衆議院

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第5号 平成24年5月22日(火曜日)

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平成二十四年五月二十二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中野 寛成君

   理事 武正 公一君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 古本伸一郎君 理事 松本 大輔君

   理事 和田 隆志君 理事 逢沢 一郎君

   理事 伊吹 文明君 理事 西  博義君

      相原 史乃君    石井登志郎君

      磯谷香代子君    稲富 修二君

      江端 貴子君    岡田 康裕君

      勝又恒一郎君    岸本 周平君

      工藤 仁美君    篠原  孝君

      白石 洋一君    田嶋  要君

      田中美絵子君    田村 謙治君

      永江 孝子君    長尾  敬君

      仁木 博文君    早川久美子君

      藤田 憲彦君    三村 和也君

      三宅 雪子君    宮島 大典君

      室井 秀子君    山口 和之君

      湯原 俊二君    柚木 道義君

      渡部 恒三君    石田 真敏君

      加藤 勝信君    金子 一義君

      鴨下 一郎君    田村 憲久君

      竹下  亘君    橘 慶一郎君

      丹羽 秀樹君    野田  毅君

      馳   浩君    町村 信孝君

      斉藤 鉄夫君    竹内  譲君

      古屋 範子君    佐々木憲昭君

      宮本 岳志君    内山  晃君

      豊田潤多郎君    中島 隆利君

      江田 憲司君    山内 康一君

      中島 正純君

    …………………………………

   内閣総理大臣       野田 佳彦君

   国務大臣

   (行政改革担当)

   (社会保障・税一体改革担当)           岡田 克也君

   総務大臣         川端 達夫君

   財務大臣         安住  淳君

   文部科学大臣       平野 博文君

   厚生労働大臣

   国務大臣

   (少子化対策担当)    小宮山洋子君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   内閣府大臣政務官     大串 博志君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    山本 庸幸君

   衆議院調査局社会保障と税の一体改革に関する特別調査室長          佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十二日

 辞任         補欠選任

  勝又恒一郎君     相原 史乃君

  田嶋  要君     工藤 仁美君

  田村 謙治君     磯谷香代子君

  早川久美子君     三宅 雪子君

  柚木 道義君     仁木 博文君

  渡部 恒三君     山口 和之君

  田村 憲久君     橘 慶一郎君

  馳   浩君     丹羽 秀樹君

  竹内  譲君     斉藤 鉄夫君

  西  博義君     古屋 範子君

  宮本 岳志君     佐々木憲昭君

  豊田潤多郎君     内山  晃君

  山内 康一君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     勝又恒一郎君

  磯谷香代子君     田村 謙治君

  工藤 仁美君     田嶋  要君

  仁木 博文君     柚木 道義君

  三宅 雪子君     早川久美子君

  山口 和之君     渡部 恒三君

  橘 慶一郎君     田村 憲久君

  丹羽 秀樹君     馳   浩君

  斉藤 鉄夫君     竹内  譲君

  古屋 範子君     西  博義君

  佐々木憲昭君     宮本 岳志君

  内山  晃君     豊田潤多郎君

  江田 憲司君     山内 康一君

同日

 理事西博義君同日委員辞任につき、その補欠として西博義君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)

 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)

 子ども・子育て支援法案(内閣提出第七五号)

 総合こども園法案(内閣提出第七六号)

 子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七七号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第七二号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――

中野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、子ども・子育て支援法案、総合こども園法案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。町村信孝君。

町村委員 自民党の町村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 きのうは金環食フィーバー、きょうはスカイツリーフィーバーですか、国民の耳目を集めておりますが、ぜひ、この当委員会の審議がスカイツリー以上の高さの関心を国民から集められるように、きょうは、自民党を代表して、私、そしてこの後、竹下さん、そしてその後、石田さんが主として税制問題、その後、田村さんが子ども・子育てに関する質疑を中心に行ってまいりたい、こう思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 冒頭、手短に、もう既に野田毅議員あるいは伊吹議員が、自民党の税制改革に関する基本的な考え方、昨日もお話をしておりますから、重複は避けたいと思っております。ごく手短に、私どもの考え方を申し上げておきたいと思います。率直に、私ども長い間政権を担当しておりまして、強い反省と自戒の念を込めながら。

 このところ、例えば九百兆円を超える国と地方の長期債務残高がある。そして、社会保障の予算だけをふやして、その他の予算、例えば防衛であるとか教育であるとか、必要な予算もどんどんどんどん削らざるを得なかった。やはりこれではまずいという反省の上に立って、私たちは、三年前の自公政権時代に、所得税の附則百四条、税制の抜本改革ということを言いました。民主党さんは、そのとき反対をされました。

 そして、二年九カ月前の衆議院選挙、一年十カ月前の参議院選挙の公約にもそのことを掲げ、消費税を当面一〇%まで引き上げる必要があると。この考えは、今も変わっていないわけであります。

 そして、財政の健全化につきましては、これまた与党民主党の反対で三回とも廃案になっておりますけれども、財政健全化法案というのを私どもは提出をいたしております。

 したがいまして、先般の本会議で野田毅議員が、我々は税制改革のむしろ推進勢力なんだという基本的な認識を述べられたのも当然のことかな、こう思っておりまして、その辺が、お手元にお配りをした「自民党の消費税に関する考え方(要約)」というところに述べられております。

 その上に立ってきょうは幾つかの御質問をさせていただきますけれども、私は率直に、きのうの野田総理の答弁に、あいた口が塞がらないところが幾つもありました。

 例えば、石原幹事長あるいは伊吹議員あるいは同僚議員が、要するに、最低保障年金は撤回しなさい、七万円、あるいは、三つの年金の一元化ももうだめです、撤回をしなさい、そして、後期高齢者医療制度の廃止、これも撤回をしなさい、子ども・子育て法案は全くなっていない、こういうことを言ったわけでありますが、これを前提として我々は議論をしていこうと思っておりますが、驚くなかれ、総理の答弁は、骨格において差はない、こう言われた。私は、骨格において大きな差があると。しかし、これを乗り越えたいというのならまだしも、骨格において差がないと言われた。失礼ながら、一体どういう認識なのかと私は思いますよ。

 私は、まさにこれは抱きつき作戦だからこういう答弁をしたいという気持ちはわかるけれども、まず、大きな差があるという認識がないのかどうか、そして、この四つの法案、撤回をするんだというところをきょう明確に御答弁いただくところから私の質問を始めたいと思います。どうでしょうか、野田総理。

野田内閣総理大臣 おはようございます。

 まず、基本的な姿勢ですが、先般の野田毅先生の本会議での御質問に御答弁させていただいたとおり、もちろん、考え方は、それぞれの積み重ねがあって、違いはあることはあると思います。ただし、それは、その横たわる川は、決して広い川ではない、深い川ではない、乗り越えられるというのが基本的なスタンスであって、最低保障年金の問題等々これまで私どもが掲げているものがございます、しかし、現行の年金制度を改善する、ゴールから見るか、現実を変えていくところから見るか、アプローチの仕方は違っても、折り合うところは折り合えるのではないかという意味で、きのうの答弁をさせていただいたということでございます。

町村委員 余り入り口で時間をかけるつもりもありませんが、しかし、七万円の最低保障年金を撤回しろと我々は言っているんです。皆さん方はそれに、絶対やるんだと言っておられるんでしょう。来年、通常国会に法案を出すとまで言っているじゃないですか。どうやって折り合うんですか。

野田内閣総理大臣 今回お願いしている一体改革は、これは社会保障改革、もちろんいろいろな内容がございますけれども、二〇一五年までに段階的に消費税を引き上げていく、それを安定財源として支える社会保障というのは、これは新しい年金制度を導入した場合でも移行期間が相当ありますので、二〇一五年段階で追加の財政需要が生じるということではございませんので、そういう意味では現実的な議論ができるのではないかという意味でございます。

町村委員 ちょっと、正直言って、支離滅裂だと思いますよ、総理の言っておられることは。

 これから後、じっくり、その辺の支離滅裂さというものを我々ははっきりと問いただしていきたいし、そして、これは直接、消費税には関係いたしません、あるいは社会保障一体改革と関係しませんが、総理のリーダーシップという意味で、きのう、石原幹事長が、二人の閣僚の問責が可決してどうしてかえないのかという問題、あるいはゼロ増五減、どうしてこれを総理は積極的にやらないのかと。指示した、指示したと言っているだけじゃありませんか、ゼロ増五減については。みずからそれをやるということは一言も言われないじゃないですか。

 私は、こうした面において、総理のリーダーシップというものに甚だ疑問を持つものでありまして、これを言ってもどうせきのうと同じ答弁しか返ってこないでしょうからこれ以上聞きませんけれども、私は、総理、本気になってこの税と社会保障一体改革をやろうという気構えが全く感じられないということを、まず冒頭、申し上げておきたいと思います。

 その上で、いろいろな世論調査を見ても、例えばこれはNHKですが、総理就任時には、一体改革を支持する五二%、反対四一%で、賛成が多かったんですよ。ところが、より一体改革の中身が具体化になり、民主党の中のぐじゃぐじゃ状態がはっきりし、総理の決断、意思もはっきりしないことから、最近の、直近の状況では、一体改革支持三四、反対六〇まで、大逆転しちゃっているわけですね。この原因を、どう総理はお考えですか。

野田内閣総理大臣 世論調査は、今NHKの調査を御指摘いただきましたけれども、一体改革について、賛成、支持というその数字が下がっている調査もあります。逆に、上がっている調査もあります。これはまちまちです。

 いずれにしても、その数字で一喜一憂しないでいきたいと思うんですが、大事なことは、やはり、より多くの国民の皆様の御理解を得るためには、何のために一体改革をやるのかというその意義をきちっと御説明しなければいけないと考えております。

 今回の一体改革は、まさに一体改革でございますので、社会保障を安定化させ、充実させるための安定財源とそして財政健全化を同時達成させるということ。消費税は確かに国民の御負担をお願いすることでありますけれども、社会保障に使途は特定をされますので、この社会保障というのは、いずれ、病気になったり、あるいは年をとったり、ピンチになったときに、どんなとき、どなたでも経験をしなければならない、そういう場面で必要なサービスですので、全ての国民に還元をされるということを、きちっと意義として御説明しなければいけないということ。

 あと、やはり、世論の御支持をいただくためには、この一体改革とあわせて、経済を再生しろ、行政改革をしっかりしろ、あるいは政治改革をやれ、今一票の格差のお話もありましたけれども、やらなければいけない改革を包括的に進めるべきだというのが国民の声だと思いますので、それは真摯に受けとめて、実現をしていきたいというふうに思います。

町村委員 肝心なことを総理は言われない。みずからうそをついてこの政権をとった。マニフェストでうそをついた。うそばかりじゃないですか。その不正直なところが出発点だから、やはりこの人、この内閣のもとでの消費税あるいは社会保障の一体改革は反対だということにだんだんなってきたんですよ。

 私は、驚くほど、消費税について言えば、もちろんいろいろな意見はあるけれども、幅広い理解というのは結構あると思っています。これは、消費税導入時や何かとははるかに違う状況が今あるんですよ。

 にもかかわらず反対が多いのはなぜか。きのう、伊吹委員等々がるるお話しになった。

 例えば、消費税を四年以内の任期中に上げない、再来年の四月だから四年の任期後だ、だからマニフェスト違反ではない、約束違反ではない、この詭弁を一生懸命頑張っておられる。こんなこと、誰も国民は信用しませんよ。だって、民主党は消費税を上げない政党だと思って投票したんだから。それにもかかわらず、いやいや、自分の任期中四年間より後なんだから、これはうそではないんだと。

 これは詭弁そのものだと御自分も思っておられるんでしょう。どうですか、総理。

野田内閣総理大臣 マニフェストでは確かに消費税は記載をしておりませんでしたし、多くの幹部あるいは候補者の皆さんが言ったことは、任期中には消費税は上げない、徹底した行革の努力をやりますということを言っていたことは間違いありません。その言い方が、今回こういう形で法案を提出したこととの関連のギャップを感じている国民の皆様は確かにたくさんいらっしゃるというふうに思います。

 そのことは、逆に、なぜ今必要なのかということをしっかり御説明しながら、御理解をいただくように努力をしていきたいというふうに思います。

町村委員 いや、そういう言い方をするから国民が不信感を持つんですよ、総理。やはり、うそはうそ、ごめんなさいと認めるところから始めれば、まだもうちょっと国民の皆さんも耳を傾けてくれるんですよ。うそをつこうつこうと思うからだめなんですね、うそを正当化しようと思うから。

 例えば、財務大臣、この四年間ということで、今回、四年後だからいいんだという話の中で、八%に上げるのは平成二十六年四月、そして翌年の十月には一〇%へと、何で二段階に分けてこれこれの時期にしたんですか。なぜこういう時期にしたのか、その判断の根拠を言っていただきたい。

安住国務大臣 町村先生は、竹下元総理の、消費税を上げたときに実務的な税調の事務方をなさっておられて大変取材でお世話になりましたけれども、実は、あのときから、五%を上げるというのは、大変な、経済に対する、やはり一回で上げることに対しては懸念というのがあったと私は思います。ですから、自民党政権下でも、まず三%、次に二%と参りました。

 それは多分、経済に対する影響をできるだけ少なくしながら、消費の反動というのが傾向としてありますので、そうした点から考えれば、二〇一五年にプライマリーバランスを、現在の三角六を、これを、大きく言うと三角三にしていく、二〇年にはさらにこれをゼロに向かっていくということになりますけれども、その中で、いわば中小企業の皆さんや消費税に直接かかわる方々に対する配慮ということと、やはり経済に対する影響を考慮して、階段をつくらせていただいたということでございます。

町村委員 きのう総理は、日本がギリシャのようになってはいけないんだという強い御認識も示されました。そうであるならば、どうして来年の四月じゃないんですか。一刻も早い方がいいじゃないですか。来年の四月に、それは一挙に一〇%。

 それは、今安住さんの言われたような懸念も私はわからないではないが、何で再来年の四月にしたんですか。それだったら来年の四月でいいじゃないですか。ギリシャ化を避けたい、もう一刻の猶予もならない。何で来年の四月じゃないんですか。

安住国務大臣 階段方式を一%ずつ毎年という意見は、税の論議の中にはあるかもしれません。やり方として私はそれもあると思いますが、ただ、来年の四月は、先生、マニフェストでいえば、やはり任期中には上げないということですから、来年の四月は任期にかかわるということになりますので、引き上げは任期以降ということになると思います。

町村委員 要するに、今の答弁で非常にはっきりしたことは、あなた方のもう今やぼろぼろになったマニフェストの首の皮一枚守るために党益を重視して国益を軽視した、そのものの答弁じゃないですか。

 どうですか、総理。非常にはっきり安住さんは、マニフェストにこれ以上違反だと言われるのが嫌だから再来年にしたと今言ったじゃないですか。総理、どうですか。

野田内閣総理大臣 これまでつくってきた素案あるいは大綱というプロセスの中で、党内で議論をいたしました。二〇一〇年代半ばまでにというやつを具体的に二段階という形で、御指摘のとおり、二〇一四年の四月に最初。

 その理由は、今マニフェストのお話で関連で答えていましたけれども、党内議論では、多かったのは、例えば、いわゆる団塊の世代が年金受給の段階に全て入るのは二〇一四年、そういう議論なども踏まえて総合的に判断をしたということであります。

町村委員 団塊の世代が六十五歳に達するなんというのは前からわかり切っていることで、そんなへ理屈を言っちゃいけませんよ。要するに、さっき安住さんが言われた、おのれの党の利益のために再来年にしたというだけのことが非常にはっきりして、それはそれでよかったと思いますけれども、要するに、国益を考えて本当にギリシャのようになりたくないという野田総理のきのうの答弁は全くうそだったということも、きょう改めて明らかになったと思いますよ。私は、国民に、そこをよく、多分わかってもらった、こう思います。

 それから、うその関連でいうならば、ちょっとこのパネルの一番目を見ていただきたい。これは、きのう伊吹さんが出した、歳出の方じゃなくて、入りの方ですね。最近の、どれだけこれが達成されているか。

 歳出削減が九兆、税制改正で二・七兆、埋蔵金等で五兆で、十六・八兆という、忘れもしない十六・八という数字がここに並ぶわけでありますが、二十四年度を見てください。歳出削減二・九兆、三分の一の達成率。税制改正も半分以下。全体としても半分以下。九兆円の穴があいている。

 無駄削減、無駄削減と言っておられた。これは私らも大いにやらなきゃいけないんですが、やってきたつもりですけれども、しかし、全くこれができていないから、結局、ああ、お金が足りない、じゃ、消費税を上げるか、そうなったんじゃないんですか。団塊の世代が来年、再来年どうこうなんて何の関係もないんですよ。結局、この歳入が実現できない、無駄削減という形での歳入が確保できないから、だから消費税を上げるという結論に至らざるを得なかったのと違いますか。どうですか、財務大臣。

岡田国務大臣 まず、先ほどの、なぜ二〇一四年からかということについて一言申し上げさせていただきたいと思います。

 これは委員もよく御存じのように、やはり、消費税を上げるというときに、それなりの準備というのが必要です。まず、中小企業の皆さん初め周知徹底しないと。やはり、こういう場合に、きちんと、上げなきゃいけないと言うことですね。それから、自販機とか、最近であるとSuicaとか、こういうカードの準備というのは相当かかるわけです。そういったことも含めて申し上げているということをまず補足させていただきます。

 その上で、今お示しをいただいた表ですけれども、まず、二十二年度には十四兆円というものを出しているんですね。ですから、十六・八兆にほぼ近いものを初年度から出している。ではどうして二十四年度にはそれが減っているかといえば、例えば政府資産の売却について言えば、これは、そういったものについては復興のために使うということになっているじゃないですか。ですから、そういったことのためにここには計上されていない。

 しかも、二十四年度は、これはまだ五月ですから、これからさまざまなことをさらに努力していくということも含めた上での数字であるということを御理解いただきたいと思います。

町村委員 余り答えていない。今、岡田さん、余計なことを随分言ったと思いますよ。

 自販機の準備等々とおっしゃるならば、それであるならば、最初導入したとき、どうですか。昭和六十三年の十二月に法案が通って、翌年四月からもう三%を導入したんですよ。プログラムを変えるんじゃないんです、導入です。それがわずか三カ月の準備でできたのに、何で今回、たかだかと言っちゃ失礼ですが、三%上げるというときに二年近くもかかるんですか。これは、あなた、全然理由になっていないことを理由に挙げているということを申し上げた上で、いずれにしても、この無駄の削減というのが全くうそである。

 そして、無駄の削減といえば、これは自民党がかねてから主張しておりますばらまき四Kですよ、ばらまき四K。高校無償化あるいは農家の所得補償、子ども手当。まあ、幾つかはもうやめちゃったからもういいですよ、高速道路無料化とか。いずれにしても、こういうのをやめる。これだけで要するに幾らあるかというと、平成二十四年度、二・七兆円。大体、消費税一%分はこのばらまき四Kなんですよ。これをやめるだけで、随分、一%違うんだから。

 いずれにしても、本当は、そういうのをみずからやめて、みずから身を正して国民の皆さんと言うのが筋であるということを申し上げたい。

 しかし、私は、この壮大な、国民をだましたマニフェストのうそは意味があったと思うんですよ。

 どういう意味があったかというと、要するに、無駄を削れば、藤井財務大臣がたしか言っていましたよ、総理が副大臣のときに、いやいや、もう十兆も二十兆も、特会と一般会計合わせて二百兆あるんだから、一割、二割の無駄は幾らでも削り出せると言ったことをみんな国民は結構信用していた。でも、実際はどうですか。これだけのことなんですよ。この表にあるだけしかできない。

 要するに、もちろん無駄を削る努力は毎年毎年やらなきゃいけないけれども、とても十兆、二十兆という大台にはなり得ないということを逆に証明してくれたという意味で私は評価をしているわけであります。

 そして、ほかにもまだいろいろな問題点があります。

 後期高齢者医療制度も、これはまだやるやると盛んに言っておられるが、何となくきのうの答弁はどっちなのかなと思いましたが、これも、私は不思議だなと思ったのは、関係者の理解を得て法案の提出の準備をしていると再三おっしゃった。関係者というのは知事会ですよね、主として。主として知事会なんですよ、市町村から知事が受け皿になるんだから。

 ところが、どうですか、担当の厚労大臣、例えばこの三カ月間、あるいは岡田副総理でもいいです、どなたか知事に会ってこの話をされましたか。どなたとも会っていないんじゃないんですか。具体的な関係者との調整努力、一体、閣僚レベルで誰が何をやっていますか。おっしゃってください。

小宮山国務大臣 厚生労働省として、関係者の御理解を得るために、今委員がおっしゃいました全国知事会と、それから市長会、町村会、こういう関係団体と、政務レベル、事務レベルの両面で、改革会議の案をもとに話し合いを持っています。

 私も、今、非公開を前提にしてお会いをしていますので、相手の方との信頼関係もございますので、どなたと会ったということは今申し上げられませんが、政務レベルそれから事務レベルで今協議を重ねているところでございます。

町村委員 何で非公開なんですか。堂々と大臣室で会えばいいじゃないですか。要するに、会っていない、努力していないということなんですよ。

 では、いつ、名前は言わなくてもいいです、誰と会ったか、何日に会ったか、言ってください。

小宮山国務大臣 ことし、全国知事会の役員をしていらっしゃる方ともお会いをしております。

町村委員 全く部外秘にする必要もないようなことを部外秘で、実は何の努力もしていないんですよ、大臣。大臣レベルでやっていない。岡田さんだってそうですよ。

 では、岡田さん、誰かと会いましたか、知事と。

岡田国務大臣 もちろん、この問題は厚生労働省がまず前面に立ってやることですので、私自身がこの問題で知事クラスの皆さんと議論したことはありません。

 しかし、今、厚労大臣は会ったというふうに言っておられるにもかかわらず、委員は何の努力もしておられないと言うのは、私はちょっと違うんじゃないかと思います。

町村委員 私も、こうやって質問するからには、それなりに調べたんです。大臣は会っていないんですよ。私は、絶対大臣はうそをついているということをあえてここで申し上げておきたいと思います。

 ぜひ、この問題は、それでは理事会でもひとつ取り上げていただきたいと思いますよ。委員長、どうぞよろしくお願いいたします。

中野委員長 理事会で御協議いたします。

町村委員 それから、消費税についてきょうは主として議論をいたします。

 ここに主要論点、たくさん論点があるのでありますが、数えただけでも大変数多くあるということを御理解いただけるかなと思います。

 そこで、四番目の引き上げ時期の話は冒頭申し上げましたからよしますけれども、まず、引き上げ理由と引き上げ幅、この一番大きな問題について伺いたいと思います。

 消費税を引き上げないで、それでは今の財政健全化をするのにはどうするのかというと、さっき言った無駄の削減あるいは自然増収ということを必ず言われます。しかし、無駄の削減はもうほとんど十兆、二十兆単位のことでは不可能だということが、先ほどの実績で民主党が証明をしてくれました。

 安住大臣に伺いますけれども、非常に楽観的に考えて、いわゆる上げ潮派の人たちが言っている、自然増収で不足を賄える、こういう状態にあると認識しておられるかどうか伺います。

安住国務大臣 累積している債務の大きさと、それから毎年の国債の発行額、今は残念ながら、予算の中に占める税収と国債の比率を考えれば、経済成長を仮に何%かずつやっていったとしても、私は、それでは到底、日本の財政構造を抜本的に改革するには全く至らないというふうな考えでございます。

町村委員 基本的には私もそう考えております。やはり、構造的にこれは歳入欠陥になっているので、構造的に対処しなければいけないということだろうと思います。そういう意味で、直接税、所得税であるとか、あるいは社会保険料、これは働く世代に余りにも過重な負担がかかり過ぎるので、やはりそこは、間接税、すなわち消費税にこれからは大きく頼っていかざるを得ない、そういう構造調整が必要であるということではないかと思うのです。

 ちょっとこのパネルの三をごらんいただけますでしょうか。これは、政府がつくられた資料を、若干数字を入れかえたりなんかしてありますが、基本的には、政府資料に基づいてこのパネルの三番目はつくってあります。

 これは、社会保障の安定財源確保の枠組み、国、地方合計分で、五%消費税を引き上げた後、したがって、二〇一五年、一六年あたりの話かなと思うのでありますが、社会保障四経費、これはきのうもたしか加藤議員がこの辺御質問されましたけれども、今回の十三・五兆円の税率引き上げ、それは、六・五兆円の社会保障の充実、年金国庫負担二分の一等々に充てられて、七兆円は後世代の負担軽減、すなわち、これまでの社会保障の負担で一般会計でやっている部分をこれに充てるということで十三・五兆円が加わる。しかし、四十一兆円に対して、今回の十三・五兆円と現行の消費税十・八兆円、これは一%強が地方に回っているから、これは一般財源ですから、これを除きますと、なおかつ十七兆円不足しますね。これはもう財務大臣はよくおわかりのことだろうと思う。

 そうすると、この十七兆円、消費税に換算すると六%相当がまだ足りないんですね。だめなんです、五%上げても、なおかつ足りない。

 この基本的構図は、皆さんが認識しておられる政府の数字ですよ。どうなさるおつもりですか、財務大臣。

安住国務大臣 この数字は、基本的にはそのとおりでございます。二〇一五年時点で、いわゆる足らず前は、社会保障の中で十七兆ほどまだあります。ですから、いわば社会保障の歳出の部分の見直し、さらに、税収全体の中に占めるバランスを考えながらさらなる歳入をどういうふうに確保していくか等々、やっていかなければならない。

 それで、町村先生、二〇二〇年のプライマリーバランスを、国債の借金払いを除いたところでプラス・マイナス・ゼロにしていきながら、いわば、昨日伊吹先生の方から御指摘がありましたように、社会保障以外がほとんど一ないし一・二か三。この十数年間、投資的な……(発言する者あり)まあマイナスの部分もあります。そういうところを改善していかないと、国家というものが、これから、潜在的成長率を持つ力というものに投資ができない。こういう財政的な硬直した状況というものを改善するために、今後さまざまなさらなる知恵と工夫が必要だという認識でございます。

町村委員 確かに、歳出の見直し、これは社会保障分野でも必要なんですね、効率化。しかし、残念ながら、今回の皆さん方の御提案の中に効率化部分はほとんど見当たらないという問題がまず大きくあるし、かつ、歳出面、ほかの部分を幾ら削ってもなかなかいかない。

 歳入も、もちろん他の税収を上げる努力は必要だろうし、それもいくだろうが、余り何兆円という単位でなかなか大きなものがないとすると、基本的には、この六%相当、穴があいていますよということをみずから言っておられるのに、それに対して今回何も言おうとしないのは極めて不誠実ではないか。

 それに加えて、先ほどの七万円の最低保障年金、いろいろな前提を加えて、いろいろ変わるとかなんとかおっしゃっているけれども、常識的に見て、それだけでもやはりまた消費税が六、七%必要になるんですね。

 これは、消費税の法案、大体、この七万円が今回出てこないというのはおかしいですよ。一体改革、年金の基本だと言っているこの一体改革の骨子であるところの年金の最低保障七万円の法案が何でことし出てこないのか。これだけで一体改革の言葉にうそがあると思いますが、何で今回出してこないのか。

 そして、どうせ撤回するから僕がこんなことを聞いてもしようがないんだが、仮に撤回しないと頑張るのであれば、そのときに、あわせて消費税の税率を六なり七なり上げますという消費税引き上げ法案を来年出すんでしょうね。そのことを総理に伺います。

岡田国務大臣 まず、法案をことし出さない理由ですけれども、前々から申し上げておりますように、これはやはり、問題として、所得の少ない層で十分な年金が受け取れない、あるいはそもそも加入していないという、そういう国民年金の厳しい状況があることは事実で、そこに対してどういう手当てを政策的にしていくか、そういう問題があることは、もう恐らく委員も御賛同いただけることだと思います。

 そういう中で我々は最低保障年金という考え方を出しているわけですが、自民党や公明党は、今の制度を改善することでそれに対応していこう、そういうふうにお考えなわけです。ですから、問題意識は共通ですから、そういうことにどう対応するかについて、やはり各党でしっかりと胸襟を開いて話し合うべきだということを申し上げているわけで、そのことをぜひお願いしたいというふうに考えているところでございます。

 それから、七万円の最低保障年金を導入した場合、消費税のさらなる引き上げが必要になるという御指摘ですが、我々の試算で、現時点ではそういう結果が出ていることは事実であります。しかし、そのことについても、実は、今の制度のままでも、ある程度の引き上げは、例えば二〇五〇年とかそういうときには必要になるわけで、そこに上乗せして若干の上乗せが必要になるということです。

 もし、今消費税の引き上げ法案を全部出すというんなら、今の制度でも同じように出さなければいけないことになりますから、これは制度を具体的に組み立てながら検討していくことではないかというふうに思っているところでございます。

町村委員 これはまたいずれ議論をしていきますが、全くあなたの言っていることはおかしいのはわかっているんです。

 第一、これは、せっかく自民党から引っこ抜かれた、せっかく引っこ抜くというのはちょっと変な表現ですが、与謝野大臣が去年の六月にお蔵入りさせたものを皆さん方が無理無理十二月に引っ張り出して、そして、再来年、すなわち来年ですね、法案を出すなんというむちゃなことを、多分長妻さんあたりが頑張って、入ったことを、唯々諾々として総理が認めるからいけないんですよ。

 せっかく巧妙に、これはとても実現不可能だからといって与謝野さんがお蔵入りさせたわけですよ。だから、去年の六月にはそういうことを書いていないわけですよ、いついつなんということは。六月なんて、いずれ法案を出すなんて書いていないんですよ。

 それを無理に、長妻氏あたりが頑張って、平成二十五年に出すなんということを書いたから、皆さん方が今七転八倒の苦しみをしているのです。しかし、言ってしまった以上、閣議決定してしまった以上は、今回のこの六%の不足分に加えてさらに六%、七%必要になる。こういうことですから、結果、今皆さん方は五から一〇に上げると言っているけれども、民主党の皆さん方の本音は、本当は一〇足す六足す六、二二、三%の引き上げを提案しているということに等しい。

 私はそう受けとめますが、どうですか総理、違いますか。これはちょっと総理に聞きます。ほかの人はいいです。ここは総理に聞きます。これは大きな問題ですから。

中野委員長 まず岡田担当大臣に答えていただきます、内容ですから。(町村委員「いや、いいです、結論だけでいいんですから」と呼ぶ)とりあえず指名しましたから。

 岡田担当大臣。

岡田国務大臣 まず、私が説明をさせていただきます。

 先ほど申し上げましたように、今の制度のままでもやがて年金について足らなくなるんです。それを消費税で補うということであれば、同じように何%かは上げなきゃいけないわけで、私は、余りこういう議論をしていることは必ずしも生産的ではないんじゃないか、やはり国民の立場に立って、国民年金の現状を改善するためにどういう考え方があるのかということをしっかり議論すべきじゃないかというふうに考えております。

町村委員 協議をする、協議をしようといったって、皆さんの案が出てこないのに何で協議できるんですか。前から野田総理も、自民党と協議する、野党と協議すると言いつつ、民主党の案が固まらないで一体何を素材に議論するんですか。おかしいことはやめてくださいよ。何か野党への責任転嫁みたいな、言いがかりですよ。

 さっきの厚労大臣の答弁だって、知事会への責任転嫁ですよ。自分たちの果たすべき役割を果たさないで、野党の責任だ、知事会の責任だと言って自分の火の粉を振り払っているだけでしょう。

 こういう無責任なことはおかしいし、絶対にこれは誰がどう計算したって、岡田さん、それは一、二%自然増がある、そんな問題じゃないんです。新しい制度を導入すれば、新たにオンして四、五%、仮に二%引いてもいいですよ、それにしても四、五%は上げざるを得なくなるんですから、そのことについて私は、本当は一〇ではなくて二二とか二一なんじゃないですかと。

 どうですか、野田総理。

野田内閣総理大臣 今回の一体改革の目的は、社会保障を支えるための安定財源確保と財政健全化、同時達成ですね。

 その同時達成、例えば財政健全化でいうと、目標は財政運営戦略に基づいてやっています。すなわち、基礎的財政収支の赤字を対GDP比で二〇一五年までに半減をさせる。その半減をさせるという数字との整合性の中から今回の数字が出てきています。したがって、それは社会保障全体を消費税で全部カバーできるものではございません。それは委員の御指摘のとおりです。ギャップがあります。

 加えて、私どもの訴えている最低保障年金等々を将来に導入すれば、将来的には当然またそのギャップも出てくることは事実でありますけれども、今回の位置づけは、社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成への重要な第一歩を踏み出すための改革です。

 その二〇一五年までに、経済の状況とか業界の取り組みとかいろいろな評価があると思いますが、歳出削減と成長の道をたどりながら、もう一つ歳入改革と、財政健全化をたどる道は三つしかないわけですから、その組み合わせの中で二〇一五年の段階で判断をしていくということでございます。

町村委員 財政健全化、たしかこれも政府の資料でありますが、パネルの四をごらんいただきますと、確かに、二〇二〇年、プライマリーバランス黒字化、これには、GDP比三%相当、すなわち、これは消費税に置きかえれば六%相当、さっきの社会保障の六%と大体符合する数字なんだろう、こう思います。

 いずれにしても、もう目に見えて、皆さん方が資料で認識しているんです。第一歩とおっしゃるが、だって第二歩目がもうすぐそこに見えているじゃないですか、皆さんの資料で出しているんですから。

 それでは、皆さん、不思議だなと思うのは、二月十七日の閣議決定で、五年後、消費税率のいわば再引き上げをはっきりと読み取れるような、それでもぼやっとした文章が書いてありましたね。それは「法案の附則に明記する」とまで二月十七日の閣議に書いてありました。しかし、三月三十日の法案からはすぽんと抜け落ちております。

 総理は、たしか金子議員だったかな、本会議の質問に答えていわく、民主党との調整ができなかったと言われた。要するに、その程度の認識、その程度の決意でこの財政健全化をやろうと言っているんですよ、あなたは。それで、ギリシャ化にしたくない、政治生命をかけると。余り大仰なこと言いなさんなと私は言いますよ。

 だって、次の第二歩目が目に見えて、皆さんの資料でも書いてあるんだから、社会保障の面からも、財政健全化の面からも。そして、それをせめて附則に書こうとしたら、民主党の抵抗があったらへなへなへなとおりちゃったじゃないですか、総理は。どうしてこれで、総理大臣、財政健全化できますか。これは総理大臣の答弁です。

野田内閣総理大臣 私、金子先生の答弁で、民主党の反対があったからやめたという言い方はしていないと思います。党内の御意見を踏まえて対応したという言い方はしたと思います。

 党内の御意見というのは……(発言する者あり)いや、いや、いや、それは正確に申し上げなければいけないですが。

 抵抗があってやめたんじゃないんです。党内の意見、どういうことがあったかというと、今後やるべきことというのは、私がさっき申し上げたことです。財政の健全化というのは、歳入改革もありますけれども、歳出削減もやらなければなりません。加えて、成長をさせて増収を図るという道があるんです。これはでも、ある意味当たり前なんです。当たり前のことをそこへ書き加えることもないんではないかという意見があったんです。それを踏まえて消えているというのが事実でございます。

町村委員 だから、冒頭、先ほど申し上げたように、歳出削減の限界はもう目に見えた、自然増収は、ほとんど、そんなに大規模とかでできないと安住大臣がさっき答弁したじゃないですか。あなたの言っていることと違うでしょう、安住さんの言っていることと総理の言っていることと。いろいろできますよねなんて言ったって、できないんだから。

 しかも、民主党の反対というか、当時の新聞を見れば、みんな覚えていますよ。民主党の皆さん方が、こんな、五%上げる約束をした上に、さらにまたそこから先、再引き上げなんか約束したら、俺たち、選挙できないと。この方々、ここにいる方とは言いませんよ、民主党の皆さんがそう言ったからあそこを削ったと全ての解説、当時のマスコミ、みんな出ていますよ。だから、民主党との、反対があったというか、調整ができなかったから落としたんでしょう。その程度の決意なんですか。

 その程度の決意だということが、あなたは、言葉だけではいろいろ力強いことを言うけれども、行動が全部伴っていないんですよ。行動がないじゃないですか。二大臣の責任の重さを痛感していると言いつつ、でも、行動の面では、罷免させないじゃないですか、交代させないじゃないですか。

 あなたのは全部、悪いけれども、松下政経塾流、言葉だけの勝負なんですよ。行動で示さないからだめです、行動で。私は、総理大臣の言っておられることというのは、まことに言葉だけ、行動が伴っていない。(発言する者あり)失礼しました。政経塾にも立派な人はいますから、一概に言うつもりはありません。

 少なくとも、政経塾出身の野田総理の言葉の軽さということが、今ごらんいただいた二つの図表からよくわかると私は思いますけれども、さらに言うことありますか。

野田内閣総理大臣 まず、安住大臣との矛盾を言われました。

 これは矛盾じゃありません。私も安住大臣と認識は一緒です。でも、成長はさせなきゃいけないんです、成長は。成長させても、ただそれは、例えば利払いがふえるという歳出の圧力もあるので、だから成長だけではだめで、歳出削減もやらなければいけないし、歳入改革もやらなければいけないんです。これは、だから安住大臣との矛盾ではございません。

 それから、言葉の問題を申し上げましたけれども、先ほど申し上げたとおり、党内のいろいろな意見を踏まえて今回つくってきています。それは、でも、抵抗があった、反対があったからという、そういう一面的な捉え方は困ります。それは、さまざまな意見を取り入れながら、私は多くの人たちが賛同できる改革にしたいと思っていますので、これは後ろ向きの姿勢ではございません。

 それで、行動を伴えと言われました。行動というのはこれからしっかりと出てくると思いますので、ぜひごらんいただきたいというふうに思います。

町村委員 そうやって、総理、自分のやったことをことごとく正当化しようとするから、みんなあなたの言っていることはうそだ、信用できないということになるんですよ。どうしてそうやって自分が言ったことをことごとく正当化しようとするのか。私は、非常にそこに、あなたが、一見誠実風、その実極めて不誠実な、その政治家としての姿勢を今はっきり見た思いがしますよ。かねがねそう思っていたけれども、改めてそう思いますね。非常にうそが上手であるということであります。

 では、またパネルの二を戻してください。

 次に、この三番目の社会保障の目的税化。

 これは、私どもも目的税的に使おうということを言っていますから違いはそうないのでありますが、本当は、これだけの大型の歳入は余り目的税的に使うというのは私はいかがなものかとかねてより思っていたのでありますが、財務大臣、どうお考えですか。これは、本当は、願わくば一般財源。ただ、国民の理解が得やすいからということなんですけれどもね。率直に、どうお考えですか。

安住国務大臣 これは、野田毅先生おられますけれども、十一年に予算総則に盛り込んで、事実上高齢者三経費に充てるということで、これは毎年の、単年度予算ですから、予算書に上げてきました。

 やはり、ここは意見の分かれるところだと思います。最も一般経費の中にかかる社会保障の主な部分を予算編成の事実上外に置くということについて、果たしていいのかという意見も当然あると思います。

 ただ、一方で、これだけの社会保障にかかっているウエートに充てる税をわかりやすくするには、お預かりした税は、国民の皆さんに、年金、医療、介護、さらに少子化ということで、我々、四経費と申し上げておりますが、お預かりしたものを何か財務省なりがほかのものに使うんじゃないかという誤解をきちっと解いて、わかりやすくやらせていただくには、ひとつ、今回は恒久化というものを提案させていただいたというところでございます。

