これは、昔は製造年月日表示だったものが、それが製造年月日を表示しないで、賞味期限、消費期限を表示しろということになったわけですね。これは本当に食品企業に対する社会の要請にぴったり一致しているのかどうかというところを考えてみないといけないと思います。そして、それは消費者の要請にかなったものなのかということも考えてみないといけないと思います。

 恐らく、いつつくったものかということを知りたいという消費者はたくさんいると思うんですね。企業の方で勝手に設定した賞味期限、消費期限じゃなくて、自分は製造年月日を知りたいという人もいると思うんです。ところが、それがどうも何か行政の方のほかの政策との関係などで、いつの日からか、製造年月日は表示不要ということになった。それがいろいろな問題を生じさせているという面では、一つのギャップの問題ではないかと思います。

 こういう社会の要請と法令との間でギャップが生じてしまうというのは、私は避けられないと思うんですね。世の中がここまで急激に変化をしていれば、当然そのギャップは生じてくるわけですから、それを常に見直す努力をしていかないといけない。

 二番目の質問であります行政に求められる対応というのは、まさにそこの部分を、世の中のニーズ、そして消費者のニーズにこたえて常に見直していく姿勢ですし、そういう意味で、もう一つ重要なことは、そういう真のコンプライアンスを行政としてバックアップしていく政策をとっていくことじゃないかと思います。

 農政という面では、農水省の行政というふうに広くとらえますと、農業政策よりも、むしろ私は、食品企業に対する行政として本当のコンプライアンスを支援していくという農水省の行政がこれから重要になっていくんだと思いますし、それは広い意味での消費者問題を担当する官庁にも言えることじゃないかと思います。

笠井委員 ありがとうございました。

 今度は、原参考人に伺いたいんです。

 金融被害にかかわって、その契機として、規制緩和による自由化ということも先ほどおっしゃったと思うんですが、その規制緩和と消費者問題の関連について、金融の問題も先ほど議論がありましたが、その他の問題での事例でもしお気づきの点があれば、あるいは問題意識を持っていらっしゃる点があれば御指摘いただければと思うんですが、いかがでしょうか。

原参考人 規制緩和と消費者問題についてということになると、またこれだけで相当延々と話になって……。

 一九八五年に、中曽根総理だったときに、日本でも本格的な規制緩和ということで、そのときにいろいろな消費者安全に関するものについては規格基準を決めて、安全基準を決めて規制をしていく、表示もきちんと項目を決めて規制をしていくというような形だったんですけれども、それから事後ルールの整備へ。これからは事後ルールを充実させて、事後ルールを働かせることによって安全な製品が出るとか、それから取引も適正にされるということで、製造物責任法を制定したり、消費者契約法の制定、金融商品販売法の制定というふうにやってまいりましたけれども、この事後ルールがまだ完全には機能はしていないですよね。

 これは使おうと思わないと機能しないので、事前の規制よりはややこちら側の行動が要るというところでなかなか難しいかなというふうに思っていて、それのいろいろなほころびが二十一世紀になってから出てきたかなというふうに思っていて、端的には、やはり金融分野が一番大きく感じるところではあります。

 金融商品の多様化だけではなくて、いろいろなところで販売ができるようになったというところがありますので、ここは大変いろいろなトラブルが出てきたというふうに思いますし、それから、今、日本は統一消費者信用法制がないのですけれども、これも、住宅ローンは銀行法にあり、そして割賦販売法は経産省にありというような形なので、クレジットによる取引というあたりも新しい進展の中では被害としてあったというふうに思っております。

 ですから、事後ルールの整備で進んできたこれまでの消費者行政、消費者政策の姿を、また今、もう一回考え直さなければいけないところに来ているというところにはあると思います。

笠井委員 最後の質問ですが、法案にかかわってなんですけれども、法案については、やはり国民の多くが望んでいる消費者行政の強化、一元化という方向に向けて、これは各会派の知恵を本当に出し合って、そして国民にとってよりよい、実効性があるものにということで仕上げることが大事だと私たちは思っているんです。

 そこで、原参考人に一問だけなんですが、消費者庁関連法案について、参考人が、消費者庁を消費者主役で動く組織にするポイントということで、一つは分析の機能の問題と、それから権限の問題と消費者政策委員会の話ということで主張されておっしゃっていると思うんですけれども、先ほど政策委員会のお話がありました。そして、権限の問題もあるんですが、確実に迅速に情報を一元化して集めて分析する機能がまず必要だというお考えだというふうに承知しているんですが、分析には商品テストの充実だとか消費者の目が欠かせないということだと思うんです。

