衆議院

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第1号 平成26年6月2日(月曜日)

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平成二十六年六月二日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

  安全保障委員会

   委員長 江渡 聡徳君

   理事 今津  寛君 理事 左藤  章君

   理事 薗浦健太郎君 理事 武藤 容治君

   理事 長島 昭久君 理事 中丸  啓君

   理事 遠山 清彦君

      岩屋  毅君    大野敬太郎君

      勝沼 栄明君    門山 宏哲君

      木原  稔君    笹川 博義君

      東郷 哲也君    中谷 真一君

      野中  厚君    浜田 靖一君

      武藤 貴也君    若宮 健嗣君

      中川 正春君    渡辺  周君

      今村 洋史君    桜内 文城君

      伊佐 進一君    三谷 英弘君

      赤嶺 政賢君    玉城デニー君

      照屋 寛徳君

  外務委員会

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺  周君

   理事 小熊 慎司君

      あべ 俊子君    石原 宏高君

      河井 克行君    木原 誠二君

      黄川田仁志君    小林 鷹之君

      河野 太郎君    島田 佳和君

      渡海紀三朗君    東郷 哲也君

      星野 剛士君    武藤 貴也君

      小川 淳也君    玄葉光一郎君

      若井 康彦君    阪口 直人君

      村上 政俊君    岡本 三成君

      青柳陽一郎君    椎名  毅君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   防衛大臣         小野寺五典君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   防衛大臣政務官      木原  稔君

   防衛大臣政務官      若宮 健嗣君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山崎 和之君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  武藤 義哉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題対策本部事務局総務・拉致被害者等支援室長)       今長 岳志君

   政府参考人

   (内閣法制次長)

   (内閣法制局第一部長事務取扱)          近藤 正春君

   政府参考人

   (内閣府国際平和協力本部事務局長)        高橋礼一郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 広瀬 行成君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 森  健良君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大菅 岳史君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            上村  司君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   石井 正文君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        住田 孝之君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  中島 明彦君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  伊藤 盛夫君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  山内 正和君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

   安全保障委員会専門員   齋藤久爾之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――

江渡委員長 これより安全保障委員会外務委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今津寛君。

今津委員 自民党の今津寛です。

 きょうの朝、大変すばらしいニュースが私たちのもとに飛び込んでまいりました。PGAで松山選手が見事優勝した、プレーオフを制したということでありまして、何かこう、朝から晴れ晴れとした気持ちでこの委員会に出席をしているところであります。

 外務大臣、防衛大臣、とにかく御苦労さまでございます。御両人につきましては、日ごろそばで拝見をさせていただいていても、全く公務が超多忙な上に、連日連日、本会議、委員会、国会日程が続いておりまして、よくお体がもつなということを感じております。

 特に防衛大臣は、シンガポールへ行って安全保障会議に日夜努力をされてきた、国益をかけていろいろと頑張ってこられた直後のこの委員会への出席でありまして、本当に御苦労さまと申し上げながら、質問させていただきたいと思います。

 日米韓防衛大臣会議でありますが、ミサイル防衛に関しては、情報共有の枠組みづくりを進める方針で一致をしたと。これは、北朝鮮の核開発に対して大変大きな抑止になっていくというふうに思います。

 しかし、報道によりますと、GSOMIA、軍事情報包括保護協定、これを大臣が韓国の方に御提案いたしましたが、韓国の方では、必要性は認めながらも同意を得られなかったというふうに報道で見ました。これは大変残念なことだというふうに思います。

 GSOMIAについては、過去、調印直前に延期になったということがあったものですから、今度こそはと思っておりました。特に、アメリカの仲介もあって、日本と韓国がやはり中国や北朝鮮の急激な海洋進出あるいは核開発に一致して臨まなきゃいけないときに、なかなかその後の問題が進まない。しかも、二〇一二年のあの四月の経験がありますから、何としても情報をこの三国で共有するということは大切なことだというふうに思います。

 また、防衛省としては、日米韓以外に、懸案の日韓の防衛会議というものはどうなんでしょうか、開催するように努力をしたのでしょうか、したけれどもできなかったのでしょうか、そういう時間が全くとれなかったのでしょうか。

 それから、あわせて、これも一部報道に懸念をされておりますが、我々にとっては大ニュースでありました、拉致問題の再調査をするということになりまして、しかし、このことが韓国の、いわゆる北朝鮮に対する支援に対して若干懸念材料になったのかなというような報道が一部あったものですから気になっておりまして、そこら辺をあわせて御質問させていただきたいと思います。

小野寺国務大臣 まず、松山英樹選手のニュース、今初めて伺いました。私が教鞭をとっておりました大学をことし三月に卒業した卒業生であります。今後とも活躍を委員とともに期待したいと思っております。

 さて、今お話ありました、シャングリラ・ダイアログにおきましての日米韓の三カ国の協議におきまして、この会議にはアメリカ側からはデンプシー統参議長も来ておりまして、特に北朝鮮のミサイル問題について、やはり日米韓の情報共有が重要だということ、これは実は三カ国で一致をしたことであります。

 ただ、日韓のGSOMIAにつきましては、やはりまだ環境が整っていないということだと思いますが、韓国側からまだ明確なお話がありませんでした。

 ただ、三カ国では、この北朝鮮のミサイル、核に対応するための情報共有の重要性は再認識をして、本件は引き続き検討が必要であるということについては共通の認識を持ちました。

 また、日韓につきましては、実は日本側からは日韓の会談を申し込んでおりましたが、金寛鎮国防相は、実は、韓国の旅客船の事故の対応に追われているということで、到着されたのも初日の深夜で、翌日の午後にはもう帰国されておりましたので、なかなか時間がとれないという内容だったというふうに私は説明を受けております。

 引き続き、日韓のこともしっかり対応していきたいと思っております。

今津委員 時間がとれなかったということであります。引き続き、最大限の御努力をお願い申し上げたいと思います。(小野寺国務大臣「拉致問題について一言、済みません」と呼ぶ)

江渡委員長 では、小野寺防衛大臣。

小野寺国務大臣 失礼しました。

 拉致問題につきましては、日本も前から、拉致、核、ミサイル、この全ての完全な解決が重要だというスタンス、これには変わりはありませんということで説明をさせていただきました。

今津委員 集団的自衛権について、率直にお伺いをいたします。これは外務大臣にお聞きをしたらいいと思うんですけれども。

 私は時々この委員会でも質問させていただいているんですが、そもそも、集団的自衛権と個別的自衛権を、国家によってその解釈というものを変えているというか区別をしている国というのは、日本は今そうですよね、集団的自衛権、個別的自衛権の議論をしているんですよね、他の国に例があるのかということ。

 あわせて、日本のように、集団的自衛権は持ってはいるけれども行使できない、こういうふうに捉えている国は他にあるのか。

 それから、九条は本当に我々日本国民の平和憲法の象徴だというふうに思いますが、私は、平和を願う、そういう考え方というものを憲法に記している、うたっている国は、日本国だけではなくて他の国にもたくさんあるというふうに思うのでありますが、簡単に、岸田外務大臣、御説明いただければと思います。

岸田国務大臣 まず、個別的自衛権と集団的自衛権。これは、論理上は自国に対する攻撃があるかないかという明確な線引きがありますので、この点につきましては明確に区別されているものであります。

 他方、これを厳密に区分して、そして制限をしている、こういった国があるかどうかという御質問につきましては、我が国としまして網羅的に把握しているものではありませんが、例えば、永世中立国であるスイスやオーストリア、これは、集団的自衛権を行使することはそもそも想定していない、こういった国であるというふうに承知をしていますし、また、コスタリカ、これは、集団的自衛権の行使を妨げる法的根拠は存在いたしませんが、そもそも軍隊を保持しておらず、集団的自衛権の行使を想定していない国、こういった国であると認識をしております。

 それから、憲法上、戦争放棄等の規定を持っている国があるかどうかということですが、これにつきましては、例えば、ドイツ連邦共和国基本法、これは、侵略戦争の遂行を準備する行為を違憲としています。また、イタリア共和国憲法、これは、他国民の自由を侵害する手段または国際紛争を解決する方法としての戦争の放棄を規定する一方、祖国防衛及び兵役を国民の義務と位置づけている、こうした憲法の構成をとっているということを承知しております。

今津委員 ありがとうございました。

 時間の関係で、これについての議論をやめたいと思いますが、まことに希有であるということは間違いありませんよね。日本のように、集団的自衛権が行使できるのかできないのか、個別的自衛権と区別をしてそういう議論をしているという国はまことに希有だということは、やはり認識をしながらこの議論をしていかなきゃならぬということ、これは大事なことだと私は思っております。

 日本は戦争に負けた。そして、GHQによって憲法を、我々がみずからつくったのではなくて押しつけられたその憲法は、不戦を誓い、そして戦力を持たないという憲法でありました。そのおかげで、戦後七十年間、経済的な非常に大きな発展をしましたが、しかし同時に、アジアの周辺の安全保障関係の環境も非常に大きく変わり、経済大国になったゆえに、国際的に果たすべき役割もあったし、私は加えて、日本国も国際正義、あるいはそれに対して相応の責任を持たなければならないということが間違いなくあるんだろうというふうに思っているわけであります。

 その中で、今議論をされている限定容認論であります。

 総理も、自分の家族を守るために今こういう議論をしているんだというふうに思いますが、私は、できるだけ自衛隊の手足は縛るべきではないという考え方です。できるだけ手足を縛らないでおいて、そのとき、事態事態によって的確に政治が判断をして、自衛権を行使するか行使しないかというようなことを判断するべきだと思うんです。

 だって、地球の裏側まで行かないといったって、家族、私は、私の家内やら子供を守るためには、地球の裏側にだってどこだって行きますよ。国家だってそういうものではないでしょうか。国民を守るという前提に立てば、これはどんなことでも妨げるものもないというふうに私は思いまして、限定的容認論、これを総理はとられたわけですね。

 安保法制懇のお考えの中には、九条の規定は、我が国が当事国である国際紛争の解決のために武力による威嚇または武力の行使を行うことを禁止したものと解すべきであり、自衛のための武力の行使は禁じられていないと解するべきであると。

 個別的か集団的かに言及せずこういうことを言っておるのですが、総理は、この考え方をとらないで、いわゆる限定容認論、一九五九年の砂川事件の最高裁判決をもとにしてお考えをお示しになりましたが、このことについて、外務大臣の御意見、それから防衛大臣の御意見を率直にお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 今回の安保法制懇の報告書の中においては、大きく二つの考え方が示されました。

 その一つは、個別的か集団的かを問わず、自衛のための武力の行使は禁じられていない、また、国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上合法な活動には憲法上の制約はないという考え方が一つでありました。

 いわゆる芦田修正に基づいた考え方でありますが、この考え方につきましては、これまでの政府の憲法解釈、すなわち、自衛のための必要最小限度の武力の行使や実力の保持までは禁じられていないとするこれまでの政府解釈とは論理的に整合しない、そのため、政府としては採用できない、こういった判断をした次第です。

 そして、この報告書のもう一つの考え方、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるという限定的な場合に集団的自衛権を行使することは、従来の政府憲法解釈に言う必要最小限度の中に含まれるという考え方、この考え方につきましては、従来の政府の基本的な立場を踏まえた考え方ということで、今後この研究を進めていこう、こういった判断をした次第であります。

 要は、この違いは、憲法解釈において論理的整合性あるいは法的安定性、こういったものを重視した上でこのような判断をしたということであります。

今津委員 ということは、総理がおっしゃっていることと同じだと思うんですが、いわゆる今の憲法解釈の上で必要最小限度、どれができるかというと、この考え方になるということですね。そして、これ以上のことをしようとするならば憲法改正の手続がという道を進むということになるのでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のように、従来の政府の考え方、必要最小限度という考え方の中に、限定的な場合における集団的自衛権の行使が含まれるかどうか、これについて研究をするということであります。

 ですから、従来の憲法解釈との論理的整合性あるいは法的安定性を重視した上でこういった判断をするということであります。これは、従来の政府の憲法の解釈の範囲内でこういったことが考えられるかどうかという考え方だと認識をしています。

今津委員 集団安全保障、PKOの関係なんですが、総理は、イラクや湾岸戦争に参加することはない、こう言っておるんですね。

 湾岸戦争のことをもう一度思い出していただきたいんですが、お金を出したけれども、クウェートのお礼の新聞の中には日本という国が出ていなかった。それでPKO法案をつくって、カンボジアを初め国際貢献を自衛隊の方々にお願いして、今日まで来ているわけですね。

 そこで、湾岸戦争には行けないんだということになると、今の議論は全く通用しない議論をしているんじゃないかなということを私は思わざるを得ませんよ。また湾岸戦争みたいなことが起きて、国際正義に向けて各国がお互いの役割を果たしていく、最悪、後方支援もできないということになれば、これは、日本というのはまた特異な国になってきませんか。

 長島先生が与党のときに私たちも呼びかけられて、PKO五原則を初め、やはり現実的でないので見直していこうという呼びかけがあって、いろいろと勉強会をやったんです。そのころ僕らは野党だったんです。だけれども、結局できなかったのは、法制局のいわゆる壁があって、長島さんもじだんだを踏んで、僕らも悔しい思いをしたんです。

 今ようやく、安倍政権ができて、国民の皆さん方に向かって、真正面から国民の皆さん方に、自分はこういう考え方なんだ、今まで日本の国はこういう考え方で推移をしてきたけれども、今は日本国民を守るという意味でこういう考え方なんだということを提起し、そして、まず与党で考え方を固めて、そして国民の皆さん方と御相談を申し上げたいという今の姿勢は、私は非常に期待をできるものだというふうに思います。

 今申し上げたとおり、私個人も政治家としてのいろいろな意見はありますが、ここはしかし、この一大事に当たって、やはりやっていくということが大事なので、それは自分の言うことが一〇〇%通るものではありません、立場というものもあります。支持する方々の御意見というものもあります。しかしこれは、やはり国際社会の中において名誉ある地位を占める日本国をつくるという意味では、それを乗り越えて一致団結する、そして国民の皆さん方の御協力をお願いするということに団結するべきだということ。

 そして、ガイドラインの年内の再改定の時期が刻々と近づいてきていますから、どうかどうかこの議論を、御苦労をかけますけれども早くお決めになっていただきたいということを、そして閣議決定に持っていっていただきたいとお願いをして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

江渡委員長 次に、原田義昭君。

原田(義)委員 自由民主党の原田義昭でございます。

 きょうの連合審査会、両大臣、まことに御苦労さまでございます。

 シンガポール・シャングリラ会議、本当に、報道でしっかりまた見せていただいておりますけれども、御活躍に心から敬意を申し上げます。一言、防衛大臣、その報告をお願いできればと思っております。

小野寺国務大臣 先週金曜日の夜から、シンガポールにおきましてシャングリラ・ダイアログがございまして、安倍総理が初めて、基調演説という形で日本の考え方そして東アジアを含めた防衛当局間の安全保障に関する考え方の方向性を示されたと思っております。

 私どもとしましては、力による一方的な現状の変更はあってはならない、国際法に基づき平和裏に、対話によって全ての問題を解決していく、この姿勢が大切だということを繰り返し、総理も、そして私どもも声を上げて、この会議で日本の立場として発言をさせていただきました。

原田(義)委員 最近の中国の動きは、きょうはG7でも議論されたようでありますけれども、非常に国際社会に懸念を与えておるところであります。これら中国の動きは、中国の軍事費、軍事予算の拡大の動きと無関係ではない、むしろ大いに関係ある。軍事費と軍事的行動は当然連動しておりまして、お互い共鳴し合っております。これはもう歴史の示すところでありますが、中国のいわゆる軍事費の動き、それに対する評価、特徴をお聞きしたいと思っております。

岸田国務大臣 中国の国防費についてですが、三月の五日、中国政府は全国人民代表大会、全人代の財政報告の中で、中国の二〇一四年の国防予算額、前年執行額比一二・二%増の約八千八十二・三億元、日本円に換算いたしますと十二・九兆円になる、こうした発表をしております。

 中国の国防予算、二〇一〇年を除いて二十六年間連続で前年執行額比二桁台の伸びになったことに留意をしておりますし、我が国としましては、今後の状況を注視しているところです。

 こうした国防費を含めた中国の国防政策や軍事力については、一層透明性を高めていくことが望まれています。このことは、中国の海洋活動の活発化とあわせて、国際社会の懸念事項であると受けとめております。

 ぜひ、我が国としましても、今後とも、関係各国としっかり連携をしながら、対話あるいは交流を通じて、国防政策の透明性の向上あるいは国際法等の行動規範の遵守、こういったものをしっかりと中国に働きかけていかなければならないと認識をしております。

原田(義)委員 今、南シナ海また我が東シナ海でも、個別の紛争という形でありますけれども、これらの諸国に非常に強い危機感、不安感を与えているわけでございます。

 つらつら考えますに、大体、何か起これば、もちろんその都度、外交的、場合によっては軍事的な対応をするわけでありますけれども、それだけでは中国の攻勢はとどまることはないと私は心配しております。今後、ますますこの行動は激しさを増す、エスカレートするのではないかというように感じまして、この動き、中国の軍事大国化は周辺諸国、東アジア、アジア全体に不安と脅威を与え続けているのではないかと思っております。

 さて、私はお聞きしたいんですけれども、外務大臣は今、安倍外交、岸田外交の柱として、積極的平和主義というのを掲げておられますけれども、これの意味について問いたいと思います。

岸田国務大臣 積極的平和主義の意味ですが、我が国を取り巻く安全保障環境は近年ますます厳しさを増していると認識をしています。あわせて、宇宙ですとかサイバーですとか、国境を容易に越えてくる新しい脅威、これも現実のものとなってきました。

 こうした環境の中で、どの国も、みずからの国一国のみでみずからの平和や繁栄を守ることができない、これは我が国のみならず国際社会の共通認識となりつつある、こうした現状があります。