町村委員 本当はこの景気対策と特に低所得者対策のところをもう少し詳しく御質問したかったのでありますが、特に景気対策について一つ二つ伺います。

 実質二%成長、名目三%、これは前提条件ではないという国会答弁がありましたから、それはそのとおり受けとめますが、しかし、私は、悪いけれども、歴代民主党内閣の景気対策、成長対策、非常にお粗末だと思いますよ。

 菅内閣が、二十二年六月、野田財務大臣でありますけれども、成長戦略というのを決められた。つい先日、内閣府のその総括では、九割方失敗であったということですね。

 要するに、野田財務大臣、野田総理の責任というのは一体どうなっているのかと思いますし、またさらに、年央というから六、七月ですね、年央に日本再生戦略というものをおつくりになると答弁しておられる。これは、今までの成長戦略と再生戦略と何が違うんですか。

 そして、僕はいつも思っているんですけれども、皆さん方のは、何か政府が絵を描くと世の中は自然にそうなると非常に楽観的にお思いのようだけれども、具体的な手段が大体いつも書いていないんですよ、これをどう達成するかと。

 今、私ども自由民主党は、やはり成長戦略ということを考えています。例えば、二階議員が中心になって、列島強靱化計画というものをつくろうと。防災計画、相当大規模な、これは建設国債で当分やらざるを得ない、こう思っております。一時的に財政が厳しくなっても、そこはやむを得ない。そして、それは特に、都心部というよりは、やはり地方の経済の活性化に物すごく役に立つ。

 今地方の経済が非常に疲弊しているのは、皆さん方がきのう胸を張って、公共事業をこんなに減らしたぞと胸を張って言っておられるが、その結果がどれだけ地方に物すごい大きな痛みになり、倒産が出、失業が出、そして働く場所がなくなっているかというそちらの面を全く見ないで、相変わらずコンクリートから人と言い続けているように見えます。でも、三・一一後、民主党の皆さん、誰もコンクリートから人と言わなくなったんで、やっと気がついていただいたのかなと思って喜んでおりますけれども。

 いずれにしても、こういった列島強靱化とかあるいは成長のことを考えたら、この電力の不足問題に対する対応の遅さ、お粗末さ、ひどいじゃないですか。五月の上旬に泊がとまって全部の原発が停止するのがわかっているにもかかわらず、早く安全基準も決めないとか。要するに、本気になって野田総理が、野田内閣が景気、経済ということを考えていないというあかしではないかと思います。

 この新日本再生戦略ですか、一体、どういう中身を考え、どういう政策手段を考えているのか。だって、年央というのは六月、七月のことですからね。もう大体できているんじゃないかと思いますが、その中身についてお話をいただきたい。

野田内閣総理大臣 まず申し上げたいのは、政権交代をした、一昨年九月以降ですか、それは、しばらくはリーマン・ショックの影響等があって景気は落ち込んでおりましたけれども、政権交代以降は、四四半期、プラス成長になったんです。

 それは、自公政権がまいた種もあったと思います。だけれども、私どもも、景気対策、雇用対策は最重点課題としてずっと位置づけてきていました。今から取ってつけた話ではなくて、一貫してやってきているということは事実として押さえておいていただきたいと思います。

 その後、東日本大震災によって景気は落ち込みました。だけれども、先般出た一月から三月期のQEでも、年率で四・一%の成長になりました。復興需要の取り組み等々さまざまな取り組みがあって、数字として、私どもは懸命に結果を出してきているというふうに思っております。

 その上で、今お尋ねの新成長戦略の、今その総括を政府等でやりました。これについては厳しい検討をしたんです。やっていることは、九八%は実施、一部実施です。手をつけていないものはほとんどありません。

 今までの総括、検証というのは、やりましたということで、それは一つの評価をいただこうとしたんです。それでは意味がないと。やったということだけではなくて、成果がどう出たかということを厳しく検証しようとして、まだ成果が出し切れていないというか、判明しないものがあるんですね。

 例えば新成長戦略、観光を位置づけています。これは、やはり大震災によって、影響、変わりました。あるいは、農産物の輸出をしていこうとしました。だけれども、これも、大震災の影響等によって、影響があります。

 だから、成果が出し切れていないものがあるんです。そういうボトルネックは何なのかということを検証して、新成長戦略をブラッシュアップして日本再生戦略に持っていこうというのが基本的な姿勢であって、厳しい検証をして成果を出したいというのが我々の思いであるということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 その中で、今御指摘があったエネルギー分野等々のいわゆるグリーンイノベーションであるとか、医療、健康のいわゆるライフイノベーション、こういう柱はしっかり立っています。その上で、細かい政策を、さっき申し上げた厳しい検証の中で成果が出せるようにするという努力をしているプロセスにあるということであります。

町村委員 ぜひ、意味のある新しい戦略をつくっていただきたいと期待をいたしましょう。

 最後に、低所得者への配慮ということについて。

 私は、野田毅議員と同じですが、逆進性という言葉を使うのは不適切ではないかと、これはいろいろな方々が言っておられますけれども。ライフタイムという、生涯で見れば全くそういうことはないんですね。でありますから、逆進性というより、むしろ、所得の低い方々への当面のショックを緩和するということなのかな、こう思っております。

 ここに書いてありますように、軽減税率というやり方と給付つき税額控除を皆さん方は導入したいと、そして、それが導入できるまでの間、暫定的な簡素な給付措置、こういうことのようであります。

 私どもは、所得税法附則で書いたように、複数税率の検討など低所得者への配慮と書いてありますから、私ども自由民主党、私もそうでありますが、一長一短とは言うものの、しかし、やはり軽減税率の方が、この一番上に書いてありますけれども、わかりやすい、実感しやすい。

 特に、私は、毎日買う食料品だけでいい、こう思っているんです。毎日か一日置きに食料品は生鮮野菜等々買いに行きましょう、だから、やはりその都度実感を持てるようなものがいいんだという意味、それはほかにも幾つか理由はありますが、私は、そういう意味で軽減税率の方がいいんじゃないかと。

 これに対して、給付つき税額控除、まことに理解不能ですよ。これを理解してもらうのは相当なことだと思いますし、わかりづら過ぎるし、第一、ここにも書いてありますけれども、これは安住大臣、ちょっと限られた時間で御答弁いただきたいんですけれども、低所得者の範囲は一体どこにするんですか。

 マイナンバーは確かに必要でしょうけれども、しょせん、それでも金融所得は把握できないでしょう。あるいは、国税当局は所得税の課税最低限以下の方の所得は把握できないんだから、どこに一線を引くかといっても、この人がどこにあるかというのはわからないんでしょう。

 そして、もっと心配なのは、既にやっていると言われておりますアメリカやらイギリスでも、小さい所得申告をして、より多くの給付をもらうという大変なモラルハザード。要するに、これは何のことはない、給付つき税額控除といっても、また皆さん方のお好きなばらまき。もうその究極が、暫定的、簡素なと言いつつ、何か四千億から一兆円ずうっと続けるという話も漏れ伝わってくるのでありますが、こんなばらまきは一体いいんですか。

 こうしたことについて、財務大臣のこれまでの検討結果の御報告をいただきます。

安住国務大臣 簡素な給付つき税額控除と、それから、それまでの間の簡素な措置、この基本的な考え方は、やはり所得の低い方をターゲットにして、それでこういう方々にできるだけ消費税での、いわば逆進性という言葉はと言いましたが、所得の低い人ほど消費税の影響は大きいということに配慮してということですが、先生の今御指摘のように、諸外国でも導入をしておりますこの制度には、ストックの所得では、フローはある程度把握はできますが、法定調書でいう五十七種類の所得は把握できますが、いわゆる資産については、これは、例えば何らかの金融関係の税で推知をしたりするしか道がないのではないかという御指摘だと思います。

 これは、私どもも率直に制度の充実というものを図っていかなければならないし、また、ターゲットを広げれば、ばらまきというお話でございましたが、際限なく財源が広がっていくということもあると思います。

 私の考え方をあえて申し上げさせていただければ、水平的な税でございますから、仮に所得の低い方がおられても、その方々にも少しずつ御負担をいただくことこそがこの税の実は重要なポイントだと私は思いますから、それに反しない範囲の中で、しかし経済的な影響を与えないようにする。一方で、先生が御指摘のある軽減税率についても、範囲を広げると兆円単位のまた負担、何といいますか、税の影響もありますから、諸外国ではやはり一五%前後の標準税率の中から実は導入をしているということもあるわけでございます。

 そういうことをるるこの委員会で、私ども資料を出させていただきますので、ぜひ、どちらが消費税の軽減対策にいいのか、御議論いただければと思っております。

町村委員 時間が来たからやめますけれども、最後に一点だけ委員長にお願いしたいんですが、あるいは財務大臣にもお願いしたいんですが、きのうも石原幹事長が言っておられた二十八項目の「検討」、これだけ法案に「検討」という言葉があるのは珍しいと思いますが、私は、少なくとも検討の方向性、このぐらいは早く資料をこの委員会に出してもらって、そして実のある審議ができるように、のっぺらぼうの検討というのはやはりまずいですよ、やはり、できるだけ早くそういった資料をこの委員会の皆さんに出していただきますように委員長にお取り計らいをお願いして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

中野委員長 理事会で協議をいたします。

 これにて町村君の質疑は終了いたしました。

 次に、竹下亘君。

竹下委員 自民党の竹下亘でございます。

 消費税、基本的に私自身は、引き上げていかなければならない、そして、社会保障の充実もありますが、国家の財政規律をしっかりしていかなければならないという基本的な考えでございます。しかし、今皆さん方が提案をされておりますような形では賛成できないというか、覚悟が感じられない、本当に生ぬるいなという思いを強くいたしておるところでございます。

 まず、財務大臣にお伺いをいたしますが、消費税導入のとき、平成元年のときに導入になり、平成九年で引き上げになっておりますが、そのときの税収構造、増税だったのか減税だったのか、差し引きどうだったのか。さらには、今回の一〇%への引き上げ、これは国税、地方税ということはありますが、国民にとっては同じです、幾らの税収を考えていらっしゃるのか。まず、その数字からお願いをいたします。

安住国務大臣 竹下登総理のときの御指摘でございますけれども、私は当時まだ政治家でございませんでしたので、記者として見ておりましたけれども、やはりあの当時は、財政再建と同時に直間比率を正していこうというのが竹下総理の先見の明だったと私は思います。

 直間比率を直すということは、広く薄く国民の皆さんに、福祉社会、長寿社会が来た中で社会保障の財源を確保するためには、やはりそうした人口構造が変わっていく中で、こうした消費税を導入することが必要である。統計で見ましても、当時の直間比率は、直接税が七二・八%、そして所得税全体でも課税率が七〇%を超えていた、地方税を含めると八八%の所得税の累進税率であった。

 こうしたことからいえば、やはり間接税の三〇%の状況というものを正していくというのが、私は、竹下総理のお考えだったのではないかなと今になって思っております。

 これは、亘先生の方にむしろ教えていただいた方がいいわけでございますが、そうした中で、実は竹下総理は、所得税について減税を何度かいたしまして、いわば増税、減税、プラマイでいえばほとんど同じような状況にして、これは経済の中での影響というものをできるだけ低くしながら、国民に初めてである消費税を導入なさったのではないかと思うんです。

 大平内閣から始まって、中曽根先生のときの売上税の問題等々、山頂登山でいえば二度のアタックにそれぞれ試みられて、三度目の挑戦ということで、竹下総理はいろいろなことをお考えになられて、後に六つの懸念等お示しにもなられて、そうした間接税に対する国民の不安というものを一つずつ御丁寧に払拭しながらこうした税収構造の見直しに取り組んで、最初の消費税を導入なさったというふうに私感じております。

竹下委員 私がお伺いしたのは、平成元年の導入時は増税だったのか、減税だったのか。(安住国務大臣「プラマイ・ゼロです」と呼ぶ)二兆数千億円の減税のはずです。もう一度検討してください。

 それから、平成九年の引き上げ時、このときは増税であったのか、減税であったのか。そして、今回はどうなのか。まずその数字を教えてください。

安住国務大臣 昭和六十年のときは、直接税で五・八兆円、既存の間接税の廃止等で三・四兆円の減収でございます。それに対して、消費税の創設で五・四兆、それから課税の適正化等で一・二兆で、差し引き二・六兆ということでございます。

竹下委員 減税なんですよ。消費税の導入は増税ではないんですよ。その認識をまず持っていただきたい。

 なおかつ、平成九年、お答えになりませんでしたから言います。レベニュー・ニュートラルでほとんどプラマイ・ゼロであります。

 それに比べて今回はどうであるか、幾らの負担を国民に求めるか、まず財務大臣からお答えをいただきたい。理屈はいいです、数字を教えていただきたい。

安住国務大臣 一%の推計を正確にはじき出してはおりませんが、大体二・五兆、一%でそれぐらいの税収ではないかなということでございますので、そこからはじき出すと十三・五兆ぐらいではないかなと。ただ、これはあくまで正式な推計ではございません。

竹下委員 ですから、純粋の増税は今回が初めてなんです。なおかつ、十数兆円というオーダーの大増税であります。

 減税のとき、あるいはレベニュー・ニュートラルで増減税チャラという状況のときに、そのときの政府がどれだけ心配りをして、どれだけ準備をして、どれだけ説明をして行ったか。

 それと、大きく違うのは、今回が初めて純粋の大増税である、その認識が内閣に私は欠けているとしか思えない。税に対する敏感性が全くないと言わざるを得ないと思う次第であります。

 例えば、先ほど財務大臣がお話しになりましたが、六つの懸念、消費税が抱えておりますさまざまな、税というのは一〇〇%正しいものはありません、消費でかけるか、所得でかけるか、資産にかけるか、この三つしか税目、税の財源はないわけでして、その割合をどうするかというのはまさに政治が決断をしなければならない。

 そのときに、さまざまな問題を、野党が追及をする中で問題点が出てくるのではなくて、政権の方から、政府の方から、消費税にはこういう問題点もあります、しかしそれは一つ一つ克服をしていきますという対応をしてきたのが、少なくとも、自民党、公明党が政権を持っていた時期の税に対する物すごい心配り、しっかりと対応してきたと私は思います。

 なおかつ、それでもなかなか理解してもらえない。それは、消費税導入のときに言っておりましたが、新税を創設して続く内閣なんかない、たとえ大減税であってもこれで竹下内閣は終わりだということを腹に決めてこの税制改革に臨んでいったわけでございます。

 ですから、新しい税、新税は常に悪税なりという言葉がございます。しかし、定着すれば必ず良税に変わっていくということ。さらには、先ほどちょっと安住さんに先見性という言葉で褒めてもらいましたが、後世の歴史家がこれを判断する、今は誰も判断してくれなくていい、そこまで覚悟を決めて大減税を行ったわけなんです。大増税を行ったわけじゃないんです。その違いをもっともっと皆さん方に骨身にしみて理解をしていただきたい。

 そして、それでもなかなか御理解をいただけない場面というのはあります。「若聞人なくば、たとひ辻立して成とも吾志を述ん」。これは江戸時代の思想家の石田梅岩の著書の斉家論の中に出てくる言葉でございますが、所信表明の中でこの言葉を引用し、そして、実際につじ立ちを何回も何回も繰り返していく中で消費税というものを国民の皆さん方に理解していただこうと汗をかいたわけでございます。

 そして、村山内閣のときに引き上げを決め、橋本内閣で実施をいたしておりますが、その際も大変な努力がございます。

 例えば、山中貞則先生が実は消費税の後の選挙で落選をされているんです。当時の自民党の税調会長。しかし、そのことを覚悟で山中先生は先頭に立って消費税の問題に取り組んでこられました。

 どういう面でやられたか。私が存じておりますのは、中小零細企業対策、本当に転嫁できるかと。なかなか難しい問題がある。公正取引委員会とさまざまな協議を積み重ねる中で、事実上のカルテルと言えるところまで踏み込んで、公正取引委員会に、これは消費税の転嫁をするための話し合いだから、いわゆる罰則に当たるカルテルではないということをみずから説得をして、中小零細企業対策というものを真剣にやってこられた。下請に対する対応というものも真剣にやってきておられるわけであります。

 そういう、いわば減税の中でも細心の注意、心配りが必要なのが税に対する物の考え方でございますが、私は、野田総理が言われる言葉の中で多少ひっかかりを持つ言葉があるんです。どの政権でも避けて通れない課題だ、そのとおりなんです。そのとおりなんですが、国民に向かって言う言葉ではない。これは、きめ細かさ、心配りのある言葉ではない。議論の中では幾らおっしゃってもいいと思いますが、避けて通れない問題だと大上段から言われたら国民がどう思うか、その辺の心配りというのをもっともっとやっていただきたい、このように願うものでございます。

 困難なことを正直に言うこと、難しいことを真心を込めて話すこと、これはまさに政治家に課せられた話であります。

 先ほど、町村議員の質問の中で、余りにもごまかし、うそ、詭弁が多いじゃないかという指摘が何回にもわたって出ておりましたが、私自身、これではなかなか国民は納得しないだろうなという思いを持っております。

 なおかつ、自民党に対して、私は多少ひどい言葉を使いますが、マニフェストで十六・八兆円というのが全てのうその原点だ、こう思っております。ですから、うその尻拭いを一緒にやろうと言われても、ちょっと待て、その前に、自民党になんか謝る必要はないんです、国民に対して謝って、その上でいろいろな議論をやっていかなければならない、このように考えておる一人でございます。

 さて、今回の消費税の引き上げは二段階になっております。

 一つは、なぜ二段階かなという疑問を私自身が持っております。五%を一発で、確かに、その抵抗は非常に強いということはあります。それから、導入時三%であった。これは、導入時だから、本当は五の方が経済界なり中小企業の皆さんから見れば処理しやすい数字、五%の方が会計的に処理をしやすい数字であったのをあえて三としたのは、小さくスタートをして国民の中に定着をしてもらおうという思いがそこに入っておったわけでありますが、今回の三%、二%という二段階の引き上げになった本当の理由が私にはどうしてもわからない。

 なおかつ、二段階、二回やると、ソフトの組みかえを二回やらなきゃいけないんです。町の中小の商店にこの負担を強いていかなければならない。なかなかこれに対する対応というのは難しい問題もございますが、まず、なぜ二段階なのか、そして、なぜこの二段階の時期が一四年四月と一五年十月なのか、この二つについてお答えを願います。

安住国務大臣 先ほども私や総理からお答えをさせていただきましたが、私は、やはり経済への影響というものを少しでも緩和をしながら段階的に上げていった方がいいのではないかと思っておりました。

 例えば、先生、一千万円のものを何か購入したとした場合、いきなり五十万の消費税が百万になるというのは、やはり非常に、購買意欲から見るとちょっとためらうような大きさであるということだと思います。しかし、これを階段を踏んでいけば、消費の変動というのはやはりへこみがありますから、そういう点では、階段を丁寧に踏むことによって、そうした需給のバランスというものを、経済にできるだけ影響を与えないようにしなければならないということだと思います。

 それから、総理からも御指摘がありましたけれども、団塊の世代が二〇一四年、年金受給者になっていく、一気にこれはふえていくわけでございますから、社会保障の目的税としてのタイミングということを考えれば適当な時期ではないかということと、これは岡田副総理も申し上げましたが、やはり準備期間、特に、今先生からも御指摘ありましたが、中小企業者の皆さんにとっては、価格表示を大幅に変えたり、さまざまな実務的なことがございます。時間を要する、そうしたことを総合的に勘案すれば、やはり今回提案をした一四年の四月それから一五年の十月ということがベストであるということで、提案をさせていただきました。

竹下委員 では具体的に、中小企業に対しまして、この二段階への対応はどんなことを考えていらっしゃるか。さらには、やはり中小企業、零細企業にとって一番難しいのは価格の転嫁の問題である。あるいは、大きな取引先に対して物品を納入するときに、おまえのところで消費税分だけまけろ、こう言われて、中小零細企業、力の弱いところがちゃんと対応できるかといったような問題等々がありますが、それについてはどのように考えていらっしゃいますか。

安住国務大臣 先ほど先生は山中先生の例をお出しになられましたけれども、私も、価格の転嫁をきちっとするためにカルテルを結んで、そして中小企業者の皆さんに対していわばそれが守りになるといいますか、今先生から御指摘の話というのは、何か特権的な地位にある、いわば上にいる企業が中間業者に対してその部分で消費税の転嫁をさせないような暗黙の圧力のようなものをかけさせないためにも、当時このカルテルをしいたことで、当時の日商なんかは反対が大変和らいだと聞いております。そういう点では私、やはり山中先生の政治決断というのは中小企業対策にとって非常に大きかったと思うんです。

 そういう中にあって、今後、二段階になりますけれども、私もやはり転嫁対策というものはしっかりとっていかなければならないと思います。そのためには、優越的地位の濫用というものを防いだり、今度新たに、今、党の方でも議論をいただいておりますけれども、こうした転嫁に対する取り締まりを強化するためのGメンを設けたり、それから表示の方式等について広く内外の意見を聞きながら、転嫁のしやすいような考え方というものをそれに反映させたり、さまざまな努力を講じていきたいと思っております。

竹下委員 実際導入する際には、必ず経済にも影響がございますし、もちろん生活に対して影響が出ますので、そうした面での細心の配慮は、細心の上にも細心の配慮をしていっていただきたい、このように思います。

 今まで、税に対する敏感性が欠けているという点を中心に質問、お話をさせていただいておりますが、減税ではなくて増税である、初めての大増税であるという点について、野田総理の感想なり心構えをまずお伺いしたいと思います。

野田内閣総理大臣 竹下委員御指摘のとおり、導入時はネット減税、次の引き上げ時は中立的、今回は、十三・五兆の国民の負担がふえるという増税であります。だからこそ、今ずっとお話を聞いていて、やはり覚悟と、丁寧な説明と、あと気配りが大事だということを改めて勉強させていただきました。

 今回は、御負担いただく部分は全て社会保障でやる。すなわち、国民の皆様が、将来、間違いなく老後を迎えたり病気になったりするときに必要なサービス、そのための安定財源を確保すると同時に、今、欧州の危機も、これは対岸の火事ではない、財政健全化も果たしていかなきゃいけないという同時達成であるということ、その目標、意義というものをしっかり御説明しなければいけないなというふうに思います。

 意義の御説明とあわせて、先ほど、竹下元総理の六つの懸念のお話がございました。

 この懸念は、今も残っているものもございます、いわゆる逆進性の問題、公平感の問題を含めて。そういうものは、きちっと制度を、先ほどの転嫁の問題も含めて、かなりこれは配慮しながらやっていかなければいけないのと同時に、懸念のうち、内容が変わったものがあると思うんです。

 六つの懸念のうち、当時、インフレの懸念をおっしゃっていたと思います。今はデフレなんですよね。デフレとの関係でどうするか。だからこそ、今回の法案の中では、名目三%、実質二%という数字を政策目標に掲げています。

 状況、時代は変わりましたけれども、環境は変わりましたけれども、配慮しなければいけないテーマはふえていると思うんです。増税の分、意義を言わなければいけないことと、国民の皆様に増税をお願いするから、だから、行革もやらなければいけないし、定数削減もやらなければいけない、経済の再生もやらなければいけない。むしろ、配慮する項目はもっと大きくなって、包括的になっていると思います。だからこそ、もっと本当に覚悟と丁寧さが必要だという御指摘は、これは真摯に受けとめなければいけないと思っております。

 御指摘、本当にありがとうございました。

竹下委員 まさにおっしゃるとおり、心配りをしなければならない範囲、深さは、より大きくなっている。だけれども、何にもしていないじゃないですか。

 例えば、問責二閣僚の問題あるいは定数の問題、審議に入る前にやっておかなければならない環境整備の一つですよ。審議に入ってがんがん追及されてこれでやるぐらい、政治の愚はないですよ。まず、審議に入る前に、成立させたいなら政府・与党として環境整備をきっちりやっておく。当たり前の話。そのためにもっと汗をかいて、きちっとしてやっていただきたい。

 例えば、民主党内でいろいろな意見があると。それはあります。政党の中にいろいろな意見はありますが、その取りまとめなり方向性の一致なり、これは国会に法案を提出する前にやらなければならない。提出した後、例えば今の、審議がスタートをしてもなおかつぐずぐずくすぶっている状況、これは努力したという状況ではありません。皆さん方は努力していません。そのことをもっともっと自覚して、汗をかいていただきたい。

 しっかりと審議ができるような、あるいは国民の皆さん方が、考えてもいいな、こう受けとめていただけるような審議をするためには、まず環境整備からやらなければならない。その部分をぜひもっとしっかり考えていただきたいと思うところでございます。

 そしてもう一つは、財政規律に対する認識の欠如とでもいいましょうか。

 一つは、十六兆八千億が全てのうその原点であると私自身認識をいたしておりますが、この十六兆八千億円というのは、恒常的な費用、一回限りのいわゆる埋蔵金頼りではない、二百兆円から、無駄を省き予算の構造を変えればこれだけの金額はいつでも出てくると。当時の鳩山さんでしたが、いや、そんなことはできませんよ、無駄を省くというのは、やり続けなければならないけれども大変ですよという話をしたら、心配しないでください、そういう答えがぽんと返ってきたんです。言葉が本当に軽いなと。

 なおかつ、四十四兆円、毎年国債を発行して今の予算が動いておるわけでありますが、この四十四兆円という数字、自民党のとき、自民党、公明党で政権を持っていたとき、それは我々も日本国の借金を膨らますのに大きな罪を犯した。そのこと自身、我々自身も物すごく反省をしなければなりませんが、細心の注意の上に、厳しい状況の中でも、三十兆円という国債の発行上限というものを定める中で財政運営をし続けてきた。なかなか景気がよくならない中で、三十兆円を守るのは相当、それでも苦しかったですけれども、私たちはそれをやり通してきた。

 しかし、民主党の場合、民主党政権になって、四十四兆円という予算の中における国債発行の上限を設けて、四十四兆円を守ればいいんだと。四十四兆円というのは、三十兆円の当初予算の国債の枠に景気対策の十四兆円を乗っけた数字。一時的な数字として、自民党のときに四十四兆円が出たことは事実でありますが。

 私は、このときに、この四十四兆円、こんなにおおらかに借金しちゃだめだよという話をしたら、当時の菅財務大臣は、自民党のときもやったじゃないかと声高に答弁をされました。ああ、この人には話しても無駄だな、財政のことを聞いても無駄だなというのを、私は非常に強く感じたことを今でも覚えております。

 財政の規律が党全体で欠けておる。だから、四十四兆円を守っていれば、なおかつ、今年度予算については、交付国債という何だかわからぬものまで使って四十四兆円を守ろうとしておる。これを守ればいいというものではない。四十四兆円というのは、やはりむちゃくちゃな数字なんだ、税収よりも多いむちゃくちゃな数字なんだという認識が本当に政権サイドにあるのかどうか。覚悟をもう一度お伺いしたいと思います。

安住国務大臣 税収が国債発行額よりも少ない状況というものがいかに異常であるかということは、私、十分認識しております。ですから、何とか、来年度予算の編成においてはこれをひっくり返さないといけない。

 ただ、一方で、竹下先生おっしゃるように、では、そもそも四十四兆、多分、交付国債を入れたらもっとじゃないかという御指摘かもしれませんが、リーマン・ショックの後の税収構造が、思った以上に、三十兆円台になってから回復していないということも事実だと思います。

 ですから、そういう点では、税収全体を上げていくと同時に、税収に左右されない安定的な財源を確保することで毎年ふえ続ける社会保障をカバーしていくという点からも、私は、やはり消費税というものは大変重要なものであるというふうに思っております。

竹下委員 総理にも、財政に対して。

 あなたは財務大臣をやり、そして今、総理大臣の椅子に座っていらっしゃいます。国家の財政に対するあり方、あるいはその規律の維持の厳しさ、そうした点を含めて、覚悟のほどをお伺いいたします。

野田内閣総理大臣 平成二十一年度の決算ベースから、税収よりも借金に依存する財政運営にならざるを得なくなりました。これは昭和二十一年以来という、今まで経験したことのないような財政の危機だと思います。

 その中で、四十四兆が本当に妥当な水準なのかという議論があるかもしれません。おっしゃったとおり、自民党政権でつくった当初予算は三十兆円台の借金ですが、経済対策を組んで四十四兆にしました。我々のときに、税収が落ち込んでいる分に、加えて第二次補正予算でさらにふやして五十兆円台の借金になりました。そこからおりてきながら、何とか今四十四兆にしているところなんです。税収もようやく四十二兆、三兆と、とんとんに近づいてまいりました。ということで、努力はそういう意味ではしているんですね。

 ばらまきだという御指摘がありますけれども、これは、四十四兆、数字の妥当性はあるかもしれませんが、その目標の中で中期財政フレームを組んで、中期財政フレームの数字に位置づけて、それで予算を組んでいって、そして二〇一五年、二〇二〇年のそれぞれの財政運営戦略の目標に向けて達成をしていくということ、ローリングをしながら予算を組みながら達成をしていくということでございますので、これはばらまきではなくて、その規律は考えながらやっているということはぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

竹下委員 理屈はお話しになりましたが、決意は感じることができませんでした。

 決意というのは、一つだけエピソードをお話しいたしますと、かつて大平内閣のときでございますが、竹下登が当時の大蔵大臣に指名をされて、そのときに大平さんがおっしゃった言葉を家へ帰って話しておりました。竹下さん、私はやってはならぬことをしてしまった。何ですか。赤字国債を発行してしまった。確かに、三木内閣の大蔵大臣として大平さんが当初予算ベースでは初めて赤字国債を発行されておることは事実であります。それをみずからの内閣のときに、ですからこれを一緒に、このやってはならないことを取り返してはくれませんかというのが、大蔵大臣の就任要請を受けたときの大平総理の言葉でございました。

 家へ帰ってそのことを本当にしみじみと話しておりましたが、もう一つ驚いたのは、財政家としてやってはならないことをしたというふうに大平さんがおっしゃったそうでございます。

 やはりそれぐらい、国の財政を預かる、あるいは国家を運営していくことに対する責任というものを非常に重く受けとめていた、そういう政治家たちが日本を背負い続けてきたという歴史の事実は、もう一度認識をしていただきたい。

 なぜこんな話をするかというと、特例公債法の処理であります。去年も、八月末までぶん投げてきました。ことしも、まだ宙に浮かせたまま今日に至っておるわけであります。これも環境整備だと思いますが、そうした面、歳入歳出合わせて予算であるという基本認識に欠けた内閣である。二年続けてこんなことをやって、私に規律があります、心構えがあります、誰が信用しますか。まずそこをきちっと基礎を正して、国会の運営にも当たってほしいし、財政の運営にも当たってほしいと本当に心から思います。

 自民党のときに、自民・公明政権のときにもいろいろな困難にぶつかりました。野党の皆さん方とのお話し合いの中でいろいろな困難にぶつかってまいりました。しかし、そのときに、やはりそれでも、歳入歳出合わせて予算という基本だけは、ねじれ国会の中でも崩さずにやってまいりました。

 なぜそれをやったか。少数意見をしっかりと取り入れて、野党の皆さん方に、賛成、少なくとも採決をしていただける環境をつくってきたからであります。そのための安定の努力、そういうものがこの日本国の安定の基礎になっていた。いや必要なんだから、どの政権になっても避けて通れないから、あるいは、赤字国債を発行できなかったら国家が大変ですよ、これは政府が言う言葉ではありません。

 そのことを改めて指摘いたしまして、時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて竹下君の質疑は終了いたしました。

 次に、石田真敏君。

石田(真)委員 自由民主党の石田真敏でございます。

 私は、地方という切り口から質問をさせていただきたいというふうに思います。

 野田総理は、お生まれも船橋市、そして選挙区も船橋市でございます。人口六十一万ということでございます。私は、生まれましたのは和歌山県海南市という五万三千人ぐらいの町なんですね。そこで市長も務めさせていただきました。そして、衆議院に転戦をしてもう十年になりますけれども、転戦をした最初、私の選挙区は二市十三町一村でした。ところが、今、平成の大合併で四市四町になりまして、実は、平野文科大臣、その私の選挙区の御出身でございます。

 そういうことで、一概に地方といっても、大きさが随分違って、それぞれの持っている悩みといいますか思いというのは違うわけであります。しかし、私は、私の選挙区のような地方というものを思い浮かべながら、総理にまず地方の現状について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 私なんか選挙区を歩いておりまして皆さんが異口同音に言われるのは、一体これからどうなっていくのかということなんです。これからどうなっていくのかというのは、自分の住んでいる地域、これから五年先、十年先、若い人もいないんですよね。つまり、この地域が持続可能性があるのか、そういう思いをやはり持っておられるということなんですよ。これが、私はほとんどの地方の一番の悩みだと思います。

 その一つの原因は、それは少子化だと思うんですね。一つの原因は、やはり子供さんの数が少ないということだと思う。しかし、もう一つは、その少ない若い人が地元にとどまろうとしてもとどまれないということなんです。これが今、地方の現状だ。

 私はそのことを総理にもぜひ御理解いただきたいと思いますが、私も市長をしておりまして感じたのは、今までずっとこの地方を支えてきたのは一体何かということです。

 やはり一つは、中心になってきたのは農林水産業ですよ。そして地場産業、そして建設業。そして、そういう人たちが生活する中で、小売商業、飲食、こういう方々が一つの地域の経済、これを私は形づくってきたんだろうと思うんですが、今見ますと、農林水産業も衰退している、地場産業も中国へ行っちゃって衰退している、そして、建設業は公共事業半減で衰退している。当然、今までいろいろ費用を使っていただいた人が衰退しているわけですから、小売も商業も飲食も衰退をしているわけなんですね。こういう現状を野田総理がどのように御理解されているか。

 そして、この地方の問題、これはどうしたらいいのか。それは、一つは、まず、今、毀損された産業、農林水産業、地場産業、建設業、小売商業、こういうものをできるだけ立て直すということだと私は思うんですね。しかし、もとどおりに戻るということはないわけですから、では、その減った部分をどういう形で補うのか。

 私は、地方の人にそのことを示して、この地域はこれからも持続可能性があるんだ、それを示さなければいけない、そのように思っておるわけですけれども、総理は、この地方の現状そして対策、それについてどのようにお考えか、まずお聞かせをいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 私どもが心がけていることは、国も財政は大変ですけれども、地方も、三位一体改革以来、いろいろ傷んだ部分がございました。そこを着実に回復していかなければいけない、地域の活性化のそれが最初の環境整備ではないかという問題意識を持っております。

 したがって、環境整備の一つとしては、交付税はずっとふやし続けてきているということ。これは、私どもの政権の前からでもあります。五年連続ふえてきている。我々もそれを拡充しようとしています。

 それから、地方一般財源総額、これもしっかりと確保してきているという、環境整備に努めてきていることと、それから、あえて地域経済の活性化という視点で申し上げると、確かにそれはいろいろな地域もある、事情はいろいろ違うと思いますが、概して、やはり中心商店街のシャッターが閉まっているのがふえてきたとか、今御指摘の雇用の問題とか、いろいろな問題があると思います。そこを突破する一助になればという期待を込めて地域活性化総合特区というものを今活用させていただいている中で、先生の地元の方でも、いわゆる高野・熊野地区等で特区が今展開をされていると思います。

 そういう特区等々を生かしながら、地方で元気が出るために、規制であるとか金融であるとか税制を含めて、こういう試みの中で、むしろ百花繚乱の元気な試みが出てくることを期待しているところでございます。

石田(真)委員 それだけでは、地方の聞いておられる皆さん、納得はされないなというふうに思います。

 それで、今度、この消費税の増税に伴いまして経済対策ということを、措置をとられることになっていますね。これは消費税法の方にもあるんですけれども、地方消費税にかかわる地方税法の方でも経済対策をとると書いているんですよ。そして、この間からの議論の中で、総理は、成長戦略を考えていくというお話をいただきました。

 しかし、総理がライフサイエンスとかいろいろ言われましたけれども、それは日本全体の成長戦略なんです。それは大事なんです、当然大事なことなんですが、地方というのは、日本全体の成長戦略をされたから同時に景気がよくなるかというと、ならないんですよ。

 そうすると、それぞれのやはり地域によって事情が違う、そうなってきますと、今の特区のお話もありましたけれども、随分ときめの細かい、そういうような経済対策をやらなければ、この消費税を上げるための前提条件、それを整えることはできないと私は思っているんですが、そのことについての総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 前提条件という御指摘がございましたが、私はいわゆる環境を整えることだというふうに思いまして、日本経済自体も、これは、この法文にも書いてありますとおり、名目三%、実質二%、向こう十年間実現をするというその政策目標の努力をしなければいけません。それで日本全体が元気になる中での、地域もやはり位置づけられていくものというふうに思います。

 もちろん、地域によっては事情がいろいろ違います。沖縄と北海道では違うとか、いろいろな事情は違うと思いますが、そこは、国が主導でやる部分は、環境整備のところはあると思いますけれども、さっき言った特区等を生かしていただきながら、地方独自でその発展方向性を思い切って探る環境をつくるということが我々の責任ではないかというふうに思います。

石田(真)委員 ずっと、この間からの議論で、言葉が軽いというお話がありましたが、非常に上っ面なんですよ。今のも心に響いてこないですよ。

 現実に今、地方はどうなっているか。先ほど言いました小売商業、これはほとんど全国展開の企業になっているんですよ。そうすると、利益はどうなりますか。全部吸い上げられるんですよ。つまり、地域でお金が回らないんですよ。

 私がまだ市長をしているころは、商店街、まだ少し元気でした。あのときに地域振興券というのがありましたね。そうすると、あれは、私の地元では五〇%台、地元で還元したんですよ、地元のお店が。ところが、全国チェーン店が出ているようなところは、町の町長さんとお話ししたら、九〇%以上がそこなんですよ。つまり、町の商店街であれば、そこのおかみさんが御近所へ行って買い物をするんですよ。そうするとその地域でお金が回ったんですね。そういうものが回らないんですよ。

 それから、きのう伊吹筆頭もお話ありましたけれども、公共事業半減でしょう。おまけに、公共事業は、これは本当にもう採算を度外視するような低価格入札が常態化しているんですよ。そうすると、従業員にもまともな給料を払えない。そうでしょう。下請にもまともな給料を払えないんですよ。つまり、地域にお金が回らないというのが今の現状なんですよ。

 だから、そのあたりを総理は本当にきちっと腹に入れていただいて、きょうはその議論だけするわけじゃありませんから次に行きますけれども、きちっとそのあたりを腹に入れていただいて地方向けの経済対策を考えていただかないと、今申し上げた消費税、地方消費税を上げるための前提条件はクリアできない、私はそんなふうに思っておりますので、そのことは総理にぜひしっかり胸の中におさめておいていただきたいというふうに思います。

 それからもう一点、少子化です。これは、附則百四条に、少子化対策に今回予算を使うということを書いておりますね。

 それで、今回見せていただいたら、これは、子育て支援七千億、ほとんど待機児童対策なんですね。いや、そんなことないと言われていますけれども、ほとんどそうじゃないですか、総合こども園。私はそう思います。

 大都市ではそういう待機児童対策は私は大事だと思います、当然やるべきだと思うんですが、和歌山県の中核市、和歌山市、県都ですよ、そこで聞いてみましたら、待機児童は実質ゼロです。つまり、地方には待機児童の問題というのは余りないんですよね。

 それでは、地方の問題は何か。先日、本会議で野田聖子議員が発言されましたね。つまり、若者支援、それから結婚、出産、そして子育て支援、仕事との両立、全部をパッケージで出さないと少子化対策にはならないと。特に、今までやってきたのは子育て支援であって、子育て支援以前に対する対策がなかったということなんです。

