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平成十六年六月十六日提出
質問第二〇一号

年金制度の根幹と信頼に関する質問主意書

提出者  阿部知子




年金制度の根幹と信頼に関する質問主意書


 年金不信は国民の一般的な感情にまでのぼりつめた。今回の年金改革では、本来は国会で十分、論議されなければならない重要問題がほとんど説明されないままに放置された。内閣に対し、誠実かつ迅速な答弁を求めたい。

1 年金積立金管理運用独立行政法人について
 (1) 年金資金運用基金を年金積立金管理運用独立行政法人に組織再編することを決定したのは、いついかなる場面だったか。
 (2) 官邸で開かれた特殊法人改革推進本部参与会議では、「年金資金運用基金の改革案」に対して、賛成・反対含めてどのような意見が出たのか。とりわけ株式運用について慎重論が出たようだが、厚生労働省の説明に対して懸念を示した参与の納得・賛同は得られたのか。
 (3) 社会保障審議会年金部会、及び運用分科会では「年金積立金管理運用独立行政法人」へ改組する案をいつ論議したのか。部会ないし分科会の了承はあったのか。それとも、説明と質疑応答だけだったのか。各界の専門家で構成される審議会の部会・分科会で、年金積立金の管理・運用に関わる組織形態の変更は、重要検討事項ではないのか。
 (4) そもそも、年金福祉事業団が年金資金運用基金(〇一年四月)に衣替えをした理由を振り返ると、「年金積立金の自主運用にあたり、厚生大臣から寄託された資金の管理及び運用を行う専門機関として、年金資金運用基金を設立し、その責任体制の明確化及び専門性の確保を図るとともに運用実績等に関する詳細な情報の公開により年金資金運用の透明性を確保する」(九九年七月厚生省『年金資金運用基金法案』提案理由説明)とあるが、今回提出の年金積立金管理運用独立行政法人法案の提案理由説明には「専門性の徹底及び責任体制の明確化を一層図る観点から」と書かれている。違いは「一層」という言葉が加わった程度だが、年金資金運用基金のどこに問題があったのか。
 (5) 年金資金運用基金には今年四月一日現在、百四十三名の職員がいる。近藤純五郎理事長は、一九九四年から九六年まで年金局長、〇一年一月から〇二年八月まで事務次官をつとめた後、年金資金運用基金に天下っている。環境庁官房長をつとめた丸山晴男理事も厚生省からの天下り組。柏崎澄雄監事にいたっては、厚生省退職後に破綻した農業者年金基金の理事を経て〇二年七月から非常勤で勤めている。いったい年金資金運用基金には過去、年金福祉事業団の時代から何人の天下り組がいたのか。中央省庁から地方に出向して、そのまま早期退職するケースも含めて、お答えいただきたい。
 (6) 現在の基金、ならびに過去の年金福祉事業団の時代に、銀行や証券会社など金融機関出身の職員は何人いたか。民間金融機関出身の職員(出向も含む)の数と配置された部署名、ならびに出身企業名も明らかにされたい。
 (7) 厚生労働省、社会保険庁をはじめとした国の機関、ならびに地方公共団体、特殊法人、公益法人からの出向者は、年金福祉事業団の時代から現在にいたるまで、何人いたか。それぞれの部署とどこから出向してきたのかを明らかにされたい。
2 独立行政法人の独立性について
 (1) 財政投融資の廃止にともなって、〇八年度には積立金の全額を年金積立金管理運用独立行政法人が運用することになるが、この巨額投資機関の責任体制はどのように明確になるのか。
 基金は理事長一人、理事二人、監事一人という構成で、新法人は理事長一人、理事一人、監事二人となる。さらに新法人は、厚生労働大臣の指導・監督を離れて、厚生労働省の定める中期目標にそって自立性・独立性を高めて国内外の債券・株式運用に乗り出す。日銀に匹敵するような巨大金融機関にしては、おそろしく貧弱な体制と言えないか。新法人の中につくられる運用委員会は、日銀の政策委員のようなものだ――と年金局は説明しているが本当か。
