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平成十四年十二月十二日提出
質問第四〇号

台湾向け原子力発電設備の輸出許可に関する質問主意書

提出者  北川れん子




台湾向け原子力発電設備の輸出許可に関する質問主意書


 日本政府に対し、輸出許可申請のある台湾向け原子力発電設備の安全確保について以下質問する。

一 平成十四年七月三十日付大島令子議員提出の質問主意書に対する答弁書(平成十四年八月二十七日付)の、二項において原子力発電施設の安全確保については当該施設を保有する国の責務であるとして輸出国は免責されるかのように答えているが、一九六〇年七月二十九日の原子力の分野における第三者に対する責任に関する条約(パリ条約)で原子力事故による被害に対しては公正な損害賠償を行うことを定めている。その際、事故発生が、輸出国の原子力発電施設の設計、使用された資機材、製造ミスなどに起因していて、保有、運転国が責任を負えない場合、損害賠償義務は当然輸出国にある。安全性を確保するうえで製造企業を監督し指導する責務とともに、輸出を許可する権限を有する政府が安全確保について責務があることは原子力安全条約の前文にかかわらず、否定できないことであるが、この点についての政府の見解を質したい。
二 原子力設備の輸出に当たっての、輸出相手先における原子力発電施設の安全性は外国為替及び外国貿易法に基づく輸出許可の審査要件とされていないとのことであるが、原発輸出許可の前提として原子力安全委員会および総合資源エネルギー調査会の報告でも強調している原発輸出の際の安全性の確保が、担保する法令もなく審査対象でもないとすれば空語に過ぎないこととなるがいかがか。
 安全性の確保は輸出者および製造者が輸出に際して考慮する必要がある、政府はその考え方の普及に努めていると答弁書は述べるが、政府のこのような法令による拘束のない行政姿勢で、輸出される原発の安全性を確保する責務が果たせるのか、答えられよ。
三 台湾向け原発の製造者である日立製作所、東芝は本年八月以降明らかとなった東京電力などの長年にわたる原子炉の損傷隠しの当事者でもある。自社に手近な国内でもそのような安全確保に疑問ある実績をもった企業が、海外での長期にわたる運転期間において、資材品質に起因する腐蝕などの損傷を防止し、安全性の確保に万全を期することが果たして出来るのか政府の見解を質したい。また政府はどのような施策をとるのか示されよ。
四 東京電力などで明らかになった原子炉の損傷(炉心隔壁および再循環パイプの応力腐食割れなどによるひび割れ)はステンレスSUS316Lでも建設後数年で発生している。これは東京電力が三十年間は応力腐食割れ、ひび割れは起きないと述べてきた高品質の鋼材である。台湾向け輸出予定の改良型沸騰水型原子炉(ABWR)もSUS316Lを使用していると思われるが、その場合どのようにして安全性を確保するのか対策を示されよ。
五 輸出許可申請があった原子力発電の装置名称について私企業の正当な利益を害する恐れがあることから、答弁を差し控えたいと前述の答弁書で述べているが原子炉、核物質など核拡散防止条約に定める禁止対象の装置名称を秘匿して、どうして同条約を順守することを証明しようとするのか、明らかにされたい。禁止対象の装置名称を秘匿する行為自体が核拡散防止条約に違反の疑いがあると思われるがいかがか。
六 前述の答弁書によれば台湾での核拡散防止条約違反を防止する措置としては、平成十年一月二十六日に米国国務省から在米日本大使館に出された口上書において米国が確認すると日本政府に公式に表明しており、この保障措置は台湾当局から得ている保障に基づいているとの説明を米国政府から受けているという。ところがこの米国国務省の口上書は二項で「台湾当局の管理下にある地域の核物質は国際原子力機関(IAEA)の保障措置の確保に従う。もし、IAEAが台湾の核施設につき保障措置を確保しない場合には、米国政府は核施設への逸失した保障措置の確保に合意を求める立場から日本政府と相談する」とされ、また四項では核物質の移転または再移転についても「それに関連して発生する問題について、日本政府の要求があれば双方に受け入れられる解決策を見出していく立場から日本政府と相談する」と述べているだけで保障措置を確保することを約束していない。すなわち、核拡散防止条約の定める保障措置の確保については、米国政府は責任を負わない、日本政府が要求すれば台湾当局との解決策発見のための相談に応じるというにとどまっている。ところが答弁書は「右口上書に述べる通り、台湾のすべての核物質は保障措置の適用を受けるので核拡散防止条約に違反しない」という。これは口上書の文言を正しく読むのではなく、自己の利益のために外交文書を偽ることになると思われるがいかがか。また、口上書の文言の正当な理解とそれに沿った措置をとる責務があると思われるがいかがか。
七 アジア地域に原子力災害を広げ、取り返しのつかない被害をもたらす危険を伴う原子力発電所の輸出、推進政策ではなく、自然と共有し将来も安全な発電設備の輸出へと政策を転換する用意はないか答えられよ。

 右質問する。



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