 先ほども言いましたけれども、今、地方では若者がいないんですよ。どうやって子供が生まれるんですか。そこが地域の持続可能性に対する住民の皆さんの不安なんですよ。それで、今度、少子化対策にわざわざ増税分のある部分を入れる、そうなったら期待しますよ。それが待機児童対策では、地方は納得しませんよ。

 やはり、地方向けの少子化対策を一体どのように考えておられるのか、私は総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

小宮山国務大臣 私の方から事実関係を申し上げて、その後、総理から御答弁いただければと思います。

 子ども・子育て新システム、これは、待機児童対策というのも確かに一つの柱ですが、一番大きいのは、全ての就学前の子供に質の高い学校教育、保育をしたいということで、これは都市部、地方、変わりません。そしてまた、地域の子育て支援の充実ということもしっかり入れてございますので、これは都市部だけに限らず、全国の子供のための子ども・子育て支援になっているということ。

 それで、都市部以外の自治体につきましても、地域型保育給付、これを創設しまして、二十人以下の小規模保育ですとか家庭的保育などのメニューをふやして、それぞれの地域でできるようにしています。地域のニーズに基づいた地域子育て拠点事業などの子育ての支援のための事業も提供をしていますし、そういう中で、全国の市長会とか町村会の皆様にも、一年半かけて本当に熟議をしました、ワーキングチームに入ってやっていただきまして、これは市町村が主体でありますので……(石田(真)委員「委員長、とめてください。長い」と呼ぶ)

中野委員長 端的にお願いします。

小宮山国務大臣 関係者の皆様の御理解も得ているというふうに考えています。

 総合的な支援が必要で、雇用の支援などをするということは、別途、雇用の方で対策をとらせていただきます。

野田内閣総理大臣 今厚労大臣の御答弁のとおり、これは都市部の子育て支援だけではない。もちろん、都市部では待機児童対策をやることは十分できます。

 一方で、地域の実情に応じて対応するというのがこの新システムである。地域によっては、さっき申し上げたように、小規模な保育をしたり家庭的保育をやったりとかというサービスもできるということで、地域の実情に応じて対応できる新システムという位置づけであるということを大臣が答弁をしたというふうに思いますし、私もそのように思っております。(発言する者あり)

石田(真)委員 そういうことは、今もお話がありましたけれども、地方ではわからないですよ。ぴんとこない。

 つまり、学校を出て、地元におられないんですよ。地元で結婚して、家庭をつくって、子供を育てたいと思っても、それができないんですよ。(発言する者あり)いや、違うんですよ。少子化対策の一番最初は若者支援から始まるんだよ。そんなことをわからないからだめなんだよ、民主党は。もうちょっと地方を歩いてみなさいよ。

 それで、このお話をしていても仕方ありませんから、少子化対策は今のことで。

 私は、もう一個、総理のお考えといいますか決意を聞きたいんですが、私が先ほど申し上げました、地域経済の再生もそれから少子化対策も、これは政治と行政だけで解決しないんですよ。今言われていた雇用の問題も入ってくるんですね、あるいは働き方の問題も入ってくる。

 そういうことになってくると、私は、やはり、利益追求だけでなくて、日本社会に対して責任を負うという意味で、経済界の方々にも協力をしていただくということだと思いますよ。地方へ行けば、先ほど言いましたけれども、待機児童の問題はないんですよ。通勤ラッシュもない、長時間通勤もないんですよ。しかし一方、仕事がないんですよ。

 だから、そういうようなことを考えていけば、政治、行政だけではなくて、やはり、日本社会をこれからきっちり支えていこう、そういう責任を持った経済界の方々ときちっとした連携をとり、対策を立てていくべきだと私は思っておりまして、そういう意味で、総理が経済界に対してどういう働きかけをされるのか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 これは御指摘のとおりだと思います。

 石田委員御指摘のとおり、少子化対策は子育て支援という側面もあります。これは地域の実情によって違うかもしれませんが、やはり雇用対策、働き方というのが大きいと思います。

 一つは、やはり非正規がふえている。地域によって雇用がそもそもないという御指摘もありましたけれども、全体で見れば、非正規の割合がふえてきているということ。それから、女性が子育てといわゆるキャリアアップと両立できるかどうかという問題。

 というと、これは、我々政府の努力も必要ですけれども、やはり企業の理解と協力もどうしても必要になってまいりますので、御指摘のようなお話は、随時、経済団体にもお訴えをしていきたいというふうに考えております。

石田(真)委員 具体的にはどんなことをお考えですか。

野田内閣総理大臣 やはり、非正規から正規に向けて、これは制度的な後押しも必要ですけれども、企業の理解を求めていくということ。それから、女性の雇用、これは、女性の力というのは潜在的には非常にある、それをもっと社会の中で活用する、御活躍をいただくということは、ある意味大事な成長戦略だと思います。そういう戦略的な発想で取り組んでほしいということを訴えかけていきたいというふうに思います。

石田(真)委員 ぜひ、地方展開ということもしっかり総理の口からおっしゃっていただきたいなというふうに思います。

 今、時間が短いので簡単にですけれども、私は、今の地方の現状について総理の御認識をお伺いいたしました。

 一方で、こういう厳しい地方状況、この中で中心になって地方を支えていくのはやはり自治体ですよ。そうですよね。それで、その自治体のために税源、財源をどうするかというのは、これは大きな議論になるわけでありまして、地方自治体の自主性とかあるいは機動性を高めるという意味から、今まで、税の偏在性の小さい、税収の安定した地方税体系の構築と書いているんですよ、どこを見ても。これは喫緊の課題なんですよ。しかし、今回、これは社会保障と税の一体改革といいながら、地方税制度の改革は先送りなんです。これは何なんですか。税制の抜本改革というのは消費税の引き上げのときではないんですか。

 そうであるならば、今回、きのう石原幹事長も言われましたけれども、検討で済む話ですか。私は非常に遺憾ですし、民主党は、地方は一丁目一番地なんて、地域主権、一丁目一番地なんて言ってこられたけれども、これはもう看板倒れじゃないですか。地方のことを本当に見ていますか。そう言わざるを得ないですよ。

 例えば、地方のことについては、地方法人特別税制度ですね。これは、我々自公政権時代に、おられますけれども、野田毅先生を中心に、我々いろいろ議論したんですよ。東京とか大都市に集まる地方法人税、やはりちょっと偏在し過ぎている。だから、それを何とか地方の方に配分してもらいたいという中でこういう制度を考えた。しかし、これは恒久措置でなかったんですよ。税制抜本改革までの暫定措置という対応をしたんですよ。それで、その後すぐ政権交代したでしょう。政権交代して三年ですよ。暫定措置が三年続いているんですよ。私は、これはもう明らかな怠慢としか言いようがないと思いますよ。

 一体、この間に、この地方法人特別税あるいは地方税制抜本改正、どういう議論をしてきたのか、お聞かせいただきたいと思います。

川端国務大臣 お答えいたします。

 御指摘のように、この税制は、税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の措置ということで、今御指摘のとおりであります。

 そのために、この地方法人特別税・譲与税を見直す際には、偏在性の少ない安定的な地方税の構築をするということが大命題でございまして、これまでおくれているじゃないかという御指摘でありますが、抜本改革の見通しが今まで立たなかったということもあって、具体的な検討は、御指摘のように、必ずしも十分に進んでいるとは言えない状況もありますが、昨年十二月の地方財政審議会、あるいは財政制度審議会等々の御議論では、活発な御議論をいただいていることでありまして、地方法人特別税・譲与税の抜本的な見直しは今回の税制改正法案に基づく地方消費税の引き上げの時期を目途にしてということで、その実施される時期までにはしっかりとした答えが出るように、これから各方面、議論をしてまいりたいというふうに思っております。

石田(真)委員 いや、政権交代して三年で、議論したのは昨年十二月末の審議会ですって、これはちょっとひどいんじゃないですか、幾ら何でも。これは非常に怠慢としか言いようがない。

 それで、今、消費税が上がるまでというようなお話がありましたが、もう一度、いつまでにやられるのかということを確認させていただきたいと思います。

川端国務大臣 改めて申し上げますが、このたび税制改正法案を提出いたしましたので、この法案に基づく地方消費税率の引き上げ時期を目途として実施することとしておりますので、今後、今申し上げた審議会、今審議会は、十二月に御意見をいただいたという時期で、このときに、議論したということで、議論の積み重ねの報告をいただいたということでございます。この提言も参考にしながら、地方団体の意見等も踏まえて、幅広い検討を行って結論を出したいと思っております。(石田(真)委員「ちょっと年数で言ってください」と呼ぶ)

 最終的には、平成二十六年四月と二十七年十月という二回に分けて引き上げが実施されます。これが一つの目安であろうというふうに思っております。

石田(真)委員 それはどちらか、お答えいただきたいと思います。

川端国務大臣 地方消費税率の引き上げの時期を目途ということでございますので、両方とも、いずれも引き上げされることになりますので、それを目途にしてやりたいと思っております。

石田(真)委員 いや、それはどちらですかと聞いているんですよ。まず引き上げるのは二十六年四月という理解でいいわけですね、先に上げるわけですから。その上げるまでということですから、二十六年四月までには税制抜本改正をやるということでよろしいですね。

川端国務大臣 この抜本的な見直しは、今、税制改正法案に基づく地方消費税率の引き上げの時期を目途として実施するということでありますので、一番早い時期はそういうことになるというふうに思います。それを目途にさせていただきたいと思います。

石田(真)委員 ちょっと今大臣の御答弁の中にもあったんですが、附則百四条がありますね、それから今回の改革の素案ですね、その中に書かれていることと、それから今度の地方税法の改正案の七条に書かれていることでちょっと違うことがあるんですよ。

 それはどういうことが違うかというと、附則百四条には「税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築」と書いてあるんです。ところが、今回、七条では「税源の偏在性を是正する方策を講ずることとし」とあるんです。「安定的な」という言葉が抜けているんです。これはなぜこういう文言が削除されたのか、お聞かせいただきたいと思います。

川端国務大臣 御指摘のように、平成二十一年度の附則第百四条では両方書いてあります。そして、昨年六月の我々の成案においても同様の記述があります。一方で、今回の税制の抜本改革法案の第七条では、「税制の抜本的な改革による地方消費税の充実と併せて」という中には「税源の偏在性を是正する」ということで、安定性が書いていないことは事実でございます。

 これは、安定性については、今回の一体改革において地方消費税率が引き上げられるということで一定程度図られるということの一方で、税源の偏在性是正については、地方法人特別税等の抜本的見直しに際しての課題としてまだ残っているという意味で、これを、偏在是正に取り組むことを明確化するということの意図としてこういうふうに書かせていただいたところでございます。

 当然ながら、国、地方税制は幅広い部分での議論が必要でありますので、このことを非常に明確にする中で議論をするという趣旨でございます。

石田(真)委員 いや、それは、附則に書いていて、今度新しい法案が出たときにその文言を削除されるというのはこれは大きいですよ。

 地方にとって、なぜ地方消費税とか税の体系を見直してくれと言っているか。それは一つは、やはりその偏在性を小さいものにしてもらいたいということですよ。それから、もう一つ同じように重要な柱は、安定的な税収ということなんですよ。そのもう一つの大事なものを、なぜこんなことで削除するんですか。総務大臣としてこれを認めたんですか。お答えください。

川端国務大臣 今回の部分では、社会保障の部分と同時に、財政の健全化という二つの方向のもとで、国と地方の税制改正をするという中におきまして、地方消費税の分、一・五四%配分するということで、一定の財源は確保できたという部分で、よりしっかりとやらなければいけないのは偏在性であるということで、安定性は当然大事なこととしてこれは私としては認識をしておりまして、そういう中で閣僚として対応をさせていただきました。

石田(真)委員 ちょっと、次の質問にも今の問題は絡みますので、次の質問に行きます。

 このフリップ、これは昨年の十二月の二十六日の国と地方の協議の場に厚生省から提出された資料、これをちょっと抜粋いたしました。

 社会保障関係の地方単独事業、これは総務省が調査したんですが、社会保障の地方単独事業、総務省六兆二千億ですね。それから厚労省は五・五兆、これは違うんですが、なぜ違うんですかね。

 それからもう一つ、これは百四条で規定されている社会保障四分野、総務省は五・一兆ですね、ところが厚労省は三・八兆です。この違いについてお聞かせいただきたいと思います。

川端国務大臣 総務省の調査は、地方の実情に合わせた部分を、決算統計をもとに、民生費、衛生費、労働費、教育費のうち、敬老祝い金の一部のものを除いたいわゆる四事業に加えて、障害者福祉、就労、貧困・格差対策等々ということで調査をした数字の積み上げでございます。

 厚生労働省は、この四事業に係るという部分で、精査をした部分で積み上げられたということの違いでございまして、そういう中で、総務省としては、社会保障全体で六・二兆円、厚労省は五・五兆円となったときに、出産祝い金、準要保護児童生徒援助等々いろいろな項目を、厚労省はこれは社会保障でないという整理をされたということで減りました。四分野に関しても、これは四分野でないという部分で、保健所とか予防接種とかがん検診とか精査をされて減った。

 我々としては、その周辺も含めた部分を調査としては入れたという差が出たということでございます。

石田(真)委員 次に、これを見ていただきたいと思います。これも十二月の二十六日の同じ会合に出されたものなんですね。

 それで、左が、この一番上を見ていただきたいんですが、社会保障給付費における公費負担ということであります。

 そして、今回の消費税対象経費ということで、この赤い囲みのところですね、制度として確立されているものということになっております。全体で三十兆七千億円ということになります。

 それから、右の囲みを見ていただきますと、これは地方単独事業ということになるわけであります。

 それで、この中で、制度として、法に基づいて、消費税対象経費ということになりますと、制度として確立されているもの〇・二兆円ということになるわけであります。

 これは、この協議の場で、最初、厚労省は制度として確立されたものということで主張されたんですが、最終的に、十二月の二十九日の最終案では、この右側の緑で囲まれた部分、社会保障四分野、二・六兆円程度、これが経費に組み込まれることになりました。このあたりの経緯について、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

川端国務大臣 先ほど申し上げましたように、我々は地方の部分の決算統計をもとに調査をいたしました。厚労省はそれを精査いたした分で数字の違いがありまして、これで地方の皆さんと国と地方の協議の場でいろいろ議論いたしました。この中で、何回も分科会と本会議と開きまして、分科会を四回、本会議三回、断続的に開かせていただきました中で、議論を積み重ねる中で、国の大きな骨太のセーフティーネットワークと、地方がそれに基づいてきめ細かく地方の実情に合わせたセーフティーネット、両方組み合わせて社会保障は維持していくという共通認識が醸成されたというのが一つ。

 それともう一つは、個々、この事業はこの事業はというふうに細かくやると、地方の実情において差があります、そしてその解釈もありますので、全体としてそのものを大ぐくりで、個々に精査を重ねるよりも、地域の判断を尊重した定量的な整理をすることが望ましいという判断に達しまして、そういう意味で、図でお示ししていただきました厚生労働省の数字に加えまして、三・八兆円というのが社会保障四分野と出てきましたが、地方の皆さんがそれにのっとった周辺事業ということで自主的にやっておられることで〇・五兆円というのを上積みしまして、合計で四・三兆円。そして、この四・三兆円で議論になりましたのは、人件費が含まれているのではないかということで、給付は除く、制度としての部分ではやっているところとやっていないところでということで、係数をそれぞれ掛けまして二・六兆円にさせていただいたところでございます。

石田(真)委員 そのことに関しまして、何回も議論されたというんですが、しかし、この資料が出てきたのは十二月二十六日ですよ。恐らくこれでもうおしまいにしようと思った会議で数字の違うものが出てきているんですよ。

 それで、御用納めの終わった後の十二月の二十九日にもう一遍会合を、地方六団体にも出てきていただいてやっているじゃないですか。その中で、総務大臣がこういう発言をされているんですよ。制度として確立されたものであるかどうかについては、法令による義務づけは制度としての重要な要素であるが、これを過度に重視することは事業の必要性に関するそれぞれの地域の判断への配慮を欠くこととなりかねない。

 総務大臣、公の場で、法令による義務づけは制度として重要であるが過度に重視することはどうだこうだ、これは問題の発言じゃないですか。これはここで、もう時間がありませんから、そのことは指摘だけしておきます。やはりきちっと法制化されたものは、それはきちっと対応していくというのが大臣の立場ですよ。

 それで、時間がもうないんですよ、実は十二月二十六日の会合で山田全国知事会会長、こんなふうに、大要ですけれども、言っておられる。消費税は確かに附則百四条三項三号で制度として確立されたと書いてある、しかし、地方消費税にはどこにもそんな文章はない、地方消費税は附則第百四条第三項第七号であって、消費税と書き分けている、私たちは地方消費税の充実を求めているんです、こういうふうなことを十二月二十六日の会合で地方六団体の山田知事は言っておられるんですよ。

 つまり、何でこんな議論が十二月の二十六日まで行われたかということですよ。つまり、先ほど私申し上げた地方税制体系の中での地方消費税の位置づけ、先送りしたからですよ。だからこういうような混乱が起こったんじゃないんですか。この地方消費税の議論を政府としては余り意識されないでやってきたんじゃないか、先送りしたままで、だからこういう混乱が起こったんではないかと私は思います。そのことについて、学者とかマスコミからやはり批判が出ているんですよ。国と地方の奪い合いをやったというような、そういう批判が出ているということ、そういうことも、私は、政府としてやはりしっかり受けとめていただきたいなというふうに思います。

 私は地方自治の出身者ですから、やはりできるだけ地方に配慮してもらいたいなという立場ですよ。しかし、でたらめなことをやったらいけない。でたらめなことをやってはいけないということはきちっと指摘をさせていただきたいと思います。

 それで、総務大臣、次は答弁してもらいますから。

 総務大臣、先ほど、地方消費税の中で、地方税分一・五四をちゃんと対応しましたよというお話をされました。しかし、もともと、地方自治体というのは何を求めているか。先ほども申し上げましたように、偏在性が小さくて、税収が安定的な税を求めているわけなんです。そして、その中心に地方消費税というものを位置づけているわけであります。

 しかし、今回の地方消費税、これは社会保障改革の中へ組み込まれてしまったじゃないですか。組み込まれた結果どうなりましたか。使途が制限された。本来、地方消費税は制限されないはずですよ。おまけに、地方交付税まで制限された。マスコミの新聞にも、事実上、限定する初のケース、こんな報道がなされているんですよ。これ、地方の思いとぴったりするんですか。しないでしょう。

 それで、この状況、先ほど対応したと言われましたけれども、では、これは続くんですか。もし次、消費税の増税があるときに、同じ枠組みでまた地方消費税をやるんですか、では、抜本改正のときには改正しないんですか。その辺について大臣の御所見をお聞かせいただきたいと思います。

川端国務大臣 お答えいたします。

 その前に……(石田(真)委員「答弁は短くしてください。時間がないんですから」と呼ぶ)法令を無視するということではなく、法令に厳密にしてそこから一歩も越えてはいけないということではない部分を、地方の皆さんの御要望ですから、のっとったということで、そこの部分のグレーゾーンの部分も地方の自主性に任せることにしましょうということであって、法令を無視してどうでもいいからやれといったことでないことは申し上げておきたいと思います。(石田(真)委員「しかし、現実そうなっているじゃないの」と呼ぶ)いや、そうなっていません。

 それから、地方の皆さんとこれは丁寧に議論をして詰めてきて、認識を共有するというのに手間暇をかけました。そういう意味で、一部で分捕りとかそういう御批判がありましたが、そういう議論は一切しておりませんので、その中身を詰めていった部分は御理解いただきたいと思いますし、そういう部分では、地方の皆さんも、今回の決着に関しては評価をし御理解をいただいているというふうな発言をしていただいております。

 そして、今までの一%分は、これは自主財源でございますが、今回上げさせていただく分は、地方交付税を含めて、一体改革の中の財源としてということで使途を制限させていただいております。これは、そういう背景の中での取り組みということで御理解いただきたいのと当時に、今後、いろいろな形で消費税をまた上げるということの議論が起こったときは、それは、そのときに、その分に関してどういうふうにするかということの御議論でありますから、今回上げさせていただく分に関しては、それは今の社会保障に使うという位置づけであることは、これは続けさせていただきたいと思っております。

 以上です。

石田(真)委員 今の大臣の、地方に配慮、それは私も、先ほど申し上げましたように、ありがたいですよ。しかし、そういうことについて学者の中からも、やはり効率化というのは進まない、拡大していく、これは民主党の体質ですけれども、その拡大していくということを懸念されているんですよ。

 それともう一つ、今お答えいただけなかったのでもう一遍聞きますけれども、これは、次の上げるときも同じ枠組みでやるのかということです。それで、率も同様の考え方で、配分の率も方法も同じ考え方でやるのかどうかということをお聞かせいただきたいと思います。

川端国務大臣 済みません、お答えしたつもりでございました。

 今回上げる分に関しての配分は、今回決定したとおりでありますけれども、次回そういう議論がもし行われるときは、それは、そのときのどういう配分とかどういう使い方かは、そのときの御議論でございます。

石田(真)委員 そうすると、先ほどの総務大臣の答弁と違うじゃないですか。さっきの答弁と違うでしょう。

 先ほど、私は、地方税等を組み込まれてどうするんですかと言ったわけですよ。彼らは、地方は、地方消費税を基幹税としてきちっと、偏在性が少なくて、そして安定した税収を得られるようなものに変えてくれと言っているわけですよ。それが、違うじゃないですか、そんな今みたいな答弁をやっていたんじゃ。

中野委員長 川端総務大臣、時間が来ておりますので、端的にお願いします。

川端国務大臣 将来も含めて安定的な財源としての地方消費税の部分に、地方の団体の皆さんからいろいろな御意見があることは当然でありますが、今回のこととそれは一体としてやっているものではないことは御理解いただけていることだと思っております。

石田(真)委員 一体としてやっていないんだったら、先ほどみたいに対応しましたと言うべきでないですよ。

 時間が来ましたので終わりますけれども、この地方消費税の位置づけは非常に曖昧なんですよ。そして、先ほどの厚労省との違いのように、やはり準備不足。これは、この法案全体について言えることだと思いますけれども、私は、やはり準備不足、整理不足であるということを指摘して、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。

 次に、田村憲久君。

田村(憲)委員 自由民主党の田村憲久でございます。

 総理、きのうはちょっとお疲れ目でございましたが、きょうは顔色が非常によろしゅうございまして、私も、きょうはしっかり質問をさせていただきたいというふうに思います。

 ここ二日、三日の議論を聞いておりまして、何か違和感を感じるんです。何かなと思ったら、総理がおっしゃっていること、この間の衆議院選挙の前まで我々が言っていたことでありまして、財政の健全化、後世に負担を残さないとか、ツケ回ししないだとか、こういうことを我々が言っておりまして、それに対して皆様方が、いや、消費税を上げなくても無駄を省けばいろいろなことができるんだなんということをおっしゃっておられた。それが、総理の口から、いや、負担のツケ回しはできないから消費税を上げなきゃならないんだ、こういうお言葉をお聞きすることができました。

 しかし、一方で、以前皆さんが言っていたことをかたくなに守っておられる方々が民主党の中にはおられるんですね。小沢さんを初めとする方々でございまして、消費税を上げること自体がマニフェスト違反だとおっしゃっておられるんです。そして、それはやるべきではない、無駄を省けばお金が出てくるから、まずやるべきことがほかにあるだろうということを言われておられる。まるで前回の選挙のときの我々とあなた方の議論を、今度は民主党の中でやっておられるような、そんなイメージがありまして、何か違和感を感じるわけでありますが、少なくとも、総理を初め皆さんは我々に近づいてきたのかなということで、その部分では評価をさせていただきたいなというふうに思います。

 さて、総理がよく、今回の消費税法案、政治生命をかける、そういうことを言われます。民主党の総理大臣になられた方というのは、結構いいかげんなことを言われる方が多うございまして、鳩山由紀夫さんも、最低でも県外、できれば国外なんということを普天間でおっしゃられました。そして、菅さんは、選挙の前に何と言われたかというと、民主党が政権をとったら株価は三倍に上がるんだなんということを言われましたよね、覚えてみえますか。忘れちゃったら、それは無責任な話ですね。要は、結構いいかげんなことを誇張して言われるんです。

 私、総理が政治生命をかける、こうやっておっしゃられたのは、そういう意気込みなんだろうなというふうに思うんですけれども、まず第一、今国会中にというお話がありましたが、会期末は六月二十一日、きょうが五月の二十二日、もう一カ月ないんです。衆議院だけじゃないんですよ、この法律を通すのは。参議院でも同じように議論をして、そして法律が通らないと、これは成立をしないんです。あと一カ月で本当に衆参通せるのかな、総理は衆議院のことしか頭にないんじゃないのかなというふうに思えて仕方がないんですが、総理、これは参議院まで含めて成立をさせるということでいいんですか。

野田内閣総理大臣 一体改革法案も、そのほかのさまざまな重要な法案も残っております。そういう法案は、政府として提出した以上は、これは国会中に成立を期すというのがやはり基本姿勢でございます。国会中で成立をするということは、衆議院を通過するだけではなくて、当然、参議院においても御審議をいただいて採決をいただくということを念頭に置いて成立と言っていることです。

 ただ、日程はタイトであるということは、それはひしひしと感じておりますが、私の立場では今延長云々と言うことは妥当ではないと思います。あくまでこの国会中に成立を期すという立場でお願いをしていきたいというふうに思います。

田村(憲)委員 今の総理のお言葉を総合すると、自分からは言えないけれども延長してでも通したい、そういう意味なのかなというふうに受けとめさせていただきますが、正直言って、出されるのも遅かった、いろいろな意味からして、党内の手続もあったんでしょうけれども、本来は、この二十一日までの会期中に成立をさせるということがあなたの本来の役割だというふうに思います。

 そこは肝に銘じながら、政治生命とは何ですか、総理にとって。普通は、内閣の命運をかけるというような言われ方をされる方はおられます。小泉総理は殺されてでもやるなんということを言われましたけれども、政治生命とは総理にとっては何ですか。

野田内閣総理大臣 不退転の決意で成立を期すという意味であります。

 もちろん、これは内閣としての重要課題ではありますけれども、私がかねてから、特に代表選のころから申し上げてまいりました、という思いも込めて、私としての、ある意味全てをかけているということであります。

田村(憲)委員 ということは、この法案が通らなければ政治家をやめるということでいいんですね。

野田内閣総理大臣 せっかくきのうから、御党も含めて、またこの後そのほかの野党からも御審議をいただいて、私は建設的な御提言もいただきつつあるというふうに思っております。そういう中で、通らなかったらという悲観的なたらればで自分の政治生命を語るつもりはありません。

田村(憲)委員 それだと迫力がないですね。通らなかったら政治家をやめるというぐらいの迫力を持って言えば、それは国民にその一念通ずることもあるかもわかりませんが、やはりそういうごまかしの言い方をするから、国民に、ああ、この人は余り信用できないなという話になってしまう。もっとも、やめると言われて、途中でやめないと言われた総理がおられましたから、やめるといってもどこまで信用できるかわからないのが今の民主党ということになるのかもわかりませんけれども。

 きょうは、実はこういう話をするつもりじゃなくて、少子化対策ということで、子ども・子育て支援法、これに対して議論をしたいと思っているんですが、ただ、総理のこの少子化対策に対する思いというものがどういうものなのか、私はちょっと、余り信用できないところがあるんですね。それは何かといいますと、大臣がころころかわる、少子化担当大臣が。

 ちなみに、民主党内閣になってから、少子化担当大臣、何人かわられて、どういう方がやられておられたか、覚えてみられますか。

野田内閣総理大臣 今回、新たに、厚労大臣を兼ねて、少子化担当大臣を小宮山さんにお願いをしましたが、その人数は、政権交代以降、少子化担当でたしか九人目だったというふうに思います。全部順番を言えというとちょっと困ります。九人目でございました。

田村(憲)委員 鳩山内閣で福島みずほさんと平野先生ですね、事務担当という形で最後入られました。それから、菅内閣で玄葉さん、岡崎トミ子さん、与謝野先生と三人。ところが、野田内閣になって、もう既に四人目なんですよ。村田蓮舫さん、岡田克也副総理、それから中川正春さん、そして小宮山大臣ということでございまして、命運をかけた法律の中に入っているのに、なぜか他の総理よりも期間が短いのに既に四人目にかわっておられるんですが、今回、小宮山大臣に寸前でかえた理由は何ですか。

野田内閣総理大臣 これは、どうしても、内閣府の業務が増加をしている一方で、法律上の閣僚の数が限られている。一部の閣僚についてはどうしても兼務せざるを得ない。その中で国会対応等々を考えたときに、今回は、厚生労働大臣で、少子化担当としても党の時代からずっとこの政策にかかわってこられた小宮山大臣が適任であるということを踏まえて対応させていただいたということでございますが、内閣府特命大臣として内閣府の事務を行うという点では不変でございますし、その分、文科大臣にも出席をいただいて、十分連携協力して法案審議に臨むようにさせていただいております。

田村(憲)委員 不思議ですね。別に大臣の数が変わったわけでもないですよね、中川大臣から小宮山大臣にかえたときには。中川大臣は今も閣内に入っておられます。別に中川大臣がそのまま担当でもいいし、ここに岡田副総理がみえるんですよね。その前は岡田副総理が担当だったんですよ。このまま岡田副総理がここに座っておられればそれで済む話であって、小宮山大臣にかえる必要はありません。ましてや小宮山大臣は、厚生労働委員会もありますから、本来からいうと非常にお忙しい身なんですね。今国会、厚生労働委員会、たくさんの法律をまだ今も残しているんですよ。

 さらに申し上げれば、今回の法案は一元化と言っています、一体化と言っております。逆に言えば、所管省庁を一つにしたいという思いがもともとあるのでありましょう。その内閣府担当の子育て担当、少子化担当の大臣を厚生労働大臣が兼務するという話になると、今度は文科とのバランスもやはりおかしくなってくる。普通で考えれば、これは、中川さんが何か事情があるのならですよ、岡田副総理がまた戻られるというのが一番私は妥当なんだろうと思うんですが、なぜ小宮山大臣にかえられたんですか。

岡田国務大臣 まず一つは、そういう内閣の人事は総理が行うもので、こういう委員会でそういうことまで取り上げられるというのは私はよくわからないわけであります。

 そういうことを申し上げた上で、私の方で少し説明をさせていただきます。私のお名前を言われたわけですから、申し上げたいと思います。

 まず……(田村(憲)委員「あなたは総理なんですか。あなたは総理じゃないんだよ。総理、お答えください。任命権者じゃありませんから」と呼ぶ)委員長が指名したんです。それじゃ、私から申し上げます。

 まず、私が本来少子化対策を担当しておりました。しかし、そういう中で、私自身が、例えば独法改革、こういったものについて、やはりこの委員会に専念するためにそれを中川大臣にお願いした。その結果として、中川大臣が内閣委員会に出られる、そうすると、内閣委員会に出られるということになるとこの委員会に出られない。

 そういうことで、子ども・子育てについてまた誰かが見なければいけない。私が見るという選択もありましたけれども、私もこの税・社会保障一体改革、行革で非常に委員会も忙しい、そういう中で小宮山大臣に総理からお願いした、こういうことでございます。

田村(憲)委員 よくわかりました。この内閣はガバナンスが全くきいていない。

 なぜ小宮山大臣を少子化担当に任命したかという理由を聞いているのに、任命権者じゃない方がそれに対して御答弁をされて、任命権者は御答弁されないという話でありますから、この内閣がいかなる内閣かというのはこれだけでもよくわかります。もうこれ以上聞きません。聞いても無駄であります。

 中身に入ります。今回、新システムの中の大きな柱、これは何かというと、幼保一体化ということになっています。総合こども園なるものが出てまいりました。説明不足もあったのでありましょうし、大きな改革というか、システムを本当につくりかえる話でありますから、関係者、これは親御さんも含めてでありますけれども、大変な不安感が聞こえてきておりますが、なぜこの幼保一体化、総合こども園なるものをやろうというふうにお考えなんですか。

小宮山国務大臣 皆様方に不安をお与えしているということは、もっと丁寧に御説明をしなきゃいけない。

 ただ、これまで一年半にわたって、いろいろなところの、各界の代表の方たち、子育てにかかわる方たちに集まっていただいて、三つのワーキングチームでそれぞれ毎回三時間余りずっとやってまいりましたので、それは、保育園の団体も、幼稚園の団体も、子育てを支援するNPOの方も、地方の代表も本当に真摯に御議論をいただいた結果、なぜ、今回、総合こども園というような大改革をするのかということなんですが、一つは、就学前の全ての子供に質の高い学校教育、保育を受けてもらいたい。幼児教育をしっかりと就学前に受けるということは、これは学力の面からも先進国全体が取り組んでいることです。

 そのことに加えまして、今のこととも関連しますが、親が働いていれば保育園、働いていないと幼稚園、今働き方も変わりますから、そのたびに動かなきゃいけない。親がどういう状況にあっても質の高い学校教育、保育を就学前に受けさせる、そのことがまず第一にございます。

 それから、都市部では待機児さんの対策ということもあります。それから、地方においてはまた、単独では幼稚園、保育園が成り立たなくなっている中で、そこを市町村の境を越えて総合的にできるようにすること。また、小規模なものですとか家庭的保育と連携をとって、いろいろな選択肢の中から受け皿をふやした中で、多様なメニューの中から全ての子供にそういうものをつくりたいということが趣旨でございます。

田村(憲)委員 全ての子供という言葉が出ました。

 三歳以上は、幼児教育も含めて、これは保育でもやってきていますから、質の高いという言い方をすれば、確かに幼稚園は幼稚園で学校教育をやっているでしょうが、保育指針と幼稚園の教育指導要領というのは中身はほぼ一緒でありますから、別に幼稚園じゃなければできないという話じゃありません。それはそれぞれの施設に応じて濃淡はありますよ。それは幼稚園でも保育園でも一緒ですよ。一生懸命やっているところは、ちゃんと教育を保育の中でもやっているんです。ですから、そういう意味からすれば、別に幼保一体化する必要はない。

 続けて言えば、今のは三歳以上です、では、三歳児未満はどうか。全てなんですか。全ての保育の必要のない子供たちまでも幼保一体化施設で預かって、そこで面倒を見る、こういう話になるんですか。今そういうふうに聞こえましたが、そうであるならば、我々自民党はもうこの法案に関しては全く理解ができない。(発言する者あり)ナンセンスだと言いますけれども、そういう話なんですか。

小宮山国務大臣 今委員がおっしゃったように、保育所の保育指針とそれから幼稚園の幼児の教育指導要領、これは主な、五領域と言っていますが、そこはもう既に重なっています。そういう意味では、保育園でも教育をやっていますが、今おっしゃったように、学校教育法上は三歳以上ということなので、三歳以上の子供についてはしっかりと学校教育法上位置づけられた質の高い教育を行いたい。もちろん保育園でも教育は行っていますが、それは学校教育とはまた違うものだというふうに思います。

 そういう中で、全ての総合こども園にゼロ、一、二歳からの義務づけということはいたしませんでした。幼稚園の中でも、やろうと思うところが手を挙げていただけるような方式でインセンティブをかけていきたいと思っているところです。

 今、皆様方が自公政権でつくられた認定こども園の制度がございますが、これを発展させた形で幼保一体化を進めたい。ただ、これには課題があるので、それを解決したい、そのように考えています。

田村(憲)委員 間違えたことを幾つか言っています。

 一つは、では、学校教育法上の幼稚園の教育と保育指針で書かれている保育園での教育とどこが違うのか、具体的なことを言っていただきたい。何か全く違うものみたいな話をされましたが、中身はほぼ一緒のはずでありますから。それは学校教育法上位置づけられているかどうかだけであって、中身は一緒だと思います。

 それから、今、もう一点、よく御理解されていないんだと思いますが、総合こども園で、確かにゼロ、一、二歳の預かりは義務づけていない。私はそんなことを聞いているんじゃないんです。ゼロ、一、二歳で保育に欠けない子供、つまり保育の必要じゃない子供まで総合こども園で預かるんですかということを聞いているんですよ。そうなんですか、この点は。

小宮山国務大臣 それは、保育の必要性のある子供と保育の必要性のない子供といますので、そこについては、その必要度をしっかりと地域でニーズ調査をした上で、それぞれの必要度を認定して入ってもらうという形にいたします。(田村(憲)委員「それから、教育のところは。教育のところ」と呼ぶ)

 そこの教育のことにつきましては、そのワーキングチームの中でもかんかんがくがく議論をいたしましたけれども、もちろん、保育園をばかにするとかいう御発言が一部ございましたけれども、そういうことは全くなく、保育園は保育園でその養護も教育もやってきていますが、それと学校教育法上位置づけられた教育は違うということを申し上げただけでございます。

田村(憲)委員 何を言っているかよくわからないんですが、中身は一緒だけれども、何か学校教育法上に位置づける、位置づけないだけでこの一元化をする、しないという話だとすれば、非常にみすぼらしい話なんだなというふうに思います。

 我々自民党は、ゼロ、一、二歳であっても、当然、保育の必要のない子供たちまで保育所に預けてほしいとは思っておりませんし、そういう子供たちは親が、またはおばあちゃん、おじいちゃんかもわかりませんけれども、保護者がしっかりと面倒を見ていただいて、それでいて、例えば、一時預かりでありますとか、それから、集いの広場のようなところで親同士が子供を連れていって、いろいろな懇談、それぞれの悩みを打ち明けながら、子育て、それぞれ向上していこう、そういうような施策でやっていきたいと思っておりますから、全ての子供に保育園というわけではありませんから、何か小宮山大臣の御発言と微妙にやはり違うのかなというふうにこの点は感じさせていただきました。

 さて、待機児童解消、これもこの中に入っていると言われましたが、総合こども園で待機児童解消というのはできるんですか。この中での待機児童解消というのは一体何を眼目にされているんですか。

 なぜならば、これはもう既に議論がありますが、仮に幼稚園と保育園が一緒になっても、先ほど、ゼロ、一、二歳は義務づけないという話がありました。これは幼稚園を気にされてそういうことにしたんだと思います。しかし、待機児童の八三%ぐらいがゼロ、一、二なんですね。三歳未満なんですよ。ということは、幼稚園と保育施設が一緒になった総合こども園を幾らつくっても、義務づけない限りは受け皿にはなり得ない。さあ、待機児童はどうやって解消されるおつもりですか。

小宮山国務大臣 今、御承知のように、都市部では保育園に入りたくても入れない待機児さんがいっぱいいらっしゃる一方で、幼稚園は全国平均三割あきがあるんですね。ですから、そこのところで、今、多くの幼稚園が、少子化の中で預かり保育ということを七五%の幼稚園がやっています。そういうところで、今回、基準を満たしてきちんと指定をしたところには財政支援を厚くしようとしています。そういう意味で、今預かり保育などをしていらっしゃるところは総合こども園になった方がやりやすい。

 ただ、ゼロ、一、二歳を、そこができないというところは、今回、都市部の方では、この総合こども園だけではなくて、二十人以下の小規模保育とか、あるいは保育ママさんがやる家庭的保育を、家庭でやるだけではなくてどこかの施設で集団的にやるとか、いろいろな仕組みをとりまして、そこと連携をして幼稚園がやることもできるような形にしておりますので、いろいろな形の中で、今回、認可だけではなくて、指定をすることによって財政支援を厚くすることで多様な預かれる施設ができますから、そのことによって私は待機児の解消にはつながると考えています。

