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平成十六年四月六日提出
質問第六九号

「行政事件訴訟法の一部を改正する法律案」に関する質問主意書

提出者  辻  惠




「行政事件訴訟法の一部を改正する法律案」に関する質問主意書


 行政訴訟とは行政行為の適法性を問う訴訟であり、行政権の行使に対して司法権がその適法性の判断を行うという意味において、国の三権のうち行政権と司法権の権限が衝突するものである。行政訴訟を論ずるにあたっては、行政権と司法権の関係、更には立法権を含めた三権のあり方をどうするかが必然的に問題となる。
 そこで、次の事項について質問する。

一 現時の政治体制の下で、行政権が肥大化し他の二権を圧倒的に凌駕する行政国家現象が現出しており、司法権による行政行為のチェックは殆ど有効に機能しておらず、行政の執行に対して監視・統制権限を強める制度的措置が真剣に講じられなければならない。また行政機能の大幅な国から地方への移譲、更には地方公共団体からする国の行政行為に対するチェックも必要である。
 @ 内閣総理大臣は、行政国家現象をどのように認識し、どのような施策を講ずべきとお考えか。
 A 法務大臣は、行政権の肥大化という現状をどのように評価し、どのように対応すべきとお考えか。
 B 総務大臣は、行政権の肥大化という現実に対して地方分権を推進する立場から何をなすべきとお考えか。
二 肥大化した行政権に対して、法の支配の理念の下に、違法な行政の是正が国民の権利としてなされなければならないが、まさに国民が行政への違法是正請求権を行使する場面が行政訴訟である。しかし、日本の行政訴訟は、申立件数が極めて少数に止まること、勝訴率が非常に低いこと等からみて、絶望的な状況にあると評さざるを得ない。
 そこで、法務大臣に対し、以下の点について所見を問う。
 @ 法務大臣は、行政に対する司法審査機能を強化させる必要があるとお考えか。
 A 行政訴訟が殆ど実効的に機能していない現状の原因は何であり、今後どのような施策を講ずべきとお考えなのか。
三 行政行為のチェックは司法によってのみなしうるものではないが、行政訴訟が主要な役割を果たすべき位置にあり、行政に対する司法の優位という観点から、違法行政の是正を行うべきことは明らかである。行政訴訟がこの役割を果たすためには以下の諸点が改善されるべきと思料するが、以下の各点について法務大臣が具体的にどうされるおつもりか所見を問う。
 @ 現行法では、取消訴訟が大原則とされているが、違法な行政行為を是正させるためには義務付け訴訟や差し止め訴訟など多様な救済方法が認められるべきである。
 A 現行法第九条は「法律上の利益を有する者に限り」訴えを提起できると規定しており、最高裁判所の解釈が厳格過ぎることもあって、消費者保護や環境保全等の現代型訴訟において門前払い判決がなされ、国民の裁判を受ける権利を通じた行政の適法性確保が困難となっている。法的に保護された利益圏内の利害を有すると主張する余地のある者に対して広く原告適格が認められるべきである。
 B 現行制度は訴訟形式が少な過ぎ、中心を占める抗告訴訟の対象は様々な行政活動のうちから「処分その他公権力の行使」に限定している。しかし、行政処分、行政立法、行政計画、行政指導などの行政の行為形式を問わず、行政活動上のあらゆる決定が司法審査の対象となることが推定されるべきである。
 C 従前の行政訴訟においては執行停止制度が全くと言っていいほど機能しておらず、このため訴訟提起時点では既成事実が積み上げられてしまい実効的な司法救済が得られなくなっている。ドイツにおけるように執行停止原則を採用すべきである。
四 本法案の内容については、義務付け訴訟の仮決定制度をはじめとして不十分な点が多々存在し、とりわけ原告適格及び執行停止に関しては本当に行政訴訟が実効性を発揮できることになるのか甚だ疑問である。そこで、以下の点について法務大臣にお尋ねする。
 @ 原告適格について、現行法第九条の「法律上の利益を有する者」という限定文言を削除せずに、改正案では第二項で「当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮する」ものとなっている。しかし、これでは原告適格が本当に拡大されることになるか全く不明であるが、第九条第二項は原告適格を拡大する趣旨であるのか。もし拡大する趣旨であるとすれば、具体的に如何なる場合に原告適格が拡大されることになるのか。
 A 原告適格に関する最近の判例では、小田急線高架裁判で第一審では原告適格が認められたものの控訴審では否定されている。しかし、このような場合にも原告適格が認められなければ、今回の法改正は全く無意味なものとなるが、本改正法によって原告適格が認められることになるのか。
 B 執行停止について、現行法第二五条第二項に「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に執行停止が認められると規定されているのを、「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」と改正する等となっているが、これは執行停止要件を緩和する趣旨であるのか。もし緩和する趣旨であるとすれば、具体的に如何なる場合に執行停止要件がどの程度緩和されることになるのか。
 C 例えば、北海道の二風谷ダム建設に関する判決は、ダム建設に反対する住民の土地収用手続が違法と判断しながら判決言い渡し時点ではダムが完成していたために、請求が棄却されたものであるが、土地収用によって家を奪われる原告の不利益が「重大な損害」にあたるとして執行停止が認められることになるのか。

 右質問する。



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