衆議院

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第1号 平成26年10月29日(水曜日)

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平成二十六年十月二十九日(水曜日)

    午前十時十分開議

 出席委員

  外務委員会

   委員長 土屋 品子君

   理事 秋葉 賢也君 理事 江崎 鐵磨君

   理事 齋藤  健君 理事 武田 良太君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 長島 昭久君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      木原 誠二君    小林 鷹之君

      島田 佳和君    薗浦健太郎君

      渡海紀三朗君    東郷 哲也君

      中根 一幸君    星野 剛士君

      武藤 貴也君    玉木雄一郎君

      津村 啓介君    若井 康彦君

      青柳陽一郎君    阪口 直人君

      岡本 三成君    宮沢 隆仁君

      笠井  亮君    小宮山泰子君

  農林水産委員会

   委員長 江藤  拓君

   理事 齋藤  健君 理事 谷川 弥一君

   理事 宮腰 光寛君 理事 吉川 貴盛君

   理事 篠原  孝君 理事 村岡 敏英君

   理事 石田 祝稔君

      井野 俊郎君    池田 道孝君

      加藤 寛治君    金子万寿夫君

      川田  隆君    坂本 哲志君

      清水 誠一君    末吉 光徳君

      鈴木 憲和君    武井 俊輔君

      武部  新君    津島  淳君

      中川 郁子君    橋本 英教君

      堀井  学君    森山  裕君

      簗  和生君    山本  拓君

      渡辺 孝一君    玉木雄一郎君

      寺島 義幸君    坂本祐之輔君

      鈴木  望君    林  宙紀君

      稲津  久君    佐藤 英道君

      村上 史好君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   農林水産大臣       西川 公也君

   外務副大臣        中山 泰秀君

   外務大臣政務官      薗浦健太郎君

   外務大臣政務官      中根 一幸君

   農林水産大臣政務官    佐藤 英道君

   農林水産大臣政務官    中川 郁子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 上冨 敏伸君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 島田 順二君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    齋木 尚子君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         今城 健晴君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  松島 浩道君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

   農林水産委員会専門員   奥井 啓史君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより外務委員会農林水産委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 本件の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付の資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。

 これより質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉木雄一郎君。

玉木委員 おはようございます。民主党の玉木雄一郎です。

 日豪EPAの議論を深めていきたいと思っております。

 ただ、その前に、ここ数日、西川大臣に関しての一部メディアの報道がありますので、その点について少し確認をさせていただいた後、EPAの議論に入りたいと思います。

 まず一点目は、大臣の親族企業に対して政党の支部から支出が行われていて、親族あるいは大臣本人に対するそういった資金の還流ではないのかということが報じられておりました。きのうの大臣の閣議後記者会見のやりとりも聞かせていただいたので、大臣の一定のお考えについては承知をした上で質問をしたいと思うんです。

 そこでも少し出てきましたけれども、たしか大臣の御子息が代表を務めておられる企業がありまして、そことのいろいろな、事務用品のやりとりであるとか、そういったことが取り上げられておりました。

 これについてちょっと確認をさせていただきたいんですけれども、まず、大臣の御子息が会社を行っているのかということの事実と、そして、その同じ大臣の御子息様が、大臣の政策秘書、公設秘書を務めておられるのか、この点についてお答えいただけますでしょうか。

    〔土屋委員長退席、江藤委員長着席〕

西川国務大臣 今、物品の購入等の問題がマスコミで出ておる、このことについて、まず先に申し上げたいと思います。

 私の親族企業が大規模な商事会社をやっておりまして、その中で文房具等の扱いも、非常に大きな額を取り扱っている県内有数の取扱業者です。それが私の自宅の隣の敷地に建物を建て、仕事をしておりますので、しかし、大規模な、全国的な物流業者からの取引でありますので、安くて便利で早い、こういうことで、私はそこから物品、特に文房具とコピー用紙を購入しています。

 それから、私の長男が会社を経営しているか。やっておりまして、釣り堀やレストラン、さらには学習塾等も経営しておることは事実でございます。政策秘書を務めていることも事実です。

玉木委員 それに関して、私ども、事実に反することを質問してはいけないということで、インターネットで幾つか調べさせていただいたんですが、大臣は、御長男さんの書かれているフェイスブックとかブログをごらんになったことはございますか。

西川国務大臣 残念ながら、私はフェイスブック等については読んだことはありません。

玉木委員 私も、実はきのう初めて読ませていただいたんですが、今大臣がおっしゃったように、御長男さんがやっておられる会社は、釣り堀の、釣り掘といってもかなり大きな、フライフィッシングとか、そういう愛好家の方はたくさんいらっしゃるので、そういう釣りの企画とかをされていると理解していますし、九月からたしかレストランも開いている。そのことを私がなぜ知ったかというと、フェイスブックに事細かく写真入りで書かれてあるので、それを承知することができたわけであります。

 それを見てふと思ったのは、一番新しい更新がことしの七月なんですけれども、ずっとそういうことを書かれておるんですが、ある意味、これは企業のフェイスブックとしては非常によくできていて、釣りの話とかレストランの話だけが出てくるんですね。かなり、一週間でも三回、四回、平日、週末ともにそういった記事を書き込まれておられるんですけれども、例えば六月十日、火曜日です、日中釣りに行かれていることを書かれております。六月四日の水曜日は、この二つある方の、たしか矢板の方にある方ですかね、小さい方の釣り堀の掃除をしているという記事が出ておりました。

 何を申し上げたいかというと、フェイスブックを見ておりますと、会社の仕事は毎日のように一生懸命されていて、ちゃんとフェイスブックも更新されているのでよくわかるんですが、一方で、例えば、六月十日、六月四日、通常国会開会中ですね。政策秘書になられたのは、たしか前の選挙の直後の二〇一二年の十二月だというふうに思いますけれども、そこからもう約二年弱がたとうとしていますが、要は、政策秘書の勤務実態がないのではないのか。

 これは、私は疑っているわけではなくて、フェイスブックを見る限り、こちらの本業、まあ、どちらが本業かわかりませんが、大変お忙しい様子が書かれているので、政策秘書としての仕事ができていないのではないのかなと。

 そういう中で、政策秘書の給与、仮に、これは七月までですから、最低でも一年半ぐらいは、前の選挙からなっていますから、一千万円以上の給料になると思います。これが、勤務実態のない、親族である御子息である、会社を経営されている社長さんに支払われているということについては、私は非常に問題ではないのかなと思っています。

 というのは、兼職をされている秘書さんもいらっしゃいます、確かに。これは届け出をする。兼職を認めるのは、実は議員本人の権限と責任になっておりますので、大臣、この実態についてどうお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

西川国務大臣 今お尋ねがありましたけれども、たまたま、休んで、自分のお店の宣伝等に使うために書き上げたのではないかと思います。勤務実態もありますし、毎日、こちらか栃木の事務所か、両方に出ておりますことを申し上げておきたいと思います。

 土日に関しては、かわって平日休むときもありますけれども、できる限り私の政治活動のために仕事をしております。

玉木委員 私もこれを読んだら、宇都宮市内で飲食をされたりとか、そういうことも事細かく上げられているんですね。

 政策秘書ですから、どこで勤務しても大臣の政策をサポートするということでいいとは思うんですが、このフェイスブックと、またあわせて書かれているブログを見る限りにおいては、私は、勤務実態については極めてちょっと疑いがあるのかなと言わざるを得ないところがあると思いますので、この点については、大臣としても明確に御説明をされた方がいいのかなというふうに思っております。これを読んだ限りにおいては、日々議員会館にいる、あるいは地元の事務所でもって公設秘書としての活動をしているような実態は、残念ながらうかがい知ることができませんでした。

 ですから、この点については、大臣、もう一度、二〇一二年の十二月、これから今日に至るまで、しっかりとした公設秘書としての勤務実態が本当にあったのかどうか、この点についてお答えいただけますか。

西川国務大臣 勤務実態は、きちんと仕事をしております。あいているときは東京を中心に来ておりますし、栃木に用事があるときは栃木の方の仕事をしておりますし、政策秘書としての仕事はしっかり務めております。

玉木委員 もうこれはこれ以上聞きませんけれども、ちょっとそういったことが、インターネット上の情報を総合的に判断すると少し疑いを持ちましたので、まず冒頭、少し質問させていただきました。

 次に、大臣、もう一点だけ。これも報道が出ていたので確認だけなんですが、大変申し上げにくいんですけれども、一九七一年の話として報道されていますが、大臣は過去に逮捕された逮捕歴はございますか。

西川国務大臣 お話し申し上げますが、本件の記事は、今言われましたように、一九七一年九月のことだと思うんです。昭和四十六年、四十三年前の話でございます。ダムの汚職事件に絡み、県庁職員時代の私が建設業者から現金二万円を受け取って、収賄罪で逮捕されたとなっています。本件は最終的に不起訴処分になりました。

 実態は、私がけがをして入院をいたしました、そして、入院したときにお見舞金をいただきましたが、これが誤解されたものと思います。当然、これに関して職務上の何らの約束や取引をしたことは、断じてありません。

 それから、不起訴処分ということはよく覚えておりますけれども、私としては、何しろ月日がたってよく覚えていない部分もありますが、その後、県庁の出先機関から栃木県庁の農務部農政課に異動いたしました。私は、勤務歴九年、最短の勤務年数で一般吏員から主査にも昇格をさせていただきました。

 それから、以上が経過でありますけれども、四十年以上も前の件でありますから、十分な確認もなくこのような御質問をせざるを得なかったと思いますが、私としてはそういう経過であるということを申し上げておきたいと思います。

玉木委員 大臣、今、不起訴処分ということになったんですが、報道では起訴猶予処分、不起訴処分もいろいろある中の一つの形態が起訴猶予処分なんですが、これは起訴猶予処分だったということでよろしいですか。

西川国務大臣 不起訴処分をされた、こう答えさせていただきます。

玉木委員 不起訴処分というのは大きなカテゴリーなので、その中に幾つか、嫌疑不十分とかいろいろあるんですが、起訴猶予ということで報道されていますけれども、これは事実かどうか、お答えいただけますか。

西川国務大臣 せっかくこういう機会ですから、少し経緯を申し上げさせていただきますが……(玉木委員「もう一回、短いので」と呼ぶ)そういう事実で、報道されたことは事実です。

 しかし、私は、二十日間の取り調べを受けた期間、ほぼ二週間ぐらいは聞かれましたけれども、私のことはほとんど聞かれずに、ほかのことを聞かれた。それから、これは事実あった話でありますが、捜査の責任者からは、終盤に当たって、複数回にわたって私に対しておわびの言葉がありました。

