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平成十五年九月二十六日提出
質問第二号

防衛計画の大綱で定める「独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力」と自衛隊の海外展開との調和に関する質問主意書

提出者  金田誠一




防衛計画の大綱で定める「独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力」と自衛隊の海外展開との調和に関する質問主意書


 「平成八年度以降に係る防衛計画の大綱」(以下「大綱」という。)は、我が国の防衛力を「独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力」と規定すると共に、「この大綱で示されている防衛力は、防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有することを主眼としたもの」と定義付けている。
 この考え方に従えば、大綱が示す防衛力は、そもそも憲法が許容する、我が国を守る必要最低限度の軍事力に過ぎず、とても海外に派遣する程の余裕はないものと思われる。
 しかし政府は国連平和協力業務だけではなく、一昨年のテロ対策特措法ではついに戦争支援のための派遣へと一歩踏み出した。そして前国会においては米国占領地であるイラクへの自衛隊派遣を決定した。もはや海外派遣に当たる自衛隊の規模は、派遣というレベルを超えて海外展開とも言うべき規模に膨れあがろうとしている。
 こうしたとめどもなき自衛隊の海外展開は、大綱が示す「独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力」が負担し得る限度を超えるものであり、政府の見解をただすために以下質問する。

一 大綱は防衛力の役割として(1)我が国の防衛(2)大規模災害等各種の事態への対応(3)より安定した安全保障環境の構築への貢献の三つを挙げているが、これらの役割は同格なのか、それとも優先順位があるのか、政府の見解を明らかにされたい。
二 テロ対策特措法に基づき補給に携わる護衛艦は、「テロ対策特措法に基づく対応措置に関する基本計画」では三隻以内と定められている。「実施要項の概要」では、この任務に充てられる護衛艦をはるな型、しらね型、たちかぜ型、はたかぜ型、こんごう型、はつゆき型、あさぎり型又はむらさめ型に限定している。
 これらの型の護衛艦は、はつゆき型(ただし海上自衛隊ホームページに掲載された「派遣艦艇出入港記録」(平成十五年五月七日現在)によれば同型は派遣されていない)を除いて全て護衛隊群に所属するものであり、しかも大綱で定める四個護衛隊群を現在編成している隻数は、編成最小限の三十二隻しか存在していない。
 海上自衛隊が四個護衛隊群を保有するのは、大綱が「海上における侵略等の事態に対応し得るよう機動的に運用する艦艇部隊として、常時少なくとも一個護衛隊群を即応の態勢で維持し得る」ために、ローテーションで運用する必要最小限度が四個護衛隊群であるためである。これに関して『防衛アンテナ』平成二年十二月号に掲載された「平成三年度以降の防衛力整備について(一)」(平成二年十一月 防衛庁)での説明によると、ある時点における部隊の訓練練度状況が修理期間、低練度期間、高練度期間とそれぞれ異なる期間に置かれていることが示されている。
 つまり海上自衛隊護衛隊群に配属されている護衛艦三十二隻全てが、大綱で定める「即応の態勢」(即ち高練度期間)にあるのではなく、限られた一部のみがその態勢にあるに過ぎない。
 同様にテロ対策特措法に基づき派遣された護衛艦も、その任務の重大性から高練度期間にあるものが派遣されたと推測される。
 そこで数少ない高練度期間にある護衛艦を三隻も海外に派遣することで、大綱が定める「常時少なくとも一個護衛隊群を即応の態勢」が現在維持されているのか、また見通し得る将来においても可能なのか、政府の見解を明らかにされたい。
三 昨年十二月に行われたテロ対策特措法に基づくイージス艦の派遣について説明するために、防衛庁が民主党外務・安保合同部会会議に提出した資料「イージス護衛艦(DDG)について」によると、イージス艦派遣の理由として「現在派遣可能な司令部機能を持つ護衛艦(DDH)四隻のみ」で、「DDHの派遣期間は約五ヵ月程度と通常の護衛艦(DD)の約三ヵ月に対し長期化」の傾向があるとし、「イージス艦(四隻)を加えることにより、司令部機能を持つ護衛艦は八隻が派遣可能となる」としてイージス艦派遣が派遣ローテーションの緩和になると訴えている。