 こういった中にあって、我が国としまして、ぜひ国際社会と連携しながらより平和と繁栄に貢献していかなければならない、こういった考え方に基づいて、国際協調主義に基づく積極的平和主義、こういった考え方を今示させていただいております。

 ぜひ、こうした認識に立って、今まで以上に国際社会の平和と繁栄にしっかりと貢献していきたいと考えている次第です。

原田(義)委員 平和というのは待っていても実現されません。今ほど大臣から、積極的な協調主義と言われましたけれども、私は、この積極的という言葉の中に、もう一歩進んで、日本として、日本外交として積極的に諸外国に働きかけるということが大事ではないかな、こう思います。

 諸外国は、中国の動きに、先ほど言いましたように、心配、懸念、危機感を大変抱いておるところでありますけれども、ただ、周辺諸国は、中国に多少遠慮してなかなかそのことを明確に言わない、ぼかす傾向にあります。これは私は、日本もそういう部分があるのではないかと思います。

 しかし、アメリカは、オバマ大統領も中国を名指しで非難してきておりますし、安倍総理も、五月六日のEU訪問においては、中国の軍事予算の脅威について明白に発言をしたというふうにも理解しておりますし、今回のシンガポールでも、ヘーゲル米国防長官も、名指しといいますか、シングルアウトしてしっかりと非難しました。

 この国、中国は、間接的また抽象的な表現ではなかなか耳を傾けない、そういう部分がありますので、私は、この際、積極的にやるというのは、決して遠慮することなく言うべきことをしっかり言うということをお願いしたい、こう思っています。

 ここで、話題は、軍縮という言葉をちょっと私はきょう思い出しました。最近余り軍縮という言葉は聞きませんし、先ほど外務大臣は、中国の軍事予算に透明化は求めるというようなお話がありましたけれども、今、軍縮といえば、ジュネーブ軍縮会議というのがありますが、ジュネーブの軍縮会議やら、また、国連総会第一委員会というのがどうもそういう分野の多国間の議論をしておるようでございますから、この二つの組織でどういう活動をしておるかをお聞きしたいと思っております。

広瀬政府参考人 お答えいたします。

 軍縮の分野におきましては、先生今御指摘になりましたジュネーブの軍縮会議、それから国連総会第一委員会など、国際的な枠組みにおきまして、策定されたルールを実効的なものにしたり、新たなルールを策定するための議論が行われております。

 最近具体的に日本から申し上げたことは、例えば、昨年十月の国連総会の第一委員会におきまして、我が国は、中国を含む核兵器保有国に対しまして、透明性の向上のほか、多国間による誠実な軍縮努力や核兵器の役割の低減などを求める発言を行ったりしているところでございます。

 また、第一委員会におきましては、一九九四年以来、日本が毎年提出しております核軍縮決議、それから、九五年以降ほぼ毎年出しております小型武器に関する決議を提出し、採択されているところでございます。

 以上でございます。

原田(義)委員 ジュネーブの軍縮会議というのは、核軍縮を中心にということを言っておりますけれども、これは通常兵器についても議論されるんでしょうか。

広瀬政府参考人 ジュネーブの軍縮会議におきましては、核軍縮、それから通常兵器も含めまして、軍縮問題について議論が行われているということを承知しております。

原田(義)委員 国連総会の第一委員会では、各国の軍事予算の削減、その透明化について、既に各国の義務として決議が行われているというふうにも聞いております。事務方に聞いてみますと、中国はこの決議をなかなか守らないということもございますけれども、しかるべき組織、会議で決めたこと、また、こういう場で、アジア諸国を代表してでも日本が問題を提起するというぐらいのことが必要ではないか、私はこう思っております。

 また、この軍縮、広く、規模の問題、透明化の問題については、中国に直接その旨を伝えるべきではないか、これはちょっと、そういうふうに考えておるわけであります。こちらの意図を伝えるには、二国間での申し入れが何より効果的であります。日本人は、直接物を言う、つらいことを面と向かって言うというのは余り得意じゃありませんけれども、しかし、それが平和をつくるために必要不可欠な、そういうことであれば、蛮勇を振るってでもそのことを主張すべきだ、それこそ、日本のとるべき積極的平和主義を実践するということの中身ではないかな、こういうふうに思うわけでございます。

 G7も、今回名指しで中国を非難しというのは、きょうは産経新聞にも載っていましたけれども、名指しでというのは相手方に失礼という部分もありますけれども、やはり国際社会で、中国の動向、この辺についてはしっかりまた反省を強いるということが大切ではないかな、こう思っております。

 二国間でやったということにつきまして、ちょっと横道にそれますけれども、私は、平成十八年四月二十五日に単独で中国を訪問しました。私自身、外務委員長のときだったんですけれども、時はどういうときかというと、小泉内閣で靖国問題が大分問題になっていまして、諸外国からいろいろ議論がありました。とりわけ中国から、個人的な批判も含めて、小泉さんがちりあくたのように言われていたのも事実でありますし、ちょうど呉儀さんという女性の副首相が会う約束をドタキャンした、こういうようなことがあったものですから、私は、外務委員長としてさすがに何とかしなきゃいけない、こういう観点からこの国に臨んだところであります。

 私は、路甬祥全人代の副議長、姜恩柱全人代の外交委員長、武大偉外交部副大臣、副部長、この三方にお会いしまして、当然、中国の姿勢やら言動を厳しくとがめたわけです。私も外務委員長をしていたものですから、やはりいささか、日本の立場をしっかり言わないかぬと。

 厳しくとがめましたけれども、それに先立って、私は、三人にこういうことを申し上げました。日本人というのは、大人から子供まで、中国の古典である論語、孟子、老子、こういうものをしっかり勉強して、そして今では日本人の道徳観、倫理観、礼節とか親子関係とか、こういうのは基本的にみんなこの古典を勉強した結果なんだ、それに対して今の中国はどうなっているんだと。九州弁では、どげんなっとるとということでありますけれども、そういうことを言いましたよ。約束は守らない、強者の論理を振り回す、自分の権利のみを主張する、あの論語の孔子先生の精神はどこに行ったのかということを私は申し上げましたよ。武大偉さんは親日派であるし、日本側、私の友人でもあったものですから、苦笑いをしておられました。

 実は、この会のアレンジは、当時の王毅駐日大使、ほかならぬ今の王毅外務大臣が本当に御苦労の中でやっていただいたわけでありまして、私は、帰国してから小泉総理にこのことを報告に行きました。そうしたら、小泉さんが別れ際に、おまえ、よく無事で帰ってきたな、こう言われたんですけれども、私は、日本の主義、主張、これは、あらゆる手段を使ってでも、国益になるもの、また世界の平和になるものなら、やはり努力すべきである、それこそが、内閣また外務大臣が唱えられる積極的平和主義の実践ではないか、こういうふうに思うものですから、大変横道でありますけれども、あえてこのことをお話しさせていただいたところであります。

 くだんの集団的自衛権の問題、これは今、本当に大事なところに来ておるところでございますけれども、私も当然、与党議員の一人として、その大事さを国民の皆さんにしっかり訴えて、ぜひともその方向で一日も早く決めていただければありがたいな、こう思っています。

 たまさか、先週の日曜日に地元で集会を開きました。七、八十人の方々が熱心に聞き取っていただき、また同時に、皆さん方の声、不安な声もお聞きしたところでありますけれども、確かに、言われておりますように、なかなか国民のコンセンサスが得られないというか、そこのところは、やはり、政府の側ないしは党の側の説明がまだまだ十分でないということを感じましたが、いずれにいたしましても、それを乗り越えて、立派なこれからの考えを決めていただきたいな、こう思っております。

 たくさんお話ししたいこともございますけれども、時間が参りましたので、私の質問を終わります。

 本当にありがとうございました。

江渡委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 おはようございます。公明党の伊佐進一でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。早速質問に入らせていただきたいと思います。

 集団的自衛権につきまして、今回総理は、改憲のことで二点おっしゃいました。

 まず一点目は、芦田修正論、これは今回はとらないと。なぜならば、芦田修正の考え方というのはこれまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合しないということをおっしゃいました。

 一方で、もう一点、限定的に集団的自衛権を行使すると。これは、さらに研究を進めていきたいというふうにおっしゃいました。いわゆるこの限定容認論というのは、総理いわく、従来の政府の基本的な立場を踏まえた考え方だからだということをおっしゃいました。

 本日質問させていただきたいのは、この限定容認論を採用した場合に、政府のおっしゃる従来のこの政府の基本的立場にどれほど沿うことができるのか、限定容認論であれば、多少の変更で対応できるものなのかどうかという点について議論させていただきたいと思います。

 まず、安保法制懇の報告書、これで集団的自衛権について、二つ目の限定容認論についてどう書かれているか。念のため、配られた資料の一番上に参考で載せさせていただきました。必要最小限度の中に集団的自衛権の行使も含まれるというふうに解釈をして、集団的自衛権の行使を認めるべきであるというふうに書かれております。

 こう書かれますと、もしかすると、単に、自衛権発動の三要件、三つ目の必要最小限度の範囲、この中で、このままここを変更せずに集団的自衛権というのも読み込んだらどうか、入れ込んだらどうか、こういうふうに思われる方もいらっしゃるかもしれませんので、少し確認をさせていただきたいと思います。

 まず、自衛権発動の三要件。一つ目の、急迫不正の侵害。二つ目の、ほかに適当な手段がない。そして三つ目の要件の、必要最小限度。この一つ目、二つ目と、三つ目の要件というのは、そもそも質的に異なると思っておりますが、法制局、いかがでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 いわゆる自衛権発動の三要件の第一要件、第二要件と第三要件の関係でございますけれども、御指摘のように、第一要件及び第二要件は、いわばどのような場合に自衛権を発動して武力の行使をすることができるかということについての要件でございますし、第三要件は、その行使する武力の程度あるいは態様等についての要件であるというふうに理解しております。

伊佐委員 ありがとうございます。

 今の御説明のとおり、三つ目、つまり第三要件、必要最小限度というのは、行使することになった後の話なんです。行使することができるようになった後の段階でどれぐらいの程度まで行使できるのかという、行使の限界について書かれたのが第三要件だと。つまり、集団的自衛権が行使できる、できないというその理由は、必要最小限度の中に入っていないからという話じゃない、第三要件の話じゃない。

 では、何が一体問題なのかというと、ここをはっきりと示している国会答弁があります。それは、平成十六年の一月、予算委員会で安倍総理が、当時幹事長だった時代に、同じ質問をしています。必要最小限度の範囲、その範囲の中に入る集団的自衛権というものを考えたらどうかという質問があります。つまり、必要最小限度の中に入る集団的自衛権もあるんじゃないかという質問ですが、それに対して当時法制局がどう答えたかについて、もう一度御紹介いただければと思います。

近藤政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねは、平成十六年一月二十六日の衆議院予算委員会における当時の安倍議員と秋山内閣法制局長官の質疑の中での長官の答弁ということでございますけれども、次のように答弁をしております。

  お尋ねの集団的自衛権と申しますのは、先ほど述べましたように、我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず外国のために実力を行使するものでありまして、ただいま申し上げました自衛権行使の第一要件、すなわち、我が国に対する武力攻撃が発生したことを満たしていないものでございます。

  したがいまして、従来、集団的自衛権について、自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものという説明をしている局面がございますが、それはこの第一要件を満たしていないという趣旨で申し上げているものでございまして、お尋ねのような意味で、数量的な概念として申し上げているものではございません。

以上でございます。

伊佐委員 ありがとうございます。

 集団的自衛権が行使できないのは、必要最小限度という中に入っているかどうかという、この話というのは、そもそも、第一要件を満たしていないからだということだと思います。つまり、急迫不正の侵害、我が国に対する侵害じゃないといけない、だから行使できないんだと。つまり、この入り口のところで振り落とされてしまっている。

 つまり、そういう意味では、集団的自衛権は、限定であれ、あるいは全面的に容認するのであれ、必要最小限度という行使の限界の話の前に、そもそも第一要件というものを変えていく必要があるということです。

 つまり、私が申し上げたいのは、総理が、限定容認論であれば従来の基本的な考え方を踏まえることができるということをおっしゃいました。しかし、実のところは、一番のこの基本的な、自衛権発動の三要件、ここすら変更しないと、そもそも限定といえども許容されないということだと思いますが、その認識で正しいでしょうか。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 五月十五日の記者会見で総理から、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるという限定的な場合に集団的自衛権を行使することは許されるという安保法制懇の報告書にある考え方について、さらに研究するように指示が出されたところでございます。これは、我が国の平和と安全を維持し、自国の存立を全うするために必要最小限度の武力の行使は許されるという従来の政府の基本的な立場を踏まえた考え方でございます。

 いずれにいたしましても、現在、与党協議が進められているところでございまして、その結果に基づき、御指摘のいわゆる自衛権発動の三要件を含め、政府としての対応を検討し、憲法解釈の変更が必要と判断されれば、閣議決定を行うこととなると考えております。

伊佐委員 ちょっと少しかみ合っていないと思うんですが、私が申し上げたかったのは、総理は、芦田修正論というのはこれまでの政府の憲法解釈とは合わないというような発言、また同時に、しかし、限定容認論については、基本的な立場は変更しない、従来の立場を踏まえることができると。実はそこのところも、これまでの解釈とは限定容認論もそもそも基本的なところを変えなければ整合をとれないんだということを申し上げたいと思います。

 少し前後しますが、先に防衛大臣に質問させていただきたいと思います。歯どめについての議論をさせていただきたいと思います。

 集団的自衛権の議論の中でこれを認める、たとえ一部を認めたとしても、恐らく国民の皆様が一番心配されていることは何かというと、きちんと歯どめがかかるかどうかということだと思います。この歯どめをきちっとかけることができるかどうか、これが集団的自衛権の議論の中で主要なポイントの一つだと私は思います。限定的と言ったとしても、この限定がどんどんどんどん膨らんで膨張していくようなことがあれば、それはなかなか皆さんに理解していただくのは難しいんじゃないかと思っております。

 例えば、総理が記者会見で示された、資料でも配りました例、日本人が第三国から避難してくる、その日本人を輸送するアメリカの船、この船を守るかどうかという話でした。この例というのは記者会見で総理が取り上げられて、そして、今与党間で協議をされています十五事例の一つとして示されている。ここに示されたのは、まさしく米艦の輸送艦についてどういう対応ができるかという議論でした。

 ところが、総理は先週の予算委員会でこうおっしゃいました。私は一言も、米国の船以外はだめだと言ったことはない、また、船籍が他国ということも当然あり得るというふうにおっしゃいました。さらには、日本人が乗っている、ところが、日本人が乗っているからこれは守る、でも乗っていないからだめですよ、これはあり得ないんだという発言もされました。

 つまり、これは、申し上げると、この図において、米国の船だろうが他国の船だろうが、そこは重要じゃないんだと。そしてまた、日本人が乗っていようが日本人が乗っていまいが、そこも実は余り重要じゃないんだと。

 さらに、報告書では、地理的要件、条件は課さないというようなことになっています。

 そうすれば、限定的と言ったところで、では、果たして何をもって限定というふうに言えるのかということだと思います。

 安倍総理のおっしゃることも一部理解はできます。つまり、いざ避難するということになったときに、では、どの国の船に日本人を何人乗せて、これを計画的に、もともと決めることができるか、それは難しいでしょうということだと思います。しかし、それは何を言っているかというと、そもそも、結局、限定というのは難しいんですよねということになるんじゃないか、歯どめというのはなかなかかけられないんじゃないかというふうに捉えられても仕方ない、こう心配になる方もいらっしゃると思います。

 このお配りした資料の三枚目、では、報告書がどのように限定をしているか、要件をかけているかということですが、これは予算委員会で我が党の遠山議員が提出した資料と同じものであります。

 例えば、安保法制懇の報告書で書いてあるのは、日米同盟の信頼が傷つく場合とか、こういう場合は使ってもいい、あるいは、抑止力が大きく損なわれる場合とか、少し曖昧に、3国際秩序そのものが大きく揺らぎ得るかどうか。これって、では、クリミア情勢はどうなるのか。これも国際秩序を揺るがすことになっているんじゃないかということだと思います。つまり、法制懇の報告書に書かれた限定の条件というのも非常に曖昧じゃないかなと思っております。

 そこで、防衛大臣は歯どめというものについてどのようにお考えか、一定のしっかりとした歯どめというものは必要だというふうに思っていらっしゃるかどうかについて見解をお示しください。

小野寺国務大臣 今、集団的自衛権の議論については、安保法制懇の報告書を受け、政府として基本的な方向性を示し、その上で与党協議が行われるということで、私ども、その議論に資するさまざまな御答弁をさせていただいているということであります。

 一般論としてお話をすれば、例えば、ここで一定の方向性が出たとしても、これはあくまでも、できるという権利であって義務ではありません。仮に、現実に事態が発生して、我が国として、実際に武力の行使を行うか否か、あるいは、今回のようなさまざまな各事例についての行動を行うかどうかというのは、仮に権利が今後できるとしても義務ではないという中で、高度に政治的な決断は必要であり、時の内閣が、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために何が最善な対応か、あらゆる選択肢を比較して、具体的な事態に即して、諸般の要素から総合的に判断するということになるんだと思っております。

 また、今後、この方針が出た中で、例えば自衛隊に対してさまざまな新しい任務が可能となるという場合には、当然、自衛隊法の改正を含めて国会での真摯な議論が必要ということになります。

 こういうさまざまなところを踏まえて、委員が今御指摘されました歯どめというもの、それが確保されていくことになるのではないかと思っております。

伊佐委員 大臣が今おっしゃっていただいたのは、そもそも集団的自衛権の議論は、権利であって義務じゃないんだということでした。

 私の今質問させていただいたのは、権利であるのは理解しております、その上で、これを使うとなったときに、権利を行使するかどうかという判断がどこかの時点で来るわけです、そのときの判断をするときに、きちんと歯どめがかかりますか、このメカニズムをどうやってつくっていきますかというところを、さらに今後議論させていただきたいと思っております。