 これは、私は不起訴処分になったとお答えさせていただきます。

玉木委員 ちょっと十分お答えをいただけていないんですけれども、なぜこれを聞いているかというと……(発言する者あり)

江藤委員長 静粛に願います。

玉木委員 起訴猶予処分であれば、一旦、事実関係、つまり犯罪行為の認定は行われます。ただ、年齢とか金額とか、そういった諸般の事情を勘案して、起訴便宜主義をとる我が国において、検察官がそれを起訴するかどうかの裁量に委ねられているという中で、事実の認定はあるけれども起訴を猶予するというのが、不起訴処分の一類型としての起訴猶予処分であります。

 もうこれ以上はやめますけれども、起訴猶予であれば、大変私は、これは過去のこととはいえ、重いことなのかなと思います。というのは、今大臣が所管しておられる、まさに農林水産大臣としては、農業用ダム、土地改良事業、非常に昔の話とおっしゃいましたけれども、この案件が対象となった贈収賄事件の、まさにその土地改良事業そのものを今所管しておられるので、そういった意味では、国民の疑念が生じないように、弁明を、もし必要であればいただきたかったということで申し上げた次第であります。

江藤委員長 時間が経過をしておりますので、質疑を終了してください。

玉木委員 はい。

 EPAの議論をやろうと思ったんですが、時間がなくなってしまったので、午後また外務委員会のところでやりたいと思います。

 大臣にはぜひ頑張っていただきたいともちろん農林水産委員として思っていますので、非常に失礼かもしれませんけれども息子さんの話も出させていただきましたけれども、ぜひそういう疑惑の持たれないような、堂々と農政を進められる環境整備は、大臣自身としてしっかりとつくっていただきますことをお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

江藤委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原でございます。

 まず冒頭、外務委員会の関係者の皆様方に感謝申し上げたいと思います。連合審査に応じていただきまして、ありがとうございます。

 ただ、ちょっと見ましたら、平成に入ってからこれがたった五回目の連合審査だそうでして、もうちょっとこういう問題、いろいろなところに関係するわけです。外務委員会は、言ってみれば傘、アンブレラ委員会ですし、深くかかわるような問題については、積極的にこのような連合審査をしていただきたいと思います。

 それでは、格調高い質問をさせていただいて、真面目にお答えいただきたいと思います。

 四十三年前の何とかと聞かれましたが、私は、七年前の西川農林水産委員長は、非常に立派な働きをされたかと思います。

 資料をお配りしてあると思います。見ていただきたいと思います、「交渉に関する国会決議」ですね。国会決議、左側が攻める西川農林水産委員長が英断を下されてできた。私は、今思えばそんなことはないと皆さん思われるかもしれませんけれども、このころとしては圧巻のできだと思います。非常に激しい文面です。

 一番の「五品目」のところですね、「除外又は再協議の対象となるよう、政府一体となって全力を挙げて交渉すること。」

 「中断脱退」、下の方を見ていただきたいんですが、「中断も含め厳しい判断をもって臨むこと。」というのを、これは右側の方、TPPについては「脱退も辞さないものとすること。」

 TPPの協定のときの決議のもとになっているのは、七年前の安倍政権のときの農林水産委員会の決議なんですね。西川委員長、そして私が野党民主党の筆頭理事でした。そのコンビでつくり上げたものでございます。これがTPPにもずっと尾を引いて、今政府が、ちょっとなまくらなような気がしますけれども、そこそこやっているのは、この決議のせいだと思います。

 では、この国会決議をきちんと胸にしまい込んで交渉していただきたいと思っておるんですが、一体これが、本当にこの決議が守られたのかどうかということをお聞きしたいと思います。

 非常に強い決議だったんですが、大臣、本当にこの点は、日豪EPA、この我々の決議は守られていると思われますか、全然立場が逆になっておられますけれどもね。

西川国務大臣 当時、篠原筆頭と相談をしながら、自民党挙げて相談をして、この決議をつくらせていただいたということで、私も先頭で、委員長としてやらせていただきました。あのとき、ここまで書いたら後で国会の評価をいただくときに大丈夫だろうか、こういう心配をしながら書いたことをよく覚えております。

 それで、いよいよ七月に安倍総理とアボット首相が調印をして、これから御審議をいただいて、御評価をいただくわけでありますが、私どもは、評価をいただくことができる、こういう気持ちで今おりますので、よろしく御判断のほどお願いいたします。

篠原委員 私は、けさ成田に、六時二十分に着いたところでして、三日間、シドニーの何にも進まなかったTPP閣僚会議に行っておりました。

 せっかく国費を使って、党費、まあ、国民の税金で行かせていただいておりますので、そう簡単には帰れないということで、予定外だったんですけれども、すぐ近くのキャンベラ、これまたきのうの朝早く起きまして、キャンベラに参りまして、関係議員と四人、正確に言うと三人ですけれども、農業大臣だけはお会いできませんでした、急のアポイントがあったんです。ですけれども、グリーンズ、緑の党ですね、それからナショナルズ、国民党というのがあります、それからレーバーパーティー、ちょうど国会開会中でしたので、それぞれの皆さんにお会いしてまいりました。

 彼らのところもちょうど批准のための手続が始まったところでした。私があした質問するんだと言ったら、いろいろ意見交換が盛り上がりました。オーストラリアは当然、大満足ですよ。

 しかし、我が方からするとどうなのかな。本当に守れたか、具体的なことを三点お聞きしたいと思います。

 TPPはどうなっているかわかりません、シークレシーとかいうのを言って、全然内容が明かされません。この交渉は、午後、岸田大臣にお聞きしますけれども、私は問題だと思います、このような交渉のやり方というのは。

 米とか小麦とか砂糖とかは例外にされていますけれども、牛肉と乳製品は除外されなかった。こういった点で決議は守られているのかどうかということ。

 次に、二番目のところのWTOとの関係ですね。「米国、カナダ等との間の農林水産物貿易に与える影響について十分留意すること。」というのがあるんですね。これが、思いがけずTPPというわけのわからぬ交渉を今しているわけですよ。これは今、TPPへの影響に十分留意することと読みかえられるんじゃないかと思います。そういうことを念頭に置いてこの協定ができ上がったのかどうか。二つ目ですね。

 それから、全然議論されていませんけれども、最後の、国内の対応です。今後の対応について、政府がきちんと政府を挙げて対応するということ、これについて、それなりの準備はできているんでしょうか。

 この三つの点についてお伺いしたいと思います。

西川国務大臣 牛肉と乳製品のことをお尋ねになりました。

 牛肉は、御承知のように、今の三八・五を下げていくわけですが、片方十八年、片方十五年かけて下げていく。

 それで、このとき、オーストラリアの主張は、私は議員として外交をやっていて、ロブ大臣と話をやっていましたが、冷蔵物も冷凍物も分けないというのがオーストラリア側の主張でありました。その主張でありますけれども、私としては、分けてもらわなければ日本の畜産への影響が大きくなり過ぎる、こういうことで、分けてほしい、こういう主張をやってきたのであります。TPP対策本部、これは外務省も一緒でありますが、農水省も一緒で交渉して、二つに分けてもらった、それで下げ方も別にしてもらった、こういうことであります。

 乳製品については、抱き合わせで製品をつくろうと。これも非常に通商外交の圧力は高かったのでありますが、私どもとしては、抱き合わせは譲るわけにいかない、こういうことで、一対三・五になりましたが、これを抱き合わせができた、こういうことであります。

 それから、米国、カナダへの影響はどうだろうか。確かに、麦は、カナダとアメリカの麦は日本のパン用の麦をつくっておりますから、相当競合してくると思いますが、そういう中で、米国、カナダの両国との影響でありますが、当面、これは日豪のEPAでありますから、その状況を見ながら判断せざるを得ないと思います。

 三番目に、政策的な支援はどう考える、こういうことでありますが、今のところ、日豪EPAについては、政策的に特段のEPA用の予算措置はまだ考えておりません。

篠原委員 大体わかりました。

 オーストラリアの関係議員、三人とは本当に一時間以上にわたって議論しました。だけれども、優しいですね、やはり。日本の農家を潰すつもりはないんだ、だけれども、例えば牛肉について言えば、いつも言われることですけれども、神戸ビーフとか、そういう差別化ができるじゃないか、だからそちらで生き残ってと言うんですね。だけれども、限度、どこに線を引くかという問題だという話をしてまいりました。

 一人は、ナショナルズ、今、政府・与党におられるんですが、ブルース・スコットさんというのは、本人が農家、下院の副議長も務めておられる方は特に優しくて、やはり各国の農民同士が手をとり合っていかなけりゃいけないんだ、工業製品と違うんだということを盛んに強調しておりました。

 それから、グリーンズの、グリーンだから緑の党ですけれども、ちょっと捕鯨問題はわざと触れないようにしていましたけれども、ピーター・ウィッシュウィルソンさんというのは、当然ですけれども、これは後で外務委員会の方で触れますけれども、食料の貿易量なんというのは減らした方がいいんだ、後で申し上げますが、地産地消で、そこでとれたものをそこで食べるというのが一番いいんだ、オーストラリアにも日本にも同じような考えがあるんですけれども、僕がそれを言おうと思っていたら、僕が言う前にそういうふうに言っていました。これはちょっとTPPなんかはとぼけていて、何でもかんでもゼロにするということを言っているんです。だから、私は非常に問題だと思っております。

 そこそこのできだと私は思いますよ、日豪EPA。ぎりぎりのところで。大臣も議員外交をやられて、努力された結果だと思いますよ。

 しかし、これがTPPのところに生かされているのか。多分、大臣は、TPPをうまくいい方向に誘導するためにオーストラリアで先鞭をつけてというつもりでやられたんだろうと思います。だけれども、本当にそうなっているのか。いまだもって、どういうふうに進んでいるのか、さっぱりわけがわからない。だから、みんな、関係者は戦々恐々として見ているわけです。

 この点は、私もシドニーに行っているんですけれども、さっぱり、まあ、余り邪魔するのもいけないですから僕のところへ説明に来いなんて言っていませんけれども、来たってろくな説明はなされないので。ですから、していませんけれども、そろそろ国民に、どういうところが問題になっているんだ、日本はこれだけ頑張っているんだ、ここは絶対死守するというのを、論点が明らかになってきているわけですから、それをやっていい時期だと思います。最後の最後まで秘密だとかなんとかというので決着の道筋を国民に示さないで、いきなりどんとこの場に提供されても、私はそんなものは絶対認めるわけにいかないんですね。