 (2) 運用委員会は提案直前まで、投資委員会と呼ばれていた。官邸での参与会議でも、「運用責任を理事長に一元化するのであれば、投資委員会をはっきりアドバイザー的なものとすべき」という指摘が出ているが、ここでいう投資委員会、現在の運用委員会の性格は曖昧ではないか。巨額の管理運用業務については、年金積立金管理運用独立行政法人法第十五条第四項で「管理運用業務に関し、理事長の諮問に応じて重要事項について意見を述べ、又は必要と認める事項について理事長に建議することができる」とされているが、この「建議」とは何か。意見を述べることができるという意味か。その意見とは参考意見の表明であって、方針の議決など決定権限はない、ということなのか。
 (3) すると、改正日銀法に根拠を持つ政策委員とはだいぶ違う。たとえば日銀総裁・二人の副総裁も含めて六人の政策委員会のメンバーは国会同意人事を必要とするが、厚生労働省の試算によると将来三百兆円を超える資金を扱う年金積立金管理運用独立行政法人の理事長・理事・監事ならびに年金局が日銀政策委員にたとえた運用委員は、国会同意人事は欠かせないと思うが、いかがか。
 (4) 巨額の資金を扱う金融機関に、国会同意人事も経ることのない独立行政法人制度はなじむのか。
 (5) 運用委員会の権限は「建議」までであれば、年金積立金百五十兆円の運用にあたって「株式等の投資割合決定」の権限は理事長ただ一人ということにならないか。理事長に責任があるのは明確だが、当面百五十兆円から将来二百兆から三百兆円の運用の鍵を一人で握る巨大投資機関ということにならないか。
 (6) 金融機関を除いた公的機関は、首都機能の分散方針にもとづいて首都圏に配置するとされている。新法人は、グリーンピアや住宅融資も廃止・撤退して、債券・株式の運用に専念するのだから新法人は金融機関そのものといえる。ならば新法人の主たる事務所をあえて神奈川県横浜市にするのか、伺いたい。
3 独立行政法人への移行直前の六兆三千億円の一括立替え払いについて
 (1) 新法人(年金積立金管理運用独立行政法人)が発足する前に、年金資金運用基金が財政投融資から借り入れている六兆三千億円を財政投融資に一括立て替え払いをすることが参議院厚生労働委員会の審議のさなか明らかになった。年金積立金を少なくとも四兆六千億円近く取り崩すのは間違いない。しかも、その法的根拠とは年金積立金管理運用独立行政法人法附則第二条第二項「出資及び交付金の交付を行うものとする」であるという。これだけ重要な事柄を、政府は国民ならびに国会に事前説明しなかった理由を明らかにせよ。
 (2) この巨額の積立金からの立て替え払いは、なぜ事前の法案説明から抜け落ちたのか。法案説明の際に、政府は国会議員に対して「要点」や「概略」を示したペーパーを作成し説明を重ねるのが常だが、「年金積立金管理運用独立行政法人法案」についての資料には、どこにもそのような記載は見当たらない。まさか、四、五兆円の積立金を動かすのは厚生労働省の裁量だという慢心があったのではあるまい。説明を省いたのは意図的な情報隠しではないか。
 (3) 与党の関係者だけに説明し、野党の法案説明時には説明しなかったのはなぜか。野党議員には「聞かれれば答えた」という姿勢は、年金関連法案の審議を進めるにあたって必要最低限の情報を公開する義務を政府が行わなかったことを自ら証明することにならないか。
 (4) 参議院厚生労働委員会で年金局長の説明にあった「年金資金運用基金に一兆七千億円の資金がある、六兆三千億円から差し引くから四兆六千億円の取り崩しですむ」という問題についてお伺いしたい。この一兆七千億円というのは、年金資金の運用のために財政投融資を通して年金住宅融資に投下され、利息をともなって返済され、やがて年金積立金に帰するものではないのか。そもそも、年金資金を活用して福祉還元するから年金住宅融資と呼ぶのではないのか。一兆七千億円も含めて、財政投融資に一括立て替え払いする年金資金は総額六兆三千億円ではないのか。
 (5) 財政投融資に対しての繰り上げ一括返済をする六兆三千億円の中にグリーンピア事業ならびに年金住宅融資事業等の損失確定額はいくら含まれているのか。六兆三千億円の内訳を明らかにされたい。
 (6) 厚生労働省の『福祉還元事業に要した総費用の状況』(試算)によると、グリーンピア事業の確定損失六百八十一億円、含み損最大千二百三十三億円、財政投融資償還利息千五百九十四億円、維持管理費二百九十億円計三千七百九十八億円とある。
