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平成十五年七月二十四日提出
質問第一三六号

JR不採用問題に関する質問主意書

提出者  日森文尋




JR不採用問題に関する質問主意書


 一九八七年四月に国鉄の分割・民営化が実施され、JRが発足してから既に一七年目に入っている。一九八六年秋の所謂「国鉄国会」で、当時の政府は「国鉄職員に対し一人も路頭に迷わせない」と答弁している。また「組合所属による採用差別は行わない」とする参議院附帯決議も採択されていた。しかし、各地の労働委員会や中央労働委員会が採用に際して組合間差別の不当労働行為の事実を認定したように、採用手続きの過程において国鉄労働組合等を弱体化、若しくは嫌悪する労務政策が強行され、国労組合員等に対する大量の採用差別(解雇)が行われた。
 爾来、被解雇者とその家族は経済的にも精神的にも多くの犠牲を強いられ、今尚、家族ともども厳しい生活を余儀なくされながらも、JR復帰をめざし運動を継続している。まさしく、被解雇者にとって筆舌を尽くせぬ日々が続いているが、既に被解雇者のうち国労組合員二六名、建交労組合員二名が解決の日を見ることなく他界し、また高年齢化のため解決してもJR会社に復帰できない者なども多数出るなど、不採用問題は、人道的・人権的にも一日も早い解決が求められている。
 この問題について、国際労働機関(ILO)は、国労などが行った結社の自由委員会への提訴(一九九一号事件)を受けて、その見解を四回にわたって明らかにしている。ILOは、日本政府に対し当該労働者に公正な補償を保障し、当事者にとって満足のいく解決に早急に到達するよう要請してきた。
 本年六月二十日、ILOは、第二八七回理事会において、あらためて本問題に関し、結社の自由委員会第三三一回報告(以下、「報告」という)を承認した。
 その内容は、ILOが解決の枠組みとした「四党合意」の不成功に憂慮するとともに、日本政府と関係当事者が、可能な限り多くの労働者に受け入れられる公正な解決を見いだす努力を行うよう促し、また不採用問題が一九八七年にまで遡ることから、既に亡くなったり退職年齢を過ぎたりした労働者の数を考慮に入れれば、たとえ解決してもその実効性に欠けるとして、問題解決の緊急性を指摘しているものである。
 今回の「報告」は、ILOが、本問題の公正な解決の緊急な実現を改めて強く要望したものといわなければならない。日本政府は、この「報告」を真摯に受け止め、本問題の早期解決にむけ責任をもって対応すべきと考える。
 このような立場から、次の事項について質問する。

一 日本政府は、ILOの常任理事国として、またILO八七号・九八号条約の批准国として条約を誠実に遵守する義務と責任があると考えるが、この点についての見解を明らかにされたい。
二 日本政府として、JR不採用問題に関わる国会審議の場において、国土交通大臣や政府参考人から、再三再四にわたってILO勧告について「誠実に実施することが、当然の責務である」と答弁がなされているが、この「報告」を踏まえて、あらためてその見解を明らかにされたい。
三 「報告」は、四党合意の不成功に憂慮するとともに、その責任の度合には踏み込まずとした上で、JR不採用問題の迅速な解決のために関係当事者(日本政府・JR・組合)が四党合意の受け入れを求めた第三二三回報告を想起していることについて、どのように受けとめるのか、その見解を明らかにされたい。
四 「報告」は、東京高裁が二〇〇二年十月に下した建交労不採用事件の判決において、JRに不当労働行為の使用者責任があること、国労・建交労の民営化政策への反対が、JRへの再雇用を決定するうえでの要因であったと判断したことに留意するとともに、JR不採用問題が採用時の差別措置という点で、結社の自由の諸原則に関わる極めて重要なものであり、日本政府によって対処されるべきものであることを強調している。日本政府として、どのように対処すべきと考えているか、その見解を明らかにされたい。
五 「報告」は、「日本政府と関係当事者たちが、可能な限り多くの労働者に受け入れられる公正な解決を見出す努力を行うよう促す」と指摘しているが、日本政府としては、このことについてどのように受けとめるか。また、どのような努力をするのか、その考え方と方針を明らかにされたい。
六 「報告」は、「既に死亡または、退職年齢を過ぎた関係労働者の数から見て、解決には緊急性を要する」と指摘しているが、日本政府として問題解決の緊急の必要性について、現時点でどのような認識をもっているか、明らかにされたい。
七 全国におけるJR不採用問題の解決を求める地方議会の決議は、これまで六一九自治体、八一九本(一七都道府県、一八四市、三五五町、五〇村、一三区)となっている。また、本年七月四日佐賀県議会は、いち早くこの「報告」を受けて、早期全面解決を政府に要請する旨の意見書を採択している。地方自治重視の立場から、国政においても、これを十分に尊重してその主旨を体して、日本政府として誠実に努力すべきであると考えるが、この点についての見解を明らかにされたい。
八 鉄道の旅客・貨物輸送の安全性確保のためには、労使が正常な関係にあることが肝要である。そのためには、正常な労使関係の形成にとって大きな障害となっている懸案のJR不採用問題を早期に解決することが求められるところであるが、JRの労使の一部による不正常な関係が存在することで、この問題解決の妨げになっていると思われる点がある。日本政府として、JR各社における正常な労使関係を実現するため、どのように努力されるのか、明らかにされたい。

 右質問する。



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