 その点について、大臣、どうお考えになっておられるでしょう。政府の中できちっとやっていただきたいと思います。

西川国務大臣 この交渉、WTOのときの苦い経験、全部表へ出しちゃって、結局、ステークホルダーの意見が強くて交渉が進まなかった。日本は、ある意味では、農業関係ではあれが締結されなくてよかったという評価もありますけれども、この反省に基づき、今回は保秘契約を最初に入れていますね。日本は、去年の七月二十三日に保秘契約にサインしています。そうしますと、この状況が進んでいっても、四年間、途中の経過についてはお知らせしないという約束でやっています。そうすると、政府側の交渉は余計責任が重くなったと私は受けとめております。

 最終的には、このTPPが合意できたときに、国会の御承認をいただかなければなりません。その国会の承認をいただくときに、国益を衆参両院の決議に基づいて守り切れた、この評価をいただかなければなりませんので、政府の対策本部はそれをしっかり受けとめてやっていますし、農林水産省も、農林水産物に関しては必ずや評価をいただける、こういう線を崩さずにやっておるということをお伝えしたいと思います。

篠原委員 時間になりましたのでやめますが、一番最後のページの表だけ、ちょっと午後に続きで、お昼休みの間にでも見ておいていただきたいんですが、いかにアメリカとオーストラリアからの農産物の輸入額が多いかということ。だから、この二国については本当にきちんとしなくちゃいけないこと、これを肝に銘じて交渉に当たっていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

江藤委員長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 維新の党の林宙紀です。

 きょうお時間をいただきましたので、日豪EPAに関する議論をさせていただきたいというふうに思いますが、私も、きょうは維新の党から立つ質疑者としては一人だけということになりますので、最近報じられております西川大臣のいろいろな件、お伺いしようかなと思っていましたが、先ほど玉木委員がいろいろとお伺いになっていて、私自身はそれ以上の事実、内容をつかんでおりません。ですので、一言だけ大臣にいただいてということにしたいと思うんです。

 自分たちを美化するわけじゃないんですけれども、私たち自身も、やはりできるだけ、この国会の審議にいただいている時間は、政策のことを議論させていただきたいと思っています。先ほど質疑に立たれた玉木委員も、まさにそういう方だと思うんですよね。なんですけれども、野党の立場としては、やはりここを確認させていただかなければいけないなということで、やらせていただいているところもございます。

 というのは、これは野党だからというわけではなくて、与党の中にも、本当に自分の身の回り、真面目に取り組んでおられる議員というのはたくさんいらっしゃると思うんですよ。ところが、こういった報道が、真偽のほどはさておきにしても、出てきてしまう。そのこと自体が、真面目にやっておられる方々は、これが不問に付されてそのまま通ってしまうのであれば、自分たちは何かばかげているな、自分たちだけがばかを見ているようなことになるんじゃないかとやはりどこかで思うと思うんですよ。

 ですから、あえて政策の議論に使いたい時間を割かせていただいて、確認をさせていただいているというところがございます。

 ですので、大臣、今後どういったことが出てくるかわかりませんけれども、今まで出てきたことに関してはこれまでお話しいただいているとおりだということで、改めて、与党の皆様、野党の皆様含めて、大臣からこれらについて一言いただきたいと思います。

西川国務大臣 政治家は、厳しく自分を律しながら政治活動に当たらなきゃならない、これは当然のことだと思います。

 そして、私もそういうつもりで来ておったのでありますが、たまたまネット関係の会社が私の親族企業にあって、非常に安く買える、早い、便利だ、こういうことで購入してしまいましたけれども、ほかの手段があるかどうかも含めて、このような批判がないように努めていきたい、こう思います。

林(宙)委員 ぜひ、今後におかれましては、そういったことが一点たりとも出てこないように取り組んでいただければというふうに思います。

 ということで、私の方は格調高いかどうかわかりませんが、質問に移らせていただきたいと思います。

 今回の日豪EPAに関しましては、私たちの党の立場から考えますと、非常に内容としてはいいものなのではないかというふうに評価をしているところではあるんです。それに当たりまして、やはり幾つか改めて御確認をさせていただきたいということもございますので、きょうはその点、確認させていただこうかというふうに思っております。

 まず、今回のEPAの内容で、私、農林水産委員会に所属しておりますので、農林水産というところから見ていきますと、やはり牛肉の関税、これについての議論というのが非常に多くあったわけなんですが、改めてここで。

 今回の牛肉の関税については、期間全般にわたって一律にというよりは、最初の一年目、二年目である程度大きく関税が引き下げられるということがあると思います。その点をもって、やはり国内の生産者、不安に思われる方、たくさんいらっしゃると思いますので、これがどういう影響を持つのか、どういう影響を与えると考えられるかというのを改めて御説明をお願いいたします。

松島政府参考人 牛肉の関税でございますが、現在、牛肉の関税は三八・五%になっておりまして、日豪EPAの合意におきましては冷凍と冷蔵を分けておりますけれども、冷凍については、初年度は八%削減の三〇・五%、二年目は二%をさらに削減いたしまして二八・五%、それから、冷蔵牛肉につきましては、初年度は六%下げまして三二・五%、二年目は一%下げて三一・五%ということで、御指摘のとおり、発効後早いタイミングで下げ幅を大きくしているという合意内容になってございます。

 ただ、先ほど大臣からも御答弁ございましたけれども、冷凍、冷蔵を区分した約束の中で、最終税率につきましては、冷蔵牛肉を二三・五%にするのに対しまして、冷凍については一九・五%という形で、競合度合いなども勘案しながら差を設けているということ。さらに、かなり効果的なセーフガードを導入するということで、近年の輸入水準以上の輸入量となったときには関税を現行の水準、三八・五まで戻すという点。さらに、長期の関税削減期間を設けているということで、冷凍は十八年、十五年と十八年ということで、こういった約束内容になってございますので、総合的に見たときに国内畜産業の存立や健全な発展と両立し得る内容となっているというふうに考えてございます。

 さらに、豪州産牛肉の我が国の市場における競合関係を見てみますと、冷凍牛肉は、国産牛肉がほとんど用いられていないファストフードなどといったところに主に仕向けされているという問題もありますし、また、冷蔵牛肉は、国産のホルスタイン種の牛肉というよりも、主として米国産の牛肉と強く競合するという面もございます。したがいまして、先ほども申しましたように、国内への影響というのは極めて限定的と考えております。

 いずれにしましても、この協定の締結の結果や影響にも留意しながら、引き続き、生産者の皆様が意欲を持って経営を続けられるように、我が国の畜産、酪農につきまして、構造改革や生産性の向上に努めてまいりたいというふうに考えております。

林(宙)委員 影響は限定的であるという御答弁なわけなんですが、ぜひ、これはあくまで未来のことですので、よく、今後、これが発効してからどういった実際の影響が出るかというのをしっかり注視していっていただきたいなというふうに思っております。

 今回のEPAに関しまして、非常に特徴的というか初めて入ったということで、これも過去に何度か質問があったのではないかなと思うんですけれども、食料供給章というものが入っております。

 これは簡単に言えば、オーストラリアで作物が余りいいできではなかった、いいできではないというか、不作とは言いませんけれども、オーストラリア国内の中で供給が少なくなるんじゃないかというときに、輸出を規制するというようなことができる限りないように、それはとりもなおさず、日本の食料供給において、食料を確保するという観点においては、非常に日本にとってむしろ有利な内容になっているのかなというふうに理解しています。

 これは、食料供給章そのものはお互いに同じような責任を負うわけなんですけれども、実際のところは、日本がオーストラリアに食料を輸出するという状況には今のところなっていないわけで、オーストラリアから小麦ですとかそういったものを輸入してくるということが、ほぼそれが全てですので、ある種、日本にとって割と有利な条件ということで入れていただいたんだと思います。

 ただ、これはやはり努力義務ということになっていますので、実効性がどのぐらいあると考えているのかというのを御答弁いただきたいと思います。

    〔江藤委員長退席、土屋委員長着席〕

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、日豪EPAにおきましては、我が国のEPAとして初めて食料供給に関する章を設けました。

 具体的には、食料分野の重要性に鑑みて、一定の重要な食料については、WTO協定に整合的であっても、輸出禁止や輸出制限の措置を導入しないよう努めるということを法的な義務として規定をしているわけでございます。

 さらに、そのような措置を仮に講じる場合であっても、締約国に与え得る影響を考慮の上、必要な範囲に限定するよう努めるということも、しっかりと明文で規定をしております。

 また、新たな規制措置を講ずる際の事前通報など、食料供給に関する措置の透明性を確保することも規定をしたところでございます。

 以上、申し上げましたような内容を持つ食料供給章の規定によって、我が国に対するオーストラリアからの重要な食料の供給を妨げる措置が抑制されるということを私どもは期待しているわけでございます。

 また、我が国と豪州側の関係者、関係機関の間の協力関係も大いに強化されると考えておりまして、そういったことを総合的に捉えまして、日本の食料の安定供給確保に資する、協定の中の食料供給章の確保ができたというふうに考えております。

林(宙)委員 そうしますと、今後こういった自由貿易協定を進めていくに当たって、ほかの国とも、ほかの国といっても、食料という意味でいくと、現実的にはアメリカですとかEUですとか、そういったところになっていくのかもしれませんが、こういった食料供給章といったものを積極的に入れていくのかどうかというところは、ぜひ、今の段階でどうお考えなのかというのはちょっとお聞きしたいなと思っています。

 というのは、多くの国とこういった協定を結んでいくと、やはり日本の食料資源というのはある種限定的というか、全てを日本国内だけで賄えているという現実にはなっておりませんので、有事のときに食料安全保障上でも非常に大きな意味を持ってくる。

 食料安全保障という観点で議論をすると、大体、立場というのは二つに分かれると思うんです。一つは、できる限り日本の国内で食料を賄いましょう、海外からの輸入はある種補完的に考えていきましょうというふうに寄っていく極、一つの極。もう一つは、もちろん国内でつくらないというわけではないんですけれども、できる限り海外で食料を確保できる場所を確保していって、どこかの国がことしはちょっとなかなか輸出が難しいとなればほかの国から融通していただく、ある種、ポートフォリオを分散的に考えていく、そういう二つの大きなポジションがあると思うんです。

 やはり農業の話をしていくと、今のところは、食料自給率を向上させる、まあ、最近は自給力というものも出てきましたが。そういう流れの中で、基本的にはその議論を補完する後ろ盾として今まで言われてきたことは、海外からの食料の供給が途絶えたときのことを考えて、国内の農業を、ある種、補助金をつけてでも振興していくんですという立場になってくるわけですね。これが主流だったと思うんです。