 私は、この集団的自衛権の議論について思いますのは、集団的自衛権の行使を慎重に考える立場と、積極的に、あるいは容認する立場が、結局は両者とも向かうべき目的というのは同じだと思うんです。つまり、いかにしてこの日本国土を守るか、日本の国民の身体と財産を守っていくか、そしてまた、幸福追求権であるとか生存権であるとか、こういうものをどうやって守っていくか、この目的、ゴールは両者とも一緒なわけです。

 その上で、もしこの真摯な議論の中で具体的に、確かにこういう場合については集団的自衛権がないとどうしてもだめだ、ここはどうしても必要なんだということになれば、そしてまた、それを国民の皆さんも理解していただけるのであれば、きちっとした手続をとってこれを認めてもいいものではないか、私はそう思っております。ただ、そこの前提として我々が必要なのは、冷静かつ丁寧な議論をどうやっていくのかということだと思うんです。

 そこで、例えば一つ申し上げますと、先ほどの絵に、総理が記者会見でも示した邦人輸送の例、これは予算委員会でもこういうふうに取り上げられました。

 この絵について内閣法制局長官からはどういう答弁があったかというと、日本はこのケースにおいて、日本の自衛艦はこの輸送艦を防護できないというふうに答弁されました。

 そのときに、安倍総理はこうおっしゃいました。一部報道によっては、このケースでもできるんじゃないかという報道があった、しかし、今法制局長官が答弁したとおり、これはできないんだ、逃れようとする親子、子供たちを守ることができないんだというふうに総理はおっしゃいました。

 でも、私は、このケースを見ていまして、いろいろな見方、いろいろなシチュエーションがあるんじゃないかと思っております。つまり、法制局長官の防護できないんだという答弁をもって、命も守れない、何もできないと本当に言い切ってしまっていいのかどうかというものを少し疑問に思っています。

 例えば、では、私の方からこのシチュエーションについてこういうふうに聞くとどうでしょうか。逃れようとする親子、子供たちを乗せた米国の輸送艦があります。日本の自衛艦、自衛の艦船が並走している場合、そこに何らかの攻撃がしかけられた。その場合に、例えば武器等防護という観点で反撃をする。それが結果的に、自衛艦、自衛隊の艦船が米国の輸送艦に対して攻撃を防ぐ、いわゆる反射的効果ということで対応できる。

 この可能性は排除されないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御指摘の自衛隊法第九十五条でございますけれども、これは、自衛隊の武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備または液体燃料を職務上警護するということが前提になっておるものでございまして、あくまで対象は自衛隊が持っている装備品の類いということではございます。

 その上で、あえて法的な一般論として、これまで政府として何回も国会で御答弁していることを申し上げますと、自衛艦と米軍の艦船が極めて接近している、先生が挙げられたような事例かと思いますが、そういうような場合において、自衛隊の船が、今申し上げました自衛隊法の第九十五条に基づきましてあくまで自衛隊の武器等の防護のために武器を使用するということが、結果的に、あくまで結果的にということでございますが、米艦船に対する攻撃を防ぐという反射的効果を有する場合、これはあり得るということはこれまでも答弁として申し上げておりますが、ただ、米艦船の防護そのものを目的とした武器使用というものは認められていないということでございます。

 それから、これまで挙げられています例はあくまで例示でございますので、これらに該当しない状況というものも起こり得るということでございますので、そうした問題意識のもとで、与党との協議、それから法制局の意見も踏まえて今後政府として対応を検討していく、このようなことになっておるわけでございます。

伊佐委員 ありがとうございます。

 私が申し上げたかったのは、こういう場合にはできませんよね、だから命も守れないんだ、何もできないんだというのではなくて、いろいろなシチュエーションがあって、いろいろな見方というのがあると思います。そこを冷静かつ丁寧に議論していく。こういう場合だったらこういうことができる、でも、この小さいすき間ではこれができないとか、こういった議論を積み重ねていくことによって、本当に大きな集団的自衛権というものの必要性の部分とか、それが国民に果たして理解されるのかどうか、御理解いただけるのかどうかということも、この議論の中で私は御理解をいただかなければいけないのではないかと思っております。

 質問時間が終わりましたので、以上、終わります。ありがとうございました。

江渡委員長 ここで鈴木外務委員長に席をお譲りしたいと思います。

    〔江渡委員長退席、鈴木委員長着席〕

鈴木委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 安保委員会と外務委員会の連合審査というのは、聞くところによりますと、史上初ということでございまして、非常に意義深い場を設定していただきました鈴木委員長そして江渡委員長に心から感謝を申し上げたいというふうに思います。

 まず、質問通告していないんですけれども、防衛大臣に、シャングリラの感想といいますか、さっきアメリカはデンプシー統参本部議長が同行されたという話でしたけれども、日本からは制服組はどんな方が行かれたんでしょうか。

小野寺国務大臣 岩崎統幕長が同席をしております。

長島(昭)委員 アメリカも統参本部議長、そして中国は副参謀総長だったというふうに思いますけれども、非常にいかめしい制服姿で演説をされていたのをテレビで拝見しました。

 日本も、大臣が行かれて、そして総理大臣も行かれて、そして地域の安全保障環境、情勢を議論するわけですから、やはり制服のトップが行かれるべきだなと思っておりましたが、行かれたということで安心をいたしました。

 そこで、中国の副参謀総長が、アメリカと日本から批判をされた、お互い調整して批判しているんじゃないか、極めて挑発的だ、こういう話をしていました。しかも、アメリカは直接批判してきたけれども、日本の安倍総理の表現はえんきょくだった、日本の方が始末に悪いといったような話をしていたという報道があるんですけれども、シャングリラの雰囲気、中国に対する地域の各国の、有識者も含めた雰囲気と、そして、中国側の姿勢といいますか、これから地域の平和と安定にプラスの貢献をしていく、そういう姿勢が少しでも見られたのかどうか。

 大臣の口から、報道に出ていない部分も含めてお話をしていただきたいと思います。

小野寺国務大臣 今回のシャングリラ・ダイアログにおきまして、まず、中国に対しての印象ですが、私は、国会の御承認をいただきまして、去年とことし、二回出させていただいております。

 昨年は、どちらかといいますと、ちょうど自衛隊の艦船に対するレーダー照射事案があって、日本がこのことについてかなりさまざま働きかけをしていた中もありますが、日本と中国の関係のことについて心配をするというような、そういう全体の会合の雰囲気がありました。

 ただ、ことしは、既に南シナ海においてもさまざまな事案が発生しており、その関心というのはむしろASEAN全体の中に広がり、中国に対しての発言、あるいは中国に対してのさまざまな要請というのはASEAN全体でも共通の認識になりつつあるなという、そのような印象がございました。

 中国の雰囲気の違いでありますが、向こうは副参謀長が来られましたが、基本的に、最終日の発言の中では、日本も含めた形で何らかの対話の枠組みが必要だというような言及をされておりました。ただ、その後、原稿を見ずに、多分、全体の雰囲気を感じられた中で、御本人が日本とアメリカに対しての発言をされたのかなという印象はありますが、基本的には、用意してきた原稿の中では、日本を含めた対話の必要性については言及をしていたと承知をしております。

長島(昭)委員 日本側の対応は非常に冷静でよかったと思います。言うべきことは言ってきたというふうに私は評価しております。

 それでは、本題に入りたいと思います。

 まず最初、防衛大臣に伺いたいんですが、日本の場合は、自衛隊の行動を法律で規律しています。今、ちまたの議論は、与党協議が終わって、いつ閣議決定をするのか、こういう議論に半ば集中している嫌いがあると思うんですけれども、私は、これはいささか的外れな議論であって、前回も、外務委員会で二週間前に岸田外務大臣に質問させていただきましたけれども、仮に政府解釈を変更することになって、限定的であれ集団的自衛権を認めるということになれば、岸田大臣はこうおっしゃいましたね、「具体的に、集団的自衛権の行使等、憲法解釈の変更が実行されるためには、その後、関連法案をしっかりと国会で御審議いただき、法律の成立がなければなりません。」と。

 この指摘は大変大事だと思っているんです。つまり、与党協議が密室で調った、そして政府が解釈の変更をする、そして閣議決定をする。これで終わりじゃないんですね。ここからなんですね、話は。

 この点を踏まえて、自衛隊の行動は法律によって規律されている、これはポジリストとか言って、私も昔から、以前から批判的に言っておりましたが、現行法制度、現行の安保法制度というのは、こういう形になっているんですね。そのことの意義について、ぜひ大臣から伺いたいと思います。

小野寺国務大臣 私は、自衛隊という実力組織を指揮する立場にございます。それはあくまでも、さまざまな法制度の中で、憲法の中で、行動がおのずと規制されるものだと思っております。そのために、自衛隊法を含めさまざまな自衛隊に関する法律がございます。

 今回仮に、さまざま今議論をされている中で、集団的自衛権を含めた新しい考え方が出た場合、それを反映した形での自衛隊法を含めたさまざまな関連法律の改正が当然必要になりますし、その中で国会での議論というのがさらに進むことになるんだと思っております。

長島(昭)委員 さっき、伊佐委員の方から歯どめという話がありました。

 私は、二つ意味があると思っているんです、国権の最高機関が法律によって自衛隊を規律するということは二つあると思っている。

 一つは、やはり歯どめですよ。民主的コントロールをきかせて、これ以上はやらせないということが一つ。ですから、先ほどの防衛大臣の御答弁は、権利だから常に行使するわけではないとか、そんなの全然歯どめでも何でもないんです。法律できちっと決められるから、国民の皆さんから見て、あるいは周辺諸国から見て歯どめとして機能するんです。

 それからもう一つは、自衛隊の行動に根拠を与えることができるんです。これは法律しかないんです。政府解釈の変更でも、法制局の解釈でも何でもないんですよ。閣議決定でも何でもないんです。自衛隊の行動は法律で規律する、つまり法律が根拠となって初めて行動できるんですね。

 防衛大臣、いかがですか。

小野寺国務大臣 まさしくおっしゃるとおりだと思います。

 昨年、国会の方でお認めいただきました邦人輸送についての隊法改正につきましても、それで初めて私ども、邦人の輸送について陸上輸送というのが可能になった。これは、この法律が成立したことであります。

 ですから、法律によって私どもの役割というのは逆に認めていただけることになるということは、間違いありません。

長島(昭)委員 これは大事な点なので、ぜひ委員で共有していきたいと思うんですけれども、国権の最高機関である国会が自衛隊の行動に根拠を与える、こういうことなんですね。法制局の解釈でも何でもないんです。閣議決定でも何でもないんです。

 法制局長官、この見解はいかがですか。

横畠政府特別補佐人 御指摘のとおりと思います。

長島(昭)委員 前回も、近藤第一部長に御答弁いただきましたけれども、政府としては、国会が制定した法律については、これを誠実に執行するということでありまして、私たちは、だからこそ安全保障基本法というものをきちっと定めて、立法府としての憲法解釈というものを示して、そしてそれに内閣法制局も含めて政府、行政機関は従ってもらわなければならない、こういう形で議論を進めていくことが極めて正当だというふうに思っているところであります。

 そこで、これも実は通告はしていないんですけれども、外務大臣にちょっと伺いたいんです。

 昨日、高村副総裁が、山口市で開かれた党の会合でこうおっしゃっているんですね。公明党の同意なしに見切り発車はしないと言い切っているので、厳密な意味での期限というものはない。ただ、年末までに行う予定の日米防衛協力の指針、いわゆるガイドラインの見直しを見据えれば、大きな方針は今の国会中に決めるのが極めて望ましい、こういうふうに言われているんです。

 前回、二週間前に外務大臣とこの進め方についての議論を少しさせていただきました。そのとき、私は、ガイドラインの締め切りについても含めてタイムテーブルにのせて外務大臣とやりとりさせていただかなかったので、きょうは、そのガイドラインの締め切りという期日の持つ意味も含めて、今後の道行きについて伺いたいと思うんです。

 高村副総裁が、公明党の同意なしに見切り発車はしない、こうおっしゃったんですが、いや、そんなことよりも大事なのは、今まさに防衛大臣と議論をさせていただいた、自衛隊に行動の根拠を与える法律の制定なしに、高村副総裁が言っておられるように、ガイドラインの見直しが差し迫っているので、政府の方針、大きな方針を今国会中に決めてしまって、それでガイドラインの議論に入るんですか。まさかそうじゃないでしょう。

岸田国務大臣 まず、安全保障環境が変化する中にあって、国民の命そして暮らしを守るために、国としてどうあるべきなのか、安全保障の法的基盤についてどう考えるべきであるのか、こういったことにつきまして、五月十五日、安保法制懇の最終報告を受け、議論が行われているのが現状であります。

 この議論は、おっしゃるように、これは丁寧に進めなければなりませんし、国民の理解をしっかり得なければなりません。期限ありきでもありませんし、結論ありきでもない、こういった丁寧な議論が行われなければなりません。

 その一方で、昨年十月の日米2プラス2におきましては、ことし年末までに、日米ガイドラインのありようについて議論をし、そして結論を出していく、こういったことについて一致をしております。

 そして、このガイドラインの議論につきましては、十月に2プラス2が行われた後、十一月に日米の外務、防衛当局の局長級防衛協力小委員会、SDC、これが開催されまして、この議論が開始されております。このガイドラインの議論は、当然のことながら、今現状の我が国の法制、憲法解釈に基づいて議論がスタートしているところであります。

 こうしたガイドラインの議論が行われているわけですが、このガイドラインの議論において、我が国の国内の安全保障の法的基盤の議論についても当然注視はしているわけですが、現状におきましては、現行の憲法解釈に基づいて議論が進んでいるというのがこのガイドライン見直しの議論のありようです。

長島(昭)委員 大臣、それは後知恵というか、余りいい答弁じゃないと思いますよ。

 アメリカ側のいろいろな関係者と話をすると、やはり期待感があるんですよ、日本の役割が拡大すると。ヘーゲル長官も日本に来られて、あるいはこの前上院、下院で議決があったときも、集団的自衛権の行使とまでは言っていませんが、日本の役割が拡大することは非常に好ましいんだ、こういうメッセージはたくさん来ていますよね。外務大臣の耳にも入っていますよね。

 それを、今の外務大臣の御説明ですと、現状と変わらない、現状の憲法解釈を維持したままやるんだと。それなら十七年前の、前のガイドラインを決めたときと変わらないじゃないですか。

 十七年前とは情勢が変わった、今そういうふうにおっしゃいましたね。そして、そのことについて、日本は役割を拡大すると言ってきた。アメリカ側の期待感はある程度上がっている。そこに、申しわけない、国内の議論が追いつかないので、ガイドラインはもう十七年前と同じ前提で、現状の解釈でやらせてもらいます、こんなの通用すると思っていますか。

岸田国務大臣 我が国の安全保障の法的基盤に対する議論、特に集団的自衛権に対する考え方について、さまざまな期待とか意見が寄せられていること、これは当然のことながらよく承知をしております。

 しかし、我が国は、年末に向けて、日米2プラス2の合意に基づいてガイドラインの見直しを行うわけですが、安全保障環境の変化を受けて、現状の法制の中においても、あるいは現状の憲法解釈の中においても対応できること、これはいろいろと検討する余地があるとまずは思っています。

 そして、あわせて、我が国は今、こうした法的基盤について議論をしております。こういった議論の行方も注視しながらこのガイドラインの議論を進めていく、これは当然のことではないかと考えています。

長島(昭)委員 大臣、今、期待とか意見とかいろいろ寄せられているけれども、日本の国内は国内の事情があるというような文脈でおっしゃいましたけれども、これは意見や期待とかということよりも、日米が緊密な防衛協力関係を築いて初めて抑止力、実質的な意味での抑止力というものが高まっていくわけですよね。

 そういう中で、国内の議論が仮に決着がつかなかったら、つまり、高村副総裁が言っているように、立法もしないうちから見切り発車でガイドラインの議論だけ先に進めるというようなことをやるおつもりはあるんですか、ないんですか、ここを今伺っているんです。

岸田国務大臣 まず、我が国の安全保障の法的基盤に関する議論につきましては、安保法制懇の最終報告書を受け、与党協議を始め、議論が開始されたところであります。今の段階で、我が国が集団的自衛権についてどういう対応をとるのか、これを予断を持って申し上げることは不適切であると考えています。

 一方、ガイドラインの見直しの作業については、昨年十月、日米間で合意をしています。その合意はしっかりと尊重しながら議論は進めていかなければならない。

 その中にあって、もちろん、今現状において、現状の憲法解釈や法的基盤を基本としながらしっかりと議論をしていくわけですが、あわせて、今行われている我が国の安全保障の法的基盤の議論、これにもしっかりと注視しながら、動向をしっかりと考えていく。これは、今現状において当然のことでありますし、そういった丁寧な作業を進めなければ国民の理解は得られないのではないかと考えます。

長島(昭)委員 結論は同感です。

 ですから、丁寧にやるんだったら、私、一つ申し上げたいと思っていますが、ガイドラインのデッドラインを延ばしたらどうですか。これは、日米間の協議、かなり厳しいものになると思いますけれども。

 だって、国内で自衛隊の役割を拡大させると言いながらその根拠となる法律もつくらないで、ガイドラインの実質的な議論ができるわけないじゃないですか。去年の十月の2プラス2で決めたとおっしゃいますけれども、今の日米間の議論というのは、日本の集団的自衛権の問題については、日本の姿勢が決まらないから、外周部分をぐるぐるぐるぐる回っているだけだというじゃないですか。一番のコアの議論ができないんですよ。

 現行でもやれることはたくさんあると外務大臣おっしゃいましたけれども、現に周辺事態法の中で、日本の協力、後方支援の協力でもできないことが幾らでもある。その部分を埋めようとしたって、それは何らかの形で法制局の解釈を変えなかったらできない話じゃないですか。それを全部、安保法制懇の議論に委ねますでずっとやってきた。議論の結論が出た。そして、それからまさに国会の議論が今始まっている。半年から一年ぐらい後ろ倒しになっちゃっているんですよ。