 そのために、法案に対する具体的な提案とか、あるいはこういう点が特に大事だとかということで感じていらっしゃる点があれば伺いたいと思うんですが、最後にいかがでしょうか。

原参考人 実際に法案を読むと大変簡単な条文で、そんなにたくさん条文があるわけでもないので、実際にはこれをどういうふうに活用していく、運用していくかというのが大きなポイントです。

 仕組みをどうつくっていくかということも大きなポイントで、事故情報については、今並行して、国民生活審議会の中に消費者安全検討委員会という専門委員会を設けておりまして、事故情報を一元的に集めて分析する仕組みを検討中です。ですから、この法案の作業と並行して、そういった仕組みづくりのところも検討を進めているというところになります。

 先ほど郷原参考人のところから出ておりました事故情報の扱いについてなんですけれども、確かに消費生活用製品安全法に基づく重大事故について消費者庁に情報が来ますけれども、瞬時に経済産業省も持って、原因究明機関と、原因究明機関になりますということも幾つもリストアップされておりますので、一緒に作業に入るということになるというふうに思っております。その制度設計も今並行してやっているというところです。

笠井委員 終わります。ありがとうございました。

船田委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 最初に、郷原先生にちょっとお伺いをしたいと思います。

 「消費者庁法案の問題点」の中で、先ほどちょっと枝野さんもお触れになったんですが、三番目の「安全確保における「重大事故の消費者への情報提供」の位置づけ」をめぐって、「製品起因の判断と原因究明をどこが責任を持って行うか」ということが提起をされていまして、私もなるほどというふうに思いました。

 後の方で運輸安全委員会の話が出てきまして、たしか、航空、鉄道事故、それから今度は海も入ったんですかね、その分野では、ここが、運輸安全委員会が専門的に調査をし、原因究明をする。これは犯罪を摘発するわけではなくて、あくまでも原因究明と再発防止ということを基本におやりになるということになっていて、我々の思いからいうと、これは、アメリカのNTSBのような、もっと強力な権限と陣容を持ったものにしたいというふうに思っているんですよ。今八条なんですが、これ、三条委員会にしたらどうかという思いがあって、事あるごとにその話は国会でもしているんですが、だんだん広がってきた。

 自動車の事故か何かも、重大事故も、アメリカなんかだと、橋が落ちてもこのNTSBできちんと原因調査をして、必要があれば企業に勧告までするというふうなことが言われているわけです。

 この間のさまざまな消費者問題にかかわる重大事故も、こうしたものがないために、きちんとした原因究明が不十分だったんじゃないかという思いは私もありまして、その専門的な調査機関、しかも客観的な、恐らく独立性を持ったという意味だと思うんですが、具体的にどんなものを想定されているのか、だれがやるのか、どこが所管するのかということについて、先生のお考えをまずお聞きしたいと思います。

郷原参考人 重大な事故が発生したときにその原因究明を行わないといけなくなる、もう当然のことですし、それも今必ずしも十分にできていないわけですね。これは港区のエレベーター事故の件がまさにそうです。

 その問題と別に、ここで書いております、この五ページで書いております消費生活用製品安全法の問題のような、事故にまでは至っていない、あるいはその製品に起因するものなのかどうか、単に疑いにとどまっているというようなレベルのときに、どういう情報を消費者に提供するのがいいのかというのは非常に微妙で難しい問題だと思うんですね。

 これは、何となく、今まで情報が提供されていなかったから悪かったんだから、情報をどんどん何でもかんでも提供すればいいんじゃないかというふうに考えられがちですが、そうじゃないんですね。不正確な情報ばかり与えられると、かえって消費者が誤解するし、混乱するし、正しい消費行動ができなくなるんですね。

 そういう面で、今の消費生活用製品安全法のスキームのもとでも、私も委員として加わっておりますが、判定小委員会というのがあって、製品起因かどうかということについて、最終的に製品起因じゃないという判断をするときには、この委員会で判定することになっているんですね。ところが、ここの委員会の判断というのは、結局どこかの公的な機関が決めてくれないとなかなか結論が出せないんです。

