自殺対策基本法の一部を改正する法律案(参議院提出、参法第5号)概要
本案は、こどもの自殺が増加している状況等に鑑み、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 基本理念として、こどもに係る自殺対策は、こどもが自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利利益の擁護が図られ、将来にわたって健康で心豊かな生活を送ることができる社会の実現を目指し、社会全体で取り組むことを基本として、行われなければならないこと等を加えること。
二 こどもに係る自殺対策について、内閣総理大臣、文部科学大臣及び厚生労働大臣は、その自殺の実態等を踏まえて適切かつ効果的に策定され、及び実施されるよう、相互に又は関係行政機関の長との間において緊密な連携協力を図りつつ、それぞれの所掌に係る施策を推進しなければならないものとすること。
三 学校は、基本理念にのっとり、関係者との連携を図りつつ、こどもの自殺の防止等に取り組むよう努めるものとすること。
四 学校は、自殺の防止等の観点から、心の健康の保持のための健康診断等の措置を行うよう努めるほか、精神保健に関する知識の向上に努めるものとすること。
五 医療提供体制の整備に関し必要な施策の例示として、精神科医その他の医療従事者に対する自殺の防止等に関する研修の機会の確保を加えること。
六 自殺発生回避のための適切な対処に必要な情報が、関係機関等に迅速かつ適切に提供されるために必要な措置が講じられなければならないものとするとともに、国及び地方公共団体は、自殺の助長につながるような情報等の適切な管理、配慮等に関して注意を促すために必要な措置を講ずるものとすること。
七 自殺未遂者等への継続的な支援を明記するほか、自殺者の親族等への支援に関し、その生活上の不安等の緩和の観点からも行うことを明記するとともに、総合的な支援について規定すること。
八 地方公共団体は、学校、教育委員会、児童相談所、精神保健福祉センター、医療機関、警察署等の関係機関、自殺対策に係る活動を行う民間の団体等をもって構成し、こどもの自殺の防止等について必要な情報の交換及び協議を行う協議会を置くことができるものとすること。
九 こども家庭庁の所掌事務として、こどもに係る自殺対策を規定すること。
十 この法律は、一部を除き、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。