 だから私は、もう何度も何度も、この委員会でも外務委員会でも安保委員会でも本会議でも、早く結論を出した方がいいんじゃないですかと。本来だったら、安保法制懇の結論は去年の秋に出ていたんですよ。その時点で報告書を出して、それから安全保障基本法の議論をしていたら、今ごろもう既にある一定の結論は出ていますよ。そうすれば、アメリカ側に迷惑をかけないで、ガイドラインの皆さんが設定されたデッドラインに間に合ったんですよ。今さらそんなことを言ってもしようがないですけれども。

 だとすれば、間に合わせるように、強引に国会の議論をちょん切って見切り発車するんじゃなくて、しっかり議論をやりましょう、そして議論の結果、実のある日米のガイドラインの議論をされたらいいと思います。そのことを一点、御忠告申し上げて、質問としたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。長島委員に続いて質問をさせていただきます。

 まず、冒頭にお尋ねをしますけれども、北朝鮮と我が国の、先般ストックホルムで行われました日朝政府間協議につきまして、何点か確認をさせていただきたいと思います。

 私のところにも、オペレーションルームから五月二十九日の夜に、この政府間協議の合意文書がファクスで送られてまいりました、連絡がありましたので、ファクスであわせて送っていただきました。これは合意文書ということで書いておりますけれども、ということでよろしいのか。

 といいますのは、これは、メモ書きといいましょうか、合意の文書という割には、伊原局長の名前も署名もない、そして、宋日昊大使の署名もないわけでございます。そして、文章としても非常に読みにくい文章なんですけれども、これはどういう位置づけになるか、まず冒頭、確認をしたいと思います。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の文書でございますけれども、五月二十六日から二十八日の日朝政府間協議で協議いたしました内容を、代表団が本国に持ち帰って報告した上で、四大臣会合を受けて日朝両政府間の合意として確認し、発表に至ったものでございます。

 御指摘のとおり、文書自体については署名はございません。

渡辺(周)委員 署名はないけれども、これは有効な外交の文書、約束された文書だということで理解してよろしいですね。外務大臣、いかがですか。

下川政府参考人 ただいま日本側の対応について申し上げましたけれども、本文書につきましては、北朝鮮側におきましても、これは北朝鮮政府として合意するものであるということを十分確認した上で対外発表することとしたものでございまして、そういう意味におきまして、日朝両国政府において確認された交渉の結果でございます。

渡辺(周)委員 いや、公式の約束の文書でよろしいかということを聞いているんです。外務大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 今答弁させていただいたような形で、日本と北朝鮮、両国においてこの文書を認めているところであります。

渡辺(周)委員 それでは尋ねますけれども、この文書の中に出てくるんですが、これは、「双方は、」というところから冒頭始まりまして、六行目に、「北朝鮮側は、過去北朝鮮側が拉致問題に関して傾けてきた努力を日本側が認めたことを評価し、」つまり、北朝鮮がこれまで傾けてきた努力というものを日本側が認めた、そのことについて北朝鮮は評価している。その次、「従来の立場はあるものの、全ての日本人に関する調査を包括的」に云々ということです。

 もちろん、今回、こういう形で合意がなされて、進展をするということに対して私どもも大変な期待を持っておりますし、また、これまで党派を超えて取り組んできた努力がこういう形で進展しているということに関しては非常に期待をするところでもありますし、何とかしなきゃいけない、一丸になってやっていかなければいけないという思いは政府の皆さんと変わらないんですが、ただし、あの国のことです。北朝鮮という性善説が通らない国を相手に交渉するわけですから、また、過去には、我々は何度も煮え湯を飲まされたことも記憶に新しいわけでございます。

 それだけに、例えば、ここに出てくる「従来の立場はあるものの、」という日本語は入っているんです。日本語で読むと、あえてそれを乗り越えて北朝鮮側が踏み切るのかな、踏み越えるのかなと思いますが、朝鮮語でこれはどう書かれているのかわかりませんが、下手をすると、これは別のニュアンスで、例えば朝鮮語で書かれていたら、実は、双方の手元に違うものがあるということになりはしないだろうかということです。

 そこで伺いたいのは、この「従来の立場はあるものの、」というのは、これは拉致問題は解決済みであるという北朝鮮の従来の主張ということなのかどうか、その確認。

 それともう一つは、それだけに、この交渉の後にも、例えば朝鮮総連の本部ビルをめぐっては、それも当然含まれているということを帰路についた宋日昊氏は言っているわけでありますけれども、我々は、それについては既に司法の手に現在委ねられているのでそれは入らないという、早速そこで言い分の違いというものが出てくるわけなんですが。

 そこで伺います。この「従来の立場はあるものの、」ということは、本当に拉致問題は解決済みであるという北朝鮮の言い分をのんだ、これをあえて書き込んだ意図は何なのか。

 もう一つ、ハングル語といいましょうか、朝鮮語で書かれたものは手元にあるのかどうか。そして、それを、朝鮮語を読める方によって、どう書かれているかという、どういうニュアンスで向こうに届いているかということは確認しているのか。できれば、日本語と朝鮮語の両方の合意文書というものが併存して残されるべきだと思いますが、我々の目にも触れるべきだと思いますけれども、その点についてはいかがですか。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘のありました過去のやりとり、それから従来の立場というところでございますが、これはまさに、これまでいろいろとやりとりがあった中での北朝鮮側の行動というものを日本側として認知し、同時に、従来の立場ということにつきましては、拉致問題は解決済みということを表明していたことも含めて、いろいろな立場がこれまであったことを踏まえての記述でございます。

 そして、今回の合意におきましては、まさにこの「全ての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施」いたしまして、「最終的に、日本人に関する全ての問題を解決する意思を表明した。」ということでございますので、拉致問題解決に向けたプロセスを前進させるための前向きな行動を示したものというふうに認識しているところでございます。

 それから、二番目のハングル語でございますけれども、ハングル語の記述につきましては、やりとりをやっておりましたスウェーデンにおきましても、朝鮮語の専門家が現場で確認をしたところでございます。

 ちなみに、朝鮮語の文書自体につきましては、たしか三十日に北京の空港において北朝鮮側も配付しているというふうに承知しておりまして、私どもの方からその文書を提供することも可能かというふうに考えております。

渡辺(周)委員 それでは、この委員会の場におきまして委員長に申し上げますが、そのハングル語の文書をぜひ当委員会に出していただきたい。そして、日本側の文書と朝鮮語で書かれたものが、これは同じ方向性で、同じトーンで書かれている、同じニュアンスで書かれているんだということをぜひ確認したいと思いますが、委員長の御判断をお願いいたしたいと思います。

鈴木委員長 理事会で協議いたします。

渡辺(周)委員 それで、少し交渉の今後の中身に入りたいと思いますけれども、外務大臣、昨日、NHKの番組で菅官房長官が、派遣、滞在をすると。これまでには北朝鮮側から言わなかったような日本側の関係者を北朝鮮側に派遣あるいは滞在をさせるということで、大変な前進だ。もしこれが実現すれば、私どももそうだと思います。

 そこで伺いたいのは、この例えば関係者の派遣、滞在という中には、救う会でありますとか特定失踪者問題調査会のような、政府以外の、ずっとこれまで取り組んできた大変な情報を持つ団体、こうした団体も派遣される、あるいは滞在するということは含まれるのかどうか、その点については念頭に置かれているかどうか伺います。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘がございましたように、調査が進捗する過程において北朝鮮側から随時通報を受けまして、その調査結果を直接我が方が確認できる仕組みというのが非常に重要な要素になっているわけでございます。その中で、まさに関係者による北朝鮮滞在ですとか関係者との面談、それから関係場所の訪問といったようなことを実現させて、関連資料を日本側と共有するといったような適切な措置をとるということになっているところでございます。

 ただいま具体的に御質問のありました点につきましては、今後、北朝鮮側と協議していくということになろうかと思います。

渡辺(周)委員 例えば、日本側が持っている情報、これは当然、拉致対策本部、そして警察庁、そしてまた、そうした救う会や調査会のようなこれまで真剣に取り組んできた組織の持っている情報、こういうものが、例えば向こうに共有させる、向こうの持っている情報をこっちが共有されるのではなくて、ここに出てくる共有というのは、こうした我が国の政府や、また支援団体が持っている情報を相手に共有させる、のませる。つまり、こちらの、これはどうなっているんだということで課題を突きつけて、これに対して向こうに応えさせるというようなやりとりも必要だと思いますが、そうした検証のメカニズムも考えていますか。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど調査結果を受けての直接確認する仕組みについて申し上げましたけれども、この点につきましては、例えば北朝鮮側が提起した場合に、日本側の関係者との面談や関連資料の共有ということを我が方から行うというようなことも想定されているところでございまして、双方向で情報の共有等を行って確認作業をしていくということが想定されている内容になってございます。

渡辺(周)委員 北朝鮮が提起した問題について、こちら側が検証するんですか。こちら側から提起することもあるということで、双方向ということで考えてよろしいですか。

岸田国務大臣 ただいま双方向で考えているという答弁をさせていただきましたが、文書の中にも、第六の部分に、日本側の提起に対し、それを確認できるよう、日本側関係者による北朝鮮滞在、関係者との面談、関係場所の訪問、そして関係資料の日本側との共有、適切な措置をとる、これを文書で確認しております。日本側の提起に対し、御指摘のような我が国の問題意識に対しても、こういった対応をとることを文書で確認している次第です。

渡辺(周)委員 そしてまた、随時通報という言葉がありますが、この随時通報するというペース、これは向こうに委ねるのか、それとも、こちら側から要請して進捗状況について何らかの形で聞くことができるのか。この随時通報ということについてはどういうことを想定しているのか、あわせて伺います。

下川政府参考人 これからどういうスピード感で協議とかをやっていくかということも含めて協議していくことになると思いますが、必要に応じて随時ということでございます。

渡辺(周)委員 ぜひ、これは、ここまで文書で合意をしているわけですから、今までのように、結果的には向こうの言う行動対行動の原則が崩されないように、向こうはとにかくしたたかに交渉してくる国ですから、瀬戸際外交を、これは日本人の持っている性善説を残念ながらかなぐり捨てて、やはり、これまで北朝鮮という国は親子三代にわたって周辺の大国に、とにかくさまざまな瀬戸際外交を繰り返しながら今日まで国家を維持してきた、そういう国であるということを念頭に置いて、ぜひ、希望を持ちながらも、決して甘い対応をしてはならない、その旨取り組んでいただきたいと思います。

 この問題の結びに当たりまして外務大臣に伺いたいのは、我々が考える拉致の解決の三要件、認定の有無にかかわらず全員帰還させる、そして真相究明、実行犯の引き渡し、これについては揺るぎない姿勢で臨む。つまり、調査の結果によっては何度でも再調査を求めるという姿勢、この強い姿勢で当然いくべきだという御決意なのかどうか。

 それと、今後、北朝鮮という国と交渉していると、必ず途中でミサイルをぶっ放したり核実験を行ったりして交渉がまた頓挫することがないように、私は、やはり今回が、非常にもう御家族の方々も高齢化していらっしゃる、焦りの声も聞かれます。それだけに、今回、ここまで来た以上は、何としても解決に向けて、日本人の安否情報、そして帰還を必ず実現する、そういう数少ないチャンスになってきているのではないかと思いますけれども、その点について御決意を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、調査の実効性をしっかり確保しなければならない、御指摘のとおりだと思います。

 今回、特別な権限を持つ特別調査委員会の立ち上げを文書で確認したわけですが、立ち上げまでに、この特別調査委員会、具体的にどういった組織で、どういった構成で、そして責任者が誰であるのか、こういった具体的なものについてもしっかり北朝鮮側から報告を受ける、連絡を受ける、こういったことを確認しております。そうしたことを確認しながら、先ほど来質疑の中で触れていただきましたようなさまざまな具体的な対応によって、しっかりと実効性を確保していきたいと考えております。

 そして、我が国の拉致問題に対する基本的な立場、拉致被害者そして拉致の疑いのある方々の安全を確保し、帰還を果たし、実態をしっかり解明し、そして実行犯をしっかりと引き渡しを求めていく、こういった点につきましては、全く、従来どおり変わっておりません。しっかりこの方針で今後とも臨んでいきたいと考えております。

 そして、今、拉致被害者の家族の皆様方も高齢化されておられます。時間は限られていると認識をしております。ぜひ、そうした認識のもとに、今回の北朝鮮とのこの合意をもとに、しっかりと結果を出せるように全力で取り組んでいきたいと考えております。

渡辺(周)委員 国家一丸となってこれは取り組むべき課題ということはお約束をして、残りわずかですが、質問に移ります。

 今回の幾つかの事例を、安保法制懇の事例に関して、出ていないんですけれども、中台紛争、また嫌なことを聞くなというふうに答弁席の方は思われるかもしれませんが、かつてガイドラインの議論をしたときに、この中台紛争というものも一つのケースでございました。それだけに、中台紛争というものを想定しているのかどうかというのが一つ。

 そして、例えば、日本人を乗せた台湾の艦船が避難をする場合に、中台紛争が不幸にして起きた、そして、台湾から与那国島や石垣島に向かって、台湾の船が、あえて船を出して日本に帰還をさせてくれる場合に、護衛することができるかどうか、その点については何か想定をしているでしょうか。その点について伺います。

平松政府参考人 お答えいたします。

 まさに今、集団的自衛権の問題に関しましては与党間で協議が進んでおりまして、その結果を予断することは差し控えたいと思います。

 具体的な例を含めまして今後どういう対応が必要かについて、まずは与党間の議論を待ちたいというふうに思っております。

渡辺(周)委員 外務大臣、我が国は、二つの中国は認めていない立場。そうすると、国または国に準ずる者の、台湾は国に準ずる者になるのではないかと思いますが、大臣はいかがお考えですか。

 安倍総理は、とにかく、そんなことは起こらないということで目を背けてきたんだ、だから、国民の命を守る責任がある政府として、いかなる事態があっても想定外は許されないということですが、台湾と中国の問題については、これを排除せずに考えるというお考えでよろしいですか。

岸田国務大臣 現在、我が国においては、我が国の安全保障の法的基盤について議論を進めているわけですが、その際に、丁寧な議論を行わなければいけない、加えて、国民の皆様方にしっかり理解をしていただかなければいけないということで、例えば、A国あるいはB国、あるいはその国がどう対応したか等、具体的な事例を挙げて、丁寧にこの議論を進めていくべく努力をしております。

 ただ、この具体的な事例あるいは事態、さらには具体的な国名を挙げてここで議論をするということは、そのこと自体が国際関係等に直接影響する部分も出てまいります。そういった議論は、ここで申し上げること、発言することは控えなければならないのではないかと考えます。

渡辺(周)委員 しかし、総理は、決意を記者会見で言われたときに、南シナ海や東シナ海の例を挙げて、これを読めば、どこの国を指しているかということは当然わかるわけであります。

 ですから、この問題は避けて通らずに、国名を出さないまでも、やはり考えられる、想定をされるケースとして、ぜひ今後また具体的に議論をしていきたいと思います。

 以上です。終わります。

鈴木委員長 次に、桜内文城君。

桜内委員 日本維新の会の桜内文城です。

 私は、我が党での集団的自衛権に関する見解の取りまとめをした一人として、きょうは差しかえで、こういった質疑の機会をいただきました。

 安倍内閣がこのたび、安保法制懇の報告書を受けて、集団的自衛権に関する政府の見解を取りまとめされようとしていることを大変高く評価したいと思っております。

 と申しますのも、戦後七十年の長きにわたって、もちろん、経済も大事であります、今は日本の財政も非常に危機的な状況にあるというのもあるんですが、やはり、安全保障ですとか憲法の問題、これは非常に難しいものもありますけれども、そこを避けて通ってきたこの戦後の長い期間であったんじゃないかという反省もございます。

 残念ながら、我が党のことでありますけれども、憲法の解釈あるいは今後の憲法改正に関する見解の相違というのがありまして、分党が決まりました。非常に残念ではありますけれども、やはり、難しい問題にまず取り組んでいくということが政治家として必要ではないかということを述べまして、質問に入ってまいります。

 まず、安保法制懇の報告書でありますけれども、その後の安倍総理の記者会見でも、法制懇のこの報告書を受けて、政府の見解を考えていかれる。例えば、集団的自衛権に関して言えば、芦田修正論はとらないですとか、もう一つの限定容認論をとられる、こういったお話もありました。また、個別的自衛権一体化論、特に一体化論については、法制懇の報告書に、これはとらないということを明記されておりますけれども、政府としてはそれを今後検討していくというような言い方を総理もされております。

 そもそも、この安保法制懇の報告書の位置づけについて、政府の見解との関係といいますか、法制懇の位置づけについてお尋ねをしたいと思います。

平松政府参考人 お答えいたします。

 安保法制懇は、安保法制に極めて見識を持っておられる先生方が集まりまして、総理の依頼により、有識者たちの考え方をまとめていただいたということでございます。

 今、それを受けまして、先ほど委員の御指摘のとおり、与党間で議論が進んでいる、そういう性格でございます。

桜内委員 安保法制懇の最終報告書が出るということで、皆期待をしておりました。私どもも、四月の十六日に、党としての見解を取りまとめて公表したところでございます。

 そういった意味では、政府のお考えと、これからもちろん閣議決定まで与党内で議論されていくことと思うんですけれども、報告書の内容とどこまで違いが出てくるのか、あるいは出ないのか、その辺の見込み等について、大臣の方で今の現状を御説明いただければと思います。

 よろしくお願いします。

岸田国務大臣 まず、安保法制懇の議論につきましては、昨年二月から有識者の方々に御議論をお願いしてまいりました。そして、先日、五月十五日に至るまで、さまざまな有識者の方々に、安保環境の変化等も踏まえながら、具体的な事例に即して専門的な御意見をいただいたということで、政府としましても高く評価をしているところであります。

