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強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 

 政府は、本法施行に当たり、次の諸点について十分配慮すべきである。

 

一 一般送配電事業者が事故等により電気の供給に支障が生ずる場合に備え、その支障を速やかに除去するために講ずるべき必要な対策について、予め検証するとともに、関係省庁間又は関係省庁と地方公共団体の間の調整その他の措置を講ずるなど、国の役割を明確にするとともに必要な支援を行うこと。

 

二 一般送配電事業者が共同して作成する災害時連携計画については、現場の実態や関係者の意見等を踏まえ、真に災害復旧の迅速化・円滑化に資するものとなるよう適切に指導を行うとともに、今後の災害復旧の経験から得られる改善点等について、他の事業者と速やかに情報共有し、災害対応力の全国一律の向上が図られるよう指導すること。

  なお、同計画で定める事項のうち電気工作物の仕様の共通化に関する検討に当たっては、現場の混乱や作業効率の低下等に繋がることのないよう配慮すること。

 

三 災害時等における地方公共団体等への一般送配電事業者の電力データの提供に当たっては、災害復旧の現場における実効的かつ迅速な対応が図られるよう、予めデータ提出の様式や手順等を定めること。

 

四 電気の使用状況等のデータを有効活用する制度については、節電やエネルギー需給の効率化のための需給管理(デマンドレスポンス)の推進の観点を踏まえて、その活用を進めるとともに、一部の事業者の独占が起きないように配慮しつつ、新しい事業の幅広い展開に繋がるよう取り組むこと。

 

五 電力広域的運営推進機関による広域系統整備計画の策定等については、電力システム改革が進展する中で、全国を視野に入れた再生可能エネルギーの主力電源化及び分散型電力システムの実現に向け、一般送配電事業者による送配電網設備の増強等が効果的に行われるよう、公開された、幅広い関係者による検討を行うこと。

 

六 電力自由化の一層の推進、再生可能エネルギー電気その他の電気の安定的かつ効率的な供給の一層の確保、送電網の広域化及び配電網の分散化の一層の推進を図るため、役割の多様化が進み重要性が増す電力広域的運営推進機関の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

 

七 送配電網の強靱化とコスト効率化を両立するための新たな託送料金制度の詳細の検討に際しては、電力の安定供給の継続的な確保とこれを支える人材の確保・育成等に支障が生ずることがないよう十分配慮すること。

 

八 地域においてエネルギーの地産地消や災害に強い電気供給体制の確立等に資する分散型電力システムの円滑な導入が図られるよう、配電事業者及びアグリゲーターによる事業参入の円滑化に向けた環境整備を図ること。

  その場合、地域の意向を十分踏まえるなど地域と密接に連携した取組を進めるとともに、災害発生時のリスク対応など電力の安定供給確保に万全を期するため、アグリゲーターに対する指導監督に努めること。

  また、配電事業の許可を行う際には、事業の開始が電気事業の総合的かつ合理的な発達その他の公共の利益の増進に資するよう適切に審査するとともに、事業の休廃止により電気の使用者の利益を損なわないよう必要な措置を講ずること。

 

九 市場価格に一定のプレミアムを上乗せして交付するいわゆるFIP制度の導入に当たっては、対象となる電源、規模、プレミアムに係る参照価格の見直し期間等について、再生可能エネルギーに対する投資インセンティブの確保及び市場への統合の観点を十分踏まえるとともに、関係者の意見を聞く等、再生可能エネルギー発電事業者の経営の安定化に配慮すること。

  また、再生可能エネルギーの導入が進展しているものの、発電コストのもう一段の低下が求められるところ、FIP制度の導入により再生可能エネルギーの導入にブレーキをかけることがないよう、再生可能エネルギー事業の動向に配慮して適切な導入時期を検討すること。

  なお、制度設計の時点では予見できなかった事態が生じた場合には、広く関係者に情報共有するとともに、必要な措置を講ずること。

 

十 再生可能エネルギーの大量導入に資するプッシュ型系統整備を図るための賦課金方式の活用に当たっては、電力需要家に対する過度な負担とならないように配慮するとともに、賦課金の算定方法など制度に係る詳細を早期に明らかにし、電力需要家の理解と協力が得られるよう、本制度の丁寧な周知広報を行うこと。併せて、電気料金表に固定価格買取制度の賦課金と区別して記載するなど、電力需要家に正確かつ確実に賦課金額が周知されるよう検討すること。

  また、電力系統整備費用の負担の在り方については、託送料金制度においても、連系線の増強に際して地域による負担の差が再生可能エネルギーの導入の障害とならないよう、検討を進めること。

 

十一 再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取組が国民の理解と協力の下により健全かつ効果的に進められるよう、未稼働案件対策、設備廃棄対策、地域の理解を得られにくい開発案件対策、長期安定発電を可能とするような産業育成について、所管官庁である経済産業省の主導により関係省庁の密接な連携により進めること。

 

十二 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の改正に伴い発生する、電気事業者が現に締結する特定契約の変更その他の事務処理及びそれらに要する費用について、当該電気事業者の負担が軽減されるよう配慮すること。

 

十三 発電側基本料金制度の検討に当たっては、固定価格買取制度の認定を受けた再生可能エネルギー発電事業者の状況を踏まえるとともに、再生可能エネルギー発電事業者が他の発電事業者と比較して著しく不利益になることがないよう、十分に配慮すること。

 

十四 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構による資源開発や緊急時の発電用燃料の調達等の業務のうち、特に石炭に関連するものについては、温室効果ガスの排出削減に取り組む政府の方針等と十分に整合性を確保するとともに、公開された幅広い関係者による検討に基づき事業を進めること。

  また、同機構のリスクマネー供給については、国際情勢を注視しつつ、将来にわたる資源の安定的な確保に向けて、民間事業者とも密接に連携して取り組むこと。

 

十五 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い経済的な悪影響が懸念されていることから、電気料金の支払いに困難な事情がある方に対しては、その置かれた状況に配慮し、柔軟な対応を行うことを要請するなど、必要な対応を検討すること。

  併せて、新型コロナウイルス感染症に係る経済対策の一つとして、配電事業及びアグリゲーター等による新たな分散型電力システムの推進に資する支援や環境整備を検討すること。

 

十六 電気等の使用者の利益の保護及び電気事業等の健全な発達をより一層図る観点等から、電力・ガス取引監視等委員会の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

 

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