 火災現場に、たまたま出火場所の近くに電気製品があった、この電気製品に何かふぐあいがあって発火したんじゃないか、これは単なる疑いなんですけれども、その疑いをどうやって究明したらいいのかというところは、まだノウハウすら確立されていないんですね。先ほども言いましたように、消防署ではわかりません。これはむしろ、その製品自体のことをよくわかっているメーカーと、そういったことに関する専門家が、徹底的に、そういうメカニズムの解明も含めて原因究明もしていかないといけないと思いますし、製品の安全性という観点から別途の検討が必要だと思うんですね。

 そういった機能が今の消費生活用製品安全法にはない。したがって、このまま消費者庁に一部の権限を持っていっても、この問題は解決しません。

 そうなると、何が求められるかというと、そういう消防とか警察とかというところとは別に、こういうような製品起因かどうかということを判断する専門的な組織をいつでも立ち上げられるような枠組みが必要なんだと思うんですね。すべての分野の専門家を常に常駐させておくとか常時雇っておくわけにいきませんから、大体の分野をカバーできるような人がそこにいて、その組織の中にいて、そして必要に応じて専門家を組織するというような機関が必要になるんじゃないかと思っております。

日森委員 原先生は、この問題についてはどんなふうにお考えでしょうか。

原参考人 原因究明機関については二つお答えしたいと思うんです。

 一つは、今の郷原参考人にあった質問の一番最後のところに加えたいと思った形で回答させていただきたいんですが、原因究明機関を即つくれるようにしたいというふうに郷原参考人はおっしゃられたんですが、これを、今消費者安全検討委員会で、その方向で報告書をまとめられないかということで検討しております。

 中を、食品と製品と施設のワーキングに分けて検討しておりますけれども、施設のワーキングのところは、今回のシンドラーのエレベーターの事故とか、特に施設部分については余りこれまで手当てがされていなかったので、重点的に今検討しておりまして、何か事故が起きたら即原因究明機関を専門家で立ち上がれるような形にしたいということで提言をまとめます。

 それから、航空機とかシンドラーのエレベーターの事故とか出ておりますけれども、航空機とか、それから船舶とか鉄道とかというのはもとの運輸省関係になりますけれども、国際的なルールで、何か事故が起きたらすぐ原因究明委員会を立ち上げるというのが何となく国際的なルールになっているので立ち上がりやすいんだけれども、ただ、もとの建設省ですね、国土交通省の、建設省関連の部分のこういった施設みたいなところはそういう仕組みがないです。

 ですから、例えば何か施設で事故があったり、大きな重機なんかで事故があったにしても、ここに出てくるのは、厚生労働省が労働安全の立場から出てきたりするんですね。全体での原因究明がなかなかできなくて、犯罪かなというのもあるとすぐ警察が入ってきて、警察の情報になっちゃうと、なかなか外からは見えないというような構図になっていて、施設関連の事故があったときの原因究明をどうするのかというのはかなり大きな課題です。そのことは十分認識しております。

日森委員 また郷原先生にここの部分なんですが、「消費者庁法案の問題点」の真ん中のところで、「景品表示法を独禁法から切り離して消費者庁の所管に」すると、どうもうまくいかないんではないかという思いを持っているということをおっしゃっておりました。

 これは具体例があるのかどうかわかりませんが、例えばこういう問題のときに消費者庁が管轄、所管をしているとこれはなかなかうまくいかないというふうな、具体的な事例を何か想定されていることがあるのか、ちょっとお聞きをしたいと思っています。

郷原参考人 いろいろな分野で考えられるんですけれども、やはり、表示のあり方の問題というのは、まず、その業界の実情のもとで、どういう表示のルールにするのが一番企業間の競争がうまく働くのか、公正な競争になるのか、それによって消費者の利益が確保できるのかということがあるんだと思うんですね。それがベースになって、不当表示とか著しく優良と誤認させるような表示というものが問題になるんだと思うんです。

 それが状況に応じて見直しも必要になってくるのに、消費者庁の所管することになる景表法のところだけで、これをお役所的発想で、こういう場合が不当表示だ、優良誤認だということだけを決めていても、そういう判断をしていても、その業界の自主ルールというものの基本的な考え方とかみ合っていないとうまくいかないと思うんですね。

 例えば家電製品であれば、何%引きということに関してどういうような表示の仕方までが許されるということが、まず自主ルールによって決まっている。それから、修理についてはこういったところまでは約束していいとかこういう表示まで許されるというのは、これは自主ルールとして決まっている。そういう状況のもとでこれが不当表示に当たるかどうかということを考えるというのは、今までは公取のもとで一元的に行われていたんですね。