田村(憲)委員 小規模保育で対応するみたいなお話をお聞きしましたが、本当に小規模保育だけで待機児童を全部解消されるおつもりなんですか。違うと思いますよ。

 お教えします。実は、今回、総合こども園なるもので質は上がるんだみたいな幻想を皆様方は我々に植えつけようとしているんですが、このパネルを見ていただきますと、総合こども園というのが真ん中にありますよね、ピンク色のもの。ゼロ―五歳。これはゼロ―五歳ですから、ゼロ、一、二も預かるんですね。

 左側に幼稚園というのがあります。青の幼稚園です。ややこしいですよね。もう一つ左にもピンクの幼稚園があるので、テレビで見ておられる方々は、この青の幼稚園とピンクの幼稚園は何なんだと、よくわからないんだと思いますが、こども園の幼稚園が青です。これは三歳から五歳。ゼロ、一、二は義務づけられていませんから、ここでは八十数%を抱えるゼロ、一、二歳の待機児童の解消はできません。

 その横にゼロ、一、二、乳児保育所というのがありますから、これはこども園の中でゼロ、一、二歳を預かるんだと思います。

 その横に実は点線で、基準を満たした認可外保育施設というのがあるんですね。ゼロ歳から五歳。私があえて指定のみのこども園という名前をつけました。これは何かというと、総合こども園と同じ機能を持っているんですが、認可じゃないんです、指定しか受けていないんです。

 どういうことかというと、これはどういうことかと私が言うよりも、本当は、指定と認可の違いはどこにあるんですかとお聞きをしなきゃいけないんですが、認可というのは、いろいろな方面から、ここは本当に、そこに権限を与えていいのかどうかということを総合的に、所管といいますか、要するに認可を与える自治体が、この場合ですと県ですけれども、判断した上で認可するんですね。

 ところが、指定というのは、外形的な指定基準をクリアすれば自動的に指定せざるを得ないという制度。だから、ここに株式会社がたくさん入ってきて、外形基準だけ満たせば、あとは、いや、あなたちょっと今までやったことないから本当にできるのかなだとか、何かあなたの身の回りを見るとどうも怪しい人が見え隠れするような気がするから、あなたにはさせられないななんというようなことで指定をしないということができないんですよ。もちろん、欠格事由はありますよ。しかし、それは明確にその欠格事由に当てはまっていないことには指定せざるを得ないんです。

 つまり、外形だけで指定を受けられるから、どんどん株式会社がここに入ってきて、またNPOもそうなのかもわかりません、数がここで稼げるから、だから待機児童は解消できるんだというのがもともとこの一番の肝なんですよ、待機児童解消の。と私は思うんですが、大臣、それでいいですか。

小宮山国務大臣 今回、新システムの中では、待機児童の解消のためには量的にも拡大をしなければなりませんので、指定制度を導入して、その指定基準を満たした場合には、この点線でお描きいただいた認可外保育施設などについても指定をすることにしました。これは、今、基準を満たしていても、それぞれの市町村の裁量で認可にしないというようなケースもございますので、そうしたところもこれは入ってきます。

 指定制度のもとでは、今のとおり保育の質を確保できるように、これは同じ指定制度をとった介護保険の例などからも参考にいたしまして、いろいろな質を担保するための仕組みは既にこの法律の中に入れてあります。

 まず、参入に当たりましては、質の確保のための客観的な基準を満たすということ、これについては、今の幼保連携型の認定こども園の基準を基礎として検討します。指定は五年ごとの更新制にしますし、定期的なチェックもいたします。法律上の欠格事由を定めるとか、連座制も含めまして、違反した場合の厳格なペナルティーを設けているということ、それから、指定権者、市町村に指導監督あるいは指定取り消しなどの権限を法制上定めるなどいたしまして、株式会社でも、きちんと参入をして、その質が保てるような仕組みをちゃんと入れてございますので、御懸念のようなことはないと思っています。

田村(憲)委員 いや、それならば認可でいいじゃないですか。何で指定制なんて導入するんですか。裁量で断れるのならば認可と一緒じゃないですか。指定制というのは違いますよ。指定の基準を超えたら断れないんですよ。あなたは嫌いだからなんて、まあ、嫌いか好きかでは選べないでしょうけれども、そういうことはできないんですよ。認可ならば、その人の信用だとか、総合的に勘案して認可を与えるということはできますが、指定というのは、外形的な基準をクリアすれば断れないんです。

 AIJの問題がありました、高速ツアーバスの問題がありました。これは全て規制改革、これを進めてきた上で事後チェックが不十分だからああいう問題が起こったんです。AIJも、もっともっと金融庁等々がああいうような投資顧問会社にチェックに入っていれば防げたかもわからない。しかし、行革でどんどん役人がいなくなりますから、できないですよ、そんなこと。そうなったときに、十分に事後チェックができないからこういう問題が起こってきた。

 指定制も同じでありますから、どんどんこれからふえてまいります。もちろん待機児童がいるところが原則ですね。ほかは、待機児童がいないところは指定しなくてもいいという、指定しちゃいけませんよじゃないんですよ、しなくてもいいという判断でありますから、これは首長さんの判断によって変わるわけでありますけれどもね。これから、東京を含め大都会はどんどんできてくるでしょう。チェックできるだけの、自治体に人員的な予算措置するんですか。そこまで含めてお答えください。

小宮山国務大臣 今そこで描いていただいたように、認可の制度だけですと、今の規模に、満たすことができない、また多様なニーズに応えて、もちろん家庭で育てることが第一ですけれども、必要に応じていろいろなメニューの中から選べるようにしようということで、幅の広い指定の基準ということを設けました。

 それで、認可保育所に公費によって財政支援をする、こういうことの現在のままの制度ですと、認可は、先ほど申し上げたように、裁量制ということもありまして、認可施設の開設には一定の規模を必要とする、こういうことから、地域のニーズに機動的に対応するのは限界があるというのが一つ。

 また、保育の必要性、保育所への入所の可否、これを同時に判断する仕組みに今なっているため、潜在的なニーズも含めまして、地域の保育ニーズを把握する仕組みと今なっていない。今回は、市町村が把握するようにいたします。

 それから、公費による支援先が限定的で、個人の多様なニーズへの対応が不十分で、利用者の自由な選択のもとで学校教育、保育が受けられない。

 こういうことから、単に予算をつけるだけで待機児など今の保育をめぐる課題に対応することは困難だということで、こういう新しいシステムということを提案いたしました。これが機動的に運用されることによって、質の確保された保育の量的な拡大を図ることができると思っています。

 そして、チェックの話ですが、市町村子ども・子育て支援事業計画、これを策定して、保育の需要の把握、それに対して計画的な整備をする責務を市町村に課しています。

 指定制の導入によりまして、株式会社、NPOなど多様な事業主体も含めて、質の確保された認可外の保育施設でありましても、こども園給付の対象になる施設としてこの指定をすることにしています。

 それで、この客観的な基準を満たしているかどうかを市町村が判断をして指定をいたしますが、先ほど申し上げたように、監督の権限も強化をしております。それからあと、実施するときには、市町村にも、子ども・子育て会議というような多様なステークホルダーによる会議もつくってまいりますので、その運用状況はしっかりとチェックができると考えています。

田村(憲)委員 人がいないとチェックはできないんです。会議を幾らつくったって、机の上であのこども園はどうなんだろう、どうなんだろうと議論していても、見に行ってチェックしないと、こんなものは質は担保できないんですよ。その予算的な措置はされていませんね、地方交付税でも。役所を呼んで聞いても、そういうことは話はされませんでした。

 監督だとか指導の権限は強化したというんですが、そもそもが、これは保育の立場からすれば、市町村の責任の言うなれば軽減策になっちゃっているんですよ。今までは、保育というものは、児童福祉法二十四条の中で、実施主体が地方自治体、市町村になっていたんですね。ところが、今回はそういうふうになっていないんです。

 二十四条を見ますと、今回はどう書いてあるかというと、要するに、「市町村は、子ども・子育て支援法に定めるところによるほか、保護者の労働又は疾病その他の事由により、その監護すべき乳児、幼児その他の児童について保育を必要とする場合において、当該児童に必要な保育を、保育所、総合こども園若しくは」云々書いてありまして、最終的に「確保するための措置を講じなければならない。」つまり、確保をするのが地方自治体の言うなれば役割になったわけなんです。

 しかし、今まではどういうことであったかというと、「市町村は、」「保育所において保育しなければならない。」つまり、実施主体が自治体だったんですよ。これは大きな違いなんですね。つまり、自治体の責任が薄まる。

 そして、もう一つ生まれてきたのが、直接契約、まあ、公的契約という言い方をされておられますけれども、利用者と施設が直接契約するんですね。そこに自治体が若干関与するという形になります。

 今までは、市町村と利用者が契約を結ぶんです。極端な話をすれば、利用料が滞納があったとしても、事業者は困りません。それは、ちゃんと自治体からお金が来ますから。今回は、滞納が生じれば、これは事業所がそれをかぶらなきゃいけない、こういう問題もある。強制徴収をするとかしないとかという話がありますけれども、本当にできますか、強制徴収。国民年金の保険料さえ、ああいう状況なんですよ。事業所にしてみれば、非常に不安定な財政運営にならざるを得ないという可能性がある。

 そして、もう一つお聞きしたいのは、事故があった場合です。

 事故があった場合、以前ですと、以前というか現在ですね、もちろん事業所に対して損害賠償請求できますよね。ところが、自治体に対しても国賠をかけることが可能なはずです。今回は、実施主体、責任者じゃありませんから、あくまでも監督をする、指導する立場になります。

 そうなった場合、一般論として考えても、設置主体である方が、当然、委託をして事業所に保育をさせているわけでありますから、そこで重大な過失だとかがあって事故が起こって、お子さんに何かがあったときには、やはり自治体に対して責任を追及できると思うんですが、きょうは内閣法制局長官、お越しをいただいておると思いますけれども、どちらの方がより責任が重くなるか、お答えをいただければありがたいと思います。

山本政府特別補佐人 お答えいたします。

 今回の改正によりまして、市町村がみずからまたは委託して保育を行うというこれまでの制度から、市町村は保育を行う施設等を指定し、施設等に関する情報提供やあっせんを行い、さらに、その施設等が設備や運営に関する基準等を満たしていない場合には勧告や命令や指定の取り消しを行うという制度に変わるわけでございます。

 そこで、その市町村の責任についてのお尋ねでございますが、改正の前と後とでどちらが重いかということはなかなか一概に比較することはできないわけでございますが、おっしゃいました、保育を行う施設におきまして万が一子供さんに何か事故が起こったというときには、その施設等を市町村が直接運営している場合は国家賠償責任、そうでない場合は基本的には民法の普通の七百九条による責任追及ということになると思います。

田村(憲)委員 ということは、今ならば、今の制度ならば、仮に、事業主が何らかの状況で賠償請求されて、お金が払えなくなった場合、破綻した場合には、もうそれでもらえないんですよ。ところが、自治体が設置主体ですから、そちらから賠償してもらえるという話になる。

 今度の制度になると、直接契約ですから、設置主体、つまり事業主が破綻してしまえば、もうもらえるところはなくなっちゃうという話。あくまでも監督権者、指導権者としての請求しかできないという話になるんですよね。だから、そういう意味からすると、やはりかなり後退をするという話になるというふうに思います。

 心配なのはこれだけじゃありませんでして、先ほど、大臣、小規模保育で待機児童を解消するとも言われました。小規模保育所の言うなれば面積基準でありますとか人員の配置基準、最低基準ですね、これは、普通のこども園、総合こども園といたしましょう、それの基準と同じになるんですか、それとも若干なりとも劣ることになるんですか。

小宮山国務大臣 先ほどから幾つかおっしゃっていることに答えさせていただきたいと思うんですけれども、今、基準の中で、地域型保育事業の基準、これは、国が示した基準を参酌して市町村が地域の実情を踏まえて条例で定めることにしています。その際、子育ての当事者を含む子ども・子育て会議の意見なども聞いて行うということにしておりますので、やはり、総合こども園とそれから地域型のこども園の場合については、従うべき基準と参酌すべき基準で違う面はございます。ただ、人員配置とかそういう面は同じにしてございます。

 先ほど、その前に、ちょっとおっしゃったことの中で言わせていただきたいことがあるんですが、二十四条で、今までとは確かに仕組みが違いますが、今回、児童福祉法と子ども・子育て支援法でしっかりと市町村の責務は書き込んでございますので、今までと形は違う。今まで、保育に欠ける子に保育をということだったわけですけれども、今回は、必要な子供、全ての子供にということなので、決してそこが薄まってはいないということ。そして……(田村(憲)委員「もういいです」と呼ぶ)いいですか。はい。

田村(憲)委員 さっき言ったのは、私は、国賠の話なので、ちょっと趣旨が違うと思います。

 それから、今重大な御発言がありました。やはり、小規模保育は、参酌標準という話が出ましたけれども、従わなくてもいいんですね。それを一つの基準として、そこは参酌しながら自分のところの面積を決めるという話になると思います。

 これは怖いんですね。例えば、駅前保育なんかで小規模保育、親もそちらの方が預ける方が楽だからいいという話になるかもわかりません。しかし、保育の場合、こども園の場合、小規模保育の場合は、受益者は子供なんですよ。親じゃないんです。子供は物が言えないんです。ですから、環境が劣悪になった中で、物の言えない中で、勝手に質が落ちて、最後に苦しむのは子供たちでありまして、我々は、物言えぬ子供たちの視点に立って、この質という問題だけは絶対に落とすわけにはいかない。

 ちなみに、日本の今の質は、世界と比べて高いんですか、低いんですか。たしか、お調べになられたはずですから、お答えください。

小宮山国務大臣 世界に比べては、決して高くはないということだと思います。ただ、今申し上げましたように、人員基準とか、子供たちの安心、安全にかかわるところはしっかりと、従うべき基準にしてあります。

 ただ、待機児さんが多いところは、今でも面積基準は、待機児がいる間は参酌基準ということになっていまして、そういう中で、やはり都市部の、待機児童が多く発生している私の地元などでも場所がないわけです。そのことによって、いる場所がない子供たちについては、安全に配慮をしながら、面積のところは参酌できるというようなことにしているところです。

田村(憲)委員 いや、問題なのは、小規模保育の方が、多分自治体の負担も安くなるはずなんですよ。すると、本来はこども園でやりたいと思っても、安いから小規模保育に走るという、そんな自治体もないとは限らない。いや、そんな首長さんばかりじゃないですよ。中にはいるかもわからない。

 先ほどの株式会社の話も、全てが悪いと言うつもりはありません。今も実は保育に株式会社は入ってきていただいています。一生懸命やっておられる株式会社もあるんです。ただ、自由にやっていい、基準さえ超えれば。それも入り口の基準ですね、指定制というのは。出口の基準じゃありませんから、入ってくる企業の中には信用できない企業もあるかもわからない。

 子供の場合は、絶対に事故があっちゃいけないんですよ、人のことだから。だから我々は厳しいことを言っているんです。だだぼだに株式会社が入ってきて、何か問題が起こったときに責任をとらなきゃいけないという話じゃ困るんですよ。だからこういう厳しいことを言っておるので、その点は御理解をいただきたいと思いますし、今の内容では我々は賛成はできかねるという話であります。

 では、自民党はどうするんだという話になると思います。

 実は、待機児童の問題だけ申し上げれば、多分、こうやって指定制にしても待機児童はなくなりません。なぜか。こども園がつくれないからなんですよ、指定のみのこども園でも。それは一番の理由は、保育士が足らないんです。有資格者は百六万人おられます。しかし、今、実働は三十九万人ぐらい、パートも入れて。パート保育士も入れてですよ。なぜか。非常に賃金が低いんですよ。待遇が悪い。この待遇改善をして、とにかく、今保育の仕事からほかの仕事をされておられる方々にこちらへ帰ってきてもらわないことには、人がいないんですから、施設ができるはずがない。

 仮に東京で無理にやろうとすれば、東京は待遇をよくしたりだとか、寮をつくって呼び込めるかもわかりませんが、近隣の自治体が、今まで待機児童のないところが、押し出しで待機児童が出てくるんですよ。だから、この問題を解決しなければ、まずどうしようもないということ。

 だから、我々自民党は、この保育士の処遇の改善、今の運営費の中で単価をアップして、とにかく保育士さんのその労働に報いられるような、そういうような施策をやっていきたいと思っていますし、あわせて、やはり地方の負担というものが大きいんです。だから認可しないという部分もあるんです。地方も今財政が厳しいですからね。認可しちゃって保育園をつくれば、当然、裏の負担をやらなきゃいけない。

 それならば、例えば、安心こども基金から待機児童解消枠でもつくって裏負担に入れてあげるとか、そういうことをやった方が、安心も確保ができるし、質も確保ができるし、保育所もふえるという話でありまして、こういうやり方をしなくったって、まあ大変ですよ、このやり方は。見ていただいたらわかるように、所管が内閣府と文科省と厚労省に、こども園だけでも三つに分かれちゃうんですよ、これは。こんなのは一元化じゃなくて多元化ですよ。こんなことをするよりかは我々の方がよっぽどいい。

 ですから、この子ども・子育て新システムの肝である指定制でありますとか直接契約でありますとか、この総合こども園、こういうものはやめて、今我々が言ったような提案を受け入れていただきたいように思いますが、いかがでございましょう。

小宮山国務大臣 質をきちんと保ちたいということは、思いは同じでございます。

 そうした中で、ぜひ御意見も伺っていきたいというふうに思っていますが、一元化になっていないということについては、内閣府にしっかりと統括的なものをつくって、残るまだ移行前の幼稚園や保育園のところも一括してやるようにいたします。将来、子ども家庭省をと思っておりますが、なかなかできないので、内閣府の中でそこは一元的にやりたいというふうに思っているところでございます。

 また、質のことにつきましても、それはきちんとその質が保たれるように、特に保育士の問題については今、潜在保育士とか、それから認可外の保育をやっている方も五年間その資格で受けられるようにするなど、また、処遇を上げる、それから配置基準を上げるなど、質の改善にこの消費税を上げさせていただく分をぜひ使っていきたいと思いますので、またお知恵もいただいて、しっかり一緒につくっていただければと思っています。

田村(憲)委員 もう時間でございますが、これからは、大臣、もうちょっと御答弁を短くしていただいて、ぽんぽんぽんぽんやれるようによろしくお願いいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございます。

中野委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 いよいよ、社会保障と税の一体改革、公明党、質問をさせていただきます。

 私たちは、平成二十一年、所得税法改正案附則百四条において、社会保障を持続可能なものにするために、消費税を含む税制の抜本改革は必要だ、こういう認識でございます。

 しかしながら、今回政府が出してきた案は、その社会保障の一体改革になっていないなどの大きな問題点がある、私たちはこのように考えておりまして、この審議を通じてその問題点を明らかにしていきたい、このように思っております。

 まず初めに、総理にお伺いいたします。

 参議院で問責決議を受けた二人の大臣、田中防衛大臣、前田国土交通大臣、早く交代させるべきだと我々は思っております。

 一つの理由は、国会を代表する参議院、院の決議は重いということでございます。

 そしてもう一つ、この委員会にも直接関係がございます。

 今回の国税の方の第七条に住宅のところがございまして、これを読んでみますと、「住宅の取得については、取引価額が高額であること等から、消費税率の引上げの前後における駆け込み需要及びその反動等による影響が大きいことを踏まえ、一時の税負担の増加による影響を平準化し、及び緩和する観点から、住宅の取得に係る必要な措置について財源も含め総合的に検討する」と。

 私たち、現場を歩いておりましても、これから家を買おうとする人、また、住宅関係の仕事をしていらっしゃる方が、今回の消費税について、非常に強い関心を持ってこの委員会を見ておられます。

 また、その文章のちょっと後に、「自動車取得税及び自動車重量税については、国及び地方を通じた関連税制の在り方の見直しを行い、安定的な財源を確保した上で、地方財政にも配慮しつつ、簡素化、負担の軽減及びグリーン化の観点から、見直しを行う」とございます。自動車関連の方も非常に強い関心を持ってこの委員会を見ておられます。

 この住宅、自動車税制、いずれも国土交通大臣の所管です。我々は国土交通大臣にここに来てもらって審議ができない、これでは私は実質的な深みのある審議はできないと思います。交代させるべきと思いますが、いかがですか。

野田内閣総理大臣 二院制の我が国において、その一つの院において問責決議が成立をしたという事実は、これは重く受けとめなければいけないというふうに思っております。

 したがって、御指摘いただいた二閣僚のみならず、私も含めて全ての閣僚が襟を正して、職責を果たすために責任を果たしていきたいというふうに思います。とりわけ、御指摘いただいた問責を受けた閣僚につきましては、反省すべき点は大いに反省をしながら、緊張感を持って職責を果たしていただきたいと考えております。

 なお、この委員会審議の関連で御指摘をいただきましたけれども、住宅の問題あるいは自動車税の問題、御質問があるのかもしれませんが、税については財務大臣がおります、住宅を含めてその対応については、全て総括は一体改革の担当大臣、副総理もいらっしゃいますので、きちっとした答弁はできるというふうに思っております。

斉藤(鉄)委員 税だけではございません。この法律の中に、住宅の取得について、消費税率の引き上げ前後における駆け込み需要及びその反動等による影響が大きい、したがって、これを緩和するという諸施策も必要だ、このように書いてございます。

 これは税の担当大臣だけで済む話ではありません。これは、住宅局を持ち、住宅政策に大きな責任を持つ国土交通大臣のここへの出席なくして審議が深まるわけがないじゃないですか。それとも、その審議なしにこの法案を採決しろ、こうおっしゃるんですか。

野田内閣総理大臣 基本的には、私ども、それぞれ担当している大臣、総括をする大臣もおりますので、そういう場面できちっと御答弁をさせていただきたいというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 住宅政策、自動車政策、税制はその非常に大きな柱です。その担当大臣なしで、その周りの者で答弁させていただく、これでは責任ある質疑はできない、このように思います。いかがですか。

野田内閣総理大臣 重要な法案はほかにもございます。この一体改革の法案も含めてでございますが、こうしたものについては、ぜひ、私ども責任を持って対応したいと思いますので、審議を進めていただければというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 総理、命をかけるとおっしゃっている、政治生命をかけるとおっしゃっている。本当に、やる気がおありになるんですか。疑わざるを得ません。

 その、政治生命をかけるとおっしゃっているということに関してお聞きいたします。

 G8サミットにおきまして、世界経済をめぐる協議の中で、消費増税法案を今国会で成立させたい、こうお述べになったというふうに報道にございます。これは事実でしょうか。そして、事実だとしたら、これは国際公約というふうに理解してよろしいんでしょうか。

野田内閣総理大臣 G8の第一セッションが世界経済というテーマでございました。大きくくくると、欧州の債務の危機の問題なども含めまして、財政再建と成長を両立させていかなければいけないという基本認識はメンバーの間でできたと思います。

 それぞれの国の考え方等も表明された中で、我が国としても、一昨年の六月に、財政運営戦略と新成長戦略、同時に閣議決定をしていますので、私どもももともと財政再建と成長を両立させる立場であるという基本的な姿勢を御説明いたしました。

 その上で、今取り組んでいるのは、この財政再建の絡みでは、社会保障のいわゆる安定財源を確保するとともに財政健全化を同時達成する、そういう法案の審議がサミットが終わってから本格的になってきます、法案を提出している以上はその成立を期すという、その立場は申し上げました。

 加えて、新成長戦略の加速であるとか日本再生戦略を年央までにつくる等の、成長についての言及もさせていただきました。

 今我が国が取り組んでいること、ゴールに向けて、目標に向けて何をしようとしているかという説明をしたということでございます。

斉藤(鉄)委員 では、国際公約ではない、説明しただけ、こういう理解でよろしいですか。

野田内閣総理大臣 会議で主張したことが全部国際公約となるのかどうかというと、これはフリーなディスカッションの場でございましたので、まさに我が国の取り組みを説明したわけです。欧州債務危機についての私どもの考え方も説明いたしました。という一連の闊達な議論の中で取り組みを説明した。もちろん、やらなければいけないことでございますので。

 受けとめ方はいろいろあると思いますが、国際公約として語ったわけではございません。

斉藤(鉄)委員 政治生命をこの法案にかける、このように何度もこれまで発言されてまいりました。これは、今国会で成立をさせる、こういう意味ですね。

野田内閣総理大臣 そのとおりです。

斉藤(鉄)委員 それでは、それができない場合の政治責任というのは、どうおとりになるんでしょうか。

野田内閣総理大臣 これまでの、例えば自民党からの御提言も、いわゆる改革推進派という立場からの厳しい御指摘も含めて、建設的な御提言もいただいているというふうに思います。

 御党からも、特に社会保障については、これまで熱心な御議論もあるし、成果もあった党でございますので、御提起をいただけるものと思います。

 そういうものも含めて、成立を期す、成立をさせるために責任を果たしていきたいというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 今国会で成立を政治生命をかけて期す。総理大臣の言葉です。それができない場合は、それはそこに大きな決断がある、こういう理解でよろしいでしょうか。

野田内閣総理大臣 不退転の決意で臨んでおります。不退転の決意のその結果については、それはやはり重たい責任があるというふうに思っております。

斉藤(鉄)委員 今、我が党に対してもぜひ協議に乗ってほしい、こういう話がございました。

 私、野党に対して協議を求めるその大前提は、与党としてこれがまとまっている、政府・与党がまとまっている、もちろん、決まるまではいろいろな議論があるでしょう、しかし、決まった以上は、政府・与党が一体となってこの成立を期す、そして野党に対して協議を申し込むということが誠実な姿勢だと思います。

 しかしながら、現状を見させていただきますと、与党どころか、その与党の中の一つの党の、その党がまた二つに割れているというふうにしか見えません。

 我々公明党としては、もし我々に協議を申し込まれるのであれば、与党として、また民主党として、また政府・与党一体となってこれに全力を挙げる、だから協議に乗ってほしい、これが私は常道だと思います。私たちが与党のときはそういたしました。この点、いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 社会保障と税の一体改革の議論をスタートしたのは一昨年の秋以降でございます。その間、かんかんがくがくの議論がございましたけれども、昨年の六月に成案をまとめ、その成案を具体化する形で素案をまとめ、そして大綱にして、そして法案提出を三月末にさせていただきました。

 この一連のプロセスを経る過程においては、さまざまな意見がございましたけれども、私が理解をしている範囲においては、明確に絶対反対という御意見はほとんどなかったというふうに思います。行革をやらなければいけない、経済再生が必要等々の包括的に進めなければいけない問題等々、あるいは、消費税そのものの問題、社会保障のあり方の問題、建設的な御提起はいろいろあったと思います。

 そういうプロセスを経て、私は、手続に瑕疵はなく、時間をかけながら今日に至っているわけでございますので、基本的には、党の方針はそういう長い時間をかけて丁寧に積み上げてまいりましたということで、いざ法案の採決に至るときには、基本的には皆様、それぞれ自由なお立場でいろいろな御発言をする機会はあるかもしれませんが、採決の際には政府・与党一体となって対応できるものと確信をしております。

斉藤(鉄)委員 いわゆる小沢さんたちのグループのことを今念頭にお話しになったかと思いますが、しかし、我々が見ておりますと、そのグループの方だけではなく、本来総理を支えるべき民主党の執行部も、本当の意味で本気ではないのではないかと疑わざるを得ないような、そういう状況もございます。

 ある意味で、総理は本当に本気になっていらっしゃるんでしょう。しかしながら、裸の王様といいますか、周りの人たちには、本気で総理を支えて今国会で成立させようという気迫が見えないということも事実でございます。

 裸の王様になっているのではないかという批評もございますが、このことについて総理はどのように思われますか。

野田内閣総理大臣 いろいろな批評があります。わからなくもない批評もありますし、根も葉もない話も多いです。

 例えば、まずは足元を固めろということで、その努力をしようとすると二股と言われますし、多くの方に御理解いただこうと思っても、いろいろあるんですね。でも、それは一つ一つ、気にしないで、とにかく前進をするようにしたいと思います。

 執行部と私の考えが離れているということはありません。きのう、社会保障と税の一体改革のための推進会議というのをつくりました。その議長に幹事長になっていただき、執行部も一体となって推進をしようという構えでございます。

斉藤(鉄)委員 国民に負担増を求める、そして野党に協議を求めるということであれば、政府・与党一体となってやっていただきたいということを申し上げておきます。

 次のテーマに行きます。

 これはもう何度も予算委員会やこの場で言い古されたことですから取り上げるのをちょっとちゅうちょしたんですが、しかし、この審議を始めるに当たって、やはり確認をしておかなければならない。それは、民主党のマニフェスト違反と、そして、政権の正統性の問題でございます。

 世の中には、正論であっても、それをあなたに言う資格があるのかという話がございます。正論であっても、世の中から信用されない、あなたが言ったのでは信用されないという問題がございます。私は、この点をまず最初に指摘させていただきます。

 まず、マニフェストにつきましては、もう一々挙げませんけれども、有権者との約束に反したこと、これはたくさんあった。私は、マニフェストに反したことそのものを今さらここであげつらおうとは思いません。私たちも政権のときに、選挙で約束したけれども実行できなかったということはありました。

 しかし、私は、そのときの姿勢、できなかったことはできなかったと素直に、素直にといいましょうか、非を認めて、そしてそこから新たな出発をする、野党に対しても提案をするということが私は野田さんらしい誠実な姿勢だと思うんです。

 しかしながら、先日といいましょうか、昨年の八月、マニフェストの中間検証が発表されまして、この中間検証を見ますと、マニフェスト作成時に検討、検証が不十分な部分があったということは認めた上で、しかし、そこまではいいんですが、その後がいけないと思います。「日々変動を続ける政治・経済状況に対応し、マニフェストを含めた政策全体の中で優先順位を付け、ときにはマニフェストにない政策を優先させるなど、国民にとってより重要な政策を実現させることが求められる」と。

 つまり、マニフェストをつくるときに検証が足らなかったところはある、しかし、世の中は動いているんだから変えてもいいんだ、こういう趣旨でございます。私は、それはマニフェストの検証にならないのではないか、このように考えます。

 今回、自分たちができなかった、そして結果的に国民をだましたというところは素直に認めるところからこの議論をスタートさせるべきだ、そこに本当に説得力のある提案ができるようになる、このように思いますが、総理のお考えはいかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 昨年の八月の中間検証、これは岡田幹事長のもとでまとめましたので、もし補足があったら当時の幹事長だった副総理に御答弁いただきたいと思いますが、基本的には、財源確保策十六・八兆円、いろいろ努力をしましたけれどもできなかったということはありました。その見通しの甘さについては、これはもう率直におわびをさせていただきたいと思います。

 ただ、よく、このことをもって、先ほども御議論があって、ばらまき四Kみたいな言い方をされます。でも、恒久財源を確保しながらやってきたということは、工夫をしながら、それでもマニフェストを、約束を守ろうとしてきたということはあったということは、きちっと御説明していかなければいけないというふうに思っています。

 もう一つは、今、優先順位のお話が出ました。これは、優先順位を変えざるを得ない状況は間違いなくあったんです。見通しが甘くて順位を変えたのじゃなくて、例えば、大震災が発災をしたことによって、高速道路の無料化を言っていましたが、最初の第一次補正はそれを財源にしなければいけなくなった等々、優先順位を変えざるを得ないことは間違いなくあったということは、これは御理解いただきたいというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 私は、その最後のところが言いわけだというんです。

 十六・八兆円の財源を出す、その財源が出なかったことが基本的にマニフェストが実行できなかった最大のポイントだと私は思いますけれども、今の総理の答弁は、その十六・八兆円の無駄なお金を出すといったことは、世の中が変わって、優先順位が変わって、優先順位が変わったから、後でまた話をさせていただきますけれども、ほかの財源を使って、新たに出てきた優先順位の高い政策項目に充てたと。私は、そこにすりかえがあるんだと思います。

 マニフェストは、あの十六・八兆円からつくるというのが基本的な民主党の考え方でした。したがって、優先順位が出てきたとしても、ほかのものが出てきたとしても、もしあの十六・八兆円が生み出されていたらマニフェストは実行できた、しかし、その十六・八兆円をほかのものに使わなきゃいけない状況があったから、マニフェストが実行できなかったけれどもその十六・八兆円をほかのものに使いましたというのであれば説明はわかるんですけれども、十六・八兆円は出てこない、しかし、ほかに優先事項が出てきたからそちらを実行しましたというのは、マニフェストを実行しなかった理由になっていない。

 ちょっとうまく言えませんけれども、わかるでしょう。今の総理の発言は、すりかえがあります。

岡田国務大臣 私は当時幹事長としてこの中間検証をまとめましたので、御説明させていただきます。

 その前に、先ほど総理の言われたことですが、やはり見通しの甘さがあったということは検証の中でもはっきりと認めて、そして、マニフェストに多くの政策を盛り込み過ぎたり、実現に至る困難さを十分検証できないまま具体的な政策を挙げたりした部分があった、この点については真摯に反省しなければいけないということは述べているところでございます。

 その上で、先ほど委員が言われた点については、例えば高速道路無料化の話ですけれども、我々は、実験的に路線を選んで無料化するということは、予算計上を一旦はいたしました。そして、その財源は、公共事業をカットすることで生み出していたわけです。

 しかし、あの大震災が起きて、私は当時幹事長として、この実験線の予算を全部やめて、それを補正予算の収入に充てて、そして被災地の港湾や道路をつくるということを盛り込んだわけです。そのことは、私は自分でやりましたから、よくわかっております。間違っておりません。

 そういう形で、公共事業削減で財源を生み出して高速道路無料化実験をやる予定をそういう形で振りかえた、そういうものがあったということを申し上げているわけであります。(発言する者あり)

中野委員長 お静かに願います。

斉藤(鉄)委員 であるならば、そのように素直に国民に説明されるべきです。

 また、このマニフェスト検証は、民主党の方の議論を聞いておりますと、私は、そもそものマニフェストの根本は、あの十六・八兆円、無駄なお金はすぐ出てくるというところにその一番大きなポイントがあったと思います。それが出てこなかったというのがマニフェスト破綻の最大原因なんですけれども、そのことを隠して、ほかに、例えば震災がありましたとか、そういうことにかこつけているのは誠実な姿勢ではないのではないかということを言っているだけでございます。

 次に、これも何度も議論になりましたが、やはり公明党として聞いておかなければなりません。

 四年間消費税率五%を維持するというのが、衆議院選挙のときの民主党の、マニフェストではない、インデックスに出てくる。五%を維持するということでございました。

 総理は何度も、消費税率を上げるのはこの私たちの任期四年間以降だからこれは公約違反にはならない、こうおっしゃっておりますが、これはやはり不誠実な態度だと言わざるを得ません。

 現に、鳩山元総理は、二〇〇九年十二月ですから政権が発足をしてすぐです、総理大臣として次のようにおっしゃっています。

 さきの衆院選で四年間は増税しないと国民に誓った、大変厳しい財政状況だが、この四年間に増税を考えることは決してない、無駄を徹底的になくしていく努力を今まで以上に行っていく。

 この発言を見ますと、政権交代当初は、この四年間は増税しないというのが、増税することを決めないというのが一つのコンセンサスだったのではないか、このように思います。

 そういう意味で、総理のこれまでの、公約に反しないという理由づけは総理らしくない、私はこのように思いますが、いかがですか。

野田内閣総理大臣 任期中に引き上げないということは、それはマニフェストに書いておりませんが、口頭では、党幹部含めて、多くの皆さんが語ったことだと思います。それはもう率直に認めます。

 鳩山さんの御発言は、その後、議論することまで否定することはなくなったんですよね。という、ちょっといろいろ変化があることは御理解をいただきたいというふうに思いますが。

 いずれにしても、総選挙のときに明確にこういう、社会保障と税の一体改革をやるということのメッセージはなかったことは事実でございますので、その間になぜ変わったのか、なぜこの一体改革が必要なのかという意義ということは、きちっと国民の皆様に御説明をしていかなければいけないというふうに思います。

 なお、これもちょっと勉強したいと思っているんですけれども、三%から消費税五%に引き上げたときも、決めた後に選挙しているんですね、翌年。その翌年に実施をしているんです。そのときにどういう御説明をしたのかも含めて、ちょっと勉強させていただきたいというふうには思います。

斉藤(鉄)委員 総理が、消費税、マニフェストにはない消費税を上げると決意された、その理由は何なのでしょうか。

野田内閣総理大臣 平成二十一年の第二次補正から予算編成にかかわりました。等々、やってきている中で、どうしても、社会保障費は自然増で一兆円ふえる等々ある中で、その部分をほかの分野でのみ込んでいかなければいけない。公共事業もそうでした。ODAもそうでした。大切な事業が、また、やらなければいけない事業があるけれども、そちらを抑えて予算編成をしなければいけないということを何回か経験いたしました。

 これではこの国はもたないんではないか。もちろん社会保障は、必要なものはやはり必要なんで、随分あるんです。また、充実させなければいけないものがあるんです。しかし、その安定財源を確保しないで予算編成をすることはやはり困難だと思いました。何よりも、その社会保障に、将来に対して不安を持っている方もいらっしゃるわけです。

 私はいつも申し上げるんですけれども、きょうよりあしたがよくなる社会をつくりたいという中で、あしたがよくなるという実感、確信を持つためには、この社会保障と財政のテーマを乗り切らないと根本的にはそういう社会に向けての前進があり得ないのではないかという思いを強く持つようになったということで、特に、だから社会保障については、持続可能性を担保するためには、給付の面と負担の面で世代間と世代内の公平を担保していくということ、そして財政も、きちっと安定財源を確保することによって財政健全化という目標も同時達成するということ、そういうことが待ったなしの状況になっているということを強く実感していることがございましたので、改めてこういう形の法案を提出したということでございます。

斉藤(鉄)委員 総理は、先日、本会議で、我が党の石井政調会長の質問に対して、消費税を上げることの理由の一つとして、政権交代以降の税収の落ち込み、それから大震災の発生ということも挙げられております。

 先ほどの総理の答弁、つまり、一言で言うと、社会保障を持続可能なものにするためにこれは必要なんだということを気がついた、こうおっしゃったわけです。私は、そのことを堂々とおっしゃればいい、このように思うんです。

 政権交代以降の税収の落ち込み、これは、リーマン・ショックですから、二〇〇八年に起きたことで、政権交代以前からあって、ある意味でわかっていたことです。これは予算委員会での質疑を通して、当時の民主党のリーダーである菅さんや鳩山さんもわかっていたということはもう明確でございます。

 それから、大震災につきましても、菅総理は消費税のことを二年前の参議院選挙でおっしゃいましたけれども、これは大震災の前でございます。私は、基本的に、大震災や税収の落ち込みということを理由に挙げられるのはこそくではないか、このように思います。

 先ほど御答弁になったように、堂々と社会保障との関係をおっしゃればいいんじゃないですか。

野田内閣総理大臣 いや、もう何よりも、これは社会保障と税の一体改革ですから、意義は社会保障の安定化と充実です。

 石井政調会長も、その答弁の話がありましたが、ほかの文脈で社会保障を言っているんです。ちょっと違う観点からの御質問のときに今の震災等々の御説明をしているということで、社会保障の意義については常に申し上げているつもりでございます。

 その中で、では、さはさりとて、リーマン・ショックとか大震災の影響がないのかというと、これも、現実問題にはあります。

 だから、社会保障だけ言えばいいという話でしょうから、アドバイスは受けますけれども、リーマン・ショックの後、その後、あのころ、こう言ってはなんですけれども、その影響を見通せなかったとおっしゃいましたけれども、我々が野党で、答弁をしているときに、実体経済への影響は蜂に刺された程度とかというお答えがあったんですよ。税収の見通しを言っても、四十兆を割るなんというお話は全然なかったんです。

