地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する件
政府及び地方公共団体は、「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律の一部を改正する法律」の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。
一 都道府県知事が特定地域づくり事業協同組合を認定するに当たっては、「地域社会の維持が著しく困難となるおそれが生じる程度にまで人口が急激に減少した状況」にあり、かつ「地域づくり人材の確保について特に支援を行うことが必要であると認められる地区」との要件を十分に踏まえ、真に地域づくり人材の不足している地区においてのみ認定・設立されることとなるよう、過疎地域の基準その他の定量的な基準を参考にすることを含め、必要な措置を講ずること。また、都道府県知事が特定地域づくり事業協同組合の認定の有効期間を更新するに当たっては、認定の有効期間における地域社会の維持及び地域経済の活性化に資する取組の状況を勘案した上で、この要件を十分に踏まえ、真に地域づくり人材の不足している地区においてのみ認定が更新されることとなるよう必要な措置を講ずること。
二 特定地域づくり事業協同組合の職員の労働条件及び労働環境を改善するとともに、地区外、特に他都道府県からの人材の移住や定住の実績及び効果について検証・評価するため、国及び地方公共団体は、事業協同組合から必要な情報の提供・報告を受けるとともに、特定地域づくり事業協同組合の労働者派遣事業の運営の状況、職員の処遇、退職後の動向や退職理由、及び就職前後の居住状況その他事業の実施状況及び本法に基づくガイドラインの遵守の実態について、毎年調査を行い、その結果を分析の上、公表すること。また、政府及び地方公共団体の特定地域づくり事業協同組合に対する財政的な支援については、この調査結果を踏まえ、特定地域づくり事業の推進等を通じて地域社会の維持及び地域経済の活性化に資する取組が着実に行われているかどうかを検証した上で、適切なものとなるよう、その在り方について必要な検討を行うこと。
三 改正法により市町村への派遣に係る員外利用規制が大幅に緩和されることに鑑み、特定地域づくり事業協同組合が職員を市町村へ派遣する場合には、当該市町村において雇用されている常勤職員や会計年度任用職員等の職員の代替としないことを原則に、当該市町村の職員や市町村から委嘱を受けて活動する地域おこし協力隊の隊員との間で、業務又は事務の内容に応じて処遇の均等・均衡が確保されるよう、適切に指導、助言その他必要な措置を講ずること。
四 特定地域づくり事業協同組合がその職員となる無期雇用派遣労働者を募集・採用するに当たっては、できる限り当該人口急減地区外、特に他都道府県からの人材の移住や定住が促進されるよう、必要な各種施策を講ずること。また、組合員である事業主が、既に雇用している従業員を安易に解雇・雇い止めし、又は自社との兼業の形で事業協同組合の職員として就労させることのないよう指導すること。
五 特定地域づくり事業協同組合の職員が地域づくり人材として特定地域づくり事業に従事しつつ適切に将来のキャリア形成を図ることの重要性に鑑み、特定地域づくり事業協同組合において、職員本人の希望に適合する就業の機会の確保のための配慮、特定の事業に継続的・専門的に従事する期間の確保、資格取得等のために必要な教育訓練・キャリアコンサルティングの実施等の取組が行われるよう、所要の措置を講ずること。
六 特定地域づくり事業協同組合の認定に当たっては、労働者派遣事業の運営に関して十分な専門性及び人的体制が確保されていることを確認するとともに、そのために必要な措置及び支援策を講ずること。
七 特定地域づくり事業協同組合が、教育訓練・キャリアコンサルティングの実施その他の労働者派遣法において義務付けられている業務の一部を第三者に委託する場合には、本来、当該組合が責任を持って同法上の義務を果たすべきものであることに鑑み、これらの委託した業務が職員の能力向上及びキャリア形成に資するよう適切に管理・運用されるよう必要な措置を講ずること。
八 政府及び地方公共団体は、特定地域づくり事業協同組合に対し、労働条件の適切な設定と明示、時間外・休日労働の制限、年次有給休暇の取得促進、派遣労働者の直接雇用の推進、教育訓練の実施その他の労働者の保護に関する法制度について、十分な情報提供を行うこと。
