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平成十四年七月二十六日提出
質問第一五七号

諫早湾干拓事業の開門調査に関する再質問主意書

 提出者
 小沢和秋    赤嶺政賢




諫早湾干拓事業の開門調査に関する再質問主意書


 有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会(第三者委員会)は、「諫早湾干拓事業は重要な環境要因である流動および負荷を変化させ、諫早湾のみならず有明海全体の環境に影響を与えていると想定され、また、開門調査はその影響の検証に役立つと考えられ」、調査は「二ヶ月程度の短期調査、次の段階として半年程度、その結果を踏まえて数年の開門調査が望まれ、開門はできるだけ長く大きいことが望ましい。できるだけ毎日の水位変動を大きくし、できる干潟を大きくすることが望ましい」という見解をまとめている。
 かねてから農水省は、第三者委員会の意見を最大限尊重すると言い続けてきたのであるから、この見解を受け入れれば、開門調査を全面的に実施し、干拓事業による有明海全体への影響の解明を最優先するのが当然であった。
 しかし農水省は、第三者委員会の見解が出された直後に「調査と事業は切り離して考える」という姿勢を示し、まもなく強引に工事を再開した。その上、今年度中に干潟再生を困難なものとする前面堤防工事に着手しようとしており、去る七月十五日には準備工事の入札を強行し契約を締結した。このような農水省の態度は、第三者委員会が要請した調査を事実上無意味なものにし、有明海の再生を願う沿岸漁民のみならず多くの国民の願いに反するものである。
 よって、次のとおり質問する。

(一)
 右にあげた第三者委員会の見解について農水省の認識を明らかにし、調査と事業は切り離して考えると判断した根拠について答えられたい。
(二)
 農水省がいうように、調査と事業を切り離し工事を行えば、仮に今後長期調査を実施しても工事が行われている下ではまともなデータが得られず、調査そのものを極めて困難にするのではないか。また、調査の結果、干拓事業を中止すべきだったとの結論が出ても取り返しがつかないのではないか。調査と事業を切り離すことは調査そのものを形式化し、実質的には否定することではないか。
(三)
 四月十一日付の農水大臣名書簡(「長崎県関係者の皆様へ」)において、「しかし、一方、現状において諫早湾干拓事業について『主因説』が巷間言われており、そのことが事業の円滑な推進にとって大きなマイナスになっていることも事実である。何故他の要因に先立ってとの思いは残るかと思うが、このまま対立の構図を残した不安定な状況の下で事業を推進するよりは、この際、短期の開門調査を行って『主因説』の当否を検証し、万全の体制で十八年度の事業完了に邁進することが適当と判断したところである。」と述べている。
 我々は、短期の開門調査を行えば「主因説」の当否を検証することができ、工事の本格的再開につなげることができるという農水省の考え方に根本的に疑問を持つが、実際に短期調査においてどういう方法で、どれだけ「主因説」の当否、あるいはノリ不作との関連が検証されると考えているのか。また、二〇〇六年度の事業完了は、中・長期の開門調査を行わないことを前提としたものなのか。
(四)
 同じく上記書簡では「中・長期の開門調査については、現在進められている有明海を再生するための新法制定の動き、各種調査の動向、短期の開門調査の結果及びその影響、ノリ作期との関係などを踏まえ総合的な検討を行った上で、新たに平成十四年度中に設ける場での議論を経て、農林水産省が判断する」とある。
 @「新法制定の動き」のどういう点が中・長期開門調査を検討する上で重要で、どのような各種調査の動向が想定されるのか。A新たにどういう議論の場を設けるのか。Bなぜ第三者委員会に引き続き意見を求めることをしないのか。
(五)
 農水大臣は、四月十五日に長崎県知事、有明海沿岸の三県漁連会長と県知事らと会談し、その場で短期開門調査の実施、二〇〇六年度の工事完了という農水省の方針を説明し、理解を得たと記者会見で語っている。しかし、その後三県漁連では内部討議の結果、工事着工に反対することが改めて確認され、現に漁連や漁民たちの活発な反対行動が展開されている。この漁民たちの反対の意見を無視するのか。
(六)
 報道によれば、農林水産省は「万一、洪水が起きたときには周囲の農地に調整池の水が逆流して被害が出るおそれはある」と説明している。調整池から背後地への逆流が起こる可能性があるのであれば、調整池への貯水自体が危険で、防災上重大な欠陥があるということになるのではないか。
(七)
 内部堤防等の工事を行うため、農水省は国土交通省に対し本年六月二十八日に河川協議を行い、国土交通省はこれに同意を与えた。農水省が出したこの協議文書には「事業の必要性」という項目があり、そこには「背後低平地における高潮、洪水、常時排水不良等に対する防災機能を強化することを目的に実施」と書かれている。
 しかし、我々が提出した質問主意書に対し、排水不良対策の解決は「関係機関が連携を図りながら、排水路の整備等を順次実施していく必要があると考えている」と、干拓だけでは解決しないことを認めている。事実、低平地では干拓とは無関係に排水路工事が行われている。また、潮受堤防閉め切り後も背後地の一部で湛水が発生していることも答弁書で認めている。農水省はこのようなこれまでの見解と異なる内容を記した文書により、国土交通省から工事の同意を取り付けているが、これは事実上、国土交通省を欺いたことにならないか。この際、正確な事実にもとづく協議をやり直すよう求めるがどうか。

 右質問する。



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