 しかしながら海上自衛隊はそもそもDDHを四隻しか保有しておらず(「衆議院予算委員会要求資料(民主党・自由党・日本共産党・社民党)」(平成十五年二月 防衛庁)より。以下「予算委資料」という。)、それぞれが四個護衛隊群の司令部機能を果たす役割にあるはずである。
 そこで以下の点について政府の見解を明らかにされたい。
 1 DDHが派遣された場合、それが所属する護衛隊群には司令部機能を持つ護衛艦が存在しなくなると思われるが、当該護衛隊群の部隊としての運用において問題は生じないのか。
 2 護衛隊群における部隊運用においてイージス艦は、DDHが持つ司令部機能の代替を果たすことが可能なのか。
四 「テロ対策特措法に基づく対応措置に関する基本計画」では補給艦二隻以内(ただし、部隊の交替を行う場合は四隻以内)の派遣を定めているが、「予算委資料」によればそもそも海上自衛隊は補給艦を四隻しか保有していない。
 基本計画が定めるように交代に伴い補給艦四隻全てがインド洋に展開していても、我が国防衛には支障はないのか、政府の見解を明らかにされたい。
五 一部報道では、テロ対策特措法に基づき派遣された自衛艦の艦載ヘリに搭乗するクルーに関して「教官クラスが多数派遣されているために、国内で必要な教官数が少なくなってしまい、こうした教官たちの負担が増える傾向にあるようだ。(「インド洋で奮戦する艦載ヘリ」『世界週報』〇三年八月十二日号四十二〜四十三頁)という自衛隊内部の声を紹介している。
 そこで派遣される搭載ヘリのクルーには教官クラスが多いために、日本国内に残っている教官たちにしわ寄せが来ているという認識を政府は持っているか。
六 「イラク被災民救援国際平和協力業務の実施について」(平成十五年七月四日 防衛庁)によると、C−130型機三機がイラク被災民救援国際平和協力業務に従事した。
 同時期に航空自衛隊のC−130型機は、この他もテロ対策特措法に基づくインド洋での米軍支援活動に六機、ゴラン高原国際平和協力業務に二機、東チモール国際平和協力業務に七機が割り当てられている。つまり延べ十八機が海外派遣に従事する態勢にあったのだ。
 一方で航空自衛隊が保有する同型機は十六機しか存在しない(予算委資料より)。
 そこで航空自衛隊はこの間、「航空輸送等の効果的な作戦支援を実施し得る」(大綱本文)態勢にあったのか、政府の見解を明らかにされたい。
七 「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(以下「PKO協力法」という。)第六条第六項は、自衛隊の部隊等が行う国際平和協力業務を「自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、実施計画に定めるものとする」と定め、また同第十八条は「国際平和協力業務に従事する者の総数は、二千人を超えないものとする」と定めている。そこでこれら条文の解釈に関して以下の点について政府の見解を明らかにされたい。
 1 大綱が想定する国際情勢下においてPKO協力法第六条第六項でいう「任務遂行に支障を生じない限度において」国際平和協力業務に従事できる自衛隊の規模をどの程度と政府は見積もっているのか。
 2 PKO協力法第十八条でいう「国際平和協力業務に従事する者の総数」とは、一つの国際平和協力業務に対する数なのか、それとも同時期に複数の国際平和協力業務が遂行されている場合は、それら全ての業務に従事する者の総数を二千人までとしているのか。
八 現在自衛隊は実施計画で派遣が定められた数としては、ゴラン高原国際平和協力業務に部隊として計一〇三名(陸上自衛隊部隊及び航空自衛隊部隊の合計)、東チモール国際平和協力業務に部隊として計八五〇名(同右)、「テロ対策特措法に基づく対応措置に関する基本計画」においては計一七八〇名(海上自衛隊部隊及び航空自衛隊部隊の合計)が派遣業務に従事可能である。これらに加えてイラク復興支援業務にも派遣されようとしている。
 自衛隊は、PKO協力法での上限であるはずの二千人を遙かに超える数が同時期に海外派遣に従事しようとしているのであるが、現在「任務遂行に支障」は生じていないのか、また今後イラク復興支援業務に派遣されたとしてもその恐れは生じないのか。

 右質問する。



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