 ところが、今後多くの国と食料供給章というようなもの、もしかしたら将来的にはもっと強い内容にできるかもしれません、そういったものを結んでいったときに、何か、余りにも全世界的に飢餓に陥るような状態なんていうのがあればまた話は別ですけれども、そのときは日本だってそうなるわけで、どこかの国がちょっと今回は輸出が余りできないよというようなことになったときに、いろいろなところから食料を確保できるような状態がもしつくれるとすれば、むしろ、国内で自給率をそんなに一生懸命財源を使って高めていかなくてもいいんじゃないのという議論も、声が大きくなってくる可能性というのはあると思うんですよ。

 そういう意味で、今までやってきたこの食料自給力向上という政策とちょっと逆の方向に進んでいく可能性も、もしかすると登場するのかなと思っているんですが、そのあたりについてはどのようにお考えになっていますか。

中川大臣政務官 お答え申し上げます。

 日本は食料の多くを輸入に依存しているわけでありまして、先ほど先生がお話しになられましたように、食料の需給及び貿易が不安定な要素を有しています。そのことを考えますと、国内生産で需要を満たすことができない食料を確保するために、安定的な輸入を行うことが重要であると考えています。このため、食料供給章を含む日豪EPAを締結することは、大変意義のあることだというふうに考えています。

 一方、食料・農業・農村基本法におきまして、国民に対する食料の安定供給については、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄を適切に組み合わせて行うと規定されてありますとおり、国内農業生産の増大を図ることにより、自給率、自給力の向上を目指すことが日本の食料・農業政策の基本であるというふうに考えています。

 このようなことから、食料自給率の向上を図るためには、生産と消費の両面の取り組みによって実現されるものであるというふうに考えています。生産面であれば、需要の大きい飼料用米、麦、大豆など、自給率の低い農産物の生産振興を図りつつ、また、消費面では、先ほど篠原先生がお話しになられておられました地産地消の取り組みなど、国産農林水産物の消費拡大、そして地域ということを考えて推進することが大切であるというふうに考えています。

 このように、食料自給率の向上に取り組んでいくというふうに考えております。

林(宙)委員 今のところは、そういう自給率あるいは自給力向上というのを国として引き続きというのは、私はそれでいいと思うんです。

 先日は、新聞にも出ましたけれども、財務省の方からいろいろと財源について少し意見があったやにうかがえるような内容なんかもありました。それは農林水産委員会でもいろいろと御答弁いただいたところなんですけれども。ああいったことがもし今後もどこかのタイミングで声が強くなった場合、そういったことも含めて、取り組んでいく課題として出てくるかもしれませんので、それはそれでそういうタイミングのときにまた議論をさせていただければいいと思いますけれども、一つ視野に入れておいていただくべきなのではないかと思います。

 そしてもう一つ、食料供給という意味では、これは質問ではないんですけれども、今回は牛肉というところで関税を少し下げるという議論になった、こういう言葉で適切かどうかわかりませんが、ある種譲歩したと見られても仕方がないと思うんです。

 ただ、今後、農業大国とこういうことをもしやっていくんだとすれば、必ずそこは相手が要求してくる圧力になるわけですね。そのときに、ある種、今回のようにどこか譲歩せざるを得ないというような場面が来るんだとしたら、私は、この食料供給章みたいなものをもうちょっと強目に入れてもいいんじゃないかと思うんです。そこで、ある種譲った形になるんだから、食料の供給に関しては優先的にやってくださいねというようなことが、戦略上あってもいいんじゃないかなと思っています。これはただの意見です。

 そういうことも含めて、いろいろ考えていっていただけるとありがたいなというふうに思っているんですね。

 次の質問なんですけれども、今回の日豪EPA、いわゆるISD条項が含まれておりません。これまでのEPAにはISD条項は間々含まれているわけなんですけれども、オーストラリアはある種そういった危険がないからということもあると思うんですけれども、今回入れなかったのはなぜなのかというところ、そこの議論を御答弁いただきたいというふうに思います。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、日豪EPAにISD条項は盛り込まれておりません。

 我が国は、投資家の保護に資するISD条項を含むことを交渉の中で一貫して主張いたしました。他方におきまして、豪州は慎重な立場を崩しませんでした。そうした交渉の結果、全体のパッケージの一環として、ISD条項の挿入については将来の見直しを行うということで合意をしたわけでございます。

 ただ、これも委員が御指摘をされたとおりですけれども、背景について補足いたしますと、豪州は国内裁判手続による公正な救済が基本的に確保されております。また、仮に日本企業が協定に反するような取り扱いを受ける場合には、協定に基づいて設置される投資小委員会などを通じまして、政府間で豪州側に問題の解決を求めることができる仕組みになっております。

 さらに、豪州は、外国投資審査基準額を引き上げまして、豪州に投資する日本企業の手続的な負担も軽減をするということを日豪EPAの中で約束しております。

 こうしたことを総合的に考慮いたしまして、ISD条項については、先ほど申し上げましたとおり、将来の見直しの対象とすることで双方が一致をしたところでございます。

林(宙)委員 ISDに関しては、国内でもいろいろな立場、意見がありますので、なかなか難しいところであると思うんです。やはり、ISD、投資をするという意味では、非常に、そこがないことによって憂慮されている業界の方々もいらっしゃると思うので、今御答弁いただいた内容であれば、最低限、そこはある種担保されているということだと思いますから、いいのかなというふうに思っています。

 ただ、今回、今のISDの是非を別に議論するわけじゃないんですけれども、TPPに関して、今議論、交渉を進めているところですが、TPPには、明確に農林水産委員会の決議の中で、これはたしか第五項だったと思いますけれども、「濫訴防止策等を含まない、国の主権を損なうようなISD条項には合意しないこと。」というふうに強く書かれております。

 では、日豪EPAのときどうだったのかなと思いましたら、これは含まれていなかったんですね、そのときの決議には。この決議というのが平成十八年でございますから、当然、私もそのときは国会にはおりませんし、その議論がどうだったのかなというのはちょっとわからないんですけれども。

 今回、ある種、TPPの決議の中には、非常に危機感を持ってISD条項について盛り込まれたわけなんですが、日豪EPAのときにこれが入らなかったというのは、なぜゆえになのかなというところ。当時の議論を御存じの方となると、今、大臣として西川大臣がおられますけれども、当時、農林水産委員長でいらっしゃったということで、その点についてお伺いできればと思います。

西川国務大臣 当時、何と何をこの文章に書いて守り抜くか、こういう話をやりました。そのときに、農産物の重要五品目を守ろうと。牛肉は入っておりますが、オーストラリアは豚肉がないということで書かなかったわけですね。それで、まだ当時としては、紛争処理をどうするか、こういう議論が盛り上がっていなかった、それと、オーストラリアが関心を持っていなかった、これが一番大きな原因だろうと思います。

 今、ほかには、国際紛争処理センター、これはニューヨークにある、こういう話で、できるだろうということもありましたし、また、オーストラリアはオーストラリアとして国内でしっかり紛争処理ができるということでもあったので、あえてこれは取り上げることがなかった、こういうことだと考えております。

林(宙)委員 そういった明確な論理のもとにそのようになっていたということであれば、結果的にはISD条項は入らなかったということですので、特に問題はないだろうと思うんですけれども、結構、ここはすごく議論の出るところだと思いますので、ぜひ、今後しっかりと考えていただいて、対応していただきたいなというふうに思っています。

 そうしますと、今回、日豪EPAを進めていくに当たりましては、やはり、先日もこの外務委員会でもいろいろと質問があったところだと思うんですけれども、どれだけ日本にとってメリットがあるんでしょうかというのは、判断基準として必要だと私は思うんです。これまでの御答弁を伺っていると、それはやはり、定量的にはなかなかいろいろな条件があるので難しいですよというお話があるんですが。

 それでは、ちょっとその先にお伺いしたいのが、今まで十三のEPAを発効済みですよということだと思うんですね。そうすると、今まで結んだEPAというのが、では、数年たった今の段階で、どれぐらいメリットがあったのか、あるいはデメリットがあったのかというところを、わかるところで結構ですので、具体的に例を挙げて教えていただきたいと思います。

西川国務大臣 効果、経済に対するものでありますが、オーストラリアとのは、自動車の関税交渉をあわせてやっていました。それで、これが条約発効と同時に、たしか四百三十七億の関税が無税になる、関税で課税されない、こういうことだったと思います。そして、全体の問題がスタートすると、これはたしか五百七十八億。いずれにしましても、数字はその近辺で関税が引き下がる、こういうことでありまして、条約発効で三年後をめどに自動車の関税は全て撤廃される、こういうことですと、大体、目安としてそのぐらいの数字でありました。

林(宙)委員 どうもありがとうございます。

 先ほども御質問したものなんですけれども、では、過去のEPAについて、ちょっと具体例を教えていただいてよろしいでしょうか。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、EPAの具体的な効能を一概に定量的にお答えすることはなかなか困難でございますけれども、EPAの締結により、我が国と相手国との関係強化や貿易投資の促進に寄与していると考えております。

 我が国が締結したEPAの相手国との貿易量を見ますと、リーマン・ショックなど世界的な不況により貿易量が一時的に減少した時期はありました。しかし、その後は順調に増加をして、特に関税を撤廃、削減した品目の貿易量は増加をしております。特に、その中でも多くの国に対して、日本から、乗用車、自動車部品、熱延、冷延鋼板等の輸出が増加をしています。

 インドネシアとチリを例にとって申し上げます。

 日本からインドネシアへの自動車部品の輸出は、EPA発効前年の二〇〇七年は六百八十七・一億円でありました。EPAが発効した後三年たって二〇一一年には千二百八十七億円へと、八七・三%増加をしております。

 チリについて申しますと、乗用車の日本からの輸出は、これも、発効前年の二〇〇六年には六百四十五・七億円でありましたけれども、発効後三年の二〇一〇年になりますと九百二十八・三億円と、四三・八%増加をしています。

 さらに、EPAにおいては、模倣品、海賊版対策の強化、改善、ビジネス関係者の入国、滞在許可の確保、手続の透明性向上や簡素化、税関手続の簡素化、迅速化、こういったことをいろいろ規定しております。

 こういったさまざまな簡素化や迅速化、透明性の向上を通じまして、我が国企業が海外で活動するに際してのビジネス環境の整備に大きく寄与しているものと考えている次第です。

林(宙)委員 押しなべて、EPAで日本が獲得してきた利益というのはやはり無視できないものがあるという前提のもとに、今回の日豪EPAも進めていくものと思いますので、これについては、ぜひいい形で発効してからも物事が進んでいくようにお願いをしたいというふうに思っています。

 最後になるんですが、実は、先日の外務委員会、私はふだん外務委員会に所属しておりませんけれども、委員の差しかえで、交代で出席をさせていただきました。そのときに、齋藤健先生が非常にすばらしいことをおっしゃっていたなと思います。

