金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)概要
本案は、金融システムの信頼性及び安定性を高めるため、情報伝達行為に対する規制の導入等のインサイダー取引規制の強化、投資一任業者等による運用報告書等の虚偽記載等に係る制裁の強化、投資法人の資本政策手段の多様化、大口信用供与等規制の強化、金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理に関する措置の整備等の措置を講ずるもので、その主な内容は次のとおりである。
一 金融商品取引法の一部改正
1 公募増資インサイダー取引事案等を踏まえた対応
㈠ 会社関係者であって重要事実を知ったものは、他人に対し、当該重要事実の公表前に取引をさせることにより利益を得させる等の目的をもって、当該重要事実を伝達し、又は取引を勧めてはならないこととし、当該違反により情報受領者等が公表前に取引をした場合、違反者を課徴金及び刑事罰の対象とすること。
㈡ 運用対象財産の運用として、自己以外の者の計算において不公正取引をした者について、当該取引をした月の運用対価に相当する額に三を乗じて得た額の課徴金を課すこと。
2 AIJ事案を踏まえた資産運用規制の見直し
投資一任契約の締結等に関する偽計等、投資一任契約の締結等又はその勧誘に関する虚偽告知及び投資一任業者等による運用報告書の虚偽記載等に対する罰則を、それぞれ引き上げることとするほか、厚生年金基金が特定投資家になるための要件を限定すること。
二 投資信託及び投資法人に関する法律の一部改正
1 投資信託の運用報告書の二段階化
投資信託の運用報告書のうち重要な事項を記載した書面の作成及び受益者への交付を義務付けるとともに、それ以外の記載内容を含めた運用報告書自体については、電磁的方法による提供を可能とすること。
2 投資法人の資金調達・資本政策手段の多様化
投資法人が自己の投資口を取得することができる場合として、新たに、あらかじめ規約にその旨を定めた場合を追加するとともに、新投資口予約権の創設に係る規定を整備することとするほか、出資総額等からの控除による損失の処理を可能とすること。
三 預金保険法の一部改正
1 金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理に関する措置
内閣総理大臣は、金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理に関する措置が講ぜられなければ、我が国の金融市場その他の金融システムの著しい混乱が生ずるおそれがあると認めるときは、金融危機対応会議の議を経て、当該措置を講ずる必要がある旨の認定を行うことができること。
2 特定負担金の納付等
金融機関等は、金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理に関する措置に係る業務の実施に要した費用に充てるため、預金保険機構に対し、特定負担金を納付しなければならないこととするとともに、政府は、特定負担金のみで当該費用を賄うとしたならば、我が国の金融市場その他の金融システムの著しい混乱が生ずるおそれがあると認められるときに限り、預金保険機構に対し、当該業務に要する費用の一部を補助することができること。
四 銀行法の一部改正
1 銀行等の同一人に対する信用供与等規制
銀行又はその子会社等が同一人に対する信用の供与等に係る規定の適用を免れる目的で信用の供与等を行っている場合には、名義人以外の実質的に当該信用の供与等を受ける者に対する信用の供与等としてこの規制を適用すること。
2 銀行等の議決権の取得等の制限の見直し等
銀行が、事業再生会社を、投資専門子会社を通じることなく、子会社とすることができることとするほか、銀行の投資専門子会社は、地域の活性化に資すると認められる事業を行う会社の議決権の基準議決権数(当該会社の総株主等の議決権の百分の五)を超える議決権を取得し、又は保有することができることとする等、所要の規定の整備を行うこと。
3 外国銀行支店の資本金に対応する資産の国内保有
外国銀行支店は、常時、十億円を下回らない範囲内において政令で定める額以上の資本金に対応する資産を国内において保有していなければならないこと。
五 施行期日
この法律は、別段の定めがあるものを除き、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。