 これを、JAS法とかほかの食品衛生法の法律とは確かにギャップがあったかもしれない、すき間はあったかもしれないんですけれども、そっちと一緒にすることによって、今度は、市場法としての性格を持った景表法の運用が何か非常にゆがんだものになってしまいやしないかというのが私が懸念しているところです。

日森委員 それでは、原先生にお伺いをしたいと思うんですが、先生おっしゃった、国民生活白書の中で、多くの国民が消費者の権利の擁護というのがされていないというふうに感じているという報告があったということが一つありまして、やはりそうだろうなという思いを私は持ったんです。

 同時に、これも、私の方はもう既に質問してあるんですが、消費者庁の位置づけを一層明確にするために、設置法の三条ですかに、もちろん権利を明記したからといって権利を守ってくれるんだというふうに自然に思うわけじゃないんでしょうけれども、しかし、これは明記すべきではないのか。これは本当に設置法の位置づけはさらに明確になるということを私は思っておりまして、権利主体としての消費者というものを明確にしていく必要があるんじゃないかというふうに思っているんですが、ちょっと具体的な話で恐縮なんですが、それについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

原参考人 権利の話と、それから景表法についても回答してもよろしいですか。(日森委員「はい」と呼ぶ)

 権利の話は、冒頭の発言、時間がなかったので、すっ飛ばして読んでおりましたけれども、私、やはり権利の尊重は明記された方がいいというふうに考えております。

 これは、消費者基本法の中には既に権利の尊重という言葉が入っている。ただ、基本法なので、ああいった、消費者の権利とかの言葉が入るので、こういった設置法にはなかなかなじまないというふうには言われたりしているんですけれども、一応、消費者庁が何を根拠に仕事をするかというとやはり消費者基本法なので、私は、やはり共通はしているというふうに思っております。

 それから、景表法なんですが、景表法という法律を公正取引委員会の中に置くのか消費者庁に置くのかというのは、これは一つの大きな論点だったんですけれども、景表法というのは、表示の、裏返しのオールマイティーのような法律なんですね。ですからすべてカバーができるというようなところがあって、非常に消費者からすると魅力的な法律です。

 公正競争規約の話が出ておりますが、公正競争規約は今百ぐらいありますが、この公正競争規約をつくるときには消費者はほとんど全部参画をしております。既に消費者参画でつくられております。

 それから、この景表法自体を、私が非常に一生懸命頑張ってやった問題の一つが、有料老人ホームの不当表示の問題があります。これは、厚生労働省が管轄をするのか、経産が管轄をするのか、国土交通省が管轄するのかというところで、本当にすっぽり落ちてしまって、枝野議員も、たしか議員になられた最初のころ、一生懸命有料老人ホーム問題をやっておられて、私も御一緒させていただいていた時期があるのですけれども、今回、「たまゆら」の老人施設の火事があって、やはりまだあれなんですよね、無届けの事業者がいるというようなこと、まだ三百幾つもあるということなんです。あそこに景表法で、初めて不当表示で有料老人ホームに網をかけたんです。表示と契約について網をかけましたから。

 そういう形で、私は非常に強い法律だというふうに思っておりますので、消費者庁で、公正取引委員会とともに機能させていきたいというふうに考えております。

 以上です。

日森委員 先ほども出ましたけれども、情報、権限、消費者政策委員会、この三つが柱だというふうにずっと原先生おっしゃっておりまして、先ほども、消費者庁も万全ではないんだ、さらにさまざまな工夫が必要になるというふうにおっしゃっておりました。

 特に消費者政策委員会の機能強化、これは全く私も同感なんですが、ここをどう強化するかということが実はこの消費者庁設置法のやはり根幹をなすんじゃないか、一つの根幹をなすんじゃないかというふうに思っているんです。

 これもいろいろもう問題提起はさせていただいているんですが、原先生として、具体的にどこをどう強化していくことがいわば本物の、本物のと言うとおかしいですけれども、さらに消費者庁を、消費者の権利擁護、利益擁護の役所として機能させることになるのかということを具体的におっしゃっていただけたらありがたいと思います。

原参考人 やはり、消費者に支えられている消費者政策委員会、消費者庁という姿にするというのが一番機能するというふうに思っておりまして、いろいろな情報が入ってくる、これが一つ大きいと思います。たくさんの情報を得ることができるということ。

