生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案(参議院提出、参法第一三号)の概要
本案は、生殖補助医療をめぐる現状等に鑑み、生殖補助医療の提供等に関し、基本理念を明らかにし、並びに国及び医療関係者の責務並びに国が講ずべき措置について定めるとともに、生殖補助医療の提供を受ける者以外の者の卵子又は精子を用いた生殖補助医療により出生した子の親子関係に関し、民法の特例を定めようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 「生殖補助医療」、「人工授精」、「体外受精」及び「体外受精胚移植」についての定義規定を設けること。
二 生殖補助医療の提供等に関し、生殖補助医療は、不妊治療として、その提供を受ける者の心身の状況等に応じて、適切に行われるようにするとともに、これにより懐胎及び出産をすることとなる女性の健康の保護が図られなければならない等とする基本理念のほか、国及び医療関係者の責務、知識の普及等、相談体制の整備並びに法制上の措置等に関する規定を設けること。
三 生殖補助医療により出生した子の親子関係に関する民法の特例
1 女性が自己以外の女性の卵子(その卵子に由来する胚を含む。)を用いた生殖補助医療により子を懐胎し、出産したときは、その出産をした女性をその子の母とすること。
2 妻が、夫の同意を得て、夫以外の男性の精子(その精子に由来する胚を含む。)を用いた生殖補助医療により懐胎した子については、夫はその子が嫡出であることを否認することができないこと。
四 この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行すること。ただし、三は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行し、当該日以後に生殖補助医療により出生した子について適用すること。
五 生殖補助医療及びその提供に関する規制の在り方、生殖補助医療に用いられる精子、卵子又は胚の提供(医療機関による供給を含む。)又はあっせんに関する規制(これらの適正なあっせんのための仕組みの整備を含む。)の在り方、他人の精子又は卵子を用いた生殖補助医療の提供を受けた者、当該生殖補助医療に用いられた精子又は卵子の提供者及び当該生殖補助医療により生まれた子に関する情報の保存及び管理、開示等に関する制度の在り方等について、おおむね二年を目途として、両議院の常任委員会の合同審査会の制度の活用等を通じて、幅広くかつ着実に検討が加えられ、その結果に基づいて法制上の措置等が講ぜられるものとすること。また、この法律の規定について、認められることとなる生殖補助医療により出生した子の親子関係を安定的に成立させる観点から三の規定の特例を設けることも含めて検討が加えられ、その結果に基づいて必要な法制上の措置が講ぜられるものとすること。