 そういう中でマニフェストをつくったということは、これは現実にあります。でも、こういうことばかり言うと言いわけになるから言いませんが、もう言っちゃいましたけれども、でも、気持ちは、社会保障の安定化と充実が基本であるということであります。

斉藤(鉄)委員 もうここも深く言いませんけれども、当時の与謝野大臣と、菅、当時は何だったでしょうか、菅さんとの質疑の中で、菅さんの方が、いや、税収は大きく落ち込みますよと言っているような場面も私は覚えております。ですから、蜂が刺すような程度だったと巷間言われている中でマニフェストをつくったから見込みが足らなかったんだというのはちょっとおかしい、このように思います。

 私は、要するに何が言いたいかといいますと、私たち自公政権では、二〇一一年のあの税制改正法案で、社会保障を持続可能なものにするために消費税を含む税制の抜本改革は必要だという認識であの附則百四条をつくりました。しかし、民主党の皆さんは、当時は、消費税を上げるとはおっしゃっていなかったんです。したがいまして、当時は社会保障の将来に対しての深い認識が足らなかったのではないか。

 私は、それはそれでいいと思います。今その認識に立ったから社会保障と税の一体改革をやろうというのであれば、自分たちがあの時点でそういう認識になかったということを、だから四年間税を上げないと言ったんだということを潔く認めて、非は非と認めて議論を始めることが大切ではないか、それが誠実対誠実の合意に向かっていく一つの方法なのではないかということを言いたかったわけでございます。

 次に、消費税の前に議論すべき課題ということで、三点お話をさせていただきたいと思います。

 まず、行政改革でございます。

 実は、民主党さんの昨年のマニフェストの中間検証を見ておりますと、二〇一〇年度には九・九兆円の財源を捻出した、二〇一一年度には六・九兆円の財源を捻出した、こういうふうにございます。

 この九・九兆円、六・九兆円というのはどういう根拠かというふうに聞きましたところ、内閣府に聞いても財務省に聞いても、これは民主党さんがやられたことですから政府は知りませんという答えで、結局、その九・九、六・九という根拠がわからないんです。

 岡田大臣、先日、政府として、政権交代以降の財源確保の状況というものをまとめられました。ここでは、単純に足すと十四兆円の財源確保ができたというようなことも記者会見でおっしゃっておられます。

 この関係はどうなっているのか、お聞きいたします。

岡田国務大臣 マニフェストの中間検証に書いたものと先般私のところで財源確保の状況ということで発表させていただいたものの間に、若干数字の違いがございます。その数字の違いは、主として、特会からの、財投特会の積立金とか外為特会の剰余金というところのカウントをするかしないかという違いでございます。

 こういうお金、一部は前政権のときから毎年繰り入れておりましたのでマニフェストの中ではそういうものは入れなかった、しかし、財源確保という意味ではそういうものを入れた方が適切だということで入れさせていただいた、そういう違いでございます。

斉藤(鉄)委員 いずれにしましても、例えば、二〇一〇年度には九・九兆円の財源を捻出した、それから、先日の岡田大臣の発表での、二〇一〇年ですから二十二年度ですね、十四兆円の財源を捻出したというのは、ぴんとこないんです。多分、いわゆる埋蔵金も全てこの中に入れていらっしゃるからだと思います。

 埋蔵金は一時的なお金です。私たちが言っているのは、あの十六・八兆円というのは、毎年恒常的に生み出される、制度改正に伴って出てくるお金という意味で、これは全然違う数字だということを私は申し上げておかなければならないかと思いますが、その誤解のないように発表していただきたいと思いますのと……(岡田国務大臣「誤解がありますよ」と呼ぶ)

中野委員長 いいですか、ちょっと。

斉藤(鉄)委員 はい。ではどうぞ。

岡田国務大臣 今委員の御指摘ですが、マニフェストも、そういう埋蔵金、一時的なお金も入れて十六・八兆ということでございます。

 ここにマニフェストのコピーを持ってきておりますが、十六・八兆のうちの五兆円、埋蔵金の活用が四・三兆、それから政府資産の計画的売却が〇・七兆、合計五兆円はそういう一時的なものだということでございます。

斉藤(鉄)委員 マニフェストを読みますと、この五兆円は基本的に毎年出てくるもので、その五兆円の出し方は、いろいろ、基金、財政云々、特別会計云々かんぬんの会計の運用益で充当すると書いてあるんです。運用益ですから毎年出てくるわけです。ですから、積立金の取り崩しじゃないんです。このことだけは指摘をしておきます。

 このように、これだけ行政改革をしたということでいろいろ数字をおっしゃるんですけれども、民主党が選挙のときに言った無駄の削減、私は、進んでいないのは、このグラフで一目瞭然ではないかと思います。

 この図は、二〇〇一年から二〇一二年までの予算歳出総額を出したものでございます。これは、当初予算プラス補正予算、つまり決算ベースです。

 二〇〇九年はいわゆるリーマン・ショックの大型経済対策がありましたので、二〇〇九年だけはちょっと除いてございます。二〇一〇年からは民主党政権ですけれども、これも基本的に当初予算プラス補正予算、決算ベースですが、いわゆる震災対策費、これは除いてございます。これも特別な費用ということで除いてございます。

 ある意味で、自公政権時代と民主党政権時代の予算の地力を比較したものでございます。二〇〇一年から二〇〇八年までは自公政権。リーマン・ショックがあって、二〇一〇年から二〇一二年までは民主党政権でございます。

 ここで、横に赤く線が引いてございますのは、いわゆる歳出の平均。自公政権時代は八十三・六兆円になります。ところが、民主党政権になってから、この歳出総額が平均九十四・三兆円。十・七兆円の増加になっております。

 この理由として、実はこれ、予算委員会で質問をしたときに、安住財務大臣は、まず国債費が上がっていると。いわゆる借金減らしですね。この借金減らしは確かに三兆円上がっております。しかし、歳出増が十・七兆円ふえておりますので、この国債費が上がった、借金返済が上がったものを差し引いても、八兆円の実質増になっているわけでございます。

 この八兆円というのは、ほかの角度からも実は同じ数字が出てきます。

 今度は、お金を入れる側から考えますと、実は、自公政権時代と民主党政権時代で、平均して国債発行は十二・八兆円ふえているわけでございます。しかし、税収も減っております。税収減は大体四・九兆円。だから、国債がふえて、しかし収入が減った。その差も大体八兆円になるわけでございます。

 それに、いわゆる政策に充てるお金ですね、経常収支対象経費というんでしょうか、純粋に政策に充てるお金も、実は自公政権時代から民主党政権になって八兆円ふえております。

 つまり、三つの角度から検証して、歳出から、歳入から、そして政策に充てる予算の総和、経常経費から、いずれも八兆円、これは八兆円水膨れしている、こういうことだと私は思います。

 つまり、無駄を排すると言いながら、無駄を排してこなかったどころか水膨れ予算をつくった、そういう体質のまま消費税を上げていいんですかということが言いたいんです、安住大臣。

安住国務大臣 岡田副総理からお答えさせていただく前に私から事実関係を申し上げますと、国債の部分は除いたとして、では、残りは何なのかということですが、社会保障の自然増を含めて四・一兆、それから、児童手当になりましたが、子ども手当の分を含めますと大体五・九兆でございます。

 それに、基礎年金の国庫負担の引き上げによる増が一・六兆で、実は、景気が悪くて地方税収が落ちていますので、その税収の補填は折半ルールになっていますから、これは多分、私どもが政権をとっても斉藤先生が政権をとっても、折半でいえば国の持ち出しは〇・九兆、自動的にふえました。

 それに、リーマン・ショックの経済予備費を新たにこれは設けておりますから、それも〇・六兆となっております。

 これらにまた道路特定財源の特会直入が、これは自動的に〇・九兆積み上がっていますので確かにふえていますが、ここから公共事業費が三・四兆減ると大体今先生がおっしゃったような数字になりますから、水膨れというよりは、やはり、リーマン・ショック以降のあの税収の落ち込みに対する例えば自治体への補填や社会保障の自然増等を含めたものだということは御理解いただきたいと思います。

岡田国務大臣 ほぼ同じことなんですが、社会保障のところ、つまり、委員は非常に良心的に国債費とか税収減をきちんとカウントしていただいて、そこは本当にありがとうございます。

 その上で、これは二〇〇一年から二〇〇八年までのこの間の、例えば中央値である二〇〇四、二〇〇五年から、二〇一〇、一一、一二の中央値である二〇一一年まで、これは五年間たっていますね。その間、社会保障費だけで五兆円ふえているわけですよ。そういったことがこの水膨れの中身であるということでございます。

斉藤(鉄)委員 社会保障費は毎年〇・七兆ないし〇・八兆円ずつふえております。

 自公政権時代を見てください。毎年社会保障費はふえていた。しかし、歳出総額は変えなかった。国債発行額もふやさなかった。社会保障費がふえる分、実はいろいろなところで無理をした。社会保障も毎年二千二百億円削った。

 そこが非常によくなかったという反省をしている面も実はあるんですけれども、しかし、そういう努力をして抑えてきたけれども、民主党政権になってきてからそのバンドのひもがぱあんと緩んで、一遍にこれが膨れ上がった。

 いろいろ先ほど数字を出して、これだけ捻出したとおっしゃるんだけれども、現実に歳出がこれだけふえて国債発行額がこれだけふえている、こういうことを考えれば、もっともっとその財政の無駄を捻出する、その努力が必要なのではないか。民主党には、その努力、口では言うけれども現実はやっていないじゃないか、こういうことを言わざるを得ません。

 あともう一つ、補助金を削る、このようにおっしゃっております、行政改革をやるんだと。

 確かに、独立行政法人は、百二あった独立行政法人が六十五、四割減った。それから、特別会計も、十七会計五十一勘定あったのが十一会計二十六勘定、半分まで減った。この努力は我々評価をしたいと思いますが、では、そこに使われる補助金が減ったかといいますと、減っていないんです。

 一般会計、特別会計、政府関係機関の補助金、ここ数年の動きを見てみました。これを見てみますと、一般会計、特別会計の補助金のほとんどは社会保障関係ですから、これはある意味で自然増なんです。これはいたし方ない。

 では、それ以外の政府関係機関のところに行った部分、これは全体から見ればごくごくわずかなんですけれども、平成十六年から二十一年まで、自公政権時代の平均は四百五十億円。これが二十二年、民主党政権になってから、百億円近く上がって五百三十四億円。補助金も減っていないんですよ。数は減らしたけれども、数は独立行政法人とか減らしたけれども、使っているお金は減っていない。今、岡田さん、首を横に振られましたけれども、これは財務省の資料でございます。

 こういうことから考えると、この無駄をなくす努力をもっと進めなくてはいけないのではないか、このように思います。これが、消費税の前に議論すべき課題のまず第一でございます。

 第二、ここが一番重要かと思いますけれども、社会保障の全体像が不明ということでございます。

 私たちは、先ほど申し上げました附則百四条をつくるときに、消費税を含む税制の抜本改革は社会保障を持続可能なものにするために必要だ、こういう決意であの百四条をつくったわけです。

 そのときの議論の順序は、国民一人一人がそれぞれのライフステージの中でどのような社会保障のサービスが受けられるかについてまず国民的な合意を得る、そして、その社会保障、こういう社会保障を目指しましょう、では、それを賄うために、税でどれだけ払うか、また、保険料でどれだけ払うか、また、サービスを受けたときの自己負担でどれだけ払うかということを議論していく、それが議論の順番なのではないか、このように申し上げたわけでございます。

 今回出てまいりました社会保障と税の一体改革の法案、消費税につきましては、これは明確でございます。

 そして、子ども・子育て新システム、これはいろいろまだ不明確なところはございますが、この点もちゃんと法律が出てきました。これは中身についてしっかり議論しなきゃいけないかと思います。

 ところが、いわゆる年金について、また、高齢者医療制度について、全く不明でございます。民主党さんがおっしゃる年金の抜本改革、最低保障年金については、来年出す予定。中身については全く不明でございます。高齢者医療制度についても、今国会に出すということでしたが、これもわからない。この表を見ていただければ、一体改革になっていないということは明白でございます。

 私たちは、先ほど申し上げた順序で議論をしようと、まず社会保障のビジョンを出す、それにどれだけお金がかかるかを議論し、どう負担するか、この議論ということで、まず、新しい福祉社会ビジョンというものを、一昨年ですけれども、つくらせてもらいました。

 こういうものが今回の政府・与党案には全くないということをまず指摘しなくてはいけませんけれども、総理、いかがですか。

野田内閣総理大臣 今、資料をお示しいただきましたけれども、消費税、子供関連は出している、年金のところは、これは、いわゆる新しい年金制度を踏まえた法案は工程表で来年出すということになっていますので書いていませんが、そのほかの年金関連の法案は、一元化なども含めて出しております。等々、一体改革については、大綱で、それぞれの改革項目、そして実施時期等々を明記しておりますので、全体像はそこでぜひ御理解をいただきたい。明示をしているというふうに私どもは理解をしています。

斉藤(鉄)委員 では、年金についてお伺いします。

 年金についても、この場で随分議論させていただきましたけれども、この年金の抜本改革、来年出す予定のものですけれども、来年出すとおっしゃりながら、今回の法律の中には、自公政権時代に私たちが提案した内容、いわゆる厚生年金と共済年金の一元化、短時間労働者の厚生年金の適用拡大、低所得者に対する基礎年金加算制度、それから受給資格期間の短縮という現制度の改善案と、そしてこの年金抜本改革、これは来年出すということが、両方書いてあるわけでございます。私は、それは成り立たないと何度もここで申し上げてきました。

 総理は、先日の本会議の答弁で、現行制度は、二〇〇九年の財政検証で、負担と給付が均衡している、長期にわたって安定である、そういう答弁をされました。であるならば、現行のこの年金制度は、もちろん、細かい点で修理をしたり改善をしていかなきゃいけない点はたくさんありますけれども、きのうもお話がございました八十年一クールのこの制度を、現在、長期にわたって給付と負担が均衡しているというその制度に基づいて社会保障と税の一体改革を議論しようということであれば、ここの年金の項は一気にこれが埋まるわけでございます。

 この抜本改革、この委員会でも何度も出ておりますが、一つは、例えば国民年金の方の年金料が二倍か三倍に上がるとか、また、一般サラリーマンについては給付が減る、また、消費税については、非常に、ある試算によると七%程度、今回上げようとする消費税とは別にそれだけの消費税、財源が必要になる、また、移行に四十年以上かかるというような、もう、考えてみれば誰が見ても非現実的なその改革案に固執しないで、現行の、これは総理も先日、長期にわたって安定していると答弁された、その現在の年金制度で議論をすれば、私は、かなり実のある社会保障と税の一体改革の議論ができるのではないか、このように思います。総理、いかがですか。

岡田国務大臣 その前にちょっと、行革の話ですが、これは委員御指摘のように、まだまだやらなきゃいけないというふうに思っております。私、責任者ですけれども、少し乱暴と言われてもいいから思い切ってやっていこうというふうに思っております。

 ただし、独法については、実は一般会計から独法へ年間約三兆円ぐらいお金が出ているわけですけれども、政権交代後、一割これをカットしておりますので、一割で十分でないという議論もあるかと思いますが、三千億ぐらい減らしているということは申し上げておきたいと思います。

 さて、今の年金の話ですけれども、何度も委員も含めて議論させていただきました。私は、坂口先生と先般厚生労働委員会で議論させていただきましたが、それは非常にいい議論になったんじゃないかというふうに思っております。

 私の方は、抜本改革、我々の案と、それから御党や自民党が主張されておられる、現行案をベースにしてそれを手直しするというか改良していく、そういう二つの考え方があるので、それを一つの場に、テーブルの上にのせて、そして議論させてもらえないかということを申し上げたところ、坂口先生の方から、そういった形で今後の各党間の話が進んだとすればその後どうなりますか、つまり来年の法律にこだわるんですかという御意見をいただきまして、私は、各党間の話し合いが進んで合意に至るということであれば、我が党だけで来年新しい法律を出すということには必ずしもならない、つまり合意した案を出せばいいわけですからということを申し上げたという一連の経緯がございました。

 ぜひ、そういった厚生労働委員会での坂口先生と私の間のやりとりも踏まえていただいて、この年金の問題、確かに国民年金などは非常に問題があることも事実ですので、それを抜本改革でやっていくのか、それとも今の年金制度をベースにしてやっていくのかということを、国民の立場で真摯に議論させていただきたい。我々は、我々の案が絶対だと言うつもりはもちろんございません。お互い、謙虚な気持ちで議論させていただければというふうに思っております。

斉藤(鉄)委員 今回の社会保障と税の一体改革、この消費税の対象には抜本改革は含まれておりません。今回消費税をもし上げたとして、そのお金でやるのは現行制度の改善案、先ほど申し上げたような現行制度の改善案でございます。

 であるならば、少なくとも今回の一体改革の法案の中から、また議論の中から、この年金抜本改革案については取り下げるということが、私は、非常に建設的な議論になるのではないか、このように思います。

 それともう一つ、これはちょっと感情的になるかもしれませんけれども、民主党の皆さんは一貫して、現行制度、年金制度は破綻している、このように言い続けてきました。二〇〇四年からです。しかしながら、先ほど申し上げましたように、総理は、先日の本会議で、長期にわたって安定している、このように答弁されました。

 私は、これまで民主党が、破綻している、破綻していると言って国民の不安をあおり、その罪は非常に大きいと思います。年金が破綻しているのかもしれない、じゃ、もう保険料を払うのはやめようか、将来が不安だから買い物を控えようかとか、それが経済を押し下げてきたかもしれません。

 しかしながら、抜本改革と言いながら具体案は一切出そうとしない。この一体改革の議論になっても出さない。二〇〇四年からですよ。もう八年以上たっている。それなのに具体案を出さない。

 こういうことに対しての真摯な反省、これも与野党の建設的な議論の一つの大きな土台になる、私はこう思いますが、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 まず、年金制度破綻というのは、私もそれに近いことをかつて申し上げたことがございます。それは大変申しわけないことだというふうに思っております。やや言葉が過ぎたことは間違いありません。

 我々の主張は、今の国民年金なら国民年金というのは、確かにこれは持続可能であるということですが、そこに、入っていない、本来入るべきであるにもかかわらず入っていない人がいる、そういうところまで含めれば、やはり本来の国民年金としての機能を果たしていない、こういうことを申し上げてきたわけでございます。ただ、途中で言葉が過ぎることがあったとすれば、それは申しわけないというふうに思います。

 そして、年金の改革ですけれども、抜本改革は我々は必要だと思っているわけですが、いろいろなシンクタンクとかあるいはメディアとか、いろいろな改革案を発表しております。ということは、やはり、今の制度の延長ではなくて、より大きな改革が要るんじゃないか、そういう意見はあると思うんですね。

 ですから、そういうことをもう一度きちんと整理をして、やはり今の案の改革を前提にして御党のおっしゃるような方向で直していくことがベストだということであれば、私はそれをとることに何もやぶさかではございません。ちゅうちょはございません。

 ぜひ一度そういうことをしっかりと議論する場というのは要るんじゃないか、私はそういうふうに思っているところでございます。

斉藤(鉄)委員 我々も、現行制度が一〇〇%完璧だなんて言っておりません。もうその都度いろいろな改善を加えていかなくてはいけない。今回の議論はそのいいテーブルではないかと思っておりますので、ぜひ、ここは御決断いただいて、そういう建設的な議論ができるようにしていただきたい、このように思います。

 高齢者医療制度です。

 この高齢者医療制度につきましても、特に後期高齢者医療制度については、我々、自公政権時代にこれを提案したときに、高齢者いじめの医療制度だと随分非難を受けました。政権をとったらすぐこれを廃止すると言っていたわけですけれども、現実、まだ何の案も出てきていないということでございます。

 実は、この高齢者医療制度をどう設計していくか、そして持続可能なものにしていくか、我々も苦しみました。今、野田総理を初めとして皆さんも苦しんでいらっしゃるんだろうと思います。

 そういう意味では、もちろん今の制度、これも一〇〇%完璧ではありません。例えば、今御苦労されている都道府県単位にするということも、我々、実は政権時代に、こうできればベストだなと思っていたことも確かでございました。そういう改善は必要ですけれども、基本的に、今の枠組み、つまり、高齢者医療については、半分は税で支援し、四割は現役世代からの支援を受け、一割を高齢者自身の御負担でという基本的な枠組みそのものは、私は、変えなくてもいいんではないか。まあそのように思っていらっしゃると思うんです。

 であるならば、このことについても、現行の高齢者医療制度、特に後期高齢者医療制度を根本にして、もちろん、変えるべきところは、マイナーなチェンジはいたしますけれども、進めていこうと、このように御決断いただければ、この一番下の欄も埋まるわけでございます。まさに社会保障と税の一体改革が進むわけですが、この点については、厚労大臣、いかがですか。

小宮山国務大臣 きょうも、先ほどもお答えをしてまいりましたけれども、やはり、今おっしゃったように、もっと広域化をした方が健康保険の制度としてもいいのではないかという御意見もございました。

 そうした中で、やはり年齢差別だと言われた中で、今運用で改善している点もございますけれども、そうした声も受けてこういう改革が必要だという考え方をとってまいりまして、二十二年暮れの改革会議の案に基づいて、一度に行くのはなかなか地方の負担なども御納得いただけないので、今、段階的にやることも含めて協議をしている最中でございますので、またこの場でいろいろな御提案もいただいて、協議もさせていただければというふうに思っているところです。

斉藤(鉄)委員 ここで私申し上げたかったことは、社会保障と税の一体改革、社会保障の全体像が示されていない、全体像を示せということですが、その示すことの具体的内容についても提案をさせていただきました。今後、この委員会での議論を推し進めていければと、このように思っております。

 消費税の前に議論すべき課題、最後でございますけれども、景気、経済の認識でございます。

 この三月期の大卒、高卒の就職がよかったということで、いい数字が出てきたということで、喜んでおります。この数字を来年も再来年も上げていかなければならない、このように思っておりますが、デフレをいかに克服するかというところが最大のポイントだと思います。三%、二%を条件にするのかしないのかというような細かい質問はしません。しかし、デフレ克服が一番大きな要素で、経済成長を図っていかなくてはいけないんですけれども、私は二つのことを言いたいと思います。

 一つは、経済成長戦略が余りになさ過ぎる。ここを明確にしなければならないということでございます。

 公明党は、防災・減災ニューディールという提案をさせていただきました。これから、防災・減災ニューディール。

 首都直下型地震ですとか東海・東南海・南海三連動地震等、全国的に防災の機運が非常に盛り上がっております。そういう中で、もちろん自助、共助の体制を築き上げるということが大切ですが、公助といたしましては、その公助の基盤になる社会資本、例えば橋梁ですと、現時点では五十年を超えたものは大体一〇%弱ですけれども、あと二十年すると高度経済成長時代につくった構造物がみんな五十年を超える。コンクリート構造物の寿命は大体五十年と言われております。そういうものに対して、命を守るという観点から、防災、減災という意味で集中的な投資をしていくということで、需給ギャップを埋めて、需要をつくり、経済を活性化させていく、こういう提案をさせていただきましたけれども、民主党に、その成長戦略、明確なものがないということが一つ。これについては、後で総理に基本的な認識を御答弁いただきたい。

 もう一つは、もう時間がありませんのでまとめて質問します。

 先日、「日曜討論」で藤井裕久税調会長と議論させていただきました。大変な大先輩で大変勉強になりましたけれども、藤井税調会長が、今はデフレではない、このようにおっしゃいました。

 私は、与党の税調会長が、そして、これから消費税を上げるそのときに、非常に微妙な問題になるデフレかどうかという問題について、与党のその責任者がそういう認識を持っていらっしゃるというのはちょっと違うんではないか。

 そのときおっしゃったのは、物価が下がっている上がっている、景気がいい悪いということとデフレというのは関係ないんだ、需給の問題なんだ、こういうふうにおっしゃって、後でゆっくりお話を、どういう意味なのか聞けばよかったんですが、ちょっとその後聞けなかったんですけれども。

 今の経済状況は、特に生産者の方から見ると、非常に値下げ圧力がかかってきていて、デフレ状況。一般庶民は、実際に身近に買うものは値上がりしているものもあるのでちょっと違う感覚があるんですけれども、少なくとも中小企業の経営者の方々は、非常にデフレ圧力が強いというふうに言っております。

 この認識で消費税を上げて本当にいいのかな、こういうこともございますけれども、総理のこの二つの問題についての見解を伺います。

野田内閣総理大臣 デフレ脱却、経済活性化というのは、やはり課題だと思っています。

 ちょっと「日曜討論」を、今週、先週の「日曜討論」ですか。(斉藤(鉄)委員「十日前のです」と呼ぶ)十日前ですか。どっちにしろ海外に行っていたと思うので見ていないんですが、恐らく、デフレスパイラルではないとおっしゃったんではないでしょうか。

 デフレからの脱却は引き続き重要課題であります。という認識のもとでこれからの経済対策をやっていかなければいけないと思いますが、その上で、御指摘いただいた、例えば学校の耐震化とか、あるいは防災・減災ニューディールとかというお考えを拝聴させていただきながら、生かすものはこれまで生かしてまいりました。累次の補正予算、そして新年度の予算。これからも、そういう考え方は、私たちは、取り入れるものは取り入れていきたいと思います。

 我々は、新成長戦略の中で、ライフとグリーン、ここでイノベーションをやっていこうということで、国内における需要を喚起するとともに、これからどんどんふえてくる中間層、世界の経済の成長センターであるアジアの中間層なども取り込んでいくために、高いレベルの経済連携などを行うことなどによって、当面、足元、一月―三月期は年率四・一%という比較的高い水準が出ましたけれども、これは息が抜けません。当面は復興需要の顕在化で経済を回復軌道に乗せていくということは大事ですが、だんだん民需主導にしていくためには、今申し上げた新成長戦略などをしっかり力強く推進していきたいというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 時間が参りましたので同僚議員に譲りますけれども、社会保障と税の一体改革、社会保障については、その全体像が示されていない。その全体像を示して、しっかりこれからこの委員会で議論をしていくということを申し上げさせていただきまして、質問を終わります。

中野委員長 これにて斉藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、引き続き、税と社会保障一体改革、特に年金を中心に野田総理に質問してまいります。

 野田総理に初めての質疑となります。どうぞ明快な答弁をいただけますよう、よろしくお願いをいたします。

 野田総理は、決められない政治からの決別、このようにおっしゃっていますね。しかし、その言葉とは裏腹に、民主党政権はこれまで、野党時代も含めまして、社会保障改革を先送りにしてきている、遅滞させてきている。私は、その事実をきょうはパネルを用いまして時系列で指摘をしてまいりたいと思っております。

 まず、二〇〇三年、年金制度抜本改革案を主張されましたね。既に九年が経過をいたしております。

 そして、二〇〇四年、私たちは自公政権当時、年金の改革案、これを提出いたしました。それに対しまして、民主党は大反対をされました。

 そして、二〇〇六年、私たちは、医療制度改革、この関連法案を提出いたしました。これに対しましても、後期高齢者医療制度の創設の廃止、こういうことを掲げられたわけであります。

 そして、二〇〇七年、被用者年金一元化法案、また短時間労働者への社会保険適用拡大の法案を私たち自公政権当時、提出いたしました。これも反対をされた。

 そして、二〇〇九年、年金制度の抜本改革案、これを主張されました。そして、後期高齢者医療制度廃止、そして障害者自立支援法の廃止、まさにこの三つ、トリプルで我々は大批判を受けたわけであります。

 あの総選挙で、この批判の嵐の中、私たちは地元に帰って一つ一つ丁寧に説明をする、一時間、二時間説明すればわかってくださる。しかし、民主党議員のさまざまな批判、こういうものによりましてなぎ倒された、そういう実感がございました。そして、総選挙で敗北を喫し、皆さん方は政権交代をなし遂げられたわけであります。

 そして、今回、二〇一二年に至って、税と社会保障の一体改革を出してこられました。新たな年金制度の創設、これはいまだに具体案は示されておりません。そして、後期高齢者医療制度の見直し、いまだに、今国会、法案は提出をされておりません。もう会期末は来月に迫っております。一体いつ提出をされるんでしょうか。そして、被用者年金一元化法案を提出されてきた。あわせて、短時間労働者への社会保険適用拡大の法案も提出をされてきた。障害者総合支援法、これは提出をして、参議院に行っているということでございます。

 このような時系列で事実を振り返ってみて、一体、これまで民主党が掲げてこられた社会保障改革案、どうなったんでしょうか。

 政権交代をしてから既に二年八カ月がたっております。後期高齢者医療制度の廃止については、法案すらいまだに提出をされておりません。障害者自立支援法に至っては、政府が出してきた総合支援法案は、結局、現行法の改正にすぎなかった。少子高齢社会の中で、社会保障の改革、これは待ったなしであります。それにもかかわらず、政権交代から三年近く、何も進めることができてこなかったのではないでしょうか。

 総理、これに関してどのような認識をお持ちでしょうか。

野田内閣総理大臣 これまで私どもが主張をしてきたことで、まだ法案を提出していない、あるいは実現できていないものがあることも事実でございます。だからといって、社会保障制度改革、これはいろいろな項目があると思いますけれども、そこに空白が生じたり後退が出たりということでは私はないというふうに思っています。

 政権交代以降、まさに社会保障を推進するためには、従来、毎年二千二百億、機械的に削るということがありましたけれども、それをやめて、例えば政権交代直後の予算においては、社会保障関係費を一〇%伸ばすという形の環境整備をしました。

 それから、政権をとる前に、介護難民の問題とかあるいは医療崩壊の話が随分強く出ていたときに、私どもが政権をとった後に、十年ぶりに診療報酬のプラス改定を行って、そして、配分を見直しすることによって、産科であるとか救急であるとか、あるいは病院勤務医とかに対する、これまで手薄だったところを手厚くすることによって立て直しを図るなどなど。

 あるいは、こういう制度論ではありませんけれども、消えた年金の記録の問題も、五千万件と言われたものを、千数百万件発見をして一兆数千億円戻るようにした等々、社会保障制度改革の中でも、きちっと努力をしながら成果を上げている部分もあるということはぜひ正当に御評価をいただきたいというふうに思います。

古屋(範)委員 私は、そういう枝葉末節の、いわば枝葉の問題を論じているのではございません。中心となるこうした制度改革、法律、この改革の問題を論じているのでございます。

 昨日の質疑の中で、総理は、政権交代するたびに社会保障が変わるのはよくない、このような趣旨の答弁をされていますね。これを見ておわかりと思いますけれども、選挙のたびに社会保障に関してさまざまなことを掲げてこられたのは民主党ではございませんか。

 二〇〇三年、年金制度の抜本改革を主張される。これは衆院選でございます。二〇〇五年は、確かに郵政改革だった。二〇〇四年、参院選では年金制度に大反対をされた。そして二〇〇六年、一元化を主張されましたね。参議院選でございました。そして、二〇〇九年があの政権交代の総選挙であります。このときに、年金制度を抜本改革するんだ、後期高齢者医療制度も廃止をする、障害者自立支援法も廃止をする、これを掲げて、これが原動力となって政権交代をされたのではありませんか。選挙を意識して、そのたびに社会保障制度に関する大きな政策を掲げてきていらっしゃる。

 いかにも社会保障制度を選挙のパフォーマンスにしているのではありませんか。選挙に利用されているのではありませんか。総理、いかがですか。

岡田国務大臣 今まで社会保障制度の改革に真剣に取り組んでこられた古屋さんだからこそ、いろいろな今までのことでお怒りはよくわかります。

 私は、社会保障制度について、二つの立場がこの国会にも、そして各議員の中にもあるんだと思うんですね。今おっしゃったように、対立の歴史というのはありますが、そこには書かれておりませんが、二〇〇五年には、衆参合わせて、年金等社会保障制度改革のための協議会だったか委員会だったか、国会につくりまして、まさしく衆参両院の超党派の議員、各党議員が集まって、そして真剣に年金制度その他社会保障制度について議論したという経緯もございました。残念ながら、それは郵政解散によって成果を得ないまま解散に至ったというか、まだあるんですけれども、その後議論されていないわけです。

 ですから、各党間で、社会保障制度の問題は、やはり国民に密接に関係するし、政争の具にせずにきちんと話し合っていくべきだという流れも一方であったということでございますので、ぜひそういう視点でこれからお互い、与党、野党、それぞれ入れかわる中でしっかり議論していく、そういうことが私は国民にとって必要なことではないかというふうに思っております。

古屋(範)委員 岡田副総理、社会保障、年金を政争の具にしてはいけない、今もおっしゃいましたけれども、それをされてきたのは民主党ではありませんか。まさに政争の具、このパネルを見てもおわかりのように、選挙のたびに年金あるいは社会保障を掲げてこられたではありませんか。

 特に、年金について申し上げます。

 二〇〇三年、抜本改革を掲げられた。それからもう既に九年たっています。十年一昔という言葉がありますけれども、もうすぐ一昔ですよ。そして、二〇〇四年、我々の年金改革案に大反対をされました。体を張って反対されたんです。あの委員会室のドアまで壊された。あれを補修するのに費用がかかったんです。そして、今回、この民主党が掲げた具体案、出てきておりません。

 副総理、あのとき与野党の会議を持ったじゃないかとおっしゃいますけれども、ここだって与野党の会議なんです。これから百時間もやろうとしている税と社会保障、この会議に、特別委員会に民主党のその年金の改革案をど真ん中に据えて与野党で議論する、これが本筋じゃないんですか。

 パネルの二に参ります。民主党の一体改革大綱の中では、全ての年金を一元化する、七万円の最低保障年金を支給する、法案を来年国会に提出するとございます。しかし、いまだにその具体案はない。そして、基礎年金六万六千円はなくなってしまうわけですので、最低保障年金七万円、これは国民全員がもらえるわけではありません。そのように誤解した国民もいるかもわかりません。

 昨年の予算委員会で、既に公明党の坂口元厚労大臣が質問しておりました。それで、やはりそのときも具体案が出てこなかった。生涯の平均所得、どこからどこまでが最低保障年金をもらえて、それが徐々に減ってきて、どこでなくなるのか。これに対して坂口委員からは、民主党の年金案は「三角形のお絵かきをされたということにすぎない」「幼稚園のお絵かきに近い」、このような発言もございました。

 また、最低保障年金、これは全額税で賄うことになっていますが、これに必要な財源、民主党が試算をされたところ、今回五%の消費税に加えて七・一%の増税が必要、そのような報道もございます。実際どうなのかと問われると、総理は、具体的な制度設計は、その規模が変わり得る、あるいは今後の重要な検討課題である、このようにおっしゃっています。これでは、どこまで負担が増すのか、国民は不安を増すばかりであります。

 なぜ、民主党の年金案、その具体像を出してほしいのか。これは私たちのためではありません。これを出していただくということが、国民の社会保障に対する、年金に対する安心と直結をしているからです。現行制度、壊れているとかあるいは破綻をしたとか、さんざん批判をされ、不安をあおったというのもあります。私たちの責任もあります。現行制度が理解をされていない面もあるでしょう。しかし、その上に、来年、民主党の抜本改革案を出してこられるというのなら、今でさえ不安があるのに、来年、負担と給付はどうなるのか、これはさらにわからなくなるわけです。国民の不安はさらに増している、そう言わざるを得ません。

 ですから、国民が安心するために、特に若い層です、納付率がなかなか上がらない、こういう若い方々の保険料納付の意欲を高めるためにも、年金の安心を高めるためにも、一日も早く民主党の抜本改革案なるものを出していただかなければ、安心して本当に年金に加入できないということになってしまうわけであります。

 政権交代して二年八カ月、民主党の年金案、まだ出てこない。この抜本改革案完成までに四十年かかるとも言われております。現在、年金記録問題もある。これが並行していく。第二、第三の記録問題も起こりかねない状況であります。

 私も、先日、若者との対話集会に出席をいたしましたけれども、自分たちは将来、年金を幾らもらえるのか、また保険料は幾ら払わなければいけないのか、こういう質問を受けております。

 現行制度がまだまだ理解されていない、そういう面もあるでしょう。しかし、この現行制度と並行しながら、新しい年金案がまた来年出てくる。民主党は、全世代対応型、このようなことをおっしゃっています。しかし、具体的な数字がいまだに出てきておりません。

 今、この具体的な数字、検討状況はどこまでいっているんですか。本当に出すつもりがおありなんでしょうか。

岡田国務大臣 具体案は、今、党の中で検討しているところでございます。

 この委員会にという委員の御指摘ですが、ここは政府とそして各委員の議論の場でありますので、そういった年金についての協議の場をおつくりいただいて、そこで私どもの考え方も出させていただき、そして、御党の考え方も出していただく中で協議をさせていただきたいということを前から申し上げているところでございます。

 この国会には、既に年金関係の法案を二本出させていただいております。その中には、被用者年金の一元化、それから厚生年金の拡大、それから加入期間の二十五年から十年への短縮、それから最低保障機能の充実、そういった従来から御党が主張されてきたことを最大限入れた法案が出ているわけでございますので、ぜひ、そのことについて御議論いただき、早くこれは成立をさせていただきたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 このパネルにもありますように、我々の提出した二〇〇四年改革案、また二〇〇七年に提出をした被用者年金一元化法案、これに対しまして、今回の本会議での質問に総理はこのように答えられていますね。将来にわたり給付と負担の均衡が現行制度は図られていると現行制度を評価されています。また一方で、国民の信頼が得られているとは必ずしも言えないとおっしゃって、結局、今回、この年金関連法案を出してこられた。そしてさらに、新たな年金制度も創設をされると言っている。この二つの答弁には私は矛盾があると感じております。一体どっちなんでしょうか。

 民主党のマニフェストの工程表があります。ここには、二〇〇九年から二〇一〇年、年金記録問題に取り組むとございます。今年度も、約七百億円、巨額の財源を割いて年金記録問題に取り組んでいらっしゃいますね。まず、この二年間、政権交代して二年間は年金記録問題への集中対応期間だと。そして、その後、二十四年度から制度設計をされる。

 なぜ、記録問題をやっている間、制度設計ができないんでしょうか。記録問題、まさか、国会議員あるいは大臣初め政務三役、皆さんが年金記録問題の作業を行われているわけではありませんよね。これは予算を割いて、人も入れて、今、年金記録問題に取り組まれているんでしょう。なぜ、政権交代をして、このマニフェストの工程表、制度設計が二十四年度からなんですか。小宮山大臣にお伺いいたします。

小宮山国務大臣 制度設計について、先ほどおっしゃったように七%さらに必要だというのは、四つのケースのうちの一番手厚く最低保障をした場合のケースですので、今、四つあるケースのうちどこにするかというような、具体的なところがまだ詰まっていないのは申しわけなく思いますが、昨年五月に、社会保障と税の抜本改革調査会、党の方から、基本的な考え方は既にお示しをしています。

 所得比例年金の保険料は、老齢年金のための分として一五%程度として、そのほかに遺族年金、障害年金のための保険料を加算するということですとか、所得比例年金の額は、納付した保険料を記録上積み上げて、その合計額に賃金上昇率をベースにした一定の運用益、マクロ経済スライドみたいなこと、似たものですが、運用益を付した上で、受給するときの平均寿命などで割って算出する、こういうような具体的な内容については既にお示しをしていますので、この間もそうした準備はしてきているというふうに考えます。

古屋(範)委員 試算をされた、これは報道で聞いております。どこにするか今決めている最中。では、どこからどこまで最低保障年金、給付をするのか、そのようなことはもうすぐ出てくるんですね。いつ出されるおつもりですか。