 それから、消費者とコミュニケーションができるということも非常に重要と思っていて、スーパーコンプレインツの仕組みというのがイギリスにあって、消費者からの申し立て制度というのがあって、九十日の間に回答するというのがあります。そういったような仕組みを入れて、消費者との連携をとっていくというようなところ、こういうのが重要になってきて、そうなると、やはり事務局スタッフですね、常勤でしっかり働いてくれる事務局スタッフがある程度の人数は欲しいということになると思います。

 または、消費者政策委員会の透明性を上げて、何をしているのかということがほかからも見える形になるということが大事かと思っておりまして、これは本当に霞が関の中でもちょっと珍しい存在になっていくというふうに思っておりますので、いろいろな工夫は凝らしていきたいと思います。

日森委員 それからもう一つ、情報の話がございました。

 これは、いろいろなお話も、郷原先生からも伺いましたし、情報が極めて重要だということで、どう開示するかとか公表するかということについてはいろいろ御意見があると思うんですが、いずれにしても、情報を一元化しなきゃいけないわけで、今そのデータベース化を準備されているというお話なんですが。

 それをちょっと聞いた方々は、データベースをつくるのは、それはいいんだけれども、しかし極めて中途半端な不十分なデータベースになっていて、消費者の側からいうと使い勝手が悪いといいますか、本当にその情報がストレートに入ってこないような、そんな中身になるんじゃないかという心配をされているというお話をちょっと聞きました。

 この問題について、今、原先生の御見解がございましたらお聞きをしたいと思います。

原参考人 今その問題を、消費者安全検討委員会で検討を尽くしているというふうに言った方がいいかと思うんです。今消費者安全検討委員会で検討している事故情報データバンクの構想のもともとの出どころは、国民生活センターの縮小の話の段階のときに出てきたものなんですね。そのときに、国民生活センターのADR機能の話と同時にこういった事故情報データバンクの構想が出てきて、それで制度設計をしてきております。

 消費者庁ができ上がったときに、ではどういう形の事故情報データバンク、全部の一元化をする仕組みとしてはどういうことがいいのかというのは、もうちょっと、もうワンランク上がらないといけないというふうに思っております。

 それが、実はもう三月末がタイムリミットになっていて、消費者安全検討委員会の報告書は今週末ぐらいにまとめないといけないんですけれども、ステップアップのための検討というのは継続する必要があるというふうに思っております。

 特に消費者に役に立つ形での公表とか情報提供のあり方のところが工夫が必要だろうというふうに考えております。

 何か政府答弁みたいになってしまって、済みません。

日森委員 時間前ですけれども、終わります。ありがとうございました。

船田委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、お二方の参考人、大変貴重な御意見をありがとうございました。私が最後の質疑者でございます。

 まず、消費者庁のあり方ということについて、お二人の参考人から御意見をいただきたいんです。

 明治時代以降、日本が殖産興業や産業育成中心の中で、事業者中心の、そして消費者は、事業者に対する規制の反射的利益の中で保護的な恩恵を受けてきたというふうにも言われているわけでございます。この消費者行政というのが、昭和四十三年の消費者保護基本法というのを経て、そして、平成十六年の消費者基本法において、行政の消費者政策の理念、これがようやく消費者の権利の尊重とか消費者の自立支援という形に転換をしたというふうに思っております。

 一方で、社会の複雑化というものがだんだん出てまいりまして、これに伴って新たな消費者の被害というのも、今マスコミの報道等でも出ているように、どんどん増加をしてきているわけでございます。

 生活者を主役とする行政全体の転換、こういうものが図られていく中で、新組織である消費者庁のもと、これからの消費者行政というのが社会全体の中でどういうふうに位置づけられていくのか、そして、理念のもとでどんな使命を果たしていくべきなのか。郷原先生はどちらかというと権利院の方がいいという御意見もございますけれども、例えば権利院にしても、どういうような形の使命というものを果たしていく必要があるのかということをお二人からお聞きしたいと思います。原参考人から。

原参考人 消費者庁の使命ですね。

 消費者行政推進会議で検討しているとき、これは、座長は東大の元総長の佐々木毅先生だったんですね。もともと政治思想史が御専門の方だったので、時代史的に俯瞰していろいろなことを見ておられて、それがやはり最終の取りまとめに反映をされたというふうに私は思っているんですけれども、今の時代をどう見るかというところですよね。

