持続可能な地方税財政基盤の確立等に関する件
地方公共団体が住民生活に必要な行政サービスを持続的かつ安定的に提供していくためには、持続可能な地方税財政基盤の確立が不可欠であること等に鑑み、政府は、次の諸点について措置すべきである。
一 交付団体を始め地方の安定的な財政運営に必要な一般財源総額については、前年度の地方財政計画の水準を下回らないよう、予見可能性を持って安定的に確保するとともに、社会保障関係費その他の拡大する行政需要を正確に見積もり、実態に合わせた拡充を図ること。併せて、各地方公共団体が、地域の実情に応じた独自の施策を円滑に実施できるよう、地方単独事業の財源の充実を図ること。
二 地方交付税については、本来の役割である財源調整機能と財源保障機能が十分発揮できるよう、引き続き、地方税等と併せ必要な総額の充実確保を図るとともに、法定率の引上げを含めた抜本的な見直しを検討し、臨時財政対策債等の特例措置に依存しない持続的な制度の確立を目指すこと。
三 地方交付税の原資となる税収の見積りに当たっては、特に減額による混乱を回避するため、正確を期すよう、万全の努力を払うこと。また、年度途中に税収の見込額が減額される場合には、地方公共団体の財政運営に支障が生じないよう、国の責任において十分な補塡措置を講ずること。
四 地方税については、地方財政の自主性・自立性を確立するとともに、安定的で充実した財源の確保を可能とする地方税制の構築を図ること。また、税負担軽減措置等の創設や拡充など減収が生ずる地方税制の見直しを行う場合には、真に地域経済や住民生活に寄与するものに限られるよう、慎重に対処するとともに、代替の税源の確保等の措置を講ずること。とりわけ固定資産税は、市町村の基幹税目であることを踏まえ、納税者の税負担にも配慮しつつ安定的税収の確保に努めること。
五 いわゆる「百三万円の壁」の更なる引上げによる恒久的な減税を行う場合には、地方公共団体の財政運営に影響が生じないよう、国の責任において恒久財源を適切に確保すること。
六 軽油引取税の「当分の間税率」については、自動車関係諸税全体の見直しの議論と併せて検討を行い、地方公共団体の財政に悪影響を及ぼさないよう、恒久的な財源を確保すること。
七 ふるさと納税制度に関しては、寄附の募集や返礼品等に係る情報を掲載するポータルサイトの運営事業者に対して地方公共団体が支払う手数料等の募集に要する費用が増加していることに鑑み、制度の趣旨をゆがめる不適切な運用などがないか注視すること。
八 企業版ふるさと納税については、地域再生計画の認定が取り消される不適切事案が発生したことを踏まえ、制度の趣旨に沿った運用がなされているか注視し、必要に応じて更なる見直しを検討すること。
九 地方債については、財政力の弱い市町村が円滑に資金を調達できるよう、地方公共団体金融機構の機動的な活用を含め、公的資金の確保と適切な配分に最大限の配慮を行うこと。
十 臨時財政対策債を始め、累積する地方債の元利償還については、将来において地方公共団体の財政運営に支障が生じないよう、万全の財源措置を講ずること。
十一 昨今の金利上昇の影響にも留意しつつ、引き続き、臨時財政対策債の発行抑制や交付税特別会計借入金の残高の着実な縮減に努め、地方財政の健全化を進めること。
十二 会計年度任用職員を含む地方公務員の人件費については、民間給与の上昇等の動向を踏まえ、その増加に要する財源を確実に措置するとともに、会計年度任用職員の給与改定の遡及等が確実に行われるよう徹底すること。また、専門人材を始め、地方公共団体における人員確保が困難となっている状況を踏まえ、地方公務員の人員確保や専門性向上のために必要な財政措置その他の支援に万全を期すこと。
十三 公立病院については、物価高騰や人件費の増加等によって経営状況が著しく悪化していることを踏まえ、引き続き、持続可能な地域医療提供体制を確保するため、十分な財政措置を講ずること。
十四 物価高騰に伴う地方公共団体の行政経費の増加については、各団体の財政運営に与える影響の把握に努め、必要がある場合には、迅速に追加的な財政措置を講ずること。
十五 地方公共団体が維持管理する施設・インフラについては、今後とも老朽化に伴う更新需要の増大が見込まれることを踏まえ、更新・老朽化対策に要する経費に関し、確実かつ安定的に財源を確保すること。
十六 地方公共団体情報システムの標準化については、標準準拠システムへの移行が完了するまでに要する経費を全額国費で支援するとともに、移行完了後の運用経費等についても、その増加分を含め適切に財政措置を講ずること。また、地方公共団体のデジタル人材が不足している現状に鑑み、地方公共団体におけるデジタル人材の確保・育成が計画的に行われるよう必要な支援を行うこと。
十七 東日本大震災からの復旧・復興事業が着実に実施できるよう、復旧・復興事業が完了するまでの間、震災復興特別交付税を始め、必要な財源を確実に確保すること。また、令和六年能登半島地震の被災地方公共団体に対しては、被災者支援や復旧・復興事業が迅速かつ確実に実施できるよう、必要な人的支援及び十分な財政措置を講ずること。
十八 近年、自然災害が頻発化・激甚化し、全国各地で住民生活の安全・安心を脅かす甚大な被害が発生していることを踏まえ、地方公共団体において、更なる防災・減災対策に予防保全の視点を含めて取り組むことができるよう、十分な財政措置等を講ずること。
右決議する。