小宮山国務大臣 今、党の方のワーキングチームで週二回ぐらい御検討いただいていると聞いておりますので、それはなるべく早くお出ししたい。

 ただ、先ほど副総理が申し上げましたように、将来の年金のあり方につきましては、やはり政権がかわっても持続可能なように、協議の場をつくっていただいて、ぜひ、今のままでいくのかどうか、その改善で済むのか。

 私どもが申し上げているのは、二十一年の検証で、持続可能だということは制度上はわかっています。ただ、特に、各地を回っても、若い方たちを含めて信頼感がどうも足りない。今の無年金、低年金があることは事実でございますから、そこを抜本改革するためには、やはり私たちは抜本改革が必要だと思っていますので、質疑の場ですと、私どもは質問にお答えするだけです。そうではなくて、お互いにちゃんと意見を述べ合える場でこれは協議をしていければというふうに思っています。

古屋(範)委員 よく野党時代は、資料がない、データがない、そうおっしゃっていましたけれども、もう政権をとられたんです。幾らでも資料もデータも出せるでしょう。あとは決めるだけなんじゃないんですか。

 二〇〇四年の自公政権当時、私たち、年金の改革案を出しました。当時坂口大臣でありましたけれども、現行制度の改正でさえ、その法案を出す前年の九月には試案が示されておりました。そこから約半年の検討を経て、二〇〇四年の通常国会に法案を提出いたしました。

 年金、これには国民的な議論が欠かせません。法案提出に向けて、丁寧な手続、議論が必要なんです。もう五月の末です。一体、民主党の抜本改革案の原案の素案の素案ぐらいは、もうできていてもいいんじゃないですか。どうでしょうか。どこまで進んでいらっしゃるのか。これは総理にお伺いをしたいと思います。抜本改革案、今どこまで進んでいるのか、いつ出せるのか、お伺いをしたいと思います。

岡田国務大臣 先ほど小宮山大臣がお答えしましたように、今党の中で精力的に議論しておりますので、その結果を見てお示しをさせていただきたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 検討中という言葉ばかりですね。結局やる気がない、そう断ぜざるを得ません。

 先ほどの議論の中でもありました、岡田副総理、私も厚生労働委員会で答弁を聞いておりました。また、議事録も精査をしてみました。入り口は違うけれども、与野党で協議をしていこう、大きな方向性が合意できれば、我々、来年度は法律を出すということに必ずしも固執する必要はない、このようにおっしゃっていますね。

 ということは、民主党の年金の抜本改革案、これは取り下げてもいいということですね。確認をいたします。

岡田国務大臣 坂口先生のこのお話は、各党間で協議をするということを前提にしての議論でございます。したがって、各党間で協議をして、そして成案が得られれば、別に民主党の案にこだわる必要はないというふうに考えております。

古屋(範)委員 総理にもお伺いいたします。

 民主党の年金の抜本改革案、取り下げてもよい、そのようにお考えですか。

野田内閣総理大臣 新しい年金制度、国民年金も含めての年金の一元化、そして最低保障年金、こういう柱の中で制度設計をこれまでしてまいりましたし、今、先ほど来答弁があったように、引き続き党内でその制度設計の詰めを行わせていただいているところであります。

 政府としても、もちろん、数字等必要なものについては、党から要請があればお答えをしていくという形でまとめていきたいというふうに思いますけれども、今は、それを撤回せよというお話でございます。

 でも、これは、お互いにあるべき姿を、公明党は公明党で積み重ねてきた年金の像があると思います。私どもも、その積み重ねの議論があります。その積み重ねの議論をやってきた中で折り合えるところは何なのかという協議は、これから真摯にやらせていただきたいというふうに思います。(発言する者あり)

中野委員長 今、公明党さんの質疑応答の最中であります。他党の方がちょっと不規則発言も多いようでございますが、もう少し静かに質疑応答を聞いてください。

古屋(範)委員 我が党と民主党政権の折り合えるところを探したいとおっしゃいますけれども、折り合える具体案そのものがまだ出ていないんです。一体どこで折り合えるのか、具体案も出ないのに話し合いなどできるわけがございません。

 いよいよ被用者年金一元化に入ってまいります。パネルの三を用いてまいります。

 抜本改革案が示されない中で、今回、年金関連法案の一つであります被用者年金の一元化、これは二〇〇七年に自公が非正規労働者への適用拡大とまとめて法案提出をしてきましたけれども、民主党の反対で廃案となった経緯がございます。なぜ今になって当時反対をしていたのと同様の内容の法案が提出をされるのか。

 総理は、五月八日の衆議院本会議において、二〇〇七年の自公案は衆議院の解散に伴い審議未了で廃案になったものであり、民主党として反対していたことではございません、このように答弁をしていらっしゃいます。

 まず、小宮山大臣にお伺いをいたします。

 大臣、平成十七年四月に、私たちが提出をした一元化法案に対して、当面、厚生、共済年金の一元化というだけではとてももたない、信頼回復はできない、このようにおっしゃっています。

 もたない法案を今回提出されたんですか。お伺いいたします。

小宮山国務大臣 私どもは、先ほど申し上げたような観点から、抜本改革が必要だというふうには考えております。ただ、これは、野党であったときに、そういう自覚が足りなかったという御指摘があれば、私は反省して、その部分の言葉についてはおわびを申し上げたいと思います、正直に。

 ただ、抜本改革については、先ほどからお話ししているように、なるべく協議の場をつくって、みんなで合意を得たい。抜本改革をするにしても一定の期間がかかりますので、今の中で改善をすべきことは、働き方に中立な制度にするという意味で、今回、中身は本当に平成十九年にお出しになったものと同じでございますので、そこのところについてはぜひ、問題意識も共有していると思いますので、成立に御協力をいただければと思っております。

古屋(範)委員 当時、確かに野党だったかもしれませんけれども、国会議員の発言というものは非常に重いものがあります。その責任、ぜひ重く受けとめていただきたい、このように思います。

 総理にもお伺いをしたいと思います。

 菅前総理はこのように発言をされています。平成十九年です。今回も国民年金以外の厚生年金と共済年金のミニ一元化法案を政府は出している。今回、ミニ一元化法案、これを提出されてきた、このように総理もお考えになりますでしょうか。

野田内閣総理大臣 ミニという言い方がどうかわかりませんけれども、もともと私どもは、国民年金も含めての一元化という論に立っておりますが、そうはいいながらも、現実的な対応をしていくときに、現行制度の改善をしていくという意味において、まずはできるところから、可能なところからの組み合わせをしていこうということで、被用者年金の一元化という判断をしているわけでございます。

 ミニという言い方がいいかどうかは別として、まずはここは、これまで各党が御賛同を得られる部分ではないかというふうに思います。その意味では、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

古屋(範)委員 であるならば、まず一元化法案を示していただきたい、このように思います。

 保険料率についてお伺いをしてまいります。

 パネルにありますように、被用者年金一元化について、共済年金と厚生年金をそろえる。民主党の抜本改革案がもし実現されたら、今回の法案は関係なく、保険料は統一をされていくものと思われます。特に国民年金加入者は、労使折半がないために保険料が大幅にふえることとなるわけであります。この厚生年金、共済年金、保険料を段階的に引き上げて、一八・三%までそろえていく、こういう保険料率の上昇であります。

 お聞きをいたしますけれども、年金の抜本改革案、この改革時に、比例部分の保険料というものがありますね、民主党の年金案には。この一八・三%がその保険料の上限、そういう意味でよろしいのかどうか。また、抜本改革案が来年提出されるわけですけれども、仮に被用者年金一元化法が成立をした場合、二〇一五年四月の時点での保険料は現行制度に基づく水準か、それとも抜本改革に基づく水準か、一体どちらを想定しているのか、お伺いをいたします。

小宮山国務大臣 厚生年金、共済年金の保険料につきましては、今も毎年〇・三五四%ずつ引き上げているわけですけれども、今回の一元化法案の中では、引き上げスケジュールを法律に位置づけまして、厚生年金は平成二十九年、公務員は平成三十年、私学教職員は平成三十九年に一八・三%で統一することにしています。

 先ほど申し上げたように、私どもの新しい年金制度がスタートをするとしましても、所得比例年金の保険料は、老齢年金のための分として一五%程度、さらに遺族年金、障害年金、ここで三%程度というふうに考えておりますので、大体今の水準と同じだというふうに考えております。

古屋(範)委員 一五%程度、それほど変わらないとおっしゃいますけれども、国民にとって、厚生年金保険料、社会保険料というものは非常に重いものであります。それが幾らか、手取りが何千何百何十何円なのか、そこまで国民は本当に一つ一つ気にしながら毎月の家計をやりくりしているわけです。そんなアバウトな答弁では、私はとても承服しかねます。

 次に、非正規労働者への適用拡大をおくらせた責任、これについてお伺いをいたします。

 非正規労働者への適用拡大について、民主党は、自公政権当時、二〇〇七年の同様の法案に対し、その理由として、適用拡大をする範囲が狭過ぎると。確かに、対象十万から二十万という法律案でございました。しかし、まずそこから進めればよかったんだと思います。もしあのとき民主党が賛成をしていれば、二〇一一年九月からもう実施をしていました。そして、そこからさらに拡大ができたんです。

 今回の提出法案、多少拡大、対象範囲が広いとおっしゃるかもしれませんけれども、仮に成立をしても、施行は二〇一六年の四月からです。これほど適用拡大をおくらせた責任、これについてお伺いをいたします。

小宮山国務大臣 委員の御指摘は、当時そういう思いで出された方の御指摘として重く受けとめたいというふうに思っています。

 ただ、私どもがその当時申し上げたのは、当時のその十万から二十万ですと、主たる生計維持者にしかいかない部分がありました。今回一番違うのは、主たる生計維持者以外の、パートなどで今女性の五三%が非正規で働いている中で、そういう人たちに何としても適用を拡大したいという思いがございまして、最初は百万ぐらいは何とかしたいと思ったんですが、やはり中小企業を中心に、経済的な負担がある、そういうお話もございましたので、今回、社会保険の適用を二十時間以上の人全てのなるべく多くの範囲に広げたいということと、経済的な、中小企業などの事情を考え合わせた上で、現実的な線として四十五万からスタートをする、三年以内にさらに拡大をするということにいたしましたので、ちょっとそうしたところの考え方の違いもございます。

 ただ、委員の、そのときに導入していればもっとそれから先広げられたという御指摘は重く受けとめたいと思っています。

古屋(範)委員 あのとき、もう既に制度設計をつくっておりました。それが実施をされていれば、施行になって、さらにその拡大もできていたはずです。それをおくらせて、今年度やっとこの法案を提出されてきた。それも、対象者はそれほど多くはございません。私は、その責任を問うているんです。

 若い世代にとって、先ほどの保険料についてもそうです、では一体、自分が厚生年金に入るのか、あるいは国民年金、ここまで一元化なのか、来年の制度設計もわからない。

 私たち、先ほど斉藤委員からも紹介がありましたように、新しい福祉社会ビジョン、こういうものをつくりました。そのときも若い世代に意見を聞きました。ともかく、社会保障の制度設計、国民目線に立った改革を行ってほしい、このように言われました。給付と負担を明確化してほしい、また制度設計も見える化をしてもらいたいと。

 セーフティーネットの機能強化を推進する上で最大のポイントは、国民に理解されやすい制度です。現行制度だって十分に理解をされていない。加入していない方々も減免制度などを使って受給資格を得ていく。これは非常に重要な点であると思います、二分の一は国庫負担なんですから。これは、死ぬまで消費税を払い続けなければいけない、年金に加入をしていればその中で年金を受けることができる、なかなかそういう理解もされていない中で、今度は、ことしはここまで厚生年金を短時間労働者に適用拡大をする、そしてさらに来年は抜本改革で一元化をしてくる。では一体、自分の保険料、そして給付、もらえる年金、そして来年の制度、自分は一体どうなっているのか、この不安は増すばかりであります。

 若い世代は、給付と負担の関係を明確にしてほしい、さらに制度設計のプロセスの透明化、こういうことを求めております。私たちも、この新しい福祉社会ビジョン、冒頭にこのことを掲げさせていただいております。ここが重要なんです。ここをないがしろにしている、私はそう言わざるを得ません。

 さらにお伺いをしてまいります。

 年金の適用範囲でありますけれども、法施行後三年以内にさらに適用を拡大するとしていますね。来年に抜本改革の法案を提出して、全ての国民を同一の年金に加入させる。では、今回の短時間労働者、非正規への適用拡大、これ自体要らないんじゃないですか。必要ないんです。ここで時間をかけてこの特別委員会で議論をしていく必要性がそもそもあるのかどうか。

 抜本改革、今般の法施行時期の二〇一六年四月からさらに三年後の二〇一九年以降、このように先送りをされるんですか。これについてお伺いをいたします。

岡田国務大臣 論理的には、委員のおっしゃることもわかります。

 しかし、年金の抜本改革が、我々これを主張しているわけですけれども、各党間で合意され成立するということは、それは結局、御党を含め野党の皆さんが理解していただき、お互い折り合いをつけなければできないわけです。したがって、ある程度時間がかかることも覚悟しなきゃいけない。その間に、やはりできることはしっかりやっておこう、こういうことでございます。

 そのできることはしっかりやっておこうということの中身が、かつて我が党が反対したりあるいは賛成しなかったことが含まれておりますので、先ほどの御意見は、私は本当に申しわけないところがあるというふうに思いますけれども、しかし、国民の立場に立てば、今できることだけでもしっかりやっておくということは必要なことで、お互いそういったことで潰し合っていたら、結局、いつまでたってもできないことになりますので、ここはぜひ、御党の従来の主張を受け入れて我々は案を出しておりますので、御審議いただき、そして賛同していただきたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 与野党協議に時間がかかるから、当面せねばならぬことをする、そうおっしゃるんでしょうけれども、だったら、政権交代をしてすぐに抜本改革案を出すべきじゃないんですか。もう二年八カ月もたっております。そのときに出して議論していれば、二年八カ月間、十分な議論ができたかもしれません。ここに至って、これから議論をし、法律が出てきて、そこで議論をして時間がかかる、当たり前のことです。

 次に、無年金、低年金対策、これをおくらせてきたことについてお伺いをいたします。

 無年金、低年金対策、私たちも、政権交代後、当時の鳩山総理に、早急にその実現を訴えてまいりました。そこでも民主党政権は、抜本改革とあわせて検討することを理由に先送りをしてきました。

 民主党の具体案づくりを待っていては、いつになったら無年金、低年金で困っている国民を救済できるかわからない。我々は、これはもう抜本改革と切り離して無年金、低年金対策をやるべきだ、そのように主張してきました。しかし、結局のところ、抜本改革にこだわる民主党政権は、すぐにでも行う必要がある改革までおくらせてしまったわけであります。

 この年金制度の抜本改革に固執してきたからには、さぞかしすばらしい案が出てくるか、そう思えば、何も示されない。財源の見通しさえ立っていない。この九年間、民主党のせいで社会保障の真っ当な議論はまさに先送りをされてきた、こう言わざるを得ません。

 社会保障改革の迷走と混乱に対する民主党の責任、これは重大であります。これをどう説明されるんですか。ぜひ、それについて明快にお答えいただきたいと思います。

小宮山国務大臣 例えば、無年金、低年金対策について、今回、受給資格期間の短縮、低所得者への加算など、こうしたことをお出ししまして、御党がそういうことを主張されてきたことも十分承知をしております。そのときにやっていればということは先ほどと同じでございますが、しっかりともっと対応すべきだったということは、今、私も思います。

 ただ、こうしたことに当たって、次の世代にツケ回しをするわけにいかないので、今回、消費税を増税させていただくことを御理解いただいて、そこで安定財源を得た上でこうした対応をしたいというふうに思っていますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

古屋(範)委員 時間も迫ってまいりました。

 最後に、子育て支援についてお伺いをしたいと思っております。

 子ども・子育て新システムについては明日の議論に譲りますけれども、これまで私も取り組んでまいりました子供の健康支援、特に、ワクチン、予防接種について取り組んでまいりました。この予防接種法見直しについて御見解を伺いたいと思っております。

 今までもHibワクチン、それから小児用肺炎球菌ワクチン、そして子宮頸がんワクチン、この三ワクチンは公費助成が実施をされております。これに加えまして、B型肝炎、成人用の肺炎球菌感染症、また水痘、流行性耳下腺炎、おたふく風邪ですね、そして、昨年承認をされたロタウイルスなど、直ちに定期接種化をすべき、このように考えます。

 こうした新しいワクチンが次々と開発をされて使用可能になっても、任意接種でありますと、個人負担になる、あるいは自治体によって助成制度が違ってくる、このような格差が出てまいります。

 明日、予防接種部会で、三ワクチンに加えまして四ワクチンについても、財源が確保され次第、順次対象とすることが検討されることになっております。これには財源がかかります。全体で年間約二千億円かかると言われております。

 子ども手当の年少扶養控除の廃止等による地方の増収分、平成二十四年度においては六千二百億円であります。これは、昨年の十二月、四大臣合意によって取り決められておりますけれども、私たちも、現金給付の重要性は認識をしているつもりでもございます。しかし、公明党は、総合的な子育て支援、それは、生まれてから成長するまで総合的な、それも切れ目のない支援が必要だということを主張してまいりました。現金給付だけではなく、ワクチンの場合には、子供の健康、子供の命を守る、ここに直接寄与していく政策でございます。

 今までも小宮山大臣にはワクチンについてはるる質問してまいりましたけれども、ぜひ、この財源を確保して定期接種化をしていただきたい、予防接種法の抜本改正をしていただきたい、このように思います。総理にお聞きをしたいと思っております。

野田内閣総理大臣 予防接種は、生命と健康を守る重要な手段であり、特に子供に対しては、その健やかな育ちを支えるものでございます。古屋委員そして御党におかれましては、かねてからこの問題に熱心に取り組んでこられたことに敬意を表したいと思います。

 もう御指摘ございましたけれども、現在、制度の見直しに向けて、厚労省審議会等では、専門家や自治体関係者の方々による議論が行われているところでございます。その中では、新たなワクチンについて、優先順位も考慮して予防接種法上の位置づけを明確にすべき、そのために必要な財源の確保に努力すべきといった方向性が示されつつあると承知をしております。

 政府としては、その議論を踏まえてしっかり対応していきたいと考えております。

古屋(範)委員 ぜひ、予防接種法の抜本改正、定期接種化に向けて最大限の御努力をお願いしたい、このことを申し上げておきます。

 子育て支援に触れましたけれども、子ども手当、この二年余り迷走してきました。二万六千円を中学生まで全員に国費で支給をする、この子ども手当を掲げられて、最初は一年間の時限法でありました。そして、その後は半年の延長、その後は半年の特措法。まさに、一回も恒久法が出せなかった、綱渡りのようなマニフェスト、子ども手当でありました。

 そして、このたび、法律も児童手当法の改正、名称も児童手当に戻りました。国民も安心をしております。来年幾らもらえるかわからない、これでは家計の予測が立ちません。予見可能性を最大化していく、これは政治の役目であると思います。それさえもわからなかった。その証拠に、毎日新聞の調査でも、児童手当に戻ってよかった、六割以上の方がそうおっしゃっています。

 また、後期高齢者医療制度、これは、うば捨て山あるいは差別、そうおっしゃっていましたけれども、五割は税金が入っている、四割は現役世代の保険料、一割が高齢者の方々の御負担、まさに支え合いの制度だったんです。これをさんざん批判して否定をされた。障害者自立支援法もそうです。このたび総合支援法を出してこられましたけれども、さんざんこれも批判をされてきた。

 こういう中で、民主党政権、民主党がこれまでいかに社会保障制度改革、年金、医療、そして障害者施策、これをおくらせてきたか、先送りをしてきたか、このことを指摘し、私は質問を終わります。ありがとうございました。

中野委員長 これにて古屋さんの質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 野田総理は、消費税率を再来年の二〇一四年四月から八%、二〇一五年十月から一〇%と二段階で引き上げる法案を提出して、これに政治生命をかけるというふうに言われております。私は、余りにもこれは異様だと思うんですけれども。

 その増税額は合わせて十三兆円を超えるわけです。これは、単純計算すると、赤ちゃんからお年寄りまで、国民一人当たり年に約十万円も負担がふえる、こういうことであります。四人家族で四十万円、そういう計算になります。

 これに対して、どの世論調査を見ましても、消費税の大増税に反対するという声が多く、五割から六割が消費税増税に反対だ、こういうふうに答えております。野田総理は、この国民の声をどのように受けとめておられますか。

野田内閣総理大臣 各種世論調査、いろいろありますが、全般的にはまだ反対の方が多いという傾向が続いていることはまことに残念でございます。

 今委員御指摘のとおり、約十三兆円国民に御負担をお願いするわけでございますから、まず、御理解をいただくためには、その意義というものをしっかりお伝えしていかなければならないと思っております。その意義というのは、社会保障の安定化そして充実に充てていく、全て社会保障に使途を限っているという意味で、まず、国民の皆様に還元をされるんだ、官の肥大化にはつながらないということを明確に意義として申し上げていかなければいけないと考えています。

 加えて、この一体改革については、国民の多くの声が、まずは身を切る努力を、削る努力を行政がしろ、政治がしろという声だと思います。そういうこともしっかり受けとめながら、国民の皆様の御理解が進むように努力をしていきたいと考えております。

佐々木(憲)委員 今、社会保障に全額使う、官の肥大化には使わない、こう説明をされました。本当にそうなのかということを確認したいと思います。

 まず、前提としまして、消費税の増税がない場合、国、地方合わせて、二〇一五年の社会保障四経費、つまり年金、医療、介護、子育ての公的負担、これは幾らになると想定していますか。

小宮山国務大臣 仮に消費税率の引き上げが行えない場合、財源を確保できないため、社会保障の充実ですとか、それから基礎年金国庫負担二分の一の恒久化の財源が実現できません。消費税引き上げに伴う社会保障支出の増も発生しないということから、機械的に計算をすれば、二〇一五年度の国、地方を合わせた社会保障四経費の規模は三十四・八兆円程度となると見込んでいます。

佐々木(憲)委員 三十四・八兆円。

 我々は消費税増税に反対ですけれども、仮に五%増税される、そうしますと、政府の計算では二〇一五年に新たに十三・五兆円の税収が入ります。全額社会保障のために使う、こういうわけですから、増税前の社会保障四経費三十四・八兆円、これに消費税増税分十三・五兆円が全額上乗せされる。そうすると、足し算をすると、社会保障四経費の総額は合計四十八・三兆円、こういうことになると思いますが、そういう理解でよろしいですか。

小宮山国務大臣 消費税率の引き上げを行う場合について、機械的に試算をすれば、消費税率を五%引き上げたときの国、地方を合わせた社会保障四経費は四十一・三兆円程度と見込まれます。

 消費税率の引き上げを行う場合、消費税率の引き上げを行えない場合の社会保障四経費三十四・八兆円程度と比べまして、一つは、年金国庫負担二分の一の引き上げ分二・九兆円程度、また、社会保障の充実分として挙げています二・七兆円程度、さらに、消費税の引き上げに伴う社会保障支出の増〇・八兆円程度、合計六・五兆円程度規模が大きくなると見込まれます。

佐々木(憲)委員 これはおかしいと思うんです。つまり、消費税増税をしない場合は三十四・八兆円になる、増税したら、それに十三・五兆円プラスになるわけですから四十八・三兆円になるかと思っていましたら、どうも今の答弁ですと四十一・三兆円だと。この差額七兆円というのは、一体どこに消えるんですか。

岡田国務大臣 委員の前提は、今まさしく赤字国債で社会保障を賄っている、それを前提にして変えずにということで言われていると思います。そういった、いつまでも赤字国債で社会保障費を賄うということは続けられませんので、その部分の置きかわりというものもある。それから、自然増でふえていく、自然増といいますか、毎年毎年、社会保障費がふえていく部分もある。そういうことで計算されるわけでございます。

佐々木(憲)委員 要するに、置きかわると今言いましたね。

 これは、民間研究機関、例えばみずほ総合研究所、みずほ政策インサイト、こういうレポートがありますけれども、これを見ますと、こう書いているんですよ。お金には色がないため、消費税収が社会保障財源に充てられることでこれまで社会保障費に充てられてきた他の税収を社会保障以外の使途に振り向けることができる、消費税の目的税化は消費税率引き上げを容易にするレトリックにすぎない、こういうふうに書いているわけです。

 要するに、社会保障に全額使うと言えば国民が受け入れやすくなる、そういうことでそういう言葉を使っているということなんですね。

岡田国務大臣 もう既に今でもというか、増税をした後でも、社会保障四経費というのは消費税収を上回っておりますので、そういう中で、委員の御主張は、ですから、現在の赤字国債をずっと出し続けろということであれば、それは論理的につじつまが合いますが、そういうことではないと思います。

佐々木(憲)委員 私は、赤字国債を出し続けろなんて言っているんじゃないんです。ほかの財源があると言っているんですよ。

 そこで、ちょっとパネルを出してみますが、今あなた方が説明したのはこういうことなんですよ。

 二〇一五年の国、地方を合わせた社会保障四経費は、増税前が、左側にありますね、三十四・八兆円。消費税収は、増税分十三・五兆円ですね。これを全部上乗せすると四十八・三兆円になるわけです。ところが、今、答弁で明らかなように、四十一・三兆円にしかならない。七兆円は、結局、ここから抜けていって、置きかわって、他の予算に回されるということになるわけです。

 お金に色がついていませんから、この七兆円は、結局、今、岡田さんが言われた財政赤字の穴埋めとか大企業への法人税減税の一部になる、さらに、八ツ場ダムなど無駄な公共事業の復活の財源になる、米軍への思いやり予算の一部になる、こういうことになるんじゃありませんか。

岡田国務大臣 委員今言われた、米軍思いやり予算とか無駄な公共事業の財源になるんじゃないか。公共事業予算をどう組むか、あるいは思いやり予算をどう組むかというのは、それはそれでそのときの政府の判断ですが、ここで七兆円あるからその部分をふやす、そういう発想に立つわけではございません。

佐々木(憲)委員 結局、十三・五兆円を国民からいわば増税で受け取って、しかし、そのうち、全部使うんじゃありませんよと、今の答弁は。結局、七兆円はほかの財源に回るんですと。その財源は、結局予算の中で使われるわけだから、赤字国債の穴埋め、法人税減税、米軍思いやり予算、無駄な公共事業、こういうところに回っていくということを今、事実上お答えになったわけであります。

 社会保障に六・五兆円回ると先ほど言いましたね。さて、その六・五兆円は、これもまた眉唾で、内訳を見ますと、消費税引き上げに伴う社会保障支出の増、これは、消費税増税をすると公費負担がそれだけふえるから、〇・八兆円。それから、年金の国庫負担二分の一、これは二・九兆円。これはまさに置きかえなんです、ここに入れること自体、私はおかしいと思いますけれども。拡充の二・七兆円。この内容もいろいろな問題点があるわけですけれども、詳しくは言いませんが、私はこれが今のからくりだと。

 しかも、これで済まないんですよ。これとは別枠で社会保障の改悪がある、こう言わざるを得ない。

 これから二〇一五年までに国民はどれだけ負担しなけりゃならぬのか。このパネルを見ていただきたいんですけれども、二度の消費税増税で十三・五兆円、さらに、既に決められた年金の削減、年金、医療、介護などの保険料引き上げによる負担増、復興増税、子ども手当の削減、こういうものがあります。家計から見ますと、負担増も給付減もマイナスに作用するわけであります。合わせると二十兆円、こういうことになります。こうなりますね。

岡田国務大臣 議論の根本的な立て方が多分違うと思うんですが、例えば年金の減額、これは、物価が下がった分下がっていない、それを下げるということです。

 もしこれをやらなければ何が起こるかといえば、将来世代の年金のやりくりがつかなくなるということです。

 ですから、今はそれでいいかもしれませんが、やはり次の世代の分をある意味では先食いしているという状況を正さなければいけないということで、これは、今がよければ全てよしというなら別ですが、やはり将来世代のことも考えてやるということであれば、私は委員のような御指摘にはならないと思います。

佐々木(憲)委員 今の答弁は、この数字は否定できないわけですよ。要するに、今はその説明をしただけなんだ。

 物価が下がった分下げられていないと言うけれども、生活必需品の物価というのは下がっていないんですよ、実際。だからこそ、高齢者の生活を支えようということで年金を下げないと決定したにもかかわらず、それをどんどんこうやって下げていくというこのやり方自体が間違っているというふうに私は思います。

 これは過去最大の負担増であります。こういうふうになっていきますと、家計負担はどうなるか。既に、高齢者の家計も現役のサラリーマンの家計も大変な火の車の状態です。これ以上負担がふえるのはとても耐えられないという声が寄せられております。

 介護保険料について言いますと、三年ごとに改定されますけれども、ことしも各地で大幅に引き上げられて、問題になっております。

 例えば名古屋市の場合、年金だけで暮らしている年収二百八十万円の高齢者夫婦世帯の場合、前の年に比べて年額三万五千円近く、三一%もこの負担が上がるわけです。三年前と比べると四万三千円余りの値上がりなんですね。これは本当に大変な負担でありまして、私、ここに通知書をお借りしてきたんですが、これは本当に、見ただけでも大変な負担だなというのがよくわかります。

 受け取った市民から、これではもう払えない、何かの間違いではないかと苦情、問い合わせが殺到しております。その数は十日間で四千件を超えております。それだけじゃありません。市の窓口にも相談する人たちが殺到しておりまして、その六割が、もう私はこれは納付できません、こういう訴えなんです。

 厚労大臣に聞きますけれども、介護保険料は何で今こんなに値上がりするんですか。

小宮山国務大臣 介護保険につきましては、サービスを充実させていくことと、それから、高齢者の割合がどんどんふえていく中で、どうしても上がらざるを得ない部分がございます。それについては、国が負担をする、現役世代が負担をする、あるいは高齢当事者に負担をしていただくしかないわけなので。

 介護保険は、保険者である市町村が三年を一期として計画を策定して、保険料を設定して運営をしています。

 平成二十四年度からは第五期の介護保険事業計画がスタートをしていまして、高齢化の進行に伴いまして介護サービスの利用者が増加をしています。また、地域包括ケアを実現するため、居宅、居住系のサービスの充実によって増加する費用、これを賄うために保険料の引き上げが必要となりました。これは、申し上げているように、在宅医療、在宅介護をこれから充実していこうとしています。

 第四期の基準額が四千百六十円だったのに対しまして、第五期の基準額が四千九百七十二円と、これが高くなっていることは事実でございまして、昨年の介護保険法改正によりまして、財政安定化基金、これを取り崩して保険料引き上げ幅を圧縮する、そういう見直しも行ってきているところです。

佐々木(憲)委員 サービスの充実とか言っていますけれども、実際にはサービスのカットが多いんですよ。実際に進んでいるんです。

 しかも、この背景にあるのは、国も負担していると言いますけれども、国の負担は減らされているんですよ。介護保険制度が開始される前は、国は五〇%を負担しておりました。それが今は国は二五%なんだけれども、そのうちの五%は調整資金という形で、これが地域によって随分違ってくるということであります。

 だから、国の負担をもう少しもとに戻すとかしないと、ずっと減らし続けているからこんなことになるわけで、その反面で、もちろん対象者はふえる。したがって、もう自治体はパンク状態で、それを全部とは言わないけれども、一部自治体が負担しても、さらに値上げという形で高齢者にこういう形で押しつける。だから、もとをただせば国に責任があるということなんですよ。これは私は直していただきたい。

 こういうときに消費税増税が直撃したら生活は成り立たない。

 これもパネルを見ていただきたい。これは総務省の家計調査報告をもとに作成したものであります。夫婦高齢者世帯の場合、平均で見ますと、世帯主七十五歳前後で年収二百七十万円程度であります。大きな特徴は、この十一年で公的年金給付が大幅に減少しているということです。実収入は月額約二万一千円減少しております。また、定率減税の廃止、老齢者控除の廃止、公的年金等控除の縮小、介護保険料の引き上げ、こういうことで新たな負担、月額約九千円増加しております。生活はもうぎりぎりの状態であります。二〇〇〇年当時は収支とんとん、大体見てわかりますけれども、今は月三万五千円の赤字になっているんです。この分はもう貯蓄を取り崩して、不安な生活を送りながら何とか耐え忍んでいる、こういう状況です。

 こんな状態なのに、消費税が引き上げられたら、月に八千円、年に十万円以上も支出がふえるわけです。さらに、年金が減らされる、医療の窓口負担がふえる、介護利用料もふえる。これは平均してもこういう状況ですから、もっと深刻な世帯が出てくるわけです。

 総理、一体これは、どうやってこういう高齢者世帯は生活をしろということなんでしょうか。総理にお聞きしております。

岡田国務大臣 確かに、高齢者世帯の状況は非常に厳しいというのは、委員の御指摘もよくわかります。

 ただ、一方で、少子高齢化が進んでいく中で、我々は今まで国債に頼って、借金に頼っていろいろなことをやってきた。そういったことはいつまでも続かない中で、やはり少子高齢化の負担というものはみんなで分かち合っていかなければいけないということだと思います。

 それから、委員御指摘の中でもう一点、消費税を上げたときに物価が上がれば、その分は年金はスライドして上げられるということは申し上げておきたいと思います。

佐々木(憲)委員 年金の上げられる部分なんというのは極めて微々たるもので、カットされる方が多いんです。

 これは高齢者を今出しましたけれども、サラリーマンも大変なんですよ。

 パネルを見ていただきたいんですけれども、四人家族で子供二人、四十代の夫が働いている平均世帯の場合です。この十一年で勤め先収入が何と四万円も減少している、これは平均でですよ。他方で、公的な負担は、定率減税の廃止、配偶者特別控除の廃止、年金、健保、介護、この保険料の引き上げなどで月に約一万四千円、こういう公的負担が増加しております。そのために、可処分所得は月に約四万三千円減少、消費が月に五万円減っております。こうなると、預金したり、保険に出すお金も減らさざるを得ない。これは大変な事態であります。

 今後、消費税率引き上げ、子ども手当の減少、年少扶養控除の廃止、厚生年金の保険料の増加、復興増税、こういうものが加わりますから、さらに可処分所得は落ち込んでいく。大体、実収入に占める消費税と所得税、社会保険料、この公的負担率は、二〇〇〇年当時は一八・五%だったんです。それが二〇一一年に二一・五%にふえ、さらに消費税の増税で負担率は二三・五%に上昇する。つまり、収入の四分の一が税と社会保険料の負担で消えてしまうんです。これでは貯蓄に回るゆとりがない。本当に大変だと思うんです。

 総理、このサラリーマンの家計をどう思いますか。

野田内閣総理大臣 数字を拝見しますと、確かに、税、保険料の負担割合が二〇〇〇年と比較して上昇をしています。実収入がずっと落ち込んでいるというのは、これは多分、ずっとデフレの傾向が続いているということが要因だと思います。ということで、実収入が上がるための努力というのはやはりデフレ克服と経済の活性化だというふうに思いますので、そういう取り組みもしていかなければいけないとこの数字を見てまず思ったこと。

 それからもう一つ、この間、社会保障給付費も増加をしております。これは、政権交代によって、控除から手当へという観点から家計に対する支援も行いつつありますし、今、消費税と絡んでの御指摘ございましたけれども、消費税はまさにこれは社会保障として還元をされて、特に逆進性対策等々を講ずることによって、いろいろな弊害が生じないようなきめ細かな対策をぜひしていきたいと考えております。

佐々木(憲)委員 口でそんなことをいろいろ言っても、現実はなかなかそうはいかないんですよ。

 これからどうなるかといいますと、大和総研のレポートがここにありますけれども、こういうものを見ましても、復興増税、消費税増税というものを柱とする一体改革によって家計の負担は今後どうなるかというのを試算しております。それを見ますと、全ての世帯で負担がふえて、これは五類型を想定した試算ですけれども、全ての世帯で二〇一一年と比べて二〇一五年の実質可処分所得は、マイナス四・七八%、それから多いものでマイナス九・二三%という結果になっております。

 何か改善するかのようなことを口で言うけれども、実際に、先ほど二十兆負担がありましたね、家計にとってはマイナスなんです。結果的には消費が減っていく、消費全体を引き下げる、そういう方向に作用するという認識は総理にないんでしょうか。

岡田国務大臣 これは、ですから、借金でやっている、それが、先ほど来の議論で消費税というものに置きかわるということになれば、いつまでも借金を続けられないということが将来の不安になって現在の消費に影響を及ぼしているということがございますので、将来的な見通しがつくということは、私は、消費支出につながってくる、そういった一つの原因になるというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 将来的な見通しなんかつきませんよ、こんな状態で。負担だけがどんどんふえていくんですから。不安が増してますます財布のひもがかたくなり、将来に備えてこつこつと貯蓄するという方向に行かざるを得ないんですよ。でも、その資金がないんです。そういう認識がほとんどないというのは、本当に私はおかしいと思うんですね。

 家計消費が落ち込むと、景気の足を引っ張るだけではありません。今度、消費税増税で景気がどうなるか。これはどのように判断されていますか、総理。

野田内閣総理大臣 消費税の引き上げは、負担面だけ見れば、それは委員の御指摘のような部分もなくはないと思います。ただ、一方で、消費税は、今回、全て社会保障に特定して使途を決めているわけでございまして、将来の不安をなくしていくことによって、先ほど副総理もお話ございましたけれども、不安をなくすことによって財布のひもが緩んでいく、消費が喚起をされる、経済が活性化されるという側面もあると思います。

 加えて、今、欧米等で起こっていることは、財政が経済の足を引っ張るということもありますので、この改革をやらなかったときの経済の影響なども考えると、総合的に考えて、私は、国民の御理解を得るべく努力をすることが、これは基本的には正しい道だというふうに思います。

佐々木(憲)委員 これだけ負担をふやしておいて、何か将来が安心になるかのようなことを言いますけれども、それはもう全く逆であります。

 社会保障に回すと言いますが、先ほど見たでしょう、回らないんですよ、全部が。将来不安をなくすと言うけれども、将来不安はますます募るばかりでありまして、これは総理、余りにも楽観的過ぎると思うんです。

 まず、実質所得が恒常的に奪われる、こういう問題が考慮されておりません。民間の調査機関、また紹介いたしますけれども、消費税増税で所得が恒常的に奪われるという点を指摘している機関が多いんです。

 例えば、日興証券の増税影響試算、消費税増税の経済産業へのインパクト、ことし二月に発表されましたレポートですけれども、二回の消費税引き上げで、二〇一四年から経済成長はマイナスに落ち込んだまま戻らない、こういう指摘があります。二〇一三年度は駆け込み需要が発生するが、二〇一四年、二〇一五年と反動減が発生し、その後は消費税引き上げなどで恒常所得が減り、それがその後も続く、こうしているわけです。これは現実味がありませんか。

安住国務大臣 一つだけ反論させていただきますと、先生の御指摘は、確かにこれは、もしかしたら、生活をしている方々から見て、一定の基準だとこうなる可能性がある、だから、大負担になるからけしからぬという御指摘ですが、一方で、マクロで見ますと、我が国の国民負担率はどうなのかということをOECD等の統計で見れば、例えば、先生、スウェーデンは六二%ですよね、国民負担率。フランスで六〇・一、ドイツで五三・二、イギリスで四五・八。我が国の国民負担率は、これは三八・三なんですね。

 ですから、考え方が違うかもしれませんけれども、受益と負担の関係でいうと、私は、日本の国での今までの社会保障の給付のサービスの維持をするためには、国民の皆さんに広く薄く御負担をいただいても、国民負担率というマクロの点から見れば、決して御指摘のような、個々にはそういう御指摘があるかもしれませんけれども、全体としては、やはりそれは御負担を少しいただかないと、では借金でこのままずっとやっていくのかということにはならないわけですから。