 それで、私は金融分野に携わっているので、昨年来のサブプライムローンからリーマン・ブラザーズのあたりからのことで、今の非常に深刻な社会の状況というのをどのように今後やっていくのかということは、本当に大きな転換期に来ているというふうに考えておりまして、そういう意味では、何を政策の柱としていくのかとか、行政がやるべきことは何で、行政は何を柱にやっていくべきなのかというところの転換に差しかかっているというふうに思っています。

 それは、本当に、生活をしている人とか働いている人とか、それから市場における消費者という存在ですけれども、やはりこういう人たちを大切にする政策から積み立てていくべきではないか、行政の姿もそうではないかというふうに考えていて、やはりその意味では試金石になるというふうに考えているところです。国民を大事にする政治の一つというふうに、それをねらいとしたいというふうに思います。

郷原参考人 私は、何といっても、従来の官の考え方から脱却してもらいたいというのが、いずれにしても重要になるんじゃないかと思っております。

 すき間を埋めるという発想だけではだめだということを先ほど来申し上げておりますけれども、要するに、消費者保護ということを目指していくとしても、従来のような消費者保護というようなことから、さらにもっと先を考えていかないといけないんじゃないか。消費者の利益、企業の利益、それを対立軸と考えて、どっちがもうけている、どっちが損しているという話ではなくて、今は、やはりその両方がもっと健全なコミュニケーションをしていって、お互いにコラボレーションの関係をつくり上げていかないと、これから先の日本の厳しい経済状況を乗り越えていけないと思うんです。

 そういう意味で、まだまだいろいろなところで生じている誤解をきちんと解いて、物事の本質は何なのか、どこに問題があって、どういうようなところを消費者が理解し、企業が改めていかないといけないのかということについて、適切な対応を指導していけるような省庁になること、これが、消費者庁であれ消費者権利院であれ、重要なんじゃないかと思います。

 そのためには、やはり従来の官の発想から抜け出して、もっと企業とか消費者とフラットな関係をつくっていかないといけないんじゃないかと思っています。

糸川委員 おっしゃるとおりで、やはり役所をつくるだけでは何ら解決もできないと思いますし、今までの、例えば農林水産省にしても何省にしても、自分たちでしっかりと消費者を保護していくんだという意識の問題というんでしょうか、そういうものが官の中でしっかりとできていないと、何省だろうが何庁だろうが、権利院だろうが、そういうものができてもやはり何ら対策にならないのかなという思いがありまして、これは先日麻生総理にも、こういう思いがあったものですから質問を実はさせていただきました。

 役所の体質というんでしょうか、権限があるのに適切に行使しなかった、そういう行政全体の体質というんでしょうか、こういうものに対して、縦割り意識、そして行政を担当する組織全体の意識改革が重要ではないのかというような質問をさせていただいたんですね。もちろん、それに対しては、そういう改革が必要だということをおっしゃられていましたけれども。

 この点、原参考人も、意識改革の重要性というものを指摘されていらっしゃいますし、例えば各省庁の設置法に、消費者、生活者重視の仕事をするということを明記すべきだということも書かれていらっしゃると思います。

 行政組織やそれを運用する公務員について、消費者重視の行政への転換をするためには、何が足りなくて、どういった改革を行うことによってこういうものが可能となるというふうにお考えでいらっしゃるのか。まず原参考人、具体的な意見を、ございましたらお聞かせいただければと思います。

原参考人 公務員の方々を私はすごくたくさん知っております。皆さん、お仕事を熱心にやっておられるんですけれども、どちらかというと、省庁の中、それから根拠法に基づいて仕事をしておられるということになると思うんですが、やはり、一生懸命仕事をしたい、国民のために仕事をしたいというふうに思っておられる方も本当に、確実にいらっしゃるということで、そういった方たちが動きやすいような形の仕組みづくりというのがこれから必要になっていくのではないかなというふうには思っております。

 おっしゃられたように、私も、消費者行政推進会議の最終取りまとめで、非常に大きな柱は三つありますというふうに言って、その一番最後のところに、公務員の意識改革の話をいたしましたけれども、やはりそこが本当にポイントになると考えております。

 それから、去年の三月にまとめた国民生活審議会の総合企画部会の取りまとめというのがあるんですが、それは、その前の半年をかけてずっと検討を重ねてきたものなんですけれども、その最終の取りまとめにも、ちょっと先ほど言われたんですけれども、各省庁の設置法に、やはり消費者のために働く、生活者のために働くという条文を根拠法の中に置いたらどうかという提案も実はしております。