 グリーンピア事業の最新の損失確定額と、今回の一括立て替え払いで処理する予定額を明らかにされたい。
 (7) 前出の厚生労働省「試算」によれば、グリーンピア事業において今後、必要となる経費の総額は八百五十四億円だった。そのうち、財政投融資償還元金が六百八億円、償還利息が百八十九億円、維持管理費五十七億円とされている。一方、法案審議中に私たちに厚生労働省から説明があった数値は、グリーンピアの財政投融資償還元金として四百億円であった。元金の約二百億円の違いはどこから出てくるのか。最新の正確な状況を示していただきたい。
4 年金住宅融資の移管と処理について
 (1) 参議院厚生労働委員会で年金局長は、「年金住宅融資について転貸法人の融資に八〇パーセント保証をしていて、年金資金運用基金に対して銀行は二〇パーセント保証していて珍しいことに一〇〇パーセント保証」と説明している。ならば、基金が公表している要リスク債権千百十七億円は存在しないことにならないか。一〇〇パーセント保証で、リスクゼロなのであれば、なぜ要リスク債権が存在するのか。
 (2) もし、一〇〇パーセント保証付きであれば、年金住宅融資の回収事業を移管する福祉医療機構に債権譲渡する際に、年金積立金の一括立て替え払いは不要となるのではないか。
 (3) 前出の「試算」によれば「被保険者住宅等融資事業」の赤字額は、最終的に九千三百二十億円となっている。この損失は、六兆三千億円の一括立て替え払いに含まれているのか。含まれていないとすれば、どこで処理することになるのか。
 (4) 転貸民法法人が次々と解散している。秋田、山形、福島、新潟、福井、岐阜、鳥取、福岡、佐賀、大分、鹿児島と続々解散してきている法人がある。解散した転貸法人の融資残高は、五千五百九十五億円と厚生労働省は参議院厚生労働委員会で答弁している。これらの解散法人の融資残高は、一括返済されて年金資金運用基金に払い込まれているのか。
 (5) 個人の繰り上げ返済もある。年金資金運用基金は財政投融資から長期にわたって資金を借り、財投金利をつけて返済していく約束だった。一方、長期ローンを組んで利息つきで元金を返済するはずの人たちが「一括返済」をしてしまったら、その後の利子収入はなくなってしまう。一方で財政投融資に対して年金資金運用基金は、元金と金利を支払い続けなければならない。「一括返済」が増える分だけ今後とも利息収入が見込めない財政投融資への支払い金利が膨らみ、年金積立金から利子を補給しつづける――こうした構造にあったと理解していいか。
 (6) 新規融資を停止することが決まったら利子収入も止まるので、あとは過去の融資事業失敗(逆ざや等)の後始末が残る。その処理が、保証金九千億円ではないのか。参議院厚生労働委員会では「一括立て替え払い六兆三千億円の中に、逆ざや分が含まれるかどうか」について、年金局長の答弁が二転三転した。正確に答えていただきたい。
 (7) 一括立て替え払い六兆三千億円に含まれる保証金九千億円の算出の根拠を示していただきたい。また、その保証金に含まれる年金住宅融資に関する金額と算出根拠を明示していただきたい。
 (8) 被保険者住宅資金の融資事業における〇二年度以降の年度別融資件数、融資残高、延滞残高、延滞件数、延滞率を六か月未満と六か月超の延滞債権に分けて明らかにされたい。
5 厚生労働省・社会保険庁関係者の天下り・渡り鳥に関して
 (1) 厚生労働省年金局や社会保険庁、社会保険庁各地方社会保険事務局、各社会保険事務所の出身者で、厚生労働省及び環境省認可の公益法人に天下り、渡り鳥をしている前会長、理事長、全理事、全監事、全職員のそれぞれの最終官職とそのひとつ前の官職を〇二年までさかのぼり明らかにされたい。
 (2) 前記の対象者の退官時退職金、現在の法人での月間報酬と年間報酬を明らかにされたい。
 (3) これら天下り・渡り鳥に対する政府の所見および対応を明らかにされたい。

 右質問する。



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