農業災害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
農業災害補償制度は、制度発足以来、七十年以上の長きにわたり、災害によって農業者が被る損失を補塡することにより農業経営の安定に大きく貢献してきた。しかしながら、同制度は、価格低下等は対象となっておらず、対象品目が限定されているといった問題が指摘されている。このため、自由な経営判断に基づき経営の発展に取り組む農業経営者のセーフティネットとして、個々の農業者ごとに農業収入全体を対象に総合的に対応し得る新たな保険制度の創設等が喫緊の課題となっている。
よって政府は、本法の施行に当たり、農業経営の安定を図るため、左記事項の実現に万全を期すべきである。
記
一 新たに創設される農業経営収入保険事業及び従来からの収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)をはじめとした収入減少を補塡する機能を有する制度が農業者の自由な経営判断により適切に選択されるよう、国と全国を区域とする農業共済組合連合会(全国連合会)等は緊密に連携し相互に協力して制度の効率的かつ円滑な実施を図ること。その際、農業者が負担する保険料と補塡金との関係についてのモデルケースを示すなど、農業者の制度理解に資する分かりやすい説明を行い加入の促進に努めること。
二 農業経営収入保険事業を安定的に運用するためには、一定の加入者数を確保することが望ましいこと等に鑑み、全国連合会が事業を支障なく実施することができるよう必要な情報及び資料を提供するとともに、適時適切な指導及び助言を行うこと。
三 保険金及び特約補塡金については、農業者はこれらを含めた当年の収入を翌年の作付等に必要な経費に充てることから、当該年への算入やつなぎ融資の無利子化など、可能な限り農業者が利用しやすい仕組みとすること。また、保険金及び特約補塡金は、保険期間の翌年の税負担に影響を及ぼさないよう、税務上、保険期間の総収入金額に算入されるよう適切な運用を行うこと。
四 保険金及び特約補塡金の支払いの基礎となる基準収入金額については、当年の経営面積が拡大する場合や農業収入金額に一定の上昇傾向が確認できる場合等、農業者が経営の発展に取り組んでいるときは、これらの動向を適切に反映すること。また、基準収入金額の算定の方法と算定プロセスの透明性を確保すること。
五 農作物共済の当然加入制が廃止される中、特に、保険を必要とする農業者が無保険者となることのないよう、今回の法改正の内容を十分に説明することにより、農作物共済への引き続きの加入若しくは農業経営収入保険事業への加入を進めること。
六 法施行後の見直しに当たっては、農業経営収入保険事業、収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)等の収入減少を補塡する機能を有する同趣旨の制度など関連政策全体の検証を行い、総合的かつ効果的な農業経営安定対策の在り方について検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずること。
右決議する。