 というのは、今回のEPAもそうなんですけれども、こういった自由貿易協定では、必ず、利益を享受する業界に対して不利益をこうむる業界というのが出てくる、そのときに、今回に関してはそれが自動車業界である、いわば日本のリーディングインダストリーであるということであれば、そのリーディングインダストリーの矜持を示して、例えば、齋藤先生がおっしゃっていたのは、自動車の会社の食堂で日本産の、国産のできるだけ農産物を使ったものを提供するとか、そういうことをおっしゃっていました。

 これは非常にいいことだと思うんです。もちろん、これはあくまで民間の皆さんがこの協定によって利益を上げた、それをどう使うか。それは、国が差し出がましいことを言うべきことではないと思っていますが、ただ、一方で、これによって多少でも打撃を受ける業界があるんだとしたら、民間同士で助け合う、日本全体で底上げしていくというものがあっても私はいいと思うんです。そこに、もしかしたら、一定期間、税制で何とかするとか、投資をしたら少し税を軽くするとか、そういうことがあってもいいんじゃないかなと思うんですよ。

 前回は経済産業副大臣に御答弁をいただいたと思うんですけれども、ちょっと通告が遅かったのであれなんですが、西川大臣、農林水産の担当の大臣として、それについてもし一言いただければ、最後にお願いしたいと思います。

西川国務大臣 私ども、今、輸出を最大限頑張ろうとやっています。そういう中で、恩恵をこうむった企業の皆さんは必ずいるわけですね。その人たちにも、日本の農産物の消費拡大、あるいは、海外事業所等ではぜひ日本の農産品を利用してくださるように、これは、今の御示唆がありましたので、さらに省内でこの方向で進めていくように努力したいと思います。

林(宙)委員 今後もぜひ、こういった協定を進めていくときには、そういう日本全体で一緒に上がっていこうというものを国としても促進していっていただきたいなというふうに思います。

 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。

土屋委員長 次に、宮沢隆仁君。

宮沢(隆)委員 次世代の党、宮沢隆仁であります。

 実は、ここのところ、派遣法の勉強、日豪EPAの勉強で、ちょっと頭がパンク状態でありますが、昨日もちょっとつけ焼き刃で勉強させていただきまして、頑張って質問したいと思います。

 私、この日豪EPAをずっと私なりに勉強してみたんですが、日豪EPAだけではなくて、こういう国際協定というのは、最初はWTOしかなかったわけですよね。それが、二〇〇〇年代に入ってからEPAが、はやり出したという言葉が適切かどうかわからないんですが、それが始まって、今、TPPの交渉も同時に行っているし、将来はRCEPという協定にも入っていこうとしているということで、これは幾ら勉強しても時間が足りないというのがよくわかりました。

 それで、先ほどの篠原議員は同じ長野一区で、比較的仲がいいと私は思っているんですが、篠原議員には、プロフェッショナルですから、とてもかなわないと思うんですが、ただ、私も、全く客観的にこのEPAの流れを見ていて、篠原議員と同じような疑問を実は感じたんですね。

 それは何かというと、第一次安倍内閣のころに、安倍総理が、かなり力を入れてこのEPAをやっていこうということで始まったと思うんですが、そのまま政権交代等があって、EPAというのは、ある時期ずっと塩漬けになっていたわけですよね。それが、また安倍総理が第二次で復活した途端に、一気にポップアップしたというんですかね、表に出てきて、ぐいぐい今進んでいるというふうに、私のような門外漢にはそういうふうに見えるんですね。

 それで、実はここに、きのう外務省、農林省の方に資料としてお渡ししたものがあるんですが、二〇〇七年の四月のイシューブリーフ五百八十号というところに、タイトルは「日豪FTA/EPA交渉と日本農業」ということで、主に農林水産省の算出したデータ等をもとに書いた一つの論文なんですけれども、そこにある象徴的な文章があるので、ちょっと読み上げますね。

 農林水産省の試算では、EPAだけではなくて、さまざまな国際交渉で、関税等、農産物の国境措置が全面的に撤廃された場合の試算を行っている。それによれば、食料自給率は現在の四〇%から一二%に低下、国内農業生産は現在の農業生産額の四二%に相当する三兆六千億円が減少、GDPでいうと一・八%に当たる約九兆円が減る、三百七十五万人の就業機会が失われるということで、これはEPA、TPP等に猛反対をしていた時期の論文だろうと思います。

 それで、私、きのうレクをしてもらって、今は政府に対して農林省はかなり協力的な姿勢で臨んでいるように見えるんですが、同じようなデータは現時点でお持ちなのかどうか、このデータは、これは過去のものであって今は違うよというようなものがあるのかどうか、ひとつそこをお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。

今城政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のものにつきましては、関税を全て撤廃するというような、かなり前提を大胆に置いた試算ということでございます。当然、その当時の諸元というものと現在の諸元というものが違っているということはまず一つあると思います。

 それと、私どもがTPPに昨年交渉参加をするというときに、TPP参加国、要するに十一カ国を対象に、仮に全て農産物の関税を撤廃した場合というような試算は、そのときに公にしておるところということでございます。

宮沢(隆)委員 そこまではわかりました。

 それで、ちょっと言いにくいんですが、いわゆる、ここまで猛反対していた農林省が今は比較的協力する姿勢でいる、農林省としての矜持というんですか、その辺をどう自分の中でそしゃくしているのかというところですね。その辺はいかがでしょうか。

今城政府参考人 お答えいたします。

 私ども、TPPの交渉参加をするに当たりましては、まず、アメリカ、私ども双方にやはり非常に慎重に考えなければならない分野、事項というものが存在するという総理とオバマ大統領の間での確認というものがあった前提で、その上で、また衆参農林水産委員会の、しっかりと重要五品目を確保していくという決議をいただいて、その決議を守ったという評価をいただけるようなことを前提といたしまして交渉を行っているということでございます。

 そういう意味で、TPP全体のメリットということと、農林水産物、特に重要五品目についてしっかり確保していくということを両立させながら交渉に臨んでいるというふうに御理解いただければと思います。

宮沢(隆)委員 農水省としては、やはりその時期その時期の政権の指示に従って動くことももちろん重要なことでもあると思いますので、そういうスタンスであろうというふうに理解いたしました。

 それで、ちなみに、ちょっとこれは要求していないとは思うんですが、先ほど私が挙げた食料自給率とか、国内農業生産の金額的な減少率とか、あるいは失業率とか、それについては、今回、日豪EPAを締結することによってどのようなデータになるかというのはお持ちだろうと思うんですが、それを簡単に示していただけますか。

今城政府参考人 委員御指摘のとおり、二〇〇六年十二月、農林水産省におきまして、豪州産農産物の関税を主要四品目につきまして全て撤廃した場合という前提で、国内生産の減少額が約八千億円という試算はその当時公にさせていただいておる次第でございます。

 ただ、これはあくまでもそういう主要四品目とか、関税を全て撤廃という前提で試算したものでございまして、具体的に現在、締結された日豪EPAの影響ということになりますと、数多くの品目がもちろんございますし、それから、国内の景気あるいは輸入先国の経済変動、それから為替、気候変動、作況、そういう非常にいろいろな要素を勘案しなければいけないということでございますので、過去に締結されたEPAにおいても、そのような影響額の試算は行っていないということでございます。

 いずれにしましても、今回の日豪EPAの締結に伴いまして、影響あるいは打撃というようなものについては、以上のようなことから、発動後、よくその状況を見きわめていくということが大切であろうというふうに考えておる次第でございます。

宮沢(隆)委員 大臣から何か追加することはありますか、もしよろしければ。

西川国務大臣 当初は、TPP、条件によって数字は変わるんですけれども、最初に、十二カ国が締結をして、日本の農林水産業を何の手当てもしなかったらどういうマイナスだという計算をしました。そのときは、農業のこうむる損失は三兆円、それから、一方、何もしなくても貿易が拡大します、そのときの数字は三・二兆円経済効果を生む、ここまでは数字をまず出したんです。

 それで、アメリカは、アメリカでピーターソン研究所が、どのぐらい効果があるだろうと数字を出しています。それは条件によって変わりますけれども、アメリカの数字は、日本に好影響が及ぶのは一千億ドル、そして、アメリカの影響は七百五十億ドル、つまり十兆円と七兆五千億だ、こういうのがアメリカの主張の根底にあります。

 さて、日本はどうする。これは条件によってTPPの数字の最後の決着は違ってきますが、予算要求も内閣官房がしておりまして、来年早々には数字を詰めて国民の皆さんにお示しをするような計算をやっていく、こういう計画になっています。

 ですから、日本では、当初の三兆円、三・二兆円の話は出ています。その後は出ておりません。それから、アメリカは、一千億ドルと七百五十億ドルの数字が出ている。

 日本は、これからいろいろな状況を入れて数字は詰めていきたい、こう思っております。

宮沢(隆)委員 さすが大臣だと思います。そこまでお考えであるというのは非常に結構なことだと思います。

 私から見て、これだけの、EPAがあり、これからTPPに入るかもしれない、それでその先にはRCEPがあるというのは、これは、どういう哲学を持って、どういう戦略で入ろうとしたり入るのをやめたりするのかというのが物すごく疑問なんですよね。本当に素朴な疑問です。これは国民の疑問だと思っていただいて結構だと思うんです。

 それなりに、EPA一つでも、入る入らないでどういうことが予想されるのか、あるいは、これが起こり得る、起こり得ないというのは、もう徹底的に詰めた上で入るというのが、どの業界でもやることだろうと思うんですね。その辺を国民にわかりやすく示していただければ国民も納得するのではないかと思います。私も納得すると思います。

 その辺のEPA、RCEPを絡めた話は、また後ほど外務委員会でやりたいと思っているんですが、次に移ります。

 それで、今TPPの話がちょっと出ましたが、今まさに篠原先生がオーストラリアから帰国したように、まさに今、現在進行中ですよね。やはり、日豪EPAとTPPというのは離れられない関係であろうと思います。

 それで、これは昨日提供していない資料なんですが、東大教授の鈴木宣弘先生、多分農水業界では有名な方だと思うんですが、この方のインターネットでの文章で、非常に私自身が納得するというんですか、そこまで考えるんだという、いい文章がありましたので、ちょっとそのまま読ませていただきます。

