質問本文情報
平成十六年七月三十日提出質問第一〇号
知的財産制度における「法と経済学」的観点の重要性に関する質問主意書
提出者
川内博史 小林千代美
知的財産制度における「法と経済学」的観点の重要性に関する質問主意書
諸外国においては「法と経済学」が学問の一分野として確立され、盛んに研究されているところであるが、わが国でも平成十五年二月に「法と経済学会」が発足し、諸外国に比して大きく出遅れていたこの分野の研究がようやく端緒につくと共に、一定の地位を得つつあるところである。
また、諸外国においては「法と経済学」の分野で特に研究が盛んなのは知的財産法の領域であり、過度の権利強化が社会制度全般に悪影響を及ぼす弊害を未然に防ぎ、社会全体の便益を最大化するための制度設計において「法と経済学」的観点の重要性が極めて高く認識されているところである。
これらの点を踏まえ、以下質問する。
イ 知的財産戦略本部(民間選出本部員)
ロ 知的財産戦略本部コンテンツ専門調査会
ハ 知的財産戦略本部権利保護基盤の強化に関する専門調査会
ニ 知的財産戦略本部医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会
ホ 文化審議会著作権分科会
ヘ 産業構造審議会知的財産政策部会
ト 日本工業標準調査会知的基盤整備特別委員会
チ 工業所有権審議会
リ 農業資材審議会種苗分科会
二 一に挙げた審議会もしくは調査会等のうち、特にイの知的財産戦略本部、ロの知的財産戦略本部コンテンツ専門調査会及びホの文化審議会著作権分科会においては主に事業者団体等の権利者を代表する委員を中心に「創作者に対してインセンティブを付与することから生ずる便益は、これを利用する人々の便益に優越する」という前提に著しく傾斜した議論が進められているのではないか、という危惧が「法と経済学」の分野に見識を有する学識経験者等から指摘されていることについて内閣官房知的財産戦略推進事務局、文化庁長官官房著作権課及び経済産業省商務情報政策局文化情報産業関連課においてどのようにお考えであるか明らかにされたい。また、各事務局及び課においては「法と経済学」の観点を今後の施策に反映させることと、その必要性についてどのようにお考えであるかも合わせてお示し願いたい。
三 本年五月二十七日の知的財産戦略本部第八回会合において中山信弘本部員は「外部から見ますと、場合によっては知的財産に関係ない事項も含めて、単に各界の要望をまとめただけじゃないかという批判がないとは限らないというふうに思えるわけであります。(中略)現在、世界を見渡しましても、知的財産制度の強化一本やりという国はないわけであります。知的財産制度と言えどもいろいろな要素が複雑に絡み合っておりまして、例えば模倣品対策のように、迅速かつ強力に直ちに実施をしなければならないという問題もございますし、逆に例えばソフトウェアのように、権利を弱めた方が、あるいは権利がない方が産業・文化の発展に役に立つという場合すらあるわけであります。(中略)権利を強化すべきものもあるし、あるいは権利を制限すべきものもあるということになるわけであります。いかにしたら産業、あるいは文化の発展に益するかという観点から、徹底した検証、検討というものが必要になってくるだろうと思います。」と指摘しているが、現行の知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画(平成十六年五月二十七日改訂。以下「計画」という。)においては各事項について「消費者利益等の観点を含めて総合的に検討」することが求められているが、今後は前述の中山本部員による指摘を踏まえ、各事項について「法と経済学」の観点からの検証を進めると共に、今後の計画改訂に際してはその旨を各事項に明記すべきではないか。
右質問する。