 しかしながら、今委員の方から御指摘がありました、報告書の中にあっても、従来の我が国の憲法解釈との論理的整合性等の観点から、とれるもの、あるいは引き続き研究を進めていくもの、そういった考え方を、この報告書を受けた後の総理の記者会見において、基本的方向性という形で示させていただきました。この基本的方向性に基づいて、今、与党におきましても議論を進めていただいているところであります。

 この議論の行方については、全く、今の段階で予断を持って申し上げるのは不適切だと思っています。結論ありきでもなければ期限ありきでもないということで、真剣な御議論をお願いしているところであります。

 この議論を踏まえた上で、我が国の政府としての基本的な考え方を決定するということになります。そして、その上で、それを具体化するために、必要であれば法律の改正もお願いしていかなければならない、こういったことでこれから議論が進んでいくことになります。

 どの程度取り入れるか、どういった結論になるのか、この時点で申し上げるのは控えなければならないと思っています。

桜内委員 ありがとうございます。

 できるだけ早く政府の見解を取りまとめていただいて、そしてまた、ぜひ国会においても議論をさせていただきたいというふうに考えております。

 そのためには、先ほど長島委員からもお話がありましたけれども、やはり、安全保障基本法ですとかそういった形で、法律という形で国会での審議をしていくことというのが王道ではないかというふうに考えております。

 私ども、野党ではありますけれども、その原案等も今起案中でありまして、与党の方でもしお出しにならないようであれば、我が党からもしっかりとこういった提案をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

 今回の安保法制懇の報告書ですとか記者会見で安倍総理が述べられたことの中身について申し上げますと、基本的に、我が党の見解の取りまとめの考え方と共通点が非常に多いというふうに考えております。

 それは、やはり冷戦構造から今に至る、日本を取り巻く安全保障環境の変化、大変大きな変化があったというふうに考えておりますし、それに基づいて、日本国憲法の前文にあります平和的生存権でありますとか、あるいは十三条の生命、自由、幸福追求権、こういったものを手がかりに、解釈を適正化していくという文言を我が党は使ってございます。

 時代に応じて憲法解釈が変遷するというのも、これはあるべき姿だと考えておりますし、その中で、やはり国民の生命、自由、財産を守っていく政府の責務をしっかりと、できれば法律の形で、自衛隊法の改正も含め考えていくべきだ。また、先ほど申しましたように、国家安全保障基本法のようなものをぜひ国会で議論させていただきたいと思っております。

 ちなみに、せっかくなので、我が党の考え方もここでもう一回、少しだけ説明したいと思っております。

 我が党は、そういった意味におきまして、今申し上げましたとおり、憲法解釈を適正化すること、具体的には、外部からの急迫不正な侵害が我が国の国民の生命、安全に重大な影響を与える場合、集団的自衛権の行使を限定的に認めていくという立場をとっております。そういう意味で、恐らく、解釈にもよるとは思うんですけれども、安倍総理が述べられた、必要最小限度の範囲内に限定的に集団的自衛権の行使を認めていくという立場と相当共通する点が大きいと考えております。

 一つ申し上げますと、安保法制懇の報告書の中では、具体的な集団的自衛権行使の要件というものがちょっと読み取りにくいと感じております。

 予算委員会で遠山委員が御指摘になっておりますけれども、例えば、そのときの資料ですけれども、集団的自衛権の行使の要件として、安保法制懇の報告書の中では、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき、それについて、それに該当するか否か、五つの要件を書かれておりまして、例えば、「我が国への直接攻撃に結びつく蓋然性が高いか」云々というところを挙げられておりますけれども、少し、こういった要件についてもっと、もちろんこれから議論されるんでしょうけれども、我が党はこれを六つの要件に整理して見解を取りまとめておりますが、政府として、どこまでこれを今後詳しく検討されるのか否か。

 私は、今の安保法制懇の報告書では、少し、記述がまだまだ具体的ではないのではないかなという気がしておるんですけれども、もちろん、まだ検討中ではあると思うんですけれども、今のところのお考えをお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 政治にとって、国民の命そして暮らしを守る、これは最大の責任であると考えます。よって、この政治の場におきまして安全保障環境の変化を踏まえて不断の検討を続けていかなければならないものであると考えますので、御指摘のような御党のこうした見解、まとめられた考え方、こういった御努力につきましては大変貴重なものであると存じます。

 ぜひ、この政治の場におきまして、こうした意見等も踏まえて丁寧な議論を続けていかなければならないと考えます。

 そして、御指摘のように、まだ、我が国はこの議論を行っている最中ですので、集団的自衛権の行使そのものも含めて結論が出たものではありません。御指摘のこの要件につきましても、安保法制懇の中での集団的自衛権行使の要件ということであります。この点、もちろん、この報告書を政府としていただいたわけですから、これもしっかり念頭に置きながら与党とも議論をし、そして、政府の方針を出していかなければならないと考えております。

 ぜひ、丁寧な議論を進めたいと存じます、国会におきましても、いろいろと御指導を賜りたいと存じます。

桜内委員 ありがとうございます。

 事例集というのも公表をされております。もちろん、十五の事例、貴重な事例ですので、きょうはこの中身について具体的に問うわけではないんですけれども、こういった議論の仕方がそもそもどうなのかということについて、少し質疑をさせていただきたいと思っております。

 よく言われますけれども、先ほども長島議員からも質問があったところではありますが、ポジティブリストあるいはネガティブリストということでいうと、こういった事例の研究ももちろん非常に大事だとは思うんですけれども、余りそこに入り込むと、やはりポジティブリスト、現行の自衛隊法に見られるような、そういったものに近づいていくのではないかなという懸念を持っております。

 特に、グレーゾーン事態への対応ですとか、警察力それから防衛力との境目、あるいは、不審船のように実は大砲まで持っていたというふうな、そういった事態にまさにシームレスに対応していくというときに、余り事例をそこに、この場合はできる、この場合はできないという議論をやっておりますと、結局、想定外の事態が起きたときに対応が不可能になってくる。

 こういった意味で、もちろん、事例の議論を深められるということ、その方向性が絶対だめだと言うつもりはありませんけれども、余りそこにこだわられるというのは、かえって実際の法制度をつくっていく際にやや問題があるのではないかなと考えるわけですけれども、その点、いかがお考えでしょうか。

平松政府参考人 お答えいたします。

 事例集でございますけれども、これは与党からの指示に基づきまして、与党協議における議論のために、現在の国内法制の課題が何か、国民にわかりやすい形で御説明をするということでございます。

 あくまでも事例ということでございますので、その事例の研究の中で、今の法制の中で何ができるかということを検討するためにあるものでございますので、我々が対応しなきゃいけない事態というのはそれに尽きるわけではないということでございますので、今委員御指摘のとおり、いかなる事態においてもシームレスに対応するということは極めて重要でございますので、こういった事例を研究しながら、いかなる対応が必要かを検討するということになります。

 いずれにしても、与党協議も進められておりますので、政府として、対応を予断することなく、協議の議論を注視していきたいというふうに思っております。

桜内委員 事例もしっかりと議論しつつも、しかし、目的とするところは、やはりどういった事態にも対応できる、想定外ということはないような法制度をぜひつくっていただきたいという希望を述べておきます。

 そして次に、少し細かくなりますけれども、ぜひ大臣の御見解をお伺いしたいところがあります。それは、この安保法制懇のくだりの中で、少し読み上げますと、「本来は集団的自衛権の行使の対象となるべき事例について、個別的自衛権や警察権を我が国独自の考え方で「拡張」して説明することは、国際法違反のおそれがある。」というくだりが、二十三ページですけれども、あります。

 よく、この集団的自衛権の行使を認めるか否かという論点の中で、ほぼ全ての事例について、個別的自衛権で、あるいは警察権の行使ということで対応可能ではないかという意見も耳にするところでございます。それをこの安保法制懇の報告書の中では明確に否定をされております。

 なぜ国際法違反なのかというと、要は、集団的自衛権の行使の後、当然ながら、国連憲章五十一条に基づいて、我が国がとった措置について国連安保理に報告する義務が生ずる中で、それが集団的自衛権の行使なのか、あるいは個別的自衛権の行使だったのかということについて、通常の一般的な国際法上の解釈からして、普通はこれは集団的自衛権だよねというものを個別的自衛権で対応しましたなんて国連に報告した際には、これはやはりおかしいんじゃないかということが論拠として書かれてあるわけですけれども、ここは私は非常に重要な論点だと考えております。

 というのは、冒頭申しましたけれども、我が党は某党との政策協議の中で、一方は、個別的自衛権あるいは警察権の行使で対応可能ではないかという意見をお持ちの方々がいらっしゃって、我が党の取りまとめた見解によれば、そういうこそくなことをしてはいけない、集団的自衛権を正面から、憲法解釈を適正化して認めていった上で、要件を明確化して歯どめをかけていくというふうな議論をしている中で、これは真っ向から実はそういった異なる見解になっているんじゃないかなというふうに考えております。

 安保法制懇の報告書はこのように、個別的自衛権あるいは警察権の行使の拡張ではなく、集団的自衛権の行使を必要最小限度の範囲で認めていくというような論旨に見えるわけですけれども、現在の大臣のお考え、どんなふうにお考えなのか、お聞かせください。

岸田国務大臣 例えば、政府として、与党協議に際して示させていただきました具体的な例の中を見ましても、個別的自衛権あるいは現在の法体系の中で対応できるものがあるというのは、事実だと存じます。

 しかし、我が国に対する武力行使がないケースにおいて対応できなくていいのか、こういった問題提起もさせていただいている、こういったことであります。

 そして、個別的自衛権と集団的自衛権、これは、国際法上、我が国に対する武力行使があるかないかということにおいて明確に一線が引かれています。加えて、集団的自衛権行使に当たっては、武力行使を受けた国から個別の要請等を受けなければならない、こういったことになっています。こういった条件は、個別的自衛権にはないわけであります。

 こういった、論理上、集団的自衛権と個別的自衛権は一線が引かれているわけですから、我が国の都合で個別的自衛権を勝手に拡大するというのは難しいと思っておりますし、そうしたことをやってしまうと、逆に、我が国の行為が国際的に武力行使というふうに認定を受けてしまう、こういったことにもつながりかねません。

 こういった国際法上の集団的自衛権と個別的自衛権の線引き等も踏まえながら、我が国としてどう対応していくのか、これを丁寧に、真剣に議論をしていかなければならないと認識をしています。

桜内委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、最後、大変明確な答弁をいただきました。ありがとうございます。

鈴木委員長 次に、阪口直人君。

阪口委員 日本維新の会の阪口直人でございます。

 きょうは、PKOにおける駆けつけ警護に絞って、日本がとるべき対応について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、私の考えとして、目の前の救える命は救わなくてはいけない、これは大前提だと思います。特に、自衛官の方々がこの問題に対して対処できないとすれば、それは大変じくじたるものがあると思います。

 一方で、実際に救出をする、この行為の中には大変に多くのリスクが存在することも事実でございます。私自身、カンボジアにおいて、和平合意が結ばれたにもかかわらず、なし崩し的にその停戦合意が崩壊をして、そして、さまざまなPKO要員の業務が拡大していく中で、私は当時国連の文民要員として活動していたんですが、仲間を失う、そういった経験をいたしました。これは、総理が先日の説明の中でもおっしゃった中田厚仁さんなんです。

 私は、そういった経験に基づいて質問したいんですが、まず、戦争というのは必ず人が死ぬんです。そして、武力の行使をすることによって、外国人を殺傷して、また、多くの民間人を巻き添えにする可能性もあります。そして、自衛隊員もお亡くなりになる可能性が大変に高くなります。

 まず、防衛大臣にお聞きしたいんですが、命令を下す立場として、このことをどのように受けとめていらっしゃるのか、お考えをお聞きしたいと思います。

小野寺国務大臣 私どもとしての役目というのは、国民の生命財産、我が国の領土、領海、領空をしっかり守っていくということだと思います。その中で、私どもに任務が与えられれば、それは私どもとしてできる限りの努力をする。これは、自衛隊員の宣誓の中には、我が身顧みずという内容がございます。その服務の宣誓は、全ての自衛官がしっかりしているというふうに思っております。

 他方、その中で、私どもとして、やはり、それだけの任務を付与するわけですから、十分な準備、あるいは訓練、装備、そういうものもあって初めて行えるものだと思っております。その点につきましては、これは国会の議論も踏まえながら、やはり隊員の任務についての、しっかりとした任務が遂行できる環境を政治の場でつくっていくということは大切なことだと思っております。

阪口委員 今、我が身を顧みずということをおっしゃいました。自衛隊法施行規則三十九条によると、我が国を防衛するために、「危険を顧みず、」、そして「身をもつて責務の完遂に務め、」る、このように書いてございます。

 しかし、「危険を顧みず、」とは書いてあっても、命をささげるとは書いていないわけです。そして、実際に自衛官になられた方、外国における戦闘行為によって自分の命が失われるということを想定して、自衛官になった方がそこまでの覚悟をお持ちなのか、これは大変に重い問題だと思います。

 この点、大臣としては、実際に集団的自衛権が行使されることになったときに、どのように自衛官の方々に説明をされるのか、もう心の準備はできていると思いますが、大臣の言葉でお聞きをしたいと思います。

小野寺国務大臣 これは、自衛官に限らず、警察官、消防、さまざまな分野の、例えばこの国の安全を守っていく役割を担っている公務員、あるいはそれに準ずるような方々は、自分の役割を全うするために、危険な状況にあってもしっかりとした対応ができるように、日ごろから準備をされていると思っております。

 私どもも、今回、今議論をされておりますけれども、今後、さまざまな議論の進展の中で、例えば自衛隊法の改正等で新たな任務が付与されれば、無事に任務が完遂できるように、そのための準備をしっかりするということだと思っております。

阪口委員 任務を完遂する、この中で公務員の方々が命の危険に遭遇するということはあるでしょう。東日本大震災の中で、大臣の地元の女性の方ですね、命の危険が迫っているにもかかわらず、避難してくださいというアナウンスを最後の最後まで続けた女性の公務員の方もいらっしゃいました。

 しかし、命が失われるかもしれないということを前提で紛争地域に赴くということは、これはまた、覚悟のあり方というのは私は異なるものだと思います。したがって、この点については、本当に冷静かつ現実的な議論をしていかなければいけないと私は思っています。

小野寺国務大臣 先ほどの任務の完遂という中には、もちろん、その任務に当たる隊員の安全、これも入っておりますので、少なくても、やはり、隊員の安全がしっかり確保される中で私どもに与えられた任務がしっかりとできるような、その体制をつくっていく、準備をしていくということだと思っております。

阪口委員 さて、金曜日に私は外務委員会でこのテーマで質問したので、きょうは続きという面もあるんですけれども、大臣が答弁された中で、駆けつけ警護について、他国と同じように駆けつけ警護を行えないということは問題だ、そのようにお答えをなさいました。

 私は、自分自身がPKOに参加するときに、PKOにおけるマンデート、これはそれぞれのPKOの前に文書によって確認されるものだという認識ではいたんですけれども、今大臣がお答えになった点についての法的根拠を改めて調べてみました。

 例えば、アメリカの陸軍は、オペレーション・ロー・ハンドブック二〇一三の中に、基本的には、国家の防衛についての規則は、防御の対象者または対象物に関しては異なっていることもあり得る、このように述べております。そして、特化した権限が付与されていることが必要である。つまり、駆けつけ警護が行えるかどうかは、米軍においてさえも、そのことが明快に書かれていないと、そのような任務には参加できないということでございます。

 また、米軍だけではなくて、カナダにおいても、ユース・オブ・フォース・フォー・CF・オペレーション、このカナダ軍の規約の中に、やはり、適切な交戦規則上の措置が認められている場合に限りということで、このような言葉で、駆けつけ警護が行えるかどうかというのは、あくまでもそのことが明記されていなければならない、すなわち、明記されていない状態で駆けつけ警護を行う国というのは基本的にはないんだということでございます。

 ですから、この点は私は明確にする必要があると思います。

 一方で、現状を申し上げると、これは、私も、さまざまなボランティア団体の方々と、戦場における安全の確保ということで勉強会を行ってまいりました。その中で彼らがおっしゃっていることとして、強行突入によって邦人の命が救えることはほとんどないということもおっしゃっております。

 要するに、私は、自衛隊として目の前の救える命は救うべきだと思っておりますが、実際に例えば人質事件が起こったときに、そこに強行的に突入していくことが問題の解決につながるのかというと、やはり第一に行うべきは交渉だと思うんですね。その交渉を行う際に、これはやはり、中立的な立場であるということが大変に重要な要件になってくると思います。

 この紛争地域における駆けつけ警護の有効性ということについては、大臣はどのように考えていらっしゃるんでしょうか。リスクを踏まえた上で大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、冒頭の私の答弁につきましては、たしか委員の方から、駆けつけ警護を行えるようになることによって逆にリスクが高まるのではないか、こういった御質問をいただいたものですから、私の方から、我が国以外、ほかの国においては現状駆けつけ警護ができる、そのことがリスクの高まりにつながっているのかどうか、この点も踏まえながら考えなければいけない、こういったやりとりをさせていただいたと記憶をしております。

 そして、その次に触れられました駆けつけ警護の根拠の点であります。アメリカの例を出していただきました。

 我が国におきましては、これまで、駆けつけ警護につきましては、このような武器の使用は、国家または国家に準ずる組織に対して行ったときは、憲法九条の禁ずる武力の行使に該当するおそれがある、ところが一方、武器使用の相手方が国家または国家に準ずる組織に当たらない仕組みを設定することができるのであれば、武器使用権限を拡充することも憲法上許容される、このように従来から政府としても説明をしてきたところであります。

 この国家または国家に準ずる組織の認定のありよう、あるいは具体的にこうした駆けつけ警護に対するニーズ等を踏まえますと、検討する必要があるのではないかということで現在議論が行われているところです。