 あと、もう一方で、政策的にどうしたって、では防衛費を削ればいいじゃないかとか、いろいろな御指摘がありますけれども、そこはやはり見解の相違ではないかなと思っております。

佐々木(憲)委員 それは反論になっておりません。なぜかというと、ヨーロッパの負担率、一定水準ありますけれども、還元される部分を見ますと、相当大きいわけです。それからもう一つは、この負担率をいきなり上げるという国はどこにありますか。日本ほど上げる国はありませんよ。

 しかし、現実に日本の家計というのは、先ほど、政府の統計ですよ、これだけ大変な事態になっているんだから。その上にいきなり二十兆円も増税する、二十兆円も負担を増す、こんなことをしたら日本経済が大変なことになるというのはもうおわかりだと思うんですけれども、わかっていて何か無理やりそんなわけのわからぬ答弁をしても、これはだめです。

 総理、ちょっと聞きますけれども、こういう言葉は知っていますか。うそで顔を塗り固めている方が総理大臣だったころ、消費税を上げ、医療費を引き上げ、定率減税を引き下げて、風邪から治りかけていた日本経済を肺炎にしてしまいました、同じことをまた繰り返そうとしているんでしょうか。これは誰の発言ですか。

野田内閣総理大臣 多分、私なんでしょう。

佐々木(憲)委員 そのとおり。総理が、これは七年前に、平成十七年一月二十五日、衆議院本会議で演説をされた言葉です。風邪から治りかけていた日本経済を肺炎にしてしまう、そういう批判を当時されていたんです。

 冷え込んだ家計から二十兆円も購買力を奪えば、あの当時は、一九九七年の消費税増税で、医療の改悪も合わせて九兆円負担増だったんです。九兆円負担増でも大変な事態だったんです。いろいろな要因、ほかにあるといいますけれども、この九兆円負担増が引き金を引いたことも明らかです。

 今は二十兆円というわけですから、これは当時の倍以上の大きな衝撃を与えるわけであります。これは、野田総理が当時批判していたことと全く同じことを繰り返そうとしている、そういうことになるんじゃありませんか。

野田内閣総理大臣 その教訓は、風邪を引いているときにはやっちゃいけないということだと思います。

 平成七年の当時というのは、もちろん消費税の影響もあったと思いますけれども、一連の国内における金融システムに対する不安の問題とかアジア通貨危機とか等々、総合的にいろいろかぶさって、景気は落ち込んでいきました。肺炎になりました。

 肺炎になりそうなとき、すなわち今回は、だから法案の中でも経済の好転という文章を入れながら、そして実質二%、名目三%、向こう十年で、平均ですけれども、これを実現することにも努力をするということなどを勘案しながら実現をするということでございますので、当時の認識は、私は、肺炎になりそうなとき、風邪を引いているときにやっちゃいけないということが教訓だというふうには思っております。

佐々木(憲)委員 今、国民は風邪を引いて寝込んでいるんですよ。そういうときに冷水を浴びせるようなこういう負担をしたら、どんな結果になるか。あの当時よりもっとひどい結果になるということを私は言っているわけです。

 一方で、こういうふうに赤字の家計を直撃する大負担を負わせておきながら、私、非常に不思議だと思うのは、大企業に対しては法人税率を下げます、こういうことですね。

 昨年秋、法人税を国税分で三〇%から二五・五%に下げました。当面三年間は、減税額と同じ額の復興特別法人税、これが課税されますね。しかし、二〇一五年には法人税は、それがなくなりますので、実質減税です。二〇一五年に消費税は大増税、一方で大企業向けの法人税は減税、これは余りにも不公平なんじゃありませんか。

安住国務大臣 国際的にどう考えるかというのは、先生、やはりもう一つの視点としてないと。経済主体の中の企業というのは、やはり非常に大きなウエートを占めております。

 何となく、先生のお話をいつも聞かせていただくと、何か大資本はけしからぬみたいなお話ですけれども、日本の株式会社は、ある種、社長から一般社員までみんなサラリーマンの集まりなんですね。そういう中で、やはり企業が国際競争で今大変苦しんでおります。そういう中で雇用を維持しながら、ある意味で終身雇用制度もほとんどの企業は守っていながら、社会保障制度の負担なんかをしてくれていますから、私は、ある意味、企業が元気でなきゃだめだと思います。

 これを比較しないで言ってもだめなんだと思うんですね。韓国とか、日本の企業がさらされている世界の競争の中でいえば、今、法人税については、その前段階ではやはり高い状況にあるということは現実ですから、日本の企業が国際競争力を維持するためにも、これは私はやむを得ない措置だったと思っております。

佐々木(憲)委員 それは全く違うと思いますね。

 大体、後でも言いますが、日本の大企業の税負担は軽いんです。今、国際競争力と言いますけれども、日本の企業が税金が高いからといって外国に出ていっているんだと盛んに経団連なんかは言いますけれども、内閣府の企業行動に関するアンケート調査、これによりますと、海外に出ていく理由として税金が高いという理由は、大きな企業はゼロですよ。しかも、外国から日本に進出する阻害要因として挙げているのは、税金というのは一七・五%、順位からいうと十番目、それから税制上の特恵がないというのは十二番目、主な要因ではありません。

 何か税金を下げないと競争力がつかないとか、国際的な対応ができないかのように言いますけれども、それは全然違います。

 日本の大企業、これは大事ですよ。なぜかというと、雇用をちゃんと守っていく上でも。その大企業が何で投資をしないか。理由はわかりますか。国内で市場が活性化していないからですよ。国内で物が売れないんですよ。何で売れないか。政府が国民の消費を冷やすことをやっているからだ。国民の消費が冷えているのに、商品がどんどん売れるはずがありません。したがって、企業は当然設備投資を縮小する。そっちの方を、つまり景気対策を国民本位でやるということが優先されなきゃならぬ。そっちをほっておいて、企業に減税したら何かうまくいくかのような、そんなことはありません。

 そもそも、この税金という問題で少し言っておきたいのは、税金は一体何のためにあるのか、税金とは何か、こういう問題を考える必要があると思うんです。

 日本の場合、法人税、所得税、消費税、この三つが大きな比率を占めておりますが、法人税と所得税、この場合は、企業、個人の所得に課税される税金です。法人税の場合は事業の利益に課税されますから、赤字なら払わなくてもいい。所得税は個人の所得に対して課税されます。ただ、課税最低限以下の低所得者は払わなくてもよろしい。

 しかし、消費税はどうかといいますと、これは根本的に性格が違うんです。消費税は買い物をするたびに課税される。したがって、所得が全くなくても、消費する限り、生きている限り負担しなけりゃならぬ、そういう税金でしょう。

安住国務大臣 まず最初の点ですけれども、やはり先生、今、日本の生産拠点は、企業から見ると、残念ながら人件費なんかは世界の生産拠点よりも高いんですよね。ですから、それは税金が直接的な原因ではないかもしれませんが、人件費等を含めて大変なコスト高になるので、その点を法人税等でディスカウントすれば国内で踏みとどまる企業がかなりいることは事実だと私は思います。

 ですから、決してそれは無駄ではないというふうに私は思っております。違いますか。

佐々木(憲)委員 違います。

 あなたの言うことを聞いていると、財界の言っていることと全く同じなんです。日本経団連が主張しているのを読んでいるようなものだ。一体誰のために政治をやっているんですか。

 税金というのは、所得の少ない人、税金を納めることのできない人から取っちゃいけません。ちゃんとお金のあるところから納めてもらうのが税金ですよ。担税力、つまり税を負担する力が認められている場合に課税をする、これが基本的なあり方です。

 所得のない人が税金を納めようとすると、生活を犠牲にせざるを得ないんですよ。収入に占める消費税の負担率は、低所得者ほどぐっと重くなる逆進性の問題があります。もともと、この消費税そのものも暮らしを壊す不公平な税制だ、そういう認識はないんですか。

安住国務大臣 ですから、お金を持っている人から多く取って、お金のない方からは取らないようにするというのは、累進性があるということからいえば、日本の所得税はそうなっています。

 ですから、それは垂直的な税で、今はちょっとフラット化していますから……(発言する者あり)ちょっと、外のやじがうるさい。

中野委員長 傍聴席からの発言はお控え願います。

安住国務大臣 だから、私が申し上げたいのは、消費税は、先生が御指摘のようなことはあるんです。なぜかというと、水平的税だからです。ある意味で、広く薄く全世代から同じ率で、消費をした分について負担をお願いするというのが消費税です。つまり、全世代型にこれをお願いして、税のバランスを、そういう意味では、所得税や法人税といわば水平的な消費税というもののバランスの中で国の税収というものを考えていくということではないかと思います。

 ちなみに、先生、スウェーデンやフランスやドイツのことで申し上げれば、日本の倍以上の消費税をそうやっていただいているわけですから、そういうことがまた、お預かりしたものは年金、医療、介護、少子化に回るというふうに私どもは目的税化もしているわけですからね。これが例えば、何か財界のために使うとか、官の肥大化のために使うとか、そういうことを私どもは申し上げているんじゃないんです。

 そういう点からいえば、この水平的な税の御負担は、ですから、逆進性の対策というのもそれはしっかりやらせていただきますから、少しこの税を負担していただかないと、やはり若い人、所得を払っている人の、若い人にしわ寄せがこれ以上行ったのでは、世の中なかなか持ちこたえられなくなるのではないかということでこういう税を提案しているわけです。

佐々木(憲)委員 バランスと言うけれども、こんなバランスを欠いたやり方はありませんよ。だって、低所得者、所得のない人にずっしり重くかかるような税金をぼんと上げて、何で、もうかっている大企業に減税をするんですか。これは一番バランスを欠いているやり方でしょう。

 法人税の話でお聞きします。法人税は本当に高いんでしょうか。表面的な税率を見ますと、日本の法人税率は、地方税を含めて実質税率は約四〇%というふうに言われています。高いかのように見えますけれども、しかし、問題は実際の負担率がどうなっているかということです。

 日本の大企業の税負担にはさまざまな優遇がありまして、実際の税負担率は軽くなっております。

 例えば一つは、税額控除という仕組みがある。例えば所得税額控除というのがありますけれども、これは、企業が受け取った配当などの収入について、所得税が課税されていた場合にその額を法人税額から控除できる、こういう仕組みです。それから、外国税額控除というのがありますね。企業や海外子会社が外国で法人税に相当する税金を納めた場合、その税額を法人税額から控除できる、こういう仕組み。これは多国籍企業になればなるほど利用できる。それから、試験研究費の税額控除というのがありまして、研究費総額の八%から一〇%の税額控除が認められる、こういう仕組みです。

 安住大臣、これらの税額控除というのは中小企業も利用できるというふうにされてはいますけれども、しかし、実際には多くが大企業によって利用されております。そのため、税負担率を引き下げる、そういう要因になっていると思いますが、間違いありませんね。

安住国務大臣 所得税額控除は、利子等に課された源泉所得税を法人税額から控除するもの、それから、外国税額控除も今先生おっしゃっているようなことでございますが、これは二重課税対策で、そういう意味での調整措置でございますから、ある意味で大企業優遇ではないと私は思いますし、研究開発というのはやはり日本の将来の発展の種を企業につくってもらうということが趣旨でありますので、そういう点では私はいずれも必要な措置だと思っています。

 なお、所得の低い人から税金を取るべきではないのではないかと。それは先生、所得税はそういうふうになっているじゃないですか。住民税だって非課税になっているわけですから。(佐々木(憲)委員「消費税のことを言っているんだ」と呼ぶ)いや、ですから、逆に言えば、消費をすることにはある程度の負担をお願いすることで広く薄く、社会のセーフティーネットを維持するということはあるんですから、所得税なんかではきちっとそこは対応しているということだけは、私、申し添えさせていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 所得税は今まで最高税率をどんどん下げてきたんですよ、今度はちょっと上げたけれども。だけれども、それは極めて部分的なものであって、所得の再分配機能を低下させてきたというのは事実であります。できているんですよ、やっているんですよなんて、そんなことはありません、言っておきますけれども。

 それからもう一つは、企業の申告所得を小さくする仕組みがある。

 例えば受取配当益金不算入という仕組みがありまして、これは、ほかの企業から受け取った株式配当は収益に計上されるけれども法人税の計算では収益に入れない、こういうものであります。それから、外国子会社配当益金不算入、これは、一定の要件を満たす外国子会社から受け取った配当の九五%までは益金に算入しなくてもよい、こういう仕組みです。また、特別償却の仕組みは、大きく償却された分、所得が圧縮される仕組みになっております。連結納税というのもあって、これは、グループの企業の中に赤字企業があるとほかの企業の黒字を減らすことができて税が軽くなる。こういう仕組みは巨大な企業グループしか利用できません。

 これらの仕組みは所得を小さくする作用を持っている、これは事実ですよね。

安住国務大臣 いずれも、税負担を軽くするためにやっているのではございません……(佐々木(憲)委員「軽くなっている」と呼ぶ)結果的には軽くなるかもしれませんが、実は、二重課税を防ぐという点から今まで損金の不算入制度も行っているし、それから、特別償却の方なんかもそうなんですね。それはまあ、小さくする効果はあるかもしれません。

 それから、連結納税も、これは中立的税制ということでやらせていただいていますから、私は、それをもって大企業優先だという言葉は当たらないと思います。

佐々木(憲)委員 私は全然見解が違います。

 こういうものを利用できるのは大企業だけでありまして、中小企業は利用できないから、したがって、大企業になればなるほど税が軽くなる。

 ちょっとパネルを出しますからね。これを見て明らかなんですけれども、企業規模別に示しますと、二〇一〇年はこういうことになるんです。パネルを見ていただきたいんですが、中小企業の税負担は二五%前後でございます。ところが、資本金百億円以上の大企業になりますと二〇%程度の負担、連結法人に至っては一〇%以下であります。資本金一億円から五億円で負担率がピークになって、それを過ぎて、企業規模が大きくなればなるほど負担率が低くなっているんですよ。これは国税庁の会社標本調査から作成したものです。

 総理、大企業になればなるほど税金の負担が軽くなる、この実態についてはどう思いますか。総理。

安住国務大臣 これは、比率は低くなっているかもしれませんけれども、納税の額が違いますから、そこだけはちょっとぜひ付言しておきますから。

佐々木(憲)委員 そんな答弁は答弁になっておりません。大体、率をお話ししているのに何で額の話にすりかえるんですか。これは全然問題にならないですよ。

 この事実は財務省の資料からつくったんですよ。私が操作したわけじゃないんです。

 もう一つのパネルを出しますと、これは一九九六年以降の十五年間の推移を示したものでございます。法人税の基本税率は三七・五%でしたが、三四・五%になり、さらに三〇%に現在下がっております。これをまた下げようというわけですけれども。この黒い線が中小企業の実質負担率です。赤い線が大企業の負担率です。

 これを見て大変驚きますのは、大企業の実質税負担率は、実に、この基本税率よりも非常に低いだけではなくて、一部軽減税率が適用されている中小企業よりもさらに低いということであります。しかも、この十年間、法定税率が横ばいなのに、次々と優遇措置がとられてきたために、大企業の実質税負担率は下がり続けている、こういうことです。

 安住大臣、これは事実ですね。

安住国務大臣 いや、ですから、この数字自体はそうですが、ただ、利益を生んでいる企業の課税であるということと……(佐々木(憲)委員「みんなそうだよ」と呼ぶ)ええ。ですから、そういう点では、さまざまなインセンティブをつけているのは、世界的にやはり同じような傾向を示しているんですよ。ですから、日本の企業が、決して税金が軽いというふうなことは当たらないと私は思います。

佐々木(憲)委員 利益を生んでいる企業が負担している税の負担率が、大企業ほど軽いと言っているんですよ。全然答弁が、何かあさっての方に向いて答弁しているような感じですよ。

 こういう状況で、これは事実ですから。負担能力のある大企業の税金が軽いというのは大体おかしいんです。こんなに大企業の税負担率が低いのに、法人税をさらに引き下げる、そんな必要があるんでしょうか。

 私は、もう一枚パネルを出しておきたいんですが、どうも、日本の大企業の内部留保、これが非常にこの間ふえております。この内部留保は、八〇年来、大体八〇年は三十六兆円、これは企業の内部にため込まれた利益でございます。この利益は、こういうふうになっているんです。資本金十億円以上なんですけれども、企業の内部でため込まれた利益剰余金という形、それから資本剰余金、引当金の合計です。右肩上がりで、景気が後退しようが、大震災があろうが、ふえ続けております。三十年前は三十六兆円だった。二十年前が百十三兆円あって、十年前が百七十二兆円、そして今は二百六十六兆円と、大変な規模に積み上がっております。

 日銀の白川総裁は、二〇一〇年九月八日、財務金融委員会で私の質問にこう答えています。「特に大企業については、手元資金は今は非常に潤沢でございます。これは各種の統計でももちろん確認できますし、私どもが企業の経営者と会いますと、手元に資金は潤沢にあります、問題はこの資金を使う場所がなかなかないんですということを、金融機関の経営者からも企業経営者からも、これはしょっちゅうお聞きします。」このように答えました。

 野田総理大臣、このグラフを見て、何でこんなに内部留保がたまるか、どう思いますか。

安住国務大臣 内部留保は、御指摘のとおり、増加傾向にあるんです。ただ、これは不良債権の処理をした後、日本の企業というのは、そういう意味では、バランスシートの調整に大変努めてきた結果だというふうに私は思っています。

 ただ、私、先生に賛同できるのは、やはり、さらに雇用を拡大したり設備投資をしたりという方にこれを回すべきだというふうに先生も思っていらっしゃるんだろうなということはわかります。

 統計を見ますと、資本金十億以上の企業は今大体九・九%、一億から十億の企業は一・三%ぐらいが設備投資を行っているんですね。そういう点では、もっと国内の雇用の確保に努めて、さらに投資を活発にしていただくことが、いわゆるデフレからの脱却等にも役立つし、きちっとした雇用の拡大にもつながりますので、だから、内部留保が悪いわけではないと私は思うので、そういう意味では、国内へのそうした投資に回していただくということが必要だと思っています。

佐々木(憲)委員 少し私の意見と近いところまで答弁が参りました。

 これだけ内部留保がたまってくるのは理由があるんですよ。つまり、賃金を引き下げて、非正規雇用をふやして、そして、その雇用関係でコストダウンをして、その結果、たまっている。それから、下請中小企業に対しては単価を買いたたいて、そして利益をふやしてきた。それから、先ほど述べたような大企業に対するさまざまな優遇措置がとられてきた。その結果、たまっているんですよ。

 だから、当然、こういうものは労働者に還元する、それから市場の拡大に対応して国内への投資をふやす、そういう方向に切りかえるというのが本来の経済政策の基本でなきゃならぬ。ところが、今やっているのは、全く逆の方向に向いていると言わざるを得ないんです。

 例えば、減税をしますね。今この状態で減税するとどうなると思いますか。帝国データバンクのアンケート調査によりますと、法人税率の引き下げでどのようにこれを使いますか、このアンケート調査で一番多かったのは、内部留保の積み増しに充てるという回答なんですよ。二番目は、借入金の返済に充てます、こういう回答が多いんです。ですから、やはり今この法人税をこういうときに下げるという、これは選択としては違うと思います。

 総理、これはやはり、国内の雇用の拡大、それから下請単価の引き上げ、そして内需を拡大していくという方向にこういう内部留保は使うべきじゃないか。どう思いますか。

野田内閣総理大臣 今回というか平成二十三年度税制改正のときの法人税の実効税率の引き下げというのは、思いは投資と雇用に回してほしいということでございます。そのことは経済団体等にもこの引き下げを実行する際には強く要請をさせていただいておりますし、基本的にはその方向で経済団体も回答としては了としていたというふうに理解をしております。

佐々木(憲)委員 雇用と投資に回してほしいというのは、二年ほど前に政府が経団連に要望した。経団連は、それもいいことだというようなことを言ったと思います。ところが、現実にやっているのは、何も具体化されていないじゃないですか。非正規雇用はふえっ放しですし、設備投資も低迷しっ放しですね。

 大体、雇用と投資に回してほしいということに全く応えないで、最近どういう要望を出していますか、経団連は。経団連が最近出した要望、「成長戦略の実行と財政再建の断行を求める」というこの文書を見て、私、びっくりしました。これは五月十五日、つい最近です。この中には、消費税率を今後一%ずつ、二〇一七年からですよ、二〇一七年から二〇二五年の間、税率を毎年一%ずつ引き上げて、一九%に消費税率を上げなさいと言っているんですよ。とんでもない話だ。しかも、法人税率を、今度は二〇一六年から二〇二五年にかけて毎年一%ずつ下げて、最終的に二五%にしてほしいと。これはちょっとおかしいんじゃないでしょうか。

 今やるべきことは、国民の消費をどれだけ拡大していくか、そういう方向に向けた経済政策の根本転換でなければならぬ。経団連がやっているのは全く逆であって、政府がやっているのは、その経団連の意向を忠実に実行しているとしか思えないですよ、私は。今までの答弁を聞いていると、財界の代表の答弁と全く同じ。だから、これは国民の立場からいいますと、一体誰のための政治なのかと言わざるを得ない。

 私どもは、こういう財政状況のもとで、社会保障の充実や財政危機を打開するためにということで、これは二月の初めに、消費税大増税に反対をし、社会保障、財政の政策を出しました。これは総理にもお渡ししていると思いますけれども、この提言、私たちが主張しておりますのは、大企業に対してこれ以上の減税は必要ないということなんです。この大企業の持っている力をどういうふうに国民のために発揮させるか。そのためには、やはり雇用の拡大、雇用の安定。そのために、非正規雇用が今どんどんふえている、それに歯どめをかけて、やはり正規社員を基本にする雇用政策に切りかえる。こういう方向に大きく転換をするということであります。

 財源政策についても具体的な政策提言を私たちは幾つか行っておりますので、きょうはもう時間がありませんから詳しく触れるゆとりはありませんけれども、ぜひ我が党の財源についても検討していただいて、今の消費税増税はやめる、法人税減税は中止する、こういうことで大きな転換を図っていただくように、我々は国民全体の運動の先頭に立つという決意を申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

中野委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 最初に、総理にお伺いいたします。

 二〇〇九年の総選挙で社民党は、民主党、国民新党とともに、政権交代を掲げて戦いました。そして、選挙後に連立政権が発足をしました。総理、このとき三党で結んだ政策合意で最重点とした課題は何だったか、御記憶ございますでしょうか。

 三党合意は、小泉構造改革に象徴される政権交代前の政策によって国民生活、地域社会が疲弊したことを指摘し、連立政権は、家計に対する支援を最重点と位置づけ、国民の可処分所得をふやし、消費の拡大につなげることを最重要課題といたしました。

 社民党は、米軍普天間基地の移設問題をめぐって政権は離脱をいたしましたが、三党の政策合意、その冒頭に示しました、家計に対する支援を最重点課題とした理念は現時点でも変わらないわけであります。大切にしなければならないという認識を持っております。

 さて、今回、二段階に分けて消費税を一〇%にまで引き上げる案でありますが、民間研究所の試算を見ますと、消費税の五%引き上げで、平均に近い年収五百万円の世帯では、年間十六万八千円も可処分所得が減ります。

 また、本会議の代表質問でも指摘をいたしましたが、年少扶養控除や成年扶養控除の廃止、縮小、健康保険や厚生年金保険の値上げ、新児童手当の給付削減、復興特別所得税の開始なども合わせますと、年収五百万円世帯の可処分所得は、二〇一六年に三十万円以上減ると試算されています。総理が目指している分厚い中間層世帯の生計を直撃いたします。

 加えて、厄介なことに、消費税は逆進性を持っていますから、可処分所得が減る割合は低所得者の世帯に大きくなります。

 これは、家計に対する支援を最重点課題として可処分所得をふやすことを目指した政権発足時の目標から明らかに逸脱をしていると思いますが、この点について総理はどうお考えか、お尋ねいたします。

野田内閣総理大臣 中島委員御指摘のとおり、三党連立政権樹立の際には、その政策合意で、家計に対する支援を最重点と位置づけるとともに、年金、医療、介護など社会保障制度や雇用制度を信頼できる持続可能な制度へと組みかえていくというふうにされていたところでございます。

 これを踏まえまして、控除から手当へという観点から、年少扶養控除の廃止や特定扶養控除の縮小とあわせて、子ども手当から新たな児童手当制度へと変わりましたけれども、こうした取り組みとか、あるいは高校の授業料の無償化であるとか、母子加算の復活であるとか、あるいは父子家庭における児童扶養手当等々の、まさに家計を助ける策というのはずっと粘り強く講じてきたというふうに自負をしているものでございます。

 そして、今回の一体改革では、子育て世代や非正規などに向けた施策を充実し、現役世代が受益を実感できるようにするとともに、給付と負担の世代間と世代内の不公平感をなくしていく、公平性を担保していく、そういう社会保障制度の持続性を何とか確保していこうというのが今回の法案と改革の趣旨でございます。

 特に、若い世代を含めて国民が将来に不安を持たないようにするため、社会保障と税の一体改革により社会保障を充実、安定化させるということをぜひ御理解いただきたいというふうに思っているところでございます。

 なお、一九九七年の金融危機、そして、その後の不良債権処理の期間に長引く我が国経済の厳しい状況、その後、持ち直しつつあった二〇〇八年の、リーマン・ショックによる再度の我が国経済の厳しい状況によりまして、御指摘のように、これら以前と比較して家計の収入が減少しておりますが、これについては政権交代以降努力してきたし、今後も、まさにデフレの脱却であるとか経済の活性化に向けて、しっかりと取り組みを強めていきたいというふうに思います。

中島(隆)委員 今申されましたように、政権交代後に家計を温める政策が全く実現していないとは言いません。今申されましたように、高校授業料の無償化、あるいは農業の戸別所得補償の実施など、社民党も一緒に進めてきた政策でもあります。これについては評価をしているわけであります。しかしながら、デフレ不況の中で、家計は依然として冷え切っています。

 消費税を五%へ引き上げた場合、九七年、所得税の特別減税の廃止、社会保険料の値上げ、医療負担増等、重なりまして、家計所得は八・六兆円減少します。その後にアジア通貨危機や金融危機、あるいは不良債権問題が顕在化したとはいえ、いきなりの負担が、失われた二十年、この引き金になった事実は否定できません。このことを繰り返すわけにはいきません。

 内閣府の国民経済計算によれば、消費税の五%へ引き上げの前、九六年と、最新データの二〇一〇年を比較いたしますと、金融機関を除く民間企業の可処分所得が十兆円、約四〇%もふえているのに反し、家計の可処分所得は実に十八兆九千億円も減少しています。率にいたしますと六・二%マイナスです。

 家計の可処分所得は、九七年の消費税増税によりまして明らかに悪い環境なのに、家計の支援を標榜する政権が十三・五兆円という戦後最大級の増税を実施する状況に今あるのですか。総理の認識をお聞かせいただきたいと思います。

岡田国務大臣 委員御指摘のように、もちろん経済的な状況というのは十分見きわめながら考えていかなくてはならない、そういったことは我々も法案の中にもそういう考え方を盛り込んでいるところであります。

 他方で、やはり、今の時代だけではなくて将来世代に対しても考えていかなくてはならないということを考えたときに、今日のように、国の予算の半分が国債によって賄われているという状況をいつまでも続けていっていいのか、それで果たして社会保障制度そのものも持続可能なのかという問題に突き当たるわけで、そういう中で、恐縮ですが、消費税の増税をお願いし、社会保障制度を持続可能にする、そのことによって将来の安心感を得て、消費の拡大にもつなげる、こういうことで考えさせていただいているところでございます。

中島(隆)委員 安住大臣、大臣は、今の経済状況であれば消費税の引き上げは可能だ、こういう認識を予算案の審議の答弁で申されております。しかし、先ほどから述べましたように、家計は依然として疲弊をしています。そこに十三・五兆円という超弩級の負担増が加わります。

 安住大臣は、それでもなお、今、増税を行える環境にあるという判断でございますか。そこのところをお示し願いたいと思います。

安住国務大臣 私が以前この場で田村委員の質問に答える形で答弁をしたときに、私、そういう話をいたしました。その後、党の中での議論で、新しく引き上げに当たっての条件がついたわけであります。名目三%、そして実質二%の経済成長を目指していくんだという目標の中で、そういうことを努力しながら、結果的に、総合的に時の政権がその経済状況を勘案して、そして引き上げを判断する、引き上げをまた、やめることも含めてですね、そういう条項になっておりますから、そういう考え方に従って対応していきたいというふうに思っております。

中島(隆)委員 少し景気は回復の基調にあるわけですけれども、しかし、経済産業省の工業統計を見てみますと、製造業の付加価値生産額は、リーマン・ショック前の二〇〇八年八月と最新の数字、ことしの二月でありますが、比較すると八%落ち込んでいます。同様に、製造業の施設の稼働率も八・二%低くなっています。リーマン・ショックからの回復がこれほどおくれている国は、先進国では日本だけであります。

 この先、十三・五兆円の負担増が行われれば、消費がさらに冷え込み、物が売れないわけでありますから、価格の低下、あるいはデフレが一層進行する可能性は否定できないと思います。

 そこで、安住大臣にお聞きいたしますが、二〇一一年から十年間の平均で、今申されました名目三%、消費税増税実施を停止する要件ではないとするなら、経済や家計がどのような状態のときに消費税の引き上げを停止することになるんでしょうか。国民の大きな関心であります。明確に、具体的に示していただきたいと思います。

安住国務大臣 附則の十八条の第一項においては、二十三年度から三十二年度までの十年間の平均において、名目成長率三%程度、実質成長率二%程度の経済成長を目指すという政策努力の目標を示しております。ですから、政府としては、デフレ脱却や経済活性化に向けて、こうした望ましい経済成長のあり方に早期に近づけるために総合的な施策を実施する、つまり、これは目標としてしっかりやっていくんだと。

 こういうことを受けて、第二項によって、さまざまな経済指標を勘案して決めるということになるわけでありますが、いわゆる停止をすることをどういうふうに規定するのか、その例はあるのかという御質問であれば、例えば、リーマン・ショックや、やはり著しい経済の変動ということでありますれば、東日本大震災のような事例等もありますから、そうしたときには、時の政権において御判断をされるものだというふうに思います。

中島(隆)委員 日本の社会は、少子高齢化が世界でも例のない速度で進んでおります。国民の所得における租税負担率が主要先進国では最低ラインにある現状で、安心した社会保障制度の構築が難しいことは理解をいたしますが、しかし、負担増を国民に求める際には、実施する時期はいつなのかを慎重に検討することが必要であり、また、格差がこれだけ拡大している中で、支え合い、分かち合い、その精神が発揮できる税、社会保障制度の抜本改革を示し、負担増をどこに求めるのかを含め、国民合意を得なければならないと思います。

 だから、率直に言って、今、十三・五兆円という大規模な負担増を求めることは賛成できません。その前に、負担増に耐えられる条件整備をすべきであるというふうに思います。

 二〇〇二年から二〇〇六年末ごろまで、戦後最長と言われる景気回復期がありました。この期間、小泉構造改革の規制緩和が進んだこともありまして、企業の業績は回復をし、消費税が二%アップした一九九七年を起点にいたしますと、企業の経常利益は、九七年に二十七兆八千億が、二〇〇六年には五十四兆四千億円と倍増になりました。同じ期間に、株式配当は四倍、役員賞与も二倍にふえています。

 しかし、国民は景気回復など実感していません。それもそのはずです。賃金は減り続けました。正規雇用が非正規になりました。そして、二〇〇〇年代を通じて、大企業は利益を上げても、中小企業は疲弊をし、働く者の所得と雇用の破壊が進みました。こんなことは勘弁してくれと、悲鳴がこの政権交代につながったというふうに私は思っています。

 だとすれば、今しなければならないことは、所得と雇用をいかに改善していくか、労働分配率をいかに引き上げていくか、その政策を示し、実現することこそが必要ではないかと思います。そのことがデフレ脱却に必要な処方箋であり、税と社会保険料を安定的に確保する、その基盤になると思います。

 総理の認識をお聞かせいただきたいと思います。

岡田国務大臣 委員の御指摘もわからないわけではありません。

 小泉政権の後期に、確かに、輸出が好調で企業も収益を上げるにもかかわらずなかなか賃金が上がらないとか、そういう議論を国会でも盛んにしていたことを思い出します。

 逆に考えますと、私はあのときに、やはり消費税を上げるチャンスを失したのではないかというふうに思うわけですね。あのときにきちんと対応しておけば、これだけの財政赤字を抱える必要はなかった。

 小泉総理は、いやいや、それはもっともっと歳出削減をまずしなきゃいけないんだということで、消費税は上げないとおっしゃったんですが、あのときは非常に大きなそういった機会であったのではないか。その間、借金はどんどん積み重なって、現在の状況になったということでございます。

 同じように、さらに先送りをしていけば、これはもう後戻りのきかないところまで来るというふうに思います。

 そういう意味で、もちろん経済の状況はよく見なきゃいけません。非常に難しい状況であれば、それはストップしたり、いろいろなことも考えなきゃいけない。それはそのときの政権が判断することでありますが、しかし、同時に財政の状況を考えれば、やはり機会を逃すことなくしっかりと、消費税を引き上げ、社会保障制度を持続可能なものにしていく必要がある、そういうふうに考えております。

中島(隆)委員 今、小泉構造改革の問題について少し申し上げましたが、少し実態を申し上げたいと思います。

 というのは、小泉構造改革で今の雇用環境を破壊したのは、私は、派遣労働法の自由化なり、いろいろな自由化、規制緩和による今の労働環境だと思うんです。

 最近の労働調査を見てみますと、非正規が三八・七%です。もう千七百万を超えているんですね。千八百万。ところが、先日、労働力調査を見ました。それによると、正規の労働者が五十六万減って、非正規が三十四万ふえている。ということは、正規労働者がだんだんだんだん減っているんですね。そして非正規がふえている。しかも、非正規も、派遣はそうふえていない。あとはアルバイト。一番ふえているのは嘱託と臨時です。ですから、今、雇用の中で、もう正規をやめて、嘱託、臨時で、まさに退職金もない、ボーナスもない、そういう方々が今の産業を担っている。

 そして、若い人が二人に一人です。所得が、年収二百万以下の人が千百万人おるんです。こういう中に、この消費税、十三・五兆円、引き上げたらもう生活そのものがなっていかない、こういう危機感があるわけです。ですから、私どもは、そういうこれまでの構造改革による今の生活不安、こういう中にあって大変な状況であるということを認識していただきたいと思います。

 ここでもう一つ、別な問題でありますが、安住大臣に、独法職員の給与見直しについてお尋ねしたいと思います。特に緊急な問題がございますので。

 これは、国家公務員の給与削減を決めた給与改定臨時特例法に関連をしているわけでありますが、五月十一日、閣僚懇談会において、独立行政法人の役職員について、国家公務員の給与削減に沿って給与の見直しを急ぐよう各法人に要請されたということであります。

 運営費交付金で人件費が賄われている独法については、次期予算編成で国家公務員の給与削減と同等の人件費相当額を運営費交付金から減額する旨、申し合わせたものと承知いたしています。

 御存じのように、独立行政法人の職員は、国家公務員ではなく、労働三権が保障されております。賃金を含めた労働条件は、各法人、自律的、自主的な労使関係の中で決めるのが筋であります。これに対し、給与の見直しを急ぐよう閣議が申し合わせた、さらに来年度予算から無条件に人件費削減を進めるよう、このように指示をされております。自律的、自主的な労使関係を侵害するのではないか、労働契約締結を侵すものではないかというふうに私は思うのですが、安住大臣にお尋ねいたします。

安住国務大臣 人件費の見直しにつきましては、国家公務員はさきに七・八%引き下げをさせていただきました。大変厳しい環境の中で、そうした御理解をいただきまして今行っておりますが、やはり公的部門全体で人件費の問題というのは取り組まないといけない部分はあると思います。ですから、独立行政法人等の役職員の給与につきましても、国家公務員の給与の動向を見つつ、必要な措置を講ずるよう要請する旨の閣議決定等がされております。

 先生今御指摘のように、自律的労使関係によるべきことは当然でありまして、そのことは、私、十分わかっております。ですから、閣僚懇談会での発言では、私は、独法についても、公的部門における人件費見直しによる財源は、ぜひ復興の財源として活用させていただきたい。それと、運営費交付金等により人件費が賄われている独法等に対する次の予算編成の際の予算上の対応も、今御指摘のとおり、私はお話をさせていただきました。

 それ以外の独立行政法人等についても、同様の給与削減によりまして、今後、できれば国庫納付等が見込まれるのでよろしくというお話をさせていただきましたけれども、自律的労使関係に介入するということではなくて、やはり公的セクター全体でこの復興に対する財源の拠出ということを、国家公務員はやらせていただきましたので、それにぜひ倣ってやっていただきたい。

 現に、私の財務省でもそうですが、労使交渉をそれぞれやっておりますので、できるだけ早い段階で、労使円満な形でそうした方向になるように私も期待しております。

中島(隆)委員 この問題を取り上げたのは、閣僚懇談会での確認で指示をされたということでありますが、この法のとおり、自律的、自主的な交渉を、それを今からやるということですから、ぜひ今後、やはりそういう給与の削減で東日本を支える、こういうことは、みんな国民もそういう理解ができるわけですが、ぜひ、十分、この法に基づいて協議をして、慎重にやっていただきたいというふうに思います。

 次に、消費税引き上げの根拠について、総理にまた改めてお尋ねをいたします。

 今回の消費税を、是非を脇に置いても、今回の一体改革のスキームについては制度設計にかなり疑問符がつきます。今回の消費税引き上げは、従来から、地方一%分を除いても、年金、医療、介護に少子化、これの四経費に充てられますが、先ほども言われましたいわゆる目的税化しているわけですね。

 ところが、今年度予算を見ますと、基礎年金、老人医療、介護に必要な国の経費が十五・一兆円。ここには交付国債で手当てする基金、年金、それから国庫負担割合引き上げの二・六兆円、これは含まれていません。これを加えますと、必要額は十七・七兆円になるんです。

 他方、国の消費税税収分は七・三兆円です。経費と収入の差額、いわゆるすき間ですが、これは十・四兆円です。今回、消費税五%を引き上げますが、国税分の五%のうち三・四%ぐらいですから、額にしますと約九兆円です。少子化対策の費用を除いても、従来の三経費のすき間部分すら埋まりません。

 消費税をしても埋まらないすき間分をどのように手当てされるのか。それとも、赤字国債の発行ですか。それとも、給付の削減ですか。あるいは、一般会計の歳出のどこかから削って回すのでしょうか。できる限り具体的に、総理、お示しいただきたいと思います。

岡田国務大臣 これは、委員、すき間と言われましたが、すき間と言うには余りにも大きな額でございます。

 二つ、今おっしゃった四経費を消費税で賄い切れていないという問題と、もう一つは、プライマリー赤字を黒字化するためにはまだ足らないという話と、二つあるわけですけれども、いずれにしても、これは将来の課題として基本的に三つのことをやらなきゃいけないというふうに考えております。

 一つは、やはり歳出削減のさらなる努力を行わなければならない。もう一つは、経済成長による増収の道。そして最後に、それでも足らざるときにやはり何らかの歳入の増、つまり増税というものを考えなければいけない。もちろん、ほかにも国有財産の売却とかそういうものがあるとは思いますが。

 その歳入増という中で、いかなる税をふやすのか、増税するのかということは、それはそのときの議論であって、今から決めることはできない。消費税の増税というのも一つの選択肢だと思いますが、ほかにも直接税をふやすという道もある。それは今決め切れることではないというふうに思っております。

