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平成十六年五月二十日提出
質問第一〇五号

旧国鉄臨時職員の退職手当の取扱に関する質問主意書

提出者  稲見哲男




旧国鉄臨時職員の退職手当の取扱に関する質問主意書


 国家公務員退職手当法第二条第二項により、同法施行令第一条第一項第二号に該当し、同法の適用を受ける職員とみなされる者の、退職手当の取扱に関する質問である。
 旧国鉄は、雇用期間を二ヶ月と定める「臨時雇用員」を反復継続更新して、長期にわたり職員と同等以上の勤務時間を勤務させたうえで、一九八三年から八四年にかけて六〇〇〇名を全員解雇した。
 この解雇時の退職手当の算定につき次の取扱がされたので、その適否について質問する。

一 国家公務員退職手当法第二条第二項により、同法の適用を受ける職員とみなされる者については、雇用形態や実態が多様であるため、細部に亘っての適用解釈に不明確な部分が生じたり、違和感が生じる場合がある。
 これに関しては、法を基準としながら労使間協議により、職場の実情に照らして不備不明な点についての整備を行なうべきと考えるが、政府の見解はどうか。
二 勤続年数の算定と支払いについて
 勤続年数の算定に際しては、職員と同様の勤務時間により勤務した日が二二日以上ある月が継続した月数により算定されるが、二二日に満たない月がある場合は、その月に一旦、それ以前の勤続期間に対して退職手当を支払うべきと考えるが、相違ないか。
 旧国鉄は、二二日に満たない月が発生した者に対して、退職扱いとすることを当該臨時雇用員に知らせることなく、且つ、その時点で退職手当を支払うことなく、八三年の解雇時に合算して支払った。
 例えば、
 ある者は、七三年と七七年の出産時に本人が届け出てした休業を退職及び欠勤扱いとされ、その後の勤務においても出勤日数が二二日に満たないことから七六年に退職としながら、八三年の解雇時までこれを本人に知らせず、退職手当の支払いもしなかった。そして八三年の解雇時に、七六年の基本賃金に乗率と期間(二年)をかけて算出した退職手当額と、八三年の基本賃金に乗率と期間(六年)をかけて算出した退職手当額とを合算して支払われた。
 退職手当は、退職時に支払い義務が発生するものであることから、このように、後日、合算して支払うことは退職手当法上ありえないのではないか。
 仮に、その時点で退職とするならば、その時点で一旦それ以前の勤務期間に対する退職手当を支払わなければならないと考えるが、政府の見解はどうか。
 また、月二二日の算定をはじめ退職手当法の適用に当たっては、労働基準法上の定め(労働時間、休日、労災、産前産後休暇、退職金規程記載義務等)を遵守すべきだと考えるが、政府の見解はどうか。
三 退職手当算定の基礎となる「俸給」について
 国家公務員等退職手当法の解釈及び運用方針について(一九五三年九月三日・蔵 計第一八三二号)では、
 第三条関係
 一、「俸給」とは、次に掲げるものをいう。
  ハ 賃金又は手当の支給を受けている者に対する退職手当の算定の基礎となる俸給月額は、次の各号に掲げる額とする
  (1) 賃金又は手当の額のうち、俸給に相当する分の額が賃金又は手当の額の算定上明らかである者については、当該俸給に相当する分の月額又はその日額の二十五倍に相当する額
  (2) 前号に掲げる者以外の者については、次に掲げる額
  (a) 賃金又は手当の額が月額で定められている者については、当該月額の八割に相当する額
  (b) 賃金又は手当の額が日額で定められている者については、当該日額の八割に相当する額の二十五倍に相当する額
とされている。
 旧国鉄の臨時雇用員の場合、日額賃金は「俸給に相当する分」であり、それ以外の手当その他は一切ふくまれていない。諸給与等取扱基準規程で、「臨時雇用員の賃金は、基本賃金、割増賃金及び特別作業賃金とする」と規定されている。千葉鉄道管理局の臨時雇用員就業規則では、臨時雇用員の退職手当は、職員・準職員に適用される退職手当支給事務基準規程を準用するとあり、それには「退職手当の額は、退職の日におけるその者の基本給月額」によるとされ、基本給月額とは、「職員管理規程に定める職員の基本給、準職員の基本賃金」とある。それにもかかわらず、旧国鉄は、退職手当算定の基礎となる「俸給月額」を、臨時雇用員の基本日額の八〇%の二五倍に相当する額とした。
 このような場合、前記第三条関係一、ハ・(1)が適用されると思われる。適用については各当事者で異なるため、規程等に照らして労使間の協議により定めるべきと考えるが、政府の見解はどうか。
四 違法な「自己都合退職率」適用の是正について
 旧国鉄は、当時六〇〇〇人の臨時雇用員に対して、「業務量の減少による解雇」(国家公務員等退職票記載)を行なった。これは整理解雇であるにもかかわらず、旧国鉄は退職手当につき、勤続一〇年以下の者はすべて自己都合退職率(五年以下の者は六〇%、六年以上一〇年以下の者は七五%)を適用した。
 この違法な退職率適用については、個人の訴訟提起により、誤りであることが確定した(最高裁一九九八年六月二二日判決)。そのため、同様の取扱をうけた当時の同僚である臨時雇用員らが、違法な退職手当減額の是正を求めて旧国鉄の承継法人に団体交渉申入れを行なっているが、これに対して承継法人は、「誰一人見直ししない」という態度をとり(九八年一〇月二日 元衆議院議員・中川智子さんの呼出しの場において)、その後の交渉に応じていない。
 近年、不安定雇用労働者が激増する中、臨時労働者、パートタイマー、派遣労働者ら非正規労働者の差別是正や均等待遇に向けた労働条件の改善が急務となっている。民間私企業に止まらず、公務職場で働く臨時・非常勤労働者の取扱についても同様である。
 旧国鉄による臨時雇用員の大量整理解雇について、不当・違法な退職手当の取扱が放置されたままである。この点につき承継法人は、被害を与えた臨時雇用員らに謝罪し、被害者らとの交渉により是正措置を講ずべきだと考えるが、政府の見解はどうか。
 また政府としてもその事実関係を調査し、それが事実と判明した場合には、違法状態を解消させるための行政指導を行なうべきだと考えるが、この点の政府の見解はどうか。

 右質問する。



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