 そして、現実において駆けつけ警護が有効に機能するのだろうかという御指摘だったかと思いますが、実際にいろいろなケースがあると思います。武器の使用が適当でないと判断されるケースももちろんあり得るのではないかと想像はいたします。しかし一方で、我が国として駆けつけ警護という選択肢をそもそも持たないということでいいのだろうかという問題意識もあります。こういった点も踏まえて、我が国としてどうあるべきなのか、今議論を行っているというふうに認識をしております。

阪口委員 私の考えは、駆けつけ警護という選択肢を完全に排除するという考えには立ちません。最初に申し上げたように、救える命を救うこと、これは大変に重要であります。ただ、実際に紛争地域において自衛隊が救える命、これはこの行動のリスクを考えると非常に限られてくるということを申し上げたいわけでございまして、この点については現実に即した冷静な議論が必要である、このように思うわけでございます。

 例えば、駆けつけ警護の行使が可能になった場合、同じPKO部隊の軍を救出することができる、助けることができる、日本人を助けることができる、こうなったとしましょう。そして、例えば、周辺の住民が救援を要請してきた場合、それが極めて人道的な理由で何とかしなければいけない、日本の自衛隊に対する期待が高まったときに、これはどのように対処をすべきなんでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、現実に駆けつけ警護を実行し得る、あるいはしなきゃいけないという状況にはいろいろな異なる状況がございますし、そのたびに、リスクにさらされている、脅威にさらされている対象も違いますので、対応はケース・バイ・ケースで慎重に検討するということになると思います。

 委員御指摘のような、一般の文民が何らかの形で非常に大きな脅威にさらされているときに、最初に考えるべきは、その地域あるいは地区の治安の維持を誰が担当しているのか、それをその国の治安、警察機関が実行し得る状況にあるのか、そうでなければ、それをいわば代替する形で行っています国連のPKOの中の治安維持あるいは安全確保に携わっている部隊が出動可能な状況にあるのか等々を勘案して、最も適切な対応をとるということになろうかと思います。

中島政府参考人 自衛隊の対応についてのお尋ねでございます。

 今先生が挙げられたケース、これは個別具体的な状況によりまして判断する必要があろうかと思いますけれども、一般論として申し上げますと、法制の関連でいいますと、現在、国際平和協力法二十四条第三項に定めます、自己とともに現場に所在し、その職務を行い、自己の管理下に入った者に当たるというふうに評価される場合には、その生命または身体を防衛するため、この規定により許される限度におきまして、武器を使用することが可能となっておるところでございます。

 他方、自己の管理下に入っていると評価され得ない場合、自衛隊が今申されたような方々の生命または身体を防護するために武器を使用することは許されず、先ほど内閣府の方から御答弁いただきましたとおり、現地の当局を含みます現地の治安それから当該の者の安全の確保に責任を有する者の対応を待たざるを得なくなるというふうに考えられます。

阪口委員 この点は、恐らく、現地に展開する自衛隊の方にとっての大きなジレンマにつながる点だと思います。まさに、私は、法律によって歯どめをかけることが必要で、警護の対象をなし崩し的に拡大する、これは結局、地域の住民を誰が攻撃するのか。紛争地域の村というのは、昼間は普通の住民であっても、夜はそこが武装勢力の拠点になるというようなこともあり得るんですね。非常に複雑であります。ですから、本当に難しい判断が迫られるんですが、ただ、自衛隊は、先ほど申し上げた、他国の警護をする、日本人は守る、にもかかわらず現地の人は守ってくれないのかということになると、これはもともと何のために自衛隊が展開するのかということに照らし合わせると、大変現地の方々の信用をなくすことにもなる。このあたり、本当に難しいんです。

 ですから、とにかくありとあらゆる可能性を想定した上で、この駆けつけ警護を行う上でのリスクというものを徹底的に議論する必要がある、これが私の最も問題提起をしたいことでございます。

 一方で、先ほど、NGOの方々と安全に対する議論をしてきたということを申し上げましたが、日本国際ボランティアセンター、JVCというアフガニスタンで長く活動してきた団体がございまして、この中で、「軍が平和をつくるんだって?」というブックレットを発行した方がいらっしゃいます。その中で述べられていることは、とにかく、そのJVCが、アフガニスタン、本当に危険が伴う中で何とか日本人の死傷者を出さずにやってこられたのは丸腰であったからだ、軍との中立性というものをしっかりと担保して、それを周辺にも伝えてきたからだということを明快におっしゃっています。

 ですから、私が申し上げたいことをもう一度申し上げると、目の前の救える命は救えるようにすべきだ、しかし、そこに伴うリスクがとてつもなく多くあるということを徹底的に分析した上で、この問題に対する結論を出すべきだということでございます。ぜひ、真摯な、そして冷静な議論と御検討をお願いしたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘でございます。

 本日は、安全保障委員会と外務委員会の連合審査会におきまして質問の時間をいただけるということにつきまして、本当にありがたく思っております。

 それでは、質問に移らせていただきます。

 先ほど渡辺周委員の質問を伺っておりまして、これは質問通告にはないことでございますが、簡単に質問させていただきたいというふうに思うんです。

 岸田大臣に伺いたいと思います。

 私も本日、こちらにブルーリボンをつけさせていただいておりますし、大臣もブルーリボンをつけていらっしゃる。ふだんは小野寺大臣もつけていらっしゃると思います。何とか北朝鮮から拉致被害者を奪還していく、その思いというものは共通しているかと思います。

 このたび、北朝鮮の拉致問題というものが大幅に進展するのではないかというふうな観測もある中で、さまざまな報道に非常に大きな違和感を感じているということも事実です。それは何かと申しますと、北朝鮮に再度の調査をさせるということの、その調査という言葉なんですね。

 これは、はっきり、明確に言えば、拉致をした、そういう犯罪者に対して、実際、拉致をした人がどこにいるかどうか、正直、わかっていることだろうというふうに思うんですね。もちろん我々、日本が、さまざまな失踪者の中にもいろいろな方がいらっしゃいます。本当に北朝鮮が拉致したかどうかというのはわからないという中で、そういうふうな、北朝鮮が拉致したのではないかというふうに言っているという方ももしかしたらいらっしゃるかもしれません。しかしながら、実際に拉致をしたのではないかというようなことについては、北朝鮮からすれば、そういうことをしたということで自白をするとか、最低限、認否をするとか、そういう文言、第三者のように、調査をするというような文言を使うということは、そもそもにおいて妥当ではないのではないかというふうに感じるところではございます。

 それはさておきまして、そういう意味でも、実際、拉致をしたという人がどこにいるかどうかというのはある程度はわかっていることだろうというふうに思います。ゼロベースで調査したけれどもわかりませんでしたというようなことにならないように、今回、日本も独自の制裁を解除するというようなことでございますから、結果として譲歩し過ぎてしまったということにならないようにお願いをさせていただきたいというふうに思いますが、この点について一言お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、今回の日朝の政府間協議の結果、出てきた今回の文書、政府間の考え方ですが、実効性が伴わなければならない、これはもう御指摘のとおりであります。そのために、特別調査委員会の立ち上げ、そしてさまざまな調査の進め方についても確認をしたわけであります。

 今、拉致被害者の御家族の方々も高齢化が進んでいます。本当に限られた時間だと思っています。この中で、政府としては全力で取り組まなければいけない、そして何よりも、結果を出さなければならないと考えています。さまざまな御意見があるということ、これについてもしっかり受けとめなければならないとは思いますが、ぜひ、このチャンスをしっかり捉えて、結果に結びつけるべく、政府として、そしてオール・ジャパンでしっかり取り組んでいかなければならないと認識をしています。

三谷委員 ありがとうございます。まさにオール・ジャパンでこの問題に取り組んでいければ、私もそのように考えております。

 それでは、質問通告させていただいた中身について移らせていただきます。懸案のいわゆる集団的自衛権の問題でございます。

 私は、自分の父親が海上自衛官だったというようなこともございます。そういう意味では、もしかしたら、一般の有権者からすると、安全保障に対する考え方というのは非常に関心がある、非常にさまざまな取り組みを今までも前向きに考えてきたというところはあろうかと思いますが、その一方で、やはり、もし有事が起きた際には、真っ先に命を失うというような立場が自分の家族、家庭の中にあるということでは、もちろん、有事ですとか武力の発動、そういったことについては謙抑的でなければいけない、もしかしたら、これはほかの方々よりも切実に感じてきたというようなところもあろうかというふうに思います。

 その意味で、冷静な議論をさせていただくという中で、やはり集団的自衛権の問題というものは、本当に、今、国際環境の中で、これは行使しなければいけないものなのか、その必要性があるのかどうかという議論と、それから、それは必要であるというような前提が満たせた上で、どういう法的な根拠に基づいてそれを認めていくのかという許容性の議論、私は法律家として、必要性の議論と許容性の議論、双方常に意識しなければいけない、これは常日ごろ考えているわけでございますが、それを両方冷静な議論をしていかなければいけない、このように考えております。

 きょうは時間も限られておりますので、主にこの必要性の議論をさせていただきたいというふうに思います。

 その質問に移ります前に、一点だけ質問をさせていただきたいと思います。

 国家安全保障戦略について。国家安全保障戦略をつくられたわけですけれども、党内でもさまざまな議論がありまして、懸念する人は懸念するというところでございますので、この点について、確認だけさせていただきたいと思うんです。

 この国家安全保障戦略の「2 国家安全保障の基本理念 1 我が国が掲げる理念」、ここに何て書いてあるかというと「我が国は、戦後一貫して平和国家としての道を歩んできた。専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、」そういう基本方針を堅持してきたというふうな言葉があります。これは今までの日本のあり方だということでございます。

 その章の最後のところですが、「これらを踏まえ、我が国は、今後の安全保障環境の下で、平和国家としての歩みを引き続き堅持し、また、」云々かんぬんで、「国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、」そういう「国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していく。」。これからの議論の中には専守防衛という文言が欠けている、だから日本は専守防衛という議論を捨てたんじゃないかというような、これは文言上の、ある意味、私からすれば非常にささいな指摘だと思いますけれども、そういうことではないということで、一応、念のため確認させてください。

岸田国務大臣 御指摘の国家安全保障戦略の中にも明記されておりますように、我が国は、戦後一貫、平和国家として歩んできました。専守防衛に徹し、軍事大国とならず、さらには非核三原則、こうした原則を守りながら歩んできました。

 この平和国家としての歩み、これは引き続き堅持すると明記しているわけですが、その中にあって、この専守防衛という考え方、これは憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢ということであり、我が国の防衛の基本的な方針であります。この専守防衛も含めまして、平和国家としての歩み、これは引き続き堅持するというのが我が国の姿勢であります。

三谷委員 ありがとうございます。

 それでは、集団的自衛権の必要性の議論に移らせていただきます。

 先ほど来、桜内委員がさまざま指摘をされました。この集団的自衛権に関するさまざまな議論というのを聞いておりまして、個別的自衛権で対処できるんじゃないかですとか、警察権の行使ということで対処できるんじゃないかとか、そういうような議論というものがされている。そういう方々がいらっしゃるのは、私も理解をしております。しかしながら、この点こそが戦後日本が犯してきた過ちの上に基づく議論じゃないか、私は率直にそのように感じております。

 これはどこから端を発しているかというと、個人的には、憲法九条の問題、憲法九条において武力を持たないというようなことが書いてありつつも、やはり、国際社会の中で、必要性に応じて自衛隊というものを創設してきた。これは、自衛隊がなくて、全く非武装中立であれば、日本の安定、平和が守れるかのような議論というのが、一時期、ある程度の勢いをもってされてきた。

 でも、本当に政治の責任を果たすという役割からすれば、そういうようなファンタジーに基づいて国家を運営していくことはできないという中で、これは、本来的には、私は、憲法九条を改正してしっかりと自衛隊というものを位置づけるべきだ、そのように考えておりますけれども、それを解釈というやり方で自衛隊というものは認めてきた。これが、本音と建前というものが乖離している今の日本の現状というものを生み出してしまっている一つの大きな原因ではないかというふうに考えているわけです。

 口先ではさまざまなことは言いますけれども、その中で、本当に難しい、一番きつい議論から逃げる、そういうことで本当にこれからの政治の役割、政治の責任というものを果たしていけるのか、私はそのように考えております。

 だからこそ、有権者の皆様、国民の皆様からすれば、余り聞きたくない、余り耳になじむ話ではないかもしれないけれども、あえて必要に応じてしなければいけない議論もあるのではないか。それが今回議論されておりますさまざまな、本当に個別的な自衛権、警察権で対処できるのかどうか、その限界事例の検討なんだろうというふうに思います。

 その中で質問させていただきますけれども、邦人輸送の米艦防護というものが一つ例とされておりますけれども、この米艦の中に邦人が乗せられているということで、これを個別的な自衛権というもので本当に守ることができるのか、または警察権の行使ということで守ることができるのかということについて、これは率直に防衛大臣の御見解を伺いたいと思います。

小野寺国務大臣 これは、今回の、政府が与党の求めに応じて示させていただきました事例の八番、邦人輸送中の米輸送艦の防護ということでありますが、このケースにおきましては、これまでの整理では、米艦に対する武力攻撃を察知したとしても、その防護を行うことは憲法の禁ずる武力の行使に当たり得るというような考え方を示させていただいているということであります。

三谷委員 個別的な自衛権というような国際的な解釈というものがあるわけでございますが、国際的な解釈からすれば、その個別的な自衛権、米艦が何らか侵害を受けた、艦船に対する侵害というのはその国に対する侵害とほぼほぼ同視できるものだというふうに考えておりますけれども、その中で、それは日本に対する侵害だというふうに認めることができるのかどうか。

 そういう議論を仮につくるとしたら、日本の艦船または日本のそういった船籍がそういう米艦にどれぐらいの距離に近接していなければいけないのか、そういった議論とかも当然出てくるわけですし、本当に時宜に応じた反撃というものを行うことができなくなってしまうのではないかというふうに思うわけでございます。

 ほかにも、シーレーンの防護というような問題もあります。一つ一つ議論していくと、なかなか時間が限られておりますけれども、このシーレーンに関しても、一つの議論としては、そこを通る、通過するタンカーのうち五%は日本のタンカーだ、日本船籍のタンカーだ、だからこそ、そこに敷設された機雷というものは日本に対する武力の攻撃だ、または武力行使の着手だと言って個別的自衛権を発動する、こういうような見解もあるやに聞いておりますけれども、これというのは、率直にどのようにお考えでしょうか。

小野寺国務大臣 これも先ほど来さまざまな議論が出ておりまして、実際、今回の事例の中でもお示しをさせていただいていますが、やはり大切なのは、国際法上、武力の行使、これが個別的なのか集団的なのかということは、これは国際法上でしっかり立場に立って考えなければいけないと思っています。そうでなければ、もしかして、逆に、私どもの議論でこういう一つの方向を出したとしても、最終的に国際法違反という中で、もっと日本としての信頼を失うことになると思います。

三谷委員 今のお答えは、本当に全くもってそのとおりだと思うんですね。今の、我々はあくまでも国際協調主義をとっていく、世界の中で認識されている解釈に基づいて自衛権というものも解釈していく、これは当然のことです。日本だけが独自の解釈をとって、それでその権利を行使するなんということをしていったらどうなるか。日本が何をする国かわからないと、本当に信頼を失いますよ。

 だからこそ、我々は、国際法というものをしっかりと遵守するという中で、これは冷静な議論をするためには、本当に集団的自衛権は認めないということであれば、そういう米艦防護ですとか機雷の除去、これは諦めないといけないんです。諦めるのか、それともやらなきゃいけないのか。やるんだったら、集団的自衛権を認めるという方向にかじを切らないといけない。ここはまさに政治の問題ですよ。

 これはどっちが正しいという話ではありません。米艦に邦人が乗っている。それでも、やはり日本は、憲法九条そして今の個別的自衛権を堅持するという観点から、米艦が攻撃されたときもそれは守らないという判断をするということにするのか、やはり邦人を守らなきゃいけないということで、これは物すごい議論はあるかもしれません、そして、もしかしたら、人気が低下する、さまざまな悪評が立てられるかもしれないけれども、右傾化だ何だと言われるかもしれないけれども、あえてそういったことを認めていく。どっちをとっていくんですか。これが政治の決断なんです。

 これを口先でごまかして、個別的自衛権を積み上げていけば、警察権を行使するという今までの解釈、その延長線でそういったところにも対処できるんだということによって、本当に日本をファンタジーの国に追いやりたいのかと。

 私は、この議論をするときには、この場でもさまざまな場でも、それは皆様にしっかりと訴えていきたい、このように考えているわけでございます。

 質疑の持ち時間が終了したということでございますので、しっかりと皆様とこの点、議論させていただきたい、このように締めさせていただきたいと思います。

 それでは、ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、椎名毅君。

椎名委員 おはようございます。結いの党の椎名毅でございます。

 本日、外務安全保障委員会連合審査会ということで、十五分質疑時間をいただきました。短い時間ですけれども、精いっぱい頑張ってまいりたいと思います。

 昨年、政府の方でNSS、国家安全保障戦略を出していただきまして、そして今回、安保法制懇の報告書が出て、さらには憲法解釈について検討を始めたということで、安全保障にまともにきちんと向き合っていただくということで、私自身は非常に高く評価をしております。

 今、集団的自衛権に関する議論の中で、政策論と法律論がどうも混在しているように私自身は考えられてなりません。一番重要なのは間違いなく政策論だと思います。先ほど三谷委員もおっしゃっていましたが、政治が何をするか、これを決めることなんだと思います。

 まず最初に、一番大事なのは、現下の戦略環境を分析して、そして戦略を立てること、さらにはそれに対する実施計画をつくり、そして最後に法整備なんだと思います。この法整備の背景にあるのがあくまでも憲法解釈なんだというふうに思っています。

 そういう意味でいうと、憲法解釈の議論というのは本筋では全くないというふうに私自身は思っていますし、あくまでも戦略論であり、その後にやるべき法制度の整備、ここなんだというふうに思っています。なので、私たちが、我が国の主権、それから国民、領土という国家の三要素、これを守っていくために何をするのかということについて、改めて、NSSを拝見させていただいて、検討いたしました。