 ですから、本当は霞が関とか永田町とかを全部で変えたいというふうに思っているんです。

 そういう意味では、今回、立法府の中に消費者問題特別委員会が設置されたということは、本当に喜んでいるところです。立法府の中でこの消費者問題というものの審議がまた進むことを期待しているということです。

 やはり総合的にやっていきたいなというふうに考えています。

糸川委員 ありがとうございます。

 郷原参考人にお尋ねしたいんですけれども、今のことプラス、ちょっと補足をしてお聞きしたいんです。

 郷原参考人は、標準報酬遡及訂正事案等に関する調査委員会の委員でいらっしゃいます。かつて検事でもいらっしゃいましたということで公務員であったという立場もありましたね。ですから、公務員としての意識の持ち方、こうやっていないと変わっていかないんだという、原参考人の場合は外から見ていらっしゃっての改革の仕方、そして郷原参考人は、それに加えて、やはり公務員でいらっしゃったということで、その意識の持ち方、それから倫理観、どういうふうにしていったら変えることができるのか、この点についてお伺いしたいと思います。

郷原参考人 若干私の著書の宣伝になるんですけれども、法令遵守に縛られないということが重要なんじゃないかと思います。とりわけ、今、公務員に求められていることは、今まで自分たちがつくった、あるいは先輩がつくった法令に単純にそのまま縛られて仕事をしていくことではなくて、自分たちが一体、庁として、役所として何を求められているのかということを、根本的なところを考えて、そのためにいろいろな柔軟な発想で業務を行っていくことだと思うんですね。

 ところが、九〇年代以降のいろいろな世の中の動きの中で、どうも公務員はどんどん萎縮してしまって、法令遵守に縛られて、肝心なことができなくなってしまっているのではないか。やはりそこを、法令遵守から脱却しないといけないところはしっかり脱却して、自分の持ち場とか所管の枠を超えてでもやるべきことをやっていくという姿勢が必要だと思います。

 ただ、一方で、絶対に法令遵守を厳格に守らないといけない部分もあるわけですね。これは罰則適用です。政治資金規正法の問題もそうです。ここは解釈を絶対にゆがめてはならない。そういう部分を厳格に守りながら、しかし、前向きに努力していかないといけない、もっともっと変えていかないといけない、新たな方向に向けていかないといけないという部分は、法令遵守に縛られないで、もっといろいろな、幅広い発想で物事に対応していくという姿勢が必要なんじゃないかと思います。

糸川委員 実際、そういう縛られている部分というのもたくさんあると思うんですけれども、今ちょっと難しい質問だったかもしれません。申しわけございません。ありがとうございます。

 原参考人にお尋ねしたいんですけれども、今回、先ほどの質問、例えば平議員の質問にもございましたけれども、二十九本の法律が消費者庁に移管、共管されたわけでございます。原参考人も消費者行政推進会議というところに参加をしていらっしゃったと思いますが、いろいろなすき間というんでしょうか、そういうところでの法律、要は各省にまたがるものとかそういうもので、この消費者庁が担当して、例えば事が起きたときには検査を指示したり指揮をとったりということになってくると思うんです。

 正直、これだけ多岐にわたって、消費者庁というのは二百四人が定員ということで、この人員が少ないのかな。これで、本当に専門性の確保ということ、同時多発的にいろいろなことが起きてくる、消費者の問題というのは起きてくる、昨年もたくさんの問題が起きましたけれども、そういうときに、この二百四名で、専門性を確保して、そして迅速な対応をしながら対応に当たれるのかな。

 国民の皆さんは、この消費者庁というものができれば相当な期待をされるんだろうと思いますが、そこで実際、迅速な対応ができない、専門性を持った指揮ができないということになってくると、逆に失望に変わってしまうのかなというふうに思うわけです。

 ですから、そういう意味では、しっかりと迅速性であったりとか専門性であったりというものを確保していかなきゃいけないわけですけれども、消費者庁というものを、行政組織として、原参考人がいろいろな部分で携わられていらっしゃいましたけれども、行政組織全体をどういうふうにしていったら、今の消費者の皆さん、国民の皆さんが望まれるような迅速性とか専門性というのが確保できると。

 そして、今二十九本の法律ということですが、まだまだ、検討されていたものとすれば四十三本ぐらいあったわけですよね。そういうものをすべてもし入れていたとしたら、もっともっと広い分野にわたってしまう。ただ、これから検討の中ではこういう法律も所管になる可能性がございますね、消費者庁の所管という形になる可能性もあるわけですから、どういうような行政組織にすべきかというもので、何か御意見がございましたらお聞かせいただければと思います。

