食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
国際情勢の変化等による世界の食料需給の変動や、国内の農地面積の減少、農業従事者の減少・高齢化が進む中、将来にわたって国民への食料の安定供給を確保するため、農業生産の基盤である農地の総量確保と有効利用に係る措置を強化するとともに、地域において人と農地の受け皿となる法人経営体の経営基盤強化に係る措置を講ずることで、食料安全保障の根幹である人と農地の確保に取り組むことが重要である。
よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。
記
一 人と農地の確保に向けた本法の措置については、農業従事者が安心して営農を継続できる環境整備を前提に、今後の人・農地政策の根幹となる地域計画と一体的に進めることが重要であることに鑑み、地域の実情に応じた地域計画の策定、農業従事者の所得向上等を通じた農業人材の確保、農地の集積・集約化、遊休農地や荒廃農地の解消等の関連施策の充実・強化を図ること。
二 確保すべき農用地等の面積の目標等に関する国と地方の協議の場については、これまでの地方分権推進の経緯等を十分に踏まえ、地方の意見を尊重し、協議が調うよう努めること。
三 農用地等の確保に関する基本指針の変更については、次期食料・農業・農村基本計画との一体的な検討を図るとともに、地域計画に位置付けられる農地の面積との関係も踏まえ、農地の確保とその有効利用が確実に担保されるよう、国と地方の協議の場も活用し、国と地方が基本的認識を共有しながら行うこと。また、基本指針の変更を受けて都道府県が基本方針を変更する際、特に都道府県面積目標については、市町村の実情を踏まえ、市町村との共通認識の下に定められるよう都道府県に周知すること。
四 国と地方公共団体との適切な役割分担の下、我が国全体及び各都道府県において必要な農用地等が確保されるよう、国の面積目標と都道府県面積目標の合計との相異、農林水産大臣が毎年公表する都道府県面積目標の達成状況等を踏まえ、必要があると認められる場合には、総合的な調整や対応のため、国と地方の協議の場の柔軟な活用を図ること。
五 市町村による農用地区域からの除外に係る協議を受けた都道府県知事の同意に係る事務が適正に行われるよう、同意の基準や除外に係る影響を緩和するために講じようとする代替措置の具体例を示すなど、必要な措置を講ずること。その際、一定の面積により一律に面積目標達成への支障如何を考慮するような基準等ではなく、地域の実情を考慮しつつ、当該協議に係る地方公共団体の負担等に配慮すること。
六 農地の権利取得の許可については、農業関係法令の遵守状況の確認等が円滑に実施され、農地を適正かつ効率的に利用する者による権利取得が促進されるよう、具体的な判断基準の周知を行うこと。
七 農地転用許可に係る定期報告、違反転用に係る公表も含め、違反転用を防止するための措置が効果的に実施されるよう、必要な措置を講ずること。
八 農業経営発展計画制度については、地域において人と農地の受け皿となる農業法人の経営基盤強化により、地域農業の発展に裨益するよう、地方公共団体と密に連携して運用するとともに、当該制度が適切に活用されるよう、制度の趣旨及び内容について、農業現場に丁寧に周知すること。
九 農業経営発展計画の認定に当たっては、十分な審査体制を構築した上で、投機目的の出資を排除するなど厳格に審査するとともに、計画認定後も、議決権要件の緩和に係る農村現場の懸念を払しょくできるよう、農業現場に寄り添った監督措置等を適切に講ずること。
十 議決権要件の特例により出資できる者の要件を、制度の開始のため省令で定めるに当たっては、農業に密接に関連する業種に限定することを要件の一つとした上で、出資を受ける農地所有適格法人と農業上の取引等の実績が十分にある等の基準を満たす食品事業者及び地銀ファンドとすること。
十一 地域の実情に応じた人と農地の確保を図る観点から、市町村の農政関係部署及び農業委員会事務局の人員を始めとした現場の体制整備のために必要な支援措置を十分に講ずること。
十二 この法律の施行に当たっては、特に不適切な営農型太陽光発電への対応、農業経営発展計画制度に係る農村現場の懸念払しょく状況等について、常時、きめ細かく把握・分析し、必要に応じて臨機に制度の見直し等の検討を行うこと。
右決議する。