 タイトルは、日豪EPAがTPPに有利であるというのはごまかしであるという文章です。

 日豪でEPAが決まれば、TPPで米国を同程度の水準での妥結に誘導できるから、日豪EPAをTPPに先行させて、牛肉や乳製品でのある程度の譲歩はやむなしの雰囲気が醸成され、国益のラインがいつの間にか後退させられてしまった。これはうまくごまかされていると言える。日米豪の力関係からして、米国が、関税の全廃も含めて、日豪の結果以上の極端な要求をしてくるのは目に見えており、米国が日豪に従うとの読みは甘過ぎる。今覚悟を決めるべきは、日豪EPAでの妥結水準が日本の最大限の譲歩であると考えるべきである。そういう趣旨の文章です。

 今これを突然読み上げたので、どなたか答えていただける方で結構なんですが、こういうTPPとの絡みについてどのようにお考えかということなんですけれども、いかがでしょうか。

今城政府参考人 お答えします。

 今委員が読み上げられました鈴木先生の言葉ということでございますけれども、私ども、まさに今、豪州での協議というものは、事務方協議はまだ続いておりますけれども、TPPについて、基本的には、衆参の農林水産委員会の国会決議をきちんと守り抜く、守ったという評価をいただけるよう交渉をやっている最中でございます。

 基本的には、日豪のEPA交渉と、それからTPP交渉というのは、また豪州もそれに参加しておりますけれども、別の交渉でございますので、TPP交渉はTPP交渉として、繰り返しになりますが、衆参両院の決議をきちんと守るという評価をいただけるよう、それに全力を傾注していくということでございます。

宮沢(隆)委員 突然の質問だったので申しわけないと思うんですが、今のお言葉の中で、TPPはTPPとしてとか、EPAはEPAとしてとか、そういう言葉がよく外務省の官僚の方から聞かれるんですが、僕はそうではないだろうと思うんです。

 やはり相互に絡み合うはずですし、そこに将来はRCEPとかさまざまな協定が入ってくるということで、そこの連携を常に頭に描きながらやっていくのが交渉であろうと思うんですけれども、その辺はいかがですか。

今城政府参考人 交渉の考え方については先ほど申し上げたとおりなんですけれども、事実関係として申し上げれば、現在御審議いただいている日豪EPAの方は、仮に先に発効するということになれば、豪州の農産品が日本に対するアクセスのしやすさというのが増すという事実が先に生ずるというのは、これはもう事実でございます。

 そういうことをどう考えるかという問題はございますが、繰り返しになりますが、TPP交渉はTPP交渉でございますので、それは国会決議を守ったという評価をいただけるよう、政府一体となって交渉してまいりたいということでございます。

土屋委員長 今、ちょっと定数が足りないということでございまして、速記をとめていただきます。

    〔速記中止〕

土屋委員長 それでは、速記を起こしてください。

 宮沢隆仁君。

宮沢(隆)委員 では、改めてよろしくお願いします。

 ちょっと次のテーマに入ります。あと二、三分しかありませんので。

 韓豪EPAというのがほぼ同時進行の形で進んでいると聞いているんですが、これがいわゆる日本の食料安全保障にどのような影響を及ぼすのかという、日豪EPAとの絡みで、その辺をちょっと教えていただきたいと思います。

中川大臣政務官 日本の食料の安定供給を確保するためには、食料・農業・農村基本法にも規定されておりますとおり、国内の農業生産の増大を図ることを基本としつつ、輸入及び備蓄と適切に組み合わせる必要があるというふうに考えています。

 豪韓EPAが署名、手続に入っているということでありますけれども、この豪韓EPAに関しましては食料安定供給章というものがないというふうに承知をいたしております。

 日豪EPAの食料供給章については、食料について、輸出国内の生産が不足した場合にも輸出規制を新設、維持しないように努める旨規定していますので、ここが豪韓と日豪EPAの違いだというふうに考えております。

宮沢(隆)委員 わかりました。

 本当は中国、中豪というのもあるらしいんですが、その辺も絡めてお聞きしたかったんですが、外務省の方によると、ほとんどデータがないということですので、お答えしようがないということで、豪韓に絞らせていただきました。

 もう余り時間がないんですが、先ほど何回も私が言っているように、こういう協定をしていく上で、やはり哲学と戦略がないと、まずはその協定を結んでいいのかどうかというところから考えるべきであろうと思うんですね。

 協定を結ぶことも恐らくお金がかかるでしょうし、税金を使わなきゃいけないということで、外務省の方にも、その辺をよく考えた上で、必要最低限の協定にしていただきたいなというのが最後の私の意見です。

 どうもありがとうございました。

土屋委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは連合審査ということで、せっかくこういう機会ができたので、特に与党委員におかれては、定足数が足りないみたいな事態になるというのはとんでもない話だと思うので、しっかり対応してもらいたいと思います。

 さまざまな問題がありますが、限られた時間なので、私は日豪EPAにかかわる問題に限ってきょうは質問いたします。

 まず、西川大臣に伺いますが、本協定は、衆参の農林水産委員会が二〇〇六年十二月、全会一致で決議をした、日豪EPAの交渉開始に関する決議という国会の意思を、政府が真剣に受けとめて、国際舞台でどう生かしてきたかが正面から問われる内容となっていると思います。

 改めて申し上げるまでもなく、この決議は、農林水産品について、日豪間で大きな生産格差が存在することから、EPAによって、国内の農林水産業を中心に大きな影響が及び、多面的機能が損なわれるおそれがあるとした上で、政府に対して、一つは、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖を初めとする重要品目が、除外または協議の対象となるよう全力を挙げる。二つ目に、WTO交渉や、米国、カナダとの間の農林水産貿易に与える影響について十分留意する。そして三つ目に、交渉期限を定めず、粘り強く交渉する。四つ目に、豪州側が重要品目の柔軟性に十分配慮しない場合は、交渉の継続についても中断も含めて厳しい判断をもって臨むことなどを求めておりました。

 西川大臣は当時の農林水産委員長であったわけでありますが、この国会決議の趣旨は極めて重いものだなという点については、いかがですか。

西川国務大臣 私も衆参両院の国会決議は極めて重いものだと受けとめておりまして、どうしても、これをもとに、衆参両院で、守ることができた、こういう評価をいただけるように交渉を進めていかなければならない、今でもそう感じております。

笠井委員 この国会決議、つまり、主権者たる日本国民の願いの中に、段階的な関税削減や関税割り当ての設定は決して許さない、こう解するのが当然であって、とるべき本当の態度だと思います。

 ところが、今回の日豪間の合意の中身は、広範な農林水産品目について、日本市場へのアクセスに係る関税の撤廃、削減等を認めたもので、私は、危惧されたとおり、国内の農業に極めて大きな打撃を及ぼす内容になっていると思います。

 特に、先ほど来議論がありますが、重要品目のうち除外となったのは米だけで、牛肉、乳製品で大幅な関税削減、関税割り当てを認めているわけですが、今大臣が答弁されたんですが、この中身というのは明らかに国会決議の趣旨に反しているということではないんですか、いかがですか。

西川国務大臣 私どもも、ぎりぎりの交渉をやってくれたと思います。そういう意味で、各党でこれからいろいろ御検討いただくと思いますが、ぜひ、国会決議が守られた、こう御評価をいただきたいというのが私どもの考え方でありまして、いただくべく努力をしてきた、こういう考え方でございます。

笠井委員 そう言われるんですけれども、関税の引き下げ、無税枠の拡大、関税割り当ての拡大設定など、これでは日本の実質的な市場開放ではないかと思うんですが、いかがですか、大臣。

西川国務大臣 確かにオーストラリアからは、私どもの農林水産物に対する市場に対して、大変きつい、厳しい申し入れがあったことも事実であります。

 私ども、最大限の組み合わせをつくりながら、きょうお諮りしているような形に落ちついてきたわけでありまして、ぜひ、この農林水産委員会の決議が守られたとの御評価をいただけますようにお願いいたします。

笠井委員 評価してほしいと言われても、中身がそうなっていない。

 まさに衆参において全会一致で上げた国会決議は厳粛なものでありますが、その決議を守ることができないんだったら、全ての資料を国民に開示して、交渉をやめるなどのやり方があったはずであります。

 そこで、先ほど若干出ておりましたが、本協定、この日豪EPAの協定の結果、生ずる影響試算の問題なんですけれども、TPPとかに広げる以前の話ですが、これそのものの影響試算について、大筋合意直後ですが、当時の担当閣僚、林農林水産大臣は、ことし四月十日の衆議院農水委員会で、公表するとひとり歩きする、公表は難しいと言われました。つまり、持っているけれども、公表するとひとり歩きするから難しいという話で言われたわけです。

 私は、これは本当に無責任で看過できないと思うんです。つまり、これを結んだらどんな影響があるかというものは当然農水省として持っている、しかし、交渉をやっているさなかだし、大筋合意といってもいろいろなことがあっちゃいけないからという話だったかもしれないんだけれども、私は、今からでも、審議をやっているので、この影響試算を持っているんだったら公表すべきだと思うんですが、大臣、いかがですか。

今城政府参考人 先ほど委員御指摘のとおり、林大臣からそういう答弁があったというのは事実でございますが、私どもがそういう数字をはじいておって、その公表を差し控えるということではなくて、先ほど少し申し上げましたけれども、最初に交渉入りするときにお出ししている約八千億というのは、主要四品目に限り、かつ、全部関税を一遍になくすという前提を置いてやっているものでございます。

 現在の日豪EPAの合意内容というのは、それに限らず、複雑多岐にいろいろな品目にかかわっておるわけでございますし、また、具体的な影響額ということになりますと、景気、為替変動、作況、輸出国の経済状況、もろもろございますので、それを特定して計算するということはなかなか難しいということでございます。

 かようなことでございますので、今まで締結したEPAについても、そういう試算を行っていないということでございます。

笠井委員 試算しないで署名したといったら、これは大変なことになりますよ。

 つまり、もろもろの要素がある、全てをやったらこうなるけれどもというふうに言って、交渉の始まる話はそうやってやったかもしれないけれども、その後、この形になったものに対して、どういう可能性やおそれがあるのか、どういうことがあるのか。

 つまり、対策を立てると言われているわけですよね。だったら、マックスこういうことになる、あるいはミニマムこうなる、そういうことでさまざまなシミュレーションをしながら、影響についてどうするんだといって、まず、数を持っていなかったら対策ができないじゃないですか。

 交渉は終わったわけです、もうこれに署名したわけですから、具体的な対策を立てると言うんだったら、今からでも、大臣、これは公表するのは当然じゃないですか。

今城政府参考人 お答えいたします。

 具体的な対策ということの言及がございましたけれども、私どもは、具体的な影響については、まず、発効後、この状況をよく見きわめていかなければいけないというスタンスでございますので、現時点において具体的な影響試算ということも持ち合わせておりませんし、また、現時点でこういう影響があるのでこういう対策ということを決めておるわけでもないということでございます。