中島(隆)委員 質問通告でも総理に御答弁をお願いしておりますので、御指名したときにはその答弁をぜひ、委員長からお願いしたいと思います。

 さらにお聞きしますが、政府は社会保障費が毎年一兆円自然にふえるとおっしゃっています。この根拠についてはまた改めて質問いたしますが、今回増税をして、国の消費税収分全部を充てても、年金、医療、介護、少子化対策の経費は埋まらないわけです。埋まらないどころか毎年社会保障費はふえます。

 このとき、消費税が社会保障のため目的税化されるとなると、今後ふえていく社会保障費に応じて自動的に消費税が上がっていく仕組みになるのではないかと懸念するわけであります。当然のことだと思いますが、この点について総理はどういうふうにお考えでありますか、お尋ねをいたします。

野田内閣総理大臣 委員御指摘のとおり、これは毎年自然増で約一兆円ずつふえていく。しかも今、一般歳出の半分以上が社会保障関係費、非常に比重が多いんですね、なおふえていく。では、それを支える財源をどうするか。

 先ほど来、ずっと議論がありましたけれども、例えば所得税、これは現役世代中心じゃありませんか。そこは世代間の公平という意味から、現役世代が支える所得税、保険料に比重が大きいということはやはりいびつだと思うんです、持続可能性を担保できないと思います。法人税の議論もありました。これはやはり景気の動向で左右されます。そうすると、基幹税としてはやはり消費税。全ての世代が支え合う、助け合うという趣旨からすると、社会保障の安定財源では消費税が私は妥当だと思うんです。

 ただ、それを五%上げたとしても、全ていわゆる四経費を支えられるものではありません。したがって、今回の一体改革は、二〇一五年までの間でございますけれども、先ほど、財政運営戦略に基づいていわゆる基礎的財政収支の赤字を半減させるという目標達成までの、まさに一里塚であります。一里塚でありますけれども、大変重要な一里塚、一歩だと思います。

 その後の御議論をどうするかということの御指摘だと思いますが、それは先ほど副総理が御説明されたとおり、財政の健全化という視点からいうならば、歳出削減と増収の道と歳入改革、この中でどういう知恵を出すかという議論を、そのときの政治状況、経済状況の中で判断すべきだろうというふうに思います。

中島(隆)委員 政府は、消費税増税法案の目的が社会保障の安定財源の確保と財政の健全化、この同時達成であると言われます。政府は、中期財政フレームの中で、二〇二〇年のプライマリーバランス黒字化を目指しておられます。しかし、内閣府がことし一月に発表した経済財政の中長期試算を見ますと、消費税率を政府予定のとおり五%引き上げても、さらに政府が目指す目標、三%の経済成長を見込んでなお、二〇二〇年、プライマリーバランス黒字化、八・九兆円が不足をしています。

 総理御自身は、この不足分をどのようにして今後考えられるのか、お尋ねいたします。

野田内閣総理大臣 先ほどの答弁と少し重なるかもしれませんが、二〇一五年に基礎的財政収支の赤字を半減させるという目標は、もし御支持いただけるならば、そのゴールは達成することができます。ただし、二〇二〇年にこの基礎的財政収支を黒字化するという目標までには当然至らないんです。

 ということは、二〇一五年の段階を経た中で、国際政治経済状況、国内の経済状況等々を勘案しながら、さっき申し上げた三つの道の中でどれを選ぶか、あるいはこれはポリシーミックスなのかを含めての対応をするということになると思います。

中野委員長 恐縮ですが、時間が参りました。

中島(隆)委員 はい、わかりました。

 では、時間が参りましたので終わります。

中野委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田憲司君。

江田(憲)委員 みんなの党、江田憲司でございます。

 まず、総理にお伺いしたいんですが、メディア各社が最近世論調査をいたしますと、将来の消費税増税に賛成か反対かと聞くと、過半数の方が賛成なんですよ。しかし、野田政権が提案をされている、一四年に八%、一五年に一〇%という今の法案に賛成か否かを問うと、過半数の方が反対なんですね。

 例えば、直近でいうと、これは朝日新聞さんがやられたこの週末の調査では、この法案に対する賛成は三九%、反対は五一%。これは、ほかの新聞社さんやテレビ社の方の調査も大体ほぼこのような結果が出ておりますが、それを総理はどうしてだとお思いになりますか。

野田内閣総理大臣 いわゆる一般論として、将来消費税引き上げ賛成か反対かというと、一定率で国民の御理解は進んでいるんですね。当面の、今の議論については、これはちょっと世論調査の結果はいろいろありますけれども、支持がふえているものと減っているものと両方あります。でも、一般論で消費税引き上げに賛成か反対かと言われれば、今政府が取り組もうとしていることの支持は低いんです。これは委員の御指摘のとおりだというふうに思います。

 その原因はいろいろあるかもしれません。一つは、何よりもまず意義をきちっと御説明しなければいけないな。この国会審議でも何回も御議論させていただいておりますが、これは社会保障に充てるお金であって、国民に還元をされるということの意義づけというものをまず明確にお伝えしていかなければいけないことと、それからもう一つは、やはりこれは一番国民の強い声だと思います、もっと行政改革をやりなさい、政治改革をやりなさい、その結果を見ているという部分がある分、まだ厳しい目で見ていただいているんではないかと思いますので、そういう目を意識しながら、社会保障と税の一体改革なんですが、行革や政治改革や経済再生等々、包括的な改革で国民は位置づけております。そのことにきちっと答えを出さなければいけないなというふうに思います。

江田(憲)委員 私は、説明が不足しているとかそういった問題ではなくて、国民はやはり、増税の前にやるべきことがあるだろう、やるべきことをやっていない、こういう思いだと思うんですね。つまるところ、政策の優先順位が間違っている、手順、プロセスが間違っている、こういうことだと私は思っているわけです。

 ただ、一点、今総理がお認めになったように、こういった負担を求める前に、やはり国会議員や役人が身を切るべきだ。これは、総理も政治生命をかけておやりになるとおっしゃっていますから、私はこれまでのことは全部棚に上げてもこれから期待をしたいと思うんですが。

 ただ、余りきょうはこの問題を議論するつもりはないんですが、一点、例えば国会議員の歳費カット、これは、我々はずっと、月給三割、ボーナス五割、これでも少ないという国民の皆さんは多いんですよ。皆さんも地元に帰られてそういう感想もお聞きになっていると思いますね。しかし、これをさんざん申し上げてきたら、この前、民主党さん、自民党さん、公明党さんで、二百七十万円年間カット、ただし二年限りということで法案が通りました。我々みんなの党も、それはもう本当に不十分だと思いましたけれども、これはやらないよりましですから、それはやむを得ず賛成しましたけれども、まだまだ深掘りできると思っています。

 それから、国家公務員の人件費二割カットで一兆円出してみせる、これはもう民主党さんも我がみんなの党も公約をいたしましたね。これは、私は、もう正直申し上げまして、政府に長くいた者として大変難しい問題なんですよ。だからこそ鳩山総理時代から何度も何度も、もういいかげんにしろと言われながら、言ってきた。それがやっと七・八%カットで、しかもこれも二年限りなんですよ。

 ですから、国民の皆さんの思いというのは、削減幅が足りないという思いもさることながら、何で二年限りなんだよ、消費税増税は未来永劫続くんでしょう、復興増税も二十五年間所得税は続くんでしょう、何で国会議員と役人だけが二年限りというこういった覚悟のないこそくなやり方をやるんだ、こういった国民の怒りが我々に向けられていると思うんですけれども、総理、この点について、やりましょうよ。増税に政治生命をかけるとおっしゃっているんだったら、この程度のことをできないと、とてもじゃないけれども国民の理解は進まないと思いますけれども、いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 まず、国家公務員の人件費については、いろいろ議論がありましたけれども、結果的にはマイナス七・八%の減額。これは、多くの野党の皆さんにも御賛同いただきながら結論を得ることができました。

 ここは、各党間の合意形成というのは、復興財源に充てるために、公的セクターとして、今回は思い切って、臨時異例としてこういう形のカットをするんだということが基本的な合意だと思うんです。それがスタートラインでありますけれども、その一方で、二年たった後にどうするかということは、国家公務員の総人件費の問題、そういう観点からの議論もあると思いますが、二年後に、そのときに決めるべきだろうというふうに思います。

 あわせて、歳費のカットについては、これは御党は非常に高目のお話がございました。ただ、これは、それぞれ政党のいろいろなお立場がある中で、合意形成を丁寧にやるしかなかったと思います。その中で年間二百七十万円をカットするということ、これも私は大きな前進だというふうに思います。

 それぞれの党がどこで折り合うかだと思います。その中で丁寧な議論が今与野党間で進んできて、国家公務員の人件費も歳費のカットもできた。これは一つの実績だというふうに私は思っております。

江田(憲)委員 増税は法案で今決めるのに、こういった身を切る改革は二年後に検討して決めましょうでは、とても国民は納得できないと思います。

 しかし、これ以上お聞きしても、それ以上の答弁は引き出せませんので、次に行きますけれども、最近報道されている問題として、例の私鉄とかバスの無料パス、これを関係協会、業界の方が、もうやめたいという非公式な意向が伝えられた、こういうことが言われていますね。これは額的には些少かもしれないけれども、民間業者の方に好意でやっていただいているわけですから、これぐらいのことはすぱっと、民主党代表でもいらっしゃるわけですから、こんなことで、いろいろ各党各派で協議するという問題でもないんですから、何ですぱっとできないんですか。

 そして、御党の幹事長が、私も報道で見ましたけれども、動画で、テレビで、こうおっしゃっているんですよ。私鉄やバスの無料パスを廃止してほしいという要望があるがということに対して、幹事長が、そんなことをやったら政治活動ができなくなるじゃないですか、身を切る、切るといったって、生活ができなくなるほど切ったらという発言をされた。

 私は、こういう感覚が国民の神経を逆なでしているんだと思いますよ。この程度のこともできずして、何で我々国民に負担を求めるんだ、この不況の折に、大震災と原発事故があって国難の折に。この程度のことは、与党の幹事長が反対であれば、代表である野田総理がすぱっと、わかった、これまでは好意に甘えてきたけれども、もうこれでやめましょうというのは普通のことではないかと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 国民の目が厳しく、特にこうやって御負担をお願いするときには、まずは隗より始めよ、そういう議論があることはよく承知をしています。

 ただ、まずやらなければいけないことは、これまでも約束をしてきた、議員歳費は、途中で、国会の中での議論から各党から盛り上がってきた、盛り上がったかどうかわかりませんが、やらなければいけないと思ったんです。

 もう一つ大事なことは、やはり定数削減なんですね、定数削減。これにきちっと、一票の格差の問題とか選挙制度改革とか、同時決着になっていますけれども、これは、でき得ればというか、何としてでもこの法案の採決の前には結論を出さなければいけないではないかと強く思っています。

 というように、一つ一つやらなければいけないことを決定していくということが大事であって、余り多方面にいろいろなことを言うよりは、パスの問題だって、これは議員活動の、生活の問題ではなくて、活動が円滑にできるかどうかというテーマだと思うんですね。余りその手足を縛ることをやることがいいのかという議論もあると思います。ということは、一つの党の一人の代表が勝手に決める話ではなくて、政党間で胸襟を開いて決める、これは歳費もそうだったでしょう。そういう議論が必要だというふうに私は思います。

江田(憲)委員 だったら、民主党代表として提起してください。この程度のことを、いや、国民はよく見ているんですね。野田総理、本当、口先では、やるやる、生命をかける、身を切るんだと言っても、全然成果は出ていないということなんですよね。私も、戦線を拡大してあれもこれもと言うつもりはありません。この程度というのは、簡単なことなんですよ。もうやめるとみんながここで言えば、やめられる話なんです。

 それからまた、重要なことをおっしゃいましたね。私も大賛成ですね。この法案が採決する前に大幅定数削減をすると初めておっしゃったわけです。我がみんなの党は、選挙制度の問題はありますけれども、抜本改革を提案していますから、全国比例、一人完全一票。それを前提にして、衆議院は四百八十人を三百人に、二百四十二人の参議院は百人にという提案も、アジェンダというか公約をしていますから。それはいろいろ各党各会派の協議がありますからね。

 我々はこういう大幅定数削減を前提にしていますから、あした、幹事長・書記局長会談がありますから、選挙制度の問題も含めてまた我々は提案しますから、ぜひ民主党代表としてリーダーシップをとっていただきたいというふうに思います。

 さて、きょうは、この身を切る改革の問題もやりたかったけれども、時間がありませんので、ちょっと素朴な、これは私に対する答弁というよりも、今この放送をごらんの国民の皆さんが理解をしていただかないと消費税増税法案も通らないわけですから、これは私、素朴な質問から始めたいと思うんですが、まず、安住大臣、消費税を五%から一〇%に上げて見込んでいる増収額というのは、十三・五兆円で結構ですか。

安住国務大臣 一%大体二・七前後だというふうに推計しております。

江田(憲)委員 今ありました、二・七兆円一%掛ける五で十三・五兆ですね。しかし、私が知るところ、消費税が三から五に上げられた、平年度化して九八年以降の税収を見ると、計算してみましたけれども、二・五兆円なんですよ。皆さんも我々も大体一%二・五兆円ということで思ってきたのに、社会保障と税の一体改革の大前提であるこの税収、これは大事な、基本中の基本ですね。これは何で二・七兆なんですか。

安住国務大臣 確定値ではございませんけれども、成長等を見込んでおります。経済成長等を見込んでおりますので、そういうふうな計算をしております。

江田(憲)委員 成長率は名目で何%を見込んで二・七兆円でしょうか。

安住国務大臣 慎重シナリオで一でございます。

江田(憲)委員 慎重シナリオで名目一%ですか。

 ちょっと時間が無駄なので、調べてください。

 要は、二・五掛ける五では十二・五兆円なんですよ。二・七掛ける五は十三・五兆円。一兆円も開きがあるんですね。一円たりともおろそかにできないんです、こういう問題は、国民に負担を求めるんですから。何でこれは簡単に一兆円も上げ下げできるんですか。皆さんは、社会保障と税の一体改革で十三・五兆円を見込んで、それを前提にしてはじいておられるわけでしょう、社会保障に何ぼ充てるとかいうことで。ですから、これは基本中の基本なんだよね。

 まず、安住大臣がそれを御存じないというのは非常に不可解なんですが、ちょっと準備ができたようですから、お答えください。

安住国務大臣 これは国家戦略大臣が担当でございますが、失礼しました。

 二〇一二年が名目で二、二〇一三年が一・七、その次が二・六、一・八、こうした名目成長率をもとに推計をしますと約二・七兆になるということでございます。

江田(憲)委員 私が言いましょう。平均して一%台半ばと書いてありますね、慎重シナリオ。一・六%ではじかれているんでしょうが、それであれば、その一・六%名目成長を下回ると十三・五は確保できないんですから、我々は一・六%名目成長じゃ低過ぎると思っていますけれども、しかし、皆さん方の立場に立っても、法案にしっかりと一・六%名目成長が前提だと書かないと、全てこれは土台が崩れちゃうんじゃないですか、社会保障と税の一体改革の。

安住国務大臣 消費税は、今から経済の議論になるんでしょうけれども、比較的、平均的な税収のアベレージは景気のよしあしに大きく影響されるわけではなくて、そういう点では水平的な税でございますので、ある一定の、現実に可能な経済推計に基づいてそうした試算をしているということです。

江田(憲)委員 おっしゃるとおりですよ。消費税というのは余り景気によって変動しないんですよ、税収が。

 現に、これは私、全部調べましたけれども、不況の度合いもいろいろ違ったこの十数年で、平均して二・五兆円なんですよ。ですから、そうおっしゃるのなら、二・五兆円掛ける五%の十二・五兆円ではじかないとおかしいじゃないですか。いや、私はもうこれ以上言いません、時間もない。要は、皆さん、事ほどさように、すぐ一兆円も異なる、説明もできないようなことをやっているということを私は一つ指摘をしておきたいと思います。

 それから、景気と増収との、もう何度も私がパネルを使いましたので見飽きた方もいらっしゃると思いますね。我々も、消費税を増税して税収が上がるのならまだ考えてもいいんですね。しかし、ごらんのように、九七年四月に三から五に上げました。そのときには五十四兆円程度あった税収は、その後、紆余曲折はしておりますけれども、最近では四十二兆円。何と十二兆円も減っているんですね。一回たりとも、増税時の五十三・九兆円を上回っていないわけです。

 私も、これが全てデフレだ、景気悪化だと、全部がそれが責任だと言うつもりはありません。例えば、小泉政権のときに税源移譲をやりました。これは、所得増税と住民税増税という形で地方に税源を移譲した、所得税収はそれだけ減りますが。それから、確かに小渕減税といって、当時あった。ただ、これはもう取り戻している部分がありますから。

 ですから、安住大臣、ぜひ教えていただきたいのは、この五十四兆円が四十二兆円になった十二兆円の減収要因を、要因別に何兆、何兆、何兆、景気悪化要因、それから減税要因と分けて教えていただきたいんです。

安住国務大臣 きょう資料要求があったということで財務省からそちらにお渡しをしましたけれども、三位一体による所得税の税源移譲、これは十六年で〇・四、十七年度で〇・七、十八年度で一・九兆円の税源移譲をいたしました。これは減額だと思います。

 それから、法人税率の引き下げにつきましては、十年度で〇・三、それから十一年度で一・七、二十四年で〇・八ということになっております。

 それから、所得税法のフラット化もしておりますので、そうしたこともありますから、全体としては税収は落ちていますが、と同時に、そういう点では景気の動向等も反映はしているというふうに思います。

江田(憲)委員 ですから、申し上げたいのは、確かに税源移譲や減税もありましたから、それ分の効果は差っ引かないかぬわけですけれども、それを差っ引いても五十四から四十二兆円に税収が落ちたということは説明できない。大体半分ぐらいは景気悪化要因だということが言えると思うんですね。

 そして、着目すべきは、二〇〇三年から二〇〇七年までは右肩上がりに税収は上がっているんですね。この時期というのは、実は小泉政権時代、税源移譲していますから、例えば所得税収は減らないかぬわけです。見てみると、逆にふえているんですね。これは何かというと、これがまさに我々が言う経済成長効果なんですね。

 当時は、小泉政権のころ、二〇〇三年から七年までの四年間ぐらいを平均しますと、名目で一%成長、実質で二%成長していたんです。株は、何と一万七千、八千円までいっていたんですね。小泉政権は一切増税していませんね。まさにこれこそが、我々みんなの党が言っている経済成長なくして財政再建なしなんです。

 要は、デフレで景気の悪いときに増税をしちゃったら、さらに景気が悪くなって税収が下がるというのが、これは歴史の真実でしょう、これが現実でしょうと私は、みんなの党は言っているわけです。

 これは、我がみんなの党や私、江田憲司が言っているだけじゃなくて、例えば、ノーベル経済学賞をもらったポール・クルーグマン・プリンストン大学教授も、デフレ下で増税をすればデフレを加速するだけだ、今の日本ではやるべきではないとおっしゃっていますし、それから、MITの教授でレスター・サロー先生、私も受講したことがありますけれども、レスター・サローさんは、ちょっと口が悪いものだから、今の日本で増税をするのはクレージーだと言っているわけですよ。要は、景気を悪化させるだけで二度と日本は立ち直れない、ここまでおっしゃっている。

 榊原英資さんは、実は昔、皆さんのブレーンでしたね、今もブレーンかどうか知りませんが、我々とは必ずしも意見が合致しないんですけれども、この点は一致していまして、世界恐慌の足音が迫ってくる中で増税をしては絶対いけない、それは経済の常識だとまでおっしゃっている。

 ですから、我々が言いたいことは、これは本当に、私も九七年四月に三から五に上げた増税時の当事者の一人です。端くれにいました。とにかく、当時、橋本総理が一番頭を悩ませておられたのが、まさにこの景気なんですよ。やはり消費増税をしたときに景気に悪影響が出る、その負担にたえられるだけの体力があるかどうか、最後まで悩まれておられました。

 しかし、当時は、これは村山政権当時に、九四年の秋に消費税増税法案を通して、それで九七年四月一日に先行するところ三年間、年間ですよ、年間五・五兆円規模の所得減税、住民減税、それを三年間連続してやったんですよ。いや、何も私は、今減税しろとは言いませんよ。そうじゃなくて、景気に配慮した対策をしっかり打って、それで当時の統計では九五年に実質成長二・二%、九六年は三・五%、株は二万円を超えていた。

 ですから、橋本総理も悩まれたけれども、しかし、村山政権で決めた既定路線でもあり、しかもこれだけ景気が回復したんだから増税をしても持ちこたえられるだろうという判断で増税をしたんですよ。

 しかし、経済は生き物なんですね。私は本当に経済は怖いと思いました。

 その半年後にタイ・バーツ危機に端を発するアジア通貨・金融危機があり、それが直接の要因じゃないんですけれども、三洋証券、我々は当時金融ビッグバンを進めていたものですから、十億円の、金融史上、戦後初めてデフォルトが起こり、それは普通だったら救うんですよ、奉加帳方式でね。しかし、我々は金融のグローバル化に沿ってフェアな金融行政にしようということであえて救わなかった。三洋証券は織り込み済みでした。そこで北拓が、もともと資金がとりにくかった北拓が倒れた。ここまでは想定済み。しかし、その一週間後に山一証券が自主廃業して、金融パニック、金融破綻、連鎖破綻になっていったんですよ。

 その結果が、申しわけないんですけれども、こういった形でどんどん税収は下がっていった。

 でも、皆さん、当時は、それは予見すべきだったという意見はありますよ、それはあると思います。しかし、当時は、増税の半年後です、来たのは。今は何ですか、皆さん、目の前にユーロ危機があるんですね。そして、日本は大震災と原発事故がそれに追い打ちをかけて国難の中にあるわけですよ。

 ですから、私は真剣に申し上げたいんですよ。選挙のためでもないし、党利党略でもないんです。私は、首相官邸でそういう怖さをまじまじ感じた者として、今こんなときに増税をするのは、レスター・サローさんじゃないけれども、本当にクレージーなんですよ。増税したらこの二の舞なんですよ。

 総理、財務省しかおられなかったから、財務官僚の言うことばかり聞いたって、経済の実態はわからないんですよ。ぜひそういうところに思いをいたして、冒頭言いましたね、手順が間違っているんですよ、あなたがやっていることは。政策の優先順位が違うんです。我々みんなの党は、増税の前にやるべきことがあるだろうと言っているんですよ。将来、絶対に増税はまかりならぬとは言っていないんですよ。まず、景気が悪いんですから、そこに原発事故と大震災が追い打ちをかけて国難にあるんですから、復旧復興を含めて経済を成長させていきましょう、景気を回復させていきましょう、それが最優先課題じゃありませんかと申し上げているんです。

 そして、額的にはもしかしたら大したことはないかもしれないけれども、国会議員や役人がしっかりと徹底的に身を切る、こういうステップ、プロセスを踏まないと、こういった消費税増税法案は絶対に通りませんから。

 ぜひ、総理、思い直していただきたいんですが、いかがですか。

野田内閣総理大臣 まず、九七年当時の引き上げの状況等々よく御存じでありますので、そういう御経験等は大変御示唆をいただくべきものだというふうに思います。過去のそういう教訓等は踏まえて、私どもも基本的には対応しなければいけないというふうに思うんです。

 過去の教訓でいうならば、この今のグラフを見ていたんですが、やはり税収が順調に上がっていたイザナギ景気を超える最長の景気のころ、このときにやはり一つの決断の時期が私はあったと思います。残念ながらそれがなかった。どんどん先送りをする中で、ではいつまでも延ばせる決断なのかというと、私はそうではないというふうに思います。これは時間との勝負みたいなところもあります。

 今、ユーロの危機のお話もされましたけれども、これは、欧州の信用不安から端を発した問題というのは、やはり財政の問題から端を発したんです。例えばギリシャの問題などは、ごめんなさい、ちょっとだけよろしいでしょうか、これはやはりスポットライトが財政に当たったことから広がった不安じゃありませんか。同じようなことを日本もやはりやってはいけないし、対岸の火事ではこれはないと思うんです。

 そういう目で私はユーロの問題や欧州の問題を考えるべきだと思いますので、もし今回のこの改革をやらなかったら、経済は何よりも成長させることを一生懸命やらなければなりません、だから今回の法文にも名目三%、実質二%をやっているんですが、逆にこの改革をやらなかったときの経済の影響というのは、私は、マイナスの影響、悪影響もあるということは、ちょっとバランスよく見なければいけないのではないでしょうか。

江田(憲)委員 一言だけ申し上げると、そういう先々の危機について目配りすることも必要でしょうが、もっと目の前の危機に対応してくださいということなんです。

 今、総理の口から欧州危機の話が出ました。欧州危機の中心はギリシャですからね。ギリシャ、このグラフ、何だかわかりますか。これはギリシャの名目・実質経済成長率の推移、これはEUの統計局の数字ですから確たるものですが、これをごらんいただければ一目瞭然なんですが、二〇〇六年から成長率が急降下しているんですね、二〇〇六年から、ごらんいただくように。二〇〇六年は名目五・五%成長、実質七・五%成長だったのが、ずうっと急降下していますね。これがギリシャ危機なんですよ。この原因は何だと思われますか。もしわかったら。総理。財務大臣。

安住国務大臣 ちょっと正確にはわかりません。

江田(憲)委員 では、私が解説します。

 ギリシャは二〇〇六年から二〇一〇年にかけて消費税を上げたんですよ。いみじくも、二〇〇六年一八%から二〇一〇年に二三%、五%消費増税をしたら、こういった奈落の底に落ちていったんです。

 ですから、私が申し上げたいことは、今、日本でやればこの二の舞になりますよと申し上げているんですよ。ギリシャを対岸の火事ではないとおっしゃるんなら、教訓はこのギリシャに学ぶべきなんです。ギリシャというのは、御承知のように、公務員天国ですね。国民の四人に一人が公務員だ。給料は民間の二倍だ。年金は現役並みにもらう。政権交代ごとに支援者を役人に登用する。公務員天国を放置して増税をしたら破綻したわけです。

 そしてもう一つ。稼ぐ力がなかった。経済成長戦略がなかった。ギリシャというのは、御承知のように、観光業ぐらいしかないんですよ。マニュファクチュアラー、製造業はGDPの一割にも満たない。EUの平均は二割ですね。稼ぐ力がない。そこに手をつけずに増税をしたら破綻なんです。

 これは、もう一つだけ言いますと、例のリーマン・ショックが起こったのは二〇〇八年ですから、その前からギリシャは奈落の底に落ちていますね。それから、二〇〇九年に政権交代をして粉飾決算がわかった。財政赤字を隠していた。ですから、二〇〇八年、九年の話ですから、二〇〇六年から急降下しているのは、まさに公務員天国を放置したままに増税をしたら破綻という教訓なんですよ。経済成長戦略もろくろく策定せず、稼ぐ力もつけず、増税したら破綻ということなんですね。

 ですから、私は申し上げている。さっき言ったように、日本の過去十数年の歴史の真実、そしてこのギリシャの二の舞にならないようにすべき。国を破綻させたら元も子もないんですよ。財政は目的じゃないんです、手段なんです。経済のためにある、社会保障のためにあるんですよ。国民の生活のためにあるんですから、破綻したら元も子もないから私は警告しているんですよ。今増税をするのは世界じゅうの名立たる経済学者が非常識だと言っているんですよ。

 ですから、まず、本当に政治生命をかけるとおっしゃるんなら、経済成長戦略、九割が効果ないというような自己評価もされたそうですけれども、しっかり経済成長戦略をして経済を成長路線に乗せる、そして我が身を切る改革を徹底的に断行する、それをお願いして、そうじゃないと絶対に増税ができないと申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

中野委員長 時間が参りましたので、これで江田君の質疑は終了をいたします。

 次に、内山晃君。

内山委員 新党きづなの内山晃でございます。

 やっと党名を間違えずに言えるようになりました。受けませんね。

 冒頭、委員長にちょっとお願いをしたいんですけれども。

 私たち、共産党さんと同じでございまして、九名の衆議院議員を擁しております。きょう与えられている時間は、十五分という極めて短い時間でございます。これはどうしても公平とはとても言えないと思いますので、ぜひ公平な差配を委員長にお願い申し上げたいと思います。

中野委員長 今後、理事会等で協議をいたします。

内山委員 それでは、野田総理に質問をさせていただきます。

 総理は、東日本大震災の復旧復興に全力を尽くすと総理就任時に国民に約束をされたと思います。政策に優先順位を決め、それを実行していくのが政治家であると思いますけれども、総理にとって、政策の優先順位をどのようにお考えになっているか、お答えをいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 昨年の九月二日に内閣が発足をいたしました。そのときからずっと、所信表明等でも申し上げているとおり、野田内閣の大きな課題というのは、大震災からの復興、原発事故との戦い、経済の再生、この三本を、基本の大きな重要課題、最優先課題であると申し続けております。

 もう一つ、加えて、震災の前から抱えている課題の中で、大きな改革として、この一体改革を申し上げさせていただいております。

内山委員 国民が求める政策の優先課題は、複数のメディアの調査によりますと、一番は東日本大震災の復旧復興、二番に年金問題、三番に景気、四番に雇用、五番に財政再建という順でありました。

 震災復興と原発事故の解決が最優先で、被災地の方々の普通の生活を取り戻すことが国民の優先する順位であるとの結果が出ておりますけれども、総理、いかがでございましょうか。

野田内閣総理大臣 そういう御希望に沿うべく全力を尽くしておりますし、二十三年度、復旧復興のために、一次から四次までの補正予算をつくっていただき、それを執行させていただいております。そのことが、この後経済のお話もあるかもしれませんが、一―三月期のQEの、復興需要の顕在化によって年率四・一%のGDPにこれは反映していると思います。

 確実に、インフラであるとかあるいは雇用であるとか産業振興等々、被災地に寄り添った政策をスピーディーにやっていきたいと思います。

 ただし、まだまだ行き届いていないとか遅いという御指摘もありますが、復興庁もつくりましたので、スピードアップを心がけていきたいと思います。

内山委員 しかし、国民が求めている優先順位の政策というのは、明らかに、消費増税による社会保障の一体改革ではないわけです。

 震災復興、原発事故対策というのが本当に進んでいるかといったら、被災地の塩竈の方がこう言っていました、政治が見えないと。

 それから、原発事故由来の放射性物質の汚染に関しても、我が千葉県、非常に、やはり食物の放射性物質の汚染であるとか、土壌がそのまま、除染をされていないとか、大変高い、一万ベクレルを超えるようなところが街角そのものにあるんですよ。

 こういったところが遅々として進んでいない中において消費増税に命をかけるというのは、とても私には理解できないわけであります。

 二年先の消費増税、さらには、社会保障の制度で、喫緊に、今何かしなければすぐ破綻をしてしまうような状況にはなっていないわけでありますよ。今、震災復興、原発事故、放射線汚染の対策、デフレ経済の解消、円高対策と、やらなければならない問題が山積していると思います。

 民主党の、例えば民主という字は、民の主と書くわけでありますよね。民が望んでいることの政治をするのが政治なんじゃないんですか。

 社会情勢はどういうふうにとらえられていますか。一千万円以上の負債を抱えて倒産する企業、一月から三月までの累計では一日三十五社ありますよ。自殺者が相変わらず三万人を超えています。この間、生活保護者が二百九万人という数字も出ていました。今でも、消費税が転嫁できずに、身を削って飲食店や商店が払っているんですよ。これをこのまま今の時点で消費増税をすれば、さらに失業者がふえ、中小零細企業は倒産していきますよ。国民生活に多大な影響を与えると私は懸念をしております。

 政府は、消費増税実施後の国民生活はどのようになるのか、どう推測されているのか、お尋ねをしたいと思います。

岡田国務大臣 今、内山委員、いろいろと列挙されました。もちろん、被災地の状況は非常に厳しい、そういった対策を全力を挙げてやらなきゃいけない、それは今総理の言われたとおりであります。

 ただ、今内山委員が列挙されたことを全部やらなければ社会保障・税一体改革をやらないということであれば、それは要するに、先送りをしろと言っているに等しいと私には聞こえます。やはり、次の世代に向けて、しっかりと今やらなきゃいけないこと、それは、増税がうれしい国民はほとんどいないでしょう、しかし、それにしっかり説明をし理解を求めながらやり抜いていくということも私は政治家として大きな責任だ、そういうふうに思っております。

内山委員 先ほどみんなの党の江田さんも言っていましたけれども、学識経験者や銀行、証券会社のシンクタンクの予測というのが出ておりまして、二〇一五年と二〇一一年を比較して家計収支にどのような影響が生じるかの分析結果、実質可処分所得が四・八%以上減少する、そういう試算結果が出ています。それによって消費が減少する。

 消費増税五%の引き上げに家計が耐えられるのかということも出ています。デフレを脱却して、二%程度のインフレ率となり、四%程度の名目成長率になったときに消費増税が可能な状況となるのではなかろうか。家計の消費税負担は、年収三百万で十一万円、年収五百万円で約十七万円、年収一千万円で二十九万円の年間の負担増になるとの試算も出ています。

 家計消費需要を十三兆九千百八十億円減少させる、国内生産額が二十一兆二千六百四十三億円減少、雇用が百十四万九千人減少、税収は、十兆円余り税収が伸びるけれども、国、地方合わせて二兆一千六百六十億円減少する、こういう数値も出ています。

 こういった数字、消費増税を行ったときに、どう総理は責任をとりますか。

野田内閣総理大臣 先ほどの江田さんの御意見と近いと思うんです。さっきギリシャの話をされていました。食いぶちもつくらないで増税したからだめになった。そのとおりだと思うんです。だから、今、国際社会の共通課題は、成長と財政再建の両立なんです。成長をやらないで緊縮だけやろうなんてことは全く思っていませんし、これまでもやってまいりました。

 これは、政権交代した直後、四四半期プラス成長になったということをこの間も申し上げました。今も足元は、これはまだ油断はできませんよ。だけれども、きっちりと復興需要を取り込んでいく足取りに今なってきている。こういうものを加速して、きちっと成長は促していくということが前提です。

 その上で、消費税を上げたときのマイナスの影響だけをお話しされています。これは、私は、公平な議論ではないと思います。上げることによって、負担に注目をしてそういう見方をする識者もいます。

 でも、逆に、何もやらなかったことのリスクを語る識者もいます。これがむしろ国際社会では共通している認識じゃないでしょうか、成長と財政再建をやるんだと。

 財政再建はやらないんだというメッセージが出たら、そのときに金利が一%上がったときのリスクは、これは政府のリスクだけじゃないです。利払いだけではなくて、企業の資金調達等々を含めて、企業にももろに影響します、経済に影響します。そういうことはバランスよく考えていただきたいというふうに思います。

内山委員 どちらに振れるか、出たとこ勝負ではだめなんですよ。そういう悪い結果が出るという私が言っていることは、これはあり得ないとでもおっしゃるんですか。

 野田さん、こういうことを言ったじゃないですか。景気の回復局面にあったときに、言ってみれば風邪から治りかけてきたときに冷たい水を浴びせて肺炎になってしまって、その後の日本経済はえらい目に遭ったという教訓がある。これは野田さんの言葉ですよね。二〇〇四年十月、財務金融委員会、野田発言です。

 これは、自公政権の、定率減税を廃止して、九七年、消費増税など九兆円負担についての教訓発言じゃないですか。

 今まさに、あなたはこれをやろうとしているんじゃないんですか。お尋ねします。

野田内閣総理大臣 午前中の質問を聞いていただいたらと、それは答えたんですが、風邪を引いたときにはやらないということです。それが教訓です。だから経済をよくするために全力を尽くすということです。

内山委員 では、二〇一四年には風邪を引いているんですか。

野田内閣総理大臣 風邪を引かないように経済の好転を図っていく、全力を尽くしていく。だから、名目成長率三パー、実質二パー、こういう政策目標を掲げているんであります。

内山委員 では、そういう状況の数値になっていなければ消費増税は行わないということですか。

岡田国務大臣 これは総合判断なんです。ですから、条件にはしておりません。しかし、全体の状況を見て、まさしくそれはそのときのリーダーの本当に重要な政治判断、総合的に判断して、最終的に決めるということだと思います。

 それから、先ほど橋本政権のことを言われましたけれども、先ほど江田さんの話も出てまいりましたが、私は、あのとき、最大の問題は、やはり不良債権の存在というもののその深刻さに気がつかなかったことだ、それが後からどんどん出てきて、そして厳しいことになった、そこにあるんだというふうに考えております。

内山委員 この税と社会保障の一体改革、聞くところによりますと、何か百時間程度で審議を終わらせてしまうんだなんということも漏れ伝わっていますけれども、本当かうそかわかりませんが、この七本の法案というのは非常に重要な、重たい法案だと思っています。一つ一つとってもこれは十分な審議時間が必要ではなかろうかと思うんですが、私の今残された時間では、もうあと数分でありますので、とても年金の細かな質疑には入れません。問題点だけ申し上げて、時間の範囲で、お答えができるところがありましたらお答えをいただきたいと思います。

 年金二法についてだけでも大変なボリュームがございます。年金機能強化法案について、年金受給資格の短縮は、以前から私、十年、日本の二十五年はアメリカのような十年にすべきではなかろうかと質疑もしたことがあります。しかし、今回の法律改正の中に、二十五年未満、十年以上二十五年未満の人をなぜ救うのか。私が質疑をしたときに、特例納付をして、みずから納めた者に対して救うべきだ、こういうことを申し上げておりましたけれども、なぜこれを、十年以上を全部救うことになったのか、大臣にお尋ねをしたいと思います。

中野委員長 小宮山厚生労働大臣、端的にお願いします。

小宮山国務大臣 はい。

 納付した保険料に応じた給付を行うべきだという意識の高まりに応じまして、また、無年金者を救済するという趣旨から今回行うものでございます。

 現在の年金制度でも、受給期間を満たしていない人が任意加入できたり、高齢任意加入ができる。また、昨年八月に成立した年金確保支援法では、二年から十年に納付可能な期間を延長したり、こういうことをしています。それでも、やはり十年より前の未納期間が長い人などはその受給資格期間を満たすことができない。

 そういう中で、特別に過去の全ての未納期間の保険料を納付できるような仕組み、これを導入しますと、今度は、高所得者とか資産家だけが得をするとか、これまで一度も保険料を納めたことのない人を含めて、不公平感を与えかねない。

 こうしたことなどから、今回、三回にわたっても、このような制度は今回限りにすべきということがあったことなどを含めまして、今、二十五年を十年にする、こういう考え方に至ったところです。

内山委員 特例納付をすることによって国の負担が幾ら軽減できるんでしょう。やはり、まずやることを先にやらなきゃだめじゃないですか。今まで二十五年に一カ月も足らなかった人たちが年金受給をできなかったわけですよ。それが、十年以上納めていれば全て年金を払うなんということ自体がモラルハザードなんですよ。これは非常におかしいですよ。

 財源がないから、野田さん、消費税を上げるんでしょう。その仕組みによって今まで払っていない人に払うということは、新たな財源の手当てが必要なわけじゃないですか。そういうことをやらずして、何か方向が違うんだよ、はっきり言って。

 この中において、非常に不可解なものはたくさんあるんですよ。短い時間じゃとても聞けない。だから、こういう重要な法案を税と一体で議論すること自体大きな問題がある、私はこう思います。

 時間がありませんので、これで。次に聞きたいと思います。

 終わります。

中野委員長 これにて内山君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

中野委員長 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に西博義君を指名いたします。

 次回は、明二十三日水曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十五分散会


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