 この中では、非常に総花的であって、いいことが書いてあるんですけれども、どこに重点を置いてあるのかというところがいまいちわかりづらいというのが正直なところだったというふうに思っています。なので、NSS、国家安全保障戦略に関する部分について少し伺いたいというふうに思います。

 日本の安全保障の大前提として挙げられるのが日米同盟だというふうに思いますけれども、NSSを見ても、日米同盟及び安定的なアジア、特に日本に対する米軍のプレゼンスというのが大前提となっているように思います。しかし、在日米軍も、昔から考えると大分減ってきて、今五万人ぐらいだというふうに思います。今の米国の厳しい財政状況等を考えてみると、世界の警察としての役割というのは既に放棄をしております。米国は、リバランス戦略というのをとっていて、アジアにシフトしていく、そして中東に空白ができる、こういうことがこれから起きてくるわけだと思います。米軍の中心地も、日本、沖縄からグアムに移転をしていくということになるんだと思います。グアムに移転していくと、東アジアに少しパワーの空白ができるというふうに思います。

 こうした中で、我が国自衛隊が主体的な役割を果たしていかなければならないというふうに思っておりますが、特に、マラッカ海峡、それから南シナ海、そして台湾海峡、こういったシーレーンの確保というのは非常に重要だと思いますし、中東へのコミットメントというのも非常に重要だと思います。

 こういったところについての防衛大臣の御見解を伺いたいと思います。

小野寺国務大臣 まずは、日米関係の中の米国の今後のアジア戦略等についてですが、これは、先日、オバマ大統領がウェストポイントでの演説の中で、やはりこれからも米国は積極的に世界の平和、安定にコミットしていく、そういうお話があったと思います。

 また、ヘーゲル国防長官も、これは先月の二国間会談の中だったと思いますが、日本におきましての発言の中で、今後数年のうちに日本に新たに二隻のイージス艦を追加配備するというお話がございました。

 また、これは、フィリピンにおきましても、今後、フィリピンと米国は新たな協定を結びまして、米国がさらにフィリピンに深く関与するということもございます。

 委員が御指摘されました、シーレーンを含めた安全保障環境は大変重要でありますので、日本としても積極的にかかわってまいりますが、その前提としまして、やはり、日米関係、日米同盟が大変重要だと思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 日米同盟はもちろん重要なんですけれども、他方で、米国の軍事予算もカットされてきています。

 軍縮という表現をするのが正しいかどうかはさておき、米国の軍備に対する予算というのがかなり減ってきているという中で、他方で、我が国にとって最も脅威として感じるべきことは中国なんだと思います。中国の軍事予算は非常に拡大をしております。年率二桁%でずっと拡大している中で、我が国がそろそろ本当に主体的な役割を果たしていく、そういう決断をしなければならない時期なんだというふうに思っております。

 こういった中で、米国の国力低下とそれから中国の脅威の強大化、この二つに対処していくに当たって、日米同盟だけではやはり限界があるというふうに私自身は思っています。

 そうしたときに、日本を取り巻く、日本と価値観を共有する諸国、韓国、台湾、それから、オーストラリア、インド、済みません、台湾は撤回します、台湾は国じゃないので。韓国、それから、オーストラリア、インド、ASEAN諸国、そして、国以外の国に類似するところとして台湾、こういったところと協力をしていくというところまでやはり考えていかなければならないと思います。

 現在、二国間のバイの同盟で全てやっているわけですけれども、これを将来的に多国間同盟へと発展させていくという必要性は、やはり検討した方がいいんだと思います。こういった観点について、外務大臣に伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、厳しさを増す安全保障環境の中で、国民の命、暮らしを守るために政府として不断の検討を加えていかなければならない、これは当然のことであります。

 そして、その際に、アメリカに対する依存という御指摘もありましたが、政府としては、まずは、国際協調主義に基づく積極的平和主義の考え方に基づいて、外交手段等を通じまして、グローバルな課題等にしっかりと貢献をしていく、このことによって、日本の国の存在感ですとか、あるいは、好ましい環境整備に努めていかなければならないと思っています。

 そして、それに加えて、我が国として、しっかりとした防衛力の強化に努めていかなければならない。そして、あわせて、そのために基本となる安全保障の法的基盤についてしっかり整備をしておかなければならないということで、今議論をしているわけです。

 そして、それに加えて、日米同盟等、関係国との連携を強化することによって抑止力を高めていく、こういったものを総合的に整備することによって我が国の平和と繁栄を守っていく、これが我が国の基本的な考え方です。

 そして、これからに向けて、多国間の同盟等を考えるべきではないか、こういった御指摘がありました。

 こういった考え方も大変重要な考え方だとは存じます。ただ、アジアにおきましては、ヨーロッパのNATO等との比較を考えますと、例えば、関係国の発展段階が極めて多様であるとか、あるいは、そもそも政治経済体制が我が国と全く違う国もアジアに存在するわけでありますし、また安全保障観もさまざまですので、いきなりNATOのような多国間連携を考えるというのは、アジアでは今現時点では現実的ではないと考えていますが、御指摘の日米同盟ですとか、ARFですとか、あるいはEASですとか、さまざまな多国間の枠組みがあります。こういったものを重層的に整備することによって、トータルとしてアジア太平洋地域の安全保障を考えていく、平和と繁栄を維持していく、こういった努力は大変重要であると認識をいたします。

椎名委員 ありがとうございます。

 国の規模も、それから経済規模も、そして政治体制も、さらには安全保障観も違うということですけれども、恐らく、オーストラリアとそれから韓国は真っ先に多分共感できる国々なんだろうなというふうに思います。

 NATOも、必ずしも最初から今の体制にあったわけでは決してないので、少しずつ少しずつ大きくしていくということを検討していくのは、そろそろそういう時期ではなかろうかというふうに私自身は思っております。バイの同盟で、米国を中心としたハブ・アンド・スポークという関係自体が結構既に不健全な状況になっているように私自身には見受けております。

 次に、安保法制懇の話について幾つか伺います。時間の許す限り、伺います。

 法制局の方に伺いますけれども、法制懇の、解釈を変更という形で提言をいただいたわけですけれども、そもそも、憲法九条を含めて、憲法の行政解釈というのがどういった手続を経て行われるものなのか。そもそも論なんですけれども、こういったことを伺いたいというふうに思います。

 最高裁は、基本的には、判例変更をし、憲法解釈を変えるときには、大法廷判決という形で、小法廷から大法廷に回付をするわけですね。それによって、一定程度厳しい手続によって行うわけですけれども、行政解釈を変えるという意味でいうと、これは閣議ということで果たしていいのかということがまず一点。

 二点目が、これはあくまでも行政解釈なんだと思いますけれども、というのは、三権のうちの行政を規律するものだというふうに理解をしておりますが、裏を返すと、立法それから司法に対する法的な意味合いというのはどういう意味をもたらすのか、あわせて法制局の方に伺いたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 行政府における憲法解釈ということでございましたけれども、行政府において、いわゆる立憲主義の原則を初め、憲法第九十九条が公務員の憲法尊重擁護義務を定めていることなども踏まえて、日々の行政の中でその権限を行使するに当たって憲法を適正に解釈していくということは当然のことであり、行政府としての憲法解釈を適正に行うものであるわけでございますけれども、もとより、こうした行政府としての憲法解釈は、国会あるいは裁判所が憲法をどのように解釈していくかということを拘束するものではございません。

 内閣における決定の仕方でございますけれども、内閣法の四条第一項で「内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。」というふうに規定されておりまして、閣議決定というのは、内閣がその意思決定を行う最高の形式でございますけれども、内閣による憲法の解釈あるいはその変更というものについて、何か手続とか方式を定めてあるというものはございません。

椎名委員 ありがとうございます。

 時間もないんですけれども、憲法解釈については、立法それから司法に対する拘束力は基本的にないというのが、今いただいたお話だったかというふうに思います。

 行政というのは、法律に基づいて行う、法律に基づく行政というのが基本的な立ち位置だと思いますので、立法府が行政のあり方を規律する法律をつくるということが一番大事なわけですね。それを我々がやっていき、そして歯どめをかけていくというのが、これから行政の憲法解釈のあり方を踏まえた上で私たちがやっていかなければならないことなのではないかというふうに思います。

 特に自衛隊については、警察予備隊をベースにしていて、警察法等から導かれた法律ですので、ポジリストになっていて、自衛隊ができることというのは、基本的には例示列挙というか、列挙型なんですね。であるがゆえに、私たちがこれから法律をつくっていくに当たって、自衛隊ができること、これを規律していくことによって我々が歯どめをかけていくということになるのかなというふうに思っています。

 最後に、個別的自衛権の解釈の変更という立ち位置、考え方というのがあるというふうに理解しています。私たちの党の中でもそういう意見もありますし、そういう議論もなされています。集団的自衛権というものの定義それから個別的自衛権というものの定義が国際法上確定しているというような形で御説明をいただくわけですけれども、一応確認したいんですけれども、我が国に対して武力攻撃がないにもかかわらず、これを我が国に対する武力攻撃であると解釈して、個別的自衛権の行使だと主張していくことが許されないと先ほど桜内先生も指摘しましたが、安保法制懇の報告書の二十三ページに書いてあります。

 これがいまいちちょっとわかりづらかったので、最後に確認をしたいんですけれども、具体的にこの拡張をすることによって国際法上どういったサンクションが科せられることが予定されているのか、外務大臣に教えていただければと思います。

岸田国務大臣 先ほども少し答弁させていただきましたが、集団的自衛権と個別的自衛権、国際法上、我が国に対する武力行使があるかないかということにおいて、これは明らかに線が引かれています。

 加えて、集団的自衛権行使に当たっては、武力行使を受けた国から要請を受ける、こういった要件が課せられる、これは国際法上の考え方です。個別的自衛権にはこういったものは課せられない。こういった考え方がありますが、そういった中にあって、我が国の安全保障の法的基盤についてどう考えるか、これが今、議論が行われています。

 この議論の行方については今予断を持って申し上げるわけにいきませんが、一般論として申し上げるならば、個別的自衛権を我が国が一方的に解釈することによって、個別的自衛権だと言うことによって、結果的に、国際社会から、それは武力行使に該当するという評価を得るという可能性がないとも言えない、こういったことであります。

 その際にどんな制裁が科せられるかということですが、これはまさに個別具体的な案件によってさまざまではないかと想像をいたします。

椎名委員 ありがとうございます。

 時間も来たので終わりますけれども、やるかやらないかであって、法解釈それから法律を整備するのは、あくまでもそれを担保するためのものだというふうに私自身は思っています。戦略論とやるべきことを決めることが政治家の仕事です。今後とも頑張ってまいりたいと思います。

 どうもありがとうございます。

鈴木委員長 安全保障委員長にかわります。

    〔鈴木委員長退席、江渡委員長着席〕

江渡委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 集団的自衛権の問題について質問をいたします。

 安倍首相は、二十八日の予算委員会で、我が党の志位委員長に対して、湾岸戦争やイラク戦争などの国連の集団安全保障措置に加えて、アフガン戦争などの集団的自衛権のケースにおいても、武力行使を目的として戦闘行為に参加することは検討しないことを明言いたしました。

 ところが、先週公表されました事例集を見ますと、事例十四として、国際的な機雷掃海活動への参加が挙げられています。ホルムズ海峡など我が国の船舶が多数航行する重要な海峡に武力攻撃の一環として機雷が敷設された場合に、我が国の存立を全うするために国際的な機雷掃海活動に参加するというものです。

 しかし、武力攻撃の一環として敷設された機雷を除去することは、敷設した国に対する戦闘行為そのものであります。総理が、集団安全保障措置であれ集団的自衛権であれ、武力行使を目的として戦闘行為に参加することは検討しないと明言しているにもかかわらず、なぜ機雷掃海が検討対象に挙げられているのですか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の十五事例を先般政府として示させていただいたところでございますが、これは、総理が記者会見等で述べられておりますように、いかなる事態においても国民の命と暮らしを守るという意識から、現実に起こり得るあらゆる事態に対して切れ目のない対応をしていくということで示させていただいたものでございます。

 政府といたしましては、安全保障を考える際には、常に最悪の事態に備えながら、万全を期すために不断に努力していくことが必要と考えております。このような中でこの事例を示させていただいたところでございます。

 現在、与党でこの問題については検討されておりますが、今後、政府といたしましては、さらに検討を進め、対応をしていきたいというふうに考えております。

赤嶺委員 それは、総理の検討の前提条件と全く違うんじゃないんですか。

 集団的自衛権であれ集団安全保障措置であれ、戦闘行為に参加することは検討しないという明言を総理はしております。そうであるならば、戦闘行為そのものである機雷掃海について検討する余地は全くないのではありませんか。

山崎政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたように、我が国の安全保障、特に国民の命と暮らしを守るという観点から国際情勢を考えました際には、さまざまな状況がございます。特に、政府といたしましては、最悪の事態についても何らかの対応ができないかということについて検討する必要があると考えております。

 総理が述べられたことにつきましては、基本的な方向性の中で総理はこれまで方針を述べられておりますけれども、このような視点に立って、現在お示ししている事例を含めまして、どういう状況でただいま申し上げましたような政府としての切れ目のない対応ということができるかどうかということについて、今後検討させていただきたいと思っております。

赤嶺委員 全く、総理が発言した趣旨と今の答弁と整合性が私には理解できません。

 機雷の掃海は、敷設された機雷を取り除くことによって、相手国に近づいて艦砲射撃を行ったり、部隊の上陸を可能にするためのものであります。戦闘機による空爆や艦砲射撃などと同様に、戦闘行為そのものであります。政府もこれまで、武力攻撃の一環として敷設されている機雷を除去することは、敷設国に対する戦闘行動と考えられ、憲法で禁止されている武力の行使に当たる、このように説明をしてきました。

 総理は、戦闘行為への参加は検討しないとしながら、機雷掃海は検討するというのは、これはどういう根拠に基づいているのですか。全く整合性がないじゃないですか。

山崎政府参考人 御指摘のございました機雷掃海についての事例につきましては、我が国を含む国の船籍が通過をするような海域において機雷が敷設された場合の対応について、特に掃海という点からお示しをしたものでございまして、先生が今御指摘ございましたような上陸等のそういう事態については、その事例の中には含まれていないというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、政府といたしましては、国民の生活と安全を守るという観点から切れ目のない対応を、何ができるかを考えていくということで総理から御指示を受けておりますので、その視点から検討を進めていきたいというふうに考えております。

赤嶺委員 私は今、上陸の話は一切やっておりませんよ。

 政府がこれまで答弁してきたとおり、機雷の除去は敷設国に対する戦闘行動と考えられる、このように繰り返し言ってきているわけです。従来、政府は、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣する海外派兵は、自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないという説明をしてまいりました。ところが、公海上については明確な説明がなされてきませんでした。

 武力行使を目的として戦闘に参加することはないと言いますが、イラク戦争やアフガン戦争のように、戦闘行為には、地上での戦闘もあれば、公海上に展開する空母艦載機や巡洋艦から行われる空爆もあります。今度の機雷の除去の場合、公海上であれば検討の対象だ、このように考えているんですか。

山崎政府参考人 公海上で想定されるような事態かどうかということについても、現在お示しをしております十五事例の中で、公海上の事態については含まれております。

 現在、政府といたしましては、この十五事例をお示しした上で、与党協議、そしてその先の対応について検討しておりますところでございますので、現状においては、公海上の事態についても事例でお示ししている範囲で検討が行われているということでございます。

赤嶺委員 公海上であれば許されるというのであれば、戦闘行為には参加しないという総理の会見は、ごまかし以外の何物でもありません。今検討しているのは、まさに戦闘行為への参加を検討している、参加そのものであるということを強く、厳しく指摘しておきたいと思います。

 空爆であれ機雷掃海であれ、戦闘行為であることには変わりはありません。機雷掃海だけは検討対象だというのは全く通らない話だ。湾岸、イラク戦争での戦闘には参加しないという場合にそういう言い逃れは絶対にできないということを申し上げておきたいと思います。

 そこで、事例集では、具体的にホルムズ海峡という名前も例示されています。実際、イランの核開発をめぐって、二〇一一年末から二〇一二年にかけて緊張が高まりました。欧米諸国によるイラン産原油の禁輸の動きに対して、イランがホルムズ海峡の封鎖に言及し、牽制しました。

 当時、政府は万一の事態に備えた対応をとっていることを説明いたしましたが、当時の玄葉外務大臣は、記者会見で、平和的、外交的な解決を図る重要性を強調した上で、万一の事態に備えて、石油は二百日分、LNGは七十日分の備蓄を確保していることや、迂回するパイプラインがサウジアラビアの紅海に至るルートやUAEのホルムズ海峡の外に向けたルートで整備されていることに言及しています。

 枝野経済産業大臣は、IEA、国際エネルギー機関と備蓄の放出について協議していくことや、中期的にはLNGの供給源を分散化していく必要があることについて国会で答弁しています。

 外務省、経産省がそれぞれ当時どのような対策をとったのか、説明をしていただけますか。

上村政府参考人 お答えを申し上げます。

 まずは、私の方から、外務省の当時の対応でございますけれども、二〇一一年の末にイランがホルムズ海峡封鎖に言及するようになって以降、我が国は、イランに対しまして、この海峡の封鎖によって日本への原油供給が途絶しないように、さまざまな機会を通じて働きかけを行ってまいりました。

 当時、一番その緊張の高まった一月の時点では、私が中東局の官房参事官をしておりましたが、ここの在京大使の次席を呼びまして、この件に関して申し入れを行っております。

住田政府参考人 御指摘のとおり、我が国が輸入しております原油の八割以上、あるいは天然ガス、LNGにつきましては二割強がホルムズ海峡を経由して輸送をされておりますことから、ホルムズ海峡が万が一封鎖をされたという場合においても、我が国におけるエネルギーの安定供給確保というのは非常に大事だという観点から、私どもも対応を検討しておったわけでございます。

