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平成29年度畜産物価格等に関する決議(案)

   令和五年度畜産物価格等に関する件

 

 我が国の畜産・酪農経営は、依然として担い手の高齢化、後継者不足が進行しており、特に、中小・家族経営における経営の継続を困難なものとしている。こうした事態に対応するためには、生産基盤をより一層強化する取組や次世代に継承できる持続的な生産基盤を創造する取組の継続が重要である。

このような中、ウクライナ情勢等に伴う穀物価格の上昇等による配合飼料等の資材価格の高騰や、新型コロナウイルス感染症等による需要の減少は、畜産・酪農経営に対し営農継続が危ぶまれるほどの甚大な影響をもたらしている。特に、飼料価格の高騰は、飼料自給率の低い我が国において食料安全保障に関わる問題であることから、飼料の輸入依存からの脱却を目指すとともに、畜産・酪農経営の安定を図り、営農継続の意欲を維持し、高めていくことが重要な課題となっている。

よって政府は、こうした情勢を踏まえ、令和五年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

                 記

一 配合飼料価格の高騰による畜産・酪農経営への影響を緩和するため、配合飼料価格安定制度を安定的に運営し、配合飼料価格の高止まりによる生産者の負担増加を抑制するための対策を着実に実施するとともに、今後の畜産・酪農経営の動向を見定め、離農・廃業を回避できるよう必要に応じて追加の対策を講ずること。また、耕畜連携による飼料用とうもろこし等の国産飼料の生産・利用の拡大、飼料用米、稲発酵粗飼料の生産・利用の推進、草地等の生産性向上、稲わら等の国産粗飼料の広域流通等による国産飼料に立脚した畜産・酪農への転換を強力に推進し、飼料自給率の向上を図ること。加えて、飼料穀物の備蓄をはじめとする配合飼料の安定供給のための取組を支援すること。

二 配合飼料に加え、単体の濃厚飼料、購入粗飼料の価格高騰等により、生産コストが上昇している酪農・畜産経営を支援する施策を講ずること。また、新型コロナウイルス感染症等による需要の減少で乳製品在庫が高水準にある中、生乳の需給ギャップを早期に解消するため、生産者による一定期間における生産抑制への取組、国産チーズの競争力強化、生産者団体・乳業者による乳製品の在庫対策を支援すること。その際、生産者の経営継続、所得の安定、将来的な生産力回復に配慮すること。さらに、牛乳・乳製品の消費拡大に取り組むこと。

三 高病原性鳥インフルエンザ、豚熱の感染拡大防止は、現下の家畜伝染病の防疫上、最重要課題である。そのため、各種対策を強力に推進し、農場における飼養衛生管理基準の遵守の徹底を図り、感染リスクを低減させる取組を支援すること。また、アフリカ豚熱等の家畜伝染病の流入防止のため、水際での防疫措置等の発生予防対策を徹底すること。さらに、これらの措置を着実に進めるため、地域の家畜衛生を支える家畜防疫員や産業動物獣医師の確保・育成を図るとともに、豚熱の予防的ワクチン接種体制を強化すること。

四  加工原料乳生産者補給金については、飼料等の資材価格の高騰を踏まえ、中小・家族経営を含む酪農経営の維持が可能となるよう単価を決定すること。集送乳調整金については、輸送環境が急速に悪化していること等を踏まえ、条件不利地域を含めて確実にあまねく集乳を行えるよう単価を決定すること。また、総交付対象数量については、新型コロナウイルス感染症等による需要の減少を踏まえつつ、国産乳製品の安定供給が図られるよう適切に決定すること。

五  肉用子牛生産者補給金制度における保証基準価格等については、中小・家族経営を中心とする繁殖農家の経営努力が報われ、営農意欲が喚起されるよう、生産コストの動向等を踏まえ再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。また、肉用子牛の価格が短期間で大幅に下落し、生産者の経営環境が急激に悪化していることに鑑み、肉用子牛生産者の経営改善を支援すること。さらに、肉用牛生産基盤の維持・強化を図るため、優良な繁殖雌牛の導入、和牛受精卵を活用した和子牛の生産等酪農経営と肉用牛経営の連携等の取組を支援すること。

六  経済連携協定等が、我が国の畜産・酪農経営に与える影響について、統計データ等を常に注視し、分析を行い、これを公表すること。また、関税削減や日米貿易協定に基づく牛肉セーフガードの見直し等に対する生産者の懸念と不安を払拭し、生産者が経営の継続・発展に取り組むことができるよう、実効ある経営安定対策を講ずること。その際、実施した施策の効果を検証し、適宜必要な見直しを行うこと。

七 畜産・酪農経営における経済性や採算性の分析を不断に行い、大規模化の効果やリスク、飼養形態・飼養規模の在り方などを検証し、現場と情報の共有を図ること。

八  中小・家族経営をはじめとした地域の関係者が連携し、地域一体となって収益性の向上を図る畜産クラスターについて、引き続き、現場の声を踏まえた事業執行に努めつつ、飼料増産や収益性向上等に必要な機械導入や施設整備、施設整備と一体的な家畜導入等を支援すること。また、既往債務が畜産・酪農経営に与える影響に鑑み、償還負担の軽減に向けた金融支援措置が十分に活用されるよう、その周知徹底を図ること。さらに、乳業工場・食肉処理施設の再編整備及び機能強化等を支援すること。

九 酪農経営の労働負担の軽減のため、飼養方式の改善、機械化、育成の外部化を支援するとともに、特に中小・家族経営にとって不可欠な存在である酪農ヘルパーについては、その要員の育成や確保、傷病時の利用料金の軽減等のための支援を行うこと。また、ICTやロボット技術の活用等により生産性の向上と省力化を図るとともに、後継者による継承や新規就農の推進のための取組を強力に支援すること。

十  国際社会において、SDGsに基づく環境と調和した持続可能な農業の促進が求められていることを踏まえ、持続的な畜産物生産に向けた家畜ふん堆肥の利用推進や高品質化、家畜排せつ物処理施設の機能強化等の温室効果ガス排出量の削減に資する取組を支援すること。また、畜産GAPの普及・推進体制の強化を図るための指導員等の育成やGAP認証取得等の取組を支援するとともに、アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の普及を図ること。

十一  家畜能力等の向上を図る取組を一層支援すること。また、関係者の長年の努力の結晶である和牛遺伝資源の厳格な流通管理及び知的財産としての価値の保護を確実に実施すること。

十二 畜産物の輸出促進を図るため、畜産農家・食肉処理施設等・輸出事業者が連携した産地のコンソーシアム化、コンソーシアムと品目団体との連携による販売力の強化等を進めるとともに、国産畜産物の需要の増加に対応できる生産基盤の構築や輸出対応型の処理加工施設の整備に取り組むこと。

十三 原発事故に伴う放射性物質の吸収抑制対策及び放射性物質に汚染された稲わら、牧草等の処理を強力に推進すること。また、原発事故に係る風評被害対策に徹底して取り組むこと。

 右決議する。

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