笠井委員 見きわめてと言うけれども、こういう協定を結んだら影響は出るでしょう。必ず出ますよね、今までとは違うんだから。それを、様子を見きわめながら、わあっと大問題になって、被害が出たら、ではようやく対策をとりましょう、そんな後手後手をやるんですか、大臣。

西川国務大臣 協定が結ばれたわけでありますから、どういう影響が出るか、私どもは、今の状況の中では、そう影響は出ない、こういう立ち位置に今のところは立っています。

 しかし、これから牛肉の関税を下げるわけですから、下げたときに、果たして、アメリカの牛肉とオーストラリアの牛肉が競合する、こういうことで、日本の国産には余り影響がない、こういう結果があるのかどうかですが、私どもはその影響を見ながらしっかり対策を立てる、こういうことでございます。

笠井委員 そう影響は出ないと大臣が言われたのは私は驚きました。やはり、そういう甘い認識ではこれは大変なことになると私は思います。

 そこで、今回の協定で、自動車の関税撤廃と引きかえに、農産物輸出大国を相手にして、食料主権をいわばないがしろにして、国内の農業を窮地に陥れる約束となったと私は思うんですけれども、重大だと思うんです。

 米を除外したというふうになっているわけですけれども、二〇一四年産の米価は大暴落という状況、六十キロ当たりのJAの買い入れ価格は七千円台ということで、生産費の半分以下で、生産費を到底賄うことができない状況。つまり、手塩にかけた米がペットボトルの水より安い、こんなことがあっていいはずがないわけで、この間、やはり政府の誘導で経営規模を拡大してきた層の経営状況というのは深刻で、展望を失ってみずから命を絶つという痛ましい事件まで発生をしているわけです。

 このままでは、離農が一層拡大して、安定的な米の生産基盤が崩壊してしまう、地方創生どころか、人が住めない地域が拡大することになっちゃうんじゃないかと思うんですが、大臣、その辺の認識はいかがですか。

中川大臣政務官 お答え申し上げます。

 二十六年産米の価格については、民間取引の中で決定されていますが、収穫や販売が本格化する十月以降の米の需給動向等を注視する必要があるというふうに思っています。

 また、JA等が農家に支払う米の概算金が下がり、農家の方々に心配の声があることは承知しています。この概算金は、販売の見通しを踏まえて、農家に追加支払いが行われるものであり、JA等においては、今後、販売戦略を立て、農家の所得確保の観点から、適切に価格を設定し、しっかりと販売努力をしていただくことが重要であると考えています。

 こうした中で、米価の変動が生じた場合には、収入減少影響緩和対策、ナラシ対策、二十六年産に限り、ナラシ対策に加入していない農家に対する対策により、農家の減収補填を実施することとしています。

 いずれにしましても、米の需給の安定のためには、主食用米から需要のある飼料用米など主食用米以外への転換を進めていくことが必要であります。

笠井委員 農家に心配がある程度じゃなくて、死活問題に今なっている状況なんですよね。米価対策に手をこまねいちゃいけないと思うんです。

 西川大臣も、農民団体から要請を受けた際に、五年先、十年先の展望が見えないという生の声を聞かれたはずであります。価格の暴落と流通の停滞の原因が過剰米にあることは明らかで、いわば米価を市場任せにしてきたこと、そういう問題がある。輸入米が年間七十七万トンも外国から入っているというのを、これをやめるだけでも過剰がなくなるわけです。

 もう一つは、暴落を招いたのが、農政改革をやってきたこと。つまり、それを一層進めようとする方向の政策というのは間違っていると私は思います。

 改めて、まず、緊急に過剰米の市場隔離を官民挙げて実施するなど、米の需給調整に直ちに乗り出す。そして、今年度の米直接支払いの交付金の半減措置を撤回するなど、経営安定政策を農家の立場に立って練り直すことが必要だと思うんですが、大臣自身のその辺の決意のところを、どうするか伺いたい。

西川国務大臣 私どもは大変な議論を重ねながら、直接支払いの制度から、経営の所得安定対策に変えていきました。

 このときに、日本の農業生産物というのは、畜産が二兆六千億ぐらいあります。それで、米麦でも二兆強ぐらいだと思うんですね。それから、野菜、果樹、そういうもので二兆円を超えていく。二兆三千億しかない農林水産の予算を米だけで八千億というのは、ちょっと偏り過ぎているのではないか、こういう意見がたくさん出ました。そういうところで、需給のバランスさえとれれば、七千五百円でも十分やっていける、対応はできるだろう、こういう考えを持ったところであります。

 それから、米価の話は、概算払い、確かに低く出ました。民民の相場を決める話でありながら、非常に例年に比べて安かった、これも私は承知しております。ただ、作況があした発表になるようでありますが、その中で、果たして数量がどういうところに落ちつくか、それによって米価がどう動くか、これを見てみたいと思います。

 ただ、概算払いは農協にはぜひ頑張ってやっていただきたいし、概算払いと標準価格の差はナラシで九割補助をする、なるべく早くやる、こういうことでまず当面対応しながら、あしたの状況を見て、また判断をさせていただきたいと思います。

笠井委員 いずれにしても、この深刻な実態があるわけですから、それに対して、本当にそれを正面から受けとめて、どうするのか。

 これまで、なぜこんなことになったのかということをきちっとやはり振り返って、とにかくメスを入れること。そして、緊急の対策と、これからどうするかということについても、やはり農家の立場に立って、そして、日本の農業、これは消費者にとっても大事な問題ですから、しっかりとやってもらいたいと思いますし、そのことを引き続きただしたいと思います。

 最後に、本協定とTPP交渉との関係について大臣に伺いたいんですが、本協定でオーストラリアに対して重要品目の関税削減を約束したことによって、TPPで米国に少なくとも同等かそれ以上の約束を行うことが確実になったと見られております。

 フロマン米通商代表は、四月八日、大筋合意の時点で、TPPで目指している水準は日豪EPAよりも高いというふうに表明していることから、米国は農産物の関税撤廃あるいはより大幅な削減を求めているんじゃないんですか、こういう状況の中で。

西川国務大臣 まず、日豪EPAとTPPの違いを申し上げたいと思います。

 日豪EPAはバイの協定であります。それで、TPPは十二カ国でやっていこう、こういう大きな協定でございます。

 そういう中で、オーストラリアと結んでいるEPAがどう影響が出るか、こういうことは、ちょっとまだはかりかねておりますが、そういうことを別にしても、アメリカは、今委員がおっしゃられたように、厳しい要求の連続であろうと私は受けとめています。

 しかし、農林水産省としては、譲れない一線は譲りません。そして、国会で農林水産委員会の評価をいただくわけでありますから、その評価にたえ得る、そういう決着にしたいということで頑張っていきたいと思います。

笠井委員 西川大臣は、自民党のTPP対策委員長であったことし五月、オーストラリア政府の招待で同国を訪問されて、ロブ貿易大臣と会談をしたそうでありますけれども、その際、この日豪EPAとTPPの関係について、何か議論されて、何かおっしゃったんじゃないですか。

西川国務大臣 それぞれが、このEPAを結ぶことによって、国内のTPPへの交渉で有利になるだろうということはお互いに考えて意見の交換はやっております。

笠井委員 日本農業新聞によれば、今言われたことをもう少し具体的に言われたんだと思うんですが、こう言われています。

 その会談で、大臣は、当時の対策委員長として、ロブ貿易大臣に対して、日豪EPAの重要品目の扱いはTPPの標準、あるいは基準になる数字だと理解している、ルールの問題もそうだ、それらを勘案しながら決めていくように政府を督励するというふうに述べたとありますが、そうおっしゃったんですか。

西川国務大臣 そういうふうに申し上げたとは私は考えておりません。あくまでも、私どもは、この日豪EPAについても、農林水産委員会の両院の決議がありますから、それで国会で、守り抜いた、こういう評価をいただくようなことを基本的な考え方にお話をしております。

笠井委員 先ほど、大臣、この報道とのかかわりで、以前におっしゃったこととのかかわりでいうと、大臣はロブ貿易相との間で、日豪EPAの合意内容をモデルにしてTPP交渉を進める考えを示したということではないんですか。

西川国務大臣 豪州側でそうとっているかもわかりませんが、私はそうは見ておりません。

 ただ、オーストラリアには先行利益ということがもたらされてくると思います。TPPで、この交渉がおくれたときは、その間はオーストラリアが日本に対する輸出で非常に優位な立場になる、これも事実でありますから、そのようなことを考えてロブ大臣が発言されたかどうかわかりませんが、私はそういう発言の趣旨ではありません。

笠井委員 そうとられたのかもしれない、そうとられる発言をされたことは私は問題だと思っているんです。

 ロブ貿易相は、日豪EPAは関税など日本の国境措置に開いた小さな穴だと述べて、TPP交渉で一層の譲歩を日本に求める考えを示唆したということでありまして、そうであるならとんでもない話になってくるんだと思うんです。

 本協定による重要品目に関する見直しとあわせて、TPP交渉と相まって、豪州を初め各国からの農産品の受け入れ拡大要求につながって、つまり、譲歩の連鎖に陥る事態というのはとんでもないことになるので絶対いけない、亡国への道は許されないということを指摘しながら、きょうの質問を終わります。

土屋委員長 次に、村上史好君。

村上(史)委員 生活の党の村上史好でございます。

 連合審査という形で、農水委員としての初めての質問でございます。どうかよろしくお願いしたいと思います。

 きょうは、限られた時間、二十分ということでございますので、深掘りはせずに、まず両大臣に、それぞれの項目について基本的な御認識をお伺いする形で進めていきたいと思っております。

 それでは、まず日豪EPAについてでございますけれども、今回の締結の意義について、岸田外務大臣からお答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、このたびの日豪EPAですが、我が国がこれまで署名した二国間EPAの相手国のうち、最大の相手国とのEPA署名となります。

 このことによって経済的な意義があるということ、これは当然のことでありますが、そもそもこのオーストラリアという国、基本的な価値観ですとかあるいは戦略的利益を共有する、この地域における戦略的なパートナーであります。こういった国との関係を強化するという意味においても大きな意義があると存じます。

 それに加えて、内容としましても、貿易、投資、知的財産、競争、政府調達など幅広い分野が含まれていること、また、ともにアジア太平洋地域における経済連携を推進する日本とオーストラリア、この二つの国が包括的な協定を結ぶということは、この地域におけるルールづくりという意味においても意義があると思いますし、また、我が国にとって、豪州市場における日本企業の競争力確保、さらにはエネルギー・鉱物資源そして食料の調達の安定供給の強化、こういった意味においても今回のEPAは意義があると考えております。