 当時、我が国は、IEAの基準、IEAの計算方法で計算をいたしますと、百六十八日分の石油の備蓄がございました。国家備蓄が九十五日分、民間備蓄も七十四日分あったわけでございまして、仮に、何らかの理由によって石油の供給不足が生じた場合には、こうした民間備蓄の基準備蓄量を引き下げるということでありますとか、あるいは国家備蓄の原油を放出するといったようなことにつきましても、体制を整えて検討しておったところでございます。

 また、当時のイランの制裁に向けた動きを受けまして、石油元売各社との間では、ヒアリング等を行いまして、石油供給への影響、あるいはイラン産原油に代替をするような原油の油種などについての聞き取り調査を行っていたところでございます。

赤嶺委員 そういう危機が生まれた場合に、石油は、一つは備蓄の問題、もう一つは供給源のリスクを回避していく、分散化していくという措置をとって対応してきていたわけです。

 大事なことは、万一の事態に備えて、経済活動や市民生活への影響を最小限にするための代替措置を一つ一つとっておくことです。その中には、国内での自然エネルギーの普及も含まれます。そうした対応をとっておくことが重要なのであって、これは、自衛権発動の対象になるような、我が国の存立を全うするなどという問題ではないということを指摘しまして、質問を終わります。

江渡委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 きょうは、国際情勢に関する件について質問をさせていただきます。

 この間、さまざまな委員の議論の中でも、やはり、どこで個別的自衛権あるいは集団的自衛権に関する歯どめをかけるのか、あるいは、先ほどもありましたとおり、そこが紛争地域であるか否かについて、まだまだ私たちはその議論を深めていかなくてはならないということを痛感いたしました。

 さて、私は、きょうは、さまざまな角度から、アメリカと我が国の同盟関係に関する質問をさせていただきたいと思います。

 まず、これは朝日新聞の記事ですが、アメリカの有力シンクタンク、戦略国際問題研究所、CSISと私たちは呼んでおりますが、このCSISは、アジア太平洋の主要十一カ国・地域の外交専門家を対象にアンケートを行った結果を公表しております。

 この中で、たくさんの項目がある中で、アメリカのアジア重視という項目について少し紹介をさせていただきたいと思います。

 オバマ政権が掲げるアジア・リバランス政策、いわゆる再均衡政策、このことについては我が国もかなり大きな役割のウエートを占めているということを私は認識するものでありますが、この政策についての質問で、ほとんどの国や地域の専門家が、全体平均で七九%、オバマ政権のリバランス政策については高い支持を示しています。ただ、中国だけが不支持が七七%となり、支持二三%を大幅に上回っています。中国に対抗的過ぎると指摘をし、米国主導の対中国封じ込め政策と捉え、警戒を強めていることが浮き彫りになっているということなんです。

 一方、そのリバランス政策への評価について、正しい政策だが、財源や実施が十分ではないとの回答が全体平均で五一%を占めているそうです。これは、米国専門家の七割も同じように見ており、オバマ政権のアジア政策の限界がアメリカの国内で認識されていることがうかがえるというふうになっております。

 二〇〇八年の前回調査で八割が支持した東アジア共同体の構築についての考えは、この十一カ国・地域の中で、今回も、強く支持する、三六%、そこそこ支持する、五三%となり、トータルで八九%です。期待の高さが浮き彫りになっています。ただ、実現に向けた動きについては最近は、大幅な進展があったかという質問には四%、ある程度の進展が五四%ということになっております。

 そういうことを考えると、やはりさまざまな国の専門家の方々の見方やあるいはアメリカ国内でも、このリバランス政策についてまだ不透明な部分が多いということが指摘されるのではないかというふうに思います。

 そこで、私は、このリバランス政策にやはり必要不可欠な予算に関することについて質問をしたいと思います。

 アメリカの上院軍事委員会は、二十二日、在沖海兵隊約四千人のグアム移転事業に関して、過去に計上された予算の執行凍結の継続を盛り込んだ二〇一五会計年度、これは二〇一四年十月から来年一五年の九月までの予算ですが、その国防権限法案を可決しています。アメリカの下院では、同じ日の二十二日の本会議で、グアム移転費の執行凍結を全面解除する条項を盛り込んだ国防権限法の下院案を賛成多数で可決しています。

 ですから、法案の一本化に向けては、年末に向けて、上院下院両院が協議をしていくということになると思います。

 上院軍事委員会のレビン委員長は、国防権限法案に執行凍結の継続条項を盛り込んだと説明をし、グアム移転の新規予算五千百万ドル、約五十二億円は全額計上を認めています。しかし、これは、グアム移転に関するアメリカ側総事業費五十五億ドルの一%未満にすぎないんですね。

 つまり、予算を認めたものの、まだ調査段階などのそれに必要な経費として予算を認めたにすぎないということになっています。ですから、米国防総省の計画のずさんさをアメリカ議会が指摘しているということで、予算の凍結でこの事業は現在のところ停滞しているということになっています。

 さらに、国防総省が四月に発表した計画によりますと、グアム移転に必要な年数は、従来は五年以上と割と短期的に見積もられていたんですが、これが十二年以上と変更されています。

 このことについては、日米両政府は、沖縄における嘉手納飛行場以南の土地の返還について、二〇一三年度の協定の見直しによりますと、牧港補給地区の海側百四十二ヘクタール、これは海兵隊の国外移転後に返還される百四十二ヘクタールプラスアルファの牧港補給地区の海側の部分なんですが、在沖海兵隊の国外移転の完了後に返還するとしている期日にも大幅なおくれが出るという可能性が高まっていることが、アメリカの議会の中ではそういう状況にあるということが日本には伝わっていないのではないか、国民の皆さんには。アメリカは、実はそういうふうに、非常に予算に対しては厳しい、その計画については懐疑的であるということが議論されている、つまり、予算はまだ凍結が全体解除されていないということです。

 この牧港補給地区の海側部分は、二〇二四年度またはその後となっております。嘉手納飛行場以南の土地の返還については、早いもので二〇一四年度またはその後の、キャンプ瑞慶覧、西普天間住宅地区の五十二ヘクタールを含めて年限が定められておりますが、必ずまたはその後というふうになっていて、アメリカの状況変化いかんによってこの返還計画も当然おくれるということも見込まなくてはならないというふうに書き込まれているわけですね。今回のアメリカの上院での予算凍結に関しては、まさにその状況を如実に示しているということにほかならないと思います。

 そこで、質問いたします。

 このグアムの、現地状況の変化による執行の凍結について、県内海兵隊基地の移転への影響について、防衛省の考えを伺います。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 在沖米海兵隊のグアム移転につきましては、嘉手納以南の土地の返還の進展にもつながることから、早期に実現させなければならない重要な事業であり、昨年十月の2プラス2共同発表におきましても、二〇二〇年代の前半から移転を開始することとされたところでございます。

 本年四月に米海軍省が公表しました補足的環境影響評価書素案において、グアム移転の期間に関する記述がありますが、これは米海兵隊による見積もりに基づくものであり、具体的な移転時期などについては引き続き米側において精査されるものと承知しており、したがいまして、今般の素案は2プラス2共同発表の内容に変更を加えるものではないというふうに考えているところでございます。

 また、二〇一五米会計年度の国防授権法案につきまして、米上院軍事委員会はグアム移転関連資金を凍結する条項を維持する内容の法案を可決しましたが、他方、委員からも言及がございましたように、米下院においては資金凍結条項を削除する内容の法案が可決されているところから、今後、米議会の両院において審議が続けられるものと認識しておるところでございます。

 政府といたしましては、このような米国の動向を今後とも引き続き注視していくとともに、沖縄の負担軽減を促進するという観点から、引き続き日米間で緊密に協力しながら、日米合意どおり事業が進捗するよう、グアム移転事業に着実に取り組んでまいりたいというふうに考えておる次第でございます。

玉城委員 確かに、私も調査をしたところ、下院の方では可決され、上院で、その権限法で凍結条項が織り込まれています。

 この凍結条項に関してレビン委員長は、アメリカ国防総省は我々の再三にわたる要求にもかかわらずいまだに基本計画書を提出していない、莫大な予算を必要とする計画で、妥協はできないというふうに述べているわけですね。この基本計画、マスタープランが提出できない主な要因は、計画のかなめであるグアムにおける実弾射撃訓練場の建設地がいまだに決定できず、移転後の海兵隊の配置などの全体像が定められないことにあるわけです。

 ですから、日本がこの2プラス2で協定を新しく結んだことを進めるという方針については、それは双方の理解の中で進められることであろうということを私も思料いたします。

 一方で、アメリカでは、計画全体がまとまっていない、そもそも論が、実現できていないということが大きな、この権限法について凍結条項が織り込まれているということになっているわけですね。

 そして、一方、このグアムの中で、では、実弾射撃演習場を移そうというふうに、新たな候補地を探しているわけですが、新たな候補地も、自然保護区の環境を損なう可能性が指摘され、再び難航する可能性が浮上している。

 グアム移転計画が進展したかのような印象が先行していますが、レビン氏は、たとえ普天間を辺野古の代替施設に移転する計画が今進んでいるとしても、グアムの受け入れ施設が整わなければ恐らく移転は難しいであろうと、普天間そのものにも懐疑的な見方を示しているということなんです。

 つまり、海兵隊の全体像が決まっていないにもかかわらず、決められたことだけを粛々とやりますと言っているのは日本側だけなんですね。アメリカでは、そういうことは認められないと。グアムでも、この環境影響評価法に基づいてもまだまだ問題があり、そして地域の住民の反対があるということが上がっているわけです。

 そういうことを考えると、この計画全体はさらにもっとおくれるということを、防衛省はあらかじめさらなる協議を米側と進めるべきではないかというふうに思いますが、その件について見解をお聞かせください。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、グアムにおきます実弾射撃訓練場選定の件でございますが、この件につきましては、補足的環境影響評価の作業の中で候補地が定められ、現在、その環境影響評価手続が進められているものというふうに承知しておるところでございます。

 また、二〇一四年度国防授権法におきましては、米国防長官に対し、資金凍結を解除する条件の一つとして、兵力態勢を実現するための施設整備に関する計画、いわゆるマスタープランの提出を求めているというふうに承知しておるところでございます。これを受けまして、現在、米国におきましては、マスタープランの策定作業が進められているというふうに承知しておるところでございます。

 繰り返しになって恐縮ではございますけれども、私どもといたしましては、日米間で緊密に協力しながら、沖縄の負担をできる限り早期に軽減するという観点から、日米合意どおり事業が進捗するよう、引き続き着実に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

玉城委員 沖縄における負担軽減、ぜひこれは実現していただきたい。これは間違いなく沖縄県民の総意だと思います。

 しかし、その一方で、嘉手納基地には無人偵察機が配備される、そういう方向にあり、さまざまな軍事的な脅威は、このリバランス政策によって、あるいは年末の改定に向けた日米ガイドラインの内容いかんによっては、基地負担の軽減どころか、さらなる基地の機能の強化につながるということが沖縄県内では大きく懸念されています。

 外務大臣に見解をお伺いしたいと思います。

 私は先般、五月十八日から二十三日にかけて米国に行きまして、さまざまな関係者の方々、政府関係者、シンクタンク、それから一般市民の方々とも意見を交換させていただきました。その中においてやはり痛切に感じるのは、今、アメリカのシンクタンクや政府の政策の関心は中国に向いているんですね。

 日本の問題、例えば拉致の問題、核開発、核、ミサイルの問題など、北朝鮮を取り巻く、そういう日本が懸念としている問題よりも、中国が今後どういうふうにしてその地域でいわゆる力を広げていくのか、あるいは、どういうふうにアメリカと連携していくのかというふうなことにアメリカのシンクタンク側の関心は移っています。つまり、日本はややパッシングされているという状況の中にあるわけですね。

 その中にあって、我が国ではこういうふうに、集団的自衛権の行使及び憲法の解釈などによる安全保障環境の法的基盤の再構築などについて、さらにしっかり審議を進めようという位置にあるわけですが、私が米国において専門家の方々と意見を交わしたところは、やはりどうしても、日本の国内情勢がこういう不安定な状況では、米国との親密な同盟関係、それを深化させていくということはままならないのではないかということです。

 つまり、国内でのその状況をもっと国民視線で議論を進めるということが必要であり、いたずらに、日程ありきの、年末のガイドラインに合わせた解釈改憲、あるいは、集団的自衛権を認める、限定的であっても安全保障における何かしらの変更を加えるというふうなことは、私は、非常に慎重にかつ慎まなければならないのではないかということを、米国に行ってそのように思います。

 最後に、大臣からその見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、我が国の国民の命や暮らしを守るためにどうあるべきなのか、これにつきましては、まずは我が国自身が真剣に考えなければいけない課題であると認識をしております。

 そのために、まずは、国際協調主義に基づく積極的平和主義の考え方に基づいて、外交手段においてしっかりとしたグローバルな課題にも取り組む等、我が国にとって好ましい環境整備を図るとか、あるいは我が国の存在感を国際的にも高めていく、こういった努力が必要だと思います。

 そして、それとあわせて、我が国自身の防衛力をしっかりと整備していかなければなりませんし、その背景として、安全保障の法的基盤というものをしっかりと整備しておかなければならない、こういったことで、今議論が行われています。そして、それとあわせて、日米同盟、関係国との連携を深めることによって抑止力を高めていかなければならない。こういった全体で、我が国自身として、国民の生命、暮らしを守るためにどうあるべきなのかを考えていかなければならない、これが基本的な考え方であります。

 その際に、やはり国民の理解が重要であるということ、御指摘のとおりだと思います。国民の多くの皆さん方からしっかりとした我が国の取り組みに対する理解を得るために丁寧に議論を進めていかなければいけない、これは大変重要な視点であると認識をしております。

玉城委員 ありがとうございました。

 アジア各国が日本に対する評価を損なうような形での行き過ぎた外交については、十分にかつ慎重に行っていくべきであるということを申し述べて、質問を終わります。

 ありがとうございました。ニフェーデービタン。

江渡委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 私は、憲法九条の規定に照らして、我が国が集団的自衛権を行使することはできないとの立場であります。したがって、憲法改正によらず、憲法解釈を変更して、閣議決定でもって集団的自衛権の行使を認めることは論外であると考えます。

 外務大臣にお聞きをしますが、最近、一九五九年、旧日米安保条約時代のいわゆる砂川事件最高裁判決から、集団的自衛権の限定的行使は認められるとの主張が自民党内で言われております。私は、砂川事件最高裁判決は、いかなる意味においても、我が国の集団的自衛権行使を認めるものではないと考えますが、外務大臣の認識はいかがでしょうか。また、その根拠もあわせて伺います。

岸田国務大臣 まず、今、政府としましては、安保法制懇の最終報告書のうち、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるといった限定的な場合に限って集団的自衛権を行使するということは、従来の我が国の憲法解釈で言う必要最小限度という中に含まれるという考え方について、研究を進めるということになっております。あくまでも、論理的な整合性あるいは法的な安定性が憲法の議論においても重要だという考えに基づいて、今議論を行っているところであります。

 そして、昭和三十四年の砂川事件の判決についてですが、この判決において示された考え方は、憲法九条に関する従来の政府見解の基本的な考え方と軌を一にするものであると承知をしておりますが、ただ、この判決を直接の根拠として今後検討を行うというものではないと考えております。

照屋委員 それでは、外務大臣、旧安保条約ではなくて、現在の日米安保条約は、我が国の集団的自衛権行使を前提としているんでしょうか。

岸田国務大臣 現在の日米安全保障条約ですが、我が国の施政下にある領域において日米どちらか一方に対する武力攻撃が生じた場合、日米は共同行動をとる、こういったものを定めています。

 この共同対処行動としてとられる我が国の行動、これは、我が国の施政下にある領域における米軍に対する武力攻撃が生じた場合も含めて、我が国に対する武力攻撃への対処というふうに認識をされております。よって、日米安全保障条約に基づいての対応については、我が国による個別的自衛権の行使として説明をされております。

 よって、安全保障条約に基づく対応については、集団的自衛権の行使には当たらないというふうに認識をしております。

照屋委員 今大臣がおっしゃったように、日米安保条約第五条は、日本国の施政のもとにある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃に対して共通の危険に対処するよう行動する、すなわち日米共同防衛を定めております。

 でも、その前に、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」との条文上の縛りがございます。だから、私は、憲法解釈の変更の有無によって集団的自衛権の行使容認をするのは、日米安保条約が憲法を超越した存在になること、すなわち、日米安保が憲法より優位に立つことを意味する、こういうふうに理解しますが、大臣の見解を伺います。

岸田国務大臣 御指摘の点ですが、日米安全保障条約の中で、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」ということについて再三強調しています。このことはまさに、日米安全保障条約が憲法をしっかり重視しているという姿勢のあらわれではないかと認識をしております。

 日本国憲法と日米安全保障条約を含む条約との関係については、政府としましては、従前から、憲法が条約に優位する、このように解しているということを申し上げてきているところであります。

 こういった態度と今の日米安全保障条約における文言、これは決して矛盾するものではないと認識をいたします。

照屋委員 大臣、御承知のように、私が住んでいる沖縄には、在日米軍の七四%が集中をしております。そして、一九七二年の本土復帰から今日までの沖縄の状況というのは、常に憲法よりも安保条約、軍の運用が優先をされてきた。それがゆえに、沖縄県民は基地の負担や犠牲を強いられて苦しんでいる、そういう実態。それから、沖縄戦の悲惨な、二十万余のとうとい命を奪われた。

 そういう歴史的な事実に照らしても、この集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更だけで決めるのは、憲法のハイジャックである、こういうことを改憲派の憲法学者すらおっしゃっておるということをぜひ肝に銘じていただきたい、そのことを強く申し上げて、私は、繰り返しますけれども、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認は認められないということを申し上げて、終わりたいと思います。

江渡委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後零時三十六分散会


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