原参考人 確かに、二百四人でしたか、少ないと私も思ってはおります。せめて三百人ぐらいいるといいのになとかという、金融庁スタート時のことを考えたらそんなことも思うんですけれども、行政改革の枠組みの中でも取り組んでおりましたから、新しい人員は入れずにほかの省庁からということを、法律とともに何人か来ていただくというような形で構成をしたので、この人数です。

 法律を何本持つかとか人員をどれだけふやすのかというのは、やや際限がないところがありまして、そういうことではなくて、特に専門性がかかわる部分というのは、それを消費者庁の中に全部持ってしまうというのは、本当にどれだけ巨大になっていくかわからないところがありますから、やはり必要最低限、情報のところを見られる専門性のところがあればいいのかなというふうに思っております。

 あとは、その専門性の部分については、それぞれの省庁が、そこが専門でおやりになっておられるわけだから、やはりそこと協力をしてやっていく姿、そういうふうに機動的に動けるような形にする方がいいのではないかなというふうに考えて、膨大なというよりかは機動的に動ける仕組みの方を考えたいということになります。

糸川委員 郷原参考人は検察官という立場で、調査ですとか、いろいろな専門性を持たなければいけないところもあり、勉強しながらいろいろ調査に当たられたと思うんです。

 今回のような、例えば消費者庁ができた場合、まあ、権利院なのかもしれません。この組織ができたときに、実際、指揮をしながら調査というのがどのくらい困難なもので、例えばそれが、消費者庁が農林水産省と一緒になって調査をするとか、指示をしながらやるということになりますと、農林水産省の職員の皆さんに対して指示をしなきゃいけないわけですね。ということは、彼ら以上に専門性を持ったりそういう勉強もしなきゃいけないということで、非常に難しい部分もあるのではないかなというふうに思うんですが、もし御懸念等がございましたら少し御指摘をいただければというふうに思うのですが。

郷原参考人 まさにその点が、今の消費者庁法案で私が一番気になるところです、先ほどのすき間の問題とあわせて。民主党法案の消費者権利院の考え方と違うところは、まさにそこなんですね。

 所管をする、個別具体的な法令を所管するということは、やはり所管している以上は、ある程度詳しく知らないといけないと思うんですよ。数をふやせばふやすほど、きちんとそれを理解して、細かいところまできちんとやれることだけで精いっぱいになってしまって、私はよく三角形で説明するんですけれども、三角形の一番てっぺんの、根本的なところ、基本的なところ、ここにしっかり注意を向けていないといけないのに、何かいろいろな法令の細かいところにばかり目が向いてしまうんじゃないか。

 やはり重要なことは、この分野の問題の本質が何なのかということを的確に把握することだと思うんです。それがわかっていれば、どんな分野に対しても、基本的に正しい指導とか指示ができるはずだと思うんですね。

 それは、検察官として捜査をしているときも、別にその分野についてディテールまで知る必要はないんです。ただ、例えば、先ほど申したような証券市場をめぐる犯罪であれば、証券市場のフェアネスが何なのかということはきちんと理解していないと犯罪捜査はできません。そこをベースにして、この人のやった行為がどこがいけないのかということを的確にとらえていけば、最終的には正しい処理ができると思うんですね。

 そういうような役割を果たす、消費者問題を担当する官庁であるべきではないか。そのために、変なところに負担を余り広げ過ぎない方が、本当の意味で消費者のために機能するんじゃないかというのが私の意見です。

糸川委員 ありがとうございました。

 今回の場合は、各県からいろいろな情報が集まってきて、これを消費者庁で実際把握をしながら、専門的な調査を行うのかどうするのかという指示をしていくんだろうと思うんですね。

 ですから、二百四人という人数で大丈夫なんだろうかとか、その専門性は大丈夫なんだろうかとか、もし同時多発的にいろいろな諸問題が起きたときにそれでどう対処するんだろうかという懸念もあるわけでございますので、また参考人の皆様方に、お二人の参考人にもあれでございますが、この委員会は今始まったばかりでございますので、さまざまな点で御指摘をいただければなというふうに思っております。

 きょうはありがとうございました。終わります。

船田委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位には、御多用のところ、また貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して御礼申し上げます。(拍手)

 次回は、明二十五日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十八分散会


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