 こうした、今申し上げましたさまざまな分野において意義のあるEPAであると認識をしております。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 我が党の立場は、基本的には、自由貿易を中心に諸外国との関係、貿易を深めていくということでありますけれども、ただ、それによるデメリットというものにも十分セーフティーネットを張りながら進めていくというのが基本的な立場であるということを申し上げておきたいと思います。

 そして、先ほど来、日豪EPAとTPPの関連について、今も質問が出ましたけれども、一般的には別物だという再三にわたる御答弁ではありますけれども、改めて外務大臣に、このEPAがTPPの交渉に与える影響についてどのようにお考えなのか。

 あわせて、今も話題となりましたけれども、西川大臣が党のTPP対策委員長時代に、今回の日豪EPAの交渉締結は米国へのプレッシャーになる、交渉や合意を促進することになるという御発言をされたと記憶をいたしておりますが、この認識でいいのか、西川大臣にもお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、委員からも今御指摘がありましたように、日豪EPAとTPP、これは別の経済連携交渉ですので、我が国としましては、引き続きまして、TPPの早期妥結に向けて積極的な役割を果たしていくべくしっかり努力をしていきたいと考えております。

 そして、日豪EPAとTPP、これはともにアジア太平洋地域における経済関係強化、そしてルールづくり、こういったものに貢献するものであると認識をしております。日豪EPA締結がTPPを含む地域の経済連携の活発化に寄与すること、こういったことは期待したいと思っています。

 そして、日豪EPAがまとまったこと自体は、TPPを含む他の経済連携交渉、我が国は今現在八つの経済連携交渉を同時並行的に進めていますが、こうした交渉の、他の交渉参加国の交渉を進めるインセンティブが働く、こういったことが期待できると考えますし、また、分野によっては、日豪EPAで合意した内容が、他の交渉において、日豪が協力していく中で参照される、こういった効果も考えられるのではないか、このように考えます。

西川国務大臣 私は党のTPPの委員長をやっていました。そういう中で、この交渉はなるべく早くまとめ上げなければならない、そういう中でも、非常に慎重に扱ってもらうべき分野である農林水産分野の重要五品目を守りながらやっていこう、こういうことをやっていました。

 そういう中でも、アメリカの主張は、とにかく、農産物は原則全部関税ゼロだ、こういう主張があった中でありますので、やはり譲歩してもらわなきゃなりません。譲歩していただくときに、日本はもう譲れない一線というのは決めておりますので、ぜひ譲歩してほしい。そういうときに、譲歩しなければこれは進みませんし、そのときにオーストラリアが牛肉等で先行利益を得ることも事実でありますから、あとはアメリカがどうとるか、こういうことであったかと思います。

村上(史)委員 両大臣のお話をお聞きしますと、交渉そのものは別だけれども、やはり深く関連する、今回の日豪のEPAがTPPに大きく影響するんだという認識はお持ちだというふうな理解でよろしいですね。はい。

 それでは、次に移りたいと思います。

 そこで、TPPが合意された、妥結されたという前提で、その場合は、この日豪EPAの内容については再協議になるのか、または自動的にどちらかに合わせるという形で見直しはなされるのか、その点についてお伺いしたいと思います。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 今まさに委員御指摘のとおり、日豪EPAとTPPは異なる交渉でございますし、交渉の結果として締結をされた日豪EPA協定、そしてまた将来あり得べきTPP協定は別物でございます。

 したがいまして、一般論として申し上げますと、両者の間に法的な優劣関係はありません。また、一方の合意内容が他方の協定に自動的に反映されるということもございません。

 いずれにいたしましても、両大臣がお答えになったとおり、TPP交渉においては、政府が国会で述べてきているとおり、関係省庁が連携し、一体となって、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めていく、こうしたことにより、国益にかなう最善の結果を追求していく考えです。

村上(史)委員 それでは、やや具体のお話をさせていただきたいと思います。

 ことし六月に農水省が出されたQアンドAの中で、国産牛肉への影響について、影響は限定的で、長期間かけての関税削減やセーフガードの確保等により、影響は緩和されるという問答集を出されております。

 ただ、早期発効となれば、いつになるか後ほど岸田大臣にお聞きしますが、例えば、その時期によっては、年度を四月一日ということから起算をすれば、数カ月のうちにまた新しく年度がかわって、二年目になってしまう可能性がある。そうなりますと、わずか二、三カ月で関税が一〇%ぱあんと落ちてしまうという状況が生まれます。

 そういう中で、まず岸田大臣に、この締結、発効の時期についてどういう見通しをお持ちなのか。そして、それによって影響を受ける畜産等を含めて、激変緩和の措置はとられるおつもりがあるのかどうか、西川大臣にお尋ねをしたいと思います。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問いただきました日豪EPAの発効の時期でございますけれども、国会の御承認をいただいた上で協定を締結するということでございますので、現時点で発効の具体的な時期について政府の方から申し上げることは差し控えたいと思います。

 ただ、その上で、豪州側の動きについて御報告いたします。

 豪州政府は、既に七月十四日にこの協定を連邦議会に提出をしまして、国内手続が進められています。さらに、きょうの質疑の中でも言及がございましたが、韓国と豪州はFTAを、本年四月、既に署名しております。韓国と豪州両国において、それぞれ締結に向けて国内手続が先行しているという事実があります。

 したがいまして、政府としましては、日豪両国首脳は日豪EPAを可能な限り早期に発効させられるよう取り組むということを確認していること、また、豪州における日本企業の競争力確保の観点からもこの協定を早期に発効させることが重要であると考えておりまして、できる限り早期に国会の御承認をいただきたいと考えております。

松島政府参考人 先ほど外務省から御答弁ございましたように、日豪EPAの発効スケジュールはまだ確定しておりませんが、したがいまして、関税削減のタイミングにつきましても予断できないという前提でございますけれども、先ほど来御答弁申し上げていますように、日豪EPAの協定内容自身が、我が国の畜産、酪農の存立や健全な発展にそごしないというような内容になっているというふうに私どもも考えてございます。

 したがいまして、今後とも、農業生産の現場に不安が生じないように、この協定内容を丁寧に説明していくということもしていきたいと思っておりますし、また、畜産物価格、例えば牛肉の変動につきましては、粗収益が生産コストを下回った場合に、差額の八割を補填する肉用牛肥育経営安定特別対策事業という事業もございます。こういった現行のセーフティーネット対策もしっかり対応してまいりたいというふうに考えてございます。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 それでは、次に、もう時間も五分程度ですが、TPP交渉について何点か質問したいと思います。

 所管は少し離れると思うんですけれども、西川大臣にお尋ねをしたいと思います。

 西川大臣、内閣委員会で御一緒させていただき、タフな交渉術といいますか、知らない間に西川ワールドに取り込まれてしまうというだけ、相当な交渉力をお持ちでございます。それを今後、対外に対して交渉の力を発揮していただくということを期待したいと思います。

 先般、シドニーでTPPの閣僚会議が開催をされました。報道では、なかなか基本的な合意が煮詰まらない、基本的要素の合意がないということで、年内の合意はもう厳しいのではないかという評価でございますが、この点について、大臣の見通し、御見解を伺います。

西川国務大臣 村上委員には内閣委員会のとき大変御協力をいただいて、二年続けて在庫ゼロ、これが内閣委員会の成績でありました。御協力、お礼申し上げます。

 さて、TPPの詰まりぐあいですが、今までは、途中、物別れで、2プラス2をやっても大体途中で終わっちゃうんですね。しかし、今回は非常にかみ合ってくれたために、最後の最後まで、こちらは大江首席代理と大澤国際部長が立って、カトラー、ベッター、こういう人たちと最後までかみ合ってきたと思いますが、最後に国益をかけた、私どもは下がれません、向こうはそこを何とか入ろう、こういうことで来ておりまして、残りましたが、あとは私どもは態度は変えません。

 ですから、アメリカの譲歩があれば交渉の妥結の期限が見える、結局、アメリカが譲歩しなければなかなか難しい、こういう判断でよろしいかと思います。

村上(史)委員 力強い大臣の御見解を示されました。

 とはいうものの、今後、十一月に北京で行われるAPECで大筋合意をするのではないかという見方もございます。ただ、十月の二十七日に閉幕をして、また一カ月足らずのうちにそんなに煮詰まった話になるのかどうか、その見通しについてはちょっと私は疑問符がつくんですけれども、それに対する見通しについてお伺いしたいと思います。

西川国務大臣 少し繰り返しになって申しわけないんですけれども、最後の大詰め、日本はどうしても譲りませんので、アメリカに譲ってほしいんです。それができれば次に向けた首脳会合もありますけれども、それが北京で行われるかどうかはわかりません。APECでやるかどうかも我々は聞いていません。それ以外に、閣僚会合は必要だと思いますし、そういうことを数週間以内にやる、こういうことも来ておりますので、全体の日程が見えてから判断をしていきたいと思います。

 あくまでも、私どもは、アメリカが、フロマン代表が、カトラー交渉官代理ですか代行ですか、そこへマンデートを与えていただけるように、私どもは待っている、こういうことであります。

村上(史)委員 かねてより、日米交渉の中で、今大臣も、先ほど来、アメリカの譲歩を待っているんだということでございます。

 ただ、一般的に、アメリカの中間選挙まではアメリカもなかなか譲歩しにくいんじゃないかというのは当初から言われておりました。その中間選挙は十一月四日で決着がつくわけですけれども、その後、アメリカからの譲歩というものは十分に期待できるのかどうか。それはアメリカ側の立場ですから、それを大臣から具体的なことはおっしゃれないと思いますが、一般的には環境としては整うのではないかなというふうに思いますが、いかがでしょうか。

西川国務大臣 十一月四日に中間選挙があります。どうも、私どもが聞いているところによりますと、アメリカのことですから論評は挟みません、挟みませんが、我々が聞いているところでは、どうも相当接近した結果になるんじゃないか、こう聞いているんです。さらには、決選投票が行われる州も起きるのではないか、こうも聞いているんです。

 決選投票をやっていきますと、結果的には一月まで延びてしまう、こういうことでありまして、十一月四日に新体制が決まるのか、それとも年が明けて決まるのか、これは私ども予測がつきませんが、早くアメリカが意思表示ができますように、待っていたい、こういう考え方でございます。

村上(史)委員 踏み込んだことは大臣も御答弁できないと思いますけれども、いずれにしましても、我々としては、合意ありきではない、あくまでも、生産者も含め、また国民の、消費者の立場からも含めて、日本の国益をいかに確保していくか、これが最大の課題であり、重要な視点だと思っておりますので、そのことは十分踏まえて、岸田外務大臣並びに西川大臣の御健闘をお祈り申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

土屋委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件は外務委員会議録第三号に掲載


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