九 特定地域づくり事業協同組合がその職員を派遣するに当たっては、組合の事業計画の内容、組合員の行う事業に係る業務又は事務の内容、想定される派遣先の業務又は事務の内容、それらに応じた適正な水準の給与及び手当を始めとする待遇等について、その者に対し十分な事前説明が行われるよう適切に指導すること。
十 特定地域づくり事業協同組合がその組合員として新たな事業者を加入させようとする場合には、事前に職員の意見を聴取すること等の職員の理解を得るための措置が講じられるよう、適切に対処すること。
十一 特定地域づくり事業協同組合が雇用する職員の雇用の継続、従事する業務の内容、労働条件等に重大な影響を及ぼす程度に事業内容を変更しようとする場合には、職員に対し、事前に十分な説明を行い、理解と同意を得るよう指導すること。この場合において、都道府県知事は、新たな事業計画を受理する際には、特定地域づくり事業協同組合がその職員に対し事前に十分な説明を行うべきことを指導すること。
十二 特定地域づくり事業協同組合の職員が従事する特定地域づくり事業は、地区によってはその内容が多種多業にわたる可能性があることから、特定地域づくり事業協同組合が職員の労働安全衛生の確保に特に注意を払い、事前の労働安全衛生教育の実施など組合員とも連携して十分な安全対策がなされるよう必要な措置を講ずること。
十三 人口急減地域において特定地域づくり事業協同組合の職員が安心して働き、扶養する家族を含めて安心して生活を営むことができるようにするため、国及び地方公共団体による財政上の措置その他の措置が講じられていることも踏まえ、当該地域における適正な水準の給与及び手当等の確保その他の適切な労働・生活環境が確保されるよう、事業協同組合の職員からの意見聴取を踏まえつつ、毎年の調査その他必要な措置を講ずること。また、その内容を公表し、都道府県による適切な指導につなげること。
十四 特定地域づくり事業協同組合が、その職員を派遣する場合、安定的かつ継続的に就業先の提供を行うことができるよう、関係事業者団体との間の情報の共有の促進その他必要な措置を講ずること。また、事業協同組合が新たな就業機会を提供できない場合であっても、職員の雇用及び賃金の支払の維持を図るための措置、休業手当の支払等の労働関係法令に基づく雇用者責任を適切に果たすことができるための知識の普及その他必要な措置を講ずること。
十五 特定地域づくり事業協同組合において、新たな就業機会を提供できないことのみを理由としてその職員を解雇した場合、その職員の就業条件に十分に配慮していない場合など、不適切な行為が認められた場合には、業務改善命令その他所要の措置を講ずること。また、特定地域づくり事業協同組合において、労働者派遣法その他の労働関係法令違反が認められた場合には、労働者派遣法に基づいて事業廃止命令その他所要の措置を講ずるとともに、事業廃止命令を受けた特定地域づくり事業協同組合については速やかにその認定を取り消すなど適切に対処すること。
十六 本事業の目的は、組合職員の雇用の安定と生活の安心を確保し、特定地域づくり事業にやり甲斐をもって参加して地域への定着・定住を促進するものであることに鑑み、組合は月給制を基本とするなど組合職員の処遇が安定的なものとなるよう努めること。また、時間外割増賃金の支払いや各種手当、賞与、退職金、昇給・昇格制度など適切な処遇の確保が図られるとともに、労働者の希望に応じた有給休暇、出産・育児・介護休業等の取得が保障されるよう、国及び地方公共団体が責任を持って事業協同組合への指導・監督を行うこと。
十七 特定地域づくり事業協同組合の事業費において、事務局運営費の比率が過大となっている事例が散見されることに鑑み、事業の効率化及び適正化に努め、派遣職員人件費の比率を可能な限り高めるよう必要な措置を講ずること。
十八 本法に基づく労働者派遣事業は、労働者派遣法の特例として人口急減地域に限定的に認められていることを踏まえ、労働者派遣法の根幹に関わる新たな特例の検討を原則行わないこと。
十九 地方公共団体の任命権者は、その職員である一般職の地方公務員が公務外で特定地域づくり事業に従事する場合においては、当該職員の自主性を損なうことのないよう配慮しなければならないこと。
右決議する。